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2013年4月15日 第1回今後のがん研究のあり方に関する有識者会議

健康局がん対策・健康増進課

○日時

平成25年4月15日


○場所

厚生労働省 低層棟2階 講堂
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議題

1 開  会

2 議  題 
 (1)座長の選任について
 (2)これまでのがん研究について
 (3)今後のがん研究の展望について
 (4)その他

○議事

出席構成員:堀田座長、石井構成員、石川構成員、上田構成員、上谷構成員、後藤構成員、小松構成員、白岩構成員、祖父江構成員、田村構成員、中釜構成員、西山構成員、野田構成員、眞島構成員、道永構成員、南構成員、門田構成員、米田構成員、米倉構成員

○岡田がん対策推進官 それでは、定刻となりますので、ただいまより第1回「今後のがん研究のあり方に関する有識者会議」を開催いたします。
 事務局を務めさせていただきます厚生労働省健康局がん対策・健康増進課がん対策推進官の岡田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。座長が決まりますまでの間、進行を務めさせていただきます。
 それではまず、厚生労働省矢島健康局長から挨拶をさせていただきます。
○矢島健康局長 厚生労働省健康局長の矢島でございます。
 今回の検討会は、文部科学省、経済産業省、厚生労働省の3省が共同して行う会議でございます。一応、政府を代表いたしまして大変恐縮ですが、健康局長である私から御挨拶をさせていただきたいと思います。
 本日は、大変お忙しいところ、構成員の先生方にお集まりいただきまして大変ありがとうございます。先生方御存じのように、このがん研究につきましては、昭和59年の対がん10カ年総合戦略が始まりでございます。既に30年経過してきているわけでございまして、我々は次の、これが10か年になるかどうかはこれからの御議論になるわけでございますけれども、次の計画を策定するという意味で、今後のがん研究のあり方に関する有識者会議というものを立ち上げさせていただいたわけでございます。
 御存じのように、平成18年にがん対策基本法が制定されました。これに基づきまして、いろいろながん対策の施策が次から次へと講じられているところでございまして、その中の一つとして、がん研究というものはすごく重要な分野だと考えております。これは政府全体として取り組まなければいけないと考えております。
 政府の日本経済再生本部に設置されました産業競争力会議におきましても、重要なテーマの一つとして健康長寿社会の実現というものが掲げられております。新たな成長戦略としての議論が政府として行われているところでございますので、こういった議論とも連携を図りつつ、本有識者会議において今年の夏をめどに一定のとりまとめを行うことを念頭に御議論をいただければ大変ありがたいと思っております。
 検討する時間が厳しいところもございますけれども、お忙しいところ大変申し訳ございませんが、何とぞよろしくお願いいたします。
 私の挨拶とさせていただきます。
○岡田がん対策推進官 続きまして、構成員の皆様方の御紹介をさせていただきます。
 愛媛大学大学院医学系研究科小児医学教授の石井榮一構成員でございます。
 京都大学大学院生命科学研究科研究科長の石川冬木構成員でございます。
 一般財団法人日本食生活協会会長の上谷律子構成員でございます。
 愛知医科大学医学部腫瘍免疫寄附講座教授の上田龍三構成員でございます。
 独立行政法人理化学研究所創薬・医療技術基盤プログラムディレクターの後藤俊男構成員でございます。
 日本医療機器産業連合会副会長の小松研一構成員でございます。
 国立保健医療科学院研究情報支援研究センター研究員の白岩健構成員でございます。
 大阪大学大学院医学系研究科環境医学教授の祖父江友孝構成員でございます。
 福岡大学医学部腫瘍・血液・感染症内科学教授の田村和夫構成員でございます。
 独立行政法人国立がん研究センター研究所長の中釜斉構成員でございます。
 群馬大学大学院医学系研究科病態腫瘍薬理学分野教授の西山正彦構成員でございます。
 公益財団法人がん研究会がん研究所所長の野田哲生構成員でございます。
 独立行政法人国立がん研究センター理事長の堀田知光構成員でございます。
 特定非営利活動法人パンキャンジャパン理事長の眞島喜幸構成員でございます。
 公益社団法人日本医師会常任理事の道永麻里構成員でございます。
 読売新聞東京本社編集局次長兼医療部長の南砂構成員でございます。
 公益財団法人がん研究会有明病院院長の門田守人構成員でございます。
 独立行政法人放射線医学総合研究所理事長の米倉義晴構成員でございます。
 独立行政法人医薬基盤研究所理事長の米田悦啓構成員でございます。
 なお、野木森雅郁構成員、宮園浩平構成員におかれまして、御都合により御欠席との連絡をいただいております。
 以上、19名の構成員の方々の御参加をいただきまして「今後のがん研究のあり方に関する有識者会議」を開催させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
 また、事務局の紹介をさせていただきます。
 文部科学省、吉田研究振興局長でございます。
 経済産業省、永塚商務情報政策局長の代理で、中山商務情報政策局審議官でございます。
 厚生労働省、宮嵜がん対策・健康増進課長でございます。
 文部科学省、岡村研究振興局研究振興戦略官でございます。
 経済産業省製造産業局、江崎生物化学産業課長でございます。
 文部科学省、中山研究振興局先端医科学研究企画官でございます。
 経済産業省商務情報政策局ヘルスケア産業課、覚道医療・福祉機器産業室長でございます。
 それでは、続きまして、お手元に配付させていただいております資料の確認をさせていただきます。
 座席表
 議事次第
 資料1 今後のがん研究のあり方に関する有識者会議開催要綱
 資料2 本有識者会議の設置と議論の流れについて
 資料3 第3次対がん総合戦略研究事業について(厚生労働省)
 資料4 第3次対がん10か年総合戦略への対応プロジェクト(文部科学省)
 資料5 経済産業省におけるこれまでのがん研究
 資料6 がん対策推進基本計画から見た今後のがん研究のあり方(門田構成員提出資料)
 資料7 新たな抜本的がん研究戦略へ向けて(堀田構成員提出資料)
 資料8 今後のがん研究のあり方に関する有識者会議(西山構成員提出資料)
 資料9 がん薬物療法専門医の立場から(田村構成員提出資料)
 資料10 日本における小児がん研究と今後の展望(石井構成員提出資料)
 参考資料1 第3次対がん10か年総合戦略
 参考資料2 がん対策推進基本計画
 参考資料3 がん研究専門委員会報告書
 参考資料4 がん研究の現状と今後のあり方について
 資料に不足・乱丁等がございましたら、事務局までお申し出ください。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 次に、資料1、開催要綱をごらんいただけますでしょうか。開催要綱3の(2)に基づきまして、本有識者会議の座長を選出したいと思います。御推薦がございましたら、よろしくお願い申し上げます。
 上田構成員どうぞ。
○上田構成員 国立がん研究センターの理事長である堀田先生にお願いしたいと思いますけれども、皆さんいかがでしょうか。
○岡田がん対策推進官 堀田構成員の御推薦がございましたが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
(拍手起こる)
○岡田がん対策推進官 それでは、堀田構成員にお願いするということで皆様一致のようですので、堀田構成員に本有識者会議の座長をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
(堀田構成員、座長席へ)
○堀田座長 国立がん研究センター理事長の堀田でございます。
 ただいま座長に御推挙いただきまして、まことにありがとうございます。というよりも、大変な重積で緊張しているところでございます。何分、平成25年度で第3次対がんが終了いたします。次期対がんの研究戦略についてきょう、各界のそうそうたる皆様方にお集まりいただきまして、今後のがん研究のあり方についてこれから討議を深めてまいるわけでありますけれども、私どもが今直面している少子高齢化社会におけるがん対策はいかにあるべきかという問題、それから、成長戦略その他さまざまな状況がございます。その中で確実に将来を見通し、また、実行可能ながん研究をどう進めていくかということを皆さんの英知をいただきまして、とりまとめてまいりたいと思います。どうか活発な御意見をいただきまして、実のある会議に御協力願いたいと思います。どうぞよろしくお願いします。(拍手)
○岡田がん対策推進官 ありがとうございました。
 以上をもちまして、カメラのほうはお収めいただきますよう、御協力をよろしくお願いいたします。
 では、先生、よろしくお願いいたします。
○堀田座長 それでは、ただいまから議事に入りたいと思います。
 まず最初に、事務局から資料2の本有識者会議の設置と議論の流れについて、御説明をお願いいたします。
○宮嵜がん対策・健康増進課長 それでは、資料2につきまして御説明させていただきます。
 がん対策につきましては、政府といたしましては昭和59年からがんの本体解明を図ることを目指しまして、対がん10カ年総合戦略を開始しておりまして、それが資料2の上のスライドの青い部分でございます。
 また、平成6年からは、がんの本体解明から克服へというテーマで、がん克服新10か年戦略、緑の部分でございますが、これが旧厚生省、文部省、科学技術省が連携して策定いたしまして、がん対策に取り組んできたところでございます。
 さらに平成16年からは、がんの罹患率と死亡率の激減を目指してということで、がん研究の推進に加えまして、がん予防の推進、がん医療の向上とそれを支える社会環境の整備の3つを大きな柱としまして、第3次対がん10か年総合戦略を推進してきたところでございますが、この同戦略は平成25年度、今年度で終了するところでございます。
 一方、上のスライドの左下の年表にもございますが、平成19年にがん対策基本法が施行されまして、昨年6月に閣議決定されました、がん対策推進基本計画におきましては、がん研究につきまして下のスライドになりますが、2年以内に国内外のがん研究の進捗状況を俯瞰し、がん研究の課題を克服し、企画立案の段階から基礎研究、臨床研究、公衆衛生学的研究、政策研究等のがん研究分野に対して、関係省庁が連携して、戦略的かつ一体的に推進するため、今後のあるべき方向性と具体的な研究事項等を明示する新たな総合的ながん研究戦略を策定することを目標とすると記載されております。がん対策につきましては、いまだ克服すべき課題も多くあることから、がん研究の今後のあるべき方向性と具体的な研究事項とを総合的に御検討いただくために、文部科学省、経済産業省、厚生労働省が協働して本有識者会議を設置させていただいたところでございます。
 裏面ですが、今後の大まかなスケジュール観についてでございますが、本日の第1回から3回くらいまでに構成員の皆様方から、今後のがん研究の目標と課題等について御発表・御意見をいただければと考えておりまして、上のスライドの右上に点線で囲っておりますが、工程表のイメージとしては下のスライドに示させていただいていますけれども、実は既に、このような形で御発表・御意見をいただけないかとお願いさせていただいております。これらも踏まえまして御議論を進め、今後のがん研究のあるべき方向性と具体的な研究事項等について、この夏を目途に一定のとりまとめができればと考えているところでございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 以上でございます。
○堀田座長 ありがとうございました。
 ただいまの本有識者会議設置の議論の流れの説明につきまして、何か特段の御意見をいただくことはございますか。流れについては、3回くらいをヒアリングに当てて、その後何回かというのはまだ確定していないのですが、いずれにしても、それからとりまとめに入って、夏までをめどにとりまとめるという方向でよろしいでしょうか。これは次期の予算編成等いろいろな問題がありますので、このあたりを目標にするということかと思いますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○堀田座長 ありがとうございました。
 それでは、引き続いて、資料3から資料5の説明をお願いいたします。
○宮嵜がん対策・健康増進課長 それでは、まず、資料3について御説明させていただきます。
 第3次対がん10か年総合戦略につきましては、先ほど来から出ていますがんの罹患率と死亡率の激減が掲げられておりまして、さらに、がん研究の推進ということでは、重点的な分野としまして最先端科学の活用によるがんの本体解明の飛躍的推進、トランスレーショナルリサーチの推進、あるいは新しいがん予防法の開発、新しいがんの診断・治療法の開発、がんの実態把握等がんの情報診断技術の発信・普及などが重点分野とされていたところでございます。
 また、スライドの上のほうにございますが、がん対策基本計画におきましては、目標として?がんによる死亡者の減少、?すべてのがん患者とその家族の苦痛の軽減と療養生活の質の維持向上、?がんになっても安心して暮らせる社会の構築が全体目標として掲げられているところでございます。
 これらを受けまして、厚生労働省では総合戦略を実践する事業といたしまして、第3次対がん総合戦略研究事業と、がん臨床研究事業を実施してきました。表は細かいので、裏を見ていただくと全体像がわかりやすいかと思いますが、第3次対がん総合戦略研究事業では、一般公募型といたしまして7分野を設定しております。第1分野で発がんの分子基盤に関する研究、第2分野でがんの臨床特性の分子基盤に関する研究、第3分野で革新的ながん予防法の開発に関する研究、第4分野で革新的な診断技術の開発に関する研究、第5分野で革新的な治療法の開発に関する研究、第6分野でがん患者のQOLに関する研究、第7分野でがんの実態把握とがん情報の発信に関する研究でございます。
 それから、がん臨床研究事業につきましては、一般公募型として主に政策分野に関する研究と、診断・治療分野に関する研究の2分野を設定してございます。それぞれの詳細につきましては、表の表側に記載させていただいておりますが、説明は省略させていただきます。また、それぞれの研究事業におきましては、戦略型研究あるいは若手育成型研究も実施してきました。
 また、本年が第3次対がん10か年総合戦略の最終年度でもございますので、これまで行ってきた厚労科研費の研究事業の成果を明らかにするとともに、その評価を行うための研究班を昨年度設置いたしましたけれども、その内容につきましては、第3回目の会議で詳細について御報告させていただければと考えております。
 以上でございます。
○堀田座長 ありがとうございました。
 ただいま厚生労働省の宮嵜課長からでございましたが、続きまして、文部科学省関係で岡村戦略官からよろしくお願いいたします。
○岡村研究振興戦略官(文部科学省) 資料4に基づきまして御説明させていただきます。
 まず、表紙をごらんくださいませ。文部科学省におきましては、当初より第3次対がん対応とされていたプログラムは、1つ目、2つ目にあります2つの施策でございます。また、この10年の間に新たにがんに特化した取り組みとしまして、3番目、次世代がん研究シーズ戦略的育成プログラムというものが発足しております。この3つについて簡単に次のページから御説明させていただきたいと思います。
