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2014年10月6日 第2回生活保護受給者の健康管理の在り方に関する研究会議事録

社会・援護局

○日時

平成26年10月6日(月)15:00~17:00


○場所

経済産業省別館310各省庁共用会議室(3階)


○出席者

相澤 照代 (委員)
芥川 千津 (委員)
浅沼 奈美 (委員)
石原 美和 (委員)
滝脇 憲 (委員)
津下 一代 (委員)
増田 和茂 (委員)
村山 伸子 (委員)
森 貞述 (座長)
(中板 育美(委員)は欠席)

○議題

・委員からの報告
・報告に対する質疑、意見交換
・その他

○議事

(挨拶)

○森座長 それでは、皆様、こんにちは。台風の大変厳しい状況の中でこうして委員の皆様方御出席いただきまして、まことにありがとうございます。

 実は、先般、9月8日の会議の際には、前もって所用がございましたものですから、欠席させていただきました。その欠席のせいかしれませんけれども、このような座長の大変な職務を仰せつかりまして、十分なことはできませんけれども、専門職の皆様方、そしてまた事務局のお力をおかりいたしまして、この研究会に与えられました、あるいは課題とされましたことにつきまして、一歩でも近づけることができればと思っておりますので、委員の皆様方、また事務局の皆様方の格別な御指導を賜りますようお願いを申し上げ、以降、取り回しをさせていただきます。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

 

(議事)

○森座長 それでは、本日の議事次第に入らせていただきます。

 お手元に配付してございます議事次第2「第1回研究会において依頼のあった資料について」、これを議題といたします。事務局から説明をお願いいたします。

 

○事務局 それでは、資料1をご覧ください。9月8日の第1回研究会の際に各委員から質問等、またこういった資料があるのかというようなお話がありました。その中で、お出しできるものに限定されてしまうのですが、それをまとめさせていただいております。

 まず、1ページめくっていただきまして、前回、生活保護受給者の年齢別の構成とそれぞれ疾病別の構成等を資料としてつけましたが、さらに年齢ごとの疾病別、主傷病別のデータがあればという話でございました。

2ページにありますように、左が国保等医療保険のデータ、右が生活保護の医療扶助のデータです。医科入院のデータとなりますが、国保と比較いたしますと、前回の研究会でもありましたが、やはり精神・行動の障害の疾病が多く、これについては年齢を問わず生活保護・医療扶助のほうの割合が高くなっているということでございます。それ以外の疾病別割合につきましては、国保等とはそんなに遜色がないという状況です。

 3ページ目が、医科の入院外、外来の関係ですが、これも同じように左側が国保等医療保険のデータで、右側が生活保護・医療扶助となっております。これについては、国保等と差異は余り見られないということでございます。

 この2枚が年齢ごとの疾病別のデータでございます。

 4ページ目ですが、前回、生活保護・医療扶助の医療費データの分析等を行って活用している自治体の資料はないかという話がありました。ここに4自治体を挙げさせていただいております。生活保護では電子レセプトシステムということで、各自治体単位、例えば市町村、福祉事務所単位で全医療扶助のレセプトがシステムに入ってくるということで、それを分析できる機能があります。それをどういった形で活用しているかということで4自治体ほどの例を載せております。

 例えば北海道旭川市であれば、レセプトデータの中から疾病1件当たりの上位30位、医療機関別に上位200件、そういったところの抽出・分析を行い、組織内で共有し、これに基づき、今後どういったところで医療扶助の適正実施を図るべきかということを検討しているということです。

 佐賀県佐賀市についても、同じような形で医療扶助の傾向の把握ということにデータを使っており、その後、個々の訪問支援、そういったところにつなげているということです。

 島根県の大田市と美郷町ですけれども、大田市の場合には半年ごとにデータを抽出しており、それによってケースワーカーと市町村の保健部門にいる保健師が情報共有して、受診、療養指導、こういったものに活用しております。美郷町につきましても、個人ごとにどのぐらい医療費がかかっているかというところを療養指導の参考とするため、データの抽出をシステムにより行い、医療社会指導員が個別の分析をしているという例でございます。

 電子レセプトシステムでは、こういったデータを集計・分析できるようになっておりますので、どのようにこれを活用していくかというところが課題ではありますけれども、こういう形で行っている例ということで紹介させていただきました。

 5ページですが、国として補助金等で健康管理に関する自治体の取り組みを支援しておりますが、前回、実際に効果がどにようにあらわれているのかという御質問がございました。これは、本日、浅沼委員から報告がある科研費で行った報告書の抜粋でございますので、詳細等については浅沼委員の説明に出てくるかもしれませんが、東京都中央区等4自治体をピックアップしています。これらの事業を行った効果ということで記載されているところをピックアップしたということです。

 前回もありましたように、数字的にどのような効果が出たとか、そういったものは今のところないのですが、明らかに自治体の保健部門や福祉事務所サイドのほうでこういった効果が出ていることは実感しているということでございます。この前の研究会の課題でもありましたけれども、これを数字とか見える形で出していくためにはどのようなことができるのか、どのような効果測定の方法があるのかということもまた検討させていただきたいと思っております。

 最後に、6ページ目です。これは食の関係ですけれども、実際、生活保護の関係でいろいろと定期的に調査を行っているものがございまして、そういったものの中から今回のテーマに沿ったものに何か生かせるような調査はないのかという話でございました。

生活保護関係調査一覧ということで挙げさせていただいておりますが、被保護者調査というのは、まさに全国の被保護者の状況を把握する調査で、月次調査と年次調査があり、生活保護の受給者の動向、全体のデータ把握といったものに使用しております。

 医療扶助実態調査は、前回の資料等につけさせていただいたものや、先ほどの2ページ目、3ページ目の資料のもとにもなっていますが、毎年1回、レセプト等からの集計を行っているものでございます。

 社会保障生計調査が前回の委員の御質問に一番合致するものですけれども、いわゆる世帯の家計調査ということで行われております。生計調査の内容として、世帯構成、就労状況、収支項目、どういった品目で使っているかということを家計簿をつけていただいて集計しているものです。調査の対象は、被保護世帯のうち約1,110世帯を抽出して行っているということでございます。それぞれの調査は公表されており、社会保障生計調査は、平成24年度分が直近の公表かと思いますが、ホームページにも掲載しております。

そういった中で、生活保護受給者の家計における食費の割合はどれくらいかという話が前回ございましたが、社会保障生計調査の結果によりますと、2人以上の世帯であれば食料費の割合は30.6%、単身世帯であれば29.5%というデータがございます。

 以上、前回の御依頼を踏まえて事務局からの説明とさせていただきます。

 

○森座長 今お示しされました資料に基づいて何か御質疑等がございましたら御発言をしていただきたいと思います。

 

○石原委員 地域医療機能推進機構の石原です。

 資料の5ページですけれども、大阪府門真市の1つ目の丸に「生活保護受給全世帯へ健康診査の受診啓発チラシを郵送し」と書いてあるのですが、この健康診査というのは健康増進法による健診なのか、あるいは特定健診と同じ中に生活保護の方々も含めてやっているのか、そこをきょうでなくてもいいのですけれども、わかれば教えてください。

 

○事務局 ここの健康診査は、健康増進法で行っている健康診査ということでございます。

 

○森座長 それでは、きょう、あらかじめ御予定をさせていただきました4人の委員の皆様方からそれぞれ御発表していただきます。ひとつよろしくお願いいたします。

 

○津下委員 あいち健康の森健康科学総合センターの津下です。

では、資料2をごらんください。健康の保持増進の意義・必要性、課題についてまとめて発表してくださいという御依頼をいただきました。

意義としましては、健康保持増進によりQOL・自己効力感の向上、また働き盛り世代の方には復職につなげる。また、医療扶助の割合が多いということで、医療費適正化の観点でも必要ではないか。高齢者では医療費だけではなく介護という問題もありますので、もちろん生活保護受給者においても健康の保持増進は非常に重要性が高いと思っております。

1ページ目は全体のサマリーのつもりで作成しておりますので、次ページをごらんください。保健事業を実際に考えていく上で重要なポイントは、健康課題を明確にするということで、解決可能な対象疾患・状態や介入方法があるということが必要だろうと思います。具体的には、健康診査を行って健康状態を把握し、肥満、メタボ対策や禁煙・禁酒のプログラム、食生活、運動等の介入ということが考えられると思います。

保健事業を具体化するには、対象者の特性に応じた実施方法が必要ですので、性、年齢、関心度や健康状態、自己効力感、社会性、ルールにのっとって実行できるか等々の観点で対象者の特徴というものを判断して行うということが必要になってくるかと思います。

そこで、対象者のセグメントを考えるということで、生活保護の方の健康状態が一体どういう状態にあるのか、を考えてみました。これは愛知県のT市と書いてありますけれども、東海市の保健師さんの協力を得まして、東海市における生活保護受給者の状況や健康増進法で実施しております健診データの特徴からどんな健康課題を持っているのかということを考えてみました。

