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2012年11月29日 専門医の在り方に関する検討会(第13回)議事録
○日時
平成24年11月29日(木) 10:00~12:00
○場所
厚生労働省専用第22会議室(18階)
東京都千代田区霞が関1-2-2中央合同庁舎第5号館
○議事
専門医の在り方に関する検討会(第13回)
日時 平成24年11月29日(火)
10:00~
場所 厚生労働省専用第22会議室(18階)
○医師臨床研修推進室長 先生方皆さんお揃いになりましたので、ただいまから「専門医の在り方に関する検討会」を開催いたします。本日は、先生方には御多忙のところ御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。本日は、高杉委員、富田委員、福井委員、松尾委員から、所用により御欠席との御連絡をいただいております。また、本日の議題に関連して、参考人の先生にお越しいただいています。静岡県理事、鶴田憲一先生です。また、文部科学省医学教育課からは、村田課長にお越しいただいております。以降の議事運営については、高久座長にお願いいたします。
○高久座長 それでは、議事を進めてまいりたいと思います。事務局から、資料の確認をお願いします。
○医師臨床研修推進室長 お手元の資料ですが、4枚セットの議事次第です。その後ろに、資料1「前回(第12回)までの主なご意見」、資料2「専門医の養成数や医療提供体制における専門医等に関する論点整理(案)」、資料3「地域医療の安定的確保に向けた専門医の養成について(事務局素案)」、資料4「静岡県の地域医療支援センターの活動について」、資料5「専門医の在り方に関する検討会 今後のスケジュール(案)」です。その後ろに、参考資料として、資料番号は付けておりませんが、「専門医の在り方に関する検討会 中間まとめ」です。一番最後に、同じく参考資料で中間まとめの全文を入れています。
それとは別途、委員の先生方の机上に、静岡県でお作りになっているパンフレットとDVDのセットを配付しております。不足等ございましたら、お申し付けください。
○高久座長 本日の議題は、前回(第12回)までの主な御意見について、次に専門医の養成数や医療提供体制における専門医の役割等について、その他になっています。まず、議題1の第12回までの主な御意見について、事務局から説明をお願いします。
○医師臨床研修推進室長 資料1を御覧ください。前回までの主なご意見です。こちらは、これまでと同様に前回の主な御意見をアンダーラインを付して追加しています。時間の関係もありまして、追加部分について一部割愛をしながら御案内いたします。
5ページの上から三つ目の○です。第三者機関が、プロフェッショナルオートノミーを基盤として運営していくならば、その運営資金は医療者が負担するのが原則であり、専門医制度が地域医療に与える影響や評価に関する研究的な面では、国からの財政支援も考えられるのではないか。公的資金については、第三者機関よりも、プログラム作成あるいはプログラムを実行する施設への支援が適当ではないか。一つ飛ばします。第三者機関は、公的な性格も強いものになると思われ、専門医の現状把握をするという仕事は、その公的な性格から、公的資金が投入されても問題ないのではないか。一つ飛ばします。第三者機関は、シンクタンク的機能をもって提言できるような役割も担うべきではないか。「第三者性」については、専門医の認定などはプロフェッショナルオートノミーを基盤とすることは問題ないと思うが、最終的によりよい医療を提供するためには、国は何らかの責任を果たさなければならないのではないか。
6ページの一番下です。研究志向の医師養成等のバリエーションについては、例えば、ある領域で3年間のコースが必要だとすれば、プラス1、2年間研究等に従事するようなコースなど、特色あるプログラムがあってもいいのではないか。
7ページの一つ目の○です。研究志向については「臨床研究」と「基礎研究」とで異なる。専門医の養成プログラムに必要なのは、「臨床研究」に関する基本的な統計学や方法論に関するものであり、「基礎研究」の方は養成プログラムからは外れるのではないか。下から七つ目の○です。医療を取り巻く環境が年々進歩しているので、専門医を取得するときより更新時の方が、ハードルが高くなるように設計するべきではないか。その三つ下です。基本領域の専門医については、原則としてダブルボードは取れない内容の質を維持すべきではないか。
8ページの上から四つ目の○です。専門医に必要とされるのは、自分の専門領域を中心として、それに関連する領域を含めて、全体的に診療できることが「基本診療能力」であると捉えると分かりやすいのではないか。例えば、日本医師会生涯教育制度のカリキュラムについては、更新時に、全医師が知っていなければならない内容は全医師共通で導入する。特定の専門領域で総合的に知っていなければならない内容はその領域と関連領域で導入する。専門に特化した内容はその領域で導入するという方向になるのではないか。新しい専門医の養成プログラムがスタートする予定の2017年(平成29年)から、新しい専門医が生まれる2020年(平成32年)までの間にも現在の学会認定専門医が生まれることになるが、第三者機関が設立された段階で、学会の専門医部門が第三者機関に属する形を取り、現在研修中の人達には、第三者機関から旧来の学会の専門医を認定することとしてはどうか。
9ページの一番上です。既に専門医を取得している人は、更新時に、ハードルを厳しく設定したうえで、新制度に移行していくこととしてはどうか。
15ページの中ほどの○です。専門医の偏在是正に対して国の資金援助が必要ではないか。
17ページの中ほどの○です。研修中の地域での経験は重要であるが、その場合、教育体制がしっかりしていることと、必ず元に戻れる、いわゆる循環型であることが必要ではないか。また、そのような形で地域に出る医師個人への財政支援があってもいいのではないか。
19ページ、下から三つ目の○です。公的資金の使い方として、例えば、院内24時間病児保育体制や医師のキャリア形成への支援という視点も重要ではないか。シームレスな教育という観点から、卒前教育の中でも医行為の拡大を具体的に検討するとともに、臨床研修も含め少しでも研修内容を前倒しして実施することで、効率的に医師を養成することも検討すべきではないか。資料1の説明は、以上です。
○高久座長 前回までの主な意見について、事務局から説明がありましたが、何か追加あるいは御意見がありますか。特に意見がないようでしたら、議題2、専門医の養成数や医療提供体制における専門医等についての問題に進みます。事務局から説明をお願いします。
○医師臨床研修推進室長 資料2をご覧ください。専門医の養成数や医療提供体制における専門医等に関する論点整理(案)です。前回の検討会に引き続き、中間まとめの中で引き続き議論が必要とされた項目について議論を賜りたいと考えています。この論点整理(案)の構成については、基本的には前回の形を踏襲していますが、例えばこのページですと、8月の中間まとめにおいておおむね合意が得られた項目を「中間まとめ」として記載しています。その下の四角の枠で囲った部分については、中間まとめの中で引き続き議論が必要とされた項目を、そのまま記述しています。その下の<論点>については、それぞれの項目について想定される論点として、事務局で記載をしたものです。
全体を四つの項目に区切って議論を賜われればと思います。一つ目の項目は、1ページの「専門医の養成数について」です。中間まとめの中では、上の二つの○にありますように、新たな専門医の仕組みの議論においては、専門医の質に加えて、専門医の数も重要な問題である。専門医の養成数については、患者数や疾病頻度を踏まえ、各養成プログラムにおける研修体制を勘案して設定されるべきである、というような方針を示していただきました。そこで、論点としては、引き続き議論が必要ということで、新たな専門医の仕組みにおいて、診療科や地域における医師の適正数を誘導する方法を設けることについて、と記載してあります。論点としては、新たな専門医の仕組みにおいて、診療科や地域における医師の適正数を誘導する方法を設けることについて、どう考えるか。この医師の適正数を誘導する上で、まずはデータベース等の活用により、医師の分布等の現状把握を行うことについて、どう考えるかを記載しています。
二つ目の議論の項目は、専門医の養成数の設定にあたり、国や都道府県内のバランスに配慮することについてです。論点としては、専門医の養成数の設定にあたり、国や都道府県内のバランスに配慮することについて、どう考えるか。都道府県内のバランスに配慮する上で、当該都道府県の考え方を養成数に反映させる方法について、どう考えるか。
三つ目の論点は、新たに専門医を目指す医師が、専門とする領域や養成プログラムを選ぶ方法、いわゆる病院群による募集・選考や医師からの応募の方法についてです。論点としては、専門とする領域や養成プログラムを選ぶ方法(病院群による募集・選考や医師からの応募方法)について、どう考えるか。そして、養成プログラム等を選ぶ方法として、例えば、臨床研修におけるマッチングシステムを参考とすることについて、どう考えるか、という論点があろうかと思います。
一つ目の区切りはここまでですが、これらの項目との関係で、別様で資料3を用意していますので、そちらを御覧ください。「地域医療の安定的確保に向けた専門医の養成について(事務局素案)」です。この資料は、実は7月に開催しました第9回の検討会において御案内をしました、地域医療の安定的確保について(叩き台)を、その後各委員からの御指摘を踏まえて、一部修正したものです。新しい専門医の仕組みが地域医療の安定的確保にどのようにつながっていくのかについて、一般の方々にもイメージしていただきやすいような趣旨で作成をしたものです。具体的には、左側が「現状」として(各学会毎に独自の運営)とあります。専門医の質としては、必要な経験内容、研修体制等が必ずしも定められていない。また、養成プログラムが用意されていないことが多く、研修内容の質が一定していない。養成数についても、特に設定されていない。研修の状況についても、専門医研修中の医師数、地域分布は特に把握をされていません。
