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2013年4月25日 第7回社会保障の教育推進に関する検討会議事録

政策統括官(社会保障担当)付社会保障担当参事官室

○日時

平成25年4月25日(木)
10:00~12:00


○場所

経済産業省別館11階 1111会議室


○出席者

委員

権丈善一座長 梶ヶ谷穣委員 細野真宏委員
前田昭博委員 増田ユリヤ委員 宮台真司委員
宮本太郎委員

事務局等

唐澤政策統括官(社会保障担当) 福本参事官(社会保障担当)
込山政策企画官

○議題

・地域社会保障教育推進事業の実施報告について
・高等学校教諭へのヒアリング結果について
・今後、検討会として取り組むべきことについて
・細野委員による年金教材の企画・制作について
・その他

○配布資料

資料1 平成24年度 地域社会保障教育推進事業 実施報告
資料1-1 株式会社東京リーガルマインド
資料1-2 株式会社放送映画製作所
資料1-3 全国社会保険労務士会連合会
資料2 高等学校教諭へのヒアリング結果について
資料3 今後の検討会の取り組みの方向性について(案)
資料3-1 社会保障を教える際に重点とすべき学習項目の方向性(案)
資料3-2 社会保障に関する映像教材の方向性について(案)
資料3-3 既存のワークシート等の取り扱いについて(案)
資料3-3-1 ワークシート(政府の役割と社会保障)
資料3-3-2 ワークシート(公的医療保険って何だろう?)
資料3-3-3 ワークシート案(年金)
資料3-3-4 ワークシート案(社会保障って何?)
資料3-4 教材検討PTについて(案)
資料3-5 今後の検討会の取り組みの方向性(全体像)
資料4 細野委員による年金教材の企画・制作について

○議事

○権丈座長 ただいまから「第7回社会保障の教育推進に関する検討会」を開催いたします。
 委員の皆様には、御多忙のところお集まりいただきまして、ありがとうございます。本日は、広井委員が欠席、宮本委員が11時半ごろ御退席の予定です。なお、大杉委員ですが、岐阜大学から国立教育政策研究所に移られまして、業務の関係で検討会の委員はお辞めになることとなりました。大変残念ですが、皆様によろしくとのことでした。唐澤統括官は、少し遅れて来るということで、文科省の塩見課長は、今朝方、急に仕事が入りまして、本日は欠席となりました。宮台委員は、遅れていらっしゃる可能性を我々は期待しております。
 それでは、早速議事に入りたいと思いますが、まず事務局から本日の議題と配付資料について確認をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○込山企画官 おはようございます。先生の皆様方、御多忙のところ参加くださいまして、まことにありがとうございます。
 では、早速でございますけれども、議事次第にのっとりまして、2の議事と配付資料について概略御説明申し上げます。
 まず、議事の第1点でございます。「地域社会保障教育推進事業の実施報告について」でございます。こちらは御案内のとおり、昨年度、教材を作成いたしまして、地域社会保障教育推進事業として3事業者の皆様方に、そのモデル事業を実施していただきました。その事業の内容につきまして御報告をいただきたいと存じます。これが1点目でございます。
 2点目でございます。「高等学校教諭へのヒアリング結果について」ということでございますが、社会保障教育の現状、また実態等につきまして、現在、授業に取り組まれている高等学校の先生方に対しましてヒアリングを事務局のほうで実施させていただきました。その結果につきまして御報告を申し上げたいと存じます。
 3点目でございます。資料3も含めまして、「今後の検討会として取り組むべきことについて」でございます。ただいま申し上げました推進事業、モデル事業の実施報告内容や、高等学校の先生方へのヒアリングの結果を踏まえまして、本検討会におきまして、今後具体的にさらにどういった検討が必要かということを御議論いただきたいと存じます。
 4点目でございます。「細野先生による年金教材の企画・制作について」でございます。前回御議論いただきました年金に関するワークシートにつきましては、御議論の中で、論点は網羅しているけれども、まだなかなか使いがたい、使いやすい教材になっていないのではないかという御意見もございました。そういった中で、このたび細野委員から教材制作のお申し出をいただきました。生徒にとってわかりやすく、また先生にとって使いやすい教材の作成につきまして、お知恵を頂戴しておりますので、その点につきまして、その成果物等と、また御議論を頂戴したいと思っております。
 内容については、以上でございます。

○権丈座長 どうもありがとうございます。
 それでは、議題の1番目であります「地域社会保障教育推進事業の実施報告について」に入りたいと思います。事務局から概要を御説明いただいた後に、各事業者さんから御報告をいただければと思います。よろしくお願いします。

○込山企画官 恐縮でございます。資料1をお開きいただきたいと思います。
 まず、概略ということで、2枚紙をつけさせていただいております。「平成24年度地域社会保障教育推進事業実施報告」と題するものでございます。こちらに書いてございますように、この検討会で作成させていただきましたワークシートの効果の検証を含めまして、社会保障教育の全国展開に向けた検討の基礎資料としてモデル事業を実施していただきました。3事業者の皆様方には大変御苦労をおかけしましたが、その内容につきまして詳しく御報告を頂戴したいと思います。
 この紙にもございますように、実施校は計14校でございます。それぞれ3事業者の方々の中で学校を選択していただきまして、こういった形で実施していただいています。内容について御報告を頂戴したいと思います。

○権丈座長 ありがとうございました。
 それでは、各事業者さんからの御報告に入りたいと思います。ご報告がすべて終わりましたら、意見交換の時間をとりたいと思いますので、まず株式会社東京リーガルマインドさん、お願いいたします。

○東京リーガルマインド木崎様 それでは、東京リーガルマインド木崎より、本授業の実施報告をさせていただきます。
 弊社のほうで作成させていただきました報告書資料1-1の、まず4ページをおあけいただけますでしょうか。こちらに記載がございますとおり、今回、弊社では4校の高校で実施いたしました。体験学習につきましては、全て特別養護老人ホームなどの介護福祉施設に訪問という形で実施させていただきました。
 この4校のうち、上2つのルネサンス高等学校様と明蓬館高等学校様につきましては、単位制の広域通信制課程の高校という形で、スクーリングという形式で実施いたしました。その下の大阪市立大阪ビジネスフロンティア高等学校さんは、商業高校3校が統合して新しくできた高校でございまして、もともとは商業高校であった高校でございます。こちらのロング・ホームルームの生徒指導の一環という形で実施させていただきました。最後の東京都立竹台高等学校様につきましては、2学年、学年全体で約240名いたのですけれども、その240名の生徒を8つの施設に分けて実施させていただいたという形でございます。
 ここで、体験学習先に介護福祉施設を取り上げた経緯について御説明させていただきます。この授業におきましては、具体的な事例で、生徒にとって家族など、身近に高齢者の方がいる場合も多いことから、グループワークや体験学習において、より教育効果が高まるという理由から、この介護福祉施設の体験というものを取り上げさせていただきました。生徒さんの中には、祖父・祖母が実際に施設に入っているという生徒さんもいらっしゃって、より切実な問題としてこの授業を受けていただいたということで、この介護福祉施設を取り上げたことにつきましては、一定の効果があったのではと考えております。
 次に、授業を実際にいたしまして、工夫した点や問題点・改善点等につきまして御報告をさせていただきます。詳しくは、こちらの報告書の35ページ、36ページに書かせていただきました。これに沿ってという形ではない部分もございますが、御報告させていただきます。
 まず、工夫させていただきました点といたしましては、講義部分につきまして所定のワークシートを使わせていただきましたが、それをそのまま実施するという形ではなく、例えば政府の歳入歳出につきましては、生徒自身のお小遣いを例に説明するなど、わかりやすい説明を心がけさせていただきました。
 また、グループワークでは、介護福祉施設に実際に行ったことのない生徒さんも多数いらっしゃいましたので、自治体、荒川区や柏市などで配布している介護保険の案内の冊子、特に荒川区につきましては中学生向けにつくられた冊子で、実際に授業でも使われていたということだったので、こちらを配布することで、介護保険の内容や種類など、体験学習の前に具体的なイメージを持ってもらうことができたと考えております。
 また、体験学習につきましては、短い時間でしたけれども、その中でも車いすを実際に押してみるとかレクリエーションに参加するなど、体験型の学習をその中にも取り入れたことで、より生徒の興味を引き出すことに成功したと考えております。
 次に、授業を実施いたしまして、弊社として考えました問題点・改善点について御報告させていただきます。大きく4点ございます。
 まず1点目は、実施をする高校への提案のタイミングについてです。今回、年度の途中で各高校さんに御提案させていただいたわけなのですけれども、多くの高校では既に年間で常時スケジュールが決まっていて、スケジュールを確保するのがなかなか難しいということがございました。また体験学習の場合、外に出て行うということで、事故などのリスクを懸念されて実施が見送られるというケースもございました。
 2点目は、教材のワークシートについてです。シートには必要なものが網羅されていて、内容としては申し分ないと思うのですが、さまざまな学力の生徒がいる高校生に対して実施するには、少し内容が難しい部分もあったのかなと感じております。学習内容も多く書かれていて、肝心なこの授業として一番伝えたい部分というのがぼやけてしまったのかなというきらいも感じております。
 3点目は、授業の担当者、講師の選定についてです。今回、弊社では、全て高校の先生ではない外部の先生で授業を実施させていただきました。専門的な授業ができた一方で、当日、授業で初めて会う生徒に対して、そのクラスの雰囲気とか、どのように授業を進めればいいかといったものをつかむまでに時間がかかってしまうところもございました。
 4点目、最後は、体験学習先の選定についてです。介護福祉施設を選定する場合、受け入れ自体がなかなか難しいというか、嫌がられてしまうケースもあったり、また受け入れが可能となった場合でも、例えば学年全体で実施するという場合、かなりの数の介護施設を選定しなければならなくなってしまうので、1施設当たり15名から20名、受け入れをしていただきたいところなのですが、それだけの人数を受け入れてくれる施設の確保がなかなか難しいというところで、特に学年全体で実施するという場合には、この体験学習先の選定というのがかなり難しい作業の一つであったなと思っているところでございます。
 それらの点を含めまして、弊社として、次の4点を御提案させていただきたいと思います。
 まず1点目は、ワークシートについてですけれども、身近な具体例といったものから入り、段階を踏んで社会保障制度が理解できるような内容にしたり、字体も大きなポイントで、生徒の興味を引くようなレイアウトとすることが望ましいのではと考えております。
 2点目は、体験学習のあり方についてです。先ほども申し上げたように、全て実際に施設に行って見学するという場合、受け入れ先の確保なども困難な場合もございますので、例えば施設の担当者の方を学校に招いて授業を行うとか、介助講習のような内容を授業で行うなど、施設に赴く以外の方法でも実施を検討するといったものも取り入れていく必要があるのではと考えております。
 3点目は、高校への打診のタイミングや方法についてです。なかなか難しいところではあるかと思いますが、可能であれば、打診につきましては、高校さんの年間スケジュールが決まる前の前年度中などに行えればよいのかなと考えております。仮にそれが困難な場合であっても、先ほど申し上げたような授業内容、体験学習を出前形式にするとか、実施時期を数回に分けて行うなどすることで、より多くの高校で実施が可能になるのではと考えております。
 最後、4点目ですけれども、体験先の施設の選定についてです。選定の過程では、この社会保障教育授業の趣旨というのがうまく伝わらず、ちょっと御理解いただけないまま受け入れを断られてしまうようなケースもございました。そこで、この授業の内容が一目で伝わるような、A4サイズ1枚程度の資料を御作成いただきまして、そういったものをこちらが使用させていただいて体験先の施設に説明させていただくことで、受け入れ先の選定作業がスムーズに進むのではないかと考えております。特に、その資料には、厚生労働省様の受託授業であるということがわかるような記載があると、より効果的であるかなと考えております。
 以上4点を私どものほうから御提案させていただきたいと思っております。
 以上、簡単ではございますが、東京リーガルマインドからの報告を終了させていただきます。

