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2012年11月27日 第10回肝炎治療戦略会議 議事録
健康局疾病対策課肝炎対策推進室
○日時
平成24年11月27日(火) 15:00~17:00
○場所
厚生労働省 共用第8会議室(6階)
○議事
○大石肝炎医療専門官 定刻前でございますが、委員の皆様全員おそろいですので、ただいまから第10回「肝炎治療戦略会議」を開催させていただきます。
委員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきましてまことにありがとうございます。
本日は現時点で8名の委員にお集まりいただいております。
なお、道永委員におかれましては、欠席されるとの連絡をいただいております。
会議の開催に当たりまして、矢島健康局長から御挨拶を申し上げます。
○矢島健康局長 健康局長の矢島でございます。
委員の先生方には、本日お忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございます。それから、日ごろからの肝炎対策だけでなく、厚生労働行政全般にわたりまして、いろんな面で御支援、御協力をいただいております。この場をお借りいたしまして厚くお礼を申し上げさせていただきます。
本日の議題ですが、前回の会議で薬害肝炎全国原告団・弁護団からの御要望のありました発がん抑制目的のインターフェロン少量長期投与に関するこれまでの報告のほかに、B型肝炎、C型肝炎の治療法の変遷ですとか、現状、今後の展望について委員の先生から御発表を前回いただきました。本日はその前回御議論いただきました、発がん抑制目的のインターフェロン少量長期投与に関します取りまとめをお願いしたいと考えております。あわせまして、先日開催されました米国での米国肝臓学会2012におけます最新の報告等について、御発表をお願いしたいと考えております。
皆様の忌憚のない御意見をいただければ大変ありがたいと思っておりますので、何とぞよろしくお願いをいたします。
○大石肝炎治療専門官 カメラ撮りはここまでとさせていただきます。退室をお願いいたします。
(カメラ退室)
○大石肝炎治療専門官 それでは、議事に入ります前に配付資料の確認をさせていただきます。
議事次第、配付資料一覧、座席表がございます。
1ページ目から資料1として「米国肝臓学会2012の最新の報告(B型肝炎)」。八橋委員御発表スライド。
45ページから資料2「米国肝臓学会2012報告(C型肝炎)」。泉委員御発表スライド。
79ページから資料3「発癌抑制目的のインターフェロン少量長期投与の有効性について(案)」。
83ページから参考資料1として、日本肝臓学会「C型肝炎治療ガイドライン」。
147ページから参考資料2「肝炎研究10カ年戦略」。
157ページから参考資料3「肝炎治療戦略会議開催要領」。
159ページから参考資料4「肝炎治療戦略会議名簿」となっております。
配付資料は以上でございますが、不足等はございませんでしょうか。何かございましたら事務局へお申し出いただきたいと存じます。
それでは、ここからの議事進行は林座長にお願いしたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
○林座長 それでは、本日もどうぞよろしくお願いいたします。
本日の議事でございますが、お手元にお配りしておりますように、米国肝臓学会2012年のB型肝炎の最新の報告、次が同じく米国肝臓学会のC型肝炎の最新の報告。その後に先日御議論いただきました発がん抑制目的のインターフェロン少量長期投与に関する取りまとめをまとめさせていただきたいと思っております。最後、その他という議題がございますが、以上4議題でございますので、よろしくお願いしたいと思います。
それでは、最初に米国肝臓学会2012のB型肝炎に関する最新報告につきまして、八橋委員から御発表をよろしくお願いします。
○八橋委員 よろしくお願いします。スライドを見ながら説明したいと思います。
米国肝臓学会は11月9日から13日、ボストンで行われました。その中でB型肝炎の治療に関係し、なおかつ日本の医療現場に関係するものを私のほうでセレクトいたしました。
(PP)
核酸アナログ製剤とインターフェロンを併用する治療法の演題が5つ、核酸アナログ投与中の肝発がんに関する演題が3つ、これはいずれも日本からの発表でございます。新しい治療薬に関する演題が2つで、本日は、スライドで黄色をつけたものに関してレビューのように説明したいと思っています。
(PP)
これはPresidential Plenaryとしてセレクトされた今回の発表演題の中から最も高く評価された演題です。中国からの多施設共同研究ですが、エンテカビルからペグインターフェロンにスイッチさせて、その有用性を検証した前向き研究です。
(PP)
主要評価項目は治療終了時のe抗原のセロコンバージョン、副次的評価項目はS抗原の消失を検討しています。日本でもエンテカビルを長期投与されている例は多いかと思うのですが、本検討では、エンテカビルを9カ月から36カ月間ほど治療をおこない、HBVDNA量が103以下で、なおかつe抗原は100PEIU未満、これはe抗原量の値としては低めの値になります。それを2群にランダマイズして、1つの群はエンテカビルをそのまま継続する、もう一つの群はぺグインターフェロンにスイッチさせるという2群比較でございます。
(PP)
両群間に差がないということと、対象例の平均年齢は33歳。中国人ですので100%アジア人が対象となります。
(PP)
これが治療成績です。48週時点の評価の比較になりますが、eセロコンバージョンに関してはペグインターフェロンのほうが有意に勝っていたということでございます。ただ、HBVDNAの3log未満という点では核酸アナログがより高い頻度であったということです。
注目すべき点は、S抗原の消失率はペグインターフェロン群で9.3%、エンテカビル群がゼロであったことです。ペグインターフェロン群でS抗体陽性は4.1%でした、このようにエンテカビルからペグインターフェロンへとスイッチしたほうがS抗原の消失率が有意に高かったという発表でした。
(PP)
ペグインターフェロン群で、よくS抗原が消える理由としては、エンテカビルを投与している群に比べてペグインターフェロンにスイッチした例のほうが、S抗原量がより低下していたが確認されています。
(PP)
特にe抗原のセロコンバージョンを起こした例でみると、S抗原量は、より顕著に低下していたようです。
(PP)
e抗原量の推移も、ペグインターフェロンにスイッチしたほうが、より低下していたということが報告されています。
(PP)
ただ、有害事象、副作用に関しては、ペグインターフェロンにスイッチしたほうが副作用の発現率が高く、特にALT値の上昇の程度として正常値の5倍とか10倍上昇する例がペグインターフェロンで多いということで、これらの有害事象に関してはエンテカビルのほうが優っていたという発表です。
(PP)
結論のところを見ていただきたいのですけれども、エンテカビル投与で、ある程度HBVDNA量が低下し、e抗原の値が下がった例を対象として、そのままエンテカビルを継続投与するよりもペグインターフェロンにスイッチしたほうが、高いe抗原のセロコンバージョン率を示し、また、S抗原の消失率が高いということです。特にエンテカビル投与でe抗原が消えてS抗原が3,000国際単位未満の状態から、ペグインターフェロンにスイッチすれば、19%の例でS抗原の消失が確認できたということです。この発表は、日本でも参考になるデータではないかと思われます。
