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2011年9月14日 第1回母子健康手帳に関する検討会 議事録

雇用均等・児童家庭局母子保健課

○日時

平成23年9月14日(水)10:00~12:00


○場所

厚生労働省9階省議室


○出席者

委員

柳澤座長、明石委員、出石委員、今村委員、内山委員、海野委員、榎本委員、小野委員、小原委員、梶委員、加藤委員、田中委員、藤内委員、福井委員、渕元委員、松平委員

参考人

中島正夫参考人、中村安秀参考人、松田義雄参考人

事務局

高井雇用均等・児童家庭局長、泉母子保健課長、馬場課長補佐、堀内課長補佐、山本課長補佐、芳賀栄養専門官、小林企画調整係長

○議題

 1. 開会
 2. 議題
    (1) 母子保健の現状と母子健康手帳について
    (2) 母子健康手帳に関する最近の研究成果
    (3) その他
 3. 閉会

○配布資料

資料1母子健康手帳に関する検討会 開催要項
資料2母子保健の現状
資料3母子健康手帳に関する関係法規
資料4これまでの母子健康手帳の主な改正の経緯
資料5母子健康手帳に関するご意見
資料6松田参考人資料
資料7藤内参考人資料
資料8中村参考人資料
資料9今後のスケジュール(案)

○議事

○馬場課長補佐
 定刻となりましたので、ただ今から「第1回母子健康手帳に関する検討会」を開催いたします。委員の皆さま方には、大変お忙しい中を遠方よりご出席賜りまして誠にありがとうございます。
 私は、雇用均等・児童家庭局母子保健課の馬場と申します。よろしくお願い申し上げます。座長選出までの間、議事進行役を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。?井雇用均等・児童家庭局長は遅れてまいりますので、議事を進めさせていただきます。
 まず、委員の皆さまを五十音順にご紹介させていただきます。明石都美委員でございます。

○明石委員
 明石でございます。よろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 出石珠美委員でございます。

○出石委員
 出石でございます。よろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 今村定臣委員でございます。

○今村委員
 よろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 内山寛子委員でございます。

○内山委員
 内山でございます。よろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 海野信也委員でございます。

○海野委員
 海野でございます。よろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 榎本滋委員でございます。

○榎本委員
 榎本でございます。よろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 小野正恵委員でございます。

○小野委員
 小野でございます。よろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 小原聖子委員でございます。

○小原委員
 小原でございます。よろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 梶忍委員でございます。

○梶委員
 梶でございます。よろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 加藤則子委員でございます。

○加藤委員
 加藤でございます。よろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 田中政信委員でございます。

○田中委員
 田中です。よろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 藤内修二委員でございます。

○藤内委員
 藤内です。よろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 福井トシ子委員でございます。

○福井委員
 福井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 渕元純子委員でございます。

○渕元委員
 渕元でございます。よろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 松平隆光委員でございます。

○松平委員
 松平です。どうぞよろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 柳澤正義委員でございます。

○柳澤委員
 よろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 また、本日は参考人といたしまして、中島正夫参考人、中村安秀参考人、松田義雄参考人においでいただいております。どうぞよろしくお願い申し上げます。それでは、厚生労働省の出席者を紹介いたします。雇用均等・児童家庭局母子保健課長の泉でございます。

○泉母子保健課長
 泉陽子でございます。よろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 課長補佐の堀内でございます。

○堀内課長補佐
 堀内です。よろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 同じく、課長補佐の山本でございます。

○山本課長補佐
 山本です。よろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 私は馬場でございます。よろしくお願いいたします。
 栄養専門官の芳賀でございます。

○芳賀栄養専門官
 芳賀と申します。よろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 企画調整係長の小林でございます。

○小林企画調整係長
 よろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 以上が、事務局の出席者でございます。
 次に、本検討会の座長の選出をお願いしたいと思います。本検討会の開催要綱は、議事次第の次のページの資料1にございますけれども、座長は互選で定めることとなっております。座長としては、事務局より柳澤委員を推薦させていただきたいと存じますが、皆さま、いかがでしょうか。

(拍手にて承諾)

○馬場課長補佐
 ありがとうございます。委員の皆さま方のご賛同を得られましたので、柳澤委員に本検討会の座長をお願いしたいと思います。柳澤委員は座長席にお移りください。以降の進行は柳澤座長にお願いいたします。よろしくお願い申し上げます。

○柳澤座長
 ただ今、「母子健康手帳に関する検討会」の座長を仰せつかりました柳澤と申します。この検討会の委員の皆さまのご協力をいただきまして、円滑な運営に努めてまいりたいと思いますので、よろしくご協力をお願いいたします。
 なお、運営に関しましてあらかじめ申し上げますが、本検討会については公開で行い、議事録につきましても、事務局でまとめたものを各委員にお目通しいただいた後、厚生労働省のホームページで公表いたします。それらのご了解をお願いいたします。
 早速ですが、本日の議題に入りたいと思います。まず、事務局から資料の確認をお願いいたします。

○馬場課長補佐
 それでは、皆さまのお手元に配付しております資料の確認をさせていただきます。まず、表紙に議事次第がございまして、おめくりいただきますと座席表、次に資料1「母子健康手帳に関する検討会」の開催要綱がございます。その裏面に委員の名簿がございます。次にパワーポイントの資料2ですが、両面印刷で右下にページ番号を振ってあります。こちらは49ページまでございますので、ご確認ください。次に、資料3として「母子健康手帳に関する関係法規」という1枚紙がございます。資料4が「これまでの母子健康手帳の主な改正の経緯」でございます。資料5は事前にいただきました母子健康手帳に関するご意見をまとめたものでございます。これは両面でございます。資料6~8は、参考人の皆さまからいただきました本日の発表資料となっております。資料6が松田参考人、資料7が藤内委員、資料8が中村参考人からの資料となっております。最後に、資料9として「今後のスケジュール(案)」がございます。
 また、委員の皆さまの机の上には、中島参考人の論文の別刷りの資料と松田参考人からいただいた母子健康手帳のサンプルがございます。それから、今村委員からの「母子健康手帳のご案内」というパンフレットがございます。以上が、今回配付させていただきました資料または参考となる資料でございます。不足等がございましたら、事務局までご連絡ください。

○柳澤座長
 それでは、議題1「母子保健の現状と母子健康手帳について」に入りたいと存じます。まず、資料2~5について、事務局から説明をお願いいたします。

○馬場課長補佐
 それでは、資料2から説明申し上げます。資料2の1ページ目の下のところですけれども、こちらは「母子保健関連施策の体系」でございます。横軸に時間軸を置きまして、縦軸に保健事業・医療対策と分け、現状の国の施策をそれぞれ掲載しています。ページをおめくりいただきますと「母子保健法の概要」となりますが、今回の議論となります母子健康手帳につきましては、右側の4番にありますとおり母子保健法第16条に明記されています。母子保健法の目的も上段に書いております。下段に移りまして、「少子化の進行と人口減少社会の到来」についてですが、左側の表では棒グラフが各年の出生数で折れ線グラフが合計特殊出生率となっております。平成21年を見ますと出生数が約107万人、合計特殊出生率が1.37%となっております。右側の表を見ますと、棒グラフが総人口で折れ線グラフが出生数と死亡数のそれぞれの推移でございます。現在は、死亡数が出生数を上回っています。次のページに移りまして、「母の年齢別にみた年次別出生数及び出生割合」ですけれども、左側が年次別の推移を見たもので、右側が2009年だけを輪切りにしたものです。2009年を見ますと30歳以上の人の出生が過半数を超しているということがわかると思います。次に「妊婦健康診査について」ですが、これは(1)、(2)とございます。(1)を見ますと、まず母子保健法において定められている回数や妊娠何週で何回といったことが書かれていますけれども、最後のところに公費負担がここ数年で拡充されたと書かれています。(2)には妊婦健康診査の内容が書かれています。最近の記憶に新しいところではHTLV-1とクラミジアが加わったということになっております。次は、妊娠後にいつ届出をするかという状況ですけれど、平成21年では満11週以下が86.9%で、徐々に若い週数で届出をするようになったということになっております。次に出生の場所についてですが、ここ30年近くは診療所・病院が大半を占めていますけれども、全体に占める割合自体は、同じような割合が最近は続いております。下のグラフを見ますと、出生数が折れ線グラフで表されています。グラフの下に1996年と2008年を比べた出生数の減少がマイナス9.6%と書いてありますが、診療所・病院の全体的なマスとしては30%超の減少を認めているところでございます。ページをめくりまして、出生数の割合ですけれども、出生数全体自体は減少の傾向にあるのですが、2,500グラム未満の低体重児は増えてきていて9.6%という数字になっています。1,500グラム未満だけを見ますと、下の方を低空飛行していますけれども、そこまで増えていないということがわかると思います。次に、出生後の母子保健法に定められた健診についてですけれども、平成21年のデータによりますと最下段にありますように1歳6か月児の受診率は93.5%、3歳児の受診率は90.8%となっております。次に、新生児マス・スクリーニング検査についてですが、これは30年以上前から開始されていますけれども、昨今では最下段の赤い文字にありますようにタンデムマス・スクリーニングの検査が導入されています。その下は先天性代謝異常検査の実施状況についてですけれども、受検率は100%を超しています。2,000グラム以下の低体重児が含まれているので、受検率が100%を超えることがありますけれども、このような状況になっています。次は、体外受精の実施についてです。不妊治療の方法の一つですが、出生児数が全体に占める割合がその下の2番にありますけれども、数も割合も徐々に増えているという状況になっています。下に移りまして、児童虐待についてです。こちらは対応件数と死亡事例ですが、対応件数については右肩上がりに増加しているということがいえます。次は、予防接種のスケジュールです。こちらは、国立感染症情報センターのホームページに掲示されている一覧表です。それに対して、その下に予防接種の接種状況について、厚生労働科学研究の方で調べさせていただいたものを年齢区分で載せています。最後は、出生児の両親の国籍別内訳です。1990年から10年ごとに見ていますけれども、日本人を両親に持つ出生児が若干ですけれども減少してきて、外国人同士の親が少し増えている状況です。次の低出生体重児以降の資料は、今まで説明させていただきましたものを補足するような資料ですので、後ほどお目通しいただければと思います。資料2については以上です。
 資料3に移ります。「母子健康手帳に関する関連法規」という1枚紙のカラフルな資料です。先ほどもご紹介申し上げましたとおり、母子健康手帳については母子保健法第16条に書かれていますけれども、「省令で定める」となっています。省令すなわち施行規則については中段にございます。ここでは母子保健法第7条関係様式第3号に定めるもののほか、次の各号に掲げることを設けると書いてありますが、?~?まで規定しています。様式3号については、皆さまの机の上に母子健康手帳を参考資料として置かせていただいておりますけれども、こちらのページ番号を緑色で色付けしている1~49ページまでのものが、この様式第3号になっています。そして、任意様式については50ページ以降のオレンジ色で色付けしているページのところで、こちらは随時、母子保健課長通知で改正しています。今回は、前段の緑色のページの省令様式について改正するということで、身体発育曲線が中にございますけれども、これは10年に1回、改訂していますので、この改訂に伴い改正するということでございます。自由記載の様式については、これを一緒に混ぜたり、各市町村によって採用する母子健康手帳はいろいろありますので、そのあり方についてもご議論いただければと思います。資料3については、以上でございます。
 資料4のこれまでの改正経緯については、昭和17年の妊産婦手帳から始まりまして、母子健康手帳と銘打ったのは昭和40年からで、現行の母子保健法に基づいて以下のような主な改正が行われているということになっています。
 最後に、資料5です。これは先ほど申し上げましたとおり、関係団体からのご意見をまとめさせていただいたものです。量が多くなっていますので、内容については割愛させていただきますけれども、こちらを基にご議論いただければと思います。資料2~5の説明は以上でございます。

