ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会 研究開発及び生産流通部会)> 第9回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産流通部会議事録(2015年1月30日)
2015年1月30日 第9回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産流通部会議事録
健康局結核感染症課
○日時
平成27年1月30日(金)15:00~
○場所
厚生労働省省議室(9階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)
○議事
○滝室長補佐 定刻になりました。ただいまより第9回「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会」を開催いたします。
本日は、御多忙のところ御出席いただき、まことにありがとうございます。
本日の議事は公開ですが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、プレス関係者の方々におかれましては御協力をお願いいたします。
また、傍聴の方は傍聴の際の留意事項の遵守をお願いいたします。
初めに、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、委員10名のうち庵原委員、伊藤委員、坂元委員、福島委員、細矢委員、森委員、山口委員の7名に御出席いただいております。なお、西島委員よりおくれて見える旨の連絡をいただいておりますので、8名の委員の出席となります。また、小森委員、三村委員からは御欠席の連絡をいただいております。
現時点で、厚生科学審議会の規定により定足数を満たしておりますので、本日の会議が成立したことを御報告いたします。
また、本日は6名の参考人をお呼びしておりますので、御紹介させていただきます。
独立行政法人医薬基盤研究所創薬基盤研究部アジュバント開発プロジェクトリーダー、石井健参考人。
徳島大学疾患酵素学研究センター特任教授、木戸博参考人。
ジャパンワクチン株式会社臨床開発部門部門長、丸山篤志参考人。
同じくジャパンワクチン株式会社臨床開発部門開発企画グループ課長、杉山敬二参考人。
サノフィ株式会社サノフィパスツールワクチン事業部ワクチンサイエンス・メディカル部部長、佐々木津参考人。
国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長、小田切孝人参考人。
それでは、議事に先立ちまして配付資料の確認をさせていただきます。
議事次第、配付資料一覧、委員名簿、資料1から5まで御用意させていただいておりますので、配付資料一覧と照らして、不足しております資料がございましたら、事務局にお申しつけください。よろしいでしょうか。
それでは、冒頭のカメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。
次に、審議参加に関する報告をいたします。
本日の議事内容において個別に調査審議される品目はございませんので、本日の議事への不参加委員はおりません。
それでは、庵原部会長に議事進行をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○庵原部会長 それでは、議題に入りたいと思います。まず最初に、「アジュバントの開発について」ということで、石井参考人から御説明いただきたいと思います。
それでは、石井先生、よろしくお願いします。
○石井参考人 御紹介ありがとうございます。医薬基盤研究所及び大阪大学に籍を置いております石井と申します。
本日は、アジュバントの開発状況について、私のほうからお話しさせていただきます。
まず、「アジュバント開発研究の新展開」という題名をつけさせていただきましたが、アジュバントの開発におきまして、最近いろいろ変化がありましたので、その点も踏まえお伝えしたいと思います。
この資料をごらんになりながら見ていただきたいのですが、免疫学的にアジュバントの効果とは3つあります。
まず、アジュバントがないワクチンに比べまして、アジュバントが添加される、またはワクチンに内因性のアジュバント因子が入っていますと、「早期」に免疫応答が起きる。そして、ピーク時にはアジュバントなしよりも「強い」免疫応答が起きる。そして重要なのは、その後に「長期」の免疫応答が維持できる。この3つの効果がアジュバントの効果としては非常に重要になります。
それでは、アジュバントとは一体どういうものでしょうか。イントロダクションとして2つスライドを持ってきましたが、アジュバントの開発はかなり歴史が長く、1920年代にさかのぼります。Ramon氏もしくはGlenny氏によってアジュバントが発見もしくは開発されたと言われておりますが、その経緯は非常に偶然の産物であります。彼らは植物のタピオカでありますとかオリーブ油からGlennyさんのアルミニウム塩に至るまで、実験においてかなり偶然が重なって開発されたとお聞きしております。
特にアルミニウム塩は、毒素を沈殿させるために使っていたアルミニウム塩をそのまま体に入れたところ、非常に免疫が増強されたという現象からこのアルミニウム塩が開発されたとお聞きしています。しかし、なぜアルミニウム塩がアジュバントとして効くのかというのは、そこから長きにわたってわかっていませんでした。
そもそもアジュバントとは何でしょうかという定義の問題になりますが、実はこれが科学的にも行政的にもはっきりしていないのがアジュバントの研究分野の問題点でもあります。
一般的にアジュバントはワクチンの効果を増強する因子の総称とされております。
「アジュバント」という言葉自体は、ラテン語の助けるという意味を持つ「adjuvare」が語源とされております。
免疫学的な定義は、元来ひどいものでして『Immunologist ’ s dirty little secret 』という教科書に書いてある言葉のとおり、免疫学者は、実は抗原にアジュバントを入れないと免疫が起きないことは知っていたにもかかわらず、その作用機序がはっきりしないことから、論文などの発表でも表立って記載されてこなかったという事実がございます。
このアジュバント開発が転機を迎えたのは、過去15年、特に2011年のノーベル賞の授与が一番重要だと思っています。2011年のノーベル賞は、まさに自然免疫と獲得免疫、ワクチンの効果につなげるための重要な細胞である樹状細胞を発見した先駆者たちに与えられたのですが、そこでわかったことは、アジュバントとはわけのわからぬものではなく、しっかりした受容体が宿主に存在し、必須な樹状細胞がその活性を厳密に制御しているということが明らかになったということであります。
下の図でもう少しわかりやすく書いてありますが、獲得免疫、すなわちワクチンの効果を長きにわたって得るには、実はワクチンや病原体が入った後に起こる自然免疫をきちんと制御することが重要であることがわかりました。すなわち、抗原をシグナル1としますと、2番目のシグナル、つまり、それがアジュバントであり、病原体成分から得られるようなアジュバントが抗原提示細胞に抗原とともに提示され、そしてそれがT細胞、B細胞にシグナルを伝えるということがワクチンの効果増強に非常に重要になると証明されたのです。これが分子の言葉ではっきり判明してきたのは、ほんのここ十数年だということを心置きください。
もう少しわかりやすい例を1つ持ってきました。それはインフルエンザワクチンの作用機序が、実は内因性のアジュバントが鍵を握っているという知見であります。これも過去七、八年の新しい知見でありますが、経験的には皆さん御存じのところだったと思います。インフルエンザのワクチンは、弱毒生ワクチン、不活化全粒子ワクチン、スプリットHAワクチンと大きく3つに分けられます。
生ワクチンのほうは、通常の感染病態に近いものをとりますので、自然免疫を担う幾つかの細胞が内因性のウイルスRNAによる受容体を介した自然免疫活性化がおこり、免疫学的によるCD8、CD4のT細胞、B細胞が誘導されて、いい免疫が起きます。
それを日本のプレパンデミックワクチンのように不活化全粒子にしますと、これは感染する病原体ではなくなりますので、ターゲットがかなり限られます。特に重要なのが、pDCsと言われる特殊な樹状細胞のTLR7という新たにわかってきたアジュバント受容体。これがインフルエンザワクチンの中に入っていますRNAを認識してインターフェロンを出すことがわかっています。インターフェロンがアジュバント因子となってT細胞やB細胞をきちんと活性化するためにいいワクチン効果が得られたと考えられています。
季節性インフルエンザワクチンでもありますスプリットHAワクチンに関しては、アジュバントのRNAをできるだけ取り除いていますので、実は自然免疫反応が非常に弱いということが知られています。これはナイーブのマウスや赤ん坊などでは免疫が成立しにくいと考えられています。ただ、大人におきましては、メモリーCD4T細胞が自然のウイルス暴露などによって得られていますので、それをリコールするという意味合いでアジュバントなしのスプリットHAワクチンが有効性があるということが知られています。
しかし、これに関しては、改善が必要で、スプリットHAワクチンにはアジュバントを入れないと、きちんとした免疫反応が得られないということも免疫学的には言われています。
そういう意味では、感染症のワクチンで生ワクチン以外の、特に精製された蛋白や抗原に関しては、アジュバントがないときちんとした免疫が起きないだろうと言われています。
また、なぜアジュバントの必要性が高まってきたかというもう一つのポイントは、下のスライドにありますが、現状のワクチン開発研究が、実は感染症の枠を超えて大きく広がっている点だとおもいます。ごらんのように、神経、循環器疾患、アレルギー・自己免疫、腫瘍、中毒、炎症、その他、避妊や肥満に至るまで、世界ではそれに対するワクチン療法が開発されております。
ごらんになってわかると思いますが、標的の抗原は、ほとんどが自身が持っている蛋白でありますので、実は免疫寛容が起きてなかなか免疫を誘導しにくいということが知られています。すなわち、これにきちんとした免疫をつけてあげようとすると、普通の病原体のワクチンと比較してさらに強い免疫が必要ですから、アジュバントが必ず必要だと言われていまして、そういう観点からアジュバントがワクチンの創薬にとっては非常に重要であるということがここ数年来言われてきたというのが事実であります。
それでは、アジュバント自体はどのようなものが開発されているのでしょうか。これはほんの一部だと思っていただきたいのですが、代表的なものをリストアップしてきました。
2つのスライドに分けてあります。
一番有名で汎用されているのが一番上の鉱酸塩、アルミニウム塩になります。
また、古くから知られているのは毒素。これは臨床応用はされていませんが、実験的にはよく使われています。
また、オイル・イン・ウオーター、もしくはその下のウオーター・イン・オイル。それぞれエマルジョンですが、これは上市されていたり、もしくは臨床研究で使われているものがございます。
また、臨床試験に使われているものの一つとしてBio polymerなどが知られています。
これを全て説明すると時間がかかりますので、どんどんスキップしていきますが、興味のある方は参考文献を御参照ください。
2枚目は病原体由来のLipid、蛋白、核酸、そして宿主由来のサイトカイン等々に至るまでいろいろなものがアジュバントになることがわかっています。
また、その他のところにもありますが、シクロデキストリンといったような、広く使われている添加剤などもアジュバント効果を有することが最近わかってきております。これも参考資料のほうに載せてあるので、御参照ください。
それでは、実際世界で使用(認可)されているアジュバントというのはどのようなものがあるかということを次のスライドにお示ししていますが、実はわずかであります。アルミニウム塩は多種多様にわたりますので、それを多いという場合はまた別になりますが、意外に上市されているものは少ないというのが現状です。特に日本に至りましては、ほとんど全てがアルミニウム塩という状況でありまして、次のスライドにあるような多種多様のワクチンにアルミニウム塩が汎用されているのがよくわかると思います。
私自身がこの会でお伝えしたかったのは、アルミニウム塩が汎用されているのですが、実はその作用機序もしっかりわかっていなかったという現状が明確にあること。最近、作用機序がようやくわかってきたということをお知らせします。
アルミニウムは、こうやって経験上使われていますので、アジュバントの効果があることは知られていましたが、実は細胞性免疫、つまり、ウイルス性の感染症やがんなどに必要だと言われている細胞性免疫の誘導は低く、実験的にはアレルギー性の反応、IgEなどを誘導してしまうことも知られています。そのため、これにかわるアジュバントが望まれておりまして、特に対象疾患に合わせたきめ細かいアジュバントのデザインが求められているのも確かです。
もう一つ重要なことは、アルミニウムの作用機序の研究が非常に進みまして、わかりましたことは、アルミニウム自身は、実際にはアジュバントとは言えず、アルミニウム自体は生体内で産生されるアジュバントの因子を誘導するものであるということがわかってきています。これも詳細は参考文献等を参照していただきたいのですが、アルミニウム自体は炎症細胞を誘導し、その炎症細胞自体が壊れて、その中の核酸であるとか、その他のものが実はアジュバント因子として重要であるということがわかってきています。
