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2013年6月24日 第1回日本人の長寿を支える「健康な食事」のあり方に関する検討会 議事録

健康局がん対策・健康増進課栄養指導室

○日時

平成25年6月24日(月)
10:00~12:00


○場所

一般財団法人日本航空協会 航空会館 201会議室


○出席者

構成員<五十音順・敬称略>

宇野 薫 (株式会社タニタヘルスケア/ネットサービス推進部 管理栄養士)
江頭 文江 (地域栄養ケアPEACH厚木代表)
大竹 美登利 (東京学芸大学理事・副学長)
岡村 智教 (慶應義塾大学医学部 衛生学公衆衛生学教授)
佐々木 敏 (東京大学大学院医学系研究科教授)
幣 憲一郎 (京都大学医学部附属病院疾患栄養治療部副疾患栄養治療部長)
生源寺 眞一 (名古屋大学大学院生命農学研究科教授)
鈴木 一十三 (株式会社ローソンマーケティングステーション部長)
高田 和子 (独立行政法人 国立健康・栄養研究所栄養教育研究部栄養ケア・マネジメント研究室長)
高戸 良之 (シダックス株式会社総合研究所課長)
武見 ゆかり (女子栄養大学栄養学部 食生態学研究室教授)
田中 啓二 (公益財団法人 東京都医学総合研究所所長)
田中 延子 (公益財団法人 学校給食研究改善協会理事)
田村 隆 (つきぢ田村株式会社代表取締役社長)
中村 丁次 (神奈川県立保健福祉大学学長)
藤島 廣二 (東京農業大学国際食料情報学部食料環境経済学科教授)
藤谷 順子 (独立行政法人 国立国際医療研究センター病院リハビリテーション科医長)
八幡 則子 (パルシステム生活協同組合連合会事業広報部 商品企画課主任)
渡邊 智子 (千葉県立保健医療大学健康科学部栄養学科教授)

事務局

矢島 鉄也 (健康局長)
宮嵜 雅則 (がん対策・健康増進課長)
河野 美穂 (栄養指導室長)
芳賀 めぐみ (栄養指導室長補佐)

