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2014年12月25日 第6回腎臓移植の基準等に関する作業班 議事録

健康局疾病対策課移植医療対策推進室

○日時

平成26年12月25日(木) 9:30~11:30


○場所

航空会館 204会議室


○議題

1 腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準の見直しについて
2 その他

○議事

○田中補佐 少し早いですが、ただいまより「第6回腎臓移植の基準等に関する作業班」を開催させていただきます。委員の先生方におかれましては、お忙しいところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本作業班は、前回の会議から2年ぶりの開催でして、本日から新たな体制で議論を行っていただくことになります。

 まず、事務局から委員の先生方のお名前と所属を50音順に紹介させていただきたいと思います。東邦大学医学部腎臓学講座教授 相川厚先生、神戸大学腎臓内科教授 西慎一先生、名古屋大学腎臓内科教授 松尾清一先生、川島病院院長水口潤先生、増子記念病院理事長 両角國男先生、水戸医療センター臨床研究部長 湯沢賢治先生、国立感染症研究所ウイルス第二部部長 脇田隆宇先生、東京女子医科大学医学部腎臓小児科学教授 服部元史先生からは、本日御欠席の連絡をいただいております。

 また、事務局の紹介をさせていただきたいと思います。移植医療対策推進室長の阿萬です。室長補佐の菊田です。室長補佐の馬場です。私田中です。よろしくお願いいたします。それでは、本日の作業班からは、前任の大島班長より御推薦をいただきまして、松尾先生に班長をお願いしたいと考えております。御異議ありませんか。

                                (異議なし)

○田中補佐 それでは、以後の議事の進行は、松尾班長にお願いします。松尾班長、よろしくお願いいたします。

○松尾班長 それでは、まず、今回の御挨拶を簡単に申し上げます。前回の会議が開かれてから2年たつということで、本会議は久しぶりに開催されます。私は現在、日本腎臓学会の理事長をやっているのですが、かねがね日本の移植の数は非常に少ないということで、非常に気になっていて、今回大島先生の後をついで、この班長をやらせていただくということですので、少しでも日本の移植の状況の改善に貢献できればと思っております。先生方のお力をお借りしながら、是非いいものを作っていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、会議を始めます。まず、事務局のほうから資料の確認をお願いしたいと思います。

○田中補佐 それでは、議事次第に「配布資料」と「参考資料」の記載がございますので、お手元の資料を御確認ください。資料の不足、乱丁等ありましたら随時、事務局までお知らせください。また、こちらのオレンジの紙ファイルに、「脳死下での臓器提供事例にかかる検証会議参考資料」というものがございますが、最後の所に、「全臓器のレシピエント選択基準」が綴られておりますので、こちらのほうも、適宜御参照いただければと思います。資料に関しましては、以上です。

○松尾班長 ありがとうございました。

 私も含めてそうなのですが、本日初めて、この作業班に参加される先生もいらっしゃいますので、これまでの腎臓移植希望者、レシピエントの選択基準の改正経緯、それから、腎臓移植におけるレシピエント選択基準を検討する上での考え方ということについて、もう一度おさらいをしておきたいと思います。事務局のほうから、資料1及び資料2に基づいて、説明をお願いしたいと思います。

○阿萬室長 移植医療対策推進室長の阿萬です。よろしくお願いいたします。私のほうから資料1と資料2に基づきまして、御説明をさせていただきます。

 まず資料1のほうですが、「レシピエント選択基準の改正経緯等」ということで、今回、先生方に御議論お願いできればと思っておりますレシピエント選択基準については、この経緯の所にも簡単にまとめておりますとおり、正式なレシピエント選択基準という形では、平成7年に制定されております。その後、平成14年に1回改正を行ったあと、平成21年改正臓器移植法の成立を踏まえて、親族への優先提供に関する規定の追加、そのあと平成23年には、地域、待機期間、HLAの配点の重み付けの補正などについて、改正を行うなどを、これまで行ってきております。改正の議論について、下半分のほうに時系列順に並べておりますので、御参照いただければと思います。

2枚目はその他腎臓移植に関する全体の状況についてです。これは、臓器提供者数ではなくて、移植者数ですので、数では臓器提供者数よりは当然多いわけですが、いずれにせよ、2011年、2012年、2013年と減ってきている状況で、特に脳死下での腎移植については、ある程度増えてきている状況ですが、心停止下での腎移植が、どんどん減ってきているという状況です。これについては、我々といたしましても、具体的にどのように対応するかというところにつきましては、また施策を打っていかなければいけないと思っているところです。

 次に、「臓器提供から移植への流れとドナー適応基準・レシピエント選択基準との関係(現状)」です。今回の作業班におきまして、先生方に御議論いただければと考えておりますものを、A4横紙1枚でまとめてます。臓器提供施設と日本臓器移植ネットワーク(JOT)、そして移植実施施設との関係で申し上げますと、まず右上で、移植実施施設自体の登録、そして個別の患者さんの登録につきましては、それぞれ移植関係学会合同委員会の下で、各学会の先生方の自主基準として運用されている部分です。特に、このレシピエント適応基準、これは選択基準と名前が少し紛らわしくて恐縮ですが、我々こうやって言いならわしておりますが、要するに、移植が必要な患者さんとして登録されるときの基準につきましては、学会の先生方の自主基準において運用されているということです。

 その下ですが、「臓器提供」と「臓器配分・あっせん」ということで分けておりますが、実際の事例が起きた場合に、臓器提供施設からJOTに情報が入って、臓器提供の手続などを進めるわけですが、その際に必要となってきますのが、ドナー適応基準と我々呼んでおります。これは個別事例におきまして、ドナーの臓器が移植に利用可能かどうかをJOTが判断するための基準ということです。そしてレシピエント選択基準、これは臓器配分・あっせんを行う際に、個別事例におきまして、登録されたレシピエントの中で臓器あっせんを行う優先順位をJOTが判断するための基準ということで、定めているものです。これらの2つは、特に個別の事例におきまして、JOTが参照すべきものとして、国が定めて、具体的には局長名の通知ということです。これにつきましては、JOTの責任で運用してもらっているということで、この中身について、この作業班において御議論いただければと考えている次第です。

 次に資料2を御覧ください。「レシピエント選択基準を検討する上での考え方」ということで、もちろん、いろいろ先生方の中でも御議論あろうかと思いますが、これまでの議論も踏まえまして、何に御留意いただくのかということを含めて少し整理をさせていただいております。

 まず1つ目、レシピエント優先順位付けの基準を設定する上での基本となる視点ということで、医学的妥当性、社会的公平性、実施可能性という観点で御検討いただければと考えております。

 更に、現行基準の構造ということで、1から4まで大きく言うと、1.搬送時間、2.HLAの適合度、3.待機日数、4.未成年のポイント加算、この4項目の点数を合算して、点数が高い順番に優先順位をつけるということになっております。ただそれだけですと、同一点数のレシピエントが出てまいりますので、それにつきましては、臓器搬送に要する時間ですとか、医学的条件などに配慮して、優先順位付けを行うという形になっております。

 これらを踏まえて、レシピエント選択基準の変更を検討する上で留意すべき論点として、事務局として整理させていただいております。論点1、上記の基本構造の見直しに踏込むかどうかという点、それについては、基本構造の見直しまで踏込むということになると、それだけ大きな必然性が必要ではないかと考えている次第です。論点2ですが、その必然性という点について言うと、まずデータということですが、我が国における臓器移植に関しての定量的なデータ、いわゆるエビデンスですが、それがあるかどうかというところが、次のポイントになってくるかと思います。

 そういうことも踏まえつつ、御議論いただければと思っておりますので、何卒よろしくお願いいたします。私からは以上です。

○松尾班長 ありがとうございました。いまの御説明に対しまして、何か御質問・御意見等ございますか。よろしいですか。一応、過去の事実関係は、そういうことで、情報共有できたかと思います。

 それでは、議事に入りたいと思います。資料3を御覧いただきたいと思います。本日は、レシピエントの選択基準に関しまして、議論を進めたいと思います。事務局のほうで、検討すべき論点を整理していただきました。このポイントを整理して、議論をいただきたいと思っています。この「レシピエントの選択基準の見直しを必要とする事項について」続いて「その他の事項」ということで、ここに挙げられた8項目について、できるだけ時間の許す限り、議論をいただきたいと思います。

 まず、レシピエント選択基準の見直しに関しまして、この待機日数の点数の取扱いについて議論いただきます。湯沢委員のほうから、御意見をいただいておりますので、説明をお願いしたいと思います。

○湯沢班員 資料32頁目を御覧ください。平成14年に、腎臓の選択基準が変わりまして、待機年数がポイントとして大きく加点されることになりました。その結果、その背景としては、待機期間が長い者が優先されるとされてきたわけですが、一方でその結果、非常に待機年数が長くなってきております。平成14年以降、平均で見ますと、平均待機年数が14年ということになっております。それが更に実は、今回脳死症例での提供について膵腎が優先されるということから、腎臓単独での待機年数、腎臓単独での提供、移植に至る症例が減っているということも、背景としてございます。

 その結果、現在ではこの平均待機期間17年ということになってきております。この待機期間が非現実的な日数になってきているというのが現実です。

 実際問題として、新規に登録した人が17年、10年以上回ってこないというのでは、登録してもなかなかしようがないのではないかという思いにもなると思います。一方で、臓器移植ネットワークで何年か前に集計されたデータで、待機年数で区切ったときに、成績がどこでいちばん有意義に分かれるか、良いのと悪いのと境目として13年という結果がございます。要するに、13年を超えた人の成績は明らかに悪い。その13年以内の人に比べると13年以上の人は、成績が悪いという優位な差が出ております。そうすると、結果的には待機年数が長くなって、成績が悪い状態、悪くなることが予想されるレシピエントに移植されているということになりまして、提供者なり御家族の意思がなかなか反映しづらい状況になっているというのが確かです。

 実際に、前回の作業班のメンバーで、これについての検討を行いました。どうしたら、待機年数が短くできるかということです。それで単純に考えまして、待機年数のポイントを下げればいいのではないかということで、私臓器移植ネットワークのデータを元に、当時シミュレーションをさせていただいた。そうしますと、この選択基準参考資料2にありますレシピエント選択基準というのがありまして、このポイント制でいくのですが、優先順位として、例えば、半年間とかHLAの適合度というところ、あと未成年者というところがありますが、そういうポイント、待機日数以外は、ほぼ正数でHLAの適合度は1.15なので必ずしも正数ではありませんが、待機日数以外のポイントは、加算されていくと階段状になってくるのですね。必ずしも斜めの線になってくるわけではありませんので、階段状になってくると。そこの階段状にポイントがいったときに、いくら待機日数のポイントを例えば10分の1、極端なことを言えば100分の1に計算したとしても、この階段の1段階の中にほぼ全部収まってしまう。そうすると、結果的に単純に待機日数のポイントを下げただけでは、何の解決にもならない。結果的には、より長い人が優先されることになってしまいまして、この17年というのがシミュレーションしてみても、ほぼ全く変わらないというぐらい変わらないのです。ですから、単純にポイントを下げるだけでは、この待機年数をより短くしたいということにはつながりません。

