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2010年12月16日 第3回 感染症分科会予防接種部会ワクチン評価に関する小委員会 議事録

健康局結核感染症課

○日時

平成22年12月16日(木)
          10:00~


○場所

厚生労働省共用第7会議室(5階)


○議事

○予防接種制度改革推進室次長 定刻になりました。ただいまより、第3回厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会ワクチン評価に関する小委員会を開催させていただきます。
 事務局から、本日の委員の出欠状況です。倉田先生より欠席の連絡をいただいています。現在6名中5名の委員の先生方に出席をいただいていますので、会議が成立しています。
 また、本日は作業チームから報告をお願いしています。Hibワクチン、小児用肺炎球菌、HPVワクチンの各チームから説明いただくことになっています。説明いただく先生方を紹介します。Hibワクチン作業チーム、国立病院機構三重病院名誉院長の神谷齋先生にお出でいただいています。肺炎球菌ワクチン作業チーム、国立感染症研究所細菌第一部室長の和田昭仁先生にお出でいただいています。また、HPVワクチン作業チーム、国立感染症研究所感染症情報センター室長の多田有希先生にお出でいただいています。医療経済評価に関する参考人として、東京大学大学院薬学系研究科助教の五十嵐中先生に参加いただいています。
 ここから岡部委員長に議事の進行をお願いします。
○岡部委員長 おはようございます。お忙しい中、お集まりいただいてありがとうございます。これまでに、WGから出していただいたものを小委員会で取りまとめて議論を行い、そこで議論されたことについてWGにおいて再度検討を加えていただいて今回再度提出を頂き、それについて本日から再び検討を行う形になりますので、どうぞよろしくお願いします。いままでは、議論の足りない部分、時間を延ばして議論していたのですが、場所の関係でどうしても今日は12時に切り上げなくてはいけないので、その点もご承知の上ご協力いただければと思います。配付資料の確認等、事務局からお願いします。
○予防接種制度改革推進室次長 配付資料の確認をさせてください。多部にわたっていますが、座席表、議事次第のほかに資料1「ワクチン評価に関する小委員会の今後の進め方について(案)」、資料2「個別疾病・ワクチンの評価・分析の視点について」、資料3「各ワクチンの接種の主たる目的や期待される効果の評価について」、資料4「ワクチン接種の費用対効果推計法」です。資料5-1「ヘモフィルスインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチン作業チーム報告書(案)」になります。資料5-2「肺炎球菌コンジュゲートワクチン(小児用)作業チーム報告書(案)」になります。資料5-3「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン作業チーム報告書(案)」になります。そのあとに1枚ずつ資料6-1、資料6-2、資料6-3として、それぞれの報告書のサマリー的なものを付けさせていただいています。
 参考資料1「子宮頸がん予防ワクチン等の副反応報告状況」、参考資料2「子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進臨時特例交付金の概要について」付けさせていただいています。
 委員の机の上のみに「ワクチン評価に関する小委員会資料へのご意見」ということで、先ほど委員長からお話がありましたように時間が限られていますので、十分に発言いただけなかった意見について記載して提出いただきたいという趣旨で、紙を置かせていただいています。以上ですが、不足しています資料等がありましたら適宜事務局にお申し付けください。
 続きまして、利益相反の関係ですが、今回も書類を確認させていただきまして、審議参加に関するご報告です。製造販売業者等からの寄附金等について、ご退席いただく委員はありません。また、申請資料作成の関与についても、本日ご議論いただくワクチンについて関与されている先生等はいらっしゃいませんので、すべての委員の方にご発言いただきたいと思っています。
 本日の進め方ですが、最初に議題の「各ワクチン評価について」、Hibワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、HPVワクチンの各作業チームから報告書(案)について約10分程度で説明いただきます。それぞれの説明のあとに質疑応答を行っていただきます。作業チームからの報告を一通りいただいたあとに、資料6-1から資料6-3についてご議論いただきます。これは委員長の指示を受けまして、事務局において「疾病の影響等について」「ワクチンの効果等について」「医療経済的な評価等について」「実施する際の課題及び留意点について」を事務局で整理して作ったペーパーですので、今回、小委員会の先生方においては内容について検討をお願いします。後ほど、資料3で説明しますが、各疾病・ワクチンの主たる目的や期待される効果についても、その際にご議論いただきたいと思います。
○岡部委員長 ありがとうございました。いまのところで何か足りないというご意見がありますか。作業チームからお出でいただいているので、それぞれの参考人から説明いただきます。いちばん最初は事務局です。
○予防接種制度改革推進室次長 簡単に事務局で用意した資料の説明だけ申し上げます。
 資料1は、今後のスケジュール感について委員の先生方と決めさせていただければと思って作った資料です。資料1の4番以降、「今後のスケジュール(案)」です。12月16日、本日ですが、作業チームからの報告・小委員会の検討ということで、先ほど委員長からお話いただきましたが、会場の都合もありまして、本日は3つの作業チーム報告書(案)について議論いただきます。年を明けて、次回に残りのものについて議論いただいた上で、小委員会としては取りまとめを次々回にしていただければと事務局として想定しています。
 後ろの資料はすでに配付したことがある資料ですので、ご参考にしていただければと思います。1枚めくっていただいて、別紙2の中で、本日は神谷先生、和田先生、多田先生に参加いただいていることを申し添えます。
 資料2についても以前に出させていただいた資料ですので、今回作業チームの報告書に沿ってフォーマットを合わせています。(4)の医療経済的評価については、これから若干数字の変更があると伺っていますので、案という形にさせていただいています。
 資料3について若干詳しく説明します。先ほど申し上げましたように、作業チームからの報告(案)についてのディスカッションをしたあとに、サマリー部分について検討いただきます。その際に合わせて検討いただきたい内容として、資料3を用意しました。今回の作業チームの報告においても予防接種の目的、あるいは効果の部分について、予防接種の効果として、【1】集団免疫による流行の阻止といったような効果、あるいは目的の記載、【2】として、個人の発病や重症化の防止という視点の記載を、まとめていただいていますが、片方ではなく、両方の側面があることを記載させていただいています。これらを複合的に有する場合があるということだと思います。
 一方で、法体系の話ですが、制度においては努力義務があるということで、一類の主たる内容は集団予防的な目的・効果に比重を置いて実施している。努力義務なしのものとして、二類疾病、個人予防的な目的・効果に比重を置いていますが、間接的効果として、その積み重ねによる集団予防的な効果を期待しているということです。
 それぞれの特性を踏まえて、働きかけ等の公的関与が定められているということを踏まえて、次回は残りのものについて議論いただきたいと思いますが、今回の検討対象としている3つのワクチンについて、例えば予防接種により感染防止が期待される者の数。麻疹等のものについては、たぶん数百万という規模だと思います。あるいは、今回議論いただきますHib、肺炎球菌については数百人の規模だと思うのですが、そういった規模の観点や感染力、疾病の原因、重篤化の防止が期待される者の規模は、100万人の感染であろうが、数百人の重篤化であろうが、日本全体の数値としては同じような規模になるのかもしれません。そういったことを踏まえて、感染者の一部の者が重篤化する可能性が高い場合、あるいは対象年齢や性別により重症化防止等の効果が限定的な場合、例えば、HPVについては対象者は女性だけになりますが、そういったようなことも踏まえてご検討いただければという趣旨で、資料を作らせていただきました。
 資料4も前回出させていただいた資料なのですが、今回の報告の中にQALYという指標が非常にたくさん出てきます。6頁までは、いままで出させていただいた資料です。7頁に「ワクチン接種による費用対効果の評価手法」ということで、1枚紙を追加しています。こちらについては、池田先生から説明いただければと思っています。
 資料6-1、資料6-2、資料6-3については、事前に送らせていただいていることもありますので、説明は割愛させていただきます。もしよろしければ池田先生によろしくお願いします。
○岡部委員長 池田先生、お願いします。
○池田委員 簡単に説明します。資料4のいちばん最後のカラー刷りの頁に示したのは、今回医療経済評価の効果指標として用いた質調整生存年(QALY)という単位についての簡単な説明になっています。
 通常は、ワクチンにより感染症の発生予防をしたり、あるいはそれに伴う障害等を予防する場合には、死亡を防ぐだけであれば、死亡数がどれだけ減ったとか、生存年数がどれだけ伸びたという指標で評価をすればいいわけでありますが、そうした障害の予防、あるいはQOLの改善ということをワクチンの効果の一部として評価をしないと、費用対効果が正しく出てこないわけです。そうした効果を評価するための統合的な指標として、質調整生存年(QALY)が国際的によく使われています。例えば、海外のアメリカのACIP等の各機関でも、費用対効果の分析を行う場合にはQALYという単位をほとんどの場合に使っていますので、今回の作業チームの報告書の中でもこの単位を使うことにいたしました。
 簡単に考え方を説明しますと、グラフにありますように健康な1年を過ごした場合には効用値、即ち生活の質が1点満点で1年過ごした。それは1QALY、1質調整生存年です。必ずしも完全な健康な1年ではないと。例えば0.5といった生活の質で1年を過ごした場合には0.5QALY、0.5質調整生存年と計算します。緑の部分が仮にワクチンを接種しない場合に、平均的にどのような健康状態で過ごすかを示したものでありまして、面積の部分がワクチンを接種しない場合の平均的な質調整生存年になります。ワクチンを接種し、感染症を予防し障害を防いだということで、追加的に健康状態が改善したということでありますと、このオレンジの部分が即ち増分の質調整生存年となります。このような考え方で可能な限りすべてのワクチンについて、費用と質調整生存年の関係を分析したことが今回の報告書の内容となっています。以上です。
○岡部委員長 ありがとうございました。いまの資料4について何かご質問がありますか。よろしいですか。今回の経済効果を見るときの1つの手法に対する説明と理解いただければと思います。それぞれの作業チームから説明をいただきます。いちばん最初はHibですので、神谷先生よろしくお願いします。10分程度だということですので、よろしくお願いいたします。
○神谷参考人 はい、わかりました。Hibについて説明します。私たちのチームの責任者は、感染研の谷口室長です。本日都合が悪いということで私がピンチヒッターで来ました。
 前回、宿題をいただいていました。谷口室長から不足の点について主に答えてほしいと依頼を受けていますので、それを中心にお話します。10分ですので、簡単にいきます。