そこで、右側のように新たな仕組みとして、中立的な第三者機関が運営するものとして、専門医の質としては、経験すべき症例数等を設定し、あらかじめ養成プログラムを用意し、複数の医療機関あるいは研修病院群で研修を担う。この養成プログラムは、訪問調査等により評価を行うということです。養成数については、患者数あるいは研修体制等により、プログラムごとに設定をします。研修の状況についても、研修中の医師数あるいは地域分布を把握することができるようになります。その結果、専門医の養成数の調整ですが、各病院の養成数の設定状況、あるいは地域分布等を踏まえて、全国・都道府県レベルで各診療領域の専門医の養成数を調整することができるようになります。※にありますように、この養成数の調整にあたっては、人口構成、患者数、医師不足の状況、専門医の定着状況、病院の研修体制、地域の実情等を総合的に勘案することとしています。
また、研修病院群の中に地域の病院・診療所を含めて、一定期間、地域の病院・診療所で専門医研修を行う養成プログラムを、第三者機関が支援をすることができるようになります。これらの取組により、最終的には左下に書いてありますように、地域医療の安定的確保につながるというようなイメージで考えています。
○高久座長 では、最初の専門医の養成数や、医療提供体制における専門医数等について、どなたか御意見、御質問はありますか。
○小森委員 あらかじめ申し上げておきたい点は、資料3ですが、基本的にこれまでの議論の中で、地域医療の安定的な確保、また患者にとって分かりやすい制度、一人一人の患者に寄り添って高質な医療が提供される担保をきちんとしようと。これは、恐らく全ての委員の合意だと思っています。しかし、この地域医療の安定的確保や、専門医の地域偏在、診療科偏在の是正を目的として専門医制度を考えると。これは、順序が違うということについては、中間取りまとめまでの議論で、各委員の基本的な合意ができたと思っています。
ここにきて、またこのような図が示される中で、特に右の段の一番下の○、研修病院の問題、それから真ん中の病院の受入定数(養成数)の問題等について、これから議論をしようということを事務局素案とはいえ、ここに出されるということは、この検討会の議論を誘導するものであって、極めて遺憾であります。こういった文章を出されるときには、各委員が合意をみた中間取りまとめに記載された文章で構成されるべきであって、このような文章で出されることは極めて遺憾であるということを、まずお話を申し上げたいと思います。
○高久座長 ほかに、どなたか意見をどうぞ。
○桃井委員 私も、いまの意見に賛成です。この資料3が出てくることと、資料2の一部に関して、いままでの議論は何であったのかという大きな疑問を感じざるを得ません。資料2に関しては、これまでは都道府県の話も全く出てきていませんし、その議論も全くされていないことに対して、論点整理という形で案であっても出てくることは、納得できないものです。特に、資料3に関しては、何回目か忘れましたが、この専門医の制度に関する制度設計を、地域偏在是正のツールにすべきではない、配慮は必要だが、ツールにすべきではないということを何回か申し上げて、多くの委員の方が御賛同された議論の経緯がある中で、この資料3が唐突に出てくることは、この委員会のまとめ資料としてはおかしいのではないかと思わざるを得ません。
○池田委員 小森委員、桃井委員の意見に、基本的には賛成です。私どもの機構では、専門医の育成をどのようにしていくかという議論をしています。そこでの考え方について、少しお話をさせていただきます。専門医制度を改革しようということは、医師の質、専門医の質の向上を目指して、若い医師を育てるということです。そして、言わずもがなですが、更新制度を通じて生涯教育を促進することです。したがって、強制的に、あるいは恣意的に専攻医(専門医を目指す医師を我々は専攻医と呼んでいるのですが)、専攻医を配属させるようなことはすべきではないということです。
しかし、質の高い専門医を育成する仕組みを作る為には、研修プログラムをしっかり作ることに尽きるだろうと思いますし、それぞれのプログラムには何人ぐらい専攻医が入れるかがある程度規定されていなければ、プログラムは運営できません。一つのプログラムに10人も20人も専攻生をとるわけにはいきませんので、当然のことながら、この出し方には問題があるかもしれませんが、先ほどの資料3の専門医の質、あるいは病院の受入数というのは、病院がプログラムを運営することになれば、その病院で受け入れ可能な専攻医の数は、症例数によって規定されるのが当然です。症例がない所では指導はできませんし、指導医がいない所では専門医は育ちませんので、プログラム制によりある程度専攻生の数が規定されることは、当然かと思います。
以前にもお話しましたように、機構では専門医制度の整備指針、あるいは最近では研修プログラム、研修施設の整備指針に対して、非常に熱心な議論が進んでいます。それを、2年に一度必ず改定をしています。そこでは、プログラムをどうやって作っていくべきか、プログラムを作るときの基本的な考え方をまとめて、指針として出すことになっています。そこには、適正なプログラムの数、あるいはそれぞれのプログラムで受け入れられる人数は、どういうもので規定されるのかが盛られています。それと同時に、プログラムを作るときに地域性への配慮はすべきであろうというような考え方は、打ち出されています。しかし、基本的には小森先生、桃井先生がおっしゃられたように、地域医療の安定が最初にあって専門医制度ではなくて、あくまでも専門医の質を向上させるためにどのようにすべきかを考えると当然そのような考え方になると思います。
専門医制度を改革する結果として、更に地域医療の状況が悪くなるということは絶対に避けなければいけないと。これも、基本的なコンセンサスとして出来上がっていることを申し上げたいと思います。やはり、患者数などを踏まえながら、あるいは基幹の病院はどのような体制を取っているかというような指導体制の問題も勘案しながらプログラムを作っていく、そしてそのプログラムで適正な受入人数が決まっていく方向に、なるべく早くもっていきたいと思っています。その議論をここでしていただければ、今、お二人の先生方が懸念されたことに関しては、私はある程度一致がみられるのではないかと思っています。
○高久座長 ほかに、どなたか御意見はありますか。
○桐野委員 同じことになるかもしれませんが、いま池田先生が言われたように、専門医制度の基本的目的が、医療の質を向上させるというところにあることについては、委員の先生方も異存はないだろうと思います。ただ、質を向上させることの論理的な帰結が、少なくとも専門医の質の向上と、その結果として量の制御が入ってくるということは、どうしてもやらなければしょうがないです。それについて、最初から量を決めて制御していくやり方がいいのか、それとも質の向上をまず中心課題に据えるかは、今後よく検討する必要があると思います。例えば、個人の自由を最大限に尊重する米国のような国でも、専門医の量の制御を強くやっていて、レジデントになるときに自分の望みの所にうまく入るのは、非常に大変です。ドイツも、同じようにやっています。そのようなことも参考にして、専門医制度と養成数については、よく考えたほうがいいと思います。
○高山委員 大阪府の高山です。私たちも、ツールとすることは絶対避けるべきという主張は、全く賛成です。ただ、プログラムが定まり、研修機関が定まると、そのことは自動的に医師の分布に大きな影響力を与えるという、動かしがたい事実がありますので、そのことを認識しながら議論しなければいけないと思います。
○藤本委員 資料の次の項目にかかってきてしまうことかもしれないのですが、医師不足の地域において幅広い疾患の診療経験を積むことは、逆に医師不足地域の売りではあると思います。ですから、そこにきちんと指導医の先生がいてくだされば、かえって医者が少ない所でいろいろな患者が頼りにしてくるという地域での経験は、総合医になられる方はもちろん、領域別専門医を目指す先生にとりましても、大変貴重な機会だと捉えられるのではと思います。ですから、プログラムの中に必ず医師不足地域、あるいはへき地における研修が入るような配慮を、各学会でしていただければ、私はそれが医師の偏在を是正とまではいかなくても、せめて緩和する方向にはもっていけるのかなと思っています。
課題は、指導医をどう配置するかだと思います。その点については、いまいろいろな自治体や大学の先生方もかなり御苦労されている部分だと思いますので、その辺りを学会と担当の方々が連絡を密にして、指導医の先生が、できるだけプログラムの中で適切な所にいてくださるような配慮を、各学会の先生方にもお願いできればと思います。私は、この医師の偏在の「是正」という言葉が少しきついのかなと、「緩和」ぐらいがよろしいのではないかと思っています。医師不足地域に住んでいる住民としては、先ほど桐野先生もおっしゃいましたが、医師の配置というものはある程度国がお金を出して医師を育てている以上は、何らかの形で国が責任をもっていただきたいという思いは持っています。その辺りのバランスを取りながらやっていただければ、大変助かります。
○池田委員 診療科、あるいは地域における医師の適正数も、これは診療領域、専門医の領域によって、かなり事情が違うわけです。ですから、例えば医師の適正数を考えた場合に、ここでも話題になりました総合医、総合診療医を専門医として一つの基本領域として認める。そこでの医師の養成の仕方と、例えば脳神経外科は基本領域に入っているわけですが、脳神経外科の専門医の数あるいは配置と、総合医、総合診療医、あるいは内科、小児科とは大分事情が違うので、一概に全部同じにして専門医を論じるのは、少し無理があると思います。