(PP)
2番目の発表は、エンテカビルにペグインターフェロンを追加するという発表で、これも中国とヨーロッパの多施設共同研究として口演発表されました。
(PP)
studyデザインとしては、e抗原陽性例を対象に、24週まではエンテカビルをともに使うわけですけれども、24週からエンテカビルに加えてペグインターフェロンを追加する群と、そのままエンテカビルを単独で継続投与する群の比較検討です。e抗原が消えてHBVDNAが200国際単位未満となった例を奏功例ということで効果判定が行われております。
(PP)
211例を対象に2郡にランダマイズして、およそ90例前後で2群間比較をおこなう前向きスタディでございます。
(PP)
対象の平均年齢は32~33歳、人種はアジア人が6割、白人が4割という集団です。HBVジェノタイプがある程度ばらついているようですが2群間で差はないようです。
(PP)
これは治療の後半の24~48週の期間内のウイルスマーカーの変化を比較したものです。ペグインターフェロンを追加した例においてHBVDNAの低下、e抗原量の低下、S抗原量が有意に低下していたことを明確に示しています。
(PP)
ただ、48週の時点のHBVDNA量の200国際単位未満の頻度、HBVDNA量20国際単位未満の頻度、e抗原消失例の頻度、それにHBVDNA量の200国際単位未満を複合して評価した例の頻度ということに関しては、いずれもペグインターフェロンを追加したほうが頻度は高いわけですけれども、有意差がこの4つの指標では得られてはいませんでした。傾向は見られましたが、有意差はなかったということです。
(PP)
奏功に関する因子の検討では、治療前のDNA量、治療前のe抗原量、治療前のS抗原量が有意であったとようですが、治療に関しては0.06ということで単変量では有意差が出ていないわけですが、多変量を行いますと治療前のS抗原量とペグインターフェロンを追加したほうが、有意に奏功に関係していた独立因子だったということです。
(PP)
横のグラフで示したものを見ていただくと、例えばS抗原の値が3logであった場合、やはりペグインターフェロンを追加したほうが縦軸のProbability of responseが高いということが理解できます。エンテカビルにペグインターフェロンを後半24週から追加したほうがe抗原のセロコンバージョンが得られやすいという発表です。
(PP)
結論ですが、エンテカビルにペグインターフェロンを加えた方がe抗原の消失率が高く、S抗原の低下にもより効果があるだろうということです。一般的にエンテカビルという核酸アナログ製剤では10年以上の長期投与が必要となります。そこで、この演題のようにエンテカビルにペグインターフェロンを追加治療することで、より早期にS抗原が消えれば、エンテカビルという薬剤は安全に中止できます。この発表は、そのことを意識した、今後の治療法につながる発表だったと思います。
(PP)
次に、エンテカビル投与中の肝発がんに関する発表が3つあり、いずれも日本からでございました。この中でも虎の門病院の保坂先生の発表が会場でも注目を集めていましたし、関係者からもインタビューもされていましたので御紹介したいと思います。
(PP)
後日、この演題は最近、Hepatologyにアクセプトされたとお聞きしております。本研究は前向きスタディではなくレトロな手法ですが、対照群と背景を一致させる手法を用いています。エンテカビルを投与した例と、全く治療していない例との2群比較であります。具体的には、最近有名となっているpropensity scoreという手法で対照群とマッチングさせます。
(PP)
左側がいわゆるもともとの対象例で、右側がpropensity scoreでマッチングさせた群ですが、マッチングさせると全ての因子において有意差がないということが示されています。
(PP)
これが結論になりますが、エンテカビルを投与した群が下の線で、もう一つのドットの線がコントロール群ですけれども、有意にエンテカビルを投与した群において発がん率が低下していたということをクリアに示されました。
(PP)
B型肝炎の患者の中にも、発がんリスク、肝癌に進展しやすい方のリスク因子がわかっています。そこでサブ解析として、肝硬変例と肝硬変でない例を2群に分けて検討した場合、肝硬変例において顕著にエンテカビルは発がんリスクを低下させていたことを示されました。
(PP)
肝硬変でない例、発癌リスクの低い集団では、エンテカビル投与による発がん抑止については結論がでていない、有意差が得られていないということでした。ただ、発がんリスクの高い例において、核酸アナログは確実に発がんを抑止したということを今回、日本から海外に向けて発表できたのではないかと思います。
(PP)
結論に関しては繰り返しになりますが、エンテカビル投与は、無治療例に比べて発がんリスクを低下させます。特に、発がんリスクの高い例においてよりその効果は顕著である。ただ、発がんリスクの低い例においてはもう少し長期的な経過を見ないと、結論は言えないのではないかというコメントです。
(PP)
もう一つは川崎医大からの御発表で、核酸アナログ投与中の肝発がん例でのS抗原量についての詳細な検討です。
(PP)
167例で3種類の核酸アナログが投与されました。2年間以上投与した例で、その後、発がんがどうなったのか、また発がんした時の状況がどうだったのかということを詳細に検討されています。
(PP)
これは3種類の核酸アナログ治療時のALT値の30未満の頻度と、HBVDNAが3log未満の頻度を示したものです。
(PP)
これが1つのキースライドになりますが、投与をして6カ月か12カ月の時点のHBVDNA量とS抗原量の値と、その後の発がんというところで検討が行われています。薄い水色の丸で示された点が、個々の症例です。核酸アナログを投与していますので、いずれもHBVDNA量は低いところに分布しています。赤い点が発がん例ですが、S抗原の値が2,000以上の例で多いことがわかります。
2群で分けますと、HBVDNA量では発癌率に差はないが、S抗原が2,000以上か未満かでその後の発がん率が異なっていたということでございます。
(PP)
もう少し分かりやすく出したのがこのアルゴリズムです。核酸アナログを投与してHBVDNA量は全例である程度下がるわけですが、2.1log以下に低下した例の中を、なおかつS抗原量が2,000以上と2,000未満に分けますと、発がんした6例というのはいずれもS抗原の値が2,000以上であったということです。核酸アナログ投与でHBVDNA量は低下しますが、S抗原量まで下がっているのか、S抗原量に関して、もともと低い例、高い例がある中で、S抗原がある程度低下しないと発がんのリスクはそれほど落ちていないのではないかということを示唆した発表だと思います。
このようにS抗原と肝発がんとの関連に関しては、昨年、台湾からも同じような発表がありましたので、この川崎医大の発表はそれを日本でも追試したものと位置付けられます。
(PP)
Conclusionの下の2行を見ていただきたいのですが、核酸アナログを長期投与してHBVDNA量が低下していても、その後の発がんリスクというのはS抗原のレベルで決められるのではないかという結論でございます。
(PP)
