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2014年8月27日 第1回 障害者総合支援法対象疾病検討会 議事録

社会・援護局 障害保健福祉部

○日時

平成26年8月27日(水)13:00~15:00


○場所

労働委員会会館 6階612会議室


○議題

(1)検討会の開催について
(2)検討会の進め方について
(3)障害者総合支援法における障害福祉サービスについて
(4)関係団体ヒアリング
  ○一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会
                代表理事 伊藤たてお氏
  ○認定NPO法人 難病のこども支援全国ネットワーク
                会  長 小林 信秋氏
(5)その他

○議事

○田中課長補佐

ただいまより「第1回障害者総合支援法対象疾病検討会」を開催いたします。皆様方には、お忙しいところお集まりいただきましてありがとうございます。議事に先立ちまして、障害保健福祉部の藤井部長より御挨拶を申し上げます。

○藤井障害保健福祉部長

本日は、お忙しいところお集まりいただきまして誠にありがとうございます。障害保健福祉部長をしております藤井と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

このたびは、障害者総合支援法対象疾病検討会への参加を心よくお引き受けいただきまして誠にありがとうございます。心より感謝いたします。皆様方御案内のように、平成26523日に、「難病の患者に対する医療等に関する法律」が成立いたしまして、先月末より厚生科学審議会の疾病対策部会の指定難病検討委員会におきまして、同法に基づく医療費助成の対象となります、指定難病の範囲についての検討が始まっております。

難病に関する障害福祉サービスにおける取組としては、平成2541日に施行されました障害者総合支援法において、障害者に難病等が加えられまして、その範囲については当面の措置として130疾病を規定して運用してきたところです。本検討委員会は、難病法の成立あるいは指定難病検討会の議論を踏まえまして、障害者総合支援法における難病等の範囲等対象疾病について改めて検討を行っていただくということを目的としております。私、本日国会関係の外せない要務が入ってしまいましたので、後ほど失礼をさせていただきますが、この検討会につきましては、障害者総合支援法における難病等の取扱いの考え方を方向づける大変重要な会であると考えておりますので、構成員の皆様方には活発な御議論をお願いいただければ幸いです、よろしくお願いいたします。

○田中課長補佐

カメラ撮影はここまでとさせていただきます。傍聴される皆様におかれましては、傍聴時の注意事項の遵守を何とぞお願いいたします。

 続きまして、構成員の皆様の御紹介をさせていただきたいと思います。

資料1、裏面に名簿を添付させていただいておりますので、五十音順にお名前を御紹介させていただきます。飯野ゆき子構成員です。大澤真木子構成員です。丹野久美構成員です。千葉勉構成員です。寺島彰構成員です。直江知樹構成員です。中島八十一構成員です。中村耕三構成員です。平野方紹構成員です。水澤英洋構成員です。宮坂信之構成員です。和田隆志構成員です。

 なお、錦織千佳子構成員におかれましては、本日御欠席ということでお伺いしております。次に参考人を御紹介いたします。一般社団法人日本難病・疾病団体協議会伊藤たてお代表理事です。

○伊藤参考人

伊藤です、どうぞよろしくお願いします。

○田中課長補佐

認定NPO法人難病のこども支援全国ネットワーク、小林信秋会長です。

○小林参考人

小林です、どうぞよろしくお願いいたします。

○田中課長補佐

続きまして、事務局の紹介をさせていただきます。障害保健福祉部長の藤井です。企画課長の川又です。企画課課長補佐の小牟禮です。最後に、私、企画課課長補佐の田中です。本日は、どうぞよろしくお願いいたします。なお、藤井部長は、公務のため途中退席させていただきますので、よろしくお願いします。

 それでは、本検討会の立ち上げに際し、座長の選出をお願いしたいと存じます。どなたか御推薦はございませんでしょうか。

○千葉構成員

障害者行政に精通しておられるということと、御専門領域がこの件に関係しておられるということで、私は国立リハビリテーションセンターの中村先生を御推薦させていただきたいと思います。

○田中課長補佐

中村構成員ということで、ただいま御推薦がございましたが、皆様いかがでしょうか。

(異議なし)

○田中課長補佐

ありがとうございます。では、中村座長よろしくお願いいたします。

○中村座長

中村でございます。着座にて失礼しますが、先ほど藤井部長のほうから御挨拶がありましたとおり、大変重要な課題を検討する会と認識をいたしております。大変大役ですが、皆様で進めてまいりたいと思いますので、是非御協力のほどよろしくお願い申し上げたいと思います。

 それでは、開催要綱に基づきまして、座長代理は座長が指名することになっておりますので、平野構成員にお願いをしたいと思いますが、いかがでしょうか。

(異議なし)

○中村座長

ありがとうございます。それでは、事務局のほうから資料の確認をお願いいたします。

○田中課長補佐

資料の確認をさせていただきます。議事次第に続きまして、資料1、障害者総合支援法対象疾病検討会開催要綱。資料2-1、障害者総合支援法対象疾病検討会の進め方について。資料2-2、難病の患者に対する医療等に関する法律について。資料3、障害者総合支援法における難病患者に対する障害福祉サービス。資料4、ヒアリング団体資料1、資料5、ヒアリング団体資料2、以上お手元にございますでしょうか。不足等ございましたら事務局にお知らせください。なお、本検討会は公開のため資料、議事録は厚生労働省のホームページに掲載されますので、予め御了承くださいますようお願い申し上げます。

○中村座長

議事に入ります。第1回目の検討会ですので、質疑の時間について一言申し上げておきたいと思います。事務局においては、資料の説明はできる限り簡潔に、要点を押さえた説明となるようにお願いします。また、各構成員におかれましても、より多くの方の御発言の機会を確保したいと思いますので、できる限り簡潔に御発言いただきたいと思います。円滑な会議運営に御協力をお願いいたします。

 本日の議事の進め方と議事内容について、事務局から説明をお願いいたします。

○田中課長補佐

本日の議事は、まず議事(1)「検討会の開催について」、議事(2)「検討会の進め方について」、議事(3)「障害者総合支援法における障害福祉サービスについて」です。事務局より説明させていただきます。

 ここまでの説明の後、一旦質疑応答時間を挟み、議事(4)「関係団体のヒアリング」を実施させていただきます。ヒアリングに関する御質問や御意見については、2団体のプレゼン後にまとめて行う予定ですので、よろしくお願いいたします。まず、議事(1)から議事(3)について説明いたします。

 議事(1)「検討会の開催について」、資料1です。こちらは本検討会の開催要綱をお示ししたものです。本検討会の趣旨としては、平成271月施行の「難病の患者に対する医療等に関する法律」の成立に伴う指定難病の対象疾患の検討を踏まえ、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に応援するための法律(以下、「障害者総合支援法」)の対象となる難病等の範囲について、有識者、関係者の参集を得て検討を行うこととなっております。以下、構成等については記載のとおりです。

 次に、議事(2)「検討の進め方について」、資料2-1です。本検討会の進め方にあたりましては、指定難病の検討の進め方を参考といたします。なお、この資料にある点線の枠で囲んだ部分は、平成26728日、第1回指定難病検討委員会資料からの抜粋です。

 簡単に参考資料を読ませていただきます。指定難病の検討の進め方()としては、指定難病の検討にあたり、難病に関する基礎的な情報を、厚生労働科学研究費補助金事業における研究班等で収集、整理するとされております。

 また、指定難病検討会において、これまでに研究班等が整理した情報を基に、医学的見知より、個々の疾病について指定難病の各要件を満たすかどうかの検討を行うとしています。なお、指定難病とされるためには、「発病の機構が明らかでない」「治療方法が確立していない」「長期の療養を必要とする」「患者数が人口の0.1%程度に達しない」「客観的な診断基準等が確立している」の5要件を満たすことが必要です。また、この指定難病検討委員会の検討の結果は、厚生科学審議会疾病対策部会に報告することとなっております。

 疾病対策部会において指定難病について審議を行い、具体的な病名などを決定します。厚生労働大臣が指定難病を決定し、厚生労働大臣による指定後も、指定難病検討委員会において難病に関する情報収集を継続的に行い、必要に応じて新規の指定難病の追加等の見直しを行うとされております。

 なお、この参考資料において、平成26年内の指定難病の検討の進め方の案としては、施行までに患者及び医療機関への周知など準備期間が必要であることから、平成271月から医療費助成を行う第1次実施分の指定難病については時間的な制約を考慮し、以下のように検討を行うこととしてはどうかと提案されております。

