ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(科学技術部会疫学研究に関する倫理指針の見直しに係る専門委員会・臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る専門委員会)> 第1回疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る合同会議議事録




2013年2月20日 第1回疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る合同会議 議事録

医政局研究開発振興課

○日時

平成25年2月20日(水)9:30~12:00


○場所

全国都市会館 第1会議室


○出席者

【委員】

福井座長 楠岡座長代理 位田委員 今村委員 門脇委員
川村委員 久保委員 後藤委員 新保委員 田代委員
玉腰委員 知野委員 津金委員 土屋委員 直江委員
中島委員 永水委員 藤原委員 丸山委員 山縣委員

【事務局】

 (文部科学省研究振興局)
森本審議官
菱山振興企画課長
板倉ライフサイエンス課長
 (文部科学省研究振興局生命倫理・安全対策室)
伊藤安全対策官
宮脇室長補佐
 (厚生労働省)
三浦技術総括審議官
 (厚生労働省大臣官房厚生科学課)
福島課長
尾崎研究企画官
吉田課長補佐
 (厚生労働省医政局研究開発振興課)
佐原課長
高江課長補佐

○議題

1 合同会議開催の経緯
2 前回会議の議論
3 前回会議の議論を踏まえた追加情報
4 両指針に対する各委員からの意見陳述
5 その他

○配布資料

議事次第議事次第
座席表座席表
委員名簿疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る合同会議委員名簿
資料1-1-1科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会における委員会の設置について
資料1-1-2疫学研究に関する倫理指針の見直しに関する有識者会合について
資料1-2厚生科学審議会科学技術部会 疫学研究に関する倫理指針の見直しに係る専門委員会の設置について
資料1-3厚生科学審議会科学技術部会 臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る専門委員会の設置について
資料2厚生労働省第1回合同委員会(平成24年12月27日)及び文部科学省第1回委員会(平成25年1月31日)における議論のまとめ
資料3疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の策定経緯等について
資料4-1オーダーメイド医療実現化プロジェクトにおける追跡調査(生存調査)に関する倫理面の検討(久保委員作成資料)
資料4-2『疫学研究に関する倫理指針』の絵解き(川村委員作成資料)
資料4-3国内研究機関における疫学研究・臨床研究の指針適用状況
資料5「臨床研究に関する国内の指針と諸外国の制度との比較」報告(平成24年度厚生労働科学研究費補助金(医療技術実用化総合研究事業))
資料6-1ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の改正について
資料6-2「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」新旧対照表
資料7臨床研究倫理審査委員会報告システムへの登録・更新状況
資料8臨床研究と治験の枠組み
資料9各委員からの提出資料
参考資料1前回会議の議事録
参考資料2「『疫学研究に関する倫理指針』作成の経緯」(「保健医療科学」2003年第52巻第3号掲載)

