ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 国際課が実施する検討会等> 国際的なActive Aging(活動的な高齢化)における日本の貢献に関する検討会> 第2回 国際的なActive Aging(活動的な高齢化)における日本の貢献に関する検討会 議事録(2013年7月19日)




2013年7月19日 第2回 国際的なActive Aging(活動的な高齢化)における日本の貢献に関する検討会 議事録

○日時

平成25年7月19日(金)16:00~18:00


○場所

厚生労働省省議室(9階)
東京都千代田区霞が関1丁目2番2号


○議題

(1)高齢者保健・福祉分野における国際協力のあり方について
(2)国内、海外調査について
(3)その他

○議事

○杉田専門官 定刻になりましたので、ただいまから「第2回国際的なActive Agingにおける日本の貢献に関する検討会」を開催いたします。

 本日は、お忙しい中お集まりいただきまして誠にありがとうございます。

 まず、開会に当たりまして、厚生労働省国際課課長の堀江裕より御挨拶を申し上げます。

○堀江課長 堀江でございます。前回に引き続きまして、この会議に御出席いただきましてありがとうございます。

 前回、課長の代理で挨拶したんですが、7月2日に国際課長になりまして、この会議の主催をさせていただく立場になりました。

 本日は、私の後任で林さんが統括調整官として着任しております。

○林統括調整官 よろしくお願いします。

○堀江課長 それから、老健局のほうでも吉田さんが企画官として着任しています。

○老健局吉田企画官 よろしくお願いします。

○堀江課長 前回は、特にアジア・ASEANの高齢化の状況などの情報を整理して、この検討会の進め方について議論をしていただいたわけでございますけれども、本日は日本はどんなことができるのだろうかということが大きなテーマになっていまして、きょうはタイからDr.Chanvit、マレーシアからMs.Ruhainiにそれぞれ保健を担当する省、それから福祉を担当する省から来ていただいております。

 きょうはそういうことですのでお2人に御説明いただいて、日本とどうして一緒にプロジェクトをしたのか、あるいはマレーシアのほうは今、日本にJICAのプロジェクトのリクエストを出していただいているんですけれども、どうして日本とプロジェクトをしようと思っているか。あるいは、高齢化の背景なども含めましてお話いただくようにして、そういうものを通じながら日本としてどういうことがこれからできるのかということを議論できたらと思います。

 各構成員の先生方にお願いしたいのは、前回は相当議論いただいたわけでございますけれども、少しゆっくり目にお話いただくと、きょうは日本語でしゃべったものは同時通訳で聞いていただけるようになっておりますので、せっかく遠いところから来ていただいているので、Chanvit事務次官補、Ruhaini課長さんが議論にうまくジョインしていただけたらありがたいと思っているところでございまして、御協力をお願いできたらと思っています。

 また、構成員のほうはどんどん手を挙げてお話いただけると思いますけれども、せっかくですので遠くから来られた方に適当に発言をお願いできたらと思っているところでございます。

 今回会議をやりまして、これからこの検討会では、日本で今行われているサービスの関係、構成員の方々には国内の調査に少し出かけていただく。また、8月からは、今年選定していますのはタイ、インドネシア、ベトナムのほうでございますけれども、そんなにたくさんはできないと思いますが、そちらのほうの調査をしていただくように考えておりまして、私ども事務局側も一所懸命準備をしたいと思いますので、御参加のほどよろしくお願いしたいと思います。

 きょうは、暑い中、多くの方に来ていただきましてありがとうございます。

○杉田専門官 続きまして出席状況ですが、本日は全構成員の皆様に御出席いただいております。

 また、本日は参考人として堀江からも紹介がありましたが、タイ王国保健省よりDr.Chanvit事務次官補、そしてマレーシアの女性・家族・地域開発省社会福祉局高齢者・家族課よりMs.Ruhaini課長にいらしていただいております。

 次に、お手元の資料の確認をお願いします。

 一番上に議事次第がありまして、その次に座席表、資料1が両面1枚の資料です。

 資料2は、14ページまでの資料です。

 資料3は、7枚の資料になっております。

 資料4は、18ページまでの資料です。

 資料4-2は、41ページまでの資料となっております。

 資料5は、両面1枚になっています。

 参考資料1は両面1枚ですが、ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合の概要になっています。今年度のテーマは、アクティブ・エイジングです。

 参考資料2は、構成員の先生の机だけに配付をさせていただいていますが、平成24年7月にJICAのほうで取りまとめられました報告書を御提供いただいています。海外調査の事前の基礎資料として御確認いただければと思っております。

 その他、向かって左側にピンクのファイルがありますが、こちらは前回資料がとじてあります。

 その下に、記事が2つあります。こちらは、前回の検討会に関する記事を参考までに配付をさせていただいております。以上です。

資料に不足がある場合は、事務局までお知らせください。大丈夫でしょうか。

 写真撮影はここまでとさせていただきます。

 それでは以降の進行は座長にお願いいたします。

○尾身座長 それでは本日も活発な議論を皆様よろしくお願いします。

 先ほども事務局から紹介がありましたけれども、本日はタイの保健省よりDr.Chanvit事務次官補、それからマレーシアからMs.Ruhaini binti Zawawi高齢者・家族課長に出席をしていただきました。どうもありがとうございます。我々の検討会を代表して、心からお礼を申し上げます。

 本日の議題は、2つございます。まず1番目に「高齢者保健・福祉分野における国際協力のあり方について」、最初に議論をいたします。その次に、「国内・海外調査について」を議論していきたいと思います。

 本日の進め方は、まず事務局からの資料の説明の後、タイ、マレーシアのお二方からのヒアリング、その後に国際協力のあり方についての議論、最後に国内・海外調査の内容について検討というふうに進めていきたいと思います。

 それでは、最初に事務局より資料の説明をお願いいたします。

○山内国際協力室長 それでは、事務局からの資料の説明をさせていただきます。

 お手元の資料1をご覧いただければと思います。資料1が、「前回の検討会で出された主なご意見」というふうにタイトルがついてございます。この資料は「主なご意見」とありますが、この資料の中では主に前回の議論の中身を抽出したキーワードという形で書かせていただいております。前回の具体的な発言等は、現在議事録等でも御確認をいただいているところだと思うのですが、特にその中で幾つか我々のほうでも宿題といいますか、調べている事項というものが出てまいりました。それが、この資料の中で下線を引っ張っている部分でございまして、これにつきまして資料2を使いながら説明をさせていただければと思います。

