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2013年5月9日 第14回シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会 議事録

医薬食品局審査管理課化学物質安全対策室

○日時

平成25年5月9日(木) 13:00~16:00


○場所

中央合同庁舎第5号館6階 共用第8会議室


○議題

・関係省庁、関係団体等のシックハウスに係る取組説明・ヒアリング
・その他

○議事

○事務局 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第14回「シックハウス問題に関する検討会」を開催いたします。
 委員の先生方におかれましては、御多忙のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 本日は中井委員より御欠席の連絡をいただいておりまして、委員総数12名のうち11名の先生に御出席いただいていることを御報告申し上げます。
 本日は関係省庁からも発表を予定しておりまして、国土交通省住宅局住宅生産課の中野様、住宅局建築指導課の渡邉様、文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課の北垣様を予定しております。
 それでは、座長の西川先生、以降の議事進行をよろしくお願いいたします。
○西川座長 まずは事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
○事務局 お手元にございます資料をごらんください。
 一番上に議事次第、座席表、委員名簿。
 資料といたしまして、議事次第の順番どおり資料1「台湾のシックハウス問題の現状」。池田委員からの発表資料です。
 資料2は「シックハウス症候群の病態解明に関する研究成果」。坂部委員からの発表資料です。
 資料3-1「建築基準法におけるシックハウス対策の概要」。国土交通省住宅局建築指導課からの発表資料です。
 資料3-2「シックハウス等に係る性能表示について」。国土交通省住宅局住宅生産課からの発表資料です。
 資料4「健康的な学習環境を確保するために」。文部科学省からの発表資料です。
 参考資料1「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会の開催について(平成24年9月改正)」。
 参考資料2「今後の検討スケジュール」でございます。
 資料の不足等ございましたらお伝えいただきたいと思います。
 以上です。
○西川座長 ありがとうございました。
 それでは、議事(1)関係省庁、関係団体等のシックハウスに係る取組説明・ヒアリングとして、まず台湾のシックハウス問題の現状について池田委員、御説明をお願いします。
○池田委員 御紹介いただきました日本大学の池田でございます。パワーポイントで御説明させていただきます。
 台湾のシックハウス問題の現状などという、ちょっと大仰な名前をつけていますが、これは私と台湾の成功大学の先生を中心とした共同研究の1つで、細々と、特に決まった予算がなくてやっている共同研究の事例報告みたいなものでございます。
 台湾のシックハウス問題への取り組みというか、私が見聞きしているものでは、私は今からほぼ10年前に中日工程技術検討会と呼ばれる、これは台湾が主催して工学の分野の日台の交流をしている会でございます。その会に私はちょうど今から10年ほど前に呼んでいただきまして、当時の日本のシックハウス症候群問題の現状を御紹介いたしました。そのときはちょうど台湾はこの問題の黎明期という感じで、台湾にも日本の建築研究所に相当する研究所がありまして、そこで1人の研究者の方が取り組んでおられて、今、一緒にやっている成功大学の研究室は、まだその問題に取り組む前でした。それからいろいろこの問題の重要さを台湾の方にもわかっていただけるよう、その後10年間一緒に、できる範囲でメールのやりとりとか、たまには行き来するという格好で協力してまいりまして、今日を迎えております。
(PP)
 これがそのときの日中のプロシーリングスです。私は建築研究組というところにいました。同じ組には土木の虫明先生という大変有名な先生も一緒にいたりました。それから電子、機械、工学の先生などもいて、台北にある一番いい円山大飯店で開かれた大変派手な、10年前ですからまだ台湾も日本も景気のいいころだった。まだまだ今から比べればよかったころなのでしょう。大変盛会な会でした。
(PP)
 そういうことを踏まえて台湾では去年11月、その1年前から公布されていた室内空気品質管理法、これは日本風の読み方をしてしまったのですが、そういうものが発行され、施行されるようになってきました。
(PP)
 これがどんなものかというと、これがその重要な部分なのですが、要するに全部で4章24条からなっています。これは漢字なので一生懸命にらんでいると何となくわかるのですけれども、まず定期的に室内の空気室を検査しましょうということがうたってあったり、罰則、罰金までちゃんと書いてありまして、厳密に施行されるとかなり厳しい法律ではないかと思います。
(PP)
 ここの部分を現地の先生に解説してもらったのですが、要するにまずは対象となる人というのは建物の所有者、管理者、使用者、測定する機関が対象です。管理する項目というのは、やることは室内空気質の測定、監視、空気質の維持管理、計画をつくる。そして実際にはかるだけではなくてIAQを改善してくださいということです。対象の場所としては公共の建築物とか密閉あるいは半密閉空間の公共交通機関が対象だと。規制項目としてはCO、CO2、ホルムアルデヒド、TVOC、細菌等々でして、日本の建築物衛生法の項目と重なっているプラス、TVOC、細菌、真菌、PM10とか今、話題のPM2.5なんかも入っているようです。
(PP)
 こういったこの法律というのは、台湾には緑建築9大指標といいますか、日本流に言うにはエコ建築と言うのでしょうか。なぜか日本はエコという言葉を使いますけれども、台湾は英語のグリーンをそのまま緑と訳しております。そういう9個の指標があるそうですが、そのうちの7番目に当たる室内環境指標に相当するそうで、そういうことをやるためには、まずは緑建材をある程度使うようにしなさいとか、下のほうに要するに緑建材というのは総床面積の45%以上にしなければいけないとか、室外空間でも10%程度は緑建材でやらなければいけないというようなことが決められているそうです。
(PP)
 台湾の緑建材というのは4つに分かれているそうでして、1つはこれは我々にも一番関係の深い低放散。化学物質を余り出さない。化学物質だけではなくて石綿とか微生物まで含まれて、そういったものをとにかく出さない建材。それから、地球温暖化とかそういう温室効果抑制というような、いわゆる我々が言うにはエコ建材、エコロジーに配慮した建材。それから、再生建材と、中には基本的な性能がよい建材。そういったものを総称してGreen Building Material、緑建材として分類しているそうです。それでこういうマークがついているということだそうです。
(PP)
 我々に一番関係のありそうな化学物質に関する低放出建材。低逸散健康緑建材と言っていますけれども、日本流に直せば逸散は放散だし、緑はエコだろうと思うのですが、その中で言っているのは、これでホルムアルデヒドということです。何て読むのかわからないのですけれども、それのホルムアルデヒドについては放散量はこういう0.08mg/m2 hrというものです。TVOCについてもありまして、0.19mgということで定義されているということです。
(PP)
 これはもとの表なのですが、これをホルムアルデヒドの放散率で言うと、それでE1、E2、E3という日本の経産省の基準に近いような分類の仕方もしておりまして、TVOC、ホルムアルデヒドともE1ですとかなり厳しくなっているということです。こういうものでラベリングされています。
(PP)
 以上が法律的なことなのですが、次にIAQの現状というか、どんなふうかということなのですけれども、化学物質に関するこれはたしかオフィスビルでの測定値ですが、いろんな場所ではかると、ここが大体0.1ppmという、これは台湾の基準だと思いますけれども、日本より少し緩い。0.08ppmより少し上の、それを超える値が結構報告されているということです。これが2003年に測定されたものです。こちらがホルムアルデヒドで、こちらがたしかTVOCではないか。こちらは微生物の測定、こちらは基準がないので一応そういう測定結果でしたということです。
 台湾のいろんな研究、こういった結果を踏まえて台湾のオフィスビルで実態調査をしたところも、台湾の人はホルムアルデヒドが原因でがんになるリスクが100倍から1,000倍に高まっていると結論づけているそうです。この辺の詳しいことは私にもわからないのですけれども、発がん性についても台湾の研究者の人たちは、そのことに注目している。台湾の研究者によれば、室内の環境は官民問わず、現在IAQに直面していると理解されているそうです。
(PP)
 次に住宅の測定例なのですけれども、日本ですと数千件のデータがあるのですが、台湾はぼちぼちと研究者レベルでやっているようでして、しかし、とんでもなく高い例もあるようでして、これは例1のW宅の場合なのですけれども、すごい値なのです。370とか1,000とか、これがホルムアルデヒドで、TVOCもこのぐらいは日本でもよくあるのですが、下のほうがWHOと言っていますから、日本とかWHOで上のほうが台湾の基準。どちらから見てもかなり高い。窓をあければさすがに低くなるのですが、窓をあけるとこれの23分の1とか13分の1になるということで、あけた場合とあけていない場合とで、窓をあければいいのですけれども、台湾の場合は比較的気候的には亜熱帯ですから、窓を閉め切っていることは少ないようですが、それでも最近では冷暖房がかなり普及していますし、高気密住宅もかなり普及しているようですから、そういうところで閉め切っていくとこういう値になってしまうのではないかと思っています。
(PP)
 これがまた2軒目の例なのですけれども、これも結構高い値を窓閉め状態では示しておりまして、窓をあけるとそれが何分の1かに減るというようなことはわかっているのですが、結構確かにこのままだと先ほど言ったこんなことになってしまうのかなとも思えないではないですけれども、一応そういう住宅の室内の報告例です。
(PP)
 次が建材からのホルムアルデヒド放出量に関する測定結果で、これは田辺先生あたりが見ると余りに簡単に出し過ぎると思われるかもしれませんが、よく使われている柳沢センサーでやっているようです。柳沢センサーというのはパッチのようなものをいろんなところに貼ることによって、例えばここの色が赤く変われば主な発生源で、その変わり具合からどれぐらい出るということも調べられるし、これを空中につるしておいたものの色の変わり具合から大体室内の空気の濃度予測も可能になるという、正確性は欠けるかもしれないですけれども、簡単にある程度のことがわかるというのではかってみた結果で、ちょっとよくわからないのですが、一生懸命見るとこれはどうもパーティクルボードはE2レベルの放散だった。
 これは木地板というのは化粧板みたいで、これが2種類あってE2レベルとE1、かなりのものがあったということです。
 家具だとE3以下といったものもあったというふうにして、家具や何かの放散量のラベリング、ランクづけもやっていますということです。これは社宅でそういうものを調べたという報告例です。
(PP)
 あと、いわゆるQEESI問診票による調査なのですけれども、御存じのようにQEESI問診票というのはミラー先生によって1998年ぐらいにアメリカや何かで使われ始めて、その次の年ぐらいから日本でも使われ始めたものなのですが、台湾でも2007年ぐらいから使われて、2008年には台湾用のカットオフ値も設定して、いろいろ台湾の中での化学物質過敏症の患者さんの動向と室内濃度の関係などを私も一応加えていただいてやりまして、この結果は建築学会の英文誌に投稿して、去年のベストペーパーに選ばれるという栄光に浴しましたけれども、ある程度こういう健康のほうの研究も進んできていますということです。
 民間でのシックハウス問題への取り組みは、これは日本にもシックハウス診断士協会というものがあってやっていたのですけれども、日本ではこのごろは一時ほど派手にはやっていないのですが、それが台湾に進出いたしまして、台湾でも日本のシックハウス診断士に相当する資格の認定を始めまして、それが2007年から始めたわけです。人のシックハウス診断士協会と協力して、台湾の1級建築士の会議で設計事務所をやっている人たちなんかが協力して、台湾の協会をつくって、これが発会式ですけれども、そういうことをやって、シックハウス診断士を台湾に導入したということです。
 そして、今までのところ2007年から今、何とか101年というのは台湾の年号だそうでして、日本の対象に当てるとぴったりなんだそうで、今、日本が大正だとしたら去年が大正101年、ことしは大正102年に当たるそうですけれども、だから同じレベルで書くと1912年までのその間5年ちょっとの間に、今のところ679人の民間の資格を持った人が出ているということで、民間の面からも取り組んでいることを聞きました。
(PP)
 そういうことを踏まえて、実際に予防するために建物を改善した例ということで、いろんな例が、例えばそのためにはCFD解析して卓越風向を考えるとか、建物周辺気流のことを考えるとか、日射の影響を考慮することをCFDで考えてつくってみるということです。計算結果もこういうふうにして設計に生かしている。例えばこれは通風がこうなるであろうということです。日射のパターンはこうなるだろうということをある程度シミュレーションしている。そして、これらは実際に健康住宅という設計例です。そこには再生用のグリーン建材、グリーンマテリアル、高性能のグリーンマテリアル、健康を志向した3つのエコ建材を使って仕上げた例です。どこが具体的にどうなのかわからないのですけれども、こういう低減になっていますということでございます。
 音の問題も考慮しています。というのは、そもそも我が一緒にやった研究室というのは、もともと建築音響の研究室で、東京大学の安岡先生のところで学んだ先生が台湾では一番偉い先生になっておりまして、その先生の結果なので音までちゃんと考慮しているということです。あとは光も、熱も、空気もということです。これは教会での例だということです。内部のインテリア写真。そこについての気流の分布等もシミュレーションしています。
