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2012年10月23日 第2回「非正規雇用労働者の能力開発抜本強化に関する検討会」議事録

○議事

○阿部座長 第2回非正規雇用労働者の能力開発抜本強化に関する検討会を開催いたします。初めに、梅村厚生政務官よりご挨拶をお願いいたします。
○梅村政務官 改めまして、こんにちは。本日はお忙しい中、ご出席を賜りましてありがとうございます。私は、10月2日に厚生労働大臣政務官に就任をいたしました梅村聡と申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。
 前任者の津田前政務官からも申し上げたことであるかとは思いますが、非正規雇用の労働者が約4割を占めていることに対して、厚生労働省として今年の3月に取りまとめた「望ましい働き方ビジョン」等を踏まえまして、人材立国の実現に向けて、是非正規雇用の方の労働者能力開発の抜本的な強化が必要だと考えております。皆様方におかれましては、現行の施策にとらわれない忌憚のないご議論をいただきたいと考えております。どうぞ、本日はよろしくお願いをいたします。
○阿部座長 では、頭取りはここまでとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 事務局から、資料の確認をお願いいたします。
○事務局(三上企画官) 今回は、資料4までご用意しています。リクルートスタッフィングの川渕様からの資料として資料1、田村委員からの資料として資料2、西久保委員からの資料として資料3、それから1枚紙で、「多様な非正規雇用の労働者と能力開発の実施主体について(イメージ)」が資料4です。もし過不足ございましたら、大変失礼なことであり、申し訳ありませんが、事務局までお申し付けいただければと存じます。以上です。
○阿部座長 では、本日の議題に移りたいと思います。今回は有識者の先生からのヒアリングということで、派遣労働者の能力開発の現状にご見識のある株式会社リクルートスタッフィングの川渕香代子さんから、資料に沿ってご説明いただきたいと思います。では、どうぞよろしくお願いいたします。
○川渕氏 リクルートスタッフィングの川渕と申します。本日、このような重要な会議の場にお招きいただきまして、ありがとうございます。派遣労働者も含めて、非正規雇用の労働者の能力開発に関しては、ここ数年、随所で小野先生のご研究等をはじめとしてなされているところかと思いますので、私からはいま現在、派遣業界から見た課題や実際にどのような取組を行っているかなどをご紹介させていただいて、議論の参考としていただければと思っております。
 お手元の資料1に沿ってご説明をしたいと思いますので、ご用意をお願いいたします。1枚めくって、まず初めに業界全体でどういった教育訓練がどれほどなされているかというマクロの数字を表すものとしては、厚生労働省が取りまとめております「労働者派遣事業報告書の集計結果」があります。何分これはコース数、対象者、人員数それぞれの延べ件数、延べ人数ということもありますので、若干実態よりも大きく出ているとは思いますが、それでも4万件の講座数があり、対象者が280万人以上にのぼっているという実態があります。そのほとんどがいちばん右の欄になりますが、派遣労働者の費用負担なしで提供されていることになります。こちらは、派遣労働者に提供している福利厚生の一環という考え方もありますが、派遣労働者の一人ひとりがスキルを上げていき、より高度で幅広い業務を行えるようになることで、派遣会社としてもビジネスチャンスは広がるので、私の個人の考えかもしれませんがウィンウィンの関係になっているのではないかと思っています。むしろ、そのようなことに努力するのが派遣会社の本分であるので、ここは派遣事業主としてしっかりこれまで以上に取り組んでいきたい部分でもあります。
 2頁目のグラフは、一方の派遣労働者の能力開発に対する意識がどのようなものであるかを示しています。こちらは、日本人材派遣協会が毎年行っているWEBアンケート調査から引用していますが、これだけ多くの講座数があるにもかかわらず、派遣会社の教育訓練を「受けたことがある」というスタッフが全体の3割にも満たないという実態が出ています。この調査では、回答者数が約5,500名おりまして、そのほとんどが事務系の派遣スタッフということもありますので、具体的に受けたことがある教育訓練の内容としましてはOA研修がほとんど、次いでビジネスマナー、語学研修、個人情報保護という、仕事をする上でのベーシックなもので、就業前に皆さんに受けていただくような研修内容が、多くなっています。
 一方で、教育訓練を受けたことがない理由として、いちばん多いのが「機会がないから」となっています。派遣会社がたくさんのメニューを用意しているにもかかわらず、残念ながら、機会がないというふうに受け取られており、双方の意識に乖離がある部分です。その理由として考えられるのは派遣会社の中でも、大手企業が比較的多くのいろいろな講座を提供していますが、、そのほとんどが首都圏や大阪、名古屋、福岡といった大都市圏での提供に限られているところや、企業規模によって提供している内容にも差異があるためではないかと推測しています。