○権丈座長 どうもありがとうございました。いろいろと御迷惑をおかけしたみたいで、貴重な御提案、ありがとうございました。
 続いて、株式会社放送映画製作所さん、お願いいたします。

○放送映画製作所西井様 おはようございます。放送映画製作所の西井と申します。それでは、ご説明いたします。
 まず、資料1-2の報告書の3ページをご覧ください。
 授業の実施校は東京都立蒲田高等学校、東京都立足立新田高等学校、大阪府立茨木西高等学校の3校です。3校とも公立の普通科です。学年は、2年生と3年生、充当教科は、社会科の現代社会と、家庭科です。講義は、今回、高等学校の各担当の先生に実施いただきました。体験学習は、社会福祉士、看護師、介護福祉士にご協力いただきました。
 体験学習先に関しましては、東京都立蒲田高等学校は溝口駅前デイサービスセンターに施設見学に伺うことができました。残りの2校に関しましては、体験学習を実施する講師が学校に出向く、いわゆる出張授業という形式で行いました。
 次に、4ページ、5ページをご覧ください。
 学校の選定に関しましては、所要期間は約1カ月です。以前に消費者教育等で教材を弊社で制作した際にご協力いただきました先生にお願いいたしました。中でも、授業実践事例をご執筆いただいた先生や、社会保障教育に関してスムーズに実践いただける先生を選定させていただきました。
 まず、趣旨をメールで伝えた後に、詳細は電話でお伝えし、学校に直接出向いて説明いたしました。選定・調整に当たっての障害となった点に関しましては、年度途中で年間授業計画が確定していることもあって、その中で社会保障教育に授業を3時間確保いただくことが難しいというのが現状でした。あと、学校長の許可や時間的な制約により、体験学習を学外でするのが難しいということがございました。
 体験活動の選定・調整ですが、所要期間は約2カ月です。体験活動を実施いただいた3校のうち、1校に関しましては学校の先生による紹介で実施をいたしました。他の2校に関しましては、以前、私どもが仕事をした施設にご協力いただきました。
 選定・調整に当たって障害となった点は、施設見学に関しましては、体験活動施設の業務の妨げにならないように注意いたしました。また、個人情報やプライバシー面でも十分配慮いたしました。
 あと、出前授業に関しましては、体験活動に必要な器具や準備、あと時間配分等の調整に少し苦労しました。1つの学校では、高齢者の食事を体験する授業を実施しましたので、事前に介護食を購入して、レンジで温めるなど、先生と一緒に準備をいたしました。
 次の6ページ、7ページをご覧ください。
 社会保障教育プログラムの策定と教材の作成・準備に関しましては、授業を担当した先生と体験学習の講師でいろいろ検討した結果、作成していきました。社会保障教育プログラムに関しましては、厚生労働省の指導用マニュアル・ワークシートを使い、あと高等学校の教科書をもとに作成いたしました。
 教材に関しましては、それぞれの先生に作成いただきました。先生は新聞とかテレビ番組、あと市の広報紙などを活用しました。
 次に、8ページをご覧ください。
 講義に関しましては、東京都立蒲田高校では、講義、体験学習(施設見学)、その後ワークショップという流れで、移動時間も含めて計4時間実施いただきました。
 次に、11ページ、東京都立足立新田高校に関しましては、講義2時間、体験学習(出張授業)という形式で2時間、計4時間実施いただきました。
 次に、14ページ、大阪府立茨木西高等学校に関しましては、講義とグループディスカッション1時間、その後、講義1時間、体験学習(出張授業)という形式で1時間、計3時間実施いただきました。
 17ページ、授業の実証結果の検証ということで、生徒の関心・理解に繋がった点といたしましては、生徒が興味を持つと考えられる話題、テーマを選び、生徒に投げかけました。例えば、『幸福』とは何だろうとか、これから高校を卒業してどのような人生を歩むかなどを導入部分に使いました。あと、一方的に説明するのではなくて、グループディスカッション等を交えることで、生徒同士が気軽に意見交換などをすることがよかったのではないかと思います。また、講義及び体験活動を計3時間以上やったことで、継続した授業を行うことで社会保障への関心・理解が段階的に深まったのではないかと思われました。
 あと、問題点・改善すべき点は、厚生労働省が作成したワークシートです。イラストなどを活用してわかりやすく工夫されており、非常によい教材であると先生からご意見をいただきましたが、授業時間の関係で、分量が少し多く、内容が詳しすぎた点です。そのため、アレンジして授業を展開いたしました。
 また以前の検討会で、体験学習を先にして、講義を後にするようにというアドバイスをいただきましたが、授業のスケジュールと体験学習の受け入れ先等の調整がなかなか難しくて、最終的には今回の3校では講義が先で体験学習が後という流れになりました。
 次に18ページ、今後の全国展開に向けた考察ですが、学校現場に関しましては、授業時間や先生の業務の増大で、多くの時間が割けないということもあり、その中で核心的なところを教えるのが最優先ではないかということでした。「助け合い」「支え合い」を中心に伝えていけばいいという話でした。ただ後ほど先生と話をする機会がありまして、「助け合い」とか「支え合い」だけですと精神的なものだけになりますので、年金制度とか社会保障制度はきっちり伝えていく必要があるのではないかという意見もいただきました。このあたりは今後の課題であると考えられます。
 あと、体験学習に関しましては、50分授業ですので、移動時間等を含めて外部施設への見学というのが難しい状況がございました。その中で1校、体験学習が実施できた大きな要因としましては、先生・学校の理解と体験学習施設の賛同が得られたことです。また学校の負担をかけないように、弊社が中心となって、スケジュール調整などを行ったことです。そして、学校から片道30分ほどの体験学習施設を選定したことです。体験学習を行うに当たって、往復時間を含めて約2時間、先生・学校から時間をいただけたというのが大きな点だったと思われます。
 教材につきましては、ワークシートは50分ではなく、20分程度で完了できるものを幾つか作成すれば、使いやすいのではないかという現場のご意見をいただきました。また、特に家庭科では、DVDやパワーポイント教材、授業展開例などがあると実施しやすいといったご意見をいただきました。
 報告書作成後、大学教授2名にヒアリングをいたしました。今後の展開につきましては、次の点が考えられます。1つは、主体的な学びの提供ということで、詰め込み型ではなく、課題学習として生徒に主体的に学ばせること。もう一つは、クロスカリキュラムということで、各教科・各科目で横断的に学習するということです。例えば社会科でしたら、公民が中心となりますが、地理でヨーロッパ、北欧を学ぶあたりで社会保障を学ぶとか、歴史ですと、イギリスのサッチャー首相の制度の問題などを学ばせればいいのではないかというアドバイスをいただきました。
 あと、時間数別のプログラムの設定ということで、なかなか3時間とれない学校が多い中で、例えば、『1時間でできる社会保障教育』などという題名にして、1時間でできるような授業等をやればいいのではないかというご意見もいただきました。
 最後にアンケート結果です。27ページにありますが、「今回の授業で使用した社会保障教育の教材はわかりやすかったですか」を、授業後、生徒に、「わかりやすかった」「ややわかりやすかった」「普通」「ややわかりにくかった」「わかりにくかった」の5項目でアンケートを実施したところ、「わかりやすかった」「ややわかりやすかった」が80%ありました。また、「今後もこのような取り組みを学習でやりたいですか」も、「そう思った」「やや思った」で81%ありました。アンケートの結果からも、学校現場において、社会保障教育をできるだけ実施していくことが重要であると思われます。
 以上、報告を終わります。

