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2012年12月20日 第6回集団予防接種等によるB型肝炎感染拡大の検証及び再発防止に関する検討会

○日時

平成24年12月20日(木) 14:30~16:00


○場所

厚生労働省 専用第22会議室(18階)


○議題

(1)検証項目「2.日本におけるB型肝炎ウイルスの感染及び感染被害拡大の実態」の(2)のB型肝炎ウイルスの感染実態に関する研究の結果について
(2)検証項目「5.諸外国における予防接種制度及び予防接種に伴う感染防止対策の実態」の(1)及び(2)の諸外国における予防接種制度及び予防接種に伴う感染防止対策の実施状況に関する文献調査及びヒアリング調査の結果について
(3)検証項目「2.日本におけるB型肝炎ウイルスの感染及び感染被害拡大の実態」の(1)の感染者の肉体的・精神的及び経済的負担並びに社会的差別偏見に関する実態のアンケート調査票について

○議事

○巽B型肝炎訴訟対策室長 定刻になりましたので、ただいまより「第6回集団予防接種等によるB型肝炎感染拡大の検証及び再発防止に関する検討会」を開催いたします。
 構成員の皆様には、御多忙の中お集まりいただきましてお礼を申し上げます。
 事務局より、本日の構成員の出欠状況について御報告いたします。岡部構成員、澁谷構成員、高橋構成員、新美構成員から御欠席の連絡をいただいております。
 撮影につきましては、これまでとさせていただきます。
(報道関係者退室)
○巽B型肝炎訴訟対策室長 これからは、永井座長に議事の進行をお願いします。よろしくお願いいたします。
○永井座長 本日は、前回に引き続きまして研究班の調査結果を御報告いただきまして、皆様に検証いただくことにいたします。
 本日の議題は、配付している議事次第で御確認ください。
 まず、議事に先立ちまして、事務局より資料等の確認をお願いいたします。
○巽B型肝炎訴訟対策室長 議事次第、構成員名簿、座席表のほか、資料1、資料2、資料3、資料4-1、資料4-2、構成員提出資料を御用意いたしております。
 また、前回までの会議の資料をつづりましたファイルを各構成員の席に置かせていただいております。
 不足や落丁等がございましたら事務局にお申し出ください。
○永井座長 では、議題の1に入ります。検証項目2の(2)の「B型肝炎ウイルスの感染実態に関する研究の結果」につきまして、研究班から御報告をお願いいたします。よろしくお願いします。
○多田羅構成員 検証項目2の「B型肝炎ウイルスの感染実態に関する研究」につきましては、研究班員である田中純子先生に現在利用可能な統計や過去の研究の結果をもとに、B型肝炎ウイルスの感染経路について推計を行っていただきました。本日は、田中純子先生からその結果を御報告していただきます。
 それでは、田中先生、よろしくお願いいたします。
○田中研究班員 こんにちは。広島大学の田中です。
 それでは、きょうのお手持ちの資料2に従って御説明させていただきたいと思います。
 検証項目2の「日本におけるB型肝炎ウイルスの感染及び感染被害拡大の実態」ということで、今あります疫学研究の資料を用いまして垂直・水平感染、それぞれの感染拡大の寄与について検討を行っているところですけれども、今のところまとまっている資料について御説明します。
 1枚開いていただきまして、きょう御説明するのは「B型肝炎ウイルス感染者全体の傾向」としまして、現在疫学的な状況からわかっていることを簡単にお示ししたいと思います。それから、2番としまして「垂直感染・水平感染によるB型肝炎ウイルス感染者の推計」というものを今ある資料を用いまして行ってみましたので、それについて御説明したいと思います。
 次のページをお願いします。「B型肝炎ウイルス感染者全体の傾向」としまして、現在ここに示しております(1)(2)、現存するある一つの測定法に従いまして、決められた測定基準に従って統一的に行われた血液検査の結果のデータから、日本全体の潜在的な感染者数を推計しました。
 まず使ったデータですけれども、(1)は日赤の初回献血者、「初回供血者のHBs抗原陽性率」です。日赤では輸血用血液の安全性のためにいろいろなスクリーニングを行っておりますけれども、全国統一された測定法で行われています。また、初回献血者というのは生まれて初めて献血をした集団でありまして、自身が感染していることを知らない集団であります。その中から感染率、HBs抗原陽性率を算出しました。この集団の特徴としましては、全体の80%以上が40歳以下の年齢層という若い集団であります。
 (2)の「節目検診受診者のHBs抗原陽性率」につきましては、2002年から老人保健法に基づいて住民検診に肝炎ウイルス検査が取り入れられました。これは5年間にわたって行われたわけですけれども、そのときに800万人の受診者がこの検査を受けました。そのときのデータを用いてHBs抗原陽性率をお示しします。
 このデータの特徴は、住民検診でありますので対象者は全員40歳以上70歳までの年齢層、5か年行われましたので40歳以上74歳までのHBs抗原陽性率です。したがいまして、40歳以下のデータは(1)を、40歳以上のデータは(2)を用いて日本における潜在的な感染者数を推計しております。
 次のページをお願いします。まず(1)の「初回供血者集団の年齢階級別HBs抗原陽性率」を示します。これは、2001年~2006年までの6年間の総計374万人の初回献血者のデータを、上に示しています。2005年時点の年齢換算で15歳~68歳、出生年では、1937年~1990年までの世代を5歳刻みにしましてHBs抗原陽性率を示したものです。
 上段は男女合計の陽性率ですけれども、年齢が高い集団、すなわち出生年が古い集団で高い傾向を示しておりますし、1986年以降の集団におきましては非常に低い値を示すのが特徴的です。また、2005年時点の年齢換算で55歳くらい、1946年~1950年生まれのところでピークを示しているということが特徴的です。
 下段をごらんください。これは男女別に示したHBs抗原陽性率ですけれども、真ん中の実線がトータルで、上の黒い点が男性、下が女性です。HBs抗原陽性率にはいずれの年齢層においても男女差が認められまして、男性は女性よりも高いHBs抗原陽性率を示しております。
 ただ、B型の母子感染予防対策が行われました1986年以降に生まれた集団、一番左の集団ですけれども、若い世代では男女差は見られておりません。
 次をお願いします。節目検診受診者のHBs抗原陽性率を示します。2002年~2006年に行われました630万人のデータです。その上段で、2002年と書いてあるのは2002年に行われました節目検診、40歳、45歳、50歳、55歳の調査の結果のHBs抗原陽性率です。順次2003年、2004年、2005年、2006年、それぞれ40歳、45歳という5歳刻みで行われましたので、1年ずつずらしますとトータル40歳~74歳までのHBs抗原陽性率が得られます。ここでも、2005年時点の年齢で55歳のところがちょっと高い値を示しているのが特徴的です。
 下には、参考資料としまして岩手県の予防医学協会、古くから検診を行っている機関でありますけれども、44万人のデータを使いまして同じようなデータを示しますと左のHBs抗原陽性率となります。保存血清を用いて測定したところ、1915年、大正生まれまでさかのぼることができましたが、やはりここでも55歳付近がピークとなっておりますが、実は大正生まれのところにももう一つピークが見られていることが新たな知見として明らかになっているところであります。
 次のページをお願いします。この2つのデータを使いまして推計した数値をお示しします。
 上の図ですけれども、グレーは日本の各年齢に相当する2005年時点の人口で、赤いものが推計したB型肝炎ウイルス感染者、HBs抗原陽性の感染者であります。各年齢すべて足しますと、全年齢において感染を知らずに社会に潜在するB型肝炎ウイルス感染者の推計数は90万人ということになっています。また、ここでもやはり55歳から59歳、2005年時点の年齢換算で、そこの年齢層にたくさんの感染者がいるということが推計されています。
 以上が、B型肝炎ウイルス感染者全体の傾向としてお示しできるデータであります。
 次をお願いします。さて、「垂直感染・水平感染によるB型肝炎ウイルス感染者の推計」を以下の手順によりまして行ってみました。
 まず垂直感染によるB型肝炎ウイルス感染者数がどのくらいであるかということを御説明しますが、ちょっと複雑でありますのでゆっくりお話をします。
 (1)の「出生数」ですけれども、これは人口動態統計からで、出産、死亡、結婚とか、そういう動きのあるときには皆、区役所に届けますが、それを国が年に1回集計している統計表です。人口動態統計には年ごとの出生数が公表されております。それに加えて、出生した子供の母親が何歳であったかということの統計表もあります。
 そこで、その出生した子供の母親が何歳であるかということを5歳刻みに表にいたしまして、1950年~1985年までについて、母親がB型肝炎ウイルス感染者であった、先ほどお示ししましたHBs抗原陽性率を生まれた児の母親の数に掛けまして、出産時に母親がB型肝炎ウイルス感染者であった者の数をまず算出いたします。
 (2)で、それで算出しましたものの数の中に母親がHBe抗原陽性の場合には90%の確率で母子感染するというエビデンスがあります。また、HBe抗原が陰性だった場合にはその子供は10%の確率で母子感染するというデータ、エビデンスがあります。それを用いて年齢階級別、出産時の母親の年齢別のHBs抗原陽性率およびHBs抗原陽性者の中のHBe抗原陽性、つまりウイルスがたくさんいる人の割合の記載のある論文をもとに年齢階級別に掛けることによりまして、垂直感染によりB型肝炎ウイルスに感染した者の数を算出いたします。それが(2)で、計算方法については1、2に書いてあるとおりであります。
 その算出した垂直感染によってB型肝炎ウイルスに感染した者の数をもとに、またこれも国の統計でありますけれども、その年に男の子と女の子の生まれた比率が報告されております。そこで男女の比を掛けまして、垂直感染によって生まれたB型肝炎ウイルスに感染している者を男の子と女の子に分けまして、その年の人口で割ります。そうすると、垂直感染によりB型肝炎ウイルスに感染した性別の感染率が出ます。それをもとにその出生世代におけるBのキャリア率から引くことによって垂直感染以外によって感染した者の率、あるいは数を算出することができます。こういう考えに沿って算出してみました。そうした結果を、次にお示ししたいと思います。
 1950年~1986年出生の年代におけるHBs抗原陽性率のうち、グリーンが垂直感染によるキャリア率と考えられるもの、赤いところが垂直感染以外、すなわち水平感染によるHBs抗原陽性率だと考えられるものを推定しております。
 上段が男性、下段が女性になっております。ごらんになっておわかりになるように、グリーンの垂直感染によるHBs抗原陽性率は男女差は認められておりませんけれども、水平感染によるキャリア率にはやや男女間に相違が認められております。
 この率を人口に戻しまして、1年ごとの推計数にしたものが次のページであります。上段が男性、下段が女性です。1950年生まれから1989年生まれまで、1年ごとにその年の推定されるHBs抗原陽性者の中の垂直感染によって感染した者の数、それから赤いところが垂直感染以外、すなわち水平感染によって感染したのではないかと考えられる推定数を示しております。赤い水平感染と考えられる全体の推定数を男女で合計しますと、下の四角にありますように41万6,587人、約42万人ということで、信頼区間41万人~43万人くらいの変動、誤差はありますけれども、大体このくらいの数ということで推計されました。
 また、男子と女子の内訳ですけれども、男性の推定数は27万人、女性の推定数は14.1万人ということです。
 下にまとめて書いてありますけれども、全体では出生年がおそいほど、つまり若い世代ほどHBs抗原陽性率は低く、陽性者は少ない傾向がありました。男女間の陽性率には統計学的に差が認められております。
 また、水平感染では同様に出生年が遅いほどHBs抗原陽性率は低く、陽性者数は少ない傾向がありました。また、男女間の陽性率には差が認められております。
 また、垂直感染は1986年以降、母子感染予防対策が実施された以降の出生では、4年くらいのデータではございますけれども、陽性率、陽性者数とも極めて小さい値を示しております。
 以上、与えられて課題に従いまして行った研究を御報告させていただきました。