 次の頁です。そうは申しましても、派遣労働者の7割以上が能力開発・キャリア形成といったものを希望しているのが実際です。具体的に、希望する内容として最も多いのが資格取得の教育訓練で72.7%になっています。一般的に、資格を持っていることがすぐにお仕事紹介につながるというのはなかなか証明しづらい部分ではありますが、資格を持っていることでそのスタッフのスキルに対して信頼感が増しますし、より多くのお仕事、高度な仕事ができるのではないかということになると思います。ただ、OA関係の資格や簿記検定ぐらいのものですと、なかなか処遇を大きく上げることにはつながりにくいのではないかというのが我々から見ての実感です。また派遣会社は、専門学校ではありませんので、提供できる講座数や講座のレベルにも限りがあります。資格取得に特化して教育訓練を積極的に行えるかというと、なかなか難しい問題があります。ここも、先ほどの認識のギャップがある理由の1つにもなっているかと思います。
 一方で、キャリア開発を希望しない方が3割近くいらっしゃいますが、その理由が「時間がないため」となっています。これは派遣労働者に限らず、一般的に正社員として働いている方でも、時間がないという理由でなかなか自己研鑽することができないということは往々に言えることかと思います。次いで多いのが、「現状に満足しているため」となっています。
 4頁に、参考までに派遣労働者の就業経験についてもこの調査で聞いておりますので載せておりますが、8割以上の派遣スタッフが正社員の経験があると答えています。しかも、正社員でも5年以上経験している方が非常に多くなっています。正社員で働いていた方が何らかの理由でやめて、派遣労働者という形で労働市場に復帰することが、よくある派遣スタッフの就業のパターンかと思います。正社員で働いていたときに身に付けたさまざまなスキルが、派遣労働者として働く上でも役に立っているのではないかと言えるのではないかと考えています。
 これに関連して派遣協会ではなく、大手の派遣会社が調査したものになりますが、5頁です。右下に小さく書いていますが、2008年にスタッフサービスが行った「派遣スタッフの働き方とライフスタイル」というアンケート調査の結果です。ここでは、「仕事に必要なスキルを、どのようにして身につけてきましたか?」という問いに対して、「派遣先の仕事を通じて」あるいは「派遣スタッフになる前に働いたときの仕事を通じて」という答えが、合わせて7割以上にのぼっています。自由記述欄からも引用していますが、仕事をする上で必要なスキルというものは、派遣スタッフはOJTで身につける、若しくは既に身についていた、派遣労働者自身がそのように考えていることがここで現れていると思います。つまり、先ほど資格取得の教育訓練を派遣労働者が望んでいるという数字が出ていましたが、実際にはそれだけでは足りず、就業経験と密接に絡んで能力開発をしていくことが必要なのではないかなと考えています。
 就業に必要なスキルが何かに関しては、これを知るためには評価が必要になってくると思っています。派遣先から評価を受けて、初めて自分の能力がいまの仕事に見合っているかどうかを測ることができますし、不足しているスキルが何か、改善点が何かといったものも知ることができます。また、就業開始に必要なベーシックなトレーニングを最初に行い、そのあと就業する。実際に働いて、評価を受け、それによって、更に高度なトレーニングをして処遇の向上、より良い条件につながっていくという好循環を作っていく必要があるのではないかなというのが、我々の考えでもあります。
 ところが、現実には、好循環のカギとなる評価というところがなかなかできていないというのが5頁の右側のグラフです。「働きぶりやスキルに関する評価や改善点について、説明を受けていますか?」という質問に対して、約半数の方々が「誰からも説明を受けていない」と答えています。このことが、実際にどういったトレーニングをすればいいのかわからないということにもつながりますし、能力開発や教育訓練を受けるモチベーションにもつながってこないのではないかと言え、業界としての課題でもあります。
 ここで、実際に派遣会社としてどういった研修メニューを提供しているかをまとめているものが次からの資料になります。6頁です。年間で約1万7,000人の方々がこれらの講座形式での研修を受講されています。教育訓練の施設が先ほども申し上げたのですが、東名阪といった大都市圏に限られていることがありますので、地理的に受講が難しい方向けには、eラーニングも提供していて、内容は基本的にOAのスキルを身に付けていただくためのものですが、このeラーニングだけで1万2,000人の方々が受講されているという実態があります。より高度の訓練ニーズに関しては、外部の教育機関と連携し、入学金免除や受講料の割引など、の優待制度を設けて、機会を提供しています。