 一方で、前回の作業班でも倫理の専門家の先生の御指摘があったのですが、待機年数が長いことが優先される根拠は何もないのだと。一方で法律的にも、この移植術を受ける機会を公平に与えられるように配慮されなければならないということからいうと、この公平という規定からは、待機年数が長いものが優先されるという根拠はないのですね。むしろ、どの患者さんも公平にという考え、単純に長いからということは、例えば登録料を多く収めたからとか、そういうことで優先されるということがあってはならないわけで、何らかの本当の公平にということが必要になってくる。ただし、一方で歴史的にはやはり、長い人が優先されるということがあったもので、1つの解決する方法として、これは、相川委員とも相談させていただいたことなのですが、1に書きましたように、HLAのミスマッチゼロの適合者がいた場合、待機日数に関係なく、第一優先とするということがあれば、たとえ、待機年数が0年であっても、回ってくる可能性は出てくるのですね。こういう方法が1つの解決策ではないかとして提案させていただきました。

 これが具体的にどのぐらいいるかどうかにつきましては、ネットワークの実際の提供データ、適合度データから、これが全然ないのだということになれば別なのですが、大いに可能性というか、希望が持てる条件ではないかと思って、これを提案させていただきたいと思います。

 それで、最後2頁目のいちばん下に書いてあります「HLA適合度に対するポイント」でそのミスマッチゼロというのは、結局昨今免疫抑制剤の進歩により、非常に移植成績が良くなってきておりまして、HLA適合度がほとんど関係なくなってきているのです。昔でしたら、適合度によって、成績がもうどんどん変わってきて、よりHLAの適合度がより良い人が優先されたわけですが、それがほとんど関係なくなってきている。ただ、統計的に見ますと、HLAとミスマッチゼロの人と、ミスマッチが123456の人を比べると、ミスマッチゼロは、有意に良いというデータがあります。ですから、ミスマッチゼロは優先しても、それなりの根拠があるのではないか。これが全然根拠がないとしたら、HLAの適合度で選択されること自体に根拠がないことになってしまうのですが、ミスマッチゼロは、やはり有意に良いということがデータとしてありますので、それを優先するのが説得力あるのではないかと思いまして、あえてこれを提案させていただいたということです。以上です。

○松尾班長 ありがとうございました。それでは、ただ今の御提案を受けまして、事務局のほうから、本件に関する背景及び検討ポイントについて、もし説明があればよろしくお願いしたいと思います。

○田中補佐 それでは事務局のほうから背景、検討ポイントについて御説明させていただきます。先ほど背景については、湯沢委員のほうから御説明がありましたので、ここでの議案に対する検討ポイントとして、事務局のほうで3つほど上げています。2ページ目の下のほうで(1)HLA適合度によるポイントの見直しについて、先ほど湯沢委員からもありましたが、ミスマッチゼロに関して、どのように評価するか、最近の免疫抑制剤による成績の向上も踏まえ、HLA適合度のポイントの見直しについて先生方から御意見を頂ければと思います。

3ページの(2)地域の定義についてです。現在の選択基準においては、同一都道府県内に12点、同一ブロック内に6点、ブロック外というように、地域での区切りを付けていますが、この地域の分け方について、点数等を変える必要があるかについて、先生方に御意見を頂ければと思っています。

(3)その他で、現在のレシピエント選択基準では、1.搬送時間、2.HLA適合度、3.待機日数、4.未成年の加算の構造を選択基準の優先順位の要素としています。この基本的な構造を変える必要があるかについて、先生方から御意見を頂ければと思います。構造を変えることになると、抜本的な選択基準の改正が必要になるので、今まで登録されていた既存の登録者への影響を踏まえ、このことについてどのように考えるかに関して先生方の御意見を頂ければと思っています。事務局からは以上です。

○松尾班長 ありがとうございました。それでは時間も限られているので順番にいきます。個別の項目について御意見、御討論を頂き全体の構造を変える必要があるかどうかを最後に議論したいと思います。先ほど示したHLA適合度のポイントの見直し、特にミスマッチゼロの評価、これについて委員の皆様方の御意見を伺いたいと思います。相川委員よろしくお願いします。

○相川班員 ただいま湯沢班員から説明がございましたが、2007年データブックというものがあり、これが臓器移植ネットワークで出した一番最後のデータです。それ以来実は統計が出ていません。多少、免疫抑制剤等により変わっていると思いますが。2007年の時点ではHLAのミスマッチつまりそれがゼロの場合と、他の場合1~6個違いがある場合と比較してあります。これは有意差でLogrank検定でもWilcoxon検定でも有意差を持ってゼロミスマッチがいいというデータが出ています。ミスマッチ数のゼロというのは、268名で統計を取っています。全体で1,854例。ということはかなりの数のHLAミスマッチゼロという方がいて、他のミスマッチの数と比較して有意に成績が良いと2007年のデータで既に出ています。

 他は1から6に関して、実は6のミスマッチは5例しかありません。これはあまり統計的に意味がないことになりますが、他のミスマッチ数との検定数を見ると全て有意差はありません。つまりゼロミスマッチだけが非常に成績が良いというデータが出ています。これから考えるとやはりゼロミスマッチの優先権を与えてもいいのではないかと私は考えます。実際イギリスで、Beneficial pointが以前よりありまして、HLAミスマッチ数がゼロの方は優先的に移植が受けられることになっていますので、それも視点に入れて考えるといいと思います。

 問題は、私ども湯沢班員もそうですが、外来の現場で死体腎移植を受けたいと登録に来た場合、先生、これ待機期間は何年ですかという話になり、15年とか17年という話をすると患者さんは普通はびっくりします。先生、そんなに待ってられない。では登録は辞めにしましょうという方も結構います。初めからその時点で登録の数が減ってしまう。これは実際に臓器移植ネットワークの待機患者数を見ても腎臓に関しては、増加傾向は見られない原因の一つと考えられます。透析患者数は増えていますが、実際に登録の患者数は増えていない。それも待機期間が長すぎるのが原因の1つだと思います。

 ということはそういう方にもHLAがあった場合には、待機期間を無視して、登録した方が選択されることになれば、では登録してみようと考える方も多いと思います。是非、このことは検討していただきたいと思います。これは2007年のデータで、やはり現在のデータを鑑みなくてはいけないと思います。以上です。

○松尾班長 ありがとうございました。大変いい御意見でした。ほかに両角先生。

○両角班長代理 当初からレシピエント選択基準作成に関わってきた立場から申しますと、何が公平かについての答えがない状態で今まで見直し作業が行われてきたと思います。最初は小児のポイントがない段階で、HLA,待機期間、地域の3つのスコアが等価になる基準から始まって、その時代、時代の背景の中で免疫抑制の進歩であるとか、いろいろな技術革新を反映しながら変わってきたのが現状です。その時代の要請を反映して基準が変わっていくのはいいことだと思います。

 現在の課題としては、これから登録をする人が、全く移植を受けるチャンスがないに等しいという事態は、異常だと思います。そういう意味では、これから登録希望する方に移植の機会が増えるような変更は必要と思います。従来の選定基準では、待機期間のウエイトが大きくなっているので何らかの見直しがいるということです。移植免疫療法向上の結果、HLAが軽視されていく傾向に対しまずいという見直しが前回のHLAポイントを1.15倍にするものだったと思います。しかし、新規登録者の献腎移植の機会増加については解決しなかったことへの対応を含め今回の見直しの課題が出ていると思います。

 ゼロミスマッチが本当にどれだけ移植成績がいいのかについては最近の免疫抑制療法下でのデータと、もう1つ必要なことはゼロミスマッチを最優先する場合に、レシピエント選択状況がどのように変わるかシミュレーションを1回出してみないといけないと思います。そのデータを頂かないと従来の基準で12千何百名の方が、登録継続している状況ですから、登録待機者が納得できる説明が科学的にできなくてはいけないと思います。

○松尾班長 ありがとうございました。そのほか御意見。

○湯沢班員 私の記憶によりますと、かつてのミスマッチゼロが優先されていて、全国シェアされていたことがあります。搬送時間、保存時間が長くなって成績向上に繋がった時期も少しあります。両角班長代理からお話がありましたように、実際allocationがどうなるのか、実務上cross match検査が必要で、抗血清を保存してあるのは基本的に同一県、同一ブロックの中にありますので、ある程度全国シェアに近い状況になったときにcross matchの体制が取れるかどうか。ただ理論的に考えるとミスマッチはゼロだとcross matchはいらないことになりますが。それも含めて考えなければいけないので、具体的に実際問題としてゼロミスマッチがどのくらいあって、どのくらいブロックを跨いだ提供に繋がる可能性があるかについて、やはりデータとして出していただかなければ現実的な話にはならないと思います。

○相川班員 参考資料にもありますが、腎臓移植の件数の推移は、式次第の裏にありますが、これを見ても明白なように心停止下の腎移植の件数が非常に減ってきています。脳死下の腎移植の件数は、90例弱で大体一定ですが、つまり脳死下の腎提供で行う腎移植の場合は、そういう意味で保存時間が非常に長くても機能的に問題ないと考えられます。心停止下で虚血時間が長い腎臓を移植する場合には、すでに腎障害が強く出現しているため、保存期間はなるべく短くするべきで、allocationに関して搬送時間が問題になってくる可能性は非常に大です。ただ脳死の場合は、普通48時間以内はそれほど機能が変わらないというデータが既に出ています。今は実際脳死下の腎移植は非常に多くなっていますので、場合によっては搬送時間の要素をあまり考える必要がなくなると思います。

○松尾班長 それではこのHLAに関してはよろしいですか。なければ先ほど少しここに入りかけました地域の定義あるいは搬送時間、この辺の課題について、御意見を伺いたいと思います。新しい提案では、いままで同一県、同一ブロックで全日本だったのを、近隣県というのが新たに御提案の中に入っていますが、これも含めて御意見はございますか。

○両角班長代理 これも以前のレシピエント選定基準見直し作業でディスカッションに挙がったことが。たとえば、県を跨いで交通・生活圏を考えたエリアを考えると、行政単位である県の区切りとの関連性を妥当とする調整が可能かどうかという話が以前も出ました。実際には、合理的に新しい区切りが作れないという問題があり、立ち消えになった経緯があります。

