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2012年12月18日 第5回今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会 議事録

職業安定局派遣・有期労働対策部需給調整事業課

○日時

平成24年12月18日(火)10:00~


○場所

職業安定局第1、第2会議室(12階)


○出席者

構成員

鎌田座長、奥田委員、小野委員、木村委員、竹内(奥野)委員、山川委員

事務局

宮川派遣・有期労働対策部長、尾形企画課長、富田需給調整事業課長
牧野派遣・請負労働企画官、佐藤需給調整事業課長補佐

○議事

○鎌田座長 定刻となりましたので、第5回今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会を開催いたします。
 本日は、有識者からのヒアリング、労働者団体からのヒアリング、派遣先からのヒアリングを予定しております。このうち、派遣先からのヒアリングについては、個別の会社に関わることであり、公開することにより不利益を及ぼすおそれがあるため、非公開とさせていただきます。傍聴されている方は、派遣先からのヒアリングが始まる前に御退席いただくこととなりますので、あらかじめ御了承ください。
 それでは、委員の出欠状況、資料の確認と合わせて、御出席いただいている方々の御紹介を事務局よりお願いいたします。よろしくお願いします。
○佐藤補佐 本日の委員の出欠状況です。アベ委員より御欠席との御連絡をいただいております。
 続きまして、本日御出席いただいております方々の紹介を申し上げます。独立行政法人労働政策研究・研修機構主任研究員の池添様です。人材サービスゼネラルユニオン会長の緒方様、副会長の木村様、顧問の?見様です。派遣ユニオンの書記長の関根様です。
 配布資料の確認をさせていただきます。議事次第、座席図とは別に、資料1として池添研究員からの御提出資料、資料2として関根書記長からの御提出資料、資料3として人材サービスゼネラルユニオン様からの御提出資料となっております。資料に不備等ありましたら、事務局までお申しつけください。以上です。
○鎌田座長 ありがとうございました。それでは議事に入ります。先ほど事務局から紹介していただきましたが、本日は最初に、有識者からのヒアリングということで、JILPTの池添研究員に御出席いただいております。
 池添研究員からは、アメリカの派遣労働の状況について御説明いただけると伺っております。20分程度御説明いただき、その後、質疑応答としたいと思います。池添先生、よろしくお願いいたします。
○池添 本日はお招きいただきまして誠にありがとうございます。
 私が依頼を頂戴しましたのは、アメリカの労働者派遣についてです。私は、現在所属している労働政策研究・研修機構の前身である日本労働研究機構の時代に『アメリカの非典型雇用』というタイトルの冊子ですが、現地調査なども踏まえてまとめたものがあります。約10年ほど前に出されたものです。現在では、一橋大学で教鞭を執っておられます中窪先生と共同して、また、労使の方も調査団に参加して、現地の状況を調べてきた資料です。
 『アメリカの非典型雇用』は、現地の言葉ではContingent WorkerあるいはAlternative Employment Arrangement、代替的就業形態ということで、幅広くパートタイム就業や独立契約者、いわゆる一人親方の方、労働者リースなどについて、幅広く包含している文言です。本日は、この『アメリカの非典型雇用』のContingent WorkerあるいはAlternative Employment Arrangementの中から派遣労働の部分について抜き出して、現状をかいつまんで、私が調査をするなどして知る限りのことをお話申し上げたいと思っております。
 事務局から御説明いただきましたように、資料1に私のレジュメを3ページ分御用意しています。大きく分けて、構成は、「実態」と2ページ目の「制定法規制」に分かれます。結論を先に申し上げると、実態としては派遣産業は過去、現在、あるいは未来においても成長産業の一つであるということ。しかしながら、日本のように派遣労働者あるいは派遣事業を直接的に規制する法制度、連邦レベル、州のレベルの州制定法ですが、そういった法律のレベルでの直接的な保護や規制はありません。既存法、例えば公正労働基準法や家族医療休暇法、職業安全衛生法、全国労働関係法という集団的労使関係に関する法律、それら既存法において、解釈によって部分的に保護、規制されているという状況です。
 アメリカでは御承知のように、市場を重視する政策を取っております。それが雇用労働政策にも反映されております。したがって、直接的に市場の柔軟性や企業の事業運営に直接的に触れてしまうような、conflictを生じるような法規制には国家としては消極的であり、反面で、マーケットメカニズムを通じて雇用を創出し、また、間接的な形で保護を図っていくという姿勢が見て取れるのではないかと思われます。
 ペーパーに沿ってお話を申し上げます。実態ですが、連邦労働省の労働統計局で、1990年代から2000年代半ばにかけて、Contingent and Alternative Employment Arrangementsという調査を、これは国勢調査に相当するものなのでしょうか、Current Population Surveyという既存のデータを活用して、いわゆる非典型雇用の実情を明らかにしようとした報道発表資料が出ております。1995年ぐらいから2005年の10年間において、2年に一度ぐらい報道発表されてきました。しかし、今日お話する2005年以降、Contingent and Alternative Employment Arrangementsについて報道発表資料はありません。といいますのも、先ほど触れました『アメリカの非典型雇用』の本の中でも紹介しているのですが、1995年から2005年にかけて、アメリカのコンティンジェント労働について大きな変化が見られない状況がありますので、恐らくはアメリカの労働統計局のほうで変化がないということであれば、余り頻繁に調査をする、検討する必要もないであろうと考えたのかもしれません。
 いずれにしましても、2005年の数値をこれから御紹介していくわけですが、派遣労働の(1)「定義」ですが、一時的就業であるかにかかわらず、派遣元会社、人材派遣業、temporary help agencyですが、派遣元会社から給与を支払われる労働者というふうに定義されております。ただ、定義について気をつけなければいけないのは、いわゆる常用雇用の人も含まれてしまう、一時的就業であるかにかかわらずですから。その点は注意が必要であろうと思います。実態としては、実際に派遣先に派遣されていく労働者は、ほとんどの場合が登録制であると聞いております。
 派遣労働者の就業規模は、2004年、2005年時点で数にして約122万人です。就業人口、これは独立契約者、いわゆる一人親方の人たちも含むので就業としていますが、そのうちの0.9%にとどまっているということです。
 年齢別に派遣労働者のマーケットを見ると、25~34歳の人たちが約30%、35~44歳の人たちが20.8%。この二つのカテゴリーを足すと、派遣労働者の半分以上が働き盛りの人たちであるということになります。
 性別別に見ますと、男性と女性と半々です。男性が47.2%、女性が52.8%ということで、女性のほうが若干多くなっています。推測の域を出ないのですが、派遣就業の場合は、仕事と生活のバランスが取りやすいといったこととも関係しているのかもしれません。
 人種別に見ますと、白人の方が非常に多くなっておりまして69%。続いて、数値がだいぶ下がりますが、黒人の方々が22.7%、ヒスパニック系の方々が21%と続いております。
 フルタイム・パートタイムの別ですが、派遣就業の場合は圧倒的にフルタイムが多くて80.4%、パートタイムは19.6%にとどまっております。
 産業別で見ますと、専門ビジネスサービス業が31.9%、製造業が28.4%などという構成になっています。
 更に細かく職種別で見ますと、事務や管理補助的な業務に就く派遣労働者の方々は24.8%、製造業は17.1%、サービス業務は15.6%、運輸業は13%、専門業務は12.7%というふうに様々な業務に散らばっています。
