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2014年11月27日 第5回 たばこの健康影響評価専門委員会(議事録)
○日時
平成26年11月27日(木)10:00~12:00
○場所
新橋貸会議室 田中田村町ビル8E
○議題
(1)電子たばこの健康影響について
(2)その他
○議事
○小野補佐 定刻になりましたので、ただいまから第5回「たばこの健康影響評価専門委員会」を開催いたします。
本日は、お忙しい中、御出席いただき、ありがとうございます。
本日、山海委員におかれましては、欠席との御連絡を受けております。
まず、資料の確認をさせていただきます。お手元の資料をごらんください。
上から座席図、議事次第
資料1 望月委員提出資料
資料2 欅田委員提出資料
参考資料1 たばこの健康影響評価専門委員会の設置について
参考資料2 電子ニコチン送達システム WHO報告書
資料は以上でございますが、もしお手元にないものあるいは落丁等ございましたら、事務局までお申しつけください。よろしいでしょうか。
そうしましたら、頭撮り、撮影のほうはここまでとさせていただきます。
(報道関係者退室)
○小野補佐 これ以降の進行につきましては、谷川委員長、よろしくお願い申し上げます。
○谷川委員長 皆さん、おはようございます。谷川でございます。
それでは、早速、議題(1)「電子たばこの健康影響について」議論をしたいと思います。
本日は、まず望月委員と欅田委員より資料を説明していただきまして、その後、総合的に議論を進めたいと思っております。
まず、資料1につきまして、望月委員より説明をよろしくお願いします。
○望月委員 皆さん、おはようございます。
ほぼ1年ぶりの会議で、前回、昨年の12月12日だったと思いますけれども、ちょうどその会議の日に日本のJTから「Snus」という新しいたばこ製品が出るということで、会議に間に合わせようと思ってネットにアクセスしたら、そのときは間に合わなかったということで、本日、今回の討議のスコープに入るのではないかと思いますので、その製品、その他、御説明の中でも御紹介します幾つかの電子たばこ製品もこちらにお持ちしました。
といいますのも、やはり前回も「Snus」という新しい製品について見たことがない委員もいらっしゃったので、討議の対象がどういうものなのかとイメージを持っていただこうということなのですけれども、この中で、電子たばこを見たこともない、実際に手にとったことがないという方はいらっしゃいますか。
○蒲生委員 電子たばこはありません。
○望月委員 では、座長のほうから後でぜひこういうものだと。お話の中で御説明します。
本日のタイトルは「脱タバコ社会における電子タバコ登場の意味と攻防」とちょっと仰々しいタイトルなのですけれども、このタイトルバックに使いましたのが、よく見るペンタイプの電子たばこ、こんないろんなきれいな色のラインアップです。これは一つの例でありまして、実はもっとバリエーションがある製品群が登場しているということの意味と、どんなことが国際的に共有されて、それから、この日本でどういうことを議論すべきかという観点からお話をしようと思っています。
1枚目の下にありますように「禁煙へのフォースが生み出した新たな方向性」について少し解説を加えますと、今まで喫煙ということを対象にして、喫煙問題をどうするか、あるいは喫煙による健康影響が明らかになって、それに対してどうやって抑制するかということで、いわゆるたばこ対策が進んできたのが日本も含めて多くの国の方向性であったと思います。
これだけ有害なもの、致死性のあるもの、依存性のあるものに対して、それを適切な方策によって抑制する、あるいは管理する、時には禁止するという方向に動いていったわけですが、日本特有の現象として、途中で分煙という概念が出てきて、これは大和先生の御専門分野ですけれども、この是非ということが出てきます。これは本題から外れるので、あえて詳述はしませんけれども、その中で生まれてきたのが、前回、前々回で討議の対象にした、煙のないもの、無煙たばこという製品群で、無煙という方向に社会が向かうのと同時にそこで需要が創出されて、煙の少ないあるいは煙の出ないたばこ群が出てきました。これは、やはり禁煙へのフォースという、立ち向かうエネルギーに対して社会や産業が対応してきた結果ではないのかと思います。
その中で、今度は煙を対象にしているので、煙でないものということで蒸気、これも括弧つきの蒸気なのですけれども、こういったものが出てきて、その間に位置するのが、たばこであるけれども、燃やさないタイプの2つの製品、JTのPloomとフィリップモリスのiQOSというものが出てきます。日本では、電子式のたばこ群あるいはたばこに類したものはこの2つ、両者が存在しているので、ここで一くくりにしたいと思っています。
スライドの次のページですけれども、これも前回御紹介した製品あるいは製品群のスペクトラムということで、私なりにまとめたものです。
たばこを吸う人たちというのは、結局、主としてニコチンなどの有効成分というものを求めて使用するわけですけれども、その抽出方式、あるいは英語で言えばdeliver、送達様式というものによって分けてみました。これは前回御説明したので、繰り返しになりますが、つけ加えたものというのは、私、バックグラウンドは薬理もありますので、吸収の経路です。経口・経鼻吸収の製品群、それからアメリカでは一時的に出たようですけれども、経皮吸収というものもあるし、一番多くを占めるのが経肺吸収です。今回対象にすべき、加熱によって有効成分を抽出して体の中にデリバーする、そういう製品群がどこをターゲットにしているかというと肺をターゲットにしています。肺胞の表面積というのは、いろいろ説はありますけれども、60平方メートルから80平方メートルと非常に広い吸収面積を持つので、そこをターゲットにして有効成分を早く的確に体の中に届けようというような、いわばドラッグデリバリーシステムのような形でこういう製品が発展してきました。
日本でたばこは、たばこ事業法で管理されています。その含有物というのはたばこあるいはニコチンですけれども、そうではなく、たばこを含まないがニコチンのあるものが出ています。例えば、ここには書いていませんが、ニコチン製剤など、ニコチンを体の中に医薬品として届けるようなものは薬事法であるし、そもそもニコチンというのは毒劇法の対象であるというくくりです。それから、どれも含まないようなものが今、出てきているというような、この辺を私たちは対象にしています。これは極めて21世紀的な製品の登場です。我々自身もこれに対して十分な知識を持ち合わせていないのと同様に、一方で、今、インターネットの社会ですので、これも21世紀型なのですけれども、あっという間に電脳空間を駆けめぐってさまざまな情報が流通して、それによって消費者は今までの流通チャンネルを通らずにじかに入手できるような状況が生まれています。今までのたばこ製品あるいはたばこ産業というのは厳格にコントロールされた状況である一方で、この電子たばこ類というものはそういう枠組みから全く外れたところに登場しているということが特徴ではないかと思います。
4ページですけれども、電子たばこの進化というふうにまとめてみました。第1世代というのは、たばこの名残を持っていて、たばこに似たシガレットタイプが出てきています。第2世代のペン型は、ちょうど筆箱の中に入るようなものや、いろんなラインアップが出てきています。今度は第3世代ということで、タンク型という、バッテリーが大きくなったり、その中にリキッドという液体を幾らでも詰めかえることができるようなものが出てきています。このように最初のシガレットというたばこの形あるいは制約を外れれば、無限の進化というか変化の可能性が出てきている製品群になっています。
あえて副題として「長く強く多く」というのは、たばこだと一服吸うのに燃え切ってしまうので、そこでおしまいになるのですけれども、それが幾らでも詰めかえ可能であり、バッテリーのパワーを上げれば、出てくる蒸気といいますか、排出される気体が幾らでもたくさんターボエンジンのように出すことができます。フレーバーもカクテルのように多く出てくるということです。最近まとめられた報告によりますと、その段階で少なくとも466銘柄、7,000種以上のフレーバーがあって、1カ月当たりいろんな種類がどんどん登場しているというような状況です。やはり消費者というのは好奇心の強い人たちがいるので、新しいものをどんどん求めていくし、あるいは産業側も、供給側と言ったほうがいいと思いますが、それに対していろいろなものを登場させているというような非常に複雑なものです。その中で、とうとう大麻味(E-Njoint)というのが出てしまって、jointというのが大麻のスラングのようなのですけれども、これは完全に合法だとネット上うたっていましたけれども、カンナビスの主成分でテトラヒドロカンナビノールを含むみたいなことが書いてあるので、こういうふうになるとこのリキッドの果てには、いわゆるドラッグのほうまでやすやすとバリアを超えるのではないかと思います。
5ページ、6ページのスライドで電子たばこの誕生について少し御説明します。今、出回っているタイプは2004年に中国のHon Likさんが開発したと言われていますけれども、実は1965年、1979年にもそれぞれパテントとか報告がなされているようです。ただ、時代が早過ぎて、まだシガレット優勢の時代に新しい製品というのは余り商業化されたり実用化されませんでした。ところが、21世紀の今、我々が目にしているようなものの原型がなぜここまで広まっているかといいますと、冒頭申し上げたように、たばこ製品をターゲットにしていろいろな規制の枠組み、あるいは知識、研究が進んできたのですけれども、ちょうどWHOのたばこ規制枠組条約(FCTC)が2003年に策定されて、日本は2004年に批准して条約として発効したのが2005年です。世界中の国々がたばこに対する規制を強めていく、そういうさなかに、タイトルにありますように、脱たばこ社会に世界中が向かっていく中に新しい脱たばこ製品として登場してマーケティングされていったのではないかと思います。
スライドナンバーですと7ページですが、では、どのぐらいふえているかというと、先ほども言ったように、いろいろな流通経路があるので、あくまでも推定値ということなのですけれども、電子たばこというのは爆発的にふえています。2008年には20億円ぐらいの市場だったのが、ことしは3,000億円ぐらいの市場になっていて、それが今後、これはプロジェクションですけれども、10兆円ぐらいに成長するのではないかという予測も立てられています。また一方で、アメリカでは日本よりも先に電子たばこの流行が始まっているので、10年ぐらいで燃焼式のものと置きかわるのではないかという予測もされているようです。
そのように、アメリカやイギリスでは実際に成人あるいは青少年を対象にしてどのぐらい使われているかという調査がきちんとされておりますので、それを少し御紹介します。8ページにありますのが、イギリスとアメリカの喫煙者あるいは前喫煙者、禁煙した人たちの中でどのぐらい電子たばこが使われているかという調査です。たばこを吸わない人たちの間でも調査されているのですけれども、非喫煙者の電子たばこ経験者はほとんどいなくて1%前後です。一方で、喫煙者における電子たばこ経験者は非常に多くて、イギリスのことしの調査では、これはever useですので一度でもということなので少し広目ですが、半分ぐらいの人たちが電子たばこを使ったことがある。アメリカの調査ですと、去年ですが、同様に36.5%ですので、押しなべていえば英米では喫煙者の3分の1から半分ぐらいが電子たばこを経験したことがある。この人たちは、たばこを吸いながら電子たばこを使っているということになりますので、二重使用です。前回のSnusでも問題になったように、いわゆるたばこと新しい製品を両方使う、両刀遣いのような人たちが実際に出てきます。一応、産業側は、これは禁煙にいいのだというようなクレームを出しているのですけれども、実際にこの人たちは禁煙のために使ったかもしれませんけれども、両刀遣いで、たばこはその後やめていないということです。
もう1つの懸念は、これらは新しい製品群なので、ほとんどの国で青少年に対する規制がされていません。特にペン型というのはティーンエージャーの筆箱にもぴったりという感じで、スワロフスキーでデコというものもあるようです。子供たちは、むしろ煙を出すたばこというものはダサいというような感覚を持っているのかもしれないのですが、実際にアメリカの青少年における電子たばこの使用というものがこれだけふえていて、ever useでいいますと高校生の2割ぐらいが実際に使ったことがある。使用率でいいますと、まだ数は少ないのですけれども、2011年の1.5%から4.5%まで、3倍増となっています。先ほどの市場全体の規模の爆発的な増加と同様に、成人でも青少年でも同様にふえているということが問題だと思います。
