ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 職業安定局が実施する検討会等> 今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会(平成24年10月~)> 第1回今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会議事録




2012年10月17日 第1回今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会 議事録

職業安定局派遣・有期労働対策部需給調整事業課

○日時

平成24年10月17日(水)10:00~


○場所

職業安定局第1、第2会議室(12階)


○出席者

構成員

鎌田座長、小野委員、木村委員、竹内(奥野)委員、山川委員

事務局

西村副大臣、宮川派遣・有期労働対策部長、富田需給調整事業課長、牧野派遣・請負労働企画官、佐藤需給調整事業課長補佐

○議事

○佐藤補佐 ただいまから、「第1回 今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」を開催いたします。座長が選任されるまでの間、事務局で進行を務めさせていただきます。初めに、西村厚生労働副大臣より本研究会の開催に当たってのご挨拶を申し上げます。
○西村副大臣 皆様、おはようございます。今日は大変お忙しいところ、研究会の第1回目の会合にご出席賜りまして、誠にありがとうございます。さまざま紆余曲折がありました労働者派遣法改正法ですが、今年3月にようやく成立して、この10月1日から施行となっております。この法律の中では、派遣労働者の保護のための法律ということが明確に打ち出されたことが非常に大きなポイントではないかと思っております。
 一方で、まだ残されている課題もありまして、例えば派遣法の国会審議において、登録型派遣・製造業務派遣・特定労働者派遣事業の在り方や、いわゆる「専門26業務」に該当するかどうかによって、派遣期間の取扱いが大きく変わる現行制度の在り方について、今後、検討・議論を開始すべきという附帯事項が付されたところです。このような経過もありまして、今回労働者派遣制度に深い知見を持った有識者の先生方からお集まりをいただき、これらの課題について整理をしていただくことにした次第です。
 派遣労働者を取り巻く状況としては、リーマンショック以降、多少減少しておりますが、現在約137万人もの方々が派遣労働者として働いていらっしゃるという現状にあります。また、東日本大震災の影響、欧州の債務危機の問題、円高等々の影響もありますので、依然としてなかなか見通しが立たないという状況です。
 こういう状況ではありますが、この検討会においては、派遣会社や派遣労働者からヒアリングも行うなど、現場の実情を十分に把握した上で、より良い労働者派遣制度を構築できるように、委員の皆様には忌憚のないご意見を賜れればと願っております。簡単ではございますが、私の挨拶とさせていただきます。これからどうぞよろしくお願い申し上げます。
○佐藤補佐 報道陣の皆様の頭撮りはここまでとさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。なお、西村厚生労働副大臣につきましては、公務の都合により、ここで退席をさせていただきます。恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
 本日は、第1回目の検討会ですので、事務局より本検討会の設置要綱を説明申し上げます。資料1として、「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会 開催要綱」ということで、研究会の趣旨・目的、検討事項等についてまとめております。趣旨・目的については、先ほど西村副大臣からもご挨拶がありましたが、労働者派遣制度について、改正労働者派遣法の国会審議において、登録型派遣・製造業務派遣・特定労働者派遣事業の在り方、あるいは26業務に該当するかどうかによって派遣期間の取扱いが大きく変わる現行制度の在り方について、今後、検討・議論すべき、こういった附帯決議が付されております。
 その他、関連する閣議決定においても、同様の趣旨の記載があります。そういった趣旨を踏まえて、今回改めて研究会を立ち上げて、今後の労働者派遣制度の在り方について、法的・制度的な観点から専門的な検討を行うことにした次第です。主な検討事項としては、2番目に書いてありますが、いま申し上げた登録型派遣・製造業務派遣等々を中心としつつ、労働者派遣制度を取り巻く諸課題について幅広く検討を行うというものです。研究会の構成員等については、これからご紹介申し上げます。
 引き続きまして、本日お集まりいただきました委員の皆様をご紹介申し上げます。資料2に、「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会 構成員名簿」とあります。なお、本日は、阿部委員、奥田委員からはご欠席との連絡をいただいております。順次ご紹介申し上げます。小野委員です。鎌田委員です。木村委員です。竹内委員です。山川委員です。
 併せて事務局のご紹介も申し上げます。担当部長の宮川です。担当課長の富田です。私は担当の課長補佐の佐藤と申します。よろしくお願いいたします。
 続きまして、座長の選任に入らせていただきます。座長については、要綱において「研究会の座長は参集者の互選により選出する」とされております。事務局といたしましては、鎌田委員に座長をお願いしたいと考えておりますが、それでよろしいでしょうか。
(異議なし)
○佐藤補佐 ありがとうございます。異議がないようですので、本研究会の座長を鎌田委員にお願いしたいと思います。鎌田座長におかれましては、今後の議事進行についてよろしくお願い申し上げます。
○鎌田座長 この専門家の皆さんの大切な研究会の座長を仰せつかりまして、責任の重大さを痛感しております。先ほど西村副大臣がおっしゃったように、国会の附帯決議を中心としながら、さまざまな労働者派遣の制度について検討するということですが、私の役目としては、専門家の皆様に忌憚のないご意見をいただき、活発な議論をするための司会進行役ということに尽力したいと思っておりますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
 早速、議事に入りたいと思いますが、議事の公開についての申合せをしておきたいと思いますので、事務局から説明をお願いいたします。
○佐藤補佐 資料3「議事の公開について」です。「本研究会の議事については、原則として公開とする。ただし、以下に該当する場合であって、座長が非公開であることが妥当と判断した場合には非公開とする」ということで、例えば個人情報を保護する必要がある。あるいは、公開することによって、外部からの圧力、あるいは干渉等の影響を受けること等により、率直な意見交換ができなくなってしまう。あるいは、公開することで市場に影響を及ぼすなど、国民の誤解や臆測を招き、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある。あるいは、公開することにより、特定の方に不当な利益を与え又は不利益を及ぼすおそれがある。こういった場合には、座長のご判断により非公開とすると。こういう取扱いにさせていただければどうかと考えております。以上です。
○鎌田座長 いまご提案いただいた、この会議の公開方法について、何かご意見はありますでしょうか。特になければ、そのように取り扱うことにいたしますので、よろしくお願いいたします。
 本日の1つ目の議題である「労働者派遣制度の現状と課題」に入りたいと思います。事務局からご説明をお願いいたします。
○佐藤補佐 資料4から資料6について説明申し上げます。まず、資料4、縦の1枚紙です。この研究会でご議論いただきたいと考えております主な論点を、事務局でまとめたものです。先ほど申し上げたことと重なりますが、1番目は登録型派遣の在り方について、2番目は製造業務派遣の在り方について、3番目は特定労働者派遣事業の在り方について、4番目は派遣可能期間の制限の在り方、いわゆる26業務なのか、自由化業務なのかというところですが、その在り方について、5番目は派遣先の責任の在り方、6番目は派遣労働者の処遇について。この処遇というのは、均衡待遇、あるいは労働保険、社会保険の適用の促進等を含んだものです。7番目は派遣労働者のキャリアアップの措置。その他として議論・検討を進めていくに当たって、委員の先生方から論点として問題提起された事項等々についてご議論をいただきたいと考えております。
 続きまして、資料5「労働者派遣制度の現状」について、簡単に説明申し上げます。1頁です。「労働者派遣法の制定・改正の経緯について」ということで、改めて簡単に整理をした資料をまとめております。労働者派遣法は昭和60年に制定されて、その後数次の改正を経て現在に至っているということです。いちばん最初の昭和60年には労働者派遣法の制定ということで、当時はポジティブリスト方式で、法律ができた当初は専門的な業務の13業務については派遣ができるという制度でした。その後、すぐに3業務追加されて、16業務について派遣ができるということで運用がされてきたわけです。平成8年に適用対象業務が16業務から26業務に拡大され、また、ここが大きな改正でしたが、ポジティブリスト方式から、いわゆるネガティブリスト方式に変わったのが平成11年です。原則的に自由化をした上で、建設、港湾、あるいは警備、医療、製造業務派遣については派遣が禁止という制度になったのが平成11年。それから、新たに対象となった26業務以外の業務については、派遣の可能期間を1年に制限するということです。
 平成15年には製造業派遣が解禁になって、また、26業務以外の業務、いわゆる自由化業務については、派遣受入期間を1年から最大3年まで延長ということになったわけです。そして、今年の3月に成立した改正派遣法では、日雇派遣の禁止、あるいはグループ企業内派遣の制限、離職した労働者の派遣受入禁止等々についての規制が新しく盛り込まれ、今年の10月から施行されているという状況です。
