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2014年9月8日 第1回生活保護受給者の健康管理の在り方に関する研究会議事録

社会・援護局

○日時

平成26年9月8日(月)10:00~12:00


○場所

経済産業省別館310各省庁共用会議室(3階)


○出席者

相澤 照代 (委員)
芥川 千津 (委員)
浅沼 奈美 (委員)
石原 美和 (委員)
滝脇 憲 (委員)
津下 一代 (委員)
中板 育美 (委員)
増田 和茂 (委員)
村山 伸子 (委員)
(森 貞述(座長)は欠席)

○議題

・生活保護受給者の健康管理の在り方に関する意見交換
・その他

○議事

(委員紹介等)

(挨拶)

○鈴木社会・援護局長 一言御挨拶申し上げます。

 先生方には、本当に御多忙の中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。御案内のように、我が国は現在の社会の中で生活困窮者が構造的に広がっておりまして、生活保護の受給者も過去最高をずっと更新し、最近でこそ伸び率は低下いたしておりますけれども、なかなか減少ということに至っていないわけでございます。そうした折から、御案内のように生活保護法を改正いたしまして、主として就労支援、自立支援といったことを中心とした新しい展開を図っているところでございます。その中で御案内のように、医療扶助が一つの大きな焦点になっておりまして、これまでもいろいろな取り組みを重ねてまいりました。その中で振り返ってみますと、扶助全体に占めるシェアや、効率化、適正化といったことに焦点が当たりがちでございますけれども、一方で、受給者の方々の健康の管理、維持、向上といった点が遅れがちになっているのではないか、そんな反省もいたしているわけでございます。

 そうした観点から、この研究会はぜひその辺にウエートを置いていただきまして、具体的には受給者の方々の健康状態がどうなっているのか、それから、健康管理上の課題は何なのか、具体的な支援をするといたしまして、その具体的な方法論といったことにつきまして、ぜひエビデンスを整理していただき、その上でいろいろと新たな御提言をいただきたいと思っております。事務局でもいただきました宿題につきまして、できる限りデータなどをそろえてまいりたいと思っております。

 そうしたことで限られた時間ではございますけれども、エビデンスがついた上での効果もきちんと打ち出していければ、非常にいい成果があったということになるのではないかと御期待を申し上げているわけでございます。

 簡単ではございますけれども、冒頭の御挨拶にかえさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

(議事)

○事務局 まず初めに、事務局から、生活保護の状況や国の施策等の現状につきまして御説明させていただきます。その後で、それらの説明内容に関する御質問も含めて意見交換とさせていただきたいと思っております。

 それでは、お手元の資料2に沿いまして説明いたします。

 最初は、生活保護全体の保護動向ということで、3ページ目からになります。「生活保護制度の現状」として、大きく4点挙げさせていただいております。

 まず、生活保護の動向ですが、毎月報道もされていると思いますけれども、これは3月時点の数字でございますが、後ろのデータは直近のものに変えております。受給者数約217万人ということで、これは平成23年7月に過去最高を更新して以降、増加傾向にあるということです。ただ、傾向としましては、一時の増加傾向よりも最近では若干微増、横ばいという形になっていて、伸び率自体は減少傾向にあるということが見てとれます。

 その生活保護受給者の方々の世帯等の状況でございますが、やはり高齢化に伴いまして高齢者の受給世帯が多くなっているということと、ここ数年の動きといたしましては、失業等により保護に至る場合が多くありますので、その他の世帯という伸びがふえているという傾向が見てとれます。

 3番目ですけれども、受給者の増加に伴って、それに係る保護の費用も増加していきますので、国の予算であります生活保護費負担金も一貫して増加を続けております。平成26年度の予算で3.8兆円という、これは国と地方の負担を合わせた全体の事業費ベースですけれども、そのぐらいの予算を占めており、さらに、そのうち約半分が医療扶助によって占められている状況です。

 4つ目は、一方で不正受給も増えてきているということで、こうしたところを厳しく対処し、信頼できる制度にしていかなければならないということであります。

 4ページ目。ここが被保護世帯数等のデータの年次推移です。ここは昭和26年度から最近の状況までつけております。この数字につきましては、平成26年6月、今月公表いたしました最新の速報値です。ご覧のように、一度景気のよくなった平成4~7年ぐらいから受給者の伸びとしては底でございますが、その後は一貫して右肩上がりとなり、平成26年6月の速報値では、被保護者の人員の推移としては216万人、世帯数では160万人となっております。若干鈍化をしておりますけれども、依然として微増傾向にあるということが見てとれると思います。

 続きまして、5ページです。これが平成1626年までの10年間の生活保護受給者数と、対前年同月伸び率というグラフをリンクさせたものです。右に上がっているのが生活保護受給者数ですが、それに関係して波のようになっているのが対前年同月伸び率をその月に合わせて載せたものです。平成20年以降急激に伸びておりまして、一時のピークは平成22年1月の12.9%ということですが、その後は減少傾向が継続し、直近では対前年同月伸び率、平成26年6月では0.3%ということで、このグラフから見てもわかりますように、過去10年の中では最も低い水準です。

 続きまして、6ページは上の枠に書いていますように、完全失業率と保護開始人員には正の相関関係があるということ。保護開始・廃止人員と完全失業率のデータをグラフに入れたものです。

 上のほうで2つのグラフが推移していますが、1つは保護開始人員の動きと、それと並ぶように動いているのが完全失業率のデータであり、ほぼこういった形で同様に推移をしていくということで、雇用情勢、社会経済情勢であるとか、そういったところに生活保護の動向は多分に影響を受けるということが見てとれるというものです。

 7ページでございます。先ほど申し上げたように、世帯類型別に見てどうかということですが、これも平成16年度と直近の数字を世帯類型別に並べたものです。世帯類型は高齢者世帯、母子世帯、傷病・障害者世帯、その他の世帯という4分割をしております。その世帯類型の定義については、下の点線枠で囲ったところに書いておりますけれども、こういった形で10年前と比較してどうかということですが、先ほど申し上げたように、稼働年齢層と考えられるその他の世帯の割合が大きく増加しているということです。

 一番左端の数字は世帯総数ですが、全体で伸びていますので各世帯類型も伸びるのですけれども、高齢者世帯等につきましては、大体1.21.6%の伸びとなっているところ、その他の世帯につきましては、約3倍になっているということです。高齢者世帯につきましては、高齢化等の影響もあり増えていくということですが、その他の世帯が3倍増という顕著な増加を見せているということです。

 右下に囲っているところですが、参考までにその他の世帯のうち年齢階級別に見た世帯人員の構成割合がどうかということです。これは平成23年の数字ですが、その他の世帯のうち2029歳が5.3%、50歳以上が53.5%ということで、その他の世帯の中でも稼働年齢層、なかでも中高年齢層が多くを占めていることが見てとれるというデータです。

 続きまして、8ページは先ほど申し上げたように予算の話ですけれども、受給者数の伸びと同様に予算も伸びているということで、平成26年度予算では全国ベース、国と地方の負担を合わせまして3.8兆円という予算を計上しております。そのうち平成25年の点線で囲っておりますけれども、医療扶助が半分を占めているということが出ております。

 以上が、生活保護全体のデータに関するものでございます。

 次に、本研究会のテーマであります健康管理に関連したデータです。生活保護受給者の健康に関する状況について、最初に言ってしまうと明確なデータはないのですけれども、まずは、ただいま半分占めていると言いました医療扶助の状況をもとに、一度見てみたいということでつけさせていただきました。生活保護受給者の疾病の状況等について、10ページをご覧いただければと思います。

 ここは医療扶助の現状ということで、繰り返しになりますけれども、こういう形で医療扶助費が多くなっている。生活保護を受給されている方のうち約8割は医療扶助を受けているという状況です。その費用は、生活保護全体の約5割を占めている。

 1番に書いていますのは、被保護人員のうちの医療扶助人員の総数、また、入院・入院外の内訳の人数と、それにかかった費用を書いております。

 その下が、費用で見た場合ということで診療種別の状況です。これは医療扶助費の費用で割合を見た場合には、入院等が57.1%、約6割程度を占めている。そのほかは入院外で4割ちょっと、歯科が若干という状況でございます。

 右側に、参考までに国民健康保険等の状況をつけておりますけれども、国民健康保険等に比べますと、生活保護は入院というのが約6割ということで多くなっている傾向がございます。