アルミニウムは、それ以外にもマクロファージ等にも作用しまして、プロスタグランジンを出させたり、いろいろな作用がわかっていますが、その中でもアジュバントに必要な因子は、実はアルミニウムそのものではなく、宿主から出てくるものだということがわかりました。
次のスライドに移っていただきたいのですが、そうしますと、アジュバントの研究で今、新展開というのは、実はワクチン自体もそうですが、プロダクト、つまり、シリンジの中身だけ調べていても作用機序としてはさっぱりわからぬ点にフォーカスが当たっています。すなわち、ワクチンをどこに打って、打ったところで何が起きているか、どのような細胞が壊れて、どのような細胞が集まってきて、どのような細胞がそこから離れて所属リンパ節に行くかというようなことが今、免疫学を中心に非常に研究が進んでおりまして、今後新たな作用機序、そして創薬に係る新規の発展があると期待しております。
一方で、アジュバントのほうは、報道等でもございますが、臨床応用への期待が高まるにつれて、副作用の危険性も言われております。この図に示していますように、いろいろな病原体やがん、アレルゲン等にもワクチン、アジュバントの創薬の可能性が言われておりますが、翻ってみますと、自己免疫、慢性炎症、組織障害といったものにもアジュバントが係っているのではないかというような不安もしくは可能性が示唆されております。
しかしながら、臨床研究上の膨大なデータ解析ではアジュバントと自己免疫疾患との明らかな関連性をしめしたエビデンスがないということもWHOのエイドラインでは明記されておりまして、そのあたりも検証が今後必要だと考えております。
日本におきまして、我々はその状況をもう少し改善すべく、アジュバントの産学官連携のコンソーシアムを開始させていただいています。
次のスライドにありますように、平成22年10月より産学官共同研究のプラットホームを設立しまして、専門書等も発行しております。
また、平成24年度からは厚生労働省の指定研究としてアジュバントデータベースプロジェクトというのが開始されておりまして、有効性のマーカーだけではなく、特にアジュバントの安全性のマーカーを見出すために、2つの動物モデルを用いて網羅的にアジュバントの投与後の遺伝子解析等も始めております。
時間がございませんので、この3年間の研究進捗状況のまとめを手短にお示しします。
まず、既に動物モデルの実験のデータがそろいまして、アジュバントデータベースのプロトタイプはもう完成しております。そして、これは動物だけでは安全性の確保ができないのではないかということもありますので、ワクチンの臨床試験のサンプル、例えばワクチンを打つ前の血清をもちましてmiRNA等の解析も行っております。これに関しましては、どの子が発熱が起こるかということを接種前の子供の血清から予想できるというレベルのバイオマーカーの候補の抽出にも成功しております。
また、アジュバントの開発も20種近い新たなアジュバントが開発されておりますし、それ以外にもPMDAの科学委員会での話題提供、グローバルにはアジュバント入りワクチンのガイドラインの作成をWHOにて行いました。その下のスライドにありますが、日本でも次世代ワクチンの実用化に向けた検討及び品質管理に関する基準の在り方に関する研究班におきまして、ワクチンアジュバントに必要なガイドラインの原案を作成しまして、今後PMDA、厚労省と相談の上、来年度にはパブコメに至るまで行きたいと考えております。
私の発表は以上です。
○庵原部会長 ありがとうございました。
これにつきまして、何か御質問ございますでしょうか。
石井先生の10年間のデータをがっと15分ぐらいにまとめてもらいましたので、何か御意見。細矢先生、どうぞ。
○細矢委員 大変すばらしい解説をいただき、ありがとうございます。
インフルエンザワクチン、スプリットワクチンを子供たちに推奨しているのですけれども、例えば乳幼児でまだ全くインフルエンザに罹患したことがない子供たちに対して、これは効果がないとはっきり言ってよろしいのでしょうか。
○石井参考人 臨床上のデータがはっきりしたものがございませんので、私自身、それが効かないということは断定できないのですが、少なくとも動物モデルでは、免疫学的な用語で言うと、プライミングの効果はほとんどゼロに等しくて、そういう意味では、もう少しプライミングの効果の高いワクチンが必要だというのは間違いないと思います。
ただ、ブースト、つまり、成人に至るまでの感染歴、暴露歴のある方にとっては、スプリットワクチンは非常に安全で、問題のないワクチンだとは考えておりますが、そこにも改善の余地はあるかと思います。
○細矢委員 現在のワクチンではなかなかその効果が望めないので、もっと有効なワクチンが必要であるというのはよくわかるのですけれども、現状で子供たちに対してワクチンの接種を勧めている側としては、どの程度なのかという情報があれば、ありがたいなと思ったのですけれども。
○石井参考人 日本以外の国で承認されています弱毒生ワクチン、そういうものが導入されるのであれば、プライミングの効果はそちらのほうが高いというデータもございますので、そういうところには期待していいかと考えております。
○細矢委員 もう一点は、アジュバントが例えば自己免疫とか慢性炎症とかを本当に引き起こすのかというのが気になるところなのですが、今のところ公にはエビデンスがないというふうに言われているのではないかと思うのですが、この点について、先生は実際に起こっていると考えておられるのか、起こり得るというふうに考えておられるのでしょうか。
○石井参考人 ワクチンの接種後のいわゆるアドバースイベントの報告はありますし、それは事実だと考えておりますが、それがワクチンやアジュバントに起因するかどうかの十分なエビデンスは十分でないというのが現状です。ただ、これは統計学的に有意差をもって、もしくはパワーを有したデータを出していくには、非常に大きな臨床研究が必要になると考えております。レアな副反応、副作用ほどそれを検出して原因を探るのは難しいと考えていまして、特に我々はそれを理解した上で、現在、安全性のバイオマーカーを接種前後で確認しながら見つけていって、少なくともそういうところのサセプタビリティー、センシティビティーの高い方にワクチンを打つ前にそれを検出して、予防できないかという研究を開始しています。
○細矢委員 ありがとうございます。
○庵原部会長 そしたら、森先生、どうぞ。
○森委員 興味深いお話をありがとうございました。今まで認可されているワクチンと先生が今、開発されて治験を始められたという核酸ワクチン、その違いというのを教えていただきたい、というのがまず1つです。
○石井参考人 核酸アジュバントですか。
○森委員 はい。アジュバント。今までに認可されているワクチンと比較して、さらにどういうところがよくなっているかとか、そういったことを教えていただけますか。
○石井参考人 13枚目のスライド「新規アジュバントの医療ニーズ」にお示ししていますように、現状で認可されてよく使われているアルミニウム塩のアジュバントは、問題が2点に分けられて、1つは細胞性免疫の誘導が低い。つまり、欲しい免疫がつくれないアジュバントしかないというところで、核酸だけではないですが、新たに出てきているアジュバントに関しては、細胞性免疫の誘導が多分アルミニウム塩のアジュバントに対しての有意性を保つところだと思いますし、アルミニウム塩も、長きにわたって歴史的に使われている経緯はあるのですが、実験的には、IgE、アレルギー反応を起こす危険性が残っておりますので、それを抑制するようなアジュバントが求められている。核酸はアルミニウムに足すだけでIgEを下げることができますので、そういった使い方も今後考えられるのではないかと思います。
○森委員 あと、今後アジュバントを開発された場合、使用法としまして、例えばどのような形で使用される予定でしょうか。毎年同じ人に打っても大丈夫なのかとか。
○石井参考人 アジュバント入りのワクチンの臨床試験もしくは研究の仕方といいますか、そういうことになると思うのですが、まず複数回打って問題があるかどうかというのは必ず検証すべきですし、もう一つ、最近、混合ワクチン等でアジュバント入りのワクチンが重ねて使われる、もしくは同時に使われるということが生じ得るかと思います。そのときの予期せぬ反応をきちんと把握もしくは検証する必要があると私自身は考えています。
○森委員 ありがとうございました。
○庵原部会長 ほかには。まず、山口先生、その次に西島先生。
○山口委員 2つほど教えていただきたいのですけれども、スライド7でプレパンデミックのお話をちょっとされたかと思うのですが、効果のあるものとそうでないもので、アジュバント成分のRNAの含量が違うためにもしそういう作用があるのだとしたら、そういうのを評価しないといけないという先生のお考えになるのでしょうか。帰結として。
○石井参考人 それはワクチンのエンドポイント次第ですね。すなわち、プライミング、免疫を初めて誘導すべきワクチンであれば、恐らくここに書いてありますように、内因性のアジュバントの効果もしくは力価のようなものを検証する必要があるかもしれませんが、スプリットワクチンに関しては、ブーストワクチン、つまり、メモリーのリコールですので、そこまでの必要があるかどうかはちょっと微妙だと思います。
○山口委員 そうすると、プレパンデミックに割とこだわるのですけれども、その辺の有効性にもし差異が、あるいはロットで差異が見られるとすると、そういうところに要因があるというふうに考えていいのだと。
○石井参考人 動物実験上はそういう差が出ているデータもございます。ただ、臨床上のデータからはそこまで推測不可能と思いますけれども。
○山口委員 逆に言うと、今の先生の説を実証していこうとすると、そういう臨床研究が必要ということになるのでしょうか。
○石井参考人 ただ、内因性のアジュバントというのは、免疫学的にも検証が非常に難しいものでして、これを評価するというのは実は難しい。添加するアジュバントですと評価可能なのですけれども。そこら辺はWHOでもガイドラインとしてしっかり分けていまして、添加するアジュバントのみを評価するということになっています。
○山口委員 もう一点は評価の点で、動物実験と臨床をつないでいくというところが一番重要なポイントになるかと思うのですが、その場合に評価の仕方として、例えばアジュバントのみの評価とアジュバントとターゲットが入ったときの評価を臨床と結びつけていくにはどういうふうな系で評価していく必要があるというふうに考えられますか。
○石井参考人 データベースの動物実験におけるバイオマーカー探しは、アジュバントの純粋なバイオロジカルレスポンスを見るために行っています。これはアジュバントの評価のみのデータベースだと思ってください。ただし、その後、ワクチンとしての合剤の評価は全く別物ですので、私たちはそこまでバイオマーカーを探そうとは現在考えていないです。
○山口委員 ありがとうございました。
○庵原部会長 西島先生、どうぞ。
○西島部会長代理 2つ伺いたいのですが、1つはB型肝炎のワクチン。これは人によっては抗体ができないということが結構な頻度で出ているようですけれども、その原因として抗原に対する反応性もあると思うのですが、アジュバントについてもそういう個体差というのをこれから考えなくてはいけないのでしょうかということが1点です。
○石井参考人 抗原、例えばHLAの差によるものほどアジュバントには個人差が余りないと言われています。ただし、種差も含めて、なかなか判断が難しいところでありますので、アジュバントに反応しない、遺伝子を欠損した個人の方もいらっしゃるという論文がありますので、そういったところが今後アジュバントの効果を判断する上での研究対象になると思います。ただ、B型肝炎のワクチンで抗体がつきにくい原因がアジュバントかどうかというのは、私も不勉強で、そこまでは存じ上げないです。
○西島部会長代理 もう一点伺いたいのですけれども、アルミニウムの作用として、細胞を壊して、そこから出てくる核酸が働くということで、大変興味深く伺ったのですが、実はきのう、ある班会議で三宅先生がTLR7のアクティベーションについて、まさにその話をされていまして、そのときに、壊れたDNA等がDNAase2で分解されて、それがToll成分に効くという話を聞いたのですけれども、そうしますと、アルミニウムについてもそういう可能性がメカニズムとして非常にライクリーだというふうに考えてよろしいのでしょうか。
○石井参考人 今、免疫学や基礎生物学で言われていますのは、薬剤もしくはアジュバントを入れて、そこに受容体なり反応するものが体にあるという考え方から、何かを入れた場合にそこで起きる現象、宿主細胞の崩壊や代謝の変化が起きて、変化した代謝物質、宿主の崩壊物質などがまた作用を持つというような形で、実は作用機序を見るときはそちらを見なくてはいけないということになっていますので、核酸も DNase-IIで短くなったり、代謝された場合にその代謝産物は活性があるということがわかってきましたので、そのあたりも現在進行形で免疫学などでは研究が非常に進んでいるところです。
○西島部会長代理 ありがとうございました
○庵原部会長 時間が来ていますけれども、何か。
私から1つだけお聞きしたいのですが、アジュバントというのは、入れた局所で働くわけですね。それはどのくらいの時間働くというか、その辺はわかっているのでしょうか。
