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2014年11月12日 医師国家試験改善検討部会 議事録

医政局医事課試験免許室

○日時

平成26年11月12日(水) 13:00~


○場所

中央合同庁舎5号館 共用第8会議室


○出席者

委員

井廻委員(部会長)・神野委員・小森委員・清水委員・高木委員
中谷委員・野上委員・伴委員・堀田委員・本橋委員・山口委員
寺門医学教育課長(文部科学省高等教育局)

事務局

福島大臣官房審議官・北澤医事課長・田村医師臨床研修推進室長・中田課長補佐
古川試験免許室長・手島試験免許室長補佐・大渕試験免許室試験専門官 他

○議事

○手島補佐 定刻となりましたので、ただいまより医道審議会医師分科会医師国家試験改善検討部会を開催いたします。本日は赤木委員、奈良委員は欠席でございます。また、オブザーバーとして、文部科学省高等教育局医学教育課の寺門課長にも御出席いただいております。それでは、井廻部会長、以後の議事進行をよろしくお願いいたします。

○井廻部会長 井廻でございます。お忙しいところお集まりいただきましてありがとうございます。前回、卒前教育における共用試験の標準化を検討しながら、国家試験の問題数をどうするか今後検討していこうということ、それから、OSCEに関して、また、国家試験の受験資格認定をどのようにしていくかということを検討しようという方針がまとまりまして、それに引き続いて今日、委員の皆様に御議論いただきたいと思います。

 それでは、まず初めに事務局から資料の説明をお願いします。

○手島補佐 資料の説明をさせていただく前に、前回の会議でも御説明させていただきましたが、医師の国家試験の試験方法等に関する検討を行っていく中で、非公開としている内容に触れる場合につきましては、会議、ワーキンググループ、会議資料及び議事録については、非公開の取扱いとさせていただきます。

 引き続きお手元の資料について説明いたします。まず、平成26年第2回医道審議会医師分科会医師国家試験改善検討部会の議事次第です。次に資料1で「主な検討課題等の検討状況について」、資料2で「共用試験を利用した臨床実習前医学生質保証システム」、中谷委員の提出資料です。資料3として「共用試験CBT等医師国家試験の出題範囲」、高木委員からの提出資料です。資料4として「医師国家試験における実技試験とECFMG2023年からの要求」、伴委員からの提出資料です。資料5として「模擬患者活動の経験からOSCEの現状と課題」、山口委員の提出資料です。資料6で「日本語診療能力調査におけるOSCEの導入の結果」奈良委員、高木委員の提出資料です。資料7「今後の具体的な審議事項について()」です。参考資料として、「今後の検討課題等の現状」です。左手のほうに、医師国家試験の改善検討部会の配布資料と、改善検討部会の報告書が青い紙ファイルに入っています。そのほか、「医師国家試験問題」と「医師国家試験の出題基準」、「臨床研修の到達目標、医学教育モデル・コア・カリキュラム、CBTの公開問題集として参考資料に出させていただいています。乱丁落丁がありましたら、事務局までお申し付けください。資料の確認は以上です。

○井廻部会長 それでは、議事に入ります。事務局から資料の内容について説明をお願いします。

○手島補佐 事務局よりお手元の資料1の御説明をさせていただきます。資料1について、主な検討課題等の検討状況についてです。6月の第1回改善検討部会におきまして、医師国家試験に関する現状の課題、若しくは前回の会議からの対応状況についてお示ししたところですが、こちらの資料1につきましては、前回課題として御提示したものについて、考え方を抜粋し、かつ黒ポツの中で、前回の会議で御議論いただいた内容の取りまとめたものです。

1の第1回医師国家試験改善検討会での議論の1.は国家試験の出題数についてです。考え方は、前回の会議でお示しした内容はそのままですが、共用試験の実施状況について評価してはどうか、全医学部での実施可能性等についても検討してはどうかという御提案をしたところ、以下のような御意見をさまざまいただいたところでごさいます。

2ページはOSCEについてです。こちらについても前回の会議で幾つか御議論いただきましたので、その概要を取りまとめています。

3.医師国家試験受験資格認定については、今回の会議で御検討いただく予定です。その他の課題についても御検討いただいた内容がありましたので、概要をお示ししています。

3ページ、今後のスケジュールです。こちらは前回の会議でお示ししたものと内容は同一です。前回が第1回平成266月で、検討の方向性と出題数について主に御議論いただきました。今回は第2回です。今回の主な論点としまして、共用試験の標準化の方針を御評価いただく、当該評価を踏まえて医師国家試験の出題数等への反映の可能性及び反映する時期を御検討いただく。OSCE、医師国家試験の受験資格認定の在り方など、その他の課題を検討するとさせていただいております。なお、今後、ワーキンググループにおいて、出題数、出題範囲等について具体的に検討いただくとしています。

 併せて最後の参考資料ですが、今回の議題である出題数及びOSCE、受験資格認定等につきまして、前回の会議でお示しした内容に加えて、追加事項がありますので、適宜御参照いただければと思います。事務局からは以上です。

○井廻部会長 ありがとうございました。今の説明につきまして、何か御質問ございますでしょうか。よろしいでしょうか。もしよろしければ、議事次第に沿いまして、国家試験の出題数についての審議をまず進めていきたいと思います。最初に中谷委員から資料2について御説明をお願いします。

○中谷委員 6月の会議では、私の代理として全国医学部長病院長会議の前会長である別所先生が、ある程度お示しされたと思いますが、本日はこの資料にありますように、今日の話題であるCBTの合格レベルの判定というのがどういう意義を持っているのか、どの程度の意味を持っているのかということを中心に説明させていただきます。お手元の資料を御覧ください。ここにいらっしゃる委員の先生方には改めてご説明申し上げることはないのですが、日本の医学教育制度の変遷には、幾つかエポックがあり徐々に変化をしてまいりました。文部科学省主導でモデル・コア・カリキュラムができ、厚生労働省主導で卒後臨床研修制度が導入されました。共用試験実施につきましては、共用試験実施評価機構というのが設立されまして、実際に2006年度当たりから本格的な試験の実施をしているわけでございます。ただ、米国に比べまして、よく言われることですが、日本の医学生が海外に臨床実習の国からクラークシップ等で行って気づくことに、医学的知識、それは基礎医学、臨床医学両方だと思いますが、その知識は米国に比べて負けていないというようには自覚するわけですが、患者さんに対する対応、診療技術、いわゆるベッドサイドでの対応では負けているなと感じてきております。語学のハンディの存在を差し引いて考えても、そう感じる状況があります。ですから、卒業前の医学教育においては、臨床実習をしっかり彼らにやらせなければいけないというのは、私たちも共通して自覚しているところでございます。

2枚目のスライド資料を御覧になって分かりますように、本邦の大学医学部の臨床実習期間というのは、過去に比べて随分増えてまいりました。しかしながら、欧米では、60-70週の実習期間ということですので、今後私たちも実習時間を増やしていかなければならないというところことです。しかしながら、実際には医師国家試験というハードルが最後に控えていますので、そのために自分たちで勉強する時間を、数か月どうしても各大学が確保しているような状況です。そういうことで、いかに共用試験を充実させて、評価システムを確立するということで、医師国家試験というのが実質的に臨床能力を判定できるような形にしていただければ、より長い期間、彼らは臨床実習に集中できるのではないかと思います。

4番目のスライドに書いてありますように、文科省が主催しました医学教育カリキュラム検討部会で、やはり共用試験の資格化の必要性というのが指摘されております。その必要性については、全国医学部長病院長会議がそのグランドデザインで提言しているところでございます。共用試験は、CBTOSCEからなりますが、私はCBTを中心に御説明申し上げます。

 次ページの7番目のスライドを御覧ください。CBTは、第1回、2006年から第1回として正式実施となっています。IRT、能力値と訳していますが、個人個人によってコンピューターを使って、問題が与えられますので、それぞれの問題の難易度が違う。そういうものを考慮して、項目特性理論で、能力値として成績を出すというものです。最初は中間値を50として標準化したわけですが、2回目以降すぐにIRTが上がりまして、最近は59という値で安定しております。ですから、ここを基準値として、それから-1.5SD。この-1.5SDというのは、相対評価になりますので、それがどういう意味があるかということは、後付けになるわけですが、そこを推奨最低合格ラインとして大体妥当なところではないかと、全国医学部長病院長会議の共用試験検討委員会で考えたものです。1つ理由は、最初1回だけ再試験の受験を可能にするという形で考えますと、IRT43を合格ラインとすれば約全国で約500-600人の学生が再試を受けるような形になるわけですが、これは共用試験実施評価機構が対応可能な人数となります。ただ、IRT43というのが、どういう意味を持つのか。これは各大学の医学部長などもそういう感覚を持っていらっしゃいますが、明らかに勉強していないと勉強不足や成績不良者として考えられるような学生は、IRT43には到達しないだろうということです。

 次のスライドで10番目の図を御覧ください。これに示してありますように、IRT43について9大学を抽出いたしまして、過去5年間の卒業生4,339名の成績を分析いたしました。その9大学は国立大学5大学、公立大学2大学、私立大学2大学の学生です。IRT43で切りますと、それ以上のIRT値の学生ではこの試験の後に留年、あるいは卒業延期になったという学生が2.3%しかおりません。また、国家試験に失敗したのが3.8%でした。ところが、IRT43値に満たない学生というのは、その約10倍が留年を経験し、国家試験も23.6%が失敗しております。

IRT値と卒業したときの医師国家試験の成績の相関図が示したのがその下の図です。これは単独の某大学の単年度データをまとめたもので、単年度です。また、医師国家試験の点数を必ずしも全員が報告してくれるとも限りませんので、報告してくれなかった学生を除いて79名について、相関関係を調べてみました。このように非常に良い相関を示し、相関係数は0.67という値になりました。この傾向は、この大学ばかりではなくて、ほかの大学でも複数年度にわたって、統計解析を行いましたが、医師国家試験点数とCBTIRT値の相関というのは、非常によい相関を示すというのが分かっております。