 9番目の福利厚生について少し御説明が必要かと思うのは、アメリカにおいて、いわゆる中流層、中間層の人たちのベネフィットです。福利厚生というものは、ここに書いてあるように、実態として、年金や健康保険は使用者が提供するということになっています。国家が、あるいは州政府が責任を持って提供するということではなく、一般の労働者は、使用者から提供されるベネフィットに対して拠出するということで、ベネフィットを受給するということなのですが、その場合、先ほど登録制と申しましたが、使用者が提供しているベネフィットに加入する場合に一定の要件があり、就業時間や就業期間に引っ掛かってくるということで、健康保険の適用対象者は8.3%、年金プランの適用対象者は3.8%というふうに、非常に低い割合にとどまっているということです。もう一点注意しなければならないと思うのは、派遣業者がこういった福利厚生の措置を導入していない場合も考えられますので、この低い数値をどういうふうに見るかは詳細な検討が必要ではないかと思います。
 賃金額を明らかにしたかったのですが、最新の調査では記述がありませんでした。American Staffing Associationという、全米派遣業協会と訳せばよろしいのでしょうか、ASAという組織が会員企業に対して、あるいは会員ユーザーに対して有料で提供している既存調査があります。したがって、産業別、職種別に詳細な賃金額をお知りになりたい場合は、ASAが提供している情報が有益かと思います。
 併せてお話しますと、『アメリカの非典型雇用』という10年ぐらい前にまとめた冊子の中に、調査年や職種産業は異なるのですが、派遣も含めて、コンティンジェント労働者の給与の額は非コンティンジェント、いわゆる日本で言う長期継続雇用に類する人たち、伝統的な雇用形態の下で働く人たちと比べて、おおむね低いという調査結果が出ています。
 11番目、今後の雇用志向です。今し方申し上げました伝統的な就業形態、いわゆる中長期の継続的な雇用関係、いわゆる安定的な雇用関係を望んでいる方が5割を超える56.2%いらっしゃいます。一方で、3割を超える32.1%の方々も間接雇用や代替的就業形態、つまり派遣就業などの雇用形態が良いということを希望していらっしゃいます。これは、恐らく、職種や賃金額によってかなり異なってくるのではないかと思います。例えば、製造関係ですと賃金額が低くて雇用期間が比較的短い。先ほど申し上げたASA、全米派遣業協会の全職種、産業別の直近の調査データを見てみますと、11.3週ですから、雇用期間が3か月弱ぐらいになっておりますので、やはり給与の高い安定的な雇用形態が良いという方がいらっしゃる一方で、キャリアアップや経済的に満足していらっしゃる方の場合は、派遣就業でも良いとお考えになっているのかもしれません。
 その他の実態ですが、企業としては基本的に、今、申し上げたように、非常に短い3か月未満ぐらいの期間で派遣労働者の方を活用されているようです。しかし、派遣元会社と派遣先企業との契約関係にもよるのですが、派遣労働者の就業中の職務遂行状況が非常に良好な場合は、派遣先の企業に自社の従業員で採用する場合があるようです。したがって、この場合、結果的には日本で言う紹介予定派遣とか、あるいは試用期間というふうに機能している側面もあろうかと思います。
 2番目は、派遣会社(temporary help agency)と雇用あっせん会社(employment agency)は、全く別のものです。派遣会社は登録制でありますが、派遣労働者を直接雇用して派遣する。雇用あっせんは、これから雇用関係に入ろうとする人たちの第三者として介在するという位置付けになりますので、全く別ものです。先ほど、派遣就業、コンティンジェントに関する問題を扱っている会社が成長産業であると申し上げましたが、こういった派遣会社と雇用あっせんの会社の両者を兼ねた会社も存在するようであります。(1)との関係でお話しますと、先ほど申し上げた紹介予定派遣として派遣労働者を活用するかどうかは、派遣会社とクライアントの派遣先会社との契約関係によるのではないかと思います。
 (3)ですが、当然と言えば当然ですが、派遣就業市場の好不況の振れ幅は景気変動に非常に大きく左右されているということです。しかしながら、景気の回復とともに活況を呈するのも事実のようです。実際、派遣就業市場は長期的に見て拡大し、大きく成長しているようです。
 冒頭、1990年代にコンティンジェント労働がアメリカにおいて注目されるという状況があったとお話しましたが、実際には1950年代頃から、こういった派遣や様々なコンティンジェント労働の会社が設立され、マーケットが構築されてきた状況があるようです。それ以後、現在ではAmerican Staffing Associationという業界団体が活動しているのですが、そこが労働統計局のデータを使って、景気後退期なども含めて、中長期的な就業状況をグラフにしています。好況のときは、派遣就業は非農林業の雇用率を非常に高めている。逆に、景気後退期においては、派遣就業の雇用率が非常に落ち込む。それに引っ張られる形で、非農林業の雇用率が下がっていくということです。後ほどの質疑の中で御質問等があれば、最近の数値について、マンスリーレーバーレビューのデータも手元にありますので御紹介したいと思います。
 制定法の規制ですが、冒頭で申し上げましたように、派遣事業者や派遣労働者を直接の適用対象とする制定法はありません。ごくわずかな州で派遣事業者に対して登録制、あるいは届出制が適用されているようです。これもごく二つか三つぐらいの州であると言われております。ただ、現行州制定法を詳細には確認しておりません。
 派遣労働者に対して既存法をどのように活用しているのかというと、2番です。共同使用者という概念、joint employerと呼ばれておりますが、通常の雇用関係は二当事者間で、一方当事者たる「使用者」が制定法上の義務履行主体ですが、雇用関係や雇用構造が長年にわたって複雑化してきたことによって、そういったことを背景としてであると思いますが、共同使用者概念が発達してきております。公正労働基準法においても、家族・医療休暇法においても、労務提供関係の共有や派遣元・派遣先と使用者の間の業務の関連性の問題といった点を考慮要素としております。
 また、とりわけ派遣労働者に対する指揮命令権限があったのかどうか、あるいはそれがなかったとしても、指揮命令権限があったと見うるような事実関係があったのかどうかという、いわゆる労働者概念に通じる話ですが、そういった点を考慮して派遣先企業、会社も制定法上の義務履行主体として、法的責任を一部負わせるという考え方が定着しております。これは、行政解釈によって示されております。
 また、職業安全衛生法については、こちらもやはり行政解釈ですが、utilizing employerという文言が使われております。実際に労働者を、場所的な空間をコントロールしている使用者、企業、会社が法的責任を負うという考え方が定着しておりまして、派遣労働者に対しても、日々、日常的な業務遂行過程で指揮命令、指揮監督している場合には、派遣労働者に対して法的な責任を負うということです。また、負傷・疾病に係る記録保存義務においても同様です。
 差別禁止法については、先ほどお話した『アメリカの非典型雇用』の参考資料として、末尾にEEOC、雇用機会均等委員会が発出しておりますコンティンジェント労働者に関するガイダンスがあります。これは1997年に出されたものですが、これについても、派遣労働者に対する指揮命令をどの程度していたかによって、差別禁止法の適用の有無を決するというスタンスでおります。もっとも、差別禁止法に関しては、第三者が雇用関係に介入して、就業者について差別を行うことをも禁じておりますので、場合によっては、雇用関係の介入ということで、共同使用者でなかったとしても、差別禁止法に抵触する場合が理論的にはあろうかと思います。
 労災補償、失業保険、雇用関係税の各州制定法の責任ですが、基本的には派遣会社が負うとされているようです。これは各州制定法を詳細に見なければ分かりませんが、基本的には、そういった方向で各州が制定法上の規制を行っているようです。括弧書きですが、「ただし、労災補償については、派遣先会社(実際に労働者を使用する使用者)が使用者であると定める州がある」ということです。
 3頁は全国労働関係法です。全国労働関係法は、団体交渉を促進する、団交権を保護するという法律です。団体交渉を行うに当たっては、交渉単位を決定した上で、その適切な交渉単位において団体交渉を使用者と労働組合の間で成さしめるという手順を追ってなされるものであります。その場合に、派遣先会社は、本質的には使用者ではないのですが、派遣先の労働者と受け入れられている派遣労働者との間で、利害の共通性といって、就業環境、その他処遇、労働条件に関して利害の共通性が認められる場合には、一つの交渉単位としてよいという考え方が示されております。これに加えて、派遣元と派遣先の両方の使用者が、派遣労働者を含めた一つの交渉単位にすることについて同意していることが要件とされております。これは、2000年ぐらいにスタージス事件という全国労働関係局の命令があり、それ以前の命令を覆す同意要件、dual consent requirementを不要だと言ったのですが、2004年のOakwood Care Centerの事件において、スタージス事件以前のグリーンフット事件、あるいはリー・ホスピタル事件という全国労働関係局の命令が示した考え方に基づいて、二つの使用者、企業の間で、どちらも同意がなければ一つの交渉単位とすることはできないという考え方が今現在では定着しています。雑駁な話で恐縮でしたが、以上で私のお話を終わりにいたします。ありがとうございました。
