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2014年10月16日 第6回社会保障審議会福祉部会 議事録

社会・援護局総務課

○日時

平成26年10月16日(木)18:00~20:00


○場所

厚生労働省 省議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎第5号館9階)


○出席者

田中滋 (部会長)
宮本みち子 (部会長代理)
石橋真二 (委員)
猪熊律子 (委員)
鎌倉克英 (委員)
(代理:西條由人参考人)
小林光俊 (委員)
関川芳孝 (委員)
高橋英治 (委員)
武居敏 (委員)
橘文也 (委員)
対馬徳昭 (委員)
平川則男 (委員)
福間勉 (委員)
藤井賢一郎 (委員)
(代理:武藤素明参考人)
堀田聰子 (委員)
松原由美 (委員)
松山幸弘 (委員)
柳川純一 (委員)

○議題

業務運営・財務運営の在り方について

○議事

○田中部会長 では、定刻となりましたので、ただいまより第6回「福祉部会」を開催いたします。

 委員の皆様におかれましては、御多忙の折、また6時からという、やや変則な時間にお集まりいただきまして、どうもありがとうございました。

 委員の出欠状況について事務局より説明をお願いします。

○西辻総務課長 それでは、本日の委員の出席状況について御報告をいたします。

 本日は、川井委員、黒岩委員、高橋福太郎委員、花井委員、藤野委員、三好委員から御欠席の連絡をいただいております。また、猪熊委員からは若干おくれて出席されるという御連絡をいただいております。

 なお、黒岩委員の代理として、神奈川県保健福祉局福祉部の西條由人参考人、花井委員の代理として、日本労働組合総連合会総合政策局生活福祉局長の平川則男参考人、藤野委員の代理として、全国児童養護施設協議会副会長の武藤素明参考人にお越しいただいております。

 以上でございます。

○田中部会長 ありがとうございました。

 議事に入ります前に、ただいま御紹介がありました欠席の委員の代理として出席されている参考人について、皆様の御了承を頂戴しなければなりません。本日御欠席の黒岩委員、花井委員、藤野委員の代理として、西條由人参考人、平川則男参考人、武藤素明参考人の御出席について、御異議ございませんか。

(「異議なし」と声あり)

○田中部会長 ありがとうございました。

 続いて、資料の確認を行います。事務局から説明をお願いします。

○西辻総務課長 お手元の資料につきまして確認をさせていただきます。

 本日は配付資料といたしまして、資料1「業務運営・財務運営の在り方について」。それから、資料2、これは高橋英治委員から御提出いただいた、前回のテーマに係る資料でございます。「社会福祉法人(保育所)が取り組んでいる社会貢献活動事例について」。それから、参考資料といたしまして、前回の部会における主な御意見(概要)をつけさせていただいております。よろしくお願いいたします。

○田中部会長 早速、議事に入りましょう。

 事務局より資料1の説明をお願いします。

○岩井福祉基盤課長 それでは、資料の説明をさせていただきます。資料1につきまして御説明申し上げます。

 当部会におきましては、第1回におきまして総論、第2回におきまして経営組織のあり方、第3回におきまして運営の透明性のあり方を御議論いただきました。そして、第4回、第5回におきまして財務運営・業務運営のあり方について御議論いただき、特に財務規律について御議論していただいた次第でございます。

 2ページをごらんください。これは繰り返しになりますが、本日の議論の前提でございますので、再度簡単に御説明いたします。

 社会福祉法人の財務規律のイメージという資料でございますが、社会福祉法人につきましては、非常に高い公益性を持った法人として、それを担保する財務規律というものを確立する必要があるのではないかという点で御議論が進んでおります。特に、その点につきましては、3本の柱で財務規律を確立しようという議論になっております。

 第1点が適正かつ公正な支出管理でございまして、左のほうに赤い字でありますとおり、役員報酬基準の設定、関係者への特別の利益供与の禁止、外部監査の活用等でございます。 このように適正かつ公正な支出管理を行いました上で、社会福祉法人の事業を適正に運営した上でさらに利益が出ることが考えられます。この場合、それが蓄積されますと、いわゆる内部留保になるわけでございますが、この内部留保につきましては確立した定義がないということで、まず余裕財産とは何かということを明確化することが必要だろうということが2つ目の柱でございます。余裕財産の明確化につきましては、大枠につきましては前々回から枠を提示しておりまして御議論いただいております。

 簡単に申し上げますと、いわゆる内部留保につきまして、その中から控除対象財産、すなわち事業の継続に必要な財産というものを控除する。また、その中には運転資金等も含まれます。その結果、控除されて残ったものが、いわゆる計画的再投下対象財産。これがいわば余裕財産と考えられるものでございます。これにつきまして計画的に再投下するというのがスキームでございます。

 もちろん、オールジャパンではこういうことが言えますが、法人によっては、このような計画的再投下対象財産、いわゆる余裕財産が発生しない法人もあります。このような計画的再投下対象財産が発生するような法人につきましては、○3、3本目の柱でございますが、これを福祉サービス・「地域公益活動」へ計画的に再投下していただくというスキームが議論されております。この再投下につきましては、これを計画的にやっていただくということで、再投下計画を策定することが提案されております。内容につきましては、地域のニーズに対応した新しいサービスの展開とか人材への投資。あるいは、今回議論されます「地域公益活動」の実施等でございます。

 いずれにいたしましても、社会福祉法人につきましては、余裕財産を明確化した結果、これを全て計画的に再投下するということで、最終的には地域住民あるいは国民に全て還元されるという形になるという制度案でございます。したがいまして、余裕財産というものは、最終的には社会福祉法人の場合はないという形で、全て地域住民に還元するということで、公益性の高い社会福祉法人の財務規律を確立するということがここまでの議論でございます。

 本日の新たな資料について御説明いたします。ただいま御説明いたしました財務規律の枠組みの中で、まず○2にあります余裕財産の明確化につきまして、さらに制度的にこれを明らかに具体化したものでございます。資料の3ページ、社会福祉法人の余裕財産の明確化と題名をつけております。

 まず、基本的な考え方でございますが、今回の余裕財産の明確化の案につきましては、社会福祉法人の全ての財産、これは固定資産も流動資産も、あるいはそれに対応する負債も含めてですが、全ての財産を対象に明確化するということが第1のポイントでございます。後ほど申し上げますが、その中で基本金や国庫補助等特別積立金は除かれます。このような全ての財産を対象にいたしまして、まず事業継続。社会福祉法人が現在、行っております事業を継続するのに必要な財産を控除対象財産と名づけまして、これを控除する。

 したがいまして、その結果、余裕財産等、事業継続に必要な財産というものが区分されるというのが2つ目のという枠組みでございます。その結果、余裕財産というものが明確化されます。それを再投下対象財産と位置づけまして、これを先ほど申し上げました再投下計画に基づきまして再投下し、地域に還元していくということが枠組みでございます。

 具体的な内容につきまして御説明いたします。まず、の対象となる財産でございますが、これはいわゆる貸借対照表上の資産から負債を引きました残りの部分、基本的には企業会計で言う純資産の部分に当たりますが、これを対象といたします。ただし、基本金というものは法人の財政的基盤でございますので、これはそのまま必要な財産と思われるので、ここは除く。また、国庫補助等特別積立金も、そのような使途で出されています積立金が貸借対照表上、表示されているものでございますので、これも控除いたします。

 その結果出てくるというものを対象にいたしまして、いわゆる事業継続に必要な最低限の財産を控除対象財産として、まず控除する。控除した結果、出てくるものが再投下対象財産でございまして、それが再投下計画等に基づきまして福祉サービスや地域公益活動に再投下していただく財産になるということでございます。

の控除対象財産、すなわち事業継続に必要な財産をどのように考えるかでございますが、ここに示しておりますのはその考え方でございます。3つに分けております。

 1番目が、社会福祉法に基づく事業に活用している不動産等でございます。財産の中には、現在、例えば特別養護老人ホームとか保育所とか、そのようなものに使われております土地とか建物、あるいはその中にあります設備等がございます。これらにつきましては、事業を継続する上で、当然引き続き必要な財産でございますので、これを再投下の対象とすることは合理性がございません。したがいまして、このようなものはまず控除するという考え方です。

 ただし、ここにありますように、社会福祉法に基づく事業とありますので、基本的に社会福祉事業法に基づきます社会福祉事業とか公益事業、あるいは収益事業もございますが、そうしたもの以外のものは全て再投下対象財産として考えられるというものです。その確認につきましては、財産目録は社会福祉法人におきまして、現在も提出していただいておりますが、例えば公益法人におきましては、財産目録に使途なども明確化しております。そのような形でこれを確認するということを検討してはどうかということでございます。

 小さな字で書いておりますが、基本金、国庫補助等特別積立金との重複分は調整するとあります。このような資産につきましては、基本金の中で表示されているものもございますので、そうした重複部分は調整するということでございます。

 以上が第1の社会福祉法に基づく事業に活用している不動産等についての考え方です。

 控除する、すなわち事業継続に必要な財産として考えるカテゴリーの第2番目でございますが、これは再生産に必要な財産と名づけております。すなわち、現在、社会福祉法人が事業を行っております上で活用しています建物とか設備等を、引き続き持続的に事業を行うためには再生産する必要がございます。具体的に言えば、建てかえ、あるいは大規模修繕、あるいは設備等の更新が必要でございまして、そのために費用が要ります。このようなものは事業継続に必要な財産と考えられますので、これも控除してはどうかということです。

 ただし、再生産に必要な財産といたしまして、例えば建てかえを考えますと、これは地域によってさまざまでございますが、補助金があります。また、融資を活用されることが通常でございます。したがいまして、控除対象財産と考えられるのは、このような補助金や融資の活用を前提とした上で、算出基準を今後検討し、それに基づきましてルール化し上で、この控除額というものを算出することとしてはどうかというのが第2点目でございます。

 第3番目のカテゴリーです。これは、必要な運転資金と名づけております。すなわち、社会福祉法人が事業を運営するに当たりまして、手元の流動性が必要でございます。例えば3月末の時点、期末を考えますと、直近の2カ月分の介護報酬等につきましては、まだ入金されておりません。もちろん介護報酬以外、措置費等におきましてはそのスパンが変わってまいりますが、いずれにしましても事業未収金というものがございます。これらにつきましては、次年度の4月以降、これを運営費に充てることが必要でございますので、そうした未収金は運転資金として留保しておくことが当然必要であろうということです。