○権丈座長 どうもありがとうございました。
 続いて、全国社会保険労務士会連合会さん、お願いいたします。

○全国社会保険労務士会連合会小野様 おはようございます。全国社会保険労務士会連合会の小野と申します。資料ナンバー1-3に従って御説明させていただきます。
 まず、表紙を開いていただきますと、「はじめに」ということで、今回行った概要が書かれております。私ども連合会では、より多くの地域における授業を実現するために、全国6の地域協議会の中から実施都県を選定しまして、具体的にはそこに掲載されている7校で実施いたしました。
 2ページを開いていただきますと、一覧については、下段のほうに詳しく書いてあります。さらに、21ページ以降には、各学校ごとの内容詳細を掲載しております。まず、この7校のうち、公立高校が4校、私立が3校。7校のうち、体験学習、いわゆる見学を実施できたのが4校、先方さんから来ていただいた出前授業という形で行ったのが3校あります。そういう内訳でございます。
 次に、35ページを開いていただきまして、まずアンケートの結果から御報告させていただきます。こちらのアンケートについては、生徒からの回収のものでございます。
 左上の「社会保障制度の仕組みを理解するのに、今回の授業で十分でしたか」という問いかけに対しては、「だいたい理解できた」から上が518名、約85%の生徒から、大体、十分理解できた、もっと詳しく知りたいという回答をいただきました。
 「今回の授業を受けて、社会保障についての関心度は高まりましたか」というのは、「少し高くなった」「高くなった」が437名、約71%という回答をいただいております。
 「今後もこのような社会保障に関する勉強会があったら聞きたいと思いますか」という問いに関しては、下半分の「どちらとも言えない」「あまりそう思わない」「そう思わない」というのが308名、約50%ございました。ですから、どちらかといえば、よかったということですけれども、今後は余りというのが半分だなという感じです。
 その下に、「今回の授業で、一番ためになった内容はありますか」という問いかけに関しては、一番上の「年金制度」が86名、次に多かったのが「健康保険・社会保険」、それから「年金事務所の見学」が35名。その次ですけれども、「人生の先輩としてのメッセージ」が19名。それから、次のページ、36ページに「社会で働くということ」が58名でした。この2つを合わせると、77名の方がこういったことが非常にためになったと回答をしております。
 それから、38ページを見ていただきますと、こちらは教諭の方、いわゆる学校の先生のほうから、「体験学習の取り組みはみどのような意義があると思いますか」という問いかけに対して具体的に列挙していただきました。「より身近に感じることができる」「講義形式よりも生徒の関心は高くなる」「社会の様子を感じることができる」「場所を変えて実際に見るだけでもいい刺激になったと思う」。下から2つ目ですけれども、「生徒が実感として捉えることができ、記憶に残っていくのでよい」と、体験学習はおおむね効果的というお話をいただいております。
 それから、ちょっと飛びますけれども、43ページからは授業の今回の実施結果の検証を述べさせていただいております。
 かいつまんで項目だけを申し上げます。45ページを見ていただきたいと思います。真ん中から下です。先ほどのアンケートにもあったように、全体を概括すると、生徒の関心の多くはやはり「年金制度」にあったと思われます。こちらは、学校の先生にも言えることで、非常に関心を持って聞いていただいたということだと思います。
 次に関心を持ったと思われるのは、社会に出てからの心構えの話とか、社会・人生における先輩からのメッセージといった内容が非常に生徒たちには響いたのかなと。これは、外部講師を活用したことによるメリットかなと考えております。ですから、授業を行う上で、その下にも通じますけれども、社会での実例や講師自身の体験談といった話を中心に組み立てていくことが、今後の授業の成功には不可欠かなと、重要かなと思います。
 それから、「授業の進め方」ですけれども、グループワークは非常に効果的だったと思われます。生徒・学校・講師、いずれからも比較的よい評価をいただいたと理解しております。
 46ページを見ていただきますと、上のほうの中ごろにありますけれども、テーマによってはクイズ形式や、時間の都合もありますが、ミニ寸劇を入れるのも非常に効果的だったかなと思っております。
 「教材や資料」については、授業の進捗状況が学校のレベルによって多少ばらつきがございます。ですから、共通の教材だけでは理解に限界がある。したがって、日ごろ学校で使用している副教材、資料をさらに追加することによって、より一層の理解ができるのではないかということです。
 47ページの上のほうで、今回は実物の教材も使用しました。例えば年金手帳、健康保険証といったものは、給付と負担が物として示される。生徒にとっては、より実感させることに効果的であったかなと思います。
 さらに、私どもが連合会で作成しました「知っておきたい働くときの基礎知識」をベースにしているのですけれども、ここにも掲載されていますが、実際に給与明細を講師のほうでつくりまして、生徒に開封させて中身を見ていただくことも試みました。この給与明細というのは、勤怠の項目から労働条件のことや社会保険のことが一覧できることから、負担について一層具体的なイメージがわいたという生徒の感想も出ました。
 それから、「体験学習について」は、実際の社会のイメージという点では、非常に効果がありました。外に出て行う体験学習というのは、おおむね評判もよく、有意義な機会になったと思います。ただ、講義やディスカッションの内容と体験学習先がうまくリンクしていなかったり、日程的にもちょっと離れていたりすると、効果がちょっと薄れてしまうのかなと思われます。
 51ページを開いていただきますと、こちらには問題点・改善点が記載されております。既に出ましたが、まず授業の内容について、事前の学校との打ち合わせや授業内容のすり合わせ等、準備期間が、今回の場合には、期の途中で学校にお願いすることになったため、ちょっと不足していた。こういったことが今回の最大の問題点でした。
 それから、中段に書かれておりますように、社会保障制度に対してある程度の理解を得るためには、体験学習を含めて3コマではやや時間が足りなかったかなと思われます。
 下のほうに行きますと、社会保障制度の話が特別なことではなく、正式な科目として認知されて、ある程度時間をかけて継続性を持たせて、当たり前のように実施されていることが必要ではないかなと思われます。
 飛びますが、52ページ、一番下の「体験学習」については、受け入れ先の選定が非常に難航いたしました。
 それと、授業のコマ数が3コマの場合には、移動時間の問題があります。受け入れ先候補がほとんど学校から遠いことがちょっと問題かなと思います。千葉県の市立船橋高校で実施させていただきましたのは、歩いて5分程度のところに船橋年金事務所がございましたので、それについては移動時間が5分ぐらいでしたが、それは例外だったかなと思います。移動の際の生徒の安全の確保、移動に伴う交通費といったことをどうするかというのが今後の問題かなと思われます。
 先方から来ていただいて出前授業となったケースについては、私どもは講義は社労士が担当しましたが、出前授業に来ていただいたところと連携した授業をしなければいけない。それが場合によっては、それぞれが単独の授業みたいな形になってしまった場合には、学校側や生徒の制度への理解をかえって邪魔してしまったかなと思います。
 また、先ほど述べましたように、座学と体験学習との間が日程的にあいてしまったケースは、生徒の記憶が薄れてしまって効果が薄れてしまうかなというところでございます。
 それから、ページが飛びますけれども、56ページを見てください。今後の定着に向けた考察ということで、現状の課題については、今までお話ししたことと関連します。
 「学校での実施にあたって」は、時間数の確保をどうするか。それから、どの教科で行うのがよいか。これは、その下に書いてありますように、学校の特色を踏まえつつ、教科横断での実施を検討する必要があるかなと思われます。
 それから、57ページの上段、学校の特色の把握。例えば、男子校、女子校でも違ってきます。また、女子が多い場合には、出産時の健康保険あるいは育児に対する制度の説明といったことは、非常に興味を持っていただいた。男子が多い場合には、稼ぐという観点からの説明が非常によかったかなと思います。また、進学する割合、就職する割合によっても、ちょっと変わってくる。それから、その次の黒ポチですが、何年生での学習と位置づけるかということも大きな課題かなと思います。その下に行きますけれども、職場教育やキャリア教育と絡めて、これを実施していくことも必要かなということになります。
 58ページの授業の内容、進め方については、既に話しましたように、授業時間数の確保。前年度行った2コマあるいは3コマ程度では、単発に終わってしまうので、例えば恒常的に行うことが必要である。それから、学校や教師への趣旨の徹底、各教科の連携が必要です。
 下のほうに行きまして、ワークシートの再検討については、使用する生徒あるいは学校のレベルに合わせ幾つかの種類を作成することが必要かと思われます。
 それから、59ページ、最後に提案ということで、今まで述べてきましたが、社会保障教育の全国展開を推進するためには、国全体を挙げて取り組む姿勢が求められる。その下にありますように、社会保障に触れる機会を早急に、義務教育の時点から制度として確立し、国を挙げて取り組む必要があると思われます。
 最後、60ページの中段に書いてありますが、今回の試みで、体験学習と座学はどちらか一方だけではなく、組み合わせて行うのが有効であったと思われます。
 下のほうに行きますけれども、現場の教師に負担をかけないことが優先かと思います。社会保障制度に関する知識を十分に身につけた教師が授業を行うことが望ましいと思われますけれども、実際の実施に当たっては外部専門家を活用することも必要だと思います。
 最後になりますけれども、厚生労働省と文部科学省間で協調した取り組みが望まれるということで結ばせていただきました。
 ありがとうございました。

○権丈座長 どうもありがとうございました。文科省の塩見課長が御欠席で、非常に残念でした。
 少し時間が押しておりますけれども、何か御質問等、ございましたらば、よろしくお願いします。

○込山企画官 恐れ入ります。先ほど御説明した資料1の裏面でございますが、ただいま頂戴したそれぞれの御報告のうち、共通する御見解等について、大変恐縮ですが、事務局のほうで簡単にまとめさせていただいておりますので、こちらも御参考にしていただきたいと思います。

○権丈座長 ありがとうございます。
 何か御質問、ございませんか。よろしくお願いします。

○宮本委員 情報量の大変多い授業を実施していただき、まずは厚くお礼申し上げたいと思います。
 その上での御質問なのですけれども、講師の語り口、それから主に扱った主題、損得勘定とか、そういうアプローチ、それから体験学習とのリンク。さらに率直に言えば、各校の水準みたいな、いろいろな要素・変数がパフォーマンスに結びついていると思うのですけれども、うまくいったケースとうまくいかなかったケースがどこで分かれるのか、どういう要素の組み合わせ、どういう条件のもとで分かれるのか。うまくいったということの基準も、アンケートにあるように、本当におもしろくて、漠然としていて吸収し切れないのだけれども、ともかくこれからこの種の問題には一貫して関心を持続させるだろうという場合もあるだろうし、こじんまりわかってしまったという場合もあると思うのです。
 そのケースをフィードバックしていただいて、もう一回整理していくためには、変数間の関係をこれからどう整理すればいいのか。例えば非常にうまくいったケースと、どうも教室が盛り上がらなかったケースを映像資料などで、あるいは映像とまではいかないまでも、何か記述された資料などがあって、判断できる条件というのがあるのだろうか。そのあたりは、事業者の方、事務局も含めて、もし何かこれからの進め方の手がかりがあれば御教示いただきたい。

○権丈座長 よろしくお願いいたします。

○東京リーガルマインド木崎様 うまくいったか、いかなかったかの基準ですけれども、高校や関連する施設の方、あるいは弊社の場合、外部の講師に依頼したわけですけれども、その方々との事前の打ち合わせとか内容に関しての、それぞれの担当する部分の事前のすり合わせといったコミュニケーションがうまくとれた場合には、比較的うまくいったのかなと感じております。弊社の実施した中では、一番最後に実施した竹台高校さんのほうが、こちらもだんだんノウハウが蓄積されてきたということもあったので、人数が多いながらも一番うまくいったのかなと思います。
 ほかの事業者様からの先ほどの御報告の中にもあったかと思うのですが、外部の講師と、例えば体験学習先の施設長の方と事前にすり合わせる時間がなかなかないので、事業者が間に入って調整していくわけですが、そこの過程がうまくいかなくなってしまうと、それぞれがばらばらになってしまってというところがあったかと思うので、そういったところがうまく実施できるか、できないかの一つの分岐点になるのかなと考えております。
 お答えになったかどうか、ちょっとあれなのですが、私としてはそのように感じております。

○放送映画製作所西井様 重なるところがありますが、学校の授業の流れにおいて先生が伝えたいことと、体験学習の講師が伝えたいことを事業者がうまくコーディネートできるかがポイントであると思われます。それがうまくいけば、スムーズにいきますし、うまくいかなければ難しいと思われます。
 生徒にとって身近なテーマや体験学習は、生徒が興味を持って楽しんだり、勉強したりしています。その後で先生に補足いただき、実施の目的などをうまくまとめてもらえば、生徒にしっかりと知識や考えが浸透するのではないかと思われます。体験学習をやった、楽しかっただけでは、学習成果として厳しい面があります。先生と体験学習の講師と事業者のコーディネート力が必要だと思われます。

○宮本委員 ちょっとよろしいですか。もちろん我々がこのデータから解釈することも可能だと思うのですけれども、そのもう一つ前の段階といいますか、いろいろな授業の記録があって、それぞれがうまくいったかどうかも含めて、ちょっと判断の基準が難しいとは思うのですけれども、そういう記録素材というのは、何か活用できるものがあるのでしょうか。活字媒体でもいいですし、もちろん映像があれば、それにこしたことはないのですけれどもね。

○放送映画製作所西井様 活字媒体でやりとりを残すというのは、弊社はしておりません。授業等の打ち合わせ部分も映像では撮っていないのですが、実際、授業をやっている映像は撮影して厚生労働省に納品していますので、生徒の反応などはご参考いただけると思います。

○全国社会保険労務士会連合会小野様 難しい質問なので、答えが一概には言えない部分があるかと思いますけれども、私ども全国社会保険労務士会連合会では、24年度だけで全国で202校程度、まだ報告が来ていないところもありますが、生徒数3万人に対して授業をしています。各都道府県会で非常に苦労しているところは、社会保険労務士というのは、社会人に対してお話しすることは比較的慣れていますが、相手が生徒となりますと、興味を持っていただけない項目に対しては、関心を示していただかないと寝てしまうかもしれません。それをうまく興味をつないで、おもしろくと言ったら、授業ですから語弊があるかもしれませんが、生徒の関心を引くような形でお話ししなければいけない。
 前提としまして、報告書の中にも書いてありますけれども、まず学校ないしは担当の先生方に理解していただいて、この授業がどういうことで行われるのかということです。
 もう一つは、体験学習について、私どもは年金事務所が多かったのですけれども、社労士と年金事務所のつながりは、我々もお手伝い等でやっていますので、比較的ご協力いただけました。体験学習については、そういった相手先の理解と協力が絶対必要です。
 もう一つは、教材ももちろん大きな要素になります。それらがうまくいったとしても、最終的には講師の力量です。魅力ある語り口とか生徒の気持ちを引きつけるということで、講師の力量が問われるかなと思います。これは何でもそうだと思いますけれども、そういったことが全部うまくいった形でよかったかなと。
 私どもでは、先ほど言いましたように、21ページ以降に7校の各学校の詳細が書かれていますけれども、この文章だけでは、うまくいった、うまくいっていないという評価がどこにも書いていないので、委員からのそういった御質問になったと思います。そこで、千葉会の話をいたしますと、アンケートを生徒、学校の担当の先生から頂戴します。そこには大変よかった、ありがとうございますと最後はなっていますけれども、できるだけ生の情報をもらって、それを次年度の出前授業に生かすように努力しております。
 以上でございます。

