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2013年1月30日 第4回再生医療の安全性確保と推進に関する専門委員会 議事録

医政局

○日時

平成25年1月30日(水)17:00~19:00


○場所

厚生労働省(12階)専用第15・16会議室


○出席者

永井委員長、西川委員長代理、位田委員、伊藤委員、今村委員、梅澤委員、掛江委員、澤委員、辰井委員、中畑委員、野村委員、花井委員、早川委員、前川委員、町野委員、松田委員、宮田委員、大和委員

原医政局長、神田審議官、吉岡医政局総務課長、鎌田経済課長、佐原研究開発振興課長、荒木再生医療研究推進室長
松岡医薬食品局総務課長、赤川審査管理課長

○議事

○永井委員長 時間になりましたので、第4回再生医療の安全性確保と推進に関する専門委員会を始めます。委員の先生方には、お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。本日は、18名の委員全員の御出席をいただいていますので、本会議は成立していますことを申し上げます。頭撮りは、ここまでとさせていただきます。
 それでは、事務局から本日の資料の説明をお願いします。
○荒木室長(医政局研究開発振興課再生医療研究推進室) 本日は全員出席ということで、お忙しい中ありがとうございます。資料の確認をいたします。議事次第のところに配布資料ということで、資料1から3があります。資料1は「再生医療の安全性確保と推進に係る日本再生医療学会の考え方」で、澤芳樹委員から提出いただいた資料です。資料2は「細胞を円滑に入手できる仕組み」ということで、大和雅之委員から提出いただいた資料です。資料3は「再生医療の安全性確保と推進のための枠組み構築に関するこれまでの議論の整理(案)」を付けています。資料については、以上です。
○永井委員長 それでは、最初に澤委員から「再生医療の安全性確保と推進に係る日本再生医療学会の考え方」について説明いただきます。
○澤委員 再生医療学会から、この「再生医療の安全性確保と推進に係る再生医療学会の考え方」についてお話させていただきたいと思います。再生医療学会では、この数年来再生医療を安全、有効、かつ迅速に普及させるために、特に規制改革を中心にいろいろな活動を行ってまいりました。資料の一番後ろを見ていただきますと、15ページに「YOKOHAMA宣言」とあります。これは、昨年の再生医療学会で声明を出させていただきまして、先ほどの再生医療学会の理念を掲げながら、それをいかに実行していくかということで、要望、取組等を宣言の中に盛り込んだ次第です。今日は、その流れから、今、我々再生医療学会での考え方、そしてこの委員会における意見を述べさせていただければと思います。
 まず、1枚目のスライドですが、先ほどのYOKOHAMA宣言の中から抜粋しています。規制当局への再生医療研究者・開発者からの要望としては、ここにありますように、再生医療というのは従来の医薬品や医療機器とは特性が異なると。その科学的妥当性を踏まえながら、適切な規制が必要だという観点を強く持っており、そのような観点から再生医療製品の臨床試験における有効性評価の方法について、是非検討いただければと思います。
 それについては、例えば症例、疾患によっては重症度が異なります。場合によっては、ランダム化を全てするというような医薬品の形式にはとらわれないデザインの設定が重要ではないかと考えています。2番は、上市後の臨床評価を重視する方向での早期承認も考えています。この承認審査段階で安全性が担保されれば、あとは承認若しくは条件付きという形でも、市販後調査等を踏まえた形の評価方法を重視して、上市をしていただければと思います。3番は、製品に利用される細胞の多様性への配慮も必要だろうと考えています。
 このような観点から、再生医療学会では、逆に私たち自身の取組として、これまで審査側と学会の情報交換会の開催や、専門分野ごとのプール委員を確保するために、私たち学会では各評議委員の専門を分野化して既に登録をしています。今後、そのような流れの中で、再生医療製品承認のための、より迅速な承認のためのガイドラインを作成していくべきではないか。それから、再生医療製品の対象疾患に対して、その評価を適正に行うためのレジストリーを作るべきで、安全性・有効性も踏まえたデータベースを構築していくべきだろうと。さらに安全性の確保、すなわちクオリティーコントロールのために、臨床研究・治験用試験物製造・調製にふさわしい細胞調製施設並びに細胞調製認定技術士等、認定制度と、技術士の教育システムの構築が重要だと考えて、この方針を立てています。
 次に、ガイドラインのお話をさせていただきます。ガイドラインについても、我々の考え方としては、重症臓器不全、若しくは重篤な遺伝性疾患、難治性疾患など、いろいろな疾患群がありますが、直接生命に影響しない領域の疾患もありますので、安全性・有効性の希求水準がそれぞれの疾患によって異なるという観点を踏まえた領域・疾患ごとのガイドラインを作成し、その水準を提言していくべきと考えています。
 さらに、先ほども申しましたが、データベースを構築するということは、これは再生医療に携わる臨床の専門医として非常に重要だという観点を持っています。ある程度ノウハウが蓄積されてきて、比較的リスクの低い幹細胞を用いた臨床研究等については、ここにありますようなヒト幹細胞の審査も含めて、学会が科学的評価について積極的に協力していく。先ほど申しました専門員を派遣する、若しくはそれを確保しておくことを進めています。このような形で、学会ではデータベースを構築しながら、Evidence besed medicineを確立して、各領域においてのレジストリーを、製品若しくは以後の製品開発にもフィードバックできるようにしていきたいと考えています。
 さらに、次の考え方として「施設・技術者の認定」です。これは臨床研究に当って、医療機関同士の培養細胞の提供を可能にしていく場合、安全確保やQuality Controlが非常に重要ですので、その培養施設や培養技術者の認定も、当学会が再生医療に関しては積極的に役割を担っていきたいと考えています。さらに安全な細胞加工技術の確立、培養施設や培養技術者の教育や選定、また予期せぬ事態への対応、患者への啓発など、適切な運用に関わる役割を学会自身が積極的に担っていくべきと考えています。
 これは、既に御存じの方が多いと思いますが、一昨年に起こりましたベセスダ以後にも、資料にはありませんが、毎日新聞が取り上げました来日韓国人に幹細胞を月500人以上投与している状況です。これは正に自由診療下で行われていますので、法規制が全くないということですが、やはり安全性に問題があれば大変な事故が起こると。再生医療学会としては、このように行われる行為に対して、これまで提言を何度も出してきています。
 このような診療も、やはり細胞を培養する、若しくは細胞を一旦体の外に取り出して体に戻す形で医療を行うことについては、私たちが行っています臨床研究、若しくは企業が中心となる薬事法のトラックで行われている製造販売等と同一であるべきだろうと。これが、患者の安全性を確保するのに必須ではないかという考え方をしています。すなわち、医療として提供される再生・細胞治療については、薬事法のトラック、それから医療法のトラックがあるかと思いますが、それらについては再生医療のみならず、細胞を利用する全ての医療に対して、細胞培養加工施設の認定が等しく遵守されるべきではないかというのが、再生医療学会の考え方です。
 次に「再生医療実用化に向けた新たな制度的枠組みへの期待」として、既に先進医療Bがスタートしています。この活用、それから従来の企業治験による承認審査の流れと併用しながら、また流動的に活用させていただきながら、承認後の臨床試験条件の評価を行いつつ、保険収載に向けて、このようなトラック、流れを作っていただくことを期待して、切れ目のない新たな支援の制度を強く期待している次第です。
 「ガイドラインの作成」については、これまで厚生科学審議会、医薬品制度改正検討部会で取りまとめられています。これらについても、私ども再生医療学会は積極的に意見を述べさせていただいて、実際にその方向に進んでいることを深く感謝申し上げたいと思っています。また、医療イノベーション5か年戦略にも、細胞培養施設の基準の作成に向けた検討を行うことや、国際的に整合性のとれた革新的再生医療製品のガイドラインを整備することが盛り込まれています。これらは、全て流れが一貫して政策として進められつつあることを、私たちは高く評価したいと考えています。
 「ガイドラインの考え方」として、「現状の課題」は、臨床評価の適切な指標が十分に検討されていない。治療領域に応じた基準づくりが必要であろう。さらに、技術の進歩に応じて順次改定が必要であろうと考えています。「ガイドラインが示唆すべき事項」としては、新たな治療機会の提供であることが重要である。また、評価上の判断の根拠とできるガイドラインであるべき。また、被験者の不利益になるような治験デザインは作るべきではない。また、最新の臨床試験が具体的に反映されていく、そして新たな実施者の参考書に成り得るようなガイドラインが妥当かと考えています。
 私たちが今考えていますのは、既に実施例を中心として疾患別のガイドラインの検討を行いながら、それらの検討を集約させながら、そしてまた再生医療学会のみならず、他学会も既にこのようなガイドラインや、先ほど申しました培養施設、若しくは培養士の基準等も検討されておられますので、このような細胞培養を中心として関連学会が協議会を作って、そこで種々の学会が議論して厚生労働省に提言していくAll Japanの体制が大変重要ではないかと考えています。
 もちろん、この次世代医療機器評価指標通知が既に議論されてまいりまして、ここにありますような種々のガイドライン、特に赤で示しますような再生医療製品のガイドラインが作られて、一部には審査に活用されようとしています。ただし、先ほども申しましたが、これらのガイドラインが作られて、また技術の進歩があったり、常に見直し、若しくは改定が大変重要だという観点から、先ほどの関連学会協議会を通じて、種々に対応、適応していくべきではないかと考えています。
 これは参考ですが、先ほどお聞きしました前川先生も既にこのような基準づくりや培養技術士の認定や培養施設の整備も行われておられるようですし、ここにあります日本免疫治療学研究会でも、このような考え方を持たれている。すなわち各学会がやはり同じ意識の下に、安全かつ有効、迅速に再生治療・細胞治療を普及させていきたいと強く考えています。この同じ思いを持つ各学会が、All Japan体制で協議会を作って、このような審査ガイドラインや培養施設基準等を検討して提言させていただければと考えている次第です。以上です。
○永井委員長 ただいまの説明について、御質問等ありますか。
○西川委員長代理 先ほど、毎日新聞のことが出されましたが、学会としてはどのような対応をしたらいいというサマリーになっているのでしょうか。基本的に、これだけではなくて、いろいろな可能性があり、なおかつ日本の人が逆に外国に行くというところまであるわけですよね。しかも、初めからそのような申請をしてくる可能性は少ないところなのですが、どのような形を考えているのですか。
○澤委員 再生医療学会は、とにかく自由診療に対してどうこうというのは、基本的には言う立場ではないと考えています。特に、細胞治療をいろいろ行われている方々に対してですね。しかし安全性と倫理性が大変重要ですから、それを重視すべきということを声明文で出しています。ですから、どちらかといいますと、安全性と倫理性を十分に踏まえるべきという声明で、これまでやってきたわけです。
○西川委員長代理 実際にはずっと昔で、私も一時それに関わっていたときに、私どもの研究所でダグラス・シップさんがこの問題を一生懸命やっておられました。特に、日本の方が行かれるという部分に関して、いろいろな国に要望を出したことがあります。そのときに唯一お願いできた例で、しかし守られていないのは、とりあえず登録してくださいと。何が行われたかと、誰に行ったかだけの登録を、少なくともアジア全体なりでやってほしいという要望を出しましたが、ほとんどそれは梨の礫です。ですから、これが日本で行われているなら、私も逆にびっくりしたわけです。どうしたらいいか難しいですよね。
○今村委員 基本的な考え方には、全く賛成です。ガイドラインを複数の学会で作成していくということですが、そのガイドラインの妥当性はどのような評価がされるのですか。端から見て、それが妥当かどうかは。
