ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 健康局が実施する検討会等> がん検診のあり方に関する検討会> 第9回がん検診のあり方に関する検討会議事録(2014年9月18日)




2014年9月18日 第9回がん検診のあり方に関する検討会議事録

健康局がん対策・健康増進課

○日時

平成26年9月18日(木)16:00~18:00


○場所

厚生労働省 専用第14会議室(12階)


○議事

○がん対策推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第9回「がん検診のあり方に関する検討会」を開催いたします。

 構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきましてまことにありがとうございます。

 本日は、皆様方、新たに構成員に選任されておりますので、座長を選出いただくまでの間、議事の進行をさせていただきます、がん対策推進官の江副でございます。よろしくお願いいたします。

 それでは、構成員の紹介をさせていただきます。

 東京大学大学院医学研究科特任教授の井上真奈美構成員でございます。

○井上構成員 よろしくお願いいたします。

○がん対策推進官 東北大学医学部医学科研究科長医学部長の大内憲明構成員でございます。

○大内構成員 よろしくお願いします。

○がん対策推進官 八王子市健康福祉保健部地域医療推進課課長補佐の菅野匡彦構成員でございます。

○菅野構成員 済みません。多分所属が古くて、医療保険部成人健診課で菅野匡彦です。よろしくお願いいたします。

○がん対策推進官 失礼いたしました。

 国立がん研究センターがん予防・検診研究センター検診研究部部長の斎藤博構成員でございます。

○斎藤構成員 どうぞよろしくお願いいたします。

○がん対策推進官 大阪大学医学系研究科環境医学教授の祖父江友孝構成員でございます。

○祖父江構成員 祖父江です。よろしくお願いします。

○がん対策推進官 公益財団法人福井県健康管理協会副理事長の松田一夫構成員でございます。

○松田構成員 よろしくお願いします。

○がん対策推進官 順序が逆になって恐縮ですが、国立保健医療科学院統括研究官の福田敬構成員でございます。

○福田構成員 福田でございます。よろしくお願いいたします。

○がん対策推進官 公益財団法人日本医師会常任理事の道永麻里構成員でございます。

○道永構成員 お願いします。

○がん対策推進官 本日は、全員の御出席をいただいております。

 続きまして、事務局を紹介させていただきます。

 局長の新村でございます。

○健康局長 新村です。どうぞよろしくお願いいたします。

○がん対策推進官 審議官の牛尾でございます。

○審議官(がん対策担当) 牛尾と申します。よろしくお願いします。

○がん対策推進官 がん対策・健康増進課長の正林でございます。

○がん対策・健康増進課長 正林でございます。よろしくお願いします。

○がん対策推進官 同じく課長補佐の藤下でございます。

○事務局 藤下でございます。よろしくお願いします。

○がん対策推進官 よろしくお願いいたします。

 次に、資料の御確認をお願いいたします。

 まず、座席表、議事次第に続きまして、

 資料1 「がん検診のあり方に関する検討会」開催要網

 資料2 「がん検診のあり方に関する検討会」の今後の進め方(案)

 資料3 乳がん検診に関する検討の経緯等について

 資料4 有効性評価に基づく乳がん検診ガイドライン(斎藤構成員提出資料)

 それから、参考資料として「有効性評価に基づく乳がん検診ガイドライン 2013年版」を別途おつけしてございます。

 資料に不足・落丁等がございましたら、事務局までお申し出いただければと思います。

 よろしいでしょうか。

 それでは、次に、本検討会の座長を選出したいと思います。御推薦がございましたらお願い申し上げます。

○祖父江構成員 がん検診の研究・臨床の両面にお詳しい大内先生に、引き続き座長をお願いするのが適切かと思います。

○がん対策推進官 それでは、大内構成員にお願いするということでよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○がん対策推進官 ありがとうございます。

 それでは、大内構成員に本検討会の座長を引き続きお願いできればと思います。

 大内座長、席の御移動をよろしくお願いいたします。

(大内構成員、座長席へ)

○がん対策推進官 それでは、大内座長におかれましては一言いただければと思います。よろしくお願いします。

○大内座長 東北大学の大内でございます。

 このたび、改めて「がん検診のあり方に関する検討会」の座長を仰せつかりました。

 皆様御存じのとおり、この検討委員会は大変重要で、もともと平成1512月から「がん検診に関する検討会」というものがございまして、当時、垣添忠生先生が座長を務められました。平成20年の3月まで18回の検討会を行っていまして、私どもは、今から2年前の平成24年5月から、改めまして「がん検診のあり方に関する検討会」ということで設置されて、構成員をずっと務めておりますが、その垣添先生たちがされた18回と言いますと、きょうが第9回ですので、まだ道半ばかなと思っております。

 ということで、引き続き御検討のほど、よろしくお願いいたします。

○がん対策推進官 ありがとうございました。

 以上をもちまして、カメラをおさめていただきますよう、御協力のほどよろしくお願いいたします。

 この後の進行は、大内座長にお願いいたします。

○大内座長 それでは、本日の議題に入りたいと思います。

 議題1の、今後のがん検診のあり方検討会の方向性と検討スケジュールにつきまして、事務局より御説明願います。

○事務局 それでは、事務局から説明をさせていただきます。

 まず、資料1をごらんいただけますでしょうか。こちらは「がん検診のあり方に関する検討会」の開催要網でございます。

 趣旨といたしましては「本検討会においては国内外の知見を収集し、科学的根拠のあるがん検診の方法等について検討すること」としております。

 裏でございますが、これは別紙でございます。がん検診のあり方に関する検討会構成員名簿となっております。本日御出席の構成員の皆様方の名簿となってございます。

 続きまして、資料2でございます。こちらは「『がん検診のあり方に関する検討会』の今後の進め方の(案)」でございます。

 当面の検討すべき課題といたしましては「乳がん検診について」「胃がん検診について」、そして「事業評価のためのチェックリストの改訂について」ということがございます。

 まず、乳がん検診につきましては、乳がん検診の現状。それから、検診に関する知見の整理。現在国の指針におきましては、視触診と乳房エックス線検査による検診を推奨しておりますが、視触診、それから、デジタル・マンモグラフィ、超音波検査、それぞれにつきまして整理をしてはどうかということでございます。

 また、胃がん検診につきましては、こちらもがん検診の現状。それから、検診に関する知見の整理。こちらは現在、指針上、胃部エックス線検査による検診を推奨しておりますけれども、エックス線検査、内視鏡検査、そしてペプシノゲン検査、ヘリコバクターピロリ抗体検査といったものについて整理をしてはどうかと考えております。

 また、平成20年3月に乳がん検診事業の評価に関する委員会がまとめました、今後の我が国におけるがん検診事業評価のあり方について、報告書の別添7に、事業評価のためのチェックリストというものがございます。こちらにつきましては、現在、都道府県、市町村、そして検診実施機関において精度管理に用いておりますけれども、現状にそぐわないような項目もございますので、今年度に検討を行い、改定に向けて準備を進めたいと考えております。

 また、検討の順番につきましては、今年3月に、本日参考資料としてお配りしておりますけれども「有効性評価に基づくがん検診ガイドライン 2013年版」が公表されておりまして、まず、その乳がん検診のあり方について検討を進めてはどうかと考えております。

 また、胃がん検診のあり方につきましても、知見を整理した上で検討を進めてまいりたいと思っております。

 今後の進め方につきましては、以上でございます。

○大内座長 ありがとうございました。

 ただいまの事務局の説明を踏まえまして、今後の検討会のあり方につきまして議論いただければと思いますが、いかがでしょうか。

 平成26年度になって初めての検討会ということになりますが、このようなスケジュール感でよろしいでしょうか。

 では、このような案で進めさせていただきます。

 次に、議題2の「乳がん検診について」、まず、事務局より説明をお願いします。

○事務局 それでは、資料3をごらんいただけますでしょうか。資料の2ページ目でございます。

 まず「乳がん検診のあゆみ」、それから「市区町村による乳がん検診の項目等」をまとめさせていただいております。

 乳がん検診につきましては、平成20年4月に健康増進法の健康増進事業として、そのほかのがん検診と同様に位置づけられております。

 また、現在の市区町村による乳がん検診につきましては、対象年齢を40歳以上、検診間隔は2年に1回。そして、検診項目は、問診、視診、触診、乳房エックス線検査となっております。

