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2012年11月7日 第3回今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会 議事録

職業安定局派遣・有期労働対策部需給調整事業課

○日時

平成24年11月07日(水)17:30~


○場所

職業安定局第1、第2会議室(12階)


○出席者

構成員

鎌田座長、阿部委員、小野委員、木村委員、竹内委員

事務局

宮川派遣・有期労働対策部長、尾形企画課長、富田需給調整事業課長
牧野派遣・請負労働企画官、佐藤需給調整事業課長補佐

○議事

○鎌田座長 定刻となりましたので、第3回今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会を開催いたします。本日は、有識者からのヒアリングということで、お2人の研究者にも御出席いただいております。委員の出席状況や資料の確認と併せて事務局より紹介をお願いいたします。よろしくお願いします。
○佐藤補佐 本日の委員の出席状況です。奥田委員と山川委員から欠席の御連絡をいただいております。座長からお話がありました本日御出席の有識者の御紹介をさせていただきます。静岡大学准教授でおられます本庄淳志様です。独立行政法人労働政策研究・研修機構の統括研究員でおられる濱口桂一郎様です。
 続きまして資料の確認をさせていただきます。議事次第、座席図に続き、資料1として前回の議事概要、資料2として本庄先生から御提出いただいています「ドイツの労働者派遣制度」についての資料、資料3として濱口統括研究員から御提出いただいております「EU派遣労働指令とEU諸国の派遣法制」という資料です。資料に不備等がありましたら適宜事務局までお申しつけください。恐縮ですが、報道関係者の頭撮りについてはここまでとさせていただきます。以上です。
○鎌田座長 ありがとうございました。早速、議事に入ります。先ほど事務局から御紹介していただきましたが、本日は有識者からのヒアリングということで、静岡大学の本庄先生、JILPTの濱口研究員に御出席をいただいております。本日はお忙しいところ、誠にありがとうございます。本庄先生からはドイツの労働者派遣制度、濱口研究員からはEUの派遣指令について御説明をいただけると伺っておりますので、まずは本庄先生と濱口研究員からそれぞれ2、30分程度御説明をいただき、残りの時間で質疑応答、意見交換としたいと思います。本庄先生から御説明をお願いいたします。
○本庄准教授(静岡大学准教授) 改めて静岡大学の本庄と申します。私からはドイツの労働者派遣制度について報告させていただきます。今日は貴重なお時間をいただきましてありがとうございます。
 ドイツの労働者派遣制度は、日本法を作ったときに参照されたという話もありますが、実際のところはよく分かりません。かなり日本の法制度とは異なっております。ドイツの法制度自体も創設当初からかなり大きく変化しておりますので、私からは大きな流れについてまず確認をして、今どういう問題状況にあるのかということについて御報告させていただきます。では始めさせていただきます。
 ドイツの労働者派遣制度について考える際には、1957年から1972年までは全面禁止されていた歴史的経緯を押さえておく必要があるかなと思います。具体的に申しますと、1957年は戦後すぐという評価はなかなか難しいでしょうが、ドイツの場合東西に分離して、西ドイツが主権を回復したのが確か1955年ですから、正にドイツが独自に歩み始めたときという辺りで、職業紹介を巡る法制度が再整備されたということです。「職業紹介失業保険法」と呼ばれる法律により、職業紹介については原則として国家が独占することが規定されるわけです。
 具体的に職業紹介とは、「労働関係を成立させるために、求職者と使用者とを結合させようとする行為」。民営職業紹介事業について全面的に禁止をする。申し上げるまでもなく、今は国際的な動向が大きく変わる中で、ILO181号条約の下で、今まではドイツでも民営職業紹介事業が許可制その他の要件の下で当然に認められています。ですから前提部分が大きく異なりますが、当時は職業紹介は全面的に国家が独占する考え方をとっていたということです。
 派遣制度との関係で重要なのは、職業紹介に関する法律の中で、「使用者が、ある業務のために労働者を第三者の利用に継続的に委ねる場合で、労働力を自己の計算にもとづいて利用することなく、割り当てられた労働者に必要とされる道具を準備しないときは、当該労働者の割当ても職業紹介とみなす」という第37条第3項の規定がありました。これにより、今でいう労働者派遣についてもドイツでは職業紹介であるとみなすことによって、包括的に禁止されてきた歴史があります。
 事情が変わるのが1967年です。adia事件と書いてありますが、要するにX社という今でいう派遣元が自由な協働者、言い方は何でも結構ですが、と称する労働者を募集し、これに対する応募者を事務職員として派遣していた。X社は労働者を交代させることが可能で、派遣先の需要がなくなると労働者はX社に復帰をしていた。X社と派遣先との企業間の契約では、労働者の就労時間数に応じて、報酬として一定額の対価が支払われ、派遣先が労働者を直用化することは違約金の定めのもとで禁止されていたケースです。一方、X社は労働者に対して1時間当たり一定の額を自分のところで差し引いた額について支払っていたということです。
 これに対して、行政側である連邦雇用庁が違法な民営職業紹介事業であると、先ほどの第37条第3項に該当するから、これはだめだということで中止を要請したことに対し、訴訟が提起された事件です。
 同じ日に関連する最高裁判決が出ております。憲法裁判所は判断の仕組みとして、職業紹介の国家独占そのものが違憲かどうかについて判断しております。職業紹介の国家独占については違憲ではないという判断を前提としながら、だけどということで、この事件では派遣と職業紹介とは共通の経済的機能を持っている一方で、派遣では派遣元と派遣労働者との間に法律関係があり、個々の派遣に限定されるのではなく、一定の継続的なものだということ。そういう派遣に対しては一定の経済上のニーズがあるのだということを強調して、派遣と職業紹介を一緒くたにして規制をかけていく1957年の職業紹介失業保険法については違憲であるという最高裁判決が下されたわけです。これを受けて、ドイツにおいては、職業紹介から切り離した労働者派遣について、制度化が進められたというのが大きな流れです。
 最初できた当時の派遣法はどんなものだったかというと、1972年法です。これまで全面的に禁止されてきた労働者派遣を解禁したわけですが、あくまで部分的に解禁したものです。要するに、派遣法が許容する範囲内でのみ労働者派遣を認めて、派遣法違反の場合には、職業紹介をしているものとみなすことによって、派遣先との間で雇用関係を擬制していくという立法です。
 特徴を大きく4つ挙げています。1つ目として許可制度による事業の参入規制。2つ目として有期労働契約の利用事由の制限。3つ目として派遣期間と雇用期間の一致の禁止。日本的に言うならば登録型派遣の全面禁止です。4つ目として派遣上限期間の制限を課していた。
 それぞれ細かく見ておくと、許可制度については、連邦雇用庁からの許可取得が義務付けられています。かなり細かい基準がありますが、1つ特徴的であるとすれば、派遣元が労働契約上の使用者としての必要な信頼性の有無や、通常の使用者としての義務を法律上、履行し得るかどうかという形で、派遣労働条件についての一定の配慮が払われているというのが1つの特徴かもしれません。
 許可義務に違反した場合どうなるかというと、まず1点目として、労働者派遣契約すなわち企業間の契約と、派遣労働契約がいずれも無効となる。無効となった場合どうなるのかということが問題になりますが、この場合、先ほど申し上げましたとおり、労働者と派遣先との直接の労働契約関係を擬制するということが法律上規定されていたわけです。擬制的労働関係と呼ばれるものです。許可がいつ取り消されたか、あるいはそもそも与えられないままで派遣を行ったのかということにより、いつから擬制されるかという細かな違いがありますが、省略させていただきます。
 違法派遣されていた労働者の保護が目的でありますから、派遣元が許可を取得しているかどうかについて、派遣先が知らなかったことは問題にならなかった。派遣先がそういう事情を知っていたかどうかにかかわらず擬制されたということです。擬制された場合の労働条件はどうなるのかということが問題になりますが、派遣先の労働条件が適用されるのが原則です。例外として、労働時間と賃金ですが、労働時間については労働者派遣契約の内容、派遣元の基準が適用されて、賃金については派遣先で上がる場合には派遣先の基準が適用されるけれども、派遣先に行くことによって結果的に賃金が下がるような場合には、かつての従前の労働契約に基づく賃金との差額について派遣元で補填する形で擬制する制度でありました。擬制する場合の労働契約期間についても原則としては期間の定めのないものだけれども、何か正当事由がある場合であれば有期雇用、期間の定めのある労働契約として、派遣先との間で直用関係を擬制する仕組みでした。
 (ウ)として書いてあるのは、新たに擬制された労働関係を当然個別の合意によって終了させることは可能なわけですが、その場合の労働条件については契約自由の範ちゅうにある。合意に基づいておりますので、そういう余地はあった。合意がない場合には一定の労働条件について直接擬制していく形で法制度が展開されていた。
 2つ目の特徴であります有期労働契約の制限は、ドイツ法の特徴かもしれませんが、派遣労働契約では無期雇用を原則としていたということで、派遣労働者の雇用の存続保護を重視しておりました。言い方を変えますと、労働契約の期間設定は、派遣労働者の個人的事情に基づいて正当化できる場合に限って、有期雇用で派遣労働者を採用することが認められたということです。
 これについては若干補足が必要です。ドイツ法では、そもそも有期雇用について、当時は判例法理ですが、締結について正当な理由を求めていた。特に6か月を超える場合の有期雇用について正当な理由を求めていた。ここで言う正当な理由は、正当化できれば何でもよかったのに対して、派遣の場合には、あくまで派遣労働者の個人的事情に基づく正当化が必要であった点では、当時の判例法理よりも、あるいはそもそも6か月を超えない場合であったとしても期間設定には労働者個人の事情に基づく正当化が必要であった点で、より厳しい規制であったことが言えるかなと思います。
 実態としては、派遣元との雇用期間が3か月、これを長いと見るか短いと見るかは人によって変わるかもしれませんが、3か月未満のケースが約8割であった。今、どうなのかというのは、今でも半分ぐらいのケースでは3か月未満です。若干期間が長くなっている傾向がありますが、約半数ぐらいは3か月未満。比較的短期間の派遣が行われているというのがドイツの実態です。