(PP)
 これは中華電信と書いてあるから通信会社ですかね。
(PP)
 これはオーディトリウムですけれども、どこかの大学です。工業大学です。
(PP)
 これは学生のロビーとかサロンでしょうか。そういったようなことをいろいろやっています。
(PP)
 これは市議会の設計に適用された例。
(PP)
 これはオフィスビルのケースなのですが、オフィスビルの場合はこうやってフロアにいろいろな点でモニタリングポイントも設けて、空気の監視をしていると同時に、最後ですが、空調系統にも多分の赤い色をしているこういったところにはモニタリングポイントがあって、この辺の空気のいわゆる建築物衛生法で言うビル管6項目プラスTVOCとかホルムアルデヒドもモニタリングしているということでした。
 まとまりないですけれども、台湾の状況ということでケーススタディでございました。
○西川座長 ありがとうございました。
 ただいまの御説明について、委員の先生方から御質問、コメント等ございますでしょうか。
○角田委員 大変興味深く拝見したのですけれども、なかなか日本限定と言うといろいろ疑問に持たれることがあったのですが、台湾でもあるということで非常におもしろく伺ったのですけれども、住宅のホルムアルデヒドの濃度が相当高いのですが、今、覚えていないのですけれども、日本の許容濃度と比べるとどうでしたか。
○池田委員 物すごく高いです。許容濃度の何倍という、これですね。ここが100ぐらいが日本だとすれば、10倍ですね。
○角田委員 許容濃度はちょっと覚えていないのですけれども、そうとすると許容濃度で加重平均か、あるいはいろいろ出すと思うのですけれども、一般的な、つまりシックハウス症候群ではなくて、ホルムアルデヒドの障害が出てもおかしくないかなと思うのですが、その辺はどうですか。私もデータをよく覚えていないので。
○池田委員 私どもが一緒にやっているのは、我々と同じ建築学科の先生ですので、余り医学的なことはわからないわけで、先ほどQEESIをやっていますけれども、QEESIも医学的判断は日本の医学部の専門家、ホウジョウ先生なのですが、そういう人の御意見を聞きながらやっていることなので、いわゆる医学的な医者による所見というものがまだ出ていなくて、一応カットオフ値も日本のカットオフ値を使って、台湾人と日本人ならアメリカ人よりかは日本人だろうということでやっているというレベルなので、これから台湾の医学関係の人たちとの協力がもっと本格的に進むと、先生が御疑問になっているような点の答えも出てくるかと思います。ほかでやっているのかもしれないですけれども、私が知っている範囲ではまだやっていないようです。
○西川座長 ほかにございますか。坂部先生、どうぞ。
○坂部委員 ということは、医療というところでの対応というのは、ほとんど今、進んでいないということでしょうか。例えばその症状を訴えた方が診てもらうような医療機関であるとか、そういったところというのはいかがなのですか。先生御存じの範囲で。
○池田委員 私が聞いている限りは、まだそういうことまではいっていないようですけれども、この濃度ですときっと将来起こってくるのではないかと思います。恐らくあちらは非常にまさに常夏の国ですから、余り閉め切っていることはないので顕在化していないのかもしれませんが、将来、問題になる可能性が十分あるような恐ろしい濃度ですね。
○西川座長 神野委員、どうぞ。
○神野委員 建材ラベルのTVOCの定義なのですけれども、次のスライドに括弧書きでBTEXと書かれているのは、台湾の定義ではTVOCというのがすなわちベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンの合計値をTVOCとしてあらわしているという理解でよろしいですか。
○池田委員 そこまでは聞いていません。普通の日本のTVOCと同じだと思い込んでいたので、改めて聞いていなかったのですけれども、ここにそう書いてあると、多分そういうことなのだろうと思います。この部分をつくってくれたのは台湾の先生ですので、多分それの御理解でよろしいのではないかと思います。
○神野委員 わかりました。
○西川座長 斎藤委員、どうぞ。
○斎藤委員 台湾のホルムアルデヒドの空気中濃度は100mg/m3という御紹介をいただいたのですが、TVOCについても空気中濃度のそういった基準というのは設けられているのでしょうか。
○池田委員 多分、日本の例えば暫定目標値みたいなものはないと思います。ですから、ここでも日本の暫定目標値がリファーされているという感じです。それらに比べると3倍ぐらい。
○斎藤委員 初めのほうに御紹介いただいた空気質管理法では、罰則があるというお話だったのですけれども、これは具体的に誰に対してどうなった場合に罰則があるというものなのか、もし御存じでしたら教えていただきたい。
○池田委員 これを少し読みますと未改善者と書いてあります。だから環境が悪いのに放置すると罰銭ですか。それが金額まできちんと書いてあって1万元。たしか1台湾ドル3円ぐらいでしょうか。そんなくらいですから大して重くはないかもしれないですけれども、5万円以下の罰銭と書いてありますから、要は対策をとらないで放置すると、それがひどいと罰則があるのではないかと思いますが、ただ、まだこれだけのことをしっかりやるとなったら相当の検査体制がないとできないから、中国でもそうなのですけれども、立派な法律はあるのですが、実際それをちゃんとできるかというと、できないのではないかというのがある感じはします。
○西川座長 ほかによろしいでしょうか。東先生、どうぞ。
○東委員 近畿大学の東でございます。貴重な御発表ありがとうございました。
 コメントと御質問があるのですが、コメントですけれども、先ほど神野先生がおっしゃったTVOCですが、私も少し調べたことがあったのですけれども、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン以外に幾つかありまして、多分10種類ぐらいの合計のTVOCだったかと思います。
 あと、斎藤先生が御質問された室内空気質の基準、ガイドラインですけれども、これも昨年11月の施行のときに幾つかの物質について空気質の基準が出ていたかと思いますので、恐らくそれもあるかと思います。
 質問なのですけれども、QEESIのところでかなりの年数にわたってお調べされたということなのですが、これは例えば日本といいますか、アメリカのミラーさんのカットオフポイントとか、そういう何らかのカットオフポイントで見た場合に、どれぐらいの割合で敏感な方がいたかといった調査結果がもしあれば、お教えいただきたいと思うのですけれども。
○池田委員 何年というか、台湾は1年です。ここから始まったわけで、今、東先生の御質問は調査が終わりまして、今とあるところに投稿中です。ですから今どうだということは言えないのですけれども、大体感じとしては日本人のカットオフ値が台湾人にも使って、アメリカ人だと少し合わないかなという感じの御報告ができるのではないか。アクセプトされればの話です。
○東委員 ありがとうございます。
○西川座長 ほかによろしいでしょうか。ないようですので、どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして厚生労働科学研究より得られたシックハウス症候群の病態解明に関する研究成果を中心として、坂部委員、御説明をお願いいたします。
○坂部委員 東海大学の坂部でございます。よろしくお願いいたします。
 私からは厚生労働科学研究より得られたシックハウスの、特に病態解明に関する研究成果を中心としてお話ししたいと思います。最後のほうの部分に少し個人情報が入っておりますので、当日の発表版ということで後半の本当の最後の4~5枚ですけれども、皆さんのお手元にはないのですが、御用意していただきたいと思います。
(PP)
 シックハウス症候群の病態解析に関する厚生労働科学研究というのは、本格的には平成12年から始まっておりまして、ここに書いてあるようにいろいろ項目を変えながら、一旦平成22年に病態解明に関する研究班は終了したのですけれども、その後、引き続いて主に空気質の解明に関する調査に関する研究班が現在も続いております。クヌギダ先生が研究代表者をされておりますけれども、平成25年、今年度から、交付申請はまだなのですが、地域健康危機管理研究で再び続くことが予定されております。
(PP)
 これも既にいろんなところで出ておりますけれども、シックハウス症候群は広義のシックハウス症候群と狭義、ナローセンスのシックハウス症候群、2つのところで切りかえて考えないといけないということで、広義では在室者の健康を維持するという観点から、問題のある建築物の中において見られる健康障害の総称であるということ。いろんな原因があるということです。狭義の場合は、主として化学物質の関与が想定される臨床症状を呈する非特異的な症状群をナローセンス。いわゆる今、議論しているシックハウス症候群というのは、狭義のシックハウス症候群になろうかと思います。
(PP)
 厚生労働科学研究では、シックハウス症候群を患者さんが来たときに、その患者さんの交通整理をするためにシックハウス症候群の臨床分類を行っております。1型から4型までございますけれども、1型はいわゆる前回も角田先生からあったと思いますが、いわゆる中毒の概念でその後の後遺障害を中心としたもの。それから、2型ですね。3型は主として精神的な関与が強いようなもの。4型というのは主としてアレルギー症状として出て、アレルギー疾患である程度病態が説明できるようなものという形で、1型から4型まで分けております。特に現在も議論しておりますのは、新築とか改築とか改装といった建築物あるいは建築関連物に関係したもの、狭義のものが2型のシックハウス症候群となります。
 これは一応QEESIで40ポイント以上、カットオフポイントはオリジナルのポイントのところで設定しておりますけれども、これが40ポイント以上の場合、化学物質過敏症としてのシックハウス症候群という形で臨床的には患者さんの分類をしています。
(PP)
 これが今、日本衛生学会で出しておりますシックハウス症候群に関する概念ですけれども、今お話ししたように中毒の概念とアレルギーを主体とするもの、2型で代表されるような化学物質プラスいろんな個人的な特性が関与してくるようなもの、こういったものに大きく分けることができるだろうということがございます。
(PP)
 当然、シックハウス症候群は今、ナローセンスでは科学的な要因がストレスとして体に加わって、体に対して影響を及ぼして、いろんなストレインと呼ばれる体の生体応答が起こって、通常多くの方が適用するあるいは純化するのですが、中に適用できない場合に急性、慢性のこういったシックハウス症候群に代表されるような環境起因性健康障害が起きるわけですけれども、当然化学物質だけではなくて生物的な要因あるいは物理的な要因、心理社会的な要因が我々外的因子としては加わっていきますし、内的な因子、体内部の事情としてはいろんな遺伝的な感受性とか栄養状態、生活習慣、こういったものにさらされている時間の長さなど、そういったものに関係してきて、適用できたり破綻が起こったりということがあります。
 一般的な症状の話をしてもあれですので、特に個人の感受性というところで、あるいは内部でこういったストレスが加わったときにどういうことが起こっているだろうかということを、少し分子生物学的な観点から我々はずっと研究班で見ていきました。
(PP)
 これはシックハウス症候群に関連した網羅的遺伝子発現の解析で、つまり実際にシックハウスの症状を出している人たちにどういう遺伝子が動いているか。症状を出していないときと比べてどういう遺伝子が関係しているか見たものです。
(PP)
 患者群は16名で健常者群は13名、男性3名、女性13名です。平均年齢と大体人数もばっちりとはマッチしていませんけれども、こういう形で健常者群と患者群ということで比較しています。
(PP)
 これが大体4万4,000ぐらいの遺伝子の1つずつの発現の状態を見て、これをコンピュータで発現が強い弱いとか、そういった解析をするわけです。
(PP)
 これはシックハウス症候群の01番という方の遺伝子の発現の状態。これは02番という方の遺伝子の発現の状態で、健常者群と比べて遺伝子の発現倍率が2倍以上のものあるいは0.5倍以下減少を示すものを変動遺伝子として一般的な扱い方なのですが、扱って、こちら側がアップレギュレート、遺伝子発現がふえたものです。こちら側が下がったものです。つまり、一般健康人と比べてこの方は463個の遺伝子がアップレギュレート、つまり遺伝子発現がふえて、こちらは428個が減少したと読んでいただければいいと思います。これが01と02で、こういう形でそれぞれ見ていったわけです。
(PP)
 これが1つ例ですが、シックハウス症候群の1の方で体調不良時、症状が発現しているとき、それから、体調が非常に良好なときの遺伝子の発現プロファイルを見たのですけれども、見ていただいてわかるように、このあたりのところが明らかに違ってきていることがわかると思います。つまり症状出現時は症状非出現時のときに比べて、非常に多くの遺伝子がアップレギュレート、遺伝子発現が増強していることがおわかりになるかと思います。
(PP)
 これらを、時間的な関係で全てお話できませんが、半数以上の患者さんでコントロール、つまり健常者群に対して共通してふえる、あるいは減少傾向を示した遺伝子を抽出したところ、4万4,000の中で28の遺伝子を選び出すことができました。
(PP)
 さらに、こういった遺伝子の発現状況について、ここに似たパターンを示す被験者を集めてクラスターと言われる系統図みたいなものをつくって、横方向は28の遺伝子の中で発言状況が似たパターンを示す遺伝子を集めて、Gene Treeを形成させたわけです。またこれも説明していると時間がかかりますので、まとめた言葉の結果で出します。
(PP)
 この28遺伝子のクラスタリング解析をした結果ですけれども、患者群を遺伝子発現が大きく変動した高変動群と、変動が少ない低変動群に今、分割可能であることが示された。これは一言で言えば患者さんというのは大きく2種類の患者さんに、遺伝子発現の方向から見れば分けられるということです。
 2つ目は、患者群で変動する一方で健常者群、コントロールでは変動しない遺伝子群が同一クラスターに属することがわかった。つまり患者に特徴的な遺伝子発現の動きがあるということです。
(PP)
