ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(科学技術部会疫学研究に関する倫理指針の見直しに係る専門委員会・臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る専門委員会)> 第3回疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る合同会議 議事録(2013年4月25日)




2013年4月25日 第3回疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る合同会議 議事録

大臣官房厚生科学課

○日時

平成25年4月25日(木)10:00~12:30


○場所

三田共用会議所 大会議室(A~E)


○出席者

【委員】

福井座長 楠岡座長代理 中村座長代理 跡見委員 位田委員
川村委員 児玉委員 真田委員 新保委員 祖父江委員
田代委員 玉腰委員 知野委員 津金委員 土屋委員
直江委員 中島委員 花井委員 藤原委員 丸山委員
宮田委員 山縣委員 渡邉委員

【事務局】

生川振興企画課長 (文部科学省研究振興局)
板倉ライフサイエンス課長 (文部科学省研究振興局)
伊藤安全対策官 (文部科学省研究振興局生命倫理・安全対策室)
宮脇室長補佐 (文部科学省研究振興局生命倫理・安全対策室)
三浦技術総括審議官 (厚生労働省)
福島課長 (厚生労働省大臣官房厚生科学課)
尾崎研究企画官 (厚生労働省大臣官房厚生科学課)
吉田課長補佐 (厚生労働省大臣官房厚生科学課)
佐原課長 (厚生労働省医政局研究開発振興課)
高江課長補佐 (厚生労働省医政局研究開発振興課)

○議題

1 前回会議までの議論を踏まえた追加情報
2 疫学研究倫理指針及び臨床研究倫理指針の見直しに当たり検討すべき事項について
3 その他

○配布資料

議事次第 議事次第
座席表 座席表
委員名簿 疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る合同会議委員名簿
資料1-1 前回会議までの議論
資料1-2 文部科学省科学技術・学術審議会第27回生命倫理・安全部会(平成25年3月13日)における疫学研究倫理指針等の見直しに係る議論
資料2 疫学研究倫理指針及び臨床研究倫理指針の見直しに当たり検討すべき事項(案)
資料3 疫学研究倫理指針と臨床研究倫理指針の統合に向けた検討に当たっての基本的な視点(案)
資料4-1 疫学研究倫理指針と臨床研究倫理指針の統合について
資料4-2 「ヒトを対象とした研究に関する倫理指針」の骨子(提案)(川村委員提出資料)
資料4-3 人を対象とする研究に関する倫理指針(案)(田代委員提出資料)
資料5 統合した場合の指針の適用範囲について
資料6 個人情報の取扱いについて
資料7 関連条文
参考資料1 第2回疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る合同会議議事録
参考資料2 疫学研究倫理指針からみた臨床研究倫理指針の関係条文
参考資料3 臨床研究倫理指針からみた疫学研究倫理指針の関係条文
参考資料4 疫学研究倫理指針の一部改正について