 ひとつは「これまで医療費助成の対象となってきた特定疾患を中心に、指定難病の各要件を満たしているかについての判断材料が整った疾患を検討対象とすること」、2つ目に、「まず、特定疾患を中心に指定難病としての該当性や重症度分類等に関する検討を行い、併せて、特定疾患と同時に検討が可能な疾患についての議論も行うこと」、3つ目に「小児慢性特定疾病として新たに追加されることが検討されている疾患のうち、指定難病の各要件を満たしているかについての判断材料が整った疾患について、検討を行う」としてはどうかとされております。

 また、以下の1から3のように、現時点で検討に時間を要する疾患については、第2次実施分(平成27年夏頃から実施)、この検討に向けて基礎的資料の収集・整理を行った上で、今秋以降に指定難病検討委員会で議論をすることとしてはどうかということで、学術的な整理や情報収集が不十分な疾患、症状名がそのまま疾患名となっている疾患、新しい診断基準等を作成中の疾患等とされているところです。以上は指定難病検討委員会の資料からの抜粋です。

 次のページです。これらの指定難病の検討の進め方を受けて、障害者総合支援法対象疾病検討会におきましては、指定難病の基準を踏まえつつ、福祉的な見地より、障害者総合支援法の対象となる難病等の要件等を検討することといたします。なお、本検討会の議論に際し、参考人として患者の立場を代表する方々を招聘することとして、本日ヒアリングを予定しております。

 また、本検討会において、障害者総合支援法の対象となる難病等の具体的な対象疾病について検討を行います。本検討会の検討結果は社会保障審議会障害者部会に報告いたします。その後、障害者総合支援法施行令別表を改正いたします。検討のスケジュール及び検討内容については、別紙1のとおりといたします。

 別紙1を御覧ください。まず、検討会において第1次実施分の対象疾病を検討しますが、今後の予定としては、秋頃をめどに第1次疾病を取りまとめ、障害者部会に報告いたします。その後、政令の改正を行い、平成271月以降に障害者総合支援法における難病等の第1次疾病の実施を予定しております。なお、第2次疾病については、その後の検討になるかと存じます。

 別紙2です。今後の検討内容の案ですが、本日は障害者総合支援法対象疾病検討会の進め方、関係団体のヒアリングを行います。第2回は9月中旬頃に予定しておりますが、障害者総合支援法の対象となる難病等の考え方として、福祉的な見地も加味した要件等について検討いたします。第3回目は10月初旬に予定していますが、障害者総合支援法の対象となる難病等の具体的範囲、つまり一次疾病()の検討と決定を行います。以上が「今後の本検討会の進め方について」です。

 次に、資料3です。障害者総合支援法における難病患者等に対する障害福祉サービスについて、すなわち現在の130疾病の方たちが利用できるサービスについて簡単に御説明いたします。

1ページで、障害福祉施策の歴史を簡単にまとめたものを御紹介いたします。障害者の法律というのは、身体障害者、知的障害者、精神障害者、そもそも3障害に分かれてそれぞれ法律があったものが、様々な経過を経まして、平成18年に障害者自立支援法が施行されたことで、この3障害共通の制度となったところです。地域生活を支援するといったような制度となりました。

 さらに、この障害者自立支援法の見直しが行われまして、平成254月より障害者総合支援法が施行されました。この障害者総合支援法におきましては、地域社会における障害者の共生の実現や、新たに障害者の定義に「難病等」が対象になったこと等が挙げられます。

2ページは、「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律の概要」です。要は障害者総合支援法の概要をお示ししたものです。2「概要」の2基本理念ですが、この法律は法に基づく日常生活・社会生活の支援が、共生社会を実現するため、社会参加の機会の確保及び地域社会における共生、社会的障壁の除去に資するよう、総合的かつ計画的に行われることを法律の基本理念として新たに掲げたものです。

3「障害者の範囲」ですが、障害児の範囲も同様です。制度の谷間を埋めるべく障害者の範囲に「難病等」が加わりました。また、見直しとしては、「障害支援区分」というものが創設され、これまでの「障害程度区分」を障害の多様な特性、その他の心身の状態に応じて、必要とされる標準的な支援の度合いを総合的に示す障害支援区分に改めたところです。

3ページは、障害者総合支援法における障害者の範囲の見直しのスライドです。制度の谷間のない支援を提供するという観点から、障害福祉サービスの対象に新たに「難病等」が加わったところですが、その範囲は当面の措置として、難病患者等居宅生活支援事業の対象疾病と同じ範囲、これを130疾患を政令で規定し、平成254月から制度を施行した上で、「新たな難病対策における医療費助成の対象疾患の範囲等に係る検討を踏まえ、見直しを行うものとする」とされております。

 なお、この障害者総合支援法における障害者の範囲に「難病等」が加わったことでどういったメリットがあるかといいますと、難病患者等で症状の変動などにより、身体障害者手帳の取得ができないけれども一定の障害があるという方々に対し、障害福祉サービスを提供できるようになりました。また、これまでは補助金事業として、一部の市町村での実施であったものが全市町村において提供可能となりました。また、受けられるサービスがホームヘルプサービス、短期入所、日常生活用具給付だけでなく、新法に定める障害福祉サービスに広がったことなどが挙げられます。

4ページは、現行の障害者総合支援法の対象疾患一覧(130疾患)を示したものです。5枚目は、実際にこの130疾患の方々が利用できる障害福祉サービスの体系を示したものです。ここにあるように、介護給付、訓練等給付、補装具、地域生活支援事業における様々なサービスを受けられます。

6枚目、7枚目は、障害福祉サービス等の体系を具体的に提示したものです。一番左を見ていただくと、訪問系サービス、日中活動系サービス、施設系サービス、居住系サービス、訓練系、就労系サービス、障害児通所系サービス、障害児入所系サービス、相談支援系サービスがあります。

8枚目、9枚目ですが、障害福祉サービスにおいて障害支援区分がございます。先に、障害者総合支援法における障害支援区分という、幾つか四角で囲っているほうのページをご覧下さい。障害福祉サービスを受けるに当たり、障害支援区分の認定を受ける必要があります。その障害支援区分の定義ですが、障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて、必要とされる標準的な支援の度合いを総合的に示すもので、「非該当」から「区分1」から「区分6」まであり、数字が大きいほど必要とされる支援の度合いが高いとなっております。

 その認定手続は、市町村は支給決定を受けようとする障害者等からの申請があった場合、以下の手続による障害支援区分の認定を行います。市町村への申請がありましたら、認定調査員による訪問調査の結果、主治医の意見書により、コンピュータで一次判定がなされます。なお、このコンピュータの一次判定において、できる状態、できない状態と、症状に波がある場合には、できない状態で判断することとされております。それから認定調査員による特記事項、主治医の意見書を参考に、市町村審査会で二次判定が行われ、市町村による認定、申請者への通知が行われます。

 なお、御参考までに、平成2410月から平成259月までの障害程度区分、二次判定の結果ですが、非該当が0.1%、区分16.8%、区分2から区分6までは、おおむねそれぞれ1420%となっております。

10枚目「児童福祉法及び障害者総合支援法における障害福祉サービス等の受給要件」について、御説明いたします。まず、障害児、障害者の定義です。

まず「障害児」の定義です。18歳未満で身体に障害のある児童、知的障害のある児童、精神に障害のある児童(発達障害を含む)、若しくは治療方法が確立していない疾病、その他の特殊な疾病であって、障害者総合支援法の第4条第1項の政令で定めるものによる障害の程度が、同等の厚生労働大臣が定める程度である児童。これは先ほどお示しした130疾患と同じです。障害者総合支援法における「障害者」の定義は、年齢は18歳以上で、身体障害者福祉法第4条に規定する身体障害者、すなわち身体障害者手帳の交付を受けた者、それから知的障害者福祉法にいう知的障害者、精神保健福祉法第5条に規定する精神障害者、130疾病とされております。

 障害福祉サービス等を受けるに際しての手帳の要否ですが、児童福祉法においては、必ずしも手帳の所持は必要ではありません。市町村又は児童相談所が必要性を判断いたします。なお、障害者総合支援法においては、身体障害の場合は身体障害者手帳の所持は必須です。また、知的や精神の場合は、必ずしも手帳の所持は必須ではありません。なお、難病等130疾患の方は身体障害者手帳等の所持は不要です。障害支援区分においては、児童福祉法における障害児においては支援区分の適用はありません。障害者総合支援法における障害者においては、介護給付等の支給対象となるサービスを利用する際、障害支援区分の認定が必要ですが、訓練等給付の支給対象となるサービスにおいては、障害支援区分は不要となっています。例えば就労支援などの訓練系、就労系のサービスの場合は障害支援区分の認定を受けることは不要となっております。