 法制度に戻ります。登録型派遣について全面的に禁止されていた。具体的には、派遣期間と労働契約期間を完全に一致させることについて、明文の規定をもって禁止していた。先ほど申し上げたとおり、この当時のドイツ法では有期労働契約で派遣を使うことを禁止した上に、しかも登録型派遣まで全面的に禁止する。例外的に期間設定が許容されるような場合であったとしても、その期間と派遣期間とを一致させることは許さんというかなり厳しい規制です。
 派遣については期間制限が設けられていた。当初は3か月です。この期間の算定ですが、同一労働者の派遣先での受入期間をもとに算定するということです。ドイツ法の特徴ですが、許可制度とこういうものがリンクしています。具体的には、同一派遣先に対して、同一労働者を3か月以上派遣した場合には、派遣元は法律上禁止された民営職業紹介事業を行っているという推定が働く。これは公法上の問題ですが、私法上もみなし規定が設けられていて、私法上は直接に契約関係が、派遣先と派遣労働者の間での期間制限を超えた違法な派遣に対しては、それによって派遣先との間で直用化を擬制するという制度でした。
 この制度はその後大きく変わっていくのですが、今でもこの許可制度を中心として、派遣法で許容しない派遣については、あるいは許可を取得していないような派遣については直用化にもっていくという枠組みそのものはまだ残っております。ただ、許可等の基準そのものが変わってきています。それが大きく反映されたのはハルツ改革と呼ばれる労働市場改革の時期です。ハルツ改革は大体2000年代の初頭です。それ以前の時期にどういうふうに変わってきたかと申しますと、基本的には期間制限、期間の延長を中心に規制緩和が進められてきた。派遣法について一部適用除外、人員調整の代わりに派遣をする場合については一部規制緩和、規制緩和というか、そもそも派遣法を適用しないということが行われてきました。
 期間制限についても徐々に期間の長さが長くなってきました。最初3か月だったのが6か月になって、9か月になって、1年になる。最終的には2年まで延長された経緯があります。派遣は臨時的、一時的なのだということでスタートしていたわけですが、基本的な考え方と期間の延長が当然に抵触してくるわけです。
 この中で行われたハルツ改革では、要するに失業対策、雇用情勢が厳しい中で、派遣を使ってマッチングを図っていこうという考え方がありました。(1)として書いておりますが、人材サービス・エージェンシーと呼ばれる、各地域にある自治体と民間とが協同することによって労働力の需給マッチングを図っていこうという仕組みです。いろいろな形態がありましたが、一言で言えばそういう制度です。
 失業者の派遣について例外的に規制緩和をしていこうという考え方が1つと、派遣法全体について規制緩和をしていこうという大きな流れがあります。規制緩和の部分は、従来の許可制度そのものは維持されております。しかし、従来は許可義務違反とされてきた、例えば期間制限や有期雇用の特別な規制、要は本人に何か特別な事情がない限り認めないという特別な規制は撤廃されました。登録型派遣について全面的に禁止する規制についても撤廃されております。ですから、派遣期間や利用事由の点で直用化に誘導していくことは現在では行われておりません。
 登録型派遣は許容されるようになったわけですが、自由に使えるかというと、パートタイム有期労働法の解釈、有期雇用法制の問題として扱われます。期間制限の撤廃に合わせて、派遣労働者としてでも理論的には長く働き得る余地が出てくるわけですが、労働条件をどうしようかということが必ず問題になるわけです。これに併せて導入されたのが、いわゆる均等待遇原則です。厳密には、その直前の改正で、最長派遣期間が2年に延長されたときに、1年を超える派遣については均等待遇を適用するという改正が行われていたわけですが、それを再整理して、派遣期間の1日目から均等待遇原則を適用する形で整備が図られたということです。
 重要なのは、これには重大な2つの例外があるということです。1つは、失業者派遣の例外です。先ほどのPSAを活用した派遣が典型的ですが、従前失業者であった人について派遣をする場合には、一定期間、具体的には6週間について賃金に限っては均等待遇から外すという例外です。いわば限定的な例外です。この制度は、実はついこの間、2011年の法改正がありまして削除されております。もう1つ重要な例外が(イ)の労働協約による例外です。これは現在でも残っています。
 具体的には、協約で「別段の定め」をした場合にはそっちを優先します。労働条件を引き下げる場合も同じです。ドイツ法の特徴は、非組合員や協約未締結の使用者団体にもその協約の基準、どこかの組合が協約を結んであれば、個別合意を通じてその協約の基準を援用してしまえということを許容している。あとで、是非これは濱口先生のEC指令との整合性をお伺いしたいのですが、そういうことも許容されるのかというのは少々疑問がありますが、少なくともドイツ法では個別合意によって協約基準を援用するという余地が認められていて、実務上これが極めて多用されているのが特徴です。一部の組合が低い労働条件で協約を結ぶ。その水準に合わせて個別の合意を使って援用する。個別の合意によって低い水準の労働条件について援用することで、均等待遇原則からの逸脱が認められるということです。もちろん、この点については批判が多かった。
 その後、最近どうなったのかということですが、典型的に問題になったのが次の2010年のSchlecker事件と呼ばれるものです。これは、大手のドラッグストアが小売店、小さな店舗をどんどん閉鎖をして、大規模店舗に変えていこうということで、小売店で働いていた人たちを全員解雇して、その後派遣として大規模店舗で受け入れる。その際に労働条件をガクンと下げたという事件です。労働条件をガクンと下げる方法ですが、先ほどの協約基準の援用です。個別の同意により、労働協約で設定された低い労働条件について合意することによって援用したということです。当然、社会から、あるいは行政からも一部批判があった。これ自体は直ちに違法かと言われるとそうではなかったわけです。
 そのような中で、1つ重大な事件が起こりました。2010年末のことです。派遣労働者に関して低い労働条件の労働協約を締結していた労働組合について、協約締結能力がないという最高裁判決が出ます。下級審をそのまま踏襲しただけですが、労働組合の要件といいますか、労働協約を締結するための要件を満たさないということで、一部の労働者しか代表していない、比較的組織率の低い労働組合が、低い労働条件で協約を結んでそれを援用することが行われていたわけですが、協約そのものに効力がないという判決が下されます。当然実務上多大な影響を与えるわけです。仮に協約による逸脱ができないとなると、原則通り均等待遇という話になりますから、時効にかからない範囲で差額請求することができるということです。社会保険料、その他の再計算が必要になるわけです。多大な影響を与えたということです。
 こうした中で、昨年、2011年に改めて法改正が行われております。法改正のポイントは大きく2つあります。1つはEUの指令への対応。国内法化の期限が2011年末、12月だったと思いますので、それに合わせて改正を図ったということと、労働者派遣が濫用的に利用されることを防止するために改正、規定を整備したということです。
 指令への対応ということで、1つ目は経済活動を行う全ての者に対して派遣法の適用を拡大した。必ずしも民間の業としての派遣ではなく、その範囲をやや拡大したということです。指令に合わせて、公的職業訓練を受けている場合にのみ例外を認めるという趣旨に沿う改正を行ったこと。2つ目として、均等待遇原則の拡大で、先ほど失業者派遣については均等待遇について一部例外が妥当したと申しました。ハルツ改革期の法改正ではそういう制度になっていたわけですが、その例外について削除した。
 細かな点ですが、均等待遇違反について、公法上も秩序違反だとして過料の定めをしたこと。指令への対応ということで、派遣先の空きポストに関する情報提供義務や派遣先の福利厚生施設の利用に関して許容する義務というものを規定したということ。第9条第5号の新設と書いておりますが、例えば職業紹介の対価について、派遣労働者が派遣元に支払う合意をした場合にもそれは無効ですよという契約無効事由が追加されたということです。
 濫用的利用の防止の点に関しては、退職労働者について、労働条件を引き下げて派遣として受け入れる。先ほどのSchlecker事件のようなケースを想定しているわけですが、そういうものについて明確に防止した。具体的には、派遣前6か月以内に派遣先又は派遣先とコンツェルン関係にある(会社法の規定に基づくものですが)企業から退職した労働者について、均等待遇原則から逸脱することを認めないという改正が行われております。協約があったとしてもこういう人たちについて均等待遇からの逸脱は認めないということです。
 もう1つはドイツ固有の問題です。労働協約による最低賃金規制ということで、3a条が新設されております。具体的には、代表性を有する労働組合と使用者団体が最賃について合意をした場合、申立てに基づいて連邦労働社会省による協約の拡張適用をする。最低労働条件については、協約の拡張適用することで対応を図っていこうということが認められたといいますか、そもそも労働協約法でもそういう拡張適用の制度があるわけですが、要件について緩和するような内容になっております。細かな点は別として、最低賃金規制に合わせた改正として、許可の欠格事由や派遣契約の無効や均等待遇、最低賃金に違反する場合にはどうなるのかというと、変わっているのは、普通は最低賃金まで引き上げる発想になると思うのですが、そうではなくて派遣先との均等待遇まで引き上げるということです。そういう規定について追加されているということです。
 先ほど、ドイツ固有の事情と申し上げましたが、法律による全国最低賃金という発想がドイツ法には少なくとも現在ありませんので、個別の産業別で労働契約の拡張適用をすることで、産業別の最低賃金を国家法ではなくて設定しているというところで、だけど外国人がどんどん流入してくる中で、最賃規制がなかったら労働力のダンピングが起こるではないかということで導入された規定です。
 最後にドイツ法の特徴を簡単に整理させていただきますと、制度の創設時代、あるいは今でも制度の枠組みそのものは残っているわけですが、許可義務を中心として、違法派遣の場合には直用化、民営職業紹介を行ったものと推定する。あるいは労働条件については直接にみなすことによって擬制を図っていく。直用化を目指していくということ。ただし、何が許可義務違反なのかということについては、かなりの規制緩和が図られて、内容自体は大きく変わってきているということです。