 資料2でございます。1枚めくっていただきますと、最初の図が前回お示しさせていただきました図で、日本から並んで、いわゆる東、東南アジアの国々の中でのいわゆるエイジングの振興について、これを使って説明をさせていただいたものでございます。

 その中で、次の3ページの図でございます。これは日本のデータですが、2010年に合わせて年齢の5歳区分の階級別、かなり細かいデータとなっておりますが、例えば前回では80歳以上で要介護認定が3割ぐらいあるというような話も出てまいったところでございますが、その中でも例えば医療費や公的扶助、あるいは介護における要介護度等々を見てまいりますと、それぞれの年齢区分の中でもこれぐらいの人数、あるいはシェアの違いが出てくるということを細かく示しているものでございます。

 続きまして、4ページ目を見ていただきます。先ほどが日本のデータでございましたが、アジアの国々を見てまいりまして、それぞれの60歳以上の人口の年齢区分というものを棒グラフで示しますとこのようなシェアになっているということがわかるわけでございまして、それをその前の日本の図に当てはめてみますと、どの程度の方々が例えば介護が必要なのか、ある程度、日本の状況に当てはまるとそのような試算をすることも可能なのかなと、日本の状況を参考にということになりますが、そういうことがわかってくる。特にこのような高齢者のデータ、こういう整理の重要性というものが前回指摘されてきたというところでございます。

 次の5ページ目でございますが、これは先ほどの図を60歳以上の人口を100%として同じように棒グラフで示したものでございまして、5歳階級別のパーセンテージが見られるものです。

 これをもう一枚めくっていただきますと6ページ目でございまして、アジア地域各国のいわゆる高齢者というものがどういう概念であり、またそれに合わせて制度的な面として定年であったり、あるいは年金を受給できるような年齢であったり、そういうようなものを調べて記載している図でございます。大体5560歳ぐらいに収まるのですが、その中で韓国、シンガポール等は6562と若干高めという図でございます。

 その次の図を見ていただきますと、7ページでございます。このように似通ったように見える面もある一方で、社会、地域、宗教の特性に十分注目して、それは国々によってかなり違うんだという御指摘があったところでございます。これは、アジアの国々においてそのような宗教、社会、経済、あるいは政治についてどのような特性があるのかということをまとめたグラフでございますが、その中でもやはりこのような文化、宗教については主観的な記述の重要性も前回の委員会で指摘されたところでございます。

JICAの御好意で、本日参考資料として各国の社会保障の要訳版というものをつけさせていただいてございます。それを参考していただければ、それぞれの国の社会保障の成り立ちについてもう少し詳しく記述がございますので、構成員の皆様にはそれをぜひ参考にしていただければよろしいかとも考えてございます。

 続きまして、その次で8ページ目でございます。これは、前回の検討会におきましても示させていただきましたWHOのアクティブ・エイジングのフレームワークの中でのHealthParticipationSecurityについて、日本の政策事例についてまとめたグラフでございます。

 これにつきまして、その次の9ページでございますが、日本の行政体系にある程度合わせるような形で保健・医療・介護、それと所得保障、社会参加という部分に2つに分けまして、それぞれのテーマといいますか、法律、制度、システム構築、人材開発、研究開発、普及啓発、さらには行政能力の向上というようなものに区分けして、かなりビジーな図になっておりますが、このように整理をさせていただいた図でございます。

 これをなぜやるかといいますと、その次の図を見ていただきますと10ページ目でございます。Historical Developmentといいますが、今、区分けさせていただきましたそれぞれの図において、施策のいわゆるクロノジカルな流れというものがここで整理されておりまして、その具体的な内容と、当時における実績及びその時々の課題を示させていただきました。これを見て、それぞれの当時のどのような状況での議論が変遷し、どのような課題があったかというものを整理していくという御指摘をいただきまして、このような整理をさせていただいたところでございます。

 次の11ページ目が、先ほどのもう一つ、「所得保障と社会参加」について、その流れをなるべくわかりやすく示させていただいたものでございます。このようなものを示していくことで議論をして、それを海外でも示すことによってまた議論をして、海外の進んでいる取り組みについても学ぶ。そういう姿勢の重要性も前回議論されたところでございます。

 次のページからはガラッと変わりまして、国際協力をどのように行っていくかに当たって、そのターゲットとなる国々について整理をさせていただいた図でございまして、インカムといわゆる高齢化の速度において整理をさせていただいたものでございます。

 その次の13ページでございますが、今回のこの検討会、国際協力のあり方ということがございまして、いわゆる国際協力の手法というものを一般的に申し上げますと、このような協力手法というものが我々の中でも現在行われていたりするものでございまして、このような政策対話、プロジェクト、研修なり、民間であればもうちょっといろいろな方法がそれ以外にもあるし、または似たようなものも当然行われている場合もあるでしょうし、こういうようなものを組み合わせて海外の協力を行ってきているものでございます。

 最後の14ページ目が、前回の検討会でもちょっとだけ紹介させていただきましたが、タイで行われていた高齢化対策における協力の手法、これにつきまして先ほどのマトリックスをもとに何を行ったかということを整理させていただいたものでございます。

 このような手法とテーマについてイメージしながら、あるいは本日タイとマレーシアの代表の方々が来てお話をしていただくことになっておりますので、頭に少しでも入れていただきながら聞いていただいて、国際協力のあり方というものについて本日は御議論をいただければと思います。

 説明を終わらせていただきます。ありがとうございます。

○堀江課長 少し補足させてください。

 本日の資料の中で10ページとか11ページ、その辺を見ていただくというよりも、日本語だけしか準備ができなかったので、夏に海外調査に行くようなときまでには英語のほうも準備をして、日本の状況はこうなっているのですよというようなものがお伝えできるような武器、資料にしたいと思っております。

