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2014年9月5日 第8回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産流通部会議事録
健康局結核感染症課
○日時
平成26年9月5日(金)10:00~
○場所
厚生労働省 専用第22会議室(18階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)
○議事
○滝室長補佐 ただいまより、第 8 回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会を開催いたします。
本日は、御多忙のところ御出席を頂き、誠にありがとうございます。本日の議事は公開ですが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、プレス関係者の方々におかれましては御協力をお願いいたします。また、傍聴の方は「傍聴の際の留意事項」の遵守をお願いいたします。
初めに、本日の委員の出席状況について御報告いたします。本日は委員 10 名のうち、庵原委員、小森委員、坂元委員、西島委員、福島委員、三村委員、山口委員の 7 名に御出席いただいております。なお、森委員より遅れて見える旨の連絡を頂いておりますので、 8 名の委員の出席となります。また、伊藤委員、細矢委員からは御欠席の連絡を頂いております。現時点で、厚生科学審議会の規定により、定足数を満たしておりますので、本日の会議が成立したことを御報告いたします。
また、本日は 3 名の参考人をお呼びしておりますので御紹介いたします。第一三共株式会社ワクチン事業部研究開発企画グループ主席、竹内馨参考人。国立感染症研究所免疫部長、阿戸学参考人。国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター第五室長、山本典生参考人です。
続いて、事務局に人事異動がありましたので紹介いたします。 7 月 11 日付けで高城亮予防接種室長が着任しておりますので、高城予防接種室長より御挨拶申し上げます。
○高城予防接種室長 皆様、おはようございます。ただいま紹介いただきました、予防接種室長の高城です。開会に当たり、一言御挨拶を申し上げます。
初めに、皆様御承知のとおり、 9 月 3 日に大臣の交代等があり、ただいま省内は慌ただしく動いております。井上課長も、私と同じく 7 月 11 日付けで新たに感染課長としていらっしゃいましたが、本日は用務のため欠席しておりますことをお詫び申し上げます。また、各委員、参考人の皆様におかれましては、本日は御多忙のところ、また遠方より御出席を頂き、誠にありがとうございます。また、平素より感染症予防接種施策に御理解、御尽力を頂き、重ねて御礼を申し上げます。
本部会は、これまでに 7 回の開催がありました。この中で、予防接種基本計画策定のほか、ワクチンの研究開発及び流通に関する多くの課題について、皆様の活発な御意見、御議論を頂いているところです。本日お配りの議事次第に記載のとおり、予防接種基本計画に明記された開発優先度の高いワクチンの開発状況について、企業、研究班から発表を頂くこととしております。また、新たなワクチンの開発に当たっての審議事項について御検討を頂く予定となっております。長時間の審議が予想されますが、委員、参考人の皆様方におかれましては、活発な御議論を頂ければと思っております。
最後に、厚生労働省としては、今後とも予防接種施策の推進に取り組んでまいりますので、引き続き皆様方の御理解、御協力をお願い申し上げ、挨拶といたします。
○滝室長補佐 それでは、議事に先立ち配布資料の確認をいたします。議事次第、配布資料一覧、委員名簿。資料 1 、開発優先度の高いワクチン等の開発状況について。資料 2 、新興・再興感染症に対する画期的な新規ワクチン開発および実用化に関する研究。資料 3 、新たなワクチンの開発にあたって。資料 4 、細胞培養季節性インフルエンザワクチンに関する検討課題についてです。以上御用意しておりますので、配布資料一覧と照らして不足しております資料がありましたら、事務局にお申し付けください。それでは、冒頭のカメラ撮りについては、ここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。
次に、審議参加に関する報告をいたします。本日の議事内容において、個別に調査審議される品目はありませんので、本日の議事への不参加委員はおりません。それでは、庵原部会長、以後の議事進行をお願いいたします。
○庵原部会長 議事に入ります。議題 1 、開発優先度の高いワクチン等の開発状況について、第一三共株式会社の竹内参考人から説明をお願いいたします。
○竹内参考人 第一三共ワクチン事業部の竹内と申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。
本日は、開発優先度の高いワクチンについて、第一三共がそれらのワクチンの研究開発に対してどのように取り組んでいるかを説明いたします。お手元の資料の 2 ページに示したのが、本日の発表内容になります。
開発優先度の高いワクチンと第一三共の取組についてお話いたしますが、その前にまず第一三共のワクチン事業がどのような戦略で新しいワクチンの研究開発に取り組んでいるかについてお話したいと思います。それから、第一三共及びその関係会社との連携についても説明いたします。これらの説明に引き続き、本題に移りたいと思います。
3 ページを御覧ください。ワクチンの開発研究における当社の戦略を示したものです。この図に示します 4 つの因子を組み合わせ、ワクチンをデザインするというコンセプトで、特にデバイス、アジュバントに注目して強化を図っております。安全性及び有効性の高いワクチンを開発するためには、新規の抗原を見出していくことが重要であるのは当然ですが、アジュバントやデバイスの開発も同じく重要と考えております。アジュバントは、高い免疫応答を誘導したり、細胞性免疫を誘導するなど、免疫応答の質を向上させるための効果が期待できます。
抗原となるものを効率よく送達させたり、ワクチンを接種する際の利便性の向上のためには、新規のデバイスを利用したワクチンの研究開発が必要だと考えており、それについても取り組んでおります。また、下に示します生産面ですが、新たな生産技術を利用することにより、ワクチンの効率的な生産をさせるためのアプローチ、品質の向上、安定供給などの課題に取り組んでおります。これらをバランスよく組み合わせることにより、次世代のワクチンを創製していきたいと考えております。
4 ページは、第一三共のワクチン事業体制について示したものです。北里第一三共ワクチン株式会社は、第一三共株式会社と学校法人北里研究所が 2011 年 4 月 1 日に設立した合弁会社です。主に、生産や CMC 研究に取り組んでおります。左のジャパンワクチン株式会社は、グラクソスミスクライン株式会社と第一三共の折半出資の下、 2012 年 7 月に事業活動を開始いたしました。感染症予防ワクチンに特化した専門性の高い企業として、日本の乳幼児から高齢者まで幅広い人々を感染症から守ることを目指しております。第一三共若しくは GSK Vaccines で研究及び初期開発を終えたワクチン開発品の臨床開発及び製品マーケティング、プロモーションなどの活動を行っております。第一三共は、両社と連携しつつ、ワクチンの事業戦略、研究開発を行っております。また、アカデミアやほかの企業とも積極的な提携を行い、日本に必要な新しいワクチンの研究開発に取り組んでいるところです。
5 ページに示しますのは、第一三共の開発優先度の高いワクチンに対する研究開発の取組です。この表に示した 1 から 6 の 6 つのワクチンが開発優先度の高いものとして選定されておりますが、これら一つ一つについて第一三共の取組を説明いたします。 6 ページは、麻しん・風しんワクチンを含む混合ワクチンに対する取組です。我々は、麻しん、おたふく、風しんの 3 つのワクチンを混合したワクチンを開発しております。これは、第一三共、北里第一三共ワクチン、ジャパンワクチン、 GSK Vaccines との共同開発となっております。特におたふくについては、無菌性髄膜炎の副反応発生率が非常に低い株を使用しております。現在、非臨床試験を準備しているところです。
2 は、 DPT-IPV を含む混合ワクチンに対する取組です。当社は、 DPT-IPV に Hib を混和して使用する 5 種混合ワクチンの開発に取り組んでおります。現在、当社と北里第一三共ワクチン、サノフィ、 Sanofi Pasteur との共同開発を行っております。現在、 DPT-IPV は御存じのとおり 3 か月齢からの接種に、また Hib は 2 か月齢からの接種となっておりますが、これから開発するこの 5 種混合ワクチンについては、 2 か月齢から使うことも踏まえた開発としていきたいと考えております。また、現状小児のワクチンについては、皮下接種の接種方法が多いのですが、このワクチンについては筋肉内接種も選択肢とできるような開発を考えております。現在、臨床試験の準備をしているところです。
8 ページには、改良されたインフルエンザワクチンに対する取組を示しました。現在、本邦では季節性インフルエンザワクチンについては、スプリットワクチンが使用されております。当社は、テルモと取り組んでいる皮内投与デバイスを用いて、皮内に投与する季節性インフルエンザワクチンを開発しております。第一三共、北里第一三共ワクチン、ジャパンワクチン、テルモとの共同開発となっております。このワクチンは、現行の皮下投与製剤に対して、同等以上の免疫原性、また高いユーザビリティーの達成、それからワクチンを受ける人に対する負担が少ないワクチンとなるように開発を進めており、現在第3相試験を実施しております。
次の 9 ページでは、このワクチンについてもう少し説明いたします。このワクチンを皮内に接種することにより、皮内に存在する免疫担当細胞やリンパ節へのデリバリーを効率化することが可能となり、皮下接種と同等以上の効果を期待しております。開発した新しいデバイスは、右の図にお示ししたように接種いたします。これは、確実に皮内接種ができることが分かっており、実用化へ近付いております。また、このデバイスは被接種者の針や痛みに対する恐怖感が低いことが予想されています。
10 ページは、ノロウイルスワクチンについての取組を示しました。現在、 UMN ファーマとの共同研究を進めております。 UMN ファーマ独自の製造プラットフォームでありますバキュロウイルスの発現ベクターのシステムを用いて製造した組換えノロウイルス VLP 抗原を抗原として、第一三共の持っている新規の投与デバイスを用いて、ノロウイルスワクチンの開発可能性を確認することを現在目的として、基礎研究を実施しているところです。
11 ページは、 RSV の感染症についての取組をお示ししたものです。 RSV 感染症は、 RS ウイルスによる急性呼吸器感染症であり、乳幼児や高齢者の発症が多く、重篤な細気管支炎や肺炎などの下気道炎症を引き起こすことが知られております。治療法としては、対症療法のみですが、一方予防薬としては、遺伝子組換え技術を用いて作製された RSV の表面蛋白の 1 つである F 蛋白に対するモノクローナル抗体製剤が日本においても承認され、現在使われております。疫学についてですが、下の表にお示ししましたが、このような報告もあり、日本においても小児及び高齢者を中心にかなりの患者が存在していると考えております。