 また、それ以外にも緊急の支払いが考えられますので、一定のバッファーが要るのではないかと考えられます。さらに、例えば4月におきますと、給与支給日と介護報酬等の入金のタイムラグがございます。そのような場合の資金ニーズがございますので、そうしたものを必要な財産と考えまして、控除対象財産として再投下対象財産には入れないという考え方でございます。

 なお、下に*で書いておりますが、これは技術的な話でございますが、このような資産につきましては、対応する負債が当然ございます。それについては、既にの部分で一旦負債を控除しておりますので、二重に控除することは不適当でございますので、この負債との重複部分については調整するというスキームでございます。

 いずれにしましても、公益法人におきましては遊休財産規制がございまして、その財にこのように積立金等を控除する仕組みがございますが、かなり幅広く自由に控除の仕組みがつくられております。しかしながら、社会福祉法人の場合は、余裕財産につきましては基本的には再投下し、地域住民・国民に還元するという思想のもとで議論いただいておりまして、その点では、この控除対象財産は事業継続に必要な範囲で、ルール化できる範囲で設定してはどうかというのが、この資料の趣旨でございます。

 その結果、財産のうち、の再投下対象財産というものが導き出されます。この再投下対象財産につきましては、先ほどの資料の2ページでございますが、再投下計画に基づきまして、福祉サービスあるいは「地域公益活動」へ再投下していただくという案で議論いただいております。

 今回は、この再投下対象財産の投下の仕方、すなわち再投下計画について少しブレークダウンしたものを用意させていただいております。これまでの議論を踏まえまして、さまざまな御意見がございました。それらを踏まえて、事務局の案を用意したものでございます。

 4ページの資料でございますが、再投下計画の枠組みについて御説明申し上げます。

 計画策定から実施までの流れでございます。再投下計画は、各社会福祉法人におきまして、その判断によりまして策定いただくことになろうかと考えております。したがいまして、基本的には社会福祉法人の判断で策定いたしますが、これにつきましては、再投下計画を通じた再投下が社会福祉法人の財務規律の公益性を決定づける非常に重要なパーツでございますので、これはきっちりとした手続によりまして計画を立てていただく必要があろうかと考えます。

 また、後ほど申し上げますが、地域における地域協議会等との関係も含めまして、地域における福祉サービスの再配分という位置づけにもなります。したがいまして、そういった点から、所轄庁の役割というものが必要であろうと考えております。具体的に申し上げますと、ある事業を行う場合の初年度につきましては、社会福祉法人が計画を策定いたしまして、それを所轄庁に承認申請を行う。それを所轄庁が承認を行うというスキームにしてはどうかという提案でございます。ただし、上の箱にございますように、再投下計画のこのような承認審査というものは、いろいろ御議論がありますが、画一的・教条的なものになってはならないと考えられます。地域のニーズとか法人の自主性を最大限尊重する必要があると考えます。

 特に、先ほどの2ページをごらんいただければと思いますが、再投下の対象は2つのルートで区分しております。福祉サービスへの再投下、それから「地域公益活動」への再投下でございますが、例えば福祉サービスへの再投下を考えますと、社会福祉事業等におけるサービスの内容の充実とか事業の拡充というものが考えられます。これらは、すぐれて社会福祉法人の経営判断によるものであるべきでございます。したがいまして、そのような場合は、法人の自主的な判断が優先されるべきと考えます。

 また、「地域公益活動」は後ほど御説明いたしますが、前回までの議論では、基本的には地域協議会等の枠組みにおきまして地域のニーズを把握し、それを踏まえたものにすべきという御議論がありました。地域の福祉ニーズに即したものにする必要があると考えます。したがいまして、いわゆる行政の関与につきましては、このような法人の自主的な判断や地域の福祉ニーズを最大限尊重したものである必要がございます。

 例えば、「地域公益活動」が地域協議会等におきます地域福祉ニーズに即した手続をとっているか、あるいは即したものになっているかという観点での承認があるのかなと考えられますが、いずれにしましても、今まで御議論がありましたような行政の画一的・統制的な承認ではなく、このような地域ニーズや法人の自主性を尊重した承認審査の基準としてはいかがかと考えております。このように、初年度におきましては、社会福祉法人が策定いたしました再投下計画を所轄庁によって承認いただくというスキームでいかがかということで御提案しております。

 また、例えばある事業、閣議決定にありますような無料または低額のサービスとか生活保護世帯への教育支援のようなものにつきまして、それぞれの事業ごとに承認をとっていただいた上で、これを1年間でできればそれで終わりでございますが、通常は何年かかかると思われます。これにつきまして、次年度以降は、その実績に基づく再投下計画の更新を社会福祉法人においてしていただくことを考えてはどうかと考えています。その際は、既に承認をとっておりますので、所轄庁に対しては届出をしていただければという案でございます。

 所轄庁においては、それを受理していただくことになりますが、内容につきまして、例えば再投下計画から大きく外れて再投下されていないとか、違う方向に再投下を行っているような場合は、通常の社会福祉法人に対する指導監督をしていただくということでいかがかと考えております。

 なお、左の次年度以降のところに※がありますが、新たな事業、先ほど申し上げたような事業に加えて新規事業を行うとか事業内容を変更する場合には、新たな承認申請が必要だと考えております。

 計画内容のところをごらんいただきたいのですが、個別の再投下事業ごとに以下の内容を記載してはどうかと考えております。なお、固定資産につきましては、処分する必要がある場合が考えられます。その場合は処分内容についても計画的にしていただくことが必要と考えております。

 いずれにいたしましても、公益法人におきましても、いわゆる収支相償原則とか遊休財産規制におきまして、行政庁の認定という行為がございまして、同じように手続を行いまして認定を行う。それが公益認定基準の一つになっております。同様に、社会福祉法人におきましても、財務規律を確立する上では、公益性を担保するという観点から、このような行政の関与も含めた、ある程度確立したリジッドな仕組みが必要かと考えております。

 内容のイメージをもう少し御説明いたしますと、5ページでございます。再投下計画に盛り込む事項でございますが、例えばある事業につきまして、計画名称、計画の内容を簡単に記述いただきまして、何年までに幾ら内部留保、余裕財産を投下するかという計画を立てていただく。その上で、算出内容でございますが、これは例えば事業であれば人件費等もありましょうし、あるいは事業の拡充で建物等の財産を取得する場合ですと、そのような内容を書いていただくことになろうかと思います。そして、これも余り長期になりますと実質的な意味がございませんので、ある程度の年限を限る必要はあろうかと思いますが、各年にどれだけ支出していくかという計画を立てていただく。

 ただし、事業でございますので、毎年利益が出る可能性もございます。そうした場合は余裕財産がまた出ますので、それを積立額にまた入れていただくということも考えられます。いずれにしましても、最終年度には帳尻が合うような形の計画を立てていただくというものです。例えば、建物を取得する場合ですと、最終年度までは基本的には積立額のみが計上され、最終年度に全て支出額で出るという計画になろうかと考えております。このような計画を毎年度更新していただくということでございまして、一般的な社会福祉法人におきます中期的な計画と同様の内容になるのかと考えております。このようなイメージで御議論いただければと存じます。

 以上が○2の余裕財産の明確化、○3の福祉サービス・「地域公益活動」への再投下の内容についての説明でございまして、基本的には財務規律の公益性を担保する観点からの仕組みを、公益法人等の仕組みなども参考にしながら、社会福祉法人の特性に合わせて構築してみたら、このようなものではどうかということで、今までの当部会におけます議論を反映いたしまして作成したものでございます。いずれにしましても、社会福祉法人の自主性あるいは地域ニーズというものを最大限重視した案としてはどうかと考えております。

 続きまして、6ページ以降でございます。このように余裕財産を明確化し、計画的に再投下するスキームを構築した上で、最終的にはこれをどこに再投下するかという問題がございます。2ページの資料で言いますと、福祉サービスまたは「地域公益活動」となっております。いずれにいたしましても、社会福祉事業あるいは公益事業の範疇に入るものと考えられますが、特に「地域公益活動」につきましては前回も御議論いただきましたが、社会福祉法人のいわゆる社会貢献活動として閣議決定でも求められているものに関連するものでございます。

 この資料は、前回の部会におきまして事務局が用意した論点ペーパーの内容が枠内の内容でございます。それに対しまして、前回の部会におきまして御議論が進んでおります。その内容を反映したものが、その枠の下に記述したものでございます。

 まず、6ページの○の1つ目、福祉ニーズの多様化・複雑化、多様な経営主体の参入といった状況の下、社会福祉法人の社会的使命の観点から、「地域公益活動」の定義や範囲について、どのように考えるべきか。「地域公益活動」と社会福祉事業・公益事業の関係について、どのように整理すべきかという論点です。中心的な内容は、「地域公益活動」の定義や範囲をどのように考えるかという点でございます。

 2番目の○でございますが、規制改革実施計画、閣議決定におきまして、すべての社会福祉法人に対して、社会貢献活動、括弧書きを飛ばさせていただきますが、の実施を義務づけるとされているが、これを踏まえ、どのように制度化すべきかという論点でございました。

 これらにつきまして、前回の部会におきましては、そもそも「地域公益活動」というものは、財産的余裕がある法人を対象とすべきであるという、先ほどの2ページの資料の絵からすれば、基本的・論理的にはそのような帰結が出てまいるわけでございますが、そのような意見がありました。

 これに対しまして、社会福祉法人が担う地域における公益的な活動には、直接費用の支出を伴わないものを含め、多様な取組みが想定される。基本的には、直接費用の支出を伴わないというのは、例えば追加的な費用がない範囲でいろいろな活動をしていただくとか、その拠点としてスペースを提供するとか、さまざまな議論が出ましたが、そのようなものが想定されると考えます。このような直接費用の支出を伴わないものを含めた公益的な活動については、全ての法人に対して、その取り組みの実施を求めるべきではないか。すなわち義務化すべきではないかという御議論がありまして、それを論点として、ここに掲げさせていただいております。

 次に、2つ目の段落でございますが、他方、「余裕財産」の再投下の対象としての「地域公益活動」については、社会福祉法人の公益性に照らし、地域の福祉ニーズの充足に他の経営主体に率先して取り組むべきではないかという論点でございます。

 これにつきましては、前回の委員からのプレゼンの中でも、株式会社等に率先して地域において必要となっているようなサービス、特に手間暇、コストのかかるようなものについて取り組むべきではないかという御意見もございました。そうした御意見も踏まえまして、いわゆる再投下対象の「地域公益活動」について、このようなことに取り組むべきではないかという論点を挙げさせていただいております。いずれにいたしましても、この「地域公益活動」は、社会福祉事業または公益事業に包摂される概念ではないかということも論点として挙げさせていただいております。