 続きまして、3ページでございます。こちらは、平成24年度に市区町村による乳がん検診の受診者数等をまとめたものでございます。

 受診者数といたしましては、40歳~49歳が最も多くなっております。

 また、精密検査の受診率は、おおむね85%前後となっております。

 続きまして、4ページでございます。こちらは、市町村のがん検診受診率の推移をまとめたものでございます。

 乳がん検診の受診率につきましては、オレンジ色の点線でございますが、近年やや低下傾向にありまして、1718%程度のところを推移しているような状況でございます。

 続きまして、5ページは、乳がんの年齢調整死亡率をまとめたものでございます。

2012年は少し下がっておりますが、少しずつ増加傾向にあるというような状況でございます。

 続きまして、6ページでございます。こちらは、乳がんの年齢調整罹患率をまとめたものでございます。

 こちらも近年は増加傾向となっております。

 7ページでございます。こちらは、乳がんの年齢階級別死亡率をまとめたものでございます。

2012年、水色の折れ線グラフを見ますと、50代後半以降は10年前、20年前と比べて高い状況となっております。

 8ページは、乳がんの年齢階級別罹患率をまとめたものでございます。

2010年の水色の折れ線グラフを見ますと、30歳以降は10年前、20年前と比べて高い状況にあり、また、特に4549歳が最も高くなっております。

 続きましては、9ページでございます。こちらは、乳がんの罹患率の推移を国際比較したものでございます。

 日本は下のほうの中ほど、実線でございますけれども、乳がんの罹患率には地域差がありまして、欧米で高く、アジアでは低いような状況でございます。

10ページでございます。こちらは、乳がんの死亡率の推移を国際比較でまとめたものでございます。

 同じように、日本は下のほうの実線でございますが、欧米諸国が下がってきているのに対し、日本はやや増加傾向にあるというような状況でございます。

 資料3につきましては、以上でございます。

○大内座長 ただいま資料3をもとに、乳がん検診に関する検討の経緯等について、事務局から御説明がありました。何か御質問はございますか。

 特になしでよろしいですね。

それでは、続きまして、資料4のように、厚労省がん検診の研究班で「有効性評価に基づく乳がん検診ガイドライン」というものが本年3月にまとめられております。この件につきまして説明をいただきたいのですが、本来ですと、このガイドラインの策定の班長は濱島先生だったと思いますけれども、御都合もあって、本日、構成員であります斎藤先生のほうから御説明いただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

 では、お願いします。

○斎藤構成員 がんセンターの斎藤です。ガイドラインについて申し上げます。

 お手元にお配りしてあるのが、3月末に上梓されたものでございます。

 冒頭に、これまでの変更を申し上げておきますと、この乳がんの2013年度版から、本ガイドラインは国立がん研究センター、がん予防・検診研究センターからの上梓、出版ということになっています。国立がん研究センターの研究開発費によって作成しております。

 資料4の2枚目ですが、このガイドラインの出自といいますか背景ですけれども、一番最初は、平成13年に公表されました東北大元教授の久道茂先生の、いわゆる久道班の報告書。ここに端を発しておりまして、ここで初めてがんの死亡をエンドポイントにしたガイドラインがまとめられました。それを基礎資料として、先ほど座長から言及がありました平成15年の検討会で、がん検診の導入について議論が始まったわけでございます。

 マンモグラフィは、その際にこのガイドラインを用いて、それをベースにして視触診とマンモグラフィの併用による乳がん検診が推奨され、これがその後40歳以上を対象として、全国の標準的な方法として導入・実施されました。

 既にそれから10年以上がたちまして、更新の時期だということで、およそ2年間のプロセスを経て、本年上梓に至ったという次第です。

 1枚めくっていただいて、作成のプロセスの核心部分ですが、対象の文献をMEDLINE等の検索エンジンで分厚く抽出をいたしまして、5,300文献がピックアップされています。これをまずは抄録をチェックいたしまして、これは2人1組で行うものですが、それを経て、フルレビューのチェックに残った対象文献が194であります。

 これらを、国際標準の論文研究の質の評価のためのチェックリストに準じましてレビューいたしまして、最終的に個別の研究の要約を作成いたします。

 対象論文は、英文が最終的に110文献、和文8文献が残っております。これらは有効性の直接指標であります死亡率減少効果をエンドポイントにした研究のほかに、有効性に間接的に関与する精度評価、それから、不利益に関する論文等も含まれております。

 きょうは、そのうちの有効性に関する、つまり死亡率に直接関係するエビデンスを中心に、簡単にお話したいと思います。

 その次のスライドですが、死亡率減少効果に関する研究は、マンモグラフィ単独、そして、視触診併用。それから、視触診単独、マンモグラフィの40歳以下。それから、超音波検診について、その表に整理してありますが、マンモグラフィ単独については6研究が抽出されました。視触診併用がさらに3文献、ランダム化試験としてはピックアップされています。これらをまとめますと、マンモグラフィは併用法も含め、死亡率減少効果が示され「科学的根拠があり」と判断されました。

 一方、視触診単独は、ランダム化試験はございませんで、次善のコホート研究がございましたが「科学的根拠不十分」、すなわち死亡率減少を判断する根拠は得られませんでした。

 それから、40歳未満の若年層のマンモグラフィ及び超音波検診に関しては、このような死亡指標をした研究は認められず、したがって「死亡率減少効果不明」と判断されました。

 次に、この死亡率減少効果について、各方法についてのまとめをお話しします。

 まず、マンモグラフィ単独法ですが、40歳~74歳について検討が可能でありました。

 その次の3ページ目の下の表に、4074歳についてのランダム化試験がまとめてあります。6研究ございまして、上限と下限をとりますと、40歳弱~75歳までの研究があります。主たるところは4069歳、あるいは一部74歳というところになります。

 これらの研究を個別に見ますと、50歳~74歳については、一部統計学的有意差を持って死亡率減少効果が示されております。一方、40代については、差を検出した研究はありません。

 今の資料の図で、一番下に書いてありますが、次のメタ・アナリシスを行いましたが、その際、解析対象とする年齢についてですが、全年齢のほかに従たる解析として4049歳、5074歳についても解析しております。

 おめくりください。メタ・アナリシスの図であります。

 この5研究について、全体では一番下段の囲みにあります。0.75。つまり検診群で、対照群に対して25%の死亡率減少効果を認めました。

 ここには書いてありませんが、サブ解析として行った40歳~49歳、あるいは5074歳でも、統計学的有意差を持ってリスクの減少が認められました。

 なお、年代別では、40代に比べ5074歳で寄与危険度が大きいという結果でありました。

 次に、マンモグラフィと視触診の併用法に関する研究でありますが、ランダム化試験については、その次の5ページの上のスライドですが、3研究あります。

 メタ・アナリシスを行いましたが、やはり解析対象としましては全年齢のほかに従たる解析として40代、それから、5064歳。これら3研究は上限が64歳ですので、それ以上の対象年齢についての解析は可能ではありません。そこで50ないし64歳についてサブ解析を行いました。

 その次の図がそのメタ・アナリシスの結果でありますが、研究間で差がありますが、一応全体では下段に示すとおり0.8713%検診介入群で、対象群に対して死亡リスクの低下が認められました。

 なお、サブ解析では、50歳~64歳については有意な死亡率減少の結果が得られましたが、4049歳では有意な結果は得られませんでした。

 また、死亡率低下に関する寄与危険度は、50ないし64歳代でありました。

 1枚めくっていただきます。

 次に、このようなランダム化試験が行われた後に、マンモグラフィの機器の精度向上がありまして、現在では主にデジタル・マンモグラフィというより精度が高いとおぼしき方法が用いられておりますがコンベンショナルなフィルム撮影とデジタルとの精度比較研究について検討いたしました。

 2研究が抄録されまして、1つ目の上段のものはランダム化試験。2番目のものはコホート研究であります。

 これによりますと、ランダム化試験のほうでは、感度がデジタル・マンモグラフィ77%に対して、従来のフィルムは61%と、感度がデジタルで高い結果でありました。一方、特異度は、96.597.強、ほぼ同様であります。

 もう一つの研究では年代別に検討しておりますが、おおむね感度・特異度とも似た結果でありますが、ややデジタル・マンモグラフィで各年代で感度が高いという結果であります。50歳などはデジタルのほうが低く出ておりますが、押しなべてそういう結果であります。