○議題

1.開会
2.議題
 (1)日本人の長寿を支える「健康な食事」に関する検討の基本的方向性について
 (2)その他
3.閉会

○議事

○河野栄養指導室長 それでは、ただいまより「第1回 日本人の長寿を支える『健康な食事』のあり方に関する検討会」を開催いたします。
 委員の皆様方には、御多忙のところ、御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 検討会の開催に当たり、健康局・矢島局長より御挨拶いたします。よろしくお願いいたします。
○矢島健康局長 健康局長の矢島でございます。
 構成員の先生方には、大変お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。
 本日の会議は、御存じのように、今月の14日に閣議決定されました、新しい成長戦略である「日本再興戦略」のアクションプランの一つであります「戦略市場創造プラン」におきまして、政府は国民の健康寿命の延伸を目指し、個人、保険者、企業の意識・動機づけを高めることと、健康寿命延伸産業の創出を両輪で取り組むことといたしております。そして、健康寿命延伸産業を育成するための当面の主要の施策といたしまして、この検討会で御議論いただきます疾病予防効果のエビデンスに基づきます「健康な食事」の基準を策定するということが位置づけられております。
 日本人の平均寿命は年々長くなって、世界でも高い水準を示しておりますけれども、日本人の食事がその一助になっていると考えられますことから、日本人の長寿を支える「健康な食事」について、多領域の先生方にお集まりをいただき、幅広い側面から御議論いただく機会を今回初めて設けさせていただきました。
 今後、高齢化がさらに進展することを踏まえますと、今、改めて「健康な食事」とは何かを明らかにし、その目安を示すことで、国民や社会の理解を深めるとともに、健康な食事の質の担保と仕組みづくりが、日本にとっても、日本から発信する国際社会にとっても大変意義深いことだと思っております。特に日本人の長寿を支えてきているいろいろな意味での日本食のよさというのでしょうか、日本人の食事のよさというものをもっと世界に発信していくということが大事だと思っております。
 先日、新聞報道でもこの検討会のことが取り上げられまして、新しい成長戦略の一環として注目され、期待もされているところでございます。この検討会を踏まえまして、厚生労働省としては、健康な食事を認証する仕組みづくりですとか、食生活指針、それから食事バランスガイド。食事バランスガイドは農林水産省さんにもかかわってきますけれども、そのようなものの見直しも将来行うことが必要になるのではないかと考えております。
 先生方には、それぞれのお立場から活発に御議論いただきまして、健康寿命の延伸を実現するためにお力をおかしいただきますことをお願いいたしまして、簡単でございますけれども、私の挨拶とさせていただきます。何とぞよろしくお願いいたします。
○河野栄養指導室長 それでは、本日お集まりいただきました先生方を御紹介させていただきます。
 資料1の「開催要綱」の裏面の構成員名簿の順に御紹介いたします。
 株式会社タニタ管理栄養士、宇野薫構成員でございます。
○宇野構成員 よろしくお願いいたします。
○河野栄養指導室長 地域栄養ケアPEACH厚木代表、江頭文江構成員でございます。
○江頭構成員 よろしくお願いいたします。
○河野栄養指導室長 東京学芸大学副学長、大竹美登利構成員でございます。
○大竹構成員 大竹でございます。よろしくお願いいたします。
○河野栄養指導室長 慶應義塾大学医学部教授、岡村智教構成員でございます。
○岡村構成員 岡村と申します。よろしくお願いいたします。
○河野栄養指導室長 東京大学大学院医学系研究科教授、佐々木敏構成員でございます。
○佐々木構成員 佐々木でございます。よろしくお願いします。
○河野栄養指導室長 京都大学医学部附属病院副疾患栄養治療部長、幣憲一郎構成員でございます。
○幣構成員 幣でございます。よろしくお願いいたします。
○河野栄養指導室長 名古屋大学大学院生命農学研究科教授、生源寺眞一構成員でございます。
○生源寺構成員 生源寺でございます。よろしくお願いいたします。
○河野栄養指導室長 株式会社ローソンマーケティングステーション部長、鈴木一十三構成員でございます。
○鈴木構成員 鈴木と申します。よろしくお願いいたします。
○河野栄養指導室長 独立行政法人国立健康・栄養研究所栄養ケア・マネジメント研究室長、高田和子構成員でございます。
○高田構成員 高田でございます。よろしくお願いいたします。
○河野栄養指導室長 シダックス株式会社総合研究所課長、高戸良之構成員でございます。
○高戸構成員 高戸です。よろしくお願いします。
○河野栄養指導室長 女子栄養大学栄養学部教授、武見ゆかり構成員でございます。
○武見構成員 武見でございます。よろしくお願いいたします。
○河野栄養指導室長 公益財団法人東京都医学総合研究所所長、田中啓二構成員でございます。
○田中(啓)構成員 田中です。よろしくお願いいたします。
○河野栄養指導室長 公益財団法人学校給食研究改善協会理事、田中延子構成員でございます。
○田中(延)構成員 田中でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○河野栄養指導室長 つきぢ田村株式会社代表取締役社長、田村隆構成員でございます。
○田村構成員 田村です。
○河野栄養指導室長 神奈川県立保健福祉大学学長、中村丁次構成員でございます。
○中村構成員 中村です。よろしくお願いいたします。
○河野栄養指導室長 東京農業大学国際食料情報学部教授、藤島廣二構成員でございます。
○藤島構成員 藤島です。よろしくお願いいたします。
○河野栄養指導室長 独立行政法人国立国際医療研究センター病院リハビリテーション科医長、藤谷順子構成員でございます。
○藤谷構成員 藤谷です。よろしくお願いします。
○河野栄養指導室長 パルシステム生活協同組合連合会事業広報部商品企画課主任、八幡則子構成員でございます。
○八幡構成員 八幡と申します。よろしくお願いいたします。
○河野栄養指導室長 千葉県立保健医療大学健康科学部教授、渡邊智子構成員でございます。
○渡邊構成員 渡邊でございます。よろしくお願いいたします。
○河野栄養指導室長 なお、本日、原田構成員、伏木構成員におかれましては、御都合により御欠席です。
 引き続き、事務局を紹介させていただきます。
 がん対策・健康増進課、宮嵜課長でございます。
○宮嵜がん対策・健康増進課長 宮嵜でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○河野栄養指導室長 私、栄養指導室長の河野でございます。改めまして、よろしくお願いいたします。
 栄養指導室室長補佐の芳賀でございます。
○芳賀栄養指導室長補佐 芳賀でございます。よろしくお願いいたします。
○河野栄養指導室長 引き続きまして、資料の確認をさせていただきます。
 議事次第、座席表をおめくりいただきまして、資料1として「検討会開催要綱」。
 資料2といたしまして「検討の方向性(案)」。
 資料3といたしまして「検討会スケジュール(案)」。
 資料4としまして、ホッチキスどめになっております「健康・栄養に関する現状及び主な施策」。
 資料5としまして、武見構成員提供資料として「日本人の長寿を支える『健康な食事』」。
 資料6としまして、佐々木構成員提供資料として、タイトルは同じで「健康な食事の観点から、地中海食を題材に日本人の食事を考える」。
 以上でございます。
 不足等がございましたらお申し出ください。
 続きまして、検討会の運営についてでございます。資料1の「開催要綱」をごらんいただけますでしょうか。「5 その他」に記述しておりますとおり、本検討会は原則として公開となっておりますので、議事録及び資料については原則として公開となります。どうぞよろしくお願いいたします。
 また、本検討会の座長につきましては、本来でありましたら委員の先生方から御推薦をいただくところでございますが、事務局としては、神奈川県立保健福祉大学学長の中村構成員にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
(拍手多数)
○河野栄養指導室長 それでは、中村先生に一言御挨拶をお願いいたします。
○中村座長 ただいま御指名を受けました神奈川県立保健福祉大学の中村です。この会がスムーズに運営されますように、御協力のほどよろしくお願いしたいと思います。
 さて、今回、このような「健康な食事」を議論する検討会が国の正式な機関として承認され、そしてこの検討が始まるわけです。これは画期的なことでありまして、国内はもとより、国際的にも注目されるだろうと私は思っております。健康な食事に関して今までエネルギーや栄養素のレベルでの議論はあります。どのような食品をどのように食べればいいかという議論もあります。しかし、食事全体を含めて、日本人、あるいは人類がどのような食事をしたらいいのかということを真正面から検討する検討会はなかったのではないかと思います。
 ないというのは、一つの理由があると私は思うのです。例えば栄養素の議論なら栄養の関係者や研究者で議論をする。食品だったら、食品の関係者で議論をする。しかし、食事となると、ありとあらゆる領域で議論しないと最終的に結論が出ない。本日、構成員として参加されたメンバーを見て本当に驚くのですが、多種多様な領域から専門家が出席されております。これをどうやってまとめていくのか、私は責任を感じているのですが、このことはどこかの時点でやらなければいけなかったのではないかと思っております。
 私、外国に行くことが多いのですが、日本人は自分たちの食事が世界一すぐれていて、世界一の長寿国を維持しているのにかかわらず、なぜその理由を公式に明らかにしないのかと言われ続けておりました。今回、この検討委員会がその結論を出すということなので、画期的なことだと思っております。ぜひ真摯で建設的な議論をしていただければありがたいと思います。よろしくお願いいたします。
 さて、副座長でございますが、厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会の委員として御尽力していただいております武見構成員を御指名したいと思いますが、いかがでしょうか。
(拍手多数)
○中村座長 では、武見委員、よろしくお願いいたします。
○武見副座長 よろしくお願いします。
○中村座長 以上でございます。
○河野栄養指導室長 ありがとうございました。
 これ以降の進行につきましては、中村座長にお願いいたします。
 カメラの撮影はここまでとさせていただきますので、報道関係者の方はお席にお戻りいただきますようお願いいたします。
(報道関係者退室)
○中村座長 まず、本検討会の方向性や健康・栄養に関する現状及び施策等について、事務局から御説明をお願いいたします。
○河野栄養指導室長 それでは、資料2、資料3を用いまして、検討の方法性並びにスケジュール(案)について御説明させていただきます。
 まず、資料2のほうでございます。方向性(案)といたしましては、一番上に書いてあります健康寿命の延伸を図ることが「健康日本21(第二次)」、また、冒頭、局長の御挨拶にありましたとおり、新たな成長戦略として位置づけられております。この健康寿命の延伸を図るためには、その下になりますが、健康な食事を実践しやすい環境整備の促進を図ることが必要になります。「健康日本21(第二次)」の観点からは、健康維持や疾病予防の推進を図ることとなり、また、新たな成長戦略では、健康産業の創出を図っていくことになります。この両者に向けて、「健康な食事」の基準を策定することで、国民の健康状態、身体機能の維持・改善を図ることができ、かつ、右側の丸の中になりますが、食事の質の保証を図ることにもなります。
 具体的な検討内容を青の枠の中にお示ししております。
 まず1点目としましては、健康な食事とは何か。概念、意義及び構成要素の整理を行っていただくことになります。枠の外側に矢印で、健康状態・身体状況、栄養、食品、加工・調理、食文化、生産・流通、経済など、健康な食事にかかわる要因というのは多数ございますので、今回、多領域の先生方に参画いただいているというところもこういった背景を持ってということになります。
 2点目としましては、その目安をどう示すかというところで、食品の種類・量・組み合わせ、食事構成・食事形態などについて。また、1食、1日単位についてはどうか。さらに、今回は基本型として、コンビニ、スーパー、宅配等で提供される食事の基準について御議論いただきたいと思っております。今回、目安の決め方などルールづくりが整理されれば、今後の展開例としては、糖尿病患者を支援する宅配食、あるいは介護食といったものも想定しております。
 また、枠の外側、紫の点線で書かれておりますように、科学的根拠をもって目安等については決めていただくことになります。その中には、食事摂取基準(2015年版)といった現在検討中のものも含まれますが、その基本となる研究の推進につきましては、現在のもので十分ではないということもありますので、そういった場合については、矢印でお示ししておりますとおり、今回の議論で出てきた課題について、研究上での整理が必要な部分については研究の推進を図っていくことも視野に入れて御議論をいただければと考えております。
 資料3のほうに移らせていただきます。全体の大まかなスケジュール(案)についてでございますが、本日、検討の基本的方向性について各先生方から自由に御意見をいただきたいと考えております。
 第2回から第5回につきましては、健康、食文化、調理、給食、生産・流通の各領域から、日本人の長寿を支える「健康な食事」について分析・検討ということで、それぞれ何名かの先生方にプレゼンテーションをいただきながら議論を進めていっていただけたらと考えております。
 第6回につきましては、「健康な食事」の概念について。
 第7回、「健康な食事」の定義、構成要素について。
 また、第8回、第9回につきましては、食事摂取基準(2015年版)の報告書の取りまとめを3月ごろに予定しておりますので、それを受けて「健康な食事」の目安について。
 さらに、夏ごろ、第10回で報告書(案)について。
 というスケジュール(案)で考えております。
 続きまして「健康・栄養に関する現状及び主な施策」について説明させていただきます。
○芳賀栄養指導室長補佐 それでは、資料4をもとに「健康・栄養に関する現状及び主な施策」に関して説明させていただきます。
 まず、健康・栄養に関する現状でございます。
 1ページの上に示すとおり、日本の平均寿命は世界最高水準となっており、今後の推計においても平均寿命は延伸する予測となっています。
 一方、平均寿命と健康寿命の差を見ますと、健康寿命のほうが平均寿命に比べておよそ10歳程度短いという現状です。
 2ページに入りまして、日本の人口構造の変化についてです。日本における高齢化率はさらに増加し、下の図にお示ししたとおり、2050年には40%近くになると推計されています。
 3ページに入りまして、こうした中、要介護度別の認定者数は年々増加しています。要介護度別に見た介護が必要となった主な原因については、要介護者についての1位は脳血管疾患、2位が認知症となっています。要支援者については、脳血管疾患は多めなのですが、関節疾患のところが19.4%で、その前の高齢による衰弱と、その後ろにある骨折・転倒を合計しますと、50%近くが高齢化の影響に関連するということで、特に割合が多くなっています。