12 ページを御覧ください。これは、 RSV 感染症による経済損失面から見た社会に対する影響です。死亡者数は、日本で 2,500 人。経済損失面では、 1 年で 5,000 億円強で、 Hib 感染症の 5 倍程度という報告があります。一方、ワクチンに関して、予防のためのワクチン開発は長い間続けられておりますが、現在開発に成功して実用化されたワクチンは、海外を含めて存在いたしません。当社は、様々な技術、抗原、アジュバント、デバイスなどを組み合わせて、新規のワクチンを創製すべく研究を実施しております。
13 ページは、帯状疱疹ワクチンについての取組です。帯状疱疹は、 80 歳までに 3 人に 1 人という高頻度での発症が推定をされております。非常に痛い病気で、特に帯状疱疹が治癒してからも耐え難い神経疼痛を残し、患者の QOL を大きく損なうことが知られております。この病気は、御承知のとおり高齢者に多く発症することから、今後迎える高齢化社会において、患者の更なる増加が見込まれます。不活化ワクチンを開発することにより、医療上のニーズの高い免疫機能の低下した患者においても予防効果が期待されております。現在のところ、ジャパンワクチンが GSK Vaccines より導入をいたしまして、 50 歳以上を対象とした第 3 相国際共同治験を実施しております。
以上、当社が現在取り組んでいる開発優先度の高いワクチンに対する取組を御紹介させていただきました。御静聴どうもありがとうございました。
○庵原部会長 ありがとうございました。ただいまの説明に関して答えられる範囲が限られているかと思いますが、御質問等はありますか。
○福島委員 皮内投与型季節性インフルエンザワクチンについて教えていただきたいのですが、既に米国等では承認された同じようなワクチンがあると認識しております。今回、開発中のこのワクチンのデバイスは国内で独自に開発されたものという理解でよろしいでしょうか。
○竹内参考人 このデバイスについては、テルモさんが開発したもので、それを利用して今、ワクチンの開発を行っております。
○福島委員 投与年齢は、成人を想定していらっしゃるのでしょうか。
○竹内参考人 そうですね。通常ですと、 13 歳以上は季節性ワクチンは同じ用法・用量だと思いますが、そういうことを考えております。
○庵原部会長 関連ですが、子供と大人と皮内までの厚さは大体一緒なのですか。それとも、今後の開発に当たって、子供用の針の短い皮内針をつくらなければいけないとか、その辺りの見通しはいかがですか。
○竹内参考人 皮膚厚については、また別にいろいろな年齢の日本人の方の皮膚厚を測定しているのですが、結論はまだ出ておりません。そういう取組をして、もし違う年齢層に打つときはどういったものが必要かということも、今後検討していきたいと考えております。
○小森委員 素人っぽい質問ですが、皮内のデバイスというのは、今、年長の方のことがありましたが、特に子供には大変刺激、疼痛が少なくて期待できます。お話できないのだと思うのですが、できる範囲で、こういったことが世界的に、あるいはまた御社等においても他ワクチン、特に疼痛の強いワクチン等についての適用というスペキュレーションにしかならないと思うのですが、お話できる範囲でどのような感触でしょうか。
○竹内参考人 当然皮内投与デバイスについては、インフルエンザだけではなく、ほかの抗原についてもいろいろな研究を行っているところです。これから、ほかの抗原についても応用を考えていきたいと考えております。
○西島部会長代理 MMR ワクチンでムンプスで非常に発生率の低いワクチン株ということですが、これについては過去にいろいろと問題があったウイルス株だと思います。これについては非常に低いということで、どのような改良がなされたか。それから非常に低いというのは、どの程度かについて何かお願いします。
○竹内参考人 具体的には、おたふくについては、 Jeryl Lynn 由来株を使っております。海外で GSK Vaccines が実際に販売されているもので、長期間の実績があるということで、国内のものに比べると無菌性髄膜炎の頻度は低いと聞いております。
○庵原部会長 関連ですが、 Jeryl Lynn 由来の RIT 株というものですよね。 3185 何とかと NO. が付いているものだと思うのですが、安全性は確かに世界的に認識されておりますが、有効性に関しては現在各地で中高生を中心に流行があるということで、それに対する評価は今一だというのが一般的な概念かと思います。その辺りに関しては、開発に当たって何か注意されているとか、どのように考えておられますか。
○竹内参考人 有効性、臨床的な効果に関しては、これから計画をして考えていきたいと思います。現在のところは、具体的にはまだ考えておりません。
○庵原部会長 多分、これは議題 3 とも関係してくるのですが、要するに有効性をどのように評価するかのディスカッションに関係するかと思います。そのほか、どなたか御意見はありますか。
○山口委員 RSV ワクチンなのですが、現行はシナジスが予防用として使われています。 2 点ほどあるのですが、現行シナジスが予防としてはどれだけ使われているのでしょうか。他社の話で答えにくいかもしれませんが。もう 1 つは、実は抗体医薬なのですよね。多分薬価が相当高くて、これをワクチンに変えることによって医療経済上もどの程度安くなるのでしょうか。その辺りを教えていただければと思います。
○竹内参考人 申し訳ありません。シナジスについて、どのぐらい使われているとか、薬価がとか、 1 回治療をするのにどのぐらいの費用がかかるかなどの情報は、存じ上げません。もちろん、ワクチンを使うことによってそういう経済効果をより得られるのではないかということはあるかもしれません。
○庵原部会長 アメリカは、余りにもシナジスが高価すぎるので、早期のワクチン開発をというのがアメリカの小児科学会などのコメントとして出ております。実際、日本でもこれは大分医療費高騰の原因の 1 つになっているかと私は判断しています。特に、適用が少しずつ拡大されることにより使用量が増えてきておりますので、そういった意味で医療経済面からも RSV ウイルスのワクチンは必要性が高いのが現状かとは判断しております。
○小森委員 全く間違っているかもしれませんが、シナジスは 50mg で 7 万円代、 100mg は 15 万と、いわば突拍子もない値段ですので、そういう意味で新しい RSV ワクチンができることはいろいろな意味で求められていると思います。今、開発の段階はなかなか企業としてお話しにくいのだろうと思うのですが、実際に実用化されるタイムスケジュールの大まかな漠然とした感覚はいかがですか。
○竹内参考人 そうですね。まだ研究の段階にありますので、実用化には相当長い期間がかかると答えさせてください。
○庵原部会長 実現性には少し時間がかかりそうだというお答えですか。分かりました。ほかに御意見はありますか。
○三村委員 今までの流れと違う質問かもしれませんが、ジャパンワクチンという存在が興味深いお話としてお伺いしました。先ほどの話で言いますと、ジャパンワクチンの存在がマーケティング、プロモーションでかなり市場性の高い所に持ち込んできたときに、恐らくこれが有効な役割を果たすのだろうと思いました。帯状疱疹ワクチンは、既にそういった形の中でいきますので、かなり実効性や現実性が高いと。例えば、ジャパンワクチンがかなりの面で出てくると、そのように受け取ることができるのかなと思ったのですが、そのような捉え方はできるのでしょうか。ジャパンワクチンの位置付け、役割をもう少し教えていただければと思います。
○竹内参考人 ジャパンワクチンについては、これは第一三共と GSK 株式会社 が折半出資した会社なのですが、この両者のシーズを持ち込んで、日本でワクチンを実用化、またその実用化されたワクチンを日本の市場に販売していく目的の会社です。ですから、幅広くいろいろなワクチンを GSK と第一三共のシーズを使ってそろえて、日本の現場にお届けしたいと考えております。
○庵原部会長 その他、何かありますか。順番に、もう一度確認いたします。 1 番に提案されました MMR ワクチンに関しては、先ほどの御意見でよろしいでしょうか。欧米で広く使われている Jeryl Lynn を日本に導入して、 MMR を作っていこうと。これは、はしかと風しんは Made In Japan を使うということですね。
○竹内参考人 はい、北里第一三共ワクチンのものです。
○庵原部会長 全部、 MMR 自体、欧米のものを入れてくるという考えではないですね。
○竹内参考人 はい。
○庵原部会長 2 番目の DPT-IPV に関しては、これは Hib を入れて 5 混を開発していこうということですね。
○竹内参考人 はい。
○庵原部会長 これは事務局への確認なのですが、 DPT-IPV に Hib が入った 5 混ができた場合は、もう 2 か月齢からの接種でするということで、いつかこの場で決めたと思うのですが、それでよろしいでしょうか。
○滝室長補佐 第 6 回研究開発及び生産・流通部会で、先生方に御議論いただいたところです。 2 か月齢から開始していただくということです。
○庵原部会長 そのときに、同時にもし DPT-IPV も全面的に切り替えてしまえば、 DPT-IPV を検討しなくてもいいということですね、 2 か月からの接種は。要するに、 DPT-IPV 、 Hib を開発、臨床研究をやるときには、コントロールとして、 DPT-IPV プラス Hib という 2 本接種と 5 混とが非劣性なりの形での治験で、伊藤先生がお見えにならないのですが、どのような治験デザインを組むかという話のときに、そうすると DPT-IPV は 3 か月で DPT 、 Hib 、 IPV 、 Hib が 2 か月だという組み合わせが可能か。それとも、 DPT-IPV も 2 か月からコントロールとして組み込むのか。これは PMDA の仕事かと思いますが、氏家さんお願いします。
○氏家課長補佐 御指摘のとおり、前回お話いただいたのは、方針として企業が開発するものを規制するとか定めるものではありませんので、あくまで審議会の中でこのような開発が望ましいという意見を取りまとめていただいたと理解しております。さらには、実際の治験を行っていく段階に関しては、所管する部局が別となっており、医薬食品局や PMDA とよく相談をしていただきながら、実際の治験デザインについて規定を行っていただくものと認識をしております。
○坂元委員 いつもそうなのですが、多価ワクチンができるときに、従来のワクチンとの乗り換えは結構自治体でも頭を悩ませております。場合によっては乗り換えのときに古いものを生産しなくなってしまうようなことが起きてくると、移行期にある人たちが困ることがあるので、やはり乗り換えを想定したものを考えていただくと、実際にやる自治体としては有り難いのではないでしょうか。その辺りも含めて、治験デザインを組むときに、幾つかの自治体に相談されて、どのような乗り換えが一番スムーズか、どのようにアピールしたらいいかなど、自治体の担当者は日々医師会の先生方と市民と、やり取りをしているので、それをよく分かっていると思いますので、できればそういうことも参考にしていただきたいというお願いです。