○鎌田座長 どうもありがとうございました。ただ今の御説明に対する御質問、御意見、御感想があれば何でも結構ですので、よろしくお願いいたします。
○奥田委員 2点ほど伺います。資料の2ページ、「その他実態」の中の(2)の活用するかどうかは、「派遣会社とクライアントとの契約内容によるのではないか」と。この「契約内容による」ということの意味は、契約にどう規定されているかどうかということですか。
○池添 文字どおりの意味でして、具体的な内容は個別の契約内容を見てみないと分かりません。
○奥田委員 もう一つは、制定法の2のf、全国労働関係法の二つ目の・ですが、「派遣労働者と他の労働者の利害の共通性」で、例えばどういうことをイメージすればいいですか。
○池添 一つの企業の中でも、就いている業務が違うと処遇が違ってくる。あるいは労働時間に関していえば、例えば警備の方ですと夜勤があり、その場合の必要な措置は、昼間製造ラインで働いている人たちと異なるということで、利害が違います。そうすると交渉単位としては、別に分けたほうが適切であろうと考えられますので、そういう意味で利害が共通しているかどうかということであります。
 そうしますと、製造現場で働いているシフト制の人たちがいる場合には、その人たちで一つの交渉単位。9 to 5とか9 to 6のオフィスの人たちの労働条件問題というのは、また別の交渉単位で話し合うのが適切であろうと考えられるわけで、それは企業ごと、事業所ごとによって交渉単位を決めていくということですので異なってくる。そういう意味で、利害が共通しているかどうか、そういうことです。
○奥田委員 ありがとうございます。
○鎌田座長 そのほかありますか。
○竹内(奥野)委員 どうもありがとうございました。1点お伺いいたします。私もアメリカの法制度のことなどを調べておりますが、御説明いただいたとおり、派遣に関しては、派遣特有の法制度というのは基本的にないと認識をしています。伺いたいのは、アメリカの場合だと、派遣特有の法規制がないというところで、ある意味、市場に自由に任されているというところもあるかもしれませんが、他方で、少なくとも雇用の保障に関しては、非コンティンジェントでない人についても、法的にはもともと解雇規制が自由だと、随意雇用だということで緩くされています。そういう意味では、非コンティンジェントであろうと、コンティンジェントの派遣労働者を含む人たちであろうとも、いずれも雇用保障がある意味、法的には弱いと思います。そういうこと等考えた場合、派遣労働者の利用は長期的には増えていく傾向にあるという御指摘でしたが、どのような観点からユーザー企業派遣労働力を利用しようと考えているのか。賃金等の面とかいろいろあるかと思いますけれども、そこについて御説明いただくと助かります。よろしくお願いいたします。
○池添 御質問ありがとうございます。Monthly Labor Reviewの2010年の8月号に「The Expanding Role of Temporary Help Services from 1990 to 2008」という論文がありまして、その中である一文があるのですが、バッファーとして利用していると。バッファーとしてどう利用しているかというと、従業員の数の柔軟性、雇用調整を容易にしたいというのが、一つ大きくあるのではないかと思います。この点と関連しますが、2001年から2003年にかけテンポラリーなエンプロイメントは、従前より20%落ち込み、労働者の数にして55万人であると。また、最近のリセッションですからリーマンショック前の12か月とその後を比べると、テンポラリーなエンプロイメントは、職の数にして48万4,000失われたとあります。非常に景気変動に左右されやすいというのは、そういうことであり、また、雇用期間が非常に短いということもあります。企業としてはそういう形で、数量的な柔軟性を自社のレーバーフォースに求めたいという観点からの活用が一方ではある。ただ、それで派遣労働者のほうが一方的に不利益を受けるかというと、そういうことではなく、これは一般的にも言われていることでもありましょうし、American Staffing Associationのエドワード・レンズという方のブリーフィングペーパーが手元にありますが、労働者にとってもメリットというものはあると。それは個人の生活、あるいは生活と仕事を柔軟に時間配分するということであるとか、例えば学卒者の人にとって、スキルを磨いていく。既に労働市場に入って働いている人であれば、アップグレードを目指していくということ。さらには、先ほどお話の中で申し上げましたが、企業への正規雇用としての懸橋になり得るということが言われております。したがって、バッファーとして企業が利用していると、それは一面としてあるかと思いますが、派遣労働者のほうにとってデメリットばかりかというとそうではなく、メリットの側面もあると考えられるのではないかと思います。
 At-Will Ruleについて竹内委員が言及されましたが、これは過去何かのときのアメリカの調査で伺った話ですが、At-Will Ruleがあるからといって、パーマネントの、いわゆる日本でいう正社員の人を即座に解雇するということは、余りないということらしいのです。それはあくまでも理論的な話で、実際に採用をしたアメリカ、アングロサクソン系でもそうですが、ヨーロッパのほうでも、ジョブ・ディスクリプションというのははっきりしている。そうすると、ヴェイカントのポジションがあって、そこでやってもらいたい人を採用投資をして、スクリーニングをして、この人をアサインするということをやるわけで、その投資を無駄にしたくないわけです、企業のほうとしては。もちろん転職するのは自由ですが、その人にいてもらいたいから採用するので、At-Will Ruleがあるからといって、お前のできは非常にパフォーマンスが良くないから即クビだ、ということには必ずしもならないと。例えば日本でいう配置転換や事業所を移っていくことは、向こうでも稀にあるようで、その場合には、アメリカは広いですから、御本人の渡航の費用、家族帯同の費用、配偶者の方がいれば、その方の配転先での職のあっせんとかも、企業としてはケアする場合がある。それはケース・バイ・ケースだけれども、At-Will Ruleを錦の御旗にして人材を処遇することはないと。そういうことを、恐らく派遣労働者の方も御存じなんだと思います。そういう意味で、パーマネントのほうは中長期的に継続雇用が安定的に提供されると。処遇も比較的高い。そういうことで、派遣労働者の人たちの半数以上はパーマネントの職に移りたいと。そういうのも一面として、事実としてあるんだと思います。そういった様々な複雑な側面がありますが、お答えとしてはそういうことが申し上げられるかと思います。
○鎌田座長 よろしいですか。その他にありますか。
○山川委員 ありがとうございました。今の話とも関連しますが、派遣先、顧客企業にとっての一つのメリットとして、先ほどお話がありました福利厚生や、今の解雇等も含めて、従業員の管理を派遣元がしてくれるということが、バッファーの中に含まれるのかなというのがありますが、それはいかがか。
 それと、今のお話との関係で、アメリカはテンポラリーであっても、期間の定めのない雇用という理解でよろしいのですか。つまり、日本と違って、法的にはということになるのですが、期間の定めを置くと、その間、解雇は制約されるので、期間の定めがないほうが解雇を自由とする随意雇用の原則が適用されるということで、派遣労働には日本だと有期の問題と間接雇用の問題と二つあるのですけれども、アメリカの場合は、基本的には間接雇用の点が主として問題になり、有期かどうかについては、有期にすると雇用保障が強まるという理解でよろしいか、その点をお願いします。
○池添 まず、バッファーの点については、そういう点もあろうかと思います。雇用に関連する税の問題もありますし、もちろん先ほど申し上げたように、自社で抱えて、パーマネントで抱えておく従業員、コアの部分だけをきちんと抱えておいて、あと、周辺的な労働力は外部調達でという、そういう部分もありますけども、雇用管理を自社において軽減させることもあるかと思います。そういう意味では、派遣労働者を活用するだけではなく、例えば被用者リースという形態もありますし、professional employer organizationですか、専門スタッフサービスというものを受ける場合もあるかと思います。様々なコスト・ベネフィットの観点から、自社の運営にどれが適切なものかというのをその時々、取捨選択されているんだと思います。山川委員御指摘の点はおっしゃるとおりだと思います。