 2頁は、今年の3月に成立した労働者派遣法の改正法の資料です。中身については、あとで労働者派遣制度の概要全体のところで簡単に触れますので、説明は捨象させていただきます。
 3頁、4頁が今回の労働者派遣法の改正法の審議の過程で、国会のほうから付された附帯決議の内容です。3頁が衆議院で付された附帯決議、4頁が参議院で付された附帯決議で、中身は大体同じなので、4頁、参議院の厚生労働委員会で付された附帯決議を参考にしつつ説明申し上げます。附帯決議は[1]から[8]まで項目がありますが、[1]で登録型派遣の在り方、製造業務派遣の在り方、特定労働者派遣事業の在り方については、本法施行後1年を目途として、東日本大震災による雇用状況、デフレ・円高の産業に与える影響、派遣労働者の就労機会の確保等も勘案して論点を整理し、労働政策審議会での議論を開始すること。[2]として、いわゆる専門26業務に該当するかによって派遣期間の取扱いが大きく変わる現行制度について、派遣労働者や派遣元・派遣先事業主にわかりやすい制度となるよう、速やかに見直しの検討を開始すること。こういった附帯決議が付されております。
 [5]では、派遣労働者に対する労働・社会保険適用を一層促進するため、現行の派遣元指針及び派遣先指針に記載されている労働・社会保険適用の促進策の法定化を含む抜本強化について検討すること。[7]ですが、派遣労働者の職業能力の開発を図るため、派遣元事業主は派遣労働者に対し教育訓練の機会を確保し、労働者派遣業界が派遣労働者の雇用の安定等に必要な職業能力開発に取り組む恒久的な仕組みを検討すること。こういった附帯決議が付されているという状況です。
 5頁は、冒頭申し上げた関連する閣議決定です。関連する閣議決定の中でも、労働者派遣法における期間制限等の見直し検討ということで、施行後検討開始と、こういった閣議決定がありますという紹介です。
 6頁は労働者派遣の概要で、これは基本的な資料ですので、説明は捨象させていただきます。
 7頁以降が「労働者派遣制度の概要」ということで、先ほど説明を省略いたしました平成24年の法改正の内容を含めた派遣制度の概要になっております。細かい説明は省略しますが、★が付いているところが今年の10月から施行されている内容です。そこの部分だけは簡単に説明申し上げます。7頁の3番目で「日雇派遣の原則禁止」とあります。日雇派遣の原則禁止ということで、「?・?のいずれかに該当する場合を除き、日雇派遣については禁止」ということで、専門業務、いわゆる17.5業務に該当する場合。それから、日雇労働者が例えば60歳以上であるとか、「昼間学生」であるとか、こういった例外に該当する場合を除いて、日雇派遣が原則禁止をされたということです。
 8頁の★の「4 離職後1年以内の労働者派遣の禁止」ということで、ある事業者を離職した労働者を離職後1年以内に当該事業者へ派遣労働者として派遣すること、当該事業者が派遣労働者として受け入れることを禁止ということで、こういった内容が新しく盛り込まれております。「6 関係派遣先への派遣制限」ということで、一事業年度における関係派遣先、いわゆるグループ会社への派遣割合を8割以下に制限するという内容が、今回の法律改正により盛り込まれております。
 9頁に8番目、9番目があります。「8 派遣先の都合による派遣契約の中途解除時の措置」ということで、「派遣先は、派遣先の都合により派遣契約を解除する場合には、派遣労働者の新たな就業機会の確保や休業手当等の支払いに要する費用の負担等の措置を講じなければならない」とされております。「9 労働契約申込みみなし制度」ということで、これは違法派遣が行われた時点で、派遣先がその労働者に労働契約を申し込んだものとみなすとされております。これについては、平成27年10月1日から施行ということで、3年間、施行があとになっております。
 10頁は10番目、11番目、12番目とすべて★を付けておりますが、派遣労働者の保護の関係の内容です。「10 マージン率等の情報提供」。マージン率、派遣労働者の数、派遣先の数、これを事業所ごとに情報提供しなければいけないといった規制が新しく盛り込まれています。「11 待遇に関する事項の説明」ということで、派遣元事業主に対して、これから派遣労働者として雇い入れようとする労働者に対して、賃金額の見込み等について説明をしなければいけないという義務を課したものです。「12 労働者派遣に関する料金額の明示」ということで、賃金だけではなくて、派遣料金額についても派遣元事業主はきちんと労働者に明示をしなければいけないという義務付けがなされたところです。
 11頁の13番目、14番目に★が付けてあります。「13 均衡を考慮した待遇の確保」ということで、いわゆる均衡待遇と言われる部分ですが、派遣元事業主に対して、派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者等との均衡を考慮した賃金決定、あるいは教育訓練・福利厚生の実施等の配慮を義務付けるといった義務を盛り込んでおります。14番目ですが、派遣元との雇用期間が通算して1年以上である有期雇用の派遣労働者については、労働者本人のご希望に応じて、無期雇用への転換推進措置を講ずるよう、派遣元事業主に対して努力義務を課すといった内容が新しく盛り込まれた次第です。あとは既存の従来からある制度ですので、説明は省略いたします。
 13頁は「派遣受入期間の制限について」ということで、これも改めて説明する中身ではないかもしれませんが、労働者派遣の世界では、業務によって派遣先が同一の業務に派遣を受け入れる期間に制限を設けているという現状があります。基本的には原則1年間、物の製造、軽作業、一般事務などと書いてありますが、いわゆる自由化業務と言われるものについては原則1年で、過半数組合等の意見を聞いた上で、最長3年まで延長できる。ただし、いわゆる26業務については、派遣受入期間の制限がないという状況にあります。その26業務とはということで、13頁のいちばん下に【参考】いわゆる「26業務」ということで、ソフトウェア開発から機械設計、事務用機器操作等々について、現行の26業務が列挙されております。
 15頁は、いわゆる「26業務」の変遷ということで、冒頭申し上げましたが、法律が施行された当初はいちばん左「法施行時」ということで、13業務ありました。しかし、昭和61年の施行後すぐに16業務となり、平成8年に26業務に拡大、そして現在に至るという26業務の変遷です。なお、この26業務の表の中で網掛けの部分があります。網掛けの部分については、注)として書いてありますが、特別の雇用管理を行う必要がある業務となっており、網掛け部分以外の業務はいわゆる専門的業務ということで、全体の26業務が構成されているという制度です。
 16頁は「労働契約の申込義務について」ということで、自由化業務、26業務について、それぞれ期間制限に抵触した場合に、どういった労働契約申込義務が発生するかと、これは現状の制度の説明です。1番目に、派遣受入期間の制限のある業務、いわゆる自由化業務についてですが、派遣先は派遣受入期間の制限の抵触日以降も派遣労働者を使用しようとする場合には、その派遣労働者に対して労働契約の申込みをしなければならないという義務が課されております。?、26業務に関しては、派遣先は同一の業務に同一の派遣労働者を3年を超えて受け入れており、かつ、その後もその業務に従事させるために新たに労働者を雇い入れようとするときには、その派遣労働者に対して労働契約の申込みをしなければならないという義務が課されております。
 17頁以降は基本的には数字の資料になっております。17頁は「派遣労働者数の推移」ということで、直近6年間の数字をグラフ化したものです。先ほど西村副大臣からの話にもありましたが、平成20年度、リーマンショック前です。これは6月1日時点の人数ですので、リーマンショック前の人数が202万人でいちばん多かった。その後は減少傾向にありますが、平成23年度でも137万人が派遣労働者として働いておられるという現状にあります。
 18頁は「業務別派遣労働者の内訳」ということで、いまの137万人がどのようにセグメントされているのかという図です。下のほうですが、常時雇用される労働者は86万人、常時雇用される労働者以外の労働者は51万人ということで、137万人のうち、いわゆる常用雇用が86万人。ただ、常用雇用というのは派遣法でいう常用雇用ですので、雇用期間が1年以上の労働者になります。常時雇用される労働者以外の労働者が51万人という状況です。左側の軸ですが、137万人のうち、いちばん上に、いわゆる「26業務」と書いてありますが、26業務に従事しておられるのが64万人、半数よりちょっと少ないぐらいですが、64万人が26業務。それ以外の方が自由化業務で、そのうち製造業務が26万人、製造業務以外が47万人という状況です。
 19頁は「26業務に従事する派遣労働者の内訳」ということで、64万人のうち、それぞれ26業務のどういう業務に従事しているのかということです。大体3分の1が事務用機器操作、5号業務と言われるものです。64万人のうち22.8万人が事務用機器操作に従事しておられる。その次に多いのがソフトウェア開発、いちばん上に1号業務と書いてあるところですが、9.7万人です。それから、下から4つ目のテレマーケティング、24号が6.7万人ということで、この3つが非常に多いという状況です。
 20頁以降、派遣元事業所、派遣先事業所の推移です。20頁は「派遣元事業所数の推移」で、いちばん右側に平成23年度の数字が書いてありますが、派遣元事業所は、約8.3万事業所あります。8.3万事業所の内訳として、多いのは特定労働者派遣事業所が6.3万ぐらい、2万ぐらいが一般労働者派遣事業所ということで、一般労働者派遣事業所は平成20年をピークに若干減少しておりますが、特定のほうは増加傾向にあるという状況です。
 21頁は「派遣先事業所数の推移」で、こちらは平成22年度の数字です。いちばん右の数字が直近で、派遣先事業所は全体では71万事業所あります。その内訳として、一般労働者派遣事業から受け入れている派遣先が大半で60万4,663事業所、特定労働者派遣事業所から受け入れている派遣先が10万6,000事業所となっております。これもピーク時の平成20年度からはだいぶ減っているという状況です。
