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2013年4月25日 平成25年度第1回医道審議会医師分科会医師臨床研修部会議事録

○日時

平成25年4月25日(木)14:00~16:00


○場所

厚生労働省 専用第23会議室(19階)
東京都千代田区霞ヶ関1-2-2


○議事


平成25年度第1回医道審議会医師分科会医師臨床研修部会

日時 平成25年4月25日(木)
14:00~
場所 厚生労働省専用第23会議室(19階)

○臨床研修指導官 定刻になりましたので、平成25年度第1回医道審議会医師分科会医師臨床研修部会を開催いたします。本日は先生方、御多忙のところ御出席をいただきまして誠にありがとうございます。本日は委員の先生方、皆さま御出席いただいています。また、本日の議題に関連しまして、参考人の先生方にお越しいただいておりますが、後ほど改めて御紹介させていただきます。
 また、文部科学省医学教育課からは渡辺企画官にお越しいただいています。以降の議事運営につきましては、部会長にお願いいたします。桐野先生、よろしくお願いします。
○桐野部会長 それでは、いつものとおり資料の確認からお願いします。
○臨床研修指導官 それではお手元の資料の御確認をお願いします。上から議事次第、委員名簿等の束です。次の束が右肩、ヒアリング資料-1とありますが、産科婦人科学会の資料で、続いてヒアリング資料-3は日本医師会の提出資料です。事務局提出資料1「必要な症例と指導管理体制に関する論点」、1枚紙の事務局提出資料2「各論点に係る参考資料の概要」、横紙の事務局提出資料3「専門医取得者数の推移」、事務局提出資料4「臨床研修制度に関する経緯」、横紙で1枚紙の事務局提出資料5、基本理念の関係、続いて事務局提出資料6「医師臨床研修部会今後のスケジュール(案)」、最後が参考資料3「初期臨床研修制度の評価の在り方に関する研究」です。
 なお、本日のヒアリング、精神科七者懇談会の資料を先生方には追加でお配りしておりまして、残りの参考資料の1と2は委員の先生方には別冊の紙ファイルにとじておりますので、適宜、御参照いただければと思います。不足する資料等がございましたら、事務局にお申し付けください。部会長、引き続きよろしくお願いします。
○桐野部会長 それでは議事に入りたいと思います。本日の議題は、関係団体等からのヒアリング、必要な症例と指導管理体制について、その他となっております。
 議事を始める前に参考人の取扱いということで、御了承いただきたいことがあります。本部会での参考人の御出席については、事前に事務局を通じて部会長の了解を得ることになっており、それに加えて当日の部会において承認を得ることになっています。参考人として御発言をいただきたいと思いますが、本日の会議につきましては、日本小児科学会生涯教育・専門医育成委員会委員長の水谷修紀先生、日本産科婦人科学会理事長の小西郁生先生、精神科七者懇談会精神科卒後研修問題委員会委員長の小島卓也先生、同じく精神科七者懇談会精神科卒後研修問題委員会委員の関健先生、日本医師会副会長の中川俊男先生です。御出席をお認めいただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
                 (異議なし)
○桐野部会長 ありがとうございます。それでは議題1の「関係団体等からのヒアリング」です。まずは日本小児科学会、水谷先生よりお話をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
○水谷参考人 ただいま御紹介にあずかりました小児科学会の水谷です。本日は本部会にお招きいただきありがとうございます。このヒアリングにつきまして、実は御招待の連絡をいただいたのが比較的ショートノウティスでして、私どものほうで十分学会員等に周知する時間的余裕がございませんでした。それと、私の理解としては、今回、ヒアリングの対象になっております内容は初期臨床研修制度と理解しておりますが、それでよろしかったでしょうか。
 そういう意味で少し資料等の準備が間に合っておりませんが、急遽、私どもの学会の理事会のメンバーに対して、今回のヒアリングの案内をさせていただいて、その理事会のメンバーからいくつかの意見を頂戴いたしましたので、これは必ずしも学会全体を代表する意見ではございませんが、取りあえず理事会の先生方の御意見という形でお話をさせていただきたいと思います。
 数年前、この初期臨床研修制度が始まった頃、小児科学会の方では初期臨床研修の期間について、3か月で必修化してほしいという希望を出していたわけですけれども、それがかなわなかったということで、かなり学会員の間に大きな不満が生じておりました。その後、この臨床研修制度の見直しがなされまして、そういう状況の中で一定程度、学会員の受止め方にも落ち着きが出ているものと考えています。ただ、長期的に見て、この制度で本当に、将来的にも小児科のレベルを維持していけるだろうかという不安を持っている方々はたくさんおります。この初期臨床研修制度につきましては、卒前教育との絡みを考えながら模索していきたいという意見がございます。現行の卒後2年を初期臨床研修制度の期間という形で定めて、枠組みが変わらないということであれば、やはり小児科学会の理事のメンバーの意見としては、最低2か月、できれば3か月の必修化を希望したいという意見が強うございます。
 その一方で、もし卒前教育の見直しと一体化する形で、この初期臨床研修制度が見直されるのであれば、卒前教育の中で小児科の臨床実習を大幅に取り込むことによって、いわゆる初期臨床研修制度そのものに関しては、むしろ旧来のストレート方式の形が可能なのではないかという意見がございます。
 先ほど申し上げましたように、飽くまで、これは理事の限られた意見であり、できましたら小児科学会としてはもう少し時間的な余裕をいただいて、学会員にヒアリングを行うなどをした上で、改めてこういった機会を頂戴できればと考えているところです。大まかには以上です。
○桐野部会長 どうもありがとうございました。今、小児科からお考えを述べていただきましたが、まだ十分、検討する余裕がなかったという点については申し訳なく思いますが、今回の見直しについても、いろいろ時間的制限もございますので。
 今の水谷先生のお話に対して何か御質問、御意見等ございますか。小森先生、どうぞ。○小森委員 1点だけ、御無礼ですがお聞きしたいのですが、前回もそうですけれども、弾力化プログラムの採用によりまして必修化から外れた科、あるいは今日もそんなお話もあるかもしれませんけれども、絶対にうちの科は必要なんだと、必修化すべきであるという御主張が大変強いわけですが、そういった中におかれまして小児科学会さまには比較的落ち着きが見られているという表現をなさったわけですけれども、そのことの意味といいますか、もうちょっと掘り下げて、どんな御意見があるのかお聞かせいただければと。
○水谷参考人 なかなか統一的な意見は出しにくいわけですけれども、やはり地域によって受止め方が大分違うということがベースにあろうかと思います。比較的、大都会等におきましては、それなりに満たされた状況が見えているわけですが、地方においては、やはりかなり苦労しているところが多くありまして、そういう状況の中で、地域によって出てくる意見が大分異なってきています。どちらかというと、地域の先生たちが声を上げなくなってきているのが現状ではないかと。この真意は何なのか。満足しているのか、あるいは少しあきらめに近いような形になってきているのか、その辺は私たちも心配をしているところです。その辺について、もう少し掘り下げたヒアリングをさせていただけないかということです。
○小森委員 申し訳ございませんが、もう1点だけよろしゅうございますか。せっかく小児科学会の代表というお立場の方が来ていらっしゃいますので。弾力化プログラムの前後を含めまして、平成22年、平成23年、24年の臨床研修を終えた方に対しまして、資料の中にもありますが、厚生労働省が研修前と後との希望する科の変化について調べておられます。すでに御承知だと思います。小児科を臨床研修前に希望されて、その後に、その減少が最も多いのが一貫して小児科です。それはやはり24時間大変厳しいということかと思いますけれども、そういったことに対して、それを踏まえて現在の臨床研修制度に対する御意見が、もしもございましたら、ちょっとお願いしたいと思います。
○水谷参考人 基本的に小児科を希望する方々というのは、当初から小児科医になろうという考えの方が多いと思います。そういう状況の中で、蓋を開けてみれば、私たちとしては、この制度によって、それほど人数に大きな差は出なかったのではないかと捉えています。そういうこともありまして、制度が悪くて小児科医が減るという考え方は、少し考え直さなければいけない部分であろうかと思います。ただ、小児科にはそれほど興味がなかったけれども小児科医になろうという気持ちを持ってくれる人たちを、どうリクルートしてくるかというところが今後の大きな問題で、そのために、この研修制度を充実させたいと考えています。
○桐野部会長 はい、そのほか何かありませんか。山下先生。
○山下委員 2つのオプションの中の1つで、卒前の教育を充実することによって、かなりその内容を前に持っていきたいと。そうするとストレート入局が可能なのではないかという御議論があったと。全国医学部長病院長会議ではそれを考えていくというか推奨しているわけですけれども、例えば卒前の教育でどういうところを充実すればいいのか、それから国試の問題などもあると思うのですが、その辺に関しての小児科学会の御意見、お考えをちょっとお聞かせください。
○水谷参考人 卒前教育を充実させるためには、やはり大学等教育機関におけるスタッフの充実が欠かせないと思います。やはりそこが1つのポイントになって、卒前教育の充実が可能かどうかが決まってくると思いますので、その部分については是非、配慮していただく必要があるのではないかと考えています。
 国試改革は非常に大きな問題ですが、いわゆる卒業試験との絡みで、できれば国試をもう少し見直していただきたいと考えています。
○桐野部会長 そのほかは、いかがでしょうか。よろしいですか。中島先生、どうぞ。
○中島委員 簡単なのですけれど、先生は現在、どこに御在籍でしょうか。
○水谷参考人 私は東京医科歯科大学の小児科でございます。
○中島委員 分かりました。ありがとうございます。
○水谷参考人 そういう意味では、大都会の小児科ですので、私の意見には多少偏りがあるかもしれません。そういう意味で是非、いろいろな方々に配慮した意見が申し上げられるような、少しチャンスをいただければと思っているところです。
○桐野部会長 もし、御意見や御質問がなければ、続きまして、日本産科婦人科学会の小西先生からお話をいただきたいと思います。
○小西参考人 日本産科婦人科学会の小西です。スライドを使いながらお話をさせていただきます。現在、安倍内閣は順調なスタートを切っておりますけれども、安倍総理は日本を活性化する第三の矢として、女性の役割が大事だと述べています。産婦人科ですので、女性の健康を守る立場からプレゼンさせていただきます。
 医師臨床研修を見直す上で必要なことは何かを考えてみると、開始後ほぼ10年がたとうとしているわけですが、この10年間にどのような変化が起こったかを基盤に考えていくことが非常に大事ではないかと思います。安倍内閣では少子化問題を森まさこ大臣が担当しています。現在、内閣府の少子化対策に、前日本産科婦人科学会理事長の吉村泰典慶應大学教授が参与として招かれていて、参考意見を述べる立場にあります。
 1つの非常に重大な問題は、我が国の少子化がどんどん進行しているということで、これに対する対策が必要であるということです。2つ目は、世界のグローバリゼーションの中で、環境汚染とか感染症、鳥インフルエンザが非常に問題になっていることが挙げられます。3つ目は、2年前に私たちは東日本大震災、原発事故を経験しています。そういう観点から臨床研修を見直していく必要があるのではないかと考えています。
 これらの観点から3つのことをお話させていただきます。1つは少子化問題です。先生方も御存じのように、日本の少子化はどんどん進行していて、現在合計特殊出生率は、一時期1.26まで下がりました。人口のプラスマイナスゼロというのは2.03です。今現在1.39ということで、将来非常に人口が少なくなってくることが予測されております。日本の国力全体が下がってくるという非常に重大な問題であります。この原因は、ひとえに女性の晩婚化、晩産化にあり、平均の初婚年齢を見ると、女性の場合はほぼ29歳以上に達しようというところです。妊娠・出産に最も適した年齢である25~29歳という女性が独身である率は60%を超えています。また、平均の初産年齢も現在は30歳を超えようとしています。
 喫煙も問題です。男性の喫煙率は下がっていますが、若い女性の喫煙率は下がってこない。また、ダイエットということで、20代の女性のやせ過ぎが非常に問題になっています。BMI18.5未満が19%もいます。これらは、ひとえにわが国の女性のライフスタイルの激的な変化によります。1990年代から、女性の社会進出、キャリア形成志向が顕著になっています。女性の社長さんもどんどん出てきている状況です。
