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2014年10月22日 薬事・食品衛生審議会 再生医療等製品・生物由来技術部会 議事録

○日時

平成26年10月22日(水)
13:00~


○場所

厚生労働省専用第12会議室


○出席者

出席委員(16名) 五十音順

荒 川 義 弘、◎大 野 泰 雄、 岡 野 栄 之、○神 田 忠 仁、
楠 岡 英 雄、  斎 藤    泉、 佐 藤 陽 治、  谷   憲三朗、
手 島 玲 子、 中 島 美砂子、 中 村 利 孝、  新 見 伸 吾、
俣 野 哲 朗、  水 口 裕 之、 森 尾 友 宏、  森 川 裕 子
(注) ◎部会長 ○部会長代理
他参考人2名

欠席委員(6名)五十音順

小 幡 純 子、 五 箇 公 一、 島 田    隆、 鈴 木 邦 彦、
津 田 知 幸、 横 田 恭 子

行政機関出席者

神 田  裕 二 (医薬食品局長)
成 田  昌 稔 (大臣官房審議官)
磯 部 総一郎 (大臣官房参事官)
矢 守  隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
梅 澤  明 弘 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構副審査センター長)
武 田  康 久 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構 審議役)

○議事

○参事官 「薬事・食品衛生審議会再生医療等製品・生物由来技術部会」を開催いたします。本日は大変お忙しい中御参集いただき、ありがとうございます。

 本部会につきましては、本年11月の薬事法改正の施行に向け、今年の8月に再生医療等製品・生物由来技術部会という名称、あと所掌事務の変更で改組が行われ、新しく委員の任命も行われたところです。

 本日は改組された部会の第1回目ということでもありますので、神田医薬食品局長から最初に御挨拶申し上げます。

○医薬食品局長 医薬食品局長の神田でございます。皆様方におかれましては、日頃から医薬品行政につきまして多大なる御協力、御指導いただいていることに対しまして、最初に御礼を申し上げます。

 さて、今回従来の生物由来技術部会というのを改組いたしまして、再生医療等製品についての承認等についても御審議いただくということで、今回改組をさせていただくことになりました。今回、その改組に当たっての第1回目ということでございますので、最初に御挨拶させていただきます。

 今回、改組に当たり委員の皆様方には、お引受けをいただきまして誠にありがとうございます。我が国におけます再生医療につきましては、これまで培養皮膚、培養軟骨の2製品のみということで、とかく諸外国に比べて遅れているのではないかというような御指摘もあったところでございますが、先月には新しく細胞治療製品の承認申請も出てまいっております。今後、一層開発が進んでいくことが期待されているところでございます。

 また、既に広く報道されておりますが、理化学研究所におきまして、今年9月から加齢黄斑変性の患者さんに対する治療として、世界初のiPS細胞由来の細胞の移植が行われたというところです。また、京都大学のiPS細胞研究所におきまして、iPS細胞の軟骨無形成症への分化に成功しまして、それに対するスタチンの薬効が見いだされるなど、非常に再生医療ですとか、その周辺技術に対する動きが活発化しているところでございます。

 厚生労働省といたしましても、こうした動きに応えられるよう、昨年11月に再生医療等製品の特性を踏まえまして、安全性が確認された段階で有効性について推定ということで、薬事法上の条件を付して承認、市販することができるという、新たな承認の制度を盛り込んだ薬事法の改正をいたしたところでございます。

 併せて、再生医療等新法という、医療の場面における細胞を活用した医療についての新法も施行されるというところになっています。来月の1125日に施行されるということですが、それに向けて中医協においても、期限付き承認を受けた製品の保険適用の扱いについても、今、議論が開始されているところでございます。委員の皆様方におかれましては、それぞれの専門分野における知見ですとか、御経験を基に御審議をいただきまして、この期待に応えていただけるようお願い申し上げる次第でございます。

 簡単ではございますけれども、開会に当たっての御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

○参事官 続きまして、今回新たに御参加いただく委員の先生方を、私から御紹介申し上げます。机上に座席表と裏面が委員名簿になっているものを配布しております。こちらを御覧いただきたいと思います。五十音順で御紹介申し上げます。

 荒川義弘委員です。続いて本日は御欠席ですが、小幡純子委員です。楠岡英雄委員、佐藤陽治委員、中島美砂子委員、中村利孝委員、水口裕之委員、森尾友宏委員です。

 そのほか、五箇委員、島田委員、鈴木委員、津田委員、横田委員から、御欠席との連絡を頂いております。本日、岡野委員、俣野委員が遅れて参加されるということです。

 現時点で当部会の委員数22名のうち、12名の委員の御出席をいただいておりますので、定足数に達していることを報告させていただきます。

 今回は第1回目の開催となりますので、本日机上に配布している「薬事法の改正の概要」と「部会の改組について」、私から簡単に御説明させていただきます。

 最初に薬事法の改正の関係で、参考資料1「薬事法等の一部を改正する法律の概要」です。先ほど局長からもお話がありましたが薬事法の改正で、この法律が本年の1125日の施行の予定になっています。その中で、幾つか柱があります。医薬品医療機器等に係る安全対策の強化の部分、医療機器の特性を踏まえた規制の構築の部分、再生医療等製品の特性を踏まえた規制の構築、そのほか「薬事法」という題名を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に改めるということで、題名も変更するということになっています。特に、本日は再生医療等製品の関係の部会ですので、中身を次のページから御紹介させていただきます。

