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2012年11月27日 第53回労働政策審議会障害者雇用分科会 議事録

職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課

○日時

平成24年11月27日(火)
10時00分~12時00分


○場所

厚生労働省専用第21会議室(17階)


○出席者

【公益委員】今野委員、岩村委員、武石委員、松爲委員
【労働者代表】杉山委員、斗内委員、冨高委員
【使用者代表】栗原委員、塩野委員、高橋委員、中村委員、萩原委員
【障害者代表】川崎委員、北原委員、竹下委員、森氏
【事務局】岡崎職業安定局長、小川高齢・障害者雇用対策部長、山田障害者雇用対策課長、金田地域就労支援室長、松永障害者雇用対策課調査官、田窪主任障害者雇用専門官、安達障害者雇用対策課長補佐

○議題

(1)平成24年障害者雇用状況の集計結果について(報告)
(2)障害者雇用促進制度における障害者の範囲等についてマル1
 ・ 論点(案)について
 ・ 検討すべき具体的な論点について
(3)その他

○議事

○今野分科会長
 ただいまから、第53回労働政策審議会障害者雇用分科会を開催いたします。本日は、菊池委員、野中委員、桑原委員、南部委員、阿部委員が御欠席です。なお、欠席の阿部委員の代理として、社会福祉法人日本身体障害者団体連合会常務理事・事務局長の森祐司さんが出席されております。よろしくお願いいたします。
 それでは議事に入ります。いつものとおり、発言される場合は必ず挙手をしていただいて、私が指名いたしますので、名前を言ってから発言をしていただきたいと思います。議事はお手元の議事次第のとおりです。最初に、平成24年障害者雇用状況の集計結果についての報告をしていただきます。よろしくお願いします。
○主任障害者雇用専門官
 主任専門官の田窪です。障害者の雇用状況につきまして、今年の6月1日現在の状況を11月14日に公表しております。その資料は参考資料1でお配りしておりますが、時間の関係もありますので、お手元にお配りしております資料1でポイントをまとめておりますので、そちらで御説明申し上げたいと思います。
 まず、集計結果の主なポイントです。民間企業は現在、法定雇用率は1.8%ですが、民間企業におきましては、雇用障害者数は過去最高の38万2,000人強で、前年より4.4%増加しております。ちなみに、この雇用者数につきましては、全ての企業規模区分で増加しており、特に1,000人以上規模の企業での増加が著しい状況となっております。
 また、雇用されております者のうち身体障害者が29万1,000人強、知的障害者が7万4,700人強、精神障害者が1万6,600人強で、実数としましては、身体障害者が依然として多い状況になっております。それぞれ、前年との伸びを括弧の中に記載しておりますが、特に精神障害者の数が大きく増加しているという状況となっております。また、実雇用率につきましては、過去最高の1.69%という状況になっております。ただし、法定雇用率達成企業の割合は、46.8%という状況となっております。
 次に、公的機関です。公的機関につきましては、国、都道府県、市町村、教育委員会ということで数字をお示ししておりますが、それぞれ、記載のとおり、全ての機関において雇用障害者数、実雇用率とも前年を上回る状況となっております。この中で国、都道府県、市町村につきましては、全体としましては法定雇用率を満たしている状況ですが、教育委員会につきましては、実雇用率は前年より大きく伸ばしていただいておりますが、まだ法定雇用率に達していないという状況となっております。
 独立行政法人につきましては、現在、法定雇用率2.1%が適用されておりますが、雇用障害者数7,650名程度、実雇用率2.1%ということです。こちらにつきましても、雇用障害者数、実雇用率とも前年を上回るという状況となっております。今、申し上げましたように、全てのセクション、セクターにおきまして、雇用障害者数、実雇用率とも伸びるというような状況となっているということです。
 次に、この状況についての評価です。雇用障害者数につきましては、9年連続で過去最高を更新するといったことで、全体として障害者雇用は着実に進展しており、特に精神障害者の伸びが大きいという部分が評価ということです。
 今後の課題としましては、先ほど数字で申し上げましたが、依然として民間企業の実雇用率が法定雇用率を下回っている。さらに、法定雇用率を達成している企業の割合が半数に満たない状況にある。また、公的機関につきましては、教育委員会の実雇用率が法定雇用率を下回る状況にあるということ。さらに、来年4月1日からは法定雇用率が引き上がるというような状況があるため、新たな法定雇用率が適用された場合、今年の6月1日現在で見ると下回ってしまう所を中心に、未達成となる可能性がある企業なども対象として、引き続き雇用率達成指導を厳正に実施していきたいと考えているところです。
○今野分科会長
 ありがとうございました。それでは、何か御質問はございますでしょうか。
○中村委員
 中村です。一つお願いです。今後の支援策などを検討していく上で、データがあれば示していただきたいということです。その内容は、都道府県別、業種別、障害種別の雇用状況や離職状況についてどうなっているのかというデータがございましたら、お見せいただけたらありがたいと思います。
○今野分科会長
 いかがですか。
○主任障害者雇用専門官
 主任専門官の田窪です。都道府県別の実雇用率につきましては、お手元にお配りしております参考資料1の21ページに、都道府県ごとの実雇用率なり達成企業の割合の部分をお示ししております。業種別の状況につきましては、15ページにお示ししているという状況です。その他、いろいろ具体的な御要望の数字につきましては、必要があれば、また御提供させていただければと思っております。
○今野分科会長
 よろしいですか。
○中村委員
 はい。
○今野分科会長
 ほかにいかがでしょうか。
○杉山委員
 連合の杉山です。私も1点質問させてください。参考資料1の14ページの表になります。企業規模別の雇用状況で、先ほども資料1で説明をしていただいたのですが、規模別の雇用率を見てみますと、1,000人以上は法定雇用率を達成していますが、それ以外の所はおおむね未達成となっています。なおかつ、規模が小さくなればなるほど達成率が下がっていくという中で、このことから推測するに、やはり規模が小さくなると、企業体力という原因もあるかもしれませんが、いわゆるノウハウの蓄積や活用が難しいのも原因としてあるのではないかと思われます。その辺に対しての捉え方をまず一つお聞きしたいのと、具体的に中小企業に対する支援について、今行われているものがあれば、教えていただきたいと思います。
○障害者雇用対策課長
 障害者雇用対策課長の山田です。御指摘のとおり、日本の場合は企業規模が大きくなればなるほど障害者が雇用されているという、ある種、特異な状況になっています。裏返せば、中小企業の雇用が進んでいないということです。背景には、御指摘のあったような企業としての体力の問題やノウハウ不足の問題などがあるということも、そのとおりかと思います。全体としては、やはり中小企業に対して、予算上の面、行政サービスの面等で、より手厚くしていくことが必要だと思います。詳細については、次回、企業に対する支援策について、いろいろ資料をお出しして御議論いただこうと思っていますので、その際に資料の提示をさせていただきたいと思います。
○今野分科会長
 ほかにいかがでしょうか。
○冨高委員
 冨高です。資料1の公的機関について1点質問させていただきたいと思います。まず公的機関の実雇用率が、全体的には上がっているということで、そこは純粋に評価していいのだろうと思うのですが、一方で、教育委員会だけが法定雇用率を下回っているという状況は変わらないということで、ここについては、今後も取組を進めていただきたいと思うのです。
 一つ内訳を見せていただくと、都道府県の教育委員会の実雇用率が1.75%から1.88%に上がっており、これはかなり大きな上昇だと思います。ここで都道府県の教育委員会で何か特段の取組をされているかについて、大きく上昇した理由などが具体的に分かれば、是非教えていただきたいと思います。
○主任障害者雇用専門官
 主任専門官の田窪です。都道府県の教育委員会につきましては、積極的に採用いただくように従来から御指導、御支援等を申し上げていたところですが、昨年度、初めての試みとしまして、取組が非常に遅いということで障害者雇用対策課にお呼び出しさせていただいて、直接お話をさせていただき、具体的な取組をやっていただくための話をさせていただいております。そういった中で、当然、教員としての特別採用枠はほとんどの都道府県教育委員会で設けていただいておりまして、そういった特別枠での採用という部分が一定進んでいるという部分があります。あと、教員以外の、いわゆる事務関係のところでも、従来の予算の枠内だけではなくて、新たに予算を確保することによって障害者の採用を進めていただきたいというようなことも御指導申し上げたところ、そういった事務職関係での採用という部分もかなり進めていただいているという状況にあります。
 そういったことで、雇用者数も含めて、実雇用率を伸ばしていただいているところです。今後、文科省とも連携をとりながら、そういう成功事例を積極的に提供しながら、更なるボトムアップ、さらには、全体として法定雇用率を満たせるような形に御支援申し上げたいと思っているところです。
○冨高委員
 冨高です。御説明ありがとうございます。恐らく雇用率をアップさせるに当たっては、働く環境の整備などもされていると思いますので、今、御説明いただいたように、成功事例を皆さんで共有できるように是非お願いしたいと思います。
○今野分科会長
 ほかにいかがでしょうか。
○高橋委員
 高橋でございます。質問を2点させていただきたいと思います。先ほど参考資料1の14ページの企業規模別の雇用状況を御紹介いただきましたが、その企業数を見ると、日本に存在する企業数の規模からいって、相当程度少ないです。全体でも7万6,308という企業数は圧倒的に少ないわけですが、これのカバー率がどのぐらいなのか、あるいはこの企業数はどうやって選定されているのかということについて教えていただきたいのが1点目です。もう1点は、この資料では、民間企業については障害種別の雇用者数が開示されていますが、公的機関における障害種別の雇用者数を是非教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○主任障害者雇用専門官
 主任専門官の田窪です。まず、1点目の企業数の問題です。この数字自体が、まず、6月1日現在で雇用をしていただいている数字を集めさせていただいております。報告していただく企業の対象としましては、現在の法定雇用率1.8%がかかったときに1人以上を雇用しないといけない企業がこの報告対象になっているということで、56人以上の企業規模の所から報告をいただいて、それを集計させていただいているという状況になっております。