 次が、現在行っている全国医学部長病院長会議による臨床実習前の医学生の質保障システムですが、共用試験実施評価機構、CATOが中心となってCBT実験を実施していただきまして、約1週間程度で受験生の成績が個人及び大学に返送されます。OSCEも各大学でCATOから派遣された第三者(モニター)が立ち合って行われると共に、各大学の独自進級試験がありますので、それらに合格しまして、進級して晴れて病院で実習するということになりますと、私たちの全国医学部長病院長会議に各大学から認定書の申請していただいて、Student Doctorの証明書を発行するという形になっております。

 次を御覧ください。これは昨年度のカードの見本です。通し番号を振り発行を行いました。そういうことで、平成25年度だけがトライアルで、今年度から本格運用しようと考えていたのですが、多少問題が見つかりました。

 次のスライドを御覧ください。

9ページの17枚目のスライドですが、80大学のうち申請が行われたのは77大学。3大学が申請いただけませんでした。これは、試験を実施する時期が比較的早かったということがあります。IRT43以上で申請していただけなかった場合もあり、これは統一されませんでした。IRT43以上で申請していただいたのは54大学ですが、IRT43未満で合格として申請してきたのが23大学もありました。54大学の中には、IRT50の大学もありましたし、IRT43ジャストで申請した大学もあったということで、ばら付きがございました。IRT43未満の大学の平均IRT41.1でした。しかしながら、IRT43以上であれば、私たちは憂いなく認定ができたと考えるわけですが、申請の最低IRTがそれ未満というのは、IRT43以上での申請がどうしてもできなかったということになるわけです。通常、大学では進級の規定というのは入学時に決まっています。その学則の変更というのが、学生の同意を得てやる形になりますので、そこの手続が遅れ、IRT43未満でも留年させることができなかったというところだと思います。

 次のスライド18で、今度は学生がいろいろな患者さんにインタビューをしたり、いろいろ体の診察をお願いしたりするわけです。その学生の呼称という問題があります。Student Doctorという名前を使っている大学が圧倒的に多いわけですが、大学によっては臨床医学生とか、医学実習生とか、いろいろな名前が使われています。ただ、もちろんStudent Doctorという名前は医師法上的にクレームがつく可能性もありますが、学生に自覚を持ってもらうには望ましい呼称です。これは私たちの大学で白衣式の写真ですが、誓いの言葉を述べさせて、責任を持つ立場になるのだということ、医療チームの一任として、社会に貢献する立場になるのだよという、自覚を促すという意義を持ちますが、Student Doctorという呼称も同様の意義を持つと思われます。

Student Doctorという呼称で問題があったかどうかということは、20番目のスライドにありますように、19大学で調べましたところ、特にありませんでした。しかしながら患者さんがこの呼称に対してどういう感触を持っているのかということについては、現在アンケートを取り、調査しているところでございます。今後この臨床実習に進む学生の質保証というのは、今後しっかりやっていけるのかということが懸念されるわけですが、全国医学部長病院長会議では、総会で改めて強くアナウンスメントさせていただきまして、IRT43を守ってくださいということで、平成26年度もトライアル年度にいたしました。

22番目のスライドです。大体申請時期は3月に集中しています。あるいは4月に申請してくる所もあるのですが、大体80大学で、もう既に8月、9月にやった大学は、申請しております。今のところはまだ4大学の申請しかないのですが、IRT43以上で申請していただいています。平成26年度は全国医学部長病院長会議で証明書を発行するのは、IRT43以上ですよという方針を再度アナウンスしまして、トライアル最終年度としてこれをしっかり行っていきたいと思います。

 最後のスライドです。これが今年発行している認定証です。在学中しか有効ではないとか、ネームプレートではなくて、携帯する証明書として発行してます。何とか27年度からは本格的に移行ができるのではないかと私たちは考えています。以上です。

○井廻部会長 ありがとうございました。引き続き、高木委員から御説明お願いします。

○高木委員 資料3を御覧ください。中谷先生からお話がありましたが、共用試験と医師国家試験の出題範囲について、検討させていただきました。医師国家試験の出題範囲につきましては、ここにありますように、必修と医学総論と医学各論の3つの分野がありますが、各論につきましては、非常に細かなことまでありましたので、今回は必修と医学総論について検討させていただきました。細かなところにつきましては、この3ページから細かく書いてあります。左側に医師国家試験の出題基準の大項目、中項目について記載をしております。右のほうが共用試験のモデル・コア・カリキュラム、平成22年度の改定版ですが、第2階層まで。第3階層までありますが、第2階層がちょうど医師国家試験の出題基準の中項目ぐらいに当たるだろうということですので、それについて比較をしています。必修につきまして、3ページから6ページまで、総論につきまして7ページから最後まで比較をしています。表の中で、例えば6ページを御覧ください。この中に必修の項目につきまして、国家試験では記載されているが、モデル・コア・カリキュラムではないというのが網掛けになっています。17の生活習慣とリスクという所の、生涯設計というのが、モデル・コア・カリキュラムの中には言葉として出ていないとか、18ですと、一般教養的な事項については、医学史は医の原則ということではありますが、そのほかのことについてはモデル・コア・カリキュラムには一般教養については書いてありません。

 総論ですと、同じような形で見ていただけば分かると思いますが、シャドウがかかっているところが、医師国家試験では記載されているけれども、モデル・コア・カリキュラムには記載されていない項目です。

 一番最初のページを御覧ください。これを全部まとめています。まず必修の基本的事項につきましては、今申し上げました17の生活習慣とリスクという所で、生涯設計、一般的教養事項で、Bの医学・医療に関する人文、社会科学、自然科学、芸術に関する一般教養的知識や考え方とありますが、記載されていません。それから、Cの診療に必要な一般的医学英語についても記載されていません。医学総論にいきますと、1の「保健医療総論の項」ですが、7の国際保健という所で、Aの世界の保健・医療問題、Bの国際保険医療協力については記載がありません。2の「予防と健康管理・増進の項」ですと、3の疫学とその応用につきましてはCの統計解析。これは準備コアカリキュラムというのがありまして、それには記載されているのですが、モデル・コア・カリキュラムについては記載されていないということです。それから、9の国民栄養と食品保健のAの国民栄養の現状の対策、Bの食品の安全性と機能性ということについても、具体的な記載がないということです。5の「病因病態生理」の1の疾病と影響因子のAの疾病の自然経過という項目がないということで、3の損傷、炎症についてはDの外傷の病態、7の循環障害、臓器不全につきましては、臓器不全という記載がないということです。

 それから、10の医原病につきましても、診断に伴う医原病、治療に伴う医原病の記載がありませんでした。

2ページの6の「症候の項」では、顔貌異常という、これは少し中に入っていますが、顔貌ということでは記載はありませんでした。

7「診察の項」ですと、4として、胎児・新生児の診察と評価のBの胎児付属物の診察というのは記載がございません。

8の「検査」ですが、2の生体機能検査、Cの消化管機能検査については記載がありません。3の皮膚・感覚器・発声機能検査については、発声・発語検査についてもありません。画像検査における医療情報、これは非常に難しい表現ですが、それについての具体的な記載はありませんでした。9の「治療の項」で臓器、組織移植、人工臓器、再生医療、提供者(ドナー)と、被移植者(レシピエント)については記載がありませんでした。

102次、3次救急患者の治療につきましては、Hの環境異常の治療とか、Iの異物・溺水・刺咬症の治療・処置、Jの産科的救急治療・処置、Kの新生児の救急治療・処置、Lの乳児の救急治療・処置についても記載がありません。

12のその他の治療法、Cの人工換気、Dの呼吸理学療法、Eの物理療法、Gのレーザー療法、Hの体外衝撃波結石破砕術とか、Iの電気けいれん療法、Jの免疫療法、Kの生殖補助技術、Lの精神療法につきましては記載がないということです。ただ、少しだけ言い分けをさせていただきますと、モデル・コア・カリキュラムの中にはGIO的なところが一般的な目標として書いてありますが、その目標として治療等について概説できるということが書いてありますので、全くこれがあてはまらないかということではありません。ただし、この項目については具体的な記載がないということで、ここに書かせていただきました。以上です。

○井廻部会長 以上、中谷委員、高木委員の御説明を伺いまして、委員の皆さんの間で質問、あるいは追加ということがありますでしょうか。

○神野委員 中谷先生のCBTの話ですが、私は今、大学におりませんので詳しいことは分からないのですが、この時期の問題が非常に幅広いわけですよね。早く受ける方と学年がたってから受ける方で、IRTの値が違ってくるのかどうかとか、なぜ早くやる大学と遅くやる大学があるのか。この時期でハンディがないのかということで、質問します。

○中谷委員 まず後半の質問からお答え致しますが、恐らくそれぞれの大学で教養教育をどのぐらいの期間の長さで行って専門教育に入るのかとか、臨床実習の期間をどの程度、どの学年で、どこから始めるかとか、そういうカリキュラムの大学によって多少違いますので、この共用試験の受験の時期の違いとなって出ると考えております。それまでの教育の後に行われる試験ですので、基礎・臨床医学教育が終わった段階ですと、恐らく同じはずなのです。同じはずというのは、同じ時間を基礎医学、臨床医学の総論・各論的なことを知識として学んだ後にCBTを受ければ、時期は多少違っても成績は同じはずなのですが、これは高木先生にお聞きしたほうが良いと思うのですが、以前のデータをCATOの報告書で拝見しますと、早めにやったほうが一般的にはちょっと低いかなという感じはあるそうです。その辺はそれぞれの大学の独自のカリキュラムの問題で、どうしてもこちらがどこの時点でやってくださいとはお願いできないものですから、これだけの申請時期のばらつきがあると考えています。高木先生から何か付け加えていただけますか。

○高木委員 多少、補足させていただきますと、共用試験のCBTの場合には期限を区切っておりまして、現在は4年生の12月から3月までを前期として、6月から9月までを後期としております。その後に試験を行う所もあるのですが、その医科大学・医学部は統計学的には別扱いにしております。今申し上げたところでいくと、今、中谷先生がおっしゃいましたように、前期と後期ではそれほど差はありません。統計学的に言いますと0.幾つ、IRTが少しぐらい違うかもしれませんが、それはほとんど有意差がないという具合に考えていただいて結構だと思います。

