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2011年2月21日 第5回 感染症分科会予防接種部会ワクチン評価に関する小委員会 議事録

健康局結核感染症課

○日時

平成23年2月21日(月)
          10:00~


○場所

厚生労働省共用第8会議室(6階)


○議事

○予防接種改革推進室次長 1時間という時間でもありますので、会のほうを始めさせていただきます。よろしくお願いします。まず、事務局より、出席状況ですが、本日は宮崎委員がご欠席です。いま、岩本委員がちょっと遅れられていますが、ご出席の連絡をいただいております。現段階で、6名中4名の委員のご出席をいただいていますので、会議は成立しますことをご報告申し上げます。
 また、本日は、ポリオワクチン、百日せきワクチンの作業チームから「作業チーム報告書」についてのご報告をお願いしています。説明いただく参考人ですが、百日せきワクチンの作業チーム、国立感染症研究所の砂川先生にご出席いただいています。また、医療経済評価に関する参考人として、東京大学大学院薬学系研究科助教授の五十嵐先生にご出席いただいています。また、ポリオワクチンの作業チームですが、少し到着が遅れられていますが、国立感染症研究所の清水室長にご説明いただく予定です。それではここからは、岡部委員長に議事の進行をお願いします。
○岡部委員長 おはようございます。いま、事務局から説明がありましたように時間が非常にタイトなので、かなり重要な議題ではありますが、要領よくやらなければいけないので是非ご協力をお願いします。それでは最初に資料の確認をお願いします。
○予防接種改革推進室次長 それでは、簡潔にさせていただきます。お手元に座席表、議事次第、それから資料配付一覧があります。資料1、資料2、それから資料3-1と3-2です。こちらは作業チームの報告書(案)です。それから資料4-1、4-2、それぞれ1枚紙ですが、3枚になっています。資料5がワクチン評価に関する小委員会報告書の(案)です。参考資料1、参考資料2が付いています。最後に、本日はもうお時間がないというので、恐縮ですが、のちほどでも意見がお伺いできるようにということで1枚紙を付けています。併せて、進め方だけ簡単にご説明いたします。
 資料1ですが、1枚目の下のほうにスケジュールが書いてありまして、平成23年2月21日、本日ですが、本日はこれまで9つの疾病ワクチンについて作業チームで作業をしていただいておりますが、本日は残っております百日せきとポリオについてご議論いただき、次回、可能であれば小委員会の報告の取りまとめをお願いしたいと思っております。これまでご議論いただいた部分についての(案)を出しておりますので、それについてご議論をいただきたいと思っています。次回ができましたら取りまとめをお願いしたいと思っています。
 資料2は「ワクチン接種の費用対効果推計法改訂版」と書いてありまして、平成23年2月21日バージョンとなっています。1頁の下のところに「単年度の費用比較分析においては割引率を考慮しない」ということで、これまでは3%を前提と書いておりましたが、こちらのほう、まず、基本は考慮しないという形で改定をしていただいています。これにつきましては、のちほどディスカッションの中で池田先生から補足等をいただければありがたいと思っています。
 それからもう1点、2頁の「分析手法」のところで、3行ほど書いてありますが、比較分析を基本とすると。これまで費用効果分析を基本とするという書き方になっていたのですが、費用比較分析を基本とし、というところの改定をしていただいています。これに基づきまして、また、のちほどディスカッションのときに補足いただけたらと思います。特段に意見がなければこちらのほうでご了解いただければと思っています。簡単ではございますが、以上です。
○岡部委員長 どうもありがとうございました。資料の過不足についてはその都度、事務局のほうにお伝えいただければと思います。それでは早速、議事に入りたいと思いますが、ポリオのほうは清水先生がちょっと遅れているようなので、百日せきのほうから先にいきたいと思います。これはチームのまとめ役だった砂川先生のほうからお願いします。
○砂川参考人 おはようございます。国立感染症研究所感染症情報センターの砂川です。私は百日せきの作業チームの代表ということで取りまとめをさせていただきました。作業チームの構成メンバーですが、私の隣にいる五十嵐先生、それから岡田賢司先生、蒲地一成先生、中山哲夫先生、原めぐみ先生、それぞれ医療経済や臨床基礎研究、そして疫学という専門分野の方々です。これらの先生方と一緒に、平成22年7月に出されましたファクトシートをベースにしまして、それに追記する内容、それから医療経済につきましては、新たに加える内容ということを足していきました。私に与えられた時間が10分以内なので、この作業チームの報告書の内容に従いまして進めていきたいと思います。
 1頁から3頁までが医療経済に関する「ファクトシート追加編」です。私は4頁の「評価・分析編」のお話をさせていただきます。
 百日せきですが、これは予防接種でコントロールをするべき病気であるというものでありますが、ワクチンが導入される以前は10万人以上の患者さんが発生し、その10%も死亡するという非常に重篤な感染症でありました。しかしながら、ワクチンの導入以降、2006年は1万人まで減少するというような状況がありましたが、その頃から、どうも百日せきの疫学に明らかな変化が生じてきたという状況がありまして、小児科定点の病気ですが、20歳以上の成人例の割合が年々増加いたしまして、2007年以降は大学とか、そのような成人を中心とする集団感染事例が起こっています。2007年以降に増加しましたこの病気の状況ですが、2007年の全国罹患数は2.4万人で、このうち乳児が約5,000人と推計されています。この5,000人という数字は、あとで医療経済のところでも重要な数字になってまいります。