○柳澤座長
 どうもありがとうございました。多岐にわたる母子保健の現状と母子健康手帳についてご説明いただきました。総合的なディスカッションは後ほど時間を取りたいと思いますが、今の事務局からのご説明について、事実確認に限った質問はございますか。なければ、先に進みたいと思います。
 議題2は「母子健康手帳に関する最近の研究成果」ということで、母子健康手帳についての昨今の主な研究成果をご発表いただきます。発表の順番は松田参考人、藤内委員、中村参考人、中島参考人の順に、各先生方には15分間という時間でお願いいたします。ご質問等は全ての先生方のご発表が終了した後にまとめてお願いしたいと思いますので、あらかじめご了承願います。
 ?井雇用均等・児童家庭局長がおいでになりましたので、先にご挨拶いただきます。

○?井雇用均等・児童家庭局長
 遅れまして恐縮でございます。雇用均等・児童家庭局長の?井でございます。本日はご多用中にもかかわらず、ご出席いただきましてありがとうございます。
 私から申し上げるまでもありませんけれども、母子健康手帳は、昭和17年に妊産婦手帳ということで始まっておりまして、長年にわたって母子保健施策において大変重要な役割を果たしてきております。母子の健康状態についての医療従事者との情報共有、あるいは妊娠時から出産、子育てに必要な知識を伝達するということで、わが国の母子保健の向上に大変大きく役立っているということでございます。
 今回は、乳幼児の身体発育曲線の改訂に合わせまして、10年ぶりに母子健康手帳の省令様式の改正をしなければいけない時期でございます。近年の母子保健のいろいろな積み上げ、業績、情報を取り入れて改訂していきたいと思っておりますので、皆さま方のいろいろなお知恵をお借りしたいということでございます。数回にわたりまして検討会を開催したいと思っております。座長をはじめ、委員の皆さまには大変ご多用中でございますけれども、10年ぶりということでぜひよろしくお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○柳澤座長
 どうもありがとうございました。それでは、先ほど申し上げたように母子健康手帳についての最近の研究成果についての発表をお願いしたいと思います。まず、松田参考人からお願いできますか。

○松田参考人
 東京女子医科大学の松田と申します。平成20年度から3年間にわたりまして「わが国における新しい妊婦健診体制構築のための研究」の主任研究者をさせていただきました。母子健康手帳をどのように捉えるかということを中に盛り込んだ研究でありましたので、母子健康手帳に関する提案をさせていただきます。研究班の構成は産婦人科医、助産師、統計の専門医ということで、いろいろな観点から新しい健診体制に向けての母子健康手帳の役割を分析いたしました。お手元の資料6を参考にしてください。これは、一般の出産直後の2,000人を対象にしたアンケート結果です。「現在の母子健康手帳を、どう思いますか」と質問しますと、赤字で示している「全く満足していない」「あまり満足していない」を合わせますと、約2割の人が現行の母子健康手帳に満足していないということがわかりました。「妊娠中、母子健康手帳をどのように利用しましたか」とお聞きしますと、やはり「医師、助産師が記入した欄を確認した」「妊婦が記入する欄を使用した」という回答が多く見られました。「母子健康手帳に必要だと思うものを選んでください」という問い掛けをしますと、「医師が診療、健診内容を具体的に記入する欄」をもっと充実させてほしいという意見、「自分の質問、不安を書き込んで、医師や助産師に見てもらう欄」の充実、さらに「リスクや病気など最新の医療情報」がほしい、「妊娠中や産後の生活情報の充実」といった意見でありました。
 現行の母子健康手帳の問題点を示します。合併症の発症に関するリスク因子に関する記載がありません。合併症が生じやすい妊娠週数が明示されておらず、早期発見が遅れる可能性があります。必ずしも妊婦参加型ではない。これは母子健康手帳に対する公開シンポジウムを開催したときに、やはり「おまかせ出産」がかなり多いということもわかりまして、必ずしも妊婦参加型ではないということであります。さらに、胎児情報も含まれていません。こういった問題点に対して、我々の研究班では日本人のデータベースから日本人の持つリスク因子を明らかにする。妊婦がリスクを自分自身で理解して「リスク評価」をトリアージの手段として用いる。妊婦と医療従事者の間での情報を共有する。胎児情報がないということに対しましては、胎児発育曲線を入れるということを提案しました。このアイデアを基に、新しい妊婦健診体制がどうあるべきかという提言をしたのですけれども、委員の皆さまのお手元に配付されております母子健康手帳の補足版を実際に作りまして、それを情報提供・情報交換のツールとして利用してはどうかということで、その主なポイントは産科合併症のプロファイル、リスクの自己評価、胎児発育曲線、そしてスタッフとの対話欄などです。リスクの自己評価によりローリスクからハイリスクまで、地域の実情に応じて、一次施設での健診から、その地域の高次施設での産科医師による健診といった幅広い概念で、チーム医療による協働体制を取って妊婦を支えていこうというアイデアであります。
 エビデンスに足るという点で日本人のデータベースを作るに当たり、日本産婦人科学会の周産期登録データベースというものがありまして、毎年6~7万例の登録があります。対象は主なハイリスクを扱っている地域の基幹施設に限定されているというところはありますけれども、5年間で約25万例のデータを精製することができました。そして、ケースコホートスタディという方法を用いまして、一応英文雑誌に5編ほど投稿いたしました。喫煙に関する問題、産科合併症の評価に当たってのケースコホートスタディの有用性、さらには母体年齢、そして日本と海外との比較、あるいは胎児の性別といった内容であります。エビデンスに足る解析の方法で産科合併症の発症につながる日本人のリスク因子を明らかにしました。これは、母体の喫煙が産科合併症にどのように影響するかということで、そのまま原著から引用したので恐縮ではありますが、切迫早産、頸管無力症、妊娠高血圧症候群、子癇肺水腫、常位胎盤早期剥離、前置胎盤、前期破水、絨毛膜羊膜炎、癒着胎盤、DICといった非常に重篤な産科合併症の中で、喫煙している場合にはそれらの因子が有意に増えることを明らかにしました。1番右側の数字は、例えば切迫早産の中で喫煙する人が占めている割合が27%、即ち喫煙を減らすことによって27%減るということを統計学的な手段で証明しました。これは年齢別のリスクですけれども、20~34歳の人を1とした場合に、例えば妊娠高血圧症候群では年齢が増えるに従って1.6~2.5倍、前置胎盤も同様に1.76~1.19倍に、常位胎盤早期剥離もこのように増えてくる。逆に、若年者に多い疾患としては切迫早産が1.78倍増えることを明らかにしました。これをいかに一般の方々に理解していただくかということにずいぶん苦労しました。今申し上げた主な合併症のそれぞれ妊娠1,000当たりの大体の数ですが、よく見られる疾患、中程度見られる疾患、稀な疾患とご理解いただき、それを年齢、喫煙、不妊治療、分娩回数、基礎疾患という項目を挙げてみました。例えば、一番下の段に注目していただきたいのですが、43歳で喫煙中、高血圧を持っている妊婦では胎盤早期剥離という病気のリスクが、いずれのリスクも持たない妊婦に比べて1.5×1.4×2.3ということで4.8倍に増えるといった事実は、医療側、妊婦側もしっかり知っておくべきではないかということも提言させていただきました。
 これは4~5年前から既に広く知られるようになりました妊婦のリスク自己評価であります。「中林・久保のリスク評価」として知られていますけれども、これを妊婦健診を始めたときに自分でチェックしていただく。そして、チェックをしたところが0~3点ならば、今のところ大きな問題はありません。4点以上になりますと、何らかのリスクが伺えますので分娩場所を相談しましょう。これをトリアージの一手段として用いてはどうだろうかと提案させていただきました。
 今までの話は我々医療側の考えですけれども、これを受け取る側の妊婦自身はどのように評価するだろうかということで、妊娠中、さらには産後の754人を対象にしたアンケートです。9割近くの妊婦がリスクを自己評価したい、自分のリスクを知りたいということでした。当初、我々が危惧していました、知ることによって妊娠・出産が怖くなったという割合は、わずか数%にとどまりました。そして、このようなリスクスコアが、将来母子健康手帳に記載されることに対して、どうだろうかということをおたずねしますと、7割の人が賛成であるという回答でした。胎児情報も今は全ての医療機関に超音波診断装置が設置されております。毎回のように妊婦は赤ちゃんの体重など、いろいろな情報を聞かれます。日本超音波医学会が作成した胎児発育曲線を母子健康手帳の前半に挿入していくのもよいのではないかという意見でした。
 これ以降は、主に助産師との協働作業です。「健診に行く前にチェックしましょう」「妊娠のはじめの頃にチェックしましょう」、いずれも対話を重視しまして、それぞれご本人と医療側への確認項目を、それぞれの時期に応じてする必要性も強調しました。「妊娠の半ばの頃にチェックしましょう」さらには「妊娠の後半の頃にチェックしましょう」。最後には、どのようなバースプランを考えているのかということを実際に書いていただいて、それを医療担当者が把握しておくということです。
 このようなところを取り入れた補足版を、母子健康手帳とサイズを同じにして作成したものが、お手元の配布資料です。「リスクの自己評価」「胎児発育曲線」「スタッフとの対話欄」、さらに「産科合併症のプロファイル」といったものです。これを上段から医師、助産師、妊婦としますと、全ての項目において、7割以上が「有用である」と評価されたということであります。助産師に実際に妊婦健診を行ってみるとどうでしょうかということを詳しくみてもらいました。80%以上の妊婦が「参考になった」と肯定的に捉えております。そうすることによって、セルフケア行動の得点が高まってくる。すなわち、今回の改訂版は妊婦と医療者とのコミュニケーションを向上させ、妊婦のセルフケア行動を高めることが明らかになりました。
 これは今回に直接つながっていないかもしれませんが、将来的に母子健康手帳をどうしたらよいのかということも我々の研究班に対する最終年度の課題でした。そのままの情報は個人情報ですので、これを2次元バーコード(QRコード)で記録して保存しておけば、これが出生から子ども、そして成人ということでの、世代間をつなぐ情報源になるであろうということで、こういったことを想定した試みが将来的にされるとよいのではないか。現在は経済産業省で、このような「どこでもMY病院」という試みが、まさしく始まったということです。
 以上で、私の発表を終わりたいと思います。