新しい製剤として、インターフェロンλをB型肝炎に投与したという発表がございました。インターフェロンλはC型肝炎のほうで今、臨床試験が行われていますが、B型肝炎患者にも投与してみたということでございます。
(PP)
これはe抗原陽性例を対象に48週間、インターフェロンλとペグインターフェロンα2aとの比較試験でございます。
(PP)
ただ、治療効果に関しては、治療終了24週目の時点ですが、e抗原の陰性化率、セロコンバージョン率、いずれもインターフェロンλとαインターフェロンの間では差がなかったという結果でした。
(PP)
有害事象に関する比較です。インターフェロンλはもともとインフルエンザ様の副作用が軽い、血球減少が軽微であるということがC型肝炎でも確認されていますが、B型肝炎でも同様に血球減少の副作用の頻度が少ないということでした。ただ、ALT値の上昇に関しては、αインターフェロンよりもλインターフェロンのほうが頻度として高い。これはC型でも確認されていると理解しています。
(PP)
REP 9AC’という新薬についてご紹介します。S抗原蛋白の肝細胞からの放出を阻害する新しいお薬でございます。これは2~3年前から基礎的な研究と、部分的ですが、バングラデシュで臨床試験の成績が学会で発表されています。
今回の発表はREP 9AC’に途中からペグインターフェロンαをかぶせたら、S抗体がよく産生されたという発表でした。REP 9AC’についての今までの報告では、投与して半年の間に急速にS抗原の低下、陰性化をもたらし、HBVDNAも陰性化するけれど、薬をオフにしても、その後もその状態が持続するということです。これだけの発表を見ていると非常に魅力的なお薬ではないかと私自身は考えています。
(PP)
これは上段がインターフェロン単独、下段は、REP 9AC’の抗ウイルス効果を、いろんな文献からの成績を引用して比較したものです。REP 9AC’ではHBVDNAの陰性化率とかS抗原の消失、e抗原の消失率がかなり高い印象を受けます。特にS抗原の細胞からの産生を抑制するということで、S抗原を急激に下げることに関しては、かなり強力なお薬のようでございます。
ただ、時間とともにもっと臨床試験が進むのかなと思ったのですけれども、余り進んでいないので演者にお聞きしたところ、今後、オーストラリアとか他の地域での臨床試験を予定しているというコメントでした。
(PP)
ということでB型肝炎の治療に関して、アメリカ肝臓学会の最新情報ということで私のほうから説明しました。どうもありがとうございました。
○林座長 どうもありがとうございました。
B型肝炎の今回の米国肝臓学会のサマリーをお話いただきましたが、コメント、御質問ございますでしょうか。国際的にB型肝炎の数は非常に多いですから、アメリカの学会ではかなり多くの報告がございます。よろしゅうございますでしょうか。
続きまして、今度はC型肝炎の最新情報につきまして、泉先生からよろしくお願いいたします。
○泉委員 C型肝炎の御報告をさせていただきたいと思います。
非常にたくさんの発表があったのですけれども、我が国のC型肝炎の実情に関係すると思うものを抜粋して、御報告させていただきたいと思います。
(PP)
新しい直接C型肝炎ウイルスを抑えるDirect Acting Antivirals(DAAs)は、プロテアーゼ阻害剤、ポリメラーゼ阻害剤、NS5A阻害剤、たくさん報告がございました。
プロテアーゼ阻害剤の中にたくさん報告があって、緑に示したのは日本で上市されているもの、赤は治験中のものを示しています。ポリメラーゼ阻害剤は核酸型と非核酸型があるわけですが、日本ではTelaprevirが上市されております。Boceprevirは日本では行われておりませんが、Simeprevir、Faldaprevir、Vaniprevir、Asunaprevir、ABT-450、こういったプロテアーゼ阻害剤の日本で開発が行われているものの発表がございました。
核酸型のポリメラーゼ阻害剤のGS-7977、Sofosbuvirという名前がつきましたけれども、これに関する報告が海外では注目されております。まだ日本では治験が始まるかどうかまで決まっていないと思いますが、それから、非核酸型のABT-333というものの報告がありましたし、我が国で非常に期待されているDaclatasvirというもの、それから、ABT-267というものが報告されておりまして、この赤で示したものが海外で第?相に入っているものであります。
(PP)
特にこのPEG-IFN/RBVにDAAを加えるという、3剤併用療法についての御報告をさせていただきたいと思います。
第1世代のTelaprevir、第2世代のSimeprevir(TMC435)、Vaniprevir(MK-7009)、Faldaprevir(BI201335)というものがPEG-IFN/RBVとの併用が行われておりますし、欧米を中心としてSofosbuvir(GS-7977)がPEG-IFN/RBVとの併用が行われておりますし、NS5Aの阻害剤Daclatasvirが3剤併用療法での試験が行われています。
(PP)
我が国で上市されましたTelaprevirにつきましてですが、非常に多くの発表がございました。特に安全性について、線維化進展例についての効果がどうかということ。日本からの発表では札幌厚生病院の狩野先生が腎機能低下についての御報告をされています。それから、1日2回がいいのか、3回がいいのかということでの御報告がありましたので、御紹介させていただきたいと思います。
(PP)
特にフランスからの報告で、代償性肝硬変でTelaprevirとBoceprevir、第1世代でございますが、これを行ったときの報告がございました。日本ではTelaprevirだけですのでTelaprevirだけのデータに絞って見ていきますと、代償性肝硬変といっても日本よりはるかに条件がよくて、平均年齢が57.2歳で非常に若い方が多い。それから、血小板が15.2万ですから、代償性肝硬変と言ってもそんなに肝硬変が進んでいない患者さんばかりが対象として行われたものであります。
(PP)
やはり肝硬変ですので、そうすると4週でウイルスが消える方がPer Protcol全体で58%、治療を行ったITTだと50%に下がっていくということでありまして、通常、慢性肝炎で行われると9割ぐらいはウイルスが消えるわけですが、肝硬変では少し低い。8週、12週でもいずれもウイルスの消え方が低かったということなので、線維化の進展例では少しウイルスの消えが、慢性肝炎よりも消えるのが低下するというデータが報告されています。
(PP)
一番重要だったのは安全性についての御報告でありまして、重篤な有害事象に関して、開発治験の段階で10%以下だったのが45.2%、ですから肝硬変ですと非常に重篤な有害事象が多いということであります。それから、早期中止が多いということと、死亡例が5例報告されておりまして、感染症とか肺障害、心内膜症、食道静脈瘤出血というものが報告されております。腎障害だとか、非常に強い貧血が起こるという報告があって、注意喚起がなされたわけであります。
(PP)
1日1回か2回かということで、ヨーロッパを中心としたスタディが行われております。8時間ごとに750mgのTelaprevirを内服してPEG-IFN/RBVをやったものと、1日量は同じなのですが、12時間ごとに内服してPEG-IFN/RBVを行ったものの比較成績が報告されております。
(PP)