 それから12ページのところで前回も使った資料ですけれども、何となく黒く囲んでいるあたりが中心ですね。High Income Countryというのはちょっと別じゃないでしょうかというのと、右のほうのフィリピン、ラオス、カンボジア、この辺はまだ2025年になっても若いじゃないですかというような話をしたわけですが、きょうの資料を見ていくとフィリピンで言えば、きょう見ている範囲でいけば定年は65歳です。

 ところで、男性の平均寿命は64.5歳です。それから、カンボジアも定年は60歳でございますけれども、男性の平均寿命は60.2歳というようなことで、いわばほぼ生涯現役に近いみたいなところがあって、典型的な日本が直面するような高齢者対策とは少し違うというような面でいくと、やはりこの12ページのような整理で、ラオスはもう少し平均寿命が高いのですが、その面で見ても大体焦点はこの囲んだ辺りが中心ではないでしょうか。

 そういう国の2か国の代表の方に本日はお越しいただいていると、こういう状況でございます。以上です。

○尾身座長 どうもありがとうございました。

 今の事務局からの説明の資料1と資料2について、議論は後でやりますので、今の事実関係のようなものでコメント、御質問がございましたらお願いします。よろしいですか。

 それでは、今日の言ってみればメインイベントとも言えます、海外からのお2人の方に発表をお願いして、その後に議論をしていきたいと思います。

 まず、初めに、タイからのDr.Chanvit事務次官補に話題提供をお願いいたします。通訳込みで、約30分でお願いいたします。

 それでは、Dr.Chanvit事務次官補よろしくお願いします。

Dr.Chanvit (資料をもとに説明)

○尾身座長 Dr.Chanvit、どうもありがとうございました。

 それでは、引き続いてマレーシアのRuhainiさんにやはり30分のプレゼンテーションをお願いいたします。

Ms.Ruhaini (資料をもとに説明)

○尾身座長 Ruhainiさん、どうもありがとうございました。

 さて、Chanvit先生とRuhainiさんのプレゼンテーションが終わりましたので、これから意見交換を行いたいと思いますけれども、意見交換に先立ちまして事実関係などについてまず御質問、確認があればどうぞ。プレゼンテーションの内容、事実関係などについてありますか。どうぞ。

○堀田構成員 貴重なプレゼンテーションありがとうございました。幾つか質問がありまして、一部はタイの方、マレーシアの方、共通の質問です。一部は、タイの方への質問です。最初の2点は、お2人に共通の質問です。

 1つ目は両方の国ですが、地域で行われるプライマリーケアと、それから専門分化、あるいは、入所・入院型のセカンダリーケアを考えるときに、そもそも現状としてそれが分化した状況にあるのか。さらに、今後の方向性として急務と考えていらっしゃるのは、プライマリーケアの強化ということなのか、セカンダリーケアの整備・充実ということなのかというのが1点目です。

 それから2点目ですけれども、現在、実際に高齢者あるいは虚弱な方々をケアしている専門職がいらっしゃるとすると、それは現状のところ看護師の方々が中心なのか、ほかに虚弱者に対するケアに関連する専門職がいらっしゃるのかということです。以上は、両方にお答えいただければと思います。

 最後はタイの方に、これは私の不勉強でお聞きしたいのですが、きょう2つのプロジェクト、CTOPLTOPというものを御紹介いただきましたが、これのそれぞれの財源はどういったものでしょうかということです。

 もう一つタイの方ですけれども、プレゼンテーションの中でボランティアや家族による地域を基盤とするケアというものをお話いただいたと思います。専門職についてはギャップが問題になっているとおっしゃいましたが、家族あるいはボランティアによるサポートの提供ということは現状、特に問題になっていなくて十分に提供されているという認識でいらっしゃるかどうかということを教えていただきたいと思います。以上です。

○尾身座長 よろしいですか。共通の質問が2つと、あとはタイのほうに1つ、さらに家族、ボランティアのほうにはギャップはないのかという質問ですけれども、レディーファーストでRuhainiさんから答えていただきましょう。

Ms.Ruhaini 御質問ありがとうございました。

 まず、1つ目のプライマリーケアとセカンダリーケアについてですけれども、こちらにつきましては制度的にまたはアプローチとして分けております。

 大きな理由としましては、管轄する官庁が違うということになります。まず、プライマリーケアに関しましては保健省が担当しております。セカンダリーケアに関しましては、女性・家族・地域開発省の担当になっておりますので、そういった意味で将来的にはこのサービスを統合していくということを考えたいと思っているのですけれども、実際に今の制度、または実践という意味ではまだ分かれた別々のくくりになっているということです。

 ただ、この統合に向けた委員会というものを2011年に発足しておりますので、今後の流れとしては統合したいというところをお含みください。

 2つ目の御質問ですけれども、現在マレーシアにおきまして高齢者の介護ということは、先ほどと同じように管轄が活動によって分かれる部分がございます。まず、保健省の管轄になるのが脆弱者、または高齢者に対するいわゆる福祉的な意味でのケアというところです。また、個別の自宅への訪問であったり、服薬の補助であったり、そういった訪問してのケアというのは福祉局の管轄になっておりますので、ソーシャルワーカーその他の行うサービスというのはそちらの管轄になっています。

Dr.Chanvit まず、最初の御質問のプライマリーケアとセカンダリーケアですけれども、タイでは特に分けてはございません。分かれた制度ではないです。

 ただ、これについても現状よりも統合が必要であるという認識ではおります。

 ただ、このセカンダリーケア、プライマリーケアということが、目的、オブジェクティブではなくツールであるという視点に立っております。そして、オブジェクティブ、目標というのは何かといいますと、このプライマリー、セカンダリーを問わず、生活の質をきちんと担保すること、QOLを提供することだと考えます。そして、家族の負荷を減らすということです。そうすることのために、例えば専門家、プロフェッショナルの介護のための訪問ということが活動として発生してまいります。

 また、加えまして病院または医療施設において、このケアの現場におきまして健康に関するリテラシー、認知度、認識、知識というものを高めるということも必要だと考えております。そういった意味で、統合が必要であると考えます。

 そしてプロフェッショナル、専門職としての視点というのは、もっと長期的なケアのところで必要になってまいります。これは、いわゆる医療、治療という意味のものではなく、介護を焦点としております。そういった意味では、タイではまだ介護の専門家というのは育っておりません。ですから、多くの脆弱な衰弱してしまった老人が病院にいる状態です。これは、医療または疾患という意味で治療をするものがなくても病院にいる状態です。療養ということですので、非常に費用がかかります。

