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2014年8月27日 第5回 臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会 議事録
医政局研究開発振興課
○日時
平成26年8月27日
○場所
厚生労働省 18階 専用22会議室
○出席者
委員
遠藤座長 | 桐野座長代理 | 楠岡委員 | 児玉委員 | 近藤委員 |
大門委員 | 武藤(香)委員 | 武藤(徹)委員 | 望月委員 | 山口委員 |
事務局
福島審議官 (厚生労働省大臣官房) |
飯田審議官 (厚生労働省大臣官房) |
成田審議官 (厚生労働省大臣官房) |
土生課長 (厚生労働省医政局総務課) |
一瀬課長 (厚生労働省医政局研究開発振興課) |
城課長 (厚生労働省医政局経済課) |
森課長 (厚生労働省医薬食品局審査管理課) |
赤川課長 (厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課) |
河野治験推進室長 (厚生労働省医政局研究開発振興課) |
中山研究企画官 (厚生労働省大臣官房厚生科学課) |
○議題
1.海外制度について(研究代表者からのヒアリング)
2.論点整理に向けた議論
3.その他
○配布資料
資料1 | 研究代表者提出資料 |
資料2 | 臨床研究の在り方に関する論点整理(案) |
資料3 | これまでのご意見を踏まえた臨床研究に関する現状の整理と今後の検討課題(案) |
参考資料1 | 第4回臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会議事録 |
参考資料2 | 検討会委員からの主なご意見(まとめ) |
○議事
○一瀬課長 それでは、定刻となりましたので、「第5回臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会」を始めさせていただきたいと思います。
委員の皆様方におかれましては、大変お忙しい中、本検討会に御出席いただきまして、ありがとうございます。
本日、山本委員から御欠席の旨、連絡をいただいております。
また、本日の議事におきまして、海外制度につきましてヒアリングを行います。参考人としまして、磯部哲様をお招きしております。
それでは、配付資料の確認をさせていただきます。
座席表
参考人名簿
委員名簿
資料1:研究代表者提出資料
資料2:臨床研究の在り方に関する論点整理(案)
資料3:これまでの御意見を踏まえた臨床研究に関する現状の整理と
今後の検討課題(案)
参考資料1、2
不足等ございましたら、御連絡ください。
これより議事に入りますので、審議の円滑な実施のために、撮影はここまでとさせていただきます。
(カメラ退室)
○一瀬課長 それでは、座長、よろしくお願いいたします。
○遠藤座長 ありがとうございます。それでは、議事に入らせていただきます。
議題の1が「海外制度について」でございます。第2回目と第3回目で研究者の先生から海外制度に関するヒアリングを行いました。先月、米国における制度の調査が行われたということでございますので、本日はその概要についてお話を承りたいと考えております。
研究代表者の慶應大学の磯部参考人、研究分担者である昭和大学の田代先生と東京大学医科学研究所の井上先生、研究協力者であられる国立がん研究センターの藤原先生にもお越しいただいております。
それでは、資料1につきまして御説明をお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。
○磯部参考人 それでは、海外法制についての比較研究ということで、研究代表者を務めております、慶應大学、磯部と申します。
資料1に基づきまして20分ほどで御説明を簡単にいたします。その上で、質疑については、きょう御出席いただいた分担者、協力者の先生方にお答えいただくということでよろしくお願いいたします。
スライド番号、右下、小さいですが、それで適時、ページは指定いたします。
昨年度、イギリス、フランスについての研究というのは第2回でお話ししたところです。それと同じ調査項目、スライド2番目のところで、その1から6についてアメリカを研究してまいりました。
3ページを見ていただきますと、「訪問機関及び調査対象機関」は、その規制当局及び製薬事業者にも話を聞き、またマサチューセッツの病院でも調査をしてきたということになります。
それではまず、「臨床試験規制の概要」ということでスライド4ページをごらんいただければと思います。まず、そこに書いてありますのは、医薬品の臨床試験を実施する際に、試験の種類や目的に応じまして規制がかかってくる、規定が変わります。FDA規則というものがあり、これを遵守するわけですが、これが日本で言えばGCP省令に該当するもの。そのうちインフォームド・コンセントや倫理審査に関する規制については、後でお話ししますが、INDの申請の必要がない医薬品の臨床試験においても課せられているということで、この被験者保護に関するFDA規則と医薬品の臨床試験以外の被験者保護ルールというのがおおむね同じ内容になっているというところがまず一つの特徴かと思います。これはまた後ほど触れることになろうかと思います。5ページにかけて今の話です。
ちなみに、参考)と書いてあるところは参考ページですので、必要に応じてコメントすることにさせていただき、質問があれば後で質疑の際によろしくお願いいたします。
6ページのところ、ちょっと注意して見ていただきたいと思います。「研究新薬規制」、ここでINDと略しますけれども、このINDの申請というのがここでの一つの重要な枠になってまいります。このIND規制について、これは連邦の食品医薬品化粧品法というものに基づいて規制が置かれているということになりますが、これは、1つ目のポツに書いてありますように、あくまで新薬の規制制度であるという点で、この点ではEUの臨床試験指令と異なってまいりますが、重要なことは、販売承認申請、これを目的としない臨床試験をも規制する枠組として機能しているという点でございます。この点ではEUの枠組と重なる部分があるということになります。
このIND規制の対象が極めて広いということがまた特徴がございまして、2つ目のポツにもかかわってまいりますけれども、1つ目のポツの次の「ただし」のところです。未承認薬のみならず、そこにありますように、適応症、製法、用量等について、これがFDAの承認条件と一致しない使用法について、それと相違する使用法による市販薬全般が含まれているという点であります。そのため、アカデミアで実施される市販薬の臨床試験についても、IND申請を免除されるという要件を満たさない限りはFDAの申請が必要となってくることになります。したがって、IND規制こそはアメリカにおける医薬品の臨床試験において極めて重要な役割を果たしていると言ってよいかと思います。
そして2つ目のポツ、それは今のところの繰り返しになりますが、INDには幾つかの種類があるということになります。大きくは、企業が新薬の販売承認のために申請するという商業INDとそれ以外、ノンコマーシャル(非商業IND)とに大別されることになり、その非商業の中にも、研究者が行うもの、あるいは緊急に行うもの、治療的なものなどがありますが、アカデミアの実施する臨床試験の申請などもここに入ってくるということになり、割合はそこに書いてあるとおりということになります。
さて、次のスライド、7ページに行っていただければと思います。医療機器については、医薬品とは別の枠組であるということです。
また、INDと新規申請数等については次のグラフがございます。
今申し上げたようなアカデミアで実施される市販薬の臨床試験についても、原則としてはFDAの申請が必要だということになりますが、9ページをごらんいただくと、適用除外といいますか、IND申請が免除される要件というのが別に用意されております。
申請が必要な場合は、日本の治験届と同様、あらかじめ規制当局に情報を届け出て、倫理審査委員会に加えて、FDAからも審査され、許可を受ける必要があるということになりますが、およそ自主臨床試験の全てがIND申請というわけではなく、その免除の仕組みがあるということになります。
ある、これはがんの領域の多施設共同などを見てみると、結局、実際にはIND申請が必要な試験は全体の半分以下というようなコメントもいただいたところであります。
その詳しい規制、免除要件というのはスライドの10から11にかけて5項目、一定の条件ということで免除条件が書いてあります。この5つの要件を全て満たす場合にIND申請が免除されるという仕組みであります。
その中身をどのようにまとめるかということですが、9ページのスライドにまたちょっと戻っていただければと思います。被験者保護や広告制限等の話もありますが、基本的には、2つ目のポツにありますように、試験の目的とリスクの程度というのが主たる軸になっていると言ってよいだろうと。試験の目的というのは、つまり、商業的目的があるかないかという点であります。
また、リスクの程度ということになりますけれども、そこにありますように、考慮要素としては、もちろん投与方法、用量等々になりますけれども、IND規制の特徴として、今回の研究の一つの認識ですが、このリスクの判断といったことについて、何か大中小というような類型だけで判断するというよりは、非常に個々のケースに応じた考慮要素の上手な総合判断といったことを可能にする枠組といったことが工夫されていることになります。それについて、詳しくはまた質疑の中で触れられればと思います。
スライドは、参考)を飛ばして12のところに行っていただければと思います。我が国で生じた高血圧治療薬の臨床研究事案との関係で言えば、販売承認申請目的、広告使用目的がある場合にはIND申請が必要になってくるという点からしますと、仮にリスクが低い臨床試験であったとしても、将来的に試験結果を商業利用する可能性がある場合には、INDの申請が必要であったということになっただろうと診断できるのではないかと思います。
以下、個々の論点について触れることにしたいと思います。13ページから、データの信頼性、モニタリングと監査の話に移ります。モニタリングとauditについてでありますが、これは昨年度のイギリス、フランスについてお話ししたときも同様で、必ずしも詳細な規定を法令上置くものではないということでありました。極めて柔軟なセルフチェックに近いものもモニタリングとして通用しているというようなことはここでもお話ししたわけですが、この点についてはアメリカについても同様でありまして、スポンサーがモニタリングを保証するといったことが書いてあるけれども、そもそも監査については法制度上のものとしては存在していないということになります。
なお、スポンサーについては、2つ目のポツにありますように、アメリカでも、やはり研究実施について対外的な責任を負うものということで、いろいろなアクターがスポンサーになり得るとなっております。
そして、14ページ目を見ていただきますと、これは研究機関側の対応としてですけれども、これもイギリスについて前にお話ししたように、非常にリスクに応じたモニタリングのあり方だという話でしたが、そのリスクの評価の仕方といったものについても、各施設ごと、あるいは学会ごとの自主的な営みというのを基盤として活用するというような話が見られるということで、幾つか、モニタリングの水準を決定するためのツールというのが開発されている。すなわち、試験のステップのレベル、IND申請の要否、施設が単一なのか多施設なのか、あるいは国内なのかグローバルにやるものか、研究者の経験、仮説等々でリスクを低中高と分けるような、そういうツールが開発されているということでありました。
15ページを見ていただきますと、先ほど触れましたauditの話でありますが、そもそも監査といったものについては法令上明確な定義がないということもあり、さまざまな事象をいわば監査とみなしているようだということであります。少なくとも3つのレベルがあるだろうと。1つ目として書いてあるのは、監査とは、基本的に規制当局が監視活動を行うというものであります。FDAによる査察等がこれに該当するだろうということで、研究者、スポンサーが何かあらかじめ準備するというものではない。規制当局が入ってくるときに入ってくるというタイプのもの。それに対して○2、○3とございます。
16ページから○2のところは少し詳しく書いてありますけれども、公的な研究助成機関でありますが、それが監査のイニシアティブをとるというタイプのものであります。具体的には、今回見てきたものとしては、例えば国立がん研究所のモニタリング部門が施設訪問監査といったことをオーガナイズしているというような運用が見られたところであります。
また、サンプリングによるSDV、Source Data Verificationでありますけれども、通常、日本の企業治験であれば、全施設をモニターが頻回に訪問して、全患者についてのSDVを行うということがモニタリングであり、試験終了後、幾つかの施設を選んで監査を行うというものであろうということですが、どうやらここでは少し違って、例えば先ほどのがん研究所が助成する臨床試験であれば、モニタリングは基本的に中央でよいという1つ目のポツですね。それを補うという目的で、たまに3年ごとに訪問監査を全参加施設に対して行うアプローチであるということで、リソースの配分といったことに配慮されているように思った次第です。
だんだん時間が心配になってきますので少しスピードアップしたいと思いますが、○3施設内での自主的なQA活動といったものもある。施設内における一種の自己点検を指すという17ページのところ、これもauditという言葉を使用する場合があるということを取り上げているものであります。
被験者保護について、18ページのところですが、これについては既に、藤原先生が研究班長でいらっしゃったへいせい24年度の研究班報告書があるところでありますので詳細は省略したいと思いますが、基本的には施設ごとのIRBがこの任を担うということでありましたけれども、2つ目のポツで、2011年、従来の枠組から大きく変化が見られたとするならば、リスクに基づく保護のあり方が模索されているということであります。低リスクであれば迅速審査などを認めるという形で、現在、変化が見られているということがございます。
次は、倫理審査委員会の関連では、19ページをごらんいただきますと、各研究機関の内部で倫理審査委員会を設置し、それぞれ審査するという仕組みでしたけれども、さまざまなレベル、営利企業が運営する倫理審査委員会であるとか、あるいは施設外部の倫理委員会に委託するとか、さまざまな運用が混在していて、実際には施設内外、いろいろな委員会が関与するということであったと。そこで審査の質の不均一などが問題になる、あるいは重複審査などのロスがあるということから、質の向上、効率化といったことが今探られているということが19ページのところの話であります。