 2点目としまして。公的機関の障害者雇用状況につきましては、細かい数字を申し上げてもあれかと思いますが、全体的傾向として申し上げますと、残念ながら、公的機関の部分について、身体障害者の方が圧倒的に多いという状況にあります。知的障害者の方なり精神障害者の方は、これから、まだまだ雇用を進めていかないといけないという現状にあります。細かい資料等が必要であれば、あとでまたお渡ししたいと考えております。
○高橋委員
 では、是非2点目の公的機関の障害種別の雇用者数は、次回の会合に資料としてお出しいただきたいと思います。
○主任障害者雇用専門官
 失礼しました。主任専門官の田窪でございます。お手元にお配りしております細かい資料の23ページ、「国の機関」の(1)のマル2に「障害種別在職状況」というものがあります。さらに、24ページが都道府県、25ページが市町村、26ページが都道府県等の教育委員会という順番で、それぞれ、マル2の表で記載しておりますので、そこを御参照いただければと思います。
○今野分科会長
 よろしいですか。
○高橋委員
 高橋です。1点目についての確認です。そうしますと、障害者を1人以上雇用している企業数は全国で7万6,000ぐらいしかないということなのでしょうか。
○主任障害者雇用専門官
 主任専門官の田窪でございます。これは、1人以上雇わないといけない企業、1人も雇っていただいていない企業も含めて、全ての56人以上の企業規模の企業から御提出いただいている数ということになりますので、56人以上の企業規模の企業がこの全体の数という状況となっております。
○今野分科会長
 少ないと思っているわけですよね。除外率を考えて雇わなくていい所は、当然、外しているわけですよね。
○主任障害者雇用専門官
 主任専門官です。それはおっしゃるとおりです。
○今野分科会長
 そうすると、そこがかなりあるとすると、実際に56人以上の企業数がどのぐらいあるか私も知りませんが、それを外すとこれになるということだと思います。高橋さん、お帰りになって、またほかの数字を見られて気がついたことがあったら言っていただければ。
○高橋委員
 分かりました。
○今野分科会長
 ほかにございますでしょうか。
○中村委員
 中村です。先ほどデータのことでお願いをしたのですが、離職状況については、次回、何かお示しいただけますでしょうか。
○障害者雇用対策課長補佐
 何が準備できるのかというのは事務局で検討させていただいて、出せるものがあれば準備させていただきたいと思います。
○中村委員
 よろしくお願いします。
○今野分科会長
 今、聞こえなかったのですが、名前を言いましたか。
○障害者雇用対策課課長補佐
 事務局の障害者雇用対策課の課長補佐の安達です。次回、何が準備できるかということも含めて検討させていただきます。
○中村委員
 中村です。お願いします。
○今野分科会長
 ほかにいかがでしょうか。それでは、この議題はここで終わりにさせていただきまして、次にいきたいと思います。
 今日は、議事次第にありますように、障害者雇用促進制度における障害者の範囲等について御議論をいただきたいと思っています。本日を含めて、2回ぐらいで議論できればとは考えております。そこでまず、議題2の中の論点について事務局から説明をしていただきたいと思います。
○障害者雇用対策課調査官
 障害者雇用対策課調査官の松永です。まず、資料2になりますが、今回と次回で議論していただきます、「障害者雇用促進制度における障害者の範囲等に関する論点」の項目の全体像について御説明をしたいと思います。
 大きく三つの柱があります。まず一つ目、第1の柱が「障害者雇用促進制度における障害者の範囲」です。そこでの一つ目の論点は、今の障害者雇用促進制度における障害者の範囲についてどう考えるか。二つ目は就労の困難さに視点を置いた判断の在り方ということで、今の障害者雇用促進制度の対象となる障害者であることの判断に関して、就労の困難さに視点を置いた判断の在り方についてどう考えるかという論点項目です。
 二つ目の大きな柱が、第2ですが、「障害者雇用率制度における障害者の範囲等」です。ここでは、一つ目は、雇用義務制度の趣旨・目的についてどう考えるか。二つ目は精神障害者の関係で、これまでの雇用率制度における取扱いについてどう考えるか。三つ目はその他の障害者ということで、手帳を所持しないその他の発達障害者・難治性疾患患者等の雇用率制度における取扱いについてどう考えるか、ということで論点に挙げております。
 大きな三つ目の柱が第3で、「障害者雇用率制度に関するその他の論点」です。一つ目は、ダブルカウント制度についてどう考えるかということ。二つ目は、特例子会社制度についてどう考えるかということ。三つ目は派遣労働者の関係で、派遣労働者の雇用率制度における取扱いについてどう考えるかということです。以上の論点項目で議論をしていただければと思っております。もし、これについて加えるべき論点等々がございましたら、御指摘をいただければと思います。私からは以上です。
○今野分科会長
 いかがでしょうか。御意見をお願いします。よろしいですか。それでは、これでやってみるということで。途中でまた論点があったら、次回もありますので、そこで追加はできると思います。それでは、その次に進めさせていただきます。お手元の議事次第にありますように、「検討すべき具体的な論点について」ということで議論をしていただければと思います。それではまず、事務局から説明をお願いできますか。
○障害者雇用対策課調査官
 障害者雇用対策課の松永でございます。今、御説明した論点項目に沿って、具体的な論点について説明をさせていただきたいと思います。お配りしている資料の資料3を御覧いただければと思います。
 まず第1、「障害者雇用促進制度における障害者の範囲」です。これは、その範囲についてどう考えるかということです。これまでの研究会報告の議論を御紹介しますと、一つ目の○ですが、現在の障害者雇用促進法における障害者については、「長期にわたる職業生活上の相当の制限」を個別に判断していると。例えば、手帳を所持しない発達障害者・難治性疾患患者等で「長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」についてもこの法の対象に含まれているということで、本来対象とすべき者が障害者とされていると評価できるとされております。
 ただ、一方で、法律の障害者の定義規定については、平成23年の障害者基本法の改正の中でも、そこにありますように、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害」というような形で改正されておりますが、こうした改正を踏まえた表現とすべきだというような御意見もありまして、対象の曖昧さを排除する観点から、対象の明確化等について法制的な検討を行い、必要な見直しを行うことも考えられるとされております。
 これを受けた形の具体的な論点が下の四角になります。現在の障害者雇用促進制度における障害者については「長期にわたる職業生活上の相当の制限」を個別に判断している。例えば、手帳を所持しない発達障害者・難治性疾患患者等で「長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」についてもこの法の対象に含まれていることから、本来対象とすべき者が障害者とされているのではないか、ということについて御議論いただければと思います。また、一方で、法律の障害者の規定については、先ほど申し上げた障害者基本法の改正も踏まえて、対象の曖昧さを排除する観点から対象の明確化等について法制的な検討を行うべきではないか、ということについても御議論いただければと思います。
 2ページは、今の議論の参考として、障害者基本法と障害者雇用促進法での障害者の定義規定について載せております。
 3ページになりますが、第1のうちの二つ目の論点、その法律の対象となる障害者であることの判断に関して、就労の困難さに視点を置いた判断の在り方についてどう考えるかということです。これについては、先の研究会報告書の中の議論を紹介します。その法律の対象となる障害者については、就労の困難さに視点を置いて判断し、それぞれの障害者の状況に応じたきめ細かな支援を実施することが重要とされております。その上で現状の評価が、三つ目の○になりますが、現在の障害者雇用促進法においては、医学的判断に加え、「長期にわたる職業生活上の相当の制限」を個別に判断しており、就労の困難さに視点を置いたものとなっていると評価できる。なお、障害者であることを判断するに当たっては、まずは個人の特性等の把握が重要であるため、現在の方法を基本としつつ、就労の困難さという観点からの判断の精度を高める工夫を行うことが必要である。具体的には、医師の診断書や意見書等により確認し、「長期にわたる職業生活上の相当の制限」について支援機関の担当者等からの情報も参考にしながら判断することが重要であるというように言われております。
 それを踏まえて、具体的な論点が四角の中ですが、現在の障害者雇用促進法の対象となる障害者であることの判断は、医学的判断に加え、「長期にわたる職業生活上の相当の制限」を個別に判断しており、就労の困難さに視点を置いたものと評価してよいか。それから、就労の困難さの判断の在り方についてどう考えるか。先ほども報告書の中にありましたが、例えば、「長期にわたる職業生活上の相当の制限」について、支援機関の担当者等からの情報も参考にしながら判断することを通じて、就労の困難さの判断の精度を高めることについてどう考えるか、ということについて御議論いただければと思います。
 次は4ページになります。大きな柱の二つ目の「障害者雇用率制度における障害者の範囲等」です。まず、この中の一つ目の論点として、雇用義務制度の趣旨・目的についてどう考えるかです。これも先の研究会報告書の中の紹介をしますと、一つ目の○ですが、雇用義務制度は、雇用の場を確保することが極めて困難な者に対し、社会連帯の理念の下で、全ての企業に雇用義務を課すものである。したがって、企業が社会的な責任を果たすための前提として、マル1企業がその対象者を雇用できる一定の環境が整っていることが必要であり、マル2対象範囲は明確であり、公正、一律性が担保される必要があるとされております。
 なお、これに関連する意見としてありましたのは二つ目の○以下ですが、まず、雇用環境の整備については、完全に整備されることを待つことは現実的ではない、障害者と一緒に働く中で障害者雇用への理解が進み、さらに雇用拡大が進むのではないかといった御意見ですとか、三つ目の○ですが、対象範囲の検討に当たっては、各企業が適切に雇用管理できるようにするためにも企業の状況・実態等に基づく慎重な検討が必要であり、事業主の必要以上の負担や健常者の雇用への影響といった視点も必要であるといった御意見をいただいているところです。
 これを受けた形の具体的な論点がその下です。雇用義務制度は、雇用の場を確保することが極めて困難な者に対して、社会連帯の理念の下で、全ての企業に雇用義務を課すものである。したがって、企業が社会的な責任を果たすための前提として、マル1企業がその対象者を雇用できる一定の環境が整っていること。マル2対象範囲は明確であり、公正、一律性が担保されること、そういったことが必要ではないかということについて御議論いただければと思います。また、雇用義務制度の対象範囲の検討に当たって、これ以外にも留意すべき事項があれば、ここで議論していただければと思います。