 次に、障害福祉サービスの実利用者数の推移をお示しいたします。平成223月から平成263月までを棒グラフで示していますが、平成263月で約70万人の方が障害福祉サービスを受けています。この内訳は、身体障害者が19.9万人、知的障害者が33.5万人、精神障害者が14.4万人、難病等の130疾病の方はおおよそ800人となっております。

12枚目は、難病等130疾患の方における障害福祉サービスの利用状況の推移を示したものです。障害者総合支援法が施行された平成254月以降を示していますが、当初は156人であったものが徐々に増えて、1か月にのべ人数で822人の方に利用していただいています。

13枚目は、難病患者等の130疾患の利用者における実際の福祉サービスでどのようなものを使っていただいたかを示したものです。のべ822人のうち目立つのが居宅介護であり、就労系サービスの利用もしていただいているところです。以上、事務局からの資料の説明でした。

○中村座長

御説明のあった議事(1)から議事(3)に関して、御質問等がありましたらお願いいたします。

○中島構成員

国リハの中島です。今、お示しいただいた資料3を拝見すると、最後のほうで、「実際の難病患者等の障害福祉サービス利用状況」という所で、難病患者の数からすると、利用者がとても少ないように思います。私自身が現場の医師としての感想というか、やや理解の浅いところで御教示願いたいのですが、「重症度分類を勘案して認定している12疾患」があります。ここにある認定対象の考え方として、「重症度が一定程度以上の者」という例示がありますが、その一方で、身障手帳の対象にならない軽い人でも支援サービスが受けられるという考えがあり、または障害支援区分というものがあり、それに掛けて初めて程度を判定することができるとなると、実際に現場の医師は重症度をどのように取り扱っていいか躊躇するところがあり、どれをどのように申請していったら、この患者さんに障害福祉サービスを利用していただけるかということに戸惑いを覚えます。

 例えば広範脊柱管狭窄症を例に採ると、ここでは「生活機能障害度が2度以上」と書いてありますが、これ以下だと福祉サービスの利用は難しいということになるのでしょうか。

○田中課長補佐

中島先生、ありがとうございます。重症度というのは、指定難病のほうの重症度でよろしかったでしょうか。

○中島構成員

はい。

○田中課長補佐

現在も難病の医療費助成のある56疾患においても、幾つか重症度が加味されているものがあるかと思いますが、それらで軽症の方で医療費助成の対象とならない方でも、現在も障害支援区分を受けて、障害福祉サービスのうち必要なサービスを受けることが可能ですので、是非そういったことを現場の先生や患者様にも知っていただけたらというところです。

○中島構成員

ありがとうございました。

○中村座長

ほかにございますでしょうか。

○大澤構成員

私も13ページの障害福祉サービス利用状況を拝見して質問です。例えば重度訪問介護というのが18名ということで、非常に少なくなっています。資料39ページで、市町村への申請があって、認定調査員による訪問調査、主治医の意見書というのがあります。実際の患者さんとして、特に精神の関係の患者さんなどの場合には、自宅を出られないとか、病院まで来るのが大変とか、パニックになってしまって病院に来られないとか、実際にはそういう患者さんがいらして、主治医の意見書を書くのに、大学病院の医師が患者さんの自宅まで行って意見書を書くというのは難しいですよね。

 その辺の実態で、実践不可能な状況というのが起こっているのかなと。認定調査員によって訪問調査をしていただくのは非常に結構だと思いますし、主治医を地域からピックアップできればいいのでしょうけれども、実際には利用に結び付かない問題があるかなという印象を受けました。具体的には、今後また検討されることと思いますが。

○田中課長補佐

ありがとうございます。なお、この障害福祉サービスの利用者の約800名ですが、それぞれの障害者手帳をお持ちの方は800名の中には含まれていません。非常に症状が重い方は手帳を取得されていて、そちらのサービス利用者としてカウントされている可能性は十分にあると思います。

○平野構成員

今、田中補佐からも話があったように、私は福祉のほうなのですが、実際には800人というのは一部の方だと思っています。実際には障害者手帳に該当する方がたくさんいらっしゃって、手帳の認定とか現場にいたのですが、4ページの関節リウマチ、ギラン・バレーといった部分は、実は身体障害者手帳に該当して、身体障害者としてカウントして受けている。この800人というのは難病患者なのだけれども、手帳に該当しないという人たちです。この部分が、逆に言うと現場からするとジレンマの部分で援助が必要だけれども現行では手が付かない、この辺が鍵になっています。

 もうひとつは、この間に身体障害者手帳の範囲が広がっていまして、例えば内部障害の小腸機能障害、肝臓機能障害など広がってきたことによって、クローン病や劇症肝炎なども、これまでは身体障害者の範囲に入らなかったのですが、今は手帳に該当して、障害者としてサービスを受けるようになってきたという歴史的な経緯もあり、それでも取り残されている部分がこれだけある、そういう意味で「谷間」という意味になっている形です。

 参考で言えば、ハンチントンなども昔は拾えなかったのですが、今は身障手帳あるいは精神のほうで拾っていますので、かなり拾えるようになってきたのですが、それでも本当に谷間の谷間で残ってしまったという、その辺のところをどうやって救済するのかというのが課題かなと思っております。

○中村座長

貴重な御意見をありがとうございました。ほかに御質問はございますか。

○寺島構成員

13 ページののべ822人の方のサービス利用状況なのですが、難病の方が居宅介護が必要だというのは分かるのですが、就労継続支援A型が117人おられます。その障害像というか、どういう方がいてこのように増えているのかが、もし分かれば教えていただきたいです。しかも障害者手帳を持っておられないということで、この方たちは総合支援法になる前は、制度を利用されておらず、総合支援法が利用できるようになってから117名が増えたという意味でしょうか。どういう方がそういうことを必要としている方なのかなという、分かれば教えていただければと思います。

○田中課長補佐

よろしければ外来等で就労に困っている難病患者さん等を御存じであれば、現場の先生から何か具体例をお示しいただければと思いますが、いかがでしょうか。

○平野構成員

全部がそうだというわけではないのですが、一般的傾向で多く、施設のほうから上げられているのは、難病の方の場合は波があるということです。A型とB型でいえば、A型は比較的福祉的雇用よりも一般雇用に近いところなのですが、波があるために、一般の企業だと波があるとうまく就労できない。そこで、波がある人たちを預っているという傾向が多いです。

B型になると福祉的な就労になってしまうので、作業内容が単調になってしまいます。一般的な企業で仕事をしたいのだけれども、どうしても病気特有の波があって、いいときはいいのだけれども駄目なときは本当に駄目になってしまうという状態があるので、そういうところがなかなか一般就労につながらなくて、そういう人たちを預っていく。

 ですから波の部分がすごく大きくて、普通の場合は障害は固定されているわけなのですが、難病の場合は変動するというのがあるので、変動の部分がA型につながる要素として、現場ではすごく対応している傾向にあります。一般的な傾向で恐縮です。

○寺島構成員

この方たちは、そもそも総合支援法の以前は対象になっていなかったのですか。新たに需要、ニーズを喚起したということでしょうか。

○平野構成員

これも一般的傾向なのですが、それまでは就労継続A、実は就労継続A自身が自立支援法になってから大分広がったのですが、それまではほとんどが正式な形では対象になっておらず、サービス的に援助したり、A型の場合は雇用型なのでオプションのような感じで扱っていて、法の対象ではなかったというものです。

 それから、市町村が独自にやっている福祉作業所のような、法外援護のような形で関わっていたというのが実態でございます。

○中村座長

ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。今後の進め方につながる話ですが、事務局からの説明の内容をよく考えてみますと、指定難病の対象が決まったものを基本とし、その中から総合支援法で見ていくものを決めていくとも書かれていますが、その辺の理解はよろしいですか。そちらのほうの検討会に出ておられる先生方も大変多いわけですが、その辺はいかがでしょうか。千葉構成員、その辺はいかがでしょうか。

○千葉構成員

指定難病につきましては、現在鋭意難病として決めていっているところです。説明がありましたように、第1陣、第2陣と分けて、現在は第1陣を決めていっているところです。私たちの理解でも、まずは指定難病として指定された疾患を対象としてここに入れ込んでくるという理解で話を進めております。そのほかの疾患等々についても、これがたくさんの方が利用できるというのはとても結構な話なのですが、やはりあるところで基準というのは必要になってくると思いますから、現時点では指定難病として指定されたものをこちらに入れていただいてという、そういう理解で考えております。