 百日せきの病気の特徴ですが、やはりワクチンを接種していない赤ちゃんの場合に重篤になることがあるということです。それに対しまして、成人が罹患した場合には、いろいろな集団発生をみてきましたが、その症状は非常に軽い場合が多いということで、乳幼児にみられるような脳症や死亡例という重篤な症例は、0.1%以下であるということが言われています。また、この百日せきは麻疹並の感染力を持っている病気であります。1人の患者さんが免疫のない集団の中にある場合に、20人強ぐらいまでの人に感染を起こす可能性があるということで、これが家族の中で発症した場合に、家族内の感染率が約50%程度に達する場合もある。それから不顕性感染も非常に高い割合、報告によっては50%弱程度まで上がる場合もあるということで、家族内の二次感染率が問題になってきますが、成人においては12%前後、乳幼児においては29%という報告などもあります。そのようなことで、乳幼児においては重症度が高いけれども、成人においてはそれほど顕著ではないという病気になっています。
 また、最近の成年・成人層の感染増加の原因としまして、この感染を一旦起こして免疫ができても、これが生涯免疫を誘導し得ないことがあるのではないかということが言われています。ワクチンによる免疫の持続期間は4年から10年とする教科書的な報告が多いという状況になっています。なので、成年・成人層、特に予防接種を1回している者については、2週間以上の長引く咳であるとか、時々発作性の咳を起こすようなことがあるということで、非常に診断が困難な状況で、その間に乳幼児に感染を伝播して重症化を起こすリスクがあるということで、早期の重症化や死亡を防ぐために、まず、全体のその患者数を減少させる対策が急務であると言われています。
 この感染源、感染経路に対する対策ということで、この症状が非典型的な成年・成人層への対策が国際的に諸外国においても注目されており、対策がなされている状況です。これは、あとで述べます。この百日せき菌は咳の分泌物による飛沫とか、そういったものにより感染を起こします。非常に高い確率で、狭い空間などにおりますと、感染が容易に拡大するという状況です。この治療については、予防接種、マクロライド系の抗菌薬が有用で、予防投薬として行われた場合には、5日以内に感染性が減弱するということも言われますが、最近では、耐性菌の出現などの情報もありまして、そういったものに関してもやはり予防接種による対策が重要になっています。
 次頁の「予防接種の効果・目的・安全性等について」ですが、百日せきの予防接種をすることによって得られた非常に大きな知見が、1975年から80年頃の百日せきのワクチンが一時的に接種率が非常に低下したという状況があったときに、患者さんの大幅な増加があったという現象がありました。それからいたしましても、集団免疫の必要性を指摘する最も重要なワクチンの1つになっています。
 先ほど私、4年から12年ということが見積もられるというお話をしましたが、いま現在起こっている流行の中心が、中学校、高校、大学というところの成年、もしくはもっと高い年齢になってきているということもありますので、予防接種の免疫効果が乳幼児期の接種だけでは足りない状況になってきているのではないかと推察されまして、この11歳から12歳頃の百日せきワクチンの追加接種を行うことが重要な政策になってくるのではないかと思われます。
 繰返しになりますが、この11歳、12歳頃への追加接種を行うことで、全体としての百日せきの数を減らす、その結果、致死率の高い生後3か月未満のまだ予防接種を受けられない弱者の赤ちゃんたちに対する直接的な感染伝播を抑制するということで、集団効果(herd immunity)も期待したいところがこの予防接種の目的としてあります。
 いま現在の三種混合として行われている予防接種ですけれども、以前は全菌体ワクチンが用いられていた状況がありましたけれども、それから副反応を引き起こす菌体成分を除いた精製ワクチンがいま現在使われておりまして、非常に高い安全性が確認されています。
 次頁です。成人百日せきの増加に対して、どのような予防接種をしていくかになります。これはのちほどちょっと話が出ますが、外国、特に米国などでは2005年からTdapという予防接種、これはそれぞれの成分の比率を変えたものですが、それが導入されておりまして、これがほかの国々、欧米諸国においても用いられて効果をあげつつあるという状況があります。日本国内においてはこのTdapがまだ開発されていない状況がありますので、この成人百日せきの増加に対応するための緊急的な研究課題ということで、厚生労働省研究班並びに日本ワクチン学会が主導するとした研究として、11歳から12歳という、通常DTワクチンを接種している年齢の方々に対するDTaPワクチンの臨床研究が実施されました。この結果は学術論文にも掲載されています。
 臨床研究は非常に重要な結果が出たわけですが、国内で製造されましたDTaPワクチンを11歳から12歳の約550例の方々に接種しまして、免疫原性については、0.5ccの場合、使われているワクチンとほぼ同等の効果がある。そして安全性につきましては、副反応の出現頻度が多くなるということはないという状況がありました。なので、いま日本ワクチン学会のほうからの要望書などの情報もちょっと見ましたけれども、日本ワクチン学会では今回の研究結果に鑑みまして、DTaPワクチン接種に関する要望書を提出する予定であると聞いています。
 医療経済的評価は私の専門ではないので非常に簡単に述べますが、隣の五十嵐先生から、もしかしたらあとで補足があるかもしれません。外国などで産出されている効果のものをみますと、基本的に百日せきワクチンにつきましては、ワクチン投与は費用対効果に優れると結論している研究が多いようですが、これは基本的な情報としまして、集団免疫の効果に対する情報であるとか、それからベースラインの罹患率という情報が必須のようです。
 そういった意味で、日本国内の百日せきワクチンの疫学がいま、サーベイランスが小児科定点のみで行われているという状況がありまして、なかなかこれがきれいに算出することが難しいようですが、厚生労働科学研究の情報の中では、11歳から12歳のDTワクチンをDTaPワクチンに変更するということで、これを費用効果分析で見ますと、70.3万円/QALYという結果が出たということで、これは一般的な閾値である500万円をかなり下回るという結果のようです。
 それから、これは我が国のサーベイランスの報告として、先ほど2007年に乳児の感染者の推定が5,000人であると言いましたが、出生数当たりで計算しますと、この数値が更に下回る状況になります。確か、32.5万円まで下がるということで、我が国のサーベイランスの結果の情報などを用いても、この費用対効果は優れているのではないかと推察されています。そういうことで、これは経済的にも有効であろうということです。