○権丈座長 どうもありがとうございました。本音の御回答を皆さん、言っていただきました。時間もちょっと押しておりますので、また質問は後ほどお願いすることになると思います。
 ここで一応、御報告のほうを終えまして、そこの席が非常に寂しくなるのですけれども、事務局の席へと移っていただきたいと思います。
 それでは、2つ目の議題に移りたいと思いますので、事務局のほうから御説明をお願いいたします。

○込山企画官 では、議題の2に移らせていただきます。「高等学校の先生方へのヒアリング結果について」でございます。こちらにつきましては、冒頭も申し上げましたとおり、社会保障教育を進めていくに当たりましては、現実的には学校での社会科などの授業の中で実施していくことにならざるを得ません。そういった授業の枠組みの現実の中で、どういった工夫ができるのかを探る一環として、先生方へのアンケートを実施させていただきました。
 目的や対象・手法については、こちらに書いてあるとおりでございます。高等学校の先生方、18名の方にアンケートをお願いしました。今回の教育推進授業実施校の先生方や、検討会でお願いしています先生方、お二人にも御協力をお願いしたところでございます。
 その結果でございますが、概略だけ申し上げさせていただきます。3ページをお開きいただけますでしょうか。
 質問項目の1点目、「社会保障」の考え方について等々でございます。現実、社会保障の授業について、どのくらい実施することができるのかという観点での質問でございました。
 例えば、「使用コマ数」、社会保障の教育について、どのぐらいコマが割けるのかということで、2コマという御回答が非常に多かったところでございます。また、2コマ以上という御回答もございましたが、3コマという方が多数でございまして、2コマ、3コマが現実であるということ。
 また、最大使えるコマ数といたしましても、大体2コマ程度だろうという御回答がございました。
 4ページに移りまして、この社会保障授業の展開方法でございます。どういった形での授業展開になるかということでございますが、これは当たり前でございますけれども、講義が中心になるという御回答が非常に多かった。それから、こうした講義の中で使う教科書なりの重要性というものも、ここにあらわれているのではないかと思います。
 一方、生徒の関心を引くための工夫として、どういったことをやられているか。こちらは自由筆記ということで、主な意見を掲げさせていただいております。今回の検討会での成果も、こういった工夫の一つの中に加えることができればと考えるところでございます。
 5ページに移らせていただきまして、「授業は誰が行うと効果的か」という質問でございます。先ほどもお話ございましたが、先生と外部の講師の方々との連携の形でやるのがいいのではないかという御回答もございました。
 飛ばさせていただきますが、6ページでございます。現在使用している教科書に関する御質問でございました。
 今、使われている教科書の内容の中で、先生にとって重点的に教えるべきと考える点はどういったことかでございます。いろいろ御回答が分かれたところでございますが、大ざっぱに申し上げますと、例えば「年金や医療などの社会保険制度の内容」という御回答が13人ございました。その他、「社会保障の理念」「社会保障の課題」という御回答もございました。ということで、理念や課題の重要性ももちろんでございますが、その一方で、個々の制度の内容・中身についてもきちんと教えることができればという意識があるということがうかがえます。
 また、「教科書の記述をより充実させてほしい点」でございますが、先ほどのお話にも関連しますが、制度の内容の記述、また社会保障の課題についても、きちんと書いてほしいという御回答がございました。
 同様の観点で、「教科書の内容のうち教えるのが難しいと感じる点とその理由」がございます。
 「どのような教科書が授業で使いやすいか」ということでございます。文章だけでなく、分かりやすい図表なども掲載して、双方を活用できるような内容にしてほしいという御回答がございました。
 分量でございますけれども、冒頭の2コマ、3コマということが現状の枠組みだとすれば、例えば教科書における4ページ程度の記述が望ましいという御回答が一番多かったところでございます。
 8ページでございます。検討会で作成していただきました厚生労働省作成の教材についてのアンケートでございます。
 レイアウト等の記述についての御感想を求めました。こちらは自由筆記でございましたけれども、主な意見として、否定的な御感想と肯定的な御感想、それぞれございまして、否定的な感想は、「難解な表現が多い」「分量が多い、詰め込み過ぎ」。他方で肯定的な感想でございますが、「見やすい。取り組みやすい」「伝えたい内容の分量からいうとこの程度が適当」といったものもいただいているところでございます。
 また、副教材についても、「使いやすい、適切なボリュームは」ということでございますが、「A3で1枚程度」ないし「A4で1枚程度」。1枚紙の教材というのが、副教材としては使いやすいということでございました。
 また、その内容でございますが、9ページの「使いやすい教材の形式」、説明の羅列だけではなくて、生徒に問いかけるような「クイズ・質問形式」がいいだろう。また、質問に対して記述で答えさせるよりは、設問の中で、選択式で答えを選ばせるほうが、子どもにとっては取り組みやすいのではないかという御回答もございました。
 その他、改善点等々につきましては、ここに書いてあるとおりでございます。
 10ページでございますけれども、例えばこういった副教材に加えて映像教材などを活用するとした場合に、どのような御提案があるかということでございます。
 「どのような内容が望ましいか」ということで、社会保障を自分と関係あることとして捉えるための取っかかりになるような、ストーリー仕立ての展開の映像教材が望ましいのではないかという御回答でございました。
 また、授業時間との関係で、時間はどのぐらいが望ましいのかという設問でございますが、20分程度という御回答が多かったところでございます。
 11ページ、これも先ほどお話がございましたが、体験学習との連携でございます。
 現在、「体験的な学習を行っているか」という御質問に対しまして、いろいろな事情から行っていないのが12名でございました。
 また、行うことについてどう考えるかということですが、多い回答としては、実施したいけれども、現実の担当教科の中では難しいだろうということがございました。
 アンケートの結果については、以上でございます。

○権丈座長 どうもありがとうございました。
 引き続き、議題3の御説明までお願いしてから、まとめて議論していただきたいと思います。よろしくお願いします。

○込山企画官 議題3、「今後、検討会として取り組むべきことについて」ということでの事務局としての御提案でございます。
 先ほど御報告いただきました「地域社会保障教育推進事業」の実施報告の内容、また、ただいま御説明申し上げました先生方へのヒアリングの結果を受けて、現実の教育現場に合った効果的・効率的な社会保障に関する学習方法を今後具体的に検討していく必要がある。そのために、どういったところに重点的に取り組む必要があるのかということでの御提案でございます。
 1枚紙の下のほうに、A、B、C、Dとして項目を列記させていただいております。
 まず、ただいまいろいろ御報告いただいたヒアリングの結果の内容を踏まえて、その枠の中で社会保障を教える際に、特に重点とすべき学習項目は何かというのをきちんと整理する必要があるだろう。ちなみに、本日、資料3-1といたしまして、重点的に教えるべき項目を1つ、提案を申し上げさせていただいております。また、この学習項目に即して、どういった授業展開、授業の内容、さらに言えば教材の内容にすべきであろうかといった具体的な内容を明確化する作業が必要になってくると思います。これが2点目のBでございます。
 また、それにつけ加えまして、具体的な教材として、例えば学習のモチベーションを高めるための映像教材。また、学習項目の理解向上に資する副教材をさらに検討していく必要があろうかと考えております。このCの映像教材につきましては、本日、資料3-2でどういった内容がよろしいかということの御議論を頂戴したいと思っております。また、副教材につきましては、これまでワークシート・ファクトシートの御検討をいただいております。これをさらにどういうふうにアレンジすればよいのかといった点につきまして、御検討をいただきたいと存じます。
 資料3-1でございます。ただいま申し上げました、「社会保障を教える際に重点とすべき学習項目の方向性」としての御提案でございます。先ほど申し上げましたとおり、現場の先生方のヒアリングだったり、また実際の授業展開、モデル授業の結果を拝見いたしますに、社会保障の授業コマ数として、現実、最大何コマ使うことができるのかという御回答で、使える授業コマ数は2、3コマという御回答がございました。
 また、内容として、重点的に教えるべき点、また教えるのが難しい点の主なところといたしまして、社会保障の内容・課題・理念という御回答がございました。そういったニーズとか現実を踏まえますと、理念・課題・内容について重点的に教えるべき点を整理する必要があるのではないかと考えるところでございます。
 そういった点から導かれる方向性ということでございます。繰り返しですが、理念・内容・課題に絞って教えるということが適当ではないか。理念・内容・課題の内容については、ここに掲げさせていただいているところでございます。こういった点につきまして、学生の皆さんに自分のこととして考えて学習していただくような工夫を、具体的な内容として、さらに検討する必要があると考えています。
 別紙が、今、申し上げました理念・内容・課題について、学習の項目としてどういった点を中心に教えるべきかといった点を掲げさせていただいております。この後、ご覧になっていただきたいと思います。
 資料3-2は、例えば映像教材という手段を仮に活用する場合に、どういった内容とすべきかという御提案でございます。
 目的といたしまして、それぞれの学生さんの当事者意識を引き出して、その取っかかりの中から学習のモチベーションを高めるような教材にすることが必要なのではないだろうか。
 基本的な考え方・アプローチに書いてございますが、そういった趣旨から、つかみを最優先としたような映像教材ができればいいなと考えております。伝えたいメッセージとしては、「社会保障は身近なもの、大事なもの、みんなで支えるもの」というのが、現実の映像の中で感じられるような、理解ができる内容にしていく必要があるのではないか。具体的なストーリーに即したものになるとよろしいのではないかと考えております。
 資料の3-3が、先ほど申し上げた検討項目Bに関連いたしますが、教科書だけではなく、副教材の重要性というのは当然のことでございまして、これまで御検討いただきましたワークシートについて、これを最大限活用していくことも大事だと思います。これまで御議論いただいた結果として作成いたしましたワークシートにつきましては、既にホームページなどで公開しておりますのが、「政府の役割と社会保障」「公的医療保険って何だろう?」というシートでございました。一方、御検討いただいているところでございますが、まだホームページ掲載には至っていないものといたしまして、「年金」「社会保障って何?」ということでございます。
 これは一つの成果でございますので、未公開になっている「年金」「社会保障って何?」につきましても今後、必要な修正を加えた上で、ホームページなどに公表したいと考えているところでございます。その上で、現場からのリクエストもございますので、使い勝手につきましてどういった改善ができるのか、現実の副教材として、さらにもう少し分割して見るとか内容をわかりやすくするといった検討は、引き続きしていきたいと思っております。
 シートにつきましては、資料3-3の枝番といたしまして添付させていただいております。
 いろいろ連続で恐縮でございますが、資料3-5を先に見ていただきます。「今後の検討会の取り組みの方向性(全体像)」として、1枚紙にまとめさせていただいております。
 今後の検討におきまして、主な見直しの視点、方向性といたしまして、先生方のアンケート等を踏まえますに、今後重点的に学習すべきポイントは、社会保障の「理念、内容、課題」である。また、学生の皆さんの学習のモチベーションをどう高めるかというのが重要である。こういった点に力点を置いていく必要がある。
 それで、先ほど申し上げたとおり、今後の検討材料といたしまして、AからDの点があります。まず、Aといたしまして、学習項目をきちんと枠内の中で整理する。そして、この学習項目に即して、授業の展開の内容、場合によっては教材の案をきちんと明確化する。それと、モチベーションを高めるための映像教材にチャレンジする必要があるかどうか。そして、Dといたしまして、副教材という4点について集中的に検討する必要があろうかと思います。
 その中で、Aの点につきまして本日御議論いただいた上で、その項目について内容を具体化するBの作業。また、映像教材をつくるにしても、どういった内容にするのかといった具体的な検討。さらに、Dの副教材のさらなる検討といった点につきまして、学校現場の先生方の専門的な視点から、ひとつ検討する必要があるのではないかと考えさせていただいたところでございます。
 その点につきまして、資料3-4でございますが、教材検討プロジェクトチーム、PTの御提案でございます。
 今、申し上げましたB、C、D、学習項目に即した具体的な内容、映像教材・副教材、またそれらを用いた総合的な授業の展開の検討といったことを集中的に検討していただくことはできないかという御提案でございます。こういった教材検討PTをつくらせていただきまして、今、申し上げたような検討をさせていただく。
 メンバーといたしましては、今、申し上げたように、学校現場で使いやすく、生徒の理解に資する教材にするという観点から、学校現場での専門性の中から御検討もいただく必要もあろうと思います。そういったことで、大変恐縮でございますけれども、検討委員の梶ヶ谷先生、増田先生、そして座長の権丈先生にお入りいただいて、今、申し上げた検討をしていただきたい。PTでの検討の成果を本検討会に再度お諮りいただいて、またさらに深みのある御議論をしていただければと考えております。御提案でございます。
 御説明は、以上でございます。