○神野委員 ということは、もし今後、資格化の問題になったときにでも、あまりハンディはないということでよろしいですね。ありがとうございます。

○小森委員 1点お聞きしたいのですが、中谷先生の資料のスライド番号の2、診療参加型臨床実習の期間ですが、2011年のデータを以前にお示しいただいて、全国平均51ということで、2年間で3週増えておられますし、全体に大変努力をしておられることはよく理解できるのですが、内訳を見ると40週から最長は78週と、大変多い。これはアンケートといいますか、例えば78週やってらっしゃるのと40週やってらっしゃるのが、本当に密度と実態はそのままの数字でカウントできるのか、それとも78週やるということになると、本当に相当時間を使っているわけですよね。

○中谷委員 御指摘のとおりです。これはあくまでアンケートですので、その大学で「こういう臨床実習はどのぐらいの期間やっていますか」というアンケートをやりますと、その前の本当に患者で診なくても、例えば診察方法をグループ学習、それも臨床実習に入れようという大学と、厳密にそこは違いますよね。患者を本当に診ている期間だけを数えようという大学もいろいろあって、恐らく捉え方の差が出ているのだと思っています。ですから、これはアンケートの非常に難しいところで、80大学全部にアンケートをお願いし、全国病院長会議でまとめて出てきてしまうデータですから、そういう細かい部分のニュアンスの違いや解釈の違いによって差が出て来ているように伺っております。ですから、小森先生の御指摘はもっともで、これは本当の臨床実習の期間の数字を表しているかどうかは、わかりません。78週といっても、それは本当の12週間だと思いますが、例えば公衆衛生などでフィールドワークをしたのも臨床実習に入れてしまっている所もあるのではないかと心配はしています。このように統計学的なものの差だというより、それぞれの大学の捉え方の差だと考えております。

○小森委員 分かりました。それともう1点、CBTといいますか、コアカリと出題基準の差ですが、私は国家試験の委員会の委員として3年たっておりまして、まだすぐにはやめさせてもらえないようなのですが、基本的に出題基準がベースですよね。ただ、治療方法については、CBT後の診療参加型臨床実習の2年間を中心に身に付けていくということですので、そこはいいのかなと思いましたが、精神療法だけでも、出題基準は精神分析療法からカウンセリングまで11も項目があって、その辺りは非常に細かく知識として問うという現状があります。正にいつも申し上げております、今、国家試験の現状としては診療に至る考え方を問うとはされていますが、治療方法を個別に出題基準で小項目の中に細かく分類されている、その差を問うているという実態がありますので、ここは今回の見直しでは相当考える必要があるのだろうと。実習として身に付けていくものを国家試験で、そういう形で問うのが本来の形だろうと思ってお聞きしておりましたが、そういう考え方でよろしいでしょうか、高木先生。

○高木委員 私からはお答えできませんが、今、先生がおっしゃっているところが重要だと思っています。もともと共用試験のCBTのほうは、治療については細かなことについては質問しないことになっておりましたが、先ほど中谷先生とお話しましたが、例えば薬理、薬のことについては基礎薬理でかなり臨床薬理も含めた講義をされていますので、これを基礎的なもので出さないわけにはいかないだろうということもあります。今は公募問題の中にも、基礎の先生がお作りになった問題でも、かなり薬物療法については出題されていますので、その辺についてここまではどうなのかと言われることは、まだ今のところ線は引けないような気はしております。ただ、外科的な治療とか、については今、先生がおっしゃったようなところで、やはり臨床実習をした後でないと問わないほうがいいのではないかと思っています。

○山口委員 中谷委員に質問させていただきたいと思います。Student Doctorということでいいますと、患者としては実習に出てくる学生が一定の認定を得られていると判断できるので、こういうものがあることは非常に納得がいくのではないかと思うのです。それに、IRT43にすることをスライド番号10で御説明いただいた内容で、私は非常に納得がいったというか、こういう基準なのですということが明確になることによって、説得力がある数字だなと思いました。

 ただ、その一方で、17番のスライドを拝見しますと、43未満で合格としている大学が23大学あるという現状で、総会などでその辺りは43にするようにということを、強制はできなくても強く求めていかれるというお話だったのですが、実際に全大学が足並みをそろえることが可能性としてはどうなのか。やはり同じStudent Doctorであれば、同じ一定の基準であっていただきたいと思うのですが、その辺りはいかがでしょうか。

○中谷委員 おっしゃるとおりで、平成26年度は今の段階ではまだ4大学しか申請がありませんが、全国医学部長病院長会議への問合せにもIRT43以上でないと認定書は出さないということを強く言ってやっております。平成26年度もトライアル年度として、最終的には平成27年度から正式実施として、それになりますと各大学の最低合格ラインをどこにしたかということを含めて、ホームページにアップで公表しますということを言っておりますので、大学の名誉をかけてIRT43以上で申請してくると私は思っておりますし、そう願っております。

○清水委員 高木先生がお作りいただいた資料について、私も質問があるのですが、国家試験の出題基準にはあるけれども、コアカリキュラムにはないというのはシャドウイングされていたのですが、確認のため、解釈は逆はないということでよろしいですか。コアカリにあって医師国家試験の出題基準にはないというものはないと理解してよろしいでしょうか。

○高木委員 先ほどお話したことについては、全くないわけではないですが、ほとんどありません。今回調べたところでは、今、先生がおっしゃっている国家試験にあって、モデル・コア・カリキュラムにないものはありますが、モデル・コア・カリキュラムにあって国家試験の基準にないと。それについてはほとんどないと考えていただいて結構です。

○清水委員 分かりました。ありがとうございます。続いて、先ほどの小森先生の御意見に似たところがあるのですが、これはとても大変な作業だったと思うのです。コアカリのところで、やはり項目名として、小項目にされなかったということもあると思うので、例えばコアカリだと基本的診療知識という総項目で一括りにならざるを得ないところがあるのかもしれませんが、その中の個々について、国家試験のほうがコアカリで述べられている基準よりも少し大きめのものになっているということが、はっきり分かるかどうか。ここで提示できないのかもしれませんが、現実にそうなのかということを教えていただきたいのです。つまり、先ほどの治療に関するところは当然、コアカリよりは国家試験のほうが範囲として大きくなると思うのですが、ほとんどの項目が多分そうあるべきなのだと思うのです。コアカリで狙っているところよりも、国家試験で狙っている基準のほうが大きい領域でないといけないかと思うのですが、ほとんどの項目がそうなのかどうかということをお教えいただきたいと思います。

○高木委員 1つは広さについては、先生がおっしゃったとおりです。ただ、先ほど申し上げたように、コアカリのほうは「何々を概説できる」とかいう、割とファジーな言い方になっておりまして、それについては共用試験の場合には機構の中で問題のブラッシュアップをします。そのときに、ブラッシュアップ委員の先生に、これはStudent Doctorになっていい学生への問題なのか。それとも今から医師になるための国家試験の問題なのかということで、広さよりもどちらかというと深さについて検討していただいて、これはstudent doctorドクターになるにはこのぐらいのレベルでいいだろう。あるいは、これは国家試験の問題ではないですかということで、ブラッシュアップをしていただいています。ですから、今、先生がおっしゃったところは、広さもそうですし、深さもそうですし、それについてはここにはちょっと書けませんので、一応は網羅されていると。ただ、深さとか広さについては、一応、問題を作るとき、ブラッシュアップするときに考慮しておりますので、それだけお答えをさせていただきます。

○清水委員 ありがとうございます。

○堀田委員 先ほどの中谷先生の1ページ目と2ページ目、3ページ目で、臨床実習の確保という部分と、CBTをどこのタイミングでやるかというのに関係して、ちょっとお伺いしたいのですが、6年生の後半になりますと、臨床研修のマッチングがあったりいろいろなことで、結構学外へ行ってしまったり、国家試験の勉強のためにこもっているみたいな時期をどうしても確保しなければなりません。その関係でいうと、40週から70週の中身はともかくとして、求められる臨床実習は、場合によっては国際的にも十分に通用するものになり得るかどうかという点のお考えはいかがですか。

○中谷委員 そういうことに関してましは、現在、国際的認証というのが試みられています。文部科学省の補助金を頂いて、私たちはJACMEと呼んでいる所なのですが、医学教育の分野別認証評価で国際的基準に合っているかどうか。これは後で伴先生が御説明なさるのかもしれませんが、そういうことが行われています新潟大学、東京医科歯科大学、慈恵医科大学、千葉大学が既に国際的認証評価を受審し、そして東京大学が今度評価を受ける予定となっております。そういう形で行って、これを全国の80大学、医学部、医科大学に広げていこうという、かなり壮大な計画です。

 そこで、臨床実習の期間の長さが、そこの認証の1つ項目であり、どのぐらいの期間を確保していますかも重要ですが、どういう内容をやっていますか、どういう先生が何人担当して、どんな臨床実習をやっていますかと、そういう質の評価もやらなければいけないとなっています。そういうことで、72週という数字が独り歩きをしているのですが、あれは米国のカリフォルニア州だけのもので、それ以外の州でもそれより短いのもありますし、どれだけ充実した臨床実習が行われているかということがより重要だと思います。もちろん期間も重要です。ある程度は必要ですが、より質が重要だと思っています。

 ですから、そういう国際的認証評価で評価されますので、先ほど小森先生から御指摘があったように、2年間で平均2週が増えただけじゃないの、3週が増えただけじゃないのという話もあるのですが、これは各大学がその内容を含めて、今盛んにカリキュラム改革を行っており、それは国際認証を受けるためでもありますし、もちろん国際的に見劣りしない臨床実習を私たち医学部、医科大学ではやらなければならないと考えていますので、そこの充実に向けて一生懸命頑張っているところです。

○本橋委員 中谷先生の資料は大変参考になりましたが、スライド番号8番目と9番目で、IRT43の意味を御説明いただいて、今、全国医学部長病院長会議でこういう基準でされているということで、これ自体は妥当なものではないかと私も考えるのです。1つは質問で、スライド9ですが、500人から600人再受験者を想定しているということで、この基準を決められたということですが、1回やった後の再分布というのですか。これがどうなっているのか後で。要するに8の所は1回目の所ですよね。