○議事

○尾崎研究企画官 定刻になりましたので、「第3回疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る合同会議」を始めさせていただきたいと思います。本日はお忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。
  まず初めに、今回初めて合同会議に御出席される委員の御紹介をいたします。京都大学大学院文学研究科准教授の児玉聡委員。大阪大学大学院医学系研究科社会環境医学講座環境医学教授の祖父江友孝委員です。
  なお、本日は磯部委員、今村委員、門脇委員、久保委員、後藤委員、永水委員から御欠席の御連絡を頂いております。また、宮田委員については、少し遅れている模様です。
  次に事務局に異動がありましたので御紹介します。文部科学省研究振興局振興企画課の生川課長です。
  次に配布資料の確認をします。議事次第に沿い資料の番号だけ申し上げますので、確認ください。議事次第、座席表、名簿、資料1-1、資料1-2、資料2、資料3、資料4-1から4-3、資料5、資料6、資料7です。参考資料として1から4までです。
  なお委員の先生方の参考資料については、この他に机上に参考資料をとじてあります。資料等について過不足等はございませんか。また、前回までの会議資料については、今回の議論に関係する資料は、あらかじめ委員の先生に配布しておりますが、その他の資料については、事務局席に置いてありますので、御覧になりたい場合はお申し付けください。資料等で御不備等があれば事務局にお知らせください。
  また、審議の円滑な実施のため、報道関係者の方々の撮影はここまでとさせていただきます。このあとの進行については、福井座長よろしくお願いします。
○福井座長 それでは長丁場ですが、よろしくお願いします。できることでしたら短めに終わりたいと思います。2時間を超えますと少しきつい感じがいたします。注意力こも落ちてきますので御協力をお願いします。
  まず議題1の「前回会議までの議論を踏まえた追加情報」についてです。前回までの議論についてですが、この合同会議が設置されている文部科学省の生命倫理・安全部会と厚生労働省の科学技術部会にこの合同会議の検討経過について経過報告を行っております。その際に行われた議論について、それぞれ事務局から説明をお願いします。
○吉田課長補佐 それではまず資料1-1を御覧ください。これは前回会議までの議論をまとめたものです。各委員の先生方から口頭、若しくは文書で提出のあった意見を整理したものです。簡単に御紹介します。
  まず「疫学指針と臨床指針の統合について」です。これについて基本共通部分、観察研究、介入研究という枠組みで考えたらいいのではないか、という御意見等を頂いているところです。
  2「統合後の指針の適用関係について」。ここでは、人文・社会系の関係する学際的研究を実施する場合の取扱いをどうするか。また、現状の指針の範囲内の中で、その指針の適用になるのか、ならないのかということに関して、幾つか個別の質問等、指摘が出ております。
  次の2ページの3「ヒトゲノム・遺伝子解析を含む研究の指針への適用について」。ゲノム解析を含む研究に関して、この疫学指針・臨床指針の中で取扱いと示すべきだという意見を頂いております。
  4「個人情報の取扱いについて」。連結可能匿名化の場合の対応表の管理の規制の強化。また、それに対して、現状の指針で書いてある個人情報に関する規定をもう少し簡素化してもいいのではないかという指摘等を頂いております。
  5「インフォームド・コンセントについて」。救急医療の現場における同意に関する要望がありました。また、包括的同意と呼ばれるものに関して、もう一度ここで議論をして、それをできるだけ認める方法で議論ができないかという指摘を頂きました。
  4ページの6「未成年者や被後見人に係る代諾及び再同意の手続について」。ここでは、インフォームド・アセントの取扱いについて、指針を検討すべきという御意見。また健康児を対象とした倫理規定を作るべきではないかという御意見があります。
  7「倫理審査委員会について」。ここでは、倫理審査委員会の地域拠点化についての示唆。また倫理審査のやり方、倫理審査委員の教育など、いずれも倫理審査委員会の審査の質に関する指摘が出ております。
  8「研究の質について」。ここではデータの信頼性の確保について、治験と臨床試験の乖離について指摘があったところです。
  9「用語や表現について」。ここでは、現在定義されていない言葉についての定義の必要性。また、両指針を統合化した場合の用語の定義間の共通化について指摘があります。
  10「被験者の補償について」。これについては、いわゆる観察研究や最小限の危険を超える危険を含まない介入研究には、必ずしも必要としない余地を残すべきという御意見。統一した基準が必要という御意見もありました。
  11「治験制度に対応した臨床研究の届出・承認制度の整備について」。これについて、臨床研究と治験の規律のレベルの違いがあるので、それを統一すべきではないかという御意見が出ております。
  12「その他」。ここでは、データベース構築に関するルール化についての御指摘。また、医学研究者以外のヒトを対象とする研究を行う者に、いかに指針を啓発していくかという御意見。また研究終了後のフォローアップをどうするか。このような御意見が出ております。資料1-1については以上です。
  また、4月18日に厚生科学審議会科学技術部会方に、この資料1-1を用いまして経過報告を行いましたので御報告いたします。以上です。
○福井座長 ありがとうございます。それでは資料1-2について、御説明をお願いいたします。
○伊藤安全対策官 それでは資料1-2を御覧ください。こちらは文部科学省の科学技術・学術審議会の生命倫理・安全部会における議論を整理したものです。この部会については、この合同会議の文部科学省側の委員会。こちらは昨年12月に立ち上げた親部会でもありまして、3月13日に2月までの議論の状況を報告しております。その部会の中において、5点ほどいろいろ意見が出ておりましたので御紹介します。
  1点目、合同会議においては、研究全般に関する立法化に関する意見も出ておりますが、憲法で学問の自由が保障されていることもあり、制限には特別な理由が必要であるということに留意してほしい。2点目、生命倫理については、関係府省が広範にわたっていることもあり、分かりづらい。国民目線で分かりやすい体制づくりが大事。3点目、臨床指針と疫学指針における交通整理の重要性について指摘。4点目、文科省と厚労省の体制、こういったものについて、今までにないような合同の進め方をしていますが、研究のスピード全体が速くなっているので、できる限り検討を加速していってほしい。5点目、ヘルシンキ宣言の見直しが現在行われていることもあり、この動きも踏まえて改正を行うべき。このような意見がありました。以上です。
○福井座長 ありがとうございます。ここまでの御説明について、何か御質問等はございませんか。よろしいでしょうか。
  それでは議題2「疫学研究倫理指針及び臨床研究倫理指針の見直しに当たり検討すべき事項について」に移ります。事務局から説明をお願いします。
○吉田課長補佐 それでは資料2を御覧ください。これは先ほど説明いたしました前回までの議論を整理した資料1-1の内容をもとにして、検討すべき事項を事務局で整理し、リストアップしたものです。今後、資料2の項目に沿って各論点の議論を進めていただきたいと考えております。各項目の中で複数の主要論点がある場合には、その論点ごとに議論を行っていただく予定です。例えば先ほど資料1-1にありました現行の指針の適用範囲以外の研究との関係の整理。あるいはヒトを対象とする医学系研究のうち、指針の対象となる研究と対象外となる研究の区別。あるいはヒトゲノム解析を含む研究の指針(案)の適用の仕方などについては、資料2では、この項目2の「統合した場合の指針の適用範囲について」という中に含めております。また、用語や表現について御指摘もありましたが、これについては個別の検討項目に合わせて議論できるように考えております。
  議論の進め方は、資料2で整理した項目について、今後4回程度に分け、毎回2項目から4項目ずつ程度、順次、議論を進めていただきたいと考えております。検討すべき事項には、10番に「その他」という項目も設けてあるので、個別項目として現在リストアップされていないものがある場合には、その他の項目のところで取り扱う予定です。もし、独立した項目として議論すべきものがあれば、随時、御意見をお出しいただければと考えております。また、ある論点の議論において結論が出ない場合には、効率的に議論を進めていただくため、まずここに整理した全ての項目について一通り議論を行ってから、結論が出なかった項目に戻り議論をするようにしたいと考えております。
  実際に各検討すべき事項の議論に用いる資料は、この資料2の項目ごとに事務局で論点を整理した資料を用意します。今回は、資料2の項目番号の0から3について資料3~6を用意しております。
  まず項目番号0で、これは資料3にあるとおり、両指針の統合の検討に当たり、疫学・臨床の共通認識事項として、基本的な視点を確認したいと考えております。これは統合化された場合の指針の前文に含まれるべき総論を想定したものです。本項目については、いろいろ御意見が出ることが予想されますが、項目番号の1番以降で議論しているものは、そちらで整理していきたいと考えております。また項目番号1以降について、これは資料4、5、6にあるように個別の論点ごとに「現状と課題」「検討のポイント」、そこから考えられる「見直しの方向性」という内容を事務局の方で整理しているところです。
  このような形で全ての論点について順番に御議論を頂き、見直しの方向性についての結論を得たいと考えております。各論点において見直しの方向性について一定の結論が得られたら、中間的な取りまとめを行い、具体的な指針の書きぶりの検討に入りたいと思います。事務局からの説明は以上です。
○福井座長 ありがとうございます。ただいまの御説明について、何か御質問等はございますか。
○丸山委員 いつも遅れて発言なのですが、今、資料2で今日の話題となるとされる点と関係しますので少し戻り、資料1-2の文科省の「生命倫理・安全部会」での議論の中で、事実と異なる発言がありますので指摘させていただきたいと存じます。
  3つ目のもので、「医師主導の臨床を可能にするために臨床研究倫理指針が作られた」というのは、誤解を生む表現ではないかと思います。最初の臨床研究倫理指針を作成したときは、臨床指針を作成する作業と、GCPに医師主導治験のルールを取り込む検討作業と両方の作業を一応別に、しかし同一の委員会で行ったということがありますので、医師主導治験の、ここははっきりと書いてないですが、医師主導治験と臨床研究倫理指針の作成は、直接の関係はないというところを指摘させていただきたいと思います。以上です。
○福井座長 ありがとうございます。このことは記録に残していただきたいと思います。
○吉田課長補佐 分かりました。
○位田委員 これから本格的に議論することになるのでしょうけれど、2点申し上げたいと思います。1点は、こういう形で項目ごとに議論をするのはいいですが、何もなしで、ある意味では一般論で議論をするとなかなか議論が収束しないので、できるだけ議論は現行の指針を見ながら、ここがこう、この問題はこうという形で進めていく方がいいのではないかという点が1つです。
  もう1点は、既にいろいろな先生方が指摘されている、現行の指針ではうまくいかない、支障があるところが具体的にどこか。厳しすぎるとおっしゃる先生方も多いので、それが一体どこがどう厳しいのか。ひょっとして緩すぎるところもあるかもしれません。緩すぎるところがもしあれば、ここが緩すぎるということも考えないといけない。
  臨床指針ができてから、若しくは改正されてからも研究はどんどん進んでいるので、臨床指針にしろ疫学指針の中身にしろ、新しく規則を設けないといけない部分はどうかを、明確にしながら議論をしていっていただきたい。特に研究者、お医者さんの皆さんには、どこがどう問題なのか。一般的に厳しいとおっしゃるのですが、どこがどう厳しいのかを具体的に言っていただくと、あとの議論がやりやすいかと思います。以上です。
○福井座長 ありがとうございます。私もその点には注意して、今まで御意見を伺うときに具体的にどこが問題なのかをできるだけ吸い上げる方向でやってきたつもりですが、そのうちの幾つかは資料の中にも恐らく出てきてはおりますが、今後ともその方向で是非お願いしたいと思います。
  最初におっしゃったことについては、事務局から説明があると思いますが参考資料2と3に現行の両方の指針を、しかも疫学研究に関する倫理指針を左側に置いたものと臨床研究に関する倫理指針を左側に置いたものの2つの様式でまとめてあり、どちらでも見ながら議論を進められるようになっております。何か事務局の方からございますか。
○吉田課長補佐 特に付け加えることはございません。
○福井座長 ほかにいかがでしょうか、進め方について。これから本格的に各項目についての見直しの内容を詰めていくことになると思います。よろしいでしょうか。それでは、この方法でしばらくやらせていただきたいと思います。
 資料2の0に関する資料3です。これについてもう少し説明をお願いいたします。
○伊藤安全対策官 資料3は、疫学指針と臨床指針の両指針の統合を検討するに当たり、事前に委員の皆様の間で共通して認識しておいた方が良いと思われる基本的な視点を整理したものです。この合同会議は、様々な立場や意見の方が参画されておりますので、いろいろな意見が出ることが予想されます。このため、統合に向けた議論が収斂し、着地点を目指して進んでいくための考え方を示したものと言うこともできるものです。この基本的な視点については、先ほども話がありましたが、中間取りまとめ等の前文の一部にもなり得るものとして整理してあります。
