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2014年8月20日 第1回 医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループ議事録

○日時

平成26年8月20日(水) 16:00~18:00


○場所

法曹会館 (2階 高砂の間)
東京都千代田区霞が関1-1-1


○議題

ワーキンググループ座長の選出について
到達目標・評価の在り方について  等

○議事

 

 

 

 

 

 

 

    第1回医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループ

 

 

                                        日時   平成26年8月20日()

                                              16:00~

                                        場所   法曹会館高砂の間

 

 

○田村医師臨床研修推進室長 定刻より少し早いですが、構成員の先生方が全員おそろいになりましたので、「第1回医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループ」を開催いたします。

 本日は、先生方におかれましては御多忙のところ御出席を賜り、誠にありがとうございます。

 会の開催に当たりまして、まず初めに二川医政局長より御挨拶申し上げます。

○二川医政局長 医政局長の二川でございます。医政局長に就任いたしまして1か月余りでございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、医師臨床研修制度に関するワーキンググループの構成員をお引き受けいただきまして、ありがとうございます。また、医療行政、ひいては厚生労働行政の推進につきまして、平素より格別の御支援を賜っているところでございまして、この場をお借りして厚く御礼申し上げたいと思います。

 医師臨床研修制度につきましては、平成16年度から法律上の義務の制度として位置付けられ、その後、10年たつということで、医師の臨床研修制度として定着を見るに至っているかと思います。また、研修医の方の診療能力の向上に格別の貢献をしてきているものではないかと考えているところでございます。

 一方、制度を取り巻く社会情勢の変化、あるいは各界の御指摘を踏まえまして、5年に一度見直すといった形で進めてきているところでございます。御承知のことかと思いますけれども、1回目の見直しにつきましては平成22年度から実施をしております。その少し前に見直しの検討会を行っています。そのときの状況といたしましては、専門医へのキャリアパスへの円滑な接続が妨げられているのではないか、といった指摘がありました。あるいは大学病院の医師派遣機能が低下し、地域における医師不足に、この制度が影響しているのではないかといった御指摘がありました。

 そういったことを踏まえて、平成22年度からこの制度の見直しが何点か行われているということでございます。御承知のとおり研修プログラムの弾力化といったことを行いましたし、基幹型臨床研修病院の指摘、例えば年間入院患者数を3,000人以上にするといった要件の見直しを行ったということがございます。また、地域の医師不足への対応ということで、都道府県別の上限を設定するといった形での見直しをしたのが1回目でございます。それが平成22年度という形でやっています。

2回目につきましては、これはまだ施行は平成27年度からということですけれども、平成2512月に医師臨床研修部会で報告書がまとまっておりまして、募集定員の設定等の見直しが行われたといったところでございます。

 少し先になりますけれども、今回、到達目標とその評価の在り方については、もう一遍、広くワーキンググループで検討してもらうといったことがございました。そういったことで、今回は医師臨床研修部会の下に、このワーキンググループを設置させていただいたところでございます。

 本ワーキンググループは、医師臨床研修部会の報告書を受けて具体的な到達目標・評価をどうするかといったことの検討をいただくということです。後ほど事務局からスケジュールをお示しさせていただきますけれども、少し長丁場になろうかと思います。実際、ここで御検討いただいた内容を最終的に臨床研修の場へというのは、5年後の平成32年からということを想定しつつ、中身を御検討いただきたいと思っているところでございます。

 ただ、平成32年からと言いましても、その前に各臨床研修病院での準備もありますし募集もあります。そういったこともございますので、平成28年度、これから2年ぐらいの間でおまとめいただきたいと思っているところでございます。いずれにしましても、2年ぐらいある長丁場の検討会になろうかと思います。内容は多岐にわたるかと思いますので、是非ともよろしくお願いしたいと思います。是非とも専門的なお立場から忌憚のない御意見を幅広くいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○田村医師臨床研修推進室長 二川医政局長につきましては、後ほど所用により、途中で退席をさせていただければと考えています。

 ここでカメラのほうは退室をお願いいたします。

 続きまして、第1回の会議ということですので、まず初めに、本ワーキンググループの構成員の御紹介をさせていただきたいと思います。資料1の別紙を御参照ください。五十音順に名簿に沿って紹介させていただきます。聖マリアンナ医科大学教授の伊野先生です。北海道大学教授の大滝先生です。岡山大学教授の片岡先生です。美郷町地域包括医療局総院長の金丸先生です。社会医療法人財団董仙会理事長の神野先生です。日本医師会常任理事の小森先生です。聖隷浜松病院副院長の清水先生は、本日所用により御欠席との連絡を頂いています。岩手県立中央病院医療研修部長の高橋先生です。東京医科歯科大学理事の田中先生です。岡山県精神科医療センター理事長の中島先生です。名古屋大学医学部附属病院総合診療科長の伴先生です。聖路加国際病院長の福井先生です。東京慈恵会医科大学准教授の古谷先生です。筑波大学教授の前野先生です。

 続きまして、事務局の紹介をさせていただきます。先ほど御挨拶させていただきました二川医政局長です。北澤医事課長です。松崎医事課長補佐です。森医師臨床研修専門官です。桑原臨床研修指導官です。私、医師臨床研修推進室長を務めております田村と申します。よろしくお願いいたします。

 本日の会議には、オブザーバーとして文部科学省のほうからも御出席をいただいています。文部科学省高等教育局医学教育課の平子企画官です。

 それでは、議事を進めてまいりたいと思います。議題1として「ワーキンググループ座長の選出について」です。先ほど御覧いただいた資料1の表のページ、「開催要綱」を御覧いただければと思います。3(2)にございますように、「構成員のうち1人を、座長として互選により選出する」とされているところです。どなたか御推薦はございますでしょうか。神野先生、お願いいたします。

○神野構成員 本ワーキンググループの座長として、この臨床研修制度が始まる前から、到達目標や評価に対していろいろ御検討なさっていらっしゃいましたし、その後もこの分野でいろいろ研究をなさっていらっしゃる福井構成員を推薦したいと思います。

○田村医師臨床研修推進室長 ただいま推薦のありました福井構成員に座長をお願いできればと思いますが、御了承いただけますでしょうか。

                                   ( 異議なし)

○田村医師臨床研修推進室長 ありがとうございます。それでは、以降の議事運営につきましては福井先生にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○福井座長 座長を仰せ付かりました福井です。よろしくお願いします。

 神野先生が言及されたように、私は制度が立ち上がる前、到達目標を作る文部科学省の会議に、田中先生、伴先生、大滝先生ともども深く関わって参りました。そのときには検討する時間が短くて、細かいところまで詰めないで制度が発足した印象があります。今回の医道審議会医師分科会医師臨床研修部会報告書で指摘された、いろいろな問題点や検討を要する点は、私も全くそのとおりだと思っています。次の見直しに向けて、少しでも良い到達目標と評価の仕方を提言できればと思っていますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、議事を進めてまいりたいと思います。初めに、事務局より資料の確認をお願いいたします。

○森医師臨床研修専門官 お手元の資料を御覧ください。資料の確認をさせていただきます。議事次第に続いて、構成員提出資料として田中構成員より提出資料を頂いています。提出資料1、提出資料22点です。事務局提出資料の確認です。資料1「医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループ開催要綱」、資料2「到達目標・評価に係る現状について」、資料3「ワーキンググループの役割と今後の進め方について」、資料4「到達目標とその評価の在り方に関する研究について」、資料5「到達目標・評価の在り方に係る論点について」です。続いて、参考資料1「臨床研修の到達目標」、参考資料2「医道審議会医師分科会医師臨床研修部会報告書(抜粋)」、参考資料3「医師臨床研修制度の評価に関するワーキンググループ~論点整理~(抜粋)」、参考資料4は、日本の人口・医療・介護の提供体制等関係資料、参考資料5は、医学教育・国家試験・専門医関係資料です。続いて、机上配布資料です。「医道審議会医師分科会医師臨床研修部会報告書」、「医師法第16条の21項に規定する臨床研修に関する省令の施行について」、「医学教育モデル・コア・カリキュラム-教育内容ガイドライン-」、「平成25年版医師国家試験出題基準」、「専門医制度整備指針(1)」。資料は以上になります。不足する資料、乱丁落丁等がございましたら事務局にお申し付けください。