 次に、11ページですが、医療扶助の現状の続きで、年齢階級別にはどうなっているかということです。60歳以上の受診費用が7割程度、そこにあります6069歳が29%、70歳以上が42%、これを足しまして大体7割程度というような年齢構成になっているということです。

 こちらの右側も参考に国保等ということで、こちらは後期高齢者の医療も入っているので70歳以上の割合は高いのですが、こうした比較状況です。

 4つ目に傷病の分類別ということで、医療扶助のデータの中からどういった疾患によるものが多いかを分類したものでございます。左の生活保護につきましては、精神・行動の障害が22.7%、循環器系20.1%ということで、精神関連の疾患や循環器系疾患の割合が高いということが見てとれるというものでございます。

 こちらも、右に国保等をつけさせていただいております。

 続きまして、12ページでございます。今までは大きく医療扶助の現状について御説明しましたが、ちょっと重なる部分もありますが、医療扶助にどういった特性が見られるのかをまとめたものです。なぜ医療扶助費が保護費総額の半分も占めるのかという視点でまとめたものです。

 まず1つ、先ほども申し上げたように、医療を必要とする60歳以上の高齢者の方が多いということでございます。受給者のうち60歳以上の方というのは過半数を占めるというデータですが、その高齢者世帯の9割以上が医療扶助を受けているという状況にあります。それをデータで示しているのが下のグラフです。年齢構成、右側にいきますと高齢者世帯のうち医療扶助があるかどうかというデータでございます。このことから高齢者が多く、その方々はほぼ医療扶助を受けているという状況が見てとれるということでございます。

 続きまして13ページです。高齢者のみならず、若年層にも医療を必要とする方が多いというデータです。そもそも生活保護に至る場合には、傷病等を原因として働くことができないという方が多いわけで、生活保護につきましては、国保等と比較しましても医療を必要とするという方が多くなりますが、若年層においてもその傾向が見受けられるものです。

 下の表は、年代別保護開始の理由別世帯数です。2059歳を若年層としていますが、そのうち傷病等によるものの割合というのが37.3%で、若年層の中でも傷病等がきっかけで保護を開始する者の割合が高い。また、若年層について入院受診率の比較を書いておりますが、国保に比べて若年層の入院受診率が高いというデータも見てとれるということです。

 続きまして14ページ、3つ目の特性といたしまして、一般的に医療を受ける方の中でも長期治療が必要とされる方が多いのではないかということです。国保に比べますと入院患者のうち精神関連疾患で入院する方が多い。また、精神関連疾患で入院している受給者の約7割が統合失調症等ということでございます。

 そのデータが下にありますけれども、これが患者ごとの主傷病別の構成割合ということで、例えば統合失調症等につきましては、国保等と比べても高い数字を出しています。また、一般的に重症化すると完治が難しいと考えられる傷病として糖尿病や肝炎についても、国保等よりは生活保護のほうが高めに出ているというデータがございまして、生活保護の医療扶助を受けている方の中には、重症化すると完治が難しい、一般的に長期の治療が必要となる入院患者が多いということも見てとれるというものでございます。

 ここまでが医療扶助をもとに分析したものでございます。

 続きまして、15ページです。生活保護受給者の健康意識等ということで、私どもが行った健康に絡むようなデータはこのぐらいしかお見せできなかったのですが、右下に出典が書いてあります。国民生活基礎調査が行われておりますが、そこに出てくる項目と同様のものを生活保護の方に限定して調査をしたというのが、出典の1つ目に書いてある「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」というものです。それで被保護世帯と一般世帯を比較したものでございます。

 1番目、健康意識といたしましては、一般世帯と比較して「あまり良くない」「良くない」と答えた割合が多いということです。特に、被保護世帯は「仕事あり」「仕事なし」で分けておりますけれども、仕事をしていない方が仕事をしている方に比較すると健康状態がよくないと答えた方が多いということです。

 2番目は、食事や運動、社会活動の状況という観点で確認したものですが、例えば、食事であれば規則正しい食事をしているのかといったこと。普段からジョギングとか散歩とかスポーツ、運動をしているかということ。社会活動としては、ボランティアや社会活動に参加したかというようなことを聞いておりますけれども、そこにあるデータのように一般世帯と比較いたしますと、できていると答えた方が少ないという傾向にあります。また、社会活動等ふだんの社会とのかかわりということも疎遠ぎみなのではないかということが見てとれるというものでございます。

 データとしては以上でございます。後でまた出てきますけれども、健診等があれば医療以外にもデータがとれるわけですが、健診の受診状況が芳しくないというのもあり、ここはデータがないという状況でございます。

16ページからは、健康管理にかかわる国の施策等の状況について御説明していきたいと思います。17ページ、セーフティネット支援対策等事業と書いておりますけれども、これは国の補助金としてメニュー事業を掲げさせていただいて、自治体が手挙げでやっていくというような補助事業ですが、その中で用意しているメニューの内容でございます。健康管理にかかわるものということです。

 1つが、平成17年度から健康管理支援事業を入れております。ここはまさに専門職の方、保健師であるとか、管理栄養士、PSWの方等、専門的知識を有する方を福祉事務所で配置して、日常生活の健康管理が困難な方に一定の計画等に従って保健指導を行うということで用意しているメニューです。この実施自治体数なりは、ここに書いているとおりでございますが、全体として900ぐらいある中の1割ぐらいということになります。

 次に、平成20年度から開始された事業でございます。高齢者医療確保法の特定健診等がスタートしたのが平成20年だと思いますので、そこにリンクして立ち上げた事業です。健康診査及び保健指導活用推進事業ということで、一般的に医療保険に入っている方については、保険者が責任を持って被保険者の特定健診等を行うのですが、医療保険から外れている生活保護受給者に関しては、市町村の健康増進部局が健康増進法に基づいて健康診査及び保健指導を行うという形になっております。そういった中で、健康増進部局と生活保護担当部局が積極的に連携協力をして、健診の受診勧奨であるとか、情報共有によって保健指導を進めていくといったところを促すためにつくられたメニューでございます。実績としては、ここに書いてあるとおりです。

 さらに平成24年度からは、直接健康管理というわけではありませんが、医療扶助に関係する、ここは主に後発医薬品等の適正受診指導に重きを置いたところで、特に、ジェネリックの使用促進という意味で、生活保護受給者に対する助言指導を含めております。これも自治体によりまして、医療扶助相談・指導員を配置すると書いておりますが、ここは専門職であったり、事務であったりするのですけれども、そういった専門の方を置いてケースワーカーと連携しながら、その方の適正受診等を助言・指導していくものです。もちろん、その中には上記のような話も含まれる場合もあろうかと思いますが、そういったことを医療扶助相談・指導員を配置して行っていくものを用意しております。

 明確にメニューとして掲げられているのが、この3つの事業でございます。

18ページにつきましては、今度は福祉事務所が専門職であるとか、そういった方を配置する場合の支援ということで、福祉事務所の体制強化に関する支援についてです。

 これにつきましては、平成25年度に支援体制の強化をより一層図っていこうということで、平成25年度予算の中で地方交付税でございますけれども、福祉事務所において保健指導等受給者の健康や受診に関する相談に対応できるように専門職の配置を行う。そこに交付税措置により対応できるようにしたということです。

 下の枠に囲っておりますけれども、平成25年度予算交付税の算定基礎の一番下で「嘱託医手当等」となっていますが、ここが対前年度に比べて大幅にアップしています。この部分で嘱託医だけではなくて、専門職の方も措置できるようにしたということでございます。

 もう一つ下の枠内につきましては、本日、参考資料として配布させていただいておりますが、厚生労働科学研究費により、福祉事務所等における実際の事例等を調査しております。各自治体でどのように効果的に取組を進めているのかという事例ですので、成果物としての冊子を各自治体に配付して、そういった取り組みを先進事例に倣って展開していただきたいという趣旨で喚起しているということでございます。

 続きまして、19ページでございます。御承知のように昨年法改正がございまして、7月から施行されているわけですけれども、その中で健康・生活面に着目した支援というものがありました。一番下に点線枠で囲わせていただきましたけれども、基本的には法律上に「自ら、健康の保持及び増進に努め」というところを受給者の責務として位置づけたということでございますが、福祉事務所等も健康管理支援に着目した取り組みができるということの裏づけとして責務規定に位置づけたということです。

 その事務的な話として2つ上になりますけれども、例えば、福祉事務所が受給者の健康診断の結果を容易に入手できるようにして、それも含めて健康管理支援の取り組みを福祉事務所として取り組んでいけるような体制というか、環境を整えたということです。