 橋渡し研究加速ネットワークプログラムでございます。基礎研究のすぐれた成果を臨床研究や治験にまでつなげるための、いわゆる橋渡し研究をさらに強化するためにこのプロジェクトを実施しております。本プログラムでは大学等が基礎研究の成果を自らの力で臨床研究や治験に橋渡しすることを可能とするために、全国7カ所の橋渡し研究支援拠点を整備いたしております。各拠点では、大学等のシーズの臨床試験プロトコル策定や、知財規制当局への対応等々の支援というような、シーズを育成する機能の強化のほか、拠点に必要な人材の整備、各拠点間のネットワークの強化を行っております。これまでにがんの免疫療法の開発について治験が開始されておりましたり、腫瘍に的確に放射線を照射するための菌のマーカーを体に挿入するようなキットが製造販売承認をされるなどの成果を挙げております。
 3ページをごらんいただけますでしょうか。重粒子線がん治療研究でございます。重粒子線がん治療につきましては、先生方御案内と思いますので経緯を御説明いたします。本プログラムは第1期の対がん10カ年総合戦略におきまして対応施策として位置づけられまして、昭和61年からHIMACという加速器を放射線医学総合研究所(放医研)に建設しております。平成6年からそれを使い、炭素線をがんに照射する治療法で臨床研究を開始いたしました。平成18年10月から先進医療として位置づけられております。下に実績のグラフがございますが、これまでに放医研のみで7,400人弱の方々の治療をさせていただきまして、さらに、これに加えまして、対がんの3次の期間中には群馬大学における小型化の研究開発、さらに、普及段階といたしましては、陽子線との併用で兵庫、さらに神奈川、佐賀で重粒子線専用ですが、こういうものが建設されました。神奈川、佐賀では近々の開設、臨床研究のスタートを予定していると伺っております。最近は、この分野におきましては、海外展開も見据えたさらなる小型化や高度化への取り組みが行われておるところでございます。
 3ページをごらんいただけますでしょうか。重粒子線がん治療研究でございます。重粒子線がん治療につきましては、先生方御案内と思いますので経緯を御説明いたしますが、本プログラムは第1期の対がん10カ年総合戦略におきまして位置づけられまして、昭和61年からHIMACという加速器を放射線医学総合研究所(放医研)に建設しております。平成6年からそれを使いました炭素線をがんに照射する治療法で臨床研究を開始いたしまして、平成18年10月から先進医療として位置づけられております。下にグラフが実績として書いてございますが、これまでに放医研のみで7,400人弱の方々の治療をさせていただきまして、さらに、これに加えまして、対がんの3次の期間中には群馬大学における小型化の研究開発、さらに、普及段階といたしましては、量子線との併用で兵庫、さらに神奈川、佐賀、これは重粒子線専用ですが、こういうものが建設されまして、神奈川、佐賀では近々の開設、臨床研究のスタートを予定していると伺っております。最近は、この分野におきましては、海外展開も見据えたさらなる小型化や高度化への取り組みがなされておるところでございます。
 4ページ目をおめくりいただければと思います。次世代がん研究シーズ戦略的育成プログラムでございます。次世代のがん医療の確立に向けて、革新的な基礎研究の成果を厳選いたしまして、診療や治療薬の実用開発につながるような有望な化合物の探索研究を実施するものでございます。
 これは大きなプログラムでございますが、下の方に構成を示させていただいております。プログラムリーダーを野田先生にお願いしておりますが、野田先生のもとに革新的がん医療シーズ育成グループと、がん臨床育成グループという2つのチームをつくっております。今日の資料は印刷がうまくいっておりませんで、右側の部分が薄くなっておりますが、がん細胞周辺のメカニズムですとか、例えば3番目、がん染色体分裂期のメカニズム。4番目は、がんのエピゲノム。下の方にいきますと、例えばチロシンキナーゼ阻害剤等々といった、各がん治癒のメカニズムに立脚いたしましてグループを組み、いろいろな創薬に結びつく革新的な基礎研究の成果を持っていらっしゃる研究者ですとか、患者・献体を持っていらっしゃる研究グループに対して支援を行いまして、基礎研究の成果を橋渡し研究や臨床研究につなげるという取り組みをいたしております。
 以上でございます。
○堀田座長 ありがとうございました。
 続きまして、経済産業省のがん研究につきまして覚道室長、よろしくお願いします。
○覚道医療・福祉機器産業室長(経済産業省) それでは、資料5に沿いまして経済産業省におけます、これまでのがん研究の取り組みについて御紹介させていただきます。
 一番最初のページにございますように、経済産業省では患者の皆様のQOL向上、医療機器や医薬品産業の競争力の強化を目的としまして、産学の連携によります研究開発体制を構築した最先端の医療機器あるいは創薬基盤技術の研究開発を行ってきております。経済産業省としまして、特に具体的に出口をイメージした研究開発を推進しておりまして、経済産業省の関係の独立行政法人でございます、新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)を通じた研究開発を主に行っております。1つのプロジェクトにつきましては、大体4~5年程度の産学連携による研究開発を推進してきております。
 ここにございますように医療機器の関係では、例えば、2006~2009年にかけまして悪性腫瘍等の治療支援を行います分子イメージングにかかわります研究開発プロジェクトですとか、現在推進しておりますがんの超早期診断・治療機器の総合研究開発、あるいは2007~2011年まで推進しておりました内視鏡下の手術支援システムといったものを推進しております。
 また、創薬基盤の関係では、後天的ゲノム修飾のメカニズムを活用した創薬基盤技術開発を現在進めております。
 また、がんに特化したものではございませんけれども、医療機器と創薬基盤に重なって書かれております基礎研究から臨床研究への橋渡し促進技術開発、これはいわゆる提案公募型の事業でございますけれども、創薬、診断、再生細胞医療あるいは治療機器といった分野について、文科省、厚労省とも連携しまして、橋渡しを強化するための研究開発のプロジェクトも実施しております。また現在、これもがんあるいはヘルスケア医療に特化した事業ではございませんけれども、ITを活用していろいろな分野の高度化を図る事業、IT融合システム開発事業の中に医療機器を大きなテーマとして設定いたしまして、その中で診断と治療におけますITの活用ということで、がんの超早期の発見につながるようなテーマを採択して研究開発を実施しております。
 2ページに、これらの研究開発でこれまで得られております主な成果を書いてございますけれども、例えば、今推進しておりますがんの超早期診断・治療機器のプロジェクトにおきましては、微小ながん治療を可能にする高精度なX線治療システムというものが進められておりまして、プロジェクトの終了時期の2015年度には装置として使えるように今準備を進めている状況でございます。また、2006~2009年に推進しておりました分子イメージングでは、微小な乳がんを早期発見するマンモPETというものが成果につながっております。また、先ほど申し上げしました、橋渡しのプロジェクトからは、遺伝子治療によるがん免疫療法の研究開発が成果として出ておりまして、これも実用化に向けて最終段階にあるということでございます。また、手術支援ロボットにつきましても一定の成果を挙げまして、現在、福島県でさらに実用化に向けた事業を継続している状況にございます。
 3~4ページにつきましては、今申し上げましたプロジェクトのうち現在走っておりますものについての予算の詳細な説明ですので、省略させていただきます。
 5ページに、今申し上げた中にはございませんけれども、別途、課題解決型医療機器等開発事業というものを経済産業省では進めておりまして、これはどちらかといいますと、今使われているいろいろな医療機器につきまして、現場の改善や改良のニーズを拾い上げまして、医療機関とそういうものの改善に資するような物づくりの技術をお持ちの中小事業者さんの連携を促進することによりまして、より付加価値の高いいろいろな医療機器をつくっていこうというプロジェクトでございます。こういう事業を通じまして、日本のいろいろな物づくりの技術、これまで必ずしも医療機器の分野には十分生かされていなかったという指摘もございますけれども、そういう技術をできるだけ生かして、日本発のより付加価値の高いいろいろな医療機器をつくっていこうということで、こういう事業も推進させていただいております。
 経済産業省からは以上でございます。
○堀田座長 ありがとうございました。
 3省がそれぞれこれまで取り組んできた、もしくは現在進行形のものも含めて紹介していただきました。こういったものが全体として、対がんという形でどのように位置づけられていくのか、あるいは今後どのように展開していくのかということが、この議論の素材になるのだろうと思います。何か特段の御意見あるいは御質問がありましたら、今ここでお受けしたいと思います。
 眞島構成員どうぞ。
○眞島構成員 私どもはアメリカに本部がございまして、リサーチアドボカシーというがん研究を促進することを一つのミッションとしてやらせていただいているのですけれども、日本でのがん研究に関しては、アメリカなどと比べますと非常に予算的にも厳しいというお話もありまして、ぜひ何とかそこで支援ができないかと常々考えています。例えば、今御発表いただいたのですが、厚労省で言いますと、裏面に分野別にいろいろ研究が走っていると書かれていますが、例えば、これに関してそれぞれの分野でどれくらいの予算が使われたのか、経済産業省はそれぞれプロジェクトごとに予算が書かれておりましたけれども、そういったわかりやすい形で予算がどれくらい使われたのか。それから、可能であれば、ぜひ部位別がんごとに、どれくらいの予算が使われたのかということも御発表いただければ、例えば、自分のがんがゼロですと情熱を持って何とかしなければいけないと思うわけですから、そういった出し方も検討していただければと思います。実際に、NIHとかNCIにいきますと、トップページからそういったようなリサーチに関しての予算別のエクセルシートなどもダウンロードできるような取り計らいもありますので、ぜひ御検討いただければと思います。
○岡田がん対策推進官 厚生労働省でございますが、今御指摘いただきました点については少しお時間をいただいて調べさせていただいて、お示しさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○堀田座長 3次対がんの厚労省の部分については、3次対がんの中間報告書で公表する形にはなってございますが、それもまた次回、次々回あたりに紹介することになろうかと思います。よろしいでしょうか。ほかにございますか。
 門田構成員どうぞ。
○門田構成員 今の点ですけれども、厚生労働省と他の2省のお話を聞いても、類似のことはいろいろ出てきまくるわけですよね。ですから、その類似点がどうなっているのかがわかるように、省庁ごとではなくて、3省合わせたものが見えるような資料をつくっていただくと検討しやすいと思います。
○堀田座長 多分この議論も最終的にその辺が問題になるところだと思います。早々と指摘していただきましたけれども、今、省庁別で出していただきましたが、最終的にはそれが俯瞰的にどうなっているのかがとても重要だという御指摘だと思います。ありがとうございます。
 そのほかいかがでしょうか。それでは、今のことも踏まえてになるかと思いますけれども、事前に事務局からお願いがいっていると思いますが、門田構成員から、がん対策推進基本計画を踏まえた有識者会議の位置づけ、あるいはがん研究の今後のあり方につきまして発表していただくということでございます。続いて、私からも少し追加的な発表をさせていただきますが、早速、門田構成員からよろしくお願いいたします。
○門田構成員 先ほどお願いいたしましたものも今回の発表に関連するものですから、ぜひよろしくと申しました。
 それでは、1枚めくっていただいたものがて、我が国のがん対策の歩みです。これも既に事務局から御報告がございましたが、私がポイントアウトしたいと思っておりますのは、この流れの中で第1次がん対策10か年総合戦略から2次、3次という形で来ているということで、今までも既にお話がありましたが、そこで右に書いておりますけれども、2000年前後から非常にがん患者さん自身からいろいろな要望が出てきだしたという流れがあったのではないかと思います。そういった流れ意味において、2004年に第3次が出たのですが、その前後から非常に患者さんの圧力とは申しませんが、いろいろな要望が出てきて、患者さんにわかりやすい、見えやすいいろいろな問題点の解決策をという形が出てきて、それを踏まえて「がん対策基本法」が成立したということです。それまでの行政的な立場からの10か年戦略ではなくて、この時点で非常に強い国民目線といいますか、患者目線の動きの必要性が強調されたということ。それに基づいて法律ができ、そして、それに基づいて第1期目のがん対策推進基本計画、そして昨年、第2期が閣議決定されたという流れで、特にこういう流れの中に患者さんあるいは国民の動向が非常に重要だというのが、この法律につながっているということを一点申したいと思います。
 3ページはまさに今、事務局からお話がございましたけれども、少なくとも第1次、第2次はどちらかといいますと、がんの本態本体解明的な行政サイドのいわゆる研究的なことがあったという流れで、第3次は少し趣が変わった。その第3次の趣が変わったのは、先ほどもお話ししましたけれども、社会からの要望が出てきているんだということです。
 4ページですが、がんの罹患率と死亡率の激減をということで第3次のテーマが挙げられました。がん研究からがん対策という形になってスタートしたのが第3次です。内容は触れませんが、その中でがん研究があり、予防の推進、がん医療の向上、それを支える社会環境整備、これが2004年からスタートしたということでございますが、それと相前後して患者さんたちの要望、ドラッグラグの問題であったり、がん難民であったり、苦痛の解消あるいはところによって地域に格差があるということ、情報もわからないといういろいろな問題が提議定義されました。そういうことが非常に表に強く出て、山本孝史参議院議員もがん患者として存在であることを公表されて、そういう内容が大幅に盛り込まれたがん対策基本法が2006年に成立したという流れだと思います。
 それに基づいて2007年の段階から、第1期のがん対策基本計画がつくられた。これは皆さん御存じのとおりですが、法律でには主にがん予防、早期発見、がん医療の均てん化、そして今回話題になっております研究の推進という形になっておりますが、この基本計画を策定にするに当たっては、厚生労働大臣はがん対策推進協議会の意見を聞くものとするとなっておりますし、がん対策推進協議会の中には20人の委員のうち5人までがん患者さんに関係した人たちが参加しておられるということで、大きな流れとして患者さん目線の対策を講じる必要があるということだと思います。
 基本法のことも挙げておりますが、基本理念は研究、均てん化、患者中心の医療ということになっておりますし、基本計画というものを策定するについては先ほど触れましたとおりです。そして、これは厚生労働大臣がやっておるものの閣議決定するものであると。政府全体で決定して、それを実際に行うということは御存じのとおりです。
 8ページは、関係者の責務等。法律の中に第3条として、国はがん対策を総合的に策定・実施する。そして、第8条には政府は必要な法制上・財政上の措置、その他の措置を講じなければならないと条文として明記されておりますし、そのほかの関係するものにつきましても責務がとして挙げられているものでます。