 4ページに入りまして、国民医療費についてですが、年々増加の一途をたどっています。国民医療費に占める生活習慣病関連の割合を見ますと、約3割が生活習慣病関係の疾患になっています。死因別死亡割合においては、その約6割が生活習慣病関連となっています。
 5ページに入りまして、国際比較における日本の位置づけです。糖尿病の推定有病率並びに成人の肥満の状況に関しては、国際比較においては、日本はともに低い水準にあります。
 6ページに入りまして、平成20年度から日本においては特定健康診査・特定保健指導制度が実施されており、その実施状況によると対象者の基準の元となるメタボリックシンドローム該当者及び予備軍の割合は26.6%となっています。
 7ページからは、高齢者の状況を少し詳しく見ていきます。
 図に示されているとおり、加齢に伴いさまざまな生理機能の低下が見られ、食に関する心身の変化というのも示されております。例えば食欲や味覚の変化、さらには、咀嚼・嚥下機能、さらに全体の機能の変化等です。
 8ページに例としてお示ししたとおり、乳幼児期については、発育・発達に伴い、食べる力を身につけていく訳ですが、離乳食については、食べ方や食事、成長の目安が示されておりまして、調理形態や1回当たりの目安量も発育・発達に合わせて示されています。
 9ページに移ります。これらをもとに、日本ベビーフード協議会では、ベビーフードの表示に関する自主基準が作成されております。
 10ページに移りまして、食品群別摂取量、栄養素等摂取量の推移についてです。国民健康・栄養調査の結果では、エネルギーの摂取量は年々減少傾向にあり、昭和50年と比較して穀類の摂取比率が低下するなどしており、栄養素別に見ても、脂質以外の主要栄養素の摂取は低下傾向にあります。
 11ページに入ります。ここからは、調理・食文化等に関する現状です。
 加熱調理の分類を例としてお示ししておりますが、加熱調理についてもいろいろあります。その中で特に煮物の種類を例に見てみますと、素材の特性に合わせるなど、調味の仕方と煮方の違いによって調理法は多種多様というのが、特に日本人の食事においては特性と考えられます。
 12ページに入りまして、これらの味の基本となるだし汁の種類と主なうまみ成分についてです。日本の料理の特徴でもある和風のかつお、昆布、煮干し等のだし、さらには、それらを構成するうまみ成分もさまざまでございまして、下の図の「世界のうま味マップ」から見てとれますように、世界の国によるうまみの違いというのが特性としてございます。日本においては、みそ、しょうゆのうまみが示されています。
 13ページに入ります。これらの料理の素材となっている食品の特徴を、諸外国の食品成分表との比較で見てみると、収載されている食品群が米国、英国、日本とでは異なっており、緑で印をつけた部分ですが、特に野菜類については、英国、米国が、生に対して生以外の収載が3倍、4倍以上という中、日本においては生と生以外の部分がほぼ同等数になっています。
 14ページに移りまして、食文化についてです。石毛直道先生の御著書をもとに考え方を例としてお示ししています。
 食べることは文化であり、人間が食べるということには、食物を生産し、加工し、あるいは食物を器に盛って食べる、食べ方を規定する食事作法などさまざまな事柄がつきまとっており、それらの食事にまつわる技術ですとか、食事においての人間の振る舞い方の多くは、本能として遺伝的に伝達されることではなく、人が生まれた後に学習した文化的な行為であるということが示されており、食の文化マップという例がございます。
 15ページに移ります。こういった食の文化の構成については、図にお示ししてある右側の「生理」、左側の「環境」に挟まれた領域を拡大してきた、すなわち食品加工や食事行動という部分が人間の食の文化と歴史であるという整理がなされていますい。特にこの真ん中の文化の歴史として拡大されてきた部分、すなわち料理を中心とする食品加工という側面、さらに食事行動については、共食を中心として発達してきた部分ということで、料理と共食の文化に関しての食文化的な整理がなされております。
 この料理と共食という人間に特徴的な2つの文化的な行為をめぐって食事文化の中核は形成されてきたと示されています。
 16ページに移りまして、主食の文化圏の世界比較の例です。米文化圏と麦文化圏の分布の違いがあります。さらに、手で食べる、はしを使って食べる、ナイフ・フォークを使って食べるなど、三大食法文化圏の分布に関しての例も示されています。
 17ページからは、給食に関する現状です。
 こちらにお示ししている「事業所給食の例」にありますように、例えば、御飯や汁物など組み合わせに配慮した食事構成となっています。さらに、学校給食においては、小学校の99.2%の実施率を筆頭に、全体でも90%以上の実施となっており、主食・主菜・副菜がそろう学校給食が日々実施されています。
 19ページに移ります。こうした学校給食と連動し、児童・生徒のための食生活学習教材の例として、地域の産物と郷土料理を題材にした教材ですとか行事食を楽しむための教材がありますあり。
 21ページからは、生産、流通に関する現状です。
 各国の消費支出に占める食料関連支出の割合については、日本においては2005年のデータとして22.9%であることが示されています。さらに、業態別の食料品販売額の推移ですが、2011年は42.6兆円のうち、特にスーパーマーケット、コンビニエンスストアの伸びが確認できます。
 22ページに移りまして、食品宅配市場についてです。図に示されているとおり、事業規模、市場規模は拡大の推移を示しています。外食などについては半数近くを占めている状態になっています。
 23ページに移りまして、日本の食料供給量の変化についてです。茶色と黄土色と黄色で色づけされたところが特に特徴かと思いますが、供給熱量の構成の推移を見ると、米に関しては減少しており、その分、畜産物、油脂類等が伸びている現状です。
 なお、下に各国のPFC比率の比較を示しています。Pがたんぱく質、Fが脂質、Cが炭水化物ですが、2005年のデータではこういった比率になっています。
 24ページには、食料自給率の国際比較をお示ししています。日本においては、食料自給率は年々低下している状況です。
 25ページに移ります。主要野菜における生産水準の推移についてです。2011年と1980年を比較しますと、1980年を100とした場合、レタス、ニンジン以外は減少傾向にあります。
 下に「野菜の生産量と輸入量の動向」をお示ししてあります。生産量は年々低下、輸入量は増加という傾向になっています。
 26ページ以降につきましては、栄養・食事に関する主な施策に関しての現状になります。
 まず、食事摂取基準に関してですが、戦後、科学技術庁が策定していた「日本人の栄養所要量」について、昭和44年の策定より厚生省が改定を行うこととなりまして、現在、2010年版の「日本人の食事摂取基準」が運用されています。この基準で策定されている栄養素等については、26ページの真ん中にお示ししているとおりです。
 この基準の位置づけは、健康増進法第30条の2に基づき、厚生労働大臣が生涯にわたる国民の栄養摂取の改善に向けた自主的な努力を推進するため、食事による栄養摂取量の基準として定めているものです。基準の値については大臣告知として定められております。
 27ページに移ります。現在「日本人の食事摂取基準(2015年版)」の策定に向けて検討会を開催しておりまして、25年度中に報告書を取りまとめる予定となっています。こちらにおける策定の方向性は、今般、生活習慣病の重症化予防も視野に入れてということで、これまでよりもさらに一歩踏み込んだ策定範囲として検討が進められております。
 28ページは、こういった食事摂取基準の背景にある3大栄養素の関係に関しての図になります。
 29ページは「食生活指針」についてです。こちらは、国民一人一人が食生活改善に取り組むよう、昭和60年に「健康づくりのための食生活指針」が策定され、さらに平成2年に個々人の特性に応じた具体的な食生活の目標として対象特性別の指針が作成されました。その後、平成12年に文部省、厚生省、農林水産省の3省で新たな食生活指針を決定しております。
 この食生活指針は、食料生産、流通から食卓、健康へと幅広く食生活全体を視野に入れたものとされていることが大きな特徴となっています。
 指針の内容については30ページにお示ししているとおりです。
 31ページは、「食事バランスガイド」についてです。こちらは、先ほど御説明いたしました食生活指針を具体的な行動に結びつけるものとして、何をどれだけ食べたらよいかという食事の基本を身につけるバイブルとして、望ましい食事のとり方や、おおよその料理をわかりやすくイラストで示したものになっています。平成17年に厚生労働省、農林水産省で決定しております。
 32ページに移ります。「健康日本21(第二次)」につきましては、平成24年7月10日に厚生労働大臣告示として、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針として示されまして、生活習慣及び社会環境の改善、健やかで心豊かに生活できる活力のある社会を実現、さらには、社会保障制度が持続可能なものとなるようにということで策定されております。下の?にお示ししてありますとおり、「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」について、生活習慣の改善や社会環境の整備によって達成すべき最終的な目標となってなっています。これ以外も含め全部で5つの基本的な方向性が示されています。
 33ページに移ります。栄養・食生活に関してはこのような目標設定となっています。
 最後に、34ページ、35ページについてです。局長の御挨拶にもありましたとおり、「日本再興戦略」において、3つのアクションプランの中の2つ目「戦略市場創造プラン」のテーマ1として「国民の『健康寿命』の延伸」について示されています。
 35ページの健康寿命延伸産業の育成において、太字に下線を引いてありますが、「疾病予防効果のエビデンスに基づく適正な運動量や健康な食事の基準を策定する」といった内容で閣議決定されています。
 説明は以上です。
○中村座長 ありがとうございました。
 続きまして、日本人の長寿を支える「健康な食事」に関する情報提供といたしまして、武見構成員と佐々木構成員に御発表をお願いしたいと思います。
 お2人の御発表の後、本日御出席の構成員の先生方からそれぞれのお立場で「健康な食事」について御意見を頂戴する予定になっております。
 それでは、武見構成員に「食生活のガイドラインから日本人の食事を考える」というテーマで御発表をお願いしたいと思います。
○武見構成員 よろしくお願いいたします。資料5のほうをお手元に御用意いただきたいと思います。
 私のほうからは、主に日本とアメリカの栄養・食関連ガイドラインの比較から考えられること、もう一つとして、今回はカナダと韓国を取り上げましたが、日本と諸外国の食生活指針について御報告させていただきたいと思います。
 最初に、日本とアメリカの比較ということです。アメリカは情報量が非常に多いということと、これまでも日本のいろいろな栄養政策、健康政策の参考にしてきたということがありましたので、まずアメリカを取り上げました、
 下のほうの図をごらんいただきたいのですけれども、上が日本、下がアメリカになります。今、既に事務局から御報告のあった栄養、あるいは食生活に関するガイドラインを、左から、栄養素等のガイドライン、食品・食材のガイドライン、料理のガイドライン、食行動・習慣に関するガイドラインと並べてみました。栄養素等については先ほどの食事摂取基準がありますし、食品・食材に関しては食品群というもので保育や学校教育の中で使われている3色分類・6つの基礎食品、それから高校の家庭科などで使われている四群点数法などがあります。さらに、食品ではなくて、それを調理した状態ということで、料理でのガイドライン、これが食事バランスガイドということになります。こうした食べ物の内容も含めて食行動や習慣を全般的に示しているものが食生活指針という整理になるかと思います。
 また、時間軸で考えれば、食事摂取基準は習慣的な摂取量ということになります。食品・食材は、教育の場面では、主に1日を基本として考えられて教育されていることが多いと思いますが、3色分類などは1食で3色そろえましょうというようなことも行われております。食事バランスガイドは原則1日の食べ方ということになります。食行動・習慣はもちろん習慣的、場合によっては一生ということになるかと思います。
 下のアメリカのほうを見ていただきますと、栄養素のところでは、食事摂取基準は英語で書いてありますけれども、基本的には同じことになります。食品・料理を見ますと、実はアメリカの場合はそこの分かれ目がございません。基準としては、1992年にフードガイドピラミッドというものができて、2005年にマイピラミッドというフードガイドになり、2011年にMy Platesとなっております。この内容はまた次のところで詳細に御説明します。食生活指針としては、現在、アメリカ人のための食生活指針(2010年版)が使われております。
 時間軸での特徴を考えますと、真ん中の食品・料理のところですが、マイピラミッドまでは基本的に1日を基本としたフードガイドになっておりました。それがMy Platesになってから、食事のときの1食をイメージさせるようなフードガイドに変わってきたということが特徴かと思います。
 右側にこれらの2つの比較を整理してあります。まず、日本には、食品・食材とは別に「料理」という捉え方の指針を1つ持っているという特徴があります。また、アメリカの場合は、フードガイドの基本単位が、今申し上げましたように1食単位に変わってきたということがございます。
 では、おめくりいただきます。この日本の「料理」という部分について、先ほどいろいろあった日本のこれまでのガイドライン、主に厚生労働省関係のガイドラインについてどのように示されてきたかを拾ってみました。
 一番左が1985年(昭和60年)の食生活指針です。30年前になります。そのときに、青字で示しているような「主食、主菜、副菜をそろえて」ということが出てきております。
 その後、対象特性別の中でも、やはり「主食、主菜、副菜をそろえ」ということが入っており、さらにその対象特性別の真ん中あたりですが、「成長期のための食生活指針」で、特に幼児期については「うす味と和風料理に慣れさせよう」ということで、「和風料理」という言葉も出てきております。
 2000年の食生活指針におきましては、この「主食・主菜・副菜」ということが引き続き踏襲されており、またさらに、ちょっと下のほうですけれども、「食文化や地域の産物を活かし、ときには新しい料理も」ということ、「文化や地域産物を活かす」ということで料理のことが取り上げられてきております。
 この2000年の食生活指針の太枠で囲んだ、つまり、何をどれだけ食べるかという部分を具体的に示すフードガイドということで食事バランスガイドがつくられたわけですけれども、このときには、日本では、食品ではなく料理レベルのフードガイドということで、主食・主菜・副菜、牛乳・乳製品、果物という分類を使ったことになります。世界的に見ても、この料理でのフードガイドというのは日本が初めて策定したことになります。