○福井座長 よろしいでしょうか。それでは、議題2「到達目標・評価の在り方について」につきまして、事務局より説明をお願いいたします。

○森医師臨床研修専門官 資料2を御覧ください。「到達目標・評価に係る現状について」ということで、臨床研修制度で到達目標や評価がどのように位置付けられているかを確認するための資料になります。

1.「到達目標について」ですが、臨床研修の到達目標については、「医師法第16条の21項に規定する臨床研修に関する省令の施行について」(以下、「施行通知」という)に、「臨床研修の到達目標」(別添1)として掲げられています。こちらは参考資料1を御参照ください。内容としては、1.行動目標、2.経験目標(A経験すべき診察法・検査・手技、B経験すべき症状・病態・疾患、C特定の医療現場の経験)により構成されています。

 この「臨床研修の到達目標」については、臨床研修制度必修化以降、基本的にその内容は変更されていません。また、施行通知においては、研修プログラムにおける「臨床研修の目標」は、別添1に示された「臨床研修の到達目標」を参考にして、研修病院が当該研修プログラムにおいて研修医の到達すべき目標として作成するものであり、「臨床研修の到達目標」を達成できる内容であることとされています。

2.「評価について」ですが、臨床研修病院における評価については、施行通知において、以下の通り行うこととしています。1つ目は、指導医等が、研修医ごとに臨床研修の目標の達成状況を把握し、研修医に対する指導を行い、担当する分野における研修期間の終了後に、研修医の評価をプログラム責任者に報告することとなっています。2つ目は、基幹型臨床研修病院の管理者やプログラム責任者等からなる研修管理委員会、これは基幹型研修病院に設置されていますけれども、この委員会で指導医やプログラム責任者からの情報提供等により、研修医ごとの研修進捗状況を把握・評価し、研修医の研修期間の終了に際し、当該研修医の評価を行い、管理者に対して研修医の評価を報告することになります。3つ目に、管理者は、研修管理委員会における評価に基づき、研修実施期間や臨床医としての適性の評価とともに、臨床研修の目標の達成度の評価を行い、それぞれの基準が満たされた場合に臨床研修の修了認定を行っています。

 資料の2ページで、評価方法について、施行通知において示されているように、研修期間中の評価については、研修医ごとの研修内容を改善することを主な目的として、形成的評価により行うことが重要であるとされています。研修医及び指導医は、「臨床研修の目標」に記載された個々の項目について、研修医が実際にどの程度履修したか随時記録を行うこととされています。研修期間終了時の評価としては、研修医ごとの臨床研修修了の判断を行うことを目的として、総括的評価を行うことと示されており、研修実施期間の評価、臨床研修の目標の達成度の評価、臨床医としての適性の評価の3つに分けて行うこととされています。

 続いて現状になりますが、こちらは部会の報告書でも報告されている内容になります。大学病院及び研修病院において、採用している研修医の評価方法は様々であり、「指導医による評価」「症例レポート」「コメディカルによる評価」の順に多く、「口頭試問」「実技試験」「患者による評価」等は少ないと報告されています。

 到達目標の達成度を記録するツールとして、制度導入当初から運用されているEPOCについては、全国の約6割の研修医が利用しているという状況です。また、海外に目を向けますと、米国、英国、仏国の臨床研修制度において、研修医、指導医、研修プログラムに対する評価が多角的に行われており、特に英国ではインターネット(e-ポートフォリオ等)の活用が進んでいるとの報告があります。資料2につきましては以上になります。

○福井座長 ありがとうございます。ただいまの御説明について何か御質問、御意見はありますか。

 ないようですので次に行きます。続けて、事務局より説明をお願いいたします。

○田村医師臨床研修推進室長 続きまして、「ワーキンググループの役割と今後の進め方」について、説明をさせていただきたいと思います。資料3を御覧ください。

 本ワーキンググループにつきましては、先ほどもお話がありましたが、昨年の12月に出た医道審議会医師分科会医師臨床研修部会の報告書で、到達目標とその評価については、人口動態や疾病構造の変化等の観点から、その内容を見直す必要があるとの指摘があり、それを平成27年度の適用ではなく、5年後の次回の見直しに向けて、別途検討の場を設けて検討していくという提言があり、それを受けて設けられたものです。したがって、本ワーキンググループとしては、まずは部会報告書に指摘された方向を踏まえつつ、それ以外にも論点等が出てくれば必要な改正をして、案を取りまとめていくことが役割になってくるところです。

 次の○にありますように、スケジュール案についてですが、実はこのような非常に多岐にわたる項目や疾病構造の変化等もありますので、別途、厚生労働科学研究費を使って関係データの収集・分析を行っています。一番下に書いていますが、「医師臨床研修の到達目標とその評価の在り方に関する研究」ということで、実はこちらも福井先生にお願いしているところですが、来年の年度当初までには最終報告を出していただくということで研究いただいているところです。したがって、本ワーキンググループとしては、その報告書も参考にしながら、また、その後は必要なヒアリング等も行いながら、到達目標・評価の在り方について進度を上げて検討していき、先ほどもありましたように、遅くとも平成28年度中には取りまとめ、医師臨床研修部会に報告していきたいという流れを考えているところです。

 また、平成27年度に研究班の報告書が出てくるまでについて、大まかな方向は去年の部会の報告書にも示されているところですが、その前提についてもう少し深めていただくことと、そういったことの御意見を頂いた上で、研究班のほうにもその観点を踏まえて研究していただければと考えています。また、資料等の収集が必要であれば、事務局のほうでも集めていきたいと思います。例えば第2回ワーキンググループの例として、毎年、臨床研修修了者にはアンケートを全員対象に取っているところですので、もしこういった項目も調べてほしいということがあれば、そういったことを踏まえてデータを出していき、平成27年度からの本格検討に備えたいと考えているところです。また、研究班の内容につきましては、後ほど研究班を兼ねている構成員の方々からも、御意見を頂きたいと思っているところです。大まかな流れとしては以上です。

○福井座長 ありがとうございます。ただいまの御説明につきまして何か御質問、御意見はございますか。

○伴構成員 2つほど意見を述べさせていただきたいと思います。1つは、このワーキンググループがせっかく今から検討して進めていくに当たって、私、田中先生と一緒に全国医学部長病院長会議の臨床研修の委員会にも所属していますが、大学の人たちは、この平成32年度見直しは、また厚生労働省のペースで、大学の事情を余り勘案せずに進められるのではないかということを大変危惧しています。特に研究班からの中間報告を踏まえてということが、また福井先生のほうから出されてきますので、その辺のことも踏まえながら、中長期の日本の医学・医療の発展をどう考えていくかということに立った報告あるいは答申なのだということを、しっかり出していかないといけないというのが1点です。

 それから、少しテクニカルな問題になりますが、平成26年度の第2回ワーキングで、「平成27年臨床研修修了者アンケート調査内容」と書かれていますけれども、この臨床研修医制度は始まって10年になりますので、ある程度臨床研修を終えて専門医、ないしは専門医研修も終えて実際の中堅医師になっている層のアンケートもまとめて、直後の人だけでなく、ある程度、キャリアパスを積んでいる人たちの意見も反映できるようなアンケートにしていただければと思います。