 これが、CTOPのプログラムでも課題になってまいりました。CTOPでわかったことの1つは、この問題に関して制度的なアプローチが必要であるということです。以前は、さまざまな取り組みを行ってまいりました。ただ、方向性は定まっていなかったというのが事実です。

 ただ、そのCTOPのプロジェクトの後、核となるコアのオブジェクティブというものを設定して、それに向けて進めていくことができるようになった次第です。そういった意味で、ターゲットグループ、つまりこのターゲットとなる高齢者に対して、よりよいサービスが提供できるようになりました。

 とはいうものの、この脆弱な高齢者に対するギャップというのはまだ存在しております。これは長期的な介護であるので、それゆえにギャップであると考えます。これは医療、治療という意味でのギャップではありません。なので、我々は次のプロジェクトが必要だったということでLTOPのプロジェクトが発足する次第です。これを通して、新しいモデルの構築をしていきたいとまさに望んでおります。

 それから、ケアのリソースとなるボランティアや家族の支援ということですが、こうした家族やボランティアの力では専門的な介護のケアというところは手が届きません。

 最終的に、2つのシナリオに至ってしまいます。1つ目は、高齢者を病院に送る。そこで非常に多くの費用が発生します。2つ目は全くノーサービス、介護なしということです。以上です。

○尾身座長 どうもありがとうございました。

 あとは、きょうの議論は主に国際協力はどういうふうにするかを議論したいと思いますけれども、そういう観点から議論、何か御意見ございますか。どうぞ。

○江口構成員 それでは、まずChanvitさんに2つお聞きしたいと思います。それから、Ruhainiさんにもお聞きしたいと思います。

 まずChanvitさん、CTOPでは大変お世話になりありがとうございました。4年間のCTOPの後にLTOPに進むわけですが、日本との4年間のコーポレーションといいますか、日本からのサポートの中で何が一番タイにとって重要というか、効率的だったのか。CTOPで何が一番日本との協働の中で得られたものなのかということを教えていただきたいというのが1点目です。

 それから、ちょっと話は飛びますが、Chanvitさんの資料の中で、実はミグレーションの話が出てきているんです。Operetion Movement into Thailandの中でミグレーションの話が出てきています。これは国際協力と関係するかどうか微妙ですが、タイのミグレーションに対する政策、ミグワーカーに対する政策というのがどうなっているのか。

 つまり、例えば介護とか、そのためにどんどん積極的に入れるのか、むしろ抑制するのか、それとも特にそういった政策がないのか、その辺がわかれば教えていただきたいとうのが2点目です。

 それから、2番目にRuhainiさんですけれども、マレーシアは半分以上がイスラム教徒というふうにお聞きしています。その際に、家族介護というのを考えるとき、イスラム教の方の場合は家族に対する考え方として何かスペシャルなものがあるのかどうか。例えば、介護は必ず家族でしなければいけないとか、そういった宗教的な特性があるのかどうか。そして、もしあるとして、それが施策の上でどういうふうに配慮されているのか、それともいないのかということを教えていただきたいというのが1点目です。

 それから、同じく資料の33ページで、NGOとか、プライベートセクターという言葉が出てくるのですが、実際にそのプライベートセクターというのは何を意味しているのか。例えば、日本では在宅サービスも株式会社がやっているのですが、そういったものはそもそもあるのか。プライベートセクターというのは、具体的にどういう組織をここで意味されているのかがわかれば教えていただきたいと思います。以上です。

○尾身座長 それでは、タイのほうの質問からお願いします。Chanvitさん。

Dr.Chanvit 重要な御質問ありがとうございました。

JICAからこの期間中にいただいた最も重要な点というのは幾つかありますが、そのうちの一つがJICAの専門家の経験を共有していただいたということだと思います。先ほども申しましたけれども、私たちのほうでもいろいろな活動を行っております。でも、方向性が定まっていなかったという問題があります。

 しかしながら、この期間中にJICAの方々と共にモデルを構築する過程の中で、どのような質の水準を維持しなければいけないか、達成しなければならないかというクオリティースタンダードを学ぶことができました。

 このプロジェクトの例を、幾つか申し上げたいと思います。タイのモデルです。コンカン州でのモデルプロジェクトです。いろいろな調査の対象に、100名の高齢者を選びました。そして、全ての方々が白内障に罹患していました。そして、タイの眼科医はそのうちの10名は手術が必要であると言いました。手術をしないと失明してしまうという診断でした。

 しかし、日本人の専門家、眼科医は全ての人、100人が手術をしなければならないとおっしゃったのです。そうでなければ生活の質、QOLを改善することができないとおっしゃいました。

 なぜかというと、情報の70%は目を通して得ます。しかし、視野がぼやけていると事故に遭うということになってしまいます。

 これは、考え方の違いを如実に示したものであると言えると思います。そして、やはり何よりもQOLに注力をするということ、これが第1点目に私たちが学んだことです。

 そして、2点目は活動あるいは仕事の仕方です。プレゼンテーションの中でも既に言及しておりますが、こうした点をJICAの専門家の方々からの経験として学ぶことができました。

 そして、2つ目の質問ですけれども、移民労働者の政策、移民労働者に対する政策の御質問をいただいたかと思います。いろいろな政策を制定しております。それは毎年、毎年この政策というのは変わっていくものです。そして、その政策の多くがタイに入ってくるのを防ぐ、制限するという目的になっております。でも、それは成功しておりません。

 ですから、逆にそれが失敗したので、タイに入ってくるということを逆に推進している、促進しているという状況です。そして、タイ国内で登録をしてもらう。この方法は、幾分かは成功を収めております。軍が力を持っているときは、こうした国外からタイへの移住者を防ぐことができます。しかし、経済省が力を持っているときは国境を開きます。国を開放します。ですから、毎年、毎年いろいろな施策が変わるということなのです。

 ともかく、最終的にはタイ国内に入ってくる人々を制限する、あるいは入ってこないようにすることはできません。ミャンマーとの国境線は2,400kmにも及びます。そして、ラオスなどの近隣諸国との国境線の長さというのは1,800kmにも及びます。そして、タイとカンボジアの国境線の長さは800kmです。