 これらをまとめますと、現在主流となっていますデジタル・マンモグラフィの精度は、フィルム・マンモグラフィと比べて感度はやや高く、特異度はやや低いという要約ができると思います。

 次に「視触診のエビデンス」でありますが、視触診に関しては症例対照研究が2つあります。

 今、話しながら気がついたのですが、申しわけないのですが、4枚目のスライドで、エビデンスの視触診に関するところがコホートになっていますが、これは症例対照研究の間違いですね。失礼しました。

 それで戻りますが、7ページ目の上段。これは、1つは我が国からの症例対照研究でありまして、93例の乳がん死亡例に対して、1対4のコントロールが選択されています。

 1年以内に検診を受けていた場合のオッズ比が0.93。そして、この年数の増大とともにややオッズ比は減少していきますが、いずれも統計学的有意な結果は得られておりません。この視触診を受けることによって、オッズ比の低下の傾向はありますが、しかし、統計学的有意水準には達しておらず、効果は明らかではないという結論です。

 もう一件、これは米国の大規模な症例対照研究でありまして、約1,500例のケースに対して、年齢とリスク、リスクというのは家族歴と生検歴の有無でありますが、それでマッチングした症例対照セットで、全体のほかにリスク別に乳がん死亡リスクを検討しております。

 そうしますと、3つのエイジグループで、いずれも視触診を真ん中の行に示し、一番右端が主たる結果ですが、視触診を行った場合には全体で0.92というオッズ比で、しかし、統計学的有意差はありません。

 これをリスク別に見ますと、ハイリスクな個人において、平均リスクに比べると効果がやや大きい傾向が見られます。しかし、統計学的有意ではありません。

 これを年代別に40代、50代としましても、やはりやや1より低いオッズ比が示されていますが、いずれも統計学的有意ではありません。

 ということで、このほかにあとインドで視触診に関するランダム化試験が進行中ですが、今のところ死亡率をエンドポイントとした報告はされておりません。

 今の2番目の研究に関しては、マンモグラフィの受診についても優意な差は得られていないということもつけ加えておきます。

 それで、これらの研究をまとめますと、視触診について死亡率減少効果の判断する根拠はないという判断になりました。

 次をおめくりください。推奨を決定するために、有効性と、もう一つ考慮すべき要素は不利益でありますが、不利益についてもこのガイドラインでは一応現在のスタンダードな項目について検討しておりますが、その中で精密検査に関する不利益についてこのスライドにまとめております。利用できるデータは、乳がん検診学会の国内のものと、海外のものとしてアメリカの報告があります。

40代を対象としまして、マンモグラフィ検診を1,000人にオファー、提供いたしますと、生検がそれぞれ99人と101人発生します。これらの精検の数が多ければ多いほど余分のな負担が発生するわけでして、例えば追加の画像診断、マンモグラフィあるいは超音波検査、そのほか生検、細胞診といったイベントが発生するわけです。

 それらを比較しますと、比較が可能なところでは、生検に関して、とりわけ生検の率がアメリカに比べて低い。それから、生検の中でも比較的負担の少ないコアニードルバイオプシーが日米で差があるということです。日本のほうが負担が少ないものが多い。それから、負担が大きい吸引細胞診とか、最も負担が大きい外科生検が少ないということで、精密検査に関する不利益は、日米で比べると日本でより小さいということが示されていると考えられます。

40代というのは、御存じのとおり米国ではUSプリベンティブ・サービス・タスクフォースで、不利益を重視して2009年に推奨を変更した経緯がありますが、その決め手といいますか重要な要因になったのはこの不利益でありまして、それを日本のものと比較したというわけであります。

 次に、超音波検査に関しては、死亡率減少効果の研究はありませんので、その事前のレベルの研究として、感度・特異度の論文を検討した論文を検討しました。そうしますと、感度をはかるために必要な対象集団内のがんの把握のためには、精度が高いがん登録が必要なわけでありますが、そういった研究は限られておりまして、上段の国内の3研究のうち、一番上段の1研究のみがそれに該当します。それによりますと、超音波は53.8%の感度でありました。

 なお、この研究では、マンモグラフィも同時に同じ対象者に行っておりますので、感度の比較が可能でありますが、マンモグラフィの感度は61.5%という報告になっています。

 他の2研究は、これは発見例を、違うモダリティーには発見例を分母にして算出するというのが基本的な方法でありまして、参考程度にとどまりますが、感度は50%~70%ということであります。

 下の2つの研究は海外のものでありますが、これはいずれも感度は28%、50%というふうに、国内からの報告よりは低い感度が報告されています。

 以上で死亡リスク減少効果及び精度に関する、あるいは不利益も交えたまとめでありますが、ここから推奨を作成するに当たって、まず、証拠のレベルの判定ですが、次のスライド上段です。従来と若干変更がありますが、1+として複数の中等度以上の質のランダム化比較試験ですね。質の悪い無作為化試験が1-としてそれに続き、その次、2+として質の中等度以上の複数の観察研究という順番になっています。

 この証拠のレベルを、個別の研究に対して判断をして、不利益を勘案して推奨レベルを決めるということになっています。

 それから、推奨レベルを決めるアルゴリズムといいますか、決め方ですが、これはがん対策としての対策型検診と任意型検診で、次の表のように整理しています。

 Aは、利益が不利益を確実に上回るということが示されているもので、このいずれの形態の検診についても実施を推奨するというもので、対応する証拠のレベルは1+または2+ということになります。

 Bは、Aよりも利益・不利益の差が相対的に小さいもので、対策型検診・任意型検診をやはり勧めるというもので、同様の証拠のレベルが対応します。

 Cは、有効性は認めるけれども、不利益との差益が非常に小さくて判断が難しい場合。このような場合は推奨しない。対策としては推奨せず、個人の検診としては個人の判断で行うということであります。これも対応する証拠のレベルは、基本的に同じです。

 Dは、死亡率減少効果がないということが示されているもので、対策型検診として推奨しない。任意型としても推奨しないということであります。

 Iは、効果がないということではなく、研究がないまたは研究で有効性が判断できない。要するに、証拠が不十分であるもの。したがって、今後研究が必要なものについてのカテゴリーでありますが、対策型としては、証拠がかたまるまでは推奨しないという原則です。

 任意型検診については、このようなエビデンスをきちんと伝えた上で、個人レベルで判断をするということであります。

 実際の推奨でありますが、次にめくっていただいて、まず、マンモグラフィ単独法。以上から、4074歳については証拠のレベルは、3番目のコラムになりますが、1+ですね。複数のランダム化比較試験による証拠があるということで、推奨グレードBというふうにしてあります。

 一応読みますが「46-74歳を対象とした複数の無作為化比較対象試験の結果を総合して、死亡率減少効果を示す相応な証拠がある。不利益については偽陽性、過剰診断、放射線誘発乳がんの発症の可能性がある」、そして「対策型検診としての実施を推奨する」。任意型検診としても同文であります。

 次に、併用法についてですが、対象年齢40ないし64歳として、同じ証拠のレベルで、やはりBとしまして、推奨の判断基準は同じであります。

 対策型検診としては「対策型検診としての実施を推奨する」にただし書きがつきまして、ここで併用される視触診については、精度管理が標準化されていないという現状がありまして、そこで「視触診が適正に行われるための精度管理ができない状況では実施すべきではない」という附則がついています。任意型検診についても同文であります。

 それから「乳がん検診の推奨(2)」としまして、40歳未満の対象年齢についてのマンモグラフィを含んだ検査法。これは既に述べましたように、証拠のレベルで研究がない。判断する根拠がない、2-。そして、推奨グレードはIですね。ということで、これは「対策型検診としての実施を推奨しない」、そして「任意型として実施する場合には、死亡率減少効果が不明であり不利益が大きい可能性について適切な説明を行うべきである」。

 次に、視触診単独法についても2-で、Iで、推奨は同じであります。この任意型検診としての文言には、視触診の精度管理が必要である旨の附則がマンモグラフィに追加されています。

 最後に、超音波検診ですが、これは研究がまだありませんので、証拠のレベルは3であります。それでIという判定でありますが、つまり感度・特異度の報告はあるのですが、死亡率減少効果を検討した研究はまだないということですね。対策型検診としては、実施を推奨しない。任意型としては、実施する場合にはきちんとした説明が要るということであります。