○柳澤座長
 どうもありがとうございました。続いて、藤内委員の発表を伺うことにします。

○藤内委員
 大分県福祉保健部健康対策課の藤内と申します。平成21~22年の2か年にわたりまして、こども未来財団の研究費で母子健康手帳について研究しましたので、その概要を報告させていただきたいと思います。お手元の資料7に沿って説明させていただきたいと思います。
 まず、この研究斑ではまさに利用者の視点からということで、産婦人科医、小児科医、助産師、保健師、管理栄養士歯科医師からなる班員で、現在の母子健康手帳に期待される機能や課題について議論しております。こうした議論を経て、これからの母子健康手帳に期待する機能、そして全国の母子保健担当課から「一押しの母子健康手帳」を紹介していただきまして、常陸大宮市、小牧市、沖縄県の三つの母子健康手帳について、開発担当者からヒアリングを行いました。こうしたプロセスを経まして、これからの母子健康手帳に期待される六つの機能を抽出しました。まず、医学的な記録です。これは説明の必要はないと思います。そして、母親が自分の妊娠・出産から子どもの成長・発達について記録していく個人的な記録。先ほどの松田参考人からのご報告にもありました保健医療従事者と母親との対話のツール。妊娠から出産、子育てに係る情報が雑誌やインターネットで氾濫する中で母子健康手帳は最も精度の高い、最も信頼に足る情報提供をするという情報提供媒体としての意義もあります。最後の二つは、これから新たに期待されるべき機能ということになりますが、父親の育児参加を促すツール、そして次代の親を育むツール。このような六つの機能につきまして、分析を進めてまいりました。
 そのために、母子健康手帳のユーザーであります子育て中の母親(全国の九自治体の乳幼児健康診査の受診児の母親)、全国市区町村の3分の1を抽出した自治体の保健師と管理栄養士、四つの県の産婦人科医会と小児科医会の会員、全国小児歯科開業医会会員を対象に自記式調査を実施しました。
 さらに、平成21年度の研究成果に基づきまして作成しました改定案について、同じく四つの県の産婦人科医会と小児科医会の会員に、これらの新しい提案についての評価、受入れ可能かどうかをおたずねしました。さらに、妊娠中の妊婦に対して、改定案の是非についても調査をしました。
 まず、「医学的な記録」につきましては、産婦人科医の半数以上が妊婦健診の項目が充実してきたにもかかわらず、現在の母子健康手帳では記載項目が非常に限られていることから、C型肝炎、風疹抗体価、HIV抗体、これにHTLV-1も加わりますが、こうした妊婦健診項目の記載欄が必要であると答えていました。ただ、これらのうち感染症の結果については、母子に不利益をもたらす可能性があるので、結果を記載するのではなくて、実施の有無を記載するという配慮が必要ではないかという意見でした。その一方で、転医に伴いまして、検査結果が記録として残されていなければ不十分であろうという意見もあり、感染症の結果について陽性の場合は、本人の了解を得た上で記載するという配慮が必要と思われます。
 「個人的な記録」の記載状況については、実際の母親・妊婦の記載状況をまとめております。妊娠前の健康記録は約7割、職業と環境についても7割の妊婦が記録していますが、最終月経や胎動については6割、出産前後の里帰りする際の居住地については半分、妊娠中の体重の変化等については4割~半分ということで、芳しくない状況になっています。産んだ後の子育て中の気持ちや子どもへのメッセージについては記載していた母親もいました。特に手帳に子育て中の気持ちを記載している母親は、子育ての喜びを実感することが「よくある」が有意に多くなっており、子育て中の母子健康手帳へのこうした記載が、母親の子育てに伴う喜びを実感する一助になると考えられました。
 現行の母子健康手帳の妊娠中の記録の欄をお示ししますが、妊娠中の母親の気持ちの変化等はここに記載する欄があります。ところが、多くの母子健康手帳では、ここにゴム印で検査結果が押してあります。つまりB型肝炎や梅毒の記載欄はあるのですが、他の感染症等の結果を記載する欄がないので、ここにゴム印が押されて、結局母親がここに書けないという状況があります。そこで、妊娠中の気持ちや身体の変化の記載欄があった方がよいかとたずねますと、母親や助産師など各職種とも「そう思う」は「どちらかといえばそう思う」を含めれば8割を超える高い割合で、もっと妊娠中の気持ちや身体の変化の記載欄があった方がよいと答えていました。
 「対話のツール」としては、妊婦健診や乳幼児健診の際に医師や助産師・保健師に聞きたいことを実際にここに書いたことがあるという人が35%でした。そこに書いたことを実際に相談できたのが9割ということで、母子健康手帳が対話のツールとして十分な役割を果たしていました。一方の健診を実施する側も、この記載欄を9割以上の人が活用していると答えていました。このように、現行の母子手帳が母親と医療従事者間の対話のツールとして十分機能しているのですが、特に生まれた後の健診欄が左側に保護者の記載欄、右側に健診結果の記載欄と見開きになっていることが大きなメリットだと思っています。そのような意味で「妊娠中の経過」を見ますと、時系列で上から下に妊婦健診の結果を記載するようになっていますが、妊婦自身の記録の部分が十分活用されていないので、そこで、研究班では生まれた後の健診の記録と同じように、左側に妊婦自身の記録、そして右側に医療機関での健診結果の記録を記載できるような様式を提案しました。こうした様式への変更につきまして、実際の産科医も半数以上、助産師・小児科医など各職種によって違いますが、妊婦自身も8割を超える妊婦がこうした見開きでの記載への変更を了解していました。
 また、レイアウトが大きく変わることに伴いまして、従来の妊娠中の記録が4ページで妊娠初期から10か月まで記載できるのですが、それが8ページに拡充されることになります。こうしたことについて昨年の調査で、産婦人科医にあらためて先ほどの様式案を示しながら、受入れ可能かどうかをおたずねしましたが、61.4%が賛成ということでした。四つに分けて記載する分け方についても、ほぼ同意が得られました。全体的なレイアウトについても、記載方法が今までの上から下が、左から右に変わりますが、8割を超える産婦人科医にレイアウトの変更についても了解をいただいています。
 「解説欄」が非常に重要であるということは先ほども申し上げましたが、実際にこうした母子健康手帳に書かれた妊娠から出産、子育てに係る解説を「全部読んだ」母親は約4割にとどまっていて、「一部読んだ」を入れると9割という状況でした。現行の母子健康手帳は先ほど母子保健課から説明がありましたとおり、省令様式の1~49ページ、任意記載の様式が50ページ以降とはっきり分かれております。つまり、同じ妊娠期であっても、記録する部分と解説の部分が大きく乖離している、ページが離れているということがあります。解説欄を確実に読んでもらうためには、省令様式と任意記載の部分を混在させることによって、同じ時期に必要な解説と健診結果を並べて見られるようにする工夫が必要だと思います。そうしますと、自治体によっては健診結果を記載するページがまちまちになってしまいますので、健診を担当する医師にとっては面倒なことになります。そこで、こうした省令様式と任意記載部分の混在について健診を担当する医師に確認しましたが、産婦人科医の54%、小児科医の61.5%、これは微妙な数字ですが、過半数に賛成と答えていただきました。
 「父親の参加」については、現状を見ると、手帳を見ている4か月児の父親が約4割、実際に手帳に記載するという父親は5%に満たない状況でした。そこで、父親が母子健康手帳に記載する欄を作ることで、父親が育児に積極的になると思うかという問いを母親・各職種にたずねていますが、半分~6割程度が「そう思う」ということで、あまり多くは期待できないものの、父親の育児参加の必要性が強調される中で、こうした手帳に父親の記載欄を入れるのも一方法ではないかと考えられます。また、父親へのメッセージ、例えば母子健康手帳の任意記載欄に「お父さんになる方へ」と題した読み物を追加することについては、7~8割の産婦人科医・小児科医が賛成していました。現行の任意記載欄にも「父親の役割」が少し記載してはありますが、そこを父親が読むとは思えない状況ですので、こうしたページを創設することが必要ではないかと思います。また、「父子手帳」のようなものやシングルマザーへの配慮が必要という意見もありました。
 折々に「お父さん・お母さんからのメッセージ」欄を設けることについては、母親の7割以上、職種によっては半分~7割の賛成が得られました。
 「次代の親を育む手帳の機能」として、今の就学前までという母子健康手帳の記載期間を18歳まで身長・体重・成長曲線などの記載ができるようにするという変更についての反応は、意外と低調でした。小児科医は半数を超えていましたが、他の各職種、母親でさえも母子健康手帳を18歳までつけることについては積極的ではありませんでした。これは、今までの母子健康手帳が「就学まで」と非常に限定されていた影響があると思います。これはお手元の資料にはありませんが、就学後の成長の記録様式を提案したものです。こうした様式に対して、82.5%の小児科医に賛成していただきました。実際に発育の様子について親の感想欄を設けることについても6割に賛成していただいています。小児科の先生から多かったのが、三種混合の2期接種や日本脳炎の2期3期の接種が任意記載のページにあります。通常の予防接種の記載欄とは別に4ページ後ろにありますので、接種記録がしにくいというのです。これは現在の母子健康手帳では、母子保健法の所管のページが49ページまでということになっていますので、その辺りの壁を越えて、予防接種については、就学以降の接種記録も同じ欄にすることが必要だろうと考えます。母子健康手帳が次代の親を育むということで、これをプレゼントすることが有用であるということは、母親を含め各職種とも多くの人に賛同いただいています。
 最後に「今後の母子健康手帳の改訂に向けて」提案をとりまとめたいと思います。、先ほど示したように、妊娠中の妊婦自身の記載を充実することによって妊婦自身の母性を育むこともできますし、産科医や助産師との対話を促進することもできると考えます。そして、妊婦健診の検査項目の充実に伴いまして、検査結果記載欄の拡充が必要であると考えます。予防接種欄についても、任意の予防接種もこれからは定期接種への動きがありますので、そうした新たな接種、先ほどの日本脳炎の2期3期についても記載欄を設けることが必要であると考えます。
 妊婦や母親に必要な解説を確実に読んでいただくために、省令様式と任意記載欄を混在させる必要があると思います。お伺いしますと、平成4年(20年前)の母子健康手帳の改訂で、49ページまでの省令様式と任意記載欄を混在させることをやめたという経緯がありますので、また20年前に戻るのかという指摘もあります。その辺りは今後皆さまからご意見をいただければと思っています。省令様式と任意記載欄を混在させますと、健診結果があちらこちらにページが飛ぶことになりますので、結果の記載が円滑にできるようにインデックスを付ける、医師が記載する欄の紙の色を変えるといった工夫が必要であると考えます。さらに、任意記載部分に「お父さんになる方へ」と題した解説が必要ではないか。最後に、任意記載部分として「就学以降の成長の記録」や18歳までの標準身体発育曲線を追加することが必要であると考えます。以上です。

