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2013年6月26日 第5回疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る合同会議 議事録
医政局研究開発振興課
○日時
平成25年6月26日(水)10:00~12:30
○場所
三田共用会議所 大会議室(A~E)
○出席者
【委員】
福井座長 | 楠岡座長代理 | 中村座長代理 | 跡見委員 | 磯部委員 |
位田委員 | 今村委員 | 門脇委員 | 川村委員 | 久保委員 |
児玉委員 | 後藤委員 | 新保委員 | 祖父江委員 | 田代委員 |
知野委員 | 津金委員 | 中島委員 | 永水委員 | 藤原委員 |
丸山委員 | 宮田委員 | 山縣委員 | 渡邉委員 |
【事務局】
菱山審議官 (文部科学省研究振興局) |
伊藤安全対策官 (文部科学省研究振興局生命倫理・安全対策室) |
宮脇室長補佐 (文部科学省研究振興局生命倫理・安全対策室) |
三浦技術総括審議官 (厚生労働省) |
福島課長 (厚生労働省大臣官房厚生科学課) |
尾崎研究企画官 (厚生労働省大臣官房厚生科学課) |
吉田課長補佐 (厚生労働省大臣官房厚生科学課) |
佐原課長 (厚生労働省医政局研究開発振興課) |
高江課長補佐 (厚生労働省医政局研究開発振興課) |
○議題
1 前回会議の議論
2 疫学研究倫理指針及び臨床研究倫理指針の見直しに当たり検討すべき事項について
3 その他
○配布資料
議事次第 | 議事次第 |
座席表 | 座席表 |
委員名簿 | 疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る合同会議委員名簿 |
資料1 | 第3回合同会議(平成25年4月25日)以降における疫学研究倫理指針及び臨床研究倫理指針の見直しに当たり検討すべき事項の議論 |
資料2 | 疫学研究倫理指針及び臨床研究倫理指針の見直しに当たり検討すべき事項 |
資料3-1 | 未成年者や被後見人に係る代諾及び再同意の手続きについて |
資料3-2 | 子どもに対する法的評価(後藤委員 提出資料) |
資料3-3 | 子どもが参加する医学研究におけるインフォームド・アセントおよび実施方法(山縣委員 提出資料) |
資料3-4 | 未成年者の研究参加へのアセントおよび再同意について(永水委員 提出資料) |
資料4-1 | 倫理審査委員会の審査の質を担保する仕組みについて |
資料4-2 | 再生医療等安全確保法案について |
資料5 | 研究の質について |
資料6 | 被験者への補償について |
資料7 | 治験制度に対応した臨床研究の届出・承認制度の整備について |
資料8 | 関連規定等 |
参考資料1 | 第4回疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る合同会議議事録 |
○議事
【宮脇室長補佐】 おはようございます。定刻となりましたので、第5回疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る合同会議を開始させていただきたいと思います。
本日は御出席いただきまして、まことにありがとうございます。まだお席にお着きでない委員もいらっしゃいますが、本日の会合に関しましては、真田委員、玉腰委員、土屋委員、直江委員、花井委員から御欠席の御連絡を頂いています。
次に、配付資料の確認をさせていただきます。お手元、クリップでまず一つ留めている資料を外していただきまして、一番上、1枚紙で本日の議事次第と記載したものがございます。こちらの真ん中下から本日の配付資料一覧、記載ございます。御案内のとおりでございますけれども、資料1から8までの書類と参考資料が1種類準備してございます。この議事次第に続きまして、1枚紙で本日の座席表でございます。同じく1枚紙の資料で、本合同会議の委員名簿でございます。以下、資料右肩上に資料番号付与してございます。資料1、資料2、資料3、資料3につきましては4種類ございまして、枝番が資料3-1から3-2、3-3、3-4、4種類の資料ございます。続きまして資料4でございますが、資料4も同様に2種類ございますので、枝番が4-1の資料、4-2の資料ということでございます。以下、資料5、資料6、資料7、資料8。資料番号が付与してあるものにつきましては以上でございます。更にそれに続きまして参考資料1という資料を用意してございます。
それから、メーンテーブルにお着きの委員の方のみ机上配付資料といたしまして、別にクリップで留めてございます関連資料という一連の資料及び紙ファイルで、事務局の都合で体裁2種類ございますけれども、黄色いファイルあるいは水色のファイルで参考資料という形で机上に配付させていただいている資料がございます。こちらは適宜御参照いただきながらお使いいただくということでございます。
なお、前回までの会議資料につきましては、今回の議論に関係する資料をあらかじめ各委員のお席に配付させていただいていますが、その他の資料につきましては、事務局席、私のこちらの方でございますけれども、必要に応じて御活用いただきたいと思いますので、その際、お申しつけいただけたらと思います。
配付資料は以上でございます。不備等ございましたら、事務局までお知らせいただきたいと存じます。
また、円滑な審議のため、冒頭の頭撮りにつきましてはここまでとさせていただきます。
事務局からは以上でございます。よろしくお願いいたします。
【福井座長】 おはようございます。それでは、本日も12時半までの会議ですので、どうぞ御協力をお願いいたします。
議事に入りたいと思います。まず、議題1の前回会議の議論についてでございます。前回の第4回合同会議での議論について、事務局から説明をお願いいたします。
【伊藤安全対策官】 それでは資料1をごらんいただけますでしょうか。こちらの資料につきましては、第3回合同会議以降の検討すべき事項の議論を整理したものでございます。
前回、5月に行った会議の議論につきましては、14ページ以降に記載しております。前回はインフォームド・コンセントに関して三つの論点に基づいて議論を行っていただきました。4-1につきましては、インフォームド・コンセントの項目をどういった内容とするかということを中心に議論していただきました。16ページに取りまとめとして書いているのですけれども、基本的にこちらの議論につきましては、また改めて次回以降に確認していただく必要はあるとは思ってございますけれども、とりあえずはその中の議論の中でいろいろと先生方から出てきた意見というのを取りまとめております。
それから4-2につきましては、インフォームド・コンセントの取扱いについて簡略化・免除の要件を含め、どのような形で類型化・整理していくのが適切か。こちらは17ページ以降にまとめてございまして、19ページにまとめを書いております。こちらにつきましても、また次回以降に少し追加して議論をしていく必要があると考えております。
それから20ページは4-3ということで、救急医療の現場における臨床研究のICの在り方ということでございまして、こちらにつきましては、見直しの方向性(案)に書かれていますように、GCP省令55条、これは緊急状況下における治験の手続に関する規定です。こちらを参考に介入研究への参加についても同様の規定を設けてはどうかという方向性で整理されたものだと認識しておりますけれども、それに加えて、救急の場だけではなく緊急性のあるケースとか観察研究についても配慮して考えていくことが必要だと、このような意見も出ておりました。
以上でございます。
【福井座長】 ありがとうございました。ただいまの説明につきまして、何か御質問等ございませんでしょうか。一つ一つの項目、必ずしも全委員の賛同が得られるような形にはまだなっていないものがございますけれども、一応最後まで全項目を扱った後で、必要に応じてまた戻りたいと思いますので、御了承いただければと思います。よろしいでしょうか。
それでは、議題2、疫学研究倫理指針及び臨床研究倫理指針の見直しに当たり検討すべき事項についてに入りたいと思います。今回は、資料2で四角で囲ってあります項目の5から9についての議論を進めさせていただきたいと思います。
それではまず、検討事項の5、未成年者や被後見人に係る代諾及び再同意の手続についてでございます。前回は、後藤委員からアセントについての基本的な考え方について、そして、山縣委員から医学研究に参加する子供のアセントについて御説明いただきました。今回は、まず、事務局から検討事項について説明をしていただいた後、永水委員から資料3-4に関して御説明をお願いしたいと思います。
それでは最初に、検討事項5、未成年者や被後見人に係る代諾及び再同意の手続について、事務局から説明をお願いいたします。
【吉田課長補佐】 それでは、事務局から説明いたします。資料3-1をごらんください。
まず、5-1としまして、出生コホートのように新生児の時期から実施している研究においては、何歳の時点で本人が納得できる形で子供からのアセントを得るべきなのかという論点でございます。
現状と課題でございます。まず、現行指針におきましては、研究対象者が未成年者の場合、代諾者からのICとともに研究対象者本人に分かりやすい言葉で十分な説明を行い、理解が得られるように努めなければならないこと。また臨床指針の場合には、更に未成年者とその他行為能力がないとみられる被験者が研究への参加について決定を理解できる場合には、代諾者からICを受けるとともに本人の理解を得なければならないことが規定されております。
近年、出生コホートのような新生児の時期から実施している追跡研究が盛んになっておりますが、未成年者のアセントについて、その内容やタイミングについての記載がないのが現状です。
また、現場におきましては、親が子供の研究参加には同意しても、子供本人が参加を拒んだ場合に、本人の意向が尊重できるのは何歳からなのか、またどういう条件下なのかということについて、ガイダンスがないのが現状です。
また、現在、公的な文書として、日本、米国、EUで統一された医薬品の臨床研究に関するガイドラインがあり、この中でアセントを得るための目安が示されているものもございます。
めくっていただきまして、検討のポイントでございます。まず1点目は、アセントですが、これは義務とは異なり、適切と考えられる場合に研究者が自発的に研究対象者に対して説明と同意取得を行う。そういう性質のものでありますが、代諾は本人同意ではないので、必要性を十分説明できる研究であっても代諾があればよいというわけではなく、未成年者を対象として研究はできる限り本人のアセントを得ることが必要ではないかという点。
二つ目でございます。未成年者からアセントを得る場合、年齢や理解の程度によってアセントの重みが違うので、アセントには年齢に応じた説明と配慮が求められるのではないかという点。
3点目、インフォームド・アセントの実施を励行するためには、アセントが積極的に励行されるケース、その内容とタイミング、本人が参加を拒否した場合の対応について、本人に対する利益の性格などを考慮して、明確な判断基準を示す必要があるのではないか。一方でアセントを得ることが適当かどうかを含む判断については、研究の内容や研究対象者によって異なるのではないかということでございます。
見直しの方向性の案でございますが、まず1点目ですが、統合後の指針において、インフォームド・アセント又はそれに相当する表現の定義を置くとともに、未成年者を対象とした研究には、できる限り本人のアセントを得ることを記載してはどうかということを提案したいと思います。
2点目。現在行われている新生児の時期から実施している追跡研究の事例等を参考にしまして、アセントを得るべきケース、アセントの程度、またその年齢とタイミング、本人が拒否した場合の対応等について、判断の目安を整理して、ガイダンスを示してはどうかということを提案させていただきます。
めくっていただきまして、論点5-2でございます。研究対象者の研究参加・不参加に対する意思表示が有効なICを与えることができる年齢として、現行の指針では16歳以上を基準としておりますが、見直しの必要がないかという問いでございます。
現状と課題です。まず、現行指針におきましては、研究対象者が16歳未満であって、代諾者からの代諾によって研究を開始した場合、研究対象者が16歳に達した以降も研究を継続する場合には、研究対象者が16歳に達し、有効なICを与えることができると客観的に判断された時点で、本人から再同意を受けなければならないと規定されております。
一方、臓器移植における臓器の提供に係る意思表示や民法上の遺言などのように有効な意思表示の年齢を15歳以上としているケースもございます。
次のページに、代諾者等からインフォームド・コンセントを受ける手続に関する規定ということで、現行の疫学指針と臨床指針のそれぞれの細則の該当部分をここに記してございます。両指針の違いといたしまして、まず疫学研究に関する倫理指針でございますが、ここでは代諾者等からのインフォームド・コンセントによることができる場合として、?研究対象者が未成年者の場合。ただし、括弧として、研究対象者が16歳以上の場合であって、有効なインフォームド・コンセントを与えることができることについて、倫理審査委員会の承認を得て、機関の長の許可を受けた場合を除くとなっております。
これに対して、臨床研究に関する倫理指針の細則ですけれども、ロのところの2行目でございます。「また」以降のところ。「また、被験者が16歳以上の未成年者である場合には、代諾者等とともに被験者からのインフォームド・コンセントも受けなければならない」となっております。すなわち代諾者の同意が、16歳以上の未成年者の場合に要る/要らないということについて、この疫学指針と臨床指針の場合では取扱いが違っているという現状もあります。
検討のポイントでございます。まず、再同意の取得が必要な年齢としては何を基準に置くべきかという点を挙げました。
2点目としまして、現行の指針の規定で研究実施上問題があるのかどうか。また、本人の意思の実現が求められる程度が高まったというような状況の変化があるのかどうか。
3点目として、参加しても本人には直接の利益がない研究においては、本人と同世代の集団や社会全体にどういう利益をもたらすかという公益性について判断できる能力があることが必要ではないか。
4点目として、研究対象者本人から研究不参加の意思表示があった場合に、その意思表示が有効な年齢は、再同意の取得が必要な年齢と同じ考え方でよいのかどうか。
この4点を挙げさせていただいております。
ページをめくっていただきまして、見直しの方向性の案でございます。まず、1点目ですが、現行の規定を基本とするが、研究対象者が16歳未満であっても研究参加という行為の性質、自分、社会にどういう利益をもたらすかということについて判断できる能力があると認められるのであれば、代諾者とともに本人からも同意を受けることについて検討してはどうかという提案でございます。
2点目、研究不参加の意思表示については、アセントとの関係から本人の意向が尊重できる年齢又は条件を検討することとしてはどうかという提案でございます。
次のページをごらんください。三つ目の論点でございます。健康な子供に対する侵襲を伴う研究への参加の同意取得について規定を設けてはどうかということでございます。