ふえているというのは、実際のトータルなたばこ市場に比べればまだ微々たるとはいっても、この間のエボラ出血熱でも流行の兆しというものはやはり看過すべきではないし、それが今後どのようなカーブを描いていくのか、指数関数的にふえるのか、ここで頭打ちになるのかどうなのかということは今後の我々の取り組み次第になってくると思います。流行の先駆けというものをいかに捉えるかというのは非常に重要なのですけれども、残念ながら、日本ではまだ包括的な調査はなされていないので、恐らく今後求められてくると思います。
今、たばことしては扱われていないので、たばこ広告とそっくりな電子たばこの広告というのがあふれているという例ですが、これはアメリカのNGOの「Campaign for Tobacco-Free Kids」のホームページから拝借したのですけれども、かつて我々が経験して今ほとんど見なくなったようなたばこ製品で展開されたような広告宣伝活動がされているという、ごく一例です。
次に、11ページですが、実はこの間ニュースで流れましたけれども、オックスフォード英語辞典のことしの単語というのに「vape」あるいは「vaping」という言葉が選ばれました。特に「vape」というのは、この資料1の5ページの電子たばこの誕生のところのDr. Norman Jacobsonが「smoking」ではなくて「vaping」という言葉を提唱していて、その「vaping」なのですけれども、「vape」という蒸気あるいは排出するという行為に「ing」をつけて「vaping」というふうに言われて、その言葉がはやっています。つまり「smoke」や「smoking」を「vape」や「vaping」という言葉に置きかえて、全く新しいはやりものとして広がっているということがうかがい知れると思います。
Google Trendsという機能を使いますと、検索インテレストという、ここに書いてありますけれども、検索ボリュームの最大値割る各時点の検索ボリュームという、このキーワードがどのぐらい検索されているかという相対値なのですが、それで見ますと、このように市場の爆発的な成長と使用率がふえていることと同様に、グーグルでの検索が非常にふえているということもうかがい知れると思います。
実は、10月にWHOのたばこ規制枠組条約の第6回締約国会議がモスクワでありまして、その中でも、いわゆる電子たばこについて議論されました。海外では、先ほどの私のマトリックスにも書いたように、有効成分である、ターゲット成分であるニコチンをデリバーするシステムとして、新しい名称としてENDS(Electronic Nicotine Delivery Systems)という言葉が使われるようになってきています。これを訳すと電子ニコチン送達システムあるいは電子式ニコチン送達システムとなるのだと思いますが、日本で出回っているニコチンが入っていないリキッド、あるいはニコチンの入っているリキッドというものもあわせて市場では混在しているので、非ニコチンのNon-Nicotine Delivery Systemsというものもあわせて対象にして議論をしました。そのときに、実際に既にたくさん使われているような国々では政府当局が規制をしていることもあるということで、WHOが最近調査して、そのまとめが報告されたわけです。規制方法として国によっては即時販売禁止とか、未成年に禁止という措置をとっているものもあるのですけれども、例えば消費財としての規制、ニコチン製剤と同じような医薬品としての規制、あるいはたばこ製品として規制している国、あるいは何も規制していない国など、今いろいろあるということが報告されました。
これを条約の中でどう扱うかということだったのですけれども、この条約そのものがたばこコントロールですので、これは一体たばこなのかどうなのかという議論ももちろんありました。しかし、実際にたばこのような使われ方をしているし、たばこ産業がこういったものを出しているという現状もあるので、一応スコープの中に入れて議論した結果が次のページです。
スライド番号の13ページです。この条約の締約国会議で、今回の資料にもつけておりますが、WHOの報告をもとに議論されたのですけれども、少なくとも締約国に対しては以下のような対策を検討することを求めるというふうに決議されました。といいますのも、FCTCとしてENDSあるいはENNDS群、簡便のため、電子たばこ群と言いますけれども、それを条約の中できっちり規制するかどうかというのはまだペンディングの部分もありますし、実際に規制をやられている国々もあるし、いろいろな健康被害あるいは事故の事例もあるので、各国が対策を検討するように求めたのがこの4つです。
まず、特に弱者に注意を払いつつ、これは非常に感受性の高い集団、例えば子供や胎児、あるいは人によっては過敏症の方たちもいますし、あるいは産業のいろいろなマーケティングに対してセンシティブな集団もいるという意味のセンシティブな集団に注意を払いつつ、非喫煙者と青少年がENDS/ENNDSを開始しないように防止する。では、日本ではどうなのかというと、たばこについては未成年者喫煙禁止法がありますし、たばこについてはたばこ事業法の中で広告・販促規制があるので、そういうことを検討するのかということで注を入れました。
2番目は、使用者の潜在的な健康リスクをできる限り小さくし、非使用者が排気(emission)にさらされないように守る。日本で言えば、いわゆる受動喫煙防止の取り組みを想起するわけですけれども、それ以前に、使用者が新しい製品群をどう使用してどういう健康影響があるのか、まだ未知の部分もあるので、潜在的なそういうものを小さくする。大きなくくりで言えば、健康増進法もそうですし、労働安全衛生法あるいは各種の条例、ニコチンが含まれていれば毒劇法ですし、あるいは薬事法、これは電子式のデバイスですので、電安法なども対象になるのではないか。
3番目は、証明されていない健康上の効能、これが禁煙補助に効くなどというクレームもたくさんあるのですけれども、実は証明されていない。これについて主張されることを防ぐ。ニコチンが入っているようなものであれば、毒劇法、薬事法の対象ですし、景表法などもかかってくるのではないか。
4番目は、たばこでもそうだったように、その産業の利権というものがたばこ規制活動を阻害してきたという事例があるので、特にFCTCの5.3条、あるいは政策決定の場に既得権者の意見をどこまで入れるか入れないかという議論、それから今たくさんの研究がなされて、一部は産業からの研究助成がなされているということと、もう1つは、たばこについて積み上げられてきたたくさんの規制活動が、新たな製品が入ることによって、片方を認めると片方の規制を阻害してしまうというようなことも含めて、この4つの目的を達成するために検討せよということで条約の締約国会議が終了しました。ですので、今回のタイミングもそれに合わせたものではないかと推察するわけです。
次に、今、各国がどういう規制をされているのか、まだ十分な情報ではないのですけれども、少し古いものもありますが、14ページは、国会図書館のほうで電子たばこに係る規制と課題ということでまとめられておりましたので、それを地図化したものです。実際にはこの後、規制が進んでいるものもあるので。若干情報は古いのですけれども、ヨーロッパでは、ことし改正されたたばこ製品指令の中で電子たばこを、ニコチン入りのものですけれども、視野に入れる。アメリカのFDAもたばこ規制法というものを持っていますけれども、そこでさらなるたばこ製品として見るというような状況なので、今、規制が強化されつつあるという進行形で書いています。次回、できればこれをアップデートしたものを御提供したいと思っています。
15ページですけれども、いろいろ調べているうちに日本でこのような電子たばこのリキッドを飲んで急性ニコチン中毒になってしまったという事例が報告されておりました。それと関連して、アメリカのCDCの中毒センターへのコールが月に215件にもなっています。日本にも同様に日本中毒センターとか国民生活センターなどの公的な機関がありますので、そこでのデータがもし事務局で入手できるようでしたらば、ぜひお願いしたいところですけれども、このようなリキッドを飲んでしまったというような事例、あるいは電池が爆発したような事例も起こっているようです。
そして、このようなものが入ってきたことに対して、欅田先生からも御報告があると思いますが、実は国は既にアクションを起こしてきたということが16ページに書かれています。まず、国民生活センターですけれども、これは消費者庁所管の独立行政法人で、この中で、当時出回っていた、タイプとしては第1世代のものだと思いますけれども、それがやめられなくなった、ニコチンが入っているのではないかというような消費者からの問い合わせに対して調べてみた結果、実はニコチンが入っていたものがあったり、充電器のPSEマークがないようなものがあったり、それに対して消費者庁長官から、厚生労働大臣、各関係部局にいろいろな通知が出されていって、一つのアクションが完了しました。
ところが、この後、平成22年からことしの間に世界中あるいは日本でも次の世代としてふえていっています。それに対して、その経緯はよく存じませんけれども、2本、質問主意書というものが出てきています。昨今の電子たばこの市場拡大、あるいはネットで検索しますとたくさんの個人輸入代行業者があったり、一応ニコチン入りではないと断りつつも実店舗もふえているという状況があって、これに対しての日本での規制枠組みの検討が求められているようです。それから、JTが最近、イギリスの電子たばこ会社を買収したということなので、これが今後どうなるかというような質問主意書が出ておりました。
17ページは、今まで電子たばこと言っていましたけれども、その定義はどうなのかということを、WHO、EU、FDA、財務省の資料などについてまとめたものです。このように確たる定義というのは統一されていないのですけれども、共通しているのは、電子たばこと言うからには今までのたばことどこが違うかというと、電気でオペレーションするというようなところ、中身についていうと有効成分が溶液に溶かされているところが共通で、発生するものが煙のようなもので、燃焼していないので煙と言うかどうかは別として、そういったものを発生させて吸う。溶剤としてはプロピレングリコール、グリセリンが入っていて、主として使用者が最も求めるのはニコチン、あるいはたくさんのフレーバーが混在したようなものが定義の中に入っています。出てくるものに関していうと、英語では「vapour」という言葉が主流なのですけれども、「emission」と言ってみたり「aerosol」、日本では電子たばこのメーカーは蒸気と言ったりしていますけれども、煙のようなものという視覚的な想起もされますので、こういった関連した用語が混在しています。
一番の問題は、電子たばこのネット上のクレームの中で、これは煙ではなくて水蒸気ですと言っているのですが、これは大きな誤りであって、もともとの原料は水だけではないので水蒸気ではありません。しかし、一般の消費者の耳に届くものとして、蒸気と言うと蒸気機関車、あるいは蒸気イコール水蒸気と錯覚してしまうというところが、用語の混乱、あるいは意図的な混乱を起こしているのではないかとこの辺で考えられますので、今後この会議あるいは厚労省あるいは国の中でも、新たな製品群を検討するに当たって何らかのくくりというものが共通認識として必要なのではないかと思いました。
19ページ、20ページです。では、何が発生しているのか。何で蒸気がたばこの煙のように見えるのか。電子たばこを使用する人たちは、動画で見ると、物すごい量の煙のようなものをぼっと吐き出して、恐らくそれが視覚的あるいは体内的にも快感なのかなと思うのですけれども、これがなぜたばこの煙のように見えるか、ちょっと調べてみましたら、ほとんどシガレットの煙と同様の粒径分布で、ニコチン量が多いほどピークの粒子濃度が高いという研究もありました。結局、光が乱反射して白く見える。全ての光を反射するような粒子群がそこに発生していくのではないかと思っています。
