ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会・援護局(社会)が実施する検討会等> 生活保護受給者の健康管理の在り方に関する研究会> 第3回生活保護受給者の健康管理の在り方に関する研究会議事録(2014年10月22日)




2014年10月22日 第3回生活保護受給者の健康管理の在り方に関する研究会議事録

社会・援護局

○日時

平成26年10月22日(水)14:00~16:00


○場所

中央合同庁舎5号館 共用第9会議室(19階)


○出席者

相澤 照代 (委員)
芥川 千津 (委員)
浅沼 奈美 (委員)
石原 美和 (委員)
滝脇 憲  (委員)
津下 一代 (委員)
中板 育美 (委員)
増田 和茂 (委員)
村山 伸子 (委員)
森  貞述 (座長)

○議題

・委員からの報告
・報告に対する質疑、意見交換
・その他

○議事

○森座長 それでは、時間前でございますが、第3回「生活保護受給者の健康管理の在り方に関する研究会」を始めさせていただきます。

初めに、大変申しわけございませんが、本日は途中退席させていただきますのでご了承願います。

 進め方といたしまして、相澤委員、芥川委員、増田委員、中板委員、それぞれ最初にプレゼンしていただいて、その後、質疑応答とさせていただきます。

 最初に、相澤委員のほうからよろしくお願いいたします。

 

○相澤委員 それでは、川崎市における健康管理支援についてお話をさせていただきます。

 1ページおめくりいただきまして、今回の内容については1番から18番までになっております。

 3ページ目、川崎市の概況をお話しさせていただきます。平成26年8月末日現在、人口は146万人、世帯数が687,423世帯です。平均年齢は42.3歳、年少人口比13.1%、老齢人口比18.3%で全国平均は25%ということですので、やはり若い都市と言えるかと思います。

 右の図にございますように、川崎市は、北側に東京都、南側に横浜市、この2つの大きな大都市に挟まれていて、東西に長い位置関係になっております。JRの南武線が東西に走っていて、南北には各種私鉄が走っているという位置関係にございます。

 その中で、川崎市の生活保護受給者の状況でございます。ここには20年度以降を示しておりますが、リーマンショックがございました平成20年9月以降やはり生活保護受給世帯は伸びておりまして、受給人員、保護率ともに伸びております。ただ、川崎市は人口が社会増も自然増も伸びているということもありまして、生活保護率は下がっている状況にはあります。また、高齢者世帯のうち単身世帯が91%を占めているのが大きな特徴であるかと思います。

右のほうに世帯類型として生活保護の世帯の属性によって分けたものを示しております。高齢者は65歳以上の方と18歳未満の子供を含む世帯、母子は18歳未満の子供とお母さんの世帯、障害は障害をお持ちの方、障害を持っているがゆえに働けない世帯、傷病は障害以外の病気をお持ちで働けない世帯、上記4つ以外のものをその他世帯という区分で分けております。川崎市は、ここに示しておりますように、全国平均とほぼ同じような割合になっております。 

次に、4ページ目の2の医療扶助・介護扶助の動向で、これも平成21年度から直近の平成26年8月までのものをお示ししております。高齢者世帯の増加とともに、医療扶助人員の増加が顕著でありまして、平成21年度73.2%だったものが直近の26年8月では77.8%に伸びております。生活保護の扶助費は川崎市全体の予算の約1割を占めていまして、そのうちの4割、約230億円が医療扶助費になっております。あと、ここにも書いていますが、自己負担額がないことの影響も多少考えられるということを入れさせていただいております。下段にありますグラフは、介護扶助人員も高齢世帯の増加とともに伸びていくものでございますので、あわせてお示しをしております。

5ページ目、3の川崎市生活保護・自立支援対策方針は、リーマンショック以降増え続けている生活保護受給世帯について、私ども生活保護主管課のみでなく全庁的に何らかの対策を打っていく必要があるだろうということで、平成2311月に「川崎市生活保護自立対策会議」を立ち上げました。川崎市は3人の副市長がいるのですが、副市長3人を頭とします会議になっております。この会議の中で、関係機関、関係部署の職員等からの意見をまとめたのが「川崎市生活保護・自立支援対策方針」となっています。本日、一部だけお持ちしていますが、御興味のある方がいらっしゃいましたら後で見ていただければと思います。 

基本目標は「地域と連携を図り、個人が持つ能力を最大限活用できるよう支援し、社会の活力を維持し、市民の安心な暮らしを保障していくとともに、適正な生活保護行政を実施し、持続可能な制度としていくことを目指す」となっております。

基本施策の中の1つとして、今回に関係しますが、5番目に健康づくり支援を掲げさせていただいています。いわゆる経済格差による健康格差の拡大が言われておりますので、この縮減が大きな命題となっております。

ページをおめくりいただきまして、6ページ目、麻生区モデル事業がこの対策方針を打ち立てる上で参考になった事業でございます。川崎市は9つの福祉事務所がございますが、最小の福祉事務所である麻生福祉事務所で先ほど言いました世帯類型に分けた生活支援の方法を模索してはどうかということで、高齢者は高齢者だけを持つ担当ということにしました。本来、生活保護のケースワーカーは民生委員単位の地区割りでの地区担当という形での持ち方をしているのですが、これをあえて属性で分けて担当して支援を模索するのはどうだろうということで始めた事業でございます。

その中で、川崎市の生活困窮者に関する調査をあわせて行いまして、顕著になったのが高齢者の方の孤立化です。先ほど言いましたように、91%が単身であるということ、御家族がいないということとあわせて、友人・知人と交流がある方が20%しかいらっしゃらないということでした。それから母子のお母様の体調が悪い、余りよくないというところを含めますと50%近い方が体調の不調を訴えている、これが調査の中では大きな視点と考えられるところでございます。

それから、高齢者世帯を担当する係に健康管理支援員を配置しました。本市の看護師OBで、障害も担当し、介護保険施設で高齢者も担当された方がいまして、その方を健康管理支援の部分の非常勤ということで配置し、モデル事業を展開していきました。

高齢者世帯の訪問調査は、設定している訪問頻度では、1年に2回行けばいいと国が示している最低限の格付の方が多いので、それだとなかなか目が届かなかったり、声が聞こえなかったりということがありました。この方に個別支援を中心にやっていただこうということで配置し、訪問調査を中心にさせていただきました。そのときに、血圧計とかいろいろ医療器具をお持ちになって各家庭を訪問しますが、やはり看護師さんであるということで高齢の方には受け入れられやすいというか、自分で病院に行くには足が遠いのだけれども、来てくれて診てくれるならいいという気安さもあって、その方のキャラクターもあるかと思いますが、受け入れられたということがございます。

まず、これを契機としまして、先ほどの対策方針に盛り込むと同時に、職員配置を考えていきました。25年度には正規職員の保健師9名、本庁の生活保護自立支援室1名と福祉事務所に8名を配置しましたが、本庁の1名は麻生区モデルと兼務でやっておりました。非常勤職員として24年度から採用しました看護師1名に加えて、5,007世帯ある最大事務所の川崎福祉事務所にもう1名の看護師を配置しました。26年度は、兼務を置いていた麻生区にも正規職員を配置し、各福祉事務所1名ずつの正規職員を配置するとともに、川崎福祉事務所は巨大事務所で、なおかつ高齢化が進んでいる事務所だということもあって更に1名の非常勤も配置しているところです。

右側の赤書きは、24年度、25年度で行ってきた健康管理支援業務の中でこういうことが必要であろうと定めて支援してきた内容です。個別支援、生活習慣病重症化予防対策、生活保護受給者健診勧奨、研修の企画実施、連絡調整となっております。

医療・介護扶助業務とありますが、保健師は健康管理支援業務とあわせて医療・介護扶助の適正化という業務も担っておりまして、システム処理というのは、いわゆる医療券の発券とか、病院への受診の状況の確認です。書類情報による課題把握というのは、各ケースワーカーが主治医を訪問して病状を調査しますが、そういう書面での生活保護受給者の方の情報も整理して、この方についてはどういう課題があるか把握していったという経緯がございます。

次に7ページ目、5の健康管理支援の事業内容に入っていきますが、左側に受給者の方の課題を書かせていただいております。健康状態の分析、健康意識の向上、重症化予防、介護予防、社会的孤立です。これを支援する職員側の問題ということでは、医療的な知識が非常に乏しいということがあってケースワーカーの知識・意識の向上、あと、福祉事務所内の体制づくりは、健康管理支援員は保健師1名なので組織としてどうやって体制をつくっていくかということが大きな課題でもありました。その中で、健康面で自立助長を図ることと医療・介護扶助の適正化という2つの大きな目標を持ってこの事業を進めてまいりました。

右側は、先ほど言いました健康管理支援業務の詳細な内容についての25年度と26年度の取り組み内容ですが、後でご覧いただければと思います。

次に8ページ目、6の生活保護の健康管理支援の課題でございます。受給者の方は、後で出てきます糖尿病の調査で見つかったのですが、約7割近い方が複数の病気をお持ちです。1つの病気ではなくて複数の病気を持っている方が非常に多くいます。高齢であったり、障害をお持ちの方もいらっしゃいますし、理解力の低い方もいらっしゃる。こちらの言っていることや指示がなかなか入りにくいという方も多いということがあります。それから、これまで生活するのが精いっぱいで、病識はあったとしてもなかなか医療機関につながらなかったという方が非常に多く、行かなければいけないという自覚があっても経済的な部分で行けなかったという実態があり、疾病の発見がおくれてしまった方が多く見られたということです。