 一方では世界経済のグローバリゼーションの中で、家庭の主婦は非常に少なくなっていて、女性も必ず働かないといけない状況が生まれています。これが、我が国の女性の晩婚化・晩産化・少子化の主要な原因です。このような働く女性の晩婚化・晩産化、また社会環境(ストレス、喫煙、食事)が女性の健康に非常に大きな悪影響を与えていて、とりわけ今問題なのは20代、30代の若い女性の健康です。これが、更に妊孕能を低下する要因になっています。これ全体が我が国の少子化に拍車を掛けていますし、更にこれが問題を複雑化させる原因になっていると思います。安倍総理もおっしゃっていますように、これからは女性の時代ですので、この女性の健康を守ることは非常に大事ではないかと思っています。
 そういう中で、プライマリ・ケアで習得すべきコモンディジーズ、頻度の高い疾患である子宮内膜症とか子宮筋腫が非常に増えてきています。これらが、更に不妊の女性を増やしているということです。この罹患率を見ますと非常に高いものがあり、20歳代、30歳代女性の10%に子宮内膜症が存在します。また20歳代、30歳代女性の20%に子宮筋腫が存在しています。月経痛を訴える女性の4分の1に子宮内膜症があって、妊娠しにくい女性の50%に子宮内膜症があります。これを放っておくと、ますますひどくなって、ますます不妊になっていく疾患です。これは非常に重要です。ところが現在は、これを予防すれば進行しなくて済むような薬剤も開発されているのです。
 もう一方で、悪性腫瘍である子宮頸がんの発症も非常に若年化しています。1985年時代は高齢者に多かったわけですが、ずっと若年の方にシフトしています。20~30歳代の女性のがんの中で、子宮頸がんが最も多く、死亡率も増えています。これも、喫緊の課題の1つです。
 まとめ、ますと、20~30歳代の女性のライフスタイルの変化、晩婚化・晩産化の中で、若い女性のコモンディジーズ、非常に重大な疾患である子宮内膜症、子宮筋腫は増えていて、これらは月経困難症、性交痛、過多月経、貧血ということで、若い女性のQOLの低下、妊孕能の低下を招いている。子宮内膜症は、卵巣がんも増やしています。初交年齢の若年化により、あるいは喫煙ということで子宮頸がん・前がん病変が増えています。検診で前がん病変で見付かっても頸部円錐切除しないといけない。妊孕能は温存できますが、早産が増えてきます。子宮頸がん(浸潤がん)で子宮を失う方も増えてきています。ストレスやダイエットということで、月経不順、無月経が増えてくると、子宮内膜症、子宮体がんも増えています。さらに、喫煙というのは卵巣機能に非常に悪影響を及ぼし、早発閉経の人も増えてきます。このように、今の日本で20~30歳代の女性のヘルスケアは喫緊の課題であると言えます。これが、ますます重大になってきていて、必ずプライマリ・ケア研修で修得すべき必須項目になってきたと考えています。
 そこで、産科婦人科学会の提案としては、プライマリ・ケア研修の一番の根本である「一般的な診療において頻繁に関わる疾病に適切に対応できる」という観点から、研修医が女性固有の生理的、肉体的、精神的変化を理解し、とりわけ20~30歳代女性に多い疾患について一定の診療能力を身に付けることは極めて重要であると思っております。産科婦人科学会の提案としては、1年次に産婦人科研修を必ず1か月間回っていただく。これは非常に頻度が高いのでどの研修施設でも必ず経験できる疾患ですので、実際に経験していただいて、こういう疾患があることを知って、いろいろな検査をしたり、産婦人科を紹介するなり、そういう能力を身に付けていただくことが必須ではないかと考えております。
 もう1つは、地球環境の悪化です。世界のグローバリゼーションの中で、地球環境の悪化、大気汚染、新たな生物、ウイルス感染症が注目されています。このような環境変化が次の世代に及ぼす影響は、非常に注目されています。御存じのように、環境省のエコチル調査も行われていて、産婦人科も協力しております。
 この環境が変化する中で、次世代に及ぼす影響を、小児科と一緒に取り組んでいく。小児科学会会長の五十嵐先生と電話で話をしていて、子供の成長を胎児まで遡って、連続的に見てはどうかということを今相談しているところです。
 もう1つ、私たちは震災を経験して何を学んだかということです。私たちは、公益社団法人として、震災直後から日本産科婦人科学会が主導し、被災地に産婦人科医を派遣してまいりました。分かったことは、震災当日でもお産は止まらないということです。必ずどんどん生まれてきます。どんな所でも赤ちゃんは生まれるということです。やはり、プライマリ・ケア研修の中で、分娩を経験することは大事なのではないかと改めて感じました。学会は、原発事故による放射能汚染に対し、最近では鳥インフルエンザに関しても、妊娠中及び授乳中の女性に警告を発しています。妊娠の可能性のある女性に対するプライマリ・ケアの重要性が問われていると思っております。そういうことで、小児科の先生方と協力しながら、そういう胎児の時期から子供の成長を見ていくようなプログラムも必要なのではないかと考えております。
 最後に、産婦人科の状況を少し説明させていただきます。先生方も御存じのように、平成16年度からこの臨床研修が開始され、それまでも産婦人科は結構大変だったのですけれども、一気に崩れたということです。当時、産科医療が全部崩壊する危機があったと思いますが、私たちが非常に頑張って回復してまいりました。当時、基幹病院の先生方がバーンアウトしてどんどん離職しました。福島県立大野病院で産婦人科医が逮捕されるというような不合理なこともありました。奈良県と東京都では、脳出血の妊婦が死亡し、行き先がないということで、救急医療体制が問題になりました。
 そういうことで、2年間の研修が明けた平成18年に産婦人科医の数がグッと減りました。それに対して、私どもは非常に危機感を覚え、リクルートDVDを作製する、サマースクールを開始する、情報誌を発行する、様々な医療体制検討委員会、ハイリスク妊娠・分娩加算、夜間分娩手当、そして産科医療補償制度と様々な努力を重ねてまいりました。一旦減ったのが急上昇してきたのですけれども、ここで2年、産婦人科が選択必修になったことで、またズズッと減ってきている状況です。
 すなわち、医師臨床研修制度は、我が国の医療全体を左右する極めて大きな影響を持っている、パワーを持っているということです。産婦人科の将来にとって非常に重要なことであります。私たちの医療体制検討委員会の検討では、毎年500名の産婦人科医が入ってこないと、将来の周産期は危ないという予測が出ています。私たち自身も努力してまいりますが、是非臨床研修制度の中で、先ほどの若い女性のヘルスケアというのは非常に注目されていますので、1か月間必ず産婦人科を研修してほしいと考えている次第です。我が国の将来を考えると、女性のヘルスケアは非常に重要です。安倍総理がおっしゃっているとおりでありまして、わが国の女性の健康を産婦人科医療・産婦人科研修ということでサポートしていきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。以上です。
○桐野部会長 ただいまの小西先生のお話に対して、御質問や御意見はありますか。
○小森委員 1点教えてください。平成24年度の科研費の事業により、いわゆるB項目の体験症例、満期産、流産、早産が弾力化プログラムによって極端に未経験者が増えた。これは、飽くまで調査ですから、先生は御承知だと思いますけれども、産婦人科に1か月以上行っていない方が、データによるとおよそ3割強と言われています。全国医学部長病院長会議の調査によるエポックによっても、それが下がっています。
 このことによって、ただ1例でも経験するのであれば、先ほどの話とちょっとかぶるのですが、学部内での臨床参加型実習の充実によって、2年ではなくて4年で評価すればいいのではないかという声もあるのですが、そのことについて先生は御反論があると思うのですが、その点について是非御意見をお願いいたします。
○小西参考人 学生時代の実習のことも言っておられますか。
○小森委員 つまり、弾力化によってB項目で体験しなければいけないとなっているのに、未体験者が非常に増えている。だけれども、だから必修化すべきだという御意見と、学部の中の臨床参加型実習を含めて4年間で見ればいいではないかという意見もあるのですが、そのことに対して反論がありましたらお願いいたします。
○小西参考人 学部の4年間でも是非見ていただきたいと思っています。ただ、産婦人科は内診であるとか様々なことで、学生が実習に関与しにくいというところはどうしてもあります。やはり医師免許を持った方でないと、なかなか関われないということがあります。学部の実習等で私たちは頑張っておりますが、やはり必修の臨床研修の2年間の中で、特に最初の1年間に産婦人科に来ていただきたいと考えております。
 この間、医学の受験生の面接等をしており、医学部に入りたいという受験生15人ぐらいと面接をし、将来のことを聞いていくと、やはりどうしても内科が中心になります。天皇が手術をされたときには、外科へ行きたいという人もいました。子供の頃に小児科の先生にすごくお世話になったので小児科医になりたいという人も15人中2人ぐらい最初からいました。産婦人科だけはいないのです。産婦人科に来てもらって、産婦人科はしんどいと分かっているのだけれども、やっている人は結構元気そうだねというので、産婦人科を選ぼうということが非常に多いのです。やはり研修で来てもらって、産婦人科に決める人が非常に多いのです。そういう意味で産婦人科に来ていただきたいと私たちは考えています。
○神野委員 今お話するのは場所が違うかもしれませんけれども、質問のあった学部内の話で、先生に対してというよりは、先ほど山下委員からも、国家試験の改革が必要ですよねというお話がありました。この国家試験の改革の話をしないで、臨床研修の話の中で、学部教育でやるべきである、やるべきでないという話はちょっと早急すぎるのではないかと思います。もし学部教育の中で、産科婦人科学会あるいは小児科学会がおっしゃるような、臨床実習型をメインにしたような学部教育をするとしたら、今の国家試験の詰込み型国家試験では、とても学生たちは付いていけないのではないかと思ってしまいます。
 私が言いたいのは、「学部教育でやればいいですよね」と言ったら、皆さんも恐らく「そうです」とおっしゃると思うのです。その前に国家試験の改革をしないと、学部教育で産婦人科の先生、小児科の先生がおっしゃっているような、いわゆる臨床的な能力を付けるのはなかなか難しいのではないかと思います。
○小西参考人 もちろん国家試験の改革は必要だと思うのですけれども、以前、医学部で学ぶことが非常に多くなりすぎたので、最低限の知識をという時代がありました。問題解決型というのがずっと入ってきたのですけれども、あの影響で学生が知識を軽視するという傾向が出てきてよくないと思うのです。アメリカでもそうですけれども、かなり勉強しないと通りませんということで、現在の医師国家試験レベルの知識は最低持っておくのが医師として大事なのではないか。いろいろな緊急時だとかありますから、たくさんの知識を持っているほうが良い医者であるという面もあります。臨床実習はもちろんやらなければいけないのだけれども、それを極端に少なくすると、ますます日本の医療レベルは落ちてくるので、これは慎重にしていただきたいと思っております。
○神野委員 そうだとすると、今の学部教育では知識を十分に付けていただく。実際の臨床能力は卒後臨床研修がいいというのが先生の思いでしょうか。
○小西参考人 実習は外圧もあり、私は京都大学ですけれども、京都大学でもやはり実習時間を増やす予定でいます。ECFMGのことがありますし。それは、できるだけ卒業前にある程度のことはできるようになることは必要だろうと思います。できると思っています。私どもはやる気がありますので、今以上にできるようになると思います。それだからといって、卒後の初期研修がすぐに変わるとは思いませんので、それはそれ、これはこれで是非やっていただきたいと思っています。
○山下委員 小森先生、神野先生の御質問とかぶると思うのですが、先生方のおっしゃるとおりで、卒前、国家試験、卒後、それから専門医研修というのは一連の流れの中でやっていかなければいけないし、それはいろいろな科で全部そうだと思うのです。そういう体系的な御検討を産科婦人科学会でされているか。小森先生がおっしゃったことは非常に大事なことで、線を引いてここからこっちではいいけれども、卒業前のものはカウントできないというのは議論としておかしいと思うのです。それは一連の流れの中で、小森先生がおっしゃったように、例えばこの4年なら4年の中で経験すればいいと。やはり、初期臨床研修の中でも、その人に極めて難しいお産を任せることは無理だと思うのです。それを経験するというのはプロフェッショナルというか、先生みたいな方が取り上げるチームの中に入ってやりましょうと。チーム医療だったら卒前でもやっているわけです。制度設計は必要だと思います。
 ここで国家試験の議論を始めると、話があっちへ行ってしまいますが、デリケートな言い方になりますが、実習をやりながら国家試験を通るというのを両立するようにしないと、はっきり言って、試験勉強のために実習が中断して臨床能力が落ちるようなことになると、これは本末転倒なのです。何のために医学部へ行っているのかというようなことなのです。質問として成立しないのですが、いずれにしても卒前から卒後までの流れを考えておられるのか。