それから、非常に細かい超微細粒子がピークとして出てきますので、これは肺の奥まで容易に到達して、肺胞を通して全身に循環するということで、いろいろな研究成果があったのですけれども、この報告の中では、7割から8割ぐらいが呼出されて、残りが肺に沈着する。もっと多く沈着するという研究もありました。この部分についても恐らくデバイスそのものの機能によって違うのではないかと思います。
今度は、その中に何が入っているのか、先ほど申し上げたように、これは単なる水蒸気ではないという証左なのですけれども、1つのレビューがありましたので御紹介いたします。気体のようなものの成分分析というのは非常に難しくて、あるスタンダードのものに比べてそれが入っているかどうかということを丹念に分析した結果だと思いますけれども、原料としてのプロピレングリコールやグリセリンだけでなしにニコチンが検出されたり、ここに書いてあるように、タバコ特異的ニトロサミン群が、微量ですけれども、入っています。これはたばこでないはずなのに、こういったものが入っているのはなぜかという疑問も出てきます。それから、前回、前々回でFDAがHPHC(Harmful and Potentially Harmful Constituents)といってリストに挙げた、有害成分リストに入っているようなものも多数含まれておりました。これの由来、あるいはフレーバーというような香料群がたくさんあるのですけれども、こういったものがたくさん入っているので、電子たばこから発生している蒸気のように見えるものも単純なものではないということがおわかりになるのではないかと思います。
このうちの一部については欅田先生のほうで詳細な分析をされていますので、後ほど御報告があるのではないかと思います。特にアセトアルデヒドとかホルムアルデヒドというのは、非常に有害性、発がん性も高いもので、こういったものが入っているということは十分警鐘を鳴らすべきでありますし、重金属類も入っています。
21ページです。こういったものがたくさん入っているとして、ではこの毒性をどう評価するかということなのですが、これが実はたばこと同様に非常に難しい。測定方法とか測定条件によって発生の仕方は非常に異なりますし、何より対象としている製品の種類が多い、あるいは液体の種類が多いということなので、今後、毒性評価を物質のレベルで行うについては、それをどういうふうに利用者が知っているか、あるいは測定方法の標準化などが必要になってくるのではないかと思います。
今度はそれを吸った健康影響なのですけれども、これのみを吸っている人たちを長期間追跡したような研究はまだないので、まだまだ登場して日が浅いということもありまして、疫学的な研究の限界もありながら、症例報告とか急性影響については大分まとまってきておりますので、そのごく一部を御紹介いたします。22ページですけれども、原料であるプロピレングリコールやグリセリンそのものの影響として目や呼吸器への刺激、あるいは長期反復吸入というのは産業現場で起こることなのですけれども、中枢神経系や行動・脾臓などへの影響があります。
これをそのままでなしに、加熱して非常に微細な粒子群の霧のようにしてしまうということなので、この過程でプロピレングリコールが酸化されてプロピレンオキサイドになって、これは、WHOの発がん性評価を行っている国際がん研究機関(IARC)の評価によりますと2Bという発がん物質のランクになっています。それから、グリセロールがアクロレインという物質に変化する中で上部呼吸気道刺激が発生します。
デバイスがリチウム電池などであるので、これが爆発したり火事になったりというようなこともあります。
まだ数例の症例報告レベルなのですけれども、別の報告で集めてみますと、好酸球性の肺炎とか、リポイド肺炎、これは非常に珍しい肺炎なのですけれども、そういったものも起こってくるということが報告されております。臨床現場で特に呼吸器の先生方が注意をして症例を集めてくると意外と集まってくるのかもしれません。
この間、実は職場で1つの電子たばこをある外来者が試し吸いをしてみたのですけれども、それだけで本当に張りつくような、何とも言えない呼吸器への刺激というものがまさに受動喫煙状態で起こって、やはり相当細かいものが発生していて、それは目に見えるだけでなしに、目に見えにくいものの中にさまざまな刺激物質が入っています。
それから、プロピレングリコールが反復吸入されると末梢気道の閉塞が起こります。
先ほど言ったように、長期影響はまだ観察期間がまだ不足しています。
今まで何度か申し上げましたように、禁煙への有効性についてはまだ証明されていないという状況です。
23ページは、今までいろいろレビューしてきた電子たばこを今後日本でどう考えるかということについて少し整理してみました。いわゆるたばこですと、たばこ事業法や未成年者喫煙禁止法あるいは健康増進法などの中で対象にして取り組みがされているところですが、たばこ事業法の製造たばこの定義は「葉たばこを原料の全部又は一部とし」ということになっています。では、いわゆる電子たばこはここに該当するのかどうかといったときに、葉たばこを原料と言えればもしかしてあり得るのではないか、該当するのではないか。そこで、その証左となるのが、痕跡量のタバコ特異的ニトロサミンが検出されると葉たばこ由来であるというふうに言えるのではないか。
もう1つ、たばこ事業法の中に製造たばこ代用品という項目がありまして、これは製造たばこ以外のものであって喫煙用に供されるものを対象にしています。大麻、麻薬、あへん、医薬品、医薬部外品を除くとありますので、もし日本における電子たばこというものがこれらでなければ、これが一番該当し得るのではないかと思います。
未成年者喫煙禁止法のたばこなのですけれども、社会通念上の嗜好品としてのたばこ製品を対象にしているので、たばこ事業法との関係でそれに該当するか否かによって、子供たちの使用に対してこの規制がかかるかどうかは考慮されると思います。
厚生労働省が持っている健康増進法なのですけれども、質問主意書の回答の中で、たばこがその使用により云々というふうに定義されておりますので、有害な煙が発生するかということがもしかしてポイントになるのではないかと思います。これは煙の定義いかんでここの中に入るかどうかということが検討の対象になるのではないかと思います。これは後で御議論いただきたいと思います。
24ページです。では、電子たばこというものは健康増進法第25条のたばこに当てはまるかといったときに、この定義を分解してみるとマル1からマル4になりますが、マル1のその使用により人体に有害な煙が発生するかどうかは、今回、御提示したのはごく一部の健康影響に対しての情報ですけれども、今後、集積されるのではないかと思います。
マル2のそれを吸入するというのは、まさに使用形態が吸入ですので、当てはまります。
マル3の国民の健康の増進を図る観点からその煙を吸入することが望ましくないかどうかというのは、これは判断が必要なので、検討対象になるであろうと思います。
マル4のたばこの定義に当てはまると多くの人が認識するかどうかというと、電子たばこというのは、私の資料の中で「21世紀型タバコ製品&タバコ類似製品」というふうにくくったことと、電子たばこ産業そのものがそういうふうに認識しているし、ネーミングもそうではないかということなので、多くの人が認識するかどうかということが論点になるかと思います。
先ほどのGoogle Trendsを使って、では日本で「電子タバコ」がどのぐらい検索対象になっているかを調べてみたのですけれども、25ページをごらんください。日本ではたばこそのものも平仮名だったり片仮名だったりするので、混在しているのですけれども、非常におもしろいことに、過去のピーク時、ちょうど消費者庁などのアクションが行われたころには「電子たばこ」と「電子タバコ」がほぼ同じようなピークを持っていたのですが、最近は片仮名がふえています。いずれにしても「電子たばこ」とか「電子タバコ」で検索している人たちが非常に多いということは、やはりたばこという概念の中で、用語上ですけれども、多くの人たちが認識しているということではないかと思います。
地域別人気度というのもわかるのですけれども、電子たばこの地域別人気度で見ると名古屋市がなぜかトップで、何でかなと考えてみたのですが、ごく最近、フィリップモリスが新しい電子式のたばこ製品を上市したから、そのせいかなというふうに類推しています。
これらをいろいろ考えて見ますと、試案というよりも私案になるのですけれども、暫定的に今回の検討会の中でのスコープとしては「内容物を電気的に熱することにより発生させた煙を吸入することに用いる製品及び当該内容物」と言ってもいいのではないかと思っています。今までの電子たばこの定義の中で溶液という言葉が頻回に出てきたのですけれども、実際に今、日本では2つのたばこ会社が投入している電子的なものは必ずしも液体のみではないので、内容物というふうに言ったほうが広く捉えられるのではないかと思います。
27ページですが、Jack Henningfieldという、世界的な依存薬物、特にニコチン依存の専門家なのですけれども、彼がたばこ産業を対象にして言っていることなのですが、「より依存の高い製品を作り、タバコの消費開始を増やすために、行動科学はタバコ産業に乗っ取られている」。逆に、公衆衛生サイドが余り行動科学というような研究分野を発展させてきていなかったと言いかえられるかもしれないのですけれども、その内的因子と外的因子というものについては、産業側は非常に広範に研究してマーケティングをしている。これらのたばこ産業みずから、今、とにかく脱たばこ領域、特にnon-smokeとかnon — tobacooとかnext-cigarettsとか、あるいはJTに至ってはemerging productというふうに新たな市場に入ろうとしてきているわけですけれども、このような行動科学をよく熟知しているたばこ産業が電子式の領域に入ってきたときに今後どういう展開がなされるのか、注意すべきだと思います。
29ページですが、実際にたばこ会社が、いわゆるvapourブランドというものを幾つか持っております。全ての主要会社が参入を始めているということが明らかになっていると思います。特に丸をつけたフィリップモリスのiQOSとJTのPloomは、いわゆる電子たばこよりはたばこ製品として市場に出ておりますので、くくっているわけです。
30ページの「Heat-not-burn」、これはフィリップモリスが言っているので拝借しておりますけれども、私の最初のマトリックスの中でも、加熱式で燃焼しないというような方式を用いて2つの製品群があります。1つがJTのPloomであるし、フィリップモリスからはiQOSが、10月に名古屋市から全国展開されるであろう、そういったものが出てきています。Ploom は、オーストリア、日本、韓国、イタリアもですが、これらの国々は比較的たばこ規制が緩い国で、オーストリアはヨーロッパ諸国の中のたばこ対策スケールでは最下位という、そういう市場に入ってきて、やはりたばこの規制が緩いようなところに入ってくるというのは喜ばしいことではないというか、公衆衛生サイドとしてはテストされているということで大きく懸念を示すところです。
31ページ、32ページで、今後のことなのですが、今まで述べてきたことをまとめまして、これらの製品群の問題点を、製品の設計から、それが流通されて人の体の中に入って、その後ヘルスアウトカムという健康影響まで1つのラインに乗せてみました。
まず最初に申し上げたように、いわゆるたばこというさまざまな制約、製品のデザインや概念、その制約を離れて自由な製品設計が可能であるということは産業側にとっては非常に魅力なのですけれども、非常に大きな多様性が出てきます。いわば自由過ぎて、我々はどこからどこまでをくくっていいか非常にわかりにくいという状況が生まれています。
製造も流通も、いわゆる紙巻きたばこというのは非常に高度に技術化された製造ラインだと思いますけれども、それに比べて電子たばこは極めて容易です。手づくりでもできてしまう。実際にネット上ではパーツが売られていたり、あるいは手づくりリキッドなどの情報もあるように、シガレットに比べ、容易であろうと思います。
それから、これまで培われてきた社会規制というものが免除されるということで混乱が起きるだろうということです。
この製品群に対してはまだたばこ税のような税金が課せられていないので、産業にとってはメリット、政府にとってはデメリットになります。
禁煙補助になるという主張が今、混乱を来しているのですけれども、先ほどの喫煙使用者の調査のところで申し上げたように、実際には両方使っているような人たちも出てくるというリスクがあります。
それから、新規製品であって慢性影響がよくわかっていないということです。