 先ほども申しましたが、派遣期間の規制緩和、期間延長、最終的には上限期間の撤廃に合わせて派遣労働者の労働条件を向上させる手段として均等待遇が軸になっております。ただ、この軸については重大な例外がある。特に協約による逸脱。協約による逸脱そのものは余り問題でないのかもしれませんが、協約により逸脱をした内容について個別契約で援用するというものがほとんど99.何%だったと記憶していますが、ドイツの派遣労働関係のほとんどはそういう形で労働条件の設定がされているという中で、派遣労働者の賃金が均等待遇原則があるにもかかわらず、原則と著しく掛け離れたところに設定されていることが問題にされております。あくまで均等待遇を軸にして、利益調整の在り方が問題になっています。
 最近では、先ほどいちばん最後に申し上げましたとおり、最賃の規制も立法で入ってきております。これも協約をベースにして拡張適用していく。拡張適用の要件について、一般の労働協約法の規定よりも緩やかな要件を設定する形で対応している。あとで議論になるかもしれませんが、例えば業務の限定とか、あるいは業務による指定、そういう考え方はもともとドイツ法にはありません。建設業は別です。最近では規制緩和の面もありますが、建設業に関しては特別な規制があります。それを別にすれば、業務による限定という発想はないですし、少なくとも現行法に関しては期間に関する制限がない。ポイントとして重視されているのは、一般の解雇有期労働法制とのバランスです。
 先ほど、登録型派遣について全面禁止していた規定がなくなったと申しましたが、それを自由に利用できるかというと、そうもなかなか言い切れない側面があります。パートタイム有期労働契約法によって規制がありますので、更新回数等々について制限がかかってくる。更新回数に制限がかかる以上、登録型派遣を自由に利用するというのはなかなかハードルが高いわけです。
 最近では、有期法制そのものが大きな変化をしてきておりますので、そちらについても併せて目を配る必要があるだろう。一言言えるのは、派遣についてのみ特別に期間を制限するとか、そういう発想がないことを1つ強調しておきたいと思います。簡単ではありますが以上です。
○鎌田座長 どうもありがとうございました。後ほどまた御質問させていただきますので、そのままお残りください。
 続きまして濱口先生から御説明をお願いいたします。
○濱口統括研究員(労働政策研究・研究機構統括研究員) 濱口でございます。本日はこの研究会にお呼びいただきましてありがとうございます。私からはEUの派遣労働指令について説明せよということですので、それを中心にいたしますが、併せてどれだけ言及する時間があるかどうか分かりませんが、EU加盟国の派遣に関する法制がどうなっているかという、非常に雑ぱくな、EUレベルでまとめたものを基にしたものです。あまり説明する時間がないかもしれませんが、本日の資料の後ろのほうに付けておりますので、あとで御覧いただければと思います。若干コメントもしたいと思います。
 EU欧州連合というのは、あまりここで細かく言うとあれなのですが、当然のことながら27か国入った国際機関です。それ自体立法・行政・司法の三権を持っておりまして、とりわけ労働法制については、いくつかの顕著な指令という形で基準を作り、それを各加盟国は国内法にしないといけないという形をとっております。
 EUにおける派遣労働の扱いの特徴は、それがパートタイム、有期契約、そして派遣労働という、三位一体といいますか、非正規というのは向こうではatypical、非典型労働と申しますが、その枠組みで議論をされてきたということだろうと思います。
 実は今から30年以上前から繰返し立法化の試みがされてきまして、1回目は全面的に失敗、2回目は安全衛生だけ何とかできた、3回目になってようやくいずれもできたという形になっています。それも紆余曲折があります。1回目は1980年代の初め頃で、ここにはテンポラリーだけ書いてありますが、パートタイムについても同じような指針と指令案がありました。テンポラリーワークというのは、派遣労働と有期契約とを両方合わせた概念で、とりわけこの有期についても派遣についても、極めて制限的な姿勢をとっていたということで、基本的にこのときは、イギリスに限らず多くの加盟国から、非常に硬直的で時代遅れだという批判があって、あまり討議されない形で葬り去られたというのが第1ラウンドです。
 第2ラウンドは、90年代初頭で、いくつか状況が違っていたのは、当時のECの条約で安全衛生については全会一致ではなくて、多数決で決めることができると入っていたというのが1つです。統合がどんどん進んでいくということで、競争の歪みというのがかなりキャッチフレーズになっていました。非典型労働についても、目的としては均等でない扱い、つまり均等をやらせている国とそうでない国があると、競争上の歪みが生じると、これは問題だという理屈付けでやっておりました。形としては3つの指令案ということで出したのですが、結局このときには、当時はまだ保守党政権ですが、イギリス以外はほぼ賛成していたのですが、イギリスの保守党政権が非常に強く反対したということで、労働条件と競争の歪みについての指令案は成立をしませんでした。ただ、安全衛生については、1つは全会一致ではなくて、多数決でできるようになっていたということと、イギリスは安全衛生についてはあまり文句を言わない、むしろ自国が非常にレベルが高いということもあって。このときには、安全衛生についての指令案だけは成立をしております。
 この概要を簡単に2ページの真ん中に載せております。有期雇用関係と派遣雇用関係についての安全衛生に関する指令が、もう20年以上前、1991年にできておりまして、中身は御覧いただくように、これから有期や派遣で働く場合に、いろいろな安全衛生上問題がある場合にはそれを知らせなさいとか、責任は利用者企業にありますよとか、あるいは健康診断はきちんとしろとか、防護、予防、訓練をきちんとしろというようなことです。これはもうずっとこの20年間EUに存在しておりますが、すべての国でこういう形の国内法ができているわけですが、日本ではこの間、派遣についていろいろ議論される中で、1つは労働基準局と職業安定局でちょっとは違うということもあるのかもしれないのですが、安全衛生という観点から、非典型労働にアプローチするという考え方があまり見られなかったように思われます。ただ、ヨーロッパではこういう形のものが既にありますので、こういったものも参考にする余地はあるのではないかという気はします。
 これが第2ラウンドで、安全衛生だけは成功しましたが、ほかは失敗いたしました。ここでEU当局、欧州委員会はどうしようかと考えたところで、実はこの頃にマーストリヒト条約というのができました。通常であれば指令案というのは、欧州委員会、行政府が出して、これを立法府である欧州議会と閣僚理事会で審議して採択するということになるのですが、それはそれとして、その前段階として、欧州レベルの労働組合と使用者団体で交渉してもらって、そこで協約を締結する。そうしたらそれをそのままEU法にするという条項がこのマーストリヒト条約でできており、それに乗せようということになりました。最初の第1次協議が1995年に行われまして、欧州労連(EUC)と欧州経団連(UNICE)等の間で、まずパートタイムについて96年に交渉が始まり、97年に協約が結ばれ、指令が採択されております。有期については98年に交渉が始まり、99年に協約が締結され、同年に指令が採択されております。
 今日のテーマとは違いますが、有期指令というのは、均等待遇と合わせていわゆる出口規制というものが入っているということで、日本で有期法制が議論されるときにも、いろいろと取りざたされたことは御承知のとおりです。簡単なほうから順次片付けていったということで、いちばん難しい派遣の交渉が始まったのが2000年でした。ところが、実は労使の交渉ですので、詳しいことは公表されませんので、1年以上経って、どうもデッドロックになっていると。いろいろあって結局、決裂してしまいました。ちょっとよく分からないのですが、その間の交渉のいきさつを研究した論文がありまして、それによると、このあとの話もあるのですが、そもそもこの交渉の前の段階に派遣事業者団体である欧州レベルの団体Euro-CIETTと、サービス関係の大産別労組、昔はUNIではなくてEuro-fietと言っていたのですが、後にUNI-Europaと改名いたしますが、ここがいわばセクトラルに、先に話をやろうとして、それに対して欧州労連と欧州経団連が勝手なことをするなと。それはお前達だけの話ではないんだということで、何とかまとめようとして進めたといういきさつがあったようです。
 結局最終的に決裂してしまったのですが、そのいきさつも外に出ているものを見るとよく分からないのですが、どうもイギリスのCBIが非常に強く反対したというのが、この最大のポイントだったようです。というのは、あとで申しますが、基本的には均等待遇が規定されているのですが、そこにはいくつかの適用除外条項というのがこの交渉段階にも入っておりまして、恐らく大陸諸国の場合には、大体それで何とか賄えると。イギスだけではどうやら賄えないというのが、その背景にあったようです。
 逆に言うと、Euro-CIETTの側からすると、これがつぶれてしまうのはちょっと困るという問題意識もあったようで、カウンターパーティであるUNIと実は2001年に決裂したあとに、共同宣言を発しておりまして、このような中身で是非指令を作ってくれというようなことを言っております。欧州レベルの労使団体で協約を結べば、全くそのまま文字どおり、一言一句変えないまま、それが指令になるということになりますが、それが失敗しましたので、原則に戻って、行政府たる欧州委員会が指令案を出すということになりました。これが出されたのが2002年の3月ということで、基本的にはその前に、労使交渉で案として大体まとまりつつあったものがベースになっております。1つは派遣事業に対する制限又は禁止を再検討せよという規定と非差別原則というのが中心になります。
 これに対して、通常ベースの立法プロセスで、欧州議会が修正意見を出し、閣僚理事会にいったところで、実はここでもかなりデットロックに掛ります。ここで相当長いこと、指令案が出されたのが2002年で、最終的に指令が採択されたのが2008年ですので、6年越しであります。何がいちばんもめていたかというと、イギリスであります。イギス政府は労働党政権になっているのですが、'labour is not pro-labour'、CBIが絶対駄目だと言っているものは、うんと言えないということで、非常にこの閣僚理事会で、イギリス政府が強く反対していたと。実は閣僚理事会の誰が、どの国がどういうことを言ったかというのは、明らかにされていますので、見ると、ドイツが大体イギリスの味方をしているのですが、ただ見る限りドイツが反対しなければいけない理由はあまり国内的にはなさそうなので、これは恐らくシュレーダー制権がブレアー政権に貸しを作っていたというか、味方するためにやっていたのではないかなと思います。