生活・環境のところでも同じような内容を書いております。

個人のところでは、価値観の多様性ということで、御本人のいろいろな考え方で生活をされている方、非常に個性的といいますか、いろいろな生活歴をお持ちの方が非常に多くいるという難しさも感じているところでございます。「健康に対する意欲や健康になりたい理由がない」というのは、長年の経済的な困窮状態で生活するのがやっとという中では、明日への活力が見つけにくい方が非常に多いというところもこの支援の難しさにつながっています。最後の「認められる経験が少ない」というのは、その方が存在そのものを認めていただいた経験が非常に少ない、成功経験が非常に少ないというところがあります。

その方たちをどういうふうに支援していって、何を目指していくかというのが右側の課題です。就労自立を含めた経済的な自立、日常生活の自立、社会的な自立の何を目指すのかということです。それから、自分のことをこんなに聞いてもらったことがない、受容されたことがない、認めてもらったことがない、誰かにこんなに自分のことを話したことがないという方が非常に多い。この辺が健康になる理由を一緒に考えることが非常に重要だと気づかされた点です。それから、ケース検討記録作成にICFを参考としました。ICFとは国際生活機能分類ということで、人の健康状態を系統的にいろいろな環境とかの相互作用を含んで見ていくものだそうですが、それを参考として指標をつくったということで、記録票を載せております。あと、専門的な機関につなぐことも重要だということも気づかされました。

福祉事務所・保健事業部署での問題は、ケースワーカーは頑張っているというのは手前みそになってしまいますが、ケースワーカーは前向きではあるのですが、それに伴う知識が不足しているところがあって、予防的な介入とか体系的な支援には至っていないというところがございます。医療・介護に関する情報を習得させる必要もありますし、そういうところでケースワーカーに対する研修の必要性というのもここで見えてきた課題になっております。

右側は、保健師、ケースワーカー、それ以外の関係機関とのチームアプローチの必要性や、ケースワーカーの意識の向上、その方のいろいろな情報の分析等も必要になってくるというところです。そして、組織として支援をきっちりまとめていって検討してシステム化していくことが必要になっております。それから、前回のこの会議でもお話がありましたように、生活保護受給者の方は経済的な困窮状態にはありますが、一市民でありますし、一地域にいる方ですので、保健事業部署とどう連携していくかというのも大変重要になっております。

次に9ページ目、7の医療・介護扶助費の適正化ですが、頻回受診・重複受診・ジェネリック医薬品の利用促進は国のほうで指示をいただいております医療扶助の適正化の3大要素であり、ここに健康管理支援がどうかかわっていくかというところです。ここで一番に言えるのは、なぜその方がこういう状況になっているかということの分析が必要だということです。必ずしもその方は医療を求めて頻回に病院に行っているわけではないというのが見えてきた実態であります。やはり行き先がない。さっきの孤立化ですね。91%の方が単身で、80%の方が誰も身近な身内がいない、お話しできる方がいないというところで、医療機関に行けばどなたかがいて、話し合える人がいる、そういうことが見えてきました。ですから、本来的な目的の裏にあるものを健康管理支援の中で見ていこうというのがこの医療扶助の適正化を図る中で見つけたものになっております。

次に10ページ目、8の個別支援ですが、ここは健康管理支援業務として保健師が25年度に行った内容です。一番多いのが状況の確認です。その方の生活状況がどうなっているかということ、服薬や病気の状況がどうなっているか、医療も含めた生活習慣はどうなっているかというところが見る対象になっているようです。

次に11ページ目、9に示しておりますのは健康管理支援記録票です。一人一人かかわった方にはこのような形で冊子にして健康管理支援記録票を作成しまして、記録をどんどんためていっております。

その内容が11ページから13ページまでとなっております。後で専門の委員の方に御意見をいただければうれしいとうちの保健師が言っておりましたので、こういうふうに改善したほうがいいということがあれば御意見をいただければと思いますのでよろしくお願いいたします。ここは記録票ですので、後で見ていただければと思います。

14ページに移ります。25年度に行ってきた中で糖尿病対策の一つとして糖尿病アンケート調査を行いました。川崎市はケースワーカーが今年度だと300人ぐらいいるのですが、ケースワーカー1人当たり2ケースぐらいの方についてアンケートを行いたいということで、調査客体自体が574ケース、そのうち実際回収できたのが464ですので、80%くらい回収ができております。

実際の調査票は16ページにおつけしております。20項目について、先ほど言いましたように、生活保護を受給されている方は理解力が低かったり御高齢の方が多いということもありますので、ケースワーカーの訪問時の一対一による聞き取りによる調査という形で行わせていただきました。

 お戻りいただきまして、14ページがアンケートの内容で、指標的な数字のところをわかりやすいように円グラフと棒グラフで描いております。

内容は15ページにまとめております。13の「糖尿病対策1糖尿病アンケート調査」の糖尿病アンケート調査の結果からということですが、最初に、自覚症状や合併症を自覚しているのはそれぞれ半数以上で、半数の方は自覚症状も合併症もわかっている。糖尿病以外の疾患を持っている方が7割以上となっています。実は、糖尿病教室を開いたのが川崎区という、いわゆるドヤと言われる簡易宿泊所が多く存在する区でしたので、台所がないという人が1割ぐらいいらっしゃって、買食、外食が中心だということが出てきました。あと、1日当たりの食費が500円から1,500円ということ、食事の回数も1回か2回と答えた方が26%ぐらいいらっしゃるということで、3回きっちり食事をしていないという方もいらっしゃいました。

次に、調査ケースから課題と感じた例では、合併症とかいろんなことの知識は多少お持ちなのですが、それが自己流の管理になっていて、正しい管理になっていない。それから、精神疾患などで自己コントロールが難しい方が非常に多くいらっしゃいます。先ほど言ったように、病気を複数持っていらっしゃるという方ですね。それから、症状や服薬、生活の状況をうまくお医者さんに伝えられていないのではないか、言葉をうまく使って説明できていないのではないかという方や、生活リズムができていない方もいらっしゃる。食事よりもお酒が優先、食事にお金はかけないという方もいらっしゃったということです。これがよくないことだとわかっていてもやめられないという方も多く、ここの層をどうしていくかというのも課題だということです。これが結論ですが、生活を変えて病気がよくなっても仕方ないと思っているということです。御家族がいて、それを一緒に喜んでくれる方がいらっしゃらない、そういう孤立感というところで達成感にうまく結びついていかないというのが課題だと見えてきました。

一方、自己管理をちゃんと行っている方は、右側に書かせていただいているように、散歩を日課で行っている、野菜を多く食べるようにしている、体重をちゃんと気にしている、施設で食事を用意してくれているので大丈夫という方もいらっしゃいました。

その中で、糖尿病教室に一緒に参加したケースワーカーの感想といたしましては「受給者の症状を詳しく知ることができた」とか、これは勉強不足で恥ずかしい限りですが、「検査数値の意味がわかった」、それから「話に広がりがでて生活状況の聞き取りに役立った」。実際ケースワーカーが訪問に行ったときもこの方たちとどう話をして帰ってくればいいかわからないと言っていたのが、この研修をきっかけに病気のことをお話しすることでその方の内面にまで深く入り込むことができたという声も聞かれています。「症状を思っていたよりきちんと把握していて驚いた」という声や、同じようなことを別のケースの方にもやってみましたという声も聞かれました。

17ページ目、15の糖尿病対策の2つ目、糖尿病教室を開かせていただきましたが、栄養士の先生をお招きしまして、さっき言いましたように買食や外食が多い、作るのは少ない方が多いということでしたので、100円均一のお店やコンビニでこのお弁当を買うのだったら次に何かを足しなさい、そのためにはこういう組み合わせがいいとか、具体的にその方の今の生活の状況に合った形での支援というものを行いました。この方たちは病院で糖尿病教室とかいろんな教室に出ていらっしゃるので、そういう知識はおありなのですが、実際の今の生活にどんなものが役に立つのかという視点からの教室を開かせていただきました。

感想は下に書かれているように「指導を受けている内容に確信が持てた」とか「他者の話を聞いて、改めて自分はどうなのか生活の振り返りができた」とか「自分に必要な情報を確認し関心がある様子が見られた」ということが確認されました。

次のページに移っていただきまして、糖尿病教室に出られた方のその後の調査内容になっております。ここを見ると余り芳しくないというか、それほど大きな成果があったと言えるものではないのですが、若干の変化が見られた方、意識が変わった方が見られたというところがおわかりいただけるかと思います。これは後でお読みいただければと思います。

次に19ページ目、17は生活保護受給者健康診査です。最初の会議のときに、川崎市の受診率は10%というお話をしたのですが、よくよく調べましたら25年度は9.8%でした。それでも高いですよと言われたのですが、右側に書いてある「健康のたしかめをしていますか」というのが、昨年度、チラシとポスターという形で福祉事務所や関係機関に貼らせていただいたものです。今年度新たにやることは、ケースワーカーにも周知した上で、保健指導で返ってきた内容についてお持ちいただいた方にはその後の指導を行うということです。