 実際、県を跨ぐ近隣県との生活圏での区切りといっても区分が分からないという状況が起き大変難しいです。たとえば、神奈川県の場合、東京に隣接する場合と、静岡県に隣接する場合にどのように線引きするかと非常に難しいなと以前にも吟味されたことはあります。

 同時に、各行政単位で都道府県が新規登録あるいは、更新に関して補助金を出しているという問題があります。そういった状況を斟酌しないで、近隣県との新しい区切りを考えてもいいのだろうかという話が以前にも話題になりました。結局行政の区切りを越すのは難しいだろうという議論を以前にも行ったことをお話しておきます。

○西班員 その点で最近誰がどのように搬送するかも都道府県あるいは地域で違っているようです。例えばコーディネータの方が運んでおられるところと、移植医の方が運んでおられる現状があります。なかなか搬送自体も地域ごとに差異があると聞いています。その辺も加味してこの辺の地域搬送区域を考えないといけないのかなと思います。その辺も含めて改善するといいますか。

○松尾班長 ありがとうございました。ほかに御意見ございますか。今、西先生、両角先生から課題を出していただいたわけですが、今のポイント制ここにおける課題が湯沢先生の提案されたことで、どのように改善されるか。あるいはその効果がどうであるかについてはいかがですか。

○湯沢班員 具体的にミスマッチゼロがどのくらいいるのか、それが都道府県をどのくらい跨ぐのかのデータは全くありませんので、これについては先ほど相川先生からもお話がありましたように、そもそも今、一番新しいデータとしてミスマッチゼロが本当にいいのかどうかも含めて臓器移植ネットワークからデータを出していただく必要があると思います。

○松尾班長 分かりました。今のミスマッチゼロの評価について、議論を頂き、2007年以降の最新のデータをきちんと集め、それを評価することが重要ではないか、ということが1点。この基準を変えたときに移植に対してどのぐらいの影響があるか、また待機者への影響が1点。この2点についてきちんと検証することが必要ということでよろしいですか。それを踏まえた上できちんと議論を進めていくことにさせていただきたいと思います。そのほか現在においては、搬送時間、HLAの適合と待機日数、未成年の加算と構造、の各項目をもとに基本的なポイント制があるわけですが、これを抜本的に変えるという全般的な意見についていかがですか。

○水口班員 私は透析の患者を主体に診療を行っていますので、透析患者の立場から見ると、現状だと40歳ごろに登録され、合併症を起こしながら命を縮めながら待っている状況です。40歳ごろに登録し60歳前後で移植を受けられるわけです。その頃には退職するとか、退職間近くせっかく腎移植を受けながら、社会貢献が十分に出来ないのではないかと思います。年老いていきながら移植腎を持ち続けるという現状だと思います。

 現状を見るとピークが50歳代、次が60歳代で今の献腎移植の成績を考えると60歳代の方が20年たつと80歳代になります。寝たきり移植患者、認知症の移植患者が出てくるような、これは非常に提供していただく方にももったいない話だと考えます。むしろ私は、移植が必要なのは若い方だと思いますので、ここに課題に挙がっていますが、待機日数よりも、若い方にポイントを多く付けて若い方に移植をしていただくほうがいいのではないかと思います。

 透析患者は今の透析技術を持ちますと、やはり30年ぐらいたつと車椅子が必要になる。そういった方が出てきます。若い時期に移植で年老いてからは透析でもいいのかなとそのような感覚があるので、現在ポイントの加算は20歳までですが、これを若い方にもっとポイントを付けていって、若い方が移植ができて、現在、献腎移植のピークが50歳代にありますが、これを40歳代、30歳代へと、10歳、20歳若いほうにピークを持ってくるような政策が必要じゃないかと思います。

 いろいろいじっても12,000人に対して、移植腎は200しかないわけで、この200をどなたに提供するかを考えるべきではないかと私は思っています。以上です。よろしくお願いします。

○松尾班長 今の御意見に対して、何かございますか。尤もなご意見ではありますが、西先生、何かありますか。

○西班員 個人的には大変賛成でございます。ただ長く待っている方がそれを受け入れていただけるか。お年の方の気持ちの問題をどのように説得するか。

○水口班員 それはそうです。そういう問題もあります。

○相川班員 この件に関しまして、Age-matchingを後で議論することになりますが、それがかなり深く影響する問題だと思います。そのAge-matchingのことも含めて議論しないとなかなか難しいと思います。

○両角班長代理 登録中、待機中の患者さんの評価が適正になされていて、移植ができるかどうかに関する移植施設側の体制整備の確認もしておかないといけないと思います。ここは適応を考える会ですが、医学的に判断して絶対に移植できないにもかかわらず、登録を継続されている方もいらっしゃいます。可能であれば現実的な待機者リストに変えていかないと、臓器提供がありましたと連絡があったときに、この機会を待っていましたと反応があるactive waiting listに変えることも同時にやらないといけないと思います。

○松尾班長 ありがとうございます。これもあとで、Inactiveの話も出てきますので、一応まとめとして先ほど言いました2点、最近のデータをきちんと取っていただく。この優先度を変えることによるallocation(配分割あて)への影響、この2点について次回の検討会で資料を出していただく。それを元に検討することにしたいと思います。よろしくお願いします。

 続いてAge-matchの制度の導入について、これも湯沢委員のほうから説明をお願いします。

○湯沢班員 資料34ページを御覧ください。これも前から言われていることで、具体的にどうするかということが大問題なのですが、小児の腎臓は小児に移植してあげたいということがありますし、高齢者の腎臓は高齢者にとしたいと思います。

 というのは、具体的には、小さい脳死下での提供のあった方の腎臓を2つ一緒に60代の人に移植したという事例があります。それが悪いというよりは、御両親の感覚としても、できることならお子さんにという思いは必ずあると思います。と同時に、正直なところを言うと、60代の人に移植した腎臓は、恐らく20何年しかもたないわけです。移植した腎臓の廃絶理由で一番多いのは、拒絶などではありませんで、患者さんの死亡なのです。それが廃絶原因で一番になっている現状から考えれば、例えばごく小さな方の腎臓を移植するのに、やはり小さな子に移植してあげればいいのではないか。

 それから、また後で出てくるのですが、実は2腎を移植するというのは、非常に小さなお子さんだったために、1つの腎臓では機能が成人には十分ではありませんでしたので、2つ一緒に移植されたと。もし可能ならば、そういうレシピエント候補者がいるかどうかというのは、また微妙な問題ですが、小さな腎臓は小さなお子さんに移植できれば、1つでいいということにもなります。ですから、こういうAge-matchの制度をどうにか取り入れられないかという考えはあります。

 前回の作業班でもこのテーマが出たものの、具体的にどのように配分すればこれが適うのかについては結論が出ずに終わってしまったものですから、是非何らかの方法でこういうシステムを作っていただければと思い、これを提案させていただきました。

○松尾班長 ありがとうございました。

 それでは、この背景等について、事務局から説明があればお願いいたします。

○田中補佐 御説明させていただきます。湯沢委員の御発言と重複するかもしれませんが、背景としましては、小児のドナー、特に6歳未満の方において、腎臓のみが高齢者、成人への提供がされたことに関してです。

 その他の臓器に関しては、全て小児に移植されたという経緯があります。そちらに関し、腎臓のみがなぜ高齢者に移植されたのかということで、そのようなことに関する違和感があるということをお聞きしております。移植関係者及び一般の方々の中でも、小児から小児へという形の移植が優先されるべきという思いが強いとお伺いしております。この件につき、検討ポイントとして、こちらで2点挙げさせていただいております。

1つ目は、小児から小児へ、高齢者から高齢者へという形の腎提供により、移植の成績は向上するのかという医学的な評価についてです。こちらについて、先生方の御意見を頂ければと思います。ただ、こちらについては、先生方から先ほどから「データが必要」ということを言われておりますが、本邦で実施された腎移植に関し、JOT(日本臓器移植ネットワーク)からのデータが必要と考えておりますが、どのような形のデータが必要か、また、この議論に関して検討するべきかどうかということも含め、先生方に御意見を頂ければと思います。

 また、小児から小児へ、高齢者から高齢者へという形になりますと、成績の観点でどうなのかという議論があると思いますが、そちらに関しても、先生方から御意見を頂ければと思っております。

2つ目に関しては、小児から小児、高齢者から高齢者というような形のAge-matchを導入することで、今まで待っておられた長期の待機者の方に関して、更に移植を受けられなくなる可能性が出てくると思われますが、その方々への納得が得られる説明はどのような形にできるかどうかに関して、先生方から御意見を頂ければと思います。事務局からは以上でございます。

○松尾班長 委員の皆様方から御意見を頂きます。いかがでしょうか。

○湯沢班員 先ほど説明が抜けてしまったのですが、ほかの臓器の場合にはAge-matchとは言ってはいないのです。size-matchが現実的に選択基準としてありますので、実際にはAge-matchになっていると。ですから、ほかの臓器でどういうシステムでAge-matchにしているかではなく、size-matchのためになっているという背景があるのです。

 腎臓はそういう意見では、非常に小さな方の腎臓のsize-matchという考えはあるかもしれませんが、年齢がある程度高齢の方についてのAge-matchということについても、どういうアルゴリズムを作って配分できるのかということについての思いが非常にあります。大変なのではないかと思うのですが、是非御検討いただきたいと思います。

○松尾班長 ほかに御意見はいかがでしょうか。

○相川班員 これも前のデータなのですが、2007年のデータブックによると、小児の腎臓移植で小児のドナーの場合、小児のドナーから小児のレシピエントの生着率が、10年で73.7%です。ところが、小児の腎提供で成人のレシピエントに移植した場合は生着率は10年で52.9%で、20%以上小児から小児へのほうが成績が良いことがわかります。ただ、これは症例数が少ないので、恐らく有意差は出ていなかったと思いますが、どちらにしても、昔のデータでも、小児から小児へのデータは、少なくとも成人のデータよりもいいだろうという感覚をもっています。

 だから、これはまた新しいデータが当然必要になると思いますが、これは免疫抑制剤が変わっても、管理体制が変わっても、恐らく小児から小児へと小児から成人への生着率の差は変わらないと思いますが、一応データを出していただいたほうがいいと思います。ただ、細かいことなのですが、NAPRTCS(North American Pediatric Transplant Collaborative Study)という北米の腎臓の統計を見ますと、2010年のデータでは、2歳未満の小児のドナーから小児の腎移植を行った場合、有意に成績が悪いのです。だから、余りにも小さなお子さんから小さなお子さんに移植をすると、生着率が悪いというデータは昔から出ていますので、その点にだけは気を付けていただかなくてはいけない。