 こうした長い国境線に対応するほどには、陸軍の大きさは、規模的に大きくないといえると思います。米国の陸軍でも、このような長い国境線に対応することはできないと思います。米国とメキシコの国境線の長さは、1,700kmしかありません。そして、米国内でのメキシコ人の不法移住者は1,000万人いるといわれています。

 ですから、先ほど申し上げましたように、政策はないといえると思います。なるように、なすがままに、ということだと思います。

○尾身座長 ありがとうございました。

 それでは、Ruhainiさんお願いします。

Ms. Ruhaini 御質問ありがとうございました。非常に大切な質問をしていただいたと思います。

 現在のマレーシアの人口に占めるイスラム教徒の割合は、約60%となっております。そして、やはりマレーシアでは家族が介護を行うということで、特にイスラム教徒の間ではこうした考えが強いわけです。

 でも、現在のところ、いろいろな問題はこの点においては生じておりません。そして、イスラム教徒の考え方としては、やはり高齢者とともにある。高齢者と関連していくという考え、概念がありますので、こういった考え方をほかの民族、グループ、あるいは宗教グループの中にも普及していきたいと思っております。

 そして、国の家族計画というものを策定しておりますけれども、これはただ単にイスラム教徒だけを対象にしたものではなく、ほかの宗教グループをも含めた全ての人に対するものであります。家族国家、家族計画、そしてその中では特にそれぞれの宗教に配慮した形で国の政策というものが立てられておりますけれども、やはり先ほど申し上げましたようにイスラム教徒の間では家族と高齢者とのつながりが深いというので、ほかのイスラム教徒以外の家族からの高齢者への虐待というのが深刻な問題となっております。ですから、イスラム教徒の家族とのつながりという大切さ、その価値というものをほかの宗教グループの中にも普及させていきたいと考えております。

 それから、先ほどのイスラム教徒に関連したことでコメントをもう一つつけ加えたいのですけれども、2008年に新しい首相が就任して一つのマレーシアという方策を打ち出しており、推進しております。これは、それぞれ異なるいろいろな民族はユニークなものであるけれども、マレーシアとしては一つであるという考え方で、現在このマレーシア政策というものが進行中です。

 それから、民間部門に関する御質問をいただきましたけれども、これが果たして株式会社なのかどうかということですが、私のプレゼンテーションの中で申し上げました民間部門、プライベートセクターの定義は個人を念頭に申し上げました。つまり、ボランティアのグループです。10名~20名のボランティアのグループをプライベートセクターとして捉えています。小規模でケアを提供するという、このボランティアのグループがプライベートセクターの定義です。このグループは、1993年に制定されましたケアセンター法のもとに登録を行ってケアの提供をしております。

○尾身座長 どうもありがとうございます。

 では、どうぞ。

○林構成員 どうもありがとうございました。

 先ほどの江口先生の質問にちょっとつけ加えるようなことになるのですが、Ruhainiさんに対して移民の件で以前、私が聞いた話ですと、マレーシアにはインドネシアからかなり多くの移民の人が入ってきて、それで家庭内の家事からケアも含めて、高齢者の介護並みのケアも含めてかなりできている。それなので、なかなか介護保険というところにはいかないということを聞いたことがあるのですが、こうした話が実際にそうなのかどうか。かなり国外からの人の動きというものについて、これからの高齢化社会として何かそれが一つのテーマとなっているかどうかということについてお伺いしたいと思います。

 それからChanvitさんのほうには、先ほど病院か、何もしないかという話をおっしゃっていたのですけれども、ちょうどこのCTOPのほうでは特に今、日本でも地域包括ケアというものをやっていますし、そういったものに対する取り組みを今後考えていらっしゃるかどうかということについてお伺いしたいと思います。

Dr.Chanvit すみません。最後の御質問をもう一度お願いします。

○林構成員 病院か、それともノーサービスかというふうにおっしゃられていて、その間にやはり地域でやっていこう、またはCTOPの中でそういうこともされていたのかと理解していたのですけれども、その間のところのサービスを今後、何か。

Dr.Chanvit まさにLTOPというものが、それこそ私たちがその中間にあたるサービスを提供したいというモデルを構築するものだと思います。虚弱な高齢者に対して、例えばコミュニティーベースであるとか、あるいはそのインスティチュートナルな施設でのケアを提供するようなモデルづくりを進めていきたいと思います。

 タイでは、医療サービスは全ての国民が受けられます。しかしながら、介護に関してはそうした仕組みがございません。ですから、CTOPを始めたとき、私たちは初めてそのロングタイムケア、介護という概念を学びました。それが何なのであるかということを、そのCTOPを始めたときに学んだわけです。ですから、それをさらに拡大して、私たちのほうでもそうした介護サービスの提供ができるようにしたいと思っております。

 もう一つ付け加えさせてください。昨日、実は友人から電話を受けました。ある政党の集まり、ポリティカルパーティーの席で、85歳の高齢者が、食事ができないので病院に入院させてほしいというようなリクエストがあったそうです。でも、介護サービスがきちんとできていればこうしたリクエストはないだろうと思いました。首都から離れたところにある地方の政治的な集まりの場での話であったと聞きました。

○尾身座長 ありがとうございます。

○林構成員 マレーシアにおいては多くのインドネシア人が介護を担っているところがあり、そのために介護保険のニーズが出てこない、という話がありますが、この点について現状をお伺いしたいと思います。

○尾身座長 それでは、Ruhainiさん。

Ms.Ruhaini インドネシアからの労働者ですけれども、こうしたインドネシアからの労働者に対しては別個の政策があります。そして、管轄をしている省庁も違っています。労働者に関する管轄になりますので労働省、あるいは移民局といったことになります。福祉局の管轄ではありません。ですから、何か問題が起こった場合には、インドネシアの労働者に関しては移民局、あるいはそうした労働力を管轄する省庁に連絡をとることになります。あくまでも国の政策というのは国民、マレーシア国民に対しての制定になっています。