○中谷委員 そうです。

○本橋委員 再試験した後がどのぐらい合格したのかということが1つ知りたいということと、例えばスライド10を見ると、43未満の場合、最終的に国試が4分の1ぐらい落ちるということですから、4分の3の人たちは努力して大丈夫なのかという数字なのかと理解しているのですが、その辺の御見解。さらに、留年のポリシーは多分、大学などによって違って、2年留年すると、もう駄目だとか厳しくしている所もあると思って、その辺は大学によって違うと思うのです。それは大学の自主性ですので、例えば留年を何回やって、もうノーですと。要するに医者になれませんという所もあり得る可能性があるのですが、その辺は今後の課題だと思います。実際、ここの再試験をやって、最終的に何回も留年できない学生はどのぐらい想定されているのかということを教えていただければと思います。

○中谷委員 最後の留年の問題は、恐らく大学毎にポリシーがありまして、我々の大学なんかも2年間の就学期間の中で4年間を越えては在席できないという規定があり、成績不良者には早めに別の道を探したほうがいいよと、肩たたきで放校にするというのは非常に希ではありますがあります。非常に希な状況ですが、それぞれの大学でいろいろな留年に関するポリシーを持っていて、今おっしゃったような、その具体的な留年に関する数字については恐らく全国医学部長病院長会議で統計は取っているのかもしれませんが、今、手元にありませんので分かりません。

IRT43未満の学生は、先ほどおっしゃったように4分の3は頑張って、最終的には国家試験に合格します。CBT4年生の最後辺りにやりますので、運動とかクラブをそこまで一生懸命やっていて、ほとんど勉強しなくて、それ以降に国家試験が目の前に迫ったら、ものすごい勢いで勉強して、ほとんどトップに近い成績を取るような学生も、もちろんいます。ですから、必ずしも全部がCBT受験時最後にいたら医師国家試験は絶対受からないかということはないというのは、先生の御存じのとおりです。

 再試験のIRT値については、これは高木先生のほうがご存じと思いますが、もちろん低いとは思いますが、そこら辺はいかがでしょうか。

○高木委員 実は余りデータを持ち合わせておりません。というよりも、私たちの所では個々のデータ自体は余り解析しないことになっておりまして、特に再試験の場合には、再試験の学生に新しい再試験用の問題を送付します。それでやっていただいて採点結果を返却するのですが、その後のことについては各医学部で判定していただくことになっております。しかも、IRTの標準スコアが43というのはまだ決まったばかりですので、再試験学生のデータについて次にどうなっているかというのは、今のところまだデータ的には持ち合わせておりません。

○本橋委員 分かりました。

○中谷委員 以前のCATOからの報告にデータがあって、大体再試験ではIRT8上がるそうです。35だった人が43になり得る可能性はあるということです。ですから、42だった人はIRT50まで上がることになります。もちろん、本人がどのぐらい勉強するかに関わってくるわけですが、そのぐらいまでは上がり得るという統計が前にあったように記憶しています。

○本橋委員 ありがとうございました。

○井廻部会長 中谷先生、そうしますと一応、この共用試験は標準化されていると。そして、平成27年度には確実に全国の大学がこれをやるだろうと言ってよろしいのでしょうか。

○中谷委員 ここで確約せよと言われても私は困るのですが、そのようになるだろうと予想しております。

○井廻部会長 そのほか御意見はありますでしょうか。今の共用試験が一応、標準化は大丈夫ですと。そして、平成27年度には全国でやられるであろうということを前提にして、国家試験、出題に関して数をどうするかという議論に持っていっても大丈夫ですか。委員の先生方、何か御意見はありますでしょうか。事務局から何かありますか。

○清水委員 一般市中病院におりますと、いわゆる6年生のときの選択実習と言われて、クラークシップと言われているような学生の実習をお引き受けするのですが、再試験がいつごろ行われて、恐らく5年生の多くの病院でやられているベッドサイドに間に合うように行われると理解してよろしいでしょうか。

○中谷委員 CBTでしょうか。

○清水委員 Student Doctorのライセンスを頂ける時期です。

○中谷委員 CBTの再試験というのは、恐らく4月になる前にやっていると思います。ですから、共用試験実施評価機構が一番忙しいのは3月と2月で、これらの月の土曜日辺りは多くの大学でCBTにおいてIRT43に満たなかった学生が、再試験を受けます。それぞれの大学で、再受験者が1-2人の大学もあれば、20人の大学もあるのかもしれませんが、そういう人が再試験を受けているわけです。従って、最終的には認定証を発行するのは、大体3月、4月が一番多くなっております。遅い大学では、4月から実習があって、その開始に間に合わない場合もあるのですが、数週間遅れぐらいで、ゴールデンウィークまでは大体、学生の手元に認定書が届いると考えてよろしいと思います。

○清水委員 ありがとうございます。そうしますと、少なくとも実習に出ている方たちはもう持っているものであると認識していいということですね。

○中谷委員 そのとおりです。

○清水委員 ありがとうございました。

○井廻部会長 国家試験の出題数については、共用試験の標準化を基礎にして、具体的な問題に関しては国家試験の詳細に触れるところがありますので、非公開のワーキンググループで引き続き検討していきたいと思いますが、よろしいでしょうか。ありがとうございました。

 もう1つの大きなテーマでありますOSCEについて、医師国家試験受験資格認定も一緒にこれから審議を進めていきたいと思います。まず、伴委員から資料4について御説明をお願いいたします。

○伴委員 資料4を見ていただきながら説明していきたいと思います。医師国家試験における実技試験、これまでの改善報告書でOSCEがその方法としては妥当なものではないかと言われているわけですが、そのことについてと、先ほど実習の長さに関して、日本で分野別認証というものが開始されているというお話がありましたが、それの1つの引き金になったと思われますECFMG2023年度からのリクワイヤメントについて、少しお時間を頂いて説明したいと思います。一応10分間で説明すると言われていますので、その時間を守ってその範囲内で説明いたします。

 スライド2ですが、日本でどのようにOSCEが展開されているかということについて書いてあります。OSCEというのは日本語では「客観的臨床能力試験」と言われていますが、1994年に私が筆頭著者で医学教育誌に投稿したときには、もっと違う名前を書いて出していたのですが、そのときに編集委員会でこのようなネーミングが適切であるということから、以降この名前が使われています。

 歴史的には、今日は国家試験の話ですので、国家試験のことについてだけ述べさせていただきますが、1992年にカナダで国家試験に導入されたのが最初です。米国ではECFMGが外国の医学部卒業者だけをターゲットにしたClinical Skills Assessment1998年から導入しました。NBMEというのは、National Board of Medical Examinersということで、USMLEという米国の医学生が通常受ける試験で、これは国家試験のようなものですが、国家試験ではなくて、第三者であるNBMEが作成している試験です。そのNBMEが米国の医学生に対しても実技試験を導入した2004年からは、外国の医学部卒業生も米国の医学部卒業生も、等しく同じ知識の試験、実技の試験を受けるというようになっております。これが2004年になります。韓国で国家試験にOSCEが導入されたのが2009年で、カナダとか米国は、文化的背景とか医学部教育のシステムも違いますので、やはり日本が今後どのようなことを考えながら国家試験へのOSCEの導入、あるいは国家試験に代わる形での医学部卒業時点での実技試験の導入を図るべきかというのは、一番参考になるのは韓国の動向かと考えております。

 韓国の国家試験について、簡単に報告をさせていただきます。4番のスライドには、患者診療をするステーション、ステーションというのは課題が出される場所と御理解いただいたらよろしいのですが、臨床実技、これは患者を相手にするのではなくて、心肺蘇生をするとか、あるいは心電図をとるとか、静脈採血をするとか、そのような臨床実技のステーションが6つあって、下に書いてあるように、患者診療する場合には10分間、実技をする場合には5分間です。患者診療の場合は10分の患者とのやり取りをした後、例えばカルテを書いたりとか、鑑別診断のための検査を選択したりとか、診療後の課題が出されて、全部で12ステーション、全部を足し合わせると各ステーションでの準備時間1分を入れると158分と、2時間半ぐらいの時間をかけてやっているというのが現状です。

 患者診療のステーションに関しては、ブループリントを作成して、スライド5にあるように、それぞれの器官・系統別疾患としての急性・慢性、終末期などということに分けて、偏りなく課題が出るような工夫がされております。

 次ページで、患者診療のステーションでは、通常、患者への対応、しっかり病歴が取れているか、あるいは身体診察はきちっとできているか、あるいはその結果を説明できているかということを評価の対象にしております。そして、一般的なコミュニケーションとして的確な質問、積極的傾聴、患者の立場への配慮、患者との情報の共有、ラポールの構築とプロフェッショナルリズムということを、「患者への対応」では更に細かい項目として検討しているということです。

 診察の仕方に関しても、清潔さ、患者への配慮、診察に当たっての声掛けということを「診察の仕方の丁寧さ」ということで、項目を挙げて評価をしております。臨床手技に関しては、そこに掲げてあるような、いわゆる採血とか注射の手技です。そのほかに各種の検査、診察、緊急の手技、これは心肺蘇生等に代表されます。あと、外科手技みたいなことです。共用試験で行われている臨床手技にほぼ準じたものと理解しておいていただければいいのかと思います。

 スライド10は、具体的にそれがどのように課題として順番に出されていくかということを図示したものです。評価者に関しては、患者診療に関してはSPが評価をしております。SP2人ペアになって、1人がマジックミラー越しにそのやり取りを見ながら評価をするということで、患者・医師関係の評価に関してはどのように感じたかということで、実際に患者として受験生の相手をしているSPが評価しています。すなわちSP2人、役割分担して評価しているというやり方をしております。

 臨床実技に関しては、各医科大学から教員が出てきて評価をしているということで、全てのパフォーマンスを録画して、実際の質の評価とともに、模擬患者がきちんとパフォーマンスできているかどうかというフィードバックにも使っているようです。