 7頁は、キャリアカウンセリングのサービスについての説明です。実際にどういったトレーニングを受けたら良いのかどうかをキャリアカウンセリングで示していくこともあります。仕事をしていくうえで、自分に必要なスキルが何か、働き方に関しての意識改革や考え方の転換といったものも含めて、キャリアカウンセリングというのが私たちの事業では重要な位置づけになっているのが近年です。大手の派遣会社のほとんどでは、こういったキャリアカウンセリングという制度は設けていると思いますが、弊社の場合は対象者を限定せず、広く開放していて、年間で約500名以上の方がこのキャリアカウンセリングを利用されています。カウンセリングを受けられた方々の内訳については女性が9割にのぼっています。実際の来談者の声にありますように、いま必要なスキルや将来を考えて必要となるスキルといったものを自ら考えて実行していただくことを後押しできているのが、このキャリアカウンセリングの制度だと考えております。
 参考までに、実際の就業経験がない方や就業が困難な方向けに取り組んでいる研修カリキュラムの例として、8頁に「直接雇用支援の取組み」を挙げています。上が、紹介予定派遣を活用した若年雇用支援における研修カリキュラム例です。自治体からの受託事業で、若年雇用支援の研修カリキュラムを提供していますが、研修期間中も弊社から給与を支払い、研修を終えると紹介予定派遣で派遣先で就労経験を積んでいただきながら、最終的にはその派遣先で直接雇用される仕組みになります。派遣というプロセスを経ることで、座学で身につけたスキルと実際に仕事をする上で必要なスキルといったものの摺り合わせが行われます。また、受入先の企業としても、時間をかけて適正を見極めることができますので、こういった時間をかけて補正をしながらマッチングをできることから、8割ぐらいの方々が就職に至っています。
 下は、ほかの大手の派遣会社が最近始めたものになります。こちらは30代後半で、なかなか派遣の就業先が見つからない方向けに、派遣、直接雇用に関わらず、実際に就職活動をしながらキャリアカウンセリングをしたり、トレーニングをする、、就職活動に必要なサポートを行っていくというものです。ですから、能力開発とは若干違いますが、こちらの講座は定員に対して5倍以上の申込みがあったということで、こういったキャリアカウンセリング付きの就職活動支援といったもののニーズが高まっているように感じます。
 4番目は、派遣労働者の能力開発における課題として個人的な考えも混じっていますが、まとめさせていただいています。まずは、派遣会社はスタッフ向けの教育訓練に多額の投資を行っているということがあります。派遣労働者は複数の派遣元に登録して就業しているということが実際には多いので、教育訓練にかけた費用が、回収が見込めるかというと、必ずしもそうではないという現実があります。昨今、事業環境が非常に厳しくなっている中で、これまでのような教育訓練への投資を維持できるかというと、なかなか難しいという声も聞かれつつあるところです。それが、1つ目の費用対効果の問題です。
 次に、派遣元会社の支援体制ですが、派遣会社側でスタッフの教育訓練の受講状況や派遣先での評価を共有する仕組みが個人に閉じられていて、共有化ができないという問題があります。教育訓練をした結果が就業や処遇の向上に結び付くためには、一人ひとりのスタッフのキャリアを考えてマッチングをする必要があり、マッチング担当者やサポートの担当者にある程度キャリアカウンセリングの知識なり素養なりといったものがあり、かつ、連携して、きめ細かなサポート体制ができている必要がありますが、そこが十分できているかというと、なかなかそこまで至っていない、というのが残念ながら実態ではないかなと感じています。
 次に、いちばん大きいのかもしれませんが、派遣労働者自身の意欲やモチベーション、気づきといったものです。「いまは特に困っていないから大丈夫」とか、「そのうち、そういうのが必要になってきたらやります」という考えで、気づくと大変なことになっているといった実態も多いところです。そうならないように、早くからキャリアについて考えながら仕事に就いていただくといった支援もこれから必要なのではないかなと考えています。そして、派遣先企業の協力といったものも不可欠になります。仕事に必要なスキルが何かというのは派遣就業先での評価をもって初めて明らかになる部分でもありますので、派遣先からしっかりとこの評価内容を聴き取る、それを活かしていただくといった仕組みが必要かなと考えています。
 最後に「法制度や労働市場の問題」としていますが、参考までに派遣労働者の分布というものを作っています。これは、事業報告の集計結果で出ている数字を基に作っていますが、ここにあるように緩やかな職種別賃金の市場が出来上がっているのが派遣労働者だと思います。事務系の職種であれば、それなりに上限がある。そこをブレイクスルーするには、それ以上の例えばソフトウエアの開発とか調査、研究開発とか、より高度な専門性を身に付けるか、若しくはこの労働市場ではなく、正社員として内部労働市場の中でより処遇を上げていくことを目指すといった努力が必要になるかと思います。法制度の問題としては、先日の「派遣制度のあり方に関する研究会」でもいろいろな方がおっしゃっていたかと思いますが、職種の縛りがあって幅広いお仕事をしてもらうとか、普段とは異なる仕事をしてもらって派遣労働者のポテンシャルを探るといったようなことがしづらいという状況もあります。これは、その研究会のほうに議論をお任せしたいと思っていますが、なるべく派遣労働者のキャリア開発につながるような制度が出来上がるというのが業界としての希望でもあるということをここでアピールしておきたいと思います。