 それから、2点目のナーシング・インシュランス、介護保険の話ですけれども、現在高齢者に対するナーシング・インシュランスの施行を目指して動いているところであります。

○尾身座長 どうぞ。

○鈴木構成員 どうも大変貴重な講演ありがとうございました。

 お二方に伺いたいのですけれども、例えば国として有効な高齢者の政策、あるいは施策を実行する上で、それが本当に有効であるかどうかという科学的な検証が必要になるだろうと思うんです。例えば、提供されたサービスが本当に高齢者のQOLという大事なものを改善したのか。あるいは、あまりり変わらなかったのか。あるいは、提供されているサービスやプログラムが本当に虚弱(Frailty)のある高齢者の改善が行われたのか。本当に行われたかどうかというのは、やはりきちんと確認することが必要になります。

 そういった意味での、いってみれば科学的研究といった点はどのぐらい重点的に行われているのか。もし御紹介していただければと思いますけれども、いかがでしょうか。

Dr.Chanvit まず政策に対する、または施策に対する評価ということですが、これは実行している管轄庁、またはどういった内容のものをやったかとか、その内容によって変わってきます。

 例えば、保健、医療、または介護関係でありますと、それに関わるさまざまなポリシー、政策なり何なりが実施された場合、そこの保健または福祉関係の大学関係の施設であったり、学会、アカデミアであったり、または研究所、リサーチ・インスティチュートとか、そういったところでありますと、または保健省も含めまして政府から公的なお金をもらって何かをするところというのは、厳しくその評価をすることが求められます。これは政府に財源を求めているので、その評価も厳しくなるという意味できちんと評価を行っていきます。

 高齢者のプランに関しまして、施策につきましては評価のための指標を計画の段階でつくらなければいけません。特にJICAさんと協業するときには、この評価のためのベストプランを用意する必要があります。その評価に際しては、専門家の方の加わった非常に細かい評価が求められるわけです。特に、LTOPのプロジェクトに関しては、この評価のための準備も含めてさまざまな情報を集めて今進めています。ですから、実際のプロジェクト、LTOPが始まる前にこういった情報収集が非常に密になされていますし、チュラーロンコーン大学のほうでもそういったプロジェクトの準備を今進めております。それから、健康または福祉に関する研究機関ですね。こちらでも情報収集を行います。

Ms.Ruhaini 同じ御質問に対して、マレーシアの視点からお答えをさせていただきたいと思います。

 さまざまな国際会議やワークショップの場で言われているコメントといいますか、リコメンデーションをいただきます。その1つが、そのさまざまな政策を包括的にした明確な一つのまとまったポリシーにするということを求められています。これについて、我々は今準備を進め、また作業しているところですが、実際にその評価を行うところまではまだきておりません。実行中というところで今進捗のあるところを見守っている段階であります。

 先ほども言及されたことですが、時にR&D、研究機関や、そのいろいろな政策に対する評価を行うということは必要になってくるかと思いますけれども、これはきちんとその進展を見た上で評価をしていくという、少し進捗を見ながらというところで、すぐに今できるというよりは少し時間をいただくことが必要な件かと思っております。

 そして、先ほど申し上げました、マレーシアで出てきている一つのマレーシアという新しいポリシーがありました。それのもとで進めているということです。

 そして、最後につけ加えたいのは、そのポリシーのもとで一つのストラテジーとして先ほども申し上げましたが、R&Dというカスターが入っていますので、そこに焦点を当てて見ていきたいと思っています。

○曽根構成員 1つだけ、お二方に短い質問をしたいと思います。

 都市部と農村部で、家族のあり方やサイズが異なったり、あるいはサービス提供側の人材とか施設の状況が異なったりしていると思うのですが、それらをどのように統一的に、あるいは分けて考えているのかということをお聞きしたいと思います。

Dr.Chanvit 日本と同様、ほかの国でもそうだと思いますが、やはり農村部と都市部ではさまざまな大きな違いがございます。

CTOPのプロジェクトの初めにいろいろなプロジェクトサイトでの調査を行いましたが、いわゆるノンタブリでは部分的にちょっと都市的な、都市部と似たような傾向というのも見られました。これは、バンコクに近いということからそういう結果になったわけです。さまざまなリソースを持っていましたし、健康状態もよいということがわかりました。また、収入も高かったです。そういった意味で、そのプロジェクトの実施というのはほかと比べると歓迎された度合いも低かったというところでしょうか。そのほかの農村部のところと比べると、歓迎ぶりは低かったということがあります。

 そういったこともありまして、次のLTOPプロジェクトでは2つ、都市部も含めて行うことになっています。それをすることによって、全面的に都市部のセッティングの中でどう展開できるのかということを検証します。

Ms.Ruhaini マレーシアのコンテクストから申しますと、もちろん都市部と農村部の違いはあります。

 ただ、新しい傾向としまして、都市部の貧困者というのが増えてまいりました。それで、全体の福祉ということを考えたときに、この都市部における貧困者に対して財政的な支援を行っていくということが含まれて、追加で入ってきていると思います。基本的に、その困窮者に対する資金的な援助というのは都市部も農村部も変わらないわけですが、新しい要素としてそれが見受けられるということ。

 特に、この都市部の貧困層に関しては1つ異なったスキームを設定しております。それによって彼らをもっとエンパワーするということを目指しておりまして、例えば職場での能力構築や、または職業スキル、技術をつけるということ、そういった意味でのいわゆる社会的な支援を行っていくということが新しい要素として今、入ってきています。

 そのほかのところでは、全体的に見てその支援という意味では違いはありません。基本的に同じになります。

○萱島構成員 大変、コンプリヘンシブなプレゼンテーションをありがとうございました。ぜひ貴重な機会ですので、お二人に2つの質問をさせていただきたいと思います。

 お二人から、日本の高齢化の施策についてぜひ学んで、それぞれの国で高齢化の対策を進めたいというお話もありましたけれども、なぜ日本なのか。高齢化を迎えた国は日本以外にもヨーロッパにもあると思うのですけれども、ぜひ日本の経験から学びたいというときの理由なりがあったら教えていただきたいというのが1点目です。