 その後、2008年の5月に、イギリス国内で、イギリス政府とCBIと労働組合会議(TUC)の三者で、一定の合意をいたしまして、これで急転直下、指令が採択に向かったと。この年の11月に採択をされました。何が問題になっていて、何で解決したのかということを、この指令の中身を説明する中でお話をしていきたいと思います。
 まずこのEUの2008年の指令の柱は2つあります。1つは第4条の制限・禁止の見直し規定です。派遣労働の利用について、制限禁止をしている、ドイツも先ほど見たように1972年までそうだったわけですが、その後もいくつか制限がある。これについては、条文は後ろのほうに付けておりますが、基本的に派遣労働者の保護、安全衛生の要件、労働市場の適切な機能、そして濫用の防止といったようなことによって、正当化されない限り、これを見直しなさいということが入っています。これはその前のEUレベルの労使交渉のときの協約の案の段階から入っていたものです。基本的にEuro-CIETTが是非ともこれを入れたいと。これを入れるためだったら何でもやるから是非これを入れてくれということで、非常に強く言っていたものです。
 これは2002年の指令案とは若干文章が変わっておりますが、2002年の指令案で見ますと、「特定の労働者グループまたは特定の経済活動分野における派遣労働のいかなる制限または禁止についても」という形で、いわゆる特定のグループやセクターについての制限という形に規定をしていたのですが、そこはもう少しぼやっと一般的な形の規定になっております。実はこの指令自体の施行期限というのが、先ほど本庄先生も言われたように、昨年の12月5日でありまして、後ろの条文で見ていただくと、13ページの第4条というところで、第1項が見直しの規定、第2項で昨年の12月5日までに見直しなさいと。第5項でそれを通知しろということなので、ちゃんとした国であればきちんと通知しているはずです。ただ、すべての国がちゃんと通知しているかどうかは分かりません。まだ、欧州委員会からこういう通知があったのでというまとめたような資料は、今日、出る前に確認しましたが、発表されておりません。たぶんまだ出していない国が南のほうに結構あるのではないかなと思いますが、よく分かりません。そういうようになっております。
 ちなみに、ドイツが採っている許可制、登録制、認証制等々といったようなものは、ここで見直すべき制限禁止には含まれないということになっております。これが1つの柱です。
 2番目の柱が第5条の均等待遇原則です。これを労働側としては入れるということで、パート指令、有期指令ともにそういうものが入っていたので、当然これも入っているわけですが、少し規定ぶりが変わっています。パートも有期もcomparableな、比較可能なフルタイム労働者なり常用労働者よりも不利な取扱いを受けないという規定になっているのですが、派遣の場合にはemployerが違うので、利用者企業によって直接採用されていれば、適用されたものを下回らないという書き方になっています。仮定法を使っているという形です。
 ただ、これにはいくつかの除外規定が入っております。もともとEUレベルの労使交渉の段階から入っていたのが、1つは常用派遣の場合の適用除外、派遣の合間の期間にもちゃんと賃金を支払うということがあればいいと。これはいわゆるドイツやスウェーデンの場合はこういう形を取っていましたので、それがクリアするようにということで、これは最初から入っていたと。それから、労働協約による適用除外で、派遣労働者の全体的な保護の尊重が条件ではあるのですが、要は労働協約でやればオーケーという、ある意味でかなり包括的な適用除外が入っておりました。
 実はこのときにはある意味で労働組合側からすると、自分たちがきちんとやるという話なので、組合側が文句を言う話ではないということもあって、あまり議論になっていなかったのです。先ほど本庄先生のお話にもあったように、どうも出来たあとで、ドイツでキリスト教何とか組合というのが出てきていろいろ問題になったというのがあるようなのですが、実際にこれをEUレベルで交渉しているときに、そのようなものが出てくるという話はどうもなかったようです。大体2つあればいいはずだったのですが、それではいけないというのがイギリスの場合で、なぜイギリスがそれではいけないのかというと、基本的にサッチャー制権以降、非常に労使関係が分権化してしまって、ナショナルレベルでざっと投網をかけるような協約というのもなければ、入っていない人まで及ぼすような一般的拘束力制度というのはないと。そうすると、労働協約であればいいのだと言っても、イギリスではそれは使えないというのが、CBIが反対していた理由でもあるし、イギリス政府が反対していた理由でもあるようです。
 実は2002年に指令案を提案したときに、どうも急きょ入れたのではないかと思うのが、6週間未満の場合には適用除外するという規定が、その前の段階では入っていなかったのですが、急きょ入りました。なぜこれが入ったかというと、恐らくこの指令案を出す直前に、フィナンシャルタイムズに、EUがとんでもないものを考えている、こんなものが来たらイギリスの派遣事業が壊れてしまうというような記事がドンと出まして、騒ぎになったというようなこともあったので、それに対してなだめるために入れた面があるのではないかと思われるのです。
 しかし、やはりこれはおかしいと。多数の国は、6週間未満は適用除外というのはおかしい、これを削除せよと主張しました。イギリス、プラスドイツ、アイルランドと、先ほどいったようにドイツは付き合う必要はなかったはずだと思うのですが、もしかすると、先ほど本庄先生か言ったように、少し問題があるのかもしれません。ただ、そういう議論はEUレベルでは出てきていないので、よく分かりません。私の認識としてはイギリスが困るので、それにドイツ等も付き合って、理事会で対立していたと。その理事会の議事録を見ると、イギリスはとにかく6週間では駄目だと。12か月間適用除外にしろと。それに対してほかの国は、そんなことをしたらすべて派遣は全部適用除外になってしまうのではないかという議論をしておりました。
 要は一般的拘束力制度のある国は、協約を拡張適用して、全部適用除外ができるかもしれないけれども、うちはできないのだということを言っていたのですが、プロセス的にいうと、2008年の5月に、イギリスの政労使三者で適用除外期間を12週間とすることで合意するというのが出てきました。そこで規定ぶりが複雑なのですが、14ページの第5条の第4項にごちゃごちゃと書いてありますが、こういった労働協約の一般的拘束力だとか、拡張適用をする法律又は慣行を有さない加盟国は、全国水準の労使団体、CBIやTUCと協議した上で、これらの協定に基づき、適用除外することを確立することができると。それは均等待遇原則が適用されるに必要な最低派遣期間を含むことができると。まさに2008年5月のイギリスの政労使三者でやったものを丸ごとオーケーにするためにこの規定が入ったということです。逆にいうと、これを入れることによって、もともとの指令案の6週間の適用除外というのは要らなくなったという関係になります。
 これで、この年の12月に最終的に指令が採択をされました。施行期間を経て、昨年の12月5日が施行期限になっておりますので、建前的に言うと、すべてのEU加盟国で既にそういう国内法が整備されているはずです。はずというのは、時々そうでない国があって、まだやっていないのではないかと問題になったりすることがあるのですが、ただ、現時点でどこがどうなっているかというのは、まだよく分かりません。通常からいうと、施行までにこういった報告するという義務が課せられていまして、それを基に欧州委員会ではまとめて、各国の状況がこうなっているというのを出すのですが、もう1年近く経ちますが、まだ出てこないということは、各国から全部まとまっていないのかなという感じがいたします。
 この2つが大きな柱で、その他の保護規定ということで、細かいことは後ろの条文を見ていただければと思いますが、派遣先の常用雇用期間の通知であるとか、直取引、要するに派遣先でうちに来ないかということを禁止するのは駄目だとか、福利施設にアクセスするのは均等にせよとか、あるいは労働者代表制についても原則は派遣元でカウントする。派遣先でカウントしてもいいよといったようなことが規定をされております。
 ここまでが今日のメインの話なのですが、実は残念ながらこの指令が施行されたあとの各国の状況についてまとめられたものはまだないのですが、2000年代に入ってから、EUの生活労働条件改善財団という、ちょうどJILPTに相当するような研究機関がございまして、ここが何回にもわたって、EU加盟国の派遣労働の状況、法制度や現実の実態について、報告書をまとめております。
 それから法制的なものを選んで6ページ以降にまとめてみました。時間もあと5分しかありませんので、いちいち見てまいりませんが、まずEU加盟国で派遣に関する法制がどのように出来てきたか。最初はオランダで1965年に出来た。それからデンマーク、アイルランド、先ほどの72年の法律がこれですが、ドイツ。フランス、イギリス、ベルギー、ノルウェー、10年ぐらい間が空いて、オーストリア、ポルトガル、スウェーデン、スペイン、イタリア、フィンランド、ギリシアと、このように作られてきました。派遣労働者の法的地位は、EU指令も基本的には日本法と同じなのですが、派遣元、派遣事業者の被用者であるという立場に立っているのですが、イギリスは若干、派遣労働者はworkerであってもemployeeでないとされているという、これはよく分からない話なのですが、そういうふうになっていると。あと、アイルランドがかなり違った、派遣先の労働者であるというような最高裁の判決があるとなっているようです。
 派遣労働者の雇用契約については、先ほど本庄先生が言われたように、かつてのドイツ法が、期間の定めのない契約に限定しておりましたが、ハルツ法で撤廃されていると。現在というのは、2008年以前の段階なので、今のスウェーデン法がどうなっているかというのはよく分かりませんが、このEU財団の資料によると、現在、常用限定しているのはスウェーデンだけだと書いてあります。
 それから、均等待遇について、規定していないのが、この段階でイギリス、スウェーデン、デンマーク、アイルランドと書いてありますが、多分その後いずれもゲルマン系の国なのできちんとやっているのではないかなという気がしますが、これも現時点ではよく分かりません。それから、利用理由であるとか、派遣期間、業種・業務限定等といったことについても、数年前の状況がここにまとめてあります。おそらくこの業種・業務限定といったようなものについては、各国とも先ほど見たように指令にかなり明確に書いてあるので、それなりの措置をとっているのではないかと思われますが、まだ正式の形では報告されておりません。