○権丈座長 どうもありがとうございました。
 それでは、順に議論をしていきたいと思います。まず、資料3の「今後の検討会の取り組みの方向性について」、何かございますか。このA、B、C、Dで進んでいくという方向でよろしいでしょうか。どうぞ、お願いします。

○前田委員 前田です。先ほど事業者の方が実施していただいた結果報告をいただきまして、ありがとうございました。
 その中で、うまくいっている、いっていないという御質問があったのですけれども、私が実際、授業を視察していまして感じたことは、学校の先生がどれだけ情熱を持っているかということではなかろうかと思います。先生と講師とのコラボレーションとか、外部講師に全部委託するとか、いろいろあったと思うのですが、学校の先生が社会保障とか年金について、ふだんから教育を言葉としてどれだけやっているのか。
 この前も感じたのですけれども、2コマ、3コマの授業を、突然という言葉はふさわしくないかもしれませんけれども、ふだん余りかかわりのないことを授業でされても、子どもとしては戸惑っているし、先生もどうやって教えていいのかわからないということを感じました。
 その中で、例えば今日いただいた資料2の7ページの「教科書の内容のうち、教えるのが難しいと感じる点とその理由」ということで、下のほうの四角い枠のその他というところに、教科書を使って話をしても、表面的で自分の問題として考えにくい。教科書以前の問題。社会保障が国民にそもそもほとんど周知されていない、自分も教わった記憶がないということを先生が言っていらっしゃるのですね。多分、教育は受けられたと思うのですけれども、実際、それだけ記憶にとどまっていない、また、いかにそういう教育がふだんからされていないかということだと思うのです。
 ある学校では、先生がテレビの映像からビデオに録画したり、新聞の切り抜きをして授業で使っていらっしゃいました。その部分は、生徒は目をきらきらして聞いているのですね。ですから、後ほど映像教材という話もありますけれども、そういう視覚に訴えるということも大事だと思うのです。
 もう一つ言いたいのは、今日、文科省の塩見課長、いらっしゃらなくて本当に残念なのですけれども、例えば我々の検討会でこれから教材をつくりますと、いい教材ができると思うのです。では、それはどこで、誰がどうやって使うのですか。2コマ、3コマで、果たしていい授業ができるのでしょうか。ですから、1月の新聞で報道されていましたが、文科省のほうで、キャリア教育で年間10コマ、10時間、週1時間ぐらいの教育をやりたいということで、職業観を植える教育なのでしょうけれども、その中にぜひ職場体験、日本の社会保障の関係なども教育の中で取り組むと学習指導要領の中で決めていただかないと、学校の先生の裁量に任せて、2コマ、3コマやってくださいということでは、その制度としてはなかなか定着しないし、生徒も覚えていかないと思います。
 ですから、塩見課長とはまたお話しする機会があるかと思いますけれども、今日のこのことを学校の指導要領の中でぜひ取り組んでいただいて、各学年、年に何コマずつやるという形で進めていっていただけたらと思っております。
 以上です。

○権丈座長 どうもありがとうございました。
 宮台委員、お願いします。

○宮台委員 今後、検討会として取り組むべき事柄は、もちろんのこと、社会保障のための教育をより合理的なものにしていくことだと思うのですが、そもそも論に戻りますと、なぜ社会保障に関する教育をしなければいけないのかという目的を確認しないと、何が合理的であるのかということに関する物差しも変わり、先ほど事業者の実施報告の中にもありましたし、宮本委員からの御質問もございましたけれども、何が成功で、失敗なのかという判断もできない。
 制度に関する理解が不十分であるために、お門違いの批判が行政側になされるということ、そういう批判からのプロテクションのために、こういう検討会が提案されているという面ももちろん必ずあるわけですけれども、以前、ここで申し上げましたように、日本の社会が非常に特殊な価値観に陥っているということを、どう理解するのか、どうするのかという問題もあります。以前、ワシントンにあるピューリサーチの結果を紹介したことがあると思います。
 貧困な家庭を政府が助けるべきであるのか。ヨーロッパの国は大体10%未満の人が反対です。アメリカでこれに反対するのが27%、これはアメリカの伝統から考えて理解できます。日本はどうかというと、34%が反対で、調査した、たしか50カ国中、最も反対が多いという恐るべき結果になっているわけです。社会学者のタルコット・パーソンズという人が、社会の存続のためには、知識の伝達だけでは足りず、価値コミットメント、社会への価値的な関わりをうまく継承していかないと社会は成り立たない。それは、彼が29年の大恐慌に直面したときに少年時代だったわけですが、深く印象づけられた問題設定だったのですね。
 また戻りますけれども、社会保障に関する教育の成功は、制度の理解が十分であるということでよいのか。つまり、理解が十分であれば成功なのか、それとも何らかの価値コミットメントを自らのものにすることをもって成功とするのか。非常に重大な問題です。客観的なポイントとしては、今後、先進国はどこも財政が逼迫する。しかし、人々はグローバル化で貧困化するので再配分要求をするとなってまいります。当然のことながら、そのギャップゆえにさまざまな不満や鬱屈した感情が行政や政治に向けられがちになります。
 しかし、他方で、物理的に見て、従来、行政がやっていたことのかなりの部分を、社会を分厚くすることで調達する必要があるとなりますと、行政にくれと言うような態度ではなくて、みずからコミットメントして社会の存続を支えるという構えが非常に重要になってくると思われます。先ほどの事業者さんの方々の報告を見ても、そうしたコミットですね。
 先ほど支え合い、助け合いの大切さについて、伝えることが大事だとおっしゃっていたのだけれども、それが大切であることを理解するとか、助け合い、支え合いについて興味を持つという次元を超えて、自分自身が支え合い、助け合いに何としてでも乗り出したいと思うところにまで持っていかないと、先ほどのピューリサーチの結果に見られるような、日本だけに特殊な政府と人々の間の関係についての価値観を恐らく変えることができず、それを変えることができない限りは、人々の行政依存は永久に変わらず、それゆえに日本だけが社会保障をめぐって極めてゆがんだ世論のもとに置かれる、制度に置かれることになると思われます。
 私からの今の話のポイントは、価値コミットメントを成功の基準として、もう少し大きく評価することによって、教材の適切化を図るべきではないかということでございました。

○権丈座長 どうも貴重な御意見、ありがとうございました。今、宮台委員の発言は、資料3-1のところまで入っておりますので、そこを含めて議論していただければと思います。資料3-1のほうでは、社会保障を教える際に重点とすべき学習項目の方向性ということで、理念と内容と課題というところをもって、これを重点的に教えるべきではないかということでまとめられております。
 そして、この別紙の、教える際に重点とすべき学習項目のところで案があって、理念だったらこういう文言が並び、社会保障の内容の課題というのもこういう文言が並んでいるわけですけれども、この理念・内容・課題というところの文言を含めて、ここで今、議論していただければと思うのですけれども、よろしいでしょうか。何かございましたらば、よろしくお願いいたします。宮本委員、よろしくお願いします。

○宮本委員 理念・内容・課題、直接にかかわることではないのですけれども、さっき前田委員のほうから、結局は教師の力量の問題だ、熱意の問題だ、私もそのとおりだと思います。また、社会保険労務士会連合会のほうからの私の質問に対する御回答でも、力量だと。ただし、教師の力量と熱意はここでコントロールできないのですね。もちろん、教師のインセンティブそのものを高める、あるいは教えるという行為に対して、今、宮台委員、おっしゃったように、損得勘定から入るのだけれども、価値コミットメントに行き着くというストーリーが、今度のこのテーマに関しては教えるという行為の中にあるのだということをわかってもらう。
 そこまでは持っていけるのですけれども、それ以上のコントロールはできないということが、まず前提になってくる。むしろ、できない条件の中で、よりサクセスフルな教育を実現していくためにはどうすればいいのかということなのだろうと思います。
 その場合、これは事務局にも確認したいのですけれども、映像教材は1つ有力なツールになるだろうと思います。ただ、その映像教材の組み込み方、これは今、座長がおっしゃった理念・内容・課題というよりは、モチベーションという位置づけなのですけれども、それはどういう位置づけなのかということと。
 もう一つ要望としては、この映像教材のタッチは決定的に重要であって、お願いとしては、これは厚労省と文科省が背後にいるとはとても信じられないような映像にしていただきたいということです。そこは、権丈座長の実力でちょっと予算を取っていただいて、何も一流の監督・俳優が出てくる必要はないのですけれども、センスの問題だと思いますね。画面が始まった瞬間、学生が目をそらしてしまうようなものになるのか、それとも、えっ、これ、何なのという感じで身を乗り出すものになるか。例えば宮台委員が合格印を押すような中身にするというのが決定的に重要だと思うので、ここは下手をすると逆効果になってしまうことも含めて、重要なポイントだと思います。
 位置づけの点だけ確認したい。