 最後に、実際に業界としてどういった取組みをしているかということを若干ご説明させていただきたいと思います。10頁は日本人材派遣協会の事業です。
 1つ目はWEBによる情報提供です。「ライフスタイルに合った働き方のススメ」ということで派遣スタッフ向けのソフトなWEBサイトになっていて、どういった働き方があるのか、それぞれ何が違うのか、何がが求められるのかといったものをわかりやすくまとめています。2つ目、右側は、先ほど少しお話をした派遣労働者に対して、キャリアについての気づきを促すようなセミナーを事業として行っています。
 3つ目に「業界横断的な評価基準の検討」としていますが、7月に発足した人材サービス産業協議会では、派遣・請負スタッフをはじめとして、非正規労働者が外部の労働市場でキャリアを形成するために、どういう仕組みが必要なのかという検討を行うことにしています。その1つの案として俎上に上がっているのが、派遣元や請負会社が変わっても、直前の就業先での評価や教育訓練の受講実績みたいなものを共有できる。キャリアにポータビリティを持たせるといった、ジョブ・カードに近いような仕組みができないだろうかということが、いま議論を始めようかというところになっています。このように、業界としてもいろいろな取組みをまさに始めつつあるところですので、今後どういった形になっていくかはまだ見えない部分がありますが、努力はしているところであることをご紹介したいと思います。以上で私からの説明は終わらせていただきます。ありがとうございました。
○阿部座長 川渕さんは、このあともお付き合いいただけますか。
○川渕氏 可能であれば。
○阿部座長 ありがとうございます。いまの発表で、内容的なご質問等はありませんか。またあれば、後ほどご質問をいただければと思います。
 続きまして、労使の現場での取組みについて、田村委員と西久保委員から資料に沿ってご説明をいただきたいと思います。初めに田村委員、よろしくお願いいたします。
○田村委員 急遽作りまして、切り張り的な資料になっておりますのでお許しをいただきたいと思いますが、現状と流通業で働くパートタイマー等にアンケートをした結果が出ておりますので、その中から若干関係あるところだけを抜粋して、今日ご説明をしたいと思っています。
 1枚めくると大きな表があります。実は私どもの組織は、11月6日に2つの流通業に関わる組織が統合いたしまして、承認されればUAゼンセンというものが作られることになっておりまして、今回アンケートの対象になるのは真ん中に「流通業」、その流通業の右に「食品関連」「GMS」とありますが、この2つの業種で働くパートの人を中心にやったものです。組織全体を見ていただくと、とんでもない数字になっていて、枠外にありますが要求書を出して団体交渉をする単位として2,478組合、最終的に141万2,000名ぐらいの組織になる予定で、正社員がそのうち49.9%、正社員以外の方が50.1%ということで、非正規と言われる人たちが大半になる組織になる予定ですし、男女比率も男性が42.2%、女性が57.8%という組織になることをご認識頂きたいと思います。
 1頁の調査の結果ですが、調査数として集めたのはパートタイム労働者3,720名分、正社員1,844名分の回収ができましたので、その資料です。男性が14.7%、女性が85.2%です。40歳以上が57%を占めていて、大多数が主婦パートです。学歴的には6割が高卒、1割が大卒以上、そのほかということになります。勤続年数では5年以上の方が55%を占めておりますので、長勤続というか中期的な勤続の方たちの回答が多いということです。既婚者のうち、54%は子供の末っ子が高校生以上で、57%が大きな子供を抱えている人たちからの回答ということです。
 3頁がアンケートの結果です。働きがいについてどうだということで、共同調査全体・正社員・パートタイム労働者というのがあります。正社員とパートタイム労働者はわかっていただけると思いますが、共同調査全体というのは国際経済研究所とタイアップしてやりましたので、そこはどちらかというと正社員が多いアンケート調査が出ていますので、そことの比較を併せて付けてあるということです。仕事が楽しいか、続けたいと感じているかどうかを聞きましたが、「楽しい」についてはパートタイム労働者が50.6%という高い比率を占めている。生きがいについても、正社員とほぼ同じくらいの思いを持っている。更に、「この仕事の働き方を続けたいか」に対しては、正社員よりもパートの方たちが「このまま続けたい」という比率が高いということですし、「この企業、この事業所で勤め続けたいか」については49%前後で、全体的に推移しているというのは、これが日本人の意識なのかなと思っています。