○石井参考人 ありがとうございます。アジュバントもそもそもワクチンのフォーミュレーションというところで非常に重要になると思いますが、どういった形で投与されるか、フォーミュレーションで非常に重要になります。アジュバントに非常に重要な評価系の一つとしてバイオディストリビューションという考え方がありまして、それがどこまでそこにとどまっていて、どこに行って、どうやって代謝されるのかということが多分作用と副作用に直結していると考えていますので、現在そのあたりを研究しております。アルミニウムなどというのは、かなり長くその局所に残ることも知られています。全然残らないけれども、代謝されてほかの臓器に行くというようなアジュバントも知られていますので、そのあたりは物によって評価の仕方が随分変わると思います。
○庵原部会長 あと、何かございますか。もしありましたら、石井先生をつかまえて質問するとか、お会いする機会がありましたときに御質問していただければと思います。
それでは、続きまして、粘膜アジュバント、木戸先生がやられていますので、注射と違う観点から木戸先生のお話を伺いたいと思います。よろしくお願いします。
○木戸参考人 ありがとうございます。
徳島大学の疾患酵素学研究センターは、酵素の研究をしている、今から53年ほど前に唯一日本でできた酵素の研究所でありますが、私の背景はこういうところで、体内の代謝という観点から、特にインフルエンザウイルスの増殖するメカニズムの解析をしているときに、トリプターゼクララの発見というのがあるのですが、同じところに阻害する物質があるのではないかという中から出会った物質が肺サーファクタントであります。きょうお話しさせていただくのは、安全性と有効性の高い、すなわちセーフティーとエフィカシーの両立したアジュバントです。もちろん、アジュバントはこういうことが求められるのですが、往々にしてエフィカシーが高ければ高いほどセーフティーに問題が出る背景が実際にはあって、大概の人には何ともないのでしょうけれども、それがアジュバント病、何らかの副作用として出てくる問題が今後大きな問題になり得るだろうという中で、私たちの取り組みは、今の体内代謝というところからの発想でして、セーフティーとエフィカシーが両立する戦略はあるという考えです。
まずはセーフティー、安全性に関しては、自然界にある物質ではなく、生体の中にある物質。ということは、代謝系がしっかりしていて、分解系がはっきりとしている。その中でも特にターンオーバーナンバーの速いもの、すなわち、速く分解をされるものの中にアジュバント物質を見つけるということが、まずは安全性、セーフティーの中では非常に重要だろうというふうに考えて取り組みをしております。
次に、エフィカシーですけれども、私たちはかなりすぐれた生体防御機能を持っていますから、自然感染ルートを使うことによって、私たちの持っているほぼ全ての生体防御機能を巻き込んで抗体誘導効果を発揮させる。この2つを実現させれば安全性を担保できる、かなり安全性の高いワクチンができるのではないかと。
したがって、今回の場合、私どもはスプリットのインフルエンザのHAワクチンを抗原とした話になります。
2枚目のところで「ワクチン開発の現状と次世代戦略」と書いてありますが、要するに、皮下注射は自然感染ルートでありませんね。皮膚に張るワクチンもそうですけれども、自然ではありません。したがって、出る反応というものは、Th2タイプということがメーンになってきまして、決して鼻汁中のIgA、予防効果の高いIgAの誘導は全く期待できません。細胞性免疫は多少誘導されますが、それは粘膜免疫と比べることができないくらい低いというふうに考えていいわけで、したがいまして、自然ルート、経鼻というのは、後からお示しします生体防御機能をトータルで誘導を起こすベネフィシャルなポイントがありますので、肺炎防止から感染予防から、ほかの人にうつさないとかいうようなことがあります。
3枚目であります。ところが、経鼻といいますと、何といっても異物排除機能の高いところになります。したがって、ここで抗体をに誘導する場合、さまざま困難さを伴うわけですが、そこで多くの方々が開発しているのが1番目のアジュバント、すなわち樹状細胞の活性化物質です。石井先生のお話もこちらのところにかなり重きを置いた話になっていたように思いますが、こういうグループのものと、2番のアジュバント、デリバリー、抗原運搬体という2つのアジュバントに分けて考えております。
私は、1番のグループ、樹状細胞を直接刺激するものは、まずは抗原がなくてもアジュバント単独で樹状細胞にさまざまなシグナルが入って活性化が起こります。したがいまして、抗原がない状態で起きた場合に、自己免疫を起こすリスクがあるというふうに考えておりまして、私どものとる方法は、こちらは後回しあるいは避けるべきであるという考えであります。こちらのほうがとても強力で、エビデンスとしては明確に出やすいのですが、2番のほうはデリバリーです。デリバリーは、何といっても自然のルートの効率をよくするということで、特にこの中でも自然界にいっぱいあるものが使われておりますけれども、私がこだわるのは、私たちの人の体の中にある物質ということで、一番最後に赤く書いてある肺サーファクタントにこだわっているのです。なぜこれにこだわるかという意味は、後から示しますが、代謝回転が速いとか、さまざまな利点があります。
アジュバントそのものは、私たちの使っている肺サーファクタントの場合、樹状細胞の刺激を全く起こしません。抗原存在下でのみ抗体誘導へのシグナルがどっと出てくるというパターンにとても特色があります。
ここまでが私のバックグラウンドで、これからより具体的なお話をさせていただきます。
タイトルは、「肺サーファクタントは、効果的なDelivery Vehicleとして作用し、強力な粘膜アジュバント作用を示す」ということです。
4枚目を見ていただきます。
まずは、肺サーファクタントとの出会いというので、ここは詳しく触れる時間がないので触れませんが、トリプターゼクララの仕事をしているときに出会った物質です。まず、肺サーファクタントは実際に小児科の先生は本当になじみの、安全性もよく知っておられる、今から二十数年ほど前に日本で最初に使われ始めて、そして世界のゴールドスタンダードとして未熟児呼吸窮迫症候群の特効薬としてこれまで使われてきているもので、肺を膨らませる界面活性作用というものなのですけれども、これが実に見事に樹状細胞に、あるいはマクロファージに抗原を運んでくれるという事実との出会いでありました。
ただ、子供さんに使っている量は、体重1kgで120~500mg。驚くほどの大量でありますが、実際に私たちが計画しているアジュバントでありますと、1人当たりこの1000分の1。ですから、体重当たりにすると、数万分の1から数十万分の1の微量で十分な効果が出るということを期待しております。
その下に書いてありますが、この物質は肺胞の2型細胞でつくられる脂肪の複合体で、形としては風呂敷状を示します。脂肪は、普通は球形、ドロップになるものなのですけれども、これだけは違うのです。風呂敷になるのです。風呂敷になってぺたっと肺胞の表面にくっつくので、肺の界面活性を下げるという特色があるのですが、何せ肺はよく呼吸運動をしますので、すぐにこの形態は壊れてアモルファスの状態になると、あっという間にその50%は肺胞2型細胞に取り込まれて、ここで代謝回転いたします。したがって、half-lifeは、肺の中では6時間から7時間であります。
では、残り半分はどこに行くのか。ここに注目をしました。残り半分が樹状細胞とマクロファージに取り込まれる。それならば、このシステムを鼻に応用しようと。すなわち、抗原をこの風呂敷に乗せて運んでもらおうというのが、私たちのそもそものアイデアであります。非常に効果的であります。
ところが、そうはいっても、肺サーファクタントというのは生物製剤で、とても高価ですね。今、日本で使われているものは、牛の肺からとっておりますので、場合によっては牛海綿状脳症ということを言われる。可能性は全くないというくらいなのですが、でも、健常な人に打つときにそんなことが問題になっては困りますので、約7~8年かけて人工合成品が完成してきました。
人工合成品をつくるという場合、肺サーファクタントは、ホスホリピドを主体としたリピドのミクスチャーです。このミクスチャーの中から何がアジュバントとして必要なのかを検討しました。そして、蛋白が4種類ありますが、4種類の蛋白の中の1種類、サーファクタントプロテインCだけがアジュバント活性にエッセンシャルであると。油はDPPC、PGとホスファチジン酸、3種類あればいいということが突きとめられた段階で合成が可能になってまいりました。
ところが、問題になったのはSP-Cです。この配列、一番下のほうに書いてありますが、これはエタノール、メタノールにも溶けなければ、通常はペプチドをオーダーしますと、どこの会社も嫌がります。というか、つくってくれない会社もある。通常私たちがつくる場合でも、100%のTriFluoro-acetic acidで溶かさなければならない。これでは工業生産ができません。
そこで、これを何とかエタノールにも溶けるペプチドにする。これはエッセンシャルなのです。しかも、アジュバント効果のアクティビティーを持ったまま抗体産生能力のない、いわゆる抗体のできないペプチドとして最終的にリジンが6個、ロイシンが16個つながったK6L16というペプチドに落ちつきました。
次のページに入ります。このペプチドとDPPC、PG、PAとペプチドをまぜるのです。これで人工合成肺サーファクタントができるのですが、同時にディスカバリーラボラトリーという人工合成肺サーファクタントをつくっているアメリカの会社さんがあります。脂質の組成は我々と全く一緒なのですが、ペプチドはサーファクタントプロテインB、SP-Bからアイデアを得たKLLLL、タンデムに4個重なったもの。したがって、アミノ酸の組成としては極めて類似していて、これも抗体ができない。さらに肺サーファクタントの作用があるということなのですが、我々もこれは試してみました。アジュバント効果はほとんどありませんでした。すなわち、ペプチドの配列がアジュバント活性にとても重要であるということがこれからわかります。
次に、その下なのですけれども、これは何といっても運び屋です。運び屋ということは、そこにスプリットのHAワクチンが乗らないと運ばれません。乗るのが大変なのです。実はここにノウハウがかなりあって、ただ単にまぜただけでは乗りません。これがとても重要なポイントになります。
例えば天然の肺サーファクタントにスプリットのHAを入れただけでは、乗っているものもありますけれども、この黒いつぶつぶがHAですが、乗っていないものがたくさんあります。これを全部乗せるようにするというのが重要な特許の内容になります。横に書いてある粒度分布を見ますと、HAの粒度分布とSSFの粒度分布、これが完璧に乗るとシングルの一峰性の山に検出されることができますが、両者の結合性というのは、実はエンタルピーをはかることによって、熱力学的にどういう条件が一番いいかということをモニターすることができるようになりましたので、どういう条件を使ったら両者がうまく乗るかということがわかります。
次に、鼻はとにかく異物を排除しますので、通常はここに増粘剤のカルボキシビニルポリマー、CVPを入れております。
その次のページに繊毛運動の図が描いてありますけれども、これに増粘剤を入れることによって、ゆっくりとここにとどまらせるということなのですが、最近、CVPを使わずに、乾燥の微粒子粉末、乾燥製剤を開発することができました。SSFを主剤にした乾燥粉末を「SF-11」と名前をつけていますが、これですと、CVPは不要になります。恐らく膨潤する間にしっかりと取り込まれるのではないかというふうに考えております。
次に、抗体誘導効果についてお話をいたします。ここに示したものはかなり前のデータなのですが、このアッセイは、私たちは免疫学者ではなくて生化学屋ですので、測定は全部例えば抗インフルエンザ、特異抗体をアフィニティーピューリファイドして、それをスタンダードにして、実際に何 μ g 産生されるのだという生化学的な指標インディケーターで測定をいたします。
文献上見ますと、多くの論文では鼻汁中に数百ng/mLの抗体産生量ですけれども、私たちの場合、数 µ g/mL の抗体産生量が達成されて、約10倍近く高い誘導になります。この場合はHAをわずか0.1 μ g 使ったとき値ですので、他の論文のようにネズミ当たり、1 μ g を使えば、これがさらに10倍近く上がるということもわかっています。鼻汁中に、数十 μ g/mL まで出るという抗体産生効果は、恐らくほかではなかなか見ることができないくらいの抗体誘導効果であろうということがわかりますし、血清中のIgGも同じです。
その下に書いてあるHI titerはずっと抗原量を減らして、0.015 μ g のHAまで減少させてもこれだけのHI価が出ますよということを示しております。少量であるからワクチンが節約できるという点は多少のベネフィットなポイントがあるのですが、何といってもエフィカシーの高いことが重要だろうと思います。
次の動物実験でありますが、当然皮下注射で20%の生存率しか出ない、LD50の40倍というようなかなりきつい条件でも鼻汁中に抗体ができて、しかも細胞性免疫もしっかりと出るということから、抜群の防御効果が獲得されております。これらは今までは教室でのラボラトリースケールで合成していたものですが、これを工業生産レベルあるいは大量につくるという事は、また別問題であります。したがって、先ほどのカロリーメーターを使った検証も含めて、しっかりとこの大量生産ラインができるかどうかの検証に今、入っております。ほぼ安定してでき上がるというところまで到達いたしました。