○中村座長

宮坂構成員もそれでよろしいでしょうか。

○宮坂構成員

はい。

○中村座長

そういう土台のもとに進めていく進め方についての説明もございましたが、この点はいかがでしょうか。第2回、第3回の進め方等について、御意見等はございますでしょうか。特にないようでしたら、御説明のあったとおりという方向で今後は進めてまいります。現在のところ、議事(1)、議事(2)、議事(3)については、そのような共通理解ということで、先にいきたいと思います。少し時間が早いですが、いかがいたしましょうか。

○田中課長補佐

ヒアリングに進めていただいて結構です。

○中村座長

それでは議事(4)、関係団体からのヒアリングに移りたいと思います。参考人のお二方には、本検討会のためにお忙しい中御出席を賜り、誠にありがとうございます。さっそくですが、一般社団法人日本難病・疾病団体協議会代表理事、伊藤たてお様よりお話を伺いたいと存じます。どうぞよろしくお願いします。

○伊藤参考人

日本難病・疾病団体協議会の伊藤です。今日はこのような機会を与えていただき、ありがとうございました。この施行に当たっての疾病の検討につきまして、患者から寄せられているいくつかのことについて、お伝えしておきたいと思います。

 私どもの意見としては、お手元の資料4にまとめてありますが、後ほど説明することにいたしまして、私たちの団体、あるいは活動について、若干説明をさせてもらいたいと思います。お手元の資料の3枚目になりますが、参考資料の中で、819日に厚生労働省の健康局疾病対策課及び障害保健福祉部、あるいは母子保健課等、関係部局の方々においでいただきまして、説明会を開いていただきました。そのときに参加した患者団体の一覧ですが、56の疾患団体が参加しています。

 また、そのとき事前にあらかじめ寄せられた、参加団体からの質問事項については、次のページから難病に関するもの、小児慢性特定疾患に関するもの、今後の課題に関するもの、障害福祉に関するもの、就労に関するもの、介護に関するもの等がこのように寄せられているので、参考として付けさせていただきました。

 この新しい難病対策というのは、今までのように研究と医療費助成に大きな焦点が当たっていたものから、更に細かく、就労から介護等に至るまでの、たくさんの課題があるということを、これでお示ししたいと思います。

 今回の「障害者総合支援法の対象疾病の検討についての意見」に移りたいと思います。また、私個人の意見としては、これは対象疾病ということでいいのかな、より広く検討していただけるということなのかなと思いますが、患者会の意見としては、対象疾病ということではなく、この中の様々な資料にもあるように、「難病等」とあるわけですから、「難病等の検討に当たって」とするべきではないかという意見があったことも、お伝えしておきたいと思います。

 この本文にありますが、細かいことはまた見ていただくことにして、今回については、この法律が成立するに当たって、衆議院及び参議院で付けられた附帯決議にあるような形で御検討いただきたい。後ほど説明したいと思います。そのことを踏まえた上で、大きく3点の要望を申し上げたいと思います。

1番目は、この指定難病の選定に当たりましては、学術的、あるいは医学的な見地から、どのように対象疾病を選ぶのかという問題がありますが、この「障害福祉サービスの利用」ということについては、疾病にかかわらず必要な制度を、必要な患者が使える制度ということが、我々の長い間の主張であることから、このサービスの適用についても、障害支援区分に基づいて判断していただきたい、「対象疾病のいかんにかかわらず」ということを申し上げたいわけですが、今般は対象疾病として決めるということですので、改めて「難病」の定義に含まれる全ての疾病を対象としていただきたい。検討要件においては、希少性は問わないということを申し上げておきたいと思います。

 なお、先ほどの議論の中にもあったことですが、障害程度区分から障害支援区分に変わったときに、大きく認定の仕方、基準等も変わっているので、そのことも是非念頭に入れた上での御検討をお願いしたいと思います。その上で改めて、疾患があることによって社会生活上の障害があって、社会的支援が必要だという患者を救うという観点から、是非柔軟に対応できるものとして、御検討いただきたいと思います。

 総合支援法では重症度にこだわらず、その疾患の患者を全て対象とし、支援区分の認定において、対象患者と支援の内容を決めるとされているわけですので、この点も是非、御検討の対象にしていただきたいと思います。

 また、私どもの経験から、患者の医学的な重症度やADLの程度と異なりまして、社会生活上の困難度ということが、これは重症度とはあまり関わらないということも往々にしてあるわけですので、その点についても是非御検討願いたい。いわゆるADLの基準には合致しなくても、様々な症状の現れ方や、外見、外貌といいますか、そういうことから極めて社会的な生活が困難であるという疾患も多いわけですので、是非そのような影響についての考慮もお願いしたい。また、この基準と認定に当たりましては、どうしても初めに医師の診断が必要になることから、治療法だけではなくて、社会生活に及ぼす影響が非常に少なくない状態についても、医師の診断によって大きく左右されるということから、先ほどの認定の基準等もありましたが、医師及び医療機関に対する、総合支援法に対する理解の促進が合わせて行われなければ、この認定が正しく行われない可能性があると思います。これについても後ほど、もう1点御意見を申し上げたいと思います。

2番目は、これまでの障害者福祉サービスの対象については、難治性疾患克服研究事業の臨床調査研究の対象疾患、いわゆる難病等の事業からの延長という経緯があって、関節リウマチもその対象になっていたわけですが、是非この指定難病ということだけにこだわらず、従来から対象となっていた身障手帳のない関節リウマチなどもこの対象として、検討の視野に入れていただきたい。

3番目ですが、現行の施策でも障害年金の制度があるわけです。日本の制度では、障害福祉だけではなくて、年金であるとか、介護保険であるとか、様々な分野で、それぞれの基準で対象範囲、重症度、支援区分を決めたりしています。それはそれなりの経過があってのことだと思いますが、障害年金においては、かなり幅広く対象を広げていますので、障害福祉サービスにおける疾病の範囲も、障害年金の対象とする疾病範囲まで、幅広く広げていただきたいということもお願いしておきます。また、身体障害者福祉における「内部障害」に含むことが適当だと思われる疾病もありますので、そのことについての周知もお願いしたいと思います。

 その詳しい具体的な説明に入る前ですが、次の資料1、障害者総合支援法における対象範囲について、国会での議論の中で、政務官、厚労大臣、あるいは当時の障害保健福祉部長が答弁している内容もあります。そのことも是非前提として御議論をお願いしたい。つまり、例えば赤石政務官は、難病の患者ではない障害者である者を例として、「診断基準が確立していない疾病にかかっているとされるため、難病の患者とは言えないが、痛みや倦怠感などの心身の機能の障害を有している者、こういう例があると思います」とお答えになっていますし、田村厚生労働大臣は、「難病指定されているものと、今、福祉サービスを受けられる範囲というものは、連動しているわけではない」ということも言っておりますので、必ずしも指定難病=新たな障害福祉サービスの対象疾患であるかないかということだけではない観点からの御検討をお願いしたいと思います。

 また、当時の障害保健福祉部長は、「具体的には、客観的な指標というものがまず大事ですので、客観的な指標に基づく一定の診断基準が確立していること。また、これを前提として、その上で指定難病の考え方、範囲等をよく踏まえながら、また、障害者のいわば福祉サービスの対象になるという点もよく考慮しながら、具体的な対象範囲というのを検討してまいりたい」と述べていることも、是非今後の検討の材料にしていただきたいと思います。

 なお、資料2ですが、この附帯決議については、衆議院の附帯決議、それから参議院の附帯決議が多少異なっていますが、参議院の附帯決議によりますと、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく、障害福祉サービスの対象となる難病の範囲等については、難病対策における指定難病の拡大を踏まえつつ、社会的支援の必要性等の観点から、幅広に判断すること」ということを決議しています。このことについても、是非よろしくお願い申し上げます。資料3では国民年金、厚生年金保険の障害認定基準というものがどうなっているかということについても書いているので、御検討いただきたいと思います。

 なお、この際に少し説明を申し上げたいと思いますが、難病患者が他の障害者と同等に障害福祉サービスを受けるに当たっての問題点を指摘しておきたいと思います。対象となっても、具体的な場面では対象とならないこともあることから、このことを申し上げたいと思います。