 この超音波検査に関しては、第3次対がんの総合戦略研修として座長がリーダーシップをとられています研究班で、J-STARTというマンモグラフィ+超音波vs.マンモグラフィという比較試験が行われておりまして、この結果が近々もし公開されれば、この推奨を再検証するというような機会もあるかと思います。ということで、上の2段とはちょっと違うということを申し添えておきます。

 最後に、乳がん検診の国際評価ですが、マンモグラフィを推奨するというのは先進国各国共通であります。ただ、いろいろ違いがありまして、とりわけ40代に対する推奨は、推奨しないというところも多く、これは先ほど言及しました不利益とのバランスの判断によります。

 以上のように、乳がん検診のまとめとしては、マンモグラフィ単独法、4074歳対象及び併用法の4064歳対象は、死亡率減少効果の相応な根拠があります。

 本ガイドラインでは、40ないし64歳に対しては、マンモグラフィ単独法及びマンモグラフィと視触診の併用法を推奨しております。

 「対策型検診において、上記の科学的根拠を反映することにより、乳がん検診の目的である死亡率減少につながることが期待される」という結論であります。

 以上です。

○大内座長 斎藤構成員におかれましては、本ガイドラインの御説明をありがとうございました。

 お手元に本体版、黄色い冊子がございますが、それの概要を今、説明いただいたことになります。

 それで確認ですけれども、今の資料の2ページ目の下、「検査法別の死亡率減少効果」の中で「視触診(単独)」とあります。これはコホートが2で症例対照研究が0ですが、逆ですね。

○斎藤構成員 はい。修正が必要です。大変失礼しました。

○大内座長 それから、3ページ目の右下で、マンモグラフィ、これは単独ですが、RCTの概要ということで、40歳~74歳まで全てを包含しておりますが、注釈、下のほうに「サブ解析として40-49歳、50-74歳」とございますが、この点、実は次のページにはそのデータはありませんで、恐縮ですけれども、お手元の本体のガイドラインの114ページをごらんください。

 ここは「マンモ単独法【4049歳】のメタ・アナリシス」で「(相対危険度)」下が「(寄与危険度)」と、さらに同じようなことがマンモ併用法のメタ・アナリシスでもありまして、先ほどの御説明の中では、5ページの右上の表の下にありますけれども、サブ解析として40代と、それから、5064とありますが、これもこの報告書の中でごらんいただくのは、117ページの図17と図18でございます。このように、40歳代においては分けてあります。

○斎藤構成員 1617です。

○大内座長 117ページ。

○斎藤構成員 116ページの図16と。

○大内座長 114ページは単独法で、併用法は117ページで40歳代。40歳代の結果は違うわけですね。そのことは皆さんに御認識いただきたいということで、国際的なRCTでは有効性は証明できていないということがただし書きでつくということでよろしいでしょうか。

(「はい」という声あり)

○大内座長 斎藤先生、よろしいですか。

○斎藤構成員 はい。図の1517です。40歳代が17ですね。下は寄与危険度の図になります。

○大内座長 ただいまの研究班からのガイドライン報告につきまして御議論いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 どうぞ。

○祖父江構成員 ガイドラインとしては、忠実に証拠に基づいた記述をされているということは理解できますけれども、視触診単独の証拠が不十分であると、解釈としては余り効果がないのかなというところですね。

 それで、マンモグラフィ単独、マンモグラフィ+視触診併用ともに効果があるというのですけれども、視触診単独で効果が認められないということであれば、主にはマンモグラフィの効果であろうというのが普通の素直な考え方だと思います。

 ただ、年齢による効果の違いというのがかなり微妙にあるので、今、言っていただいた年齢別のサブグループアナリシスというのが非常に重要だと思うのですけれども、これを見ると効果の大きさとして、どちらかと言うとマンモグラフィ単独のほうが効果が大きいように出ていますね。ということは、やはり視触診は余り効果がなくて、マンモグラフィ単独で十分というような結論が素直な解釈と思うのですが、その点はどう思われているのですか。

○斎藤構成員 そうですね。オーソドックスな解釈は全くそのとおりで、異論はありません。

 視触診単独に関しては、マンモに比べ、個別に判断する研究が圧倒的に数からも質からも不足しているということであり、とはいえ、リスクの低下傾向があること、また大きな症例対照研究ではマンモグラフィも下がっておらず、同じような結果が出ているということで、やはりそこはなかなか判断が難しいところだと思うのです。

 しかしながら、基本的には、祖父江委員の解釈で多分誰も反対はしないだろうと思います。

○大内座長 どうぞ。

○祖父江構成員 諸外国のほうで併用法をどう扱っているかに関して余り説明がなかったように思いますけれども、11ページの上の表の中で「マンモグラフィ」と書いてあるうちの、単独、併用それぞれの扱いは、諸外国ではどうなっているのですか。

○斎藤構成員 それに関しては世界の網羅的な情報について、今、ちょっと心もとないので、明確な答えはできませんが、主たるガイドラインで従来併用法だったものも含め、現在、単独法が主体だということだと思います。

○大内座長 ただいまの御質問、11ページの右上の「乳がん検診の国際的評価」に関しての視触診の位置づけですが、私の知る範囲では、そのデータを持っていますのがInternational Cancer Screening NetworkICSNと言いまして、米国NIHが主幹する国際会議、2年~3年に1回開催されておりますが、その中に日本のデータ等も入っていますけれども、主に先進諸国ですが、28カ国が今、加盟しています。アジアからは日本と韓国だけですけれども、欧米においても基本的に、例えば米国のガイドラインにはマンモグラフィと視触診という記載もございますが、確認をしますと、基本的にアディショナルに触診を行っていて、例えばマンモグラフィネガティブで視触診ポジティブであっても、検診発見がんとは呼ばない。それは偽陰性という扱いをしているということでございます。

 恐らく先進国の中で視触診を今、推奨しているのは、日本と韓国だけだと思います。祖父江先生の御質問には、ICSNのデータで私の知る限りにおいては、欧米ではスタンダードな検診方法として触診を推奨しているとは言えないと思います。そのことがこの表からも、「視触診」の欄を見ますとほとんど導入していない。ACSが唯一「30歳から3年に1回」とありますが、これもあくまでも相補的な意味で行っている。それは「mammography is not perfect」という記載があって、そのために、それを補うために触診を加えることも可とするというふうな形で書き込まれていることを確認しております。

 それでよろしいでしょうか。

○祖父江構成員 はい。

○大内座長 祖父江構成員の御提言というのは大変重要でして、視触診単独というのをどこまでここで議論するかということと、それから、マンモグラフィ検診についてのデータは、このようにかなりそろっていまして、単独でよしとするのか、あるいは視触診も残した書きぶりにするのかということを今後議論する必要があります。

 そのために私が先ほど申し上げたのは、サブ解析でこの表がありますように、マンモグラフィの弱点はデンスブレスト、乳腺濃度ですね。密度が若年者で高い。40歳代で約70%の方が不均一高濃度、あるいは高濃度乳房を呈しまして、そのことが今、世界的に問題になっています。それでこの国際評価でも意見が分かれているところでして、今、40歳代に導入している国。これもICSNのデータを見ますと、3分の1以下です。そういったことを考えますと、日本の向く姿勢はかなり今、問われているわけですが、この点についてはこの検討会で議論を進める必要があると思っています。

 といいますのは、約10年前の平成1512月から、乳がん検診と子宮頸がん検診のガイドラインの見直しが行われた際に、当時、平成16年2月の中間報告書としてまとめがございます。その総括の中で、この前の検討会ですけれども、結論としては「原則として、マンモグラフィによる検診を推奨する」というふうに書き込まれております。ただし「視触診及び超音波検査についての有効性については今後検証する必要がある」ということでとどまっていまして、それは、当時マンモグラフィの機器あるいはシステムが全国的にまだ行き届いていなかったという状況も鑑みてそのように定めたと記憶しております。それから10年たっています。

 さらに当時厚生労働省は、その報告を受けまして、マンモグラフィの緊急整備。すなわち、健康フロンティア戦略、女性がん対策ということで、80億円を使って、平成17年度から2年間で全国にマンモグラフィの機器等の整備、それから、医師・技師の講習等について整理を図ったところですので、現在はかなり体制的には整ってきたという状況がございますので、まさしく祖父江構成員の言われるように、10年前の検討会の結論を、さらに踏み込んだ形で議論を進める必要があるのではないかと私自身は思っています。よろしいでしょうか。