 次に、5ページになりますが、二つ目の論点の精神障害者の雇用率制度における取扱いについてどう考えるかです。精神障害者の雇用義務については、研究会報告書の一つ目の○にありますように、平成16年12月の労働政策審議会意見書の中でも、将来的には精神障害者について雇用義務制度の対象とすることが考えられるとされています。ただ、当時、現段階ではということで、精神障害者の雇用に対する企業の理解と雇用管理ノウハウの普及を図り、精神障害者の雇用環境を更に改善していく必要があるとされていたところです。この研究会報告書では、その次の○になりますが、この義務化については、精神障害者に対する企業の理解の進展や雇用促進のための助成金等々、各種支援策の充実など、精神障害者の雇用環境は改善され、義務化に向けた条件整備は着実に進展してきたと考えられることから、精神障害者を雇用義務の対象とすることが適当であるとされております。ただ、一方で、義務化の意味合いは非常に重く、企業の経営環境や企業総体としての納得感といった観点からは、実施時期については、慎重に結論を出すことが求められるとされております。
 精神障害者の雇用義務化に当たっては、企業内で理解を得られる環境づくりが必要で、その対応を適切に行う。精神障害者の特性として、症状の波があるといったこともあり、個人と企業とのマッチング、定着を支援する体制、企業と外部の支援機関が連携して支援していく体制の充実が必要であるとされております。
 なお書きですが、精神障害者を雇用義務の対象とする際の対象者の把握・確認方法については、精神障害の特性、プライバシーへの配慮、公正、一律性等の観点から、精神障害者保健福祉手帳で判断することが適当とされております。
 これを受けた形の具体的な論点がその下です。先ほど御説明しました、(1)の雇用義務制度の趣旨・目的を踏まえ、精神障害者を雇用義務の対象とすることについてどう考えるかということ。義務化の意味合いは非常に重く、企業の経営環境や企業総体としての納得感といった観点も踏まえ、実施時期についてどう考えるかということ。精神障害者の雇用義務化に当たっては、企業内で理解を得られる環境づくり、個人と企業とのマッチングや定着を支援する体制や企業と外部の支援機関が連携をして支援していく体制の充実を図ることが必要ではないかということ。次、6ページになりますが、精神障害者を雇用義務の対象とする場合の対象者の把握・確認方法は、精神障害の特性やプライバシーへの配慮、公正、一律性等の観点から、精神障害者保健福祉手帳で判断するということについてどう考えるか、ということについて御議論いただければと思います。
 次の7ページは、先ほども少し御紹介しましたが、平成16年12月の労働政策審議会障害者雇用分科会での意見書の抜粋ですので、こちらも参考にしていただければと思います。
 8ページになりますが、三つ目の論点、その他の障害者についてです。障害者手帳を所持しないその他の発達障害者・難治性疾患患者等の雇用率制度における取扱いについてどう考えるかです。先の研究会報告書については、今申し上げた手帳を所持しない発達障害者・難治性疾患患者に対しても、障害特性に応じて適切な支援が受けられるようにすることが重要である。ただ、現状としては、こういった発達障害者や難治性疾患患者の方については、企業が雇用できる一定の環境が整っていないということで、企業における雇用管理ノウハウの蓄積や企業の雇用環境の改善、地域の就労支援の体制作りやネットワークの構築を進めていくことが必要である。対象範囲が明確でないというようなことで、職業生活上の困難さを把握・判断するための研究を行っていくことが必要であるとされております。
 それを受けて具体的な論点がその下です。手帳を所持しない発達障害者・難治性疾患患者等のその他の障害者については、まずは、企業における雇用管理ノウハウの蓄積や企業の雇用環境の改善を進めていくこと、地域の就労支援の体制作り、ネットワークの構築を進めていくことが必要ではないか。もう一つは、対象範囲が明確ではなく、公正、一律性が担保されていないということで、職業生活上の困難さを把握・判断するための検討を行っていくことが必要ではないかということ。その上で、先ほど御説明した(1)の雇用義務制度の趣旨・目的を踏まえて、今の手帳を所持していないその他の障害者を雇用義務の対象とすることについてどう考えるか、ということの御議論をいただければと思います。
 次に、9ページ以降が三つ目の大きな柱の「雇用率制度に関するその他の論点」です。まず一つ目は、ダブルカウント制度についてどう考えるかです。先の研究会報告書の中では、一つ目の○ですが、ダブルカウント制度は、就労の困難度の高い重度障害者の雇用促進に一定の役割を果たしてきたということで、今後も重度障害者の雇用を促進していくためにも、ダブルカウント制度は継続していくことが必要であるとされております。
 ただ、二つ目の○以下で、一方の意見としては、重度障害者とする基準が実態と乖離する部分があるのであれば、より効果的なものにするために実態に応じた見直しを検討していくべきだという御意見もありましたし、三つ目の○では、精神障害者について、短時間労働をダブルカウントにより評価すべきだという御意見もありましたが、これについては、他の障害者との公平性の観点や精神障害の特性にかかわらず、本人その他の事情で雇用契約が短時間である場合もあること等を考慮し、慎重な議論が必要であるとされたところです。
 これを受けての具体的な論点です。まずダブルカウントについて、就労の困難度の高い重度障害者の雇用促進に一定の役割を果たしてきたことを踏まえ、制度を継続していくことでよいかどうかということ。ダブルカウント制度の対象となる重度障害者についてどう考えるかということについて御議論いただければと思います。
 次に、10ページになりますが、特例子会社制度についてどう考えるかです。先の研究会報告書の中では、一つ目の○にありますように、特例子会社制度が、知的障害者をはじめとする障害者の雇用促進に果たしてきた役割は大きく、多くの障害者をその特性に配慮して継続して雇用するという観点でも貢献しており、特例子会社制度は継続していくことが必要であると言われております。二つ目の○ですが、今後の役割として、特例子会社で蓄積した障害者雇用に関するノウハウを他の企業に普及・啓発させる等の役割も期待される。また、親会社と人事交流を行う等親会社の障害者雇用を積極化する仕組みとしても活用できるのではないかといった御意見をいただいたところです。
 これを受けての具体的な論点です。特例子会社制度は、知的障害者をはじめとする障害者の雇用促進に果たしてきた役割を踏まえ、制度を継続していくということでよいかどうかということ。それから、特例子会社の今後の役割についてどう考えるかということについて御議論いただければと思います。
 11ページになりますが、派遣労働者について、派遣労働者の雇用率制度における取扱いについてどう考えるかということです。これも先の研究会報告書の中で、二つ目の○にありますように、派遣労働は複雑な雇用形態であり、各企業で派遣労働者の位置づけをどう捉えるのかということにも関係することから、引き続き、派遣労働者としての障害者雇用のニーズの動向等を見た上で検討する必要があるとされております。
 これを受けた形の具体的な論点ですが、今の報告書と同様で、引き続き、派遣労働者としての障害者雇用のニーズの動向等を見た上で検討すべきではないかとしております。これについても御議論いただければと思います。
 以上が具体的な論点についてです。今日お配りしている資料の中で、参考資料2から6までが今説明した論点に関する現行の制度等の参考資料です。個々の細かい説明は割愛させていただきますが、1点、お配りしている参考資料5-1というのがありまして、今日、主に議論していただきます精神障害者、発達障害者・難治性疾患患者の雇用を取り巻く状況を整理しております。これについて簡単に御説明をしたいと思います。
 まず、精神障害者の雇用を取り巻く状況です。精神障害者の雇用促進のための施策メニューは着実に充実させておりまして、実績も増えているところです。そこにもありますように、まずハローワークでの就職件数は、平成14年度当時は1,800件ぐらいだったわけですが、平成23年度には、1万8,000件を超えるという実績になっております。その下の6・1報告での雇用者数も、平成18年当時は1.900人強だったわけですが、直近の平成24年では、1万6,000人を超えるという状況です。そのほか、その下のナカポツセンターの登録者数、障害者職業センターの利用者数も、それぞれ、2万6,000人、1万人といった形で数を増やしているところです。そこから下は各支援策の実績になりますが、そこにもありますように、特定求職者雇用開発助成金の支給件数、トライアル雇用の雇用会社数、トータルサポーターの対象者数等々、各種支援策についても、その実績は増加しているという状況です。
 次に、同じ資料の裏面が、発達障害者・難治性疾患患者の雇用を取り巻く状況です。まず発達障害の方のハローワークでの就職件数については、これは平成18年度以降からのデータになりますが、平成18年度当時は110件だったわけですが、平成23年度は320件となっております。それから、ナカポツセンターの登録者数、障害者職業センターの利用者数についても、それぞれ、2,300人、4,700人という形になっております。その他、発達障害者の雇用支援についてはまだまだ新しい取組が多くて、経年的な比較ができないものもあるわけですが、発達障害者の雇用開発助成金の支給件数については少しずつ実績を伸ばしておりますし、その他の取組についても、実施する地域を徐々に広げているという形でやっているというところです。
 下のほうにありますのは難治性疾患患者の状況です。まずハローワークの就職件数は、平成18年度は36件、平成23年度は548件となっております。それから、ナカポツセンターの登録者数、障害者職業センターの利用者数についても、それぞれ200人程度となっております。それから、難治性疾患患者の雇用開発助成金の支給件数は、平成23年度で236件、ジョブコーチの支援対象者数は、平成23年度で4人という状況になっております。
 以上、簡単に御説明しましたが、こういった今の雇用状況も参考にしながら御議論いただければと思っております。私からの説明は以上です。
○今野分科会長
 ありがとうございました。今、説明をしていただきました資料3に基づいて議論したいと思います。大きく言うと、1ページ目の第1、4ページ目の第2、9ページ目の第3と分かれております。順番にやったほうが議論が整理できるかと思いますので、最初は第1の「障害者雇用促進制度における障害者の範囲」について御議論をいただければと思います。それでは御意見をお願いいたします。
○竹下委員
 日盲連の竹下です。結論から申しまして、雇用促進法の対象となる、即ち、ここで合理的配慮等を必要とする障害者の範囲というものは、障害者基本法に合わせることで、疑義をなくすことができるのではないかというのが結論です。