 続きまして20ページ以降、実際の今の福祉事務所における健康管理支援体制がどのようになっているのかという調査を本年5月に実施しております。

21ページ以降に、その調査をまとめた概要を載せております。調査は、本年度5月末時点で健康管理支援に従事する保健指導専門職員の配置状況等の調査を行わせていただきました。調査対象は899自治体ということになっております。

 まず、職員配置の状況ということで、配置の有無、保健指導の専門職員を配置しているかどうかということです。あくまで、これは福祉事務所の中に専門職員を置いているかということで、そこで「配置あり」と回答したのが152自治体、16.9%という状況でした。

その下が職種・勤務形態ということですが、一番左が職種のグラフで、保健師、看護師で合わせて約6割ということです。

 真ん中が勤務形態ですが、その方々がどういう勤務形態で働いているかということで、常勤が3割弱ということでが、残りの非常勤の方は1週間の平均勤務日数を見ると4.4ということになっておりますので、非常勤という形態ではあるのですが、ほぼ福祉事務所の中にいらっしゃるというような状況が見てとれるということでございます。

 あとは専任か、併任かということでございますが、一番右のグラフで、生活保護部局で専任として働いている方が約9割という状況でございました。

 続きまして、22ページですが、勤務されている専門職の方々がどの時点で配置されたか。これは平成25年度に交付税措置をしたということもあり、平成24年と平成25年に線を引きまして確認をしたものです。平成25年度以降ということで37.3%いらっしゃいますけれども、それ以前からも大体6割くらいは配置されていたということです。

 先ほど「配置なし」という自治体が多かったのですが、そういったところでは、例えば配置をしたいのだけれどもできないというところが、どういった理由でできないのかということですけれども、下のグラフにありますように、健康管理の対象者が少ないというのもあるのですが、それ以外では適当な人材が見つからない、財源の不足ということも調査回答としては返ってきたということです。

 続きまして、23ページです。では、その専門職の方の業務内容は、福祉事務所の中で主にどのようなことが行われているかということでございます。こちらからの補助金等もありますので、後発医薬品の使用促進であるとか適正受診指導、ケースワーカーへの支援というようなことで割合が高いところです。

 下に4つ区分してますけれども、一番大きいのはケースワーク、専門職の方がケースワーカーとして働いていらっしゃる場合もございますし、ケースワーカーと連携をとりながら同行訪問といったことをされているということもあろうかと思います。右2つは、ジェネリックの使用促進、適正受診指導。一番左につきましては、衛生部局と連携した健康管理指導等ということで、全体から見ると少ないのですけれども、こういった形でも行っているということでございます。

 6番目でございますが、先ほど申し上げたように、生活保護受給者の方の健診につきましては、健康増進法に基づき公衆衛生部局で行っているということになろうかと思いますけれども、そもそも健康増進法に基づいて生活保護受給者に健康診査の機会があるかというようなことですが、それを聞いたところ下にありますように、実施しているところは6割以上、実施していないところが4割というデータでございました。

 さらに、福祉事務所側が公衆衛生部局から健診結果を入手しているかどうかを聞いたところ、入手しているところが16.8%ということで、福祉事務所として健康管理支援のために健康診査を入手しているかというところは、まだこれからかなという形でございます。

 次に24ページです。先日、厚生労働省として概算要求を提出し、その内容も公表しております。その中で、医療扶助適正実施の推進という大くくりの中ですけれども、健康管理支援に関連した要求事項がございます。先ほど申し上げた医療扶助適正実施推進事業、セーフティネット支援対策等補助金のメニューとして御説明したものですが、その中の事業について、先ほど医療扶助相談・指導員を配置するという話をしました。その医療扶助相談・指導員というスタッフの事業範囲をもうちょっと拡充して、さらに配置を強化していくということで、来年度の特別枠要求がございますが、その中で34億円程度の要求をしております。

 その中で、下に書いてあるものが来年度以降、医療扶助相談・指導員というスタッフを置いて強化していこうということですけれども、もちろん今までと同様に一番左側はジェネリックの使用促進であるとか、レセプトチェックの強化と書いてありますが、通常のレセプト点検にプラスして、私ども生活保護で電子レセプトの管理システムがございますので、そこから適正受診指導につなげていくという取り組みを行っておりますが、そういったものを強化していくということ。

 右から2番目が、頻回転院の解消ということで、長期入院患者であるとか、短期に頻回転院しているといった若干問題があるところもございますので、そういったところにも着目してやっていこうと。

 この研究会に関係しまして一番右でございますが、健康管理支援ということで健診受診勧奨といったところも事業範囲の中に入れて進めていきたいと考えております。これを自治体が進めていくために、こういった研究会の中でどういった取り組みができるのかを自治体にもメッセージとして伝えていかなければならないのかなということでございます。これはまだ要求の段階でございますので、最終的に年末どうなるかわかりませんが、そういった形で要求させていただいているということです。

25ページは参考です。先に出されたいわゆる骨太の方針の中でも、生活保護・生活困窮者対策ということでアンダーラインを引かせていただいておりますが、まずは医療扶助の話になっておりますが、それを適正に行うためにジェネリックの使用促進、プラス保健指導等によって健康管理を支援していこうというと。医療機関受診の適正化を図っていくといった中で、健康管理の支援に関する取り組みも進めていかなければならないということでございます。

 最後になりますけれども、こういった課題も含めまして今後、研究会で委員の皆様に議論していただくのですけれども、とりあえず事務局として最低限ということで今後の課題ということで書かせていただいたものが26ページです。

 先ほど申し上げたように、健康状況や生活状況等実態把握のところが、なかなかできていないところもありますので、そういったデータも含めて、あとはどういった形で、どういった項目でとっていけばいいかというところも考えられるのではないかということです。それを決めて年末までにやっていくというのは難しいのですけれども、今後、自治体が取り組みを進める上で最初の段階で、どういった視点で把握していくかというところも、良い知恵をお出しいただければということです。

 2番目、3番目は、健診受診や保健指導に関することです。先ほど申し上げましたように、高齢者医療確保法ができてから各医療保険では、被保険者の健診、特定健診・保健指導をやられているのですけれども、それと同じ形が生活保護も健康増進法の中で担保されてはいるのですが、なかなかデータが芳しくないというか、行われていないということがあります。それをどうやって行っていくかということと、扉は開いているけれども、そこにどうやって来てもらうかというお話もあろうかと思いますので、その辺も含めまして、どうやって参加を促すのか。そもそも生活保護受給者の方に自分の健康を管理して、健康を大事にするということをどうやって知ってもらって、自分が健康になりたいというような意識を醸成していくのかというところも含めまして議論させていただければということです。その上で、健診受診率の向上や保健指導が終了したといったデータとしての効果も上げられればということです。

 4つ目につきましては、先ほど体制等をお話しさせていただきましたけれども、いかに専門職の方に効果的に取り組みの中に入っていただくかということでございます。福祉事務所に専門職を置けない場合でも、公衆衛生部局との連携ということで何とかカバーできる部分もあるのではないかと考えておりますので、そういったところをどのようにやっていくかということでございます。

 次の○につきましては、ケースワーカーが日ごろのケースワークの中で日常生活支援の効果的な実施ということで、どのようなことができるかということです。ここに挙げていますのは、薬の管理の支援であるとか食事の摂取、身体活動指導ということでございまして、これに限らずですが、効果的な実施方法等についても検討していきたいということです。

 最後の○につきましては、行政だけでというのも限界がありますし、いろいろと地域社会資源がございますので、こういった健康等に関すること、例えば、先ほど言ったように、外出であるとか運動、食といったものでも地域の支援を活用できるということもあろうかと思いますので、こういったものが使えるのではないか、こういったものがあるというところもいろいろと議論させていただければと思っております。

 以上が、事務局からの御説明とさせていただきます。

 それでは、早速、意見交換とさせていただきたいと思います。今の説明資料の内容の質疑等もお受けいたしますが、それも含めまして広く自由に御意見や御質問をいただけたらと思います。

 

○津下委員 あいち健康の森健康科学総合センターの津下と申します。もともとは糖尿病の臨床医をやっておりまして、生活保護との関係でいうと、糖尿病の合併症、網膜症になって失明したりとか、透析になったりされた方が仕事を続けられず退職されて生活保護になるケースがあり、書類をたくさん書くというのも一つの医師のお仕事でございました。糖尿病の視点で見ると、糖尿病の方を早く予防・治療して、生活保護にならないようにすることが大切と思いました。