 次の最終ページをごらんください。前回の論点の中で、「地域公益活動」の実施に関し、地域のニーズを把握する仕組みをどのように構築すべきかという論点がございました。これにつきましては、社会福祉法人の在り方等に関する検討会においても、ある程度方向性というものが提言されておりますが、前回の部会におきましても御議論がございました。

 1つは、地域の福祉ニーズについては、地域の利用者、福祉関係者、行政関係者等により構成される協議会、あるいは地域福祉計画の策定に係る議論の場において把握すべきではないかという御議論がありました。それは、既存の例えば地域包括ケアに関する会議体であるとか、あるいは社会福祉協議会の枠組みを活用すべきではないかという御議論もございました。このような既存のものを活用することを含め、どのようなスキームで、どのように地域ニーズを把握するのか。さらに、その把握した地域ニーズをどのように地域において、適正に地域の資源を配分させていくのかということが論点として考えられると思いますので、この部会におきましても御議論いただければと思います。

 次に、再投下計画における、「地域公益活動」と福祉サービス(社会福祉事業・公益事業)の充実との関係、位置づけをどのように考えるべきかという論点がございました。

 これにつきましては、さまざまな御議論を総体的に考えますと、まずは社会福祉事業をきっちりやっていただく。その意味はいろいろございますが、適正かつ公正な支出管理をしていただくということ。さらに、適切な事業運営を確保する。これは、その事業、利用サービスの内容・質とか、当然、職員処遇の問題もございます。

 そうしたものを適切にやっていただいた上で、さらに利益が生じて蓄積された余裕財産がある場合には、これは社会福祉法人においては、その公益性、すなわちその社会的使命に照らし、地域に必要とされているニーズに基づく「地域公益活動」に優先的に投下すべきではないかということを論点として挙げさせていただいております。この点についても御議論いただければと思います。

 最後の点でございますが、再投下計画に位置づけられた「地域公益活動」について、その定義や範囲に照らした内容の適正性の確保、その実効性の担保という観点から、行政の関与の在り方を含め、どのような仕組みが考えられるかという点でございます。

 これにつきましても、そもそも地域ニーズというものについては、そのニーズを把握する仕組みが必要である。行政のあり方についても、これまでの措置費の経緯なども含めて、そのあり方については検討すべきであるという御議論等がございました。

 これにつきましては、「地域公益活動」については、把握した地域の福祉ニーズをもとにすべきである。これは、先ほど申し上げました地域協議会とか地域福祉計画のような枠組みでございますが、そこで把握した地域の福祉ニーズからスタートすべきである。そこを前提として考えるべきであるということ。そして、行政の関与ということも必要であろう。それは先ほど説明いたしましたが、公益性を担保するという観点から必要でございますし、また地域における適切な資源配分ということも考慮して、再投下計画は位置づける必要があるということがあります。さらに、その再投下計画による再投下の実効性を担保することも必要でございます。そうした観点からの行政の関与の必要性について、論点として挙げさせていただいております。

 このような点を含めまして、本日、この論点につきましてさらに議論を深めていただき、「地域公益活動」のあり方というものの議論を収れんし、形づくっていただければと存じます。

 説明は以上でございます。

○田中部会長 ありがとうございました。

 前半、後半に分けて議論してまいりましょう。まず、前半の余裕財産の明確化及び再投下計画の枠組み、資料で言うと2ページから5ページについて御意見、御質問がありましたらお願いいたします。

 武藤参考人、お願いします。

○武藤参考人 1つは、3ページ目で、細かい話になるかもしれませんけれども、社会福祉法人には寄附金等々が結構あり、こういう目的に使ってくださいというのがはっきりしているものがある一方で、そうでないものもあります。これは、基本金ということでよろしいのでしょうか。それが1つ目の質問であります。この図の下のところにあります。

 2点目は、今、社会福祉法人のあり方が問われていまして、社会福祉法人の法人本部の機能も今後、非常に重要だなと思っています。ただ、法人本部のさまざまな費用というのは本当に捻出できない状況で、例えば法人本部で人を雇う、それから建物を取得する、それから部屋を準備するということであれば、この中でいくと、土地、建物、設備というところに入れていいのかどうか。そういうことを少し聞きたいなと思います。

 3点目は、そのページの○2再生産に必要な財産、○3必要な運転資金というのがありますけれども、これについてもう少し説明していただきたいと思います。要は、いろいろな事業拡張で施設をつくりたいとか、こういうことをやりたいという計画があるのです。そのことについてはここに入るのか、いや、再投下の対象財産に入るのかどうかというところが不明確でした。

 いずれにしろ、社会福祉のニーズが非常に高まっていますので、社会福祉法人としても将来的にこういうことをやるべきだなという計画、そのために財源をある程度蓄積しなきゃいけないというのがあるのですね。それがここに入ってくるのか、いや、それは余裕財産とみなすのかどうかについて、少し不明確だったものですから質問しました。

 以上です。

○田中部会長 課長、お答えください。

○岩井福祉基盤課長 まず、寄附金の扱いでございますが、ただいま御質問いただいたものは、全て今後検討して詰めさせていただきますので、確定的というわけではないのですが、基本的な事務局の考え方といたしましては、寄附金で使途を指定されているものについては、通常、基本金に繰り入れられていると考えております。先ほども御説明いたしましたように、基本金は控除しております。使途が決められているものは再投下の対象ではないのではないかと考えております。

 それと、法人本部について、費用の問題はこの部会でもいろいろと議論が出ておりますが、今、委員が御質問になったのは、財産としての部屋ということだと思います。これは簡単には言えなくて、どこまで社会福祉法人の業務なのか、事業なのかということでありますが、事業に必要なものと考えれば、その対象にはなり得るだろうと思いますが、そこは一応ルール化が要るのではないか。ただ、そのときに各事業とか施設の、どちらかというと費用の問題ですけれども、規制とかの関係は今後整理しなければならないと思います。

 それから、新たな事業を行う場合の、多分おっしゃるのは積み立てとか、そういうことであろうと思うのですが、控除対象財産のところは、あくまで現在の段階で確定した再生産に必要なものを対象とする。ここをルール化できるものを対象とするという案でございます。今後、その事業を拡大するのか、地域公益活動とかサービスに投下するか、人材に投資するかというのは、これは経営判断の話でございますので、それはどちらかというと再投下対象財産として考えていただく。その中で計画を立てていただいて、必要なものは積み立てていただいて区分経理していただくということでございます。

 思想的には、まず余裕財産というものを明らかにするというのは、余裕財産という言い方を今後考える必要がありますが、決まって必要なものは、まず控除する。あとは、地域ニーズや経営判断などを踏まえて再投下するわけですから、そこは全て再投下対象財産であると考えておる次第です。

○田中部会長 よろしいですか。

 藤井委員、お願いします。

○藤井委員 考え方は非常にすっきりしてわかりやすくなりまして、私、おおむねこのような考え方でお進めいただきたいということでございます。

 ちょっと技術的に確認といいますか、今のうちに聞いておきたいということで、3ページですが、という部分は資産から、貸方のいろいろなものを引きますので、残るのは社会福祉法人会計で言うと次期繰りが残るだけではないかと思います。次期繰越金、内部留保と言ってもいいと思うのですけれども、これがということで、正当な形とて使われるものを引いて、それ以外は再投下になるべきだと、これも考え方としてはよくわかります。

 このとおりだと思うのですが、実際上、実務的にの○1と○3ですけれども、○1でも○3でも、法人設立当初に社会福祉法に基づく事業に活用の不動産、例えば土地は当然持っておりますし、必要な運転資金もある程度持つようにということでスタートしていると思うのですね。これはもともと持っているお金ですから、内部留保から発生したものではないはずということになると思いますので、概念としてはわかるのですけれども、技術的には新しく利益の積み立てから生じたものが、もともとあった○1、○3は控除してということになるということでよいのかどうかというのが1点。

 そういうことでいいのだと思うのですけれども、確認しておきたいということで確認させていただきます。そうしないと、が控除し過ぎになってしまうのではないかという心配でございます。

 4ページにかかる話になるのですけれども、事業拡大といいますか、地域ニーズに応じた事業をやっていくときにということでございますが、先ほどのお答えですと、再投下計画の中に入れていただこうという話になると思うのです。これの○2、○4で「承認」という言葉をお使いになっていて、これは強調されたように自主性を非常に重んじるということでございますが、法令の言葉で「指定」「許可」とか「認可」とか「承認」とか、いろいろございます。

 「承認」が、おっしゃるように本当に形式的な、きちんとつじつまが合っているかということを見るのであって、所轄官庁にとっての都合を押しつけるようなものであったり、考え方を押しつけるようなものではないということを強調されたと思うのですけれども、「承認」という用語を、法令ではそういうふうに考えて使われるということを2番目に確認しておきたいということと。

 それから、その点に関して言いますと、自治体は自治体で福祉サービスの計画をいろいろ持っておられると思うのです。それに対して、再投下計画の中でやりたいというものとつじつまが合わないということは、当然生じてくるだろうと思うのです。これをどうするかということは、ちょっと御議論といいますか、きょうの話じゃないと思うのですけれども、御検討いただきたいことと。

 これが同じ所轄庁の中で起きている話ならいいのですけれども、ほかの県の話が入っていたり、そういう場合はどう考えるだろうかということがあるかと思います。このあたり、もしお考えがあればお答えいただければいいですけれども、ぜひ御検討いただければということで、3番目の指摘として申し上げます。

 4番目は6ページに当たることなので、以上で結構です。

○田中部会長 2番目の点は、多分多くの委員が心配している点ですね。所轄庁が自主性を損ねないようにすることの確認を求められますから、お答えください。

○岩井福祉基盤課長 順を追って、まず3ページの○1、○3の考え方でございますが、私、委員のおっしゃることをしっかりと理解しているかわからないのですが、初めの段階で必要な財産あるいは手持ちの運転資金を含めたものということと、ここで申し上げているのは、運営しているある時点、例えば期末ですけれども、その段階で必要な財産。そして、当面必要な運転資金というものでございますので、それ自体は違うのですが、基本的に内容は一緒といいますか、趣旨は同じだと。要するに、財政的な安定の観点から、当面事業を運営するのに必要なものと考えて、その範囲でいわゆる控除対象財産に入れているという考え方であろうかと思います。