 9ページですが、がん対策推進基本計画は昨年6月に閣議決定されたものと前第一期のものが一緒になっておりますが、図の中で「新」と書いてありますものが今回追加されたものでございます。そうでないものは前回と内容が微妙に違うところがありございますが、全体目標として、がんによる死亡者数の減少、と同時に、すべてのがん患者と家族の苦痛の軽減と療養生活の質の維持向上ということを第1期次に挙げました。そして今回は、さらに全体目標として、がんになっても安心して暮らせる社会の構築という形で、大きな全体目標が3点挙げられているということですし、ほかの件につきましても、小児がんの拠点病院、あるいはがんの教育、普及啓発、あるいは就労関係という具体的なものが新たな個別目標として挙がっているということでございます。
 そういう中で、第1期でがん研究についてどう記載されているかということでございますけれども、10ページに簡単に書いてありますが、臨床的に重要性の高い研究、行政的に必要性の高い研究、新しい治療法及び有用な早期診断技術についての研究開発、治験・臨床研究の実施基盤の整備・強化ということと、下に枠で囲んでおりますが、先ほど申しましたように、がん対策基本法が患者あるいは国民目線の必要性ということから、このポイントがを非常に強く書かれていますると。研究を企画・実施する際には国民の意見をより一層反映するとか、あるいは国民に対してわかりやすく伝える、あるいは意義を周知し、患者さんからの協力を得るという内容。そして、最後に挙げていますけれども、透明性を確保するというように、非常にそういう目線を重視したものになっていることを忘れてはならないと思います。
 その後、第1期から第2期に変わるときに、今後のがん研究のあり方についてということで、がん研究専門委員会報告として上げておりますが、専門委員会を協議会のもとに置きまして、そこでディスカッションしたものが挙げられております。ここにつきましても書いておりますが、一番ポイントとなりますのは、がん研究の推進がより一層重要になることから、国全体としてのがん研究推進のあり方に関する議論を行い、がん研究のあるべき方向性を示すということになっております。
 12ページに取り組むべき課題ということで、今がんで苦しむ患者、明日のがん患者、将来がん患者を生まないためのがん研究、がん研究と社会との関連性についてという内容をディスカッションしたものがまとめられております。これも資料がありますので見ていただきたいと思います。
 がん研究の現状云々につきましては、ほかの構成員の発表の中に出てくると思いますので、がん研究、取り組むべき施策の1、2は割愛させていただきます。
 その次に、がん研究の個別目標を書いています。これも先ほど事務局からございましたけれども、あえて申し上げさせていただきますと、第3次対がん10か年総合戦略が平成25年度に終了することから、2年以内にがん研究の推進状況を俯瞰し、がん研究の課題を克服し、企画立案の段階から基礎研究、臨床研究、公衆衛生学的研究、政策研究のがん研究の分野に対して各省庁が連携し、戦略的かつ一体的に推進するため、今後のあるべき方向性を明示するとなっております。こういうことで、先ほども3省のお話を聞かせていただきましたが、省それぞれいろいろな形で頑張っておられるのはよくわかるのですが、国民の目線で考えたときに、それがどう映るかというあたりに課題がないとは言えないというところが課題だということです。
 そこで今、日本社会がどうなっているかということでございますけれども、これもわかっていることでございますが、人口構成が大幅に変わってくるということで、今から30~40年の間に変わっていくことに対して、どう対応するかという非常に重大な時期に差しかかっているということです。
 18ページの左側に年齢調整死亡率を挙げておりますが、96年以降がんよる死亡率は低下してきていると。非常にいいことではありますが、実態とすれば右側に挙がっていますように、まだまだ死亡数とすれば全体としてこういう状況になって年々増加していることは事実でございますので、対応はそういうことを踏まえて考えなければならない。
 19ページですが、その一つとして、例えば医療費を見れば、このような形でうなぎ上りのように増加してきているということで、しかも所得比で見ますと比率が10%を超える状況になっています。そういう中にあって、左上に挙げておりますけれども、医療費の変動を15年間の比率で見ますと、医療費全体がブルーの線で15年の間に約25%増ぐらいですが、一方で金額は高くなっておりますが、循環器疾患でも11%ぐらいしか増加しいっていないところをのに、がんに関しては1.5倍、50%増になっているところということでをこれから先、先ほどお示ししましたように人口構成が大幅に変わってくるということで、非常に大きな課題に直面していると言わざるを得ません。
 そこで20ページですが、我が国のがん対策の流れの中で、事の重要性がいろいろなところで理解されております。がん対策の対がん10か年戦略がこういう形で3次が終わり、4次はをどうするかということになっておりますし、内閣府では総合科学技術会議の中での検討もされておりますし、がん対策推進協議会の基本計画は第2期目が今始まっています。それから、医療イノベーション会議あるいは健康・医療戦略推進会議という形でもやはり話題になっているということでございます。
 私はこの全体を見渡して、2つの提案をさせていただきたいと思っております。1つは、このような非常時とも言えるような状況に差しかかろうとしておりますので、がん対策を国家戦略として推進し、さらに全国民ががん対策を最重要課題であると認識できるように今、がん対策推進基本計画の10年単位と、がん対策の対がん10か年等がうまく同調していないということで、がん対策基本法は後からできたのでやむを得なかったわけですが、法律に基づくがん対策基本法での方針と、それから、10か年で今までやってきたことを、ここでシンクロナイズする必要があるのではないか。そうすることによって、国民によりわかりやすく、より協力を得られるような体制を敷くべきではなかろうかという提案です。
 それから、提案2です。がん対策を総合的・効率的に実行でき、かつ国民に理解してもらいやすくするために、省庁間の連携をさらに推進させる具体的な作業の目標を作成すべきではないか。言葉の上では連携ということがよく出てきますが、なかなかわかりづらいということ。そういった意味で、例えば、公募の課題設定や事後評価などを関係省庁が連携してでき、お互いが見える化ができるような体制を一つの体制として築くべきではなかろうかという提案でございます。
 22ページですが、我が国はイノベーションという単語が非常によく出てまいりますが、私が申し上げたいのは、多くの場合医療イノベーションと言いますと技術革新的な理解のほうが多いということで、今、日本が遅れていると言わざるを得ないのは、そうではなくて、それをどういう体制の中にはめ込んでいくのかという医療と社会の体制、すなわちソーシャルイノベーションというイノベーションを改めてここで見直す必要があるのではないかと思っております。ということから、先ほどの提案も含めてそういう体制を考えたらどうかということでございます。
 以上です。
○堀田座長 ありがとうございました。がん対策あるいは基本計画に基づいて、全体としてがん対策あるいはがん研究はどうあるべきという俯瞰的な立場からの御発表をいただきました。
 引き続きまして、また少し視点が違うのですが、私からも発表させていただきまして、まとめて御質問・御意見をいただきたいと思います。資料7を御参照ください「新たな抜本的がん研究戦略に向けて」というものでございます。
 まず最初に、2ページを開いていただきますと、これまでの我が国のがん研究を大づかみに申しますと、昭和59年に中曽根内閣の提唱によりまして、対がん10カ年総合戦略が開始されました。これはちょうど日本で死因の第1位ががんになって3年目に当たる年でございます。歴代の政府の強力な推進によりまして、2次、3次とまいって過去30年間の対がん戦略において、がんの仕組みや分子レベルでそういったことが明らかにされ、画期的な予防法や治療法も登場して、治療成績が上がり、死亡率も減少に向かっているという状況でございます。
 しかし、依然として原因不明のがん、あるいは難治がんも存在しますし、予防・早期発見の重要性がこれからもますます増大している。特に、こういったものは日本人だけではございませんで、がんに対する挑戦は世界共通の大きなテーマになっているということでございます。
 3ページでございます。先ほど門田構成員の資料にもございましたけれども、我が国のがん対策がどういった流れになっているかということでございます。右側に特に日本のがん研究対策、そして、左側に参照としてアメリカでのNCIを中心としたがん研究予算を参照してございます。1981年に死因の第1位になって、その後対がん総合戦略が3次まで来まして、3次の途中に先ほど紹介がありましたように、基本法ができて、それが同調していないという部分はございます。昨年、医療イノベーション5か年戦略が決定され、この見直しが新しい政権で行われておりますけれども、流れとしてはそういった流れ。今後、10年、15年先を見てみますと、恐らくがん多死社会、これは言い方が適切かどうかわかりませんけれども、確実に死亡者数もふえるという状況の中で、私どもが新たながん総合戦略をどのように構築していくかという視点は、これまで以上にもう少し社会的な視点等が必要なのではないかということでございます。
 先ほど眞島構成員から予算がどれくらい使われているかという御質問がございましたけれども、細かくはここには書いてございませんが、第1期10カ年が3省合わせて大体1,000億円ぐらい、第2期で1,500億円、第3期はまだ途中ですので集計ができておりませんけれども、8年という段階で厚生労働省の分野では360億円ぐらい。これはあくまで研究予算でございますので、米国のNCIは人件費を含めた全体なので、そのまま比較はできませんけれども、一けた違うという印象はございます。
 続きまして4ページです。第3次対がんの10か年戦略、今は最終年度でございますが、がんの死亡率と罹患率の激減を目指すということで、死亡率につきましては一定程度の成果を見ていますが、罹患率は部分的には下がったものもありますが、全体としてはむしろまだふえつつあるという現状でございます。
 具体的な戦略目標は、本体解明あるいは基礎の成果を臨床に応用するという問題。あるいは革新的な治療法の開発、あるいは予防。そして、そういったものの均てん化という言葉も既にこの時期に使われてございます。
 5ページですが、3次全体の流れを少し展開してみますと、左から基礎・基盤、開発的な研究から臨床へということでございまして、それぞれのモダリティーに従って下の方にいろいろな研究分野があります。ある意味2次元の展開で見ると、このような状況になってございます。
 6ページですが、まさにがんは国民病と言われるわけでして、現在急速な高齢化に伴いまして、既に日本人の2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで死亡する、この状況が罹患率につきましては増加、粗死亡率も増加するという状況の中で、がん多死社会、特に団塊の世代が後期高齢者層を形成する時期にはピークを迎えるだろうと。それに向けて、これからの10年間が対策の正念場ではないかという認識が皆さんあると思います。
 次に、先ほど門田構成員からもありましたように、粗死亡率は右肩上がりでまだ上がっていますけれども、年齢調整死亡率は1990年代後半から減少傾向ですが、罹患率につきましては相対としてはまだまだふえている。この差が広がっているということは、がん患者さんの総数がふえるということに相なるわけでありまして、そういったときに我々がどのような医療あるいは医療供給体制を提供するのかは大きな問題になろうかと思います。
 8ページに進みますが、これは年齢階級別のがん罹患率の推移を1980年と2007年、点線で書いてあるのが1980年ですが、全体として高齢者が増加しているのと、左の若いほうに少しシフトしてきているという問題がございます。高齢者層については確実に患者数の増加が到来する。そして、それを支える年代、すなわち働き盛り世代を含む生産年齢と言われる年代における労働力の喪失を考えてみても、7兆円以上に相当するという研究成果が出されております。こういった支える世代の問題、そしてまた、それより若い青少年を含めた小児といった問題があることから見ますと、こういったライフステージにマッチした対策あるいは研究も今後必要ではないかということに結びつきます。
 次に9ページですが、我が国のがんの現状と将来予測。これは今までの繰り返しのようになりますが、いずれにしても2030年代をピークに、私どもが研究あるいは対策をどうしていくか大きな課題として突きつけられているものです。
 10ページですが、先ほどありましたような第3次対がんの研究の展開として、どちらかというと基礎から臨床あるいは政策へ、そして、予防、診断、あるいはいろいろなモダリティーとしての展開、2次元展開という形での位置づけがありますが、これからの研究につきましては、少子高齢化という社会の中で、どのような研究戦略を立てていくかという視点が必要なのではないかということで、このような第3の視点としてライフステージをきちんと踏まえた研究をしていくべきではないかということでございます。もちろん、これまでもそういう研究がなかったわけではなくて、やられてはおりますけれども、それを体系的に位置づけてやっているわけではないという意味で、縦のライン、ライフステージにマッチした研究あるいは対策をきちんと立てることが今後必要なのではないかということです。
 12ページにその必要性が書かれてございますけれども、小児あるいは働き世代、高齢者、それぞれのライフステージに応じた個別課題がありますので、そういったものに対してきちんと対応することが今後重要になってくるということです。
 そういった視点で13ページですが、今後の研究方向につきまして、がんの特性あるいは人のライフステージ、こういったものに応じた医療の創出を軸にすべきではないか。1つは、本体解明に基づく早期発見で、患者数をとにかく減らすという方向性を持つ必要があると。死亡率の減少ももちろんそうですが、罹患率をどうやって組み合わせて減らしていくかという問題。それから、まだ治せないがんがあります。こういったものに対して、革新的な治療法や診断法を開発することは引き続き重要なポイントですし、成長戦略にもつながるところです。また、小児あるいは希少がんといった特性に応じた医療の確立、あるいは治療法の開発等も必要だと思います。今回特に指摘したいのは、働き盛り世代に対する就労支援と書いてありますが、基本的には社会復帰が目標になるという位置づけがきちんとされるべきであろうと思います。そういった点での包括的な支援体制が必要。そしてまた、高齢者にはいろいろ合併症があったり、例えば、80歳以上で別の病気で死亡した場合に、剖検をいたしますと、ほとんどの人がおとなしいがんですが、何らかのがんを持っているという状況から言うと、ある意味こういったがんとどのように付き合っていくかという視点も必要だろうと思うわけです。
 そういった視点で、ライフステージ、がんの特性に応じた医療を創出することによって、これは恐らく全世界が直面するであろう高齢化社会に向けて、日本型のがん医療モデルを国際展開するという視点も必要なのではないかと考える次第です。
 最後のページです。こういった有識者会議で踏まえておくべき指針というものを一覧しておきました。先ほどありました基本計画あるいはイノベーション、そして専門委員会の報告、そして文科省が作成いたしましたライフサイエンス委員会の報告、そして、第3次対がんの全体を俯瞰して、この評価。そして、新しいがん研究のあり方を示す厚生労働省の研究、これは後ほど発表していただきますけれども、このようなものを踏まえて今後の施策に資していきたいと思います。
 以上でございます。
 今までの門田構成員と私の報告で何か御質問・御意見等がありましたら、いただきたいと思います。まず、門田構成員についていかがでしょうか。