あと、社会通念への挑戦であり、青少年や非使用者に対してのアクセスバリアが極めて低く、全く年齢規制がない国が日本を含めて多いということと、火をつけて吸うという行動的には一つのバリアがあるようなものに対して、充電してスイッチを入れるだけ、ネットで簡単に買えるという、さまざまな意味合いでのアクセスバリアが低い。値段もそうなのですけれども、先ほども申し上げたように、リキッドを詰めかえれば簡単にドラッグを使用することもできますし、実際にそういうアトマイザーとほぼ同様のメカニカルであり、電子たばこを通じて喫煙のほうに行く場合もあるということでゲートウエーになるという懸念があります。
日本はこの研究分野はこれからの領域なので、今後必要な領域として幾つか書いたのですけれども、一言で言えば、流行初期にある電子たばこの未知の危険性あるいは対策を講ずるに当たって、レギュラトリーサイエンスという発想が必要なのではないかと思います。この検討会の第1回目に座長から、なぜ日本のたばこ対策はおくれているのかというところで、前の委員の津金委員が「レギュラトリーサイエンスがないからではないですか」とおっしゃったことが非常に耳に残っておりまして、第2回目に私なりにレギュラトリーサイエンスについて少しプレゼンしたのですけれども、この領域が全く足りないのではないかと思います。
33ページ、34ページは、条約の締約国会議の事務局長であるVera da Costa e Silvaさんがたばこについて言っているのですが、たばこ自体も前世紀あるいは今世紀にかけて爆発的な流行が起こって、今、そのアウトカムとしての健康あるいは経済への影響に我々がさいなまれて、これからの対策ということを講じているわけですけれども、これは社会の過ちであったのではないかと。このようなたばこ製品に対して我々が非常にナイーブであって、対策が後手後手であった。今後、電子たばこ群が同様の道筋をたどらないように、やはり電子たばこで歴史を繰り返してはならないのではないかと思います。
34ページです。Simon Chapman、この方も世界的なたばこ対策の専門家ですけれども、今の政策が将来のシナリオを決めると。最良シナリオと最悪シナリオというふうに分けられております。まさに我々の検討会そのものがこの岐路に立ってどちらを選ぶのか、この比較は非常にわかりやすいと思ったのですけれども、フィルムのカメラからデジタルカメラに転換した、そういうふうに喫煙者が電子たばこに移行するシナリオ、それが完全に置きかわって、しかも完全に安全な製品管理のもと生き続けるのか。最悪シナリオというのは、過去から現在におけるたばこで起こったようなことが電子たばこにおいても起きるのではないかというような、2つの極端なシナリオですけれども、提示されておりました。
スライドにはないのですけれども、一つ、臨床の先生の言葉を引用したいと思います。日本赤十字広島看護大学の名誉教授の呼吸器の先生なのですけれども、川根博司先生がおっしゃっていたことなのですが、呼吸器疾患のため酸素吸入や気管支拡張薬吸入をしている患者さんを除きますが、「電子たばこのように煙ではなく蒸気であっても、空気以外のものを肺に入れる、吸入するのは自然の摂理に反します」。これは日ごろ呼吸器疾患で苦しんでいる患者さんをベッドサイドでごらんになっている先生ならではのお言葉ではないかと思うのですけれども、これで私の説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○谷川委員長 ありがとうございました。広範囲にわたりまして、ENDSの問題をわかりやすく解説していただきました。時間が相当超過しましたけれども、望月先生の話は非常に大事だと思いますので、あえてとめませんでした。
欅田先生、申しわけありませんけれども、今度は先生におかれましては、電子たばこの有害化学成分について、時間を手短におまとめいただけますでしょうか。お願いいたします。
○欅田委員 望月委員のほうから非常に広範にレビューいただきましたので、私のほうからは、電子たばこに含まれる、今、蒸気、煙といろいろ出てきましたけれども、蒸気に含まれる有害化学成分について、私たちが既にここ数年間分析した結果を中心に報告させていただきます。
提示する内容は目次のところに示していますけれども、先ほど望月委員からも紹介がありました国民生活センターの報告の過去の分析事例、また私たちのほうで分析してきた事例、それとこれらによるリスク評価、またWHO報告書による勧告の状況等を紹介していきたいと思います。
20ページですけれども、国民生活センターのほうで、先ほどお話がありましたように、既に2010年にそういう評価がされています。25銘柄中45味中、11銘柄15味でニコチンが検出されたということです。この当時、ニュース報道でもかなり報告されたわけですけれども、問題視されたのは、日本の場合はニコチンが入っている電子たばこというのは、当時、薬事法との兼ね合いで認められない状況の中において、コンタミ的に、非常に少ない濃度ではありますけれども、入っているものがありますよというふうなことで議論がされて、これを契機にして薬事法との兼ね合いということが随分話題になったところであります。
そのような中で、この報告と相前後するときから、私たちのほうでは電子たばこの分析を行っておりました。21ページの上の図は、先ほど紹介がありましたように、いわゆる第1世代と言われるような、たばこの外見と似たような形の電子たばこです。それを中心にこの当時は分析しました。電子たばこの構造は、下に書いてありますけれども、バッテリー部分とカートリッジ、この中にプロピレングリコールを基剤として香料等が含まれている液が入っています。それをアトマイザー、変霧器とも呼ばれますけれども、ニクロム線に電圧をかけることによって熱して蒸気化するという形で吸入する仕組みになっております。
私たちは以前から、WHOとたばこ研究室ネットワーク(TobLabNet)という形で、たばこの有害成分の分析を行ってきたわけですけれども、その方法を応用しまして、21ページの下に書いてありますように、機械喫煙装置を用いて電子たばこの蒸気を捕集して分析することを行いました。電子たばこに、私たちのほうで開発しまして、TobLabNetのほうでガス状成分の標準化に使用しようとしている方法ですけれども、固体捕集装置をつけまして有害成分を捕集する、それで分析するということを行っております。
このようにして捕集したものを分析しますと、22ページにありますけれども、こういうカルボニル類というものが見られます。これは高速液体クロマトグラフィーで分析した情報をお示ししているわけですけれども、FAと書いてあるのがホルムアルデヒドのピーク、AAと書いているのがアセトアルデヒド、ACRというのがアクロレインのピーク、GOがグリオキサール、MGOといのがメチルグリオキサール、こういったものが蒸気から検出されるというところです。
同時に、入っているリキッドそのものも分析しているのですけれども、リキッドのほうにはこういうカルボニル類は本来は入っていませんでした。プロピレングリコールを基剤としたベースがありますけれども、カルボニル類はリキッドの中には入っていないというような状況で、当時市販されていたものを数多く購入して分析しました。
その結果を22ページに示しています。銘柄としてA、B、C、D、Eという形でお示ししていますけれども、それを10箱買ってきて3回ずつはかるという形で、n=30という分析をしています。例えば一番上のホルムアルデヒドのところを見ていただきますと、Aの銘柄におきましては、平均値としては11mg/㎥という状況ですけれども、最大値が67、最小値が0.4と、非常に濃度がばらつくという結果が見てとれます。同様に、B、Cでも高いのもあれば平均値としては若干下がってくる状況もあるというところです。一方、Dはほとんど検出されるものがない。Eは検出されるけれども、若干低いところになるという形で、銘柄間で非常に大きなばらつきがあります。それとともに、1つの銘柄の中においてもかなりばらつきがあるということがこのときにわかりました。高いものが出てくるものに関しましては、アクロレイン、グリオキサール、メチルグリオキサールといったものを示していますけれども、同時にそういったものも検出されるということがわかったわけです。
銘柄間あるいは同じ銘柄の中でもロット間によってばらつきがあるという今の数値をグラフ化しているのが23ページです。対象物質としては、ここではホルムアルデヒドだけを示しているのですけれども、A、B、D、Eと書いてあるのは銘柄です。先ほど言いましたように、10箱買いましたので、ロットナンバーというのは、その箱、製品10個で、それぞれを3回ずつ分析しました。
そうすると、Aの銘柄におきましては、7番、9番の箱の分は非常に濃度が高く出てきます。ところが、1~5番のものは低い濃度で出てきます。6番、8番の分はほとんど出てこないというばらつきがあります。さらに、7番、9番を細かく見ていただきますと、3回分析しましたけれども、その3回の中でもばらついてきます。同じロットの中においてもばらついてきます。使用状況においてもばらついてくるところがあるという感じがありました。
Bにおきましても同様で、2番、3番、7番、8番、9番のロットは非常に高い濃度が出てきます。そのロット内においてもばらつきが出てくるといった状況ですが、D、Eにおいては比較的少ないという状況が確認されました。
この背景はどういうものなのかということですが、電子たばこの構造は、変霧器、アトマイザーというのがあって、そこに電圧を加えて霧状にするということでしたけれども、その変霧器を拡大したのが23ページの下です。左側は、蒸気発生した後に高濃度が観察されなかったものの拡大写真です。真ん中に白く橋渡しのように見えているところにニクロム線が巻いてあります。ニクロム線の周辺が焦げた状態でなく、白く綿状にそのまま見えますけれども、右側の高濃度が発生したほうは黒焦げ状態になってしまって、焼きついているという状況が確認されました。焼きついたようなものの製品において高い濃度が検出されたところです。
24ページは、先ほどのAとかBとか高い濃度が検出された銘柄について、ほかのカルボニル類がどうなのかということを表で示していたものをグラフ化しているわけです。例えばAの銘柄におきましては、10箱のうちの7番、9番の箱からは高いホルムアルデヒドが出てきたと先ほど紹介しました。そういう高い濃度が出てきた7番、9番のロットからはアクロレインあるいはグリオキサール、メチルグリオキサールといったものも高い濃度が出てきます。ホルムアルデヒドの濃度は低いけれども、出てきたというものに関しては、1、2、3、4、5と示しているように、同様に低い濃度のアクロレイン、グリオキサール、メチルグリオキサールが出てきているという状況が確認されました。
これは銘柄Bにおいても同様で、ホルムアルデヒド、アクロレイン、グリオキサール、メチルグリオキサール、そういったものがそれぞれ相応して同じロットに出てくるものは全部のカルボニル類が出てくると認められたわけです。
一方、比較的濃度の低いほうのCとかDでは、それぞれの化学物質でも低い状況であるのは同様であったということです。
26ページですけれども、なぜこういうことが起こるのかということで、電子たばこの構造は、さっきも望月委員からもお話がありましたが、非常に単純なものですので、それを模擬的に私たちのほうでつくって確認しました。上の写真にありますけれども、ニクロム線を巻いて、これを電池につないで電圧をかけます。そこに基剤となっているグリコール類を添加して電圧を変動させていくとどうなるかということを見たわけです。そうすると、3ボルト以上電圧をかけると、蒸気、いわゆる電子たばこの煙状のものが出てきます。9ボルトまでいくと発火してしまうということが確認されました。
そこで、添加するグリコール類の種類を変えて、電圧を変えたときの経過がどうなのかというのを26ページの下に示してあります。最初に、エチレングリコールをニクロム線に塗布しまして、それで電圧を上げていきました。そうすると、クロマトグラムとして左上にありますように、ホルムアルデヒドやグリオキサールが検出されました。
この濃度推移がどうなのかをグラフ化しているのが26ページの下2つの折れ線グラフです。電圧を上げていくと、4ボルト、6ボルトぐらいのところから若干生成が見られます。7.8ボルトぐらいにすると高濃度のホルムアルデヒドが検出されました。同時に、そのときにはグリオキサールも非常に高濃度で検出されたということがあります。