現状と課題です。まず、研究対象である疾患を有さない子供を対象としたコホート研究のように、参加しても本人には直接の利益がない研究におきましては、研究実施の可否の判断におきまして、臨床研究のように参加することで本人に直接利益がある研究とは異なる配慮が必要ではないかという意見がございますが、現行指針では特段の規定がないのが現状です。
二つ目として、研究参加について親子で意見の不一致がある場合、どちらの意向を尊重すべきなのかについてガイダンスが必要であるという意見がございますが、これについても現行指針には特段の記載がございません。
ページをめくっていただきますと、検討のポイントでございます。研究対象である疾患を有さない子供を研究に参加させることの是非については、どのような観点から判断されるべきか。例えば採血の参加について、本人に直接の利益がある場合とない場合とでは、侵襲の程度についての考え方が異なるのではないか。後者の場合は、本人と同世代の集団や社会全体にとって共通の利益となるかどうかを考慮すべきではないかという点でございます。
2点目、研究参加に関する説明は、参加者の年齢層に応じた文書、例えば小中学生の教科書レベルのものを作成して行うことが必要ではないか。
3点目として、親が子供の研究参加に代諾して本人が参加を拒否した場合、本人の意向を尊重できるのは何歳としたらよいか。同様に、本人が研究参加に同意して親が参加を拒否した場合、親の意向を尊重できるのは本人が何歳までとしたらよいかということを挙げております。
見直しの方向性の案でございます。健康な子供を対象としている研究事例を参考に、代諾、アセント、本人同意という一連のプロセスにおいて、研究に参加させる理由、子供の発達段階や年齢に応じた説明と配慮、親子での意見が異なる場合の対応などについて整理し、ガイダンスを示すとともに倫理審査委員会はそれを踏まえて研究計画が適切か審査することとしてはどうかという提案をさせていただきます。
事務局からの説明は以上でございます。
【福井座長】 ありがとうございました。
続いて、資料の説明を最初にお願いしたいと思います。資料3-2と3-3は、前回、御説明いただきました。永水委員からの資料3-4について説明をお願いします。
【永水委員】 それでは、資料の説明をさせていただきます。今回は民法の立場からということでお話をさせていただきますが、ただいま、事務局から5-1、5-2、5-3という論点を示していただきましたが、その並び順に検討してまいりました。
まず、前提1という部分につきましては、今、御説明があったとおりでして、コンセントとアセントとは異なるということだけですので、これは省きたいと思います。
次に、2のところなのですけれども、出生コホートのように新生児の時期から実施している研究においては、何歳の時点で本人の納得できる形で子供からのアセントを得るべきなのかという論点5-1に対応している部分です。これにつきまして、例えば、家族法、民法の分野におきまして、離婚の際の親権者決定等における家裁の実務を見てみました。それを見てみたところ、大体10歳前後で子供の意見を聞いているというようなことが挙がってきました。
そして、注の1を見ていただきたいのですけれども、法律上はどうなのかといいますと、家事事件手続法というのがあるのですが、ここでは、下線引いておりますが、子が15歳以上であれば、家庭裁判所が子の陳述を聞かなければならないとされております。更に65条を見ると、次なのですが、15歳未満であっても、その年齢や発達の程度等を考慮して、その意思を考慮しなければならないということなので、一応、15歳以上であれば聞くとなっているのですが、15歳未満であっても発達の程度等を考慮して、一応意見を聞くということはあります。ですので、家裁実務におきまして、10歳前後でも意見を聞いているということです。
ただし、注意したいこととしましては、説明を聞きたがっていないのに無理に説明して、例えばアセントをとるとか、このようなことを行うのは子供にとってよくないと言われております。いきなりアセントの話になってしまいましたけれども。そして、アセントというのは、本人の選好であると捉え、リスクと利益を衡量する際の一つの要素として勘案するだけであって、必ずしも本人の意思が通るわけではないだろうと考えられます。ただ、アセントは研究継続参加への動機づけともなりますので、これを得ることに重要性があるとは考えております。
さらに、次、アセントは法的な要件ではなく、倫理的な要請あると書いてしまいましたけれども、法的な要件ではなくというのは、別に法的に重要ではないという意味ではなくて、注の2を見ていただきたいのですが、例えば、前回も後藤委員から提出がありました児童の権利条約12条1項にも、未成年者が表明した意見は、年齢及び成熟度に従って考慮されるという規定があるわけなのですけれども、ただ、アセントが得られなければ研究参加が認められないというわけではないという意味で、法的な要件ではないとここでは書きました。しかし、倫理的な要請は非常に高いということもありますので、見直しの方向性としては、統合後の指針の本文に未成年を対象とした研究にできる限り本人のアセントを得ることが望ましいという記載をするということはよいことではないかと思います。年齢につきましては書けるかわかりませんが、年齢を問わずアセントは重要だということは書くことが望ましいと考えます。
次に、3の部分なのですが、これは事務局の5-2に対応している部分です。研究対象者の研究参加に対する意思表示が有効なICを与えることができる年齢として、現行指針では16歳以上を基準としているが、見直しの必要性がないかという部分なのですが、まず、今回、指針を一本化するということになりますので、疫学指針と臨床指針とでリスクの質が異なるということから、必ずしも同じ扱いにする必要はないのではないだろうかということはここで検討すべきではないかと考えました。
更に2番目なのですけれども、現行の疫学指針の細則には手続的な面で研究対象者をより保護できるような仕組みを入れる必要があるのではないかと思いました。というのは、次のところと重なってくる部分なのですけれども、当該研究によって自分と社会にどのような利益、身体的なものに限られず、精神的な、参加することによって社会に貢献しているというものも恐らく含まれるのではないかと思うのですけれども、どのような利益があるか及びどのようなリスクがあるかについて承諾能力の有無を判断するのが、少なくとも専門家、心理学等の、認知心理学等の専門家を含めたチームが判断するという枠組みが必要なのではないかと考えます。
しかし、承諾能力の有無につきましては、我々民法をやっている者が承諾能力があるの、ないのということを考えるイメージとしては、個別の人間に承諾能力があるのかないのかを個別的に審査するということをイメージしているのですけれども、承諾能力の有無について、グレーゾーンがあるのではないかと。そして、間違う危険性を恐れて、実際には未成年者に承諾能力あるかなと思ったとしても親の同意を取得することが多いと考えられます。ここで研究が円滑に行われるためには、最初は親の同意と本人のアセントあるいは本人のコンセント、これはどちらかはわかりませんが、を得る方が望ましいと考えるのか否かについて議論をする必要があろうと思います。
次に、3番目ですが、疫学も含めて、16歳未満の未成年者の場合に、本人の同意だけで研究参加できるとすることには問題が多いと指摘ができるかと思います。16歳未満の場合には、リスク判断を的確になし得る程度に成熟していない未成年者が多いということから、親権者が決定して、本人からはアセントを得ればよく、親権者を排除して本人のみが決定するという必要もないであろうと考えられますし、そのような制度設計によって未成年者本人の利益が侵害されるという危険性も高いのではないかと考えるからなのです。
また、民法の研究者から言われていることなのですが、親権者による研究参加契約を取り消すとか、あるいは親権者が提供した試料への同意を撤回すると言ってきたときに、データが欠けてしまうという危険性があるということ。そして、これが実際にあるかはわかりませんが、親権侵害を理由として損害賠償請求を研究者に対して起こしてきたときに、研究者が訴訟に巻き込まれるリスクがあるのではないかということが言われております。
4番につきましては、再同意取得が必要な年齢としましては、IC可能年齢が挙げられると思いますが、詳細は2でしゃべりましたので、ここでは省略します。
そして、5番目ですが、研究不参加、研究に参加したくないという意思表示と再同意取得年齢、つまりIC可能年齢というのは必ずしも同じでなくていいと考えられます。不参加の意思表示があった場合には、それを可能な限り尊重すべきであろうと思われますし、不参加の意思表示年齢の方が低いという制度設計はあり得ます。根拠としては、例えば改正されました臓器移植法のガイドラインでは、承諾能力がないと考えられます16歳未満の者の拒絶意思でも尊重すると書いてあります。ですから、「年齢にかかわらず」と実際は書いてあるのですけれども、これを見る限り不参加の意思表示というものは通すべきであると。未成年者が嫌だと言っているのに無理に研究に参加させるということは不適切であろうと考えます。
さらに、研究不参加の意思表示につきましては、そのような場合に無理に参加させるということが親権行使として適切なのかどうかという観点から検討しなければいけないとともに、実際問題として未成年者が不参加すると言っているのに強制的に参加させることは不可能であるし、人身の自由を侵害するということから、年齢を問わず、不参加の意思表示があった場合には、不参加で決定すべきであろうと考えます。
その次の文章は不適切かなと思いましたので、削除したいと思います。説得や話合いを継続して行うというのは、あくまで治療の一環として臨床研究が入ってくる場合を指しております。普通、研究に参加するか否かについて説得を行うというのはおかしいだろうという議論がありますので、「ただし」という部分につきましては削除したいと思います。しかしながら、治療の一環として臨床研究に参加する場合と、例えば本人にとって直接利益のない研究のみに参加する場合とでは扱いが異なっていいのではないか。そして、治療の一環として参加する場合には、未成年者の不参加の意思を覆すということも、場合によってはそれが子供の最善の利益になるならば、あり得るのではないかと考えます。
最後なのですけれども、5-3に対応するものとして4があります。健康な子供に対する侵襲を伴う研究への参加の同意取得(アセントを含む)について規定を設けてはどうかということなのですけれども、こちら、事務局が現状と課題ということで、それに対応して場合分けをしてみました。まず、親子で意見の不一致があったある場合の解決方法として、四つの場合分けをしております。未成年者が参加を拒否している場合、親が同意している場合、更に未成年者に承諾能力がある場合、ない場合という形で場合分けをしました。
1番目ですけれども、未成年者が参加を拒否している、親が同意しているという場合です。このような場合、a-1、a-2と分けておりますが、基本的に先ほども説明しましたように、承諾能力のある未成年者が参加拒否をしている場合も承諾能力のない未成年者が参加を拒否している場合も扱いは同じだと思います。ですので、a-1とa-2は結論は一緒です。親は同意している。このような場合は、先ほども申し上げましたとおり、未成年者の拒否の意思を優先する。健康な子供の研究参加の場合は、先ほど「ただし」というところで述べたようなことがありませんので、健康な子供の研究参加の場合は、未成年者の拒否の意思を優先するということになるかと思います。
更に場合分けとしまして、b-1、b-2があります。未成年者が研究に参加する意思を表明しているけれども、親が拒否している場合です。b-1としまして、承諾能力のある未成年者が参加意思を表明しているが、親が拒否している場合、未成年者の意思を優先するかということです。これについて、果たして未成年者ということは、一応承諾能力があろうと親権者がついているわけなので、親権は何のために存在するのかということと併せて考えなければならなくなります。そこで考えると、子供の権利を保護するように親権行使すべきであるということが言えます。では、子供の利益保護のために親は何をすべきかということにつきまして、未成年者保護と未成年者の自律のバランスをどのようにとるかということをめぐって、民法上は大体以下の三つの考え方が導き出されます。
まず1番目としまして、リスクの有無に関係なく未成年者保護のために親権を重視するという考え方によりますと、リスクが高くなくても親が拒否すれば未成年者は望んでも研究参加できないという立場になります。しかし、これにつきましては、承諾能力のある、つまり自己決定能力のある未成年者の自己決定を尊重しないということは子供の人格権侵害につながるのではないかという批判があります。
次に丸3に行きます。丸3の考え方は、子供に承諾能力があるならば、その決定を覆さないということが子供の人格の尊重になるという考え方です。これによりますと、未成年者の意見が通るということから未成年者は研究に参加できます。ただし、これだと未成年者の保護、リスクの判断を誤った場合に保護ができず、親権の存在意義がないかもしれないという批判があります。
1と3の中間的な立場、折衷説としましては、親は子の権利が尊重されるように治療方針を決定しなければならないが、親権は専ら子の利益・福祉を目的とする監護権であることから、未成年者に承諾能力があっても未成年者自身にとって害となる決定をしている場合には、その決定を是正すべきであるという考え方が出てきます。すなわちリスクが高い場合には親の拒否が通るため、未成年者は研究に参加できないということになります。これにつきましては、リスク判断は自分がやるのだという子供からすると、親によるパターナリスティックな介入、これは自分の人格権を侵害することになるという批判ができます。
民法上有力な立場としまして、丸1、そして丸2が最近割合出てきている意見です。
b-2としまして、場合分けの最後ですが、承諾能力のない未成年者が参加意思を表明している、すなわちアセントを与えている。そして、親が拒否している場合はどうするかというと、リスクと利益を衡量して、親権者が最終的には決定するけれども、見解の相違がある場合は、本人が参加したがっているので話合いの場を設けて、その中で利益判断要素の一つとして未成年者がどうして参加したいのかということを考慮し、話合いを促進して、親にとっても未成年者にとっても納得できるような結論を導き出せるようにすべきではないだろうかということです。
最後なのですが、そのほかに検討すべき事柄としまして、虐待の可能性への対応です。未成年者の意向をきちっと確かめるということが大切なことです。更に未成年者と親の意見が不一致の場合に、話合いを行う場を設けるという手続を構築する必要も出てくるのではないか。そして、研究倫理審査委員会による研究審査で研究計画を厳しくチェックするという必要も出てこようということです。
更に今後検討していただきたいこととして、ゲノムや遺伝子解析をする場合に、未成年者本人の同意のみではできないのじゃないか、すなわち個人の処分権を超えているのじゃないかということを今後検討していただきたいということです。