 2番目のテンポラリーも期間の定めのない雇用関係と同じかどうかという点ですが、この点もおっしゃるように、雇用期間をきっちり定めてしまいますと、いくら登録制とはいえ、登録型が多い、主流をしめている、実態として多いとはいえ、派遣元会社のほうで、その登録期間はきちんと雇用しないといけないことになると、ペイしていかないといけないわけですから、これは恐らく、期間の定めのない雇用で、日本でいうところの期待を余り抱かせない何か雇用管理というものを、派遣元会社のほうで派遣の際にやっているのではないかなと、一応推測はいたします。
 ある企業で、派遣先会社の事業所に派遣元会社の常駐スタッフがいて、day-to-dayのベースで、日々の受入れというものを、ニーズを派遣先から聞いて、あの人派遣して、あの人派遣してという感じで、day-to-dayベースでやっている場合もありますので、そういう管理の仕方をしていれば、先々までエクスペクテーションを持たせるような、2か月だよ、3か月だよという形ではなくて、その時々随時という派遣労働者の管理の仕方もあるのではないかなと思います。ですから、期間の定めのない契約で登録型として、派遣労働者を活用しているのではないかなと思われます。
○鎌田座長 ありがとうございます。ほかに御質問はありませんか。
○小野委員 共同使用者のところについて教えてください。日本の派遣法であれば、どちらかというと、派遣元のほうがいろいろ責任を負わなければいけないということが多いのですが、この共同使用者の概念でいうと、派遣先もかなり責任を負うべきものが大きいと解釈していいですか。
○池添 これは実際にそうなのかどうかは、これは裁判例の詳細を見たり、派遣労働者を活用されている企業にあまた行ってみて、確認をしてみないと、何とも申し上げられないと思います。行政解釈によって共同使用者の概念というものが発達し、また、活用されているとお話を申し上げましたが、これはあくまでも制度上の問題であるということ。制度上の問題だけど、行政解釈の中では、通常は受け入れている派遣労働者を日常的に指揮監督をしている要素がいくつか見られるのであれば、通常は共同使用者だと言っていますが、その要素の判断の仕方というのも、恐らく、裁判所によっても裁判官によっても違いますし、企業が訴訟・紛争に巻き込まれなかった場合で、では企業実務として、共同使用者として扱っているかというと、そうならないように、法的な責任を逃れる形で、先ほど山川委員がおっしゃったように、自分たちは法的責任を回避するという側面もないわけじゃないと思います。公正労働基準法であれば、週40時間を超える部分についての1.5倍の割賃の支払いという義務が生じますし、安全衛生関係については、他の法律よりも共同使用者の考え方が広いように読めますが、日常的な監督ではなく、派遣元会社の、例えば建設関係で多いようなのですが、派遣元会社の責任者が来て、その人が指揮監督をしているという場合であれば、少なくとも理論的には、共同使用者の概念というものを使わずに、派遣先は、法的責任を回避しうると考える余地も多分にあると思いますので、制度上は、こういったものが最後の砦かどうかは分かりませんが、派遣労働者を救済するというために設けられているのはほぼ間違いないと思いますが、それが企業実務や裁判例の判断、解釈において、どの程度活用され普及しているのかという点は、詳細にお答えするのは難しい点かと思います。申し訳ありません。
○鎌田座長 もうお答えいただいたのを更にお聞きするのも申し訳ないのですが、共同使用者のことで、2ページの?の2、「派遣労働者の雇用と就業にかかわる法規制」として、「共同使用者」というようにまとめておられますよね。「通常は雇用関係の一方当事者たる『使用者』が制定法上の義務履行主体」と。質問は二つあります。一つは、「制定法上の義務履行主体」ということは、恐らく、公正労働基準法、家族・医療休暇法、職業安全衛生法、差別禁止法などの、この制定法上の義務履行主体ということで、a~fまでですかね。全体で共同使用者という言葉が使われるものなのか、あるいは、例えば公正労働基準だとか家族・医療休暇法という分野で、こういう共同使用者という言葉を使って、例えば職業安全衛生法では、そういう言葉は使わないとか、言葉の使用の範囲です。それが一つ。
 もう一つ、これは概念的なことですが、日本では使用者という概念は二通りあると思います。一つは労働契約上の一方当事者、労務の受領者だと思いますが、もう一つは、例えば基準法とか、そういった制定法上の義務履行主体という、この二通りが使用者という言葉を使う場合に出てくると思うのです。そうすると、「通常は雇用関係の一方当事者」というのは、雇用関係というのは、日本的に読み込みますと、労働契約と読んでしまいますが、でも、後の文章を見ますと、指揮監督権限ということで、必ずしも労働契約ということではないように思いますが、そういう理解でよろしいですか。
○池添 まず2点目の御質問についてお答えします。おっしゃるとおり、雇用契約関係あるいは雇用関係が明確になかった場合でも使用者と見なすという、そういう趣旨です。なので、契約関係、雇用関係の存在が前提にあってということではない。実態としての指揮監督を行っていたかという、そういう実態の側面から判断するということです。
 最初の御質問のjoint employerですが、御指摘を受けるまでは、私は気付きがなかったので申し訳ないです。公正労働基準法、家族・医療休暇法は、明確にjoint employerのカバレッジに関する行政解釈が示されています。したがって、文言としては使われております。
 職業安全衛生法では、明確には確認していないです。条文本体のほうでは確認をしていないのですが、行政解釈のほうでは、特に記録保存関係の行政解釈は見ることができたので手元にありますが、joint employmentとjoint employerという言葉は使っていないようであります。
 差別禁止法ですが、今回お話を受けたときに久しぶりに見たので、失念してしまって申し訳ないのですが、ガイダンスが発出されているというお話をしました。そのガイダンスの中では、joint employmentとjoint employerという文言が使われております。
 eの労災補償、失業保険のほうでは、これは恐らくjoint employmentとjoint employerではなく、州の制定法自体でのカバレッジとして、派遣先会社が使用者だと書かれているのではないかと推測はしているところです。したがって、joint employmentという言葉は使われていないかと思います。
 最後のfの全国労働関係法ですが、制定法の条文では、joint employmentとjoint employerという文言は、たしか使われていなかったと思います。交渉単位の確定の範囲として、employer union、craft unitとかいうような文言であったと思いますが、そういう交渉単位、ユニットですね。そういうことで、あくまでも解釈として、複数使用者、multiple employerという概念から、joint employmentとjoint employerという概念が発達してきた。これは解釈の問題であって、解釈上、裁判例上、あるいは全国労働関係局の命令上は、そういう文言を使われておりますが、条文上は、joint employmentとjoint employerという言葉は使われていないということになります。そういう意味では、各制定法、連邦法、あるいは州制定法でありますが、共同使用者という文言を使うかどうかについては、その時々の行政解釈であるとか、関係機関の命令の中で使われたりというように、様々なバリエーションがあるということになってくるかと思います。
○鎌田座長 しつこいようですが、共同(joint)という意味ですが、要するに制定法上の義務を誰が担うかということで、いま御説明のように、労働契約というのは決定的なメルクマールではないということでいうと、重複して派遣元と派遣先が負う場合も、いわゆる共同というふうになるのか、あるいは、日本的にいうと補充というか、派遣元が責任を負えなかった場合には派遣先が負うとか、あるいは、そもそもある一定の義務について住み分けといいますか、いわば分配するという意味で共同というのか、その共同ということの意味というのは、法律によって様々違って一概に言えないということなんでしょうか。