ちょっと急ぎますので、次、20ページから利益相反に関しての話が出てまいります。まず、FDA規則の中においては、参加した臨床研究者の利益相反、金銭的な利益情報に着目するということで、市販承認に関する申請について、そのもととなる研究のデータにバイアスによる影響を受けていないように手続を確認することが規定されているということになります。
また、公衆衛生局が助成する場合についての利益相反についての規則というものもございます。これは直接にはアメリカ公衆衛生局が助成する研究が対象だということになりますけれども、多くの自律的な医学団体などもそれを採用しているということで、非常に通用力があるものという話のようでありました。
具体的な内容については、21ページ以下、2011年の規則改正の後どうなっているかということが項目として挙がっておりますが、研究者が所定の手続に関する、あるいはCOIという問題の所在といったことについての知識があるのか、要するに研修をきちんと受けているかということ。その上で、申告した何らかの金銭利益について重大かどうか、研究機関側が判断するということが想定されているようであります。
その研修についても、どのようなことが目的とされているかとか、実施主体の責任といったことについても幾つかの規定があるということも見てきたところです。
少し飛ばしまして、サンシャイン条項などは見ていただければよいかと思いますし、23ページはマサチューセッツ総合病院の事例ということになりますけれども、それも適宜御確認ください。
そして、研究不正のところであります。これもまだもう少し私も調べたいところではあるのですが、一応不正に対する取組ということで、FDAのものと次のPHSのものという2つ、24ページからと27ページからということで項目分けてありますけれども、FDAにおいては、研究不正に対する所定の権限があるということで、虚偽情報の提出であるとか、記録管理に不十分な点があるものは捜査権限の対象となってくるということで、実際には事件化したものもあるという話でありました。
そうした刑事事件以外にも、25ページを見ていただくと、行政処分ということで、一定期間、新薬の試験など、試験新薬の取り扱い等の資格を剥奪するというようなことで、安全を担保するという趣旨の行政処分も用意されているということであります。当然、不利益処分ということになりますので、26ページでは、事前のノーティス・アンド・ヒアリングという仕組みが動いてくるということで、これは一般行政手続法理からすれば当然のことかと思います。
27ページからがPHSのほうで、研究助成を受けた医学研究についての不正があった場合については、当然、事後の支給が受けられないといったことがあり、そういう対象となる研究不正についての定義、類型化といったこともその中で見られるということになります。
ORIがどういう組織かといったことは28ページに書いてあるところです。不正について監督することができるということになります。
29ページをごらんいただければ、研究不正の対応ということになりますけれども、連邦規則では、研究不正にあたる主たる責任は研究機関にあるということを基本的な考え方としている。したがって、各研究機関は不正対応のための手続などを備えること、ポリシーを定めて、そして適切な対応が求められるということになってまいります。
このポリシーなど定めて、手続が整備されてないとむしろ研究助成が得られないといったことで実効性も担保されている。さらには、通常は各機関に、RIOとそこに書いてありますが、研究公正責任者と言われるものを指定し、しかるべき旗振り役になってもらうということを想定しているようであります。
そして、教育支援といったこともあるというのが30ページであります。
最後の項目、広告規制のところ、31ページに大急ぎで移りたいと思います。アメリカでは、連邦食品医薬品化粧品法によって、FDAが医薬品や医療機器の広告、その他さまざまな情報提供のための資材といったものについて監視するという権限を与えられているわけであります。その重要な原則、プリンシプルというのは、これはファイザーの担当者の発言なども踏まえると、要するにこの4点ではないかということで、FDAの承認条件との適合性、実質的証拠の裏づけ、虚偽又は誤解を招かない、有効性と安全性の適切なバランス、というようなことが語られたところであります。
そして、32ページには、これは処方薬の広告規制を担当している、FDAの中に処方薬プロモーション室というところがございまして、その組織などについての説明であります。33ページまで続いている。
そして、34ページとしては、結局、製薬企業のほうとしては、公表、要するに販売促進用の資材としてどういったものを用いているのか、これをきちんとFDAのほうに届けなければならないということになります。年間8万点以上ということで、先ほど言った処方薬プロモーション室というのもこの販促資材のチェックを行いますし、さらにそれ以外にもさまざまな積極的な監視活動を行っているというような話で、予告なく学会に行くとかいうようなことをして発表内容をチェックする。併設された展示会等にいきなり出席するといったこともやっているという話でございました。
そして、35ページに参りますが、試験薬について、承認前の薬についてどのようなプロモーション活動が許容されているのかという話です。承認前について言えば、開発段階の医薬品の安全性、有効性の広告はかたく禁じられているということになりますが、一方で、「科学的な情報交換」というのは許容されるということになります。もっともこの線引きが難問であるということになりますが、建てつけとしてはそのようになっていると。
そして、参考)のところですが、実際に営業活動としての広告というのと必要な安全の情報を提供するといったものをどのように分けているのかという話でありますけれども、どうやら、担当者を分けるということなどで工夫するというやり方をとっているという話であります。
あとは、37ページ以下、御一読くださいということになろうかと思います。
ちょっと時間が超過してしまいましたので、相当駆け足でやったことをおわびいたしますが、私からの説明、以上にさせていただければと思います。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。
それでは、早速でございますけれども、ただいまの御説明につきまして、御質問、御意見あれば承りたいと思います。
武藤香織委員、どうぞ。
○武藤(香)委員 短期間での調査、大変ありがとうございました。時間がちょっと短かったのでもう少しお伺いしたいと思います。日本にフィードバックできると思われる点や学ばれた点を、最後、まとめも割愛されましたので、ぜひおっしゃっていただければと思います。
○磯部参考人 ありがとうございます。はしょったところのまとめが3枚スライドがあるところですが、39ページのまとめ(1)を見ていただくと、1つには、製造販売承認目的かどうかというところで決定的に制度を分けるということは必ずしもリーズナブルでないというのが最初のポツに書いてあるところですし、もちろん市販薬を用いた臨床試験においても、規制の重い軽いといったものについて分けるというやり方は工夫が必要ではないかというのがまずあろうかと思います。
また、これはイギリス、フランスについても指摘したことですが、2つ目のポツのところですけれども、モニタリング・監査といったときに、何か、今現在、日本の治験の中でやっている特定のやり方のみをイメージするのではあまり生産的ではないのであって、リスクに応じた上手なやり方というのがあり得るし、またリスク自体をどのように評価するかといったことについても、現場の研究者や学会などの自律的な営みといったことをある程度活用するという、そういう専門知見の活用の仕方といった点はアイデアとしては参考になるのではないかと思います。
被験者保護のところについてですけれども、これも法律に基づく仕組みというのが多かった点はやはり欧米の特徴だろうと思いますが、やはり倫理審査委員会というところにも重要な機能が置かれているわけで、その質の保証といったこと、適切な人材がそこに集まるような仕組みといった運用上の工夫といったことについては見るべきものがあったと思っています。
あと利益相反についても、法律上の仕組みであるべきなのかどうかといったことは、私は若干留保いたしますけれども、ひとり、研究者だけではなく、施設であったり行政機関であったりいろいろな利益相反という問題はあるだろうということで、広く、これは視野を広げて考えるべきではないかと思います。
41ページ目の「まとめ(3)」についてですが、研究不正については、必要な対応はやはりあるのではないかなと思います。刑事告発というのは、どこでもレアではあろうかと思いますが、それも可能であるという仕組みがもともとあり、そこに至るほどではないにせよ、しかし、安全確保のためには、研究に対する信頼確保のためには、不正を行った人にはいったん御退場いただくとか、そういったことは仕組みとして十分検討すべきではないかという印象を私は持っているところです。
広告の話は、法律屋としてはとてもおもしろいところでありまして、表現の自由と営業活動の自由とか、どこまで国が事前の許可とかいうのはなかなかにセンシティブな問題であろうかと思いますけれども、しかし、やはり広告の悪しき運用ということがもたらすデメリットといったことはどこの国でも担当者は認識しているようで、全く自由であってもよいというわけではないということは、今後我々も検討しなければいけないのではないかと考えているところです。
これは全く私の個人的な感想で、ここは具体的にこういう条文をつくればいいというほどには練れたものではございませんが、まず私の印象だけ申し上げました。
○遠藤座長 ありがとうございました。武藤香織委員、何かコメントございますか。
○武藤(香)委員 できればほかの先生方のご意見もお伺いしたいです。
○遠藤座長 それでは、ほかの先生方で何かフォローすることがあればお願いいたしたいと思います。
○田代先生 ほぼスライドの「まとめ」と重なりますが、1点は、もちろんアメリカとEUで臨床試験の規制に関して少しパターンは違うのですが、やはり問題になるのは、アカデミアで行われる、特に適用外使用の臨床試験であることは間違いないと思います。その場合、適用外使用の臨床試験を全て当局届けが必要とはしない、というのがアメリカの知恵ではないかと。つまり、適用外使用であっても、例えばがんや小児のように、日常診療で行われているものが多い場合に関しては、日常診療に比べて特段リスクが上がらなければ、それを一律IND申請対象とはしない、という形で、基本的にはリスクに応じて当局届出の規制をかける範囲を変えているわけです。そういった意味では、アメリカもEUも論点は似ていると思います。
信頼性確保の手段は、ほぼ同じような条文が書かれていますので、ここは共通しているだろうと。
被験者保護というか、倫理審査委員会の制度に関しては、やはりアメリカのほうで苦しんでいると言ったら変ですけれども、施設ごとに置くということを最初にしてしまい、日本と同じですが、それをどうやって今動かしていけるのかということで苦しんでいるところがある、という印象です。ただ、日本と大きく違うのは、法的な裏づけがあるないということで言いますと、やはりないところとあるところでの違いはあるかなとは思います。
最後に広告規制のところは、これは、各国回りましたけれども、一番落差が大きいというか、日本でほとんど取組がない。こういう医療職に対する広告の規制については、各国、アメリカだけではないですけれども、専門の部局があって、そこがいろんなやり方がありますけれども、割としっかりとしたチェック体制を持っています。ここは非常に大きな違いかなとは思いました。
私のほうからは以上です。
○遠藤座長 ありがとうございました。また引き続きお願いします。
○井上先生 私は、前回の欧州調査に引き続きまして、研究の不正の話と利益相反の部分を担当させていただきました。短期間で調査結果をまとめるということになりますと、まずは目に見えやすい、明文化された規制や手続的な部分が目立ってしまう限界がありました。特にアメリカの場合は、枠組を設けて、実際の運用は広範に行政の担当者や各機関に委ねられている場合が多いです。各機関が研究活動の実態に即して物事決定できることの利点も多くあるのでしょうが、制度を検討し、評価するという今回の調査の目標からすれば、機関の責任が大きいという部分はよく分かったのですが、個人に及ぼす影響についてはブラックボックスの部分も多いと感じています。
前回のヨーロッパの調査の印象では、研究者側の裁量に委ねられる部分が多く、その裁量および責任を重視しているように見え、アメリカとは好対照だと思いました。例えば、利益相反について、アメリカの場合は、機関やスポンサーが責任を持って、研究者に利益情報をディスクローズしてくださいと、公開してくださいという方向性で要件が設定されている。一方、ヨーロッパの場合は、その研究者が自分で不遍性を宣誓してください、デクラレーションしてくださいというところに重きがあって、かなり方向性に違いがあるようです。
つまり、それぞれの裁量、研究者の個人の裁量、機関の裁量というものについて、制度がどこまでそこに入っていくのか、裁量とそれぞれの規制の役割というものについて、ヨーロッパとアメリカで、不正、あるいは利益相反の取り扱いについて考え方に違いがあるように思われました。ぜひ委員の皆様方には、これから出る報告書と前回出ているヨーロッパの報告書をぜひ一緒に並べて見ていただいて、規制と裁量の運用のバランスについて各国がどのように苦心してバランスをとっているのか、考える材料としていただければと思います。
私からは以上です。
○藤原先生 藤原です。
今回は主に広告のところを見てまいりましたけれども、ほかにもあわせて気づいているところで幾つか述べさせていただきます。
1つはモニタリングとか監査でございます。私、臨床研究に冠する倫理指針の改定の委員もしておりますが、モニタリング・監査を新統合指針に入れる議論のときに、アカデミアの方々は企業治験のイメージが非常に大きくて、全てオンサイトで全部のカルテを見てということで、そんなことを現場がやったら破綻しますという意見が多かったのですけれども、今回、アメリカ、あるいは前回、欧州にも行ってまいりましたけれども、モニタリングについてはすべてに非常に厳しいところまでは要求せずに、いろんな段階があって、さまざまな試験のリスクに応じたいろんな手法がありますということ。それから、法令の規制にはきちっと書いてありますけれども、そのやり方に関しては法令で詳細に規定しているわけではないこと。