最後に、20ページ目、18今後の課題といたしまして、2つ挙げております。一つ目は、医療等情報の分析と評価です。一番最初のこの会議でも他の委員の方がお話をされていたように、医療情報を正しく分析して、今後どう進捗していくのか、どうなっていくのか分析していくということです。二つ目は、今行っている健康管理支援についての指標が定かではないというところです。明確な評価方法がない、医療扶助の適正化とうたってはいても、具体的な効果額とか目に見える形での顕し方、スケールがないというところがやっている者としては難しさを感じているところです。後は、中長期的な課題ですので、効果が見えてくるのは20年後、30年後、重症化しなかったからこういうふうになったということでもあると思いますので、そういう指標の置き方というのが大変重要になってくると考えております。

以上です。

 

○森座長 どうもありがとうございました。次に、芥川委員よろしくお願いいたします。

 

○芥川委員 続きまして、上尾市における生活保護受給者に対する健康支援の取り組みにつて御報告させていただきます。

 2枚目、上尾市の概要を簡単に御説明させていただきます。上尾市は、東京から約35km、埼玉県の南東部に位置し、さいたま市に隣接していまして、典型的な住宅都市という市になっております。人口は22万人を超えて、県内では8番目の人口規模になっております。その中で世帯数も年々増加しておりまして、平成17年の時点で単身世帯が1万7,796世帯、そのうち65歳以上の単身世帯が4,293世帯、総人口の5.3%が65歳以上の単身世帯という状況です。高齢化率は、平成26年1月時点で23.5%、県の平均21.7%より若干高い状況です。平均年齢は44.1歳、県内27番目で、高齢化が進行してきていまして、今後においても上尾市の高齢者人口は増加を続けると予測されています。

 3枚目は、被保護世帯と被保護人員の推移ということで載せさせていただいております。こちらも全国的な動向と同様に増加傾向にあります。平成25年度は、就労支援員の活動の効果もありまして、新規に保護を開始するケースよりも廃止になるケースが多い月が2カ月あったということで、前年に比べ若干の減少となっておりますけれども、今年度になりまして再び増加に転じているという状況です。

 平成25年度の被保護世帯の内訳を見ますと、高齢者世帯が47.4%、障害者世帯が11.8%、傷病者世帯が17.0%というように、疾患を抱えているもしくは容易に病気にかかりやすいという被保護者が圧倒的に多いという状況で、これは全国的な統計と同じような状況でした。

 4枚目は、医療扶助費と生活保護費の推移です。医療扶助は生活保護費の大体4割を占めているという状況です。平成25年度は、保護世帯の減少という影響もあって前年度より若干減少しておりますけれども、今後、被保護世帯の増加に伴う医療扶助の増加を考えると上尾市においても医療扶助の対策は重大な課題と捉えております。

 5枚目ですが、そのような課題がある中で、健康支援プログラムに上尾市が取り組むきっかけとしては、平成23年度に電子レセプトシステムが導入され、病院受診した際の病名や処方内容が把握しやすくなったということや、先ほどの川崎市さんの9%を聞くと何か恥ずかしいところではあるのですけれども、一般健康診査受診率が3%台でかなり低い受診率であったということ、ケースワーカーが被保護者とかかわる中で、食生活が乱れて太っている人が多いと実感していたこと、何よりも平成24年度に保健師の常勤配置がなされたということが大きいのではないかと思います。

 私の上司の話によると、近年の顕著な傾向として高齢者や精神障害者などの処遇に工夫を求められる受給世帯が多いということや、精神病の罹患率が多いということもあって、健康管理や介護・自立支援プログラムを立てて指導していくために、毎年、保健師の配置を要求していたそうなのですけれども、要求して5年目にようやく保健師が平成24年度に配置されたということです。

 健康支援のプログラムとしましては、健康増進プログラムと健康管理支援プログラムがありますけれども、まず健康増進プログラムについて御紹介します。健康増進プログラムは、生活習慣病の予防と早期発見・早期治療を目的として実施しています。こちらに関しては、衛生部門である健康増進課と共同で行っている事業です。

 6枚目は、健康増進課の紹介を簡単にさせていただいています。上尾市は東西を挟むように高崎線が通っていますが、高崎線を挟んで東西に保健センターがあります。専門職の配置としましては、東西で合わせて保健師が22名、栄養士が4名、非常勤特別職の歯科衛生士が1名います。保健師の業務につきましては、地区分担制をとっておりまして、母子、精神、成人などに特に関係なく担当地区のケースの支援を行っております。保健事業については、それぞれの保健師が担当の事業を持ち、責任を持って事業運営をしているという状況で行っております。

 7枚目の健康増進プログラムに戻って流れを説明させていただきます。まず、生活支援課のほうで一般健診を受診してほしい人を抽出いたしまして、抽出した人に健診の申込書を送って受診勧奨をします。一般健診の受診勧奨者というのは、このプログラムの目的の生活習慣病の予防と保健指導の効果という観点から、年齢が40歳から64歳までの方で、糖尿病、脂質代謝異常、高血圧、動脈硬化などの内科疾患で通院中でない方を勧奨対象にしています。ただ、勧奨対象でなくても40歳以上であれば一般健康診査の受診は可能です。健診を希望する被保護者は、健診の申し込みをし、実施医療機関で健診を受診します。受診後、受診した医療機関を通して健診結果を確認していきます。医療機関は、健診結果を健康増進課にも送付いたしまして、その健診結果をもとに健康増進課は保健指導対象者を抽出します。保健指導対象者は、いわゆる特定健診の積極的支援、動機づけ支援に該当する方で、腹囲が一定以上、男性が85cm、女性が90cm以上の方か、BMI25以上で、かつ高血糖、脂質代謝異常、高血圧のいずれかがある人を抽出しています。

受診された方は医療機関で健診結果を手にしているのですけれども、健康増進課のほうからも健診結果を、検査基準値と、健康増進課で実施している健康応援相談という事業の勧奨のチラシを同封して送付します。健診結果を送付して1カ月たっても本人から自発的な健康応援相談に申し込みがない場合には、健康支援課の担当ケースワーカーが健康応援相談にかかるようにということで勧奨します。それで本人が健康応援相談を申し込み、健康増進課で保健指導を行うというのが一連の流れになっております。

この健康応援相談というのは、生活保護受給者の方のための事業ではなくて、市民の方を対象にした保健事業ということになっております。具体的な内容としましては、血圧測定、尿検査、体重・体脂肪測定をして、1時間ぐらいかけて保健師、栄養士、歯科衛生士、運動指導士が個別指導を行うという内容になっております。

8枚目を見ていただきますと一般健康診査の受診状況を載せております。実は、一般健康診査の勧奨を始めたのは私が配置になって24年度からなのですけれども、24年度は受診者数と受診率も、もともとが低かったので増加と言っても何か恥ずかしい数値ではあるのですが、一応増加しました。ただ、ちょっと要因がわからないのですけれども、25年度に関しては受診者数も受診率も勧奨していなかった23年度よりも下がってしまっていて、どうにかしなければいけないと思っていました。今年度に関しましては、これは受診券の発券ベースなので必ずその人が受診しているというものではないのですけれども、受診券の発券枚数としましては86枚ということで、この方たちが受診につながれば一応24年度を超える受診率になる予定です。

9枚目は、一般健康診査受診者の中の要指導者の割合です。平成24年度74名受診して29名が要指導、39.2%でした。平成25年度は41名の受診に対して9名が要指導、割合は22.0%です。今年度に関しましては、9月30日現在で健康増進課のほうに健診結果が上がってきている人数が18名で、そのうちの5名が要指導の該当になっておりまして、27.8%です。

参考までに、上尾市の特定健診の要指導該当者は10%弱を切っておりますので、それを考えるとやはり一般健診の対象者のほうが要指導になる割合が高いということがわかります。

今までの会議の中でも生活保護においてはメンタルを患っている方が多いというようなお話があったと思うのですが、要指導者の方の状況を見てみたときに、結構多くの割合で精神疾患にもかかっているということがわかりました。保健指導をするにしても、何とか教室みたいな感じで集団指導するというのでは十分ではなくて、より個別的な指導が必要なのではないかとデータを見ても感じております。

10枚目は、健康応援相談の勧奨結果について載せています。健康応援相談の勧奨は、今年度は生活支援課で行っているのですけれども、平成24年度、25年度に関しましては、健康増進課のほうで行って、電話で勧奨をしていました。前のページで平成25年度の要指導者が9人となっていたのですけれども、健診を受けた後に市外に転出されて保護廃止になり、勧奨対象から外れた方がいるので、平成25年度の合計の人数は8人になっています。平成24年度も25年度も実際の健康応援相談につながったのが4分の1程度しかなくて、指導の必要な人に適切な指導がきちんとできていないという課題がありました。