 診療後の課題に関しては、先ほど述べましたように、鑑別診断であったり、後の治療計画であったりということがそこに書いてあります。現状では、建物は1つで、2つのフロアに分かれて1日に3回転して、ですから、それぞれのフロアで3回転ですから、6回転されていることになっております。

 実際の試験の実施するのは、National Health Personnel Licensing Examination BoardNHPLEB)で、これは第三者機構です。これが医師の国家試験だけではなくて、そのほかの医療従事者の国家試験も、全部まとめて管轄しているという第三者機構が作られております。期間は9月末から12月初めまでということで行われており、模擬患者の訓練もNHPLEBで行われているというのがスライド16に示されております。

 スライド17には、模擬患者のトレーニングの詳細が書いてありますが、これは省略いたします。後でまた御覧ください。

 配点ですが、患者への対応が600点、実技が300点ということで、患者への対応のそれぞれの配点の分配は、病歴聴取、医師・患者関係ということで、先ほど出ておりました診療後課題が5%となっております。合格率は比較的安定しており、2009年から導入されており、そこに書かれているようなパーセンテージで、まず実技試験を受けた後、筆記試験を受けるという順番で行われております。費用は飛ばします。プラス面は、実際にはスキルスラボでの教育が増えて、患者又は模擬患者を相手にした実習とか試験を各大学がやっているところが増えてきました。カリキュラムも、医療面接、身体診察、臨床手技とか外来実習などが増えてきているというプラスの評価がある反面、実技試験の準備のための予備校がもう既に幾つかできているということがありますし、一部の学生は国家試験の実技試験のために、病棟や外来ではなくて、スキルスラボに出入りしているという現状が出現しています。各学校の臨床実習は、国家試験の実技試験を意識したものになっているという傾向があるというマイナス面があることが分かっております。

ECFMGについて、簡単に報告いたします。写真の24は私が真ん中に写っているのですが、右にいる人がECFMGCEOEmanuel Cassimatisドクターです。ECFMG2023年以降は各大学がその国できちっとした認証を受けていることが前提条件になるということで、スライド26に示しているLCME又はWFMELCMEというのはアメリカの認証機関なのですが、WFMEはインターナショナルな所で、最終的には今LCMEWFMEの認証を受けたという形になっておりますので、WFMEの基準進むことになると思います。そもそもそもそもこのようなECFMGの対応が出てきた背景は、スライド27に掲げてあるように、いろいろな国々で医学部がどんどんできているという、非常にクオリティコントロールが求められるということであり、このような医科大学がそれぞれちゃんとした認証の機関から認証を受けていないと、USMLEStep3が受験できない。Step3が受験できないということは、実際には臨床ができないということなのですが、レジデンシーに入れないことになりますということです。

 スライド29ですが、日本では先ほど中谷委員から御紹介がありましたJACMEで認証を統一して、各医科大学が認証を受けると。ですから、WFMEが認証するわけではなくて、日本ではJACMEWFMEの認証を受けた上で、各医科大学を認証するという構図で走っております。

 資料32ですが、今JACMEの設立に対して、日本医学教育会、文部科学省、その他の関連団体、厚生労働省、医学教育振興財団がサポートした上で、実施のノウハウをどう提供を受けるかという候補者が大学基準協会、大学評価学位授与機構、日本高等教育評価機構という所が挙げられております。私が理事長をしております日本医学教育学会は、WFMEの基準を日本に適用できるように、日本語訳ではなくて日本版ということで、そのまま訳したものではなくて、日本に適用して齟齬のないようにという形での基準を提供しているという現状です。

 「おまけ」と書いてあるのは、今、日本で日本人がECFMGの認証を何人ぐらい受けているか。これは認証を受けている人ですので、受験生は多分この5倍ぐらいいるはずです。以上です。

○井廻部会長 引き続き、山口委員から資料5の説明をお願いします。

○山口委員 資料5に沿って説明いたします。私たちCOMLでは模擬患者の活動を1992年から取り組んでまいりましたので、模擬患者を実施している立場の経験を通して、OSCEの現状と課題をお伝えしたいと思います。

 スライド1にあるように、流れとしては1992年から模擬患者に取り組んでまいりまして、OSCEが開始されてからはOSCEにも模擬患者を派遣しております。これまでのところでは、医学部の講義を含めて、模擬患者の派遣回数は1,300回を超えており、OSCEにも310数回派遣をしているところです。

2番目のスライドですが、これはこれまでに交流会を開いて、他の模擬患者のグループと交流をしたり、あるいは過去にいろいろな大学で模擬患者を養成するお手伝いをさせていただいた経験から感じていることですが、これだけ時間がたってきているにもかかわらず、模擬患者のレベルがまだ一定していない現状があるように感じております。特に人数をそろえないといけないということで、大学で養成されている所は、もちろんきちんとしている所もあるわけですが、中には誰でも来てくれるのだったらOKだという大学もあれば、事前に練習や模擬患者間のすり合わせもせずに、「この設定を読んで覚えてきてください」と渡されて、当日はいきなり始めるという大学もあって、実際に活動している模擬患者がこんなことでは不安だという声をあげているのも、実際に複数耳にしております。模擬患者の養成者次第で、模擬患者のレベルが非常に大きく変わってくるところかと感じております。

 実際に模擬患者を養成する大学、特に教員の方が、模擬患者に求めている内容のレベルに非常に違いがあります。毎年OSCEの担当者が代わり、それに伴って模擬患者の養成者も代わる大学があったり、必ずしも模擬患者の養成に熱意がある教員が担当になっているとは限らない大学があったりするようです。そういう中で、模擬患者として活動を継続することに対しても不安があるという声も聞こえてまいります。実際に大学に模擬患者グループを立ち上げるときには、一生懸命力を注いでいた教員の方がいらっしゃっても、その方が異動をなさると、途端に大学側の模擬患者への熱が覚めるということもありまして、その辺りが課題かと思っております。

 スライド4番ですが、実際にOSCEに模擬患者を派遣している中で、OSCEの評価者の問題も感じています。各大学内部から、あるいは外部の評価者が学生の評価をされるわけですが、どうも模擬患者として参加をしていると、大学関係者のかき集め状態で、とにかく講座から1人ずつ出してくださいとか、中にはこんな役割は本当は嫌なんだということを露骨におっしゃる教員の方もいらっしゃるように聞いております。実際に学内で事前研修はあるようですが、出席が義務付けられている大学もあれば、そうでない大学もあるということで、もちろんきちんとしている大学があることは存じておりますが、そうではない所も散見されるということのようです。

 評価者の中には事前に採点の方法であったり、チェックの資料を渡されていても読んでいなくて、「これ、どうやってやるの」と直前になっておっしゃるような方がいらしたり、多くの場合は外部評価者になるための講習会には、きちんと学内で経験を積んだ方が出てこられていると思いますが、中にはそうではなくて、大学から行けと言われて、そんなに経験を積んでいないのに外部の評価者として、講習会に出たから外部に行けということで、時折、実際に問題が起きているということもあるようです。

 実際にOSCEの運営に関わらせていただいている中で、模擬患者として感じていることとして、1回のOSCE実施時にかなり多くの模擬患者が必要になるわけですが、評価者と模擬患者の意思疎通が不十分なこともあります。特に特徴的なのは家族歴を聞かれたときに、感染症を想定して同居の家族のことを聞かれているのか、あるいは遺伝的な要素を考えて血縁関係に関係することを聞かれているのかが分からないときに、模擬患者が答えないと、何で設定には書いてあるのに答えないんだという齟齬が起こっているようなこともあります。練習OSCEと本番OSCEの評価者が異なっておられるような場合には、学生に対するアドバイスに一貫性がなかったこともあるようですし、OSCEの担当者は、とにかく評価者の人数をそろえないといけないということで、質よりも人数に力を入れざるを得ないという現状も運営上はあるようです。

 実際の運営自体は共用試験実施評価機構の関与で、年々スムーズになってきていることを模擬患者も実感しておりますが、この後、少しお話しますように、運営、設営に低学年が関わっていることによる問題も起きているように感じております。

 そんな中で、OSCEをどう位置付けるかということですが、スライド6番です。共用試験のOSCEの医療面接は、もちろんよほどのことがない限り合格すると聞いております。これは学生の質問項目がほぼ同じ順番で、同じ内容を聞いてくるという、とてもマニュアル的な内容になっていて、そこさえ聞いていればある程度合格できるレベルで、初診のみですから診断まで至らないということがあります。ですので、卒前や国試に導入するとなれば、このままのレベルで実際によしとしてしまうことには問題があるのではないかと、模擬患者活動に関与している立場からは感じています。

 特に国試にOSCEの医療面接を導入するとすれば、一体どこまでのレベルを求めるのか。ここの議論が欠かせないと思いますし、実際に国試となってくると、予算の問題とか、どこまで実現の可能性があるのだろうということ、それから先ほど申し上げたような模擬患者のレベルを一定させるという辺りにかなり力を入れないと難しいのかと思う一方で、それでは卒前のOSCEでいいのかということになると、共用試験レベルの繰り返しになれば、それでは卒前OSCEとして国試の代わりにするという位置付けでは、余りにもレベルとしては問題があると思います。卒前のOSCEとして実施することになれば、かなりレベルを上げていかないと意味がないのではないかということを感じています。

 そんな中で4つ目のポツに書いてあることです。皆さんも御存じかと思いますが、ある大学でOSCEの試験問題漏えい事件が起こりました。私は共用試験実施評価機構の理事も務めさせていただいていて、漏えい問題の調査委員を仰せつかっております。ついこの間、実際に現地調査ということで現地に行ってまいりました。簡単に言いますと、4年生から依頼を受けた3年生2人が設営中の会場に警備員をだまして中に忍び込み、無人ではなく大学関係者複数名が最終の試験会場設営作業をしている状況の中で、人目を忍びながら侵入して貼り出されていた課題を盗撮したと。3年生が盗撮した写真を4年生に送り、4年生は入手した課題の内容を予想問題として加工し、4年生全員にメールで送ったということの実態が見えてまいりました。初めカンニング問題と聞いていましたので、ここまでひどくないのかと思っていましたら、かなり悪質だなということがわかってきました。さらに現地を拝見してみますと、何という倫理感の欠如かと、とても悲しい思いがいたしました。トライアルとはいえ、Student Doctorという申請をする年に行われたOSCEということを考えると、Student Doctorが始まっているのだとしたら、大学側としても今までとは違うという思いで臨まないといけなかったのではないかと思うのですが、そういったことも感じられませんでした。