 働きがいを取り巻く要因でどうなのか。それに会社がどのような関与をしているのか等々についてもそこで聞いているわけですが、左から2つ目に2があります。下に番号順に中身が書いてあります。「会社や、その事業の将来に夢を持っているか」については、共同調査の場合には41%ぐらいありますが、私どもの調査では23.5%が正社員、25.1%がパートと、パートのほうがまだ高いのですが夢を持っていますが、正社員が非常に低いことについて少し危惧しているところがあります。
 4.自分がいなくなると職場が困りますかということについても、グラフの4のところで23%、22.7%という回答で、ほぼ正社員と同じような意識を持っています。7.に、「仕事に自分の総意工夫が十分活かされている」がありますが、ここは正社員のほうが若干高い結果になっています。
 仕事の取組みの姿勢ですが、8.自分で見通しを立てながら仕事をしているかについては、60%弱くらい同じような結果が正社員とともに出ていることが言えると思いますし、9.「自分の仕事の目標は常に達成しているか」については、社員より8.7ポイントも高いパートの意識があることが見て取れると思っています。
 次の頁は、会社関与・自己開示・属性別パートの意識ということをもっていろいろな数字がありますが、私どもが見ているところは職種別の真ん中辺の本部スタッフのところを見ると、職場の中で自分をあまり出していないところが同じような調子になっていますので、この辺を若干危惧しているところがあります。パートの方たちより、若干高い本部スタッフ、自分を出さずに殺して仕事をしている意識を持っている人が多いことも、非常に心配をしているところがあります。
 下の「今後の働き方」、パートタイム労働者は必ずしも責任ある仕事をしているのを望んでいないという結果が出ています。1.「結婚、出産、育児後も仕事を続けたいか」ということで、女性に多い回答かと思いますが、社員の方で62.7%、パートの方で51.2%が「続けたい」、パートの人のところは49%ぐらいが「やめる」という意識を持っていることが言えると思います。2.「今の就業を続けたいか」については、社員よりもパートのほうが「続けたい」という意識が高いことになっています。
 3.「自分の仕事は正当に評価されているか」については、23.4%、24.1%ですから、4分の1ぐらいの評価ということで、あまり適正に評価されていない意識が全社員的にあるのかなと思っています。4.「責任ある仕事に就きたいか」については、先ほどリードにありましたように、社員のほうは42.3%が就きたいと思っていますが、パートの方は24.7%という低い数字になっています。
 次の頁は、各領域の関与です。1.「能力開発のための教育やセミナーの内容や企画」ですが、一般外も含めた関与の関係について、パートは19.1%と低い状況になっている。組合の関与はそれより低いので、非常に危惧しております。会社関与も、正社員とパートでいきますと、パートのほうが半分以下ということで、教育の場があまり与えられていないことが言えるのかなと思っています。組合の評価は、私どもに対するバッテンの評価ですので、あえて触れないでおきたいと思います。
 2.「生活設計のための教育やセミナー内容企画」についても、同じような傾向があります。組合関与が非常に低いですが、会社関与が能力開発より非常に低くなっていることがあって、生涯教育等々を含めたパートに対する関与が低くなっていることが問題ではないかという意識を持っています。
 3.「教養を高めるための教育やセミナーの内容や企画」等々についても、正社員とパートには10ポイント以上の差があることが言えます。ただし、ここは会社関与は、パートタイムについては若干生活設計よりは高い数字が出ていることが言えると思っております。
 次の頁は、具体的な活動の全体的なニーズということを図にして表してみました。下にそれぞれありますが、今日ここで関係あるのは(1)採用時に業務内容について説明や訓練のための研修があったか。先ほどの話と同じようなところですが、(1)というのは上は横軸が制度・政策の導入の認識が高いか、低いか。右へ行くほど高いということですし、重要度認識は上に行くほど高いということですが、(1)は右下の真ん中の上、黒い実線の横線のすぐ下ぐらいにありますが、その制度の認識しかない。重要度があまり高められていないということが言われますが、制度としては重要だということが言われているということだと思います。
 (2)採用時に会社の理念や方針についての説明があるかということです。これは、その右下の真ん中辺の下にありまして、これも制度としての導入の必要性は認められているけれども、重要度としてはあまり高く認識されていないということだと思います。(3)採用時に就業規則について説明があったかです。これは制度としては非常に高くて、これも右下に入っているということで、必要性はあるけれども重要度についてはあまり重視されていないのかなという気がいたします。この場合の課題は(4)仕事の能力やキャリアアップのための教育や研修がある。(4)はまさにクロス点、実線のクロスしたところのすぐ下の左側にありまして、制度的なものが若干遅れている。重要度も下に見られていることについて、私どもは流通の業界の中では少し問題があるのではないか。パートだけではない問題ですが、その辺の問題意識を持っているということです。