○永井座長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御報告につきまして御質問、御意見をお願いいたします。どうぞ。
○丸木構成員 丸木と申します。
 2つほどお聞きしたいんですけれども、最高裁の判決の中で患者推計がたしか120万~140万で、今回の調査とはちょっと差があるんですけれども、この差というのはどういうことが考えられるのかということをお聞きしたいことが1つです。
 もう一つ、明らかに男女間の陽性率に統計学的差があったというふうな報告なのですけれども、これはどういうことが考えられるのか。要するに、なりやすい、なりやすくないということで、男女間で個体差があるのかどうかということを教えていただければと思います。以上です。
○永井座長 いかがでしょうか。
○田中研究班員 最高裁で120万~140万というのは何の推計数であったのか、ちょっと私のほうは、B型のですか。
○丸木構成員 そういう言い方しかしていないものですから、裁判記録には「現在の我が国におけるB型肝炎ウイルスの持続感染者数は、推定で約120万~140万人であるが」という1行しか書いていないので、私はその辺は訴訟に詳しい方に説明していただいたほうがいいと思うんですけれども、ちょっと差があったものでお聞きした次第です。
○B型肝炎訴訟対策室長補佐 最高裁のほうの120万~140万は患者調査、まさにB型肝炎患者全体というところでの数でございますので、この田中純子先生のほうの。
○田中研究班員 恐らく120万~140万というのは、この検討の1番目に示しました、自分が感染を知らないまま社会に存在している感染者の人、それプラス自分が感染を知って病院に通っている人、プラス自分は感染しているけれども病院にはまだ行っていない、行くのをやめた人を含めて全体で120万~140万と、当時2000年時点で推計されたものだと思われます。
 それで、きょうお示しした資料の6枚目の感染を知らないまま潜在している感染者は90万人ということにしております。この数は2005年時点なんですけれども、2000年当時に推計された数よりも検査などがいろいろ世の中で普及していますので、この数自体も減っております。また、いろいろな治療が行われていますので、やや減っているかもしれません。今回最後にお示しした40万人というのが少ないんじゃないかという丸木構成員の御質問かと思いますが、それは年代を1950年生まれから1989年生まれに限りまして、その中での感染者数ということでお示ししていますので、数はちょっと増減があるかと思います。
 それからもう一つ、男女差があるということについてですけれども、同じようにB型肝炎ウイルスに曝露を受けて感染が起こったときに、男の子と女の子で持続感染者になる割合が違うのかということについては、違うという報告は見ておりませんので、感染そのもの自体に性差という生物学的な差はないと考えております。ウイルスに曝露したときに感染するか、しないかはそのときのウイルス量によったり、その人が抗体を持っているか、持っていないかによるものでありまして、独立に性別に差があるかということについてはないと思っております。
○丸木構成員 とすると、この差というのはどういうふうなことが推測されるのでしょうか。
○田中研究班員 母子感染については、お母さんから同じように曝露を受けて生まれるわけですから、性別に差はないと考えています。なので、全体的に見たHBs抗原陽性率、あるいは陽性数に男女差が見られるというのは、垂直感染の部分ではなくて水平感染の部分に差があるのではないかと考えられます。
 水平感染で男女差があるのはなぜかということについての御質問ということでよろしいでしょうか。
○丸木構成員 はい。
○田中研究班員 それは、はっきりと明らかになったものはまずありませんということをお答えしてから答えたいと思うんですけれども、それはまだこれから検討することがあるのではないかと思います。B型肝炎ウイルスは血液を介して感染する感染症ですので、水平感染の中にはいわゆる今、課題になっております予防接種によるもの、あるいは家族内感染によるもの、それは今のように核家族ではありませんでしたので、大家族の中でのお母さん以外の人からの感染もあったやに推定されます。
 それから、子供同士で遊ぶことがない現代ですけれども、昔では子供同士だけでいろいろなところに遊びに行ったり、集団生活をしていていろいろな血液を介する接触、けがとか、そういうものがあったかもしれません。そういうことは推定というか、推論というか、昔のことを思い返して考えるわけですけれども、そういうさまざまな水平感染の経路の中で男女に差があるようなことがあったのだろうと考えられますが、それはまだ検討する余地があるかと思います。
 ただ、少なくとも集団予防接種は男の子に多く女の子に少ないということはないと思うので、ほかに性別に差がある感染要因でこのような差が出たのではないかと私どものほうでは考えております。
○永井座長 ほかにいかがでしょうか。
 では、小林委員、それから垣本委員どうぞ。
○小林構成員 資料がありましたらお教えいただきたいのですが、まず地域性はいかがでしょうか。
 それと、先生は今お話の中でちらっとおっしゃいましたけれども、ウイルス量、インデックスケースはインフェクシャスドーズが高ければその周辺は感染者が多いと思うんです。その辺の疫学的な御検討はいかがでございましょうか。
○田中研究班員 この資料の(1)の中にお示ししております初回献血者のデータで日本を全体に8地域に分けまして、その中でのHBs抗原陽性率というものを算出はしております。、HBs抗原陽性率はどの地域もきょうお示しした55歳~60歳くらいのところで高い値を示すということが認められております。地域差はそれほどないと思っています。
 私は厚生省の肝炎の疫学研究班の班長をしておりまして、そちらのほうの研究報告書のほうにデータは載せておりますが、きょうは手持ちをしておりませんので、そこぐらいまででよろしいでしょうか。
○小林構成員 ありがとうございました。
○垣本構成員 垣本と申します。
 教えていただきたいのですけれども、6ページにもありますが、感染者全体の傾向として今、先生のおっしゃるとおり55~59歳が年齢層のピークとなっているということが見られるわけですが、この年齢層というのは逆にどういうふうな影響を受けた人たちと考えればいいんでしょうか。
○田中研究班員 それについても、明確にこれが原因だということをお答えすることができませんので、今回少なくとも垂直感染と垂直感染以外ということでどうなるかということを推計させていただきまして、それから水平感染にどんなものがあるか。あるいは、年代ごとにどうなっているか。
 まず母子感染、垂直感染によるものはずっと年代ごとに一定なんですけれども、水平感染の率はどんどん減っています。それは近代に向けて衛生環境、医療環境、いろいろな周りの環境が整ってきたことによって水平感染が減っているということが推察できます。ではこの55~59歳の世代でピークがあると言っても非常に低い割合の中でのピーク、山ですが、これがなぜかということについては明確にお答えすることはまだできない状態であります。
○垣本構成員 ありがとうございました。
○永井座長 ほかにいかがでしょうか。
○八橋構成員 性差がある点が少し気になります。私が考えるに、2つ原因が考えられて、ひとつは、男性のほうがやはりHBVに曝露される頻度が高いのではないか。水平感染の頻度です。
 もう一つは、HBs抗原の消失の確率が男女間で差があって、女性のほうが成人までにHBs抗原の消失する確率が高いのではないかという2つが考えられるのですが、いかがでしょうか。
○田中研究班員 近年になりまして、B型肝炎ウイルス感染、HBs抗原陽性者の中で自然経過の中でもs抗原が消失するという報告が見られていますので、そういうことを加味してそれも含めて考えていかなければならないことだと思っています。
○八橋構成員 それからもう一つお聞きしたいのですが、これは推定で構わないのですが、今から50年前に日本のキャリア率というのは5%前後あったというふうに諸データから私は考えているですけれども、そのような推定でよろしいでしょうか。結構高かったと。
○田中研究班員 この場では推測で物を言っていいかどうかということは問題だと思いますけれども、参考資料に岩手県の検診受診者集団における出生年別キャリア率を示しております。日本には大正生まれの方までの保存血清を確保している施設はありませんので、これが本当に唯一のデータではないかと思いますが、一番右の1915年生まれの世代ぐらいにいきますと4%を超えてあります。それで、近年言われているs抗原消失がある。自然経過の中でも消失するということを考えますと、これ以上であったということが考えられますので、今、八橋委員の言われたように5%以上あったのかもしれないということは否定できることではないと思います。
○永井座長 ほかにどうぞ。
○田中構成員 B型肝炎訴訟原告団の田中です。
 そうすると、集団予防接種でB型肝炎に感染をしたと推定される方の人数というのは一体何人になるのでしょうか。
○田中研究班員 それがお答えできればよろしいんですけれども、今回の解析では垂直感染か垂直感染ではないかというところまでしか推定できておりません。
 でも、少なくとも男女差があることを考えますと、水平感染と考えられる全体の推定数42万人のうち、男性が27万人、女性が14万人ですので、予防接種には男女差はないということを考えますと、この共通部分である14万人掛ける2がマックスでありまして、それからまた男女共通に受けるかもしれない水平感染の要因を引くということになるのではないかと思っています。
○田中構成員 そうすると、この9ページにある全体推定数の41万6,587人ではなく、女性推定数の14万1,598掛ける2引く幾つかということですね。
○永井座長 また後ほど御議論いただく点もあるかと思いますが、議題の2にまいりたいと思います。田中先生、ありがとうございました。
 続いて議題の2、検証項目5の(1)及び(2)の「諸外国における予防接種制度及び予防接種に伴う感染防止対策の実施状況に関する文献調査及びヒアリング調査の結果」につきまして、研究班から御報告をお願いいたします。
○多田羅構成員 これにつきましては、イギリスとアメリカの予防接種制度及び予防接種に伴う感染防止対策について、文献調査及び現地でのヒアリング調査を行いましたので報告させていただきます。報告については、私の方からさせていただきます。
 資料3をごらんいただきたいと思います。一応文章になっておりますので、読んでいただければ大体のことはわかっていただけるかと思います。翻訳の言葉もあり、少しわかりにくいところもあるかもわかりませんが、大筋は御理解いただけると思います。
 ここでは、まずイギリスから主な点について説明させていただきます。
 まず、イギリスの「予防接種に関する歴史的背景」でございます。これは教科書にも出てくるような歴史的な出来事で、1796年に世界で初めてエドワード・ジェンナーによってジェイムス・フィリップスという8歳の男の子に種痘が実施されました。
 そして、1840年にイギリスでは種痘法、Vaccination Actが制定され、種痘は無料となりました。
 そして、1853年の種痘法により、生後4か月までのすべての乳児の種痘が強制義務となりました。
 そして、1967年には4か月までというところからすべての幼児の種痘が強制となりました。
 しかし、この強制というものに対しては非常に国民の抵抗といいますか、反対もあったのが事実のようでございます。そういうことから、特に宗教的な観点からの反対であったと思うんですけれども、輸血を受けないというようなことが今日でも宗教的な観点があることから類推されるのですけれども、あったのだと思うのですが、そういうことから1898年には根拠のある反対、conscientious objection、これは非常におもしろいといいますか、こういう概念で、これは根拠のある反対、宗教なり、身体の状態もあったかもわかりませんが、理由のある反対、たださぼるとか受けないということではなくて、反対があれば親が子供の強制種痘を受けさせないことできるというようなことが認められました。
 にもかかわらずというのは、根拠なく子供に種痘をさせなかった両親は罰金を取られるか、投獄されるという規定があったようでございます。
 そして、そういうことでの統計ですけれども、1907年には拒否した親は8.4%でしたが、あったのは1921年には45%にならいました。根拠を示して受けなかったのだと思いますけれども、45%にもなっているということで、1946年の国民保健サービス法ではこの強制予防接種と登録制度が廃止されたということでございます。