○柳澤座長
 どうもありがとうございました。続いて、中村参考人。よろしくお願いします。

○中村安秀参考人
 大阪大学大学院人間科学研究科の中村安秀と申します。私自身は小児科医ですが、母子健康手帳に関しては、小児科医というよりもパブリックヘルス、むしろ国際保健の専門家として各国でいろいろな活動をしてきました。先月もベトナムへ行って、母子健康手帳の普及活動をベトナム保健省の人たちと議論してきました。今日はそのような私自身の経験とともに、昨年、こども未来財団で「母子健康手帳の活用に関する調査研究」をやらせていただきましたので、それを踏まえて、今日は報告させていただきます。
 こども未来財団の「母子健康手帳の活用に関する調査研究」を平成22年度の後半に行いましたが、「目的」は、少子化の時代に子どもを産み育てようと決意してくれた家庭に届く行政からの最初の贈り物が母子健康手帳です。そのような意味で、親や子どもたちが参加できる、楽しく有意義な母子健康手帳を作りたい。母子健康手帳のあり方を検討したいということで行いました。
 利用者の立場からの分析、母子健康手帳と学校保健との連携、デジタル時代の母子健康手帳、海外の母子健康手帳という四つの分野で検討しました。先ほど発表いただいた藤内委員が利用者の立場からのところは共同研究していましたので、そこの部分は省略して発表させていただきます。
 もう一つは、このような報告書を作ったのですが、ここにかなりエビデンスや細かいデータがあるので、今日はむしろ限られた時間ですので、データよりも今後どうあるべきかについてということを中心に発表したいと思います。
 そしてもう一つ、これは事前にお回しするつもりですが、藤内委員もおっしゃいましたが今、母子健康手帳で日本の中でベスト3といわれているのが、小牧市と沖縄県と常陸大宮市です。三つをそれぞれ実際に調査しました。この特徴は大きくいうと三つあって、一つはいずれも小学校になっても使えるような工夫をしてある。6歳で切らないで、小学校・中学校、常陸大宮市は日本最長で20歳まで使える母子健康手帳です。それから、母親・父親が自分の思いを書き込める場所をきちんとキープしてある。もう一つは、インデックスを使ったり、使い勝手を非常に上手にしてあります。省令様式と任意記載分の混合もやっています。そのような意味ではユーザーフレンドリーな母子健康手帳になっています。これをお回しします。
 私自身の経験でいうと、初めに日本の母子健康手帳のあり方に非常に興味を持ったのは、アメリカの母子保健の専門家でした。サンディエゴ大学の先生たちが日本に来て、1990年代にいろいろな調査をしたことがあります。日米の乳児死亡率の比較です。それをしますと1964年の東京オリンピックの年に、日本はまだ1ドル360円の時代ですけれども、アメリカの乳児死亡率を下回った。これはなぜだというのがアメリカの人たちの関心でした。幾つか国際共同研究をしました。実際にきちんとしたエビデンスは出なかったのですが、五つのポッシブル・エクスプラネーション、説明可能な理由として考えられるものを五つピックアップすることができました。そのうちの2番目は、今年50年を迎えた国民皆保険ですが、3番目が今年63年目になります母子健康手帳でした。これはいろいろなところで歴史の話で出ていますが、右側にあるのが、元厚生省におられて当時働いていらっしゃった小児科医の巷野悟郎先生からいただいた1948年の母子健康手帳です。このときに和歌山県で「和歌山県民の友」という雑誌が昭和23年に出ています。そこで和歌山県の保健師が何と言っているかというと、「こうのとりの母子手帳が新しくできました。このきれいな母子手帳を使って、今後はすくすくと健やかに育ってもらう国民を育てるのです」と、熱意を込めて語っているわけです。そういう熱意とともに、この母子手帳が生まれたことを私たちは忘れてはいけないような気がします。
 海外でいろいろなことをするときに、日本の母子健康手帳の役割が非常に強調されます。その役割をパブリックヘルスの視点からみますと、時代によって変わってきたということがいえます。当初、乳児死亡率が高いときは、母子手帳が食料の配給手帳の役割も果たしていました。ところがその後、妊婦健診と指導、健康診査が中心になりました。そして、乳児死亡率が10(出生千対)を切るころになりますと、障害の早期発見・早期治療が大きく謳われました。そして、5を切ると子育て支援・心理社会的サポート・虐待など、いろいろなキーワードになっています。その時代に沿った母子健康手帳の役割で、母子健康手帳が十分に変化できたのだろうかというのが、私たちの研究班の中で議論されました。
 もう一つ、世界的な分野で、母子保健の中での母子健康手帳の役割を考えますと、このように言えます。実は、妊娠、出産、新生児、乳幼児。異なる場所で、異なる時期に、異なる専門職によって母子保健サービスが行われています。これを統一することを、最近では継続ケア、英語ではコンティニウムケアと呼んでいますが、これが世界中の課題です。これは先進国でもばらばらです。この母子健康サービスは、決して一貫していない。それを一貫するためにはどうしたらよいか。先進国でも途上国でも、いろいろな工夫をしています。その中で、実は母子保健手帳は、継続ケアを保障するツールではないかということで、海外からの関心が非常に高いのです。これはもしかしたら私たちにとって母子健康手帳の再発見かもしれません。このようなツールは実は世界でもなくて、アメリカでもイギリスでも母子健康手帳がなくて、そういう国の人が母子健康手帳の役割に最近は注目しています。そういう中で、いろいろな形で今は世界の二十数か国へ母子健康手帳が広がっています。途上国だけではありません。手元にあるのは「BABY YOUR BABY」というユタ州の母子健康手帳です。これはインドネシア、そしてアラビア語もあります。私が今回ぜひ皆さまにお見せしたいと思ったのは、タイの母子健康手帳です。今、世界で一番きれいだといわれている母子健康手帳がタイの母子健康手帳です。とてもカラフルで中身も豊富です。ただ、15年前はこのようにほとんど中は1色で、体重のところだけカラーがあるだけで、中は1色刷りです。15年でディベロップするのです。15年経つと、新しい良いものに変えていく。どんどん母子健康手帳が進化していっているのが、実は途上国です。そのような意味で、日本の中でも、もっと大胆に変わっていけばよいのではないかと思っています。世界の母子健康手帳は、とても楽しいものになっています。
 その中で、母子健康手帳とは果たして何なのかという母子健康手帳を定義することを私たちは迫られました。日本では母子健康手帳を定義する必要はなかったのですが、国際的にやっていると、果たして何を母子健康手帳と呼ぶのか。集約しますと、二つの点です。「妊娠・出産・子どもの健康記録が一冊にまとめられていること」と「保護者が手元に保管できる形態であること」です。これを母子健康手帳として、日本が世界で最初に1948年に開発しました。その先駆者として、今はトップランナーですが、今後、次世代に向けて、どのような母子健康手帳に変えていかなければならないかということについて、議論を重ねた結果のまとめを3枚のスライドでお示しします。
 一つは、「子どもが読むことを前提とした母子健康手帳」にした方がよい。今、大学などで健康教材としても活用しておりますし、もっとわかりやすい用語を使った方がよい。子どもが読む、子どものための母子健康手帳であるということを考える。そのためには、子どもへのメッセージ欄を増やす。「お父さん・お母さんからのメッセージ」という欄も必要です。また、少数派の子どもたちへの温かなまなざしを忘れてはいけません。低出生体重児の親は、今の母子健康手帳のグラフを見て、毎日泣いているわけです。「私の子どもは、の体重は、追いつかないから、どうしよう」と。障害をもつ子どもは、どうなのか。外国人の子どもに関しては今、8か国語でありますが、そういうサービスも必要です。そういう意味では、今後デジタルなども使って少数派の子どもたちのことも考えながら、母子健康手帳を発展させる必要がある。
 二つ目は、藤内委員からのお話にもありましたが「子育て時期に応じた医療記録と健康情報」です。この部分に関しては、メッセージを入れると子育て支援にもなるし、もっとカラーやイラストを入れればよいと思っています。「便の色」なども素晴らしい工夫で、世界的には大変高い評価をされています。便の色を健診のときに見せてチェックさせる。そういうことを母子健康手帳の中でどうして組み込まないのか。海外の人が見たら、全部の人が言います。そういうものをカラーで入れればよいと思います。もう一つは、「妊娠・新生児・乳幼児・学校期にいたる継続性」です。確かに行政では区分されています。しかし、子どもの発達には5歳、6歳、7歳の切れ目はありません。その行政の枠はわかった上で、でも、子どもたちのためには、その枠を越えた形での母子健康手帳を提供するのが私たち大人の役目だと思います。「医学的記録と健康情報提供の一貫性の確保」をして、できれば18歳までの予防接種と身体発育の記録は継続したものをきちんと確保する。「母子健康手帳」が良いのか「親子健康手帳」が良いのか。実は、常陸大宮市でも沖縄県でも、法律を改正しないで「親子健康手帳」という名称の手帳を発行しています。そういうやり方はできると思いますので、名称は「親子健康手帳」の方が良いのではないかと思っています。
 続いて「どのように使う:HOW ユーザー志向の母子健康手帳」です。先ほども言いましたが「出産を決意した女性への行政から最初の贈りもの」が母子健康手帳なので、最初のときに、保健師が立ち会うとか、取扱説明書がほしいという母親が結構いました。母親は、母子健康手帳をどう使ったらよいか、習っていない。母親学級で母子健康手帳を解説している所は非常に少ないです。母子健康手帳をどう使うか、どう書き込めばよいか。母子健康手帳と同時にいろいろなパンフレットが配布されています。そのパンフレットのクオリティが高いかというと、決してそうではありません。ですから、母子健康手帳をきちんとすることも大事ですけれども、同時に配るパンフレット類のクオリティを考える必要があると思います。実はオランダが、まさにそれをやりました。母子健康手帳を考えるときに、同時に各社から配っているパンフレット類が多すぎて親が混乱するので、それをまとめるというのが、オランダの発想です。続いて、「医療的な視点が強調された省令様式の改善」ですが、「できる」「できない」をやっている限り、障害を持つ人は、非常に悩みが多くなる。「できる」「できない」ではなくて、「いつできましたか」という質問に変えれば良いのではないでしょうか。それから、「子育てについて困難を感じることはありますか」という質問は、子育て支援にはなりません。子育て支援をするためには、無意味な質問項目を削除する必要があると思います。
 もう一つ今回問題になったのは、幼稚園・私立小学校などで、母子健康手帳の提示を求めることにより、そこは書いてほしくないとか、いろいろな意見があることでした。これは個人情報の保護という点から、かなりきちんと「そういうことはしてはいけない」ということを、本来言うべきだろうと思います。
 次は「All in Oneのメリット」です。海外でやっているときは、いろいろな配布物があるので、まとめて母子健康手帳にしましょうというのが母子健康手帳の導入の大きなモチベーションでした。ですから、この母子健康手帳と一緒に別の予防接種手帳を作ろう、何とか手帳を作ろうと別の手帳は作らないで、やはり「All in One」の母子健康手帳を発展させるべきだと思います。
 最後に、一枚だけ付け加えです。今回の東日本大震災で被災した母親が、少し気持ちが落ち着いたときに、ほしいと言ったのが母子健康手帳でした。いろいろな物が流されたけれども、子どもの母子健康手帳がほしい。厚生労働省では震災の翌日に全国どこでも母子健康手帳を再交付できるという通知を出していただいて、それはとてもよかったです。ただ、陸前高田市では庁舎も全部流されいますから、母子健康手帳の再交付に来ても、渡す母子健康手帳がなかったのです。そのときに、これは私たちの研究班で一緒にやっていた博報堂が作っていた母子健康手帳を1週間後に陸前高田市に届けて、私たちの研究班がモデル開発して博報堂が作った母子健康手帳が母親の手元に届いています。これは災害の後方支援をしていた岩手県遠野市ですが、人口が約3万人、出産は約2000件。そこでは産婦人科医ゼロ、小児科医1人という中で「ねっと・ゆりかご」というものを作ってモバイルで助産師が中心になってケアし、そこで行われているのが全国でただ一つ、デジタルの母子健康手帳「すこやか親子電子手帳」です。実際に運用されているデジタル母子健康手帳は、全国でここだけです。アナログとデジタルの両方を使っています。両方でやって非常に活用しています。そういう意味では、被災地などからの声も聞きながら、新しいチャレンジをしていけばよいと思います。以上です。