 ただし、ドナーが2歳以上であれば、成人の腎臓を移植したものと生着率はほぼ変わらないというデータが出ていますので、余り小さな2歳未満のドナーの場合には、場合によっては、子どもに移植してしまうと生着率が悪くなるという可能性はあると思います。

○両角班長代理 Age-match全般でいうと、何歳以下の小児とか、今お話のあった乳幼児のような年代については理解されやすいと思いますが、高齢者については、意外に難しい印象があります。まず、小児に限って議論するとかしないと、収束しないのかなという印象があります。その中で相川先生からお話のあったところの2歳未満から2歳未満へというのは日本の場合で言うと、その手術に対応できる施設が何箇所あるのかという課題もあります。

 移植施設として、ネットワークに登録している施設は100以上あると思いますが、幼児への移植経験があり対応できる施設が限定される、できないグループを対象に取り上げていることも考える必要があります。

 非常に少ない小児の提供に関しては、どうして小児に提供されないのかと考える方は多いため、待機者からも社会からも理解が得られやすいという印象があります。

 一方、提供が多いのは成人ですしwaiting listに載っている方が多いのは成人、高齢の方に偏っています。数多くの待機者の方のことを考えると、公平性とは何かが非常に大きな問題になります。が、何となく理解されやすい、医学的にも成績がよく、心情的にも、社会的に受け入れられやすいところで、小児提供は小児という方向性で議論をしたほうが、広くAge-match全般でやるよりは、分かりやすいかなという印象はするのですが、いかがでしょうか。

○西班員 今日お休みの服部委員に以前にお会いしたときに話をして、「機会があれば発言してほしい」と言われたことでもあるのですが、今、両角先生がおっしゃったように、小児というところで括りたいという話です。移行医療という少し話題になっていることがございます。小児の患者さん、小児と言いましても、実際に小児科の先生が診ておられるのは20歳代ぐらいまでの方を小児科で診ているという現状があるので、成人で小児科で診ているのは移行期の患者さんというわけなのです。

 そこにまで、むしろ広げていただければと。小児というのは今は16歳という括りかもしれませんが、そういう括りの中で、移植を移行期までを含めた中の患者さんを優先的にしていただければと。

 また、その年齢のdonationが出た方の場合は、移行期医療の、移行期以内の年齢、現実的には30歳ぐらい、あるいはもう少し議論が必要かもしれませんが、おおよそ20代ぐらいまでの方の中で考えていただければと。

 それから、年を取って待たれている方に納得していただける理由としては、腎臓のもつ年数が20代の方、30代の方の残りの何年、腎臓がもつかという年数を考えて、若い人に移植したほうが価値があって、日本の経済を支えていただける、あるいは社会保障を支えていただけると、そういうところにうまく話を持っていって、何とか高齢者の方の理解を得られないかという話を2人でしましたので、意見として述べさせていただきました。

○松尾班長 なかなか微妙なところがあるとは思うのですが。

○水口班員 微妙なところはあると思いますが、腎不全医療全般に鑑みますと、そういう形に将来は持っていかないといけないのではないかと私は常々思っていますので、どうぞよろしくお願いします。

○両角班長代理 今までのレシピエント選定基準見直し作業の中で、16歳未満、20歳という区切りでポイント獲得になっています。従来の流れの中でも理解できやすいと思います。

○水口班員 そこでサッと切らずに、taperingをするとか、そういうシステムを取っていただいたらいいかと思うのです。21歳になったら、たちまち0点になるというのは、そういうことだと思いますので。

○松尾班長 今、小児慢性の医療補助は18歳までで認定するのですが、たしか一応補助は20歳まで付くことになっているのです。ということで、そこから先はどうするのか。現在、移行期の取扱いが必要だという議論を腎臓学会でやっていて、そういうバックグラウンドで水口先生から発言いただきました。

 確かに、20歳を過ぎたらゼロかというのは、非常に問題があるところだと思うのですが。

 今回のAge-match制度の導入ということなのですが、これを今後どのように議論をしていくかという方向性について、少し議論いただきたいと思います。両角先生からは、小児は小児、高齢者は高齢者というような、余り広げるのではなくて、小児、今の話ですと若い人の腎移植をどうするのかという議論に、ある程度絞ったらどうかという御提案があったのですが、この点についていかがでしょうか。

 ただ、これをどのように進めていくかは難しいのですが、先ほどの1つ目の議論と一緒なのですが、データをしっかり出すというのが1つです。2つ目は、これも同じ議論なのですが、そうしたときに、待機者の思いも含めてどういう影響があるか。この2点に集約するかと思います。そのほかに何かポイントはありますか。

○相川班員 6歳未満の臓器を提供された御家族が、今までに2家族いらして、富山と先日の順天堂大学病院の2例です。

 富山で臓器提供したご家族は、子どもの臓器は小児の患者に移植してほしいと発言されています。また、実際に手術が行われた病院の移植医も、小児の2腎を使って成人に移植を行っておりますが、移植医も非常に違和感を感じている。

 もう1つの順天堂大学病院での臓器提供に関して、先日、御家族から臓器移植ネットワークにコーディネータを通してお手紙を頂いております。これは個人情報の関係もありますので、御家族の方に承諾を得て、ここに持って来ております。ここにも、実際に小児のドナーとなった家族の方からの御意見として、このように書いてあります。

 「腎臓が比較的高齢の方に移植されたことに関しては疑問を感じる声を多く聞きました。現行のポイント制度ではそういうこともあり得ると、私たちも承知の上ではありますが、やはり小児の臓器は小児に最優先されるように見直しをしていただけるよう、私たちからも強く強く希望いたします。この意見を、今後どのように対応して生かしていただけるかは、是非とも書面で御報告いただければと思います。」ということで、書面でネットワークのほうにコーディネータを通して頂いております。

 この意見も全く無視するというわけには、私はいかないと思います。医学的な検討も必要でしょう、もらう方の状況も必要でしょうから。ただ、臓器提供推進のことからも考えて、この感情を全く否定するわけにはいかないと思いますので、是非これも付け加えていただきたいと思います。

○松尾班長 大変重い御意見だというように思うのです。特に小児のドナーの場合に、ドナーの御家族の思いを、これもなかなか微妙なところはあると思うのですが、どのように反映するのかしないのか、その辺のところも非常に大きなポイントになると思います。

 ということで、今後議論するときのポイント、データはデータとして用意をしていただくのですが、2つ目の影響の中で、これはレシピエントの方だけではなくて、ドナー側の意見もどのように取り入れるか、特に小児ドナーです。この場合、どのようにするのかということもディスカッションのポイントだと思います。

 それで、今日はまだいろいろと課題の整理というのがありますので、これも次回の宿題にし、次回以降に検討させていただきたいと思います。

3つ目の「PRA検査の再評価」の項にいきます。これも湯沢委員から提案趣旨を説明していただきます。

○湯沢班員 これは現在の選択基準の一番最後の所に書いてあることなのですが、この選択基準で「PRA検査の取扱い等についても適宜検討を行い、必要があれば見直しをする」としたのですが、そもそもこのPRA検査というのが4年前の組織適合検査の時代の頃、その頃の情勢と大分変わってきております。これはPRA検査というのは、少し専門的な話になりますが、Panel Reactive Antibodyといって、ブロードな抗体があるかどうか、どのぐらい反応性があるかという検査であり、余り特異的ではないのです。

 ただ、このPRAが高いと、一般的に成績が悪いというデータがありますので、これを反映したものなのですが、この頃はパネルといって、ある程度リンパ球を集めたウェルに反応を見ていたわけですが、そういうアバウトなことではなくて、4年間で大分この検査自体が変わってきており、最近はより特異性の高い抗HLA抗体の検査ができるようになってきております。これ自体すごくお金はかかるのですが、PRA検査よりも、より精度と感度の高い抗HLA抗体検査の導入を検討してもいい時期なのではないかと思っております。

 背景の所に書かせていただきましたが、実際にはPRA検査より、抗HLA抗体検査をより精密に行っていきますと、もはやcross matchが要らなくなる、リンパ球に特異的なドナーのHLAに対する抗体があるかどうかというのを調べられるわけですから、これがcross match検査に代わるものとしてヨーロッパで試行されており、実際によい結果が得られているということがあります。これを今の段階で全部導入することについては、まだ予算の問題、例えば1人の患者さんについてお金が6万円ぐらいかかるということもありますから、13,000人ぐらいの方にやるのは、現実的には不可能かと思いますが、やはり次の段階としてはPRA検査ではなくて、抗HLA抗体検査に向かうべきこととして検討課題として残させていただければと思っております。

○松尾班長 それでは、今の御提案に対し、背景及びディスカッションのポイントの説明を事務局からお願いいたします。

○田中補佐 このPRA検査の見直しということで御提示させていただいておりますが、こちらは参考資料2「レシピエント選択基準」の3ページ目の「注4」という所に、書かせていただいている「新ルール実施後1年をめどに新ルールの運用状況について検討を行うとともに、今後新たな医学的知見を踏まえ、PRA検査の取扱い等について適宜検討を行い、必要があれば、基準の見直しを行うこととする」とあります。

 前回の改正から時間がたっておりますので、医学的知見というものも変化していると思います。この検査の取扱い、新たな検査について、先生方に御意見を頂ければと思っております。先ほど、抗HLA抗体検査のことを湯沢委員から御説明いただきましたが、ヨーロッパ等のデータもあると聞いておりますので、そちらも踏まえて御検討いただければと思います。

 この背景を受け、こちらから御提示する検討ポイントは3つございます。

1つ目に、現在行われている直接交差試験を廃止してよいかという点です。抗HLA抗体検査ではnon-HLA抗体については検出できないとお聞きしていますが、この点についてはどのように評価するかについても、先生方に御議論いただければと思います。

2つ目は、現在の全てのHLAの検査施設でこの検査の導入が可能なのかについて、技術面、設備面等も踏まえ、先生方から御意見を頂ければと思います。

3つ目は、この抗HLA抗体検査は新たに御提示いただいた検査ですが、1人当たり6万円という高額の検査費用がかかるとお聞きしております。この検査費用を負担しても、この検査を行うことにより良い結果が得られるかどうか、こちらを負担する意義があるかということについて、先生方から御意見を頂ければと思います。事務局からは以上です。

○松尾班長 御意見をお願いいたします。

○両角班長代理 1年後に見直しをしましょうとした背景を補足いたします。あの時点ではHLAタイピングにDNAタイピングが導入されていなくて、古典的な2桁タイピングでした。少なくとも4桁のDNAタイピングを採用すべきだという合意ができなかったわけです。現在は抗HLA抗体に関しては、single biseを使えば、個々の抗HLA抗体を的確に検出することができるのが移植関係者の常識になっています。