 気になるのは2つあります。今のままでいったときに、促進法の第2条を見た場合、身体障害者、知的障害者、精神障害者の場合に、当然、身体障害者についても知的障害者についても、別表等によっての枠組みというか、一定の要件があるわけですから、そこから落ちる人が出てくることにもしなるとすれば、障害者基本法において求められている労働雇用における合理的配慮、障害者権利条約において求められている労働雇用分野における合理的配慮等に違いが出ることがあってはならないことだろうと思うわけです。したがって、その点からもここは統一的な記載、ないしは要件にすべきではないかと思っています。
○今野分科会長
 ありがとうございました。ほかにどうぞ。
○栗原委員
 栗原です。今のお話に関連しますが、現在、雇用率の対象となっている身体・知的に今度精神を入れるということで、この義務化はやむを得ないという感じはするのですが、ただ、この範囲につきましては、やはり、できれば手帳を持っている人に限定をしていただきたい。そうしないと、広くと言いますと、このカウントに入るのかどうかという問題も出てきますので、その辺のことがある程度明確にならないと。当面は手帳を持っている人が対象ということでやってもらいたいという感じがします。
○今野分科会長
 今、栗原委員がおっしゃったのは、次の第2の論点に直接関わりますので、それはよく覚えておきますので大丈夫です。要するに、雇用率対象を考えるときは、手帳保持でいけよということですね。
○松爲委員
 松爲でございます。先ほどの竹下委員の御発言につきまして確認しておきたいのです。基本法第2条と雇用促進法第2条では少し文案が違うのですよね。つまり、後半の部分なのです。例えば、身体障害、知的障害、精神障害、基本法の場合には「(発達障害を含む)」というところがあります。ですから、雇用促進法の場合には、身体障害、知的障害又は精神障害、むしろ、そのあとです。あるものであって、例えば、基本法の場合には、「障害及び社会的障壁により継続的に日常生活、または社会生活に相当な制限を受ける状態の者」をいう。雇用促進法の場合には、「長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」をいう。つまり、この微妙な文案の違いを、基本法に全部合わせていく格好になっていきますと、雇用促進法の趣旨と少し違うかどうかという疑義があるのですが、そこはどういう格好で調整する形で御発言があるのか確認したいと思います。
○今野分科会長
 いかがですか。竹下委員がおっしゃったのは、後半ではなくて、前半の対象者の方ですよね。
○竹下委員
 竹下です。今、松爲委員のおっしゃったことはごもっともだと思っています。二つあって、今、座長もおっしゃったように分けて考えるべきだと思っています。まず、最初の冠というか、枠組みとして、身体障害、知的障害、精神障害に限定するのかどうか。「(発達障害者を含む)」でもいいのですが、基本法では「その他」とあるわけです。ここの文が、枠組みをそういう意味では限定しないほうが、そこに整合性を持たせることができるのではないかというのが1点目です。
 2点目については、そのとおりだと思っています。これは私自身が、未経験の者がしゃべることをお許し願えれば、私もあくまでも雇用促進法、雇用、労働の分野における合理的配慮を問題にしているわけですから、基本法における日常生活云々のところは、表現としてもいらないのかなと。社会生活イコールこの場ではまさに労働の分野、職業生活におけるということになると思うので、そこの表現は変わってくるというか、それに合わせるべきだろうと思います。そういう2段階の整合性になるのではないかと思っております。
○松爲委員
 松爲です。今の竹下委員の御発言には賛成なのです。障害の範囲につきましては、基本法につきましては、発達障害に関しては、その他も含めて非常に努力して入れられた言葉です。ですから、基本的な範囲そのものに関しては広げていい。ただし、後半の部分に関しては、やはり雇用促進法の趣旨をきちんと反映する形のものが、私はいいと思っております。
○今野分科会長
 事務局、私も確認したいのですが、今までのお話では、実態は身体障害、知的障害、精神障害ということではないでしょう。ハローワークで支援しているのは、現実には職業生活に相当の制限を受けている人ということで支援しているのが実態ではないですか。
○障害者雇用対策課長
 障害者雇用対策課長の山田です。今野先生のお話も含めて、基本的に事実関係だけは確認しておきたいと思います。障害者基本法の改正が行われた際に、発達障害や難病等に起因する障害を基本法の障害に新たに含むという改正ではなくて、改正前の基本法でも基本的に発達障害や難病に起因する障害は、もともと障害に含まれていましたが、今回の改正に当たって、それを明確にするために改正を行ったと内閣府から聞いているのが、まず事実としてあります。
 今野先生のお話の身体、知的、精神があるため云々のところですが、もともとこれは障害者基本法の議論のときに、ここで表示する障害というのを、体の障害と心の障害の2類型にするという議論も実はあって、障害というのは、結局どちらかに帰着するだろうということで、いろいろ議論があった末に、最終的にこの文言に落ち着いたわけです。そういう意味では、もともとの障害者雇用促進法の発想もそういったもので、身体、知的又は精神ということです。ただ、範囲の実態としてはそういう話ですが、「対象の曖昧さを排除する観点から、対象の明確化等について法制的な検討を行うべきではないか」とあえて書いたのは、範囲はそうであろうが、そういった対象の曖昧さの排除といった観点から検討をする必要があるのではないかというところなので、ややフレーズが、1ページの一つ目の○と二つ目の○で違っているところはあります。
○今野分科会長
 ほかにいかがですか。
○斗内委員
 斗内でございます。今の御議論と追随する形で、労働側としても意見を申し上げたいと思います。全く今、御議論をいただいているとおりで、障害者雇用促進法は、基本的に障害の種別や度合等々により範囲が制限されることのないように、全てがカバーされるべきであると思っております。
 ちょうど参考資料3に図解で示されているとおり、対象としては全部をカバーしている状況にあります。事務局からの提案にもありますように、対象の明確化等を図るべきではないかということに関しては、先ほどの2ページの裏にもあるように、いわゆる「発達障害」という文言が入るか、入らないかということになるかと思いますが、実態としてカバーしているのであれば、そこは明確化しておくことも必要ではないかと考える次第です。
○今野分科会長
 皆さんの議論をお聞きしていると、最終的な表現をどうするかは別として、明確化しろということですので。
○竹下委員
 竹下です。山田課長の説明のところでされるのかなと思ったのですが、座長がおっしゃったように、ハローワークなどでの取扱いはどうなっているのかという趣旨の質問があったかと思うので、その部分は欲しかったのですが、ここは私は大事だと思っているのです。
 先ほど栗原委員が発言されたように、雇用率の対象の部分での身体障害者なり、その他の障害者の枠組みをどうするかということは、今は置くのですが、しかし、ハローワークでは、現実に手帳を持っていない身体障害者やその他の障害者の方が行かれても、相談そのものや職業あっせん等の支援を拒まれる例は非常に多いのです。それは誤解があるのか、明確な答えは私の立場から言えませんが、残念ながら、手帳を持っていない障害のある人がハローワークでの支援なりが受けられない現実があることを考えると、第2条の部分の記載方法というのは極めて大事になるのではないかと思っておりますので、もし、その点の現状での取扱いのところで私の認識が違うようであれば、山田課長から御指摘をいただければと思います。
○主任障害者雇用専門官
 主任専門官の田窪でございます。竹下委員からの御指摘の部分で、我々として手帳の有無にはかかわらず、障害があることによって長期的に職業生活に相当の制限があるかどうかということでちゃんと対応するように、各局なり、各ハローワークに指示しているところで、もし個別に具体的にそういう事例があればお教えいただいて、我々の方で適切な対応は図っていきたいと思っております。いずれにしても、手帳の有無にかかわらず、対応させていただくのが我々としての基本姿勢で、そういうふうにやっているものだとは思っているところです。
○松爲委員
 松爲です。今の担当官のお話と同じです。障害者職業センターにおきましても、実は障害の種類を問わず、相談した件数に関しては全部扱っている話なのです。そこはまず確認しておくということです。先ほどの発達障害を入れるかどうかということは、実は現実問題として発達障害の団体はたくさんありますし、人が増えてくる中で、彼は一体どこに所属するのか。つまり、行き場がないのです。そういった意味では、この文面の中に「精神障害(発達障害を含む)」と入れることによって、いわゆる発達障害の、これからますます増えてくる可能性のある人たちにとっては、非常にある意味では救いになると思っています。そういった意味では、範囲の広がりをより明確にするためにも括弧書きとして入れたほうがいいと思うのです。ただし、現実問題として実際の支援の在り方というのは、ハローワーク、例えば、障害者職業センターの中では、障害種類を問わず、あるいは手帳の有無を問わず実際に相談は受けているはずという格好で認識しております。
○竹下委員
 竹下です。専門官の御説明の中で、是非そうあってほしいわけですが、現実にどういうやり取りがされるかというと、例えば、身体障害者に限定して言いますと、「別表に掲げる」云々のところで、手帳があれば証明されているけれども、そうでないと、そこの部分も対象になるかどうかというところで、入口で議論になってしまったり、簡単に跳ね返されたりするという弊害が生まれていることもあるので、この部分を、そうしたことが起こらない明快な表現をお願いしたいということです。
○主任障害者雇用専門官
 主任専門官の田窪でございます。それはハローワークにおける窓口での説明が不十分であった部分もあるのかなとは思いますが、具体的に障害者自体の定義としては、法律の第2条第1号で全体で手帳の有無を問わないような形で定義をさせていただいております。法律の第2条第2号のところで、いわば法定雇用率の対象となる、雇用義務の対象となる身体障害者という定義が設けられております。そこが別表に掲げる障害ということで、雇用義務の対象となるかどうかというお話をさせていただく部分で、そういうやり取りがもしかするとあったのかも分かりませんが、サービス自体としては手帳の有無を問わないでやるという基本姿勢でやっているところです。
○萩原委員
 萩原です。障害者雇用促進法の第2条第1号については、障害者の定義をもう少し明定する趣旨から表現を変えることはあり得る議論だと思いますが、仮にそうされたときに、実際に対象とする方々は変わらないという理解でよろしいのか確認したいと思います。
○障害者雇用対策課長
 障害者雇用対策課長の山田です。そこ自体も御議論していただければ結構ですが、1ページ目の二つ目の○については、それを一応前提に問いかけはしています。
○高橋委員
 高橋です。先ほどの参考資料3を拝見しますと、現在でも障害者雇用促進法の対象は、身体、知的、精神に加えて、その他も含む対象ですよね。そうなっているのに、それを明定化することによってどういう意味が出てくるのか、その辺りをお聞きしたいと思います。
○今野分科会長
 先ほど松爲さんが言われたのも、松爲さんがそうしたほうがいいということの一つの理由ですよね。