○議事

○高江課長補佐 定刻となりましたので、「疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る合同会議」を開催いたします。本日は、朝早くからお忙しい中、委員の皆様にはお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日の疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る合同会議については、既に文部科学省と厚生労働省でそれぞれ第1回の専門委員会が開催されていますが、文部科学省と厚生労働省の合同会議としては第1回となりますので、議事に入ります前に御出席の委員の皆様を御紹介いたします。お手元の資料の委員名簿を御覧ください。名前、所属、それぞれの専門委員会にどのような形で入られているかが、これで御覧になれるかと思います。五十音順で紹介いたします。
 杏林大学学長の跡見裕委員ですが、本日は欠席との御連絡をいただいています。慶應義塾大学大学院法務研究科准教授の磯部哲委員ですが、本日は欠席です。同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科特別客員教授の位田隆一委員です。社団法人日本医師会常任理事の今村定臣委員です。東京大学医学部附属病院院長の門脇孝委員ですが、少し遅れるとの連絡をいただいています。京都大学環境安全保健機構健康科学センター長で教授の川村孝委員です。独立行政法人国立病院機構大阪医療センター院長の楠岡英雄委員です。楠岡委員には、座長代理をお願いしています。独立行政法人理化学研究所ゲノム医科学研究センター、センター長職務代行の久保充明委員ですが、少し遅れていらっしゃいます。京都大学大学院文学研究科准教授の児玉聡委員ですが、本日は欠席です。千葉大学大学院専門法務研究科教授の後藤弘子委員です。社団法人日本看護協会副会長の真田弘美委員ですが、本日は欠席です。独立行政法人国立国際医療研究センター臨床研究センター医療情報解析研究部長の新保卓郎委員です。大阪大学大学院医学系研究科社会環境医学講座環境医学教授の祖父江友孝委員ですが、本日は欠席です。昭和大学研究推進室講師の田代志門委員です。北海道大学大学院医学研究科予防医学講座公衆衛生学分野教授の玉腰暁子委員です。株式会社読売新聞東京本社編集委員の知野恵子委員です。独立行政法人国立がん研究センターがん予防・検診研究センター予防研究部長の津金昌一郎委員です。社団法人日本薬剤師会副会長の土屋文人委員です。名古屋大学大学院医学系血液腫瘍内科学教授の直江知樹委員です。社団法人日本歯科医師会常務理事の中島信也委員です。桃山学院大学法学部准教授の永水裕子委員です。自治医科大学公衆衛生学教室教授の中村好一委員ですが、本日は欠席です。なお、中村委員には座長代理をお願いしています。全国薬害被害者団体連絡協議会代表世話人で、大阪HIV薬害訴訟原告団代表の花井十伍委員ですが、本日は欠席です。聖路加国際病院院長の福井次矢委員です。福井委員には座長をお願いしております。独立行政法人国立がん研究センター企画戦略局長の藤原康弘委員です。神戸大学大学院法学研究科教授の丸山英二委員です。日経BP社特命編集委員の宮田満委員ですが、本日は欠席です。山梨大学大学院医学工学総合研究部教授の山縣然太朗委員ですが、少し遅れていらっしゃいます。浜松医科大学医学部臨床薬理学教授の渡邉裕司委員ですが、本日は欠席です。
 続いて、事務局側を、文部科学省の事務局から紹介いたします。文部科学省研究振興局の森本審議官ですが、少し遅れての出席となります。研究振興局振興企画課の菱山課長です。研究振興局ライフサイエンス課の板倉課長です。ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室の伊藤安全対策官です。ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室の宮脇室長補佐です。
 続いて、厚生労働省側の事務局を紹介いたします。厚生労働省の三浦技術総括審議官です。大臣官房厚生科学課の福島課長です。医政局研究開発振興課の佐原課長ですが、公務により遅れてまいります。大臣官房厚生科学課の尾崎研究企画官です。同じく大臣官房厚生科学課の吉田課長補佐です。私は、研究開発振興課の高江と申します。よろしくお願いいたします。
 続いて、配布資料の確認をいたします。議事次第の下から配布資料の一覧がありますので、こちらに沿って確認をしていただければと思います。1枚目は、議事次第です。2枚目は、本合同会議の座席表、3枚目は合同会議の委員名簿です。その後ろからが資料になっています。資料1-1-1「疫学研究に関する倫理指針の見直しに関する専門委員会の設置について」、資料1-1-2「疫学研究に関する倫理指針の見直しに関する有識者会合について」、資料1-2は、厚生労働省側の疫学研究の専門委員会の設置、資料1-3は、臨床研究に関する倫理指針の専門委員会の設置の規定、資料2は、厚生労働省と文部科学省の第1回議論のまとめ、資料3は、疫学研究の倫理指針、臨床研究の倫理指針の策定経緯、資料4-1は、久保先生から提出の「オーダーメイド医療実現化プロジェクトにおける追跡調査に関する倫理面の検討」、資料4-2は、川村委員から提出の「疫学研究に関する倫理指針」の資料、資料4-3「国内研究機関における疫学研究・臨床研究の指針の適用状況」、資料5は、藤原先生から提出の「臨床研究に関する国内の指針と諸外国の制度との比較報告」、資料6-1「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の改正について」、資料6-2「ゲノム指針の新旧対照表」、資料7「臨床研究倫理審査委員会報告システムへの登録・更新状況」、資料8「臨床研究と治験の枠組み(イメージ)」、資料9「各委員からの提出資料」をまとめて提出しています。
 参考資料1については、各委員の机上にあります各種指針等を綴ったファイルの最後に、議事録を添付しています。また、このファイルは毎回使用する資料ですので、会議終了後は机上に置いたままでの退席をお願いできればと思います。また、前回資料等については、事務局で別途用意していますので、もし必要な場合には事務局までお申しつけいただければと思います。なお、頭撮りはここまでとさせていただきます。資料の過不足等ありましたら、事務局までお知らせいただければと思います。以後の議事進行は、福井座長にお願いいたします。
○福井座長 本日は、お手元の資料にありますように、議題が「その他」を含めて五つ用意されています。まず、議題1の合同会議開催の経緯について、事務局より説明をお願いします。
○伊藤安全対策官 資料1-1を御覧ください。疫学研究についてですが、こちらは疫学研究の適正な実施を目的として、文部科学省と厚生労働省で共同で策定した指針です。平成19年に全部改正が行われ、規定の中で、施行後5年を目途として見直しを行うと書かれており、今般、科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会に「疫学研究に関する倫理指針の見直しに関する専門委員会」を設置したところです。また、資料1-2、1-3で厚生労働省の専門委員会の規定が記述されています。こちらも同様に、疫学研究について、文部科学省と共同で策定したこともありまして、同じ時期に専門の委員会を立ち上げています。
 また、臨床研究についても、こちらは臨床研究の適正な実施を目的として平成15年に策定したあと、平成20年に改正し、大体5年ぐらいを目途として見直しを行うことになっています。こちらは、疫学研究、臨床研究併せて、厚生科学審議会科学技術部会で委員会を設置したところです。
この三つの委員会については、厚生労働省の科学技術部会において、検討時期が重なっており、連携して見直しを検討すべき旨の意見が出されていたこともあり、まず1回目については、厚生労働省で疫学、臨床の合同の委員会を昨年12月27日に開催しました。また、文部科学省は本年1月31日に1回目を開催しました。どちらもフリーディスカッションを行ったところです。そして、今回合同で三つの委員会を開催することにしたものです。
 資料1-1-2を御覧ください。文部科学省の委員会においては、科学技術学術審議会が2月から新たな期に入り、手続上の関係で今回は有識者会合という形で開催したいと思っています。座長は福井委員、座長代理は中村委員にお願いし、この検討の内容は次の疫学研究に関する専門委員会に報告するという形で整理したいと思っています。以上です。
○福井座長 ただいまの説明について、何か御意見、御質問はありますでしょうか。この合同委員会の成立の経緯で手続上のことですので、実質的には余り大きな影響はないと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、このような経緯を踏まえて、今後の合同会議において両指針の見直しの検討を進めていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 続いて、議題2に入ります。この会議は、ただいま事務局から説明があったとおり、既に文部科学省と厚生労働省でそれぞれ第1回の会議が開催されております。委員の皆様の中には、両省の委員を兼任されている方と、一方の委員会だけに専任されている方がおられますので、前回の議論のおさらいとして、前回の議事概要について事務局から説明をお願いします。
○吉田課長補佐 資料2を御覧ください。これは、厚生労働省の第1回の合同委員会と、文部科学省の第1回の委員会におけるそれぞれの議論を簡略にまとめたものです。書いてある内容に一部重複等ありますが、発言された委員の先生方によって多少のニュアンスがある関係上、そのまま書かせていただいています。
 フリーディスカッションの中で大きくいくつかの意見が出ていまして、それを事務局でまとめたものです。一つは、疫学研究指針と臨床研究指針の適用範囲について、御議論がありました。具体的には、両指針の関連性や、具体的にそれぞれどのような研究をカバーしているのかに関しての意見です。その中では、観察研究の取扱い、また、それぞれの研究でヒトゲノム・遺伝子解析を行う場合の取扱い、医学研究以外の人文・社会系の関係する学際的研究を実施する場合の取扱いについて、議論がありました。
 2番目は、倫理審査委員会について議論がありました。ここでは、各機関が倫理審査委員会を有する現在の状況ではなく、倫理審査委員会をlocal化する、統合化するといった必要性があるのではないかという指摘がされています。また、倫理審査委員会における倫理性の確保の前提として、科学性の確保についてそれをきちんと検討すべきではないかとの意見がありました。倫理審査を実施したあとのフォローアップをどうすべきか、これが十分にされていないのではないかという指摘があったところです。
 次に、インフォームド・コンセント等の在り方についての議論がありました。一つは、未成年者の同意について、アセントの中身とそのタイミングをどうするかに関して、指針で明確に決めるべきではないかとの意見がありました。また、いわゆるブロードコンセントに関して、まだ十分に認められていない状況下で、この機会に議論をすべきではないかという意見があります。また、昔のICが取れていないデータを現在研究に使用する際にどうすべきかという点についても、議論いただきたいとの意見がありました。
 4番目です。臨床研究の倫理指針に関係する事項として、現在の委員会の事後報告システムに関して、やはり委員会の質を保証するようなメカニズムが必要なのではないかという指摘がありました。また、今行われている指針適合性調査に関しても、やり方の改善が必要ではないかという意見があります。また、救急医学会からの要望ということで、救急医療の現場における同意に関する事項について意見があったところです。
 「その他」ですが、研究の成果をどのように患者に返すかということに関して、ICの取得との関係で議論すべきではないかとの意見があったと思います。また、その研究をする土台となるデータベース、アーカイブを構築するときのルールが、データの2次利用や検証、あるいは若手研究者の育成の観点から必要なのではないかとの意見がありました。医学研究以外の分野も含めて、この指針の利用に関してどのように普及・啓発をしていくかを考えるべきだとの意見があったところです。以上です。
○福井座長 これまでの議論のかなりの部分がうまくまとめられているとは思いますが、ただいまの説明について何か御質問、御意見はありますでしょうか。議論を進める中で、その都度御意見をいただければと思います。それでは、議題3に入ります。ただいま事務局より説明のありました前回での議論を踏まえ、事務局で追加の資料を用意していただいておりますので、説明をお願いします。
○高江課長補佐 議題3ですが、資料の説明の仕方を簡単に御説明いたします。まず、事務局から資料3の御説明をいたします。資料4-1から資料4-3については、久保委員と川村委員に疫学指針と臨床指針の適用についての考え方を、資料4-1と資料4-2に整理していただいておりますので、こちらの資料については両委員から御説明をお願いいたします。資料4-3は事務局から御説明いたします。資料5については、藤原委員が研究代表者となっている厚生労働科学研究の研究班の報告案の概要ですので、こちらは藤原委員から御説明をお願いいたします。資料6、資料7、資料8は事務局から御説明させていただきますが、よろしいでしょうか。
○福井座長 そのようにしたいと思います。まず、事務局から資料3の説明をお願いいたします。
○高江課長補佐 資料3は、前回の厚生労働省の合同委員会で御指摘がありましたが、疫学研究の倫理指針と臨床研究の倫理指針の策定の経緯について紹介してほしいとの御意見ありましたので、それぞれ年表形式でまとめたものです。左のカラムが「疫学研究に関する倫理指針」の策定と改訂の経緯、右側のカラムが「臨床研究に関する倫理指針」の改訂と経緯です。
 疫学研究に関しては、平成14年6月に策定されておりますが、その後、平成15年に個人情報保護関連3法が公布されました。臨床研究に関する倫理指針の関係としては、平成15年6月に医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令の一部を改正する省令、いわゆるGood Clinical Practice(GCP)省令ですが、その中において医師主導治験に係る基準が追加されました。これは、平成15年6月に出てきているわけですが、臨床研究に関する倫理指針の以前から、疫学研究に関する倫理指針にちょっと遅れて改訂がスタートしておりましたので、この流れも受け、平成15年7月に策定されました。