 もう一点では、救急外来には日ごろの健康管理がうまくできていない、健診を受けていない生活保護の方も多いですし、また一方で、精神科疾患の方は内科的な管理を受けていないので心筋梗塞等が多いということも実感してまいりました。

 特定健診・保健指導という生活習慣病の対策について、平成20年度から始まった制度の設計時点からかかわり、今、指導者の研修をしたり、評価をするなどという仕事をしておりまして、現時点で生活保護の方々に直接かかわる場面は少ないのですけれども。健康日本21の市町村計画立案支援をしており市全体での健康格差を縮めるという観点で、保健師が生活保護受給者のところへ一緒に行くことの意義があると答えている保健師が多いということを実感しております。

 ただいまいろいろなデータを見せていただいて非常に勉強になりました。生活保護という特殊性もあるけれども、一般的な健康づくりの政策がうまく広がっていない、アクセスが悪い、その2点が気になるところです。生活保護対象者全体というよりも、セグメントに分けてどういう課題特殊な状況があるのかを整理することが必要と思います。また一般でやれていることで、なぜ生活保護受給者の方々はアクセスが悪いのか、そのアクセスの改善という2点を検討する必要があるかなと思います。

 特定健診・保健指導、特に特定保健指導について、受けていただくことを考えたときに、現場の保健師にそこまでスキルがあるかどうか、どんなスキルが必要とされるかを考えないといけない。特定保健指導の脱落理由として精神疾患がある方が上がってきます。精神疾患とメタボは非常に合併しやすいもので、うつ病とか統合失調症の方は薬の影響もあって肥満が多いとか循環器疾患が多いということはデータで出ているのですけれども、そのあたりの理解。保健指導をすると考えた場合、どういう目的を持ってどういった支援をするのかを検討する必要があります。精神科医等と内科系医師、保健師との連携をしながらやっていくなどの工夫が必要かもしれません。

 一方で、メンタル休職者に対して運動を中心としたプログラムは体力をつけたり、自己効力感を高めることができ、自信を深めて、復職につながるケースも多いようです。このあたりは取り込めるのかなと思って、この会議に出席いたしました。

 先ほどお示しいただいたデータの中で、例えば11ページですけれども、年齢層が違うと。傷病名も比較していますけれども、同年齢で比較をすることが可能でしょうか。

60歳未満での傷病はどうなのか、60歳以上でどうなのか。国保なり協会健保なりのデータと年齢層をそろえて比較するということが必要かなと思います。

 それから、4の傷病分類では、精神・行動の障害と循環器疾患、または肥満、糖尿病とオーバーラップがあるのですが、これは主病名しか拾っていないとすると、合併病名という考え方も見ていく必要があるのかなと思いました。

 病気と生活保護の関係を考えると、がん、新生物の場合は、治療するために生活保護に入られる方が多いし、糖尿病の場合は最初は働いていたけれども、合併症のために職を失って生活保護に入るとか、プロセスが違うのかなと思います。可能であればそのプロセスがデータで追えるといいのかなと思います。

 ということで、現状で生活保護受給者の年齢構成はこうですというのもありますけれども、受給開始年齢別に疾病の状況などが見られるデータがもしあれば、参考になるのかなと思いました。

 治療はしているけれども健診を受けていないという方が、救急外来の方に多いかと思います。救急外来はその日に処置をしたり、その日に投薬して終わりになってしまうので、健康管理面というのは余り実施されないわけですから、そういう意味では、ふだんの健康管理に対するアプローチというのは重要だという趣旨は十分納得できるものですし、そういう体制を進めていく必要があると考えます。

 以上です。

 

○増田委員 健康・体力づくり事業財団の増田でございます。今うちの財団は、健康運動指導士という運動指導者の養成をメーンにやっているわけですが、このデータを見せていただいて統合失調症の方がかなり多いということに初めて気がついたのですが、実際に運動と精神ということをやっている学会もありまして、早稲田大学の内田先生が主宰されている日本スポーツ精神医学会という学会がありまして、その中には精神科の先生、当財団が養成している健康運動指導士も入っていろいろ議論をしています。メンタルに強い運動指導者というのは全国に結構います。先般の東日本大震災のときも、運動指導というよりは、その後のメンタルのケアでかなりの健康運動指導士が今でも継続して東北に入っているという状況です。

 まさしく今おっしゃいました社会環境の整備が必要かなと。それは、まさに第2次健康日本21の中でも健康格差と社会環境の整備をうたっていまして、個人でどうしようもない健康問題をどう社会がサポートしていくのかという一つの課題を掲げて10年計画で第2次の健康日本21を推進している中で、1つお聞きしたいのは、たばこです。たばこに対してどれくらい厳しくチェックをされているのか。最近よく言われているのは、日本人の感染性疾患以外の死亡の第1のリスクファクターは、たばこなんですね。2番目が高血圧、3番目が運動不足、要するに、身体活動を余りされていない方、この3つのファクターが日本人の死因のトップ3と言われていまして、ここに食事と運動と書かれていますが、たばこに対してもある程度どういう実態があるのか。生活保護を受けている方というのは、先ほど言いました健康格差の中でも、年収200万円の世帯と年収600万円以上の世帯では明らかに健康格差があるんですね。運動習慣のある世帯というのは年収600万円以上の世帯のほうが高いし、喫煙率を見ても年収200万円の世帯と年収600万円以上の世帯では、男性で10ポイント違うんです。男性が年収200万円の世帯で大体37%吸われているのですが、年収600万円以上では27%です。女性の場合も年収200万円では大体12%くらいの方がたばこを吸っておられるのだけれども、年収600万円以上のところはその半分の6~7%なんです。だから、社会環境を整備していくことで生活保護を受けている方々に支援の手を差し伸べるというのは、それこそ厚労省の施策と合致しているのかなと思います。

 とりあえず以上です。

 

○中板委員 日本看護協会の中板と申します。前回の検討のときも参加させていただいておりまして、そのときに福祉事務所に保健師を配置するということも目指しつつ、地方交付税の算定基礎の中にぜひということでお願いしていたところですけれども、かなわなかったということで、なかなか配置が進まないというのはそういうことになってしまうかなと思うのですけれども、調査の21ページ以降の話ですが、調査対象自治体数が899自治体という、この899というのはどういう数なのか、母数は何だったのかということをお聞きしたいということ。

 それから、保健師等の専門職員を配置している自治体が16.9%ということで、こちらは平成25年以降アピールされていますので、そのために配置されたところが多いのかということをお聞きしたいということ。

 それから、()健康診査について実施していない369自治体というのは、どういうことを実施していないとおっしゃっているのか詳細をお聞きしたいということ。

 それから、戻って大変申しわけありませんが、()業務内容ですが、衛生部局と連携した健康管理指導などが非常に少ないということで、ここを上げていかなければならないということもあるのでしょうけれども、保健師を配置して、なお連携が滞るということを示唆しているのかということをお聞きしたいなと思っております。

 というのは、今の高齢者については地域包括ケアシステムということで非常に横断的に連携していかなければならない、他職種連携ということが非常に強く言われているわけですけれども、保健師を地域包括支援センターに配置した自治体においては、例えば、直営は少ないのですけれども、直営でありながらも高齢者は地域包括支援センター、高齢者以外の65歳未満は保健センターという、年齢で区切って連携するはずが分断していくという結果を招いておりますし、それから、児童福祉の領域でも母子保健と児童虐待についても、児童福祉の領域に保健所を配置すると、保健師の保健領域の母子保健が虐待については福祉という分断傾向が大変よくないので、改善していかなければならない部分なのですけれども、そういったことが起こるので、そういう意味では福祉事務所に配置するという際にも、分断にならないように仕掛けていかないといけないということがありますので、この調査の内容、特に()業務内容が連携している割合が少ないとおっしゃられているのですけれども、これがもう少し詳細がわかれば教えていただきたいと思いました。

 

○事務局 まず、最初の調査対象自治体ですが、ここは福祉事務所を設置している自治体の数ということになります。

 保健師等の専門職員が平成25年度以降に配置されたのかどうかというところですが、調査の中で配置年度が平成24年度以前か、平成25年度以降かというのをとっております。資料の22ページの(3)になりますが、平成25年度以降の配置については88人だったということです。「配置あり」の自治体の中に複数人いる場合もございますので、そこはリンクした集計というのはないのですが、こうした調査結果が出ています。