○祖父江構成員 今、座長の大内先生からもあったように、マンモグラフィはパーフェクトではない。特にデンスブレストに対してのセンシティビティーが低い。特に40歳代のところをどうするかが焦点になるわけですけれども、このガイドラインでまとめている中でも、マンモグラフィ単独の死亡率減少効果が、40歳代では0.81で、50歳~74歳では0.71というふうに、比べてはいないですが、そうなっていますね。ですから、この0.81というのが十分な死亡率減少効果とはちょっと言いがたいということで、40歳代に対して何らか追加的に何かができないかということで今、超音波の評価をしているわけです。

 しかし、少なくともそれが視触診を追加するということでは余りないような気がする。少なくともエビデンスというかこういうデータを見ている限りでは、40歳代に対して追加的にやることが視触診ではないだろうということが言えるのではないかと私は思います。

○斎藤構成員 はい。

○大内座長 どうぞ。

○斎藤構成員 さっきちょっと歯切れの悪い言い方をしましたが、このデータを見ると、視触診の有効性がないと断定することはできないということを申し上げたかったのですね。

 ただ一方で、もしこれが今後の、例えば低開発国での研究等、インドとかそれが示されたときに、果たして先進国でそれを採用するのがよいのかどうかと考えた場合には、やはりそれは現時的な対応では多分ないのですね。ガイドラインの完成の時期にフォーラムというのをやって、関係者のいろいろな意見を多角的に聞きますが、

 精度管理ができない、実際に個人間で感度が非常にばらつくということも認められていて、もしやるならば精度管理が必須であるという意見が強かったと思います。そういうことを考えると、現状やっている視触診をつづけることは、むしろもしエビデンスが出てきてやるとしてもハードルが低いことではないというふうに考えられると思います。

 ですから、結論は、私も視触診をというのに関しては祖父江委員と同じ意見です。

○大内座長 この検討会は、触診についての位置づけをやはり明確にすべきだと私は思っております。

 7ページに今回、症例対照研究等についてまとめられておりますが、上段の、これは今、Cancer Scienceに変わりましたけれども、Japanese Journal of Cancer Researchの症例対照研究で、主に宮城県と群馬県における乳がんによる死亡者についての症例対照研究を行っていまして、死亡率減少効果が得られなかったというのが結論でした。

 これも10年前にはこのデータがあったのですが、ただし、そのときはまだマンモグラフィ検診体制が整っていなかったという状況を鑑みて、現在の健康局長通達で「触診及びマンモグラフィ」というふうになっていると理解しております。

 その後、視触診に関するエビデンスというのは、蓄積されているわけではないというふうに私は理解していますし、それから、何よりも10ページのガイドラインの推奨の(1)のところに赤字で書いてありますように、視触診がたとえ残ったとしても、精度管理ができていない。これは事実なのです。ですので、やはり視触診の重みは低くなったのではないかと考えますが、いかがですが。

 どうぞ。

○松田構成員 これまで視触診をマンモに併用する根拠として、時々出くわすのが、マンモの偽陰性症例で、視触診のみで発見されるがんがあるので、やはり視触診は外せないという意見が現場としてはあるのだと思うのです。

 それで、きょうまとめていただいたデータだと、視触診を併用しても死亡率減少効果という観点からするとそれほど大きな効果がなくて、むしろマンモ単独のほうが死亡率減少という証拠が出ているという。そして、座長がおっしゃったように、私も地域における乳がん検診で時々視触診を担当していますが、精度管理がきわめて難しいという観点からすると、このまま視触診を併用する根拠はないというふうに考えればよろしいということですね。マンモを補完するだけの価値はないという。

○大内座長 マンモを補完する価値はないとは言えないと思います。

 といいますのは、マンモネガティブで触診ポジティブというのはもちろんあるのですね。日本の場合これを検診発見がんに含めているだけで、例えば先ほど言いましたように、米国では入れていません。これは検診陰性になります。

 実際に起こっていることは、現場でマンモ、特に40歳代においてはマンモグラフィの感度が低くなるのは乳腺密度が高く、エックス線画像診断の根幹たる問題ですので、そこに別なモダリティーとして何かあるかということを検討されています。約10年前から国としてもアウトカム策定に関する研究班、当時、黒川清先生が、内閣府特別顧問として計画された戦略的アウトカム研究班の中で、エコーを使ってみてはどうかということで、第3次対がん総合戦略研究事業において超音波を用いた研究デザインが提案され、平成18年度から「超音波検査による乳がん検診の有効性を検証する比較試験」(J-START)が開始されました。

 エコーについては、実は10年前のこの検討会でも何度も議論されたのです。ところが、そのとき証拠不十分だということで、Iのままだったのですね。では、そのデータをどうつくるのかということで手を打ったのが、第3次対がん総合戦略研究のJ-STARTになります。

 ですので、私が言うのも変ですけれども、これはやはりJ-START、既に7万6,000人の登録、90%以上がRCTです。きれいにランダム化されておりまして、今、データ解析を行っていまして、ほぼ終了間近で、今、投稿する準備に入っております。それで、今、松田構成員が懸念されているマンモグラフィネガティブの部分をどの程度エコーで拾い上げているかとかそういったことが当然そこで見えてくるわけですが、どうしましょう、祖父江先生。これは話していいですかね。国の研究班ですから。

○祖父江構成員 それは先生の判断です。

○大内座長 国の研究班ですから、国税を使っているという立場から、あえて申し上げますか。

 そうしたら、よろしいですか。

J-START、次の議論にも、多分次回以降で参考人として別な方に入っていただいて示していただきますけれども、私は今、座長ですので非常に歯切れが悪くなるかもしれませんが、7万6,000人のうちRCTに参加された方々は各群に3万人以上おられます。スタディー(研究)がマンモグラフィ+US(超音波)です。コントロール(対照)群がマンモグラフィオンリー。触診は両方に入ってもいいし、入らなくてもいい。これはランダム化されていますから、均等に割りつけられますね。

 結果、当然のことながら、マンモ単独群のほうでは、マンモで見つからずに触診で見つかった方が、3万数千例のうち8例ございました。しかし、スタディー群、マンモ+超音波群では、マンモネガティブでもエコーポジティブで拾い上げているためと思いますが、触診単独で見つかった方はゼロというデータは出ております。

 きょうはこの辺まででよろしいですね。

○祖父江構成員 お任せします。

○大内座長 まさしく本幹に、これは議題のかなめだと思いましてあえて申し上げたのは、国の戦略研究として行われてきたJ-STARTのエントリー期間は東日本大震災が起こった2011年3月まででした。そこまでに7万6,196名が登録されておりまして、その後の2年後に同じ検診を行うこととなっており、2013年3月末をもって2回目の検診が終了しています。それから今、1年半経過しています。膨大なデータが集計されて、そのスクリーニングがほぼ終わりました。それで、今、投稿に向けて準備中でございますので、その点については、恐らく私ではなくて、研究デザインからかかわってこられた祖父江構成員に説明いただたいほうがより客観的であろうと思いますが、いかがですか。

○祖父江構成員 御指名とあらばそれはやりますけれども、きょうではないですね。

○大内座長 事務局の方に、申しわけないです、勝手に私が決めたようですけれども、今後のことも考えますと、やはり触診についてのスタンスを明確にするためにも、超音波検査についてどういう状況なのかということを皆さん、やはり国民の方々が知りたがっていると思うのですね。

 それで、超音波に関する大規模なRCT。これは世界初ですけれども、7万人以上のRCTが終わって、その結果がもう出ようとしているわけです。さらには、その超音波検診のシステムづくりをこの10年間で行っておりまして、いわゆる超音波検査を行う臨床検査技師及び放射線技師の方々2,000名以上。それから、それを読影する、あるいは自分で超音波の検査ができる医師2,000名以上をもう既に養成しています。これはマンモグラフィを2000年から入れたときと同じで、当時厚生労働省から500名を超えたらと言われていまして、500名超えたという状況も鑑みてマンモグラフィが入ったわけですけれども、今回、超音波についてはそういった体制整備はほぼできております。