  主に4点に整理しております。1点目は、統合指針の適用対象について述べたものです。疫学研究指針と臨床研究指針を統合した指針の適用範囲については、医療における疾病の予防・診断・治療方法の改善又は有効性の検証、あるいは疾病の原因及び病態の理解を通じて、患者の生活の質の向上及び国民の健康の増進に資することを目的とした研究と捉えることができるのではないか。こちらは、現行の両指針を再整理したものです。
  2点目は、研究の自由と研究対象者の保護について述べています。研究の自由は憲法上保障されたもので、研究者等が自由で円滑な疫学研究又は臨床研究を行うことのできる制度的枠組みが求められているということ。一方で、研究対象者の福利に対する配慮というものは、科学的及び社会的利益よりも優先されなければならない。また、研究における研究対象者個人の尊厳及び人権が守られなければならない。更に研究の実施に当たっては、研究計画の科学的妥当性も確保されなければならない。
  3点目は、指針の構成について言及したものです。疫学・臨床研究の内容・方法等には多様な形態があることに鑑み、統合した指針に記述する事項というのは、現行指針を踏まえた基本的な原則を示すこととしてはどうかということです。
  4点目は、ほかの規範との関係、あるいは計画の決定の在り方について整理したものです。統合指針は、ヘルシンキ宣言等に示された倫理規範や関係法令に基づき、疫学研究及び臨床研究の実施に当たって、研究者等が遵守すべき事項を定めるものであること。また、研究計画の妥当性というのは、研究責任者が立案した研究計画を、まず倫理審査委員会が判断し、その判断結果を受けて、当該研究責任者の属する研究機関の長が適切に決定することを基本とする。
  こういう観点を頭に抱きながら物事を進めていくのが重要ではないか。その際に、位田先生も先ほどいろいろとお話されましたが、疫学研究及び臨床研究における国内外の動向や情勢の変化を、きちんと頭に置きながら検討していくことが重要である。それから、研究現場において、指針の適用に関して問題が起こっている具体的な事例、例えばどの指針に適用すべきか判断の困る研究の内容などを、具体的に示して進めていくのがいいであろう。これは、合同会議の委員は研究者の先生方だけではありませんので、研究内容などについて具体的に示していただく方がより理解が進みやすいということです。これらのことについて、個別事項を検討する前に、まず共通的に確認させていただければということでお示しさせていただきました。以上です。
○福井座長 ただいまの説明について御意見はありませんか。
○宮田委員 非常に明快でありがとうございました。最後に、「念頭においておくべき現状」ということで、「疫学研究及び臨床研究における国内外の動向や情勢の変化」というのは非常に重要です。資料2を先ほど拝見して少し欠けていたのは、国際的な、グローバルな指針の協調ということが意識されなければいけないのではないかと思っています。医薬品の臨床試験は既に国際治験が当たり前になってきています。臨床研究においても、そういう研究がこれからは増えるだろうと思っていますので、この観点はすごく重要です。私は、ここの部分は余りよく分かっていませんので、事務局の方から、海外の情勢はこのようになっているという情報提供も期待したいと思います。
○楠岡座長代理 基本的な認識のところで確認しておきたいということです。宮田さんがおっしゃったことと関係するのですが、今の臨床研究の倫理指針というのは、基本的に省令GCP、治験のための省令が基本になっていて、それを基に作っているようなところがあるかと思います。今の省令GCPも、ICH-GCPという国際的な基準にのっとっているわけですが、日本のGCPと国際的なICH-GCPで大きく異なるのは、ICH-GCPには研究機関の長というか、施設の実施研究者の長は一切関わっていなくて、全てが研究責任者の責任において行われている。
  ところが、日本ではそこのかなりの部分が機関の長に委ねられるというか、任せられているところがあって、そこに非常に大きな違いがあります。確かに省令GCP等が入ってきたときには、まだ研究責任者が育っていないと言うと言葉が悪いですけれども、十分認識ができていないので、かなりの部分を機関の長に委ねて、そこでコントロールを掛けるというような基本的な考え方があったのかもしれませんが、それをそのまま今後も踏襲するのか、それとも研究機関の長というのはなくても研究責任者の独自な判断でできるようにするのかというところで、後々の構成等がかなり大きく変わってくると思います。
  私自身は、研究機関の長の立場で、責任がかなり負わされている。しかし、今の日本の現状ではこれもやむを得ないかと。むしろその方がいいかもしれない。ただ、現場の方からは、研究機関の長がよく理解していなくて、むしろ障害になるという意見もあるので、研究機関の長を置くということは基本的に今後も続けるということを最初にしっかり認識しておかないと、あとでそこを外すとなると全面的に変えなければいけない話になると思うのです。そこだけ確認させてください。
○福井座長 最初に楠岡委員がおっしゃったことについて御意見はありますか。
○丸山委員 先ほども指摘したところなのですが、臨床研究倫理指針を最初に作ったときは、GCPの影響はなかったと、私は委員として参加していて記憶しています。ヘルシンキ宣言を参考にしたところは大きかったのですが、2001年、2002年ということで、医師主導の治験についての議論と同じ委員会でやったのですが、GCPのルールの影響はさほど大きくは受けていないと認識していますので、その辺りをよろしくお願いいたします。
○藤原委員 宮田先生が国際協調をうたわれましたが、1回目に私は海外調査の話をさせていただきました。国際協調といってもかなり相違があります。楠岡先生がおっしゃったところは日本の風土で、ずうっと長い間議論していることであって、日本の医療関係においては病院長の先生とか、医療機関の長の先生に責任を持ってもらっているのを、いきなり変えるというのはかなり難しいと思うので、それをこの会で変更するのは大変かと思います。
  それ以外にもICH-GCPがありますけれども、EUとFDAとかアメリカの法令とを比べてもかなり齟齬があります。例えば、臨床研究に関わる所でも、被験者の補償を日本では求められていますけれども、アメリカは被験者に対して無過失補償は一切しないのです。賠償責任は問いますけれども、補償はしません。例えば、全米の科学アカデミーが、傘下のIOMが臨床研究についても、被験者に関してコンペンセーション、無過失補償をしなさいという勧告を何度も出しているのですけれども、アメリカは一切聞いていないです。補償はしていません。それに比べて、日本は補償という制度を過去から入れているので、そこをアメリカに合わせたりすると、今までの制度はどうだったからという話になります。
  それから利益相反です。COIについては、米国のCFRという向こうの官報には非常に詳しい利益相反に対しての開示の記載はありますけれども、ICH-GCPにはCOIの記載は確かなかったはずです。ですから、国際協調といっても結構バラバラなところがあるので、基本は後で田代先生がお話される倫理のいろいろな要件があって、それが大基本で、それはヘルシンキ宣言とか、過去のベルモントのレポートとかいろいろなもので共通してできたところがあって、そこは根幹的に臨床研究倫理指針の医学指針でぶれていないと思うのです。
  ある程度そこの国際協調はできていて、今、私が申し上げた利益相反とか、PIを誰にするかとか、補償の問題というのは各国それぞれの事情があって相違があるので、それ以上議論しても多分収斂しないかと思って発言いたしました。
○高江課長補佐 楠岡委員からの御指摘については、個別事項の9番で深く御議論していただければと思います。事務局としては、現在日本の制度では機関の長が出てまいりますが、これはアメリカと決定的に違うのが、様々な契約のシステムが機関委任事務になっていることですので、アメリカは研究者個人で契約いたしますが、日本の場合はそういう形になっておりませんので、そういう意味で何らかの関与は当然必要になってくるだろうと思います。ただ、その分担の割合や、それから実務に関してどのような形ですればいいのかということについて、個別事項の9番でいろいろ御指摘を頂ければと思います。
  宮田委員からありました、海外のお話は藤原委員からもありましたけれども、前々回OECDの話を事務局から御紹介させていただきました。まだ、そこのハーモナイゼーションについて具体的な細かな項目について、どこをハーモナイズしていくかというところのコンセンサスとか実際のアクションが、今のところ明確にEUとFDAでハーモナイゼーションする動きはありません。引き続き国際会議、ICHも含めてですが、情報を事務局で集め、これも個別のお話として御紹介させていただければと考えております。
○丸山委員 ICH-GCPのことが何回か言及されておりますが、それは1996年だったと思います。現在でもアメリカはICH-GCPが重視されているというか、お気に入りのようですが。補償については、臨床研究倫理指針の2007年から2008年の改訂で取り込まれましたけれども、それはヘルシンキ宣言の2008年の改訂を踏まえたところがあり、時代の流れを踏まえ、それぞれの宣言とかGCPを参考にすることが必要ではないかと思います。
○福井座長 研究機関の長が関わることについてはいかがでしょうか。それほど研究機関の長が研究のスピードを遅らせるほど強く関わっているでしょうか。私自身、余り大きな問題ではないのではないかと、少なくとも現在までのところ思っていますが、よろしければこれは踏襲していくということで、少なくとも今回の見直しでは検討を取りあえず進めていきたいと思います。
○楠岡座長代理 私も、それでいいと思います。一番最初にそれが出てきますので、その確認をしたかったということです。このままで、現状ではいいと思います。
○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。
○位田委員 2点確認です。1点は、今いろいろ議論されているのですが、治験と、ここでいう「臨床研究」を一緒に含めて議論をするのか、医薬品と今までの臨床研究とは一応別口で議論をしていいのか。その出発点をはっきり決めておかないと、常に治験ではどうだこうだという話が入ってきますので、若干ややこしくなるかなと思います。恐らくこれは国際的スタンダードだと思うのですけれども、治験と患者さんに対する臨床研究は区別していろいろなルールも取り扱われていると思うのです。参照することはいいのですけれども、1つで議論するのはなかなか難しいかと思います。
  2点目は、2つ目の○です。「研究の自由は憲法上保障されている」というのはそのとおりなのですが、「一方で」という所で、研究対象者の福利だけではなくて、特に臨床研究で介入をするような場合には、やはり身体に対する侵襲があるのだと。だからこそ研究の自由もある程度の制限を受ける。そうでなければ人体実験は何でもいいという話になってしまうので、そこは単に福利という話だけではないだろうと。そこを確認しておきたいと思います。
○福井座長 治験と臨床研究は必ずしも同一のものとしてここでは取り扱わない、ということでよろしいでしょうか。位田先生がおっしゃった方向でよろしいでしょうか。
○田代委員 治験と臨床研究の話なのですが、もちろん薬事制度は各国にあるので、例えばアメリカでもFDAに出すものと、倫理審査委員会に出すもので2つあるということになります。ただし、アメリカの場合もそうですが、基本的に被験者保護に関わることに関しては、FDAのルールもコモンルールも同じものを定めているので、そういう意味では日本のようにGCPと臨床指針の間ですごく大きな乖離があるというのとは少し状況が違うと思うのですいます。
  もちろん、ここで治験を扱うというわけではないと思うのですが、その念頭に置く話として、日本におけるGCPとそれ以外の臨床研究のルールが極端に違うということは、必ずしも良いことではなくて、その調整ということも中長期的には考えるということは別に視点に含めていいのかなと考えています。
○位田委員 私の言い方がちょっと舌足らずだったかもしれません。要するに、患者若しくは被験者の保護という観点では当然共通しているので、臨床研究指針の方が低ければ、それはその観点から当然高めないといけないと思っています。
○藤原委員 治験というのは日本だけの言葉で、むしろ臨床研究倫理指針にないのは臨床試験という言葉がなくて、ヘルシンキ宣言にも臨床試験という言葉があるのですが、かつて日本の中ではずうっと臨床研究倫理指針という言葉だけで、臨床研究と臨床試験というのが、この指針の中で明確に区別化されていないところが問題だと思うのです。その辺りを、議論の中で用語集で今回ちゃんと定義するというようにしておけば、余り治験にこだわる必要はないと思います。
○福井座長 是非その方向でお願いしたいと思います。位田先生がおっしゃった、2点目の福利という言葉に、身体の侵害という内容が読み取れないということでしょうか。
○位田委員 読めないとは申し上げませんが、やはり重要なのは被験者に対して介入をして、つまり侵襲をすることをどこまで止められるかという話だと思うのです。そうでなければ、ナチの人体実験だって、731部隊の人体実験だって福利はあるわけです。何らかの医学的なプラスはあるので、そういう話ではないだろうという趣旨です。
○福井座長 何かここに文言を加えておいた方がいいという御指摘でしょうか。
○位田委員 はい。