更に解放された未成年者という概念があります。我が国におきましては、例えば民法753条で結婚すると未成年者でも行為能力があるとみなされます。そうしないと結婚生活を行えないからです。民法上はこれしか規定がないのですが、例えばもう中卒で自活している、独り暮らしの未成年者という方もいらっしゃいます。こういう方の場合は、わざわざ親権者に聞かずに単独で医学研究に参加できないだろうかという疑問があります。これについても今後検討すべきかと思います。
最後になりますが、研究参加の可否を同意のみに依拠させるのではないということは、この場でしっかりと再確認すべきだろうと思います。すなわち被験者保護ということを同意のみに任せるということになると、自己決定や自己責任の問題になってしまって、被験者保護として不十分であろうということで、再度、研究倫理審査委員会における審査の重要性や国や社会による研究の監視、重要性ということを指摘しておきたいと思います。
長くなってしまって申し訳ございませんが、以上です。
【福井座長】 ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして、御意見ございませんか。田代委員、どうぞ。
【田代委員】 最後の点ですけれども、これは私も大賛成です。特に海外の指針、GCPやヘルシンキ宣言も含めて、こういった研究を子供のアセントなり親の代諾だけでしていいという規定はどこにも存在していません。対象者集団の健康増進に役立つものかどうかとか、同意能力ある人で代替できないかどうか、あるいはリスクに関する制限という項目は必ずつけ加わっています。これはもちろん、この後具体的な話になると思いますけれども、アセントや代諾の手続だけを決めるのではなくて、倫理審査委員会が判断する際の基準として、こういったほとんどどのガイドラインも共通した項目を設けているので、これを必ず入れていただきたいということが一つです。
もう一つは、これも永水先生が先ほどから何回か言われているのですけれども、5-3の規定の仕方が健康な子供か病気の子供かという区別になっているのですが、これについては、ヘルシンキ宣言もGCPもCIOMSガイドラインも全て、本人に直接の治療上の利益が見込めるものなのか、そうではないのか、という区別で全てのロジックを作っているわけです。もちろん、それが全て正しいとは思いませんけれども、日本で非常に独自の、健康な子供か病気の子供かという場合分けをしてルールを作るのであれば、かなり強い理由付けがいるかと思います。基本的には、この5-3で扱われている議論というのは、今のところ、ほぼどの国でも本人に直接の治療上の利益が見込めないのだけれども、本人が同意できないという研究をどうするかというルールとして作られています。ですので、その際には先ほど言ったようなリスクの制限なり、同意能力ある人では代替してできませんよ、という条件を追加してもらうという形で考えていただければと思います。
以上です。
【福井座長】 ありがとうございます。丸山委員。
【丸山委員】 まず、今の田代委員の2点については、私も同じ意見なのですが、永水委員の御報告について少し確認をさせていただきたいと思います。2ページから3ページにかけてのところなのですが、16歳未満の者について、ゲノムの指針ではアセントという言葉を使われていますけれども、代諾者の同意があっても本人について説明をして理解を得るよう努めなければならないという努力義務が課されています。これは参加についてのもので、だけれども必要条件ではないということですね。
その後、2ページの下の方に書かれているのですが、アセント年齢にならない者であっても、本人が、永水さんは控えめに研究不参加の意思表示と書かれていますが、私は拒否権というような強い言葉で表現したくなるのですが、本人が研究参加について、たとえ代諾者が同意を与えていても拒否できるというようなことが指針にはこれまで書かれてなかったかと思うのですが、海外でも我が国でも認められてきたと思うのですね。それについては、アセント年齢よりも下のところに、ひょっとするとはるかに下のところに基準の年齢が定められて、物心つく者であれば本人が嫌だと言っていれば、その研究の内容が本人に対して利益を与える度合いが非常に高い、あるいは前回の救急の場合のようにほかに方法がないという場合は別としまして、そうでない限りは拒否は認めるというような理解でよろしいのでしょうか。ちょっと確認させていただきたいと思いました。
【永水委員】 はい。それで結構です。
【福井座長】 ありがとうございました。山縣委員、どうぞ。
【山縣委員】 永水委員の今の御説明、大変よくわかりましたし、ほとんど同意なのですが、一つ現場の問題として、現在、例えば16歳というのが結構出ているものに関しては、学校で調査する場合に高校生とか中学生とかという枠組みになったときに、高校1年生、15歳と16歳いて、非常に厄介なことになって、そのあたりのところ、少し細則などで。つまり、彼らは教育歴としては同じわけですし、そういう意味ではコンピテンスのことを考えても、そこで例えば日本の中で明確に16と15を区切る必要があるのかどうなのかということも含めて、この家族法の中の15歳という数字で年齢も出ていますし、そういうところを原則16だけれどもというような形でできないかということは感じました。
とりあえず、以上です。
【福井座長】 それでは、後藤委員、どうぞ。
【後藤委員】 私も最初に田代委員がおっしゃったようなことを申し上げようと思ったんですけれども、基本的に子供に対する研究というのは、子供はリスクを引き受ける判断ができないというのは、この前、お話をしたとおりなのですけれども、子供のリスクになるか、ならないかということを決められないので、したがって、よほどのことがない限り、子供に対する臨床研究ないしは疫学研究というのは例外的であるという規定は最初にきちんと設けるべきだと思います。それに加えて、子供の最善の利益というのを、これは親だけではなくて社会も考えなければいけない。そうすると、研究者も一応子供の最善の利益を考えると。大前提として、子供の最善の利益を考えないで研究計画を作るということはあり得ないと思うのですけれども、とりあえず指針の中には子供の最善の利益に資すると。子供というのは具体的な子供か、あとは集団としての子供かという二つの考え方があると思いますが、そういう総論的なものをどこかに置いていただきたいと思います。
あと先ほど田代委員もおっしゃったように、本人の利益になるか、ならないかというのは一つの大きな基準になると思います。それに対して、あとは拒否をする場合、アセントで足りる場合、コンセントが認められる場合というような分け方をしていけばいいと思います。
一つ、私、アセントは必ずあった方がいいのではないかと思います。拒否は、先ほど改正臓器移植法の話がありましたが、あれはどのぐらいを念頭に置いているのか、私もいま一つよく分からないのですが、15歳未満であっても拒否の意思は尊重すると。5歳でも4歳でも拒否をするということを書面で書いていたら、多分あの文面からいくと尊重せざるを得ないということにならざるを得ない。そういうことになってくると、死後の臓器の提供ですからいいのかもしれませんが、やはり拒否の意思というのは特別に取り扱っていく必要がある。アセントについては、できる限りアセントは得る。あと法的な問題とあとは倫理的な問題とあと子供の権利を尊重するという問題というのは、若干分けて考えた方がいいのではないかと思います。
【福井座長】 位田委員、どうぞ。
【位田委員】 今の後藤委員の発言ともつながるのですけれども、未成年者を研究に参加させていいかどうかということについての規定が何もないのですね。ここは未成年者だけではなくて、弱者一般について、やはり弱者を研究に参加させる必要があるかどうかということがまず第一で、その必要がある場合にインフォームド・コンセントを誰がするのか、アセントをどうするのかという問題になってくるはずなのですが、現行の両方の指針ともインフォームド・コンセントと代諾のところしかないのですね。ですから、先ほど後藤委員がおっしゃったように、ある種の総則的な、子供だけではなくて弱者一般について総則的なものをきちっと置いておいて、その上で、特にこれは海外の指針もそうですし、国際的な文書もそうですけれども、自分について直接の利益があるような臨床研究指針に参加する場合、若しくは、自分に直接の利益がない場合には社会に大きな利益をもたらすような臨床研究、その場合には参加させることができるけれども、それ以外は駄目だというのが一般的な考え方だと思います。健康かどうかという話では恐らくないのだと思うのですね。もちろん健康かどうかというのはそれなりに重要な決め手ではあるのですけれども、それはその次の問題だろうと私は思っています。
それからもう1点、アセントという言葉がゲノム指針に入ったんですけれども、そろそろ片仮名の用語はやめた方がいいのではないかと。というのは、インフォームド・コンセントはだいたい人口に膾炙しているので、普通の人でもまあ分かると思うのですけれども、アセントというのは、例えば小さな子供があなたにアセント要りますよと言って、これで本当に分かるのか。15歳で本当に分かるのかというと、恐らくそうではない。我々はここの場では学問をやっているわけではありませんから。何かアセントに代わるような、「賛意」という言葉がいいかどうかはわかりませんし、納得とか承諾とかいろんな言葉遣いがあるのですけれども、やはり日本語を作らないといけないのではないかと思います。そうでないと、どんどん片仮名ばかりで、分かっている人は分かっているけれども、分かっていない人は実は分かっていないというのは、余り臨床研究をする場合にはよくないのじゃないかと思います。
【福井座長】 山縣先生。
【山縣委員】 いろんな弱者を参加させるときの研究についてですが、これまでも倫理指針の中に、この審査というのは科学的観点と倫理的観点から審査すると書いてあって、当然この研究というのは科学的に妥当かどうかというのは、その同世代の子供たち、未来の子供たちにとって妥当かどうかということ、当然評価するわけですし、それを実施するに足りる研究者が構成員になっているかということも見るわけですから。そういう意味では、そのところをもう少し具体的に、例えば何か書いていくなり、もしもその以外の文言が必要であればだとは思いますが、とりあえず今の現行でもそういうふうに審査はされていると理解をしています。
それからもう1点、健康な子供かどうかということに関しては、一般的にはそれの方がむしろ分かりやすいのかなという気はします。といいますのも、現場にいますと、やはり病気の子供に対して行う検査、研究に対する何らかの本人に利益があるのではないかとか、それから本人、今、苦しんでいて、将来同じような病気の子供たちに利益があるのではないかという親の思いというのがあって、それで参加していただけるわけですが、健康なお子さんの場合には、なかなかどこまでそういうふうな想像がつくのかどうなのかということで、同じ、例えば採血とはいえ、最小限のリスクと言われているものに対しても、親の意識はかなり違うのだろうと思います。
そういうふうなことを含めて、救急医療なんかの研究のときに、ベストプラクティスをガイドラインでということも出ていますが、やはりこういう弱者、健康な子供を含む、そういった研究に対してのベストプラクティスといったようなものを考えていく必要があろうかと。
今、健康な子供たちと再三言っていますのは、子供の場合には発育・発達ということそのものが健康の予防に直結するものであって、そこをきちんと、これまで研究、なかなかできていない。これをやはりやっていかなければ、子供たちが健やかに育つ環境を構築することができないということで、改めて、今、例えば健康小児科学といったような言葉を言われる小児科の先生もいらっしゃるように、そのあたりのところが今、改めてクローズアップされているという意味からも、このあたりのところを倫理指針の中で、それなりにきちんと規定しておく必要があると思います。
以上です。
【福井座長】 渡邉委員、どうぞ。
【渡邉委員】 社会的な弱者の中に子供は確かに含まれるかもしれませんが、臨床研究の対象者として考えた場合、弱者と子供を少し区別して考えた方がいいのではないかと思います。いろいろな病気にかかる方には社会的弱者の人もいるし、そうでない人もいる。そういう中で弱者の方々を臨床試験に組み込むということと、子供の方を対象にした臨床試験で子供が被験者として参加することを倫理指針のなかで同列に論じるのは、少しなじまないような気がいたします。
後藤先生がリスクの判断が成熟していないので、本来臨床試験に子供を組み入れるべきではなく、子供の臨床試験はやはり例外的に取り扱うべきだとご発言がありました。しかし、子供しかない病気も存在する訳ですから、私自身はむしろ、臨床試験の中には、どうしても被験者として子供が必要な場合があるのだという事を明確にし、ただし、その場合は、子供に対しては特別な配慮を必要とするという姿勢を取るべきではないかと思います。【福井座長】 後藤委員、どうぞ。
【後藤委員】 おっしゃるとおりで、ほとんどの研究は子供しかない病気の対象に対する臨床研究だと思っています。だからこそ、結局ある意味子供の直接の利益ないしはその子ではなくても間接的には利益になる研究だと思うので、それは利益になるということが明らかに最初にされていれば、一応子供にとって必要なことはちゃんと研究をしていきましょうと。子供であるから研究の対象としなくて、子供に対する利益が将来にわたって阻害されるということはよくない。ただ、その本人にとってみれば、やっぱりそのリスクが大人になってから、こういうことをするべきじゃなかったというような後悔を生じさせるようなことだけは避けたいという趣旨で申し上げました。
あと、ついでなので、山縣委員がおっしゃったように、もちろん、今の指針でも未成年者の研究の必要があるかどうかって書いてあるのです。チェックする欄もありますし。ただ、多くの場合、この研究で本当に未成年者が要るのかどうかということが実際の個別の研究で明らかでない場合も往々にしてあるので、今の渡邉委員のおっしゃったような子供に関係する研究、子供で対象にしかできない研究の場合と、ちょっと16歳までやっておこうかみたいな感じのタイプの研究が事実上あるという前提の下で、やはり総論的な規定が必要だということを申し上げておきたいと思います。
【福井座長】 位田委員、どうぞ。
【位田委員】 私の言い方が若干誤解を与えたかもしれません。確かに現行の指針の中に子供の取扱いとか審査の問題とかっていうのは全くないわけではないのですけれども、やはり被験者の保護ということについての総則的なことを、一般の被験者とそれからやはり子供若しくは例えば認知症とかそういう代諾を必要とするような臨床研究や疫学研究の場合の場合と、やはりきちっと一番原則的なものを書いておいた方がいいという意味で申し上げました。
そういう意味では、後藤委員も恐らくそういう趣旨だと思うのですが、それを審査の段階におろしてしまうのではなくて、まず大原則があって、それを基にして審査をするのだという方向の方が私はいいのじゃないかと思っているのが一つ。
それから、渡邉委員がおっしゃった、弱者という言葉の理解が若干私と違うのかなと思うのです。要するに、大人に対して子供はやっぱり弱者なので、一般的にある意味では広い意味の弱者と考えれば、やはり子供は自分では意思判断ができない若しくは同意ができないという意味での弱者ではありますので、全体としては弱者の中に含まれます。けれども、子供の場合にはどうなのか、若しくはそれ以外の例えば認知症の御老人の場合にはどうなのか、といった場合分けがその次の段階では必要だと私は思っています。