今、ここに示したデータは、液剤としてCVPを入れるものであります。そのほか粉末剤がありますが、特許の関係から今、ここには出しておりません。
効果です。大量生産用、工業生産レベルで作成したSF-10の効果なのですが、Nasal IgAあるいは血液のIgGは、しっかりと上がります。例えばこの場合はHAの投与量が0.4 µ g でありますが、Nasal IgAの誘導量は30 μ g/mL ですから、これもかなり高い、いわゆる世界のトップクラスの誘導効果であろうというふうに思われます。
では、乾燥粉末はどうなのだということで、その下に乾燥粉末、SF-11の誘導効果を示していますが、この場合、ちょっと前の上のものに比べると若干低いように思われますが、理由はかなり明確でして、マウスに粉末を噴霧するというと、とても小さな鼻の穴に粉末を入れる、そのときのデバイスがまだ十分に開発ができていなくて、粉末が残るとかそのようなことが理由です。今、デバイスもどんどん良いものが開発できてきておりますので、同じような効果が出るというふうに思っております。
メカニズムでありますが、鼻に直接打つのですから、T Cell Independentのローカルなパスウェイもしっかりと動かします。したがって、BAFF、 AIDが動いて、IgAのクラススイッチングが明確に観察されます。当然システミックないわゆる自然感染ルートが働きますので、CD8、CD4両方ともにクロスプレゼンテーションが起こってまいりますので、Th1とTh2バランスから言うと、ratioで言うと1.3とか1.4とか、場合によっては2くらいまでしっかりと出ますので、細胞性免疫もしっかりと上げ得るアジュバントであるということが確認されております。
さらに、これは自然ルートである。したがって、私たちの生体防御機能をフルに動員するということが明確です。鼻に点鼻をするのですけれども、実際に腸管液の中には大量の抗インフルエンザ抗体が出てくれますし、膣液の中にも出てくれるということがこのグラフから一目瞭然であります。
ただ、この中の黄色いバーは、盲腸内の便だけですから、全体の便も入れたらかなりの量の抗体が出るということで、したがいまして、エンテロウイルスに関するワクチンに関してもこういう戦略はとても有効に働く、あるいは膣の感染というものも非常に有効に働くだろうというふうに思われます。
これを乾燥粉末でやったものがその下であります。上と下を比べると、下のほうがいいのではないかというふうに思われるかもしれませんが、実際は先ほど言った理由で、乾燥粉末の場合は量をちょっと多くしているのです。上が0.4 µ g のHAに対して、下のほうは乾燥粉末で全部飛ばないかもしれないということで、1.0 µ g のHA、2.5倍のHAを使っていますので、ここまで上がります。ここまで抗体が誘導できるということがわかります。
次に、どのくらの期間抗体誘導価が保たれるのか。これは2011年からカニクイザルで実験したときのデータで、それ以降まだやってはいないのですけれども、とにかく9カ月まではしっかりと中和活性も確認できるのですが、9カ月目にもう一度打ちます。初回は3回免疫しているのですが、9カ月目に1回打っただけでぼーんと上がり始めます。
これは、念のため2回は打っていますけれども、このようにしっかりとメモリー機能がキープされているということが判ります。これはラボラトリースケールでやったときのものでして、今、工業スケールのものはさらにディベロップしておりますので、もうちょっといい結果が出るのではないかと思っています。
安全性についてです。まずは、人工合成肺サーファクタント、SSFとしては、GLP試験は終了して、安全性には全く問題がないということが確認されています。
加えるCVPも普通の添加剤ということなのですが、加えたものでのGLP試験はまだ実施しておりません。
そのほかの動物実験における安全性ですが、マウス、ミニブタ、カニクイザル、この3種類の動物で鼻腔局所の炎症性のないこと、白血球の変化のないこと等を明確にしております。
さらに、ミニブタの場合の有効性評価でH3N2がはやったときの臨床分離広島株を実際にP3のブタの部屋で投与しますと、経鼻ワクチンを接種したミニブタでは全くウイルスは検出されないということが確認されたりしております。
最後はまとめです。
生産性としては、人工合成肺サーファクタントは、大量生成系が可能になってきております。
エフィカシーとしては、自然ルートを使うということが、各種の臓器だけでなく、先ほど石井先生が言ったもの、いわゆる生体内にDNAを出すとか、そういう話とは全く違いまして、我々のものは、アジュバント自体は全く樹状細胞を刺激する能力がないという状態でのセーフティー、かなり高いセーフティーが担保されるのではないかなと思っております。先ほどのデータのように、腸管とか膣液に大量に出るということからも、これらのところも視野に入れることができるだろうと。
その下に書いてあるのが中和活性として、実際にミニブタあるいはマウスではウイルス増殖が全く検出できないというところまでは確認しております。
セーフティーに関しては、先ほどのスライドに示したごとくであります。
石井先生もおっしゃられましたように、こういう戦略というのは、感染症のみならずさまざまな領域に今後拡大し得る能力、ポテンシーを持っていると思います。現実的には例えば花粉症ワクチンとか食物アレルギーワクチンに使いたいというオファーが来る等々、こういった安全性と有効性が確保されているものならば、大いに拡大をしていきたいなと思っております。
以上です。
○庵原部会長 ありがとうございました。
木戸先生のプレゼンに対しまして、何か御質問がございますか。
まず、私から2つほどお聞きしたいのですけれども、これは、サーファクタントをビークルにして、そこに抗原を乗せて運んでいくという考え方ですか。
○木戸参考人 当初、一番最初に我々研究班、JSTの重要課題解決型研究というので研究費が約10億出て、やり始めたときは、肺サーファクタントを直接使ってという実験も走らせようとしたのです。ところが、厚労省も文部科学省も、これは牛ですよ、海綿状脳症のリスクがあるということから、何としても合成を優先するようにとの意見がありました。もちろん合成はメインストーリだったのですが、先生の御質問で、肺サーファクタントでも効果があります。ですが、さらにそこに例えばCVP等を入れれば十分に上がってまいります。
○庵原部会長 肺サーファクタント、先生がつくられたSSFは、そこに抗原がくっつかないと働かないのですね。
○木戸参考人 そうです。
○庵原部会長 そうすると、そこへくっつくのはどういうメカニズムでくっついているわけですか。
○木戸参考人 もちろん、イオン結合もあるでしょうけれども、主にはhydrophobic interactionで、うまくhydrophobic interactionで油の膜に乗せるポイントが非常に重要です。これはかなり重要なノウハウになります。
○庵原部会長 ありがとうございました。
ほかに。森先生、どうぞ。
○森委員 大変興味深く拝聴させていただきました。
HA をターゲットにされているのですが、ほかの抗原とまぜようと思ったら、またコンディションを決定しないといけないということでしょうか。
○木戸参考人 それはそうです。ですが、ほとんど同じ方法でRSVはしっかりと乗る。例えばOVAとかいうようなものもしっかりと乗りますので、いろいろなモデル実験では頻繁にOVAを使ったりしておりますし、RSVは今後の問題でありますから、RSVもしっかりと乗り、誘導されるということも確認しております。
○森委員 単独では全く炎症を誘導しないということで、アジュバントのような作用はないということですが、まぜることによってHAをデリバリーして、そこで炎症を惹起しているということだと理解しました。
、先生の今のお話では、ペプチド自体に対する抗体は誘導されないというお話だったのですが、例えばこれを抗原とまぜたときは炎症反応が惹起されるので、その場合にペプチドに対する抗体も誘導されるということはないのでしょうか。
○木戸参考人 それは危惧されましたので試験をしまして、K6L16に対する抗体が惹起されていないということを確かめています。
SF-10の主成分は油です。実際に樹状細胞の中に抗原と結合したままさっと入った後に、極めて速く油が溶けて影も形もなくなります。蛍光標識した人工合成SSFと別の蛍光標識をしたHAをまぜて、コンプレックスの状態で樹状細胞に取り込ませると、SSFはあっという間に消えて、そしてHAが細かく分解されて、MHCクラス1と2の方向にプレゼンテーションをされていくということが確認されています。
○森委員 IgAの誘導に加えて細胞性免疫によるクロスプレゼンテーションも誘導されるということで、すばらしいものだと思います。そのメカニズムをもう一度確認させていただきたいと思います。デリバリーがいいということで、抗原をデリバリーできるから、その抗原をDCの中に伝達することができて、炎症反応を惹起できるということなのでしょうか。
○木戸参考人 メカニズムに関しては、とにかくデリバリー効果は確認しております。実際に樹状細胞の中に入った量がふえたというところにしかまだやっていませんで、それだけがメカニズムのメインストーリだとは決して思っていません。
実はメカニズムがまだかなり抜けておりまして、厚生労働省の科学研究費の中でしっかりとしたメカニズムをやるための班を立ち上げておりますが、それは先生がおっしゃるように、実はメカニズムがずっと後回しになっている点を考慮したためです。我々研究者としては、とにかく世の中に出したいということもありまして、順位としては安定製造というところに主力を入れてこれまで進めてききた事情がありまして、メカニズムがちょっと後回しなのですね。
わかっているところもありますけれども、これはごく最近いじり始めてわかってきたところであります。ですから、これからさまざまなことがわかってくるのだろうというふうに期待しております。
○森委員 ありがとうございました。
○木戸参考人 ありがとうございます。
○庵原部会長 それでは、坂元先生。
○坂元委員 基本的なことなのですけれども、21番のスライドで鼻汁とか腸管液を比較されていますが、これは単位組織重量当たりの抗体の産生量なのか、それとも全腸管液あたりの産生量なのか、そこをお教えいただければと思います。
○木戸参考人 まずは腸管液というのは、腸管全体を洗うのですけれども、便は盲腸の中だけなのです。したがって、全体の小腸の中の便も入れると、かなり多くなるはずなのです。そして、これは「/mouse」で書いてあります。1匹当たりです。
○坂元委員 そうすると、臓器が大きければ産生量も大きいというふうになると解釈してよろしいのですか。
○木戸参考人 そうですね。ですが、コンセントレーションとして、ここでは書いてありませんが、濃度については、何ccで洗うかということも重要なのです。私たちは、例えば鼻汁ですと、約300 μ L とか400 μ L で洗った場合の結果です。膣液も同じぐらいの量です。
それに対して、腸液となると1ccくらいで洗っておりますので、そういった表記の仕方はありますけれども、やはり問題になるのは、1匹当たりどのくらい抗体が産生されるかというところが重要ではないかと思いますので、こういう表記で今回の場合はデータを示しております。但し今回は便の中のほんの一部、盲腸の中にたまった便しかとっていない値で示してます。ですから、トータルの便というと、さらに大量になる可能性があります。やはり経鼻接種というのは、腸管のIgA分泌量に大きな影響を与えます。値は特異抗体でインフルエンザスペシフィック。トータルIgAでは決してありませんので、かなりの量が誘導されるところにポイントがあるということは、実感として驚きました。生物学的には。
○坂元委員 ありがとうございます。
○庵原部会長 あとはよろしいでしょうか。西島先生、どうぞ。
○西島部会長代理 このようなパーティクル状のものをつくられて、それが非常にマクロファージあるいは樹状細胞に取り込まれやすいということですけれども、そのときにパーティクルであれば、いろんなリン脂質の組成でできると思うのですが、特に肺サーファクタントにあるのはダイパルミトイルのリピドですけれども、特にそれがいいというのはどういうメカニズムをお考えなのでしょうか。
○木戸参考人 ほかのものを入れて検証したことは本当にわずかしかなくて、ホスファチジルセリンを入れるとむしろ落ちるとか、先生がおっしゃるパルミチン酸というのが非常に重要であるということは、腸管免疫の研究者である清野先生のグループからもパルミチン酸が非常に重要であるということがずっと後から発表されたりして、ああ、なるほど、そうなのかというふうに思っております。
例えばコレステロールとかを入れても全然変化しませんし、むしろ下がるということがあります。
○西島部会長代理 11ページに模式図が描いてあって、これが表皮を通ってデンドリックセルに入っていくというふうに書かれていますけれども、こういうすき間を通っていくときにダイパルミトイルがサーファクタントということで有効だという、そういうメカニズムですか。
○木戸参考人 想像ですけれども、さまざまなほかの人たちの文献から言うと、やはりこれは考え得る一つのメカニズムだろうということになります。terminal bronchiolesとかいうところにはサーファクタントが実際に出ておりますから、それで免疫の誘導性が非常によくなるということ、しっかりとそういうエビデンスがございますので、これが全てではなくて、これも作用の一つではないかなというふうに推量しております。