 さて、このワクチンを成年・成人層、11歳から12歳に導入することで、どのような効果が得られるかと言いますと、例えば欧米でこのTdapを導入された際の有効な状況としましては、これはそれほど情報がたくさんあるわけではないのですが、例えば百日せきの流行に対し、このTdapの導入に伴いまして、有効率が65.6%とか78%という報告が得られています。いま現在の状況としまして、DT2期というものをDPTの0.2ccという現実的な案が我が国において考えられる1つの方法ではないかということがあげられています。
 その結果、作業グループとしましては、最後の「総合的な評価」に入りますけれども、成年・成人層における百日せきの流行が制御できないということがありますので、11歳から13歳未満の小児を対象にDPTの接種を導入すべきである。それから、この年齢のみならず、乳幼児の両親であるとか、医療従事者へのワクチン導入体制に向けた研究の推進が必要であるということ。それから、このようなワクチンの有効性であるとか医療経済性に関する知見を集めるためにも、サーベイランスの全数化が必要ではないかということで、このサーベイランスの整備についても一言言及しています。
 以上が作業チームからの報告です。どうもありがとうございました。
○岡部委員長 どうもありがとうございました。現在の百日せきを巡る問題と、そこから考えると、従来の子どもへの百日せき対策だけではなくて、結論はこの11歳以上13歳未満の小児を対象としてDTPへの接種が望ましいというところが最終的な結論だと思いますが、委員の先生方からご意見がありましたら、どうぞお願いします。
○岩本委員 結論に賛成で、特に意見もないのですが、1つ伺いたいと思います。ワクチンの安全性の問題から子供達にワクチンを打つのは生後3か月目以降になる。一方で、百日せきで死亡する子どもたちには3か月未満が多い。したがって、社会の中で百日せきを減らすことによって、3か月未満の子どもたちが感染するのを少なくしよう、というのは非常によくわかるポイントだと思います。我々の学生時代に、母親から子どもへは胎盤を通じて抗体が移行するので、生後6か月くらいはあまり病気にならないと習いました。接種後10年ぐらいで免疫が切れるので、11歳ぐらいをワクチンターゲットにしようという論点はよくわかるのですが、一般論として、例えば母親から子どもへの胎盤移行抗体で、生後6か月ぐらいまでの子どもは病気をしにくいというのは、いまも認められる概念ではないのか。母親の抗体が高ければ、乳幼児はもっと百日せきになりにくいのかという質問です。
○岡部委員長 移行抗体についてです。
○砂川参考人 この移行抗体のことにつきましては、この予防接種とか、いわゆる生涯免疫を誘導しないというのがこの感染においても言われていますので、移行抗体が十分でない状況で出生してしまうということに対しては、なかなか難しいのではないかと思います。
○岩本委員 昔、百日せきがいっぱいあって、いろいろな人が百日せき菌で感染していた時代と、おそらくいまと既に違うと。教科書もちょっと変えなければいけないのかもしれないですね。
○岡部委員長 例えば、破傷風なんかは妊娠中の母親に接種をすることはあるのですけれども、常に感染症とその新生児の問題は、その都度変えていかなければならないとは思いますが、いまの現状はやっぱり全体の百日せきを少なくしていくということで、妊婦のワクチンとか、あるいは新生児にすぐにやるというような状態までには至っていないけれども、その前に打つ手があるということだと思います。ほかにご質問があれば。結論としては明快な部分だと思うのですが、あとで総合的に話をするとして、次はポリオのほうに話を進めたいと思うので、清水先生、よろしいでしょうか。
○清水参考人 それではポリオワクチン作業チームの報告書の説明をいたします。作業チームの中島先生、中野先生、田島先生、大西先生を代表して、私、国立感染症研究所ウイルス二部の清水が説明いたします。
 ポリオに関しては、他のワーキンググループと多少違うところがあります。1つは、この作業チーム報告書の取りまとめに当たっては、医療経済の専門家の先生が加わっておりませんので、ポリオに関しては、医療経済に関する詳しい解析はしていないということです。現実に今の日本では製造承認を受けた不活化ポリオがないことと、医療経済の解析をして、そのコストではIPVよりOPVのほうが安いからOPVという話にはならないだろうということで、医療経済的な解析はしておりません。
 また、ポリオに関しては、定期予防接種がないワクチンに新たな定期予防接種ワクチンを導入するということではなくて、いま既に定期予防接種として使われているOPVから、今後はできるだけ早くIPV含有ワクチンに変えていくことで、定期のないものに定期を導入するというのとは考え方が少し違うかなということです。ご存じのように、IPV含有ワクチンに関しては、いま日本では製造承認申請を受けて使えるようになっているワクチンがありません。今後これが開発に導入されてくるということから、未確定の情報を基にある程度議論をする必要があったことをご理解いただければ幸いです。
 今日は時間が限られておりますので、作業チーム報告書の中の「評価・分析編」の内容について、簡単に説明いたします。疫学情報としては、日本では野生株ポリオの伝播が30年以上認められていないのですが、世界的にはWHOが今のところまだ認定している4カ国がポリオ流行国として残されております。インドとナイジェリアに関しては去年の終わりぐらいからかなり減っていますが、まだ流行国があって、流行国以外にも野生株ポリオが再流行を起こす、伝播するということでは、去年のタジキスタンの例もありますが、そのような流行のリスクはワクチン接種をしていない所を中心としてまだ存在するわけですから、OPVにしろIPVにしろ、ポリオワクチンそのものをやめるということは、未だに高いリスクがあるということです。
 日本では、野生株ポリオの伝播が収束してから認められるポリオ患者というのは、ワクチン関連麻痺症例によるものであるということです。ワクチンを飲んだご本人、家族、あるいは二次感染によるVAPP患者が常にOPVを使っている以上は、日本ではまだ認められているということで、予防接種の効果・目的・安全性の面では、OPVあるいはIPVは海外ですが、優れた有効性及び安全性が既に確立していますし、OPVに関しては価格あるいは利便性、接種に関する簡便性といったところで非常に優れたワクチンとして現在も世界中、特にポリオ流行地周辺国で広く使われています。ただ、先ほど言いましたように、OPV接種に伴うワクチン関連麻痺のリスクというのは避けようがありませんので、このところを鑑みて多くの先進国ではOPVからIPVへの変更が進められております。ワクチン接種者自身のポリオ発症リスクや二次感染のリスクをできるだけ除去するために、IPV含有ワクチンの導入が進められているということです。
