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2015年2月2日 第12回院内感染対策中央会議(議事録)

○日時

平成27年2月2日(月)10:00~13:00


○場所

厚生労働省 中央合同庁舎5号館 共用第8会議室(19階)
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号)


○議事

○森井地域医療計画課長補佐 それでは、定刻になりましたので、第12回「院内感染対策中央会議」を開催いたします。

 本日は、先生方には御多忙のところ、御出席を賜り誠にありがとうございます。

 開催に当たりまして、医政局長の二川より一言御挨拶を申し上げます。

○二川医政局長 おはようございます。医政局長の二川でございます。

 構成員の皆様方におかれましては、御多忙の中、お集まりいただきまことにありがとうございます。

 この院内感染対策中央会議は、昨年の夏に引き続いての開催となるわけでございます。前回の夏の会議での議論を受けまして、新しい通知「医療機関における院内感染対策について」ということで、昨年12月に通知を発出することができました。皆様方に、この場をおかりして感謝を申し上げますとともに、今後、この通知が我が国の院内感染対策の基本指針となるものと考えているところでございまして、厚生労働省といたしまして、今後も医療機関に対し、この通知の周知に努めてまいりたいと考えているところでございます。

 さて、今回の開催は、昨今、国際的に非常に大きな問題となっております薬剤耐性菌対策に関して、専門家でいらっしゃる委員の皆様方、先生方の議論を通して、我が国としての対応を検討していきたいといった目的でございます。

 御承知のことかと思いますけれども、昨年5月のWHO総会におきまして、薬剤耐性菌に関する決議が採択され、抗菌薬の適正使用、感染管理の強化、耐性菌サーベイランスの強化について加盟国の努力が求められているところでございます。国際的には、2011年の世界保健デーでのテーマとして薬剤耐性菌問題が取り上げられた際に、WHOは、「ポスト抗菌薬時代の到来が懸念される」と警鐘を鳴らしたところでございます。これは、薬剤耐性菌問題がこのまま進めば、抗菌薬がなかった時代に後戻りしてしまうという警鐘であると考えられるところでございます。

 我が国の耐性菌状況は、他国に比べますと、現時点では良好な状態を維持しておりますけれども、海外で治療を受けられた患者が我が国の医療機関に転院となった際に、耐性菌を持ち込むという事例が実際に起こっているところでございまして、油断できない状況が続いていると考えているところでございます。

 我が国は、平成24年度より、診療報酬において感染防止対策加算が設けられ、医療機関に多剤耐性菌を含む院内感染対策を行うように促してきたところでございます。WHOの決議を受けまして、現状の院内感染対策をより実効性のあるものにしていくこと、それから、抗菌薬適正使用を進めるための方策、それから、JANIS等のサーベイランスの充実に関して、いろいろな課題があるわけでございますけれども、こういったもろもろに関しまして、専門家でいらっしゃいます皆様、委員の先生方の御意見を伺いたいと思っているところでございます。

 時代に即応した院内感染対策を講ずるため、どうか忌憚のない御意見、御指摘をいただきますよう、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 簡単でございますけれども、私の冒頭の挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。


○森井地域医療計画課長補佐 二川は、公務のためにここで退席させていただきます。

(二川医政局長退室)


○森井地域医療計画課長補佐 続きまして、構成員の先生方を紹介いたします。

 名古屋大学、荒川宜親先生。

 京都大学、一山智先生。

 東京医療保健大学、大久保憲先生。

 筑西保健所、緒方剛先生。

 川崎市健康安全研究所、岡部信彦先生。

 東北大学、賀来満夫先生。

 東京医療保健大学、木村哲先生。

 国立国際医療研究センター、切替照雄先生。

 国際医療福祉大学、倉田毅先生。

 日本看護協会、洪愛子先生。

 東京医療保健大学、小林寛伊先生。

 山口県環境保健センター、調恒明先生。

 慶應義塾大学、高野八百子先生。

 それから、参考人といたしまして、大阪大学、朝野和典先生。

 国立感染症研究所、大石和徳先生。

 三重大学、田辺正樹先生にお越しいただいております。

 私は、医政局地域医療計画課の森井でございます。よろしくお願いします。

 なお、ここでカメラは退室をお願いいたします。


(カメラ退室)


○森井地域医療計画課長補佐 続きまして、当会議の座長についてですが、構成員の互選ということで、前回、小林先生が座長に選出されております。

 小林先生、よろしくお願いいたします。


○小林座長 小林でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 先ほど、二川局長から大変明快に議論ポイントを御紹介賜りましたけれども、効率的にきょうの会議も進めてまいりたいと思います。

 前回の夏の議事録の整理並びに1219日の通知に至るまで、構成員の皆様方にいろいろお力添えをいただいたことをこの席をかりて感謝させていただきます。

 きょうは、ちょっと時間が長く予定がとられておりますので、1時までということで、皆様、昼食の予定等ございますでしょうから、効率的に進めて30分ぐらい短縮できればと欲張ったことを考えておりますので、どうぞよろしく進行方に御協力いただきたいと思います。

 それでは、議事に入る前に、いつものとおり、当会議の議事や資料の公開の取り扱いについてのルールを確認しておきたいと思いますので、事務局から、よろしくお願いいたします。


○森井地域医療計画課長補佐 それでは、説明いたします。

 当会議は公開で行い、議事録につきましても、事務局でまとめたものを各構成員にお目通しいただいた後、厚生労働省のホームページで公表することといたしたいと思います。御了解お願いいたします。

 続きまして、資料の確認をさせていただきます。

 本日御用意させていただきました資料がお手元にあると思いますが、議事次第の記載にあるとおりでございます。資料の欠落がございましたら、お申し出ください。


○小林座長 よろしゅうございますでしょうか。資料の欠落はございませんでしょうか。

 それでは、議事に入りたいと思います。

 まずは、事務局から、「第12回院内感染対策中央会議の趣旨説明」をお願いできますでしょうか。


○森井地域医療計画課長補佐 先ほど医政局長の二川からも説明がありましたが、昨年5月、WHO総会で耐性菌に対する決議がなされております。その中で、加盟国に対してもろもろ求められているところですが、1つには、感染制御の強化、それから抗菌薬の適正使用、それからサーベイランスの強化という大きな3つの柱を提示しています。

 これも二川から説明がありましたが、世界保健デー2011年のテーマとして薬剤耐性菌が取り上げられておりまして、「ポスト抗菌薬時代」という言葉がそこで出てきているわけです。さらに、昨年4月にWHOが初めてサーベイランスのグローバルレポートというものを提出しておりまして、その中で、例えばクレブシエラのカルバペネムの耐性率が50%を超える国が幾つも出てきているというような状況で、2011年のポスト抗菌薬時代というものが、一部にはもう現実のものとなってきているという警鐘がさらに鳴らされているところであります。

 日本にあっては、耐性菌の状況は、この後説明があると思いますが、比較的良好ですけれども、今後、この状況をいかにして維持していくのかということが喫緊の課題になっていると考えておりまして、今回の会議を開催させていただきました。

 以上です。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 それでは、議事に入りたいと思います。


○森井地域医療計画課長補佐 すみません、少しつけ足しですけれども、資料1として、本日の会議の論点というものを示させていただいております。一応このような趣旨で議論を先生方にいただければと考えておりますので、よろしくお願いいたします。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 それでは、議事に入らせていただきますが、本日の議題は大きくは4つございますが、その1番目は「感染制御の強化について」ということで、この中に3つの項目を含んでおります。1-1)が平時からの地域連携、1-2)が感染制御におけるICNの役割、1-3)が医療機関に求められるアウトブレイク対応ということで、感染制御の強化について話を進めていきたいと思います。

 2番目が「抗菌薬の適正使用について」、きょうの非常に重要な課題の一つであります。

 3番目に「サーベイランスの強化について」。

 そして、4番目は、何かあれば「その他」ということで進めたいと思います。

 今、御紹介もありましたように、今日の会議の議論を踏まえまして提言をまとめていくという形で、前回と同じように、また皆様方のお力添えをよろしくお願いいたします。

 それでは、議題に入りたいと思います。

 議題(1)は「感染制御の強化について」ですが、その1-1)として、平時からの地域連携についてでございまして、まず初めに、議論の土台になるために、非常によく地域連携を以前から続けておられる大阪と東北での実際について御報告いただければと思います。

 まず、朝野参考人から、大阪における事例を御紹介いただければと思います。よろしくお願いいたします。


○朝野参考人 よろしくお願いいたします。大阪大学の朝野和典と申します。

 きょう御紹介するのは、私たちが存在しておりますのが吹田市でございますので、吹田市の事例を御紹介したいと思います。資料5を見ていただければと思います。

 私たちは、「保健所をハブとする地域ネットワークの構築」というものを進めております。これは、加算ができる前から既に進めているところでございますけれども、院内感染対策中央会議及び昨年出されました「医療機関における院内感染対策について」というところには、そこにございますように、緊急の場合に地域の連携を必ず行うことということが書かれております。そして、地方自治体としても、それぞれの地域の実情に合わせて、地域における院内感染対策のためのネットワークを整備し、積極的に支援することが必要であると書かれておりまして、これは非常に重要なポイントではないかと思っております。

 そこの図に示しますように、右の図でございますけれども、これはシームレスに医療機関と行政、あるいはその調査機関である、調査と申しますか、サーベイランス、あるいはそのサポートをする地方衛生研究所や国立感染症研究所へ速やかに情報が提供され、そして、そこで解析が行われることが必要ではないかと思います。このことは、大阪で起こりました多剤耐性のカルバペネム耐性の腸内細菌科によるアウトブレイクの時におきましても、迅速に保健所、それから国立感染症研究所と動いていただいたという事例で実感しているところであります。

 次をご覧いただけますでしょうか。次のスライドで、ただ、非常にこの加算によって、日本国内の院内感染対策の質及び実質的な面でもかなり向上してきたと思うのですけれども、この加算の1つの欠点と申しますか、まだ補うべきところはどこかというと、ここには行政とのかかわり合いというものが明確には制度化されていないということが難点ではないかと思います。つまり、この加算をとっているところはいいのですが、とっていないところは抜け落ちてしまうというようなことが起こり、かつ、保健所等の行政機関がこの中に入っていないということは、地域における院内感染の何らかの問題点というものを保健所が把握できない、ということが起こります。ですので、先ほどの中央会議の提言におけるようなことが、現実にはなかなかスムーズに動いていないのではないかということを危惧するわけであります。

 そこで、地域包括的なネットワークの構築が必要ではないかということで、私は、ここにありますようなことを考えました。加算にかかわりなく、地域全体の包括的な医療機関によるネットワークの構築のためには、行政・保健所を必ずそこに入れるべきではないかということを考えました。保健所は、院内感染対策では、監査・監督型の従来の保健所の機能ではなく、むしろ問題解決型あるいはマネジメント型の役割が必要であり、このことは、新型インフルエンザ等特措法におきましても、保健所というものの役割が大きく変わったのが、この特措法の役割でありますので、同時に、この院内感染対策におきましても、同様にマネジメント型の保健所に変わるべきではないかと考えております。このような組織であれば、「中央会議の提言」する地域全体の問題に迅速に対応できるシステムとなり得るのではないかということを考えております。

 そこで、大阪府吹田市の現状をお話しします。これはもう加算に関係なくやっていたことなのですけれども、その次のページのシェーマをごらんいただけますでしょうか。大阪府吹田市というのは、万博記念公園があるところでございますけれども、大きな病院としては、大阪大学と国立循環器病センターがございます。そのほかにも、加算1をとっている施設が5施設ほど、それから、それ以外の加算2をとっているところ、あるいはとっていないところも含めて、全体を吹田保健所をハブといたしまして、そこでつないでいくということを行っております。

 そこに要綱の抜粋を書いてございます。要綱の全体につきましては、その次の資料6にも全部書いておりますが、抜粋をこういうふうに書いております。連絡会議はおおむね年2回程度開催しております。そして、管内医療機関から院内感染対策に係る相談・支援ということを行っております。管内医療機関は、院内感染が発生もしくは発生が疑われた場合、連絡会議に現状解析、原因分析及び改善策等の助言を要請することができる。これは中央会議の提言にあります地域の専門のネットワークの中でということを実現するためであります。そして、この窓口を吹田保健所としておりまして、保健所に速やかに連絡することによって、行政もそれを把握することができる。それで、支援することができるということにしております。

 5条には、管内医療機関から院内感染対策に係る相談、助言要請等に応じて現状解析、原因分析等を行う支援チームを設置することができる。これは、国立大学におけるアウトブレイク時の改善支援というものを模して、ここでそのチームをつくって、例えば加算1のところの専門的なICNあるいはICDが、それぞれの問題を解決するとしております。ただし、それほど頻回には起こっておりませんので、こういう制度をつくっているということで、1度か2度介入したことはございます。

 次のページをごらんいただけますか。最後のところでございますけれども、保健所との連携ということにおきまして、もう一つ工夫を重ねております。それは、立入検査が毎年、各病院でございますけれども、立ち入りのときに、加算1の病院の要件でございます、地域連携加算の要件でございます1、1、同士の相互チェックというものを行うことにしております。つまり、保健所が入るときに、同時にこの相互チェックも行うということをやっておりまして、このメリットといたしましては、受診するほうの病院としては、1回で準備が済むということで、2度、3度という手間がかからないことが一つであります。

 もう一つは、講評は、保健所の講評の後で行うということで、保健所がまず講評しまして、その後で入っていって、その相互チェックの講評を行うということをしております。このメリットは何かというと、保健所の立ち会いのときには、必ず病院の主なる執行管理者は必ずいていただくわけで、病院長、副病院長、あるいは看護部長、薬剤部長、検査課の部長等の人が、執行部が全ているところで同時に講評することができるということであります。

 さらには、これも同日に行いますけれども、別々に行っておりまして、決して保健所と同じに行動するということではありません。ただし、保健所の職員の方も1名あるいは2名同行していただいて、感染制御におけるICDICNあるいは検査技師等の見方というものを学んでいただくということで、決して保健所が全て専門家でできているわけではございませんので、保健所の方もそこでトレーニングをするというようなことをやっております。

 もう一つの利点としましては、吹田市の場合は5つの病院が加算1ですので、そこに1週間か2週間前にしか立ち入りの予定は決まらないのですけれども、そこに全ての病院から参加できる人に参加していただきます。およそ10名程度の参加が毎回行われておりますけれども、その中には、必ず必要な4職種の参加が得られるというメリットもございます。

 一番最後のスライドは、ちょっと図がずれておりますけれども、申し訳ございません。このようなことをやることによって、何が目標か、次の目的は何かというと、実は、また後ほどお話もあると思うのですけれども、カルバペネム耐性の腸内細菌科等の耐性菌は、実は病院の中だけではなく、施設でも起こっている。施設で感染が伝播し、病院に持ち込まれることがアメリカ等では言われておりますし、そういう意味でいうと、感染対策というのは、病院の感染対策だけではなく、やはり施設における感染対策も必要であろう。そうすると、これは、やはり地域包括的な感染対策というものをやっていく必要があります。その場合、保健所は病院あるいは市役所福祉課がそういう施設を管轄しておりますので、これはもう保健所、市役所というような行政の枠を越えて、お互いに協力し合って、包括的な地域感染対策を行うべきではないかということを実現しております。