○澤委員 ガイドライン自身が、客観的に作るメンバーとしていろいろな領域、施設に偏らない方々を集めて作らせていただく形で、これまで通知にも出ているようなガイドラインが作られています。やはり、そこをどうやって客観性を出すかは、学会がということで、しかも複数の学会が議論してということでしか、まだ今のところ私たちも言えないです。ですから、それが出てきたガイドラインをどのように行政側が取り入れていただけるかは、1つのあれになるかなと思います。
○今村委員 恐らく、ガイドラインを作っていかれる中心メンバーは、先端的な研究者が中心になるのではないかと思います。ともすれば、それが先走り過ぎてというような懸念もときどき見受けられるので、少し引いた所からの観点も必要かなと思います。
○澤委員 その辺りは十分配慮してやるべきだと、学会も考えています。
○永井委員長 確かに、既存の治療との比較が当然重要になるわけですから、先端の研究者だけではなく、既存の治療について十分理解している人と議論しないといけないと思うのですね。
○大和委員 最終段階に、パブリックコメントとして広く皆様から御意見を頂戴するというステップを必ず入れるようになっています。先ほどの澤先生の資料にもありましたが、再生医療学会から出すものに関しては、理事会でオーソライズされたあとに、例えば整形領域であれば整形外科学会、あるいは更に細分化した学会等とコミュニケートするというスキームになっています。我々のところで勝手に独断的にいくというようなことがないようにしています。
○永井委員長 ほかにいかがですか。
○中畑委員 今まで我が国はヒト幹の指針を作られて、一応新しい幹細胞を用いた治療に関して、やはりその指針に沿ってやるべきだという形で、中央審査という体制で審査をして、各施設の倫理委員会だけではなく、公平な目で中央でも審査をして進めるという形で、比較的機能してきたのではないかと思います。その指針で、もし足りないところがあるのであれば、それに対して外からアドバイスを頂くと。やはり、基本となるような指針は、現在行われてきた幹細胞を用いた臨床研究の指針というガイドラインに沿ってやるべきで、幾つもガイドラインが作られて、結局それぞれが相矛盾するような形になってしまうと非常に問題があります。何を基本にしてこれから議論を進めていったらいいかは、私自身はある程度ヒト幹の指針の改正を今回考えているわけですので、そこにできるだけ幅広い意見を集約するような形で、公平な目で見た指針を作っていくべきだと思います。
 もう1つは、このヒト幹指針がせっかくできて動いているにもかかわらず、日本の中にもそれに違反して医療行為を行った施設があるわけですね。そういったことに対して、今までは特別罰則規制もなかったわけですからあれですが、学会として除名にしたのか、あるいは何らかの警告をしたのかに対して、どういう姿勢で臨まれてこられたのか、その点だけ少し説明いただけますか。
○澤委員 ガイドラインといいましても、臨床研究は全て等しくヒト幹でやるべきだと思っています。これは、製品化に向けたというか、治験承認における審査のガイドラインということで、私の説明不足で混同がありましたら、そこはそのようにお考えいただければと思っています。ただ、培養の基準等については、我々は当然ヒト幹で幾つも申請し実施しているのですが、そこにおける基準は、早川先生からお話を頂いたほうがいいかもしれませんが、薬事法下の考え方、ヒト幹の考え方、また自由診療の考え方も、やはり安全性という観点のミニマムリクワイアメントは等しくあるべきではないかと考えて、この培養施設基準等が作られるべきと考えています。
○荒木室長 後者の罰則というか、当然、指針上は大臣告示ということで守っていただきたいということで、研究の方については守っていただいていると思っています。具体的な罰則は当然ありませんが、指針を守らなかったという道義的な意味合いで、例えばそこに公的な研究費助成があれば、そちらについて何らかの対応をしなければいけないということはあります。
 それから、先生の御質問の部分は、再生医療学会として、例えばその方が再生医療学会に加盟された場合に除名をする、あるいは警告を発するかということだと思いますが、そちらは澤先生にお返しします。
○澤委員 そちらは、これまでそういう方がうっかりという話を聞いているのですが、学会委員でアカデミアの施設でヒト幹に申請せずにされた施設がありました。そのような所には、やはりこういうことがないようにという警告を皆さんにお出ししたと。実際に、具体的には除名等の処分はしていませんが、学会員の中でいろいろな方がおられますので、このような自由診療に携わっている方もおられますので、その辺りは今後再生医療学会としてどのような形で対応していくかは、今ちょうど議論をしているところで、罰則規定、除名規定はまだ実行はしていないということです。ただ、そのような方が新聞等で出たときに、再生医療学会はすぐに反応して、そのような声明、警告を常に出しています。
○永井委員長 よろしいでしょうか。
○早川委員 今の中畑先生の話と関連するのですが、今は3つのルートがあるわけですよね。いずれにしても共通項は細胞を使うというところなので、細胞を使う医療に関して本来的にいえば憲法というと言い過ぎですが、そういう意味での全体をオーバーアーチィングできる考え方に従うべしというような、そのような大きな憲法のようなものがあり、それからその下に例えばヒト幹の場合にはヒト幹指針がありますから、それに従ってやると。薬事の場合には薬事と、それぞれ多少の扱い方は違うにしても、それはそれぞれに応じてやる。医療法でやっているものも少なくとも大きなオーバーアーチィングの中で何らかの形でコントロールされるのが望ましいのだろうと思います。
 今、再生医療学会で出されようとしている非常に有益な部分は、更にそれを階層別に下に下げていって各疾患別に対応するものであると、私はそのような理解です。それと一番ボトム、最低限度これだけは細胞を使う限りは守るべきだと。もちろん、理念の問題は当然ベースメントとしてあるのですが、細胞を扱う上での基本の基本、これだけはどんなケースであってもやるべしというような枠組みが全体の構成としてできればいいのかなと思います。
○中畑委員 先生のお考えに、私自身も全く賛成です。そういうことになりますと、今自由診療で行われているような、例えばがんに対する免疫療法なども、ある程度の加算の中で行われていることでより安全な。どんな医療、どんなトラックに乗って医療を行うにしても、最低限の安全性は確保するような形で日本でも医療が進むのではないかと、それは非常に賛成です。
○西川委員長代理 学会としてできることと、できないことがあります。私自身、再生医療学会は余り経験がないのですが、一番最初に国際幹細胞学会ができたときに、最初から7年間ボードをずっとやっていて、立上げをやったときに、澤先生もおっしゃるように、このエリアはとてつもないプレゼンテーションのアプリケーションが出てくるのですね。なぜかというと、基本的には学会そのものをブランドに使われると。ですから、やはり患者たちも逆に例えば再生医療学会のポスターを出しているとか、ISSCRのポスターを出していることがものすごく重要になります。逆に言うと、最近は分かりませんが、最初から全部読ませていただいて、リジェクトするものはリジェクトする形の防衛をしました。
 ただ、今はその上に中畑先生がおっしゃる部分は、これはもう学会ではどうしょうもないと。ですから、そこに関してはやはり登録性なり、逆に学会でISSCR、シップさんを中心にメディカルツーリズムも含めた調査機関をもって提言をしていく形ですね。ですから、多分再生医療学会でも同じようにせざるを得ないと。一番怖いのは、先ほどのものもそうですが、日本をブランドにしたり、各学会をブランドにされる形で、記憶に新しい森口事件がありましたが、そのような形で使われないように、学会はしっかりと防衛をしていく必要があると思いますね。
○永井委員長 よろしいでしょうか。それでは、続いて大和先生から「細胞を円滑に入手できる仕組み」についての説明を頂きます。
○大和委員 女子医科大学の大和でございます。「細胞を」と書いてありますが、基本的に他家細胞をということでお話させていただきます。
 2枚目のスライドです。「薬事承認されている」と書いていますが、いずれも北米です。最後のProchymalがカナダで、それ以外は全部アメリカとなっております。他家細胞由来のいわゆるアロジェニックな細胞・組織加工製品では、古いところでは、TransCyteやApligraf、Dermagraftは1990年代に市販が承認されています。TransCyteは真皮由来線維芽細胞と合成高分子の膜で、創傷被覆材として売られております。
 ApligrafはいわゆるBell型の全層型人工皮膚であり、線維芽細胞を含むコラーゲンゲル、これが人工真皮に当たるのですが、その上に表皮細胞を播きまして、全層型の表皮と真皮からなる培養皮膚となっており、糖尿病などで生じる難治性の足裏の潰瘍の治療などに使います。
 Orcelは表皮はなく、線維芽細胞とコラーゲンゲルだけでできています。
 Dermagraftは、バイクリルというポリ乳酸、ポリグリコール酸のコポリマーですが、生体内で溶けて吸収される特種な合成高分子製のメッシュの上に線維芽細胞を播きます。線維芽細胞が培養の間にコラーゲンや細胞外マトリックス、細胞成長因子等をメッシュに沈着させ、これが移植後に徐放されます。これも人工真皮であります。
 Hemacordは、いわゆる造血幹細胞移植に使うアロの骨髄が商品化、薬事承認されているものです。
 Gintuitというのは、Apligrafと中身は全く同じもので、同じ会社が作っているのですが、Apligrafが比較的小さな難治性の潰瘍を適応にしているのに対して、Gintuitは、歯茎の治療に使います。これも全層型の培養皮膚です。
 ProchymalはGVHDの治療に使う、アロジェニックな骨髄由来の間葉系幹細胞です。ステロイド不応の小児のGVHDが適応です。カナダで承認が出ています。
 このような商品、Hemacordは骨髄ですし、Prochymalは骨髄由来の間葉系幹細胞ですが、残りの5製品に関しましては、全て細胞ソースは割礼包皮であります。アメリカはユダヤ教の方、ムスリムの方、カトリックの方が多数いらっしゃいまして、それらの皆さんはほとんど割礼を受けております。数にすると年間の割礼の回数というのはものすごいものがございます。どういうプロセスになっているのかよく分からないのですが、それぞれの会社に病院から渡りまして、原材料として使われています。
 日本では割礼の習慣はございませんが、包茎の手術ということで考えると、実はかなりの数の切除した包皮があります。現在では全て医療廃棄物として処理されていますが、こういう商品が作れる素材として、産業利用を考えてもいいのではないかと思うところです。
 我々は現在、成育の梅澤先生及び東海大の整形外科の佐藤先生と共同で、余剰指を細胞ソースとする軟骨再生の研究をおこなっています。この写真をよく見ていただくと分かりますが、指が6本ありまして、多指症といいます。もしくは5本ですが、途中から枝のように小さい指が生えているという患者さんが、疫学的には結構な頻度でいらっしゃいます。子どもの頃に切断するケースがほとんどだと伺っております。
 我々は成人由来の軟骨の細胞の培養を相当な量やっておりますが、成人由来ではなかなか細胞増殖が悪いというのが現実です。ところが、同じ培養条件でも、あるいは更に乏しい培養条件を使っても、小児由来、つまり余剰指由来の軟骨の細胞は非常に高い増殖能を持っております。余剰指は子どもから取ってくるので、太さでいうとマッチ棒か精々細目のタバコぐらいのサイズしかないのです。長さもものすごく短いのですが、そこから採取した軟骨から細胞を採取して膝関節の大人の治療に供した場合、あくまで試算ですが、1,000人分以上の軟骨細胞が1本の余剰指から培養できるということが分かっております。膝関節の変形等々で悩んでおられる患者さんはたくさんいますので、非常に魅力的ではないかと考えています。
 実際、将来的にどれくらい他家製品が治療の場に登場し得るのかということですが、このスライドは私が大学等の講義で用いているものを少しモディファイしたものですが、私は講義の中では、再生医療はこの4つに分類して理解するのがよろしいのではないかと提案をしております。
 1つは幹細胞を補充するということで、典型的には造血幹細胞移植、いわゆる骨髄移植、あるいは我々が阪大の眼科の西田先生と共同で行っているような、角膜上皮幹細胞疲弊症というものに対して、上皮の幹細胞を補ってあげる。これらは血液の細胞であるとか、角膜上皮のターンオーバーを実現する幹細胞を供給するという治療ですので、永久生着を期待します。例えば角膜上皮は2週間でターンオーバーしますので、幹細胞が供給されていなかった場合、1か月もしくは2、3か月以内に角膜上皮がなくなってしまうという状態になります。幹細胞を供給することで、5年、10年、20年という治療が実現できます。この場合、免疫拒絶されるわけにはいきませんので、自家の細胞でいくか、若しくは免疫抑制剤存在下でアロジェニックな細胞を使うという選択になります。