 歴史的にここのところは非常に私も関心を持って調べてみたんですけれども、強制ということについてはイギリスにおいて長い歴史があって、特にconscientious objectionということまで規定されたということで、公衆衛生は強制ということが裏側にあるところがあるのですけれども、イギリスでもこういうことがあったのかというところは非常に興味深く調べさせていただきました。
 そして、国民保健サービス憲章では、「国民は、種痘及び予防接種に関する合同委員会(Joint Committee on Vaccination and Immunisation)が、全国予防接種計画のもとで受けるべきであると推奨した予防接種を受ける権利を有する」ということで、義務を有するものではない。これは、現在も継承されている憲章でございます。
 続いて「予防接種制度の概要」ですけれども、イギリスの予防接種制度においては全国レベルで一律に予防接種計画が策定され、この予防接種計画に基づき地方で実施されております。歴史的には、天然痘というのは国民保健サービス法ができるまでは義務ということがございましたので、それは国の形として一定の方法があったんでしょうけれども、ほかの予防接種計画は地方で策定され、地方で実施されていた。そのため、接種率は自治体によって大きく異なるというようなこともあり、全国的な統一が図られるとはいえない状況がありました。これは主として1948年まででございますが、それ以降も必ずしも自治体に対する統一的な形が働いているとは言えないというようなことがあったようでございます。
 しかし、そういうようなものを受けて1961年に全国的なスケジュールが保健省によって勧告されるようになりまして、全国的な指針などの整備、接種率の向上などが進められたようでございます。それで、今日に至っております。
 予防接種の「根拠法令」ですが、今日では国民保健サービス法に基づいて実施されているということでございます。それで、1963年に種痘及び予防接種に関する合同委員会が独立諮問機関として設立されまして、ワクチンスケジュールやワクチンの安全性についての提言を行って予防接種が実施されているというのが大きな形でございます。
 「対象疾病」についてですが、これは一応4つの区分が便宜的に行われております。
 まず、就学前の児童に対して実施されている予防接種、これは基本実施とされております。
 それから、2が未就学児となっておりますが、これは私の誤解でございまして、未就学児童というのは就学児なんですけれども、地域で一般医によって予防接種が実施されている予防接種のことでございます。
 それから、就学児というのは就学しているときに学校で実施されている予防接種です。ですが、3は集団予防接種ということになります。
 それで、4については成人に対して実施されている予防接種です。
 この4つに大きく区分されているようです。そして、例えば就学児で学校でされている予防接種としてはHPV、ヒューマン・パピローマ・ワクチン。それからMumps、これはalertとありますけれども、緊急対応として始められて、その後、続けているようでございます。これは、おたふく風邪でございます。こういう格好で、学校における集団予防接種も行われているということがございます。
 それから「実施体制」のほうですが、基本的にイングランドやスコットランド、北アイルランドに対してはロンドンの保健省はすべて調整して実施しております。それで、決められた施策を全国同時にといいますか、一律に実施されているのですが、それは御存じのようにイギリスは国民保健サービスという格好で国民のヘルスサービスがすべて保健省の下に統一的に行われておりますので、その上に乗せて行われているということであります。
 また、その実施方法についてはここにございますようにGreen Bookと向こうでは呼んでいるんですけれども、Immunisation against infectious diseaseに詳細にすべて記載されているということで、基本はそれに基づいて実施されている。そういう意味では、画一的に一つの指針に基づいて基本の方針は示されている。しかし、計画そのものは各地方自治体といいますか、Primary Care Trustというところで、後で述べますけれども行われているというのが大勢でございます。
 国レベルの予防接種にかかわる組織についてはここにあるように保健省、それからNational Institute for Biological Standard and Control、またはMedicines and Healthcare products Regulatory Agency、Vigilance and Risk Management of Medicines、National Health Service Suppliesで行われております。その内容については、ここに記載しておりますので御確認いただきたいと思います。
 しかし、さらに具体的に予防接種に直接関与してサポートしているのは次のHealth Protection Agency、これは全国に3つあって2003年に設立されたもので、今回私もイギリス訪問時に訪問していろいろお話を伺いました。これは国民保健サービス、これはPrimary Care Trustですけれども、PCT、関連機関、保健省、その他の委託機関などに一般人の健康管理、特に危機管理も含めて健康管理に関する総合的な情報管理の指導を行っております。
 それからもう一つ、Public Health Laboratory Service、これは昔からあるものですけれども、Communicable Disease Surveillance Centreでございまして、予防接種に関する疾患のサーベイランスを実施している。
 それから、先ほど言いましたもう一つ具体的に種痘及び予防接種に関する合同委員会、Joint Committee、これは1963年に設立されたもので、保健省の独立機関です。必須のワクチンスケジュールやワクチンの安全性について有識者が助言を与え、現在の予防接種施策の遂行に関する提言を具体的に国に対して行っていくという形で、実際にこの合同委員会が全体を管理しているということになると思います。それで、地方自治体レベルの組織がここにあります。
 それから、具体的にはこのPrimary Care TrustというのがイギリスのNHSの各地域において管理している機関でありまして、全国で現在では150のトラストがあって、そのトラストのもとにNHSが管理されています。そして、そこで予防接種実施計画が策定されているということであります。日本の自治体に当たるものになるかと思います。トラストに相当する部分に一方、自治体があって、自治体とトラストが並んで保健サービスは主としてトラストが実施しておりますけれども、自治体と協力しながらやっているというのがヘルスサービスでございます。
 それで、このPCTには予防接種計画委員会というものがあって、委員会は戦略実行の機能を持ち、1か月ごとの遂行と長期観測を行い、最終的にNHS役員会への報告を行うというふうにされております。
 それから、先ほど来申しております強制・任意の件でございますが、現在イギリスにおいては予防接種は義務化されておりません。NHS法において義務は廃止されておりますのでされていない。接種については過去には強制とされてきたことがございますが、強制の種痘も強い反対があって廃止されました。
 しかしながら、ヘルスケア従事者に対しては現在でも諸病的なリスクがございますので、義務化されている。それは、ヘルスケア従事者は予防接種を受けることが仕事に従事するための前提条件となっているということでございます。
 それから、もう一つの大きな概念でございます、集団か個別かということですが、イギリスにおける予防接種は国民全体が一般医という医師にすべて登録して一定の一般医に健康、医療をすべて依存しているということがございますので、その範疇の中で予防接種も行われていることかと思いますが、一般医のサージャリー、診療所、あるいは一般医と保健師などの拠点となっているヘルスセンターというところを訪問して行われるというのが原則で、個別接種が原則でございます。
 しかし、イギリスにおける集団接種としては先ほども言いました学校というところで行われるということがあります。学校における予防接種は集団で行われる。それから、一般医の診療所やヘルスセンターにおいて予防接種のためにあらかじめ決められた特定の日時に実施という場合にも、やや集団的な形で予防接種が行われるという2つの例外的な集団接種はございますが、基本としては個別接種です。
 今まで集団接種が行われた例は、ここに挙げましたように1953年のBCGワクチン、1956年のポリオワクチン注射、いわゆる不活化ワクチンですね。その後、ポリオワクチンは内服ワクチンに切りかわりました。
 また、1994年には麻疹について学童期の子供の届出件数が増加したことが確認され、集団予防接種のキャンペーンが行われた。だから、学校で行われるということがあったということかと思います。
 そして、1999年にはC型髄膜炎に関するワクチンが導入されたときにも学校で看護師によって実施されました。
 それから、2008年からは先ほど申しましたヒューマン・パピロマ・ウイルスのワクチンが行われたということであります。
 それから、「注射針・注射筒の消毒・交換」について、ここにそういうことの報告、それに伴う特に黄疸の発生なんですけれども、文献の報告をかなり細かく調べて載せさせていただいております。結論的にいいますと、既に1943年、45年にそれらの予防接種ないしは医療の中で黄疸の発生があったということで、特にこの括弧の中にMEDICAL OFFICERS OF THE MINISTRY OF HEALTHと書いておりますけれども、こういう人たちが論文を発表している。国の主たる担当官がこういう事情について認識して、それで発表している。
 またイギリス医学研究会というところでも注射器の滅菌等、使用、管理について発表しているというふうなことで、大体1945年~1946年、そして62年、またここには挙げておりませんが、51年にはペニシリンの発見で有名なフレミング先生も御自身でBMJにそういうふうなことを書いているということで、相当具体的に注射針、注射筒の回し打ちというんでしょうか、そういうことによる健康への影響というもの、特に当時は肝疾患でいえば黄疸というものが把握されていることがわかります。
 そして、7ページですけれども、インタビューの結果では1950年には注射はこのように行っていたとか、60年には学校での集団接種は行われていたが、診療所でまとめて実施することもあったというようなこと。あるいは、70年の消毒はオートクレーブで行っていた。あるいは、イギリスでは75年ごろからディスポーザブルになったというふうな報告もお聞きしました。
 それから、「ディスポーザブル製品の普及状況」については特にここにかなり詳細に記載させていただいておりますけれども、1954年に米国のBecton,Dickinson and Companyですか、そういう会社が非常に最初の大量生産用のガラス製ディスポーザブル注射針・筒を開発、販売したというようなことで、このころからかなりディスポーザブル注射器についての開発が進んだようです。
 そして、1960年代までに滅菌後に再使用可能な注射器をディスポーザブルのプラスチック注射筒と単回使用の注射針にディスポーザブルによって置きかえられていったというようなことがあったようでございます。
 しかし、使い捨ての概念はまだ新しく、ディスポーザブル製品を加熱、再滅菌して再利用することが危惧されたというようなこともあったようでございますが、1961年にはポリプロピレン製のディスポーザブル注射筒が導入され、大きくマーケットは変わったというような報告があります。
 ちょっと長くなってしまったんですけれども、要点でいいですか。そういうことでございますが、「予防接種を原因とするB型肝炎感染事例」として、イギリスではこういう予防接種の安全性をモニタリングするものとしてイエローカードスキームという制度がありまして、このイエローカードという様式があってそれで報告するということが行われております。そういう制度はあるんですけれども、そういう中でも予防接種を原因とするB型肝炎感染事例は今まで報告されていないということをインタビューでも聞きましたし、文献的にもそういう報告を見つけることはできませんでした。