 結論的には、28遺伝子のクラスタリングの中で患者のみで変動を示したのは、ここにあるAMP phosphodiesterase、CD83、NfkB、CXCL2、angiotensin/vasopression receptor、ICAM1、TNFαなどそれぞれあるのですが、unknownというのは遺伝子のどういう機能があるかということがよくわかっていない遺伝子です。この10遺伝子というのが抽出されてきました。
 これをよく見てみると、CD83、NfkB、CXCL2あるいはTNFα、IL-4は全て免疫応答、アレルギーに関係してくるような遺伝子なのです。つまり、やはりこういったシックハウスの症状を出現しやすい人というのは、ベースとして非常にアレルギーを持っている方が非常にリスクが高いのだろうということが、この結果からはある程度推測することができます。ただ、解析した数が非常に限られておりますので、さらに解析の数をふやしていかないと本質的なことはわからないと考えています。
(PP)
 次に、当然こういう症状だけで判断するような病気というのは、なかなか実際に確定診断するのは難しいわけです。ですから遺伝子からこういった疾患感受性遺伝子、つまりシックハウス症候群を呈する患者さんに特徴的なゲノム、つまり生まれつきの化学物質に対する感受性が関係していないだろうかということを調べるために、疾患感受性遺伝子の検索というものも行ってきました。
(PP)
 つまり、遺伝子が違うことによる質の違い、例えば外見とか性格の違いもそうですし、病気のなりやすさの違い、熱が出やすい、出にくい。あるいは薬の効果が効く効かない、お酒に強い弱いもこの中に入ると思います。副作用だけが出てしまうような、こういったいろんな違い。これは多くの場合はもともとのゲノムの遺伝子の構造が違うことによって起こってくることがこれまでわかっています。
(PP)
 1つは、遺伝情報というのは不変でございますので、子供でも大人でも、もともとの生まれつきのゲノムの配列というのは変わらないので、年齢を余り考慮しなくても解析が可能で、データを結合できることが1つあるわけです。
(PP)
 これは既に論文になっているのですが、化学物質の代謝というのはシトクロムP450系という第2相の代謝酵素と呼ばれものと、それに引き続いて第2相の代謝酵素と呼ばれるものがあるのですが、これはまずCYP1A1と呼ばれるもの、第1相のシトクロムP450系の酵素です。薬物代謝酵素です。それから、これはグルタチオン-S-トランスフェラーゼと呼ばれる第2相のグルタチオン抱合に関係するような代謝酵素なのですが、これとシックハウス症候群との関連性を見てみました。
 そうすると、シトクロムP450系、つまり第1相の解毒する酵素、例えば酸化するような酵素というのは、基本的には患者群とコントロール群、患者120、コントロール262と比べて有意差のあるところはなかったのですが、グルタチオン-S-トランスフェラーゼのexon7、実際にこのたんぱく質をコードしているところのexonの7番目のところでT/Cパターンと呼ばれるジェノタイプで、健常者群と比べて0.034ぐらいの有意差が見られたことがわかりました。ジェノタイプというのは要するにお母さん側からと父親側からの半分ずつで二重らせんをつくっている、そのゲノムのタイプということです。
(PP)
 実際、こういったグルタチオン-S-トランスフェラーゼの発現を人で、これはメッセージのレベルですけれども、こうしたメッセンジャーRNAのレベルで完全にこういったアブセント、この酵素が欠落していらっしゃる人がいらっしゃるわけです。
(PP)
 それを全体で見てみると、このグルタチオン-S-トランスフェラーゼというのは3種類あるのですけれども、主に金属の代謝に関係するようなものとかいろいろあるのですが、こうして見るとG507という人はどれも全部ちゃんと発現している。これは2つのバンドで出てきて見えるのですが、こちらのG644の方は全て欠損しているわけです。つまり、患者さんでなくても、健常人でもこういった完全にそろっている人と、完全にどれもそろっていない人がいるということで、化学物質の感受性というのは非常にこういった遺伝的な遺伝子レベルで見た場合に、非常に大きく個人間でばらついていることがわかります。
(PP)
 もう一つ、NTEと呼ばれる神経障害標的エステラーゼという、Neuropathy Target Esteraseという活性があって、これは主に有機リンの化学物質の代謝に関係して、多動児なんかの障害と非常に関連性が示唆されている酵素で、人における活性というのは個人差が6倍近くあると言われて、主としてニューロン、神経細胞の細胞膜と免疫系リンパ球にたくさん含まれているもので、これの重要性を示唆されたのが『nature genetics』にWinrowらが発表して、我々もこれに飛びついたわけですけれども、こうしてシックハウス症候群とNTEの関連性を、患者群とコントロール群で調べていきました。
(PP)
 ずっと非常にたくさんのものを調べていった途中経過で、このexon2あたりで何か関係がありそうだということでいろいろ解析を進めていきましたけれども、最終的にはexon2のジェノタイプでC/Cというパターン、最初こちらがA/cパターンでも有意差があるような結果が出ていたのですが、最終的にC/Cパターンのところで患者群とコントロール群とで変わってくる。いわゆる突然変異ですね。SNPの遺伝子の頻度について調べて、統計学的な有意差を見出しました。つまり患者群とコントロール群では、このNTEと呼ばれる神経障害標的エステラーゼという酵素でどうも違いがありそうだということがわかってきました。
 現在、これのトランスジェニック、遺伝子を改変したネズミを去年我々つくりましたので、これを使ってモデル動物ができましたので、人に直接いろんなことをばく露して見ることはできませんので、モデル動物を使ってやるという研究も今後道が開けています。
(PP)
 実際、これは化学物質過敏症の患者さんも含んでいるのですが、患者群とコントロール群でNTEの活性を調べてみると、どうも患者群が最初は低いので代謝が悪いと思っていたので、実はそうではなくて、こういう患者群では非常に酵素活性が高いために代謝物、それによる二次代謝物が体の中で酸化ストレスを初め、いろいろな悪影響を及ぼしているのだろうということが推測されています。
(PP)
 これがまとめで、細かいところはこちらのEnvironmental Toxicology and Pharmacologyと、それから、つい最近でまだ今、電子でのあれになっていますけれども、Environmental ToxicologyにこのNTEの論文は出ておりますので、読んでいただければと思うのですが、このエクソン2に対してSNPを見出した、突然変異を見出したということと、人のリンパ球でNTEの活性の測定の結果、患者群によって有意に高かったというところが、最終的な結果です。これが1つのまとめとなります。
 あとは、化学物質のばく露と生体応答に関する研究で、実際にその患者さんに微量な化学物質をばく露したときに、今、ここで角田先生と東先生も関係してくださっておりますけれども、化学物質ばく露と心拍変動ということで、実際に自分のうちでVOCのモニタをつけて、ホルター心電図をつけて、これは自律神経の変動を見る検査ですが、自覚症状を記入してもらってという、そういったことをやっています。これは朝8時から夜22時まで。これは主として東大のヤナギサワ先生のときいらした、ミズコシさんがやってくれたものですけれども、これが自律神経の変動を見ています。これがTVOCの濃度の変化量を見ています。これは見ていただいてわかるように、非常に濃度の変化量が大きいところで自律神経の変動が起こっていることがわかると思います。
 これは自覚症状ですけれども、自覚症状の場合は大きく変動したところで自覚症状の記録というのもあるのですが、関係ないところでも起こっておりますので、自覚症状というのは空気の変動、濃度差の変動とマッチはするけれども、しない場合もあるので、やはりこういった形のリアルタイムモニタリングというのが非常に有効であるということがわかります。これはTVOCの濃度と心拍変動というのはある程度相関することがわかります。
(PP)
 そのほかにクリーンルームの中のブース室で化学物資をいろんな濃度で負荷をして、脳の血流量の変動を見るとか、今これをもう少し進化させた形で近畿大学の東先生のほうでやっていただいております。
(PP)
 それから、当初は原始的な袋の中に試薬を落として、かいでもらってガスの吸入負荷試験という、今は倫理的になかなかこういうものも倫理委員会も通らないのですけれども、当初はこういう形での実験と言ったらあれなのですが、研究もしておりました。
(PP)
 あとはこれは東北大学の神経内科との共同研究で、これを少し進化させた形で今、角田先生やってくださっていますけれども、患者さん群と健常者群でトルエンを100ppb負荷したときに、脳のどういうところで血流の変動、つまり脳の活動が活性化するかどうかというのを調べたものです。
 これは標準脳と呼ばれるものにこういったデータを重ね合せたものですけれども、これを見ると健常者群でもいろんなところが動くのですが、唯一の違いというのはここの部分が赤くないですね。こちらは赤いです。これは海馬と呼ばれるところと視床と呼ばれる、いわゆる情動です。感情の中枢とか、あるいは自律神経の中枢のあるところで、やはり患者群で非常に大きく変動が起こるということがわかります。なので、トルエン100ppbというのは恐らくトルエンのにおいとしては自覚できないぐらいの濃度だと思うのですけれども、においに反応しているというよりも物質に反応している可能性が非常に高い結果であります。
(PP)
 あと、子供のシックハウス症候群ということで、これは個人情報保護の関係できょうはあれなのですが、これは1つの例で、東北大学に同じ研究班でいた角田先生、坂総合病院の小児科で、今は開業されておりますけれども、その先生の症例なのですが、こういった防虫シートの防虫畳。こういった中にはいわゆるフェニトロチオン、有機リンが使われていたわけですけれども、こういったものの畳がえをした直後から、2日後からこういった中毒性皮疹と呼ばれるtoxicodermaといいますが、こういう浸潤性紅斑と呼ばれるものが露出部位、つまり服を着ているところは全然大丈夫なのですが、露出しているところでこういう非常に強い中毒性皮疹が出てきて、ある程度これは因果関係がわかったので、畳のあれを除去すれば非常にきれいになおったというドラマチックな症例です。こういったものです。これも手掌部でこういう状況があります。
(PP)
 これも研究班で、少し衝撃的なものなのでここでだけでお見せしますけれども、小児の化学物質と知能指数というところで、一般的な知能指数と、知能指数のほかに言語性の知能指数と言語性IQと動作性IQと呼ばれるものがあるのですが、これも山形大学の教育学部の先生方との共同研究なのですが、言語性IQというのは知識とか算数とかそういったものです。動作性IQというのはパズルを完成させたり、あるものを時系列で並べたり、迷路をスタートからゴールしたり、そういったことが動作性IQとなります。
 これで見ると、A群、B群、おうちの中のTVOCの濃度が平均が3μg/m3以上のところと、B群というのは367です。つまりこれは400以下に、たまたま偶然こうなったのですが、それで見てみるとIQがA群とB群と比べて、TVOCの高いところの群の子のほうがIQが低いです。動作性IQと言語性IQも数値的には低い状況になっております。
 一番の重要なポイントというのはこの次なのですけれども、言語性IQと動作性IQがTVOCが高いところの子供というのは、極端に動作性IQが低くなってしまうことがあります。言語性IQに関しては、それ以上低くはならないのですが、B群の場合はTVOCが400以下のものなのですが、それほど2つには統計学的な有意差は出てこないということで、揮発性有機化合物というのは動作性IQに影響するかどうかということが、この研究班の報告書には出ておりますし、日本語の論文は一部書かれておりますけれども、こういったことがわかっております。
 アメリカなんかでは、こういったことをドリス・ラップさんと呼ばれるシカゴの大学の小児科の准教授の先生だったのですが、impossible childという形で、これなんかこういうクリーニングの液を使う前と使った後の子供に数字を書かせたときに、ばく露した後、こういう字になってしまう。これは明らかにこういう違いが出てきましたよという例を報告されています。つまりこのばく露ということで、子供の何らかの行動に関係があるのではないかということが、今後見ていかないといけないシックスクールと言っていいと思いますが、状況だと思います。
 実際、ランセットに2006年にハーバードのグループが、発達途上にある脳にダメージを及ぼす可能性のある物質として202種類の化学物質をリストアップしておりますので、特に妊婦です。これは胎児に影響があるということ。それから、乳幼児、学童と、特に室内空気質に関係するようなものに関しては、今後よく見ていかなければいけないのかなというのが、最終的なきょうのお話になります。
 以上です。
○西川座長 どうもありがとうございました。
 それでは、委員の方々から御質問、コメント等ございますでしょうか。
○五十嵐委員 大変おもしろい研究発表ありがとうございました。
 資料16ページに心拍変動とTVOC濃度の変化量ということでグラフがあったのですけれども、TVOCの具体的な化学物質はどういったものがあるのでしょうか。
○坂部委員 トルエン換算でされていますので、個々に何がどのくらいかというのは今の情報としてはありません。データを見れば恐らく出ている。ミズコシさんに聞けばわかると思います。
○五十嵐委員 心拍数が変動したときのTVOCの値というのは、患者さん、対象の人がにおいを感じるようなものだったのでしょうか。
○坂部委員 これで見る限りのTVOCの濃度では、においとしては感じていないと思います。これを見ていただいてわかるのですが、濃度が高いというのでも低いのでもなくて、濃度差のあるところで変動するのです。つまり高いところから低いところに移動するというか、空気質が変わっても変動するし、低いところから高いところに行っても変動するということなのです。だからこれは最高でも恐らく400ちょっとぐらいなので、におい云々という問題ではなくて、恐らく生体が我々が自覚できないところでそれを捉えているのかなと思います。
○西川座長 東委員、どうぞ。
○東委員 大変貴重な発表をありがとうございます。