 ただし、私も自分で言うのではなくて、これを扱っているのが今、NPO化しました元マンモグラフィ検診精度管理中央委員会と呼ばれた組織がございますけれども、現在は超音波による乳がん検診の精度管理も担うということで、日本乳がん検診精度管理中央機構ということに改められております。そこの実態等を説明していただいたほうが、日本でこれから仮に超音波検査について検討を始めると言ったときに、バックグラウンド、あるいは全国的なサポート体制が敷けるのかどうかということが見えてくると思うのですが、いかがでしょうか。これは私からの提案でございます。

 どうぞ。

○がん対策推進官 ありがとうございます。

 説明方につきましては、我々としましてもきょうで何か決めるということではなくて、視触診との併用につきましても今後さらに議論を深めていくために、参考人の方をお呼びするなりして議論を進めていければと思っておりましたので、その中でもちろん座長の今、御提案があったような超音波についての知見についても、あるいは精度管理の状況についても、必要に応じて参考人等をお呼びして議論を深めていくということはこちらも想定しておりましたので、事務的には可能でございます。

○大内座長 ほかにいかがでしょうか。

 どうぞ。

○井上構成員 先ほどからマンモグラフィが必要だというのはよくわかるのですけれども、やはり欧米諸国と日本人との大きな違いというのは、乳がんの罹患率、あるいは死亡率の二方性だと思うのですね。そこら辺をやはり考慮しないわけにはいかないと思いますので、ぜひJ-STARTの結果を詳しく分析するときにも、年齢でどの辺で、要するに、若い人でマンモで見逃される例が多いのかとかその辺のことも明らかにした上で、欧米のようにほとんど前の若いほうのピークがなくて、年をとってから乳がんの罹患率がふえていくというようなところで、比較的対策型検診に関しては、若いほうは切り捨てていくというような考え方もあるかと思うのですけれども、日本人の場合はそこが大きな違いなので、ぜひ似たような罹患率の特徴を持つ国にも参考になるかと思いますので、その辺もきちんと分析していただけたらと思います。

○大内座長 ただいまの井上構成員からの御質問ですが、年齢・階級別の罹患率が欧米と異なることは、最初の資料ですね。資料3にあるとおりでして、日本人あるいはアジア人の罹患のピークが45歳~50歳、40代ということでございます。

 では、マンモグラフィ検診による感度・特異度はどうなっているかということは、既に宮城県は、地域がん登録制度、新生物レジストリー委員会というのがございまして、そこで、宮城県は平成元年からマンモグラフィを導入しておりますから既に20年経過しておりまして、死亡率も見ております。年代別の感度・特異度を既に調査して、これは2008年のCancer Scienceに公表済みでございます。

 簡単に申しますと、50歳以上のマンモグラフィの感度は、86%以上です。一方で、40歳代のマンモグラフィ検診の感度は、71%でした。その差が15%開いております。そこで、40歳代への対策ということでの戦略研究。J-STARTからわかってくることは、あくまでも40歳代しか対象としておりませんので井上構成員の御質問に答えることはできませんが、その前に、世界標準であるマンモグラフィの、いわゆる検出力ですね。日本人女性の乳がんの検出力については、既に発表済みであるということでございます。よろしいでしょうか。

○井上構成員 はい。

○大内座長 どうぞ。

○菅野構成員 八王子市、菅野です。

 科学的根拠のことを議論するときに、一自治体というところを余り言うべきではないかなと思うのですけれども、現場の空気という意味で、現状、実は八王子市では今、視触診のみという検診も、マンモグラフィが整備されるまでという意味合いもあって、今日まで正直残っておりまして、マンモグラフィと視触診の併用の検診をもちろんやっています。

 その中で、私どもの自治体の中での精度管理として見るに、視触診のみによる検診は、発見がんが少ないということもマンモグラフィに比べてあるはあるのですけれども、それ以上にまずばらつきがやはり多いという問題が大変うちの市の中でも議論になっておりまして、そういう意味でいくとマンモグラフィと視触診の検診のほうをもっと進めていこうというふうに、一自治体の例としてはそのような取り組みをしているのです。

 ただ、きょうも議論ありましたとおり、やはり視触診をきっちりやってきた先生方もいらっしゃる中で、それにかわるものがないとなかなか、今、せっかく受けていただいている方々が受ける機会を失うのではないかという議論がやはり先生の中にもありまして、こういったことは多くの自治体で共通していることだと思いますので、きょうの議論の方向性で深めていっていただけたら自治体の現場としては助かるかなと思います。

○大内座長 ありがとうございます。

 では、福田構成員、どうぞ。

○福田構成員 ちょっと話を戻しますが、40代に対するマンモグラフィと視触診の併用に関してなのですけれども、先ほど座長に教えていただいた、本体のほうだと117ページの図17の併用のところですが、このメタ・アナリシスの結果を見ると、解釈が違ったら教えてほしいのですが、カナダの研究のところはやはりウエートが大きくて、ここで余り効果が出ていないので、全体としては有意差がつかないということになっていると思うのですね。

 それで、斎藤先生に御説明いただいたスライドの5枚目のところの、上のRCTの概要を見ると、どうもこの研究だけ対照群が視触診+自己触診になっていますから、要は、これだけ見ると何となく、結局この世代に上乗せでマンモをやってもそんなに効果がないような印象を受けてしまうのです。上の2つは、比較対照は検診なし等の比較なので、何となく上乗せマンモよりも視触診のほうがむしろ意味があるのではいかと読めたりするような気もするのですが、おかしいでしょうか。

 なので、もうちょっと検討が必要ではないかと思ったりするのです。

○斎藤構成員 軽々に申し上げられないのですけれども、カナダの研究はデザイン上も視触診を経た後にランダム化してやっているとか問題があります。それから、最近、今年出た死亡率が減らないというBMJの論文があるのですけれども、その中では問題なしとしていますが、初期の4ラウンドか5ラウンドの80年代に行われた検査の精度が悪いということが公表されているのですね。1の水準を達成すべきところが0.3ぐらいしかない、その後にそれが改善されたなど、この研究単独ではいろいろ指摘されるところもありますので、解析結果で、研究間に非常に結果に差があるというのは見てのとおりですけれども、その中でもこの研究はちょっと違う、そういう保留は、これはパーソナルな意見ですが、あると思いますね。

 ただ、メタ・アナリシスするときに、どれかを外すか、はっきりした明確な根拠がなしに、恣意的にピックアップして分析するというのはやはり方法としてはよくないので、こういう研究を束ねて解析しているわけです。

○大内座長 カナディアン・トライアルは、いろいろな問題が指摘されていまして、実態は今、斎藤先生が言われたように、どうも先に触診をされた上でランダム化されたということも指摘されているとおりです。今年のBMJにも出ていましたし、何度も繰り返し議論されているところです。

40歳代のマンモ単独あるいは併用については、いつもコントラバーシャルで、先ほど申しましたように、世界的にもマンモ検診の対象としている国は3分の1以下であります。

 ただ、資料4の3ページの右下の右端に「UK Age trial」という、一番直近のトライアル、RCTなのですけれども、ここでは対象がエントリー時に39歳、41歳ということで若年者に絞った研究がされていまして、これを見ますとネガティブリスクが0.83とかなり効果を認めているのです。

 ただ、問題は、95%信頼区間が1を超えているということで、この解釈がちょっと難しい。しかし、これは結構評価される点も多々ございます。

 ただし、皆さん、UKとかUSAのトライアル等は、やはり欧米人という、私たち日本人とはまた異なった集団になりますので、罹患率のピークとか乳腺濃度・密度を考えた場合には、やはり我々はまた観点を少し変えながら、例えばエコーのみならず、MRIとかほかのモダリティーについても検討すべきだということが常々言われてきたところです。

 それで、10年ほど前に、それを国策としてする場合に、エコーがいいのかMRIがいいのかということが議論されて、普及度とか日本の先進性から考えれば、超音波で調査研究してはどうかというのが国からの依頼ということがございました。

 祖父江先生、そこまで言っていいのですね。

○祖父江構成員 意見を言っていいですか。

 やはり40歳代のマンモグラフィの効果というのが小さ目である。エイジトライアルである程度示されておりますけれども、有意差がない。ほかの研究はむしろ50歳代あたりもカバーしていますので、そちらのほうが効果が大きいということは明らかだと思うのです。

