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2012年8月31日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会議事録

医薬食品局

○日時

平成24年8月31日(金)15時~


○場所

厚生労働省 専用第23会議室


○出席者

出席委員(12名) 五十音順

 加 藤 総 夫、 佐 藤 雄一郎、 手 島  玲 子、 豊 見 雅 文、

 成 冨 博 章、 野 田 光 彦、 林   邦 彦、 檜 山 行 雄、

 古 川   漸、◎松 井   陽、 本 橋 伸 高、 山 田 清 文

 (注) ◎部会長 ○部会長代理

他参考人2名

欠席委員(8名) 五十音順

 木 村   剛、 佐 藤 田鶴子、 鈴 木 邦 彦、 千 葉   勉、

 西 澤   理、 増 井   徹、○松 木 則 夫、 村 田 美 穂

行政機関出席者

 平 山 佳 伸 (大臣官房審議官)

 赤 川 治 郎 (審査管理課長)

 俵 木 登美子 (安全対策課長)

 矢 守 隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)

 森   和 彦 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)

 佐 藤 岳 幸 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)

○議事

○審査管理課長 定刻になりましたので、「薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会」を開催させていただきます。本日はお忙しい中御参集いただき、ありがとうございます。
 まず、部会委員の異動について、日本薬剤師会理事の豊見雅文先生に新たに当部会の委員に御就任いただいておりますので、御報告いたします。
○豊見委員 はじめまして、日本薬剤師会の組織が7月から変わりましたので、交代で私がまいりました。広島から来ておりますが、病院ではなくて、薬局をやっております、薬局の薬剤師です。よろしくお願いいたします。
○審査管理課長 なお、本日はその他事項に関しまして、独立行政法人国立循環器病研究センター先進医療・治験推進部の山本晴子先生、名古屋大学大学院医学系研究科神経内科の勝野雅央先生を参考人としてお呼びしています。
 本日の委員の出席についてですが、木村委員、佐藤田鶴子委員、鈴木委員、千葉委員、西沢委員、増井委員、松木委員、村田委員より欠席との御連絡をいただいております。現在のところ、当部会委員数20名のうち12名の委員の御出席をいただいていますので、定足数に達しておりますことを報告します。松井部会長、以後の進行をお願いいたします。
○松井部会長 本日の審議に入ります。まず、事務局から配付資料の確認と審議事項に関する競合品目及び競合企業リストについて報告してください。
○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日「議事次第」、「座席表」、「当部会委員名簿」を配付しております。資料1~10をあらかじめお送りしております。このほか資料11「分科会における取扱い等の案」、資料12「専門委員リスト」、資料13「競合品目・競合企業リスト」を配付しております。
 続きまして、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて、資料13に基づき、御報告させていただきます。
 1ページは「アイリーア」です。本品目は「中心窩下脈絡膜新生血管を伴う(滲出型)加齢黄斑変性」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として資料に掲げる品目を選定しております。
 2ページは「アイミクス配合錠」です。本品目は「高血圧症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として資料に掲げる品目を選定しております。
 3ページは「プラビックス錠」です。本品目は「末梢動脈疾患における血栓・塞栓形成の抑制」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として資料に掲げる品目を選定しております。
 4ページは「トレシーバ注」です。本品目は「インスリン療法が適応となる糖尿病」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として資料に掲げる品目を選定しております。
 5ページは「ディアコミット」です。本品目は「Dravet症候群患者における間代発作又は強直間代発作に対するクロバザム及びバルプロ酸ナトリウムとの併用療法」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤がないことから、競合品目はなしとしております。
 6ページは「ブフェニール」です。本品目は「尿素サイクル異常症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はあるものの、本剤との併用が予想されることから、競合品目はなしとしております。
 7ページは「メサペイン錠」です。本品目は「他の強オピオイド鎮痛剤で、治癒困難な疼痛を伴う各種がんにおける鎮痛」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として資料に掲げる品目を選定しております。
 8ページは「リツキシマブ」です。本品目は「難治性ネフローゼ症候群」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。以上です。
○松井部会長 ただ今の事務局からの説明に対して御意見、御質問はございますか。よろしいですか。それでは、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、委員の皆様の御了解を得たものといたします。
 それでは、委員からの申出状況について報告してください。
○事務局 各委員からの申出状況についてです。
議題1「アイリーア」、退室委員なし。議決には参加しない委員は野田委員と山田委員です。
 議題2「アイミクス」、退室委員は野田委員。議決には参加しない委員は山田委員です。
 議題3「プラビックス」、退室委員は成冨委員。議決には参加しない委員は野田委員です。
 議題4「トレシーバ」、退室委員なし。議決には参加しない委員は野田委員です。
 議題5「ディアコミット」、退室委員なし。議決には参加しない委員なし。
 議題6「ブフェニール」、退室委員なし。議決には参加しない委員なし。
 議題7「メサペイン」、退室委員なし。議決には参加しない委員は加藤委員です。
 議題8「リツキシマブ」、退室委員は加藤委員。議決には参加しない委員はなし。以上です。
○松井部会長 本日の審議事項は8議題、報告事項は1議題です。そのほかに「その他事項」のために参考人の先生お二人に来ていただいておりますので、「その他事項議題1」から入ることにいたします。お手元に資料10を御用意ください。参考人の山本先生及び勝野先生から御説明をお願いいたします。よろしくお願いします。
○山本参考人 国立循環器病研究センターの山本です。私からは「アルテプラーゼ(遺伝子組換え)」及び「プロプラノロール塩酸塩」の公知申請への該当性に関して検討会議での検討結果について、説明いたします。
 資料10の3ページを御覧ください。まずアルテプラーゼです。投与開始時間を4.5時間以内への変更です。一般社団法人日本脳卒中学会より既承認の効能・効果である虚血性脳血管障害急性期に伴う機能障害の改善の発症後3時間以内から発症後4時間以内へ変更するという要望が提出されております。
 4ページに要望内容があります。医療上の必要性ですが、虚血性脳血管障害を含む脳卒中は、2011年の人口動態統計では本邦における死亡原因の第4位になっております。致命的な疾患でもあり、また、介護が必要となる原因疾患の第1位でもあります。本薬の虚血性脳血管障害の発症後4.5時間以内の患者に対する投与は、米国及び欧州の診療ガイドラインにおいて推奨され、標準的治療に位置付けられていることを踏まえ、検討会議では本要望について、医療上の必要性が高いと判断されました。
 少し飛び、24ページを御覧ください。公知申請の該当性についての記載があります。欧州で実施されたプラセボ対照無作為化二重盲検試験のECASS-III試験において、有効性・安全性が確認されております。また、このECASS-III試験を含む海外臨床試験のメタアナリシスの結果でも、発症後3時間以降4.5時間以内の患者に対する有用性が示唆されております。日本人に対しては、国内外で発症後3時間以内の患者に対する本薬の用量が異なるものの、海外では発症後3時間以内と発症後3時間以降4.5時間以内の患者に対して、同一の用法・用量が用いられており、国内でも発症後3時間以内の脳血管障害患者を対象とした臨床試験において、海外臨床試験と同様の結果が得られていること及び既承認効能・効果である発症後3時間以内の患者に係る使用成績調査において、発症後3時間以内の患者と用法・用量を変えることなく、3時間~4.5時間の患者に投与された例も確認されていることから、一定の有効性が期待され、許容可能な安全性が示されていると判断し得ると考えております。
 以上より、検討会議では、国内での使用経験は少ないものの、本薬の本邦における発症後3時間以降4.5時間以内の虚血性脳血管障害に対する有効性及び安全性は、医学・薬学上公知であり、26ページに用法・用量、効能・効果等を記載しておりますが、効能・効果は虚血性脳血管障害急性期に伴う機能障害の改善(発症後4.5時間以内)とすることが妥当、及び用法・用量は既承認の用法・用量と同一に設定することが妥当と判断しております。
 本剤については、これまでも日本脳卒中学会の協力により、適正治療指針の作成及び講習会実施等による治療指針の周知徹底がなされております。引き続き有効性・安全性についてのエビデンスを熟知した医師の下で、適正に使用されるよう、安全性確保に向けた方策を継続することが望ましいと考えております。また、添付文書ですが、3時間以内の注意喚起を遵守するということで、現在の記載と同等の記載で、適正使用がなされるものと考えております。アルテプラーゼについては以上です。
続けてプロプラノロール塩酸塩の説明をいたします。こちらは資料の31ページを御覧ください。日本頭痛学会、日本神経学会及び個人より、偏頭痛における頭痛発作の予防の効能・効果を追加する要望が提出されております。要望内容における医療上の必要性については、31~32ページに記載しております。偏頭痛は、発作発現中は仕事や家事等の日常生活に支障をきたすような苦痛を伴う慢性疾患です。また、国内では本剤とは作用機序の異なるロメリジン塩酸塩及びバルプロ酸ナトリウムが偏頭痛発作の予防での使用が認められておりますが、「診療ガイドライン」ではロメリジンよりもプロプラノールの方がエビデンスの評価及び推奨度が高いことなどを踏まえ、検討会議では、本要望について医療上の必要性が高いと判断されました。
 本薬は欧米等で既に偏頭痛の発作予防に対する適用を有しており、国内外ガイドラインにも、その有用性が記載されております。
