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2014年11月10日 第1回 技能実習制度の見直しに関する法務省・厚生労働省合同有識者懇談会 議事要旨

職業能力開発局外国人研修推進室

○日時

平成26年11月10日(月)13:30~15:35


○場所

東京高等検察庁17階第2会議室
(〒100-8904 東京都千代田区霞が関1-1-1 中央合同庁舎6号館)


○出席者

多賀谷座長,青山委員代理,浅井委員,板垣委員,小林委員,新谷委員,高倉委員代理,高橋委員,豊島委員,根本委員代理,山川委員,吉川委員

○議題

(1)技能実習制度の見直しについて
(2)その他

○議事

互選により多賀谷委員の座長が決定されるとともに、議事の公開について案のとおり決定された後、法務省及び厚生労働省から,技能実習制度の概要,現状及び見直しの検討状況について資料に基づき説明を行い,協議を行った。委員から出された主な意見は以下のとおりであった。

総論について

       ○ 技能実習制度は国際協力として発展途上国に我が国の技能を持ち帰ることによる国際貢献のための制度。しかし,こうした制度趣旨を逸脱する運用が多数見られ,単純労働者として扱い低賃金で働かせている実態がある。パスポートや携帯電話の取上げ,保証金の徴収といったことも起きている。2009年の入管法改正で労働者としては保護の強化が図られたが,依然として労働基準監督署が指導に入ると8割で違反がある。これは遺憾な状態であり,早急に解決すべき。
 
○ 出入国管理政策懇談会・外国人受入れ制度検討分科会の報告書では,制度の拡充についても触れているが,まず今般指摘されている問題点を洗い出してその解決策を議論し,それからはじめて技能実習制度の拡充を議論するという段取りで議論すべきではないか。
 
○ 管理運用体制の強化と制度の拡充のバランスをとるべき。過度な負担や煩雑化が生じないようにしてほしい。新たな規制によって現行制度の下でも大きな問題なくやっているところの負担が増し,技能実習制度の利用をためらうようなことがないようにしてほしい。
 
○ 製造業では特に,技能実習制度で発展途上国に対して技能移転することで,結果的に,日本の企業が海外展開する際に,技能実習生がキーパーソンとして活躍することが想定される。日本企業にとってもメリットがあることであり,互いの国にとってもいいこと。
 
○ まず制度の適正化の方策がなされ,その効果が確認された段階で拡充の検討に踏み出すべきというのが,「外国人受入れ制度検討分科会」の報告書の基本的な考え方。
 そうした基本的な考え方を前提として,技能実習制度が発展途上国の発展に資するという国際貢献の仕組みとして適切に運営されるよう見直すべき。また,技能実習生の母国である外国のニーズに応えていくべきであり,受入れ国たる我が国のニーズだけに基づくものであってはならない。

論点1.制度の適正化方策


(1)確実な技能等の修得・移転
1 技能実習の各段階での技能評価の在り方について

○ 技能実習制度が制度本旨に沿った運営とされるためには,技能実習生の技能が高まったかを適切に確認すべき。現在は2号終了時の技能検定3級の受験率が0.3%しかない。効果測定できないと制度の目的が果たせないので,2号修了時に3級の受検を義務付け,技能の向上を確認すべき。
○ 2号修了時における技能検定3級の受検率などが低いことの背景には,技能実習生が3年間では日本語の習得レベルが高くなく,筆記試験がネックとなっていることがある。実技と筆記を分けて,実技だけの合格を求めるなどできないか。義務化をするのであれば,技能は修得しているのであるから,技能検定3級の全てではなく実技だけにするなど検討していただきたい。
○ 技能修得の状況を適切に評価するためには,実技と学科の両方の受検の義務化が必要。
○ 技能実習生に,技能移転のためにやっているのだということを認識させ,技能修得をしっかりと目的づけること,また,単純労働のための労働力の受入れになってしまわないように,制度趣旨を契約レベルでも活かすことが大事であり,そのためにも技能実習計画ないしその概要を実習生本人に示して理解させることが重要である。


2 実習生の帰国後のフォローアップの推進について
○ 帰国後フォローアップ調査は重要。制度のPDCAを回す上で,基礎となる情報はしっかり把握すべき。フォローアップ調査の回収率が15%にとどまっているので,技能実習生に調査への協力を義務付けるなどすべき。


3 修得技能・経験の帰国後における発揮の促進について

○ 実習実施機関からは,技能検定試験に合格しても技能実習生の母国では評価されず受検するメリットが少ないという話があるようだが,そうであるならば技能検定が母国の労働市場でも評価,活用されるようにすべき。