()の健康診査の実施状況の聞き方ですけれども、「実施している」「実施していない」、あくまでも福祉事務所を通して確認したわけですが、自治体の公衆衛生部局で健康増進法に基づいた健康診査をやっているかどうかという質問に対する回答です。よって、これらの自治体では、健康増進法に基づく生活保護受給者が健康診査を受診できる機会というものが設定されていないと考えております。

(5)の業務内容ですが、ここは実際に専門職が配置されている自治体に、その専門職がどういった業務にかかわっているかという選択肢を示して回答いただいているものです。その結果として、衛生部局と連携した健康管理指導等が少なかったものですが、そもそも福祉事務所の中の健康管理のあり方等として福祉事務所と衛生部局が連携しているかどうかのデータはありません。あくまでも専門職を配置して、その専門職の方の業務として衛生部局と連携をしているかどうかという聞き方をしていますので、専門職を置いていなくても組織として連携している場合もあり、そういった意味ではちょっと舌足らずな話だったかもしれませんが、こういう結果になっているということです。

 

○浅沼委員 杏林大学の浅沼です。この事例集のほうをヒアリングにあちこち回らせていただいたのですけれども、きょう提示していただいた資料の中で、11ページの傷病分類は非常に効果的だなと思いました。生活保護に関しましては、一般的に専門職は精神疾患はもちろん多いのですけれども、傷病と聞くと精神疾患としか思い浮かばないとなりますと、専門職が限られてしまうことがあるんですね。しかし、このように見ますと重複の問題はございましたけれども、圧倒的にそれ以外の疾患から絡んできているということが明らかになっておりますので、精神以外にきちんとやらなければいけないという意味で、この11ページのグラフは非常に明確に出ていると思いました。これに関して、精神以外の内科的な循環器系、それ以外のことも含めまして適切に健康管理指導、保健指導をしていかなければいけない。そのような専門職を配置しなければどうなのかというのが明白ではないかと思いました。

 それから、出していただきましたデータの中で、中板委員に言っていただいたところにつながっていくのですけれども、21ページ、福祉事務所の健康管理支援体制に関する調査結果で、専門職、保健師等の勤務体制は非常勤が圧倒的に多かったんです。これは調査に回ったときもそうでした。そして、人が集まらないというデータが22ページにあります。適当な人材が来なかった。立川市もそうでした。それは非常勤というところでどれだけの専門職が集まってくるのかという問題もありますし、生活保護の保健指導というのは精神も抱えながら、先ほど先生が言ってくださったように、重複・合併した人の保健指導をしていくというテクニックや技術が必要になります。そういう人を非常勤でいきなり雇って継続してやれるかという問題がございます。そういう意味では、人が集まらないという問題、それから非常勤、そして、その後さっき中板委員がおっしゃったように、公衆衛生部局との連携という意味で、非常勤の者がどれだけ内部の保健福祉分野と連携をなめらかにやっていけるかということを考えますと、やはり市の職員として責任を持って、ほかの部局と連携しながら保健福祉の施策を計画的に連携させていくという意味で、非常勤という体制がどれだけできるかということを考えると、このような結果が反映されてくるということも考えられると思いました。

 それから、23ページの健診に関して実施していない、さらに、実施しているけれども、それに関して検診の結果を入手していないと、これは大変な問題ではないかと思います。やりっ放しで、その後、自立支援に向けて指導していくときに、健診はしているけれども、その結果を入手していないという結果は大変な問題だと思います。やはり健診をしたら、その後きちんとフォローしていくと。そして、自立支援に向けて健康面からも支援をしていくということをしなければ、自立に向かわないということです。先ほどあったように、中高年の方たちが今ふえてきているという中で自立支援を図るときに、健康支援でやりっ放しという問題は大変大きいと思います。ここをどうしていくかということで、専任の保健師ということになっていると思いますし、それから、同じ市町村の責任として川崎市さんもやっていらっしゃると思いますけれども、同じ市民として、集まってきてしまったというような地域もあって、大変悩ましい地域もあると思いますけれども、自分たちの市民として、あるいは自分たち地域の住民として、どういうふうに健康支援をしていくかということも責任を持って自治体としてやっていく必要があると思いました。そういう意味で、調査権を拡大されて健診データを入手できるとなっているわけですから、それを入手して保健指導しながら、総合的に自立支援のサービスをしていくというところが必要なのではないかという意味で、大変貴重なデータを出していただいたと思いました。

 以上です。

 

○事務局 健康診査の調査項目で補足ですが、あくまで福祉事務所としてどうかということですので、保健センター等が健康診査をやって、そこにちゃんとフォローして保健指導を入れているということも考えられますので、入手していないというのが全て放置されているわけではないということだけ補足させていただきたいと思います。

 

○芥川委員 今、浅沼委員からも健診をやりっ放しというのは自立支援には結びつかないのではないかということがございました。これは私の勤めている上尾市のものですけれども、生活保護受給者というところで健診を受診した人がすぐにわかるというのは、いわゆる一般健康診査については、こちらが福祉事務所として受給者の方に勧奨して受けていただいていて、一般の市民の方は受けないので、一般健康診査を受けた方は生活保護受給者ということがすぐわかるのですけれども、例えば、そのほかのがん検診ですとか歯科検診とか一般健診以外の健診については、一般市民の方の中に生活保護受給者の方もいて、ただ、生活保護受給者の方は無料で受けられますよというようなことで、そちらの健診に関しても一応勧奨はしているのですけれども、その健診結果を福祉事務所として集約する方法というのが、今、衛生部局とも詰めてはいるのですが、なかなか難しい。というのは、衛生部門はその人が生活保護を受けているかどうかというのはすぐわからないということで、では、生活保護の人をどうやって抽出して福祉事務所に報告するのかということで、今すごく課題を感じているところではあります。

 また、そういうシステムなどを構築するにしても、予算も大きく絡んできてしまって、いわゆるセーフティの補助金に関しても、健診データを抽出するというものに関しては福祉部局ではなくて衛生部局の事業に対しての予算づけとなるので、例えば、セーフティの補助金が衛生部局として確保できるのかというところも一自治体としてはとても大きな課題です。お金がないと、その辺がなかなかできないので、そういうところを課題として感じています。

 あとは、先ほど浅沼委員もおっしゃられていましたけれども、私は実は去年、育児休暇で1年間お休みをいただいていたのですが、幾ら専門職を配置していても常勤の職員がいないと、例えば衛生部局だったり、高齢者の部局と新たな事業を展開するにしても、交渉の仕方や連携の仕方など、力はあるかもしれないけれども、非常勤の立場としてはそういうところがなかなか発揮し切れなかったりということもあるかと思いますので、ぜひ常勤の保健師なり専門職がきちんと配置されて、事業の企画や他部門との連携がすごく大切になってきますので、そういうところで他部署との連携・協力ができる常勤の職員を配置するということが、すごく重要なのではないかと思います。

 

○相澤委員 川崎市では、平成24年に先ほど御説明にもありました、リーマン・ショック以降増え続けている生活保護受給世帯をどのように効果的に支援していくかということがありまして、平成24年からモデル事業という形で、麻生区にある麻生福祉事務所で「麻生モデル」という形で事業を開始しました。その中では高齢者に特化した係、就労支援が必要な係、それ以外の係というふうに特化して課題が何かを見ていこうということでモデル事業を開始しました。

 その中で、高齢支援の中でキーになるのが健康管理支援だろうというところがありまして、平成24年4月に非常勤職員で退職されたすぐの方で、児童部局にもいて高齢にもいた、それから、精神保健にもかかわっていた保健師さんではなくて看護師さんだったのですが、ベテランの看護師さんを非常勤職員として採用して、健康管理支援事業を一番最初に開始しました。

 その同じ年に麻生モデルをやる中で、先ほど全国的なお話でありましたが、健康の意識調査もしたところ、やはり6070%近い方が健康に何らかの不安を抱えていると、「私は健康です」と答えられた方が少なかったということもあって、健康というのが大きなキーだなという話が出てきました。その中で、1年間1人の看護師さんの支援の方法を見ていく中で、生活保護を受給されている方というのは健康に不安な方が5~6割いらっしゃって、やはりここが大きなキーなんだなというところがあって、翌年平成25年4月から、川崎は7区ありまして、9つの福祉区があって、9つの福祉事務所があるのですが、全福祉事務所に正規の保健師を1名ずつ配置しました。