 もう1つ、先生の論点の中では必修というか、こういうのを経験してほしいということと、それからプロフェッショナルの産婦人科医をどうやってリクルートするか。そうすると、小児科の先生がおっしゃっていたように、卒前にがっちりといろいろなことを教えて、しかもそこに魅力も一杯教えて、そこからストレートに入局させたほうが絶対に効率は良いと思うのですけれども、それはどのようにお考えでしょうか。
○小西参考人 もちろんストレート入局にしていただけるのであれば、それがベストだと思うのです。しかし、恐らく時間がかかるのではないかと予想していますので、現時点では初期研修が存在するという前提で、もちろん卒前の臨床実習も増える方向で各大学いっていますので、それに対応したプログラムを考えているところです。
 一番最初にお願いいたしましたように、妊娠・分娩を経験するのは大事なのですけれども、今一番必要なことは、先ほど申し上げたように若い女性です。20歳代、30歳代の女性のヘルスケアというのが、今の日本で一番大事なのではないか。月経痛を訴える女性に対して、どのようなドクターでもいろいろなアドバイスをできるような環境にしていただきたい。例えばMRIを撮っても子宮内膜症はすぐに分かりますので、子宮内膜症と診断されると、最近は低用量ピルとかいろいろなお薬も発達してまいりましたので、その進行を防ぐことができるので、予防的な観点から、そういう知識と経験を是非全ての研修医に身に付けていただきたいと考えております。
○中島委員 小西先生のおっしゃることはとてもよく分かるのですけれども、産婦人科の研修が特に必要だということをおっしゃっていますが、最初の「医師臨床研修を見直す上で必要なことは」の所に挙げている、「我が国の少子化」とか、「環境汚染」、あるいは「東日本大震災と原発事故」というのは社会問題なのです。社会問題の中でも、産婦人科は役立っていますということをおっしゃられたのだと思うのです。
 しかし、今回の論旨から言うと、若干ずれているように思うのですけれども、いかがでしょうか。
○小西参考人 私はそう思っていなくて、医師臨床研修制度を含めて医療体制というのは全て、今、日本の国民・女性がどういう状況に置かれているかということに基づいて計画を立てていかないといけない。そういう観点が絶対に必要です。全くそういうことを抜きに、医学だけで議論して結論を出すのは無理です。全体の世界の流れ、日本の流れの中で、今どういう研修が必要だという観点が是非とも必要です。そういうことでお話を申し上げました。今、日本の置かれている状況はどうか、女性の置かれている状況はこうで、そのために研修としてこういうことが必要であるということを申し上げたつもりです。
○中島委員 議論はいたしません、ありがとうございます。
○桐野部会長 よろしいでしょうか。小西先生どうもありがとうございました。続いて精神科七者懇談会の小島先生、関先生よりお話を頂戴いたします。
○小島参考人 精神科七者懇談会の卒後研修問題委員会の委員長をしております小島です。ヒアリングにお招きいただきましてありがとうございます。精神科臨床研修について説明させていただきます。精神科関連学会と臨床研修の関係についてお話いたします。精神科では、日本精神神経学会が親学会的な存在ですが、その他に6つの団体、合わせて7つの団体が精神科のいろいろな重要問題について話し合って解決していくシステムになっています。それが七者懇談会です。
 その中で臨床研修については、卒後研修問題委員会が担当統括して行ってきました。新臨床研修制度発足前から、本制度の充実に向けて真摯に対応してきたつもりです。例えば平成16年から現在まで、指導医講習会を55回、毎年2回ぐらい開催し、厚生労働省認定の指導医を2,249名養成しています。
 臨床研修の目標は、発足前、それから発足当時も、プライマリ・ケアと全人的医療の向上が大きな目標になっていたと思います。これは、現在もそれは続いているのだろうと思います。全人的医療は、身体、心理、社会、倫理的側面を統合して行う医療ということですが、この目標が重要なのではないかと私どもは思っています。
 精神疾患についての認識ということでお話いたします。精神疾患は特殊な疾患である、精神科に任せておけばよい、一般科医が関係しなくてもよい、こういう考え方を持っている方々はいまだ非常に多いのです。これは、精神疾患に対する理解の欠如・恐怖・偏見という形につながっていきます。しかし臨床経験をすることによって、恐怖・偏見から抜け出すことができます。
 精神科の臨床経験をすることの効果は、体だけでなく、心を理解することの重要性を、実際の臨床経験の中から習得することができることですこれは、先ほどの臨床目標にあった全人的医療の基盤を作ることにつながってきます。
 それでは、精神疾患が特殊な疾患かどうかについて検討いたします。精神疾患の受診患者は、平成8年は200万人ぐらいだったのが、徐々に増えて、平成14年には250万人を超え、平成17年には300万人に到達して、平成20年には324万人になっております。右肩上がりに増えています。国民の40人に1人が精神疾患のために受診中ですし、生涯罹患率については一般人口の18%以上、国民の5人に1人が精神疾患にかかっています。こういう点からも、精神疾患は特殊な疾患ではないことがお分かりいただけるかと思います。
 一方、政策としての精神疾患、WHOと世界銀行が政策における疾病の重要性の指標ということで、障害調整生命年(DALY: disability adjusted life years)という指標を推奨しています。これはどういう指標かというと、病気により失われる命と、障害により損なわれる健康生活を足し合わせたもので、右の表にあるように、精神疾患が、がん、循環器疾患、傷害、感染性疾患の上に来てトップに位置しているということです。失われる命と、障害によって損なわれる健康生活の両方を合わせると、非常に重要な疾患であることがお分かりいただけるかと思います。
 そのような流れを酌んで、我が国の医療の重点施策として、2011年7月に、4疾病・5事業に精神疾患が加わりました。皆様も御存じだと思いますが、5疾病というのはがん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病に精神疾患が加わって5疾病になりました。これは、精神疾患の重要性が政策の上でも認識されたということです。ですから、特殊な疾患ではないのだということです。
 社会的な問題という点から見ると、自殺者の問題も非常に重要な問題です。平成11年度まで、14年連続して3万人を超えています。平成12年度は3万人を割っておりますが、依然として高い自殺率です。8割近くが何らかの精神疾患に罹患していることが分かっています。一方で半数近くが身体疾病を苦にしていて、これは一般科の先生方の所に受診していることを意味しています。ですから、一般医と精神科医の連携の必要性が問題になってきています。現在、臨床現場ではこの連携が進んできていて、そういう効果もあって平成12年には下がっているのかもしれません。
 もう一方で認知症の高齢者が増加しています。平成12年には300万人を超えました。精神症状や行動異常が認知症には伴いますので、そういうことに対する知識や対応が必要になってきます。一般の方々から相談されたときに、適切な対応をすることができるためには、臨床現場での経験が必要になってきます。
 もう1つ、これは非常に重要なことなのですが、精神疾患及び精神障害に対する偏見が厳然と存在しています。どういうことかというと、精神疾患患者の身体合併症の入院治療に際し、診療回避、診療拒否などが頻回に行われています。これは、臨床現場において、精神科の医師たちが日々経験していることです。こういうことに対して、患者家族会からの切実な要望が出されています。これが、患者家族会からの要望書の抜粋です。東京都精神障害者家族連合会からですが、精神科の合併症患者の一般科入院治療を、精神科の知識がない医師が敬遠するために救急医療が受けられない、放置されるという問題を解決してほしいと。そのためには、精神科研修を必修化してほしいという要望です。
 それでは、どうしてそのような偏見があるのでしょうか。これは統合失調症の問題がどうしても絡んできます。統合失調症では、認知機能のゆがみが幻覚や妄想につながってくるわけですが、やはりいろいろな点で一般科の先生は敬遠しがちになってしまいます。しかし、これらは様々な精神症状の一部であって、精神症状を把握して治療・改善するという経験を積むと、患者の心理状態を理解することができます。そうすると、他の精神疾患や身体疾患と変わらないという実感が得られます。それに伴って、恐怖や偏見が薄れていきます。このようなことから、統合失調症の診療経験というのは極めて重要な位置にあるということがわかります。統合失調症を経験することがいかに重要であるかを示してます。
 それでは、私たちが行ったアンケート結果についてお示しいたします。必修化されていたときのアンケート、平成18年6月、専門科で研修を始めた医師に対して行ったアンケートです。アンケート結果としては802名、これは平成18年ですから最初の必修化のときのアンケート結果です。これは全人的な医療の修得への効果ということで、「精神科研修は全人的医療の修得に役立ったか」との設問に対し、8割以上の方が効果を認めています。これは7段階の評価で、「そうだ」「大体そうだ」「どちらかといえばそうだ」「どちらかといえばそうでない」ということで、こちらの黄色い所までがポジティブな評価ということです。80%少しが全人的な医療の修得に役立っていたということを示すものです。
 これは、「精神障害者及び精神症状の偏見をなくすことが大切だと改めて実感できましたか」という設問に対し、801名の研修医のうちポジティブな評価が、90%近い、およそ9割近くが、精神科研修によって、精神障害及び精神症状への偏見が除去・低減したという研修医の評価です。この結果、先ほどの統合失調症の研修とも絡んできますが、臨床研修をすることにより、偏見が軽減したという重要なデータだと私どもは考えております。
 これは選択必修になった時期のアンケート結果で、今年の3月に行いました。内科、外科で専門研修を行っている医師及び指導医に対して施行したアンケート結果です。427病院、大学病院及び一般病院を含めての内科、外科の責任者にアンケート送付して依頼しました。104病院が回答してくれて、回収率24%でした。
 研修医自身の評価は、各項目について精神科での初期研修が役立ったかを質問しました。患者、家族のニーズを、身体、心理、社会的側面から把握できるようになったかということに対して、精神科研修が役に立っていたかどうかということです。これは4段階評価になっていますが、「とても役立った」「いくらか役立った」「あまり役立たなかった」「全く役立たなかった」ということで、2つがポジティブな評価ですが、76.8%が精神科研修が役立ったという、全人的医療の修得に役立ったということを示しています。
 患者の訴えに真摯に対応でき、傾聴し気持ちを理解することができるようになることについて、精神科研修が役立ったかどうかに関して、83.7%の研修医がポジティブな結果を示しています。これは、最初の必修化のときの結果とほぼ同じような結果です。この人たちは、選択必修でも精神科を選択した人たちです。
 それでは、指導医による研修医の評価はどうだったかについて報告します。全く関係のない、他の科の内科、外科の指導医が研修医をどのように評価しているかについて見てみました。これは、患者、家族のニーズを身体、心理、社会的側面から把握できることについてですが、全人的医療についてです。非常に高い評価で、研修医よりも少し高い評価をしていて、92.5%がポジティブな評価をしています。次に患者の訴えに対して真摯な対応ができるようになったかということについて、「とても優れている」「やや優れている」で96.9%という高い評価を指導医がしています。
 以上をまとめると、精神疾患の通院患者は320万人を超えている。重点施策の疾患として5疾病に加わった。自殺対策、認知症の精神症状など、一般科医も精神疾患に直面しなければならない状況に来ている。精神疾患、精神障害者に対する偏見のため、入院拒否などが存在し、患者、家族を苦しめている。偏見を解消するため並びに全人的医療の基盤を構築するためには、統合失調症を含む精神疾患の臨床経験が有効である。二度のアンケート調査で、精神科卒後研修の有効性が検証されたと考える。このようなことから、卒業直後の医師全てに精神科の臨床研修を1か月程度やることが必要ではないかと私どもは考えております。以上です。
○桐野部会長 御質問、御意見等がありますか。
○小森委員 お聞きしたいのですが、本日配布されたデータ、その他のデータもそうなのですが、精神科に実際に回った方のポジティブ評価ということです。これは精神科に限らず、どの科に行っても、研修に行った方のポジティブ評価は高いので、これだけをもって精神科が格段に良いという評価はできないのだと思うのです。特に認知症等については、今は305万人とも言われていますし、もう20年もすれば500万人近いということもあり、様々な場でそういった患者さんに接する機会は大事だと思っていて、日本医師会としても精神医療については格段の思いがあります。
 精神科という科の必修は、絶対に必要で、しかし1か月なのでしょうか、あるいはもっと更にということなのか。それぞれの科の方が、外科の方もそうなのですが、絶対に必修にしてくれという要望があります。一方で、できるならばストレートにしてほしいという御意見もあって、ある意味二律背反される御意見を同時におっしゃるので、その2点についてのお考えを聞かせてください。