 ただ、課題もあります。HLA class1はいいのですが、class2DRまでの検出に留まり、DPDQまでは測定していないのが実情です。従って、virtual cross matchに使用する抗HLA抗体は全部の抗HLA抗体ではありません。Class2のうちDRまでですから、DPDQによる拒絶反応が起きるものがあるのが分かっています。そうすると、全部の抗体関連型拒絶反応のリスクが今のvirtual cross matchでは拾えない可能性があります。

 したがって、non-HLA抗体の問題も含め、現時点で交差試験を省略するのは、HLAを専門にしている方々からも異論がたくさん出るのではないかと思います。

○松尾班長 ほかに御意見はいかがですか。

○湯沢班員 私は組織適合性学会、HLA検査とかcross match法検査、こういうことを検討する学会の理事をしております。今、両角先生からお話がありましたように、まだ完成されたデータではありません。

 ですから、完全に抗HLA抗体検査だけでいいとはとても思えません。これはまだまだデータを集める必要かあると思っています。

 ただ、ここであえて言わせていただくのは、PRA検査そのものをここに書く必要は、もはやないのではないか。今お話にありましたように、HLA検査がしっかりとできるような状況の下で、PRA検査、このアバウトな検査を残す必然性はないということをあえて発言させていただきます。それから、HLA検査は非常に正確にできるということでお話がありましたが、もう1つ是非検討していただきたいのが、現在のHLAのミスマッチの算定の仕方が、昔の抗血清でされていた精度の低いHLAタイプなのです。2桁と言っておりますが、今DNAタイピングだと4桁の結果がより精度の高い、細かいHLAの検査ができるようになっており、2桁でマッチングを見るよりは、4桁のほうがいいという結果も出ております。

 ただ、今現在のネットワークのシステムですと2桁の選択しかできていませんが、PRA検査はどうでもいいので、もはや要らないと思いますが、できればHLA4桁での運用を是非お願いしたいと思います。

 というのは、現在は4桁でほとんどDNAでのHLAタイピングはされているのですが、選択アルゴリズムとして2桁でしかされていないのです。その読み替えをしていて、今のHLAのタイピングの現状に少し合わないまま残されています。これをしっかりとした4桁でのマッチング、選択に持っていくほうが、HLA cross matchについて必要なことだと思っております。

○相川班員 そうなると、今の平均待機年数が17年ということですので、17年前のタイピングは当然DNAではないわけで。

○湯沢班員 ただ、一度全部リタイピングされていて、DNAの結果として入っているのですが、登録データ自体が2桁しかないのです。ですから、それを読み直すとか、リタイピングが必要になる可能性はあります。

 ただ、HLA検査数は4桁のデータについてはほとんど残ってはいるのです。登録の段階で2桁にしてしまっているのです。登録だけで2桁にしてしまっているという、ちょっと無駄なことをしていたので、4桁は結構あるのではないかと思ってます。それについては調査が必要だと思います。

○両角班長代理 今の話の補足です。前回の段階で、大多数のHLA検査施設は4桁でできるだろうという判断で、ほぼ問題はないというのが大勢でした。ところが、一部HLA検査施設の中で4桁に対応できないところがあることから、HLAタイピングが2桁で残ってしまったのです。今はどの施設も4桁対応が可能ですので、少なくともHLAの基礎データを4桁に変えるということは行うべきだと思います。より適合性が高い人を選択でき、ミスマッチ評価も正確になります。一方、PRA検査結果は、現在の配分基準に反映されていないです。PRA検査を反映させる意義は、PRAが非常に高くて、既存抗体をいっぱい持っている方に、もし適合する提供があった場合には移植を受けるチャンスを優先的にあげたい、極めて希な機会を大事にしてあげたいということです。PRA検査導入の背景が日本と逆です。したがって、今PRAの概念がここに残っている必要がないとの湯沢先生のご指摘はおっしゃるとおりで、私もそう思います。

○松尾班長 ほかに御意見はございますか。大体一致はしたと思います。4桁は現在のところ、ほぼ全ての施設で可能ですね。ですから、今、2桁しか記載していないのを、きちんと記載するようにするというのは、全員一致でよろしいですね。それほど、お金も掛かりませんね。

 その上で、抗HLA抗体検査については、導入の重要度、緊急度、実現可能性から考えて、もう少しデータも集めながら議論をしてもいいかなと思いますので、これはデータも集めながら、今後議論していくことにします。将来的に、合意できたらそういったほうに移るのですが、財源の問題もあるので、誰が負担するかとか、いろいろな議論があると思います。これは引き続き議論をしていただくということで、取りあえず4桁運用にするということでよろしいでしょうか。

○湯沢班員 追加させていただきます。抗HLA抗体検査は移植前の検査として、骨髄移植では保険診療として認められています。腎臓移植では認められていないのですね。移植前も後も。それが次の改正当たりでは、認められていく方向になるのではないかと思いますので、今後の検討課題として残していただいて、いずれこういうことも考えていきたいと思います。

○相川班員 もう1つは、生体腎移植の場合は、症例数が多い施設は、全て抗HLA抗体の検査をやっているのが現状です。

○松尾班長 私は詳しく知らないのですが、骨髄移植の場合の抗HLA検査の費用負担については、確か施設負担もあったりして、結構ややこしかったのではなかったですかね。

○湯沢班員 今は検査そのものが認められていますから、普通の診療報酬として支払われているものだと思います。

○相川班員 ややこしいのは腎臓のほうです。

○湯沢班員 HLADNAタイピングするときに、自費扱いになっています。ただし、それは移植が成立した時点でお返しするということで、2年前に厚生労働省から通達を出しました。

○松尾班長 分かりました。その辺りのところも含めて、課題整理して、今後ディスカッションを進めていきたいと思います。

 続いて、「2腎同時移植の規定について」、これも湯沢委員から説明をお願いいたします。

○湯沢班員 資料の6ページです。腎機能が低く1腎であると移植腎機能が不十分である場合、2腎を同時に移植することを可能にしたいというのは、実際に腎機能が悪い方からの提供の症例がありまして、これが結局、腎機能が悪いということで移植されなかったということがあります。1腎では機能が不十分でも、無駄にするのだったら2腎を1人の方に移植する。先ほどの小児で非常に小さい小児からの話もありますが、それとは別に成人でも1腎で不十分な場合には2腎を移植して差し上げるという考えはあっていいのではないかと思っております。ただ、現実的にはそういう話はあったのですが、これについての規定がないので、残念ながら1人の提供者からの腎臓が無駄にされたということがありますので、何とかそれを生かすための方法として考えていきたいと思っております。以上です。

○松尾班長 この背景、ディスカッションのポイントについて、事務局のほうからお願いします。

○田中補佐 事務局から説明いたします。こちらの背景ですが、この2腎同時移植については、現在でも心停止下での腎移植に関してはメディカルコンサルタントと移植医、提供医の判断で行われていると聞いております。脳死下での腎移植に関しては、今まで1例、第178例目の事例で2腎の提供が行われております。こちらは小児の事例でしたが、60歳代の女性に2腎が提供されたという事例があります。現在の選択基準上においては、1人のレシピエントに対して1腎を提供することを想定しておりますので、1人のレシピエントに対する2腎の提供は明文化されておりません。

 以上から、こちらから提案する検討ポイントですが、1つ目は腎機能が低く、1腎であると移植腎の機能が不十分であると考えられる場合、メディカルコンサルタント及び移植医、提供医の判断になるかと思いますが、現場の判断で2腎を移植することに関して明文化してよいか、御検討いただければと思います。また、1人のレシピエントに対して2腎を移植することに関して、具体的な判断基準を定める必要があるかどうかに関しても、先生方から御意見を頂ければと思います。事務局からは以上です。

○松尾班長 ポイントは明確で、これは明文化するかということです。その際に、もしするとしたら判断基準を決める必要があるのか、ないのかということですが、御意見はいかがでしょうか。

○相川班員 明文化する必要があると思います。というのは、実際に東日本で起こった事例で、心停止下の臓器提供で、腎機能が相当悪くなって尿量も少なくなっている状態で提供になったわけですが、そのとき移植医側から是非2腎で提供してほしいという希望がありましたが、明文化されていないので、臓器移植ネットワークとしては1腎での提供を、まず登録者から順位別に行っていましたが、実際、腎機能がかなり低下していたもので、希望者がどんどんお断りになって、随分下位まで行ってしまったのです。ということは、それに対してリンパ球交差試験もやらなくてはいけないので、相当時間が検査で費やされました。

 その後、今度は1腎での提供者がどうしてもそういう条件下でも移植を受けたいという方がいらっしゃれば、臓器移植ネットワークとしては、どうしてもそれを提供するというルールになっておりますので、いきなり2腎での希望者を募ることはできないのです。結局、時間が経過して、1腎は移植はされましたが、1腎は廃絶する、破棄するような事態に陥ってしまって、相当御批判を頂きました。というのは、1腎を移植した移植施設の先生は、1腎破棄するのだったら、どうして2腎、条件が良い状態で移植をできなかったのかという相当強いクレームを、実際、東日本支部に頂いております。これに関して、やはり明文化していないと、現場で非常に混乱するということ。そして、貴重な少ない臓器提供、腎臓の提供が破棄する結果になると。これも非常に重いことですので、これに関しては臓器提供者の御家族の意思、又は本人の意思を尊重するに当たって、またシステムの円滑化をするに当たって、適正化をするに当たっても、明文化していただかないとなかなかうまくいかないと私は思います。ただし、2腎同時に移植をするというのは、実際海外でもそんなに多いものではありませんので、実際海外でどういう基準で行われているのか、これはよくよく調べる必要があると思うのです。日本だけのデータでは不十分だと思います。

○両角班長代理 日本臓器移植ネットワークの支部の中で、こういった症例に関する症例検討会が行われています。1腎提供がよかったか、2腎提供がよかったかというディスカッションがいつもされています。こうした経験の中から、比較的2腎提供がしやすい支部エリアがあります。2腎で提供することによって、うまく移植腎機能が発現したという成功事例を経験している先生がいらっしゃる地域ではその話を進めてくださいます。そういった事例を経験されていない医師がたくさんいらっしゃるエリアですと、まず移植手術をどうやってするのかという話になってきます。提供腎を大動脈カフで2つを移植する、2個の腎臓を別個に移植するとかあると思います。移植の先生方の中でも技術的に可能な医師とそうでない人に分かれると思います。そういう意味ではこの施設では2腎提供に対応できる情報が明示されれば、ポジティブに考えてくださるきっかけになります。貴重な腎提供を破棄することなく待機者の腎機能回復に役立てるべきと思います。2腎提供による移植手術が問題ないエリアにいるものですから、私の中では気にしていなかったのですが、やはりそういう事例があるのですね。