 47ページ以降に記載しておりますが、国内で使用実態調査をした結果、本薬が偏頭痛発作の予防に対して使用されている実態が明らかになっております。これらを踏まえ、検討会議では、本薬の偏頭痛発作の予防に対する有効性及び安全性は、医学・薬学上公知であり、効能・効果は偏頭痛発作の発症抑制と設定することが妥当と判断されております。
 用法・用量については51、52ページに記載があり、ガイドラインや使用実態を踏まえ、通常成人にはプロプラノロール塩酸塩として1日20~30mgより投与をはじめ、効果が不十分な場合は60mgまで漸増し、1日2回あるいは3回に分割経口投与すると設定することが適切と判断しております。以上です。
○松井部会長 山本先生の御説明に関しまして何か御質問等はございますか。よろしいでしょうか。
 私から質問ですが、プロプラノロールの投与に伴って、脈拍の変化などはフォローする必要があるでしょうか。
○山本参考人 量の設定としまして、高血圧あるいは頻脈の治療有効域よりは少し少ない量で設定しております。使用実態調査の方からも、特にその点、この量で特段徐脈とか多く起こることは出ておりませんが、もちろん使用にあたっては血圧の低下あるいは徐脈については注意して使っていただく必要があると思っております。
○松井部会長 ありがとうございます。ほかに、山本先生に御質問はございませんか。成冨委員どうぞ。
○成冨委員 アルテプラーゼは、3時間以内使用の場合にいろいろな検査、例えば血小板がどれぐらい、血圧とか血糖とかいろいろな条件がありますが、それは全く同じで、4.5時間にただ延ばすというだけになるわけですね。
○山本参考人 はい。一応禁忌の項がありまして、そのほかに使用上の、特に注意して使う「慎重投与」の項目があります。出血のリスクの高い人ということで、「慎重投与」のところにほぼすべて書き込まれております。海外でも国によって、欧州は少し慎重な投与がありますが、アメリカでは同じような投与になっております。そこはどちらかというと、学会の「適正使用指針」の方で注意喚起をしていただくということで、よろしいのではないかと。添付文書レベルでは、現在の書き方を遵守していただくことで、安全性は保たれるのではないかという判断をしております。
○松井部会長 ほかによろしいでしょうか。では、引き続いて勝野先生、御説明をお願いいたします。
○勝野参考人 メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウムの公知申請の該当性に関して、検討会議での検討結果を説明いたします。医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議の精神神経ワーキンググループの座長をしております、名古屋大学神経内科の勝野でございます。
 まず、資料10の57ページを御覧ください。今回、日本神経学会より、多発性硬化症の急性増悪の治療の要望が提出されておりました。57~58ページにかけて、要望内容の医療上の必要性について記載しております。多発性硬化症は中枢性の脱髄性疾患の一つで、病気の進行が不可逆で、日常生活に著しい影響を及ぼすこと、またメチルプレドニゾロンは米国等で承認されており、海外ガイドラインなどから、海外で標準的療法に位置付けられていることを踏まえ、検討会議では、本要望について医療上の必要性が高いと判断しました。
 64ページから、無作為化比較試験の結果や、国内外の教科書、ガイドライン等の記載をまとめております。1日当たり500~1000mgが、おおむね共通して有効であるとされております。73ページから記載されている日本神経学会の使用実態調査によると、国内でも主に1日当たり500~1000mgの用量範囲で使用されていることが確認されました。安全性に関しては、既に知られている副作用を除き、重大な問題は認められないと考えられ、多発性硬化症の急性増悪に対して本剤を投与したときの有効性・安全性は、医学・薬学上公知であると判断されました。77ページの下のところで、効能・効果は、多発性硬化症の急性増悪としました。用法・用量については、78ページで、「通常、成人にはメチルプレドニゾロンとして1日500~1000mgを緩徐に静注又は点滴静注する。」と設定することが妥当と考えております。なお、国内外のガイドラインなどの最新の情報を参考に実施する旨、注意喚起することが適切であると判断しました。説明は以上です。
○松井部会長 勝野先生の御説明に対して、御質疑をお願いします。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、「その他事項」については、委員の皆様の御確認をいただいたものといたします。山本先生、勝野先生、誠にありがとうございました。
── 山本参考人、勝野参考人退室 ──
○松井部会長 審議事項に移ります。審議事項議題1について、機構から御説明をお願いします。
○機構 審議事項議題1、資料1「医薬品アイリーア硝子体内注射液40mg/mL及び同硝子体内注射用キット40mg/mLの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より説明いたします。
 はじめに、審査報告書の訂正が2点ございます。審査報告書59ページ、「2)VEGF阻害作用に関連する全身性の有害事象について」の項を御覧ください。下から5行目に「投与96週目までに認められたVEGF阻害作用に関連する全身性の有害事象は表50のとおりであり」と記載しておりますが、表50の表題にあわせて、「全身性の有害事象」の前に「主な」を追記させていただきます。
 また、審査報告書60ページ1行目に、「いずれも因果関係は否定されており」と記載しておりますが、審査報告書59ページ、下から4行目以降に記載した重度の事象のうち、本剤2mg/4週毎群の心筋梗塞1例は因果関係が否定されておりませんでしたので、この部分については「心筋梗塞1例(本剤2mg/4週群)を除き因果関係は否定されており」との記載に訂正させていただきます。大変申し訳ございませんでした。なお、これらの訂正による審査結果の変更はありません。
 説明に入らせていただきます。本剤の有効成分であるアフリベルセプトは、米国リジェネロン社で開発された新生血管増殖因子(以下、「VEGF」)阻害薬であり、ヒト免疫グロブリンG1のFcドメインにVEGF受容体の細胞外ドメインを結合させた組換え融合タンパク質です。海外において、本剤は2011年11月に米国、2012年3月にオーストラリア、2012年6月にコロンビアで承認されており、欧州では現在審査中です。本邦においては、2008年4月より臨床試験が開始され、今般、中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性に対する有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認申請が行われました。本申請の専門委員としては、資料12に記載されている9名の委員を指名しました。
 審査内容について、臨床試験成績を中心に説明いたします。既承認のラニビズマブでは1か月毎の硝子体内投与により視力改善効果が最も維持されることが知られていますが、硝子体内投与は注射手技による眼内炎のリスク等を伴うので、本剤はその投与回数を低減することを目的として開発されております。本剤の脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性に対する有効性及び安全性を検討するための第III相試験として、ラニビズマブ0.5mgを4週毎に投与する群を対照とした二つの臨床試験(VIEW1試験及び、VIEW2試験)が同一の試験デザインで実施されており、日本人患者は国際共同治験として実施されたVIEW2試験に参加しております。
 有効性について、審査報告書43ページ、表26を御覧ください。VIEW2試験において、本剤2mgを投与3回目まで、4週毎に1回、その後は8週毎に1回、硝子体内投与をした群では、主要評価項目である投与52週目に視力が維持された症例の割合について、ラニビズマブ群との群間差は-1.1%、その95%信頼区間は-4.8~2.6であり、95%信頼区間の上限はあらかじめ設定した非劣性限界値10%を下回ったことから、ラニビズマブ群に対する非劣性が検証されました。また、本剤0.5mgを4週毎に投与する群及び本剤2mgを4週毎に投与する群でも、ラニビズマブに対する非劣性が検証されており、日本人集団において全集団と同様の傾向が認められました。
 審査報告書39ページ、表20を御覧ください。VIEW1試験においても、VIEW2試験と同様に、本剤各群のラニビズマブ群に対する非劣性が検証されました。
 安全性について、審査報告書56ページ、表43を御覧ください。有害事象の発現頻度に本剤の用量依存的な傾向は認められませんでした。審査報告書58ページ、表46及び表47を御覧ください。第III相試験2試験において、本剤投与時の注射手技に関連性がある有害事象として、結膜出血、眼痛、眼圧上昇等が認められましたが、多くは軽度又は中等度であり、発現頻度はラニビズマブ群と同程度でした。また、眼内炎についても、ラニビズマブ群を上回るリスクは認められませんでした。
 次に、審査報告書60ページ、表50を御覧ください。第III相試験2試験において、VEGF阻害作用に関連する全身性の有害事象として、高血圧、出血、タンパク尿等が認められましたが、多くは軽度又は中等度の事象であり、本剤群とラニビズマブ群で大きな違いは認められませんでした。安全性について、日本人集団で全集団と異なる傾向は認められませんでした。なお、現時点では、本剤の安全性に類薬を上回るリスクは認められておりませんが、本剤はラニビズマブよりもVEGFに対する結合親和性が高いこと、硝子体内投与時の血漿中濃度のばらつきが大きいこと等を踏まえ、特に全身性の有害事象については今後も注視し、製造販売後調査において、引き続き検討する予定です。
 以上の審査を踏まえ、本剤を「中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢横斑変性」の効能・効果で承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本申請は1-(1)新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品に該当すると判断しております。なお、薬事分科会には報告を予定しております。以上です。よろしく御審議の程お願いいたします。
○松井部会長 委員の先生方から御質疑をお願いいたします。いかがですか。特にございませんか。加藤委員、どうぞ。
○加藤委員 製剤というか、最終的な投与形の問題、剤形の問題なのですが、例えば資料1.8のところに添付文書(案)があり、ここに、注射液とキットと両方2通りの製剤があるということなのです。この注射液の方は、注射用のシリンジが一緒についてくるようなのですが、投与量が50μL、非常に微量であり、30ゲージを使うということです。もちろん厳密に丁寧にやれば大丈夫なのでしょうけれど、ついてくるシリンジが1mLサイズの普通のサイズに近いような目盛りで、0.6とか0.8ぐらいまでの目盛りが入っているのです。説明はついてはいるのですが、それで0.05mLを取れというような指示なのです。もっと内径が細いようなシリンジを開発するようにして、もう少し投与量の精度を上げられるような工夫は、こういう大きい1mLサイズので0.05を取るというのは、何か精度が出ないとか、あるいは打ち間違いなどがあった場合に、これは打ち直してできるようなものではないと思いますので、その辺についてはどうなのでしょうか。これだと、自分の学生がこれを使っていたら、もっと細いマイクロシリンジに近いのを使えというように指導したくなるような形だと思うのですが、いかがでしょうか。