 今の五十嵐先生の御質問と関係するのですけれども、TVOCがかなり急上昇しているピークポイントというのは、居住者の方で一体何があったのか。例えば喫煙をされたとか、何か医薬品のようなもののふたを開けられたとか、そういうような行動行為があったのか。何があったのかというのがわかれば教えていただければと思います。
○坂部委員 少なくとも患者群なので、どちらかと言うと家の中を自分の過ごしやすいようににおいのものは出すとか、ある程度むしろきれいな空気環境にされているはずなのです。なので、全体的には400を超えるような部屋というのはなくて、大体200とか平均すると100とかそのぐらいの比較的空気のきれいな部屋なので、1つ言えるのは濃度の変化が起こったということは、そこで場所を移ったとか、行動の影響というのが心拍変動に影響している可能性ももちろん十分あると思いますので、そのあたりが今後、数をふやして解析しないといけないところだと思います。
○西川座長 ほかによろしいでしょうか。
 では、先に池田先生。
○池田委員 今から10年以上前、私はまだ国立保健医療科学院にいて、その当時の院長が小林秀資先生という小児が専門の先生で、院長研究費でキレやすい子供の原因を探るということで、化学物質が関係あるのではないかということで参加させていただいて、あの当時一生懸命いろいろなところを調べたのですけれども、化学物質の濃度が高いとキレやすい子供ができやすいとか、なりやすいという資料がなかなか出なかったのですけれども、最近はそういうものができてきたと考えてよろしいのでしょうか。
○坂部委員 キレやすいと言うと、またちょっとあれなのですが、少なくとも環境省で始めているエコチルなんかも、そういうことも加味した形でのコホート研究だと思うのですけれども、やはり妊娠中に母親からある一定以上の化学物質の移行を受けた子供が生まれて育ったときに、そういった自閉症だとか、逆に多動症とか、注意欠陥、ADHDと言われるようなものとの関連性があるのではないかというところが、いろんなところで疫学的な調査で出てきているという段階だと思います。
○角田委員 大変おもしろい発表だと思うのですけれども、末梢血を使って遺伝子解析されたというのは、結局、末梢血でやりやすいということだと思うのですが、全身的に同じような発現がほかの組織でも起こっていると考えてよろしいでしょうか。
○坂部委員 NTEに関しては主に神経系と免疫系だけにかなり多く含まれていることがわかっていて、患者さんで神経をとってきて調べるわけにいかないということがあるのと、これを1つの一般的な検査にするということになると、どうしてもやはり採血をしてとるのが一番、患者さんの生体情報をとりやすいことがありますし、同時に血液の中の酵素量も当然はかることができるので、それとの相関性でリンパ球を見るので、なので恐らく先生はリンパ球を調べているから免疫応答に関係する遺伝子が動くのは、NTEだけではなくて当然なるのではないかというつながりもあるのかなと思いました。
○角田委員 オッズ比が90%信頼区間を使っている理由というのは。
○坂部委員 これは調べたあれに、一般的にはこの調べ方をしているのです。この遺伝子の統計では。
○角田委員 95%ではなくて90%を使うということですね。95に使えば違くなるかなと。
○坂部委員 おっしゃるとおりだと思います。
○角田委員 それから、やはりNTE活性を図ると、マン・ホイットニーのUで解析しなければいけないぐらいばらつきが大きくなるわけなので、診断的価値をこれから見出すのは厳しいかなと。有意差は出ると思うので、メカニズムの探求にはいいかと思うのですが、実際の数値の範囲を拝見しても、かなりかぶっていますので、その辺はこれから課題かなという感じがします。
○坂部委員 おっしゃるとおりで、そのあたりは数をふやしてどうなるかというものもあると思いますが、検討していきたいと思います。
○西川座長 東委員、どうぞ。
○東委員 遺伝子の解析のところでの患者群とコントロール群の定義といいますか、患者群はどういった方を選定されるかということをお聞きしたいのですけれども、例えば臨床分類を最初にお示しいただいているのですが、この2類に該当する方になるということでしょうか。
○坂部委員 そうですね。少し前にいただいた血液の方もいらっしゃるのですけれども、その方でもなるべくそのほかの要因あるいは基礎疾患、例えば糖尿病があるとか、そういった方は取り除いています。逆に健常者のほうにそういう不耐性がある方が混じっていらっしゃる可能性はあるかもしれないです。
○東委員 ですから化学物質に非常に過敏な方がこの中に入っていらっしゃるということですか。
○坂部委員 はい。入っていらっしゃると思います。
○東委員 ありがとうございます。
○西川座長 1つ教えてください。
 GSTのところでお示しになったように、遺伝子多型によってシックハウス症候群になりやすい方と、そうでない方があるという捉え方でよろしいでしょうか。
○坂部委員 そこまでは恐らく言えないと思うのですけれども、シックハウス症候群を訴える患者さんの一部に、そういった薬物代謝酵素の酵素活性の違いによって、症状の出やすいリスクのある集団がいらっしゃることは言えるのかなと思います。
○西川座長 ありがとうございます。
 神野委員、どうぞ。
○神野委員 今のお話に関連してなのですけれども、GSTPの多型でヘテロのT/Cの方がオッズレシオが高いという結果になっているかと思うのですが、この場合T/Tは患者さんの中では見つからなかったということなのか、また、T/Cがどういうメカニズムで障害を与えるのか、感受性を高めるのかという、そういうメカニズムについて知見があれば。
○坂部委員 まだそこはわからないです。ですから酵素活性が実際どうなのかというところは、細かくまだ調べておりません。
○西川座長 ほかによろしいでしょうか。吉田委員、どうぞ。
○吉田委員 最後の子供さんに関する発表で、先生は先ほど母体でのばく露ということをおっしゃったのですけれども、調べたお子さんたちの例ですと、家族全員が高濃度ばく露になっている可能性が否定できないというようにもお考えになりますか。
○坂部委員 今エコチルなんかのあれでは臍帯血を調べて、千葉大の森先生なんかの研究では第1子、第2子、第3子、つまり長男、次男だけでも長男が一番たくさん臍帯血の濃度が高くて、二男になるとそれが減って、三男ぐらいになるとかなり少なくなるのです。つまり、最初の妊娠のときに母体のいろんな化合物が、特に脂溶性の化合物が最初の子供に移行してしまうということがあるのです。それは主に有機塩素系の化合物で、室内空気質というよりもどちらかと言うと残留農薬とかそういったもの。あとはダイオキシン類であるとか、そういう結果を出されています。
○西川座長 よろしいでしょうか。
 それでは、少し進行が早めに進んでいますので、続けていきたいと思います。
 次に国土交通省住宅局住宅生産課の中野様より御説明をお願いいたします。
○中野(国土交通省) 私は国土交通省の住宅生産課の中野といいます。よろしくお願いいたします。
 国土交通省からは、私、住宅生産課というところから来ていまして、住宅性能表示制度という制度を担当しておるものでございます。もう一名、指導課というところ、建築基準法の担当と一緒にきょうは来ています。
 資料3-2をごらんいただけますでしょうか。住宅性能表示制度という制度がまずございまして、住宅について?~?で構造、いわゆる耐震とか防犯とか耐久性、省エネなど、10個の分野に分けて住宅の性能を等級を1とか2とか3とか、そういった数字で表記するような住宅性能表示制度というものがございます。
 10個の分野のうちの6個目のところ、空気環境に関することというところで、シックハウスに対する対策がどうとられているかというところを評価する項目がございます。
 具体的には、今となっては大分建築基準法の規制とかぶるところが多いのですけれども、1つはホルムアルデヒド対策ということで、使用される建材がホルムアルデヒド対策がどうなっているかを表示するところと、換気対策ということで換気の性能です。居室の換気と局所換気ということで換気回数を表示させていただくというところと、3つ目が実際の濃度をはかるというところです。これについてはホルムアルデヒドだけではなく、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレンの5つの化学物質の濃度について実測し、その濃度を表示する。大きく分けてホルムアルデヒドと換気と最後実際の濃度の測定。この3点が住宅性能表示制度の項目となっています。
 ただし、3つ目のところだけは選択事項となっておりますので、皆さんが必ずやらなければいけないかというと、そうではなくて任意の制度という形になってございます。
 では、指導課のほうにかわりたいと思います。
○西川座長 それでは、続きまして国土交通省住宅局建設指導課の渡邉様から御説明をお願いいたします。
○渡邉(国土交通省) 建築指導課の渡邉と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 私からはお手元の資料3-1に基づきまして、御説明させていただきたいと思います。
 今ほど住宅性能表示制度の説明があったのですけれども、どちらかと言うと住宅性能表示制度というのはより質の高い建築物、住宅等をやっていくという制度なのですが、建築基準法につきましては御存じのとおり建築物を建てる上での最低の基準ということで、どの建物もこれを満たす必要性があるという基準になってございます。
 その中にシックハウス関連の規制というものが冒頭に表がありますけれども、平成14年7月12日に改正法が公布されまして、翌15年7月1日から施行されているものでございます。
 規制している項目は大きく2項目ございます。?は防蟻剤であるクロルピリホスに関する規制ということで、これを添加した材料の使用を禁止するというのが大項目の1つ目となってございます。
 もう一つ、ホルムアルデヒドに関する規制というものがございます。これはここにありますとおり?~?までの大きく3個の観点からの規制を行っております。
 まず?ですけれども、内装仕上げの制限ということで、居室の種類及び換気回数応じて内装仕上げに関するホルムアルデヒドの発散材料の建材の面積制限を行うものでございます。その下に表がございますけれども、いわゆるフォースターの場合につきましては制限なしで使うことができるというものでございます。スリースターになりますと居室の使用面積が制限されるということで、こうした面積関係での制限を加えているというのが内装制限の仕上げの規制になってございます。
 2点目が換気設備の義務づけということで、ホルムアルデヒドを発散しない場合においても、家具等からの発散があるため原則として全ての建築物に機械換気設備の設置を義務づけるということで設けております。
 3点目が天井裏等の制限ということで、天井裏等につきましては発散の少ない材料を建材とするか、下の表の?建材による措置ということでやるか、気密層、通気止めによる措置ということで、完全に居室と天井裏を区画するという措置を設けるか、あるいは換気設備による措置ということで換気設備を居室に加えて天井裏などにも設置することによって対応するということで、制限をすることで規制をしております。
 これら?~?の措置をもって、基準法の中では規制をしているものでございます。
 簡単ですが、以上となります。
○西川座長 ありがとうございました。
 それでは、委員の方々から御質問、コメント等をお願いいたします。
○田辺委員 早稲田大学の田辺です。
 建築基準法の資料3-1の部分で、実際の世の中では建築に関するものはかなりF
☆☆☆☆が多くなっています。このF☆☆☆☆は世界で非常に厳しい基準だと思うのですが、第12回のときに神野先生から御報告があって、実際に居住している住宅を調べるとホルムアルデヒドの濃度が100μg/m3を超えているのは6%ぐらいあった。実際の居住状態において高いものがあるというのは、後で持ち込まれた家具とか製品とか、そういうものが原因の一部だと思うのですが、国交省としてどの辺までが基準法の責任範囲で、生活の部分に関してはどういうふうに思っていらっしゃるかというのが1点。
 もう一つ、機械換気が義務づけされて、もうすぐ10年ぐらいたちますけれども、どういうふうに使われているかとか、不具合とかフィルター上の問題とか、そういうものに関して何か知見とかそういったことをお調べになっていたら、ぜひ伺いたいと思います。
○渡邉(国土交通省) まず1点目につきましては、建築基準法につきましてはいわゆる建築行為に対して規制をするものになってございますので、どうしても後から設置される家具などに対して、要は建築行為を伴わないものに対して規制するというのは、なかなか難しいのではないかと考えております。
 2点目の機械換気設備の不具合につきましては、こちらにつきましては申しわけないですけれども、我々のほうで調査を実際にしたことがございませんの。
○西川座長 よろしいでしょうか。斎藤先生、どうぞ。
○斎藤委員 東京都の斎藤です。
 最近、シックハウスの御相談をいただいている中で、やはりホルムアルデヒドが原因だなと思われるのは非常に少なくて、ホルムアルデヒドについての対策はかなりなされている印象が非常に強いのですが、ただ、御相談いただいた場合ベッドが問題で、ホルムアルデヒドが高かったというケースは、それはときどきあるのですけれども、ただ、最近遭遇した事例で、これは建材のホルムアルデヒドではないかと思われた事例がございまして、どうも調べていくと、そのお宅のフォースター表示のものなのですけれども、キャッチャー剤が使われていたという建材ではないかということが疑われているのです。
 キャッチャー剤というものは、接着剤の中にホルムアルデヒドを吸収するような薬剤を入れまして、つくって半年から1年ぐらいはホルムアルデヒドが放散しても、その化学物質に吸着されて、建材からは出てこないというもので、ただ、そのキャッチャー剤は全てホルムアルデヒドを吸着してしまいますと、吸着能力がなくなってしまいまして、発生したホルムアルデヒドがどんどん建材から放散するというものが、実は市場にはあることが最近非常に危惧していることなのですけれども、こういうものについての規制などはお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
○渡邉(国土交通省) それはいわゆる建材そのもののフォースターのつけ方の話だと思うのですけれども、その辺になると我々国交省だけではどうこうという話はできないと思いますので、経産省なり関係省庁さんで、あるいはそういう話があるのであれば、その一連の課程の中で考えていくべきことなのかなと思います。