○花井委員 2つ目の○なのですが、文言自体がどうかということではないです。最後の方で、「研究計画の科学的妥当性」という言葉があります。今後この指針のカバーする範囲の議論にもつながるのですが、社会科学という言葉があって、そのサイエンスという言葉が、具体的現場では質的とか定性的と言われる研究のときに、その科学性においてかなり狭い意味でのエンビリカルサイエンスの科学性を問われると、そういう研究は科学的ではないという評価をされることも現状ではあります。
  広い意味ではそれはサイエンスなのですが、通常医療現場で医師が考えるサイエンスとちょっと乖離する場合があったときに、この文言の科学性という表現だけだと、今後人文・社会科学的な研究もカバーするとすれば、ちょっとその指針の中に読み取れるように書いておいた方が、それを運用する段階でこれは非科学的だみたいな不毛な方法論の議論が、倫理委員会でなされることがあるので、そういうことを避けるようにした方が、運用が非常にスマートになるのではないかと思います。
○福井座長 この「科学的」の「科学」の。
○花井委員 厳密に言えば科学の定義なのですが、それをここで言うか、要は実際に使用するときに、人文・社会的な研究をするときにも、スッと使えるような文言になっていればそれで足りるとは思います。
○福井座長 今ここで何か良い案があったら伺っておきたいのですけれども。
○田代委員 今言われたことに関しての私の考え方ですが、やはり科学的妥当性の中身には、取りあえず指針本文では踏み込まないというのは、1つ大事かという気がするのです。つまり、それを判断する人たちのある種の合意の中で、これは科学的だと考えられるようにする。もし先ほど花井委員が言われたような懸念があるのであれば、Q&Aなどに、それぞれの科学的妥当性については、それぞれの分野の慣例というか考え方をきちんと尊重した形で、例えば倫理審査の場でも判断するというようなことを少し付け加える。
  もし、この「科学的妥当性」の中身を非常に詳細に指針の中で決めてしまうと、多分先ほど言ったような、ここからここは科学で、ここからここは科学ではないという議論にどうしてもなってしまう。ここについては科学的妥当性というのは非常に重要なのだけれども、判断する人たちの合意、合議をまずベースに置くという形でとどめておくのが1つの考え方かと思います。
○福井座長 恐らく英語ではScientific validityの翻訳です。今すぐにパッと良い案が出てこないようでしたら、田代委員の御意見も参考にしながら、議論を進めていく中でまた詰めていければと思います。先ほど位田先生がおっしゃった、身体への侵害が起こり得るということを十分踏まえてという。
○高江課長補佐 例えば、「研究対象者の福利や起こり得る身体への侵襲に対する配慮」みたいな形で、事務局の方では考えさせていただきたいと思います。
○福井座長 取りあえず、その案で進めていきたいと思います。
○真田委員 「身体」というと、体だけになりますか。
○位田委員 「心身」でしょうか。
○真田委員 「心身」にしていただかないとと思うのです。
○福井座長 それでは、そのようにお願いいたします。
○田代委員 今の点なのですが、もう1つの案として、先ほどの位田先生の趣旨に沿うかどうか分からないのですが、「個人」ということが入ればそれでいいのかなと。下の方では、「研究対象者個人の尊厳」という言い方をされています。社会的利益ということではなくて、「その対象者個人の福利」という言い方では難しいのですか。
  この辺りはもちろん幾つかの案を出していただいて、いずれということにはなると思うのです。先ほどナチスということで懸念されていたのは、その個人に対する福利ということではなくて、社会的な利益が優先されることによるいろいろな悲劇というニュアンスだと思います。どうしても日本語の場合は、研究対象者と書かれてしまうと、個人なのか集団なのかというところの、複数・単数が曖昧になるので、はっきりと「個人」と書くことで1つクリアするという案もあるかと思いました。
○位田委員 私は、心身に対する侵襲というのは非常に大きな問題だと思うのです。例えば、「研究対象者個人の心身、尊厳及び人権が守らなければならない」としてはどうでしょうか。表現としては余りこなれていないのですけれども、そういう趣旨の言葉が入った方がいいかなと思います。単に個人ということだけではなくて、かつ個人の尊厳というので、すぐに身体への侵襲を思い浮かべるかというと、余りそうでもないと思います。どういう言葉遣いでなければいけないというこだわりが特にあるわけではありませんが、その辺はやはり。
○尾崎研究企画官 ここは、「基本的な視点」の案なので、今ここでしっかり固めなくてもというか、多分、大凡のニュアンスは今の議論で合意されていると思います。細かい表現ぶりは、今後詰めればいいのではないかと考えています。
○福井座長 そういうことで、取りあえず進めていきたいと思います。資料2の検討項目番号1~3に移ります。それぞれ資料4、資料5、資料6が用意されております。項目1の「疫学研究倫理指針と臨床研究倫理指針の統合について」、まず事務局から説明をお願いいたします。
○吉田課長補佐 資料4-1で、項目1「疫学研究倫理指針と臨床研究倫理指針の統合について」です。疫学研究倫理指針と臨床研究倫理指針を統合する場合、統合の方法はどのようにすべきか。「現状と課題」ということで、疫学研究倫理指針と臨床研究倫理指針の適用対象となる研究が多様化しており、その目的・方法等には共通するものが多くなってきている。このため、現状ではどちらの指針を適用するか分かりにくいとの意見が出ている。また、多様化する研究に対応できる指針構成にすべきという意見も出されている。
  「検討のポイント」は、まず適用対象となる研究区分について、「疫学研究」「臨床研究」という枠組みをどのように見直すか。例として、人を対象とした研究として大括りした上で、「観察研究」「介入研究」という枠組みにするなどということです。2番目は、現場での使いやすさに配慮した構成にする必要がある。3番目は、指針の統合の有無にかかわらず、用語は分かりやすく統一的な定義を用いて検討していくこと。以上3点を挙げさせていただきました。
  次のページで「見直しの方向性(案)」です。検討の進め方としては、資料2に掲げる事項について一通り議論した後に、指針各章の具体的な構成・内容を検討することとしてはどうか。統合指針については、基本共通事項、研究デザイン、研究フィールド等に応じた場合分けが必要な事項から構成することとしてはどうか。指針各章の具体的な規定については、両指針の共通部分をベースとして、研究デザイン、研究フィールド等に応じて、上乗せ又は例外を設ける形で整理してはどうかという提案をさせていただきます。
  「関連意見」は、本件この論点に関係する意見を資料1からここに転載してあります。関連資料として、第1回の厚労省の合同委員会で配布した、「医学系研究に関する主要な指針の概要」を配布しております。この後に説明していただきますが、資料4-2と資料4-3があります。これらの資料は、お二人の先生方が個人的に考えておられた内容を、今回は参考例示させていただいております。本件の議論をするに当たり、具体的にイメージできるものを見ながら議論していただいた方が、今後の議論が円滑に進むと考えた次第です。以上よろしくお願いいたします。
○福井座長 議論に入る前に、川村委員、田代委員から提出されております資料について説明をしていただいた方が、議論が進みやすいのではないかと思いますので、よろしくお願いいたします。
○川村委員 前回の委員会の帰りの新幹線の中で、すぐにイメージをまとめて整理いたしました。基本的な考え方としては、研究の種類によらず共通の部分があって、また研究によって特別に加えられるべき、配慮されるべき点があることから、共通事項、コア部分と、研究ごとに特異的な事項という二階建ての構成を取っております。
  初めに「共通事項」ですけれども、ヒトを対象とした研究についての法律がないこともあり、きちんと背景や目的をもっと高らかにうたった方がよいと考えています。ヒトに対する医療とか保健事業に資する直接のエビデンスは、ヒトを対象とした研究から生まれるものであるのですが、一方で先ほどの議論にあったように、生身のヒトを対象としているので、対象者に対する尊厳と人権保護が必要であること。更に、こういう指針を作りかつ守ることは、研究者をも守ることになるのだということをきちんとうたった方がよいかと思います。
  2番目は「研究者の責務」です。これは、今の指針と大きく変わるところはありません。先ほど楠岡委員から御提示がありましたように、「研究者を管理する者の責務」についても、今までの指針に書いてあるものをほぼ踏襲しております。研究者を管理する者は、単に管理するのみならず支援ということもやっていると思いますので、支援と制御を併せて管理として適正化を図るというように理解しております。
  4番目の「指針の適用」は詳しく書いてないのですけれども、具体的に申しますと、診療や保健事業なのか研究なのかという、業務か研究かという境目の問題です。産業医とか学校医を規定した法律に「調査」ということが出てきますので、こういう管理を仕事とする立場にある者の業務上の調査と研究との境。それから法定の調査、例えば国勢調査、人口動態統計、健康栄養調査という法律で規定された調査は、この範囲にあらずということをうたっていることになります。
  「倫理委員会の設置」についても、現在の指針にあります。「審査の要否・簡略化」については、今でも審査不要の要件、あるいは審査の簡略化の要件などが書かれていますので、これも1項に当てるということです。
  7番目は、「インフォームド・コンセントの取得」です。説明と同意取得の方法について記載し、代諾を求める場合は代諾の要件等。特にここが議論になると思いますが、インフォームド・コンセントを取得しない場合があると思います。それの条件、それを容認する、許容する場合はその条件が何かということ。例示的に考えると、感染症の流行、今の新型インフルエンザのようなものが流行するときの調査、あるいは救急現場のように瀕死の状態で同意の説明もできないような状態も想定されます。記載が十分ではありませんけれども、インフォームド・コンセントを取得しないとすればその条件は何かということ、その場合は代わりに何を求めるか。情報の公開であるということが考えられます。
  8番目は「個人情報の保護」で、保護を講ずる時点。これは、今まで余り議論されていなかったのですが、データを収集する時点、データを処理する時点、データを保管する時点、他施設に移転する時点という4つの時点が考えられようかと思います。保護の具体的な方法については、今の指針はかなり詳細に書かれていますので、それを踏襲すればよろしいかと思います。
  9番目は今の指針に十分にないことです。臨床指針の方で書かれていることはありますが、疫学指針にないことなのですが、「研究を登録すること」、あるいは「追跡」、場合によっては「監査」をすることが必要かと思います。それから「用語の定義」が来ますが、1つ書き忘れたのは、先ほど藤原委員から説明がありましたように、「利益相反」についてもここにうたった方がよいのかと思いました。ここまでが共通の事項です。多分どういう研究をやるにしても、このことは踏まえないといけないでしょう。
  更に研究ごとにいろいろな配慮をしなければいけないことがありますので、それを「個別的事項」「特異的事項」として列挙しております。第1が「介入」ということです。これは病院を場にした臨床治験であれ、あるいは一般生活の場における生活面の介入であれ、介入ということは研究者がばく露条件をコントロールするわけですから、その内容について妥当性をきちんと吟味することが必要だと思います。介入の種別といいますか、介入の在り様・内容によって説明とか同意の方法は変わる。これは現在でも、例えば個別の介入の場合と、集団レベルの介入の場合と分かれていて、いろいろな分類がされておりますので、おおむねそれを踏襲することになろうかと思います。
  2番目は心身への侵襲です。「侵襲」とだけしか書いてありませんが、「心身への侵襲」です。侵襲というのは必ずしも介入に限らず、観察研究であっても測定という場面において侵襲がある場合があります。例えば骨密度を測るときにエックス線を当てるというのも1つの侵襲です。採血をするときに非常にトラブルが多いのですが、血液検査で血液の検体を採取する場面においても侵襲があります。したがって、侵襲ということが1つ重要な項目になろうかと思います。具体的には安全対策、有害事象発生時の補償の問題が出てこようかと思います。
  3番目は「遺伝子の利用」です。遺伝子あるいはゲノムの利用です。これには非可変性といいますか、自分の力で変えることができない側面と、親族の中で共有する側面がありますので、そこに対する特別な配慮が必要かと思います。
  4番目は今の指針のどこにもないもので、「質的研究」です。先ほど花井委員から御説明がありましたけれども、質的研究というのは、我々が通常一般的に研究としてイメージされる疫学の手法を用いた数量的な処理をする、データを数量的に処理する、多人数に対して数量的な処理をするのとは異なって、1人あるいは少人数の状況をつぶさに描出・叙述いたします。これは人文系の研究もそうでしょうし、医学でも精神医学の領域などではそういうことをよく行いますが、非常に包括的な、総括的な数量データではなくて、個別の状況を詳細に書くことになります。格別な配慮が必要だと思い、「質的研究」について1項立てました。
  5番目は「多施設共同研究」です。これは、今かなり多く行われていて、主任研究者の施設、あるいは分担研究者の施設でどういう責務があるのか。今は研究者には含めておりませんけれども、情報や人体試料のみを提供し、研究の企画や運営、論文執筆には直接関わらない、そういうデータや試料の提供者に対してもう少し明確にする必要があるかもしれません。データの処理、その他研究をサポートする委託業者、これは業者とは限らず個人であってもいいわけですが、そこのところをもう少し明確にする必要があるかもしれません。