○機構 御指摘ありがとうございます。まず、バイアル製剤については、専用シリンジはついておりませんので、病院の方で準備していただいて1mLのシリンジを使っていただくことになると思います。既にルセンティスという類薬がバイアル製剤として承認されており、投与量も同じ容量になっております。非常に微量ですが、今のところルセンティスと同じように使用されるので大丈夫であろうということで、特段の手当てはなされていない状況です。ただ、本剤については、バイアル製剤だけでなく、キット製剤も開発されております。キット製剤ですと、注射針をセットして標線に合わせていただくことで、より簡便に使用いただけるのではないかと思っております。
○加藤委員 そういう意味で、キットの方がそういう問題点はないかと思うのですが、こちらのバイアル製剤の方は、どういうシリンジを使うべきかとか、あるいはシリンジをこれのために開発していただくとか、何か指導は要らないのかと思いました。
○松井部会長 いかがでしょうか、指導に関してですが。
○機構 ありがとうございます。今のところ、バイアル製剤を使用する際の専用シリンジの開発は考えてはいないようです。本剤においては、キット製剤を開発することで簡便に使用できるという部分を、担保しているところもあると思います。御指摘の点については、申請者に指導させていただきたいと思います。
○機構 補足説明させていただきます。現状といたしまして、御指摘の点は既承認のルセンティスという製剤でも、同じような議論が専門協議からずっと繰り返しなされておりました。ただ既承認の製剤はバイアル製剤しかなかったのですが、本剤ではその点を踏まえて、キット製剤が開発されたという経緯があります。
 一方で、バイアル製剤については、今説明させていただいたように、既承認のルセンティスと同じような使い方にはなると思うのですが、実際に採液するためのシリンジが、1mLのシリンジよりも小さなものが市場にはないのが現状です。御指摘の点は、例えば今後は硝子体内投与の製剤のために、そういったより低容量を採取可能なシリンジを開発する必要があるとのことかと思うのですが、我々としては、むしろキット製剤として販売してほしいということを中心に、企業には指導させていただいております。したがって、ご指摘のような懸念のある施設においては、キット製剤の方を使っていただけるような形で、お願いしたいと思っています。
○松井部会長 キット製剤の使用を勧奨するということですね。ほかにございますか。
○本橋委員 今回の結果から、類薬との非劣性というのはよく分かったのですが、結果が、例えば表26を見ますと、ほとんど100%視力が維持されていますね。ということは、プラセボだとどれぐらい落ちてしまい、その差はどれぐらいあるのか。これだけだと分からないものですから、教えていただけますか。
○機構 機構より説明いたします。審査報告書の44ページにBCVAスコアのベースラインからの変化量を載せており、投与により上に上がっていく結果となっています。ルセンティスの承認時には、プラセボであるsham群を置いた比較試験を実施しており、sham群ではBCVAスコアの変化量としては下に下がっていく結果になっており、悪化してしまう例が非常に多くなることになります。ルセンティスの試験では、sham群ですと、平均として15文字以上悪化しています。申し訳ありません、カテゴライズしたもので、今96%と示している辺りがshamではどの程度か、すぐに出てこないのですが、この結果からですと、本剤投与によりBCVAスコアが改善することが、shamとは傾向が違うことを示しております。
○本橋委員 ただ、ここでは維持された割合となっておりますから、改善されたものとの比較結果は分かりませんね。
○機構 補足させていただきたいと思います。御指摘の点については、実はこのAMD、加齢黄斑変性症に関しては、元々その視力が進行性に低下する、将来的には社会的失明に至るという疾患です。既に承認されているルセンティスについては、sham投与といって、注射の針だけを当てるような、いわゆる事実上治療しないような群との比較を行っています。それについては、先ほど説明させていただいたように、大体半年間で、平均で15文字ぐらい視力が悪化してしまうような状況です。したがいまして、そのsham群に対する比較試験は、倫理的にも今なかなか実施できない状況です。ルセンティスは視力の改善を示した初めての薬剤でしたので、従来は視力の維持を目的に治療されてきた経緯があります。本剤の開発においては、最初に説明させていただきましたように、ルセンティスの4週毎の投与と同じぐらいの効果が、8週毎の投与で得られないかということを主眼に開発されております。したがって、ルセンティスの臨床試験で実施された当時の視力の維持をエンドポイントにおき、それに対する非劣性を検証するような試験デザインになっております。
○松井部会長 山田委員どうぞ。
○山田委員 副作用についてお伺いします。手技あるいは眼の炎症と、その全身性の副作用との関連性については何かあるのでしょうか。
○機構 機構より説明いたします。注射手技等の関連性については、本剤の投与手技なのか、本剤を投与するその薬物のものなのかが基本的には分けられない状態です。手技なのかというところは分けられないのですが、基本的に全身性のものについては、手技とは関係なく、全身に移行することによる影響というものを見ているものと思っております。
○山田委員 例えば、手技が少しうまくないことがあった場合には全身性の副作用が起きやすくなるとか、そういったことは分かっているのでしょうか。
○機構 機構より説明いたします。今のところ因果関係のあるVEGF阻害作用に関連する全身性の有害事象というものは、とても少ない状況です。注射手技に伴う有害事象については頻度が高く発現しておりますが、全身性の有害事象で因果関係があるものはあまり上がってきていない状況です。
○山田委員 分かりました。もう1点、審査報告書の4ページに、販売名について、当初の案から、40mg/mLに変更したと、下から3行目に記載があります。類似品の先行のルセンティスの場合には、2.3mg/0.23mLと書いてありますので、このリスクマネージメントの観点からというのが、少し商品間で統一性がないように感じるのです。この点、今後はこの濃度で記載していく方向性になるのでしょうか。
○機構 御指摘ありがとうございます。こちらの点については、基本的には一つの製剤に入っている含量を記載することが一般的となっており、本剤についてもそうするべきであったと思うのですが、今回はキット製剤とバイアル製剤があり、濃度は変わらないのですが、含量が変わってきてしまいます。表示される含量が異なると紛らわしいといいますか、投与量が変わるのではないかという誤解を生むことを懸念し、製剤間では統一した方が良いということで、本剤については濃度で記載させていただくこととしております。
○山田委員 分かりました。
○松井部会長 ほかにはいかがですか。御意見も尽きたようですので、議決に入ってよろしいでしょうか。
 野田委員、山田委員におかれましては利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮ください。
 本題の議題に対して、承認を可としてよろしいでしょうか。
ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告いたします。
 それでは議題2の御説明をお願いいたします。野田委員におかれましては、議題2の審議の間、別室で御待機していただくこととします。
── 野田委員退室 ──
○機構 審議事項議題2、資料2「医薬品アイミクス配合錠LD及び同配合錠HDの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より説明させていただきます。
審査報告書の3ページを御覧ください。本剤は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬であるイルベサルタンとカルシウム拮抗薬であるアムロジピンベシル酸塩を有効成分とする配合剤です。これら二つの有効成分は、いずれも降圧剤として既に承認されております。
 本剤の開発は、2008年から大日本住友製薬株式会社により開始され、今般、国内臨床試験成績等を基に、イルベサルタン100mgとアムロジピン5mgの配合錠、及びイルベサルタン100mgとアムロジピン10mgの配合錠の承認申請がなされました。なお、審査報告書では、イルベサルタンの用量を「I」というアルファベットで、アムロジピンの用量であることを「AML」あるいは「A」というアルファベットで示しております。また、本配合剤の海外での承認や申請などはなされておりません。
本剤の審査につきまして、専門委員として資料12に記載されております委員が指名されました。
 本品目の審査の概略について説明させていただきます。有効性について審査報告書17ページの表4及び表5を御覧ください。上の表4が主要評価項目の収縮期血圧の成績、下が副次評価項目の拡張期血圧の成績を示しています。本治験では、イルベサルタン100mg単剤で効果不十分な高血圧症患者を対象に、2.5mg~10mgのアムロジピンを追加投与する並行群間比較試験とされ、有効性の主要評価項目である収縮期血圧と副次評価項目の拡張期血圧のベースラインからの変化量について、いずれの用量のアムロジピンを併用した場合でも、イルベサルタン単独群と比べて有意かつ用量依存的な血圧低下が認められました。
 次に、審査報告書19ページ、表7と8を御覧ください。こちらの試験は、アムロジピン5mgで効果不十分な高血圧症患者を対象に、50~200mgのイルベサルタンを追加投与する並行群間試験です。いずれのイルベサルタンの併用群でも、アムロジピン単剤と比べ有意な血圧低下が認められました。なお、イルベサルタン100mgまでの用量では用量依存的に血圧が低下しましたが、イルベサルタン100mgと200mgでの間では降圧効果に差が見られませんでした。これら2試験の成績から、イルベサルタン100mgとアムロジピン5mgの組合せは、各単剤を上回る効果が示され、イルベサルタン100mgとアムロジピン10mgの組合せは、100mgと5mgの組合せを上回る効果が示されたと判断しました。
 安全性については、審査報告書18ページの表6及び20ページの表9に示しますように、各臨床試験において、併用群で単独群と比べ特に発現率が高くなる有害事象は認められず、また、各単剤で懸念される副作用は、両剤を併用することで増悪する傾向も認められませんでした。したがって、現時点では各単剤の添付文書と同様の注意喚起をすることで差し支えなく、本剤の承認の可否に影響するような安全性に関する重大な懸念は認められないと判断しました。
 続いて、本剤の配合意義について御説明します。審査報告書22ページ中段を御覧ください。イルベサルタンとアムロジピンの併用は、各単剤より高い降圧効果が期待できるということが示されたこと、また、安全性について大きな懸念を示すデータはないことから、両剤を同時投与することに科学的合理性が認められ、国内外の高血圧治療ガイドラインで推奨されているARBとカルシウム拮抗薬の併用療法の選択肢を配合剤という形で提供することには意義があると判断しました。