それから、監査については、当初、ICGCPのようなものが各国に法整備がされているのかと思いましたけれども、行ってみると、法令の中には全く書き込まれてなくて、あくまでも自主的にやったらどうですかというぐらいのレベルなので、ここは皆様方が法制度を考える際に、余り企業治験、製薬企業のやっている医薬品の治験だけをイメージされないほうがいいのではないかというのが大きな感想として思っておるところです。
それから、倫理審査委員会、IRBのところですけれども、これは一昨年から私も調査したことも踏まえて感じるところは、日本の、治験審査委員会以外の倫理審査委員会は余りにもフリーハンドで、倫理のことについて皆さん声高におっしゃいますけれども、国の規制は一切入ってはおりません。それに対してお金も入れているわけでないですし、どういうレベルをクリアーしたらいいかということも一切言われてなくて、ようやく再生医療新法で認定倫理審査委員会の要件の議論がされている程度でございまして、臨床研究に関しては全く今のところ、各医療機関に任されているというところであります。
それに比べて、イギリスとかフランスは地域倫理審査委員会といいまして、日本の人口の半分ぐらいですけれども、フランスは40くらい、イギリスは80くらいの研究倫理審査委員会に絞っておりまして、例えばイギリスでは、研究倫理審査委員会の審議のレベルをそろえるためにしっかりとしたマニュアル、SOPが作られているのと、ダミー審査というか、イギリス厚生省がある課題を出して、その審査をさせて、どういう結論になるかというのを見て、一定の審査レベルが保たれているのかをチェックするという努力もしていたりとか、非常に国が積極的にお金とリソースをつぎ込んだ対応をしている。これはもう各国共通です。それに関してはまだまだ日本は足りないなと思いますし、1,300も研究倫理審査委員会があるという現状は明らかにおかしいと感じました。
それからもう一つ、研究不正について言いますと、先ほど磯部先生がおっしゃったように、私もORIに行きましたけれども、ORIのような組織を日本に整備しようとの議論がされている時には、何か警察権力を持ったすごい組織ではないかと思われているふしがありますが、実際には非常にこじんまりとした組織で、20人ぐらいの人材しかいなくて、調査権限は1990年代に既に剥奪されておりまして、彼らが今一番やっていることは教育であると。どうやって研究不正を防ぐかということを大学の先生方とかのいろんなプログラムを通じて教育するということ。それに予算が年間900万ドル、9億円ぐらいだったと思いますけれども、20人の職員の人件費も含めてその程度の予算、と言っては悪いですけれども、その程度の予算を組んで臨んでいました。そのくらいの予算と人手をかけてORIのような組織を日本に入れられるのかということを皆さん方には考えていただきたい。
それから広告規制も、言うはやすしで、日本の場合、今、監視指導・麻薬対策課というところが一つの課で、あとは都道府県にいろんな業務を委託してやっていますけれども、先ほど磯部先生に紹介していただいたように、380万ドルですから、4億円ぐらいの予算で、70名ぐらいの職員で、16ぐらいの審査チームで、年間8万件ぐらいの広告資材をチェックしているのですね。そのぐらいやればできますけれども、そこまで皆さん方がお金をつぎ込んでやれるだけの日本の余裕があるのかというのはちょっと考えていただきたいなあと思ったところです。
以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。武藤香織委員、何かコメントございますか。
○武藤(香)委員 論点を立体的にしていただき、ありがとうございます。
○遠藤座長 それでは、ほかの方で何か。
山口委員、どうぞ。
○山口委員 多岐にわたる御説明、ありがとうございました。特にモニタリングと監査について非常に柔軟な対応があるということを伺えたことがとても参考になりました。
私からの質問としては被験者保護の部分の倫理審査委員会のところです。今、藤原参考人からお話がございましたように、私もちょっと聞きましたら、ヨーロッパでは、手順書だけで100ページぐらいのものがつくってあって、さらには模擬審査というのでしょうか、そういうものをしていると。今まさにおっしゃったようなことをお聞きして、質の向上にかなり力を入れておられるということをお聞きしております。
そこで、アメリカが今、施設IRBから中央に移り始めているという背景として、日本と共通の問題があるのかどうか。それから、先ほど質の向上と効率化というお話をされたのですけれども、効率化を図るとどうしても質の担保ができなくなる部分もあると思うのですが、質の向上について、今、アメリカが何か取り組んでいることがあるとすれば教えていただきたいと思いました。
○田代先生 アメリカの動きも、一概にこうだということはなかなか言うのは難しいのですが、最後の質の向上に関しては、民間ですけれども、認定プログラムがあり、そこが今200ぐらいの主たる研究機関を認定して、それを3年ごとに更新というような形でチェックしているという仕組みです。ただ、これにも幾つか問題はあり、1つには、これは非常にお金がかかるプログラムで、かなり財力に余裕があるところでなければなかなかこれを維持していくことはできない、ということが1点かなと思います。
あと効率化の話なのですけれども、効率化の話はうまくやれば質の向上とリンクするということもあり、質の向上だけではなく、効率化ということが同時に言われています。それはなぜかといいますと、少し今回もお話の中に出てきましたが、現在、被験者保護に関する規制を変える際に、低リスク研究に関してより扱いを軽くしようということが言われているわけです。低リスクというのは、例えばアンケート調査ですとか、一度もらったサンプルを二次利用するとか、そういったものを念頭に置いていただければ良いのですが、なぜそういうことをいうかと言えば、結局、アメリカで倫理審査委員会に出す研究の範囲が果てしなく広がっていった結果、余りにも膨大な数の研究が倫理委員会に出てくるようになってきた。それで何が起こるかというと、本来は非常に慎重に見なければいけない、そういうプロトコールの審査に時間が割けなくなって、言ってみればほとんど誰も実体的な被害をこうむらないような研究の審査に無駄なリソースをかけてしまう。それは結果として本当の意味で保護しなければいけないものにリソースをつぎ込めないのではないか、という議論が出てきているわけです。これは恐らくEUも共通だと思うのですが、そのために、倫理審査委員会で時間をかけて見るべき研究の範囲をある程度絞ったほうがいいだろうと。それが1つには効率化ということで言われていることだと思うのですね。
もう一つは、EUの際も出てきたのですが、やはり多重審査というのが余りにも不効率であるということです。これは、世界的にほぼどのような立場の方でも同じ意見だと思いますが、10回質の低い審査を繰り返すよりも、1回質の高い審査を行ったほうがはるかに効率的であり、かつ被験者保護にとってメリットがある、そのために、どうやってこの多重審査ということ、特に多施設共同研究やる場合に、本当に40の施設全てを通す必要があるのか、ということを考える必要があります。本当に1回の倫理審査でしっかりした審査ができるのであれば、そこできちっと修正していただいて、それができるということのほうが効率的であり、かつ、被験者保護にもつながるという考え方です。
繰り返しになりますが、1つは、余りにもリスクが低いもので倫理審査委員会があふれ返ってしまわないようにするという工夫と、もう1つは、多施設共同研究に関してなるべくそれを集約化していくという取組が、効率化という側面だけではなくて、倫理審査の質の向上という面からも非常に重要であると私は理解しています。
○遠藤座長 ありがとうございます。山口委員、よろしゅうございますか。
○山口委員 非常に参考になりました。ありがとうございました。
○遠藤座長 楠岡委員、どうぞ。
○楠岡委員 2点ほどあるのですが、まず1点目は、INDを出すか出さないかの判断は、ガイドラインが定められていて、自主的にチェックすることになると思うのですけれども、出すべきものを出していなかったとか、あるいは出したのだけれども実際は要らなかったという場合です。要らないというのは、これは突っ返されるだけの話なのですが、出すべきものを出さなかったというのは、どこかチェックするところ、例えば、必ずIRB審査はあるので、IRBがこれはやはり出すべきだという判断を下すのか、そこの判断というのはどこが下しているのかという点です。
○田代先生 私も少し気になっていて、今調べているところで、確定的な答えではないのですが、少なくともFDAの書いているものを見る限りでは、まずは施設の規制担当者に相談しなさいと。IRBにも確認はしなさいということで、まさに今先生がおっしゃられたように、IRBのほうから、これはIND出しなさいということで、出さざるを得なくなるということも実際にはあるようです。
ただ、結局最後わからなくなればFDAに聞くしかないという状況で、この意味で、本当にこのINDの免除の仕組みが実態としてうまくいっているのかというと、難しいところだと思います。といいますのも、今回の検討の中でも参考にさせていただいた、FDAが出しているIND申請の要否に関するガイダンスを読んでいくと、最初のほうに、非常に多くの問い合わせをIRBや研究者や研究機関から受けている、と書いてある。つまり、INDの要否の判断が難しくて、結局のところ、FDAに確認しないとなかなか前に進めないというところもあるのではないかと思うわけです。
ですので、アメリカの場合は、特に個別的に判断しろと言っているので、例えばEU臨床試験規則のように低介入試験とはこういうものであると定義して、これについてはこういう扱いですよ、という形ではなく、INDの免除の要件は、幾つかの要件をばらばらと示して、個別に判断しなさいという形なので、確かに判断は難しいと思います。今まさにおっしゃったように、少なくともIRBからの差し戻しはあると伺っています。
○楠岡委員 INDを出さずにというか、適用外で、将来申請とかには使うつもりはなくて行ったところ非常にいい結果が出たような場合、日本の公知申請のように、それをもって適用に加えていくという制度はあるのでしょうか。それとも、それでやる限りは適用に追加するとかいうことはないと考えたらいいのでしょうか。
○藤原先生 FDA規則を見てみると、申請資料にGCPに準拠しなさいとは一言も書いてないのですね。「adequate and well control trial」という金科玉条のような言葉がずうっと続いているのですが、その中にGCPという言葉はありません。ですから、日本のように、治験届けが出していて、しかもGCP準拠にしてないと申請資料に使えないということはあり得ない。例えばがんの領域で言えば、アメリカのNCIがやっているcooperative trialがやられて、それは企業サポートではないトライアルですけれども、非常にいい成績だったとしましょう。それを企業の効能追加の承認申請に使うということになり、後から企業がauditに入ったりとか、効果を新たに第三者評価をしたり、もう一度エンドポイントを見直したりとかして、企業スポンサーではないトライアルの結果を申請資料に使って承認するというスタイルも、かつてというか、時々あるのですね。
ですから、日本のように、治験届けが存在している企業治験、医師の治験も含めた治験というものと臨床試験が完全にセパレートにあって、多分、厚労省の医薬局なんかは臨床試験は見るかもしれませんけれども、それは参考にしかなりませんよというスタンスはFDAはとってなくて、ちゃんとしたエビデンスがあって中身がしっかりしていれば、臨床試験は何でも許容しますというのが基本的スタンスのように思いますけれども。
○楠岡委員 もう一点はIRBの認証制度ですけれども、私の理解では、OHRPはあくまで届出であって、認証ではない。ただ、一部、若干認証的なものを要求しているところはあるというのは聞いているのですが、そうしますと、ある特定のIRBが非常に審査の質が悪いので、このIRBの活動を修正してもらいたいというようなリコメンデーションを出すというか、IRBを監督すると言うとおかしいですけれども、そのようなところはどこかあるのか。それとも、それは、言うならば経験を積む中で、どうもあそこのIRBはよくないぞということで、研究者が、自主的にセレクトしていくのか。IRBの規制に関する何か法的なものがあるのか、それとも、そういうのは特にはなくて、結果としてそういうものができ上がっているのかという点はどうなのですか。
○田代先生 明確な答えは持ち合わせていませんが、1つには、先ほど藤原先生のほうからお話があったような、例えばイギリスでやっているようなものと明らかに違って、アメリカの場合、まさに先生がおっしゃったように、OHRPのものは単なる登録なのですね。これは全数把握的なところがあって、日本の今の仕組みで言うと今ある報告システムに近いと思います。ただ、少なくとも登録するときにコモンルールを遵守しますといったようなことを誓約させるといった形で、それによって一応全体を見ている。ですから、もちろんそこでも通報などがあってOHRPが動くということはあり得ると思いますし、何かあまりよくないことが行われていて、ということはあると思いますが、基本的にはイギリスのように、アクティブに質を向上させる取組はしていない。
これはアメリカ的だと思いますが、先ほどお示ししたAAHRPPの認証によって、倫理審査の質が高く、そこではしっかりとした体制があるということで、組織というか、それを運営している施設にとっても非常に名誉なことであると。それによっていろんな臨床試験が走るというような形にしているようで、そこは自主的にそういうものをきちんととって、自分たちは、それこそ医療評価のような形で水準の高い被験者保護プログラムを持っていますよという形で、上を引き上げていくという形になっているわけです。これは、イギリスでやっているように、数を絞り込んで、その中で質の向上の取組を全体にやるという形ではないような印象があります。そもそもコマーシャルIRBのようなものを認めるという時点でやはり随分考え方が違って、倫理審査委員会というものを公的なものとして捉えるのか、それとも、一定のファンクションさえ果たせばそれはそれでいいのではないかという考え方で、そこはちょっと考え方が違うのかなとは思います。
○井上先生 先ほど田代先生おっしゃったように、アメリカでは、倫理委員会の運用に深く介入する司令塔のようなところはないのですけれども、例外的に、FDA規則に基づいて実施される臨床試験が被験者保護要件を満たしていなかったり、適切に倫理審査が行われていなかったりした場合について、IRBに対して指導を求める、是正を求める、場合によっては一定期間の機能停止を求める措置をとる権限がFDAにあり、実際にこうした措置が大体年に数例ぐらいのペースで行われているようです。