この背景としては、上に化学式で書いていますけれども、エチレングリコールが酸化されるとグリオキサールができ、さらに酸化されるとホルムアルデヒドができるという反応が起こるのではないかということが想定されたわけです。
同様に、最も多く使われているプロピレングリコールについても実験を行いました。プロピレングリコールそのものは、先ほど望月委員のほうからもありましたけれども、無味無色無臭のもので毒性も比較的低いということで、食品添加物、医薬品等に幅広く使われているものです。これを同じ構造のニクロム線に塗布して電圧をかけていくと、やはり4.3ボルト、6ボルト、8ボルト弱と電圧依存的にいろんな化学物質が発生してきます。プロピレングリコールからは、下のグラフの左のほうですけれども、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドが非常に高濃度に発生してきます。同時にメチルグリオキサールも発生してきます。これに関しましては、右上に化学式で書いていますけれども、プロピレングリコールの構造はこういったものですが、これが酸化されるとまずメチルグリオキサールが産生されてきます。さらにこれが酸化されるとホルムアルデヒド、アセトアルデヒドといったものが産生されてくるということで、リキッドの中にはグリコール類しか入っていなく、もともとカルボニル類というのはないのですけれども、電子たばこを蒸気化させる時点でこういったものが発生してくるということが確認されたわけです。
グリセロール(=グリセリン)についても同様の実験を行いましたところ、グリセロールからはホルムアルデヒドあるいはアクロレインが産生されてくるということで、右上にグリセロールの構造を書いていますけれども、これが酸化されるとアクロレインができる、さらにホルムアルデヒドができてくるという状況が確認されました。
それをまとめたのが28ページです。基剤として入っているグリコール類が酸化されると今回私たちのほうで問題視しているようなカルボニル類が発生してくるということがメカニズム上も確認できたということをお示ししているわけです。
それでは、先ほども毒性評価のことが望月委員から若干報告がありましたけれども、こういった濃度の暴露があった時点でどの程度のリスクが想定されるのか、簡単に私たちのほうでもリスク評価を行ってみました。この点に関しましては、後ほどこれを専門とする蒲生委員のほうからコメントをいただければと思うところです。
製品評価技術基盤機構のほうで行っています「初期リスク評価書」に基づきまして、それぞれの化学物質についてはNOAEL(無毒性量)というのが報告されていますので、そのNOAELと私たちが実際に先ほど報告した検出された濃度とを比較して、Margin of Exposure(暴露マージン)というものですけれども、NOAELというのがこれ以下では毒性が観察されませんでしたというところの濃度で、それに対してどの程度余裕があるのかを示しているのがMargin of Exposureですが、そのMOEを算出していくことを行いました。ただし、NOAELを算出するには、いろんな実験系で動物実験等を主体としていますので、動物と人との種差であったり、個体差であったりということで、不確実係数をそれぞれ掛けられますので、その不確実係数と先ほどのMargin of Exposureの大きさを比較することでどの程度毒性リスク可能性があるのかということを検討したわけです。
先ほど報告しました濃度で、高く出た分の平均値を下の表のAのところに各物質について書いてあります。ホルムアルデヒドであれば61mg/㎥といったような濃度です。これに対して人がどの程度吸煙しているのかということで、これは私たちのところでクレスマイクロ装置というのを使って、1日、たばこを吸っている人たちの実際の吸煙量を評価させていただいて論文化しているのですけれども、そのときの情報として、1日、紙巻きたばこを吸っている人の平均は大体1万4,500mℓ空気を吸っているという状況があります。喫煙者の体重を50kgと想定して計算すると、1日、単位体重当たり何mgこういう化学物質をとっているのかをDのカラムのところに示しています。これとNOAELを比較していくと、Margin of Exposureというのがホルムアルデヒドであれば2.2になりますけれども、不確実係数が200ということで、それよりも小さい値で毒性が懸念される値になってくるということです。同様の評価を行っていくと、アクロレインでも同じような値になって、Margin of Exposureが非常に小さい値になってくる、あるいはグリオキサールも同様の傾向になるということで、これらに関しては人に悪影響を及ぼす可能性が示唆されるという結果が得られたところです。
ここまでのデータは、私たちのところで4年ほど前に第1世代と言われる電子たばこについて分析してきたところですけれども、今般、非常に電子たばこに対する関心が高まってくるとともに、先ほど望月委員から供覧いただいたような新しい電子たばこが出てきましたので、とりあえず、いわゆる第2世代と言われるペン型のタンクを持った電子たばこ、これはタンクの容量が1.5mℓあるような形で、連続して使用可能な構造になっているのですが、そういったものについての発生量を検討したのが29ページです。
グラフの上はミスト量と書いていますけれども、横軸が喫煙回数です。1回の喫煙、例えばたばこを喫煙する人であれば5分ぐらいかけてたばこを1本吸うわけでしょうけれども、それに相当する回数として15回吸煙(パフ)を1クールとして1回喫煙という形にしています。その15パフを10回繰り返していったときにどういう蒸気中の濃度を示しているのかをお示ししています。10回喫煙すると、ここでは銘柄としてグリーンと書いていますけれども、430mgのミストが産生されてきて、そのミスト中に含まれている蒸気を下に書いていますけれども、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドが非常に高濃度、アクロレインも検出されるということで、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドに関しては1シリーズ15パフ、5分間程度で吸煙する量の中に1,500μg、1.5mgが含まれるという状況が観察されているわけです。
ブルーのものに関しましては、ミストの発生量が非常に高かったのですけれども、ミストの発生量が若干下がってくるようなタイミングのところで今度はカルボニル類の発生が非常に高くなってきます。
ピンクの分に関しましては、カルボニル類の発生がこのときはなかったのですけれども、ほかのロットのピンクのものをはかったときには、ピンクの分からもカルボニル類の発生が検出されたといった状況がありました。
さらに、グリーンの状態のものについて濃度がどの程度なのかというのを紙巻きたばこと比較しております。電子たばこのほうは、さっきも言いましたように、5分ぐらいで吸う量としての15パフを吸入量という形で見ました。それが左のチャートに示しているものです。紙巻きたばこのほうは代表としてセブンスター1本当たりの量を示しております。そうすると、どちらからもホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレインといったピークが見られますけれども、ピークの高さを見てもらったら一目瞭然ですが、アセトアルデヒドにしても紙巻きたばこのセブンスターよりも電子たばこのほうが圧倒的に高い。極端なのはホルムアルデヒドです。ホルムアルデヒドの濃度は電子たばこのほうが圧倒的に高いという数値が見てとれます。
ホルムアルデヒドは、このときに15パフ、5分間ぐらいの吸煙で1,600μg、1.6mg吸煙したという形になるのですけれども、この濃度がどの程度なのかといいますと、今、シックハウスのガイドラインが厚生労働省から出されているわけですが、100μg/㎥という形で示されています。私たちがこうやって座っているような状況での1日の空気の吸入量というのが大体16㎥ぐらいです。そうすると、それを掛け合わせると1日で1.6mg、ホルムアルデヒドを吸入するような状況になります。シックハウスのガイドラインというのはそういったところを想定してつくられているという状況なのですけれども、グリーンの電子たばこでは、1回使うとその量を一気に吸い込んでしまう数値になることがわかったわけであります。
模擬的に電子たばこをつくったら酸化的にこういうものができてくるということがわかりましたけれども、第1世代の電子たばこをはかったときにはばらつきがあって、もしかしたら製品のばらつきかなと思っていました。今の第2世代のものは蒸気をいっぱいつくって楽しむというふうな扱い方がされていて、連続して使用していくとアトマイザーがさわっていて熱くなってきます。そういう環境になってくると酸化反応が非常に進んでくるということで、どういったものにおいてもこういったことは起こり得ることが見てとれたわけであります。
これに関しまして、先ほど望月委員からCOP6で電子たばこが一つのキーとして議論されたところのまとめがありましたけれども、そこに持っていく前に、既にWHOでは2010年ぐらいからいろんな報告を出しております。無煙たばこの議論がされたときにも、私たちのほうで報告しましたけれども、WHOのテクニカルレポートシリーズのNo.955というところに、無煙たばことともに電子たばこについての記述がまとめられていたわけです。その中においては、30ページの下に書いてありますが、「大半の国において規制の狭間となり、医薬品としての規制を逃れ、たばこ製品に対する規制を回避している」のが現状である。そういった中において「健康上の利益、被害削減、又は禁煙における使用を説く主張は、科学的に証明されるまで禁ずるべきである」。これは先ほどのCOP6につながっているところであります。「成分及び表示の規制、公共の場での使用の禁止、ならびに宣伝、プロモーション、及びスポンサーシップの制限」といったものを考慮していかないといけないということが既にこの時点でもまとめられておりました。
そういったことを鑑みて、この冊子の中で総合勧告としてまとめられているのが31ページです。電子たばこのニコチン入りのものの場合は、喫煙が禁じられている場所でのニコチン摂取を可能にする。そういったことでニコチン依存が維持される環境が、今、受動喫煙対策で、禁煙しようと思う人に対して喫煙を継続させる効果が出てくるということが非常に問題になってくる。電子たばこがなければ使用しなかったであろうという人々に対してゲートウエーになってくる。そういったことも考えると公衆衛生リスクを生み出す可能性があるので注意しないといけないということです。
主要な医薬品規制当局により製品が安全かつ有効であると承認されない限り、薬物療法を支持するということも問題である。先ほど禁煙治療として使えるということが議論されているとありましたけれども、そういったこともこの時点でまとめられています。加盟国は、これらの製品の製造者が全ての既存の規制要求事項を確実に遵守するようにし、たばこ規制における公衆衛生の取り組みを頓挫させることがないようにしていかないといけないということがまとめられています。その辺が効果のCOP6の中でもさらに議論されて、まとめられていったという背景があったわけです。
私のほうから、化学成分の分析を中心にして以上のように報告させていただきました。
○谷川委員長 本当にわかりやすく、ありがとうございました。カルボニル類が発生するというのが問題ということですね。
それでは、これまでの説明を踏まえまして、総合的に議論をしたいと思います。
お二人に非常にいい内容のお話をしていただきまして、少し時間をオーバーしていますが、議論を活発にするためにもどんどん御意見を下さい。
まず、電子たばこの定義を詰めまして、電子たばこの製品としての健康影響と日本における健康影響や未成年者への影響の現状について議論を行いたい、そういうことをするのが必要かと思いますが、いかがでしょうか。
まず、電子たばこの定義につきまして、望月委員のほうからは資料1の13ページに「内容物を電気的に熱することにより発生させた煙を吸入することに用いる製品及び当該内容物」ということで提案がございましたけれども、御意見いただけませんでしょうか。
私のほうとしては、「熱する」は他動的に「加熱する」のほうがいいかなと思います。そして、「煙」というのはベーパーとかいろんな言葉がありましたので、「煙等」とか「煙・ベーパー等」とか、「等」がつけばあらゆるものが含まれてくるかと思うのですけれども、いかがでしょうか。そういうあたりは感じたのですけれども、ほかに先生方、御意見ございませんか。