○福本参事官 幾つか御意見、いただきました。
 直近の御質問で映像教材ですけれども、今回、現場の先生方、あるいはやっていただきました事業者の方々のアンケートをして、映像教材というのは、先ほどもありましたけれども、生徒たちが食いついてくるかどうかというのが大事。私も幾つか実施校を見学しましたが、先生が自分の事例、家族の話を引き合いに出されていた。そういうところが必要なのじゃないか。ただ、これは私が見たのは、先生が自分の事例をおっしゃっていましたけれども、それをすべての先生に期待しても難いかもしれないし、ぴったり来るものがないかもしれない。
 かといって、これもひょっとしたらできるのかなと思いながら、難しいかもしれないと思って映像ということにしたのですけれども、例えば教室にいる生徒の家庭のものを引き出して、事例を出させるということになれば、自分の仲間の家庭で起こった出来事なので、食いつきがあるかもしれないということも考えたのですけれども、これも最近はなかなか難しいかもしれない。
 この映像というのは、ストーリー仕立てで、年金ということであれば、例えばダイニングでおじいちゃんと孫が会話しているところから始まる。預金通帳を見ているところから始まる。年金の振込金額が書いてある。孫が、幾らもらっているのか尋ねる。あるいは、それは誰が負担しているのかという話になって、おじいちゃんが昔の給与明細を見つけた。それは給与額が書いてあって、保険料が幾らと書いてある。このおじいちゃんが生涯負担した保険料額が、自分の年金額になっているのかを試算してみると、どうも合わないらしい。
 そこにおじいちゃんと孫の間のお母さんでもお父さんでもいいですけれども、登場して、今、保険料をどのぐらい払っているかという話になる。おじいちゃんが払っていたときよりは、息子さん、孫にとってみれば父親ですけれども、払っている額が高いという話が話題になる。そうすると、先ほどの誰が負担しているかという話が身近なものとなってあらわれるのではないか。医療の例であれば、交通事故で担ぎ込まれて、実際手術が行われて、支払い請求が来た。実際に負担する額は、医療費総額とは違うらしいとか、そういうストーリー仕立てのものが、最初、導入、イントロダクションとして引きつけるのに役立つのではないかというイメージです。
 これは、先ほど宮本先生がおっしゃいましたが、役人がストーリーを書いてもうまくいかないかもしれませんので、専門の得意な方々に少し考えてもらえればというのが、この映像ということの意味合いです。我々が今、考えている映像というのはそういうものです。
 それから、理念と内容と課題ということを資料に書きました。宮台先生が価値コミットメントとおっしゃった話というのは、実際、この中で言うと、内容というのは制度に近いので、理念か課題に該当すると思いますが、ここは悩ましいと思っています。特に価値コミットメントという中で、この課題という話になりますと、これは行政が抱える課題で、確かに今の教科書に書いてあります。年金制度についての課題、医療・保険制度についての課題。
 ちょっとステレオタイプ的なところがあると同時に、教科書によっては、こうなのかなと思うようなことが書いてあるのもありまして、そこに関しての価値という話は、制度のあり方にかかわる話であり、教育の場でやる話で、難しい点があると思います。
 ちょっと違っているかもしれませんけれども、先生がおっしゃった話で、米国でなぜそうなるのか、わからないところがあるのですけれども、例えば価値コミットメントというところで、米国の大統領なり教育長官が教科書をつくるときに、皆保険制度であるべきかどうかという話が教科書に載せられるかどうかという話になると、あの国に公的教科書があるかどうか、ちょっと知らないのですけれども、多分難しいのではないかという気がします。
 ただ、さっき宮台先生がおっしゃったように、貧困者を助けるという話については、米国民であっても、皆保険をやっている日本より高い支持があるというのはなぜなのか。制度という話になるとコントロヴァーシャルになる面があるにもかかわらず、理念なのですか、そういう面では我々と違うものが出ているのは何なのか。ここは、課題と理念と我々は分けて書いたのですけれども、どこまで、どういうものを書けばいいのかというのは、確かに悩ましいところだと思っています。
 ただ、いずれにしても、そのあたり具体的に我々も考えていきたいし、先生方とも御相談したいということでございます。

○権丈座長 宮台委員。

○宮台委員 例えば福本さんのほうから出していただいた疑問、アメリカも日本も非常にずば抜けて政府が助けるべきではないと考える割合が高いのですが、その背景にある思想や価値が全く違っていて、アメリカは自助、セルフヘルプの伝統がありますので、このセルフヘルプのセルフというのは、多くの場合、家族集団なのですが、自分たちのことは自分たちでちゃんとやるので、やらないやつらが下に落ちていくのは当たり前のことだから、それを助けるべきではないという発想になるのですね。
 ところが、日本の場合はちょっと違っていて、ヨーロッパと比較するとわかることですが、ヨーロッパでは、そしてアメリカでもそうなのですが、貧困の放置が共同体の破壊の問題なのだと理解されているのですね。だから、オバマさんのオバマケアに関するスピーチを見ても、貧困を放置すると、あるいは無保険である方々を放置すると、社会がだめになってしまうのだと訴えるのですね。ところが、日本では、どうしても行政依存的なメンタリティーが支配的であるおかげでといいますか、それが背景にあって、貧困の問題が社会のスポイルというか、社会がだめになっていく問題なのだと理解しておらない。したがって、自分の問題だと理解することもできない状態にあるのだと思います。
 その意味で、この日本のもともとの近代化以降の歴史を背景にした、分厚い、ある種の依存的なメンタリティーをどうにかしないと、実は制度に関する理解がどんなに進んだとしても、そこで出てくる要求がアメリカやヨーロッパとはどうしても違ったものになってしまうという問題があるのではないかと思います。短く。

○権丈座長 どうもありがとうございます。ビデオをつくる予算もないかもしれないぐらいの小さな検討会ですので、余り大きいことはできないのですけれども、今のお話のところは、別紙にある社会保障の理念のところの文言とかを工夫することによって、少しバージョンアップできないか、改善できないかと思うわけですが、このあたりの文言の、これはだめだよというものを言っていただけると助かるのですけれども、いかがでしょうか。

○宮台委員 そのための方向性なのですが、私も皆さんと同じように、免許更新の講習で二十数分の映像を見せられますね。言いにくいことなのですが、私は非常に免停回数が多くて、免停講習でも映像を見せられるのですが、内容の方向性が違うのです。免許更新講習のときの映像は、どちらかというとポジティブな動機づけで、いわば支え合い。自分だけがいい目に遭おうという形では、交通は成り立たないのであるところから始まって、余裕、ゆとり、そうしたものがいかに多くの人を幸いにするのかみたいな感じのものが多いのです。
 免停講習、それも90日免停以降になると、むしろ恐怖主体で、アリの一穴からあなたの幸せな生活は一変して地獄に落ちるというタイプの、かつてのオウム真理教の映像を彷彿させるような恐怖映像が全面に出てくるのです。これは非常に合理的なことで、受け手がどういう映像を見るのかによって、ポジティブなインセンティブ、あるいはネガティブなスレットというか、おどしと、どっちが有効であるのかということは、多分変わってくるのだと思うのですね。
 ですので、最も強烈なのは、もしあなたがこれを放置しておくとあなたの将来には地獄しかないみたいな、それが損得勘定的には最も有効なのですが、それだけだと、今、申しましたように、そういう恐怖の植えつけが必要ではない人のコミットメントを引き出すのには役立たないことがあるので、両面を視界に入れたようなコンセプトの設定が必要だろうと思います。ちょっと恥をさらしました。申し訳ありません。

○権丈座長 どうもありがとうございました。
 先ほどの社会保障の価値コミットメントといいますか、もっと大きな役割を果たしているというところは、例えば社会保障の理念の下のほうに、私だったら、「社会保障制度はその所得再分配機能を通じて対象者個人の生活を守っているだけでなく、経済・社会の活性化にも役立っている」というところに、「安定・活性化」の「安定」という言葉も入れていただければと思うんですね。先ほど宮台委員がおっしゃっていた意味は、活性化だけじゃなくて安定のほうですね。
 こういうところを少し文言として充実していくことによって、核の部分をここに書き込んでおきさえすれば、後は教員の力量次第で、いろいろなところで自由に話をすることができるという、重要な、基本法のようなものになるところだと思います。このあたりを少し御検討いただきたいと同時に、もう話が資料3-2、3-4のところまで行っておりますので、3-2と3-4の教育検討PTも、厚労省とか文科省というところでない教材をつくりたいということで、社会保障を学校で教えている先生の御意見を聞きながらつくっていこうという、結構弱気な姿勢でおりますので、その辺も御検討いただければと思います。
 あと、今までつくってまいりました資料3-3の既存のワークシートというところも公開して、いろいろと御意見を伺って、その意見を伺ったところについては、修正を加えてきましたので、これを公開していただいていいだろうかということも御検討いただければと思います。よろしいでしょうか。お願いします。

○増田委員 皆様の御意見は本当にもっともだと思いながら、今日、お話をお聞きしてきました。そういうことに苦労しているから、これをどうしたらいいのかなと、現場の人間としては思っています。
 アンケートにも私、答えたのですけれども、1つには、私は大変居心地のいい学校におりまして、もう20年もいるのですが、それでも自分のやりたいことができないことはたくさんあります。ですので、私は私立なのですが、公立の学校の先生たちは転勤があったり、新しい環境に入ったり、いろいろなお仲間の中でこういうことに情熱を持ってやっていくためには、周りの方の理解とか厳しい御意見も出てきていましたけれども、私もそう思っていますが、教員自身の資質・力量・価値観みたいなものが、この社会科という教科は非常に大きく反映される教科なのですね。
 私は、この仕事をもう26年もやっているわけですが、最初始めたころと今とでは全然違います。それは、私が学校以外のところでもいろいろなことをしてきたからであって、これが学校現場で長い時間過ごしてきて、あまり外の社会とのかかわりがない方が、こういうものを社会科で教えていくとなったときに、自分の価値観の中での理解で子どもたちに向き合うことが多くなってくると思うのですね。
 ですから、さっき宮台先生も価値コミットメントということをおっしゃっていましたけれども、そのあたりのところでもこの教材を理解していただくのは難しい部分があるとは思っています。それで、先ほど宮本先生もおっしゃっていましたが、教員の個人個人の話をしてしまうとおしまいですから、この会では、それを踏まえた上で最大限効果を上げることが一番の目標だと思っています。
 私がいろいろなお話の中で1つ思っていることは、映像にしろ、外部の講師の方、また学校の先生の中でお話いただくにしても、話として生のノンフィクションがいいと思うのです。フィクションの映像をつくったりしても、それはばれてしまうと思います。これは実際にあったことなのだ。例えばクラスのある家庭でこういう事例があるとか、これは学校のある先生がこういう生活をしているのだとか、自分たちが、ああ、そうだ、自分の身近にこういう人がいるのだと思えるような形での教材づくりというのが、すごく効果があると思うのです。
 前の会議のときに梶ヶ谷先生がおっしゃっていたと思うのですけれども、同僚の先生で介護をしている方がいる。その先生にちょっと来てもらって授業で話をしていただくだけで、すごく効果があることだと思うのです。ですから、実習にしてみても、ある段階をいろいろつくって、その実習先をつくれるのか、それとも学内で調達できるのか、そういうヒントみたいなものを各学校に配ってあげるというのも、1つ実習としてやりやすくなっていく材料といいますか、資料になっていくと思うのです。
 ですから、先ほど皆さんの御報告の中に、実習が難しいとか、施設が遠いとか、いろいろなことが御意見というか、難しかった点としてありましたけれども、それをクリアするために、近づけるためにということで、私、教材検討PTということについて事前に説明は受けたのですけれども、そういう形での工夫も盛り込みながら、これをどうやっていくのかということを考えていけたらと思っています。
 以上です。