ですから、あんまり私の申し上げたことと渡邉委員と山縣委員の申し上げたことは違わないと思います。規定の仕方を、私はまず原則的で傘になる部分を書いて、場合分けして、この場合にはこう、例えば健康の子供はこう、子供の臨床研究はこうという分け方をしていった方がいいのではないかという趣旨です。
【福井座長】 ありがとうございます。丸山委員、どうぞ。
【丸山委員】 位田先生の発言についてなのですが、弱者を研究対象者とすることの是非について、指針が欠けているということなのですが、インフォームド・コンセント関係では、先ほど、後藤委員も指摘されましたように、研究対象者からインフォームド・コンセントを受けることが困難な場合に、公衆衛生の向上のために特に必要がある場合であって、当該研究対象者について研究を実施することが必要不可欠な場合、そのことについて倫理委員会が納得した場合に限るということが書かれているのですが、あるいはこれはインフォームド・コンセントの場所に置かれているので、もっと広く研究の実施の可否のところにその旨を定める方がいいのか。そういうことであれば、弱者も今の同意を十分に与えることができない未成年者とか、あるいは今、発言されました認知症の方とかに限らず、海外でよく出てくる施設収容者あるいは囚人は今、受刑者というのですかね、そういうような人も弱者のカテゴリーとして考えるのか。あるいは今の先生が例に挙げられたのは、子供と認知症だけなので、もしそうであれば、翻ってインフォームド・コンセントのところに置いておいても良いのじゃないかと思うのですが、そのあたり弱者としてお考えになっているのが広く施設収容者なんかも含めてなのかあたり、教えていただければと思います。
【位田委員】 インフォームド・コンセントの項で扱うのか、もう少し総論の方で扱うのかというそこの位置づけの問題でもあるのですけれども、弱者という場合には、私は認知症と子供、未成年者というだけではなくて、むしろほかにもカテゴリーを作ることができるのであれば、要するに自己自身で意思決定がどこまで十分できるかということも含めて弱者ということを考えています。施設収容者なり受刑者なりというのも、必ずしも全ての場合とは思いませんけれども、そういうことが弱者に入る場合もあり得るだろうと。そこで、基本的にはまず被験者の保護という大きな枠があって、その中で弱者の保護というのもあるのですよということを全体の一番前に置いた方がいいのではないかというのが私の基本的な立場です。具体的な問題としては、もちろんインフォームド・コンセント若しくは今、議論になっているアセントというところで出てきますし、倫理審査で研究計画についてこれは必要である、これはこれこれこういう理由で例えば未成年者を含むことが必要であるという流れになる方がいいのではないかという趣旨です。
【福井座長】 川村委員、どうぞ。
【川村委員】 ちょっと別件。先ほど出てきた受益に関することですけれども、研究というのは基本的には受益が明確でないというか、ないと考えた方がよくて、分からないから調べるので、受益が最初からあるかどうかは分からない。ただ、付随的なサービスとか、例えばいろいろアンケートをとられるのだけれども検診にも参加できる、ただで参加できますとか、あるいは謝礼に図書券もらえますとか、そういう代償措置とか付録のサービスにおいて受益があることはあっても、研究本体は基本的には未知のことを解明するので、受益は未確定、若しくは前提としてはないと考えた方がいいということが一つ。
それから、先ほどから弱者という言葉がありますが、この用語はちょっと気をつけて使わないといけないのは、子供とか認知症の人ばかりではなくて、例えば医師・患者関係における患者さんとか、あるいは教員が学生を研究に巻き込むことが間々ありますが、そのときの成績評価権を持っている教員と成績を評価される側の学生というのは強弱の関係があるので、ちょっと限定的にというか用語を注意して使う必要があるかなと思いました。
以上です。
【福井座長】 宮田委員。
【宮田委員】 川村先生、教えていただきたいのですけれども、確かに研究というのは分からないことをやりますから受益がないというのも分からないわけではないのですけれども、私は科学者をいっぱい取材して問題だと思うのは、この研究がキュリオシティー・ドリブンで、自分がやりたい放題やることがいいと思っている先生が結構いらっしゃるのですけれども、人を対象にした研究において、こうした放埒な自由が認められるかどうかということをやはり皆さん、心の中に留め置いて議論をしないと。先生が言っていることは、文言上理解できるのですけれども、その背景を考えると、やっぱり人道的な目的というのが前提としてこの臨床研究とか疫学研究になきゃいけないと思うのです。それをわざわざ倫理として我々は今、議論するための指針を作っているので、そういう気のない言い方はやめていただきたいということです。
【川村委員】 誤解があるといけないのですけれども、その時点で受益があるかどうかはもちろん……。
【宮田委員】 いや、先生、それを明示しておかないといけない。
【川村委員】 もちろん、これによって将来の患者さんには役に立つことを期待してやるのですが、その対象者に直接の利益はないというのは研究者としては自明なことだと思っております。そもそもその研究をやる価値があるかどうかは、臨床とかあるいは社会の公衆衛生をやる方が必要性を感じた時点で、相手に対して受益をもたらしたいという動機で始めるのがほとんどだと思います。ですので、先ほどから受益がある場合、ない場合という前提条件があったので、多分それでは分けられないという意味で説明をいたしました。
【宮田委員】 確認させていただいただけですので。議事録をカット・アンド・ペーストする人もいると思うので、ちょっと蛇足ですけれども、お願いしました。
【福井座長】 ありがとうございました。田代委員。
【田代委員】 すいません、今の川村先生のお話、よく分かるところもあり、確かに通常の臨床研究では必ずしも「受益があるかないか」という区別はないのですが、子供のように同意能力がない場合に限って、少なくともヘルシンキ宣言もGCPもCIOMSも全部その規定を入れているのですね。そのことの是非はあると思いますが、少なくともそのときに「ある」「ない」という言い方ではなくて、プロスペクトなのですね、一応表現としては。「見込み」があるのかどうか、ということで区別をしていて、実際の臨床研究をやられている先生の中には、やはりそれは重く見られている方はいらっしゃるわけです。それを今回全部ひっくり返すという手もなくはないのですが、一応海外の状況と国際的な状況を見た場合には、この区別、特に個別の子供に対する利益というのが見込めるのか、見込めないのか、という区別でルールが全て作られていて、これをすべてひっくり返すかどうか、というのは非常に大きな論点だと思います。
先生がおっしゃる方向性も一つの一貫した立場で、研究というのは基本的に利益が未確定なのだから、全て個別の利益は存在しないものとして考えるというのも一つのスタンスだと思うのです。ただ、少なくとも現在の国際的なルールや各国のルールがそれに沿っては全く作られていないので、日本だけが独自の道を行くかどうか、という判断も必要になってくると思います。これは、本当にどういうふうに研究を位置付けるかという根本的な問題で、「受益はない」と言ってしまえば、ある意味すごくすっきりするのですね。ですけれども、やはり現実の問題として、特にお子さんを対象に、特に患児を対象に研究されている先生で、薬物動態試験なのか、それとも後期の臨床試験なのかということで、すごく気持ちは違うのだと思うのです。なので、そのあたりをどうするかというのは、非常に本質的な議論だと思うのですけれども、とりあえずここでの議論は受益の「見込み」があるかないか、という区別だということだけお伝えしておきます。
<都合により永水委員退席>
【福井座長】 だんだんこのテーマだけで1日また終わりそうになってしまって。山縣先生、お願いします。
【山縣委員】 要するに、3-1の資料に関してでよろしいのですか。ここで実は同意の問題については、5-2で述べられていますように、疫学研究と臨床研究の倫理指針、それからゲノムの指針で異なっているということをまず認識すべきであると。臨床と疫学、ゲノムは一緒なのですが、疫学研究の場合に、16歳以上であったら本人の同意能力があれば本人の同意でできると読める文体で、つまり、親の同意は不要であるというように読めるものだと思います。私はこれとても重要な点で、高校生以上になったら、例えば採血を伴わないような疫学研究のようなものは本人の同意で参加できるようにすべきではないかという考え方を持っておりまして、この辺のことについて今後、議論を進めていただきたいと思います。
以上です。
【福井座長】 中村先生、どうぞ。
【中村座長代理】 すいません、長くなって申し訳ないのですけれども。先ほど、山縣先生は16歳だと高校1年生だという話が出ました。そういう意味では、高校生になったらという意味では今の現行の16歳というのを15歳におろすというのが一つの手なのかと私自身は個人的に思っています。それは後藤委員がお作りいただきました資料でも遺言の能力とか、それから臓器提供意思表示というのが15歳になっていますので、その辺のところも参考にしてというのが一つの解決策かと思っています。
【福井座長】 中学3年生はどうなるかという話……。
【後藤委員】 だからそうなるのですね。多分法律というのは、中学校や高校へ行っていない子供も対象にするので年齢になっていて、ただ、実際に子供たちの認識もあとは研究者の認識も高校にお願いするとか中学生を対象にしたいというようにいったときに、疫学研究の場合はそうなると思うので。ただ、それは両方併記するというか、16歳原則として、あとは高校生、16歳若しくは高校生というような形にコホートみたいな形であれば、そういうような両論併記するということが可能だと思います。やっぱり16歳以上、高校生で余り侵襲性がないようなものについては、親の同意は要らないかとは私も思います。ただ、患児を対象としたような研究で、ある意味侵襲性が高いものについては、やっぱり医療行為という枠組みを外すことは若干できないと思いますので、親の同意というのも、私は両方同意があったっていいと思うので、両方同意をとっていくというようなことは研究者を守る意味でも必要かと思います。
【福井座長】 いずれにしても、年齢のところは幅を持たせた表現方法にならざるを得ないと思いますので、それはまた事務局と相談して案を出したいと思います。
次の項目に進みたいのですが、一言だけ私も座長の場を離れて、川村先生のバックアップをしたいと思ってます。人を対象にする研究といいますのは、何がいいか分からないからやるのであって、ただその時点の見込みに基づいてやるわけです。その見込みというのは、動物実験だとかたった1人の患者さんでの経験とか何か手掛かりがあってやるのであって、全然何の手掛かりもなくみましょうということはあり得ないわけです。
英語では必ず科学的妥当性を考えるときに、僕も日本語よくわからないのですが、equipoiseという言葉があって、両方、何しろどちらに傾くか、人については全くエビデンスがないというものについてしか臨床研究はやらないということになっているわけですので、その背後に基礎研究があるということだけちょっと頭に入れて、お願いしたいと思いますので。すいません。
それでは、検討事項の6……。
【丸山委員】 すいません、直近に山縣先生と中村先生が指摘されたところなのですが、疫学指針で16歳以上の者が同意能力を与えられるタイプの研究については本人同意だけでよいとされている規定について、前回の臨床指針の改定の際には臨床指針にもこの規定を入れてはどうかということでパブコメに出したんですが、結局頂いたコメントの幾つかが現場ではやっぱり未成年者については親権者の同意が求められているということで引っ込めたんですね。しかし、今の御意見だと本人同意だけでできるということについて肯定的な御意見ですので、この規定を臨床指針にも入れることの是非についても御検討いただければと思います。すいません、大変失礼しました。
【福井座長】 案としてまとめたところで御検討いただければと思います。子供の拒否権、先生のおっしゃる拒否権のことも最大限重視するということも踏まえて、委員の先生方の間で、このテーマについては大きな意見の違いはないのではないかと思います。後日また御検討いただければと思います。
【楠岡座長代理】 この話とちょっと別なのですが、先ほど最後、位田先生がおっしゃったアセントの言葉をどうするかですけれども、基本的にアセントを別の言葉にしても、その概念が普及しなければ結局同じことになってしまう。それから似たような日本語で置き換えると、かえって概念が混乱するということがあるので、アセントが本当に大事であればもうアセントのまま置いておいて、そのアセントの概念をいかに広めるかという方に努力すべきだと思いますので。それだけコメントとして。
【位田委員】 反論するわけではないのですが、じゃあ、そのアセントという言葉が日本の中ではっきりしているかという問題も実はあります。日本人にとってどういうふうな言葉を、いずれ説明をするときにはアセントというのはこんなものですよという説明をしないといけないので、そのときにどんな言葉を使うのか、という話になるのだろうと思いますよね。
【楠岡座長代理】 説明は必要ですし、それをどう表現するかは大事ですけれども、ただ単に言葉を置き換えて済むという話ではないと思いますので。
【位田委員】 もちろんそうだと思っております。
【福井座長】 少なくともアセントの定義、説明文は付けるということでお願いしたいと思います。
それでは、検討事項の6、倫理審査委員会の審査の質を担保する仕組みについて、事務局から説明をお願いいたします。
【高江課長補佐】 それでは、資料4-1、4-2で御説明させていただきます。時間も押しておりますので、簡潔に御説明させていただこうと思います。
検討すべき事項の6でございますが、四つ、論点、御用意させていただいてございまして、一つ目が倫理審査委員会における審査の質を担保するための方策でございます。
現状と課題でございますけれども、現行指針におきましては、研究計画の審査に加えまして、継続の適否等も行ってございますけれども、両指針におきまして、長い研究の実施状況の報告ですとか、指針に重大な不適合あった場合の対応等、書きぶりが異なってございます。
また、倫理審査委員会につきまして、指針におきまして、責務、委員構成、運営、審査、報告の手続を定めてございますが、判断基準ですとか着眼点は示しておりませんので審査の質にばらつきが生じているのではないかとの指摘がございます。
1枚おめくりいただきまして、現行指針では、様々な立場の委員によって公正かつ中立的な審査を行えるように、構成等につきまして細則で定めてございますが、特別な配慮が必要な者を対象とする研究を審査する場合に、特別な配慮に係る事項に関する有識者、専門家、先ほどの弱者の議論がございましたが、そういった事柄に精通した方を委員に加えるべきだとの意見もございます。
また、臨床研究倫理指針におきましては、委員の教育、研修に努めるという規定がございますが、疫学の方ではないという状況でございます。