 かつ、大阪府の公衆衛生研究所も、この試みに参加しておられまして、耐性菌の解析等をやっていただいているという現状でございます。

 以上でございます。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 御意見、御質問等は、東北の事例の紹介があった後にお願いしたいと思います。

 では、その前に、賀来先生にちょっと待っていただいて、先ほど局長からも指摘がありました、国外でも問題になっているということに関しまして、大石参考人が本日お越しいただいておりますので、その辺の国内、国外の状況についてお話をいただければと。約10分ということで予定しております。

 今の保健所の問題は、吹田は非常にうまくいって、保健所もアクティブに動いてくださっているようですが、緒方構成員が以前から、また、特にこの1年間、いろいろ御苦労くださっておりまして、ただ、全国的に見ますとまだまだ問題がございますので、後ほどまた、緒方構成員から御意見をいただければと思います。

 では、大石先生、よろしくお願いいたします。


○大石参考人 お手元にあります資料3、資料4について御説明させていただきたいと思います。

 資料3は、国立感染研の細菌第2部から提供されたものであります。このバンコマイシン耐性腸球菌、そして多剤耐性アシネトバクター、そしてカルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症、これらは全て、5類全数把握疾患となっているものであります。

 まず、資料3でありますが、これは、国内外の検出状況の違いについて、細菌第2部でまとめていただいています。VREのほうは、米国、欧州、韓国、日本の違いをお示しいただいています。判定基準が不明な韓国の情報もありますけれども、分離率は、米国が79.4%、圧倒的に高く、韓国がそれに次いで25.9ないし41.7%、その次が欧州というデータになっています。欧州の中でもかなりゼロから42.7%と開きがあるようです。

 一方、日本では、バンコマイシンに対する感受性が32ガンマーと16ガンマーで、頻度が0.7%、1.4%。ちなみに感染症法では16ガンマー以上を基準としているということであります。日本のVRE分離率が低い理由として考えられる要因としては、1つは、米国では臨床現場におけるバンコマイシンの使用量が日本よりもかなり多いということ、例として数値が示されています。2番目には、日本の臨床現場では、VREが分離された場合、保菌者であっても隔離等を厳重に行い、院内での拡散阻止、コホーティングに取り組んでいる。分離率が低いため、こういった実施が可能。逆に言うと、米国等ではこういった対策はとれないという状況にあるということだと思います。

 次に、多剤耐性アシネトバクター(MDRA)であります。これについては、米国、欧州、アジア太平洋、日本ということで比較がされております。アジア太平洋では、少し判定基準が違いますが、基本的には、カルバペネム、アミノグリコシド、フルオロキノロン、すべて耐性というのが共通したものかと思います。

 分離率は、米国が33.6%、欧州が、これもゼロから86.6%ですけれども、平均で47.6%、アジア太平洋が34.2%、日本は0.44%。これは、日本のデータは、いずれもJANISの検査部門の2013年のデータであります。

 日本のMDRA分離率が低い理由として考えられる要因としましては、欧州や米国では、1980年、90年代から多剤耐性アシネトバクターによるアウトブレイクが問題になっていた。一方、日本では、2000年代に大学病院などで散見されるようになっています。日本では、MDRAが分離されるようになったとき、既に欧米での問題が知られていたため、VRE同様、保菌・感染患者の探知と隔離が積極的に実施されているという状況があるということであります。

 次に、資料4でありますが、これは、実を申しますと、国内外の比較という形ではなくて、先般、感染症法で5類全数に取り上げられたこともあり、また、国内でのアウトブレイクの発生もあり、このCRE感染症の感染症発生動向調査につきまして、昨年12月に病原微生物検出情報(IASR)に掲載した次第であります。2014年の38週から感染症発生動向調査の集計の届け出が始まったわけですけれども、201412月の特集でありましたので、計7週間のうちに得られました情報についてまとめたものであります。

 背景としましては、JANISによれば、我が国における腸内細菌科の主要な菌種におけるメロペネム耐性は1%以下であると。表1に示してありますような、菌種によって多少の差はありますけれども、1%以下であるということ。

 今回、届け出基準が策定されましたけれども、表2にその詳細が示されています。

 あと、届け出状況、ずっと、表3ですけれども、次のページにまたがりますけれども、届け出状況は次のページの図に示されています。ご覧になってわかりますように、60代から80代の症例が主体であるということ。表3では、カルバペネム耐性腸内細菌感染症の届け出の主な菌種名が示されています。

 まとめますと、この2014年、38週から44週に113例が29都道府県から届けられておりまして、65歳以上が88例と全体の78%を占めています。血液、腹水、髄液などの通常無菌的とされる検体からCREが分離された症例は47例、42%でありました。カルバペネム耐性の確認は113例中31例がメロペネム耐性、41例がイミペネムとセフメタゾールの2剤耐性によって判定、39例がメロペネム耐性及びイミペネムとセフメタゾールの2剤耐性の両方で実施されています。2例の確認方法が不明だったようです。届け出菌種の約半数が、エンテロバクター属菌による感染症であったという報告であります。

 海外につきましては、このIASRの特集の記事にも記載されておるのですけれども、そこでは、米国のほうで報告されたクレブシエラ属菌に限るとカルバペネム耐性の割合は10.4%。これは、2013年のMMWRの報告にあるものであります。一方、朝野先生からいただいた情報ですけれども、クレブシエラ属菌に限れば、ギリシア、インドではかなり、50%を超えるような頻度になっているということが言われているようです。

 以上です。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 それでは、引き続きまして、賀来構成員より、東北の事例を御紹介いただきたいと思います。


○賀来構成員 東北地区では、以前から地域ネットワークに取り組んでおりました。すでに、地域連携加算のシステムが動き出していますけれども、加算にとらわれない地域連携も実践されておりますので、御説明させていただきたいと思います。

 資料7をご覧いただければと思います。

 まず、地域病院への支援ということですけれども、2014年5月15日から10月7日の期間に、入院患者5名の尿培養検査からMDRPが分離されたということで、当該病院のICT委員長から当該保健所並びに地域連携が組まれている病院のICTに相談が行われ、いろいろな疫学解析も含めて、より詳細な検討が必要ではないかということで、私ども東北大学に御依頼をいただいたということであります。いわゆる加算を組んでいない施設への支援ということでありました。

 今回の支援の目的は、入院患者のMDRPの分離に関して、全体像を把握するということ、それから、感染源・感染経路・感染リスク因子の検討を行うということでありました。

 今回の支援は、東北大学のチームにより、MDRP分離患者の疫学解析、分離株の薬剤感受性の解析・遺伝子の解析、院内環境の調査、院内のラウンド等を実施するとともに、その1から4に基づいて報告書を作成し、提言を行うこととなりました。

 次のページには、患者さんの移動や、使用抗菌薬等に関しての疫学解析結果であります。見ていただきますと、高齢の方が比較的多いということと、いずれも尿道カテーテル留置をされており、病室を、2階から4階、それからまた3階とか、3階から2階というように移動されていることがわかります。また、併せて菌が検出された時期を記載しております。

 薬剤感受性のパターンについても、こちらで再度調べてみまして、ほとんど同じようなパターンであったということであります。分離されたMDRPの遺伝子解析はPOTという方法で行いました。これは愛知県の衛生研究所の方々が開発されたものですけれども、記載しておりますように、この4症例から分離された株は、いずれもPOT12でのPOTポイントがほとんど同じであるということから、ほとんど水平伝播したものであろうということがわかりました。

 次のページですけれども、41箇所の院内環境を調査したところ、MDRPの分離は認められませんでした。

 また、私どものチームが院内環境のラウンドを実施させていただきまして、さまざまな改善点があるのではないかということで、改善を促す指摘をさせていただきました。

 次のページですけれども、昨年1023日に報告書を作成させていただきました。概要のところですけれども、菌株間で分子疫学的手法にて検討したところ、MDRPの相同性が高く、院内での水平伝播が主要因であるのではないかという報告内容になっております。

 今後の感染対策についての、提言のまとめがその次にありますけれども、多剤耐性菌の治療については、チェッカーボードなどを活用していただきたい。サーベイランス体制などについても整備を行っていただきたい。日常の対策の徹底、コンプライアンスの向上、手洗いの徹底などに加え、情報の共有などを行っていただきたい。特に、これは以前から言われていることですけれども、汚物処理室における交差感染防止ですとか、あるいは尿道カテーテル留置についてのいろいろな取り扱いについてのこと、それから環境整備のこと、それから職員の教育についても充実させていただきたいなど、多くのことを提言させていただきました。

 このように、以前から東北地域で構築されている地域ネットワークで、このような支援はあったのですけれども、加算以後もこのような形で、加算にとらわれない連携の中での支援が行われているという例をお示しさせていただきました。

 また、宮城県内でいろいろなグループが加算にとらわれない地域連携活動をしておりますので、紹介も兼ねて、これから幾つかお示しいたします。

 まず、仙南ネットワークといいまして、仙台よりも南の地域ですけれども、宮城県の仙南保健所が中心となって進めているネットワークであります。宮城県仙南保健所からの呼びかけで、宮城県南地域の病院、老人介護施設からの参加があり、また、私たちも支援・助言をさせていただいています。

 まず、このネットワーク活動は平成24年度から行われています。次のページには、平成25年度のネットワーク会議の内容が記載されています。会議は、仙南保健所があります大河原の合同庁舎で行っております。8月30日の会議のテーマは「地域における感染拡大防止のための病院・施設間の連携について」ということで、私と教室の具で参りました。そのときの出席者は、病院11施設から16名、老人保健施設7施設から8名ということでありました。

 連携上の課題については、さまざまな感染症に関する共通の認識が必要である。あるいは、施設に入所するときに、感染症を持っているということでお断りされるということもあるので、そういったときのいろいろな情報の共有化が必要であるということで、病院と老健施設との連携を図っていくという内容でワークショップを開かせていただきました。

 平成26年度も、やはり仙南保健所でネットワーク会議を開かせていただきましたが、病院の参加が、平成25年のときには11施設だったのですけれども、26年になりまして13施設、それから、老健施設も7施設から10施設というように順調に伸びてきております。このように、いわゆる保健所が中心になって、病院と老健施設を結ぶネットワークも構築されつつあるということになります。

 次に、仙台東部地区感染対策チームの活動を紹介させていただきたいと思います。

 これは、仙台東部地区の感染対策チームが中心となって進めているネットワーク活動ですが、ICNの方が非常に活発に活動なさっておられます。宮城ICNネットワークが2005年にできておりますけれども、地域連携加算を組んでいる加算1同士のいろいろな話し合いの中で、医療施設・老人福祉施設から転院した患者さんに疥癬が発症した事例、すなわち持ち込み事例が散発しているということがわかりました。そのような経緯から、老健施設の方々の感染対策、情報の共有化も踏まえて、加算1、2の施設が共同で、仙台東部地区感染対策チームというものを結成することとなり、活動を開始しております。

 その活動内容を記載してありますけれども、6施設を会場として、加算に加わっていない近隣の病院も含めて、「疥癬の感染対策」及び「感染対策なんでも相談会」というものを企画して、セミナーを開催し、並びに何でも相談というものも受け付けているということであります。

 加えて、実際にアンケート調査もしておりまして、そのアンケート調査から、加算算定施設以外のところでいろいろな初期対応の大変さ、基礎知識の不足、事例対応の困り事が挙げられており、このようないわゆる加算にとらわれない連携が必要であるということが明らかとなりつつあります。

 次に日本感染管理ベストプラクティス“Saizen研究会”の活動を紹介いたします。宮城県での活動では、病院が30施設、介護施設が11施設参加しています。この活動も、非常に多くの加算にとらわれない施設が参加し、幅広い職種からの参加があり、ワークショップも複数回開催し、情報の共有と現場に有用な資材を提供しています。

 その次のページに示しておりますように、非常に興味深いのは、看護師の方だけではなくて、リハビリテーションの方、栄養士の方も入って、いろいろな職種の方が参加し、昨年は6月、9月、今年の1月に計3回ワークショップを開いているなど極めて活発な活動を展開していることが挙げられます。また加えて、非常にわかりやすい、病院や介護施設などでも使えるようなわかりやすい感染管理のマニュアルといったものも作成し、これらの成果物を提供し、お互いに利用しており、大いに参考になる活動かと思われます。

 最後になりますけれども、非常にユニークな試みということで、東北の地域連携ではないのですけれども、追加資料として、兵庫県宝塚地区でのネットワーク活動について少し御紹介申し上げます。

 兵庫県宝塚地区については、宝塚医師会と宝塚市立病院、宝塚市の健康推進課、健康福祉事務所が、感染対策サポートチームをつくっています。これは、先ほど朝野先生からも御指摘がありました、いわゆる高齢者の介護施設に対してモデル事業を展開するということで、そこにありますように、「感染対策でお困りのことはありませんか?」というように呼びかけ、感染対策のサポートチームが実際に福祉施設を訪れて、環境ラウンドで気づいた点を報告し、改善を促すというように、医師会を含めた複数のグループが連携協力して、このような素晴らしい活動を続けているところもあるということであります。

 最後になりますが、「加算参加施設だけでなく、地域全体の医療関連施設を結んでいくという広い視野に立った総合的なネットワークの構築が必要不可欠」であると思います。私どものホームページから、診療所でお使いになるようなマニュアルもダウンロードしていただけるような活動も行っておりますが、総合的な地域ネットワークの構築が重要であると思います。

 以上です。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 ちょっと時間が押していますので、まず、今のお二方のお話の中で、保健所中心にという、どちらも保健所が中心になって非常にアクティブに活動されているようですので、緒方先生に御意見を賜って、その後、調先生、何かございましたらまた御発言いただきたいと思いますが、まず、緒方先生、どうぞ。


○緒方構成員 朝野先生、賀来先生を初め、先生方には、地域の支援あるいは保健所の支援をいろいろいただいておりますことに感謝申し上げます。

 私の保健所でも、実は先週金曜日に、自治医大の森澤先生に来ていただきまして、管内全部の病院が集まって、ここではラウンドをやったり、会議をやったりしております。大事ことは、加算をとっていない病院、診療所あるいは施設において、どうやって支援していくかということが大切であると思いますし、その場合、先ほど先生方からお話がありましたように、立入検査みたいな監査型とは別に、マネジメントとか支援とか助言とか、そういった横の関係でのネットワークが大変大事だと思います。

 ネットワークには、必ずしも保健所を中心である必要はなくて、多様なものがあり得ると思うのですが、保健所に関して言うのであれば、1年半前に全国保健所長会が調査いたしましたところ、加算のネットワークに入っている保健所が出席しているのが2割ぐらいで、それから、その加算以外のネットワークを独自につくっている保健所が1割強ぐらいございましたが、まだまだ全体をカバーしているとは言えないと思います。