  6番目は、データバンク、アーカイブ、バイオバンクの話です。これも、現在は明確に指針には書かれていません。直ちに研究ではなく、むしろ将来の研究に対する基盤構築という側面が強いのですが、これについてもきちんと規定があった方がよろしいと思います。
  7番目は「資料等の二次利用および第三者提供」に関することです。これは、現在でもある程度規定があります。
  8番目は新たに追加したもので、「医療類似行為」です。例えば、脳波を取ったり、ファンクショナルMRIを取ったりするのですが、必ずしも医療職でない人が、ヒトに対して測定をする場合があります。ですので、どこまでが許容されて、どこまでが特別な配慮の下にやってよいか、安全対策は何かということについて言及しておいた方がよいかと思います。
  このように二階建て構造を取っております。基本的に私が思うところ、今までの指針はちょっと混乱するところがあるかもしれませんけれども、個々の条文についてはかなり良くできていると思いますので、今までの条文を上手に再配置して、足りないところを若干加えて再構成してはいかがかと思って提案させていただきました。以上です。
○福井座長 続いて田代委員から説明をお願いいたします。
○田代委員 資料4-3の「人を対象とする研究に関する倫理指針(案)」に沿って説明させていただきます。いろいろ細かいことを書いているのですけれども、時間も余りないと思いますので、最初のページを中心に、大雑把な方向性の話だけいたします。(1)「一体化の手順」ですが、個人的にはこの検討会では、疫学と臨床の2つの指針をきちんと一緒にするとともに、将来的にゲノム指針をここにきちんと統合する準備をすることは非常に重要だと考えています。もちろんこれまでにも議論の積み重ねがあると思いますので、現行の疫学指針・臨床指針の規定を統合して一体化することを最優先とする。新しく加える部分は最小限にしたいというのが私の基本的な考え方です。
  特に、この後の具体的な案にもそのように書いてあるのですが、将来的なゲノム指針の統合を視野に入れた改訂が必要だろうと考えています。この委員会でも、これまで疫学研究、臨床研究、ゲノム研究の3つを分けること自体がそもそも不可能であるということについては、委員の認識は一致していると考えているので、これが非常に重要だと考えています。
  具体的な案として私が作ったのは、現行の疫学指針を基本として、ヘルシンキ宣言との対応項目など一部の臨床指針の構成・項目を追加する形で、両指針の規定を整理するのはどうか、というものです。疫学指針の方が、いろいろな項目に階層構造があって記載が整理されていること。今回はのようにかなり広い範囲の研究をカバーするときに、雑多な研究を念頭においている部分が大きいので、そちらの方が吸収しやすいのではないかというのが私の基本的な考え方です。
  (2)「指針の構成」については、川村委員とある意味ではほとんど変わらないのですが、私の方は頭に「原則」を置いています。要するに、研究者は一体何を基本的に大事にするのかをはっきりさせた上で「一般規定」、先ほど川村委員がおっしゃったコア部分にほぼ対応するものと「特殊規定」、これを川村委員は「特異的事項」とおっしゃいましたが、この3部構成としてはどうかということです。
  基本原則、あるいは基本方針を独立するというのは、ゲノム指針とかヒト幹指針と同じ考え方です。やはり、最初に基本的な考え方として、適用範囲や用語の定義といった、枠組み的なところを独立して定めた方がいいだろうと思います。全ての研究に共通の一般規定については、現行指針の構成をいかして、研究者の責務、倫理審査委員会、インフォームド・コンセントと、個人情報保護と考えています。
  なお、一部の研究についての特殊規定として、以下の2つを設定してはどうかと考えています。1つ目は、主に疫学指針の方が主導で作られてきた「資料の保存と利用」に関する重要な節があります。ここを「試料・情報の保存と二次的利用」、あるいはこの中に具体的にデータバンクだとかバイオバンクの話を入れ込んでもいいのだと思いますが、現時点では非常に分かりにくい名称になっていますので、はっきりと将来への利用を想定した様々なものなのだということで、ここを独立してはどうかと思っています。内容的には、両指針で既に共通のものですので、そこに足りない部分を足していくということでいいかと思います。
  2つ目は、臨床指針の方に特異的な項目として、「医薬品・医療機器の臨床試験」については、やはり独立した項目を設け、保険その他の措置ですとか、有害事象の報告、あるいは事務局案の論点にもあるように、臨床試験の届出とか、データの信頼性といった項目は、恐らく全てに関わるというよりは、ここに入り込んでくるので、この項目を独立させてはどうかと思っています。
  (3)「新たな要素の追加」については、最初に宮田委員から御意見がありましたが、国内独自性というのがあってもいいと思うのですが、国際的に説明して理解してもらえるというか、日本はそういうところを大事にしていて、こういうところは共通なのだということがスッと分かるというのは非常に大事だと思っています。新たに加える部分については、国際的な研究倫理ガイドラインとか、各国ガイドライン他においてほぼ取り入れられていて、日本だけになぜかこの表現がないとか、かなり大きな齟齬があるところを見直すことが大事だと思っています。
  (4)は私の個人的な意見ですけれども、「過剰な規制はやめた方がいい」と思っています。適用範囲はきちんと絞った上で、学会等の自治に任せていい部分というのはきちんと任せることは大事だと思っています。これは、あくまでも行政指針ですので、完全な自治に任せていい、学会等でルールをきちんと作っていてそれを遵守してやっていればいいという部分は、全部を取り込む必要はないと考えています。
  2ページで「指針の構成案」です。これは先ほども申し上げましたように、疫学指針の方を中心として、一部臨床指針の構成を取り入れる形で考えています。幾つか強調点があるとすれば、第1の「基本的考え方」の4基本原則を独立させてほしいということ。第2の「研究者の責務」に関しては、先ほど楠岡委員からもお話がありましたが、研究機関の長と研究者の責任の間の中身を少しいじることはあってもいいかもしれませんが、ただ分けて設定するのが、現状の日本ではいいのではないかと思っています。
  下にずっと見ていただいて、特殊規定が第6と第7です。私の考え方としては、第7の後ろに、例えば第8「遺伝情報の取扱い」のようなことを追加していけば、ゲノム指針を統合することも可能ではないかと考えています。
  3ページは、独立させる「基本原則(基本方針)の案」として、これも詳細は述べませんけれども7つ挙げています。川村委員の案でも、研究者の責務として7つ挙げていましたが、そこと重なる部分、重ならない部分があります。今までの指針の中で、ある程度はっきり出ている所と、はっきりは出ていないのだけれども、いろいろ国際的な議論を考えると、やはりこれは重要なのではないかと考えています。1つの典型例としては、(4)「独立審査」を基本方針とするという点です。つまり、研究計画を第三者にきちんと見てもらうことは大事だろうということをうたった方がいいと思うのです。実は、原則としてこれはゲノム指針にしか出てこなくて、むしろ疫学とか臨床の原則の所には、「機関の長の許可」が原則になっています。ですが、考え方としては、むしろ第三者にレビューしてもらうことを原則とした方がいいだろうと考えています。
  4ページは細かい話なので本日は余り触れません。こういう形で、私の方は3部構成ですけれども、基本的な発想としては他の方の考え方と大きく変わるところはないと思うのですが、私が考えたものを紹介させていただきました。以上です。
○福井座長 川村先生のものとかなり共通する部分があると思います。ただいまの説明について御意見、御質問はありませんか。
○丸山委員 資料4-1も含めてということでよろしいですね。疫学指針と臨床指針を合わせたものの適用範囲に関してです。資料4-1の1ページの「検討のポイント」の3行目の小さいフォントで書かれている所では、「人を対象とした研究」という表記がされています。こうなると社会学的研究も含まれるのかと思ってしまって、それはちょっと広いのではないかと思います。資料4-2の川村先生の案の最初の「共通事項」の(1)の?に書かれている「医療・保健事業」に関するところに範囲を絞るのが、現在母体として考えている臨床指針・疫学指針の適用範囲を踏まえると妥当なのではないかと思います。
  川村先生の方で最後に、「医療類似行為」と書かれてお話になっていました、検査であっても、医療において用いられるものであれば、あるいは保健関係で用いられるものであれば、指針の対象となるのではないかと思いました。その辺りでMRIなどが医療関係でない所で、あるいは保健関係でない所で使われることがあるのかがよく分からなかったのですが、その辺りの外辺をいずれ明確にする必要があるのではないかと思いました。
○吉田課長補佐 最初の御質問ですが、ここでは一応統合の方法をどのようにすべきかということで、このように書かせていただいております。「人を対象とした研究」とした場合のその適用範囲については、この後の資料5の方で御議論いただければと考えていますので、よろしくお願いいたします。
○福井座長 丸山委員がおっしゃった、2つ目の「医療類似行為」のことについて、川村先生から何か付け加えることはありますか。
○川村委員 医療機器と同等なのだけれども、医療機器としての承認を受けておらず、医療職でない人が使って測定をする場面は間々あります。医療職であっても、今の法律の構造上は、医師の指示に基づいて、例えば検査技師や看護師さんがやらされる場合、医師の指示の下に行うことになっています。研究の場合だと、必ずしも医療を目的としていないので、そのようにはなされていない場面を見掛けることがあります。この辺りをどこで収めるかということ。
  1つは検査行為自体の危険性の問題と、もう1つは異常所見が出た場合にどう説明するか。不用意に説明すると、それ自体が医療行為になってしまうところがあります。その辺りがまだ未整理かと思います。私自身もまだ確たる見解を持っているわけではないですし、きちんと書いたものもないです。どこだったか神経領域の学会で、そうした検査を行う場合の指針が学会として出されていましたので、今のところそれが1つの参照情報になろうかと思います。
○福井座長 これは、あくまでも研究という枠組みの中での医療類似行為の話ですね。
○川村委員 もちろんそうです。
○山縣委員 川村先生、田代先生のまとめは私も全く同意いたします。川村先生が言われたようなことに関して、いわゆる偶発所見についての対応は、今度のゲノム指針でやっとそれについて検討しなさいということが入りました。これについては共通するものですし、しっかり要るだろうということ。
  お二人が説明された中に恐らく入っていると思うのですが、研究者・倫理審査委員会に対する教育・研修といったようなものは非常に重要な枠組みとしてあるだろうということ。田代委員の中に、Independent reviewとありますが、その研究そのものについて第三者がきちんと評価するような科学的な妥当性、研究遂行についての評価をやっていくことは大切だと思っています。
  もう1点はゲノムのときにも問題になったのですが、研究結果の開示の問題についても、やはり共通のものとして、先ほどのインシデンタルファインディングスと同じように、その開示をどうするのかといったことについては、共通のこととしてきちんと明記しておくと思っております。
○福井座長 倫理委員会の設置の所にも、川村先生の案では、委員の研鑽という言葉も入っていて、恐らくカバーされてくると思います。
○位田委員 川村先生のところで3点と、田代先生のところで3点お尋ねします。1点目は、医療類似行為のところとも関係するのですけれども、研究と診療との区別はどこかで書いておく必要があるのではないかという気がいたします。2点目は、遺伝子の利用の所で、「非可変性親族内共有性」というのはそのとおりなのですが、「遺伝性」というのがこの中に入っていないのはどうしてなのですか。3点目は、私は「ヒトを対象とした研究」ということよりも、むしろ「ヒトを対象とした医学研究」という括りにした方がいいかと思っています。ヘルシンキ宣言もそういう呼び方です。そのときに、医学研究をする際の研究者の資格というか、要するに誰がその研究計画の中で研究者として研究しているのか。もちろん医師ないしサイエンティストの方がおられます。研究によっては看護師の資格のある方もいます。場合によっては、事務の職員も研究の中に入って、カルテの取扱いということもやるので、どの範囲までをこの指針で縛る研究者かということを考える必要はないのか、という気がしています。
  田代先生に対しての1点目は、医薬品・医療機器の臨床試験も中に含めるというのは、先ほど私は含めない方がいいのではないかという話をしたのですが、この辺りはいかがなものか。基本的に違う取扱いをした方がいいのではないかと思っています。2点目は、1ページの(4)「過剰規制はやめる」の所で、ここは「行政指針なので」とおっしゃいました。確かに現状は行政指針なのですけれども、国によっては法律で決めている場合もあります。EUも基本的には国内で法律にしろという話なので、行政指針だから学会に任せるという趣旨なのか、今すぐはできるとは思いませんけれども、これが法律になれば学会に任せないで国がやるという趣旨なのか、そこのところの意味が分かりにくかったです。3点目は、3ページの「基本原則」なのですが、先ほど田代先生がおっしゃったように、被験者の保護というのは大原則だと思うので、これは当然書き込むのがいいのではないかと思っています。以上です。