11枚目は、この健康増進プログラムの今後の課題と対策を載せています。まず、一般健康診査の受診率の低下に対しては、特に先ほども御報告したのですけれども、健診を受けてもらいたいケースについては、健診の申し込みをしてくださいということではなくて、受診券を発券して、これを持って病院に行ってくださいとするようにしてみました。「福祉だより」というのを年に3回、4月、8月、12月に全受給者の方に送っているのですけれども、こちらでも4月と8月に健診を受けてくださいということで勧奨しています。健診申し込みが10月まで、健診の実施期間が11月までなので、4月と8月に「福祉だより」にも健診のことを載せています。

2番目として、健診結果を健康増進課と共有することに関して受診者への周知ということです。過去に健康増進課で健康応援相談の勧奨をした際に、何で健診データをそっちの課が知っているのだ、みたいな感じで個人情報の行き違いというところで問題になった事例もありました。健診の申し込み時や、受診券や受診票を記載してもらうときなどに健診結果の取り扱いについてもきちんと被保護者の方に伝わるようにし、健診結果を健康の保持・増進の為に役立てていくことを周知していく予定です。

3番目として、要指導者の受相率が低いということです。先ほどもお話ししたのですけれども、去年までは健康増進課からは健診結果を送っていなかったのですが、今年度から健康増進課からも健診結果と基準値についてと健康応援相談の事業のチラシを郵送するということと、勧奨については健康増進課からよりも担当のケースワーカーのほうがより指導に結びつくということで、生活支援課のほうから勧奨するという方法に変えています。

4番目として、健康応援相談の未受診者への対応が不十分であったということ、健康応援相談自体が単発の保健事業になっておりまして、継続的な支援ができていないということ、健康応援相談後の評価やフォローが不十分だということが今までありまして、こちらに関する対応としましては、健康増進課との個別ケースカンファレンスや、後でお話しする健康管理支援プログラムの保健指導との連動ということで、一応こちらの要指導に上がってきた人に関しては保健指導の対象者として生活支援課のほうで引き続き支援していくということにしました。ほかの健康づくり事業の活用として、栄養教室、運動教室、健診結果説明会という事業がありますので、こちらのほうも活用していけたらと考えております。

5番目としては、一般健康診査以外の検診・健診受診率の向上と受診結果の活用ということです。上尾市では、各種がん検診、骨粗鬆症、肝炎ウイルス、若い方には2030歳代ヘルスチェック、成人歯科検診という検診がありまして、こちらに関して生活保護受給者の方は無料で受診することができますので、これらの検診の勧奨もしていきます。ことしから福祉事務所の権限強化で、福祉事務所が健康診査の結果などを入手できるようになり、それに基づき健康面の支援を効果的に行えるようになったので、一般健康診査以外の検診結果についても生活支援課で活用して健康支援に役立てていきたいところではあるのですけれども、ただ、この点につきましては、今お話しした検診は全市民を対象にしている検診になるので、生活保護受給者の方を抽出する方法が難しいという状況です。再検査、要精密検査になった人たちに対してのかかわりについて健康増進課と生活支援課の役割分担をどのようにしていくか、今後、健康増進課のほうと詰めて協議して、連携を強化していきたいと考えています。

情報の入手についてなのですけれども、厚生労働省からの通知をよく読んだところ「健康増進事業第4条の2各号に掲げる事業に限る」というただし書きがありまして、この事業に該当しない健診ということで2030歳代のヘルスチェックというのが上尾市独自で行っている健診になっておりまして、こちらに関しては生活支援課と健康増進課で情報を直接やりとりするということができないという状況になっています。こちらに関しては課を通してということができないので、受診した本人に健診結果を見せてねみたいな感じで検診結果を入手する方法しか今のところないかと考えています。

6番目の課題としましては、高齢者に対する介護予防ということです。今後、上尾市においても高齢化が進んでいきますので、介護予防ということにも取り組んでいかなければいけないと考えています。高齢介護課のほうで介護予防事業のために基本チェックリストの調査を年に1回行っておりまして、この調査結果については第29条の情報収集というところで情報収集が可能なので、こちらに関しては高齢介護課のほうと調整をして、そのデータを活用して保健指導にもつなげていきたいと考えております。実際に高齢介護課で行っている二次予防事業にも生活支援課から勧奨することをしていきたいと考えています。

7番目に、電子レセプトデータの活用があります。上尾市においては電子レセプトデータを十分活用し切れていないというのが実情でして、医療扶助の傾向を把握してプログラムの評価・改善につなげられたらと考えております。

続きまして、12枚目、健康管理支援プログラムについて御説明させていただきます。これは、被保護者がみずからの健康に関心を持ち、健康の保持増進のための行動がとれるよう支援することを目的にしています。具体的には、全ての被保護者に対して健康の保持増進、疾病予防の意識づけ、流行疾患に対する注意喚起や予防のための情報提供を行っています。先ほども御紹介した「福祉だより」というのがあるのですけれども、こういうものに熱中症やインフルエンザの予防に対する情報を掲載したり、ケースワーカーが訪問や面接したりするときに被保護者に声かけをしております。全受給者の中で特に生活習慣が乱れて健康状態が悪化している被保護者に対しては、ケースワーカーと保健師が連携して保健指導を行い、疾病予防、健康状態の改善、自立阻害要因の解消を目指していきます。

保健指導の流れとしましては、保健指導が必要な被保護者をケースワーカーが把握したら、ケースワーカーとともに保健師は対象者と面接、訪問して保健指導を導入します。本人とともに健康管理の改善に関しての目標を設定し、保健師はその後も継続的に保健指導を実施して、日常生活状況の確認、設定した目標の評価、見直しを行っていきます。保健師はケースワーカーに状況報告を適宜行って、支援方法の打ち合わせをします。保健指導をする中で、目標の達成により保健指導は終了となり、その後はケースワーカーのフォローとなります。再度保健指導が必要な状況になった場合は、随時保健指導を再開するというような流れでプログラムを策定しました。

 

ちょっと飛ばさせてもらって、16枚目の課題と今後の対策です。

1番目に、ケースワーカーがプログラム対象者の選定に迷うことがあるということです。実はアンケートを行ったのですけれども、そのアンケートの中で、このプログラムを活用したことがないという方も何人かいまして、誰を対象にしていいのかわからなかったという意見がありました。そちらに関して、チェックリストをつくって活用できるようにしたのですが、そのチェックリストも十分活用できていないという状況でして、今後、ケースワーカーに対しても勉強会を実施して、きちんと支援対象者を把握できるような体制にしていきたいと考えています。前回、浅沼委員から、和歌山市の福祉事務所で保護の申請時から健康支援が必要な被保護者を選定してかかわっているという報告がありましたが、そういう体制づくりは必要と感じています。

2番目に、食生活に課題のあるケースが多いということで、栄養士との連携・協力が必要ということを感じております。こちらに関しては、以前、栄養士と打ち合わせをしたのですけれども、まずは被保護者全体の栄養知識の底上げ、日常的に実践可能な指導として、調理のことまで言うと実践できなくなってしまうだろうから、ごくごく簡単なレベルでの食品のそろえ方程度のものを資料で準備して、例えばケースワーカーが訪問するときに、話題づくりではないですけれども、それをきっかけみたいな形で活用してもらうということをやっていく予定です。個別の対応については、その都度栄養士に声をかけて対応していく予定です。

3番目に「受給者自身のニーズで支援開始ではなく、相談ニーズや指導の受け入れに消極的な場合が多い」と書いてありますが、こちらに関しては、ちょっとだけ頑張れば達成できる日常生活の目標を一緒に考えて、達成状況を簡単にマル・バツ・三角で記入するような生活記録をつけてみましょうということで最近始めてみました。こちらも粘り強く継続的に支援していくことが必要ではないかと思っています。ケースワーカーが保健指導対象者と認識していない被保護者の中に健康面の相談を必要としている人もいるかもしれないので、そういう人たちへの支援ができるようにということで、保健師、看護師が健康面の支援をしているということを紹介した「すこやか通信」というものを発行して、近々全世帯に発送する予定です。

4番目に、健康・生活面の課題が複雑多岐にわたるということがあります。こちらに関しては、他部署・他機関との連携協力が重要で、ふだんから風通しをよくして連携し合ってやっていくことが必要と思っています。

5番目に「初回以降の訪問・面接もケースワーカーからの依頼」とありますが、こちらに関しては、SVCWとも相談しながら、2回目以降の訪問・面接についても保健師などが単独で主体的に計画を立ててかかわれるような形で実施するようにしました。。

6番目に「生活保護が廃止になると支援も終了」とあるのですけれども、保護が廃止になってしまうと生活支援課としてのかかわりができなくなってしまうので、他部署・他機関に引き継いだり、ケース自身に利用できる事業を紹介したりということが必要なのではないかと考えています。

7番目に、電子レセプトシステムの活用ということを挙げました。継続的にレセプト内容を確認して保健指導の評価に活用したり、保健指導対象者の選定にも活用していきたいというところです。平成23年度にこのシステムを導入して、平成28年度は5年経過して更新する時期になってくるということがありますので、そちらに関してもきちんと予算措置などをしてもらって、十分なシステムの活用ができるようにしていただきたいと考えています。