特に、この検討会では既にサブスペシャルティとして内科系、外科系に関しては2段階制を取ろうということで理解されています。例えば、循環器や血液などのサブスペシャルティになりますと、また少し基本領域と違うわけですね。ですから、その辺りの議論は少し整理しないといけないかなと思います。そういう面では、総合医、総合診療医のところが、地域医療との関わり合いが一番強い領域ですので、まだその議論がされていませんが、その議論のときに、またこの問題に戻ってきてもいいのかなと、私は考えています。常に、地域医療のことを頭に置きながら、専門医制度を考えなければいけないことは事実だということで、私どもの機構でも地域医療への配慮が整備指針等で皆さんの意見として出てきていることは確かです。
○今委員 八戸市民病院の今です。診療科でのバランスが崩れていると思います。地域や地方での医師不足の前に、診療科自体、例えば麻酔科や小児科、産科、リハビリ科、救急科の医師不足が都市部でも著しいので、そこの専門医をうまく誘導して増やすような対策が必要なのではないかと思います。それがうまくいけば、少しずつ地方の医師不足も解消するのではないかと思います。
しかし、いつまで経っても都市部と地方での格差が続きますので、ある時点で都市部の専門医をある程度制限しながら、地方に少し回るような対策が必要なのではないかと思います。この専門医制度が始まる頃は、いきなり地方のことを考えると混乱が生じますので、まず国内の専門医の数全体を考えるやり方にいけばいいのではないかと思います。そのためのデータベースですが、外科学会がやっているデータベースはしっかりしていますが、なかなかほかの学会ではできていないと思います。都合のいいことに、今はDPCが非常に発達していますので、DPCデータを全て学会に公表して、DPCデータを学会がうまく考えながら現状を把握できれば、今は専門医がどのぐらい足りなくて、どこに格差があるかが分かるのではないかと。新たなデータベースの確立よりも、DPCデータを流用するほうがいいのではないかと思います。
○高久座長 いろいろな意見が出されたと思います。この委員会の主要な目的は、専門医の質の向上による日本の医療の質の向上です。総数や養成数をこれから具体的にデータを集めてプランニングする場合には、当然地域のことが問題になってくると思います。ですから、専門医制がある程度確定したときのメリットとして、ある程度地域や診療科の偏在が改善されればいいと思いますが、それを目的としているものではないということでよろしいのではないかと思います。地域や診療科の偏在を完全に無視して、専門医の議論だけをするのも問題です、この委員会で決めることは日本の医療の将来にかなり大きな影響を与えますので、その点を少し配慮に入れながら、しかし主な目的は専門医の養成をきちんとして、我が国の医療の質の向上を目指す。我が国の医療の質の向上の中には、その結果として、できれば診療科や地域の偏在も解決の方向に向けていければよいのではないかという希望をもって、委員会を進めていきたいと思いますが、いかがですか。
○池田委員 高久座長がおっしゃるとおりだと思います。機構でも、先ほど申し上げたように、やはり地域性への配慮を常に念頭におきながら、どのような育成の仕組みをつくるか、質の向上を図るかということの議論も並行してやっています。その中で一番大事なのは、門田先生が新しい専門医制度の改革の素案をお作りになったときから、やはり研修のプログラムをしっかり作ることを念頭において、ずっと進めているわけです。その作り方に、例えば基幹病院があり、それがいくつかの研修施設と共に研修群を作り、複数の施設が一つのプログラムを運営することになります。あるいは県単位でそういうプログラムをいくつ作るか、その為には県と学会、機構が連絡を取りながら、一つのプログラムをどのように作っていったらいいか議論することが必要です。
日本全国で、そのようなプログラムをどのような配置をしたらいいかというようなことも含めて、プログラムがあって初めてそういうことが可能になるのではないかと思います。やはり、専門医制度改革の討論が始まって一番よかったなと思うのは、研修プログラムを作ること、それを基に地域性への配慮が考えられるようになったということで、そこを強調させていただきたいと思っています。
○高久座長 まだ御意見はあると思いますが、時間の関係で、次の医療提供体制における専門医について、事務局から説明をお願いします。なお、事務局の説明のあとに、本日御出席の鶴田先生から、静岡県専門医研修ネットワークプログラムについて御紹介いただきます。
○医師臨床研修推進室長 2ページを御覧ください。先ほどの1点目の項目と重複する部分がありますが、医療提供体制における専門医です。中間まとめの中では、医療提供体制全体の中で、医師の専門性の分布や地域分布について、グランドデザインを作ることが重要である。国民のニーズに応え、効率的な医療を提供するため、現在のフリーアクセスを前提としつつ、「総合医」「総合診療医」や「領域別専門医」がどこにいるのかを明らかにして、それぞれの特性を活かしたネットワークにより、適切な医療を受けられる体制を構築することが重要、とまとめられています。
一つ目の、引き続き議論が必要とされた項目について、新たな専門医の仕組みにおいて、専門医の養成プログラムの地域への配置の在り方など、地域医療が改善するような制度設計を行うことについて。論点としては、専門医の養成プログラムの地域への配置の在り方など、地域医療が改善するような制度設計を行うことについて、どう考えるか。
二つ目の項目です。新たな専門医の仕組みの設計において、地域医療支援の観点から、例えば、養成プログラムの中に、へき地や医師不足地域における研修を取り入れるなど、地域偏在・診療科偏在の是正の効果に視点を置くことについて、とされています。論点としては、地域医療支援の観点から、養成プログラムの中にへき地や医師不足地域における研修を取り入れるなど、地域偏在・診療科偏在の是正の効果に視点を置くことについて、どう考えるか。二つ目が、地域偏在・診療科偏在の是正の効果に視点を置く場合、例えば、一定期間の地域従事を要件とする奨学金を受給する専攻医、専門医の養成プログラムにおいて研修中の医師を専攻医と称した場合に、この専攻医や、初期診療が地域で幅広く求められる「総合医」「総合診療医」等を対象として、へき地や医師不足地域における研修を取り入れることについて、どう考えるか。
三つ目は、大学病院等の基幹病院が地域の協力病院と連携して専門医の養成プログラムを作成し、その中で「地域医療の実践」も必須項目とすることで、総合的な診療能力が習得できるとともに、地域医療の確保にもつながることについて。論点としては、大学病院等の基幹病院が地域の協力病院と連携(病院群を形成)して専門医の養成プログラムを作成することについて、どう考えるか。病院群を形成する場合、養成プログラムの中で「地域医療の実践」も必須項目とすることについて、どう考えるか。二つ目の区切りはここまでです。
これらの項目との関連で、地域医療の支援の観点から、専門医研修のやり方を工夫されている一つの例として、資料4に基づいて、静岡県さんの取組みについて理事の鶴田先生に御紹介いただきます。
○鶴田参考人 静岡県の理事をしています、鶴田です。本日は、説明の機会を与えて頂き、関係者の方々に感謝を申し上げます。
静岡県の専門医取得プログラムについて、私からは都道府県がこれにどう関与しているかという観点から説明いたします。都道府県の中で、静岡県の特徴は、浜松医科大学が設置されるまでは、静岡県には医科大学がない県であったこと。また、静岡県はいわば三つの県からなっていること、浜松を中心とした西部、静岡市を中心とした中部、それから沼津、伊豆半島、御殿場を中心とする関東の影響の多い東部です。このため、3ブロックとも医師の供給は他県の大学に依存してきたということです。
そのような中で、静岡県には400床以上の自治体病院が多くあります。400床以上の21病院の内、13病院が自治体病院、また、国立大学浜松医科大学病院、国立病院機構の二つの病院併せると16病院が、国公立病院です。県全体としては10万人当たりの医師が全国に比し、少ない。全国的に平均在院日数が短縮する中、400床以上の病院においては、平均在院日数が非常に短くなると、より多くの医師を必要とします。例えば、平均在院日数が半分になれば、100床当たりでは倍の医者がいないと忙しさが解消しない。平均在院日数が短くなる中で、400床以上の病院は、医師を確保することが困難になってきています。
浜松医科大学ができてからは、現在、大体卒業生の半分が県内に残っています。浜松医科大学も県内に残るよう努力してもらっていますが、まだ現状においても100名以上を県外の大学に依存しています。日本の人口と医学部の入学定員からみますと、約250名の方が県内で勤務してもらって全国平均ですから、100名来てもらっても100名足りないのが現状です。このため、県としては毎年100名に医学修学研修資金を貸与しています。県外の19大学と特別枠の契約を結んで、引き続き県内の病院に派遣して欲しいと、特別枠を設定しています。また、静岡県内で働きたい方々については、一般枠という形で修学資金を貸与しています。お金を貸与すれば来るだろうという考えではなく、やはり来てもらった医師には定着して欲しいということから、魅力あるプログラム作りに取り組んでいるところです。