 22頁は「労働者派遣事業に関する年間売上高の推移」ということで、これも平成20年度がピークで、約7.8兆円が年間売上高という状況でしたが、平成22年度直近ですと、いちばん右側の数字で5.3兆円が派遣事業の年間売上高となっております。5.3兆円の内訳として、多くは一般労働者派遣事業ですが、これで3.8兆円、特定労働者派遣事業で約1.6兆円という状況になっております。
 23頁は「派遣料金と派遣労働者に支払われる賃金の推移」ということです。これは一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業で、派遣料金と賃金の推移をグラフ化したものです。ここ2、3年はそれほど変わっていませんが、一般に比べると特定労働者派遣事業のほうが派遣料金、賃金ともに高いという状況にあります。
 24頁、25頁は「諸外国の労働者派遣制度の概要」ということで、これはJILPTの報告書を基に、私ども事務局でまとめた資料です。アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、ベルギー、韓国とあり、把握できる範囲でまとめた資料です。アメリカについては、基本的には規制がないということ。イギリスについては、職業紹介事業法と派遣労働者規則があり、派遣労働者規則はEU指令に基づいて策定されたもので、昨年の10月から施行されているまだ新しいものです。ドイツ、フランス、ベルギー、韓国については、基本的にはいろいろと規制がかかっているという状況です。ドイツ、フランス、ベルギー、韓国ともに、許可あるいは事前届出が派遣を行う上で必要になっていて、禁止業務があると。例えばフランス、ベルギー、韓国であれば、派遣禁止業務として建設とか危険業務以外にも、経営上の理由により解雇を実施してから6カ月以内の同一ポストへの派遣は、フランスであれば禁止されているとか、ベルギーであれば解雇された方の代替、あるいは業務量の一時的増加の場合であって労働組合が承認しない場合等には、これも派遣が禁止されているという規制があります。
 24頁のいちばん下ですが、派遣が許可される事由と派遣期間の上限ということで、例えばフランスであれば、休暇、病欠等による欠員の代替であれば、最長18カ月、あるいは被代替者の復帰までは派遣が可能。廃止予定ポストに配置されていた労働者の離職に伴う代替であれば、2年間は派遣可能。こういった形で、各国それぞれ規制があります。
 25頁のいちばん上の欄は、派遣が許可される事由と派遣期間の上限ということで、先ほどの頁の続きです。真ん中の欄に、派遣労働者の待遇に関する義務ということで、ヨーロッパの場合には基本的に均等待遇が義務付けられています。韓国の場合には差別的処遇の禁止ということが規定されているという状況です。
 いちばん下は、派遣労働者数、雇用者数に占める割合ということで、大体2%から4%程度が全労働者に占める派遣労働者の割合となっている状況です。資料5の説明は以上です。
 資料6は統計的なデータです。ちょっと古いのですが、平成20年に派遣労働者実態調査をやっております。細かい説明は捨象して、1頁の真ん中の「ポイント」の部分だけ説明いたします。この派遣労働者実態調査は、派遣先の事業所に対する調査、それから派遣労働者に対する調査と2種類に分かれております。1頁の「ポイント」にあるように、事業所調査、派遣先の事業所に対する調査結果のポイントとしては、派遣労働者が就業している事業所は全体の13.8%。派遣労働者を就業させる理由としては、「欠員補充等の人員の迅速な確保」がいちばん多いとか、あるいは派遣労働者の41.6%は「製造業」で就業といった調査結果がまとまっております。
 派遣労働者調査ということで、対労働者向けの調査としては、回答者の内訳ですが、年齢階級別には30~34歳が21.4%と最も多い。ついで多いのは25~29歳、それから、35~39歳ですので、20代から30代が多いという状況です。これまで働いてきた派遣先の数は、「1カ所」が最も多い。(3)技術・技能を習得した主な方法を見ると、「派遣先で就業中の技能蓄積」が50%と最も多い。あるいは雇用契約の期間を見ると、登録型では「1カ月から3カ月」がいちばん多い。常用雇用型では、「期間の定めはない」というものが多い状況になっております。細かい調査結果については、時間の関係もありますので、説明は省略いたします。事務局からの説明は以上です。
○鎌田座長 ありがとうございました。それでは、事務局から事前にお願いがあったかと思いますが、今回は第1回目の会合ですので、大変恐縮ですが、委員の皆様から、1人5分程度で結構ですので、労働者派遣制度が抱える現状と課題について、それぞれのお立場から、ご自由にご意見をいただき、委員の皆様のご意見を一通りお伺いしたあと、フリーディスカッション形式で議論をしたいと思います。それでは、あいうえお順で恐縮ですが、小野委員からお願いしたいと思います。
○小野委員 小野でございます。大変貴重な場で発言をさせていただくことを許され、緊張しております。派遣労働に関しては、私は2008年度から研究をしており、派遣先、派遣元、派遣労働者に関してアンケート調査をやったり、ヒアリング調査をつぶさにやってまいりました。そういうことを踏まえて5分ばかりお話をさせていただきたいと思います。
 根本的に日本の労働市場が、派遣法が施行された時期から、大きく様変わりしているのを感じます。派遣法自体がかなり古くなってきており、現状の日本の労働市場にそぐわない。簡単にいうと、流行遅れの服を着ていると言ったらいい、そのような感じでしょうか。あるいは成人したのに、まだ子どもの服を着ていると言ったほうがいいかもしれません。ということもあって、現状、この服はリフォームしながら、つぎはぎ状態で着られているという感があります。ですから、派遣のこの業界で働いている労働者あるいは派遣元で仕事をされている方たちが、非常にやりにくい状態であろうということが、各所からのヒアリング調査から知ることができました。今回のこの機会を与えていただいたということは、私個人的には根本的に見直しをしたい。いまの労働市場に合った形でリフォームをしたいと思っております。
 労働者の中で非正規の人たちが3分の1に迫っている状況で、特に若者層が非正規の中に多い。派遣労働の中でも、先ほどもありましたが、20代後半から30代の若年層が非常に多い労働市場であるということが、1つの派遣労働の在り方を根本的に考え直す鍵ではないかと思っております。
 派遣労働をそういう中でどのように捉えるか。派遣労働自体は労働市場の中で、ポーションとしては非常に小さいのです。非常に小さいポーションですが、いわゆる労働市場で正規労働者、正社員というものと、パート労働者と言われる人たちの中のちょうど間に挟まったような働き方であると実態調査から思っております。
 ということは、非常に小さなポーションであるけれども、ここを改革することで双方に波及する影響力が非常に大きいのだろうと思っております。しかも、ここの労働市場は緩やかな職種別の労働市場が形成されていると思いますので、今後の日本の労働市場全体を指し示すような改革ができるのではないかと思っております。
 また、正社員への転換も、派遣労働から正社員へ移るということが、ほかの雇用形態より多いというか、可能性が高いという研究結果もあります。繰り返しになりますが、大きな鍵になる労働市場であると言えると思います。
 そして、私のほうで1つ考えるのは、これまでは正規の代替を禁止するという意味において派遣法が作られてきたわけですが、この根本的な考え方をこのままでいいのか、あるいはこれだけ非正規の労働者が大きくなってきて、乗入れを可能にしていこうというときに、やはりキャリアを積めるような根本的な仕組みを携えたベーシックな考え方の上に法律をどう改革すべきか、ということを議論したいと思っています。そして、人材を育てることが急務だと思っています。端的にいうと、人材を商品として扱う労働市場です。そこに携わる派遣元だけではなく、人を働かせる派遣先にも、日本の国を支える、人材を支えるという意味において、一緒に育ててもらうことが必要になってくる。これは企業一つひとつの論理で考えるのではなく、日本の大きな労働市場として日本の行く末の大きな目的のために、いま一度、材という意味において考え直した形で投資する行動が必要ではないかと思っています。以上です。
○鎌田座長 木村さん、お願いします。
○木村委員 私の研究は経営学ですので、いままでは人材ビジネスの経営ということで研究をしてまいりましたが、こちらの研究会では、まず労働者派遣の意義は何かということからしっかり考えなければいけない。つまり、国として労働者派遣を認めているわけですので、何のために行っているのかということです。
 今回の法律は労働者保護ということですが、もともと労働者派遣は臨時的・一時的な労働力需要の変動に対する、いわゆる需給調整機能を持たせたということで、理解はしております。しかし、これが良いか悪いかの判断はまだ控えさせていただきますが、改正派遣法の一連の流れからいくと、臨時的・一時的というよりは、雇用の安定化、長期雇用化を促進する流れになってきていると思います。ですから、派遣先での直接雇用を進めるという意味での個々人の雇用の安定化と、労働市場全体での需給調整機能の両立がまず可能かどうかということ。可能に越したことはありませんので、いかに可能にしていくかを考えなければなりません。
 この問題は、先ほども論点に出されました登録型製造派遣とか、26業務の取扱いの根幹になるのではないかと考えます。例えば、26業務は無期限で、その他業務は期間限定という区分は非常に大きいものですが、26業務はすべてが専門というわけではありませんが、専門業務と位置づけたとして、専門以外と比べますと、ハイリターンになるということです。例えば26業務が無期限で、その他は期間限定とすると、26業務はハイリターンでローリスクであると。一方で、その他業務はローリターンでハイリスクになりかねません。ただ、直接雇用の推進によって、いわゆるその他業務の方々は雇用を安定化する。つまりローリスク化するということですが、それが実際にローリスク化になるかどうかということを考えなければならない。リスクとリターンのバランスが崩れかねないということです。