 その前に少し、825日の新聞各紙に出たと思いますが、障害年金の判定に地域格差がある、その地域格差は6倍であるということも言われていますし、同じ制度であっても、どこでどういう機関が、誰がどう判断するかによって、受けることができる人に大きな格差があるということがあります。そういうことの一例だと思いますが、平成254月時点での難病患者等居宅生活支援事業の中のホームヘルプサービスの利用者というのが、平成254月から障害福祉サービスへ移行したということについて、厚生労働省では調査していますが、そのときの対象患者が328名でした。これが障害者手帳を持っていない患者でしたが、その後、この4月になって新しい制度に移行する中で、難病として新しいサービスへ移行した者が216名であって、112名が移行しなかったということが調査に出ていますが、この移行しなかった理由というのが、身体障害者手帳を取得し、身体障害者として障害福祉サービスを受給した者が25名、介護保険に移行した者が25名、精神障害者保健福祉手帳を取得して、精神障害者としてサービスを受給した者が5名というもので、総数に対して16.76%の方が、つまりほかの制度を利用できていたかもしれない。4月になって急にこの制度の対象、障害者手帳の対象になったのではなくて、状況から見れば、その前から可能であったにもかかわらず、障害者手帳の対象とされてこなかった。つまり申請していなかったということも考えられることから、これは窓口ないし相談を受けた担当者の判断なのでしょうが、障害福祉サービスへの理解が、従来の難病の分野からの観点では不足していたということも考えられるわけです。つまり難病対策のほうにだけに視点が行っていたために、他の制度が使える状態であるにもかかわらず、身体障害者手帳の申請をしなかったということも考えられるということを、今後検討しなければならないと思います。

 この障害者福祉サービスだけではなくて、身体障害者手帳を持っている人と、持たない場合の難病患者が、この制度を利用する場合は、同じものを利用するかしないかだけではなくて、手帳を持っているか持っていないかということは、他のサービス、例えば雇用、失業保険、就労支援、障害年金、生活保護などにも大きく影響するわけですので、より有利な身体障害者手帳を受けることができるのであれば、そちらを優先するべきだということも、周知しなければならないと思います。

2番目ですが、介護の問題がひとつあります。介護についても、障害者総合支援法によるサービスを受ける場合と、介護保険によるサービスを受ける場合では、様々な違いがあったり、あるいはヘルパーの連続性などの問題もあって、いろいろ不都合が生じているので、今後これをどうするかという問題。あるいは、いくつかの疾病については、介護保険上の特定疾病ということで、40歳からの介護保険になりますが、この介護保険優先でいいのか。あるいは、障害者も65歳になると介護保険の対象になりますので、その場合がいいのかということも、合わせてこの機会に念頭に入れて、御検討いただければと思います。

 また、地域格差の問題があります。先ほど言いましたように、障害年金では大きな地域格差があるということは、調査の上で明らかになりましたが、この障害者福祉サービスの利用に関しても、大きな地域格差があると言われていますが、まだ具体的な調査は行われていません。

 また、一部拝見したところ、自治体によって書式がいろいろ違う。申請書や診断書の書式が違う。その中で、例えば難病が対象になっているので、「難病」という選択肢がある書式もあれば、それがない様式を使っている地域もあったりすることなどで、様々な取組の格差ということも影響しているかと思われますので、是非そういうことも念頭に入れた上で、分かりやすい制度にしていただければと思います。

 もうひとつ、同じ日本に住んでいて、同じ制度を受けるに当たりましても、地域による、例えば冬季積雪だとか様々な、あるいは交通機関というものによって、受けることができるサービスに格差もありますので、そういうことも念頭に入れて、御検討いただきたいと思います。

 短い時間ですので、多くの患者さんの実態を十分申し上げたとは思えませんが、実は指定難病の検討会に対しては、学術的な要素が大変強いというので、よく分からない患者が構成委員になるよりも、是非、専門の先生方に御検討をお願いしたいと思ったわけですが、患者の具体的な生活上の、あるいは福祉サービスを受ける上での観点から検討すべき当検討会におきましては、是非、当事者の参加というのも検討していただきたかった。今日はこういうヒアリングという形で意見を申し述べさせていただきましたが、本来、当事者参加を言うのであれば、是非、当事者の代表も構成メンバーに入れてほしかったという声も大変強くあることを申し添えて、意見陳述を終わりたいと思います。以上です。ありがとうございました。

○中村座長

どうもありがとうございました。それでは、引き続き認定NPO法人難病の子ども支援全国ネットワーク会長の小林信秋様、よろしくお願いします。

○小林参考人

小林と申します。今日は本検討会において、意見を申し上げる機会を頂きまして、大変ありがとうございます。私どもはこの資料にありますように認定NPO法人として、難病の子どもたちと家族を支えるための活動を、四半世紀以上にわたって進めてきています。小児がんや先天性心臓病など、56の親の会が活動に参加して、研修をしたり、親睦を図ったり、あるいは行政へのお願い、働き掛けなどもしてきています。

 私自身はSSPE、亜急性硬化性全脳炎患者の元親です。元というのは、もう子どもは亡くなっていますが、その患者会活動を通じて、こうしたことに参画してきたわけです。一方で小児慢性疾患児の支援に関する専門委員会の委員を拝命して、これまで委員会で様々な発言等をさせていただいています。

 資料に沿って、お話を進めさせていただきたいと思っています。資料の1ページの下のほうですが、「小児慢性特定疾病医療支援とは」と書かれています。これまで小児慢性特定疾患治療研究事業という支援事業が行われていました。医療費を国と地方で補助するという制度でしたが、今回、難病法の成立とともに、新しい児童福祉法改正を受けまして、小児慢性特定疾病医療費という名称に変わることになりました。ここにありますように、「長期にわたり療養を必要とし、及びその生命に危険が及ぶ恐れがあるものであって、療養のために多額の費用を要する者に対し、健全育成の観点から、患児家庭の医療費の負担軽減を図る」ということが趣旨ですが、その内容は医療費を負担するというほかに、小児慢性特定疾病児童の地域での自立に向けた支援ということにも、新しく取り組むとなっています。例えば就学や就労、そういったことを進めやすくするために、様々なサポートをしよう。また、患者データを登録していただいて、治療研究に生かしていくということで、管理システムの開発とデータ運用事業を実施したり、それから、これは以前からありましたが、日常生活用具の給付、こういったことも行っていこうということです。

 次のページですが、「小児慢性特定疾病の要件等」と書いてあります。対象疾病ということですが、これは1.「慢性に経過する疾病である」、2.「生命を長期にわたって脅かす疾病であること」、3.「症状や治療が長期にわたって生活の質を低下させる疾病であること」、4.「長期にわたって高額の医療費の負担が続く疾病であること」、この4つの要件に当てはまる疾病を選んで、小児慢性特定疾病に指定しているということです。

 その対象疾病の患者数ですが、今度の改正は来年の1月からということで、対象疾病は514から705になると予定されています。対象患者は、これまでは11万人ですが、およそ14万人から15万人ぐらいになるだろうと予想されています。

 具体的にはどのような病気が指定されているかということになります。小児慢性特定疾病の疾患群と、それぞれの代表的な疾病ということで、2ページ目の下のスライドに書いてあります。これまで疾患群は、特定疾患の場合は56疾患が指定されていたわけですが、これまでは、小児慢性疾患の場合は、疾患群と疾病というように分かれていました。これまでは11疾患群だったのですが、今回の改正で14疾患群に増え、上にあるように705疾病になりました。その具体的な病名が、こちらにいくつか書かれています。

 今回はおよそ200近くの疾患が増えているわけですが、特に特定疾患、これまで特定疾患の中で指定されていた病気が多く含まれています。例えば膠原病でいいますと全身性エリテマトーデスとかベーチェット病、それから表皮水疱症、多発性硬化症、重症筋無力症、そういった病気がかなりたくさん含まれていることと、それから先天異常症候群、例えばダウン症候群とか、こういったものが新しく追加されてきているということが特徴かと思います。

3ページ目の上の段に「小児の難病の特徴」ということで、いくつか書かせていただいています。これは、私どもの活動の中で寄せられる相談や、親の会のみんなと様々な研修や話合いの中で出てきたことをまとめると、こうしたことが言えるかなということで、6項目を挙げています。

 小児難病の特徴のひとつは、一つひとつの疾患の患者数がとても少ない病気が多いのです。そのために診断が遅れたり、治療法の周知が不充分であるということが言えると思います。患者数が1,000人に満たない病気が非常に多くて、100人以下もまれではありません。そうした病気の場合、同じ病気の患児家族と出会うことも少なかったりするわけですが、患者数が少ないと、どうしても患者家族が抱えている問題を、医療、福祉、社会に伝える力も小さいということが言えるかと思います。

 子どもであるために、患者が成長発達するということがあります。病院や学校の選択など、闘病生活に多様な困難が伴うわけです。御存じのように、重い障害があっても、どんな病気でも、子どもは必ず成長発達します。新生児期、乳児期、幼児期、就学期、思春期、そこに保育や教育、あるいは就労など、様々な対策が必要かと思いますが、我が国ではこういう部分がとても不十分ではないかと私たちは感じています。