その歴史的経緯を踏まえ、東部のプログラムは大学がないものですから、複数の大学医局の診療科からできてきています。各病院が単独では医師を確保できないという危機感の中で、東部地域は複数の病院が専門医プログラムを作ろうというような機運が出ました。西部地域は、浜松医科大学の関連病院を中心とした専門医プログラムを作ってきました。これが、我々が専門医プログラムを作った背景になります。作った経緯等を含めたシステムですが、「静岡県専門医研修ネットワークプログラム」のガイドブック2013をご覧ください。理事長は、10月に亡くなられた寺尾先生で、私が副理事長をしています。「ふじのくに地域医療支援センター」は、「4つの機能」を持っています。一つは、医療の質の向上及び医師を支援するための研修の充実。ここで、専門プログラムを作っています。もう一つは、医学修学研修資金貸与者に対して、勤務先を我々が決めないといけない役割があります。その方々にも専門医資格を取った後に医師の少ない地域に行ってもらうということで、我々としてはこの2点から専門医プログラムを作って来ました。
具体的には、静岡県専門医研修ネットワークプログラム「明日の医師を育てる」を御覧下さい。ある先生にプログラムリーダーになっていただき、複数の病院がプログラムに関与します。5ページにありますように、これは循環器の例ですが、1年目に県立総合病院の循環器を学んでもらい、そのあと静岡市立病院、そのあとは比較的医師が少ない島田市民病院や藤枝市立総合病院に行ってもらうというようなプログラムです。
6~7ページは、それぞれのプログラムがどの学会に準拠したプログラムであるか、また参加している病院はどういう病院かを示しています。現在までに、53のプログラムを作成しています。この運営に当たっては、ふじのくに地域医療支援センターは、本部と支部構成がありまして、各支部で院長を集めて、院長がそのプログラムを作ろうということになったら、各診療科の部長クラスでプログラムを作って来ました。プログラムを作成し、また維持、向上するためには、そのための経済的支援もしています。後期研修医や指導医に対する研修支援も行って、このプログラムの推進を図っています。プログラムの内容については、基本的には各学会の専門医が取れるプログラムであると理解していただきたいと思います。以上です。
○高久座長 ありがとうございました。鶴田先生にお聞きしたいのですが、医学修学資金を提供される100名の方は、浜松医大の学生も入っているのですか。
○鶴田参考人 特別枠に浜松医大の学生も入っていますし、一般枠にも浜松医大の学生が入っています。
○高久座長 ほかの大学の学生も入っているのですか。
○鶴田参考人 入っています。地域は特定していません。どこでも結構です。
○高久座長 どなたか、今の事務局の説明と鶴田先生の説明について御意見、御質問はおありでしょうか。
○小森委員 鶴田先生、ありがとうございました。私も石川県の医療の責任者の一人としていた事情もございまして、私はここで、あくまで今一度、地域の主権の回復を主張したいと思います。地域の様々な問題は、住民に最も近い地域そのものでしか認識ができません。地域、地域に。私どもは、臨床研修につきましても各都道府県に臨床研修機構を設置し、それぞれの患者、住民を交えて、その地域にどういった医療提供体制が最も適切か、そのためにどのようなことができるか、研修プログラムについても、柔軟な、弾力的な、地域に合ったプログラムを策定すべきと提案をしております。そういった意味においても、この専門医研修につきましても、やはり都道府県に専門医臨床機構といったようなものをお作りになっていただいて、地域の住民を交え医師会、当然、大学、病院、様々な関係の方々にお入りいただいて、プログラムを作ることが大切だと思っています。
今の鶴田先生のお話は私どもにとっても非常に共感を感じるところですが、逆に言いますと、なぜこのように静岡県さんが頑張っておられるか。今、プレゼンがありましたのは静岡県ですが、各地域でこのような取組を様々な形でしておられます。なぜ必要なのか。それは、国が一律に押しつけてくるから、それでは解決しないということにあるのです。そういった意味で、鶴田先生の御講演は大変共感を感じるところですが、今一度、この検討会であることについて、こういった地域の取組について、国はそれを支援する、そういう基本的な姿勢は明らかにしていただきたい。つまり、この検討会で議論されることが逆に地域を縛ることであってはならないと思っています。そのことをあえて強く申し上げたいと思います。とりあえず以上です。
○高久座長 私も全く賛成です。医療は地域ごとに異なりますので、県単位で地域の医療提供体制を整えていく必要があると思います。それで、鶴田先生にもう一つお伺いしたいのは、ネットワークプログラムの中でいろいろな病院で研修をしていますね。この○をした所は、全部、指導医がいるのですね。
○鶴田参考人 基本的にはそうです。専門医が取れるためには指導医が必要とかの要件がありますので確認しています。
○高久座長 そういうことですね。
○鶴田参考人 もし要件を満たさない場合には、研修期間を長くする形になると思います。例えば、4年で取れるところを5年で取るとかです。
○高久座長 指導医がいない場合は。
○鶴田参考人 基本的には指導医がいる所でプログラムを組んでいますが、細かく見ていくと小さな病院がちょっと入っていますので、そこには指導医がいない可能性があります。
○高久座長 そうですか。例えば県が頼んで、大きな病院の指導医を一時期、専門医を取る人がいる所に派遣するというような体制はとっていないのですか。
○鶴田参考人 そのプログラムを作るときに、専門医が取れるプログラムを作ってくださいということでこちらからチェックリストを出しています。それをクリアする形でプログラムを作っていますので、医師確保が少し難しい所も入りたいということであれば、その場合は入ってもらいますが、専門医は取れるという形になっています。この53のプログラムの病院に全て指導医がいるかどうか、私自身がチェックしておりませんので断定的に言えませんが、ベースは、基本的に指導医がいる病院での研修ということです。
○高久座長 分かりました。
○藤本委員 貴重なお話、ありがとうございました。今の取組の中でもうちょっと。例えば、先ほどは地域を縛るような制度であってはならないという御意見がありましたが、逆に、システム的に、例えば制度的なものとか、国からの支援とか、そういうものがあればもっとうまくいくのにとか、そのようにお感じになっているところはございますでしょうか。
○鶴田参考人 そのプログラムを作るときに、専門医が取れるプログラムを作ってくださいということでこちらからチェックリストを出しています。それをクリアする形でプログラムを作っていますので、医師確保が少し難しい所も入りたいということであれば、その場合は入ってもらいますが、専門医は取れるという形になっています。この53のプログラムの病院に全て指導医がいるかどうか、私自身がチェックしておりませんので断定的に言えませんが、ベースは、基本的に指導医がいる病院での研修ということです。
○高久座長 ほかにどなたか。
○山口委員 これからの専門医の研修としての研修プログラムの一つの形を示していただいたと思います。このようないろいろな病院を回ることで、それぞれの診療科の目標としているところの研修到達目標を達成できているのであれば非常に素晴らしいと思いますし、また、そのことをこういう形で県がサポートしていただくのは、同じプログラムが並んでいたときに、より多くの人がこういうプログラムに集まるというところでは非常に望ましい一つの形なのではないかと思います。
教えていただきたいのですが。補助金の制度がありますが、補助金は研修医と専門研修については、産科、小児科、麻酔科と3科にしかありませんが、これはそういう理解でよろしいのでしょうか。プログラムの11ページの下に研修医には補助金があるというのがありますが、専門研修については、全ての研修プログラムにあるのではなくて、産科、小児科、麻酔科の3科という、そういう理解でよろしいのでしょうか。
○鶴田参考人 11ページには、二つの制度のことが書いてあります。制度概要に書いてある上のほうは、いわゆる後期研修に来られた方々に対する支援です。下のほうは、医学修学研修資金貸与制度であり、先ほど言いましたが、メインは学生に対してであり、麻酔科とか産科とか小児科は少ないものですから、3診療科の専門研修医についても奨学金を貸与しますということで、上の制度と下の制度には少し違いがあります。下のほうは、医学修学研修資金の中で二つに分かれていまして、学生に対するものと専門医に対するものがあります。医師の確保が少ない小児科、産婦人科、麻酔科には医学修学研修資金をやって、2年間貰えば1.5倍、3年間勤めてほしいという制度です。下のほうは、後期の専門医研修プログラムとはまた別のものです。
○山口委員 後期の研修プログラムに付いているということではないのですか。産科、小児科、麻酔科の3科の後期研修プログラムは、こういう研修資金を受けようと思えば受けられるということではないのですか。
○高久座長 これは、産科、小児科、麻酔科の専門医資格を目指す専門研修ですね。
○山口委員 ですから、専攻医にというように理解したら、できれば全部のプログラム、ということもあるのです。そういうサポートが得られれば、それぞれのプログラムに集まる人も増える一つの方法かなと拝見したのですが。
○鶴田参考人 現実的な話をしますと、例えば、ある病院に麻酔科研修医がいます。学生ではなくて、実際、医者になった研修医に対して医学修学研修資金としてこれを出しています。ですから、その人はまだ専門医でも何でもないのです。麻酔科に行きたいという人であれば学生でなくても出している、というのが実態なのです。ほかの専門医プログラムは、卒後3年以降に県内に来る人に対して、そのプログラムで研修を受ければ専門医が取れますという制度です。こちらのほうは、実際、今、麻酔科・産婦人科をしている研修医たちに対して、月20万円出します、そのあと、2年間もらえば3年間勤めてください。その人たちが後期のプログラムに入っても入らなくても構わない。実際は、今、麻酔をしている人にはあげますという制度なのです。
○高久座長 分かりました。
○山口委員 ありがとうございました。
○高久座長 ほかにどうぞ。