 いろいろなネットワークがあり得ると思うのですが、もし保健所がかかわるネットワークを広げていくとする場合は、2つほどポイントがあるかと思います。1つは、保健所は、必ずしも、特に多剤耐性菌については専門家ではございませんので、専門の先生方にかかわっていただくことが非常に大事だと思います。うまくいっておられるネットワークはみんなそうであると思います。もしできましたら、こういった支援をいただくためには、自治体や保健所に加算1をとっておられる病院の先生から御支援をいただけると、そういったことの努力をしていただけると、私どもとしては大変ありがたいと思っております。

 2つ目は、国あるいは中央会議から自治体に対して、もうちょっと地域の加算をとっていない病院も含めたネットワークにかかわるようにという通知とか御指導とかがありますと、もう少し現場はそれを積極的に受けとめるのではないかと思います。

 以上でございます。ありがとうございます。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 調先生、何か。


○調構成員 地方衛生研究所におきましては、これまで耐性菌の検査というのはなかなか行われてこなかったわけですけれども、昨年9月19日、CREMDRAが全数把握となりまして、また、発生動向調査事業の対象疾患となりましたことから、かなり問い合わせがふえていると伺っております。それで、これまでは、細菌検査といいますと、食中毒菌などの検査が主だったわけですけれども、そういった意味でも少し技術的なところを補強しないといけないと思います。

 全国に6支部ございますけれども、それぞれの支部に中心的な役割を担っていただくリファレンスセンターとなる地方衛生研究所を選定いたしまして、特に昨年度は、そこを含めて19カ所の地方衛生研究所の職員の方々が、国立感染症研究所で、CREを中心とした耐性菌検査の研修を受けることができました。これからは、地域のネットワークの中に地方衛生研究所も入っていって、検査対応を可能な限りつくっていくことが重要だと思います。

 どうもありがとうございました。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 保健所の役割というのはかなり幅が広いものがあって、感染制御に限ったことではない中で、入院加算で地域連携が始まってから、急速に保健所の役割が明確にされつつあり、また、いい事例がだんだんふえてきていると思います。これは、来年度ですか、また改定があるときに加算がなくならないように、継続するためにも、非常に重要なポイントの一つになっていくのだろうと思います。

 ほかの皆様方から、何か御意見があればどうぞ。最初にお名前をおっしゃって、御意見ください。


○洪構成員 洪です。

 賀来先生の御紹介された事例の中で、宮城ICNネットワークの活動が御紹介されておりました。地域で継続した良い活動をしていると思いますが、課題としまして、勤務時間外での個人活動なので制限がされるということと、それから特に病院以外の介護施設等への情報を発信することに限界があるので、そこに自治体とか保健所がかかわってくださると、大変活動がやりやすくなると思われます。

 以上です。


○賀来構成員 ありがとうございました。

 洪先生の今の御指摘どおりで、やはりICNの方での活動というのも一つの限界がありますので、そこに今、この課題になっています自治体の方々の協力をいただければ、さらに強化されると思います。


○小林座長 どうぞ。


○荒川構成員 名古屋大学の荒川でございます。

 名古屋市内、愛知県内も同様に、大学病院が公立、私立を合わせて4つぐらいありまして、それぞれ地域を分けていろいろな病院と連携を組んで、日々対策に協力しておりますけれども、後ほど田辺先生から御紹介があると思いますが、それ以外にも、例えば900床弱の拠点病院で、海外から戻ってこられた患者さんが、VREとか、多剤耐性シロトバクターとか、あとKPC産生のクレブシエラ・ニューモニエ、こういうものを持っておられたという事例があって、それに対して、当方もいろいろ御協力をしたのですけれども、こういうことが可能になっている一つの原因は、やはりそういう感染防止対策加算が非常に大きな役割を果たしているのではないかと思います。

 ただ、この防止加算について、もっと活用できるようなシステムがあるといいかなという気がします。具体的には、例えば1株、2株程度であれば、当方は耐性菌の研究費もありますので、それで対応可能なのですけれども、そういうものを持っておられない施設では、特殊な遺伝子解析をする場合に、かなりの経費がかかりますので、それを本来であれば感染防止対策加算のほうで支給できるといいのですけれども、なかなか、病院によってはそういうことが難しいような施設もあるようで、やはりこの防止加算をその目的に応じてより有効に活用するためには、防止加算で、当然人を雇ったり会議の経費とか、いろいろことに使えるのですけれども、菌株の解析などにももっと活用できるような、そういうことを推進していただくのが必要ではないかと思います。


○小林座長 ありがとうございました。

 先ほど緒方構成員のお話で、積極的にネットワークに、加算がついているネットワークが全国で20%ぐらいで、独自にやっているのが10%ぐらいというお話がありましたけれども、まだまだこれは、そういう参加をふやしていかなければいけないと思いますので、その辺で何かいい方法を御提案いただければと思うのですが。


○岡部構成員 川崎の岡部ですけれども、むしろ朝野先生にお尋ねしたいのですけれども、緒方先生もおっしゃった、加算にかかわりなく仲間に入ってもらうというか、そういう議論の場に入っていただくのは重要なのですけれども、先生のところで随分いろいろなところを包括してやっている中で、加算に入っていない方に声をかけるときは、どういうふうにしてやって、実際に入ってくるのかどうか。一番難しいところではないかと思うのですけれども。


○朝野参考人 大阪大学の朝野です。

 それは、まさに先生、保健所から、こういうことがありますよと言っていただくと、加算に入っていなくても、保健所に言われたら、やはりちょっと行ってみようかということになるのではないかと思います。ちょっとそれは、保健所を利用してと言ったら失礼ですけれども、やはり保健所というのは、そのくらいの力があるところだと思いますので、こういう会議は、賀来先生のところもそうですけれども、保健所で行います。だから、会場費とかそういうものは一切かからないし、連絡は、全部保健所がしていただくということで、ハブになっていただいているということで、1つはそういう、保健所という行政の力をかりて、加算に関係ない、加算に入っていないのだけれども、だから、例えば精神科の病院等もございまして、全て入ってきて、そこで情報を得ていただくということが同時にできると考えております。


○小林座長 一山先生のところもいろいろネットワークを充実させて活動されているので、何か。時間がありますので、皆様御協力いただいて、なるべく簡単に、明快に御意見をいただきたいと思います。お願いいたします。


○一山構成員 一山ですけれども、京都での事例を簡単に御紹介しますと、2004年のVREの件がありまして、1つの病院から100名を超える院内伝播がありました。そのときやはり非常に力を発揮していただいたのは、京都府、京都市の行政でして、そこから京都大学と京都府立医科大学にサーベイランス、そして地域連携のような、今のこういう形をつくってくださいと、ある意味、命令していただいて、そこで皆さんに声がけをして、そうすると、今、朝野先生がおっしゃるように、いまで言うところの加算を算定していない医療機関にまで、行政からの呼びかけであるからということで、連携が上手くいきました。行政の役割は大きいと思います。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 この問題はまだまだ議論があるかと思うのですが、もう一つ、今のお三方の話の中で、大石先生からも御紹介がありましたけれども、世界の中では多剤耐性菌の分離頻度が、日本はかなり低い状態を現在は維持していると思うのですね。これを増やさないことも非常に重要な課題で、これとネットワーク、確かに加算1のネットワーク等で、ほかの施設のアウトブレイクを早期発見したというのが17施設あったのですね。それは、最初のときの、12年4月参加者の組織の中での調査ですが、そういう例がどんどん増えていって、耐性菌を抑えることができればと思うのですが、このことに関してどなたか、ちょっともう一、二分しかございませんが、御意見があればどうぞ。

 よろしいですか。まあ、一番難しい問題でもあるし、後でアウトブレイクの問題、サーベイランスの問題が出てまいりますけれども。


○大石参考人 感染研の大石ですけれども、先ほど申しました3菌種の中で圧倒的に届け出数が多いのはCRE感染症であって、この実態を正確に把握すべきであり、対策を一番とるべき疾患ではないかと思います。


○小林座長 先生のデータからは、保菌者は完全に除外しているのでしょうか、一緒になっているのでしょうか。


○大石参考人 実は、その届け出のところで、保菌者が入っている可能性があります。基本的には、届け出は感染症ということにはなっております。


○小林座長 ありがとうございました。

 それでは、済みませんが先に進めさせていただきたいと思います。1-2)議題、感染制御におけるICNの役割についてということで、これは高野構成員からですか、お願いいたします。


○高野構成員 資料8をごらんください。高野から報告させていただきます。

 この資料は、数名のICNに協力をいただいて、資料を提供していただいたり、話を聞いて、洪先生と共同して作成しております。

 2枚目のスライドです。まず、ICNの大半を占める認定看護師の活動について、日本看護協会が2012年に実施した調査報告が、下のほうの段に書かれています。認定看護師は21分野あるのですけれども、その中でも感染管理認定看護師は、施設外での活動が多いということが特徴的でした。これは、先ほどから話題になっておりますような地域連携加算ですとか、それ以外の相談など、他施設とのかかわりで行っている活動と思われます。

 下の表ですけれども、その中で、所属施設以外からのコンサルテーション、相談依頼を受けているかという質問があるのですけれども、77.5%の人が、他施設からの相談も受けているという結果になっております。

 3枚目のスライドです。認定看護師だけではなくてICNが参加する感染管理ネットワークのほうで活動内容について調査が2012年、2013年に行われております。その結果ですけれども、詳細はいろいろあるのですが、各種委員会活動、施設内の巡視、感染管理コンサルテーション、感染予防策の周知徹底などが80%以上を占める活動内容になっております。したがって、現場での感染対策の実施について、ICNが役割を担っていることがわかると思います。

 4枚目のスライドです。看護師による医療関連感染サーベイランス活動ということで、どのようなものをしているかという内容を聞いていますが、医療処置、医療器具に関連した感染、BSISSIUTIなどが多く実施されていることもわかると思います。

 5枚目のスライドのグラフです、これは、A病院で手指衛生回数と新規MRSAの検出率を調べた結果になっています。2004年度から2014年度、2014年度はまだ12月までの途中のものなのですけれども、MRSAの新規検出率がぐんぐん減っているのにあわせて、患者当たりの手指衛生の回数がふえていることがわかります。ほかの耐性菌に関しては、手指衛生と余り連動していなくて、現場の感染対策、環境などが要因になることがとても多いと思うのですけれども、特にMRSAに関しては、手指衛生との関連がとても大きいのがわかります。

 ここでは、手指衛生の教育に基づき遵守率調査を行っております。遵守率調査や現場指導も行っているわけですけれども、2013年4月に調査を行ったときには、遵守率が30%というかなり低い状況でした。その後、いろいろ取り組んだ結果、201412月には78%と遵守率がかなり改善していることがわかります。このように現場に入っていくことで、遵守率などの対策が改善していくことがわかります。

 6枚目のスライドです。手指衛生の向上に向けた取り組みというのは幾つかあるわけですけれども、特に遵守率の調査に関しては、かなり時間もかけて地道な調査ということになります。1日中調査しても、1人でも6日間ぐらいかかるような内容になります。このほかパンフレットの配布ですとかポスターの配布、あとはマンスリーニュースなどに載せるといったことは、大体どこの施設でも最低限ということで実施されていると思います。また、手指衛生の回数などを部署にフィードバックすることも行っていると思うのですが、やはり現場に直接入って、処置やケアのプロセスで手指衛生ができるような直接的な取り組みが重要になります。

 7枚目のスライドです。、B病院で、手指衛生の回数とイベントを表示したものがこちらになっておりますが、同じような背景を持つ同じ診療科で、患者の数も同じような病棟のC病棟とD病棟がありました。2012年から2013年にかけて、それぞれノロウイルスのアウトブレイク、あとインフルエンザのアウトブレイクなどが起きていて、極めてこの病棟は手指衛生の回数が少ないということで、このICNが取り組んでおります。

 手洗いキャンペーンですとか、ICNの直接観察などを行っていたのですけれども、なかなか改善がないということで、現場に入って、冬期のウイルス疾患流行前に、病棟別の勉強会ですとか、直接的な指導を複数回実施したことによって、かなり回数の改善が見られたという事例になります。

 8枚目のスライドはCAUTIの事例です。こちらの病院では、医療関連感染サーベイランスにおいても同様のことが言えまして、ただ感染率を出していても、なかなか改善はなく、実際にデータのフィードバックだけではなくて、具体的な尿道留置カテーテルの管理方法の見直しに働きかけたことによって、感染率の低減が見られたということがありました。

 このように、現場に直接働きかけるということは、手指衛生だけではなくて、例えば防護具の着用ですとか、尿道留置カテーテルのように排せつなどのケアにかかわる感染の防護策、あとカテーテル類の医療器具に関する感染対策など、実際の具体的な処置の手順といったものを、現場を見ながらその場で指導していくことが、特にICNに求められていることになるかと思います。

MRSAの感染率ですとかUTIの感染率、こういったサーベイランスの結果と含めて、組織の中で、ICNだけが現場指導をしているわけではないと思うのですけれども、そういった組織内で体系的に実施して、それを広めて、また、それを年間を通してずっと維持していくということは、時間をかけたとても地道な作業が必要なのですけれども、こういったことが、外部ではない、実施施設の中の感染対策のICNの活動の中心になっていることがわかりました。

 以上です。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 皆さんから御意見、御質問をいただきたいと思うのですが、その前に、このサーベイランスの結果が出ておりますけれども、この診断基準はJANISなのでしょうか。CDCに従って、両方同じところもありますけれども、その辺、何か情報がございましたら。


○高野構成員 一応、JANISの、CDCと同じ基準を使っております。


○小林座長 どうぞ何か御意見。大久保委員。


○大久保構成員 大久保です。

 高野構成員と洪構成員、どちらかにお聞きしたいのですけれども、いわゆるCNIC(感染管理認定看護師)の皆さん方は、感染制御活動の中心的な役割をしておられることは、今、十分わかりましたけれども、人数的な問題で、我々の大学ではデルファイ法をもとに計算すると、大まかに言って患者さん200人に1人ぐらいの割合で必要だと考えています。現在たしか2,053名でしたか、具体的な必要人数をどのように見ておられるかということと、そして、それを達成するための今後の、例えば教育環境の整備とか、その辺で何かお考えがあればお教えいただきたいと思います。


○小林座長 どうぞ。


○洪構成員 洪です。ありがとうございます。

 今、感染の認定看護師は2,053名と、それから感染症看護の専門看護師が32名で、合わせましても2,100名ほどです。確かに200名に1人というところが、私たちも望ましいと考え目標としたいところではあるのですが、実際には、今2,000名ほどの人たちが、1,410の病院に勤務しておりまして、そうすると、病院だけで約8,500ありますのに、その中の2割程度ということになります。少なくとも医療施設には必ず1人必要だというところで、約10,000人以上を目指しているところなのですけれども、複数いらっしゃる施設におきまして、200名に1人ということの基準を満たしている施設は、全国的にも多くはないところだと思います。診療報酬で感染防止対策加算がついて、教育に派遣したいという施設は増えてきておりますがまだまだ人材育成は課題だと思っております。


○一山構成員 一山ですけれども、ICNの仕事の中身ですけれども、施設外での仕事というのが結構多いですね。そうしますと、先ほどの地域連携を含めまして、これは必要だと思うのですけれども、実施設の中での立場といいますか、例えば組織上、やりにくくはないか。だけれども、これを後押しすることが地域連携のために必要なのだけれども、その辺の工夫、お考えをお聞かせいただければと思います。