○池添 それは法令によって違うと思います。共同して、まさに実態として派遣元会社と派遣先会社が並んで共同して責任を負うという場合は、恐らくfの全国労働関係法、団体交渉の場面が主ではないかと思います。
 一方で、公正労働基準法、家族・医療休暇法、職業安全衛生法、差別禁止法、それらについては、実際に違法行為を行った、あるいは報復的な法違反に対する救済措置を派遣労働者が求めた場合、それに対する報復を行った実際の行為者たる企業が責任を持つということかと思います。そういう意味では、住み分けはされているのではないかなと思います。
○鎌田座長 どうもありがとうございました。ほかの方は御質問よろしいですか。本当に貴重な研究成果を提供していただきありがとうございます。このあと引き続き、労働者団体からのヒアリングがございますので、池添先生に対する御質問はここまでとしたいと思います。
 池添先生はここで退席される御予定と伺っております。大変御多忙であるにもかかわらず、本研究会に御出席いただき、誠にありがとうございました。
○池添 ありがとうございました。
               (池添研究員 御退席)
○鎌田座長 続いて、労働者団体からのヒアリングに移りたいと思います。事前に事務局から説明があったかと思いますが、最初に、それぞれの団体から5分から10分程度で御説明をいただき、その後、質疑応答に移りたいと思います。
 最初に、派遣ユニオンの関根様より御説明をお願いいたします。
○関根書記長 派遣ユニオンの関根と申します。よろしくお願いします。私からは、資料2に沿ってお話をさせていただきたいと思います。
 派遣ユニオンというのは、全国ユニオンに加盟している個人加入の労働組合でして、派遣労働者など、非正規雇用で働く人たちを中心に組織している労働組合です。
 日頃から、派遣労働者などからの相談を多く受けていることから、そういった相談などをベースに、お話をさせていただきたいと思います。同時に、NPO法人の派遣労働ネットワークというのも同じフロアに併設をしていて、私はそちらの事務局も一部兼ねておりますので、NPO派遣労働ネットワークの立場からも、少しお話をさせていただきたいと思います。
 派遣労働ネットワークは、1991年に設立いたしまして、派遣労働者の実態調査や相談活動などを行っている法人です。最近の動向については、2ページ以降を御覧ください。毎年、派遣トラブルホットラインということで、派遣労働者からの相談を一斉に受け付ける日を設けています。例年、必ず多いのが派遣切りです。長期で働く予定だったのに、契約を打ち切られてしまった、あるいは、契約の途中で切られてしまった派遣労働者からの相談が非常に多いのが特徴です。御記憶にあることと思いますが、リーマンショックのときには、製造派遣で働く人たちが一斉に切られて、製造派遣で働く人たちの多くは、派遣会社が用意している寮で生活をしていたわけなのですが、その寮からも同時に追い出されるということで、結果として、多くの派遣労働者がホームレス状態になってしまう事態を迎えました。数十万人規模で派遣労働者が切られたという経過であったと記憶しているのですが、実はリーマンショックに限らず、そういった景気変動があるごとに、大きな派遣切りが起こっているのが実情です。
 リーマンショック以降で言えば、例えば、東日本大震災が起こったときには、製造派遣だけではなく、コールセンター業務、例えばアウトバウンドのコールセンターなどは一斉に事業を停止したところがありまして、そういったコールセンターの人たちも一斉に切られましたし、観光関連の派遣労働者も一斉に切られたということで、多くの派遣労働者が派遣切りに遭いました。また、最近では、電機関連産業の不況を理由として、そこで働く派遣労働者が切られるという相談が数多く寄せられています。
 つまり、現状のような登録型派遣が続く限りにおいては、派遣切りは、好・不況の波に応じて、派遣労働者が増やされたり、あるいは一斉に切られたりということで、こういった派遣切りは繰り返されると考えざるを得ないだろうと思っております。派遣トラブルホットラインにおける相談の内容については、ここに記載させていただいておりますので、御覧いただきたいと思います。
 登録型派遣で働く労働者の雇用が非常に不安定であるのは、そもそも登録型派遣自体は、仕事があるときだけ雇用契約を結ぶことになっているものですから、派遣先での仕事がなくなったら即座に雇用契約もなくなってしまうということ。それから、派遣先企業は雇用上の責任を負っていないことから、ごく簡単に事業場の都合で「もう要らないよ」と派遣元に言って、派遣元は派遣先から切られた以上は、これ以上雇用を継続することはできないということで切り捨ててしまうということで、非常に登録型派遣労働者は不安定な雇用で働いているわけなのです。この間、極めて長期間働いている派遣労働者などが、自分の雇用は継続することを期待できるのではないかということで、裁判で争ったケースなどがいくつかあります。
 例えば8ページから、ILOの勧告が出たということを掲載させていただいていますが、伊予銀行で13年間にわたって働いていた派遣労働者が、伊予銀行でのパワーハラスメントの問題で不服を述べたところ、契約を切られてしまった事件で、裁判で雇用契約関係を争って、最終的には最高裁で敗訴してしまった事件ですが、その件について、私どもの上部団体、全国ユニオンとしてILOに申立てをしておりました。このような、13年間にもわたって働いていた派遣労働者が、派遣先の都合で切られたら、もう雇用の継続さえ期待できない状況で働かされているのは、雇用労働者としての最低限の権利も認められていない。つまり、そういったものを許してしまっている現在の労働者派遣法はおかしいのではないか、ILO181号条約に抵触しているのではないかということで、申立てをしていたところ、今年の3月にILOから勧告が出たものです。つまり、13年間働いていた、長期間働いていたとしても、登録型派遣である以上は雇用継続の期待権はないのだという判断に達してしまうということでは、派遣労働者を十分に保護しているとはいえないことから、そこの部分についてきちんと見直しを行うように、という勧告がILOから日本政府に対して出たわけです。
 こういった事例は、伊予銀行事件だけではありません。ごく最近で言えば、トルコ航空で働いていたキャビンアテンダント(CA)の方々が、2009年2月に一斉に切られた事件がありました。トルコ航空においては、TEI(テイ)という派遣会社からトルコ航空に派遣のような形で18名の日本人キャビンアテンダントが働いていたのですが、労働組合を作ったところ、それを嫌悪して、トルコ航空が一斉に切り捨ててしまった事件で、東京地裁に提訴をしていたわけです。これについては、つい最近ですが、12月5日に東京地裁で判決が示されて、契約期間の満了までについては契約を認めるけれども、有期雇用である以上、雇用継続の期待権はないと。登録型派遣である以上は期待権はないという判断になってしまって、結果として、事実上は、ほとんど敗訴という判決が下されてしまいました。
 つまり、伊予銀行においてもトルコ航空においても共通しているのは、登録型派遣においては、派遣先企業との契約が切られたら、派遣労働者の雇用契約も終わるのだから、雇用継続の期待権はないのだという判断になってしまっている状況で、どんなに長く働いている派遣労働者も、派遣先から切られた時点で切られてしまう状況になっているということです。こうした非常に不安定な登録型派遣は原則禁止して、常用型、雇用の安定した派遣を原則とする派遣制度に切り替えていくべきだろうと考えています。
 労働者派遣法が、今回、10月1日から改正されたのに伴って、偽装請負が非常に増えている点についても触れさせていただきたいと思います。たしか、2009年か2010年だったと思うのですが、厚生労働省から、「『労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準』に関する疑義応答集」が示されて、そこには、例えば請負の場合の請負労働者と発注主の労働者が混在して働いていたとしても、それだけで偽装請負とみなされるものではありませんという記載がなされています。従来、偽装請負の判断においては、請負の発注主の労働者と請負労働者が混在して働いているということは、偽装請負を判断する重要な要素の一つとされてきたのですが、この疑義応答集が示されることによって、そのような混在して働いていることだけでは、必ずしも偽装請負と判断されるものではありませんよという考え方が示されてしまったことによって、偽装請負に対する取締りが非常に行いにくい状況になっていて、むしろ現在においては、労働者派遣法も、ある程度規制が強化された部分もあるので、偽装請負への流れが非常に増えていると、現場としては考えているところです。