○田辺委員 今このF☆☆☆☆、スリースターのマークをとる方法というのは、JIS(日本工業規格)か農林規格のJASか、国交省の大臣認定の3つのルートでとれるのですけれども、キャチャー剤を用いている場合は、例えばF☆☆☆☆建材に関してはスリースターに塗布したものしか認めていないのです。実はワンランクアップしか大臣認定上は認められていない。ですから幾らキャチャー剤がなくなってもスリースター以上にはならないのです。もちろん、ちゃんとやっていればの話です。
 ただ、キャッチャー剤の中には内添型と言われる塗布されていないものがあります。例えば尿素を過多に入れるとキャッチャー剤効果があるのです。そういう内添型ものに関してはなかなか持続効果の把握が難しいです。塗られたものに関しては持続効果は判定をしているので、それに関してはある程度わかります。物質の反応を利用するように中に混ぜられたものに関しては、今の制度では非常に難しいですね。そういうものがあるのかもしれないと思います。
○西川座長 ありがとうございます。よろしいでしょうか。
 池田委員、どうぞ。
○池田委員 日本大学の池田です。
 ちょっと教えていただきたいのですけれども、いわゆる性能表示制度なのですが、ここに最後のほうに幾つかの化学物質の測定も実施するということで表示する中に、最近、御承知のようにホルムアルデヒドはかなり改善されてきているという報告もあちらこちらありますし、そういう感触があるのですけれども、そのホルムアルデヒドにかわって東北大学のヨシノ先生なんかとも実測した後、話すのですけれども、アセトアルデヒドの指針値超えがよくあることが実感としてあるのですが、アセトアルデヒドがこの中から抜けているというのは、この辺はいろいろいきさつがあったことは私は存じているのですけれども、そのいきさつと同じようないきさつで、アセトアルデヒドがここには入っていないのでしょうか。それとも新しい理由があってアセトアルデヒドが入っていないのでしょうか。
○中野(国土交通省) 恐らく私が漏れ伝え聞いたものと多分、池田先生おっしゃっている理由というのは同じだと思います。以前はアセトアルデヒドも実はこのラインナップに入れていたのです。それが平成16年にWHOの指針値が変更になった際に、こちらのほうもそこから落としたという経緯がございます。現状はそれをまた復活させるという話は、今のところは特に出ていないという現状でございます。
○池田委員 それが御回答ですか。WHOの対応が今回の国土交通省の対応になっている。反映したものであるということでよろしいでしょうか。
○中野(国土交通省) WHOの数字が変わったというところから、うちが落としたというところまでの、そこの細かいいきさつは正直言って私も把握していないところで、それが1つのきっかけだったというふうには聞いております。
○池田委員 そういうことであれば、ちょうど厚生労働省の皆さんがいらっしゃるので、今の国土交通省の方の御回答に対し、何か御意見はございますでしょうか。
○事務局 事実関係として、WHOの室内空気質基準で1ランク下げた扱いになっていることはあるかと思います。そういうこともありますので、最新の状況をまた情報を集めながら、アセトアルデヒドについても現在の指針値がいいのかどうかも、将来的にこの場で御検討いただければと思っております。
○西川座長 東委員、どうぞ。
○東委員 WHOの指針値についてですが、誤解のないようにお願いしておきたいと思うのですけれども、指針値が変更にされたとか、数値が上げられたという事実はございませんので、あくまでWHOのガイドラインとして出されているペーパーの数値と、リスクアセスメントされているバックグラウンドペーパーの値が少し違うという事実関係でありまして、オープンにされている指針値が変更になったとか、数字が50から200に変更されたという事実はありませんので、その辺だけ御理解をよろしくお願いしたいと思います。
○西川座長 ありがとうございます。
 田辺委員、どうぞ。
○田辺委員 先ほど斎藤先生より、もしF☆☆☆☆表示を持っているような建材だったら、教えていただければ少し調べてみることに大変興味があります。国交省大臣認定は実は1回いいと言われるとずっといいのです。1回マークがつけば、その同じものを作る限りはずっといいのです。同じ畑でとれたものはずっといいと評価をしています。かなり製造者を信用するというベースでされているので、その辺は実はマークがついていてもそういうものがあれば、きちんと事実関係を調べてみたいと思います。
 アセトアルデヒドはシックハウス問題に関する本検討会中断前の最後の会のときにかなり議論をしていて、48μ/m3は正解な数字であるということになっています。日本の行政官が出した問い合わせにWHOの担当官の方がプライベートなといいますか、手紙の受け答えをしています。しかし、それはWHOの担当官の方の多分勘違いだと思います。。このシックハウス検討会で示されているガイドラインが本来正しい値だろうと思います。
○西川座長 ありがとうございます。
 神野先生お願いします。
○神野委員 話が変わるのですけれども、私どものほうで化学物質安全対策室からの依頼で全国調査を今、進めておりまして、その解析は今、行っているところなのですが、この検討会で以前いただいた宿題の中の1つに、建築基準法の改正前後でホルムアルデヒド濃度は変わっているのかということで、N数が少ないのですが、今、解析している感じでは冬季のホルムアルデヒドについては有意な低減がみられ、2003年前後でグループ分けして統計解析したときには、有意な違いがあるという結論が得られるのではないかと思っています。その一方で夏場あるいはTVOCに関しては全く有意差が導けない。
 これが何をあらわしているかと申しますと、先ほどのシックハウス対策で御発表いただいた中で、恐らくホルムアルデヒドの放散を低減した建材の仕様というのは非常に低減化に役立ったのだろう。一方で0.5回換気というのは必ずしも先ほど田辺先生もおっしゃったような建材以外の放散も含めて考えると、必ずしも十分な回数になっていないのではないかと感じているのですが、0.5回という当時決められたときの根拠というのは、どういう意義づけで0.5回となったかというのを御存じでしたら教えていただきたい。
○池田委員 そのとき、私は委員だったものなので、そういう意味では余り大した根拠があるとは言い難いかなということはありますが、1つ考えられるのは、デンマークあたりでは0.5回というのがあったという外国の例などを参考にして、これでなければというほどのものはなかったと私は記憶しております。
○神野委員 それで私どもで調査していても、例えば家庭用品とか持ち込み家具といった類の、新たな負荷がもしも室内環境で有機物の負荷として存在するという前提に立つならば、もしかしたらこの0.5回の部分は総負荷を考えた時にも十分な低減効果が得られるような形で、今後見直していただくほうがいい場合もあるのかなと思いますが、その辺はいかがなものなのでしょうか。
○西川座長 ありがとうございます。
 国交省で何か補足はございますか。
○渡邉(国土交通省) 補足はないですけれども、建築基準法というのは全ての建物に適用される最低の基準だという前提がありますので、そうしたものとのバランスを見ながら考えていくべきことだと認識しております。
○西川座長 池田委員、どうぞ。
○池田委員 ちょっと戻るかもしれないですけれども、先ほどの田辺先生の御発言の中に勘違いであるということであったようなのですが、私もそう理解はしているのですけれども、勘違いに基づいて国土交通省がそれを廃止したということであった場合、それでよろしいかということを1つちょっと御意見いただきたいかなと思います。
○西川座長 どうぞ。
○中野(国土交通省) 先ほどの性能表示制度のアセトアルデヒドの件ですか。勘違いというあたりは私も詳細を把握しておりませんので、当初の経緯を調べて対応させていただきたいと思います。
○西川座長 よろしくお願いします。
 田辺委員、どうぞ。
○田辺委員 私の理解では、もちろん指針値となる物質ですけれども、アセトアルデヒドが出る大きな原因が実は木質建材なのです。日本の伝統的な木材に例えばアルコール等を塗るとアセトアルデヒドが実は発生します。第三種換気をして、木質住宅の室内空気を引くような換気をすると、それは濃度が高くなる可能性があるということが1つです。また、日本の伝統的な中のものの住宅とリスクをどう考えるかというのが1つ。それから、この性能表示で行われたバッチ法で測定したアセトアルデヒドが、詳細な方法より少し高く出るというのがわかりまして、ガイドラインの微妙な濃度のところでそれがあったので、大きな観点から見て国交省は性能表示の中から多分アセトアルデヒドを抜かれたのではないかと思います。
 これはどういうふうに厳しく対応するのかどうかというのは、いろんなリスクと便益ともあわせて考える必要があります。TVOCを議論するときもそうですけれども、一部には非常に厳しくしなさいという意見もありますが、暫定目標値になっている大きな理由は木質の建材とか、日本が伝統的に過ごしてきた生活があるわけで、そのためにこれは規制値となっていなくて、暫定目標値になっているということだと思います。
 換気に関しては、これは先ほどおっしゃったように建築基準法は本当に最低限の基準なので、これをつくったときも1年間に100万戸住宅が新築されている中に、ファンを幾つつける気なんだと相当批判をされました。エネルギー消費量もある。その最低限の換気回数が0.5回/hであって、それ以上換気することに関しては何ら禁止していません。住宅メーカーやつくる人が夏場には少し窓をあけて換気をしてくださいとか、こまめに新築時に新しい家具などを買ったときは外で開封してくださいなどと、ライフスタイルの関係をきちんと指摘していけば、2倍のファンの量を日本に入れる必要もないと思います。基準法は入口規制ですので建材を規制して換気を規制してよくしようということです。当時、全ての住宅を厚労省の詳細法で測定したら、どのくらい社会コストがかかるか計算したのですけれども、100億円とかそういうオーダーのお金が実はかかるのです。それとリスクをどうやって判断するかということです。一旦測定を開始し出したものは二度とやめられないですから、こういう性能表示の中で望む人は測定をして、というような制度に落ち着いているのだろうと思います。これはどうお金を使うかとか、どうリスクを解釈していくかということと非常に関係しているのだろうと思います。
○西川座長 貴重な御意見ありがとうございました。よろしいでしょうか。
 それでは、ここで少し休憩をとりたいと思います。10分程度ですから2時45分再開としたいと思います。よろしくお願いいたします。

(休  憩)

○西川座長 文科省がもう少し時間がかかるようですので、その他の議題に入りたいと思います。
 事務局から今後のスケジュール等について説明をお願いします。
○事務局 それでは、参考資料2に今後のスケジュールを提示させていただいてございます。
 今後のスケジュールでございますけれども、今月は5月ということで、シックハウス問題検討会のヒアリング、関係者からの情報提供、意見交換という形で、今回を含めて少なくとも2回はやろうと考えておりまして、次回は月末を準備しております。
 6月以降、こういったヒアリングの結果であるとか、昨年9月に御指摘いただいた宿題等々、私どもで検討できた範囲内のことを提示しながら、そういったものを踏まえて今後の検討の仕方を取りまとめた上で、それらに基づき個々の物質について御検討をお願いしたいと考えております。
 こちらの進め方で特に御意見ございましたらお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
○西川座長 御意見ありましたらお願いします。
○田辺委員 今のところ住宅とか建物とか医学的知見の御発表をいただいておりますけれども、厚労省のシックハウスの指針値には対象を住宅、建築だけではなくて自動車ですとかほかの施設や空間にも対応するということが書かれています。車に対してはこの前、御紹介したようにISOができていたり、自動車の人たちもかなりよく対応されていると思いますし、ぜひ一度そういう車とか移動物とか、そういうもののヒアリングをされてはどうかなと思います。
○事務局 そうしましたら、業界のほうにも働きかけてみまして、スケジューリングのほうも考えてみます。もしかしたらあと2回ではなくて、今日を含めてあと3回やらせていただくかもしれませんが、スケジューリング等を考えてみたいと思います。
 今のところ予定してございます次回なのですが、産総研さん、北大の岸先生等に発表をお願いしております。岸先生のコホート関係はかなり蓄積されたデータを持っていらっしゃるようです。
○西川座長 よろしくお願いします。
 それでは「健康的な学習環境を確保するために」について、文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課の北垣様、御説明をよろしくお願いいたします。
○北垣(文部科学省) ただいま御紹介に預かりました、文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課で、健康教育調査官を務めさせていただいております北垣と申します。本日はよろしくお願いいたします。
 委員会の皆様におかれましては、このような文部科学省の取り組みについて御説明をする機会をいただきまして、本当にありがとうございます。
 それでは、早速ですけれども、化学物質、シックハウス症候群問題に対する文部科学省の取り組みといたしまして「健康的な学習環境を確保するために」ということで御説明をさせていただきたいと思います。
(PP)
 まず文部科学省が所管をしております学校におきましては、児童生徒、子供たちがいかに安全に、もしくは安心をして学習ができるか。教育活動を行うことができるかというふうに考えております。これは全ての国民が一致する考え方であろうと考えております。
 そこで文部科学省としましては、どのように児童生徒、子供たちの安全・安心を確保していくかという観点からから考えますと、まず一義的には施設環境を健康的かつ安全で豊かなものにしていくことが必要であろうと考えております。その中心となる考え方といたしましては、どういう建物を建てるのか、もしくはどういう家具等を学校の中に入れていくのかという設置に関する考え方が必要になってきております。
 もう一つは、建物、施設設備に関しましては経年的な劣化等がございますので、それに対してどういうふうに維持管理していくかという考え。この車の両輪をしっかりと確保していくことが大切だと考えております。