 多くは兄弟がいて、その配慮が重要だと思っています。親は病気の子どもにかかりきりになりますので、幼い兄弟がそのまま放り出されてしまうこともまれに見られます。大きければいいのですが、幼い兄弟を放っておくわけにはいきませんので、こうした幼い子どもたちを支えるためのことも考えていかなくてはならないと思っています。

 親が若いと、経済的な負担も大きくあります。病院に支払う医療費だけではなく、保険がきかない治療もありますし、差額ベッド代や二重生活、こういったことが以前から指摘されています。

 そして、先天的な疾患が多く、誤解や偏見によって傷付く患者、家族が少なくありません。例えば退院して在宅に移ったら、近所の人に「うつるのではないか?」と言われたり、あるいは学校に通うようになると、「学校にそういう子が入ってくると、全体の勉強が遅れる」、こういったことをよく指摘されているという報告があります。

 こうしたたくさんの困難があって、これらを若い御両親が、1人だけの家族で乗り越えるのは、非常に難しいということが言えると思います。そうしたことのために親の会だとか民間の様々なサポートが必要なのだろうと、私たちは考えているわけです。

 次のスライドは「難病の定義」と書いてありますが、「発症の機構が明らかではない」、「治療方法が確立していない」、「希少な難病であって」「長期の療養を必要とする」ということが挙げられています。また、患者数が人口の0.1%ということも、先ほどの資料の中にありました。これは、いずれも書いてある言葉は違っているのですが、小児慢性疾患とほとんど変わらない、同じ内容ではないかと感じています。まして人口の0.1%といいますと、小児慢性疾患、これまでは全体でも11万人ですから、0.1%を大きく下回っているということが言えるかと思います。

 次のスライドは、「障害者総合支援法の対象となる難病等の範囲について」というスライドです。これはホームページから抜粋したものですが、※2の所に、「障害者総合支援法上は、治療方法が確立していない疾病、その他の特殊な疾病であって、政令で定めるものによる障害の程度が、厚生労働大臣が定める程度であるもの」と規定されていると書かれています。これも、やはり小児慢性疾患と同じことかなと、私たちは思っているわけです。

 こうしたことを考えて、今日は冒頭の1枚目にありましたように、小児慢性特定疾病を是非、障害者総合支援法の対象疾病にしてほしいと、私たちは願っているわけです。この障害者総合支援法の対象となった場合の利点ということを、ここに代表的なこととして書かせていただきましたが。場合は疾病単位の指定でありまして、例えば小児慢性特定疾病の対象年齢。これは20歳ですが、対象年齢が経過した後も、障害者総合支援法の対象となるということが挙げられます。そうしますと、障害福祉サービスの利用が可能となるということから、いわゆるトランジション問題、小児慢性疾患が20歳で終わった後のことを、ずっと以前から様々な対策について検討をお願いしてきているわけですが、誠に残念ながら、現時点ではほとんど対策はとられていないというのが実情です。

 そういうことを考えていきますと、小児慢性特定疾病が障害者総合支援法の対象となった場合には、トランジション問題の解決へのひとつの方策になる。これで十分ではありませんが、方策ともなるのではないだろうかと感じているわけです。

 こうしたことから、小児慢性特定疾病を障害者総合支援法の対象疾病として、是非ともお願いをしたいということを、意見として申し上げさせていただきます。どうかよろしく御検討をお願いします。どうもありがとうございました。

○中村座長

どうもありがとうございました。2人の方からお話を伺いましたが、御質問、御意見等がありましたらお願いいたします。

○丹野構成員

横浜市の丹野です。お話をありがとうございました。伊藤さんにお聞きします。資料の3ページの2番に「介護保険と障害者総合支援法によるサービスの違いやヘルパーの連続性などについて様々な不都合な事例がある」と書かれています。私自身今は障害者総合支援法の居宅介護を担当しておりますので、この辺の具体的なところを伺いたいと思います。

○伊藤参考人

今言われている違いで、幾つか様々な違いがあります。具体的にヘルパーを使っている方々の意見なのですけれども、介護保険の居宅生活支援事業といいますか、派遣事業所をやっている所と、障害者の事業をやっている所と同じ事業所が両方の制度をやっている所は比較的少ないです。特に地域では両方一緒にやっている所は少ないです。それはどう違うかというと、報酬が違うとか派遣の条件が違うから、時間の区切りが違うこともあります。重度障害者の所へ行っている方々はそうなのですが、重い障害の方々への技術的な課題と、介護保険で比較的高齢な方々を対象にした場合とで、かなり技術的な問題も違うという話があって、どっちにも行くというのはなかなか困難だということをよく聞きます。

 それだけではなくて、障害者の場合は個人への派遣ですので、障害者本人へのサービス提供です。家族がいても、いなくても同じようにヘルパーが派遣されるわけです。介護保険では、同居の家族がいれば、それは派遣の対象にならないというような違いがあると聞いています。それで障害者団体の中では、65歳問題と言っておりますけれども、65歳になったらどうするのだと、今まで来ていたヘルパーがそのまま慣れた介護で引き続き継続してくれるのか、あるいは事業所を変わってもらうのか、二重に登録するのかという問題が出てきたりしています。

 同じようなことだと思うのですけれども、40歳から対象になる患者の場合は、実際には障害者手帳の対象になっている人が多くて、どちらを優先するかということなのです。行政の中では介護保険優先と言われてしまうために、障害者の制度のような十分な派遣時間が保障されなかったり、あるいは介護保険で不十分だった場合に、障害者のほうの制度を使えるのだということはなかなか知らされていなくて、両方併用というのは困難であった。これは自治体での対応の差というのもあるのかもしれませんけれども、具体的にはヘルパーがいないという問題があったりするのかもしれませんが、そういうことが起きています。

 現在、重い障害者の場合、その自治体の中で重い障害をもった人へヘルパーを派遣する所が手一杯で派遣できないのでということで、隣の自治体の事業所から派遣されてくるということが起きています。これは地域差がある問題ですけれども、様々な食い違いがあちこちで起きているということで、かなり不安に感じていることがある、ということが具体的に報告されています。

○丹野構成員

横浜の場合は事業所数が600で、介護保険だけという所は他都市と比べると少ないので、どういうことなのかなということで伺いました。

○伊藤参考人

それは、地域による差が大きいと思います。

○飯野構成員

自治医科大学の飯野です。小林様にお伺いします。小児の慢性特定疾病を、障害者総合支援法の対象疾患にするということは非常に重要なことで大賛成です。やはり、親御さんたちはまだ若いので、資金面のこととかいろいろなことがありますので、そのような負担を減らしてあげることは非常に喜ばしいことで、是非考えなければいけないことだと思うのです。私も随分子どもを見ているのですが、成長によってかなり変わってきます。2ページに代表的な疾病が書いてありますけれども、これを見るとほとんどの疾病が、成長とともに改善が見込まれるよりは、むしろ悪くなっていくと捉えてよろしいでしょうか。その内訳というか、大体どのような経過をたどるのかを教えてください。

 あとは、0.1%以下という規定がありますけれども、例えばダウン症候群は700人に1人という発生頻度で生まれてまいりますので、そこも外れてしまう。小児の慢性特定疾病のときはいいのですけれども、その後に成長して、今度は難病のほうに移行するときに、かなりの疾病が抜けていく可能性があります。そこに関してはどのように対応するというか、御希望というか、教えていただければと思います。

○小林参考人

多くの病気は先生が御指摘のように、進行していくことが言えるかと思います。ダウン症の話がありましたけれども、ダウン症の場合は今回も名前は挙がっています。ダウン症で、通常、小児慢性疾患の医療費支援の対象になるのは、心臓とかがんのお子さんということになります。多くの場合は、この小児慢性疾患の対象ではなくなるだろう。いわゆる重症の方ということになります。

 ダウン症の場合の心臓やがんの場合には、これまでは先天性心臓病や悪性新生物で、小児慢性疾患の対象になっていました。今回は、ダウン症という基礎疾患の名前で指定になったのが大きなトピックスということではないのかと私たちは感じています。したがって、医療費でここの予算全体に大きな変わりはない、ただ基礎疾患の名前がここに出てきたという、そこなのだろうと私たちは思っています。

 親御さんたちの話から出てくるのは、「こんなに大変な病気なのに、難病にも小児慢性疾患にもなっていない」という不安な気持ちや、不満な声をよく聞いていました。そういうことは届けていたのですけれども、母子保健課のメンバーと話をした時に、「そういうことを考えて、親御さんたちの不安な気持ちを何とか支えたいと思ってした」という話も聞いております。そういう患者さんの家族への配慮という点は、今回はとても目立ったように感じています。