○庵原部会長 坂元委員に確認ですが、行政レベルでは混合がどんどん進めばメリットは大きいのですか。
○坂元委員 いろいろな意味でもメリットが大きいというのは、やはり多くのワクチンが出てくると市民への説明が複雑になることと、予防接種を普段やっておられる臨床の現場の先生方も、非常に忙しい中で接種スケジュールをお母さんと一緒に組んでいかなければいけないときに、この多価ワクチンが出ると非常に接種回数が整理されるので、あとにも出てくると思うのですが、事故が起こらなくなることと、期間のミスが少なくなることと、それからちょっと言わせていただければ、自治体の費用負担が少し安くなるのかなという期待感もあるということで、自治体としては多価ワクチンの出現は非常に望ましいものだと考えているところです。
○庵原部会長 ありがとうございました。では、次の皮内インフルエンザワクチンに関しては幾つか議論が行われましたので、よろしいでしょうか。ノロに関して、どなたからも御質問がなかったのですが、何か御意見はありますか。これは大分かかりそうだというか、見通しはいかがですか。毎年、各地で流行していてマスコミ沙汰になっているのですが、いかがでしょうか。
○竹内参考人 これについても、基礎研究の段階ですので、実用化にはそれなりの期間がかかると御認識いただければと思います。
○庵原部会長 RS に関しては議論がありますので、最後の帯状疱疹ワクチンについて、どなたか御意見、御質問等ありますか。これは、先ほども説明されましたが、不活化ワクチンでやっていこうという。現行は、生ワクチンが欧米では一部使用されておりますが。
○竹内参考人 これについては、不活化ワクチンです。
○坂元委員 この帯状疱疹ワクチンですが、下を見ますと 50 歳以上を対象に第 3 相と書かれておりますが、実際は何歳ぐらいから打つということを想定されているのでしょうか。それから、あとは免疫不全のいろいろな方々がいらして、そういう方々は帯状疱疹を発症するリスクが高いと思いますが、そういう方々に対してどのように考えているのかをお聞きできればと思います。
○竹内参考人 詳しいことはお答えできないというか、私も余りよく知らないところもあるので申し訳ありません。治験は 50 歳以上で行っておりますので、そういった方が実用化された際も接種対象になるのではないかと想定しております。また、特殊患者については、そういう開発をすれば実用化できるのではないかと思うのですが、実際にやっているかどうかは私も存じ上げません。申し訳ありません。
○坂元委員 治験をある年齢に限ってやってしまうと、それ以外の年齢に使えないということへの危惧があります。例えば 50 歳以上で治験をやった場合、今お答えはできないと思うのですが、適応症として成人などという表記が考えられるのか。例えば、免疫不全の方は年齢的にかなり若い人まで入ってきてしまいますので、いや、 50 歳以上しか治験データがありませんとなってしまうと、低年齢の免疫不全の方に打てないなどいろいろあるのかなと思い、その辺りの年齢に関してどのようなお考えをお持ちなのかをお聞かせください。
○竹内参考人 これは、もちろん新しいワクチンの許認可の問題でもあると思いますので、審査側の方々ともよく相談をしながら開発を進めていきたいと思いますので、今後もそのように企業として努力していきたいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。
○森委員 帯状疱疹ワクチンに関してですが、不活化ワクチンを成人に接種ということで、接種回数はどのように設定されるのでしょうか。それから、抗原として使われるのは、 1 種類の遺伝子なのかを伺います。その 1 種類であったとしたら、それは既に感染している水痘の免疫に対するブーストがかかることも分かっている抗原なのでしょうか。
○竹内参考人 詳しい接種回数はお答えできないのですが、当然これはもちろん水痘のウイルスを保菌している、持っていらっしゃる患者が帯状疱疹を発症されると思いますので、そういう発症を抑制することをエンドポイントにして開発を進めております。
○森委員 抗原なのですが、それは 1 つの遺伝子ですか。
○竹内参考人 これも、私はよく分かっておりませんのでお答えできません。申し訳ありません。
○庵原部会長 もし、 GSK が開発しているのでしたら、確か何かの 1 種類の糖蛋白を用いて、サポニン系のアジュバントを加えたものだと認識しているのですが。現在、ヨーロッパで開発が進んでいるものをそのまま持ってくるのでしたら、多分そのタイプかなと思うのですが。
○竹内参考人 これは、ヨーロッパでグローバル試験としてやっており、日本もそこに参加しているという形です。
○庵原部会長 この辺りは、森先生のほうが専門なのですが。確かに、中和に関係する糖蛋白を何か遺伝子ベクターなどで発現したものを用いているようなのですが。詳しいことは、私も存じ上げません。
○小森委員 坂元委員の発言に関係するのですが、治験のプログラムを作るのは大変だとは承知をしておりますが、最後の帯状疱疹等について、やはり免疫不全の子供に対する防御が社会的要請として非常に強いものだと私は理解しておりますので、是非その取組をお願いしたいと思います。これは、強い要望です。お返事は結構です。
○庵原部会長 ありがとうございました。大体時間になりましたので、これでこの話題は終わりたいと思います。次は、議題 2 に移ります。厚生科学研究班発表です。阿戸先生、よろしくお願いいたします。
○阿戸参考人 国立感染症研究所免疫部の阿戸と申します。本日はよろしくお願いいたします。資料 2 を御覧ください。本日の発表内容といたしまして、「万能」インフルエンザワクチンの開発の計画についてお話いたしますが、その前にインフルエンザワクチンに対する免疫応答の概略、どのように新しい次世代のワクチンを開発するか、研究班の研究、ほかのワクチンについても開発研究を行いますので、その概略を説明させていただきます。
2 ページを御覧ください。先生方は御存じだと思いますが、インフルエンザウイルスは 8 本の分節を持っております。その分節が入れ替わることによって全く新しい形のウイルスが起こる。そうしますと、新型インフルエンザの発生と。記憶に新しいところでは、 2009 年の H1N1 のパンデミックがあります。これが抗原シフトといわれる現象です。
季節性のインフルエンザウイルスも徐々に変化していきますが、これはなぜかといいますと、インフルエンザウイルスは RNA ウイルスでありまして、ウイルスは複製ミスが起こった場合に、修復機構がありません。それで、ここに変異が起こりまして、表面層の分子の構造が変わりますと、全く免疫が対応できない新しいウイルスができてまいります。これを抗原ドリフトといいまして、季節性インフルエンザワクチンの問題は、主にこの抗原ドリフトという現象に起因するものです。
3 ページを御覧ください。そうしますと、我々の免疫にどのようなことが起こるかといいますと、感染、あるいはワクチンを打って中和抗体が誘導されます。そうすると、インフルエンザウイルスの表面にこのように抗体分子が結合しまして、中和できるわけです。ところが、抗原ドリフトが起こりますと、中和抗体が結合できないように変化しますと、これは無効化、そして、また新しいインフルエンザにかかる状態になります。したがって、この抗原ドリフトに対応するためには、現在、例えばウイルスの流行状態を世界的に調査して、我々がどのような抗体を持っていて、それが有効かどうかを予測する。そして、ワクチン株を毎シーズン選定すると。このような作業が必要となっております。
4 ページを御覧ください。現行の季節性インフルエンザウイルスの問題点をまとめております。まず、インフルエンザウイルスというものは変異しやすいということ、ワクチンがカバーできる領域が比較的ほかのウイルスに比べて狭いと考えられるため、流行状況に合ったワクチンを毎年接種しなければいけないという問題があります。それから、ワクチンで誘導される免疫は大体半年程度しか持続しないと言われておりますので、毎年ワクチンを接種する必要がある。
あと、これは卵で増やしますので、鶏卵馴化ということで、卵で培養、継代している間に変異が入って、抗原性が変異する場合がある。それから、現在の注射型のワクチンでは、重症化を抑制することはできますが、実際、この抗体粘膜面には分泌されない IgG ですので、感染防御については、軽症になったりすることはあるのですが、防御自体はできないと言われております。もう 1 つは、異なる亜型のウイルスには対応できない。したがって、新型ウイルスへの効果は期待できないと、これらの問題点があります。
5 ページを御覧ください。これらの問題点を解決するために、我々としましては、 VLP はウイルス様粒子となっておりますが、これを用いた「万能」インフルエンザワクチンの開発が 1 つの研究班の大きなプロジェクトとなっております。ところが、「万能」という言葉が一般的に日本でも使われておりますが、これは英語では実際はオールマイティーではありませんで、‘ Universal ’の訳です。したがって、これは正確に記すとすれば、非常に交差反応性が高いいろいろなウイルスに対応できるワクチンということで、何でもできるものではないことは、この場を借りて強調したいところです。
このような現行のインフルエンザワクチンの問題を解決するのに、 2 つの大きなウイルス開発の方向性があります。 1 つは、副反応を強くしないで、かつ、交差性が高い免疫応答を誘導するワクチンとして、これは経鼻、鼻の粘膜のほうにワクチンをしますと、交差反応性の高い抗体が産生することが報告されておりますので、経鼻粘膜ワクチンという方法があります。
もう 1 つは、我々の研究班で行おうとしています、ウイルス間で共通性があって、変異しにくい部分に対して、免疫を誘導しようということを試みるワクチンでして、これが「万能」ワクチンです。これは交差反応性の抗体誘導ワクチンです。本研究班では、現在、これの研究開発を計画しております。また、今、これは世界的にも非常にトピックになりまして、論文、あるいは臨床研究を含めて活発に行われているところです。
どのようなウイルス蛋白が標的となるかといいますと、ここに書かれていますように、 1 つは M2e という部分、それから、本来はヘマグルチニンという、これは現行のワクチンでもこれに対する抗体が誘導されますが、実際はこれの頭の部分とくきの部分がありまして、くきの部分が比較的保存性が高い部分であることがいえます。それからノイラミニダーゼ、そして内部蛋白質、現在、これらが‘ Universal ’ワクチンの標的となっております。
これの評価といたしましては、 M2e ワクチンで誘導される免疫としては、感染を許容してしまうと考えられています。現在、これは恐らくフェーズ 2 に入っているという報告が分かっております。ノイラミニダーゼに関しましては、確かに抗原連続変異の頻度が低いと言われていますが、それでも抗原連続変異が起こりますので、必ずしも完ぺきには‘ Universal ’ではないと言われております。