 では、私から。基本法が第3次対がんの途中から出てきたという状況で、しかも、それは法律として出てきているということなので、当然これが上位に来るという位置づけになろうかと思いますが、第3次対がんの途中でそういった意味での見直しという大きな見直しはしてこなかったと言うべきですか。それに関して、今後のがん全体の総合研究対策といったところに、先生としてはある意味同調させて、そこで見直しをかけるということを提案されているのですか。
○門田構成員 1つには、そういう点と、やはり今、2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで死んでいますといろいろ言っている割には、患者さんたちや周辺の人たちは意外にそう思っていないんですね。がんにかかって、がんと言われた途端に改めてそう感じるという国民性ですよね。そういった意味で、今の我々が向かっている課題、先生も触れられましたけれども、これから本当に30~40年ぐらいの間は、大変な状況をこれはないものねだりしても仕方がないので、全国民がそれに向かって何がしかの努力をしていくという体制をつくるためには、先ほど幾つか矢印を書きましたが、こういうものでは国民にはわかりにくい。国民の皆さんに、本当に重要性を理解し、政府としても正すべきところは正して一体感を持ってこうしますという姿勢を示すことも非常に重要なのではないかと思いますし、今回、後から法律ができて第3次が20135年度で終わるというこのタイミング、これをもう一回同じことを繰り返したらもう見直しはできなくなると思います。なぜ前回しなかったかということで。そうすると、今のタイミングで何がしのずれを解消し、一本化してやるんだということを社会にアピールする必要性があるのではないかと感じております。
○堀田座長 ありがとうございます。
 野田構成員どうぞ。
○野田構成員 今の門田構成員のおっしゃるとおりだと思いますけれども、その前の堀田座長の御質問にわかるところをお答えしますと、がん対策協議会の委員の先生方は何人もこの中にいらっしゃいますが、がん対策基本計画の1次ができたときに、いわゆるそのとき走っていた3次に対して何か働きかけがあったのか、あるいはそれに基づく何かが行われたのかということに関しては、ほとんど行われなかったと理解しています。
 基本的に、第1次計画ができたときの研究部分は、それをつくった研究の方たちがつくられていますが、そのときと今回の第2次の基本計画との大きな違いは、そこから第1期が終わって、その間に20人の協議会委員、その下にある多くの委員会が動いて、がん対策基本計画あるいは基本法の理念が協議会にある程度浸透してきた結果、見直しが行われて、その見直しの中で研究の方向性を出すといったときには、先ほど門田構成員が言われた透明性の担保であったり、あるいは目的及びがん対策における効果を明確にするということで、今回できている基本計画あるいはそのもとになる小委員会が、ある意味協議会ができた理念にのっとってできているもので、ようやく近づいてきている段階だと思いますけれども、眞島構成員、そのあたりいかがでしょうか。
○眞島構成員 確かに、理念的にはそうだと思いますけれども、今回の5か年計画を策定するに当たっても、やはり計画を立てるだけではなくてPDCA、きちんと目標に向かって実際に動いたかどうかという検証も必要で、そのためには指標が必要ではないかということも検討されました。その観点から言えば、がん研究はどうなのかと。さまざまな国民的視点を取り入れて、国民に理解しやすいようにしようということが文言としては入っていますけれども、実際にそれが検証されたのかどうかということも我々は考えながら、次の10か年計画を立てていかなければいけないのではないかと思います。
○堀田座長 ありがとうございました。
 ほかの視点あるいは質問はよろしいでしょうか。祖父江構成員どうぞ。
○祖父江構成員 門田構成員の資料の21ページ目に提案1、提案2とあって、提案2の中に省庁間の連携の話がありますし、それから「例えば、公募課題の設定や事後評価などを関係省庁が連携でき」とありますけれども、研究の内容もいいのですが、研究費配分の仕組み、それから、意思決定のあり方が非常に重要だと思います。これは門田構成員に質問というよりも、今これがどうなっているのか。3次がんの中で、私の理解では企画運営会議があり、事前評価委員会、事後評価委員会があり、そういうところで課題設定をし、評価をし、採択しということをしてきていますけれども、それは厚労省の中だけの話ですし、それを文科省、経産省の中でどうやって連携していくかについて、まず現状がどうなっているのかを事務局から発表していただくほうが私はいいと思うのですが、いかがですか。
○堀田座長 事務局、何か発言はございますか。
○岡田がん対策推進官 関係する文部科学省さん、経済産業省さんとは、我々の研究事業の運営に当たって、例えば、評価委員会にオブザーバーで参加していただいたりとか、我々の省でどういう研究をしているかを把握していただいているという状況ではありますけれども、全体を見渡したところまでいけているかどうかは微妙な状況ではありますについては改めて整理したいと思います。
○祖父江構成員 私が言っているのは、3次がんとがん臨床に関しては、少なくともそういう仕組みが現に動いていて、構成員の方々がきちんと運営しているわけですから、その仕組みをまず厚労省の中だけでもいいので説明していただけませんかということです。
○堀田座長 祖父江構成員のおっしゃるのは、要するに、全体を推進するための仕組みが少なくとも厚労省の中でどうなっているかということですね。3省で今どうなっているかと言われても、それはこれからの課題かもしれないので、その辺はいかがですか。
○岡田がん対策推進官 連携という意味では今申し上げたような点ですが、基本的には公募課題の設定に御意見をいただいて公募課題を設定して、その事前評価、中間・事後評価という形で外部有識者の先生方に御苦労いただいて評価をいただいた結果で、公募型については採択を決めているという状況でございます。
○堀田座長 野田構成員どうぞ。
○野田構成員 提案なんですけれども、祖父江構成員の言っていることはよくわかるのですが、今ここで話をしても皆さんなかなか理解しにくいと思うので、きちんと行われていますので、ごく簡単なものにまとまるのではないかと思いますので、厚労省の研究費のいわゆる運営の仕方の今は特に評価・採択というところですよね。経産省もありますし、文科省もありますし、その仕組みをそれぞれ1枚紙程度にまとめていただくのと、さらに祖父江構成員、門田構成員も問題にされている、その紙の間のインタラクションはどういうことをされていますかということだと思います。そして、最後にさっき眞島構成員が言われたように、その中にPDCAサイクルのような評価、あるいは見える化が取り込まれているかどうかというところを次回にでも出していただいたほうがいいかと思います。ここでお話しいただいても、ちょっとわかりにくいのではないかと思います。
○堀田座長 提案どうもありがとうございました。今のは重要ですし、いずれその話題は出てくる話ですので、これはちょっと宿題という形で収めさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、私のほうの発表につきまして、何か御質問・御意見をいただければと思いますが、特にございませんか。
 石川構成員どうぞ。
○石川構成員 堀田座長がおっしゃられたライフステージと、がんの特性に応じた医療の創出、13ページですけれども、これはすごく大事なことだと思いますが、5番目の高齢者に適したがん医療の確立ということで、私もすごく大賛成なのですけれども、。堀田座長はこのときたしか「がんとつき合う」というような例え言葉をお使いになったと思いますが、具体的にこの場合においては、医療ががんに対して介入するというよりは、何らかのサポーティブなケアをするということが念頭にあるのか、もうちょっと具体的に教えていただきたいのですけれどもけますか。
○堀田座長 実は、最後に構成するときに「高齢者」ではなくて「高齢社会に適した」というふうに考えたのですが、ライフステージということになればやはり「高齢者」だろうということにしたのですが、単につき合うという話ではなくて、より低侵襲の治療法の開発やあるいは合併症というよりも併存疾患と言いますか、大体70歳代になりますといろいろな併存疾患がありますので、そういったものがありながら例えば化学療法をやるというときのポイント、こういうものもまだまだ研究不足ではないか。例えば、小児についても、小児は小さい大人ではない、小児は小児。それから、高齢者も働き盛り世代がただ年齢がいったというだけではなくて、特有の問題を抱えていると。それに対してきちんと対応するような医療提供あるいは診断治療技術を確立することが大事ではないか。その中の一つとして、では、がんとともに生きる向かい合い方もあっていいのではないかと考えるところでございます。
 田村構成員どうぞ。
○田村構成員 同じ流れの質問なのですけれども、がんは高齢者の慢性疾患であるという位置づけは皆さん共通の認識だと思うのですが、実は、以前は文科省の科研、今は厚労省の科研の審査をさせていただいている中で、がん関連の中で高齢者を扱った研究はほぼ皆無ではないかと思いますの印象です。次回までで結構ですが、今までどのような研究がされてきたのかをぜひ調べて教えていただくといいと思います。私の知っている限り、少なくとも過去4年間ぐらいは余りないんですね。
○堀田座長 それは、厚労省の科学研究費の対応の中で、どのくらいの課題が高齢者をターゲットとした研究としてあるかという質問ですね。
○田村構成員 文科省もぜひお願いしたいなと思っています。
○堀田座長 野田構成員どうぞ。
○野田構成員 先ほどの祖父江構成員の質問もありましたが、今度は対がん10か年全体としての厚労省、文科省の動きに関しての質問ですけれども、その10年の間に当初立てた計画に関して、どういうフォローアップがなされて、検証がなされて、どういう見直しがなされたのかという、つまり10年も丸々来てしまっているのか、内容というよりは進めるプロセスに関して、これは対がん10か年というより、厚労省のがん研究に関してでいいのですけれども、文科省も文科省のがん研究に関して、その10年間立てたものをただずっと来ているのかというのを1回教えていただくことが、これから先で非常に重要なのではないかと思います。それから、それもまた一つその間のインタラクションというか、情報共有などがどのようにあったのか、この2点を先ほどのものと同じでいいと思いますが。
○堀田座長 ありがとうございました。それはまた事務局でコメントをお願いします。
○岡田がん対策推進官 ちょっとお時間をいただいて整理して示させていただきたいと思います。
○堀田座長 ありがとうございました。
 中釜構成員どうぞ。
○中釜委員 堀田座長からの提案だけではなく門田構成員の発言にも関係するのですけれども、ここではこれまでの経緯や現状の問題点の把握を踏まえた今後のがん政策のあり方について書かれているわけですが、同時にライフステージを考慮したようなこれまでにない深みのあるがん医療を実現するために、門田構成員の資料にありますけれども、る人材育成のあり方もさらに非常に多角的に考慮していく必要があるだろうと思います。今後の議論に上がってくるだろうと思いますけれども、このあたりもぜひ深く議論していただければと思います。
○堀田座長 人材育成というとても重要な視点を今述べていただきました。
 それでは、時間の関係もありますので、また議論は各省のところで挟んでいただいて結構ですので、構成員の発表を続けたいと思います。一通り発表が終わった後に質疑の時間にしたいと思います。まず最初に、西山構成員からよろしくお願いいたします。その後若干の小休止をして、次に進めたいと思います。では、よろしくお願いいたします。
○西山構成員 私がここへ出席しておりますのは、日本癌治療学会の理事長を担当しておりますので、そちらの立場からお話をさせていただきます。資料8をごらんください。
 日本癌治療学会は外科、内科等々の診療科にこだわらない、これらを横断したオンコロジースペシャリストの集合体です。したがいまして、臨床というがん研究の出口の実践を担当している学会だと御理解いただければと思います。
 同時に、実際にがん対策基本法で求められているもの、平たく申しますれば、がんになりたくない、がんを治したい、よい医療を受けたい、前と同じように生活したいという一連の流れの中で派生してくる研究のほとんどに関与しているということです。したがいまして、こうした観点からやや広めに臨床あるいは医療実践という点から提案を申し上げたいと考えております。
 4~5ページに、先ほどまでるる御説明のございました第3次対がん戦略の重点研究と支援事業をまとめてございます。これを見ていただけると、まず、がんの本体を知り、それらの成果をもって臨床の実用化を図り、さらに予防法、診断法、治療法といったものを開発していく。次に、がんの実態把握とがん情報、そうした実際の医療の現場での発信の問題、それから支援事業という形になっております。まさしく、これは原因を知り、そこから新しいものをつくっていくという研究の鉄則、鉄板の方向性ですけれども、その実、結果はどうかと申しますと、医療イノベーション5か年計画のように、かなり危機感を持って、新たな医療が生まれていないという結果となっております。鉄板の方向性で動いているにもかかわらずなぜなのか、ここを考えないと、次のがん研究戦略ということにはならないのではないかと考えております。
 その大きな原因は、今までいろいろな先生方の御発表にもございましたように、極めて合理的な内容にもかかわらず、必ず言われるのは基礎研究の成果を臨床に展開するという一方向のお話です。基本的には、臨床の現場からそれを研究で解決するという逆向きの動きがあってしかるべきなのですが、おのおのが分離されている中で、基礎研究の中に臨床家のアイデアが入ることもなければ、あるいはそれらが実際に分離された形で次々にバトンタッチしていく形になっていますけれども、それらが同時に並列して動くあるいは1つのチームで動くということがないような研究テーマになっていると思われます。すなわち、これらの今までの研究の大半はシーズプッシュ型、初めに発見があってそれを展開していく。あるいはテクノロジープッシュ型と言えるもので、現実に本当に必要な研究というのは、例えば、膵がんでどの程度の研究がなされているか、肝がんの研究でどの程度の研究がなされているか、そうしたことがはっきりわかるようなニーズプル型、マーケットプル型のものが必要なのではないかと考えております。
 6ページをごらんください。実際に、新規医薬品がどれだけ出たかというお話でございますけれども、ちょっと古いデータではございますが、日本は世界のうち売り上げトップ100の医薬品のうち、それを開発した国としては3番目でございます。その特徴が右側のグラフにございます。米国あるいは欧米ではその大部分、米国においては50%を超えるところがベンチャーあるいは大学から発見された内容です。ところが、本邦を見ていただけますと、ほとんど茶色の部分がない。すなわち企業中心の開発という形になっております。これは何を意味するかということです。
 7ページをごらんください。これは『Nature』に載っていたデータですけれども、実は新規創薬標的の候補は実に多く出ております。しかしながら、『Nature』『Science』といった超一流紙であっても、そこで出た論文データの再現性は20~25%、要するに4分の1から5分の1にとどまるということです。これは私も基礎研究者でございますのでよくわかるのでございますが、かなり細かい部分について基礎研究者特有の私でしかできないという研究をされる傾向も多々あって、実際にオンコジーン(がん遺伝子)研究はドラッガブルではないというのがほぼレッスンでわかっている内容であったとしても、オンコジーンの研究に中心的な重きを置くということが多々起きるのです。こうしたことを考えますと、逆に臨床のニーズ、社会のニーズからそれを解決していく研究にも目を向けなければいけないのではないかと考えております。