 では、アメリカのほうの状況をもう少し詳しく見たいと思います。下になります。アメリカの食生活指針なのですけれども、左の文章に書きましたとおり、1980年、アメリカ農務省が中心に、保健省と協力して食生活指針というものを発表しております。その後、5年ごとに改定され、現在使われている2010年版が第7版となります。2歳以上のアメリカ人を対象として策定されてきましたが、2010年版からは「慢性疾患のリスクを有する者も対象に含む」というような表現が加わってきております。
 真ん中はその表紙のイラストです。食生活指針を具体的な行動に移す教育ツールということでフードガイドはつくられてくるわけですけれども、実は歴史はもっと古く、下に並んでいる絵の一番左側、最初のフードガイドは1940年代、第二次世界大戦中にベーシックセブンという7群のものができて、「U.S.・ニーズ・U.S.・ストロング」というキャッチフレーズですね。「アメリカは強いアメリカを必要とする」というようなことで栄養政策がスタートしております。
 その後、4つの食品群。次の絵は5つあるように見えるのですけれども、4つの食品群というものが使われていた期間が長く、1992年にこのフードガイドピラミッドというものが出てきました。アメリカがこのピラミッドを示したことによって、世界中のフードガイドでこのピラミッド型が一気に加速するような動きがありました。5つの食品群でどれぐらいというのが目で見てわかりやすい表現になっているわけです。
 それを2005年のときには、マイピラミッドということで、ピラミッドは同じなのですけれども、身体活動をやや強調する形と、この「My」という名前をつけた。この意味は、一人一人が自分に合わせた展開をウエブ上で使いやすくするということを目的にして「マイピラミッド」という表現を使ったということになります。
 そして、それが2011年にはお皿型のMy Platesに変わった。かなり大きな変更になります。My Platesは、上の文章にありますが、健康的な食物の組み合わせを強く印象づけるアイコンとしてつくられたと書かれております。つまり、人々に健康的な食物を促し、食事を食べるときにこのお皿のイメージがぱっと頭に浮かぶようなリマインダー、それをちょっと思い出させるようなものとして策定されたとなっております。
 次のページに行っていただきたい。このフードガイドピラミッドもMy Platesも基本的には食生活指針を具体的な行動に移すための教育ツールなのですけれども、2010年版を踏まえてMy Platesが作成された経緯を簡単に御説明したいと思います。
 左側が食生活指針になります。消費者向けのメッセージは非常に単純化されて、緑字で示したBalancing caloriesとあるようにエネルギーを調整するということと、何をふやすか、「Food to Increase」と「Food to Reduce」と、非常にシンプルなメッセージに変わってきています。
 その一つ一つ、どんな食品をふやすかとか、あと、実はナトリウムとか栄養素のことも入っているのですけれども、どういうふうにするか。右のほうに矢印を引っ張ってありますけれども、これらの要素を取り込んだ健康的な食事パターンを考えていくというところになります。高血圧予防のための食事パターン、地中海食型食事、ベジタリアンの食事というものが具体的にどんなものかということが検討された上で、それらに共通する要素を拾い出した結果、USDA、アメリカ農務省のフードパターンというものを提案している。それは当然、食事摂取基準との整合性もとりつつ、アメリカの食事パターンを決めて、そしてそれを具体化したものがMy Platesということになるわけです。
 この「My Plates」という表現になった経緯については、例えば消費者のニーズであるとか、それまでのフードガイドピラミッドの使われ方などの調査が非常に丁寧に行われております。そこに細かい字で書いてありますが、農務省が、関係者のインタビューとか、米国内で行われたいろいろな教育プログラムでどう使われてきたかの検証とか、メディアにフードガイドピラミッドがどう露出されてきたかという露出度調査であるとか、消費者のフォーカスグループインタビューとか、非常に多種類の量的・質的調査を実施した結果、メッセージはよりシンプルなものとする。つまり、一つのメッセージで全ての人にうまく使えるものなどはないということで、まず起点を決めて、そこからいろいろな情報を得られるような仕組みにすることが重要だと。お皿にしたのは、食に関連したシンボルとしては、やはりピラミッドよりはお皿のほうが親しみやすいという声が多く、健康なお皿にしようと。人々に気づきを促すシンプルなアイコンにしたと書かれてあります。
 また、このアイコンは、多くの栄養・食情報を与えるものではない、これだけで人々の行動変容を促すものでもないとはっきり書かれています。ですから、これを見た人が次の情報に行ってもらいたい。そういうことを目指しているということになります。
 以上が日本とアメリカの特徴の比較になります。
 次に、残りの時間で、簡単に諸外国の指針をお話ししたいと思います。
 WHOの統計を見ますと、公表されている2011年の平均寿命で、日本はもちろん男女平均なので83歳でトップです。あと、スイスとサンマリノが83歳です。その次、82歳で、オーストラリア、カナダ、フランス、シンガポールと十数カ国あり、81歳が、韓国、フィンランド、ドイツと十数ヶ国あるのですけれども、きょうはカナダと韓国について簡単に御紹介したいと思います。
 左側は日本の食生活指針を書いておりますが、カナダについては、そこの絵にあるカナダズ・フードガイドを使うために具体的な指針を示している。アメリカとはちょっと逆のつくりになっているのです。その指針の中に、1、2、3、4、5と書かれております。1から4までは、何を食べるかとか、身体活動を増やそうといったことですけれども、5番目に食事を楽しみましょう、と楽しみのことが入っています。特に赤字で示したところには、「Having meals regularly together as a family」ということで、家族と一緒に食事をしようということ。それから、一番下のところでは、さまざまな食物を楽しむと同時に、「take the time to eat」ということで、時間をかけて食事をすること、一口一口を味わって食べることの要素が入っている。これは、左側の日本の食生活指針の赤字で示した部分と一致するものと思われます。
 最後のページへ行ってください。欧米と日本ではもともと食文化も違うだろうということで、同じアジア圏であり、小麦文化でなく米文化の韓国を取り上げてみました。韓国についても1、2、3、4、5、6とあるのですけれども、その中の3番のところです。「清潔なものを食べましょう」「適切なものを食べましょう」の中の最後の赤字のところなのですけれども、「Eat a balanced diet that included bab(rice)and side dishes」。「bab」は御飯のことで、ここだけ韓国語のままになっています。あと、「side dishes」というのは、韓国の小皿の料理ですね。ご飯と一緒にさまざまな小皿のおかずを食べる。いうなれば、韓国の伝統的な食事パターンを大事にするということが示されていますし、食塩摂取を減らすということでは、キムチという食文化のことを配慮したガイドラインになっています。
 そのようなことで、その国が大事にしてきた食事パターン、日本で言えば、主食・主菜・副菜になるのでしょうか、そうしたことを取り入れているところが欧米の指針とアジアの指針の違いかなと思います。
 最後、まとめになります。日本の食生活指針には多面的な要素が含まれております。資料に示したように、「食事を味わう・楽しむ面」「食事を一緒に食べたり、作ったりする人との関わりの面」「伝統的な食文化・地域産物の活用の面」「健康的な食物の組合せ(食品の組合せ・料理の組合せ)の面」です。これらはいずれも、日本の食を考える上で当然重要なものですが、これらのうちどの要素が健康長寿支える「健康な食事」の概念のあり方として重要なのかという議論が必要かと考えます。
 また、日本のフードガイド、食事バランスガイドは、複数の食材を組み合わせて料理をつくり、その料理を組み合わせて食事に仕立てるという日本の食の特徴を踏まえたガイドと考えられます。しかし、健康な食事のシンボルとして2011年にアメリカで出たMy Platesに比べ、複雑でわかりにくいという感じがします。したがって、上にあるような日本人の食のさまざまな面の特徴を生かして、わかりやすいシンプルな表現を目指して、「健康な食事」の概念・あり方を公開できるような方向での議論が必要なのかなと感じました。
 以上です。
○中村座長 ありがとうございました。
 引き続きまして、佐々木構成員に「健康な食事の観点から、地中海食を題材に日本人の食事を考える」というテーマで御発表をお願いいたします。
○佐々木構成員 それでは、15分ほどのお時間をいただいて情報の提供をさせていただきます。
 同じく「日本人の長寿を支える『健康な食事』」というのがメインタイトルでございますが、世界的に「健康な食事」と申しますと、地中海食というものが挙がってまいります。そこで、それを題材にして、比較検討するような形で日本人の食事について考えてみたいと思いました。
 1枚目の下をごらんください。地中海食と健康との関係は多数の研究成果があるのですけれども、その一例を持ってまいりました。あくまでも一例ということでございます。これはスペインで行われた研究でございます。「あなたはどれぐらい地中海食的か」という簡単なスコアのシステムをつくりまして、1万3,000人の健康な方々を調べておいて、その後4年間にわたってその中の誰から糖尿病が発症するかということが観察されました。
 その結果が、右側にありますように、地中海食的食事をしていた人たち、グラフで「高」と書いてあるところは、「低」の人に比べて糖尿病の発症はわずかに17%であった、5分の1の発症でしかなかったというところでございます。しかしながら、地中海食の定義やこのスコア化の方法は現在多数提案されておりまして、結果は必ずしも一致しておりません。しかしながら、ここで少しおもしろいかなと思ってやってみたのが下でございます。
 これは、その地中海食スコアを用いまして、現在の30~49歳の日本人の平均値がこのスコアのどこに落ちるかというところを見てみました。このスコアでは、下にございますように、食物繊維、オリーブオイルから始まりまして、肉類、乳製品までの項目がございます。そして、日本人が現在どのあたりを食べているかを書いたのがこの信号の3色でございます。食物繊維と野菜と果物はこの「低」という人たちよりもさらに低いところでございます。ただし、日本人はオリーブオイルの消費量が少のうございますので、それに比較的類似したほかの油脂類も入れてございます。したがって、直接比較はできません。油脂類、穀類、豆類、肉類。これは少な目がよいのですけれども、こういうものは青信号で、「高」よりもさらによい食べ方をしています。そして、真ん中に2つ黄色信号がございます。
 このように、地中海食のスコアで見ますと、現在のごく普通の日本人でもかなり地中海食的な、むしろそれを超えるような摂取をしている場面もある。その一方で、少なくとも地中海食から見るとかなり問題ありという食習慣を持っているということがここからかいま見ることができます。
 ちなみに、きょうの資料は、関連するデータのソースを全てスライドの下に示しましたので、詳細は後日そちらをごらんいただきたいと思います。
 では、ページをおめくりください。
 この地中海食ですけれども、少し歴史を見てみたいと思います。1957年ごろ、第二次世界大戦が終わった直後に近いのですけれども、地中海の食がどうなっているか、それから、ほかのヨーロッパ人、アメリカ人の食と健康がどうなっているかという大きな研究が立ち上がりました。「Seven Countries Study」と呼ばれます。
 その研究はたくさんの結果が出ているのですけれども、その中で、当時の食習慣とその後の心筋梗塞の死亡率との関連を示した結果を例として持ってまいりました。左側が総脂質の摂取量と心筋梗塞の死亡率。このSeven Countries Studyに参加した地域ごとの点を示してございます。実はこれに日本も参加しておりまして、ほぼ重なっておりますが、2つの赤い点が日本でございます。左側の総脂質と心筋梗塞の死亡率の間には関連は余り見られません。
 その一方で、右側の図をごらんください。これは飽和脂肪酸の摂取量でございます。そこにきれいな相関が見られます。こうしまして、飽和脂肪酸と心筋梗塞の関係が栄養疫学的にクローズアップされてまいって、その後いろいろな研究が進みました。
 右側の上に飛び出ている青い点がフィンランドでございまして、ここはその課題を明らかにすべく、急いで大学院を設置して研究を始めるということをしております。その一方で、赤の点の近くにあります黄緑色の2点がございますが、これはギリシャでございます。1つはクレタ島でありますが、ここもまた、自分たちの食の健康性の優越性を証明しようということで大学院にこのような研究と教育機関を設置し、研究・教育を進めてきたという歴史的背景がございます。
 その結果どうなったのかというのが下のスライドでございます。なぜ地中海食は健康食として世界に受け入れられたのだろうか。医学並びに健康科学の研究論文は、アメリカの国立医学図書館の研究データベースにほぼ網羅されておりまして、2万2,000論文以上が累積・保管されております。自由に閲覧することができます。そこで、ついこの前「地中海食」というキーワードで検索をやって年次推移を見てみたのが下の図の緑の棒グラフでございます。ごらんのように、1984年に登場しまして、1995年以降、うなぎ登りでふえてきております。合計2,042論文が地中海食と健康に関する論文でありました。
 その一方で、定義やワードがまだ整っていないので過小評価にはなっているとは思うのですけれども、「Japanese diet」という項目で調べてみたところ、130論文、グラフ上はこの赤でございます。そうしますと、地中海食よりも早く赤の棒が登場するのですけれども、その後、増加がなく、散発的にぱらぱらと研究がなされてきた状況がある。それに対して地中海食は固まりでかなりたくさんの論文が出てきて2,000を超えたという現状がございます。
 次をお願いいたします。
 単に研究を進めているだけではなく、この地中海の国々は、その1950年、60年の歴史的なスタートから、定義をどうするかという国際会議を何度か開催してまいりました。これは1993年の地中海食に関する国際会議で定められたものでございます。それ以外にも幾つかの定義が存在します。植物性食品が豊富であること、加工度を最小限にとどめた季節折々のというような文章、それからデザートの話、油の使い方、動物性食品の使い方、そして、お酒の飲み方まで含めまして討議がなされております。その後、食文化的要素が人間栄養学的並びに栄養疫学的な研究によって検証されてまいりまして、その結果として、地中海食が定義づけられ、先ほど紹介しましたスコアのようなものがつくられていったという経緯。その経緯に注目したいと思います。
 では、先ほど武見先生の御報告にもありましたが、2010年に米国政府が「Dietary Guidelines for Americans」という食事ガイドラインに関する報告書を出しております。その中で、彼らはDASH食や地中海食を参考としてかなり使っているのですけれども、日本食はどうなっているのかというところで、このガイドライン全文を読んでみました。そうすると、「Other Dietary Patterns」という中に、ここに示しましたような英文が入っております。その中心部分を和訳してまいりました。