 もう一つが、お手元に資料2がございますでしょうか。資料2の中に、厚生労働省のほうで9ページに日本の高齢化に関するプログラム、スキームというのを英文でまとめてくださっています。こういう表があります。個人的なお考えで結構ですので、高齢者の対策、さまざまな施策といっても多分、大変多様なものがあると思うのですけれども、日本で行われている施策のうちで特に興味があるとか関心がある、これらは自分たちの国にとって非常に参考になるだろうというようなところがありましたら、ぜひ教えていただきたい。

 さらには、それらをもしそれぞれの国に導入する、日本のことを参考にしながらトランスプラントするときに、どういうことに注意しないといけないのかについてもお考えがあったら合わせてぜひお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

Dr.Chanvit まず、最初の御質問ですけれども、もちろんいろいろな国を見てみますと、日本よりも先に早く高齢化社会に入った国々がございます。特に、西欧諸国はそうです。

 しかし、西欧諸国の場合は、家族のきずなというものがアジアの国々よりも弱い気がします。ですから、やはり家族のそうしたつながりが弱いということ、そして文化が余りにも違い過ぎるというような要因で、私は日本から学んだほうがいいと思っております。

 特に、タイの高齢者を考えてみますと、非常に恥ずかしがり屋なんですね。恐らく、日本の高齢者も同じではないかと思います。西欧の高齢者に比べると、やはりそうした性格といったものも日本とタイで似たようなところがあると思います。

 私も、これまでスウェーデンや西欧諸国とのいろいろな協力関係で仕事をしてきました。そして、JICAの方々とも仕事をしてきました。しかし、西欧諸国の方々とのいろいろな作業、協業よりも、やはり同じアジアの国々の方々と仕事をするほうが私としてはやりやすいというようなところもございます。これは、個人的な見解ですけれども。

 そして2点目ですけれども、介護保険制度とか年金保険制度、そしてデータ収集、分析などといったところに非常に関心を持っております。

 もう一度申し上げますと、介護保険制度、それから地域包括ケアシステムの構築、そして要介護認定制度、それからデータ収集、分析、モニタリング、評価、そして住民組織によるボランティア、コミュニティービジネスや生涯教育、年金保険料の納付改善の取り組み、国民年金保険料の納付改善の取り組みといった分野に非常に関心を持っております。

Ms.Ruhaini まずは最初の御質問をマレーシアの観点から申し上げますと、先ほどもお話がありましたように、やはりアジアの国々というのは家族のきずなが非常に強いと思います。そして、特に高齢者は非常に強い尊厳を持っているということですね。強いディグニティーをきちんと持っていらっしゃるということです。ですから、こうした観点からやはり日本は非常にすばらしいベストプラクティスを有していらっしゃると思います。

 そして2点目ですけれども、マレーシア側として非常に関心を持っている分野としましては所得保障と社会参加という枠で、特にそれに加えましてNGOのキャパシティービルディング、日本ではNGOがこうした高齢者に対するサービスの提供に参加して非常にうまくいっているということですので、こうしたキャパシティービルディング、特にNGOの点について学びたいと思います。

 そして、ライフタイムエデュケーションですね。生涯学習、私たちはライフロングエデュケーションと呼んでいますが、生涯教育などについても学びたいと思います。日本では、多くの大学でこうした取り組みをされているということですけれども、マレーシアではまだ生涯教育を行っている大学は1か所しかございません。ですから、生涯教育についてですね。

 そして、それとともに地域包括ケアシステムというものは非常にすばらしいと思いますので、この点についても非常に関心を持っております。

 そしてもう一つ、日本では非常にいいデータの収集とか、あるいは研究開発が盛んに行われておりまして、それがインターネット上でも公開され、いろいろなところでアクセスできるということは非常にすばらしいと思います。そして、高齢者に対するプログラムや活動というものも、いろいろな形で多岐にわたって提供されているということで、その点についても学びたいと思います。

○大泉構成員 日本総研の大泉です。今日のご発表で、マレーシア、タイの現状を理解することができました。基本的な質問をします。

両国の医療保険と年金制度の現状について聞きたいと思います。タイのケースでご指摘された白内障のケースは、介護保険の問題でもなくて、地域福祉の問題でもなく、医療保険の問題です。

30バーツ医療制度(インフォーマルセクターをカバーする)では高齢者の25%がこの制度の対象になっているとおっしゃった。しかし、30バーツ医療制度では白内障の手術を受けることはできません。

 おそらくマレーシアでも問題になっているのは、そのような低所得の高齢者(インフォーマルセクターに属する)の医療保険制度をどうするか、いかに他と公平な医療制度が形成できるかではないでしょうか。この検討会のテーマである「アクティブ・エイジング」に沿えば、介護の対象となる前、地域福祉のお世話になるその前の高齢者を支えるような医療保険制度と基本的な年金制度(所得保障)が要るだろうと思います。

 タイの年金制度でいいますと、インラック政権は、高齢者に1か月に5001,000バーツの手当を支給しています。マレーシアは、所得のない人に月100ドル与えると今日初めて聞きました。しかし、これはいずれも積立を必要としない手当てであり、それだけでは十分な生活ができません。

 そこで、質問です。タイとマレーシア政府は、インフォーマルセクターの人々を現行の医療保険や年金制度に含めるつもりがありますか。

 なぜなら、私たちが考える介護や地域福祉というものは、医療保険とか年金制度と補完関係にあるからです。ところが、タイとかマレーシアの医療保険や年金制度が未整備なままでは、介護保険や介護制度も日本のものとは異なるものになるはずです。そのような現在の環境の変化を最初に認識しておいたほうが、支援を実施する際の効果と限界が前もって知ることができると思うのです。

 質問は、タイとマレーシアには、インフォーマルセクターに対して、積み立て型の年金制度を入れる計画があるかというのが第1点です。第2点は、タイの場合の30バーツ医療制度やマレーシアの場合の無償の医療制度を、今後他の人と同じ制度に近づけるような計画があるかどうか。その2点をお伺いしたいと思います。

Dr.Chanvit ちょっと質問が難し過ぎるのですけれども、一言で言うとどうでしょうか。

○大泉構成員 一言で言うと、インフォーマルセクターの医療保険と年金制度は普通のフォーマルの形と同じような形になるように計画されていますか。保険料をとった公平な保険制度を作ろうとしているかということです。