○楠岡委員 2000年代にJones Hopkins大学で臨床試験に関する死亡事故が起こったときに、OHRPがJones Hopkinsで実施されている臨床試験を全部とめて、洗い直しを指示し、それでホプキンスからの報告を受けて再開を許したと聞いています。その法的根拠は何かあったのですか。それとも、IRBを言うならばサスペンド、要するに活動をとめたので、IRBが動けないから、結果として試験がとまったのか、そのあたりはどういう形か、もし御存じであれば。
○井上先生 その件に関するOHRPの機能は、IRBそのものについてではなく、被験者保護に関する連邦規則の諸要件を見たし、その機関として助成を受けられる体制にあるということを約束する、アシュアランスといわれる制度と連動しています。研究機関がこうした約束に反していると判断された場合には連邦の研究助成が停止されることになります。実際に連邦助成が停止されるということはそんなに数多く発生しているわけではないのですけれども、いつでもできるのですよという権限が行政当局側にあり、またその事実について研究者側も知識を持っているものですから、そこである程度の実効性は担保されているということでした。
このJones Hopkins大学の事例についても、限定的な期間ではありましたが、実際に停止されたことの背景はこのような事情によるものです。お答えとしては、被験者保護要件の不遵守への連邦規則上の対応としてこの措置がなされたということであります。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。ほかにございますか。
望月委員、お願いします。
○望月委員 非常にわかりやすい説明、ありがとうございます。アメリカの様子を伺っていると、監査、モニタリングにしても、倫理審査委員会にしても、各施設に任せてやっていけるところが多いということです。先ほどの説明では、たまに倫理審査委員会の指導が入ることもあるということですけれども、全体的には、各施設、各組織が非常に成長していると見えます。これは各機関で任命される研究構成責任者、RIO、これが非常に強く、うまくリードしているというふうに聞こえました。そういう理解よろしいでしょうか。
○田代先生 研究不正関係に関して井上先生から説明があると思うのですけれども、あくまでもRIOというのは研究不正のところだけですので、例えば被験者保護に関して言うと、かなり人材とお金を使った形で、ミニ被験者保護局的なものが各施設にあるわけです。一昨年、藤原先生と一緒にアメリカに行った際に、Dana Farbarの被験者保護に関する部署は、7機関ぐらいにまたがる倫理審査委員会なのですけれども、そこの職員というのが100人ぐらいいるという規模なのですね。なので、そこまで本当に必要かという議論もあると思いますが、そのぐらい人をつけて被験者保護プログラムの確保ということはやっているわけです。その他、例えばモニタリングとか監査についてもそれぞれの部局があって、それぞれ専門的な立場の人たちが、ボストン地域の場合は幾つかの病院とか研究機関が一緒になってこういう組織を持っていますので、7とか8とか大きな研究機関に対して、そこでやっている臨床試験に関するモニタリングや監査についてはどこが責任を持つのか、倫理審査に関してはどういう組織が責任を持つのか、という形で張りつけていると思います。
研究不正関係に関しては井上先生のほうから。
○井上先生 今、各機関が成熟しているように見える、それをアメリカの報告は物語っているのではないかということがありましたけれども、行政当局と各機関の取り扱う範囲や責任は必ずしも安定していません。現在、行政当局側のORIには直接の調査権限がなく、多くは各機関の責任でなされているという点ではご指摘のとおりかもしれません。それは非常に前向きに捉えることもできれば、行政権力としてのORIの位置づけ自体、非常に不安定だということも同時に物語っているものでして、基本的にこの研究助成をしている当局が各機関による研究不正をどのように予防し、または対応していくのかという点は、今回、日本の場合もそうですけれども、世論の反応ですとか、こうした世論を意識した立法府のメンバーのメッセージによっても影響を受けてきました。
もともとこのORIができた背景というものにも、当時から研究不正が多発していたという背景がありまして、その問題について行政として非常に強い調査権限を持った組織を最初一旦アメリカではつくったわけですけれども、そのことについて、果たしてそれが研究者個人のそのまま、人生に非常に大きく影響するような処分について、あるいは研究活動そのものについて行政としてどこまで介入できるのかということが法廷で争いになりまして、行政のほうが少し自制する形で、ORIから調査権限を抜いて、基本的には教育のほうにシフトしてきたと、そういう経緯があります。
今回実際に向こうの方にお話を聞いてみますと、基本的に、現在ORIができることというのは二次的に機関のやる取組を支援することであると。ただ、国の財政を預かる、国の税金から出ている研究資金を預かる立場ということでもあるので、その研究不正について各機関が対応した報告についてはしっかりチェックさせていただきますよという姿勢であると。ただし、実際に機関の取組をチェックしていると、これは本当にちゃんと調査したのかということも出てくるわけだけれども、もう一回調査してくださいということをリクエストすることはできるのだけれども、それ以上なかなか強いことは言えないということがあるようです。今回の調査に対応してくれたORIのスタッフに言わせると、理想を言えば、機関に任せるのではなく、ORIにも調査権限が欲しいと。ただ、今の状況ではそういうことはできないということで、隔靴掻痒であるということでありました。
実際、現在のORIの体制になって以降、各機関に主たる対応を委ねて不正の数が減ったかというと、そういう評価でもないようです。ただ、機関側のコントロールに問題があるのか、不正についての認知度が高まったゆえに指摘される不正の件数がふえたということなのか、評価は難しいということでした。ORIについては、最近、日本のメディアでもいろいろ紹介されることが多いのですけれども、各機関の取り組みとORIの位置づけには変遷があり、一様ではないようです。
○遠藤座長 ということは、アメリカでも、今の日本におけるような混沌とした状態というのを経験した上で今の体制というのはでき上がったという考えでよろしいのでしょうか。
ありがとうございます。
○楠岡委員 ORIに関してですが、ORIのホームページを見ていると、ORIが直接捜査はしないのですけれども、関連部局でOffice of Inspection General、OIGという部局があって、そこに調査を依頼することは可能みたいです。OIGというのは、厚生労働省の同じ部局にあって、捜査権限を持っているみたいです。ORIと、それから、Office of Inspection Generalは上部で同じ担当者が見ているというような。ですから、ORIが捜査権限なくぽつんとあるのではなくて、場合によっては、そのような関連のところに捜査指示ができるというか、協力を得られるような体制と見ているのですが、それはそういう解釈でよろしいのでしょうか。
○井上先生 はい。その点については今回の調査項目の中にも入れさせていただいて、我々も非常に興味を持っていた部分ではあるのですけれども、まず、ORI自体を向こうの厚生省の中でどのように位置づけるのかという話、ここも最初はNIHの中にあったわけですけれども、研究助成をやっているところが同時に研究不正も調べるということは中立性を欠くという指摘があり、のちに改善されました。機関や研究者が言うことを聞いて、また方針が伝わりやすいようなところということ、またORIは不正に関与した研究者の処分内容を実質的に決定するところでもあるので、厚生省長官に直接意見を言える、実質的には次官補のもとについているという組織としての位置づけに至っています。
ご指摘のOGIというのは、ORIと連動して事案の処理にあたるというよりは、違法行為など、犯罪に関する調査を主に行う組織として位置づけられているようです。研究のミスコンダクトを調査する場合に、OGIと連携して何かをやるということは一般的ではないということでありました。
○遠藤座長 ありがとうございます。ほかに何かございますか。
よろしゅうございますか。
それでは、時間になりましたので、本日は本当に貴重なお話、ありがとうございました。これはいつぐらいに報告書になるという御予定でございますか。
○磯部参考人 なるべく早く。
○遠藤座長 どうぞよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
引き続きまして、第2番目の議題に移りたいと思います。第2番目の議題は論点整理に向けた議論ということでございます。事務局から、資料2として「臨床研究の在り方に関する論点整理(案)」と、資料3として「これまでのご意見を踏まえた臨床研究に関する現状の整理と今後の検討課題(案)」が提出されておりますので、まずは事務局からこれらの説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○中村補佐 事務局でございます。お手元の資料2、それから資料3のほうをごらんいただければと思います。
資料2は、前回第4回及び前々回第3回の検討会においてお配りしたのと同じものでございます。これに加えまして、今回、資料3ということで「これまでのご意見を踏まえた臨床研究に関する現状の整理と今後の検討課題(案)」という形でお示しさせていただいております。こちらの資料は、参考資料2のほうで、これまでの検討会の委員の先生方からの主な御意見をまとめさせていただいた資料がございます。こちらの主な論点ごとに、これまでにいただいた御意見をまとめさせていただいております。こちらを踏まえまして、今回、資料3という形で事務局のほうで資料を作成させていただきました。簡単に御説明させていただきます。
まず、資料3の2枚目でございますけれども、「倫理指針を超える対応が求められる臨床研究の範囲について(案)」ということで資料をつけております。これにつきましては、まず前提としまして、臨床研究には、過去に得られた健康データを分析するものから、通常の治療の範囲内でその効果を観察するもの、研究目的で被験者に未承認の医薬品を投与するものなど、さまざまなものがあるという状況を踏まえ、また、2点目でございますが、現在、「臨床研究に関する倫理指針」において、広く臨床研究の実施に関する一定の規範が示されている中で、学問の自由や、新薬の創出や新たな治療法開発の端緒となる臨床研究を推進するという観点から、今の指針を超えてさらなる対応を求める際には、その範囲を限定するべきとの考え方があります。
その場合、被験者保護の観点や医療現場に与える影響を踏まえて、研究を目的として一定の侵襲を伴うものを念頭に置くことが考えられます。加えて、諸外国においても、介入行為を伴うものや医薬品を用いるものなど、研究に伴うリスクに基づいた対応を行っています。
こういった現状がある中で、倫理指針を超える対応が求められる臨床研究の範囲についてどう考えるかということが検討課題として挙げられるかと思います。
次の3ページ目に参ります。「倫理審査委員会に関する現状と今後の検討課題(案)について」という資料になっております。まず、「現状と課題」ということで、1点目、ディオバン報告書において、不正の発生につき倫理審査委員会が歯止めにならなかったとの御指摘がありました。2点目、さまざまな内容の研究計画がある中で、審査の質にばらつきがあり、公平性に欠けるとともに、被験者保護の観点から問題があるという指摘がございます。3点目、現在、倫理審査委員会の数が非常に多く、全ての倫理審査委員会において審査に必要な人材等を確保することが困難であるとの御指摘もあります。また、欧州や米国のほうでの倫理審査委員会に関する取組としてさまざまなものがあります。
こういった現状を踏まえまして、「今後の検討課題(案)」ということで、まず、一定の審査の質を確保するために、必要な委員構成や審査体制に関する基準を策定することについてどう考えるかという点があります。また、その際に、審査する研究計画の内容に応じて、委員構成や審査体制を定めることについてどう考えるかという点があります。また、審査に必要な人材等を有効に活用するための方策についてどう考えるかということもあるかと考えております。
次に、「モニタリング・監査の実施について(案)」でございます。「現状と課題」として、まず課題の1点目、モニタリング・監査は、研究現場における人的・経済的負担に配慮すべきではないかという御指摘があります。また2点目として、臨床研究には、その規模や内容についてさまざまなバリエーションがあるということで、欧米の制度も参考に、研究の内容等に応じて必要な実施方法を設定できるようにするべきではないかとの御指摘があります。
こちらを踏まえまして、「今後の検討課題(案)」としまして、モニタリング・監査について、対応を求める範囲を限定するという必要性についてどう考えるかという点。また、欧米では、研究機関の自主性を尊重するとともに、モニタリングの実施方法は研究の内容等に応じて研究責任者があらかじめ定めて、倫理審査委員会の審査を受けて実施しております。このような対応についてどう考えるかという点がございます。
次に5枚目になります。「臨床計画に関するチェック体制について(案)」ということでお示ししております。まず「現状と課題」につきましては、1点目、一連の不正事案を通じて、研究不正に対する当局の調査が任意によるものにならざるを得なかった点があります。また2点目として、ディオバンの報告書において、不正の発生につき倫理審査委員会が歯止めにならなかったとの指摘もありました。また、現行の指針ではモニタリング・監査は求められていないということがあり、倫理審査委員会以外には第三者によるチェックの仕組みがないという現状があります。
これにつきまして、臨床研究の実施基準違反に対する対応についてどう考えるか、また、倫理審査委員会以外のチェック体制の整備と、その対象範囲についてどう考えるかという検討課題が考えられるかと思います。
下の図については、このような現状と課題を踏まえまして、仮にこのような形で例示として載せさせていただいたものになります。
6ページ目でございますけれども、以上のような観点から、「臨床研究の実施医療機関に対して今後考えられる主な対応と対象となる研究(イメージ)」を掲載させていただいております。