 2ページ、「再生医療等製品の特性を踏まえた規制の構築」です。特に、iPS細胞などによる再生医療は、革新的な医療として実用化に向けた国民の期待が高い。また安全面などをどう考えるかという課題があり、安全性を確保しつつ、迅速な実用化を図るということから、特にその特性を踏まえた制度等を設けることが必要ということです。特に特性としては、人の細胞等を用いることから個人差などを反映し、品質が不均一になるということがあることに着目した制度設計になっています。

 その上で、まずは医薬品・医療機器と別個の定義付けということで、これまで医薬品か医療機器に分類されていたものを再生医療等製品ということで抜き出して、新たなカテゴリーを作り、それに定義を置き、再生医療等製品の特性に合わせた内容を薬事法の中に章を設け、規程するということです。

 再生医療等製品の範囲については、人の細胞に培養等の加工を施したものであって、身体の構造・機能の再建・修復・形成や疾病の治療・予防を目的とし、使用するもの、又は遺伝子治療を目的として、人の細胞に導入して使用するものが、再生医療等製品として改正薬事法で規程するものです。

 これらのものについては、細胞の不均一性に着目し、条件及び期限付き承認制度の導入を新たに設けたところです。そこでは、有効性が推定され、安全性が確認されれば、条件及び期限付きで、特別に早期に承認できる仕組みを導入する。その場合は承認後に有効性・安全性を改めて検証するということです。

 その場合の条件、期限というのは、どういうことをイメージしているのか。ケースによって付け方はいろいろですし、今後各製品を審査していくときに、また先生方の御意見も聞きながら決めたいところですが、想定しているものとしては、例えばメーカーから再生医療等製品を販売する先をその分野の非常に専門的な医師に限るとか、そういう特別な設備というか、そういう対応ができる設備を有する医療機関などに限定するとか、期限という意味では、法律では原則として7年を超えない範囲内の期限を想定ということで、期限が付けられた承認については、7年以内の間にそれまで得られた使用成績に関する資料などを添付し、再度承認申請を行うことが必要ということです。逆に言えば、承認申請を行わなければ承認が失効してしまうということになります。

 3ページは安全対策の関係です。()()は、特に全体の共通事項の話です。医師のインフォームド・コンセントの部分について、努力義務を規程しています。それから、使用成績に関する調査や感染症情報提供の対象者などに係る記録と保存などの市販後の安全対策を講じるということ。もし、万が一健康被害が起こった場合に関しては、これまで医薬品対象の制度の副作用被害の救済制度、生物由来製品にある感染等被害救済制度も対象になるということです。そのほか、安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律の改正も行っているところです。このような法律改正を行ったところです。

 このような法律改正を受け、本日の参考資料2を御覧ください。以前に御説明させていただいたものですが、おさらいさせていただきます。今の薬事法改正に伴い、再生医療等製品の審査や安全対策をどこの部会でやるのか。

 1枚目の2「改正()の主な内容」を御覧ください。再生医療等製品と新たに定義付けされたこのカテゴリーについて、承認の関係について議論していくのが本部会です。この再生医療等製品・生物由来技術部会で、従来の生物由来技術部会ということで、これまでカルタヘナ法の対応とか、生物由来製品の基準の策定を担当していたこの部会を改組し、再生医療等製品の承認審査や再審査、再評価などの対応をここでやるということです。また、市販後の安全対策に関しては、これまでの医療機器安全対策部会を改組し、医療機器再生医療等製品安全対策部会というところで担当するということです。

 そのほか、後ろに細かい分科会の規程の新旧を付けさせていただいておりますが、御紹介したい点を申し上げます。15ページの8ですが、今までは生物由来技術でしたが、再生医療等製品の中でも特に新規性の程度に着目し、薬事分科会審議までいくもの、また部会審議を行うもの、部会報告を行うもの、事務局で処理するものといったものを規程しております。

16ページには、再生医療等製品の再審査・再評価に関しても、同様のものを付けております。17ページには「生物由来技術」と書いていますが、これについては従来のものをそのまま置いております。

 このような形で、再生医療等製品・生物由来技術部会においては、今後再生医療等製品の審査などに関する業務を行っていただくということで、よろしくお願いできればと思ってございます。

 それでは、大野先生、以後の進行をお願いいたします。

○大野部会長 昨年よりこの部会の座長を務めさせていただいております大野でございます。どうぞ、よろしくお願いいたします。不十分なところがございますが、神田先生をはじめ、今までの委員の先生方の御協力を得て、この部会を進めてまいりました。今度は再生医療に関することも入るということで、それを専門にされている先生方に協力していただくということになって、また新しい先生にも協力していただいて、今後この部会を運営していきたいと思っています。

 先ほど御説明がありましたけれども、再生医療製品については、安全性を確保しつつ迅速な実用化が図れるようにという目標がございますので、この部会もそれに向けて役に立つような形で進めていきたいと思っています。もちろん、今までの生物由来技術の応用に関しても進めていきたいと思いますので、どうぞ、御協力よろしくお願いいたします。

 それでは、まず事務局から配布資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合リストについて報告をお願いします。

○事務局 本日、席上に議事次第、座席表、当部会委員名簿を配布してございます。議事次第に記載されている資料1から資料5までを予めお送りさせていただいております。

 このほか、当日配布資料として、資料6「専門委員リスト」、資料7「競合品目・競合企業リスト」、資料8「諮問書」、参考資料1から参考資料4までございます。先ほどの説明の中で、参考資料1、参考資料2は使いました。資料に不足等がございましたら、事務局までお申し付けください。

○大野部会長 続けて事務局から説明をお願いいたします。

○事務局 本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リスト、資料7です。1ページ、「ヒト(自己)表皮由来細胞シート」です。本申請品目は患者自身の細胞を採取して培養する製品で、競合品目はなしです。