 もともと、初めの財務的な基盤と観点は違うと思うのですが、その点ではずれが出てくるかと思いますが、ランニングする上で事業が継続する安定的なものとして必要なものという考え方で、ここは書かせていただいております。これが答えになっているかどうかわかりませんが、そういう考え方です。

 それから、2番目の論点で承認という用語でございますが、恐縮ですが、法制的な詰めは、法制局とも相談いたしますので、まだこれからでございます。また、その内容については、さらに今後、検討を進めてまいりたいと思いますが、趣旨で申し上げましたとおり、基本的には行政の裁量が余り大きいものではない、あるいは行政がやりたいことを、今のお言葉で言うと押しつけるようなものではないと考えております。

 それは次の話とも関連してくるのですが、自治体も福祉計画、供給体制の責任者でございますので、いろいろな計画もありますし、お考えもあろうかと思います。これらについては、先ほど申し上げました地域協議会などの枠組みを活用しながら、そこでも行政も参加いただいて、いろいろな情報を収集し、形づくっていただく必要があるのではないかなと考えています。特に、地域公益活動も単独の法人がそれぞればらばらにやるのではなくて、地域におけます適切な資源配分という考え方がいいのかもわかりませんが、連携してやっていただく必要があると思いますので、そういう地域の主体がそれぞれ参画する形がよろしいのではないかということを議論しております。

 その観点で申し上げますと、例えば一つの所轄庁の範囲で、人の流れとかサービスの範囲が完結しないことも考えられますので、もう少し広域的な調整というのも今後検討する必要があるのではないかと考えております。

 以上です。

○田中部会長 藤井委員。

○藤井委員 1番目の技術的な点は、別途やられるということで、ここは基本的な考え方ということで確認させていただければと思います。

 2番目の点ですけれども、私が強調し忘れたのですが、承認を求めるという行為ですけれども、私は現段階では、2番、3番、4番は非常に必要な、なくてはならないと考えております。といいますのが、以前も申し上げましたけれども、社会福祉法人がこういった計画をつくってこなかった、あるいは理事会承認をしてこなかったということがございますので、これを機にこういったものをきちんとつくるということを、枠組みが走るということはしなくてはならないということですし、必要であると。

 ただ、こういったものを社会福祉法人がきちんとつくれるようになった場合には、準備しておけばいいとか、将来的には流動的になり得るかもしれないが、現時点においてはこの考え方が重要だということでお考えいただければと思います。

 最後の都道府県をまたがるというのは、例えば東京と新潟でやっているケースですと、昔は厚生局だったと思いますけれども、今は東京が主であれば東京都が所轄ということになっていると思うのですけれども、そういった場合が一番ややこしいと思いますので、考えていただければと思います。

 以上です。

○田中部会長 ありがとうございました。

 平川参考人、お願いします。

○平川参考人 ありがとうございます。

 最初に、3ページの余裕財産の明確化のところでございます。考え方はこの方向でいいと思うのですけれども、懸念されるのは、の控除対象財産を大きく見せかけて、再投下対象財産を小さくするということがないような形で対応をお願いできればと思います。

 特に、○2の再生産に必要な財産というところでありますけれども、これは例になるかよくわかりませんけれども、例えば病院であれば、基本的には融資を活用して建てております。民間の病院はそうですし、公立の病院だと起債して、それに基づいて病院を建てかえるということが基本です。先ほど、再生産に必要な財産については、「補助金、融資の活用を考慮した算出基準を適用」することが前提と説明されていたと思いますので、その辺をしっかりと明確にしていただければと考えています。

 それから、4ページ目の再投下計画の枠組みです。確かに前回の会議の中で、創意工夫ある取り組みが社会福祉法人の中でも行われているという報告もありました。創意工夫のある取り組みは重要ではありますけれども、一方で、承認審査がありますので、行政的というか、事務的にどう所轄庁が判断していくのかということがありますので、ある意味しっかりと類型化していく必要があるのではないかと思います。

 所轄庁がこの事業は承認できませんと言って、一方で社会福祉法人がこれは承認されるべきものではないかと争いになったときに、どういう判断に基づいて調整していくのかが当然必要になってくると思いますので、ある程度類型化し、所轄庁が承認申請において、しっかりと適切に対応できる仕組みが必要ではないかと考えているところであります。

 以上です。

○田中部会長 ありがとうございます。

 関川委員、お願いします。

○関川委員 4ページの承認審査につきましては、岩井課長の説明を聞きまして納得いたしました。

 余裕財産は、法人の経営努力によって形成・蓄積された財産という一面と、優遇税制及び補助金によって形成され、いわば国民に信託された財産であるという一面があろうと思います。後者の立場に立てば、その使い方に関しても、公共性の確保という観点から、ある程度の行政の関与が必要と考えられますが、あわせて、前者、経営努力尊重ということを考えれば、法人の自主性を損なうことのないようなスキームをつくっていただきたいと思っております。

 私は、この承認につきましては、「確認」ではないかと思っております。何を確認するのかということにつきましては、第一に、事業についての公益性があるかについての確認。第二に、余裕財産が公益活動に投下されるものであるかどうかの確認。第三に、地域住民のニーズを反映したものであるかどうかの確認。具体的には、意見聴取、協議などその方法などについて確認をするということだと思います。第四に、実際に資金が計画どおり執行されているかどうかの確認をしていただくことが大切であると考えております。承認という言葉が使われておりますけれども、確認された場合は、所轄庁の意思にかかわらず、計画に基づいて適正に余裕資金の執行が可能となるものだと私は考えておりますので、先ほどの岩井課長の説明の趣旨に賛同いたします。

 もう一点ですが、3ページの余裕財産の明確化にかかわって、1点教えていただきたいことがございます。このスキームでいきますと、保育所や措置施設などは、繰越金が発生した場合には民改費の一部支給停止となるという仕組みがございますので、この整理によりますと、○1、○2、○3が控除されますと、多くの場合は余裕財産、つまり再投下対象財産が残らないものと考えております。

 そこで2つ質問させていただきたいのですが、そうした事例では、再投下計画の策定及び所轄庁への提出承認は必要とされないのか。それとも、余裕資産がない場合であっても、地域貢献活動に資金を再投下する場合には、こうした計画を作成して所轄庁に提出することが必要なのか。私は、余裕財産がない場合であっても、運営費の弾力化に関する所定の要件にしたがい法人の判断で福祉サービス及び地域貢献活動への資金の投下を妨げるものではないと考えておりますので、そのように理解してよろしいでしょうか。その場合には、所轄庁への計画提出が必要なのか、改めて教えていただければと思います。

○田中部会長 お願いします。

○岩井福祉基盤課長 ただいま関川委員から御指摘いただきました内容につきましては、実は最終的には次回以降、いろいろと御議論いただきたいと思っております。ただ、いろいろな施設・事業における資金の規制との関係ですとか、あるいはフローとストックの概念が異なりまして、再投下対象財産はあくまでストックの概念でございます。そこで切り分けられる面があろうかと思っております。また、地域公益活動への投下は、義務的に制度化する部分でございまして、それを自主的に法人がなされることとは次元が違う話ですので、それに対する対応も変えざるを得ないのかなと思っておりますが、次回以降、そこは御議論いただければと思います。

○田中部会長 関川委員、次回にまた問題点を御指摘ください。

 対馬委員、お願いします。

○対馬委員 2点お伺いしたいと思います。

 2ページ目の余裕財産の明確化の中で、運転資金についての説明がありました。介護保険収入を国保連へ請求してから入金になるまで2カ月かかるので、運転資金としては2カ月必要だという説明でありましたが、私は2カ月では足りないと考えます。例えば、特養の中でも区分変更があり、そのため国保連の請求が先送りされたり、緊急に大きな修繕費がかかったりしますので、私は株式会社と社会福祉法人を31年間経営していますが、3カ月分の資金は必要と考えます。この点はいかがですか。

 2点目ですが、4ページ目で次年度以降、新規事業・事業内容の変更については、新たに承認申請と書かれています。例えば、施設の整備を計画していて、土地が偶然出てきて、そこに小規模多機能型居宅介護施設をつくろうとした場合、主管庁に承認申請という話になりますし、例えば賃貸物件を借りて定期巡回の事業所を立ち上げようと考えた時、この場合も承認申請をすることになるのでしょうか。そういう意味では、物件購入のタイミングを逃したり、あるいは事業のスピードが遅くなる可能性があります。この点はいかがでしょうか。

○田中部会長 岩井課長。

○岩井福祉基盤課長 まず初めのほうにつきましては、申し上げましたのは、未収金が2カ月程度であろうということでございまして、手元流動性につきましては、ここにありますように、まさに緊急の支払いとかタイムラグの問題がございます。確かに委員おっしゃいましたとおり、さまざまな団体とか会計関係の専門的な団体は、大体3カ月というところを出されておりますので、それが一つのメルクマールかなと考えております。

 それから、2点目のお尋ねでございますが、これは地域公益活動が何かという議論の帰結次第でございまして、今、提示されたのは一般的な普通の社会福祉法人の社会福祉事業でございますので、それ自体は地域公益活動とはまた違うものとして考えれば、その重複の問題はないのではないかと考えております。

○対馬委員 1番目の質問の運転資金の話でありますが、3カ月という話もありますが、今、100名の特養であれば、月の収入は4,000万円ぐらいです。3カ月で1億2,000万円ぐらいの資金が必要になるわけです。厚生労働省が調査された内部留保の金額としては、1施設平均1億3,000万円という話がありました。それと比較すると、特養1施設で1億2,000万円、3,000万円は運転資金の範囲として考えられるのではないかと思います。

○田中部会長 御指摘ありがとうございました。

 高橋委員、お願いします。

○高橋英治委員 日本保育協会の高橋でございます。

 3ページ、イメージ的には理解しようとして一生懸命頑張っているのです。ただ、現実的に数字などを当て込めて考えていったときに、具体的にどういうことになるのか。先ほどどなたかおっしゃいましたけれども、例えば積立金が4種類ある中での位置づけはどうなのだということも含めて、社福の会計基準の勘定科目などに照らし合わせて、例えば具体的な計算式を提示して、事例に基づくシミュレーションみたいなものがあると、よりわかりいいなということを思ったのが1つでございます。

 それから、4ページの承認申請ということがずっと言われておりますけれども、この辺も同じですけれども、このことによって法人の自主性を重んじるということですけれども、これが硬直的なことにならないようにしてほしいなと思いますことと。突発的な事例があるかもしれませんので、場合によっては事後承認のような流れも少し検討をしてもいいのかなということを感じました。