○高山委員 先ほどの藤本委員の、国からの支援に関連して追加で発言させていただきます。静岡県さんのような素晴らしい取組、強制力を働かせるのではなくて魅力あるプログラムで誘導しようという、こういう工夫は非常にたくさんの県でされているのです。それで、地域ごとの実情に応じた組立てをしようとしている取組は正しくあります。先ほど小森先生がおっしゃったことが現に進行しているのです。そういう意味で国からの支援で一番大事なのは、先ほども「これ、静岡県でいくらかかっているのですか」とお聞きしたら、「7、8億円かかっている」と。その財政負担は、各都道府県にとっては非常に重いのです。現在は、地域医療再生基金などで多額の基金が造成されて期間限定でサポートされているのですが、そのあとのサポートがどうなるのかというのは、各県、非常に心配しています。そこが非常に大きいと思います。
○高久座長 そうですね、地域医療再生基金がなくなったら大変ですね。ほかにどなたか。
○池田委員 静岡県のこの取組については、プログラムリーダーを置かれて学会と行政とが一体になっていいプログラムを作ろうということで、私は非常に意欲的な取組だと思って、それが各都道府県にあるというのは非常に好ましいことだと思うのです。ただ、これを作った目的は、医師の数が少ないから医師の数を増やせばいいというようなところでもともと始まったというところに、私自身は少し危惧を持っています。やはりきちんとしたプログラム、ただ単に数合わせで病院を回ればいい専門医が育つということでは決してないので、プログラムリーダーなり、あるいはプログラムディレクターという人たちが、やはり専門医の研修はどのようなプログラムが最低必要かということをどうしても担保していただかないと。
初期研修などの場合でも、若い医師が大学から地方に出たというところでは初期臨床研修の効果があったのですが、北海道のある地域に行くと、大学を出た人がいきなり1千何百万円をもらえるとか、そういうことで誘導して。ただ医師がいればいいということではないと思うのです。要するに、専門医制度の改革は、初期研修を終わったあとの3年なら3年、あるいは、5年なら5年の間にいい医師を育てるというところに専門医制度の改革の意義があるわけです。私どもは、10年、20年先に日本の医療がどういう形になるかということを念頭に置きながらやっているので、今、現実にとにかく医師を配置すればいいということとは少し意味が違うということをもう一度ここで強調しておきたいと思います。しかし、静岡県のこの取組に関しては、そういう点を考慮していただければ、行政とアカデミアが一体となっていろいろなことを考える、いい医師を育てるという方向に向いているということで、私は、評価をしたいとは思います。
○高久座長 そうですね、総合診療医などの場合にはアカデミアと行政と医師会が一緒に運営していく必要があるのではないかと思っています。
○平林委員 今の池田先生のお話につなげてお伺いしたいのですが。仮に、こういう各都道府県のネットワークプログラムと、今後出来る専門医の制度の在り方をどうリンクしていくかというのが一つの問題になると思うのです。そのときに、例えばここにあります専門医の研修プログラムが、第三者機関で制定されたプログラムがここにそのまま入ってくることによってその質を担保しながらその地域の医師の確保に向かっていくというような形になれば、質のいい専門医があるいは各地域に確保できるということになるのだと思うのです。ただ、問題は、そのように専門医の研修プログラムに対応できない所も恐らく出てくると思うので、そういう場合にどうするのかということは問題として残ると思うのです。恐らく、リンクの仕方としてはそういうものが考えられるのではないかと思いました。
○桃井委員 最後の「国の関与の在り方について」とも少し関連してくるのですが、日本の中の今の医師の地域偏在の最も大きな基盤といいますか、背景は医学部の地域偏在だと思います。それについて議論するわけではないのですが、例えば四国に四つの医学部がある、同等の面積の福島県には一つしかない。これが今の日本の医師の数の地域偏在、つまり多くの診療科で西高東低の形を作っている最大の背景であると思います。医学部の多い所は、当然、指導医も多いですし、同等のプログラムであれば、自分の地域に近い場所に行く。そういう背景がまずあります。
医師を派遣する大学病院の立場からいきますと、地域に医師を派遣するときに一番困るのは、派遣される医師も人間ですから家庭を持った医師ですし、指導医の年齢層はほとんど家庭を持っておりますので、大部分が単身赴任でないといけないという事情があります。そういう事情プラス、若い方は、そこで十分な専門研修ができるかどうか、素晴らしい指導医がいるかどうかという大きな問題があります。ですから、医学部偏在と医師不足に由来する日本の地域の医師偏在をどうするかという抜本的課題と、この専門医の在り方で解決のツールとすることは根本的に違うと思います。繰返し申し上げていますが、配慮をすることは非常に重要ですが、これをツールとすることは根本的に間違えていると思います。
そこで、この大きな日本の東西の医師偏在を何とかするために国にしていただきたいことは、2次医療圏の医師数が、西のほうには10万人当たり300人台の地域もありますし、東のほうには70人台の地域もあります。このように数として出ているわけですから、少ない地域に対してどれだけ財政支援を研修病院、あるいは派遣する医師に対してできるかというところが国がすべきところであろうと思います。最後のほうの国の支援の在り方について関与しますが、そういう国の支援の在り方が望ましいのであって、専門医の在り方に国が関与することを通して地域偏在を是正する力とすることはやはり間違えていると考えます。
○高久座長 ほかにどなたか。
○門田委員 医療提供体制、医師の偏在、これもこの委員会の立ち上がったときからずっと同じです。同じというと言いすぎですが、同じようなことで行きつ戻りつになっているというような気がして仕方がないのです。
ここで一つだけ確認しておきたいと思いますのは、専門医を養成するプログラム、養成するということと医療の人員配置そのほかをどうするかということは、皆さんもたぶん最初から同じようなお考えだと思いますが、これは別次元のことだということですよね。ですから、どこか少ない所があって、そこに養成プログラムが行くならば、その研修内容が非常に落ちてもそこに人が行くためにはやらなければならないということは、みんな、否定しておられると思うのです。そうするとはっきりしていて、養成の段階では質をいかに維持するかという、専門医をどうつくるかということである。ということと偏在の問題をどうするかということとを同じ次元でやりだすから話が複雑になるような気がして仕方がないのです。ですから、養成は養成、配置は配置、そして、それを個別に考えた上でどのような形でリンクすることで少しでもこの問題が緩和できるかというような発想につなげていく、そういうディスカッションが必要ではないのかと思います。
○高久座長 そうですね、おっしゃるとおりだと思います。
○平林委員 今の点に関連して、先ほど発言しようと思ってチャンスを失ったのですが。専門医制度の在り方が医師の地域偏在の改善のための切札になるなどと、誰も思っていないと思うのです。問題はむしろ、ここで作った専門医制度が今のように地域偏在になってはならないということがポイントなのだと思うのです。ですから、今作っている新しい制度を地域偏在させないようにするためにはどうすればいいのかという、専門医の在り方としてどうすべきかという観点から考えて、その結果として、もしかしたら少しは地域偏在の解消に役に立つかもしれない、そういう議論の仕方をしていかないと、とても不毛な議論が繰り返されると思います。
○高久座長 それは、池田先生も先ほどおっしゃっています。
○小森委員 なぜ不毛な議論が続くか、この構図は明確です。委員が合意をした。そのことにもかかわらず、事務局がしつこくこの話を持ち出してくるから不毛が続くのです。ですから、この検討会の議論をどの程度重く受け止めておいでになるかと、事務局に大きな反省を求めたいと思います。
○高久座長 分かりました。
○藤本委員 先ほど地域医療再生計画の基金のお話が出ましたので、私、そちらの有識者のほうを仰せつかっておりますので、一言だけ申し上げます。それぞれの都道府県で二つずつの2次医療圏、全部の計画を見せていただきました。計画の傾向が大きく二つに分かれていると感じました。
一つは、例えば大学などにとにかく医者を集めて、そこから地域に派遣をしていくというタイプ。もう一つは、そこの地域で医者を育てていくために、病院・診療所あるいは保健所、いろいろな所が連携をとって、医師会の先生方ももちろんそうですが、そこで地域でお医者さんを育てるためのネットワークを作って、地域にお医者さんが来るようにしているプログラムを作っているというタイプです。明らかに二極化しています。ですから私は、これから、再生基金を投入することによってかえって地域の格差が広がるのではないかとちょっと心配はしております。先ほど小森先生もおっしゃっていましたが、自分たちの所に必要なお医者さんはこういうお医者さんであり、だから、そのお医者さんを育てるためにはどういう人たちが連携をとっていかなければいけないか、ということで動いている所はあるのです。
ただ、そういった取組がほかの、都道府県なり、そういう担当者のところに情報として行っていない。国ができることはその辺で、こういういい事例がある、こういうふうに取り組んで、こういうふうな効果が出ている所がある、という情報を自治体さんに分かるようにしていただきたい。ホームページに載せていますとか、そういうレベルではなくて、担当職員の研修をするなり何なりしてそういういい事例を徹底的に広めていくというような形での支援は国にできることであると思っております。
○高久座長 どうもありがとうございました。それでは、時間の関係がありますので、次の「専門医の位置づけ」ということで、事務局から説明をお願いします。
○医師臨床研修推進室長 かしこまりました。資料2の3ページをお開きください。三つ目の項目です。「専門医の位置づけ(医療制度上の位置づけ、情報開示等)について」です。