 2ページの括弧書きに、「G47デルタ」とあります。本申請品目はウイルス療法に用いる遺伝子組換えウイルスであり、競合品目はHF10OBP-301としています。

 3ページで、「MS3II-NYES01-siTCR」です。本申請品目は患者自身のリンパ球に遺伝子組換えを行い、悪性腫瘍の治療に用いるものであり、競合品目はなしとしています。

 続いて、各委員からの申出状況について御報告いたします。

議題1の「ヒト(自己)表皮由来細胞シートを希少疾病用再生医療等製品として指定することの可否について」は、退室委員はなし、議決に参加しない委員もなしです。

 議題2の「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律第4条に基づく遺伝子組換え生物等の第一種使用規程の承認について(47)」ですが、退室委員はなし、議決に参加しない委員は谷委員です。

 議題3の「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律第13条に基づく遺伝子組換え生物等の第二種使用等の拡散防止措置の確認について(MS3II-NYES01-siTCR)」は、退室委員はなし、議決に参加しない委員もなしです。

○大野部会長 本日は審議事項が3議題、報告事項が一つです。

 まず議題1「ヒト(自己)表皮由来細胞シートを希少疾病用再生医療等製品として指定することの可否について」御審議いただきます。これに関する制度についての説明をお願いいたします。

○事務局 制度について御説明いたします。参考資料3です。制度の概要は、希少疾病用再生医療等製品については、医薬品医療機器等法第77条の2に基づき、基準を満たす再生医療等製品について薬事・食品衛生審議会の意見を聞いて厚生労働大臣が指定することができるとされています。これは再生医療等製品の製造・販売の承認ではなく、承認を目指して開発を進める再生医療等製品のうち、医療上の必要性が高いものについて、研究・開発の促進のために厚生労働大臣が指定する制度となっています。医薬品医療機器についても同様の指定制度がありますが、今回の薬事法改正において、再生医療等製品についても同様の制度を設けたものです。

 具体的に指定を受けられる開発促進の制度については、資料中の中程に記載していますが、承認審査における優先審査の対象、再審査期間の延長、開発助成の対象、税制優遇の対象となることとなっています。

 具体的な指定の基準としては、医薬品・医療機器と同様に三つの観点から評価することとしています。資料下部に記載しているとおり、対象患者数が5万人以下であること、他の治療法がないなど医療上の必要性が高いこと、開発の可能性があることの3点です。これらの基準に従い、指定の可否について御審議いただけますよう、お願いいたします。

○大野部会長 本日の議題1ですが、それについて説明をお願いいたします。

○事務局 本品目について資料1を御覧ください。2枚ほどめくっていただき、PMDAの事前評価報告書を基に御説明いたします。

 本品はヒト(自己)表皮由来細胞シートで、予定される効能・効果、性能は、先天性巨大色素性母斑です、申請者は株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングです。

 対象者数は2ページの上部に記載のとおり、厚生労働省の平成23年の患者調査において、皮膚の良性新生物の患者数が12,000人と報告されており、巨大色素性母斑の患者もこの中に含まれると考えられることから、12,000人よりも少ないと予想されます。また、成育医療研究センターでの受診経験や南米における患者数に関する情報からも、本邦における患者数は5万人以下であると考えられ、対象患者数については指定基準を満たすと考えられます。

 医療上の必要性については、2ページの中程に記載しています。巨大色素性母斑に対する既存の治療法としては、母斑細胞を破壊するレーザー治療や母斑を含む深皮層の除去後、自然な上皮化を待つ掻爬術、母斑部位を切除した後に修復する手術的治療法がありますが、いずれも侵襲性が高いことや骨格の成長異常を誘発する可能性があることなどの理由により、広範な面積の母斑を治療することは困難となっています。本品は患者自身の皮膚組織を培養することによりシート化されたものであり、既存治療に比べて広範な母斑の治療が可能となっています。

 また、3ページの2段落目に記載のとおり、本品の巨大色素性母斑に対する治療については、既に医師主導治験が実施され、本品が移植された8例全例において95%以上の上皮化が認められており、巨大色素性母斑の治療に関する有効性を示唆する試験成績が得られています。以上のことから、本品の医療上の必要性はあると考えられます。

 また、本品について申請者は、先に申し上げた医師主導治験の結果をもって製造販売承認の申請を行う予定であり、開発の可能性はあると考えられます。

 以上により、本品は希少疾病用再生医療等製品に指定して差し支えないと考えております。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○大野部会長 先生方から御意見を伺います。まず、対象者数は5万人以下という要件があるということですが、この説明だと12,000人以下だろうという御説明でした。これについて、先生方からいかがでしょうか。特に異論はないということでよろしいですね。

 医療上の必要性についてです。従来法と比べて優れているという説明がありました。いかがでしょうか。□□行っていませんが、私はそれぐらいしかできないかと思ったのですが、□□%以上の患者に上皮化が認められ、安全性の面でも長期的な治療を要するような問題は認められていないということです。これについて御意見はございますか。

 指定基準として挙げられているのは5万人以下ということ、医療上の必要性、高い有効性・安全性が期待されるということ、ここまではよろしいですね。

 それから、理論的根拠があるとともに、その開発に係る計画が妥当であるという要件がありますが、これについて御意見はございますか。よろしいですか。医薬品医療機器総合機構の判断材料について、特に御意見はなかったということですが、これについて議決をいたします。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。御異議がないようですので、指定を可として薬事分科会に報告させていただきます。

 それでは議題2「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律第4条に基づく遺伝子組換え生物等の第一種使用規程の承認について」です。制度の説明をお願いいたします。