○西島部会長代理 あと、製剤にするときには再現性が必要で、そのときにパーティクルのサイズをきちんと決めなくてはいけないということかと思うのですけれども、サイズ的にはどのくらいのサイズになるのですか。
○木戸参考人 これは大体数マイクロメーターのサイズで、かなり大きいです。余り小さいと取り込みにくいだろうというエビデンスがございます。
余り大きかったらだめなのですが、マクロパイノサイトーシスの形で取り込んでいくというふうに考えておりまして、それに適したパーティクルサイズということで、最終的に製剤のときにはサイジングまでして出すということになるのかもしれません。
これは脂肪ですから、先生の御専門なので、実際に酸化されたり、リゾ体ができたりということ等も。例えば半年、1年とすると、ごくわずかですけれども、リゾ体が検出されたりしますので、これらを完璧になくす一つの手だてとして今、取り組んでいるのが乾燥粉末、微粒子の粉末ということであります。
○西島部会長代理 ありがとうございました。
○庵原部会長 そうすると、まず山口先生、それから細矢先生ということで。
○山口委員 視点が少し違うのですけれども、非常に興味深いプロミッシングなお話を聞かせていただいて、ありがとうございます。
先ほどペプチドの合成が非常に難しいというお話がございました。気になるのがそのサイズの問題、製剤化の問題もあるのですが、これは4つの成分をまぜるということになるかと思うのですけれども、それでペプチドの合成がかなり難しいと。
○木戸参考人 でも、K6L16は難しいことは全くありません。これは研究室でもできるくらい。ほとんどはGMPグレードのものを発注して購入しているのですが、そこは問題ありません。
○山口委員 ちょっと気になったのは、アジュバントというのは割と高いものになるというか。
○木戸参考人 ペプチドがですね。
○山口委員 そうです。全体としてワクチンの価格が高くなるということはあり得るのか。それとも量が非常に少ないので、その点は問題ないのかという話。
○木戸参考人 量は極めて少ないと思っていただければいいと思います。全脂質の数百分の1になります。そのくらいで有効です。
○山口委員 もう一つは、サイズが大きいので、割とろ過滅菌とかができないので、要するに、無菌製造ということに多分ならざるを得ないのかなとちょっと思ったのですが、承認というか、実際に薬事のほうで開発していこうと。
○木戸参考人 それは製造工程の工夫でが全く問題なくできております。最初にSSFをつくるときの油だけをろ過滅菌やりまして、無菌調整したHA、スプリットワクチンと後でまぜ合わせて、そしてサイズを大きくするというパターンで製造しますので、これ自身は問題ないというところ。そこを結構我々も気にして、製造工程を考えてやってきました。
○山口委員 ありがとうございます。
○細矢委員 未熟児の治療でサーファクタントを使うとき、非常に溶けなくて、均一にならなくて困ったのですけれども、これは吸入させるのが容易なほどに溶けて、均一になっているということでよろしいですか。
○木戸参考人 そうです。
それから、先生がやるときもそうだと思うのですが、未熟児のときのあれを振ったりして泡立つと非常にやりにくくなります。人工合成品ですから多少その性質はあるのですけれども、もとの牛のものに比べたらそこら辺は本当にやりやすくて、点鼻などは全く問題ございません。
○細矢委員 ありがとうございます。
○木戸参考人 耳鼻科の先生たちと、クリアランスタイムを含めて、倫理委員会を通して、どこに向かって点鼻するか、どういうデバイスがいいのかということのセレクションを今、始めているところであります。
○庵原部会長 よろしいでしょうか。
そしたら、時間が押していますので、木戸先生、どうもありがとうございました。
○木戸参考人 どうもありがとうございました。
○庵原部会長 それでは、その次の議題としまして、ワクチンの開発状況ですけれども、これは時間の関係で、丸山参考人にまず説明していただいて、続いて佐々木参考人という形で、連続して2社から説明していただいた後、まとめて討論するという形に持っていきたいと思います。
そしたら、まず丸山さんからお願いします。
○丸山参考人 よろしくお願いいたします。ジャパンワクチンの臨床開発部門の丸山でございます。
それでは、弊社のワクチンの開発状況を御説明させていただきます。
本日、機密保持の情報も含んでおりまして、スライド中に明確にお伝えできないところ、それから明確にお答えできないところがありますことをあらかじめ御了承いただきたいと思います。
右下のページ数で御説明を申し上げたいと思います。
2ページ目でございます。本日の内容でございますが、ジャパンワクチンは設立して3年ほどたっておりますので、開発体制につきまして改めて少し御紹介をしたいと思います。また、弊社で開発中のワクチンは、現在4製剤動いておりますが、本日は主に2製剤、帯状疱疹のワクチンとMMRのワクチンにつきまして御報告を申し上げたいと思います。
そして、前回の部会で私どもの親会社の一つであります第一三共の中で開発状況というのを御説明しておりますので、きょうはもう一つの親会社でありますグラクソスミスクラインの世界の開発の状況ということで、エボラ出血熱ワクチンとマラリアワクチンということにつきまして御説明を申し上げたいと思います。
3ページ目が、ジャパンワクチンの開発体制の模式図でございます。ジャパンワクチンといいますのは、グラクソスミスクラインと第一三共の感染症予防ワクチンの臨床開発、承認申請、販売を担う会社でございます。
GSKというものは、海外において豊富な有効性と安全性、また、豊富なパイプラインを有しているGSK Vaccinesというワクチンに特化した会社を有しております。
また、第一三共グループに関しましても、日本で求められる高い品質、安全性に対応できる、日本での製造基盤を持ちます北里第一三共ワクチンという会社を持っております。
ワクチンの両会社の機能を有機的に使用いたしまして、私どもジャパンワクチンの役割として、原則としてはPOC以降の臨床開発となりますけれども、臨床開発と承認申請、そして取得、販売を担うということで、感染症予防ワクチンに特化した新しい形、ハイブリッドな形の会社ということでございます。
4ページ目が現在弊社で開発中のワクチン4製剤ございます。1剤目は小児用の肺炎球菌感染症ワクチンということで、これはGSKのほうからの導入品でございます。無莢膜型インフルエンザ菌のプロテインD結合型の新しいタイプの小児用の肺炎球菌感染症ワクチンでございまして、昨年の3月に承認申請をジャパンワクチンからしております。現在審査をいただいているところでございまして、このワクチンは世界の100カ国以上で承認をされているというものでございます。
2剤目は、皮内投与型の季節性インフルエンザワクチンというものでございます。これは第一三共からの導入品でございます。ジャパンワクチンとして現在承認申請の準備に入っております。このワクチンにつきましては、前回第一三共のほうから詳しい説明がありましたが、そのワクチンと同じワクチンでございます。
3剤目が帯状疱疹ワクチン。後ほど少し御説明をさせていただきますが、現在、第3相試験の実施中でございます。
そして、MMRワクチン、混合ワクチンということで、現在非臨床試験を実施しておりまして、臨床試験の準備を現在しているというところでございます。
現在、弊社では4製剤開発を進めておりまして、そのうち3製剤が開発優先度の高いワクチンのカテゴリーに属していると考えておりまして、弊社としましても力を入れて開発をしているという状況でございます。
5ページ目は、帯状疱疹でございます。帯状疱疹につきましては、先生方よく御存じの疾患でございますが、80歳までに高頻度で発症が推定されているというものでございまして、今後日本は高齢化社会でさらなる増加が見込まれているのではないかと思います。こういったものに関する予防というものが認められて、開発優先度の高いワクチンに選ばれているのではないかと考えております。
弊社開発中の製剤ですけれども、遺伝子組換えの水痘と帯状ウイルスの糖蛋白のgE蛋白を用いまして、それにアジュバントAS01を添加した不活化のワクチンでございます。先ほど石井先生のスライドの中にもございましたが、AS01は、MPLというものとサポニン系のQS21というものを配合しているということでございます。
接種回数は2回接種となっておりまして、現在予定している効能としましては、帯状疱疹の予防、帯状疱疹後の神経痛の予防というものを目指して開発を進めております。
対象年齢は、成人としては50歳以上の成人。
そして、このワクチンは不活化ワクチンでございますので、この利点を利用しまして、免疫機能の低下した方も接種対象にしていきたと思って開発を進めております。
開発状況でございますけれども、現在、世界で第3相試験のプログラムを走らせておりまして、免疫原性、有効性、安全性というものを評価しております。
一番メインの有効性の試験としては、50歳以上の成人を対象とした第3相試験、70歳以上の成人を対象とした第3相試験というものも実施しております。
また、免疫が低下した患者さんのために、免疫不全を対象とした有効性の試験というものも実施しております。このメインの3試験につきましては、開発の当初から日本も参加しておりまして、日本人としては約1,200人ほどの方に御参加いただいているという状況でございます。
6ページ目でございます。昨年12月に先ほど御説明しましたメインの50歳以上の有効性の試験がまとまりましたので、本日速報としてお持ちいたしました。ただ、残念ながら本日お伝えできますのがプレスリリースの範囲ということになります。
この試験デザインは、弊社の帯状疱疹ワクチンを筋肉内に2回接種した群と、プラセボのダブルブラインドスタディーということで、1万6,000人規模のスタディーでございます。この試験には日本人が577人入っておりまして、最長で評価期間として、ワクチン接種後4年から5年間追いかけて、イベントが規定数に達しますと解析を行うという試験でございます。
昨年、イベントが規定数に達しましたので、有効性の解析を実施いたしました。プレスリリースの内容だけお伝えいたしますと、主要評価項目でありますワクチンの有効率というものが主要評価の目標を達成いたしまして、プラセボと比較しまして97.2%という予防効果が認められております。この予防効果は、非常に高い値が得られておりまして、今まで世界で売られている帯状疱疹の生ワクチンに比べましても非常に高い値が出ているのではないかなと思っております。
現在、安全性、免疫原性の解析を継続して実施しておりまして、この試験がまとまりましたら、世界各国の当局の方も含めまして御相談申し上げて、早期に導入できる運びとなるよう検討していきたいと思っております。
7ページ目は、MMRワクチンの開発状況でございます。MMRワクチン、混合ワクチンにつきましては、安全性の高い混合ワクチンというのが望まれているかと思います。現在、弊社開発中のワクチンですが、真ん中の緑色で示しているのが株でございます。北里第一三共ワクチンからMRワクチンの株を用いまして、麻疹のAIK-C株、風疹の高橋株を用いております。
ムンプス株に関しましては、海外で接種経験の多いPriorixというGSKのものですが、その中のJeryl-Lynn株由来のムンプス株というものを配合しております。
緑色で示しましたのが弊社開発中のものでございまして、日本独自の組み合わせというふうになっております。非常に発熱が低いのではないかと考えておりますし、無菌性髄膜炎の頻度も低くなるだろうと考えておりまして、弊社としても期待をして現在非臨床試験を実施しているというところでございます。
次のページからはグラクソスミスクラインの世界での開発状況の御紹介をさせていただきたいと思います。
GSKで開発中のエボラワクチンでございますが、GSKはWHOと協力してこのワクチンの開発を促進しております。昨今いろいろな報道等で見られているものもこのワクチンかと思います。
開発製剤としましては、チンパンジー由来のアデノウイルスベクターにエボラ糖蛋白の遺伝子を導入したワクチンということでございます。
免疫のゴールとしましては、抗体応答の誘導、CD8T細胞(細胞性免疫)の誘導を目指しているということでございました。
非臨床のサルの実験から単回接種で早期の免疫効果が確認されておりますし、また、プライム・ブーストを用いて持続的な免疫応答というものも確認されているというふうに報告がございます。
現在の開発状況ですけれども、昨年9月より米国アレルギー感染症研究所などと協力しながら、第1相臨床試験を実施しているということを聞いております。
第1相臨床試験のデータを見ますと、ワクチンによる良好な免疫原性ですとか忍容性が確認されているという報告も出てきております。
現在、第2相臨床試験の協議も開始され、第2相臨床試験も近々開始されるというふうにGSK Vaccineから聞いております。
また、第3相臨床試験に関しましては、米国のNIHがスポンサーになりまして、3万人規模の有効性の試験をリベリアで実施するという報告も聞いております。第2相、第3相試験を終えまして、このワクチンの導入というものを図っていくものと考えております。
9ページ目は、マラリアワクチンの状況でございます。マラリアワクチンに関しましても、GSKは30年来開発を進めているものでございますが、PATHマラリアワクチンイニシアチブと各パートナーさんと密接に協力して開発を促進しております。
製剤的には、熱帯熱マラリア原虫のスポロゾイド周囲蛋白というものとB型肝炎の表面抗原を融合させた抗原を使っているということでございます。