○柳澤座長
 どうもありがとうございました。続いて、中島正夫参考人から。お願いします。

○中島正夫参考人
 中島と申します。私はこれまで発達を中心とした小児科臨床に8年半、その後、厚生省を含めた公衆衛生行政に21年半従事、そして大学の教員となって4年半経つ者であります。厚生省在職中の平成3年に当時の母子衛生課、今の母子保健課で課長補佐として勤務していたときに、平成4年の母子健康手帳の改正を担当させていただきました。その際に、乳幼児体力手帳・妊産婦手帳制度から母子健康手帳制度に至る流れについて、瀬木三雄先生はじめ制度の創設や改正の企画立案を担当された先輩方の政策意図などを知りたいと考え、ここ数年瀬木先生の遺された昭和20年前後の著作物や厚生省の関連通知などを読み、自分なりの整理を得るに至りましたので、論文にまとめ、日本公衆衛生雑誌に投稿させていただき7月号に掲載されました。今日、委員の先生方には別刷りをお渡ししております。
時間も限られておりますので、ポイントだけをお話しさせていただきます。今までのお三人の先生は、今後どうしていくかという具体のお話でございましたが、母子健康手帳の見直しの時期に、70年前まで遡って先輩たちがどのように考えておれたのかを押さえるのも大事ではないかということで私が呼ばれたのだと思います。お配りした資料を2枚めくっていただきますと、表1が出てまいります。私はこの手帳制度について、あくまで「妊産婦と乳幼児の健康を支援する手帳制度」と理解しております。表1は制度をまとめたものでございます。先ほどの馬場課長補佐のご説明では、乳幼児体力手帳制度のご紹介はありませんでした。私も平成3年に担当したときはあまりよく知りませんでしたが、この度、調べてみますと、全く同じ年に乳幼児体力手帳が5月に、そして妊産婦手帳が7月に動き始めています。乳幼児体力手帳は当時ありました国民体力法の改正によって、当初1・2歳、翌年には3歳までの健康診断受診者に交付し、その結果と予防接種の記録などを保健医療従事者が記載し、それに基づいて、保護者等に保健指導をするという仕組みでございます。
妊産婦手帳制度と後の児童福祉法に基づく母子手帳制度は、妊娠の届出が義務付けられています。さらに、届ける前に必ず医師か助産婦を受診して妊娠の証明を付けて届けさせる。すなわち、医療に早く接触させることが最大の目的でございました。
当時、欧米諸国と比べて非常に高かった妊産婦死亡率、乳児死亡率をいかに下げるかが課題となる一方で、人口が減りつつあり、既に第二次世界大戦が始まっているという時代の中で、人口政策そして母子保健対策として、乳幼児体力手帳と妊産婦手帳ができたということだと思っています。妊産婦手帳制度は、配給手帳としての運用が企画に加わっておりまして、配給手帳があったがゆえに戦後も継続されます。さらに、児童福祉法に基づく母子手帳制度もこの配給制度があったから継続されます。配給制度は結局昭和28年3月まで続き、そこで終了ということになっています。昭和41年に母子保健法が施行されたとき、今に続く母子健康手帳制度がスタートしております。そこの中で、平成4年に大きな改正がありましたが、そのことは後ほどご説明いたします。その後、非常に情報部分が増えてきて今日に至っているのが現状だと思います。
 次に、524ページ表2が、先輩たちは、どういう時代背景の中で、どのようなことを狙って制度を作り改正してきたのだろうかと、いうことに関する自分なりのまとめでございます。あくまでも自分のまとめですので、ご異論もあると思いますし、またご指導いただきたいと思いますが、大きく分けて五つ考えました。
 一つは、瀬木先生が、世界で初の妊婦のレジストレーションであった、とおっしゃっていますが、「母子保健サービスの対象を把握すること」でございます。これにつきましては、乳幼児体力手帳制度以外の全ての手帳制度で目的にしております。
 次に、「妊産婦を早期に医療に結びつけること」につきましては、妊産婦手帳制度と母子手帳制度がこの役割を果たしています。
 そして、「各種記録を当事者が携帯し、その後の保健医療従事者の的確な支援等に結びつけること」のうち、保健医療従事者の記録に関しては全ての手帳制度が目的としています。一方、当事者による記録が本格的に様式で明らかになったのは母子健康手帳制度になります。
 そして、「当事者・家族による妊産婦・乳幼児の健康管理を促すこと」につきまして、保健医療従事者が記載した各種記録を当事者等が見て参考にすることは全ての手帳制度で目的にしております。また、当事者が自ら記録をすることで、自己健康管理意識の向上を期待することが様式上明らかになったのは母子健康手帳制度であります。また、母子健康情報の提供は、妊産婦手帳制度、母子手帳制度にも若干ありましたが、本格的になるのが母子健康手帳制度です。そして、この母子健康手帳制度は届出も勧奨であります。あくまで自らの健康を守る、すなわち妊産婦が自分の健康を守る、また子どもたちの健康を守るという自主性を重んじるという法改正でございましたので届出も勧奨になりました。ですから、情報をたくさん載せて健康の自己管理に役立てるという仕組みになっております。
最後に「配給手帳としての運用」は先ほど話したとおりでございます。
 この中で平成4年(20年前)の改正につきまして、若干補足させていただきます。10年に1回の身体発育調査の結果を受けて大改正を行った年でございます。ちょうどその年に手帳の交付事務が市町村に委譲されることになりまして、それまでは、一字一句すべて厚生省で定めておりましたが、市町村でさまざまな情報を自由に入れていただけるように、これは分けましょうということになりまして、記録の部分は全国どこへ行っても、何ページを開けば必ずこの記録を見ることができるように前の方にまとめ、情報に関しては、こういうことは書いてくださいという項目を省令で規定し、中身に関しては市町村の状況に応じて「どうぞ、自由に書いてください」と。ただ、モデル版は作りましょうということで、当時、研究班で作っていただいたモデル版も併せて提示していったという経緯がございます。
 これらのことをまとめますと、論文に戻っていただきまして、523ページの右側の列の真ん中よりやや下からになります。わが国の妊産婦と乳幼児の健康を支援する手帳制度について、私は次のように考えました。当事者が健康記録を所持・携帯することにより、その後の保健医療従事者の的確な支援等に結びつけるとともに、当事者・家族による妊産婦・乳幼児の健康管理を促すことを基本とする制度で、当初「戦時下」において、母子保健対策と人口政策の観点から、義務として妊産婦を早期に医療に結びつけた上で行政が把握するなど主に父権的制度として制定され、母子栄養を維持するための配給手帳としての運用により普及し戦後も継続されています。「戦後復興期」末に配給手帳としての運用は廃止、「高度経済成長期」となり、母子保健思想が向上するとともに医療施設の整備が進み大部分の分娩が施設で行われるようになる中、妊娠の届出が勧奨とされ、また当事者による記録の記載が明確化、母子保健情報の提供が拡充されるなど、主に当事者の自発的な健康管理を期待する制度へと成熟していきました。
 以上のことを踏まえまして、今回の改正について個人の意見としてお願いしたいことが、大きく二つございます。