中間まとめの中では、「新たな専門医の仕組みは、プロフェッショナルオートノミーを基盤として、設計されるべきである。新たな仕組みの設計にあたり、専門医のキャリアや認定基準、更新基準など専門医に関する情報を国民に分かりやすく示すなどの仕組みが必要。専門医に関する情報は、医師が他の領域の専門医や高次医療機関の専門医を円滑に患者に紹介できるようなネットワークで活用できるようにすべきである。広告が可能な医師の専門性に関する資格名等については、新たな仕組みの構築に併せて見直すことが必要である。新たな仕組みの下での専門医について、標榜科と関連させることも将来的には考えるべきである。」と取りまとめられております。
引き続き議論が必要な項目としまして、一つ目が「新たな専門医の仕組みにおける医療制度上の位置づけについて」です。論点としましては、新たな専門医に関する医療制度上の位置づけの必要性について、どう考えるか。中間まとめで示された広告等の見直しについて、その見直しの方向性(新たな専門医の位置づけ等)について、どう考えるか。
二つ目の項目です。「専門医に関する情報の開示の在り方について」です。論点としましては、専門医の情報を国民に分かりやすく示すとともに、医師が他の領域の専門医等を円滑に患者に紹介できるようにする上で、情報開示の内容について、どう考えるか。専門医の情報に関するデータベースについて、どう考えるか。
三つ目です。「プロフェッショナルオートノミーを基盤とした上で、新たな専門医の仕組みを、国がバックアップしていく必要性について」です。論点としましては、プロフェッショナルオートノミーを基盤とした上で、新たな専門医の仕組みの公益性を踏まえ、国がバックアップしていく必要性について、どう考えるか。以上が三つ目の区切りです。よろしくお願いいたします。
○高久座長 どうもありがとうございました。この専門医の位置付けに関しまして、どなたか、御意見はあるでしょうか。
○藤本委員 情報開示、とりわけ国民に出す内容についてお話したいと思います。私は、専門医の先生方がどこにいてということは、あまりオープンにしすぎると、せっかくこれから作ろうとしている総合医、領域別専門医という医療の流れが作りにくくなると思いますので、その辺はあまり詳しく出さなくてもいいという立場に立っております。ただ、その地域にいる先生方がどこの総合医にかかっても、必ずきちんとした専門医あるいは総合医の先生に紹介していただけるという担保は必要だと思いますので、専門の先生方の間でのネットワークは、個人的なヒューマンネットワークではないもの、公的なネットワークを作っていただきたいということ。そして、それがきちんと国民に分かるように、安心してもらえるように、そのようなシステムがあるということは広報していただきたいと思います。
もう一つ、医療の不確実性についても国民にきちんと伝える必要があると思います。と言いますのは、せっかくその地域で最適の先生にかかっていたとしても、患者自身の望むような結果が得られないようなときに患者がほかの医師のところに行くことがありますね。それがドクター・ショッピング、重複受診、薬の重複処方という、かなり無駄を招いていますので、やはりある程度、医療の不確実性とか限界というものについて国民ももう少し大人にならなくてはいけないと私は思っています。そのようなことを誰が教育するのか、情報を出すのかということも一つ大事なことだと思いますので、どこかで検討していただければと思っております。以上です。
○高久座長 どうもありがとうございました。総合診療医も一つの専門医になるわけですから、その所在を開示する事が必要だと思います。後のほうの問題は、メディアの方の協力も得なければならないと思いますし、国と我々医療人も積極的に訴えていく必要があると考えています。ほかにどなたか。
○山口委員 同じようなことを、前にも言ったと思うのですが。専門医の所在あるいは勤務している所を公表するという話は、現在、実際に広告ができる学会でも公表していない学会が結構あるのです。「事務局にいらっしゃればお見せいたします」というような形です。そのところの一番の問題は、これは個人の資格なので、個人情報を開示したくないという人について、学会がそれを認めているということにあるのです。これからの専門医がそういう公的な責任を負っているという自覚を持たせるという意味では、むしろきちんと開示をして、どこにどの先生がいて、どういう専門医がいるということをオープンにする、したくない人には専門医を与えない、というぐらいの話が必要なのではないかと思うのです。
ただ、そういう情報がたくさん出ると混乱するかどうかというのは、それは一つには、基本領域プラス、サブスペシャルティの領域の専門医を、どの程度の者をサブスペシャルティの専門医、あるいは公表、広告できる専門医とするかという議論がまだ十分されていませんので、そこにも原因があります。それが非常に細かいところの、うがったような専門医まで認め、そして、その認めたものは全部公表するとなると、これは確かに、必ずしも専門医の公表が患者さんの受診行動にプラスになるというわけにいかないという話になると思います。それはむしろ、基本領域は問題はないと思うので、こういうところでどういうサブスペシャルティを認め、しかも、そのデータを公示していくかという議論がやはり必要なのではないかと思います。いつか機会があれば、是非その議論をしていただくのがいいと思います。
○高久座長 それは時間的にいって無理で、やはり第三者機関にある程度委ねる必要があるのではないでしょうか。ただ、県単位で専門医のいる病院や診療所をホームページか何かで分かるようになっているのではないですか。
○高山委員 基本的に、医療機関情報システムということで、医療機関の情報は、かなり開示するようになっています。ただ、デリケートな部分があります。例えば大阪府などは二階建てにしていまして、医師のみが見られるサイトはもう少し詳しい情報がそこに載っているという取扱いはしていますが、どこの県でも、この前の医療法の改正の中でかなり開示するような制度になっています。
○座長 なっていますよね。当然、患者さんも見られるようになっていますね、一般の方が。
○池田委員 現在、専門医の広告の基準に関しては、いわゆる平成14年の外形基準に基づいて、それを満たす団体が認定する専門医は広告してよろしいという仕組みが出来上がっているわけですが、今回のこの検討会を機に、専門医はどういう所が認定をして、どこが認定した専門医ならば広告してよろしいというコンセンサスをここで得ていただきたいと思います。今までのまとめでは、第三者機関が認定したような専門医は広告してよろしいという格好になっています。それはなぜかというと、外形基準ではなくて内容を伴っている専門医であることが一応認定されたということで、そこで認定された専門医は広告してよろしいという仕組みになっていると思います。
それでは、第三者機関が認定する専門医というのはどんな領域なのか。今、山口先生がおっしゃったように、現在、我々の機構には80学会が加盟しているのですが、それを全部、第三者機関で認定する専門医としていいかどうかというのは、これからも議論しなければいけませんし、どの範囲までを第三者機関として認定するのかという議論は、恐らく日本全体の医療界でも議論しなければいけないのです。私どもとしては、日本医学会とも連携をとりながら国民が分かりやすいような形の、ここぐらいまでの専門医だったら、やはり認定することはいいでしょう、あまり細かい、あるいは、症状や病気の名前の付いた専門医をどんどん作っていくというような形になるとかえって医療現場は混乱することになりますので。是非、その辺の議論をする仕組みも考えていきたいと思っていますし、学会が、それぞれ、専門医制度を作ることを誰も止めることはできないと思いますが、やはり学会が認定する専門医と、国民的な視点に立って第三者機関が認定する専門医とは自ずと違ってくるというところを基本的には捉えていくべきではないかと、私自身は思っております。
○桃井委員 現在の専門医制度の大きな三つの問題点のうち二つは、第三者機関を立ち上げることで解決すると思うのです。その二つとは、今は各学会が認定しているということ。これは、第三者機関を設立することで解決されます。もう一つは、専門医のイメージが混乱していること。これも、既に協議されましたので新しい機関で解決されるでしょう。最後の3番目の問題、専門医を取ることに何らインセンティブがないという問題は、議論はまだ全くされていません。今は、各医師が認定のときにお金を払い、更新もお金を払いとお金を払い続けて、それが何ら診療報酬にも、あるいは病院の収益にも、あるいは自分自身の収益にも全くならないという形になっていて、正に医師各人の質に対する満足感を満たしているだけという状況にあります。
しかしながら、専門医は国の財産としての医療人の育成ですので、質を担保するためには、専門医を取ることに関してインセンティブがなくてはいけないと思います。この新しい機関で専門医を取得する、そして、その質をキープし続けることに関するインセンティブをどうするかを十分に議論して、作っていただきたいと思います。
○池田委員 私も桃井委員の御意見に全く賛成です。最近、いくつかの学会で、専門医制度の改革はどうなっているのかということでお話をする機会があるのです。そのときに、それだけ努力して取った専門医には何のインセンティブがあるのかと、そこを議論しないで通り過ぎるのはどうなのかという質問をたくさん頂きます。私は、とにかく今は質の向上を目指して制度を作る、しかし、やはりインセンティブの議論はどうしても避けて通れないのでなるべく早い時期にやるべきである、というような答えをしています。ただ、多くの先生たちは、インセンティブはすぐに、ドクターズフィーという形で考えるのですが、インセンティブを必ずしもドクターズフィーに結び付ける必要もなく、別の形でもいいので、専門医を取ったことが取った個人にとってどういう良い点があったのかということも明示しておく必要はどうしてもあるかと思います。ですから、インセンティブの在り方も含めて、是非検討していただきたいと思います。