そうしますと、こちらが8時間ごと、こちらが12時間ごとですが、治療が終わってウイルスが12週で消えている患者さんの比率は両方とも同じである。それから、線維化進展例でも、線維化進展していない群よりも少し悪いのですが、しかし両者に差がないということ。それから、IL28Bで非常に効きやすいタイプの患者さん、効きにくいタイプの患者さん、両方とも治療効果は変わらなかったということですので、1日2回か3回かということに分けても治療効果は変わらなかったというデータが報告されております。ただ、1日量は同じ量であります。
(PP)
第2世代のSimeprevir(TMC435)、大環状型と言われるものですが、これとPEG-IFN/RBVの成績が報告されております。海外では150mg、日本では100mgですが、海外のほうが少し多い量であります。最初の12週間と治療期間全体に分けてPEG-IFN/RBVだけのプラセボ群と、TMC435が入ってPEG-IFN/RBVに入った群の比較であります。
有害事象は両者に差がありませんし、有害事象による中止だとか、それ以外の有害事象についてもTMC435とプラセボ群、つまりPEG-IFN/RBV2剤との差はほとんどないということで、新たなTMCを加えることによって有害事象はほとんど起きていないということが報告されています。
(PP)
それから、非常に線維化が進行したF3/F4の患者さんについて、そして再治療の成績でウイルスが消える率がどれぐらいかということを報告されております。そうすると線維化進展例のウイルスが消えて治った率が56%ですし、前治療が再燃の患者さんは非常にいい条件ですが65%、そして前治療がウイルス量が100分の1まで下がるpartial responderの方が67%です。ところが、前治療で全然ウイルスが下がらない患者さんが33%ということで、線維化進展例だとなかなか厳しいのですが、しかし、線維化が進展していても治療成績がよくなっているというデータが報告されています。ちなみにコントロールのPEG-IFN/RBVの2剤ですと4%であります。
(PP)
もう一つ、新しい日本でも開発が行われていますMK-7009、Vaniprevirという名前がつきましたが、こちらも第2世代のプロテアーゼ阻害剤であります。
(PP)
これは林先生が御報告なさったものでありまして、日本からの成績であります。前治療が再燃の患者さんばかりで1型高ウイルス量を対象にしたものであります。100mgのMK-7009とPEG-IFN/RBVあるいは300mg、600mgと最初の4週間の内服量を変えて4週間だけ治療する。そしてプラセボ群、PEG-IFN/RBVだけの群と比較をしたものであります。主治医の判断で48週間、72週間まで治療していいというプロトコルでありました。
(PP)
最終的に非常にいい成績になっております。SVRで治った患者さんは300mg、600mgで100%治っております。100mgの群で1例だけ再燃が起きましたので、95.5%で、対照のPEG-IFN/RBVよりもはるかに治療成績がよかったというデータです。そして4週でウイルスが完全に消えた患者さんは300mgが一番よかったということなので、今後、日本での開発は100mgよりも300mgがよかったということなので、300mgで行われることになろうかと思います。
(PP)
全体まとめてみますと、初回治療で見ていきますとTelaprevirが第1世代で我が国の開発試験ではOkanoueの報告のとおり73%のウイルスが消える率ですが、第2世代の1日1回から2回の内服のTMC435、BI201335、MK7009あたりがPEG-IFN/RBVを併用しますと80%を超えるウイルスが消える率になります。
ポリメラーゼ阻害剤で核酸型のGS-7977を1日1回内服でPEG-IFN/RBVだと90%というデータになっていますし、NS5A阻害剤のDaclatasvirとPEG-IFN/RBVを併用すると87%ということなので、3剤併用ですと今後非常に治療効果が向上するというデータがアメリカ肝臓学会のまとめであります。
(PP)
さらに再治療、1回治療して治らなかった患者さんばかりのデータであります。そうするとPEG-IFN/RBVのときに一旦ウイルスは消えた再燃の患者さんはTelaprevirの治療効果も非常にいいですし、第2世代も非常によかったので余り差がありません。ところが、Partial Responseといって100分の1以下にウイルスは下がるけれども、消えなかった患者さん。Telaprevirの59%よりも第2世代のMK7009とかTMC435は75~77%で、PEG-IFN/RBVのとき100分の1以下にウイルスが下がらない患者さんは第1世代ですと32%ですが、第2世代になりますと51~55%に上昇するということなので、今後第2世代に非常に期待がかかるデータになろうかと思います。
(PP)
今回のアメリカ肝臓学会は、何と言ってもトピックスはインターフェロンなしで内服薬だけで治療する。特にこれにリバビリンが入るかどうかというのはいろんなプロトコルの発表がございました。
日本で最も注目されているのはプロテアーゼ阻害剤でありますAsunaprevirと、NS5A阻害剤のDaclatasvirの併用であります。それから、Faldaprevirという第2世代のプロテアーゼ阻害剤とポリメラーゼ阻害剤、これは非核酸型でありますが、これとリバビリンを併用するデータが報告されております。
これはアボット社の非常にたくさんの種類になりますが、プロテアーゼ阻害剤とNS5A阻害剤とポリメラーゼ阻害剤とリバビリンの4つ。ここにリトナビルが入りますので5種類の薬ですが、これを内服することでの治療効果が報告されています。
海外での期待値が大きいGS-7977(Sofosbuvir)というものとリバビリンあるいはポリメラーゼ阻害剤を加えたものの報告がございましたので、これを御紹介したいと思います。
(PP)
まず日本からの報告でありまして、Daclatasvir(NS5A阻害剤)とAsunaprevir(プロテアーゼ阻害剤)の併用のデータでありますが、我が国からは非常にいい成績が報告されておりましたが、これが欧米でどうだったかということがAnna S. Lokが報告したものであります。
(PP)
日本では1b型が非常に多いわけでありますが、欧米で1b型だけで経口薬2剤だけのデータがどうか、Aunaprevirは1日2回と1回の比較であります。そういたしますと治療が終わった後のウイルスが12週で消えた患者さんが78%と65%で、我が国の成績と大体同じようなデータではなかろうかと思います。
そして、我が国よりもっと難治の1a型の患者さんは非常に耐性が出やすいわけですので、これはPEG-IFN/RBVが入って4剤併用療法というものが行われています。そうしますと95%と非常に効果が高いということですので、1a型については4剤併用すると治療効果が非常に高いというデータが報告されております。
ところが、1a型につきましてインターフェロンを抜いてしまって経口薬2剤にリバビリンを加えたというデータ、24週間治療を行ったのですが、そうしますと23%と下がってしまうということで、1b型の78%と1a型23%で大きな違いがあるということになります。したがいまして、1a型ではなかなか内服薬だけでの治療はこの組み合わせでは難しいという結果が報告されております。
(PP)
1つ問題なのは、インターフェロンがないと薬剤耐性というものが大きな問題になるということで、これもposterで発表があったわけであります。そうしますとアメリカ人、フランス人、日本人で治療前にどのような薬剤耐性があったかということが報告されております。