 いちばんの問題として、ワクチンの効果について質問がきています。効果については、5歳未満の侵襲性感染症というところで、10頁の2「予防接種の効果・目的・安全性等について」に書いてありますように、5歳未満の侵襲性感染症はワクチンを接種すれば、ただし接種率が上がらないといけませんので、90%以上、あるいは95%以上の接種率が確保された場合の条件が付きますが、99%、国によっては92%ぐらいの疾病の減少があるということです。
 とにかくワクチン接種が完全に行われていれば、夜間等に高熱で対象年齢の患者さんが来た場合でも、まずHibの、あるいは肺炎球菌の感染症のことをすぐ考えなくてもいいと。少なくともワクチンを接種しているか、接種していないかによって予後がかなり変わるので、夜間の診察等についてもかなり楽になることが、ワクチン接種の効果として表れてくるだろう。
 そのほかにも、肺炎球菌のほうがはっきりしますが、Hibでも集団免疫効果がありますので、そういう意味でも、特に保育園等で、入園してから1年ぐらいの間に鼻腔内の保菌率等を見ていきますとかなり減ってきます。ほっとけば多いわけですが、ワクチンを打てばそれがなくなってくることになりますので、そういう意味でも非常に効果はある計算です。
 2番目です。今度はワクチンの目的です。Eliminationができるかどうかなのですが、Eliminationをどう取るか、ほとんどゼロという程度の取り方なら簡単なのですが、WHOが定義されていますような基準にしっかり沿うことになりますと、HibについてのEliminationの定義がありません。13頁に注がありまして、私たちの意見が書いてあります。要するにEliminationという定義がありませんが、もちろん目的はEliminationがいちばんの目的になります。それを目的として接種率を上げていくのだという強いチームとしての決意がありますので、そのためにEliminationという言葉を使っていますが、それがゼロに限りなく近付けることであって、とにかく侵襲性Hib感染症が90%以上減るところを目標にしていると考えていただいたほうがいいかと思います。
 3番目の問題です。現在、日本において利用可能なワクチン以外にほかにあるかということです。16頁辺りに書いてありますが、このワクチンはいままで世界で使われているワクチンにはコンジュゲートに何を使うか、要するに、PRP、Hibの外側の蛋白ですが、PRP抗体をいかに小さな年齢の子たちにリフェクトさせるかということが問題でありまして、そのためにコンジュゲートを付けるわけですが、いま発売されているワクチンの中では、現在、日本が扱っているPRPに破傷風の抗体を付けたPRP-Tワクチンが非常に使いやすい。それはどうしてかというと、DTaPワクチン等々と接種時期がまったく一緒になりますので、その時期に同時接種が可能だという点でこのほうが勝れているだろう。
 そのほか、17頁に世界でいま使われるワクチンが5つほど書いてあります。PRP-Tについては2種類ワクチンがありますが、使用上の外国の成績を見ると、ほとんど同じような効果が出るとわかっています。基礎的な免疫として3回接種しますと90%ぐらいの抗体が上がりますが、これは目標の抗体値をどこまでもってくるかということです。当面3回打って、1年間ぐらいの間についてはほとんど90%以上の阻止ができますし、長期で5歳以上まで阻止をすることになりますと、追加接種をすれば100%ができることになっています。ワクチン効果としては、世界で売られているワクチンの中でも現在使うワクチンが非常にいいだろうと考えています。
 16頁のいちばん下に書いてありますが、日本でもキャリア蛋白にCRMの197を使って、アジュバントを使ったワクチンが出ることになっています。フェース1ですが、このワクチンが今後出てくる可能性があります。
 供給についての検定がきちんとできるかどうか。感染研から加藤先生のご意見で、仕事量が増えるので、1名のお手伝いの方がもう1名増える必要があるけれども、それさえ可能であればきちんとできるとお話がきています。現状でもできるだけのことを頑張っているということで、当面、定期化されてもすぐ不足することはないと会社から報告が出ていますので、大丈夫だと考えています。例外的に検定に落ちることがなければ大丈夫だと思います。
 最後は費用の問題です。経済効果については、疫学的にこの病気が何人かかるかが本当に日本の正確なデータはなかなか難しいと思います。私たちがやっているのが大体10万人当たり8人ぐらいです。開業の先生がきちんと血液培養をやって、髄膜炎及び非髄膜炎でも敗血症を起こすような症例まで入れて計算しますと、もう少し人数が増えます。したがって、我々のレベルでいきますと、多くても500人、600人レベルですし、その計算でいきますと1,700人ぐらいの数になります。それによってどれだけの人が防止できるかによっても効果が少し違ってきますが、実際に始めてみないとわからないところがあります。少なくとも我々の計算では82億円ぐらいのプラスになることになります。池田先生のチームで計算していただいたのでは、少なくとも損にはならないというデータになっています。いずれにしろ、ワクチンの効果については十分あるという見方をしたほうがいいという考えです。大体、宿題の部分は以上です。
○岡部委員長 どうもありがとうございました。明解にご説明いただいたのですが、委員の先生方からご質問がありましたらお願いします。
○岩本委員 この莢膜抗原、多糖体抗原ですが、肺炎球菌の場合のような多価というか、抗原性の違いが、どのぐらい将来的に影響し得るのかというのを明確に知らないので基礎的なことを質問致します。例えば変異型Hibとか、あるいは新型Hibとか、そういうものが出てくる可能性をいまのワクチンが普及したときにも考えておく必要があるのか、あるいはHibの場合には肺炎球菌ほどの抗原性の広さはなくて、現在あるいは少しワクチンが改良されたものが出てくれば、かなりのHibの株をカバーして、先ほど出たEliminationという言葉が、ある程度考えられるような菌なのかというような質問なのですが。
○神谷参考人 肺炎球菌は和田先生のほうから言っていただくとして、Hibにつきましては、ご承知のように、いわゆる莢膜があって、タイプがAからFまであります。これについては、いままでのずっと長期的な世界的なレベルで見ても、感染で特に髄膜炎等を起こすのは98%ぐらいがbであるということで、これが変異をして変わっていくということはあまりない。
 もう1つは、ノン・タイパブルというのがありまして、例えば日本の子どもたちの中耳炎等は、ほとんどノン・タイパブルでbはありません。したがってbワクチンは髄膜炎や侵襲性感染症だけに効きますが、そこに関しては将来的にもあまり問題はないと考えます。
○宮崎委員 費用対効果のことで、1つは患者さんがどれぐらい出ているかということと、もう1つは接種費用です。前回も少し議論になりましたが、3頁に海外でのいろいろなワクチンがいくらぐらいで接種されているかという表があって、あまりの違いに本当かと驚きます。例えば日本だと4回で2万8,000円ですから、1回当たり7,000円になります。韓国は本当に3回で5,200円なのですか。この辺のことは確認されましたでしょうか。
○岡部委員長 それは事務局のほうでわかりますか。あるいはワーキンググループのほうで何か検討されていれば。
○神谷参考人 谷口先生からは、これはワーキンググループマターでもないというようなことを答えたという話を聞いておりますが、いずれにしろこのワクチンの値段が国によって違うということがあります。例えばアメリカの場合でも、いわゆるお医者さんが個人のレベルで買う場合と、CDCがまとめて買う場合とでは、半分ぐらいの値段に変わりますので、買い方をどうするか、日本がどういう使い方をするかによって変わってくる。したがって今後決めていくときには、やはり国が主導型で購入をして、ある一定量がカバーできるという保証ができれば、値段をもう少し下げることは可能です。
 もう1つは接種費用なのです。これはお医者さんのほうが接種費用をどうするかで、例えば同時接種をしたときに、1本ずつの値段を2本目からは下げるかどうかで、私の病院ではそういうやり方をしております。患者さんは診察を1回するだけで、2本3本打つわけですから、私たちはそういうことを主張して、病院で減らしてもらっています。ただし、それでも説明時間などがかかりますから、全く診察料がただにはならない。そのような計算をするので、すぐいくらになるかということはきちんと決め難いけれど、下げる要素はあると思います。
○宮崎委員 実は今回、特別対策を国は実施されていますが、実勢価格より決して安くないですね。国が接種費用の目安を何十何円まで決めておられますが、全国的にこれだけのお金を投入するのだったら、もっと国が安く購入できるという状況もあるのではないかと思うのです。そういうことをやれば、もっとQALYはよくなっていく可能性は極めて高いのではないかと思いますので、付言しておきます。
○廣田委員 有効性のところに載っておりますのは、侵襲性Hib感染症の変化。これは接種プログラムを始めての侵襲Hib感染症のインパクトの変化という感じで載っているのですが、具体的に接種することによって、この侵襲性の感染症のリスクがどれだけ下がるかというような、そういった意味での有効性のデータというのはいままでないのですか。
○神谷参考人 日本はまだデータがありません。外国では大体5年から、早い国では2年ぐらい、遅い国でも6年ぐらい経ちますと、90%の接種率を確保すれば、Hib感染症が、ワクチンを始めてから90%以上減るというデータは出ております。
○廣田委員 それがプログラムを始めてのインパクトの変化ですよね。
○神谷参考人 そうですね。
○廣田委員 実際接種することによって、接種しない場合に比べて、リスクがどれだけ下がるかというような。
○神谷参考人 接種しないのがどれだけどうかというのは、いまのサーベイランスデータしかありませんので、いわゆる接種して比較するということはどこの国でもやられていないと思います。
○岡部委員長 ほかにご質問がなければ。それでは、一応またあとでも議論がありますので進めていきたいと思います。
 その次は、肺炎球菌チームから代表で来られた和田先生、お願いします。
○和田参考人 先回作成して提示した資料が、資料5-2のフォーマットに沿っていないということで、今回全面的に順番をこの資料5-2に沿って書き直してまいりました。頁に沿ってご説明させていただきたいと思います。
 2頁です。日本でいまどれぐらい肺炎球菌の侵襲性感染罹患率があるかという、神谷先生たちの積極的な調査によって数字が下に出ております。髄膜炎以外の侵襲性感染症は、主として菌血症、敗血症で、数字としては年によって大体人口10万当たり20人程度です。県によってばらつきがありまして、沖縄県ですと人口10万人当たり120人という菌血症が見られています。髄膜炎のほうはそれほど県による差がなくて、大体人口10万人当たり2~3人前後ということで、Hibと比べて違うのは、髄膜炎に比べて菌血症が非常に多いという点です。
 肺炎球菌の場合は、菌を上咽頭に保菌していることが、その後の菌血症及び呼吸器感染、中耳炎のリスクファクターになるわけですが、その保菌者の割合を調べた試験がありまして、それが3頁の中段になります。年長の兄弟がいると、生まれた子どもが非常に早期に菌を保菌してしまって、そのオッズ比が3.5、3.9と書いております。また、早期に保育をした場合も、保菌率が高くなる。これは佐渡のデータで、それ以外に横浜でも1カ月児の子どもを調べておりますが、保菌している場合は100%お兄さんがいるというデータがあります。 4頁です。神谷先生の研究班で、肺炎球菌がワクチンによってどれくらいカバーされるかということを調べています。肺炎球菌はHibと違いまして93種類の血清型がありまして、非常に多彩なのですが、ワクチンには7種類しか血清型のコンジュゲートが含まれておりません。それでも7種類のカバー率はいちばん下を見ていただきますと、菌血症、髄膜炎を含めまして77.8%。また、6Aまで入れると83%。髄膜炎の場合ですと71%のカバー率ということで、非常にアクセプタブルな話になろうかと思います。