内部蛋白質は、保存性、抗原性に優れておりますが、抗体ウイルスは内部に到達しないので、中和には関与しないということで、抗体による防御は比較的希望が薄いと考えられております。ヘマグルチニンのくきの部分ですが、保存性には優れております。ところが、抗原性に関してはかさの部分、現行ワクチンの部分に対して劣って、免疫学的な改良が課題となっております。
9 ページを御覧ください。くきの部分を詳細に説明したのがこの図ですが、ヘマグルチニンはウイルスの表面に存在する主要な糖蛋白で、 1 つの分子ではなくて、 3 つの分子が集まって 3 量体を形成しております。それを見たのが立体構造の図式で、色が付いているのが 1 つのヘマグルチニン分子になります。これが 3 つ集まってキノコの形をしております。キノコのかさの部分、これを Globular head( かさの部分 ) と申しますが、これは現在のワクチンが誘導する抗体の結合部分でして、この黄色で示した所が細胞のシアル酸に結合する部分です。ところが、ここに関しては非常に構造が変わりやすくなっておりまして、せっかく抗体が誘導されても、また別にどんどんと変異を起こして抗体が結合できなくなるのが問題です。
それに対して青で示したくきの部分ですが、ここは細胞との融合に必要です。構造は比較的変わりにくいということで、こちらに対して抗体を誘導すると、新型ウイルス、あるいは変異に対しても効果があるワクチンができる可能性がある。ここに変異ができますと、ヘマグルチニン分子構造が保てなくなりますので、ウイルスは感染性を失ってしまうので、ここは非常にターゲットになるであろうという部分です。
10 ページを御覧ください。これは本当にここの部分に抗体ができるかどうかですが、実は 2009 年のパンデミックのときに、くきの部分に対する抗体の誘導が行われることが分かったということです。季節性のインフルエンザの感染では、頭の部分に抗体が多く誘導されております。ドリフトが起こったウイルスに対する抗体でも、ほとんどの部分は頭のほうに誘導されます。ところが、全く違う構造を持ったパンデミックが発生しますと、頭の部分に抗体産生は起こりますが、くきのほうにも抗体が誘導できるという事実が、これはヒトで確認されております。したがって、このような頭の部分を持ったヘマグルチニンで免疫することによって、くきの部分に対する抗体を誘導するという戦略が提案されております。ただし、抗体誘導能というのは未知数であり、また、どれぐらい防御に有効かに関しては未知数であるということです。
11 ページを御覧ください。ここに対してどのような戦略をもってワクチンを作っていくかに関しては、実は免疫側の基礎的な事実から非常に示唆されることが分かってまいりました。ビジーなスライドですが、本来ヘマグルチニンに対する、あるいは一般的な抗原に対して、抗体がどのように産生されるかを示した図ですが、実際には 1 つの分子に T リンパ球、それから B リンパ球の両方の反応部位、我々はエピトープと言いますが、それが存在することが、実は長期記憶メモリー、あるいは長く抗体を産生するプラズマ細胞を誘導するのに必要であることが分かっております。それはどういうことかと言いますと、まず T 細胞の反応が起こった後に、今度はヘマグルチニンのエピトープに反応する B 細胞が抗原を取り込みます。
そして、取り込んだ細胞が真ん中の図になりますが、 T 細胞のエピトープを T 細胞に提示いたします。そして、 T 細胞と B 細胞の反応が起こることによって、記憶 B 細胞が効率的に産生される。そうすると、 T 細胞エピトープは、別に抗原そのものが元々持っていなくても構わない。ですから、ここの所に別な部分のエピトープを入れ込んだり、あるいは別のタンパクのものにしても構わないということは言われています。ただし、 T 細胞が出会う回数を多くするためには、エピトープの種類は多いほうがいいことになります。
実はこの方法を利用したのが、コンジュゲートワクチンでありまして、例えば多糖類に対する抗体を産生しようということになりますと、こちらには T 細胞は反応できませんので、トキソイドとか、そういったものを付けることによって、 B 細胞には多糖体を反応させて、それでトキソイドに乗っている T 細胞の抗原決定基で T 細胞からヘルプを頂くと、このようなシステムで非常に強い抗体産生反応が起こることになります。
もう 1 つ、先ほど何度も言いましたが、交差反応をする B 細胞は比較的非常に少ないので、抗原と出会える工夫を HA 、ヘマグルチニン抗原に付けていかなければいけないことが、だんだん分かってまいりました。そこで、我々はどのようなデザインを考えているかと言いますと、まずウイルス粒子ではなくて、抗原が変異しないようにということで、 VLP ということで、ウイルス様粒子にくきの抗原がきちんと出るものを作製いたしました。そして、これはヘマグルチニンでも構わないわけですが、くきの部分の B 細胞が反応する部分のアミノ酸を少量変異させて、非常に B 細胞に高い親和性が出るくきを作製いたします。
そして、このくきの部分に余り T 細胞のエピトープがありませんので、かさの部分に多数の T 細胞エピトープが存在するように、そして構造が変わらない形でここに T 細胞が反応できる抗原を組み込んでまいります。このような抗原をデザインした VLP によって、この VLP にこれらの抗原を多数発生させることによって、交差性の抗体を誘導できるワクチンを産生しようと考えております。
13 ページを御覧ください。ただし、このように様々なたくさんの候補ができてまいりますが、これ一つ一つを臨床治験をすることはなかなか難しいということで、我々は末梢血リンパ球を用いたヒトに対するワクチンを評価する系を作成いたしました。これはどのようにするかと言いますと、ヒトの末梢血を採血してきます。それをそのままヒトの細胞を拒絶できない NOD/SCID/Jak3^-/- マウスという特別のマウスにこのヒト末梢血細胞を導入いたします。そうしますと、この細胞がマウスの中で生きたまま循環する。いわゆるヒト化マウスが作製されます。そのヒト化マウスにこれらの VLP ワクチンの候補を打つことによって、ヒトの記憶応答の再構築ができることは、既に確認しております。これでワクチンの接種後の T 細胞の評価、あるいは抗体による感染防御効果の評価をして、臨床研究を逐一行わずに、ワクチンに対する 2 次抗体産生応答が予測可能、そして評価できると考えております。
14 ページを御覧ください。その計画としましては、抗原を調整したヘマグルチニン、あるいはほかの表層蛋白の作製を複数の系で行って、それの作製条件の最適化、培養条件等の最適化を図りまして、まずは動物実験で抗体価を測定し、チャレンジを行って、防御能を評価した後に、ヒト化マウスの結果を含めて再デザインを行いながら精密度を上げていきたいと思っております。
15 ページを御覧ください。目標としては、保存性の高いウイルス蛋白を VLP に組み込んで、投与方法はこれから様々に検討、あるいはアジュバントの有無も検討していく。それから、当然ですが、低コストで製造可能な系を検討いたしまして、先ほど申し上げた問題点に対応しようと思っております。
16 ページを御覧ください。これが「万能」インフルエンザワクチンですが、我々の研究班では、そのほかにノロウイルス、 RS ウイルス、デングウイルスなど、ワクチン製造上、あるいはウイルス学的、また免疫学的な諸問題で、現在、実用化していないウイルス感染症に対する次世代ワクチンの開発に資する橋渡し研究を行おうと思っております。インフルエンザウイルスにおいては、例えば H7 トリインフルエンザワクチンのように、 HA に T 細胞免疫応答エピトープがないため、ワクチン効果が弱いものであるとか、あるいはノロウイルスに関しては、ウイルスが培養できない新型・ドリフトウイルスが出現することに対応しようとしております。
また、先ほどもお話に出ましたが、 RS ウイルスあるいはデングウイルスに関しましては、免疫あるいはワクチンに関して感染増悪が起こったという過去の例があって、開発が止まっておりますが、ここに関して免疫応答を調節しつつ、ワクチンの開発を目指そうということを考えております。
次のページを御覧ください。これが我々研究班のスキームですが、国立感染症研究所が所有する様々なワクチンシーズ、そしてゲノムデータに基づいて流行予測をして、それから、 VLP 技術をそれぞれ持っておりますので、それを共有して、改良しつつ、これらの感染症に対して次世代のワクチンを開発すると。そのときにアジュバント、ナノ技術、ウイルス培養技術、先ほど申しましたヒトを反映した動物モデルを用いまして、新型ワクチンの実用化による社会への還元をしようと思っております。もちろん、我々は実際に開発そのもの、あるいは臨床治験そのものには参加できませんので、ここに関しましては、ワクチンメーカーの方々、あるいはそのほか医療関係者の方々に御協力をいただきたいと。
具体的なタイムラインとしましては、最後のページになりますが、 2017 年までにシードワクチン候補の免疫原性の評価をしたいと。そして、 2020 年までには、ワクチンシードをメーカーに提供できるようにしたいと。そして、我が国の目標であります 2030 年までに新型のこういった次世代のワクチンの実用化に寄与したいと思っております。
○庵原部会長 阿戸参考人、どうもありがとうございました。御説明されました内容について、御質問をお願いします。いかがですか。
○福島委員 幾つか教えていただきたいのですが、的外れな質問もあるかもしれませんが。スライド NO. で言いますと 14 、今後の研究計画で抗体価を測定されるということについて、現行のワクチンであれば、ワクチン株に入っている A H1N1 、 H3 と B のワクチン株に対する抗体価を測定するということになりますが、今回の新規ワクチンについても現状の HI 価の測定でいいのかどうかを教えていただきたいと思います。
○阿戸参考人 ステム、くきの部分に対する抗体に関しては、 HI という機能はありませんので、別なことで評価しなければいけないと考えております。どの指標で測るかは非常に難しいのですが、今のところ抗体の親和性といいますか、要するに抗原に付く力が比較的防御能と相関するという新しい知見を我々は持っておりまして、もちろん更に詰めなければいけない部分はありますが、動物に対する保護能と抗体の親和力と、あとは vitro の試験を評価しながら決定していると思っております。
○福島委員 分かりました。それでは、これが実用化した際にも、ヒトでどれだけ免疫が誘導されているかは、別の測定系で評価しなければいけないことになりますか。
○阿戸参考人 少なくとも現行の HI 抗体価では測定できませんので、新しい指標が必要になると思っております。
○福島委員 あと幾つか伺います。同じくスライド NO.14 で、一番上に「抗原を調整した HA/NA/M2e 、 VLP(H1 、 H3) の作製を複数の系で行う」と書かれていますが、現行のワクチンでは B 型に対する抗体誘導が少し低いことと、ワクチンの有効性についても B 型に対しては検出されにくいということがあると思います。 B 型に関しては、どのような状況になるのですか。