 個別の話をいくつか簡単にさせていただきます。例えば日雇い派遣の問題があります。雇用が不安定、低収入、保険加入問題、安全衛生管理、搾取的なマージンの問題といったことで日々紹介への転向がありますが、紹介で直接雇用になるので、雇用責任が明確になるかということですが、例えば、こういうことを考えるときでも、このように改定をしたところで、どういうことが起こるのかを考えなければいけない。日々紹介にして、短期の直接雇用で雇用責任が担保されるのかどうかということがあります。例えば、需給調整機能ということでいきますと、いろいろな就労先を持っている派遣会社に任せる。また個人が直接雇用されると、直接労働者と会社で、例えば労働問題が発生したときにやり取りをしなければいけませんが、派遣会社と派遣先が力関係でまだ少し強いのではないかということがあります。そのようなことを考えなければならないのが1つです。
 あと具体的な話は後ほどでしょうが、例えばマージン率で考えますと、これも高いのがいいのか、低いのがいいのかということがあります。高すぎるのが搾取だということも問題ですが、低すぎても当然問題です。その際に言われるのは、派遣社員に関わる社会保険です。きちんと入っている所がマージンが低くなる問題がよく言われるのですが、もう1つ、特にこの研究会で議論したいことは、派遣会社の内部のことです。つまり、マージン率を公開させて派遣労働者のためにお金を使えということですが、派遣社員を支えるのは、営業や事務といった派遣会社の社員です。その人たちの労働条件が仮にマージン率の切下げによって切り下がる、例えば、派遣の営業の担当者を減らす、またその人たちの給料を抑えるとします。そのようにされた人たちが派遣社員のマネジメントをきちんとやるのかどうかという問題があります。
 派遣の問題がいろいろ言われてきましたが、派遣社員が何か問題を起こしたとか、派遣労働問題が起きたときに、派遣業界全体の問題と見る節があって、それはもしかしたら事実かもしれませんが、会社の中で差があるのが事実です。これは私の知見の範囲ですが、派遣社員をきちんと派遣会社がマネジメントしていない、必要なサポートをしていないことが原因になっているケースも少なくはない。統計があるわけではなくて恐縮ですが、派遣社員を管理する方々の条件をきちんと整えることも重要です。
 マージン率ということでもう1つ考えなければいけないのは、今後の人材ビジネスの発展ということです。それは人材ビジネスのためではなくて、労働市場のためということで申し上げますと、例えば労働者派遣は現状でやっていますが、これは変わっていないと言ったら怒られるかしれませんが、派遣法施行以来、あまりビジネスモデルは変わっていません。例えば高付加価値サービスとして、新たなサービスを派遣サービスに付け加えた場合にマージンが高くなりますが、これは良いのか、悪いのか。私は良いと思います。そのような形でマージン率と言っても、派遣サービスが今後もし多様化していき、サービス化して、高度化・多様化していくと単純比較も難しくなるということがあります。
 また、特定派遣と登録型派遣ということで申しますと、まず、特定派遣というものが、常時雇用される労働者が、いわゆる正社員とはちょっと違うということです。資料20でご提示いただいたとおり、特定派遣業者の事業所数が増えています。これは可能性の話ですが、いわゆる正社員ではなく有期雇用契約の反復でよく、また届出でできるということで、特定派遣に流れている可能性があります。これはいわゆる登録型と特定型の間みたいなものが増えている、いわゆるルールの穴に落ちたような所が増えている可能性があって、もしかしたら、こちらは非常にバランスを欠いた特定派遣への流れかもしれません。こういうことが実際に起きているのではないかと考えられます。ですから、登録型の是非を考えると、いまのように特定派遣への安易な流れが起きている可能性を考えなければならないと思います。少し具体的な話になりましたが、このようなことを議論したいと考えております。
○鎌田座長 それでは、竹内さん、お願いします。
○竹内(奥野)委員 発言の時間を与えていただきまして、感謝いたします。どうもありがとうございます。私は労働法を専攻しております。労働法の中でも特に労使関係法の領域、集団的な労働関係法の領域を検討しておりまして、そのような観点を1つの中心としつつ、コメントを申し上げたいと思います。
 小野委員からもお話がありましたが、派遣法は、もともとは、常用の代替の防止が非常に大きく頭にあったかと思います。しかしながら、今般、改正された法律の名称にも現れているとおり、派遣労働者の保護という観点が打ち出されています。もちろん常用代替の防止という懸念が全くなくなったわけではないかと思いますが、派遣労働者として、いかに保護をするか、言い換えますと、適切な派遣労働者としての雇用の在り方はどのようなものか、といった観点から検討する必要があるのではないかと思っております。そのような意味では派遣労働者、あるいは派遣という働き方を正面から位置づけた上で、どのような保護あるいは派遣の働き方についての規制をしていくかという観点が重要ではないかと考えております。
 派遣の働き方に関係して、雇用の保障、派遣という働き方がしばしば不安定な働き方だと言われておりますが、そういう意味で雇用の安定について、どのように考えるか。また、いわゆる正社員に比較すると、労働条件水準でいろいろ劣るのではないかということで、雇用保障とは別個に、労働条件の水準あるいは内容についても検討する必要があるかと思います。
 これらに関連してやや具体的な話になりますが、現行法の下では、いわゆる常用型と呼ばれるものと、そうではない登録型で区分されて、派遣の形態として存在することになっておりますが、登録型と常用型と呼ばれる類型は、特に雇用保障との関係を議論するに当たっては、混乱を招きやすい表現だと思います。少し言い直しますと、有期の労働契約で働いている派遣の人たちは、登録型の方が基本的に多いわけです。常用型の場合は無期雇用が期間の定めのない雇用形態が割合としてはいちばん多いという話がありましたが、有期雇用を反復更新して1年以上継続するという形で常用とされている所もあるかと思います。
 有期雇用の場合と無期雇用の場合は、その雇用保障の在り方は、今般、労働契約法の改正の中でもいろいろ規制が変わっていますが、取扱いが違っていますので、そのような意味では、有期で働いている派遣労働者と無期契約の下で働いている派遣労働者を念頭に置いて考えることが必要だと思います。それをやや近似的に表現し直すと登録型と常用型になるのかもしれませんが、そのような労働契約の期間の定めの違いを意識したそれぞれの雇用保障の在り方、例えば、無期雇用であれば、派遣労働者であっても雇用の安定という点では、例えば解雇権濫用法理については、類推適用ではなくて、普通に適用されるなど、いわゆる有期で登録型等で働いている場合に比べれば雇用の保障は厚いと考えることも可能かと思います。そのような特に期間の定めの有無という違いを踏まえた規制が必要かと思います。そこをどのようにするかは、この研究会の中で議論すべき事柄だと思いますが、そのような違いを意識した議論が必要ではないかと思っています。
 また、登録型の雇用保障に関連してですが、派遣先によるみなしの擬制、これは法違反の場合等でいろいろ規制されていますが、その1つには期間制限の違反という項目が、申込みのみなしが擬制されることの1つとして挙がっています。そのように派遣先での申込みのみなし、それは派遣先での雇用につなげるという形での解決方法になっているわけです。そのような形での解決が、派遣労働者、特にここでは有期の登録型等を主として念頭に置いていますが、そのような人たちの雇用そのものにとって適切なものかどうかについては慎重に検討する必要があるのではないかと思います。そのほかに、より良い長期間の目で見た場合における雇用の適切な在り方はないのか。一つひとつの雇用の保障というわけではありませんが、例えば金銭的な保障、あるいは、次の雇用をいかに確保するか、そのような観点についても、結論は私もまだ出ていませんが、検討すべき事柄ではないかと思っております。
 労働条件の側面に関連してですが、ここでは改正された法律の中でも、均衡について配慮をするという形の規定が入っています。今般の労働契約法の改正等では、均衡について配慮というよりも、さらに踏み込んだ形で均衡について定めがなされており、例えば有期労働契約の場合ですと、期間の有る無しで不合理な処遇であってはならないとなっています。派遣法の場合は間接雇用という形で特殊性もあるかと思いますが、このような均衡について考慮する場合に重要になってくると考えているのは、現場の労使です。これは派遣元と派遣労働者ということもありますが、具体的な労働条件の中身に関しては、実際に働いている場面を念頭に置いて、派遣先の事業者、派遣先と派遣労働者とが、どのような処遇が均衡を考慮したものかを考えることになると思います。派遣労働者に限りませんが、現在の働き方は非常に多様化していると言われています。そのような意味では、何が均衡な処遇なのか、あるいは均等な待遇なのかに関しては、現場の労使の判断抜きに一律に上からこれが均等だ、均衡だということを決めることも困難であると考えられます。
 そのような意味では、均衡待遇、均衡処遇の話も検討する必要があるかと思いますが、その際には、いかに労使間のコミュニケーションを図る手立てを講じるか。もちろん派遣元と派遣労働者というのもありますが、派遣先と派遣労働者とが、いかにコミュニケーションを図っていくことができるようにするか。そのようなことを促す法政策についても検討が必要かと思います。これは派遣法の話でできるものなのか、労働法全般に関わってくることなのか、この研究会で検討する対象事項にそもそも入るかということもあるかと思いますが、少なくとも派遣の就労を取り巻く労働者と事業者間との話合いのチャネルについては検討する必要があるかと思います。