 5頁の後半ですが、いま廣田先生からご質問がありました。二重盲検試験の結果を示しております。アメリカのカリフォルニアで行われた試験で、最初のエンドポイントで、ワクチン群とコントロール群を比べますと、コントロール群が17に対して、ワクチン群のほうは、肺炎球菌7価に含まれる血清型が侵襲性感染として出てきたのはゼロということで、有効率100%になっております。それ以外のものに関しても非常に良いということです。
 6頁です。どういった血清型のものが出てくるのかということで、19Fや14で、海外で多いものが非常に良い効果が出ております。日本ですと6Bが多いのですが、6Bに対しても二重盲検試験で非常に有効な効果が見られております。
 7頁です。これは日本では承認はされておりませんが、肺炎に対してどれくらい効果があるかということで、起炎菌を肺炎球菌と限らない肺炎に対しても、20%から30%の効果が見られているというのを表3に示しています。また、中耳炎に関しましては、文書で述べているだけですが、ワクチンに含まれている血清型による中耳炎は57%減少しています。
 観察研究で、ワクチンを導入した国によってどれぐらい肺炎球菌性の侵襲性感染が減っているかということです。アメリカの場合ですと、接種率が93%で、8頁のグラフの赤い線を見ていただければと思います。ワクチン導入前には10万人当たり81.9人の罹患率あったものが、2007年時点で0.4にまで減っています。また、右のほうに成人と書いていますが、実際にはワクチン接種を受けていない成人として65歳以上の高齢者ですが、そういった方のワクチン型による侵襲性感染も減っている。つまり子どもから高齢者へ菌が飛んで、そこでの侵襲性感染が減っている。非常に強力な集団免疫効果が見られております。
 9頁の表に、各国の接種率と減少率の関係を示しています。国によっていろいろな状況があります。特にヨーロッパは非常に多彩です。全般的な傾向としましては、接種率が高いと減少率が高いということが見られております。
 10頁です。予防接種の目的をどこに置くか。Hibの場合はEliminationという形ですが、肺炎球菌の場合は先ほど岩本先生からご質問がありましたが、いろいろな型がありまして、実際、7価のものが減っても、ほかのものが増えてくるといった現象が見られております。とりあえずは10万人当たり1人を目標ということで書かせていただいています。
 「安全性」としては11頁です。これは添付文書より、それぞれ記載したものになります。国内では局所の紅斑、硬結が70%、80%。海外ですと、その下の表6で12%、10%ということで、これは接種方法の差によるものと考えています。国内では皮下、海外では筋注ですから、そういった局所反応の差を見ていると思います。
 「医療経済的な評価」で、神谷先生のご研究で、全体に接種した場合の医療費が、ワクチンにかかる費用が296億円に対して、中耳炎まで含めた医療費の削減効果としては687億円。また、12頁からQALYという形でまとめたデータが載っております。
 14頁。全体のQALYが、子どもさんの集団に接種をすることによって438獲得できるのだけれども、それにかかる費用は結構大きく400億円になります。1QALYは4,500万円ということで、QALYの一般的な基準としては決して安いワクチンではないということになります。
 17頁に「供給体制」が書いてありますが、製造販売会社のほう、検定を行う我々としましても、特に問題は現時点で生じておりません。十分に潤沢に供給できます。
 18頁です。「キャッチアップの必要性」ということで、図6に書かれています。通常は2カ月、4カ月、6カ月、1年を越えたところで追加接種を行うのですが、実際には定期接種化が始まった場合に、大切なのは2歳から4歳の子どもさんに対して接種をすること。侵襲性感染の罹患率そのものは高くありませんが、3頁に示したように、新しく生まれた子どもさんに感染を起こさないためには、全体の子どもさんのポピュレーションそのものに対してワクチンを広く接種していく、そういうキャッチアップが必要になることを示したデータになります。
 総合的な評価はまた別の資料になっておりますので、あとでご質問いただければと思います。
○岡部委員長 ありがとうございました。いまの時点でご質問がありましたらお願いします。
○岩本委員 肺炎球菌とほかの菌との比較で伺いますと、昔学生の時、我々はA群の溶血性連鎖球菌とその後のリウマチ熱であるとか、感染後に起きてくる重要な免疫の病気について、むしろ肺炎球菌以上に習いました。同じ連鎖球菌ですよね。限られた知識ですが、A群の溶血性連鎖球菌による病気は抗生物質の普及とともに減っていったのではないかというふうに言われていると思うのです。一方で、肺炎球菌は病原菌としてますます重要性を持っている。菌の性質との関連で、溶血性連鎖球菌と肺炎球菌は、片方は比較的減ったのでしょうか。これが違ったらごめんなさい、僕はそう思っていて。A群連鎖球菌による病気が随分減ったのに、肺炎球菌がずっと重要な菌であるという違いは何なのですか。例えば、抗生物質の耐性なのか、抗原性の問題なのか、そういうところのエビデンス、あるいは先生の考え方を聞かせてください。
○和田参考人 溶連菌が減ったかという問題ですが、咽頭炎の数そのものは決して減っておりません。ただ、昔見られていたような急性糸球体腎炎やリウマチ熱そのものの数は減ってきております。逆に劇症型の連鎖球菌の感染症というのが増えてきておりまして、最近は小児に対してもそういった感染症が見られているのが問題です。肺炎球菌に関しましては、昔からずっと子どもないし大人の咽頭にいて、それで侵襲性感染を起こしたり、呼吸器感染を起こす。日本の特徴は、溶連菌と違いまして、薬剤耐性が非常に高いことで、この20年間で肺炎球菌の薬剤耐性はかなり進んでしまいました。
 病原性の変遷を申し上げますと、昔は大葉性肺炎というのは、戦後大人では見られなかったと言われていましたが、実はここ10年ぐらいで小児に対しても大人に対しても非常に病原性が強い肺炎球菌が出てきております。実際にこのワクチンで、呼吸器を含めてどれぐらいそういうものが防止できるかというのは、今後観察研究を続けていく必要がありますが、菌そのものは単純に病原性が減ったり、罹患率が減ったということではなくて、どんどん新しく病原性を獲得して、昔見られていたものや、新しく見られる病態がどんどん出てきております。
○岡部委員長 ほかにはいかがでしょうか。かなりシビアリティーとしても問題になりつつあるというところだと思います。耐性の度合もかなり増えてきているということで、治療の現場では行き詰まっていることが多いと思うのですが、いかがでしょうか。
○和田参考人 神谷先生がご専門というか、神谷先生にお伺いしたほうがいいかもしれませんが、特に日本では、7価のワクチンが海外で入ることによって逆に増えてきた19Aに非常に耐性のものがありまして、ペニシリンのMICで最高で4とか8とかというもの、これは髄膜炎を起こしたらペニシリンの治療域ではなくなってしまいます。髄膜炎の治療に使われますメロペネムに関しても0.5。非感受性の菌で、そういったものが今後日本で7価のワクチンが入った場合に増えてこないか、非常に問題になっております。この資料の最後に書きましたが、13価のワクチンですと、19Aというものをカバーします。残念ながらいま19Aが含まれている13価のワクチンの機構での審査は止まっておりますので、必要性をご議論いただいて、機構のほうに早く承認申請を開始するようにというような意見を出していただければと思います。
○岡部委員長 ほかに何かご質問はありますでしょうか。
○宮崎委員 単純な質問です。供給量のところで検定という話が出ましたが、Hibワクチンあるいは今回の7価肺炎球菌ワクチンは、1ロットどれぐらいの単位なのでしょうか。
○和田参考人 大体20万本になります。ロット数でいくと、年間40ロット程度、700万本から800万本の供給量です。
○岡部委員長 あとのHPVにもかかわってくると思うのですが、それぞれのワクチンについては検定が可能であるというご意見をいただいていますが、ただ総合的に考えると、例えば感染研の検定をやる部門はそれぞれのワクチンを一部門で一ワクチンについてやるのではなくて、各部門がそれぞれの担当項目をやるわけですよね。トータルで考えてみた場合いかがでしょうか。
○和田参考人 特に動物を使っている所は大変だと思います。昨年度のようにパンデミックインフルエンザが入りますと、それで非常に食われてしまいますので、そういった点で余力を持たせる。ないしは今後のいろいろな工程規格のレビューも含めて仕事をやらせていただくためには、おっしゃっていましたように、人を付けていただければと思います。
○岡部委員長 それについて別途検討といいますか、別のところでの議論だと思いますが、全体の供給としては、生産だけでなくて検定ノキャパシテイ—も含めて考えなければいけないことだと思います。ほかにいかがでしょうか。
 ありがとうございます。ヒトパピローマウイルス(HPV)については、このワーキンググループの代表の多田参考人お願いします。
○多田参考人 私たちのチームはウイルスの関係者の者、産科、小児科、産婦人科、社会疫学、公衆衛生、医療経済と私を加えた8名の作業チームで報告書を作らせていただきました。作業チームの報告書について代表して説明させていただきます。前回と同様の内容になる部分もありますが、23頁からの「評価・分析編」を基に説明させていただきます。
 「対象疾病の影響について」ですが、この対象とするウイルスは、人にのみ感染するウイルスで、人以外からの感染はないウイルスです。性行為を介して感染しまして、生殖器の粘膜細胞で潜伏・持続感染を確立します。HPVの遺伝子断片や感染した細胞の遺伝子に組み込まれることで、高い増殖能を持つ細胞からなる前がん病変を生じ、さらに悪性形質を獲得すると子宮頸がんが起こるということになります。ほぼ100%の子宮頸がんのがん組織から、HPV遺伝子断片が検出されておりますので、子宮頸がんの原因はこのウイルスの感染と考えてよいと思います。
 16行目から罹患及び死亡の状況ですが、これを前回から新しい数値にファクトのほうで更新しています。我が国の子宮頸がんの罹患者数は、ファクト追加編の2頁に追加していますが、2005年には8,474人、死亡者は2009年に2,519人です。罹患及び死亡率を全年齢の女性でみた場合、相対的順位が他のがんと比較してそれほど高いとは言えません。それぞれ9番目、10番目に高いです。しかし、40歳未満の女性に着目しますと、罹患率は乳房に次いで2番目、死亡率は乳房、胃がんに次いで3番目に高いがんになります。また、ファクト追加編の図1、図2の5歳ごとの年齢群別で見ますと、罹患率は20~24歳、死亡率は25~29歳から上昇し始めます。さらに図3、図4の最近20年間の推移では、図3で25~39歳の罹患率、図4では39歳の死亡率は、改善することなくむしろ上昇しているのが見てとれます。さらに図1を見ていただきますと、15~19歳の年齢群から、罹患率が上がり始めているというのが見てとれます。
 これらのことから、HPV感染の一次予防を考える場合には、HPV感染率の極めて低い、つまり性経験率の極めて低い年齢を対象として対策を取り始めなければいけないということが考えられます。