○阿戸参考人 B 型についても同じようにやれればよいとは思っていますが、まずは H1 、 A 型からと考えております。
○福島委員 あと 1 点だけ。このワクチンが開発されますと、毎年の株選定を行わなくてもいいと、少なくとも A 型に関してはということかと理解しておりますが、免疫応答の持続期間としては 6 か月で落ちてしまうことになるのですか。つまり、株の選定はしなくてもいいけれども、毎年ワクチンを打つことは必要であるという理解でいいのですか。
○阿戸参考人 これは安全性の部分と関わってくると思いますが、現行でスプリットワクチンですので、例えば、これも VLP を想定しておりまして、それほど激しい、例えば全粒子ワクチンのようなものは想定していません。したがって、ある程度頻繁に打たなければいけないとは思っております。
○庵原部会長 関連で幾つかお聞きしたいのですが、ストークの部分の抗原は、 H1 は共通性がある、 H3 は共通性があるというか、亜型ごとの共通性ですか。それも A は全て共通ですか。
○阿戸参考人 もちろん先生も御存じのように、グループ 1 のグループ B がありますが、基本的には H1 、 H5 はほぼ同じと考えています。 H3 は若干違いますが、これに関してもある程度は H3 もカバーできると、くきに関しては。ただし、実際、 H1 と H3 を両方混ぜたほうがよいか、この辺りは検討する必要があると考えております。
○庵原部会長 ただ、開発戦略としては、同じ系統はいいけれども、系統が異なると、それぞれストークに対するというか、 VLP を作ってこないといけないという解釈でよろしいですか。
○阿戸参考人 ここの部分はやってみないと分からないです。理想的には 1 個で進みますが、現実問題としては 2 つ必要なことを考えなければいけないと考えております。
○庵原部会長 抗体に関しては、結局、これは中和ですか。
○阿戸参考人 そうです、中和という形になります。どこで効くかに関しては、結合をブロックするのではなくて、融合の所をブロックするという形で効いてくる中和抗体になります。
○庵原部会長 そうすると、まずはストークの部分をイクスプレッションする VLP を作って、それから実験、これから vitro のほうへ入っていくと、今の段階はどの辺りですか。
○阿戸参考人 今の段階としましては、実際に T 細胞エピトープとか、そのものを使う、くきの部分ができるかどうかをチェックしております。現在、この系で分かったこととしましては、確かに T 細胞エピトープを入れ込むと、今までないものに対して反応すると。そして、くきに対する抗体応答ができるというところ、要するにヒトで実際に存在することまで確認されております。 VLP の製造等に関しては、これからになります。
○庵原部会長 分かりました。
○森委員 ストークでもう少しお伺いしたいのですが、これは免疫誘導をする箇所というか、アミノ酸とかも分かっているということですか。
○阿戸参考人 これについては、我々のグループではないのですが、既にくきのどの部分に対して抗体ができて、そのくきを少し変えますと、親和性の高い抗体が誘導されるという報告が今年に入って出てきておりますので、それを参考にしながらデザインをして進めていくという形になります。
○森委員 それはリニアでも大丈夫ということですか、かなり短い抗原発現でも。
○阿戸参考人 いえ、これは立体構造が非常に大事になってまいりますので、比較的大きいもので、リコンビナント蛋白として評価を最初にするという形です。
○森委員 それを VLP にして発現させるということですね。
○阿戸参考人 おっしゃるとおりです。
○森委員 VLP のベースとしては、何を使われるのですか。
○阿戸参考人 これもいろいろ検討しなければいけません。例えば、バキュロ系とか、いろいろなものを考えておりますが、それも、例えば増殖性等々、安全性を含めて検討していく予定です。
○森委員 それは投与法としては、将来、皮内と経鼻ということで考えられているのですか。
○阿戸参考人 15 ページに書いておりますが、経鼻、経口、経皮等、これもどれが一番効率がいいかを考えつつ開発していこうと思っております。
○森委員 15 ページですが、「 DNA から発現させるので、変異が入らず」というのは、元々 VLP を作る段階でということですか。
○阿戸参考人 そういうことです。
○庵原部会長 2 つほど確認したいのですが、 13 ページのこのモデルというのは、インフルエンザだけではなくて、いろいろなワクチンの開発には使えるというか、使えそうだという前提でよろしいですか。
○阿戸参考人 これはインフルエンザウイルスだけではなくて、様々なウイルス、それから細菌感染においてもこのような、要するに我々の体が持っているメモリー応答にどのようなものが、末梢血をとって調べることで評価できることが分かっております。
○庵原部会長 ということは、これはプライミングもブースティングも、両方とも反応がこの系で評価できるということですか、先ほどの説明ではプライミングの評価と言われていましたが。
○阿戸参考人 いや、プライミングは実際はできません。というのは、これは末梢血ですので、ナイーブはかなり少ないことになっております。それなので、あとは、樹状細胞、特に抗原提示細胞が末梢血中にはほとんどありません、ヒトのものがないので、プライミングに関してはこの系ではなくて、これはブーストの評価系です。ただ、インフルエンザに関しては、現行のワクチンもブーストの評価、ブーストワクチンですので、インフルエンザに関してはこれでいけると考えております。
○庵原部会長 これはブーストの系であり、プライミングの系ではないということですか。
○阿戸参考人 そのとおりです。
○庵原部会長 まとめといいますか、最後から 2 枚目の所だと思うのですが、今のところはデングも RS も VLP で開発していこうというお考えですか。
○阿戸参考人 はい、デング、 RS に関しても、 VLP で行おうと思っております。
○西島部会長代理 お話を聞いていて、外国でも同様の研究が進んでいるように思えるのですが、国際的に見て先生方の研究の位置、競争力、将来の見込みのようなところは、どういうことですか。
○阿戸参考人 ここのところは国際競争が非常に高いと思っておりますが、少なくとも T 細胞エピトープとか、 B 細胞の改変技術、評価系については世界にそれほど負けてはいないのではないか。ただし、もの、例えばくきの部分をどう VLP 化するかとか、そういったことは既に先行されていると考えております。そうなので、我々としては、免疫の部分で勝負していきたいと思っております。
○庵原部会長 ほかにありませんか。そうしたら、阿戸参考人、どうもありがとうございました。続きまして、議題 3 の「新たなワクチンの開発に当たって」ということで、事務局から説明をお願いします。
○氏家課長補佐 資料 3 です。「新たなワクチン開発に当たって」に書かれているとおり、昨今、接種すべきワクチンが増加しているということで、この接種すべきワクチンというのは種類もさることながら、同じ感染症を予防するワクチンの中でも製剤の種類が増えているということもあります。一般に申し上げるとワクチン製剤ごとのスケジュールが複雑化するほど、また接種回数が増えるほど、接種を受けられる方の利便性が低くなり、また接種事故、有害事象等のリスクが増加すると考えられます。
具体的な事例を申し上げると、今回もそういったディスカッションがあったところですが、研究開発に関し以下のような対応がされているところです。まず、予防接種基本計画の中で開発優先度の高いワクチンとして、 4 価の DPT-IPV を含む混合ワクチンが明記されています。それを踏まえて、第 6 回の研究開発及び生産・流通部会においては、 Hib を加えた 5 種混合ワクチンの開発に当たって、現在の Hib ワクチンの接種時期に合わせる形で接種時期の検討を行うことが望ましいとする方針が示されたところです。また、今後の予定としては、さらに B 型肝炎を加えた 6 種混合ワクチンの開発などが進められることが予想されており、こういった具体例では、様々な接種スケジュール、接種間隔で接種が行われているところです。例えば資料にて、フランス、オーストラリアの接種スケジュールを見ていただくと、初回接種については 2 回と追加が 1 回の計 3 回のみの接種を実施しているようなところもあり、ベルギーですと、接種間隔は 1 か月置きで、 3 回の初回接種後に追加接種、その代わりに 2 歳以降の接種がない等、国ごとに様々なスケジュールが行われているところです。
こういった現状を受け、一般論としては、こうした新たなワクチン開発に当たり、下記のような要請を製造販売会社にしてはどうかということで、審議をいただければと考えています。具体的には、まずは十分な免疫が得られると期待される範囲においては、臨床試験において、より回数が少ない打ち方のスケジュール方法についても、有効性等を評価することは望ましいことであると考えられます。具体的には、 2 回と 3 回で同じ有効性が得られるのであれば、 2 回で開発を進めることが可能ではないかということが 1 点です。
もう 1 点は、同じ疾患を予防する異なるワクチン製剤については、可能な範囲ではあると理解していますが、先行する既存のワクチンがあれば、その有効性に関する互換性、この互換性という意味においては、スケジュールということも含めて、交差免疫、スケジュールといったものについて評価を行っていただき、例えば同じ病気を予防するワクチンでも製剤が異なると接種間隔、スケジュールが変わってしまったり、交差免疫がないため接種開始後に受けられるワクチンが限定されたり、といったことになると、よりスケジュールが複雑化することにもつながりますので、可能な範囲でこういったことに留意していただくことをお願いしてはいかがかということを、事務局から提案させていただきます。よろしくお願いいたします。
○庵原部会長 御質問、御意見はございますでしょうか。
○小森委員 大いに結構なことではあると思いますが、そういう要請することにどういった実効性、実効性は担保されるものなのでしょうか。当然、企業の方の自由度ということの絡みがあると思うのですが、そういう方向性でやっていただくことをこの部会で正式に決めて、その実効性ということについてはいかがお考えでしょうか。
○氏家課長補佐 もちろん企業ごとの開発状況というのは、正式には企業が決定されることですので、前回の議論の中でも、 Hib を含めた 5 混のワクチンを生後 2 か月から開発するということは、あくまでも意見・要望として申し上げていることであり、 2 か月から開発しなければいけないというものではございません。
また、企業からよく相談なども受けるのですが、治験が始まってしまうと、なかなかスケジュールとか、どういった治験をデザインするかということで変更が利かなくなるため、ある程度の望ましい方向性を、今後の定期接種等を考えるに当たって、事前にお示しいただきたいとの意見をお伺いします。方向性に関する提案に拘束力があるものではないと理解しているところですが、こうしたことを考慮していただきながら、開発を進めていただくことが望ましいのではないかという一種の提案というような認識でおります。