 現在、我が国ではIPV含有ワクチンが開発されていますが、特にヒトでの有効性、安全性についてはまだ報告されていないため、どれだけの接種率があればポリオコントロールに確実だとか、そのようなデータに関してはまだ不確定な部分がありますが、一般的には現在使われているOPVと同等以上の接種率があれば、ポリオコントロールは可能である。それから、いま開発しているワクチンはおそらくDPT-IPVという混合ワクチンですので、接種スケジュールに関しては、いまのDPTワクチンの接種スケジュールを参照するというか、それに対応した形の接種スケジュールとなって、4回程度のスケジュールで接種率が高く維持されれば、ポリオコントロールには十分な集団免疫が維持可能であると考えられます。ただ、それに関しては新しいIPV含有ワクチンということですので、短期的及び長期的な効果を流行予測調査事業等により、導入後も検討していくことが大変重要であるということです。
 いま申しましたとおり、IPVの接種スケジュールに関しては、現在使われている接種スケジュールが参考になると思います。ただし、導入時において、これは我が国でIPV含有ワクチン導入に向けてということになるかと思うのですが、海外においてもOPVから直接IPV含有ワクチンだけにするか、あるいはIPVを接種してからOPVを接種するという併用期間を設けるか、それも、ずっと併用するのか、一時的に併用するのかといった検討がこれから重要になってくると。それも含めて、IPV導入までの端境期に、IPVでもOPVでもポリオワクチンに対する接種率が下がることがないように、慎重な対策及び配慮が必要だと考えられます。
 現状はDPT-IPVだけではなく、IPVだけの単身のワクチンは開発されていませんし、開発の予定もないと伺っておりますので、例えば端境期にDPTだけを受けた人に、どうやってDPT-IPVを受けていただいて、ポリオに対する集団免疫を維持するか、あるいは先ほど言ったように、OPVを併用する期間を設けるのかといったことも、IPV導入が近いこともありますから、ここに関しては早急に検討し、集団免疫が低下することがないように慎重に、ただし急いで準備を始める必要があるということです。
 DPT-IPV導入時期には、接種対象者が現行DPTを接種している場合、あるいはDPT-IPVだけ接種している場合、あるいは未接種である場合などで接種スケジュールが異なることが考えられるので、その辺の複雑化による接種率の低下が懸念されていることから、それがないようにすると。また、IPV含有ワクチンが導入されることが決まりますと、現行のDPTやOPVの接種控え等も懸念されますので、接種率をどう維持するのかということを、接種者の不利益や現場の混乱がないように、そして接種率の低下が起こらないように十分に配慮することが必要だと考えております。
 DPT-IPVが導入され、おそらく今後は定期接種化になると考えられますが、その後もまだ世界的にはポリオの流行があって、OPVがどこかの国で使われているという状況では、アウトブレイクのリスクが必ずありますので、アウトブレイクレスポンスのためにはどのようなポリオワクチンを手当てしておく必要があるか。それにはOPVを残しておくことが必要なのか、IPV含有ワクチンあるいはIPV単身ワクチン等を、アウトブレイクレスポンスのためにどの程度、どのようなワクチンを、どのぐらいの量を用意しておくかといったことも、DPT-IPV導入以前にしっかりと考えておく必要があると思います。DPT-IPVが導入されて、OPVはもう併用しないということになると、使われているOPVは国内だけですので、それがなくなったときにアウトブレイクレスポンスに使うワクチンがないという状況にならないように配慮していかなければいけない、そのための準備をしていかなければいけないということです。
 いずれにしても、VAPPのリスクというのはOPVを継続している以上は必ずあるものですので、一刻も早くIPV含有ワクチンの導入が求められると。それまでは、しっかりとしたポリオの疾患サーベイランス、病原体サーベイランスを継続徹底することで、ワクチン関連麻痺の発生状況の把握に努めるとともに、現行のOPV接種率のモニタリングや端境期の接種率、あるいは導入後のモニタリングをしっかりやって接種率を維持し、それを確認しておくことが必要であると考えております。
 Sabin株に由来するIPVは今開発が進められているところですが、これは世界的なポリオコンデンスの状況によって、野生株に由来する海外のIPV、あるいは日本でこれから使われるであろうSabin株に由来するIPVの供給体制、これはポリオウイルスに関わるバイオセーフティレベルがコンデンス後は変わる可能性がありますので、そこに関してもよく注意し、せっかく導入されたIPVが作れないということにならないように考えていく必要があるとコメントしております。以上です。
○岡部委員長 ありがとうございました。これまで随分議論されていたことで、IPVの必要性はいろいろなところで既に十分認識されていると思うのですが、DPT-IPVも治験がほぼ終了している段階で、できるだけ早く導入しようというところが結論ではないかと思います。一方、一般にはIPVの必要性はもちろんよく知られていますが、日本で使っているIPVは、いわゆる外国製のものとちょっと違っていて、長期的なスコープで見た場合、Sabin由来のIPVを育てるというか、バイオセーフティの問題からも必要であることが含まれていると思います。
 私から先に質問で申し訳ないのですが、DPT-IPVはいくつかのメーカーがやっているということで、その互換性についても触れていますが、これは全部の互換性を担保していかないと導入が難しいということですか、それともそれぞれについて工夫ができ得るということでしょうか。