 本剤の臨床的位置付けと用法・用量につきましては、審査報告書31ページ、32ページを御覧ください。まず、本剤のようなARBとカルシウム拮抗薬の配合剤は、既に本邦で4剤承認されておりますが、それらの配合剤はいずれも高血圧治療の第一選択薬としては用いないとされておりますことから、本剤もそれらの配合剤と同様、高血圧治療の第一選択薬としては用いるべきでないと考えます。
 次に、各用量の位置付けになります。まず、イルベサルタン100mgとアムロジピン5mgの製剤、配合錠でいいますとLDとなっている製剤です。こちらは各単剤を上回る効果が示されたことから、両単剤を併用している場合の切り替えや、各単剤で効果不十分な場合からの切り替えが主な使用法であると考えます。こちらが審査報告書32ページの中段、「用法・用量に関連する使用上の注意」の2.で、その旨を記載しています。続いて、イルベサルタン100mgとアムロジピン10mgの組合せ、HDの製剤につきましては、100mgと5mgの組合せを上回る降圧効果が示されたことから、基本的にはイルベサルタン100mg、アムロジピン5mgから、さらに効果不十分な場合に増量する用量の配合剤として臨床現場に提供することが妥当と判断しました。その記載が「用法・用量に関連する使用上の注意」の3.の記載となっています。ただし、アムロジピン10mg単剤に対してイルベサルタン100mgを併用したときの有効性が上回るということを、今回明確に示した臨床成績が得られていないこと、イルベサルタン100mgにアムロジピン10mgを上乗せしたときの有効性は試験によって示されたものの、イルベサルタン100mgにアムロジピンを併用する際の用法・用量として、いきなりアムロジピン10mgという高用量を投与することが推奨できないことなどから、10mgと100mgの製剤については各単剤での効果不十分な場合からの切り替えには推奨できないと判断しました。以上を踏まえ、審査報告書32ページに記載しております「用法・用量に関連する使用上の注意」の記載が適当であると判断しました。
 製造販売後調査については、審査報告書32ページの下段を御覧ください。使用実態下における長期投与時の安全性及び有効性を確認することを目的に、高血圧症患者2000例を対象とした使用成績調査が計画されております。本調査において、臨床試験において投与経験が限られている75歳以上の高齢者、腎機能、肝機能障害患者などにおいての安全性などを情報収集する予定です。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会において御審議いただくことが適切であると判断しました。本剤は劇薬に該当し、生物由来製品又は特定生物由来製品には該当せず、再審査期間は4年とすることが妥当であると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いします。
○松井部会長 委員の先生方から御質疑をお願いします。配合剤に関しては何回かディスカッションしてきたと思います。御意見はありませんか。御質疑がないようですので、議決に入ります。山田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮ください。それでは、本議題につきまして承認を可としてよろしいでしょうか。
どうもありがとうございます。承認を可として薬事分科会に報告いたします。
 次は、議題の3です。成冨委員におかれましては、議題3の審議の間は別室で待機いただくこととします。機構から説明をお願いします。
── 野田委員入室、成富委員退室 ──
○機構 審議事項議題3、資料3「医薬品プラビックス錠25mg、同錠75mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」医薬品医療機器総合機構より御説明申し上げます。
審査報告書3ページ下を御覧ください。本剤の有効成分であるクロピドグレル硫酸塩は、フランスのSanofi社が創製したチエノピリジン系抗血小板薬です。海外では米国、EU加盟国等を含む多くの国又は地域で承認され、末梢動脈疾患治療における標準薬と位置付けられております。本邦では、2006年1月に「虚血性脳血管障害(心原性脳塞栓症を除く)後の再発抑制」を効能・効果として承認され、その後、2007年10月に「経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞)」の効能・効果が、2011年12月に「経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される安定狭心症、陳旧性心筋梗塞」の効能・効果がそれぞれ追加承認されています。また、先月の本第一部会にて御報告いたしました「経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用されるST上昇心筋梗塞」の効能・効果が8月24日に承認されました。
 今般、国内臨床試験成績等を基に、「末梢動脈疾患における血栓・塞栓形成抑制」の効能・効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。なお、本剤の「末梢動脈疾患のアテローム血栓症イベントの抑制」の開発については、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議にて医療上の必要性が高いと判断され、厚生労働省より開発要請が出されております。本品目の審査に関しまして、専門委員として資料12に記載されております委員が指名されました。
 審査の概略について、国内第III相試験の成績を中心に御説明いたします。審査報告書4ページ下を御覧ください。日本人末梢動脈疾患患者を対象とした国内第III相試験は、本薬又は類薬のチクロピジン塩酸塩を12週間投与する第1期と、第1期から継続して本薬をさらに40週間投与する第2期からなる安全性を主要評価項目とした試験です。
 まず、有効性について御説明いたします。審査報告書6ページ、図1を御覧ください。有効性の評価項目は第1期における初発の「脳梗塞、心筋梗塞、その他の心血管死の複合エンドポイント」の発現までの時間とされ、第1期での累積発現率をKaplan-Meier曲線で示すと、図1のとおりでした。第1期の最終評価時における初発の「脳梗塞、心筋梗塞、その他の心血管死の複合エンドポイント」の累積発現率は、本薬群で0%、チクロピジン群で0.9%でした。
 続いて、安全性について御説明いたします。審査報告書10ページ、図7を御覧ください。安全性の主要評価項目は、第1期における初発の「治験薬との因果関係が否定できない重大な出血、血液障害、肝機能障害、その他の重篤な副作用の複合エンドポイント」の発現までの時間とされ、第1期での累積発現率をKaplan-Meier曲線で示すと、図7のとおりでした。第1期の最終評価時における初発の「治験薬との因果関係が否定できない重大な出血、血液障害、肝機能障害、その他の重篤な副作用の複合エンドポイント」の累積発現率は、本薬群で2.4%、チクロピジン群で13.6%であり、群間に有意差が認められました。
 以上の試験成績に加え、国内外のガイドラインの記載状況や海外で実施された大規模臨床試験の成績等も踏まえ、本薬は、類薬のチクロピジン塩酸塩と同様の位置付けで、日本人末梢動脈疾患患者における治療薬となり得ると判断いたしました。
 効能・効果については審査報告書48ページの「(4)効能・効果について」を御覧ください。本薬の国内臨床試験の対象や試験成績に加え、本薬の作用機序や海外の臨床試験の成績等も考慮し、本薬の効能・効果を「末梢動脈疾患における血栓・塞栓形成の抑制」とすることが適切と判断いたしました。
 本薬の出血リスクについては、審査報告書49ページの「1)出血リスクについて」を御覧ください。国内第III相試験における出血性有害事象の発現状況から、本薬の日本人末梢動脈疾患患者への投与時に、チクロピジンと比較して臨床的に問題となるほどの出血リスクの増大が見られる可能性は高くなく、長期投与における出血リスクも臨床的に許容可能な範囲であると判断いたしました。また、国内第III相試験で出血性有害事象の発現リスクが高まる可能性が示唆された高齢者及び脳梗塞の既往・合併を有する患者に対し、添付文書では既に出血性有害事象の発現リスクについて十分な注意喚起がなされており、新たな注意喚起を行う必要はないと判断いたしました。
 製造販売後の調査計画等については、審査報告書50ページの「(7)製造販売後調査等について」を御覧ください。製造販売後調査では、出血リスクを増大させるような薬剤と本薬を併用したときの出血に関する有害事象や、本薬を減量投与した患者に関する情報について収集する必要があると判断いたしました。申請者は、これらの情報を適切に収集できるような症例数を既存のデータ等から見積った上で、調査目標症例数を□□□例とした製造販売後調査の計画を提出しております。情報収集する項目も含め、申請者の方針は妥当と判断いたしました。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤の再審査期間は4年とすることが適当であると判断しております。また、薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○松井部会長 機構からの説明について、御質疑をお願いいたします。いかがでしょうか。よろしいですか。特に御意見、御質問がないようですので、議決に入ります。なお、野田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただきます。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
ありがとうございます。異議なしと認め、承認を可として薬事分科会に報告いたします。
── 成富委員入室 ──
○松井部会長 次に、議題4について、機構から概要を説明してください。
○機構 審議事項議題4、資料4「医薬品トレシーバ注フレックスタッチ及び同注ペンフィルの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より御説明申し上げます。
本剤は持効型インスリンアナログであるインスリンデグルデク(遺伝子組換え)を有効成分とする1日1回投与の注射剤です。申請者が製造販売している持効型インスリンアナログの有効成分であるインスリンデテミル(遺伝子組換え)の構造の一部を変更することにより、投与後に皮下組織で6量体が多数連なった構造として存在し、単量体が徐々に解離することで、既存の持効型インスリンアナログ製剤より作用の持続時間が長く、安定したプロファイルを持つことを期待されて開発された薬剤です。
本邦では、持効型インスリンアナログとして、インスリングラルギン(遺伝子組換え)を有効成分とするランタス注が2003年10月に、インスリンデテミル(遺伝子組換え)を有効成分とするレベミル注が2007年10月に承認されています。本剤については、2012年6月現在、欧州、米国及びその他8か国で審査中です。
本品目の専門協議では、資料12に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。