○福井座長 事務局のほうから何かございますか。

○田村医師臨床研修推進室長 臨床研修修了者以外のところについても、どれだけの人数を対象にして行うとか、どうやって抽出するかというのはありますけれども、何らかの形では検討していきたいと思います。また、様々な意見が臨床研修についてあると思いますので、しっかり時間を取って、いろいろな意見を聞いていきたいということで、今回は直前ではなく早めに立ち上げて検討を始めています。大学関係者の皆様方のみならず、いろいろな方の御意見を聞いて、本ワーキンググループも進めていっていただければと思っているところです。

○神野構成員 1つだけ、今、この臨床研修の話の前の話として、医師国家試験見直しの検討も同じ医事課で行われていますし、後のほうの専門医制度についてのいろいろな検討は、どこまで進んでいるか分かりませんけれども、いろいろ進められていますね。とすると、日本史と世界史ではないですけれども、前と後ろのスケジュールをこの会を合わせたスケジュールがあると分かりいいと思います。そうすると、前の議論と後ろの議論と、ここは間の議論だと思いますが、間の議論と、ある程度整合性をこれから取っていく必要があると思いますが、いかがでしょうか。

○福井座長 両方とも検討が進んでいるようであれば、その都度、ここで情報を入れていただき、我々もその内容を見ながら議論を進めていくことになるのでしょうか。

○神野構成員 スケジュールを3列にしていただくと分かりいいかなと思うのですが、医師国家試験はいつまででしたか。

○田村医師臨床研修推進室長 医師国家試験につきましては4年に1回、改正を行っているということで、今年、改正の検討委員会が動いているところです。専門医の動きも含めて一覧で、こういうスケジュールになるだろうというのを、資料として作れると思いますので、そういったものも作成して委員の皆様方にお示ししたいと思います。

○神野構成員 お願いします。

○福井座長 よろしくお願いします。ほかに、高橋先生。

○高橋構成員 今更ですがアウトカム、つまり医師臨床研修制度が実際に施行されて、その後、診療能力がアップしたかということについて、これは以前、福井先生が調査発表されたデータがありますが、それ以降あまり認知されていないということがあります。何度も言われていることだと思いますが、今一度、臨床研修制度必修化による成果、つまりアウトカムを明確にする方向で検討することも必要かと思います。

○福井座長 私たちの研究でのデータは、最近のものもありますが、ずっと同じ方法で収集しています。診療能力や経験症例数以外のアウトカムは、新しい制度になる前のデータがありませんので比較することはすごく難しいと思います。私たちがやっている自己評価で、こういうことができる、ああいうことができる、経験患者数がこうだというのは言えますが、それの妥当性についていろいろな意見があり、必ずしも皆さんが納得するわけでもないというのが実情です。もしこの会議で先生方から、こういうふうに調べたら違う切り口でのアウトカム評価ができるのではないかというアイデアを出していただければ、是非調べたいと思います。

○高橋構成員 アイデアはありません。ただ、以前によく言われていたこととしては、2年間の初期研修を行うことによって、専門医修練が2年間遅れるというお話がありました。実際に2年間の臨床研修がその後の専門医育成を含めた医師の在り方にとって問題を含んでいるのか、そうでないのか。各分野によって評価も難しいと思いますが、実際に以前の制度と、現在の制度の下で、どのように変わっているか。単純比較ができないのは重々承知の上ですが、何らかの評価を模索することは重要かなと思います。

○中島構成員 神野先生がおっしゃった前と後についても、ちゃんと見ながらやっていかないといけない。国家試験の問題の更に前が、私は非常に問題になるであろうと思います。つまり、学部教育の段階でどういうふうに教育がされているか、あるいは、しようとして今目指しているのかというところを、明確に出していただかないと、議論が進まないのではないかと思っています。こういう方向を目指していますというのを出していただくことで、ここでの議論もきちんとした議論ができるのではないかと思います。

 もう1つは、今まで出ていないのですが、比較的評価しやすい項目と評価しにくい項目があると思います。特に、今一番問題になっていることとして、この制度ができたそもそものところから、医師のコミュニケーション能力そのものがどんどん落ちてきているのではないかと言われていたわけで、特に現在、それが上がっているようにも見えないところが辛いところです。コミュニケーション能力をどう育てるかという、この視点が1つ必要だと思います。いかに教育しようと、育たない人もいると思いますが、そうなると、これは入学試験のやり方から考えなければいけないという問題になってきます。また、教える教授の資質にも関わってきますので、是非、そのあたりは全国の大学の先生方にもしっかり考えていただいて、教授の選び方ということについてまで踏み込むぐらい、力を入れて頑張ったらいいのではないかと思います。

○福井座長 田中先生、いかがですか。

○田中構成員 ワーキングの役割と今後の進め方の資料を拝見すると、福井先生の研究班が重要な役割を果たされるかなと思うので、それに関するお願いなのですが、よろしいですか。

○福井座長 はい。

○田中構成員 EPOC(オンライン卒後臨床研修評価システム)の運営委員会の委員長を、私は務めさせていただいていますけれども、EPOCについて一番評判が悪いのは項目が多すぎるということなのです。でも、それは先ほど森先生からお話があった、個々の項目について研修医がどの程度履修したか随時記録を行う、というのに忠実に沿っているから、そうなるのです。ですから裏を返すと、そもそも目標の数が多すぎるのではないかという考え方はあるのです。それはそれなりに理由があったと思います。制度が発足するときは細かく目標を決めたほうが、そこから逸脱したものがないのではないかといった議論もあったのかと思いますけれども、10年たってある程度定着してきている部分もありますから、是非、今の行動目標と経験目標という分け方の中で、これだけのものが必要なのかどうか吟味していただければと思います。

 僭越ですが、今日、構成員の資料として出させていただいたのが英国の資料である理由は、同じような国民皆保険の制度の中で、2年間の臨床研修必修化をほぼ同じ時期にやった国であり、そこでは御覧いただくと分かりますが行動目標が主体なのです。ですから評価項目も少ないですし、また、一つ一つの行動目標について、評価方法も初期においては定められていたのです。ですから、そういったものも参考になるかと思いますので、是非、そういったことも含めて検討していただけると有り難いです。

○福井座長 もっと簡略にしようという話には、既にコンセンサスが得られていますので、その方向で進むと思います。

○田中構成員 是非、よろしくお願いします。

○古谷構成員 2つあるのですが、1つは、医学部でクリニカルクラークシップがどんどん進んでいくと、研修医が教育に参画するということが出てきています。「屋根瓦方式」を大学病院でやっていくとなると、研修医が教育に参画することに関しても、ある程度明記していく必要があるのではないかということが、ちょっと気になっているところです。

 もう1つは、先ほど報告でもありましたように、海外では指導医やプログラムに対しての評価が出ているということで、ここは目標と評価を決めるということですけれども、研修医の評価だけではなく、指導医、プログラムの評価をどう考えていくのかということを検討していったほうがいいのではないかと考えています。

○福井座長 ありがとうございます。田中先生、よろしければ、先生から頂いた資料について説明していただけますか。

○田中構成員 簡単に御説明させていただきます。私の提出資料1は、以前に厚生労働省の部会か何かで出したものと全く同じもので、2008年ですから今から6年前になりますけれども、大筋変わっていないのでそのまま使わせていただきました。

 イギリスは、同じように高校を卒業して医学部56年の課程を経て、臨床研修1年目に入り、1年終わったところでナショナル・ヘルス・サービスに登録されるという意味で、医師免許そのものは英国にありませんが、それに相当することになり、もう1年初期研修をやって、家庭医研修に行くか専門研修に行くかという形になります。これが今、我が国が目指しているEPOC研修で総合診療専門医ができるというのに、かなり近い形なのかもしれませんので、一層類似性は高まっているのではないかと思います。

 マッチングも行われますけれども、定員は卒業者+5%ぐらいの数ということで、これも今、我が国が目指している方向に、逆に6年たって近づいているのかなと思います。

2ページを見ていただくと、プログラムの実例です。1年目は外科と内科を半年ずつ回るプログラムがあったり、外科と内科と小児外科を4か月ずつ回るプログラムがあったりします。2年目は家庭医と精神科と心療外科など、いろいろな形をとることができますが、原則は4か月単位としたローテーションだということです。