 もう1点は、コミュニケーションの確保に関連しては、派遣法の問題というより労働組合法の問題かもしれませんが、近時、団体交渉に関連して、例えば派遣先が使用者と言えるかどうかに関しては、特に直用を決定する前後等に関連して、特に直用を決定したあとについては、派遣先が使用者に当たるとしている労働委員会命令もありますので、団体交渉の問題、特に派遣先の使用者性の問題についても、この研究会の議題として許されるならば、検討が加えられてもよいのではないかと考えております。そのような観点で、派遣として働き方を保護するという基本的視点を持った上で、労働条件内容と、そして雇用保障の2つの観点から、さまざまに検討を加えていく必要があると考えております。以上です。
○鎌田座長 それでは、山川さん、お願いします。
○山川委員 よろしくお願いいたします。2008年の改正法案につながった研究会に参加しておりましたが、それ以外、特に研究者として長期にわたって労働者派遣の制度を検討してきたわけではありませんので、現在のところ、特に固定的な方向性、結論は持っておりません。この研究会で勉強させていただきたいと思います。むしろ視点のようなものを簡単にお話させていただき、とりあえず責めをふさがせていただけないかと思っております。
 ごく簡単ですが、5つあります。1つは、改正法が施行されたばかりで、既に見直しのようなことを行うのは、ある意味で異例なところがあろうかと思いますので、その点は施行状況と言いますか、調査やヒアリングによって、どのような点で問題があるか、あるいは効果があったかについて把握したいと考えております。
 第2点は、労働者派遣法は何度も改正がなされており、先ほど小野委員が言われたように継ぎはぎ的な状況にあります。そういう度重なる改正の中で、その趣旨や内容等も微妙にというか、大きく変遷しております。結局のところ、誰の利益がどのように保護されているのかが見えにくくなっている部分があるかと思います。その利益状況をきちんと整理した上で、それぞれの利害をどのように調整するか。可能ならば、最もwin-winな状況、利害調整ができればいいのですが、その前提として、現在の制度でどのような利益が、どう保護されているかを、まず整理する必要があると思っています。
 第3点は、研究者としての理論的関心ということになりますが、労働者派遣の構造はそもそもどのようなものなのか。労働者派遣関係は、通常の労働契約関係とかなり異なっております。例えば派遣元と派遣労働者の労働契約はどういう構造をとっているのかは議論がありますが、派遣先と派遣労働者がどういう関係に立っているのか。このような基本的構造自体、必ずしも統一的な理解がまだなされていないという点があります。この点を研究会で議論するのか、労働法学者の中で理論的に研究すべきことなのかよくわからない点もあります。また、そのような構造が具体的な立法論とか解釈論にどう影響していくのかもよくわからない点があります。しかし、わからない問題、新しい問題が出てきたときには結局、基本的な原理のようなことに立ち返らざるを得ないだろうということもありますので、ここで検討するかどうかはともかく、個人的にはそのような労働者派遣の構造みたいなものを考える必要があると思います。
 第4点目は、先ほど木村委員からありましたように、労働者派遣制度は、労働市場の需給調整機能を担っているということですので、その適正な需給調整機能をどう図るかを考える必要があります。この点は言うまでもありませんが、その際の視点は、抽象的ですが、質の高い労働市場ということです。労働市場については、その質全体を高める必要があるということを、以前、経済学者との研究会で考えたところです。
 いろいろな手法があると思いますが、派遣労働者のスキル、キャリアの向上というのがあって、その点は労働者派遣契約との関係で、なかなか個々の事業主の人材投資のインセンティブが働きにくいということがあるかと思いますので、人材への投資のインセンティブをどうやって向上させていくか。検討課題には業界ということも書かれておりますが、その点も視野に入れて人材投資の促進の仕組みを考えることが視点として必要かと思っています。
 第5点目は、これも理論的関心になるかもしれませんが、労働法規としての実現の手法というか、労働法規の実効性を確保するにはどういう在り方が望ましいのかということです。これも抽象的なことですが、ある政策目的を達成するのに、最も有効で適切な法律の実施の在り方にはどういうものがあるか。例えば、現在問題になっているルールとしての明確性の問題が1つあります。他方でルール違反をした企業が得をしてしまうというのは公正競争という観点から問題があると思いますので、その辺りを考える必要があります。
 この点は竹内委員からも言われましたが、労働契約法の改正にも関連して、非典型雇用の中での労働者派遣の位置づけを考えるということもありますので、それぞれの法規の相互関係をか考えr必要があります。あとは法律の実現手法という観点では、やはり竹内委員が言われた労使の協議の在り方みたいなものをどう考えていくかも、視点に入れることが有益かと思っています。以上です。
○鎌田座長 ありがとうございました。委員の1人として私も意見をということですが、格別いま提言というものはありません。まず、いま4人の委員の皆様のお話を聞いて、時代の変革というのをすごく強く感じております。派遣という利害関係が激しく対立する中で、若い皆さんに非常に大胆に問題点を提起していただいて、私の役割としては従来であれば議論の俎上に乗せることすら難しかった問題を一生懸命考えて、この中で議論していくというのが私の仕事かなと思っておりますので、そういった気持をいま抱いております。
 現在におけるさまざまな問題を皆さんに議論していただき、この研究会は派遣法のそもそもの成立の経緯の中で、「子どもの服を着た大人」という、まず子どもがどうやって生まれてきたかぐらいの話から話をしなければいけないかもしれませんが、私は労働者派遣の問題を考えるときには3つの要請が常にあるのだろうと思っています。
 1つは、先ほど来、木村さんも言われていましたが、需給調整という観点。つまり、仕事を効率良くそれを求める人たちにどれだけ確保してあげるか。これはかつては国の仕事だったのです。ところが、それが徐々に民間の雇用サービスを活用して共働して仕事の確保、労働市場の効率化を進めていく。その民間の雇用サービス事業の最も議論のタネになったのが派遣という事業だったのです。
 しかし、派遣のこの機能は期待をされて、ILOの民間職業仲介所に関わる条約の中でも、こうした機能は非常に大切なので、是非これを広く活用するような方向で国の政策をとってほしいということで、1999年の派遣法の改正、ポジティブリストからネガティブリストへの転換が行われたわけです。
 次には派遣労働者の保護の問題です。派遣というのは、いま雇用サービス事業だと言いましたが、ほかには民間の職業紹介事業というのがあります。でも、民間の職業紹介事業が派遣とちょっと違うのは、派遣というのは派遣会社が雇用主になるのです。つまり、派遣会社と労働者の間に雇用関係があるということから、派遣労働者の雇用の安定、派遣労働者の処遇、待遇、労働条件は派遣会社との関係で問題になってくる。それが非常に不足している、あるいは雇用の不安定をもたらしているのだということで、これが常に問題となっているわけです。
 3つ目の要請は、雇用システムとの関係です。つまり、派遣先の雇用に関わる話ですが、派遣労働者が派遣先の正社員の仕事に取って代わる、どんどん正社員の仕事がなくなって、派遣社員が増えてしまうことから、日本の長期雇用システムがガラガラと崩れていくのではないかという危惧がありますので、長期雇用システム、正社員を含めた無期の人たちと派遣労働をどのようにバランスをとっていくかです。
 この3つの要請は、どんな法制度をとろうと常に出てくる話で、1985年に最初の派遣法ができたときは、この長期雇用システムとの関係をどうするかというのは最大の問題だったのです。なぜかというと、実は派遣というのは、その前の時代は派遣をやってはいけないと法律で禁止されていました。それを認めるとなったときに、長期雇用システム、日本の雇用システムに対して、これはどのように歯止めをかけるかという視点で考えられる。そのときに、いま言った要請があって、その要請をどれか1つを切り捨てることは当然できませんので、政府はその中でそれぞれの工夫をしたのです。その1つは、できたときには先ほどから話題に上っていますし、小野さんが言っていた子ども服です。つまり、特定の専門職に限定して派遣を認める。子ども服なのか大人服なのか微妙ですが、作ったときは工夫だったのです。それが需給調整機関としてさらに活用するということから、そういった要請が非常に働いたところで自由化されて、1999年のネガティブリスト化、つまり、どんな業務でもできるようになったのです。ただし、受入れ期間は限定するということになっていったわけです。
 この3月にできた派遣法は労働者保護という観点から、さらに強化をしていく。こうなってみると、今度は先ほどから議論になったように、需給調整の機能はこれでうまくいくのだろうか、ちゃんと働いているのだろうか。あるいは先ほど常用雇用代替防止をもう一度考え直そうという議論がありましたが、そうすると、長期雇用とこういった非正規の雇用とのバランスはどうすればいいのかというのは議論しなければいけない。この3つの要請のどこかにウェイトがかかると必ずほかの所から、言ってみれば批判がくるという仕組みになっているのです。
 私は長い間派遣を見ていて、ある意味でのイデオロギーから現実論に転換しつつあるのではないかと思っています。イデオロギーというのは何かというと、派遣というものを、そもそも認めないという直用正社員主義といったようなものから、そういった主義は主義として現実にあるさまざまな国内の労働市場の中で、どれが最も現実的で効率的なシステムなのかを冷静に考える気運が国民と労使の間に、まだ十分ではないと思いますが、徐々に出来上がってきつつあるのではないか。それだけ成熟してきたのではないかと思っています。
 是非この中での議論も、そういったようなタブーなく、着実に議論をして、これが考え方の違う人が出てくると180度変わってしまうのではなく、ある種の相場というか、中庸の道を徐々に見つけながら、安定的な法政策に至らないかなと思っています。少し長くなりましたが、これが私の感想です。