 それから、観点が異なりますが、派遣についての団体交渉や労働協約というものが、どの程度行えているかということについても、EU財団の報告書でまとめております。これを見ますと、逆にイギリス、アイルランド、ギリシア、ポルトガルを除き、派遣事業レベルの団体交渉が行われていると書いてありまして、各国でどのようなことが行われているかということについても、ここに書いてあるとおりです。書いてあるとおりというか、本当はもう少し詳しく、細かく言えばどうなのだと突っ込まれましても、逆にこれ以上細かいことはよく分かりませんので、あくまでもEUレベルの機関でまとめたものです。各国法制が具体的にどのようになっているのかというのは、恐らく各国レベルに遡って調べてみないと分からないところもあろうかと思います。ただ、全体像をざっと概観するという意味からすれば、この6ページ以降をざっと見ていただくと、全体的な傾向が分かるのではないかなと思います。極めて雑ぱくではございますが、私からの報告は以上です。ありがとうございました。
○鎌田座長 お二人から本当に詳しい背景事情を含めた御説明があって、私としては非常にありがたかったと思っております。早速、今のお二人の御説明について御意見、御質問、何でも結構ですので、よろしくお願いいたします。
○竹内(奥野)委員 お二人とも、非常に詳細かつ有意義な御報告をいただきましてありがとうございました。私からは、とりあえず思い付いた点ということで、主として大きく言いますと2点質問がございます。本庄先生については2点で、濱口先生に関してはそのうち特に1点が関わる質問になろうかと思います。
 まずドイツに関して御報告をいただきましたが、その途中で、派遣はもともとも短期の形での利用であって、今日でも半分ぐらいは3か月未満の利用ではないかというお話がありました。他方で、法制度については派遣の利用期間がどんどん延びてきているということがありまして、そうすると法制度上は緩くなっているけれども、長期間の派遣という使われ方はしていないのではないかな、という気がしました。それはなぜかということが分かればと思いまして、例えば、派遣というのはそもそも臨時のものとして考えられているということが現実かもしれない、と思いまして、それについてお伺いできればと思っております。有期の規制他方で存在しており、そちらのほうが影響しているということもあるかもしれませんが、そういうことを含めてもしお分かりでしたら教えていただければと思っております。
 2点目は団体交渉に関するところで、これはお二人の先生方にそれぞれ関係するところでお答えいただければと思っております。ドイツですと御報告の中で、均等待遇の例外で協約についてより低い、あるいは均等ではないようなより低い条件を派遣労働者に定めることが可能である。しかしながら、現実的にはいろいろ問題が起こってきたりしているということですが、そもそもこういう協約を結ぶような労働組合というのは、なぜそういう協約を結ぶのか。そういう労働組合というのは、いったいどういう人たちの労働組合なのか。単純に考えると、派遣労働者をきちんと代表しているような労働組合だったら結ばないのではないかと思います。もちろん、派遣労働者の雇用の口を広げるために、わざと賃金では譲歩するということかもしれませんが。ご報告ではキリスト教労働組合等が出てきていますが、具体的にはどういう人たちを代表していて、なぜこういう協約を組合側は結んでいるのかが分かれば教えていただければと思っております。また、EU法のところでは派遣事業のレベルで団体交渉というのが、比較的多くの国でなされていると最後のところで御報告がありましたが、そこでも大体どういう労働組合が、特に労働者側のどういう組合が交渉しているのか。具体的には、派遣労働者をある程度適切に代表している人たちなのかどうか。そこについて分かりましたら教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○鎌田座長 質問は大きく2つありましたが、第1の質問をよろしくお願いします。
○本庄准教授 主に、ドイツに固有の問題についてお答えさせていただきますと、派遣期間については継続的に統計調査をしているのかどうかははっきりしないのですが、一般に目に触れるところではなかなか出てこなくて、出てくる統計によると1週間未満、1か月未満、3か月以上とかなり大雑把な括りしか出てこないので、その経年変化についてお話させていただきます。
 まず、いちばん古いのは先ほどのデータですが、その後1994年当時の状況を見ると、3か月以上の派遣というのが大体3割ぐらいでした。ただ、その後、期間制限の延長がどう影響したのかははっきりしませんが、少なくともリーマンショック以前については期間は長期化する傾向にあったようです。例えば2008年の途中ぐらいまでに関しては、先ほど申し上げたとおりほぼ半数ぐらいの労働者については、3か月以上の派遣であったということです。一方、特に1週間未満の派遣についてはほとんど変化がなくて、1週間以上3か月未満という括りについて長い傾向で見ると減ってきている。3か月以上の派遣が増えて、そこの部分が減ってきているということで、どういう背景があるのかというのは、はっきりとは申し上げにくいのですが、市場の動向によって業種その他によってかなり事情が違うと思われますので、この統計の結果だけを見て、もしかすると業種等によって相当なばらつきがあり得るところですので、全てが短期間というのも少し躊躇を覚えます。
 2点目の組合側のインセンティブがどこにあるのかというのは、まず代表制がないというところが問題で、確かに一部の派遣労働者は代表を当然しているわけですが、ごく一部なわけです。それについて、拡張適用制度を使うのでもなくて個別同意でやっていくことに対して、ドイツではネガティブな評価がされている。要は、これまでのドイツではあり得なかったパターンかと思われますので、そういうところについて批判がある。なぜ、組合側がそういう協約を結ぶのかについては申し訳ないですが、今、分かりかねるところです。
○鎌田座長 EUについては濱口先生から。
○濱口統括研究員 まず、なぜこんな協約を結ぶのかという話があったと思いますが、労働組合としてこの条文からいうと14ページの第5条第3項に当たりますが、派遣労働者の全体的な保護を尊重しつつ、均等待遇でない、かつ全体的な保護というのはその前の派遣の合間、引き続き賃金は支払われるというのがこちらの第2号でありますから、派遣の合間は賃金は払わないけれども全体的な保護の水準があるということなので、これはいったい何だという話になります。実は、昨年の8月に出された専門家グループの報告の中でそれについて議論しているところがあって、例えばそのような労働協約は派遣の合間の期間に訓練機会、training opportunityを提供するということがあるのだと。そういうことを協約で結んでやるというのは、合間に賃金を払うのではないけれども、それも派遣労働者にとってメリットがあるから、そういうのを想定しているのだということが書いてあります。これは1つの例だと思いますが、作ったときはそういうことを想定していたのだろうなと思います。
 実際にどんなことをやっているかというのは、10ページをざっと見ていただければ分かるように、大部分の国でナショナルセンター、そうでない所もありますが、オランダ、ベルギーはそもそも審議会の中ですし、ドイツもナショナルDGB、CGBだし、スペイン、フランス、イタリアもそうですから、何かやっているといっても組合側というのは、むしろナショナルセンターの中に派遣の部局というか、そういうのを作ってそこがやるというのが、少なくとも2008年にこの報告が出された時点では一般的なパターンのようです。その後、どういうふうになっているかは今の段階ではよく分からないというのが現状です。
○竹内(奥野)委員 ありがとうございます。
○小野委員 日本の派遣とEU、そしてドイツの派遣労働市場の違いというか、私の存じ上げるところは少ないのですが、各国においては非常に移民が多いということもありますし、若年の失業が非常に深刻だという問題もありますし、製造業や軽作業といった短期の派遣就労が日本に比べて多いというようなことを聞いたこともあります。そういうことを知っていらっしゃる限りで分かりましたら教えていただきたいです。
 それと最近、キャリア面に関しても1つ視点として、今、濱口先生がおっしゃったようにトレーニング期間、training opportunityを設けたり、ステッピング・ストーンに派遣がなるような仕組みを考えたりというようなことをやっていらっしゃるような感じではあります。それについて、知っていらっしゃる限りで結構なので教えていただければと思います。
○本庄准教授 ドイツの事情ですが、どういうところで事情がどうなっているのかについては男女でかなり違いまして、男性に関しては製造業が48%と大体半分ぐらい。それから建設というのは先ほど禁止されていると申しましたが、一部例外的な要件を満たせば認められますので、それが8%程度。それから運輸・交通が22%程度という状況です。女性に関しては、製造系がいちばん多いようですが、それでも3割程度と男性に比べるとやや少ない。女性に関しては医療関係で特に多い傾向があるようです。あと、男女合わせた傾向として、最近では製造関係がやや低下傾向にある。ただ、かなりの部分を占めている状況です。
○濱口統括研究員 EUは1つの国ではないので、状況は国によってさまざまです。ただ、全般的に見ても製造業は半分近いシェアを占めている国が多いのかなという感じはいたしますが、細かく見れば国によってそれぞれ特色はあるのだろうなという気がします。
 それから、どの国がということではなくて全般的にそうだと思いますが、先ほど本庄先生がドイツでハルツ改革のときの問題意識としても言われたことですが、この派遣指令の中にも労働市場政策の一環として、今、小野さんの言われたステッピング・ストーンとしてというような問題意識があります。例えば指令の12ページの第1条適用範囲。派遣は全部適用だよと書いてありますが、第3項で公的な職業訓練や社会統合や職業訓練計画と、今まで失業していたような人たちを労働市場に統合するために派遣を使うという、まさにドイツでPSAでやったようなものがイメージされていると思います。そういうものは適用しないことができるよということが書いてありまして、恐らく一般的にはこういう均等待遇原則を中心とした規制ではいきますが、積極的な労働市場政策として使うことも念頭には置いているということだろうと思います。これは各国のいろいろなものを見ても、そんな形で使おうという政策はいろいろあるようです。