 肝心の研修目標は右上にありますが、小さくて申し訳ありません。行動目標が主体で、基本手技でも非常に限定されたものになっていて、例えば1年目は局所麻酔、2年目は中心静脈穿刺といったものになっています。

 下の評価ですが、評価はポートフォリオ評価ですけれども、評価結果が1つのポートフォリオにまとめられている形です。三角で4種類ぐらいの色が付いていますが、例えば緑ですとCase-based Discussionですから、ケースに基づいたディスカッションをするという評価をやらなければいけない。Multi-Source Feedback、いろいろな角度からのフィードバックを受けなければいけない。今、日本でもいろいろな所で行われようとしていますが、mini-CEXと言って、病棟で実際の患者さんを診察するところを見て評価するみたいなことをやる。あるいは、Direct Observationと書いていますが、実際のスキルをやっているところを見て評価する。それぞれの項目について、どれで評価するかも定められているという形です。こんな形で評価が行われているということです。

 次の3ページですが、研修制度は基本的に医学部を終えて2年間の臨床研修制度ですけれども、例えば大学とか、そういったアカデミック・キャリアをやりたい人は、それ用のプログラムが途中で用意されている形です。今、研究を志向するMDが減っているということで、それも1つ課題になっていますけれども、そういうものの両立も図れる制度設計がされたということです。

 これは、飽くまでも6年前のものでしたので、提出資料2として手に入れられる最新のもの、つまり2年前のものですけれども、それを参考資料としてお付けしました。概略は大きくは変わっていません。以上です。

○福井座長 ありがとうございます。今の田中先生の御説明についてでも結構ですが、ほかに御意見ございますか。金丸先生、どうぞ。

○金丸構成員 田中先生に質問、よろしいでしょうか。先ほどの神野先生のことと関連しますし、中島先生の学部教育のお話にも関係するのですが、先般、イギリスから5年生の学生が宮崎を訪れて研修をしていただいたのです。海外でもどこでも行くという仕組みがあるので日本に来たということで接点があったのです。そのときに、5年生の医学部生にレクチャーをしてもらっていろいろ触れることができたのですが、私自身が誤解しているのかもしれませんけれども、医学部教育は全て症例中心にやっていると。つまり、学部のときからポートフォリオが肌に沁み込むように、要するに基礎医学もケースで入っていて、いわゆる症例から基礎医学ということです。だから学部の卒業までに何十症例とか言っていましたけれども、全部ケースでやっているという話を聞きました。もしそれがそうだとすると、それは学部教育からそれに馴染んで、そういう思考を持ち、そういう熱意を持って入って、終えて、卒業した後の制度も、そういうしっくりとした研修制度になっているのかなと思っていたのです。ところが、日本の医学部教育は全然違っている部分がある。そうすると、出たときの研修医のプログラムは、果たしてそれと一貫していく部分で難しい点はないのか気になっていました。

 もう1点驚いたのは、卒業するときに1つだけ取らないと絶対卒業できない科目があって、それはコミュニケーションだということです。コミュニケーションが駄目なら、他がどんなに良くても、そこの1点だけで卒業できない。この仕組みもはっきりしているという話を聞いて驚いたのですが、それが私の聞き間違いなのか分かりません。もし御存じでしたら教えていただければと思います。

○田中構成員 私も英国の卒前教育全般について詳しいわけではないので、一般論まで敷衍できるか分からないですが、東京医科歯科大学はロンドンのインペリアルカレッジと提携校になっていて、お互いに学生を交換しているということがあります。ただ、交換している学生は4年生なので、まだ臨床実習に入っていないのです。ただ、その時点でもプレゼンテーションは上手ですし、臨床医学の知識も結構定着しているので、今先生がおっしゃったようなCase-basedでしっかり鍛えられているのかもしれません。

 もう1つは、そういう関係で、インペリアルカレッジを卒業した日本人の医師が臨床研修を終えた後、日本で臨床をやりたいと考えた人間がいて、何人も医科歯科のプログラムに来ているのです。元学生、研修医もF1までは終えた人たちですけれども、その人たちに実際に聞いてみると、実は診療参加のレベルはそんなに高くないと言うのです。ただ、先生が正におっしゃったようなことは相当鍛えられると。

 もう1つ、彼らがなぜ日本でやりたいと思ったかというと、それは日本の医師のほうがずっと患者さんのことを大切にすると言っていました。要するに、彼らは学生時代に、日本に行ってやろうか英国でやろうかと迷うわけです。その迷った人たちが医科歯科に来たり、あるいはいろいろな病院を見に来ると。そうすると、イギリスの研修医よりはずっと患者さんのために深夜までやったりする。それについて批判もありますけれども、そういうのに共鳴した人が日本に帰ってくるみたいなことはあります。ですから、いい面はあるのだと。

○福井座長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。それでは、資料3の説明にありましたように、厚生労働科学研究の「医師臨床研修の到達目標とその評価の在り方に関する研究」について、私が代表者ですが、大滝先生と前野先生から御説明をお願いしたいと思います。最初に大滝先生から、よろしいですか。

○大滝構成員 資料4を御覧ください。福井先生が研究代表でいらっしゃいますけれども、座長を務めるということで、代わって私と、5番目の項目は前野先生が担当ですので、前野先生にその辺りを説明していただきます。

 会が始まる前に御質問を頂きましたので、研究班の構成員を御紹介いたします。福井先生、前野先生、私と、聖路加ライフサイエンス研究所臨床疫学センターの高橋先生、杏林大学の野村教授、医科歯科大学の奈良教授という構成です。後で御紹介するそれぞれの分担項目を、中心になって担当する方向で、検討が進んでいます。

 資料4に沿って御説明いたします。一番上に書いてあるのは、この研究班をどういう目的で設置するかということです。到達目標及び評価の在り方の見直しに向けた検討の基礎資料を作っていくのが目的です。どういう基礎資料を作るかというと、どのような医師を育成すべきかを踏まえつつ、人口動態や疾病構造の変化、医療提供体制の変化、診療能力の評価、項目の簡素化、評価の標準化、医師養成全体の動向等の観点から、いろいろデータを集めて分析して基礎資料とするということです。この研究班で何かを決めるということではないと伺っています。提案といいますか、論点整理的なことを担当するのだと思います。

 研究代表者が福井先生で、研究期間は今年度末までと伺っています。

 研究内容は大きく5項目あります。1項目目は「診療能力を踏まえた到達目標設定の在り方に関する研究」ということで、目標の設定の仕方です。先ほど話題になりましたように、研修医の診療能力の実態、現在の目標の過不足、構成の問題点などを把握することを目的として、後で出てくる、より広いアンケートも利用する予定ですが、そのほかに、ここでは臨床研修指導医に対してインタビューを行いたいと考えています。一体どういう目標を立てるのが妥当であるかについては、現場で指導しているかたが、目標の適切なレベル設定や、実際にそのような教育が実現可能か、について詳しいと思いますので、それらについても調査を行いたいと考えております。そうした、診療能力のレベル設定を踏まえた目標の具体的な在り方について、検討してまいりたいと考えております。

 その到達目標はどういう形で表すかということですが、先ほどの田中先生からのイギリスの資料にもあるように、最近は「コンピテンシー」という言葉で、行動を1つの特徴ある、ここでは「行動特性」と訳してありますが、これもどういう訳にするかも含めて検討していく必要があると思います。そういう形で目標を設定したほうが、海外あるいは他の領域との整合性も取れるのではないかと考えています。それから、卒前や専門医制度なども、こういう形に整理していく方向での検討がなされつつあるので、それらを参考にしながら、そういう形での目標の立て方について検討していきたいと考えております。1項目目は、私が担当になっています。