○高久座長 現在、専門医を持って広告をしている方々に対する対応という問題は当然起こってきます。これがいつのことになるか分かりませんが、この専門医制度が本当にスタートして若い人が取るようになったときには、アメリカの様に、専門医でないと看板も出せないということにする。それには、かなり時間がかかりますし、非常に難しい問題もたくさんありますが、将来的には、そうしないと患者さんの信頼が得られないでしょう。これが一番大きなインセンティブになってくるのではないかと、そのように考えています。ただ、問題はたくさんありますから大変ですが。ほかにどなたか。
○小森委員 医療制度上の位置付けのことについて発言をさせていただきたいと思います。中間取りまとめの五つ目の○の「将来的には考えるべきである」。正にそれが座長がおっしゃったことだと思います。それから、池田先生もおっしゃいましたように、我々が今、議論しているのは専門医、いわゆる医師の資質の向上をまず目指そうと。ここに、それは第三者機関によって行い、学会(日本医師会、日本医学会)との強力な連携の下にこれを認定していこうと、国が関与することではないと、そういう意思であると思います。その上で、国民の方々に新しい専門医が評価される時代が、恐らく遠からず来るであろうと、その上で標榜科等については考えるという、こういう順序であろうということを主張しているのです。そこで軽々に、医療制度上の位置付けについてあまり安易に議論をいたしますと、やはりこれも本末転倒ではないかという認識を持っております。発言をさせていただきました。
○高久座長 どうもありがとうございました。ほかにどなたか。
○門田委員 この中間まとめの1番の「検討にあたっての視点」の一番最初に書いていますが、今、我々がディスカッションをしている基本領域の専門医というのは決して、スーパードクター的なものではないという前提で私たちは集まっているのですね。
○高久座長 そうです。
○門田委員 ということは、患者さんから信頼される標準的な医療を提供できる医師ということで、これは一応ここでコンセンサスが得られるということからすれば、やはりこのことは特殊なインセンティブがあるとは、私は思えないです。医師の免許証は持っている、その次にある領域の標準的な診療をすることができる人間ということになり、これはやはりその領域を担当する人だと認められたという流れが出来ているのではないかと。ただ、どの段階で実際の標榜科をどうするかというのはディスカッションが必要だと思いますが、方向性はそうなっているのではないかと。そこでサブスペシャルティの話が出てくるから話は複雑になるのですが、やはりプロフェッショナルとスペシャリストと、ここのところを使い分けていかないと。同じ単語でもって使いだすと、また話がこじれてくるのではないかと思います。ただ、少なくとも、今、我々は、医療制度の中に持ち込む専門医ということでプロフェッショナルという制度の中に入っていくという形だとすれば、やはり早い時期に標榜科辺りを検討する必要があると思うのです。
○藤本委員 先ほども申し上げましたが、医療の流れを作るためには国民に対して、ここに行ったら、次、こうだよ、ということが分かるようにすることが必要なのです。そうすると、やはり制度が動きだすと共に、標榜科あるいは広告も連動してやっていかないと効果がありません。患者がそのような受診の仕方をしなければ、いくら医療の質が向上するといっても、それはお医者さんたちの自己満足に終わってしまうわけです。ですから、その流れを作る分かりやすい説明をする、そして、分かりやすい表示をすることは、順番として後になるものではなくて、同時進行でやっていただきたいと、私は思います。○高久座長 池田先生、第三者機関には一般の方にも入っていただくわけですね、学識経験者として。
○池田委員 第三者機関の在り方については少し議論をさせていただきましたが、また機会を作って、是非この検討会でもやっていただきたいと思うのですが。私自身としては、第三者機関は自己点検評価ができる機関であって、外部評価も必ず受けていかなければいけないという、そういう二つの性格を兼ね備えた組織でなければいけないということがあります。中の具体的な、例えばプログラムを作って認定していく、これはそれこそプロフェッショナルオートノミーでやっていかなければいけない。ですから、外部評価というところには患者さんの視点等々、たくさんの意見を頂くような仕組みを作っていかないと、やはり第三者機関としてはうまく機能しないだろうと思っています。
○高久座長 ほかにどなたか、御意見があるでしょうか。それでは、最後の課題は「国の関与の在り方について」です。これは事務局から説明していただけますか。
○医師臨床研修推進室長 かしこまりました。資料2、最後の4ページです。四つ目「国の関与の在り方について」は中間まとめの中では「専門医を認定する新たな仕組みの構築にあたり、専門医の質の確保、地域偏在・診療科偏在の是正、第三者機関の運営に対する国の支援を含め、国による関与の在り方について」と記載をされております。論点といたしましては、専門医を認定する新たな仕組みの構築に当たり、国による関与の在り方についてどう考えるかを挙げさせていただいております。以上です。よろしくお願いいたします。
○高久座長 これについてはどなたか御意見おありでしょうか。
○小森委員 これも何度も申し上げていることですが、ただ国の支援を受けざるを得ないところがあるのです。それは私は当初から申し上げていますが、様々なデータベース、住民の例えば2025年にどのような様々なデータを駆使しながら、住民の配置はどうであるのか。地域にどれくらいの年齢の方がどのように居住しておられると推定されるか。年齢構成、あるいはまた年々の様々な医療あるいは特定検診、特定保健指導等の行政的な問題等を含めて、どういった疾病がどの地域にどのくらい発生されると考えるのか。そういったことについて、医療提供者としては住民の方々とともに、その地域地域で最もそこに適した医療提供体制というのをやはり住民の方々と作っていく必要があります。そういったデータベースというのは、これは国の支援がなければとてもできないと思っております。そういうところでは、私は国に是非支援をしていただきたい。
ただ、何度も申し上げますが、この専門医の認定に国が関わることや、あるいは第三者機関に国が財政的な支援を行って、そこで管理医療の方向にもっていこうとしてないと言われるかもしれませんが、歴史的な事実もあります。そういったような関与についてはあえて拒否するということです。
○高久座長 どうもありがとうございました。ほかにどなたが御意見をどうぞお願いします。
○山口委員 以前にも言いましたが、新しく第三者機関ができて、新しいプログラムができて、それに乗かって、新しい専門医が誕生するとしても、早くても2020年にようやく新しく誕生するという話です。プログラムを作る段階でも、それなりの医師あるいは診療科の偏在みたいな問題には、それぞれ学会あるいはそれの専門家たちが考慮してプログラムを作ることになるだろうと思います。しかし、現在機構で把握しているのは、それぞれの学会の専門医になった人は把握をしていますけれども、現在トレーニングを受けている人、それから2020年までに古いシステムで、学会の認定で研修を受けながら専門医となってくる人、これについては専門医を取るまで、全くどこにどのくらい専門医研修中の人がいるかという情報はない。今せっかく初期臨床研修を終わって、そのあとの専門研修へいくところまで国である程度の把握はされています。是非、専門医専門研修を受けている人たちに関するデータを国の費用をかけて、把握するようなことをしていただきたい。そうすれば、先ほどの医師の偏在の話あるいは診療科の偏在の話について、これからプログラムを作る段階でそれなりの配慮をするためのデータとして役に立つのではないかと思います。新しくここで検討されていることが効果を現すのは随分先の話なのです。それまでは従来の形で現在進行している専門医の養成についても、やはりフォローしていかなければいけないと思います。もちろん機構もお手伝いをしなければいけないと思いますが、そのデータが欠けているところを国の力で補っていただきたいと思います。
○高久座長 池田先生、機構では大体基本領域は5年か6年になっているのですね。
○池田委員 そうですね。初期臨床研修を終わったあとに、現時点で考えられているのは、どの専門医コースに入って研修を受けるかを事前に登録していただきます。実際に既に外科系の学会では事前登録制度を取っています。そうすると、例えば、3年先にはその領域の専門医は何人できるかがデータとしてきちんと把握できるということになります。そうすると、常に3年、5年先を見ながら、現時点でものが考えられるという格好になります。その事前登録制で専攻医を把握するということができるように仕組みを今考えています。それに対して、今、山口先生が言われたような格好で是非データベースを作っていく。そういうことも含めて、データベースを専門医に関して作っていくのは、かなり大がかりなシステムを組まなければいけないので、国の支援をお願いしたいということが一つあります。
それと同時にもう一つは、やはり静岡県から話がありましたように、地域で研修プログラムをうまく作って、いい医師を育てたいという取組があちらこちらで出てきています。そういうプログラム作る。そして、そのプログラムが実際に効率良く運営できるように研修施設等の充実に向けて、国が是非バックアップをしていただければ、新しく提案された専門医制度改革が実効あるものになるのではないかと私は思ってます。国はそういう形で是非絶大な支援をしていただけたらと私自身は思います。