欧米以外の食習慣への興味は(これはアメリカが持っていることです)非常に高い。しかしながら、DASH食(これは高血圧を予防するような食事で、アメリカでつくられたものです)や地中海を指示する事実に比べると、日本食に関するエビデンスは健康的利点を示す疫学的研究や臨床介入研究の報告のみならず、その食構成に関する詳細な報告も乏しいと。ここに実際に「日本食」としっかり書いてございます。アメリカ政府がつくりました、ちょうどこの検討会と同じ立場にあると考えられますダイエタリーガイドラインズの検討会でこのような報告書の文章を作成したということであります。
 次のページをおめくりください。地中海食や、アメリカと日本並びに東アジアの食事習慣のどこが大きく異なるか。たくさんあると思うのですけれども、お米を中心としているというところはやはり外せないだろうと思います。そこで、地中海食やアメリカからの引用だけでは不十分かと思いまして1つだけ例を持ってまいりました。日本の研究でございます。
 現在、日本人は、朝食に御飯を食べる人、パンを食べる人は比較的均等に存在しているようでございます。そこで、1,771人の若い女性の大学生を対象としました研究でございます。「朝、御飯を食べますか、パンを食べますか。それを週に何回食べますか」と調べまして、同時に、その人が1カ月間にわたって食べている食事を詳細に調べ上げました。そして、朝食にほとんどパンを食べている人たちに比べて、御飯の回数がふえていくに伴って、このスライドの上に掲げましたような状態で食習慣が異なっていたということがわかりました。
 すなわち、朝食にパンを食べていた人たちに比べて御飯を食べていた人たちは、朝食だけではなく、間食も含めてですが、1日全体、大豆製品が多く、お魚が多く、野菜が多く、お肉や果物はわずかに多く、乳製品がわずかに少なく、お菓子類がかなり少ないという結果でございました。これはかなり望ましいということを示してございます。
 では、栄養素としてはどうなるかということをそのまま栄養価計算をしたのが下の図でございます。このように、御飯派の人たちのほうが摂取量が多かった筆頭が食塩、そしてビタミンC、鉄、食物繊維。それに対して、総脂質が少なく、飽和脂肪酸が少ない。カルシウムは、わずかではございますが、御飯派のほうが多いという結果でございました。
 すなわち、朝、パンを食べている人に比べて御飯を食べている人たちのほうが、御飯やパンに入っているものではなく、その場合につけるいわゆる主菜、いわゆる副菜からの効果でございます。
 最後のページの上のスライドをごらんください。そこで、地中海食の研究、きょう御発表できなかったものを含めまして日本食の健康効果を考えてみました。日本は、地中海と同様、またそれ以上だと私は思いたいのですけれども、季節ごとに旬の食べ物があります。気候と地形の多様性にも恵まれております。その地場産物を利用できる国でございます。そして、お米を中心とした食文化、食習慣を持っております。これを基本といたしますと、少なくとも、先ほど御紹介しました2つの結果に基づくと、野菜をたっぷり食べたい、果物をたっぷり食べたい、そして主食の精製度の低い穀類を選びたい、さらなる減塩に努めたいというようなことが加われば、ひょっとすると、地中海食を超える健康食として世界への発信をする。発信だけではなく、世界の人が納得をするということが可能かもしれないと考えました。
 そこで、まとめでございます。地中海食と健康との関連を明らかにするための栄養学的研究、特に論より証拠という栄養の疫学的実証的研究の結果、「地中海食と健康」というものが世界に広がっていった。残念ながら、日本食はこれらの研究資料が乏しいために、現在、世界では参照しにくい状態にある。しかし、世界は求めているというように私はアメリカの文章を読みました。
 現代日本人の食事は栄養学的には地中海食と類似する、共通する点を多々有してございます。一方で、相違点もございます。これを科学的に客観的に明らかにしていくことが将来のために重要だろうと考えます。国内研究におきましては、朝食に御飯派は朝食にパン派よりも総じて好ましい食品群や栄養素の摂取量になっていた。ただし、食塩の摂取量が多いという課題は確かに有すると考えられます。
 まとめまして、質の高い、論より証拠の栄養疫学的実証研究を数多く実施し、この検討会の中では結論を出せないかもしれませんけれども、長期的な視点に立って、未来の日本に、そして未来の世界の人たちのために日本食の健康影響について検証していくことが重要であると私は考えております。
 以上でございます。
○中村座長 ありがとうございました。
 ちょうど時間どおりに進んでおりますが、これから意見交換に移りたいと思います。
 本日は、さまざまな分野の先生方にお集まりいただいております。資料2の「検討の方向性」に示されたとおり、健康な食事には、健康状態や身体状況、栄養、食品など、そちらに示されたような要因がかかわっていきますので、このような流れで順に御発言をお願いしたいと思います。
 なお、事務局や先生方への質問があれば、あわせてお願いしたいと思います。
 時間が非常に限られておりまして、多くの先生方が参加されてきていますので、お1人2分か3分程度で、きょうはまず顔見せも含めて御意見をいただければありがたいと思います。
 健康、食品、調理、給食、家庭経済、生産・流通・経済のような順序で御意見をお伺いしたいと思います。
 まず、健康の観点から田中構成員にお願いしたいと思います。
○田中(啓)構成員 最初に振られると思いませんでした。
 私は、生命科学の研究者でありまして、もともとは座長と同じ徳島大学栄養学科の卒業生でありますけれども、主にたんぱく質の代謝研究を細胞・個体レベルでやってきています。
 ただいま詳細な最新の発表をお聞きしました。学術的な観点から申しますと、日本は栄養学に対するコホート研究といいますか、そういう長いスパンでの基礎研究が非常に不足しているのではないかと感じました。したがって、栄養、料理というふうな食生活を中心とした視点から、学問的に栄養学を発展させていくことが必要であり,学術的な基盤を背景とした「健康な食事」の指針の策定が重要であると思いました。た。日本の素晴らしい食生活の根拠となるような、先ほどエビデンスという話がありましたけれども、栄養学としての学術的な進展が非常に欠けているのが日本の特徴ではないかと個人的には感じました。
 私は一科学者ですので、どうしてもそういう学術的な観点からの意見となります。
○中村座長 ありがとうございました。
 では、岡村構成員、お願いします。
○岡村構成員 健康というか疾病との観点で意見を述べさせていただきますと、先ほどの佐々木先生の資料のSeven Countries Studyというか、1964年ぐらいまでのデータで、このとき、データで見ると、日本人は心筋梗塞が一番低い。逆にこのとき日本は、先進国の中で脳出血の死亡率が断トツで高かった時代でして、脂肪が低くて塩分がものすごく高かったというのがこのときの日本人の食事背景。それが先ほどの流れで脂肪摂取量が上がってきて塩分がそこそこ減ってきたということで今の長寿に至っているのです。要するに、低脂肪の高塩分から、今は恐らく中脂肪の中食塩ぐらいのところに来ている。
 何が言いたいかといいますと、食べ物というのはバランスなので、普通に食べていくと、どっちかをとればどっちかが引っ込んだり、そこが機械的な一方向ではいかないので、どうバランスを保てるようにしていくかというところが今後の一つの課題になっていく。そういうことが重要であろうと今の流れとして思ったところです。
 それから、研究については、栄養素の疫学というのは、一種のパブリケーション・バイアスというか、栄養素については論文は書きやすいので、そこに特化したものは出る。ただ、食パターンとか文化まで入れてしまうとなかなか理解されにくいので、誰も好んで難しいところに論文を書きにいかないので公表されないとか、そういう事情が恐らくあるのだろう。今の研究領域から見たら、そういうことが言えるのかなと思います。
 研究している人間は、日本の食生活というのは、恐らく、その塩分のところを何とかすると非常にいいものだろうということは思っているのですけれども、どういうふうな形にしたら発信できるかが非常に大事だというのが正論からは1点。
 もう一つ、武見先生の御発表と絡んでくるのですけれども、理想的に調理して、みんなで食べてというのももちろん大事なのですが、現実に今、単身世帯とか、結婚されない方とかがふえてきたりすると、その実情に合わせて、その範囲の中で健康に食べるにはどうしたらいいかという別の側面も多分考えていかなければいけない時代に来ているのではなかろうかと思いました。
 簡単ですけれども、以上です。
○中村座長 ありがとうございました。
 次に、幣構成員、お願いします。
○幣構成員 よろしくお願いいたします。
 私は、現在医療機関に勤める管理栄養士として、日々、疾病をお持ちになっている患者さんたちを目の前にして栄養管理・栄養治療に関わる仕事をさせていただいております。この疾病治療というのは、基本的には御家庭で摂られてきた食事のバランスや量の問題があり、そういったところが大きな疾病につながっていると考えています。病院で提供されます「治療食」というのは、日本食の原点を振り返って、適切な食事の習慣を提供し、バランスや量についての栄養教育を行っていくということが基本になっておりますので、今回、このような「健康な食事のあり方」に関して、課題の検討の方向性を示されていることは非常に重要だと思っていますし、私はここに参加できたことを非常にうれしく思っています。
 現在、私は、京都大学医学部附属病院で糖尿病を中心に栄養治療の研究などをさせていただいておりますが、欧米から出てくる「エビデンスに基づく食事」というものをそのまま日本になかなか持ち込みにくいという現状にあると考えております。特に欧米型とは異なるアジア型の糖尿病の増加が世界的な問題点になっておりますので、できることならば、今お話がありましたようなアジアをターゲットとしたコホート研究やいろいろな日本型の食事研究を進める中で、日本の食事の有用性というものを示し、また、3大栄養素の比率なども、欧米は日本の栄養素の比率を目指しているわけですから、この有用性というものを的確に研究成果として世界へ発信するという大きな目標を持つということが非常に大事な案件かと思っています。
 私は、今回、医療というか、疾患治療の面から意見を述べさせていただきますが、この根本の健康寿命を延ばすためには、この日本食をぜひとも活用するというコンセプトは非常に大事な部分だと思っておりますので、何かお役に立てることがあればと思っています。
○中村座長 ありがとうございました。
 では、藤谷構成員、お願いします。
○藤谷構成員 藤谷でございます。救急車のたくさん来る総合病院でリハビリテーション科の医師をしております。
 多分、呼んでいただいたのは、リハビリテーションの中でも、摂食・嚥下障害、咀嚼能力の低下、嚥下能力の低下のリハビリテーションを専門にしておりますので、 だんだん能力の落ちてきた高齢者の方をどうするか。特に日本は箸文化が強いので、スプーンですくうようなものに対する抵抗が非常に強く、かたいものを食べての窒息とかの問題もあります。高齢者がいかに長寿食に移行していくか。もちろん、歯を失わないとか、嚥下機能を落とさないということも大事ですけれども、80歳ぐらいになってきたときにも食べられる長寿食にいかに移行するかという問題が大きいかと思います。
 あとは、日ごろリハビリテーションをやっておりまして、外出する、物を買う、調理する、そういう能力がさまざまな理由で低下してきた障害者の方とか虚弱な高齢者の方々がいることを痛感していますので、供給体制も重要と思います。今回、非常に多くの供給体制側の方が参加されて、供給体制にも配慮された会議構成ができているのがすばらしいと思います。
 あと資料の「健康日本21」のところにもにも少し記載があるのですけれども、具合の悪い方、糖尿病になる方とかは、健康への意識が薄いといいますか、そういうところがどうしてもあります。意識の高い方だけではなくて、そういうこぼれそうな方々をいかに救うか。それは次年度以降の問題かもしれませんけれども、そういうところをしないと、トップのクラスはいい健康状態が維持できるけれども、健康についてを意識できない、あるいは考慮できない人たちが日本の疾病をふやす状況になってしまうのではないかと考えております。
 今後ともよろしくお願いします。
○中村座長 ありがとうございました。
 引き続きまして、高田構成員、お願いいたします。
○高田構成員 高田でございます。このところ、身体活動と栄養・食事の両面から介護予防関係のことをさせていただいています。