 ここで、まず設置に関しましては文部科学省においては学校施設整備指針、この後、御説明をさせていただきますけれども、学校種、小学校、中学校、高等学校等によって必要な施設設備は変わってきますので、それに対する考え方をお示しさせていただいております。
 施設設備を維持管理するためにはどういうことをしているかと申しますと、学校保健安全法という法律のもとに学校環境衛生基準というものを定めておりまして、これによって維持管理を進めていくという考え方を持っております。
(PP)
 これを化学物質に当てはめていきますと、シックハウス症候群に対する予防対策の考え方ということに尽きるかと思います。皆さん共通の御認識だと思いますけれども、学校内、いろんな施設においてシックハウス症候群等を発生させないためには、学校の施設の新築・改築・改修だけではなくて、学校備品等の購入時に化学物質の放散を限りなく低く抑えていくことが第一義的に大切である。また、学校の環境衛生を維持する観点から、それらをモニタリングしていくことも大切だろうと考えております。
(PP)
 冒頭申し上げました学校施設整備指針について少し御説明をさせていただきます。
 学校施設整備指針というものは、学校の施設を計画及び設計する際の留意事項を取りまとめたものであるということになっております。端的に申しますと、学校教育を進める上で必要な機能を確保するための方策であるとか、考え方を示しているものであると御理解をいただければありがたいと思っております。
(PP)
 これは小学校の施設整備指針の抜粋を少し取ってきたものですけれども、健康に配慮した施設をつくるべきだということになっております。健康に配慮した施設というのはやはり建築基準法であるとか、他の法令等も当然絡んでくるわけですが、学校における考え方といたしましては、建材、家具等が快適性を高め、室内空気を汚染する化学物質の発生がない、もしくは少ない材料を採用することが重要であるという認識を持っております。
 具体的には新築、改築、改修等を行った場合には、養生とか乾燥期間を十分に確保すること。また、室内空気を汚染する化学物質の濃度が基準値以下であることを確認させた上で、建物等の引き渡しを受けてから子供たちが学校生活を送れるようにすることが大切である。まず契約の段階において基準値を下回る、基準値というのは室内指針であるとか、この後、御説明をさせていただく学校環境衛生基準を指すと考えられますが、そういう状態をまず確保することが大切だという認識を持っております。
(PP)
 これらをパンフレット等で御説明をさせていただいておりまして、広くホームページ等にも公表しておりますし、設置者と書かれておりますけれども、教育委員会と学校を運営するような方々に広く周知を図っているということになっております。
(PP)
 次に設置だけではなくて、維持管理をしていくという考え方に基づいております。その点について少し御説明をさせていただきます。
 環境衛生検査というものは、先ほど冒頭に御説明させていただきました学校保健安全法という法律に基づいております。この5条において、こちらに書かれておりますけれども、環境衛生検査は計画を策定し、これらを実施しなければならないと定めておりますので、環境検査というものは法律に基づいて検査をすることになっていると御理解をいただければありがたいと思っております。
 この環境衛生検査はここにいらっしゃる方々全て学校経験者だと思いますが、健康診断がしっかりとやられているのと同じような位置づけにおいて、環境に関しても検査をすることになっていると御理解いただければありがたいと思っております。
(PP)
 ここに書かれております学校環境衛生基準というものはどういうものかということを、もう一度御説明させていただきたいと思います。
 これは学校保健安全法の第6条第1項に書かれておりまして、学校における換気、採光、照明、保温、清潔保持その他環境衛生に係る事項について、児童生徒及び職員の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準を、文部科学大臣自体が定めることになってございます。
(PP)
 この学校保健安全法の環境に関することに関しましては、学校設置者、この設置者というのは教育委員会等になりますけれども、教育委員会等の責務が明確化されているという法律になっております。
 御紹介をさせていただきますと、学校保健安全法の第6条第2項になります。学校の設置者は、環境衛生基準に照らして、その設置する学校の適切な環境衛生の維持に努めなければならないという努力目標が課されていると御理解いただければと思います。
(PP)
 学校の管理者としての校長の責務ということも、この法律の中では明確化されております。
 同じく学校保健安全法の第6条第3項になりますけれども、学校の管理責任者になります校長は、学校環境衛生基準に照らして学校の環境衛生に関し適性を欠く事項があると認めた場合には、遅滞なく、その改善のために必要な措置を講じなさいということになっております。また、当該措置を講じることができないときには、当該学校の設置者に対してその旨を申し出るものとすると書かれております。
 この条文は少し読みにくいところがあるかもしれないですけれども、環境衛生というのはここの場では化学物質についてお話がされておりますが、例えば照度。例えば電球が切れていて室内が暗くなっているということであれば、校長の責務として電灯をかえるということで環境改善が行われることになりますので、校長の責務として遅滞なくその改善措置を講ずることができます。ただ、改築・改修等が必要な事態が生じている場合には校長だけの判断ではできない。もしくは財政的な支援が必要になるということになりますので、これは設置者、教育委員会、自治体等がサポートしていく。それをしっかりと伝えないといけないという法律になっているということになります。
(PP)
 この学校環境衛生基準を解説したマニュアルを文部科学省で作成をしておりまして、これもホームページから見ることができるようになっています。
(PP)
 ここからは化学物質について少し御説明をさせていただきたいと考えております。
 これはこの審議会の中でも何度も出てきているものかと思いますけれども、平成12年の段階で厚生労働省が指針値を取りまとめておりまして、これらの13物質及び揮発性有機化合物の暫定目標値というものが定められております。
(PP)
 学校環境衛生基準における揮発性有機化合物の項目に関しましては、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレンの6物質を測定することになっております。こちらの検査回数の頻度を少し見ていただきたいのですが、ホルムアルデヒド、トルエンに関しましては年1回定期に行うことになっております。キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレンに関しましては、必要と認める場合に年1回測定をすることとなっております。
 なぜこのような切り分けをしているかという御疑問が出るかと思うのですけれども、こちらは文部科学省が厚生労働省の指針値が出たときに、抽出ではございますが、学校での環境を少し調べさせていただいた上で、ホルムアルデヒド、トルエンに関しましては基準値を超える、もしくは基準値に近いような値が出るもので、毎学年定期に測定することが必要であろうと判断をさせていただきました。
 キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレンに関しましては、検査をして基準値を超えることはなかったのですけれども、低い値であっても検出されてしまうことがありましたので、必要と認める場合に関して測定を行っていただきたい。この必要と認める場合というのがわかりにくいと思うのですが、パラジクロロベンゼンを例にとればわかりやすいと思うのですけれども、パラジクロロベンゼンは何に使われるかと申しますと、防臭、防虫剤に使われるということになりますので、現在の学校においてはお手洗い等でパラジクロロベンゼンを使うこともかなり減ってきている。そのような学校でパラジクロロベンゼン自体を測定する必要性はかなり薄いだろうということで、必要に応じて測定をしていただくことになっております。
 揮発性有機化合物の採取の時期なのですけれども、温度の高い時期に行う。これは以前のガイドラインの中にもこのような記載があったのですが、その場合には夏季に行うというふうになっていたのですけれども、北海道等になりますと夏季よりもどちらかというと暖房をがんがんかけているような冬季のほうが、温度が高い時期があるのではないかという御指摘もありますので、温度が高い時期に行うという規定をさせていただいております。
 測定値が著しく基準値を下回る場合には、以後の教室等の環境に変化が認められない限り、次回からの検査を省略することができるという除外規定を設けております。ここで討議されているかと思いますけれども、揮発性有機化合物に関しましてはまず設置の段階で高い値になっていて、換気等を励行することによって徐々に下がってくる。新しい家具等が入ってこない、もしくは学校の環境、周りの環境が変わらない限りはいきなり高い値になることはないであろう。したがって、基準値を著しく下回っている場合が確定できれば、新しい家具等が入らない限りは検査を省略することができるのではないかという判断をしております。
(PP)
 ここで今のことを少し詳しく御説明させていただきます。
 ホルムアルデヒドの測定方法について御説明をさせていただきますと、児童生徒がいない教室において30分間換気の後、5時間密閉をしてから採取をする。夏場に密閉をして、このような密閉空間の中で5時間密閉をすることになっておりますので、揮発性有機化合物の放散が著しく高い最悪条件を考えております。
 ここで採取したサンプルを高速液体クロマトグラフ法で測定する。精度の高い方法で測定することによって、先ほどの述べた著しく低い値というのは基準値の2分の1を文部科学省としては想定をしておりまして、基準値の2分の1になった場合には次回からの測定を省略することできるという規定にしております。
 ここで例えば夏場に5時間密閉をした中で子供たちが学習をするというのはなかなか考えにくいということがありますので、通常の授業が行われている環境下での採取も認めるとしております。通常の授業が行われているというのは、窓をあけていることなどをイメージしていただければありがたいと思っておりますけれども、そのような場合、このような高速液体クロマトグラフ法で測定をして、結果が2分の1を下回ったとしても、次回からの測定を省略することができない。毎年モニタリングを続けていただきたいとお願いをしているところでございます。
 例えば、この採取に関しまして厳密な条件でやったとしても、測定器自体をどうするのかというお話があります。厚生労働省の建築物衛生法においては大臣の告示器、指定器というものがございますけれども、この指定器に関する精度というものに関して、やはり高速液体クロマトグラフ法よりは若干劣るのではないかと文部科学省の委員会の中で判断されましたので、それらに基づいて、これらに関してもこのデータ自体は採用することができるが、例外規定は使うことができないと考えております。
 これも当然のことですけれども、基準値は下回るけれども、基準値の2分の1よりも多い場合に関しましては、もう一度次年次も測定を続けていただきたいというふうに、かなり厳しい測定条件を課していると御理解いただければありがたいと思っております。
(PP)
 学校環境衛生基準に関しましては定期的な検査、先ほど揮発性有機化合物であれば毎学年1回と規定しておりますけれども、臨時の検査というものも課しております。これは先ほどもお伝えをしておりますように、新たな学校備品が搬入される場合に関しましては、学校の環境が変わっている。そこで臨時の検査が必要であろうと考えております。
(PP)
 こちらに学校の新築・改築・改修があったときと書かせていただいておりますけれども、先ほど施設整備指針のときに、まず引き渡しの段階で低減化が図られていることを確認した上で引き渡しをしてくださいとは言っているのですが、引き渡しの時期というのが必ずしも暑い時期とは限らないので、定期検査の項目の時期に来ることになれば、それを臨時検査としてもしていただく。念には念を入れていただくという考え方をとっていると御理解いただければと思っております。
(PP)
 次に、化学物質の健康影響に関しましては、学校の職員は専門家ではございませんので、それらを学校の関係者に周知を図るような資料が必要であろうと文部科学省としては考えておりまして、平成24年1月の段階で学校教職員等もしくは設置者を意識して、健康的な学習環境を維持するためにどのような方策等が必要なのであろうかということを解説させていただいているパンフレットをお配りさせていただいてございます。こちらも文部科学省のホームページで見ることができるようになっております。
(PP)
 作成目的は、シックハウス症候群及びいわゆる化学物質過敏症というのは、学校という環境の中でも起こり得るという大前提に立っております。ただ、特にいわゆる化学物質過敏症に関しましては医学的な見解が必ずしも定まっているわけではない。ただ、そういう過敏症というものが存在するという前提に立って、児童生徒もしくは保護者の方々が化学物質過敏症を疑われるお子様方がいらっしゃいます。その場合、学校に行った場合に学校が化学物質の健康被害に関して理解が乏しいと、なぜ学校に来られないのか、なぜなんだろうというところで、保護者と学校関係者との意思疎通がうまくいかないという場合がございます。それらを少しでも改善できるようにとこの資料を作成させていただいていると御理解をいただければありがたいと思っております。
(PP)
 この資料の全般を少し御説明させていただきますと、まず第1章といたしましてシックハウス症候群及びいわゆる化学物質過敏症について、症状等の解説をさせていただいている。文部科学省に関しましては、健康に関する専門的知識を全て有しているわけではございませんので、厚生労働省が平成12年に開催されたこの委員会の前身になりますけれども、そちらの見解等を解説させていただいていることになります。
 もう一つ、つけ加えさせていただきますと、シックハウス症候群ということになりますと、この委員会では化学物資を中心にお話がされていると思うのですが、シックハウス症候群の基本的な考え方というのは、不適切な建築物の中で起き得る健康障害全般を指している。例えば温熱、湿度もしくは微生物等の影響による健康被害というものも広範囲で拾うことになっているかと思うのですが、この資料に関しまして中心的に考えているのは、化学物質による健康被害を想定していると御理解をいただければありがたいと思ってございます。