 「健康被害救済制度」についてはVaccine Damage Payment Schemeというものが行われているということで、詳細はここにありますのでごらんいただきたいと思います。
 続いてアメリカでございますが、アメリカではここにありますように学校予防接種法ということで自主的に管理されている。学校予防接種法というのは1827年にボストンで始められ、1855年にマサチューセッツで全米初の学校予防接種法が定められた。そして、1890年代までにほとんどの州で学校予防接種制度が定着しました。そして、どの予防接種が就学に必要かという規定は州によって異なるということでございますが、この学校予防接種法によって予防接種を受けていないとその学校に入学することができない。入学する条件として予防接種を受けたということを定めているというのはこの予防接種法によるものでありまして、これがアメリカにおける予防接種の柱になっております。
 対象疾病はここにありますように、「予防接種スケジュール」として示されている16であります。
 アメリカではBCGというのは1964年に予防接種スケジュールがつくられて以来、一度も対象疾病には含まれておりません。天然痘は含まれておりましたが、1971年に除外されております。
 それから、「管理体制」としてはここにあるようなものが国としては設置されておりますが、具体的にはこういうもので特にCDCを中心に、CDCとAdvisory Committee on Immunization Practice というところが管理している国の機関でございます。国としてはそういう形でもちろん管理しているんですけれども、各州、例えばニューヨーク州では自治体における予防接種実施計画委員会のようなものは存在していない。ですから、日本のように自治体、あるいはイギリスのようにPrimary Care Trustというところが行うという格好で行われているものではない。結果としてCDCを頂点とした州とカウンティの強力な一本体制、CDCが強く管理しながら行われているというのがアメリカの形でございます。
 そして、自治体レベルにおける次ページの3つ目の丸ですけれども、自治体レベルの予防接種への関与の状況については、ここにSカウンティー、スケネクディカウンティーの例を挙げておりますので見ていただきたいと思います。
 それから、強制・任意というところでございますが、ACIP、Advisory Committee on Immunization PracticeとCDC、これはCDCの中にあるものですけれども、それが予防接種スケジュールを示しております。そして、それに基づいて全国のカウンティが行っているんですけれども、このACIP/CDCのスケジュールも法的な強制力はない。また、州においても州民全体に対する法的強制力もないということで、実質上、学校予防接種法によって推進されている。それで、ニューヨーク州の場合、接種の証明がない子供は証明が出るまで学校に登校できないが、子供や保護者への処罰はなく、未接種の子供の登校を許した場合、学校側が処罰されるという格好で予防接種法が施行されているということでございます。
 それで、アメリカでもこの予防接種の強制に対する反対は非常に強く、「反予防接種派」というものが現在も勢力を保っている。社会の影響のある人が強力なグループであって、1990年代の半ばには宗教上の理由で子供の予防接種を拒否することを支持する判例も出ているということのようでございます。
 それから、集団・個別ですけれども、基本的に学校に入る前に予防接種を子供は受けておりますので、学校で集団接種をするという必要性がない。そのため、集団接種というのは基本としては行われていないのですけれども、歴史的には2回ほどあったということがあります。第1回はポリオで、ポリオはかなり大々的に取り組んだようでございます。それから、2度目としては2009年のインフルエンザ予防キャンペーンという格好でインフルエンザが行われたようでございます。
 そして、「注射針・注射筒の消毒・交換」ですが、まずイギリスで1940年代に発表された報告書などについては注射ごとに滅菌した針と交換するという注射の安全管理の認識はアメリカでもあっただろうとされております。それから、アメリカでは1952年に完全なディスポーザブル注射器を開発、使用しているということも行われております。特にポリオの撲滅運動などの中で、ディスポーザブルのものを使って全国的にポリオに取り組むということが行われたということで、アメリカにおけるディスポーザブルの普及にはこのポリオが大きな役割を果たしています。
 それからもう一つは、ちょっと言い残しましたが、軍人に対して戦地での処置ということからディスポーザブルというものが進んだというようなこともございます。
 そして、12ページの普及状況はここにあるとおりでございまして、滅菌済みの採血用の注射器で朝鮮戦争中に野戦病院で献血運動を行っていたアメリカ赤十字社のために開発されたというふうな事情もあったようでございます。
 それから、特にその次の丸ですが、1988年にはニュージャージー南部の医療機関で消毒不十分な注射器による患者から患者へのB型肝炎のアウトブレイクが起こり、注射器を介したヒトからヒトへの感染が初めてアメリカで報告されています。この事件を介して、同年にポリプロピレン製の普及型のディスポーザブル注射が開発されたというようなことで、ディスポーザブルというものの開発が進んだということも報告されております。
 それから、「予防接種を原因とするB型肝炎感染事例」でございますが、B型肝炎の主な感染経路としては14ページを開けていただいたらわかりますけれども、こういう格好で調べられておりますが、B型肝炎発症者の中に予防接種によるという報告は今までのところないようでございます。セックスパートナーであるとか、違法のドラッグというものが主な内容になっております。
 「健康被害救済制度」については、14ページのところに挙げておりますのでごらんいただきたいと思います。
 ちょっと時間が超過して済みません。以上でございます。
○永井座長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御報告につきまして御質問、御意見をお願いいたします。
○野口構成員 全国予防接種被害者の会の野口です。
 詳細な御報告、ありがとうございました。非常に貴重な示唆がここにあると思いますが、特にイギリスの場合でもアメリカの場合でも強制予防接種が1946年にイギリスでは廃止され、さらにアメリカではそういう状態ではなかった。私もいろいろ裁判の記録を見ているのですが、きょうお話になられていたようなこともロンドン大学のディック教授が予防接種東京集団訴訟の裁判で証言されていますけれども、その中で1946年に廃止した理由の一つとして非常に危険性が高いというふうな認識が薄れてきた。それで強制接種を廃止したという証言があるのですが。
○多田羅構成員 危険性というのはどういうことですか。
○野口構成員 つまり、廃止の理由を要約すると、国民に種痘を強制するためには社会が非常な危険にさらされるという理由が必要だろうと考えられるわけですが、その危険が既に失われ、考えられなくなったのが廃止の一番大きな理由であったと証言されています。
 それで、何が言いたいかと申しますと、日本と比較して、つまりアメリカとかイギリスでは接種率を上げるということが政策ではなかったというふうにこの時点で捉えてもよろしいかということです。
○多田羅構成員 まず危険性ということですけれども、ちょっとここにはないのですが、当時のイギリスの伝染感染性疾患の状態を見てみますと、やはりジフテリアとか、そういうもの、天然痘は大分減少しておりますけれども、コレラとかも圧倒的に何千というオーダーでありますので、そういう意味でリスクが消えているとは思いません。
 もう一つ、2番目は何でしたか。
○野口構成員 政策そのものですね。
○多田羅構成員 それはハード・イミニティー(Herd immunity)という概念がございまして、イギリスでも一定の90%の接種率がないと社会防衛できない。90%以下だと、誰かが感染したときにそれは社会に広がるというわけですね。90%のイミニティーを確保していればその社会は安定しているという概念がございまして、ハード・イミニティーというんですけれども、そのイミニティー、免疫率を確保するということは至上命令です。ですから、今でもイギリスの予防接種率は日本などと違ってほとんど90%を超えております。そういうふうに国も指導をしているんです。ですから、接種率が低くていいということは、イギリスではほとんどそういうことは行われていないと私は思っております。
○野口構成員 ただ、当時のいきさつを証言で見てみますと、接種率がその時点では実際に受けたのは40%~50%、宗教上の理由とか、それから接種を強制されるというふうなことは考えられないという考え方がその根底にありますので、その辺は非常に我が国の強制という法的な拘束力とは違うものがそこで見えると思うのですが。
○多田羅構成員 それはそのとおりで、コンシャス・オブジェクションというものもありまして、強制のものについて40%というのは一つの報告ですけれども、あります。
 しかし、今日で言えば90%、大体全部の予防接種の受診率は達成しております。それでよろしいでしょうか。言っていただいているのは、強制というものについて。
○野口構成員 そうですね。やはり政策がどうだったかというのは一つのポイントだと思いますので、やはりここでイギリスとアメリカの例を挙げているのは我が国との対比ですね。その中で、強制という政策が1946年時点で、アメリカの場合は初めから強制という方法で、イギリスの場合でも1946年の時点で既に強制ということをやめていた。ひいては、我が国の場合は強制接種を廃止したのは1994年ですね。ですから、それだけタイムラグがある。
○多田羅構成員 私などは向こうの方とのヒアリングで、やはりそういう社会から強制されるということについてまず国民の中に抵抗があるんですね。強制されるということではなくて、何事も自発的、自分の健康は自分で守るではないですけれども、そういうものがあって、まず強制されるということについては当初から反対という社会のあり方ですね。国民に国家が強制するということに対する基本的な反対というのはイギリスの場合、相当根強いものがあった。その上に宗教も重なってくるということで、まず強制というのは国民にほとんど受け入れられなかったところが基本的にあったということで、そこは非常に大事なことだと思います。
○永井座長 ほかにいかがですか。
○山本構成員 この報告を見させていただきますと、非常に感染が少ない。B型もC型もウイルス性肝炎については少ないという実態だと思うんですが、現在イギリスとアメリカの両方ですが、B型あるいはC型の感染者数というのを行かれたときに聞かれたと思うのですが。
○多田羅構成員 感染者数そのものは私も関心があったんだけれども、行っている間にその数字をもらうことはできませんでした。
 しかし、B型が少ないというわけではありません。向こうのGPなどと話しましても、それはさっき申し上げたセックスビヘービアであるとか、あるいはドラッグとか、そういう人の中のB型というのは非常に一般的で、イギリスのGPでも珍しいことではないということで、B型が大人の感染症としてはかなり大きな分野を示している。
 そういう意味で、アメリカについても14ページのような調査も行われていて、2,800人の調査が行われているような格好で、B型肝炎が非常にまれな疾患という形ではなくて、こういうセックスビヘービア、あるいはドラッグの関連の中では非常に課題の多い疾患であるという認識にはなっていると思います。
○永井座長 そのほか、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、どうも多田羅先生ありがとうございました。続いて議題の3、検証項目2の(1)の「感染者の肉体的・精神的及び経済的負担並びに社会的差別偏見に関する実態のアンケート調査票」につきまして、研究班から御報告をお願いいたします。
○多田羅構成員 感染被害実態のアンケートにつきまして、研究班でその調査票の検討を行いましたので報告させていただきます。
 詳細については三菱総研から説明させていただきます。では、お願いします。
○研究班事務局 それでは、資料4-1、4-2を用いまして御説明をさせていただきます。
 まず資料4-1が御本人宛て、それから資料4-2が御遺族様宛てということでございます。
 調査の概要について御説明するために、資料4-1の一番後ろをごらんいただきますと、研究班からの調査協力依頼状をおつけしております。ここに記載しておりますとおり、この調査はB型肝炎訴訟の和解が成立したすべての方を対象として調査を行いたいというふうに考えております。この紙には記載してございませんが、現在のところ概数で御本人様が約1,000人、御遺族様が約50人という対象数というふうに伺っております。