 先ほど岡村構成員が申しましたように、このところの食習慣というのは大変大きく変化してきておりまして、現在の高齢者の方というのは、非常に変化してきた中のとてもよいバランスのところの食事ができていたようなところがあるかと思います。ですので、各世代を見てきたときに、世代間差も非常に大きいので、日本型の食生活というのは年代的に大きく変化してきた世代と西洋化がすごく進んだ世代と、どこら辺が一番特徴と捉えるかというのが一つ大きな問題かと思っています。
 もう一点は、健康志向とか、食の安定とか、非常にこだわりのある方、あるいはグルメ的においしさにすごくこだわりのある方。一方で、全く関心がなくてどうでもいいと思っている方など、食事に対する価値観も非常に多様化しておりますので、その辺を、健康な食事という意味で、食事摂取基準とは違って、もう少し味わうとか、楽しむとか、生活全体を見て、特に高齢者の方ですと、食欲がある状態が維持できるような生活というような広い視点もできれば欲しいという点があります。
 また、今回、外食産業等を含め、非常に多くのいろいろな方が来ております。高齢者のおひとり暮らしの方、高齢者世帯の方を相手にしておりましても、理想はわかるのだけれども、それを日々、3食365日継続するのが非常に難しいということが大変大きな問題になってきますので、どんな状態の方でもそれが実現しやすいような体制を含めた提言ができていけたらと思っております。
 以上です。
○中村座長 ありがとうございました。
 引き続きまして、渡邊構成員、お願いいたします。
○渡邊構成員 渡邊でございます。
 もう30年ぐらい食品成分表にかかわっておりまして、大学では調理学や食育論等を教えさせていただいており、千葉県では「健康ちば21」等の計画にもかかわらせていただいております。今回のようなメンバーに入らせていただき、ありがとうございました。
 今回、食品成分表の比較ということで事務局から、なぜ日本の食品成分表の食品数が諸外国に比べ少ないのかという質問がございました。日本人は素材に非常に恵まれた国で暮らしており、米に水を加えて炊くというとてもとても簡単な食事(飯)を主食としてきました。飯にはお砂糖とかお塩も入ることなく、非常に健康的な食べ物を主食としてきたということです。パンが食品成分表に入ると、砂糖の量等さまざまなのでバリエーションがありますありが、日本の主食である飯には必要ではなかったということです。
 それから、主菜の魚もお刺身が非常に重要な料理であって、その次に、焼くとか煮るとか簡単な料理だったので、その点についても成分表に複雑な料理を入れるということを余り考える必要がなかったのです。
 副菜の野菜もゆでるということが主です。
 このように、調理による成分変化も、三訂成分表のころは必要なかったし、四訂成分表のときには、成分表に、魚を焼く、煮る、野菜をゆでるなどが入りましたが、栄養計算には利用されていないような状況でした。そこで、五訂成分表では、調理した成分値の栄養計算への使い方が示され、使っていただけるということになったように思います。
 また、日本では、米国や英国の成分表と異なり野菜類の中にいもを入れていません。いもは成分的には穀類の仲間でエネルギー源と考えられますし、日本でのいも類の食べ方が野菜とは区別されているというのが従来からの成分表の委員会の考え方でした。このように、日本の食文化は外国とは違うところもあるので、その辺は考慮していただきたいと思います。
 ところで、「副菜」という言葉の定義ですが、お料理の世界では「小さいおかず」でいいのです。卵焼きでも、茶わん蒸しでも。しかし、厚生労働省の食事指針の「副菜」は、野菜、海藻、きのこ。おいももちょっと入るかもしれませんが、いわゆる食材で決まっていると思うのです。その辺のお知らせをうまく行っていただきたいと思います思い。
 千葉県では「ちば型食生活食事実践ガイドブック」という、食事バランスガイドを配膳の形で周知するということをやっています。今年度からそれを「グー・パー食生活」というふうに名前を変えましたら、マスコミ関係にも取り上げられて、地域にすごく浸透するようになってきました。ですから、こういったものをつくったときに、ネーミングも大事なのだと思います。
 ありがとうございます。
○中村座長 引き続きまして、江頭構成員、お願いいたします。
○江頭構成員 地域栄養ケアPEACH厚木の江頭と言います。
 私は、神奈川県の厚木のほうでフリーランスの管理栄養士として地域で活動しています。活動自体は、離乳食から高齢者まで非常に幅広くなっていまして、保育園の食育等から、主に高齢者の在宅訪問栄養指導という形になっています。
 今回「健康な食事」というところで、主に私の専門はどうしても高齢者になってくるのですけれども、先ほど藤谷先生のほうでお話があった、どうしても高齢になることでいろいろな疾患を持っていらっしゃって、そして食べられなくなってくるというところで関わるときに、資料2の今後はというところでもありましたけれども、結局、どういった形で口に入るかというところでは、食事構成、栄養素だけではない、食形態というところも非常に大事かなと思っています。
 また、実際、現場で地域で活動しておりますので、例えば複数の診療所での外来の支援もさせていただいていますが、その地域によってさまざまな地域性があって、畑の多い地域と都市型の地域、同じ厚木の中でも、食文化とか環境の違いというものもすごく感じています。
 また、特定保健指導では、これは介護予防にもつながるのですけれども、男性の方のひとり暮らしや、夜遅く帰ってからの食事の問題等々ある中で、いわゆる栄養素だけではない、食材の選び方と調理方法、そして味というところで、その3つを組み合わせることで初めて、整った、飽きのこない長続きできる食というところで提案させていただいています。
 当然ですが、手づくりばかりではいかないわけですから、いろいろな外食、中食というようなところの紹介もさせていただいたりしているというところで、今回いろいろな方が参加されているこういった中で私も勉強させていただきながら考えていきたいと思っています。
 よろしくお願いいたします。
○中村座長 ありがとうございました。
 引き続きまして、田村構成員、お願いいたします。
○田村構成員 おはようございます。厚生労働省からいきなりお電話を頂戴いたしまして、何で私がと思った次第でございます。
 メンバーを見ますと、非常にかたい方ばかりだなと思っております。ゼリーをつくるときに、普通の果物を入れるとちゃんとゼリーができるのですけれども、パイナップルとかキウイとか、そういうものを入れますと酵素が働きますので、ゼリーが酵素によって分解されてやわらかくなってしまいます。固まらないゼリーができます。多分、私はそういう役目を果たすのではないかと、きょうは参りました。先ほどからいろいろと難しいお話を聞かせていただいておりまして、ほおーっとか思いながら聞いております。
 平成22年に厚生労働省の皆様から「現代の名工」を頂戴いたしまして、そんな御縁で多分お声がかかったのかなと思っております。それ以来、学校とか幼稚園のPTAの方、もちろん、私の祖父が女子栄養大学の一番最初の客員講師として行ったという経緯もありまして、ちょうど私も56歳になりますが、いろいろなところからこういうお話をいろいろ頂戴いたします。全く場違いではないかと思ってはいるのですけれども、おととしも厚生労働省から塩分摂取量は1日6グラムにせよという減塩プロジェクトのお話があって、1食2グラムの弁当をつくってくれないかということ。1食2グラムの塩分というのは、薄口しょうゆで小さじ2杯弱です。それでお弁当をつくれというすごいプロジェクトでございます。
 その教授は、人間には食塩は要らないのだと豪語した先生で、そこでちょっとバトルになりまして、絶対嫌われてしまったのだなと思ったら、また名古屋でそういう学会があって、そのときに2年ぶりにお呼びいただいて講演もさせていただいたのです。
 武見先生のここに書いてありますように、食事を楽しむとか、家族団らんとか、しっかりかんでゆっくり食べましょうとか、もちろんよくわかっているのです。わかっていて、わかっていて、昔からよくわかる。「ま・ご・わ・や・さ・し・い」というのがありますよね。豆、ごま、何とかとありますね。そういうものをちゃんと食べることが一番いいのだというのはもちろんわかっているのですけれども、家族全員で食べる時間がなかなかない。それから、全員そろうことができない。いろいろな状況があります。だから、タニタ食堂がいっぱいできたり、ああいう本が売れたり、いろいろなことをすると思うのです。
 NHKの「きょうの料理」にしても、4人前、6人前という人数の分量から、2人前にしてくれということで、3年ぐらい前から要請がありました。煮物をつくるときに、2人前の煮物はどうやってできるのでしょうか、高野豆腐を2人前というのはどうやって煮るのでしょうかと。いろいろやったのですけれども、2人前でないと本が売れないのですということ。そういう状況が現状でございます。
 なので、ここでこうやって論議をする、机の上でいろいろお話しして研究なさるのも大事なことですけれども、そういう現場へ行って、お母さんたちに、大根はこうやってむくのですよ、こうやって切るのですよ、大根の繊維はこうなんですよと言うと、へえーっと200人の人がうなずくとウェーブができるのです。そのぐらいに基本的なところからやっていかなければいけない。私としては、そういうところからうちの若い衆も育てつつ、そういうお話があったら、時間のある限りなるべくお邪魔して、皆さんにお伝えできるようにしたいと思っております。
 今一番大事なことは、何を食べるかというよりも誰と食べるかというのが私のテーマであろうかと思います。
 私は余り難しい話はなかなかできませんけれども、ぜひまた機会がありましたらよろしくお願いいたします。
○中村座長 どうもありがとうございました。
 引き続きまして、高戸構成員、お願いいたします。
○高戸構成員 高戸でございます。私は、給食サービスの事業に携わる人間としてお話をさせていただこうと思っております。
 今回「日本人の長寿を支える『健康な食事』のあり方に関する検討会」につきましても、給食という事業を取り上げていただいて非常にありがたく思っております。給食というのは、お子様が産まれた産院のところから、社員食堂、学校給食、あるいはケアも含めて、極論を言えば、揺りかごから最後の一口まで食事を提供させていただく非常に広いライフステージで仕事をさせていただいております。ですので、私どもの事業はいろいろな形で健康に携わる機会がたくさんありますありま。一方で、お客様からも非常にニーズが高い。
 例えば社員食堂とかもそうなのですけれども、ヘルシーメニューというのを提供させていただいております。ニーズも高いです。しかし、そこで提供させていただくヘルシーメニューは、それぞれの基準がばらばらであったり、なかなか1本の線でつながってきていないところもございます。今回、この検討会で「食事の質の保証」が検討されます。これらができ上がりますと、我々、サービスする立場からすれば、新しいサービスがどんどんでき上がってくるだろうなということを期待としております。
 新しい「健康日本21(第二次)」でも、給食施設で管理栄養士、栄養士の配置率を高めるという目標が提示されたことは、質の高い食事やサービスで健康に寄与できるだろうということも検討されると考えて考えおります。いろいろな意味で給食事業が発展できるように参加させていただければと思っております。
 よろしくお願いいたします。
○中村座長 ありがとうございました。
 引き続きまして、宇野構成員、お願いいたします。
○宇野構成員 宇野でございます。私は、病院給食や高齢者施設の経験を経まして、予防に取り組みたいという一心でタニタに入社いたしました。現在、タニタで管理栄養士として特定保健指導のスタート面から特定保健指導を中心に対応させていただいています。
 きっとここに呼ばれた理由は、社員食堂の本が売れたせいなのかなとも思っているのです。資料にもあります『丸の内タニタ食堂』という本が最新刊になりますけれども、おかげさまで、3部シリーズで520万部の売り上げとなっています。それだけ多くの方がタニタの社員食堂に対してや、健康食に対して、どういうものなのかということで関心をお持ちいただいたというのはとてもうれしく思っています。
 今、私ども、10名近くの管理栄養士が全国でタニタ社員食堂のコツをお伝えするというセミナーをさせていただいており、のべ、7,000名以上の方が受講していただいている状況です。そのセミナーを聞いても、本を持っている方は多くても、実際、毎日はできないとおっしゃるのが現状なのです。なので、理想と現実をどう埋めるか。今回も中食、給食、外食の先生方もいらっしゃるというところで、おいしい健康食を求めているこの国民のニーズにどう応えていくかというところで、私のふだんやっている仕事内容をお伝えできればとも思っています。