 両指針は、平成16年12月に全部改正をしております。改正点は、疫学研究のほうは実施に関する責任、個人情報の保護に関する措置。臨床研究の指針に関しては、用語の定義の明確化と個人情報の保護に関する措置ということで、個人情報保護関連3法に対応した形での改訂がなされております。
 疫学指針については、平成17年6月に「介護保険法等の一部を改正する法律」の施行に伴う用語の修正を行っております。平成19年8月には全部改正の方向になり、疫学研究を指導する者の指導・監督業務の追加等の大きな改正を行っております。
 臨床研究に関する倫理指針については、平成20年7月に全部改正を行っております。倫理審査委員会に係る規定、健康被害に関する補償等、こちらも大きな改正を行っています。疫学研究のほうは、平成20年12月に「一般社団法人、一般財団法人に関する法律」等の施行に伴う用語の修正を行っています。こういう経緯でここまで進んでいます。
 今回、参考資料2として論文形式ですが、計画研究に関する倫理指針策定の経緯ということで、順天堂大学医学部衛生学教室の稲葉先生がまとめたものがありましたので、参考として付けております。説明は以上です。
○福井座長 ただいまの説明について、御質問はありませんでしょうか。よろしければ、続いて久保委員から、資料4-1についての説明をお願いいたします。
○久保委員 資料4-1「オーダーメイド医療実現化プロジェクトに関する追跡調査における倫理面の検討」ということでお話をさせていただきます。このプロジェクトは、2003年から2008年の第1期、20万人のDNA・血清・臨床情報を収集しましたが、それらの方々についての追跡調査を実施するということで第2期に検討を行いました。実際には病院に来ているかどうかの来院調査、来られていない方についての住民票照会と、亡くられた方の死因調査の3段階で行っております。行うに当たっては、我々のプロジェクト内でいろいろな検討を行いましたので少し御紹介いたします。
 このプロジェクトにおいては、ヒトゲノム指針に基づいて計画され、実施されております。収集された方の追跡調査をするということについては、新たな研究目的の追加になるということで、その時点でのヒトゲノム指針を見たところ、新たな研究目的の追加や、ゲノム疫学研究における利用についての記載がありませんでした。我々としては、ヒトゲノム指針をベースに考えるということで、次のページの真ん中に赤で書いてあるように、ヒトゲノム研究に対する利用についての合意は得られているけれども、ケース・コホート研究、患者コホート研究としての生存調査への利用に関する明示的な合意が得られていないと判断し、ゲノム指針におけるB群試料等に準じた扱いが必要と考えて、倫理委員会に申請を行いました。
 また、実際の研究デザインが生存調査という形になりますので、疫学指針の適用範囲にかなり該当することがありましたので、その理念に基づいて審査をお願いいたしました。詳細については、我々のプロジェクトのホームページにワーキンググループの報告書がありますので、そちらを御覧ください。
 次のページは、ヒトゲノム指針のB群試料等の扱いの所です。今回、我々は「連結可能匿名化されており、かつ、B群試料が提供された時点における同意が、ヒトゲノム解析研究の目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる場合」というふうに、我々はこの文言を取り、「かつ、ヒトゲノム解析研究の目的を提供者に通知又は公表した場合」という文言を用いて生存調査を実施しております。
 実施するに当たっては、プロジェクト内にあるELSI委員会に諮っております。ELSI委員会のほうでも、細かい所は飛ばしますけれども、科学的には十分な意義がある。ただ、その実施においては、参加者に分かりやすく説明すること及び参加者の理解・了承を得ること。また、その他広報等や実際に対応するメディカル・コーディネーターに十分な資料提供・説明を行うことという見解を頂きました。
 次のページで、実際にどのような手続をしたかということです。最終的には、東大医科学研究所が中核機関ですので、ここで倫理委員会に掛けております。当初、ゲノム委員会と、通常の倫理委員会の二つに掛けることも検討いたしましたけれども、指針上ゲノムを扱っているものは全てゲノム倫理委員会でしか判断しないということがありましたので、最終的にはゲノム委員会で通常の倫理審査を実施していただいております。
 その後、このプロジェクトに関与している12の協力医療機関で、同じように倫理審査をやっていただきましたけれども、最終的にはほとんどの医療機関で、ゲノムの倫理委員会で変更申請をしていただく形になりました。ただ、各医療機関においては、迅速審査で行われている機関、通常審査の機関、また住民票の交付は駄目で閲覧だけはOKという機関など幾つか対応にはばらつきが見られました。
 その後は実際の実施の方向ですが、実施においては住民票調査に関しては、住民基本台帳法に基づき、市町村に住民票除票の申請を行っております。その際に、プロジェクトの同意書のコピーを依頼された自治体が数多くありましたが、その点については総務省へ照会し、それが個人情報保護法における第三者への提供には当たらないということの裏も取っております。以上です。
○福井座長 後ほどまとめて議論したいと思いますので、このまま説明を続けていただきます。続いて川村委員から資料4-2についての説明をお願いいたします。
○川村委員 私は、京都大学の医の倫理委員会の中で、疫学専門小委員会の委員長を8年間務めておりました。全体で、年間600件ぐらいの審査件数のうちのおよそ半数が疫学研究ですので、来る日も来る日も倫理審査をずっとやってきました。現在はその任をやっと解いてもらって、京都大学の霊長類研究所で、霊長類研究所といってもヒトの研究もやっているので、そのヒト研究の倫理委員をやっています。医学に類似していながら、医学にあらずという領域の研究を審査しております。そういう意味で百パーセント現場人間ですが、私の審査経験から、現在の倫理指針を見たものを御説明いたします。
 倫理指針は文章で書かれていて、私のような者には一瞥しただけではなかなか関係性がよく分からないということがありました。それで、いろいろな関連規則も含めて視覚化しようということで、いくつかの図や表を作って、医の倫理委員会のホームページに掲げておりますので、それを持ってまいりましたので御説明いたします。
 初めに、「倫理指針適用の有無」という分岐のツリー状の図ですけれども、これは前回5年前の疫学指針の検討で決められたことを図示したものです。そもそも倫理指針、あるいは倫理審査の必要があるかどうかを樹状に書いてみました。検討すべき研究、若しくはそれに近い事例があった場合に、まず研究なのか、あるいは診療若しくは保健事業、あるいは教育に該当する、つまり非研究なのかを分岐します。前回の疫学指針の検討の中で、診療の一環といえるものは研究から除外するという議論がなされ、例えば受診動態の把握、検査の精度管理、事故の再発防止、公衆衛生上の緊急調査といったものは除外されております。そのものを除いた残りが研究です。
 研究の中で指針の適用になるものと、指針は適用されないものに分かれます。適用されないものは法定の調査、連結不可能匿名化資料のみの研究といったことがあります。ただし、「指針は不適用とはいえ、しかるべき立場の者が適用外であることを確認する」という文言も入っております。指針が適用された場合、審査が必要なのか審査は不要なのかということで、例えば無記名のアンケート調査などは、指針の適用は受けるけれども審査は要らない、ということが決められております。このように、どこまでが指針の適用で、どこからが審査が必要かということを図示しております。
 2番目ですが、2×2×2の表があります。これと、その次の3番目の流れ図、フローチャートが特に今回説明を要するかと思います。指針が複数あります。先ほどから出ているように、疫学指針と臨床指針があるのだけれども、どちらが適用になるのだろうかということが現場で大変分かりにくく感じられておりますので、ある整理をいたしました。初めに「場による違い」、例えば臨床という場において、あるいは臨床的な知識や技術がなければ成り立たない臨床的な研究と、そうでないフィールド、すなわち一般の生活の場における研究といった場の違い、セッティングの違い。それから「研究の手法の違い」が2番目の軸です。介入か、介入なしの観察かが第2軸になります。第3軸は疫学研究、すなわち量的研究なのか、質的研究なのかということになります。このx、y、zに相当する3軸で整理したものです。
 ここでは、臨床の場における介入の研究は臨床試験などになりますが、これは臨床指針で、オレンジ色でマークしてあります。反対に同じ介入でも、フィールドで行われる健康増進のようなものは疫学指針の対象になると読めます。こういうことで色分けしていきますが、どこにも該当しない黄色のゾーンが出てきます。これは質的研究の中の症例報告や、ケース・シリーズのような記述を基本とした研究がほとんどになります。介入もせず、集団というよりは、個々の記述を中心に行うものは指針がないという問題があります。
 疫学指針と臨床指針の適用について、しばしば疑問に思われてしまう一つの原因として用語の問題があろうかと思います。「疫学」という言葉と「臨床」という言葉は対立概念ではなくて、「臨床」という言葉はフィールドに対応する言葉で「場の概念」でありますし、「疫学」という言葉は量的研究を現すわけで、質的研究、言い方を換えると決疑術、casuistiqueというフランス語があるようですが、それの日本語が決疑術というのだそうです。そういうものの対立概念の組合せであると考えています。この考え方は、必ずしも普遍性を持ったものではありませんで、こういう指針やその他疫学の教科書などを書くに当たり、いろいろ考えた結果の分類ですので、必ずしもコンセンサスを得ているものではありません。こういう「場の違い」と「研究手法の違い」というのが別の軸になっていますので、それが指針の名称になっているということで、どちらの適用になるのか分かりにくいということがあろうかと思います。
 次のページにフローチャートが出ています。これは、先ほどの2×2×2のテーブルよりも前に作ったものですけれども、どこに行くかというのは、自分の研究がどこに当てはまるかをこれに当てはめていくと、到達する所が適用指針になるという図になっております。この中で、上のほうの「ヒトを対象とした研究」の次の段にあるものは、特化したものについて、特異的な研究は別にしていて、ヒトゲノム・遺伝子研究、遺伝子治療の研究、幹細胞の研究といったものは、それぞれ独自の指針を持っているため、直接そちらに譲っております。
 遺伝子を用いない、幹細胞などは用いない研究で、法令にも基づかない、そして量的な疫学研究であってというのがフローでだんだん下りてきて、介入をするかしないか。治療の研究であっても、研究のために意図的に介入するか、それとも主治医の判断に任せるような観察タイプの研究かということで分けます。さらにそれが医療に特有の問題を扱う介入研究か、生活レベルの問題か、あるいは人体試料を扱うか扱わないかということで、どんどん分かれていって、最後の段階は一番下段になりますが、具体的な指針、若しくは法律の下にある省令に行き着くようになっています。最終的には治験、それも企業主導、あるいは医師主導によって分かれておりますし、一般の医療研究、「侵襲性のある測定を行う」というのは京都大学独自のルールなので、普遍化できるかどうかは後ほど検討していただきたいと思いますが、臨床指針の適用になるもの、疫学指針の対象になるものということで、フローチャートを掲げております。
 これに載せれば、完璧とはいえないまでも、おおよそのところに到達すると思います。ただ、先ほども説明がありましたように、一つの研究で複数に跨がる場合もあるなどして、一つに帰属させるのだったらこれで大体は間に合うのですが、複数に跨がる場合にどのようにするかはこれでは解決しない問題です。
 次のページで4番です。これは指針の分類ではありませんで、幾つかある指針の中で、特に煩雑な、疫学研究においてインフォームド・コンセントの手続をどうしたらよいかということです。もちろん指針本文に書かれているように、原則は個別同意ですけれども、疫学研究においては過去に遡るとか、広い範囲に渡るなど、なかなか単純にはいかない面もありますので、原則としては保持しつつ、代替措置を整理したものです。これも一種のフローチャート的になっておりますが、デザインが介入か観察か、人体試料を使うか使わないか、その他の特性、侵襲性があるとか、個人単位か集団単位か、資料が新規か既存かということによって枝分かれしていって、個別同意が要るか要らないか、そしてその同意の取得にどのような方法でしなければいけないか、口頭なのか文書なのか、あるいは情報公開プラス拒否の機会の提供なのかを整理したものです。これは、疫学研究の指針によるものであって、医療における介入研究は全て文書による同意が必要ですので、基本的にこの表は疫学指針のものを表にしたものです。
 最後は同意ですので種類が違いますけれども、最初の三つについては適用ということ、審査の必要性について現場として何らかの道筋を立てること、倫理審査を申請しようという人にとって分かるように示す必要性からこのように解釈いたしました。以上です。
○福井座長 ただいまの御説明とも関わりますので、次に資料4-3について事務局から説明をお願いいたします。
○吉田課長補佐 資料4-3です。事務局のほうで、国内研究機関における疫学研究・臨床研究の指針適用状況について三つの事例を収集いたしました。最初のページは、ただいま川村委員からも御紹介がありました、京都大学の医の倫理委員会の作成資料です。3ページは、東京大学の生命・医療倫理研究センターが、東京大学グローバルCOEプログラム「次世代型生命・医療倫理の教育研究拠点創成」というもので作成されたガイドです。
 最初に、疫学指針と臨床指針のどちらの指針を参照すべきかをフローチャートでまとめてあります。6ページには、介入研究と観察研究をどのように区別するかということで、ここに示したようなフローチャートが提示されております。9ページには、侵襲性を有する研究をどのように取り扱うかということでフローチャートが示されています。12ページには、研究と診療をどのように区別するのかということに関して、その判断基準の表が示されています。
 一番最後のページに、A3縦の折込みの資料がありますが、これは国立循環器病研究センターの研究開発基盤センター医学倫理研究室の松井室長が作成された資料です。同センターでは、基本的にこのチャートに沿ってやっていると理解していいと伺っております。先ほどの、京都大学で使われている資料をより詳しくした形になっています。これらの三つの事例に共通しているのは、初めに研究か診療か、法律の適用になるのかならないのか、他の事業の適用になるのかならないのか、他の指針の適用になるのかならないのかということに関してのクライテリアがあって、その後、いわゆる少数症例を扱うのか多数症例を扱うのか、また介入なのか観察なのか、医療現場なのかフィールドなのか保健指導なのか、そして侵襲性が有るのか無いのか、といった観点で判断し、仕分けをしているように理解されるかと思います。以上です。