 1ページ目に戻っていただきまして、調査項目でございます。
 まず、最初の1ページ目に全体の構成が記載してございます。1~10までの大きなくくりで合計24ページの調査票になってございます。基本的には御本人に御回答いただきますが、御記入いただけないような場合には御家族の方に御本人の状況をお伺いするということで御記入いただく予定でございます。そのため、1ページの1は「回答していただく方(記入者)について」という設問を設けてございます。
 次の2ページからは、すべて御本人のことについてお伺いする項目でございます。基本情報としまして、性別、年齢、それから和解手続で認定されたB型肝炎の病態、感染原因、問4が住居の状況、問5が同居の人数ですね。同居している方の続柄ですとか、同居している方のうちB型肝炎に感染している方の人数とその続柄というような項目になっております。
 3ページ目にまいりまして、B型肝炎の症状ということで、現在の病態についてが問1です。それから、B型肝炎と診断された時期、B型肝炎に感染していることが判明した検査、その検査を受けた理由というような設問を設定してございます。
 それから問5ですが、症状についてお伺いする設問ではあるのですが、ここではB型肝炎に感染したことが判明したときのお気持ちについて自由記入欄を設けてお気持ちをお答えいただくというような設問も設けてございます。
 4ページ目でございます。問6で、これまで受けた治療ということで選択肢で選んでいただきます。また、その治療の副作用について設問を設けてございます。
 それから、核酸アナログ製剤の投与の状況、それから受けていない方にはその理由という設問でございます。
 問7は、医師の処方以外の健康食品の摂取や民間療法についてということで、したことがある、ないという状況をお伺いするものでございます。
 5ページからが、身体の状況全般あるいは医療機関の受診の状況についてということでございまして、この設問に限りませんが、全般的に国民生活基礎調査でありますとか、既に公表されている先行的な研究をなるべく近い形で設問を設けておりまして、集計結果をそういった先行研究、あるいは一般的な調査と比較できるような工夫をしております。
 5ページの問1につきましては国民生活基礎調査の設問に基本的に倣っておりまして、「あなたはここ数日、病気やけがで具合の悪いところがありますか」という設問で、ある場合には「それは、どのような症状ですか」という設問です。
 この選択肢はたくさんございますが、1~41は国民生活基礎調査で挙げられていますが、42~46につきましてはB型肝炎に特有の症状ということで追加的に設けているものでございます。
 また、(2)ではその中でB型肝炎に関連していると思われる症状の番号を記入していただくという設問を設けてございます。
 6ページ目でございますが、病院や診療所に通っていますかということで、通っている場合にはどのような症状で通っているかについて御回答いただくということでございます。5ページと同様に、(2)ではそのうちB型肝炎に関連していると思われる傷病の番号についてお答えいただきます。
 7ページ、問3では医療機関の1年間の受診の状況ということで、入院、通院、往診、それぞれどれくらいの頻度でかかっているかということについてお伺いします。
 また、受診している方については受診の交通手段であるとか、時間あるいは費用の負担についての設問を設けてございます。
 8ページ目にまいりまして、医療費にかかる自己負担の状況ということで、まず問1では国が行っております医療費助成制度の利用についてお伺いをしております。利用していないという方にはその理由、知っているという方には制度を知ったきっかけについてお伺いをしております。
また、8ページの問2では生活保護の状況についてもお伺いをします。
 9ページでございます。問3で、過去1年間で病気やけがや、あるいはその予防で払った費用ということで、1年間に要した医療費等についてお答えをいただくものでございます。
 それから、問4では公的な払い戻し金であるとか、民間保険の給付された金額ということで、問3と問4で医療に関するお金の出入りの実態を把握するという設問でございます。
 10ページでございます。仕事の状況についてということで、現在の仕事の状況、それから仕事の形態、勤めか自営かについて、就業の希望、それから11ページにまいりましてすぐにでも仕事につけるかどうかという設問を設けております。
 それから、問2でございますが、「B型肝炎の発症により仕事や部署が変わったことはありますか」ということで、B型肝炎に感染したことによる経済的な影響についてお伺いをするところでございます。
 さらに、その時期であるとか、仕事が変わったことで収入が変化したかどうか、減少したと思うかどうかについても設問を設けております。
 12ページにまいりまして、世帯の所得状況ということで、非常に細かくなってしまいますが、これも国民生活基礎調査をベースになるべく正確に把握できるようにということで設定しております。問1が民間取得総額、問2が家計支出総額、問3が合計貯蓄現在額という設問でございます。
 13ページにまいりまして、B型肝炎に感染してからの生活についてということで、健康上への影響、それから問5が仕事や普段の活動への影響についてお伺いしております。
 それから、14ページの問7、経済的負担について改善を希望するものということで、正確な情報、就労・雇用支援、自己負担額割合の軽減、医療機関でのフォローアップ、交通費の割引といったような設問を設けてお伺いをしております。
 問8では、日常生活であるとか学校生活といったような日常の場面ごとの悩みであるとかストレスの感じ方についてお伺いをしています。
 それから、15ページの問9ですが、これは1~6までございまして、知識や情報の入手あるいは悩みやストレスをどういったところに相談しているかということをお伺いする設問です。
 1が医学的な知識や情報について、あるいは医学的な面での悩みの相談について、どんなところを利用しているかというものです。次のページにまいりまして、2が経済的な面での悩み、あるいは知識・情報の入手について、3が生活全般についてという設問でございます。
 17ページの4から以降は、同じようなことについて今後充実を期待するところはどこかということをお伺いしております。
 また、18ページの7では1~6以外でB型肝炎に関する知識・情報の入手、悩みやストレスの相談についての意見・要望ということでお考えを記入していただく設問を設けています。
 18ページの問10では、感染について誰か知っているか。
 あるいは、19ページの問11では反対に秘密にしている人がいるかということをお伺いしています。
 それから、問12ではB型肝炎を理由にして嫌な思いをした経験について、選択肢で選んでいただいた後、その下の空欄に自由に御記入をいただきます。
 20ページ、問13では最初に肝炎とわかったときの思いについてどのようなお気持ちであったかをお伺いする設問でございます。
 同様に、問14では病気が進行したことがわかった後の気持ちについてお伺いをします。
 また、問15ではB型肝炎に関してどのようなことにお困りですか、あるいは将来に対するどのような不安、思いをお持ちか、御自由に御記入をいただきます。
 21ページ、問16は再発防止のために必要なことということで、医療あるいは政策・制度、社会一般についてなど、さまざまな観点でここは再発防止に向けたお考えをお書きいただきたいと思っております。
 22ページが、母子感染でお子さんがB型肝炎に感染してしまった母親の方にお伺いするもので、母子感染の状況であるとか子供に対するお気持ち、あるいは子供が御自身に対する接し方が変わったかどうかというようなことについてお伺いする設問を設けています。
 23ページが、反対に母子感染で御自分が感染した方について、感染したことを誰から伝えられたか。あなたの母親に対する気持ちは変わったか。母親のあなたに対する接し方は変わったかということをお伺いしています。
 24ページ、最後でございますが、同居している家族がいる方ということで、同居している御家族の方に対するワクチン投与を勧めたかどうかについてお伺いをする設問となっております。
 以上、御本人宛てでございまして、御遺族様宛てのものはおおむね同じような内容で、亡くなった方についての状況を御遺族の方にお伺いする設問で、ほぼ同様の設問になっております。
 違うところが、最後の8ページでございますが、御本人、お亡くなりになった方がB型肝炎に感染していることを理由に御遺族が受けた嫌な思いであるとか、そのときの気持ちについてお伺いをする設問、問6、問7、それからそれについての自由記入欄として問8を設けております。
 資料の御説明は、以上でございます。
○永井座長 ありがとうございます。
 それでは、ただいまの御説明に御質問、御意見をお願いいたします。
 では、小林委員、続いて垣本委員どうぞ。
○小林構成員 小林でございます。
 1つお伺いしたいのですが、家族内感染、垂直感染と家族内の水平感染、またはワクチンを勧めたかということを同居ということに限っておられるのは、特に家族構成が高年齢の方が多ければ核家族化していると思うのですが、同居と限定した理由はどういうことでしょうか。むしろ同居したことのある全家族を調べないとこの実態はわからないんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
 2ページの問5の(2)と、24ページの問1のところに関してです。
○研究班事務局 同居の状況につきましては、先ほどちょっと申し上げましたが、国民生活基礎調査ベースで世帯ごとに聞いているというようなことを踏まえて設定したものでございますが、御指摘のとおり調査の趣旨を踏まえますと、過去に同居していた方も含めるのがいいということもごもっともかと思います。
 一方で、どこの時点までさかのぼってお答えいただくのか。あるいは、お答えいただけるのかというような可能性の問題もございますので、事務局としては持ち帰って検討させていただきたいと思いますが、多田羅先生いかがでしょうか。
○多田羅構成員 それで検討させていただきたいと思います。
○小林構成員 ありがとうございます。よろしくお願いします。
○垣本構成員 垣本です。
 質問は1つだけなんですけれども、資料4-1と4-2と比較すると、1ページの一番上の四角の中に「ご本人」という言葉がありまして、資料4-1のほうは「被害者ご本人」と書いてあるのですが、資料4-2のほうは「ご本人について」ということで、この辺の「ご本人」の中身があいまいになってしまうので、4-2のほうも「ご遺族ご本人」とか書いておいたほうが間違いが少ないかと思いました。それだけです。
○山本構成員 日肝協の山本です。
 7ページとか9ページのことで提案させていただきます。B型肝炎というのは治療方法がずっと変遷しておりまして、インターフェロンは昭和60年くらいに認可、それから核酸アナログ剤が平成12年、約12年前に認可されているわけですけれども、核酸アナログ剤は非常にいい薬でございまして8割~9割、あるいはそれ以上くらいの方が非常に沈静化する。肝がんになっている方以外は非常に沈静化する薬剤でございます。
 それによりまして、それ以前であれば非常に入院とか、あるいは通院とか、医療費はすごくかかって各個人あるいは家庭に負担がかかっていたんですけれども、ここの設問では過去1年ということになっていますので、核酸アナログ剤が投与されていますので、非常に落差のある集計しか出てこないと思うんです。
 だから、ぜひ核酸アナログ剤が認可される前の非常に厳しい段階のところの受診状況であるとか、医療費であるとか、あるいはその他の項目があれば、そういう項目をぜひ追加していただかないと適切な調査はできないと思います。それぞれのB型の肝臓病患者はそう感じると思いますので、ぜひそれは考慮していただきたいと思います。
○多田羅構成員 そうしますと、それは12年前とか、そういうことになるんですか。
○山本構成員 そうですね。核酸アナログ剤は2000年に認可されていますから、それ以前であれば非常に皆さん厳しい状況だったと思うんです。
○多田羅構成員 12年前のことは記憶いただいているでしょうか。
○山本構成員 そういう方もいらっしゃると思います。データを持っていますよという方もいらっしゃいますし、あるいは移植された方とか、私もそうですけれども、非常に厳しい状況でありましたし、私の患者会の友人も兵庫県にいるんですが、虎ノ門まで入院あるいは通院をしていたという状況ですので。