Dr.Chanvit タイにおきましては、この年金制度というものは社会保障制度のもとに置かれています。それで、今実際に年金という形でフォーマルセクターからこの年金を受け取れるのは2つぐらいの非常に限られた人々で、政府の高官や、または公務員という立場です。ですので、公務員でない人たちというのは、この年金制度が実際には走っていないことになります。

 では、これを将来的にどうしていくのかというのを考えたときに、考え方として2つオプションがあると言われています。1つは、社会保障制度のもとにこのインフォーマルなシステムを組み込んでしまうということ、フォーマルなものに全てしてしまうという考え方です。2つ目は、別途このインフォーマルなシステムのために新しい基金を設立するという考え方です。これをすることによって、インフォーマルセクターにいる労働者もこの年金に与かれるようになるという考え方です。

 ただ、現状、財務省の考えとしてはこの2つ目のシナリオ、新しい基金の設立ということを考えております。その一方で、社会保障制度という考え方のもとに労務省、労働省に関しましては1つ目のスキームを推奨していますので、これはどちらに落ち着くかということについては近い将来決定がされると思いますが、先ほども言いましたように、誰でも何が起こっても驚かないタイという感じがありますので、どう転ぶかというところは私どもにはまだ見えない状態です。

 ちなみに、医療サービスにつきましてはインフォーマルセクターも既にその保険の適用のもとに入っておりまして、先ほどございました30バーツのプログラムがあります。これによって、今国民皆保険の適用下にあるということです。

 それに加えまして、合法的ではないインフォーマルセクターもあります。つまり、移民の方が対象になる場合です。非常に少額のお金しかなくて、これは非常に安いのですが、大体米ドルで一人当たり年間45ドルくらいの額になります。それをもって全ての医療サービス、保険サービスを受けられるというものです。

 新しいスキームをちょうど発足したところですが、これは移民の子供を対象として、1日1バーツの負担で済むものです。これは換算しますと、米ドルで12ドルというところでしょう。適用される範囲は新生児から6歳までになります。これによって、ワクチンも含めて1年間、医療そして保険サービスを受けることができるという額です。

Ms.Ruhaini マレーシアの場合ですと、まず年金についてはスキームが2つあります。これは、フォーマルなものとインフォーマルなものというふうに分けることができまして、前者のフォーマルなものは義務になります。2つ目のインフォーマルなものは義務ではありませんが、政府としては登録するように奨励をしていく形のスキームになります。

 現在、この2つ目のカテゴリーに関して登録をどのように広めていくのかというのが課題になっています。その登録はあまり進捗がよくないということです。

 ただ、これを進めていく理由としまして、政府としては将来的に高齢者に対してその収入を確保していくために必要な策であると考えておりますので、高齢者の所得保障のための策ということを位置づけております。

 それから、医療サービスにつきましては2011年から高齢者に対しては全額無料になっています。これは全ての病院、または医療施設、これは公的なものも民間のものも問わず無料になっています。

 失礼いたしました。民間の医療施設に関しましては部分的な無料のサービスということで、幾つかその部門を区切って、また内容を区切って無料のサービスが提供されているということです。

○尾身座長 さて、そろそろ時間ももう30分近くオーバーしていますので、この議論はそろそろ終えたいと思います。いろいろ日本もマレーシアもタイも、高齢化という意味では皆、共通の課題を持っているわけですけれども、現実には日本のシステムをそのまま、さっきトランスプラントという言葉がありましたが、なかなか難しいと思うので、厚労省が書かれた9ページのところの中でどんなことをこれからマレーシア、タイにサポートできるかというのは、もう少しじっくり時間をかけて議論をすればいいと思います。

 きょうは、この前同様いろいろなリッチなディスカッションが出てきたと思うので、また事務局の方で今日の議論を少しまとめていただければと思います。

 それでは、時間もあれなので、2つ目の議題があと10分近くでできるかと思いますけれども、事務局よりお願いしたいと思います。

 その前に、Chanvitさん、Ruhainiさん、本当にきょうはプレゼンテーションありがとうございました。

 それでは、事務局のほうから資料5の説明をお願いしたいと思います。

○山内国際協力室長 ありがとうございます。議論というよりは、お知らせをさせていただいて、後ほどメールで御意見をいただければと思います。

 「国内・海外調査について」でございまして、「国内調査」につきましては皆様から御提案いただきまして、対象としてそこに挙げられている4つの自治体ということに決めさせていただいております。

 もし御意見をいただけたらと思いますのは、その下に書いてある「内容案」でございまして、このような内容よりほかにこの調査の中で聞いておいたほうがいいようなことや、ここは見ておいたほうがいいというような御提案がありましたら、いただければ幸いでございます。

 「海外調査」につきましても同様で、いろいろお知らせをさせていただいているところですが、その「内容案」というところで、どういうところを見て、またどんなことを聞いたらこの調査はより有益になるかというところにつきまして、もし御提案等がございましたらお知らせいただければ幸いでございます。

 ついでに、もう一つお知らせさせていただきたいのが、参考資料1として資料の最後につけさせていただいてございます。毎年やっております日・ASEANハイレベル会合というものがございまして、本年11回目を迎えております。本年のテーマはアクティブ・エイジングでございまして、ASEAN諸国からいわゆるハイレベルの行政官を招きまいて、このテーマにつきまして12月に議論をする予定です。傍聴も少数ですが、毎年用意させていただいているところでございますので、また委員の先生方にお知らせいたしますので、もし御興味がありましたらというところでございます。以上です。

○尾身座長 どうもありがとうございます。今の事務局の説明について、何かコメントとか質問はございますか。よろしいですか。

 それでは、時間になりましたので今日の会議を終了させていただきたいと思います。

 本日は、本当に活発な議論をいただき、ありがとうございます。国内・海外調査に参加される方、いろいろな事例について見てきていただきたいと思います。

 それでは、最後に事務局のほうから連絡をお願いします。

○杉田専門官 御出席の皆様、どうもありがとうございました。

 次回の開催は、少し空きまして10月ごろを予定しておりますので、また後日、日程調整等をさせていただければと思います。

 それから、海外調査、国内調査の詳細につきましては、それぞれ御参加いただける先生方に御連絡をさせていただきます。

 それでは、これをもちまして第2回検討会を閉会いたします。どうもありがとうございました。

 


(了)

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