○清水参考人 ワーキンググループの議論の中ではそこを厳しく、互換性を云々ということは、これから導入されるワクチンですので、導入が非常にしづらくなることがあるのではないかと。ただ、どの程度互換性に配慮して見なければいけないかということ自体の考え方の整理は早急にしないと、これからいくつか違う製剤が出てくるのは明らかですから、そのことがどれぐらい問題になって、どこまで考えなくてもいいのかということに関する整理はしっかりしておかなくてはいけないということだと思います。
○岡部委員長 例えば、現状でもDPTをA社で2回やった人が、3回目はB社のDPTでやるということは実施されているわけですが、それについて実際上の問題点はないが、先生のおっしゃるのはそのようなことも含めて、医学的な評価をきちっと平行線でやっていく必要性を訴えられているということでよろしいですか。
○清水参考人 そうですね。何らかの調査は必ず必要ですが、現場の先生方に混乱とか負担にならないようなやり方をしないと、互換性がないから駄目、使えないという言い方をするのは少し難しいかなという感じがいたします。
○岡部委員長 委員の先生方からご質問があればお願いいたします。
○倉田委員 私は、WHOの生物製剤標準化委員会に7年間おりましたが、品質が全然違うものをマーケットにいくつも並べて、どうぞ、お好きなものをというやり方をするならば、いま言ったとおりで結構ですが、これはきちっとしたことを日本のやり方でチェックする必要がある。というのは、世界統一基準などというものは何もなく、ヨーロッパでやっているEUの20何カ国かを中心とする承認のライセンスのやり方と、FDAのやり方と、あとは日本があるだけです。日本がどこかと一緒にやるならば、それはそれで薬事法も変えて一緒にやり、そこに日本の専門家を派遣してその中でやるという場合と、何でもあるものをドサッと、とにかくあらゆるものが入ってくると6つも7つもということになって、悪いけれど、臨床の先生はそんなことは全く頭にないと思いますし、それがどうだということは読みもしないと思います。7ワクチンであればということでは全くない。
 互換性というのは、まさに非常に大事な問題で、それは考えることなく、ラボできちっとチェックをする必要があって、それをどうするかということを日本は自分で決めなければいけないのです。それを外国がやったからいいか、という話には全くならないのですよ。向こうが日本のものをと言った場合には、向こうのラボでも厳しいやり方でイエスかノーかを決めるわけですから、そのようなことをきちっとしないで、いいじゃないかという話にはならないのです。きちっとラボでチェックする必要があります。また、完成品の場合はチェックする義務があるわけです。国がやらないよということになれば義務も何もないでしょうが、そういうことを考える必要がある。
 IPVというのは非常に大事なことで、IPVの場合、日本の場合は昔からSabin株でやっているのはよく知っていますが、それは野生株で作ったものをそのまま持ってくるという話なのか、あるいはDPTと一緒にしたものを持ってきてやるという話なのか、バラバラにして日本のものと組み合わせる話なのか、このレポートは非常に抽象的な書き方しかしていないからそのようなことが全く見えないです。外国のDTaPと国内産のものとでは、病理学的に接種後をみても、全く反応が異なっています。これはWHOでも既に発表し、かつ外国誌にも掲載してあります。混在、互換性ということは、正にこの事です。このあとにやるかどうかは知りませんが、そこをきちっと次の段階で、まさに今の互換性というものは事前にやっておいてやらないと、トラブルが起こってきてからではもう日本のやり方では収拾がつかなくなって、ワクチンが全部止まることになります、1例出ただけでとまった。日本脳炎と同じです。そのような轍を踏まないためには、事前にやれることはいくらでもあるわけですから、それをやらなければいけない、そこがこの予防接種の議論の中で全部抜けているのです。そこが最大の弱点です。
 品質については私は毎回言っていますが、そこをきちっとやるべきで、マーケットの中に何でもあればいいという話ではないのです。この委員会にいる方々はそうかも知りませんが、、臨床の先生はどの先生もそんなことは全く頭にないです。そこを気を付けないとまずいと思うのです。しかし、一般的にワクチンに興味がある人にとって、これはA社、B社、C社、外国も入ってくれば10ぐらい並んでしまうかもしれないですが、そのようなものに対して同じものをマーケットに置くことがいいかどうかということも考えなければいけないと思います。どの国も5つ、6つとあるものの中から、どれでもどうぞということはしていないです。ですから、あるということと、どのようなやり方にしていくかということは、厚生労働省が政策的にもきちっとその方針を決める必要がある。例えばお茶が7つも8つも売っていますが、どれでも同じですからどうぞという話では全然なくて、そこが今までの議論で全部抜けているのです。担当課はそこを十分に検討した上でやらないと、大混乱はもう目に見えています。IPVについては、OPVと全く免疫獲得の機序がちがうので、そこの辺をきちっと種々の方法で、実験するにも証拠が必要です。
○岡部委員長 マーケットに出る前に、すべての互換性やすべてのものをチェックしてから出したほうがいいということですか。
○倉田委員 互換性は国がテストをやらざるを得ないと思います」。それはやる必要があるでしょうね。どれを対象にするかというのは、ここで議論する話ではない。
○岡部委員長 ここの議論ではDPT-IPVというものが必要であるというところだと思うのです。そのほかご意見があればお願いいたします。
○岩本委員 いまの議論の関連ともう1点、バイオセーフティレベルのことです。いまの議論の関連では、私は臨床医の端くれです。先生がおっしゃるように、「そんなことは考えちゃいない」と言われれば、「ああ、そうですよ」と答えてもいいのですが、万が一、ワクチン株で麻痺が起こったときの悲惨さは我々のほうがよく考えているので、「基礎の先生はそんなこと全く考えていないんじゃないか」と逆に返してもいいかもしれません。ですから、諸外国で切り換えた事例なども参考に、いかに早く不活化に変えていただくかということと、日本でやるべきこととをはっきりさせて進んでいただきたいと思います。この点はそれだけです。