(2)監理団体による監理の適正化及び公的機関による監視体制の強化等
1 新たな法律に基づく制度管理運用機関による指導監督の在り方について

○ 制度管理運用機関については,JITCO(公益財団法人国際研修協力機構)が行っている現在の体制を見直す必要がある。JITCOに代わって,法律に基づく公的機関を立ち上げ,政府として体制強化をやるべき。
○ JITCOについては,見直しに当たり,職員の雇用問題が起こらないように配慮してほしい。
○ JITCOはこれまで監理団体や実習実施機関への支援をきめ細かくやってきており,そういう面も踏まえてほしい。
○ 制度管理運用機関には,監理団体や実習実施機関への立入権限や指導監督の権限を付与すべき。
○ 新法人の独立性が重要。従来のJITCOが機能を果たしていないので,新法人はしっかりと独立性を保つ必要がある。一般の会社でも外部役員は一部義務付けされているので,新法人でも考える必要があるのではないか。
○ 新法人については,財政面での独立性も重要と考えており,国費でしっかり担保すべき。
○ 新法人の設立にあたっては,国費の歳出を伴うものなので,過度なものにならないようにということと,行政改革の観点にも配慮して効率的な形で対応してほしい。


2 監理団体や実習実施機関のガバナンス強化の在り方について
○ 事業協同組合は,基本的には組合員内部で運営をする前提となっているものであり,また,一部員外役員を設けているところもあるが,現実的には員外役員に払う役員報酬など厳しい部分がある。員外役員の数は中小企業等協同組合法で人数の制限が設けられていたり,員外役員への報酬を支払うのは厳しいこともあったりするので,例えば,監理団体での会計の方法や監理費の額を公表させるなど,外部役員とは何らか別の方法が考えられないか。
○ 新しい事業協同組合ができてからすぐに(技能実習生を)受け入れると,財政基盤もなく,監理団体としての役割を果たせないおそれがある。事業協同組合や実習実施機関について事業の実績を見てから技能実習を行わせることが適切かを判断できるようにすべきであり,新制度においては,監理団体の許可基準などで,財政基盤や監理の状況を見るべき。
○ 異業種組合は問題を起こしたら,名前を変えてまた出てくる。事業協同組合の認可は,許可制よりも緩やかであり,なかなか事業協同組合の規制をするのは難しい面がある。


3 悪質な監理団体等に対する罰則等の在り方について
○ 罰則や公表についても,新たな制度でしっかり設けるべき。
○ ペナルティーの性質としては,事業協同組合などが自己規律をしているかという観点と,実習実施機関が現場で実際に雇ってやっているという観点があり,それぞれどのように実効的な罰則にできるかという問題として考える必要がある。


(3)技能実習生に対する人権侵害行為等への対応の強化
1 通報・申告窓口の充実について

○ 技能実習生の人権侵害が表面化しづらい背景には,技能実習生が実習実施機関に縛り付けられているという面があり,転職できないことから,不正な行為があっても告発をためらうということがあると考えられる。
○ 技能実習生の通報窓口の強化は重要。技能実習生が実習実施機関の不正行為を監理団体に相談したら,監理団体も実習実施機関と結託していたという事例も聞いている。公正中立な機関が母国語で相談に乗れる体制は重要。そうした相談窓口について,技能実習生にしっかりと周知することも重要。


2 実習生に対する支援や保護の在り方について
○ 人権侵害を起こさないということが大事であり,その点は新たな制度でしっかり担保すべき。
○ 実習生保護の観点から,新法人の関与の下,人権侵害などの不適正な受入れをしている実習実施機関から転籍できるよう措置を講じるべき。


3 実習生における賃金等の処遇の適正化について
○ 技能実習生の中でも,農業が特に賃金が低く,技能実習生全体の賃金の平均を引き下げているのではないか。小さな規模の農業などでは外国人技能実習生が賃金を比べる対象となる日本人労働者がいないという場合もあるのではないか。
○ 技能実習について,日本人のなり手がいない分野で,最低賃金に張り付いた形になってしまわないか懸念がある。そうした実態も見ながら議論すべき。
○ 報酬については,日本人と同等以上という法務省令の実効性を担保すべき。例えば,業種別の最低報酬ラインを示し,そのラインを下回った場合には実習生の受入れを認めない等の措置を講じるべき。
○ 農業については,労働基準法上,労働時間規制の適用除外とされている。人手不足を理由にチープレーバーを入れるという発想では,農業分野の労働者全体の処遇が改善しない。新たな日本人の担い手の参入を考えても,しっかりと処遇を確保すべきであり,そうした実態も見て検討すべき。