 現在、FK506やシクロスポリンなど幾つかの免疫抑制剤が市販されておりますが、アステラス、ノバルティス等々、次世代の免疫抑制剤を開発していますので、将来、更に副作用の少ない、よりパワフルな免疫抑制剤が市場に出てくる可能性は十分あります。
 2番目は、創傷治癒・組織修復を促進するというものです。(?)が付いているものに関しては、本当にいけるかどうか自信があるわけではないのですが、皮膚、食道、軟骨に関しましては、動物レベル、人間レベルでエビデンスがありまして、他家でもいけます。というのは、永久生着を求めないということです。永久生着しなくても、一過的に創傷治癒・組織修復を促進することができればよいのです。先ほどお示ししたアメリカで承認されている皮膚の製品は、いずれもこのタイプになっています。
 3番目は、失われた組織を補綴するということです。組織を体外で作って移植する、若しくは細胞を細胞レベルで移植するのでも結構ですが、幹細胞ではなくて分化細胞で、特にターンオーバーが早いわけではないような細胞に対しては、これで考えるということで、1番と3番を分けています。これももちろん永久生着を期待するので、自家でいくべしとなりますが、現在、心臓、肝臓、腎臓、膵臓、肺、小腸に関しては、免疫抑制剤存在下で臓器移植をされていることは皆さん御存じのとおりです。例えば糖尿病の患者さんに他家のβ細胞を入れて、もちろん免疫抑制剤も一緒に入れるというようなことが可能ですので、これも他家のターゲットになると考えております。
 最後、炎症・免疫反応のモジュレーションですが、一番最後にありましたカナダで承認されているProchymal、GVHDの治療。専門的なことは省きますが、間葉系幹細胞はもちろん骨や軟骨等に分化する多分化能を持っておりますが、一方で未分化の状態では、様々なサイトカイン、リンホカインを分泌しておりまして、炎症をミニマイズする、免疫反応を非常に和らげるというような作用を持っておりまして、Prochymalはそういう薬理です。
 ProchymalはアメリカのOsirisという会社の製品ですが、Osiris自身はここ数年、心筋梗塞、脳梗塞の急性期に、この細胞を静注することで症状を和らげるという治験をやっております。それ以外のグループがクローン病等々の炎症性の難治疾患に対して、これを入れて治すというような治験を進行中です。これはもちろん他家ですけれども、非常に将来性が高いと考えています。
 最後のスライドです。現在、日本で他家細胞が使えないのかというと、いろいろな人に相談したり意見を伺っていますが、他家細胞を使って細胞組織加工製品を作ってはいけないという法律は日本にはありません。ガイドラインもありません。しかし一方で、使っていいという明確に書いた文書もないことが大きな問題であると考えています。
 関連することで3つ書いてありますが、臓器移植法等で無対価原則というので、売買してはいけないと書いてあります。ヒト幹にも同様の記載があります。ですが、実際、最終的に薬事承認を取って産業化・商業化するときに、無対価原則で原材料としてのヒト組織を無対価原則で恒常的に手に入れることは本当に可能なのだろうか、と疑問を持たざるを得ません。
 自家細胞を使う臨床研究の非臨床試験でも、どこかの時点でヒト細胞に全部切り替えるわけです。通常健常ボランティアドナーから組織を頂きまして、細胞を調製して前臨床研究に使います。しかし、現実問題として、これまでに様々なヒト組織を使ってきましたが、ボランティアドナーによる組織の供給が、実は一番のボトルネックになっています。ドナーが集まらないので研究がストップしてしまって、次のドナーが来るまで待っているという事態が発生しています。
 さらに今までやってきた皮膚や歯や口腔粘膜等々であれば、健常ボランティアドナーによる提供を期待できますが、iPS、ES細胞からスタートして、腎臓や肝臓にいくときに、リファレンスとして正常な細胞が絶対に必要になります。ところが、正常なヘルシーな肝細胞、腎細胞というのが現実、手に入らないので、iPSからそういうものを分化させたとしても、リファレンスが成立しないという事態となります。本当に分化しているのかどうかということの検証さえも、国内の現状では難しいというのが私の認識です。
 かつては手術時に、例えば肝がんを摘出するときに、がんの周りのマージンを少し取って、そのマージンのところは捨ててしまうので、正常組織として研究に使うというような方法がありました。今でもまったくないわけではありませんが、年々マージンが小さくなっている傾向がありまして、さほど研究に使えなくなっているという現実があります。
 我々としては、前臨床研究から産業化まで切れ目のない供給体制ができなければ、産業化に手を挙げていただけるような奇特な方は現われないと強く認識しています。アメリカ以外でも、実際ヨーロッパでも少し似たような問題があります。ヨーロッパの会社でさえも他家製品を扱う会社は、治験等々をアメリカでやっているという現実があります。それは、細胞ソースがアメリカではないと入手できないからだという理由だと思います。
 最後はやや過激な意見かもしれませんが、東京女子医科大学で年間医療廃棄物の廃棄に係るコストが約4億円ぐらい使っています、現状で。お金をかけてわざわざ捨てているわけですが、もちろんいろいろなことはあるとは思うのですが、例えば余剰指の親御さんに十分御同意いただけるようなところであれば、商業利用に一気にいくかは別なのですが、取りあえず研究目的の利用に関して、国がある程度オーソライズしていただけるような制度的枠組みの構築が必要ではないかと考えています。
 アメリカから持ってくればいいじゃないですかという意見もあるのですが、世界移植学会のイスタンブール宣言というのがありまして、メディカルツーリズムで国をまたいで移植を受けることはやめるべきという宣言があります。再生医療の研究において、海外から細胞を入手してきて云々というのは、このイスタンブール宣言のフィロソフィーには大きく抵触すると考えており、国内で十分こういったことができるような世の中を作っていきたいというように考えております。以上です。
○永井委員長 ありがとうございました。ただいまの御説明で御質問、御意見を頂きたいと思います。
○西川委員長代理 ちょっと訂正というか、肝臓に関しては、移植で使わなかった肝臓を日本でセクシーメディカルとベクトン・ディッキンソンが売っておられます。私も基本的にiPSから肝臓をやっておられる方には、その細胞リファレンスとして使ってくださいという形で指導しているのですが。
○大和委員 確認ですが、あれは海外ではないのですか。
○西川委員長代理 いや、海外です。
○大和委員 海外ですよね。だから、最後にお話したように、イスタンブール宣言のフィロソフィーでいくならば、国内でのリサーチ等々に使うものは国内で調達すべしという観点であって、それを否定しているわけではないのですが、イスタンブール宣言を尊重するならそうかなと。
○西川委員長代理 逆に言うと、大和さんの提案をもう少し広い枠組みで考えると、日本でもちゃんと移植は行われているわけですから、もし同意がある場合には、基本的にはアメリカでやっている、移植できなかった臓器も含めて全体に、はっきり言うと使えるような仕組みを作ろうということですね。
○大和委員 臓器移植法には、逆に移植に使わなかったものは廃棄すべしと書いてあって、研究にも使ってはいけなくなっている現実があるのです。
○永井委員長 臓器移植法と細胞移植と同列に考えてよろしいのですか。
○大和委員 移植の行為は違うのですが、今やっていいとかいけないとかという法律が何もない現状の中で、参照すべき既存の法律というものでいうと、臓器移植法等に無対価原則というのが書いてあって、研究目的の利用はしてはいけませんと書いてあるものですから、我々、角膜の研究をするときも、アイバンクアイで余った角膜は廃棄に回して、アメリカのアイバンクから研究用、つまり臨床に使えない傷が入っている角膜を輸入して使っている現実があるのです。そこのところは臓器移植法をむしろ緩めていただけるだけでも、大きく変わると思っています。
○今村委員 確認させてください。先生のお考えとしては、無対価原則というのは貫くべきだとお考えなのですか。それとも違う方法がよろしいと、必ずしもこだわらないという考え方なのですか。
○大和委員 貫くべきだとは考えていません。むしろ、先に「べき」があるのではなくて、最終的に再生医療が広く現実化するために、どういう制度的枠組みが必要かの議論をすべしと。現状では無対価原則というのが書いてありまして、売買であるとか、もっと言ってしまうと、流通という言葉もまたいけないのかもしれませんが、研究目的に利用することに関して大きく制限がかかっているというのが、少し舌足らずでしたが、そういう意味です。無対価原則をやめるべきとか、貫くべきとか、先にそういう結論があってしゃべっているつもりではございません。
○花井委員 幾つか教えてほしいのです。私どもの経験からすると、一番近いのは、生物由来製品というカテゴリーがあって、主に血液製剤でかつてはドナーまでいわゆるルックバック、プレースバックという形で今やっていますよね。そうするとどのプロダクトであっても、最終的にはどこの誰々まで遡及できるという体制でやっているわけですが、ドナーリストをきちんと確保して遡及できるとか、そういうことが必要なものなのか、それを必要とお考えなのかというのが1点です。
 もう1点は無対価の話ですが、もちろん献血と売血という話は古い議論ではあると思うのですが、今、京大と日赤が他家のバンクを作るようなことも始めていまして、日赤が割とドナーリクルートに協力していただけるというようなことも始まっているようです。あと臍帯血というのもありますね。ああいったものも含めて、私も無対価であるべきという気はないのですが、やはり倫理性とかそういう論点が幾つかあると思うので、必ずしも臓器移植に準ずるのはちょっと違うかなとは思うのですが、臍帯血の議論とか、血液の議論の延長線上にある程度構築する論点というのがあるのかなという、この2点についてお伺いしたいのですが。
○大和委員 ありがとうございます。まず後者からいきますが、正しくそのとおりで、臍帯血等々の先例に関しては十分参考にすべきだと思います。ただし臍帯血のときにも、かなりいろいろ議論がありまして、産業応用を可能にする枠組みを求めていた人たちも私も含めていたのですが、なかなかそうならなかったというのがあります。それはステップなので、最初は研究でどこかのステップで産業というのでいいと思うのですが、うまくいっている事例が国内にあるわけではないというのが認識です。
 最初のトレーサビリティですが、現在、我々が使っている臨床研究レベルでさえも、売血とか売血に添加する添加物とか、あるいは牛胎児血清とか、すべてトレーサビリティが取れるようなものだけ使って、そういうシステムを構築してやっていますので、もしも他家細胞でいく場合には、連結可能匿名化や不可能匿名化などいろいろ議論はまた個別にはあるのですが、間違いなくドナーのところまで遡れる状態でなければ、つまり添加物でさえできているわけですから、そうなると考えております。
○松田委員 後ほど議論の対象になるのでしょうけれども、この製造規制といいますか、細胞をどうやって培養するか。施設の問題あるいは培養方法の規制ということが非常に重要になってくるわけですが、一番最後のページで大和先生が記述されておりますように、切れ目のない供給体制の確立ですよね。これは本当に製造現場と臨床の現場が切れ目のないように、どのようにして培養し品質保証をするかというところは、御紹介のあったカナダやアメリカの企業が、どういう切れ目のない品質保証体制を構築してやっているのか。それがこれから議論の対象になり、日本においていろいろなベンチャーの参入も含めて、細胞培養を通してビジネスを展開していく上において、品質保証体制というのは、日本にもそのまま持ち込んで参考になるものかどうか、あるいは日本はそういうことを余り参考にすべきではないのではないかとか。品質保証という点において、既に先行しているアメリカやカナダの例というのは大いに参考になるものでしょうか。