 2点目はバイオセーフティレベルのことで、確かにマホニ株はバイオセーフティが非常に厳格、厳格どころか、おそらく天然痘ウイルスみたいなレベルにしようという話が将来出てくるでしょうが、そのときにSabin株は絶対残るべきだと思うし、OPVの一部は残すべきだと思います。それをどの程度のバイオセーフティレベルでやるのかというのは、もちろんこの会の議論ではないですが、いままでワクチンに使っていた株をどこまで厳格にやるのかというのは、ゼロリスク社会のこの国の場合、Sabin株までえらい厳しいことを言い出すと、逆にとんでもないことになるという心配があると思います。
○岡部委員長 それについては倉田先生からお願いいたします。
○倉田委員 いま岩本先生が突いた問題は、私はWHOのバイオセーフティアドバイザーグループで8年ほどやっていたのですが、いまから6年前、ジュネーブでこの議論がされております。そのときはポリオ部会の方々とバイオセーフティアドバイザーグループとで共同の会議を3回ほど行いました。その中で今言われたマホニ株、外国でIPVにしている部分の分に関しては、世界的になくなった時点でのバイオセーフティレベルの扱いは「4」、Sabin株については「3」で、そのときのリコメンデーションというのはまだ変わっていないと思います。そのままでずっと生きていると思います。そこをもう一度確認されて、バイオセーフティのほうはそんなところで、私自身は病原性のいろいろなものを考えたときにいいと思うのですが、日本がどうするかということは、もう一度そのようなものを参考にして位置づけを決めたほうがいいと思います。BS1-4での製造は考えられないのでSabin株の維持はきわめて重要です。
 幸い日本はマホニを使ってワクチンを作るなどといったことはやっておりませんが、ストックはあるので、そのようなものの扱いも含めて製造株、野生株を含めて全部の扱いは「4」ないし「+4」、いや、レベルはもっと高くする、「5」というのはないですが、そのような議論が行われて、決定ではないですが、そのようにしてはどうかというところで止まっています。さらに重要なのは、世界中に山ほどあるポリオウイルスと、それを含んだ便をどのようにして不活化するかは、ワクチンよりもリスクとしてはもっと重要でしょう。
○清水参考人 いまの岩本先生と倉田先生のポリオのcontainment、つまり封じ込めのことですが、やはりポリオ根絶が本当に達成できるのか、いつになるのかということにかなり依存していますので、先は見えてきた気はしますが、いつと決まって言えるわけではないので、それ以降の話になると思いますが、やはり野生株、強毒株に関しては厳重なcontainment、BSL3以上のcontainmentになっていくだろうと。ただ、ワクチン株、Sabin株に関してはいろいろ議論のあるところで、一部にはWHOの中でもポリオウイルス自体はOPVが世界的にやらなくていいという言い方になったら、ウイルスそのものに関してもある程度containmentをしなければいけないという議論もあります。そこは世界的な議論と、日本でどうしていくのかということをよく摺り合わせて見ておかないと、急に排卵になってもSabinに使えませんということになると非常に困るので、そこはしっかり見ておく必要があると考えております。
○岩本委員 手短にお話しますが、おそらくSabinが作って生のSabin株で残っていた時代と、Sabin株がクローン化されてDNAで残っている時代で、何回殖やしたらどのぐらい強毒化、バックミューテーションが起こるのかというところはだいぶ違うと思うのです。WHOの議論はおそらく元の生ウイルスでSabinが作ったものを殖やして、どのぐらい強毒が出るかという議論で、それにあまり巻き込まれないできちんと議論したほうがいいと思います。
○岡部委員長 それはあとでフィードバックしてくる議論だと思います。時間が限られていて大変申し訳ないのですが、先ほど事務局から言ったように、ほかの議論はあとから追加質問等々意見がありましたら、こちらにある紙でお願いいたします。
 次は資料4がベースになると思うのですが、「ワクチン強化に関する小委員会の報告書」で、この報告書は直接厚生労働省、あるいは世の中にということではなく、部会に対する報告書だということですので、いろいろなことを最終的に検討するのは部会で検討してほしいという意味合いであることが前提にあると思います。事務局からその報告書(案)についての説明をお願いいたします。
○予防接種改革推進室次長 お手元の資料5をご覧いただければと思います。ただいま委員長が言われた、報告書(案)です。簡単に全体の構成だけご説明いたします。最初に目次がありまして、1頁の「はじめに」にはこれまでの経緯等について、いままでのご議論等を踏まえて事務局のほうでまとめまして、2頁までがその内容となっております。特に2つ目の○ですが、これは作業チームのほうでまとめていただいた報告書で、非常に詳細なものです。その中で簡潔にまとめていただいたという形になっておりますので、参考資料としてワーキングチームの報告書も付けさせていただき、詳細はそちらにという構成になっております。
 本日は資料4-1、4-2はあとでご意見をいただくということで議論を割愛いたしましたが、3頁からは各ワクチン、疾病について、それぞれの小委員会の回で出したサマリー部分についてまとめております。こちらは委員会終了後等に委員の方々からもご意見をいただき、今回、仮で作ったものについていただいたご意見を反映させたものです。ただ、完全に反映していない部分もありますので、このあとにでもご意見をいただければと思います。同じような形で3頁、4頁とありまして、4頁からは肺炎球菌コンジュゲートワクチン、5頁からは肺炎球菌ポリサッカライドワクチンとなっております。ここでは(5)の「総合的な評価」がペンディングとなっております。作業チームの報告書でも総合的な評価を付けておりますが、特に部会あるいはこの小委員会として、どのようなまとめ方をすればいいかということについては、後ほどご議論いただいた上で、次回ここに記載して提出させていただきたいと思っております。
 申し訳ありませんがちょっと端折らせていただきまして、12頁は、現在予防接種の対象となっているが、今後はどうすればいいかということで本日ご議論いただきましたポリオワクチン、百日せきワクチンについて記載したいと思っております。こちらは本日のご議論ということで空欄にしてあります。最後の13頁は結論部分として、これを総括してどのような形で結論づければいいかということについても本日議論していただき、それに基づいて成文化し、次回提出したいと思っております。なお、本日の資料を出す前に、委員の方々には1回ご紹介しております。かなりの部分は反映させていただいてはおりますが、一部不十分なところもあろうかと思いますので、よろしくお願いいたします。