○相川班長 ただし、この判断は非常に難しくて、実際、今お話した事例に関しては、かなり腎機能が低下して1腎だけでは不十分だと移植施設では考えて、クレームを言ったのですが、実際には非常に良い腎機能に戻りまして、機能はしております。ということは、そういう腎臓でも場合によっては1腎ずつ移植はできたと。結果論としてはそういう結果になりますが、だからここはなかなか難しいところだと思います。

○松尾班長 そうですね。

○水口班員 最後に書いてありますが、判断基準をはっきりしておかないと、皆さん迷われるのではないかと思います。

○相川班員 それに臓器移植ネットワークとして、あっせん自身が非常に混乱する原因になります。少なくとも腎臓を破棄するというのは避けたい事態ですので、ある程度の判断基準又は明文化をしていただかないと、これは皆さんから叱責されるのは当然のことになってしまうと思います。少ない資源ですので、これはどうしても生かさなくてはいけないというのが我々の義務だと思います。

○松尾班長 今、御意見を伺えば、破棄するということはあってはならないことなので、機能の低下した腎臓をできるだけ生かすという意味では、一般的な意味ではこれは反対される方はいないと。その際に、現実的な問題も含め、またどのような状況というか、どこまで腎機能が低下したら2腎をやるのか厳格に決めるのは非常に難しいと思います。また、今の話で後で腎機能が戻っているというのは、例えば亡くなる前の状況によって、腎機能が一時的に低下したりすることがありますから難しいとは思うのですが、これについてはそういう方向でこの検討会議の中で、今後少し基準も含めて検討していくということでよろしいですか。一般的な意味では当然やっていくべきだと。ただ、具体的な技術的なことも含めて、細かい手順だとか、基準だとか、そういったものを決めていくという方向でよろしいですか。

○両角班長代理 基準作りは大変に難しくてできるかどうか不安があります。

○松尾班長 いや、基準といっても、大体の目安を決めておかないといけないと思うのです。

○両角班長代理 かなり曖昧な表現にならざるを得ないと思うのですが・・。1腎で提供された場合には十分な移植腎機能の発現が困難と予測され、2腎提供下では良好な移植成績が期待できるとか、こういった表現での文章は書けるのですが、数値化するとか、もっと明確な基準を何とか示してくださいというのは、とても無理です。

○松尾班長 数値化は難しいと思いますので。

○水口班員 難しいからこそ要ると思うのです。

○松尾班長 これは海外も含めて事例も少ないということなので、なかなか数字で出すのは難しいかもしれませんが、データは集めて努力はするということでいかがでしょうか。

○湯沢班員 例えば心停止下の提供などの場合に、死戦期、摘出する直前のデータがどのぐらい悪かった場合とか、そういう患者が最初入院して、病院に来た最初のデータと死戦期のデータと直前のデータと、最終的に移植して結果どうだったかということのデータがあれば、結構、説得力のある、どのぐらいまでは大丈夫だと、ある程度の基準というか、データはネットワークが持っているのではないかと思うのですが。

○両角班長代理 脳死下提供の場合は、入院時と提供時の腎機能の低下が余り大きくずれていないのですが、心臓死下の場合には症例によっては大きなギャップがありますから、2つ基準がいる可能性も含めて検討する必要があるかもしれません。

○湯沢班員 ですから、今回も入院時のデータを基に結構、判断はしているのですが、具体的に例えばその症例も腎機能が低いというのはどの段階で低くてどうだったかとか、心停止下の提供の場合のデータとして、具体的にどのぐらいまでやられていて、結果的にどうなっているかということについてのデータがやはりほしいところだと思うのです。それより相当悪かったのだとは想像できますが、それでも大丈夫だということなら、やはりデータとしてほしいと思います。

○西班員 この場でなかなか決められないことだと思いますので、私はたまたま臨床腎移植学会のガイドラインの作成委員会も担当させていただいていますので、もしよろしければ臨床腎移植学会に振っていただければ、そこで調査班を立ち上げて、ネットワークでの資料、あるいは実際にそれを行った先生方の体験を集めさせていただいて、そこから基準を作る班といいますか、ワーキンググループをというように、この会から御依頼いただければ、そのように臨床腎移植学会で少しやらせていただいても構わないと思います。

○松尾班長 ありがとうございます。大変積極的な提案で、正式に直ちに依頼することを決定させていただいて、分析研究、その結果をまたこちらへ持ってきていただくということにしたいと思います。その上で、さらに議論を進めたいと思います。ありがとうございました。

 ここまでのところ全般で特に何か言い残されたことはありませんか。先ほどのAge-matchの導入について、データを取っていただくのですが、そのときに少し詳しいデータを頂きたいと思いまして、移植が行われたドナーの年齢分布、あるいはレシピエントの年齢分布、ドナーとレシピエントの年齢区分の組合せ、待機登録者の年齢区分とデータ、高齢者間での移植成績というデータを是非、細かく出していただきたいと思います。

○相川班員 あとAge-matchingを昔からやっているユーロ・トランスプラントとUNOSですね。アメリカでは実はAge-matchingを最近までやっていなかったのですが、確か23年前に変えて、形式上はAge-matchingになっています。例えば子供は35歳以上の方からのドナーから腎提供は受けないとか、プラスマイナス15歳の年齢差で腎臓を提供するという形になっていますので、その辺も参考資料として必要だと考えます。

○松尾班長 そのUNOSのほうのデータもよろしくお願いします。

○湯沢班員 是非こういうデータが出たら、次の会議で出されるのではなくて、出次第早急に我々に送っていただきたいと思うのです。それをよく見た上で考えさせていただきたいと思うので、是非。

○松尾班長 次回の検討の予定については、また後でやらせていただきたいと思いますが、データはなるべく事前に検討できるように早めに出していただくということでお願いしたいと思います。その他の事項に移っていきます。5.生体腎移植ドナーが腎不全となった場合の優先権の付与についてということです。これも湯沢委員から説明をお願いしたいと思います。

○湯沢班員 資料の7ページです。2008年に国際移植学会とWHOで採択されたイスタンブール宣言があります。これの中の条文、随分長い文章なのですが、その中にはドナーが臓器不全に至った場合には、生体あるいは死体臓器移植においても、臓器配分原則において優先権が定められていることとされています。要するに生体ドナーが腎不全になった場合に、亡くなった方からの提供を第一優先にしなさいということなのですが、現実的にはこれは日本ではされておりません。他国でもそうなのですが、こう書いてある以上、これについての検討が必要なのではないかと思って、検討事項として挙げさせていただいたものです。

○松尾班長 時間が限られておりますので、湯沢先生に以下の事項についても説明いただけますか。

○湯沢班員 8ページです。医学的理由は、例えばがんの手術をされた患者の場合は、がんが治ったと認定されるまでの間は移植は受けられないことになりますし、昨今ですと心筋梗塞になってステントを入れられたような患者は、しばらく待ちということになってしまうのです。そういう患者がそういう事態が登録されないまま、今の登録制度ですと、結局先ほどお話がありましたcross matchや意思表示の段階で、無駄に患者のリストとして上がってきてしまうのです。ですから、例えばがんの患者だったら、5年間はInactiveにしたいとか、PCIを受けた患者なら1年ぐらいは、移植は受けられないけれども、waiting listにはそのまま載せておきたいという患者。それをInactiveにすることによって、要するにネットワークで意思確認とか、cross matchのステップを省略できることになりますから、是非、導入していただければと思います。

 現在の配分ルールですと、C型肝炎抗体陽性ドナーからの移植は、C型肝炎抗体陽性レシピエントのみを対象とするということで、リスクについては十分に説明・承諾を得られた場合にのみ移植可能とするとされていますが、現実的にC型肝炎で移植された患者は、劇症化して亡くなられている症例が実際にはあります。それをどうやって防げるかということについては、私はネットワークの移植検査委員会の委員長をしておりますが、その前の委員会の段階で検討されております。これが後で示される次ページのチャートになりますが、これは実は前の委員会で脇田先生も入って作っていただいたもので、私が一昨年からこの委員会の委員長を務めておりますが、これでも特に問題がないというか、これで十分だということがありまして、これをネットワークの検査委員会からの報告としても挙げさせていただきます。ただし、現実的にこの検査が現在の移植ネットワークの検査体制で維持できるか。serotypegenotypeともいいますが、これの検査が現実的に対応可能なのかどうかということは、非常に困難を伴うのです。ですが、これをこのまま野放しにしていいとは思えませんので、あえて提案させていただいたものです。

○松尾班長 続きまして、8番、追加になった事項ですが、移植腎機能無発現腎であったレシピエントについてお願いします。

○両角班長代理 脳死下提供ではほとんどなくなったと思うのですが、心臓死下臓器提供の場合には5%ないし8%の提供腎が機能無発現という状況で終わっています。しかも、多くの場合は提供された二つの腎臓が無機能ということになると、移植側の責任ではなくて提供された腎臓自体に問題があったという事実があります。腎移植後の経過にかかわらず移植を受けられると、現時点ではウェイティングタイムはゼロに戻ります。本当にそれでいいのかなという印象があります。移植の先生方の中で、献腎移植手術を受ることで、全身麻酔下で免疫抑制を受けるようなリスクのある患者に対して、一定の期間、移植腎機能を発現した場合には納得を得られるけれども、機能無発現腎のレシピエントの待機期間がゼロに戻っても本当にいいのだろうかという御意見があります。こうしたレシピエントでは待機期間を維持するのか、あるいは半分ぐらいに戻すとか、そういった工夫はできないのだろうかという提案をいたします。

○松尾班長 それでは、今の御提案、あるいは問題提起に対して、背景説明を事務局からざっとやっていただいて、あとは全体討論にしたいと思います。

○田中補佐 事務局から5番目、「生体腎移植ドナーが腎不全となった場合の優先権の付与」に関して、検討ポイントについて説明いたします。こちらに関しては、イスタンブール宣言をどこまで厳密に遵守するのかというものがあります。特に生体移植が行われているほかの臓器もありますので、そういったこととの兼ね合いから、このイスタンブール宣言についてどのように考えるのか、御検討いただきたいと思います。また、学会から生体腎移植ドナーガイドラインが出ているかと思うのですが、そちらの遵守、また移植施設のQuality controlを進めることで、これに関してはコントロールができるのではないかということもありますので、ドナーが臓器不全に陥らないような取組と、このイスタンブール宣言の遵守、選択基準への盛込みと、どちらを優先するのかに関して御議論いただければと思います。