 23頁です。31行目からの記載になりますが、HPVの潜伏・持続感染から子宮頸がんに至るまでの経過は長期にわたると考えられており、進行度が「限局」という早期の状態で発見された場合の生存率は90%以上ですので、検診による早期発見、つまり限局の状態で早期発見して、それに続く早期治療が行われるということが非常に有効ながんになっています。検診受診率は20%程度と極めて低いですが、そこでの発見率としては、50%が限局で見つかっていることからも、検診の受診も勧められるがんとなっています。
 次に「子宮頸部浸潤がん患者を対象としたHPV遺伝子型の分布」なのですが、HPVは100種類以上の遺伝子型に分類されます。約40種は粘膜病変から、約60を皮膚の病変から分離されております。40種の粘膜型のHPVのうち、15種の子宮頸がんからDNA遺伝子が検出されています。ここから見つかっている15種類が、高リスクHPVと称されています。
 海外の複数の研究をまとめますと、15種類のうち、HPV16とHPV18で約70%を占めます。この割合については、今年も新しい報告が出ましたが、それでも同じような割合を示していますので変わっていません。一方、日本人を対象とした報告では、HPV16と18の占める割合は50~70%と幅があります。14件の研究のメタアナリシスでは59%と海外よりもやや少ない値になっています。16と18は多くを占めますが、いずれにしても16と18のみに対するワクチンでは100%カバーすることはできないということに注意が必要です。  【3】で「子宮頸がんの妊娠・出産への影響」について検討しています。40歳未満の女性のがんでは、子宮頸がんの罹患率が2番目に高いことを述べましたが、5歳ごとの年齢群別の罹患率で見ますと、特に35~44歳で高い値になっています。人口10万対35~39歳で21.0、41~44歳で22.9と推定されています。
 一方、年齢群別の出産率に着目しますと、25~34歳の人口10万対が8,500~9,500ということでピークです。35歳以上になりますと、4,500にやや低下します。このように、現状では、子宮頸がん罹患の年齢は出産のピークより若干高年齢ですが、先ほども指摘した20代、30代の罹患の増加傾向が今後もこのまま続くとすると、今後出生率に対して影響を与える可能性もあるのかなと考えられます。
 「対象疾病の治療法」については、子宮頸がんの治療ですので手術療法と放射線療法があって、これが主体となりまして、これに化学療法を組み合わせる場合があるということを書かせていただいています。適切な治療が行われた場合の5年生存率ですが、限局の状態、1期という状態で発見されると、70.3%ということです。ただし、骨盤腔を越えて広がったりしているような場合には、11.3%と報告されています。
 次に26頁、「予防接種の効果・目的・安全性等について」です。まず効果についてですが、ワクチン自体は組換えDNA技術を用いて作ったHPVウイルス蛋白を抗原として製造された不活化ワクチンです。ウイルスは含まれず、生ワクチンではありません。先ほど述べたように、海外では子宮頸がんの70%、我が国では50~70%に原因となっていると考えている、HPVの16と18の感染予防を主目的としたワクチンになっています。感染を予防するワクチンですので、既に感染してしまっている場合の治療効果はないワクチンです。現在ワクチンとしてあるものは、ここにいらっしゃる皆さんはよくご存じのとおり、2種類の遺伝子型ウイルスに対する16と18の2価のものと、さらに良性の病気である尖圭コンジローマの原因となるHPV6型と11型を加えた4種の遺伝子型ウイルスに対する4価のワクチンがあります。いずれもすでに100カ国以上で承認がされています。
 効果については、この2種類のワクチン、具体的にはサーバリックスとガーダシルといいますが、これらについて海外で実施された無作為二重盲検比較試験の結果では、いずれもHPV16と18の感染を防御するということが認められています。効果判定については、感染を受けてから子宮頸がんの発生までは10年以上かかるということに対して、現状の効果判定のための試験の観察期間は、いま結果はよかったと言いましたが、平均3年間であることがあります。まだ3年間のものしか見られていないということ。それと、エンドポイントというか、効果の判定のところを対象圏のHPV感染、あるいはそれらによる子宮頸がんの前がん病変の発生の頻度を見ています。効果の持続、再接種の必要性とか、16、18以外の含まれていない高リスク型のHPVの交差免疫効果の程度ということは、今後、見極めが必要な課題として残っているかと思います。
 「予防接種の目的について」。27頁に、子宮頸がんの罹患者及びそれによる死亡者の発生をできる限り減らすこととあります。個人予防ということになるかと思います。社会防衛に関する影響については、集団免疫効果という部分ですが、今後知見を重ねて判断していかなければならない部分となっています。
 ワクチンの安全性についてですが、先ほども言いましたが、ウイルスそのものは含まれていないワクチンです。副反応も主に局所の反応に限ったものとなります。特に安全性については、思春期、成人年齢層の接種を対象としたものですので、迷走神経反射による失神への注意とか、あるいは妊娠の部分、稀に発生し得る全身性の副反応について、また発生に備えた対応準備が必要です。
 「医療経済的効果について」は、池田先生からお話もありましたとおり、今回いろいろ書き替えています。時間があると思いますので説明しますと、まず国内外の多数の報告のレビューによるものでは、費用対効果は概ね良好と報告されています。今回やっていただいた分析については、今回修正した主な点は、一人当たりワクチン接種費用を先行研究で求めたもので前はやっていたのですが、今回はメーカー希望販売価格に技術料を加え、それに消費税を加えたものを接種費用に組み込みました。
 接種率を前回100%で計算していたのですが、85%程度を見込みました。
 評価対象としては、前回13歳女子に対する場合をやりましたが、それに加えて13~16歳。対象と私たちが考えた年齢全体に対するものも、算出していただきました。分析は支払者の立場で分析を行っていきます。間違えていたら、またフォローしてください。先生からもお話がありましたが、算出した指標は増分費用効果比、incremental cost-effectiveness ratioで求めています。
 ファクトシートの追加編のほうにも記載しているのですが、13歳女子に対する接種での増分費用対効果比は、1QALY当たり201.1万円。これは前回も池田先生からもお話のあった1QALY当たり500万円を超えない値、500万円を閾値としていますので、それを超えない値に収まっていて、費用対効果は良好と言えます。さらに、研究の中では割引率、ワクチン効果、ワクチン効果の持続期間などのパラメーターについて、感度分析をしていただいていますが、それらの結果でも500万円を超えない結果が得られています。13歳~16歳女子全体に対する増分費用対効果比は、1QALY当たり180.2万円ですので、これも500万円を超えない良好な値が得られています。
 次に実施について、28頁のところからになります。目的を果たすために求められる接種率は、一人ひとりにおける接種効果なので、100%を求めると書き込ませていただいています。
 ワクチン導入が可能かについては、前回、供給量は調査中でしたが、今回はご回答いただいていまして、本年度のサーバリックスの供給量は130万本だったそうですが、平成23年度については、接種状況等にもよりますが、年間400万程度の供給までが可能と回答いただいています。
 「勧奨される具体的な接種スケジュール等」としましては、まず対象者です。我々は効果の持続期間、説明の点、がん検診との連続性の点なども踏まえて、さらに中3の初交経験率が5%であるというような状況も加えて、標準的には中学校1年生から高校1年生の4年間と考えました。特に推奨する年齢を中1としております。なお、先ほども「説明の点」と言いましたが、中1、中2での接種に当たっては、性感染症の観点からではなくて、がんの予防の観点からの説明になると思います。性感染症についての学習指導が中3で行われるということからです。
 接種方式ですけれども、個別接種を原則としています。適切な接種体制が整えられれば、学生という年齢を考えますと、集団の場における接種も考えられると思います。接種時の注意としては先ほど安全のところでも言いましたけれども、年齢的な要素が追加されます。迷走神経反射の点や妊娠の有無にも配慮が要るかと思います。
 (3)が「実施する際の留意点」です。問診などの部分はもちろん、あとは説明の点があるかと思います。その中に少し細かく書いていますが、性行為でうつり、発生するがんということから、子宮頸がん患者が性感染でかかったという偏見・差別が生じないようにという配慮や、HPVワクチンが性感染症すべての予防ワクチンという誤解が生じないようにする必要があります。それから、ワクチンで完全に子宮頸がんにかからない、検診は要らないという間違いがないようにということも踏まえて、非常に丁寧な説明が必要になってくると考えています。
 最終的な「総合的な評価」としては、ファクトやWHOの勧告、それから海外先進諸国の取組み状況なども踏まえた結果として、我が国においてはHPVワクチンの定期的な位置づけの接種の推進が必要と考えております。
 繰り返しになりますけれども、留意点として残る点を最後に述べさせていただきますと、ワクチンのHPV感染予防効果は100%ではありません。ワクチンに含有されていない型のHPVウイルスもあります。その感染の可能性があることと、何よりHPVワクチンを接種した集団において子宮頸がんが減少するという効果は期待されるものの、実際に達成されたという十分な証拠がいまだないのが現状であることから、罹患率・死亡率の減少に対する効果がすでに確認されている細胞診による子宮頸がん検診が、適正な体制で実施されなければいけないと考えております。また、WHOも提唱しているように、HPVワクチン接種導入の効果判定が必要という観点からも、がん登録はもとより、せっかく実施されている検診制度の中で前がん病変の把握・集計の実施をこの機会にこそ、是非検討する必要があると考えております。我々の報告の内容は以上です。
○岡部委員長 ありがとうございました。それではご質問をお願いします。
○宮崎委員 2つあります。1つは費用対効果です。13歳で接種した群と13~16歳に広げた群と比べて、200万と180万円で、広げたほうがよくなっていますよね。単純に考えれば年齢が上がればそれだけ感染率は上がっていくわけです。だからこそ13歳のほうが接種時期としていいと言っているわけです。ですから、この辺にQALYの割引率とかいろいろなことの、現場の感覚と合わない不可解さがあるのではないかと思って聞いていたのですが、いかがですか。
○岡部委員長 これは五十嵐先生ご本人のほうからどうぞ。
○五十嵐参考人 ご指摘のとおり、全く割引きを行わなければ、当然早くやったほうがいいに決まっていますので、13歳が最も費用対効果に優れて、13歳からだんだん落ちていくという形になります。ただ、今回のベースラインの分析では、割引きを入れています。
 13歳でやる場合、16歳に比べてのメリットというのは、13、14、15歳の感染を抑えられるということです。先ほどの多田先生のお話にもありましたけれども、主に子宮頸がんを発症する年齢というのが20~30歳前後ということになると、例えば25歳で子宮頸がんを発症した人がいて、13歳に接種した人に関しては25歳の感染予防効果というのが12年後に表れます。一方、16歳で接種した人に関しては、25歳で発症を予防するメリットは9年後に表れます。13~16歳の全員に投与しますと、最初の3年間分の感染は防げない。これがデメリットになります。多く感染が発症する年代、20代、30代に関しては割引きをしなければ、もちろん効果は一定になるのですけれども、いまの価値に換算した場合は、16歳から見た25歳のときの予防効果のほうが、13歳から見たときの25歳の予防効果よりも大きくなりますので、費用対効果が良好になります。