○小林座長 どうぞ。


○洪構成員 ありがとうございます。洪です。

 実際に感染防止対策地域連携加算を施設がとる、あるいは行政からの要請で地域連携を施設に求められたときには、施設の中でこの役割をと指示されますので、そのことにおいて活動しやすいというのは事実です。では、施設の中のことを誰がするかというと、結局施設内も対応して、そして施設外のことも対応するということを求められますと、負担が大変増しているという状況がございます。やはり先ほど大久保先生が指摘されたように、施設の中で本当に必要な人数、その求められる役割に対応して人数をどう配置するか、また、その感染管理の認定看護師とか、看護師だけではなくて、チームでのほかの職種の方たちも、感染制御活動ができるような配置をどうするかという組織体制を整える工夫が必要だと思っております。


○小林座長 よろしいでしょうか。


○高野構成員 高野からもよろしいですか。

 やはり地域連携加算をとっていれば、外にも出ていきやすいし、その施設とは全部連携しているということの説明がついて院外の活動もしやすいのですけれども、全く関係がない施設だと、自分の責任で、例えば相談に乗って、回答していいのかどうかとか、そういうことがありますので、やはり保健所なり、何か公正な第三者みたいなものが入られると、とても活動はしやすいのかなと思います。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 それに関しまして、そういう場はふえているのですけれども、一部で、やはり加算によって仕事量がふえて負担がふえたという意見を耳にします。洪先生が二、三年前のこの会議で57%という数字、6カ月の講習をしても、つけていない人、仕事ができていない人の数字を出されておりましたが、それが今どういうふうに変わってきているか、その2つ、ちょっとお教えいただけませんでしょうか。


○洪構成員 配置につきましては、たしか半数が認定看護師になっても感染管理に従事していないというところだったのですが、今、医療機関に従事するものの78%程度が、その役割を、専従とか専任でできるようにはなり、加算が活動の後押しにはなっています。業務がふえて負担感が増してはいるのですけれども、では、活動がしやすいということに関しては満足をしているということを聞いてございます。


○小林座長 今のお話も、これは加算を継続していくために必要重要なことだと思います。6カ月という非常に貴重な教育を経た方が、この加算を契機にして、働ける場所、アクティブに仕事ができる場が増えたということは、それだけ感染制御の質が上がったということにつながることだと思いますので、今の洪構成員のお話は非常に重要なポイントだと思います。


○高野構成員 負担は確かに多いと思います。でも、それは、自分の施設のICTといろいろな活動の仕方とかを考えていくことによって、少しは改善できる部分もあるかと思っています。


○小林座長 確かに人の力というか経験にもよることだろうと思いますので、一概にそれが問題だとは言い切れないことだと思いますが、やはりそういう声が起こっているということは、やはり何らかの対応を考えていかなければならない一つだと思います。

 ほかに何か。


○荒川構成員 今のお話の関連ですけれども、この加算が認められるようになってから、この加算の経費で、実際にそういう専従とか専任の職員として、加算を活用して、実際に新しく採用した病院がどのぐらいあるのか、もしデータがあれば、それもこの加算がいかに重要だということを示す資料になるのではないかという気がします。

 それから、あともう一点、このスライドの資料8の裏のページの上の感染管理活動ですけれども、2011年と2012年を比較しますと、若干12年のほうが棒グラフが少し短くなっているかなという印象があるのですけれども、これは回収率が上がることによって、そういう見かけ上、若干、全般的に棒グラフが縮んでいるのか、少し皆さんが忙し過ぎて、いろいろなところに力が注げないので、この活動の率が減ってきているのか、その辺はどういうふうに考えたらいいのか、教えていただければと思います。


○洪構成員 後半の質問で、このスライドで示している活動が、全体の活動としまして、2011年と2012年の活動比較で2012年の回答者数は増えております。回答者の中の実施割合をパーセンテージで示すと、若干減少しているという実態がございます。

 そして、先ほどの、では、加算がついてどのぐらいかというところ、小林先生が指摘されましたように、2010年に開催された第9回院内感染対策中央会議の時点で、日本看護協会登録データで、専従と専任あるいは兼任として感染管理に従事している認定看護師は43%だったところが、2012年実施の日本看護協会調査結果では93%が感染管理に従事しています。そのうち専従者は68%ですが、23%にあたる220人程度が2012年の感染対策加算がついて専従配置に変わりました。調査回収率が641030人でしたので、対象全体では340人ぐらい、約340施設は、今まで認定看護師はいたけれども、病棟等から専従の配置に変えたということが推計されます。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 それでは、ここで次の議題に進めたいと思うのですが、1-3)医療機関に求められるアウトブレイクの対応についてということで、本日お越しいただきました田辺先生から、事例を踏まえて御報告いただければと思います。よろしくお願いいたします。


○田辺参考人 三重大学の田辺と申します。本日は、このような発表の機会をいただきまして誠にありがとうございます。

 それでは、お手元の資料9をご覧ください。本日は、当院で経験しました多剤耐性アシネトバクターの集団発生事例につきまして御報告させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 では、1ページ目でございますけれども、まず、アウトブレイクの定義でございますが、これは、昨年12月に新しい通知が出まして、その中に定義がされていまして、基本的には、「一定の場所で院内感染の集積が通常よりも高い状態」ということで定義されているところでございます。

 その後、アウトブレイクの定義の中で、ブルーで書いておりますけれども、通知の中では、「各医療機関は、疫学的にアウトブレイクを把握できるよう、日常的にサーベイランスを実施することが望ましい」、このようなことが書かれているところでございます。

 当院といたしましては、ICTとして、どういった微生物を検出したときに動くのかということを内規として決めておりまして、一例での発生で注意が必要な微生物として、メタロ -ラクタマーゼ産生菌といったものも事前に上げているところでございました。

 次のページをごらんください。当院で経験しました事例につきましては、IASR10月号として発表させていただいておりますので、その中、下線を引いたところを中心に御説明させていただきたいと思います。

 1例目の患者様ですけれども、ラオス、タイで入院加療を受けた方が、当院の総合集中治療センターに転院となりました。感染症を発症した状況ではございませんでしたが、喀痰が多かったということもございまして、入院時に喀痰の細菌検査を施行しております。その結果、多剤耐性アシネトバクター(MDRA)、そして多剤耐性緑膿菌(MDRP)、そしてMRSAを検出しました。

 この情報は、細菌検査室から私たち感染対策チームのほうに迅速に連絡いただきまして、私たちがその情報をセンターに伝え、検査結果が判明した時点から、患者様を個室に収容して、厳格な接触予防策、また、アシネトバクターというのは環境を汚染しやすい菌として知られておりますので、高頻度の接触部位を清掃するといった対策を開始いたしました。

 その後ですけれども、入院8日目、初めての方が入院されてからの1週間後ぐらいなのですが、センター内の別の患者さんからMDRAを検出したことが判明いたしました。新たに判明した方につきましても同様な感染対策をとるのですけれども、短期間に2例の方からMDRAを発見したということで、アウトブレイクも疑いまして、周囲の方々を対象としたアクティブスクリーニング検査を施行しました。その結果、新しく5名の方からMDRAの検出を認め、最終的に7名の方という形になるのですけれども、アウトブレイクとして確定したということでございます。

 続きまして、3ページになりますけれども、その後は、感染対策の内容でございます。ICTが中心として活動しましたけれども、これは病院全体に及ぶことですので、病院全体で組織的な感染対策の強化を行いました。MDRAが判明した方につきましては、センター内のある区画、これは後で御説明しますけれども、別の区画の専用病棟を用いまして、その中のそれぞれの個室という形で管理をさせていただいております。

 また、担当するスタッフも専従化して、ほかの方と交差しないようにするということ、それから、環境の培養を頻回に行いまして、清掃も行うのですけれども、清掃の精度を確認する。それから、定期的な環境清掃。あとは、センター内全体を特別清掃するということを行いまして、アウトブレイクを収束することができました。

 この事例を経験したときに思ったのは、この方はMDRAのほか、MDRPMRSAも検出されていたのですけれども、周囲に広がったのはMDRAのみであったというのが今回の事実でして、3ページ目の下のほうに載っておりますけれども、日本環境感染学会のポジションペーパーにも、アシネトバクターと緑膿菌を比較した場合、アシネトバクターのほうが環境を汚染しやすい、こういったようなデータもございますので、やはりアシネトバクターというのは、ほかの耐性菌とは少し違うのかなといったような印象を持っております。

 また、この菌株につきましては、構成員であられます荒川先生のいらっしゃる名古屋大学に菌株の解析を依頼しまして、sequence type215という形で判定していただいております。

 続きまして、次の4ページ目をご覧ください。時系列でお示ししますけれども、Day0として症例1が入院されました。曜日を入れさせていただいているのですけれども、やはり今回、非常によかったなと思ったのは、このDay3、土曜日だったのですけれども、細菌検査室の担当の方が、これは普通の状況ではないということで、細菌検査室の長の方に連絡、その方から私のほうに連絡が来て、その日の土曜日のうちにICTラウンドをすることができたということは非常によかったかなと思っています。2日間遅れていると、さらに患者さんが増えていた可能性はあるかと思います。

 そして、Day8ですけれども、2例目の患者さんを検出した時点で、周囲の方を対象としたアクティブスクリーニング検査を実施しております。

 翌日ですけれども、まだ感受性は未でしたが、4名の方からアシネトバクターが出ているということで、これは多剤耐性である可能性も考えまして、その時点で病院幹部を含む対策会議の第1回目を開いております。また、連続して、対策会議が終わった後、周知の会議ということで、リスクマネジャー会議といいまして、病棟主任とか師長、あるいは中央部門の長の方が集まっていただく、そういった会議でその事例を周知しております。また、このDay9、まだ、これは2例確定の後、疑い事例の段階でしたが、保健所に連絡をしております。

 そして、Day11、これは日曜日になるのですけれども、MDRAが確定しました。また、もう1名から、感受性未ですけれども、アシネトバクターが出ているということがありましたので、月曜日の朝一番で会議を開けるように、日曜日の段階から準備をいたしまして、Day12の朝一番で対策会議を開いて、その後、周知の会議を開く。また、行政機関であります厚生労働省、文部科学省に報告しております。

Day13にまた会議を開いていて、この際、7名の方が確定されています。またこの日、特別清掃を実施しております。

 その次、Day14で記者会見をして、ホームページで公表。県内の医療機関・医師会・消防へ連絡しました。今回、外部に公表した理由といたしましては、ある程度、救急医療あるいは集中医療を縮小しなければならないといったような事態になりましたので、このような対応をとらせていただいております。

 その後、また会議を開いたり、リスクマネジャーを通じて、現場のスタッフには情報は伝えられてはいるのですけれども、ICTから、職員全員に情報を伝えたいということで、緊急の職員集会を開催しております。

 その後、国公立大学の感染対策協議会、これもアウトブレイクの確定した時点で支援の要請をしておりまして、Day22のときに来ていただいているといったような時系列でございます。

 続きまして、5ページになります。多剤耐性グラム陰性桿菌のアウトブレイクにどのように対応するかということで、これは、日本環境感染学会のポジションペーパーから持ってきたもので、特に関係するところに丸で赤い色の数字を入れておりますので、少し御説明させていただきます。まず、1つ目として、検査室と感染対策部門が連携をして、耐性菌に関する情報を共有することが重要であるとされておりまして、私たちの事例としましては、検査室からICTへの情報は迅速に行われました。

 それから、2つ目は患者さんの治療のことですけれども、ブレイクポイントチェッカーボード法を用いた薬剤感受性検査も実施しておりますし、また治療が必要な場合は、コリスチンあるいはチゲサイクリンの使用ということを検討しておりました。ただし、保菌の場合には、治療対象とはいたしませんでした。

 3つ目といたしまして、他患者への伝播防止をしなければならないということで、MDRA陽性とわかった方につきましては、個室収容としまして、接触予防策を適用。また、環境清掃を追加しております。

 4つ目が、周辺患者のスクリーニング検査を同時に実施するということで、今回2例目を検出した時点で、水平伝播を疑いまして、周辺患者のスクリーニング検査を実施しております。

 5つ目、アウトブレイクの真偽の検討ということで、当院では過去にMDRAを検出したことはなかったため、早期からアウトブレイクとして対応いたしました。また、菌株の詳細な解析、タイピングにつきましては、行政機関と他の研究機関(名古屋大学)に依頼しております。

 6つ目、なるべく早目に行政への連絡ということで、疑いの時点で保健所への第1報の連絡、複数名のMDRA確定後、文部科学省、厚生労働省へ報告しております。

 7つ目、アウトブレイクの収束に向けた支援を仰ぐということで、今回は国公立大学の感染対策協議会に改善支援を依頼しております。

 そして8つ目、再発防止策について検討するということで、今回の事例の発端は、海外で医療を受けた患者さんの受け入れというところから始まっておりますので、そういった海外で医療を受けた患者様の受け入れ時の感染対策をどうするかということを検討しました。また、日ごろからの感染対策の強化を行いました。

 では、次のページをご覧ください。6ページです。こちらはAPICと言いまして、アメリカの感染対策の学会ガイドラインには、もう少し組織的な対応も含めてこういった項目をやりましょうといったチェックリストがありましたので、こういったものも参考にさせていただきました。これは11項目ございますので、この後、写真等を示しながら、それぞれのどういった項目をやったかということで整理をさせていただきました。

 7ページ、これがセンターの見取り図になります。救命ベッドの部分、それからICU、そしてHCUがあり、HCUは少し離れたゾーンになっております。図で示したような形で1番から7番の患者さんが判明した時点でHCU、別の病棟というか別の区画に患者さんを移動させる対応をとりました。上段に記載させていただいておりますように、患者のコホーティング、スタッフのコホーティング、それから、発生当時は、新規入院の停止といったような対応を行いました。

 続きまして8ページになります。次は清掃ですが、まず、左側ですけれども、定期的な清掃も重要になりますので、どういったところを清掃するかということで、高頻度接触面をリストアップしまして、時間を決めて、誰が清掃するか、そして、清掃したら、チェックを入れる、このようなことをやりました。

 それから、右側ですけれども、現場はこういった感染対策もしながら、患者さんのケアもしなければいけないということで、なかなかセンター全体の清掃を行うことは難しく、外部の力をかりて特別な清掃が必要となりました。当初、外部委託の方との追加契約などもいろいろと検討したのですけれども、迅速性の問題もありましたので、まずは病院のスタッフでやろうということで、看護助手さん、事務職員の方に集まっていただきまして、どこを清掃するか場所を決めて徹底的な清掃を行っております。その後、外部委託業者と、新たに委託契約を結びまして、指導に当たるような、清掃のプロの方に来ていただきまして、特別清掃をしていただいております。