最後に、生活支援課の職員配置を紹介させていただきます。ケースワーカーが18名おりまして、この中に、精神保健福祉士5名、採用としては4名採用なのですけれども、1名、入庁後に資格を取った者がいるということと、保健師1名、こちらは今、産休中です。昨年度採用になった保健師ですけれども、初めから生活支援課に配属されています。今、看護師の代替職員が来ております。私が生活保護事務担当に保健師として採用されておりまして、健康増進担当業務としましては、健康増進プログラム、健康管理支援プログラム、後発医薬品使用促進プログラムのほかに、中国残留邦人の支援給付と介護扶助事務をやっております。残留邦人支援給付と介護扶助事務は結構なボリュームがあって、健康支援のほうに手を広げてやりたいと思ってはいるのですけれども、こなせる仕事量を考えるとすぐに広げてというのはなかなかできない状況になっております。

去年採用された、今、産休中の保健師と話をしたのですけれども、ケースワーカーとして配置されたので、健康支援という視点でケースにかかわることが難しいと言っていました。専門職として課に配置されても、ケースワーカーとして配置されてしまいますと担当ケースを責任持って担当する形になるので、専門職ならではの力を発揮するような役割が十分できないのではないかと感じております。常勤の専門職を配置するということに加えて、専門性を発揮できるような業務配置をすることが重要で、それぞれの福祉事務所がそのような配置ができる仕組みや、国からの支援が必要なのではないかと感じています。

ちょっと時間をオーバーして済みませんでした。以上です。

 

○森座長 ありがとうございました。それでは、増田委員よろしくお願いします。

 

○増田委員 私は、総論的な話と理想論しか言えませんが、一応私の職責を果たしていきたいと思います。

 1ページ目、まさしく、ことしの8月に厚生労働省が厚生労働白書を公表されて、ことしを健康・予防元年にしようとおっしゃっているわけですから、やはり生活保護受給者もこの例外ではないのではないかということをまず考えていく必要があるのではないかと思います。

 健康の定義は、皆さん御存じのように、社会的にも健康でなければならないということです。我が国の健康づくりの対策というのはそんな古いものではなくて、35年前に第一次国民健康づくり対策がスタートしました。その後、二次、三次、四次と、現在、第四次の健康づくり対策が実施されているわけです。

第一次では早期発見・早期治療、第二次では、とりわけ運動が大事だということで運動に重点を置いた健康づくり対策「アクティブ80ヘルスプラン」を実施されて、そのために必要な指導者の養成を厚生労働省みずから開始されましたが、国としてやられたのではなくて、それをうちの財団が受けて、健康運動指導士、健康運動実践指導者の養成を現在もしているところでございます。

 第一次の「健康日本21」では、このときに健康寿命の延伸をうたって、壮年期の死亡を減らそうということでいろいろ実施されてきたわけであります。後ほど第二次の「健康日本21」については少しお話をさせていただきたいと思うのですが、今まさしく日本の命題というのは、一昨年でしたか、出された日本再興戦略、さらにはことし改訂された「日本再興戦略」2014改訂版にも書かれているように、健康寿命の延伸が一番の課題で、それで社会保障制度を何とか維持して次の世代につないでいこうということです。

皆さん御存じのように、社会保障制度というのは、年金5に対して医療が3、福祉が2という割合で支出されているわけであります。こういう社会保障制度を維持可能なものにするために、一昨年、消費税を上げる、それから社会保障制度を改革する法律というのが成立し、現在もその流れの中でいろいろな関連の健康施策も実施されていると理解をしております。

 一昨年、この法律が改正される前に、第二次の「健康日本21」について方針が発表されました。その中で、全ての国民がともに支え合いながら、希望や生きがいを持ち、ライフステージに応じて健やかで心豊かに生活できる社会を実現し、社会保障制度を持続可能なものにしようということであります。

 今、もう一度、我が国の生活習慣病を見てみる場合、生活習慣病になる原因、リスクというのはたばこと高血圧と運動不足だと、どこの先生もその話をされているわけです。まさしく生活保護を受けている方々の生活習慣病のリスクというのはこの3つだと聞いております。特に喫煙率は非常に高く、アルコールも結構飲まれるということで、生活習慣をよくするということは、ただ単に一般の方々だけではなく、生活保護受給者は特に不健康な生活習慣をされている方々でありますので、こういう方々に対して指導するというのは並大抵ではいかないと思っております。

これらの因子というのは日本人のがんのリスクを高めている要因でもあります。厚労省は平成17年の「健康日本21(第一次)」のときに、余りにも幅広に健康づくりをしてもだめだということで、運動と食事とたばこに焦点を絞ってポピュレーションアプローチを行っているわけです。生活保護を受給されている方にも、やはりこの3つを重点的にやる必要があると思っておりますが、果たしてそれが実施されているのか。聞くところによりますと生活保護者の周辺にいらっしゃる方というのは、例えばそういう指導をしたり相談を受けたりする方がたばこを吸っているということで、実際に精神病院の健康運動指導士の方に聞いたのですが、なかなかたばこの指導は難しい、なぜかというと周りにいる人がたばこを吸うものだから皆吸ってしまうという話を聞いております。

運動に関しても生活習慣病の予防に効果があるというのは皆さん御存じの話なのですが、最初にそういう関係の論文が出たのが1953年、これは「LANCET」に掲載された論文です。2階建てバスの運転手と車掌の冠動脈疾患の発生率を見たら、運転手のほうが高く、車掌は半分ぐらいだというわけです。やはり車掌は、切符を切ったりなのか知らないけれども、バスの中を上に行ったり下に行ったりしている。その運動だけで運転手と車掌の冠動脈疾患の発生率が違います。

その次のページですが、ハーバード大学の先生が卒業生の追跡調査を10何年間したところ、1週間の運動量が500kcal未満の方と3,000kcal以上の方を比較すると死亡が5割違うという発表もあります。

御存じだと思うのですが、2010年に「LANCET」で、先進国だけではなくて発展途上国にも身体的不活発病というのは蔓延していて、これは単に国民一人一人の健康問題ではなくて、その国の経済から全ての分野に影響を与えると言っているわけです。それはまさしく我が日本の現状であって、社会保障制度がどうなるのだという影響を与えています。

その次のページを見ていただきますと、2010年には第3回国際身体活動公衆衛生会議で「トロント憲章」というのをつくって世界に呼びかけているわけですね。これもまさしく身体的不活発が将来大きな問題を与えるということをうたっていて、もっともっと政治家等に身体活動の重要性を訴える必要があるということを言っています。

昔は、運動、運動と言っていて、運動に対するアレルギーがあったということで、国も、運動と言わずに、身体活動という全体の中で自分が意識を持って体を動かすような場合を運動あるいはスポーツと呼ぼうと。ふだんの生活の中で、例えば買い物に行く、掃除をする、そういう体を動かすことがあるわけですから、その部分で体を動かして足りない部分を少しウオーキングしてもらう、そういう形でやろうということで、国が進めている「健康日本21」の中でも、例えばエクササイズガイドだとか、昨年新たに出たアクティブガイドの中でもそれをうたっているわけです。決して特別に運動をさせる必要はなくて、常日ごろ何をしているかというのをちゃんと把握して運動をさせようということです。

次のページを見ていただきますと、体を動かす人と動かさない人ではメンタルの問題も違ってくるのだという報告がいろいろなところで出されております。まず、余暇に体を動かさない人と135分以上週に動かしている方では鬱病の発生が全然違います。最近は認知症と身体活動のことがいろいろと言われておりますが、これについても体を動かす方というのは認知症になりづらいということであります。

次のページを見ていただきますと、統合失調症の方というのは当然メタボリックシンドロームのリスクが非常に高いのです。一般の方に比べると2倍以上高い。

それから、生活保護受給者の健康リスクというのは、高血圧、糖尿病、鬱病、痩せ・肥満、こういうものがあると言われています。

統合失調症の方に特に目を向けてみますと、これは健康運動指導士の石井千恵さんがおっしゃっていることなのですが、まず精神障害者の方々というのは無為自閉の状態になって、体を動かすことがないのだということです。例えば通所しているような方々は、通所に行っているときは体を動かすのだけれども、家に帰してしまうと家ではずっと安静にしているということです。食事を見ても、食費を切り詰めることを優先し、長期にわたった視点で栄養のバランスなどへの配慮も怠りがちです。そういう意味で、もともと一般の方以上に生活保護受給者の方というのは手がかかるわけですから、それを考えて対策を練っていかないとなかなか健康管理というのは難しいのではないかと思います。

退院した統合失調症の患者さんというのは、先ほど来お話がありますように、まず自分で料理をつくらない。外食が多い。食べたい物を食べる。野菜の量など本当に少なくて、お菓子やパンなどを食べる。野菜や魚、肉は高いからということで食べない。前回でも栄養のお話がありましたけれども、栄養指導もかなり力を入れていかないと難しい。

次のページですが、今、国は、一に運動、二に食事、しっかり禁煙と言っています。食事だけ、運動だけではなくて、食事と運動をうまく組み合わせることによりまして、例えばこの図の左側ですが、食事と運動を組み合わせると3カ月後には体力年齢は6.8歳ぐらい若返る。右側は体重で、食事制限だけで3カ月指導して7kgぐらい減少するのですが、運動をうまく組み合わせることによって体重が8.3kg落ちます。