○大和委員 今の意見に賛成で、欅田先生の資料2の26ページに、3ボルトのところでは蒸気がということで、9ボルトで発火というふうなところがありますけれども、煙というのは粒子も含んでいないといけませんので、まず蒸気だけの状況などが発生するときには粒子がない、ガス状物質だけが発生している状態もあるでしょうから、ベープ及び煙等というふうにしたほうがいい。
○谷川委員長 このあたり、資料1の9ページの18枚目に、エアロゾル、ベーパー、水蒸気、蒸気とありますけれども、先生はどういうふうに書くのが一番いいと思われるでしょうか。
○望月委員 私のスライドの19枚目、10ページ、これが一つのお答えかなとは思うのですけれども、要は、完全なガス状だったら見えないわけですね。見えるということは粒々が浮いているので、粒子状物質も入っているわけです。中身はどうであれ、そういったものが発生するので、それを一くくりにして適切な日本語は何だろうというところで苦しむわけで、湯気では決してないわけで、煙状物質、それでいろいろ書いてはみたのですけれども、煙を広くとったときに、煙のように立ちこめるものも煙と言ってしまう場合もあるので、いわゆるたき火の煙だけでなしに。
○谷川委員長 では、「煙等」でどうですか。
○望月委員 「等」ですね。
○大和委員 「煙」はガスと粒子が混在した状態を表します。平成22年の健康局長通知の中に「残留たばこ成分」という言葉が入りました。あれは三次喫煙ということの日本語訳なのですけれども、あのとき厚労省の担当者の方から、残留たばこ煙、煙という表現でどうでしょうかと聞かれたことがあるのです。洋服についたにおいですね。これから発生するのはガス状物質しかありませんから、残留たばこ成分のほうが適当ですというふうに回答したことがあるのです。
○谷川委員長 残留たばこ成分。
○大和委員 そうすると残留農薬などをイメージさせますから、ちょっとネガティブな印象も持たせることができますね。ですから、ここでは科学的に正しい言葉として「ガス状成分もしくは粒子状成分を吸入する」というふうにしたらどうでしょう。
○谷川委員長 いかがですか。
○望月委員 先生のその粒子というのは固体ですか。
○大和委員 固体の場合も、液体の場合もあります。
○望月委員 液滴ですね。
○大和委員 はい、それも含んでいます。そうです。たばこの粒子そのものはタールの霧ですから、厳密に言えば液体ですね。
○望月委員 液体の中に固体が入っている。
○大和委員 液体が飛んでいる。霧、ミストが飛んでいる。タールのミストがたばこの煙で見えている部分ですから「ガス状成分、粒子状成分、その両者の混合物を吸入する」としておくと全部を包括できると思います。
○野田専門官 事務局から質問なのですけれども、現状のたばこの煙という部分の成分でいいますと、粒子状成分とガス状成分がそれぞれ分かれているという定義になっていると思います。一方でたばこの煙ということを考えるときに、粒子状成分だけ、ガス状成分だけをとっても、たばこの煙はそれぞれ要素として分かれていると思うのですが、電子たばこの煙及びガス状成分という話になった場合に、たばこの煙と比較して考えると、多少、前半の電子たばこの煙という部分にも電子たばこのガス状成分が入ると思いますので、そうするとかぶってしまうような感じが事務局としては感じられたのですけれども、その点はいかがなのでしょうか。
○大和委員 今、意味がよくとれなかったのですけれども。
○野田専門官 済みません。すなわち、たばこの煙自体が粒子状成分とガス状成分の2つに分かれるというところはコンセンサスが得られていると思います。一方で、電子たばこについても、今のお話ですと粒子状成分とガス状成分に分かれる。目に見える部分は、液体であろうが固体であろうが粒子であろうと。そして、目に見えない部分について、どのような形で、煙もしくはそのような形で入れるかというところが今の議論だと思うのですけれども、たばこの定義を考えますと、一応たばこの煙という形でもガス状成分と粒子状成分が入っている。新たにそれ以外の部分のガス状成分という部分を出すべきかどうかというところが今の議論の焦点だったと思います。ただ、そう考えると、電子たばこの煙及びガス状成分という定義にした場合には、前半の電子たばこの煙というところがそもそも粒子状成分とガス状成分が入っている。「及びガス状成分」となるとかぶってくるところが定義上あるような気がするのですけれども、そこはいかがでしょうか。
○谷川委員長 資料1の9ページの「電子タバコの既存の定義・説明」というところを見ますと、大体が蒸気という名前になっているのですね。一番上のWHO/COPのところでは「ニコチンを含む、又は含まない溶液を蒸気とし、吸入する」とか、Wikipediaのほうでも「霧を作り出す」と書いてあります。日本語ウィキペディアでは「少量の蒸気を吸入する」。財務省のほうでも「蒸気となって吸い口へと流れてゆく」。だから「蒸気等」という名前で一括してはいけないのですか。
○望月委員 多分、定義は目的とセットだと思うのですけれども、何が問題かというと、何らかの有効成分を体の中に取り入れる、その摂取経路によるわけですね。今回のものはみんな肺が摂取経路なので、肺の奥深くにデリバーしなければいけない。そのときに、どういう形態が、様態が適切かといった場合に、気体の形にして送り届ける。そして、そのための装置が開発されていると思うので、WHOはエミッションと言ったり、排出されるもの、そこにとどまっていればデリバーされないわけですね。だけれども、飲んでしまえば、口腔内で消化管から吸収されて事故が起こる。今回何を議論するかというと、やはり健康影響をどう抑制するか、アセスメントするかという観点でこの製品群から出てくるものをくくり出そうとしているので。
○谷川委員長 それで。
○望月委員 あと、社会通念上の適切な言葉を探そうということだと思うのです。
○大和委員 それに関連して補足ですけれども、電圧が低いときには温まってきてガスしか出ていない状況が発生します。でも、電圧が高くなってくると燃焼が発生して、粒子とガスと両方出てくる状態が発生します。ですから、電子たばこにはガスだけが発生する状況もあります。温度が高くなれば粒子も出てきますので、ガスだけの状態、ガスと粒子が混在する状況とがあることを踏まえて、私はさっき発言したのです。
○谷川委員長 先生の一番いいアイデアは何ですか。
○大和委員 それこそ、熱することによって発生する物質とかいうのでもいいですし、ガスと粒子、両方含めた形。
○谷川委員長 ただ、先生、これは電子たばこに対応する定義ですね。そうしたら、何を目的にその製品群がするかというときに、それはやはり蒸気を吸入するということが主目的なわけですね。主目的の中に煙も出れば、時によっては粒子も出ればというのですけれども、その主目的のことを書こうというのがこの製品は何ですかといったときの定義としては妥当かなと思いますが、いかがですかね。
○大和委員 定義としては。
○谷川委員長 要するに、何を目的とした製品かということを一般の方もわかりやすく定義する。
○大和委員 はい。
○谷川委員長 そういう意味ではどういう言葉が適切かを。
○大和委員 ガス、もしくは、ガスと粒子の混合物ということになるでしょうね。望月先生の31枚目のスライドにありますように、大量の煙が出る製品もあるのです。ユーチューブなどでありますが、普通のたばこよりも何倍も濃い煙が出ていて、これを先ほどおっしゃったように求めている人たちもいるので、温度が低い状況で少量のガスが発生する状況を規定するだけでは不十分だと思います。
○谷川委員長 ほかの委員の先生、いかがですか。先生、御意見、どうですか。本委員会のほうでは電子たばこの定義について詰めたいのですけれども。
○奥村委員 時間もないので、言いっ放しになりますが、目的のところには、最後に体内に移行していくというところを入れておいたほうがよいと思います。
定義をつけるときに、ここに書いてある暫定案に賛成ですが、やはり一般的な電子たばこの目的も書いておいたほうがよいと思います。人の身体機能に影響を及ぼすことを目的としてというような前段を定義に入れておいたほうがよいと思います。
以上です。
○望月委員 今のは医薬品のようにということですか。
○蒲生委員 定義自体は今のディスカッションの範囲で私も賛成なのですけれども、ちょっと気になったのが、定義を運用する人は誰かという主体が決まらないと、例えば法律ベースで考えれば該当する、しないという議論が当然出てきますし、例えば原料によって判断する、しないとかもあると思います。多分、狭義にはこの委員会の場ではということだと思うのですけれども、それがどこまでかというのはコンセンサスを得ておいたほうが。
○野田専門官 蒲生委員、ありがとうございます。まさにこの委員会のスコープ、権限という部分と権限外の部分があるということだと思います。まず、この委員会の権限でございますけれども、第1回にも確認させていただきましたが、基本的には健康影響を評価するという権限を持っている。一方で、何かしら規制を行うべきかどうかという権限については有していないと確認しております。
そういう観点でいいますと、先ほど奥村委員よりございました身体的機能に影響を与えることを目的としてという、目的の部分が入ってくると、例えば薬事法ですとか、いろいろな規制を念頭に置いたところの範疇に入ってくるような目的になってくるのかなという気が事務局としてはしております。
○谷川委員長 ですから、単純に、内容物を電気的に加熱して発生させた、ちょっと言葉は難しいけれども、煙等みたいなものを吸入することに用いる製品及び当該内容物で事務局的にはオーケーなわけですね。
○野田専門官 まず、この委員会の御議論というところはあると思いますが、少なくともこの委員会のミッションという部分で考えますと、何かしら規制を行うかどうかというところを念頭に置くというわけではなく、まずは健康影響を評価する。
○谷川委員長 わかりました。
○野田専門官 そういう部分をニュートラルな形で製品の健康影響について御議論いただくというところですね。どういう形の規制をするかというところの定義は外しておいたほうがこの委員会のミッションには沿っていると考えております。
○谷川委員長 どうぞ。
○奥村委員 ここの委員会の権限はよくわかったのですけれども、ただ定義をつけたときに、望月委員が資料1の13ページに書かれたような、暫定試案の定義だけだと何のことを言っているのかがよくわからない。もう1つは、この定義というのは、例えば薬事法の管理医療機器の定義とほとんど一致してくるので、むしろこの定義自体のほうが今、野田さんが言ったのに該当してしまって、そうすると何もこの委員会で決められなくなってしまうから、余り難しく考えずに、健康影響を与えるというところがここの一番の視点なので、一般の方々にもわかりやすいように定義づけていったほうがいいのではないかと思います。そのためには、やはり私が言う前段に目的があるほうがいいと思いますね。健康影響という、委員会の名前にもあるようにキーワードなものですから。それから具体的に望月先生の案みたいな細かな、どんなものだというのを書いたほうがいいと思います。
以上です。
○谷川委員長 例えば奥村先生の御意見でいくと、健康影響がわからない段階では、これはたばこではないですよというような詭弁も通るのではないですか。
○奥村委員 今ここでの資料を見せていただいて、欅田先生の資料の中に入っていましたね。ホルムアルデヒドとかメチルグリオキサールとか、そういうものも入っているので、これは健康に影響があるのは明らかです。
○谷川委員長 私が言いたいのは、今の既製品においてはそういうのが入っていても、今後、電子たばこがどんどん改良されていったときに、一々それを分析しないと健康影響があるのかどうかわからない状態では困ると思うのです。先生には申しわけないのですけれども、私は先生の意見に反対で、健康影響を与えると言ってしまったら、与えないというふうな触れ込みで来たものに対しては、今度は調査しないとそれが電子たばこかどうかわからない状態が続くわけですね。そういう空白をなくすためにも、健康影響を与えるというのはあえて入れないほうがいいと思います。ほかの先生の御意見、どうでしょうか。
これは電子たばこではありませんよと言われたときに、なぜかといったら健康影響はわかっていませんから、証明するまでは電子たばこではありませんというのも困ると思うのです。むしろ単純に、内容物を加熱して煙等を吸入することに用いる製品、それがどういう影響を与えるかというのはわからないが、そういうものを全部、電子たばことくくったほうが広くこれから使えると思うのですけれども、どうでしょうか。