○松爲委員
 松爲です。実際は対象になっていて、ハローワークでもサービスを提供しているわけですよね。
○今野分科会長
 私の理解は、考え方としてはそうなっている。竹下委員の言うように、オペレーション上で何かちょっと違うことがあるかもしれませんが、考え方としては参考資料3のとおりです。それをどう表現するかということだと思います。
○岩村委員
 岩村です。恐らく先ほど松爲先生がおっしゃったような、実際上の理由というのもありますし、もう一つは、これは変な言い方ですが、法制上の美しさというか、整合性というのも、もう一つの理由としてはあると思います。既に先ほど来説明がありますように、障害者基本法が改正されて、少なくとも前段の「障害」の中に何が入るかということを、従来と変わらないにしても整理をしたということであれば、多分紛れがないように、障害者雇用促進法についても、少なくともその部分については文言を揃えておくほうがより適切ではないかということだと思います。文言が違ったままですと、やはり、どうしても一般の人が読んでみたときに、これは違うことが書いてあるよねと読まれてしまう可能性は常に残ると思います。
 そういう意味では、実際上現在と同じである、変わらないということであっても、基本法と前段の部分については揃えておくほうがより明確になりますし、要らぬ疑問を引き起こさないで済むということではないかと思います。
○今野分科会長
 ほかにいかがでしょうか。
○中村委員
 中村です。精神障害者の保健福祉手帳についての質問ですが、交付、あるいは更新するに当たり、どのような診断、あるいはそのプロセスを経て手続が行われているのか教えていただきたいと思います。
○今野分科会長
 多分、第2の重要な論点になります。これは私は覚えておきますので、いちばん最初に答えてもらいます。今のところ、御議論を聞いていると、竹下委員は、要するにどこかが落ちてしまうことがあるから心配ということですよね。松爲委員が言われたのは、発達障害の人たちを少しクローズアップする。岩村委員が言われたのは、やはり、法律的にきれいな方がいいよねと。正確には何と言うか分かりませんが、そういうことですよね。それぞれ理由は違うのですが、共通して少し明確化するために変えたほうがいいということかなと思います。
 今日はまだ第2の論点のこともありますので、この辺で次の第2に移りたいと思います。
○高橋委員
 高橋です。第1の論点がまだ残っていますので。
○今野分科会長
 残っていますか。
○高橋委員
 就労の困難さの判断については、実質上、企業に全て委ねられてしまっているところが問題ではないかと思っています。少なくとも医学上のサポートが絶対必要だと思います。やはり企業の現場を知っているお医者様をどうやって育成していくのかということが重要です。それが就労の困難さの判断の精度を高めていくことにもつながっていくのではないかと思っておりまして、この辺りが非常にまだまだ足りていないと思いますので、これに向けての施策の充実が求められると私は思っているのです。
○今野分科会長
 今の点について何かありますか。そういうことですかねということで、一言いいですか。
○障害者雇用対策課長
 障害者雇用対策課長です。全くおっしゃるとおりだと思います。それをどういう形で施策と絡めていくかということはありますが、そういった企業の現場を知っている医療関係者が増えることは、特に精神の問題が大きな問題になってきている中では重要だと思います。
○川崎委員
 家族会の川崎です。就労の困難さをどのように判断するかというのは、私は大変に難しい問題だと思っております。仕事をするだけの能力を問われるのではなく、その人全体を見なくてはいけない。特に精神の人は人間関係がとても苦手であり、仕事はできるが、職場の人間関係でなかなか仕事が続けられなくて辞めてしまったという人もかなり多くおります。就労の困難さは医学的なことだけでもまた難しいし、はっきり言えば個別性があるわけで、そういうところをしっかりと支援してくれるような支援者、それは企業だけに負わせるのではなく、その人に対する就労を支援する仕組み作りが、医学的なものだけでなく生活全体を見るような、それでナカポツセンターがあると思いますが、そこを充実させることも一つだと思います。端的に一線を画して、これが就労の困難さということはなかなか言えないのではないかということです。
○今野分科会長
 多分、高橋委員もそういうふうに思っていらっしゃると思います。高橋委員はその中の医学部分を強調されておっしゃったと思います。もう一つ、人間関係が難しいというのは就労の困難さだと私は思います。ほかにございますか。
○松爲委員
 松爲でございます。今の話というのは、8月までやった第三研究会に被る話で、人材の育成に非常に密接に絡んできます。ですから、私としては改めて、前回の委員会でも話しましたが、特に就労支援に関わる人材をどのように育成していくか。それをもう少し本格的にきちんと制度化していくことが必要だと思っております。
 一つは、例えば、1号、2号のジョブコーチにしても、まず絶対数が足りません。企業が要求する話にとてもではないが満たさない話です。あるいは、企業の中には相談員制度がありますが、2号はまだ足りませんが、相談員に関しても本格的にきちんとした研修体制を作ることが必要だと思っております。
 更に障害者職業カウンセラーにつきましても、今、高齢・障害・求職者雇用支援機構の中で、労働大臣指定研修制度ですから、いちばん緻密な人材育成をしていると思います。ですから、労働大臣指定研修の在り方そのものを高齢・障害・求職者雇用支援機構と別枠で、例えばアメリカのCRC的な形まで広げていくような、多面的な人材育成システムを是非とも実現していくことが必要だと思っております。基本的にはそういったことを踏まえて、企業をどう支えていくかということがすごく大事だと思っております。企業を支える機関というのは、単なる制度を作るのではなくて、有能な人材をたくさん育成していくことだと思っていますので、その点は是非とも検討していただけるといいと思います。
○今野分科会長
 就労支援については、別途、ここで議論する場を設けます。次のテーマに移ってよろしいですか。「障害者雇用制度における障害者の範囲等」についてです。この点については、精神の手帳の交付の仕方はどうなっているのかという。
○中村委員
 中村です。更新とか診断とか、そのプロセスがどのようになっているか。
○障害者雇用対策課課長補佐
 障害者雇用対策課課長補佐の安達でございます。まず、手続を申し上げます。居住地の市町村を経由して、県知事に申請することによって交付されることになっております。精神の手帳制度につきましては、2年間の有効期間が設けられており、更新に当たっては改めて医師の意見書をいただくことになっているとともに、精神障害が治癒した場合には、手帳の返還という制度になっております。取りあえずお答えできる範囲は、今のところこれまでです。
○中村委員
 中村です。交付のことは分かったのですが、更新されるときには、同じような診断をされるか教えてください。
○障害者雇用対策課課長補佐
 障害者雇用対策課課長補佐です。おっしゃるとおりでございまして、更新に当たっては改めて医師の意見書を要することになっております。
○中村委員
 ありがとうございました。
○川崎委員
 川崎です。研究会では、精神障害者の雇用率制度の義務化の方向性が出たところですが、まだまだそこで少し検討の余地があるということで、やはり、企業総体としての納得感といった観点から、実施時期については慎重に結論を出すということが研究会の報告です。
 私がここで申し上げたいのは、先ほど事務局から報告がありましたように、今、精神障害者の雇用が大変に進んでいるといいますか、就職している人が多いということです。それは一つは精神障害者に対する雇用の支援制度がかなりたくさん出来てきているということです。精神障害者の雇用を取り巻くいろいろな制度が参考資料5-1にありますように、このような支援を使いながら、企業側で雇用の促進があったのかなと思います。もう一つは、精神障害者の症状が、昔のように何をするか分からないとか、怖いとかいうような感じではなくなっており、今は薬の進展によりまして、地域生活をする人がかなり増えているということです。精神障害者は今323万人と言われております。実際、ここの雇用の1万9,000人からいきますと、本当にまだまだ雇用ができるような体制になっておりませんので、やはり、私ども当事者家族としては、しっかりと雇用の義務化に向けたいと思っております。それはこれからの精神障害者の生きがいになると思います。
 やはり、企業側の不安を取るための支援体制です。困ったときに企業を支援する。はっきり言いまして、精神障害者は怖い、何をするか分からないとか、そんな、宇宙人ではないのです。しっかりと精神の人もコミュニケーションを取れます。コミュニケーションを取るための支援体制や、企業側の方でこういうことがあったら企業でも精神を雇えると。ということは、今まで、この例からも分かるように事例が少ないということで、企業側もどうしたらいいか分からないというのが実情だと思います。しっかりとその辺の支援体制を作る。実施期限を慎重にということですが、やはり、ある程度期限を決めてほしい。野田総理の「いつか」ではないですが、これが10年先になっては話にならないわけです。
 まず提案したいのは、こういうことがあれば企業としても精神を雇うというようなニーズ調査をされてから、そのニーズに基づいた支援体制の仕組みを作り、これは見直しが3年後でしょうか、次の見直しの時期にはしっかりと義務化になる方向ができたらというのが、私ども精神障害者の当事者家族としての思いです。よろしくお願いします。
○今野分科会長
 ありがとうございました。ほかにいかがですか。
○栗原委員
 栗原です。今の川崎委員のお話に続いて、今は精神障害を持たれている方の雇用が非常に進んできていると。これは数字で現れています。ただし、中小のように雇用が少ない所は、まだまだ精神に対する認識度は少ないと思います。大会社は別ですが、中小は非常にまだ認識的なものが低い。また、身体や知的のような歴史がないですから、まだまだとっかかりが非常に難しい部分は多々あります。
 参考資料5-1に、マル4特定求職者雇用開発助成金、マル5トライアル雇用の2つの項目があるのですが、これは非常に有効です。雇用をしてみたい又はしてもいいと言うのですが、やはり心配事がある。そういうのを払拭してもらうためにこのトライアルは非常に効果があると思っています。横から今、お話が出ていますが、これをなくそうというお話もちらっと伺っていますが、そういうことは多分ないと思います。なくされると雇用が進んでいかないと思っていますので、ひとつよろしくお願いします。
○今野分科会長
 ほかにいかがでしょうか。
○萩原委員
 萩原です。質問と意見があります。先に質問からさせていただきます。仮に精神障害者の方々を雇用義務の対象とした場合の、実際の効果としては、法定雇用率が上がること以外にどういうものがあるのかを先に確認したいと思います。
○今野分科会長
 法定雇用率が上がる以外にですか。何かありますか。
○障害者雇用対策課長
 障害者雇用対策課長です。はっきりしているのはそこですが、あとは精神障害者の雇用を義務化すること自体のアナウンスメント効果は恐らくあるかとは思います。
○今野分科会長