 さて、このあとフリーディスカッションということですが、まず自由にご発言いただいて結構だと思います。小野さんが問題提起された現在の労働市場の変化の中で、派遣というのはどういったところをターゲットに。若者ということを中心にして考える。そして常用代替防止はこのままでいいのかということから、そしてキャリアを高めるような法制度、人材の育成がポイントなのだということで問題提起をされてきたと思いますが、そういったことを少し切り口にしながら議論していただければと思います
○小野委員 ありがとうございました。鎌田先生の先ほどのお話の中で、需給調整と派遣労働者の保護、いわゆる正規代替の禁止という3つのトピックというのは、時代がいくら変遷しようとも、なくならないという、これは私も同じように考えているところでございます。おそらくそういう目的で最初作られた法律ですから、ある意味、これに関してはある程度達成されていると思っているのです。例えば需給調整に関して言えば、各派遣会社さんは非常に熱心にやっていらっしゃいますので、非常に迅速な労働需給を達成しているのではないかと、やはりその辺が国ができない細かな需給調整機能を民間が労働市場の中で役割を果たしているだろうと思っております。
 しかしながら、先ほど私が申し上げました正規代替に関するところは、現場で言いますと、やはり正規の正社員の仕事を奪わないような職域に派遣労働者を留めておくというようなことになっていますので、どうしても仕事が広がらないわけです。本人がやっている職場で、仕事が広汎化しない、高度化しないということになりますと、キャリアが積めないことになります。端的なことで、例えばコールセンターなどで言いますと、「あなたは電話だけをしていればいい」。例えば電話のほかに後輩が入ってきたら、その後輩を教育訓練してあげたり、教えてあげたりができるようになれば、ある意味その人はリーダー的な役割りというものが付いて、キャリアが少しずつでも伸びていくことが可能になるのですが、職域が「あなたは電話をしていればいい」、「あなたはこのコンピューターで入力さえしていればいい」と分けられてしまいますと、その人は例えばそれが20代でそれを行って、30代もそれをやっていると、おそらく40代もそれ以降も同じように仕事が制約されたままで、そうなってくると賃金も伸びないことになってまいります。
 職域がなぜ伸びないか広がらないか、高度化しないかといったときに、やはり引っかかってくるのが、正規代替というところに若干縛られた職域の在り方だろうなと、私のほうで考えているわけです。派遣先において若いうちに仕事に広がりを持たせる。派遣元はやはりこれは如何ともし難い問題がございますので、OJTの中で仕事を広げていく。派遣先との関わりは非常に重要ですので、先ほど竹内先生もおっしゃったように、派遣先とのリレーションシップ、コミュニケーションを大事にしながら人を育てていくことを考えなければいけない。
 ここが正規代替とキャリア形成は相互離反するような関係性なのか、それとも正規代替にならなくても職域は広げられ、キャリアを伸ばせられるようなものなのかというところです。そうであるならば、正規代替というのも残しつつ、キャリアも伸ばしていけるような在り方が考えられればいいなと思います。
○鎌田座長 どうもありがとうございました。ある種の派遣先と派遣会社の、いわば人員管理といいますか、キャリアを伸ばしていく視点で第一の責任を負うのは派遣会社です。労働者はもちろん自分で考える。そうした場合にネックになっていること、あるいはいま小野委員は職域限定ということが1つあるのではないかと。木村委員はそういった観点からいうと、何かご意見がありますか。
○木村委員 まず職域ということでいきますと、派遣法による限定だとか、そういう部分もあるのですが、やはり派遣先の人員の方針ですね、人材戦略と言ったりしますが、それにかなり影響を受けていて、長期に投資しないところを分離して、そこを派遣社員にするということなのです。これは経済の原則に従って企業が行動すればそのようになっていって、その職域から飛び抜けられる人が、例えば100人の派遣社員がいたときに何人いるかというと、それが一部に限られてしまって、同じような仕事をしていた正社員、つまり、投資を前提として雇った人よりは割合が低くなってしまう。
 これは経済原則に従っているということですので、派遣法の文脈でどこまでそれを変えられるかというと、ここは忌憚のない意見ということですので、ある意味致し方ない部分もありますし、あとは率直に言いますが、派遣社員の中でキャリアを積んでいきたいと、本気でここの職域から飛び抜けたいと思っている方々がどれぐらいいるのかという問題にもなってきます。派遣という就労で入って来ていると、そもそもこの派遣という職域をなかなか飛び抜けられない雇用の中に入ってくるわけです。それは契約社員とか正社員の仕事がないからということかもしれませんが、それをあえて派遣という形で自主的に選んで来ている方々が、そういった躍進突破的なキャリアをどこまで本気で望んでいるかということも考えなければいけないということですので、派遣法の中でどのような扱いができるかは私も見えていないところではございます。
 あと、キャリア開発ということでいきますと、1つは先ほどの需給調整と絡むのですが、労働者派遣の形で派遣会社から派遣するときに、即戦力でなければいけなくて、派遣元がきちんと育てていることが前提で派遣先に派遣する。つまり、派遣先に育ててもらうという観点はよろしくないということでございますが、これが現実的なのかどうかが1つあるると思います。もちろんある程度の技能を持って会社に行きますよ、ということなのですが、当然会社によって仕事が違いますので、最初は慣れないということがあるのと、より重要なこととしては、人間が仕事で成長するときに、いまできることをやったら成長するのかといったら、それは成長するかもしれませんが、反復することによってスピードが上がることはあるかもしれませんが、新たな力が付くといったら、付かないことが多いのではないかということです。
 ですから、例えば100の能力が求められたら80ぐらいの人でいく、70ぐらいでいく、これがいちばん人間の伸びるところです。労働者派遣のいまの仕組みを守っていくと、100の人間を100の所に行かせたり、120の人間を100の所に行かせたりせざるを得なくなっている。これが普通の人間の仕事の中での成長ということからすると、完全に対立することになってしまって、キャリア開発といっても、できる仕事をできる能力の範囲でやっているので、では、これでキャリアが積めるのかといったら、そこに大きな問題があるのではないかと考えます。
 もう1つ大きなことと言えば、登録型のことでもあるのですが、いわゆる登録型と言いますと、もちろん派遣をしている間は派遣先の社員なのですが、そうでないときは、いわゆる登録者という段階でして、登録者は拘束できないわけです。ほかの派遣会社から派遣されるとか、ほかのパートとか正社員なりで直接雇用をされることを妨げることはできません。ですから、そういう人たちに対して、例えば教育訓練なり人材開発投資をして、せっかく育てたらよそから派遣されてしまうということです。登録者は派遣会社にとって重要な資産なのですが、ほかの派遣会社との共有資産であったり、あとは自分でコントロールできる資産ではないので、これは単純に経済的に考えると、投資するインセンティブが湧かないということです。共有資産なので投資をしたところで回収できるのは自分とは限らなくて、ほかの人が回収してしまう。これが構造的な問題であって、いかに投資インセンティブを伸ばせるかということで、特定型というのは1つの手なのでしょうけれども。
 ではその登録型でそれができるのかできないのか。単純に言ってしまえばできなそうなのですが、そういった流れの中でいかに教育訓練投資のインセンティブを与えているかということも考えなければいけないと思うのです。以上です。
○鎌田座長 どうもありがとうございました。次は少し視点を変えまして、法律家のお2人に議論をしていただきたいと思うのです。先ほど竹内委員は、派遣先の使用者性あるいは法的地位ということについての問題提起をされましたし、山川委員は、そもそも派遣元、派遣労働者、派遣先の法律関係は基本的にどうなっているのか。そのこと自体が必ずしも明確になっていなかったのではないかという問題提起がありました。
 これは、そもそも論で言いますと、明確であったかどうかは別にして、派遣法が成立した経緯はある程度はっきりしていまして、雇用主は派遣元、派遣先はユーザー、つまり、あくまでもお客です。ですから、派遣労働者というのは、労働条件、処遇については、派遣元に対して何らかの請求をして、そこで充実を図るということだと。
 ところが先ほど来お2人が言っているのは、実はそういったような基本的な考え方が現在、更に問われていますよということで受け止めたのですが、もちろんお2人ともそういう仕組み、前提に成り立って出発したということはご存じだと思うのです。例えば団交についての派遣先の使用者性については、1985年から政府は、原則として団交応諾義務は派遣元が負うということを、もう何度も何度も国会答弁をしてきているわけです。ただ、具体的な事案の中で団交応諾義務がどこにあるかは裁判所、労働委員会が個別事案に即して判断するというのが現在までの政府の立場ですし、また私も含めて多くが、そこの枠にとらわれているということなのですが、そうしたようなことから考えると、いま使用者性をもう一度見直すという視点でおっしゃったのは、どういったような問題提起、問題意識で言われたのか。コミュニケーション論ということで言われたのかもしれませんが。あるいは批判でも結構なのですが、そういう枠組み、前提がそもそも問題だったのだと。あるいは山川委員にすれば、そもそも派遣元と派遣労働者の労働契約関係ということに、何らかのある種のフィクションがあったのではないかというような問題提起になるかもしれませんが、その辺のところを少しご説明を、まず竹内委員からお願いいたします。