○福井座長 それでは、藤原先生から資料5の説明をお願いいたします。
○藤原委員 資料5です。私は厚生科学研究費を頂き今回各国の制度、アメリカ、フランス、イギリス(イングランド)の3か国について、日本の臨床研究の倫理指針とどのように違うかという現状調査を昨年10月末と11月中旬に行ってまいりましたので、その簡単な報告をこれにまとめております。
 最初に米国の状況です。米国は御存じのように、コモンルールという連邦規則が、連邦政府から公的研究費の助成を受けて行っている研究については適用されています。医薬品や医療機器の臨床試験、介入を伴う臨床研究については、FDAへの申請を意図する、意図しないにかかわらず、FDA関係の連邦規則に従って行う、というのも皆さん御存じだと思います。
 4ページは、今回の調査で一番注目している点です。真ん中辺りに書いてありますが、コモンルールの大幅な改定が準備されているというのが、今回の調査のポイントでした。
 パブリックコメントを経て、最終的にこのルールがどのように改定されるかはわかりませんけれども、コモンルールの改定案の要点を5ページのスライドにまとめてあります。この中で一番大事なところは、本日私がお話する他の国についても適用できるのですが、臨床研究が持っているリスク、被験者に対してどのようなリスクがあるかに応じて規制のレベル、強さを変えていくという点です。
 6ページには、「リスクに基づく新たな保護の確保」と書いてありますが、臨床研究の持っているリスクに応じて、例えば研究倫理審査委員会の審査を免除したり、迅速審査を適用したりということが種々検討されています。
 7ページは、コモンルールの改定案に対して、いろいろな所、アメリカの中の各方面から、ある部分は賛成であるとか、ある部分は反対であるとか様々な議論がされていますが、それをまとめたものです。
 8ページと9ページはちょっと細かいので飛ばし、10ページのイングランドを次に説明します。英国の場合はスコットランド、イングランドが大きな所ですけれども、今回は主にイングランドということでロンドンを中心に調査をしてまいりました。イギリスでは、かつてから国民皆保険が適用されています。そして、その国民皆保険を実施しているNHSの医療機関等でいろいろな臨床研究が行われています。これら臨床研究に対しては、各医療機関ごとではなくて、地域単位のREC(Research Ethics Committee)という公的な倫理審査委員会が、様々な審査をしてその承認をしてきた実情があります。医薬品や医療機器の介入を伴う臨床研究についてはMHRAという、アメリカのFDA、日本のPMDAに相当するような規制当局ですが、そこへの届出、審査等が必要です。
 12ページ、13ページの所ですが、12ページは現行のイングランドの臨床研究を規制している法令の一覧です。13ページを注目すると、イングランドでは2011年12月にHealth Research Authority、医療研究機構が樹立されて、割とシンプルに臨床研究の審査をする、という方向に舵が切られました。現在、イングランド全体の研究倫理審査委員会を統括しているのは、このHRA傘下の国営研究倫理サービス(National Research Ethics Service)で、このNRESが広く審査をしています。七つの地域にセンターを設け、そこが各研究倫理審査委員会の統括をしています。年間14億円ぐらいの予算をそこへ投じ、職員等の雇用を確保しているところに注目していただきたいと思います。1パラグラフの一番下に「RECs」と書いてありますが、過去、一時的には200ぐらいありましたが、現行では全イングランドで79に集約され、そこが全ての医療機関のいろいろな臨床研究の審査をしているところは注目すべきかと考えております。
 14ページはフランスです。フランスは、日本と同じような中央集権国家ですし、被験者保護法を非常に重視した法規制を持ってきたところがあります。16ページは、皆様方もよく聞かれたと思いますが、ユリエ法というのは2001年ぐらいの、EU全体の臨床研究を規制する法律が施行されたときに併せて法改正で出てきた被験者保護法です。このフィギュアを見ていただいたら簡単なのですが、その当時、観察研究はユリエ法の対象とされておらず、介入を伴う研究がユリエ法の対象となるというのが、かつてのフランスの法令体系でありました。
 17ページですが、観察研究が被験者保護法でカバーされていないところの問題点とか、ここに掲げているような幾つかの問題点がその後指摘されて、2012年にユリエ法が改正され、通称ジャルデ法と言いますが、「人間を対象とする研究規制法」が法制化されたのがフランスの直近の状況です。
 18ページが、ジャルデ法の対象としている範疇を示したフィギュアです。現在は、観察研究も介入研究も、全て人を対象とした研究はジャルデ法という被験者保護法の中で研究倫理がカバーされる実態に変わっております。この非介入、観察研究と言ってもいいのですけれども、非介入研究の所で注目していただきたいのは2番目です。これは、従前のユリエ法のときもそうだったのですが、こういう非介入研究に関しては明示的同意は不要である。インフォームド・コンセントを不要として、こういう研究を行ってもいいというのがフランスの特徴的なところではないかと思います。
 19ページは倫理審査委員会です。フランスも、イングランド同様、各医療機関に個別に倫理審査委員会を設置するようなことはせずに、全フランスで2009年時点で40と書いてありますが、私どもが行った昨年11月の時点でも40は変わっていませんでした。地方圏ごとに40の研究倫理審査委員会でしか存在していないというところが、日本とは大きく違う、あるいはアメリカとは大きく違うところだと思います。
 21ページに3か国のまとめがあります。アメリカの実態は、コモンルールが臨床研究を規制する非常に大事な連邦規則ですが、今後の改定のところでは研究リスクに応じた審査プロセスの設定が議論されているということです。本日は端折りましたが、セントラルIRBの機能をもう少し活用しましょうというところも、今回のコモンルールの改定の中で議論されているようです。
 イングランドは先ほど申し上げましたように、細かい規制はしない。イングランドのいろいろな人たちに聞いても、研究倫理審査委員会に掛けるのは非常にハイリスクであったり、介入を伴うようなものであって、それ以外の観察研究に関しては、例えば大学であれば大学の中の倫理審査委員会だけで、個別の機関のオートノミーを尊重して審査して進めていけばいい。そこに、国が介入して規制するようなことはしなくてもいい、というのが基本的なスタンスでした。
 フランスも同様です。規制を余り細かくするのではなくて、リスクが少ないものに関しては、非常に積極的な法令での介入はしない方向に舵を切っているのがフランスの現状です。
 最終的には3月末にこの研究報告書を厚生科学研究の報告書として出しますので、そちらのほうに詳細は記載いたします。以上簡単ですが報告させていただきました。
○福井座長 ありがとうございました。大変参考になりました。テーマが広くなってしまいましたが、ただいまの資料3から資料5までの説明について、御質問、御意見はありますか。
○津金委員 オーダーメイドプロジェクトの発表を聞いていて、今、我が国の研究環境において非常に障害になっている二つのポイントが明らかになっていると思います。一つは、ゲノムが絡むとゲノム指針で疫学研究を実施せざるを得ないという現状です。ゲノム指針が一番、王様になっている現状です。その結果として、例えば生存調査を、ゲノム解析と全く同列に扱う必要があって、それでB群試料等の利用ということでやらざるを得ないのです。ある意味では非常に不自然だし、本当はあり得ない話です。
 このような状況においては、ゲノム研究へ資料を提供するので、自治体も共同研究機関として位置づけて、個人情報管理者を置いて匿名化しなければいけないということに、過剰に指針を読みこむとそういうことにも結び付いてしまいます。がんセンターでも、非常に指針に一生懸命の倫理審査委員会で、我々は行政機関を共同研究機関にしろとか、個人情報管理者を置いて匿名化した情報をもらえと現実に言われたのです。それが一つです。
 2番目は、疫学指針において、先ほど川村先生からも出ているように、文書による同意を必ずしも求めないという規定があるにもかかわらず、自治体が生存調査をするときに同意書を付けろと求めてくる事例があるということです。これは、久保先生の資料の7ページにありますが、住民基本台帳の事務処理要領に、「本人承諾の下で追跡調査をする必要がある場合」という、「本人承諾」というのがここに出ているので、自治体は非常にプロテクティブになって、本人承諾はあるのですか、ということを求めてくる場合があります。せっかく指針はこうなっているのに、個人情報保護法でも公衆衛生目的とか、研究に関しては除外規定になっているにもかかわらず、このような現状が日本において本当にあるのです。
 こんなことになっていると、例えば昔の印刷工場で、胆管がんが本当に多く発生しているかどうかを、同意を得られた人だけを追跡するのですかということになる。1980年と1990年の国民栄養調査のときに、循環器疾患基礎調査がやられていて、それは断面調査です。その参加者について、後から住民票照会による生存調査を実施し、追跡調査に展開しています。それによって日本のガイドラインなどに反映されるとても重要な知見を出しているような研究があります。本人同意を求められたら明らかに支障を来たすわけです。そのようなことができなくなるわけです。その辺のところが、非常に浮き彫りにされているのではないか。
 だから、当然これは同意無しで、情報公開しながらこういう研究をやるべきであって、同意文書を自治体に送るなんてことをしなくても良いハズです。特に追跡に関する同意ではないですよね。ゲノム研究に参加する同意を、なぜ自治体にまで本人の名前を付けて送らなければいけないのか。そんなことまでさせられるのは、非常に異常な状態だと思います。この辺は指針との絡みもあるので、なんとかしていかないと我が国は公益上大きな支障を来たすということです。私が最後に意見を出した、三つのポイントのうちの二つが今のポイントに合致した場所です。
○福井座長 久保先生から何かありますでしょうか。
○久保委員 非常に指針に苦労しながら、結局こうやって跨がる研究の場合は両方の指針を見ざるを得ないのです。実際のところ、指針の適用の範囲が、ゲノムを扱えば全部ゲノムでやってもらう。そうしたときに、実際に疫学関係の追跡調査の部分は、ゲノム指針では記載されていないので非常に困ったのが現状です。
 本日は時間がなかったので説明はしませんでしたが、我々は遺伝子型検査を用いた臨床研究も既に始めています。その場合は、ゲノム指針と臨床研究指針と両方見ないといけません。ところが、ゲノム指針のほうが上位に立っていますので、ゲノム指針だけでやろうとすると、実は健康被害に対する補償の問題であったり、重篤な有害事象に対する項目であったり、研究計画の事前登録であったり、臨床研究指針にしか記載されていない事項が幾つもあります。そうすると、やはり同じように臨床研究指針も参照しながらゲノム研究をやらなければいけない。そこの境界領域に当たる所では、きれいに棲み分けるのではなくて、それぞれの指針を参照しながらというような適用範囲の考え方を少ししないと、実状に合わないことがありますので、その辺りも検討していただければと思います。
○福井座長 ちなみに、被験者から後で意見やクレームが出てきたということはありましたでしょうか。
○久保委員 生存調査の場合は広報をします。ポスターを貼ったりいろいろしていますので、その段階で病院に患者さんが来ていますので、そこで生存調査についての拒否権を保障しております。実際に、私はしないでほしい、という意思表示をしていただいた方は、調査をストップしています。
○玉腰委員 今の点なのですが、京大がされた長浜の研究が、ゲノムと疫学が別々に適用されるのではとても地域で研究ができないということで、長浜ルールが実際に策定されています。その辺りを論ずるときには一度参考にされたほうがいいのではないかと思います。
○福井座長 長浜プロジェクトですね。事務局のほうで、簡単な資料でも頂けるようでしたら、出していただければありがたいです。
○楠岡座長代理 藤原先生の報告に関してです。イギリスとフランスにおいて、特に非介入の研究においてはかなり同意等が緩められている状況だと伺いました。この指針の前に基本になる個人情報保護法とか、人権保護的な法律がもともとあって、それがある程度縛っているから、あえて非介入に関してはそこまでしなくてもいいというようなシステムなのでしょうか。それとも、別にそういうものもなく、当たり前ということでこういう形になっているのでしょうか。その辺が分かれば教えてください。
○藤原委員 まだ整理中なのですけれども、その辺は判然としないところがあります。本当に厳しく個人情報保護法でカバーしているから、そこは免除されているかどうかというのは、今回のヒアリング等の中では明示的に私は理解できませんでした。田代先生も一緒に行ったのですけれどもどうでしたか。
○田代委員 今おっしゃったとおり、個人情報保護に関しては別立てで作っています。これまでフランスでは非介入研究であっても、倫理委員会とは別にCNILという情報を扱う委員会に申請しなければいけませんでした。ただ、それも今回のジャルデ法の下では不要となったようです。ただ、フランスの非介入研究というのは、私たちの想像とは全然違う狭い範囲で、介入研究の中にいわゆる日本でいうところの「侵襲性のある観察研究」が全部入っています。ですので、採血をしたりするとそっちに移っていくわけで、相当狭い範囲の、全く侵襲性のない観察研究だけが入っていると考えてもらっていいと思います。
○位田委員 ゲノムで疫学をやりたいときに、ゲノムが関わるときには全部ゲノムだけであって、疫学なり臨床なりを含めてその他の指針は全く適用できない、という御理解で現場ではやられているのでしょうか。そこは指針の読み方によるのだろうと思うのですが、ある一つの研究の中で、ゲノムに関わる部分は確かにゲノムの指針ですけれども、疫学に関わって、ゲノムだけではない部分については疫学研究の指針が適用される。
 それぞれの指針の適用範囲の書き方が少しずつ違うので非常に難しいのですけれども、ゲノムに関われば必ずゲノムだけで最初から最後までやらないといけないというのが本来の趣旨ではないと私は理解しているのです。先生が今おっしゃったように、もしゲノムで疫学をやるのであれば、両方の指針は見ないといけませんけれども、それは、もともとそういう形になっている。ところが、現場の先生方が、ゲノムだからゲノムだけでやらないといけないとお考えになっていると、ものすごく研究の前提条件が制限され過ぎて、本来のゲノムの指針の趣旨でもないし、疫学研究指針の趣旨でもないと思うのです。