○尾崎研究企画官 先生方からは大変貴重な御意見を頂いているところですが、我々としては、資料4-2とか資料4-3については、イメージとしてはこんな大分類になるのではないか、1つの案を提案していただいたものと理解しています。資料2の中で、個別事項については、それぞれの項目のところでまた詰めていくことになると思います。
  恐縮なのですが、資料4-1の「見直しの方向性」(案)について、大体の大枠ということで議論をしていただければと考えております。個別の議論は非常に重要だとは思うのですが、議論する場面はまだあります。先生方が言われた貴重な御意見は「その他」のところで、抜けがないように議論をできるものと事務局では思っています。したがって、できれば、資料4-1の見直し案の3つの事項で、指針の構成として特に2番目ですが、「基本的共通事項、研究デザイン、研究フィールド等に応じた場合分けが必要な事項から構成することにしたらよいかどうか。」について、御意見をまず頂ければと思いますので、よろしくお願いいたします。
○福井座長 恐らくここに書かれていることは前提として話が進んでいるわけですので、大丈夫だと思います。言葉の遣い方も基本共通事項とするのかどうなのか、特殊事項だとか、特異的事項なのかという言葉の遣い分けということにはなると思うのです。研究デザインだとか、研究フィールド等に応じた場合分けというのがそちらに入ると。いずれにしても、お二人の先生の案もそうですし、大体この方向で行うということでよろしいでしょうか。
○尾崎研究企画官 はい。
○福井座長 すみません、これを前提に私自身は話が進んでいるものだと思っていました。取りあえず資料4-1については、この方向で進めるということで確認させていただいて、また途中でいろいろ細かい点があれば御発言いただいた方がいいと思いますし、その都度記録を残していって、後でまとめるときにそれを使わせていただくということでいいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  時間的にも大分押してきていますので、項目2「統合した場合の指針の適用範囲」について、資料5に基づいて事務局から説明をお願いいたします。
○吉田課長補佐 資料5を御覧ください。項目の2番です。「統合した場合の指針の適用範囲について」ということで、ここでは項目を3つに分けています。2-1の統合後の指針の適用範囲をどう整理するか。特に、現行の疫学研究倫理指針の適用範囲と臨床研究倫理指針の適用範囲以外の研究との関係をどう整理するかです。なお、ここに小さい字で書かれていますけれども、それぞれの適用範囲を合わせた研究に関して、以下「医学・公衆衛生学系研究」と表記させていただきました。
  「現状と課題」です。現行の疫学研究倫理指針及び臨床研究倫理指針は、医学・公衆衛生学系の研究に適用されています。心理学、社会学、教育学などの人文・社会学分野の研究においては、この医学・公衆衛生学系研究と同様の方法や内容のものもあり、統合後における指針との関係を整理する必要があるのではないかという意見がありました。また、医療機器の開発等の工学分野、あるいは看護、福祉等の分野における研究についても同様の指摘があったところです。
  次のページで「検討のポイント」です。これら各研究分野との関係をどう整理していくかということ。そして、複数の研究分野の研究者が関わる研究について、指針との関係をどのように整理するかを挙げました。
  「見直しの方向性(案)」ですが、人を対象とする医学・公衆衛生学系研究を適用範囲としてはどうか。また、医学・公衆衛生学系研究以外の研究についても、この指針が参考になることを考慮した構成・内容にしてはどうかという提案をさせていただきます。この「関連意見」は資料1-1から関係する意見を転載したものです。また先生のお手元には、第2回の合同会議で配布した「人文・社会学系分野における人を対象とする研究の規制と倫理」という資料を配布していますので御参照ください。
  次のページです。2-2の人を対象とする医学・公衆衛生学系研究を指針の適用範囲とした場合、適用・非適用の区別をどのようにしてより明確に示すかです。「現状と課題」です。現行の指針や細則では、適用・非適用が十分に明確化されておらず、倫理審査委員会での取扱いに迷うことが多いという意見がありました。また、倫理審査委員会の審査の対象外と判断された研究については、論文投稿などの際、審査の対象外と判断された根拠を書面で求められることがあるが、現行の指針や細則では、この適用・非適用の判断基準が明確化されていないので、説明が十分にできないという御意見もありました。また、どのような研究に現行の指針が適用されるかについては、独自のフローチャートを作成して対応している研究機関もありました。
  「検討のポイント」です。研究の属性(介入、既存資料、共同研究者の有無など)を基にして、統合された指針を適用する際の取扱いをより明確化すること、を挙げさせていただきます。
  「見直しの方向性(案)」ですが、統合された指針において適用・非適用の対象をできる限り指針本則に示してはどうか、という提案をさせていただきます。なお、小さい字で書いていますが、最終的には倫理審査委員会の判断を基に研究機関の長が決定するという原則は守るということです。
  次のページです。本論点について「関連意見」、資料1から関係する部分をここに転載しています。また「関連資料」として、第1回の合同会議で配布した「国内研究機関における疫学研究・臨床研究の指針適用状況」についての資料を配布しています。
○伊藤安全対策官 引き続き、2-3について御説明させていただきます。これは、ヒトゲノム・遺伝子解析研究を含む研究の指針への適用をどうするか、について整理したものです。「現状と課題」ですが、ゲノム研究を伴う疫学研究及び臨床研究については、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」が適用されるということで、疫学研究倫理指針、臨床研究倫理指針の対象外として整理されています。このため疫学研究や臨床研究で起こり得る問題に対応できていない。例えば疫学でいうと追跡研究、あるいは臨床研究でいうと補償といった問題に対応できていないという意見がありました。
  この点について、ゲノム研究倫理指針は、本来、生殖細胞系列変異のゲノム研究などに用いられるものであることについて、関係者の認識が十分でないからではないかといった意見もあります。この生殖細胞系列変異というのは例示で、必ずしもこれに限りるものではありませんが、そういった意見があります。また、ゲノム研究倫理指針の適用についての問題は、研究デザインの立て方によって解決できるのではないかという意見もあります。
  次のページをお開きください。「検討のポイント」ですが、こういった認識を踏まえ、ゲノム研究を含む疫学研究又は臨床研究についてどう整理していくか。あるいは、どのような研究の場合に研究デザインによって切り分けられるのか、といったポイントが考えられます。またゲノム研究倫理指針については、疫学研究倫理指針及び臨床研究倫理指針との整合性を踏まえ、今月の4月1日に改正指針が施行されたところです。この指針の内容については、例えば倫理審査委員会の構成、既存試料の取扱い等については、両指針との整合性を踏まえた形の改正が行われています。この改正指針の内容及び運用状況を踏まえた上で、問題点を整理していくことが重要であることをポイントとして挙げています。
  「見直しの方向性(案)」について、2点示しています。1点目ですが、ゲノム研究を含む臨床研究や疫学研究においては、ゲノム研究倫理指針だけを参照するのではなく、疫学研究倫理指針や臨床研究倫理指針の両指針も参照できるよう指針で明確化してはどうかといったことです。これについては18ページの参考を御覧ください。改正された最新のゲノム研究倫理指針のQ&Aを見直し、今、ホームページにもアップしているのですが、このQ&Aで新たに整理しています。ゲノム研究を伴う臨床研究や疫学研究を行う場合に、どういった倫理指針が適用されるかの回答として、ゲノム研究倫理指針のほかに疫学研究倫理指針、臨床研究倫理指針における取扱いも踏まえ、研究計画を作成することが適切な場合も考えられるということを示しています。
  16ページに戻ってください。今、1点目で申し上げたことはゲノム研究倫理指針の方で、例えばAという項目について「Aすべし」「Aすべきでない」といったことでなく、Aについて何も書いていないときに、疫学や臨床で「Aすべし」という場合には、上乗せして指針を見ていくことは今でも十分できるけれども、明示されていないので、そこは明確化していこうというものです。一方、ゲノム研究倫理指針では「Aすべし」と書いているけれども、疫学や臨床では「Aすべきでない」と書いた場合には、まずゲノム研究倫理指針の方を見ていく必要があることを踏まえて整理したものです。
  2点目、研究デザインについては倫理審査委員会が確認することを前提とした上で、ゲノム研究倫理指針を適用する研究部分と、疫学研究や臨床研究に関する倫理指針を適用する研究部分に分けて、合理的な指針の運用ができることを周知することとしてはどうか、ということをお示ししています。これは倫理審査委員会が確認することを担保して、いわゆる虫食いのような計画デザインを認めるものではないことを、改めて確認しようというものです。以上です。
○福井座長 ありがとうございます。3項目ありますので、最初に2-1から議論を進めたいと思います。真田委員、どうぞ。
○真田委員 この2-1ですが、看護学はどこに位置づけていただけるのかを、是非、伺いたいと思います。今、看護の大学が200以上でき、年間、修士論文、博士論文だけでも2,500近く出てくる状況で、医学と公衆衛生看護学の研究と言われてしまうと、看護学はどこで審査していただくか分かりませんので、その辺、御検討いただけますか。
○福井座長 この点で何か、川村委員、どうぞ。
○川村委員 医学の言葉の定義の問題であって、看護学も例えば検査学あるいはリハビリテーション学も全て医学に包摂されると思います。むしろ医学と公衆衛生を対立概念的に扱っていいかどうか引っ掛かるところで、いわゆるClinical MedicineとPublic Healthは対立とまではいかないけれども、別の概念といえます。そういう対象者の範囲の軸と、いわゆる病態生理学的なアプローチや治療学、その治療に関わるものとしての看護学、あるいは診断学など、そういったいろいろな縦軸、横軸の切り口があるので、看護学に限らずリハビリテーションや検査学といったものも、全て医学という言葉に包摂されているのではないかと考えています。
○真田委員 医学と看護学は学問として区別して、今いろいろな体系が作られているので、先生がおっしゃるように言われるならば、医学のところを医療としていただくのが妥当ではないかと思います。
○山縣委員 この辺の議論は難しいと思うので、基本的には、むしろ研究デザインの話だと私は思います。医学の中でもいろいろあるのですが、臨床研究も疫学や公衆衛生学の研究も、結局、研究デザインとして観察研究なり介入研究なりといったものの手法で行っていくときのこれは指針で、例えば看護研究でも医学研究でも、医学のスキルをアップするような研究はよく出てきますが、そういったものは、それが医学研究であっても看護研究であっても対象にならないだろうと、そういう話として我々の倫理委員会ではその適用範囲を考えています。
○田代委員 デザインの話も確かにあると思いますが、私はここの提案で示されているように、基本的には目的で区別しているのだと思いますし、それは妥当だろうと思います。表現として医学系という言葉がいいのか、医科学研究とかいろいろな表現があり、広く人の健康や治療法の開発を目的として人を対象とする研究が対象に含まれるというイメージですが、その中には当然、看護学的な研究も入ってくるという理解で、多分ここは作られています。個人的には、基本的に目的で縛ることは妥当ではないかと考えています。
○知野委員 先ほどの議論とも重なるのですが、人を対象とした研究に関する倫理指針というふうに名前を変えることは、私たち素人というか一般の者としては非常に分かりやすいと思って聞いていました。その適用範囲をどこまでにするかというところで、ここで心理学といった分野との切り分けの難しさを指摘されていますが、確かに心理学だけでなく、というより、最近、脳の機能を測定してマーケティングに活かすなど、とか、医学と市場調査などいろいろなものが一緒になっている分野が出てきていると思います。かつ、そちらの方が一般の我々には馴染み深いものになりつつあるのですが、そういうものは一体どこの対象に入るのかということ。それが果たして、本指針が参考になることを考慮しろという程度の表現でいいのか、取扱いとしてどういうことがあり得るのか専門家の方の御意見を伺いたいと思います。
○福井座長 どなたか答えられますか。
○跡見委員 脳科学などもファンクショナルMRIを使ったりして、医学的な内容を多く含むと思います。指針というのはある程度限定したものにしていかないと、余り総花的にいろいろなことを考慮して書いてしまうと、考慮することは必要かもしれないけれども、かえって使い勝手が悪いのではないかという気がします。人文・社会科学系の倫理委員会が、今、私たちの大学にもありますけれども、そこは既存のものを参考にしながら準用していくという形ではいかがでしょうか。
○知野委員 ただ、そうすると、今、盛んに科学技術イノベーションなどと言われて、いろいろな利用を考えようと取り組んでおりやっているときに、いろいろなものが出てくる。そのときに現実と、新しく作られた指針に何か距離感があるというようにか、何か違うなというふうに受け止められないでしょうか。そこがちょっと気になります。