検討のポイントでございますが、五つございまして、まず一つ目でございますが、まず、統合後の指針においての倫理審査委員会の役割、どのように考えるか。また、現行指針の倫理審査委員会の責務を見直す必要があるか。また、倫理審査委員会において審査すべき共通的な事項について示す必要があるか。また、次のページでございますけれども、細則において委員の構成、記載されてございますが、見直す項目はあるか。先ほどの特別な配慮が必要な者に関してのところとかがあるかと思います。また、倫理審査委員会の委員の教育、研修、訓練について、全ての倫理審査委員会に求めるかというところでございます。
これらを踏まえまして、見直しの方向性(案)、三つ、ビュレットがございますけれども、統合後の指針における倫理審査委員会の役割を整理した上で、判断基準・着眼点を分かりやすくするように審査すべき共通的な事項について示すこととしてはどうか。また、委員の構成でございますけれども、現行指針の細則の事項を基本とするものの、審査する研究の対象ですとか内容に応じて、必要に応じて有識者、専門家からの意見を聞く機会を設けることを検討してはどうか。また、統合後の指針におきましては、全ての倫理審査委員会に対しまして、より適切な審査に資するため、委員に必要な教育、研修、訓練を受けること。また、その倫理審査委員会の設置者は、そういった機会を確保するということを求めてはどうかとさせていただいてございます。
続きまして、1枚おめくりいただきまして、見開き右でございますけれども、6-2、倫理審査委員会の設置条件について見直す必要はないかという点でございます。
初めに、現状と課題でございますけれども、現行指針では、設置機関の範囲は示してございますが要件は示していない。また、指針間でこの設置機関の範囲の規定が異なってございます。
この資料、1枚おめくりいただきまして、上の方、小さくて恐縮です、ページ11と書いてございますが、こちらが現行指針でのそれぞれの倫理審査委員会の範囲でございますけれども、臨床研究倫理指針の方、この丸1から丸8に掲げる形で個別に書いてございまして、疫学の方に関しましては、もう少しまとめた形での記述となってございます。
お戻りいただきまして、10というところでございますが、現行の疫学の倫理指針では、倫理審査委員会は研究機関の長自らが設置するということを原則としてございますが、臨床研究の指針の方では原則とはしておりません。
また、臨床研究倫理指針に基づいて、約1,300の委員会が登録されてございますが、審査の質向上、効率化の観点からは、外部の倫理審査委員会の活用などを進めるべきではないかとの御意見もございます。
1枚おめくりいただきまして、下側の検討のポイント四つございますけれども、倫理審査委員会の設置機関としての設置要件を求めるべきか。また、その際どういうのが必要か。また、実施する研究の種類、リスクによって要件を変えることが必要ではないか。また、二つ目でございますが、倫理審査委員会を設置できる機関の範囲をどのように示すか。今、両指針違いますのでこれをどのように示すか。また、研究機関の長が自ら倫理審査委員会を設置することを原則とする必要があるかどうか。あと四つ目といたしまして、外部の倫理審査委員会を活用する場合、研究開始の前のみならず研究の継続の可否等も審査を行ってございますので、満たすべき要件を示す必要があるのではないかということでございます。
次のページ、見直しの方向性、二つ挙げてございます。倫理審査委員会を設置できる機関の具体的要件を明示することといたしまして、この要件を基に倫理審査委員会を設置することができる機関の範囲を示してはどうかと考えてございます。また、研究機関の長が自ら倫理審査委員会を設置するという原則を示すかわりに、倫理審査委員会の役割を踏まえた上で外部の倫理審査委員会において審査を行う場合に満たすべき要件等について規定してはどうかということを考えてございます。また1枚おめくりいただきまして、論点の三つ目でございますが、倫理審査委員会の審査について、迅速審査や付議不要の要件、また、外部の倫理審査委員会の付議が可能な要件について、より明確化すべきではないかということでございます。
現状と課題、二つ掲げてございますけれども、現行指針の細則で、こういった要件について、規定は置かせているのではございますが、現場では具体性が十分でないということもあるので、判断に迷うという御意見がございます。また、近年、多施設の共同研究が実施されることが増えてきておりますが、一つの研究計画でも参加する各施設全て倫理審査委員会を通すということがございますので、これは効率的ではないという御意見がございます。
次のページ、検討のポイントでございますけれども、迅速審査、付議不要、あと外部への付議というものについて、効果的、効率的に実施できるようにするためにどのように現行の規定を明確化すればよいかということでございまして、見直しの方向性といたしまして、迅速審査、付議不要、あと外部の倫理審査委員会の付議が可能な要件について、できる限り具体化し、統合された指針に規定するだけでなく、それら運用についてのガイダンスに示してはどうかということを考えてございます。
続きまして、また1枚おめくりいただきまして、最後の論点でございますが、倫理審査委員会に関する情報公開についてどう考えるかということでございます。
現状と課題、四つございまして、まず一つ目でございますが、現行指針では、両指針ともに倫理審査委員会の設置者に対しまして、倫理審査委員会の情報公開を義務付けておりますけれども、この更新の頻度などについては裁量に任されているというところでございます。また、臨床研究倫理指針にはこれに加えまして、年1回、厚労大臣への報告を求めてございまして、運用といたしましては、厚労省で運営しております倫理審査委員会報告システムに運営規則、委員名簿、会議記録を入れていただいて、それを公開しているという状況にございます。
次のページでございますが、このシステムでございますけれども、審査実施後に御報告いただくという形とってございますが、倫理審査委員会、設置した時点でできるものについては報告を公開すべきではないかという御意見もございます。また、疫学の指針では、倫理審査委員会、大臣報告を求めてございませんが、当該システムに報告されている倫理審査委員会で疫学研究、臨床研究どちらも行っている場合がございます。
検討のポイントでございますけれども、統合後の指針におきまして、情報公開を進めるという観点からも、現行の疫学指針に基づくものも含めて、全ての倫理審査委員会について国への報告を求める必要があるか。また、その報告のタイミングですけれども、設置した時点で行うべきかどうかということでございます。
最後のページでございますけれども、見直しの方向性といたしまして、倫理審査委員会の情報公開を進めるという観点から、全ての倫理審査委員会の設置者に対しまして、委員会の運営規則、委員名簿、会議の記録の概要の公表を引き続き求めるとともに、現行のシステムを活用することしてはどうかということでございます。また、全ての倫理審査委員会に設置から第1回目の開催までの間に、運営規則と委員名簿についてはこのシステムへの登録を求めてはどうかということでございます。また、登録内容の更新の頻度でございますが、少なくとも年1回、議事概要を含めて実施することを求めてはどうかということとさせていただいております。
こちら、資料4-1でございます。
この資料4-2というものがあるかと思います。題名が再生医療等安全確保法案になっておりますが、安全性確保法案で、正しくは「性」が入りますけれども。こちら参考までに御紹介でございますが、この資料4-2、一番最後のページを。一番最後、裏側になるのですけれども、こちら先月でございますけれども、再生医療等の安全性の確保等に関する法律案というものを国会に提出したところでございまして、この法案の内容を御説明する趣旨ではないのですけれども、法案の内容のところをごらんいただきますと、1番といたしまして、まず再生医療、リスクに応じて3分類します。この3分類した再生医療の提供の手続といたしまして、2番のところに、第1種、第2種、3種についてそれぞれ手続が定めてございます。
いろいろ倫理審査委員会のお話とかも出てくるのですが、この概要のところを1枚開いていただきまして、「リスクに応じた再生医療等の手続き」という、スライド番号でいうと7があろうかと思いますけれども、こちらが具体的に1、2、3と三つにリスクに分けた再生医療の提供の手続でございますが、左側がリスクが高いもの、右側が低いものでございますが、第1種、第2種のところをごらんいただきますと、医療機関が特定認定再生医療等委員会と書いてございますが、こちらは法律の中で再生医療の技術ですとか法律の専門家等、有識者からなる合議制の委員会で、一定の手続において厚労大臣の認定を受けるといったものを定義付けしてございます。
特に高度な審査能力、第三者性を有するものがこの特定認定再生医療等委員会というものがございまして、再生医療に関しまして、研究、あと自由診療でされているものに関しましては、今後、この法律がもし通りますれば、この特定認定再生医療等委員会というところに各実施機関は計画を出して、ここで審査が行われるという形で、今までこういった形での国の関与ですとか倫理審査委員会という形というのがなかったので、こういった検討がもう進んでいるということを議論の御参考までに御紹介ということでございます。
ちょっとはしょっての説明でございますが、以上でございます。
【福井座長】 ありがとうございます。ただいまの御説明につきまして、何か御質問等ございませんでしょうか。山縣委員、どうぞ。
【山縣委員】 この点に関しては非常に重要な点で、本当に倫理審査委員会の標準化と質の担保という仕組みというのは非常に重要だと思っておりますし、今お示しいただいた方向性というのは、私自身はこういうふうにしていくことが必要だと思っております。
ただ一方で、なかなかこういうふうにしてやっていくと、各倫理審査委員会の負担というのが非常に大きくなってきておりまして、それぞれの委員が本務とこれをやっていくというときに、もう少し人材がここで必要になってきたりする際の、例えば経費の支出といったようなものが、今、例えば科研や厚労科研においては間接経費の中で賄うというようなことは一応担保されていると思うのですが、恐らくもうそれでは足りなくなってきて、そういった研究費の直接経費の中にこういった倫理審査委員会を受けるための経費というものを組むことによって、これはあとは各倫理審査委員会が独自に決めることだとは思うのですが、例えばそれを有料化して、それで得たもので専任の事務なり担当者を置いて、こういったことを充実させるといったような仕組みを作っていかないと、なかなか絵に描いた餅になるのではないかと思っております。
以上です。
【福井座長】 丸山委員、どうぞ。
【丸山委員】 今の山縣委員の御指摘と同じ方向になると思うのですが、今の倫理委員会、事務局も委員もかなり負担が大きいということが言えます。委員の方は我々でありますから頑張ればいいのですが、事務局がやっぱりしっかりしていることが倫理委員会の運営に非常に重要と思うのですね。事務局のところに、よく分かっていらっしゃる方が1人でいいと思うのですが、いらっしゃると、非常にその倫理委員会の運営に一貫性があり、かつ研究者にも委員にも優しいといいますか、負担が軽減されるところが多いと思います。そういう方を確保するために今もおっしゃった財政的な手当てをする。間接経費があるじゃないかということなのですが、間接経費は指針が適用されない研究についても与えられ、指針が適用されない研究については、こういうことを考慮する必要がないので、指針が適用されるから間接経費から倫理審査委員会の運営経費をというのは難しいところがあるのじゃないかと思います。それで、この指針が適用される研究について、倫理委員会の承認を得るというのは不可欠なものでありますので、料金を取れたら、そして、人材確保の方に振り向けることができればというところ、ここで事務局の方で用意されているのは非常にもっともなのですが、これまでより一層更に負担が増えるという側面がありますので、是非御検討いただければと思います。
【福井座長】 方向性はよくて実現性をもうちょっと担保できるようなことということだと思いますが。楠岡委員、どうぞ。
【楠岡座長代理】 二つありまして、一つは今の経費の問題なのですが、治験においては、それは審査料として取っておられるところもありますので、経費的に賄われているところはあるわけです。けれども、それ以外の、ここで審査の対象になるような研究では、必ずしも研究費の裏付けがあるわけではなく、研究者の自発的なものとなりますと、審査料というのが研究者にとって大きな負担になってくる。お金の準備ができないと研究ができないということになってしまいますので、その辺を何か。例えばある一定のものであれば、公的な支援を受けた公的IRBみたいなものが受け付けてくれるというようなシステムを作らないと、研究そのものができなくなってしまうというような危険性もある。その点は倫理指針以外の問題点として、財政的なものも含めて必要になってくるのではないかと思います。
2点目は、情報公開に関してなのですけれども、現在は臨床研究の倫理審査、IRBに関しては登録制という形になっています。しかし、言うならば登録されればそのままになっていて、仮にそこが休眠状態に入っても何ら処置がなく、見かけ上は生きているのか死んでいるのか分からない状況がずっと続いている。審議がなされたりすれば当然更新がされるので、丹念に見れば、どういう状況があるかは分かるとは思うのですけれども、活動を停止した場合には届け出るとかが必要です。自然消滅したらなかなか届け出られないので、どこか第三者的にチェックして、これは活動していないと見るならば、取り消すというのではないですけれども、それが分かるような措置が必要でしょう。登録の上にもう一段階加えるようなことをしないと透明性が不十分になってしまわないかという点があるかと思います。
以上です。
【福井座長】 ありがとうございます。
ちょっとよろしいですか。6-1のところで、倫理審査委員会委員の教育のことが扱われておりますが、その具体的な取組につきまして、お2人の委員からコメントをいただきたいと思います。
最初に藤原委員から、例えばこういうことをされているといったコメントをいただけますか。
【藤原委員】 がん研究センターでは、どれにこうしたというわけではないです。我々、倫理審査委員会に就任される先生方には、事前に事務局の方が伺って、ヘルシンキ宣言とはこんなものですよとか、それからヒトゲノム指針とか疫学研究とか臨床研究倫理指針はこんなものですよとか。それから、有害事象の解釈をこういうふうにしますとか。さらに、臨床研究の審査の場合はエマニュエルの8原則といって、NIHのクリニカルセンターのエシックスの専門家だったエマニュエルさんが非常に包括的に研究の倫理性をチェックするために、こういうポイントを押さえて審査しなさいという原則を2000年にJAMAに出しているのですけれども、これを委員の方にお話しして、包括的に見て、この研究のどこが問題で、どこが評価できるかというところを見てくださいというようなお話を必ずしています。委員の研修という意味では、各委員、各医療機関については、そういう大局的に、どういうことが求められているかということをわかっていただく研修が私はいいのかなとは思いますけれども。
【福井座長】 ありがとうございます。もう一人、中村委員、お願いします。