○宮崎委員 そういう計算なので、実感と合わないという話を申し上げたわけです。もう1点は、最後にまとめを言われましたね。その中で検診のこととか、いろいろ言われていましたが、本当に必要なのは日本におけるHPVのウイルスの動向です。子宮頸がんにおけるHPV16型、18型のパーセントのデータも、まだばらついていますし、今後どうなっていくのかということを加えておかないといけないのではないかと思います。それが先ほどのまとめの中では言われなかったような気がしました。
○多田参考人 いちばん最後に述べました。
○岡部委員長 たぶん宮崎先生のお話は、型別も含めたサーベイランスが重要であるということですね。
○宮崎委員 そうです。そう思うのです。やはりそこをきっちりやっておかないとと思います。
○岡部委員長 「がん検診」「がん登録」という言葉で含ませないで、タイプ別も含めたヒトパピローマウイルスによるがんに関する日本における検証が必要であるということですね。
○宮崎委員 そうです。子宮頸がんのウイルス学的なことは、いろいろな検査法も含めてまだばらつきがありますので、そこをきちんと研究班なり感染研なりでやって、逆に言うと、そこにきちんとお金を出していただかないといけない。厚労省の説明の文章を読んでみると、もともと8月末のがん対策のときには研究としていろいろフォローすると言っていたのに、今回はワクチンに特化した対策になっていて、費用的に言えば8月はチャラになっていると書いてありますものね。そこはもともとのがんをどうやって制圧していくかという中に、検診だけではなくてウイルス動向も必要だということを、やはりきちんとやっていかないと、ワクチンだけやっても半分しか減らないということが、10年後、20年後にわかってくるだけという話になりますので、よろしくお願いいたします。
○岡部委員長 結論のところに、ウイルスのタイプ別というのは書いておいたほうがいいと思います。それがワクチンに関連する感染症の問題なのか、総合的に見たがん対策の問題なのかというところで、あとでどちらだ、どちらだと言われても困るので。鈴木室長から、何かコメントかご意見がありましたらお願いします。
○健康局がん対策推進室長 そもそも我が国のHPVのタイプ別の感染率のサーベイランスというのは、非常に重要だと思っています。私どもがんのほうの研究の中でも、研究費を作って今やっていただいていますので、それも含めて今後ともHPV対策、もしくは子宮頸がん対策をさせていただきたいと思っています。
○岡部委員長 ほかにご質問はいかがでしょうか。
○岩本委員 ワクチンも実際の商品名まで出ていて、2つ話題になっているわけですが、非常に難しい部分は、中学一年からの接種を考えてサーベイされているけれども、学習指導要領の問題等で、がんを中心にせざるを得ないというのは、非常に難しい一歩としてよくわかるところもあります。その場合に、例えば非悪性腫瘍性で、尖圭コンジローマを起こすパピローマ、6とか11の入った製剤に関してどう位置づけるかというところは、子宮頚がんを起こさないHPVようのワクチンも入っているけれども、がんのタイプも入っているので、がんワクチンなのだという説明をしてやっていくのですか。それとも方針としては、HPVに関するワクチンとして生活指導要領をもっと若いほうに前倒ししろという方向でいくのか、どちらでしょうか。
○岡部委員長 多田参考人、その辺は答えられますか。
○岩本委員 ワーキンググループの範囲を越えているかもしれないけれども。
○多田参考人 先生のおっしゃるとおり、報告書を作るグループの範疇を越えているかと思います。個人的な意見として述べることは控えさせていただきます。
○宮崎委員 結局2価、4価ということで4価が出てくる場合には、もう子宮頸がんを超えた話になるのに、いつまでも「子宮頸がんワクチン等」などと言っていること自体がおかしくなります。実は、これは国のほうがどう考えるかということなのです。
○岡部委員長 当初から「子宮頸がん」ワクチンということを全面に出しているので、パピローマウイルス感染症予防であるというところはアナウンスしても、受ける側の印象として少し弱くなっているのではないかと思うのです。それはこの委員会でも指摘していることです。名称としては生きているけれども、今後は4価ワクチンについてどうしていくかです。これは当然、ワーキンググループの役割からは超えているのですけれども、どなたか何かご意見はありますか。あるいは事務局のほうからもありますか。
 理解としては、4価が出てきたときに子宮頸がんも防げるけれども、パピローマウイルスの予防としてのワクチンである、という位置づけであることを認識しておかないといけないと思います。さらに、それで子宮頸がんの予防の枠が広がるという誤解がないように是非しておいていただきたいと思います。よろしいでしょうか。宮崎先生のおっしゃったのは、名称も含めて継続した問題になっていくと思うのです。
○宮崎委員 現在は2価ワクチンしかないのでほぼイコールだけれども、近々4価ワクチンが使われるようになれば「ヒトパピローマウイルスワクチン」と言っていかないと収まらなくなるということを申し上げたいのです。
○岡部委員長 これは十分にノートしておいてください。ワーキンググループからも話があったように、STDかどうかという問題だったり、100%効果を期待するものではないけれども、現在のところは子宮頸がんの予防になるということだったり、前々から強調されていますが、検診をしっかりして、なおかつサーベイランスもやるということを忘れずに付け加えておかないと、違った方向に行ってしまうところがあるように思います。これは使う側にとっても勧める側にとっても、注意の必要なところだと思います。しかし必要度は高いという意味だと思います。
 ほかにいかがでしょうか。それぞれのワーキンググループからはまとめてお話していただいたので、もうすでに頭の中に入ってきているとは思いますが、冒頭に藤井次長からお話があったように、一応事務局でサマリーを作っているということですので、これについての説明をお願いします。これは全部読むわけにはいかないと思います。重複するだろうと思います。なお、それぞれのワーキンググループについて、さらに委員の先生の間で意見があるということでしたら、手元に紙が行っていると思いますので、それに記入して提出していただければと思います。それでは説明をお願いします。
○予防接種制度改革推進室次長 お手元に資料6-1、6-2、6-3と、先ほどご説明した資料3をお手元に置いてください。先ほど作業チームのほうからご報告いただいた内容について、6-1ではHibワクチン、6-2ではコンジュゲートワクチン、6-3ではHPVワクチンについて、各項目に基づいて内容としてはこういうことが書かれているということを、事務局でまとめてみました。先ほどの質疑応答にもありましたけれども、かなり膨大なたくさんの情報量が詰まっているものですので、要約するのは結構苦労しました。最終的に小委員会から部会に上げていただくときの報告、あるいは国民の多くの方がご覧になるという意味では、やはりサマリーが必要かと思って作成しているものです。
 結論の部分については、おそらくすべてのワクチンをご検討いただいたあとで、まとめて横並びで書くことになると思います。まずは(1)から(4)の内容について、作ったものでお気付きの点等がありましたら、あるいはご指示等がありましたら、よろしくお願いいたします。併せて主たる目的等についても、各ワクチンについてご議論いただければと思います。
○岡部委員長 まとめについては、ザッと見ていただいているとは思うのですけれども、いま一つひとつ議論をしていくということではないので、これもご意見があれば、あとで合わせてペーパーで出していただければと思います。そこには最終結論はまだ書いていないはずだと思います。最終結論については総合的な形で、今のところでの必要度、インパクト、これからの課題を述べていただいておりますけれども、最終的なまとめとしては、現在議論中のムンプスや水痘やポリオなども含めて、結論というようにまとめていきたいと思います。その点はまだこのサマリーには書いてありませんので、一応ご承知ください。それぞれについてはこれでよろしいですね。
 もう1つは、資料3で提出していただいたものです。特にワクチンについてその目的が、いまの一類、二類という分け方が良い悪いというのは、いろいろ議論のあるところだと思いますし、それぞれのワクチンについて、完全にクリアにはいかないと思うのですけれども、オーバーラップするところを承知した上で、どちらのほうに比重が高いかといったところでのご意見もいただきたいと思います。ご意見がありましたら、よろしくお願いします。
○岩本委員 まずは文章的な問題です。[背景など]の4行目に、「集団予防的な効果」と「個人予防的な効果」と書いてあります。「これらを複合的に有する場合がある」の「複合」とは、具体的に言うとどういうことを指しているのですか。例えば頻度は少ないけれども、非常に重い感染症であるということですか。
○予防接種制度改革推進室次長 こちらで書きましたのは、必ずしも現在の制度にそのまま当てはめる、という結論ありきで出しているものではないのですが、基本的に、例えばインフルエンザ等については、個人の重症化の防止などをメインに、法律の中でも制度の中でも申し上げております。そういうことを代表して、「個人予防的な効果」と書いたわけです。しかしながら、今回の作業チームの発表にもありましたように、主として個人の重症化の防止という視点がありながら、間接的にはやはり集団予防的に、ワクチンを打っていない方に対しての罹患率を下げるといったお話も出てきている部分が多々あります。そういうことは視点として1つに絞れるわけではなくて、両方の効果がある。そういう意味で「複合的」という表現をさせていただいております。2つが重なっているという意味で使っている表現です。不適切であれば違う言葉に変えますが、意味としてはそういう意味です。
○岩本委員 しっくりと落ちないのが、私は部会でも一度申し上げたことがあるのですが、例えばポリオのような病気だと、今起こるのはほとんどワクチンによるリバータントであって、野性型のウイルスによる自然感染はなくなっている。しかし、起こると重症だから、ワクチンは打っておいたほうがいいと私は思っています。しかも不活化ワクチンになったほうがいいと思っています。しかし、それが集団予防か個人の予防か、どちらに入るのか難しいと思います。一つひとつのワクチンがどちらの目的を持つワクチン化を分類できるのかな、と思います。
○予防接種制度改革推進室次長 いまの現状からして、ポリオの例を挙げていただけると、まさにおっしゃるとおりだと思うのですけれども、もともとポリオというのは1人の方が罹患し、周りに集団免疫的なものがなければ、あっという間に広がるという意味では、私は、集団予防的な効果と捉えて、これまで予防接種法の中に位置づけられてきたのではないかという認識なのです。
○岩本委員 その辺は医学の問題と、法律でどういうように縛るかというのは違うので、そこがある程度ぎくしゃくするのは仕様がないと思うのですけれども、過去のいろいろな定義を活かしていこうとすると、齟齬が大きくなり過ぎるだけではないかという心配をします。
○岡部委員長 おそらくこの議論は、齟齬も含めて矛盾点が出てきていることも含めての意見ですね。つまり、いまの一類、二類が妥当かどうかということにもなってくると思うのです。