○大和委員 我々のところの大学院生が、アメリカの公開されている書類をかなり徹底的に見て、このアロジェニックな製品の原材料としての細胞がどれぐらい、例えば97年から市販されているもので、既に15年歴史がある中で、何回マスター・セル・バンクが変わっているかというのを調べました。実は驚くなかれ10回から20回しか更新されていないのです。つまり1つのロットがかなり大きく取れるような製品設計になっています。決して売れていない商品ではなくて、黒字化していることも別の資料から分かっております。
 今すぐに何個売れたか思い出せませんが、かなりの数売れていても20マスター・セル・バンクです。複数のドナーをプールしたミクスチャーになっていると思いますが、1バッチを1ロットとしてマスター・セル・バンクを作ってワーキング・セル・バンクを作って商品を作るというパターンでいったときの、そのトップにあるマスター・セル・バンクは、線維芽細胞だと10以下でも15年ぐらい使っていて、表皮細胞でも20以下しか使っていないという資料がFDAから出てきました。なので、製品設計にかなり依存するのですが、現在そういう皮膚の領域においては、かなり大きくロットが組めるような製品設計になっていることが分かりました。
○永井委員長 よろしいでしょうか。
○今村委員 無対価原則のことをもう一遍お話させていただきますが、細胞と臓器が一緒だということはないと思います。ただ、一方で生殖補助医療等においては、卵あるいは精子あるいは受精胚というものは当然売買の禁止、あるいは無対価原則というのが貫かれるわけですね。そういうものを考えたときに、1つひとつのあれは細胞ですけれども、こちらのほうの細胞は商業利用がオーケーで、向こうのほうはノーという、ダブルスタンダードになる可能性もあるので、そこのところは産業化というときにはよほど注意しなければいけないのではないかなと思います。
 医療の産業化について、特に日本医師会として反対するものではないですけれども、ただ、医療が過度に営利産業化という状況になるのは、やはり非常に注意をしておかなければいけないと思います。
○永井委員長 ありがとうございます。
○辰井委員 資料に関しては、産業化というところにいく前にできることが多分かなりあるように思われ、それでやらなければいけないことはかなりあるように思います。先ほど大和先生もおっしゃいましたように、現状で禁止している法律というのはなくて、少なくとも本人の同意があってそれで提供するということであれば、侵襲性が極めて高いようなケースは別ですが、そうでなければ法的には問題がないというのが私の理解です。
 ただ、現状でそのように動いていないというのも事実です。1つには臓器移植法の影響があると思います。臓器移植法で試料に関して扱えなかった、移植がでなかったものに関して、廃棄しなければならないと法律に書いてあるということでしたが、それは少し不正確で、法律には処分するときには厚生省令にしたがってやらなければいけないみたいなことが書いてあり、その厚生省令を私は少しうろ覚えですが、廃棄する場合は焼却しなければいけないというようなことが書いてあり、どこにも常に廃棄しなければいけないというようには書いていないと思います。
 ですから常識的に考えると、御本人がいいと言っている場合にはそれを研究用に提供するということは十分に可能だと思いますが、今現在どうか分かりませんが、少なくとも一時期の厚生労働省の担当の方の解釈などはかなりきつくて、そういったことの影響で実際にはできていないということもあると思います。死体などに関しても、死体解剖保存法が出てきたり、実際にはできると思われることが、いろいろな法律の解釈などでできなくなっているところはかなりあるように思います。ですので、もし機会があるならばその辺りをきちんと整理して、議論をするだけでできることは相当増えるのではないかと思います。
○辰井委員 すみません。ちょっと確認というか、質問をさせていただきたいのですが。3枚目のスライドのときに、割礼包皮の話を外国のケースということでお話されたと思うのですが、病院から企業のほうへ供給されていてというような御説明だったと思うのですが、例えばその場合に廃棄物としてものが流通しているのか、それとも同意を取っているのかとか、無対価なのか、トレーサビリティがどうなっているのかという辺りはどうなのかなというのは。
○大和委員 FDAの書類だけからでは、正解を見つけられていません。
○町野委員 余り時間を取るつもりはないのですが、先ほど無対価原則と移植に使われなかった臓器等の処分の問題、恐らく法律的にははっきりしていないのですよね。その根拠もよく分からない。だから、これは、いつかどこかでやらなければいけない問題だと思います。厚生労働省の今の実務、移植に使われなかったものは全て、本人が承諾してもほかに転用してはいけないというのは、厚生労働省のやっているところでして、これは頑として動いていないわけですが、これもやはり考え直してもらう必要が、法律的にはそのとおりではないわけですから、という具合に思います。
○永井委員長 御指摘いただいたことは、宿題として次回報告したいと思います。
 続きまして、前回専門委員会で御議論いただいた「再生医療の安全性確保と推進のための枠組み構築」です。事務局から前回の議論を踏まえて再度まとめの見直しをしていただいておりますので、御説明をお願いします。
○荒木室長 資料3です。前回は論点整理という形でお示しさせていただき、かなり議論もしていただきました。その際の御意見及び今回の会議の事前に先生方に御意見を頂戴したものを反映させたものとして、資料3「再生医療の安全性確保と推進のための枠組み構築に関するこれまでの議論の整理(案)」を出させていただきました。少し時間を頂いて御説明させていただきます。
 構成としては、前回の論点整理メモと一緒です。「主な意見」という先生方の御意見があり、その後に「論点」を示し、「方向性」という枠組みになっております。柱として前回お示しした6つの柱は変えておりません。
 1ページで1の「再生医療の安全性確保と推進のための枠組み構築の目的について」ということで、主な意見としては、例えばまだらな規制がかかっている。患者の立場としては非常に期待は大きいのだけれども、事故が起こる前に、高性能で集中的な監視と規制のシステムが必要。学会の視点としてもということで、先ほどプレゼンがありましたが、国民に安全・迅速に届けるため、再生医療の研究をしている。一方で、似て非なる医療というのがあって、モチベーションの低下にもつながっているのではないのか。産業化の観点からも、統一ルールがあることが推進につながる。一方で、医療の内容を法的に規制することについてはなかなか例がないのだけれども、国策として再生医療を推進していることから、安全性確保のために一定程度の規制も要るという点が理由になるのではないのか。さらには多数の省庁、学会・企業というように、再生医療に関わるのは非常に大きくまたがっていることから、これを網羅するような監視・規制システムの構築も必要ではないか。
 2ページでは、そういうことも含めて上のほうに書いてありますが、臨床研究を経ないで実施されている自由診療に対する実効的な規制の検討。安全性を確保する基本的な法律は作っておくべきである。
 論点は前回と変えておりません。「したがって」以降に書いてありますが、安全性を確保しつつ、再生医療の実用化を推進していくためには、法整備も含めた実効性のある統一的なルールが必要ではないのか。
 その方向性として、再生医療がその用いられ方によってはヒトの尊厳の保持、生命・身体の安全等に重大な影響を与える可能性があることに鑑み、再生医療の実用化を推進するためにも、安全性の確保等のため必要な措置を目的とした法的な整備を行う。
 「また」以下は事前に御意見を頂きました。また、今回の枠組みでは、再生医療・細胞治療の実施に入る段階での安全性確保のためのチェックが一義的な目的であろう。その次として、当該治療の有効性や実際に組織が再生しているかどうか等についても、科学的・学術的に評価できるように促すよう配慮する必要があるのではないのか、ということで方向性として書かせていただきました。これが1です。
 2の「対象範囲・定義」というのは、前回非常に御議論を頂きました。cell therapyあるいはcellular therapyとするのがよいのではないのか。あるいはminimally manipulatedの定義も考えるべきではないのか。3ページの上の、加齢で失われた美容を回復するための医療(美容形成)や、リンパ球活性化療法、樹状細胞療法等も規制範囲に含まれるように定義する必要がある。再生医療の中には、細胞治療に含まれるものと含まれないものがあると考えられるが、それぞれを明確に定義する必要があるのではないのか。細胞医療として捉える考え方もあるし、国民の理解を得るためには「再生医療」という言葉も入れてよいのではないか。
 論点については、前回と変えておりません。「ヒトの細胞・組織を採取し、加工した上で移植又は投与を行う医療をいう」。「失われた臓器や組織の再生を目的として疾病の治療のために人の体内に移植又は投与するもの」。これまでの指針等がありますが、これらを参考にしつつ、どうやって対象として定義するのか。
 方向性としては、「再生医療・細胞治療」として別紙1の範囲を対象としてはどうかということで、事務局の方向性を書かせていただきました。別紙1が資料3の一番最後の9ページに表として付いております。「今回検討中の枠組みにおける、細胞治療等と臓器・組織再生目的との関係」です。前回も御議論がありましたが、細胞を用いるものあるいは用いないものという大きな分け方があると思います。臓器・組織の再生を目的とするかどうか。これは※に書いてありますように、再生を目的とするかどうかというのは最初の段階の思い入れの部分がありますので、実際に再生するかどうかというのは、実施前に不明なものも含まれております。
 細胞を用いるものの中では、治療と治療目的でない医療、治療目的でない医療といいますのは、言うなれば美容整形的なコスメティックな豊胸手術というのは治療ではないのかなということで分けさせていただいております。細胞を用いるもので治療、さらに臓器組織の再生を目的とするものとしては、今のヒト幹指針の対象研究のようなもの、あるいは幹細胞以外の細胞を加工して使用ということで薬事承認が取れているジェイスやジャックのようなものがあるのかと思っております。これが、一番左端の上のカラムです。
 その下が臓器組織の再生を目的としないもの。先ほど大和先生からプレゼンがありましたが、ProchymalのようなGVHDに対する治療、その免疫反応を少し抑えるような治療や、幹細胞以外の細胞を加工して使用するようなリンパ球活性化療法、樹状細胞療法というのはこちらの治療。再生を目的としないが治療はするものに入るのかと思っております。
 治療目的でない医療というのはちょっと分かりづらいのですけれども、美容整形のようなものというのは、細胞は用いるし、実際にそこに臓器組織の再生がなされる可能性もあるということなので、治療目的でない医療で、再生を目的とするというカラムに入っております。
 右半分ですが、細胞を用いないものというものはいろいろあります。治療、再生を目的とした治療というと、細胞を用いないものというのは幅広い意味合いがあります。1つは増殖因子、サイトカイン等の液性因子と呼ばれるもの。ステロイドも幅広い意味では入りますし、G-CSF、あるいは薬事承認されていないものの中には濃厚血小板血漿や、幹細胞の培養液などもあります。
 さらに言うと、先ほどの細胞外基質や人工物等の足場ということでヒアルロン酸や、外科の手術までも大きい意味では、臓器組織の再生を目的として細胞を用いない治療であることは確かだと思われます。
 治療目的でない医療もあるということで、今回対象にすると思われるものは細胞を用いるもの。細胞を用いて治療をするものということで、細胞治療ということも考えられます。臓器組織の再生を目的とし、治療しないようなものも含むということであれば、再生医療ということで、左上のカラム2つが対象になるということで、この3つのカラムが対象になるのかと思っております。これを図1で示させていただきました。御意見はこれから頂きたいと思っております。
 3ページの下のほうの3つ目の柱は、「リスクに応じた安全性担保の枠組み」です。主な意見としては、患者数や治療成績を、臓器移植法と同様にしっかり把握することが重要であろう。4ページの上から2つ目の○、安全性は相対的なものである。ES細胞やiPS細胞など、臨床応用されておらず未知の領域が多いもの、体性幹細胞のように臨床研究として一般的に行われるレベルのものまで、様々にあるだろう。そういう場合には、先端的なものについて施設を限定する方法もあるのではないか。さらに、限定された施設での検証を踏まえて一般的医療になる、という方策も考えられる。