○阿部委員 濱口さんに質問します。3ページの上で、最初の労使交渉による失敗のところでは対立のポイントとして、「派遣労働者の均等待遇の比較対象を、利用者企業の労働者とすること」と1つ挙がっていましたが、結果としては5ページで「同一職務に利用者企業によって直接採用されていれば適用されたものを下回らない」という規定になっているということですが、この間どういう議論があったのかとか、あるいはこれを受けて、今、対立していた団体はどのような感情を持っているのかという情報があれば教えていただきたいです。
○濱口統括研究員 先ほども経緯の中で、強烈に反対しているのはCBIだというお話をしたのですが、これは労使交渉なので経緯が全部公開されているわけではないですが、いろいろな情報を見る限りは、派遣先との均等をフランスみたいに昔からやっている国は問題ないわけで、そうでないドイツやスウェーデンの場合は常用の場合は適用除外にするよというのがあるので、それでOKだと。そうすると、この表現は決裂したときのUNICE、欧州経団連の声明がこう言っているので入れたのですが、これを強行に行って、CIETTが結びたいと思っていたのを潰したのは、CBIとしてこれが入ってしまうとイギリス用の抜け道がないというのが大きかったのではないかなと思います。
 やや私の解釈が入った御説明になりますが、確かに見ると、そもそも均等待遇といってもユーザーカンパニーの労働者と比べるのと派遣元事業者と比べるのと両方あり得るのに、一方だけにするのはおかしいというのを縷々言っていますが、本当にそこで対立していたのかどうかはちょっと変だなという感じはします。ただ、経営側もそこで中に亀裂があるというのをあまり見せたくないというのもあるので、こういう形でやったのかなと。結果的に言うと、原則は派遣先との均等待遇で、それに各国が満足できるような抜け道にプラスワンで最終的に3つ作ることで決着したので、そういう意味では比較対象は派遣先ということを一貫していたのだろうなという気はいたします。そう書いてあるわけではなくて、いろいろな交渉の経緯とか何とかから見ると、そうなのかなという気はいたします。
○木村委員 お話をありがとうございました。質問をさせていただきます。日本は派遣期間が長いという特徴があると思いますが、ドイツのほうで派遣の期間が短期間であるということで、そちらが少し長期化してきているというお話がありました。均等待遇が重視されていますので、低い人件費でずっと長く派遣を使うというインセンティブというか、その理由が日本より低いということですので、均等待遇が実現されているから短期間という形になるという実態なのかということと、派遣期間が長期化してきていることが先ほどの労働協約による均等の逸脱と関係があるのか。そういった逸脱が進んできたので、結構安く使えるということで長期の派遣が出始めてきている。そういう影響があるのかどうかということを疑問に思いました。
 もう1つは、日本の場合は業務で制限するというのがありますが、EUの場合はそちらはないということでした。その代わり利用理由で制限していて、特にラテン諸国では厳格であるということだったと思います。ラテン諸国は私の今聞いただけの理解ですと、一時的、臨時的なところに絞って、そういうことを利用理由で実態的に制限しているという理解ですが、ゲルマン系諸国では濱口先生の9ページで、共同決定権限を有しており、これによって派遣労働の濫用を防ぐ仕組みになっているということです。これは具体的にどういうポリシーで、どういう制限が行われているのか。このあたりを教えていただければと思います。よろしくお願いします。
○本庄准教授 まず、ドイツに固有の点ですが、期間の延長と均等待遇は因果関係がはっきりしないところです。なぜはっきりしないかというと、均等待遇というのが原則どおりに適用されていないからです。ただ、均等待遇原則が整備されたのがハルツ改革ということを申しましたが、その前に期間制限が1年から2年に延長されたときに均等待遇原則というのは既に導入されていて、初日からではなくて、均等待遇は1年経過後に、かつそこでは協約等々の例外はなかったという時代が少しだけありました。その間の調査によりますと、均等待遇を実施すると、派遣先として長期的に利用するインセンティブがなくなるということがたしかあったかと思われますが、その後、均等待遇を整備しつつ、協約による逸脱を認め、かつそれが当たり前になった中で、均等待遇原則と期間の長期化あるいは短期化についての因果関係は、はっきりしないというのが正直なところです。サンプルになる期間が、ほとんどなかったというところです。
○濱口統括研究員 これも2008年頃のものですが、ざっと見るとどの国も短いです。ドイツでも3か月未満が半分以上とか、フランスは平均が2週間ぐらいとか、ただイギリスがこのときのデータでいうと、3か月未満が36%、3か月から6か月が21%、6か月から1年が20%、1年以上が25%と長く使っています。だからイギリスの三者合意で12週間は、ヨーロッパ大陸の感覚だと結構長めにやっているように見えますが、それが過ぎてしまって均等にしなければいけない部分というのはイギリスだとあるなということが、これから分かります。いちばん最近のデータではないですが、数年前のデータではそんなふうになっております。
 その利用事由は数年前にはこうだったのですが、その後どうなっているかは分かりません。この見直し規定は指令案ができたときには、主としてそういった労働者グループや特定の活動分野、業種というものを念頭に置いていたのですが、一般的な規定になっていて、昨年の専門家会議のものを見ると、指令で明確に除外されている許可制や登録制でないものは全部入るのだと。だから、利用事由の制限も全部レビューしないといけなくて、昨年の12月5日までにラテン諸国がやっているこういったものも全部レビューして、結論としてこれでいうと、労働市場の円滑な何々みたいなことに、逆にそれが入るためにこういうのも書いてあるのだと思うので、きちんとした国であればそういった報告をしているだろうと思います。現段階では、どの国がどうなっているか、またどういう報告をしているかというのは分かりませんが、一応そこまでを含めて見直しの対象になっているということです。
 共同決定の話は、EU財団の報告書でラテン諸国のようなことがゲルマン諸国には書いていないけれども、それはこちらでやっているよという断り書きみたいな形で書いてある話なので、むしろ個々の話になると思います。具体的にどうこうということが、その報告書に書いてあるわけではありませんでした。それこそドイツでベトリープスラートみたいなところでどんなことをやっているのかという話は、本庄先生なりのほうがお詳しいのかなという気もいたします。一般的に、そういうような状況にあるという記述があるということで、それ以上、私が把握している限りではよく分からないということで、申し訳ありません。
○鎌田座長 本庄先生、その点で補足していただければ。
○本庄准教授 共同決定についても実はよく分からないというのは、直ちに派遣先の事業所における統合というか資格を得るわけではなくて、一定の期間が経過した後に資格を得る仕組みになっておりますので、先ほど申し上げましたとおり期間が短い中で、そもそも要件を満たす派遣労働者は必ずしも多くない。満たしたあと、少なくとも法制度上は基本的には同じ権限を持っているわけですが、どこまでそれが現実化しているのかはよく分からないところです。
 それから、今の点とは少し違いますが、先ほどのところに遡って、確かに直感的にはラテン系の諸国で締結事由の制限をしているという印象がありますが、それは有期とのバランスというのが何よりも重要で、有期のところを締結理由の制限せずに、派遣だけを締結事由の規制にしている国、そこに何か矛盾があるような国がもしあるのであれば教えていただきたいです。ドイツがまさに典型的でありますが、有期の入口規制から徐々に出口の規制のほうにシフトしつつある中で、派遣に対する規制の在り方も変わってきているというのが典型的な例でありまして、そこはパラレルに考えていく必要があるのではないかという点です。1点目は申し訳ないですが、詳細は分からないです。
○鎌田座長 そのほかはありますか。私から質問です。まずは本庄先生のドイツ法についての質問ですが、均等待遇をドイツ法の中で導入することの理解というか理由ということで教えていただきたいです。私の理解ですと、かつて無期雇用を原則として、それが登録と雇用期間の一致原則を取り外すことからtemporary work型を導入したと理解していますが、その前の無期雇用を原則とした時代と考えれば、実はその派遣先との均等待遇の要請というのは理論的には出てこないのではないかと思います。要するに自分の所の正社員ですから、それをなぜ派遣先と比較しなければいけないのかということを私は感じる。どうか分かりませんが、ドイツでもそういう会社はかなり抵抗感があったのではないか。無期で正社員として雇っている所をなぜ派遣先と均等化する必要があったのか。逆にいうと、temporary work型を導入することが、均等待遇原則をドイツの中で受け入れる1つの理論的な背景になっていったのではないか。だとすれば、均等待遇の条文を導入した時期というのは、派遣期間と雇用期間の一致原則を外した時期と一致するのかなと思います。一致しないのかもしれませんが、もしその辺がお分かりであれば、教えていただきたいです。
○本庄准教授 まさに最後の点ですが、均等待遇を導入した時期はハルツ改革期とほぼ一致しておりますので、テンポラリー型の派遣あるいはテンポラリー型だけを想定しているわけでもないと思われますが、派遣期間が長期化する場合も含めて派遣労働条件の維持改善だと。これまで、期間制限等々でやってきたことを別の方法でやっていくのだと。確かに、派遣元との継続的な雇用関係があるところで派遣先との間で均等待遇をする必要がないというのは、短期間の場合にはそうかもしれませんが、これも長期間になってくると微妙な問題が。特に産別で賃金が決まっているような所になると事情が変わってきますので、テンポラリー派遣だけを念頭に均等待遇を強化したというのは、確かにそういう面を意識したのは事実でしょうが、それだけかなと言われると自信がないところです。
○鎌田座長 分かりました。それを踏まえて今度はEUの話に移りたいと思いますが、EUは当初からtemporary work規制という発想で来ていますよね。つまり、派遣規制と有期規制と一体で議論していますよね。先ほど言ったように、派遣の規制というのは常に有期雇用の規制と一体で考えていて、そこを一緒に考えないと説明できないことがたくさんある。均等待遇の問題も、有期の問題とパラレルの問題、パートの問題とパラレルの問題ですね。だから、EUのものは原則として、有期の人たちを前提にした仕組みで出来上がっていると考えています。それは、臨時的な需要に応じて派遣するのがEU法で言うところの派遣ですよね。臨時的な目的で派遣するという定義ですよね。今ここで濱口先生がお持ちいただいた指令案を読みますと。