 社員食堂の資料はこちらの17ページに入れさせていただいておりますが、現在、タニタ食堂では、500キロカロリーから600キロカロリーで、塩分3グラム以下で、野菜の使用量を150グラム以上ということでお伝えしているのと、あとは、よくかむことの重要性をおつたえしています。かみごたえのある食事で、1回の食事に20分以上かけて食べてくださいということで、食堂のところにタイマーを置いてあるのです。ただ、食べるのにも時間がかかるし、つくるのにも時間がかかるこの現状をどうにか現実的な生活感のあるスタイルで落とし込みできたらなと思っています。
 日本の食文化というところでは、定食とか弁当というスタイルで海外にどんどんPRできたらいいなとも思っています。佐々木先生の地中海食のお話にもあったのですけれども、日本食のよさのところで、今、野菜、海藻類、大豆、魚とかが不足している。メタボの方に足りていないという現状のこれらのものたちをしっかりとおとりいただいて、ビタミンやミネラルも不足がないように。どうしてもカロリー、カロリーと、国民は皆さん、カロリーを抑えなければいけないと思っていらっしゃるようなのですけれども、そうではなくて、不足しがちなビタミンやミネラルが大事なのです、そういう意味でのバランス食でタニタ食堂を例にしてくださいというふうにお伝えしております。どうしても理想と現実のギャップがあって、ウエブサイトやモバイルサイトに多くのお問い合わせをいただいている状況なのです。特に成長期のお子さんをお持ちのお母様からも、うちの子供はこれでいいのですかとか、疾病をお持ちの方からは、こういう病気があるのですけれども、これでいいですかとか聞かれるので、アメリカのMy Platesみたいに、その疾病ごとだったり、成長期のお子さんにはという、簡単な、わかりやすいアイコンとかがあったらすごく便利なのにと思いながら、日々皆さんのご質問に答えている現状です。なので、国でどうにか基準を決めていただけるとうれしいです。
○中村座長 ありがとうございました。
 では、田中延子構成員、お願いいたします。
○田中(延)構成員 田中です。
 私は20年ぐらい学校給食の栄養士をしていまして、その後、北海道教育委員会で学校給食とか栄養士たちの指導にかかわって、ちょうど栄養教諭制度ができたとき、平成17年から、文部科学省の学校給食調査官として仕事をしておりましたので、ほとんどずっと学校給食一筋の仕事をしてきました。
 昔、最初のころは、私の認識としては、学校給食は食育のためにあると思っていたのです。保護者の方に、学校給食はとてもありがたいのです、学校給食があるからうちの家庭は助かっていますとか言われると、すごく複雑で、いや、そうではないのですよ、これは教育のためなのですよと思っていたのですけれども、世の中がだんだん変わってくると、それも学校給食の役割になってきたということを認めざるを得ないなと考えています。
 特に最近、調査をしてみますと、家庭の食生活が本当に悪いのです。学校給食と学校給食のない家庭の昼食を比較してみますと、カルシウムは家庭では4分の1ぐらいしかとれていない。野菜も3分の1から4分の1しかとれていないということで、非常に危機意識を持っています。幼児・児童・生徒、私は高校生までと思っていますが、それらの子供たちの対症療法になってしまうかもしれませんけれども、給食1食が充実したものを提供できているということは、非常に残念ですが、これは欠かせないのではないかと思っています。
 それでは一体どういう食生活をしていったらいいのだろうかと考えたときに、ほとんどの方は、何をどのぐらい食べたらいいのかわからないというのが現実で、とにかく、お菓子でも何でもいいからおなかに入れておけばいいのではないかというような人がどんどんふえていると思います。学校給食の役割もさることながら、何をどのぐらい食べたらいいのかということを国の立場としてしっかりと発信していくことがすごく重要だと思っています。例えば、1日に3食食べることが悪いだとか、睡眠時間は短くていいだとか、いろいろなことを声を大にして情報発信するので、きっと国民は何を捉えて自分の食生活を営んでいったり、生活を営んでいったらいいのかわからない現状になっていると思います。
 そういう意味で、この委員会は非常に有意義な会だと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
○中村座長 ありがとうございました。
 では、大竹構成員、お願いいたします。
○大竹構成員 多分、私が一番食に関係ない人間かなと思っております。家庭科教育を専門にしております。家庭科教育の中には、食生活領域は非常に大きな領域としてあるのですけれども、実は私はそこの専門家ではなくて、どちらかというと、生活経営とかライフスタイルがどうなのかというところを専門にしております。なので、こういう私がこんなところに来てお役に立てるのですかということを申し上げたのですけれども、全く違う領域のほうから考えていただくというのも重要ですからということでお声をかけていただきましたので、多分、今までと全然違った視点からになるかと思いますが、参加させていただきました。
 家庭科教育の場合には、生活を自立的に自主的にできるということを非常に大事にしておりまして、今、それぞれに御報告していただいたようなバランスをどのようにとるかとか、それを自分でつくったらどうなるのかということを中心に家庭科教育では食生活を教えておりますけれども、現実としては、今いろいろな方々がおっしゃったように、自分でつくるという生活からほど遠くなっている。そうすると、何を選んでいくかということになります。
 私が最近、さらに一歩踏み込んで考える必要があるかなと思っているのは、今、タニタ食堂さんとか、田村さんとかでは、あるいは給食のほうからも、非常に健康に配慮した食事が提供されており、それを本当に全部食べれば健康になるかと思いますけれども、人によっては、これは嫌だとか、おなかがいっぱいとか言って、食べないで残して捨ててしまうということもあるだろう、すなわち人々が最終的に本当に食べているのか食べていないのかというところまで見ないと健康的な食生活になっていない、多分そこも含めた食生活を考えることが必要なのではないかと思いました。
 そういう意味では、食を与えられる、それを食べるだけではなくて、それを主体的に食べていく、あるいはそれを選んでいく。そして、残さない。あるいは、これは嫌いだけれども、これをこっちに変えて食べましょうとかというような力が必要になっているかなと思いました。
 それと、家庭科教育の場合には、全くわからない、いろいろな知識がない子供たちに教えるには、先ほど武見構成員がおっしゃったように、非常にわかりやすい単純な標語みたいなもので伝えていくことが必要かなと思っております。家庭科教育の中では、では、何をつくりましょうといったときに、夕飯とかは多くは親がつくったりしているので、子供たちには自分のお弁当ぐらい自分でつくりましょうということで、お弁当をつくるということを一つの教材にしております。先ほどワンプレートとおっしゃったけれども、日本の場合には、あの四角いお弁当箱にどこまで主食を入れて、どこまで主菜を入れてというのを学ぶというのはあのワンプレートの発想と同じなのだと改めて思いながら伺っていました。そういう家庭科の中でのいろいろな工夫というのがもしかしてお役に立てるかなと思ったりしました。
 あと、ライフスタイルというところから見ますと、実はここでいろいろな資料を提供していただきましたけれども、例えば性別によって随分違うのではないか、男性と女性で生活スタイルが違い、そこで食生活も大きく違うのではないかと思います。食生活の管理も男性と女性では随分違っていると思いますので、その辺にどのようにアクセスしていくかというところの視点が必要かなと思います。
 あるいは、経済階層によっても相当違うかと思います。具体的に調査をしているというわけではありませんけれども、例えばうちの学生などを見ていますと、家庭科の学生で食のことを学んでいるにもかかわらず、お昼はコッペパン1つだったり、カップラーメン1つだったりするのです。あなた、何でそんな食事をするの、習っているでしょうと言うと、お金がないから100円で食べられるのはこれなのですとか言って、わかっていても100円で済ます食事は何なのかというところで日々生きている。学生は多分、ちゃんとすればできるのだろうなと思いますけれども、そうやって食まで切り詰めなくてはいけないような経済階層の人たちに、理想を提供するだけではなくて、そこのところにもしっかり栄養バランスがとれた食事が届くような社会構造と言ったらいいのでしょうか、提供のスタイルというのもこれから考えていかなくてはいけないかなと思った次第です。
 ばらばらの意見で申しわけありませんけれども、以上です。
○中村座長 ありがとうございました。
 では、八幡構成員、お願いいたします。
○八幡構成員 初めまして。パルシステム生活協同組合連合会の八幡と申します。
 私どもは、お店を持たない生協です。毎週カタログを配付し、食品と日用品をお届けするという事業を行っております。
現在約120万世帯の組合員さんが登録されおり、カタログから商品を利用いただいている実利用の組合さんは毎週約70万世帯です
 パルシステムは食育にかなり力を入れていることに加え、赤ちゃんがいらっしゃる若い御家族から、50代から60代の団塊の世代の方々までライフステージ別のカタログをつくっているということもありここに呼んでいただいたのかなと思っています。そうそうたるメンバーの皆様の中において、私は、主婦の立場からの意見が出せるのかなと、お話を伺いながら思いました。
組合員さんに毎週カタログで商品を選んでいただくだけでなく、パルシステムは食の安全についてや、日々の食卓をどういうふうにしつらえていったらいいかという情報提供も行っており、毎日の食を大事にしたいという方たちがパルシステムを選んでおられると思うのです。そういった組合員さんたちからは毎週いろいろな声をいただきます。今、パルシステムの組合員を構成している平均的な年代は40代半ばぐらいですが、が、皆さんの日々の食事の大きな課題として本当によく聞こえてくるのが、とにかく子供に野菜を食べさせたい、どうやったら野菜を食べてくれるのかということ。ああしたらいい、こうしたらいいという情報提供などもいただきます。あるいは、小さな赤ちゃんをお持ちの組合員さんたちは、赤ちゃんに何をどう食べさせたらいいのか、日々悶々と悩んでいらっしゃる様子が受けとめられます。
 逆に、お母さんたち、お父さんたち、大人たちはどう食べたらいいのかしらというところはなかなか意識が向かないのもかもという印象は確かにあります。子供たちをどう健やかに育てるかというところには高い意識があっても、これから成人病の課題などを抱えていきそうなご自分たちについてはまだまだ意識しないところもおありなのかなと。それは自戒も込めているのですけれども、思っております。
先日、60代前半ぐらいの組合さんとお話ししたのです。豊富な食経験を重ねていらっしゃるとは思うのですけれども、「私は御飯を全然食べない」とおっしゃるのです。それはなぜかというと、低炭水化物ダイエットをやりたいと思っているから。御飯はほとんど食べないし、お米も買わないとおっしゃっていまして、大変驚きました。
 そういった日々の食卓をどうしつらえたらいいかとお悩みの組合員さんたちの意見などもうまく皆さんにお伝えしながら、参加できればと思っております。
 よろしくお願いいたします。
○中村座長 ありがとうございました。
 では、鈴木構成員、お願いいたします。
○鈴木構成員 おはようございます。私は、株式会社ローソン、コンビニエンスストアマーケティングステーション部長の鈴木です。よろしくお願いします。
 コンビニエンスストアのローソンには、1日当たり800人以上のお客様がいらっしゃっていて、全店ですと1日当たり800万人以上の方にコンビニに行っていただいているという状況です。今までは若い男性の方が多かったのですが、昨今は女性の方や御高齢の方にたくさんご利用いただいて、多様化しているのが現状です。
 その中で、我々コンビニとして、求められるいろいろなニーズに従って商品を準備しているというところがあり、3,000点以上の種類がある中で、食にかかわる部分がかなりのウエートを占めております。その中で、健康にも気遣ったようなものを出して、その方々がずっと買い求められていくような形をとって、継続性のある暮らしをしていただかないと、我々コンビニとしても立ち行かないというのも正直ありますので、そこのところを加味しまして、予防医療、それから医療に行った方々をつなぐような役割ができないかということで、今年の5月末に「健康を応援するローソン」を目指しますという宣言をさせていただきました。
 今回もお呼びいただいて、新参者でとても恐縮していて、田村先生によると、多分、パイナップルのほうに入るのではないかと思うのですが、私なりにコンビニの実態、席朝族とかにも代表されるような、実態に即したガイドラインを皆さんおっしゃっていたと思いますけれども、かゆいところに手が届くようなガイドラインが必要だと考えます。それから、800人が来店されていますので、考え方がスムーズに浸透するような施策にご協力できると考えます。コンビニを普通に利用していたら健康的な食事をとっていたみたいなスムーズな浸透のところのほうを検討できると思います。