対象セグメントについては3ページになります。ゼロ歳から高齢者まであるわけですが、2039歳という若い世代の方、5060代、これは男性が多いという年齢層、そして70歳以上の方がこのような分布になっておりました。世帯の特徴としましては、一人世帯が50代以降多いということや、世帯区分については若年期では母子が多いのですけれども、障害その他がふえ、最後は高齢世帯になっているということがあります。大まかにセグメントを区別しますと、右下にありますように、若いころから障害や精神疾患等で生活保護になっているグループの方々、就労後病気等で仕事が続けられなくなって退職して一時的に生活保護になったという方、復職を目指す方々、そして社会情勢等のために退職に追い込まれて、もともとは働いていたけれども、就労の機会を逸した方。よくある例として、就職活動している間に健康管理が行き届かずどんどん体力が落ちてきて、さらに意欲が落ちてきてそのまま生活保護を受給し続けるというようなグループがあるかと思います。高齢者につきましては、今、問題というよりは過去の経緯で貯蓄が少なかったり、病気になったために経済的な負担が大きくなって生活保護になったというような方々も多いということで、生活保護と言っても一くくりにはできない。対象者に分けてアプローチを考えていくことが必要なのかなと思いました。

次に、4ページをごらんいただきますと、東海市では800名ぐらいの方が生活保護を受けておられます。これは、健康増進法に基づいて特定健診と同じような方法で健診を行うということで2年間分のデータになっております。841名、819名というのが生活保護受給者でありまして、2年間で受けた人が191名、こういう方々の健診データをヒストグラムにしたのが4ページです。

左上のBMIですけれども、BMIは一番多いのが22ぐらいなのですけれども、25以上の肥満の方がかなり多く、一方で痩せの方がいるということ、血圧が高い方がかなり多いということ、脂質異常症、糖尿病についてもヘモグロビンA1cで7%以上の方が一定数ある。貧血がヘモグロビンで12g以下としますと4分の1程度の方に貧血があるというような状態や、尿蛋白の陽性の方、これは腎臓障害で腎不全のもとになってくるわけですけれども、14.2%の方が腎臓障害というようなデータになっています。

こういうデータを見ますと、生活保護受給者のBMIは結構ばらつきが多くて、正常範囲が少なく、両極が多いという分布になっていると思います。閉じこもりや活動性の低下、またジャンクフード等でメタボ系になっている方々のグループと、一方で低栄養で痩せ、貧血というようなグループ、もう少し詳しく見ると、肥満であっても必ずしも栄養状態がよくないということで、脂肪はついているけれども、少し貧血ぎみという方もいる。カロリーはとっているのですけれども、必要な栄養素がとれていないというような方々があります。今回のデータは健診受診率でいうと12%ぐらいで、生活保護受給者の一部の方ですが、こういうデータでわかります。

それを5ページにもう少しまとめてみました。まず、下の段から見ていただきますと、下の左側がBMIの分布を見ています。男性においては全国でBMI25以上の肥満が31%なのですけれども、ここの集団で見ると40%ということで肥満の割合は高い。痩せは全国的には3%なのですけれども、生活保護の方は12%ということで、痩せもかない多いという両極端になっています。つまり適正体重が少ないという状況です。女性についても肥満は18.5%が全国平均なのですけれども、生活保護の方は35%が肥満、また痩せの方も若干高いというような傾向にあります。

これを、性、年代別に見たのが上のグラフになるのですけれども、今回のデータでは生保の女性の肥満度が突出した傾向にありまして、一般男性と生保の男性を比べますと若い世代では生保の男性のほうが痩せ気味である。どっちかというと一般男性のほうがメタボ系は多いのですけれども、中高年になると生保の方のほうがメタボ系です。女性の場合は生保の方のほうのBMIが一貫して高くて、特に若年期に高いというデータになっております。

右側は血圧なのですけれども、男性では全国でいうと41%が高値正常以上、高血圧の予備群以上というのが全国のデータなのですけれども、生活保護の方ですと67%が高値正常以上ということ、女性も一般では34%なのですけれども、生活保護では66%ということになっております。

今回は服薬状況について加味した分析にはなっておりませんので、服薬していて高いのか、服薬していないのか、そのあたりももう少し詳しく見ていかなければいけないと思いますが、生保の方々の健診データを見ると一般的な国保や健保の人よりは肥満と痩せの両極端の課題があるということがわかると思います。

1ページにお戻りいただきまして、必要性のところを御説明したいと思うのですけれども、きょうお出しいただいた資料を事前に見せていただいたのですが、入院外医療では同年齢で見ても循環器病等の生活習慣病の割合が高い。国保と同程度と言えるわけですけれども、やはりその割合は多いと思います。

健診データでは、肥満、高血圧等の頻度が高くて、若年者、特に女性で肥満傾向がある。若年男性では、肥満、痩せの両方の課題を持つ。痩せや貧血の程度という低栄養の問題というのも高いと思います。

そういうことで、食生活や運動習慣、それから喫煙率や飲酒については今回十分に調査できていないのですけれども、喫煙の頻度も高いという調査結果もあったかと思いますので、そういう改善可能といいますか、生活習慣の介入ポイントはいろいろあるのかなと思いました。

次に、対策をとるとしたらどうするかということで、セグメントに分けた対策が必要だろうということ、可能なものは既存の事業にうまくのせられるものはその仕組みをうまく使っていったほうが効率的だろうと思います。既存の部分にのらない部分は、生活保護特有のプログラムというのがあってもいいと思いますけれども。例えば病気になって一時的に退職したとかいう機会で生活保護になったという方については、既存事業につながる対象範囲はどの範囲なのかという見きわめをして、そこにうまくのってこられない範囲には特別なアプローチも別途考えるということで、まずはそこの切り分けをしたほうが動きやすいのではないかと思いました。

2ページ目なのですが、プログラムを考えるとしたらということで、3つ目のポツです。主体性重視の保健事業が望ましいと思います。改善すべき点はいっぱいあるかもしれないけれども、行動変容のプロセスに応じてできるだけ「できること」をふやすという、自信をつけるための事業であるといいかなと思います。

その実施主体は誰がどういう財源で、そして働きかけの方法としてはどういう方法をとるかということになると思いますが、資料の6ページに行っていただきたいと思います。生活習慣病のメタボの保健指導においても介護予防事業においても重要なポイントは、やはり本人が健康でいたい、元気でいたいという目的意識をしっかり持てるというのがまず第一歩として重要ではないかと思います。

そこで、面接や健診等の機会で、右の図にありますけれども、自分の体に起こっている変化で改善できるポイントがあって、これからも元気で過ごしていくためには健康管理が必要なのだと、やはりその目的意識がないまま指導されてもなかなか腹には落ちないということがありますので、その健診の機会を捉えて自分の体に起こっている変化を理解していただく。そして、今何かやらないとまずいなと思っていただいたところで、具体的に食生活や運動などの行動目標を設定するということが大事です。

何を具体的にやっていくのか。自己効力感が低い場合も少なくないと思いますので、達成可能な目標で段階的に進めていくということがよいのではないかと思います。余り高い目標を立てるとやはり実現不可能で自己効力感が下がってしまいますが、やれてよかったということで一歩一歩進んでいくようなプログラムが求められると思います。それから、記録をつけるということで、できる人においては生活のリズムをつくるということも重要だろうと思いますし、指導者と約束をして期間限定で1週間頑張るとか、1カ月頑張るとか、区切って約束をする。一生頑張るというのは一度には無理なので、まず期間限定にして、それは指導者や支援者とのお約束という形で行動実践への目標を明確にする。できないことはたくさんあるかもしれませんけれども、できること、肯定的な思考をふやすようなアドバイスをしていくというアプローチが必要であろうと思います。

それから、保健指導の終了後も継続的に自分が出ていく場があるというような場づくりとか、サポートする、例えば運動施設に通うとか、そういうような環境づくりということが必要なのではないかと思います。右側の図に書きましたけれども、気づきを与え、具体的で実行可能な目標を設定しつつ応援していくというようなプロセスが一般的には健康保持増進の事業では重要なプロセスと考えております。

7ページは、実際に東海市の保健師さんが生活保護受給者にかかわってどんなことをして、どんな課題を感じているのかということを聞き取ったものですが、実態としては、食事が質・量ともに不良で閉じこもりがち、身体活動が不足で抑鬱傾向があるというような方々が少なくないわけです。具体的に調理法を知らない人も結構多い。コンビニの食材を使ってどうやってバランスをとるか。バランスという概念も、保健師、管理栄養士はわかっているのですが、イメージがつかめないとか、何と何を組み合わせてどうするといいという具体的な調理方法の知識が足りないこともあったということで、本人の能力に合った指導法を考える。手に入るものでどうやってうまくやっていくかということを考える。また、出て行く場所があるということも非常に重要なので、近くで出ていく場所をつくる。定期的にその人を待っている場所、安心して行ける場所をつくる。医療扶助というのは、医療機関になぜ行くかというと、医者はちゃんと迎えてくれて、患者さんとして扱ってくれるから、そこに行くと安心。行ける場所があることも要素になっていると思います。高齢者でも暇だから医者に行くという人も結構いるように、指導ではなくて、行き場所としてちゃんと一人の人間として受けとめてもらえるということが重要なので、そういう場づくりが必要だろうと考えます。