 こんな意識を持ちながら、次は処遇と制度、いわゆる賃金なりをどう決めていくかについて、いま私どもがどんな指導をしているかです。基本的なコンセプト、理念として1つ目に掲げましたが、「このことが」とありますが、政策・制度を出していくことそのものがパートタイム組合員にとって、魅力ある活動の構築となる取組みに向かう理念であること。理念を掲げないと手段だけが先に行ってしまいますので、そうではなく理念をきちんと押さえていきましょうねということを言わせていただいております。
 次のパラグラフの3行目、下から2行目になりますが、処遇の均等や均衡、働き方を自由に選択できる新しい働き方の仕組みを目指していく必要がある。既存のものの中でするのではなく、何かクリエイトしていくことが必要ではないかということを大きな理念として掲げて指導しているということです。基本的な考え方は2行目にありますが、私ども労働組合員が対象になっておりますので、その人たちが当事者となって取組みに参加できるということで、同保障で同伴しながらやっていくことを重要視した取組みという展開をしていくということです。
 コンセプトは8つ。1つ目は基本的理念、基本的理解の原則ということで、1行目の後半からある「聞いてほしい」「共有したい」「応えてほしい」という手応えの関係について、我々は一緒に取り組んでいくところが大事だ。2つ目は、同じ目線に立つ。正社員の目線ではなしに、パートの方たち、あるいは働いている短時間の方たちの目線で環境を作ることが大事。3つ目は、多様対応の原則。集計的に見ると全体は多様ですが、働いている個人は一様ですから、身近な職場で取り組める取組みをしていきましょうということにしています。4つ目は、共通理解の原則です。ベースは、1行目の後半からある人間的なつながりをベースにした制度にしていきましょう。5つ目は、当事者性の原則ということで、当事者本人たちが原動力になるような動かし方をしていきたいということ。6つ目は、情報の共有化。これは当然のことだと思います。7つ目は、リーダー創造の原則ということで、パートの方の中からリーダーを作り出していくことが大事だということです。8つ目は、成果反映の原則ということで、いちばん最後の行に「活動への評価を高める」とありますが、それぞれなされたことが適正な労働条件として評価されることを知らせていくことが大事だというコンセプトで進めようということです。
 次の頁からの流れですが、「パートタイム労働者の人事制度の設計」ということを考えてきました。ステップ1としては、人事制度の現状と課題を洗い出すことが大事だということで、今回も含めたアンケート調査も含めて、現状分析をする。ステップ2は「人事制度の基本理念の設定」ということで、まず大事なのは経営者自ら経営理念、組織特性というものをしっかり労使というか、上から下まで共有することが大事なので、そのことをきちんと立てていきましょうということ。?の2行目の真ん中にありますが、何を目指し、実現したいのかを労使で確認し、それぞれの個々の目標が明確になるようにしていくことが大事。ステップ3は人事制度の関係。これは、?にある職能職務資格制度の体系をベースに置きながら考えていきましょう。?で、これを遂行することによって正社員への転換の道が開けるのだということを考えていきましょうということにいたしました。ステップ4は、その人事制度が動けば当然、賃金制度も同じになるということで、??は同じものが書かれています。
 次の頁は、人事考課評価の育成、ステップ5になります。職能の派遣については職能の評価、考課が適正に行われるしくみというのは非常に難しいですが、これを構築する必要があること。?にありますが、そのときに大事なのは1行目の後半から現場任せにしないこと。そして2行目の後半、全員標準評価といった一律にならないような注意をしながら、個人をきちんと見ていくことを大事にしようということを指導しています。ステップ6は、新人事制度への移行の関係ですが、納得性ということが大事ということにいたしております。ステップ7は、手引き等を作っていくということですが、下のほうにフローチャートがありますが、「働き方に応じてバランスの取れる報酬体系を作る個々人の能力を最大限に発揮する」ことが最終目標で、そのためのポイントとして下に○が3つあります。適正に合う仕事を選択できるように考えていかなければいけないでしょう。次は、労働者のニーズに応じた働き方が選択できることも考えていく必要があるでしょう。そして、そのニーズに応じた働き方が長く続けられる。長く続けたことによる貢献が、きちんとした報酬に反映できるということを全体として組み立てていきたいということを考えています。
 そのときの多様性ですが、次の頁で「それぞれに」といくつかありますが、タイプとしては大きく3つ、定型職、専門職、総合職にさせていただきました。これも説明すると長くなると思いますが、真ん中辺に3つのタイプ、定型、専門、総合がありますが、まず定型職を(1)にさせていただいて、1)の?にありますが、現在の担当業務の職務職能遂行能力を基準とした処遇なり制度というのが必要なのではないか。枠囲いの下の2)の育成、評価、昇級の関係の育成は、定型化、標準化された職務が中心という方たちがここに配属されますので、マニュアルによる上位等級への職務基準に沿った現場教育、OJTをベースに、この先の能力開発をするのがいちばんいいのではないか。評価としては、a.は達成レベルの評価を定期的に実施する。b.として本人面談というのがありますが、こういう育成マニュアルが必要なのではないかと考えています。