○小島参考人 評価が高かったということですが、他の科でもみんな同じではないかという御意見かと思います。そういうこともあって、私たちは直接関係ない内科、外科の指導医に今回はお聞きしてみました。指導医は、別に精神科と何の関係もないわけで、低い評価をする場合もあるのかと思ったのですが、かなり高い評価があったということで、私たちは精神科の臨床研修が評価されているのではないかと思っております。
 1か月程度というのは、本日お話いたしましたようなことから、これは精神科だけの問題ではなくて、私たちは他の科に行く先生たちが、全人的な医療、身体、心理、社会、倫理的な側面から総合的に診られるような医者になってほしいという気持ちから、是非1か月程度の臨床研修をやっていただければいいのではないかと思っています。
○神野委員 本日お示しいただいているように、鬱病の方とか認知症の方は、大勢いらっしゃるわけで、日常診療であるという意味では大変重要だと思います。前回この会でも話になったのですが、例えば弾力化コース(専門医コース)で、外科へ行こうが、内科へ行こうが、眼科へ行こうが、認知症の方はたくさんいるから、そこで十分研修ができるのではないかという御意見がありました。それに対して、例えば内科研修の中の認知症とか鬱病を診るのと、精神科へ行って認知症とか鬱病を診るのとの違いがあったら教えてください。
○小島参考人 精神医学の患者の見方については、患者の話を十分傾聴して、どこに問題があるかということを、患者の気持ちになりきって診察する。専門的には記述的、あるいは現象学的にといいますが、そのような診察の仕方というのは、精神科できっちり学んでいただかないと、臨床場面で十分な効果が得られないと私たちは思っております。
○関参考人 先ほどの小森先生のお話に対してですが、いわゆる1か月が必要なのか、もっとというお話がありました。当初、我々は3か月プログラムが非常に適切だろうということで行っていましたが、現状ではいろいろな臨床科が、特に見直し後は、研修期間が実質的に1年ちょっとということになってしまったので、そういう意味では1か月がギリギリかという印象があります。
 それから、これはむしろ先生方に逆に私の方から問いたいのです。先生方は、医師になって恐らく50年ぐらいは何らかの形で医療に関わっていくのではないかと思います。そのぐらいしないと、国民に対する義務が果たせない。その中の僅か2年間の臨床研修の中で、ストレートになぜ専門科研修を急ぐのか、どうも解せないのです。2年間の間に、医師としての基本的な診療の能力とか態度をきちんと養うことが、将来のキャリアパスにとっても重要だと思います。ですから、この2年間というのは非常に重要な時期だと思います。
 もう1つは、先ほど来出ていた、いわゆる卒前教育、卒後教育、そして専門教育とシームレスにいくというのは当然必要だと思います。精神神経学会、あるいは精神科七者懇は、現在も、いわゆる後期研修についても、小島先生や私も関わって、そういう問題を討議しています。医学部の教育についても、いわゆる講座担当者がそのことを頭に置きながら、ずっと、シームレスな精神科の教育はどうあるべきかということもやっております。
○山下委員 今までの先生方とちょっとかぶるかもしれませんが、精神疾患に対する対応が大切であるということに関しては、私は眼科なのですけれども、毎日のように痛感しております。うちでは大谷教授という精神科の教授が、いろいろな形で協力しながら診療するのだということを明言しておられます。その中で、神野先生がおっしゃったように、ものすごくいろいろな意味で勉強します。これは研修医もそうですし、専門に入ってからもそうです。各診療科が全部連携しています。だから専門の研修をしなければいけないと、患者会のおっしゃったことは分かるのですが、それは研修の問題ではなくて、精神疾患以外の科と精神科をどうやって診療連携するか。そういうのを作っていただいて、その中で教育をしていただくことを推し進めないと、これはいつまでたってもプロにはならないです。先生がおっしゃるように、我々が頼りにしている精神科の先生はすぐに飛んできて、すぐに患者の話を聞いてくれます。がんの緩和ケアにしても、必ず精神科の方が入っているわけですから、そういうシステムを作って、そういう中で教育をする。最初にそういう非常に良いシステムの中に入れておくことが大事だと思うのですが、いかがでしょうか。
 もう1つは、50年の医師のキャリアの中でたった2年ではないのです。最初の2年はものすごく大事なのです。その中で、どのように自分が医師としてやっていくか。昔は医局に入って、医局の先輩にものすごく怒られながらかわいがられて、それぞれの分野でのプロフェッショナルとしての魂を叩き込まれました。それをどのように現代風に、要するに若い人に良い意味でのプロフェッショナリズムと、いわゆる初期臨床研修が目指している、ジェネラルにいろいろなものに対応できる能力の両方をやらなければいけないのか。小森先生が非常に端的におっしゃいましたが、ストレートに入局するほうがいいのか、プロフェッショナルを作るのか、その辺をうまく整理した議論をしないといけないと思うのですが、いかがでしょうか。
○小島参考人 初めのお話で、各科と連携する中で勉強していくことはもちろん大事だと思います。しかし、医師としての基本的な姿勢、全人的医療の意味合いは非常に深いものがあります。それをしっかり身に付けるためには、例えば、もし全人的医療がきちんと対応できていれば、「統合失調症の患者が来ても診療しないよ」、「うちは精神疾患は診ないよ」、というようなことはあり得ないのです。しかし、そのようなことが、現在はかなりあるのだということを皆さんに是非御理解いただきたい。そのために1か月であっても、精神科研修をして、統合失調症の患者さんを一緒に診察し、彼らがどのように考えているのか、幻聴というのはどんなものか、妄想というのはどんなものかを体験することで、「ああそうなのか、彼らも自分たちと同じことを考えているのだな」ということを実感します。そして今は治療がかなり進んでいますから、それで良くなっていくと、「幻聴や妄想も良くなるんだ」と驚きます。
 そういうことで、彼らには統合失調症に関する偏見がなくなっていくわけです。そういうことを通して、全人的医療、いろいろな訴えがあったり、いろいろな問題に対して、一応患者の立場に立って、心を診ながら身体の診療をしていくという姿勢がそこで付くわけです。これを、是非皆さんに考えていただきたいのです。アンケートは高く出すぎだというお話ですけれども、彼らは本当に実感しています。臨床研修をやった後、やはり偏見があったのだと、これは取り除かなければいけないのだという体験を是非していただきたいのです。それが将来どの科に行く医者にとっても、非常に素晴らしい全人的医療の基盤を作るのだということを是非御理解いただきたいと思います。
○小川委員 大変失礼な言い方かもしれませんが、まとめにあるように偏見を解消するために、臨床研修が必要だというのは、臨床研修の到達理念と全く相反するところだと思います。
 もう1つは、家族会からの要望にあるように、これを防ぐために研修の必修化が必要だと。研修を必修化したら、こういうものが防げるのかと。これは、もうちょっと広い学部教育も含めた、トータルの医学教育の中でやるべき問題であって、だから研修が必要だということではないのだと思うのです。
 それから、先生の一番重要なところは、一般医と精神科医の連携の必要性ということをおっしゃっておられます。当然のことながら、研修をやる所は病院です。病院でも、精神科もあり、一般科もあり、そしてそういう中で精神を病んでいる一般科にいる患者さんもたくさんいるわけです。
 臨床研修医の到達目標として、そのような全人的な医療もできる人間を育てるのだということからすれば、別に精神科のプロパーで、個々の科で研修をするのではなくて、内科だ、眼科だ、耳鼻科だといったいろいろな科の中でそういう患者さんがいらっしゃるわけですから、それをチーム医療として教育をしていくのが、そもそもの臨床研修の在り方だと私は思います。
○小島参考人 議論になってもしようがないと思うのですけれども、ただ、現実としてそういう患者さんを診られない、うちは精神疾患の人は遠慮したいという現実があるわけです。それを偏見と言わなくてもいいのです。ただ、そのような態度を持っている医師がたくさんいるのだということ。この臨床研修で私たちの精神科に1か月でも来て研修する中で、そういう態度がかなり薄れていく。どういう患者さんが来ても一応対応できる。決して診ないというような形にならない、というようなことに役立っていくということを申し上げているのです。特に、偏見というものを取り上げているわけではありません。
 他の科の中にいろいろな患者さんがいるから、そこで研修できるのではないかということですが、先ほども申し上げましたように、その見方だとか態度ということを学んでいただいて、それが他の科へ行って非常に役立つのではないかということを申し上げているのです。
○桐野部会長 小島先生、関先生どうもありがとうございました。それでは、日本医師会の中川先生からお願いいたします。
○中川参考人 ヒアリング資料-3で御説明いたします。この提案は、医学部教育の充実と臨床研修の見直しを通じて、最終的に全国の医師不足の主因の1つであります医師の地域間偏在と診療科間偏在の解消を目指すものだと御理解いただきたいと思います。
 目次を御覧ください。「医学部教育」と「臨床研修制度」の2つの項目になっています。まず、1ページです。基本的な考え方を申し上げます。医学部の1~4年生では、高校の学習や受験勉強の繰り返しにならないように一般教養科目の在り方を見直して、大学6年間を通じて医師として必要な幅広い資質を涵養するということです。医学部4年生終了時にCBT・OSCEを課し、CBT及びOSCEに合格した学生には「学生医(仮称)」の資格を与え、医学部5、6年生で診療参加型臨床実習を行う。6年生終了後、各大学の卒業試験を経て医師国家試験を受験するのですが、現在、医学部6年生は、知識問題を含む医師国家試験対策に多くの時間を割いています。こうした医師国家試験を見直し、医師国家試験は医学部5~6年生の参加型臨床研修実習を通じて習得した深い医学的知識及び技能に基づいて、プライマリ・ケアを中心に適切な臨床推論を行えるかどうかを客観的に評価するものにすべきだと思います。
 3ページの図1.1を御覧ください。医学部における一般教養科目の在り方を見直して、大学6年間を通じた、いわゆるリベラル・アーツ教育によって医師として必要な幅広い資質を涵養します。さらに、社会保障制度、これは医療保険及び介護保険概論、社会福祉などや医療政策及び医療経済等についても学習します。医学については、医学教育モデル・コア・カリキュラムや大学独自のカリキュラムを尊重しつつ、1年生から基礎医学・臨床医学・社会医学の履修を積極的に取り入れ、介護や福祉との連携を含む地域医療連携を体験できる演習、実習、ボランティア活動等を実施します。リベラル・アーツ教育はここに書いてあるとおりです。
 医学部4年生終了時に幅広い臨床能力を判断する目的で、CBTに加えてOSCEを課し、現在実施されている共用試験では、大学が独自に合格基準を設定していますが、全国統一の判定基準導入を目指します。また、CBTは知識偏重にならないよう配慮して、医学部1~4年の間に医療現場での実習等に参加できる機会を拡大します。
 4ページを御覧ください。5、6年生は診療参加型臨床実習に参加してもらいます。参加資格は医学部4年生終了時のCBT・OSCEで一定水準に達した学生に対して各大学から与えられます。日本医師会は、これらの学生が安心して実習に取り組めるよう、例えば「学生医」として位置付ける必要があると考えています。また、この診療参加型臨床実習とは、CBT・OSCEに合格し、医師国家資格の取得を目指す学生が、指導教員の下で、医療チームの一員として、患者の診療、診断、治療等に参加する実習とします。この内容、到達目標は、モデル・コア・カリキュラムを尊重し、さらに基礎医学・臨床医学・社会医学が密接に関係し合っていることを認識できるものとします。実習内容は、本部会等で評価・検討します。また、日本医師会が医師としての適格性を養う目的で、5年生終了時又は6年生時に、指導教員や地域医療の代表者等による一般面接を行い、面接結果に基づいて、指導教員が適切な指導を行います。
 日本医師会は、診療参加型臨床実習を支援するために、次の4つの点に取り組みたいと思います。特に強調したいのは5ページの上から3つ目の黒ポツで、指導教員の教員数確保と指導力向上のため、国に対して十分な財源の手当てと対策を要請したいと思います。
 医師国家試験については、現在6年生は、知識問題を含む医師国家試験対策に多くの時間を割いています。しかし、医学的知識については、医学部4年生終了時に受験するCBTでも高度な内容が課せられています。そこで、医学的知識は医学部4年生終了時のCBTで評価し、医師国家試験を上級OSCEに相当する内容に見直すことを提案します。各大学は独自に卒業試験を行いますし、医師国家試験を見据えて、OSCEを重視した内容にすることも可能であります。医師国家試験は、5~6年生の診療参加型実習を通じて習得した深い医学的知識及び技能に基づいて、適切な臨床推論を行えるかどうかを客観的に評価します。医師国家試験に不合格になった場合には、出身大学の診療参加型臨床実習に引き続き参加できる仕組みを検討します。