○小森委員 そういうことなのだと思いますが、是非御提言の中に、今すぐにでなくてもいいのですが、先ほど少し申し上げたような、対象疾患等の spectrum がある年齢以上に多いというようなことになりますと、どうしても治験のデザインもそういう方々になってまいります。特に、免疫不全の小児等に対する治験のデザインというのは、なかなか難しいことがあると思うのですが、是非そういう方々に対することを、こういう提言に入れていただくことは可能かどうかということをお願いしたいと思います。
○庵原部会長 事務局、いかがですか。
○氏家課長補佐 実際にこの部会を受けて、そういった要請の案を作成する際には、また御相談させていただきたいと考えております。
○庵原部会長 先ほどの小森委員との関連です。まず 1 つ、「有効性」という言葉は免疫原性を含んでいるということで解釈してよろしいですか。というのは、一般的に有効性だと、流行が入らないと、実際にそのワクチンが効いたかどうかが分からない。要するに surrogate marker も含めた有効性であるという解釈でよろしいかというのが 1 つです。
○氏家課長補佐 御指摘のように治験デザインにもよるかとは思いますが、 efficacy と effectiveness という意味においては、抗体が上昇するという話なのか、実際の臨床治験の中で有効性が担保できるというものなのか、これはそれぞれ現存のワクチンを見ても、いろいろな開発に当たっての知見データを踏まえて、それぞれの製剤ごとに相談や審査検討がされているところかと思いますので、どちらかに規定するというものではないと考えております。
○庵原部会長 要するに、これは広い意味の有効性という解釈で、 surrogate marker も含むという解釈でよろしいでしょうか。
○氏家課長補佐 どちらも含むと考えております。
○庵原部会長 それと、 1 番目の臨床試験ではという、少ない接種回数というのは、現在例えば日本では DPT は 3+1 でやっているのを、今度は DPT-IPB Hib でやるときには 2+1 でやるのでよろしいかとか、要するに接種回数をできるだけ減らした治験をやってほしいという、具体的な中身はそういうような意図であるということでよろしいですか。
○氏家課長補佐 そうです。具体的にはおっしゃられるように、こういった 6 混などを見ますと、より少ない接種回数で実施しているような国もありますので、そういった混合ワクチン、そのほかにも例えばですが、 HPV ワクチンなどにおいても、今は 3 回の接種が一般的ですが、 WHO を含めて 2 回の接種が検討されている状況もあり、有効性が担保されている状況の中で接種回数が減れば、実際に接種を受ける方の負担も減らすことが可能であるという観点から、そういったことを可能な限り検討していただくことはどうかと考えています。
○福島委員 要請内容の 1 ポツの「十分な免疫が得られると期待される範囲において」という所は明確に定義されていないと思うのですが。期待される範囲というのは、例えば各メーカーがお持ちの自社製品の過去の臨床試験のデータを基に判断されるのか、あるいはその次のスライドのような、海外の動向なども踏まえて判断されることになるのか、どちらでしょうか。
○氏家課長補佐 開発においては、ここは研究開発部会ではありますが、実際に開発された個別の製剤についての承認に関しては医薬食品局の審査課及び PMDA で、具体的な一つ一つの検討が行われるものと考えていますので、最終的にはそういった開発をされる企業の判断や承認に当たっての関係者との相談内容によって規定されてくるものだと理解しております。
○庵原部会長 関連ですが、 PMDA なり審査管理課が、現行は 3+1 を 2+1 でやることに関して、承認しそうな流れはあるのかというか、例えば先ほどおっしゃったように、 WHO はパピローマのワクチンは 1 、 1 でするという方向に動いていますし、肺炎球菌ワクチンは 2+1 でするという方向で動いているのですが、そういうのが WHO から出てきたときに、日本は添付文書がこうなっているので、それは認められませんという方向へ、審査管理課なりが動いてしまうのか、いや、そちらのほうでもう一遍再開発をしてくださいと動くのか、その辺の見通しはいかがですか。
○氏家課長補佐 まず前提として、これは要請と書きましたが、あくまでも一般論ですので、できることとできないことがあろうかと考えております。実際に主体となるのは開発を行われる企業だと理解しておりますので、あくまでも審査管理課及び PMDA というところは、そういった審査、開発に関する相談を受けて、実際に申請内容の承認をするための具体的なロードマップを相談しながら考えて、評価をするところと理解しておりますので、どちらが先かというのは難しいところです。例えば WHO の position paper などを読んでみましても、 Hib のスケジューリングについては、初回接種が 2 回も 3 回も、両方記載されているようなところがあり、国や地域によって判断、実際の実効性は異なっているというところと認識しています。そのため、要請して現行の承認事項を変えるということには難しさもあると考えていますが、ないものをこれから開発するという製剤については、できるだけ被接種者の負担を軽減するような方向での検討というものを企業にしていただきたいということでお願いする趣旨です。
○坂元委員 素朴な質問なのですが、多価ワクチンというのは、メーカーにとっても多価ワクチンを開発するときは、その全ての構成ワクチンがすでに定期接種になっていないと難しいと思うのです。
ここに肝炎ワクチンというのがあるのですが、これはまだ定期化になっていません。ただ、海外では 6 混が開発中であると思います。この国は、 1 度定期化になって単独で世の中に出て、それから多価ワクチンという形が多いかと思います。つまりワンクッションがあると思うのは仕方ないのかなと思うのですが、どうも海外を見ていると、必ずしもそういう形でなく、多価ワクチンが最初から開発されているようなところがあるので、ある程度定期の見通しが付いたものに関しては、そういう方向性を示せばタイムラグみたいなものが防げるのかという気がしましたので、メーカーサイドからその辺をどう思われるか答えにくいかとは思うのですが、御意見をいただければと思います。例えばそういうものが必要であると、あらかじめこれは将来定期化されるだろうという方向がある程度読み取れれば、そういう方向の開発も同時に進めていくというのは、早い段階でそういう多価ワクチンが供給できる、つまり利便性が高まるということで、時間的な遅れを少なくできると思いますが、いかがでしょうか。
○庵原部会長 竹内参考人、可能な範囲でお答えください。
○竹内参考人 ここにあるとおり、諸外国は 5 混を主に使っている国々と、 6 混を主に使っている国々、日本は 4 混になってきつつあるところです。次、私どもは 5 混は具体的に開発を企画しておりますが、 6 混については、 B 型肝炎を混ぜるときに、 1 つは接種のタイミングを 4 混とか Hib とどうやって合わせていくのか。もちろん、今、坂元先生がおっしゃったような、本当に B 型肝炎が定期になるのでしょうかというところ、その辺はもちろん情勢を見つつ、流れができてくれば企業としては、もちろんそういうワクチンが望まれるでしょうから、具体的な開発を考えていきたいとは思っております。
ただ、 5 が 6 になっていない国もあって、そこがどうしてそうなのかというのもよく考えていかなければいけないところではあると思っております。
○庵原部会長 ちなみに、米国はキャリアレイトが高いので、母子感染を大切にしているという、イギリスは逆にキャリアレイトが非常に少ないのでユニバーサルは要らないと考えています。そのほかの国は、全部水平感染予防であって、母子感染予防ではない。そこで 6 混をこういう形で入れています。
というのは母子感染予防をやるためには、 0 、 1 月でやらなければいけませんので。ですから、それぞれの国がそれぞれの事情に応じてスケジュールを組んでいますので、どうするかというのは、日本がこれからどう考えていくかというところにも入って、要するに B 型肝炎とか Hib 対策、 DPT-IPB をどのように考えていくかというところにかかってくるのだと思っています。
ただ、そういうことではなくて、多価を作るときには提案のような形でやっていきたいというのがご意見ですね。
○氏家課長補佐 あくまでもここで議題として挙げさせていただいたのは、方向性を示すという意味においてで、先ほど竹内参考人からも御指摘のあったような、具体的な情勢を見ながらというようなこともありますが、開発が先なのか実情が先なのかということは、やはりどちらか一方だけということは難しいと思いますので、基本的に両輪となって進んでいくものだと考えています。
また、制度としては現在予防接種の基本計画というものがあります。この中で開発優先度の高いワクチンとして、多価ワクチンというものを挙げて、開発の要請を行っているところです。一方では、定期接種化ということの議論については、承認が得られた上で、安全性、有効性、費用対効果、こういった科学的な知見に基づいた議論をした上で決定するというような規定になっています。そのため、あくまでも大きな方向性としては、基本計画に沿った形で進めていく必要があると考えていますが、より具体的に進めていくに当たって、審議会として、考えられる望ましい方向性というものをある程度は具体的に示し、具体的にできない部分については、今回のような方向性という形で示していくということは、ワクチン施策を進めるに当たって重要なことではないかと考えています。
○庵原部会長 そうしますと、具体的に 1 ポツの話は、現在例えば 3 回しているところを 2 回にするなり、 1 回にするなりという形で、最初の「十分な免疫が得られると期待される範囲」と、ここの言葉に意見が出ているようなのですが、いわゆる感染防御レベル以上の免疫ができるとか、その辺のところが誘導されることが可能なら、できるだけ接種回数が少ないほうが受ける人たちの負担も少ないし、定期になった場合は行政側の負担も少ないのでということで、少ない接種回数での有効性についても評価するという中身だということなのですが、 1 ポツに関してはよろしいですか。
「十分な免疫」というのは、要するに発症予防レベルという考えですよね。疾患によっては発症予防レベルが分かっていないものもありますが、多くは分かっていますので、そういう解釈ですか。
○氏家課長補佐 製剤によって、それぞれ異なるものだと理解しております。
○庵原部会長 福島委員、いかがですか。
○福島委員 企業に対する要請ということで強制力はないということなのですが、要請される企業の方が困らなければ、それでいいかと思います。
○氏家課長補佐 もちろん具体的に開発を考えるときは企業の方が PMDA の方などとよく相談をして、どういう評価をするかということを決めていく内容であると思いますので、困ることは特にはないと思います。
○庵原部会長 そしたら、 1 ポツは大体原案どおりということで、 2 ポツの話です。これはいかがでしょうか。特に御意見はございませんか。この既存のワクチンとの互換性というのは、混合ワクチンと単味のワクチンとの互換性を見るという中身でよろしいですか。