 その中で見えてきたことというのは、今課題にたくさん出ている健康診断です。川崎市でも生活保護を受給されている方の受診率は今現在でも10%です。健康診断を受けている方の比率が10%にとどまっているというところで、働いている方は当然会社の健康診断をお受けになっているので、その方を除外しても、やはり低いかなというところがあります。さっき何らかの医療扶助を受けている方が80%いますというお話がありましたが、川崎も大体7879%の方が医療扶助を受けているので、主傷病についてはそこの病院にかかっていることで何とか対応されているのでしょうが、それ以外の隠れた疾患は健康診査をしないと見つからないだろうなというところがあって、昨年度は健康診査を受けましょうというパンフレットやポスターとチラシをつくりまして配りました。おおむねの傷病を抱えている世帯に配ったのと、福祉事務所や関係機関にポスターを張っていただいて受診率の向上を図ったのですが、それでもやはりそんなには増えていないというところで、今年度に関しましては、もう少しさらにそれを進めて、またビラをつくってお渡しするのもそうですが、健康に問題のありそうな人については保健師なりケースワーカーから直接受診しましょうという受診勧奨をする予定としております。

 あとは、先ほどから出ています循環器系疾患、中でも重症化しやすい糖尿病について、糖尿病が主傷病となっている方の10%を抽出して昨年度アンケート調査を実施しました。その中で正しく病識をお持ちの方が非常に少ないということがわかりました。それは、ケースワーカーが直接御本人と聞き取りをするアンケート調査です。御高齢の方ですとか精神疾患を抱える方で、言葉の理解がなかなか難しい方もたくさんいるので、1対1の聞き取りという形でアンケート調査を実施して、その中で病識が低いというところも出てきましたので、その方のうちさらに20人ぐらい抽出した上で、糖尿病の正しい知識の研修と、その後栄養士さんによる糖尿病の食事の指導、これをあわせて研修を昨年度行いました。これは今年度2カ所でまた実施する予定としております。

 という形で、川崎は正規職員を翌年度から9名各事務所に配置することができたので、割とその辺の動きがスムーズにいっているということで、ここに私が今来ているのかもしれないのですけれども、一つは、保健師さん総体の動きの中でも意味があるというのは、衛生分野の中でも地域に入っていて保健師がなかなか活動しにくくなっている。日々の健診事業や本来業務に追われていて、現場に行って家庭訪問をして地域の問題性を把握する力が弱くなっているというところで、生活保護を受給されている方というキーでくくって、その中に入っていって課題を見つけてくるという意味では、意味があるというところを保健師さんたちからも言われておりますし、私ども生活保護サイドから見ても、保健師さんという医療を知っている方のアドバイスですと、生活保護受給者の方の反応が全然違うんですね。血圧計を持って訪問したりとか、医療の側面から専門家にアドバイスをしていただけるということで、今まで全然病院につながらなかった人が病院につながりやすくなったりですとか、すごく有効な面があると考えております。

 今度は、先ほど言ったように、今、糖尿病という1つのくくりでは見ているのですが、それ以外の疾病についてのかかわりをどうしていくのかというところも今年度は課題としてとらえて、どういうアプローチの仕方があるのかというところを模索しているところです。

 川崎は保健師総体の職制の会議というか体制も充実しているので、必ず生活保護受給サイドでやっているものは保健師の総体のところに持ち帰ってアドバイスもいただきますし、連携もうまくいっています。先ほど、衛生部局との連携が低いというアンケート結果がありましたが、生活保護を受けている方なのですが一般の市民にかわりはないわけです。ですから、衛生部局も当然かかわっていくべき人なので、そういう意識を持っていただく必要があるというところで、衛生部局の方にも必ずこういう事象があったとか、こういう問題性があるという課題については返していただいて、一緒に考えていくような体制はできているかなと考えているところです。

 以上です。

 

○村山委員 新潟県立大学の村山でございます。私は主に栄養・食生活を専門にしております。今現在、厚生労働省の研究班で、日本人の中で社会経済的な要因によって食生活にどのような影響があるのかという研究班の研究代表者をさせていただいております。

 先ほど国民健康・栄養調査で経済的な差で健康行動に差があるというお話がありましたが、食事においても同様の結果が得られております。さらに、私たちの研究班で分析を進めている中で、成人におきましては野菜の摂取量が少なく、主食・穀類に偏る食べ方が多いということが問題点として挙がってきています。同時に、低所得世帯の子どもの食事についての調査もしておりまして、成人と同じような傾向にあるということが今見えてきているところです。

 私たち食生活・食事を扱う立場としましても社会経済的要因が重要と考えております。これまでは生活保護あるいは社会・援護局とは余り関わりが無かったのですが、きょう疾患データを見せていただきますと、生活保護受給者で糖尿病や循環器疾患が課題になっており、まさに食事と密接にかかわっている課題ですので、何らかの貢献ができるとよいと思っております。わからないことも多いので、いろいろ教えていただきながら勉強していきたいと思っています。また、この研究会にも大変期待をしております。

 きょうお話を伺わせていただきまして、生活保護受給者の方の健康管理のとしては健診が非常に重要だろうと私も考えました。しかし、約4割の自治体が健診を実施していないということですが、この理由と、先ほど受診率が10%というお話がありましたが、ほかの実施している自治体でどのくらいなのかがわかれば教えていただきたいと思います。

 それから、今後、健診データを有効に活用するというのは非常に重要だと先ほど御指摘がありました。私もそう思います。一方で、社会・援護局で実施されている生活保護世帯への既存の調査にどのようなものがあるのかということを次回で結構ですので知りたいということと、その1つとして家計の調査をされて食費についても細かく把握されているとうかがっています。それがどのように分析されているのか、分析可能なのかというあたりも、教えていただければと思います。いろいろな既存のデータを活用し、リンクしていけると、もう少し生活実態が既存のデータだけでもわかるのではないかと思います。

 とはいえ家計の調査を毎回毎回福祉事務所で細かく分析するというのは無理だと思いますので、その中からスクリーニングできるような、例えば、食事、健康行動に問題があるような人をスクリーニングできるようなシートといいますか、調査票、項目ができれば、もう少し簡便に普及できる、各福祉事務所でもできるような体制になるのかなと思いました。といいますのは、先ほど栄養指導というお話がありましたけれども、野菜を食べましょうと言っても高くて買えないという人がほとんどなんですね。主食に偏るのは好きでそうなっているわけではなくて、野菜は高いし、肉・魚も高いから、一番安い主食のみの食事になりがちです。米だけだとおかずがないと食べにくいので、麺類、パンのみということが起こります。家計の中でどのくらいの食費を使っているのか、それが不適切な人もいるかもしれないし、一生懸命やっているのだけれども確保できない人もいるかもしれないし、そのあたりを見極めていくことも必要だと思いましたので、ぜひ既存の把握されている調査の再分析も行っていけるとよいと思いました。

 最後に1点、これまでのモデル事業の成果を確認して検証していくということも重要だと思います。17ページに大きく3つの取り組みがされてきたとありましたが、これがどういう成果があったのかも、もしできれば次回以降に聞かせていただけると、今後の参考になると思いました。

 以上です。

 

○事務局 まず健診の話ですが、今回の調査では実施していない理由まではとっておりませんので、そこは把握していないということです。

 また、自治体ごとのデータですけれども、集計したものがございません。例えば、健康増進法に基づいて健診を受けている全国の人数というのは、公式な地域保健等の報告や調査で出ていますので、それによれば全国で年間9万2,000人ぐらい健診を受けているというデータがあります。単純に被保護者で生活保護の中の40歳以上の人数と照らし合わせると、大体6%くらいになりますがが、そこの相関関係はちょっとはっきりしていませんので、あくまでも既存のデータから推計したものとなります。

 それから、生活保護の調査関係については、どういったものを調査しているのか、こういったものが使えるといったところも含めて、次回以降こちらでまとめまして提示等を考えたいと思います。

 あと、セーフティネット支援対策等事業ですが、効果的な活動・活用事例は本日の参考資料として配付している中の事例については、こうした補助事業を活用された事例もございます。ただ、ほかの自治体に広げていくためには、どのくらいの効果が出たのかということが、自治体で事業を始めていくときには一番重要かと思いますので、そういったところも今後、この研究会の中で実施自治体の状況を分析というかまとめてみることも可能かと考えています。

 

○石原委員 地域医療機能推進機構の石原です。きょう、おまとめいただいた資料から3点思ったことがございます。幾つかのデータをお示しいただいたのですけれども、すごく見える化されていてよかったなと。