この図につきましては、左側に○1から○9まで対応例ということで挙げさせていただいた内容につきまして、AからDまでの目的に応じて対象となる臨床研究の範囲をそれぞれ例示させていただいたものです。○1から○9に関しては、前回の検討会において事務局(案)ということで提示させていただいた資料と同じものになります。○1については、主に被験者保護の中でも安全性確保という観点から、○2のモニタリング・監査については、安全性確保に加えて、臨床研究のデータの信頼性確保を念頭に置いたものということで研究の対象範囲をこのようなものとするという例を挙げさせていただいております。
それ以外の研究については基本的に全ての臨床研究を対象となる研究の例として挙げさせていただいております。
事務局のほうからは以上になります。
○遠藤座長 ありがとうございます。
これまでの皆様方の御意見を整理しつつ課題を整理していただいたということと、それと関連いたしますけれども、6ページに、前回事務局から提出された対応例ということについて幾ばくかの内容を入れたものが出されております。相互に関連する話だと思いますので、どなたでも結構でございますので、時間は本日は結構たっぷりとっておりますから、ぜひ忌憚のない御意見いただければと思います。
山口委員、お願いします。
○山口委員 特にこのテーマごとということではなく、フリーディスカッションと考えてよろしいですか。
○遠藤座長 はい。もちろん結構でございます。
○山口委員 では、2つだけ意見を述べさせていただきます。先ほども申し上げましたように、倫理審査委員会のあり方ということが、被験者保護とも大きく関係しますので、それをどう強化していくのかがやはりとても重要なことだと感じております。先ほどから出ているように、日本の中で1,300を超える倫理委員会があり、その1,300を超える倫理委員会の現状について全く検証が行われていないというようなことも問題ではないかと思います。
そういうことを考えたときに、例えば全体的に質を上げることは一度にやろうと思ってもなかなか難しいのではないかなと。そうであるならば、例えばですけれども、まず臨床研究中核病院の倫理委員会がどんな現状なのかを検証して、何が足りないのかを浮き彫りにして、中核病院の倫理委員会の質を上げる。そこから他の病院の倫理審査委員会に広げていくというような工夫をすることで、質の向上が図れるのではないかと考えます。ですので、まずはぜひ現状の検証から始めないといけないのではないかと思っています。
倫理指針も、今回、疫学と絡めて新しくなるということですけれども、そことリンクしてどのように進めていくのかということも問題の1つかと思います。前回も申し上げましたが、例えば一般の立場の倫理委員であれば、養成するというところにもお金を投じていかないとなかなか質は本当の意味では上がっていかないのではないかなということを強く感じております。だから、まず実態把握ということも必要ではないか。
それから、モニタリングと監査ということに関しては、先ほどお話がございましたように、治験のときのあり方とは別に考えて、実質に即した臨機応変な対応が必要だと思います。ディオバンの問題を考えたときには、試験の目的、研究の目的ということも視野に入れて考えていかないと、不正ということは防げないのではないかということを思っております。
以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。3ページと4ページに該当する内容だったと思いますけれども、重要な御指摘をいただきました。いかがでしょうか。ただいまの倫理審査委員会及びモニタリング監査との関連でも結構でございますし、あるいは違う視点でも構いませんけれども。
近藤委員、どうぞ。
○近藤委員 山口委員、どうもありがとうございました。この辺は、国民の健康に直結する研究であると思うので、その責任の所在という話になると、形だけ責任をとるというのではないだろうと思うのです。どういう形でちゃんと相手に対して責任態度をとれるかということだと思うのですね。アメリカのFDAのやり方とすれば、先ほど御説明いただいた内容を参考にすると、研究者自身が、例えばこれはある意味では責任をとってやる。それから、ある機関で、その研究した機関が責任をとる。そういう考え方もお示しいただいたわけですけれども、いずれにしても、何とか委員会が見てくれたからいいんだよという話ではないだろうと思うのですね。だから、本当にそれを誰が保証するのかという観点から見て、形骸的な倫理委員会では無責任ということになります。
従って、IRBにしろ、倫理審査委員会にしろ、その審査というのは本気でやってもらわなければならないわけですね。だから、どう本気を持ってやってもらえるかという仕組みをつくるべきだろうと思うのです。何を求められているか理解した上で倫理委員会のあるべき姿であるとか、IRBのあるべき姿というのを逆に提示すればいいのだろうと。それで、最も可能なところを、できることからやっていかなければなりません。できないことを言ったって、これはできません。人の数は少ないし、専門家もそんなに多くないわけです。そういう中でどの程度のことができるか。でも、将来これだけのことをしたいよねというゴールがあるだろうと思うのですね。そういう建設的な格好で、この倫理委員会なりIRBをつくっていくというアイデアを出していくのが重要なのではないかなと思いますね。
○遠藤座長 ありがとうございます。
では、山口委員、お願いいたします。
○山口委員 済みません。先ほど1つ言い忘れたのですけれども、ある程度質の高い倫理委員会をつくったとしたら、そこで質の高い審査を集約して行っていくということが大事なのではないかなとも考えておりました。今おっしゃっているように、具体的にできないことでなくて、できることから始めないといけない。多重になっているところをということでなくて、本当にこの審査に対しては力を入れないといけないのだというものを質の高い倫理委員会でまずは取り組んでいくというようなところから始めるのが現実的なのではないかと思っております。
○遠藤座長 ありがとうございます。倫理委員会のあり方に関する移行のプロセスも含めて御意見いただいているわけでありますけれども、関連してでも結構でございますし、そうでない視点でも結構でございますけれども、何かございますか。
望月委員、どうぞ。
○望月委員 先ほど磯部先生の初めの御報告を伺っていまして、かつてはこのような状態であったとのことです。やはり人が育ったということが非常に大きいと思うのです。ですから、人が育って、倫理審査委員会にしてもきちんとした体制ができる。けれども、待っていられない。待っていられないときにどうするかというのは、必要な人材等を有効に活用する、あるいは確保するということが必要です。日本にもそのような人材がいらっしゃるはずです。企業をリタイアした人とか、大学をリタイアした人とか、そういう人をもう一度、活用すると言ったら失礼ですけれども、人材バンクみたいな形にして、まず緊急に必要なところに配置するなり教育するなり。その間に、今の若い人材をどんどん育て上げる。
そういう両方の仕事をする必要があるので、そのときにやはり、近藤先生のお顔を見るとつい言いたくなるのですが、PMDAが中心になって、そういう人材バンクのような形をつくるということが可能だったらと思います。1,300全部の倫理審査委員会に配る必要はない。重要なIRBにそういう方々を配置するなり、あるいは教育機関として、PMDAでそういう拠点をつくるなり、とにかく人材をまず育て上げるのが緊急に必要かという気がします。今後の検討課題(案)3ページの審査に必要な人材等を有効に活用するための方策ということで思いついたことを申し上げました。
以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。ほかにございますか。
武藤香織委員、どうぞ。
○武藤(香)委員 今の人材のお話についてです。アメリカの場合は、IRB認証ビジネスの仕組みが確立しています。また、IRBの事務局の専門性についても、今回の海外調査では行かれてないと思いますが、人材養成のための協議会として、プリマー(PRIM and R)という団体が資格認証と生涯教育を進めています。先ほど望月委員からも御提案がありました、社会人の学び直しプログラムのような、長く大学院に行かなくてもよい取り組みを事業化する必要があります。倫理審査委員会を法的に位置づけることには基本的に賛成ですが、非常に一般論的なことしか書けませんので、それだけだと倫理審査委員会を統廃合したり、質を高めたりすることにはつながらないと思います。ですので、法律と同時に教育や研修の事業も走らせるということが必須かと思います。
○遠藤座長 ありがとうございます。
桐野座長代理、お願いします。
○桐野座長代理 今、IRBのことが問題になっているので思っていることを言います。臨床研究の倫理指針も当然、IRBが関係するわけでありまして、それより少しきつい目の、場合によっては法規制を含めたことを考える場合でもIRBはもちろん関係するわけですけれども、ではIRBにグレードAとグレードBとグレードCをつくるのかという問題になってくる可能性もでてきます。IRBは今のところIRBであって、それぞれが機関が持っているか中央倫理審査委員会形式でやっているか、こういうものだと思いますけれども、何らかの形で、こういう非常に要求のきつい判断をする場合のIRBというのは今後相当質を高めていかないといけないという御意見だろうと思います。多くのIRBは、事務局が非常に弱いということと、それから外部委員の先生方は、多くの場合はボランティアでやっておられ、時間もそうとれないので、事前に資料を20件、30件をお送りして、事前に見てくださいとは言いますけれども、そんなに長時間費やして見ていないという状況が多い。大体は内部のサブコミッティみたいなものをつくって、そこで事前にある程度問題点を洗い出して、チェック項目をチェックしてというような作業をいっぱいやるわけですね。これはもうほとんど、現在のレベルだと専門家の仕事になっているにもかかわらず、大体は病院の部長先生や副院長先生たちが時間の合間を縫ってやっているというのが現状なのです。
ですから、通常の、余り侵襲性の高くないものであればそれでいい場合が多いのですけれども、場合によってはその研究が発売されたり、発売や広告にかかわるような、逆に言えば、ある意味で、データの公正性を保つのがなかなか難しいようなものについては、今のままでやれないということについては多分間違いないので何か考えないといけないと思うのですが、倫理審査委員会に高級倫理審査委員会みたいのをつくるのかという議論については、やはりそれは難しいのではないかという感じもします。
○一瀬課長 よろしいですか。事務局からちょっと。
○遠藤座長 事務局、どうぞ。
○一瀬課長 今、厚生労働省のほうでやっております倫理審査委員会関係の取組を簡単に御説明させていただきますと、まず、先ほど藤原先生からちょっとお話がありました再生医療新法の関係で倫理審査委員会を設けているのが、初めて法律に基づく倫理審査委員会ということになります。こちらのほうでは、審査する再生医療技術によりまして、倫理審査委員会の認定基準をを2段階に分けることとしております。
今ちょうど省令のパブリックコメント中なのですけれども、厳しい基準を求める特定認定再生医療等委員会、こちらのほうが、専門家を8名以上そろえること、また委員として必要な専門性をそれぞれお示しした形で省令の案を今出しております。緩い基準の委員会は5名以上の形でやるということで、若干差別化した形での提案を今しているところであります。
それと、倫理審査委員会が1,300ある現状で、その質がさまざまだというお話がありました。これらについては、今年度から予算事業の中での認定ですので法律に基づいてはいないのですけれども、どういった形の倫理審査委員会であればある程度の質の担保ができるかというものを研究班のほうで研究いただいておりまして、今年度中にそれを予算事業の中で動かしてみたいと考えております。
また、疫学の指針と臨床の指針を今統合する議論を行っているところで、こちらのほうもパブリックコメント中なのですけれども、この中では、倫理審査委員会の委員に対しても教育することをその委員会の設置者、開設者に求めることとしております。
それと、山口委員からお話がありました中核病院の件なのですけれども、今やっております中核病院といいますのは予算事業に係るものでございます。来年度、4月1日からは法に基づく中核病院という制度が動き出します。その中核病院の要件としましてどういったものが必要かというのを今後検討していくこととしておりますので、その中で臨床研究中核病院が持つ委員会とはこうあるものだというのも当然御議論になるのではないかと考えております。
私からは以上でございます。
○遠藤座長 ありがとうございます。ただいま課長から御報告あった内容について、何か御質問ありますか。
児玉委員、どうぞ。
○児玉委員 倫理委員会の委員を何度か務めさせていただいた経験から、先ほど桐野委員がおっしゃったことにも関連してコメントします。倫理委員会の委員を努めるときにはできるだけ事前準備をしようとするのですが時間が足りないこともあり、また、審査も時間が限られている中で、私の仕事柄、法的な観点からのポイントを3つに絞らせていただいています。○1説明がわかりやすく適切か、○2個人情報保護と匿名化に法令に違反するところがないか、○3補償・賠償の仕組みがリスクに応じて適切か、の3つです。ただ、時間が足りず、質問もし切れず、振り返って、倫理委員として十分に検討を尽くせたかというと忸怩たるものがあります。
また、○1説明、○2個人情報保護、○3補償・賠償の仕組みの前提になるのは、「研究の科学性」と「データの信頼性」だと思います。これだけ錯綜した法制度があり、また科学性の評価が困難な中で、先ほど事務局機能の整備が重要だというご指摘がありました。これほどたくさんの倫理審査が行われてきても、なお、○1説明、○2個人情報保護、○3補償・賠償の仕組みが必ずしも安定していないように思えますし、いわんや、今課題になっているデータの信頼性確保や研究の科学性の担保という点で、倫理委員会の強化ということでどれほどの実効性があるのだろうかということを若干危惧したり懸念したりしております。
今回、資料3がよくいろいろなことを整理していただいています。とりわけ最後の6ページのところが全体の見取り図として大変イメージがよくわかるなと思っております。「研究データの信頼性確保」、Cというマークがついているところに注目しています。
今、方策として挙げられているものは、○2のモニタリング・監査と○3の倫理委員会の責任・体制強化でいずれも研究データの信頼性確保の役割を担うということになっています。ただ、現状の事務局体制と倫理委員会の体制が大きく変わらない限り、個別の倫理審査委員会、施設内でリビューをするにすぎない外部委員の組織にこれ以上の負担を課することがどうなのだろうということを思います。