○多田羅構成員 わかりました。研究班のほうに原告団の方もおられますので、班に持ち帰って検討させていただきます。
○八橋構成員 アンケートの内容ではなく、アンケートの配布の仕方をお聞きしたいのですが、この対象は和解が成立した原告の方ということで、和解が成立していない方は対象外でよろしいでしょうか。
○多田羅構成員 そうです。
○八橋構成員 それと、これは無記名のアンケートですね。
○多田羅構成員 はい。無記名です。
○八橋構成員 それと、弁護士の方が配布するということで、その後、アンケートに答えるかどうかということに関しても、郵送するかどうかに関してもご本人の意思であり、アンケートに答えたくない方は書かれないし、出さないという理解でよろしいですか。
○多田羅構成員 今のままですと、そういう形になると思っております。
○八橋構成員 この調査は、自由な意思で回答をいただくという点を明確にすることが大事で、これに答えないことで不利益にならないというふうな一文句が必要だと思います。原告の方々は、この状況を広く伝えたい方と自分の個人情報を守りたいという方と2つに分かれると思います。その自由な意思を残してあげることが大事なことだと思います。
○多田羅構成員 挨拶文ですね。わかりました。
○永井座長 では、どうぞ。
○野口構成員 全国予防接種被害者の会の野口です。
 アンケートの作成、ありがとうございました。問13、14に関してですが、私は普段被害者の方から聞く感情が入っていないのではないかと思います。例えば、苦しみ、憤り、怒りとか、許せない。
 なぜかとちょっと考えていたのですけれども、初めに肝炎になったと思ったとき、原因がわからないわけですね。ところが、だんだん経っていって、要は自分の責任ではなくてこうなってしまったんだという場合、違った感情が生まれるんです。許せないとかですね。そこら辺の気持ちというのを、どういうふうにここから斟酌するのでしょうか。
 つまり、かかった時点で原因がわからない。ところが、原因がわかったんですが、自分の責任じゃなくてこうなってしまったというときには、やはり憤りとか、やるせない気持ちとか、苦しみですね。それから、許せないという気持ちがこのアンケートでは表現として出てこないと思います。
○多田羅構成員 許せないというのがわかったほうがいいですか。
○野口構成員 これは実態調査ですから、つまり心の変遷を時系列で追うわけですね。ですから、初めは肝炎になってしまいました。なぜなったのか、悲しい。
 ところが、時間が経つにつれて裁判が始まり、私は実は自分の責任じゃなくてという事実が判明したときには違った感情が私どもの被害者からは裁判のときに出ております。つまり、自分たちの責任でないのにこうなってしまったんだというふうな感情を、ここでどういうふうに時系列とともに表現していただくかということです。
○多田羅構成員 研究班の原告団の方もおられますので、御意見いただいたことを受けて研究班に持ち帰って検討させていただきます。
○野口構成員 ですので、私の要望はこの間に1つ入れていただきまして。
○多田羅構成員 13、14のところですね。
○野口構成員 この肝炎の感染が御自分の責任ではない。つまり、水平感染とか、その他の理由とわかったときはどういうふうな気持ちになったかということです。それで、そこにはやはり私どもの被害者ではかなり強い怒りとか、そういう気持ちが挙がってきております。
○多田羅構成員 わかりました。
○荒井構成員 形式的なことで恐縮ですが、大変項目的には網羅的に拾われていると思われますし、なるべく答えやすいように基本的には番号に丸をつければいいという記入の仕方を工夫しておられて、全体として私は回答される方は大変だと思いますけれども、配慮されていると思います。
 なおかつ、今、野口さんがおっしゃったことにも関連して、今の13、14もその他の空欄で自由記載のところがございますね。ですから、そこである程度時間的な経過についても書き込むことはあるいはできるかもしれないという気はするわけですが、この自由記載に関連して一言申し上げます。
 恐らくこの調査票というものは、レイアウトを含めてこのままお使いになるようにできているんだろうと思うのですが。
○多田羅構成員 一応そのつもりでおります。
○荒井構成員 自由記載で書いてもらう項目が何か所かございまして、それは大体適当だろうと思うのですけれども、資料4-1の15ページをごらんいただくと一番上の2の自由記載ですね。できるだけ具体的に記入してくださいという割には、この空欄が少ない。せっかくこのページの下のほうが真っ白で空いていますから、もっとここを広く取っていただいたらいいんじゃないか。細かいことで恐縮です。
 それから、資料4-2のほうです。これも同じく8ページに問8と問1がございますが、これは紙が1枚増えるかもしれませんけれども、問8とその下のほうの問1のところの自由記載欄をもうちょっとたくさん書こうと思えば書けるようにしていただくほうがいいんじゃないかと思います。
○多田羅構成員 検討してみます。
○永井座長 ほかにいかがですか。
○野口構成員 済みません。1つ、先ほど忘れました。
 問16ですけれども、四角の中の「医療について、政策・制度について、社会一般について等、様々」とありますが、この中に本検討委員会に希望する事項というものを入れていただきたい。つまり、やはりいろいろ皆様方の御意見を真摯に私どもは受け取るべきだと思いますので。
○多田羅構成員 そうすると、問17ですね。
○野口構成員 17でも結構です。独立しても結構です。
○多田羅構成員 検討させていただきます。空いていますから。
 では、アンケートについてはよろしいでしょうか。
○丸井構成員 小さいことで済みません。先ほど話題になりました20ページの問14ですけれども、「病状が進行したことが分かった」というのは、どちらかというと受け取った書かれる方がどの時期を想定するかということがかなりばらつくように思います。ここはどういう状況を想定しているのかということが聞く側と記入する側で随分ずれそうな質問形式になっているので、ちょっと御検討いただければと思います。
○多田羅構成員 わかりました。検討させていただきます。
○永井座長 どうぞ。
○梁井構成員 原告団の梁井です。
 本人アンケートの12ページですけれども、ここのアンケートの対象者が和解した原告になっておりますので、貯蓄の現在高というところに和解金を外してとか、何かそういうものを入れていただけないでしょうか。
○多田羅構成員 ただし書きですね。検討させていただきます。
○永井座長 よろしいでしょうか。
 そうしますと、今の幾つかの御指摘の点、核酸アナログのところ、思いのところ、空欄の大きさ、今の和解金の話、問14、17、御意見がありましたが、これは一度お持ち帰りいただいて。
○多田羅構成員 もう一回研究班を開きますので、その中で最終案を検討します。
○永井座長 そちらにお任せするということでよろしいですか。
○多田羅構成員 一応、事前に委員の皆さんには少なくともメールで見ていただいて、特段の御意見がないかどうかは聞かせていただきますが、この会にはできましたらそういうことでお願いできたらと思います。
○永井座長 よろしいでしょうか。
○花井構成員 一言だけ、かなり御苦労してつくられたということで大体よろしいかと思うんですけれども、私の認識としては被害実態調査というのはいろいろありまして、どちらかというとこれは質問項目からいえば被害者実態調査の項目が多くて、被害の実態調査の項目というのは見たところ、問12、15以降の幾つかの質問になっている。
 つまり、被害とは何かという定義はいいんですけれども、例えば感染した疾病自体の苦しみというものがあるでしょうし、それからスティグマとかフェルトスティグマとか、そういったものがありますね。それから、被害と普通の疾病だけとどう違うかというコントロールスタディーと比較するためのスケールとか、そういうものがあると被害実態調査なんです。
 私どもは薬害なのでちょっと違いますけれども、そういった形で被害者の実態と被害の実態というのはやはりちょっと異なる概念として、被害者の実態を把握する。さらに被害の実態となると、その被害の内実というものは主観の世界もあるんですが、それをいかに例えば定量化できるような項目にするかを検討してやるんですね。
 それを全部、今からどうのという話を言っているのではなくて、例えばどこかで、特に感染症つながりで私もBもCもIもやったのでわかるんですけれども、例えば他人にうつすことを心配しているかという項目がありますね。その内実そのものが被害なのだから、そこに対して私たちだったらかなり踏み込んだその中身ですね。職場でどうかとか、フェルトスティグマないしはスティグマのどのようなものかというところをさらに掘り下げるという質問があり得ると思うんです。
 ある種、そういう何かスケール、ちょっとスペースもありますが、先行研究で幾つかそういう割と主観の世界なんだけれども、コントロール群と比較できるようなスケールも多少研究されてあるので、もしスペースがあればそういったものをどこか1つくらい入れて、いわゆる一般ポピュレーションと比較して、やはりこれだけのストレスがかかっているなということがあれば、もうちょっとサイエンティフィックというか、被害を低量化するという意味においてはそういう装置もあればいいかと思います。
 あと1回しかないということなので、これで全部盛り込むというのは難しいと思いますし、最初の調査なのでこのくらいかとも思いますけれども、何か1つくらいあると、それは。
○多田羅構成員 先生がおっしゃっているのはスティグマのことですか。
○花井構成員 例えばスティグマです。
○多田羅構成員 スティグマは、龍岡班で相当やっているんですね。厚生省のもう一つの研究班で、差別と偏見でしょう。
○花井構成員 予防接種被害者のですか。
○多田羅構成員 予防接種というか、肝炎です。
○花井構成員 だから、そうなるとまさにそこでやられている肝炎一般と予防接種という。
○多田羅構成員 これも肝炎になりますよ。
○花井構成員 だから、それを調べなければ。
○多田羅高委員 これはいわゆる原告の和解を達成した人ですから、一般市民ではない。一般の患者ではないので。
○花井構成員 ですよね。ですから、まさにそうなると、例えば私たちで言えば単にプレーンなHIVと薬害のHIVとか、疾病としては同じなんだけれども、それはどのような被害なのかというところを切り込むということはあるんです。だから、いわゆるHIVと薬害を比較するとか、そういう調査をやっているんです。その差分が被害になるということですから。
 わかりますか。これでやれと言っているのではなくて、そういうようないわゆる被害実態と被害者実態ということで言えば、被害実態ということであればそういうふうな切り込みもできるわけです。だから、まさに先行研究が肝炎一般であるならば、そこと比較して、では予防接種の人たちは何が違うのかという仮説形成があり得るわけで、そういうものを比較できるスケールを当てると結構いい。
 だから、先行研究で使われたものがあればそれはまさにそれがどんぴしゃで、それと同じものを当てる。これは違うんじゃないかというものに関して、こちらで全く同じ質問を入れることによって比較できるということです。そういう趣旨ですですので、御検討いただければと思います。
○多田羅構成員 わかりました。研究班の中で、先生の御意見をそこで検討させていただきます。
○永井座長 ありがとうございます。よろしいでしょうか。
 では、ワーキングにお任せして、最終的にメール等で各委員に見ていただく。
○多田羅構成員 そこまでは確実にやらせていただきます。それで、もし課題が出ましたら次の検討会にお諮りしますけれども、一応、今日いただいたような範囲のことは処理できると思いますので、御了解いただきたいと思います。
 一言だけいいでしょうか。さっきの私の報告の追加ですけれども、野口委員からリスクの減少ということをおっしゃっていただきました。当時、もうリスクは減少していた。それで私は思い出したんですが、確かに強制というのは天然痘に対する強制なんですね。それで、もう46年には天然痘は非常に減少しているということがありまして、天然痘に対しては確かにリスクが減っているということがあって、強制ということはなくてもいいという意見があったということは向こうでお聞きしました。
 だから、リスクというのが天然痘の減少ということでいえばそういうこととして天然痘を強制にする必要はないということがあったということは申し上げることはできると思います。
○永井座長 よろしいでしょうか。ほかに何かございますか。