アジュバントとしましては、先ほど帯状疱疹のところで御説明いたしましたAS01というもののアジュバントを用いて、遺伝子組換えの不活化ワクチンということでございます。
接種回数は3回接種で、追加接種につきましては、現在まだ調査中ということでございました。
接種年齢は、生後6週から17カ月ということでございまして、開発状況といたしましては、第3相臨床試験を終了いたしまして、昨年ヨーロッパのほうに承認申請を行っているというふうに聞いております。これはヨーロッパのほうで製造し、その後、お使いになる国へ出していくというところで、WHOとの協力審査になるということでございます。
第3相臨床試験の成績も報告がございまして、6週から12週齢の方でワクチンの予防効果というのが27%ぐらいというふうに報告がございます。また、5カ月から17カ月のお子様でこのワクチンの予防効果というのが46%ぐらいという御報告もございます。こういったデータを用いまして現在承認申請を実施しているという状況でございます。
次のページが最後のスライドになります。これはジャパンワクチンで現在開発中の品も含みますラインナップの一覧となっております。弊社としましては、小児ワクチン、成人用ワクチン、いろいろなラインナップから社会の皆様のニーズに応えるべく、感染予防ワクチンに特化した企業として、さまざまなステークホルダーの皆様と力を合わせて本邦の疾病予防の確立に貢献していきたいと考えてございます。
以上でございます。御清聴ありがとうございます。
○庵原部会長 ありがとうございました。
続きまして、サノフィの佐々木参考人のほうから説明をお願いいたします。
○佐々木参考人 サノフィ株式会社の佐々木と申します。本日はこのような発表の機会をいただきまして、関係の方々にお礼申し上げます。
早速私どものワクチンの開発状況について御説明したいと思います。
本日の内容でございますが、打ち出しの「議題」というところにあります。まず、会社の概要を簡単に御説明した上で、日本の開発品目、そして質疑応答という形で進めたいと思います。
スライド3ページをごらんください。私どもは、フランスに本社を置く外資系企業でありまして、創業以来約120年ということで、かなり老舗でございます。
いろんなワクチンをつくっておりまして、世界のワクチン業界のリーディングカンパニーの一つであろうかと思っております。
また、非常にたくさんのワクチンを世界中で使っていただいておりまして、およそ5億人の人々に弊社のワクチンが使われている。
と同時に、研究開発にも力を入れておりまして、グローバルでは14種類ワクチンを開発しております。
ちなみに、従業員は世界で1万3,000人。昨年の売り上げが37億ユーロ。現在の為替で約5,000億円程度という会社の規模でございます。
4ページにうちで持っている20種類の感染症の詳細が書いておりますが、このようなワクチンについてラインナップを取りそろえております。
5ページは、研究開発の状況です。開発の拠点は、フランス、米国、カナダ及びアジア太平洋領域では中国、インドと世界に開発の拠点を持っておりまして、グローバルレベルで開発をしております。
開発の優先分野でございますけれども、新しいワクチンとしては、最近日本でも話題になっておりますデング熱、院内感染症。
既存のワクチンの改良ということでは、高用量のインフルエンザワクチン等です。
混合ワクチンということでは、6種混合ワクチンについて、2013年に欧州でライセンスをいただいております。
その他、デリバリーデバイス等の開発もあわせて行っているというところでございます。
ここまではグローバルな話ですけれども、次の6ページから日本のサノフィパスツールのワクチンの開発状況について御説明したいと思います。
3つ箱が並んでおりますが、左側が既に承認をいただいた品目です。上からHibワクチン、ソーク株由来の不活化ポリオワクチン、黄熱ワクチン。この3つは既に国内で販売・使用されております。
その下の2つ、メナクトラというのは4価の髄膜炎の結合型ワクチンでして、これは昨年ライセンスをいただいておりますけれども、現在発売準備中。
その下にありますのは4種混合ワクチン。これは北里第一三共並びに第一三共さんとの共同開発品で、ライセンスは北里第一三共さんがお持ちのものになります。
日本で臨床開発中のワクチンというのが真ん中の箱になります。まず、ソーク株由来の不活化ポリオワクチンの就学前、4~6歳、そのぐらいの年齢での追加接種のワクチンということで、臨床試験を終えたところでございます。現在、これについては薬事対応の準備をしているところでございます。
次にあるのがTdapです。破傷風、低用量のジフテリア並びに百日咳の混合ワクチンで、これは思春期ないし成人に向けた、主に百日咳のブースターワクチンということでございます。これについても申請を準備しているところでございます。
また、腸チフスワクチンは、腸チフスのポリサッカライドを抗原としたワクチンですけれども、これについても申請を準備しております。
その下が5種混合ワクチンです。4種混合にHibワクチンを加えた5種混合ワクチンですが、これについては、現在、国内で臨床第3相試験を実施中でございます。
次に、院内感染症としてはクロストリジウム・ディフィシル、下痢症のワクチンですが、こちらについても現在、国内の臨床試験が行われたところでございます。
一番右側の緑のボックスは、現在、国内での開発を検討中のワクチンということになります。デング熱ワクチン、高用量のインフルエンザワクチン、この2つについて国内の導入を今、検討している段階というところになります。
次に、各プロジェクト、製品の概要について簡単に御紹介申し上げたいと思います。
7ページをごらんください。これはメナクトラという結合型の髄膜炎菌ワクチンですけれども、このワクチンはそもそも厚労省の未承認薬の枠組みで開発要請をいただきまして、それに応じて開発を開始したものでございます。昨年7月に承認をいただきまして、現在販売を準備しているところでございます。
適応症は4つの血清型による侵襲性髄膜炎菌感染症の予防ということで、0.5mLの筋肉内注射という使用法になります。
世界では44カ月国でライセンスをいただきまして、発売以来、およそ7,000万ドーズが使われております。
ちなみに、国内でこのワクチンの使用が想定されるリスクの高い集団としては、PNHの患者さん並びにさまざまな髄膜炎ベルトと言われるアフリカのサブサハラアフリカ地域への渡航の方々、それから一般的には小児・思春期、あるいは集団生活の方々がリスクが高いのかなというふうに考えております。
ちなみに、右側に疫学データがありますけれども、直近の感染研のデータから引用しておりますが、血清型が判明した髄膜炎菌感染症のうちおよそ半数以上がこのワクチンで予防可能ということがわかっております。
次に8ページ、IPV、不活化ポリオワクチンの就学前追加接種について、お話ししたいと思います。現在、日本では乳幼児期に計4回不活化のポリオワクチンを打っておりますけれども、諸外国では5回目接種をやられているのが趨勢でございますので、それについてどうかということで、4~6歳のところでの免疫原性並びに安全性を評価する臨床試験を完了したところでございます。これについては現在薬事対応を行っているところです。
4~6歳のIPVの追加というのが年齢的に適当と思われる理由ですけれども、まず免疫系が乳児期ないしは1歳ぐらいのお子さんに比べて相当に成熟しており、長期の免疫獲得が可能と考えられること。
この年代ですと、まだ定期接種のワクチンがありますので、それとの同時接種を行うことによって高い接種率、すなわちポリオに対する集団免疫の獲得が期待されるということ。
それから、これより高い年齢、思春期での接種というのは比較的接種率が高くないという問題もありますし、また、副反応等の問題も考えますと、4~6歳のほうが適当ではないかということで、この年齢が適切ではないかと思っています。
下に時系列でいろいろなことが書いてありますが、詳しいことはさておき、2016年にはIPVでプライミングを終えたお子さんが4歳ぐらいの年齢になるので、そのときまでに使えるようになるといいのかなということを弊社としては考えております。
9ページは、Tdap、百日咳のブースターワクチンです。このワクチンは5種類の百日咳抗原、PT、FHA、PRN、FIM2、FIM3を含んでいるブースターワクチンになります。
想定する適応年齢と申しますか、これは治験の対象年齢になりますけれども、11~12歳です。
開発段階ですけれども、国内で1/2相及び3相の試験を終了して、現在承認の申請を準備しているところであります。
このワクチンのグローバルヒストリーとしては、1999年に最初にカナダで使用され始めて、その後、世界63カ国で広く使われております。
世界での販売実績は1億3,000万ドーズとなっております。
現在問題となっておりますのが、若年乳児、ワクチンの接種が完了する前の幼い、生まれたばかりの赤ちゃんの重症の百日咳、そのような方を守るために、赤ちゃんにワクチンを打つのは限界があるので、その赤ちゃんと接触する医療従事者であるとか、妊娠中の女性、あるいはその赤ちゃんの兄弟、そういった方に対する免疫をつけるということが重要。コクーンストラテジーを考えていかなければいけないということです。そのときにお役に立てるワクチンかなと考えております。
また、百日咳については、流行を受けて、今後どういうふうにワクチンを使っていくかということが日本のみならず世界で非常にホットトピックになっておりますが、どのようなワクチンがいいかということについては、百日咳という病気自体はパータシストキシン、百日咳毒素で起こってくるのですが、その毒素に対する抗体のみならず、右下に菌の模式図が書いてありますけれども、菌の気道粘膜への接着を阻止するフィンブリエでありますとか、パータクチンであるとか、そういったものに対する抗体も重要なのではないかということが最近言われていますので、そのような組成のワクチンが望ましく、また、このワクチンはそれにかなっているのかなということを考えております。
10ページは、5種混合ワクチン。DTaP-wIPVはワイルドタイプ、ソーク株のことですけれども、それとHibをまぜたものです。
このワクチンは、弊社と第一三共さん、北里第一三共さんとの共同開発品目で、この委員会において開発優先度の高いということにノミネーションされておりますDTaPベースの混合ワクチンに該当するものでございます。
混合化によるメリットとしては、当然のことながら接種回数が減るので、副反応及び紛れ込み有害事象のリスクを軽減するということ。それから、今の開発プログラムにおいては、2カ月齢からの接種並びに筋注を選択肢として可能にすることを視野に入れた開発プロジェクトを立てております。
現在進行中の臨床第3相臨床試験については、この5種混合ワクチンと4混プラス単味のHibを打った群で比較するというデザインになっておりまして、被験者数は約400名。昨年10月から試験が開始されて、現在進行中という段階でございます。
次のスライド11ページをごらんください。こちらが院内感染症用のワクチン、クロストリジウム・ディフィシルトキソイドワクチンということでございます。
クロストリジウム・ディフィシルは、御承知のとおり、抗生剤を多用した方で、重篤な下痢の原因になるものですけれども、ディフィシルのトキシンA並びにBに対するトキソイドのワクチンでございます。
このワクチンの接種の対象者ですけれども、想定されるのは、待機的入院の予定のある患者さん、並びに老健施設や老人ホーム等に入所する方というのが対象として考えられるのかなと思っております。
開発段階としては、現在、日本で第1/2相試験が終了したところであります。
試験のデザインとしては免疫原性並びに安全性を評価するということで、終了しましたけれども、現在の段階としては、実際のトゥルーエンドポイントのエフェクティブネスを見る国際共同治験にことしじゅうに日本人の被験者も入れるようにいろいろ努力をしているところでございます。
12ページは、デング熱の4価組換え弱毒生ワクチンです。ここのシェーマに描いてありますように、このワクチンは少し複雑な構成になっておりまして、黄熱のYFV17D、現在国内でも使われている黄熱ワクチンのキャプシド及びノンストラクチャープロテインに、相同性が高いものですから、デング熱の抗原蛋白としてのエンベロープ及びプリカーサーメンブラン、この2つの抗原遺伝子を組みかえて入れたキメラ体のワクチンになっています。このキメラをデング、病原性を持つもの、1型から4型までをまぜた混合の組みかえの生ワクチンというものになります。
この開発段階としては、現在グローバルではデング熱の流行地、東南アジア並びにラテンアメリカ、計10カ国で臨床試験が行われましたけれども、その臨床試験の成績がアジアで56%ぐらい、ラテンアメリカでは60%をちょっと超える程度という成績が出ております。この成績は既に公表されておりますが、これらの国々でまず申請の準備をして、できるだけ早く使えるようにしていきたいと考えているところでございます。
13ページが高用量のインフルエンザワクチンです。インフルエンザは、年齢にかかわらず感染しますが、一番疾病負担が大きいのは高齢者で、特に免疫機能の低下したお年寄りとか基礎疾患を持つ方では死亡の原因になったりすることも多いということで、そこでの疾病負担を軽減するためにどうしたらいいかということで考えられたものでございます。
高ドーズですから、普通のインフルエンザワクチンは、単抗原当たり15 μ g のところを、このワクチンは60 μ g 含んでおって、4倍量の抗原を含んでいるというワクチンでございます。これについても臨床試験が終わって、既に結果が公開されておりますけれども、普通の用量のワクチンに比べて25%程度有効率が高いという結果が出ております。