○濱口統括研究員 第1条第1項の臨時的にということですね。
○鎌田座長 臨時的に就労する。ドイツはむしろ臨時的に利用はしてもいいですが、無期で雇うものだけよという発想で出来上がっていたわけです。その中でお聞きしたいのは、この臨時的に就労するというのは、派遣先からの臨時的な労働需要に対して派遣をする。したがって、派遣期間と雇用期間をセットで考えるのが通常でいうと原則というか、典型なのかなと思っています。ところが、雇用期間については何ら定めがないのです。そうすると実際問題として、この場合のEUで議論する中で、無期で派遣社員を雇っている企業の取扱いというのをEU指令の中ではどういう理解でいるのだろうか。全然一緒だと思っていたのか、雇用関係については有期だろうと無期だろうと関係ないと思っていたのか。でも、temporary workという括りで考えると、無期というのは視野の外にあったのかなと思うので、その辺のところで何か議論があったら教えていただきたいです。
○濱口統括研究員 第1条第1項の臨時的にというのは、何か法的効果がどこかにあるかというと実はなくて、そもそも後ろを見ると結構穴をあけている。しかも、それはかなり長く行われることを前提としたような規定も入っていて、タイトルが「temporary agency work」と言っているのでテンポラリーと言っていますが、そのテンポラリーという副詞から一定の派遣期間がテンポラリーでなければいけないというような、具体的な実態的な規制にどこかつながっているかというと、それはない。むしろ、そうでないものがあることを前提とした規定ぶりが後ろのほうに、それこそイギリスで12週間までOKというのを前提とする規定がここに入っています。あるいは第5条第5項ですが、それを反復更新することで、例えば11週間やって、クーリング期間を置いて、次の11週間をやることで永遠に均等待遇しなくていいようにしようというようなものはきちんと排除しなければいけないよという規定がここに入っているということは、逆に言うと全然テンポラリーではないことがこの指令の下で行われることをたくさんの規定ぶりからすると予定しているのだろうと思います。
 そこは、学者的に見ると何だということになるのかもしれませんが、1つは経緯から見ても分かるように、もともと1980年代初頭に作られたときは非常にフレンチスタイルで、フランス型の規制をベースに作っています。そこにドイツはそれではいけないからと、いろいろなものを付け加える形でできてきているという経緯があるので、もともとの骨組はいちばん最初のフランス系でできたときの尻尾がまだ残っているのだろうと思いますが、実態的な法規定の効果がどこにどうあるかというと、第1条第1項のテンポラリーがそれだけで何かの効果をもたらすようにはなっていないのではないかなと思います。ほかの後ろのほうの諸規定からするとです。
○本庄准教授 1点だけよろしいですか。まさに今の点とも関係するかと思いますが、国家として派遣というのは短いものだとか長いものだとか、そういう考え方というよりは協約に任せたという側面が強いのかなという印象を持っております。結果的に、派遣期間が短い国が多い。ただ、今日の対象ではありませんが、オランダ法のように、2年以上の長期間の派遣というのも当然に予定して労働協約を結んでいるような国がありますので、派遣というのは短くなければならないとか、そういう規範的な意味はないというか、少なくとも法的な拘束力を持ってくるような意味はないのかなという理解をしております。ドイツ法もEU法に合わせて、この2011年に労働者派遣というのは短いものとするというような訓示規定が入っているわけですが、ほとんど解釈上の影響はないと説明されております。
 先ほどの点とも関係しますが、有期、無期の違いというのは単純には比較できない面があるのかなと思います。何が言いたいかというと、ドイツ法ですと無期雇用の場合でも解雇制限法が適用されるのは6か月以上だと。6か月以上の継続があって、初めて適用されるわけで、もちろんその間に権利濫用規制はありますが、差別的な解雇でなければ解雇が認められる可能性が相当高い中で、無期だから直ちに安泰だという国のほうがEUの中では珍しいのではないかなと。6か月経過後になると無期は確かに解雇規制がかかってくるけれども、6か月未満の所については無期と有期とで明確に何か違い得るわけでもないだろうと。その辺は、日本法と違うのかなという印象を持っております。
○鎌田座長 分かりました。私が聞いたのはもっと低レベルな話で、例えば無期で雇っている派遣会社は、基本的には日本と違って給料も職務給的なものですが、長期間にわたって得られるメリットというのはあるのではないかと。それは教育訓練を含めて、長期的な視野で育成をして、その人たちに対してさまざまなメリットを上げていくという方針の派遣会社がいて、そうしたときに均等待遇ですよと言われたときに、法律に書かれていればやると思いますが、あるいは協約でということにも思いますが、temporary work型と同レベルの規制がそのままストンと落ちますかと言われると、抵抗感があるのではないかと思っています。ドイツは、そもそも出発点はそうだったと思います。今、本庄先生がおっしゃったように、雇用保障がどれだけあるのかというのはまた別の問題ですが、それを先ほど言いましたように、派遣期間と雇用期間の一致禁止原則を撤廃したときに、恐らくドイツとしては大きな柱を捨てたわけです。立法として、そのことが均等待遇ということを基礎づける理由になったのかなと思ったものですから、そうしないと、今言ったような長期にわたって教育訓練して育て上げてという法の理念というかシステムの中で、temporary work型が入ったときに、均等待遇というのがセットされたのかなと思ったものですからおたずねしました。今のお話だと必ずしもそうでもないということですか。
○本庄准教授 因果関係がはっきりしないという。
○鎌田座長 そうですね。
○本庄准教授 やはり協約に丸投げした側面が強いのかなという印象があります。教育訓練その他にしても、基本的には協約。均等待遇の原則というと、すごく強そうなイメージがありますが、要は交渉のベースを与えたわけですよね。まさに、そこに丸投げしたのではないかと。
○濱口統括研究員 基本的にはそうだと思いますが、指令の書き方はある意味でイギリスだけあれだったのですが、ほかの国々からするとどうやってもこれで読み込めるような非常に緩いというか、常用であればいい、労働協約を結べばそれでいいと言っているわけなので、パートや有期に比べるとかなり緩やかな規制になっています。かつ、それはもともと労使交渉の段階からそういう形になっていたということを考えると、実際派遣先のニーズに応じてそれこそテンポラリーに派遣されて、その合間が開くということを前提にしたような規定ぶりで恐らく交渉がされていたことを反映しているのではないかなと思います。イギリスだけ少し状況が違ったので、作るときにもめたということかなと思います。
○竹内(奥野)委員 今、座長との議論の中で話されたこととも関係することかと思いますし、初めに私から質問させていただいたことと関係しますが、お話をお伺いしていた印象だと、少なくとも日本に比べると派遣労働が利用されている期間は短いという印象を持っています。その背景は何かが、先ほどからかなり気にかかっておりまして、お話を聞いていると派遣法あるいは派遣の法制度の制限が何かかかっていて短いというよりも、先ほど来お話が出ているとおり、有期とセットでもともと派遣というのは規制されていて、有期の規制が効いていることもあって短いのかなという気もしております。特に、有期の法制との関係を念頭に置かれて短いのはなぜかということを、もし御説明できれば教えていただきたいということが追加の質問の1点です。
 本庄先生の報告でも濱口先生の報告でも出ておりまして、これはガラリと変わる質問ですが、業種制限です。製造業の原則禁止をどうするかということも、この研究会の話の中ではもともとの議論の取り上げるべき対象としてあるのではないかと思っております。お話をお伺いしていると危険有害業務については制限する、要するに、そういう安全確保的な観点からの発想で制限は加えるけれども、それ以上の制限はしないと理解をさせていただいております。その業種制限の発想というのがどこにあるのか。有害業務の制限ということだけかもしれませんが、そこについても確認させていただければと思います。よろしくお願いします。
○本庄准教授 後者の点をもう一度。業種制限についての根拠。
○竹内(奥野)委員 後者の点は、業種制限をする際の基本的発想というのが何かという質問です。
○本庄准教授 ドイツ法でということですか。
○竹内(奥野)委員 ドイツ法ないしはEUにおける、EUは各国それぞれ資料の中に出ておりますが、その辺の基本的発想について、見て取ることができるものがあればということです。
○本庄准教授 まずドイツ法については、そもそも業種制限という発想がない。危険有害業務の建設だけは別ですが、それ以外については少なくとも派遣法の中で禁止をしている業務はないので、建設業に関しては、明らかに危険有害業務という発想はさまざまな立法理由を見ても出てくるわけですが、そういう状況です。
 1点目の有期とセットで考えるというのは当然そうで、派遣は確かにヨーロッパの多くの国で、日本と比べると期間は短いわけですが、恐らく有期についても大差はないわけですよね。ですから、なぜそうなのかと言われると、各国の解雇法制も含めて細かく見ていかないと分かりません。解雇制限法でも、適用除外の問題や整理解雇の容易さというのはそんなに簡単に図れるものではありませんので、職務が限定されている場合、職務を失った場合の整理解雇の容易さというのは、恐らく日本の一般的な解雇の話とは違う面がありますし、金銭解決が認められている国と、そうでない国というのでも事情が違いますので、一概に比較はしづらいというのが正直なところです。ただ、有期とパラレルだというのは一言言えるところで、そことのバランスを欠くようなことはあり得ないかなと思います。
○濱口統括研究員 EUというのは1つの国ではないものですから、さまざまです。確かにフランスをはじめとするラテン系の国だとそういう傾向があるのかもしれませんが、先ほど言ったようにイギリスは25%1年以上ですし、今、表を見直したら、いちばん長いのはオーストリアのホワイトカラーで44%が1年以上と分布しております。むしろ日本に近いかもしれません。それは本当にさまざまで、かつ各国がなぜそうなっているかまで立ち入って分析せずに、単にこうだよとざっと書いているだけなので、なぜそうなっているかはよく分かりませんが、少なくともそういう国もある。非常にさまざまなEU加盟国に投網をかけるような形で指令ができていますので、temporary workと言っていますが、必ずしもテンポラリーでないのも当然対象になっています。