 12ページからは、「派遣スタッフアンケート2011」です。派遣労働ネットワークが昨年行った派遣スタッフの調査の結果が掲載されています。少し分量が多いので割愛して紹介させていただきたいと思います。
 例えば21ページに、労働時間と賃金が示されています。問4の真ん中の辺りに時給平均が示されています。2011年の時給平均は1,310.6円となっています。実は、ここには掲載されていませんが、派遣労働ネットワークが1994年から、このアンケート調査を開始したのですが、1994年の段階での平均時給は、1,704円でした。それが、2011年には1,310円ということで、おおよそ400円近くも時給の平均が下がっているということで、この間、若干の増減はあるものの、派遣労働者の時給水準はずっと下がり続けている傾向があります。
 例えば、32ページの問12「あなたは、正社員と派遣スタッフの格差を感じますか?」というところで、「格差を感じる」という派遣労働者が約85%という、非常に高い比率になっています。また、40ページの問30「あなたは今後どのような働き方を希望しますか?」という問いですが、1994年の段階では、「できれば正社員で」という方が29.6%、「今後も派遣スタッフで」という方が47.9%だったのですが、2011年の段階では「正社員の就業を希望している」という方が62.8%、「派遣スタッフを続けたい」という方が22%で、できれば正社員で働きたいけれども、正社員の仕事がなく、やむなく派遣で働いている人が非常に増えている状況になっています。
 こういった実態を踏まえて、私どもから労働者派遣制度についての要望事項として、いくつか観点をまとめさせていただいています。一つには、登録型派遣、製造派遣については、是非、原則禁止をしていただきたいという要望です。やはり、派遣切りを繰り返さないためには、登録型派遣、製造派遣を禁止して、「常用型派遣」を原則とする派遣制度に切り替えていくべきだろうと思っております。
 2番目として、特定派遣を許可制にすべきであろうと考えております。2008年のリーマンショックのときに派遣切りが一斉に起こったときにも、その実態をよく見てみると、製造派遣においては常用型派遣、いわゆる特定派遣でやっている事業が多かったのです。その背景には、特定派遣は届出制だから簡単に届出でやっていくことができる、ということでやっていた事業者が多かった背景があります。きちんと許可制にしていくべきだろうと思います。
 それから、法律上の特定派遣の考え方として、常時雇用をする労働者のみを使っているところを特定派遣と呼んでいるわけですが、残念ながら、業務取扱要領などで示されているのは、「常時雇用」の範囲が、1年を超えて働くことが見込まれること、あるいは、1年を超えて働いている者は常時雇用という判断になってしまっています。しかし、私たち一般の者からすると、この、「1年を超えることが見込まれる」というのが常時雇用というのは、非常に違和感のある考え方ですし、十分に雇用が安定しているとは言い難い。やはり、常時雇用は、本当に文字どおりの「常時雇用」に限定すべきであろうと考えております。
 現在の派遣可能期間制限については、原則1年、最長3年となっていますが、1年に短縮をすべきであると考えております。
 今回の法改正では落ちてしまいましたが、派遣先の責任の強化をすべきであろうと考えています。リーマンショックのときにも、一斉に派遣切りが行われました。その派遣切りを行ったのは、事実上は派遣先が切っていったわけなのですが、その派遣先に対して労働者が、私の雇用を切らないでくださいと訴えていっても、派遣先は、私たちは雇用主ではないから関係ないよということで、みんな逃げてしまった。やはり、団体交渉の応諾義務もないことによって、労働者が非常に守られていない状況になっていますので、派遣先に対しても団体交渉応諾義務を課していく。あるいは、育児介護休業についても、派遣元に対してはある程度適用されるのですが、派遣先には全く適用されていないことから、派遣労働者が仮に育児休業を取ったとしても、育児休業を取ったあと復帰するときに、元の派遣先に戻れない状況になっています。逆に派遣労働者は、現状においては育児や介護と仕事とを両立できない働き方になってしまっている状況にありますので、こういった育児介後休業についても、派遣先にきちんと責任を負わせていくべきだろうと。あるいは、賃金支払いの連帯責任も、派遣先に対してきちんと負わせていくべきであろうと考えております。
 先ほども申し上げたとおり、派遣労働者が非常に格差を感じている中で、均等待遇、派遣労働者であることを理由とする差別禁止も明確にしていくべきだろうと思っております。
 法的な義務としては非常に難しいのかもしれませんが、派遣労働者のキャリアアップについても、是非考えていただきたいと思います。
 現在、派遣会社が教育訓練に費やす費用は、どんどん少なくなっています。こういった統計上のデータも、多分、日本人材派遣協会などで調べているもので出ていると思いますが、教育訓練費用が非常に少なくなって、キャリアアップが難しい状況になっていることを踏まえて、派遣労働者のキャリアアップを図れるようにしていただきたいと思います。
 最後に、今後の派遣労働者の働き方としての望ましい方向として、「常用型派遣」を原則にすべきだということは申し上げましたが、マージン率の上限を設定すべきであろうと考えています。現在、中には5割、6割というマージン率を取っている派遣事業体もあると聞いております。こういった、マージン率をいくらでも取れるような状況に、是非、規制をかけていくべきであろうと思っております。
 3年後の適用となる、労働契約の申込みみなし規定の適用格大を、是非、御検討いただきたいと思っております。現在では、期間制限違反や偽装請負の場合など、四つの場合に限ってだけ、みなし規定の適用となるわけですが、労働者派遣法に違反する場合、例えば事前面接などが行われた場合も含めて、全般的にみなし規定の適用対象にしていくべきだろうと考えております。私からの話は以上です。
○鎌田座長 ありがとうございます。早速ですが、人材サービスゼネラルユニオン様から説明をお願いいたします。
○?見 私の方から説明をさせていただきます。本日は、こうした機会を頂きました厚労省、あるいは「在り方研究会」の委員の方に、まず、感謝を申し上げたいと思っております。私どもの資料3に沿って御説明申し上げます。
 資料3の2ページです。これから御説明する内容の背景である私どもの組織の概要について、簡単に触れさせていただきます。組織名は、『UAゼンセン人材サービスゼネラルユニオン』です。略称としてJSGUと申しますので、これから、その略称で御説明させていただきます。2004年5月に結成し、現在の組織人員は1万6,000名強を擁しております。目的は、そこに記載のとおりですが、組織構成として、本日後ほど御説明するアンケートの内容とも関連しますので、少し触れさせていただきます。
 私どもの組織は、15社の派遣請負会社を横断的に組織して、1万6,000名の組合員を擁しているわけです。一般的に事務系というかサービス系の派遣会社が4社、組合の組織として4分会ですが、製造系が1社、技術系が6社で構成しております。それぞれ23%、14%、61%という構成で、基本的にはJSGUとしては、技術系が今の主たる組織人員になっています。
 運営ですが、私どもは集団的労使関係といいますか、あくまでも企業単位に組織をして、企業の労使関係に基づいて、主体的に労使間で諸々の組合員の労働条件を改善していくというスタンスに立って、活動を進めさせていただいております。性別は、約80%が男子、女子が20%ということで、特に私どもの組織は95%、ほとんどの方が実際に派遣の現場で働いていらっしゃる組合員です。
 本日の説明の趣旨です。私どもは組合ですので、あくまでも派遣現場で働く組合員の思いなり考えなりをお伝えすることを主たる目的で、本日はお伺いさせていただきました。より具体的にお伝えするために、直近でアンケートをさせていただきました。今後の在り方研究会の御参考にしていただければ幸いだと思っております。
 直近で行ったアンケートについて御説明をさせていただきます。資料の3ページからです。まず、アンケートの内容に触れる前に、このアンケートがどういうものかをお断りしておきたいと思います。このヒアリングの打診がありまして、何らかの形で、より具体的に組合員のことを知ってもらうために、急遽、アンケートを行いました。先ほど組織構成で申し上げましたように、私どもは、たまたまですが、全種類の派遣請負の企業あるいはスタッフさんを抱えております。そういう意味で、できましたらこの際、事務系、製造系、技術系を比較しながら御覧いただける、あるいは分かっていただけるために、そういう結果が出るアンケートにしました。そのために、各種から1社ずつ、代表的な、一番大きなところを選んで、アンケートをさせていただきました。約600名に配って、300名弱の回収を得ております。内容ですが、お断りもしないで勝手に使ったということで申し訳ありませんが、実は、在り方研究会の資料として出されていた、派遣スタッフへのアンケート調査の調査資料がありました。これをそのまま使ったわけではないのですが、この中から必要な部分を抜粋しながら借用させていただきました。なるべく、後ほど実施されるであろう、在り方研究会の調査とも比較しながら御覧いただければ幸いです。