左がNS5A耐性、右がプロテアーゼ阻害剤の耐性であります。そうしますと日本で一番問題になっているような31番とか93番、NS5A阻害剤の耐性のあるところが、少し日本人のほうが耐性の頻度が高そうだというデータでありますし、プロテアーゼ阻害剤もやはり日本人で170番とか80番、これは余り影響しないかもしれないのですが、こういった耐性の頻度が少し日本人は高かったというデータが報告されております。
(PP)
このデータを見てみますと、治療した後の結果であります。全員治っていないのですが、VBTというのは耐性変異が出た患者さん、Relapseというのは治療が終わった後にウイルスがまた復活してきた患者さんであります。そうするとNS5Aの耐性変異を見ていくと31番にはほとんどの患者さんが入っていますし、93番に耐性変異が入っている患者さんが多いということになります。黄色が治療前から耐性が入っていた患者さんでありますが、特に日本人では治療前から93番に薬剤耐性を持っている患者さんが多いというデータになっています。
プロテアーゼについても168番については耐性変異があるのですけれども、やはりNS5A阻害剤のときには薬剤耐性というのが非常に大きなポイントになるのではないかと考えられます。
(PP)
新しい薬でありまして、BI201335、Faldaprevirというプロテアーゼ阻害剤と非核酸型のポリメラーゼ阻害剤、この2種類の内服治療成績が報告されておりまして、これがプロテアーゼ、ポリメラーゼ阻害剤であります。
(PP)
このスライドは後からつけ加えましたので先生方のお手元にはないかと思いますが、こういった成績が報告されていまして、これはZeuzemがOralで報告したものであります。非常にたくさんの患者さんが入っておりまして、2つの薬剤にリバビリンを加えて1日3回内服。ポリメラーゼは1日3回内服したものが3つでございます。
16週、28週、40週のデータが報告されておりまして、内服薬だけでの成績が59~52%のウイルス排除率でございます。少し低いように見えるのですが、肝硬変が10%入っていますのでこういったデータになっています。
それから、ポリメラーゼを1日2回にしてプロテアーゼとリバビリン3剤併用療法を行うと、69%のウイルス陰性化となっています。
そして、この2剤でリバビリンを入れないと39%に下がってしまいますので、リバビリンを入れないと耐性変異が出てしまうということを意味していると思われます。
(PP)
特に2つの薬剤、1日3回よりも1日2回のほうが成績がよかったということと、1a型が43%で、日本人に多いC型肝炎の1b型で見ると85%ですから、やはり1b型のほうが耐性が出にくいので治療成績がよかったという成績になっております。
IL28Bがここに少し関係をいたしまして、インターフェロンの治療効果に関係すると言われているのですが、これがよく効くタイプのほうが経口薬でも治療効果がよかった。そして効きにくいほうが64%と低かったということが報告されております。
(PP)
この中に肝硬変が含まれておりますので、これも皆さんのお手元にないと思いますが、肝硬変の患者さんと肝硬変でない患者さんでどうだったかという比較であります。そうすると治療中にウイルスが耐性化とか薬剤が効かなくなった率が少し肝硬変の患者さんは高い。そしてリバビリンをなくしてしまうと非常に耐性で効かなくなってしまう患者さんの率が高いということであります。ですから肝硬変でも効くというのは非常に有利な点でありますが、19~33%の患者さんは内服中にウイルスが効かなくなってしまうという成績が報告されております。
(PP)
今回のアメリカ肝臓学会で最も注目されたのは3剤の内服剤の併用です。プロテアーゼとNS5A阻害の内服、それにポリメラーゼ。この3つの薬を内服を併用してどうだったかという成績であります。ただ、プロテアーゼにはリトナビルが入っておりますので、これだけで4剤となります。
(PP)
8週と12週の群だけ今回レイトブレイキングで報告されております。このプロテアーゼとNS5Aとポリメラーゼとリバビリン。これはリトナビルが入りますので5剤併用の8週間、12週間の成績でありますが、全体で87.5%、97.5%、非常に高い成績になっています。もう少し長期のものは報告されておりません。そして日本人に多い1b型だけで見ていくと、96%とか100%という非常に高い治療成績になっております。
1剤抜いて、NS5Aなしにしてプロテアーゼとリトナビルとポリメラーゼとリバビリン、4剤併用で85.4%、1b型では100%となっていますし、ポリメラーゼだけを抜いてプロテアーゼとリトナビル、NS5Aとリバビリンを加えて89.9%、日本人に多い1b型は100%となっています。
プロテアーゼとNS5Aとポリメラーゼ、リバビリンを抜いてしまっても87.3%の100%ということで、非常に高い著効率になっています。
それから、1型で前治療で全然PEG-IFN/RBVでウイルスが下がらない患者さん、5種類のお薬を飲んで全体で93.3%、1b型で100%になっていますし、ポリメラーゼを抜いてもプロテアーゼとリトナビル、NS5Aとリバビリンの88.9%、1b型だけだと100%ということで、非常に内服薬だけでの治療効果が高いということで衝撃のデータが報告されたわけでありますが、平均年齢が50歳ということで日本よりもはるかに若い患者さんであります。ですからリトナビルが入りますので日本でこれがどのぐらいの応用できるかということが、高齢者が多い日本でここを少し検討しなければならないかと思っております。
(PP)
耐性変異が非常に出やすい1a型については、海外ではGS-7977に対する期待が非常に高いわけであります。核酸型のポリメラーゼ阻害剤で1日1回の内服であります。昨年のアメリカ肝臓学会で最も注目を浴びた演題はこれであったのですが、GS-7977という薬とリバビリン、わずか2つの薬を飲んで8週間治療したら2型、3型全部治ったという去年の報告だったのですが、ことしの報告だと少し症例数がふえて64%、60%ということであります。ですからインターフェロンなしでも6割以上治るということは非常に画期的なのですが、去年ほどのデータではなかったわけであります。治療を一旦受けたことがある患者さんも68%であります。
1型について、初回治療でGS-7977とリバビリンの2剤内服で84%という非常に高い成績だったのですが、前治療でインターフェロンが治らなかった患者さんで2剤併用治療したときの著効率は10%になります。したがいまして、やはりなかなかインターフェロンが効かなかった患者さんでの2剤内服でGS-7977とリバビリンだけでは、著効率を上げるのは難しいというデータになっております。
(PP)
そこでもう一つGS-7977、非常に有望視されているお薬とNS5Aの阻害剤を加えて、プラスリバビリンでどうだったかという成績が報告されております。まだ症例数が非常に少ないのですが、1型で初回治療の患者さんは治療が終わった4週目にウイルスが100%消えている。それから、全然インターフェロンでウイルスが消えなかった患者さんでも、3人ですが100%消えている。IL28Bに関係なく効果はよかったというデータでありますので、こういった内服2剤が今後どんどん出てきているという現状であります。
(PP)