 臨床研修制度の基本的な方向性については、7ページにある「基本3原則」を堅持するべきだと思います。また、日本医師会は2011年から臨床研修医支援ネットワークを構築し、日本医師会ホームページを通じて、図書館利用サービスや生涯教育オンラインサービスなどを無償で提供しています。
 9ページの図2-1を御覧ください。まず、上の図ですが、医学部5、6年生の、2年間の診療参加型臨床実習と臨床研修2年間のトータル4年間で、プライマリ・ケア能力の獲得を目指します。到達目標は、自立して患者を全人的に診ることができるよう、適切な初期対応能力を身に付けることとします。臨床研修は、原則、卒業直後から行いますが、基礎医学に進む場合には後年改めて臨床研修を受けることができるようにします。
 黄色の所を御覧ください。1年目は、プライマリ・ケア能力の獲得に一定の目途を付けることを目指し、原則として1年目に必修科目を研修します。必修科目は内科、救急医療、地域医療、精神医療とし、それぞれ介護、福祉との連携も視野に入れます。地域医療には小児医療・高齢者医療を含みます。精神医療では認知症・鬱病・自殺などの諸課題にも対応できるよう、社会環境の変化を踏まえメンタルヘルスケアを行えるようにすることも目指します。2年目は、将来専門としたい診療科、又は多くの診療科を巡回してプライマリ・ケア能力を深めていきます。
 10ページは、臨床研修システムの見直しです。医学部5、6年生は、参加型臨床実習と研修2年間のトータル4年間で、プライマリ・ケア能力を獲得することを目指しますが、特に臨床研修の2年間は、臨床研修医は地元出身大学に軸足を置きつつ、より実践的な地域医療を身に付けます。地域では、医師会、行政、住民などが協力して、地域で温かく医師を養成するべきだと思います。
 まず、「大学臨床研修センター」の提案です。各大学に臨床研修センターを設置します。研修希望者は、原則として、出身大学の「大学臨床研修センター」に研修先についての希望を提出します。研修希望先の地域は問いません。このセンターは、研修希望者と面談して研修希望先を確認した上、必要があればアドバイスを行って研修先を選定します。研修先に応募した結果、希望がかなわなかった場合は、改めて研修希望者と相談して調整します。研修病院は、研修医がどの大学の「大学臨床研修センター」に所属しているかを含めて、次に説明する「都道府県医師研修機構」に臨床研修医の受入状況を報告します。
 次に、「都道府県医師研修機構」です。都道府県ごとに「都道府県医師研修機構」を設置します。これは、医師会、行政、住民代表、大学、大学以外の臨床研修病院で構成します。各都道府県の機構を束ねる「全国医師研修機構連絡協議会」を設置します。この連絡協議会は、人口や地理的条件など地域の実情を踏まえて、臨床研修希望者数と全国の臨床研修医の募集定員数がおおむね一致するよう、都道府県ごとの臨床研修募集定員数を設定します。この機構は、都道府県ごとの募集定員数を基に、当該都道府県下の研修病院における臨床研修医募集定員数を調整します。また、地域で特色のある研修プログラムの検討・提案、研修病院等の登録、研修内容のフォローなどを行うほか、地域の臨床研修医に対して必要な支援を行います。
 13ページの図2.3を御覧ください。次の4者を発展的に「都道府県地域医療対策センター」に再編するという提案です。まず1つ目は、医療法第30条に基づく都道府県地域医療対策協議会。次に、20道府県に設置されていますモデル事業の地域医療支援センター。それから、今の「大学臨床研修センター」と「都道府県医師研修機構」です。臨床研修医は、「都道府県地域医療対策センター」に臨床研修修了後の就業先を届け出ます。同センターは、「大学臨床研修センター」や研修先病院等の協力も得て就業先を把握し、医師養成及び医師確保対策を推進します。「都道府県地域医療対策センター」は、臨床研修修了後の医師のその後の異動や配置についても継続して把握します。これらの情報に基づき、医師確保及び偏在解消を推進するとともに、医師の生涯におけるキャリア形成支援を行っていきます。将来は、「都道府県地域医療対策センター」が把握した医師の異動に係る情報を全国レベルで統合するべきだと考えています。この機能を少しずつ機動性を高めれば、地域間偏在、診療科間偏在の解消に確実につながっていくだろうと思っています。
○桐野部会長 どうもありがとうございました。御質問や御意見はございますでしょうか。
○神野委員 まず、9ページまでと10ページより先の新しいシステムの話とは話が別になると思います。9ページまでは、正に今ここで先ほどから話しているようなことがたくさん出てきていて、今、弾力化プログラムうんぬんと言っているのは正に9ページの図2.1の話ですね。その前提としては、医学部5、6年生の、学生医というか、医行為ができる学生に対しての国民的コンセンサスあるいは法的コンセンサス、それができて初めて、中川先生の資料の、臨床研修1年目はプライマリ能力、2年目は専門だというふうに組んであるわけですね。今、弾力化プログラムはこの5、6年生がないままに先行してしまっている。中川先生がおっしゃる学生医制度ができてこそ、今の弾力化プログラムは活きてくると思いますが、いかがでしょうか。
○中川参考人 そのとおりです。4ページを御覧ください。少し端折りましたが、下から3行目、「日本医師会は、診療参加型臨床実習を支援するため、次のような取組を行っていく」とあります。まずは『学生医』に対する国民の理解と協力を求めます。そして、注釈4にあるとおり、1991年の「臨床実習検討委員会最終報告」、いわゆる「前川レポート」でこの違法性は阻却されていると我々は認識しています。国民に理解を求めるときに、このことも強調しなければいけないと思っています。
 やはり、我々の提案の最大のポイントの1つは、5、6年生の診療参加型臨床実習を本当に実現できるかどうかにかかっている。そのためには、5ページの上にあるように、国からの十分な財政的な支援を含めた強力な応援体制がないと、とてもできないだろうと思っています。
○神野委員 議論を戻して恐縮ですが、学生医の制度がないままに弾力化プログラムをどんどん進めることに関しては、私はいかがなものかと思います。5、6年生のこのシステムがきちんと整うならば、全面的に弾力化プログラムはありだろうと思います。それなくして、弾力化プログラムに走り過ぎるのはいかがなものかと思います。
 もう1点、後の方についてです。これは全部これからの話ですから今言うのも何ですが、「大学臨床研修センター(仮称)」と「都道府県医師研修機構(仮称)」は、あえて2つに分ける必要はないのではないでしょうか。
○中川参考人 あえて分ける必要がないのではということに対しては、13ページの黄色い所で、最終的には対策センターに統合することで御理解いただきたいと思います。やはり最初は、「大学臨床研修センター」が大事だと思っています。先生方がよく御存じのように、今、民間の医師紹介業者が跋扈していて、若い医師が一説によると4,000~5,000人も登録してモラルハザードが起きています。医師が根なし草になっているというような大変なことが起きています。紹介業者は年収の2割の手数料を取って1割を戻すなんていうことが起きているのです。まずは自分の大学に軸足を置く。そこに縛るものでも何でもないですから、まず自分の大学のセンターに登録して、そこから臨床研修病院を選定するということを通じて、自分はこの大学出身だったと常に思い出す。それから、各大学医学部は自分の卒業生が一体どこに行ったのかを把握する。これは最低限のことだと思いますが、今は全然できていないのです。これを通じてこの情報も把握する。そのために、まずはこの2つ、都道府県の研修機構と大学のセンターは必要だと。そこから始めて、最終的には4者を統合して地域医療対策センターができれば最高だと思っています。
○吉岡委員 私も、基本的には、医師会のこの提案は大変意欲的な提案だと考えます。私は、全国医学部長病院長会議の医学教育の質保証検討委員会のメンバーですので、その立場からも少し情報とその辺りの流れを申し上げます。学生医、student doctorを目指した、4年生終了時のCBTプラスOSCEを全国統一的に実施するという形は粛々と進んでおります。正に過渡期で、全国医学部長病院長会議としては今年度から実施を要請することになります。また、最低ライン的な点数についても、おおむね内々に決めたものを持っています。恐らく、初年度からは余り高い点数にしないけれども、段階的に高くしていくことになろうかと思います。ただ、進級判定の最終的な権限は全国医学部長病院長会議にあるわけではありませんので、その点は各大学の判断との調整が必要だろうと思っています。これが順調にいき出すことと、もう1つ、ECFMG関係の臨床実習が72週程度になる場合の学生時代の臨床実習の内容・プログラムについては、日本医学教育学会と医学部長病院長会議と評価機構の3者で粛々とワーキングを重ねています。いずれ全国に提示できるモデル的な72週問題にも対応したプログラムも考えています。本日の御提案や議論の一部は粛々と進みつつあるので、正に過渡期であるということを考えますと、方向性としては、お互いにかなり近いものを持っているのです。先ほどから議論されている、学生医の認定と最終的な6年生卒業時の国家試験の在り方、ここをクリアしないと全ての臨床研修が方向性を間違ってしまうことになろうと思っています。
○小川委員 先ほどの神野先生の話にも関連し、今の吉岡先生にきちんとお話していただいたので、これ以上追加することはないのですが。例えば、医師会の資料の2ページの下の方に「全国統一の判定基準の導入を目指す」となっていますが、これは全国医学部長病院長会議の中で、最低基準はここにするのだということで、試行をそろそろ始める段階まで行っているわけです。名称を「学生医」とするかどうかは法律の問題もありまして、いろいろ議論している最中ですが、近々に試行が始まります。先ほど神野先生がおっしゃったように、こちらの臨床研修制度だけが先行して、そちらの方がおろそかではないかという御指摘は当たらないのではないか。多少タイムラグはありますが、ほとんど順調に準備は進んでいるということだろうと思います。
○山下委員 1つ、補足的なことです。11ページの、研修センターと研修機構の連絡協議会は非常に大事なものなので、是非これは具体的に詰めて、我々とも、また話をさせていただきたいと思います。事務局提出資料3に、中川先生がおっしゃったことと全く同じ情報ではありませんが方向が同じ、「専門取得者数の推移」の?、?とあり、各基本診療の18学会に全国医学部長病院長会議から入会者の数と専門医の取得者数を教えてほしいということで、それぞれの専門の学会が出した数字をそのまま載せています。臨床研修前の平成14、15年が旧制度、平成16、17年は臨床研修の最中ですから、平成18年以降の入会者で見ると9割で、1割減っているのです。ということは、基本18科のどこにも属さない方が1割出てきている可能性がある。実は、専門医の取得者数はほぼ同じです。それは、前の年代から入会していて、専門医をどんどん取っていくので、科によっては出ていますが、まだ直接的な影響はないのかもしれません。ですから、中川先生がおっしゃった、フローティングの医者といいますか、自分のきちっとした医療を持っていないようなお医者さんが出てくると国民にとっても大変なことなので、これは是非進めていただきたい。やはり、これは国民的な問題になるのではないかと思います。
 最後に、質問です。先ほどの数千人という数字はどこからの、調査された数字ですか。
○中川参考人 民間の紹介の数字ですか。
○山下委員  はい。
○中川参考人 役所に数字を頼んでいるのですが、なかなか出てきません。情報を総合的に考えると、そのぐらいだろうと思っています。確実な数字ではありません。
 それから、1つ、追加させていただきます。13ページの、「都道府県地域医療対策センター」の機能についてです。なぜ地域間偏在と診療科間偏在の解消につながるかというと、イメージとしては、各都道府県内の診療科の患者数と医師数を、このセンターが常に把握している。いろいろな県内の情報を集めている。そして、若い医師に、このようになっているということを含めて情報提供しながら、研修もしてもらえれば、診療科間の偏在解消につながるのではないかと思っています。
○桐野部会長 研修の質の向上のため、つまり、各病院の研修の質を向上させるというメカニズムの1つとして、競争的にするということがあります。研修医にそれを選ばせるというメカニズムを、平成16年から入れているのです。これが過剰に働いた面もなきにしもあらずですが、先生の方式では競争的にはならないので、質の向上はどこで図るのでしょうか。
○中川参考人 競争的にならないとおっしゃいますが、どう違うのですか。
○桐野部会長 Aの研修病院とBの研修病院でAの方が優れていれば、研修医はそちらを選ぶというメカニズムです。
○中川参考人 これは別にそれを阻害していません。
○桐野部会長 だけど、決めるのは研修医が選ぶわけではありませんね。かなり規制的になりますね。
○中川参考人 研修病院ですか。
○桐野部会長 はい。
○中川参考人 研修病院は大学センターに登録し、そこから希望しますけれど、それは別に強制しません。自由に研修先を選択するわけです。
○桐野部会長 その自由な所を選ぶのが大変なので、そういう競争的にマッチングをしてやるという方法を選んだわけですね。
○中川参考人 それはこの提案も同じです。
○桐野部会長 同じですか。分かりました。失礼しました。