○高山委員 国の関与ではないのですが、行政との関係といいますか、都道府県行政との関係をある意味きちんと認識し位置付けておくべきではないかと思うのです。そういう意味で、現行でも既に地域医療対策協議会、地域医療支援センター、さらにいえば医療計画というスキームがあります。それは各地の試みでは、一定機能しているのです。ですから、そことの関係で第三者機関がどういう連携をするのかは、きちんと議論すべきかと思います。
そういう意味では、我々都道府県行政の観点から国に求めたい支援としましては、やはり今出ておりましたプログラムの作成の支援であるとか、指導・育成の支援であるとか、データベースの構築、その提供を非常に重視したいと思います。
○高久座長 地域医療支援センターは今、何県ぐらいでできているのですか。
○医事課長 現在、都道府県に1か所ずつ地域医療支援センターを整備する方向になっておりますが、現時点では20か所準備をされております。
○高久座長 はい、分かりました。これから全県に作る予定ですね。
○医事課長 今、20か所と申し上げましたのは、国から補助金を出している数でありまして、そのほかで地域医療支援センターと同様の事業を行っているところは、4か所あります。来年度はさらに先ほどの20か所から13か所増やすように、概算要求をしているところです。
○高久座長 ほかにどなたか御質問、御意見がありますでしょうか。
○今委員 専門医の機構では専門医の数とか、何県に何人いるとかは、今も学会で把握して、今後も把握できるかと思うのです。しかし、その症例数が多い、少ないなどがなかなかで、例えば外科の手術症例であれば、若しくは脳外科のくも膜下出血の手術症例では、容易に把握できます。しかし、脳外科領域の脳梗塞についてはなかなか把握できてなくて、脳外科専門医に聞いても、何か分からないと。先ほど、今日の会議の冒頭でも話したように、DPCデータを利用することによってそれは明らかに分かります。外国の多くの所では、DPCデータを学会が使っていると聞きました。ですから、日本でももし国の関与が専門医制度に必要なのであれば、今、厚労省で公表していないDPCデータを学会が使えるようにする。そうすると、例えば脳梗塞のような分かりづらいデータもDPCからあっという間に分かって、脳梗塞の治療をする医者が何人いればいいかがすぐ分かるのではないかと思います。
○高久座長 ただ、専門医がいても、DPCに加盟していない病院がありますね。
○今委員 そうなのですけれども、でも今の日本の例えば脳梗塞の把握がほとんどできてなくて、それにある程度近いデータがDPCから拾えるのではないか思います。
○藤本委員 データということでいいますと、私たちの地域は医師不足が厳しい地域で、いったいどういう患者さんがいるのだろうということを調べたくて、保険のほうからで調べようと思ったことがありました。そうすると、国保、社保などといろいろな保険がある中で、行政としてもきちんと把握されていない。どういう患者さんが集まっているかは医療機関に行けば分かるのですが、それはたまたまここの地域にそういう医療があったから、患者さんが集まっているとか、ないから患者さんの数としてカウントされていないものもあると思います。医療機関ごとのデータはそれはそれとして貴重なデータですが、やはり保険をどのように使っているか。どういう医療機関に行っているかという住民の実態が分かるようなデータベースの一元化もとても大切ではないかと思います。
○森山委員 2020年が目標なのですが、あと2、3年すると、いわゆる地域枠がかなり出てきます。もう今、学年で1000人を超えています。そうすると、地域における大学病院を中心とした研修病院群の教育指導体制は、かなり充実しないと、地域でドクターは多数できるのだけれども、教育はできないということになります。そこにかなり、国は財政援助をしていただきたいなと思います。それと同時に、派遣されるドクターの個人的な財政支援は非常に大事なのではないかとは思っております。
○高久座長 ほかにどなたか御意見はおありでしょうか。
○桃井委員 前にも申し上げたかもしれませんが、女性の医学生が35%になっています。地域枠で育成された医師がこれからどんどん地域にでてきます。その中にも女性は同等%おります。医師を地域に派遣する立場からいうと、現状では子育て中の女性医師は遠方には派遣できません。遠方の病院の小児医療を何とか構築したいと願っても、派遣できる医師の母集団が育児中の女性医師の分減ってきます。文科省で大学病院を中心に女性医師支援のいろいろな事業があって、私どもの大学も国もその事業を使わせていただいて、女性支援センターが立ち上げて大変有効に活用されていますが、遠くに行けば支援できる御家族がいないわけですから、親の支援を受けられない地域の病院にこそ24時間の保育、そして病児保育システムがないと、とても女性医師を派遣できるというわけにはいきません。
今から、どのような医師も派遣できる地域の体制の整備について財政の枠を取っていただかないと、女性医師がフルタイムで十分に活動できるという状況はできません。専門医の機構に対して國がどう支援するかとは別にこの面でも財政の構築をお願いしたいと思います。
○高久座長 はい、分かりました。ほかにどなたか御意見おありでしょうか。
○小森委員 日本医師会で女性医師支援男女共同参画も担当している小森から発言をさせていただきます。今、桃井先生のおっしゃられたことは非常に重要な問題であります。御承知のように、国家試験合格者が30%を超えております。女性医師の方々が御自分の能力を最大限発揮をしていただくことがこれからの我が国にとって極めて大切なことです。日本医師会が調査をした結果によりましても、女性医師の方々が専門医制度、現在の制度によっても、専門医を取得することが困難である。また、継続が極めて困難であると回答しておられます。女性医師の方々がそれぞれの御自分が天から与えられた能力を最大限に発揮されて、素晴らしい専門医になっていただくためには、これは支援は欠かすことができません。是非、その点を強力にお願いをしたいと思っております。
○高久座長 第三者機関でもその問題を考える必要が当然にあるでしょう。ほかにどなたか国の関与ということで、あるいは何でも結構ですが、今までのことでありますか。
○平林委員 今はまだ言うべきではないのかもしれませんが、ただ問題として確認しておきたいことは、医療制度の中で、国がどう関与するかといった時に、これを最終的に法制度の中にどう落とし込んでいくかも最終的には議論しなければいけないと思います。今はまだ広告の問題と標榜科目の問題だけが出ておりますが、専門医制度である以上は、既存の制度の中にどう落し込んで整合性を取って、正統的な担保をしていくかと問題もいずれ出てくると思います。問題提起だけを忘れないようにしておきたいと思います。
○高久座長 特に、広告の問題や、標榜の問題がいずれ出てまいります。その時はどうしても法律的で対応しなければならないだろうと思います。ほかにどなたか。第三者機関のことは、いずれ議論する必要がありますね。
○医臨床研修推進室長 失礼いたします。資料5を御覧いただきますでしょうか。検討会のスケジュールということで、過去の分も入れてありますが、実は第三者機関については前回10月に二つめの・で専門医の認定機関として一応議題として挙げさせていただいておりました。ただ、時間等々の関係で、十分に議論が深化しなかった部分については、今後また改めてという機会ももちろん設けたいと思っております。
○高久座長 そうですね。分かりました。それから、次回は12月に開くのですか。もう12月になるのですが。
○医臨床研修推進室長 はい、12月下旬頃を予定させていただいております。また、日程が確定次第御案内申し上げますが、ちょっとここで医事課長から一言発言させていただきたいと思います。
○医事課長 先ほど医師の偏在是正について事務局の資料について御意見をいただいたのですが、これは我々が専門医と医師の偏在との関係について、強い関心を持っているということで、こういう資料を準備しております。これまでの意見も十分に理解をし、またそれを踏まえておりますが、この専門医とその医師の偏在について議論を更に深めていただきたいと資料を準備をしてきたものです。本日はそういうこともどういう影響があるのかも分かりませんが、我々としては必要な議論が行われて、活発な議論が行われて深まったのではないかと思っています。ありがとうございました。
○高久座長 よろしいでしょうか。
○池田委員 今後のスケジュールを拝見しますと、次回が「総合医」「総合診療」の在り方について、あるいは養成についてですので、この領域については以前に福井委員がプレゼンテーションした時も含めて、やはり地域を診るお医者さんという考え方が強く出ると私は理解しています。ですから、本日、随分地域医療の話が出ましたが、そこでこそ私は「総合医」「総合診療医」の議論の中で、地域との関わり合いという方向で議論していただけたらいいのではないかと思います。
○高久座長 今、池田先生のところでも「総合医」「総合診療医」の問題の議論をしておられるのですね。
○池田委員 機構では「総合医」「総合診療医」の在り方に関する検討会を実は金澤先生に委員長を務めていただいて、小児科、内科、外科、救急医学会、そして日本医師会あるいは日本プライマリケア連合学会、病院総合診療学会等先生方、代表に出てきていただいて、「総合医」「総合診療医」というのは、どういう医師像で、どういうトレーニングのプログラムを作ったら、いい医師が育つのか、ほかの領域の専門医との役割分担等も含めて議論をして、今まで3回議論をして、今まとめの段階に入ってきています。もちろん、これは機構の中で立ち上げた委員会なので、機構の理事会でも議論していただいて、その成案を得たら、ここで発表させていただこうかなと思っております。
○高久座長 よろしくお願いします。それでは、あと11分くらいありますが、これで本日の検討会を終わらせていただきます。活発に御議論いただきまして、どうもありがとうございました。
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