○岩本委員 その一類、二類の前にもう1点申し上げます。例えば、先ほどインフルエンザの例が出ました。インフルエンザは集団ではなくて、個人予防で重症化を防ぐというのはよくわかるのですけれども、一方で去年のインフルエンザのワクチンを見ると、個人個人の持っている免疫機能の違いとか、基礎疾患のある子どもたちとか、基礎疾患のある大人とか、ワクチンの効果が違いますので、順位づけをするという対策があったと思います。個人予防か、集団予防か、というカテゴリー分けの背景として、人は同じような健康を持っていて、微生物の病原性の強弱、あるいは宿主域の拡大度だけで物事を分けようとする考えというのは、感染症で言えば20年、30年以上前の概念、予防接種法を作ったときの概念なら、それでよかったかもしれないけれども、今はもう少し違うのではないでしょうか。
 要するに、個人予防という場合、一人の人間を例に考えても、年齢によって違うし、年を取ってきて糖尿病になったり、がんになったりいろいろあれば、個人の免疫度も変わってくるわけですから、微生物の持つ病原性の重要度もその時々で変わるのです。私が前から申し上げているのは、やはり健康というのは初めからあるものではなくて、個人個人を積極的に守る必要があるし、集団としての健康状態も保つためには、必要なワクチンがあるという発信が必要だと思います。法律というものは、できるだけそういう考えに即した方がいいと、個人的には思っています。
○岡部委員長 感染症というのは基本的に人に移るので、その人だけが予防すればいいものではなくて、広い意味では社会の防衛になっていくと思うのです。しかし一方ではその広がりがあまり強くなくて、個人の疾病の予防が中心になるようなものもある。現在の一類疾病にもそういうものが含まれているわけで、線引きはなかなか難しいと思うのです。逆に線を引かないほうがいいのかもしれない。そのことも含めた議論がいま必要で、多分そういう意見を求めているのではないかと思います。
○岩本委員 ワクチンプリベンタルブルディジーズとは何ぞや、それについて国はこう考えますというものを法律に書けないのかということをずっと申し上げているつもりです。その中で、財政的な問題から、何から順番にやるかとか、どういう補償はどれを優先するかというような分け方のほうが、私はわかりやすいと思っています。法律で一類、二類とやると、これを一類に入れるのか、二類に入れるのかという議論ばかりに行くのは、私はもともと非常にわかりにくいと思っています。
○予防接種制度改革推進室次長 先ほど委員長からもお話があったのですけれども、一類、二類を一本化するとかしないという話は、いま部会のほうでも議論されておりますので、それをいまのご議論の大前提にしていただくということを言うには、早すぎる時期だと思っております。ただ、この前もご意見が出ましたように、ある一定の集団の方たちに予防接種を行う場合に、かなり強くお勧めするものと、個人の選択等に担う部分がかなりあるものとがあるのではないかという議論があります。そういう意味では今の一類、二類も一定の合理性があるのではないか、というご議論をいただいたのも確かです。
 ということは、やはり大きな分け方として、皆さんにかなり強くお勧めしていくものと、個人が選択していくような範囲の広いものとが仮にあるとしたら、その辺りはやはりきちんと議論をしていただいた上で、今後どういう制度設計にするかという議論の基礎資料というか、基礎の議論になるのではないかと思い、今回こういうことをご議論いただけないかというお願いをしたところです。
               (神谷参考人退室)
○岡部委員長 具体的にインフルエンザだけですか。
○予防接種制度改革推進室次長 現在の体系で二類疾病に付けられているのは、高齢者を対象に行っている季節性のインフルエンザです。
○宮崎委員 一類、二類という分類ですが、すでに一類にも完全な個人予防も入っていますので、そういう単純な議論ができないということを、まず了解を得ておく。要は、どれぐらい国民にとって必要かということをきちんと議論していく。その中に個人予防がメインだけれど非常に重症なものも入るし、集団予防が非常に大事なものも入る。ここに書いてあるように、個人の蓄積が集団予防につながるものもあるので、これらが全部入っていいのではないでしょうか。必要かどうかということを考えていけば。とても必要であれば、勧奨の程度は高くなるでしょう。ワクチンというのは常に効果と副反応の比率もありますので、いろいろなことの中でどうしていくのかというのは、なかなか難しいワクチンもいくつか残ってくるかもしれません。
○予防接種制度改革推進室次長 そういう意味で、今回は三疾病についての議論というか、留意すべき点等について記載いただければと思っています。総合的にはおっしゃるとおりだと思います。こういうものもある、ああいうものもあるということです。
○廣田委員 個人予防と集団予防という項目を2つ、同じように対立させた形で設定して、それに見合った形でカットオフを何らかの形で作ってという対応は、諸外国にはあまりないのではないかと思うのです。個人予防と集団予防とはせずに、大体感染予防や発病予防、入院予防、重症化防止、死亡の予防、というのがあります。そのあとぐらいに、例えば接種率が何十パーセントのところと何十パーセントのところを比較すると、発病率がこのくらい下がったという報告もあるという形で。個人予防のほうにはエビデンスとして積み重ねられていますが、集団予防というのはエビデンスと言うよりも、やはり単発的な報告、あるいは経験的な統計上に表れた数値で言われているものだろうと私は思うのです。ですから、この2つを常に対立させた形で2項目として挙げるのは、その次に何となくまた矛盾を生んでくるという気がしております。
○岡部委員長 参考人の先生方も意見があったら、どうぞおっしゃってください。私自身の頭の中では、一類疾病というのはある1つの方針で、きちんと多くの人にできるだけ「ノー」と言わないでやっていかないと、世の中全体としてもその病気から守れないものです。先ほどポリオの例が出ました。いま仮にポリオをやめたとすると広まってくるのが目に見えていると。はしかの場合も現在はたくさんある病気だという意識が、この間まであったわけです。個人予防で言えば、もうそろそろ止めても差し支えないのかもしれないけれども、ストップして元どおりにするわけにはいかないというところから、多くの人に防いでいただきたいといった強いアナウスで持っていくのが、たぶん一類だろうと私自身は思っているのです。そこに費用の問題あるいは法律の問題が絡んでくると、非常に複雑になってくるのですが、総論的な話としてはそうだと思うのです。
 それから、一応今日のテーマになっている3つのワクチンについて、総論的なところも含めて、どういうニュアンスで使われるワクチンなのかということについて、少しご意見をいただければと思います。最初のHibワクチンについてはいかがでしょうか。
○和田参考人 先ほど保菌状態について肺炎球菌で話しましたが、同時にHibに関しても聴取されていますか。
○岡部委員長 一緒でどうぞ。
○和田参考人 当然、集団でHibを抑えていくことによって、より年少の子どもの感染を抑えることができます。
○宮崎委員 私も同じ意見です。患者さんの数としては例えばHibの場合、確かに髄膜炎は数百人、その他の重症感染症を含めて1,000人ぐらいだと思います。しかし重篤で、我々医療現場でも治療に難渋し、死亡も後遺症もある。そういうものをワクチンで防げるという意味では、本当に個人が守られます。そういうことをやりつつ、接種率を上げていくと、いま言われた間接効果も同時に出てきて、よりいいことがあるわけです。そういう意味で総合的に言うと、推奨度は高くなると私は思っています。
○岡部委員長 ほかにはいかがでしょうか。
○岩本委員 費用対効果の説明がよくわかりません。例えばHibと肺炎球菌のワクチンを比べた場合に、単純計算で症例数を見ると、Hibの場合は400例と200~300例です。先ほど神谷先生からも、500~600例ではないかというお話が出たと思います。500~600例とか700例といった数字ですね。肺炎球菌のほうで出ているのが、例えば150と1,000を足すと1,150で、ここに出ている数字でいくとHibの大体倍以下ですけれども、費用対効果のところからいくと、例えば両方の3行目にあります。このQALYというのが私はいまだによく分かりませんけれども、1,098万と4,554万ということで、大体4倍の差があるというところです。その根拠というか、基本的な考え方というのがよくわからないのです。
○和田参考人 Hibと肺炎球菌を比べますと、髄膜炎の罹患率が随分違ってまいります。肺炎球菌の場合、全体の侵襲性感染の8分の1です。髄膜炎の後遺症がQALYに効いてきますので、肺炎球菌の場合はどうしても1QALY当たりの費用が高くなってしまいます。Hibの場合は菌血症より髄膜炎のほうが多いために、QALYの値が低くなります。
○岡部委員長 五十嵐先生、何か付け加えることはありますか。
○五十嵐参考人 いまご説明していただいたとおりです。減少効果が少し小さいのと、もう1つの効果として、Hibワクチンのほうのベースラインはワクチン費用が3万円ぐらいです。肺炎球菌に関しては、今はおよそ4万5,000円程度になっていますので、その分効果が少し小さいというのと、費用が3割程度高いというのが効いてきて、肺炎球菌のほうの費用対効果が悪くなっているということです。
○池田委員 費用の点でもう1つ、間接費用などを入れていきますと、肺炎球菌の場合、中耳炎の予防というところがあって、そこで医療費としてもかなり大きな費用がかかってきます。さらに生産性損失まで入れると、親がその間看病したりというところもあります。そういった社会の立場から見ますと、ますます肺炎球菌のほうが大きな数字が出てきて、費用対効果の点では有利に出てくるということですね。
○五十嵐参考人 そうですね。ただ、中耳炎のコストに関しては響いてくるけれども、中耳炎によるQOLの低下というのは、今回は考慮していません。最初の1段目のコスト/QALYに関してはHibが勝っている。基本的に中耳炎は費用のみに効いてきていますので、間接費用になりますと、肺炎球菌が逆転するという形になっております。
○宮崎委員 逆に言うと、中耳炎に関する効果をあまり過大に期待しすぎてもいけないわけです。なぜかと言いますと、中耳炎の中にはウイルス性中耳炎と細菌性中耳炎というのがあって、データ的には細菌性中耳炎の3割ぐらいが肺炎球菌で、その中でワクチンで予防できる型が限られますすので、過大評価しすぎない方がよいと思います。
○岡部委員長 ほかにはいかがでしょうか。集団だから費用的に重要だとか、個人防衛だから費用的に重要でないということが中には含まれるのですが、私はそうは思っていないのです。いまワクチンで防げる病気は、できるだけ個人負担にならないようにというのが、大きな声でもあると思うのです。その辺はいかがですか。
○予防接種制度改革推進室次長 この集団という意味が、コストも含めての集団防衛かどうかというご議論もあろうかと思いますけれども、今までそういうことは観点に入れておりません。まさにコストパフォーマンスだけで今後の対応を決めてはいけないというご意見もありますので、純粋に医学的なご判断をいただければと思っております。
○岡部委員長 肺炎球菌とHibについて、もしご意見がなければ、HPVのほうはどうでしょうか。HPVのほうと言うより、HPVそのものが従来考えられている感染症とニュアンスが違うというのがあるので、立場的にもポジションが違うと思うのです。いかがでしょうか。パピローマグループから、何か意見はありますか。
○宮崎委員 例えば、Hibはこのワクチン1つでほぼカバーできますよね。肺炎球菌は少し不十分さがあるけれども、かなりのカバー率があって、13価PCVなど、今後の開発の状況によっては9割ぐらいまでいけます。そこからいくとヒトパピローマは少しカバー率が低くなるというのと、本当の意味での効果は少し長期的に見ないといけないというところがあります。それから、やはり原因ウイルスのカバー率が低い分だけ、検診などのがん対策のほうもガッチリやっていかないと、本当の意味で患者は減っていかないだろうと思います。そういう意味では、Hibとか肺炎球菌よりもややわかりにくいと言いますか、明確でない部分が残っているのではないかという感じはします。ただ、国が使われている「がん予防」というのは大事なタームですので、これもうまく利用しながら理解を得ていかないといけないのではないかと思っております。