一つは、先ほどの藤内委員のお話、また中村安秀参考人のお話にありました「記録と情報部分の混在」ということでございます。このことについてのポイントは、情報部分の増加があまりにも激しいということです。これに関する対応を今回こそ考えないとまずいのではないかと思います。平成4年改正のときも、分冊化ということを議論はされましたが見送られました。今後も、先ほどご提案があったように、ますます手帳のページ数は増えると思われます。
 平成7年以降の手帳改正の内容につきまして別の論文にまとめましたが、特に平成17年度以降は毎年改正されています。その結果、手帳のページ数について平成4年版と比較しますと平成23年度版では省令部分で3ページ、そして任意記載部分で22ページも増加しています。今後も先生方からのご提案など、さまざまなことを盛り込んでいくと、一冊で運用することが可能なのか。既にそこに問題が生じているからこそ、記録部分と情報部分が離れ過ぎているといったようなことにも跳ね返ってくるのではないかと感じます。このことに関しては、思い切って、情報の部分と記録の部分を分冊化し、運用上入れ物は一つにすることで一体性は保つという形にすることが考えられます。もし手帳を一冊にまとめるのであれば、従前より、いわゆる「副読本」というものが業者によって発行されていますので、情報部分に関しては簡潔に重要なものを手帳に掲載し、詳細な説明と毎年変わっていきそうな部分は副読本に委ねるという思い切った判断が、この平成24年改正では求められているのではないかと思います。
 蛇足でございますが、時々、ある市の乳幼児健診を担当しております。概ね10%の保護者は他の自治体で発行された母子健康手帳を持って来られます。今は必ずこのページを見ればこの記録があるとわかっていますので、すぐにそこにたどり着きます。これが10%の人たちが記録と情報が混在したさまざまな自治体の手帳を持って来られたら、記録を探すのが大変で困るのではないかと思います。
 次に、母子健康手帳の名称については、中村安秀参考人からご提案がありましたし、11の市町村から名称を「親子健康手帳」にしてはどうかという提案がなされています。これに関してでございますが、私は、あくまでこの手帳制度は妊産婦と乳幼児の健康を支援する施策であると考えております。父親は医学的にいえば妊娠・出産はいたしません。そして、機能的に未熟でもありません。ですから、この時期、父親が少なくとも身体的な健康を害することはありませので、現在の手帳も父親の健康は視野に入れておりません。なので「母子健康手帳」だと思っています。当事者家族の妊産婦と乳幼児の健康管理を促すことは、昭和17年当初から既に意図されていました。父親は妊産婦をサポートし、まだ育児を共にするのは当たり前のことであります。このことに関して、既に多くの自治体で「父子手帳」もしくは「父子健康手帳」を別に作っておられ、父親の育児参加が強く求められる時代への対応に関してはもう一冊、「父子手帳」もしくは「父子健康手帳」を各自治体が発行すれば、その趣旨は実現できるのではないかと考えております。父親の育児参加を促す手段として、妊産婦と乳幼児の健康を支援する手帳の名称を「親子健康手帳」に変えるというのは、私は振り子の振れ過ぎだと考えております。以上、これまで母子保健に携わってこられた現場の方々や行政の担当者等、さまざまな方々がここまで育ててこられた手帳制度の基本的なコンセプトは、あくまで妊産婦と乳幼児という、非常にリスクを負う時期の健康を守ることであると考えますので、今後も「母子健康手帳」という名称は残していただきたいと思います。以上、つたない説明で申し訳ございません。

○柳澤座長
 どうもありがとうございました。ご発表いただきました先生方、本当にありがとうございました。まず、これまでの発表について、確認の質問がありましたら、どうぞ。

○海野委員
 日本産科婦人科学会から来ております北里大学の海野でございます。今、お話を伺っていて、いずれにしてもわが国の母子健康手帳をより良いものにしていこうという方向性に関してのそれぞれの先生方のお考えは、ほぼ同じような方向を向いていらっしゃって、問題点も共有されていると思いますが、問題というか、要は今回の改訂でどこまでやれるのかということです。例えば、便色カードを入れましょうとすると、省令部分にカラーの部分が必ず入ることになる。そうすると、その部分は誰がお金を出すのですか。その部分については保障されるのでしょうか。それがその自治体によってできる、できないという話になると、実際には同意できないでしょうから、その辺の財源的な部分をご説明いただいた上で議論を進めた方が、何となく話がうまく。というか、母子保健課の方々の思惑の範囲がどれくらいなのかというのがわからないので、その辺を教えていただきたいと思います。

○柳澤座長
 大変重要なご指摘だと思います。今の海野委員からのご指摘に関して、事務局から何らかの回答はありますでしょうか。

○泉母子保健課長
 お答えいたします。母子健康手帳は各市町村で作ることになっています。このための特別の財源が国からいっているわけではなくて、国から市町村にいっているお金の全体の中で市町村が必要な額を確保して作っているということでございます。これが、例えば数十円のものがいきなり数百円になったときに対応できるかとご心配いただいていると思いますけれども、実際には市町村の負担というのは一つの現実的な話としてはあると思います。検討会では基本的なことを議論していただき、例えば、カラーのものを入れるべきということになれば、具体的にどうするかは私どもの方で検討したいと思います。母子健康手帳作成の財源については、基本的な変更はないということでございます。

○柳澤座長
 よろしいでしょうか。それでは、これからフリーにディスカッションしていただきたいと思いますが、資料5に各委員から検討項目ごとに分けたご意見が記載されております。その辺を参考にしながら、あるいは見ながら各委員からご意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

○海野委員
 短くまとめたいと思いますが。

○柳澤座長
 あと30分ですので、そのことも念頭に置いて、お願いします。

○海野委員
 見れば明白なことですが、今まで、妊娠中の経過の情報はずっと長い間変わらないできているということがございます。これは、例えば妊婦健診に対する公的な助成などがこの十数年間で大幅に改善されまして、その中で妊婦健診の内容も非常に充実して、質の標準化も行われつつある。それから、日本産婦人科学会で診療ガイドラインを出していまして、妊婦健診の中での検査項目等についても、基本的な標準化という方向で進んでおります。そういうことも含めて、私どもから出した意見と申しますのは、現場で行われていること、あるいは実際に時代を合わせる必要があるということに尽きると思っております。それで、特に今まで全く記載がございません胎児情報に関しては、生まれた後の発育はあるわけですけれども、生まれる前の発育に関する情報も、それは妊婦健診の中で常にチェックしていることですので、その辺も含めて、それも母子健康手帳の重要な記載要素・要因にしていただければという意見でございます。