○氏家課長補佐 記載内容としては一般論に落とし込んでしまっているので、具体的にはそういった事態も考えられると思いますし、今後いろいろな同製剤のワクチン、例えば DPT に関しても、いろいろな製剤があるかと思いますが、同じスケジュール、同じ互換性ということで現在行っています。同じ疾患で複数のワクチンが存在する場合においても、可能な範囲でスケジュール、そして交差免疫というような評価を行っていただくことが望ましいのではないかと考えている次第です。
○庵原部会長 この点に関して、 2 ポツに関して特によろしいですか。例えば具体的に言いますと、ポリオのワクチンは IPV がセービン由来とソーク由来と 2 つあるのですが、それの互換性を見よと、具体的にはそういうような内容を暗に考えているということでよろしいですか。
○氏家課長補佐 そうです。具体的には、御指摘いただいたように、 2012 年に IPV が導入された際には、 OPV との互換性というものが検討されましたし、実際にソーク株とセービン株に関する互換性も研究班等で有効性を確認しているところだと認識しています。そういったような方法等で、被接種者がスケジュールを現行よりも更に複雑化するようなことを、できるだけ避けるような取組が望ましいだろうというような観点での記載です。
○庵原部会長 そうしましたら、事務局の提案どおりでよろしいですか。読んでいますと複雑な中身があるような気がします。氏家さんの説明を聞くと理解できるのですが、初めてこれを読むと読み取りにくいところがあるかと思います。個々に書くのではなくて、普遍化しようとしているからこういう形だと思いますので、内容的なところに委員の先生方の異論はありませんので、事務局で皆さん方が納得いくような文章に練り直していただければというのが注文です。
○氏家課長補佐 具体的に、企業の方々に対して要請するような文案を作成するときには、また部会長の庵原先生並びに先ほど御指摘のあった小森先生等に御相談させていただきながら、検討を進めていきたいと考えています。
○庵原部会長 そうしましたら、異議がなければ事務局の原案どおりということで進めます。
続いて、報告事項ということで、山本参考人から、季節性細胞培養インフルエンザワクチンの開発に向けた検討状況ということでよろしくお願いします。
○山本参考人 国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター第 5 室の山本典生と申します。よろしくお願いいたします。資料 4 に従って、「細胞培養季節性インフルエンザワクチンに関する検討課題について」ということで、御報告いたします。
スライドの 2 枚目です。このスライドは細胞培養法と鶏卵培養法の比較について示したものです。上半分が鶏卵培養法、下半分が細胞培養法です。まず、上半分の鶏卵培養法については、ワクチン製造用ウイルスを発育鶏卵で増やすという形です。この発育鶏卵を用意するときに、卵を産ませる雌のニワトリを準備するところにも時間が必要ということで、ワクチンの製造にはかなり長い時間が必要ということが分かっております。青い字で書いていますが、ワクチンの製造には、例えばパンデミックが起こった場合などに急遽製造するという場合には、 1 年半程度の時間が必要だと考えられています。また、ウイルスを鶏卵の中で増やしていくので、鶏卵馴化によりワクチンの抗原性が変化する場合があることも知られています。
一方、細胞培養法では、ワクチン製造用のウイルスを培養細胞で増やすわけですが、この培養細胞は既に手元にあるストックから細胞を増やし、迅速に拡大培養ができます。その結果、短期間に大量の製造が可能である。また、培養細胞を用いるので、鶏卵馴化に伴う抗原変異を回避又は軽減することが可能と考えられております。
スライドの 3 枚目です。しかしながら、細胞培養ワクチンにも問題点があります。様々な検討すべき課題があることが分かってきました。その検討課題について、 3 つあります。 1 番目は、細胞培養ワクチン製造用ウイルスの開発、供給体制についてです。簡単に言うと、この開発、供給体制がまだ整備されていないので、基礎的な様々な検討を行い、この体制を構築していくことを進めていく必要があるということです。
1番目の課題「細胞培養ワクチン製造用ウイルスの開発、供給体制について」に関連して行うべき事項として4点あります。
1点目として、細胞培養での継代におけるワクチン製造用ウイルスの抗原的、遺伝的安定性の解析を行う必要があります。
2 点目として、ワクチン製造効率向上のために、メーカー保有の細胞において行う継代馴化等が、ウイルスの抗原性、免疫原性へ与える影響の解析も必要です。
それを踏まえて 3 点目が、鶏卵培養によらず、細胞培養のみによりワクチン製造用ウイルスを開発、供給するための枠組の整備が必要である。
4 点目として、ワクチン製造用ウイルスの品質の担保です。この中に迷入ウイルス、インフルエンザウイルスと関係のないウイルスが入っていないことを確認する仕組みの構築も必要であるといったことが、課題として挙がっております。
4 枚目のスライドです。検討課題の 2 番目として、細胞培養ワクチンの力価測定法についてです。細胞培養ワクチンの力価を測定するための試験法、標準品選択の妥当性について、十分に検討しておく必要があります。
3 番目は、ワクチン製造用ウイルスの指定法の見直しについてです。製造用の細胞が各メーカーそれぞれで保有されている細胞ということですので、複数種類あります。複数のワクチン製造用ウイルスが必要になることが想定されます。したがって、現行の単一の株を指定する方法では対応できない可能性が高いです。この課題については、ワクチン株選定会議等ともリンクしながら検討を進めていくべき課題と存じます。
スライドの 5 枚目です。これは細胞培養ワクチン製造用ウイルスを作製するための枠組みについて、現状も含めて示したものです。これまで検討課題 1 から 3 を示したうちの 1 番目に関連するところです。現状、細胞培養ワクチン製造用ウイルスを作製するための国際的枠組みに関する検討が WHO ネットワーク内で、進められているところです。
2 ポツですが、 WHO ネットワーク内での検討内容も踏まえながら、国内における細胞培養ワクチン製造用ウイルスの作製の枠組みについて、結核感染症課の同席の下、国立感染症研究所とワクチンメーカーで、これまで検討を行ってきました。
その検討内容を示したのが、 6 枚目のスライドです。国内における細胞培養ワクチン製造用ウイルスの作製・供給体制の検討を進めてきましたところ、以下の 3 つの段階を含む形が提案されてきました。
まず第 1 段階目として、安全性が確認された細胞を用いたワクチン候補株の確保、性状解析及びワクチン製造所への供給です。これは、例えばウイルスを含む臨床検体などを安全性が確認された細胞に振りかけ、材料となるウイルスを分離してくるということが想定されています。
第 2 段階目として、 1 段階目で分離されたウイルスを用いてということになりますが、ワクチン製造所における高増殖株の開発を含む、ワクチン製造候補株の適性検討。これは増殖性を見る等の試験が含まれると想定しています。また、増殖性の上がったウイルスを作っていくことが含まれると想定しています。
第 3 段階目として、感染研におけるワクチン製造候補株の適性確認試験です。これは第 2 段階から出てきた増殖性が上がったウイルスのワクチン製造に関する適性を感染研で確認していく、抗原性がずれていないか等を確認していくことを想定しています。
7 枚目のスライドです。先ほど、細胞培養ワクチン用のウイルスを作製するためには「安全性が確認された細胞が必要」と申し上げましたが、実際にそれが必要と考えております。 1 ポツですが、このウイルスを作製するための細胞は、病原体等による汚染がないこと、がん原性がないこと等が確認されている必要があると考えております。そこで感染研では、臨床検体からのウイルス分離に使用可能な細胞の 1 つとして、 GMP 準拠条件下で、無血清培地馴化 MDCK の細胞バンク (MDCK-NIID) を構築いたしました。
そして、感染研で構築した MDCK-NIID 細胞バンクを GMP/GLP 基準の安全性試験・特性試験で評価いたしました。その結果をまとめたものが、 8 枚目のスライドです。
結果についてです。 1 点目、 MDCK-NIID のマスターセルバンクについて、 13 項目の GMP/GLP 試験を行い、これは全試験で問題がないことを確認しました。
2 点目として、このマスターセルバンクから作ったワーキングセルバンクについて、 7 項目の安全性試験・特性試験を行いましたが、これも全試験で合格し、問題がないことを確認いたしました。 3 点目として、このワーキングセルバンクをさらに 20 代継代したものを End-of-production cell 、つまり実際の製造の過程に必要な代数を大きく超えた代数、培養した細胞について、 16 項目の安全性試験・特性試験を実施し、全試験で合格し、問題がないことを確認いたしました。
9 枚目のスライドです。以上、感染研で構築した MDCK-NIID の細胞バンクは全ての安全性試験・特性試験で問題を認めなかったということから、安全性等の観点からは、この細胞バンクはワクチン製造用ウイルスを作製するために使用可能と考えられました。では、この MDCK-NIID はウイルスの分離効率や増殖性についてはどうなのでしょうか。その点について評価した結果が、次の 10 枚目以降のスライドです。
10 枚目のスライドです。このスライドは、 MDCK-NIID 細胞に H1N1pdm09 のウイルスを含む臨床検体を振りかけ、その後、継代をします。そして、 HA 価を測定したというテーブルです。パッサージナンバーの後に 1 、 2 、 3 、 4 とあって、これが継代数で、その下にある 2 未満であるとか 8 という数字が、 HA タイターになっています。上半分の 5 つが、 MDCK-NIID 細胞の結果で、その下の半分の「 conv-MDCK 」とあるのが、 conventional MDCK ということで、これは GMP グレードではない、通常の研究室にある MDCK 細胞ということになります。これをコントロールとして置いております。実験を行ってみたところ、 MDCK-NIID 細胞では、 1 つの検体でのみウイルスが分離できて、分離率は 20 %という結果であるのに対し、 conventional のほうは 5 検体中 5 検体で分離できたという結果になり、この結果を見る限りでは、 MDCK-NIID では分離効率が低そうだという結果になりました。
10 ページの表の右のほうを見ていただきますと、「 Real-time Cts 」と書いてある部分があります。これは Real-time PCR の結果を示したもので、数字が出ていますが、 29.18 という数字は PCR をして信号が立ち上がるまでの回数を示したものです。これが少なければ少ないほどウイルスの量が多く、多ければ多いほどウイルスの量が少ないということになるわけですが、これとの相関で見ると、 MDCK-NIID で分離された臨床検体では 25.59 という数字になっていて、つまり、ほかの臨床検体に比べるとウイルス含量が多い臨床検体であることが分かりました。これを踏まえて、ウイルスの量が多いところから少ないところまで、ある程度分布している臨床検体をもう少したくさん使用して、どの程度分離できるのかを調べたのが、 11 枚目のスライドです。