 続きまして9ページ目になります。今回非常に困ったのは、拭きやすい場所はいいのですけれども、なかなか拭きにくいものがあるということです。環境培養で確認しておりますと、通常の清掃ではMDRAが消えなかった部分というのがございまして、1つがエコーの器械でございます。左側ですけれども、エコーは、トラックボールという球状になっている部分などもあり、拭いてもなかなか全部拭き切れない箇所があり、私たちでは清掃しきれなかったので、メーカーの方に来て、分解していただいて清掃をしております。

 それから、1例目の方は、入院時に脳波をとっていました。その後、その脳波計は他の患者さんには使用されていませんでしたが、使用後、通常の清掃はされていたのですけれども、培養すると、MDRAが検出されました。脳波計もかなり細かい部品が多いので、これも私たちでは清掃ができなかったので、分解を業者の方に依頼しております。

 それから、写真はございませんけれども、MDRA陽性の方に使用したエアマットもなかなか清掃ができないということで、これも非常に苦労いたしました。

 次のページでございます。HCU病棟の患者さんが減っていった時点で最終的に閉鎖をしたのですけれども、閉鎖をするときに、日本ではまだ余り行われていないのですけれども、イギリスなどでは蒸気化過酸化水素というもので部屋全体を消毒する方法がかなり行われているということを知りましたので、実施しております。この写真にありますようにケーブル類などは、拭いてはいるのですけれども、もう一度確認のために蒸気をかける。あと、椅子が並んでいるのは、今回、椅子からも一度MDRAを検出したことがありまして、布製の椅子というのは非常に拭きにくいということで、その時点で使用は止めていたのですけれども、蒸気で消毒するときに、一緒に消毒しました。このような徹底的なクリーニングに関しましては費用もかかっておりますので、経営管理的な支援をいただいております。

 それから、11ページでございますけれども、リザーバーの探索・同定、環境中の物品に対する培養ということで、MDRA陽性になった方につきましては定期的に検査をする、それから、センター内に入室した方に対しては、定期的、あるいは退室時にスクリーニング検査をする、それから、環境の定期的な培養を行いました。

 続きまして12ページですけれども、接触予防策及びPPE使用のモニタリング、それから、手指衛生のモニタリングになります。手指衛生の徹底はいたしました。それから、PPEの着脱方法とか各種手順など、いろいろ細かいところまで気をつけなければいけなくて、レントゲンなども、ポータブルで順次別の方を撮っていきますので、1人の方を撮り終わったらどのようなことをするのか、そういったことのマニュアルをつくって、みんなで遵守していく、それから、接触予防策のPPEの着脱などの手順につきましても、現場の方で教育用のビデオをつくって、みんなで共有する、そういったことをまたICTラウンドで確認するということになります。手指衛生の回数につきましては、アウトブレイク前後で非常に増えているということが、データ上からもわかります。

 続きまして、情報伝達と教育ですけれども、リスクマネジャー会議を緊急で何度も開きまして、現場への周知も行っておりますし、職員集会での情報伝達、教育を行いました。その内容といたしましては、ここに少し載っておりますけれども、標準予防策と感染経路別予防策の違いであったり、標準予防策でもPPEは重要ですよということで、どういったときにPPEをつけるか、あるいはPPEの着脱をどうしますかといったことを教育しております。職員全体の集会もいいのですけれども、全体集会では防護具の着脱とかといった細かいところまでの教育はできませんので、医局会などにお邪魔しまして、各部署単位で出前講習などをしております。この写真は、病院長のいらっしゃる診療科のところに我々が出向いて、ICNPPE着脱の訓練をしているところになります。それから、県内の関連医療機関、消防、行政機関などへの情報提供、報告を行っております。

14ページになります。


○小林座長 ちょっと時間がオーバーしておりますので。


○田辺参考人 では、もうこれで、済みません。

 アウトブレイクの費用ということで上げさせていただいております。1つ目、感染対策の費用として、培養検査、患者様、環境でおよそ300万円程度。清掃として、先ほど挙げさせていただいたもので、数百万円程度、それから、接触感染対策の費用の増加分、こういったものを合計して900万円程度、それ以外に、物品の損失費用として160万円程度、そして、収益減少について、これは億単位と聞いておりますけれども、このような状況でございます。

 では、まとめと考察は割愛させていただきます。ありがとうございました。


○小林座長 どうもありがとうございました。申し訳ございません。

 これは、いろいろ皆様方、御質問や御意見がおありだと思いますので、どうぞ。いかがでしょうか。

 では、先生、最後のところをはしょっていただいてしまいましたけれども、このコストの問題ですけれども、かかった費用はこうですが早期にアウトブレイクを見つけたことによって、やはりかなりの損失を防止しているだろうと思うのですね。それがないと、やたらにかかったところだけが出てしまうといけないので、ネットワークを含めまして、予防効果、その経済的効果、マンパワーの問題もあると思うのですけれども、その辺、何かございますでしょうか。


○田辺参考人 ありがとうございます。

 そうしましたら、最後の考察について、少し説明させていただければと思います。

 2つ目のポツでございますけれども、まず、病院全体で「標準予防策」「感染経路別予防策」の徹底、そして、今回は、海外の医療機関からの受け入れということなのですけれども、こういった方々につきましては、耐性菌保有の可能性も考えまして、結果が判明するまで個室管理とする、こういった感染対策が必要となるということが今回の教訓としてあろうかと思います。先ほど小林先生からいただきました御質問ということになりますと、その次の3つ目、病院の中では、もちろん頑張ったのですけれども、地域、県内の医療機関、消防機関、また連携医療機関、行政機関など、いろいろなところの支援をいただきましたので、日ごろからの地域連携というものは非常に重要だと感じました。

 そして、最後ですけれども、今回、私が非常に危惧していたのは、ICUというのは病院の中のハブでして、そこから全病棟に患者さんが行きますので、MDRAと判明したその時点で、病棟に行く方の転棟を止めたり、転院の予定だった方を止めて検査をしたりということで、他への波及を防止することを非常に考えました。おかげさまで、病棟にMDRA陽性の患者さんが行くということがなかったので、早期に収束することができたのですけれども、これがもし病棟に及んでいくと、収束までの時間も非常にかかると思いますし、そのための経済的なデメリットも大きくなろうかと思います。アウトブレイクが生じないように、日ごろから感染対策をすること、そして、早期に発見できるようなICT活動を行うこと、起きないほうがいいのですけれども、万一アウトブレイクが起きてしまったら、早期の組織的な対応が重要と感じました。


○小林座長 ありがとうございます。

 もしお許しいただける、お願いできるならば、議事録の段階でも結構ですから、例えばこれは3日で7例、それがちょっとおくれたら、倍、3倍となっていくだろうと思うのですね。そこの費用が、しかも散らばると、それだけそっちも倍々でふえていくと思いますので、そういったスペキュレーションでも結構ですから、もし早く見つけないとこのぐらい大変なことになるのだということを御追加いただければ、これも非常に加算を続けてもらうための重要な要素になるかと思うのですが、いかがでしょうか。

 賀来先生、どうぞ。


○賀来構成員 小林先生の御指摘はすごく重要だと思います。田辺先生、この概算、アウトブレイクの費用が今900万円ぐらいかかっているわけですけれども、これは加算の予算から出していただいたということがありますか。


○田辺参考人 加算の予算については、結局、病院の中の収入として入ってきますので、結局どこをもって加算とするかというのは難しいですけれども、もちろん病院としては、当然ここは感染対策としてかかった分だという形で執行部の方は認識されるかと思います。


○賀来構成員 私たちの病院では、こういった費用が必要な場合は、感染対策委員会のなかで、これらの費用は加算のなかからお願いしますというようにしています。感染対策委員会には病院長も出席されており、病院長のおられる前で、加算の中からの費用の捻出などという言い方を極力させていただくことにしています。すなわち、加算を積極的に感染対策の費用に充てていく、そういう意識を持ってもらうというようなやり方を心がけています。


○小林座長 どうもありがとうございました。今のことも非常に重要な点ではないかと思います。

 大久保構成員。


○大久保構成員 加算の費用をどういうふうに見るかというところの考え方ですけれども、これは2010年に初めて感染防止対策加算として入院時加算100点がついたときに参考となった資料なのですが、ある1,000床程度の大学病院で、1人の患者さんが入院してから退院するまで、どのぐらいお金がかかるだろうかというのを、PPEを対象として、手袋とか消毒薬も含めて調査して頂きました。そうしましたら4,694円。これが、ある意味で参考となって、今の400点プラス100点の5,000円がついたのではないかと思います。したがって、この費用は、これはアウトブレイク対応の費用ではなくて、全て日常の感染制御のためのPPEに要する費用、消毒薬も含めてと考えると、ここからアウトブレイクの費用を算出するというのは少し無理があるわけで、到底この費用で賄えるものではないと僕は考えます。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 ただ、もう一つ考え方を変えますと、これは、アウトブレイクが拡大するのを防止するための予防的な費用だと考えれば、やはりこれはプリベンションのための経費として活用できるのだという見方もあるかと思いますけれども、いかがでしょうか。


○荒川構成員 実は昨日、日本臨床微生物学会でアウトブレイク対応の報告がございまして、これは名古屋市内の私が少し関連したところからの御発表だったのですけれども、アシネトバクターとKPCを産生するクレブシエラ数名が、患者さんから、そういう患者さんが見つかって対策をされたのですけれども、ICUの一定期間の新規入院の停止とか、いろいろなことを全て含めて計算すると約六千数百万円の病院の収入減になったという御報告もありましたので、その規模の、数名の規模のアウトブレイクであっても、これはかなり迅速に対応したわけでありますけれども、そのぐらいの経費を要したということで、これが100とか200というような数になれば、もっと大きな支出が病院の負担になっているのではないかという気がいたします。


○小林座長 ありがとうございました。

 そうなりますと、もっと早い時期にアウトブレイクを特定できて、もっと少なくて済む方法があるかどうかというのも、今後のこの会議の重要な課題になっていくだろうと思うのですが、ほかに御意見、何かございませんでしょうか。


○荒川構成員 やはり特定の耐性菌のアウトブレイクに迅速に対応するためには、その病原体を早期に特定して、これが病院内で広がりやすい感染制御の対象として重視すべきものかどうかを識別するのが非常に大事ではないかと思いますね。その意味で、やはり検査機能を強化することと、あと、自施設でできないところは、地域連携のネットワークを使って、近隣の病院でそういうことが可能な病院に依頼をして、支援していただく、そういう体制を、つまり、アウトブレイクが起きてしまってからの対策の中で早く気がつき迅速に対応するというところをさらにより強化していくことは、重要な課題かと思います。


○小林座長 ありがとうございました。

 そのことに関しては、前回の8月の中央会議のときに、特に300床未満の中小の施設で検査室を持たないで外注しているようなところが多いわけで、それに対して、全国的に主なところは4カ所ぐらいで、その下にいろいろな検査会社があるというようなことをたしか荒川先生が御紹介くださったと思うのですけれども、その辺の外注を中心に検査しているところをどういうふうにしていくかというのも、一つこれから考えて、ネットワークの中で処理できるのか、または最初から外注しているところにわかっていてもらって、そういう検査もできるようにするのか、その辺も今後の議論の課題になるかと思いますが、何か荒川先生、いかがですか。


○荒川構成員 そうですね、中小病院については、先ほど先生がおっしゃったように、民間の検査センターの機能強化は当然進めていく必要があると思いますね。それに加えて、今、実際に全ての検査センターでいろいろ解析ができるわけではありませんので、地域でそういうことが可能な大学病院とか、あるいは拠点病院、基幹病院というところでも、特に加算1をとっているような施設では、基本的にはそういう多剤耐性の菌に対して、自施設で当然対応できて、しかも他施設からの依頼にも応えて支援ができるような体制を組んでいくことが必要かと思います。


○小林座長 ありがとうございます。

 一山先生、賀来先生、この辺の早期特定の問題はいかがでしょうか。


○一山構成員 荒川先生がさっきおっしゃったように、地域の拠点になるようなところがあると思うのですね。例えば大学であるとかの検査室。そういったところがどこまで関与できるかということ、責任問題とか品質の保証とか、そういうものを議論して進めていくのがよろしいのではないかと思います。


○小林座長 ありがとうございました。


○賀来構成員 荒川先生、一山先生が言われました地域の拠点病院が関係してくるということも、いろいろな課題はあるのですが、地域支援を積極的に行っていく、そういう方向性で臨床微生物学会でも方向が進んでいます。

 もう一つは、いわゆる検査センターの役割もとても大切なので、学会の委員会の中に大手の検査センターの方にも入っていただいております。アウトブレイクを早く見つけ出すというようなことについては、外注する場合、検査センターからの薬剤耐性菌検出に関する早期の連絡体制も含めて、とても大きな課題だろうと思いますので、今後、この中央会議でもやはりその方向性をどうやっていくのかを議論していく必要があると思います。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 緒方先生、指導する保健所の立場として何か御意見ございますでしょうか。


○緒方構成員 繰り返し申しますように、保健所は、指導というよりも、その専門家の先生の力を借りながら支援をしていくという立場だと思うのですけれども、今ちょっと虚をつかれたというか、やはり検査センターとのネットワークの関係ということを余り考えてこなかったのですけれども、確かにうちの管内の加算1をとっていない病院は、大体外注が過半数でございます。ですから、検査センターのネットワークへの関与を今後は少し考えていきたいと思っております。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 田辺先生、御経験から、今の議論で何か御意見ございましたら、どうぞ。先生のところは、大学病院として検査室が充実しておられるから早く特定ができたわけですけれども、一般論としては、まだまだいろいろな問題があって、経費的にも、この2倍も3倍もかかってしまうような結果は、危険性はたくさんあると思いますので。


○田辺参考人 この1・2連携が始まりまして、かなり地域のネットワークができてくる中で、私も危惧しているのは、その1・2連携に入っていない病院も含めてどのように支援していくかということで、今、三重県も、三重県全体でそういったものができないかということを考えております。私たちの場合は、三重県内における唯一の大学病院ですので、私たちの病院への支援に際しては国公立大学にお願いしましたけれども、県内で起こったことは、私たちが中心になって対応できるような体制、検査あるいは感染対策の看護師さんの問題も含めて、そういったような支援体制は作っていきたいと思っております。


○小林座長 ありがとうございました。

 どうぞ。


○大石参考人 感染研の大石です。最近経験しました実地疫学調査の例は、大阪地域で発生したMDRPの小規模病院でのアウトブレイクでありますが、そこでは細菌検査にはコマーシャルラボが入っていたため、分離株の遺伝子検査は地方衛生研究所と連携して実施されました。また、地域の大学病院の感染制御の先生方が協力していただいて、小規模病院での感染対策が効率よく実施できました。今、議論されているようなことが成功裏に実現できた例です。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 これもまた議論の尽きないところだと思うのですが、この会としましても、幾つかの方法があると思いますので、それを今後、何らかの形でどなたかにまとめていただいて、それをみんなで、皆さんの御意見をいただきながら、事例として御紹介して、その中の可能な方法をとって、早期特定ということをすることも大事かと思いますので、今後の課題としてぜひ検討していただければと思います。