○柳澤座長
 どうもありがとうございます。他には。

○今村委員
 参考人から、いろいろと貴重なご意見を承りました。日本医師会といたしましては、本検討会に出席していない関係団体がございまして、そこからの要望がございましたので、ご披露しておきます。お手元に配布しております黄色のパンフレットでございますけれども、「母子健康手帳のご案内」ということで、(社)日本視能連合訓練士協会から日本医師会に対する要望として出てまいりました。ここの下の部分に書いてございますけれども、0か月から目の状態を知ることができるチェック用紙ということで、これを母子健康手帳に挟み込んで全国に配布したいということで、日本医師会としては了承いたしました。そして、同協会からの要望ですが、この内容をできれば本冊の中に書き込んでいただきたいということがありましたので、ご検討いただければと思います。
 それから、松田参考人のご講演にありました最後のページですけれども、将来的活用に向けてということで、来年の4月からの配布ということではないのかもしれませんけれども、いわゆる「どこでもMY病院」の構想を基にこの母子健康手帳にもその考えを入れようということですけれども、経済産業省に主導による「どこでもMY病院」構想につきましては、個人情報保護の管理あるいはその利活用の仕方について非常に日本医師会としては疑義を持っておりまして、これについては今回の議題にしていただかないようにお願いしたいと思います。以上です。

○柳澤座長
 どうもありがとうございました。他には。各委員それぞれご意見を出していただいて、それをまとめてありますので、それに沿ってご発言いただければと思いますが。

○出石委員
 保健師の代表としてまいりました出石と申します。今、委員方の発表を聞きまして、まず間違いなく今の母親方は母子健康手帳に対して「母子手帳」と言えば100%通じるようなツールになっております。これをどのように使うかという目的のところは、子育て支援の部分を入れていくと非常に今後もページ数が増えていくところは明らかに予測がつくところです。予防接種に関しましても、ここ数年で非常に細かい内容の変動が続いておりまして、現場の母親方が非常に混乱して、どう使うかといったところを迷っておられるのが事実です。
 今日はたくさんの研究発表も聞きましたが、この母子健康手帳をどういった目的で今後どのように使うかというフォーカスがもう少し。先ほど中島正夫参考人がおっしゃったように、その目的の部分をどこに絞るかによって、私どもも今後どのような母子健康手帳にしていくのかという辺りの意見というか、方向が変わっていくのではないかと思いまして、その辺りを事務局の厚生労働省にも確認したいと思います。

○柳澤座長
 時間は限られていますけれども、委員の方それぞれからご意見をいただきたいと思います。どうぞ。

○梶委員
 日本栄養士会から来ております梶です。委員方のお話を伺って、確かに今後ボリュームが増えていくということで、分冊の可能性もあるとは思っていたのですが、先ほど沖縄県をはじめとした、地自体の3冊を回していただいた中で、1冊の中にかなり情報も入っており、「しおり」があれば健診のときのページも早く探せるのではないかと、見て大変参考になりました。最低限の情報を入れるのであれば1冊の分冊でもよいと思います。それから、資料で出させていただきましたが、妊婦の食事や産後の母親の食事が大変悪い状況がありますので、そのようなものもサブテキストとして加えていくような方針を出して、各自治体でテキストを作ってもよいと思います。
 もう1点。かつて母親が自分の母子健康手帳を自分の娘が出産するときに経過として渡していた歴史があるのですが、今、聞きますと、かなりその意味が薄れてきまして、極端な話では小学校に入るとなくしてしまったなど、私は窓口をしていますので予防接種をどこまでしたのか忘れたので教えてくれという電話も結構あるので、やはり20歳ぐらいまで続くような母子健康手帳であれば、紛失などは防げると思います。かつて母親が子どもに渡したような歴史ある母子健康手帳を復活させたいと思います。以上です。

○柳澤座長
 どうもありがとうございました。他には、どうでしょうか。

○明石委員
 保健所長会の代表として来ております名古屋市の明石と申します。今までの委員方のお話等をお聞きして、私も目から鱗が落ちるようなところもあったのですけれども、やはり母子健康手帳は原点に戻って「母と子が使う」ということであり、その人たちの立場に立って作製するということが一番大事なのだということを改めて思いました。具体的な話になりますけれども、今、保健所の中では予防接種が大変変わっておりますので、今のままですと、任意的記載事項の中に入れ込んだりして本当にわかりにくいということがありますので、予防接種については先ほどから何歳まで使えるかということも出ておりますけれども、そこを見ればわかるという形で、一覧にしていただきたいということが第一の希望です。
 それから、父親もそうでしょうが母親の記載する欄はやはり気持ちなどを書くといったことに使えるように工夫することが大事だと思いました。先ほど、小牧市のものを見せていただきまして、母親と子どもの立場に立って作れば、あのようなものができるのだということを勉強させていただきましたので、今回の改訂でその立場に則った今の時代を反映したものにしていくことが大事だと思います。

○柳澤座長
 どうぞ。

○松平委員
 日本小児科医会から来ました小児科の開業医の松平と申します。いろいろとご議論いただいておりますし、また、今ご報告いただきまして感じているのですけれども、やはり開業していますと、この母子健康手帳を分冊化して2冊、3冊にしますと母親方はなかなか持ってこないのです。今、1冊であっても予防接種するときに持ってこない母親もかなりいますので、これからは情報が多くなってくるでしょうけれど、ぜひ1冊でまとめていただきたいということ。
 それから、今もたくさん出ていますけれども、やはり今回の改訂は、ぜひ予防接種のところを重点的に改訂していただきたい。これは我々がやっていますと、予防接種の事故につながるところがたくさんありますので、ぜひ事故防止の点からも改訂していただきたいと思っております。
 それから、母子健康手帳と父親の参加ですけれども、私は平日を休診にしまして、今は日曜日に予防接種をしております。そうすると、父親が子どもを連れて予防接種に来てくれますから。予防接種の内容を改訂することも重要でしょうけれど、やはり父親が母子健康手帳を利用する機会をつくってあげることも大切になってくると思っております。以上です。

○柳澤座長
 他に、ありますか。田中委員。

○田中委員
 産婦人科医会から来ました田中と申します。委員方のご意見がありますが、この資料5に会員から募った意見を少し記載させていただきました。例えば、資料5の5ページの上の方に「田中」と書いてありますが、ここのところは何かというと、妊婦の書くところはいろいろとありますけれども、それに対する医師の答えがワンポイントぐらい書ける記載欄がほしいという意見がありました。
 それから今、ありましたように9ページの真ん中辺りです。ワクチン・予防接種のことですが、これはスケジュール表があって、きちんと一目瞭然に今も多少なっているのですが、これをもっとわかりやすくしていただきたいという意見がありました。
 海野委員からも出ましたが、超音波などもやっているので記載のところに、今の時代では腹囲などは要らないから、せめてそこのところに超音波の所見が書けるような何かがほしいという意見です。
 いろいろと書きましたが、13ページの最後です。やはりインデックスがあって、すぐにどこかわかる。それから、やはり便の色はカラーにしてほしい。
 もう一つ、今までにないのは、いろいろなスクリーニングの中で聴覚のことにあまり触れていない。聴覚のことは、ある程度早めにわかれば、医療経済など、いろいろなことから見てもよいのではないかと。ですから、この聴覚のことの啓発をどんどんしていっていただきたいということです。
 ガイドラインに則って、いろいろと体重の増加などもあるのですが、少しこの場にはそぐわないのですけれども、15ページです。今回の災害のときに妊婦健診などがなかったときに、お金も何もないときにどうしたらよいか。母子保健課からどんどん連絡を出していただきまして非常によかったのですが、診察券のような何か補助券がないかというのですが、そのような意見を直接言ってきた医院には、もし補助券が入っていても災害で流れてしまったら使えなくなるから、それよりもこのような事態が起きたときに国からこうやってくださいという連絡の方がもっと強いと思いますと言ったら、「そうか。しかし、そういう意見があったということを言っておいてほしい」と言われましたのでご披露しています。
 今は、いろいろとありますよね。やはり母子健康手帳は自分で見て、これは大田区のものを持ってきたのですが、これはこれでよい。副読本の方を妊婦はよく見ているらしいです。字も大きいですし。そのような妊婦の意見もありましたので、副読本をうまく利用するということです。幸い日本はよい副読本がたくさんありますので、その辺も含めた意見です。ありがとうございました。

○柳澤座長
 どうぞ。

○榎本委員
 日本歯科医師会から歯科の保健ということでお話しさせていただきます。意見にも出しましたけれども、我々は地域保健委員会をつくっておりまして、委員方からご意見をたくさん伺っているものですから、いろいろと細かいことが書いてありますけれども、我々の歯科保健としてはこういうことだというポイントだけ、少し説明させていただきたいと思います。
 まず、文言の修正等はありますけれども、それは別として、むし歯予防に関係したフッ化物について母子健康手帳に書いていません。今は保健所でも行いますし、母親方もフッ化物については非常に興味があると思います。どこかでフッ化物に対するかかわりというものを記載していただきたいと希望しております。
 それから「口すすぎ」という言葉が出てくるのですが、「口をすすぐ」ということは言葉ではそうなのですが、どのようなイメージを持つかということが難しくなっています。「ガラガラうがい」や「ブクブクうがい」が感染予防あるいはインフルエンザの予防、口腔内の清掃ということで、うがいということに対してもう少しきめ細かい母親方への対応を説明してみたいと思っております。
 それから、この母子健康手帳には食育に関して非常によく記載してあって、とても良いことだと思いますけれども、我々としても歯科の保健に関してももう少し記載を追加してみたいと考えております。そのようなことが今回、意見を出させていただいた中での大きなポイントになりますので、それを踏まえて読み取っていただきたいと考えております。ありがとうございました。

○柳澤座長
 どうもありがとうございました。どうぞ、内山委員。

○内山委員
 産業保健の立場で参加させていただいております。今は全ての母子健康手帳に母性健康管理指導事項連絡カードが組み込まれていて、普及してますけれども、それでも一般に知られていない状況です。それから、働く女性が多くなっていて、その部分の法令も記載されていますけれども、なかなか読まれていないというのが現実です。先ほど4割というようなお話がありました。情報の部分では最も信頼できるものであるとおっしゃっていましたけれど、やはりこれを読んでもらえる、活用できる、利用していただくということにもう少し力を入れていくような工夫が必要ではないかと思っております。