 ただ、そういうことを背景に、国際的な評価として40歳代を推奨しないという御判断が幾つかのガイドラインから出ていますけれども、それは40歳代が効果がないからと言っているわけではなくて、利益・不利益バランスで考えると利益が小さい。不利益がほかの年齢と同じぐらいあるとすると、40歳代での利益・不利益バランスがよろしくなくて、50歳代、60歳代のほうが利益が不利益を上回る程度が大きいので、そこに焦点を当ててやりましょうということ。

 その状況と、日本の状況はどうかというと、罹患率が40歳代をピークとしてそういう分布をしているというのがやはり欧米とは違いますので、利益・不利益、特に利益の大きさに関して、ネガティブリスクとしての効果の大きさが40歳代で小さいとはいえ、罹患される人が多いので、その積としての利益の大きさというものは、ほかの年齢層と遜色ないというか、むしろ大きいかもしれないというところで、40歳代に関して外国とは違う推奨はしないことはではなくて、利益・不利益バランスから考えると、40歳代も含めて推奨しますという判断を私はすべきだと思うのですけれども、そこはここの一番大きな議論だと思うのです。

○大内座長 がん検診の利益が死亡率減少効果であることは世界の標準ですけれども、最近はハーム、不利益についてかなり議論が深まっていまして、USPSタスクフォースが2009年にマンモグラフィによる乳がん検診を40歳代に勧めない、グレードBからCに下げた根拠は、ハームが大きいということです。

 それに対して、では、日本はどうなっているかということをきょう、説明の中で、斎藤先生の資料の8ページの上段に【マンモグラフィ精密検査による不利益の比較】とございますが、これは英文誌にも既に発表されているところですが、40歳代におけるマンモグラフィの不利益について、米国と日本。これは「Miyagi's data」となっておりますけれども、宮城県だけではありません。日本の4県、福井県とか徳島県も入っていまして、かなり大きなスタディーです。ここで生検とか追加マンモグラフィとかこういったものが不利益になるわけですね。これが米国と比べて低いことがわかるかと思います。

 一方で、いわゆる発見がん。左側、乳がん2.8というこれは日本のデータ。右側は2.6。これは米国のデータで、発見率から言うと日本のほうが上回っているということ、不利益について日本のほうが米国よりは少ないのではないかということを発表しています。

 そういった意味で、40歳代においては、日本においてマンモグラフィ検診は、かなり精度管理をされた上でやっているのではないかということが読み取れるということです。よろしいでしょうか。

○井上構成員 済みません。

○大内座長 どうぞ。

○井上構成員 ちょっと存じ上げないので教えてほしいのですけれども、斎藤先生の資料の11ページの上のスライドで「乳がん検診の国際的評価」というのがありまして、今、若いほうの年代について問題になっておりましたが、英国で「47歳まで順次拡大」とか「73歳まで順次拡大」とか、これは年齢別に、緻密な今のような利益・不利益の解析をした上で決められた年齢なのでしょうか。それとも、その国で走っている何か対策型の検診のようなものの年齢の切り目がたまたまこの辺なので、そうなっているのでしょうか。

○斎藤構成員 最初にお断りしておきますが、正解かどうかはわかりません。

 ただ、英国を初め海外での対象年齢層の決め方というのは、エビデンスをもとにするわけですが、例えばRCTでのエビデンスが5069まであったときにどういう対象にするかというと、大半はそれより狭め55-64などにしているようです。これは対策で成果を挙げるためには、コンパクトにというか集中的に、有効性だけではなくて、それが成果に結びつくようなマネジメントが十分できるという条件があるわけです。それを達成するために、狭めて設定するということがあります。

 それから、随時評価を、最終的なエンドポイントも含めて評価をして、うまくいっていて、かつ財政とかほかの条件が許せば拡大していくというような、そういう判断のスキームでやっているのではないかなと理解しています。

 ですから、本当のことはわからないのですけれども、その流れかなという気がいたします。

○大内座長 ほかに御質問等ございますか。

 どうぞ。

○菅野構成員 せっかく今、年齢のお話が出たので、ちょっとお話なのですけれども、やはり自治体の現場でも幾つまでやるのかというのはよく問題になることでして、実際の施策としてとるときに、高齢者の方に優遇というふうな形がどうしても福祉施策は多くなっていて、そうすると、必ずしも科学的根拠が語られて決められているものではないので、今回初めて年齢が出る形でガイドライン等の改訂もあったということを踏まえると、ほかの検診にもかなり絡むとは思うのですが、年齢にもぜひ踏み込んでお話をしていただけると、現場としては助かるなと思います。

○大内座長 この点は重く受けとめていまして、前の検討会からずっと上限設定については意見があったところですが、諸外国の、例えば乳がん検診の対象年齢は、先ほど言いましたように50歳からが主で、3分の1程度が40歳も含みます。多くは64歳とか69歳、あるいは74歳までということで上限設定されているのが実態です。

 今回のガイドラインのまとめ方にも、74歳とか64歳とかという言葉が出てきまして、この点は多分議論をする必要があるのではなかろうかと思っていましたが、一方では、国のがん対策基本計画の中で、がん死亡率の減少の目標値が設定されておりますが、その対象年齢が74歳までとなっておりますことから、状況はかなり変わってきたと考えます。これは皆さんの御意見を考えた上で、検討しながら確認をとりたいのですが、年齢上限についても議論すべきとお考えでしょうか。祖父江構成員からお願いしますか。

○祖父江構成員 証拠がある年齢層というのは、もちろん評価研究の対象年齢になる年齢ということで、そんなに高齢者が当然含まれないわけですね。なので、そこで高齢者が含まれなければもう効果がないのかと判断するのは、やや行き過ぎのところはあるかと思います。

 ただ、もう一つの考えは、やはり利益と不利益のバランスを考えるというところであって、またこの不利益の証拠がなかなか確実なものが得られなくて、特に高齢者に関して合併症ですとか、あるいは過剰診断などというものが、一体高齢者でどの程度定量的に証拠として提示できるのかというと、結構私は問題だと思います。

 ただ、やはりそういう証拠がない中でもある程度は判断をして、高齢者の年齢層における利益・不利益バランスが余りよくないということは、少ない証拠の中で判断できるのであればそのようにし、既に受診率に関しては4069歳を算定の範囲とするというようなことを言っていますので、積極的な受診率向上施策というのをその年齢層でやるということなのでしょうけれども、受診をしたい方々をどう積極的には受診干渉しないまでも、お年寄りの方々を拒むのかと言われるとそこもちょっと余り厳しいものを設定するのはどうかなというところもありますので、推奨するというところをややグレーゾーンを設けて、積極的にはしないけれどもオーケーかなというところもあり、なおかつ、これ以上だと余り利益というものが大きくないだろうと考えられるところもありというところで、ちょっといい方が歯切れが悪いですけれどもね。

 ただ、やはり高齢者側で、青天井に検診を受けたほうがいいですよというような考え方は是正していったほうがいいということは強く思います。

○大内座長 どうぞ。

○斎藤構成員 実はこの案件は、この検討会が始まってから多分2回は話題になったと思います。いずれもそこで動議というか発言をしたのですが、1回目は差別とかいうことで話が済んでしまったのですが、2回目は、不利益が高齢者には人知れず大きいということで、それで議論がかみ合ったように覚えています。引き続き検討すべきということで終わったように記憶しています。

 ここで今、祖父江委員の話とちょっとかぶるのですが、現在の利益・不利益バランスの指標では、本当に高齢の人たちのポピュレーションでメリットがデメリットを上回るかどうかという判断は、私はまだできないと思います。ですから、非常に説得力がある根拠で年齢の天井を決めるというのは、現状無理だと思うのです。

 ですから、決断はなかなかできないわけですが、少なくとも重要なことは、今、市民の皆さん、国民の皆さんは、多くは年齢に関係なく検診は受けたほうがいいという想念を、理解をお持ちだと思うのですね。それから、検診を提供する側もそういう、ちょっときつい言い方をすれば、一種思い込みも含めて誤解があるように思います。がんの疾病負担がある一定の年齢になると一番ではなくなるというのは御存じのとおりですし、それの前に、例えば高齢者というのは非常に多様な存在なので、利益と不利益が人によって非常に異なる、多様になってくると思うのです。そうなると、対策型検診の最初の理念というのは、科学的根拠がある検診をきちんとマネジメントして、検診を提供した対象者全員にあまねくメリットがデメリットを上回るというようなことですから、その原則が果たせなくなるというか、高齢者にオファーすることによって人知れず不利益を被ってしまうということになりかねない。この理解を進める上でも、まず公正な議論をしていくことが重要なのではないかと考えています。