○伊藤安全対策官 今の意見に関して関連資料の資料5、田代先生に作っていただいたパワーポイントの資料の6ページ目ですが、ここで各学会の取組を整理しています。特に心理学については心理学系の学会において倫理綱領などを作って、心理学の分野における学会として、まず自分たちのところでいろいろと考えてやっているという現状があります。これが十分かどうかについては、今後更に見直しをしていくものだと思われますが、その中の動きを尊重して、医学系の分野でこの両指針が作られてきている経緯があるということですから、この指針が参考になるような形でまたいろいろと考えていく必要があると思いますが、まずは心理学の学会のところで書かれている倫理綱領を尊重していく中で、整理していく必要があることをお示ししたものです。
○福井座長 いかがでしょうか。
○宮田委員 今、御指摘になったことは産業化が相当進んでいますので、そういった動きがあることだけは認識しなければいけないと思います。ただ、議論のときにその範囲を絞っていかないと、確かに、とてもではないがまとまらないというのが現状ですので、便宜的にそういう範囲は絞っても私は構わないと思います。ただ、ほかの学会に対する働きかけも含めて、被験者の保護に関する考慮をもっと行うべきだという何らかの情報発信を、ここの指針の中に入れる必要はないと思いますが、付帯意見みたいな形で示す必要は、もうそろそろあるのではないかと思っています。
○福井座長 恐らく結論的には、全ての分野をここに全部入れ込んでという書き方は、なかなか難しいのではないかと私も思います。田代委員がおっしゃったように、人の健康増進あるいは治療、又は医療の発展を目的とした研究みたいな何かそういうふうな書き方でないと、全部はうまく網羅できないのではないかという気はします。
○真田委員 見直しの方向性がはっきりそう書かれていて、「人を対象とする医学・公衆衛生」と書いていますから、ここを読む限りは看護、薬学、栄養などが入らないのではないかと懸念したのです。もしここを先生方がおっしゃるような考え方にするなら、せめて「医学系」と入れていただくとよろしいかと思います。
○福井座長 「人を対象とする医学系研究」としてしまえば、どうかということだと思いますが、いかがでしょうか。実は公衆衛生学をここにわざわざ入れてしまうと、公衆衛生学に対する言葉は基礎医学と臨床医学なので、区分が何となく不明確になってしまう言葉を羅列することになってしまいます。
○丸山委員 真田先生に1つ確認させていただきたいのですが、看護の研究も新たに作る指針の適用対象にしてほしいというのが、看護の立場の方の意見と受け取ってよろしいですか。
○真田委員 今まで全ての倫理審査は、この倫理指針に沿って看護の研究もなされてきました。なので入っているものだというのが前提でした。
○丸山委員 最初の2002年に作ったときは、看護の方も取り込んでほしいという立場を強く訴えられましたので、現状はそうなっていると思いますが、その方向で今後も維持するようにという御意見なのですね。
○真田委員 是非、お願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○川村委員 私も真田先生と同じで、基本的に医学系というのが最初に私は浮かんだので、それでいいと思いますし、もう1つ、Health-related QOLとか言いますので、そういった健康関連という表示もあるかもしれないとは思いました。
○福井座長 それでは、この2-1については「人を対象とする医学系研究」ということで進めていき、恐らく用語の説明のところでまた加えていただくことになるかと思います。
○直江委員 その意見に賛成ですが、先ほど被験者保護という観点からの話がありました。例えば病院に入院されている患者さんについて、新しい医療機器を工学者が研究するという場合に、実際問題、その審査をどこでやるのかというと、多分これは病院だろうと思います。だから工学的な研究であっても被験者の観点から言うと、それが患者さんであれば、それは医学系研究だということは確認しておく必要があるだろうと思います。
  議論が戻りますが、先ほど「研究機関の長」というのが出てきました。例えば看護学の研究でも患者さんを使った場合に、これは看護学で審査するべきなのか、それとも病院で審査するべきなのか。大学病院の場合でも医学部で審査するべきなのか、病院で審査するべきなのか。これは現場でいろいろ混乱というか難しい個別の議論に入りますから、そこはまた、いずれ各項目のところで少し問題提起したいと思います。
○福井座長 真田委員、何か御意見はございますか。
○真田委員 大変貴重な御意見だと思います。どこで審査していただくかというのはずっとコンサーンでした。特に病院で、医学ではないから看護学は病院では審査しないという大学もあって、決して東大ではありませんけれども、どこで審査していただいたらいいのか悩んで、よく看護の学会に持って来られる研究者もいますので、是非、その点は御考慮いただきたいと思います。
○福井座長 ありがとうございます。
○田代委員 1点だけ。最初の直江先生の御発言で工学の方がやられる場合ということですけれども、これも、ここで示されている案にあるように目的なので、バックグラウンドが何であれ、正に人を対象とした健康の増進や、治療、医療機器の開発をやる場合にはここに入るということ。その目的で規定することにより、工学出身であろうが何であろうが、同じような医学系の目的に向かって研究しているということで、ここは線を引くというのが、そういう意味でも私は妥当だと考えています。
○福井座長 ありがとうございます。それでは、2-2につきまして議論をお願いしたいと思います。結論的には、見直しの方向性の案として、統合された指針において適用・非適用の対象をできる限り指針本則に示すという方針ではいかがかということです。
○山縣委員 今の目的が明確になれば、ある程度その範囲が明確になると思いますが、看護研究で教えていただきたいのが1つあって、医学でも稀にあるのですが、要するに専門家のスキルアップのための研究というのをかなりされていると思います。ああいうものは例えばこういう倫理指針の適用に対して、看護系ではどういうふうにお考えなのかということです。
○真田委員 例えば先生がおっしゃるのは、業務改善という部分でしょうか。それは倫理審査には入れなくてもいいのではないかと思っています。
○山縣委員 学会での発表とか論文のときに、必ず倫理審査を通せと言われるのです。ただ、今のガイドラインでは適用外だろうというお話をするのですが、それに関しては何らかの対応が必要ではないかと思っています。
○真田委員 確かにおっしゃるように、今、業務指針と申し上げましたが、例えば看護教育の中でナースたちのキャリアラダーを作って、それを評価するときに、それは患者さんでなくナースのための研究ではないかということで、持って行く場所がないという意見は多々あったと思います。その点に関しては、それでもこの倫理審査を通していただいているという点では矛盾が生じているところだと思います。おっしゃるとおりです。
○田代委員 今の話に関係するのですが、この適用範囲に関しては先ほどの私の案の中でも、現状の疫学指針の細則を最大限利用したらいいのではないか、ということを少し書いたのです。というのも、恐らく前のときに作られたのだと思いますが、かなり詳細に、どこまでが指針の対象内でどこからが外であるということが、具体例を挙げて書かれていて、これが今の臨床指針にはないのです。恐らく先ほどの業務改善が研究ではないのだということも、ここに具体例としてきちんと追加されていくと、学会などでの対応も少し変わってくる可能性があるので、そういう形で処理するのもいいのではないかと考えてはいます。
○福井座長 私も、個人的にはその方向でいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○直江委員 この場合、適用か非適用かという問題と、もう1つ、例えば審査対象かどうかという切り口もあるのではないかと思います。例えば届出だけをするということで済ませる。理想的にはどこかで事前審査のようなものがあって、これは審査の適用ではないというところも、ひとつ現実的な運用としてあっていいので、ここを整理した方がいいと思います。
○田代委員 正におっしゃるとおりで、この適用・非適用の話と別に、付議不要かどうかという判断が別にあるわけです。恐らくそこの話は倫理審査委員会の項目を詰めるときに、一体どこまでの研究が付議不要の範囲なのかが検討されると思います今はすごく狭い範囲が付議不要になっているのですが、この範囲を広げるのか、それとも狭めるのかという議論があると思いますし、もう1つ、迅速審査の対象というので審査自体が3段階になっていて、今、ここでやっている指針の適用内か外かというのは、更にその外側の話だと思いますので、正におっしゃるとおり、その段階に沿って議論がされていくものだと考えています。
○楠岡座長代理 適用・非適用のところは、運用のところにも関わってくると思われますし、先ほど宮田委員からあったように、新しいものが出てきたときは、結局、Q&Aのような形で追加していくしかないと思いますので、そこは運用のところだと思います。
  あともう1つ、適用・非適用で非常にややこしいのは、研究者は所属している所の許可は取っているけれども、フィールドを使うときに、それが病院などになった場合は誰がその実施を許可するかということが、今の指針の中では明確にされていないわけです。病院によっては別途、もう1回、病院側の倫理審査委員会にかけてくださいとか、あるいは親元の倫理審査委員会がどういうふうに承認したか。についての情報提供を求めたりしています。というのは、研究機関の長の許可は必要ですけれども、実施場所である医療機関の長の許可は今の指針の中では何も求めていない。実際には実施医療機関にいる患者さんが対象になったりするので、その辺の運用のことも、適用・非適用に絡めて明確にしておく必要があるのではいかと思います。
○福井座長 実際は、実施医療機関の方で研究協力している方が、その施設に出して審査してもらっているというのが実情ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○楠岡座長代理 ただ、場合によっては協力者なしの場合もあったりするので、あえて協力者を作ってもらわないといけないという運用上の問題も、実際にはあると思います。
○中村座長代理 今の点に関して、先日、行われた日本疫学会の理事会で同じような問題が出てきました。具体的には稀な病気について症例対象研究ができなくなってきている。要するに研究者の方から医療機関にお願いして対象者を紹介していただき、調査者を派遣して聞取りなどをやるわけですけれども、それを、それぞれの医療機関で倫理審査委員会を通さなければいけないとなると、医療機関の先生の負担がものすごく大きくなって、それだったらお断りということで、やりにくくなってきている状況が生じているので、その辺は何とか考えてほしいという意見が出されました。
○福井座長 また個別のところで議論できればと思います。2-3のヒトゲノム遺伝子解析研究について、「見直しの方向性(案)」、スライドの16枚目です。ここに書かれているような案で進めることは、いかがでしょうか。
○田代委員 度々すみません。これ、2つ目の案がどうかなと個人的に思うのは、これをこのまま運用していくと、一部の医療機関で既にそうされていますけれども、同じ研究計画をわざわざ2回、ゲノム委員会と倫理審査委員会に出すという、私からすると絶対やめた方がいいような慣行をますます助長させてしまうことになります。研究の評価としても、全体として例えばリスクとベネフィットがどうかを見なければいけないのに、部分を見て評価してもほとんど意味がないことがたくさんあるのです。指針を柔軟に活用して1回の審査をやる方向はいいと思いますが、審査自体は基本的に1回でいいということをきちんと書き込まないと、これは、いろいろな所で2回審査に出すことをどんどん助長する規定になると非常に厄介だなと思います。
○福井座長 ほかには、いかがでしょう。
○玉腰委員 先ほど田代委員からの提案にもあったのですが、今回は一緒にしていかないにしても、方向としては今後合わせていくということを、是非、入れていただければと思います。もう1つ、前々回のときのお話だと思いますが、長浜が実際に合わせて自分の所で条例を作って運用しているという実例がありますので、それは是非、この場でまた御紹介いただけるといいのではないかと思います。お願いします。
○福井座長 ありがとうございます。
○津金委員 疫学研究でも臨床研究でもないゲノム解析研究というのは、現実問題としてはほとんど存在しないと言ってもいいのです。ですから、基本的に疫学指針とか臨床指針も参照するのではなくて、ベースとしては疫学研究指針、臨床研究指針を参照して、ゲノム解析に関わる部分においては、ゲノム指針を遵守するという方向の方が絶対いいはずなのです。
  そのゲノム解析に関わる部分というのは、1つは血液などのゲノム解析の試料を収集するところです。ゲノム指針は、今、情報も試料も同じように扱われているのです。ですから市町村からいろいろな追跡情報をもらうときに、ゲノム指針でやらなければいけないことになってしまうのです。大事なことはゲノム解析をする試料を収集するところです。そこは将来的にゲノム解析とか、そのあと、ゲノム解析が想定されれば、当然ゲノム指針に書かれているインフォームド・コンセントを遵守することは、すべきであると。