 8ページをごらんください。臨床という立場から申しますと、実はEvidence based medicineという言葉は皆さん御存じだと思いますけれども、臨床の実際はがん診療ガイドラインというものでほとんど行われております。これはエビデンスミステイクということですけれども、9ページを見ていただけると、実はこのエビデンスはほとんど欧米人のデータであって、私どもアジア人、日本人というデータは出ておりません。何によるエビデンスなのか、この部分がまだあいまいなままであって、臨床エビデンスに関しても輸入超過の状態が続いているということです。
 10ページをごらんください。では、そうした形の中で、新たな私どもにとって本当に有効で安全な治療を提示できるようなエビデンスが集まるかということですが、実はいまだに臨床研究数は圧倒的に少なくて外国に追いついていません。臨床研究数は赤く見えているところが多いわけですけれども、欧米に比べて日本は7,700、ブルーの状態です。要するに、私どもが使っている薬剤も、あるいは医療機器も輸入超過の中であるだけではなくて、臨床のベースになっているデータすらもまだ追いついていないということです。
 ただし、私どもがこうしたエビデンスとして用いているものについて、これが欧米人の方々と同じであれば問題はないのですが、11ページをごらんください。今までの数々のレッスンの中で、メーカーになっているのはこうした薬物療法やいろいろな医療に関して人種差、民族差、地域差があるということです。これは何を意味するかというと、私どもにとって有効でかつ安全な薬剤は、必ずしも今までのエビデンスと同じではないということです。
 こうしたものについてのレッスンは山ほどございまして、12ページをごらんいただきますと、まずはEGFRのミューテーション、これは大変有名なストーリーですけれども、それだけではなくて、ふだん私どもが使っている既存のサイトトキシックエージェントに関してもこうしたものが出ております。私どもが急がなければいけないのは、こうしたエビデンス、臨床研究の積み上げと、本当に重要な医療に直結するような研究ということになります。
 もう一つの問題点は、がん対策基本法ができましてから随分と整備が進みました。しかしながら、13ページをごらんください。今の問題点の一つは、いまだに患者さんの手元に届かないがん対策の恩恵ということです。かなりの整備が進みながらも、現実の患者さんのところには情報も、また、情報を届けるシステムもまだでき上がっていないということです。医療の開発研究ということに加えて、こうした社会整備のための研究も必須ということになります。
 14ページを見ていただいてもおわかりのように、その中にはがんの教育も入ってまいります。赤線を引いた部分ですけれども、もっと厳しい病気と向き合うことになったときに自分らしく生き抜くための力を身につけるための教育、こうしたものについても、どういう教育が一番効率的なのかといった研究も進めなければいけないと思っております。助かった命を助けるための研究、そうしたものについても幅を広げていかなければいけないと感じております。
 15ページをごらんください。では、具体的にどうするかという提案でございます。まずは、私ども臨床を中心とする学会として提言できるのは、1つはシーズ研究、実践医療研究、臨床開発研究の展開です。なぜシーズ研究かと申しますと、実は、最終的にどんなにゲノムのデータが再現性の高いものであっても、それと比べる臨床の情報があいまいであると、そこからは違ったものが出てまいります。そうした意味で、ある程度クオリティーの高い、そして、十分な量のある臨床情報を提供するという対応が必要になるということです。
 これは幾つもの臨床研究グループがデータを出しておりますけれども、そこに統一化あるいは標準化された方法論はまだありません。国家的な施策として、やはりこうしたことはすぐに直接的な成果に結びつきませんので、ある程度統一的なルールをつくった道案内、ナビゲーターがいるような、例えば学会主導といった形での大きなデータベースの構築が必要になるのではないかと考えております。
 今までるるお話をした内容が16ページの問題認識に書いてございます。現実に医療の実用化にいくためには、真に有用なシーズが発見できると、あっという間に上市まで持っていけます。これは肺がんにおけるALKで既に実証されたように、4年間で上市というところでまいりました。それを考えますと、ドラッグラグも解決できるので、有用なシーズをいかに選ぶか。そのためのリソースをどこに持つかという個人の業績にならない成果にも目を向けた形が必要かと思われます。
 それから、アジアがキーワードになると考えております。同じようなゲノム配列を持つと考えられるアジアの中で行っていくということ、あるいはアジアのがん研究やがん臨床の拠点が、今や中国や韓国に移ろうとしている中において、本邦においてそうした大きな拠点を持つことが極めて重要なことだと考えております。
 臨床開発研究もそうした意味で、本邦の中には患者さんの数にも限りがありますし、施設も限りがございます。そうした中で、インターグループのスタディーを上げたところで、ナンバーがふえるわけではありません。アジアに目を向けた臨床研究ということも配慮した、患者さんに手の届くような実践医療研究に注目した形でいければと考えております。
 具体的な方法論として17ページに5つほど挙げました。画期的な医療シーズ策定ツールボックスの構築という新たに組み入れなければできないもの、全体でなければできないという大きな研究を組んでいただきたい。それから、アジアに視点を向けた臨床エビデンスの蓄積のための研究に力を入れていただきたい。隅々まで行き渡る地域医療、フォローアップネットワークを確立するための研究も重要なポイントだと思っております。また、学校でのがん教育の普及に関する研究、どのような形で効率的に負担をかけずに検診やあるいはがんに対する治療の重要性を考えられるか、こうした研究も必要だと思われます。また、先ほど来問題が出ておりますように、評価がとても重要なポイントで、がん研究・医療の質の評価にかかわる指標、手法、システム。どのように評価していくかということが全く確立されておりません。これらに対する確立研究も必須の項目だと考えております。
 18ページに、今私が申し上げました従来の研究に加えての新規項目に対する今後のがん研究の目標と課題です。ここで重要なポイントは、今すぐにできること、しなければならないこと、将来に向かって、こうした研究の内容を大きく振り分けることだと考えております。がんの本体を理解するということは、かなり複雑で根本的に解決するには時間がかかるものと考えます。30年後にもわかっていないのではないかと、私個人では考えております。ただ、それらの研究から派生するさまざまなものを使って実用化していくということだと思います。がんを根治することできなくても、克服することはできる、その視点の中で、時差を考えた研究、すなわち10年かかる研究、3年かかる研究、その他のものを振り分けていただけると、さらに研究の効率は上がるのではないかと考えております。
 最後の19ページでございます。先生方から大分出されましたけれども、まず、全員が手に手をとって総力を挙げたとしても、がんに対する対策あるいはがんに対する研究を進めることはかなり困難なことです。それなのにバラバラに分散されている状態では、決して大きな成果を上げることはできないので、ぜひともその戦略に関して一体化して進めていただきたい。もう一つは、先ほど来申し上げておりますように、継続・維持すべき研究課題と独創的な短期決着型の課題とを並行する。もう一つは研究の方向性ですけれども、出口戦略を持った研究の促進をしていただきたい。シーズプッシュ、テクノロジープッシュというのもとても重要なポイントですけれども、これに加えてニーズプル、マーケットプル型の研究も中に入れていただくということだと考えております。
 私見を交えまして、臨床の現場にいる代表としての学会からの提言でございます。
○堀田座長 西山構成員、どうもありがとうございました。
 引き続き順番に発表していただいて、最後にまとめという形で質疑をしたいと思いますが、3時間を予定しているので、ここで小休止を入れたいと思います。次の田村構成員の発表は45分からお願いしているので、10分間の休憩をとりたいと思います。また御参集いただきますように、よろしくお願いします。

(休  憩)

○堀田座長 それでは、時間がまいりましたので、ただいまから再開したいと思います。お席にお戻りください。
 続きまして、田村構成員から発表をお願いすることにしていますので、どうぞよろしくお願いします。
○田村構成員 がん薬物療法専門医の学術集団になりますであります日本臨床腫瘍学会を代表して意見を述べさせていただきます。
 既にがん関連学会の集まりであります癌治療学会の西山理事長より、がん臨床の立場から日本のがん研究の現状と課題を包括的にまとめていただいていますので、できるだけオーバーラップを避け、がん薬物療法にある程度特化したような、少し踏み込んだお話をさせていただきたいと思います。
 2ページですが、次の4点について主に意見を述べたいと思います。これから10年、20年、また半世紀後の日本のがん医療を考えていくに当たりまして、現状を踏まえ、日本が最も力を入れて推進していかなければならない次の4点について意見を述べさせていただきます。
 がんの自然史とそれぞれの段階での研究・介入ということで、がんの自然死では自分がかかわろうとしている研究事業がどこに位置付けられているかを認識する必要があります。すなわち、がんになりやすい遺伝的な背景、あるいはヘビースモーカーのように発がんの環境要因、これらの要因が重なりまして遺伝子異常を来して、前がん状態になります。その時点で環境要因の除去、前がん病変の切除により発がん予防ができます。不幸にしてがんに罹患した場合は、できるだけ早期に発見し、手術療法あるいは放射線治療によって治癒を目指していくわけです。その段階ではアジュバント療法としてのがん薬物療法が登場いたしますし、さらにがんが進行していきますと、薬物療法が主体となってまいります。これらの介入を一貫して支えているのが支持療法です。
 これらを踏まえまして、がん医療の目標は、まずがんにならないようにする。がんになっても検診等で早期がんを発見する。不幸にして進行したがんの状態では、治せるがんを徹底して治す。治らない段階である再発例ではQOLのよい状態での延命を図るということになります。
 発がん予防について最初の段階ですけれども、まず、禁煙などの一次予防はもちろんですが、欧米では多くの大規模介入試験が実施されまして、例えば、抗エストロゲン薬による乳がん発がんの予防、あるいはBRCA1/2遺伝子の異常女性に対する予防的な乳房あるいは卵巣切除術といった発がん予防の効果が実際に成績として出ております。
 原因微生物の除菌は、日本に多い肝がんや胃がんでは有用であるはずですけれども、薬剤を使っての介入試験は未承認薬あるいは保険適用外薬を使っての試験となりますので、日本での大規模試験は難しいところです。
 また、1つ目のがんに罹患しても治療を受けた後、再発予防という観点から2つ目のがんの発症予防に関する介入も重要です。
 日本の現状を見てみますと、がんセンターや大学の公衆衛生学講座等から発がん要因のデータが出た後に、それを検証するための大規模研究がなかなかされていません。したがって、何らかの介入によってがん発症を予防する研究は限られてきたように思います。まず、そのような介入研究を実施できる体制の整った研究機関が少ないこと、すなわち前向きに介入研究をするためには、公衆衛生の専門家、生物統計家、我々のような臨床医が協力して実施しなければ有用な研究はできません。
 残念ながら、医学研究科には公衆衛生を学ぶ研究者・大学院生が少ないという問題がありますし、学部教育におきましても、衛生学関連の講座が統合されて講座数が減ってきているという大学もございます。一つの問題点として、生物統計学者や発がん予防の介入試験にかかわれるような臨床医がフルで雇用されるというシステムが必要かと思います。
 次に、新規抗がん薬の創薬と開発について述べたいと思います。これに関しましては、既に「医療イノベーションの具体策の進め方」という推進室からのまとめが出ておりまして、このとおりにしていただければ問題はないわけです。この具体策が実現されることをぜひ期待したいと思いますし、その中で抗がん薬の創薬についてのみ現状と課題について話を進めていきたいと思います。
 これは現在の抗がん薬の創薬を研究レベルから診療の現場での薬剤の位置づけまでの流れを図示したもので、文科省の研究費等を使用しまして、大学の研究室や研究所において新規薬剤の可能性のある物質の発見、あるいは薬剤開発の標的になるような遺伝子・タンパクが見出されます。この段階の基礎研究では、ハートヤスイキットの発見のように日本は貢献しておりまして、レベルは高いことが知られています。それに基づき、製薬会社、ベンチャー企業による新規候補薬がつくられるわけです。前臨床に進むあたりから製薬会社の研究費、文科省、厚労省の科研費を使って前臨床から臨床まで進めてまいります。場合によっては製薬企業へ乗ってこない物質については、医師主導治験を実施する場合もあります。前臨床から臨床に行くところの橋渡し研究、すなわち薬効・薬理、安全性試験などの非臨床開発部門を担当する部署や、研究者がいないのが問題です。
 そこでまず、創薬に結びつくがんの原因遺伝子やタンパクの探索ですけれども、検体を保存するバンクが必要でして、これは事業化して永久保存を前提に体制の確立が必要です。最も難しいところの一つは患者から検体を得るところで、がん拠点病院を中心とすればいいのではないかと思いますが、処理・保存するための施設の体制と、何よりも患者からインフォームドコンセントを得るためのコーディネーターの育成と配置が必要です。
 それから、パーネントに検体を保存できるような地震に強い検体保存施設が必要です。現在、理研では天然化合物バンクNPDepo、東大、京大などにはライブラリーが整備されておりますけれども、これらがネットワークを形成・事業化して、また同時に医工連携で創薬した薬剤の標的分子を検出する試薬機器を開発・製品化するベンチャーあるいは医療機器・企業の育成が必要です。
 10ページですが、赤字で書いた部分は先ほどからも話題が出ておりますけれども、がん研究全体を俯瞰して、研究内容、実施状況、研究の成果を評価する仕組みと組織が日本にはないのではないかと思います。研究内容の重複を避け、予算を適正配分し、共同研究を促して効率よくすぐれた研究結果が得られるように常設の機関を設けてはどうかと思います。
 科研費の審査をさせていただいておりますけれども、臨床研究において2年も3年も症例登録に至らなかった例を複数見ております。このような研究をもっと早く評価して適切な対応ができれば、億という単位の研究費を他に回すことができます。
 日本においての弱点は、先ほどからの話題ですけれども、橋渡し研究のところで、2007年度に文科省の事業として東大、阪大等7カ所が施設として選ばれ、橋渡し研究支援推進プログラムが開始されておりますけれども、Good Laboratory Practice、いわゆるGLP準拠の実施、実験設備をすべての大学に備えることは現実的ではないのではないかと思っています。主役集約化が必要ではないかということです。
 日本製薬工業協会(製薬協)のデータによりますと、2005~2009年の間に日本の研究開発型の製薬企業において見出された化合物は65万件と言われておりまして、そのうちの非臨床試験の段階に進んだ化合物が200、それから、臨床開発の候補が60ということで、大体1万件に1つが臨床開発候補に挙がる程度の状態です。としますと、開発リスクが高く、製薬企業のみで薬剤開発は難しい面があります。ましてや、アカデミアがこれらの中心としてやっていくことは不可能です。