○大内座長 きょうは再開された最初の会ですので、いろいろとこれからの検討課題が見えてきましたが、年齢上限設定についても検討をいただくということでよろしいですか。

(委員、首肯)

○大内座長 道永構成員、何か特にございますか。

○道永構成員 乳がん検診について、40代というのはとても大事だと思いますけれども、先ほどから伺っていて「高齢者」という定義がやはり難しいと思うのですね。40歳~74歳は単独法でよくて、64歳までは併用法がいいということで、だから、65歳以上はどういうふうにするかというのも分けて考えなくてはいけないと思っています。

40代の先ほどのマンモグラフィによる不利益ですけれども、やはりちょっとこれは大きいのかなと思います。ですから、40代に関しては、どのようにしたら一番その人にとって利益があるのかということはきっちりと考えなくてはいけないと思いました。

○大内座長 ありがとうございました。

 ほかにございますか。

 どうぞ。

○斎藤構成員 今度は下限の話なのですけれども、言い忘れたことがあるのですが、今、前回の改定で2年間隔が推奨されているわけです。ところが、実態は毎年やるというのが、子宮がんもそうなのですが、非常に多いのですね。自治体での実態は2年間隔が推奨されているのですが、毎年やってしまう。これも誤解に基づいていますが、40代をターゲットにするというのは、先ほどの議論でいいと思うのですが、一方で、きょう余り詳しく触れなかったのですけれども、不利益については、その中の主要なものは放射線被曝だと思うのですが、これが40代以上で押しなべて利益が不利益を上回るというまとめはできると思うのですが、一方で、50代以上に比べて40代では利益・不利益バランスがかなり接近するというか、差がなくなるというのも明らかなのですね。

 そうすると、40代をやるに当たっては、改めて放射線のコントロールといいますか、このガイドラインの中にもたしか書いていると思いますが、累積での被曝量ですね。定期的な受診における累積の被曝量をコントロールというか最小化すべきということもきちっと明記しておかないといけないのかなと思います。

○大内座長 2004年から、乳がん・子宮頸がんについては隔年検診に改められたのですが、実際には逐年検診で行っていることもあるのではないかという御指摘です。

 これも地域によってさまざまなデータがあるかと思いますけれども、これは厚労省のほうでも確認できると思うのです。毎年市町村等から報告が上がってきていますね。受診率の計算式はそのところを鑑みて、連続して受けている場合は引き算をして計算しているはずですので、どうなっているか一度見ていただくこと。これは事務局のほうでできますね。

○がん対策推進官 確認して、また次回お示しできるようにします。

○大内座長 ほかにございますか。

 どうぞ。

○松田構成員 今の2年に1回の受診が、地域で、いわゆる対策型検診で逐年検診というところは恐らく余り多くないと思いますが、いわゆる職域の検診ですとか任意型検診ですと、毎年受けたほうがいいのだという思い込みが必ずあるので、今日話に出てきた利益・不利益、そのハームの面をもうちょっときちっとこれからは伝えておくということが非常に必要なのだと思います。

 あと、ちょっと戻りますが、年齢の差、上限というか、積極的に受診勧奨する年齢層をはっきりさせるというのは、きわめて重要だと思います。福井県でも全ての市や町が全ての人に受診券を送付するという形を今、とっているのですけれども、それは年齢上限がないので、80であろうと、場合によっては90であろうと全員に送ってしまうということが、それはいけないと思いつつ切れないので、高齢者だから送らないということが現実にはどうもされていないようなのですね。

 ですから、受診をしたい方の機会はそれなりに奪わなくてもいいのかなと思いますが、それもハームの面も含めてこれからもっとしっかりと情報を我々が提供するということも含めてやっていかないといけないのかなと、そういうことをすることによって、今の上限設定というものもおのずと理解が得られるのかなと思います。

○大内座長 上限設定とハームに関する、利益と不利益に関するデータも必要だということですね。

 どうぞ。

○福田構成員 いろいろ勉強不足で大変申しわけないのですけれども、確かに利益と不利益のバランスは重要だと思うのですが、どうやって差をとるのかがわからなくて、利益より不利益が上回るとか、推奨のグレードの考え方も差が小さいとかそういう言い方が出てきますが、基本的に差がとれるものなのかどうかがよくわからないのですね。

 例えば、効果を死亡減少で見るのであれば、仮に不利益もそういう被曝とかによる死亡だけをとるという話なのか。そうではないような気がしますので、どう考えればいいかを少し御教授いただきたいと思います。

○大内座長 前例がありまして、2009年のUSPSTF、タスクフォースのガイドラインの変更の根拠となったのは、NNIと言いまして、number needed to invite。1人の乳がん死亡を減らすのに、何人の受診者が必要か。スクリーニングが、NNSのほうが正しいのでしょうけれども、対象者ということでNNIという数値です。

 例えば乳がん検診で、40歳でマンモグラフィは、1,900人代に対して1人。一方で、50歳は1,30060歳以上はさらに600以下ですね。どんどん欧米人の場合ブレスデンシティーが低くなるので、よくなるのですね。40代がDからCに下がったという根拠は、いわゆるNNIという指標に基づいたものです。

 それで、1,9001300の差の600というのがどういう差なのかということを、私は当時、タスクフォースが声明を出した直後に厚労省と議論して、NIH及びACS等々議論しましたが、当時のタスクフォースのメンバーの座長であった方とも話しましたけれども、600という数字は無視できない。これは大腸がん検査の便潜血反応での死亡率1人を下げるのに必要な数が600だということを言われていました。

 ですので、指標ということではそういうものも存在するということで、では、ここで新たな指標をつくりますかということになると、なかなか難しいと思います。ですから、今、存在するものを使って行う。私たちはそのことを受けてすぐに日本のデータも見直しましたし、これは祖父江先生にもお手伝いただいて、国立がん研究センターの時代ですけれども、日本の乳がんのNNIについても調査いたしています。

○福田構成員 済みません。追加で教えていただけたら。

 そのNNIを出すときに、おおよそこのくらいならオーケーという目安があるのですか。

○大内座長 それは、その判断を選考しているUSPSTFの、これもタスクフォースが決めるのではなくて、その前にエビデンス・プラクティス・センター(EPC)があって、そこでのデータ結果、いわゆる独立機関があって、そこからの推奨があった上でタスクフォースのメンバーが投票で議決しているようですけれども、濱島先生がその点に詳しいのですが、そういったことが米国では起こっているし、多分イギリスのNHSも同じような仕組みだと思います。その点も、オーストラリアも含めて、祖父江先生が詳しいのではないですかね。

○祖父江構成員 余りこれ以上はコストエフェクティブネスですというわけではないですね。割りと雰囲気で決めているようなところだと思います。

○大内座長 そのような、いわゆる利益と不利益のバランスを見るような指標は提示されています。よろしいでしょうか。

(委員、首肯)

○大内座長 ほかに御意見ございますか。

 それでは、本日の主な議題としましてはこれで終わることになりますが、次回以降につきまして、乳がん検診については先ほど来議論のありましたように、視触診のあり方のためには、やはり超音波検査による乳がん検診のデータについてどうなっているかということと、それから、精度管理も含めて参考人をお招きして意見を交換したいということがございますが、それでよろしいでしょうか。

(「はい」という声あり)

○大内座長 とともに、きょう事務局からお示しいただきました資料2ですけれども、本日は乳がん検診について2点説明がありました。

 次に、胃がん検診についても検討することになりますので、次回、胃がん検診についての議論も開始したいと思いますがよろしいでしょうか

(「はい」という声あり)

○大内座長 では、今後のスケジュール等については、事務局よりお願いいたします。

○がん対策推進官 御議論ありがとうございました

 次回につきましては、議題、それから、日程につきまして、また座長と御相談して調整をしまして、また御連絡できればと思います。

 以上です。

○大内座長 それでは、本日の検討会をこれにて終了いたします。

 構成員の皆様におかれましては、まことにありがとうございました。


(了)

健康局がん対策・健康増進課

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