○岡部委員長 空欄部分というのは最終的な部分ですが、そこを除いたところは、ワーキンググループから上がってきた意見に基づいてまとめておいてもらったものです。これも既に委員の方々にはそこの部分での修正、その他の意見をいただいて調整したものがこれであるということですが、それを加えて何かご議論があればお願いいたします。たぶん、細かいところがまた出てくると思うのですが、そこはメモその他で行うことにしまして、今日が最終のものということではないと思うのですが、一応そこに至るまでの全体のまとめということで私もまとめてみたのですが、ちょっとそれをご披露するといった形でもよろしいでしょうか。
 Hibと肺炎球菌の小児用、成人用、パピローマ、水痘、おたふく、B型肝炎までは今までに議論があって、DPTというか百日せきとポリオは今日の議論があったのですが、この辺も今までのいろいろな議論の中に相当含まれていることだと思います。例えば、Hibですと、これまでの疾病の影響やワクチンの効果を踏まえた場合には、結論的に言えば、促進すべきワクチンではないかと。ただ、補正予算ですでに始まっている事業なので途中でやめるのはまずいだろうというのは当然ですし、1年、2年で区切るものではないので、継続的に実施していきたいということ、PCV7も既に予算事業で始まっているということがあるので、やはり継続性は重要であろうと。ただ、13価になると、高齢者に対する効果はもちろんあるわけですが、全面的な効果があるかと言うと、そのような意味では若干低かったり、あるいはインフルと一緒に接種することによって効果が高まるので、高齢者に対するワクチンでというところがある、そういった点があると思いました。
 ヒトパピローマについては、いま言ったHib、PCV7と同様の事業をスタートといった点からも継続性が重要であると思います。水痘、おたふく、B型肝炎、ポリオ、百日せきは事業としてはまだスタートしていないわけで、やはりこれはトリガーになっているとは思うのですが、全体的な評価としては広く接種が望まれるワクチンであるというのは、大きい結論になるのではないかと思います。ただ、水痘で言えば、そのほかに帯状疱疹に対する効果、もしかすると倉田先生から異論が出るかもしれませんが、あってはならないことですけれどもバイオテロ対策として似たような病気をきちっと押さえておくといったようなこと、おたふくの場合も同様でして、海外ではMMRという形で広く行われていますが、そのようなことの導入についての理解も必要だろうと思います。
 B型肝炎については、ユニバーサル化、続いて思春期年齢をどうするかという問題がありますので、これも広く接種が望ましい中で、この辺の具体的な検討が行われる必要もあろうかということです。ポリオの場合は、まさに1日も早い速やかな導入が望まれているわけですが、倉田先生もおっしゃったように、一部問題点をどこで切って、どのバランスをもってやるかということについては、ワーキンググループをはじめとするここの小委員会では必要であるということで、どのようにやっていくかを部会のほうで検討していただくということになるかと思います。
 百日せきについても、成人層を含めた百日せき対策は他の先進国諸国も悩まされている問題なわけで、百日せきという病気が子どもだけの病気ではなくなってきているというところの対策を、やはり我が国も取らなくてはいけない、Pワクチンをある年齢で導入することは必要であろうということが、いちばん大まかな結論と言いますか、それぞれのワクチンに対するまとめの部分ではないかと思うのですが、それを含んで委員の方々から、あるいは百日せきとポリオについては参考人の先生から、医療経済的には五十嵐先生からもご意見をいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
○池田委員 費用対効果の推計を担当したのですが、私ども12名のメンバーで、廣田先生の研究班の中で分担ということで作業させていただきました。今回は資料2で「ワクチン接種の費用対効果推計法」の改訂版をお出しいたしましたが、基本的には推計法を変えたわけではなくて、今回の小委員会の報告書の中では結果を簡潔に、一言でというぐらいの分量しか書けなかったものですから、どの分析結果を基本としてここに提示するか、作業チーム報告書の中のどの数字を代表的な値として書くかということで、例えば小児期のワクチンですと、子どもをワクチン接種に連れて行ったり、病気になったときに看病するといった家族の生産性損失というところを含めた形での費用比較分析を基本とし、代表的な数字として小委員会の報告書に含めました。
 例えば、子どもにワクチンを打ったときに将来医療費がどれだけ減るかという、1人の子どもの生涯について費用の推計を行った場合には、通常は割引率というのを考慮するわけですが、今回、小委員会の報告書に載せた数値は、定期接種化になってワクチンが行き渡ったときに、ある一定の時間が経った将来において、1年当たりどのぐらいワクチン費用が必要で、そして、その年に過去にワクチンを打った方について、どれだけの医療費の節約等が生じるかという単年度の推計ということで、割引率を考慮しない数値を載せております。すなわち、計算方法を変えたわけではなくて、小委員会の報告書に含める代表値と言いますか、基本的な値としてどれを選択するかについての考え方を示したということです。
○岡部委員長 その他ご意見があればお願いいたします。
○岩本委員 たぶん、この小委員会のミッションとは違うのだと思うのですが、日本の最も得意とする技術分野で、例えば携帯電話に起こったことを見ていると、要するに、ガラパゴス化と言われている現象です。ワクチンもいろいろな形で国内に広がるのは私は大賛成です。しかし、日本の優れたワクチン技術をこのままガラパゴス化させてしまうのか、国際競争に勝てるようにするのか、というのは、大切な視点であると思います。そうでないと、この国のいろいろな技術は国際化しないと思っております。その辺についても今後部会なりで何らかの議論がされるとありがたいと思います。
○岡部委員長 部会の中のミッションには、日本の科学的な部分とかサイエンスのベースをもっと持ち上げるべきだといったことがあったと思いますから、そこも全体の総合的意見として必要であるということを加えたいと思います。そのほかにいかがでしょうか。