 以上でございます。

○田中部会長 御意見ありがとうございました。

 福間委員、お願いします。

○福間委員 いただいた資料とか、前回のものを含めて、言葉が大分すっきりとわかってきたのですが、一個一個の用語について、私どもは公益法人会計のほうで法律とかガイドラインを読むと、言葉の定義が割とはっきり書かれていて、先ほどのシミュレーションというのがありましたが、電子システムに全部入力して表が完全にできるというソフトが認定委員会のほうで提供されていて、それで作業することが多いものですから、すごくわかりやすいのです。

 そういう点では、課長からも余裕財産の言葉の整理とかあると思いますが、再投下というのが会計上、こういう言葉に本当になじんでいるのだろうかとか、今の社会福祉法人の会計基準でもなかなかなじまない言葉があったり、一般の会計基準で普遍的な言葉なのか。今回、固有のものであれば、きちんとした定義づけを法律なり、またガイドラインなりで確認しておくことは非常に大事だと思います。システム的なものも、ぜひ提供されていくと、みんな同じ仕組みでできるようになり、それが情報の開示にも役立つし、収集にも役立つことになると思いますので、大変とは思いますが、一つのルールとしてみれば難しいことではないのではないか。お願いしたいということでございます。

○田中部会長 具体的な御指摘、ありがとうございます。課長、そういう方向でよろしいですね。言葉は今後進化し、システムも変わっていくという理解でよろしいですか。

○岩井福祉基盤課長 現段階では、御議論という意味での用語を使っておりますので、制度化あるいは法案化する段階では、それを定義していきますし、システム等につきましても、今回のこの案は非常に大きな改革になりますので、当然国のほうにおきましても、各法人において適切に運営していただくような準備、用意は必要かと考えておりますので、今後それは肝に命じたいと思っております。

○田中部会長 では、西條参考人、それから柳川委員。

○西條参考人 ありがとうございます。

 3ページの社会福祉法人の余裕財産の明確化につきましては、考え方とか方向性については了解といいますか、よろしいのかなと思うのですけれども、問題は余裕財産といいますか、再投下対象財産、これがあるかどうかを誰がどういう基準あるいは根拠をもって判断するのかという問題があるのではないかと思います。例えば、法人の自主性を重んじるということを考えれば、○2の再生産に必要な財産は、将来計画、社会福祉事業に必要な資産がこれだけ必要だと言われれば、その範疇は誰も侵せないわけですね。経営自主権という問題が当然あります。

 ですので、そういったモデル的なもの、標準といいますか、仮に所轄庁が指導するということであれば、所轄庁の行為というのは法令上、根拠が当然必要となりますので、あるいは要綱、通知でも構いませんけれども、そういったものを国は明確に示していただく必要があるのではないかと考えます。

 それから、4ページの再投下計画の承認審査も同じことが言えるのですけれども、先ほど御議論もございましたが、地域のニーズあるいは法人の自主性というものを重んじながら、計画を所轄庁だけの判断でやるのではないと、そういう御議論があったと思います。例えば公益法人制度改革の中でも公益認定審査会というものを置きまして、第三者的な評価機関を設けた上で所轄庁が判断するという仕組みもありましたので、そうしたものも参考にしていただきながら、それぞれの地域で第三者機関みたいなものを設ける必要もあるのではないかと考えます。

○田中部会長 御意見、ありがとうございました。

 柳川委員、お願いします。

○柳川委員 まず、2ページ目ですけれども、既存事業の合理化などが前提にあって、その後、余裕財産をどう使っていくかというのが大きな流れだと理解しています。先ほども意見がありましたけれども、控除対象財産が肥大化するのではないかというのは大変重要な点だと思いますし、確かに民間企業でも、運転資金や内部留保はあるにこしたことはないというのは当然ありますが、実際のランニングコストなどを勘案しながら、3カ月分必要か、4カ月分必要かということの妥当性の問題はあると思いますので、その辺は、ガイドラインとは言わないまでも、一度お示ししたほうがよろしいのかなというのが1点目です。

 2点目が、4ページ目の再投下計画ですが、在り方でも議論が出たと思うのですが、地域包括ケアシステムの概念を考慮するとかございますが、そのような大枠のフレームを使うというのが1つの方法としてあるのかなと感じました。計画立案でこれをやります、あれをやりますというのはもちろんありますし、本来的には公助、本当に自治体がやらなくちゃいけないところまで手を突っ込んでやるのが、地域ニーズに本当に合致するということになります。

 先ほどから承認ということがありましたけれども、少なくとも意見とかコメントを出せる機能は所轄庁にあって良いのではないかと私は考えます。同時に、PDCAですけれども、中間のチェック及び評価が必要です。単にニーズがあるから3年やりましたというのでいいのかどうか、評価制度もきちんと作るべきだと考えています。そういうことで、せっかく良い概念があるので、公益性などを考えた場合は、所管庁は市町村単位よりは都道府県のほうに頑張っていただきたいなと考えております。

 以上です。

○田中部会長 御意見、アドバイス、ありがとうございました。

 松山委員、お願いします。

○松山委員 余裕財産の明確化の枠組みは、資料で書かれているのでいいのではないかと思うのですが、その法人が持っている金融資産から借入金を差し引いた純金融資産の金額というのが、実は法人間で物すごく大きく違うのですね。参考データとして、そういうものも使うというのがあるのではないかという気がします。

○田中部会長 実際に制度化されて、そういうガイドラインをつくるときには、さまざまな参考データもきっと使っていくことになるでしょうね。ありがとうございます。

 前半の議論はさらに続けていただいても結構ですが、時間もありますので、後半の「地域公益活動」の論点についても御意見、御質問がございましたらお願いいたします。前半のほうもまだ残っていれば、もちろん言っていただいても構いません。

 高橋委員、お願いします。

○高橋英治委員 7ページですが、一番上ですけれども、「地域公益活動」の実施に関し云々とありまして、さまざまな方より構成される協議会や地域福祉計画の策定に係る議論の場において把握すべきではないか。それはそれで理解できるわけですが、こと子どもの分野に関して言いますと、現在、来年度の新制度に向けて、地方でそれぞれ子ども・子育て会議で、まさに5年間の計画をどうしていくかという議論の真っ最中であります。

 恐らく、それは新制度に向けて、地方版の子ども・子育て会議で、需要に対する供給をどうしていくかとか、保育ニーズを含めた児童の分野におけるニーズについて、どうとらまえていくかということを議論していくわけですが、そのことと今回の地域公益活動の計画というのは、これは社会福祉法人のということになるのだと思うのですけれども、今、児童の分野で議論されている子ども・子育て支援計画と、この計画の位置づけというのは、意味が違うと理解してよろしいのでしょうか。

○田中部会長 お答えになれますか。

○岩井福祉基盤課長 委員の御質問にきちんと答えているかわかりませんが、介護とか子どもとか、さまざまな計画とか協議の場というものがあり、そこで地域における体制というものが構築されるということは、もちろんある上で、社会福祉法人が地域公益活動をするという、これはある意味全体の基盤といいますか、制度の対象にならない方も含めたものをどうしていくかという枠組みとして、そういう枠組みが必要ではないかという提案でございます。これは、既存のものを活用することも十分あり得ると思いますが、そこはある意味横断的な発想を入れる必要があるということを念頭に置いて御議論いただければと思います。

○田中部会長 石橋委員、どうぞ。

○石橋委員 地域公益活動につきましては、論点の1番目に書いてありますように、それぞれの地域ごとでニーズが異なりますので、それぞれの地域の社会福祉法人が核となって、例えば地域の中には介護福祉士とか社会福祉士ケアマネージャーなど、さまざまな福祉専門職がいますので、そういう専門職もしっかり活用して地域ニーズを把握する仕組みを作ることも必要かと思います。

 それから、この後、介護人材確保の検討が行われると思いますけれども、例えば地域公益活動の中におきまして、今でも当然、社会福祉法人で取り組んでいると思いますけれども、施設を開放して行事などを行い、地域住民との交流をするとか、また、地域の小・中学校の子どもたちに介護体験をしていただく。それから、女性とか高齢者の方たちに介護のボランティアをしていただくとか、そういった介護に関する啓蒙活動などもしっかり行っていただく。さらには、介護職員養成のための初任者研修などを無料、もしくは低額で実施するなど、介護や福祉にかかわる人材養成ということを、地域公益事業の中に位置づけることが必要であると思います。

○田中部会長 御意見、ありがとうございました。

 堀田委員、どうぞ。

○堀田委員 1つ前のやりとりと関係しますけれども、一番上の「地域公益活動」の実施に関し、地域のニーズを把握する仕組みというところですけれども、地域公益活動ということを入り口にしながら、これから地域包括ケアシステムを構築するということに結びつけていく形で、今のところは先ほどの御指摘のように、子ども・子育て支援は子ども・子育て支援でやっていて、生活困窮者はそれでやって、高齢と障害はまた別々にということになっているわけですけれども、それらの横串を刺すということを、先ほどの課長のお答えにもありましたけれども、とても重視した形でこの地域ニーズを把握するということを、既存の枠組みを利用しながら横串をしっかりと入れていくことが、今後のためには非常に重要ではないかと思います。

 以上です。

○田中部会長 ありがとうございました。私が調べた幾つかの自治体でも、地域包括ケア計画に児童や障害者を含んだ場合、まさに横串的な推進室をつくっておられますね。大変いい意見、ありがとうございました。

 鎌倉委員、お願いします。

○鎌倉委員 地域公益活動については、現在、NPO法人やボランティア団体がWAMから助成金をもらって行っている福祉活動と、先ほどから議論されている社会福祉法人が余剰金を投下して独自に行う地域公益活動との違いが明確でないと思います。社会福祉法人が独自に行っている活動内容は、前回の会議での事例で発表されましたが、独自性が明らかになったようには思いません。社会福祉法人が行う地域公益活動は、NPO法人やボランティア団体とは異なっているというところを、活動内容と財政面から社会福祉法人関係者以外にも理解できるように論理的に定義して、社会福祉法人が行わなければならない地域公益活動を明らかにしていただきたいと思います。