○奥泉構成員 B型肝炎弁護団の奥泉です。
 事前にペーパーを出させていただいていますけれども、今のアンケートについていろいろ議論いただきましたが、これに加えてぜひとも被害者本人のヒアリングも実施をしていただきたいということです。
 このアンケートはいろいろつけ加えて検討して、またふくらませていただくことになるとは思うんですけれども、やはり全体の把握は量的な、あるいは典型的な把握ということになると思いますが、個々一人一人の被害実態あるいは被害の感情なりというのは書き込めないといいますか、書き切れないといいますか、自由記載欄もあるんですけれども、それぞれの方がどこまで自分のことを書けるか、なかなか難しい。やはり人との対話の中でそれが出てくるものではないか。
 私たち弁護団もそれぞれ原告の皆さんと話をして、そこで本当に大変な面があるんだ、こんな面もあるんだということがわかってきてここまで裁判をやってきているという実態はあります。この検討会でも第3回で3人の方に意見陳述していただきましたけれども、やはりそれぞれ違います。
 ですので、どこまでできるかということはあるかもしれませんけれども、少なくとも一定の病態で地域的な方を選んで、そこで聞き取り調査を加えた形の被害実態調査をぜひとも行っていただきたいと思います。
○山本構成員 日肝協の山本です。
 今の件ですけれども、やはり本当に実のある再発防止策を講じていただきたいのですが、そのためにはいろいろな生の被害を聞いていただいたほうがいいと思いますので、ぜひヒアリングをしていただきたいと思います。
○永井座長 いかがでしょうか。
 多田羅先生、どうぞ。
○多田羅構成員 その件につきましては、研究班の中でも田中委員、梁井委員のほうから御提案いただきました。
 それで、研究班でかなりの時間をかけて議論させていただいたのですけれども、基本的に1つは被害者に対するヒアリングは検討会で既に3人の方からお聞きしていること。
 それから、この被害の実態は今日、見ていただきましたようにかなり詳細なアンケートによりまして網羅しているのではないかということがあること。それには、原告の方からも詳細なアンケート項目についても提案いただいていること。
 そして、さらに自由記入欄というところを設けまして記入していただくことにもなっていること。
 それから、これを研究班の研究として行うとしますと、どのような人を対象にどのような方法で行うかということの議論も研究班で行いましたけれども、その場合、逆に相当の時間とか体制とが不可欠であるということ。
 今回、そのような4つの観点から、この研究班でヒアリングを行うことは中立という面から望ましいということはいえるかもわかりませんが、現在の時点では特に研究として行うとなると、そのデータの代表性といいますか、そういうものをどのようにして担保するのか。誰にヒアリングするのか。どのような方法で、インタビュアーはどのように要請するのかというふうな議論まで研究班では出まして、そういう点から簡単にいいだろうというわけにはいかないというふうなことが大勢を占めた事情でございます。
○田中構成員 今、多田羅班長から出たように、研究班の中で検討しました。それで、これはこの検討会でぜひ出してほしいということで今回この要請書を出したという経過です。それで、今お聞きのとおり、時間的、体制的、あるいは研究としてどうなのかということでした。もちろん、この検討会は3月までというような時間的な制約はあります。
 ただ、この検討会の目的として、時間に制約されることが目的なんでしょうか。この検討会の設置の目的の中に、集団予防接種のB型肝炎感染拡大の検証、そして再発防止というものが今回の検討会の目的です。そして、これは第三者機関において行うとなっています。まさにこの検討会がその機関でありますから、ぜひこの検討会でヒアリングをするということを決めていただきたい。
 今、多田羅班長から、被害の実態については検討会の中でも3人の方にお話しいただいた。あるいは、アンケートも非常に細かく決めたというふうにおっしゃっていただきました。ただ、構成員の皆さん、本当に被害の実態をおわかりいただいていますでしょうか。今までの例えばハンセン病、HIV、薬害、そういったところの検証会議の中で、例えばハンセンの最終報告書の中でも「検証に臨むに当たって多少の知識は持ち合わせているつもりだった。だが、実は何も知らないということにすぐ気づかされた。検証が進むにつれて知らされるこの無知と加害者の意識は、本検証作業にかける私たちの情熱と原動力になった。」
 ハンセンの最終報告書でも、以上のように謳っております。私たちは1989年、平成元年から23年、24年かけてこの問題を解決すべくやってきました。昨年、ようやく基本合意を見て、そしてこの検討会ができました。ぜひこの検討会で私たちの被害の実態をしっかりと目に据えて、そしてそこから始めてほしい。これは、何回も検討会あるいは研究班で言っていることです。ぜひヒアリングの検討をお願いしたい。以上です。
○永井座長 構成員の方から御意見はいかがでございますか。
 荒井委員、どうぞ。
○荒井構成員 先ほど御説明のあったアンケート項目というものは、被害あるいは被害者の病気のみならず生活実態まで含めて相当網羅的に、お答えになるのが大変だなと思われるくらい自由記載欄も含めて盛り込まれておりますね。
 それで、ヒアリングということでおっしゃっている先ほどの奥泉委員のお話、あるいは田中さんのお話はわからないではないんですが、これほど網羅的綿密なアンケートで、なおかつ足りないというのはどういうところに主眼があるのかということをお尋ねしたい。これが1つです。
 それから、まず構成員がその実態をよくつかまなければならないというのはある意味でおっしゃるとおりだろうと思うのですが、構成員がわかる方法としてヒアリングというものが規模、程度にもよりますけれども、適当なのかどうかですね。結局、今後の防止策をいろいろ考えていく上に、アンケートでつかんだ大量観察的もので対応を考えていく。ヒアリングというのは、恐らくきめ細かくというところにウエートがあるのではないかと思うのですが、それを我々を含めてどう反映するかといえば、結局そのヒアリングの結果をまたこのアンケート項目みたいな形で整理していくというような作業につながっていかざるを得ないのではないか。
 つまり、一人一人から相当の時間をかけて聞き取ってその実態を把握するという趣旨はわからないではないんですけれども、ここでの作業の後のことを考えると、具体的にどういうふうに生かすことができるのか。我々はそこの実態をなるべくきめ細かく臨場感を持ってということでしたら、それはまたやりようもあるんだろうと思うんです。
 アンケートを補充するという意味でのヒアリングというのがもうひとつ私にはわからなくて、それがなければ何がうまくいかないかとか、あるいはどういう規模でお考えなのか。それを、奥泉先生のほうからお願いします。
○奥泉構成員 被害者の類型的にといいますか、質問項目をどうつくるか自体、本来は一定数のヒアリングを前提にしてスタートすることがいいのかとは思っているのですが、今回は原告さんも含めて研究班で検討されてこういう形になってきたと思うんですけれども、少なくとも例えば問13の肝炎とわかったときの思いはどうですか、あるいは進行したとわかったときの思いはどうですかという聞き方をされても、先ほど途中から被害者とわかったときにどんなふうに変わっていくのかというところも入れるべきだというお話もありましたけれども、こういうふうに平板的に聞かれても答えられる人がどのぐらいいるかというか、量的にといいますが、やはり一人一人の生活が違っていますので、例えばこんな偏見を受けたという要因の中でのこういう例があった。あるいは、こういう面もある、こういう面もあるということがここで本当に全部拾えるだろうかというところが1点です。
 それと、規模として全員ということを私は考えているわけではないですけれども、一定の病態の方の一定数といいますか、数十名なのか、少なくともそのくらいの数の方からそれぞれの日常生活も含めたことを聞きながら、この病気に対してどう思っているのか、あるいは被害に対してどう思っているのかということをお話をしていくということが、やはり本当の気持ちなり、思いなり、困っていることなり、腹が立っていることなり、そういうことが出てくるのではないかと私は考えています。
 ですから、このアンケートを補充する形で結構ですので、一定数から直接話を聞いて、ここに書いてある、あるいはここに書くべきことが本当にもっともっといろいろなことが前提的にあって、こう思っているということが出てくるかもしれないし、私はいろいろ先ほど言いましたけれども、一人一人の個々の裁判での意見陳述というものを毎回やっているんですけれども、それはやはりお一人お一人違って、こういうアンケートではなかなか類型的に出てこない部分は本当にお話をする中で出てくる問題といいますか、そういうことから発見されるというところがあるものですから、そういう意味でということです。
○荒井構成員 繰り返しですけれども、わからないではないのですが、そういう形でヒアリングを担当した方はその実態に触れることができて、アンケートの集計よりははるかにきめの細かい実態が理解できる。それはよくわかるんです。
 しかし、それは例えば我々構成員に対して逐語的に聞き取ったことをテープに取ったものを反訳して、それを皆に配るような形でお互いにもっと理解しましょうというようなことを想定なさるのか。
 つまり、ヒアリングをすることに意味があるんじゃなくて、その結果をどう生かすかということを考えますと、結局まとめという作業を伴わざるを得ないんじゃないだろうか。ここがひとつ私は気になるんです。
 今、奥泉先生のおっしゃった、これも全員ではないかもしれませんけれども、裁判の中で原告のそれぞれの方が意見陳述なさる。それで、例えばの話ですけれども、裁判記録そのものをこちらのほうで利用するというのはいろいろ制約があって、これは難しい。だけど、多くの私の経験からしましても、意見陳述なさる方は大体原稿をお考えになって用意なさっている。そういうものはむしろ裁判記録ではない、その方のいわば陳述内容ですね。まさに実態を語っておられるというようなものを、何らかの形でこちらのほうに提供していただくというような方法もあり得ると思うんです。
 だから、申し上げたいのは、もうひとつヒアリングでないとどうもつかめないという辺りが具体的なヒアリングの後の利用の方法と合わせて考えたときに、果たして大変なエネルギーをそれ以上かけてやるだけの意味が持てるだろうかというところがちょっと気になるものですから、若干私は慎重な感じにならざるを得ないです。
○永井座長 私からよろしいでしょうか。
 私は、数十名でも何らかの情報が増えると思います。ただ、問題はこれが全体の中のどの部分を反映しているのかということが当然問われると思います。一種のサンプリング調査ということになりますので、するのならば全員に調査をしないと全体像はわからないと思います。
 ですから、私の提案としては、もっと自由記載を増やすなりして、そこにいろいろな思いを書いていただく。あるいは、そういうものを最後にまとめてきちんとした記録集としてしっかりそれを各構成員に読んでいただくということでいかがでしょうか。
 例えば30名に聞いても、それで足りるかと言われたときに、やはりこれは結局全数調査だということにならないでしょうか。むしろその全数調査をする代わりにアンケート調査プラス自由記載、しかも病態だけではなくて社会的な実態を含めた調査ということに研究班のほうで、あるいはこの検討会でもそういう方針を立てたのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○花井構成員 永井座長のほうからせっかく再提案が出たところで申しわけないんですけれども、今の議論を聞いていて、つまり奥泉構成員の言われている趣旨を反映すると、この質問紙に加えて何人か聞いて、それを加えたほうがいいという方法論では多分難しい。だめと言うと失礼なんですけれども、それではかえってそれは達成されないと思います。
 つまり、聞いたインタビューはどのようなステータスによって行うかという議論に関しては、荒井構成員の言っていることがそうだというふうに私は思うんです。私はなぜこう言うかというと、もしこの限られたリソースで奥泉構成員の意見を反映するとなると、今の永井座長の再提案が一応理論としては妥当に思えます。