健康づくりに関する支援というのは、第一次の「健康日本21」はどちらかというと、自分でやりなさい、個人としてやりなさいということをかなり強調していたわけですが、第二次は、個人の力ではどうしようもない、そのために環境整備をしていかないと解決できないものがあると。それがまさしく健康格差だと思います。

保健指導については、国は特定健診、特定保健指導のところで人材をちゃんと育成しましょう、行動変容につながる保健指導を展開することが必要なのだと言っているわけです。指導者に求められる資質は、行動変容に結びつけられる能力、対象者と信頼関係を構築できる能力、個人の生活と環境を総合的に評価する能力、安全性を確保した対応を考えることができる能力等々ずっと書かれているわけです。例えば今お話を聞いていると、人がいないから、そういうお話をされているのだけれども、一番手のかかるところに逆に人が張りついていないのではないかという印象を受けています。

「運動しなさい」とお医者さんは言います。病院に行ったら「あなたは体重がふえているから運動しなさい」と、それしか言わない。具体的な運動は何をしろとは言わない。だから、やらないのです。患者さんが「どんな運動をするのですか」と言われたときに、やはり正確な具体的な運動指導ができるようにしないとだめだと思うのです。運動が楽しく続けられる条件というのは、参加者側としては、指導者がいい人だなと温かく感じられる、確かに体力がついてきたということが実感できる、うまくウオーキングできるようになったとか、仲間との交流等々あるわけです。指導者側にもいろいろあります。

国は、もう25年前に運動が大切ですよということを言って、健康運動指導士、健康増進施設の認定を開始したわけですね。第二次の「健康日本21」の中でも、運動指導については健康運動指導士という専門家がいるということをちゃんと言ってくれています。現在、1万7,404人の方がいらっしゃるわけですが、健康運動指導士の約1割の方が保健師さんです。管理栄養士さんが2割です。なぜかというと、国が運動指導者の養成を開始したときに、行政にいる保健師さんなり管理栄養士さんが運動の知識を持ってくれることによって保健指導の実がもっと上がるのではないかということで、保健師さんや管理栄養士さんに健康運動指導士の資格を取らせなさいと、わざわざ国は地方に対して通知を出しているわけです。

健康運動実践指導者もいまして、ことしの6月に出された、それこそ安倍総理みずからが力を入れておられる「次世代ヘルスケア産業協議会」の中で、運動については健康運動指導士等という人的資格は存在しているのだ、もっともっと活用して健康寿命の延伸をしましょうということを言っています。

法務省は、受刑者に対しても健康運動指導士で指導させています。常勤ではないのですけれども、ことしは30庁、健康運動指導士に委託します。今、14庁でやっておられるそうです。受刑者に対してもちゃんと運動指導の必要性というのを法務省は言っているわけです。

国が言っている身体活動指針というのは何も難しいことはありません。「アクティブガイド2013」は、プラス10、あと10分運動してくださいと。例えば10分ウオーキングすることによって1日20kcal消費できます。それが1年になると7,000kcal以上、まさしく1kgなのです。もし10分多く歩いてくれると、その人は食べる量が一緒ならば少なくとも理論的には1kg痩せるということであります。

健康格差は、何人もの方々からもお話があるのだけれども、年収でどうしようもない、自分ではどうしようもない、生活保護を受けている方々というのはこういう状況だと思うのです。所得と疾患の有病率の関係も言われています。低所得者の方と高所得者、160万円未満を低所得者、250万円以上を高所得者とすると、精神疾患が3倍以上、睡眠障害、肥満が1.5倍というデータを出されている方もいらっしゃいます。

次のページを見ていただきますと、所得と要介護認定の割合なのですが、第1段階の介護保険料が安い人、いわゆる所得が低い人と第5段階の所得が多くて介護保険料が高い人を比較した場合も、やはり死亡が全然違ってくるというデータがあります。健康格差の大家の近藤先生もおっしゃっているように、社会参加も大切で、社会参加している人としていない人では全然違うというデータもあります。

そろそろ最後になるのですけれども、今までは生活保護を受けている方々の指導の話ばかりですが、では生活保護を将来受けないようにするにはどうすればいいのかというのをここに書かせていただいております。将来アメリカに役立つ人材を育てるためにはどうあるべきかという論文が出されているのですけれども、そこに書かれているのは、4歳前後の幼少期の生活習慣がその人の一生を決める。言い方はおかしいかもしれませんけれども、例えば親の生活習慣が悪い、そういう環境にいる子供をそこから救い出さない限り次の生活保護受給者をつくってしまう。生活保護を受けている家族だけではなくて、国として幼少期における生活習慣をどうするのかというのは非常に大事な話だと思っています。

最後になりますが、衣食住だけではだめなのだと、医衣食職住遊友、これを目指してかなりきめの細かい生活指導をしていかないことには、なかなか生活保護から離脱できない、新たな人もつくってしまうということになるのではないかと感じております。

以上です。

 

○森座長 ありがとうございました。次に中板委員にお願いしますが、すみませんが、ここで退室させていただきます。

 

○中板委員 日本看護協会の中板と申します。貴重な時間をいただきましてありがとうございます。また、前回、所用がありまして欠席させていただきまして申しわけありませんでした。

 それでは、きょう提出させていただいた資料は2種類ありまして、要回収のものが1種類ございます。この要回収のほうから少し説明をさせていただこうと思います。

 こちらはB市となっておりますけれども、一昨年、援護局のほうで生活困窮者の検討会がありましたときに、私たちも実際にはどのような状況なのかということを確認するために幾つかの市町村にヒアリングさせていただいております。その中の1つをきょうは抜粋してきましたが、B市というのは兵庫県の芦屋市です。

芦屋といいますと、一般的には非常にハイソなイメージがあると思いますので、あえて出させていただいております。人口9万6,000人、4万4,000世帯ということで、高齢者人口は24%、保護率が6.5‰ということです。6.5ということを見ますと、一般から比べると確かに低いという状況ではあります。

世帯類型ですけれども、高齢者世帯、母子世帯、傷病者世帯、その他ということに関しての割合については、全体的にそう大きな変わりはないと思っております。

この市は、トータルサポート事業という形で福祉事務所を展開しておりまして、要するに総合的に支援していく。今回の健康管理というところももちろん含めた上で、健康管理だけでは生活保護受給者の方たちの健康を守り、生活を守り、少しでも自立した生活に導くことはできないという理念のもとにトータルサポートという形をとっております。

福祉部門における保健師の配置の状況ですけれども、保健師が6名配置されておりまして、課長級1名、主査1名を含めて、高齢担当、介護保険担当、障害福祉担当でそれぞれ兼務しながら福祉事務所の仕事をされているということでございます。保健師が配置されてから、保健師が特に対応するような生活困窮の相談事例の特徴をヒアリングさせていただいておりますけれども、皆さんのこれまでの御発表にもありますように、やはり障害や疾病を抱えていること、孤立していること、そういったことが言われております。特に精神疾患、知的な障害、発達障害といった複合的な障害を抱えながらいるということが非常に特徴的だと伺っております。まさにそうだろうなと思っています。

そのケースの例を4例ほど簡単に書いてありますが、後で2例については詳しくお話をしたいと思います。

1例目は、男性単身、住所不定、保健師から見れば発達障害の可能性があるけれども、これまで全く受診したり障害認定されていないという状況の中で、いろんなところを転々としておりましたが、母親の年金の収入を当てにして母親の家に転がり込んだという状況です。借金も抱えておりますが、発達障害がありますので、その借金と自分の収入とのバランスももちろんとれなくて、母親が病気で施設に入った後、この方が一人で生活されていたわけです。ペットをたくさん飼い、生活環境は非常に劣悪な状況になり、市営住宅からも退去命令という形になっております。

2例目は、生活保護受給中ですけれども、中学生の子供と2人暮らしです。これも保健師が訪問して本人はアスペルガー、発達障害だろうと、子供はダウン症であり、非常に環境が不衛生で、いわゆるごみ屋敷と言われるようなところにお住まいになっていました。家事のヘルパーを導入していますけれども、家事のヘルパーを導入しても対症療法にしかならず、何も変わっていかないという状況です。結果的にはネグレクトという状況にもなりますので、虐待予防のための相談員など児童福祉のほうでもかかわっていますけれども、何分、本人の状況もありまして、支援がなかなか受け入れられない、そういった家庭もございます。

3例目は、知的障害の可能性がある男性の住所不定の無職の方ですが、こちらもこれまで全く受診につながっておりません。この方もお母様が入院中に実家に転がり込みましたが、万引き等々犯しまして、警察から地域包括支援センターに連絡があって浮上しました。血圧の上昇もあり、糖尿病もあるということですが、治療は中断しているという状況です。

4例目は、精神障害者手帳を持った女性と両親の3人暮らしで、母親も統合失調症です。こちらもごみ屋敷の状態で近隣からの苦情もありということで、家からは出られないという状況で孤立しています。生活保護受給者あるいは生活困窮されている方たちというのはこういう状況もあるということです。