○事務局 参考資料4を御覧ください。遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律、いわゆるカルタヘナ法は生物の多様性の確保を図るため、平成15年に制定された法律です。上から三つ目の囲みです。遺伝子組換え生物等の使用等に係る措置にありますように、この法律では遺伝子組換え生物等の使用等に先立ち、使用形態に応じて環境中への拡散を防止しない開放系で行う「第一種使用等」と環境中への拡散を防止する閉鎖系で行う「第二種使用等」に分類されております。

 第一種使用等に当たっては、使用者による第一種使用規程及び生物多様性影響評価書の作成、厚生労働大臣及び環境大臣による学識経験者への意見聴取、必要に応じてパブリックコメントの募集等の手続を経た上で、大臣の承認を受ける必要があります。

 第二種使用等については、品目のリスク区分に応じて使用者が拡散防止措置を定め、それについて大臣の確認を受けるなどにより使用等を行うこととなっております。今回の審議事項については、議題2は開放系で行う第一種使用等のため、第一種使用規程の承認について申請があったものです。議題3は閉鎖系で行う第二種使用のため、拡散防止措置の確認について申請があったものです。

 それぞれ、本部会において御審議いただくものです。なお、第一種使用規程は、治験を実施する場合に薬事・食品衛生審議会において御審議いただき、臨床研究を実施する場合には、厚生科学審議会で御審議いただくことになっております。

 議題2の品目については、現在、臨床研究については既に別途厚生科学審議会で御審議いただき承認を可とされて、臨床研究が実施されたものです。臨床研究を経て治験を実施するに当たり、臨床研究で御審議いただいた第一種使用規程の内容から変更がない場合は、改めて薬事・食品衛生審議会で御議論をいただく必要はありませんが、今回は第一種使用規程の内容を変更したい希望が申請者からあったため、その変更後の内容について改めて申請いただき、本部会で御議論いただくものです。以上です。

○大野部会長 それでは、議題2の品目について具体的に説明をお願いいたします。

○機構 本審議品目は、東京大学医科学研究所附属病院から申請されております大腸菌LacZ遺伝子を発現し、γ34.5遺伝子・U^L39遺伝子、 α 47 遺伝子を不活化された制限増殖型遺伝子組換え単純ヘルペス1型(F株由来)、G47 Δ の第一種使用規程承認申請です。資料2-1は、総合機構が作成した事前審査結果通知書です。資料2-2は、第一種使用規程承認申請書と生物多様性影響評価書です。適宜、御参照ください。

 品目の概要です。本品目は、遺伝子工学的に作成された遺伝子組換え制限増殖型単純ヘルペス1型、HSV-1です。野生型のHSV-1に比べて正常細胞内での複製に必須の遺伝子を欠損しているため、正常組織においては毒性を示さない一方、増殖の盛んな腫瘍細胞や一部の培養細胞では複製し、感染細胞を破壊して殺細胞効果を示す腫瘍溶解性ウイルスです。

 これを含む製剤を用いて放射線治療と化学療法後に残存、又は再発した膠芽腫患者を対象とする治験が計画されております。今回、遺伝子組換えウイルスを含む製剤を用いて治験を行うに当たり、申請された第一種使用規程が適切であるかについて、申請書に添付された生物多様性影響評価書等の資料に基づき御審議いただきます。

 本申請の申請者である東京大学医科学研究所附属病院は、本遺伝子組換えウイルスの臨床研究の第一種使用の実績があります。実際の経緯は脳腫瘍に対する遺伝子治療臨床研究を行うため、東京大学医学部附属病院を申請者として平成21年5月に第一種使用規程の承認を受けております。

 その後、臨床研究実施者の異動に伴いまして、改めて東京大学医科学研究所附属病院を申請者として平成25年5月に第一種使用規程の承認を受けております。更に同じ遺伝子組換えウイルスを用いまして前立腺がんに対する遺伝子治療臨床研究を行うために、東京大学医学部附属病院を申請者として平成2311月に第一種使用規程の承認を受けております。

 今般、東京大学医科学研究所附属病院が医薬品開発を目指す使用等として治験を実施するに当たり、第一種使用規程に変更を加えた上で改めて申請がなされたものです。治験届自体は本年7月に厚生労働省に提出され、30日調査を経て受理されておりますので、従前の第一種使用規程にのっとって行う限りにおいては治験の実施は可能です。本日は当該、第一種使用規程の変更に伴いまして御審議いただきたいと考えております。

 本遺伝子組換えウイルスの第一種使用規程について、簡潔に御説明いたします。資料2-2です。冒頭にある第一種使用規程承認申請書ですが、この規程に基づいて製剤の使用、保管、運搬及び廃棄並びにこれらに付随する行為が行われております。本遺伝子組換えウイルスは容器に密閉された状態で運搬し、治療室において患者の腫瘍内に注入されます。本遺伝子組換えウイルスを含む溶液の廃棄に当たっては不活化処理又は厳密な密閉を行った後、当該医療施設で定められている医療廃棄物管理規程に従い廃棄いたします。

 投与部位等、高力価組換えウイルスと直接接触した可能性のある部位の被覆材や器具等については、他の患者の廃棄物と分けて保管した上で、医療廃棄物管理規程に従い廃棄いたします。患者由来の検体の取扱いについては使用施設の規程に従い、医療廃棄物として処理いたします。単純ヘルペスウイルス1型の回帰症状が疑われる等にあっては、医療上必要と判断される場合、唾液等のサンプリングを行い遺伝子組換えウイルスの有無の確認等を行う予定です。