○望月委員 奥村先生が最初おっしゃったのは、人の身体機能に影響を及ぼすことを目的としてというのをこの定義の前段に入れたらという御意見ですね。2番目におっしゃったのは、この委員会の報告書的になるときに、評価専門委員会だから、健康影響を報告書の骨子の目的に入れる、どっちの意味でおっしゃられたのかなと思います。
今、座長がおっしゃっていたのは、この定義に健康影響というのを入れるというふうにおとりになったのですか。
○奥村委員 定義と聞かれたら、一般の方々がわかるように定義するのが普通だと初めは考えたので、目的とかもやはり入れておいたほうがいいのではないかと。谷川先生の言われる、実際にこれからその定義がどういうふうに使われていくかを考えたときというのも、そういう技術的な問題があるのは理解できます。初めに言ったのは、普通の一般の方々にこの委員会として説明したりするときにはやはりあるほうがいいのではないかということです。それがどこに入っていくかということについて特にこだわりはないです。要するに、望月先生の言う定義に入っているのだけれども、定義を説明する資料みたいなところに入れておいてもいいかという質問であれば、別にどちらでもいいのです。
○望月委員 自分で書いておいてなのですけれども、お香みたいな、アロマオイルみたいな、あれも電気的に加熱してミストを発生させて、それを環境中で吸うわけですね。それもスコープに入ってきますね。
○谷川委員長 入っていますね。それはどうなのですか。
○望月委員 入ってもいいような気もするのですが、お香と称してドラッグを売っている人たちもいるので。
○谷川委員長 あれもスコープとしては電子たばこかな。
○望月委員 ただ、やはり広目のスコープと、実際に我々が取り組み得るのか、測定し得るのか、議論できるのかというのは、広義と狭義と頭の中では整理しておいたほうがいいとは思います。
○谷川委員長 確かに、お香の中にニコチンが入っているような成分をたいて空気の中でやるというのも、たばこの一種といえば一種かもしれませんけれども、そういうのはまだないですね。
○望月委員 知りませんけれども、どうなのでしょう。ニコチンではないドラッグ入りのお香をたいて、それがリキッド状でアロマオイルのようにたくように売られていて、でも実態としてはこういうパーソナルなアトマイザーの中に入れて吸う。だから、定義ではパーソナルという言葉をわざわざ入れて、個人的に人が直接吸うような形で定義をしている国もどこかにあったので、要は、我々が相手にしているのは、今までのたばこというくくり出しでないようなところにいろいろな製品群が出てきて、それにどういうスタンスで臨み得るのかということなのかなとは思います。
○谷川委員長 資料1の17枚目の日本語ウィキペディアとか英語版のところでも、個人用の気化器とか、いろいろ書いていますけれども、定義だったら広くしたほうがいいと思うので、「内容物を電気的に加熱することにより発生させた煙等を吸入することに用いる製品及び当該内容物」で、場合によってはアロマみたいなものでも今後対応できる可能性を残しておいたほうがいいと思いますが、いかがですか。
○井上委員 私も先ほど望月先生が言われたことと同じことを指摘しようと思っていたのですが、そうすると電子たばこという言葉がむしろ違和感になってきますね。もちろん、アロマのうちはいいけれども、その中に例えば脱法ハーブみたいなものが入ってくる可能性も十分あって、そういうのは規制したいわけですね。最終的にそこまで考えて定義を決めないといけないのかなと。あと、先ほどの煙という言葉をどう扱うか、どのように置きかえるかという話がごっちゃになっていて、それはまた別の話だと思っています。私は、大和先生のおっしゃるガス状成分あるいは粒子というのが割とクリアに定義をあらわしているのではないかと思います。
○谷川委員長 では、煙のかわりに何を使いますか。発生させた何々を吸入するという、何々というのはどういうふうに定義すればいいですか。
○井上委員 ガス状成分あるいは粒子。
○谷川委員長 ガス状成分。
○井上委員 粒子あるいはガス状成分でしたか。
○大和委員 ガス状物質、もしくは、ガスと粒子の混合物でいいと思います。
○井上委員 「煙等」というふうに先ほど案が出ましたけれども、「煙等」にすると蒸気の中に入っているものは煙ではないのだと言う人が必ず出てくると思うのです。逃げられないようにするためにどういう言葉を使ったらいいかというのを考えないと、将来、規制に向けて動くときに、相手は逃げるのが上手なので、いろんな手で逃げてくると思います。だから、どちらかといえばクリアなのは、たばこと同じような言葉を並べ立てるよりも、蒸気だ何だと並べ立てるよりも、大和先生が言われたガス状成分とか粒子とか、そういう言葉のほうが何かしっくりくる、適当なのかなと思いました。
○大和委員 ガスまたはガスと粒子の混合物、とすると全部を含むと思います。
○谷川委員長 ガスまたは粒子ね。
○井上委員 私も専門ではないので、むしろ素人が聞いたときにどういうイメージを持つかで今、考えています。
○谷川委員長 わかりました。では、欅田先生はどうですか。ガスまたは粒子でよろしいですか。余りここで時間をとるのももったいないので、決めてしまいたいと思いますけれども。
○欅田委員 的確な表現としては、ガスまたは粒子というのが占めていると思うのですが、何とも難しいというのが率直なところですね。
○谷川委員長 どうぞ。
○野田専門官 今、委員の先生方からいろいろと御議論いただきましたが、時間も限られているというところもあると思いまして、一回、事務局で今の意見を集約して、次回また示すという形でよろしいでしょうか。
○谷川委員長 わかりました。では、そうしましょう。
では、そういうことで、内容物を電気的に加熱することにより発生させたガスまたは粒子または煙等、その辺を考えていただいて、それを吸入することに用いる製品及び当該内容物ということで、後は事務局のほうで案を出していただければと思います。
次に、2番目に、電子たばこの健康影響につきまして、欅田委員から、電子たばこにはホルムアルデヒドとかカルボニル類が含まれている、これは発がん物質であるという御指摘がありました。その煙を吸入することによる健康影響の評価案もいただきました。このあたりにつきまして御意見をいただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。何せ電子たばこが発売開始後10年ということで、恐らく電子たばこのコホート研究は余りないのではないかと思うのですけれども、この長期影響につきまして、今回この成分分析の結果からどういうふうに考えていったらいいかということで御議論をお願いいたします。
このあたり、まず蒲生先生のほうからお願いできますか。
○蒲生委員 特に28ページの下のスライドについてコメントというふうに言われたので、そこについてですが、一つ一つの情報の詳細は把握していませんけれども、表の一番右にある根拠というところは、多くは基本的に呼吸器系のところへの影響で、一部臓器への影響もありまして、何が言いたいかといいますと、今の計算は体内に入る量というようなことで計算されているようですが、肺への影響、呼吸器系への影響ということであれば、気中濃度として同じような計算をするというのがどちらかというと妥当ではないかという印象があります。
あと、吸ったものの、100%体内に入るわけではないというような、ちょっと細かいと言えば細かいようなところもあります。
結論なのですけれども、不確実係数積とMOEを比較して明らかにMOEが小さいということで、これはそういう結果なのだろうと思います。行ったり来たりのコメントになりますけれども、不確実係数積というのはかなり安全側に見て、この数字を上回るようなMOEが計算されれば、ほぼ事実上安全と言ってもいいというようなラインですので、それとの比較において影響を及ぼしていることが示唆されるという結論はちょっと行き過ぎかなと、あくまでも否定できないという程度の結論のほうが順当かと思いました。
ただ一方で、実際、有害影響が動物等で観察されるぎりぎりの濃度量とたばこのこのシナリオによる量が同じぐらいのオーダーになっているものが幾つかあるということから考えると、今ここに書かれているような、及ぼす可能性が示唆されるといってもいいのかなとちょっと思いました。
全体としての結論はおおむねこうで、計算はある程度リファインの余地はあるかもしれないのですが、よろしかろうと今のこの範囲でいえば思いました。
簡単ですけれども、以上です。
○谷川委員長 望月先生に1つ質問したいのですけれども、カルボニル類が含まれているということは、しかも欅田先生の29ページのデータから見ますと、ホルムアルデヒドなどは相当高いわけですが、従来の紙巻きたばこに含まれている発がん物質についてはどうなのでしょうか。例えばタールだとかベンツピレンの量とかは何か報告があるのでしょうか。
○望月委員 私の資料の10ページに、定量的なデータは出していませんが、エアロゾルの組成というところにありますが、この中でタバコ特異的ニトロサミンというのは非常に強い発がん物質で、このうちの4種ともトレースアマウントで出ている。そして、ベンツピレンもここにありますね。これはタールの中に含まれる大きな発がん物質なので、こういったものは入ってきています。
○谷川委員長 その量は、量的にはどうですか。
○望月委員 量については、1つレビューがあったのですけれども、非常にさまざまなものがあるので、それこそ製品のロットから何から何まで、100倍、1000倍ぐらいの開きがあるので、代表的な値というのはここでは御紹介できないのですが、資料1の21枚目はFDAが今まで報告された文献をレビューしたものです。こういったものは入っているけれども、銘柄により非常に幅広いということです。最初の話に戻るのですけれども、測定方法とか発生条件によって非常に変わります。しかし、入っていることはもちろんあるので、例えば標準的な方法で、欅田先生のところのラボでされたような方法で発生させて、そのターゲットの物質を決めてはかればカルボニル系と比較し得るようなデータは出ると思います。
○谷川委員長 そうですね。それは非常に大事ですね。
○望月委員 一番問題なのは、欅田先生も入っていらっしゃるTobLabNetというWHOのネットワークの中でも、たばこについては標準的な測定方法というのはもう確立しているのですけれども、電子たばこという製品に対しての標準的な方法を今後恐らく検討してやっていくのだと思います。
○谷川委員長 欅田先生に質問したいのですけれども、先生の資料2の23ページにアトマイザーの拡大写真がありますが、このアトマイザーが焼け焦げていなかったら割と低いと考えていいのですか。よくわからなかったのが、10箱で3回されたときに、例えば23ページの上のA、Bというところを見ますと、Aのほうで7番と9番がすごく高くなっていますけれども、これは焼けているからこうなったのであって、成分自体というよりもむしろ附属品の問題というような感じ、どちらなのですか。
○欅田委員 結局、使い方というところになるのだと思います。ここで示している分は第1世代の外見が紙巻きたばこタイプのものだったのですけれども、当時の分は蒸気の発生量も非常に少ないのです。今は、むしろ第2世代、ペンタイプというのは、先ほどもお話がありましたように、蒸気をいっぱいつくって、それで遊ぶみたいな楽しみ方という使い方がされているのですけれども、そうなってくるとどうしても加熱される状態が高まってくるということで、私たちも、製品が変わってきたから、第2世代のほうは出ないのだろうというふうな想定のもとで。
○谷川委員長 それは29ページですか。
○欅田委員 はい。29ページの新しいのでは逆に蒸気をいっぱい発生させるということで、過電圧なども調整できるようになっているものが今、出てきています。あるいは蒸気を発生させるためにわざとニクロム線の抵抗を下げて電流を高めることによって蒸気を発生させるというキットも出てくるということで、そうするとこういうことが幾らでも起こってきます。酸化現象として普通に起こってくるということを見ていただければと思ったところです。
○谷川委員長 29ページのデータというのが今の世代の電子たばこ。
○欅田委員 そうですね。
○谷川委員長 では、ホルムアルデヒドが、先ほど述べられましたように、シックハウスのガイドライン1日量に匹敵するぐらいは吸っているということが予見されるわけですね。