2番目については、社会で生活する基礎力がもともと若いころから生活保護の方は低く、なかなか抜け切れないということで、これは保健師だけではなく、ほかの職種と一緒にかかわっていく必要があるタイプです。

それから、医療扶助が多いということでは、貧困と疾病は悪循環しております。医療扶助が多くて、かかりつけ医がいるのだけれども、必ずしも健康保持増進行動にいかない。かかりつけ医がいた場合に、健康増進を応援してくれるかかりつけ医もいれば、俺の患者に余分なことをしなくてもいいのではないかと思われる医師もいるのではないかなと思います。かかりつけ医がいることがマイナスになるというのは非常にもったいない話なのですけれども、現実にあるわけです。保健師が働きかけしやすい仕組みづくり、治療中の人でも保健師がかかわるというような枠組みをつくることが必要かなと思います。制度的なバックアップをするということが必要ではないかと思います。

参考になるかどうかはわかりませんが、8ページは、メンタル不調で一時休職している方に対するリワークプログラムに運動を入れたという、うちのセンターの事例です。週3回を推奨していますけれども、週2回程度は来てくださいということで、プログラムを段階的に進めていくというプログラムをうつ病の方を対象に実施しています。運動というのがメンタル不調者にとっては重要だということは文献的にはあるのですけれども、やり過ぎてかえって障害を起こしたり続かないということがあるので、指導者が行うことはむしろ励ましというか、余りやり過ぎないようにコントロールして、ステップ1が無事終わったので次はステップ2だねというふうにして段階的にプログラムを進めるということと、次の約束をするということではないかと思っています。

右側に効果が書いてありますけれども、BMIや腹囲とか、当然メタボ関連の項目はよくなっておりますし、肝機能などもよくなっておりますが、抑鬱点数も改善しておりまして、利用回数、週に2回以上来ているということが抑鬱の改善につながっています。一回にたくさんするのではなくて、やはり規則的に通うということがプラスに作用しているのだということがわかりました。

9ページが参加者の感想です。1カ月目は「緊張した」「もう少しできそうだ」「ちょっと疲労感」とか言っていますけれども、どっちかというと、出ることに疲れはあるけれども、プログラムとしてはこんなものでいいのかという、ちょっと物足りないぐらいでもっとやりたいという気持ちを残しておくぐらいのほうが続けやすいのかなと思います。2カ月目になりますと、効果についてある程度自覚し、3カ月目になると、運動をするとすっきりするとか、トレーニングをあけるとかえってだるいとかいうように自己効力感が高まるという感想が聞かれていますので、段階的に進めていくという考え方が必要なのではないかと思っています。

1ページ目のところの対策ですが、セグメントに分けた対策が必要で、既存事業の中でも受けとめていける部分もあるかもしれない。しかし、受けとめられない部分、それを課題として書いてありますけれども、健康になろうという意欲が低いというか、病気であるから生活保護でいられると。あえて飛ばしたのですけれども、ケースワーカーの人が言っていることは、病気が既得権益になり、仮病、詐病が少なくない。病気でなくなったら逆に困ると思われている方も実はいるわけで、その辺の目的意識をどう持っていくかということが大切かなと思います。自己効力感や生活の自立能力が低い方も見えますので、達成状況をきちっと評価して、その人に合った課題を提供していくというきめの細かさというのも必要だろうと思います。

最後に10ページです。セグメント別の対策の可能性は、あらあら考えただけなのですけれども、高齢期まで自立できていて、途中で生活保護になった人なのか、若くからなっているのかということで若干対応が違うのかなと思います。もともと自立できていて、環境要因とか、何かの失敗でとか、そういうことで生活保護になった方については、何とか既存の事業にうまくのっていく道が探れないだろうかと思います。職探しの面でも、福祉事務所からハローワークに行って就労による自立、図の上が現在の市のマニュアルに書いてあるものなのですけれども、就職活動をするのと同時に健康相談とか体力を回復するとか、自己効力感を上げて働ける体づくりをする。また、その体力に合わせた仕事がうまく選べるということも必要なので、就職支援とともに健康相談を一緒に行って、一定のプログラムをかませるというような可能性が考えられるのではないかと思いました。

以上です。

 

○森座長 今の津下委員の御発表につきまして、何か皆様方のほうで御質問等がございましたら。

 

○増田委員 T市のところで、行政にいらっしゃる保健師さんと管理栄養士さんがほとんど関与されていて、ケースワーカーの方もいらっしゃるのだけれども、今、国が言っている地域包括ケアシステム、要するに地域のソーシャルキャピタルとして、例えば管理栄養士さんではなくて食生活改善推進員だとか、地域の方々がいらっしゃいますね。あと、運動もスポーツクラブと言ったって難しいので、例えばウオーキングに参加させるとか、地域の総合型のスポーツクラブをうまく使うとか、何かそういうことを実際にやっておられるのですか。

 

○津下委員 現在はそこまで組織立った動きがT市で行われているというわけではないのですけれども、市の保健センターに併設でフィットネスルームといいますか、運動施設が100円で一般市民が利用できるようなところが一つあります。そこは、昔は指導員がいなかったのですけれども、今は健康運動指導士、保健センターの保健師、管理栄養士が時々のぞきに来るというような環境ができていますので、そこでそういう方も一緒に参加してもらう、また市のウオーキングコースやさまざまな活動の中にそういう機会を積極的に進めていく、それも今、模索中だと思います。

市の健康づくりの事業やボランティアを活用した事業が一般市民向けには整いつつあるところなので、うまく生活保護受給者に対するアプローチ、特にケースワーカーとつながっているかというと、そこまではいっていないのですが、ちょうど市全体で健康づくりの政策を進めるときに、生活保護担当のケースワーカーも一緒に参加してもらいました。「生活保護の方々の生活実態を保健師さんは知っていますか」というようなやりとりをして、ケースワーカーだけでは難しいというような話をもう5年前からしているということです。

市全体として健康を進める中に生活保護の方をどうしようという問題意識を持っているのと、ケースワーカーと保健師が一緒に行動する機会が幾つかあって、そういう動きにはつながってきているとは思います。保健師から見ると、本当にやらなければいけない仕事だなと思う反面、マンパワー的にどうしようとか、どうやって広げようという課題は持っているという状態だと思っています。

 

○森座長 次の村山委員のほうへ移らせていただきます。もし最後に時間がありましたら全体を通してということでお願いいたします。

 

○村山委員 新潟県立大学の村山でございます。よろしくお願いいたします。

 資料3をごらんください。私がいただいた課題は健康格差についてということでしたので、社会経済的要因と健康あるいは食生活に関しての既存の研究を整理し、さらに今後の生活保護受給者支援に向けて御提案をさせていただきたいと思います。

 次のページをごらんください。報告内容といたしましては、まず1番目に特に健康の中でも生活習慣病をターゲットにしまして、社会経済的要因と生活習慣病についてです。2番目に栄養・食生活について、最後に食生活支援についてということでございます。時間も限られておりますので、資料を少し飛ばして説明をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 4ページ目をごらんください。社会経済的要因といいますと、主に外国では収入または所得、学歴、職業などであらわされますが、このパスウェイは所得に関してのものでございます。所得が病気の罹患または死亡に関連するメカニズムといたしまして、相対的貧困に基づくストレスの経路と絶対的貧困に基づくリスク行動、ここに食生活も含まれていますが、生活習慣を経由するパスウェイ、あるいは医療へのアクセスが少ないということを経由するパスウェイがあると考えられております。これに基づきまして、以降、がん、循環器疾患、糖尿病について既存の研究を整理してみました。

5ページ目、まず初めに、がんでございます。上が欧米の研究、下が日本の研究で、いずれの疾患でも一貫して欧米では研究が多いのですが、日本ではまだ途上ということで、幾つかの研究に限られております。

まず、がんにおきましても、SESというのは社会経済的な状態ですが、SESが低い人たちでがんの罹患率、死亡率も高いということが確認されております。そのパスウェイといたしましては、生活習慣、健診の受診率が低い、あるいは自覚症状から受診までの期間が長いということが報告されております。

一方、日本におきましても、いくつかの研究でSESが低い人たちでがんの罹患率、死亡率が高いという傾向が認められております。

6ページの循環器疾患におきましても同様で、欧米の研究は循環器疾患に関してはかなり多数ございます。低SES群で脳血管疾患、心疾患の死亡率が高い、発症後の致命率(致死率)が高いというような結果が得られており、その理由として、生活習慣、リスクファクター、あるいは健診の受診率が低いといった報告があります。

日本におきましては、研究が少し見られまして、やはり低SES群で脳血管疾患の死亡率が高いという結果が得られておりますし、生活習慣、血圧、健診の受診率におきましても、低SES群で低いということが認められております。