 前回頂いた意見の中では、行政の役割だけではなく、学会の役割も重要であるということで、今回澤先生よりプレゼンを頂きました。安全性が確認されていない再生医療が自由診療等で多く実施されることになると問題が生じる可能性がある、という意味では制度的な枠組みが必要だということ。そういう制度的な枠組みを設けた際のチェック機関としては、厚労省が実施すべきではないのか。さらにはこれも学会の関与ということで、前臨床試験を実施せずにヒトに用いられるような技術というのは、学会もしっかりと関与すべきだということ等、様々御意見を頂きました。
 論点も同じですが、「再生医療・細胞治療」において用いる細胞の種類、採取部位・方法、細胞の調製方法、投与部位・方法等によってリスクの程度が異なるということで、一律の安全対策ではなくて、リスクの程度に応じた安全性の確保を図るための仕組みが必要ではないのか。その例として、例えばリスクの程度に応じて再生医療・細胞治療の実施に先立ち、厚労大臣の承認を求めること、審査委員会による審査という仕組みが考えられるのではないのか、という論点を前回もお示しさせていただきました。
 これに基づいて方向性です。これまでの委員の御意見と論点をまとめて方向性です。(1)iPS細胞等の臨床で使用されたことがない安全性の確保等に特に注意が必要な医療については、事前に厚労大臣の承認制とする。
 (2)体性幹細胞等を用いた医療のうち、一定程度安全性が確立したと認められる医療については、今のヒト幹指針では全て厚労大臣の意見の発出となっておりますけれども、そこまでの承認制とはせずに、第三者性が担保された有識者からなる質の高い審査委員会の意見を聞くものとする。
 (3)分化細胞等を用いる、安全性や倫理面での問題が比較的少ないだろうと呼ばれるものでも、細胞を使いますので、そちらについては品質が不均一とか、細菌やウイルスが伝播するリスクもあるということで、第三者による安全性等の確認は必要であり、審査委員会の意見を聞くものとする、という方向性を書かせていただきました。
 5ページの下段の4の「細胞の培養・加工基準の設定等」です。細胞の培養・加工の基準、培養士の技術認定という議論も必要ではないか。培養・加工された細胞は最終的にヒトに投与されるということで、培養・加工の過程、その業務の安全性を確保するということは、再生医療・細胞治療において極めて重要であるという御意見がありました。
 論点ですが、やはり安全性を担保するとともに、実用化を推進するためにも細胞の培養・加工を実施するような施設の基準等を明確にする必要があるであろう。医療機関以外で細胞培養・加工を実施する場合、現行では薬事法に基づき、許可された製造所が前提となっておりますが、それ以外の形態も考えられるのではないか、という論点を出させていただいております。
 それに対する方向性です。1つは、細胞培養加工施設の施設基準、あるいは手順。中で培養する手順等を定めるとともに、その基準を満たしているかどうかをチェックする。医療機関以外においても、事前にしっかりと施設基準を満たしているかを確認した上で、細胞培養・加工を実施することを認める、という方向性を示させていただきました。
 5つ目の柱は、「国民への情報公開」です。こちらも様々な御意見を頂いていて、専門家と一般の方との知識の乖離があるということで、やはり国民への情報公開が重要だろう。既に研究としてなされているヒト幹細胞臨床研究の結果の解析、その成果を国民にフィードバックされる体制も重要である。法的に枠組みを示すだけではなくて、教育により利用者側の国民がしっかり知識を持つことも大切である。100%リアルタイムでの情報公開を目指すことが大切だろう、という御意見を頂いております。
 論点についてはほとんど変えておりませんけれども、どのようなシステムで適切な情報収集をして提供するのか。国民への情報提供の在り方について更に工夫が必要ではないのか、という論点です。
 方向性です。7ページの方向性の(1)再生医療・細胞治療の実施状況を把握し、その実施状況について、最新の情報を定期的に広く国民へ情報提供することができるような仕組みを設ける。再生医療・細胞治療に関する情報が、国民へ一方通行に流れるだけではなくて、国民が例えば知りたい情報、そういうことを相談できるような何らかの仕組みが必要ではないのか、という方向性を示させていただきました。
 最後の6番の柱は、「倫理面の配慮・その他」です。主な意見として、生命倫理への配慮は十分すべきだ。倫理審査委員会任せということもすべきではない。推進する立場と安全性を確保する立場を別にすることによって、倫理的な問題、個人情報を担保するのではないか。iPS細胞、ES細胞については、全ゲノム情報も伴うこともあり得るので、個人情報の取扱いは重要となってくる。
 方向性の(1)は、第三者性が担保されるような委員構成とする、というところが重要な部分かと思っています。(2)再生医療・細胞治療というのは高度な技術であり、感染症あるいは将来的な腫瘍化のリスクも否定できないということで、その実施に当たっては、そういうリスクがあることについて、患者が十分理解した上で、インフォームド・コンセントをしっかり取って進められる必要がある。これは一般の医療でも当然ですが、特に再生医療・細胞治療についてはそういう未知のリスクがあるということで、その辺の説明が必要だ。最初の方向性とも連関しますが、組織等が再生するかどうかについて、被験者の誤解を招かないように、科学的な根拠を持って適切な表現で説明がなされるべきだ、ということも書かせていただきました。
 (3)個人情報の保護が十分に図られる必要がある。(4)は事前に御意見を頂いた中で、再生医療・細胞治療の実施の際に、患者に生じるおそれのあるリスク、特に再生医療・細胞治療に特有なものですが、それに対しての補償も考慮する必要がある、と書かせていただきました。最後に、先ほど大和先生にプレゼン頂きましたように、細胞を有償提供できるルートも含め、円滑に入手できる仕組みを構築するための検討が必要である。
 前回の論点メモに少し肉付けをして、パワーアップしたものということで、今回はこちらを踏まえて御議論いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○永井委員長 いかがでしょうか。
○野村委員 理解が悪くて混乱しているのですが、枠組み構築に関する議論という理解で参加させていただいています。先回、言葉の定義でかなり議論をした段階で終わっている状況で、私は今回来させてもらっています。昨日の朝日新聞の報道だと、本日の議論を踏まえて法案を確定するみたいな表現があると、私たちは厚労省の法案の中身を追認するような議論をするのか、そのために来ているのか。私は付いていけないような状況があります。その辺についてはどのように考えればいいのでしょうか。
○永井委員長 これは、事務局から説明してください。
○荒木室長 前回、12月に論点メモということで、こちらについては大きな方向性としては、本委員会で認めていただきました。その際にも申し上げましたが、本委員会での検討と並行し、法案という形にするのであれば、その具体的内容について事務的な作業は並行して行っているのは事実です。
 しかしながら、今、野村委員から御指摘がありましたように、最終的には飽くまで、本専門委員会における報告を踏まえて法案の内容を確定していく形になりますので、引き続き本委員会において専門的な観点から、特に重要事項として、先ほどの定義の問題も含めてですが、リスクに応じた評価体制も含め、できるだけ速やかに中間的な取りまとめも含めてお願いしたいと思っております。ですから、法案の内容を確定していくためには、本委員会の報告を当然踏まえると思っております。
○掛江委員 質問をさせていただきます。別紙1にお示しいただいた表の囲み自体はどういう意味付けなのか。あとは、前回の委員会のときに大和委員が、安全性が確認されていない自由診療でやっている再生医療の問題について御報告くださったと思うのです。そういうものは、細胞を用いる治療目的のところに書いてはないのですが、入らないものなのですか。この表は、今世の中に存在している再生医療と関連したものを網羅的に拾って分類していただいているものなのか、ここでフォーカスしたいものだけをピックアップしてまとめていただいているものなのか、という辺りが理解できていないので教えてください。
○荒木室長 例として挙げておりますので分かりづらかったと思います。申し訳ありませんでした。一応、網羅的にお示しさせていただいていると思っております。すなわち細胞を基本的には用いるものと、用いないもの。今回ターゲットとするのは、前回の御意見でCell therapyということもあり、細胞を用いるものであろう。細胞を用いるものの中でも、治療として使われるもの、あるいは治療ではない美容整形のような、医用として使われるものがある。臓器組織の再生を目的とするかどうかという、3次元的になっておりますけれども、そういうものも分かれるだろうということです。
 この囲みの意味合いですが、左から上2つの囲みは、臓器組織の再生を目的とするもので、治療あるいは治療目的ではない医療として使われるもの、これがいわゆる再生医用としていわれるものなのかということで囲んでおります。左上と左下の縦の囲みについては、細胞を用いるもので、治療として用いられる細胞治療と呼ばれるものなのかと思っております。
 前回、大和先生から御報告いただきましたような、海外で行われている規制外医療と言われるものの中には、多分細胞を用いて、どこのカラムにも入る可能性がありますけれども、例えばパーキンソン病や脳梗塞を治しますみたいな話であれば、治療をするもので、再生自体の目的としないものもあるかもしれませんし、目的とするものもあるかもしれない。その辺りは微妙なところだと思います。そういうことで、一応全体としては網羅的に書いているつもりです。
○永井委員長 そうすると、これは治療ではなくて治療目的ですね。
○荒木室長 そうです。
○永井委員長 要するに、これは入口論なのです。この前、私は大分意見を言いましたけれども、今回は飽くまでも入口論なので、この再生医療・細胞治療の範囲とするのは、再生を目的とする場合です。本当に再生するかしないかはよく分からないけれども、再生治療を目的とするのであればこの枠組みに従ってくださいという議論です。これが出口の議論、つまり患者さんに適用する場合には、また別の議論になります。つまり、細胞治療として確立したら、これが組織の再生を促すのかが議論になりますす。再生しない治療は再生医療と言ってはいけないわけです。再生医療のあり方を考える、いわば入口論のとき、再生を目的とするのなら、この枠組みに従ってくださいと理解していますがいかがですか。
○早川委員 ここの議論を、そんなに詳しくすることに意味があるのかどうかと私は思います。第1に、用いる細胞にフォーカスを当てて、それを患者さんというかヒトに用いる場合にどういう考え方が必要かということがまず焦点で、物としてのフォーカスは細胞です。その細胞の中に、原材料としての細胞と、製品化された細胞があるわけです。そこでの考え方は、それぞれ原材料はリスクが高くても、例えばiPS細胞はいくらリスクが高くても、製品になったときにiPS細胞が跡形もなく消えているような製品であれば、そういう意味ではヒトに用いる製品のリスクはその程度と。そういう考え方でいいのだと思うのです。
 まず、細胞として我々はどういうものを対象にするのか、しないのかということを議論の的にして、あとは結局ヒトに対して何らかの形で有用性を発揮するかということであって、結果としてそれは永井先生がおっしゃったように、再生として有用性を発揮したかもしれないし、あるいは分泌物が代謝的に効いてうまくいったかもしれないし、いろいろな効用があると思うのです。
 これを余り分け過ぎると、例えばここに書いてあるiPS細胞、ES細胞、体性幹由来製品が全て再生を目的とすると言えるのかというと、これはいろいろな使い方によって、例えば体性幹だって再生を目的としない場合もあるし、ES細胞だって目的としない場合もあるし、iPS細胞だって目的としない場合もあるので、今は再生の話をしているからこだわらざるを得ないのだけれども、細胞を使ったものでヒトに有用性を与えるもの、そういう分け方をしたほうがよいと思います。
○永井委員長 細胞治療だけにしてしまったほうが、議論ははるかに整理されるのです。どうしても、再生医療という言葉を皆さんが使いたいというのであれば、入口として使うのはよいだろうということになります。ただし、出口でいよいよ患者さんに行うときには、組織が再生しているかどうかは、ちゃんと患者さんに説明しなければいけないわけです。そういうことで、入口と出口の議論を分けています。