 次の頁は、昇格等々は当然あると思っています。下に枠囲いがあります。賃金体系としては例示で金額も入っていますが、事例1がシングルレート、考課型レンジレートがあります。私どもとしては右側にあるレンジレートの例で1年、2年、3年、A、B、Cの評価及びこれくらいの幅の中でも評価をし、それぞれ昇級を図っていくことが適正なのではないかという基準を持っているということです。
 次の頁は、専門型タイプです。1)職能等級の設定?に、専門的な知識、経験、技能の熟練度、成果による処遇が必要なのではないか。a.の業務の定型化、標準化の程度は低いだろう。専門的な知識、経験、技能などの熟練度によって、個人差が大きく広がる専門型ということです。熟練度を中心にした業績反映の処遇が大事なのではないかと考えています。四角囲みの下に2)育成、評価、昇級のレベルというのがありますが、育成は専門レベルの高い定型化、標準化しにくい業務の性格ということを取り上げて、マニュアルによる現場教育ではなしに、専門分野別の集合教育なり外部教育機会への参加が必要なのではないかというタイプという具合に分類をさせていただいています。評価はa.の2行目にありますが、それぞれ正社員の等級にスライドしたような評価制度がここは必要なのではないか。b.にある社会的な労働市場がここは形成されている。かなり専門的なことで、例えばレジを打つという専門職の人たちは、かなり同じような賃金で動くことができますので、そういう労働市場が形成されていますが、企業の中で留め置くには上位等級への昇格等々の準備をしておく必要があるのではないか。抱え込みになりますが、こういうものが必要なのではないかということを考えています。
 次の頁の賃金モデルはいいと思います。枠囲いの下の(3)「総合職タイプ」の処遇体系と賃金があります。職務等級の設定については、?正社員に近いタイプの総合職だという認識を持っておりますので、正社員に準じた職務遂行能力の高まりが非常に強い、そういう認識の高い人たちがここに集まっていると思っています。?は等級の設定ですが、定型職、専門職に比べると多めの等級を設定し、その中で随時上がっていくという制度が必要なのではないかということの指導をいたしております。
 最後の頁の上に表がありますが、そこの遂行能力は表の中の右下の職務1、職務2、職務3、左側が職務4、職務5、パート2級、パートとだんだん上がっていくことを考えています。2)育成、評価、昇格の問題ですが、ここは正社員の人事処遇に準ずることがベース。「パートタイム労働者の働き方に応じて、職業能力開発及び向上等を図るため教育訓練を、会社は実施するように努めるものとする」ということで、ここはまさに正社員と同じような教育訓練体系を入れていく必要があるだろうと考えて、こんな指導をさせていただいて、パートの抱え込みを含めた能力アップによって、正社員に近づける努力をさせていただいているということです。
 この辺は全体を通じて、紙にはしていませんが、企業の教育訓練、能力開発は、企業にとっては企業の業績を最大化させるために、OJTというのはなされるものだと思っています。そういう意味では企業価値を高めるために、企業は全体的な人材の底上げについては前向きであるという認識を我々は持っています。しかし、現実にパートタイムの人たちを見ると、処遇の関係について能力が向上したから、その上がった能力に対して適切な処遇がされているかということになると、必ずしもそうされていないと思っております。この検討会でやりますように、こういう人たちの能力を上げていくことになると、むしろ賃金を先に上げる。賃金を上げたことによって、企業がそれを最大化に生かすためには、教育訓練に着手せざるを得ない。むしろ、こういった方式のほうがいいのではないかという気がしております。それが1つです。
 2つ目は、行政がとにかくパートタイマーの教育訓練を進めることになると思いますが、そのときの目的が企業間の労働移動を進めるものであるならば、たぶん企業は飛び付かないだろうと思います。教育訓練したら、違う所に変わっていってしまうことになると、企業は乗ってこない。それは労働者にとって、労働者がもし万一やめざるを得ない、あるいは企業が閉鎖するようなことになったときに、次に持っていけるポータビリティというものであるならば、それは有効なのかなという気がしますが、その辺は少し切り分けてやる必要があるのかなと思っています。しかし、大本は国全体で労働力の人材の底上げを図って、生産性付加価値の向上を目指すことは必ず必要なことだろうと思っておりますし、最終的に少子化が進んでいくと日本全体の消費構造が減っていきますので、パートタイマーや外部労働を求めることになると、私どもは移民ということも考えながら教育訓練ということも考えなければいけないのかなと考えています。そもそも、生活できない労働なり賃金があること自体が問題でありまして、そこに税の投入ありきではない教育訓練という体系を作る必要があるのかなと思っています。