7ページは、参考といたしまして、循環器疾患に関連するリスクファクターと生活習慣等の要因の関連を図示したものでございます。参考までに添付しておきました。

次に、8ページの糖尿病でございます。2型糖尿病に関しまして、欧米の研究では、低SES群で糖尿病の有病率が高いということが認められ、その経路といたしまして、やはり食事、運動、健診の受診率が低いことが報告されております。一方、興味深いのは、妊婦の低栄養によって低出生体重児が生まれ、そのことが成人後の糖尿病に関連するといった研究もございます。日本におきましては、SESと糖尿病との関連について論文として発表されたものは見当たりませんでした。前回のこの研究会においては、生活保護の方々で糖尿病の患者数の割合が若干高いということが報告されております。

9ページは、以上の関連をまとめたものでございます。欧米では、社会経済的に不利な人に、がん、循環器疾患、2型糖尿病の罹患率または死亡率が高いという結果が多く見られます。そのメカニズムとしましては、物理的貧困による不健康な生活習慣、健診未受診による発症予防が難しいということ、それから医療へのアクセスが少ないことによる重症化予防、または精神的ストレス、出生前の子供の時期の低栄養ということがパスウェイとして考えられております。

日本におきましては、研究は少ないですけれども、がん、循環器疾患の死亡率につきましては、欧米と類似の結果が見られております。

次に、SESと食生活についての研究について報告させていただきます。11ページをごらんください。今御報告しました三大生活習慣病で、循環器疾患、がん、糖尿病に関連する栄養・食生活の要因について「健康日本21(第二次)」の目標として挙げておりますものを添付しておきました。主に食塩、野菜・果物、主食・主菜・副菜のバランス、適正体重が要因としてとりあげられております。。

これらを念頭に置きながら12ページをごらんください。こちらは欧米の研究をレビューしたものですが、括弧内の数字は発表された論文の数です。見ていただきますと、低SES群に主食系の穀類、油脂の摂取が多く、野菜・果物が少ないという研究が多く見られます。

13ページ目におきましては、食べ物が違えばやはり栄養素摂取に影響しますので、栄養素摂取の状況を見たものです。低SES群に摂取が多いものとして、やはりエネルギー、炭水化物、脂質、逆に少ないものとして、食物繊維、ビタミン類が多く見られます。

それでは、日本においてはどうかということで14ページ目をごらんください。「健康日本21(第二次)」におきましても、健康格差の縮小が大きな目標として掲げられ、国民健康・栄養調査におきましても、平成22年より世帯収入を把握するようになっております。これは3年毎に1回モニタリングすることになっておりますが、平成22年の結果がこちらになります。赤の色でつけましたところを見ていただきますと、世帯収入が200万円未満の者は600万円以上の者に比べて、女性では肥満者割合が高いなど、以下、各生活習慣につきましてよくない傾向の者が多いという結果になっております。

15ページ目をごらんください。さらに実証的な研究をしようということで、。厚生労働科学研究費で行っております研究の結果の一部御報告させていただきたいと思います。

16ページ目です。成人の食物摂取量と世帯収入との関連を詳しく見たものです。一番右の欄の200万円未満のところをごらんください。600万円以上との比較になっております。例えば穀類に関しましては、200万円未満群で多いプラスの係数になっております。赤字の部分です。逆に青字の部分、マイナスの係数になっていますところは、200万円未満の方々で少ない項目となっておりまして、穀類以外の多くの食物は少ないという傾向になっております。

次のページをごらんください。主食が多くておかずが少ないという傾向になると思いますが、こういった食事がどういったことから起こってくるかを分析してみた結果です。こちらは内閣府の食育調査を再分析した結果ですが、世帯収入が200万円未満の方は600万円以上の方に比べて食品選択で重視することに価格を挙げている人が多く、逆においしさとか産地は余り気にしていないという傾向です。今後身につけたい知識におきましても、食費を節約する料理のつくり方というのが有意に多いという結果になっておりました。

18ページをごらんください。以上は成人の結果なのですが、次に子供についてです。世帯収入が貧困ライン以下の子供の傾向として有意な傾向が見られたものを3つ挙げております。こちらの研究はまだ研究途中で、食事の記録の結果については今、分析中でございますので、質問紙調査の結果からですが貧困ライン以下の世帯の子供は、休日の朝食の欠食が多い、家庭での野菜の摂取の頻度が少ない、インスタント麺、カップ麺の摂取頻度が多いという傾向が見られております。

次のページから参考として私たちの研究班以外の研究結果を掲載しておりますが、時間の都合で割愛させていただきます。

飛んでいただきまして、22ページ以降です。低所得世帯にフォーカスを当てた場合にどうなるのかということです。

23ページをごらんください。大阪市の研究に関して論文で出されているものでございます。先ほどの津下先生の御報告とかなり共通した結果です。。国の全体の調査では成人女性の肥満が多いという結果だったのですが、この研究では痩せの人が多いという結果になっておりまして、やはり両極の人がいるということが見受けられます。また、ヘモグロビン、ヘマトクリット値から見た貧血に関しても多いということ、その背景としてたんぱく質摂取量が少ないということです。一方でアルコールのエネルギー比が多いとか、野菜の摂取量が少ないという傾向が見られました。

次に、24ページをごらんください。先日「クローズアップ現代」で放映されましたもとになっているデータで、フードバンク山梨の支援対象者の食事を調査した結果でございます。私ども調査にかかわっておりますが、食費が1人1日300円台ということ、食事パターンといたしましても、3食主食のみという方が多く、主食のみの食事が約半数以上となっております。おかずがついていない食事をしているということがこの調査からも見られております。

25ページをごらんください。以上の栄養・食生活と社会経済的要因の結果のまとめでございます。欧米、また日本においても、収入と摂取食物の種類と量には関連があり、特に日本におきまして、低収入群で主食のみの食事が多いこと、食品でいうと穀類が多く、その他の野菜・果物、肉、魚が少ない。栄養素といたしましても、糖質が多く、たんぱく質、ビタミン、ミネラル系が少ないという結果でございます。このパスウェイといたしましては、やはり食の意識調査からも食物価格等金銭的な制約の問題があるということが見受けられました。そのほか、緑の部分はまだ仮説の段階ですが、子供の低栄養と将来の生活習慣病の関連に関しても注目していく必要があるだろうということです。

最後になりますが、生活保護受給者の栄養・食生活支援に向けて考え方の整理をしてみました。

27ページをごらんください。健康管理と家計管理についてです。前回の厚生労働省の説明の中でも、生活保護法の改正の中で健康の保持増進と生計の状況の適切な把握ということが受給者の責務として位置づけられたというお話がありましたが、まさにその両面の接点の部分、重なる部分が食事の管理だろうということでございます。

健康管理といたしましては、健康の保持増進のために、何をどれだけ食べるかという栄養バランスの確保が必要ですし、家計管理としては、健康の保持増進のための食料費の確保、何をどれだけ買うかということが必要となってきます。最終的に食事の管理が目指すものといたしましては、栄養学的あるいは経済的に望ましい食事、食生活を営むことで、健康の保持増進とともに自立的な生活の一助とするということがあるかと思います。

28ページをごらんください。では、食事の管理のために何が必要かを考えてみますと具体的な目安が必要だということです。健康面から何をどれだけ食べたらよいかにつきましては、厚生労働省でも基準がございますが、一方、家計面で何をどれだけ買ったらよいかということにつきましては、健康の保持増進に必要な食費の目安がないということと、どれだけの頻度でどういう食材をどれだけ買ったらよいか、具体的知識やスキルの目安がないということで、これらの目安を考えてみることも必要なのではないかということです。

29ページをごらんください。支援に向けて具体的な目安が必要ですが、食料費の総額あるいは食費の内訳としてどれだけ確保したらいいのか、あるいは内訳をどういう分配で買ったらいいのかということについての目安と、食知識やスキル、行動の目安は、これだけあってもだめで、実際に個々の対象者の方々がどのような食料費の使い方をしているのかなどの簡単なチェックリストに落とし込んでおくということで実態把握ができるだろうと思います。そうすると実態と目安の乖離を埋めていくということで支援が行われる。そのためにはわかりやすい支援マニュアルがあるといいのではないかということでございます。

この目安につきましては、先ほど御紹介がありました社会保障生計調査の中で、具体的には食費全体としてしか集計されていないのですが、実際の調査はいろんな穀類とか魚介類、肉類といった食費を分類して集計されておりますので、そういったものを使うと目安ができるのではないかと考えております。できたら研究としてやってみたいと考えております。

30ページ目をごらんください。こういった目安あるいはツールを使った実施・モニタリング・評価の考え方の例でございます。実際にできるかどうかは別として、考え方でございますが、まず国がこういった目安とチェックリストと支援マニュアルの作成を行い、市町村等の現場でこういったものを活用した対象者の支援を行う。そのことで対象者は健康の保持増進と生活の自立ができる。チェックシートあるいはチェックリストを用いた改善状況の把握と分析、あるいはできたら健康状態の関連分析をしつつ、これを国にフィードバックすることで数値的に見える形でのモニタリング評価が可能かということで御提案させていただきました。

以上です。

 

○森座長 今、御発言の中にありましたように、子供の時代からずっとというのは将来にわたってということで、ある面では悩ましい問題だということは、今お聞きしましてよくわかりました。村山委員の資料につきまして、何か皆様方のほうで御質問等ございましたら。