○早川委員 ですから、ここで実は入口の議論をしているのに、出口の議論も一緒にかぶさっていて、かつ入口の細胞も原材料と製品レベルが区別されていなくてオーバーラップして議論されているので非常にややこしいのです。
○永井委員長 しかし、この枠組みでは、研究期間中に、きちんと科学的に再生するかしないか、有効かどうかを評価する義務を負うわけです。そういう意味では、出口のことも意識して議論しないといけないと思います。
○早川委員 もちろんそうです。言わば何を対象にするかという話と、何をという意味は、物としてです。細胞として何を対象にするかという話をしっかりして、もう1つはエンドで、どういう評価をして、どういうやり方をするか。また全体としてこれは、倫理の話も含めていろいろなことを、実際に使う場面、それから評価する場面、あとモニターしていく場面といろいろな所でどういうことをきちんとやっていけばいいか、あるいは場合によっては補償の問題も入ってくるというように、ちょっと概念を分けないと。
○永井委員長 ちょっとややこしい話なのです。やはり、対象をどうするかという話と、方法はどういうことなのかという話と、プロセスをどうするかということと、出口をどうするかということで、これは相当いろいろな視点が入らざるを得ない枠組みだと思います。
○掛江委員 申し訳ありません、議論を前回に戻してしまったみたいになってしまいました。気になったのは、今回の委員会で安全性であるとか、規制であるとかということが議論のテーマの中に入っているにもかかわらず、網羅的にという整理なのだという説明をしていただいたのだけれども、例示されているものが、たまたまここの重なっている部分でいえば、ヒト幹の指針の対象の研究が例示され、きちんとした製品になっているものが例示されということで、安全性といったものについて、きちんとルールを持っているものだけが例示されているように感じています。
 そうだとすると、ここではそもそも安全性とか規制の話は必要ないのかなという印象を持ってしまっているのです。もし、そういうところから外れたものも、この議論の対象に含めるのであれば、議論の対象を明示した表の中に、是非例示として挙げていただきたいと思いました。議論を混乱させてしまって申し訳ありませんでした。
○位田委員 私も、いろいろな説明を聞いていてよく分からなくなってしまいました。別紙1の全てのカラムを含むのが、我々が議論している枠組みの対象なのか、若しくは網が掛かっている横2つと、縦2つの欄、ちょうどL字型というのでしょうか、その2つのみを対象にするのか、その辺りがはっきり分からなかったのです。
○永井委員長 上2つですね、横並び2つではないのですか。
○位田委員 というのは、先ほどのお二人の先生のプレゼンとも関わるのですが、例えば澤先生がおっしゃっているガイドラインというのはどこの範囲を示していて、大和先生がおっしゃっている細胞の入手という問題は、どの範囲を対象にしているのかというのがよく分からないのです。まずもって我々が議論するべき対象は、この枠の中のどの範囲かを少し教えていただきたいのです。
○永井委員長 先に、事務局からそこの定義を説明してください。
○荒木室長 基本的には前回、これまでの御意見で細胞を用いるものとなりましたので、この左半分4つのカラムであろうと。この4つのカラムのうち、右下のカラムに当てはまるものは見付けきれなかったので、基本的にはこのL字型の部分が対象になるのかということで提示させていただきました。
○永井委員長 この3つを対象に。
○位田委員 そうすると、先ほど学会のガイドラインということで澤先生から御説明いただいたのですけれども、学会のガイドラインもこの3つを対象にしているのか、若しくはこの重なった部分、私はどちらかというと重なった部分だけを対象にしているように聞いているのですけれどもそうなのか。もしそうであると、それ以外の、つまり重なっていない右側の部分と、下側の部分について学会は関与していないということになるので、ここについては当然ほかの学会かどうか分かりませんけれども、何らかの科学的なガイドラインというものを作る必要があって、その辺りがちょっとどうかなと思います。
○澤委員 学会の立場で少しお返事させていただきます。私たちは、早期承認に向けたガイドラインということで、製品を目指すという部分にガイドラインとして、先ほどお話もありましたが、ヒト幹はヒト幹です。ヒト幹と我々が考えているガイドラインは別で、製品化に向けて早期承認、承認を促進するためのガイドラインという切り口でお話させていただいています。そこはクリアにしていただきたいのです。ただ、安全性を求めて培養の基準とか施設基準については、私たち再生の学会の立場としては、そこは細胞を用いた医療に対してのという考え方をしています。
○永井委員長 対象としてはどこ。
○澤委員 ガイドラインと培養のところは別ですけれども、私たちの理解として今回考えているのは、この4つのカラム全部で、治療目的でない医療で、かつ目的としない、再生医療を目的としないというカラムも、培養基準としては等しく遵守すべきという考え方を持っています。ですからこのカラム4つ、例示はないのですけれども、4つともが培養とかに関して、安全性を希求するためにそこは遵守して、ガイドラインは早期承認というか、製品化のための迅速なガイドラインと。ちょっと話が混乱して申し訳なかったのですが、そこで書いてあります。
○早川委員 これをこのように書いてしまったから、いろいろコンヒューズしているのです。まず使うものは細胞です、というふうに取りあえずフォーカスを当てて、それと医療というものの話を全体としているのだと。今、医療と、細胞を使う医療とされているものに薬事法があって、今回の議論の外と思いますが、薬事法の承認を早くというお話の中で、澤先生は主にお話をされたと。それから、いわゆるヒト幹はヒト幹というトラックで来ているものに対して、それが今回の範疇に入るわけですけれどもそういう話がある。もう1つはそれ以外の、自由診療の中でやっている医療というものです。それも安全性としてはどの程度求めるかは別として、それはそれなりの網を掛けなければいけない。
 非常に単純に言えば、細胞はどういう細胞をスコープにして我々は語るのかということと、どういう医療。どういう医療と言ったときに、どういう点を留意しなければいけないのか、どういう行政的な対応が必要なのかという話だったですね。
○永井委員長 そうなのですけれども、それは前回、議論をしました。それならば細胞治療の安全性確保と推進のための枠組み検討でいいのです。それでは駄目だ、再生医療という言葉を皆さんが使いたいというので、どうするのだという議論になっています。目的なのか、結果なのかという話になってしまっているわけです。それだったら、むしろ細胞治療の枠組み検討で十分だと思います。
○早川委員 全くそのとおりなのですが、もう再生医療という言葉は随分ポピュラーになってしまっている。
○永井委員長 それはまた別の話です。この枠組みとしては、細胞治療の枠組み検討でもよいのではないでしょうか。
○早川委員 おっしゃるとおりですが。
○永井委員長 前回は違う御意見だったようですが。
○位田委員 そういうふうに理解するのでしょうか。つまり、再生医療というのは単にキャッチフレーズだけであって、我々が議論するのは細胞治療全体に関する枠組みと理解していいのですか。
○永井委員長 事務局はどうなのですか。この会の目的にも関わってくるのですけれども。位田先生のご意見のほうがはるかに簡単ですが。
○町野委員 私は、細胞治療で結構だと思います。2ページの方向性のところを見ると、要するに危険性の問題です。だからその点が問題なので、細胞を使ってやる治療については固有の危険性があるという前提でこれはできているという話だろうと思います。方向性のところで、「人の尊厳の保持」というのは何を言っているのかよく分からないのですけれども、あとのほうは分かりやすいです。生命・身体の安全。だから、細胞治療に固有のそういう危険性だとか、そういうものがあるのだということだとするならば、正に先生方が言われるとおりだろうと思います。
○永井委員長 これは前回もお話したのですが、例えば薬物治療や外科治療では手段を述べています。再生医療というのは非常に魅惑的な言葉で、簡単に人はそちらに引かれます。再生というのは結果なのです。もちろん目的とするというのであればそれは入口論だし、再生医療ということを結果として、あるいは手段として使うのであれば、その証明が求められる。そういうことで、今回は前回の議論を踏まえて、再生を目的とする医療をどうしましょうかという中で、入口として議論しています。ただし再生医療という言葉を使うのであれば、きちんとそれを科学的に示さないといけない。非常にきつい縛りが出てきます。
 しかも、それは法律の網が掛かってくる。研究に対して法律がかなり規制を掛けるという話です。そういうことを覚悟の上でこれは議論しないといけないわけです。再生というのを言うのであればです。細胞治療というのであれば、これは手段ですから、結構いろいろ自由度は高いと思うのです。その辺をよく弁えて御議論いただきたいと思います。
○町野委員 今、私は細胞治療というのは何か特別の危険性があるから、これについては細胞のところで括るというのは非常に合理性があると言ったのです。その危険性というのは、先ほどのお話では、いろいろと培養の過程でそれができたり、あるいは異物が身体の中に入るという点とかいろいろなことがあるという理解でよろしいのでしょうか。
○永井委員長 がん化する可能性もあります。
○町野委員 そういうことですね。そうすると、再生という言葉を使うかどうかというのは、もちろん先生がおっしゃられるようにありますけれども、再生しないではないかということで、これは要するに詐欺の情報だと。その規制のためにやっているわけではなくて、安全性確保のためですから。そうすると、事務局が整理されたように、それから前回からのお話のように、細胞のところで区切るというのは合理性が非常にあると思います。
○永井委員長 話を全部細胞治療としてまとめていくという御意見ですか。
○町野委員 はい。
○西川委員長代理 例えば、再生でいえばFGFスプレーなどがあります。それは、細胞治療対象では全然ないわけですから、細胞治療でいいと思います。そういうつもりで、入口でやっていって十分だと思います。
 先ほど、澤さんと大和さんの話を聞いていて思ったのは、法律にするときに対象が何かということは結構大事です。再生とか細胞ではなくて、実際に日本国民なのか、先ほど言ったようなあらゆる日本で行われる、日本に来られるあらゆる医療を受けられる人が対象なのか。私は法律のことは分かりません。もう1つは大和さんがおっしゃったように、細胞が外国から持って来られるということもあるという視点は、法律の場合はどこかに入れておかないと、多分ややこしい話になるのではないかという感じがします。ですから、細胞治療でいいけれども、今言ったように法律にするときには対象をしっかりする。
○宮田委員 この議論は楽しくて、ずうっと続けられそうなのですけれども、基本的にまず3つぐらいの新しい事項をここに付けなければいけない可能性があります。つまり、研究をカバーするのか、業をカバーするのかというのを明確にしなければいけない。両方だったら、それなりの法律の書き様があるだろうと思います。
 もう1つは、細胞治療と言っても、造血幹細胞移植などはみんなやっています。そうすると、ここで細胞治療と言った場合でも、我々がリスクというのは経験あるいは知識の集積ですから、それに応じてここにも随分違うぞと書いてありますので、この場合は何か新規細胞治療みたいな枠組みを入れておかないと、今までの通常医療行為となっているものを、どうやって取り扱うかというのは非常に難しいです。
 これから、私たちが今は意識していないイノベーションが起こったときにこれを取り込み、しかも十分知識を得られた細胞治療に関しては、この法律においてエグゼンプションする形にしていかないと、規制だけが一方的に太ってしまう可能性があります。日本の法律の構造の一番悪いところ、あるいはガイドラインもそうですけれども、エグゼンプションできないのです。つまり、知識がどんどん蓄積していて、今のヒト幹の指針もそうですけれども、もういい加減いいではないかと思っているようなところでも、みんな真面目だからやってしまう。これが、臨床研究の阻害要因になってしまうという、自縄自縛の構造があるので、今回の法律においても新規性とかそういうこと、リスクと同じ意味ですけれども、それを是非縦軸みたいなところに入れて議論していただきたい。