 そもそもなんですけれども、やはり生活保護受給者の方々における健康や医療の問題というのは、非常に議論すべき重要な課題であると思いました。生保の受給者にとって医療は深刻な問題だと思ったのは、10ページの約8割が医療扶助を受けておられるということや、もともと生活保護受給者になった原因の背景が、たしか病気というのが多かったと思うんですね。

 見える化に関連するのですけれども、まだまだいろいろ分析して問題点を洗ったほうがいいなと思うことが幾つかありました。特に11ページの傷病分類の年齢別で、先ほど津下委員から御発言がありましたけれども、私も同様に思います。

 ただ、治らない病気が多いというような御発言があったと思うのですが、これは全国民も同じことで、なかなか治らない病気というのは共通かなと。ただ、生活保護受給者の方々のデータを拝見させていただくと、重症化して入院に至る方が多いということで、糖尿病や循環器の重症化が想定されるので、こういうところは国保の保険者が取り組んでいるデータ分析や、そういう手法が使えるのではないかと思いました。集団としては別なのですけれども、分析手法というのは国保の方々がされている手法を参考にできるのではないかと思いました。

 次は質問ですけれども、福祉事務所でケースワーカーの方々が受給者の方々の相談に乗ったり、いろいろ包括的な生活の支援や指導をされていると思いますけれども、ケースワーカーの目で見て、受給者に対応していて、健康や医療に関してお困りのことというのは何か調査があれば教えていただきたいなと思いました。それによって保健師に期待されているのは、まずデータ分析だと思いますけれども、どういう活動が必要なのかということが引き出されてくるのかなと。

 それから、きょうの議論のフレームというのは、生活保護を受給されている方の健康管理についてですけれども、健康というのは連続しているもので、生活保護を受給したから問題になっているのかということではないと思うので、例えば、生保になる前の国保の段階とか、それから、生活困窮者の支援を一方で取り組まれていると思うので、そういう中で生保になる前のところでも健康管理の議論をすべきなのではないかと思いました。これは補足の発言です。

 

○事務局 今お話いただいたデータ等で、例えばケースワーカーから見た問題点みたいなものは、すぐ出るようなものはないのですが、そういった視点から今現場でケースワーカーがどう思っていて、健康面や専門職の知識が要るという結果があればそこに力を入れていくみたいな、多分そういうつなぎはできるのかなと思っております。

 それ以外で今提案いただいたものについては、今後どういったものを示していけるのか一度、事務局でも確認させていただいて、また次回に向けて用意していきたいと思っております。

 

○滝脇委員 ふるさとの会というNPO法人で活動しております。東京都内で、ホームレス支援の活動から出発しまして25年ほどになりますが、今支援している人は路上生活を経験した人にとどまらず、低所得の高齢の方や、障害を抱え家族の援助が受けられないなど、居住支援と生活支援が必要な人に対してそれを行っております。本拠地は台東区ですが、墨田区、荒川区、新宿区、豊島区にも事業所を展開しております。5月現在で1,134名の方の支援をしているのですが、高齢化が進み病気を抱えている方が増えてきて、生活保護を受けている方がおよそ9割になっております。居住形態としては、アパートなどでひとり暮らしの方が7割ぐらいですけれども、ひとり暮らしが維持できない人は、会が借り上げている共同住宅に入っていただき、24時間職員が生活支援を行っております。そちらに3割程度の利用者がおられるという概況です。

 きょうの資料を拝見しまして、保護の動向、例えば、世帯の類型で高齢者が半数を占めているとか、さまざまな疾病を持っている割合というのも大体私たちが支援している内容と重なります。がんの方も10%ほどいらっしゃいますし、認知症の方あるいは精神障害を抱えている方、こういう人たちが非常に多いということ。それから、4人に1人くらいが要介護であるというあたりも、少し要介護の割合が高いかもしれませんけれども、背景には脳梗塞や心筋梗塞を抱えている人が多いという点で疾病分類には非常に納得できるものがありました。

 本日の福祉事務所や自治体の体制強化という話は非常に重要で、私たちも地域で活動するうえで、そういった強化が進んでいくのは非常にありがたいことだと期待しています。その一方で、地域における社会資源づくりという視点をこの研究会の中でもぜひ盛り込んでいただきたいと思います。資料で言うと、「今後の課題」というところにある日常生活支援の効果的な実施や、社会福祉法人やNPO法人など社会資源の活用可能性にかかるテーマだと思います。先ほどケースワーカーの困り事というお話がありましたけれども、活用できる社会資源が十分にないという地域も少なからずあるのではないかと思いました。

 それと関連ですけれども、入院の人の多さ、そして長期療養している人の多さが言及されていました。その中で、帰る家がある人がどれほどいるのかということが、もしおわかりであれば教えていただきたいと思います。私たちが共同住宅を借り上げて支援しているところには、さまざまな依頼がありますけれども、特に多いのが入院していて、ここで言う短期転院を繰り返してきた方、5年、10年という方も珍しくありません。そういう方の退院先として、一旦は共同居住で手厚く支援して、そこでアパートに移行するということが必要な人も少なからずおります。そういう短期頻回転院の受け皿づくりという点で言いますと、居住や生活支援などの社会資源づくりは、大変重要になると思います。私たちもいろいろ工夫しながら入院者の受け入れや日常生活支援の体制づくりをやっているのですけれども、自治体の方にお金の面も含めて少し応援していただけないか、あるいはプログラムを一緒につくっていただけないかと話をしたときに、健康支援というのは効果を検証しづらいということをしばしば言われます。この研究会を通して効果の検証の指標みたいなことも明らかになっていくと、自治体と協働できるところが膨らんでいくのではないかと期待もしております。

 最後に、自治体の保健師さんからはさまざまなご協力を受けながらやっております。生活支援はそれだけで完結するものではなく、その先には医療や保健、介護あるいは就労サービス等々との連携が大事になります。ふるさとの会にも保健師1名がおります。この間、ふるさとの会を利用している人で、薬情の把握をしている人の服薬状況を全てリストにしました。きっかけはいろいろなところから処方薬が出ていて、かえって健康に悪いのではないかと心配になったものですから、この機会に全ての利用者の薬情を整理した次第です。このように生活支援として服薬を支援できるところと、民間団体にも保健師がいること、そして、自治体と連携していくという地域の全体的なネットワーク図を描けるといいのかなと思いました。

 

○津下委員  今いろいろな話を伺って、直近の薬の整理という話もあるのですけれども、病院では入院してきた患者さんの飲んでいる薬を整理するというか、不必要なものを減らす作業から始めなければならないことが少なくありません。中にはそれだけで病状がよくなってしまう人もいるので、何カ所かの過剰投与でかなり健康を害している例も逆にあるのかなと思いました。それは補足です。

 データの見える化とか、今回もデータが出てきて、健康管理の面でかなりやれる部分があるのではないかということになるわけですけれども、健診データを特定健診データのように全部集約して分析できるような仕組みにすると、例えば、同じ年代でどのくらい異常率が高いのかとか、どういう問題があるのか、それから、生活習慣の問診も標準化されて22項目ありますので、例えば、喫煙率から過量飲酒の問題がある人も結構いるのではないかと思いますので、個人に対して健診して健康管理を使うのと、また、効果の見える化や自治体としての戦略を考える上でも、そういうデータ分析ができるような仕組みが整えられたらいいのかなと思います。

 それから、増田委員から喫煙の話がありましたけれども、アルコールの話もかなり気になっているところで、先ほどの資料では「肝炎等」になっている人の中にアルコール性の肝障害が含まれている可能性があり、循環器疾患、がんの非常に大きな危険因子であるということがわかってきています。これまでアルコール問題は、依存症になってから精神科の先生が介入されていましたけれども、今は特定健診で肝機能が少しの異常があるとき、または飲酒量が多いという段階が把握できます。早期に介入して、依存させないということが非常に重要だと思うのですが、焼酎はカロリーがないからいいでしょうという間違った知識のまま飲み続けている人も結構多いです。アルコールについても依存症になった後の対策もあるのですが、ならない対策というのもできることだと思います。データから導き出された健康課題について何が改善できる介入方法があるのか、肥満や喫煙、アルコール、運動とかこのあたりは具体的にできる話ですし、食生活についても安くてバランスのよい食事をどうとるのかというあたりも、価格の面も考慮したガイドとか、安い食材をどううまく活用するかという視点でのバランスのとれた食事についての情報提供が考えられます。何ができて、どういう情報を提供したらいいのかというのをしっかりと検討していき、現場で使いやすいようなマニュアルやコンテンツができたらいいのかなと思いました。