【中村座長代理】 私は自治医科大学の疫学研究倫理指針の委員会の委員長をやっておりますが、うちの大学のシステムといたしまして、疫学研究だけではなくて臨床研究の一部も担当しております。これは歴史的な経緯があるのですけれども、附属病院の患者を対象としない臨床研究というのがございまして、それは疫学の私どもの委員会で引き受けるということになっています。私自身は特に委員の質の担保ということについて、OJT、オン・ザ・ジョブ・トレーニングでやってきたつもりでございます。大前提として、やはり人選からあるのだろうと思っておりまして、柔軟に物を考えられるけれども真面目であって、なおかついろんなことに興味を示してもらえる、そういった人を選んでいるつもりでございます。
実は審査の在り方というか、何をやるかというのはもう明確にしておりまして、とにかく国の指針にこの研究が合っているかどうかということだけを審査します。要するに、国の指針のレベル以下は駄目ですよと。でも以上のことは求めませんということで、そこだけを審査してくださいということで。就任するときに、とにかく国の指針は二つとも読んでねという話はしています。それから、就任が決まったら、就任前でもオブザーバーとして委員会に参加していただいています。
実はうちの進め方、申請が上がってきますと、まず、内部委員で担当者を1人決めまして、その委員が自分で審査をして、申請者といろいろやりとりをして問題点を解決していく。最終的にその担当委員がこれだったら自分は通していいよと認めたものが委員会に出てまいります。委員会ではやっぱりそれをまた審議をして、この辺、問題あるのじゃないのということなのですけれども、その事前審査を結構いいかげんにやっていると、委員会でぼこぼこにやられます。そういう意味で、1回ぼこぼこにやられると、次からそういうことにならないようにということできちんとした仕事が皆さんできるようになっていると私自身は思っていますし、そういう形でトレーニングしていくのかなと思っています。
先ほど来、委員の負担ということで、丸山先生、我々が頑張ればいいとおっしゃいましたけれども、私はちょっとそれには賛成しかねるところがございまして、非常に本当に負担になっております。私自身、実は今日、こういう発言するために1か月どれくらい倫理審査委員会のことに時間を使っているかなと考えたら、毎月、委員会があるのですけれども、その委員会の出席の時間、前があって、後ろがあってということで、大体1か月8時間じゃ済まないな、12時間ぐらいかなみたいな感じで。平均すると。ほかの委員はそこまでいかないにしても、かなり負担がかかっていて。なおかつ方向性にあるような教育、研修、訓練みたいなことまで負担として課すと、いよいよこれ、引き受け手がなくなるのじゃないかしらという懸念があります。そうすると、質を確保するという逆の方向に行く懸念もあります。そういう意味では、この辺のところは慎重に考えなければいけないのかと思っております。
私からは以上でございます。
【福井座長】 ありがとうございます。門脇委員、どうぞ。
【門脇委員】 倫理審査委員会の審査の質を担保するということを考える上で、今回、挙げられた現状や課題は極めて適切だと思うのですけれども、現実に1件1件の案件にこれをきちんと適用する場合に、例えば東京大学医学部の倫理審査委員会では、毎年、少なくとも数百件の案件を扱い、この10年間でそれがまた数倍ぐらいになっているという状況です。それに対して教員の使命感で、非常によくやっていただいているのですけれども、それにも限度があるという状況になってきています。科学性と倫理性をきちんと見ることでやっていますけれども、時間的な制約があると、質の低下ということが今後、起こってくるリスクがあるのではないかと見ています。
それを回避するために、医学部で助教を雇用して、倫理審査委員会の書類の事前チェックを行っているという状況です。専門的な知識を持った助教が事前チェック・事前相談整理されていますので、審査の質を何とか保つことができている状況です。
【福井座長】 今村委員、どうぞ。
【今村委員】 今、委員会の質の担保に事務局機能が非常に重要であるというお話が言われました。このために人を専任の人員を配置するということが非常に重要だということも今、言われましたので、こういうことを実現するためにはやはり財政的な措置というのがどうしても必要だろうと。ただ、門脇委員が言われた診療報酬上での対応というのは、ちょっとニュアンスが違うので、政策として、それを配置する費用をやっていただくというのが非常に大事じゃないかとはお聞きしました。
それから、委員の負担がすごく大きいというのは、本当にそうだろうと思いますけれども、例えば会議のやり方で、持ち回りとかこういうこともやっておられるのですかね、実際問題として現場の方では。全部集まってから……。
【楠岡座長代理】 それは認められていません。
【今村委員】 持ち回りというのはないわけですね。わかりました。
【福井座長】 先に祖父江委員、どうぞ。
【祖父江委員】 私、国がんから阪大に移って、二つの倫理審査委員会、経験しているのですけれども、阪大のいいところが電子申請システムになっていて、事務局の負担を軽減するということに関して、紙ベースでなく電子申請システムというのがあると非常に楽になると思います。なので、こういう標準化とかいうことを進める際に、ソフトを開発して提供するということが結構重要なのではないかと思いますけれども。
【福井座長】 楠岡先生。
【楠岡座長代理】 倫理委員会の負担がすごくなっているというお話はよく聞くのですが、いろいろお伺いすると、その機関には倫理審査委員会を一つしか置いていない。今の指針だと一つしか置けないみたいに読めるのですが、実際上は二つ以上置いて、それぞれが同じレベルの審査をすればいいわけです。そうしますと、1委員会当たりの仕事量は当然分散されるということになる。もし可能ならば、業務量に応じて二つ以上置いてもかまわないとか、その両者が同じレベルの審査ができるように、場合によっては専門別に分化させてもいいとか、何かそういうことをガイダンスに書き込まないと、いつも一つだけでそこにどんどん負担が集中するような形になってしまうのではないかということを危惧しています。
【福井座長】 門脇委員、どうぞ。
【門脇委員】 それから、東京大学の医学部では、倫理委員会の委員長は1人ですけれども、その下に二つの委員会を作って、運用するようになって、委員会の開催頻度も2倍にすることができました。それは、委員長は大変なのですけれども、委員一人一人の負担は増加させずに、そのことによって審査期間を非常に短縮することができて、今ではやはり一、二か月以内に全て審査できるというような形で運用されています。
【福井座長】 ありがとうございます。ごめんなさい。
【知野委員】 今、皆様から大変人手とお金の負担というのをお聞きした中で非常に心苦しいのですけれども、登録内容の更新は少なくとも年1回というのは、これは私なんか科学技術関係の取材をしていますけれども、とても少ないと思います。少なくとも委員の構成が変わったときには公開すべきではないかと思います。
なぜ申し上げるかと申しますと、これは医療関係の国のある組織で非常に公開が遅い。というのは、トップがおやめになられて、そのトップが交代されたことなどがもう新聞でもテレビでも報道されているにもかかわらず、それからかなりの日数がたったのにまだ昔のままのメンバーになっているということがホームページでありましたので。是非ともこれは倫理委員会ってとても大事ですから、信頼性という意味でも即メンバー、それから議事概要を公開していただくことが必要ではないかと思います。そして、そのために政策的な費用が必要であるというならば、それは御検討なされるべきではないかと思います。
それと、委員のメンバーの構成で、最近、内部関係者だけじゃなくて、一般の方もお入れになる。その一般の方が果たしてどういう方なのかというところがやはり説明がされていないというか、はっきりしていない。肩書とか組織に所属している人でなければ駄目だとかそういうことではなくて、どういう人だからこの人を入れたのかという理由があると思うのですね。例えば経営にすぐれた人でいろんな目を持っているとか、一般市民活動で実績がある方とか、やっぱり理由があると思いますので、単に誰のものとも分からない名前を出されるだけではなくて、そういうことも選ばれた理由も含めて公開していただきたいと思います。
以上です。
【福井座長】 位田委員、どうぞ。
【位田委員】 申し上げようと思っていたのは、IRBの経費の問題です。やはり研究者にその経費を負担させるというのは少し趣旨が違うと思うので、倫理審査委員会を置いている機関がその経費をきちっと予算上措置をするというのは、本来の形だと思うのですね。
そのときに、スライドの13、6-2の見直しの方向性で、設置することができる機関というより、むしろ設置すべき機関というのが本来の形じゃないかと思うのですね。設置すべき機関であれば、そこの倫理審査委員会については当然それを運営していく経費も予算上措置をしないといけないという方向性に本来はなるべきなので、何か現状では審査委員会がかなり研究機関にとって経費上お荷物になっていると考えられているような状況もあるように思います。
それから、今、いろいろお話しになっていた教育、研修の問題なのですが、幾つか問題があると思うのです。一つは、いいプロトコルが出てくると審査が非常にやりやすい。そういう意味では、審査の前のプロトコルを作る段階での支援というのが非常に必要ではないかと思います。東大の医科研で研究支援室だったでしょうか、そういう名前のものがあって、これは審査の支援だけではなくて、それより前にどういうふうにしてプロトコルを書くかとか、プロトコルを作るときにどういうことに気をつけないといけないか、倫理的な問題も含めて。そこをきちっとやっていただくと、恐らく審査委員会にプロトコルが出てきたときに、委員も分かりやすいと思います。その辺の審査前の支援というのが一つ必要です。それから実際に審査に出てきたときには、やはり事務局の方の支援体制です。どなたか専門家がおられると、やはりいろんな形でスクリーニングをやりやすいでしょうし、例えば迅速審査でいいようなプロトコルも、これは迅速審査でいい、これはきちっと会合して審査をするというような仕分もできるので、かなり事務的に効率化ができるかと思います。
それからもう1点、教育、研修、訓練の内容なのですが、先ほど、藤原委員がおっしゃったように、審査委員会というのはこういうことをやるのですよというのは、当然審査員になっていただくときには必要だと思いますし、そのこと自体、非常に重要なのですけれども、問題は実際に審査をやっているときに、例えばES細胞なんかのときに、かなり審査に時間がかかるという問題がございまして、なぜ時間がかかるのかというと、一体ES細胞とは何かということを実は倫理審査委員会の中で勉強会のような形を開かれていて、倫理審査委員会は、例えば1か月に1回とか2か月に1回なので、その勉強会が終わらないと実際の審査に入っていけないということになる。すると、何を審査しないといけないかということと同時に、実際に審査の対象になるような研究が非常に新しい研究である場合、そうすると、これがどういう研究内容というか科学技術の進展によって、こういう新しい問題が出てきたのかということも恐らく教育、研修の内容にしないといけないのではないかと思います。委員になるときの教育、研修と、それからなってから後の教育、研修というのはやはり2段階で考える必要があるかなと思います。
【福井座長】 新保委員、どうぞ。
【新保委員】 倫理審査でものすごいリソースをかけなくてはいけない。それぞれの先生方に非常な負担がかかってしまうということで、一つ大切な視点は、効率的に運用するという視点が大切かなという気がしています。そういう点で、6-3で挙げていただいたような迅速審査や付議不要の活用であるとかそういうのがよりしやすくなるような見方が必要かと思いますし、場合によると効率的に運用するというような文言が指針の中に入っていてもいいのかという気もしています。
【福井座長】 宮田委員、どうぞ。
【宮田委員】 まず、皆さん、今、議論していることを整理しなければいけない。指針に関わることと指針以外に関わることを整理してください。前々回にも申し上げましたけれども、よい臨床研究とか疫学研究が我が国で実現するためには、この指針だけでは不足なので、この指針を発表するときには、そのインフラに関わる点に関して一言申し述べるようなペーパーを付議すべきだ。予算が足りないとかそういうことはそこに全部、皆さんの愚痴を盛り込みたい。
きょう、指針のことを考えますと、普通、企業から言わせるとスケールメリットってあるのですよ。だから、申請が増えればもうかってしようがないみたいな仕組みになぜ皆さんがならないのかということを考えると、幾つか重大な欠点がありますね。一つは経営がない。要するに、今、各ところで努力するように、実はこの指針、曖昧に作ってあって、ある幅で裁量権というのが認められているはずなのに、多くの研究者は国から言われることを棚ぼたのように待っている。裁量権があるのだから、どんどん自分たちでやってほしい。そうじゃないと先進的な研究なんか進むわけがない。そこをまずどこかに精神として、この指針の中に入れるべきだと私は思います。
それからもう一つ、それじゃあ、スケールメリット、ビールと比べたら申し訳ないのですけれども、ビール、ある固定費を超えるとあとは利益だけになります。これは製造業の仕組みなのですけれども、知識を生産しているようなメディアとかそういうような仕組みでどうやってスケールメリットを出すかといったら、それはデータベースを作ったり、データを共有したりすることをいかにやるかということなのです。
先ほど、東大は二つ、A、Bの倫理委員会をつくっている、阪大は電子申請をやっている、すばらしいことじゃないですか。それがなぜ国内で共有されていないのか。それによって合理化がまだ進んでないのか。それは指針の中に、皆さん、この指針のとおりやればいいのだよという精神的に堕落したようなガイダンスとしての存在を待ち受けているような研究者を作っちゃったからだと私は思っているので、もっと裁量権があるので是非やってほしい。そのかわりに情報はきちっと共有して、みんなでいいものに関しては取り上げて、それを国で共有していく仕組みにしましょうというようなことをもっと考えていただきたいと考えています。
したがって、ここに年1回でいいなんて書くこと自体が倫理的な堕落だと私は思っていまして、できれば倫理委員会で決定した1週間後ぐらいに情報は公開することを定めていただければ、各医療機関は苦しくなって何とかしてくれって言うに決まっていますので、そのときに電子申請システムなどを構築するという動きになると思うので、いきなり指針の中で甘やかす必要はないだろうと思っています。
それから教育に関しては、倫理委員会の先生だけの問題なのですか。先ほど位田先生がおっしゃっていましたけれども、申請をする研究者そのものが倫理委員会にかけるようなプロトコルをどう構成するか。あるいはそもそも倫理委員会にこれをかけなきゃいけないのか。慶応でそういうような事例がありましたけれども、そういう認識を持たせるような教育を作る必要がないのですか。ここにおいて、倫理委員会だけの教育というところに矮小化させてはいけないと思います。ですから、この臨床研究あるいは疫学研究、統合されて何というか分かりませんけれども、その研究に関して人を対象に研究してやる場合には必要な事項に関して、研究者に対して、機関は教育すべきであるということを是非明示していただきたいと思います。