6番目の「Inactive制度の制定」に関しては、先ほどのものと同じポイントとなるかと思いますが、移植施設における移植希望者への定期的なフォローアップ等の徹底です。選択基準にInactive制度を盛り込むことと、定期的なフォローアップ、移植施設のQuality controlではありませんが、どちらを優先するべきかということに関して御意見を頂ければと思っております。

7番目の「C型肝炎抗体陽性ドナーの取扱」については、2008年のJOTの移植検査委員会から作成された「HCV抗体陽性ドナーからの腎移植に関する指針」があります。次ページにフローチャートをお示ししておりますが、選択基準を変えずにこちらのフローチャート、HCV陽性ドナーからのレシピエント、移植の取扱いを行っていくべきかどうか、それとも選択基準の見直し自体を行うべきかどうかについて、御意見を頂ければと思っております。

8番目、「移植腎機能が無発現であった腎についてのレシピエントへの対応」についての検討ポイントとしては、移植腎機能無発現腎であったレシピエントについて、再移植の登録の際に待機期間を継続する扱いをすることができるかどうかについて、御議論いただければと思います。また、その場合の基準の設定に関して、どのようにするのかに関しても御意見を頂ければと思っております。事務局からは以上となります。

○松尾班長 7番目のC型肝炎の抗体陽性ドナーの取扱いはフローチャートもできておりまして、これそのものについてはおおむね合意はされているのかと思います。問題は検査の体制をどうするかということなのですが、医学的にはこういうフローチャートでよしということになったときに、これはどこまで本気でやるかということなのですが、この点についてちょっと御議論を頂きたいと思うのです。

○脇田班員 フローチャートが作られた時点では、ドナーとレシピエントのserotypeを決めて同じserotypeに移植するというのは、HCVの病原性の問題です。genotype1のほうが病原性も治療効果も悪いということがあって、こういう形になっていますが、現在、経口2剤療法で治療効果は非常に良くなっています。以前の治療はリバビリンが入っていましたので、腎臓が悪い人にはなかなか使いにくかったのです。現在、経口2剤療法では肝臓で代謝される薬2剤のものが出てきていますので、医師主導臨床治験により透析患者さんなどの治験が進められているところです。その結果を見ないとなかなか言えないわけですが、genotype別に行われます。ですので、逆に1b2aが混ざって感染するということはその後の治療を難しくするという事態があります。genotype1bのほうは肝臓で代謝される薬の経口2剤で非常に効果は良いと言われています。genotype2は将来、経口2剤がきますが、それは核酸アナログ、あるいはリバビリンが入ってきますので、腎臓代謝になってしまうので透析患者さんや低腎機能の患者さんの治療が難しいということになります。したがって、以前よりも、むしろはっきりとこれが分かれていたほうがより望ましいと考えます。ミックスタイプの感染になってしまうと将来の治療が難しくなってしまうかなというところがありますので、このフローチャートのとおりにやっていただくのがいいかと現時点では思っています。

○松尾班長 ということで、このフローチャートがいよいよ重要だということですね。

○相川班員 私のほうから質問させていただきたいのですが、待機期間が17年になると、HCV抗体は前の世代の抗体検査をして、そのままになっている待機患者が結構多いと思います。これはかなり問題でして、抗体陽性なのに、実際PCRを測るとウイルスがいないという待機患者も場合によってはいると。そうなると、ドナーのウイルスがいる所から、ウイルスのいない患者に移植をされてしまうというと大変な問題になってしまいますので、登録患者でHCV前の抗体検査しかやっていない方は、PCRも含めて早急にやっていただかないと、これはなかなか運用できないと思います。非常に危険だと思います。最近の方はまず問題ないと思うのですけれども。

○脇田班員 確かにそのとおりだと思うのですが、実際には抗体陽性者でHCVRN陽性の場合、自然治癒はほとんどないですから、ウイルスがいた人がウイルスが自然にいなくなるという方はほとんどいないはずなのです。ですから、以前の抗体検査の制度の問題ということであれば、それはもちろんやり直したほうがいいと思います。PCR検査も必要と考えます。

○相川班員 分かりました。

○松尾班長 だから、理屈の上からはこの抗体検査はやったほうがいいということなのですが、あとは制度上、財源、対象をどのようにするかといった問題になるかと思うのですが、この辺りは厚生労働省のほうではどのようにお考えですか。

○阿萬室長 御議論ありがとうございます。その点について、基本的にはこの作業班の場では、基準としてどのようなものを定めるべきかというところをまず御議論いただく場だと思っております。運用については、基準と関係する部分で当然いろいろ御意見を頂くところもあろうかと思いますが、それ以外のところについて、例えば運用の関係でこういう問題があるという御提言を頂きましたら、それは事務局で受け止めまして、JOTと相談をすることになると思いますが、その上で、具体的な対応をどうするかというところについて考えていきたいと思います。

○松尾班長 従前の打合せでは、このフローチャート自体がまだ検討委員会のほうでオーソライズされていないということだったので、今日まずこのフローチャートそのものについては、先ほどの脇田先生の話もありましたが、ここではこういうフローチャートでよしということで、まずこれは合意いただいてよろしいですね。運用のほうはまた御相談いただくということで、先生は何かありますか。

○湯沢班員 私はネットワークの移植検査委員、今は委員長をしておりまして、検査体制がどうなるかということについては、ネットワークのほうで実際に今HLAの検査施設について、アンケート調査を行う予定にしております。実際にこれで運用可能なのかどうかということもありますので、今お話がありましたように、それを基に運用についてはネットワークともども検討していきたいと思っています。

○松尾班長 作業班の意見として、こういうフローチャートを推奨するというのか、そういう形でこれは本日の決定事項として決めさせていただきたいと思います。

 次に生体腎移植ドナーが腎不全になった場合の優先権の付与、イスタンブール宣言をどう扱うか、この点について御意見をお願いします。

○両角班長代理 今年、移植学会、臨床腎移植学会、腎臓学会等の関連学会で、生体腎移植ドナーのガイドラインを作りました。ドナーが安全な手術を受けて腎提供後も長期に生命を全うできるか、高い社会生活を維持できるかという基準を作ったところです。欧米にはアムステルダムフォーラムという基準があって、それが基本になっています。日本の場合にはそれよりも緩い腎機能基準になっていますし、更にその基準の外側にマージナルドナー基準という、少しグレーゾーンの所までを一応、可とするという基準を作っています。できればマージナルな生体腎移植手術はしないでほしいということをかなり一生懸命書いたつもりです。それでも、日本の生体腎移植のドナー評価をきちんと行うと、一定数はマージナルの方がいらっしゃいますし、従来はそのマージナルの基準からも逸脱する人たちもいたと思います。

 一番大事なのは、生体腎移植の提供者、ドナーが決して長期にわたって腎機能を損わない、あるいはほかのリスクを含めても良好な社会生活を送れることを担保することと考えている中で、生体腎移植ドナーがもし腎不全になったら、死体腎移植を優先的に受けることができますという基準が組み込まれることが現状に相応しいかと言われると、とてもそぐわないなと思っているのが率直な印象です。

○松尾班長 かえって悪い影響が出ると、こういう話なのですが、いかがでしょうか。今の御意見ですと、この優先度については特に認めないで、今までどおりでいくということですね。

○両角班長代理 実際の数はよく分かっていないのですが、今までの2万件を超す日本の生体腎移植症例の中で、40例を越すドナーが腎不全になっていらっしゃいます。今後はゼロにしたいというのが一番大切なメッセージです。

○松尾班長 これはドナーの予後の調査もされて、データが出ているのですね。

○湯沢班員 私は日本移植学会の登録委員長として、イスタンブール宣言を受けて、全ての生体ドナーを生涯にわたって追跡することになったのが5年前からです。5年前からの追跡ですと、まだ100%登録されているわけではないのですが、全部で70%ぐらいの中には一応、今のところは腎不全はいないのですが、生涯にわたってしっかり追跡していきたいと思っておりますので、全貌が明らかになると思います。一方で、一般集団でも450人に1人ぐらい、日本全体でいうと30万人ですから、そのぐらいの透析患者がいるわけで、2万人の中に450分の1の確率で腎不全になっている方はいる可能性はあるのです。

○両角班長代理 提供時に腎機能とか検尿異常とか、腎尿路の形態をチェックされていますので、その段階で腎不全に進行するリスクの低い集団が選ばれています。無作為に抽出された一般の集団と、同じ頻度で末期腎不全に進行するとしたら大変なことになりますので申し上げました。

○松尾班長 この問題に関しては、一応、現状どおりということで、これももし問題があれば、引き続き検討課題にいたしますが、今日のところは従来どおりということでよろしいでしょうか。

 続きまして、Inactive制度の制定に関してですが、これについては御意見はありますでしょうか。

○西班員 西側というか、関西地区です。やはりがんの手術を受けられておられる方がリストの中におられて当たって、まだそれほどたっていないということでお断りになったと。そういう症例がたまたま続いて2例あって、待機下位の方にどんどん話がいって、移植した腎臓に機能障害が起きてしまったという事例がありますので、がんの治療を受けられた方の基準を早く作る必要があります。高齢者が多くなっている待機患者に是非必要だと思うのです。UNOSに確かがん種ごとの推奨待機時間、ウォッチング時間がありましたよね。それを日本でそのまま利用していいかどうかは議論があると思うのですが、もしよろしければそれもまた参考として、当面、日本で独自にものが決められなかったら、UNOSの推奨しているウォッチングタイムをがん種ごとに推奨してもいいのかと思うのです。

○両角班長代理 登録後、移植希望の登録施設では、登録者を定期的にフォローアップする責任があると思うのですが、正直なところ何をどこまで評価するかという基準が全くないのが現状です。実際、死体腎移植の連絡がネットワークからかかって、移植施設に来院され直前スクリーニングをしたら移植手術を行うことができない問題が見つかる方もいらっしゃるのが現実です。今回の御提案のように、あらかじめ移植適応がない登録希望者をInactiveに置くのは可能です。腎移植の適応に問題のある登録人はゼロにならないものですから、この制度を進めるのであれば同時に登録施設の責任として、きちっとした評価をするという体制が整備されないといけません。ある施設からはInactive登録が上がってくる。たくさん登録していても定期評価をしていないためInactive登録がされない施設があってはいけないと思います。そういったことが起きないような責任のある登録者評価の担保も同時に考えてもらえる必要があると思います。