○久保委員 先生がおっしゃるとおりだと思うのです。実際に指針の適用範囲のところで、ゲノム情報を扱う場合は対象としないと書いてあります。だから、どうしてもそれを一般の倫理委員会とか、東大の倫理委員会もそのように判断したわけです。先生がおっしゃるとおりだと思うのです。実際にこういう研究が増えていますので、臨床指針であったり、疫学指針であったり、その適用範囲のところで対象としないと書くのではなく、もう少し各大学の倫理委員会が判断できるような文言に変えていただく。そうすると、先生方がおっしゃっている意味が伝わると思うのです。今現状で実務のレベルでは、そういう捉え方をされているということの報告です。
○楠岡座長代理 今のに関連してです。これは、皆さんが感じていることだと思うのですが、ゲノムの指針が出たときには、疾患原因遺伝子の探索のために作られたものなので、今のようなゲノム疫学とか、ゲノム薬理学などというのは、その当時は全然想定されていなかった。ただ、ゲノム疾患遺伝子のことに関しては、人権侵害とか差別の大きな問題がバックにあるので、あれだけ厳しくせざるを得なかった。緩めればいいかというと、今でもゲノム原因遺伝子という探索はあるので、その兼ね合いをどうするか、というのが現場が一番悩んでいるところかと思います。その辺が少し明示されれば大分違ってくるのではないかと思います。
○門脇委員 私も、今の御意見に全く賛成です。今のいろいろな医学研究が、ヒトゲノムが2003年に解読されたわけですが、その後10年間たって、臨床研究や疫学研究と遺伝子研究というのは対峙されるべき研究ではなくて、臨床研究や疫学研究の非常に重要な一部を成しているというように研究のフレームワークが変わってきていると思います。今までは久保先生がおっしゃるように、遺伝子のことが少しでも書いてあれば、それはヒトゲノム・遺伝子解析研究の倫理委員会に必ず掛かって、通常の倫理委員会には掛からないという審議の仕方をしていたのです。今の議論によれば、遺伝子の部分についてはヒトゲノム・遺伝子解析倫理委員会で、臨床研究や疫学研究については通常の倫理委員会というような分け方で、二つの委員会で議論をするという形がフィーザブルであるような感じがするのですが、更に御検討いただければと思います。
○位田委員 確認させていただきます。ゲノム指針というのは、基本的に生殖細胞系列のゲノム研究なのですけれども、実際に倫理委員会ではそれ以外の、要するにゲノムなり遺伝子なりという言葉が入ると全部そちらでやってしまうというのは現場の誤解だと思うのです。もともとの本来の趣旨から離れた形で、実際の倫理指針がやられているのですけれども、そこをもう少しきちんと広報するというか、情報をはっきりさせておかないといけないのだと思います。
○久保委員 すごく大事なことだと思います。
○福井座長 三つの指針の使い分け方といいますか、どうやって全体的に使ったらいいのかということについてのガイドラインが必要になるかもしれないということになると思います。資料4-3は、それぞれの施設で苦労して、使い分けのガイドラインを作っているわけですので、この点につきましては何かの方法で皆さんが困らない形にする必要があるのではないかと思います。
 座長からで申し訳ないのですが、藤原先生にお尋ねします。5ページのアメリカの説明でリスクの話をされましたが、これは個人情報が漏れるというリスクと、被験者への身体的なリスクの両方が入っているのでしょうか。
○藤原委員 身体的なリスクが主なリスクで、もう一つ別に下のほうに書いてありますように、HIPAAという向こうの個人情報保護を管轄する別の法で、個人情報の関連は縛られているので、そことの関連、学術研究と個人情報の兼ね合いといった、日本でもあるような問題が向こうでも今正に議論されているところです。
○丸山委員 先ほどの指針の適用の所は、私も同じ意見で、臨床指針と疫学指針の適用範囲の所の文言を改めることを考えていただきたいと思います。それとは別の質問をさせていただきます。川村先生の説明についてですが、資料4-2の1ページの真ん中辺りに、「適用する倫理指針」とある中の臨床のほうを取り上げたいと思います。臨床のほうで、上のほうは介入ですので、臨床研究指針が適用される。下のほうは予後調査・診断研究などで多数のサンプルを扱うものについては疫学指針の適用ということです。
 右下は症例報告なのですが、これは、昨年末の厚労省の検討会でも触れたところなのですが、これについては川村先生の整理では、ガイドラインということで臨床指針も疫学指針も適用はないということでした。わたしは、これが自施設の院内でなされる場合については、医療・介護関係事業者個人情報適切取扱いのガイドラインの適用があると思うのですが、他方、複数の機関の研究者の参加する研究会、学会、ジャーナルで症例報告がなされる場合についてはどうなるのか。数が多くなれば臨床研究指針なり、川村先生の整理では疫学研究指針が適用されるとなると、個人情報保護の問題を念頭に置くと、何か単一の機関で、院内でやるのは医療関係事業者適切取扱いガイドラインが適用されて、数が多くなると研究指針が適用される。そうでない、複数の研究者が参加する会合でなされる少数の症例報告については、個人情報保護のルールが適用されないか、その谷間に入ってしまう、その辺りを川村先生はどのようにお考えなのかを教えてください。
○川村委員 黄色のゾーンを作ったのは、疫学という言葉がもともと多数を対象にして、数量的処理をするという、疫学自体の持つ特性があるので、そこをケースレポートやケースシリーズは数量的処理を通常は余り行わないことから、疫学研究という言葉自身に該当しなくて、行き場を失っているところです。それは、必ずしも疫学という言葉が当てはまらないのでここから外れて別の色が付いているだけで、そのために先生がおっしゃったように、医療・介護関係者における個人情報の適切な取扱いのガイドラインしか当てはめるものがないということで黄色になっているだけで、後で述べますように、研究としての指針がないという意味になります。
 青色の疫学指針の所だからといって、ガイドライン非適用ということではなくて、ガイドラインは多分どこであっても、医療・介護関係者には等しく掛かっていると思いますので、それは共通の土台で、その上に疫学指針が掛かるか掛からないかという色分けをしただけです。
○丸山委員 今の川村先生のお話だと、複数の機関に属する医療者や研究者が参加する会合で症例報告がなされる場合は、医療・介護関係個人情報適切取扱いガイドラインが適用されるということのようなのですが、そういう整理はこの医療関係事業者ガイドラインではなされていないのではないかと思うのです。このガイドラインに基づいて、あるいはこのガイドラインを作る際の検討会での議論に基づいて日本医師会が用意した掲示の見本も、複数の医療機関関係者の参加する会合や学会等での報告は想定されていないように思います。その辺りで谷間にあるのではないかと思うのですが、その辺りを教えていただけますか。
○川村委員 医療・介護関係者何々のガイドラインには、症例報告をするときに写真を載せる場合はアイマスクをしなさいということが書かれていました。それで、学会とか学術雑誌で報告する際の個人情報の保護の手順について僅か2、3行であったと思うのですが触れてあったので、そこしか拠り所がないですねという、かなり消極的な記載ですので、現実には指針無しと書いたほうがよかったのかもしれません。そのガイドラインには、僅かながら症例報告をする際の個人情報の注意点が非常に短く記載されておりました。
○丸山委員 それは、研究なり報告の内容に基づくもので、どこで報告されるかというところとは関係ないと思うのです。
○川村委員 関係ないことです。
○丸山委員 関係事業者のガイドラインは、院内であるか、多数の施設が参加する会合であるかで区別しているようなところがありますが、その辺りはいかがですか。
○川村委員 すみません、よく承知しておりません。
○福井座長 もしよろしければ、今後の委員会でその法律の説明もしていただければと思います。現場では症例報告も結構問題になっていて、人によって、また学会によって対応が全然違うようですので、もし可能であれば今回の見直しのところで明確にしていただければありがたく思います。また教えていただければと思います。
○丸山委員 また発言の機会があれば。
○今村委員 確認させていただきます。資料4-2の2ページにフローチャートが書いてあります。本日いろいろなことを議論しているのは、この一番下の柿色の右の三つの部分をどうするかということなのですね。上のほうにいろいろ書いてあるヒトゲノムだとか、遺伝子のあれだとか、ヒト幹だとか、そういうことの議論は全然しなくていいということですね。それから、5年を目途に見直しをしようという、そのための合同会議ということなのですよね。そうだとすると、今現場からの声を聞いていると、このフローチャートに書かれているようなことで、研究者が非常に困っている、複雑なことに陥り過ぎて、現場の判断に非常に迷う。そして、そのことが研究の進展のための隘路になっているということなので、下の三つの部分を簡素化する、あるいは規制を緩めるところはきちんと緩めよう。ここだけは守ろうというものを、きちんとしようという議論と理解してよろしいのか、当局の方に教えていただきたいと思います。
○伊藤安全対策官 正に今村先生がおっしゃったことについては、この会議の中でお決めいただくことだと思っております。ただ、こちらの両指針を定めていくに当たっては、正に情報やデータの適切な取扱いを図りつつ、研究の推進がされていくという形で、最終的な指針ができていければと思っております。そのバランスの中で、守るべきことは守って、簡素化できることは簡素化ということで、この会議の中で整理されていければ、私どもは厚生労働省と共にそのような形で、最終的な指針を決めていきたいと考えております。
○福井座長 今村先生がおっしゃったことは、また後ほど委員の皆さんから頂いた意見の中にも扱われておりますので、よろしければ検討を続けていくということでよろしいでしょうか。
○今村委員 分かりました。
○福井座長 最初からこのようにするという結論ありきの委員会ではないと考えておりますので、要は患者さんの個人情報保護、そして身体的なリスクを最小限にしながら、研究をどうやって促進するかというその両方のバランスの話だと思います。是非この委員会で全体的に考えていきたいと思います。
 時間も大分押してまいりましたので、引き続き資料6から資料8までの説明を事務局からお願いいたします。
○伊藤安全対策官 資料6-1、資料6-2です。まず、資料6-1を御覧ください。ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の改正に関する資料です。先ほどからいろいろとお話しがありましたように、疫学研究、臨床研究の指針と併せて見ていくことが、より多くなってきている現状、それから、遺伝子の高速・大量解読技術の進展がより進んできておりまして、平成23年より文部科学省、厚生労働省、経済産業省の3省合同委員会で、見直しについて検討を進めてきたものです。
 こちらについては、3省委員会で取りまとめまして、その後省内手続を経て、今月2月8日に公布を行い、4月1日から施行を行う予定です。この施行に当たりましては説明会を行い、また、Q&Aなども作成しまして、周知徹底に努めていきたいと思っています。
 次に、具体的な内容です。今回の改正の内容について、大きく二つに整理しております。全体としては、上のほうの二つ目の○に書かれていますように、先ほどのような、技術の進展に伴って期待される疾病関連遺伝子の解明、オーダーメイド医療の実現に向けて、遺伝情報の適正な取扱いを確保しつつ、長期的な追跡研究を推進するためのものという形で、見直しを行っております。
 改正内容の一つ目として、コホート研究における長期的な追跡を可能とするために、匿名化に関する規定を見直しています。これはどういったことかと申しますと、資料では現行指針となっていますが、旧指針で、情報や資料などを提供する場合には、これまでは匿名化し、かつ、提供元の対応表を破棄することを原則としておりました。ですから、提供元に、例えばAさんが文科太郎で20歳、健康というような場合に、提供先に渡す情報は、匿名化したAさん、文科太郎ということは分からないまま、20歳、健康といった形で渡すという整理になっていまして、この場合、対応表を破棄するということで、追加情報の取得が困難であったという課題がありました。
 今回の見直しに伴いまして、匿名化の方法について、長期的な追跡研究が実施できるように対応表は提供先には渡さない、別途厳重に管理したと。ここの部分は、きちんと安全面などは確保しつつ、情報等を提供できるような形で見直しています。
 したがいまして、その後、例えば10年後にAさんがどういった状況にあるかといったことを追跡的に研究先は得ることが可能になるという形で、規定を見直しています。
 また、そういったことで、今後長期的な形で情報の利活用が多くなっていくことが想定されますので、安全管理に配慮した情報の取扱いに関する規定の整備を併せて見直しています。
 ここに書いてありますように、例えばインフォームド・コンセントの際に提供者に説明する内容の追加とか、あるいは安全管理措置に関して、情報を明確化していく。それから、研究業務を委託した場合の情報等については、契約によりきちんと明確化していく。研究者や倫理審査委員会に対する教育、研修の実施。こういった取扱いに関する規定も併せて整備しています。簡単ではありますが、以上です。
○福井座長 厚生労働省からお願いします。
○高江課長補佐 時間が押していますので、簡単に資料7、資料8を御説明します。
 資料7については、前回厚生労働省と文部科学省の会議にもお出ししましたが、倫理審査委員会の報告システムの状況について、「もう少し具体的に詳細が分からないか」という御指摘がありまして、都道府県別、設置主体別に、全登録件数、1年以内に新規登録された数、1年以内に会議録を更新されたところについて、まとめたものです。
 資料8は、臨床研究と治験の違いについての御指摘がございましたので、御説明する資料です。1枚目は、医学系研究全体の中で臨床研究があります。治験は臨床研究の中の1類型で、右側にありますが、医師主導と企業主導がありまして、薬事法の承認取得目的で、薬事法や薬事法に基づくGCP省令等を遵守して行われるものである。
 治験以外の臨床研究は学術目的のもので、介入研究、観察研究に分類されます。これらについては、臨床研究に関する倫理指針等を遵守していただきます。