 全体の、小児慢性疾患のいろいろな細かい数値といいますか、パーセント等について全て把握しているわけではありませんけれども、相対的に悪くなっていく病気は多いのだと私たちは感じています。

○飯野構成員

難病への移行というか、小児の枠から外れたときにどのようにお考えですか。

○小林参考人

例えば、ダウン症が小児の枠から外れた場合、20歳以降という全ての場合ですか。

○飯野構成員

はい。

○小林参考人

現在、私たちトランジションを何とか実現してほしい、移行期を実現してほしいということをお願いしているわけですけれども、現在のいろいろな制度の中で、それを解決しようとすると、特定疾患にしていただくことしかないと思っています。特定疾患の決まった制度の中で、小児慢性疾患の病気をひとつでも多く拾い上げていただいて、特定疾患に指定してもらうということが、今ある制度の中では一番考えられる方法で、それを期待してお願いしているところです。

 ダウン症の場合は、障害者あるいは知的障害の制度の中で対象となっておりますから、それはそういう形で継続してということであろうかと思います。グループホームだとか、そういう制度の中でサポートしていってもらうということかと思います。

○直江構成員

今の小林さんのお話で確認させてもらいます。このタイトルが「小児慢性特定疾患を総合支援法の対象疾患に」ということですが、小児慢性特定疾患として認定された患者さんについては、その後、例えばキャリーオーバーの問題も含めて、支援法の対象としてほしいという理解でいいですか。ポイントは、一旦認められた患者さんが、その後もずっと障害が続いているので支援が必要だというのは一応分かります。多分そうだろうと、ニーズがあるのではないか。ただ、小児慢性特定疾患の疾患と、今回指定難病で検討している難病の疾患群は一部違いますよね。

○小林参考人

はい。

○直江構成員

例えば、基本的にがんは入っていないという問題があります。その辺をどのように、小林さんの主張の中で理解すればいいのかということで聞いていたのです。私の理解では、今言った小児慢性特定疾患患者さんについては対象にしてほしいということなのか、疾患をそのままスライドさせてほしいということなのか、どっちなのでしょうか。

○小林参考人

小児慢性疾患の場合には、20歳で終わってしまいますので、制度の対象から外れてしまいます。私が申し上げているのは、総合支援法の対象疾病の中では疾病単位になります。そうするとその疾病の患者さんはこうした福祉サービスの対象になり得るだろうと理解しています。

○直江構成員

患者さん単位で、ものを考えたほうがいいですね。

○小林参考人

当然のことながら、結果的にはそういうことだと思います。

○大澤構成員

大澤です。小林様がおっしゃられたように、是非小児慢性特定疾病を総合支援法の対象にと私自身も考えております。2ページの上の段の、小児慢性特定疾病の要件等の所の2で「生命を長期にわたって脅かす疾病」となっています。この要件があることにより、小児慢性特定疾患の援助の基準といいますか、そこに視覚障害や聴覚障害があっても、他の点で命が脅かされることがなければ対象にしないということもある程度言われていたかと思うのです。私自身は、聴覚障害や視覚障害がおありになると、やはり機能的な問題があるので、総合支援法の対象にしていただいたほうがよろしいのではないかと思うのですが、その点についてはいかがでしょうか。

○小林参考人

私も同じ考え方です。1人でも多くの患者さんたちが手を差し伸べられるようになっていくことが一番望ましいと思っています。

○大澤構成員

もう1点は事務局に伺ったほうがいいのか、あるいはこの場で検討すべきことではないのかもしれません。短期入所というサービスがあります。この短期入所というサービスは、ある意味ではいろいろな家庭にとってとても大事なことです。そのサービスを受けるためには、例えば肝炎の検査とか、梅毒の検査を済ませていて、陰性という証明がないと受け入れてもらえないということがあります。そのための診断書が必要です。そういう採血というのは、ある意味では原疾患のための採血ではなく、健康診断的な採血になってしまいます。そうすると、今の医療保険の体制では、そういうものと、その原疾患の採血と別の日にやらないと認められないのが多分現状だと思うのです。こういう対象になるような患者さんたちは血管も細く、採血もしにくく、病院に来るのも大変でということが多いのです。その辺りを今後は総合的に認めていただけるような方向に持っていっていただきたいと考えています。この会ではなくて、別の会で検討していただくことかもしれません。

○寺島構成員

障害支援区分に変わったときに、認定方法が大きく変わったと言われたのですけれども、こういうふうに変わったから、難病を個別に制限する必要はないのではないかという御主張だと思うのです。具体的にこの部分はこうだからそういう主張ができるのだというのを教えてください。

○伊藤参考人

障害保健福祉部の認定基準のマニュアルを、去年の4月から制度を入れるに当たって作り換えているわけです。我々の理解では、今までは何か動作をすることができるかできないかという判断がある場合に、できないことを前提に対象を決めていったと思うのです。患者の場合は非常に波があって、できる時とできない時があります。朝はできても夕方はできない、昨日まではいろいろなことができたのだけれども今日は急にできないということがあります。そういう場合に、今までは「できる」と判定されて支援の対象になりませんでした。新しい基準では、できる時とできない時がある場合には「できない」というところを中心に判定をするのだというようになっています。そのような説明も度々受けています。これは、今までの考え方と大きく変わったことだと思います。

 それから、認定の項目が整理されて随分減りました。そのような形で、個々には様々細かい所でいっぱいあるのですが、このように認定の仕方が変わって「できる時とできない時があるときには、できないということを中心に判定をしていくのだ」ということになったことが、まだ意外に知られていないのだと思います。特に、これは診断書を書く場合に大きく、特に難病の場合は手帳の等級ではなくて、診断書で判断されるものですから、そういうことを周知していく必要があるということでお話をさせてもらいました。

○田中課長補佐

事務局から補足させていただきます。これまでの程度区分においては、例えば1か月30日を例に取って、状態に波があって25日間は自分でできる、そのうち5日間は誰かの助けが必要な場合、程度区分では「頻回ベース」でしたので、「支援は不要」と認定調査員は判断することになっていました。それが新しい支援区分においては「できないベース」ですので、自分でできない日もあるということから、「支援が必要」と認定調査員が判断するように変わりました。このような改正が正しく実施されるように、私たちも周知を行ってきた次第です。

○平野構成員

伊藤さんと小林さんとそれぞれにお伺いします。寺島構成員からもありましたが、難病患者でも社会参加、あるいは仕事を続けたいというニーズは大変高くなっていると伺っています。医療だけではなくて、そういうサービスが必要だからこそ、今回こういう配慮を考えてほしいという部分があるのかということがひとつです。

 小林さんのほうでも、一番最後に、総合支援法に加わることによって、トランジション問題がなくなるということがありました。3ページの上の「小児難病の特徴」の所をザッと見ると、患児の問題だけではなくて、家族の問題がすごく大きい、そういう家族の支援が必要だということを私どももよく耳にします。短期入所の話もありましたけれども、例えば家族が病気になったとき、子ども自身はまだ入院が必要ない場合に、当然子どもは入院できない、家族は面倒を見られないのでどうしようか。そういう場合に、このぐらいならショートステイが使えるわけです。こういう意味で、福祉的に家族に対する支援のほうが非常に重要視してほしいという意味もあるということだと思うのですが、その辺はいかがですか。

○伊藤参考人

御質問頂いた点も新しい難病対策では非常に大きな議論といいますか、転換点になっているところです。そのひとつには、非常にたくさんの難病が対象になっていくと同時に、医学というか治療の発展で、あるいはリハビリテーションなどの発展で、かなり多くの患者さんが社会参加が可能になってきています。完全に仕事はできないにしても、何らかの社会参加が必要だと。ずっと病気とだけ向かい合っているのでは、病気の治療もうまく進まないこともあって、これからの時代は難病であっても、病気を持ちながら社会参加が非常に大きな目標になる。これは治療の目標にもなるだろう。完全に治すというよりも、社会参加できる程度にしてほしいという大きな要求があるわけですから、それが大きな目標になるだろう。しかし、受皿のほうがどうなのだということがあります。

 もう1点はリハビリテーションの先生からお聞きしたことなのですが、何らかの仕事に就こうとしている、あるいは就いている患者さんと、そうでない患者さんではリハビリテーションに大きな違いが出てきて、就労すること自体がリハビリテーションになっている、あるいは通勤すること自体がリハビリテーションになっているとも言われています。社会参加の大きな形のひとつだということで、これからの難病対策というのは、就労というのは単に稼ぎに行くというわけではなくて、社会参加という意味で非常に大事になってくるのではないかということは、難病対策委員会でも議論されたところです。