 よろしゅうございますか。では、先に進めさせていただきます。

 

○浅沼委員 よろしくお願いいたします。

 こちらは、平成25年度の厚生労働科学研究費の補助金を使いまして「質の高いサービスを提供するための地域保健行政従事者の系統的な人材育成に関する研究」班の分担として「福祉事務所等における保健師の効果的な活動・活用事例に関する研究」として行われた内容をもとにお話しさせていただきます。

 ページをめくっていただきまして、本研究の目的は、平成25年の「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」の中で専門職員の配置を検討することが必要と指摘されたことを受けまして、現状ではなかなかそのような者が配置されていないということで、先駆的に取り入れている自治体の事例を収集して事例分析するということでヒアリングを行ったという内容です。

 3ページの研究方法ですけれども、研究対象は、幾つか情報をいただきまして、活動しているところを聞いて14カ所を回りました。東京都(中央区、立川市、昭島市)、埼玉県(上尾市)、千葉県(千葉市)、神奈川県(川崎市、相模原市)、茨城県(鉾田市)、和歌山県(和歌山市)、大阪府(四條畷市、門真市)、兵庫県(尼崎市)、福岡県(宗像市)、鹿児島県(北薩地域振興局)の14カ所のヒアリングです。

 期間は、2013年となっております。

 方法は、直接、福祉事務所に出向きまして、保健師による健康支援内容の聞き取りを行いました。その調査事例を分析したということです。

 4ページです。半構成的なもので、地域の概要、自治体基礎データ、保護動向、保護受給者への健康支援の内容を聞き取りまして、健康診査、保健指導、健康管理支援事業の内容などを聞きました。また、後発医薬品のこと、具体事例などを聞いたということです。

 5ページが結果です。事業の内容を聞き取った結果、分類してみますと、健康診査と保健指導等に分かれました。

 健康診査に関しましては、健康増進法に基づく健康診査がほとんどでした。

 保健指導等は、生活保護担当の正規職員として保健師を雇っている事例、健康管理支援事業(自立支援プログラム策定実施推進事業)を活用した職員配置の事例、生活保護適正化事業を活用した医療相談員の活用の事例、それ以外の配置の保健師というような内容でした。

 6ページは、内容と地域ですけれども、聞き取りに行きまして、生活保護担当の正規職員で保健師を配置しているところは、上尾市、川崎市、和歌山市でした。四条畷市は看護師の配置になっておりました。

 健康管理支援事業を活用したものとしては、中央区、立川市、昭島市、門真市、尼崎市、宗像市で、相模原市は看護師ということでした。これはほとんど非常勤です。

 生活保護適正化事業の活用は、千葉市で看護師となっています。

 生活保護担当以外の所属は、福祉課に置いて、常時、声をかけて動くような形になっています。

 7ページは、事業内容ですけれども、健康診査を主眼としては、神奈川県の相模原市が看護職を雇っております。平成23年の実績としては受診者450名で受診率6.74%、その後の指導が当時55名ということで、主に健康診査を実施するということで看護職が配置されているという内容でした。

9ページは、川崎市です。川崎市は委員の先生がいらっしゃいますので、後日詳しくお話しいただきたいと思うのですけれども、9つの福祉事務所にそれぞれ平成25年度から常勤の保健師を配置したということです。それに先立ち、川崎市のほうで「川崎市生活保護・自立支援対策方針」というものを策定して、6つの柱の1つとして「健康づくり支援」を位置づけて、各福祉事務所に保健師を配置したというプロセスを経ているということでした。

10ページの和歌山市は、平成20年度に保健師の常勤の専門主幹を生活保護の担当課に置いて、医療扶助の適正化に取り組み始めました。その後、非常勤の看護師を医療相談員として雇用し、翌年、さらに非常勤の看護師1名を追加し、非常勤栄養士2名を雇用し、主に糖尿病の重症化予防対策など生活保護受給者の生活習慣病対策に力を入れたという経過がありました。特に稼働年齢層を中心に、糖尿病の治療を行っていながらコントロールが順調にできていない者を対象者に選定してかかわっていったということでした。

また、生活保護担当課に自立支援班というものを置きまして、常勤の保健師と医療相談員として非常勤の看護師1名、栄養士1名、精神保健福祉士1名のチームで生活保護受給者の健康管理支援に対応するというプロセスを踏んでいます。

その後、糖尿病の重症化などの生活習慣病対策は、糖尿病外来の地域の医療機関などが充足されだしたということで、そこと連携し、生活習慣病対策から精神疾患などの頻回・重複受診の対策を強化するということになっていったようです。医療相談員は、看護師2名、精神保健福祉士1名の体制に改編され、その後公募した非常勤看護師に適任者がいなくて、看護師1名、精神保健福祉士1名の2名の医療相談員と常勤の保健師で生活保護受給者の健康管理支援を担うということで、生活保護部門に多様な職種のチームを置くということをしております。

11ページですが、和歌山市の中で対象者選定は、頻回受診者、多機関受診者、向精神薬を重複処方されている者、新規の生活保護受給申請者で健康管理支援を必要とする者としております。特に新規の生活保護受給者に対し健康面での支援を要する者を医療相談員が選定するという意味では、初回に健康相談の問題を一緒に窓口でやるということが特徴的です。徹底してここにこだわって始めたということです。それ以外に、昨年度の医療費が高額であるにもかかわらず改善しない者などは、ケースワーカーが支援を必要とする者を一覧表にしてきちっと渡すこともやって、対策に取り組んでいたということでした。

評価、効果に関しては、医療扶助に関しての前年度比較、検査データの推移、摂食行動の変化、栄養管理状況により健康状態の改善状況を把握するということですが、ここにデータとして出せるほどのところまではいっていないということです。1カ月の平均受診回数により、頻回受診、重複受診の是正が認められるか、疾病に対する本人の認識の変化はあるか、食生活や運動など日常生活の改善、社会参加、それらに関しての評価をしているということですけれども、まだまだ始まったばかりということでした。

12ページは、具体的な事例がわかりやすくなっていたのでお話しします。和歌山市で例えば40代の男性が重複受診していたという場合は、難病で障害を持っている方で受給者ということだったのですけれども、その人が整形外科に受診・通院しているにもかかわらず、ほかの医療機関が訪問診療をしていました。それは床ずれ(褥瘡)の問題だったのですけれども、両方受けていたケースが発覚したということで、ケースワーカーと相談して、医療相談員が訪問を重ね、褥瘡に関しては通院できている専門医療機関でも褥瘡外来があるので、整形外科の通院と同時にそれを利用して、訪問診療のほうは医療機関とお話をして調整させていただいて、一本化して、ヘルパーさんの回数をふやしたらどうだろうかというやりとりを本人として、最終的に納得していただいてサービスが整理されたということがあります。これを医療費で換算すると年間70万円ほど削減される計算になるということでした。

 それから、60代男性で、長期受診しているけれども、内容を見てみると肝炎によってインターフェロンが長期投与されていて、これも医療機関と調整して年間270万円ほどが削減できました。60代の女性は向精神薬が大量に6カ所で出ていて、これも調整して年間80万円弱の医療費を削減できました。

 こういうふうにレセプトのダブルチェックがあったとしても、その後、御本人に納得していただいて調整したり、それにかわるサービスをしていくというのは、一人一人やっていかないと、ただダブったものをチェックできても改善できない。最終的に、一人一人の受診料、医療費に換算されていくと大きく減少が図れるという意味では、ヒューマンソフトサービスの部分で一人一人にその後のダブルの受診のところを調整して納得していただく、あるいは了解していただく作業が必要だということがこれでよくわかると思いました。

 次に、13ページです。健康管理支援事業のプログラムを使って健康管理支援員や自立支援相談員という名目で非常勤を活用している地域なのですけれども、1つは相模原市です。先ほど言ったように、看護職を配置して健診と健康相談事業、保健指導というところに焦点化して活動しております。

 東京都中央区は、区の内情を知っていて、区の人たちの顔も知っている退職したベテランの保健師が非常勤として保護課に行っています。こちらに関しては、若手のケースワーカーたちがケースワークをするときに相談が非常に多くて、健診にまだ行けていないとおっしゃっています。とにかく相談がとても多くて、健診というところまで行けていないという実情でした。

 昭島市も、東京都を退職したベテランの保健師が入っております。ここは福祉課に配置されていますので、必要時ケースワーカーの依頼で動くというような状況になっています。組織立てた健康支援というところまでは手が出せないということです。健康部門にも非常勤としてはなかなか参加させてもらえない。時間の制約があってできない。事例検討や連携会議にも参加できない。新規で健康支援が必要な人の面接があったとしても、ケースワーカーから直接つながってこない。和歌山市と比べると、必要な人は入ってくるけれども、全員管理できていない。それでもやることはいっぱいで動き回っているというような状況でした。