それで、○2のモニタリング・監査のほうのCに目が行くわけですが、ここで「広告等に用いられる研究」という言葉がありまして、どのように制度として言葉にしたらいいか、随分検討する余地のある難しいものではないかなあと思います。
最初から広告に用いようと思って研究するときにこういう規制をするという形であればまだそれはわかりやすいのかもしれないですが、研究が終わった後で広告に用いるときに後づけで規制をかけるのは難しく、どういう要件を満たせば「広告等に用いられる研究」にあたるのか、先ほど資料1で見せていただいた、磯部先生初め皆様のご報告の中で、35ページに、広告と科学的情報交換の区別というのが大変難しいというような御指摘もあります。制度をつくるときの全体の整理から言えば、今、データの信頼性確保と科学性の問題を議論しようとすると、モニタリング・監査の仕組みをつくるか倫理委員会の体制強化をするかという選択肢があり、モニタリング・監査のほうに着目すると、広告プロモーション活動と科学的情報交換の区別というなかなか困難な問題に出会うのではないかと思います。
長くなりました。恐縮です。以上でございます。
○遠藤座長 ありがとうございます。何か関連して、全てが関連し合っているわけでありますけれども、何かございますか。
今、倫理審査会の話をされていながら、実はモニタリング・監査の中で、その範囲についてどう考えるかという領域についての少しコメントがあったとも捉えられますので、その辺も含めて何か御意見があれば承りたいと思います。
大門委員、お願いします。
○大門委員 この8月に改訂倫理指針案が提示され、その意見公募が現在実施されているところですが、その案のモニタリング・監査の項を見ますと、「侵襲を伴う研究であって、介入を伴うものを実施する場合には、研究機関の長の許可を受けた研究計画に定めるところによりモニタリング及び監査を実施しなければならない」と記載されています。そうしますと、侵襲を伴う研究であって、介入を伴うものに関しては、モニタリング・監査の実施自体は、この指針でも担保されるということになろうかと思います。ただし、法的拘束力があるわけではないことも含めて、この点は前提として押さえるべきところだと考えます。
結局そこで問題になるのは、範囲のことももちろん関与してくるとは思いますが、その実施の仕方だと思います。これはやはり研究の内容やリスクに応じて変わってくるものですし、例えば侵襲を伴う研究であって、介入を伴うものの中でも、ここに挙げられていますような未承認の医薬品・医療機器を用いる研究だとか臨床現場の治療行動を変え得るような研究については、藤原先生にご指摘いただいたように、やはりケース・バイ・ケースで考えていかないとなかなか難しいものだと感じた次第です。
少なくとも言えることは、承認申請を狙うとすれば、当然、GCPのレベルでやる必要があるでしょうし、そうでないものに関しては、おそらくケース・バイ・ケースであろうと感じました。
以上でございます。
○遠藤座長 ありがとうございます。いかがですか。
武藤委員、どうぞ。
○武藤(徹)委員 このIRBというのは、私がまだ現役のころは全然なかったのですね。スタートして時間が短いのですね。ですから、アメリカにしろ、ヨーロッパにしろ、比較して日本が劣るのは当たり前と言えば当たり前の話で、いかにして早く彼らの進んだところを取り入れるかということだと思います。イギリスのやり方などは非常に成熟していて非常にクオリティの高いIRBの団体があって、それを常にブラッシュアップしているわけですから理想的だと思いますけれども、今それを日本でやろうといったって無理でしょう。そうすると、今の日本型をとりあえずは踏襲しなければならない。
で、1,300幾つもあるのはおかしいではないかという話があるのですけれども、これは恐らく、実態を調べればわかると思いますけれども、日本の場合と欧米の場合と病院の種類が違う。日本の場合は、やたら中小の病院が多くて、そういうところでも、頼まれれば治験に加わってきます。難しい治験ではない場合、年間に1例しか参加していない病院も入っているから、100以上の病院が一緒になってトライをするのですね。イギリスなんかは少数の大病院でやってしまうので、必要なIRBの数も違ってきます。それを考えに入れないと、1,300という数字は理解できないことになりますね。
ただ、現状を分析しているだけではしようがないので、一つの案として、やはり治験の難しさに応じて、質の高い倫理委員会をつくるということからまず始めて、それを徐々に拡散していく。日本人は非常にまじめですから、やり始めれば、5年もたてば立派に拡散できるのではないかと思います。
がんについて言えば、がん拠点病院があるのですから、それを中心にして、そこにしっかりした倫理委員会をつくるということから始めていくのが実質的効果が上がるのではないでしょうか。不満を言えば切りがないので、ただ、やらなくてはいけないということになれば、やはり少数精鋭で、病院を選んでやるということ、それがまず第一ではないかと思います。
○遠藤座長 どうもありがとうございます。
楠岡委員、お願いします。
○楠岡委員 今までのいろんな議論で、モニタリング・監査に関しても、研究の内容、レベルによってグレードをつけるとしても、結局最後は、山口委員が指摘されたように、IRBに全部集約されてくるというか、IRBそのものによって決まってくるという、どうしてもその枠組になってしまう。
ただ、今の研究班の報告を伺っていても、ヨーロッパ型とアメリカ型は全く異なっていて、これは文化の違いといいますか、ヨーロッパはもともと法律が先にあって、それに従ってシステムをつくっている。しかも、倫理審査委員会は、フランス型にしろイギリス型にしろ、税金を投入してやっていくというやり方で来ている、そのような理解になると思うのですね。
それに対してアメリカの場合は、国のでき方からして、法律が後から追いついていくような形なので、結局、各施設等でIRBを持って、ただ、それだと当然レベルの問題とかが出てきますので、武藤委員がおっしゃるように、アクレデンシャルというか、認証という形で質を担保していく。それで、その認証も勝手に認証するのではなくて、結果的に幾つか、そういう認証団体みたいなのができて、その中でそれが一定のレベルで統合していくとか、あるいは協議会みたいなものをつくって、その協議会の中で相互認証していくみたいな形。
例えば医学教育においても、アメリカの場合、医学部は、文部科学省が認可するというのではなくて、勝手につくれるわけですけれども、そこで一定の教育をしてなければ認証が得られないし、認証が得られなければ国家試験の受験資格がないみたいな形での規制という形になっていると思います。
日本の場合は、結局、倫理審査委員会システム、ヨーロッパ型ではなくて、アメリカ型でスタートしたわけですが、これの一番のメリットは、税金が投入されないといいますか、受益者負担でやっていくみたいなところがあったので、多分、最初やりやすかったのだと思います。もし今後、それをヨーロッパ型に切り替えるとなると、先ほど武藤先生おっしゃるように、相当力も要りますし、当然、それに伴うコストをどうするかというところから考えないと、軽々しく変えることはできない。そうすると、もしこの今のアメリカ型で継続していくとなると、認証制度とかが必要ですが、自然にでき上がるのを待っていては間に合わないので、そういうところに少し力を入れて、そしてレベルを上げていくような形しかない。結果としては選択肢が非常に狭まってきているのではないかという気がします。
そのときに、認証制度みたいなものに法的な裏づけをするのか、そこまではしないけれども、法律の中でそういうものがつくることを推奨してバックアップしていくのかという形になると思われる。結果的にそれがコアになって、例えばモニタリング・監査、どれぐらい行うかとか、もし研究不正があった場合にはどのような形で調査を行うかとかいう形になっていくのではないかというのが今私自身が感じているところで、中心になるのはどうしても倫理審査委員会になってきます。それをどういう形にするかで全体の枠が決まってくることになるのではないかと思っております。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。
非常に多様な御意見が出されておりますし、ある意味で共通認識も持たれておられる。つまり、不可能なことはできないと。フィージビリティというのは重要なのだというところの御意見だったと思いますけれども、何かつけ加える御意見があれば。
児玉委員、どうぞ。
○児玉委員 倫理委員会について、アメリカ型、ヨーロッパ型というような、直観的によくわかるお話をいただいていて、私もそうだと思います。もう一つ比較の軸を入れるとすると、倫理委員会について、専門家型と非専門家、市民型という見方もできると思います。倫理委員会は本当は専門家と市民の両方の役割が必要だと思います。レイマンコントロール(layman control)という観点から普通の市民が伸び伸びと意見を言える土台をつくるために、法的な検討や科学的な検討、それから、専門的な意味での人の生と死をめぐる倫理的な検討をきちんとするという専門家の土台が必要です。
武藤先生のような専門家の前でこんなこと言うのもちょっと差し出がましい話ですが、ただ、アメリカの倫理委員会において最後の最後に素人の目、一般市民が発言する場をつくるというのは、例えば法制度の陪審制でも、IRBの運用の仕方でも、普通の人のコントロールというのをとても重視するアメリカの伝統と文化なのだろうという気がします。
ただ、それにしても、アメリカの倫理委員会ではドラフトの法的チェックは、そこそこの病院であれば、必ずその病院に専属の弁護士がいるわけですし、そういうリーガルチェックをきちんと経た上で伸び伸び一般市民が意見を言っているというアメリカ的な倫理委員会のあり方と、時間とリソースの限られた中で日本の倫理委員会のあり方とを比較すると、少しリソースのベースが違うのではないか。そういう意味で、基盤整備にもう少しマンパワーの育成と、それから実際の今果たしている倫理委員会の役割も含めていろいろと基盤整備を御検討いただきたいなと、そういう機会になるとよいなと思います。
以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。ほかに。
武藤香織委員、どうぞ。
○武藤(香)委員 制度を考えるということで、この先どこまで細かく議論できるのかわかりませんけれども、倫理審査委員会に対して何かしなければいけないというのは大分前から合意ができていると思います。倫理審査委員会を標準化し、数を減らすという方針が普及すれば、これを機会に手放したいという施設もあると思うのですね。逆に、私がちょっと危惧しているのは、意外と倫理審査委員会を維持したがるのではないかということです。そういうところが閉じやすくするためにどんな手当をしてあげればいいのか考えなければなりません。
他方、多機関や地域のために貢献したい倫理審査委員会というのがあるとすれば、そちらに対してどうやってお金や人を集めてやっていただくのか。具体的な方策を考えていくと、意外に今の中でお金をかけずにやれることがあるのではないかという気もしております。
以上です。
○遠藤座長 どうもありがとうございます。
山口委員、お待たせしました。
○山口委員 児玉委員のお話をお聞きしていて、私自身が委員を務めている倫理委員会のことに絡んで意見を述べたいと思います。毎月かなりの数の、事前資料を読むことに私自身も個人の時間をかなり費やしています。でも、実際に委員会に行ってみますと、事前に目を通して参加している方ばかりではありません。そういうことをお見受けする現状の中で、先ほど1,300という話を私もしましたけれども、倫理委員会もいろいろあると思うのです。とても難しい審査をしている病院の倫理委員会もあれば、開かないといけないからやっているというところまでかなり、レベルと言っていいかどうかわかりませんけれども、差があるのではないか。
そんな中で、先ほど事務局から、今、研究班が行って要件を整えているという話があったのですけれども、例えば要件を厳しくしたとしても、それに形を合わせようとするのですね。倫理委員の教育をしないといけないということが厳しくなると、勉強会として情報提供はされます。しかし、一方通行の話題提供、情報提供であって、それが委員の理解につながっているのかどうかや、実際の倫理委員会の活動に生かせているかどうかは疑問で、本当の教育になっているとは限りません。ですので、今まで形を整えなければいけないということでいろんな枠組はつくってきたと思うのですけれども、すぐ形骸化してしまうところが反省点だと思います。
ですので、形をつくるよりは中身をどうするのかということと、実際に必要な審査を質の高い倫理委員会でできるような仕組みつくりということ、これは皆さんがいろいろおっしゃっていることと同じだと思いますけれども、そこのところに、こういういろんな膿が出てきた段階だからこそ、ちょっと今までとは違う視点で中身づくりということをしていかないといけないのではないかという思いで先ほどの発言に追加させていただきました。
○遠藤座長 ありがとうございます。倫理委員会が非常に重要だということでありますので、非常に多くの方々から御指摘をいただいているわけでありますけれども、当然関連するわけでありますが、事務局から出されている資料を見ますと、またやや違った視点からの問いかけもあるということで、例えば2ページですと、これは先ほど大門委員が触れられたことと関連いたしますけれども、倫理指針を超える対応が求められる臨床研究の範囲についてどう考えるかといったような内容であるとか、あるいは、4ページになりますと、モニタリング・監査について指針を超えて対応を求める範囲を限定する必要性についてどう考えるかといったようなこと。あるいは5ページに、臨床研究の実施基準違反に対する対応についてどう考えるかといったような。
今までの議論はどちらかというと倫理委員会の体制整備に関するお話。もちろん、そのことが実効性をどう担保するかという話になりますから、当然、今申し上げたものとは関連するのですけれども、また違った視点の直接的な問いかけがあるものですから、これについて何がしかのコメントがあればいただければなと思います。なかなか難しいところではあるわけですが、ある意味、この検討会のミッションの本道でもあるというところかもしれませんので、まとまった御意見でなくても結構でございますけれども、何かあればコメントいただきたいと思います。
○近藤委員 私は、倫理委員会の役目は、もちろん被験者保護というのは大事な観点であると思いますけれども、もう一つ、研究データの信頼性をいかに保つかということだろうと思います。最近、この数年にわたって、文部科学省の橋渡し研究であるとか、それから厚生労働省の中核施設の拡充を見てみますと、いろんな研究テーマが次から次に挙がって、例えば一つの大学で100ぐらいの研究テーマが臨床研究として出てきている。そういう中で、手挙げしていろんな研究が施設の中でわき上がっている状況にあるわけです。そのような体制にない所での研究は、例えばAROみたいなところに編入してもらって、そういう研究をやっていただくと。そういう流れの中で、研究費もしっかり保持され、IRBなり倫理委員会で評価されることになると思います。