 まとめますと2点で、データのマクロ的な活用の話、そして、アルコールや喫煙は問診項目で依存症にならない前に把握して対応する。本人に対しても健診データが改善するというのは大きな自信になるかもしれない。自分の行動で自分の健康状態が変えられたというのが、次のステップに進める一つの大きな自信になるというケースも経験しておりますので、そういうようなことを検討していくといいのかなと思いました。

 

○中板委員 私も、先ほど質問だけさせていただきましたので、ちょっとお話しさせていただきたいと思います。

 今、健康日本21の検討をさせていただいて、その中で先ほど増田委員もおっしゃいましたけれども、健康格差の縮小ということが明記されたというのはとても重要なことだと思っておりまして、その健康格差を縮小するために、生活保護受給あるいは経済困窮者の方たちへの関与というのはとても重要なことだと思っております。ですので、今回の研究会も非常に価値があると思っておりまして、3点ほどお話をさせていただき、ぜひ御検討いただきたいと思っております。

 まず、今、津下委員もおっしゃいましたけれども、情報管理の仕組みは行政が突破しなければならないところかなと思っておりまして、健康日本21あるいは健診データを介護のところと連携させていくということは検討されていたかと思いますけれども、生活保護、福祉事務所との連結ということも、どのような形で情報管理システムの中に盛り込めていけるのかという、先ほど予算上の枠組みのお話とか衛生部門とのやりとりのお話もありましたが、そういったことを勧奨していくためにも、仕組みをどのように整えていくかというのは一つの大きな検討課題かなと思っております。

 それと、健康支援は、生活保護受給者というのは先ほど何人かの方もおっしゃっていましたが、そもそも家族内のセーフティ力が弱いということですとか、もともと生活能力が低い、生活保護になったから低くなったわけではなくて、結果的に生活保護になっていると。コミュニティーとの接点も弱い、知的な水準も一般世帯と比べると高いわけではない、そういったいろいろな要素が絡み合っている中で、一概に画一的な健康支援では成果は出ないのだろうと思っておりますので、年齢階級別あるいは疾病分類別等々含めて、もう少しマトリックス的にどのような対象にどのような健康支援が効果が出るのかといった、少し具体的な方向性を導くということが必要なのかなと思っております。

 特に統合失調症の患者さんが生活保護受給者の中に多いということは、印象としてもそうなのですけれども、統合失調症の治療薬というのは代謝の変化を非常にもたらすということがありまして、そうすると、糖や脂質の摂取というものが、いわゆる精神論や頑張らなければという頑張り論で解決できないということもございます。そういったことを踏まえると、糖尿病の患者さんと脂質異常の患者さんには使えない統合失調症の薬も結構あって、そこは非常に密接に連携が必要になってくる。そういったことも一般の健康づくりの中の健康診断を受けた人への保健指導とかなり質が違ってくるのではないかと思いますので、具体的な対象像を描きながら、その人たちへの焦点を絞った健康支援のあり方が必要なのかなと。

 先ほどおっしゃっていましたけれども、最終的にアウトカムとしてどの辺に底を置いていくのかということも見据えながら、効果的あるいは効率的な健康支援のあり方が具体的に出てくれば、現場としても活動しやすくなるし、保健師に対しても啓発しやすくなるかなという印象を受けました。

 以上です。

 

○増田委員 まさしく今、政府を挙げて健康寿命の延伸ということで、日本再興戦略の中でも運動だとか栄養だとか、そういうところにもっともっと取り組んで、健康寿命を延伸しようという中で、生活保護を受けている方々だけの話ではなくて、生活保護を受けている方というのは国民の一部ですから、今、国はいろいろ健康に関することをやり出しているわけですから、それにうまく乗っかっていただきたいと思いますし、結局、生活保護を受けている方というのは、健康上の理由でということは幼少期における生活習慣というのが大きくなってから影響が出てきて、生活保護を受けざるを得ないという人もかなり出てくるのだと思いますので、先般、子どもの貧困対策に関する大綱というのが出されましたが、まさしくその辺との連携も考えてやっていただきたいと思います。

 1つお聞きしたいのは、ほとんどの生活困窮者の方はみんな生活保護を受けておられるのか、いや、生活保護を受けていなくて頑張っているといいますか、生活保護の外にいらっしゃる世帯もかなりあるのかということをお聞きしたいと思います。

 以上です。

 

○事務局 今のお話ですが、生活保護の受給の基準というのは、一定のこのくらいの最低生活費というのがありますけれども、最低生活費に達していない方が全て受給されているかと言われると、そこまで証明できるデータはないです。もちろん、そういうことを知っていて私は受けないとかいう方もいらっしゃるかもしれませんし、生活保護では利用できる資産、能力は活用していただく前提ですので、単純に最低生活費と収入を比較してというものでもありませんので、それがイコールかと言われれば、正確なデータを出すのは難しいと思います。 

 

○滝脇委員 診断がついている病気の把握と、診断がない状態の健康問題の把握の区別が必要だろうと思います。例えば、残念ながらアパートで亡くなった方のお部屋に酒瓶がいくつも転がっていたということがありました。重度のアルコール依存症だといろいろなプログラムに参加する機会もあり、周囲も十分な配慮を行うのですが、診断がついていないと周りの人が見過ごしやすいという問題があろうかと思います。

 これは広い意味でのメンタルヘルスの問題でもあります。稼働年齢層の「その他世帯」について言及がありましたけれども、平成23年度に社会福祉推進事業の補助金をいただいて、ふるさとの会で雇用している111名の利用者の意識とプロフィールを調査しました。非常勤で生活支援の業務に当たっている生活保護受給者などですが、働いている人たちですので、働いていない人たちよりは当然健康状態がいいと推測されました。しかし、実際に調査を行ったところ、手帳とか病名がついていない人の精神健康がよくなかったという結果が出ました。それでも適切な支援をすれば稼働できる人の稼働能力が十分に発揮されます。健康問題の把握を診断等から分類するしかないのはわかりますが、見えづらい軽度の発達障害の人の健康、生活、就労をどう支えるか。私たちは地域リハビリの視点を取り入れながら、地域の中で仲間をつくり、役割を得るための互助づくりを支援しています。居場所づくり、仲間づくり、仕事づくりを一体で取り組み、役割関係のなかで誰かを支えているという誇りや自尊感情を回復することは、可視化されにくい健康問題を支えるうえで、重要な効果を持っていると考えています。

 もう一点が、先ほどの食生活の問題なのですけれども、十分な栄養をとっていない方は非常に多く、独居の人が健康的な食生活を営むには非常にコストがかかります。その一方で、私たちは給食センターを運営していますが、給食という形で規模の経済のような集合性を活かせば、栄養士がつくった献立をひと月あたり3万2,100円の負担で3食提供できます。生活保護個別の支援が中心ですが、包括支援とか一定のエリアにおける集合性でとらえていくと、仲間づくりというのも結局人と人とのつながりも含めて健康支援の展望が見えるかなと思いました。

 以上です。

 

○石原委員 24ページの参考資料の中に、レセプトチェックの強化というのが書いてあるのですけれども、健診データやそういうデータがなかなかないという状況がわかりました。受診された結果のレセプトなので、そこの資料をうまく活用している自治体の事例がありましたら、ぜひ御紹介いただきたいと思います。

 

○事務局 レセプトは先ほどありましたように、全国的に集約しているものがなく、自治体ごとにレセプト管理システムがあって、自治体でやろうと思えば、いろいろと分析に使えるような環境はあります。そういった自治体の事例があればお示しできるのですが、そういったことをどこかの自治体にやってもらうという形でつくり上げることは可能かなと思いますので、そこも検討したいと思います。

 

○事務局 本日は議論の柱立て等もない中でいろいろと御意見をいただきありがとうございました。本日の御意見等を集約させていただき、この研究会の最終形としてどうしていくか、例えばどういったターゲット、重点的に見ていくところ等について一度まとめさせていただいて、また御相談させていただければと思います。

 次回以降につきましては、今回お集まりいただいている委員の皆様から発表という形にしたいと思います。それと並行して事務局で今回の議論も踏まえて、ここでどういう柱立てで議論をしていくか、最終形も見据えながら次回以降、また御提示しながら御相談させていただければと思います。

それでは、本日の議事については終了させていただきます。

次回の日程が決まっておりまして、10月6日月曜日、15時からということでございますが、詳細はまた追って連絡させていただきたいと思います。

 本日は、どうもありがとうございました。


(了)

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