 よろしくお願いいたします。
○中村座長 ありがとうございました。
 では、藤島構成員、お願いいたします。
○藤島構成員 東京農業大学で農産物、主に野菜の流通の調査・研究をやっている者です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回、野菜のことについて非常に強調していただいていて、私もそれにかかわっているということでは大変ありがたいなと感じております。ただ、私自身は、この研究会の中ではある意味では傍流になりますので、できるだけお役に立ちたいとは思っておりますけれども、十分お役に立てるかどうかちょっと心配しておるところでございます。
 私、流通の関係で、食生活のあり方にも興味を持っておりますが、その中で特に注目しているのは、もう既に御指摘の点もある高齢者の方々が非常に多様な食生活をされているといいますか、食形態が非常に多様になっていることです。
 その中の一つとして、例えば、私はラーメンが好きなものですから、よく安いラーメン屋さんに行くのですけれども、そういったラーメン屋さんで高齢者の方の数がここ10年ぐらい非常にふえてきているのではないかと思うのです。そこに来られる高齢者の方は、安いラーメンだけを注文される。私の場合、ラーメンプラスぎょうざが多いのですが、多くの方はラーメンだけ。ラーメンだけでも決してカロリーが少ないということではなく、高齢者の方の場合、それで十分のように見受けられます。そういった食生活をされている方も結構多いのではないかと考えると、先ほどから御指摘いただいているように、さまざまな食事の形態がある中で、それぞれ健康な食事というのはどういうものなのだろうか。特に高齢者の方の場合、単身の方などの場合は共食ではなくて、ひとりでわずかな食事をされているということを考えると、健康な食事とはどういうことになるのだろうか。この場でいろいろと教えていただければと考えているところです。
 よろしくお願いいたします。
○中村座長 ありがとうございました。
 では、最後に、生源寺構成員、お願いいたします。
○生源寺構成員 生源寺でございます。
 私は、今の藤島構成員とやや近い分野で、農業あるいは食料の経済学を専門にしております。大竹構成員ともやや近いことになるかもしれません。いろいろ御発表、あるいは役所からのお話なりに触発されて、いろいろ感じていることがございますけれども、2つ、3つに絞って申し上げたいと思います。
 日本の食について、エビデンスに基づいた評価ということがこれまで余り行われてこなかったということを中村座長はおっしゃいました。そのとおりかもしれません。ある意味では、今、そういう仕事をするのに非常にいい時期に来ているのかなという感じもしております。
 と申しますのは、戦後生まれの方が高齢者になりつつあるわけですけれども、戦後のこの国の食の変化は大変なものだったと思います。恐らく、1億人のオーダーの人口の地域で起きた変化としては、歴史上、未曽有のことだったと。肉も8倍、9倍食べるようになり、油も5倍とるようになり、そういう変化を経過してきて、恐らく、この10年、20年である程度落ちついてきたという状況かと思います。
 コホート研究というお話がございましたけれども、この変化をいわば経験してきた世代から、ある程度落ちついた世代に移行しつつある。こういうもとでの評価ということは非常に意味のあることだろうと思っております。
 私、地中海のことは存じ上げないのですけれども、恐らく、ヨーロッパ、あるいはヨーロッパ起源の国は比較的早い時期にある程度の所得のレベルに到達していて、それほど大きな変化はないというところが割に多いのではないかと思います。ところが、アジア、特に日本は大変な変化を経験したわけで、それがある程度落ちついた。そこで1回振り返って現状を見てみるということが非常に大事かなと思っております。
 恐らく、アジアの経済成長の第二集団のトップをこれまで日本が演じてきたわけですけれども、これからどうなるかわかりません。アジアの変化を経験しつつあるあ国々にとっても非常に意味のある仕事になると思っております。
 もう一つは、経済という関係でいいますと、私は存じ上げなかったのですけれども、今回この仕事が「日本再興戦略」の中に位置づけられていると。私は、商売柄、農林水産業のところは読んだのですけれども、ほかのところは余り読んでいなかったものですからちょっと驚いたのですが、10年で所得が云々というより、もう少し長いスパンでこういった仕事は重要性があると認識しております。
 今、この国の就業者の数は6,000万人をちょっと割ったかと思います。そのうち、食品の産業、農業、水産業、食品の加工・流通・外食を含めて1,000万人を超えています。特に農業、水産業はもちろんですけれども、食品の製造の産業は地方に密度が高く立地しておりますので、そういう意味で、雇用機会としても食の産業は非常に重要です。この産業がある意味では安定した形でいい形の社会貢献を行うということは、いわば地域の雇用の力を安定させることにもつながると思います。
 ただ、この1,000万人を超える食の産業の就業者ということは、裏返しますと、加工の度合いと外食の比率の高さということにもつながっているわけでありまして、食事バランスガイドなり食生活指針を私なりに読みますと、基本的には家庭食、内食の中での調理・料理という部分がベースだと思いますけれども、今は外食が飲食費の支出の中の3割、いわゆる調理済みのものを含めて加工が5割という時代ですので、そういう食の中でどういう形のいい方向への誘導なり、誘導という言い方はよくないのかもしれませんけれども、変化を求めるかということも大事かなと思っております。
 最後になります。既に何人かの方は御指摘ですけれども、特に高齢者の場合にそういう傾向が強いと思いますが、かなりばらつきのある集団になってきているところがあります。所得の水準もそうでありますし、家族の構成、そういったいろいろな面でばらつきのある集団になっている。そういう中で、平均値、あるいは比較的意識の高い方だけではないようなスタンスで考えていく必要があるかと思っております。
 余り細かなことを申し上げませんけれども、実は公表統計ではばらつきがなかなかうまく把握できないという状況にあるかと思います。
 以上です。
○中村座長 ありがとうございました。
 本当にいろいろな御意見をありがとうございました。ゼリーが固まるかどうか、これからが大変な仕事になると思いますが、御協力のほどをお願いしたいと思います。
 次回から、本日いただきました御意見をさらに深め、各領域ごとに何人かの先生からは情報提供をお願いすることになるかと思います。
 最後に、局長から一言御感想を。
○矢島健康局長 大変貴重な御意見をありがとうございました。
 最初にお話しすると議論を誘導してしまうことになると思ったので、今ここで私の思いを伝えさせていただきます。資料の28ページをお開きいただきたいと思います。
 実は先ほど食事摂取基準のお話をさせていただきました。この検討会では、医学ですとか栄養学の先生方を中心に、例えば糖尿病の治療ガイドラインですとか、動脈硬化、循環器病とか、専門分野の先生方にも入っていただいています。我々が目指すのは最終的には疾病予防、重症化予防ですので、脳卒中だとか、心筋梗塞だとか、そういう生活習慣病が減るという観点から議論いただいています
 我々、基本的には「健康日本21(第二次)」をベースにしています。健康寿命を長くするということはどういうことなのかというと、病気にならない、寝たきりにならない。寝たきりにならないということは、脳卒中だとか、心筋梗塞だとか、そういう生活習慣病にならないようにする。生活習慣病にならないようにするためには、そのベーシックな疾患である糖尿病だとか高血圧だとか脂質異常、高コレステロールだとか、そういうふうなものを予防するということが健康寿命を延ばすことにつながっていくと考えています。
 先ほど特定健診の話が出ました。今、毎年2,000万人を超える方々が特定健診を受けている。特に40歳以上、高齢化社会の中では、そういう人たちは、自分の血糖値だとかコレステロール値だとか、そういうデータを見ることができます。そういう中で、自分の健康というものをちゃんと意識できるようになっていますし、病気にならない、仮に糖尿病になった人でも、治療しながら、薬も大事ですけれども、やはり食事も変えないと薬がうまく効きません。ですから、治療をやりつつ、普通の生活をしつつ、どういう食事とセットにすると、例えばヘモグロビンA1cだとか血糖値だとか、そういうものをコントロールして重症化を予防できるのか、発症を予防できるのかというところを、今、我々議論させていただいています。健康である、健康寿命を延ばすということはどういうことなのかということのメッセージも、「健康日本21(第二次)」でぜひ見ていただければありがたいと思います。
 実はこの28ページのところになぜこれを出させていただいたかというと、例えば炭水化物の制限とか糖質制限だとかの話がありました。そのような偏ったいろいろな情報が出ているのです。これは今まさに食事摂取基準のところで御議論いただいているのですが、炭水化物を制限しても、たんぱく質だとか脂質をとってしまえば、結果的にはみんな中性脂肪に行ってしまうという話になるわけです。ですから、太ってしまう。それがいろいろな意味で問題になるわけです。こういうメカニズムだとか、そういうものをちゃんと考慮した上で正しい情報を発信させていただく。ただ単に糖質制限がいいとか悪いとかという議論ではなくて、必要とされる総エネルギーをどういうふうに配分していくのが科学的に正しいのかということを踏まえて検討することが大切だと考えています。
 先ほどメタボの話が出まして、肥満の話が出たのですけれども、メタボ健診の制度設計をやっていて気づいたのですが、欧米ではBMI30以上が肥満なのですけれども、日本人はBMI30以上でいくとかなり数が少ないのです。欧米は30以上でやっていますけれども、日本は25以上を肥満としています。25以上の割合を見ると、欧米の30以上の肥満の率はほぼ同じです。日本人はBMI25以上が肥満、欧米は30以上を肥満とすると、肥満の割合は合うのです。
 なぜそんなふうになるかというと、インシュリンの分泌が違う。日本人は農耕文化で、欧米人は狩猟文化、肉をたくさん食べてインシュリンを分泌する能力を持っている。アジア人はどっちかというと米を主体にしていますから、インシュリン分泌が少なくても済む。その影響があるのではないだろうか。エビデンスがまだ不十分かもしれません。アジアと欧米の人たち、先ほど地中海食の話も出ましたけれども、肉食を中心にしている人たちとアジアは違う。
 先ほどアジアで糖尿病が問題になっているという指摘がありました。米を主食にする文化の人たちはインシュリン分泌が低いわけですから、それだけ太りやすいし、糖尿病になりやすい。
 そういうことも踏まえた中で、日本としての食文化として、人と一緒に食事をするということもすごく大事だと思いますし、高齢化社会の中で、外食だとか中食だとか、時代がいろいろ変わってきている中で、先ほどの健康な食事の基準にするためにはどのようにしたらいいのか。
 これから提案させていただきたいのは、例えばお弁当をつくるときに、我々は野菜が100グラムとか150グラム入っているというのを1つの基準にしたらとか、カロリーも500だとか600だとか単位をもっとわかりやすいカロリーにしたり、塩分を、例えば2グラムとか、2グラムが難しいのであれば3グラムでもいいのかもしれませんけれども、わかりやすい基準ができるような仕組みをぜひ御議論していただければ大変ありがたいと思っています。
 我々日本人はアジアに貢献できるものを持っているのだと思うのです。日本食の文化のよさをぜひ知っていただく。そのようなものがあるのではないだろうかという思いがあります。
 まだまだ不十分な点、まだまだ議論が足らない点はよくわかっておりますので、そういうことも踏まえてぜひいいものにしていただければありがたい。
 きょうは私の思いを伝えさせていただきました。どうもありがとうございました。
○中村座長 どうもありがとうございました。
 では、事務局から御連絡をお願いいたします。
○河野栄養指導室長 次回ですが、8月20日を予定しております。時間や場所については追って開催の案内をお送りいたします。当日御発表いただく先生方には事前に事務局より御連絡いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
○中村座長 どうもありがとうございました。
 5分ほど過ぎてしまいましたが、本日はこれで閉会といたします。ありがとうございました。
 先生、どうもありがとうございました。


(了)

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