 そうすると、ここの濃厚血小板血漿は違うぞと書いてあるけれども、例えばiPSで血小板を作ったときに一体どのように考えるのか。それから血球もそうです。そういうものを作ったときにどう考えるのかというのは、やはりちょっと違う側面なのです。そういう意味では、我々の知識が有るか無いかというのを少し軸にして議論を整理していただいて、イノベーションが起こった、我々が全く知識がないものに関しては、極めて慎重にこういう法律で患者さんの安全性を担保しながら、臨床研究を進めていく。十分知識が得られたら、それはそれで規制を緩和するという仕組みをこの中に入れておかないと、この法律自体が暴走する可能性を私は考えています。最初はいいでしょうけれども、あと10年後になったら軛になってしまうという仕組みだけはやめていただきたいというのが1つです。
 そのためにも、実は何が一番重要かというと、知識の共有なのです。安全性を担保するための知識の共有の仕組み。ですから、症例の登録と、その結果の追跡みたいなことが、今の自由診療においても行われるような仕組みというのはどうしても必要で、この論点メモの中にはそれがスッポリ抜けていますので、そこは是非皆さんに議論していただきたいと思います。
○早川委員 私の理解を申しますと、先ほどの全体の憲法を作れるかどうかは別にして、憲法的なものですが、それを作るとすれば薬事法も、血液法も全部その中に入ると思うのです。今我々が議論しているのは、例えば先ほどお話のあった濃厚血小板血漿みたいなのは、血液法等の中で既に扱われているものです。それから薬事法の中で扱っていくものがありますから、それは細胞を使うのだけれども、多分この対象にしないのだろうと思います。ヒト幹はまだ法律ではないので、要は医師法・医療法の中でやられている細胞を使った医療というものを、ここでターゲットにして、全体として議論していきましょうと私は理解しました。
 もう1つは軛にならないようにするために、いろいろなルールの階層があって、今ここで作ろうとしているのは、原則的にこういうことは、こういう対象で、こういう医療を対象にしながら、原則的にどうしてもここは守らなければいけないところだけを法律にしていくのだと。細かいことはまた別のやり方があるのだと思います。
○永井委員長 ある程度自由度があったほうがいいですね。
○中畑委員 今回検討することというのは、当然ヒト幹の問題だけではなくて、薬事法の中で取り扱われる、細胞に関する再生医療とか、そういったものも当然含まれる、そこにまで影響するようなことになるのではないかと思います。薬事法の中に規定されているものは、ここから除外されるということにはならないのではないかと。むしろ、それまで含まれるような形で、全体の枠組みは作るべきだと思います。
 それから、細胞療法にするか、再生医療にするかということですが、両方とも良い点と悪い点があると思うのです。例えば細胞療法ということになると、iPSから先ほどお話のあったような血小板を作って、あるいは赤血球を作って、それを輸血製剤として使うといったところまで含めるとすると、それは血小板とか赤血球というのは細胞ではないわけです。そうすると、細胞療法の中には定義的にも含まれないことになってしまいますので、細胞療法と再生医療と両方をカバーするような文言にして、両方含まれるような、しかもそういった細胞を使った医療、あるいは幹細胞から作られた製品を使ったような医療を是非安全に使う、安全性を担保するような形で、できるだけ大きな枠の中に含めることのほうが大事ではないか。今後の方向性としては大事ではないかと思うのです。
○永井委員長 そうすると、こういう表のようなことになってきて、大分ややこしくなってくるのです。
○中畑委員 一応この4つの枠は含めたほうがいいのではないかと思います。それが一番底辺にあって、先ほど御意見のあったような、非常に複雑な加工をして、それだけリスクが高まったような製品というのは、それだけより慎重に安全性をチェックしなければいけません。アメリカのFDAでも、加工する度合いによってグレードを分けているわけです。ドナーから取り出して、それをすぐ移植するというのとは違って、いろいろな加工をした場合は、より慎重にするというような考え方は必要ではないかと思います。
○永井委員長 ただ、本当に再生するかどうか分からない医療・治療法も対象としないといけないわけです、研究中のときには。
○中畑委員 そうです。その場合は細胞療法の中に含めるという格好になります。
○永井委員長 結果としてそれが再生するかどうかを、研究者は示す義務があるということになりますね。
○中畑委員 その考え方を織り込むべきだと思います。
○辰井委員 中身に入らせていただきます。法制度としてかなり重大な提案であると思われるのが、5ページの「方向性」のところで、これは安全性確保の観点から提案されているところです。議論の前提として2つ伺いたいのですが、(1)の承認制とありますが、実際上許可制となる部分に関しては、「iPS細胞などの臨床で使用されたことがない安全性の確保等に特に注意が必要な医療」とありますが、実際にはどういうものを想定されているのかをお聞かせください。その上で、そうやって括る根拠がちゃんと見い出せるかな、というところが少し課題かと思います。
 (2)(3)についても、大体どういうものを想定しているかということが聞ければ有り難いです。それと同時に、こちらは審査という観点だけで書かれておりますが、これは届出は義務付けることが想定されているのかどうかを教えてください。
○荒木室長 先ほど中畑委員からの御意見もありましたように、(1)については例えばiPS細胞等の臨床で使用したことがないという、正にここに書いてあるとおりなのですが、iPS細胞あるいはES細胞等、ヒトにまだ応用されたことのないようなものについてを、(1)の事前の厚生労働大臣の承認という形で対象とするのかと。そうすると、件数としては非常に限られるかと思っております。
 (2)(3)ですが、(2)は体性幹細胞等を用いて、一定程度今のヒト幹の研究等で安全性については大体確認されているもの。(3)というのは幹細胞ではなくて細胞と。分化細胞と呼ばれるもので、少しリスクとして低めなのかなというものについてを(3)と考えております。(2)(3)については、しっかりと第三者性の担保された審査委員会の意見を聞いていただくとともに、意見を聞いた結果も含めて届出をしていただくということで、実態の把握にもつながるかと思っております。
○辰井委員 今の段階で懸念されることについて幾つか意見を申し上げます。許可制ということは、恐らく許可なくやった場合には罰則がかかることを想定されているのだろうと思います。そのときに、実際にどういう文言で書けるかということが私にはピンと来ません。先ほどのお話もありましたが、多分、間もなく確立されてしまうという動きのある分野を規制することになると思いますので、それをある特定の文言で、刑罰をもって禁止する、という条文がちゃんと作れるのかということが1つ疑問です。
 もし今の段階で、こういうものは駄目だろうというのが先生方の中である程度共有されているものがあるとすると、その問題性は一体どこに本質があるのかということを伺いたい気がします。そうすれば、もしかしたらそこだけ禁止するという理屈が立つかもしれないと思う反面、今どこか特定の部分を禁止するというのは、少し難しいような感触を持ちます。
○花井委員 今の意見と私も同様の疑問を抱いていました。その下に加工技術の、つまり培養施設基準も言っています。私の理解だと、製品化ということになると薬事法でGMPという基準があります。治験の段階ではGCPでやっている。プロダクトにするものについては、ある程度今も規制があって、その規制を再生医療に合わせてどうするかというのがあると思うのです。
 1の方向性の、大臣の承認制にするときに、例えばプロセッシング・センターの施設基準も含むのであれば、これは当然最低のクライテリアがあるべきなのだから、このことを行うのであれば、このぐらいの施設基準とか、輸送するときの手順とか、そういうのがちゃんとなっているかということは、実用化しようがしまいが、最低のクライテリアとして存在するわけです。そういうものを、薬事とは別に国が見て、確認して、全体として承認する、若しくは許可するということをお考えなのか。
 下の施設基準というのは別の問題で、施設の問題として規制する話で、この方向性の(1)(2)(3)は飽くまでそのものごとの、それぞれごとの研究のものによってそれをやろうとしているのかによって、大分先ほど言った話と設計が変わると思うので、そこの事務局のお考えを聞きたいと思います。
○荒木室長 御指摘ありがとうございます。上の3のリスクに応じた再生・細胞医療の実施に当たる承認制の話と、下の培養・加工基準、施設の基準との関係はどうなっているかということだと思います。逆に、再生医療・細胞医療を実施する際には、そこにCPCなりが当然最低限必要になってきます。ここの実施計画を出すと例えば考えたときに、今のヒト幹でも同様ですけれども、CPCはしっかり管理されているのか、その施設基準がある程度担保されているのかというのはチェックしておりますので、それと同様な形、すなわちこの実施計画の中にも、その施設基準が認められているかどうかというのは確認する作業が入ってきます。
 しかしながら、独立して4の「細胞の培養・加工」だけをするような所というのも、もしかしたらあるかもしれない。「細胞の培養・加工基準の設定等」の論点(2)にあるように、薬事法以外で、製造所以外で、例えば医療機関から委託を受けて、培養・加工の作業だけをやりますというような所があった場合に、そこについて今は基準がありませんので、そこは基準をしっかり決めてやっていただく。そういう所で作られた細胞を利用して、ヒトに投与する研究をします、あるいは自由診療でやりますというときには、3の再生医療・細胞医療の実施についての厚労大臣の承認とか、届出というのをやってもらうということです。
 説明が分かりづらいのですが、施設基準は施設基準として当然必要だろうと。当然その施設基準を基に作られた細胞を使って、こういう臨床研究をしますとか、こういう治療をしますというような計画をチェックするというのが3番になります。
○花井委員 4の施設基準は、今回は薬事法以外の部分が入っていると思いますが、それも強行規定によって縛ろうというお考えですか。つまり、大臣が施設の基準のほうも、要はインスペクターが行って、見て、いいよねと言ったらそれはお墨付と。そうでない所でやったら、それは違法だというイメージですか。(1)と連携して、ちょっとそこが分からないのです。基準で、ガイドラインであればそれはいいのですけれども。
○荒木室長 ここは御議論のあるところだと思います。今、薬事の話をされましたが、薬事法ではしっかりとそういう形でインスペクトしてやっていくということです。逆に今回対象としているのは、先ほど早川委員がおっしゃいましたように医療法の下というか、薬事法以外のものでやられている臨床研究、あるいは自由診療の部分について、安全性をしっかり担保する仕組みがないということなので、この新しい法律的な枠組みが必要だろうという御議論が最初のきっかけです。その薬事以外の部分で、同じ細胞を使って培養加工施設がある場合に、薬事と全くそこはフリーでいいのかと。そこは、ある程度同等な基準をもって、しっかりとしたものでやってほしいという意味合いでここに論点を挙げさせていただきました。
○永井委員長 そうすると、民間の医療で再生をうたっているものについては、再生についてどのぐらいの責任を負うのですか。やはり、再生しないものは再生医療と言ってはいけないということになりますか、民間医療についても。それもこの法律で縛ろうということになるわけですか。
○荒木室長 再生をうたうかうたわないかといえば、先ほど永井先生御自身がおっしゃられました、入口部分で、そういうことで再生を。
○永井委員長 研究としての入口であっても、もう実践ということになればそれは出口です。そこについてこの枠組みはどこまで規制するか。つまり、研究するときには再生するかどうか分からないわけですから、目的とするというところを対象にするわけです。しかし、それが確立した医療のようにうたった場合には、再生という言葉に対して責任があると思います。
○荒木室長 それは前回も御議論いただきました。特に再生医療をうたって細胞治療をやっているような自由診療の部分についても、対象にすべきというお話ですので、そこもこの仕組みの中で、例えば届出なりをしていただく中で、そこでは先ほど先生がおっしゃいましたように、実際に再生しているかどうかというところも含めて、その御自身がしっかりと申告してもらう。そういう意味での申請行為をやっていただこうかというのも1つのアイディアかと思っております。
○町野委員 少し戻って、先ほどの辰井先生の質問の内容の確認です。5ページの「方向性」が(1)(2)(3)とありますが、この差というのはいずれにせよ承認がなければ実行してはいけないのですよね。その点では全て許可制と同じようなものだということでよろしいですね。これは、(1)だけではないですよね。意見を聞かないで実行するわけにはいかないわけですから。