 本遺伝子組換えウイルスの生物多様性影響評価についてです。生物多様性影響評価書については資料2-1です。2ページは事前審査結果通知書の添付です。1番目、他の微生物を減少させる性質。2番目、病原性。3番目、有害物質の産生性。4番目、核酸を水平伝達する性質。以上四つの観点からまとめております。事前審査の結果としては、いずれの観点でも大きな問題はないとものと考えております。

 続いて、機構における審査についてです。主な論点は投与方法及び本遺伝子組換えウイルスが投与された患者の個室管理についてです。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、本使用規程に「腫瘍内」と記載することを了承いたしました。

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 更に、本品の一世代前のHSV-1に二重変異が加えられたG207は、欧米で悪性神経膠芽腫の患者を対象に臨床試験が行われ、第三者への健康被害の報告はされていないということからも、機構としましては当該腫瘍内投与であれば個室管理を行わないとする規程の変更を了承いたしました。また、機構は投与後の患者管理としまして、口腔粘膜等に単純ヘルペスの回帰症状が疑われた場合には、唾液等のサンプリングを行い遺伝子組換えウイルスの有無の確認等を行う必要があると考えており、この点について申請者からは「医療上必要と判断される場合、唾液等のサンプリングを行い遺伝子組換えウイルス有無の確認等を行う」と変更され、機構としてこれを了承いたしております。

 審査において、主に次に挙げる3点より申請された第一種使用規程に従って使用を行う限り、生物多様性に影響が生じる恐れはないと判断しております。一つ目は、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。二つ目は、使用規程に基づいて使用した残液や器具の廃棄処理や管理が適切になされれば、環境中への拡散は制限されると考える。三つ目は、たとえ外界に出たとしても、本遺伝子組換えウイルスは制限増殖型のウイルスであり直接、水平伝搬し複製する可能性が低いと考えられる。

 本遺伝子組換えウイルスの第一種使用規程承認申請書及び生物多様性影響評価書について御審議のほどよろしくお願いいたします。

○大野部会長 どうもありがとうございました。先ほど私に問合せがあって、問題ないと思ったのですが、事務局に確認をしていただきたいのですが、斎藤先生から同じ施設に属しているのですが、審議に参加してよろしいかどうかということがありました。名簿から見れば斎藤先生は医科研の遺伝子解析施設という所に属しています。今回の申請は医科研附属病院だということで、大きな施設として見れば同じ施設だけれども中の部局は違うということで、特に問題はないかと私は思ったのですが、そういうことでよろしいでしょうか。

○事務局 利益相反の確認については、施設での所属により判断するものではなく、個別の品目に関する関連性により判断しております。これに基づいて今回斎藤先生には御審議に参加していただいて差し支えないと判断しております。

○大野部会長 それでは、大きな意味で同じ組織に属していても、今回の資料の作成に直接関与がなければよろしいということですか。

○事務局 はい。

○大野部会長 そういうことですので、斎藤先生、御意見等よろしくお願いいたします。それでは、ただ今御説明がありました品目について、カルタヘナ法に基づく問題点について審議して、承認してもいいかどうかということについて先生方に審議していただくわけですが、これについて要点が資料2-1の右のページに幾つか書かれておりますが、まず、それについて御審議いただいて、それから全体を通してまた御意見いただきたいと思います。

 このものは、他の微生物を減少させる性質があるかどうかという問題があります。それについて先生方、御意見ございますか。特にこれについては、影響を受ける可能性のある他の微生物は特定されていないという評価が行われていますが、そういうことでよろしいですか。

 病原性についてです。感染性は野生型単純ヘルペスウイルス1型のF株と同じであるということですが、植物及び微生物への感染性はなく、人及び一部の動物には感染性はあるが、増殖部位が腫瘍細胞等に限定されていること。今までの臨床研究で重大な有害事象が認められていないということ。そういうことで、病原性を示す可能性は極めて低いというまとめが出ておりますが、それについて御意見いかがでしょうか。

 有害物質を産生する可能性はないかです。それについて、いかがでしょうか。全塩基配列が確定されていて、その中に有害なタンパクを作る配列はないということが報告書に書かれております。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。これについて、問題ないと考えてよろしいでしょうか。

 核酸を水平伝達する性質があるかどうかです。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。これについて、先生方、御意見ございますか。それでは、拡散を水平伝達する性質についても特に問題になることはないと考えてよろしいでしょうか。

 全体、ほかの面も含めて先生方から御意見があったら伺いたいと思います。

○楠岡委員 先ほどの事務局の御説明では、既に承認を取られて臨床試験を進められ、今回治験に移るに当たって、変更事項があるので再度審査となったということでした。どこが変更になったのか具体的に教えていただければ、前の臨床試験のところとの違いが大きくなければ余り心配するところはないと思うのですが、その点をお願いします。

○機構 先生の御質問で前回の第一種使用規程との違いですが、本来であれば新旧対照表を付けておくべきだったと事務局の不手際を反省しております。大きなポイントは、これまでの臨床研究の中でやられている本剤を用いた試験は、患者さんの個室管理をしておりまして、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、個室管理を今回解除して通常の病棟で治療できるようにするということ。

 あと、第一種使用規程の申請書の幾つかポツが書いてあるところにありますが、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、通常の感染性の廃棄物と同じ病院内の廃棄物の取扱いでよいという点を変更するというのが、今回の改正趣旨です。

○大野部会長 拡散防止措置についても、当然皆さんに御意見を伺わなくてはいけなかったのですね。それについて、密閉容器に適切な表示と保管をしていくこと。廃棄や不活化は規程に従って廃棄する。接触した可能性のある機器、器材は他の患者のものと区別して保管するということです。拡散防止措置について、何か御意見ございますか。