 業種については先ほど申し上げたように、第4条の見直し規定というのは結果的に今の規定ぶりは、ありとあらゆるものを全部見直せということになっていますが、2002年に欧州委員会が出したときは主として特定の労働者グループや特定の経済的分野という形で、まさに今言われたような業種を限定するようなものをいわばターゲットにしていました。逆に、もう少しそれこそ期間制限や利用事由みたいなものも含めて、全部見直せという規定に今なっていますが、その分、正当化事由も広がっている。要は、全部広げて見直せという形になっています。とは言いながら、出発点がそういった特定のグループなり、特定の業種だけを制限するようなものが念頭に置かれていたというのは、こういった各国の見直しでも念頭に置かれるでしょうし、恐らくは各国とも業種制限みたいなものについては、もともとあまり正当化できないという観点で見直すでしょうし、利用事由やそういったものについては、もともと認められるものなのだと。一応指令上、それも含めて見直せと書いてあるから、形の上でレビューして、これは必要だということで残しましたというような報告がたぶん来ているのではないかと思います。そういう意味では、指令上は全部投網に掛けるような見直し規定になっていますが、問題意識としては今、竹内先生の言われたような特定の労働者グループなり、経済活動分野に制限したり禁止したりするということが主として念頭に置かれているのは確かだと思います。
○竹内(奥野)委員 どうもありがとうございました。
○鎌田座長 今のことで濱口先生に質問ですが、13ページの第4条第1項「派遣労働の利用への禁止又は制限」ということで、この禁止又は制限できるのは、「とりわけ」という具体的に示しているような、公益上の根拠のみによって正当化されなければならないということは、つまり、この「とりわけ」以下に関わる理由がある場合に限って、禁止又は制限できるという発想ですか。
○濱口統括研究員 「とりわけ」というのは例示列挙をするときに使う言葉なので、なぜこれが入っているかというと、ほかにもあるかもしれない「その他条項」のつもりで入れているのだと思います。何かギリギリ言われたときに、ここに上がっているものではないけれども、こういう正当化事由もあるよという余地を、これに限らず、こういったものを作るときには各国とも交渉の結果、明確に書きたくないときには「その他条項」みたいなものを入れておくことで、いざというときには抜け道を作るというのはあります。法制の解釈としてはin particular、あるいはフランスのnotammentというのは例示列挙である。だから、この4つだけでなければ駄目だという趣旨ではないことになるのだと思いますが、全然これと関係ないようなものがいきなりポッと出てきて、それで通るかというと、これに類するようなものだということになるのではないかなと思います。そこは明確にどこかに書いてあるわけではないですし、基本的には昨年の12月までに各国が出してきたものを見て、これは良いとか悪いという話になるのだと思いますが、まだそこまでは行っておりません。
 ここから先は推測ですが、恐らく当初の欧州委員会の指令案の発想からすると、労働者グループや業種で限定しているものについてはかなり厳しく見るけれども、その他については何か理屈が付いていればいいというような感じに行くのかなと予想しておりますが、これは蓋を開けてみないと分かりません。
○鎌田座長 例えば無期原則だからここは禁止するとか、つまり雇用というのは常用代替をしないように制限するという、抽象的な話というのは想定していないわけですよね。今のお話で「とりわけ」というのは例示列挙ですが、具体的に被害とか損害とかを考えて言っていて、あまりシステムのことで正当化できるわけではないというニュアンスなのかなと思ったのです。
○濱口統括研究員 実害といっても、言葉の上でこういう実害が出るからという意味からいえば程度問題かもしれませんが、基本的にはここに挙げているような労働者にとっての公益上の利益というもので正当化される必要がある。そうでなかったら、それは見直しなさいという趣旨であることは間違いないと思います。
○鎌田座長 もう一度確認ですが、これは例示列挙ですね。文言は禁止又は制限は、斯く斯くの公益上の根拠のみによって正当化されなければならないというか、普通は限定列挙になるのかなと思いますが。
○濱口統括研究員 要は、そもそもがここはそういう意味では最初は労使交渉ですし、そのあとは各国の交渉の結果で、とりわけ第4条のこの文言は、閣僚理事会で各国がいろいろやる中で、できるだけ自国が今やっている制限を生き残らせることができる余地を残したいということと、かつ、しかしもともとの正当な理由がないのに制限しているものは撤廃しなければいけないという大原則と調和させるために、こういう形になっているのです。そういう意味からすると「とりわけ」と言っておいて、かつ「のみ」という言葉を入れるところに、各国間の交渉担当官の苦労の余地が残っているのかなという感じがいたします。
○鎌田座長 その背景事情はよく分かります。
○木村委員 今のところと重なりますが、第4条の利用制限の正当性で下記の正当性4点あって、特に3点目と4点目の「労働市場の適切な機能」と「濫用の防止」というのを先ほどお聞きしていて、具体的にどこまで何が入るのかが疑問だったのですが、今おっしゃられたように「とりわけ」「のみ」ということで、ここに各国のさまざまな状況が何でも入るようなことで、3、4番は実態的にはそんな意味があるという形でよろしいのでしょうか。何か具体的な議論があったというよりは。
○濱口統括研究員 何でも入ると思われないために、つまり、できるだけ入れたいという気持が「とりわけ」に入っていますが、とはいえ、だからといって何でもかんでも入れるわけにはいかないよという気持が「のみ」に入っているということだろうと思います。論理学的にいえば、「とりわけ」というのは「公益上の根拠」の例示列挙であり、「のみ」というのは「公益上の根拠」以外はダメだよということですから矛盾はないわけですが、政治的にはその両方の思いがここに入っているという。恐らくまだ何も各国からの報告も発表されていませんし、欧州委員会で取りまとめてもいないので現段階では分かりませんが、少なくとも「とりわけ」と言いつつ、「のみ」と言っているというのがにじみ出るような形で報告がまとめられるのではないかなと思います。まだ全然その気配がないので、現段階では分かりません。私の感じでは、欧州委員会の当局としては、当初から特定のグループや業種に制限するというところに問題意識を持っているので、そこを中心に見ることになるのだろうなと思います。
○竹内(奥野)委員 時間も押してきているところで細かい点ですが、ドイツ法について確認的にお伺いさせていただければと思います。1点は本庄先生のレジュメの5ページに2011年改正のことが書かれておりまして、EU指令への対応のところで(エ)に「福利厚生施設やサービス利用を認めるべき義務」という形で書かれていて、要するに福利厚生等については均等待遇原則の話ではなくて、想像ですが、そのまま利用を認めるという意味で、派遣先でもともと直用されている人も利用できるのと同じように利用できるということかと思いますが、そういう意味ではこれについてはある意味、等しくそのまま取り扱えという規定なのかが1点です。
 あと、ドイツ法はもともと派遣の利用を認めていく中で、許可制度については基本的に維持をしている。その細かい規制の中身はいろいろと緩和されているけれども、許可に違反している、そういう意味で違法なものについては、直接雇用のみなしをするという基本的発想は残っているということだと思いますが、日本だとその手の直接雇用のみなしなどの話をすると、必ず採用の自由や契約の自由との関係の話が出るわけですが、そういう議論がないのかどうかだけを確認的に教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○本庄准教授 1点目のところは、確かに均等待遇原則の中に入ってきそうな話ですから、更に確認規定みたいなものを規定する意味がどこにあるのか。まさにEU指令に沿ったというのが恐らくドイツの実態で、ただ均等待遇と比べると協約等々による例外が認められていないというのが1つと、合理性があれば異別取扱いを認めるという例外の余地は認めている。ですから、内容は少し違います。ただ、重要なもので、かつEU指令でこう定めているのだからそれを導入しようというところで、ほとんど議論のないまま導入されてしまったという規定です。
 一方、後者の点については、もう一度簡単にお願いします。
○竹内(奥野)委員 後者の点は、違法な派遣の場合などにおける直用化をめぐるものです。
○本庄准教授 直用化ですね。採用の自由を巡る問題というのはもちろん理論的にはあり得るのでしょうが、そもそもドイツ法の発想そのものが民営職業紹介の一種であるところからスタートしているというのが、かなり大きな事情なのかなと。ですから、当時の議論を遡ってみればそういう議論が強くあるのかもしれませんが、派遣法ができて数十年経った中で、今はそこについて採用の自由云々の話は見かけないというのが1つですが、他方で、ではこの規定に基づいて直用化されているのかというと、そこは極めて怪しいのではないかという印象を持っております。許可制度そのものの内容がかなり変わってきておりますし、特に協約を結んだ場合には均等待遇すらも除外できますから、かつそれが一般化しておりますので、守らなければならない基準というのがほとんどスカスカの中で、直用化の問題というのは実務上もないのではないかなというのが直感的な印象です。むしろ、派遣元における労働条件の改善というところに軸足を移してきたのかなと、大きな流れとしてはそういう傾向があるのかなという印象を持っております。
○竹内(奥野)委員 ありがとうございました。
○鎌田座長 よろしいですか。まだまだお聞きしたいことはたくさんあろうかとは思いますが、そろそろ終わりの時間も迫っておりますので、本日はこのあたりで議論を終了したいと思います。
 次回は、個々の派遣会社、派遣先、派遣労働者からヒアリングを行う予定と聞いております。個別の会社等に関わることですので、場合によっては非公開とする可能性もありますが、その点は事務局とも相談して決めたいと思います。事務局から、何か連絡事項はありますか。
○佐藤補佐 次回の日程については、調整の上また御連絡を申し上げたいと思います。以上です。
○鎌田座長 予定の時間も参りましたので、これをもちまして本日の研究会は終了いたします。本庄先生、濱口先生におかれましては、お忙しいところどうもありがとうございました。参考になりました。


(了)

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