以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。有効性については、審査報告書56ページの表39を御覧ください。1型糖尿病患者を対象とした国際共同第III相試験である3585試験の主要評価項目とされたHbA1c変化量について、IDet群と表記しましたインスリンデテミル群に対する本剤群の非劣性が示されました。次に、60ページの表46を御覧ください。2型糖尿病患者を対象とした国際共同第III相試験である3586試験においても、主要評価項目とされたHbA1c変化量について、IGlar群と表記したインスリン グラルギン群に対する本剤群の非劣性が示されました。
 安全性については、日本人が参加した国際共同治験における有害事象及び副作用の発現状況、83~93ページに記載しましたように、低血糖、アレルギー反応、注射部位反応、新生物、心血管系リスク等の個別の事象について検討した結果などから、本剤の安全性は許容可能と判断いたしました。
 製造販売後調査については、113ページの「(6)製造販売後調査について」の項に記載しましたように、低血糖症、注射部位反応等の安全性に関する情報や、他のBasalインスリンから本剤への切り替え時や本剤の投与タイミングを変更したときの安全性及び有効性に関する情報が収集される予定です。
 以上のとおり、機構での審査の結果、「インスリン療法が適応となる糖尿病」を効能・効果として、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会で審議されることが適当と判断いたしました。なお、本剤は新有効成分含有医薬品であるため、再審査期間は8年、原体及び製剤ともに劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○松井部会長 委員の先生方から御質疑をお願いいたします。野田委員、お願いいたします。
○野田委員 これは1日1回投与ということですが、血中の薬物濃度の持続時間が長いことから、以前は週に3回投与するなどといった方法も検討されたことがあったと思うのですけれども、それに関してはいかがでしょうか。
○機構 機構よりお答えいたします。御質問ありがとうございます。開発中の過程においては、先生が言われたように週3回投与が海外で検討されていますが、低血糖の発現が高くなってしまっていることも関係していると思うのですけれども、本邦でも海外においても、承認申請はそのような用法ではされておりません。
○松井部会長 よろしいですか。ほかにはいかがでしょうか。特にないようですので、議決に入ります。なお、野田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただきます。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告いたします。
 続きまして、議題5に移ります。機構から概要を御説明ください。
○機構 審議事項議題5、資料5「医薬品ディアコミットドライシロップ分包250mg、同ドライシロップ分包500mg及び同カプセル250mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
本申請の対象疾患であるDravet症候群は薬剤抵抗性で、けいれん発作が消失せず継続し、けいれん重積も起こしやすいため、長期予後が不良で、死亡率が16~19%とされている難治の疾患であり、本邦における患者数は約3,000~6,000人と推定されております。本剤の有効成分であるスチリペントールはフランスのBiocodex社で開発された芳香族アリルアルコールであり、海外で1970年代より様々なてんかん及びてんかん症候群に対し、GABA受容体への作用を介した治療効果が検討されてきましたが、2007年1月に欧州において、Dravet症候群に対するクロバザム(CLB)及びバルプロ酸ナトリウムとの併用療法の適応で承認されました。
 なお、欧州においては製造販売後臨床試験を実施するとともに、1年毎にその内容を見直す条件付き承認という形で承認されております。本邦においては、2007年7月に開催された未承認薬使用問題検討会議において早期に治験が開始されるべきとされ、2010年4月から臨床試験が開始されました。今般、有効性及び安全性が確認されたとして製造販売承認申請が行われております。なお、本剤は2010年2月に未承認薬開発支援事業による開発支援品目に選定されております。
本申請の専門委員として、資料12に記載されております9名の委員を指名しております。
 審査内容について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。まず、有効性についてですが、審査報告書48ページからを御覧ください。国内臨床試験として、クロバザム及びバルプロ酸ナトリウムを併用している日本人Dravet症候群患者を対象とした非盲検非対照試験が実施されました。49ページ中ほど、表23の下の段落に記載しておりますが、「初めて本剤が投与される1歳以上18歳以下の患者」、審査報告書の表の中では「解析対象1」と表示しておりますが、これらの患者集団における9~12週のレスポンダーの割合は65.0%であり、海外で実施されたプラセボ対照試験と同程度の有効性が示されました。また、49ページ表24にお示しておりますが、長期投与期においても間代発作及び強直間代発作の発作発現回数は、40週まで減少したまま維持されております。
 次に、安全性について説明させていただきます。審査報告書58ページからを御覧ください。国内外臨床試験においては、58ページ表32に示しておりますが、傾眠、61ページ表35に示している食欲減退などの有害事象が高頻度に認められております。しかしながら、傾眠、食欲減退といった有害事象は、併用しているクロバザム及びバルプロ酸ナトリウムによっても高頻度に発現する有害事象です。したがって、これらの有害事象の多くは本剤又は併用抗てんかん薬の減量や時間経過によって改善することが確認されております。また、60ページ表34に血液障害に関しての有害事象を示しておりますが、こちらに関しても定期的に血液検査を行うことで管理できると考えられております。
 審査報告書73ページの(8)製造販売後調査の計画を御覧ください。国内外臨床試験及び海外製造販売後調査において、現時点では本剤による安全性上の大きな問題は認められておりませんが、非臨床試験において、本剤が呼吸器系及び心血管系に対して影響を及ぼす可能性が示唆されていること、国内外臨床試験で検討された症例数は非常に少数で限られており、海外製造販売後においても十分な安全性情報が集積しているとは言い難いことから、製造販売後には投与患者全例を対象とする使用成績調査を実施することが必要と考えております。
 以上の審査を踏まえ、製造販売後の全投与症例を対象とした使用成績調査の実施を承認条件として付した上で、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は新有効成分含有医薬品であり、再審査期間は希少疾病用医薬品であることから10年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。なお、薬事分科会には報告を予定しております。以上でございます。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○松井部会長 委員の先生方から御質疑をお願いいたします。
○豊見委員 審査報告書7ページにきちんと書いてはあるのですが、用量を漸増させていったりする場合、250と500の分包の残薬廃棄ということになりますね。その辺の使用法が添付文書にないのではないかと思うのです。添付文書だけを見たときに、水に溶いたものを2分の1とか4分の1服用するというのはありますか。
○機構 添付文書にはそこまで具体的なものは記載しておりませんが、資材には服用方法を詳細に記載しておりまして、対象の患者さんに説明しております。
○松井部会長 パンフレットのようなものに書くということだそうです。
○豊見委員 少し不親切だと思います。それを添付文書に使用上の注意ということで記載するわけにはいかないのでしょうか。
○機構 本剤については、体重1kg刻みで投与量を設定する必要があります。そのため体重1kgずつの投与量と、併せて具体的な服用の方法を記載することが必要と考えておりまして、添付文書ではスペースも限られているということもありますので、具体的な図等を用いまして、資材の方で説明をさせていただきたいと考えております。
○松井部会長 今、捨て方もおっしゃられていましたね。
○豊見委員 はい。いろいろな部分で、添付文書だけ見ていたのでは、体重で漸増させていくときに、当然廃棄が出ることさえも理解できないのです。必ず水に溶くということも書いていないですね。このまま飲めるのかとか。
○機構 添付文書では、記載場所が「適用上の注意」のところで、1.8の4ページに、「ドライシロップ剤」の適用上の注意というのを記載しております。左側の下の9.に「適用上の注意」の記載があります。こちらの2)に、「用時調製の製剤であるので、調製後の保存は避け、水に懸濁した後は速やかに服用するよう指導すること」ということでは記載しております。
○豊見委員 4ページの「適用上の注意」のところですね。
○機構 はい。
○豊見委員 ここに「包装に入れた状態で保存し、服用時に開封するよう指導すること」、用時調製の製剤であるのでということで、普通、ドライシロップというのは粉のまま服用する場合もあろうかと思うのですが、この製剤に関しては粉のまま服用することは考えられていないのでしょうか。
○機構 おっしゃるとおりです。
○豊見委員 そうだとすると、常識的にはそれを書いておかないとまずいのではないでしょうか。
○機構 溶解の必要性については、「適用上の注意」の記載をもう少し改めまして、用時溶解する旨を加えたいと考えております。また、廃棄に関しては、この中で「調製後の保存は避け」というところで一定の注意喚起はしているものと考えております。この薬剤は分包をうまく体重に合わせて溶解するということで、使用するときにどのぐらいの量を服用するかなど細かく情報提供する必要がありますので、その中で溶解後の廃棄などといったことを周知徹底できるようにしたいと考えております。
○松井部会長 第一線の薬剤師さんの御意見ですので、どうか今後の参考にしていただければと思います。
○豊見委員 加えまして保険上の点からも、病院では注射で残薬廃棄というのは割とあることだと思うのですが、薬局の薬剤師は残薬廃棄というのに慣れていないのです。その辺もパンフレットか何かで注意していただけたらと思います。
○機構 ありがとうございます。分かりました。
○松井部会長 そのほか何かあればお願いいたします。
○古川委員 この薬を併用すると、クロバザムの血中濃度が非常に上がるということで、作用機序は一体何なのかという一つ分からない点があるのですけれども、これを高用量に上げることが一つの作用機序です。71ページにあるように、欧州で審査したときに、この薬を併用した場合とクロバザムを非常に高用量でやった場合の比較検討試験が必要だろう、ということが書いてありまして、ただし、会社側からは症例数が非常に少ないからと。確かにこういう患者さんというのはそんなにいるものではないし、いても非常に重いというのはよく分かるのですけれども、日本もそのような試験をしなくていいことになったようですが、その辺の御意見をお聞かせいただきたい。