○権丈座長 非常に心強い御発言、どうもありがとうございます。
 では、次にPTに参加していただきます梶ヶ谷委員、よろしくお願いします。

○梶ヶ谷委員 梶ヶ谷です。よろしくお願いいたします。
 高校の教育現場で三十年以上教えてきましたけれども、自分としてよかったかなという授業は、1年間で1時間か2時間かなと思っています。今回社会保障についていろいろな方々の授業を参観させていただきました。基本的には講師の先生の力量で授業の良しあしが決まってしまう、何十年も教員をやっていますと、教育実習の生徒の授業などを指導しながら思うのですけれども、授業の最初の数分間で、これはいい授業かどうかそういう判断はできるかなと思います。
 ただ、授業の成否は基本的には教師の教え方によるところが大きいということですけれども、それをカバーするという意味ではどういう方が授業を担当されても、一定のレベルを確保するような教材とか映像教材というのは、特にこの社会保障については必要かなという感じがしております。
 先週、別の会議で小学校、中学校、高校の、どちらかというと年配の先生方とお話をしたのですけれども、定年間際の教員でさえ自分がどういうような社会保障の恩恵に、あるいはどのくらいの年金をもらうか、ほとんどわかっていない。これが社会保障についての多くの教員の現状じゃないかと思います。中には、自分の家族の介護とか、同僚で親しい先生が実際に教員をやめられて年金をもらっているという情報が入る先生などは、それなりに関心があると思いますけれども、会議では10名ほど出席されていましたが、自分の社会保障、年金についての知識は本当に少ない。これが今日の多くの教員の実態なのではないかと思います。
 ですから、社会科の教員もそうなのですけれども、教員自身がわかっていないので、生徒に社会保障や年金を教えること自体が結構無理な話なのですね。社会科・公民科の教員なら当然教科書内容については、それなりに教えられますが。ただ生徒にすこし専門的な質問をされた時に、果たして自分がその生徒に納得してもらえる、理解してもらえるような回答ができるかというと、多分できないのではないかと思います。教員ですから、それなりに説明をするとは思いますけれども、本音を言うと結構悩ましいです。
 このような実情ですから、まず生徒、高校生に勉強させることの前提は、教員に理解してもらうこと、そして教員に社会保障についてもう少し興味・関心を持ってもらう。それがまず第一だろうと思います。そのような前提がないのに、授業をするとか、ホームルームや総合的な学習で社会保障について云々というのは、結構難しいかなと思います。
 そういう意味では、今の内容、学習項目についてですけれども、社会科の教員も、社会保障の内容とか課題については、それなりに教科書内容を把握して、それなりにいろいろな情報や新聞記事なども集めますから授業ができるのですけれども、一番難しいのは、社会保障の必要性、理念の問題、価値の問題をどういうように生徒に考えさせたらいいか、結構悩むのです。若い先生は、ディベートなどで何か課題を考察させるという手法を使われたりすると思うのですけれども、社会保障については、本当に理念などの面ではどのように教えるか考えさせるか社会科の教員も物すごく悩みます。
 もう一つは、どうしても公民の学習内容で考えると、経済の一部分としてのスタンスで財政学習絡みで社会保障を説明するような傾向があるのではないかと思います。この検討会に参加させていただいて、社会保障を経済単元の一つとして捉えて学習することも重要かもしれませんが、社会保障は社会保障で、それなりの柱というか、しっかりとした学習内容の展開が必要なのではないかと思います。
 このようなことから、まずは教員に正確な情報を与えて社会保障に興味を持ってもらうことから始め、実際に生徒に使う教材については、多くの先生方も映像がよいということですので、その映像をうまく、先ほど言ったようにお金をかけていただいて、国がつくったと思えないようなびっくりするような、物すごく画期的なものをつくれば、生徒が「おー」と言って飛びつく。そうなれば、社会保障について、年金についても、たとえ内容がわからなくても半分は成功かなと思います。まずは生徒が興味・関心をもって考えさせるような資料あるいは映像をつくっていただきたい。
 そうすれば、それらの資料や教材が社会科や公民科だけではなくて、例えば学年の行事とか、ロングホームルームとか総合的な学習の時間で使うとか、さまざまな学習場面での活用が可能であるのかなと思います。

○権丈座長 どうもありがとうございました。資料3-4の教材検討PTの中で、映像教材、紙ベースの副教材を考えていく。映像教材を考えていく中で、メンバーとして参加していただく梶ヶ谷委員と増田委員に話を伺いました。
 私は、権丈座長と書いてありますので、多分座っているだけでいいのだと思うのですけれども、このメンバーに現場の先生の意見を反映したり、現場で今回、教育に実際携わられている先生に参加していただいて、この教材を考えていければと思っております。昨年度は蒲田高校にいらっしゃって、この4月から都立国際高校に移られております宮崎先生と、足立新田高校の三野先生にお願いいたしましたら、御内諾を頂けましたので、メンバーとしては私が座って、あと、梶ヶ谷委員、増田委員、そして宮崎先生、三野先生で、この映像教材、紙ベースの教材ということを考えていこうと思うのですけれども、よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○権丈座長 ありがとうございます。
 それと、先ほども言いましたように、別紙のほうの文言というのは、次回あたりには公にすることも考えたいのですけれども、その前に1つ言いたいのです。左側の理念のところで、「社会保障制度は、市場経済では果たせない所得再分配を担っている」。下から3つ目のポチです。うそではないのだけれども、市場経済では果たせない、ある目的を達成するために、その手段として所得再分配を使っているのですね。ここをどう表現すればいいか。
 難しいのですが、所得再分配をやっている。だけれども、これ自体が目的であるわけではなくて、市場経済で達成することができない、ある目的を実現するためには、市場ではできないから、市場外としての所得再分配という手段を使っているという文脈に、何とか工夫して変えて、それを公にすることができればと思うのです。
 それと、先ほどから出ました、ずっとやっております既存のワークシート、資料3の「社会保障って何?」から「年金」のあたりは、まだ公にはしておりませんけれども、この資料も今回をもって公にする許可をいただく形でよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○権丈座長 どうもありがとうございました。
 では、この件に関しましては、そろそろ時間になりますけれども、何か。よろしくお願いいたします。

○前田委員 次へ行く前に一言お願いしたいのですけれども、今、梶ヶ谷先生と増田先生のほうから先生方の現状をいろいろ教えていただきました。3業者からもいろいろ提案いただいていますけれども、社会保障制度の理解は国民的な課題であるということは、もっと大きく言うと国家的な事業だと思うのです。年金保険料の滞納者・未納者がいっぱいふえると、その中で再構築というと、いろいろな制度をつくったり、教育をしたりということになります。
 教育の部分では国民目線、今回は生徒目線で、ぜひわかりやすい教材をつくるという形にしないと、先生方も教えるときに大変苦労されると思いますので、生徒にわかりやすい教材という形で、我々も取り組んでいかなきゃいけないのですが、実際につくるときにもそういう形でやっていただきたいと思っています。
 以上です。

○権丈座長 どうもありがとうございました。先ほどの梶ヶ谷委員のお話を伺いますと、先生にも関心を持ってもらって、先生が興味を持って勉強しようと思ってくれるような教材も考えていかなければならないと思っております。どうもいろいろありがとうございました。
 そろそろ最後の議題に移ろうと思います。事務局のほうから御説明をお願いいたします。

○込山企画官 その前に補足でございます。恐縮でございます。
 今、申し上げた教材検討PTでございますけれども、次回の検討会の前までに、先ほど申し上げた検討項目について御議論いただいて、そこでの一案を次回のこの検討会で御紹介し、また議論していただきたいと思いますので、よろしゅうございますでしょうか。

○権丈座長 わかりました。

○込山企画官 では、次に議題4でございます。「細野先生による年金教材の企画・制作について」でございます。
 これは、冒頭申し上げましたとおり、年金ワークシートにつきまして、一つの成果というか、到達点をいただいたところでございますが、それに加えまして、生徒の皆さんにとってのわかりやすさであったり、また学校の先生にとっての使いやすさという観点で、さらなる工夫ができないかということで、細野先生からいろいろお知恵を頂戴しているところでございます。その点につきまして、先生から御紹介いただければありがたいと思います。