○田中部会長 御質問はなくていいですか。御意見として。

○鎌倉委員 意見です。

○田中部会長 御意見として。

 藤井委員、お願いします。

○藤井委員 今の御意見についてもかかわることですけれども、2点ございます。

 1点、ちょっとページが戻って申しわけないですけれども、5ページのイメージはいいと思うのですけれども、再投下計画という名称でいきますと、どうしてもイニシャルコストを想像してしまうと思うのですが、私は地域公益事業のことを考えますと、イニシャルもフローもストックも、両方のコストというものがどれだけ社会福祉法人としてやっているのかということが明示されることが重要なのではないかと思います。そして社会福祉法人として、先ほどどなたかがおっしゃいましたけれども、その計画はつくらなくてはならない。しかも、やらなくてはならない。ここが私はNPO法人との最大の違いになってくるのではないかと思います。

 やっている内容のよしあし、イノベーティブであるかとか、地域包括ケアに資するかどうかというのは、社会福祉法人とNPO法人とが競い合っていいのだと思うのです。NPOのほうがすぐれた活動があれば、社会福祉法人はそれに追いつくように頑張ればいい話ですが、社会福祉法人というのはそれを必ずやらなくてはいけないということで、非課税の優遇がある、やっている事業の差から社会福祉法人とNPO法人の差があるというのはちょっと難しいし、余り意味がないのではないかと考えております。

 それから、2番目ですけれども、先ほど平川参考人だったと思うのですが、間違っていたら申しわけないのですが、類型化というお話がございまして、これが最後のページの「地域公益活動」について(論点(改訂))のところで重要になってくると思います。福祉サービスの充実との関係、位置づけをどのように考えるべきかという真ん中の論点でございますが、前回も申し上げたのですけれども、社会福祉法の社会福祉事業、公益事業という線が、私は今の時代の間尺に合いにくくなってきているのではないか。例えば、定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、社会福祉事業ではございません。地域包括支援センターも社会福祉事業ではございません。公益事業です。

 さらに言いますと、今、ソーシャルなニーズに対して、国のお金、政府のお金とか寄附とかではなくて、ソーシャルビジネスといった仕組みで回したほうがうまくいくものがある。ムハマド・ユヌスのマイクロクレジットは有名でございますけれども、そういったこともできておりまして、下手をすると非常にいいものが、地域で行われるソーシャルなニーズにかなったものが、これは収益事業としか言えないねというものも生まれてくる可能性はあるのではないかと思います。

 社会福祉事業、公益事業、収益事業という今の区分に問題があると言っているよりは、今、この地域公益活動を考える際には、その枠組みと違う枠組みを考えなきゃいけないのではないかと思っているということであり、そこでは先ほど平川参考人がおっしゃった類型化というものが伴うべきではないか。例えば、小規模多機能型居宅介護に関して、非常に黒字が上げにくいのだけれども、これを赤字地域で頑張っておりますということは、5年前であればそうかもしれないなという話が、介護事業経営実態調査ではプラス、黒字の事業でございますから、この赤字分が社会福祉法人が頑張っているのだと言われても、社会福祉法人以外の法人格をお持ちの方々は、それはちょっとおかしいのではないかと思われると思います。

 極論ですけれども、ある社会福祉法人で訪問介護事業が赤字で、これが地域貢献事業になるかと聞かれたことがあるのですけれども、やり方とか中身を聞いても、確実にきちんと利益を上げなくてはならない事業が、適切にやっていないがゆえに赤字を出している。この赤字を地域貢献事業として認めてほしいみたいな話が現にございます。したがって、イノベーティブであるがゆえに、あるいは黒字にしにくいがゆえに、赤字的な事業を社会福祉法人に頑張れと言うのも、この類型の中で少し整理した上でどういったものを認めるか。

 先ほど人材育成の初任者研修の話がありましたが、これも頑張ってほしいことなのですけれども、現に多くの社会福祉法人が初任者研修をやっておられるのは、自分のところの人材確保のためにやっておられるのもございます。8万円取るけれども、うちに就職したらただでいいみたいな例もございます。これを地域貢献事業とは呼びづらいだろうというのがございますので、類型化して整理して、それからフローとストックのお金があってといったあたりをもうちょっと明確にするという作業を次の段にしていきますと、それが見える化されますと、恐らく社会福祉法人以外の方々にも、こういうものが確かに必要だねと思って頂けますし、社会福祉法人は、仮に投下するお金がなかったとしても、「見えざる資産」でやらなくてはならない。

 見えざる資産の中でやっていただく必要があるという御理解をしていただければ、社会福祉法人、非課税ということの理解も進むと思いますので、類型化も含めて肝になるところだと思います。

○田中部会長 西條参考人。

○西條参考人 地域公益活動の定義につきましては、前回も議論がなされたところでございますけれども、社会福祉法人が公益あるいは収益事業で得た利益というものが社会福祉事業に帰結するという原則の中で、余裕財産、ここでは再投下計画の対象資産という言い方もされていますが、これを地域公益活動に使うということが、果たして社会福祉事業に必要な資産の圧縮、すなわち外部流出に当たらないのかどうかというのがどうも懸念されるところです。

 私どもで前回議論の中で披瀝させていただいた生活困窮者を支援するためのライフサポート事業につきましては、社会福祉事業の第2種として認可させていただいた上でやっている、新しいサービスといいますか、すき間ということでやっている、あくまでも社会福祉事業です。ですので、いろいろな地域公益活動の事例が出てくると思うのですけれども、ここは第2種社会福祉事業の定義を拡大するとか、そのような仕組みをつくっておかないと、外部流出じゃないかとか、これは収益事業じゃないかとか、いろいろな判断が出てくると思いますので、その辺の定義を明確化していく必要が今後あるのではないかと思います。

○田中部会長 御懸念ですね。

 武居委員、お願いいたします。

○武居委員 確認の意味ですが、先ほどの7ページの地域公益活動の実施に関する仕組みの話と、再投下計画の中に出てくる所轄庁の再投下計画の承認審査の話であります。

 所轄庁における再投下計画の承認審査の中身は、地域公益活動の内容が適切かどうかという判断ではないと考えていいのでしょうか。というのは、その内容については、地域の利用者、福祉関係者、行政関係者等により構成される協議会が把握するとなっていますので、そこには既に行政関係者が入って判断しているわけですね。ということは、その内容に関して、また新たに所轄庁が再投下計画として適切かどうかという内容の判断はないと考えていいでしょうか。

○田中部会長 岩井課長、お答えください。

○岩井福祉基盤課長 これは、地域公益活動にどのような概念を持たせて、内容がどのようなものになるかということとも関連してくると思いますが、承認という言葉を使うかどうかは別といたしまして、計画の妥当性を判断するということになりましたならば、地域公益活動として、それが当たるかどうかの判断は、当然入ってくるのではないかと思います。ただ、それが以前から議論がありましたように、限定列挙の中で画一的に判断するのか、あるいは行政庁の実施計画との整合性という判断をするのかということに対する御意見は、そのとおり、私どもとしても認識しておりまして、そういうことではなくて、自主性とか地域ニーズであるのではないかということです。

 そのときに申し上げたのは、例えば地域ニーズを反映したものであるのかとか、それは地域協議会におきまして議論があった地域ニーズを反映しているものかという判断も、一つの地域公益活動としての妥当性の判断でありますので、そういう観点はあるのではないか。いずれにしても御議論いただく話だと思いますが、この内容が地域公益活動に当たるのか当たらないのかということが全くフリーハンドということではないのではないかなと思います。

○田中部会長 橘委員。

○橘委員 すみません、教えてください。実は、来週、私どもの協会の全国47都道府県の会長を招集いたしまして会議を開催いたします。ここで書かれている資料、私は賛同するものでありますけれども、全国の会長にこの流れを啓発したいと考えております。

 そこで少々教えていただきたいのは、地域公益活動の内容については、それぞれの法人の自主性を尊重するとのお話がありましたが、余裕財産があっても公益活動をしない法人に対して、何らかのペナルティーという話が今までありましたでしょうか。これは、義務化ということの前提の本日のお話につながるのだろうかということを教えていただきたいと思います。

 6ページ、これは少し意味が違うかもしれませんけれども、直接費用の支出を伴わないものを含め、多様な取組みが想定される。すべての法人に対してこうした取組みの実施を求めるべきではないということがありますけれども、すべての法人というのは、余裕財産のない法人に対しては実施を求めないという解釈をしていいのでしょうか。それを教えていただきたいと思います。

○田中部会長 2点、お答えください。

○岩井福祉基盤課長 まず、ペナルティーというお話、ございまして、これは今後の議論も踏まえてですが、地域公益活動を、閣議決定におきましては社会貢献活動を義務づけるとなっております。これは、また次回以降、御議論いただければと思うのですが、前回の御議論で、例えば直接費用の支出を伴わないものは、そういうものも含めて全ての法人に義務づけるべきではないかという御議論がありまして、これをこのまま踏襲するとすれば、全ての法人に対して何らかの義務というものが課されるのではないかと考えています。

 一方で、再投下計画の議論につきましては、余裕財産がある法人については、これを地域公益活動とか福祉事業への再投下をするというスキームができて、それがきっちりとされていなければ、先ほど申し上げましたように、指導とか監督とか。これは、通常の社会福祉法人に対する所轄庁の指導監督の対象でございますけれども、そのような形で担保する形になるのではないかなと考えております。

 以上です。

○田中部会長 福間委員、お願いします。

○福間委員 地域公益の類型化の議論と、確かに行政の承認にしろ、判断とかはあると思うのですが、大事なことはニーズを踏まえるということで、先ほど来、地域包括ケアとか子育て支援とか類型化されていない、もしくは制度の谷間にあるニーズにどう応えるかというのが最も大きなことだと思うのです。

 例えばグループホームというのは介護保険制度ができてから出ていますけれども、その前は宅老所で始まっていた。そういう中で、結局抜けてしまったものを小規模多機能型がつくられてきたとか。社会福祉法人なりが現場でニーズに応えて、制度の狭間でやってきたことを、最終的には普遍化したり、類型化するということはゴールとしてはあると思います。

 そういう点で、一定の判断基準なりは必要かもしれませんが、最終的にはそこに弾力的なものを残していただかないと、例えば社会福祉法人は定款に基づいて事業を行う。定款には、社会福祉事業1種、2種、福祉を目的とする事業、公益事業と書くわけですけれども、公益事業も公益を目的とする事業の中身を全部列記しなきゃいけないわけですから、定款にない事業はできないという、もっと以前の大きな指導監督のほうに入ってしまいますので、そことの関係をちゃんとできるようにしてあげないと、全く意味がないし、その上で社会福祉法人がこれをやらねばならないということをきちんと位置づけていただくのは大変賛成でありますけれども、ややそこが不安だと思います。