○相川班員 今、実際、臨床腎移植学会の保険関連委員会と移植学会の保険診療委員会が集まって、腎移植の前にどの程度の検査をしたらいいのか。それについて、1223()に大阪で集まって、ある程度の試案を作りました。これが基本にはなると思うのですが、これは保険関係ですので、必ずしも全部を網羅するというわけにはいかないかもしれませんが、ある程度の基準を今、作成しております。

 もう1つ、私は臓器移植ネットワーク側の腎移植施設基準の委員会の委員長をしておりますが、3年間、見直しの期間、猶予期間がありましたが、来年の3月でそれも終わって、少なくとも1年に1回は登録した患者を診ないと、施設基準としては問題だと、もう項目は入っています。来年の3月で全て猶予期間が終わりますので、今後それをやらないと、腎移植の施設基準の認定から外されることになります。これは実は公益社団法人になる前にいろいろ調査を行って、待機期間が長いものですから、フォローアップもしないで、いきなり移植の手術をして、実際、随分、患者が亡くなられたのです。そのために、全国でどの程度、待機患者の定期フォローアップをしているのか、支部ごとに調べました。私どもの担当の東日本がフォローアップをしている率が非常に少なくて、中日本と西日本はそれなりのフォローアップ体制ができていたのですが、残念ながら東日本はなかったものですから、これを一律にやろうということで、今まで猶予期間を見て実施をしてきております。だから、来年の4月から、恐らくもっと厳密にこれを要求することになると思いますので、その点では前よりタイトに管理することにはなると思います。もしこれを守らないのであれば、腎移植の実施施設から外すことも考えなければいけません。以上です。

○水口班員 待機患者なのですが、プレエンプティブの方はともかくとして、一般的には透析患者ですから、透析患者は年1回、がん検診をしましょうというのが基本的な考えになっていますので、移植施設でやりますと保険上いろいろな問題が出てくるかと思うのですが、透析施設でそれをやっていただければ、大きな問題は出てこないかと思います。保険で移植施設でも認めていただければそれはそれでいいですが、難しいようであれば透析施設との連携もいいかと思いますけれども。

○松尾班長 水口先生、前透析医学会の理事長がそうおっしゃっておられるので、透析施設と移植を実施される施設の連携。今のお話を伺うと、大体、年に1回フォローアップをして、ちゃんとデータを整えると。そのときの項目を今、検討されているということなので、これについては、合意できれば例えばこの検討班から、こういったフォローアップは望ましいというリコメンデーションをしっかり出してもいいのではないでしょうか。

○相川班員 これはもう既に実施基準の中に入っているのです。だから、本来は実施しなければいけないのです。ただし、体制ができていないところがある可能性がある。例えば待機患者が非常に多い所は、この待機患者をフォローアップするだけでも相当な時間と労力を費やしますので、その体制整備のために3年間、猶予期間を設けたのですが、来年の3月でそれが終わりますので、来年の4月からは結構厳しく、やっているかやっていないかを判定しないといけないことになると思うのです。

○湯沢班員 それに関わることなのですが、登録患者が登録を更新するときに、中日本と西日本では移植医のサインなり判こが必要だったのです。東日本ではそれが一切、登録施設と関係なく、透析施設などだけで判断されたというか、更新できていたので、そこが多分変わるのですよね。

○相川班員 もう原則的に移植施設は1年間に1回は見なくてはいけないという項目が入っているのです。ただ、問題は、患者自身がいくら要請しても外来に来ていただけない。そういうことがありまして、100%それが担保されているかどうかはなかなか難しい状況です。

○湯沢班員 強制的ではないのですが、強制と言ってもいいのか。登録用紙にしっかり移植施設が、例えばがんというか、ちゃんと問題ないということを確認して更新するとか、場合によっては更新のところで移植施設が、登録患者についてInactiveと判断するとか、そのような更新のシステムにすることも可能なのではないですか。

○相川班員 移植をするのは移植実施施設ですから、そこの施設でこの患者をInactiveにするかどうかは決定すべきだと思います。情報は与えていただいたほうが、もちろんそれに越したことはないです。

○両角班長代理 実際Inactive制度を導入した場合には、Inactiveでなくなる時期があるわけですから、ネットワークで的確にInactiveでない状態になったことが把握される必要があります。Inactiveでない医学的状況であるのに登録者に連絡をしなかったということになると、私は移植ができたはずだという形で、登録者から苦情が出るというリスクがあります。制度の導入と同時に、Inactive時期がいつからいつまでかということがきちんと把握できる体制をネットワークが持たないと非常に危ないことになると思いますので、それはよろしくお願いいたします。

○西班員 がんはとても難しい。ファジーな問題があって、がん検診というのも、どこまでやったらがん検診なのかというのがなかなか難しいところがあって、例えば移植施設で1年に1度やるのは難しいと思うので、水口先生がおっしゃるとおり、透析施設が責任を持つべきだと思うのですが、何という項目まで男女それぞれやればよいのか、これは非常にファジーなところがあると思うのです。でも、今後その辺も本当はある程度、明文化していく必要はあるとは思います。

○水口班員 施設にお願いするに当たっては明文化が必要だと思います。

○相川班員 問題はがんの種類によって、臓器によって、ステージングによって、予後は随分違いますので、その辺を細かく細分化するのは非常に難しい作業なのです。ある程度の指針はUNOSから出ていますので、それを参考にするのがいいことだと思いますけれども。例えば早期の腎がん、大腸がん、子宮頸がん、皮膚がんは猶予期間は短かったと思います。そのように個別にがんの種類によって、実際データが出ていますので、それも参考にするべきだと思います。

○松尾班長 そうしますと、意見をまとめますと、大体、待機をInactiveにする。それに当たっては、きちんと登録患者のフォローアップを定期的にするということについては、皆さん御異論がないということなのですが、1つはフォローアップの内容をどうするのか。例えばがんについても、一般の健康な人もそうなのですが、どこまで検診をやるのかということは多分あると思います。2つ目は、両角先生が御指摘のように、解除の条件とか通知、これを徹底する体制をしっかり作っておかないと、Inactiveのままずっと行ってしまうということがあってはならないので、この辺りをどうするかということが今後の検討課題かと思います。今日はこの問題はこの程度にしておいて、課題が大体クリアになったので、今後、引き続き検討させていただきたいと思います。

 最後に、移植腎機能が全く発現しなかったレシピエント、この対応についてどうするかということなのです。これはごく簡単に、もしありましたら御意見を頂きたいと思います。もしないようでしたら、これも今後の検討課題ということで、検討を進めたいと思います。

 ということで、今日は非常に良い御意見を頂きましたので、合意に至ったものもありますが、大部分がまだこれから検討課題ということになります。今日の議論の内容を事務局のほうでまとめて、また議事録としてお送りいただいて、かつ検討の課題、ポイントをまとめていただきたいと思います。ありがとうございました。事務局にお返ししますので、今後の予定等々、御説明いただければと思います。

○田中補佐 今日はたくさんの議論をありがとうございました。今後、私どもで整理をして、先生方にお返ししたいと思っております。本日、予定しておりました議案についてはこれまでとさせていただきたいのですが、そのほか委員の先生方から御意見等、何かありましたら御発言いただきたいと思っております。

○両角班長代理 腎臓移植のレシピエントの選定基準からちょっと離れますが、先行的献腎移植の希望者が大変増えてまいりまして、210名になりました。2年ちょっとで210名ですので、かなりの方が希望されています。西先生が委員長なのですが、腎臓学会の腎移植推進委員会のメンバー、あるいは関連する5学会の皆さんの協力を頂いて審査を行っているのですが、ボランタリーにやるものではなくて、ネットワークでやってほしいなと思っておりますので、また御検討いただきたいのが1点です。

 もう1点、本当は今日の議論の中で最初に出てくるべきだったかもしれないのですが、なぜレシピエントの適応について見直しているかというと、臓器提供が少なくて、患者が待っていても移植する機会がないから見直しが要るという話につながっているようです。そうすると、この見直しをする中で、こういう方向で見直しをすると臓器提供が増えていく、社会に対してアピールできるという側面も配慮されてもいいのではないかと思いますので、また今後の議論の中に反映してもらえるといいなと思います。

○阿萬室長 両角先生からのコメント、ありがとうございました。先生のおっしゃった1つ目については、個別に日本移植学会等及びJOTと相談するところがあると思いますので、それについてはまた我々も検討させていただければと思っております。2つ目の、特に「臓器提供が最近減っているのではないか」というところで、それについての対応をどうするのかという話は、我々もいろいろな所で御指摘いただいております。それについては、まず我々とすると、これは提供側の話ですが、提供側として御家族に選択肢、ちゃんとした言い方をすると救命治療をしても回復の見込みが無いとなった場合に、御家族に臓器提供についてもあり得ますよという選択肢の提示をされる場合に、実際に移植につながれば、費用面についても一定のものは出るわけですが、移植につながらないような場合についても、いろいろな準備をされるときの掛かり増しの費用なども含めて、ちゃんとある程度の費用について支援ができないかということで、通常パターンだと大体今ぐらいには国の予算ができておりますが、今年はちょっとずれておりますが、その中で、財務省にもいろいろ要求をして、そういうことについてもある程度予算を確保することもいろいろやっていきたいと思っております。まだ最終的に決まっておりませんので、まだペンディングの状態ではありますが、いずれにせよそのような形で、我々としても臓器提供施設の支援も含めて、いろいろやっていきたいと思っておりますので、引き続きそれも含めてよろしくお願いいたします。

○松尾班長 最後にちょっとお願いをしたいのですが、せっかくこうやって集まって議論をしているので、一定の時期までに一定の結論を出して、作業班から意見をしっかり公表というのか、提言をすることは必要だと思うのですが、そのタイムラインといいますか、それをしっかり決めていただきたいということです。それから、今日いろいろ課題が出たのですが、私はいつもやるときに緊急度とか重要度とか、実現可能性などを勘案して全体的な優先度が決まると思うのですが、今日出た課題についても是非その辺りを整理して、特に3つのポイントが高いものは、なるべく早くここで提言をしっかりまとめて出していくことを是非していただきたいと思います。次回は決まっておりませんが、その辺のところも、せっかくやるので、あるところはしっかり出せるような形でお願いしたいと思います。

○阿萬室長 先生、ありがとうございます。まずはJOTと相談して、データがどのぐらいで出るかを含めて、その辺りを整理した上で大体どのぐらいをめどに次回を開催させていただけるかを含めて検討したいと思います。そういう意味で、次回はいつというのは別途調整させていただければと思います。

○松尾班長 分かりました。拙速はいけないと思いますが、是非そういうことでよろしくお願いしたいと思います。今日は以上です。どうもありがとうございました。


(了)
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