インターフェロンなしのデータをまとめていきますと、DaclatasvirとAsunaprevir、これは日本のデータでありますが、虎の門病院の鈴木先生が御報告なさったものでありますが、PEG-IFN/RBVで全くウイルスが消えなかった方でも91%治っていますし、インターフェロンできない患者さん、不適用の患者さんは64%の率であります。
一方、プロテアーゼと非核酸型のポリメラーゼにリバビリンを加えたBIのデータです。肝硬変を除きますと85%というデータになります。
先ほど御紹介した非常に注目を浴びたプロテアーゼとNS5Aとポリメラーゼとリバビリン、リトナビルが入って5剤併用となるのですが、100%今のところ治っているというデータであります。
海外で非常に注目されている核酸型ポリメラーゼ阻害剤GS7977とDaclatasvirの併用で100%というデータになっています。
GS-7977とリバビリン、昨年非常に注目されたのですが、初回治療だと88%でよかったのですけれども、PEG-IFN/RBVで治らなかった患者さんは10%ですので、これは厳しいデータということが言えるのではないかと思います。
(PP)
先ほど八橋先生が御紹介くださったインターフェロンλについてなのですが、従来のα型インターフェロンはレセプターが非常に多臓器にわたるということで、リンパ球、血球、こういった多臓器に分布するということで副作用が多いのが問題だったわけですが、λ型インターフェロンというのは肝臓に主としてレセプターが存在しますので、熱が出たりとか血球減少が少ないというような副作用が少ないという非常に有利なものがある。これも皆さんのプリントにはないと思いますが、追加して説明させていただきます。
(PP)
これは私が報告させていただいたものですけれども、そうするとインターフェロンλとリバビリンにNS5A阻害剤のDaclatasvirという1日1回、あるいはAsunaprevirというプロテアーゼ阻害剤1日2回内服して24週間の治療をする。最初によく反応したものは24週間でストップする。反応しなかったら48週間というプロトコルでやったものであります。
(PP)
そうするとDaclatasvir(NS5A阻害剤)とλとリバビリンを併用しますと、全ての患者さんが治ったというデータとなっております。
それからAsunaprevir(プロテアーゼ阻害剤)とλの患者さんは1例だけここでドロップしていますが、4週で切れなくてもその後、治っていまして、全例治ったというデータになっていますので、λ型インターフェロンの場合には副作用が少なくて完治率が高いのではないかということが報告されております。
以上でございます。
○林座長 どうもありがとうございました。何か御質問、コメントございますでしょうか。
今年の学会の、特にC型の特徴はどのぐらい効くかという議論だったのですが、臨床試験をして効かない例がどういう例かという議論に様相が変わってきたのではないかという気がします。全体にかなり著効率は高くなってきていますので、議論のやり方が変わってきたのが今年の印象でございました。よろしゅうございますでしょうか。どうもありがとうございました。
それでは、次の議題でございますけれども、前回、御討議いただきました発がん抑制目的のインターフェロン少量長期投与の有効性についてという、前回の議論を事務局のほうで文章をおまとめいただきましたので、それを事務局から御説明いただきまして、討論をさせていただきたいと思っております。
それでは、事務局どうぞよろしくお願いします。
○大石肝炎医療専門官 それでは、資料の79ページを見ていただきたいと思います。こちらは前回の議論を林先生の御指導をいただきながら、事務局でまとめさせていただいたものでございます。
79ページ「1.はじめに」で、これまでの経過について記載しております。中ごろになりますけれども、発がん抑制目的のインターフェロン少量長期投与については、第6回肝炎治療戦略会議において、当時の知見に基づき議論を行い、この時点では有効性についての見解が得られていないとの結論が取りまとめられております。
一方、平成24年度の薬害肝炎全国原告団・弁護団と厚生労働大臣との定期協議の場におきまして、原告団・弁護団より発がん抑制目的のインターフェロン少量長期投与について、医療費助成の対象にしてほしいとの要請が寄せられました。これを受けまして厚生労働大臣より、前回の議論以降3年近くが経過していることから、これまでの知見を整理してエビデンスを明らかにするために、専門家の会議でしっかりと検討する旨の回答がありまして、前回の会議で御議論いただいたところであります。
2番ですけれども、C型慢性肝疾患に対するインターフェロン少量長期投与の有効性について、前回議論したときから新たになった主な知見は以下のようなものでありました。
次のページは、前回の議論で委員の先生から御発表いただいたものを取りまとめたものでございます。一番上はHALT-C試験。こちらにつきましては根治目的のインターフェロン治療を行ったものの、効果がなかった線維化進行例についてペグインターフェロンα2a90μgを3.5年投与した群と投与しない群を、前向きに比較した大規模試験でございます。
投与群・非投与群の全体の比較では、両群で発がん率に有意差は認められず、投与群で生存率の低下が認められております。
肝硬変症例のみで解析が行われておりますが、こちらにつきましては非投与群に比較して投与群で発がん率の低下が認められましたけれども、肝疾患関連死亡率の改善は認められないという結果でありました。
慢性肝炎症例のみで解析しますと、投与群・非投与群で発がん率に有意差は認められず、投与群で生存率の低下が認められております。この原因として肝疾患以外の原因が関与しているという報告でありました。
EPIC試験ですが、根治目的のインターフェロン治療を行ったものの効果がなかった症例について、ペグインターフェロンα2bを0.5μg/kgを投与した群と投与しない群を、最大5年観察した大規模前向き比較試験でございます。
こちらにつきましては投与群・非投与群を比較したところ、両群で発がん率に有意差は認められなかったという結果でありました。しかし、門脈圧亢進症状を有する患者では臨床的有効性(腹水貯留、静脈瘤破裂の発生抑制など)をもたらす可能性が考えられると報告されておりました。
我が国からの報告ですが、3つの後ろ向き研究、単独施設のものが2つ、多施設共同研究が1つ報告されております。これらの研究ではいずれもインターフェロン少量長期投与群では、非投与群と比較して優位に肝がん発生が低下しているという報告でございました。
その下ですけれども、前回議論された内容をまとめております。
発がん抑制目的のインターフェロン少量長期投与の有効性は、我が国の研究報告では、インターフェロン少量長期投与により、発がん抑制効果があったというものがありますが、インターフェロン少量長期投与により生存率を改善させているかどうかは明らかではない。また、後ろ向き比較試験が主体であるため、バイアスが含まれている可能性も否定はできない。
よりバイアスがかからない欧米の大規模前向き比較試験を見ますと、米国のHALT-C試験では肝硬変群で長期の観察を行ったところ、インターフェロン少量長期投与群で肝発がん率の低下が認められたとの報告がある一方、欧州のEPIC試験では、インターフェロン少量長期投与によって発がんは抑制しないという結果でございました。
以上から、欧米の大規模前向き比較試験の結果において、インターフェロン少量長期投与によって発がん率が低下するかどうかについて、一定の見解が得られていないというものでございました。