○田中部会長 イノベーションを進める方向にしなくてはいけないですね。もちろん、後から制度に取り込むことは必要で、永遠に自由ではないと思いますが、最初のイノベーションは制度や定款の外かもしれません。それについても、行政指導についての後日議論の場があるのですね。

 どうぞ、武居委員。

○武居委員 先ほどと関連しての話でありますけれども、地域公益活動を協議会等で、地域福祉計画の策定にかかわる議論の場において把握すべきではないかというところでありますが、従来の流れからしますと、現場で働いているケアワーカーとかソーシャルワーカーが、いかに仕事の中で新しいニーズを発見して、そこに感性を持って対応し、そのことが実際に地域公益活動につながっていくかというところが最も大切なところではないかと思うのです。

 協議会が新たに考えられる地域公益活動というのは、ゼロではないと思うのですが、基本的にそういう場所から新しいものが出てくるとは考えにくいものだと思います。したがって、現場の中でいかにその問題に対してアンテナを張り、その問題に対応するかということが最も大事であり、現場から上がってくるものに対して、ぜひその判断を間違えないようにしていただきたいと思います。

 というのは、かつて行政の判断がいかに新しい福祉ニーズに否定的なことがあったかという例は、たくさんあったように思います。例えば、今のように在宅サービスが一般化する前の段階では、老人の入所施設で新しく在宅にいる高齢者にサービスを提供しようということを考えたときに、所轄庁は「それは入所者に出しているお金だろう。だから、在宅にいる人に対して、そのお金を使うのはおかしいのではないか」と言った。そういう議論もかつてはあったわけでありまして、ぜひそういう方向に行かないようなシステムにしなければいけないのではないかと思います。

○田中部会長 そのとおりですね。

 関川委員、お願いします。

○関川委員 資料6ページ及び7ページについて、2つほど、大きな質問をさせていただきたいと思います。

 まず、6ページですが、「地域公益活動」と社会福祉事業・公益事業の関係について、どう整理すべきかという論点整理が提示されておりますが、在り方検討会では、「社会福祉を目的とする事業」と社会福祉事業と公益事業との関係について、主として議論していただいて論点整理をしていただいたと思います。それが今回は「地域公益活動」という言葉が出てきて、かつ事務局の御提案は、それも社会福祉事業・公益事業の枠の中に入るものだ、包摂されるものだという整理をされておられます。

 在り方検討会の議事録を読みますと、社会福祉事業及び公益事業のほかに、社会福祉を目的とする事業を広い枠組みで捉えれば、地域社会の一員として自立した日常生活を営むことを支援する事業が、社会福祉事業・公益事業とは別に考えられるはずで、それについて地域ニーズに基づき、さらなる取り組みが考えられないかという整理をされていると理解しております。今回、事務局提案による「地域公益活動」と社会福祉事業・公益事業についての概念整理自体は理解できるのですが、改めて「社会福祉を目的とする事業」と、地域公益活動及び社会福祉事業・公益事業との関係について、事務局のお考えを伺いたいのが質問の1点でございます。

 もう一つに関しましては、先ほど西條参考人が社会福祉事業の範囲について見直すべきだと御指摘されましたけれども、私はあわせて公益事業の範囲についても抜本的に見直すべきだと考えております。事務局提案によるように、地域公益活動は社会福祉事業及び公益事業に包摂されるという整理であれば、公益事業の範囲の見直しが必要と考えます。

現在の告示によって、社会福祉法政令4条7号によって公益事業の範囲が定められておりますが、あくまで1から13は例示列挙になっております。例示されていない公益的な事業に対して収益の一部を充てることができるかに関しましては、当該事業を実施することによって社会福祉の増進に資するものと所轄庁が認めるものであれば構わないとされています。所轄庁においては、例示列挙されたもの以外の公益目的の事業に対しては、公益事業の基本的な枠組みの中で社会福祉事業に関連性があるかとか、社会福祉の増進に寄与するものであるかということをケース・バイ・ケースで判断されてきましたけれども、概して慎重な判断がされてきたと思います。

これに対して、従来の地域社会が一員として自立した日常生活を営むことを支援する事業や、制度の谷間にあって社会的援護を必要とする人たちへの生活支援など、現在の社会福祉事業・公益事業も対応していないニーズに対して、社会福祉法人が柔軟に対応し社会福祉を目的とする事業を企画・実施できる仕組みが必要と考えます。こうした観点から、公益事業の範囲を抜本的に見直していただく必要があると思っております。

 せめて、公益財団法人における公益認定要件として定められている公益目的事業を参考にしていただいて、たとえば「社会福祉を目的とする事業に該当し、不特定かつ多数の福祉の増進に寄与するもので、社会福祉事業以外のもの」という定義をするなどして、所轄庁に対しては社会福祉事業に支障がない限り、定款認可しなければならないと求めるような仕組みをぜひとも検討していただきたいと思います。

 ちなみに、公益財団法人における公益認定の要件では、公益目的事業に関しては非常に包括的な規定をしておりますので、このような包括的な規定をぜひとも考えていただければ、その中には先ほど福間委員が御指摘のとおりの制度のはざまにあるニーズも含めて、社会福祉法人は公益事業として実施することができ、かつそれに該当すれば所轄庁も公益事業として定款変更並びに事業の実施を認めていただける仕組みが必要だと思っています。

○田中部会長 前段の質問について、岩井課長、ありませんか。

○岩井福祉基盤課長 地域公益活動の範囲につきまして、社会福祉事業または公益事業に包摂されるという趣旨につきましては、ある意味先生のおっしゃることとかなり同じような話なのですが、公益事業の運用との整理というのは、また議論する必要があろうと思いますが、社会福祉法の公益事業というものが何かということは、先ほど先生がおっしゃったこととほぼ同じなのですが、基本的に社会福祉法人は公益法人の一種でございまして、公益法人としてすべき事業、公益法人たるゆえんとなるような事業と一応解釈されております。

 ただし、社会福祉法人が公益法人として行うような事業というのは、これは社会福祉に関するものであると。これは、既に解釈として解説書などにも書いておりまして、それが定着ていると考えています。そのように考えますれば、基本的には社会福祉に関する公益事業というところが、本来的な意味では社会福祉法人が行う社会福祉に関する事業をあらわしているという前提のもとで、社会福祉事業と公益事業に包摂されると申し上げている次第でございます。

 いずれにいたしましても、今回の議論は、地域公益活動というもの、これはいわゆる規制改革会議で言えば社会貢献活動ですし、この部会におけます議論で言いますと、再投下対象財産の投下先ということから始まりまして、それ以外の再投下対象財産がない法人についての議論にも拡大しておりますが、そういう論点からいきますと、公益性を高めるという制度改革におきまして、どの分野の事業に充てるかということを考えれば、社会福祉事業または公益事業ではないか。公益事業は、社会福祉事業ではない、公益法人である社会福祉法人が本来担うべき公益的な活動と解釈すれば、そうなるのではないかという観点から申し上げている次第です。

○関川委員 もう一点、よろしいでしょうか。

○田中部会長 どうぞ。

○関川委員 資料7ページに関して質問させていただきたいと思います。7ページでは、社会福祉法人の公益性に照らし地域ニーズに基づく「地域公益活動」に優先的に投下すべきではないかと書かれておりますが、社会福祉法人が今日求められている福祉課題というのは、もちろん地域のニーズも重要ですが、もっと大きな枠組みで、地域ニーズにはないけれども、現代社会の福祉課題であったり、もう少しグローバルに国際社会の抱える福祉課題、福祉ニーズにも対応していくことが必要なのではないかと考えております。

 例えば住民が求める地域ニーズで考えた場合には、刑余者に対する生活支援というものが挙がってこない可能性があります。路上死、ホームレスに対する生活支援が挙がってこないかもしれません。外国人、なかでも違法に就労する外国人に対する生活支援、あるいはHIV感染患者に対する生活支援というニーズが挙がってこないかもしれません。

例えば、大阪府で考えますと、そのようなニーズは一般市である所轄庁レベルでは把握されない場合であっても、広域自治体をベースにして考えれば確実に存在する支援ニーズです。そこに対して市町村ごとの圏域を超えて、大阪府下の社会福祉法人全体で協力し、「オール大阪」としてかかわることが私は非常に大切なのではないかと考えています。地域ニーズに基づく「地域公益活動」といった場合では、所轄庁の行政圏域で考えず、都道府県を圏域にした地域ニーズという考え方も必要と考えます。

 あるいは、災害支援に関しても、所轄庁から離れた地域で地震が起きた、あるいは韓国や台湾や中国で地震が起きた場合にも、社会福祉法人が災害支援に駆けつけることが求められると考えます。特に福祉のスキルを持った人たちが駆けつけて、被災地の高齢者や障害者の支援に当たるということはとても大切なことなのではないかと考えます。

 さらには、国際貢献として考えれば、NGOと協力して、アジアのストリートチルドレンの支援に当たる、現地でシェルターをつくる、食糧を提供する、薬を持ち込むなどといった支援も、このスキームの中でやれるようにぜひとも検討していただきたいと思います。アジアの障害児のために車椅子を提供する、義肢・義足を提供するということも、社会福祉法人の一つの使命として考えられるべきではないでしょうか。地域ニーズに限定してしまうと、そうした社会福祉法人による活動の可能性が制約されることにならないか、危惧しているところでございます。余裕財産を再投下する範囲について、あらためてご説明いただきたいと思います。

○田中部会長 ありがとうございました。お答えになりますか。

○岩井福祉基盤課長 これは委員の皆様におかれまして御議論いただく問題でございますが、1点だけ論点の整理といたしまして申し上げますと、この議論の発端は、社会福祉法人が我が国の法人体系の中でどのような意義があって、その位置づけがどうで、そしてどのように存続させるかという議論でございます。

 したがいまして、関川委員からお話が出ました事項は重要なニーズであると思いますが、それは社会福祉法人が社会福祉法人としての本来的使命として、特に担うべきものなのかどうかという見地からの検討は必要かなと。NPOとか一般的な財団とか株式会社とか、さまざまな法人体系がある中で、社会福祉法人制度が我が国においてなぜ置かれているか、そこは何を担うべきなのかということが、この地域公益活動の議論と直結する話だと思われますので、そういう観点をお持ちだいたければと思います。