そうなると、そういうところでしっかりとしたプロトコールなりが整えられると思います。そうすると、残りのところ、つまり、小さな規模の研究とか、大きな社会的要求の少ない研究では、被験者保護であるとかそういうところが問題になってくるわけで、従来あるような倫理委員会に、そこでしっかりと、審査していただければ良いのではないかと思います。これは、今、研究の流れがだんだんそのようになっているという私自身が感じたことでちょっとお話し申し上げたところです。
○遠藤座長 ありがとうございます。
どうぞ、武藤委員。
○武藤(徹)委員 今、モニタリング・監査をやらねばいかぬという規定はないですね。自主的にどこかでやっているかもしれないけれども、ここに倫理審査委員会がやっていると書いてあるけれども、実際には倫理審査委員会にそんなこと頼んでいることはないと思いますよ。結局、それをやってなかったのが今度の事件の原因の一つではないでしょうか。実際に途中で修正できなかったのですね。IRBは入り口の審査だけで、途中で何もしないということは欠陥だと思うのです。これも研究のレベルというか、難しさ、それからリスクも考えて監査することにしないと、一律にやってはまずいと思います。
○遠藤座長 それはちょっと事務局に。
○一瀬課長 事務局でございます。
今、御発言いただきましたモニタリング・監査につきましては、現行の臨床研究倫理指針の中には規定はございません。ですが、ディオバン報告書を踏まえまして、今回、疫学と臨床合わせた統合指針というのを作成しておりまして、現在、パブリックコメント中でございます。その中では、先ほど大門委員が御発言なさいましたとおり、介入・侵襲、ともにある研究についてはモニタリング・監査をするようにという規定を盛り込んでいるところでございます。
それで、大門委員がおっしゃられた介入・侵襲があるものをベースにという御発言というのは、6ページで言うところの全ての臨床研究という、それを意味されての御発言ということでよろしいでしょうか。
○大門委員 改訂倫理指針案の文言どおりでして、介入、侵襲を伴うものに関してと記載されておりますので、それを意味します。もちろんいわゆる未承認薬等の臨床試験もその中に含まれます。
○遠藤座長 それでは、山口委員、桐野座長代理の順番でお願いします。
○山口委員 質問をさせていただきます。事務局から、今、パブコメをしているところではモニタリングが指針の中に入ってきたというお話だったのですが、法律ではなく指針でやっていたことが今回のさまざまな問題の背景の一つだと思っています。中でも途中の経過をきちんとチェックする機能がなかったことも問題の一つではないかと、ディオバン事件を見ていて思ったのですけれども、法規制でなくて倫理指針に入れるだけで今までより規制力が働くとしたら、その力はどれぐらい効力があるものなのですか。モニタリングを指針の中に入れるだけできちんとできるのであれば法の縛り必要ないのかもしれませんけれども、その力の大きさがわからないので教えていただきたいと思います。
○一瀬課長 公費、国等からお金を出しているものにつきましては、当然、倫理指針を守っていただくという話になります。具体的には、厚労科研でありますとか文科の科研費を用いた研究につきましては、当然、指針の遵守義務がかかることになりますので、守っていただく内容が今まで以上に増えることになります。
一方で、もともと倫理指針を守っていただけないような研究者であれば、新しい倫理指針を示しても守っていただけないということにはなってしまいますので、今回こちらの資料3でお示ししておりますのは、今の倫理指針を超えて対応が求められるものというところに限定してはどうかということで御提案させていただいているものであります。
○桐野座長代理 今のモニタリングの件については今度の倫理指針で盛り込まれるということになっているのですけれども、既に学会等で行われている、ある程度侵襲性がある、あるいは余りないものも含めてデータベースに登録して始まっておりまして、それはもうかなり前からやられているし、モニタリングも相当やっていると思います。少なくとも私が知っている幾つかの研究についてはモニタリングをやっています。全例、モニタリングというやり方でない場合もあります。ランダムサンプリングをしてモニターしている場合もありますけれども、やっておりまして、そこまで倫理指針が少し整備されつつある現状では、遠藤先生も、今、事務局からも言われたように、これを超えているような範囲について議論して、それからいろいろ考えていくという議論の仕方に変えたほうが少し有効かなあという感じもします。
○遠藤座長 ありがとうございます。
楠岡委員、どうぞ。
○楠岡委員 この、指針を超える対応が求められる臨床研究の範囲というのは非常に難しい話です。今、大門委員がおっしゃられたように、指針においては、侵襲を伴って介入を伴うということは、特に臨床試験に相当するところを意識していて、それに関して、モニタリング・監査を義務づけるとか幾つかの条項、資料の保存等が義務づけられることになりますけれども、そうすると、非常に小さな施設内研究も臨床試験であればこの基準を守らなければいけませんし、全国的に、それこそ1,000人以上の被験者が入るような大規模なものも当然、臨床試験であれば入ってくる。そのところで今問題になっている、どこからを法律の対象にするかとかいうことですけれども、なかなか線の引きようがない。例えば人数が多いから問題かというと必ずしもそうではない、ほとんど観察研究に近いようなものもあるでしょうし、逆に人数が少ない、高度なものを入れるからといっても、その高度という範囲がなかなか難しい。
例えば未承認とかいうものであればはっきりしてくると思いますが、結局、その範囲をどう決めるかということで、そうすると、先ほどのアメリカのIND制度のようなものが1つ参考になるような形になってくるとは思います。問題は、この法律が適用されるとか、あるいはIND的なものを必要とするというときに、その判断をどこがするのか。それが先ほど質問させていただいたところで、IND的なものをやる場合に、それを受け取るところに結局最終的には問い合わせないとわからないようなものが結構出てくると、結果的にそこのところが非常に煩雑化してくるというような問題が出てくる。
問題は、どこがそれを受け取って判断するかというのをはっきり決めておかないと、ぐるぐる回るばかりで、いつまでたっても回答が得られないということになってしまう。そうすると、具体的に法の対象範囲になる研究を書き出すというのは非常に難しいので、多分定性的なものになってしまう。それから、先ほどのINDの出すか出さないかのガイドラインである程度自己チェックも考えられるが、明らかに対象外であるとか、対象にかかわるものはいいとして、グレーゾーンのところをどうするかというシステムも含めて考えておかないと、法律をつくったはいいけれども、その法律を実際動かすところが全くわからない。それを自主的にやりなさいと言われ、結局、先ほど議論の、IRBがその判断をするという話になっても、IRBも判断できない場合はではどこへ相談するのかという問題が必ず残ってくると思います。そこを考えながらでないとなかなかその範囲を決めるのは難しいのではないか、あるいはその範囲の決め方を決めるのが非常に難しいのではないかと思います。
○遠藤座長 ありがとうございます。実際に運用する上での課題というものは非常に重要だということでございますね。そのとおりだと思いますが、いかがでございましょうか。とっかかりの話で結構でございますけれども、何かあればいただきたいと思います。
近藤委員、どうぞ。
○近藤委員 先ほどの研究費の出どころになる話ですけれども、文部科学省であるとか厚生労働省、そういった公的な研究費でやる幅がだんだん広くなってくることは間違いありません。今まで研究したくてもできなかったものが、今、イノベーションの推進の中でどんどんその輪が広がってきていることは間違いないと思います。しかし、今まで起こったいろんなことの事件を見てみると、製薬企業から出ていたお金、ルートとしては寄附であったりいろんな格好があったのかもしれませんけれども、そういうものの場合、特に倫理委員会の役目が大きいだろうと思うのですね。
だから、今後、こういう研究費の出所について利益相反になっていないかどうか、よしんば、利益相反がある場合にはそれを乗り越えるだけのものがどういう格好でやっているのかとか、そういうのを調べていくのがこれからの倫理委員会だろうと思います。
○遠藤座長 ありがとうございます。
先ほどの話で少し振り返りますと、山口委員がおっしゃったのは、まず、倫理指針の中でモニタリング等々のことが入ったとしても、その実効性というものがどのぐらいあるのですかというようなお話をされたと思います。それに対して事務局としてみれば、そのことについてはなかなか事務局としても直接的にはお答えは難しいのですが、ただ、お金の出所が公的なものであるならば、ある種の行政処分的なものが背景にあるのでそれなりの効果はあるだろうと。したがって、近藤委員もそういう話で、そういう面はそちらのほうからのアプローチで、強制力がある程度、牽制力といいますか、あるだろうと。問題は、そうでないところについては倫理委員会の機能というものに頼らざるを得ないところがあるのではないかと、このような御主張だったような気がするのですが、そのような話がされているということだと思いますが、ほかの視点からでも結構でございますけれども、いかがでしょうか。
なかなか難しい課題でありますので、何かあればまた御意見いただければと思いますが、6ページに、事務局が前回もつくっていただいたものでありますけれども、既にこの内容について言及された委員の方もいらっしゃいますけれども、これについて何かコメントございますか。これは今までの議論をまた違う側面で見ているというところもあるかと思いますけれども。
桐野座長代理、どうぞ。
○桐野座長代理 6ページで、先ほど児玉委員もおっしゃったのですが、今回の倫理指針を超えるものになる可能性があるのは1番と2番と9番ですね。ですから、その他のものについては、恐らく倫理指針をきちっと遵守していけば、やらなければいけないことが書かれているので、もし、それをちゃんと遵守しなかった場合どうなるかという議論については、全くそのとおりですけれども、既に侵襲性のある研究についてはデータベースで登録して、どんな手順で何をやるということは書いてありまして、それに縛られますから、少なくとも結果を論文として報告する場合には、そこに書いてあるのにやっていないということになると、これは研究として相当問題があるということになりますので、それが一応歯止めになるという、そういう仕組みだと思います。
だから、それを超えるものとしては、ここに書いてあるように、治験、臨床研究を通じて初めて届出されるもの、あるいは広告等に用いられるもの、これが対象になるのかなあと。この表で見ますとね。それから、一番下のその他の問題発生時の立入検査等々についてはまだよくわかりませんけれども、この3つかなと思いますが。
○一瀬課長 事務局でございますが、よろしいですか。
○遠藤座長 事務局、お願いします。
○一瀬課長 資料がちょっとわかりにくくて申しわけないのですけれども、こちらの6ページの表の中で「すべての臨床研究」と書いてありますのは、広義のすべての臨床研究のうちの、※印、下のほうに小さく書いておりますけれども、「指針を超える対応が求められる範囲におけるすべての臨床研究」ということで、6ページの中の狭義の「すべての研究」という表現にしております。非常にわかりにくいのですけれども。広義のすべての研究のうちの指針を超える対応が求められる研究のすべてという意味なのです。すべての研究のうちの一部分を指してすべてという表現にしているのですね。倫理指針を超えて対応する必要のあるものというのがすべての研究中に一部分あるとしたら、その部分を指してすべての臨床研究、超えて対応するものすべてという意味で書いておりますので、ある程度限定的な意味で使っております。
○遠藤座長 何か実例でちょっとお話しいただくとイメージが共有化できるかと思いますが。
○一瀬課長 例えば臨床研究ですと、2ページで超える範囲はどこかというところで書いておりまして、一定の侵襲を伴うものとしてはどうかとか、介入を伴うものとしてはどうかというようなことを上のほうの四角の中で書いております。ですから、臨床研究に関する倫理指針とすれば、侵襲がないものまで広く対象としておりますけれども、今回、倫理指針を超える対応が求められるものとしては、侵襲かつ介入がある臨床研究としてはどうかというような御提案をさせていただいておりまして、6ページで書いております「すべての臨床研究」とは、例えば侵襲かつ介入がある臨床研究のことといった意味で記載したつもりでございます。
○遠藤座長 ありがとうございます。そういうことだということですが、そのように御理解されている方いらっしゃったとは思いますけれども。したがいまして、今は仮に侵襲があるということを範囲としたならばという前提になっているわけで、それでよいかということは実は議論になるわけでありますけれども。
6ページについて何か、質問でも結構でございますが。
武藤委員、どうぞ。
○武藤(徹)委員 児玉委員からもちょっと指摘ありましたけれども、2番目の「広告等に用いられる研究」、これがどういうことをイメージしているかなと。広告は、そもそもいい研究が出てきたら、それが後になって広告に使われるので、最初から広告を目標とした研究というのは余りピンと来ないのですが。
○一瀬課長 事務局でございます。よろしゅうございますか。
○遠藤座長 お願いします。
○一瀬課長 まず、当然、広告を前提とした研究というのは入ります。また、後になって、もし前提としていなかったものをどうするかというお話ですけれども、逆に考えますと、モニタリング・監査をしてなかった研究については広告に用いることができないと、そういうルールになるかと思います。
○遠藤座長 そうすると、今度、広告とはどこまでを言うのかとか、学会誌に書いたものをMRがぽっと持ってきた。これは広告かと。
○一瀬課長 広告につきましては、今、医薬食品局のほうで検討している最中でございまして、次回もしくは次々回ぐらいには御報告できるかとは考えております。
○遠藤座長 そちらのほうで検討が進んでいるということ。ただ、そういう意味合いだそうです。したがって、このルールでやった場合には、広告として事後的には使えないというぐらいのことをここでは言っているのだということですね。