○清水委員 質問です。この制度の中でお考えなのは、卒後の2年までということですね。3年目以降は自由競争が働くということでよろしいですか。
○中川参考人 競争というのは、どういう意味の競争か分かりませんが、やりたいことは、臨床研修2年終わった後も、その医師がどこに行っているのかということを各都道府県は把握しているべきだという意味です。そうしたいと思っているのです。
○清水委員 そうすると、この制度を進めるに当たっては、医師は大学臨床研修センターに登録されますと、その登録がずっと永続的に続くと考えておけばよろしいでしょうか。
○中川参考人 近い将来、最終的には、この黄色い「都道府県地域医療対策センター」で全て集約していく。会内では個人情報だとか何とかという意見もありましたが、ただ、医師が、自分が今どこの医療機関で勤務しているのかということを「個人情報だから言いたくない」と言うのならば医師を辞めた方がいいです。そういうことも含めてです。
○清水委員 分かりました。
○神野委員 医師がどこにいるかを、保健所が全部チェックしていますね。ですから、調べようと思えば国はすぐにできるわけです。それから、先ほどのフローティング・ドクターの話ですが、現状のフローティング・ドクターは大学医局をスピンアウトした連中が多いのではないでしょうか。臨床研修の大学医局等に参加しないで、いわゆる市中病院の臨床研修を回った上でなったのか、大学医局に1回入ったのだけれども、スピンアウトしてフローティングになったか。全部が臨床研修のせいだとか大学に所属しないからだというのは、少し飛躍があるのではないかと思います。
○中川参考人 フローティング・ドクターの分析については、今は我々の時代と違うのです。我々の時代は、まずは医局に入るというのが大前提だったのですが、今は全く関係ない、医師になったらもう自由なのだという考えの人が急増しているのです。それは間違いないと思います。
○山下委員 神野先生、全国医学部長病院長会議で、初期臨床研修を終えていわゆる医局に入ってきている人の数を調べていますが、激減しています。ですから、中川先生がおっしゃったように、最初から入っていないのです。スピンアウトではないのです。これはエビデンスとしてあります。もともと入っていないのです。
○中島委員 スピンアウトかどうかということは本当はどっちでもいいのです。きちんと教えて、きちんと人を呼ぶかどうかの問題だと思います。中川先生に是非お尋ねしたい。9ページ目まではとても良いと思います。大変結構だと思います。ただ、臨床研修2年目に、「将来専門としたい診療科のプライマリ・ケア能力」という、何かよく分からない言い回しがあり、その下の方に、将来その診療科においてプライマリ・ケアを行う、コースも1と2に分かれるとなっています。これは、コース2だけでいいのではないかと若干思いました。それから、10ページ以降については御提案ということで考えていいのですね。今後、こういう方向が望ましいのではないかということで、机の上で考えられたわけですね。
○中川参考人 いいですか、これ全部が提案なのです。机の上というのは机上の空論という意味ではないですよね。これは日本医師会執行部で練りに練った案です。「第3版」とあるように、第1版を出したときは、医学部の卒業生は当該都道府県で臨床研修をするべきだという非常に厳しいものだったのですが、いろいろな意見があって、第2版ではそれを緩くして、第3版ではこのような10ページ以降を作りました。最大のポイントとして我々が強調したいのは、10ページ以降なのです。
○中島委員 10ページ以降ですか、分かりました。
○河野委員 10ページ以降の体制について、13ページの図2.3は非常に重要だと思います。既に現在においても、これはやらなければいけない機能です。卒前から卒後もずっと、例えば大学の立場で言えば、その人たちがどこに行ったのかを把握しなければならないと思います。私は千葉大ですが、そこでもそういった話がずっとされていながらできないのです。というのは、この分野のマンパワー、体制が整っていないのです。これは後で新設で、この提案の中でというよりは、既にこれは進めないと、今すぐにでもできる部分だと思います。それには、先ほど、財源など国からの措置が必要だということも含めて、こちらは提案を待っていないで至急に進めていただきたい。その上で、そういった情報の下で、前半についてもいろいろな議論がしやすくなるのではないかと思います。いかがでしょうか。
○中川参考人 是非進めていただきたいと私も思います。原局長がいらしていますので是非よろしくお願いしたいと思います。
○桐野部会長 中川先生、どうもありがとうございました。
 議事の2に移ります。「必要な症例と指導管理体制について」です。まず、事務局から資料の説明をお願いします。
○医師臨床研修推進室長 お手元に、御議論に資するように様々な資料を用意させていただきましたが、時間の関係もありますので、かいつまんで御案内いたします。
 まず、事務局提出資料1「必要な症例と指導管理体制に関する論点」を御覧ください。前回と同様に、ワーキンググループの論点整理の上に本部会で頂いた主な御意見を追加する形で整理しています。アンダーラインを付した部分が、前回の部会で頂いた主な御意見です。今回、想定している論点項目、すなわち「必要な症例と指導管理体制」の部分を御案内します。
 7ページの下の方からが、今回御議論を賜りたい部分です。2)「必要な症例」については、現状では、必要な症例を確保するために基幹型病院の指定基準として、平成22年度研修から年間入院患者数を3,000人以上とする基準が設けられました。この際、制度改正以前からの指定病院については、平成23年度末までの間、いわゆる激変緩和措置として、3,000人に満たない場合でも指定が継続されていました。平成24年度からは、従来の指定病院については、年間入院患者数が3,000人未満であっても、個別の訪問調査の結果、適切な指導・管理体制等があると認められた場合には指定が継続されることとなったものです。
 一方で、各診療科での研修に必要な症例については、例えば救急患者の取扱件数が年間5,000件以上、内科、外科、小児科、産婦人科及び精神科については、年間入院患者数100人(外科では研修医1人当たり50人以上)、産婦人科を研修する病院の分娩数は年間350件又は研修医1人当たり10件以上が望ましいとされています。
 これらの現状を踏まえ、論点としては、年間入院患者数については、引き続き「3,000以上」の基準を設けることについてどう考えるか。また、その2つ下、訪問調査については、3,000人未満の病院だけではなく、3,000人以上の病院に対しても実施することについてどう考えるか。その他の症例数について、現行の診療科ごとの必要症例数の取扱いについてはどうか。研修医1人当たり症例数を考慮することについてどう考えるか。このような論点が挙げられています。前回、本部会においても、例えば研修病院については、小さな病院でも熱心な指導者がいるところもあるが、一般論としては700床程度以上の病院であれば症例数を確保できるのではないかといった御意見を頂いています。
 9ページです。3)「指導・管理体制」については、現在、基幹型病院の指定基準として、研修管理委員会を設置していること、プログラム責任者を適切に配置していること、適切な指導体制を有していること、これは研修医5人に対して指導医が1人以上と定められています。また、原則として、内科、外科、小児科、産婦人科、精神科の診療科については、指導医の配置が求められています。
 論点ですが、それらを踏まえて、このような現行の指導・管理体制に関する指定基準についてどう考えるか。また、病院独自に必修としているものも含めて、必修又は選択必修になっている診療科についても、指導医を必置とすることについてどう考えるかということです。本部会でも、前回、以前は大学の医局で医師個人のキャリア形成を支援していたが、現制度が導入されて研修病院を自由に選べるようになったことで、帰学者以外はキャリア形成支援に責任を持つ人がいなくなった、という御意見を頂いています。今回、議論を賜りたい項目は以上です。
 続いて、事務局提出資料2「各論点に係る参考資料の概要」です。先生方には別ファイルでお配りしている参考資料のうち、今回の論点に係る部分について概要をまとめたものです。全て参考資料に記載していますので、読み上げは割愛させていただきます。
 次に、事務局提出資料3「専門医取得者数の推移?」です。これは、先ほど山下委員から御案内があったとおり、全国医学部長病院長会議からお出しいただきました、新規の学会入会者と専門医取得者数の年次推移です。
 3ページに、「広告可能専門医の取得状況」という棒グラフのペーパーを入れています。厚生労働省で行っています三師調査の中で、厚生労働省の告示の基準を満たした広告可能な専門医の取得状況を整理したものです。年次推移は把握できませんが、医籍登録後の年数によって分類した場合に最も取得率の高い、医籍登録後「15~19年」では67.7%となっています。全般的に6~7割が広告可能な専門医を取得している状況です。
 次のページに、「新たな専門医に関する仕組みについて」という資料を用意しています。専門医の在り方に関する検討会において、4月22日の時点で報告書をおまとめいただきました。この検討会には桐野部会長や小森委員もメンバーとして御参画いただいています。簡単に中身を御案内します。
 視点として、新たな専門医に関する仕組みは、専門医の質を高め、良質な医療が提供されることを目的として構築することとする。現状として、専門医の質の面では各学会が独自に運用していて、学会の認定基準の統一性、専門医の質の担保に懸念を生じている。地域医療との関係では、医師の地域偏在・診療科偏在は近年の医療をめぐる重要な課題である。
 このような現状を踏まえ、新たな仕組みとしては、まず、基本的な考え方として、専門医を「それぞれの診療領域における適切な教育を受けて十分な知識・経験を持ち、患者から信頼される標準的な医療を提供できる医師」と定義した上で、プロフェッショナルオートノミー(専門家による自律性)を基盤として設計する。さらに、中立的な第三者機関を設立し、専門医の認定と養成プログラムの評価・認定を統一的に行うこととされています。総合診療専門医については、中ほどに書かれていますとおり、「総合診療専門医」を基本領域の専門医の1つとして加えることが挙げられています。
 次ページです。専門医の養成・認定・更新については、医師は基本領域のいずれか1つの専門医を取得することが基本であるとされています。また、地域医療との関係では、専門医の養成は、大学病院等の基幹病院と診療所を含む地域の協力病院等が、病院群を構成して実施することとされています。それから、その3つ下にあるとおり、少なくとも現在以上に医師が偏在することのないよう、地域医療に十分配慮することとされています。スケジュールです。新たな専門医の養成は、平成29年度を目安に開始することとされています。その結果、期待される効果として、専門医の質の一層の向上(良質な医療の提供)、医療提供体制の改善とされています。
 続いて、事務局提出資料4「臨床研修制度に関する経緯」を御覧ください。前回の本部会において、中島委員から、そもそも現在の臨床研修制度に至るまでの経緯や見直し内容について確認したい旨の御要望がありましたので、概要をまとめました。2枚目の「臨床研修制度に関する経緯」にあるとおり、昭和23年のインターン制度が開始された当時の問題点として、身分や処遇が不明確、指導体制が不十分であるということを踏まえ、昭和43年に臨床研修制度が創設されました。これがいわゆる「旧制度」です。この際は、免許取得後、2年以上、努力義務として臨床研修が課されていました。その当時から指摘されていた問題点として、専門医志向のストレート研修が中心で研修プログラムが不明確である、受入病院の指導体制が不十分であるといった問題点を踏まえて、平成16年に今の制度が必修化として施行されました。その際にも、検討会や医道審議会において制度の見直しの検討が平成20年からあり、この中で指摘された問題点として、専門医等の多様なキャリアパスへの円滑な接続が妨げられる、受入病院の指導体制等に格差がある、大学病院の医師派遣機能が低下して地域における医師不足問題が顕在化した、募集定員が研修希望者の1.3倍を超える規模まで拡大し、研修医が都市部に集中した、などの問題点が指摘されていました。このため、平成21年に臨床研修制度を一部見直し、平成22年度の研修から適用しています。これが直近の見直しです。
 3、4ページは、これまでの経緯を項目ごとに整理したものです。このエッセンスをまとめたものが、5ページの「平成21年臨床研修制度の見直しの概要」です。見直しの趣旨は、臨床研修制度の基本理念の下で、臨床研修の質の向上を図るとともに、医師不足への対応を行うこととしています。見直しの内容は大きく3つの柱があります。1つ目は、研修プログラムの弾力化です。必修の診療科は内科、救急、地域医療とし、外科、麻酔科、小児科、産婦人科、精神科は選択必修科目として、この中から2科目を選択して研修を行うこととしています。一定規模以上の病院には、産科、小児科の研修プログラムを義務付けています。
 2つ目は、基幹型臨床研修病院の指定基準の強化です。これについては後ほど、少し詳細な資料を用意しています。3つ目は、研修医の募集定員の見直しです。これも後の資料で詳説しています。