日本は非常に高齢化が進んでおりますので、このワクチンがお役に立てる可能性があるのであれば、ぜひとも導入を考えていきたいと考えております。
最後のスライドです。いろいろ書いてございますが、弊社は外国の企業ではありますが、日本の医療事情及び予防接種行政に適合したビジネスを展開していきたいと考えております。そのためには、医療関係の方々、公衆衛生行政に携わる方々並びに国内ワクチンメーカーの方々とのパートナーシップというのを今後とも強力に推進していきたいと考えております。
以上になります。御清聴ありがとうございました。
○庵原部会長 丸山参考人、佐々木参考人、どうもありがとうございました。
一括して質問を受けたいと思うのですけれども、どなたか御質問ございますでしょうか。まず、伊藤先生。
○伊藤委員 ジャパンワクチンの方に伺いたいのですが、帯状疱疹ワクチンということで、私ども高齢者を診ている者にとっては大変期待がもてるワクチンが出てきてよかったと思っておりますが、お答えいただけるかどうかわからないですが、このワクチンは、1回接種してどの程度有効性が期待できる代物なのでしょうか。毎年打たなければいけないような帯状疱疹ワクチンだったら困ったものだと思いますし、どの程度効くのかという概略をわかれば教えていただきたいなと思うのですが。
○丸山参考人 御質問ありがとうございます。どの程度効くかということにつきましては、現在臨床試験を実施しているというところでございます。先ほど御紹介いたしました第3相試験の結果、平均して大体3年半ぐらいフォローしているところでございますが、そこでの有効性が確認されました。今後、承認申請を考えておりますけれども、その後もどれくらい効くのかというのは、長期にフォローアップしていきたいなと思っております。
あとは、接種回数の層別解析なども含めまして、今後どこまで続くのかというのも解析をしていきたいと思っております。
○庵原部会長 そしたら、福島先生、その次に細矢先生。
○福島委員 同じく帯状疱疹ワクチンの第3相臨床試験についてお尋ねしたいのですが、規定のイベント数に達するまでフォローアップされて、3年半の時点での解析をお示しされたと思うのですけれども、規定のイベント数というのは、現時点で利用可能な疫学データから50歳以上の健常成人でこのぐらい発症するだろうということで規定されたのか、あるいはそもそもワクチン有効率がこれぐらいだろうとわかっていて、この共同研究で1万6,000人ぐらいしかリクルートできないとわかって、そこから算出された数なのかというのを教えていただきたいのですけれども。
○丸山参考人 詳しい例数につきましては、本日お答えはできないのですが、計算方法としましてはどちらもということでございます。50歳以上の疫学調査も世界中で見ておりまして、どのくらいの発症インシデンスがあるのかというところ、そしてパワーの計算ということで、1万6,000人でワクチンの有効率をある程度算出しておきまして、それで解析例数をはじくというところで、お答えとしましては、疫学と有効率の想定を見ているということでございます。
ただ、今回の成績は弊社が予想していたよりも少し高目に出ていますので、そういった状況では、私どもの見積もりよりもよい結果が出ているのかなという感じはいたします。
○福島委員 わかりました。これから承認申請をされるということで、プラセボ群でどれぐらいの罹患率であったのかというのがちょっと気になるところでした。それが一般的に予想されるものよりも高いか低いかで、今後使用されたときにどれぐらいの効果が出るのかという推定につながるかと思いお尋ねしました。
あと一点お尋ねしたいのですけれども、実施国18カ国ということで、かなり多岐にわたっているかと思いますが、途上国も含まれているのでしょうか。
○丸山参考人 途上国のほうは含まれておりません。
○福島委員 アウトカム確認の精度管理もしっかりされているということでよろしいでしょうか。
○丸山参考人 はい。治験実施可能な国、特に精度の高い国で実施しているというところです。
○福島委員 ありがとうございます。
○庵原部会長 細矢先生、どうぞ。
○細矢委員 ジャパンワクチンさんのMMRワクチンについてなのですけれども、ムンプスが入ると、やはり髄膜炎の発生頻度というのが気になるのですが、どの程度の発生頻度を想定してどれぐらいの被験者数をやる予定なのか、教えていただきたいのですけれども。
○丸山参考人 臨床試験の例数につきましては、これからヒトに対する投与を考えるところですので、算出が必要かと思うのですが、無菌性髄膜炎の頻度は、おたふく風邪のファクトシートを見ますと、その中に書いてあります私どものRIT4385株は、10万人当たり0件と書いてあるのですが、接種150万人中0件という報告がファクトシートにございます。私どもがドミナントにする前のJeryl-Lynn株、MMR2が使われているものは、このファクトシートによりますと、10万人当たり0~1件程度。これは接種者370万人というふうに書いてございます。このあたりで、私どもとしまして、ほぼゼロに近い値というふうに見ておりますが、日本人で投与はまだしておりませんので、フェーズ1の結果も見ながら検討していきたいなと思っております。
○細矢委員 発生頻度を出せるほどの大規模にしなくてもいいというふうに。
○丸山参考人 ここは難しいところであると思います。何万人規模の調査をしないと承認申請まで行けないかどうかというのは、当局の方とも十分協議をさせていただいて。ここがこのワクチンで望まれているところだと思いますので、どういった疫学調査でもするのか、PMSでもするのかも含めて、当局の方とも十分協議をしながら進めていきたいと思っております。
○庵原部会長 ただ、100万人規模の治験というのは非現実的ですので、どの辺で妥協するかだと思いますが。
山口委員、どうぞ。
○山口委員 ジャパンワクチンの丸山参考人にお聞きしたいのですけれども、アデノというのは今まで遺伝子治療でよく使われているベクターで、これはチンパンジー由来なので、その辺が少し違うのかもしれませんけれども、海外では遺伝子治療の枠組みなのでしょうか。それとも予防用なので遺伝子治療から外れた形で規制を受けているというふうに考えてよろしいのかという話。
アデノウイルスベクターなので、ブースターをつくるときに、何回ブースターを打てるか、その辺の懸念があるのかなと思いまして、その辺がわかりましたら教えていただければと思います。
○丸山参考人 一番初めに御質問いただきました遺伝子の関係のカテゴリーにつきましては、残念ながら今、持ち合わせておりません。
ブースターのことに関しましても、今、詳しいことはわかりませんけれども、先ほどお話ししましたプライム・ブーストとして違う改変の、別のベクターワクチンを投与するということを考えているということでございます。
○山口委員 わかりました。
○庵原部会長 森委員、どうぞ。
○森委員 デング熱4価組換え弱毒生ワクチンについて、お伺いします。このワクチンは、私の理解では、それぞれのタイプのデングの遺伝子を組み込んだ生ワクチンというふうに理解しているのですけれども、よろしいですか。
○佐々木参考人 そのとおりです。黄熱と各4つの血清型のデングワクチンの組換え体4種類を混合したワクチンということになります。
○森委員 その場合、ウイルスを混合しているということで、それぞれのウイルス間の干渉というのはないのでしょうか。
○佐々木参考人 干渉と申しますと、免疫応答がどれかの足を引っ張るというような意味ですか。
○森委員 そうですね。接種したときにウイルスは同じように増殖しないといけないと思うのですが、どれかがふえないということがあると、デングの場合、問題になってくるのではないかと思うのですけれども、その点はいかがなのでしょうか。
○佐々木参考人 臨床試験においては、どのウイルスがふえる、ふえないという観点での検証はいたしておりません。ただ、血清型別の有効性を見ますと、血清型によって差異があるのは事実でございます。
○森委員 わかりました。では、血清型というか、実際得られた結果でおのおののタイプの免疫がしっかり誘導されていたということでしょうか。
○佐々木参考人 免疫原性ということについては当然誘導されております。
○森委員 ありがとうございます。
○庵原部会長 佐々木さんに1つ確認ですけれども、ヨーロッパはキメラワクチンのレギュレーションができて上がっているのですか。日本はまだキメラのレギュレーションがなかったと思うのですけれども。ヨーロッパは普通の生ワクチンと同じレギュレーションでキメラもオーケーという形でやっているわけですか。
○佐々木参考人 ヨーロッパのレギュレーションについては、私は把握しておりません。済みません。
○庵原部会長 もし可能でしたら、情報を教えていただけますか。日本でも今、キメラワクチンの開発が進んでいるので、それを応用するに当たって、生ワクチンのレギュレーションでよければそんなに問題はないのですが、キメラだと別にレギュレーションをつくらないといけないとなってくると、大変なことになりますので。
この辺について、山口先生は何か御意見をお持ちですか。
○山口委員 庵原先生のおっしゃった話は、生ワクなのですか。
○佐々木参考人 生ですね。
○山口委員 昔、組換え生ワクについてのガイダンスをつくるということで、一応検討はしたのですけれども、その当時はまだ申請がなかったものですから、公表していないのです。ただ、今、庵原先生がおっしゃったとおりに、そういう開発が進んでいるので、これは再度考えないといけないという話で、ひょっとしたらこれは遺伝子治療になるかもしれません。遺伝子治療であれば、もし臨床研究のほうであれば厚生科学課、今度新しい枠組みになりますが、そこでの審査になりますし、承認申請になれば、前につくって、まだ表に出していないのですけれども、そのときのやつをもう一度リバイスしないといけないかもしれません。その辺については、今、明確にお答えするのは難しいかと思います。
○庵原部会長 森委員、どうぞ。
○森委員 これは健常人をターゲットにしていると思いますので、この組換え生ワクチンは遺伝子治療という概念からは外れるのではないかと思うのですけれども。
○山口委員 ところが、遺伝子治療の薬事で承認申請のルートがある中で、そういう審査をする生物由来技術部会というのがあるのですが、FDAなどは予防用のDNAワクチンとかというのは遺伝子治療には含めていないのですけれども、プラスミドとDNAワクチンはその懸念は同じであろうということで、一応遺伝子治療に含めるというふうに今、しております。ただ、組換え生ワクについて、その規制をどうするかというのはまだ明確にされていないと思います。これは審査管理課に検討していただかないといけない事項だというふうに思っています。いろいろ相談があることも伺っております。
○庵原部会長 ありがとうございます。
事務局、この辺は審査管理課との打ち合わせというか、情報をよろしくお願いしたいと思います。というのは、デングワクチンが、日本でトラベルワクチンとして申請があった場合に、レギュレーションがなかったよという話になってくると大変ですし、実を言いますと、今、生ワクチンにいろんな抗原を入れたキメラワクチン、日本でも幾つか開発が進んでいまして、できたけれども、使うまでにレギュレーションで3年、5年待たないといけないという、非現実的なことが起こらないように準備していただくことが必要かなと思いますので、審査管理課と打ち合わせをよろしくお願いします。
山口先生、どうぞ。
○山口委員 そういうガイドラインが出ていないというだけの話であって、一応PMDAでの審査、薬事の相談とかを含めて、全て相談対応はやっております。本当はガイドラインをつくって、明確にこういう基準でやりますというのを明示したほうがいいとは思うのですけれども、まだガイドラインが発出されていないということで、開発そのものは、一応受け皿はできているというふうに考えていただいて結構だと思います。
○庵原部会長 ありがとうございました。
どうぞ。
○西島部会長代理 基本的な知識がないのですけれども、伊藤先生の御質問とも関係するのですが、帯状疱疹に一度かかると、2回目はかからないものなのですか。
○丸山参考人 帯状疱疹というのは、免疫機能が落ちてきた場合に出てくるというふうに言われておりますので、その部分でかからないとは言えないと思います。
○西島部会長代理 ウイルスを根絶するような研究というのは何かされているのでしょうか。
○丸山参考人 そこの研究について、現在、私は情報を持ち合わせておりません。申しわけございません。
○庵原部会長 どうぞ。森先生が専門だと思います。
○森委員 水痘帯状疱疹ウイルスは体内に潜伏感染します。それが再活性化して帯状疱疹を起こすということですので、根絶させることは難しいのではないかなと。どちらかというと再活性化を予防するというのがワクチンになるのかなと思います。
○西島部会長代理 B型肝炎ウイルスもcccDNAがなかなか消えないということで、今、それに向けてタレンとかクリスパーを使って切ってしまおうという話がありますが、そんなことはこちらでもできるのでしょうか。
○森委員 そういうことができればすばらしいと思いますが、ヘルペスウイルスの潜伏感染の機序とか動態とかをまず解析する必要があります。潜伏時はゲノムの形で存在していますので、そこを解明しないと進まないかなと思っています。
○庵原部会長 どうもありがとうございました。
そしたら、時間が押していますので、小田切先生、長い間お待たせして済みません。インフルエンザのほうをよろしくお願いします。