2項目目は、「人口動態や疾病構造、医療提供体制の変化等を踏まえた到達目標の在り方に関する研究」で、これは聖路加の高橋先生が中心になって行うと伺っています。受療状況や、入院・外来等についての疫学・保健統計等を用いて、入院、外来、在宅等において押さえるべき頻度の高い症候・手技・疾患等を検討する。これは、毎年行われている臨床研修修了者のアンケート調査の結果なども用いて、基本的な診療能力、経験数などが過去と比べてどう変わってきたか、先般行われたプログラムの弾力化が、そういう能力にどのような影響を与えたかということも検討することを考えています。

3項目目は、「プロフェッショナリズム」の話で、杏林大の野村先生が中心になって検討していただく予定です。臨床研修の基本理念のところに、「医師としての人格の涵養」と書かれています。これが最近の医学教育関係の言い方で言うと、「プロフェッショナリズム」に相当するだろうと考え、先ほど申しました、行動の特徴的なものとしてのコンピテンシーの1つとして、このプロフェッショナリズムを目標の中で明確化していって、目標として挙げていくことを検討します。更に「中間目標」と書いてありますが、最終的なチェックだけではなくて、中間的な、どの時点でどういうことを目指すのか、そのための方法・方略についての検討を行うことが含まれています。そして、学会や民間のキャリア支援に関する取組です。これは女性医師の問題なども含めてということになろうかと思いますが、、医師のキャリア形成の在り方と体制の整備についての検討もここで行っていくことになっています。

4項目目は、「医師養成全体の動向を踏まえた到達目標の在り方に関する研究」です。これは、先ほど来話題になっているように、卒前教育、国家試験、専門医制度などの連続性を十分踏まえて検討していく必要があるだろうということです。卒前教育ではモデル・コア・カリキュラムがあります。国家試験では出題基準があります。初期臨床研修では、今回検討する到達目標があります。それらを並べて、その連続性、整合性などを検討していくもので、これは奈良先生が中心になって担当していただくと伺っております。

5項目目は前野先生に説明していただきます。現在までに班会議を2回行い、研究計画についていろいろ詰めている段階です。

○前野構成員 5項目目は私が担当しております。評価手法や運用についての実態を把握することをまず始めたいと思っております。一応評価をして、それぞれ経験したことになっていますが、何をもって経験したかというのが明示されていない。それから、形成的評価が途中で入るということが、最終的に制度全体で確認できていませんし、また、総括的評価も、いわゆる外部の目が入っていないので、それぞれの研修委員会が実態を伴わない形で終了している可能性がなきにしもあらずという部分があります。

 それに関しては、まずは実態の把握から始めたいと思います。現行の制度でどれぐらい本当にやっているのか、あるいは何をもって研修はできると評価しているのか、そういうところから実効性のある評価の仕方が見えてくるのではないかと思っておりますので、そういう調査を今年度行いたいと思っております。

○福井座長 ただいまの御説明について、御質問、御意見はありますか。

○伴構成員 おおむね先ほどから、アウトカムを評価の対象にしてということになると思うのです。言葉の使い方として、これは世界的にも統一されているわけではないので、コンピテンスと大きく分ける分け方、例えばアメリカでは、ACGMEのアウトカム・プロジェクトの中では6つのコンピテンスに分けて、カナダでは7つのコンピテンスに分けて、英国では12ぐらいのコンピテンスに分けてということで、結局、よく卒前と卒後と専門研修とで並べてという話が出てくるのですけれども、コンピテンスは、コンピテンスという考え方でいくと結局一緒なのです。それぞれのコンピテンスの下位の項目とか深さが変わってくるということであることを確認しておく必要があるだろうと思います。

 そのコンピテンスの下に、コンピテンシーという言葉の使い方をするか、コンピテンシーが上で、コンピテンスが下なのだとか、考え方の違いはあるでしょうけれども、それはちゃんと日本語にしてしまって、もう少し具体的な到達目標という形で整理していただくといいかと思います。

○福井座長 先生にも最終的なチェックをお願いいたしますので、よろしくお願いいたします。ほかに何か御意見はありませんか。こういう項目をもっと調べたほうがいいのではないかとか、こういうデータを出してほしいとか、思い付くことがありましたら御意見を頂ければ有り難いのですが、片岡先生どうですか。

○片岡構成員 先程、評価しやすい項目と評価しにくい項目があるという御意見もありました。御説明頂きました医師のプロフェッショナリズムを踏まえた研究に関してなのですが、プロフェッショナリズムは恐らく評価しにくい項目の1つなのではないかと思うので、その辺りはどういうものを評価の指標にするのか、もし分かっていることがあれば教えていただきたいです。個人的には共感性の尺度はプロフェッショナリズムの評価の尺度としてはいいのではないかと思うので、よろしくお願いいたします。

○福井座長 野村先生が随分研究されていますので、いろいろな資料が出てくると思います。外国では、プロフェッショナリズムの評価はいろいろ行われていて、例えばカナダのCruess先生は24項目で、プロフェッショナリズムの評価としてはかなり妥当性の高い評価項目を発表していて、私たちが関係しているグループによる研究で、日本でもそれを使えるのではないかという結果も出されています。それなりのデータをこの会議に出すことはできるのではないかと思います。ほかにはいかがでしょうか。

○小森構成員 様々の審議会で、アウトカム評価と、ポートフォリオによる評価ということが述べられます。様々な御意見がある中で、平成32年度とはいえ、臨床研修制度の評価について、結論を出していけるのかどうか。それぞれの欠点や良いところがあるのだと思うのです。全国一律に1つの制度として、そこまでの結論を出していけるのか。専門医機構の中でも、それぞれの御意見の方がかなり激しく対立する場面もあります。

 伴先生がおっしゃられたコンピテンスという言葉についても、資料1では「行動特性」と訳し、3では「行動能力」と訳している。こういう現状の中で、コンピテンシー、コンピテンスという、要するに最初は基本的に英語圏でできた概念だと思うのです。このような評価そのものが妥当であるかどうかということにも踏み込んで、いろいろな御意見を出して議論していただければと。つまり、医学教育には様々な立場があるのだと思うのですけれども、ある流れ歩きの議論で、できればデータを出していただくのではなくて、多面的に出していただければと。この概念は、臨床研修のみならず学部教育、国家試験の在り方、専門医教育並びに生涯教育としてもずっと関係してくることなので、そういう意味で、そういう議論に資する資料になっていくと思いますので、そういうことにも御留意いただければと思います。

○福井座長 医師の養成課程全てを通じて、同じ言葉を用いてカリキュラムができるといいですね。先生がおっしゃったように、深さの問題に還元できれば、同じフォーマットで作れるのではないかと思います。伴先生よろしくお願いいたします。

 ほかにはいかがでしょうか。どんなことでも、思い付いたことをおっしゃっていただければ、研究班をこれからやっていく上でも助かります。、伊野先生いかがでしょう。

○伊野構成員 アウトカムのコンピテンシーの話から、今までは経験目標で、経験すればいいと言ったものから、やはりある程度の能力が担保できているかどうかという目標に変わっていく流れと考えてよろしいのでしょうか。それとも見ただけだとか、経験しただけという目標も多少は要るのだということなのでしょうか。

○福井座長 言い訳ではないのですが、実は、到達目標の中の経験目標は、私たちが作ったもともとの案にはないものでした。もともとは行動目標だけだったのですが、どういういきさつか私は分かりませんが、経験目標という言葉が作られ、疾患名や症状が全部入ってしまって到達目標としてはものすごい量になっています。最初我々が文部科学省の研究班で作ったときにはいわゆる到達目標は行動目標だけでした。