○機構 御指摘ありがとうございます。確かに、クロバザムの血中濃度が上がるというのが、作用機序の一つであると考えられております。ただ、御指摘にもあったように、患者数が非常に少ない希少疾患ですので、現時点では本剤を医療現場に迅速に提供することが、まず重要と考えております。また、患者数が非常に少ないことから、これ以上の試験の実施もかなり困難な状況にあると考えられますので、現時点ではこれ以上の検討を求めるということは考えておりません。
○松井部会長 第1の御質問については、よろしいですか。
○古川委員 しようがないでしょうね。症例が少ないから検討するのは難しいというのは、ヨーロッパと同じ考えですね。そういう話なら、それはそれでしょうがないかもしれません。
 それからもう一つ、62、63ページに、身長や体重が伸びないということがありました。食欲がなくなるから云々ということで、体重はそれでもいいのですが、63ページの身長の流れを見ると、最初は50パーセンタイルにあったのが、6、7年使うと、10パーセンタイルになっています。5、6年使うと身長も伸びてくるので、その年齢に合わせての身長ですから、最初50パーセンタイルが10パーセンタイルになったのは、病気のせいもあるけれども、薬のせいもあると書いてあります。これをもう少しはっきりさせるためには、今までこういう症例は、歴史的に見るとそれなりにあるわけですから、この薬を使う前に、例えば7歳とか6歳の子どもの身長はどのぐらいだったのか、あるいは2歳ぐらいの子どもの身長はどのぐらいあったのかというのと比較していただくと、50パーセンタイルが10パーセンタイルになったのが、病気のせいなのか、薬のせいなのかというのがもう少し分かると思うのです。10パーセンタイルになるというのが、仮に薬のせいということになると、注意事項としてかなり喚起しなければいけないことだと思うのですが、薬を使っていない、症例に入っていない、何かそういう資料を出していただいた方がよろしいのではないかと思います。
○機構 確かにDravet症候群自体、疾患の特性上、通常の小児よりも成長が抑制される可能性がありますので、御指摘のように薬剤のせいであるのか、疾患の特性のせいであるのかは分からないところがあります。製造販売後調査においては、身長や体重と本剤との関係の調査はいたしますが、薬剤が全く投与されていないDravet症候群の患者さんというのは、実質的にはいらっしゃらないというのが現状だと思います。
○古川委員 この薬剤を投与していない方ということですよ。バルプロ酸や、他の薬剤を投与した、あるいは昔はずっとそうやっていたわけですから、この薬を併用しない症例をいくつか出していただくと参考になったのではないかということです。薬剤を使っていない方とは言っていません。
○機構 先生の御指摘の内容は我々としても理解しておりまして、製造販売後調査の中では、Dravet症候群にスチリペントールが投与された患者さんの長期的な成長のデータを取りたいと考えております。御指摘いただいたとおり、ヒストリカルなデータなどでDravet症候群、特に日本人でのDravet症候群で、これまでの成長というのがどの程度であったのかというものと比較して、製造販売後調査のデータが得られた時点で、成長への影響については再度検討し、注意喚起の必要性などについて検討したいと考えます。
○松井部会長 仮に市販後調査ということであれば、症例数もそれほど多くないので、例えば骨年齢や成長ホルモンがどれぐらい出ているかといったようなことも、小児内分泌の専門の先生に御相談されるとよろしいかと思います。
○機構 ありがとうございます。調査票の作成の際に検討したいと思います。
○松井部会長 そのほか何かあればお願いいたします。
○豊見委員 カプセルの包装の件で、ここにもきちんと指摘はあるのですが、これはもう使いようがないですね。60カプセルで分包して2週間ということは、どうしろという話になろうかと思うのです。現実にこれだけ少ない患者さんの薬を、このようにバラで出されてしまって、残りはどうするのですか。そして、2週間しか投与できないわけですね。アメリカなどではこのようなボトルでお渡して、何カプセルずつお飲みくださいという調剤が主だろうと思うのですが、日本では何日分という形で出るわけですので、どうやっても半端が出るわけです。そうすると、分包する以外に、ほかの瓶を提供していただいて、その瓶に入れて出すのか、投与の仕方ができないと思うのですが。
○機構 審査報告にも記載しておりますけれども、これが実際に臨床現場に出たときに、分包剤も含めてカプセル剤をどのように患者さんに提供するのかについては、申請前の段階から申請者と何度も議論を重ねてきました。申請者の主張としては、例えばこのようなボトルを患者さんに合った適当な量を渡す形で対処したいという説明がありまして、我々としてもそこはできればもっと使いやすい包装を、ということを求めてはきました。一方で、この品目は日本での開発要請に基づいて、MeijiがフランスのBiocodex社から持ってくるという開発をしておりまして、基本的に日本でのニーズを十分に主張できないところがあったということと、Biocodex社というのもそれほど大きな会社ではありませんので、日本のそうした需要というものが分からないということで、そこのところがなかなかうまく開発できなかったということがあります。
 また、そういった包装形態を待っていることで、この薬剤を臨床現場に提供するのが遅れるというのも望ましくないと考えましたために、現場の先生方にとって十分に納得のいくものではないのかもしれませんけれども、現時点ではこういったボトル包装でカプセルを供給するということで承認し、この後、日本の臨床現場でのニーズに合わせたいろいろな要望に基づいて、さらに開発の必要性を会社に検討していただきたいと考えております。
○豊見委員 これは開けて投薬をした後、この残りはいつまでもつのですか。
○機構 密封できるファスナー式のような袋に入れた状態で、2週間までの安定は確認しております。
○豊見委員 そうなると、これは開けてしまうと2週間で使えなくなるということですか。
○機構 現時点では、我々としてはそれよりも長い期間を推奨できない状況です。開封後の安定性試験の中身も、これが申請された中で会社の方に検討を求めたので十分なものではありませんから、現場での使い方をよく考えた安定性試験などを実施した上で情報提供するよう、こちらとしても指導したいと考えております。
○松井部会長 どうでしょうか。今の問題について、成冨委員からお願いいたします。
○成冨委員 抗てんかん薬は古くから長期投与が許されておりまして、100日間投与という処方が出されることも少なくありません。この薬剤が認可された当初は新薬だという理由で2週間という縛りがくるのかもしれませんけれども、ただ今指摘されたような問題があることを考えると、新薬だから何でも2週間で縛るというのも、馬鹿げた話ではないでしょうか。いずれにしろ、1年経ったら2週間以上の投与が可能になるのでしょうから、例えば特別処置として、最初から2週間という縛りは取るという措置をするべきではないでしょうか。
○松井部会長 例えばこのケースの中には、体重が10kgなら10kgの子どもの何日分服用できる量の薬剤が入っていて、処方ができるのか。一度開けたら2週間で使えなくなるとすると、患者さんはそれだけ頻繁に病院を訪れたりしなければいけないのではないかと思うのですが、どうでしょうか。私の質問はその辺の現実的なところを詰めておかないで、今日ここで承認してしまっていいのかどうか、という委員の皆さんの総意というか、御意見であるのではないかと思うのです。
○機構 どうしても新薬は2週間処方になりますので、2週間処方量に合った形のカプセル剤というものを、ボトルとしてはいくつかの数を処方していただくことになるだろうと考えております。この薬は基本的に小児が主なターゲットになりますので、カプセルよりも、むしろドライシロップの方が多く供給されるものと考えておりまして、ドライシロップだけでも現場に提供する意義はあると思っております。また、カプセルの包装に関しては、どのようなことができるかということを、さらに会社にも考えさせたいと思いますので、そのような形で、是非とも御検討いただければと考えております。
○松井部会長 いかがでしょうか。これでいいとは、なかなか言えませんが。
○豊見委員 法律上、最初は2週間しか投与できないのだとしたら、それはそれで構わないのですが、この形態では患者さんによって違う量、例えば10歳を少し過ぎた方ならば、そろそろカプセルが飲めるということになろうかと思いますが、投与した後の残りをどうするのかという話もあるわけです。むしろ、患者さんは2週間で飲むのだからいいのです。しかし、これには60カプセル入っているわけで、ちょうど一瓶渡すわけではないですから、瓶の中に残ったままで調剤室にあるものはどうなるのか、という話なのです。これは普通のこういう包装にしていただかないと、多分日本では使えないのではないかと私は思っております。
○審議役 機構より御説明させていただきます。非常に多くの患者さんに使われるお薬ならば、今のような話は申請者側に包装形態について指導して、より適切に配付できるような形態で御審議をお願いするところではありますが、先ほど事務局から説明しましたように、これまで薬が開発できなくて、未承認の会議においてようやくこの薬の必要性が高いこと、かつ開発要請をかけたわけですが、実際の薬については、フランスの小さな会社が、今のところはこの形態でしか出せないという状況にあるわけです。そのような中、我々としても苦渋の選択ではありますが、この形態で御審議をいただいたということです。ただ、先生方の御指摘のとおり、例えば無駄な薬剤が出ないようにするとか、あるいは廃棄については現場が混乱しないようにもっと情報提供すべしといった御意見については、申請者側に伝えて、できる範囲のことをやらせていただきたいと思います。それで御容赦いただければと思います。
○成冨委員 法律だからしようがないというお話ですが、あれは法律で決まっているものなのでしょうか。2週間しか投与しないというのは、厚生労働省が決めた内規的な単なるルールなのか、法律で定められたものなのか、どちらでしょうか。
○審査管理課長 これは健康保険の療養担当規則で、いわゆる処方の、何日間投与分は出せるかということについては決められているところではあります。ただ、抗HIV薬など一部例外もありまして、この部会では品質、有効性、安全性といったところから、御了解いただけるのであれば御了解していただき、包装の単位がより合理的なものと言いましても、それを供給するフランスの会社の状況を見ても、日本の患者さんだけのために容易にできるような状況でないというところもありますので、私ども医薬食品局の方から、若しくはここで御了解いただけるならば、こういった包装単位での供給の実情も踏まえて、14日間の処方制限について、何とか規制を緩和できないかということを保険局に申入れをさせていただきたいと思います。本部会でそのような強い御意見があったことを申し添えた上で、申し入れたいと思います。
○古川委員 この症例はけいれんが頻発して、何とかしてあげなくてはいけないということなので、包装の問題などいろいろなことがあっても、小児科のためには絶対必要な薬なのです。このような患者さんを送るときは、いつもドクターが付き添っていくとか、ヘリコプターで送るぐらいの大変な病気なのです。症例数が少ないというのも事実ですし、失礼な言い方ですけれども、薬包がどうとかいう問題ではなくて、今すぐ何かしなくてはいけないということがありますから、いろいろな問題点は御指摘いただいたということでよろしいと思うのです。むしろ、後に審議を延ばすというのは良くないように思います。