○岡部委員長 そういう点では集団防衛という言葉に、あまり馴染まない病気ではないかと思うのです。
○宮崎委員 ここは難しいところですね。実は外国でも今、ここが研究されているところです。ヒトパピローマウイルスワクチンに関しては、男性に打ったらどうなるのだろうとか、いろいろなことが研究中の部分ではないでしょうか。Hibや肺炎球菌ほど集団効果云々という議論は、今からというところではないでしょうか。
○多田参考人 その点については、今日のお話の中でも触れたかと思うのです。確かに集団防衛にかかる影響がどうなのかという知見は、これからの部分になると思います。資料3にも書いてあるとおり、ウイルスの感染でおきる病気のワクチンですので、個人の予防で始めたものであっても、必ず集団には影響するものです。ここに「両方の側面があると考えられるが」という文章があります。両方の側面が絶対にあるわけですから、そこからスタートだと思います。現段階でどちらの比重が重いかということで考えると、個人の予防のところに収めておき、これから知見が得られてきたときに移すという話になってくるのかなと、個人的な意見も含めて考えていました。
○宮崎委員 基本的には感染症がベースになるので、ある一定数の感染が本当に防げれば、その人が感染をばらまく率も減るということです。では男性もやるかというと、ここも費用対効果を考えると、そこまでの決断はなかなかできないというところも含めて、まずは今から大人になっていく女性を守る、というところから始めるのが妥当ではないかという感じがします。
○岡部委員長 理想を言えば、もっともっと多価のワクチンになって、カバー率が広くてということになりますけれども、そこまでのエビデンスを待つ必要はないのです。いま現存のものを使ってどうやって防げるか、ある程度の効果はありそうだというのがHPVワクチンではないでしょうか。
 また、ワーキンググループからもお話がありましたけれども、前回の委員会でも出たように、これはがんの予防であるというのが前面にあるので、ここ数年間、5年ぐらい使っても全然わからないと思うのです。ではエビデンスを待ってやるかというと、それは間に合わない。B型肝炎ワクチンのときもB型肝炎ワクチンを導入して、日本から肝硬変と肝がんが減るかというと、スタートのときにそのエビデンスは当然なかったですよね。しかし、これがスタートしているのは、将来、そういう方向に向けていくというスコープがあってのことだと思うのです。その意味を含めてのHPVワクチンであるという考え方ではないかと思います。
○宮崎委員 同様に風疹もそうでしたね。1977年に中学生に風疹ワクチンを始めたときも、すぐにCRSが減るわけではなくて、将来この人たちが妊婦になったときに風疹にかからないようにすれば、CRSも減るという目標を立てて当時やったわけです。その後、風疹そのものをなくそうという、それこそ集団防衛効果も含めた政策転換が、平成6年に行われたということだと思います。
○岡部委員長 非常にいい例だと思います。もし小西先生もご意見がありましたら、どうぞおっしゃってください。傍聴席ではありますけれども、エキスパートとして、もし何かご意見がありましたら。
○小西先生 いまクロスプロテクションが少し注目されております。ひょっとしたら16、18以外のウイルスにも少し効く可能性もありますので、とりあえずはこれで是非やっていただきたいという強い思いがしております。それと、先ほど議論がありましたように、4価ワクチンをどのように考えていくかということも、私たちの学会としてもう少しクリアな見解を持ちたいと思っているところですので、もう少し研究したいと思っております。よろしくお願いします。
○岡部委員長 学会などのデータも非常に必要だと思いますので、その辺の協力をぜひいただきたいと思います。それと、繰り返しになりますけれども、基本になるデータがないといけないので、サーベイランスをガチッとできるような工夫を是非続けて、あるいは強化するような形にしていただきたいと思います。
 一応いろいろなご意見をいただきましたが、いま結論がなくてもいいのですね。いろいろな意見を並記して、後の議論に結び付けていくということになると思います。今日、事務局として検討いただきたい点として書かれたことは、以上にしておきたいと思います。この次にあるのは参考資料ですか。
○予防接種制度改革推進室次長 事務局から、参考資料を2つ用意しております。1つ目が、この中でもご参加されている委員の先生方もいらっしゃると思いますが、12月6日の薬事食品衛生審議会医薬品等安全対策部会、安全対策調査会において、今日ご議論いただいている子宮頸がん予防ワクチン、Hibワクチン、小児用肺炎球菌ワクチンの副反応についてのご報告をいただいておりますので、安全対策課の方から説明させていただきます。
○医薬食品局安全対策課長補佐 それでは医薬食品局安全対策課から、資料を説明いたします。本日の会議で、作業チームの報告をいただいております3つのワクチンについては、参考資料2にあります。11月に補正予算が成立して、子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進臨時特例交付金という事業が開始されております。この事業で対象とされている3つのワクチンは、いずれも発売からまだそれほど長くは経過しておりませんので、発売から本年10月末までに寄せられた薬事法に基づく製薬企業からの副作用報告です。ワクチンの場合は通常、慣例的に「副反応」と申しておりますので、資料タイトルはそうさせていただいております。その状況をまとめたものを報告しておりますので、こちらの会議にも併せてご報告をということです。
 参考資料1に関しては紙2枚で、トータル3頁です。各ワクチンの発売時期、出荷数量、それに基づく推定の接種者数と報告されている副反応の件数を、多いものから順に表にまとめたものです。1枚目がヒトパピローマウイルスのワクチンです。昨年12月から今年10月までの間に、ワクチンとしては約60万本出荷されております。計3回打つワクチンですので、接種者数は新たに打たれる方が出てくることから、平均接種回数をおよそ1.5回と見積もって、およそ40万人程度であろうと考えております。接種回数としては60万に近い数字になろうかと思います。
 副作用、副反応の報告としては発熱、失神、意識消失が11件、11件、10件ということで、比較的多くありました。このワクチンに特徴的なものは、あとの2つのワクチンではあまり見られない意識消失や失神というものがあります。血管迷走神経反射による失神に関しては小児科学会からも、今年の9月に注意点に関しての声明が出ております。本日、資料は用意しておりませんが、12月6日の会議の際には併せてご紹介しており、すでに添付文書では血管迷走神経反射による失神についての注意喚起を行っております。11月から開始された事業においても、特にこのワクチンの予防接種後の措置に関しては、失神の発生の恐れがあるという注意喚起を実施要領中に書いております。
 もう1点。このワクチンでは痙攣が6例ということについて、※を付けております。12月6日の会議の際に、その他あと2つ出てくる乳幼児に打つワクチンに見られる痙攣と比べてどうなのかという点のご指摘をいただき、専門家に症例の経過を詳細に見ていただいております。このワクチンの副作用の報告はトータル81例で、189の副反応の件数が報告されております。1人の方に複数の症状が併せて見られることが一般的です。本ワクチンでの痙攣は、乳幼児で見られる熱に伴って出る、あるいは単独で出るというものではなく、失神や意識消失に伴った症状として出ているということがあり、そういった評価をいただいております。
 2頁目はHibワクチンの副反応の状況です。こちらは3つの中でいちばん早く発売が開始されておりますが、それでも平成20年12月ということで、現在までにおよそ230万本余りです。推定接種者数は、年代によって接種回数が異なりますが、予約販売などを行っているため、およそ140万人と把握されております。こちらは熱性痙攣や発熱などの副作用が多く見られております。
 最後の3頁目が、小児用肺炎球菌ワクチンです。こちらは最も発売が新しいもので、今年の2月からです。120万本余り出て、推定接種者数は70万人程度となっております。副作用は発熱が比較的多く見られているほかは、まだそれほど集積がないという状況です。これらの報告を安全対策調査会に行いました。現時点では承認されて以降、特段の安全性の懸念は生じていないという評価をいただいております。
○岡部委員長 これについて、何かご質問がありましたらどうぞ。
○廣田委員 HPVワクチンの失神についてですが、海外報告でもこんなに多いのですか。
○医薬食品局安全対策課長補佐 率的なものまでは、いま手元にありませんけれども、海外でもたしかHPVワクチンが出てから、失神の発生が比較的多く見られているという報告はあったかと思います。
○小西先生 HPVのファクトシートの追加の安全性のところに書いております。HPVの9頁から安全性の10頁、特に段落の下の3分の1のところに、迷走神経反射の失神に関して詳しく書いておりますので、ご参照いただきたいと思います。集団接種をしたときも多かったと思うのです。特に立って打ったときに失神が多かったということですので、この点は非常に注意が必要だという喚起がアメリカでなされております。そこで今回、発売になったときに、注射してから必ず30分はちゃんと見ておくようにということで、転倒する例は非常に少なかったと聞いております。
○宮崎委員 比較的年齢の高いところ、小学校高学年から中学生ぐらいで、とても痛いだろうと不安を持って接種を受けて、しかも集団だったりすると、いわゆる脳貧血と言われる状況でパタッと倒れてしまうことがあります。私はHPVワクチンを接種したことがないのですけれども、比較的痛いワクチンらしいので、その辺は十分注意をしてもらう。これから特別対策でたくさんやられるようになるので、その辺はやはり現場にきちんと周知をして、座ってやるとかいろいろなことをやると、無駄な副反応報告が減ってくるだろうと思います。単純にただ倒れただけなのに、けがをしてそれが被害報告になったりすることもなくはありませんので、よろしくお願いします。
○岡部委員長 小児科領域ですと、子どもたちが予防接種をしたあと、そこで30分ぐらい待ってくださいというのは、ほぼ常識になっていると思うのですが、今度は接種する側の対象もずっと広がってくるので、その辺は医療側としても十分注意をしなくてはいけないし、受けられる側も、痛いものに対する反応が出てくることについての認識を持っていただいたほうがいいだろうと思います。直接大きな影響はないわけですけれども、いま宮崎先生がおっしゃったように、ほかのワクチンで接種直後に痛みや迷走神経反射でひっくり返ったあとで、どこか打って大けがをしたという事例もないわけではないのです。そういうことも含めての啓発が必要だろうと思いますので、よろしくお願いします。
○多田参考人 HPVワクチンに限らずということです。このワクチン特有のということではないと思ってください。HPVワクチンだからというだけではなくて、例えば麻疹ワクチンなどでも、年齢の大きい子に接種した場合は小さい子に接種したのと違って、同じようなことが言われています。
○廣田委員 私がお伺いしたのは、日本で失神と言うと、ファクトシートの追加編で出てきた、いわゆるフォールに値するようなものを、通常、失神と言いますよね。ところが欧米での副反応、「有害事象」と言ったほうがいいですか。そのときは「シンコーブsyncope」という言葉を使いますよね。あれにはめまいみたいなものも入るわけです。そこら辺で日本の失神の定義と言いますか、考え方からすると、かなり多いなと私は考えるのです。