 それでは、次に議題(2)に移りたいと思います。「抗菌薬の適正使用について」ですが、薬剤耐性菌を新たに生まないためにも、これは今までの話の中にも出てきたことでありますが、また、それを広げないために、最初に局長からもお話がございましたように、国際的にも、WHOも含めて世界的にこのことが一番課題になっているわけでありまして、日本におきましてもまだまだ、諸外国に比べて耐性菌の率が少ないにしましても、やはり抗菌薬の使い方にはいろいろ問題があると思いますので、これをどのように進めていったらいいかということに関して検討を進めたいと思います。

 まず、一山先生、口火を切っていただけますでしょうか。


○一山構成員 一山です。

 それでは、抗菌薬の適正使用に関して自験例をお話しさせていただきますので、議論いただきたいと思います。

 資料10をご覧ください。これは、診療介入についての内容でございます。

 ここに書いてある1枚目のスライドが、どうしてこういったことが必要かということを、我が国の現状は、恐らくこうであろうと思うからです。感染症は全ての診療科に存在するわけですけれども、専門家でない方が治療せざるを得ないという状況がありまして、そういったことを、いかに抗菌薬の適正使用を病院全体で進めていくかということが重要な課題だろうと思います。すなわち、診療科横断的に、できれば適正な診断と治療が行えるような組織があればよいのではないかということです。

 京大病院では、この診療介入を2001年から行っておりまして、細菌検査室が感染制御部とほとんど同じ立場でありますので、重症感染症を疑う検査データ、薬剤耐性菌による感染症の症例といったことを把握できます。そして、患者さんを診察したり、主治医と一緒に診療行為を行うわけです。昨今、届け出制・許可制抗菌薬に関するものがありますので、その情報をもとに不適切ではないかと思う症例にも介入しております。

 コンサルテーション、すなわち主治医が積極的に我々にコンサルトを申し入れてくる症例を、副主治医として診療しているわけです。

 次のページをお願いします。2001年からの経緯でございますけれども、これは何回診療行為を行ったかということです。1つの事例が1回とカウントしまして、開始した当初は、こういう1,000例ちょっとでございまして、2001年から2003年の3年でこれだけですね。棒グラフの上の青い部分が血液培養陽性例、すなわち重症の感染症でして、赤いところは、主治医が我々専門家にコンサルトをしていただいた症例です。順調に増えておるので、病院の中での認知はされているのかなと判断しています。

 そのコンサルテーションの内容が非常におもしろくて、主治医は感染症の症例に遭遇した場合に何を聞きたいのかというと、まず、一番多いのは、やはりどういう治療をすればよいのかということで約半数ですね。次に4分の1が、どういう検査をすればいいのか、この検査をどう読むのか、すなわち耐性菌かどうかなどを聞きに来ているわけでして、このようなところが、我々、感染制御、感染症診療の必要性を物語っていると思います。

 次以下のスライドは、菌血症の症例に関して申し上げたいと思います。検査が非常に重要でして、早期に菌血症の診断をするという正しい診断手順を病院の中で指導すると、改善が見られるわけです。

 次のページをお願いします。あと4枚のスライドは、菌血症の中でも特に重要な黄色ブドウ球菌とカンジダについてお話をします。

 アメリカの感染症学会も、この2菌種は非常に重要と捉えています。なぜなら、予後が重篤であるからです。適切な抗菌薬を早く投与することが一番重要でして、グラフの一番上に書いてありますように、我々の活動の前期と後期と比べてみますと、後期のほうが早く正しい治療が行われていることになります。

14日以上の治療、これはどうして長くすべきかということですが、抗菌薬はできれば短いほうがいいのではないかと一般的に捉えられがちですけれども、黄色ブドウ球菌の治療は14日以上必要であることが臨床的にわかっておりますので、それを推奨します。

 血液培養検査を再検することも非常に重要です。さらに心エコー検査もして、心臓の弁に病巣があるかどうかをチェックして治療方針を決めることが重要です。いずれも後期のほうがよくなっています。

 そうしますと、次のスライドですけれども、確かに抗菌薬、検査、診断の適正化、治療の適正化、そして、現場での予防策の徹底、こういったものをバンドルと通称呼びますけれども、こういったものにまとめてきちっと対応すれば、前期に比べて後期のほうが死亡率は改善するということで、実際、患者さんにいいことを我々はしているということが御理解いただけるわけで、その必要性が認識されるわけです。

 次のスライドが最後ですけれども、カンジダについても同様でございまして、カンジダ菌血症に関しては、カテーテルを抜去することが必要であります。抗真菌薬1日投与量、これは、この当時は非常に使いにくい薬でしたけれども、投与量は十分量を1日行かなければならないわけでして、これを勧めました。治療期間も2週間以上投与しなければいけませんので、このように介入前と後とを比べると、診療のパフォーマンスを感染制御部によって、病院全体で上げることができました。その結果、実際、感染症の患者さんの予後もこのように改善しているわけです。

 したがって、一例一例診療介入をして、抗菌薬の適正使用を中心に介入していけば、患者さんの予後がよくなるということを御説明して、訴えていきたいと思っております。

 以上です。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 もう一方、田辺先生、介入の実際と、それからICTの問題等についてお話しいただけますでしょうか。


○田辺参考人 ありがとうございます。一山先生のスライドの2枚目、「インターベンションの流れ」の図の中で、「細菌検査結果」とか「抗菌薬の不適切使用」とか、あと「コンサルテーション」など、何らかの形で我々は動くわけですけれども、私が感じているのは、まず、under-treatmentover-treatmentというものがあって、抗菌薬の適正使用という言葉を議論するときに、おおむね、多くはover-treatmentの話で、broad-spectrumnarrowにしましょうといった話が多いと思うのです。もちろんそれもやらなければならない、耐性菌対策として必要なのですけれども、感染制御としては、一山先生のスライドの1枚目にありますけれども、まず、現場の方々、全ての診療科と渡り合っていかないといけなくて、これは非常に信頼関係も重要になります。私が考えているのは、抗菌薬を使った後に培養検査しても菌が生えませんので、やはり抗菌薬を投与する前に培養検査に出していただいて、検査室のほうでつかまえて、耐性菌があれば介入する、あるいは血培陽性であれば、一山先生らがされているように確認していくといったことが重要かと思っています。

 もう一つ、薬剤部のほうで確認できる届け出制薬についても、いろいろな方法で把握しながら、どういった基準で介入していくかということを決めて動いていくことが重要かと思っておりまして、ただ、今日、御紹介いただきました京都大学は、非常に多くのメンバーがいて、マンパワー的にも充実しているトップランナーの大学病院であって、我々ではまだそこまでのパワーがなくて、大学病院でも、やれているところとやれていないところがある。では、一般の市中病院の200床、300床のクラスでここまでのことができるかと言われるとなかなか難しいと思います。ただ、一山先生の一番初めのスライドに書いてありますように、minimum requirementですので、感染制御のレベルを上げるためには、全国的にどういった形でしていくのが良いかということを、こういったところで提言として出していただけるとありがたいと思います。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 抗菌薬の適正使用の中で、臨床薬剤師の活躍というものが最近求められるようになって、その中でTDM、テラポエティック・ドラッグ・モニタリングの必要性ということも言われているわけですが、これは、それこそ中小の施設ではなかなか難しいことだと思いますけれども、一山先生、その辺いかがでしょうか。


○一山構成員 そうですね、薬剤師の役割、検査技師の役割は非常に大きいのです。ドクターがなかなか専門医でこういったことをしている病院というのは、やはり限られていますので、薬剤師、検査技師の力をお借りしていくのが良いと思います。専門性を高めるような認定資格が学会ではありますので、そういった方々はかなりのレベルまで行けますから、その方々に協力をお願いして、それから、できれば兼務でもいいですから、医師が全体の指揮をとるというスタイルを目指すのがよいのではないかと思います。


○小林座長 どうもありがとうございます。

 ほかに、抗菌薬適正使用に関して御意見がございましたら。どうぞ。


○一山構成員 1点追加して、現在、加算の要件の中に届け出制、許可制ということもありますけれども、ややもすると形式的になっていることもないわけではなくて、できますれば介入、こういうことができて、正しく使うという方向をどこかで追加していければいいかと思います。


○小林座長 どうもありがとうございます。

 私も全くそれは同感でございまして、届け出はしなければ使えないとなると緊急の場合、困ると思うので、使ってからの届け出もいいですから、それがあったら、やはりICTが、検査技師、薬剤師を含めて、現場に行って、実際に適正に使われているかどうかということをチェックすることが、今、一山先生が非常に重要なことだとおっしゃったのだと思いますが、私もそれは、当初よりそういうふうに思っております。

 賀来先生、何かございますか。


○賀来構成員 もう、まさにそのとおりで、抗菌薬の適正使用に関しては、アンチミクロバイアル・スチュワードシップ(Antimicrobial Stewardship)という、いわゆる医師だけではなくて、薬剤師の方や、検査技師も協力して適正化をはかっていくというような方向性が見えていますので、ぜひそういった届け出制に加えて、Antimicrobial Stewardshipの実践が評価されるということをぜひうたっていただくと、さらに抗菌薬の適正使用が進むと思います。


○小林座長 洪先生、高野先生、ICNがやはり一番現場との接触が多くて、そういう抗菌薬を使っている状況なども見つけやすい立場にあると思うのですが、それを見つけた際に、あと、薬剤師なり検査技師、ドクターにどういうふうにうまく、早くコミュニケーションをとっていくかということで、何か御意見ございませんでしょうか。


○高野構成員 高野ですけれども、ICTが専従専任者が大きな病院で活動しているようなところは別にしますと、専任で働いているICTというとICNがほとんどの施設が多いと思います。そういうときに、今、小林先生がおっしゃいましたように、やはり患者さんを見て、この人は、血培、例えば陽性だとか、何の抗菌薬を使っているということを把握しながら、ナースが毎日現場に行って気がついたことを、兼任であったとしても、薬剤師や医師にすぐ連絡をとりながら、どういうふうに具体的にナースがどう動いて、医師や薬剤師とどう連携していくのかということを、これからナースは明確にしていかなければいけないのかなと思います。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 洪先生、何かございますか。


○洪構成員 先ほど田辺先生がおっしゃった、検体をとったけれども、その検体が適切にとられているかということなどに関しましても、看護師等がかかわっているわけですので、検体採取方法に関するICNの指導といったこと、そして、中小の規模でも、感染制御に関する専門の資格を取った検査技師や薬剤師がいらっしゃいますが、チームでどう活動していくかという連携や調整について看護師等が役割を果たせるかと思います。

 ありがとうございます。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 ほかに。どうぞ。


○荒川構成員 細菌感染症の治療は非常に難しい。例えば同じ緑膿菌でも、普通の緑膿菌の場合と多剤耐性緑膿菌では、やはり治療法がかなり違ってまいります。ですから、抗菌薬治療というのは、なかなかプロトコール化しづらい、ガイドライン化しにくいというのが、ほかのがんとか慢性疾患などの病気と一番大きく違うところだと思うのですね。ですから、感染症の化学療法を専門に行う、感染症治療が専門だという医師をもっともっと育成しなければいけないのではないかと。

 今、感染制御と感染症治療の両方を掛け持ちしておられる、かなりスーパーマン的な方が何名かおられますけれども、やはり本来は感染制御と感染症治療は違いますので、特に抗菌薬を使った感染症治療の専門家をもっと育成していかなければいけないのではないかと思います。


○小林座長 ありがとうございました。

 私もそれは同感で、ややもすると、先生のおっしゃったように混同されていますので、感染制御と、それから感染症に対する専門医というのはまた違ったものになると思うので、両方やることは大変なことだと思いますし、その言葉の使い分けも必要になってくるのではないかと思います。

 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。


○森井地域医療計画課長補佐 事務局から1つお願いがあります。この会議は院内感染対策中央会議ということですけれども、やはり外来の患者さんのことも、外来で耐性菌ができると院内に入ってくるという部分もありますので、外来の感染症治療に関する抗菌薬の適正使用という観点でも御議論願えないかと考えています。


○小林座長 ありがとうございます。

 特に外来の場合、入院すればインテンシブにケアできますけれども、外来のままで抗菌薬を出す場合に、ややもすると出し過ぎるとか、患者様側が薬を要求してくるとか、いろいろな問題点がある。今、御指摘の点は非常に重要な今後の課題の一つだと私も思いますが、いかがでしょうか。大久保先生、どうぞ。


○大久保構成員 大久保です。

 要は、ウイルス性疾患なのに通常の抗菌薬を患者様が希望される事がないように、プロパガンダを関連の学会の市民公開講座やマスコミなどにお願いして、一般の人にもそういう啓蒙をきちっとしておかないと、なかなか外来の現場で薬を制限とか、そこでゆっくり説明するのは難しいと思いますので、何らかのそういう方策を考えておく必要があると思います。


○小林座長 ありがとうございました。

 それと関連して、在院日数が非常に短くなってきております。アメリカほどではありませんけれども、アメリカみたいに3日、4日になると、やはりどうしても退院してからの病院感染発症というものが問題になりますので、抗菌薬をヘビーに使い過ぎたり、また、退院後も抗菌薬を投与しなければならんという状況になると思うのですが、日本はまだそれほど短くなっていない、10日前後が短いところでもあれだと思いますが、アメリカあたりは、そういうことによって、つい強い抗菌薬を使って、耐性株がふえてきているという傾向もあるのではないかと思うのですが、大石先生、いろいろお調べになって、いかがでしょうか。アメリカあたりのそういう耐性菌がふえる率が割合高いという耐性株の状況に関して。


○大石参考人 東南アジアなどでは、米国のガイドラインなどを使っているようで、その結果、カルバペネムの使用の期間とかがかなり長くなっていて、耐性菌の率が高くなっているというように私は認識しております。


○小林座長 ありがとうございます。

 賀来先生、どうぞ。


○賀来構成員 外来の抗菌薬の使用については本当に重要で、日本の中ではこれをサーベイする方法論がないというか、そういう研究が少ないのですけれども、現在、私どもの教室の具が調査解析を行っています。主としてレセプトからの解析ですけれども、日本の外来の抗菌薬の使用の中のある程度特徴的なことが出てきていまして、マクロライドが非常に使われているという結果が得られています。欧米ではペニシリン系が多いのですけれども、日本では外来で非常にマクロライドが多い結果であり、そういったことから、やはりマクロライド耐性が生まれてきている可能性があるということがわかってきています。

 また、現在、イギリスでは市民向けの啓発活動として、アニメを利用した薬剤耐性菌の制御等のキャンペーン活動が盛んになっていますし、香港でもそういう市民向けの抗菌薬適正使用のキャンペーン活動を香港の衛生当局が行っています。

また、今年度から、グローバルPPSといった世界規模で、病院における抗菌薬の使用に関するサーベイが行われることになっており、私どもも参加することにしております。各国でのいわゆる外来も含めた使い方の違いがあるのかということは、今後のすごく重要なテーマですので、森井補佐が指摘されましたテーマはとても大きいと思います。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 ほかに何か御意見ございますでしょうか。どうぞ。