○砂川参考人 百日せきですが、お隣の韓国も同じような問題に遭遇し、昨年だったと思いますが、TDaPを輸入して、これを導入することを開始して、非常に速やかな政策決定がなされています。
○岡部委員長 韓国はDTPは自国製でしたでしょうか。
○砂川参考人 TDaPのほうを使うという決定を聞いておりますが、自国製ではないのではないかなと思います。
○岡部委員長 そうではなくて、自国のDTPが。
○砂川参考人 DTPは自国で。
○岡部委員長 たしか、あれはライセンスですね。
○砂川参考人 はい、そうだと思います。
○岡部委員長 廣田先生、お願いいたします。
○廣田委員 これもこの小委員会のテーマとは違うかもしれませんが、VAPPは一般に知識がかなり普及していて、IPVでそれが避けられるという知識の普及から、一般の小児科で海外からIPVを輸入して打つ、また、それを求めるお母さん方がいるということがあるし、実際に起こっているという噂もありますので、特に接種スケジュールとの関連の問題などを、なるべく早く啓発していただきたいと思います。
○岡部委員長 それと、10年ぐらい前から、もうすぐ、もうすぐと言われていたのが10年以上経ってしまっているというのも問題なので、この辺は本当に先を見据えて、多少のズレはあっても、この先どのぐらいであるということを示していくことが必要ではないかとも思います。次に五十嵐参考人、お願いいたします。
○五十嵐参考人 純粋にテクニカルな話ですが、医療経済部分の報告書に関して、いままでのファクトシートと小委員会のものと摺合わせをして、矛盾のないようにこれの内容をまとめる必要があると思いますが、私自身はこの報告書を紙の形では初めて拝見いたしましたので、これは事務局の方に直接お伝えすればいいということでしょうか。
○岡部委員長 全体的な検討はここでいいのですが、詳細な部分の修正はもちろん可能ですので、意見を出していただければと思います。時間は11時になったのですが、いま全体の各論の結論を申し上げたわけですが、私としては全体のまとめをちょっと考えてみました。ワーキンググループから意見をいただき、この小委員会でまとめることが命ぜられたこのいずれのワクチンも、国民の健康を守るためには広く必要なワクチンである、これが第1点だと思います。また、医学というのは常に進んでいますし、全部結論を求めてからスタートするということでは何年先になるかわからないということもありますが、そこをオンゴーイングしながら、一方では現在行われているワクチンも含めて、医学的な検討というのは常に必要であるということも結論になろうかと思います。
 出っぱなしになってしまって、出たからこれでいいということではなくて、いくつかの課題については、現在進行形の状態でやっていくことが必要だろうということがあります。ただ、全体的には、この委員会では医学的なことをまず念頭に置いて結論を出しているわけですが、やはりワクチンというものを考えたときには、医学的な課題以外も含めて考えなくてはいけないというのは、行政的な問題であったり、予算の問題もあるでしょうし、国民の多くの方々の意見といったようなことも必要なので、これを含めた上で部会のほうで検討していただきたい。
 これは先ほど岩本先生からもあったように、ワーキンググループ及び小委員会のテーマではなかったわけですが、やはり安定的な、継続的な予防接種の制度、柔軟な制度というのは必要だろうと思いますので、その体制整備については、部会で引き続き検討していただきたい。また、当面は一類、二類という形で動いていますが、こういった形での予防接種法が将来にわたっていいかどうかということも、この委員会の結論ではないですが、部会においてやっていただきたい。それから、そのような議論の場をどこでやるかといったことは部会のほうでテーマになっていますが、それらのことについて引き続き部会において総合的に検討を行っていただき、結論を出していただきたい、というのがこの小委員会からのまとめではないかと考えて、ちょっとドラフトのドラフトを作ってみたわけです。もし、その辺でよろしければ、そこを骨子にして少し書き加え、また先生方に見ていただいた上で最終案と。たしか、最終は3月の何日かの予定ですので、そのようなプランでいきたいと思っておりますが、この結論の内容についてはいかがでしょうか。もし、ご意見がありましたらお願いいたします。
 それでは、今のようなところを骨子にして少し案を作って、紙のやり取り、あるいはメールのやり取りでご意見をいただきたいと思うのですが、事務局からお願いいたします。
○予防接種改革推進室次長 いま言われたことを事務局でも書き取りましたが、一度委員長と相談させていただいて、他のところの修正も含めて、成文化したものを事前に先生方に見ていただきたいと思っております。その上で、いま委員長からもお話があったように、事務局としては、できれば3月にこの取りまとめができるようなスケジュールで日程調整をさせていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○岡部委員長 いまのようなことを結論として、小委員会としては一応議論を終了して、報告書が出ないとデューティーは果たしたことにはならないのですが、集まっての議論はこれで終了にしたいと思います。何回かに分けて、特にワーキンググループの先生方はここには出席されていないのですが、非常な時間と労力を使っていただきましたので、感謝の気持を表したいと思います。どうもありがとうございました。それでは、事務局からお願いいたします。
○予防接種改革推進室次長 短い時間でのご議論をどうもありがとうございました。先ほども申し上げましたように、成文化した報告書案を見ていただきまして、もう1回だけ小委員会を開かせていただき、最終的な確認をしていただければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○岡部委員長 失礼いたしました。小委員会として最終的な確認をもう1回やるということだそうです。訂正いたします。ありがとうございました。
○予防接種改革推進室次長 直列で日本脳炎の小委員会を開催させていただきます。引き続きご出席の先生がいらっしゃると思うのですが、会場の設営の関係で、一旦お席を外していただければ幸いです。よろしくお願いいたします。


(了)

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