○細野委員 はい。最後ですので、たくさん言いたいことがありますね。まず前田委員がおっしゃったように、この検討会は物すごく大事で、国家プロジェクトの単位でやらなくちゃいけない課題が物すごく多いのです。ただ、多過ぎるからこそ、私は一つひとつのプロジェクトのスピードを早めたいと思っているのです。今、前田委員が、「できるだけ早く、まず先生に興味を持ってもらい、かつ学生にもちゃんと興味を持ってもらえるような教材をつくらなくちゃいけない」といったお話があったのですけれども、それは委員全員が共有できている話だと思いますし、フロアにいらっしゃるメディア関係者の方々もそう思っていらっしゃると思うんです。
 そこで、コンテンツというのは議論していても始まらないので、とりあえず「つくってみました」というのが、このテキストです。後から具体的に説明したいのですけれども、まずは、せっかく本日は、3事業者さんがいらっしゃっていますので、授業の視察の件からコメントしたいと思います。私は視察に2回行ったのですけれども、そこで2つ象徴的な出来事があったので、いろいろな意味で皆さんに考えてみてもらいたいのです。
 まず、先生の質こそが重要といった話がありましたよね。本当にそうだなと思うのです。一つの年金の授業では、最後に時間が少し余ったんです。そこで、先生が生徒に、「何か質問ありますか」といった質疑応答に入ったんです。そこまではいいのですが、その先生が最初に言った言葉が、「難しいことはできるだけ聞かないでくださいね」でした。私、この言葉には、かなり衝撃を受けて、「いや、むしろ逆だろう」と頭のなかでツッコんでしまいました。普通なら「どんな難しいことでも聞いてくださいね。大丈夫です」くらいのスタンスで臨まなくちゃいけないのに、派遣された専門家であるはずの人が、「難しいことはできるだけ聞かないでください」みたいなことを言ってしまうのは致命的で、先生の教える力量は物すごく重要なのだなと。まず、そこが1つ。
 もう一つ、「社会保障教育は根深過ぎるな」と思ったのは、授業が終わった後に僕らと先生との全体懇談会みたいな意見のやりとりの場があったのです。その中で、私は素朴に、「年金を中心に誤解が多過ぎて、どう教育を機能させていけばいいのでしょうか」という、どちらかといえば前向きなつもりで先生に振ってみたのです。そこで返ってきたのが、「我々は国の言いなりにはなりませんよ」という感じのことをボソっと言われたのです。小さな声だったのですが、これも衝撃が走りました。世の中に、「国の言うことは陰謀」みたいなものが渦巻いていて、「押しつける」といったイメージが完全にでき上がってしまっているのです。この2つが、かなり問題の核心を突いている事象だと思うのです。
 そこで、これらの状況を踏まえ、私なりに解決方法をいろいろ考えてみたのですけれども、要は「押しつける教育」であってはいけないのです。現時点でのワークシートは特に間違っていないし、いいのです。けれども、この状態だとわかりにくいから、変な邪心も入ってしまうと思うのです。だから、もっと伝える側が、抜本的に工夫をしなくてはいけないんです。つまり、まずは大人を口説くぐらいの感じで、客観的な事実を与えながら、「普通に理解してみよう。これはこうなるね、わかりますか?」という感じで、大人が、先生がわかるところを目標にすることが、第1ミッションとして、まずあるのだなということを、このモデル授業の視察で私が得た結論です。
 ただ、モデル授業に行って、プラスの話もありました。実際に学生たちと話して、この検討会とか、これからやろうとしていることは物すごく意味があるのだなと思ったのは、子どもの言葉として、「こういう社会に出てから役立つ授業をできるならたくさん受けたい」といった話があったり、何より、学校で取り上げることの重さを彼らは本音で語っていました。つまり、テレビとかで見聞きする断片的な情報じゃなくて、学校で教えられることは、それなりに意味があって大切なことなのだという、学校に対する信頼がある。だから、学校の場で教えるということは、私たちが思っている以上に重要なことなのだなと感じることができたのです。
 そこで、まずは、先生をきちんと前向きに、これだったら教えたいと思うような教材をつくらなくちゃいけないということで、何ができるのだろうかと考えてみたわけです。ただ、アンケートでも出てきていたように、学校側は「2、3コマなら大丈夫」だと言ってくれているのですけれど、とてもじゃないですが、現状のワークシートだと2、3コマの中で教えられない。さらに、3業者さんがおっしゃっていたように、学校というのは年間のスケジュールが事前に決まっているわけです。つまり、そもそもスケジュールが決まっている中で、いきなり「3コマを強引にあけてくれ」というのは、持っていき方としても、やや乱暴なわけです。
 だから、こちらも教材をつくる上で、使いやすいように、とにかくハードルを下げるような努力もしなくちゃいけないと思って、「どうやったら使いやすく、かつハードルを下げられるような教材がつくれるのだろうか」といったときに、キャッチコピーとしては、「1日10分」。それだったら、そんなに重くない、というところから始めたいなと思ったのです。
 以上のような発想のもと、とりあえず2コマで社会保障とか年金がわかるということで、別紙のイラストが入った教材を見てもらいたいのです。まず表紙に書いてある、「10個の『10分間講座』」というキャッチコピーで行きたいなと。それこそ50分の2コマの授業で使ってもらってもいいのですけれども、例えば2コマとるのは大変だとなれば、10分の朝のホームルームで10日間やるだけでも、丸々終わってしまうわけです。それぐらいだったら学校の年間カリキュラムに入り込む余地は十分にあると思うので、切り口としては、とりあえずこういう形で教材を持っていくべきだろうなと考えています。
 具体的に全部で10枚つくって、全体像も考えて、これだったら年金などがきちんと誤解なくわかるなということで、構想はもうあるのですけれども、とりあえず2枚、仮でつくってみました。せっかくなので、最初の1ページ目を簡単にやってみましょうか。Q1、「日本は世界一の長寿国と言われていますけれども、女性の平均寿命は86歳。現在65歳の女性は、その後何年まで平均で生きられるでしょうか」という問題。これは、これまでの年金のワークシートの場合だと、単なる算数問題でした。ところが、この問題は、「平均寿命が86で、現在65だから、差を考えて、あと21年生きるから2の21年が答えですね」と思うのですけれども、これは、引っかけ問題で、違うのです。
 答えは、3の24年なのです。つまり、まずは「平均寿命」と「平均余命」ということが世の中で全然わかっていないので、そこから入りたい。引っかけ問題。大人も先生も含めて、全員が引っかかるような身近な話から入っていく。子どもらは、どういうふうに考えていけばいいのかといったら、そもそも平均寿命がどんどん延びているという話がぴんとこないわけです。そこで、例えば「65歳の定年の女性が90歳まで生きる確率はどのぐらいだと思う?」と、単純に投げかけてみれば、「90歳まではさすがに生きられないんじゃあ」と考えると思うのです。でも、結論を言えば、2人に1人は90歳まで生きてしまうのです。これは、結構、衝撃的な話ですよね。
 これでようやく、自分も90歳とか感覚がつかめてきて、具体例を入れていくわけです。例えば、30年ぐらい前までは100歳を超える人は1,000人もいなかったんですけれども、今では100歳以上の人口が50倍もふえている状況になっているわけです。このように、人はどんどん長生きしていっていることを知った後で、今の高校生の場合は95歳ぐらいまで生きることを、ある程度想定しながら考えていかなくちゃいけない、というところまで、自然に客観的な事実で理解させるわけです。
 その上で、引退したら、とりあえず収入がないということぐらいは高校生でもわかる。そうなっていったときに、単純に95歳まで生きるとしたら、生活費は平均でどのぐらいかかるのかというところで、3番目のクイズがあるわけですね。それで計算すると、とりあえず8,300万円が単純に必要になるわけです。この段階でようやく、えっ、これはちょっとしゃれにならない。八千何百万円も、とてもじゃないけれども、貯金とかできないというところで、自分の身近な問題意識として、そういう「問い」が出てくるわけです。
 どうしたらいいのだろうと、一瞬不安になるんですけれども、2枚目の、高齢者になったらどう生活していけばいいのかというところで、ここで初めて、「そもそも年金というものがあって」という流れで年金の話を始めていくわけです。つまり、これまでのテキスト案というのは、「最初に年金ありき」で議論が来ていたのですけれども、それが唐突過ぎてイメージが全然わかない現状があったので、まずは本当に身近なところから始めて、1日10分で終わるような形でやっていく。これで10枚やれば、相当なところまで先生も自信を持って教えられるぐらいの形になり、なおかつ、子どもたちも十分おもしろかったと記憶にも残るような授業ができるのではないかと思っています。
 すみません、長くなりました。

○権丈座長 どうもありがとうございました。この取り組みについてと、あと本日の資料の中身について、御意見とか御質問、ございましたらば、よろしくお願いいたします。

○細野委員 ぜひお願いします。

○権丈座長 全体的に今日御意見を伺って、そしてまた修正をして、それでその後に公開するという今までのプロセスを経ていきたいと思います。かなり前に皆さんに御意見を伺って、そして修正して、今日お配りしたものについては、本日をもって公開しようと思うのですけれども、本日新しく配られたものについては、皆さんの御意見を反映させた形で、次回にまた最終的に検討してもらう方向でいこうと思っておりますけれども、よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○権丈座長 ということで、本日のところ、あるいは細野委員のところで、何か。はい、よろしくお願いいたします。

○宮台委員 細野委員のこの教材は非常にすばらしいと思います。理由は、細野委員からも御紹介がありましたけれども、子どもたちの感情の流れに非常に沿っているので、少なくとも入り口としては非常によくできていると思うのですね。こういうすばらしい入り口を用意するという意味で、まずこういう教材、ある種のドリルみたいなものを活用して、子どもたちにある種の動機づけ。これは大変なことになるみたいな、食いつきやすい動機づけなので、むしろいいと思います。
 しかし、その後、どこまで子どもたちを連れていけるのかというところが、先ほどから話題になっているように、梶ヶ谷委員も今おっしゃったように、教員自身がどのぐらい見識やコミットを持っているのかということで変わってくると思うのです。その意味でも、実は教員に対する研修が極めて重要になるのかなという気がいたします。
 先ほど、権丈先生のほうから出ていた、社会保障制度は、市場経済では果たせない所得再分配。実は、市場経済と社会保障の間の関係について、社会の先生を含めて余り御存じないと思うのです。ですので、当たり前の理屈、しかし、すごく大事な理屈を先生に理解していただく必要があるのですね。市場経済というのは、いわゆる価格決定点イコール需給均衡点、つまり需要と供給が均衡するところで価格が決まるのですが、これは必ずパレート最適解と言いまして、ほかの誰かの効用、利益を下げることなしには、満足を下げることなしには、誰の満足も上げることができないという意味で、最も効率的な配分なのです。
 しかし、この最も効率的な配分は、公正な配分とは違うのです。どうして違うかというと、初期手持ち量と言いまして、市場のゲームに参加するときにどれだけのストックを持っているかということによって均衡点が変わってくる。もう一つ、人々がどういう好み、どういう価値を持っているかで均衡点が変わってくる。なおかつ、最初、フェアな、同じ手持ち量から出発しても、市場の帰結でストックに差異が生じる。2番目のゲーム、3番目のゲームと繰り返しているうちに格差が広がっていく可能性が、必ず数学的に存在しているのですね。
 だから、手当てをしなければいけないとなるのです。なぜ手当てをしなければいけないのか。これは理屈がいろいろあるのですけれども、もし経済的な利益という観点から言えば、格差が広がれば社会的リスクを抱える。それは、犯罪の増加、革命の可能性、あるいは人々のモチベーションの喪失、さまざまな問題を考えることができる。だから、投資家、ファンドマネジャーから見た場合、コンセンサスが欠けた社会は長続きしないと思えるのです。だから、手当てをしよう。その手当てをするときに、もう一回初期手持ち量をそろえる方法で手当てすると、これは社会保障になるのですね。
 しかし、その社会保障の財源、これから限りがあるし、政府に頼るのはおかしいというイデオロギーもありますから、それを何とかしようと思う場合には、さっき申し上げた価値コミットメント、つまり人々がもともと持っている好みの構造を変えるしかないのです。例えば、よくありますフェアトレードのような人に優しい商品やサービスを買うことにどれだけ人々が動機づけられるのか。あるいは、企業名は挙げませんけれども、ある企業はとても安い、いい商品を売っているけれども、裏では第三世界にこれだけの負担をかけている。あるいはフードマイルみたいな考え方もあって、非常にエネルギー負荷の高い商売をしている企業。アメリカ、ヨーロッパでは、そういうものを評価するNGOがありますけれどもね。
 そうしたデータをベースにして、人々がどれだけ動かされるのか。それによって人が動かされれば、例えば男女雇用機会均等化あるいは子育て世代に対するケアについて、どれだけ関心を持っている企業かということによって、人々がその企業のサービスや物を買うかどうかに動機づけられる可能性が高まるわけです。つまり、そういう動機づけの構造をいじるというのが、実は価値コミットメントということのポイントなのですね。
 だから、市場のパレート効率性、最適性がフェアであることを意味し続けるために必要なものが、実は社会福祉と、もう一つは価値コミットメント。価値コミットメントの部分をいじらないとする度合いが高ければ高いほど、再配分をしなければいけないという構造になっているのです。ただ、その価値コミットメント自身に政治が介入するところに不遜な響きがあるので、そもそもこういう図式をつくったのがタルコット・パーソンズという人なのですけれども、もともとキリスト教者やさまざまな立場の人から批判されている立場ではあるのですけれどもね。
 今のところ、現代の我々の社会状況では、そういうのんきなことを余り言っていられないことになってきていますので、ありとあらゆる手段で、まず細野委員のつくられたようなもので、どんな感情のフックでもいいから、とにかくばらまいて、何とか社会保障に関心を持ってもらうところから始まって、理想的なゴールはここまでだけれども、そこまでは無理だとしても、最低ここまでというやり方でやるのがいいのではないかと思いました。

○権丈座長 どうもありがとうございました。宮台委員とか細野委員がこの教育検討会、そして教育検討会で目指していることを、ずっといろいろなところで発言していただくだけでも、この会の効果があるのではないかと思いますので、よろしくお願いいたします。
 では、本日はこれで議事が終了いたしました。
 それでは、連絡事項が事務局からありますので、お願いいたします。

○込山企画官 恐れ入ります。次回につきましては、また別途、日程調整表をメールでお送りさせていただきます。引き続き御協力のほど、よろしくお願いいたします。

○権丈座長 では、以上で第7回の検討会を終了とさせていただきたいと思います。本日は、貴重な御意見、本当にありがとうございました。


(了)
<照会先>

政策統括官(社会保障担当)付社会保障担当参事官室

政策第三係: 03(3595)2159

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