 裏面です。医薬品のGCP基準、薬事法のほうと、臨床研究に関する倫理指針の主な規定の比較ですが、倫理指針は被験者保護に重点を置いています。データの信頼性保証の面からいうと、GCPほど厳格ではないという状況です。以上です。
○福井座長 ただいまの事務局の説明について、何か御質問、御意見はございませんでしょうか。
○津金委員 資料6-1の「コホート研究による長期的な追跡を可能とするため」というのは、違和感を感じます。長期的な追跡を可能にするなら、個人情報を全部自分たちで持っていないとできるわけがなくて、長期的な追跡の情報を、例えばバンク側が入手可能にするためという意味ですよね。
○福井座長 その意味だと思いますが、よろしいでしょうか。
○伊藤安全対策官 先生のおっしゃるとおりでございまして、今後説明会のときに、文言を見直してまいります。
○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。
 続いて議題4に入ります。各委員の皆様には、事務局から事前に、意見発表の意思の有無と、資料の提出の依頼がされています。事務局に意見発表の申し出をいただいている委員の方々から、順に御説明をお願いします。発表の順番について、事務局から説明をお願いします。
○高江課長補佐 資料9です。こちらは、各委員から事前にお送りいただいた資料について、氏名の五十音順で並べています。本日御欠席の先生もいらっしゃいますので、その方を除きまして、この資料の順に門脇委員から、川村委員、楠岡委員、新保委員、田代委員、津金委員、直江委員、藤原委員、丸山委員の順番で発表をお願いできればと思います。
○福井座長 残り時間が1時間になりましたので、お一人につき5分以内、可能でしたら3分ぐらいでお願いします。
○門脇委員 先ほど御紹介のありましたヒト・遺伝子解析の指針の改定の中でも、これまで単一遺伝子病等に限られていた被験者への情報のフィードバック、カウンセリングの機会の提供を、多因子病まで広げていることが、一つの特徴かと思います。
 そこで、私がここに数行で書いていますが、臨床研究や疫学研究の中でも、今後エピゲノムやバイオマーカーの情報の中にも、重篤な疾患や予防し得る疾患との関連が明確なものが多数出てくることが想定されます。例えばApoEの比較的頻度の高いε4は、アルツハイマー病の強いリスク因子であることが分かっています。
 このような、疾患との関連が明確なものが多数出てくるときに、被験者の知る権利と、知らないでいる権利をどのようにインフォームド・コンセントの中、あるいは包括同意の中で担保するのか、どのように運用するのか、是非検討していただければというのが、第1点です。
 第2点はここには書いていませんが、インフォームド・コンセントの具体的な中身を、より実質的なものにすべきではないかということです。インフォームド・コンセントは「説明と同意」と、最も簡略には訳されますが、日本医師会の定義は「十分な説明と同意」、また、日本弁護士会の定義では、「正しい説明を受け、理解した上で自主的な選択、同意、拒否」ということが書かれています。
 現場でのインフォームド・コンセントが、このような本当の意味でのインフォームド・コンセントとして運用されることが、私は必要だと考えています。しかし、そのためには、このようなことに関わる方の人材養成、あるいは質の担保、資格の認定等を行う中で、研究者を支援するような立場の人材が豊富に存在して、はじめてインフォームド・コンセントの正しい実行というのはされるのではないかと。
 インフォームド・コンセントの正しい実行がされれば、そして、それはこの倫理指針が最も目指すところの、被験者の正しい理解の下で公共の福祉のために研究を行うというところが、目的を達成することができる、その実質を作る上でも、このインフォームド・コンセントの本来の意味でそれを遂行する人的な資源の養成、確保の問題については、ゆるがせにできない問題と考えています。
○福井座長 皆さんの御意見を伺ってから、質疑応答に移りたいと思います。川村委員、どうぞ。
○川村委員 たくさんありますので、抜粋で報告させていただきます。
 1の(2)「連結不可能匿名化された試料は指針の不適用」と指針本文に書かれていますが、これは主に国が行う行政調査などの試料の2次活用が想定されていたかと思います。ところが、近年、健保組合が自分のところの健保組合のデータ、あるいはそれを複数統合して、研究者に提供するようなことが行われていますが、この辺については、研究者に提供される時点では匿名化されているのですが、これを倫理指針の不適用としてよいかどうかという問題があります。これを追求していくと、研究のために第三者が匿名化データベースを作ってしまうと、全て指針不適用ということになるので、一定の歯止めが要るのではないかと考えています。
 それから、先ほど来出ていますが、2番目の「適用する倫理指針」の問題です。統合ということは、課題として重要と考えています。その際に私がイメージするところは、コアになる部分を共通で作って、それに、臨床現場に特異的な状況、ゲノムを扱うのに特異的な事情、あるいは質的研究を行うのに、個人を詳細に記述するなどの特異的な状況、そういったプラスアルファの部分を、それぞれ瘤のように付けて、コアの部分は共通にしておくという解決策があるかなと考えています。
 それから、先ほども少し触れたことですが、(4)で、質的研究には指針がありません。それから、資料バンク、データバンクが最近相次いでできつつありますが、バンキング自体は直接研究ではないので、指針の適用がしにくい状況にあります。インフラを整える、と理解していますが、いつでも研究に利用できるというインフラなのですが、人体試料を扱ったり、個人情報を扱ったりしますので、研究と言えないまでも、研究に近い。しかし、そういうものをどういう方向で個人情報を守っていくかということを決めるものが、十分にあるとはいえないというところが問題です。
 それから、類似していますが、メーカー等によって、機器あるいはデータ処理システムが作られるときに、生データあるいは生の生体材料がほしいということで、研究者側が提供する場合があります。この場合は、業者がやられることなので、直接は指針がないわけですが、苦し紛れに研究の形にして、研究者の名前を入れてという形で審査をしたりしていますが、これも指針に含まれるようにする必要があるかもしれません。
 それから、研究者自ら、あるいは研究者の教室が、自分たちの血液などを使って行う研究があるけれども、こういうものは指針をどのように適用していくかという問題があります。自分たちが自分たちのためにやるということなのですが、これに指針をどのように適用するかが分かっていません。以上、指針がないものがいくつかあります。
 3番目の問題は、倫理委員会が承認したあとのフォローです。現在は、臨床指針では1年後、疫学指針では3年後に進捗状況を報告するという規定はありますが、これもきちんと守られているかどうかという問題があります。ともすれば、審査だけを通ればいいという気運がなきにしもあらずですので、監査する仕組、全数をやるのは難しいとしても、何らかの形でフォローして、審査の妥当性なり、遵守状況、コンプライアンスを見ていく仕組みは要らないのだろうかと思います。これに合わせてですが、審査に多大なエネルギーを使っているので、本当にボランティアベースの審査でよいのかどうかということも、少し考えるところがあります。
 そのほか、細かいことですが、分担研究者は研究者として、今の規定を読む限り、そのまま考えれば、全ての研究者の施設で倫理審査が必要ということになりますが、Gift Authorshipの場合もあり、その世界の権威者ということで列席していらっしゃる方もありということで、全てにおいて倫理審査をするというのは、余り現実的ではないとも思います。あるいはデータ解析だけをやるので、何かあっても、その研究者が所属している組織には、それほど害がないのではないかと言っている人もいました。
 しかし、それでは無節操になりすぎますので、一つの運用方法として、計画、運営、介入、解析、論文執筆を行うコアメンバーについては、研究者として審査を求め、データ提供のみを行う者は、今の規定でもそうですが、研究者にあらずということで審査不要、データの管理や統計処理などを部分的に業務として担う場合は、委託という位置づけにすれば委託元責任となって、直接は審査は要らないという運用ができるかなと考えています。
 (2)ですが、「医学者以外のヒト対象研究者への啓発・浸透」です。これは私が先ほど申しましたように、霊長類研究所という所で、サルの研究所なのだけれども、ヒトの発達や心理の研究もしています。だけれども医療者ではないという所がありまして、こういうのは恐らく多くの大学でそういう事例があろうかと思います。そういう所は、いわゆる疫学研究、臨床研究といった指針に正面を向いて座っているわけではないので、同じ土俵に上っていないような気がします。といって、関連はすごくあるということで、こういう所にも浸透していく。啓発と浸透というソフトな方法ですが、基盤を広げていく必要があろうかと考えています。
 それに類似しているのですが、医療機関でない所で、かなりの検査行為、臨床検査に類似した行為が行われています。例えば心電図で、健康づくりのスポーツの現場などで心電図が取られていたり、心理などで脳波が取られていたり、あるいはfunctional MRIが撮られていたりということで、通常ですと医療行為になるのですが、医療としてではなく、研究として行われている場合に、それに対して何らかの保護、侵襲有り無しのギリギリのところだと思いますので、この辺りをどう考えるか。一つの方向性を打ち出したいと思っています。以上です。
○福井座長 続いて、楠岡委員からお願いします。
○楠岡座長代理 既にいろいろ個別的な問題点が指摘されている中で、指針を見直す場合の基本的な考え方というところで、まとめさせていただきました。疫学研究、臨床研究の研究そのものに「属性」という表現をしていますが、共通点が多いので、それが逆にどちらを適用するかという混乱の原因にもなっています。属性から考えると、ある一つの指針でカバーができるのか、あるいはそれを分けたほうがいいのかということも考えることができると考えて、以下のようにまとめている次第です。
 属性というか、このようないくつかの座表軸を考えて、その空間のどの辺りにその研究が位置するかによって、例えば同意取得の程度、有害事象への補償等、それぞれについてどのように考えればいいかという、分析の軸ということで捉えていただければと思います。
 考えましたのは、一つは介入研究か観察研究かということで、介入研究に関しても、介入の程度として、指導的なことから、薬剤等の具体的に物を使用する場合とありますし、介入の可逆性ということで、通常、薬剤等の場合は中止すれば元に戻ると考えられるわけですが、植え込み型医療機器のような場合には、中止しても元には戻らない形になりますので、これは少し考える必要があるかと思います。
 観察研究に関しても、データ収集に関する侵襲の程度、これは既にいろいろ考慮されていますが、全くない場合もあれば、いわゆる健康診断的なもので、簡単な採血程度のものもあれば、それ以上のものもあります。データ提供も、1回のみの場合もあれば、数年にわたり継続的に追跡が行われるような場合もあるので、こういうこともファクターとして考える必要があるのではないかということです。
 2番目の軸は、前向き研究か後ろ向き研究かということです。
 3番目は、試料の匿名化度です。個人情報保護の観点から、連結可能匿名化の情報なのか、連結不可能匿名化なのか。あるいは、匿名化の作業者は当事者が行っているのか、第三者が行っているのかによっても、かなり匿名化度に影響するかと思います。
 第三者により、完全に連結不可能匿名化が既に行われたもの。先ほどの提言にもありましたように、データバンク、バイオバンクで、既に集められ匿名化されたものが提供される場合と、当事者が集め、連結可能匿名化していくようなものによって、かなり内容が異なってくる可能性があるかと思います。
 対象の大きさとしても、数名程度から、1,000人程度、数万人程度、数百万人程度。例えば臨床試験だったら100人程度かというと、市販後大規模研究になりますと、数万人程度のものを扱わないといけませんし、逆に疫学的研究だからといって、必ずしも数百万というわけでもないということで、研究とはまた別に、対象の大きさも一つの座表軸になるかと思います。
 これ以外にも、本日の議論にありましたゲノムや遺伝情報を扱うかどうかもあります。このように、いくつかの座表軸を導入して、その中で各研究がどこに位置するかによって、適用するルールの違いを明確化するのも一つの考え方ではないかということで、提示させていただいた次第です。
○福井座長 続いて、新保委員からお願いします。
○新保委員 9ページに記載させていただきました。最初に書かせていただいたのは、指針の見やすさ、あるいは読みやすさが、こういった指針の普及のためには非常に大切なのではないかという気がしています。研究に慣れた先生方だけではなくて、レジデントの先生、研修医の先生、今後若い先生方にも読んでいただきたいものかと思いますし、看護師であるとか、いろいろな職種の方にも利用していただきたい指針かと思います。そうしますと、どうしても見やすさ、読みやすさにも行き届いたものであればいいのかなと思っています。
 従来の指針で、例えば疫学、臨床、ヒトゲノム、遺伝子等で、章立てや項目番号の振り方がばらばらであって、同僚の間で「ここに書いてあります」といって、議論するときにとても議論しにくいような状態になっているように思います。そういったところで、少し読みやすい形になっているといいかなと感じているところです。
 2番目に書いたのは、疫学指針と臨床指針の一本化です。現状で、かなり一致している部分が多いと思っています。細部を調整すれば、不可能ではないかなと思っているのですが、疫学研究の実施に関しては、ゲノム研究や臨床研究に倣った形で、余り厳格になりすぎないような形で、効率的に研究が実施できるような形になっていればいいかなと思っています。
 3番目に書いたのは、中央倫理委員会の普及ということも言われているかと思うのですが、現状で、他の主たる共同研究の倫理委員会の審査でOKであれば、従たる施設は迅速審査でも済むという考え方があると思うのですが、現状で実際の運用として、各現場でなかなかこのようにされないことがあるように感じています。こういったことを明確に、いろいろな形で、できるということを記載いただくといいのかなと感じています。
 4番目に書いたのは、個人情報の取扱いに関することです。従来、連結可能匿名化をするときの対応表の扱いが、現場でどれぐらいうまくされているかというのは、なかなか難しい、分かりにくい、管理しにくい形になっているのではないかと危惧しています。人手があって、治験管理室等があれば、きちんとした管理ができるのかもしれないのですが、一般の臨床研究で、忙しい現場の先生方が管理がどのぐらいきちんとできるのかというところに危惧を感じていて、場合によると、対応表の外部の管理、委託ができるような形になると、安心というのもあるのかなと感じています。