○岡部委員長 これはリストがあるのではなくて、記載でやってもらったのではなかったですか。違いますか。
○医薬食品局安全対策課長補佐 これらの集計については、現場から報告されてきた名称でやっております。したがって失神という中にどういった症例が含まれているか、痙攣という中にどういう症例が含まれているかということに関して言うと、そういうタームであれば、質的に均一になっているかという点は、それぞれ報告の質に委ねられているところです。
○岡部委員長 それから一般の方からよく質問があったのは、不妊に対する懸念です。ファクトシートの中では、エキスパートの中では不妊については直接の影響はないのではないかという1行があったと思うのです。いかがですか。不妊は当然、この中には入ってこないことだと思うのですが。
○多田参考人 それについては今わかっている段階で、このファクトとしてそれを盛り込んであります。
○岡部委員長 ほかにご質問はよろしいでしょうか。副反応は引き続きモニタリングしていただけるわけですね。
○医薬食品局安全対策課長補佐 当然、継続的に副作用報告は収集・評価してまいります。
○岡部委員長 是非、適切に公表していただきたいと思います。これはホームページか何かに出ているのでしたか。
○医薬食品局安全対策課長補佐 これは安全対策調査会の会議資料として、ホームページに掲載されるものになります。
○宮崎委員 もちろん紛れ込みだろうと思うものが、ここにもいくつか入っていますけれども、そこまでの分析はホームページには載らないですよね。数だけが載っていきますから。例えば「Hibの脳症」と書いてありましたけれども・・・。
○医薬食品局安全対策課長補佐 一応ここに出しているのは、報告いただいたものを10月末の時点で集計して出しております。その後の詳細調査によって因果関係が全く否定されることになれば、薬事の副作用報告は取り下げられます。詳細な調査が行えず、関連性が否定も肯定もできないようなものは残った形となります。
○宮崎委員 分かりました。
○岡部委員長 できるだけ分かりやすいものが出るのは1つの安心感、あるいはモニタリングに結び付いてくると思うので、是非よろしくお願いします。
○医薬食品局安全対策課長補佐 もう1点だけ、本日はこの表しか付けておりませんけれども、12月6日の会議にはアナフィラキシーの副作用に関して、インフルエンザワクチンの安全性評価で実施しておりますが、アナフィラキシーとされる報告には、実際には迷走神経反射なども含まれておりますので、ブライトン分類に基づいた評価をして、そのレベルの一定以上のものが何件というような評価も、併せて実施しております。その資料はそちらの会議資料として提出しております。
○岡部委員長 それでは、もう1つの参考資料のご説明が必要だと思いますので、お願いします。
○予防接種制度改革推進室次長 参考資料2です。これは10月29日の第15回の部会においても、若干ご説明申し上げました。部会の意見等に基づき、「子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進臨時特例交付金」という補正予算を提案していたわけですけれども、ご案内のように、11月26日に補正予算が成立して、平成23年度末までの事業として行うことが決定いたしました。最初のほうはこの前の部会の資料と重複しておりますので、ポイントだけご説明申し上げます。
 「基金の対象疾病・ワクチン」はHib、HPV、小児用肺炎球菌ワクチンです。国、市町村がそれぞれ2分の1で、都道府県に基金を作って助成いたします。公費カバー率は9割です。
 次の頁にその仕組みを書いております。2頁の下のほうにありますように、それぞれの経費的な内訳はこのような形になっています。
 3頁の上のほうですが、10月29日にご説明したときと少し変更があります。HPVワクチンの接種対象者については、中学校1年生相当から高校1年生の4年齢4学年となっておりますが、その下に括弧で書いておりますように、例外として小学校6年生(12歳相当)の女子も対象とすることも可能で、これは4学年の幅をスライドしていく形で運用していくということを想定しております。3頁の下あるいは4頁については、一応のスケジュールですので、あとでご覧いただけたらと思います。
 それから、先ほど副反応の報告のお話がありましたが、この事業については当然のことながら、予防接種法に基づくものではありません。ですから予防接種法に基づく救済という形の枠には入りません。最後の7頁をご覧ください。しかし当然、これは医薬品として医薬品医療機器総合機構が実施する、副作用被害救済制度の対象になることはもちろんです。「被害救済」と書いてあるいちばん上の○をご覧ください。接種行為等に基づく事故は、予防接種法ではカバーされているのですけれども、それについては現在、民間保険があります。その民間保険に市町村が加入することを要件として助成するということで、対応させていただこうと思っております。当然ながらこの保険への加入については、この事業の中から掛け金を出していただいて結構ですという形になっております。
 それと、もう1つ関連することがあります。6頁をご覧ください。やはり事業として行っていただいた場合、私たちも国として予防接種後の副反応というものを、きちんと把握させていただきたいということがあります。この図は、新型インフルエンザの予防接種のときにご覧いただいた図とよく似ていると思われると思います。副反応報告等については医療機関から厚労省のほうに直接ご報告いただいて、医薬品総合機構等々と連携して、その状況を把握させていただきます。また、その内容については都道府県・市町村にもフィードバックいたしますし、都道府県・市町村からは被接種者数についてもご報告いただき、接種数に対する発生率等も出すという形で把握したいと思っております。その下のほうに「副反応報告基準」というのがあります。こういったものを要綱の中に付して市町村にお願いして、この事業の実施をしていただきたいと思っております。
 それからもう1点。1頁に「基金の期間」と書いてあります。「平成22年11月26日(補正予算成立日)」と書いてあります。原則としては実施要綱等に基づいた体制が整備されてから、その補助の対象にさせていただくことになるのですけれども、すでにいま市町村で実施されている内容が、実施要綱等と副反応報告も含めて要綱に沿って行われているものについては、遡って11月26日から助成の対象にしようといったことです。これは11月9日に都道府県への説明があり、そういう説明をしたところです。
○岡部委員長 ここで何かご質問はありますか。
○多田参考人 平成22年度から開始ということは、平成22年から開始もできるということでしょうか。その場合、今回の3つのワクチンの対象疾患のサーベイランスの体制が、全部追い着いていない病気ばかりなのです。平成22年度から開始した場合、効果の判定はもうここから始まりますので、その体制整備を緊急にやっていただきたいというのが言いたかったことです。
○岡部委員長 それは部会でも出ている意見です。たぶん国の説明としては、これは予防接種法に基づくものではないから、事業でやっているのでという理由が、もしかしたら付いてくるのではないかと思います。ただ、疾病の経過を見ていくというのは非常に重要なので、これは必須事項として是非受け入れていただきたいと思います。よろしくお願いします。ほかにご意見はありますか。
○宮崎委員 先ほど言い忘れたのですけれども、肺炎球菌ワクチンのまとめのシートの最後に、13価ワクチンのことが一応書いてありますね。しかし13価だけでよろしいのですか。ほかのメーカーの、例えば10価云々などは。
○和田参考人 まだ10価のほうは承認申請はきておりません。13価は一緒に施策を作れば。
○宮崎委員 ただ、そういうタイミングだけでここに13価だけ書かれたということですか。
○和田参考人 あとは先ほど言いました19Aということで、増えているものが13価でカバーされますけれども、10価のほうはカバーされていないので、とりあえず今ある13価ということです。
○宮崎委員 わかりました。もう1つだけ。国の緊急対策で言えば、医師が認めれば同時接種も可能と書いてありますが、もうちょっと積極的に、原則やっていいと言っていいですよね。結局こう書き方をされるので、同時接種と同日接種については、市町村も現場もどのように考えたらよいか悩まれるところがあるのです。
○予防接種制度改革推進室次長 基本的には、同時接種については、医師の判断でやっていただいていいと言っておりますので、判断でやっていただいていいと思います。
○宮崎委員 同日接種はどうですか。
○予防接種制度改革推進室次長 同時接種と同日接種との違いは。
○宮崎委員 いや、「ない」と言っていただければ非常に助かります。
○健康局結核感染症課長 いま原則では、同時と同日は違います。同時接種については医師の判断でよろしいと思えばやっていただけるのですけれども、同日と言う場合は、時間差を付けて打つということですよね。
○宮崎委員 時間差があったほうが副反応の出方がわかりやすくなりますが、なぜ同時がOKで、同日が駄目かという理論的な根拠はありますか。
○健康局結核感染症課長 添付文書上、それぞれのワクチンでこれぐらいの時間は開けろということがきちんと書いてあります。同日だとそれがクリアできないので、大変申し訳ないのですけれども、原則的にいま、同日は避けていただかないといけないと思います。
○宮崎委員 何分以内だと同時ですか。
○健康局結核感染症課長 大変難しい話ではありますけれども、その辺については別途、研究のほうも立ち上げて、どのような接種がよろしいかということについても、並行してエビデンスを出そうと思っております。したがって、いま確たるお答えはできませんが、感覚として同時はいいけれども、同日と言うと薬事法上差し障りがあるという認識で対応いただければ、大変ありがたいと思います。
○宮崎委員 理論的には特にないですね。
○健康局結核感染症課長 これは制度上の話になりますので、そこのところは先生方の臨床現場でのご判断というのも大きいと思います。
○岡部委員長 宮崎先生は承知の上でのご質問だと思うのですけれども、これは医学的な部分での議論ではないと思うのです。ただ、行政的というか、仕組みとしてこうなっているので、行政の立場としては守ってもらいたいところだと思います。医学的なエビデンスに基づいているものではないので、医学的な側としては、是非そこのところを改善するような方向に向けていただきたいということではないかと思います。同時接種の場合は同じ医師がやることであって、同日の場合はたぶん違う医師がやるというところで、責任体系の分散などが問題になっているのだろうと思います。
 時間も過ぎてしまいました。今日はどうもありがとうございました。時間を気にしたために、発言を少し止めたり動いたり、大変失礼しました。足りない部分については、ご意見用のシートがありますので、委員の先生方あるいは参考人の先生方も、どうぞ意見をおっしゃっていただければと思います。最後に今後のスケジュールも含めて、事務局からお願いします。
○予防接種制度改革推進室次長 いま委員長がおっしゃったこの紙は、忘れないうちにメモランダムしておきたいということもあって、早めに出していただくことをお願いします。一応24日、来週中に出していただければと思っております。次回はまた日程調整をさせていただきます。年が明けますけれども、残りの部分についてご議論いただきたいと思います。日程調整ができましたら、またご連絡申し上げますので、よろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。
○岡部委員長 どうもありがとうございました。


(了)

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