○朝野参考人 朝野です。

 外来における耐性菌の問題というのは、もちろん医療現場における抗菌薬の使い方もあるのですけれども、やはり今、ワンヘルスという考え方が出てきておりまして、環境や、あるいは動物も含めた耐性菌対策をしないといけないと。院内感染対策は、日本はかなりよくなってきていますけれども、まだ外来では、外来の耐性菌の率というのが日本は非常に高いと思います。それを一律に、抗菌薬の外来における使い方だけで説明できるかというと、それはまだ研究が進んでいない段階だと思いますので、やはりワンヘルスという概念もここで取り入れて、環境や、あるいは動物飼料も含めた耐性菌対策まで大きく広げていかないと、この外来における耐性菌の広がりというのは完全には抑制できないと考えております。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 ほかにいかがでございましょうか。


○荒川構成員 外来における抗菌薬の使用というのは非常に難しい、あるいは重要な課題だと思うのですね。例えば、私たちが研修を始めたころは、外来で経口セファロスポリンをかなり大量に使っていました。その影響があったかどうか分かりませんが、日本ではB型インフルエンザ菌の髄膜炎は、諸外国に比べると非常に低い値で、10万人に対して1桁というような状況が続いていましたけれども、反面、ヘモフィルスなどで、PBP(ペニシリン結合タンパク)に変異を獲得した要するにブルナール(BLNAR)というタイプのものは、やはり日本では増えてきて、そういう功罪というものがいろいろありますので、外来において抗菌薬を使うことによってどういう菌が増えて、どういう菌が減っていくのか、サーベイランスといいますか、今、院内感染のJANISのような入院患者のサーベイランスはありますけれども、外来で分離される菌の耐性度の獲得状況を把握するようなシステムも並行して構築していく必要があるのではないかという気がします。


○小林座長 ありがとうございます。

 この抗菌薬の適正使用というのは、そう簡単に結論が出る問題ではないと思いますけれども、また、この議事録を整理して、それに沿って、今後検討を続けていくことになるだろうと思います。

 ここで、抗菌薬の適正使用とは非常に関係の深いサーベイランスの問題に関して少し時間をとりたいと思いますが、まず最初に、これは事務局からお話しいただけるのでしょうか。


○森井地域医療計画課長補佐 はい、説明いたします。資料11をご覧ください。

 先ほど荒川先生からもお話にありましたJANISというサーベイランス、院内感染の耐性菌についてのサーベイランスが我が国では動いています。このJANISですが、従来は、それぞれの医療機関の全くボランタリーベースで運用してきたもので、200床以上の比較的規模の大きな病院に限定してきたわけですが、一昨年から200床以下の病院にも解禁いたしまして、小さな病院も含めて、今、JANISへの参加施設が急増しています。

 加えまして、昨年4月より、先ほど来よりお話のあります感染防止対策加算の施設要件としてJANISの検査部門に入っていることが求められるようになりましたので、従来の全くボランタリーベースという状況ではなくなりまして、加算をとりにくる施設が、このJANISに入る状況になっています。その中で、従来1,000施設程度がJANISに参加いただいていたところですが、それが1,300、さらには1,700という形で大きく数が増えているところです。

 やはり参加して初年度となる医療機関や、あるいは小さな病院、それから、もともとサーベイランスということにそれほど理解のない医療機関の参加が増えていることもあって、事務局の負担が非常に大きくなっています。雑駁に申し上げて、非常に手がかかる医療機関が非常にふえておりまして、今後、JANISのデータの質をいかにして維持していくかということが大きな課題となっております。そのことについて先生方に御意見をいただければと考えています。

 よろしくお願いします。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 今、御紹介いただいたJANISに関して、その質の問題がまずあるということ、そして、これが地域その他で比較できるように結果を公表していかなければいけないということ、さらには、国内だけではなくて、インターナショナルに比較できるような形の診断基準を含めて考えていかなければいけない、こんな問題があるかと思うのですが、どうぞ御意見をいただければと思うのですが。

 大久保先生、どうぞ。


○大久保構成員 大久保です。

 本来は、これはJANISの運営委員会で議論されるべきかもしれませんが、せっかくのこの会ですので少し意見を述べさせていただきます。


○小林座長 中央会議として、JANISの委員会にこんなことを考慮してもらいたいというような形のアプローチができると思います。


○大久保構成員 わかりました。

 まず、200床未満が参加できたことに対して、これまでの集計の仕方では、少しわかりにくくなってきますから、やはりその施設の特性別、病床数別、平均在院日数別などのいろいろな形での細かい集計をして発表して頂きたいと思います。新しく参入する小規模な病院というのは、個性のある病院が多いものですから、そういう意味で、特別な急性期病院と長期療養型病院を分けた解析が望まれると思います。

 それから、今年の1月までに、新たに600病院ぐらいが参入してきました。特に検査部門ですね。これに対して、質と言っては何ですけれども、きちっと吟味されないでデータが出てくる場合、どういうふうにそれをチェックして、改善していくかということの議論が必要です。提出されてくるデータを眺めながら、事務局あるいはその専門のグループでチェックをして、それなりにその施設へ出向いて、いかにそういうデータを収集しているかというところを見ることが非常に大事です。そういう形でのチェックが今後求められるのではないかと考えております。

 以上です。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 地域連携の中で、やはりサーベイランスをその中で評価する、そこで質を評価するということは非常に重要なことだと私も思います。今、大久保先生のお話にもありましたけれども、施設の規模によって、やはり大きな施設、大学病院みたいなところと、300床未満の中小のところでは、病院感染の質といいますか、やはり違ったものがあると思うのですね。その辺もやはり評価していかなければいけませんし、専門家がいないような中小の施設では、1年中続けてサーベイランスをやることもできない。JANISでも、たしか1月単位で報告しているのでしたね。だから、国立大学で以前、月単位か何かで比較したことがございましたね。だから、そういうとっつきやすいところからサーベイランスをやって、しかし、質はしっかりしていく、それを地域連携でチェックしていくということも大事かと思いますが、いかがでございましょうか。

 どうぞ。


○荒川構成員 JANISデータは今、全国的な集計結果が出されておりまして、まだ地域的な細かい解析のデータの還元は実際されていませんけれども、今後の予定として私が聞いているところでは、地域ごとにそういう集計をしたり、あるいは地域連携で、連携している病院の間でJANISデータを持ち寄って活用できるようなことも検討されているようですので、そういう方向で多分改善が図られるのではないかと思います。

 それから、今、新しく200床以下が参加できるようになりましたので、全体集計と、それから、200床以上と200床以下に分けてとりあえず集計をして還元していくというようなことで今、作業が進んでいると聞いています。

 それから、これまで耐性菌を判定する場合は、2007年のブレイクポイントでやっておりましたけれども、今回から2011年のブレイクポイントに切りかえて、これは、多くの病院で2011年のパネルが使えるようになりましたので、そういう形の集計がされるとか聞いています。

 あと、やはり問題はマンパワーでして、感染研で今、JANISの担当者が実質的には1.5人で、残り数人が、臨床部員の方がサポートしているような体制になっていますので、やはりそこの事務局機能をもっと強化しないと、今後、この参加施設が増えていく、あるいは質を確保するためには、やはり事務局機能の強化をもっと図らなければいけないと考えております。


○小林座長 ありがとうございます。

 一山先生。


○一山構成員 このサーベイランスのデータの質なのですけれども、JANISの事務局でそれをチェックしてというのは、かなり無理があるように思います。したがって、地域連携の最初の話に戻りますけれども、そこへ行くまでに、どこかで品質を保証するような連携のシステムを考えるほうが良いと思います。


○小林座長 どうぞ。


○緒方構成員 このJANIS以外に、私どももともと感染症法で、御存じのように、保健所に、普通のサーベイランスというか発生動向調査をいただいて、これは大石先生のところでまとめられて、サーベイランスは地域に還元されている、感染症情報センターで、都道府県や、あるいは保健所でそれをまとめているわけです。JANISについては、個別の病院に対しては多分還元があるわけだと思うのですけれども、今までお話があったように、例えば都道府県とか、あるいはもう少し小さい保健所とか、そういう地域の中でのデータというものをいただく。そういったことを、必ずしも保健所でやる必要はないと思うのですけれども、都道府県とか衛生研究所とか、あるいは保健所とか、あるいはネットワークとかいろいろなところでデータをいただいて、どういう特性があるのか、ベースラインがどうなのか、例えば、この地域はこういう多剤耐性菌が少し多いのではないかとか、そういったことを把握したり、あるいは何かが起こっているということを見つけて早く地域で対応していくためにもそういうことがあり得るのではないかと思います。

 ただ、もちろん前から言っていますように、それは自治体だけの知識でそれを評価したり分析するということは不十分だと思うので、専門家の先生の御協力をいただきながら、地域でそれを評価したり、あるいは施設上の対応をとるということが、今後1つやっていただけるといいのかなと、ちょっと個人的に考えております。

 ありがとうございます。


○小林座長 ありがとうございます。

 緒方先生、イングランドというかロンドンの例だと、セントトーマスホスピタルが中心になってMRSAのサーベイランスをやって、改善策を出して、介入して、非常にいい成績を出しているのですね。日本でもそういうしかるべき施設が中心になって、その地域の、または全国になってもいいのでしょうけれども、また、そういうそれぞれのデータを比較できるような状況にすることも、1つこれから質の改善につながっていくのではないかと思うのですが。ただ、1つの問題は、最近、個人情報云々ということで、患者情報を出しにくい状況になってきている。変なほうに進んでおりますので、私も長年続けてきたMRSAの全国調査ができなくなってしまったのは、結局、データを出してもらえなくなったということがあるのですね。その辺はどういうふうに考えていったらいいのか、働きかけていったらいいのか、いかがなものでしょうか。


○緒方構成員 ちょっと今おっしゃった点についてもう一回教えてください。例えば、欲しいデータは、アウトブレイクのときは、そこの個別のデータということになると思うのですが、地域で欲しいのは恐らく、例えばこのMRSAの検出率が全国は4割なのだけれども、この地域は7割もあるぞとか、そういう集団的なデータかと思うのですが、そういうことに関してはどうなのでしょうか。情報の取り扱いというのはいかがなのでしょうか。


○小林座長 ただ、そこだけでとめてしまうならいいのですけれども、やはり経済的な評価とか、いろいろなことを考えますと、どういう質の患者様で、どのくらいの在院日数があってというような情報が、やはり欲しいわけですね。感染を起こさなかった症例とを比較して、ケース・コントロール・スタディーみたいなことをやって、やはり評価していくというようなことをやらないと、ただ数だけを評価していても、率だけを評価していても、やはり質の改善にはつながらないと私は思うのです。そうなると、個人情報という問題でバリアーが出てきているのです。

 どうぞ。


○大石参考人 先ほど感染防止対策加算1の病院が急速に増加し、対策の質を調査することも必要だという話でしたけれども、その対策として、JANIS内部の体制を強化することも大事なのですけれども、それだけでは困難だと思われます。そのような病院のJANISへの報告を、地域の保健所や学会で支援する仕組みを作らないと、実質的な改善に結びつかないのかなという気がしますけれども、いかがでしょうか。


○小林座長 ありがとうございました。

 おっしゃるとおりだと思います。いずれきょう、JANISのインターネットで入れる診断基準を見ようと思って入っていったのですけれども、入った限りでは、CDCみたいに細かくは書かれていないような気がするのですね。どこかにそういう細かいものがあるのか。そういうものを普及して、やはり共通の土俵の上で、今おっしゃられたようなサーベイランスをいろいろなところでやることも重要ではないかと思いますが、いかがでございましょうか。

 どうぞ。


○切替構成員

 全く同じ意見なのです。JANISは非常によくなっている。200床以下の病院も参加していただいて規模も大きくなっている。JANISの質を今後維持していくことも重要です。また、地域の問題も非常に大事だと思うのです。地域の医療機関でJANISを有効に使っていくためには、倫理審査や患者情報の扱いも難しくなっている。

 例えば東北大学などは、あの地域で倫理委員会に提出して、個人情報をスタディー化して、いろいろな院内感染対策に役立つようなエビデンスをつくっておられたり、東北大学だけではなくて、いろいろなところでやっていると思います。この中にJANISを組み込んでいくようなデータを研究者側、専門家側も含めて、JANISの事務局も両方が少し歩み寄って、うまくJANISを使っていけないかというような議論をきちっとしていただければと思います。


○小林座長 どうもありがとうございます。

 はい、どうぞ。


○洪構成員 JANISのホームページは、以前に比べるとすごくわかりやすくはなって改善はされておりまして、実際に施設側からデータを提出することは大変ですけれども、このたび、感染防止対策加算で、これが位置づけられていることによって、提供しやすくなった、提出しやすくなったということがございます。

 ただ、200床未満というところで言うと、やはりそのデータの質ということで、しっかりサーベイランスに関してトレーニングされた人がいるかというと、認定看護師などについても、200床未満ですと1割程度しかいないと思われますので、そうすると、この相談機能をどうするか、地域の中で対応していくことも必要ですが、やはりJANIS自体のその体制は強化して、相談機能を充実していただきたいということはあります。

2012年の本会調査の結果で、一般病棟の常勤看護師は、平均超過勤務時間が月7時間なのですけれども、専従の感染管理認定看護師は、これが3倍で24時間になっております。それ以外に、超過勤務として届け出をしていない活動として大多数はサーベイランス活動だったのです。今後の課題として考えないといけないと思われます。

 以上です。


○小林座長 ありがとうございました。

 それから、加算がついたころは、勤務当直というのですか、ですから、感染制御以外の仕事で当直してしまって、取り消されたようなことがたしかございましたね。その後どういうふうになっていますでしょうか。


○洪構成員 それは多分厚生労働省の担当の方のほうが詳しいのだと思うのですが、地域の厚生局の対応に若干ばらつきがあると聞いております。


○森井地域医療計画課長補佐 おっしゃるとおりで、判断するのはそれぞれの厚生局が判断しますが、今、加算要件として、一応専従を求めていますので、場合によっては、他勤務の形態で当直されていることをもって、専従ではないとみなされるケースがあるかもしれません。


○小林座長 これは確かな、直接聞いた話ではございませんので議事録からは削除しておいてくださっても結構ですが、はっきりすれば別ですが。


○森井地域医療計画課長補佐 その件に関しましては、保健当局は保険局になりますので、そちらのほうに確認して、また、先生方に回答いたします。


○小林座長 ありがとうございました。

 先ほど洪先生の数字なども、また議事録のところで正確に伝えていただければと思います。

 ほかにいかがでございましょうか。


○荒川構成員 200床以下の病院の参加もふえてきましたので、JANISデータのクオリティといいますか信頼度を高めていくのが非常に重要になってきているというのは、小林先生の御指摘のとおりだと思います。

 それで、現在、例えば普通の黄色ブドウ球菌に占めるMRSAの割合が2割以下の病院、あるいは8割以上の病院というのが一部に確かにございます。そういうものを全て事務局でチェックするのは、マンパワー的にも不可能だと思いますので、これこそ地域連携で、その地域ごとにデータを共有して、自治体も含めて、あそこの病院はこんなデータを出しているけれども、本当かどうかも含めて、地域でそのあたりをきちっと調査するなり、もしそれが本当であれば、また対策をしなければいけないし、データの提出ミスであれば修正をしなければいけないし、そういう形で、地域でJANISのデータ利用と精度管理の活動をさらに強化、支援していただくことが重要かと思います。