そういう中で、次のスライドですけれども、保健福祉部門における保健師が支援をしてきた特徴として、2つ目の四角の中ですが、健康面に関して本人が健康維持管理できるように、健康管理、服薬管理ということがあります。保健師が医療の必要な生保の受給者を訪問するということは服薬管理に関してはかなり成果が出る部分ではないかと思っております。また、心身の不調を訴える、受診しない、これまで受診してこなかった、体調が悪いし、対人関係もなかなか結べない、そういった状況は、本人の努力とかではなく、やはり障害ということをしっかりとアセスメントし、医療機関と調整して初めてしっかりと医療につながり、必要に応じては同行受診もしながら医療の調整をしていくといったこともなされております。

芦屋市はそういった活動を通して、保健師たちがまずは把握というところで、生保を受給している方たちだけではなく、その予備軍といいますか、そういった方たち、生活困窮者についても病気も重症化してからの発見ではなく早目に発見して、予防的に関与できるようにするために、全庁一斉にメイビーシートというものをつくりまして、職員研修も行いまして、市民課やいろんなところで事務方も含めてこういった人たちをなるべく早く発見し、つないでいくという活動をしております。

2例ほど事例を紹介したいと思います。

先ほど4例御紹介いたしましたけれども、そのうちの一例で男性の事例です。発達障害の可能性がありますけれども、これまで受診もしていませんので、診断名は特についていません。年金で生活している母親のところに転がり込んでいます。借金もありということです。ペットもたくさんいて生活環境も不衛生で、ふん尿にまみれているという状況でしたが、社会から完全に孤立しているという状況の中で、保健師が家庭訪問してその辺がようやく浮き彫りになったわけです。保健師としては、しっかりと診断をつけるために医療につなげて、それからホームレス支援団体、動物愛護会、地域包括支援センター等々関係機関と連携会議を行い、再度調整して、ホームレス支援団体が非常にいいかかわりをしていただきまして、就労準備、就労訓練等々につなげて、結果的には就労につながり、少しずつですけれども、貯蓄もできるようになっているということがあります。これは、まさに生活保護になる前にかかわって就労に結びつけたという事例でございます。

次の事例ですけれども、こちらは生活保護受給の状況でした。グレーゾーンではありますが、知的障害の可能性があって、糖尿病、血圧上昇があり、しびれの自覚症状もある。しかしながら、適正な医療を受けていないというのが現実でございました。こちらも万引きをしたり、いろいろされておりますけれども、先ほどどなたかもおっしゃっておりましたように、自分の生活のパターンにおける課題を認識しているわけでもなく、生活上の問題点を市に伝えられるわけでもなく、自分なりに頑張っていることを医師に伝えることもできないといった状況がありますので、まさにこういった知的障害や発達障害がある方たちの代弁者として医療機関との調整に保健師は入っております。糖尿病とかいろいろありましたので、教育入院等もされまして、退院して、その後の生活に向けて支援をしています。これまで障害があったのだということ、その病気についての説明もきちんと受け、治療についても医師に指導を受けるだけではなかなか行動変容というか、理解につながらないという中で、保健師がそこを翻訳しながら伝えていって、本人は自立した生活に前向きに意欲を持ち始めているということで、継続支援中ということになっております。

こういった事例を踏まえますと、服薬管理、医療の適正利用ということが十分に機能としては果たせると思っています。直に医療費削減ということにつながるかというとなかなか難しいかもしれませんが、適正な医療と、無駄な医療は使わないことには寄与できると考えております。多重服薬、そういったことについては調整ができると思います。

何といってもトータルサポートと芦屋市がおっしゃっているとおり、孤立からの脱出、ひきこもりからの脱出、そして社会参加といったことを連動させて調整しながら、本人の能力に合わせて、本人のスピード感に合わせて支援していくことは、保健師が生活保護受給の方々とかかわることについて可能なところではないかと、ヒアリングをさせていただいて思っているところです。

こちらが回収させていただきます資料でございます。

こういったヒアリングを何件かさせていただきまして、配付資料のほうを説明させていただきます。

先ほどからずっと健康格差ということが言われておりますが、健康と医療の質の格差ということです。これにつきましては、先ほど増田委員からも近藤先生の話が出ておりましたが、既に社会疫学上、格差の先進を行っておりますアメリカ、イギリス等々で言われていることをここに羅列させていただきました。こういったことは当たり前に言われていることでございます。

低所得者層は、転倒や骨折が多い。教育年数が短くて所得が低い人たちには不眠が多い。低所得者層は要介護リスクや虐待が多い。低栄養、口腔衛生の不備、閉じこもり状態などの危険因子は社会経済地位の低い人たちに多い。社会経済地位の低い人たちは健診を受診していない。低所得者層は死亡率が高い。学歴が低い人ほど事故死が多い。親の社会階層が低いほど出生時の体重が低い。低所得者層のほうが犯罪や自殺が多い。歩かない人、スポーツクラブに参加しない人は社会階層の低い人に多い。肥満、アルコール過剰摂取、身体活動量不足だけではなく、高血圧、高コレステロール血症、肥満などの心臓血管の危険因子も社会階層が低い人に多い。鬱は低所得者で5倍も多い。低所得者層のほうが夫婦関係満足度の低い夫婦が多い。ひとり暮らし男性は社会階層が低い人に多い。離婚は学歴が低い者に多い。社会的孤立は社会階層が低い人に多いということで、こういったことはずっと言われていることです。

次のページも先ほどの増田委員とかぶりますので、省きたいと思います。

こういう状況の中で、改めて生活保護受給者へ支援を行う意義と特徴ということを考えたいと思っています。

生活の困窮と健康というのは表裏一体であります。社会疫学から見ても、困窮していくことと健康を守り抜くことは、まさに表裏一体の関係でございまして、そういうことから考えれば、健康支援を使命としている保健師の積極的な介入は当然必要だろうと考えております。

4点挙げておりますので、詳しくは読んでいただければ思いますけれども、貧困から脱出していくためにはまずは健康でなければいけないということです。

それから、先ほど増田委員もおっしゃっていましたが、やはりこういった人たちを支えていけるような環境整備が必要だということです。国も政府も一体的に言っておりますが、まさにソーシャルキャピタルを醸成していくことがセットで必要ではないかと思います。

次に、潜在的な健康課題を顕在化させて解決に向かわせるという、まさに予防的な介入ということをしながら、先ほどの生活困窮者で、これまで非常に生きづらかった、あるいは対人関係がままならない状況の中で自分を責めてきた、そういった方たちの背景にある病理をしっかりと顕在化させて、その上で自立に向けての支援をしていくというのが非常に重要なことではないか。

次に、PDCAを意識しながら、目的は何なのか、評価の指標の話も出ていましたけれども、評価をどの時点でどのような形でしていくのか、そういった詳細な計画づくりが必要なのではないかと思っております。

この4点につきましても、保健師が日常の活動の中で実施していることですので、それを生活保護の制度の中で活用していくことは不可能ではないと考えております。

次のスライドは、情緒的なので省かせていただきます。

平成24年に生活困窮者の検討会がありましたが、そのときに保健師の活用ということを言っていただきまして、大変ありがたかったと思っております。それを受けまして、日本看護協会では健康局長宛てに人材確保に関する要望書を出させていただいております。残念ながら、地方交付税はケースワーカーという形でつきましたけれども、ケースワーカーは専門職である保健師にも代用ができるということで、専門の保健師を採用していただいている自治体も出てきていると認識しております。

最後のスライドですけれども、今までお話しさせていただきましたように、保健師の技量を生活困窮者あるいは生活保護受給者の方たちの健康支援に活用するということは、非常に重要なことだと考えておりますし、今、大命題である健康格差の縮小あるいは是正ということに関してもとても重要なことだと思っております。しかしながら、先ほどお話もありましたけれども、保健師の人数が確保し切れていないところがございまして、保健師の配置の方法はどのようなものがよいのかということで悩んでいます。方法1と方法2、これ以外のこともいろいろあるでしょうけれども、大きく分ければ2通りあるかなと考えております。

方法1は、きょう発表があったように、福祉事務所に専任の保健師を配置する。要するに、社会保障制度を何とか維持したい、これは国民の願いだと思いますが、それには世代間扶養という限界を乗り越えなければならないといったことや、少子化対策も手を抜けないということもあります。ヘルス部門としましては、母子保健等々、保健師活動のベースも手を抜けない、そういったことを考えますと、今でも少ないヘルス部門から保健師を福祉事務所に異動させるというのは非常に難題だと思っておりますので、福祉部署に専任の保健師を配置する場合には、やはり純粋にきちんと採用して配置していただきたいと思っております。

その際のメリット、デメリットを書かせていただいておりますが、当然のことながら、福祉事務所内の他職種との連携はとりやすくなりますし、生活保護費の適正な受給・使用、その決定のプロセス、評価についても参画できるということがございます。それと、健診データを確認できるようになっていくと思っております。デメリットですが、福祉事務所においてはなかなか地域づくりというところにいかなくなって、個別の対応に終始しがちだということは大きなデメリットではないかと思っております。この辺につきましては、ヘルス部門と連携をしっかりするということがとても重要なことになります。