 御質問の意図は、法定雇用率が上がれば雇用が増えるだろうと、普通には考えるわけですが、それ以外の効果として何か想定されていることがあったら。これだぞというようなものを。
○萩原委員
 萩原です。正直言うと、それ以外の効果はないだろうと思って質問しました。
○今野分科会長
 もう一つ、御質問と御意見があるとおっしゃっていたので。
○萩原委員
 意見のほうは、ただ今の質問に対するインパクトもあったようなので、それが終わってから改めていたします。
○今野分科会長
 そうですか。それでは松爲さんからどうぞ。
○松爲委員
 松爲です。私事ながら昭和48年から障害者雇用しかしていませんので、いろいろな障害の人たちを全部見てきています。その中で、精神の人たちは知的障害の人たちに比べて、統計上だけでも6倍いらっしゃいます。6倍の人がいるにもかかわらず、今の時点で精神の人たちが義務化されていないのは、社会構成から考えても非常に奇異だと思うのです。それが第1点目です。
 第2点目は今の話です。これは非常に心外だと思います。特に知的障害の人たちに比べて、労働能力は非常に高いと思っています。中途障害の人たちを含めて、実際には症状のないときには、極めて知的障害の人たちより高い能力を発揮するはずです。ただ大事なことは、精神障害の人たちは非常にストレス脆弱性モデルといいますか、不安定性があるということです。安定しない。逆に言いますと、安定した状況と、いわゆる症状の予知的なものを自己コントロールできれば、私は知的障害の人たちよりは十分高い労働力になるものと確信しております。それが私の意見です。
○竹下委員
 竹下です。まず、精神障害者を加えるべきでしょうし、私は手帳の所持のことについては特に反対するわけではないのですが、一つ気になるのは、精神障害者の場合の手帳所持者は、正確には覚えてきませんでしたが、5分の1ぐらいで20%前後ではないかと思います。それに対して、現実にメンタルヘルスというか、職場における近年の適応障害や鬱を含めた精神障害、又は精神障害疾患の人たちの支援というものが必要になっていることは、多分共通認識だろうと思います。
 そういうときに雇用率に加えるということと、加えずに支援を行うこととのバランスというのか、両立はどうするのかというのを議論してもらえればと思います。まず雇用率に入れることは、雇用率が上がることだけというよりも、もっと大事なのは、多分、助成金などの制度に乗ってくれるところが非常に大きいかと思います。それはそれとして是非強調すべきだろうと思います。
 逆に今度は、手帳を所持していない精神障害者に対して、職場では就労時間の短縮であったり、あるいは休憩時間の取り方であったり、職種の変更であったり、様々な配慮を事業所はされると思うのです。そういう形で配慮している場合にカウントができないことのジレンマみたいなものをどう解決するのか。逆に言えば、配慮している場合に実雇用者数に入れて、そこで何とか対応できることは可能なのかどうかというものについて、私は不勉強で分からないのですが、もし検討した結果があれば教えていただきたい。
○障害者雇用対策課長
 障害者雇用対策課長です。今いろいろな論点が入っていたので、それに全て答えられるかどうか分かりませんが、今の基本的な障害者雇用対策の体系というのは、一つには、障害者雇用率制度というのがありますが、それ以外に各種の行政サービスや助成金制度といったものがある。
 これに加えて、今回の分科会のシリーズの前半で御議論をいただいた差別禁止及び合理的配慮の問題が、もし合意が得られれば、新しい大きな柱として入ってくる。その障害者の状況を見てどれを充てるのかということで、いろいろな組合せが生じてくることになると思います。特に範囲の議論をした第一研究会では、合理的配慮の提供が障害者雇用対策の制度の中に組み込まれたときには、それとの雇用率制度の関係、雇用率制度の対象になっていない人も当然合理的配慮の提供の対象にはなります。どういった組合せにしていくのかというのは、結構重要な論点ということは言われていましたが、杓子定規にこういうカテゴリーの人は、こういう支援の組合せということはなかなか言いづらいところはありますが、いろいろな組合せ方のバリエーションが広がることにはなると思います。
○北原委員
 育成会の北原です。精神障害者の雇用の義務化について、私どもとしては、多分、これは随分早くから議論が出て、議論もかなり熟していますので、やはり義務化はすべきという考え方を持っています。
 実施の時期については、特に企業側の理解、納得感という表現もありましたが、そういうものも必要だと思いますので、十分に検討すべきかと思っています。手帳の所持については、やはり一定の基準といいますか、公正さを担保する意味からは、やはり手帳保持者というところで線を引くべきかという考えを持っています。
○川崎委員
 川崎です。先ほどの精神を義務化することによる効果で、雇用率が上がるのは、もう明らかなことなのですが、私ども家族・当事者の立場で考えますと、所得保障の一環となることですし、生きがいのある生活ができるということで、入院が減ると思っているのです。今までどうしても何もできなくて入退院を繰り返している人が、全てとは言いませんが、方向性としてはそういう明るい将来を見据えるということで、今問題になっております精神科の入院のベッドが減っていくし、社会的入院も大きな目で見れば減っていくのではないかという感じがしております。
○松爲委員
 松爲です。川崎委員のお話にちょっと補充しますと、私は長い間やっていてすごく分かるのは、知的障害、身体障害の人たちと精神障害の人たちに対する雇用、働くことの意味はかなり違うということです。特に精神障害の人たちはストレス脆弱性モデルといいまして、ストレス状態に非常に弱い。逆に言うと、働くことを通して生活リズムを作っていくことによって、症状の改善が見られるのは結構あります。ですから、精神領域で言いますと、精神科のお医者さんなどでやっている医療の枠の中でいろいろな就労支援のサポートは結構あるのです。身体とか知的障害者の場合には、ちょっと出てこないような、そういったことが精神の場合には非常に多く出てきています。
 そういった意味では、川崎委員がおっしゃったように、実は予防的な格好。生活リズムをつくることによって、退院を進めていく。それは国全体の中からしますと、医療費抑制、特に精神障害者に関しての抑制に非常につながると。大きなマクロ的な視点から見ますと、そういった意味では財政効果が非常に高まってくるということが言えると思います。川崎委員の補充でお話させていただきました。
○萩原委員
 萩原です。発言が誤解を招いているようなので、補足させていただきます。付随的効果を否定する気は全くないのですが、法令上で雇用義務の対象としたときに、法令上の枠組みで何が変わるのですかという趣旨の質問です。特におっしゃられるような精神障害者の方はもっと雇用のチャンスが増えるだろう、また、そういった医療費が減るだろうということは、当然想定されるという気はしております。
 先ほど申し上げた意見です。障害の類型の中で精神障害者だけを特に別にするというのは、ある意味公平でないのではないかというのは、一般論としておっしゃるとおりだと思っております。しかしながら、企業は税金でまかなっているわけではありませんので、来年度から法定雇用率が2.0%に上がり、さらには、今回の前段の議論にありました障害者権利条約の中での合理的配慮の対応等を求められることになります。もう一つ、これは「お前のところの労務管理が悪いんだ」と言われるかもしれませんが、先ほど竹下委員からもありましたように、社内でのメンタルヘルス不調者は結構増えているのです。そういった中では、精神障害者について、雇用義務化を仮に図るとしても、ある程度の猶予期間をいただかないと、正直言って企業としての存立は相当に厳しくなるところも増えてくるのではないかと思っております。
○今野分科会長
 先ほど川崎委員は、具体的に3年とか言っていました。余計なことを言いました。
○塩野委員
 塩野です。精神障害者の義務化の件について、いろいろ効果なども教えていただき理解するのですが、一方、企業はといいますと、例えば来年の4月に改正された労働契約法や、高年齢者雇用安定法などが施行されるのに伴って、今後、多様な労働者の雇用の維持ということを、今まで以上に努力していかなければいけないという状況にあると思っています。同じタイミングで、今回、障害者雇用率が上がるということを、企業は非常に重く受け止めております。今後、雇用率が上がったことによって、一生懸命障害者を雇用する努力はしていくのですが、各企業が努力すればするほど、なかなか雇用もできない状況になっていくかと思っています。そういう中で、精神障害者の雇用を義務化するというのは、将来的には雇用率が上がっていくことを考えますと、義務化の時期については慎重に御検討いただきたいと思っております。
○斗内委員
 斗内です。精神障害者の雇用義務化の件ですが、基本的に労働側としても、今までのデータから見ても、義務化の範囲に含めていくべきだろうと思っております。そういう意味で申し上げますと、労働側としては、実施時期については、いたずらに先延ばしをするべきではないという意見を持っております。ただ、先ほど御意見がありましたが、私どもの基本スタンスをまずお伝えしておきますと、企業の規模によって差を設けるというのはいかがなものかと思います。公平性の観点からして問題ですし、また障害者の種別の中で、殊更精神障害者だけを取り上げて実施時期をずらすというのは、合理性の観点からも少し合わないのではないかと思っております。
○栗原委員
 栗原です。今でも精神障害を持たれている方を雇用しているわけですね。増えているわけです。ですから、雇用しないというのではない。雇用を進めていくというのは当然だと思うのです。ただ、こういうのは性急にやるべきではないという考えを持っています。現在、雇用義務の1.8%に達していない企業がまだまだ半分以上あるわけです。それで、ハードルが上がってしまうと、またまた追い付くのが大変だと。大企業は特に何とかなったとしても、それ以下の中小に対しては非常に厳しいハードルがまたまた目の前に立ちはだかるわけです。そういうのからいけば、ここですぐにという性急にではなくて、緩やかにやっていっていただきたい。雇用は既に進んでいるわけですから、ここでの義務化は少し延ばしたからといって、先ほど3年と言われましたが、私は少なくとも5年は要るのではないかと。そうしないと、やはり追い付いてこないのではないかという考えを持っています。
○森氏(阿部委員代理)
 森です。精神障害者の問題については、歴史的に見て、まず医療の形で全部整理したのです。福祉だとか職業だとかいうことは、医療という世界に全然手が出なかったのです。それがいちばん初めに出たのが平成5年だと思うのです。たしか障害者基本法の改正のときに入った。しかし、それだけだったのです。今回はっきりと入ったのは、良い悪いは別ですが、平成18年から障害者自立支援法ができました。これが一つになったのです。今度は間違いなく差別禁止法でも入ってくるでしょう。
 したがって、私は実際的に組み込まないといけないと思っております。ただし、実施時期の問題は出てくると思うのです。これについては、もし慎重になるとすれば、その法律か何かのところで実施時期を明記するとか何かという方法はあるのではないかと思いますね。