 そうしますと、薬剤開発のプロセスを事務的・金銭的にも支援する日本版のCTEP(Cancer Therapy Evaluation Program)が必要です。最近の例では自治医大の間野教授が発見された、肺腺がんの5%に見られるEML4-ALKフュージョン遺伝子、キメラ遺伝子は、日本の製薬会社に薬剤開発を持ちかけましたけれども、乗ってくれる企業はなく、結局米国の大企業がクリゾニブを創薬し、ファーストインヒューマンはソウル、ボストン、メルボルンで行われまして日本が外されました。これこのことは、日本人として非常に悔しいところです。間野教授が相談できるようなNCIのNexTネクストプログラム、あるいはCTEPのような窓口があれば日本主導で開発が進んだのではないかと考えております。
 さらには、開発段階の薬剤を最初に患者に投与するファーストインヒューマンそれに引き続いて行われる、抗腫瘍剤効果の有無を確認するところのプルーフ・オブ・コンセプト試験。これらが連続的に開発されるプロセスが日本には必要でして、日本の最も弱いところです。
 日本において東病院の早期探索研究センターと、がん研の化学療法センターのアカデミアを支援する部門が研究者に開放されているぐらいなので、ぜひ日本版のCTEPをつくりましょう。
 先ほど西山構成員もお話しになりましたけれども、米国の120薬剤の開発が断トツですけれども、米国との大きな差は、やはりアカデミアからの製薬企業への移転が非常に少ないというところです。
 12ページにCTEPのホームページから取り込んだものがありますが、とにかくかなりのお金をかけまして、第1相、第2相を含む医師主導型の治験をサポートしております。スタッフだけでも60名いるということでして、現在過去20年間に180の早期開発のための試験が行われ、19以上の化合物の承認が得られ、過去10年間に前臨床段階から化合物のうち9種の抗がん薬が医療現場で使用されています。そのような実績があるということです。
 抗がん薬は開発されて市場に出てまいりますけれども、その前後で開発された薬剤のがん治療の中での位置づけを決定する試験が行われます。臨床に使用される場合、多くの薬剤は単独では使用されません。患者の同意を得て、他の薬剤あるいは他の治療法との併用が行われますけれども、併用療法おける用法・用量の検討、また、従来の治療にすぐるかどうかなどの臨床研究をしなければなりません。その際に、臨床試験をする場と、試験を組織する機関が必要です。日本ではJCOGやWJOGのような多施設共同研究グループが頑張っておりますけれども、ほとんど手弁当でやっているのが現状です。
 臨床試験にGCP準拠が要求される中、実施体制の整備と運営に多大な資金が必要となり、公的資金の投入と企業と公的研究費の混合使用など、研究費のフレキシブルな運用ができる仕組みが必要ではないかと思います。
 14ページの赤字部分ですけれども、これらの研究グループの連携で、無駄な重複している試験を避けて共同で試験を実施することにより、速やかに質のよい試験の結果が得られます。これらの研究グループ間をコーディネートとする仕組みをつくる必要があると思います。
 15ページは見ていただければいいかと思います。再生医療、免疫・細胞療法も、がん薬物療法専門医と関係がございます。
 16ページですが、先ほどもお話ししましたけれども、高齢者のがん医療の研究で、先日の厚労省の発表にもありましたように、全人口で65歳以上が占める割合は2010年が23%、10年後には36%になると。東北・北海道で40%を超えるという超高齢化社会を迎えます。がんの平均発症年齢も既に60歳を超えておりまして、がんで死亡する患者のうち65歳以上の割合は80%を超えています。
 ここで一つ書き忘れましたけれども、高齢者の検診率が低く進行期で発見されて、予後が成人に比し悪いことも知られた事実です。しかしながら、多くのがんの臨床研究は高齢者を除外して薦められてきております。そのために、高齢がん患者の標準的な治療が確立しておりません。がん診療のガイドラインも高齢者を避けた形で作成されておりまして、その理由の大きなものはエビデンスが少ないことにあります。
 17ページを見ていただきますと、上の段は若い人のがん診療ですけれども、この場合は診断がついて病期決定が行われれば治療方針が決定されて、その治療に応じて治療されますと一定の効果が得られます。一方、下段の高齢者では年齢が上がるとともに、精神・身体能力が落ちます。重要な臓器機能も低下してまいります。すなわち生理的な老化が見られまして、簡単につまずいて倒れる脆弱性、日常生活能力の低下、先ほど合併症というお話がありましたが、併存症が、たくさんあり、そして、多種類の薬剤が使用されるポリファーマシーということです。低栄養、認知障害、抑うつ、経済的に年金や子どもに依存、また配偶者においても高齢でして、独居の患者も多いと。介護不在ということもあるわけです。これらの問題は、いずれもがんの診断治療に大きな影響をもたらしますので、それらを考慮した上での診療方針を決定していかなければなりません。
 18ページですが、したがって、高齢者のがんのバイオロジーの研究、薬物動態、力学、さらに、高齢者にも優しい薬剤の開発が必要です。これらは今まで述べた研究、薬剤開発に準拠しますけれども、ただ、実際に抗がん薬を使用するに当たっては、高齢者を総合的に機能評価して、それに基づいて薬剤の選択や用法・用量を決定するツールの開発が急務です。すなわち、副作用を危惧し過ぎてアンダードースになって治癒率の低下を招いては何もなりませんし、一方で機能評価の悪い患者に成人と同様の治療を行いますと、重篤な副作用が増加し、延命が得られないばかりか治療死の危険性が出てまいります。
 19ページですが、がん治療には必ず何らかの副作用が生じますので、支持療法が重要であるということです。ここに書かれてありますいろいろな治療法が開発されてきましたけれども、それから、緩和医療においても専門医が少ないことはもちろんですが、エビデンスの高い臨床試験に基づく緩和医療の確立が十分ではありません。特に支持療法に使用される薬剤の開発というのは、がんを標的とした治療と同じような開発手順が必要かと思います。
 21ページ、グローバル化でございますけれども、アジアを軸にして特にグローバル化が必要であろうということです。
 最後にまとめといたしまして、がん薬物療法専門医の立場からここに掲げる4点を提言します。そして、最終的には、我々としては内科的な治療のみでがんの克服を目指して、世界の研究者と協力して研究を進めていくべきではないかと考えております。
 以上です。
○堀田座長 ありがとうございました。
 続きまして、石井構成員から小児の関係をよろしくお願いいたします。
○石井構成員 それでは、日本における小児がん研究と今後の展望ということでお話しさせていただきたいと思います。資料10をごらんいただきたいと思います。
 まず、2ページ目は、日本の小児がんの疾患別分布を書いております。一番多いのは白血病でして、悪性リンパ腫を含めて血液がんが全体の40%を占めています。次いで多いのが中枢神経系腫瘍で神経芽腫、以下ここに書いているとおりで、中枢神経系以下の固形がんが全体の60%を占めています。
 さて、3ページ目に示しておりますが、小児がんの患者さんの生存率は大幅に向上しています。しかしながら、四角で囲んでおります脳腫瘍、神経芽腫、急性骨髄性白血病の3つの疾患に関しましては、予後がまだ完全には確立されたものがございません。
 4ページに、一番最近の日本における小児白血病と悪性リンパ腫の生存率を書いておりますが、ALL(急性リンパ性白血病)は約90%の生存率が得られるようになってきていますが、AML(急性骨髄性白血病)に関しては7割強ということで、まだまだ生存率の改善が十分に得られている状況ではございません。
 一方、5ページに示していますように、小児がんというのは非常に少ないのですけれども、実は小児の病死の第1位は悪性新生物でございまして、1~4歳までは先天奇形群が死亡率として一番高いのですが、5歳以降は病死の死亡率の第1位は悪性新生物ということになっていますので、小児の場合は小児がんを克服するということが、小児のQOLを高める意味で非常に重要であるということが言えると思います。
 もう一つ、AYA世代におけるがんということが問題になると思います。がんの生存率や改善が一番認められないのは、このAYA世代でして、6ページに黄色で示してありますように、15~39歳までAYA世代におきましてのがんの生存率の改善は非常に悪いということです。小児科でなぜこれを取り上げているかといいますと、1つは、小児の年長児がここに含まれてくることと、小児がんを克服されてもその人たちがAYA世代になっていろいろな問題点が起こってくるということで、AYA世代を一つ取り上げさせていただきました。
 7ページにありますように、AYA世代のがん治療における課題というのは、1つはプロトコル・コンプライアンスの問題、それから、臨床試験参加の積極性、精神的、教育的、経済的支援の問題、それから、小児に比べますと治療関連の合併症や死亡が多いという問題点が挙げられると思います。
 8ページですが、日本と欧米における3大小児がんの治療の比較を書いております。白血病、神経芽腫、脳腫瘍の3つの疾患について書いておりますけれども、白血病に関しましてはALLはある程度、予後は改善しておりまして、一応目的は達成されていることになりますけれども、一方、AMLに関しましては生存率が60%程度にとどまっているということで、今後clofarabine、mylotargといった新しい治療薬の導入によって生存率が改善される分野です。
 続きまして、神経芽腫に関しましては、実は欧米と日本を比較しますと、欧米に比べると日本の予後が2割程度悪くなっています。それは、1つはGD2抗体の使用あるいは内照射療法の使用等が日本で十分にまだ開発されていないということで、この辺が開発されますと神経芽腫の生存率が大幅に改善する可能性があります。
 一方、脳腫瘍に関しましては、実は現時点では有用な治療法はなくて、新しい治療法を模索する必要があると考えられています。
 9ページに進行神経芽腫における日本と欧米の標準治療の違いを書いてありますが、要するに日本では欧米で使われている標準治療が一部使われないために、このような予後の差となって表れていると考えることができます。特に抗がん剤、1つか2つの適応外薬があるということと、維持療法で使えないGD2抗体があるということで、予後が大幅に悪くなっているということが言えます。
 10ページは乳児白血病の治療成績を示しています。小児の白血病は治療成績は非常によくなっているのですけれども、乳児白血病の関しましてはまだまだ改善の余地があるということで、私たちが1995年からこれまで生存率の改善を目指して治療をやってきましたけれども、現時点でもまだ5割程度の生存率しか得られていません。現在これに対しまして、マイクロアレイ解析を用いた分子標的薬の抽出が行われまして、11ページに書いてありますように、その中で重要な標的薬としてはFLT3が挙げられています。
 このFLT3に関しましては、既に米国の小児がん研究グループ(COG)において分子標的薬導入を用いた臨床研究が行われていまして、新しい分子標的薬を直ちに導入した治療研究が行われるという点で、アメリカは非常に進んでいるということが言えると思います。
 それ以外にも乳児白血病に関しましては、脱メチル化剤であります5-Azacitidineというものが非常に有力ということで、私たちの研究室での研究でも5-Azacitidineは乳児白血病の増殖を強く抑制するということで、欧米も含めて今、乳児白血病においては一番注目されている分子標的薬ということになると思います。
 駆け足で済みませんけれども、14ページには小児急性骨髄性白血病の治療成績の変遷を述べております。AMLに関しましては、実はここ10年間治療成績が全く伸びていません。これに書いておりますように、AML99とAML-05の治療研究を見ても、治療成績はほとんど改善していないのがわかると思います。ということですので、小児のAMLに関しましては、既存の治療法ではこれ以上改善が期待できないということが言えると思います。
 それで最近注目されているのは、15ページにありますような新しい予後因子の同定ということで、1つは、私たちが最近同定しているのはEVI1でございまして、16ページに書いてありますように、EVI1陽性のAMLというのは非常に予後が悪いということがわかりました。
 したがいまして、これも一つの分子標的薬のターゲットになるのではないかということで、17ページに小児白血病における分子標的療法の一覧を示しておりますが、このような形で新しい分子標的療法を開発することによって、小児白血病の大部分は治癒できる病気に今後なっていくものと期待されています。
 18ページは、神経芽腫を示しています。神経芽腫に関しましては、アレイCGH解析を用いた神経芽腫のリスク分類が行われていまして、例えば、ここに示しているように1p lossとか、11q lossあるいはMYCNの増幅、ALKの増幅、17q gain等の発現レベルを解析することによって、例えば100%近く自然退縮する神経芽腫が見つかります。そうしますと、実はこれまで治療をやってきた患者さんに対して、全く治療をする必要がないという患者さんも逆に出てくるということが言えると思います。
 19ページに、現在、神経芽腫に対して国際分子遺伝学的分類というものが行われていまして、このような各遺伝子の発現等を使いまして、リスク分けをすることによって新しい治療法を開発する、新しい層別化治療を行うことができるということが言えると思います。
 20ページに、小児がんのリスク層別化による治療開発のイメージを書いておりますけれども、例えば、難治性白血病は進行神経芽腫に対して腫瘍細胞の網羅的発現解析を行って、予後に関係する遺伝子を同定し、さらにそれを用いてリスク分類、そして、新しい分子標的療法や免疫療法を含めた想定される治療法を導入するという形が今後行われることによって、各種の小児がんに対して治療成績を上げることができるのではないかと考えられます。
 21ページ以下は、新しい治療薬の開発について書いていますので、簡単に説明していきたいと思いますが、欧米に比べると日本では新薬の開発が非常に遅れているということで、例えば、米国では国が直接COGという小児がんの研究グループに年間60億円の援助を行っています。それから、2009年にはNCIで包括的なプログラム(PPTP)というものが組織されまして、製薬会社がつくってくれない薬剤に関しましてもNCIが積極的に研究を組織して治療開発を行っているということが言われています。
 22~23ページは日本で行われている神経芽腫に対する創薬の研究の一部を示しています。これは飛ばさせていただきます。
 24ページは、それまでまとめている国内における小児がん治療薬の開発の現状ですけれども、幾つかの薬は欧米に比べるとドラッグラグがありまして、例えば、Peg-AspとかGD2抗体、Clofarabine、L-DNR、それから、131I-MIBG等、今後このような薬を適応外薬を用いた新しい治療研究を組むことによって、小児がんの克服に向けた新しい世代が迎えられるのではないかと考えられています。
 25ページは、いろいろな開発中の薬を述べておりますので、後で見ていただければと思います。
 最後に、このような取り組みに対して、それを受け入れる窓口になるグループが非常に重要になってくるわけですが、26ページに実は2003年に小児白血病とリンパ腫に対しては、1つの研究グループができまして、先ほど田村構成員のスライドにもありましたけれども、JPLSGという治療研究グループがございます。これを使って現在、皆さんが参加した形で治療研究が行われています。
 27ページには、JPLSGの構成が書かれていますが、このような形で治療研究がスムーズに、かつ、効率よく行われるような形で治療研究グループが組織されています。
 一方、固形がんは28ページに示しておりますが、実は非常に多くの治療研究グループがあるのですが、これもようやく統一される形で臨床試験共同機構ができておりまして、JPLSGに倣う形で小児固形がんに対する治療研究が進められています。