 7ページを御覧ください。指定基準の見直しの中身です。改正前は、内科、外科、小児科、産婦人科、精神科の年間入院患者数が100名以上となっていましたが、改正後には、年間入院患者数が3,000人以上とされました。救急医療を提供していること、CPCを適切に開催していること、それから、指導医1人が受け持つ研修医は5人までとする。この辺りについては基本的に踏襲していますが、指導医の5対1については「望ましい」から「配置すること」と、必置とされています。また、これら指定基準は、従来、協力型病院と共同で満たせばよかったのですが、改正後には基幹型の病院が単独で満たすこととされています。
 8ページは、「都道府県別募集定員の上限の考え方」です。1つ目は人口分布、2つ目は医師養成状況、いわゆる医学部入学定員の割合に応じて、どちらか多い方に地理的な条件を加味した上で都道府県別の募集定員の上限を定めています。下の方の激変緩和措置で、「募集定員の上限が、当該都道府県内の研修医の受入実績より10%以上少ない場合には、この受入実績に0.9を乗じて得た数値とする」とあるとおり、受入実績の90%までは保証するということで、平成26年度に研修を開始する研修医の募集まで、すなわち平成26年3月まで措置されています。
 9ページは、「研修病院の募集定員の設定方法」です。例えば、A病院の前年度の募集定員を30名、過去の受入実績を3年間で最大20名を仮定します。その上で医師派遣を評価します。この場合は10名加算と仮定します。これは、医師を派遣している数が20名で1人プラス、5人増えるごとに1人ずつプラスして、マックス10名まで定員を加算する制度になっています。マックスの10名を加算した場合は、20名プラス10名で30名となりますが、都道府県上限との調整があります。病院の募集定員の合計が上限を超えているとき、募集定員の合計が100名、都道府県の上限が90名だった場合には、10分の9、100分の90を掛けて27名、これがA病院の募集定員です。B病院については、前年度が12名、過去の受入実績の最大値が10名と仮定した場合で、かつ、医師派遣の実績がない場合、加算はありません。ただ、一番右側にあるとおり、都道府県の上限との調整との関係は掛かってきますので、これも100分の90を掛けまして9名、これがB病院の募集定員になります。
 下の方に細かく書かれていますが、都道府県の調整については、都道府県別の募集定員の上限の範囲内で、各病院の募集定員を調整することができるようになっています。また、こちらも激変緩和措置がありまして、募集定員が前年度の内定者数を下回らないようにするよう、平成26年3月まで措置が実施されています。
 10ページです。以上のような制度の下で、平成24年度までの採用実績の経年推移を見たものです。6都府県が紫色、その他の道県が緑色です。平成24年度では、6都府県が46.7%、その他の道県が53.3%の採用実績です。
 次のページは、採用実績を大学病院と臨床研修病院で分けたものです。平成15年度以降はグラフのような推移で、最新では、臨床研修病院が55.6%、大学病院が44.4%となっています。
 12ページは、研修医のマッチングの推移です。最新のデータによりますと、6都府県が45.7%、その他の道県が54.3%です。
 13ページは、大学病院と臨床研修病院で分けた場合の推移です。平成24年度では、臨床研修病院が54.3%、大学病院が45.7%となっています。
 引き続き、事務局提出資料5を御覧ください。前回の部会において、基本理念での「プライマリ・ケアの基本的な診療能力(態度・技能・知識)」の文言についての御議論がありました。部会長から、アンケート形式で御意見を募るという御示唆を賜りましたので、委員各位に照会させていただきました。ここにまとめましたとおり、4人の委員から御意見を頂きました。左側の「修正等」です。1人目は、修正案として「医師としての基本的診療能力」、つまり、「プライマリ・ケアの」という言葉は要らないのではないかという御意見です。右側に理由を付しています。解釈の幅広い「プライマリ・ケア」を入れることに抵抗を感じる。「プライマリ・ケア」の前にかなりの説明があるべきなので、むしろ「医師としての基本的診療能力」でもよい。また、態度の中に含まれる「マインド」「気持ち」がもう少し強調されてもよい。2人目は、修正案として、「基本的な診療能力(態度・技能・知識)」とすべきであって、「プライマリ・ケアの」という文言は落とすべきだという御意見です。理由の記述はありませんでした。3人目は、加筆訂正の必要はないけれども、「プライマリ・ケア」については定義する必要がある、という御意見を頂いています。4人目は、「プライマリ・ケア」の文言を使用しない方がいいという御意見です。理由をかいつまんで申し上げますと、解釈が異なるようであれば、誤解を招かないように使用しない方がよいかもしれない。基本的診療能力についてのコンセンサスも必要である。将来、どのような分野に携わるかにかかわらずに必要な基本的臨床能力は共通のものだと考えているが、御意見が分かれるところである。医学教育学会から、「プライマリ・ケア」という用語については、世界の先進諸国では1つの専門領域として認識されており、2年間の臨床研修修了をもってプライマリ・ケアにおける十分な診療能力が身に付くという誤解を招く可能性があるので、この用語の使用は避けることが望ましい、という提言があった、という理由を頂いております。なお、本日の対象としている主な論点ではありませんし、また時間も限られていますので、改めて御議論いただくこととして、今回は以上を御案内するにとどめたいと考えています。
 事務局提出資料6は、「今後のスケジュール(案)」です。議論する項目の枠が前回から1つ下がって本日の日付になっている点以外は変えていません。
 別にお配りしている参考資料3を御覧ください。平成22年度厚生労働科学研究として、「初期臨床研修制度の評価の在り方に関する研究」の総括研究報告書の抜粋を用意しています。こちらは、前回の部会で山下委員から、桐野部会長の研究班で臨床研修旧制度と新制度を比較した研修医のアンケート調査を行った結果を、参考資料として提示してほしいという御要望がありましたので、その抜粋です。研究代表者は桐野先生、研究分担者は小川先生、山下先生にも御参画いただいています。かいつまんで申し上げます。
 1ページ、「研究項目」としては、(1)初期臨床研修を修了した医師に対するアンケート調査で、調査対象者は、新制度下の臨床研修修了者、すなわち平成16~19年卒業の医師と、それから、新制度前の臨床研修修了者、すなわち平成13~15年卒業の医師を対象に調査をしています。このアンケート調査については、全国医学部長病院長会議と共同で実施されています。回収率は、臨床研修病院が51.7%、大学病院が42.3%です。
 集計結果です。項目が多岐にわたりますが、その一部を御案内します。2ページの上から2つ目の段落で、学位の取得については、新制度の医師の2.5%、旧制度の医師の29.6%が学位を取得しています。新制度の医師の40.5%、旧制度の医師の47.4%が学位取得を希望しています。それから、少し下の方で、自身の受けた臨床研修の満足度については、旧制度で3.7点、新制度で3.8点です。その下、自身が臨床研修を行った病院の改善すべき点として、新制度の医師は、多くの診療科をローテートするため深く学べなかった、シミュレーターや図書など機器や設備が充実していなかった、手技を豊富に経験できなかったと答える医師が多かったのに対して、旧制度の医師では、研修プログラムが充実していなかった、多くの診療科を選択できなかった、手技を豊富に経験できなかったと答える医師が多かったという結果になっています。
 3ページです。考察・結論としましては、この調査によって今後の臨床研修制度の評価及び見直しに必要な基礎的資料の一部を提供できたと考える。その上で、最後にあるとおり、この調査結果については、様々な視点からの評価が必要であり、今後の議論に委ねたいとされています。
 以降の資料については、個票なので説明は割愛させていただきます。以上です。
○桐野部会長 いろいろ足早に説明していただきましたが、本日については、2つの論点に御議論を集中していただきたいと思います。即ち必要な症例数の問題と、指導管理体制についてです。もう終わりの時間なのですが、一番最初のときに30分だけはいつも延ばしますよというお話をして了解を頂いておりますので、あと20分、まず第1に、必要な症例について御意見がありますでしょうか。
○神野委員 実際に3,000人より少ない病院に関しては訪問調査を行っているわけですよね。その訪問調査の結果を伺えば、何ら問題はないということです。ならば問題ないと、理論的にそういうことになるのではないかと思います。
○桐野部会長 もちろんそうなのですが、結果は臨床研修を継続的にやっておられる所については、多くの病院においてしっかりやっておられるという結論であって、やっておられない所については何のデータもありません。ただ、その点はちゃんと御留意いただきたいと思います。
○山下委員 基本的に、事務局提出資料2で必要な症例うんぬんと。結局、条件闘争のようにして、何人がどうのこうのというのは、もうやめていただきたいというのが結論です。前から、小川彰先生がおっしゃっているように、病院群を作ってくださいと。それによって研修の質を上げるんですという議論をしていただきたいと思うのです。先ほど精神科の先生方がおっしゃったように、一般の診療科と精神科というのが連携しなければいけないとか、非常に高度な医療をやっているか、コモンディジーズか、それは問いませんが、とにかく大きな枠組みでいろいろなことが診療科、チームとして協力できるような体制を取らなければいけないということ。それから事務局資料2に書いてありますが、満足度を見たときに、必修症候、疾患の経験率は、やはり大きい病院が多かった。
 要するに両方必要だということで、これは前から小川彰先生がおっしゃっているように、大きな病院が全ていいとは言いませんが、外形基準として、例えば600床規模の病院と、地域で頑張っておられる病院を、両方合わせたような形でプランを立てる。そしてそこに指導医がちゃんといますよという。だから何人いてどうのこうのという、5人ならいいのかとか、3人でなきゃ駄目だとか、3,000人がいいかどうかという話になってくると、これはもう先ほど小森先生が正におっしゃったように、みんな入れてくれと言っていると、どうやってそこで決めていくのだという話になってくると思うので、私はそれを提案したいというのが1つあります。
 本当に外形基準でやるとすれば、必要な症例数、例えばお産は何例、精神疾患は何例、それを全部見られるような症例数を全部積み上げると、多分3,000は優に超して5,000とか7,000になってくると思います。それでいいのだったらそれでいいのですけれども、やはりきちんとしたコンセプトとして、数字の問題ではなく、要するにネットワークを作る。そのネットワークを、どのようにして研修の質を担保するかという議論にしていただきたいと思います。以上です。
○小西参考人 産科婦人科学会としてお願い申し上げます。今でも経験すべき分娩数というのは規定がありますので、是非このままこれをお続けいただきたいと思っております。やはり産婦人科研修は、産婦人科に行かなくても見たいという方は非常に多うございますので、必ずこの規定だけは続けていただきたいと思っております。
 また、次回以降のディスカッションになりますが、小児科、産科特例プログラムに関しては、産婦人科に関しては、まだまだ医師数が足りないということがありますので、是非お続けいただきたいというように希望させていただきます。
 それと、産婦人科の研修に関する様々な御意見が書かれておりますが、特に、事務局提出資料1の6ページのワーキンググループの主な意見ということで、「例えば、産婦人科において、臨床研修中に出産を何回か経験することが、将来的に産婦人科以外の分野で役に立つか否かは疑義があり、現実には出産の際の単なる労働力確保のような形になっているのではないか」というようなことはありませんので、これは削除していただきたい。エビデンスをもって、こういうことを書かれるということはないと思いますので、こういうことを書かれる自体、産科婦人科学会としては非常に怒っておりまして、何でこんなことを言われなければいけないかと思っております。これは是非とも削除していただきたいということです。以上です。
○医師臨床研修推進室長 ワーキンググループでの主な意見ということで、ワーキンググループの論点整理の中で、いろいろな御意見があるもののエッセンスを掲げさせていただいています。
○小西参考人 意見と言っても、様々なプライベートな主観的な意見や個人の意見。書く以上、はっきりエビデンスを持ってこういうことを言われるのかどうかということを、是非精査いただきたい。きちんと検証されて、精神科もそうでしたが、産婦人科はよかったという意見が非常に多いので、1人の意見を取り上げるということ自体がいかがなものかと思っております。
○医師臨床研修推進室長 御意見は御意見として承りますが、これは繰り返し申し上げますが、ワーキンググループで論点を整理をした、そのワーキンググループの主な御意見を踏まえた上で、今は本部会として御議論を賜っているものですから、本部会としてワーキンググループの意見を修正するということは難しいのではないかと思っています。
○小西参考人 ワーキンググループで意見があったということを書いていただきたい。
○桐野部会長 ワーキンググループは、10回ぐらい。
○医師臨床研修推進室長 10回程度です。