○山田委員 日本人では初めて使うわけですから、包装形態のことを優先して14日を変えるということならば、慎重に審議をする必要があると思います。
○佐藤(雄)委員 この薬はヨーロッパでは1年間の条件付承認だというお話でしたが、日本の薬事法で、何かそのような手段というのはあるでしょうか。承認後に製造販売後調査をして、その後場合によっては承認の撤回をするというルートしかないのでしょうか。
○機構 この品目についても全例調査の内容や欧州での承認状況などの情報を得ながら、再審査時点にどのような判断をするかについて考えていきたいと思っております。
○松井部会長 ドラッグ・ラグを少しでも解消するというところに力点を置くべきとの委員の御意見だと思います。それでは、ほかに御意見がなければ議決に入ります。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
ありがとうございます。審議の過程で出てきた問題については、積極的に解決していただきたいと思います。
 それでは、次の議題6に移ります。機構より説明をお願いいたします。
○機構 審議事項議題6、資料6-1、6-2「医薬品ブフェニール錠500mg及び同顆粒94%の生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より御説明申し上げます。
 まず初めに、審査報告書に誤記がございましたので訂正させていただきます。審査報告書39ページ上から9行目「安息酪酸ナトリウム」について、正しくは「フェニル酪酸ナトリウム」です。大変申し訳ございませんでした。
 御説明させていただきます。尿素サイクル異常症は、尿素サイクルを構成する酵素が欠損することで、アンモニアの尿素への変換が低下して血中アンモニア濃度が高値となり、食欲不振、嗜眠、錯乱、昏睡及び脳障害等の症状を来す先天性代謝異常症であり、早期の診断、積極的な治療が必要な疾患です。発症時期により、新生児発症型、遅発型に分類されており、新生児発症型は急激に症状が進行し、重症化しやすく、透析等の治療を行った場合でも多くが1年以内に死亡し、長期生存例でも中等度から重度の中枢神経障害が多く認められます。遅発型は、幼児期から成人期までに脳症様の症状で発症するもので、感染症等による発熱、飢餓、疲労から高アンモニア血症が惹起され、迅速な治療を行わなければ脳浮腫等が進行し死亡します。
 尿素サイクル異常症の患者数については、国内では46,000例の出生児に対し1例で発症し、国立成育医療研究センター小児慢性特定疾患登録事業によると、2008年度には242例の患者が確認されています。
 本薬はフェニル酢酸のプロドラッグであり、生体内でβ酸化によりフェニル酢酸に変換され、フェニル酢酸1分子はグルタミン1分子と結合し、フェニルアセチルグルタミンを生成し、腎臓より尿中に排泄される機序により、本薬1分子はアンモニア2分子を減らすことができます。また、欧米では尿素サイクル異常症の標準的治療法として、本薬による治療(長期的治療管理)について教科書等に記載されています。以上の背景から、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、国内開発企業が公募されるとともに、未承認薬等開発支援事業による開発支援品に選定されました。また、本剤は希少疾病用医薬品に指定されています。本剤は2012年7月現在、米国、欧州、韓国及び台湾で承認されています。
 本品目の専門協議では、資料12に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。
以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。有効性については、尿素サイクル異常症の希少性や重篤性等を踏まえ、国内第I/II相試験に加え、米国第III相試験、国内レトロスペクティブ調査、国内臨床研究の結果から総合的に評価しました。国内第I/II相試験では、審査報告書30ページ表11及び表12に示しましたように、本剤投与期間中の血中アンモニア濃度が比較的安定しており、投与開始12週間に高アンモニア血症が生じなかった症例も認められました。審査報告書34ページ表17に示しましたように、米国第III相試験(StudyIV-17)の申請コホートでは、1986~1994年に148例のデータが集積され、最終的に80%、148例中118例の生存率となりました。米国第III相試験と実施時期は異なるものの、海外疫学調査では薬物治療が実施されていない場合(食事制限のみを行った場合)の1年生存率は14%と報告されていること、31~33ページに記載しましたように、国内レトロスペクティブ調査及び国内臨床研究においても、本剤投与中の高アンモニア血症の発現がコントロールされていた症例が存在すること等を踏まえれば、日本人においても本剤の有効性は期待できるものと解釈して差し支えないと考えました。
 安全性については、40、41ページの「(3)安全性について」の項に記載しましたように、国内外の臨床試験、国内臨床研究及び海外市販後報告からは、本剤に起因する変化と原疾患及び合併症の変化に伴う異常を識別することが困難なこと等により、本剤の安全性が明確になっているとは言い難いものの、本剤は尿素サイクル異常症の長期的管理の標準的治療薬として海外で臨床使用されていること、本剤の使用においては、患者の状態に応じて適宜増減されること等を踏まえると、海外と同様の注意喚起を行い、その注意喚起のもとで本剤が使用されることを前提とすれば、期待される有効性との観点から安全性は許容可能と考えました。
 製造販売後調査については、49ページの「(6)製造販売後調査について」の項に記載したように、血中アンモニア濃度、高アンモニア血症の発現回数、血漿中アミノ酸濃度等を調査項目とし、腎機能障害患者、肝機能障害患者等における安全性及び有効性について、情報収集される予定です。
 なお、51ページの「承認条件」の項に記載したように、国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでは、全投与症例を対象に使用成績調査を実施して、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じる旨の承認条件を付けました。以上のとおり、機構での審査の結果、「尿素サイクル異常症」を効能・効果として本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会で審議されることが適当と判断いたしました。
 本剤は希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年が適当と判断しております。なお、原体及び製剤は、毒薬、劇薬のいずれにも該当せず、また、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。
○松井部会長 では、委員の先生方から御質疑をお願いします。いかがでしょうか。特に御意見はないでしょうか。OTC欠損症がここに例として挙げられておりますが、この患者さんは非常に重症で、生まれて間もなく対処しなければならない。対処というのは一つには透析ですが、中にはドイツでは幹細胞を臍帯静脈から輸注して、幹細胞移植をしておいて、2、3か月後に肝臓移植をするといったような症例が報告されています。私ども成育医療研究センターでもそうした肝臓移植、それから幹細胞移植を計画しており大変やっかいな病気です。御質疑はありませんか。もしなければ、議決に入ってよろしいですか。それでは、本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。
ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告とさせていただきます。
 続きまして、議題7をお願いします。
○機構 審議事項議題7、資料7「医薬品メサペイン錠5mg及び同錠10mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
 本剤の有効成分であるメサドン塩酸塩は、オピオイドμ受容体作動薬であり、WHO方式がん疼痛治療法における3段階除痛ラダーにおいて、モルヒネの代替となる第3段階(中等度から高度の痛みに用いるオピオイド鎮痛剤)として位置付けられております。本剤を有効成分とする製剤は、米国では1947年8月に錠剤及び注射剤が承認されており、英国、ドイツ、フランスを含む世界各国で使用されております。本邦では第14回未承認薬使用問題検討会議にて、本薬の国内開発が「早急に行われるよう検討すべき」との結論が出されたことを踏まえ、□□年□月より臨床試験が開始され、今般、他の強オピオイド鎮痛剤で十分な疼痛管理が得られないがん性疼痛に関する有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認申請が行われました。
本申請の専門委員としては、資料12に記載されております11名の委員を指名いたしました。
 審査内容について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。有効性について、審査報告書35ページ下から2段落目を御覧ください。強オピオイド鎮痛剤により、十分な疼痛管理が得られていない日本人がん性疼痛患者を対象とした第II相試験において、前治療オピオイド鎮痛剤の投与量に応じて本剤を1回5、10又は15mg、1日3回から開始し、症状に応じて適宜増減して至適用量を決定した後、用法・用量を変更せずに5日間経口投与したとき、主要評価項目である切り替え成功例の割合は85%。その95%信頼区間は69.4~100%でした。また、65%の患者で、本剤への切り替えによる疼痛の改善が認められました。
 安全性について、審査報告書43ページ、表14を御覧ください。第II相試験及び長期投与試験において、傾眠、悪心、嘔吐等のオピオイドに特徴的な有害事象に加え、心電図QT延長が認められました。審査報告書43~44ページ、「2)QT間隔延長について」の項を御覧ください。本薬は、QT間隔延長作用を有しており、海外では死亡例が報告され、2004年以降に各国でQT間隔延長及びトルサード・ド・ポアントに関する注意喚起が発出されております。審査報告書45~46ページ、「3)呼吸抑制及び過量投与について」の項を御覧ください。本薬は、他のオピオイド鎮痛剤との交差耐性が不完全である、薬物動態の個体間差が大きい、血中濃度が定常状態に達するまでに時間を要する等の特性を有しておりますが、海外ではこれらの特性に関する理解不足に起因する意図しない過量投与や呼吸抑制が多数報告され、死亡例も報告されております。したがって、本剤は薬理及び薬物動態学的特性、安全性プロファイル等を十分に理解した上で、リスク・ベネフィットバランスを十分に検討し、慎重に選択されるべきであると考えており、添付文書案の警告欄におきまして「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ投与すること」と注意喚起いたしております。