 5番目に書いたのは、用語の定義です。一部、指針間でばらばらになっているところがあるように感じています。これも、ばらばらになっていますと、研究者間でのいろいろな討論を阻害する要因になりますので、指針が改定される時期が違うということはあるかと思うのですが、そのときに用語が揃う形になればいいのかなと感じています。
 指針に補償の問題が書かれているのですが、これもリスクに応じたフレキシブルな形で、補償が適用できるような形になればいいのかなと思っています。現在、治験のほうは整っているとは思うのですが、臨床研究の補償は黎明期のようで、結構高額になっています。非常に高額で、むしろ補償に高額に付けてしまうと、ほかのスタッフを抑えないといけないので、そうするとかえって質が下がってしまうということもあり得るかなという気がしていまして、リスクに応じた補償の適用等ができる形になればありがたいのかなと思っているところです。以上です。
○福井座長 13ページについて、田代委員からお願いします。
○田代委員 「指針見直しにおいて検討すべき点と今後の方向性」ということで、簡単にまとめさせていただきました。
 1の「指針間の関係」です。疫学指針と臨床指針は一体化すべきだと考えています。これは皆さん御存じかと思いますが、前回の臨床指針改正の際に、観察研究に関してはほぼ一体化していますので、今後は介入研究についての条項、特に疫学の介入研究に関して、インフォームド・コンセントの除外規定などを設けることで、統合は十分に可能だと思っています。ここでは医科学分野における「人を対象とする研究」の「総則的」指針という書き方をしましたが、そもそも臨床指針を最初に作るときに、総則的指針として作るということを意図していたはずですので、その本来の形にすべきだと考えます。改定の度にいろいろな規定をすり合わせるという作業は、コストの面から見ても非常に無駄だと感じています。
 すでに何人かの先生もおっしゃっていましたが、一体化の過程で、一部の研究に特異的な項目が生じるという可能性は十分にあると思います。その場合は一体化された指針の末尾に、追加項目として配置するということで対応可能だと思います。まったく同じではないですが、カナダやオーストラリアの指針のような体裁を取るという手もあるかと思います。
 特に日本の場合、PMDAの扱っている範囲が非常に狭いということもあって、自主臨床試験の一部を、この臨床指針で見ざるを得ない状況があります。ですので、特に、医薬品・医療機器の臨床試験に関する追加規定は必ず設けることになると思います。先ほど来話に出ている補償、臨床試験登録とか、臨床試験に特異的な規定というのは別途定め、臨床試験に関しては追加でこういうものをきちんと守ってくださいという形にしていくというのが、一つの形かと思います。
 どうしても一体化が困難な場合には、現在の適用範囲よりも分かりやすい役割分担としては、疫学研究の指針は観察研究の指針として切り分け、臨床指針は介入研究の指針として切り分けるという形もなくはないと思いますが、基本的には一体化すべきだと思います。
 1-2は、こういう一体化した指針を将来に共通ルール化していって、いろいろな指針のコアにしていくほうが良いということを書きました。
 2の「倫理審査」関係に移ります。まずは倫理委員会の委員が参照できるような審査基準を指針の中で明示してほしいと思っています。現行の指針には、審査の基準、つまり何をもってこの研究を承認すべきなのかということが全く書かれていないので、これを書き込むべきだろうと思っています。
 その際に、非常に大きな問題だと感じているのが、GCPやヘルシンキ宣言、さらには各国独自の指針いずれにしても、ほぼ研究倫理の指針であれば必ず入っている、リスク・ベネフィット評価についての項目が全くないことです。これは一番シンプルな形でいえば、研究の意義と被験者に対するリスクや負担を天秤に掛けて、意義が勝る場合によいとするという判断基準のことです。これが指針には明記されておらず、基本的には安全性が担保されれば同意があればよい、という作りになっています。ですので、これを今回入れるべきです。またリスク・ベネフィット評価については、倫理審査の基準というだけではなくて、研究者の責務でもあります。研究者はこれを踏まえて研究計画を立てるべきである、ときちんと書き込むべきだと思います。
 2-2ですが、倫理審査委員会の委員教育は努力義務ではなく、義務にすべきだと考えています。現状は研究者だけが義務で、委員は努力義務にとどまっています。時々こういう例えを使わせていただくのですが、いわば現在は審判だけがルールを知らないでサッカーをやっているような状況が生まれているわけです。ですので、これは絶対にやめたほうがいいと思います。2-3、2-4は前回も述べたことで、まとめにも反映されていましたので、省略させていただきます。
 3については、ほかの先生からも御意見があると思いますが、試料・データの二次利用に関して、研究計画ごとに個別の同意取得、いわゆる再同意を促すという現在の考え方を改めるべきだと考えています。基本的には将来の幅広い研究利用への同意を得たあとは、広く情報公開をして頂き、嫌だという人には手を挙げてもらうという、opt-out型の同意でいくという方向がシンプルで良いと思います。
 具体的にはそこに書いていますように、特に、疫学指針・臨床指針の既存資料の利用に関わる規定が、私自身は非常に厳しく感じていまして、「当該同意を受けることができない」というかなり厳しい表現になっているので、これをもう少し現実的な内容に変えて頂きたい。これはヘルシンキ宣言に比べても、かなり厳しい言い方だと思います。ですので、ここを少し現状に合わせるというか、再考したほうがいいのではないかと考えます。
 併せて、幅広い同意ということを考えるときには、当然ですが、幅広い研究利用への同意の及ばない範囲、どういうところには同意が及ばないのかを明示化していくことが必要になってくるかと思います。
 4の「用語の定義・表現」に関しては、先ほど御意見も出ていたような話で、用語の統一、鍵となる概念はきちんと定義していくことが重要だと思っています。以上です。
○福井座長 続いて、津金委員にお願い致します。
○津金委員 私は3点の意見を記させていただきました。
 まず、適用範囲です。先ほどから議論にもあるように、疫学という方法論と、臨床という場が、タイトルに掲げた指針では適用範囲を区分することは合理的でないので、基本的には一本化が望ましいと思っています。
 一本化のあとで、以下の点で、インフォームド・コンセントの取得などにおいて、場合分けをした対応が必要です。一つ目は、被験者保護というのは、一番倫理的な問題では重要だと思うので、そういう意味では、研究者の意図によって介入するかどうかというのは一番重要なポイントだと思います。そして、この介入の侵襲の程度、観察研究においても、資料収集における侵襲性の程度を考慮した場合分けが必要だと。
 2番目に重要なポイントは、研究参加の決定に影響する、研究対象者と研究者の関係です。例えば医師と患者の関係であるということは、ある意味ではインフォームド・コンセントは取りやすいし、我々のフィールドで全く普通の人に協力を求めるときに、臨床研究と同じようにインフォームド・コンセントを求められるようになってしまいまして、本当に苦労するというところがありますので、そこら辺の場合分けは必要だろうと思います。
 2番目は、ヒトゲノム・遺伝子解析を含む疫学・臨床研究ということで、今は、ヒトゲノム・遺伝子解析を含む瞬間に、疫学指針からも臨床研究指針からも、適用から外れているという現実があって、ほとんどの日本での倫理審査はそうして審査しているはずですから、どんな臨床研究でも、どんな疫学研究でも、ヒトゲノム解析が一つでもあれば、ヒトゲノム・遺伝子解析指針に従っているというのが現状だと思いますので、その異常な状態を早く何とかしないといけないと考えています。
 ですから、基本的には疫学指針、臨床指針で、これは一本化が望ましいと思うのですが、そこでヒトゲノム・遺伝子解析を含む場合はどうするのかということで、それは指針として一本立ちするのではなくて、飽くまでも取扱いとしての注意として、付帯事項のようなものであるべきだろうと考えています。
 3番目は、ある程度現状の指針でも対応できているのですが、現場に伝わっていないというようなことです。個人情報保護関連法では、学術研究、公衆衛生目的は除外しているにもかかわらず、個人情報保護法を一生懸命守ろう、となっていることによって、結局インフォームド・コンセントの取得をものすごく強く言われるので、偏った集団だけを研究するという現状が起こっていて、これは結局、最終的には国民が損をすることを招きかねないので、こういう状況を、基本的にはインフォームド・コンセントの取得がなしでも研究は行われるのだと。特に、保険医療サービスという税金を使っているサービスから得られた資料とか、そういうものに関しては、当然次の世代の人のために基本的に漏れなく研究利用をするのが当然であるべきですから、原則インフォームド・コンセントの取得を不要にするとか、要件を緩和する対応が必要で、先ほど藤原先生の紹介で、フランスではインフォームド・コンセントはかなり簡略する方向にあるというのが、国際的な現状だろうと考えています。
 先ほど言ったように、実際に「本人承諾などの下で」と、住民台帳の事務処理要項に書いているがために、多くの自治体は、「本人同意はあるのですか、書類を送ってください」ということを求めてきているという現状がありますので、指針を適用させた研究ができるように、厚生労働省、文部科学省も、自治体に対してそこを周知していただきたいと考えます。以上です。
○福井座長 次に、直江委員からお願いします。
○直江委員 私は臨床の現場という立場で、いくつか意見を伺わさせていただきました。
 1番目ですが、前向き介入研究です。これは今日は余り議論になっていませんが、この指針の範囲外である、例えば薬事法の治験との整合性、あるいは国際共同研究等に備えまして、今日も話が出ましたが、国際協調性ということも重要なのではないか。
 これは、私は間接的に聞いているところですが、欧米は全ての臨床試験というのが、ICH-GCPに従って行うべきという考え方のようなのですが、これは被験者の保護とか質の担保、出口戦略、特に薬事承認です。こういうことからは、非常に妥当だと。特に、新しい化合物、適用拡大もこれに当たるかもしれませんが、GCPで行うべきであろうと考えられます。これを、今回はこのように書くのかどうかは、少し踏み込んだ話になろうかと思います。
 ただ一方、現状では、GCP下でやろうとしますと、特に大学等の研究者にとっては、非常に抵抗感があります。事務的に煩雑である、多くの自由な臨床研究というものを阻害するのではないか。結果的に、医学の発展が遅くなるのではないかという意見もあることは事実だと思います。これは、こういう意見があるということです。
 2番目です。倫理性の高い臨床研究とは、そもそも何かと言いますと、適切な研究者が、適切な施設を使って、その質を担保するためのシステムと書類が揃っている、データが正確である、患者がちゃんと集まる。患者の個人情報保護等の秘密が守られる、成果が公開されるということが揃ってこそ、達成されるものだと思います。
 現在の指針には、いろいろ書いてありますが、研究者とか施設の要件、あるいは研究が開始されたあとのモニタリングで、実際にそのとおりになっているかどうか。それから、ちゃんと成果が公開されているのかどうか。論文になっていない研究が非常に多いというのは、最近は論文でも出ていますが、ここをきちんと書き込むべきではないか。それから、同意書の保管とか。今日もバイオバンクの話が出ましたが、研究で使った試料の管理をちゃんとやっているのかどうか。ここも検討されてもいいのではないかと思います。
 3番目は疫学研究です。これは私たちは非常に悩むところなのですが、例えば実地医療とか業務で、例えば病院業務の中で医療事故や院内感染があったという事例を分析したら、これは業務ですが、これを論文に書いたら研究になるということで、今日も少し議論が出ていたと思います。後ろ向きの観察研究で、新たな臨床の検体などは使わないという場合、特に単施設で解析を行うというものであれば、こんなに厳密にやる必要はないのではないかと思いますし、その意見はたくさんございます。
 一方、それを倫理委員会に掛けなくていいのだということを誰が決めるのか。研究者本人が決めていいのかという問題がありますので、ここは是非議論していただきたいと思います。
 4番目です。これは先ほどから何人の委員の方もおっしゃっていますが、疫学研究、臨床研究という分け方が妥当かどうか。現場では非常に混乱しています。例えば前向き、後ろ向き、介入か介入ではないか、試料を用いるか用いないか、単施設か多施設かという切り口で、もう少し分かりやすい指針にしていただきたいということです。
 それから、先ほど「リスクに基づいた」という話がありましたが、私も同意いたします。例えば個人の尊厳であるとか、個人情報、被験者の安全性に関わる影響度を考慮した、分かりやすい指針にしてほしいと思います。
 もう一つは、疫学研究と臨床観察研究というのは、非常にオーバーラップする課題が多くて、これは一本化する方向でお願いしたいと思います。
 5番目です。これも用語のことで、既に指摘されたとおりです。
 6番目です。倫理委員会の質の向上が急務です。これはレベルが低いということ以上に、非常に慎重になりすぎるということで、先ほどルールを知らない人が審判であるという面白い話がありましたが、あと、新たな医療技術です。こういうものを倫理委員会で、科学的な判断が行えるかどうかということです。
 それから、委員の方が誰も知らないというような技術や解析方法があった場合にどうするのかという問題もあります。是非、第三者機関としての審査体制、あるいは施設から独立した審査体制を行うことによって、研究における施設としての利益相反も回避できるのではないか。あるいは均一性・効率性が要請されるのではないかということを思いますし、これは議論のあるところですが、臨床研究の中核となるような機関に、質の高い倫理委員会を集約して、central IRBというものも考えていいのではないかと思います。
 7番目は、小児、災害被災者、認知症の場合のリスクの軽減、インフォームド・コンセントはもう少し厳密にやったほうがいいのではないかと思いますし、研究情報をどのように公開するか。施設によっては、こういう手順で公開するということを決めたほうがいいのではないかと思います。
 8以降は、私の経験に基づいた細かな指摘事項ですので、この辺は時間もありませんので、読んでいただければいいかなと思います。以上です。
○福井座長 続いて、藤原委員からお願いします。