○伊野構成員 納得しました。ありがとうございます。私は10年間臨床研修をやってきて、OJTの中で評価をしていくワークプレイスアセスメントが必要ではないかと。やっていらっしゃるとは思うのですが、多分、前野先生の所の研究になっていくのかもしれませんけれども、そういうものをどう扱っていくかとか、そういうことも考えていく必要があるのかと思います。

○前野構成員 私もプログラム責任者としてプログラムを運営しておりますけれども、実際にここで理想的な評価の在り方を議論しても、全国で毎年約8,000人の研修を実際に預かる現場の指導医まで下りていくと、かなりなまるといいますか、心が伝わりにくくなる部分がたくさんあると思っています。

 コンピテンシーの評価をきちんとしようと思えば、客観性とか数値化とか難しいものになっていくわけです。例えばポートフォリオを誰が評価するのかという話になると、相当指導側に力量と負担が求められるわけです。それを全国8,000人に末端まで行き渡らせることができなければ、むしろ評価は悪化する。つまり、多少妥当性は下がっても、ある程度客観性があるメジャラブルな項目で測ったほうが、トータルとしては良い評価ができるという現実性の問題もあると思っています。e-ポートフォリオを本気でやるならば、ものすごい準備が必要なので、私が頂いたこのテーマは非常に難しい問題だと思っています。それなので、そのコンピテンシーの考え方、アウトカムベースの在り方をできるだけ組み入れながら、最終的にどの研修病院でも実施可能な形にしないと、例えば指導医養成講習会を、全指導医もう一回やり直さないとできないぐらいの、そういう現実離れした議論をしてもしようがないのではないかと思っています。

○福井座長 ほかにはありませんか。

○神野構成員 進め方がよく分からないのですが、資料5関係事項を質問してもよろしいでしょうか。

○福井座長 次に、資料5の説明をお願いします。

○神野構成員 是非研究の中に資料5の論点を入れていただきたいと思いましたので。

○福井座長 それでは、事務局から資料5の説明をお願いします。

○森医師臨床研修専門官 資料5の説明をさせていただきます。「到達目標・評価の在り方に係る論点について」ということで、部会報告書において指摘された課題及び見直しの方向については、参考資料2にも抜粋で添付してあります。本ワーキンググループにおける検討の参考とするため、具体的な論点についてどのように考えるか、また、これ以外の論点についてどのようなものが考えられるか。資料5は本日の議論の参考として、具体的な論点の例を挙げたものです。

 「到達目標に係る論点について」ですが、重複しますけれども、部会報告書の内容の抜粋を点線の中で記載をしております。到達目標は、基本的には制度導入以降、内容は変更されておりません。今回の部会報告書で指摘された内容に関しては、急速な高齢化等による人口動態や疾病構造の変化、卒前教育や新たな専門医の仕組み等の医師養成全体の動向等に配慮すべきである。また、症例レポートは入院患者について提出することになっておりますけれども、化学療法や手術等は外来での対応が増加していること等の状況の変化があることから、入院医療から外来医療への移行をはじめとした医療提供体制の変化等について、適切に踏まえるべきである。また、「経験すべき症状・病態・疾患」などについては、当該項目を「経験する」ことが基本となっておりますが、診療能力の評価を更に重視すべきである。また、項目が細分化されており、何らかの簡素化が必要である。こういった指摘がされております。

 報告書の中で「見直しの方向」については、今申し上げました観点を踏まえて、その内容を見直す必要があるということが示されております。また、どのような医師を養成すべきかということを踏まえた上で、医師養成全体の動向の中で、卒前教育、医師国家試験、新たな専門医の仕組みにおける各専門領域の目標等との連続性にも考慮しつつ見直すこととする、と示されております。

1枚めくりますと、1つ目の「人口動態や疾病構造の変化」ということでの具体的な論点で挙げております。1つ目の○としまして、2025年には団塊の世代が75歳以上となるなど、今後ますます高齢化が進展することになります。こういった高齢化の進展に伴う医療サービスの需要の増大に対応するため、例えば、以下のような患者像や医療現場に対応できる基本的な診療能力についてどのように考えるかということで、幾つか具体的な患者像や医療現場というものを挙げております。例えば、複数の慢性疾患を有する患者、認知症を有する患者や疑われる患者、せん妄等の精神症状を合併したような患者、リハビリテーションや胃ろう等の栄養管理が必要な患者、終末期医療が必要な患者への対応といったことを挙げております。

2つ目の○で、こういう高齢化とは別に、臨床研修制度の導入時と比較して患者数の増加が見られるようなもので、将来専門とする分野にかかわらず、臨床研修制度の目的である初期の診療、また、専門医や保健サービスとの連携等が見込まれる疾病に対応するために、例えば以下のような患者像や医療現場に対応できる基本的な診療能力について、どのように考えるか。例として、悪性腫瘍等による緩和ケアが必要な患者、また、鬱病等の気分障害を有する患者や疑われる患者への対応を挙げております。

2つ目の論点として、「医療提供体制の変化」が報告書で挙げられております。1つ目の○は既に説明しましたように、化学療法や手術等は外来での対応が増加していること。そういう状況を踏まえて、症例レポートを外来患者も対象とすることについてどのように考えるか。

2つ目の○で、最近は法改正を伴うような大きな医療提供体制の方針が示されたものとして、参考資料4を適宜御参照いただければと思いますが、医療機能の分化や連携の推進、医療と介護の連携、地域包括ケアシステムの構築、精神病床の機能分化や長期入院精神障害者の地域移行等があります。現在進められている医療提供体制の整備状況を踏まえて、例えば、以下のような医療現場の経験についてどのように考えるかということです。1つ目は入院医療の機能分化に伴い、退院後の生活を支える、また、地域包括ケアシステムに資する在宅医療への対応、自宅や施設など、様々な場での看取りへの対応、多様な医療、介護、保健サービス等を提供するための多職種協働への対応等を挙げております。

3つ目の論点として、「医師養成全体における連続性」です。これに関しては、先ほどから説明がありますけれども、卒前教育や国家試験との連続性の観点から、クリニカル・クラークシップの実施状況や、大学間の取組内容の標準化等の状況を踏まえながら検討する必要があるのではないか。また、専門医については、日本専門医機構が、平成29年度からの養成開始を目指して認定基準の作成など準備を現在進めております。これへの連続性の観点からどのように考えるか。

4つ目の「診療能力」の論点についての1つ目は、「経験すべき症状・病態・疾患」等については、当該項目を「経験する」ことが基本となっております。部会報告書にもありましたように、診療能力の評価を更に重視するため、例えば、その習得の程度を示すことについてどのように考えるか。先ほどから御意見を頂いておりますけれども、単に経験したか否かではなくて、例えばコンピテンシーを踏まえた到達目標とする場合、留意すべきものについてどのように考えるかを挙げております。

5つ目の論点は「項目の簡素化」です。臨床研修をより効果的に実施する観点から、細分化された項目に関し、例えば、症状・病態・疾患について、現在必ず経験する項目と、それ以外の項目、また、その在り方として、例えばレポートを提出するとか、70%以上の経験が望ましいといった内容になっておりますけれども、この在り方に関してどのように考えるかを挙げております。

 続いて「評価に係る論点について」です。部会報告書の内容は、点線で囲んだところになります。評価手法が各研修病院によって異なっていることにより、臨床研修修了者の到達度に差異が生じている可能性があるという課題が挙げられております。

 見直しの方向については、評価の在り方についても、研修病院で採用している研修医の評価方法が様々であることから、何らかの標準化が必要ではないかということが挙げられています。再掲になりますけれども、到達目標と併せて、評価手法についても、卒前教育や国家試験、新たな専門医の仕組み、このような動向や連続性を考慮しつつ見直すこととする、と挙げられております。

1枚めくって、「具体的な論点の例」として挙げております。評価手法については、何らかの標準化をするにあたって、例えば、以下のようなシステムを活用する際に留意すべき点についてどのように考えるかということで、大きくEPOCの活用やインターネットの活用を挙げております。また、研修期間中を通じて行う形成的評価については、例えばポートフォリオ評価を取り入れるとした場合、その運用に関して留意すべき点はあるかということを考えております。資料5の説明は以上です。