方法2として、ヘルス部門の保健師を増員して、地区担当制をとりながら、生活保護受給者への健康管理支援をケースワーカーと連携しながら行うという方法もあるかと思っておりますが、ケースワーカーと保健師が同行で訪問するといったことはしてきたことで、これは従来の方法ということになります。こちらのメリットは、地域づくりのほう、特定健診・保健指導あたりと非常に連動しやすくなる、情報共有しやすくなるという点があると思っています。

いずれにしても、先ほどの事例にも挙げさせていただきましたように、高い支援技術が求められることには間違いなくて、ジョブローテーションも含めて人材育成あるいは教育体制を整備することが不可欠ではないか、より質の高い保健指導を実施していくためにもそれが必要ではないかと考えているところです。 

 

○事務局 今後の議事進行は事務局が務めさせていただきます。よろしくお願いします。

 きょうは、その都度、報告に対する御質問をお受けしませんでしたので、順を追ってさせていただきたいと思います。

 まず、ただいまの中板委員の御報告に関して御質問等がございましたら、お願いいたします。

 よろしいですか。

では、冒頭の2つの自治体の方の、まず相澤委員の川崎市の関係で御質問等がありましたら、お願いいたします。

 

○津下委員 私も糖尿病をずっと診療していたので、その関係でアンケート調査に非常に興味があります。ヘモグロビンA1cで未把握の方も4割いて、把握している方もA1c7%以上が5割を超えているということでコントロールが悪いのです。恐らく糖尿病に初めてなったのは何歳ですかというのは聞いていらっしゃると思いますが、随分若い年代に糖尿病になって、生活保護になる前に、一般的に言うと貧困で薬を間引く時期だとか、治療が中断しがちになってコントロールが悪くなる時期があって、医療側ははらはらしているのです。インスリンを1カ月分出しているのに3カ月に1回しか来ない。「薬代が高いから間引いています」とお答えになるような時期があって、どんどんデータが悪くなっていく。そのうち合併症が出て、もう仕事も続けられない、視力が低下したので運転できないということで退職せざるを得なくて生活保護、そういうケースも何例となく見ていたので、このパターンは結構多いのではないかと思います。

発症年齢とその経過についてわかることがあればお知らせください。生活保護にならなくても済む対策をもう少し強化できたらという部分と、これを見ていてもやはり把握できていないのが4割あり、これは相当悪い可能性もありますし、8%以上が2割で、7%以上を合わせると5割を超えている。さらに次の合併症を引き起こしていくという対象群だと思います。そういう健康管理の状態がわかったというのは非常に貴重なデータだとは思うのですけれども、そのあたりはいかがでしょう。

 

○相澤委員 今のは発症年齢というところでしょうね。このアンケート調査の対象者の70%が60歳以上の方なのですが、糖尿病の発症年齢でいいますと4049歳までで22.6%、5059歳で21.8%というところなので、アンケート対象者の方は60歳以上なのですが、40歳から60歳になるまでに50%の方が既に発症しているという実態にはあります。

 

○津下委員 あともう1つ、低血糖です。治療する側で十分なコントロールができない。先ほど中板委員の話でもあるのですけれども、医療側からいくと、地域で低血糖になって倒れていて見つけてくれる人がいるのかいないのか、その辺がわからないときちっとした治療もできないし、ひとり暮らしの生活困窮者が救急車で運ばれてきて病院で治療が始まるという方が多いのですが、救急車で運ばれてくる急性期の病院側としては、その人のふだんの状況が全然わからないまま治療して、病院にいる間はコントロールがよくなって、その後どうなるのだというのが切れてしまうので、非常に不安な状態で治療が終わっているというのがよくあります。

 

○相澤委員 低血糖の有無でいうと、51%の方が低血糖を「経験しています」とお答えいただいて、低血糖を起こしたときの対応方法を知っていますかというのは67%の方が「はい」と答えています。ただ、それも「内容は何ですか」と聞くと、誤った考え方をしている人もいるというところなので、70%近くの人が知っていると答えていますが、全ての方が正しく理解しているかというと、そこはこれから教育というか、そういうものが必要だと感じているところです。

 

○浅沼委員 川崎市の方にもう少し聞かせていただきたいのですけれども、私もDMの方を受診につなげるときに、血圧計を持って何回も訪問して、ネグレクトが絡んでいるような、先ほど報告があったような事例があったのですが、具体的に今、保健師がこれだけ配置されている中で、ケースワーカーではなくて保健師が配属されていて、糖尿病もそうなのですけれども、きちっと受診につながる事例とか、あるいはメリット、そういうところというのは何かお感じになっていることがございますか。

 

○相澤委員 先ほど御説明の中でもお話ししたのですけれども、やはり保健師さんなり看護師さんというところで、病院では先ほど言ったように自分でお医者さんにはなかなか聞けないところを聞きやすいというか、身近に訪問もしてくれますし、実際自分がこういうことで困っているのだとか、こういう問題を抱えているということを身近に相談できるというメリットが一つ、それは生活保護を受給されている方側のメリットです。

それから、ケースワーカーの医療に関する知識というのが、一緒に訪問して、どういうアプローチの仕方とか聞き方をするかというのを実際に間近で見ますので、そういう意味でのスキルが上がるというところの2つの点で効果は感じています。

 

○浅沼委員 ケースワーカーの方は血圧計を持って訪問するのですか。

 

○相澤委員 一緒に行きます。保健師さんや看護師さんが行くときに一緒に訪問して、どういうアプローチの仕方かというところを見る。一番最初は同行訪問するということになっています。2回目以降は保健師さんが単独で訪問するということもあります。

 

○津下委員 今の話で本人が医師には言えない情報を保健師さんがつかんだときに、その情報は医師にきちっと伝わる仕組みになっていますか。本人が実はこういうことをやっていますとか、こういうことが困っていますということが医療のところまでつながってこないと、よい医療にはつながらない。こんなに薬を余らせていますとか、そういう情報が医療の現場に還元されていないと、せっかくの情報がうまく生きないのかなと思って、そこのところが流れる仕組みというのは何かありますでしょうか。

 

○相澤委員 私はそこまで把握していないのですけれども、ケースワーカーは病状調査で主治医の方と1年に1回は直接お話をさせていただくので、そのときに情報を返しているという事例はあるかと思います。直近で情報を仕入れたものについてはあるのですけれども、時間的にというか、その場で返すような仕組みというのはなかなか今の時点ではつくられていません。

 

○中板委員 今、津下委員がおっしゃったように、そここそが今回の「健康管理の在り方に関する研究会」の中でしっかりと仕組み化していくという一つではないかと思うわけです。糖尿病でありながら中断している、先生がおっしゃることを自分なりに解釈をして行動している、あるいは薬なども間引きしているというのはもちろんありますので、そこを適正に受診できるように、あるいは服薬管理できるように支援していく仕組みをどうつくるかというのが一つあります。

あと、隠れ疾患、要するに病気を持っているのだろうけれども、受診していないという方たち、あるいは先ほどから事例を挙げましたように、知的障害とか発達障害、そういったことがあって、どんなに説明されても何となく自分の中でそしゃくし切れないという人たちを個人責任にするのではなくて社会でどう支えるかということを含めて考える仕組みというのは、現状で津下委員がおっしゃったような仕組みは全くないと思いますので、そこをどうつくるかというのが一つ大きなポイントではないかと思います。

 

○事務局 

 続きまして、芥川委員の御説明の上尾市の事例で御質問等ございましたらお願いします。

よろしいですか。

 それでは、次に増田委員からの御報告に対しまして御質問等ございましたらお願いします。

 

○津下委員 石井さんとか健康運動指導士さんが運動の場面でかなり活躍していらっしゃると思うのですけれども、例えば就労支援をしていて、仕事を始めても続かない人が結構いるかと思います。その中で、仕事が合わないとか、非常に疲れがあるというあたりに対して、就労支援とあわせた運動支援というか、体力づくりの意味でそういう取り組みをされた事例というのは何かあるのでしょうか。

 

○増田委員 生活保護受給者の方が入所中に運動指導を受けているので、今までほったらかしの人から見ると全然違うというのです。家に帰って1人で住んでいてもちゃんと病院に来て、月に1回か、週に1回か知りませんけれども、運動指導を受ける。それとここの病院は最優秀の病院だと思うのです。彼女は実は院長夫人なのです。旦那さんが精神科の医者で、旦那さんがいかに地域に帰して生活保護を受けさせないようにしようかということですから、ほかに健康運動指導士も採用しているし、保健師さんも使っている。精神病院の中では一番モデル的なことをやっておられる精神病院ですね。

 

○事務局 

時間もございませんので、この後お気づきの点等がありましたら事務局に寄せていただければと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、本日の議事についてはこれで終了させていただきたいと思います。

 次回ですが、日時は1113日(木曜日)14時からとしております。これまでの委員各位の御報告でありますとか、第1回目に行いました意見交換、そういったものをまとめさせていただきまして、最終的な取りまとめを見据えながら議論いただければと考えております。

 本日は、御多忙のところ、ありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会・援護局(社会)が実施する検討会等> 生活保護受給者の健康管理の在り方に関する研究会> 第3回生活保護受給者の健康管理の在り方に関する研究会議事録(2014年10月22日)

ページの先頭へ戻る