それからあと二つあります。一つは大学の人事は流動化していますよね。ですから、先ほど、筑波大学の立派な倫理委員長がある日、東大に移ったらどうなるかとかいろいろなことを考えると、倫理委員会の仕組みそのもののデータの継承ということをもう少しきちっとこの中に盛り込まないと、常に何か積み木崩しみたいなことをやらざるを得なくなってくるだろう。あるいはいい人が来なければいけないという漠然とした期待になっちゃいますね。企業からすると、人なんて代わっても業務は動いていかなければいけないので、そういうようなことをもう少し御配慮いただきたいと思います。
最後に、これはあんまり言いたくなかったことですけれども、コンフリクト・オブ・インタレスト。今後、産学連携研究は必ず起こります。むしろ、国策としてそれをやろうということになっておりますので、今回の倫理指針の中には是非COIの規定をどこかに入れていただきたい。ですから、倫理委員会でCOIに関しても、どこかできちっと議論すべきみたいな規定を入れていただきたいと思います。それが多分後顧の憂いを少なくすることだと思っています。
以上です。
【福井座長】 ありがとうございました。跡見委員。
【跡見委員】 今の最後のCOIに関しては重要な問題で、ですけれども、結局利益相反と倫理委員会というのは全く別個の独立したものとしてきちんと存在するというのが今の規定ですので、それは倫理委員会でどう盛り込むかは別として、きちんと別個の独立したものとしてある……。
【宮田委員】 わかります。ただ、それは確認すべきことだと思いますね。
【跡見委員】 それと、それからもう一つおっしゃった、私、研究を始めたころに倫理委員会に提出するのは、要するに倫理委員会というのは出されたプロトコルをきちんと検討するのだと習ったんですね。だから、多分しっかりとしたプロトコルが書かれていれば、一々集まって読んで議論をしたりするというのはほとんど必要ないと習いました。だから、きちんとしたプロトコルを書かせること、書いていただくこと、その教育が極めて重要だと考えます。
それからもう一つ、さっきから出ているように、これは最初にも申し上げましたけれども、倫理委員会というのは、審査することと申請をするものが同じ指針で考えていくということがやはりどうしても難しいのじゃないか。倫理審査というのが審査委員会がしっかりしてさえすれば、いろんな問題というのは本当は片付くはずなのですね。だから、倫理審査委員会をもっと一番最初に出すか、別に出すか別として、極めて大きくそこで取り上げていただきたいと考えます。
【福井座長】 門脇委員、どうぞ。
【門脇委員】 先ほど、あらかじめ申請について、専門知識を持った助教が論点を整理するという話をしましたけれども、その後あったそもそも研究計画の申請の段階からそれをサポートするということを東大病院でも行っています。それは倫理委員会の負担を大きく軽減して質を上げるいい方法だと思います。
それから、倫理委員会の委員の、教育の問題が議論されていますが、根本的には、その医療機関の臨床研究あるいは疫学研究に関わる研究者の教育の問題がベースとして非常に重要で、これは仕組みとして今ではどこでも行われていると思いますけれども、東大病院でも定期的に、臨床研究や疫学研究に従事する資格として、ある一定のボリュームの教育を定期的に受けていなければ、臨床研究あるいは疫学研究に参加することができないと厳格に運用されています。
【福井座長】 それは前回の指針の見直しで組み込まれて、全国的に恐らくそうなっていると思います。
【門脇委員】 そうですね。
【福井座長】 後藤委員、どうぞ。
【後藤委員】 私も東大の倫理委員会の委員もさせていただいて、うちの大学でもやっているのですけれども、多分この10年ぐらい倫理委員会の委員をやっていて気付くことは、かなりいろいろな形で申請者の質も上がっているし、あとは倫理委員会の委員の質も上がっているのじゃないかと思います。ただ、東大とかそういうところ、千葉大かどうかは別として、そういうところとあと例えば1,300のところと同じふうに考えるということが多分できないことが問題で、グッドプラクティスをやっているところの情報を共有すると。東大では例えば先ほども門脇委員からもお話ありましたけれども、一応これをミニマムスタンダードで、あとは自由度がかなりあるので、自由にこの委員会で決めればいいというような言い方をかなりその審査の中でやっています。なので、問題があるとすれば、グッドプラクティスになるようなところと、あとはそうではないところをどうやって底上げしていくのかというところで、そういう意味では、ある程度今の方向性、資料4-1にある方向性でいいのではないかと思います。
あと、最近あるということで、多施設研究の場合、あれは私はもちろん効率化ということに反するかもしれませんが、多施設研究を審査をやるということによって、ほかの大学でどういうことを審査しているのかというのがかいま見えるときもあるので、そういう意味ではグッドプラクティスを多施設研究の倫理審査を通じて共有できるというメリットも私はあるのではないかと思います。
【福井座長】 ありがとうございます。丸山委員、どうぞ。
【丸山委員】 すいません。テクニカルなところばかり発言しているのですが、先ほど、位田先生がおっしゃった倫理審査委員会を設置できる機関ところ、4-1の資料の14ページのところなのですが、設置すべきじゃないかと指摘なさったんですけれども、最近の指針、それからGCPについては省令なのですが、GCPの平成18年か19年の改正で、治験を行う機関に、GCPですから治験審査委員会を設置することが求められなくなったのですね。その後、改正された臨床研究倫理指針においても、機関の長は倫理審査委員会を設置しなければならないという規定ではなくて、いろんなところが設置する倫理審査委員会の審査を求めることという義務付けになりました。それ以前の歴史のあるゲノムの指針とか疫学指針は、研究機関の長は倫理審査委員会を設置することを原則として、ただし例外として、ほかのところに審査を委ねることもできるとされているので、この在り方について検討することが必要じゃないかと思います。
最近のGCPの改正以降の雰囲気だと、特に研究機関の側で倫理審査委員会を設置することは義務付けられていないのじゃないかと私、感じておりましたもので、先ほどの先生の御発言を聞いて、どちらなのかというところありましたので、今後、検討いただければと思います。
【福井座長】 渡邉委員、どうぞ。
【渡邉委員】 GCPに関しては治験が主な対象となり、後期相の試験の場合には多くが多施設共同試験です。その場合には、同じ内容のプロトコル、同意説明文書を幾つもの医療機関で、それぞれの倫理委員会がそれぞれに審査するということに比べて、中央IRBといったような形で一つの倫理審査委員会が質高く審査すれば、リソースの面でも効率的であり、もちろん審査にばらつきもありません。また治験が実施されるのはクリニックの場合もありますので、「治験のあり方に関する検討会」の議論などを踏まえ、実施医療機関ごとの治験審査委員会の設置義務が除かれ、実施医療機関の長の判断により、実施医療機関の内外問わずに治験審査委員会を選択することが可能となりました。先ほどの門脇先生のお話にもありましたとおり、臨床研究の場合は非常に数が多くて、治験での制度とはまた少し違うと考えております。
【福井座長】 位田委員、どうぞ。
【位田委員】 基本的には制度をどう作るかという話なので、我が国が今のIRB制度を基本的に維持していく限りは、作っても作らなくてもいいという制度だと、結局は臨床研究がどこが責任を持って審査をするかということが曖昧になってしまいます。
私自身は、先ほどの再生医療等安全性確保法案の特定認定再生医療等委員会、これは基本的に地域倫理審査委員会ということを考えているわけですが、そういう形の地域審査委員会がまとめていろんなところからの研究経過が出てくるのを審査するという方がいいのじゃないかと思っています。ただし、今すぐにそういうことができるわけではないので、もしIRB制度を作るのであれば、丸山委員がおっしゃったことと渡邉委員がおっしゃったことを、どちらかというとそれを折衷するような形になりますけれども、やはり基本的に臨床研究が多いところについては倫理審査委員会は置かなければいけないという制度を作って、しかし、小規模の研究機関とか病院なんかの場合には例外的にほかの機関に審査を委ねるという形が実効的かなと思います。できる、できないという話ではないのじゃないかと思って申し上げました。
【福井座長】 丸山委員、どうぞ。
【丸山委員】 今の渡邉委員の御発言についてだけなのですが、GCPの改正の背景としてそういう事情があったということは、今、指摘されてよくわかったんですが、それを受けて臨床研究倫理指針がGCPと同じような規定を置いたというところがありますので、それを事実として指摘させていただきたいと思います。以上です。
【福井座長】 楠岡委員、どうぞ。
【楠岡座長代理】 今、臨床研究だけでも1,000近くのの委員会があって、年に1回、申請があるかどうかというところでは多分質を保つのが非常に難しい。一方、東大などのように非常に忙しいところもあるので、ある一定の量が常にあるところはそのままやっていただくけれども、基準に達しないようなところは取りまとめて、地域になるのか、あるいは基幹になるどこかの研究機関が引き受けるかという形で、少し集約化していかないと質という点では保つのがなかなか難しいのではないかと思います。
【福井座長】 ありがとうございます。参考にさせていただいて、また進めたいと思います。
【中村座長代理】 ちょっといいですか。
【福井座長】 どうぞ。
【中村座長代理】 私の説明が悪くて、うちの自治医科大学の倫理審査委員会があんまり合理的な方法をとってないから負担が多いのじゃないかと誤解を与えたとすれば、やっぱり言い訳しておかなきゃなと思っております。迅速審査はどんどん使っております。それから事務局からの話にあった付議不要についても、実際出てきた案件について、これは国の疫学の指針にも臨床の指針にも該当しないというのは、委員長の名前で、該当しないから審査しませんということで返しています。ただ、どうしても審査が必要であるということであれば、その理由を具体的に書いて、再申請してくださいということで返しておりますけれども、今まで再申請、出てきた件数は全くございません。
それから、臨床研究につきましては、先ほど、私のところでもやっていますということですけれども、プラス二つ、臨床研究の委員会がございまして、それは薬を使うか使わないかということで分けていて、薬を使う方は臨床薬学の講座の先生なんかが入ってやっております。そういうことで比較的効率的にやっても負担が多いということだと思っております。
ただ、祖父江先生から御指摘のあった電子申請についてはまだ導入しておりません。これについては、私自身の致命的な欠陥なのですけれども、きちんと物を読むときには紙でないと駄目だと。ディスプレーの上ではぱらぱら見ができないし、これで計画の審査とか、あるいは人の論文の評価というのは幾ら何でもできないなということで、もしやったとしたら、いずれしても打ち出し作らなきゃいけないけれども、それは事務局で作るのですか、それとも私の負担で作るのですかという話になって、ほかの委員長が集まってそういうことも議論したんですけれども、それはそうだよねという話になって、今のところ検討中ということでとどまっているような状況でございます。そういうことで、かなり合理的に進めているつもりですが、それでも負担が多いというところは御理解いただければと思います。どうもありがとうございました。
【福井座長】 ありがとうございます。
それでは、検討事項の7、研究の質について。移りたいと思います。事務局から説明をお願いいたします。
【高江課長補佐】 それでは、右肩、資料5とございます、7、研究の質について、簡潔に御説明いたします。論点二つございます。まず7-1でございますが、研究成果の科学的な信頼性の保証、あと社会からの信頼を確保するための新たな規定を設けるべきかということでございます。
現状と課題が四つございますけれども、まず、現行指針に関しましては、研究成果の信頼性の保証、不正行為への対応、利益相反の管理等について、直接は言及しておりません。治験は研究成果に基づきまして、薬事法上の承認審査を行うものでございますので、モニタリング、監査等、データの質の担保の規定はございますが、それ以外の臨床研究では、そこらについては研究者の判断という形になってございます。
ページおめくりいただきまして、国や学会等において、研究上の不正行為の対応ですとか、あと利益相反の管理に関するガイドラインにつきまして、この指針とは別途定められているという状況です。また、個別の研究ごとにモニタリングとか監査を求めても、十分な研究資金とか体制で実施できる研究は限られていると考えられる。
検討のポイントでございますけれども、研究の質の担保、あと利益相反の管理等につきまして、人を対象とする研究であり、研究成果のもたらす社会的影響を考慮して、指針でどのように取り扱うべきか。また、統合後の指針において、研究機関にモニタリングや監査を求める必要があるかということでございます。
見直しの方向性でございますが、統合後の指針において、研究不正、あと利益相反の管理に関して、国や学会等により別途定められているガイドラインも踏まえ、研究の質の担保や利益相反の管理を適切に実施するということを、これは研究者とか研究機関の長に求めてはどうかということを考えております。また、現行の公開データベースの仕組みを活用いたしまして、研究責任者に研究計画の登録・公開を求めている研究について、研究の進捗状況を適宜更新することを求めてはどうか。また、研究機関の長に対しまして、当該研究機関で実施する研究の研究成果の信頼性を確保するために適切に研究が実施されていることを自主的に確認することを求めてはどうかということを考えております。
1枚おめくりいただきまして、二つ目の論点でございます。前の論点でもいろいろ御議論ございましたが、研究者等への教育、研修、訓練というものをどのようにあるべきかということでございます。
現状と課題でございますけれども、現行の臨床研究倫理指針におきまして、研究者等に対しまして、臨床研究の実施に先立ち臨床研究に関する倫理、その他臨床研究の実施に必要な知識について、講習、その他必要な教育を受けることを求めております。また、臨床研究機関の長に対しましては、このような教育の機会の確保を求めております。疫学研究の指針につきまして、学生等に疫学研究の指導を行う者に対して、研究者が遵守すべき基本原則を遵守の上実施するように指導、監督をしなければならないという規定がございます。
検討のポイントでございますけれども、研究者等の教育、研修、訓練に係る事項は、統合後の指針においては、研究の内容にかかわらず、一律に求める必要があるかということでございます。
見直しの方向性ですが、現行指針の規定を基本に、統合後の指針において、研究者等の責務として研究の実施に必要な教育、研修又は訓練を受けること、及び研究機関の長の責務として研究者等の教育、研修又は訓練の機会及びそれらの実効性を確保することを一律に求めてはどうかと考えてございます。
事務局からは以上です。
【福井座長】 ありがとうございます。先ほどの議論ともオーバーラップするところはございますが、何か御意見ございますでしょうか。楠岡委員、どうぞ。