○高橋委員
 高橋です。今日の資料の5ページに研究会報告が引用されています。雇用義務化についての最初の○で、「義務化に向けた条件整備は着実に進展してきたと考えられることから、精神障害者を雇用義務の対象とすることが適当である」という結論になっていますが、ここがポイントだと思うのです。義務化に向けた条件整備が着実に進展してきたと考えられるかどうかということだと思うのです。進展してきたことは事実かもしれません。ただ、雇用の義務化は重いですから、それが十分に進展してきているかどうかを、この審議会の場で検証・検討することがとても大切な視点ではないかと思いまして、べき論ありきではなく、まず実際に本当に条件整備がどうなっているのか、もうちょっと検証しなければならないと私は思っています。
 関連の資料では、例えば資料5-1を見せていただいていますが、全体の数字の傾向は分かります。しかしながら、これは日本全体の数字であって、地域的にどうなのかといった視点の数字は一切開示されていません。また、先ほど松爲先生もおっしゃっていましたが、精神障害者は不安定性の問題がありますから、定着の問題もあります。そうすると、離職の状況がどうなのか。就職と雇用だけではなくて、離職状況はどうなのかという数字も当然必要だと思います。
 また、参考資料5-2に、精神障害者を対象とした支援施策を資料として出していただいています。これは単にこういうメニューがありますよというだけの資料にしかすぎないわけです。メニューはあったとしても、そのメニューがどのように活用されているのかといったことの検証も必要でしょう。また、とりわけ重要なのが、恐らくマル5の総合的な雇用支援だと思います。単に全国47センターで実施していますということだけではなくて、実際に精神科医がそこのセンターにどの程度配置されているのかとか、そういった実態をもうちょっと明らかにする必要があります。また、マル2のトータルサポーターでハローワークについても触れていますが、全国のハローワークにおいて、トータルサポーターがどの程度カバーされているのかとか、そういった全体的な支援の状況をもっともっと細かく分科会の資料としてお出しいただいて、それを踏まえて議論をするということを是非お願いしたいと思います。
○障害者雇用対策課長
 障害者雇用対策課長です。今おっしゃった話は、大方は資料を出せますので、次回、今回の論点に加えて支援策を御議論いただこうと思っております。その際に、我々が予定しているのにはもうちょっと追加的に資料を出さなければいけないかと、今の御発言を聞いて思いましたので、次回出させていただきます。
○高橋委員
 高橋です。私が今申し上げたことだけに対する資料を出すのではなく、それ以外のことも含めて、しっかりした資料を出していただきたいということが私の願いです。
○杉山委員
 杉山です。実施時期の関係ですが、我々も常識的な準備期間を置いた中で、なるべく速やかに義務化が必要であると考えます。そういった意味で、先ほど斗内委員から「いたずらに延ばすことなく」という表現を使わせていただいたのですが、高橋委員からありましたように、詳細に何が変わったか、どういう状況になったかというのを見るのは必要だと思います。そこは賛同します。
 その上で、参考になるかどうか分かりませんが、知的障害者の雇用を義務化したときには、1988年にカウント対象となり、その10年後に義務化をしたという例があるわけです。このとき、カウント開始から義務化に至るまでの10年間に何が起きたかというのは、そのままダイレクトに使えないにしても、一つの参考にはなるかもしれません。そういった意味では、次回資料を出していただくときに、その辺も少し示していただけたらよろしいのではないかと思います。
 もう1点、先ほど竹下委員からお話があった中で少し気になった点があって、もし事務局としてデータがあれば教えていただきたいと思います。それは、精神障害者の手帳所持者が大体5分の1であるという数字が出ているということは、実際に手帳を所持していない人の数、規模感がもし分かるようであれば共有したいと思っていまして、そこはお願いしたいところです。
 もう1点、精神障害者の話で、先ほど竹下委員の発言の中にもありましたが、今回義務化に当たって非常に心配するのは、手帳を取れという強制が行われないだろうかということです。もしくは強要がされないように、しっかりとした、そういったことをさせない規定を置くべきではないかと思います。例えば、これは想像だけの話ですが、実雇用率にカウントされ、業務への支障も小さいので、軽いメンタルヘルス疾患であるにもかかわらず手帳を取りなさいというようなことを防ぐ規定はしっかり置いておいたほうがいいのではないかと思います。
○今野分科会長
 手帳保持者比率データですね。
○障害者雇用対策課課長補佐
 障害者雇用対策課課長補佐の安達です。先ほどのデータの件です。先ほど竹下委員がおっしゃったのは、調査による患者数323万人に対して手帳所持者が約60万人ということで、少ないのではないかという御指摘だと思います。実は323万人の中には、手帳の要件である「日常生活、社会生活に制限を有するとは言えない」という者も含まれているということなので、これだけをもって単純に取得率がどうこうというのは難しい議論であるというのが一方ではある、ということだけ説明させていただければと思います。
 もう1つ、先ほど杉山局長のお話にもあった、本人の意に反して手帳を取らせる云々という御指摘について、平成18年4月から精神障害者の実雇用率の算定を認めるに当たって、厚生労働省では在職している精神障害者の確認をする際に、障害者本人の意に反した制度の適用が行われないようにガイドラインを定めて、事業主の指導という形で取り組んでいるということです。
○今野分科会長
 だいぶ議論していただきました。もう一つ論点が残っていますので移らせていただきたいのです。いずれにしても、皆さんの議論をお聞きしていると、原則的には精神の雇用義務化はいい。対象者を限定するときには、手帳主義でいったほうがいいだろう。ただし、実施の時期については、会社の状況などを考えて配慮すべきである。ただ、配慮の仕方は、皆さんの意見でだいぶ幅がある。その配慮をするときに、企業においてどの程度受入条件が整備されているのかということを検討する必要があるだろうということです。ですから、かなりの部分はここで合意ができて、最後の何割か分かりませんが、配慮を決めるときの条件の確認というところで、少し議論の幅があるという形かと思いますが。
○高橋委員
 高橋です。私はその言葉には大変異論があります。原則としていいとは、少なくとも私はそのようには思っておりません。
○今野分科会長
 でも、原則いいという人が多かったです。だから、私はそうやってまとめたのですが。
○高橋委員
 高橋です。いや、私自身は、そんなふうには使用者側の委員の皆さんはおっしゃっていないと思っていますし、原則として義務化するかどうかは、先ほど実態をよく踏まえて議論してくださいと私はお願いしましたけれども。
○今野分科会長
 高橋さんの意見も、結局精神の雇用義務化については原則としてはいいけれども、条件が整っているかどうかが非常に問題なのだというように私は理解したので。
○高橋委員
 それでは、私の伝え方が悪かった、主張の仕方が悪かったということです。
○今野分科会長
 そうですか。分かりました。
○中村委員
 中村です。意見なのですが、障害者雇用の地域による格差ということを一つ申し上げたいのです。先日、日本商工会議所で委員会がありまして、地方の企業からこんな話がありました。障害者を一生懸命採用しようとしている会社なのですが、その会社が障害者に内定を出したところ、結果的には地元の市役所に就職が決まり、内定を辞退されました。つまり、障害者が地元の市役所や大企業を選ぶ傾向があり、中小企業では採用がなかなか難しいという声がありました。現実問題として、地域によって障害者の人数であるとか、支援機関の数などによって、障害者を採用しにくい地域があるということも考えて、これからいろいろな配慮をしてもらいたいと思います。このような問題が解決しなければ、精神障害者の雇用義務化についても、大きな課題が残るということだと思いますので、その辺のことも御配慮をお願いしたいと思います。
○今野分科会長
 私は、この第2の論点の中で、(3)のその他の障害についてについてをすっかり忘れておりまして、失礼いたしました。資料3の8ページですが、その他の障害者についても、皆さんの御意見を伺っておく必要がありますので、お願いいたします。
 よろしいですか。よろしいということは、大体この研究会報告書の方向かと思いますけれども。また思い付いたら、次回でも結構ですので言っていただくということで、今日は9ページの第3の雇用率制度に関するその他の論点について、御意見をいただければと思います。
○竹下委員
 竹下です。ダブルカウントの制度は、私は個人的には反対なのですが、それはさておいたとしても、現在のダブルカウントの対象障害者の問題に少し工夫が要るのではないかと思います。といいますのは、現在、身体障害者でいうと1、2級がダブルカウントの対象になっているかと思うのですが、これはもともと身体障害者福祉法が本来の福祉サービスの提供の程度・内容との関係で位置付けたものであって、就労の困難性、あるいは合理的配慮等の事業主、企業の負担とは結び付いていないと思うのです。
 現に、先ほど自立支援法とあったけれども、障害者自立支援法においても、1、2級は採用されていなくて、すなわち介護保険でいう要介護度と同じです。それと同じように1、2級、例えば私は全盲ですが、全盲で身体障害者手帳1級。だけれども、自立支援法の要介護でいったら、要支援か自立になってしまうか、ほかの事情があったとしても要介護1なのです。ですから、自立支援法の範疇ではまず間違いなく重度に入らないのです。あくまでも法律のダブルカウントの制度趣旨から見て、就労の困難性、あるいは合理的配慮を含めた支援の重要性とか負担の大きさというところから、ダブルカウントが考慮されるべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○今野分科会長
 この点について、いかがですか。
○松爲委員
 松爲です。竹下委員のおっしゃることはもっともな話で、昔からそうなのですね。障害者の手帳等級と実際の労働性の問題は、非常に乖離しています。例えば脳性麻痺の人たちにしても、重度1、2級だからといって職業的な問題は全然違いますし、視覚障害もそうです。問題なのは、それに代わるものとして何を作っていくかなのです。手帳制度を全体的に廃止するにしても、手帳制度に代わって社会的な承認を見て、皆さんが納得する合理性の得られるようなものをどうやって作っていくかが、多分すごく大きな問題だと思うのです。
 それは先ほど川崎委員がおっしゃいました職業的な能力、重度・軽度をどういう格好で判定するか。日本の場合ですと、いわゆる就職といっても、ユニオンに入っていくのではなくて、就社的な機能がありますね。そうすると、先ほど竹下委員がおっしゃったように、仕事そのものではなくて、仕事を構成しているソーシャルのネットワークの中、企業なら企業といった社会的な枠の中に入っていくという、そういったものをみんなインデックスとして評価の根拠に入れなければならないといった難しさがあります。そういった意味で、手帳制度の問題点はあるにしても、それに代わるものをどうやって作っていくかという、そこがすごく大きな問題だということを指摘しておきたいと思います。