○谷委員 議論には参加させていただけるということで、お聞きしたいのですが、この場合は患者さんの排泄物等について、チェックを一切しなくなるということですか。

○機構 今回の使用規程におきましては、排泄物等についてのチェックは特段しておりません。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、他の廃棄物と分別をして処理をしていただくという限りにおいて、実際病院内で患者さんを取り扱う方やその他の方に対して、きちんと注意喚起をした上で使っていただければ、特段検査をする必要はないということで、我々の事前審査の中でも可ということにしております。

○荒川委員 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

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○機構 先生のこれまでの関与に関しては、厚生労働省からお答えさせていただいた方がよろしいかと思います。投与部位の関係ですが、基本的に今回の申請は脳腫瘍内投与で脳腫瘍内でのこれまでの実績に基づく形での申請です。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

○事務局 もう一つ御質問になりました利益相反の関係です。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

○大野部会長 もう一つ、順序が異なってしまって申し訳ないですが、この遺伝子はゲノム、互いに離れた4か所に操作が加えられているため、野生型に戻る可能性は極めて少ないという説明が文章の中にありましたが、そう考えてよろしいでしょうか。もし、どこか一部だけ戻って野生型と生活力が変わらなくなって増えてしまうと困るわけです。その可能性は極めて低いという説明になっております。そのような判断でよろしいでしょうか。

 もう一度先生方から御意見をいただきたいと思いますが、全体をとおしてそのほか質問も含めて御意見ございますか。それでは、この議題についての議決に入ります。谷先生におかれましては利益相反に関する申出がございまして、議事には参加するけれども議決への参加は遠慮いただくということになっております。それ以外の先生の御判断を伺いたいと思います。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。それでは、皆さんの御賛同を得られたようですので、承認を可として薬事分科会に報告させていただきます。

 それでは、議題3の「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物多様性の確保に関する法律第13条に基づく遺伝子組換え生物の第二種使用等の拡散防止措置の確認について(MS3 II -NYESO1-siTCR) 」、御審議をお願いいたします。事務局から説明をお願いします。

○機構 それでは、審議事項3と審議事項4について御説明します。本品目は、タカラバイオ株式会社より申請がなされているHLA-*02:01拘束性NY-ESO-1を特異的に認識するT細胞受容体(TCR) α 鎖及び ベータ 鎖、並びに内在性のTCR α 鎖及び ベータ 鎖遺伝子に干渉するsiRNAを発現し、Gibbon ape白血病ウイルスのEnvタンパク質をエンベロープに持つ非増殖性の遺伝子組換えモロニーマウス白血病ウイルス、MS3 II -NYESO1-siTCR の第二種使用確認申請です。資料3-14-1は、総合機構が作成した事前審査結果通知書、資料3-2と質料4-2は申請書となっております。質料3-2は、タカラバイオ株式会社の草津事業所で遺伝子治療等に使用するウイルスベクターであるMS3 II -NYESO1-siTCR を製造等するための申請書です。また、資料4-2は三重大学の無菌細胞調製施設でMS3 II -NYESO1-siTCR を用いて、患者のTリンパ球に目的の遺伝子を導入するための申請書です。各資料については、適宜御参照ください。

 以上の2品目について、まとめて御説明します。本品目の専門委員には、配布資料6にある5名の委員を指名いたしました。それでは、品目の概要を御説明します。本遺伝子組換えレトロウイルスの宿主は、モロニーマウス白血病ウイルスです。宿主に対する本遺伝子組換えウイルスの特性の違いは、主に3点あります。

 1点目が、ウイルスの増殖に必要なgag遺伝子、pol遺伝子、env遺伝子を欠いており、パッケージング細胞側から供給される遺伝子産物を用いてウイルス粒子を形成することはできるものの、自ら増殖する能力を欠き、特殊な細胞中でしか増殖できないことです。

 2点目が、NY-ESO-1という主要抗原に特異的なTCRの α 鎖遺伝子及び ベータ 鎖遺伝子、並びに内在性のTCRに対するsiRNA発現配列を有することです。

 3点目は、サルの白血病ウイルス由来のエンベロープタンパク質を産生するパッケージング細胞を用いることによって、ヒト、サル、イヌ等の細胞にも感染力を有することなどの特徴が挙げられます。

 供与核酸は、全塩基配列が明らかにされており、既知の有害塩基配列を含んでおらず、有害物質の産生性も知られておりません。増殖能を欠損したウイルスであるため、自然環境における生存能力は、宿主である野性型のウイルス以下であると考えております。遺伝子導入Tリンパ球の製造工程においては、ウイルスを含有する可能性のある廃液や使用機器は、高圧蒸気滅菌等により不活化処理を施されております。なお、最終製品に本遺伝子組換え生物が残存していないことが、本部会で示された「遺伝子導入細胞の製造に用いられた非増殖性遺伝子組換えウイルスの残存に関する考え方」に基づいて確認されております。

 機構における事前審査においては、使用区分について専門委員と協議した結果、遺伝子治療用医薬品又は遺伝子治療用医薬品の製造に用いられる非増殖性ウイルスであることから、感染性はあるが病原性を示す可能性は低いと考えられ、カテゴリー1とされております。また、生存能力試験の方法等についても専門委員と協議し、機構は本遺伝子組換え生物の第二種使用等に当たって、申請者より示された拡散防止措置を執ることは適切であると判断しております。