 そして、今年やっとJCCGというものが設立されることになりました。これは白血病とリンパ腫の研究グループであるJPLSGと共同機構をまとめる形で小児がんの治療を1つの研究グループの中でやっていこうという形で、3月28日に設立準備委員会が発足しました。
 30ページに書いておりますように、JPLSGによく似た形ですけれども、中央診断センター、検体保存センター、データセンター、それから、事務局、そして理事会の下に基盤委員会や疾患委員会等を設ける形で、1つの治療研究組織をつくって、効率よく小児がんの治療を行っていこうということです。
 31ページに書かれていますように、どういう効果が期待できるかといいますと、小児がん診療の標準化と均てん化に貢献できる。それから、研究内容の統一化による小児がんの臨床研究の質が向上する。それから、日本における国際的競争力が増す、同時に国際共同研究が推進できる。それから、患者団体や国家機関との連携がスムーズになり、無駄な資金や労力を省くことができるということになると思います。もちろん、小児科や小児外科、病理・放射線等の連携が大きな課題になってくるだろうと思います。
 今後、必要となる小児がん対策を32ページに書いております。小児がん拠点病院、小児がん専門医の育成等は現在進められておりまして、今後1~2年で整備が進むものと思われますが、問題はその次に書いてありますように、検討中あるいは検討課題として臨床試験グループを統合して、欧米に対抗できる治療研究を推進する。それから、再発、難治例や希少疾患に対して新薬・未承認薬を用いた治療を行える研究体制を整備する。それから、AYA世代の難治がんに対する治療研究の開発をする。そして、白血病、神経芽腫に対して網羅的遺伝子発現解析などを用いた新たな治療層別化を行うことになると思います。
 33ページ以下は飛ばしますけれども、37ページに、新たながん研究戦略に基づいた小児がん研究の推進(ロードマップ)を書いています。国としては20年、30年先を見越したがん研究のあり方を考えていると思いますが、小児がんというのは非常に成果の出やすい分野ですので、私としては2024年、ここ10年間ですべての小児がんの撲滅と、それに伴うQOLの改善を目指して、子どもたちがよりよい人生を歩めるような形で治療研究あるいは臨床基礎研究が行われればと考えて提示させていただきました。
 以上です。
○堀田座長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまお三方からそれぞれ、どちらかというと学会、研究者の立場からの御発表をいただきました。西山構成員、田村構成員、石井構成員でございます。ここから予定の時間までディスカッションという形でいきたいと思いますので、活発な御意見・御質問をいただきたいと思います。
 まずは、スペシフィックな問題があるかどうかということで、西山構成員の御発表に何か御意見いただくことがございましたら、よろしくお願いします。いかがでしょうか。田村構成員どうぞ。
○田村構成員 私の発表のことも少し考えながら先生のお話を聞いていたのですけれども、19ページの一番最後の出口戦略を持った研究の促進というところで、ニーズプル型、マーケットプル型という極めて重要なポイントを挙げていただいたと思います。アメリカのCTEPなどではオーディットがあって、そこでヒアリングをするというシステムがあるのですけれども、先生はこのシステムを具体的に機能させようと思った場合に、日本でどのような形があり得るのか、何かお考えがあったら教えていただければと思います。
○西山構成員 これも先ほどの先生のお話とも重複するのですけれども、日本においては研究の評価についての客観的な第三者組織みたいなものがないということで、それをつくるという研究を今度上げなければいけないと思っています。例えば、新薬の開発といっても、実際に標的検証を終えて新薬の開発に入るものの、3万分の1、0.0032%しか新しい薬として承認されないという現実があるわけですね。そうすると、3万の研究から1つの薬ができるという母数がある。そうしたものをより効率的なものにするには、実際に何が必要でどうかという人たちの意見から逆向きに向かうという方向性が必要だと思うので、そのためにはやはり第三者機関みたいなものをつくって、そうしたことについての効率を高めていく方法、評価を高めていく方法を考えないといけないと思います。
○堀田座長 そのほかいかがでしょうか。
 私のほうから。先ほど田村構成員の御発表の中にもありましたが、例えば高齢者に向けたガイドラインはほとんどそこを避けているような発表がありましたけれども、癌治療学会はガイドラインの作成といったことに非常に熱心にやってこられているのですが、今後の展開として、小児あるいは高齢者といった視点でガイドラインをどう整備したらいいかということは何かお考えがありますか。
○西山構成員 先ほど田村構成員も御指摘になられましたように、高齢者に関してはちゃんとしたデータベースがないんです。それで、今まで厚労省のほうでそうした研究に対してお金を与えてきたかという田村構成員の御質問もありましたけれども、実は私個人で第3次がんで高齢者のデータベースをつくっております。ゲノムのデータベースと高齢者の臨床情報。ただ、ここではたかだか2,000~3,000例ということなので、こうしたものを広げていくというか、私の研究を広げていくという意味ではなくて、そうしたことに関する足がかりはできていると思っています。当然のことながら、高齢者、小児に関してもあるいは一番の関心である、例えば、小児がんかから若年者がんというデータも、いろいろな小児がんの専門学会と一緒にそうしたものを組んでいければいいと思っております。将来的な課題だと思っております。
○堀田座長 ありがとうございました。
 上田構成員どうぞ。
○上田構成員 お三方の学会代表のお話をお聞きしたのですが、次回がん学会からもお話があるかと思いますが、今がんに関して学会がどのくらいあって、実際問題どのくらい必要なのか。そして、今回発表してくださった4学会の代表の方々は、その分野に関してちゃんとグループをまとめられる力があるのかどうか。日本でがん登録や何かができないといったときに、本来学会がもっと一生懸命やれば、特に治療学会などのグループは、先ほどから厚労省等に対する質問ばかりが多いですが、学会同士がそういうことに対しての連携や登録に対する立ち向かいとか、もっと大事なことは、学会は物すごくきちんとプロトコルをつくったり標準療法、治験のための新しい進捗をいかに患者さん方にきちんと見える形にするかという努力に対して、随分なさっていることは私も内部を知っていますからある程度はわかっているのですけれども、やはり皆様にわかるようにして、今後それで十分なのかというようなことを、せっかくですからお話しいただければと思います。
○西山構成員 まず、わかりやすい話のほうから。私個人にそうしたものをまとめていくリーダーシップがあるかということでございますが、残念ながら私自身も認めるように非力でありますし、組織の中で動く1人の人間です。
 それから、2つ目、実は私がきょう発表した内容も、今まで学会が何もしてこなかったという反省に満ちております。本来こうした研究に関しても学会が単なる意見交換の場だけではなくて、さまざまな提言を社会に出していかなければいけない、それをわかりやすい形で示さなければいけないという反省に立ってのお話です。
 きょう私がお話しした、例えばアジアの問題は、中国、韓国とファッコという組織をつくっております。ところが、これをメンテナンスするには、癌治療学会を実は1億円、自分たちの学会費を払ってそうしたものを設立しようとしているわけですけれども、こうした事業を継続していくことについては学会にはある程度限界がございます。こうした意味で、本当に必要なものがあればやはり国レベルで研究費という形でやっていくべきだと個人的には思っております。学会ができることと学会がしなければいけないこととは、必ずしも一定ではない。ただ、今までと違う、要するに専門家集団であったからといって専門の議論だけではないということに関しては、各学会が今大きく動こうとしているのだと考えております。
○堀田座長 ありがとうございます。
 石井構成員どうぞ。
○石井構成員 上田構成員の御意見は非常に重要なポイントだと思います。例えば、今まで学会というのはどちらかというと西山構成員がおっしゃったように、意見交換をやったり情報を得る場だったと思いますけれども、今後は積極的に治療研究等に踏み込んでいかないといけないと思います。ですから、小児がんの場合でも当然学会を支援する形で治療研究グループを組織させると、むしろ学会が中心となってそういうものをつくっていく。場合によっては、資金獲得も学会が中心となってやっていくという形になっていけば、かなり欧米スタイルに近づいていくのではないかと思います。
○堀田座長 ありがとうございます。
 田村構成員どうぞ。
○田村構成員 我々の学会はまだ10年ぐらいの若い学会ですので、エクスキューズばかりにはなりますけれども、これは我々の現在の比較的クローズドな学会運営からアジアに軸足を置いて展開していくということでぜひ前向きにやっていきたいと思います。私がそのリーダーとして発表の機会をいただきましたけれども、一応この発表に関しましては、一部の評議員と理事にすべて回しまして意見をいただいた上での発表になっておりますので、少なくとも理事会の総意ということで御理解いただきたいと思っております。特に社会的にどのように活動していくかについては、今まではクローズの中でやってきましたけれども、やはり国民あるいは行政にもわかるような形でやっていくというのがこれからの我々の方針ですので、ぜひご期待いただきたいと思っております。
○堀田座長 ありがとうございます。
 眞島構成員どうぞ。
○眞島構成員 西山構成員の資料の最後のページ「とるべき基本姿勢の確認」というところで出口戦略とありますが、特に出口戦略ということから言えば、がん患者さん、また患者団体にとって一番これが興味のあるところだと思います。ところが、残念ながら、そこに患者会が関与するようなことが一言も書かれていなかったので、ちょっと残念だなということがあります。学会の先生方から御発表いただいたわけですけれども、今、学会でそういった患者さんの声、特に出口戦略に関して吸い上げるというようなメカニズムはあるのか、ないのか。アメリカではNCIとかNIHが当たり前のように患者会の方たちとアドバイザリーボードを組んでしっかり意見をくみ上げるような姿勢があるわけですけれども、今後ということを考えても、やはりそのあたりは重要ではないかと思います。今、現状と今後どういう対策が組まれるのかということに関してコメントをいただければと思います。
○堀田座長 それでは、西山構成員から順番に各学会のスタンスを紹介してください。
○西山構成員 まず、私どもの学会は4年前からペイシェント・アドボケートという形で学会誌にいろいろな意見の交流を図っております。まだこうした出口戦略に関して患者さんから御意見を直接いただくということがないのですけれども、こうしたことを担当するためのがん診療連携委員会をつくりました。ステップ・バイ・ステップで上がっていかないと一気にこういうことはなかなか難しいものですから、学会自体が研究を主導するということに関してもいろいろな意見があるものですから、そこのところはしておりますが、こうした出口戦略に関する意見を述べていただく場は設けていく方向で動いております。
○堀田座長 田村構成員どうぞ。
○田村構成員 我々も学術集会の中で2011年の大津学会のときからアドボケートラウンジをつくって、その中で講演をしたり、意見を交換する場を設定してやってきております。ふだんからどこまでやれるかというのは、まだそこまで見込んだふみ込んだ形で議論しておりませんけれども、先ほどお話ししたように、患者さんあるいは国民、行政に非常にオープンな形でやっていきたいと思っております。
○堀田座長 それでは、石井構成員、お願いします。
○石井構成員 小児がんに関しましては御存じのように、がんの子どもを守る会がございまして、そちらと連携を非常に密にやっております。地方にも各組織がございますので、地方における声も十分に聞き取って反映させるようにしております。
○堀田座長 門田構成員、お願いします。
○門田構成員 今の話題と少し外れますが、先ほど省庁間の連携というお願いをいたしましたので、今、各学会からの御発表があったので、あえて追加したいと思いますけれども、例えば、専門医制度の問題は歴史的に見ても、必ずしも連携というよりも、ある意味では相対立したような形で動いたりだとか、そういう歴史がありますよね。今アジアが大切という話を皆さんおっしゃっておられますが、やはりそれより前に国内の同じ腫瘍を対象とする学会がどういう連携をして何をやるのか、どう動いているかということを国民あるいはがん患者さんに見えるような連係プレーをしっかりしていただくということが、政府のほうに要望を出しているのと同じように、私は現役の学会員からちょっと外れておりますけれども、ぜひそれをやっていただきたいと思います。
○堀田座長 ありがとうございます。
 恐らく小児に関しては、今までも細かいものはたくさんあったものがだんだん集約化されてきて、オールジャパンの体制になりつつあるという状況かと思いますけれども、では、小児の学会と成人は一緒にやっているかというところになると、連携がまだ不足しているだろうし、例えば今、適応外を拡大するときに、必ずしも薬事承認をとらなくても保険でカバーしていこうという動きが一方でありますよね。その場合の大前提は、それぞれのガイドラインがしっかりあるということです。そうすると、ガイドラインはきめ細かく網がかかっていないと、そもそも検討対象から外れてしまうということがあるので、これは学会全体として漏れのない形でガイドラインをきちんと整備する必要があると思います。それが連携の問題にもかかわってくるのだと思います。
 そのほかに御意見いただくことはございますか。例えば、田村構成員の御発表に対して何か御意見ございますか。
○米田構成員 抗がん剤の開発というだけではなくて、いわゆる創薬という意味で医薬基盤研究所がこれからいろいろな意味で日本全体の拠点といいますか、全体を俯瞰するような形の研究所になって創薬を推進しないといけないと考えておるのですけれども、抗がん剤開発という意味で、いろいろなステップで問題が出てくるかと思いますが、一番乗り越えないといけないと思われているステップがあるのかないのかという具体的な情報を教えていただければと思います。抗がん剤の治療開発というだけではなくて、いわゆる創薬という意味で医薬基盤研究所がこれからいろいろな意味で日本全体の拠点といいますか、全体を俯瞰するような形の研究所になって創薬を推進しないといけないと考えておるのですけれども、抗がん剤という意味で、今いろいろなステップの問題が出てくるかと思いますが、一番乗り越えないといけないと思われているステップがあるのかないのかという具体的な情報を教えていただければと思います。
○田村構成員 私のスライドの11ページだと思います。結局は現在、ドラッグラグが一番大きいところは、企業が開発に入っていくときにディシジョンメイキングがなかなかできないというところが一番大きいと思います。そこを乗り越えないとドラッグラグは多分解消しないと思います。同じ理由で未承認薬の早期導入もそうですけれども、その後の開発においてもきちんとした指導のもとに評価をしながらやっていくということで、真ん中に書いております抗がん薬開発支援センターが一番役割として大きいのだと思います。薬ができて、橋渡し研究があって、そしてファーストインヒューマンまでに行くところが一番大きな問題で、そこをどうやって進めていくかでこれからの10年、20年の日本の創薬が決まっていくのだと思っています。
○米田構成員 それらをすべて理解して、見渡す人材といいますか、研究所が必要だという理解でよろしいでしょうか。そこをすべてを理解してといいますか、見渡す人材といいますか、研究所なりがあってと。