 具体的なアンケート結果について、3ページから御説明いたします。どういう人たちが3分会の構成になっているのか、非常に分かりにくくて恐縮ですが、白黒で男女別になっています。
 4ページは、年齢が記載されています。御承知のとおりだと思いますが、特徴的なのは、全体的に若いということです。事務系で20歳代が60%、30歳代まで含めると98%になります。技術系では、20歳代で30%、40歳未満では8割が技術系で働いていらっしゃる。ただ、製造系だけ、年齢層が幅広いということです。おのずと、家族状況となると、その結果として、妻帯者が33%ぐらいで、独身が67%の構成となっています。
 5ページの最終学歴で、私どもは技術系が中心の派遣会社のスタッフを擁しておりますが、かなり高学歴の方々がいらっしゃいます。派遣会社によっては8割ぐらいが大学を出ているところもあります。
 6ページからは、そういう人たちが、どういう条件でどういう仕事をしているのかということです。雇用形態は、先ほど申しましたように、私どもは事務系、製造系、技術系があり、特に技術系は基本的には無期雇用になるのですが、事務系と製造系は基本的に有期雇用になっています。仕事も7ページに記載のとおり、事務系、製造系は当然でしょうが、一般派遣ということで、技術系は全て26業務ということになります。賃金の水準といいますか、月収の大体の目安も、そこに記載のとおりです。
 3番目にお伝えしたいのは、そういう条件で働いている人たちは、どうして派遣で働くようになったのかについて調査した内容です。8ページからです。まず、派遣に就いた経緯として、直近の就労の形態です。多くの方は正社員の経験があるという事実です。もう一つ注目しなければいけないのは、学卒者がいきなり派遣就労に就くようになってきている。当組合の場合は、新卒採用も正社員として行っているわけですので、当然、技術系の場合は43%の方がそうなのですが、事務系、製造系においても若干いらっしゃるという事実に注目する必要があるのではないかと思っております。
 社員なり直接雇用で働いていた方が離職した理由ですが、これは非常に端的に出ていて、自己都合です。それぞれの理由があったのでしょうが、ある意味で御自分の意思で、何らかの形でお辞めになっているという事実です。
 どうして派遣で働くようになったかということの3番目の問題として、派遣を選択した理由です。9ページの表4です。たくさんの項目がありますが、これを大きく三つに分けて見てみたらどうかということです。「好きな勤務地」だとか、「経験や学歴がなくても希望する仕事に就ける」、あるいは7番目の「私生活との両立が図れる」とか、「残業や休日出勤が少なくて済む」など、つまり、自分の生活の都合で選んだ方が36%ほどいらっしゃいます。キャリアアップや仕事をもっとアップしようということで、1番の「働きたい仕事内容を選べる」とか、4番の「専門的な知識や資格を活かせる」とか、つまり、積極的な理由で選ばれた方が27%で、30%弱いらっしゃいます。合わせて6割強の方が、ある意味で派遣という働き方の一つのメリットを感じながら選択をしたという経緯です。12番目にありますように、そうは言っても現実は、正社員では働けないのでやむなく働いているという方も確かに16%ほどいらっしゃいます。いずれにせよ、案外、派遣の制度が現実的な仕事に就くことに関して、具体的に役に立って機能しているという事実です。
 9ページの4以降は、そういう人たちが、今、どのような思いで働いているのかということです。まず最初に、働いている上で、派遣元と派遣先それぞれにどのような思いでいるのかです。これは非常に端的に表れています。派遣元に関しては、当然、雇用の問題ですので、賃金と雇用不安の二つに集中しています。賃金で言えば2番目の賃金水準、3番目の余り賃金が上がらない、6番目の従業員に比べて低いなど、賃金に対する不満を持っている方が一番多くて、約6割の方です。雇用が不安定だと意識されている方は、1番や8番を選んだ方を合わせると3割弱の方です。それ以外のことに関しては、あまりボリューム的にはないということです。
 派遣先についてはどうかというのが、10ページの表6です。これも整理すると、7番目の、派遣先には特段言うことはないというのが一番多くて、4割ほどです。次に多いのが、休みや人間関係などの働きやすさに関してで、36%ぐらいの方が派遣先に対して働きにくさを感じておられます。こちらとしてはある程度多いと思っていたキャリアに関しては、35%ほどが仕事に関する若干の不満を訴えていらっしゃいます。
 10ページの(2)のキャリアの問題について、現在どんなことを感じているのかということです。これは、私の想定とはかなり違っていて、案外、現状維持派というか、むしろ満足と不満足、つまり、満足している、まあまあ満足しているのが大体満足。なんとなく不満、不満、非常に不満というのを足して比較すれば、やや、満足しているほうが多いということです。全体的には54%。むしろ不満側が46%です。少し気になるのは、技術系は、本来的には雇用不安やキャリアアップに関しては、ある程度正社員として有利なはずなのですが、むしろそちらの方に危機感があって、ある意味では一番不安定な製造系の組合員は、どちらかというと不安感が少ない、ある意味では危機意識が若干弱いというのが見てとれるかと思います。
 その具体的な内容の認識として、どんなときに満足感を感じているのか、どんなところを不満に感じているのかの内容が、11ページにそれぞれ記載してあります。これは、キャリアなり、自分の置かれた状況に対する自己認識だと思いますが、これに対しても、私が冒頭申し上げた傾向が読み取れるのではないかと思います。
 12ページ以降が、今後の働き方についてどう思っているかということです。結論的に申し上げますと、これはなかなか複雑で、数字をそのまま鵜呑みにできないというのがあります。まず、「派遣という形でいつまで働きたいか」ということに関しては、図13に記載のとおり、「できるだけ長く派遣で働きたい」「ある程度の期間、派遣で働きたい」、それと真逆の「できるだけ早く派遣をやめたい」、この二つに区分しますと、事務系で60%、製造系で80%、技術系でも約半分の方が、できるだけ、あるいはある程度の期間働きたいと。今のままができればいいのだということです。こういう現実があります。
 一方、(2)は「今後希望する働き方」です。あくまでも「希望」ということが入っているので、聞かれれば、将来的なことを考えると正社員がいいのかなということで、全体的には61%ほどが正社員を期待されている事実があります。将来的にも派遣のままでもいいという方は3割近くおられますが、この事実は、なかなかギャップがあって、どういうことなのかということを、若干ヒアリングをしています。ヒアリングの結果については後ほど口頭で御説明します。
 今後働いていく上で何を重視するかというのが、最後の設問になっています。これも冒頭の、できれば長くというのに似通っていますが、「できるだけ一つの仕事・職場で長く働く」などの形で、ある程度現状維持というか安定志向が強く見てとれるように感じています。これが、御報告したい派遣組合の気持ちということです。
 先ほどの、正社員になりたいということと、現状のままでいいという矛盾した答えに関して、若干のヒアリングをしてみました。平たく言えば、言葉は適切かどうか分かりませんが、全体的には、今のままの仕事をできるだけ続けたいというのがあります。そういう意味では、正社員というのは、安定するというシンボルで言っていますが、実際はこのまま、今の賃金が少しでも上がって、かつ、今の仕事の経験が生かせるような働き方が続けられればいいということが本音と受けとめております。以上、アンケートの御報告を申し上げました。