 第2章につきましてはシックハウス症候群に対する予防的な考え方。先ほど御説明をさせていただいた建築もしくは家具等を購入するときの留意事項はどういうものがあるのかということと、あと、学校環境衛生基準での管理の方法等を御説明させていただいた上で、あとは日常的にどういうことに留意をしておけばいいのかということを御説明させていただいております。
(PP)
 第3章におきましては、シックハウス症候群が発生をした場合の対策。これも予防的な観点と対策というのは表裏一体の部分がございます。例えばシックハウス症候群を早期発見するというのは予防的な観点がありますけれども、それにはまず校内組織をしっかりとつくっていく。あとは校外組織との連携をしっかりとっていく。この委員会の中でも御説明がありましたが、保健所もしくは環境管理センターみたいなところとの連携をしっかりとっていくことも必要になってきますし、教職員は常に自分の児童生徒たちをしっかりと見ている。これを健康観察という呼び方をさせていただいておりますけれども、日常的に健康観察をする上で化学物質等によって、もしくは具合が悪い子供たちがいた場合には、それが化学物質の影響なのかということを常に頭の隅に置いておいていただきたいということを書かせていただいているということになります。
 次に、シックハウス症候群が不幸にして発生をしてしまった場合には、それはやはり原因究明をしなければいけない。それに対して子どもたちの経過観察等も必要になってきますので、それに対する解説を行っているとともに、大きな重要ポイントといたしましては、学校の管理下においてシックハウス症候群が発生した場合には、災害共済給付の対象となることの周知を図らせていただいております。学校で起きたけがと同じ扱いになっていると御理解をいただけるかと思っております。
 ここからが改築、ほとんど新築に近いような改築をした場合なのですけれども、シックハウス症候群が発生した発生した小学校の事例を少し御紹介させていただいて、この審議会の中でも参考になればありがたいと思っております。
 この小学校というのはすごく小規模校でありまして、児童生徒の数が十数人、20名を切るぐらいの子供たちしかいないような、極小規模の小学校であったと御理解をまずいただきたい。
(PP)
 そこでシックハウス症候群が改築にともなって発生をした。まずは教職員が気分が悪いということを申し出て、その後、児童生徒が何人か気分が悪いということを申し出てきました。
 こういう事態が発生した場合に教育委員会、学校もしくは保護者の方、地域の方々は何をしないといけないかといいますと、まずは児童生徒、教職員等の健康被害の拡大を防止しないといけない。これは当然のことだと思います。これに関しましては新しい施設ができたのですけれども、それが使えないということになりますと、代替施設を確保しないといけないことになります。本件はかなり小規模な学校でしたので、公民館が使えるような形になっていて、それを長期間使わせていただける確約ができたということがありますので、継続して授業を行うことができました。
 あと、健康被害を受けた児童と職員に関して、専門医を紹介して、その専門医の診断のもとに適切な治療を受けていく。その専門医を学校の設置者及び学校側から紹介をするのをしっかりしないといけないということがあります。
(PP)
 次にやらないといけないことは何かといいますと原因究明である。この場合も教育委員会は科学的な知見が全てあるわけではございませんので、環境衛生に関する公的機関の協力を得て原因物質の検査を実施している。申しおくれましたけれども、まずこの新築・改築をした場合に、学校環境衛生基準に基づく臨時検査のような形で、引き渡しの時点で6物質に関してはしっかり検査をされていて、基準値を下回っていることを確認した上で引き渡しを受けていた。その後、シックハウス症候群と疑われるような症状が出てきましたので、まずは厚生労働省が定める13物質についても測定をして、それも基準値を下回っていた。それ以外のどういう検査をしたらいいのかということで環境衛生の衛生管理センターの協力を得て、この13物質以外、実際には76物質を2回と100物質を1回だと理解をしておりますけれども、そのような形で広範囲な物質について検査をしていただきました。
 指針値に示されていない2物質、1-メチル-2-ピロリドンとテキサノールが比較的高濃度。この比較というのは語弊があるかもしれないですけれども、かなり高い値が出たことになっています。ただ、ここには環境衛生の専門家だけではなくて医学の専門家も当然入っておりまして、これらの専門家によると、この物質自体が比較的高濃度であったことは確かであるのですけれども、それが体調不良、シックハウス症候群、化学物質過敏症の原因となったと断定はできない。肯定もできないとおっしゃられておりました。
 このデータからも化学物質で何かが高いということであって、それが即直接的な原因かということは、なかなか原因究明が困難だということを示唆するのではないかと考えております。
(PP)
 次に学校施設、せっかく新しい施設をつくったので、子供たち、地域の方々も期待をする施設ということになりますので、原因究明をして、その原因を取り除いた上で施設を使っていきたいという思いは皆さんおありになります。そのために原因物資をどのように除去するかというと、換気の励行ということが一番になります。ただ、これはいろんな異論があるかとは思いますけれども、この学校に関しましてはベークアウトといいまして、暖房機を連続的に運転させて、室内温度を上昇させた上で建材に含まれている揮発性有機化合物を飛ばしてしまおうということを、かなりの時間をかけてやっていったということがございます。
(PP)
 これらの事案が発生すると、やはりしっかりと情報公開をする。リスクコミュニケーションというのがどうしても大切になると私たちは理解をしております。この情報公開のあり方なのですけれども、学校関係者だけではなくて専門家を交えて、専門家のほうから保護者及び地域住民に対して検査結果の報告は当然なのですが、今後の施設の再開に向けてどういう方策をとっていったらいいのかということが、何度も協議がなされたということになっております。
 この最低条件というものが環境及び医学専門家の提言を踏まえまして、高濃度で検出されました先ほどのテキサノールとピロリドンの2物質の低減化をしっかりと見ていく、モニタリングを続けていくということと、厚生労働省が定めております指針値において暫定値でありますけれども、総合的な化学物質の指標である揮発性有機化合物、TVOCを400μg/m3を下回ることをまず決定をする。ただ、こういう健康被害がある特定の場所で発生をしてしまった場合、それらの低減化が図れたと言っても人間心理としてすぐその場所に戻れるものではございません。段階的な再開を目指していこうという合意がなされたとお伺いをしております。
 実際にこの学校は1年間使うことができなかった。1年後に段階的に使うことが可能になってきたとなっております。これはごく小規模な学校であって、なおかつ公民館という代替施設をすぐ見つけることができた。なおかつ小規模であるであるがためにいろんな融通が利きやすかったということがあります。これを東京もしくは横浜等の大都市における大規模校でこういうことが起きた場合にどうしたらいいのだろう。なおかつ、この場合には専門家のサポートがすぐ得られました。こちらのほうは専門家、環境衛生の部署になりますけれども、そちらが自分たちの研究費からかなり捻出して、いろんな検査をしていただいたということがありますので、いろんなステップ、いろんなサポートを得ることがこの学校に関してはできた。それが一律的にできるかということが文部科学省としても懸念をしておりまして、そういうことを起こさないためにはどうしたらいいのかということを、この審議会の中でも期待をさせていただいています。
(PP)
 第4章になりますけれども、シックハウス症候群の中でも特にいわゆる化学物質過敏症に関する問題というのは、かなり難しい問題がございます。やはり医学的な見地がしっかりと定まっていないこともございますが、それを医学的な見地のバックグラウンドがない、教職員等がすぐに対応できるかというと、なかなか難しい問題がございまして、それを学校全体として何でも一律的に対応するということの難しさも、私は担当として実感をしているところでございます。
 このようないわゆる化学物質過敏症を持たれているお子様、保護者の方は御不安に思わられています。そのような方々がいらっしゃる場合には、まず文部科学省としては子どもたちの学習環境をいかに確保するかということを大前提に考えさせていただいております。
 その重症度によって対応の仕方が違ってくる。それを一律的に決めることはできない。私が対応させていただいている保護者から先週もそういうお電話をいただいたのですけれども、特定の教室に行くと気分が悪くなると言われる方もいらっしゃいますし、その学校がだめでお姉さんが行っていた学校に行ってみたら、そこでは何もなかったと言われる方もいらっしゃるわけです。そういう場合があると、一律的に化学物質を全部下げるということはなかなか難しい問題がございますので、その子に合った対応というものを地域、学校がまず中心に考えることになりますけれども、次に設置者。設置者の対応が難しければ文部科学省、もしくはこのような審議会の中で新しい対応策を御提言いただいたものを、文部科学省としても反映をさせていくという、いろんな情報のやりとりが必要になってくるであろうと考えております。
 化学物質過敏症のある子供たちへの対応に関しましては、文部科学省から通知文を出しておりまして、個別に配慮が必要であろうと考えております。
 以上が文部科学省からの御説明になります。このような審議会において、文部科学省として子供たちの学習環境を確保するためにはどうしたらいいのかということが一番の懸念になっております。
 先ほどのようにシックハウス症候群のようなことが起きてしまった場合の学校の復帰条件を1つとったとしても、なかなか難しい問題があります。東京都の委員から御提言が少し前の委員会の中でもありましたように、総揮発性化合物の量を持ってくるのか、もしくはある程度、今、使われているような揮発性有機化合物を一つ一つに基準値をしっかりと決めていくのかというところに関して、先生方のお力を借りて子供たちが楽しく安全に安心して学校生活が送れるように、御協力をいただければと思っております。
 御清聴どうもありがとうございました。
○西川座長 どうもありがとうございました。
 それでは、委員の先生方から御質問、御意見等ございましたらお願いいたします。
○角田委員 北里大学の角田ですけれども、大変気をつかってつくられているなということがよくわかって、大変興味深くお伺いしました。
 いわゆるシックスクールとかいう報道がされた場合には、ある程度の濃度があって、それが病気に達しないレベルであっても不快感とかでみんなが感じたときに、こういうある程度出た場合の対応だと思うのですけれども、最後に言われたお姉ちゃんの学校なら大丈夫だという例は、何となく適応障害的なところが非常に強いと思うのです。そうするとメンタルヘルス的な対応が個々の場合は、1人出た場合は重要になって、それもシックハウスに含めると、先ほど坂部先生からもありましたように広義のものもありますので、なかなか地域精神保健的なリソースは非常に少ないという問題があるのですが、その辺はいかがでしょうか。
○北垣(文部科学省) おっしゃられるとおりだと思います。いわゆる化学物質過敏症に関しましては医学的な見地というものがまだ定まっていない。ただ、文部科学省といたしましては子どもたちを預かり、子供たちが楽しく学校生活を送れるようにするためにはどういう対策が必要か。化学物質過敏症のような低濃度の揮発性化合物に対しても、健康被害が生じる子供たちがいる可能性があることを否定せずに、ただ、そのような化学物質によって健康被害が生じている可能性があると保護者もしくは子供たちが相談に来た場合には、養護教諭もしくは学校医等がいますので、そのような方々とどういうものが原因なのか、どういう対応をしていったらいいのかということを総合的に判断しながら、個別の対応を考えていくことが大切なのだろうと考えております。
○西川座長 よろしいでしょうか。
 斎藤委員、どうぞ。
○斎藤委員 東京都の斎藤です。
 学校を新築して、引き渡しの際に測定されるのは13物質という理解でよろしいでしょうか。
○北垣(文部科学省) 施設整備指針に関しましては、基準値を下回ることというふうに書いておりまして、学校環境衛生基準を指しているのか、室内整備指針を指しているのかということを明確化しているわけではございません。ただ、一般的に考えれば学校環境衛生基準等を考えることになりますけれども、この施設整備指針の解説をした、先ほど御紹介させていただいたこちらのパンフレットの中にも少しあるのですが、MSDS、今はMDSと言うのでしょうか。いろいろデータシート等を見ていただいた上で、必要な検査を、必要な揮発性有機化合物等を考えていただくことが必要なのではないか。そのためには施行者もしくは設計者の段階から、化学物質による健康被害が生じないような建物の建て方を考えていただくことが必要になってくると考えております。
 したがって、御質問の中で基準値は13物質かというお話になりますと、それはその学校の判断に委ねられていることになるかと思います。
○斎藤委員 一旦シックハウスが学校で起きてしまうと、子供たちへの被害というのはかなり深刻で、それに先生も親も全てかかわる非常に一大事になってしまうので、やはり引き渡しのときに完全に安全なものにしてから引き渡していただきたいというのが、実はシックハウス、シックスクールを子供たちが経験した私たちは非常に強く感じるのですけれども、そういった事故が起こった場合、再開するポイントとしてTVOCが400μg/m3を下回ることというふうに、そういうことをここでおっしゃっていらっしゃるので、ぜひともそれは再開をする際ではなく、引き渡す際にそういうことをぜひとも確認した上で引き渡すようにと、そういう仕様書にするようにという指導をできたらしていただきたい。
 東京都の調布市ですけれども、学校でのシックスクールの件で過敏症になってしまわれたお子さんがいらっしゃいますが、その市の仕様では公共施設については、TVOCが400を必ず下回ることを確認して引き渡しをするということを入れておりますので、ぜひともそういう対応をしていただけると嬉しいということが1つございます。