 ですので、もしこれが卒前のOSCEとして、国試だったら法の下に基づいての試験が行われると思いますが、卒前のOSCEと位置付けるとすると、OSCEの在り方自体をもう一度、徹底的に見直さないとならないと思います。このような試験問題漏えい事件は、どこの大学でも起こり得る問題だとお聞きしていますし、そこまで悪質ではなくても、作業に関係しないステーションに紛れ込んで課題をじっと見ている低学年がいると。それが漏えいにつながっているかどうかというところ真偽のほどは定かではありませんが、そういうところを目撃している模擬患者も実際にいることを考えると、低学年を使った設営準備で、卒前OSCEというのはあり得ないのではないかと、私自身は思っております。もし、国試ではなく、卒前OSCEでよりレベルの高いOSCEを実施するとなれば、学生の取り組む姿勢と大学の緊張感、運営の在り方といったことについて、かなり厳しい見直しが求められるのではないかということを、今回、漏えい事件もありまして、特に強く感じましたので、そのことにも触れさせていただきました。以上です。

○井廻部会長 なかなか重い問題を提起していただきました。引き続き高木委員から、資料6の説明をお願いします。

○高木委員 資料6を御覧ください。私は、日本語診療能力調査の副委員長をさせていただいております。本日は奈良委員長がアメリカで、国家試験の関連の会議がありましてそちらへ行っていますので、私が代わりに御説明させていただきます。

 外国医学部出身者に対する国家試験制度ということです。スライド2を御覧ください。外国において医科大学を卒業した者又は医師免許を取得した者が、日本で医師国家試験を受験するためには、医師法の規定に基づいた厚生労働大臣の認定が必要ということで、この調査を行っています。

3ページを見ると、日本国内では大学医学部を卒業すると、そのまま医師国家試験の資格ができますけれども、そうでない外国の方は、外国の大学の医学部を卒業し、日本の医師国家試験を受けたいという場合には2つのルートがあります。1つは、予備試験をやっていただくのと、それからその本試験ということで、日本語診療能力調査を行うということです。予備試験をやった後に、今度は1年間の実地訓練を日本の教育施設でやってもらいます。それが終わると医師国家試験が受験できるシステムになっています。

 本試験と予備試験とどこが違うかということが4ページの表にまとめてあります。本試験の場合には6年以上、進学課程が2年以上、専門教育が4,500時間といろいろ規定があります。これをクリアできていれば本試験が受けられます。まだあります、医学部卒業までの修業年限とか、医学部卒業までの年数とかいろいろあります。それを、全部免許室のほうで、各個人に対して調査をし、認定しています。この大学、この医学部を卒業している場合、この学生については本試験でいいだろう、これについては予備試験にしましょうということで、大まかなものは決まっておりますので、そこでやっていただいています。

 スライドの78を御覧ください。そのようなことがありますので、当初は日本語を用いて診療するために十分な能力を有しているかどうかを調査しましょうというのが、日本語診療能力のことでした。日常診療において関わる機会の多い主要な症候を呈した患者に対する医療面接等及び当該診療に関する記述や説明を行い、次の各領域において、調査委員2名が各々4段階の評価を行っています。

 評価項目はアからオまであります。診療を一緒にやっていただかなければいけませんので、患者は当然ですけれども、その次に医療従事者というのがあります。医療従事者の話が聞ける、医療従事者に診療内容を正確に説明できる、診察する能力もその他の所見を医療従事者に適切に説明することができるというような、患者だけではなくて、一緒に働く医療従事者に説明ができたり話せたり、聴けたりする。

 もう1つは、診療録を書いていただかなければいけませんので、日本語で適切に書く能力として診療録を書いていただく。日本はかなり難しい医学用語がありますので、それもしっかり読んでいただかなくてはいけないということで、読み取る能力として、日本で使われている医学用語を正しく理解した上で音読できるということも、この評価項目の中に入っています。

 このアからオの5つの評価項目について、3は日本語で医学教育を受けた者と変わらない。2は一部に困難はあるが診療の支障とならない。1は全体に困難はあるが、かろうじて問題を克服することができる。0として誤解を生ずる危険性、診察上の不都合があるということで評価をしていただいています。

 どのような内容かはスライド10です。現在は3ステーションで行っております。医療面接が2ステーション、それから身体診察を実際にやっていただいているのが1ステーションです。ですから、全部で3つのステーションを受験していただきます。

 次のページに、日本語診療能力の課題について書いてあります。12ページを御覧ください。伴先生から御説明がありましたけれども、韓国では12やっていますけれども、ここでは時間的な制限もあって3つのステーション、医療面接2つと、身体診察1つです。ですから、これだけのステーションで本当によろしいのかどうか。シナリオの内容については、評価者である医師が作成し、委員会全体でブラッシュアップしております。シナリオの内容的はかなり充実しております。ただし、シナリオはできているのですけれども、日本語診療能力ということで先ほどお話したように、日本語で患者さんに話ができたり、日本語で医療従事者や関連のコメディカルに話ができる、若しくは聴けることを中心にするのか、診療能力を問うのかというところがなかなか難しい問題です。その辺については、適切なシナリオを作成しているつもりです。

 もう1つは、そのシナリオのプールですけれども、これは受験者がいると必ずその漏えいというところがあります。次の年に、こういう問題が出ましたというのが必ず出てまいりますので、シナリオについても、毎年毎年新しいシナリオにするのか、それともプールしたシナリオでよろしいのかというのもこれからの課題ではないかと思います。

 もう1つは診察能力の適正な評価です。評価項目に従って、評価者が先ほどお話した項目に従って評価します。この場合に模擬患者役と、指導的な、受験生かた質問が来た場合に、診察したときにはこうでしたよという所見を述べる方がいます。これは両方とも医師です。模擬患者役も指導医役も一緒ですので、割と細かいとろこまで手が届くというか、もしシナリオにないようなことを聴かれても、自分で作成しておりますので、それについては適切な回答ができています。信頼性は高いと思っております。先ほどから申し上げておりますように、これは日本語の診療能力なので、それだけでいいのかという疑問を持っています。

 それから実施体制ですけれども、医療面接8委員と、身体診察4委員によって2日間で行っております。お配りした参考資料の13ページを御覧ください。平成26年度まで本試験の受験者数が、このように徐々に増加しております。平成13年度はたった8名でしたので、非常に少ない評価者で十分間に合いましたけれども、今年度はもう55名になっておりました。次のページの上のほうの本試験の認定です。国籍別を見ると、中国が15名、韓国が6名というのは分かるのですけれども、日本国籍が32名に増えています。学校の所在地はどこかというと、中国は当然中国、韓国は韓国です。その下のハンガリー等が22です。今、北欧で医学部を創り、そこへ日本人が行って、そこで医学教育を受けて、その方が日本に帰ってきて、医師国家試験を受けるようなことがだんだん増えてまいりました。これが55名です。

 昨年が39名でしたので、今年は16名増えています。聞いたところによると、毎年毎年増えていくだろうということです。そうすると今申し上げた、非常に少ない人数でこの本試験ができるかどうかというのも非常な問題ではないかということです。

8ページの14OSCEのステーション数を適正数とし、かつシナリオを確保していくことが望まれるのではないか。今行っている日本語診療能力を、今後はOSCEの国家試験等へ拡大するには、評価者とか模擬患者の養成制度をしっかり構築し、十分なトレーニングにより、標準化が必要だろう。これは、先ほど山口先生がおっしゃったことと同じです。これらのことが、日本語診療能力調査に関する導入の結果です。よろしくお願いいたします。

○井廻会長 OSCE及び日本語診療能力試験についてお話していただきました。日本語診療能力試験は私の記憶だと、国家試験でOSCEを入れるか入れないか、できるかどうか一種のトライアルのような形で導入されたと記憶しているのですが、そういうことですね。

○高木委員 そのとおりです。それに従ってどのような運営をしたら一番よろしいかを行っています。

○井廻部会長 今の説明に対して御質問、御意見等がありましたらお願いします。伴先生に質問なのですが、韓国でのOSCEで、SPが評価者になっていました。そこに医師は入ってこないのですか。実技でないほうです。

○伴委員 患者診療のほうはSPだけです。このやり方はアメリカのやり方と一緒です。アメリカのNBMEのクリニカルスキルズの部分の評価も全部SPがやっています。カナダは医師がやっています。それぞれの言い分があって、良いところと悪いところがあると思います。

○高木委員 診療能力の、医療面接でない身体診察のほうは先ほどお話したように医師がやっておりますので、実際に模擬患者のどこを触っているのか、どこを聴いているのかがよく分かります。ですから、実際は聴いているようなふりをしていたり、触っているようなふりをしていても、医師が実際に患者役をやっているということは、日本語診療能力に関しては良いことではないかと思っています。

○堀田委員 SPの役割は非常に重要で、実際問題として現場では頼ってやっています。模擬患者をやっていただく人から見ると、医学生の態度が必ずしも協力するに及ばないような者は結構あるというお話を聞くと残念です。医療面接をある程度マニュアル化をしてやっていくというのは、ある程度仕方ないです

 そういうものに流されてしまっている現状は、医療の本質は何かというところで、これはOSCE以前の問題だと思っています。そういう意味で倫理教育というか、そういうものについて、もう少し深める必要があると、先ほどお伺いしていてつくづく感じました。これこのことは卒業してからでも傾向はあります。マニュアルにどう書いてあるかということではなく、まず自分の頭で考えろと言いたいようなケースが結構あるのはちょっと心配しています。

○中谷委員 山口先生から、この間の会議では、漏えいというのははっきり分からなかったのですけれども、本日は内容をお聞きしてよく分かりました。これは倫理的な問題で、それはOSCE以前の問題だと思います。もちろん倫理というところも、OSCEの一部分ですから、そういうことをやった大学は全員不合格ということで、やり直しか、Student Doctorの認証を渡さないというぐらいの処置はせざるを得ないような状況だと思います。二度とそういうことが起こらないように願っております。