  もう1つ大事なことは、次の問題として、いわゆるゲノム解析をしてゲノム解析のデータが出てくる部分です。それは個人情報の保護や個人情報の管理など、いわゆるゲノム指針の個人情報保護、個人情報管理者の責務というところです。要するにゲノムのデータが出てくるところを匿名化してきちっと情報管理する。そうでない情報もゲノム指針は同じように果たしているのが問題なのです。先ほどゲノム指針でやるべきことが疫学指針で書いていなければ、ゲノム指針に準じなければいけないと言われましたが、そうするとバイオバンク・ジャパンで起こったように、ゲノムでない情報を市町村や自治体や医療機関から集めるときに、ゲノム情報を取り扱う機関と同じように研究機関として位置づけて、それぞれの所で全部倫理審査しろとか、匿名化して個人情報を管理しろとか、ゲノム指針をちゃんと読むとそういうことになってしまうのです。それは方向が逆なのではないかと思います。
○藤原委員 適用範囲が混乱しているのがここの記載の一番の問題で、現行、ヒトゲノム指針が最初にできて、疫学指針も臨床研究倫理指針も最初のところの適用範囲で、ヒトゲノム指針が適用してあるものは適用にしないという表現が書いてありますから、今回の見直しの中でその前文を削除してしまえば、皆さんが今おっしゃっているように、ヒトゲノム指針は、当然、臨床研究倫理指針や疫学指針など医学系の倫理指針の下位というか、下にあるスペシフィックな指針ですということが、多分、明示できると思います。今の書きぶりでいくと、臨床研究倫理指針も疫学指針も、ヒトゲノム指針が対象とするものは対象としないという前文が両方の指針に入っているので、今回の指針でそういう文言を除いてしまえば全然問題ない話だと思います。
  あとヒトゲノム指針の中には、例えば薬事法でやる治験に関して、本来、審査したらいけないと書いてあるにもかかわらず、全国ほとんどの委員会はいまだに二重審査しているのです。そういう実態があることを考えると、今回の統合の中でシンプルにするというところさえ徹底しておけば解決すると思います。
○福井座長 ありがとうございます。
○楠岡座長代理 先ほどの田代委員の関係で、これは多分、倫理審査委員会のところでのディスカッションになるかもしれませんが、何か倫理指針ごとに倫理指針委員会を作らなければいけないみたいな考え方があって、倫理審査委員会が1つあって全ての指針を参考にしながら審査するという考え方が、足りないような感じです。本来ならば倫理審査委員会は1つで十分で、全ての倫理指針等を参考に審査を行い、それでリスク・ベネフィットを評価する。倫理審査委員会を2つ以上置く場合は、指針に対応するためではなく、非常に専門性が高いとかで、特にこの問題に関してはこの審査委員会に集めるとか、そういう仕分の上での考え方。あるいは研究の数が多くて業務量が多く、1つではとても無理なので複数化するけれども、その複数の間では何ら特に差別はしないというやり方もあると思います。
  指針ごとに倫理審査委員会を置いて、そこで1つの指針でもって審査するという基本的な考え方は誤りではないけれども、余り適切な考え方ではないということを、もう少しきっちりやっていく必要があるのではないかと思います。
○福井座長 ありがとうございます。
○位田委員 もうほとんど議論は出尽くしているのですが、要するにゲノム研究に特有なルールの部分と、臨床研究のルール、疫学研究のルール、それぞれ違う部分と共通の部分があるので、今までお話をお聞きしていると、一番困るのは倫理審査だという話ですよね。倫理審査は、今、楠岡先生がおっしゃったように、それぞれの指針ごとに倫理審査委員会の構成やいろいろなことが違ってくるのが問題なので、どれか1つで全部カバーするようにすればほとんど倫理審査の問題はカバーできる。そうすると問題は、ではゲノム研究として、どこを特別のルールとして維持しないといけないかだけの話だと思います。それはそれで重要な部分があるので、倫理審査がどうだから一緒にする、しないという話は、本質とは少し離れた部分ではないかと思います。
○福井座長 ありがとうございます。
○伊藤安全対策官 まず倫理審査委員会ですが、2つに分かれて、例えば臨床研究的なものについては臨床委員会で見ていく、ゲノムについてはゲノム委員会でと、2つの委員会で構成するということですけれども、確かにそのような話をいろいろとお聞きしていて、今回のゲノム指針の改正においては、例えば外部委員が半数以上といった規定があり、2つにせざるを得なかったことも議論の中で出ています。そこの部分について見直しを行い、今月1日から施行されている委員会においては、疫学・臨床両指針の委員会の構成を念頭に置いた形で整理しています。今後、より統合した1つの委員会の中で研究計画を見ることができるのではないかと考えています。
  もう1つ、ゲノム指針が正に施行されたばかりであることを「検討のポイント」に書きました。したがって、その内容や運用状況、より疫学や臨床の研究との整合性も踏まえた形で見直していることもありますので、その辺の状況を少し見る必要があるのではないか。ゲノムとの整合性というのは、次の議題にもなりますけれども、医療等、個人情報保護法との関係なども踏まえ、更に次の段階においていろいろと議論していく。まずは臨床と疫学の統合について、これもできるかどうか議論していかなければならないので、少し段階を追って整理していく中で、この見直しの方向性を今の段階でお示しできると事務局は考えて、お示ししたことを御理解いただければと思います。
○福井座長 今回の指針を作っていく中で、ゲノム関係の特殊なところを書き加えていくという作業は、していく必要があるのではないかと思います。藤原先生がおっしゃったような方針で進めていきながら、またその都度議論していただければと思います。時間のこともあり大変お疲れとは思いますが、もう1つ残っています。「個人情報の取扱いについて」、項目3ですが、これについて事務局から資料6に基づいて説明をお願いします。
○吉田課長補佐 それでは資料6を御覧ください。項目の3番、「個人情報の取扱いについて」です。個人情報の保護に関する法律において、学術研究機関が学術研究目的で個人情報を利用する場合は適用除外となっている。一方で、現行の指針では、法律で適用除外とした内容とほぼ同様の規制となっていることについてどう考えるか、ということです。
  「現状と課題」です。連結可能匿名化の場合の対応表の管理について、これは研究者任せになって十分ではないので、管理の委託も含めて安全管理措置の充実を図るべきではないかという意見がありました。一方、個人情報を収集する際には本人の同意を得ることが原則となっているが、観察研究については、内容に応じてインフォームド・コンセントの取得の要件を緩和してほしいという意見もありました。また、保有個人情報に対する訂正要求など、現行の指針は個人情報保護法の規定をほぼそのまま組み込んだものとなっています。医学・公衆衛生学系研究における個人情報の取扱いについて、原則を決めておくことだけでもよいのではないかという御意見もありました。
  次のページで「検討のポイント」です。まず、個人情報保護に関する現行の規定が整備された平成16年12月以降、どのような状況の変化があったのかということです。2番目として、個人情報の利活用等については別途、医療分野における診療機関に蓄積されているデータの幅広な利活用を可能とする法制度の検討が進められていますが、個人情報の保護に関して現行の個別分野の各指針において個別に規定しているルールについては、新たな法律で規定する事項にはならない見込みであり、現時点においては、引き続き指針においてルールを定めていく必要があるのではないかということです。3番目として、個人情報の取扱いについては、研究機関によって適用を受ける法律・条例等が違っていますので、現行の指針を通じてルールが共通的になっている側面があることから、もし現行の指針のルールを緩めてしまうと、個人情報の取扱いに関して、研究機関の間の差異が大きくなる可能性があることについてどう考えるか。この3点を挙げました。
  「見直しの方向性(案)」です。医療等情報の利活用と保護に関する法制度について随時検討の状況を把握しつつ、指針で取り扱うべき事項を見極めた上で、診療情報等の適正な利活用を促進する観点から、現行の指針の規定ぶりの整理、見直しを検討してはどうかと提案させていただきます。
  次のページですが、「関連意見」については資料1-1から関連する部分を転載しています。また「関連資料」として、第2回合同会議で配布した「個人情報保護法制について」の資料を、委員の先生方のお手元に配布しています。また最後のページで参考ですが、「学術研究を行う場合の個人情報保護法令等の適用関係について」、学術研究を行う機関の属性ごとに適用法令等の区別をした表を付けています。以上です。
○福井座長 ありがとうございます。いかがでしょうか。かなり抽象的な見直し案になっていますけれども、御意見、御質問はございませんか。どの程度具体的に書き込むかというのは難しいテーマだったと思います。全く御意見がないとこれで終わってしまうのですが、よろしいでしょうか。
○花井委員 この連結可能匿名化という話で、具体的にどうというのではないのですが、今、日本赤十社の血液の疫学利用という枠組みを医薬食品局の方で検討していて、連結不可能でそれを出すのですが、日赤内部に戻せば可能になるという状況は、事実上、連結可能な匿名化になっていると思います。ただ、そこら辺のルールづくりで、例えば完全連結不可能化した場合、そこには個人情報はないのかというと、通常はないと考えるのでしょうけれども、先ほどのゲノムとの関係で、全く連結不可能になってもゲノムになった瞬間にそれは個人情報になるというと、個人情報保護法ではゲノムのことに言及していないので、いわゆる個人を特定できると。具体的には住所、氏名みたいなところですが、その辺もゲノムとの兼ね合いでは、個人情報という言葉が現行の個人情報保護法に規定されているので、そのままでいいのか。ゲノムはちょっと違うと、個人情報に入ると考えるのか。若干、連結不可能匿名化、可能匿名化、個人情報を定義としてもう1回、整理していただきたいと思います。
  本当に難しいのですが、本当に連結不可能な場合であれば、かなり簡便な包括的同意で研究ができる方が研究の推進という観点からは望ましいという考え方もあります。先ほど出した日赤の血液の例で言えば、かなり今は厳しくやっていて、ほとんどマテリアルとしての利用以外は不可能な現状指針です。それでいいのかという議論が向こうでは多少出ていて、若干、そこは可能なものと不可能なものを明確に線引きする意味でも、連結可能、不可能、個人情報のところを整理し直していただけたらと思います。
○福井座長 これも字句の定義のところで明確化していく作業を、お願いしたいと思います。ほかにはいかがでしょうか。
○丸山委員 それについて、全体から見て連結不可能ということも重要ですが、その場において医療機関では連結可能だけれども、研究者の所では連結不可能というか、対応表が研究機関には行き渡っていない場合、研究機関においては連結不可能ということで、場を踏まえた捉え方というのも指針の書き方としてあり得るのではないか。これまでもいろいろな所で議論されていることですけれども、そういうところをお願いしたいと思います。
○福井座長 ありがとうございます。
○山縣委員 ここのところは、今、進んでいる医療法のマイナンバー法との関係で、結論としては余り触わらないことなのかなという気がします。ただ、一方で観察研究に関し、それを公的にきちんと使うことに関して、もしガイドラインの中で入れることができるのであれば、そういう形で入ることによって、より一層、この観察研究が正確な情報の下に実施できるのではないかと思います。
○跡見委員 個人情報というのは非常に重要だろうと思います。きちんと守らなければいけない。ただ、バランスが悪い。画一的に全てということを規定しているので、うまくいっていないのだと思います。例えば先ほど花井さんがおっしゃった匿名化の問題も、どのレベルでの匿名化が連結不可能であればいいか、しっかり明示しておいてやる。それから試料を利用したりする場合の包括的同意の問題も含めて、全てを同じようなことでやっていくのでなく、その場に応じて分けることを明記すればいいのではないでしょうか。
○福井座長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。また必要であれば議論を続けたいと思いますが、項目が多いものですから次回も資料2に挙げた項目を、このようなペースで進めていった上で、最終的に見直し案の全体がでてきたところで、また議論することになると思います。よろしくお願いします。議題3の「その他」ですが、事務局より何かございましたら御説明をお願いします。
○吉田課長補佐 事務局からは特にありませんが、1点、資料2を見ていただいて、今日、0番から3番まで御議論いただきました。次回ですが、次の4番と5番について御議論いただくことを予定していますので、お知らせいたします。
○福井座長 ありがとうございます。本日予定しておりました議事は以上ですが、何か御意見、御質問等、委員の皆様からございませんか。特にないようでしたら、本日の会議はここまでといたします。最後に事務局から連絡事項をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 次回の日程につきましては、後日、改めて事務局より御連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。また本日の議事録については、作成次第、委員の先生方に御確認をお願いし、その後、公開させていただきますので、併せてよろしくお願いします。なお、紙ファイルの机上の参考資料集につきましては、そのまま残してお持ち帰りにならないようにお願いいたします。事務局から以上です。
○福井座長 ありがとうございます。それでは、これにて閉会いたします。ありがとうございました。


(了)
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電話: 03-5253-1111(内線3819、3822)

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