 それから、いろんなところで実はシックスクールの報道なりがあって、それを拾っていくと全国各地でぽつんぽつんと起きているのですけれども、そういった事例が起きた場合、そこの親御さんたちは自分たちの学校でこういうことが起きている。同じようなことが起きた過去の事例を探して、どう対応していったらいいかを探したいと思った場合、そこの学校のサイトに行ってもなかなかそういう過去のシックスクールへの対応をした経緯、どういう経過をたどって解決をしていったかというところが、なかなか拾えてこないというところがありまして、そのせいでどうしたらいいのだろうという、非常に右往左往することになってしまうのですけれども、できたらそういうシックスクールという、学校におけるシックハウスという事例が起こった場合は、できたら全てを文部科学省のほうに報告していただく。その経緯も逐次報告していただいて、できればデータベース化のような形で記録として残していただきたいと考えるのですが、いかがでしょうか。
○北垣(文部科学省) まず最初の引き渡し時点で400μg/m3以下にすべきということを契約書に書く。これは施設整備指針の中に書くのかという話になるかと思うのですが、先ほど冒頭に御説明させていただきましたように、施設整備指針というのは化学物質だけをターゲットにとっているわけではなくて、子供たちが発達段階に応じてどういうふうな学習環境が適しているのか。例えばオープンなところがいいのかとか、芝生を植えたほうがいいのかということを考え方としてお示ししている。それを法的に全て一律的に縛るものではないということを御理解いただきたいという点と、私たち学校健康教育課は子供たちの健康をいかに保持していくかという観点からすれば、再開基準ではなくて、発生の段階でしっかりと抑えていく。それを規定するのは建築基準法であり、このような審議会の中で最低限どういうことをすれば発生を抑えられるのかということを、先生方に御討議いただいているものだと理解をさせていただいております。こちらは私たちとしては期待をさせていただいています。
 TVOCが400μg/m3が本当にいいのかというのは、田辺先生からも前回お話があったかと思いますが、今、日本の木材を使いましょうというふうな建築方法等の採用を文部科学省としては促しているところでございます。その場合に、TVOCというものが化学物質の総合的な汚染の指標として提示をいただいていることになりますので、健康被害と直結をしてそれをどういうふうな形、斎藤先生からも御指摘がありましたけれども、TVOC自体をどういうふうな測定方法で、どういうふうにするのかということを明確にしないと、それを一律的に施工業者もしくは教育委員会等に還元することが難しいという状況にあるかと思います。
 次の対応策についてですけれども、先ほど申しましたようにシックハウス症候群もしくは化学物質過敏症の事例というものは、重症度というものに関して大きく濃淡があります。学校に来て気分が悪いと言われるお子さんというのは、毎日全国で一学年大体100万人を切るぐらいになっておりますが、小中高等学校合わせても12学年あって1,000万人を超えるようなお子さんが学校にいらっしゃっているわけです。その中で気分が悪いとおっしゃられたお子さんがいらっしゃった場合に、これは化学物質が疑われるということで全てをデータベース化して文科省で取りまとめるというのは膨大な量になりまして、なかなかそれは現実的に困難であろうと考えております。
 したがって、このような冊子を教職員向けに配らせていただくことによって対応策、シックハウス症候群のようなことが起きた場合に何がまず一番最初にしないといけないのか。やはり専門家とコンタクトをとり、学校環境として換気を励行していただくことが一義的に必要なのであろう。そういうことをまずは下支えとしていく。それを地域の保健活動に従事されているよう保健部局であるとか、保健所であるとか、衛生管理の衛生検査センター等のサポートを受けていった上で、そちらのほうから学校をサポートしていただくことが大切になっていくのではないかと考えております。
○西川座長 斎藤先生、よろしいですか。
○斎藤委員 ここに書いてあることがきちんと教育委員会なり校長先生なり、学校を管理する方々がお守りいただいて、十分な知識もお持ちいただいた上で御判断いただけるのであれば、子供たちは恐らく健康に過ごせるのであろうなということを実はお伺いして思ったのですが、やはり学校でそういった新築なり改築の後の子供たちの具合の悪いというようなことが起こってしまいますと、自分の事例で恐縮なのですが、どうしてもなかったことにしてしまおうという方向に教育委員会で方向づけといいますか、いろんなことがありましたので、ぜひとも教育委員会、これは今もあり方については非常に論議されていますけれども、直接かかわる教育委員会はもちろん対策をしなくてはならないのですが、その一段いらっしゃる文科省から、こういうときはこういうふうにしなさいというふうな、ここに書かれているようなきちんとした方向づけをしていただけると、非常に子供たちも安全に過ごせるのではないかという感想を持ちました。
○北垣(文部科学省) 感想に対するお答えになるかどうかわかりませんけれども、学校保健安全法という法律に関しましては、学校保健安全法から平成20年6月18日に改正をされて、21年4月から交付をされております。こちらのほう最初冒頭に御説明をさせていただきました、学校環境衛生基準を文部科学大臣が定めるというのも新しく入ってきた項目でありまして、その6条第2項で設置者の責務ということもしっかりと書かれておりますし、ほかの条文の中ではなかなかないのですが、校長の責務ということも考えております。
 文部科学省としましては、教育委員会の方々の御尽力なしには文部科学行政は進まないということがございます。一方私のほうにはたくさんの教育委員会、保護者の方からお問い合わせが来ます。その場合には法律に基づいているからやるという考えではなくて、子供たちの健康をいかに保護するのか。もしくは子供たちの学習環境をいかに確保するのかという観点から考えた場合、やるべき検査もしくはやるべきことというのはしっかり明確化されているのではないでしょうかというふうにお答えをさせていただいているという現状になります。
 このためには、やはり教育委員会というところは科学的知見をたくさん持っている方々が集まっている場所ではないので、都道府県、自治体等の横の連携。東京都であれば教育委員会の中に環境衛生等に対して専門性のある方を置いていただいたりしているところもありますけれども、環境部局もしくは保険部局との横の連携をしっかりとつくっていただくと、そのことに関しましても設置者に向けてこのような冊子もつくりながら広報、啓発、周知を図らせていただいているというのが現状でございます。
○西川座長 ありがとうございます。
 ほかにございますでしょうか。
○田辺委員 いわゆるシックスクールの問題に関して、今から10年ぐらい前になると思います。私は江東区の元加賀小学校のシックスクールの問題の委員長を区から頼まれてやらせていただきました。そのときの大きな理由は文教施設の標準設計仕様書の中に溶剤型塗料、いわゆるペンキを使うと書いてあって、これは非常に大きな原因ではないかということで、その後、水性の塗料をちゃんと使いなさいとか、施工業者が測定したものが物すごく低くて、これは多分窓をあけてはかっていたのではないかと思われるので、第三者性を持って測定するようにということで局長の通達を出していただいたりしました。
 そのとき感じたのは、私は父兄の方との公開対話に出席しました。30分の約束が3時間ぐらい父兄の方と懇談してよくわかったのですが、この学校の中には毒があるから、それをなくすまでは子供を戻せない。大変よく気持ちはわかって、それでやはり最後解決するときにはTVOCみたいなもので、総量としてないというものをある程度示すことでないとなかなか解決しない。それが多分、斎藤委員のお気持ちではないかと思うのです。
 TVOCについてはこの検討会でよく議論する必要があると思うのですけれども、暫定目標値となっている大きな理由も先ほどの木質の建材とか日本古来のものとか、実はどういう毒性によって成り立っているか完全にわかっていないのです。これはドイツ、ヨーロッパでも汚れの指標と一緒だと。建築物衛生法における二酸化炭素と同じような指標ですよと言っていますので、400μg/m3を多分最初にはかって、この数字だけで善し悪しを判断してまうといろんな問題が逆に起こるというのを御心配になっているのではないかと思うのです。それは文科省というよりもシックハウス検討会できちんと議論を実はしておくべき問題だろうと思います。
 私は実は建築をやっていますので、小学校の建築にもかかわっていのですけれども、この学校だけが唯一でき上がった後にはかるのです。だから仕様規定ではないのでふつうは建築基準法というのは仕様を守ればOKなのですが、できた後に測るのでものすごく怖いです。専門家であっても、建物ができて3月の終わりぐらいに測定して、びくびくしながら指針値を超えたらどうしようと。万が一超えたらそこで工事もとまってしまいますし、場合によっては賠償もとられる可能性があるので、できれば建築から見れば仕様で決めていただいたほうがとても有り難い。その中でTVOCに関しては今の木造とか、しばらく最初の1年ぐらいとか、どうしても高い時期はありますから、それをどうやって下げるかというマニュアルをつくるとか、そういう対応の仕方も1つではあるのかなと思います。
 早稲田大学も学校法人なので、この通達が及ぶので年間実は数千万円ぐらい使って教室を測定しているのです。我々はマニュアルを学校とつくっていまして、学生用の什器などを新しく買ったときは外で開封して、風通しをして入れなさいとか、学校と協力してそういうマニュアルを内部用には実はつくっています。揮発性ですので放散量はそうすれば落ちるものはわかっているのでそういった注意が必要かなと考えます。そうした中で斎藤先生が御指摘された指針値以外の違う物質が出てきているのでぜひ対応する。例えばにおいとか1年ぐらいたって、コンクリートフロアの上にPVCがあるとDHPでジエチルヘキサノールが出て非常ににおうとか、これもアルカリの加水分解の問題があるのですけれども、幾つかの問題もわかっているので、そういうものをつぶして子供にいいものを提供できるといいのではないかと思います。
 横浜の保土ヶ谷高校も私は対策に係わりました。これは天井の屋上防水材が問題で、改修工事をした後に屋上にプライマーという接着剤に近いものを塗るのですけれども、それが下に染みて、下の階で濃度が高くなって、屋外で使われたものが実は室内濃度を上げたという事例です。大分問題はわかってきているのですが、まだまだ実はわからいものもあって、単純にはかって大丈夫というだけではなくて、生活の中での注意というのがマニュアルの中に出てくるといいかなと思います。
○北垣(文部科学省) ありがとうございます。
 田辺先生が御指摘いただいたように、例えば新しい什器もしくは例えば机が入った場合、これはとある大学が新しい施設を建てて、そのときには何もなかったのだけれども、その後、数カ月したら学生の気分が悪くなったという事例がございました。それは何が原因だったかというと机なのです。机からの揮発性有機化合物の放散によって気分が悪くなった。それは養生をしっかりしなかったということになると思います。
 そういうことを教育関係者の方々に周知が徹底されていないという斎藤先生の御指摘がございますが、そういうものを少しでも改善するために、こちら(パンフレット)のほうに先ほど田辺先生から御指摘いただいたような養生をしっかりするようにという話であるとか、あと契約時の話というのは施設整備指針のほうでも書かせていただいているように、やはりその基準値。何を基準値ととるのかということはこのような審議会もしくは専門家からのアドバイスを受けながら、不必要なものを測定する必要はないわけです。例えば新築にパラジクロロベンゼンが本当に必要かと言われると、今の段階では必要ないであろうと判断されると思いますし、例えばほかの物質がMDSによってしっかりとこの物質は溶剤としてたくさん使っているということであれば、そこをターゲットに何かアドバイスをできるような方々。それはやはり教育委員会だけの力ではできないこともございますので、その辺を審議会等に御指摘をしていただき、それは建築基準等にも反映されるべき話であると思いますので、そういうことを国全体として、もしくは国民全体として考えていくことが必要になってくるのではないかと考えております。
○西川座長 神野委員、どうぞ。
○神野委員 国立衛研の神野です。
 コメントですが、先ほど来お話があるTVOCに関して申しますと、どちらかと言うと400という数値を判断することに重きが置かれ過ぎていますが、その一方でTVOCを測定するとどのような化学物質が多く含まれているかという情報が得られるわけで、テキサノールが多いという情報、あるいはそれを通して何らかのシックスクール、シックハウスとの関連があるという前例があれば、TVOCを測定することでヒノキチオールでTVOCが上がる場合、テキサノールで上がる場合といろいろな区別がつく、そういうすばらしい分析法の1つですが、400を上回るか下回るかという議論のためにかえって避けられてしまっているよう感じも受けました。その辺は多分この検討会でTVOCの位置づけとか、あるいはその意義を議論していけたらと思います。
○西川座長 ありがとうございます。
 ほかによろしいでしょうか。それでは、どうもありがとうございました。
 今後のスケジュールについては既にお知らせしましたとおりですけれども、そのほかに何か事務局からございますか。
○事務局 特にはございません。
 先ほどスケジュールの関係で御提案いただいた、自工会等々を追加でヒアリングしたほうがいいのではないかという点につきましては、今後検討させていただきまして、ヒアリングをあと1回予定していたところに、もう2回ぐらいいけるかどうか検討させていただきますので、よろしくお願いいたします。
○西川座長 よろしくお願いいたします。
 それでは、これにて本日の検討会を閉会いたします。本日はお忙しいところ、どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

医薬食品局審査管理課化学物質安全対策室

連絡先: 電話:03-5253-1111 (内線2424)
FAX:03-3593-8913

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