○福井座長 最初に、「到達目標に係る論点について」という1ページと2ページ、3ページの半分までの所について、御意見、御質問がありましたらお願いします。

○神野構成員 ここで出てきた話が、また福井班の研究でお願いしたいということの確認でよろしいですね。

○福井座長 はい。

○神野構成員 説明がありましたように、疾病構造と人口動態、それから地域の過疎化とか高齢社会というのは全然変わってきていますので、それに対応できる能力というのは、研修医が好き嫌いは別にして必要な能力なのかと思われます。したがって、ここに挙げているのはそのとおりだと思います。例えば私たち医療のほうからケアマネを見ると、あの人たちは全然医療を知らないと。ケアマネのほうから我々を見ると、あの人たちは全然介護を知らないと。やはり、範囲は難しいところですけれども、介護保険の分野というのは、何らかの項目としてある程度新たに入れる必要があるのかという視点。

 今も指摘がありましたけれども、外来医療についてです。入院はどんどん短くなっています。化学療法等も含めて、外来診療の比重がものすごく大きくなっている中での、臨床研修が終わって外来診療ができるのか、社会のニーズに応えているかどうかという視点も必要であると思います。

 もう1つ社会のニーズの視点から言うと、先ほどイギリスの例もありましたが、私は聞き及んだ話だけですけれども、今イギリスではセルフメディケーションに対してのコンサルティング機能みたいなことがトピックだと聞きます。薬は我々の賛否は別にして、スイッチOTC薬が増えてきて、セルフメディケーションが増えてきて、それに対してコンサルティング機能を持った医師が求められているようです。その辺を加えて、いわゆる健康全体に対するコンサルティング機能みたいなものというのも、新しい視点としてこれから必要なのかと思います。

 以上3点、地域包括ケアの介護の視点と、外来医療と、コンサルティング機能というのが、今までは余りなかった視点なのかと思います。

○福井座長 研修病院の外部評価に行っても、外来での研修医のトレーニングは非常に対応が遅くて、国の制度のほうが余りにも早く進んで、在宅医療、介護まで必要になっています。今後外来診療についての目標がドラスティックに変わる部分が出てくるのではないかと思っています。特に、大学病院が在宅医療とか介護に本当に対応してくれるのかどうか、大学病院で在宅医療や介護を組み込むのは行きすぎだと言われますでしょうね。

○田中構成員 医科歯科大学病院では、1か月間は在宅医療をやっているような所に出していて、その1か月で十分かどうかという議論はありますけれども、そこで実際に訪問診療をやっていますし、そういうチャンスはちゃんと与えています。医科歯科大学はそうなのですけれども、他がどうかというのは分かりません。EPOCで見ても、評価項目は福井先生がおっしゃるように十分ではないのですけれども、そういう部分は結構高い点数は出ています。

○片岡構成員 私も、在宅診療や地域包括ケアも絶対的に必要な項目だと思っています。今のカリキュラムの必修分野には地域医療が入っていますけれども、その内容については詳細に定義された形にはなっていないと思います。もう少し確実に必要な項目を学べるようにし、評価も行うといった作りにしたほうがいいのかもしれません。

 内容という点では外来診療に関しても同様です。今は内科や救急という分野は必修になっているけれども、その中で実際に何をするのか。外来診療を重要視するならば、評価の対象にもなるし、経験が必須であるという作りにすることは大事なのかと思います。

○前野構成員 大学でというお話がありましたけれども、確かに筑波大学でも、在宅医療は研修医の半分かそれ以上が経験しているのではないかと思います。ただマストとなると、例えば医科歯科大学のように100人以上の研修医がおられる病院も含めて、1人残らず必ず在宅で研修、となった場合、実際にそれを実現するとなると、かなりハードルは高いのではないか。いわゆる「やっている」というのは、「研修することができる」なのか、それともミニマムリクワイアメントとして「必ずやる」なのかによっても違ってくると思うのです。それを、ミニマムリクワイアメントにすると、ものすごいハードルが上がってしまうことになりますので、そこは難しいです。

 むしろ、在宅をマストにするのは、恐らく卒前のほうがやりやすいのではないかと思っております。それは先ほどお話がありましたシームレスな中で考えていく部分も出てくるように思います。

○金丸構成員 正に神野先生がおっしゃったように、地域包括ケアというのは、国の政策でありますし、高齢化を見据えた中でも、市町村レベルで政策として下りてきているわけです。その中で、この研修制度が幸いにも必須化された地域医療というのがあります。そこは片岡先生におっしゃっていただいたのですが、正にその現場こそが貴重な地域包括医療を、実際の医師として経験する。ケアマネとの接点、介護保険の現場というのは、非常に貴重な位置付けに更になるのではないかと思うのです。この点も含めた形で評価到達目標が、更に次の改定においても、また必要であればおっしゃったように必須化されている地域医療の中身をもっと踏み込んで議論が重ねられると有り難いと思います。

○高橋構成員 我々の施設等では、中小病院、小規模病院に対して、外来診療や訪問診療を経験し、いわゆる地域包括へつながる研修が行われています。研修医の受け手側の指導医も研修医も、かなり集中して良い経験をしたという意見を残してくれています。もし機会があれば、いずれかのこの会に、担当者を呼んで意見を聴く機会を設けるといいかと思います。

○大滝構成員 外来研修についてです。このワーキンググループで話題にすることかどうか分かりませんが、特定機能病院に紹介状なしで、まだ診断が付いていない人が受診する場合に患者さんが負担する金額を上げようという動きがあります。大学病院も含めて特定機能病院はほとんどが研修指定病院になっていると思います。そのような病院に、診断の付いていない初診患者さんが、救急車以外で来る数はどんどん減ってきています。それを踏まえて、そういう研修病院が、外来で診断の付いていない患者さんを診療する研修の場をどう作っていくか、検討する必要があります

 他の研修の場と組み合わせるという考え方もあると思います。あるいは、研修医がそういうトレーニングしているということで、何らかの制度上の配慮をしていただくとか、幾つかの可能性はあるかと思います。それを踏まえて議論しないと、恐らくそういう病院からは、無理なことを言われても困ると。頭を押さえ付けておいて尻を叩くみたいな制度になりかねないので、そこは注意が必要かと思います。

○福井座長 どういう医師を育てようかという話と、具体的にそれをどう実行するのかは注意して議論したいと思います。ほかにはいかがでしょうか。

○田中構成員 「具体的な論点」の所に書いてあるのですけれども、イギリスは完全に統一した電子ポートフォリオみたいなのがあって、そこでデータを収集することができます。評価システムというのは、臨床研修は必修化されていて、国費が投入されている以上、評価方法も統一したものであったほうがいいのではないかと思います。もちろんコアになるものは統一されていて、それにプラスしてオプションで、それぞれの研修施設が独自のものを加えるのはいいと思うのです。コアの部分は、やはり統一したものがあるがゆえに、質の保証もできるし、いろいろなデータが収集できて、そのデータに基づいて今後も5年ごとに改定していくことがしやすくなる。

 今のEPOCでも、せいぜい6割ぐらいの研修医しか使用していませんし、病院ごとの偏りもあります。例えば、こういう規模の病院は向いているとか、こういうふうにグループを組んでいる病院のほうがいい研修ができるとか、そういう解析はできない。私の意見としては、そういうコアの部分については共通の電子的な評価システムを作る。福井研究班にお願いしたいのは、そういう可能性も考慮して、フィージビリティがあるのかないのかを検討していただきたい。