○藤原委員 皆様方の提言と少し違って、私は腫瘍内科医で、がんの薬物療法が専門で、臨床家ですので、現場で指針の運用等で、どのようなところが困っているか紹介します。当センターの研究倫理審査委員会に実際に掛かってきたプロトコル、研究実施計画書とか、インフォームド・コンセントとか、そういうものが委員会からどのような指摘を受けているかということをまとめてみました。
 自施設のものを細かく話してもしようがないので、倫理指針の中で我々研究者、臨床現場が恩恵を受けているのは、大きな他施設で承認を受けたプロトコルを、自分たちの施設では迅速審査という項目で進めていけるfirst trackがあるのですが、迅速審査で、大きな病院や大学で承認された品目でも、結構記載の不備があることが日本の実態であることを紹介し、指針の改善につながればなと考えて、当センターの事務局にまとめてもらったのが、この資料です。
 当センターで、2011年、2012年の11月末までで、435課題ほど審査されているのですが、そのうち迅速審査、特に臨床研究倫理指針が対応になった研究というのは、31課題ありまして、そのうちの20課題が、いろいろな記載不備があるということが、実態として明らかになりました。
 いろいろな項目がありますが、中段辺りの31のうちの過半数近いところとすると、14項の記載不備があったのは、被験者の福利に対する配慮とか、科学性及び社会的利益の比較のところですが、これは正に議論になっている、研究者側に研究のリスク・ベネフィットをしっかり考えて、インフォームド・コンセント、プロトコルを記載する習慣がないところが、背景にあるのではないかと思います。
 下のほうで、最近問題になっている利益相反です。ここは、日本の研究者は従来から、特に臨床家の場合は余りそういうことを考えない風習がありましたので、COIに関する記載が不足しているものが結構目立ちました。
 被験者の安全性の観点からすると、一番下が結構大変なのですが、重篤な有害事象、医療機器の不具合が発生したときにそれを報告する手順というのが、どのプロトコルも、迅速審査ですから、いわゆる名だたる大学病院で既に承認されてきているものですが、記載不備が3分の2ぐらいあるのです。
 これはどういうことかというと、発生した重篤な有害事象、機器の不具合は、施設の中では割と報告はされるのですが、それを例えば厚生労働省に報告したり、他の医療機関に報告されたりという、周知徹底のところが、手順としてはなっていないということが、背景にあります。これが現状の臨床現場の臨床研究指針の運用で、我々が遭遇している問題点だというところで、今後の議論の参考にしていただければと思いまして出しました。
○福井座長 最後に丸山委員からお願いします。
○丸山委員 私は1月末の文科省の委員会で話を出しました、包括同意あるいはbroad consentの問題について、既に田代委員の3番で要領よくお話になりましたが、少し詳しくお話をしたいと思います。
 焦点を当てようと思っているのは、診療等で発生したサンプル、ウェットなサンプル、情報あるいは先行研究で残ったものを研究利用する際に、どういう在り方がいいかということです。
 23ページの3枚目のスライドですが、二つの対応方法があります。一つは、一般的同意あるいは包括同意に基づいてサンプルや情報を収集し、個別の研究の実施の際には倫理委員会の承認を得て実施する方法。もう一つが、現在の指針の中に設けられているインフォームド・コンセントの要件の適用除外の規定に基づいて、倫理審査委員会の承認を得るという在り方です。
 私は、一般的同意・包括同意を最初に取得しておくほうがよいのではないかと考えます。その根拠は、提供者本人に対して不利益がない。そして個別の研究実施の際には倫理審査がなされるという条件で、医学研究に限定されると思いますが、あらゆる医学研究にその使用を認めるということが、本人の真意であることが少なくないと。本人の真意をいかすということは倫理的であるといっていいのではないかということが、肯定論として挙げられます。
 否定論としては、個別の同意を不要にする、本人からいうと、個別の同意を免除するということなのですが、免除の対象が明確には把握されていないのではないかという点で、理論的な問題点があるということが指摘されます。
 これまで指針でどのような扱いがなされてきたかということですが、24ページの3枚目のスライドで、私の認識では、包括同意について最初に取り上げられたのが、2006年の疫学指針改訂の際の委員会で、そこでは24ページの3枚目の下から5行目以下ですが、包括同意について、利用目的を明示しないまま得た同意に基づき、利用が得られているとして、資料を利用することは、社会からの是認を受けることは可能か、難しいのではないかということで、先ほど言いました同意の免除の規定に基づいて、資料利用をすることでいいのではないかとまとまったわけです。
 私の観点からすると、この問題の設定は、何でもできるとすることの是非を問うているところで範囲が広すぎるということです。それと、資料を用いて現実に研究実施をする際には、倫理委員会の審査、承認の手続が踏まれますので、その辺りが落ちているのではないかと思います。
 しかし、指針の策定においては、疫学指針では包括同意については触れられませんでした。そのあと臨床研究指針の改訂の際にも触れられない。今般のゲノムの指針の改訂の際にも、一次的には包括同意あるいは一般的同意の規定は設けられない。将来については、自施設での研究、あるいは他施設への試料等の提供について、そういう可能性があるということを説明の中に含めなさいということでした。
 25ページの2枚目のスライドですが、この規定について担当の責任を担っておられた渡辺さんの説明では、包括同意を認めたものではないのだけれども、遺伝子解析研究という縛りが掛けられた上で、広く利用の可能性があるということを想定しているということです。
 その次のスライドですが、一般的同意、あるいは包括同意のほうが望ましいのではないか、という私の意見で、なぜかというと、本人に対して、早い段階で研究利用ということを認識してもらえること。後に研究実施の際に情報提供があれば、一般の人たちに対して、医学研究はこのようになされているということを知ってもらえることを掲げています。
 その次からはオーダーメイド医療、Biobank JapanのELSI委員会で、一般的同意、包括同意について検討しましたので、その結果を少し紹介させていただきます。
 基本的には、包括同意、一般的同意の考えを認めていいのではないかとしております。しかし、その際には研究の実施あるいは結果についての情報公開をしてくださいということで、そのあと、一般的同意を用いる際に留意すべき事項として、26ページの1枚目の所が、何を集めるかを明確に決めて、本人にお知らせすることを考えないといけない。2枚目の所は、どういう利用をするかを検討して、説明すべきものは説明してください。3枚目の所は、事情の変更があると考えられますので、それに対する対応をあらかじめ検討して、説明できるものは説明してください。最後の所は、情報公開の在り方について、層別的に、自分の試料はどのように研究利用されているかが分かる簡単な情報提供が(1)です。研究の内容を概要的に説明するものが(2)、細かい関心のある人に対する情報提供が(3)ということで、こういう情報提供システムを構築するのはコストがかかりますので、すぐに導入というのは難しいかもしれませんが、将来的にはこういう方向を目指していただきたいというところです。以上です。
○福井座長 この会場は12時には終わらなくてはなりませんので、時間が少々足りないのですが、2、3よろしければ御議論いただければと思いますが、いかがでしょうか。
 もしなければ、多くの委員から一本化ということが提言されておりまして、その方向でこの委員会を続けるとなると、事務局にもいろいろな作業が発生すると思いますので、ここで一本化には反対で、そのことを考えないで議論を進めるべきだという委員がいらっしゃらなければ、事務局とも相談しまして、一本化に向けた事務作業をさせていただきたいと思います。それをたたき台に、この委員会で御意見を伺いたいと思います。かなり大きな方向の決定になりますが、倫理指針の一本化を視野に置いて事務作業をしていただくという方向でよろしいでしょうか。
(異議なし)
○福井座長 それでは、その方向で作業をお願いしたいと思います。途中で、やはりできない、ということになるかも分かりませんが、実現する方向で議論を進めていきたいと思います。
○直江委員 お伺いしたいのですが、一本化の方向で進むのですが、個別にはいろいろな問題が出てきます。だから、そこの二段階のようなことをイメージされていると思うのですが、そこで、例えば将来的にゲノム指針とか、今日も「ゲノム」という言葉が何度も出てきたのですが、ゲノムと今回新しく一本化する指針との関連性は議論しておかなくていいのでしょうか。
○福井座長 私は、ゲノムのほうは、今回公示されて、施行されるのが4月1日ですので、それを今回の改定作業に取り込むというのは、手続上、難しいのではないかと思います。取りあえずは疫学と臨床の倫理指針について作業を進めては…。
○直江委員 分かりました。それで、将来的にはゲノムといっても、医学の研究の中のゲノム研究であるということになると思うので、将来的にはもう少し大きな、包括的な、広い範囲で議論するという方向でよろしいのですね。
○福井座長 津金委員もおっしゃいましたが、議論をする中の、今回はゲノムに関しても言及するようなことがあってもいいのではないかということですね。
○津金委員 今、疫学指針、臨床指針の適用範囲から、ゲノム研究は全部外れていますから、そこをまず入れていただいて、その中でゲノム解析をする場合はゲノム指針を可能な限り遵守するとか、そういう書き方をすればいいのではないかと思います。
○門脇委員 私も全く同じ意見で、遺伝子解析研究が入っていても、臨床研究、疫学研究の場合には、今度一本化を目指す方向で審査をして、遺伝子解析研究の部分だけは遺伝子解析研究でといったことを、具体的な運用として明示する必要があると思います。
○福井座長 川村委員も田代委員もおっしゃいましたが、コアの部分を作って、それにプラスアルファで特異的な項目について、文章を書き足すという作業が必要になると思いますので、その方向でやりたいと思います。
○藤原委員 手元の青い資料にもありますが、幹細胞指針のほうは、今年再生医療の法律ができるからしようがないにしても、遺伝子治療臨床研究に関しても、指針が平成20年12月に一部改正になっていますから、今年ぐらいに見直すのであれば、そのときに今回のこの会議の議論を踏まえて、なるべくシンプルに一本化していく方向で、事務局には考えてほしいと思います。
○福井座長 また議論を進めていきたいと思います。
○楠岡座長代理 一本化するときにどう一本化するかということですが、基本を決めておく必要があると思います。基本以外のものには規制を上乗せするタイプにするのか、むしろ一番きつい規制を作っておいて、これに関してはこれは免除しますというように緩めていくのかという、基本的な方向を考えておかないと、なかなか難しいと思います。
 研究者としては、最低限守るべきことで、個別に乗せていけばいいというのが理想でしょうけれども、そうすると現実に規制が追い付かなくなる可能性もありますし、また逆も起こるので、そこをどのように考えるかも少し議論をしていく必要があるのではないかと思います。
○田代委員 私のイメージですが、上乗せのところが臨床試験関係のところで、これは追加でやってくださいという話が出てくると思います。これに対して、恐らく疫学に関しては、基本の共通ルールのところに除外規定を設けるという形で吸収できる部分が多いのではないでしょうか。
 ただし、それをどのように出して、どこを引っ込めるかというのは、具体的な作業に入ってからの議論になると思います。
○福井座長 川村先生、何か御意見はございますか。
○川村委員 私のイメージとしては、コアの部分で、そのかなりの部分は疫学指針に書かれている内容が占めると思います。その上に臨床で固有のこと、つまり、場の問題とマテリアルの問題と、質的研究のような研究の成果の出し方の問題とか、そういうことで付帯条項がだんだん付いてきて、雪ダルマみたいになるのかなと考えております。
○福井座長 雪ダルマは避けたいと思いますが、位田委員どうぞ。
○位田委員 私は、先ほど田代委員がおっしゃった、要するにヒトを対象とした研究という形で一般原則を作っておいて、あとは固有の部分で付け加えるなり、若しくは除外にするなりというほうが、本当は一番いいのだと思うのです。
 ですから、ここの議論で、二つの指針を一本化するということだけではなくて、当面はそうなのでしょうけれども、将来的にはもう少し一般的に、ヒトを対象とする医学研究でくくり、その中には医学なのか、少しその外側にあって、たとえば特に心理学の研究というのは非常に危ない部分があって、その辺も含めて考えておいて、それを、いわばピュアに医学の研究と、それ以外の研究に分け、その中でも、場が違うとか、種類が違うという形で、全体のフレームワークを一度きちんと考えておく必要があるのではないかと思うのです。
 それともう一つ付け加えさせていただけば、法律でどこまで定めるか。法律でいくのか、指針でいくのか。先ほど藤原委員から御説明いただいた海外では、基本的には法的なものがあって、その上で実際に適用されている。
 日本はそうではなくて、治験の部分だけは薬事法という、非常にきちんとしたものがありますが、あとは全部指針で、法的なものは何もないわけですから、そこの整合性も考える必要があるのではないかと思います。
○福井座長 ありがとうございます。時間も少なくなりましたので、まだ御意見のある方もいらっしゃると思いますが、本日はここまでにしたいと思います。次回も議論の時間を確保したいと思いますので、またよろしくお願い致します。次回の日程について、事務局からお願いいたします。
○高江課長補佐 いろいろと御議論をありがとうございました。次回は3月14日(木)の10時から12時30分までの2時間30分を予定しています。出欠の確認は後日改めて御連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 本日の議事録については、委員の皆様に御確認いただいた後に公開とさせていただきますのでよろしくお願いいたします。事務局からは以上です。
○福井座長 以上をもちまして、第1回疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る合同会議を終了いたします。どうもありがとうございました。


(了)
<問い合わせ先>

医政局研究開発振興課
担当:本間、森下

電話: 03-5253-1111(内線4165)

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