【楠岡座長代理】 研究者の教育、研修に関しましては、先ほど、東大の事例もありましたけれども、今かなりそれぞれやられていると思います。ただ、レベルが多少まちまちのこともあるので、レベルに関してある程度基準を示せばいいのではないかと思います。問題は質そのものの保証として、モニタリング、監査を行うかどうかということであります。もちろん、するにこしたことはないわけですけれども、それに関して、かなり人手、費用が掛かるので、かといって、どういう研究ならばしなければいけない、どういう研究だったらしなくてもいいということを示すのも難しいので、そのあたりをどういう表現にするかということは非常に難しい。
今の臨床研究・治験活性化5か年計画2012の策定のときにも、このことは非常に大きな議論になったんですが、現状において全ての臨床研究にモニタリング、監査を求めるのはやっぱり無理であろうということで、そこはある程度努力規定みたいなことになったわけでありますけれども、その辺のことをもう一度考える必要はあるかと思います。
ただ、医療機関の長にそれを全部求めてしまうというのはすごく医療機関の長に対する負担が大きいので、義務化は避けていただきたい。
【福井座長】 ほかにはいかがでしょうか。藤原委員、どうぞ。
【藤原委員】 まずCOI。先ほど、宮田委員がおっしゃっていましたけれども、COI、既に臨床研究倫理指針でも書き込まれていますし、新たにCOIの記載を加えるということはそんなに必要ないことかなと思いますけれども、重視すべきであることの事実は確かです。
先ほど、楠岡委員がおっしゃったように、モニタリングとか監査のところというのは、経費が非常に掛かる。前向きの介入を伴う臨床研究、臨床試験といいますけれども、EUで臨床試験に対してICH-GCPを求めた2000年の法令の導入のときに、試験経費が3倍に上がっているのです。この3倍になった経費をどう面倒をみるのかというのは、今でも議論が続いているところです。
それから前回の臨床研究倫理指針の改定のときの会議でも、今日と同じような議論がされました。教育をするための人を付けなさいとか予算を付けなさいとか、局長通知までわざわざ付けているのですけれども、この5年間、ほとんど何も変わってないです。ですから、議論するのはいいのですけれども、実際にどういうふうに今後変えていくかということを事務局方の方々に、次の5年の間に何とかしてほしいということを願います。
その観点からすると、位田先生がさっきおっしゃっていた1,300も倫理審査委員会、要るのかと。世界の動向としては、こんなに多くの倫理委員会を持つことを尊重している国は日本だけであって、例えば私が以前、本委員会で報告した訪問調査では、フランスとかイギリスなんかは、既に倫理審査委員会の集約化をしているわけですし、二十幾つとか。それは前向きの介入を伴う臨床研究っていう非常にリスクの高い分野に限ってはいますけれども。集約化というところに全体の方向性を持っていかないと、リソースの無駄遣いは明らかだと思います。それからアメリカはあんまり参考にならなくて、最近アメリカなんかは倫理審査委員会も商業化の対象になっていて、お金を出して審査してもらうという事例も多くなってきているわけですから、モデルにするのはなかなか難しいと思うので。やっぱりヨーロッパのように文化的に成熟した社会に合わせ、倫理審査委員会の数を絞ってやっていくというところを今回、方向付けをしておいて、次の5年までの間にそれに向けて制度設計をするという方が実行可能性が高いように思いますけれども。
【福井座長】 ありがとうございます。位田委員、どうぞ。
【位田委員】 私も今の藤原委員の御意向に大賛成なのですが、そのときにやっぱり国に覚悟していただかないといけないのは、地域的な倫理審査委員会を置くと、当然国が全部その経費は見るということでやらないと、それをまた申請する側の研究者に負担をかけると、アブ蜂取らずになってしまいます。現状でもそうですけれども、やはり国がこの倫理審査に対して、どの程度の経費負担なり、財政負担なりをするかということもきちっと考えて、将来的に私も地域倫理審査委員会の方がいいと思いますし、そういう方向に国が持っていっていただくと。そのためには国の経費、財政的な負担はかなり大きくなりますけれども、その辺はやはり十分考えておかないといけないと思います。
【福井座長】 山縣委員、どうぞ。
【山縣委員】 今、藤原委員が言われたこと、私も非常に大切な点だと思います。ただ、もう一方でこの指針が人を対象とする研究全てを対象にしている際に、年間どれぐらいの数が世の中で研究が始まっているかということを考えると、ある程度、先ほどのヨーロッパのように、どういうレベルの研究に関してはそういう集約化したところでやり、そのほかのところはやはりそれぞれのところで迅速も含めてやっていくという枠組みがない限り、なかなかそれこそ実行可能性として難しくなってくるのではないかと思います。
【福井座長】 どうぞ。
【磯部委員】 磯部でございます。私もそこで実際に我が国でどのぐらいの研究の数があるのか、1,300は委員会の数なわけで。リソースをできるだけ効率的に使うべきであるとか、リスクに応じた密度の濃い審査と、そうでなくてよいのとといったことを効率的に考えるべきだという方向性は私も共有はするのですけれども、実際どのぐらい数がやられているのだろうか。あるいはここで研究の質ということを、例えばヘルシンキとかのような自律的な規範の中で何か書くということと国がそれを言うということは、やはり性質が異なるのであって、場合によっては研究の質の低いものはしない方がいいといって、研究の数を削減することに何かつながりかねないことになると、それはそれでやや危険な気もするので、どういう意味で研究の質を論じるのかということは少し慎重に考えた方がいいのかという気がいたしました。それは明確な不正な研究ということはもちろん排した方がいいでしょうし、そのためにできる間接的な支援ということをどういうふうにしていくのか。そういう視点でここで論じているのだろうという認識でおります。その意味で見直しの方向性というのは理解はできるのですけれども、慎重な議論が必要かということを一言申し上げたかった。
【福井座長】 渡邉委員、どうぞ。
【渡邉委員】 7-2についてもよろしいでしょうか。研究者等への教育・研修又は訓練はどのようにあるべきか、という点に関してですが、各医療機関が教育の機会をそれぞれに設けることも重要ですが、現在、国が、厚労科研費等を通じてEラーニングのシステムにかなり助成を行い、臨床研究に関してすぐれたEラーニングシステムができつつあると思います。教育の標準化とか、質の標準化や担保ということを考えると、既存のこのようなすぐれたシステムをうまく活用していく枠組みを作っていくのも重要ではないかと思います。
【福井座長】 ありがとうございます。
【楠岡座長代理】 先ほどの質の担保、モニタリング、監査の問題ですけれども、先ほど、藤原委員から話がありましたように、ある一定のレベルのものに関してはきっちり行う。といいますのは、結局参加していただいた被験者の方のリスク、負担を考えるときに、診療データをそのまま使う観察研究などの場合は、患者さんにはそんなに大きな迷惑をお掛けしているわけではない。仮にその研究に問題があって失敗したとしたって、余り大きな迷惑は掛けないだろう。しかし、前向きの介入研究の場合は、いろんなお薬飲んでいただいたりという負担をしていただき、またいろんな検査も余分に受けていただくという負担をしていただいたのに、結果的に信頼性が乏しくて、その結果が物にならないということになってしまえば、協力した方にすごく大きな迷惑というか、協力が無駄になってしまう。ある意味被験者保護といいますか、どれぐらい被験者に負担をかけているかということも質のレベル付けの1つの基準になるのではないかと思うので、その辺も入れたらいいのではないかと。
【福井座長】 山縣委員、どうぞ。
【山縣委員】 一言だけです。現状で受託研究と研究補助金、科研のような研究補助金とある。受託研究の場合には、例えばそれのファンドエージェンシー側がプロジェクトに対して別個にちゃんと倫理委員会を作ってやっているということも今現状ではあるということは認識しながら、その研究の出どころによって倫理委員会の在り方みたいなものは、現状でも実際に変わっている。もちろんそこに参加する各研究機関がそこでも審査をするという枠組みがこれまで大きなプロジェクトではなされているということは一応認識しながら、そういう枠組みをどう考えるかということも含めて検討が必要だと思います。
【福井座長】 宮田委員、どうぞ。
【宮田委員】 研究の質の担保というのは、実は相当重要だと思っていますが、それを誰がやるかという議論はまた別のことだと思っています。できればピアレビューというのが科学研究の原則ですので、それが機能することを期待したいのですけれども、今、残念ながらそれがあんまり機能していない。産学連携で皆さんの論文を再追試しようとすると、企業が大体追試できるのは2割とか3割というとんでもない、今、状況が起こり始めていたので、そういう意味では、これもまたこの指針で議論すべきところじゃないと思うのですけれども、やはり全般的に研究の質をどう上げるかというのは国家的な課題であると実は思っています。ですから、ここの指針を手直しして、そんなに簡単に解決できると実は思ってないので。ここでは研究、どちらかというと重要だという指摘が重要なんじゃないかというのと、もう一つ、質を担保したり、COIを担保するためにいろんなガイドラインがあるので、それをどこか集約して、確認はしなきゃいけないということはやっぱりここでは書いておいた方がいいだろうと思っています。
それからもう一つ重要なのは、残念ながら私も今、臨床研究が日本で何件行われているのか、それが増えているのか減っているのか分からない。しかも、多分厚労省も分からない、文科省も分からないという状況がまず間違っているのですね。そうすると、僕らは一生懸命やっているという印象評価になってしまうので、ここも指針の問題じゃないですか。指針の付議として、是非、今、臨床研究というのは何件日本で行われていて、現場はどういうような問題があるのかというのを厚生科学研究費か科研費で調査してほしい。そういう調査レポートに基づいて、我々がもっとモデルを作って、これ以上いくと各機関の倫理委員会では無理だねと。そうすると、今度は主語が変わりますので、各施設の長の責任じゃなくて、ひょっとしたら地域の自治体の長の責任になるか、国の責任になるか、厚労大臣の責任になるか分かりませんけれども、主語が変わってきちゃうので、大きな倫理委員会の組織の議論をしなければいけないと思いますので、今の段階ではそれは無理だと私も判断しています。むしろ次の改正のときまでには、そういった調査レポートは必ず出るというような体制を整えた上で、みんなで頭を集めていい議論をしたいと思っています。
ただ、さっき再生医療新法の御説明がありましたけれども、国の方でも再生医療といういわば特区ですけれども、特区扱いで新しい倫理委員会の地域倫理委員会的なものを導入していますので、多分次の改定のときにはこれがモデルになるだろうと思っていますけれども、それを印象でやっちゃいけないので、データをちゃんと、お願いですけれども、次までに皆さんで工夫して、研究者いっぱいいますから、集めていただきたいと思っています。
【福井座長】 報告システムのデータというのは、あれは研究の件数というのはたしか……。
【高江課長補佐】 倫理審査委員会の報告システムとは別にUMINですとかJAPICですとか、介入を伴う研究について登録されているものについては、件数は分かります。それは今回の関連資料としてございますけれども、論点9関連ということで別なのですけれども、関連資料7、臨床研究に関する倫理指針、平成20年改正後の対応状況の中で、これ第1回目の資料でございますけれども、これページが何か変な形になって申し訳ないのですけれども、スライド番号でいうと10のところで、臨床研究の登録状況というところで。すいません、分かりづらくて。関連資料というのが別束であろうかと思います。別束である関連資料のクリップを外していただいて、それの後ろから二つ目の資料が資料7というものがございまして、臨床研究に関する倫理指針、平成20年改正後の対応状況というのがあろうと思いますが、その中のスライドの10以降に臨床研究の登録状況という形で新規の登録件数、あと診療科別の新規登録件数等を載せてございます。
こちらUMINの事務局から頂いたものですので、介入があるものについてはこれぐらいだと。ただ、先ほど来、議論ございます疫学とか観察とか全て含めて何件かというところのデータまではないというのが現状でございます。
【福井座長】 田代委員、どうぞ。
【田代委員】 先ほどの福井座長の発言の続きなのですが、一つの可能性として、報告システムの中に年間どのぐらいの審査をしているのかとか、特に例えば迅速審査、そのうち何件あるのかとか、多分アメリカのFWAの中でも、そういった事項とあと何人の被験者が入っているのかとか、そういうごく概数的に把握できるものは併せて報告させているはずなのです。ですので、ひょっとしたら、年間何件審査しているかという程度のことであれば、ばっと計算すれば出るような話なので、それを併せて盛り込むということも一つの話としてはあるかと思いました。
【福井座長】 私も例えば次の会議までに登録されているところには問合せをして、数を幾つか出してもらうということも可能じゃないかとは思いました。
また本日も予定の半分少々で、なかなか予定どおりには進まなくて恐縮ですが時間も参りましたので、この付近で議論を中断したいと思います。
それでは、事務局から今後の予定などについてよろしくお願いします。
【宮脇室長補佐】 事務局でございます。ただいま福井先生から御案内いただきましたように資料2の1枚紙でございますけれども、こちらに一覧として検討事項を示してございますが、本日は資料2にお示ししております7番のところまで御審議いただいたとさせていただきまして、次回は、この残りの8番、9番、そして10番といたしまして、その他というところございますけれども、こちらにつきましては、本日までの御審議いただきまして、更に加えてお気づきの点ございましたらば、事務局に恐縮ですがお早めにお知らせいただけたらと存じます。
そして、こちらの11番にございますが、一通り御審議いただきまして、前回までの会議で整理できなかった項目ということとしまして、繰返しになりますが、こちらの資料2の8番から11番までを次回の会合の議事ということで予定させていただけたらと存じます。
それから、次回の日程でございますが、7月25日の木曜日の午前10時からを予定させていただきたいと存じます。場所等につきましては、後刻改めて事務局から皆様方の御出席のお伺い確認と併せて御案内させていただきたいと存じます。
また、本日の議事録につきましては、作成次第、いつものことでございますが、各委員の皆様に御確認を頂きました後、公開という形をとらせていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
事務局からは以上でございます。
【福井座長】 ありがとうございました。活発な御意見、大変ありがとうございます。
それではこれで閉会いたします。ありがとうございます。
<問い合わせ先>
医政局研究開発振興課担当:本間、吉岡
電話: | 03-5253-1111(内線4165、4163) |
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