○小田切参考人 それでは、資料5をごらんください。
今シーズンの国内外でのインフルエンザ流行株の状況と、細胞培養季節性インフルエンザワクチンの実用化に向けた進捗状況について、9月のこの部会報告した以降の進展について、お話しいたします。
まず最初に、今シーズンの流行ウイルスの状況であります。
めくっていただきまして、スライドの番号は右下のところにあります。現在インフルエンザの流行はピークに達しつつあるわけなのですけれども、ここでお示ししましたように、流行ウイルスはほぼ1色でありまして、H3N2、いわゆる香港型と言われるウイルスがほぼ96~97%を占めておりまして、わずかにH1パンデミックウイルス、B型ウイルスが検出されている状況です。
4枚目の日本地図がまさにそれを示しております。
5枚目のところは患者の年齢分布で、いつもどおり小児に流行のピークが多いということと、高齢者にも徐々に感染者がふえてきているという状況であります。
6枚目は海外の状況で、ほぼ日本と同じでありまして、北半球はH3N2が流行のドミナントであります。
めくっていただきまして、7枚目は、今シーズン、実際ワクチンとして採用されているワクチン株のリストです。上のほうがWHOが推奨したワクチン株で、前シーズンと変更ありません。また、
4価の場合は、B型のビクトリア系統のBrisbane/60というのがさらに追加されて推奨されています。
下段が国内で使われていますワクチン株で、日本はWHOの推奨と一部変更しまして、H3N2ワクチンをTexasからNew York/39/2012。資料の製造株番号にミスがありまして、正確には「X-233A」であります。という製造株に変更しております。
変更した理由は、前回の本分科会でお話ししましたように、ワクチン株Texasは、卵馴化による抗原変異の程度がかなり大きいので、ワクチンの有効性が下がることが予想されます。そのため、卵馴化しても抗原変異の程度の軽微なものを検索した結果、
New York/39 X-233Aが見つかったので、Texas株よりはワクチン製造効率は下がるものの、ワクチン効果のより期待できるものを供給すべきという考え方から、New York株にワクチン株を変えたという経緯があります。
ここからの資料は、流行ウイルスの抗原性、遺伝子グループを解析した国内外の成績に沿ってお話ししていきます。
下のスライドになります。
まず、H1N1パンデミックウイルスであります。これは国内で十数株検出されるのみであって、ほぼ流行していません。
入手できましたウイルスの抗原性を解析しますと、ワクチン株California/07と抗原性が非常に類似している。遺伝子のクレードも去年と全く変わっていないということで、昨シーズンからは全く変わっていないという状況であります。
次の9枚目のスライドは、海外の状況でありますが、海外も全く同じで、去年からH1は変わっていないということであります。
下のスライドは、H3N2のウイルスであります。流行のパターンが少し変わりました。昨シーズンほとんど検出されていなかった新しい遺伝子のグループのクレード3C.2a、3C.3aに入るウイルスが今、流行の主流になってきています。これは昨シーズンの3月以降に出てきたウイルスでありまして、これが国内も海外も主流になりつつあります。
抗原性はどうかといいますと、これは物差しを2つ準備して考えないといけないのは、海外ではTexas株をワクチンに使っていることと、国内ではNew Yorkをワクチンに使っているためで、まずTexasを基準に流行株の抗原性の乖離具合を調べますと、新しく出てきました3C.2a、3C.3aという流行株は、抗原性が変化した変異株であります。
国内でワクチンに採用していますNew York株を基準にすると、今、流行しているのはTexasよりは抗原性の乖離は小さいものの、やはりNew Yorkに比べましても変異株であることがわかります。
11枚目は海外の状況で国内と同じよう新しいグループに3C.2aが流行の主流で、Texasを基準に比べますと、68%の流行株は変異株であることがわかっています。
南半球のワクチンとして来年用にWHOが推奨しました3C.3aの代表株であるSwitzerlandと現在の流行株の大半は抗原性が類似しています。
次はB型であります。B型は山形系統、ビクトリア系統と2系統あるのですけれども、流行しているのは国内では山形系統。ビクトリア系統は1株しか分離されていない。そういう状況なのですが、抗原性はワクチンに採用していますMassachusetts/2/2012に非常に類似しているということで、ワクチンが有効に作用していると思われます。
海外の状況は13枚目のスライドになります。山形系統、ビクトリア系統がコサーキュレートしている国もありますが、やはり流行の主流は山形系統で、流行株は2シーズン前のワクチン株のWisconsin、それから来年の南半球用に推奨されましたPhuketのウイルスと抗原性が類似しています。
ビクトリア系統は非常にマイナーで、ワクチン株に採用されていますBrisbane/60または新しいウイルスでありますTexas/02/2013と抗原性が類似しているということがわかっています。
薬剤耐性株の出現状況ですが、国内外ともほとんど耐性になるようなウイルスは検出されていない現状であります。
ここまでが今シーズンの流行株の解析情報であります。
2つ目の項目の細胞培養季節性ワクチンの実用化に向けた取り組みを話します。
既にこの部会の第7回、第8回でお話ししましたように、現行の卵で製造しますワクチンは、卵での製造過程で馴化によって抗原性が変わる。これを回避するものとして細胞培養ワクチンが期待されています。
17枚目のスライドになりますけれども、細胞培養ワクチンも幾つか解決しないといけない検討課題、いわゆるハードルがありまして、これをいかにクリアして実用化、導入に進めていくか。
まず、検討課題の一つとしましては、細胞培養ワクチンに変えた場合、卵馴化で起こるワクチン製造株の抗原性の変化が解決できるかというと、必ずしもそうではない。すなわち、亜型によっては、むしろ細胞培養ワクチンに切り替えることによって逆に細胞馴化の抗原変異が起こるものが出てきます。H1パンデミックウイルスがそれで、MDCK細胞(イヌの腎臓細胞)で見る限り、卵馴化に類似したような抗原性の変化が起こります。
ただ、今、一番問題になっていますH3N2ワクチンの馴化変異の問題は、この細胞培養ワクチンに切りかえることによって解決できそうです。
もう一つの問題は、細胞培養ワクチンに用います細胞ラインはワクチンメーカーごとに違います。そうしますと、国が指定したワクチン株が全てのメーカーの細胞で同じような増殖性を示すという保証がないでの、年度によってはワクチンの供給量にばらつきが出る可能性がある。これをどうクリアしていくか問題解決していかなければなりません。それが(2)に関係しています。
細胞培養ワクチンの製造株、ワクチンシードウイルスの指定法を検討していく必要があるだろうということが2つ目。
3つ目は、ワクチンが製造された後に、国家検定で実際にワクチンの中の抗原ウイルス量を測定するための力価測定法を立ち上げなければいけないということが検討課題なわけであります。
下のスライドになりますけれども、それらの問題を解決するために会議体を発足させました。2014年9月には「細胞培養ワクチン開発研究会議」というのを発足させまして、これは、感染研インフルエンザセンターのワクチン開発室メンバーと厚生労働省結核感染症課、各ワクチン製造メーカーの合同の会議でありまして、今、お話ししました検討課題を解決していく会議であります。
それにぶら下がる会議体としまして、日本ワクチン産業協会の専門委員会の中に「細胞培養インフルエンザワクチン専門委員会」というのを立ち上げていただきました。この委員会でメーカー側が検討した課題、その上の「細胞培養ワクチン開発研究会議」に上げてもらって、そこでさらに協議するというシステムであります。
それと並行しまして、ワクチン株の指定法を決める必要がありますので、指定法検討のワーキンググループも発足いたしました。
次のスライド19枚目は、実際の問題解決に向けた取り組みについてであります。
まず1つ目は、細胞培養ワクチンのシードウイルス、ワクチン種ウイルスの供給体制をいかに確立していくかということであります。まず、感染研でヒトのワクチン製剤用に品質管理されたMDCK細胞で臨床検体から種ウイルスを回収します。その回収したウイルスがWHOが推奨したワクチン株と抗原性が類似しているかどうかをチェックして、適合しているものをメーカーに配付して、そこでそれぞれのメーカーの細胞で製造効率とか、細胞に植え継いだときの抗原性の変化の程度や、遺伝的安定性などを調べていただきました。
メーカーで馴化させたウイルスを再度感染研に戻していただきまして、感染研から配付したもとのウイルスと抗原性が変わっていないかとか、遺伝子変異が入っていないかとかをチェックして、最終的にワクチン製造候補株となり得るかどうかというのを検討していきます。これがワクチンの種ウイルスの供給体制の確立であります。
下のスライドがワクチンの株の指定法の戦略で、現行は卵製造のワクチンでありますから、1つの種ウイルスの指定で済みますけれども、今後予想されるのは、卵で製造します生ワクチンが入ってくる可能性があるのと、それから今、お話ししました細胞培養の不活化ワクチン、もう一つは、バキュロウイルス発現ベクターを用いた組換えHAワクチンというのも導入されてくる可能性がありますので、これらに対するワクチン株の指定法を検討していくことになり、これらをワクチン株指定法ワーキンググループの中で検討していきます。
次のスライド21枚目です。3つ目の課題としましては、ワクチンの力価を測定するための標準試薬の開発、検定法の開発ということで、現行のワクチンは卵で製造していますので、力価を測定するための標準品は、抗原ウイルスも抗血清も卵培養ウイルスから作製し、力価としては一元放射免疫拡散法(SRD)で測定しています。
それが細胞培養ワクチンに切りかわった場合、力価測定に卵で作製した標準品が使えないこととがわかっております。そうすると、細胞で培養したウイルスを標準抗原として、またそれに対してつくった抗血清を標準抗体として準備しなければなりません。メーカーごとにワクチン製造する細胞ラインが違いますから、それぞれに適切な標準品を別々に準備する必要が出てくることが予想されます。この仕組みをどうするか、検討が必要です。
最後のスライドになりますけれども、今後の取り組みとしましては、ワクチンの種ウイルスの評価としまして、今、実際それぞれのメーカーに感染研から臨床検体から分離した種ウイルスをお配りして、そこで製造効率を見てもらっております。遺伝子の安定性、抗原性の安定性を2月からことしの中盤にかけて検証していく予定であります。
2つ目としましてはワクチンの株の指定法。これも検討を進めてまいります。
3つ目としましては力価の測定法。これはことしの中盤以降から本格的に取り組みますけれども、さらに新たな力価測定法の開発研究にも取り組んでいく必要があります。
これらの問題を解決しながら実用化に向けて進めていきたいと思っています。
以上であります。
○庵原部会長 ありがとうございました。
何か御質問ございますでしょうか。現行のインフルエンザワクチンのネックがどこにあるかというところのデータと、それに対する対策ですけれども、よろしいでしょうか。山口委員。
○山口委員 小田切先生のほうでは、一番問題になるのはワクチン株の細胞の指定法ということで、やはり指定しないといけないという方向でしょうか。それとも細胞培養株、場合によってはそれぞれ特有なものを使って生残菌をつくり上げているケースもあろうかと思うのですけれども、一応株を指定するという方向で今、考えておられるのでしょうか。
○小田切参考人 インフルエンザワクチンの製造株というのは、厚生労働省が決めることになっています。
○山口委員 細胞バンクというか、生産細胞を。
○小田切参考人 細胞ですか。
○山口委員 はい。
○小田切参考人 それぞれのメーカーが開発したものを使うので、特にこちらサイドからこの細胞ですよという指定はしません。
○山口委員 そうすると、例えば場合によってはMDCKとか、あるいはニワトリの細胞とか、さまざまな使われ方をすると思うのですが、その評価というのは、最終的には感染研の国家検定になるのでしょうけれども、アッセイ法によって違ってくるという可能性もあると考えられませんか。
○小田切参考人 先ほどの19枚目のスライドのところでもお示ししましたが、基本的には渡したウイルスを、それぞれのメーカーの細胞で増殖性とかそういうのを調べてもらって、それが渡したもとのウイルスと変化していませんよというのをもう一回返してもらって、感染研で評価しますので、評価法としては一律のやり方で評価します。
○山口委員 わかりました。
○庵原部会長 よろしいでしょうか。
どうもありがとうございました。
本日の議事は以上で終わりですが、事務局から何か連絡事項ございますでしょうか。
○滝室長補佐 次回の日程は未定となっておりますので、改めて御連絡差し上げます。
事務局からは以上です。
○庵原部会長 どうもありがとうございました。
本日、ちょっとおくれまして申しわけございません。今日は一日ありがとうございました。
ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会 研究開発及び生産流通部会)> 第9回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産流通部会議事録(2015年1月30日)