○荒木室長 そこはどういう枠組みかというのを、もう一度御説明申し上げます。(1)は基本的に厚生労働大臣の承認とか許可と。(2)(3)については届出である。届出する際には、当然第三者性のある審査委員会の意見を聞いたもので出していただきたい。
○町野委員 届出というのをもし法律用語で使うのならば、届け出れば勝手にやっていいという話なのですよ、もともと。それが法律なのですが、それでいいのですか。届けたよ、今から出掛けるよというのと同じだということではなくて、恐らく向こうのほうに意見を聞いて、その意見を待ってから初めて実行できるわけでしょう。
○荒木室長 審査委員会のです。
○町野委員 私が聞いているのは(1)だけではなくて、ある意味で実質的に全部について、これは許可制なのですよね。ただ、許可を与える主体が一番最初は非常にきつくて厚生労働大臣になって、2番目が機関内の倫理審査委員会ではなくて、ある範囲で公的な忠実なもう一つの倫理審査委員会を作る。(3)が機関内倫理審査委員会という位置付けという具合に考えてよろしいわけですか。だから(3)も、機関内の倫理審査委員会がオーケーと言う前に勝手にやってもいいという話ではないですよね。だから、その点ではみんな許可制だという点で共通ではないかというのが私の質問です。確認です。
○佐原課長(医政局研究開発振興課) 町野委員のおっしゃるとおりだと思います。(3)は、例えば各施設の倫理審査委員会の許可を得た上で、許可と言うのが適当かどうか分かりませんが、その上で届けをしていただくというような形はどうかというのを提案させていただいております。
○前川委員 5ページの「方向性」の3つの枠組みで実施した場合に、今巷で自由診療と称して行われていることに対して、どの程度監視ができるかどうかということは極めて疑問に思うのです。ここのところをよく考えなければいけないと思います。例えば、ISSCRではいろいろな情報を集め、患者さんにその情報を提供することによって、きちんとしたエビデンスのあるものかどうかを資料として、アンケートまで出してそれを回収しても結局公表されていないのです。それは、いろいろな所からクレームが入ってきたりしたみたいですけれども、そういうところまで狙ってこの方向性を考えているのか、あるいはそこは今までどおり勝手になる可能性もあるということになりはしないかというのを危惧するのです。
○早川委員 これも私の理解ですが、今まで医療法・医師法の中でヒト幹に来てやっている医療というもの、正確には臨床研究というべきかもしれませんけれども、そういうものとそうではないものも細胞を使ったものにはあるわけです。しかも、ヒト幹の中でも医療の中身によって、どれだけ安全性をびっしり担保しなければいけないものかというのは、それぞれによってケース・バイ・ケースで違ってくるのだろうと思うのです。
 今、自由診療といわれている中でも、いろいろなグレードで安全性を担保しなければいけない。医療の中身によって変わってくるのだろうと思うので、そこをにらみながら、しかるべきコントロールをする。推進と安全性確保と言っていますから、そこはとりわけヒト幹のようなものは、推進を阻害しないことを前提にしつつ、必要な安全性を確保するということですが、とにかく細胞を使った医療を何とか網に掛けていきましょうという試みだろうと思います。
 先ほどの4について言えば、少なくともヒトに投与するわけですから、これだけは誰が何と言っても、ディスカウントできませんという部分があるのだろうと思います。あとは、例えば薬事法のように、非常に大勢の人たちに投与して、製品が本当に一定のものでなければいけない場合と、そうでもない場合もあるかもしれない。例えば研究段階ではです。4というのは、多分ミニマムについても、とにかく今まで設定されていないケースもあるので、そこはミニマムを設定しつつ、グレードに応じてという考え方ではないのかと私は理解しています。
○佐原課長 前川委員からの御質問で、今は自由診療で、再生医療と称して体性幹細胞などを使ってやっている場合はどのようになるのかを考えてみますと、5ページの(2)で、体性幹細胞を使っているような自由診療のクリニックであれば大臣の承認制はしないけれども、きちんとした質の高い倫理審査委員会の審査をまず経ていただいて、それを許可と言うかどうかは別として、きちんと審議を経た上で、厚労省に対して届出をしていただくということがあるのかなと。
 その上で、更に届出をしていただいたものについては、6ページから続きますが、5の「国民への情報公開」ということの続きで、7ページの一番上の「方向性」の(1)で再生医療・細胞治療の実施状況を把握し、その実施状況について最新の情報を定期的に広く国民へ情報提供していく。国民のほうへフィードバックしていく、というような議論が今まで3回御議論いただいたところを事務局のほうでまとめさせていただいたものです。
○前川委員 申請してくるものはいいと思うのです。申請してこない、いわゆる地下に潜る、という言い方がいいかどうかは別として、そういうものに対してはどうなるのか。そういうものも宣伝が必要でしょうから、Web上、ネット上で恐らく出てきます。それを、ISSCRは全部チェックして、そこへアンケートを送ったのですけれども、結局それが公表されないというところがあるので、そこを私は危惧しています。性善説というか、それに立って皆さんこれを守って申請していただけるであろうというところになっていると思います。そうでないものに関しては、ちょっと議論が外れるかも分かりませんけれども、そこがちょっと気になります。それでないと、ベセスダ事件とか、福岡の問題(博多新宿クリニック)はなくならない可能性があるのではないかと思います。
○伊藤委員 大和委員と澤委員が本日お話された内容と、この議論の整理の案とがなかなか結び付かなくて困っていました。何で結び付かないのかいろいろ見ていたら、ここの「主な意見」というのは今までに出た意見のまとめですからそれなりのことはあります。「主な意見」とあって、「論点」となって、「方向性」になったら途端に骨抜きになっています。ここの関係がよく分からなくて、取り分け5ページにある3の項目の「方向性」、7ページにある「方向性」というのが、これだと何をしたくてこの議論をしていたのか分からない。当たり前でしょうみたいなことしか書いてないような気がするのです。そうすると、先ほどどなたかがおっしゃったように、この議論というのは何をやっていたのだろうということにもなり兼ねないのです。
 せっかく「主な意見」とか、「論点」ということでまとめているのですから、そことこの「方向性」との整合性について、何でこの方向性ということになっていくのかという流れを、もう少し丁寧に説明していただかないとよく分からない。ずうっと聞いていたのだけれども、ほとんど分からなかったです。そこのところを、どういうつもりでこれをやりたいのかをお聞かせいただきたい。特に「主な意見」で出ていたところをもう少し尊重して書かれたらいかがかという気がいたします。
○掛江委員 これは、できればということでリクエストなのですが、例えば先ほど辰井委員、町野委員が御指摘された、5ページの「方向性」の(1)(2)(3)です。事務局のほうでグレードを付けて(1)(2)(3)としていただいたことは非常に理解できるのですが、この3種類は何が違うのかというところを、整理していただきたいと思っております。つまり、辰井委員の言葉をお借りすると、問題性の本質がどこにあるのかという観点から、規制を検討すべき問題やリスクというのは何なのか、何を危惧してこの規制の議論を検討しているのかというところを、まとめていただけると助かります。恐らく、専門家の先生方は頭の中で具体的にどういうリスクがあるか、それぞれについてイメージできているのだと思うのです。一方、一般の者というか、研究者ではない者にとっては、どういう具体的なリスクを懸念しておられるのかというところが、若干共有できていない部分があると思うのです。問題が何か、リスクが何かというのを、いろいろな規制を考える、それぞれの医療なり、研究なりについて一度整理して教えていただくというのはできないかなというところをお願いしておきます。
○梅澤委員 私が専門家という立場でお答えさせていただければ、(1)と(2)との間のiPS細胞等を用いた医療と、体性幹細胞等を用いた医療で、(1)で新たなリスクというのを思い当たるのがあるのかという御指摘と理解しました。(1)(2)を用いた医療であっても、基本的なリスクに関しては大きな違いはありません。
 それでは、なぜ(1)と(2)で違いがあるのか、又はそのような許可制の程度が違うのかと考えると、原材料であるiPS細胞等で、従来それを原材料として使用したことが一度も日本国内でないという事実があります。そうすると何が起きるか分からない。そういう観点からも、安全性の確保等に特に注意が必要である。一方、(2)の体性幹細胞等を用いた医療の場合、従来から既に多くの臨床実績があるため、ある範囲の中で安全性を予想できるということがあります。繰り返しになりますが、(1)と(2)の間に安全性といった観点から、新たな別のリスクがあるという思いは私にはありません。もし違っていれば御指摘いただければと思います。
○宮田委員 これは、安全性の担保のところで皆さんの議論の中心になっていますが、一方で推進になっています。そうなると、この枠組みで本当に良い自由診療、再生医療が全国民に手の届くような形ではなく、ダラダラと行われることを、この法律が担保されることだけは避けていただきたい。
 つまり、どういう形で国民健康保険のほうに載っていくかという3つのトラックがあって、薬事でやるか、先進医療Bでやるか、それから自由診療でやるか。もし自由診療の中で、本当に良いものだったら国民が共有すべきだと思っているので、それをこの法律を盾に自由診療がダラダラと続くというのは間違っていると思うのです。これは推進という側面から、是非そういう良いものだったら、うまく薬事とか、先進医療Bで、基本的に健康保険のほうに持っていくような筋道も作っていただきたい。そうでないと本日の議論は、その筋道を意識した上で議論しないとまとまらないのではないかと思っております。
○松田委員 時間も押しているので、簡単に要望だけお願いいたします。「細胞の培養・加工基準の設定等」というところで、方向性の記述があります。表現はこれでよろしいかと思うのですが、これを具体的に制度設計をしていくときに、是非ITをフル活用してもらいたいということなのです。
 その主な理由は2つあります。1つは、ICHでもその方向で整備が進められていると思うのです。従来の品質保証というのは、できた製品、この場合は細胞ですけれども、その細胞が基準にマッチしているかどうかということをチェックするという考え方から、今はそういう基準に合った製品なり細胞を作るためのプロセスをどう設計するか。そのプロセスでできてきたものは基準に合っている、という考え方にシフトしているわけです。今は、ソフトウェアでも随分そういうものが市販でもありますので、プロセス管理、工程管理をITの技術で細胞を培養する現場と、医療の現場がリアルタイムでこの情報を共有できるような仕組み下にその管理を置いておくのがよろしいのではないかということです。
 もう1つはIT企業のトップの方と話すと、いつもそういう話題になるのですけれども、日本はITの活用ということでは、お隣りの韓国に比べるといろいろな分野で随分遅れていると。関心の高い再生医療・細胞治療の分野で、是非ITの技術をフル活用して、品質管理も、治療の効率化も含めてやってもらいたいというお願いです。
○永井委員長 ありがとうございました。もう時間も過ぎておりますので、本日はここまでとしたいと思います。次回は取りまとめ案が出てくるのですか。今の時点で取りまとめは難しいかもしれないのですが、取りあえず何か本日の議論をまとめていただいて、資料を提出していただければと思います。それでは、事務局から連絡事項等をお願いいたします。
○荒木室長 今回も非常に激しい御議論をいただいてありがとうございました。次回は2月19日(火)の15時から17時ということですが、会場はまだ未定ですので、詳細についてはメール等でお伝えいたしますのでよろしくお願いいたします。
○永井委員長 それでは、長時間にわたってありがとうございました。


(了)

照会先
厚生労働省医政局研究開発振興課再生医療研究推進室
TEL  03-5253-1111
内線 2587

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