また、HALT-C試験の解析によりますと、肝発がん率が下がった群(肝硬変群)においてさえも、生存率の改善は明らかではなく、一部の群ではインターフェロン少量長期投与を行ったほうが生存率が低下したとの報告も認められました。
以上から、インターフェロン少量長期投与の有効性については、現時点では定まっていないと記載しております。
最後「3.取りまとめ」でございますが、発がん抑制目的のインターフェロン少量長期投与の有効性については、我が国の研究において発がん抑制効果について肯定的な論文が認められる。しかし、我が国の報告は後ろ向き試験が主体であり、インターフェロン少量長期投与によって生命予後の改善効果があるかは明らかではない。
欧米の大規模前向き比較試験では、発がん抑制効果について一定の見解が得られていない。
また、発がん抑制効果のあった肝硬変群に限って解析された場合でも、生存率の改善は明らかではなく、全体の解析ではインターフェロン少量長期投与群のほうが、生存率が低下したとの報告が認められる。
以上から、発がん抑制目的のインターフェロン少量長期投与についての有効性については、現時点で一定の見解が得られているとは言えず、引き続きデータ収集等を行っていく必要があると考えられる。このようにまとめさせていただいております。
事務局からの説明は以上でございます。
○林座長 ありがとうございました。
前回の御発表と討論の内容をまとめさせていただきましたが、各委員の先生方も御意見があると思います。どうぞ訂正等がございましたらぜひ御発言をお願いしたいと思っております。いかがでしょうか。
まだ論文数が欧米の大規模試験が2つで、国内で3本、合計5本をベースに前回も御議論いただきましたけれども、それを取りまとめさせていただいたのがこの文書でございますが、いかがでございましょうか。
○八橋委員 前回の議事録としては非常に妥当だと思います。この件について全般的に私からコメントしたいと思います。少量長期投与の医療費助成について検討していただきたいというのが、患者団体からのリクエストであることをお聞きして、委員として、この問題については真摯に受け止め、誠実にコメントすべきと思いました。
恐らく本日参加されているこの委員の中では、私が最も多くの例に対してIFNの少量長期を実際の臨床でも使っているのではないかと思います。当施設でも100例以上の症例に数年に渡って使用しています。
私の実感としては、IFNの少量長期療法は、患者さんの発がんを抑止しているし、生命予後を改善しているというのが私自身の個人的な見解です。ただ、なかなか比較試験が難しく、当院でもレトロスペクティブにしかデータを集計比較していません。日本からのデータは、我々の施設も含めてそういう状況にあります。
ただ、繰り返しになりますが、ある程度高齢の患者さんや発がん率の高い人に関して、IFNの少量長期療法は確実に発がんリスクを下げていると私自身、ひとりの医者として確信しています。
ただ、これを助成制度とする、しないに関しては、幾つか問題点があると考えます。1つは保険適用がもともとないことです。IFNの少量長期療法は主治医が保険制度の枠内で何とか工夫してやっている治療法で、治療の目的に関しても、効果判定についても添付文書に書かれていない治療法です。投与法もばらばらでございます。今までは、個々の患者さんの状態に応じて主治医がさじ加減をしながら、この治療法をおこなってきました。
また高齢の方を治療対象としている場合が多いことから、長期投与する上での安全性については、特別な注意が必要となります。IFNの少量長期療法も肝臓の専門家が対象を選択して、治療法も、中止時期も、個々に応じて対処すべき治療法であると考えています。たとえば、間質性肺炎の指標にKL-6というものがあるのですが、長期投与で徐々に上昇してくる例がみられます。私はKL-6が上昇しはじめると、休薬したり中止したりして、そういう安全性に関しては特別な注意を払っています。高齢者が対象であり、長期投与ですので、その安全性を確保する為に、今までとは異なる注意点があります。
いろんな副作用、問題が出てきた場合、無理せずに、少量長期の場合は、ひとまずやめるのがこつである、と私はいろんな本の中で注意喚起しています。ただ、今回、仮に制度化されると非常に多くの方に、より長期に使われる可能性が高まります。制度化できるほどの安全性情報、今の日本では、明確なエビデンスはないと思います。
また、コストに関しても、私は何人かの患者さんにもIFNの少量長期療法の助成について直接お聞きしました。ただ、元々、現在のシステムの中でもIFNの少量長期療法はコストの低い治療法です。例えばペガシス90μgは1回投与が70歳以上だと1割負担で1,500円なのです。月3,000円となりますが、私の患者さんにおいては、それほど経済的には負担になっていない。10名近くの方にお聞きしたのですが、そのようなコメントでした。負担になっていないので、現行のシステムの中でも、数年に渡って治療が継続できていると私は考えています。
いろんな意味で、この治療法を助成制度にしていただきたいという患者さんのお声、気持ちを私自身理解していますし、何とかお応えしたいという気持ちがあります。しかし、仮に少量長期療法を制度化することで、いろいろな検討がおこなわれ、今まで個々の医者が工夫しながらおこなってきた治療法が均一化されると、今までおこなってきたこの治療法そのものが逆にできなくなるのではないか、その可能性をとても危惧しています。結論から申しますとIFNの少量長期療法を医療費助成の対象とすることは、私は基本的には反対という見識です。
以上でございます。
○林座長 ありがとうございました。
前半のところは、論文5編からのサマリーについては、これで今のところは問題ない。ただ、実際に日本で多くの患者さんに治療が行われておりますので、その問題点をうまくおまとめいただいたのではないかと思っております。
○金子委員 この論文の取りまとめのことですけれども「3.取りまとめ」と書いてあるところの上の数行で「また、HALT-C試験の解析によると」の文章なのですが、その2行目に「一部の群ではインターフェロン少量長期投与を行った方が、生存率が低下したとの報告も認められる」と書いてありますけれども、一部の群ではなくて、実はこのHALT-Cスタディの1,050例全例を対象とすると、その全例がインターフェロン少量長期投与を行ったほうが生存率が低下したという論文ですので、「一部の群では」というのは間違いで、全体としてということでございます。
○林座長 「一部の群では」を削除させていただいたほうがいいということですね。
○金子委員 そうですね。削除していただいたほうがいいと思います。
○林座長 わかりました。
○金子委員 特に問題だと思っておりますのは、こういう書き方になってしまう理由も考えますとあれなのですけれども、このHALT-C解析の一番の問題点は、全体としては有意差が0.049ぐらいで、投与したほうが生存が悪いのですが、肝硬変でない群に投与するとP=0.01で圧倒的に投与するほうが悪いという成績が出ていますので、そこはちょっと注意が必要だろうと思います。
○林座長 これは御指摘のとおりだと思っています。
○泉委員 今、金子先生がおっしゃったことと絡むのですけれども、欧米ではペグインターフェロンは御自宅に持って帰って自己注射が多いと思うのです。我が国だと医療機関に来て、専門医が診て注射をする。したがって、副作用がちゃんと管理されている状態で、その上でレトロスペクティブに専門医からデータを集めると肝発がん抑止効果があったというデータがあったので、ですから欧米のように自己注射をしていると安全管理が十分できていないので、むしろインターフェロンをやったほうが死亡率が高かったというデータになるのではないかと思うのです。