○桐野部会長 非常に時間をかけて、この問題点の議論をしておられて、議事録も全て公開されておりますが、ただ、今、検討しているここでは、その意見に縛られるということはありません。3,000例というのは、前からいろいろ多数の御意見がある点なのですけれども。
○清水委員 基本的に、何人で切る必要はないのかなと思っていて、やはり研修病院の質を担保できていればいいのではないかと思っています。したがって、事務局提出資料2にもありますように、例えば小規模研修病院の質が良ければ訪問調査のほうが有効というような、質を検討するのに訪問調査が有効といった御意見もありますし、病院群を作って、質を高めるというのは、方策の1つだとは思うのですが、外形基準を決めるということに関しては、訪問調査によって個々の病院を検討することが一番有効なのではないかと思っています。
○小川委員 先ほど山下先生からお話をいただき、今のお話にもありましたが、要するに数ではなくて質であると。そういう意味では、臨床研修病院群の形成を促進するということが省令でもうたわれているわけですが、実際にその中身を見てみますと、非常にお寒い臨床研修病院が全国にたくさんあるということは明らかなのです。例えば岩手県や山形県については、岩手県では、イーハトーヴ臨床研修病院群ということで、全て大学と県内の研修病院は連携をして、お互いに管理型、協力型になって、全て襷掛けになっています。山形でも蔵王協議会というのがあって、それに近い対応を取っているわけです。
 それに対して、例えば全国のいろいろな所の臨床研修病院群を見てみますと、その辺の小さな病院が基幹型病院で、隣にある開業の先生の病院が2軒だけ協力病院で、臨床研修病院群と言っているような場所もある。それから、更にとんでもない臨床研修病院群もあるわけです。北は北海道から南は石垣島まで、30箇所の病院を臨床研修病院群として、その中で例えば東京の基幹型の病院で研修している人が、北海道に行ったり、あるいは石垣島に行ったりすることができるはずがないでしょうと。そういうような、臨床研修病院群とは言っても全然内容が伴っていない研修病院群があるので、私としては今回の見直しのときに、これをきちんとやっていただきたい。これが質の担保なのです。
 ところが、事務局提出資料6で、「臨床研修病院群の形成」というのは、どこで議論されるかというと、6月の「中断及び再開、修了」、そして「その他」の3つのものと一緒に議論をされるわけですから、これで十分な議論ができるはずがない。ですから、この辺のことを、きっちりこの部会として検証し直すのだということをしていただきたいと思っています。
○小森委員 ワーキンググループに参加をした者として、確かに調査に入ったのは27病院ぐらいだったかなと理解をしておりますが、その中では病床の多寡にかかわらず、かなり研修をしっかりしていらっしゃるということでしたが、その解釈については桐野部会長のとおりでいいと思っております。では、何でもありかというと、そうではないわけです。各地域によって、相当事情がある。例えば東京、大阪といった所と石川県、岩手県、山形県、様々な事情がありますが、基幹型病院と臨床研修病院群を作るにしても、総体としてその中での入院患者数を決めるにしても、その内容は様々です。
 平成16年からかなり年月が経ってきていますし、臨床研修病院又は基幹型を中心とした臨床研修病院群等には、おおむねDPCも採用しているわけですから、入院患者についても症例の内訳等の情報を収集をしながら、その病院群が一体どういう質の患者さんを診ているのかということ、又は研修される方がどういう疾患の患者さん、どういう病態像の患者さんに接しているのかということを、評価していくということが大事なのではないか。3,000というのは、エビデンスがない数字ですので、ここにこだわる必要はないのだと思います。
○河野委員 私も前から申し上げていたのは、やはり、ここの臨床研修制度の外部評価システムが確立されていないということが一番問題で、3,000未満の所には訪問の調査が入りますが、3,000以上には入っていないということもありますし、実際はその病院の中に、先ほど小川先生もおっしゃいましたが、その研修体制が万全かというと、どうだろうかと思わせる所もないわけではない。他の国を見ましても、研修に対しては必ず第三者の評価機構がありますよね。それを整備するということと抱き合せでいかないと、これは3,000という数だけを議論しても、なかなか難しいのではないかと思います。
○桐野部会長 今、河野先生がおっしゃった評価というのは、当然評価機関もありますが、例えば5年に1回とかぐらいの頻度で仮に評価するとなると、現状では年間200を評価していかないといけないということになります。200を評価できるかどうかというのは、その評価機関の能力によると思うのですが、ぎりぎりできるという御意見を伺ったこともあります。そういうことをおっしゃっていると理解してもよろしいですか。
○河野委員 日本医療機能評価機構などありますよね。実際はああいうイメージを持っていまして、何日間かの、その前の書類審査等々で考えれば可能かなというイメージなのですが、先生がおっしゃったのは、物理的に難しいというような状況なのでしょうか。
○神野委員 この臨床研修病院だけの評価という手もありますが、日本医療機能評価機構の普通の病院機能評価でも、臨床研修病院用のいろいろな聴取項目等々がありますので、例えば日本医療機能評価機構等ですよね。ねばならないということはないけれども、何らかの評価を受けたというぐらいは条件にしてもよろしいのではないかと思います。
○桐野部会長 確かに3,000例というのは、非常にアクティブな病院であれば、平均在院日数が15日ぐらいで、稼働率が90%だとしても、150ベッドぐらいで実現できるのです。そういう意味では日本全国もっともっとたくさんになってしまって、実務的にそれを全部訪問調査をするということになると大変なので、やはりある所で1つの閾値を設けるというのはプラクティカルな判断かなと思います。それより多い病院は、もうそれだけの外形標準で十分大丈夫というわけではないので、義務的にできるということであればいいけれども、少なくとも努力目標として、評価を第三者機関から受けるということを、もし可能ならば今回考えてはどうかなとも思っております。
 3,000というのは、歴史が古いらしくて、旧制度では3,000例以上、300ベッド以上というような仕組みだったと思うのですが、今回は3,000という、非常に単純な外形標準を設けて、現状では3,000に満たない所については、逐一訪問調査をして、チェックをして大丈夫という。幾つか大丈夫でなかった所もありましたが、そういう状況になっておりますが、この件についてはいかがですか。
○山下委員 河野先生がおっしゃったことがポイントだと思うのです。とにかく3,000を超えていればいいというのは、余りにもラフすぎる。小川先生がおっしゃったように、いろいろな所、日本全国かき集めて3,000と言われても、はっきり言って困るのです。基幹型だからそれはないか。いずれにしても、150床とか200床で頑張っておられる所があるというのは分かりますが、そうではなくて、1つのポイントは、要するに教育の質。それを担保するものとしては、1つの数字だけではなくて、小森先生が言われたように、どういう種類の疾患がその中に含まれているかと。それはDPCできちんと裏は取れるわけですので、組み合わせるとか、実際にどういう研修をさせたいのかというところから入った数にしてほしいということと、もちろん3,000という数字は、私はもともと認めていないのですが、やはり、3,000を超えても全部にチェックは入れたほうがいいと思います。
○中島委員 ある程度の評価、評価するに当たっては、そのケースの数によってランダマイズさせるときの密度を変えるとか、いろいろな方法があると思うのです。それをやったらいいと思うのです。ただし、余り画一化しようという意図が働きすぎると、私は研修制度というのは失敗すると思います。ちっとも学校に行かず、ちっとも勉強しなかった私がこんな委員になっているわけですから、そのことを忘れないで、皆さんしっかり頑張ってもらいたいと思います。
○桐野部会長 もう時間がなくなってしまって、後半に入ればもっと議論の時間が増えてくると思いますが、このあと、各県別の研修医の数の問題もありますし、なかなか大変な問題が待っております。もちろん3,000というのが本当に合理的かどうかという議論は、以前から何度も繰り返されていて、これには客観的・合理的な根拠はないというのが一応のコンセンサスだろうと思います。しかし、それを全部外してしまうと、できないということもあって、仮の数として3,000は置いて、取扱いとしては、現状では3,000以下だと全部訪問調査を受けなければならないということになっていて、3,000以上であればおかまいなしと。それはちょっと片手落ちであるというぐらいは、今回の報告書のようなものをもし書くとすれば、そういうニュアンスを含めたものを書いたらどうかと思いますが、いかがでしょうか。もちろん、最終案のときに、また御意見があればおっしゃっていただきたいと思います。
 それから、指導管理体制については何か大きく変えるべきであるという御意見はございますか。
○清水委員 プログラム責任者に関してなのですが、プログラム責任者がいるかいないかということがボトルネックになっているというような議論が一度あったかと存じますが、やはりプログラム責任者講習会の回数を増やしたりなどの対策を取っていただくとして、プログラム責任者は、新しい制度においては研修が達成できているかどうかをみる大事な役目の方ですので、その方をやはり必ず1人は置いてほしいというように希望をしております。
○桐野部会長 いかがですか。
○神野委員 賛成です。
○吉岡委員 本当に指導者講習をきちんと受けたかどうかというのは、絶対に確認しなければならない。プログラム責任者が医師としてのマインドを与えると言いながら、一体誰が責任を持つのかということがないままは、あり得ないと思います。受けようとすれば受けられるのですから、研修をやる病院がそのことがボトルネックになることはあってはならないと思いますので、必須だと思います。
○桐野部会長 初期臨床研修制度はそろそろ10年になるので、やはり前よりは少しずつ少しずつよくなっているということをしていかないと、制度としていかがなものかと言われかねないと思います。一応、今の清水先生の御発言については、反対は少なくともないということでいいでしょうか。そのほかに何かございますか。
○小川委員 その他でよろしいですか。ちょっと田原課長にお伺いしたいのですが、臨床研修医の予算につきましては、平成25年度、増額を予定して申請をしたのだけれども増額されなかったということをある所で聞いたのですが、それが事実かどうかということと、それから、医師確保総合対策と緊急医師総合対策で、入学定員が各大学で増えた学生が来年から卒業していくと。そうしますと、今までどおりの臨床研修医の予算であれば、せっかく卒業生は増えたのだけれども、臨床研修医になれないから、国家試験を難しくして、もっと減らすということになるのだったら、何のための定員増かということになるのです。その辺は大丈夫なのですよね。
○桐野部会長 その点、非常に重要なポイントなのですが、お答えいただければお願いします。
○医事課長 医事課長でございます。遅れてきて申し訳ございませんでした。補助金のことですが、臨床研修の補助金は、今年度で121億円ございます。平成24年度が132億円ですので11億円減っているわけですが、やはり財政が非常に厳しい中、10%減らすという基本的な方針がある中で減額をしているという状況です。来年度、入学定員が増えたことで研修医の数も増えるということですが、そこにつきましては、必要な予算が確保できるように努力をしてまいりたいと考えています。以上です。
○桐野部会長 一応お約束した時間と5分ほど。
○中川参考人 ちょっといいですか。お願いなのですが、事務局提出資料5、プライマリ・ケアなのですが、これ、医療界に根付いていますので、あまり変えられると起きなくてもいい混乱が多発すると思います。是非慎重な御議論をお願いしたいなと。医師法改正にまでつながるのではないですか。医師法にプライマリ・ケアと書いてあるのです。是非慎重にお願いしたいなと思います。
○桐野部会長 今回については、激変緩和措置を外すというようなことがありまして、それもここの御議論によるのですが、そういうこともあって、ものすごくドラスティックな方法から慎重なところまで、いろいろなスペクトラムがあり得ると思います。今、先生がおっしゃったこともよく念頭において、今後議論していきたいと考えております。
 それでは、十分議論したとまでは言えないのですが、今日の議論の必要な症例及び指導管理体制については、先ほど申し上げましたようなことを、この会の現在のテンタティヴな仮の結論として、最終的な報告のところで、またいろいろ御審議をいただきたいと思います。それでよろしいでしょうか。
○医師臨床研修推進室長 次回ですが、次回は来月、5月を予定しておりますが、詳細が決まり次第、また御案内したいと思います。以上でございます。
○桐野部会長 それでは、皆さんどうもありがとうございました。


(了)

照会先
厚生労働省医政局医事課
医師臨床研修推進室

直通電話: 03-3595-2275

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