○田村構成員 そういう母体がないと、常設機関がないと無理ではないかと思います。相談を受けて、評価して、実際に試験が始まって、そして途中のプロセスを評価し、それをまた研究者に還元していくと。最終的に薬をファーストインヒューマンしていくと、そのあたりのきちんとした常設機関がないと難しいと思います。
○米田構成員 すべてのステップを理解してするということですね。ありがとうございました。
○堀田座長 ありがとうございました。その点は創薬だけではなくて、研究全体でがん対策全体を俯瞰的にリードして調整する機関がぜひ必要だという皆さんの御意見だと思います。
 米倉構成員どうぞ。
○米田米倉構成員 まさにその点で少しお聞きしたいのですが、先ほど御説明いただいた中で、アメリカでは大学発のベンチャー企業がかなり重要な役割を果たしていると。ただ、先ほどの図もそうですが、これはアメリカだけの特殊な状況なのかなということも感じています。アメリカの場合には、いわゆる公的な機関から企業への研究費というのは基本的に出ないと私は理解しています。そういったものが大学等かなり基盤的なところにばらまかれて、そこでこういうベンチャーが育っていくという素地があるのかなと。ただ、日本の場合は、大型のトップダウン研究で企業も含めて重点的に開発を進めるという形になっていると、どうしてもその部分が非常に弱くなってくるような気がするのですが、こういうファーストインヒューマンをやっていくような人材がいないという、そこの部分をどのようにして解決していくのかがこれから非常に重要になるだろうと思います。そのときに、日本臨床腫瘍学会としては、そういう人材をどこに求めていくのか、あるいはそういう人たちを学会の中に取り込んでいくのか、そういうところは何か提言のようなものをお持ちでしょうか。
○田村構成員 基本的には、がん薬物療法専門医を育てるのが我々の一つの大きな目標でして、その中でがん薬物療法のジェネラルな部分と臨床試験や橋渡試験ができる、もう一つ上のスーパー・スーパーの専門医を育成することによって、その人たちの中から研究の流れが全体としてわかるような人たちを育成していくという流れは検討中です。今のところ、まだがん医療のベースを理解し、臓器横断的に診療できるジェネラルなオンコロジストまでベースを育成しているところで、学会としてはピラミッドシステムになると思いますけれども、がん医療のベースのところ、そして、もう一つジェネラルにオンコロジーができるところ、そして、その上のスーパー専門医として・スーパーでできるようなかなり特化したような、ファーストインヒューマンを含めた研究ができるような人材を育成していくという過程のまだ最初のとっかかりのところです。
○堀田座長 今の件に関しましては、初めの方で中釜構成員から人材育成の重要性が指摘されたのですけれども、いわばトランスレーショナルというか、橋渡しのところの人材をどうやって育成したらいいかということで、中釜構成員、何かコメントはございますか。
○中釜構成員 今、具体的に何かアイデアを提示できるほどのものはないのですが、従来より基礎研究のところに特化されたような人材育成はなされてきて、それなりの成果はあったと思います。ただ、トランスレーショナル、基礎から臨床の出口を見据えるとなってくると、西山構成員もおっしゃっていましたが、そういうことを効率よく育成していくためには、臨床からの逆向きの課題提案ができるとか、もう少し幅広い視点での人材育成が必要です。この強化なくしては恐らくここに挙げてあるような課題を効率よく推進していくためにも支障を来すだろうと思います。そのあたりは、これまで以上にどのような人材がどのような方面に必要かをきっちり議論していく必要があるだろうと考えております。ぜひ、そういう議論をしていきたいと思います。今、具体的に何かアイデアを提示できるほどのものはないのですけれども、従来かなり基礎研究のところに特化されたような人材育成はなされてきて、それなりの成果はあったと思いますけれども、トランスレーショナル、基礎から臨床の出口を見据えるとなってくると、西山構成員もおっしゃっていましたが、臨床からの逆向きの課題提案であるとか、そういうことを効率よく育成していくためには、もう少し幅広い視点での人材育成が必要で、この強化なくしては恐らくここに挙げてあるような課題を効率よく推進していくためにも支障を来すだろうと。そのあたりは、これまで以上にどのような人材がどのような方面に必要かをきっちり議論していく必要があるだろうと考えております。ぜひ、そういう議論をしていきたいと思います。
○堀田座長 先ほど米田構成員からも創薬の指摘がございましたけれども、創薬支援ネットワークをつくって、いわば日本では基礎研究のシーズがなかなか臨床につながらない部分を補っていこうという話ですけれども、その中の学会との関係とか人材育成ということで先生から何か要望や、あるいは今後の進め方について御意見ありますか。
○米田構成員 
医薬基盤研究所は、いろいろな薬の開発の基盤とならないといけないと思うのですけれども、それぞれの疾患に関しては、縦糸となっていただくような組織といいますか、何か仕組みが必要だろうと思います。それが、もし、それぞれの学会ということであれば、人材育成も含めて、その学会と相談しながら、連携をとりながら進めていくということが必要かと思います。その辺はこれからの議論の重要なことの一つになるかと思います。
医薬基盤研究所は、いろいろな薬の開発に恐らく基本とならないといけないと思うのですけれども、それぞれの疾患に関してはどこかが縦糸のような感じになっていただくような組織といいますか、何か仕組みが必要だろうと。それが、それぞれの学会であれば、もちろんそれは人材育成も含めて、そこと相談しながら、連携をとりながら進めていくということはできるかと思います。その辺はこれからの議論の重要なことの一つになるかなとは思います。
○堀田座長 そのほかいかがでしょうか。後藤構成員どうぞ。
○後藤構成員 今のお話に関連してですけれども、多分きょうのお話ですと、基礎研究の部分と診断あるいは診療という部分、特にがんについてのお話が非常によく出ていたと思います。今、米田構成員からお話があったように、その間のギャップをどうつなぐのかというのが一つ非常に大きなことではないかと思います。特に、医療イノベーションを考えたときに、学問的なこともあるのですけれども、社会的な価値の創造とか経済的な価値の創造とかいろいろな意味があると思うので、特にがんの場合には疾患の患者さんが多いだけではなくて、基礎研究者の数も圧倒的に多いと思うんです。そういう意味で、今後の健康・医療戦略という部分をシンクロナイズさせるというより、むしろ先導していく役割があるだろうと。ですから、ここで何らかのモデルのようなものをつくる必要があるのではないかと思います。
 NIHの話が出ていましたけれども、その代表例としてはアメリカではNCIなので、今回の議論の中で第3次がんの話と、第3次と第4次をつなぐような研究政策もあると思うんですね。この辺がNCIなどと比べてどういう状況にあって、バジェットの問題もあるのですが、施策的にどうなのかという議論を踏まえて第4次にいく必要があると思いますので、そういう意味ではその辺の整理というものを昔、総合科学技術会議でやっていましたが、この席でやっていただけたらと思います。
 それから、この部分については、がんの部分で整理できないと、ほかも整理できないのではないかと思うので、ぜひここがモデルケースになってほしいと思います。
○堀田座長 力強いコメントありがとうございました。
 野田構成員どうぞ。
○野田構成員 上田構成員からちらっと出てきたので、日本がん学会というか、がんの研究者全体という、一番広くカバーしている学会だと思います。当然、西山構成員、田村構成員の学会の方たちも多く所属していますし、がんのエリアを幅広くカバーしていて、例えば創薬に限って言えば、シーズの発見から最後の臨床試験まで、みんなやっているところです。
 我々のオピニオンとしては、かつては基本的にはエビデンスの提供、それから、サイエンスによる検証というのがすべてだったわけですけれども、今お話に出ているように、広くカバーしているのにそれぞれの分野がそれぞれのエビデンスを出していても、なかなか社会的な価値の創造につながらないというところから、近年は西山構成員や田村構成員とも協調していますけれども、要するに社会的価値の創造にどのように研究者はオーガナイズされるべきかという話し合いを随分してきています。その延長戦上に、先ほども質問がありましたが、患者さんたちとのコンタクトもあると思いますけれども、我々は一番その点ではコンタクトが弱いところなので、北海道でのカンファレンスの後を受けて、アウトリーチ活動、がん学会のいわゆる協働委員会、つまり、市民との協働をどうやるかという中で、患者さんとの意見を取り入れる。その中では逆に言えば、患者さんたちにすべての情報がどう見やすく整理されるべきかというところは、やはり我々がん学会が担わなければいけないのかなと思っています。
 ただ、もう一つ近年の議論は、どうしても薬をつくるニードDBになることが、いろいろなシステムの制約を乗り越えてものを動かさなければいけなくなるので、どうしてもサイエンティフィックな面やエビデンスの面がおろそかになりがちになるということがあるし、視野がどうしても1点に集中してしまうということがあって、その点がん学会としては、例えば治療の前に予防があるべきであるというような、もう少し広い目からのエビデンスの提供というものを推し進めるというところのオピニオンリーダーとして動いていきたいと思います。
 最後に1つだけ。先ほどから、例えばみんな一緒になれば、すばらしいシーズがあれば、すぐトランスレートされて、ニードが引っ張ればいくという感じになっていますが、一つがん研究で最大の問題点は、研究の2つの側面、1つは知の創造、2つ目は社会への貢献。これは両方とも大事ですけれども、社会への貢献は患者さんを治すこと、あるいは患者さんを出さないことです。しかし、例えば特許戦略を考えたときに、知の創造はだれよりも早くものを見つければ、だれよりも早く多くの人にものを知らせなければいけないというのが普通の流れですし、もう一つ社会への貢献は、それだけでは社会への貢献が成り立たないというところで、それを社会の価値にトランスレートする、そこにイノベーションが生まれるという部分があって、それを外国ではベンチャーがある程度担っているという部分があるわけですよね。
 気をつけなければいけないのは、日本のここでのディスカッションがすべてのものに対して画一的になると、今言った2つの側面両方に関して弱くなってしまうのではないか。その点で、がん学会からお願いしたいのは、これからは国際性も意識して、評価の段階で国際的な競争力の評価が一緒に行われないと、すべてのステップで国をまたいでものがエスクチェンジされる状況ですから、シーズも有用なシーズであれば外国へ持っていかれるということですので、そういうところの評価機構がすべて必要であろうというのが、がん学会の考えです。
○堀田座長 きょうは臨床系の学会が中心だったので、次回にがん学会の発表をいただくことになりますけれども、基本的にはいわゆる本体解明、基礎研究から臨床へどうやってつないでいくかというときに、余りスポット、スポットで切れないようにするにはどうしたらいいかという問題ですが、がん学会はどちらかというと知の創造のところにかなりウエートを置いているし、そうであってほしいという気もしますね。上積みだけつくってから本当に大きく言えば枯渇してしまうのではないかという心配があるので、やはりためておくものもしっかりしていかないといけない、裾野が広い必要があると思います。
 道永構成員あるいは南構成員、今までの議論を聞いていて何かコメントいただければと思います。
○道永構成員 先ほどから各省庁がバラバラにいいことをやっていてもしかたがないので、横のつながりでというお話がありました。西山構成員からのお話で、がん教育のことが取り上げられていましたけれども、あれは本当にすぐにできることだと思いますので、文科省と厚労省が中心になって、先ほど報告にもありましたが、がんが怖いものであるという教育ではなく、生活習慣を変えていくことと、命の大切さということを文科省が中心になって、すぐにでもがん研究ということでやっていただければと思いました。
○堀田座長 南構成員、いかがでしょうか。
○南構成員 私もきょう、いろいろ現状を聞かせていただきまして、確かに10年を3次やって積み重ねてきたわけで、その間にいろいろなことが実ったり、わかるようになったり、できるようになったりしたことがたくさんあったと思うのですが、やり方に関して言えば、各省庁の壁や、医療側で言えば各学会のそれぞれの壁も、論点となることはある程度出尽くしているのかなという印象を受けます。この先、確かに法律もできたわけで、それとも何らかの同調をしながら、人口も減少する、高齢化する社会に対して限られた医療資源なり人材をどう生かすかということで、ここは一つ出尽くした議論をどう動かすのかというところに集中していかないと、なかなかこれ以上の成果を出していくことは難しいのかなという気がいたしました。
○堀田座長 ありがとうございました。
 そのほか上谷構成員、何かございますか。
○上谷構成員 今まで専門的な先生のお話で、私は多分、健康づくりの活動団体としては異例な人事ではないかと思いますが、その中でがん対策推進基本計画を拝見しながら、がんの今後の研究のあり方という今回の一番の表題の中で予防というのはないのかなと。もちろん、基礎研究があり、臨床研究がありというところで治療法があって、新薬の開発は急がれることだと思いますけれども、がんを治す研究も大事ですが、がんにならない予防という部分を私ども健康づくりをやっている者からすると、どういうふうにしたらいいのだろうと今、皆さんの報告を伺っておりました。
 がんの基本計画の中でがんの教育、普及、啓発という部分があるのですが、子どもに対するがん教育のあり方の検討の中で、健康教育の中でがん教育を推進するというのは、10か年計画の中で新しく組まれた中では大変健康づくりに取り組んでいただいているということはわかるのですが、では、子どもたちをどこでとらえていくのかという年齢的な部分もありますし、どういう場所でそういう対象者をとらえるかという形も健康教育の中でどう想定されているのかなと考えました。
 また、がんの予防について基本計画に示されている中で、たばこの問題は取り上げられておりますけれども、食生活の問題は全く論議されていないなというところで、厚労省のコホート報告によりますと、食事による抑制が見られることも一つの成果であれば、この辺も研究を進め、そして、皆さんに周知させる必要があるのかなと考えているところでございます。
 以上でございます。
○堀田座長 ありがとうございました。
 そのほか御意見いただくことはありますか。本日は第1回ということで、主に各臨床系の学会の立場からの意見を出していただきました。いずれにしても、いろいろな角度から問題点を出していただいた上で、先ほど南構成員もおっしゃいましたけれども、基本的にはがん対策あるいはがん研究というのは、どこだけやって、あとはやらなくていいという話は多分なくて、ある意味、総合的あるいは幅広くやらざるを得ないと思いますけれども、では、この10年あるいは何年かを通して、どこに特に重点的に力を入れる必要があるのかという議論を今後、各立場からの発表をいただきながら詰めてまいりたいと思います。本日は、このような形で第1回を締めさせていただければと思います。
 では、次回の会議につきまして、事務局から案内をよろしくお願いします。
○岡田がん対策推進官 次回の会議につきましては、4月23日、10~13時を予定としまして、全国都市会館2階大ホールにて開催する予定でございます。よろしくお願いいたします。
○堀田座長 時間は若干2分ほど早いのですけれども、これで本日の会議を終了といたします。構成員の皆様、長時間にわたりまして熱心に御議論いただきまして、ありがとうございました。また次回よろしくお願いいたします。


(了)
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