 以上2品目です。本遺伝子組換え生物を第二種使用等する際の拡散防止措置について、御審議のほどよろしくお願いします。

○大野部会長 これについては、資料3の審査と資料4の審査は、ほとんど同じ内容だということで、一緒に審議するということです。両者の違いは、場所が違うということだけです。ということで、両方一緒に御審議いただきたいと思いますが、これについて、まず病原性ですね。もともとは、マウスに悪性腫瘍を含む多様な疾患を発生させるウイルスだということですが、ヒトに対する病原性はないということです。これについて先生方、御意見ありますか。よろしいですか。では、有害物質の産生性ということで、今まで産生したという報告がないということですが、先生方のお考えはいかがでしょうか。

○岡野委員 最近のレトロウイルスベクターの進歩に必ずしもついていっていない可能性もあります。ナイーブな質問で恐縮なのですが、少なくともMoloney Leukemia Virusに関しては、インテグレーションサイトはランダムになると。しかも3 側のLTRからの、要するに転写が起きるため、下流にもしもオンコジーンが存在したら、オンコジーンの発現がアグリゲイトされる。これが、いわゆるアラン・フィッシャーのときのX連鎖重症複合免疫不全症に対する遺伝子治療の場合のleukemogenesisの一つのメカニズムであったと理解しています。恐らくそれを回避するために3 LTRのU3領域を他の配列に置換していると私は読んだのですが、レンチウイルスと違って、Moloney Leukemia Virusの場合に、3 側のLTRからの転写が起きるため、もしインテグレーションサイトの3 側にがん遺伝子があった場合は、ウイルスの中には有害なものはないけれど、ホストの遺伝子に対して働きかけて何らかのことをする可能性があります。それを防ぐコンストラクションをしているかどうかというのをお伺いしたいと思っています。

○大野部会長 事務局又は委員の先生方でも、御意見があったら伺いたいと思います。

○機構 特に先生のおっしゃられるようなコンストラクションの改変は、本製品については実施されておりません。ただし、先生のおっしゃられた発がん性のようなところは、我々も十分に留意しておりますので、治験の段階で、投与される細胞が異常増殖を示さないかということは注意して見ております。

○岡野委員 むしろ私よりウイルスに詳しい斎藤先生と谷先生にお伺いしたかったのですが、結局、ex vivoでのセルセラピーではなくて、フレッシュにTリンパ球にかけて、インテグレーションがランダムに起きるような条件下で患者に戻すということですね。だとすると、何らかのそういった危険性は議論すべきであって、これまでの臨床研究等々でそういうことは起きなかったというエビデンスがもしあれば、それはそれでいいことだと思うのですが、そこが少し気になりましたので。

○大野部会長 私が聞いたところだと、ウイルスは今までと同じだが、それに入れた抗原が違うのだということを伺ったのですけれども。

○岡野委員 そのウイルス自身に関しては、今までそういったことはなかったと。

○大野部会長 それについて実績があると伺っておりますが、それについてはいかがですか。

○機構 実際に本ウイルス自体は、今回、細胞の調製施設である三重大学で臨床研究等が実施されておりまして、ウイルス自体は臨床に応用されているものです。そこの臨床研究の中で、そういった御報告はないことが分かっております。

○岡野委員 もう1点よろしいですか。このマイクロRNA17を含む幾つかのクラスターを内蔵しているのですが、これは当然Tセルレセプター以外に標的を持つマイクロRNAですけれど、そちらの影響は何か検討されていますか。

○機構 本カルタヘナに関するこの申請書の中には、特にそういう記載をしているわけではありませんが、実際の治験に入る前の安全性の確認段階として、そういうsiRNAの影響がどうあるかというところについては、きちんと解析がなされております。実際にジーンチップ等で発現解析をしているところです。

○大野部会長 今までのところ、神田先生よろしいですか。

○神田委員 検討しているのは、この組換えレトロウイルスをカテゴリー1で製造していいかどうかということですね。この会議では、臨床試験をやって、安全かどうかという話ではなく、カテゴリー1の拡散防止措置を執ってこの組換えウイルスを作ることが妥当かどうかということを確認するのだと思います。

○岡野委員 拡散防止さえ、きっちりやっているという条件下ですね。それは問題ないと思います。ただ、それ以降のことについて若干疑問がありましたので申し上げたのです。

○谷委員 岡野委員の御懸念はもっともだと思います。大切なことは、このレトロウイルスベクターでどれくらいの患者さんがこれまでに治療されてきたかということだと思います。私の知る限りでは、まずレトロウイルスべクターの開発過程で、複製可能レトロウイルスベクターを用いた免疫低下サルでの非臨床試験で、10頭中3頭でT細胞リンパ腫が発生した報告が1992年になされ、複製不能レトロウイルスベクターの使用が義務づけられました。しかし、その後御承知の様に、後者を用いて遺伝子治療を実施されたX-SCID(X連鎖重症複合免疫不全症)患者さん21名中5名で、リンパ性白血病が発生し、原因は転写因子LMO2部位にレトロウイルスのベクターがインテグレーション(ゲノムへの挿入)され、同転写因子の活性化、遺伝子導入した共通ガンマ鎖リセプター遺伝子の発現によるT細胞の活性化、および幼児造血に由来する造血能の亢進等によって、白血病化が促進されたと判断されました。その後、慢性肉芽腫症患者でのMDS発症、Wiskott-Aldrich症候群患者でのMDSおよび白血病の発症を認めています。これに対応すべく、現在このレトロウイルスベクターにおきましては、SINベクターという、レトロウイルスベクターのプロモーターおよびエンハンサー部分を不活性化させ、安全性を高めた新しいベクターが導入され始めています。