 システムとしてそれをどうするのか、共用試験実施評価機構がモニターを送ってやっていますので、そこで二度とそういうことが起きないようにいろいろ注意していただいて、国民の信頼を裏切るようなことは決してさせないようなことでいきたいと思います。全国医学部長病院長会議でも、そういう方向で考えたいと思っています。内容的には、診療手技などはずうっと永年的に変わりませんので、低学年の学生を試験場に絶対に入れては駄目かどうかというのは、またこれは議論すべき問題なのかもしれません。ただ、先ほどおっしゃったように、忍び込んで写真をとるという、何か訳の分からない状況になっているのは倫理的問題だと思います。

○山口委員 実際に調査とヒアリングをしてまいりました。実はモニター機能も働いていなかったというか、外部から入っているモニターの教員にOSCEの実施途中で試験問題の漏えいが疑われたのに相談もしていなかったということが分かってまいりました。そのことについては、例えば試験の課題は当日の直前に貼る、モニターに何かあったら必ず相談するということを、次回からのOSCEの運営に向けた注意事項として共用試験実機構が盛り込んでくれるというお話がありました。

 先ほどもお話がありましたが、今はスマホなどさまざまな便利な機器があるわけですが、それを日常生活の当たり前の道具として使ってきた世代の方たちが医学部に入ってきて、できることと、して良いこと悪いことの判断がなかなか付かなくなっているのかと、ちょっと由々しき事態かと思っています。実際にOSCEとか、それ以前の問題であることは確かなのですけれども、患者の立場から見て、そういう倫理感の欠除した人に将来的に診てもらいたくないという思いもあります。今回の出題数の問題もありますけれども、果たしてどうやってその倫理の面をきちんと見ていくのかということも、問題としては課題としてあるのではないかと思っています。

○本橋委員 OSCEの問題、先ほどの国試か卒前OSCEかというところは、これからこの場で更に議論されていくことだと思います。私がこの問題を考えていくときに、国試をOSCEに導入する場合に、どういうフィロソフィーでそれをやっていくのかということを議論したほうがいいと思っています。

2つの考え方があると思うのです。1つは国試に導入してOSCEをやるといった場合には、一人一人個人の倫理感とか行動能力の到達度を見るということだと思うのです。ところが卒前教育で、例えば大学の医学部で実際に任せた形で認定していく場合には、医学教育の質保証という面のほうがむしろ強いような気がするのです。私は大学にいた人間としては、大学のオートノミーみたいなのを考えれば、国試にOSCEを導入するよりも、例えーば卒前教育のところで、一定の質保証をした上で卒業要件に加えるという形のほうが、より現実的なような気がするのです。

 伴先生にも聴いてみなければいけないのですが、韓国で実際にOSCEをやっているときに、地域ごとのステーションをどうやっているのかを考えてみた場合に、国家試験でOSCEをやる場合にも、仙台だとか東京だとかコアになる所があってやるとしても、結局その地域ごとの教員だとか大学の先生だとか、基幹病院の先生たちが入ってくるわけです。そうすると、今の47都道府県あるような国立大学、国公大学を含めて47あるわけです。大学で質保証を、それは第三者機構が認定をした上で、OSCEをきちんと全国レベルでやっているかを踏まえた上で、各大学がある程度の質保証ができれば、そこで卒業要件としてやるほうが、いろいろな意味で現実的なのかと。

 先ほどの倫理的な問題についても、最後のところで国家試験でやるというよりも、そこのところで、例えば卒前に2回ぐらいOSCEをやったときに、そういう問題が起きたときの再教育というのも、学校のレベルできちんとやるなり、ペナルティを課すということがあり得ると思うのです。これはまだ結論が出るわけではありませんけれども、山口委員からも、どちらがいいのかという議論があった中で、多分どちらの面を強調するかということです。その辺のフィロソフィーを少し議論しておいたほうがいいのかと思い、私としては本日この場でお話しようかということで意見を述べさせていただきました。

○伴委員 本橋委員の御意見に対する直接のお答えにはならないと思うのですが、本日は述べませんでしたけれども、イギリスないしイギリス圏は、筆記試験も含めて国家試験はないです。各大学が全部責任を持って評価しています。そういうやり方だと、イギリスでは、臨床実習が行われた各科が、自分たちの領域として重要と思われるステーションを提供して、それで学生たちが20なり30なり、多い所は50ぐらいのステーションを受けて卒業していく。これは、各大学の中でやることですので、オールイングランドでやるものでもないのです。そういうところのコストというものの制限がないので、そのようなことができる。彼らは、国家試験をしようという動きはほとんどありませんし、それは筆記試験も含めてです。それぞれの良いところ悪いところ、日本は割と普通の受験の様子を見ても、韓国の動きと非常によく似た動きになるだろうと思うのです。

 これは全然話題が違いますけれども、メディカルスクールという問題があります。韓国では盧武鉉大統領の時に、トップダウンで、各大学にメディカルスクールの導入をかなり強くプッシュして、多くの大学がメディカルスクールを導入し、カレッジを卒業してからメディカルスクールに行く形にしました。私たちから見ていて、日本で同じようなことをしたら、カレッジが恐らく予備校化するだろうと思っていたのですが、韓国はそのとおりになって、医学部へ行く人たちは、そのカレッジの4年間を予備校として活用しています。非常に優秀な人は海外のカレッジに行って、そして帰ってきてから韓国の医学部に行く。この人たちは、ものすごく英語が上手になって帰ってきているから、それはすごくよかったのだと言っている人もいます。でも、全体としては韓国のメディカルスクール構想は導入を失敗し、そして今はほとんどが6年制に逆戻りしようとしています。

 その辺はPBLにしてもそうなのですけれども、欧米でうまくいっているPBLは、日本でPBLとしてうまくいっている所は必ずしも多くない。プログラム問題立脚型の学習、スモール学習方法です。ですから、その辺の歴史とか、受験の状況とか、メンタリティとか、医学教育の制度を考えながら、日本には共用試験実施機構という、第三者機構としては一番評価のクオリティ・コントロールとしてはしっかりしている所がありますので、そのような存在があることも含めて、これから国家試験か、あるいは卒前の国家試験でない形での実技評価かというのを考えていく必要があるかと思います。

○清水委員 論点からちょっと離れてしまうかもしれないのですが、伴先生にお聞きします。韓国の国家試験OSCEは、同じ場所で4,000人の学生が評価者も全く同じ方々がなさるのでしょうか。その評価者のトレーニングはどのようになさっているのかを教えてください。

○伴委員 評価者のほうは先ほど言いましたように、患者の診療に関わるところは模技患者が参加しています。模擬患者はある限定された人数です。ただ、実技評価のほうは、それぞれの医学部から教員が出てきておりますので、同じ人がずうっと評価しているわけではないようです。

○清水委員 その評価者の評価の標準化はどうやって担保しているのかを教えてください。

○伴委員 模擬患者のことについては先ほど飛ばしてしまったのですが、スライド1617に書いてあります。NHPLEBという第三者機構が独自に募集し、その人たちは大学教育には一切関わらないという形で宣誓してもらった上で、それぞれの課題が少なくとも34人のSPが演じられるように、病気になったら他のSPがすぐに入っていけるように訓練しています。トレーニングのやり方としては、課題別の基礎トレーニングを134時間を、4回から6回ぐらいやってスタンダーダイズするということをやっています。

 いわゆるコミュニケーションの評価に関しては、個々の課題についてではなくて、一般的なジェネリックな評価基準としてトレーニングを受けるという形でやっております。その辺のところはかなりスタンダーダイズされていると思いました。

○清水委員 今、私は研修用OSCEの課題作成とか、評価者に関わっています。20人とか40人の研修医の評価をするのにさえ、その標準化はとても大変です。もし日本で8,000人の学生をどんな格好にしてもOSCEをやるとしたら、その80大学からどのようにして評価者を集めるのかとか、標準化の手法がとても大変だと思ったのでお聞きしました。実際的な運用はこの後になるのかもしれませんが、その運用なくては実施を考えられないのかと思ってお聞きいたしました。

○井廻部会長 そこも含め、今後検討ということになると思います。

○堀田委員 先ほど本橋委員がおっしゃったように、OSCEを国家試験のレベルに持っていってしまうのか、あるいは大学の責任として一定の質を保証するという方向に持っていくのかというフィロソフィーはとても大事だと思います。結局のところ私は後者のほうがよいと思います。要するに、医学教育は継続的に改善していくプロセスの中で教育すべきで、一発勝負で通るか通らないかというところに標準を合わせていくと、これは選抜試験みたいな話になってしまいます。基本的に国家試験というのは、各大学がしっかり教育したプロダクトをきちんと確認することでいいのではないかと思うのです。

 これは出題数の関係にもなるのですが、たくさんの出題にする方向よりは、やはり大学でやってきたことをきちんとそれが保証できるかというレベルで考えていいのではないかと考えます。これは、これから議論する内容ですが、先ほどフィロソフィーというお話を伺ったので、発言させていただきました。

○高木委員 情報だけですが、共用試験機構では、伴先生がお話されたような、臨床実習前のOSCEは大体浸透しているだろうと。山口先生からは、多少儀礼的だ形式的だとおっしゃられるかもしれませんけれども、大体80校ではそこそこの成果が出たのではないかということです。ポスト・クリニカルグラークシップ・オスキー(PC OSCE)でしょうか。先ほど中谷先生からお話がありましたような、多くの医学部では臨床実習がクリニカル・クラークシップに移行し、大体6年生の春頃、若しくは夏前にクリニカル・クラークシップが一応終わりますので、そのときにOSCEをしましょうと。そのOSCEの形態はこういう具合にしたほうがよろしいのではないかということを検討する部会を立ち上げるということです。大体23年をめどに、このような形でOSCEをされたらいかがでしょうかということです。