○福井座長 それは、特に評価の所ですか。

○田中構成員 そうです。

○福井座長 田中先生から、評価について御意見がありました。そのほかに御意見なり御質問がありましたらお願いします。

○小森構成員 社会が変わっていく中で、これもこれもというと、項目が増えていくだけです。一方で、こういうニーズがあるというお話がありながら、一方で簡素化も必要ということで大変難しい。正にそういうことで論点評価の整理をしていただいて議論するということだと思います。

2つあります。1つは、私も全国医学部長病院長会議と定期的に意見交換をする場があります。そこで言われることは、今までのお話にも出てきたように、特にこれから診療参加型実習を強力に進める、また進めなければならないという外圧もあります。そういうことで実験的に行う。恐らく来年から正式にStudent Doctorをしっかり稼働させてやる。

 そこでやる目標と、国家試験の出題基準と、この臨床研修制度における到達目標は全く同じものを3回やる。その中でも、先ほどの議論でも、深さが違うと言いつつも、前野先生がおっしゃったように、これは学内の教育のほうが向いていると。正に研究班の5番目でそういうことをされるということなのです。今回は32年の少し前を目標にしていますので、その議論の取っ掛かりを、やはり皆の合意がないと、ちょっと混乱するのではないかということを感じています。合意がされるのであれば、どういう深さかということは、概念的にでも示さないと、同じことを3回繰り返すという議論と、やはり先に進まないのではないかということが1点です。

 もう1点は神野先生が言われたことなのですけれども、社会保障制度改革国民会議の後で作られたことなのですが、大きくキュアからケアへという流れの中で、今まで医療というのは病を得られた方が対象でして、それを治すと。これから必要なのは、予防医療の、健康な方々のコンサルテーション。健康な方々に対する広い意味での医療。この前置きは長くなりますのでやめますけれども、そういうことに対する取っ掛かりみたいなものがあってもいいのかという感じがしていますので、御検討いただければと思います。また皆さんと一緒に考えたいと思います。

○古谷構成員 評価のことに関してです。形成評価をしてくださいと書かれています。例えば、このEPOCの一番の問題点は、そこで出た評価が研修医のためになっていないということなのです。コミュニケーションでBという評価が付きました。その研修医は何をすればいいのか、そこからどういう学習をすればいいのかということが、そこからは全く生まれてこない。ただ、アンケートのように評価されているだけになってしまっています。形成評価というからには、その評価をされることによって、研修医が次のステップを踏めるというような、そういう実効性のある評価を考えていただけるといいと思います。

 ただ、総括評価でないから、これは形成評価ですよというような分類ではなくて、ちゃんと実効性があること。逆に総括評価も、先ほど前野先生がおっしゃいましたように、ただ合否を決めましたから総括評価ですよではなくて、何を基にそういうことを決めていくのかという明確な基準というものを、それぞれ考えていかないといけないのではないかと思います。

○伴構成員 田中先生は責任者なので余りアピールしにくいかと思います。私は、EPOCというのはものすごく重要なツールだと思うのです。あれは飽くまでも、入れたらそれで形成的評価になるわけではなくて、そのEPOCを使って、誰がどのようにフィードバックするかという仕組みを、それぞれの研修プログラムが持っていないといけないものですから、それをメンターと呼ぶのか、あるいは相談指導医というような担当を決めてやっているのか、それは研修施設によると思います。

 せっかくここまで発展してきているEPOCを、例えばこれを卒前に援用するとか、専門医制度の中にそのようなシステムを組み込むとか。これはCBTに関して、そのノウハウを共有試験だけではなくて国家試験にも援用すべきという議論とも通ずるところがあります。教育を卒前、卒後、初期、専門医あるいは生涯教育も含めてもいいかもしれませんけれども、そのようなところで日本が持っているいろいろな資産みたいなものを共有していく。卒前も、初期研修も、専門医研修もというようなことを、省庁の縦割りの問題もあるのかもしれませんけれども、その辺も是非やっていくべきかと思います。

○福井座長 平子先生から何かコメントはありますか。

○平子文部科学省医学教育課企画官 省庁の縦割りというお話がありましたけれども、私どももこのような形でオブザーバーとして厚生労働省の会議に参加させていただき、また、私どもが開催する会議には厚生労働省からもお越しいただくということで、連携を取りながら中身を見ていっています。その上で、これは省庁だけの問題ではなくて、各学会であったり、大学と病院との関係であったり、それぞれが恐らく程度というよりは人であったり、中身であったり、そういうものの共通理解をあらゆる場面で進めていくということが重要だと思いますので、その辺は是非先生方におかれましても、継続して御尽力いただければと思っております。

○福井座長 御指名して申し訳ありませんでした。ほかに何かありますか。

○片岡構成員 プログラムの評価という御意見も出ました。例えば米国ではサイトビジットが非常に重要で、それはプログラムの評価でもあり、中にいる研修医の評価でもあると思います。前回の平成27年度に向けての見直しのワーキンググループで、やはりサイトビジットは非常に重要であるという意見が出ました。ただ、現実的にはなかなか難しい面もあるという話でした。今後、そういうサイトビジットについての議論も行う予定があるかどうか、もし分かれば教えてください。

○福井座長 研修部会からの報告書でも、それを強く進める方向に行っていますし、更に5年後は全ての施設のサイトビジット、外部評価を受けなくてはならないという方向に進んでいるのではないかと勝手に理解しています。神野先生、部会でのディスカッションはいかがでしょうか。

○神野構成員 前回のワーキンググループあるいは部会のディスカッションで、評価すべしという意見もたくさん出ましたが、まだ時期尚早ということで前回は止まったと思います。恐らく次の5年間で、臨床研修の評価をする所も、あるいは日本医療機能評価機構も、またバージョンが変わってまいりますので、そちらを見ながら利用するのも手なのかと思います。

○高橋構成員 第三者機構として、今実際に動いているのは卒後臨床研修評価機構(JCEP)が代表例と思います。卒後臨床研修評価機構の審査を受けた病院はまだ160病院ぐらいですので、全臨床研修病院の10数%の受審率ですけれども、そちらで持っているデータとEPOCのデータを突き合わせながらの研修対象疾患を検討することも必要かもしれません。あとサイトビジットに関しては、卒後臨床研修評価機構の第三者評価がいいのか、あるいは何か他の組織がサイトビジットを行うのか、その辺りも含めて、これから詰めていかなければいけないかと思います。

○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。本日は比較的自由に意見を伺うというセッションです。もしほかにないようでしたら、本日頂きました御意見等を参考に、私たちの研究班での調査研究を進め、次回のワーキンググループの会議では中間報告をしたいと思います。

 次に議題3「その他」を事務局からお願いします。

○田村医師臨床研修推進室長 冒頭で事務局の紹介をさせていただきましたが、会の途中から福島大臣官房審議官が参加いたしましたので御紹介いたします。

○福島審議官 福島です。どうぞよろしくお願いいたします。

○田村医師臨床研修推進室長 次回のワーキンググループの日程ですが、何回か出てきました研究班の進捗状況を踏まえながら日程調整ができればと思っておりますので、追って調整の上、事務局から御連絡させていただきます。

○中島構成員 お話を伺っていて、福井先生に非常に負荷が掛かりすぎているのではないかと若干思いました。全てのデータが福井先生を通して出てくるようなことになっているので、いろいろなデータを、いろいろな所から出して、福井先生の重荷をちょっと取ってあげるというぐらいの気持ちで進めたほうがいいのではないでしょうか。

 もう1点は、精神科をやっておられる人以外は知らないと思うので、縦割行政の話が出てきたので申し上げます。一般科は全て医政局の管轄ですけれども、精神科については社会援護局の管轄なのです。もういい加減に医政局で取っていただきたい。

○福井座長 以前、先生からその話を伺って、驚きました。

 ちょっと早いのですが、ほかに御意見なり、御質問がなければ終わりにいたしますが、最後に御発言はありますでしょうか。それでは、本日はこれで終了いたします。ありがとうございました。


(了)

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