○竹内(奥野)委員 まず、団体交渉の点で、特に使用者性の話ですが、そこのところを最後に付け加えて申し上げさせていただいたのは、もちろん原則は雇用主である派遣元が団体交渉に応ずべき、もう少し言い直しますと、不当労働行為を禁止される使用者に当たるということは、もちろん認識をしています。しかしながら、他方、派遣法の下での事案とは厳密に違いますが朝日放送の事件とか、あと先ほど少し申し上げました派遣先による直用決定後において、では、派遣先でどのように労働条件を決定するかということに関する近年の労働委員会命令、クボタ事件とかですね。そのようなもの等が議論されているということで、一体どのような場面にまで派遣先が使用者として、どのような内容、事項について、更に言うと、どのような程度まで団交の応諾が求められるかについては、紛争が提起されているという意味で議論があると思っています。
 そのような点で、どこまで使用者性を認めるべきであるか、派遣先により使用者性を認めるべきであるか、そういったことについての見識はまだもちろんございませんが、議論を整理しておく必要があるのではないかという観点で申し上げたものです。
 少し付け加えた形で申し上げて、混乱をさせてしまったかもしれないとは思ってはいるのですが、その前に申し上げました、特に派遣先、ユーザーと実際にそこで就労をしている派遣労働者との間のコミュニケーションを図る手立てを考えるべきではないかと申し上げましたのは、これが非正規労働について近年研究されているところですが、いかに待遇の改善等、均等な、あるいは均衡のとれた処遇等を実現していくかといった中で、派遣労働者に限らず、労使コミュニケーションを図りながら、多様な現実に合わせて、何が当該現場の労働者にとっての均等、あるいは均衡な処遇かということを考えていくべきだという議論があることを背景にして、そちらは労組法の使用者として団体交渉義務があるかどうかという話とはまた別に、均衡ないし均等な処遇を実現するという政策実現との関係で、山川委員からも先ほどご発言がありましたが、より実効的な形での政策実現を図るという観点で、何か団体交渉とは別に議論をする、コミュニケーションを取る枠組みというものが考えられるのではないかといった意味で、法律的に細かく言えば、団体交渉あるいは不当労働行為制度の話と、一応政策実現のための労使のコミュニケーションと、2つに分けて申し上げたつもりでございます。
○鎌田座長 つまり、いわゆる伝統的な団体交渉というレベルとはまた別なコミュニケーションの仕組みを派遣先との間で作れないかということですね。はい、分かりました。
○山川委員 先ほどの労働者派遣の構造は、先に小野委員と木村委員の言われた派遣社員のスキルアップにも関係があるのかなという感じがしています。たぶん共通されている問題関心だと思いますが、例えば派遣先に雇用される場合とか、あるいは派遣元で無期に転換するという規定が今回できましたが、そういう場合に備えて有益なのは、派遣労働者が今している仕事以上のことをすることですが、それが派遣制度のもとでは難しい場合があるのではないか。そこは結局、派遣制度のもとで、先ほど鎌田先生が言われましたような、指揮命令しか派遣先は行ってはいけないというような構造に起因していると思います。そこには26業務の問題も関わっていると思います。
 そうなると、結局指揮命令とは何か、指揮命令を少しでも超えるとすべて労働者供給の禁止の原則論に戻ってしまうのかとか、その辺りがよくわからないところがあって、トレーニングは派遣元が行うということなのですが、仕事上の工夫を考えるときに、指揮命令の中に留める必要があるのか、それとも、それとは別の考え方があり得るのかというところが出てくるのではないか。つまり、思いつきですが、派遣先と派遣元で協力して派遣社員のスキルアップを図るスキームができるかどうか。それが労働者派遣の構造との関係で、問題が生ずるかもしれないということです。そのように、例えば具体的な改善の仕組みと基本的な構造の問題が関わっているのではないか、という感じがいたしました。以上です。
○鎌田座長 どうもありがとうございます。非常に具体的な政策的な課題とその基本的な問題の、特に結節点になるところのご指摘があったと思います。今後、議論をいろいろと進めていく上で、私と事務局でもう少し細かな論点をもし整理できるようであれば、そのような形で整理をして、皆さんに更にご意見を伺いたいと思います。とりあえずは今日まだもう少し議論をしていただきたいことがありますので、この程度といたしまして、2つ目の議題に入りたいと思います。事務局から資料7から9までについてご説明をお願いいたします。
○佐藤補佐 資料7から9です。これは先ほど山川委員からもお話がありましたが、派遣労働者に限らず、実態を把握できないかということで、私どもでアンケート調査といいますか、実態調査を行おうかと考えています。派遣元事業所、派遣先、それから労働者と、数は非常に多いものですから、なかなか全数調査というわけにはいきませんので抽出調査で行おうかと考えております。
 ざっと全体を申し上げますと、資料7が派遣元の事業者に対する調査、資料8が派遣先に対する調査、資料9が派遣労働者に対する調査という束になっています。細かい調査項目の説明は時間も限られていますのであまりいたしませんが、まずは資料7の派遣元事業所向けの調査で頁がかなりあるのですが、具体的にこのような項目を調査しようかと思っています。
 大きく調査項目が5点あります。まず1点目は派遣事業の概要で、派遣元事業所でどのような派遣事業を行っているのか。例えば労働者の方をどれぐらい使っているのか、その労働者の方のうち、例えば常用雇用型がどれぐらいなのか、登録型はどれぐらいなのか。常用雇用と言っても先ほどの話もありましたが、そのうち正社員はどれぐらいなのか、それ以外の方はどれぐらいなのかといった辺りの調査をしたい。それから、雇用契約期間と派遣契約期間との関係、例えば派遣契約期間でも1回の派遣契約はどれぐらいなのか、通算での派遣契約はどれぐらいなのかといった辺りを聞いてみたいと思っております。
 2点目は、26業務、それから自由化業務の関係です。資料7の11頁に「2.派遣可能期間の制限についてお伺いします」とありますが、実際にこれまで派遣可能期間の制限のある業務、自由化業務に派遣した場合には、いま最長3年となっていますが、クーリング期間を経ればもう1回派遣することができるとかいった規定がありますが、その辺りの運用が実際にどのように行われているのか、クーリング期間として、どのぐらい設定されているのか。あるいは同じ派遣先の中で課を変えている、チームを変えているなどといった辺りの実態がどうなっているのかを調査したいと思っております。
 大きな3点目、4点目ですが、派遣労働者の処遇だとか、能力開発、キャリア・パスについて、派遣元としてどのように取り組んでいるのかという点についても、お伺いしようかと思っております。処遇に関連して、例えば賃金とか福利厚生の現状ですが、こういった話。あとは派遣労働者の教育訓練、キャリア形成、登録型と常用雇用型で取組状況など違うでしょうから、その辺りの実態がどうなっているのか、こういう点について把握をしたいと思っております。
 いちばん最後、紹介予定派遣の状況についても、紹介予定派遣が制度化されてある程度経ちますので、どれぐらい使われているのかといった点について、お聞きしたいと思っております。
 資料7の19頁、20頁で、これは派遣元事業主(本社)として書いていますが、例えばいま派遣会社の中には、一般の派遣元事業所と特定の派遣元事業所がありますが、例えば最初は一般でやっていたけれども、途中で特定のほうに移行した会社もあろうかと思います。その辺り、どういう理由で特定に移行されたのかとか、そういった経緯など状況についてもお聞きをしようかと思っております。論点が多岐にわたるものですから、幅広にアンケートとしてはまずはお聞きしようと思っております。これが資料7です。
 資料8は派遣先に対する調査です。派遣先に対する調査も基本的な視点は同じでして、主な調査項目は事業所の概要だとか、派遣労働者を受け入れているのかどうかとか、26業務、自由化業務の状況、先ほど申し上げましたようなクーリング期間の状況とかその辺りについてお聞きしたいと。それから、派遣先として例えば派遣労働者に対する教育訓練など、キャリア形成などが行われているのかどうか。仮に行われているのだとしたら、実際どの程度で行われているのか、OJTなのか、それ以外の部分でも何か行われているのかどうか、その辺りについても可能な範囲でお聞きしたいと思っております。
 最後、資料9が派遣労働者向けの調査で、これは労働者に対する調査ですので、労働者の属性、年齢、これまでの就労形態とか、派遣で働いて何年ぐらい経ちますかとか、そういった労働者の属性についてお聞きをする。それから現在、派遣労働者として働いておられる派遣就業の実態、どのような仕事に就いておられるのか、あるいはあなたの雇用形態は常用雇用型なのか、あるいは登録型なのか、あとは派遣労働者の雇用契約期間はどれぐらいなのかといったことについてお聞きをする。同じように、26業務あるいは自由化業務での就労状況、クーリング期間の取り扱いとか、どれぐらい取れるかは分かりませんが、そういったことについてお聞きをしたい。
 あとはキャリア形成とか能力開発の状況など、そもそも派遣労働者として働くことをお決めになられた理由、それから今後派遣労働者として働きたいのか、あるいは別な形で就労をしていきたいのかといったことについて、網羅的にお聞きした上で、まずは実態を把握する手かがりにしたいと思っています。いずれも現時点で事務局として考えている調査項目の(案)ですので、今後項目については更に精査した上で、また委員の皆様方からご意見・ご示唆をいただければ、そういったことも踏まえながら最終的に調査の項目を確定して実施をし、結果がまとまり次第この研究会にもご報告を申し上げたいと思っております。事務局からの説明は以上でございます。
○鎌田座長 どうもありがとうございます。この調査票の完成時期はいつごろを目処に考えていますか。
○佐藤補佐 調査に当たっては、印刷をかけたり、発送をしたり、かなり手続きがありますので、中身自体は今月あるいは来月の頭には確定をさせていきたいと思っております。
○鎌田座長 少し皆さんのご意見を伺いながら、全部というわけにはいきませんが、今日の段階で何か気付いたところがありましたら、是非ご意見をいただければと思います。これは研究会後であっても、今週中であればいろいろご意見を伺うのはよろしいですか。