○欅田委員 1回休憩の中で吸うだけでそれだけ吸ってしまうということで、先ほど蒲生委員のほうから濃度でという話もありましたけれども、これを濃度換算すると数10ppm以上になってきて、ホルムアルデヒドの急性毒性としての刺激が出てくる濃度域になってくるわけです。使っている人の中にも、ネット上の動画などを見ても、蒸気がいっぱい出てくるように工夫したいということでやっているのですけれども、そうやると刺激も出てくると述べているのもあるのが現状です。
○谷川委員長 わかりました。
ほかに健康影響につきまして御意見ございませんでしょうか。大和先生、どうですか。
○大和委員 大体さっき申し上げたとおりで、定義のところにちょっとかかわることですけれども、「個人的に吸引する」という言葉を入れておいたほうがいいかなと思いました。
○谷川委員長 定義のほうですか。では、部屋の中でたくというのはなしということね。
○大和委員 それを今、問題になるようなところで使っているかなと思って、そうすると蚊取り線香のベープまで対象になってしまうような気がして、それで「個人的に吸引」というのを入れたほうがいいかなと。
○谷川委員長 あれは吸入が目的ではないでしょう。
○大和委員 ええ、吸引を目的にとか、何かそういう言葉は必要なのかなと思っていたのですけれども、直接肺に吸引することを目的にとかですね。済みません、ちょっと話が変わって。
○望月委員 では、間接はいいのですか。ベープ小屋みたいなのがあって、そこに行く。要は、ふりで入ってベープ小屋で吸うとかいうのも、アヘン窟のような感じで。
○大和委員 結局そういうのが全部健康影響につながっていくわけですから、それで今、思ったのです。
○望月委員 直接吸引。
○谷川委員長 直接吸引ね。
○欅田委員 また定義のほうに戻ったのですけれども、健康影響のことに関して、先ほどの望月委員が出された資料1の10ページのスライド20のエアロゾルの組成に関してですが、私たちが今回、電子たばこのほうでターゲットにしているのは、カルボニル類を中心にして分析しているわけです。紙巻きたばこに関してはここの赤で示しているようなものを一斉に私たちのほうでも分析しています。ただ、日本の場合は、とりあえず法的にはニコチンが入っている電子たばこは薬事法との兼ね合いで販売しないとなったときに、紙巻きたばこの中での有害性というのも今後の有害物の暴露の中でどうなるかということで、第2回、第3回の検討会で望月委員のほうから、それらのリスクに寄与する割合がどうなのかというのも出していただいています。
その中で重点的に見ていくと、やはりタバコ特異的ニトロサミンというのが入ってこないような状況であれば、カルボニル類が一番効いてくる。重金属も問題になってくるけれども、電子たばこのような構成成分の中ではほとんど入ってこないとなると、一番効いてくるのがカルボニル類で、その発生が、もともとリキッドには入っていないものがこういう酸化反応の中で起こってくるということをすごく早い段階から私たちのほうでも報告していたところです。海外のほうでもやはりその辺を追随されて情報が出てきて、今、カルボニル類をターゲットに問題視しています。
ハームリダクション、毒性が低いから電子たばこに置きかえていきましょうという議論のところもあるのですけれども、その中において、カルボニル類が出てくる可能性はあるけれども、紙巻きたばこに比べて桁が違うぐらいの濃度しか出てこないという議論が入っているところもあります。現状は、私たちがずっと測定してきたところを見ると、今お示ししたように紙巻きたばこを凌駕する濃度のものが出てきます。ベーパーがいっぱい出てくるものであれば、そういったものが普通に流通しているという状況であるので、そこはいま一度皆さん気をつけて見ていただかないといけないのかなと思うところです。
○谷川委員長 そうですね。わかりました。
こういうものを考えますと、まずカルボニル基のような、あと、タバコ特異的ニトロサミンが含まれているということから、電子たばこの煙等については発がん性物質が含まれていることは間違いないわけですね。そして、電子たばこの使用による健康影響の存在は否定できない。3番目に、長期影響については今後の検討課題であるということだと思いますけれども、この3点についてはよろしいでしょうか。そこはここの委員会での一つの合意事項としたいと思います。
続きまして、日本における健康影響や未成年者への影響の現状につきまして、お考えをお聞きしたいのですけれども、未成年者についてというのは、これがゲートウエーになるのではないかという話がありました。この辺は望月先生、もう一回、お願いできますか。
○望月委員 日本のデータがないので何とも言いがたいのですけれども、まず年齢制限がないというので未成年でも入手できて、言いかえれば合法だというような位置づけにあるのが問題だと思います。海外ですと、やはり成人よりも未成年の使用率の上昇のほうが著しいので、恐らく日本でも同様な状況が起きてくるのではないかと思います。
それから、たばこについても同様の議論があったと思いますが、若い生体というのは外来性の有害物質、発がん物質に対して感受性が高いというような、発達段階の身体に対する影響というものもありますし、ニコチンを含むものに対しては、幾ら日本では合法的に出回っていないといっても実際には入手できるので、そういうたばこでない、要は摂取経路が新たに口をあけているということでの子供たちの脳への影響、そこからのゲートウエーが、さきほどの私のスライドにもあったように、喫煙へのゲートウエーと同時に危険ドラッグへのゲートウエーにもなるというようなことから、未成年に対しての影響というのは、健康影響のみならず社会的な影響もあり得ると思います。これもぜひ調査を起こしたいところですけれども、これについては恐らく欅田先生のほうから御意見があると思います。
○欅田委員 ちょっと続きをしゃべらせていただきます。日本の現状に関しては、まだ情報が全然ないということで、今回私たちのほうで、ネット調査でかなり大規模に実態を評価しようということを計画しているところです。次回の検討会ぐらいにはその情報も提供できるようにしていきたいと思っているところです。
もう1つは、未成年への毒性ということに関していえば、先ほど望月委員のほうからも幼小児が誤飲するということがありましたけれども、現状でも救急搬送される幼小児で一番大きな問題にたばこがあります。特に1歳児ぐらいであれば一番大きな問題になってきます。たばこの場合は葉ですから、直接すぐに吸収されるということが余りないのですけれども、電子たばこはリキッドの状態なので、入るとすぐ吸収されるわけです。結構高い濃度のリキッドも販売されているところでありまして、20mg/mℓの濃度のものが販売されています。リキッドの販売のキットとしては通常6mℓぐらいのものが多いのですけれども、それを電子たばこのほうに入れるときに、これが今そういう状況のものですね。
(望月委員が実物を提示)
○谷川委員長 カートリッジですね。
○欅田委員 電子たばこの本体のほうにも現在既に1.5mℓぐらい入るのがほとんどになっています。そうすると電子たばこはひっくり返すと時々ぽたぽたと液が落ちてくるような状況になります。
○谷川委員長 危ないですね。
○欅田委員 テーブルとかに置いておいて、子供が遊べばそのまま。
○谷川委員長 なめてしまうのですね。
○欅田委員 なめて、入ってしまう。乳幼児の致死量が大体10~20mgといいますから、1mℓ弱その濃度のものが入ってしまうと、それが致死量になってしまうということもありますので、そういった観点からもすごく気をつけておかないといけないと思います。
現在、日本の場合、ニコチン入りは制限されているとはいっても、ほとんど個人輸入代行でネット上、買える現状にあります。一応このカートリッジには、海外から全部輸入されていますけれども、18歳以下は禁止というマークはついているのですけれども、日本の場合は、未成年者、妊婦の場合は気をつけてくださいみたいなことが若干書いてある程度です。
○谷川委員長 今、これ日本ではもちろん禁止なのでしょう。
○欅田委員 個人輸入であれば。
○谷川委員長 未成年者は。
○欅田委員 いや、個人輸入で入りますから、デバイスも今、規制されていないから、使ってしまおうと思えば使える。
○谷川委員長 例えば高校生が電車でたばこを吸っていたら、これはアウトでしょう。電車の中で高校生がこれを吸っていても取り締まれない。
○望月委員 今の未成年者喫煙禁止法の中に取り入れるかどうか。
もう1つ、今の子供向けのことで言うと、さっき全然触れなかったフレーバーの問題があって、キャンディフレーバーとかフルーツ味とか、そちらのほうが非常に多いのです。大人のたばこ使用者は、たばこ味から入ると言われているのですけれども、新しい子供たちは、本当に甘ったるいにおい、そういったほうから入っていくので。
○谷川委員長 バニラとか。
○望月委員 そうです。それがカラフルな容器に入っていたり色がついていたりすると、子供はジュースと間違えて飲んでしまう。先ほど欅田先生がおっしゃったように、たばこというのは食べたらまずいわけですね。でも、液体というのは、入ったら。
○谷川委員長 もう終わりだね。
○望月委員 私はそのリキッドをなめたことはありませんけれども、においからして本当に甘ったるくて、子供はそういうフレーバーを好みますね。そういう認知的な危険性もあるのではないかと思います。
○谷川委員長 先生の資料1の5ページの9枚目のスライド、「CDC2013、2014」の「米国青少年における電子タバコ使用」がありますね。ハイスクールの4.5というのは、4.5%が吸っていると考えていいのですか。
○望月委員 そうです。
○谷川委員長 米国においては青少年に対して電子たばこは規制されていないのですか。
○望月委員 規制されていないです。それをしようとFDAが考えているので。
○谷川委員長 これは結構高いですね。
○望月委員 それがふえているということは、やはり非常に入手しやすいということと、ピア・プレッシャーということで広まりつつあります。
○谷川委員長 わかりました。
そういうことで、まだ日本においてはデータもないことで、海外の状況を踏まえつつ、日本の使用について、特に未成年者についてはさらにデータ収集が必要ということで、認識として考えてよろしいでしょうか。
それでは、ほかに何か先生方おっしゃっておきたいことはございますでしょうか。ちょっと時間も押してまいりましたので、言い足りなかったことは、どうぞ。
○井上委員 望月先生のところで質問する時間がなかったのですけれども、今の未成年者の話で、7ページの14枚目の既に未成年に対する規制が進んでいる国の規制されたいきさつのようなものは、どういう大義名分で規制が進んだのか。特に驚くのは喫煙率の高いイタリアとか、ギリシャですか、余り規制できないのではないかと思うような国がやっているとか、アメリカは随分と規制が進んで販売禁止とか、ですから、この辺の事例がすごく参考になると思っていて、きょう議論する話ではないのですけれども、もし背景がおわかりになるようでしたら、参考になるのではないかと思います。
○望月委員 次回、もう少し詳細に調べてまいります。
○谷川委員長 それに関連して、課税について電子たばこはどうなっているのですか。
○望月委員 課税は、アメリカでミネソタでしたか、2つの州がされています。
○谷川委員長 日本において、値段が安いので、青少年や非使用者のアクセスバリアが低いというのがありましたけれども、日本における課税はどうなっていますか。
○望月委員 日本は、これはたばこではないので課税されていない。
○谷川委員長 それも一つの問題なわけですね。
○望月委員 そうですね。簡単に答えますと、未成年の使用禁止は、たばこ製品というくくりにしてしまえば、未成年に対して喫煙禁止の法律を持っていればそれが適用され得る。定義次第ですね。
○井上委員 線を引くというのが大事なのですね。
○望月委員 でも、必ず議論の背景はあったと思いますので、調べてみます。
○谷川委員長 わかりました。
それでは、本日の議論の結果を事務局のほうで後ほど集約していただきまして、次回の専門委員会で事務局より提示していただくことでいいかと思いますけれども、よろしいでしょうか。
では、ありがとうございました。
それでは、本日の議論はこれで終了いたしますけれども、最後に今後のスケジュールにつきまして、事務局のほうから御説明をお願いいたします。
○小野補佐 今後の日程について御案内申し上げます。次回、第6回の専門委員会につきましては、改めて事務局より調整させていただき、御連絡差し上げたいと思います。
以上です。
○谷川委員長 では、本日はこれで閉会したいと思います。どうも御協力ありがとうございました。
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