このスライドは、 MDCK-NIID に、ここに並んでいる数の臨床検体を振りかけ、分離されるかされないか、 HA タイターはどうかを見たということです。そうしますと、上の TA71 から TA78 までは分離できております。その下の TA95 から TA79 までは分離できておりません。タイプ A の Real-time PCR の立ち上がりの回数を見ると、これは少ないほうから多いほうにと並んでいるのですが、 25.59 回の立ち上がりまではウイルスが分離できております。しかし、 26.12 以上の回数が立ち上がりまでかかるものについては、分離できないということです。つまり、ウイルス量がある程度入っているというもの、 PCR で 26 回未満であるものについては、ウイルス分離に使える。実際、この 26 回未満で立ち上がるウイルス量を含む臨床検体というのはどの程度あるのかというと、私たちの手元に 39 の臨床検体がありましたが、そのうちの 27 、 69 %が、 26 回未満の Ct 値を示しましたので、 7 割程度はウイルス分離に使えるということになりました。
スライド 12 です。今度は H3N2 について、ウイルス分離効率、 HA タイターを見たものです。こちらについては、コントロール MDCK も MDCK-NIID も、 100 %ウイルスが分離できました。
13 枚目のスライドです。こちらは B/Victoria について見たものです。こちらについても、コントロールも NIID 細胞のほうも、全例ウイルスが分離できました。こちらのほうは立ち上がりの回数が 30 回、 31 回とかなり多く、つまりウイルス量として少ないものでも分離ができております。
スライド 14 です。 B/Yamagata について同様の試験を行った結果です。こちらについても、全例でウイルス分離ができました。こちらについては 35.82 といった回数でもウイルスを分離することができました。
スライド 15 です。以上の結果をまとめますと、 A(H3N2) 、 B/Victoria 、 B/Yamagata については、 MDCK-NIID 細胞のウイルス分離効率、また分離ウイルスの増殖性は、 conventional MDCK 細胞と同様に良好でした。 2 ポツですが、 A(H1N1)pdm09 については MDCK-NIID 細胞のウイルス分離効率は conventional MDCK よりも低い傾向にありましたが、ウイルスを多めに含む臨床検体を選択することにより、高い効率でウイルスを分離することができました。 3 ポツですが、現時点までの限られた解析の結果からは、 MDCK-NIID 細胞はワクチン製造用ウイルス作製のための野性株分離用細胞として使用可能と考えられました。現時点ではまだ解析数が少ないので、今後検体数を増やし、解析を更に進めていく予定にしております。
スライド 16 です。このスライドは今後の取組について示しています。このスライドの最初のほうでも「検討課題」ということで挙げていますが、それらについて今後進めていくということで、ワクチンメーカーとの会議でも合意ができております。
1 点目は、細胞培養ワクチン製造用ウイルスの試験的開発、 2 点目は細胞培養ワクチンの力価測定法の検討、 3 点目は細胞培養ワクチン製造用ウイルスの指定方法に関する検討を進めていくということです。
1 点目の試験的開発についてですが、次のスライドです。この「細胞培養ワクチン製造用ウイルスの試験的開発について」ですが、ここまでの検討から、前のスライドで示したとおり、 3 つの段階からなる枠組みが提案されております。この枠組みを踏まえて、この体制を具体的に実施するため、メーカー、結核感染症課、感染研の連携体制で、必要な各種試験系の構築と実施戦略の策定を進めてまいります。また、この試験的開発を行うことにより、ウイルスの増殖性、ワクチンの収量、抗原的安定性等に関する基礎的なデータを得ることができ、また現段階では見えていない潜在的問題点を明らかにできると期待できると考えています。私の発表は以上です。
○庵原部会長 御質問はございますでしょうか。
○坂元委員 こういう系の確立というのは、例えば知的財産として登録できるのか、例えば使うウイルスに関しても細胞に関しても、どこかに提供するときに、これは 1 つの知的財産として売買が可能なのか、それとも一定メーカーから要望があれば無償で提供するものなのか、その辺が分かったらお教えいただきたいと思います。
○山本参考人 この MDCK-NIID 細胞を用いて分離したウイルスについては、知的財産等は発生しないと考えております。この MDCK-NIID 細胞は先進的な何かの工夫などが、いい意味で加えられていない細胞ということですので、一般的な細胞という位置づけですので、そこから採れたウイルスについても、フリーに配布できるものと考えております。
○山口委員 感染研でやられているときは接着細胞として樹立されたものを用いて、どれが一番いいかという評価をされたのだと思うのですが、企業だとそれを受けて培養されるというか、企業だと浮遊細胞を使ったり、あるいはサイトデックスのようなものを使ったり、いろいろと使い方が違ってくる可能性があります。こういう場合に、ある考え方であれば、 MICK-NIID に馴化されたウイルスということになると思うのですが、この細胞そのものを生産用に供給するということはまず考えていない、それはもう生産のほうは企業の最適化された方法でという、そこは今後企業のほうで評価をしていくということになるのでしょうか。
○山本参考人 現時点で細胞培養ワクチンの開発を進めているメーカー等は、それぞれのシステム、細胞培養系を持っておりますので、この MDCK-NIID 細胞を使ってメーカーがワクチンを製造することは想定しておりません。
ただ、この試験的な枠組み、試験的な検討を行うということですが、その中で MDCK-NIID 、先ほど御指摘の MDCK に馴化されたような変異があるかもしれないといったことがございましたが、それを持ったウイルスを各メーカーの細胞で増やしたときにどうかといったことも含めて、検討する予定です。
○山口委員 それと、これは今、臨床検体を MDCK-NIID でやられているということなのですが、実際には WHO から指定された株を季節性のところに適用するのであったら、そういうところの評価が今後必要になってくるのでしょうか、それとも野性株の指定された株だけでいいのでしょうか。
○山本参考人 海外的な情勢から見ても、細胞培養ワクチンの開発が非常に活発に進められているところは日本ということですので、日本国内でこういった株を作っていく枠組みといったことは考えていかなければいけないと思っておりますが、そういった状況から、臨床検体から国内でもウイルスを分離して、ワクチン製造用のウイルスを作っていくことができる体制が必要と考えております。
その際、流行の中心の中に含まれているウイルスであるといったことは、当然確認が必要で、そのためにはサーベイランスのデータとも比較しながら選んでいく必要があるのだろうと思っております。
○山口委員 MDCK-NIID のウイルス安全性も評価され、合格というのは、 ICHQ5A みたいな、そういうものに適合しているということでしょうか。
○山本参考人 これまでの様々なガイドライン、 CBER が出しているガイダンスといったものを参考にし、試験項目を検討し、 in vitro の迷入否定試験とか、 in vivo も行っておりますし、 oncogenicity なども行っております。
○庵原部会長 私から 2 つあります。 1 つは、山口委員との関連です。今インフルエンザワクチンを作る regulation として、鶏卵分離されたものでしかワクチンのシードにはならないというのがあるはずなのですが、今後先ほどの御提案のように、培養細胞で採れたものをシードにするというときは、当然 regulation は変わるだろうという予測でよろしいのでしょうか。
○山本参考人 私の理解では、そのようにする必要があると考えています。 regulation の部分も含めてと。
○庵原部会長 開発が実用化できそうだといった段階では、当然 regulation を変えなければいけないということでよろしいでしょうか。
○山本参考人 そのように考えています。
○庵原部会長 2 点目が、 H1N1 の分離率の効率が悪いのですが、これは 2009 年のサンプルだからということでしょうか。ちなみに、去年 2013 、 2014 シーズンに H1N1 は流行りましたが、それだとサンプルの分離効率は上がっていないかというところなのですが。
○山本参考人 2013 、 2014 シーズンの臨床検体からの分離については、正にこれから検討するという段階ですので、その結果を待つしかないという状況ですが、一般的に MDCK での H1N1 pdm の増殖性というのは、ほかの亜型や B などに比べて低い傾向にはあるようです。
○庵原部会長 それは、まだ十分に人の細胞にアダプトしていないからであって、人の間で何シーズンか付けばアダプトしてきて、分離されやすくなるという予測はいかがなのですか。
○山本参考人 その予測は十分に成り立ち得るものと考えます。
○庵原部会長 このメリットは無血清で増やすことができるという、しかも安全性が確認されているということで、もし可能ならば将来メーカーにも供給する予定があるという解釈でよろしいですか。
○山本参考人 はい。正に、分離ウイルスのメーカーへの供給といったことを念頭に置きながら開発を進めているという状況ですが、細胞培養ワクチンの 1 つのメリットとしては、特に現在は H3N2 のワクチンについて鶏卵馴化によって有効性が低下するという問題が指摘されておりますが、例えばそういった問題が細胞培養ワクチンに切り替えることで改善可能ではないか、そういったメリットが考えられております。
○庵原部会長 ほかに御意見はございますでしょうか。順調に進むことを期待していますのと、ひょっとしたら合いの子みたいな、この亜型は卵で、この亜型は細胞でというような、それだとそれでまた regulation を変えていかないといけないという、できましたら事務局、実情に合わせた regulation をするようにということで、審査管理課等と早めの調整をお願いしたいと思います。
特にワクチンというのは、いろいろな技術で今後開発されてくると思いますので、開発された技術でできたワクチンが人にも使えるように、それを regulation で駄目だということがないように、その辺のこともメーカーが開発するに当たって大事なことだと思いますので、その辺も念頭に入れて検討をお願いしたいと思います。最後に意見はございますでしょうか。なければ事務局にマイクを戻します。
○滝室長補佐 本日はありがとうございました。次回の日程は未定ですので、改めて御連絡させていただきます。
○庵原部会長 本日はどうもありがとうございました。これで第 8 回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会を閉会いたします。
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