 もう1つは皆さんも御存じかもしれませんけれども、今の共用試験のOSCEでは、共用試験機構から、モニターと、各課題のところに外部評価の委員を派遣していて、その大学のOSCE自体が適正な評価をされているかどうかについてはモニターをしているつもりです。そのような形でしていただければ、先ほどから本橋先生や堀田先生がおっしゃっているように、一応質保証的なものではできるのではないかとは思っております。

○小森委員 これから議論していくことなのだと思うのです。高木先生がおっしゃったような卒前OSCEPC OSCE、アドバンスOSCEと、いろいろ中身もあって、歴史もあって、それぞれの持つ意味合いは違うようですが、いずれにせよそういう形の2年間の診療参加型臨床実習の成果を問う。これを大学の責任として行うか、堀田先生と一緒なのですが、国家試験の一部として行っていくのか。ただ、今の議論をすると非常にOSCEに重きを置いて、そして一気に現在の形を変えようと思うと、確かに大変大きなハードルがあるということになってまいります。

 これまでの報告書をずっと拝見してきても、いずれにせよ国民に対する様々な診療的な手技を自分の身に付けているかということと、臨床推論をしっかり身に付けているか。患者さんその他に対する倫理的なといいますかそういうポジション、人間としての質をどう見るのか。これは500題ある○か×か、ABCのどれを選ぶかということではできないということの議論からあったのだと思うのです。ある部分OSCEとしての何を見るのか。フィロソフィーの問題だと思いますし、これからの議論だと思うのです。

 無理だと言いながら、試行的にやっていくことは大事なのだと思うし、そこで何を見るのかということでは、山口委員のように、人間としての素養といいますか、その人の人格を見ていくということは、ABCから選ぶということでは絶対にできないので、そこの部分を国民は求めているのだと思います。一挙に100を目標として、うち304050OSCEに求めるのではなくて、ある部分はOSCEでないと見られないという部分をそこで担保していくことは、具体的な導入としては考える必要があるのではないかと考えています。

○伴委員 追加なのですけれども、1990年代後半から共用試験が始まった2005年までの間に厚生労働省の科学研究費で、いわゆる国家試験へのOSCEの導入をかなり検討していました。それはほぼそのまま今は共用試験に導入されています。その頃は非常にプリミティプな医療面接、あるいは身体診察さえ、日本の医学生は卒前教育できちっとできていなかったのです。国家試験が、あるいは各大学では試験が学生の学修行動を決定しますので、そのようなところから少しプッシュしようという考え方で、国家試験に実技試験を導入してはどうかということを考えてやっていました。

 イギリスのやり方とか、アメリカのやり方とか、あるいはそれを導入した韓国のやり方を見ると、国家試験でドライブされるものは違う方向にドライブされる面もかなりあります。その辺のところを考えて、実際の知識の試験では問えない、ペーパーテストでは問えない能力をどう評価するのかということは、かなりいろいろな側面を考える。もちろん費用の面もあるし、人材の面もありますので、それを有効かつ効果的に生かす評価法を考えていくべきなのだろうと思います。

○神野委員 伴先生がおっしゃったことにも関係しますけれども今の学生、医学部だけではなくて全ての学生は、何か試験があると、それに対しての傾向と対策を非常に立てるのが上手です。伴先生の資料でも、韓国の実技試験の合格率は9596%で、全員合格に近い数字です。もちろん大学の中での医学教育の話もありますが、例えば国家試験にOSCEがあると言っただけで、1年生のときから学生はそれに対応する能力を付けようとするドライブがかかるのではないか。

 そうだとするならば、規模は12ステーションでなくても、ステーションの数が少なくても、あるいは合格率が非常に高いとしても、何らかの実技をもって国家がメスを握る危ない人間とか、針を刺すような人間を国家が認めるというのもありかという気がいたします。

○井廻部会長 各委員から様々な御意見を頂きました。今後のOSCEをどうやっていくかということの基本になるいろいろな御提案を頂けたと思います。これに関しては引き続きクローズドの検討会で検討していきたいと思います。少し時間がありますので、その他に関してですが、先ほど出題数の問題がありましたけれども何か御意見はありますか。

○堀田委員 ちょっと別の議題なのですが、高木先生からお示しいただいた日本語診療能力調査の話です。年々こういう方が増えてきて、今は50人を超えているということです。実際に合格される方はその中の一部かもしれませんが、これも一定の勢力になりつつあると言わざるを得ないです。海外で教育を受けた外国人が日本で診療をするために検定試験を受けたいというのは非常によく分かりますまた。日本人で、帰国史女というのもそれでいいのですけれども、日本国籍を持つものが大学医学部だけのために海外に行って戻ってくる意味は何なのだろうということです。そこが増えてきているのは気になります。それは海外の大学のカリキュラムにしっかり従って、向こうの教育をしっかり現地での言語で受けてきているのか、その辺の実態はどんなものなのでしょうか。

○高木委員 詳しくは知りませんけれども、当然ながら向こうのカリキュラムに従い、全ての教育を受けています。もともと英語で皆さん授業を受けたり、全てのことはしているようです。そして、向こうではEUの免許をそのまま取れます。ですからEUの免許を取って、なおかつ日本の医師国家試験も受けたい。日本で開業したいという先生もかなりいるようです。

 問題は先ほどお話しましたし、先生がおっしゃっているように、これは等比級数的にきっと増えてくると思うのです。補助資料の16ページにも書いてありますけれども、ハンガリー、ブルガリア、スロバキア、チェコ、ルーマニアとすごく増えてきています。1学年でも10人近くいるようです。そうすると、これが50人とか100人とか。今の日本の法律では駄目と言うことはできないようです。そうすると堀田先生がおっしゃいましたように、日本ではちょっと無理かな、でも向こうへ行ったら英語もしゃべれるようになるし、EUの免許も取れる、ましてや日本の免許も今のシステムでいくと取れますということであるとかなり増えてくると思います。その辺りについて私は余り意見を持っていませんけれども、そういう現状はあります。我々としては、増えた場合にはどうやって対応したらいいかと。

 これは調査になっていて試験ではありません。調査になっているから無料で受験することはできますので、どんどん増えた場合に、現有の委員だけでこれができるかどうか。しかも今は2日やっていますけれども、これが200人、300人になったら、今の医療面接、身体診察を3ステーションでやると、3日とか4日かかってしまいます。そうすると評価者や模擬患者役をどう養成するかもかなり問題になっているのではないかと思います。

○堀田委員 そういう物理的な制約の問題もありますし、こうしたケースが増えてくると、1つ分の医学校が海外にあるみたいな感じになりかねないということがあります。そういう問題についても検討する必要があるかと思いました。

○神野委員 その件について、情報があります。私どもは聖隷浜松病院と違って、大人気臨床研修指定病院ではなくて、そこそこ人気臨床研修指定病院をやっています。マッチング等で欠員が出たときの穴埋め対策ということで、そういう方からの問い合わせがあります。ハンガリーの場合も、入学したときに比べて、6年間本当に英語教育で向こうの資格を取る方は、相当絞られています。途中で脱落者はものすごい数がいます。学力は日本の医学生と比べてどうか分かりませんけれども、学力のある方が最後まで残るのは事実のようです。

 卒業が7月になります。そして、これから日本のいろいろな試験等々を考えると、少し時期があります。その間の就学資金等々で、臨床研修指定病院に対して、お宅の病院に必ず医師免許を取った後に行きますので、少し面倒を見てもらえませんかという問合せは、私どもはやっていませんけれども、来ているというのも事実です。そういう動きで、後ろでバックアップする方がいると、英語で教育された方が、日本国内で日本語の診断学、病名を覚えるような、予備校的学校もあると聞いております。

○井廻部会長 事務局のほうで、こういう人たちの合格率が、最近はどのぐらいか分かりますか。

○大渕専門官 認定等、先ほどの本試験認定及び予備試験認定後に、実地修行1年以上やられた方の医師国家試験合格率については、第108回医師国家試験では44%です。

○井廻部会長 東欧で卒業の日本人が本試験認定を受けて国家試験を受けた場合の成績は分からないですか。

○大渕専門官 今この場でお示しできるデータはありませんので、今後この部会で調査が御要りようということでしたら、こちらでまた別途お示しするものを検討させていただきます。

○井廻部会長 一通り各委員の先生方の御意見を伺うことができましたので、今後の会議の進行について、事務局より説明をお願いします。

○大渕専門官 資料7について御説明いたします。今後の具体的な審議事項についての案です。以下の事項について、ワーキンググループにおいて集中的に具体的な検討を行う。

1.出題数について。先ほど御検討いただいた結果を踏まえ、出題数、試験日程、導入時期及び出題基準の改定に向けた出題範囲の方向性等を御検討いただきます。なお、医師国家試験を通過した後の実態を正しく国家試験に反映するため、現在臨床研修に大きく関与している診療科等からも、部会長と御相談の上、意見聴取等を行いたいと考えております。2.またOSCEについては、高木委員から御説明のありましたOSCEのパイロットとして、日本語診療能力調査の結果等、御指摘を踏まえて方向性を検討いただきます。3.受験資格認定について、諸外国、米国、欧州の状況や、日本における医学教育の標準化の取組を踏まえた方向性等についても、詳細な検討を行っていただきます。4.その他出題内容、合格基準、受験回数制限、試験問題の蓄積、コンピューター制の導入、年間の試験回数等について、集中的に具体的な検討を行っていただくことを考えております。

○井廻部会長 今後については、専門官から説明がありました方向で検討を進めていきます。最後に、事務局から資料の取扱い等について説明をお願いします。

○手島補佐 資料の取扱いですが、本日お配りしている議事次第ほか資料1から資料7と、参考資料の今後の検討課題等の現状についてはお持ち帰りいただいて結構です。ただ、左側にある机上配布資料と書かれております国家試験問題と青紙のファイルについては机上に残したままでお願いいたします。

 旅費の支給についても、机上に必要事項を記載した資料を用意しておりますので、御確認をお願いいたします。

 今後の日程については、机上に日程案を配布しておりますので、部会長とも御相談の上、決定次第改めて開催案内を送付させていただきます。

○井廻部会長 これをもちまして、本会を閉会いたします。どうもありがとうございました。


(了)

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