 ただ、そこまで踏まえた上で、私ども10年以上被害実態調査をやっている者からして、再発防止と被害実態、真相究明、これは一見整合的なようですが、実は意外にそうではなくて、例えば裁判の段階ではやはり勧善懲悪物語をつくらないと裁判になりませんから、ある種のバイアスがあえてあるわけですね。ちょっと言い方は変ですが、裁判、法廷というメカニズムがそうなっていますから、国も法廷の段階では本当はわかっているんだけれども、自分の不利なことは言わずに資料も隠すということになっていて、そこの表面的な言説というのは必ずしも実態を反映していないというのが私の薬害全部の経験です。
 だから、再発防止をするときの調査と、それから被害者の本当の痛みについての調査というのはちょっと異なる位相で設計する必要があるというのがこの経験のノウハウなんです。
 それで、被害がこれで十分わかるじゃないかという主張に対しては私は全く反対で、被害者像というのはどんなものかというのはこのくらいではまず足りないと思います。
 それで、これは事務局とも御相談なんですが、方法論はあります。さっきの代表性問題も、これは古くはウィーン学派とケンブリッジ学派の議論からずっとある話なんですが、代表性という意味においてはまずはやはり質的研究は主には民族学の人とか、それから社会学でいえば構築的な、つまりインタビューをしてそこの場をやる。ただし、その質をやっていると、結果としてはやはりそこである程度の仮説形成が生まれるわけですね。こういうことは全体に広がりがあるんじゃないか。これは被害としてこの個人の話ではなくて敷衍性があるのではないかと、ここで仮説形成するわけです。それで、幾つかの仮説形成をして、もう一回何かインタビューをして仮説形成をした上でそれを量化する質問を考えるんですね。
 この段階で次の段階に進めて、それで新たな被害実態の質問紙がそこで仮説を立てて、それは当たるかどうかということです。仮説がなければデザインできませんから、まず仮説形成をエスノロジーでも何でもいいんですが、それはインタビューをずっとやって、それをやった上でそれはそのまま構築的な論文は何本か書くんですね。その論文はそれで置いておいて、今度はそれで仮説形成をして量化して、それでまたアンケートをやり直して、どんというのが多分理想的で、そうやってきた。
 しかし、それは非常に時間がかかりますので、どうですか。来年、予算は一応取っているんですか。一応来年度までは何か研究費くらいはあるんですか。いずれにせよ、もし被害者が望むのであれば、被害実態調査という意味でいえば、これはやはり足りないと思います。
 私の個人的な感覚からいえば、ハンセンや薬害エイズでやってきた作業からいえば、これはまだまだ序の口というか、さっき1回目の調査としてはと言ってしまいましたけれども、まさにそういうことになるし、とりあえずこれでいいという形で、それは御判断なんですけれども、被害者の方々がそれをやっていくという強い意思があるのであればちょっと国は応援してあげて、来年もこれはこのままのタイムスケジュール感で進みつつ、何か研究費をもう一回、多分2年くらいかかると思うんですけれども、来年度と再来年度くらいでがっちりやるということはできます。
 もしそうであれば、私どもはいろいろな分野の専門家と協力してやっていますので、何人かそういう方々を紹介して、被害者の方々とインタビューチームも、ある程度ハンセンのインタビューチームとかエイズのインタビューチームは多分使えるというか、そういう人たちは持っていますし、そういう人たちはこういうものに割と慣れていますから、そういう方々や先生方にお願いしてやるということは可能ですという御提案です。
 事務局、3月までで予算はもうありませんということではないですね。
○永井座長 事務局、いかがでしょうか。
○巽B型肝炎訴訟対策室長 本検討会は初めの設置要領にも書いてありますように、本年度末をめどに取りまとめるという話になっております。それで、先ほどの花井構成員のお話によると、質的な深みのある今のような把握ということになればやはり10年かかったというような話もありますので、その辺はこれまでの研究とか、そういうところも踏まえながら、原告弁護団とも相談しながら、ここの議論ではとりあえず先ほど言った期限というものもありますので、その辺はどういうふうな研究ができるのかということでまた原告弁護団と議論したいと思っております。
○永井座長 そうすると、とりあえずは今のアンケート調査に基づいて報告書を1つ書いて、質についてはさらに継続して研究を行うという御説明ですか。
○八橋構成員 ヒアリングに関しては、この場で結論を出すのではなくて、ただ、紙面調査とは区別して検討すべきだと思います。
 というのは、紙面調査はあくまでも患者さんの自由意思で答えるべきことですが、ヒアリングになりますと個人情報も全部オープンになってしまう可能性があります。実はB型肝炎の患者さんの中には自分がB型肝炎であることを知られたくないし、原告になっていることを知られたくない方はかなりおられるはずです。その人たちに圧力がかからないようにしていただきたいということです。
 一方、自分のことをオープンにして、改善策を求める方もおられるでしょうから、そういう方を対象にヒアリングを行うのは良いと思います。アンケート調査とヒアリングは区別して独立して検討すべきではないかと思います。
○多田羅構成員 今の八橋委員の御意見はもっともだと思います。
 しかし、一応梁井委員、田中委員、あるいは奥泉委員からも御意見をいただいておりますし、それに代わる方法として今の座長の御意見にあった自由記載の充実ですね。ヒアリングというのは大きな概念で、おっしゃったようについでにやるというようなことではないんですね。これはものすごく手間もかかるし、方法も今、花井委員がおっしゃったように大変な作業なので、私も今年度そういうヒアリングというものをここでついでにやるという形としては、ついでと言うとあれですけれども、追加的にやるということではなくて、やるとすれば2年くらい予算をつけてばちっとやらないとできないというのは花井委員のおっしゃるとおりだと思います。研究としてやる場合ですね。
 ですけれども、せっかく自由記載の充実ということで座長が言っていただいていることに乗せていただくとすると、今回のアンケートで自由記載の上で相当書いていただいたりしている方に、その人がどなたかということは無記名なのでわからないのですけれども、その方のそういう自由記載についてもう少し知りたいとか議論したいというところがあれば、その方とヒアリングというのではなくて自由記載の充実でしょうか。アンケートの充実ということで、できることであればその自由記載ですね。
 ただ、無記名ですので、この自由記載が誰かということはわからないというところはあるんですけれども、そういうことを踏まえて自由記載などの充実のために誰かわからなければ原告団の代表の方と議論するとか、そういう格好でヒアリングに代わることはこの結果の強化、充実のためにさせていただくということで、今回のアンケートは了解いただいて、ヒアリングについては別途座長あるいは国のほうで考えていただいたらどうでしょうか。
○永井座長 そういうことでいかがでしょうか。
 位田委員、どうぞ。
○位田構成員 恐らくこのアンケートそのものは非常に細かくいろいろな状況を聞かれていると思うんですけれども、これでもまだ言い足りないというか、もっと知ってほしい部分もたくさんあるのだろうと思いますので、このアンケートの自由記載項目を充実するというよりは、むしろ自由記載用紙のようなものを何枚かつけていただく。
○多田羅構成員 御意見ですね。
○位田構成員 はい。御意見ですね。このアンケートでまだ言い足りないこと、もしくはこのアンケート以外に被害者の方がこういうことを言っておきたいということを、枚数を限らずにつけていただいて、それが出てくることによって我々も。
○多田羅構成員 本人が差し支えなければ、名前を書いてもらったらいいですね。
○位田構成員 差し支えなければ書いていただいてもいいです。だから、無記名でもいいし、記名でもよろしいですし、そういう形で文章の形で出てきますから、それを結果の一部として我々も共有することができるという形にしたらいかがでしょうか。
○永井座長 手記のような感じですね。
○位田構成員 そうですね。3人の被害者の方の御意見をお聞きしたときも原稿が出てきましたので、それを見て我々もこうだったのかなということが共有できましたから、同じようなことで、ちょっと手もかかるでしょうし、それをまとめるのにどうするかという問題はあるんですけれども、とりあえず御意見を共有する手としてはそういう方法もあるかと思います。
○永井座長 野口委員、どうぞ。
○野口構成員 全国予防接種被害者の会の野口です。
 やはり構成員である以上、アウトプットのところを非常に気にしておりまして、必ずアウトプットは読み手がおります。原告団の方にお伺いしたいのですが、来年以降どうなるかはさておき、この今回のアウトプットでヒアリングが含まれない場合ですね。被害者及び原告の方々というのはどういうふうに捉えられると想定されますか。
○田中構成員 全国B型肝炎訴訟の田中です。
 一原告の意見ですが、このアンケートでもちろん自由記載を増やしていただいて、いろいろ意見は出てくるかと思います。これをもとに、またさらにやはり被害の実態について深く調査をする。そのための研究費はぜひ確保していただきたい。
 例えば、私もこの原告になって初めて差別ということがこんなにあったんだということがよくわかったんです。私自身は男性でお産のときだとか、そういうことは全然経験もしていなかったですから、お産のときの差別などはわかりませんでした。原告になって裁判をして、いろいろな方のいろいろな意見を聞いて、こんな差別やこんな被害もあったんだ。離婚されたとか、本当に悲しい話も聞きました。これは今までのハンセンだとかHIVもそうですけれども、やはり被害実態をきちんと捉えて、そこから出発しない限りは再発防止につながらないと思っています。ぜひ研究費をつけていただきたいと思います。
 それからもう一つ、私も実は龍岡班のアンケートに答え、そしてヒアリングもしました。それで、ヒアリングというのはこういうことなのかということがよくわかりました。なぜならば、やはり差別、偏見ということに気づかされるんですね。単にアンケートを書くだけではない。それは非常に自分の実体験から感じましたので、ぜひ来年度、また厚労省とも検討させていただいて、この被害についてはさらに深く掘り下げていただきたいと思います。以上です。
○梁井構成員 梁井です。
 被害を共有するというふうに先ほど先生はおっしゃいましたけれども、原告は自分のつらかったことは結構胸の奥にしまってしまうんです。それをやはり引き出すというのが、この検討会でやらなくちゃいけないことだと思うんです。人は個人個人全然違う被害を持っていても、それを出していなくて、それをいかに引き出していってこのB型肝炎の感染拡大という被害がどういうものなのかという大きなものを見つけ出していくというのがここでの仕事じゃないかと思います。そして、それを再発防止につなげていくのが私のここの仕事だと思っているので、ぜひともヒアリングをやってきちんとしたものを出していただきたいと思います。
○山本構成員 日肝協の山本です。
 今、ヒアリングとか、そちらのほうに重点のお話がいっているんですけれども、その前にいろいろな現状調査を昭和23年~63年までということでやっております。48年までは血清肝炎の時代ですので、血清肝炎がなぜ起きたか。それはやはりBあるいはCのほうも絡んでまいりますので、その防止という面では両方考えた結論というんでしょうか。それを期待しておりますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
○永井座長 時間が大分過ぎましたので、とりあえずは今回のアンケート調査は自由記載を充実して発出するということでよろしいでしょうか。
 そして、ヒアリングをどうするかということについては、先ほど花井委員がおっしゃられましたように簡単に済む話ではありませんので、今後の進め方とのと関係になります。したがいまして、事務局と相談し、または事務局と被害者の方々との相談ということもあろうかと思いますが、次回以降それについては検討するということで、きょうはこれまでとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 それでは、多田羅委員にはお手数ですけれども、アンケート調査のほうをよろしくお願いいたします。
 以上でございますが、事務局から何かございますでしょうか。
○巽B型肝炎訴訟対策室長 次回の日程につきましては、1月16日15時半から予定しております。
 本日も、長時間にわたりどうもありがとうございました。
○永井座長 どうもありがとうございました。


(了)

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