○田中部会長 藤井委員、どうぞ。

○藤井委員 私は、今の関川委員の御意見、基本的に賛成でございまして、事務局のほうから社会福祉法人としてというお話があったのですが、この話がある以前に年越し派遣村問題がございまして、これを頑張ったのはNPOでございまして、厚生労働省さんが苦労されて年末年始に講堂を使われたときに、私が聞いている範囲で言うと、厚労省とすれば、泊まるところというのは適切じゃないということで、都内の重立った社会福祉法人にお願いした。お願いすると、そういう対応は今の法令上も非常に難しい。できないということもあったのかもしれませんが、ということで断られたという話がございます。

 関川委員がおっしゃったことを、大々的にそれを中心に展開されるという話であれば、おっしゃっていることはそのとおりだと思うのですけれども、資源なり人なりを持っておりますし、ノウハウも持っている、見えない資源というものも持っていますから、そういうものは積極的に活用していって、社会福祉事業という、先ほど来定義のお話ありましたけれども、定義を見直したほうがいいのか、その枠とは違うことで打ち立てていいのか、私はその枠とは別に打ち立てたほうがいいと思っているのです。例えば社会福祉事業であると、一定期間6ヶ月とか継続しなきゃいけない。そういうものでないような取り組みもどんどんやっていってもらおうという考え方です。

NPOがやればいいとおっしゃられたのですけれども、もちろん主たる目的から離れたことを大々的にやられるというのは論外にせよ、NPOさんがどんどん先進的なことをやっている中で、社会福祉法人というのは旧来の守りの経営しかやっていない、新しいことができないというのが、私は社会福祉法人不要論の一つの根幹をなしているのではないかと思いますので、いろいろなことが自主的にやれるようにということをいかにつくっていくかが重要だと思います。

 そういう意味では、先ほど来出ておりますような、2番目の論点の定款の問題でございますが、定款に全部書かなきゃいけない、そして、この許認可は都道府県がやるということが大きなハードルになっていたことは間違いございませんから、これを法令上、どうつくり上げるかは別といたしまして、株式会社の定款というのは非常にあいまいに書けることになって、結果的に何でもできる。あれが公益法人たる社会福祉法人に適切とは言わないですけれども、自主的な判断に基づいて、都道府県等、自治体が許認可によって、そんなことはやってはいかぬということにならない形が重要なのではないかと思います。

 3番目の論点ですけれども、武居委員がおっしゃった、7ページ目の地域ニーズを把握する仕組みをどのように構築すべきかということで、本来のニーズは現場において把握されていくものであるというのは、これは私は基本的にそのとおりだと思いますし、そこが重要だと思うのですが、今のこの社会の変革状況において、あるいは福祉事業の経営がさまざま困難な状況において、ここだけでは限界に来ているのではないか。

 イノベーションという言葉がずっと出てきておりますけれども、創造的破壊というシュンペーターの言葉にありますように、今あるものと全く違うものを考えていくということも必要になってきている。そのときに、ここに書いてあるような、地域の方々に集まっていただいて、お話をしたら出てくるという読み取りを、この文章で私はすべきではないと思っておりまして、地域の方々のニーズをどのようにして引き出すか。リレーションシップ・マーケティングという言葉がマネジメントの世界にありますけれども、どれだけきちんとかかわって、地域の中に社会福祉法人が飛び込んでいって、言葉にできないニーズが転がっていることに気づいた上でやっていくかということを私は求めていきたいと思います。

 そういうことから言うと、地域に対してオープンになって飛び込んでいくのだという意味で、こういう仕組みといいますか、社会福祉法人の側も地域の方々に説明したり、理解していただいたりということが相当重要だろうと思います。住民自治を高める方法として、さまざまな委員会に住民に参加してもらうという手法ができて、もう十何年になりましたけれども、参加してくださる住民の方に物すごく機会を提供して、勉強していただいたり、説明しているところは、住民の方々がさまざまな形で意見を積極的に言ってくれるようになって、住民自治が広がっているところもあると思うのですけれども、そうでない、形式的に入っているところは全く機能しておりません。

 ですから、実質をこれでどうつくっていくかということとセットであれば、私はこういったものが求められている時期でありますし、社会福祉法人が地域に開かれたものになるためにも、武居委員がおっしゃっていることはそのとおりだと思うのですけれども、むしろ重要視すべきではないかと思います。

 以上です。

○田中部会長 宮本先生、お願いします。

○宮本部会長代理 今の御発言に続けてです。社会福祉法人が担うものとNPOが担うものの関係についてです。先ほどからイノベーションという言葉が出ておりますが、今、地域の新しいニーズの担い手は、どちらかというとさまざまなNPOのほうが圧倒的にやってきていると思います。

 ですが、NPOの多くは、経済基盤それから経験の蓄積という点で言うならば、NPOの経営は決して恵まれているわけではなく、そういう意味で言えばイノベーションの担い手でありますけれども、NPOがやっているから社会福祉法人が担わなくてもいいという議論ではなく、NPOが萌芽的にやってきたものを、今、作業をやっているような制度の改正の中で、社会福祉法人が積極的に担うことに意味があると思いますので、先ほどの議論はある意味逆転して、NPOが先駆的にやってきたものを新しい地域のニーズだと位置づけ直して、社会福祉法人の方がより安定的な力を持っているのであれば、積極的に担っていくという考え方が必要ではないかと思います。

○田中部会長 岩井課長、どうぞ。

○岩井福祉基盤課長 私の説明が少し誤解を招いているようでございますので、改めて説明申し上げますと、NPOがやっているからやらなくていいとか、あるいは範囲がイノベーションのところをやる必要はないという、非常に旧套的なことを申し上げているわけではございませんで、NPOは公益法人ではございません。社会福祉法人がなぜ公益法人として位置づけているかという観点が必要であるということで、むしろ社会福祉法人は、NPO法人とかよりも、本当に社会の問題になっているところをしっかり担わなければならないということが突きつけられているのではないかということをお考えいただきたい。

 先ほど関川先生がおっしゃったことは全て重要な話であるわけですが、我が国の制度の中でどこをやるかということ、別にそれを範囲というわけではないのですが、義務づけであり、制度化するということでございますので、何をやるかということはある程度そういう観点を持っていただきたい。社会福祉法人は、なぜ公益法人としての立場があるのかという観点から、そういうことも念頭に置いて御議論いただければという趣旨で申し上げた次第です。

○田中部会長 では、武藤参考人、それから平川参考人、どうぞ。

○武藤参考人 私たち社会的養護の分野では、藤野委員がいつも言っていると思うのですけれども、本来業務でやらなきゃいけないことが、資金や人材の不足により、まだまだ不十分となっている点が多々あるのです。ですので、そこがこの意見の中でもよく出てきていますけれども、本来やらなきゃいけないサービスを十分やるということが前提になると思います。

 そこのところをいいかげんにしながら、余裕財産があって、それを海外のほうに投資するとか地震災害に行くということになってしまったら大いに本末転倒の議論になってくると思いますので、まずは本来の業務をしっかりやるということが重要だと思います。

 それから、私、前回出たときにもここで話をしたのですけれども、本来業務の周辺の業務をもっとやりたいというのはいっぱいあるのです。それは費用がないから、ちょっとできないという部分があって、順序というものがあるのではないかと思います。そういうところをしっかりしながら論議をしないと、この余裕財産とか再投下のところが重視されて、本来のところがおろそかになってしまうのはいけないと思います。これは念のためにという意見になると思いますけれども、よろしくお願いします。

○平川参考人 私も念のために、という発言でございます。7ページの○の2つ目の下に「適切な事業運営を確保する」ということでしっかりと書かれてありますけれども、今指摘があったように、地域公益活動のほうが優先されてしまうということ。例えば、職員の給料が適切に設定されていないにもかかわらず、それに伴う余裕財産の分まで地域公益活動に注ぎ込むということになると本末転倒ではないかと考えております。

 保育もそうですし、介護もそうですけれども、人材確保とともに処遇改善というのは喫緊の課題であります。「適切な事業運営」という意味合いは含まれているということで説明がありましたけれども、「適切な事業運営」の中身が社会福祉法人の中で共通の認識で持たれた上で、しっかりと運営されるということが重要ではないかと考えています。

 もう一つ、社会福祉法人の社会的な任務という前提で委員の皆さんは議論されているかと思いますけれども、確かに社会福祉法人の創意工夫ある地域公益活動も大変重要ではあります。一方で、税制が優遇されているという観点から言うと、国民なり地域住民の皆さんにどれだけ納得感がある地域公益活動になるのかという観点も重要ではないかと考えているところであります。

 以上です。

○田中部会長 本体業務をおろそかにして公益活動をしろと言っている委員も誰もいないし、事務局もそう思っていないので、これは大丈夫だと思います。むしろ、本体活動をきちんとしてきたから何も言わないでほしいとの発言は世の中に通らなくなってきて、本体活動以外の満たされていないニーズとか、新しいイノベーションに基づく満たし方とかも考えないと公益法人とは言えないと要求する社会からの指摘に対して応える。本体をおろそかにしろと言う人は、この中に多分誰もいないと思うので、確認、ありがとうございました。

 あと1人か2人。柳川委員、どうぞ。

○柳川委員 7ページ目ですけれども、座長には苦笑いされるかもしれませんが、経済界として地域に根差した活動をしている人はたくさんいます。商工会議所はもともと渋沢栄一がつくった団体で、社会福祉の増進を視座に常に経済活動を行っているメンバーですので、ぜひこういった面が描かれることをお願いしたいところでございます。特に、地域経済の担い手であり、言うなればNPOに近いところもございますので、我々、社会的な視座を持った経済活動をしている者の知恵を活用していただければと思います。

 それと、これは議論がずっとたくさん出ているのですけれども、公益活動の定義にもかわるのですけれども、ちょっと逆転の言い方をして恐縮ですが、地域のニーズを得るというのはとても大事だと思うのですが、地域の中でのプライバシーの問題、その人にとっては地域の人に相談できないとか、そういった懸念を持つ人はゼロではないと思われます。それについて、どう仕分けしていくかという議論も今後ぜひお願いしたいと考えております。

 以上です。

○田中部会長 ありがとうございます。

 一わたりよろしゅうございますか。きょうだけじゃなくて、また来週、すぐありますものね。言い足りなくても機会はすぐ来ますので、本日はここまでとさせていただきましょうか。

 では、本日の審議はこれにて終了いたします。

 次回の開催について事務局より連絡をお願いします。

○西辻総務課長 次回でございますが、本当にすぐで申しわけないのですけれども、1020日月曜日、来週の月曜日でございますけれども、10時から航空会館の大ホールで予定しております。よろしくお願いいたします。

○田中部会長 ありがとうございました。本日の議論は以上でございます。皆様、活発な御議論、ありがとうございました。


(了)

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