 ところが、実際には患者さんが何か仕事をしたいということで主治医に相談したり、あるいはハローワークに行っても、「まず病気を治すのが先でしょう、それが治ってから」と言われて諦めた方がいました。次第に社会も変わってきますし、何らかの形で就労に結び付くものということでずっとやっていたわけです。それは、今までの福祉の施策の中の、就労支援の対象としてカウントされていない、もちろん雇用率にもカウントされないことがあって、どちらかといえば、障害者手帳を持っていない難病の患者というのは、どこかの就労支援の作業所へ行ってもお客様扱いで員数外、あるいは地域活動センターでしかないということでした。それをひとつ打ち破って、今はかなり増えてきていると思うのですが、就労支援の継続ABにしても、移行支援にしてもたくさんの患者が行くようになりました。

 これは中島先生も所属されている研究班で調査をしているところですけれども、難病の患者は実際スキルが高いのではないか。特に、途中から病気になった方々は社会性もいろいろな技術も持っています。我々の調査でも、患者の職業を調査しても、IT関係をやっていたとか、管理職だったというのが非常に多いこともあり、かなりのスキルや経験を持っているのだろうけれども、しかし、それが病状の変化、あるいは病院に通わなければならないという様々なことのために正規の就労は困難になったのだ、ということを踏まえて就労問題を捉えています。

 今は、ハローワークの目標15か所で、実際は12か所ぐらいなのだと思いますが、難病就職サポーターを非常勤で置いて、難病患者の就労の支援をしているという体制も出てきました。難病患者のグループだけで、就労継続ABの作業所をつくっていく所も増えてきています。これは、今後もっと増えるだろうと思っています。そういうことを通じて、病気を持っていても社会参加をすることは非常に大事なのだという方向に持っていきたいと思っています。

○中島構成員

中島です。小林さん、伊藤さんのお話を聞いてひとつ思ったことがありますので、ここで述べておきます。小林さんから、疾病単位で認められたと。例えばダウン症であるならば心臓が悪いとか、そういうことではなくて、ダウン症として認められるようになってよかったというお話を伺いましたが、私もそれは全くそのとおりだと思います。ただし、ここで少し整理をしておきたい議論があります。いわゆる難病の支援となると疾病単位でいいのですけれども、障害福祉サービスというのは、元来障害種別に物事ができています。手帳を取る際にも、何 障害ということで手帳を取るのであって、何々病ということで手帳を取ることはありません。

 私がたまさか意見を承るチャンスがあった小慢の中での、小児脳腫瘍のグループについて言うと、外科的、あるいは放射線治療によってうまく治療ができたケースが20歳を超えていったときに、60名だか70名だかの母集団の中で、約3分の1ぐらいは高次脳機能障害を持ち合わせていました。それで、精神障害者保健福祉手帳が取れることを1人も知りませんでした。自分たちは脳腫瘍であって、何か障害を持っているとは思っていませんでした。その時に、この人たちが伊藤さんが言われるところの、社会参加を果たすために必要なこととして、生命的に予後からいえば治療は絶対的に必要としても障害の特性を知ることなくして社会参加はあり得ないのです。

 確かにサービスの中で、居宅介護とか短期入所と考えるときには、別に病名だけでもいいと思うのですけれども、中には目が見えなくなったり、耳が聞こえなくなったりする難病の方もいます。それは、その障害特性に応じた対応をしないと、本当の意味での障害福祉サービスは展開できなくなります。したがって、病名ということでは、例えば小慢がキャリーオーバー問題を、病名をそのまま持って20歳を超えていくのもありだと思うのです。その一方で、病気の治療ということではなくて、社会参加ということを考えたり、あるいは障害者制度の利用ということになっていくときにはどのような障害をもつかということは、その個人個人の患者さんにとって評価していくことは大事かと思いましたので、一言意見を述べました。

○中村座長

ありがとうございました。どうぞ。

○小林参考人

平野先生の御質問というか、御意見なのですけれども、これでトランジション問題が全て理解するとは思っておりません。そのひとつの方策だろうと思っています。もう1点は、社会参加と家族のことかと思います。おっしゃるとおり、子どもと親、家族は一体なものだと私たちは考えています。言ってしまえば、私も親ですから、子どもが元気ならば親も元気でいられるし、親が元気だと子どももそうだということからすると、御指摘のように家族全体を支えていただけるような仕組みはとても大事だろうと考えています。

 そのために兄弟のことだとか、経済的なことだとか、様々な仕組みを考えていただく必要があるのだと考えています。社会参加も同じことかと思います。子どもの就学・就労だけではなくて、子ども自身の、家族を含めた地域への参加だとか、仕事やいろいろな社会の一員としての日々の暮らしの中での行動はとても大切だろうし、そのためには仕組みだけではなくて社会啓発といったことに私たちもこれからもっと努力しなくてはならないだろうと思っています。先ほど申し上げた中で、誤解や偏見によって傷付く家族は少なくないと申し上げましたが、これは社会啓発を一般の人たちにもっともっと広めていかなくてはならないということを、以前から常日頃から感じていることで、もっともっと努力したいと思っています。

○伊藤参考人

中島先生からお話いただいたことは、私どももそのように思っています。実際には長い名前でなかなか正確には言えないのですけれども、高齢・障害者・求職者雇用支援機構障害者職業総合センターという独立行政法人があります。そこを中心に、難病患者の雇用促進のための事業者向けに、どういう病気に、どういう支援をしたらいいかという調査・研究をしてその報告書やパンフレットを出しています。私どももそこの一員となっていろいろ作ってみました。全疾病を読まなければとなると大変だというのも困りますけれども、そのようなことが試みられてきています。また、少しずつ経験が積み重なっていくと、疾病ごとというのではなくて、単なる障害プラス病気という状況、変化するという状況にどういう支援を事業主はしたらいいのか、主治医は配慮したらいいのかということがこれから進んでいくだろうと思います。そういう中でいろいろ障害感なども変わってくるのではないかと期待しています。

 冒頭に私どもが申し上げましたように、本質的に私どもは病気ごとの指定というよりも、そういう社会的サービスを必要とする人に必要な支援をというのが原則だとは思うのですけれども、今はまだまだ制度が障害種別になっていたり、病気別になっていたりいろいろするので、過渡期かとは思いますけれども、将来的にはそのようなことをと願っています。

○小林参考人

伊藤さんがおっしゃったのですけれども、私たちも現状の難病や小児慢性疾患が疾病単位になっていることに非常に疑問を感じています。それは、どうしてもこの形でやっている限り、様々な不公平感ということがあります。障害についても中島先生がおっしゃったように、生活に対する様々な弊害とか困難とか、そうしたことからされるべきだろうと思っています。そういう意味では、その病気をもっと評価を変えた形で障害の中に組み入れることはできないのか。いろいろなことについて、伊藤さんたちと常日頃から議論をしています。現状の今の仕組みの中で提案というかお願いするとすると、先ほど申し上げたような形で小慢を是非総合支援法にとならざるを得ないのかと考えています。

○中村座長

ありがとうございました。事務局から何かありますか。

○田中課長補佐

事務局から1点確認です。資料310ページの「児童福祉法及び障害者総合支援法における障害福祉サービス等の需給要件」を御確認ください。1番の定義の所で、障害者総合支援法で中島構成員からも御意見を頂きましたけれども、基本的に今は身体障害者手帳、療育手帳(知的障害者)、精神障害者の方たちは手帳があり、障害福祉サービスが受けられています。身体障害者手帳においては疾病ごとではなく、障害手別種別ごとに、疾病や外傷なりその原因は問わず、状態によって必要な等級が決められて、手帳が取得できればサービスが受けられる状況です。

 それに加えて、疾病等の方で障害者手帳を持たない方でも障害福祉サービスを利用できるということで、その対象疾病を決める検討会であるというのが、今回の検討会の趣旨であることを確認させていただければと思います。

○中村座長

貴重な御意見等を頂きまして大変ありがとうございました。有益な質疑が行われたものと思います。これを、今後の検討会を進めていく中で生かしていけるように努めてまいりたいと思います。時間もまいりましたので、本日はここまでとします。次回については、本日のヒアリング等を受けて、障害者総合支援法の対象となる難病の考え方、要件等について議論していきたいと考えております。次回の日程について、事務局からお願いします。

○田中課長補佐

本日は大変御多忙の中、活発に御議論いただきまして誠にありがとうございました。次回以降の開催予定ですが、第2回は9月中旬頃、第3回は10月初旬頃に予定させていただきます。詳細については、今後事務局から別途御連絡いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。事務局からは以上です。

○中村座長

本日はこれで閉会いたします。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

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(代表電話)03(5253)1111 内線(3029)

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