 一方で、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症患者に対するレトロウイルスベクターを用いた遺伝子治療においては、現在までに42名に実施されていますが、白血病・MDS化の報告はありません。一般的に、導入遺伝子が対象とする造血幹細胞に強い増殖優位性を持たせることがなければ、白血病化等のリスクは低いものと考えられていますが、決してゼロではありません。したがって、こういう症例に関しては、継続的に遺伝子モニタリングが必要で、問題が発生した際の早期対応が必須である、というのが一般的な考え方となっていると認識しております。

 それと私からの質問ですが、最初のイントロダクションのときに、これは一種で臨床研究が実施されたとお聞きしたのですけれど、正しかったでしょうか。

○事務局 過去に第一種使用等として臨床研究が行われた実績があると。

○谷委員 一種で行われたのですね。そのときは全然患者さんとの隔離はなかったのでしょうか。

○機構 厚生科学審議会で御審議いただいた一種規程で臨床研究はされています。

○谷委員 今回は治験だから二種に、という意味ですか。

○機構 これは製造の封じ込めですので、臨床使用ではなくて、この二種の確認申請に基づいて、このウイルスを作ってよろしいかという部分の確認です。したがって臨床使用をまた一種で、また別途ということです。

○谷委員 ありがとうございました。

○機構 事務局から少し補足したいと思います。この二種申請は、一つはウイルスの製造、もう一つはウイルスを患者の細胞に感染させて、その細胞をエクスパンドするという、患者に投与される直前の状態までエクスパンドする、その二つが二種の申請として別々に申請されております。その中でウイルスの生存性等について評価をした結果、この新しく再生医療等の部会になる前の生物由来技術部会で了承いただいたように、その中で第二種使用等としてウイルスを感染させて細胞を作製した際に、最終的な細胞の中にはもう増殖感染性のあるウイルスは残っていない、プロウイルスとしては入っているけれども、そういう感染性のあるウイルスは残っていないという場合は、その最終製品は既に遺伝子組換え生物は含まないものと見なして、それを患者に投与する部分については、第一種使用規程は必要としないという整理で、三重大学から治験届が提出されております。

○谷委員 その場合、結局ウイルスが残存していなければ良くて、例えば対象とする細胞ゲノムに遺伝子が組み込まれ、発がん性等の危険性が増しているということは、特にこの会での議論の対象にならないという理解でよろしいですか。

○機構 ヒトの細胞は生物として見なさないということが、この法律の中で定められておりますので、そういう細胞が遺伝子改変されたことに関して、その細胞自体は、単独の生物として環境中で生存することはできませんので、それについては特にこの法の対象にはなりません。

○谷委員 ありがとうございました。

○大野部会長 ほかの先生方、何か御意見ありますか。

○岡野委員 この場での議論ではないということはよく分かりました。もし患者に投与する場合は、何らかの議論は必要かもしれないと議事録に残しておいていただくとありがたいと思います。ただ、今回の議論の対象ではないというわけですね。私個人としては、今回はお認めしたいと思っております。

○大野部会長 私が病原性について御審議いただくということで、意見を求めましたので、そういう方向に行ってしまいましたが、それも踏まえて御議論いただければありがたいと思います。

 それでは、この拡散防止措置について御意見を伺いたいと思います。作業区域や保管場所は区別されている、そういう隔離施設内で使用しているということ。不活化された後に廃棄されるということ。それから、担当者については、きちんと教育をするということが書いてあったと思います。そのほかのことも含めて、拡散防止措置が適切であるかどうかについて、先生方から御意見を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。作業区域も外界や他の部屋と適切に区分されていて、差圧などもきちんと設計されていると思いました。いかがでしょうか。特にその辺はよろしいですか。

 ほかのところで、核酸を水平伝達する可能性などはいかがでしょうか。増殖に必要な遺伝子を欠損しているので、通常の細胞の中では増殖できないということがありましたが、そういう可能性についてはいかがでしょうか。

 全体的に先生方から御意見があったら伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。特に追加の御意見、御質問がないということでしたら、この資料3-14-1での審議事項、両方ともタカラバイオですね。実験施設は一つはタカラバイオ、もう一つは三重大学ということですが、その二つについて、この拡散防止措置が先生方によって確認されたとしてよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。特に御異議がないようですので、本品目についての拡散防止措置は確認されたということにいたしまして、薬事分科会に報告させていただきます。

 それでは、次は報告事項です。報告事項について、PMDAから説明をお願いいたします。

○機構 資料5を御覧ください。「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律第13条に基づく遺伝子組換え生物の第二種使用等をする間に執るべき拡散防止措置の確認を行った品目について」、御説明いたします。前回の生物由来技術部会での御報告以降、平成26年6月から9月までの期間に、厚生労働大臣の第二種使用等の確認を行ったものを表でまとめております。全部で12点、総合機構において専門委員と協議をした上で、いずれの遺伝子組換え生物についても、使用区分はGILSP又はGILSP相当であり、執られる拡散防止措置は適切であると判断したものです。資料5については以上です。

○大野部会長 ただ今の報告について、先生方から御質問、御意見ありますか。よろしいでしょうか。それでは、特に御意見がないようですので、報告していただいた事項については、先生方に確認をいただいたということにいたします。本日の議題は以上ですが、事務局から何か連絡事項はありますか。

○事務局 次回の部会については、また改めて日程調整した上で御連絡したいと思います。よろしくお願いします。

○大野部会長 それでは、本日はこれで終了させていただきます。先生方、御協力どうもありがとうございました。


(了)

連絡先:医薬食品局 医療機器・再生医療等製品担当参事官室 課長補佐 堀内(内線4226)

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