14ページは、立川市です。こちらも年齢がいったベテランの保健師を非常勤で採用しておりまして、入りやすい母子とか精神の自立支援業務にケースワーカーから依頼があって一緒にかかわっていたということです。保健師の増員で公募をかけましたけれども、保健師の応募がなくて、精神保健福祉士を採用して健康管理相談員としております。保健師1名で、さらに翌年度追加募集しても保健師が来ないということで、精神保健福祉士がかわりに採用になり、精神保健福祉士は精神に関してやりますが、保健師はそれ以外の難病や循環器系、生活習慣病を含めてかかわって、保健師1名、精神保健福祉士2名という体制でやっております。こちらもなかなか健診のこととかは手が回っていない様子でした。

 門真市は、嘱託で市町村を退職したベテランの保健師が雇用されています。ケースワーカーからの依頼で健康管理、保健指導、重複受診に関してやっています。糖尿病の問題を指導強化しなければいけないということはわかっていますけれども、組織的に健康管理の道筋は見えていないという状況でした。

 尼崎市も、非常勤の保健師なのですけれども、こちらは精神保健福祉士2名の嘱託と非常勤保健師1名で、健康診査は健康増進法で保健師が行っていて、平成23年度は232名、受診率1.8%です。なかなかここが大変で、受診者の9割以上に指摘事項があります。先ほどいろいろデータがありましたけれども、同じように高血圧、脂質異常、高血糖、肝機能などがあります。保健指導の受診率は、努力して平成23年の20%から翌年は倍の45%で、半数の人に何とか指導の手が行っているという状況です。受診率1.8%、このあたりが本当に困った難しいところだと思います。

 宗像市は、日々任用ということで保健師1名が入っていまして、保護課の係長は保健師の資格を持っている者が1名入っていますが、精神疾患のほうがいっぱいになってしまって、実際は手が行かないというような実態でした。

15ページの千葉市は、生活保護適正化事業を活用して医療相談員を雇用しております。3名の非常勤の看護師で、レセプト管理をしながら、頻回・重複受診の適正化、後発医薬品の使用促進などをなさっているという状況でした。

16ページです。それ以外に、日本全国ほとんどが福祉課などに混合して保健師などがいて、場合によってケースワーカーと同行するというのが実態です。健康増進課の保健師が一緒に訪問したりということはもちろんありますが、健診を含めた健康管理支援を組織的にしていくという意味では、まだまだ始まったばかりというのが実態です。

17ページは、以上のことから考察をしていきますが、考察の項目立ては研究としては5個なのですけれども、前回の会議のこともありましたので、私のほうで1個追加してあります。

18ページですが、最初に、健康管理を行う専門職員というものが必要なのではないかということです。特に生活習慣病の重症化予防を初め、医療扶助など保護費の減少ということは、相手は人ですからわかっていただきながら、一緒に応援しながらということに関しましては、丁寧に時間をかけて援助していくということが必要ですし、先ほど先生方がおっしゃったように、重症化の予防や疾病の改善は就労・自立に向けて欠くことができない環境整備であり、そこに専任の担当者を置くか置かないかというところに関しては、やはり置かないできているのが現状で、それで全くできていないことをどう考えるかということだと思います。

19ページは、健康管理支援への着目、自治体の生活保護施策戦略の確立が必要ではないかということです。各自治体の福祉事務所において健康管理が重要だということが認識されていけば変わっていくと思いますが、後ほど川崎市のほうのお話をしていただけると思いますけれども、まず自治体が、例えば次世代育成支援行動計画、高齢舎の保健福祉計画、母子保健計画とかいろいろあるにしても、生活保護に関しての自立支援対策の計画、方針というものをきちっと策定していただきたいということです。そうすると川崎市のように当然、健康の問題にぶち当たるのではないか。市町村としてどう考えていくかを改めて考えていただきたいというところでした。

20ページは、健康診査の実施ということです。生活保護受給者の健康診査の受診率については差があって、一人一人が受診していただくこと自体大変なことが多くて、一ケース一ケースのケースワークの中で地道に声をかけたり、ある程度の仕掛けをつくったりしてやっていかなければいけない。さらに、受給申請の初回の面接のときにきちっと保健師が面接をして受診勧奨するとか、健康管理も応援していくと伝えることが必要です。結核管理対策というのは非常に形ができています。最初の初回面接ときに健診などをきちっとやっていくというものがない中で、途中で言われてもということになってしまいます。ケースワーカーが申請受理して、その後、何とかと言ってもなかなか難しいという意味で、この辺のところの対策、制度、システムがまだできていないということです。

21ページですが、健診のデータを持って健康管理支援をしていくというところもできていないというのが実態です。やっているところはやっているのですけれども、全国的にはまだまだできていないと思います。国保との差異もそうですし、自治体間の差もあると思うのです。先ほど先生方が言ってくださったような愛知もそうだし、地域によってやはり特色があるから、自分の自治体あるいは特色ごとにデータ分析して、対策をやっていく必要があるのですけれども、なかなかそこがまだ難しい。

データベース化して、レセプトを活用して、後発医薬品の使用促進や重複受診・頻回受診の是正などをしていくにしても、その判断を相手に納得していただく、その後の人を相手にしたところのサービスが欠かせなくて、そのときに健診データを持たないで調整ができるのか。複数受診をしているときに、自分たちがその根拠を持たないでそういうことができるのだろうか思うと、やはり健診を受けていただくことで健康支援していくということが不可欠ではないかということです。客観的なデータを把握する努力を各自治体がしていくことが必要なのではないかということでした。

22ページは、保健師による健康管理ということがありまして、いろいろあるのですけれども、一番適切だと思われるのは、適切な診療科に受診勧奨ができたり、精神科だけではなくて多様な診療科の服薬指導ができたりという部分もございます。健康を切り口にしながら、その人の健康状態を把握して対象者を総合的に支援する。あるいは早期発見、重症化予防、健康増進課や地域の保健・医療関係者の人たちとネットワークを組んだり連携したりして事業を組んだり、あるいは責任を持って保健計画策定に参画できるなどの特徴があるということです。

23ページは、そういうことで特色のある保健師ですが、一番大事なのはケースワーカーたちとのチームでアプローチができるのか、福祉だけではなくて、保健職、医療職も含めてチームでやっていくという意味では、ぜひ活用していただきたい職種ではないかということです。

24ページは、前回に評価の話題があったので、現場経験も踏まえた私の中での評価ということを少し追加させていただきました。生活保護受給者への健康支援の評価をどう考えたらいいかということです。やはり重症化予防ということで、精神疾患以外でも必要な健康支援ということを主眼にしますが、皆様方は社会保険で健康診断をして異常が見つかったら病院に行こうと受診行動にすぐ動くということがありますけれども、先ほどの先生の報告にもありましたように、まず医療へのアクセスが非常に困難だということなのです。まず、健診を受けない。健診受診率が向上しない。治療に行かない。受診行動に移ることが大変困難だ。そこに支援が要る人たちが多いということなのです。そして、治療を受けても中断してしまう人もとても多い。精神疾患を合併して調子が悪かったら、こもって行けなくなることもあります。

そういう意味では、特定健診の対象者のように、健診を受けてもらう、病院に行っていただく、続けていただくということがとても困難な、基本のところがとても大変な方たちであるということを考えますと、評価というのは多様な段階で多様な評価軸を持っていかないと、特定健診と同じような評価を持たせても、やっている人たちはとても大変ではないかと思います。

生活保護受給者の人たちの受診行動への動機づけは非常に難しい。もちろん保健指導技術の研鑽も必要です。受診行動自体を評価する、こんなことが必要なのかと思うかもしれないけれども、実際、結核などはそうなのです。私も東京都でやっていたのですけれども、やはり途中で中断したりすることもあって、受療行動自体をきちんと評価していく、それをデータ化するためにどういうふうな取り組みをしていくのか、どういう報告を国として求めていくのか、フォーマットを自治体としてつくるのか、共通のフォーマットはどうするのかというようなことを具体的につくっていくことで初めてエビデンスとして上がってくるものがあると思います。今は余りにもそれがなくて、エビデンスとして出していただきたいと局長さんが最初におっしゃったのですけれども、今はそれを出していくところも大変だなと思っています。

その次に受診した先あるいは健診センターでどう本人が行動変容していくかというのは、先ほどのように評価していただいたり、あるいは仕掛けをつくって、アルコールの人たちの栄養教室とか、いろいろあるのですけれども、そういうことをしていかなくてはいけないと思います。

まず最初の段階でどう医療につなぐかというような視点も持っていただきたいと思いました。それに関しては、例えば健康管理記録とか、結核だったらビジブルカードのようなものを全国で使っていますけれども、健康管理に対してデータ化できるようなもの、記録カードみたいなもの、そういうものがないというのが実態です。生活保護の方たちの健康管理に着目し切れなかったのは、そういうところにあるのかなと思います。だから、きちっとしたカード、最低限の健康に関するデータを報告していくということを期待したいと思いました。それが自立に向けた基盤づくりとなって、次に医療費の減少とか、そこが評価され、さらに就労率がその次に来る、そういうような段階を考えていただきたいと現場を経験した者からすれば思いました。