○小林座長 非常に重要な御指摘だと思います。どうもありがとうございます。

 どうぞ。


○田辺参考人 田辺です。

JANISの還元のことで少し思っていることを述べさせていただきたいと思います。まず、JANISの一義的な意味としては、ナショナルデータとして、やはり国際的な比較ができるというのが1つ大きいと思っております。もう一つは、JANISデータがどのように還元されるかといいますと、今までですと200床以上の病院という1つの集団の中での位置づけということでした。今後は、200床未満はまた違ったグループとなっておりますので、結局そのグループにどういうメンバーが入ってくるかによって、自分たちの偏差値といいますか、それが変わってくるので、特に200床未満のグループというのは、今後また参加施設がどんどん増えてくれば安定したデータになるかと思います。

 これを日本のデータとして使うのはそれでいいと思うのですけれども、感染対策上どう使うかとなりますと、その結果を見られるのは、先ほどもありましたけれども、多分事務局は、見ることはできても、全ての医療機関の、ここはアウトブレイクですよねというようなチェックをするような体制はできていないと思いますし、多分そういったサーベイランスではないと思いますので、感染対策の担当者が、全国平均の中で、自分たちの病院がどういったところに位置づけられているのかということを把握して、それを感染対策に生かすということが重要かなと思っています。ただ、これがほかの病院のデータが見られるかというと、それはまたなかなか難しい問題があろうかと思いますので、JANISのデータを地域の病院も見られるような仕組みにするのか、また別個、JANISと同じようなフォーマットでデータを収集していくのかというのは、今後考えていかないといけないかと思います。


○小林座長 ありがとうございました。

 調先生、どうぞ。

 その前に、何人かの方がおっしゃったように、地域連携の今回の加算によってできた非常に緊密な関係を持っているネットワークを活用して、今、御指摘いただいたようなことをやって、それが競争していくような形で水準を上げていくことも重要ではないかと思いますので、御検討をいただければと思います。

 調先生、どうもお待たせしました。


○調構成員 ちょっと確認しておきたいのですけれども、地域におけるJANISデータの活用あるいはその精度の確認ということについて、これは、国全体のデータは厚生労働省、感染研が見られるようになっていると思いますが、例えば自治体、それから地域連携の核となっている事務局などで、恐らく見ることができないと思うのですね。それで、先ほど、持ち寄りということが言われたと思うのですけれども、結局ボランタリーに医療機関にデータを提出していただいて、地域で共有するということしか方策はないのでしょうか。


○森井地域医療計画課長補佐 ナショナルデータに関しては、公開情報として年報及び季報という形で出ていますので、全体の主な耐性菌の耐性率であるとか検出頻度等、見られるようにはなっています。ただ、先ほど来より議論になっていますように、地域ごとに分かれたもの、あるいは先ほど田辺先生からも御指摘ありましたように、病院背景に層別化したようなデータというのは、今のところできてはいませんが、今後の課題と考えています。


○小林座長 ですから、いろいろな形があって僕はいいのではないかと思うのですが、加算による地域連携であっても、また、東北大学みたいに、東北大学が中心になってそういうサーベイランスをやるとか、いろいろな形の中で、お互いに切磋琢磨して質のいいデータをとっていく。それに大きな差があったりしたら、それはやはりおかしいということになるのでしょうから。または、何かアウトブレイクがあって、原因でそういうことが起こっているということになるのだろうと思いますので、いろいろな形で質を高めていくということが大事かと思います。


○荒川構成員 JANISに提出されたデータを中央で集計して、それをまた、参加施設以外のところにほかの病院のデータを返すことは、現実的にはできません。ただ、皆さんが、各病院がJANISに提出したデータを持ち寄って、きちんと秘密保持ができるグループで持ち寄って、お互いにそれを共有することは可能だと思うのですね。

 ですから、せっかくJANISの入力したデータは、あるいは還元データとして返ってきますので、48時間以内には集計したデータが返ってきますから、それを持ち寄って地域ごとに活用していただくことは、今の体制でも可能だと思います。


○小林座長 おっしゃるとおりだと思います。JANISが、その地域のデータを出すという、そこの手間などは絶対ないと思いますので、別途データを集めるのでも、JANISのほうに出したデータを持ち寄るのでも、その地域として、グループとして考えていくということが一つの方法ではないかと思います。おっしゃるとおりだと思います。

 どうぞ。


○緒方構成員 今おっしゃったやり方はいい方法だと思うのですけれども、少しプログラムを変えて、例えば茨城県はこうですというようなデータを、それはプログラムを開発すればできるのでしょうか。技術的にですね。


○森井地域医療計画課長補佐 技術的に可能だと思います。そのための予算がとれるかとか、そういう話もありますけれども、技術的には可能だと思います。


○小林座長 それで、さっき申し上げたのですが、診断基準をよりオープンに、明確にすることによって、それをそのまま使って比較すれば今おっしゃったことができるのではないかと私は思うのですが。


○森井地域医療計画課長補佐 あとは、1つ懸念されることとしては、JANISは今、全病院の大体、従来は8分の1ぐらい、これからその倍ぐらいになって4分の1ぐらいになろうとしていますけれども、JANISに入ろうとする病院というのは、何らかのインセンティブがあって入っているので、そういった医療機関が持っている特性というか属性があって、それが何らかのバイアスになる可能性はあるかと思っています。

 そういった中で、JANISのデータをどう読むかという話にも恐らくなりますが、JANISのデータの代表性というものに関しては、少し考えないといけないかと考えています。


○小林座長 ありがとうございました。

 特に、この問題もまだ議論は尽きないとは思いますけれども、その他のことで何かございましたら。または、きょうの全体を通して、これだけは発言しておきたいというようなことがございましたら、どうぞ。

 事務局のほうでは、特別追加はございますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。


○森井地域医療計画課長補佐 ありません。


○小林座長 どうぞ。


○切替構成員 地域連携についてのところで発言すべきことだったと思うのですが、切替です。

 今回のお話の中で、病院協会とか医師会という言葉が出てこなかったので、ところが、自治体側と例えば国が地域連携でお金を出した場合に、窓口になっているところは病院協会だったり医師会だったりする県が、例えば、具体的には滋賀県とか、それから青森県は医師会が窓口になっているとか。ですから、保健所と一緒に、そういう団体も積極的に参加できるようなシステムが必要かなとちょっと思いました。


○小林座長 ありがとうございました。

 ほかにいかがでございましょうか。


○大石参考人 感染研の大石ですけれども、きょうの議論を聞きまして、日本が耐性菌対策ということに非常に先進的な位置にいるのだということがわかりました。高いレベルでの議論がされていると思います。一方ではWHOが懸念している多剤耐性菌の問題には、途上国を中心とした院内感染の蔓延状態が背景にあります。昨年、WHOの事務局長補のケイジ・フクダが来日され、耐性菌の講演をされたときに、彼と議論する機会がありました。私はこの耐性菌問題では、抗菌薬の適正使用ということが、すごく大事だと強調しました。しかし、その辺が世界的にはまだ十分に認識されていないと思うのですね。

 この中央会議からも、日本のレベルの高いアンチマイクロビアル・スチュワードシップを近隣のアジア地域に輸出して、より良い感染対策の体制をつくってもらえればありがたいと思います。


○小林座長 それに関しまして、アジア地区では、アジア・パシフィック・ソサエティー・オブ・インフェクション・コントロールというものがございまして、ことしは3月に台北で開かれますが、これが、どちらかというとアジアの途上国を対象にして、いろいろな教育的なニュアンスを持った学会になっておりますし、それからまた、日本、韓国、中国の3カ国でイーストアジアンカンファランスというのを毎年開催しておりまして、来年は九州で開催することになっておりますが、アジア地区に関しては、そんなものを通していろいろな問題を検討し、特に中国、韓国とはかなり緊密な連絡がとれるようになってきて、中国なども相当レベルが高くなった。まだ格差はございますけれども、非常に進んできていると思います。これがアジアの現状でございます。

 ほかに何かございますでしょうか。どうぞ。


○木村構成員 木村です。

 さきに議論があったところですけれども、保健所等が中心となって、その地域の連携を図るというのを2例提示してもらって、非常にうまくいっていると思うのですね。ですから、この会議として、各地域で保健所がハブとなって感染対策を推進するというようなことを提言したらいいのではないかと思うのが1つと、それから、加算1の施設が、地域連携加算をとっている。文書を読むと、地域連携とは言いながら、その一定の地域を特に特定していなくて、問い合わせたことがあるのですけれども、かなり離れたところとの連携でもいいという返事をいただいていて、名前は地域連携なのだけれども、どうも地域というのがはっきりしていません。その地域連携のあり方をもうちょっと明確にしていったらいいのかなという2点、追加させてください。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 2点とも非常に重要なことだと思うのですが、保健所に関しましては、緒方先生が全国的に働きかけて、啓発をされておられますので、そのことを含めてちょっと。


○緒方構成員 今そういう励ましの言葉もいただきましたけれども、現実には、保健所に相談したけれども、適切な対応ができなかったとか、あるいはネットワークに無関心な保健所もあり、先ほど3割ぐらいしかまだかかわっていないと言いましたけれども、非常に不十分だと、全国的にはまだそういうものがあると思います。

 ですから、保健所は多様なネットワークのバリエーションの一つであると思っておりますが、そうであっても、これをさらに進めるとなれば、1つは、先ほど申し上げたように、専門家の先生との連携、御指導、それから、あと保健所の職員の教育をもう少し進めなくてはいけないと思います。

 それから、やはり国から少しはっぱをかけていただくとか、少し自分たちの職務を自覚していただくことをやらないと、今のままではまだまだ不十分なので、そういう意味での御指導もお願いしたいと思います。

 ありがとうございます。


○小林座長 どうもありがとうございます。

 去年から緒方先生にも加わっていただいて、しかも保健所の役割とか、いい例も随分紹介がございましたし、今後、やはり今、緒方先生が御指摘になったような意味での保健所の有効活用、活用と言ったら怒られてしまうかもしれませんが、連携をよくとって、日本の水準向上にともに頑張っていくということも1つ、この会として重要な課題として続けていくことになるだろうと思います。

 最初に申し上げましたように、きょうはちょっと長い会でしたので、余り時間を残せませんでしたけれども、特別何かございませんでしたか。


○荒川構成員 今の保健所の充実機能のことは非常に重要だと思います。保健所は、既に医療法とか感染症法にもきちっと書き込まれた組織で、そこでどういうことをしていただくかということを見据えた上で、その保健所活動の業務の内容を、感染制御あるいは地域の感染対策、耐性菌対策にもっとコミットしていただけるような形の提言をしていただくのが必要かと思います。

 それから、もう一つは、やはり地方衛生研究所は、残念ながらそういうメジャーな法律に盛り込まれていないということがありまして、地方衛生研究所の方々の御意見を聞くと、もう少しその役割を法令等できちっと位置づけてほしいというような意見もありますので、地方衛生研究所の機能強化を図ったような形での何か提案ができるとよろしいかという気がします。


○小林座長 倉田先生は今、お立場は違いますけれども、衛研の話が今出ましたので。


○倉田構成員 これはまさに、何かあると衛研を使うくせに、衛研を位置づけていないのです。これは、厚生労働省は衛研に対して非常に失礼だと思うのですね。地域何とかと書いてあるけれども、地方衛生研究所にその役割があるということを一言も書いていないですね。これはもう何十年前からの大失策だと思うのですよ。

 私も事あるごとに言いましたが、それが法律にないというのはちょっと考えられないことをいう。しかし、何か起きると、全部、地方衛生研究所が対応しますね。それに対してもう少し、感謝は要りませんから、きちっと位置づけて、法律で対応していくことが、これも最大最低のことだと思うのですが、今までのところなされていませんね。そのくせ、地域何とかというものがありますけれども、私も厚生労働省の人間だったので、厚生労働省に物を言っては悪いのですが、現役のときに幾ら言っても直らなかったから、ぜひこれは、保健所と同じように組織として位置づける、それをやらずして、例えば、はっきり言いますと、インフルエンザのときは、夜中まで遺伝子検査しろ何しろとずっとやっていましたけれども、私のときでもありましたから。それに関して何一つ位置づけをしないというのはやはり違うのではないかと。

 審議官の意見を聞きたいのですが、いかがでしょうか。


○朝野?参考人 私がこれまでの、かつて地域保健健康増進課にいたとき、あるいは感染症課長をしたときも、地方衛生研究所の皆さんには非常にお世話になりました。今の立場でももちろんお世話になっているわけです。ただ、一方で、地方分権の中で、行政機関、必置にしていくということについては非常に難しいという流れがございます。

 地方衛生研究所の重要性については、もちろん論を待たないわけでありますけれども、その一方での国全体での行政の中で、行政といいますか、そういう地方分権の中でもそういう議論になっているということもまた御理解いただきたいと思います。

 もちろん私ども通知等の中で、地方衛生研究所をきちんと位置づけてしていくということは、今後もやっていきたいと思いますし、その重要性については、私も十分認識を持っておりますので、そういう中で、どういう形で位置づけられるか、また考えさせていただきたいと思います。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 ちょっと時間の前ではありますが、はい。


○調構成員 地方衛生研究所全国協議会の副会長として一言補足説明させていただきますけれども、地方衛生研究所そのものを法制化することはなかなかできなかったのですけれども、昨年成立しました感染症法の改正によって、都道府県に感染症の検査を義務づけるという法改正がなされました。これは、地方衛生研究所の検査機能そのものを法律に盛り込んだと私は理解しておりますし、また、厚生労働省の意図もそういうところにあったと思います。

 ただし、これは感染症法の中での改正ですので、医療法に基づいて、もし院内感染薬剤耐性菌の検査を行うとすれば、その部分は少し弱いところがあると思います。発生動向調査事業というものは、感染症法に基づいて行われているわけですけれども、これに関しましては、先ほど申しましたように、CREMDRAが新たにその対象疾患として位置づけるという改正がなされましたので、サーベイランスという意味では検査が可能になっているという状況にあると思います。ただし、院内感染につきましては、やはり医政局の後押しといいますか、そういうところが予算的にも人的にも地方衛生研究所に与えられるということは、今後お願いしたいと思います。

 どうもありがとうございました。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 先ほど大石先生からお褒めをいただきましたが、非常にレベルの高いホットな議論を長時間にわたってどうもありがとうございました。また、これは事務局、大変でしょうが、まとめていただいて、提言等をしていくことになると思いますので、その間、また先生方のいろいろお力をおかりしまして、より有効な感染制御策を日本につくり上げていく、そして、アジアだけではなく、欧米の範となるようなシステムを構築していくべく、皆様方のお力添えをお願いしたいと思います。事務局は大変だと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 事務局から特に何かございましたら。


○森井地域医療計画課長補佐 特にはございません。


○小林座長 それでは、以上をもちまして第12回の「院内感染対策中央会議」をお開きにしたいと思います。長時間にわたってどうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

医政局地域医療計画課救急・周産期医療等対策室

直通電話: 03-3595-2194

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