○楠岡委員 論文になった後で広告を考えた場合というときに、今のお話ですと、一定のレベルのモニタリング・監査等がなされてなければ信頼性に問題があるからだめだとは思うのですけれども、ではどの辺までしていればいいかというところも非常に難しい。承認申請に使うデータをとる治験においてすら、リスク・ベースド・モニタリングということで、かつてのように、全例を直接閲覧するとかいうのがだんだんに減ってきて、特に大事なものだけを見ていくというような方向にもいっています。リモートSDVも今入れられようとしていますから、承認申請にかかわるデータをつくるところもかなり効率化とか省力化が進んでいます。その中で、臨床研究の結果を広告に使うというときだけに、全例、SDVをやってないとだめだとかいう話になると、全く、逆になってしまうということと、そのときに、そのプロトコールを見てどれぐらいのSDV、モニタリングをしていればOKかどうかというのは、どこが判断するのかということもあらかじめ決めておかないといけない。それを自主的判断と言うと、ある意味、水掛け論みたいなことになってしまいますし、その辺の具体的な内容とかそれの判断をどこがするかというのは非常に難しい話です。
結局、それは持って回ってまたPMDAとかがそれを担当するとかいう話にならざるを得なくなってくると結構難しいというか、先ほど出ているフィージビリティの問題としてなかなか難しいのではないか。逆にそれを先に決めておけばということになりますけれども、そうすると、最初から将来広告に使うかどうか意図してなければ、当然のことながら、なるだけコストは安く効率を高くしようとしますから、そうすると、後での判断で食い違いみたいなものが出てくる。概念的にはわかりやすいけれども、実際しようと思うと、どのようなプロセスを構築すれば可能になるのか非常に難しいところではないかと思います。
○武藤(徹)委員 今のに追加して。私は、抗がん剤のことしか知らないので、抗がん剤の例をとりますけれども、市販後調査というのがありますね。フェーズ3でやりますね。あれなんか、いい結果が出れば、たちまち広告に使われるわけです。製薬会社はそれを狙っていたものだから。それが一々こんなことやらなくてはと思うと大変なのですね。とても実臨床ではやっていられない。藤原先生、どうですか。実際に今までタッチしてこられたでしょう。一々、こんなモニターやらなくてはならないとなったら大変ですよね。
○遠藤座長 藤原先生、どうぞ。
○藤原先生 実際、フェーズ3とかフェーズ4という市販後の臨床試験では、インテンシブなモニタリングしなくても、セントラルでCRFとプロトコールの中身を突合するとかデータベースの単純な打ち間違いをチェックするとかいうのはそんなに経費かからずにできる。
○武藤(徹)委員 それは普通にやっていることですね。
○藤原先生 そうですね。今やっているところなので、それは求められても。ただ、企業主体でやっていますので、その企業が払っている経費をそれ以外のところの経費として払えるのかという実行可能性を考えた場合には結構、例えば科学研究費でそういうデータマネジメントの金をしっかり出してくれるのかとか、そういう話に研究者の人たちは思ってしまうと思います。だから、やっているのは、企業さんがやっているからできるのであって、それが全部主体が研究者に来ると結構大変な手間とお金がかかります。
○遠藤座長 ありがとうございました。ほかに。
どうぞ、桐野座長代理。
○桐野座長代理 モニタリングの問題は、楠岡先生が言われたように、これも費用かかるし、本当に大変で、これをまじめに全例きちっとモニタリングするとなると費用が何倍にもなってしまうということもあって、研究を始める前に、手順書で、どのような手順でモニタリングするというのを書いて、それに従って忠実にモニタリングしているかどうかという評価だと思うので、結局、全ての手順をある程度定めて、それでゴーサインを出すわけですね。何月何日をもってスタートしようと。この当局への届出というのは、届出及び認可なのか、このようにやりますよというのを届けてスタートすればいいのかというのも大問題で、モニタリングや監査をやったと認めるか、十分やってないと認めるかというのは難しくて、結局、手順書を最初にOKと、IRBが多分これでいいでしょうと言って、その手順書に沿ってやっているかどうかという判断だと思うのですね。だから、ある研究ではモニタリングも監査も相当厳重にやっていて、ある研究ではサンプリングをしてやって、それでよしというようなものもあると思います。
○遠藤座長 ありがとうございます。実際になかなかコストがかかる、資源が必要だということで、フィージビリティが非常に重要だということですね。
武藤香織委員、どうぞ。
○武藤(香)委員 今、桐野委員がおっしゃった○1の届出ですけれども、多分、届出という行為は、書類を送って終わりではなくて、その書類が担当課から見て受理できる体裁のものに仕上げるためのやりとりが必要で、それなりの手間と時間がかかるのが実際だと思いますが。
○近藤委員 そのとおりです。
○遠藤座長 ほかに何か。関連して、あるいは全体を通じてでも結構でございますけれども。
○武藤(徹)委員 私、最初から言っているペナルティの問題ですね。これは一番最初の回に曽根先生が学術会議の報告としてやはりペナルティのことをおっしゃっていて、何もそれがないのはおかしいのではないかというスタンスのお話をされました。私も、とにかくペナルティはどこかになくてはいけないとずうっと主張してきたのですけれども、全然反応がないので少数意見だと思いますが、やはりヨーロッパでもアメリカでもそういう条項がありますね。これを見ると、それについては何も書いてないですね。どういう形でするかというのは問題ですけれども、最後の最後は、重大な違反をした場合にはペナルティがあるということはどこかに入れておく必要があるのではないかというのが私の意見ですけれども、それについていかがでしょうか。
○遠藤座長 法的規制をどうするかという議論ですから、法的規制を加えるということはそれに対して何らかの形の、破った場合には罰が発生するという理解でよろしいわけですね。ただ、それがどういう形の処罰なのかというのはいろいろパターンがあり得ると思います。ですから、本来であれば、ペナルティの議論というのは視野の中に当然なければいけない話だと思いますが、今回事務局から出てきているものの中にはその辺のところは明確には入っていないので、武藤委員おっしゃっていただきましたので、その議論というのは重要だということで、今後の議論の中で、資料の中にも関係するものについては整理していただきたいと思います。それをやらないと、何のためのこの検討会かというところもあります。倫理委員会のつくり方のアドバイザーグループではないということです。
事務局としては、そういうスタンスでよろしゅうございますか。
○一瀬課長 はい。事務局でございますが、とりあえず例としまして○1から○9までお示ししておりますし、この中でまた重要度等違いがあると思いますので、重要になればなるほどペナルティということも考え方が出てくると思いますし、そういったところも御発言、御議論いただければと考えております。
○遠藤座長 ありがとうございます。では、法制化したときのペナルティということについて何かお考えがおありになる方いれば、必ずしも整理されてなくても結構でございますけれども、何かございますか。
○楠岡委員 ペナルティとしては、一番考えられるのは、やはり研究費、公的研究費の停止ということになると思うのですが、アメリカの場合は、NIHの研究費が膨大なので、NIHの研究費がとめられるとなると、研究機関としては本当に死活問題になってしまうので、そういう意味で強制力が結果的に発生している。日本の場合は、公的研究、競争的研究費として、厚生労働省、文部科学省の研究費があるわけですけれども、この間の資料でも、全部の研究費の中で公的研究費が占める割合はそんなに大きくないのが現状なので、研究費をとめるということがどれぐらいペナルティとして大きいかというのは、もちろんそれぞれの研究機関によって差はあるでしょうけれども、かなり違い、強制力としては少ないのではないかと思う。
ましてや、一病院レベルでの研究に関して研究費をとめると言われても、もともと公的研究費でやっている研究ではなく、違反を起こしたときに研究費をとめると言われても何の痛みもないということになってしまう。では研究費以外のペナルティというと、例えば広い意味での研究全般をとめるとかいうことになると、これは余りにも大ごとといいますか、バランスを欠くことにもなってしまう。ペナルティとして何が一番いいのかというのはかなり難しいところがあるかと思います。
一方、個人に対して研究する資格をとめるというか、アメリカの場合は、INDに違反するとINDの申請資格をとめるという方法があるわけですけれども、それもINDを必要としないようなレベルのものであればあまりペナルティーにならない。また、今回の倫理指針改訂でいろいろ義務づけされたものが、全部、研究機関の長はというふうに、研究機関の長に責任がある格好になっている。研究機関の長としては、何でもかんでも全部責任を負わされても困るし、研究機関の長にいきなりペナルティが来るというのも困るなというところもある。どのようなペナルティを具体化するか、非常に難しい問題で、ぜひこれはいろいろ検討していただきたいと思います。
○遠藤座長 おっしゃるとおりだと思いますね。どういう形のペナルティにするのかというのは非常に大きな意味合いを持つと思います。
1つだけ確認ですけれども、公的な資金が原資となっている研究費について、不正があった場合にはその研究費の支給をしないということは、現行においても、行政指導といいますか、行政処分といいますか、そういう視点か何かで。
○一瀬課長 はい。もう既にやっております。
○遠藤座長 そこをもう少しきっちり示すというのはあるにしても、法的規制云々というのはそういう視点ではないところという理解でよろしいですか。
○一瀬課長 はい。そういう視点ではなく、民間資金も含めての話です。
○遠藤座長 ということでございますが。
○武藤(香)委員 北米の例で見かける制裁としては、IRBの活動停止があります。その研究機関で行われている研究全体に影響を与えますので、一定の抑止効果を与えていると思います。でも、日本の場合、現在は、楠岡委員がおっしゃったように、研究機関の長の諮問委員会という位置づけです。今後、倫理審査委員会が法にどう位置づけられるかによっては、検討可能な制裁かと思います。
○遠藤座長 桐野委員、どうぞ。
○桐野座長代理 ペナルティは、議論出てくるのは当然だと思うのですが、ごく少数の研究者で実施する基礎医学の研究と比較すると、大規模多施設共同研究のようなものは非常に遠隔地で、研究の主任研究者からかなり離れたところでヘンテコなことが行われた場合に誰の責任なのかというのは非常に曖昧になりやすい性質のものであって、その問題が起きた場所の機関の長の責任なのか、それとも実際に起こしたグループの長なのか、起こした本人なのか、それとも誰なのかというのは結構難しい問題があって、その問題を解くために相当労力をかけて調査しないとなかなか結果が出ないという問題があります。それから、実際は、研究費の問題で、もし研究費を止められるとその研究者としてはもうだめですし、それから不正の事実がいろんなところで公開されることだけでも、研究者としては相当なパニッシュメントであることは間違いないと思います。
○遠藤座長 いろいろ難しい課題があるということですね。
話は変わりますけれども、昔、介護保険の中で、訪問介護で連座制というのがあって、どこかの事業所が悪さをするとその組織全体に罰を加えるというところがありまして、実際それがあったがために非常に大きな会社が撤退するということになったことがありました。そういうこともあるので、どこまで処罰の対象を限定するのかというのは非常に重要な課題だということかもしれませんね。
非常に重要な御指摘をいただいておりますので、何かあればまたいただきたいと思いますが。
それでは、一通り事務局から出されている資料を参考にいろいろと御意見いただきました。また違う視点からもさまざまな御意見出ておりますので、このような違うフレームからの課題の整理もお願いしたいと思います。とりあえず本日は御意見このぐらいにさせていただいて、また本日の御意見を踏まえて事務局で、事務局も今度のは難しい宿題になると思いますけれども、少し相談させていただきたいと思いますけれども、より突っ込んだ議論ができるような資料の作成をしていただいて、次回以降、さらにこの話を進めていく。こういう形で進めてよろしゅうございますか。
(「はい」と声あり)
○遠藤座長 それでは、事務局は大変重い宿題かもしれませんけれども、次回までに間に合わないかもしれませんけれども、ひとつ御検討のほどよろしくお願いします。
それでは課題の3でございますが、「その他」というのがありますけれども、これは具体的に何もないのですけれども、事務局から何かございますか。
○中村補佐 事務局のほうからも特にございません。
○遠藤座長 皆さんのほうから何かございますか。
楠岡委員、どうぞ。
○楠岡委員 今、法律としてどうするかという議論なのですが、一番最初のときに、きょう欠席されています山本委員が、法律としてどういう法律をつくるのか非常に難しいということをおっしゃっていたので、もし次回、山本委員出席されるのだったら、ぜひ法律学者の立場から一度御意見をいただきたいと思いますが。
○遠藤座長 全くそのとおりだと思いますので、本日の議論、山本先生にお伝えして、今後、法的な問題、罰の与え方の形も含めて少し課題になっているということもお伝えいただいていろいろアドバイスをいただければと思います。
○一瀬課長 では、お伝えしておきます。
○遠藤座長 それでは、「その他」というのは何もないということで、ほかに何かありますか。議事運営の仕方で結構ですけれども。
よろしゅうございますか。
それでは、事務局から次回以降の連絡事項があればお伝えいただければと思いますが、いかがでしょう。
○一瀬課長 次回の開催につきましては、また改めまして委員の皆様に御連絡差し上げたいと思います。また、本日の議事録につきまして確認をお願いいたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
事務局からは以上です。
○遠藤座長 ありがとうございました。
それでは、本日は長時間どうもありがとうございました。また、参考人の先生方、本当に長時間どうもありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
それでは、これにて本日は閉会したいと思います。どうもありがとうございました。
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