その次に、結核管理の評価とか、就労に向けた評価の出し方などを少し資料としてつけさせていただきました。途中で言いましたけれども、市町村として母子保健支援あるいは高齢者支援サービスの推進と同様にその一環として、生活困窮者の健康診査サービスを位置づけていただきたい。そして今ある市町村の健康サービスの水準を低下させないで、生活保護者の健康管理支援サービスを充実させるために、新たに福祉部門に専任の保健師等を置いていただきたいと最後に提言して終わりたいと思います。

 以上です。

 

○森座長 次の滝脇委員に御報告をお願いして、最後に残りました時間の中で質疑等がありましたらということで御了解いただきたいと思います。

 

○滝脇委員 NPO法人ふるさとの会の滝脇と申します。

 私からは、地域で生活支援を行う団体の視点から取り組みの報告をしていきたいと思います。

 まず、2枚目は、私どもの法人の概要を書いております。本拠地は台東区にありまして、事業所数、従業員数、年間事業規模、事業目的、関連法人等、書いてあります。1990年にボランティアサークルとして活動を始めまして、山谷地域のホームレスの支援活動を出発点に生活困窮者の支援を行っております。

 3枚目は、現在の利用者像です。ここで健康課題、健康状態がある程度おわかりいただけるかと思います。全体として1,154名の方の支援を行っておりますけれども、1,154名のうち907名が生活保護の方、247名が生活保護以外の主に生活困窮、低所得者の方です。

特徴ですが、まず高齢化が非常に進んでいます。一番多い年代は60代で、経済的な面だけではなく、さまざまな病気や障害を抱えている方が多いという状況であります。特に多いのは精神の障害を持っている方が221名、認知症の方も高齢化に伴ってふえてきており、121名、がんの方も40名から50名程度常時いらっしゃるという状態です。要介護の方が264名、こういった全体像であります。

 独居、共同居住の居住形態別で健康状態に傾向の違いがあります。独居というのは、アパート、簡易宿泊所、公営住宅などでひとり暮らしをしている方を指しますけれども、最多の年代は60代で、障害としては精神の障害を持っている方が多い。それに対して共同居住のほうは、ふるさとの会が借り上げを行っている物件で共同生活を支えております。こちらは70代以上の方が最も多いです。独居と共同居住の割合が、全体の母数、独居749名、共同居住が405名に対して、認知症の方だけ見ますと、その数字、比率が逆転しているというところは特徴的だと思います。認知症の程度はここには書いておりませんけれども、例えば先日共同居住で受け入れた方は、認知症を発症して5年間独居の生活を支えてきたのですが、徐々にADLが低下し、認知機能低下によってぼやを起こしてしまい、家主から退去を求められ、同じ地域の中の共同居住に移っていただきました。

 上のところの「四重苦を抱える人」は何かといいますと、「たまゆら」という老人ホームの火災が2009年3月に起きました。このときにどういう方が居所を失いやすいのか調査を行ったところ、4つの問題を重ねて持っているということが分かりました。つまり、お金がない、家族がいない、要介護、4つ目に精神や認知症などの障害やがんを抱えている方です。四重苦を抱えると、病院や施設を探すことも、在宅独居も難しいという問題です。

 整理すると、病院や保護施設、刑事施設などから帰来先がない方が多くいらっしゃる。そして住所不定の方、自宅におられて近隣のさまざまなトラブルであったり、独居生活が継続できない、さっきのぼやを起こしたような方、そういう方の支援、そして緊急性の高い支援、こういった特色があります。

 5枚目のスライドに移りますと、従来、私たちは身寄りのない単身者の支援が中心でありまして、今もそうなのですが、最近では家族のいる人の利用もふえてきておるという状況です。

 6枚目のスライドですが、時々入院、ほぼ在宅という言い方がありますけれども、これまで生活保護の方は社会的入院の方が非常に多かったという問題があると思いますが、最近ではそういう状況ばかりではなくなってきております。地域の側も、急性期は入院、しかし回復期は在宅、そういった覚悟が求められていると受けとめております。ただ、それを支えるためには、「居住支援・生活支援」と下に書いておりますが、この土台の部分、居所の維持確保、生活支援、医療・介護サービスの調整ということが基盤として必要であると捉えております。

 7枚目のスライドは、私たちの活動をインフォーマルコミュニティーケアの視点でまとめてみました。これは重ね餅のようなイメージでつくっている図ですが、まず健康を支援する上でも、住む場所、ケアする場所がないと始まらない、そういう方がたくさんいらっしゃるわけです。生活支援ということに関しては、生活が成り立つようにする。特に単身者に関しては、家族がいない、家族のケアが受けられない、家族の援助が受けられない方に家族がわりの人が必要です。3つ目に仲間づくりということで、サロンやイベントをやったり、仲間の中で孤立しない関係性をつくっていく、そういうことが必要だと思っています。そして、在宅みとりということを最後に掲げておりますけれども、ここではさまざまな医療や介護、制度との連携ということが非常に重要になってきます。ただ、これは一つ一つ切り離せる話ではなくて、例えば最期を迎えるときにどれだけ多くの仲間にみとってもらえるかという互助づくりがあって、その先に地域でのみとりということが可能になるのではないかと捉えておるものです。

 8枚目のインフォーマルコミュニティーケアの運営のところは、これはお金の話を少し書いておりますけれども、ここで余り説明はしません。支援を行うためには人件費を賄う必要がありますが、現状では対応する扶助がないため、利用料の中から管理コストとして賄っています。

 9枚目のスライドは、私たちが活動している地域の一つとして、墨田区における支援状況というものを地図に落としております。緑のマークが私たちが在宅で独居を支援している方、特にアパートの保証人を引き受けている方のアパートの所在地です。赤や黄色が私たちが借り上げている共同居住の場所になっておりまして、こういう形でさまざまな居住形態というものを結び合わせながら、包括支援を展開しています。

ここから先は少し具体的な事業の説明に入っていきます。まず、私たちのメインの利用者は独居、アパートですので、その暮らしを支える拠点というものが必要です。各地域に共同リビングと呼んでいる支援拠点あるいはカフェなどを設置して運営しております。事業内容、プログラムは書いてあるとおりです。

11枚目のスライドは、ケアつきの保証人事業です。これは居住支援の一番基本となる部分ですけれども、今、独居の方のうち538名の方の保証人を引き受けております。一般の保証会社ではなかなか通らない、審査から落ちてしまう、つまりハイリスクな人ということになります。非常に高齢であったり、障害を抱えておりますと、保証会社のほうも家賃滞納とかさまざまなリスクを軽減するために審査を通さないということがありますので、そういう方のための保証会社というものを運営しております。

ここで一つ特色なのは「生活サポートが必要な方でアパート生活が継続できるようにトラブルの早期発見、対応を行う」と書いております。在宅で暮らしている方はさまざまなトラブルを抱えておりまして、大家さんが一番不安なのは独居死をされるということでありますし、ADLが低下していく、受診や入院ができないという問題、あるいは認知症が悪化していく、また精神症状があらわれて幻聴や幻覚などから近隣とのトラブルが発生する、そういったさまざまなトラブルに生活サポートとともに対応を行っております。

12枚目のスライドは、それを大家さんの側から見るとどうなのかということにかかわります。大家さんや不動産屋さんはさまざまなトラブルが非常に心配です。そして、大家さんも不動産屋さんも高齢化しているので、御自身で対応する力がなくなってきています。そういう大家さんからの相談を受けて、私たちは対価をいただいてアパートの管理の委託も受けております。従来のアパート管理というものは、ごみ捨て場、自転車置き場、電球の交換、そういうハード面の管理が中心でしたが、むしろソフト面の生活支援がアパートの経営を維持するためには必要で、それが結果として空室対策につながり、長く住んでもらう、そういう生活支援が地域の中で求められてきていると捉えております。

13枚目は都内のアパートですが、アパートの1階に大家さんが住んでおり、居間を地域のサロンとして運営しています。大家さんのサロン運営を私たちがお手伝いしているという関係です。ここで食事をしている絵がありますが、地域の方が皆さん集まって、サロンに面した路地も開放して、路地はもともと開放されていますが、そこも居場所というか、人が集うあるいは通る場所、そういう空間も有効に活用しています。地域の高齢の女性などが集まって食事をみんなでつくったり、私もお邪魔すると、食べなさい、食べなさいとカレーライス3杯も食べさせられてメタボが心配になってしまうぐらいで、こういった地域の高齢者の力というのも重要なソーシャルキャピタルの一つではないかと思っております。

 続きまして、もう一つの居住の軸が宿泊所・自立援助ホームというもので、生活支援を24時間体制で行っております。空き家を活用して24時間ケアできる場所をつくっておくということが地域で必要になっております。

例えば15枚目ですが、自立援助ホームと呼んでいる共同居住では、ほぼ全員が認知症です。カルテや主治医の情報ではここまで認知症の人が多くなかったのですが、東京都健康長寿医療センターの専門医が調査ましたら、診断がついている人以上に認知症圏内の人が多いという結果を出しております。