(4)送出し機関への規制の実効性の強化
1 送出し機関の適正化に向けた送出し国政府への要請について(2 監理団体及び実習実施機関の役割についても含む)

○ 送出し機関について,実態として,農業や繊維などが不正行為をたくさんやっているが,これらに対して不正防止のために何らかの措置ができるのか。外国政府との二国間協定等で規制の実効性を確保できるのか。実効性のあるような規制ができるのか。
○ 送出し機関については,現行では,JITCOと相手国政府のR/D(討議議事録)しかない。これは話し合いの記録でしかなく,強制力はない。
○ 保証金の徴収などの不適正事案の根絶のためには,相手国と日本政府が二国間協定等を結んで不適切な送出し機関を排除し,適正でない送出し機関からは受け入れないような制度にすべき。
○ 二国間協定での対応に加え,日本国内において外国のブローカーが日本の職安法等に違反する活動を行った場合に,日本法の適用があり得るのかなどといった問題もあるのではないか。


論点2.制度の拡充方策

 (1)実習期間の延長又は再実習
1 優良な監理団体及び実習実施機関の要件の在り方について

○ 制度の適正化が確認されていない段階で制度の拡充を行うことは施策の順序として逆であり,厳に慎むべき。仮に実習期間の延長等を認める場合であっても,法令遵守や3年目の2号終了時に技能検定3級の受験率や合格率が高いなど,適切に技能実習を行っている受入れ機関に限定して認めるべき。
○ 拡充は制度の適正な利活用拡大に向けたインセンティブになる。成長戦略にも記述されていることであり,着実に行っていただきたい。
○ 延長の対象となる優良な機関の基準としては,問題ないところであれば基本的に認定される現実的な水準にしてほしい。


2 延長又は再実習が可能となる実習生の要件の在り方について
○ 仮に技能実習の期間の延長を認める場合であっても,3年の技能実習後引き続き日本で技能実習することは人道上の問題があるので,必ず一度帰国する形とすべきであり,それを要件とすべき。
○ 技能実習期間の延長については,一旦帰国させることに賛成。帰国させずに家族帯同を認めると子どもの教育問題なども出てきて問題が大きい。
○ 延長の対象となる技能実習生については,技能検定3級の合格は要件とすべき。
○ 「技能検定3級」ではなく,技能検定3級「程度」とすべき。筆記試験があると日本語の関係で難しいので,実技面を重視して判定すべき。その上で,実技試験に合格した人を再入国させる形としてはどうか。


3 講習期間の柔軟化について
(言及なし)

(2)受入れ人数の上限の見直し等
1 優良な受入れ機関への受入れ人数の上限設定の在り方について

○ 受入れ人数枠については,上陸基準省令は最低基準を定めているミニマムのスタンダードであって,最低基準の安易な緩和は認めるべきものではない。


2 常勤職員数に応じた区分に関するよりきめ細かな人数枠設定の在り方について
○ 受入れ人数枠については,弾力的な受入れ枠の扱いをお願いしたい。


(3)対象職種の拡大等
1多能工化のニーズへの対応の在り方について

○ 多能工化ニーズは多くの企業から上がっている。技能実習計画上で複数の技能を修得できるようにしてほしい。
○ 制度の矛盾を感じている。日本側のニーズが人手の足りないところになっており,相手国側のニーズをどう担保していくのか。職種の拡大とどう制度の趣旨との折り合いをつけていくのか。
○ 相手国側のニーズに応えているかは根本的な疑問。例えば,2号移行対象職種には,「かつお一本釣り漁業」や「まぐろはえ縄漁業」や「いか釣り漁業」などがあるが,いか釣りなどは2~3ヶ月かけて日本海でいかのいるところを追いかけているが,他の国でこうした漁法のニーズというのはあるのか。人手が足りないことの穴埋めとしか思えない職種もある。
○ 送出し国の方にニーズがあるのが大前提。その趣旨に沿っているのか。


2 「地域ごとの産業特性を踏まえた職種」や「企業単独型において社内検定を活用する職種」の追加について
○ 送出し国に,固有ニーズがあるということを具体的に把握しているのか。そうではなくて何となく拡充すればいい,拡充ありきという話では認められない。


(了)

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