 もう一つ御報告をさせていただきたいことがあります。今の資料の14ページからです。そうした気持ちで働いている組合員が、製造派遣ないし登録型派遣に関してどのような意見を持っているのかというのも、素直に直接お聞きしました。事務系の方に、登録型派遣禁止についてはどうですかということと、製造系の組合員に、製造系派遣禁止をすることについてどうかということが、図1のグラフです。6割強の方が、少なくとも禁止されるのは困るということです。直接的に反対というのはごく一部です。登録派遣・製造派遣禁止に反対のそれぞれの理由は、そこに記載のように、「自分が派遣で働けなくなる」、あるいは「正社員などの雇用機会が増えない」。そういう意味では、このまま禁止されては困るということです。あるいは、仕事を選べることや労働条件が良いなど、派遣のメリットを挙げていらっしゃる方がおられます。こういう意味で、現実的には、今の状態をなるべく続けていきたいという願いからすると、単に禁止をしていくことについては、彼らとしては困るということです。ちなみに、15ページには、禁止に賛成だという方の意見も添えておきました。
 以上が、二つの調査の御報告でした。これを基に、人材サービスゼネラルユニオンとして、「在り方研究会」に二つのお願いをさせていただきたいと思います。一つは、最後に御報告しました登録派遣、製造派遣禁止については、私どもとしても、禁止すること、あるいは禁止の方向ということに関しては、是非とも見直していただきたい。あるいはノーということであります。この制度に対して、いろいろ問題もあり、改善の余地はありますが、何らかの形で改善をしながら続けていっていただきたいということです。何となれば、彼らに対しての大きく二つの思いがあります。一つは、当然ながら、巷間言われているように、派遣を仕事と生活のバランス上、積極的に使われている方が厳然としていらっしゃること。それよりも何よりも、派遣制度あるいは派遣企業の力を借りながら仕事に就いている人がかなりいる。これが現実としては多いことに目を向ける必要があるのではないかということです。
 つまり、先ほど、現状維持や正社員と言いながらも、できれば派遣を切れ目なく紹介してほしい、できれば、賃金が社員ほどだとは思っていないけれども、少しずつでも、慣れた分だけは上がってほしいという切なる思いは、ここに強く出ているのではないかと思っております。
 なお、先ほどの6割強の登録型・製造派遣禁止のアンケート結果ですが、実は私どもJSGUとしては、2009年6月、リーマンショック直後に、製造派遣禁止について同じアンケートをしました。項目も一緒です。結果的にはほとんど変わっていません。そのときも禁止反対が6割、賛成が5割、分からないが36%でした。このことについても、是非御記憶いただきたいと思います。
 2点目のお願いです。多少抽象的になりますし、かつ、物言いとしては少しせんえつなお願いになるかと思いますが、結論的に申し上げますと、派遣労働・派遣制度に対して、キャリア形成・人材育成の主軸となるような法整備、あるいは社会制度を強力に推し進めていただきたい。あるいは、発想の転換をするぐらい、そこに集中するほどに御検討いだだきたいというのが、私どもの思いです。繰り返し言われているように、派遣労働の問題点は、雇用と賃金とキャリアの問題です。先ほどのアンケートにありました、彼らの現状働いている上での不安感は、賃金と雇用不安に集中しています。先ほど御報告したとおりです。
 しかし案外、キャリアに対しての認識は、自覚が乏しいという事実もお示ししたとおりです。この賃金と雇用を具体的に考えてみると、彼らの望みと、賃金の改善と雇用の安定を考えた場合どういうふうになるかというと、彼らは、正社員になれないことは十分承知している、あるいは、それには無理があることも承知している、かつ、積極的に自分はメンバーシップのように何でもかんでもやれというのは正直言って困るということもあります。賃金に関しては、正社員ほどになれなどと言っているわけではなくて、少しでも上がってほしいという願いです。雇用に関しては、先ほどの繰り返しになりますが、できるだけ長く仕事が続くことです。これを達成するのは非常に当たり前の話ですが、彼らの能力、技術、人材の育成が、そのことを可能にする唯一の手段であろうかと思います。これは当たり前の話です。そういう意味で、冒頭に結論的に申し上げました。
 派遣について、いろいろ制限をするなり、いろいろ論議はあろうかと思いますが、やはり、民間の持つ派遣事業の新たな機能として、より一層、キャリア支援企業として、あるいは人材育成として行動化が図れるような環境整備を、是非お願いしたいと思っております。そのことが、私どもが頂いている派遣労働者の一番の労働条件、気持ちの安定、福祉につながると確信しております。かつ、もしその発想で大きく現状を変えていこうとするならば、やはり派遣に対する見方も、一定程度肯定した上での政策論議になろうかと思います。否定なり規制からは、そういった民間のパワーは生まれてこないというのが原則・原理ではないかと思います。今回の検討が、新たな可能性のスタートになることを期待したいと思っております。以上です。
○鎌田座長 どうもありがとうございました。両団体から、かなり詳細なアンケート調査結果、データを踏まえて御紹介いただきました。私の予定よりも少し時間がタイトになってしまいました。この後、派遣先企業からの調査も予定していまして、委員の皆さんには大変申し訳ないのですが、お一人かお二人ぐらいの御質問があれば、その程度で制限をさせていただきたいと思います。資料は大分、分厚いものを頂いておりますので、私どもはこの後十分検討させていただきます。何か御質問はありますか。
○奥田委員 どうもありがとうございました。人材サービスゼネラルユニオンさんにお聞きしたいのですが、企業単位での交渉ということをおっしゃっていたのですが、派遣先との交渉などもされるのでしょうか。
○緒方 派遣先との交渉は、基本的にはないです。
○奥田委員 ないというのは、そういう要望が出てこないからということですか。
○緒方 その部分に関しては、私どもは、派遣元を通じていろいろなものは解決していただくと。派遣元と派遣先。そこで、先ほどあったようなパワハラなどがあれば、派遣元を通じて派遣先と交渉していただいて解消していただくのが基本的なスタンス、今のところやっている内容になります。
○木村委員 関根さんにお伺いしたいのですが、御見解の第2のところで、「登録型派遣、製造派遣の禁止を」とありまして、御説明を伺った範囲では、特定派遣というのも、1年超ではなくて、正社員の派遣だということで受け取ったのですが、製造派遣に関しては、登録型派遣ではなくて正社員派遣でも禁止という御意向なのかどうかということと、禁止ということであれば、禁止すべきという理由をお聞きしたい。
 もう1点は、第2の4のところで、「派遣可能期間制限を1年に短縮すべき」とあるのですが、その1年という期間の理由、その2点をお聞きしたいのですが、お願いします。
○関根 まず1点目としては、登録型派遣を禁止すべきだと考えております。先立って国会に提出されていた労働者派遣法の改正法案というのは、登録型派遣原則禁止と製造派遣禁止というふうに、ダブルで禁止となっていましたが、登録型派遣の原則禁止ということで両方カバーできるだろうと考えております。つまり、製造派遣であっても、きちんと正社員型、常用型であれば、ある程度認められるのではないかと。登録型派遣を禁止していくべきだと考えております。
 それから、期間制限の問題でしょうか、1年に短縮すべきであろうと。この問題については、どういった御質問でしたか。
○木村委員 1年という期間ですが、なぜ1年なのかということです。
○関根 無制限に長くしていくことは望ましくないと考えております。私どもは、派遣が無制限に使われることは、結果として、正社員なり安定雇用で働く人たちをどんどん派遣に置き替えていくだけ。つまり、不安定雇用に切り替えられていくだけだと考えておりますので、派遣可能期間制限を1年と、非常に短く設定して、本当に臨時的に、かつ、一時的な業務についてのみ派遣を活用できる、というふうに規制をしていくべきであろうと考えております。
○竹内(奥野)委員 今の最後の問いに関連してなのですが、御主張としては、登録型派遣禁止と併せて1年間への期間短縮もすべきである。あるいは、そのいずれかはすべきである,ということでしょうか。どのような御意見なのでしょうか。そこだけ確認させてください。
○関根 登録型派遣を原則禁止していくべきであろうというのが第一です。それから、予備的に、もし登録型派遣原則禁止にならなかった場合については、派遣可能期間制限をきちんと1年にしていくべきであろうということです。
○竹内(奥野)委員 ありがとうございました。
○鎌田座長 それでは、大変申し訳ありませんが、以上で質問を終了させていただきたいと思います。お忙しいところ、両団体の皆さんには、本研究会に御出席いただき、誠にありがとうございました。
 引き続きまして、派遣先からのヒアリングに移りたいと思います。冒頭に申し上げましたとおり、傍聴の方々については、ここで御退席いただきますようお願いいたします


(了)

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