○佐藤補佐 今週中あるいは来週になってもかまいませんので、是非いただければと思います。ご意見を取りまとめた上で、また座長とご相談をして決めたいと思います。
○鎌田座長 少し先走った言い方になってきましたが、とりあえず現段階で何か気付いたところをご指摘いただければと思います。
○山川委員 先ほどの竹内委員の問題関心に基づくものになるかと思いますが、派遣先調査票の問10で、1年を超えて3年までの期間を定める場合に、過半数を代表する者の意見聴取を経る必要がある。ここに例えば過半数代表から意見を聞くのが前提ですが、どういう意見が出たか、本当は組合調査があってもいいのかもしれませんが、派遣先との労使コミュニケーションの状況を、少しここで伺えればなと思います。これが1つです。本当は期間以外についても、過半数代表がどういうことをしているのかも聞きたいのですが、新たな問を起こすことになってしまうのかもしれませんので、そこでのご検討をいただきたいと思います。
 もう1つは、派遣元事業主に関しては、業界団体に所属しているのか、これは実態が分からないのですが、ある先生が未組織労働者の問題のほかに、未組織事業主という問題を指摘されていまして、業界団体には、情報提供のほかに、例えば公正競争の促進とか、いろいろ役割りを果たし得る可能性があると思いますので、業界団体の加入状況についてもお聞きできればと思います。
○鎌田座長 よく分からないけれども、政府の調査として、特定の団体に所属していますかという調査は可能なのですか。
○佐藤補佐 調査項目自体が否定されているということではないと思いますが、どこの業界に加入する義務がある、ないということを促進するわけではございません。現状として加入しているか加入していないかということを、単にお聞きするだけであれば。
○鎌田座長 特定のかくかくしかじかの団体にあなたは所属していますかというのはどうですか。
○佐藤補佐 個別の団体名を出すのは、なかなか難しいかもしれませんけれども、派遣であれば派遣の関係の団体に加入していますか、という聞き方であれば可能かもしれません。
○小野委員 業界団体、いま4つくらい人材ビジネスの団体があるので、それを4つ書いて、いずれにも属していないみたいな形にすれば、大体網羅できます。
○鎌田座長 その辺のところは政府調査との整合性を少し考えさせていただきたいと思います。
○山川委員 ご考慮いただければと思います。あと1点だけ、これは派遣労働者への調査票の13頁、苦情の申立てやトラブルの相談についてですが、派遣先の労働組合というのがあるのですが、派遣元の労働組合というのがないので、これは当然入ることかなと思います。
○鎌田座長 そのとおりですね。これは当然入れていただきたいと思います。
○佐藤補佐 当然入れるべきだと思います。
○竹内(奥野)委員 2点ございます。1点は確認だけですが、派遣元事業主の調査の問2で、常用雇用と常用雇用以外で、その常用雇用について「正社員として雇用されている」、これは無期雇用が前提だということだと思いますが、それ以外の無期雇用の人ということなので、a-b-cで有期の派遣が分かるという理解でよろしいでしょうか。
○佐藤補佐 さようでございます。
○竹内(奥野)委員 この派遣元のアンケートで、14頁から15頁にかけて、教育訓練・キャリア形成についてという話がありました。これは全く思いつきなのですが、先ほど来の議論だと、派遣元が教育訓練投資をするインセンティブがあるのかないのかという話がありまして、これは作問を少し拡大するような形になるので、可能な範囲であればご検討いただければと思うのです。問19、20などについて、「特に行っている取組みはない」というものがあります。行わない理由が聞ければ、それはそれで1つキャリア形成に対する障害として何か存在するのか、そのようなことについて伺うことができるのではないかなと。少し問を足すような形になりますので、可能な範囲でご検討をいただければと思います。
○鎌田座長 どうもありがとうございます。そのほか何かございますか、何でも結構です。最初に私があまり枠組みを変えない範囲でというような余計なことを言ってしまったから言いづらくなったと思うのですが、かまいませんので。こういった視点での調査をしたいので、ここをこういったような項目を加えてくださいみたいな感じのものでも結構です。
○木村委員 全部は目がいっていないのですが、派遣労働者調査のほうですが、キャリア形成に関しての質問が10頁の問30辺りからありますが、先ほど私が申し上げたとおり、「満足している」とか結果はあるのですが、では、本人の物差しはどこにあるのか、何を目指していて満足しているのかとか、その辺りがあると満足度の評価がより明確にできるのではないかと思います。
 11、12頁辺りから、「派遣会社に関して」というのがあるのですが、問33の(1)派遣会社に関する不満。具体的に何がどうかということなのですが思いつかないのです。この質問で把握できるかどうかという観点で質問したいのです。派遣先と、自分がキャリアアップしたいとか、安定して働きたいという、その派遣社員がいろいろ考えている中に、派遣元がきちんとサポートできているのかというところを、いまの質問で捉えられるかどうか。労働条件的な不満、そういうところはあるのですが、こういう支援をしてほしいだとか、こういうコミュニケーションをとってほしいとか、その辺りがこの選択肢で十分とれるかなと、全部踏み込んでいないのですが、その辺りの調査をしていただきたいと。労働条件への不満ではなくて、自分が伸びていくためのコミュニケーションのサポートを派遣会社がどのぐらいとれているか、できているかという質問を全体的にとっていきたいという希望です。
○鎌田座長 よろしいですか。ありがとうございます。また詳しく調査票を作成するときは、また詳しくご相談してご協力をいただくということでお願いいたします。
○小野委員 派遣労働者に関して、可能であればで結構なのですが、働いている派遣労働者の方が、どのぐらい派遣法の具体的な中身を、本当に分かって働いているのかどうかというのは、ヒアリングをしたときに、実は働いてから派遣だということに気づいたという方とか、結構いらっしゃるのです。自分が26業務か自由化業務かすら把握していない方とか、意外にいらっしゃったりして、おそらくそういうバックグラウンドというのは働き方にも影響を与えるのではないかなと思ったりしています。
○鎌田座長 これはかつて直接に「派遣法を知っていますか」と言っても、そもそも分かっていないので、何か代替的な質問でかつて聞いたことがなかったですか。例えばパンフレットを読んだことがありますかとか、ハローワークで派遣に関するチラシを読んだことがありますかとか。
○小野委員 以前ほかの調査で、これは派遣ではなくて労働者全般の権利であったりとかという法律関係のことを聞いたような調査をやったことがあるのですが、「知らない」とか、「分からない」という項目を書くところに付けておいて、その「分からない」と答えた方が、分析をするときに非常に調査上で影響が効くというか、そういうことがあるので、知っているか、知らないかと。
○鎌田座長 まずそれで聞いて、あとでクロスをかけると、そのいろいろなことについての1つの層の特徴が出てくる、そういうことですか。
○小野委員 あるいは、自分の労働条件を上げるために、何か手段を講じて言ったとか。例えば派遣先に何か言っているかとか、ひどいことをやられたら労働基準監督署というものがあることを知っているか、そういうことも含めて自分を守るというか、泣き寝入りしない意識というか、アピールする行動というか、そういうものを持っている人と、そうでない方というのは、働き方が違ってくるのではないかなというところがあります。
○鎌田座長 分かりました。そうすると、まずは法制度を知っているかどうかというレベルの話と、自分が困ったときトラブルを解決するための外部の機関を利用していますかということですね。
○小野委員 そういうことですね。
○鎌田座長 そのような感じになりますか。
○佐藤補佐 はい、私のほうも考えてみます。
○鎌田座長 そのようなご意見です。どうもありがとうございます。先ほど佐藤補佐から来週までなら大丈夫ということでした。あるいはさらに今いただいた意見を具体的に質問票にするときのご協力などをお願いするかもしれませんが、その節はお忙しいでしょうけれどもよろしくお願いいたします。最終的には私と事務局で相談して調査票を確定させていただくということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。調査結果については改めて研究会で報告してもらうということでございます。最後に今後のスケジュール案について、事務局から説明をお願いいたします。
○佐藤補佐 今後のスケジュール(案)ということで、最後に資料10で添付しております。まず第2回で今月下旬、すでにご案内申し上げておりますが、有識者からのヒアリング、それからその他で引き続き議論、ディスカッションをしていただこうと考えております。第3回目以降で11月以降になろうかと思いますが、有識者からのヒアリングに加えまして、派遣元事業主、派遣先、それから労働者の方々からのヒアリング、関係団体の方々からのヒアリングを何回かに分けて実施をして、その後、個別の論点についてご検討をいただき、最終的には来年の夏ごろを目途にお取りまとめいただきたいと考えてございます。細かい日程、場所等については、また改めてご連絡を申し上げたいと思います。以上でございます。
○鎌田座長 ありがとうございます。いまの説明について何かご意見がありますでしょうか。よろしければそのようなことで進めさせていただきたいと思います。大体、予定の時間もまいりましたので、これをもちまして本日の研究会は終了したいと思います。お忙しいところをありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 職業安定局が実施する検討会等> 今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会(平成24年10月~)> 第1回今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会議事録

ページの先頭へ戻る