 適正使用について、審査報告書50ページ「(2)適正使用推進のための方策について」の項を御覧ください。本剤の使用に際しては、がん性疼痛治療の十分な経験を有する医師に対して、本剤の適正使用に関するインターネット上のウェブサイトを介した講習又は集合形式の講習を義務付け、適正に使用できると確認された医師による処方であることを確認した上で調剤がなされるよう、管理体制を構築すべき必要があると考えており、当該管理体制に関する承認条件を付すことが適切であると判断いたしました。なお、医師以外の医療従事者に対しても「適正使用ガイド」を用いた情報提供を行い、患者又はその介護者に対しては患者向け資材等を用いて主な副作用、相互作用、投与時の注意点等を説明し、理解を得た上で投与を開始することとしております。また、本剤の国内での治験症例は極めて限られていることから、承認条件として全症例を対象とした使用成績調査を実施することが適切であると考えております。
 以上の審査を踏まえ、本剤を「他の強オピオイド鎮痛剤で治療困難な場合における鎮痛:中等度から高度の疼痛を伴う各種癌」の効能・効果で承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤は1-(1)新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、原体は毒薬、製剤は劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品に該当しないと判断いたしております。なお、薬事分科会に報告を予定しております。以上です。よろしく御審議のほどお願いいたします。
○松井部会長 先生方、御質疑をお願いいたします。いかがでしょうか。
○本橋委員 二つ質問があります。一つは、これはかなり古い薬だと思いますが、これまで日本で承認されていなかった理由は何かありますか。
○機構 承認されていなかった理由というのは、確認はしていませんが、日本では特に麻薬自体の使用というのが限られていて、今でも他の国に比べると麻薬の使用量というのはとても少ない状況ですので、そういったところも踏まえて今ある薬でなんとかするというか、新たな薬剤の開発というのがそもそも進んでこなかったのではないかということ、本薬を持っている会社は海外の会社で、日本の企業と連携を取っていなかったこともあり、日本での開発が遅れていたのではないかと思っております。
○本橋委員 分かりました。もう一つは43ページに安全性情報が出ていますが、ここで自殺既遂という例がかなりあります。これは薬剤との因果関係は、どうなのでしょうか。
○機構 海外の報告における自殺既遂のところですね。この薬は海外では麻薬依存症の患者に用いられていまして、特殊な状況で使われているということもありますので、特に乱用とか、そういった報告が多くなっているのではないかと思っています。安全性情報として因果関係があるかどうかというのを関係なく収集されているものですし、会社が集めたものではなくてWHOやFDAに報告されたものをすべて集めて記載していますので、因果関係は不明となっております。ただ、オピオイドですので、ほかのオピオイドと同じように、依存症といったリスクがないわけではないと思っております。
○本橋委員 もともと、癌の疼痛にかなり苦しんでいらっしゃる方なので、そういう方に逆に自殺を助長するような働きがないのかというのを心配したものですから、質問した次第です。
○成冨委員 呼吸抑制というのは、例えば肺気腫とか換気障害のある人に使うと、CO2ナルコーシスとか、そういうものになりやすいのか、換気障害有無にかかわらず、止まりやすいのか、その辺はどうでしょうか。
○機構 機構より御説明させていただきます。まず、本剤は肝で代謝される薬剤ですので、肝障害などの患者では血中濃度が上がるということで、呼吸抑制のリスクが高くなる可能性は否定できないと思っております。ただ、この呼吸抑制については他のオピオイド鎮痛剤と同じですが、本剤では特に血漿中濃度の半減期が長く、かなり定常状態に達するまでに時間がかかり、蓄積が大きいというところがありますので、そういったところで先ほども御説明させていただきましたが、消失を待たずに増量してしまうことで、過量投与に至って呼吸抑制が起きてしまうというリスクが高いと考えております。
○松井部会長 よろしいですか。呼吸抑制の話だったと思いますが。ほかにございますか。
○手島委員 2ページの「承認条件」の2.で、製造販売後の一定数の症例にかかるデータが集積されるまで、ということですが、具体的にはどれくらいの症例数をお考えですか。
○機構 機構よりお答えいたします。今回特に注目しているのが呼吸抑制のリスクでして、そのリスクを検討する症例数として、申請者としては、□例を目標として全例調査を実施する予定としております。
○加藤委員 NMDA受容体に対する作用もあるというような記載が前臨床でもあるようですが、それを反映するような臨床の副作用の報告、例えば、前向性健忘や認知症の増悪というものはないのかというのはどうでしょうか。
○松井部会長 前臨床で、そういう成績があったのでという御質問だと思います。
○機構 機構より御説明させていただきます。認知症の増悪や前向性健忘については、今回臨床試験の中ではごく限られた例数ですので、検討されておりませんし、臨床試験の中ではそういった報告は上がってきていません。海外においても、審査報告書43ページ表13に示させていただいたものが主な安全性の情報ですが、この中にはそういった報告は上がってきていない状況で、それ以上の情報は分からないというところです。
○松井部会長 よろしいですか。ほかにはありますか。よろしいですか。それでは、議決に入ります。加藤委員におかれましては利益相反に関する申出に基づいて、議決への参加を御遠慮いただきます。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告いたします。
 議題8に入ります。加藤委員におかれましては議題8の審議の間、別室で御待機いただくこととします。
── 加藤委員退室 ──
○松井部会長 議題8について、概要を説明してください。
○事務局 審議事項議題8、資料8「リツキシマブ(遺伝子組換え)を希少疾病用医薬品として指定することの可否について」事務局より御説明いたします。
 資料8の評価報告書に沿って御説明いたします。申請者は全薬工業株式会社、予定効能・効果は「難治性ネフローゼ症候群」です。対象者数は、公表されている最新の患者調査結果によると、2008年の原発性ネフローゼ症候群は成人、小児に合わせて23,000人とされております。アンケート結果も踏まえ、本品目の使用対象と想定される既存治療で、寛解導入又は病状維持が困難な原発性ネフローゼ症候群患者数は約8,000人程度と推定されております。以上から、患者数が5万人未満という希少疾病用医薬品の指定基準を満たしているものと考えております。
 続いて、医療上の必要性ですが、ネフローゼ症候群の成因である蛋白尿の発現機序は解明されておりませんが、T細胞やB細胞の関与が示唆されております。治療には主にステロイド薬が用いられ、頻回に再発を繰り返す場合やステロイド抵抗性の場合には、免疫抑制剤が使用されます。既存治療により病状がコントロールできない場合、腎不全に移行することから重篤な疾患と考えられております。また、長期にわたるステロイド薬の使用には副作用の問題から、治療継続が困難な場合や、小児においては成長障害が問題となることがあります。
 これら既存治療では寛解導入又は病状維持が困難、もしくは長期のステロイド薬使用から離脱困難な患者に対する新たな治療薬が望まれており、近年、本品目によって病状の改善を認めた報告例もあることから、医療上の必要性は高いと考えております。
 最後に開発の可能性ですが、B細胞を枯渇させる本品目の臨床研究報告で改善例が多くあることに加え、現在、国内の小児期発症の難治性ネフローゼ症候群患者を対象とした第III相試験及び薬物動態試験が医師主導治験として実施されており、本品目の開発の可能性はあると考えております。以上の3点から、本剤は希少疾病用医薬品の指定要件を満たすものと判断しております。御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。
○松井部会長 ただ今の御説明について、御質疑をお願いします。委員の先生方、いかがでしょうか。
 私からですが、このリツキシマブというのは難治性ネフローゼに限らず、最近使われる機会が増えてきているように思いますが、免疫抑制に関してはどのように説明が、あるいはどのように考えられているかを簡単に。というのは、免疫抑制によりまして易感染性が起きて、中には重篤な転帰を取る症例もあるように思います。いかがですか。
○事務局 今、実施されている臨床試験結果に基づいて、先生から御指摘いただいた点についても検討させていただきますので、よろしくお願いします。
○松井部会長 ほかに何か御質疑はありませんか。議決に入っていいでしょうか。本議題について、指定を可としてよろしいですか。
ありがとうございます。御異議がないようですので、指定を可として薬事分科会に報告いたします。以上が審議事項です。
── 加藤委員入室 ──
○松井部会長 報告事項について、機構から説明をお願いいたします。
○機構 報告事項議題1「医療用医薬品の再審査結果について」まとめて御報告いたします。資料9-1~資料9-4を御覧ください。これらはいずれも医薬品再審査確認等結果通知書です。
 資料9-1は、一般的名称は「シクロスポリン」、販売名は「サンディミュン点滴静注用250mg、同内用液10%、同カプセル25mg、同カプセル50mg、ネオーラル内用液10%、同10mgカプセル、同25mgカプセル及び同50mgカプセル」のもの。
 資料9-2は、一般的名称は「ソマトロピン(遺伝子組換え)」、販売名は「ヒューマトロープ注射用6mg及び同注射用12mg」のもの。
 資料9-3は、一般的名称は「フェンタニル」、販売名は「デュロテップMTパッチ2.1mg、同MTパッチ4.2mg、同MTパッチ8.4mg、同MTパッチ12.6mg及び同MTパッチ16.8mg」のもの。
 資料9-4は、一般的名称は「エストラジオール」、販売名は「ディビゲル1mg」のものです。
 これらの品目について、製造販売後の使用成績調査、特定使用成績調査等に基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、薬事法第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち、効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要がない「カテゴリー1」と判定したものです。以上です。
○松井部会長 委員の先生方から、ただ今の報告事項について何か御質問、コメントはありますか。特にありませんか。
それでは、ただ今の報告事項については、委員の先生方に御確認をいただいたものといたします。
 本日の議題は以上ですが、事務局から何か報告はありますか。
○事務局 次回の部会は、既に御案内をさせていただいておりますとおり、10月26日(金)午後3時から開催させていただく予定です。よろしくお願いいたします。
○松井部会長 特に御発言がなければ、本日はこれで終了といたします。どうも御苦労様でした。


(了)

備考
 本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬食品局 審査管理課 課長補佐 野村(内線2746)

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