○竹下委員
 竹下です。ごもっともだと思うのです。多分二つあって、一つはこれは評価は別にしても、現在の障害者自立支援法において要介護という援助の程度、あるいは支給料を判断するための枠組みとして107項目でしたか、そういう調査項目を設けている。あるいは、別の関係で言うと、例えば視覚障害者のサービス的なところでは、別途にアセスメントといいますか、指標を作ったりしている。そういう意味で言うと、私は不勉強で、労働の分野でどういう形のそういうアセスメントがあり得るのか分かりませんが、そういうシートが開発されることが前提にならないと、この部分は現在のそうした矛盾を克服する次の段階に行かないのかとは、私自身も思います。
○栗原委員
 栗原です。松爲委員からのお話もありましたように、うちで雇用している障害を持たれた方は、知的だけで35名の人がいます。その中で、もちろん重度の子も多々いるわけです。重度の場合でも仕事をしてみると、確かに軽度の人にも負けないような働きをする人もいます。しかしながら、そうでない人もいるわけです。そういう重度の人でも、2年、3年やっていくうちに、だんだんだんだん力を発揮してくると。ただ、軽度の場合ですと、それが半年で力を発揮する場合もあるし、長い子でも1年。
 そのような状況を見ますと、重度の人は入口に入りづらい部分があるのです。それをダブルカウントということで後押ししてくれている部分は、私は多々あると思います。ですから、ダブルカウントというのは、今回精神の場合はどうかちょっと分かりませんが、今の状況では必要だと私は認識しています。
○川崎委員
 川崎です。9ページの○の四つ目で、精神障害者の短時間労働をダブルカウントとするかというところなのですが、ダブルカウントは重度の障害者ということで、大体精神の人でこのような仕事ができる人は、ほかの障害者の手帳制度と精神は違いますが、精神は、受けられる人は障害手帳が2なのです。1がすごく重症で、2はほとんど地域生活ができるというような観点ですので、これをダブルカウントとするのは、私としてはちょっと違うかなという感じがしております。
○北原委員
 北原です。知的障害に関して言えば、重度知的障害という場合に、例えば児童相談所、あるいは更生相談所、あるいは職業センターとか判定機関、こういったところが重度ですよと認めた人が重度ですというように、法律には明記されているわけです。そのときに、判定機関が、いま自立支援法では障害福祉サービスの程度区分がありますが、これを基にして重度を判定しているのかどうかですね。その細かいところまで分かりませんが、多分違うのではないかという気がしました。実際に重度であるという判定がどのようになされているのか、ちょっと聞きたいと思います。それから、ダブルカウント制度は一定の役割を果たしておりまして、これは継続すべき制度かと思っております。
○今野分科会長
 最初の御質問についてはどうですか。重度かどうか、どうやって判定していますかという。
○障害者雇用対策課課長補佐
 障害者雇用対策課課長補佐の安達です。基本的には先ほどから話に出ているように、手帳等を基に重度の区分に該当する方は重度扱いということで運用されていると承知しております。
○今野分科会長
 松爲委員がおっしゃったことと関連するのですが、多分職業の場合は、例えば機能的にこういう障害があるということで判定しても、それが仕事のうえでどの程度の障害になるかは仕事によって全然違いますよね。だから、そこがすごく難しいですね。でも、重度かどうか判定するには、どこかでバサッと切らなければいけないということだと思うのです。
 ほかに特例子会社も派遣もテーマにありますので、そちらのほうも御意見をいただきたいです。
○冨高委員
 冨高です。特例子会社制度について、意見を言わせていただきたいと思います。前回まで議論を行っておりました国連の障害者権利条約で、障害者を区別することを禁止しておりますので、原則的には障害の有無によって職場を分離することは好ましいとは言えないと思います。ただ、実際には障害者の雇用が進んでいないという中で、我々の加盟組合の企業でも特例子会社を持っているところがありますが、この中でやりがい、働きがいを持って活躍されている障害者の方たちが非常に多いですし、特例子会社を設置している会社によっては、障害者の労働環境をきちんと考慮して、障害者を積極的に雇用していくという観点から設置されているところもあるかと思います。現に私の知っている特例子会社で、ITネットワークなどを使って、非常に生き生きと働かれている障害者等もいらっしゃいます。こういったところをここに記載していただいておりますが、我々は今後、障害者の雇用を促進していかなければいけないので、むしろノウハウを蓄積されている特例子会社は今後も継続させていく必要があると思います。当面の間という形にはなるかと思いますが、ポジティブアクションというのでしょうか、積極的差別是正の一つということで、制度自体は当面継続させていくことが適当ではないかと考えております。
○松爲委員
 松爲です。特例子会社については賛成なのです。ただ、企業の方々に一つお願いしておきたいのは、障害を持った本人の企業内のキャリアアップとかキャリア形成を、もう少し丁寧に考えてもらえると有り難いと思うのです。障害を持った人たちが特例子会社に入りました。そこで一生涯過ごさせるというのは、どう考えたっておかしいと思うのです。本来、特例子会社でちゃんとキャリアアップして、場合によっては本社へ行ける。行かなくても、人事異動体制とは言わないけれども、企業体系を含めて、特例子会社と本社をつなげるような形のシステムを是非とも作っておかないと、特例子会社に入った障害を持った人たちは先が見えないのですよ。先が見えないままに、それでいて一方では職場定着が悪い悪いと言いますが、職場定着の悪さは本人が先を見えないような形を作っているからだという感じを、私などはむしろ思うのです。特例子会社の持つ意味は非常に重要なので、それを認めますが、一方ではそれが本社機能との間で、いわゆる人事の流れのシステム、給与体系も含めて、そうしたものを是非とも作ってもらいたいというのが私の要望です。
○竹下委員
 竹下です。私自身は特例子会社制度に疑問を持っているのですが、それはこの場では意見としては置くとしても、特例子会社制度で気を付けなければならないのは、三つあると思っています。松爲委員におっしゃっていただいたように、キャリアアップに結び付けていき、その結果、次の職場、例えば本社への就労という形に結び付けるとか、そうした流れを作ることが目的として必要ではないかというのが1点です。
 もう一つは、先ほどどなたか委員がおっしゃったように、差別をなくすために特例子会社をということは、趣旨としては理解したのです。ところが、この研究会報告書を読んでいても出てくるように、特例子会社を作ることによって、別個に労働条件を設定したり、管理することができると書かれているのですね。それはそれ自身が結局は差別を温存ないしは作り出すためのツールにされかねないということは、気を付けるべきだろうと思うのです。それは2点目として大事だろうと思っています。
 3点目には、閉鎖性といいますか、もともと、例えばADAができたときもそうですし、権利条約でも議論されたわけですが、イコール・バット・セパレートでは駄目だと言われてきたわけなのです。その部分で、閉鎖的な環境を作り出すことが、特例子会社によって喪失されるということだけは避けるべきだろうと思っています。
○今野分科会長
 何か松爲さんが言われたことも、竹下さんが言われたことも、特例子会社はいいけれども、少しオープンにせいよと。オープンには、キャリアでオープンとか、いろいろな意味のオープンがあると思いますが、そういうことだと思います。
○松爲委員
 松爲です。今の竹下さんに補足といいますか、私の個人的な意見を言いますと、私自身は特例子会社は賛成なのです。特例子会社を含めて、働く職場における準備、訓練等々をやった上で、次の流れを作っていく。いきなり例えば本社機能に入って、大企業の1万人、2万人の所で、障害を持った人たち100人、200人に個別的な支援とか、管理体制というのは難しいと思うのです。そういう点では、小規模の特例子会社の中で、きめ細かく個人個人の様子をきちんと見られるような訓練、能力開発、そのシステムが必要だと思っています。そういった意味では、大企業にとっては特例子会社は不可欠の要件。ただし、先ほど言いましたように、そこだけでとどめておくというのは、これはある意味では問題点があるというのが私の意見です。
○北原委員
 北原です。私は雇用事業所をやっていまして、その経験から、今おっしゃったようにキャリアアップ、あるいはそこで培ったノウハウを広げていくのは大賛成です。もう一つ、働いている本人たちからすると、社会との連帯感、あるいは社会貢献かもしれませんが、そういう社会に貢献していくという場を用意する。そのことで、彼らが連帯感を感じて、生きる力をつけてくるのです。だから、特例子会社については当事者の社会貢献という場をどう作っていくかということも、考えてもらいたいと思います。
○栗原委員
 栗原です。あまりそういう難しい話はしたくないのですが、特例子会社が雇用率を上げてきているという、これは明確な数字が出ているわけですね。それで、私どもも加盟しています重多事業所の協会の中でも、特例子会社がいちばん先進的なのです。何が先進的かといいますと、今まで身体とか知的は多数の企業が雇用していたわけです。そこで、今度は精神が出てきた。精神に対して、真っ先に取り組んでいったのは特例子会社なのです。特例子会社が今、その実績をどんどん上げているのです。ですから、そういうパイオニア的な役目をしているということで、そういう面から言っても、特例子会社は存続が不可欠だと私は思います。
○今野分科会長
 そろそろ時間がオーバーですので、特例子会社については原則OKだけれども、改善すべき点があるぞということで、いろいろな意見をいただいたということだと思います。今日の議論はこの辺にさせていただいて、最後に「その他」、事務局からお願いします。
○障害者雇用対策課課長補佐
 事務局でございます。次回ですが、12月3日16時から18時、開催案内は既に前回配布しているとおりです。議題ですが、「障害者雇用促進制度における障害者の範囲等について」の2回目。併せて、「地域の就労支援の在り方」について御議論いただく予定としております。
○障害者雇用対策課長
 障害者雇用対策課長の山田です。今回と次回の日程が非常に接近している関係がありまして、今日いただいた御意見に対応した資料は、可能な限り準備をしようと思っているのですが、そういう意味で資料の送付が遅れる可能性があります。その点は御容赦ください。可能な限り、議論を深める方向にしたいということで、我々も突貫で作業はいたしますので、その点御容赦ください。
○今野分科会長
 議事録の署名について、労働者代表は杉山委員、使用者代表は栗原委員、障害者代表は竹下委員でお願いいたします。時間をオーバーして失礼いたしました。終わります。ありがとうございました。


(了)

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