16枚目は、認知症の専門医から見て、精神科に入院していてもおかしくない人たちがなぜ普通に暮らしているのかということを、さまざまな角度から分析されています。

17枚目は、生活支援について定義的なことを書いております。ここでは機能障害を生活障害にしないという生活支援の特色を記しております。例えば認知症の場合、認知機能という障害は我々はもちろん、お医者さんにもなかなか治せないところだと思いますけれども、認知機能の障害が生活の障害にならないケアは可能であるということです。

次のページは、トラブル対策ですが、認知症の人が妄想を持っており、そのときにどういうケアが行われているかということもケース記録から分析されております。

とりあえず先に行きます。19ページは、東京都健康長寿医療センターの先生が私たちの現場の調査を行ったものです。先ほどの機能障害を生活障害にしないというのは支援の考え方ですが、具体的な支援内容、行為としてどういうことをしているか、特に頻度の高い日常生活支援をこのように書いております。右下のところの家族的支援が必要であるという結論です。

20枚目は、保健・医療・福祉との連携です。専門職の方々の協力なしには地域のケアは成り立ちません。その一方で、インフォーマルなケアが必要であるということも欠かせない条件になっております。非医療専門職による支援、インフォーマルな支援とフォーマルなケアサービスが連携していくことが重要になっています。

21枚目は、山谷地域で「地域ケア連携をすすめる会」というのをやっております。規約のところをごらんいただきますと、3行目に「居住支援と社会サービスの事業者が連携し」と書いておりますが、ここが一つの特色です。地域柄、安定した住居を持たない高齢者が多いということがありまして、さまざまな居住支援、居住資源というものが展開されております。それが生活の基盤をつくり、さまざまな専門サービスとの円滑な日常の連携というものを可能にしています。それを一つのネットワークにしたものです。

22枚目、ふるさとの会の取り組みについて、これは地域包括ケアとの関係です。インフォーマルなサポートもフォーマルなサービスも、都心部ではサービスがないということはありません。ただ、それが特にアクセスの悪い人に行き届くようにするためには、地域の中で、先ほど申し上げたような重ね餅の部分、生活困窮者の社会資源というものをはめ込んでいく必要があるという概念図です。

その次の23枚目からは、稼働層のことについて少し触れておきたいと思います。生活支援ということを申し上げましたけれども、生活支援は雇用を生み出すという視点も重要だと思っております。特に、私たち274名のスタッフがおりますけれども、そのうちの119名は生活保護を受けていたり、元ホームレスであったり、利用者でありながら支援する側に回っている人たちです。要介護高齢者を地域で支えることによってさまざまなコミュニティービジネスが発生します。特に中心になるのが生活支援という働き方です。生活支援労働という言葉は、中央大学の宮本太郎先生に概念として教わったことですけれども、では、それを具体的な就労支援にどう結びつけているのか。

私たちの就労支援というものは、資料5の参考資料をごらんいただきますと、図表の5ページ目のところに就労支援179名という数字を書いております。7月現在でこれだけの方を就労支援していて、もちろん全てが就労しているわけでも、また全て私たちが雇用しているわけでもありません。ただ、この人たちの大部分がさまざまな働きづらさを抱えている、そういう稼働層であるということです。ハローワークへ行ってもなかなか仕事が見つかりません。

平成23年度に私たちが「ケア付き就労」で雇用しているスタッフの調査を行いました。ケア付き就労というのは、2つポイントがあります。1つは、その人に合わせて仕事をつくるということです。雇う側の都合でフルタイムの人を何人とかではなくて、就労支援の側から、例えば週に1回2時間だけだったら働ける、こういう職種だったら、こういう関係性の中だったら働けるという、その人に合わせて仕事をつくっていくというのがケア付き就労の特色です。もう1つは、雇用の場所に生活支援を入れていくということです。生活支援を行っている人が雇用の場にも出かけていって、仕事になじめるようにサポートも行っていく。これがケアつき就労の特色です。

このケア付き就労をしている人たち全員に対して意識とプロフィール調査を行いました。その結果として、まず障害の有無、これは実際の働きづらさを反映するほどは出てきませんでした。

しかし、その次の27枚目のスライドを見ていただきますと、診断とか手帳ということにはあらわれにくい疾病既往、特に精神面の問題を抱えている人が多く出てきています。

さらに、28枚目のスライドに行きますと、GHQという精神健康の28項目の調査を行ったところ、非常に問題のある人が多かったということで、診断の場面ではなくて、生活や働く場所の中にいたときにさまざまな障害、健康問題というものがあらわれていると思われます。

しかし、彼らは働いているわけで、29枚目のスライドを見ますと、生活支援をしていてどんなことがやりがいになっていて、どんなことがつらいですかという質問に対して特徴的な2つの答えがありました。1つは、一番入りやすい仕事は配膳したり、そういう仕事ですが、「ありがとう」と声をかけてもらったということです。もう一方でつらかったことは、自分がかかわっていた人が亡くなってしまったり、長期入院してしまって離れ離れになってしまったこと、つまり、働くといっても、やはり自分を迎え入れてくれる他者がいるから働こうという気持ちになっているのであって、自分の居場所でもあり、その人ともかかわるためには健康でいようという気持ちが生まれるのであって、居場所づくりと仲間づくりと仕事づくりということが全て結びついている必要があると私たちは考えております。

それを展開するためには、当然、人の支援にかかわるわけですから、さまざまな研修が必要になっております。漢字があまり読めないという人もいますので、わかりやすいテキストを使って誰でも生活支援に携われるという研修をつくりながら、もう一方で、常勤になりたい人にはその次のケア研修という39科目の研修を受けてもらって、さらにステップアップできるような検定制度というものを設けております。

まとめになりますけれども、まず私たちが行っている活動を通して、利用者等の健康状態、健康課題ということにつきましては、在宅の方が重篤化しているという傾向をごらんいただけたかと思います。

2つ目に、必要とされる健康管理支援あるいは現在の取り組みは何かといいますと、先ほどの生活困窮者のためにつくっていた重ね餅の支援というものを地域にはめ込んでいく、そしてさっきの就労でもわかるとおり、互助というもの、お互い仲間がいて助け合うという関係性があることによって自分の健康への配慮が生まれているのではないか、この互助づくり、横のつながりをつくるということが大事になっているのではないかと思っております。

最後に、行政とNPOとの連携につきましては、私たちはこういった社会資源を地域の中でつくっていきますので、単身生活困窮者のためにつくってきた社会資源というものを福祉事務所や地域包括、あるいは地域福祉の社会資源として活用していただけるような、そういった連携を目指していくことが大事だろうと思っております。

以上です。

 

○森座長 どなたか、これだけは聞いておきたいというものがございましたら御遠慮なく御発言をしていただければと思います。

委員の中からこの委員の方のこの点についてというものがございましたら、事務局を通してそれぞれ出していただければ、きょうの発表の委員の方からの御回答があると思いますけれども、その辺のことはひとつよろしくお願いします。

 

○増田委員 事務局にお聞きしたいのですけれども、レセプトと健康診断のデータを突き合わせるデータヘルス計画を医療保険者に義務づけるというのは、生活保護を受けている人はその対象にならないということですか。それとも、生活保護、医療扶助を受けている方にもシステムをちゃんと市町村につくれと、それをこれからの指導に生かしていこうということになっているのか、あるいはまだそこは途上ですということなのですか。

 

○事務局 データヘルス計画は医療保険者には課せられているのですが、健康診査と同じように、生活保護については、市町村に義務づけされているものではないです。

 

○増田委員 その対象にならないということですね。蚊帳の外側に置かれてしまうということですね。そこは何かシステムとして考えていかないと、全くそこに入れない人が出てくること自体がおかしいかなと思うのです。

 

○津下委員 きょう、それぞれがいろんな視点で話をされて非常に参考になったのですけれども、例えば医療扶助の状態でも、生活保護の受給者に対するアプローチと、本当は医療機関側の問題というのも非常に大きくて、その問題を受給者からのアプローチとしてやっていると結構大変なので、問題を切り分けて、どっちからのアプローチが一番動きやすいのかということも整理していかないと仕事が多くなり過ぎてしまうのかなというのが一つです。

 それから、滝脇委員のお話を聞いていて、どの段階になっても、生きがい、やりがい、役に立つ、この感覚をどう持ってもらうかというのが原点で、そこと仕組みづくりというのが、もっと若い世代で在宅でやっている人、私たちが東海市の健診データで見た人たちよりももっと困窮した状況の方々にはどうするとか、そういう段階に応じたアプローチをいろんないい事例を参考につくっていく必要があるのかなと思いました。

 

○森座長 ちょうど時間が参りましたので、本日のこの研究会をこれで閉じさせていただきますが、これからもまたいろんな意味で、皆様方の今度の会合のときも発表がございますので、またぜひよろしく。

事務局のほうで次回のことにつきましてよろしくお願いします。

 

○事務局 次回の第3回は、日時としては1022日(水)14時からの開催とさせていただきます。内容につきましては、各委員からの御報告の2回目ということで、きょう発表された以外の方からの報告ということにさせていただきますが、詳細等についてはまた追って連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 

○森座長 どうもきょうは大変御苦労さまでした。ありがとうございました。


(了)

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