ですからインターフェロンの長期投与におきましては副作用管理が非常に大事で、特に高齢者が多い中では副作用管理が非常に大事だということなので、そこをあえてこういう医療費助成をすることでオーソライズしてしまって、普遍化してしまうことはちょっと危惧を抱くところがあります。
○林座長 ありがとうございます。
○熊田座長代理 実際に治験をやっていなくて保険適用がないものを医療費助成することになると、それが前例になると今後別に治験は要らなくて、それは医療費助成するという話になりますから、基本的には助成をすることになると治験をきちんとやって、エビデンスを日本で出して、それからでないと根本が全部崩れてしまうと思いますので、個々にやるのは別として、医療費助成となるとまず原則は医療課で保険投与の仕方が通っていることが大前提になると思います。
○林座長 ほかいかがでしょうか。
○岡上委員 実は皆さん御存じのとおり、日本のC型肝炎患者は欧米に比べ平均年齢が10~15歳高齢で、しかも最近、日本では高齢者の慢性肝炎からの発がんが全体の4割ぐらいを占めています。日本で行われた発がん抑制に関する治験は全てレトロスペクティブなものでしかもHALT-Cは金子先生も言われたように、肝硬変以外ではメリットは出ていないわけですから、そういうものを、公的に助成するのは学問的なことも含めて、問題があると考えます。
レトロスペクティブな解析では副作用が出て中止したような例は除外されそこでドロップアウトしているわけで、結果としては最後まで治療された例のみ残るようになり当然いいデータが出てまいります。したがって、治療をするとすれば先生方がおっしゃったように、専門医のもとで有効な例のみを治療し、しかも患者さんの負担のもとでやるべきと考えます。
○林座長 ほかよろしゅうございますか。
文章は先ほど金子先生に御指摘いただいたように「一部の群では」というのを削除させていただくということで、この文書自身はそれでよろしゅうございますでしょうか。
皆さん実際にこの治療は患者さんに行われている治療ですので、それが今のところ保険診療下ではうまく行われているので、現時点それをうまく使わせていただいたほうが、よりスムーズにいくのではないかという御意見が多かったのではないかという気がしております。それでよろしゅうございますでしょうか。それでこれを取りまとめの文書として出させていただきたいと思っております。
あと、少し適宜修正させていただくかもわかりませんが、それは恐れ入りますが、座長のほうに御一任をいただければと思っております。
最後、これに関してもう一点、各委員の先生方に日本肝臓病患者団体協議会と薬害肝炎全国原告団と同全国弁護団から要望書をいただいております。本日出席の委員の先生には前もって私のほうからお送りをさせていただきました。
要望趣旨は3点ございまして、1つは肝臓学会から出しておりますガイドラインとの整合性の問題と、あとの2点は特定の集団で有効性が確認できるような集団が特定できるならば、それを記載していただけないかという、大きくこの2点ではないかと思っています。何かこのガイドラインに対するコメントと、これを踏まえて先ほどの文章の一部を訂正する必要があればお聞きしたいと思っておりますが、いかがでございましょうか。
肝臓学会のガイドラインは、確かにぱっと読むとそういうふうに感じられる御指摘は私もごもっともかなという点もあるのですが、ガイドラインと今回の文書の趣旨が違うという点がございます。ガイドラインは基本的に現在日本で行われている治療をある程度追随する形で事実を記載させていただいております。リコメンデーションという書き方が不適当だと我々も思っておりますけれども、ただ、欧米のガイドラインがリコメンデーションという言葉を使っておりますので、日本のガイドラインもその言葉を今回使わせていただいております。
恐らく肝臓学会のガイドラインについては、今後定期的に改訂がなされてまいりますので、その点も踏まえて今後改訂のときに我々も十分注意を払っていきたいとは思っております。この要望書で先ほどの文書に訂正を加える必要がございましたら、お聞きできればと思っております。
○八橋委員 ガイドラインでもインターフェロン少量長期で発癌抑止効果が明記されています。今回の検討でも日本ではそういう見識で一致しています。しかし、ガイドラインでは少量長期の副作用のこととか、生命予後のことに関してまでは言及がなされていない。それは今の日本ではわからないということなのだと思います。
それと一定の集団での治療効果に関しては、このガイドラインにも書かれていますが、少量長期でALTが下がるとか、AFPが下がるとか記述されています。特に泉先生が今回まとめられたものでは、むしろAFPが下がる例で発がん率がコントロール群と比較して差があったということですが、治療前の因子ではなく、レスポンスを見て判断ということになるのかなと考えています。
○泉委員 私は今回、熊田先生の班会議で全国集計させていただいて、治療前の予測因子がなかったです。結局、治療して24週目にALTとAFPが下がった患者さんにとって、発がんが低かったということが後ろ向き解析で出てきたので、だから治療前の予測因子というのは残念ながら特定できるようなものはないということが1つのポイントです。
それから、今回は全部専門施設の先生方からデータをいただきましたので、ちゃんと副作用が全部管理できているという患者さんにおいて、きちんとAFP、ALTが下がった患者さんで発がん率が下がったということが1つの大きな特徴ですし、肝臓学会のガイドラインの中にも、全体では93ページになりますけれども、ここでやはりHALT-Cのデータからはむしろ相当数の死亡または肝移植イベントが発生していて、副作用に関する注意喚起がなされておりますので、ですからやはり専門医がきちんと副作用をコントロールしてうまく治療できた場合に、そしてAFP、ALTが下がった場合に発がん抑止効果があるということになります。
ですから、よく内容を読んでいただくと、非常に特定された患者さんにメリットがあるということになろうと思います。
○林座長 ほかよろしゅうございますでしょうか。それでは、文章はこのままで最終的な取りまとめとさせていただきたいと思っております。どうもありがとうございました。
それでは、3つ目の議題は以上でございます。それ以外に何か委員の先生方から御発言はございますでしょうか。
きょう、両先生の御発表をお聞きしましても、肝炎の治療というのは今後大きく変わっていくだろうということが大体予想されております。今後この中でどれが日本で実施できるか検討を進めていかなければなりませんが、この委員会としても、またいろんな検討をさせていただきたいと思っております。ほかよろしゅうございますでしょうか。御発言がございませんでしたら、これで終わらせていただきますが、事務局もこれでよろいですか。
○北澤肝炎対策推進室長 はい。
○林座長 それでは、少し時間が早くなりましたが、これで本日の「肝炎治療戦略会議」を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
<照会先>
健康局疾病対策課肝炎対策推進室
大石
(電話): 03-5253-1111(内線2944)
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