○柳澤座長
 どうでしょうか。まだ発言しておられない委員に、一言お願いいたします。

○小原委員
 小原と申します。恐らく保護者の代表として来ていると思いますけれども、自分も3人子どもがいるので三冊持っているのですが、当事者としては、まず妊娠中自分のおなかの中のことを伝えるということはできないので、いろいろなチェックをしてもらうためのツールだと思って使っています。出産後は小学校に入るまで予防接種のときと健診のときぐらいしか私は活用できていなくて、まめな方はそこにいろいろと書いていくのでしょうけれど、多くの人はそのような形になってしまっていると思います。小学校に入るときに病気の履歴を書かされたり、授業で出産時のことを振り返るときになって、こんなに書くところがあったのに書いていなかったと気付くのが現状です。ですから、もう少し要所要所で毎回小児科に行くときには持っていくものだとか、入学のときに体重なども一通り測るので、そういった情報もそこに書くというように一貫して保護者もその都度何かあったらそこに記入していく。小児科や学校など、みんながそこに記入していくという位置付けがあると、もっと活用されるかと思います。情報に関しては、もちろんそこに書いてあればよいのですけれども、本当に最低限の情報でよくて、難しいことが書いてあってもなかなか頭に入らないので、誰に聞いたらよいかということがわかった方がよいのではないかと思っております。

○柳澤座長
 どうもありがとうございました。小野委員、どうぞ。

○小野委員
 日本小児科学会代表として来ています小野と申します。学会の意見としての便カラーカードなどそのようなことは書いてあるとおりですけれども、中村安秀参考人にご指摘いただいたユーザー志向の母子健康手帳というところで出していただいたマイナーな人に配慮する書き方、できるできないではなく、「いつ、できましたか」と変えてほしいという基本的なスタンスが大事だと思いました。できますか、できませんかということでは、常に「できます、よかった」という人はどんどん書いていくのですけれども、「まだできない、これもできていない、もう書くのが嫌になってしまった。これから自分は落ちこぼれている、子どもは将来どうなるのだろう」という心配を助長していってパタッと書くのが途絶えてしまう傾向がよく見られますので、この観点は大事だと思っております。
 それから、「お受験」のときに使われるという情報にまどわされる人もいるという現状があり、本当に共感しております。実際に「黄疸があった記録を消してほしい」と言われるということを聞いたことがありますけれども、非常に最たる個人情報の固まりのわけです。これも大切な母子健康手帳をうまく活用して、大人になるまでずっと予防接種記録も何もかもしっかり入れ込んでほしい。けれども、それをいつどこで見せるかという個人情報保護の観点で運用面が大変重要だろうと思っております。これを一度良いものを作っていただいた後は、その運用にかなりかかっているのではないかと思いました。

○柳澤座長
 加藤委員、どうぞ。

○加藤委員
 身体発育曲線のリニューアルに関連して入らせていただいております。提案ですけれども、「ご意見」というところの最後の紙ですけれど、身体発育曲線のイメージ図で、まず輪郭のことですけれども、境界の線よりも小さい・大きいで非常に神経質になっている保護者が多いことから、データにおける信頼区間を考慮しまして、強制の線を少しグラデーションといいますか、あまり鮮明にしないようにすることをご提案するとともに、小さく生まれた子ども、早く生まれた子どもの場合の配慮について、文言で書いていただいたらいかがかと思います。
 発達に関しまして50~90%まで矢印で通過月齢が書いてありますが、これもかなり不安の種になっていることを聞いています。発達スクリーニングは75~95%でやっているものが多いので、そのままの値を矢印ではないもう少しソフトな形でお示ししたらいかがかということです。
 それから、学童期以降の身体発育についても、小児科医の場合はやっと半数ぐらいのニードだということでしたけれども、現場ではこのようなものがあった方がよいと聞きますので、一応、学校保健統計からの発育グラフを任意記載の部分に加味したらいかがかと感じております。それについても、このようなものはどうかということで図をお示しいたしました。以上です。

○柳澤座長
 いろいろとご意見をいただいておりますが、ともかく記録と情報、それに伴うボリュームの問題。それから、どこにフォーカスを当てるかということで、いろいろなご意見が出てきたと思います。まだ、ご意見をいただいていない方は遠慮なく言っていただきたいと思いますし、二度でも三度でもどうぞ。

○福井委員
 日本看護協会からまいりました福井と申します。記録と情報とボリュームのことと整理していただいたのですが、母子健康手帳は母と子と家族という視点から使われていくものであろうと思いますけれども、海野委員からもたくさんの資料が出されているのですが、医療機関と医療機関をつなぐという視点を、ぜひこの機会に盛り込んでいただきたいと思っております。妊婦健診を受ける所と出産する場所が違う妊婦は多数おりますし、それから妊娠糖尿病の妊婦が非常に増えていますので、1か月健診が終わって、その後その人たちのフォローがされないという現状がありますので、そのことも視野に入れて、地域と医療機関が連携できるような、連携の視点もぜひ取り入れていただきたいと思っております。以上です。

○柳澤座長
 他に、ありませんか。

○渕元委員
 日本助産師会の渕元です。会から上がってきた意見については資料に載せていただいているのですが、日本助産師会としても、海野委員に資料で出していただいているのと、今、福井委員がおっしゃったように、妊娠期においては記録の充実がとても必要で、医療機関が変わるというだけでなく、今回の震災のように、もちろん母子健康手帳がなくなってしまったということもあるかもしれませんが、カルテがなくなってしまったというときに、カルテの代用が果たせる程度の情報量を母子健康手帳に入れたいという意味では、感染症などの検査結果が貼れるページであったり、そのような部分の充実を図っていきたい。待ったがきかないのが出産だと思いますので、そういう意味では妊娠経過の記録の充実をもう少ししていきたいと思います。

○柳澤座長
 田中委員。

○田中委員
 時間がないので手短にいきますが、今、「感染症」というキーワードが出ましたが、これが恐らくどこかに入学するときに問題になるということがあるかもしれません。ですから、私の所属している病院ですが、妊婦の患者が送られてきたときに自分たちが何を知りたいか。まず、感染症を知りたい。それは記載していなくても、ひょっとしたら母子健康手帳を忘れてきていることがある。しかし、そこに自分たちが逆の立場になったときにはデータをプリントアウトして、書き写すときに間違えてはいけないので、それをそのまま渡しているのです。感染症だけわかれば後は別に診察して、他のデータは1時間やそこら遅れても診療には差し支えないというのが私の実感です。感染症の取扱いはやはり記載というよりも誤記では困りますので、各医療機関は電子カルテ化している所が多いですから、そうでないところもあるでしょうけれど、プリントアウトして渡すのが一番確実だと思って、私どもではそのようにしています。ご参考までに。

○柳澤座長
 参考人の方も、どうぞ。短時間で。

○松田義雄参考人
 産科の立場から。今まで意見が出ていますように、胎児情報・妊婦情報をほしいということで、やはり連続性ということを考えますと、「All in One」という発想は変えない方がよろしいのではないか。それから、確かに病院間の連携ということまで欲張ってくると、ますますボリュームが大きくなってきますし、個人情報という観点があります。その点で、先ほど今村委員は「どこでもMY病院」という発想にも疑義があると言われましたけれども、将来的には個人情報を考えた情報伝達手法を考えてもよいのではないかということで提案させていただいたということです。

○柳澤座長
 どうぞ。

○中村安秀参考人
 今までの議論の中で、特に記録と情報が多くなって母子健康手帳をどうコンパクトにするかという話に関しては、実は世界で母子健康手帳を導入している二十数か国が全くみんな同じ悩みを持っています。その中で、先進国のオランダはどのようにしたかというと、オランダは障害を持つ子ども、例えばダウン症の子どもの成長曲線もほしいなど、そのようなことは全部、母子健康手帳に関するホームページをつくって、そこを見なさいと。先ほども小原委員からありましたが、そこを見れば、もっと詳しい情報はそこに載っている。新しい情報は毎年アップデートしなければいけない。それはホームページ上でやればよいではないか。母子健康手帳は1年や2年で変わらない、10年はもつ最低限のエッセンシャルな情報だけにする。そのように分けるのが一つの方法でした。
 もう一つは、今回調査した中で、私たちも少し思ったのは、私たちの方はこんな情報を入れたというつもりでいても、母親が読まないと結局伝わらない。その辺りも考えなければいけないと思いました。以上です。

○柳澤座長
 どうぞ。

○中島正夫参考人
 一言、言い忘れました。今の中村安秀参考人のご発言と趣旨は同じです。平成17年から毎年、任意記載部分が変わっております。極端な場合は、3月に妊娠を届け出た母親に交付された手帳の内容が4月には古くなってしまっていることになります。ですから、これだけ頻繁に変わっていることに関して、新しい情報を的確に必要な人に提供していく仕組みを、今、中村安秀参考人がおっしゃった例を含めて検討していく必要があると思っております。以上です。

○柳澤座長
 どうもありがとうございました。そろそろ終了の予定の時間になりましたが、ただ今、委員それぞれのお立場で非常に活発なご意見・ご提案がありました。今日ご議論いただいた内容は、次回までに事務局で論点を整理していただいて、次回から順次議論を深めて、最終的な報告書にまとめていきますので、今後ともよろしくお願いいたします。そういうことでよろしいでしょうか。
 それでは、事務局にお返しいたします。

○馬場課長補佐
 誠にありがとうございました。本検討会における論点整理は、本日のご議論等を基に事務局で作成いたしまして、次回に提出させていただきたいと存じます。次回は、今のところ10月7日辺りが最も多くの委員のご都合がつきそうですけれども、最終的な日程はまた皆さまにご連絡申し上げます。本日は、お忙しい中を誠にありがとうございました。

○柳澤座長
 どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

雇用均等・児童家庭局母子保健課母子保健係

電話: 03-5253-1111(7938)

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