 最後に、国のほうで公的資格、販売資格とかいろいろ作ってやっていただいておりますが、その公的資格をあまり増やしてしまうと、行政による規制のほうが増えていってしまいまして、実質現場ではあまり活かされていないし、そのことが次に移ったときの処遇に反映するかは、なかなかそうはいっていないところがありますので、公的資格が増えることについては考えものだなと思っております。以上、私見も含めながらご報告とさせていただきます。
○阿部座長 ありがとうございました。続きまして、西久保委員お願いします。
○西久保委員(三越伊勢丹ホールディングス) 資料3についてご説明します。「(株)三越伊勢丹における従業員体系と能力開発に関する取り組み」ということで、弊社の子会社である(株)三越伊勢丹の事例を取り上げます。弊社よりはるかに進んでいる企業はたくさんありまして、私どもはあくまでも1例として取り上げていただくというイメージですので、私どもの例が必ずしも全体の中で進んでいる事例ではないとは思っておりますが、議論の参考と何らかの題材にしていただければと思います。よろしくお願いします。
 1頁目、弊社の概要については、三越伊勢丹ホールディングスは全国展開している三越3グループの親会社の形になります。今回取り上げるのは、その子会社である、主に首都圏に展開している(株)三越伊勢丹の事例を申し上げます。伊勢丹・新宿本店、三越・日本橋本店、三越・銀座店、この基幹3店を中心として、首都圏に展開している企業です。三越と伊勢丹が統合して、2011年から新たに設立している会社です。ポイントは、従業員数が1万1,959人、2012年4月現在でこの人数がいるということです。これは有期、無期かかわらず、合計している人数です。
 2頁、現在の(株)三越伊勢丹の雇用形態における分類です。左側に「名称」とあり、大きく分けると紫色の部分、社員、メイト社員、フェロー社員、この3つが主軸で展開している雇用形態です。社員につきましては、通常の無期雇用の月給制の社員で、フルタイムで勤務しているということです。2番目のメイト社員は、一般的に言いますと「月給制契約社員」と呼ばれているグレートがあり、勤務時間はフルタイムですが、基本的には有期雇用、1年契約の更新です。弊社の場合は、4年目以降は、無期雇用に強制的に転換する仕組みをすでにとっており、4年目になると自動的に60歳定年まで勤務できる状態にはなっております。
 3番目がフェロー社員です。これが時給制の契約社員、パートタイマーです。右側の「勤務時間」のところに、週20時間未満と、週28~35時間未満、この2パターンに分かれております。これは社会保険の適用・不適用の問題で、個人で皆さんは選択されますので、ここで分類している形です。基本的には時給制で勤務しているということです。
 このほかに「エルダースタッフ」がありますが、これは定年後の60歳以降の再雇用者です。「スペシャリティスタッフ」は、特殊業務に携わる方です。「アルバイト」については、いわゆるお中元・お歳暮の時期で臨時で雇用されている方ということで、基本的には2カ月以内の雇用の方です。
 下に弊社のまとめがありますが、「月給制契約社員」に当たるメイト社員は、4年目以降に無期雇用としております。有期雇用契約者におきましては、アルバイト以外は、基本的に雇用更新を継続しているケースが大多数です。何らかの病気やご都合がある方以外は、基本的に更新をしております。
 派遣社員の方については、弊社ではあまり派遣社員の活用は行っておりません。百貨店でよく「派遣店員」と呼ばれる方がいらっしゃいますが、これは取引先様が雇用されている従業員です。いちばん分かりやすいのは、例えば化粧品のコーナーにいらっしゃるビューティーアドバイザーという形で化粧をされている方がいますが、基本的に化粧品会社の方がいらっしゃっています。そういった方が一般的に派遣店員と呼ばれておりまして、通常で言いますと、派遣社員の方とは異なります。アルバイト以外は、弊社の場合、全雇用形態とも労働組合に加盟している状態です。
 3頁、3つの主力の雇用形態です。「社員」「メイト社員」「フェロー社員」と3種類ありますが、ここはすべて転換制度を設けております。黄色で書いてあるフェロー社員からメイト社員の転換制度があり、これは毎年数十名単位で転換しております。もちろん転換するに当たっては、審査やグループディスカッションと面接、その辺を踏まえて転換しているということです。
 同じくメイト社員から社員、4年目で無期雇用になりますが、そのあとに上の社員のグレードにステップアップする制度もあり、こちらも年間数十名程度、同じように審査、グループディスカッションやペーパー試験、面接を含めて登用しております。
 この3つの雇用形態の違いは、まず、フェロー社員は時給制で、ここが大きく違います。社員とメイト社員の違いは、移動の範囲が異なります。当然、社員は(株)三越伊勢丹以外の会社への出向、転居も伴う出向もある。メイト社員については、基本的にエリア限定の括りをしており、例えば、新宿勤務でしたら、新宿地域の勤務。銀座でしたら銀座地域、あるいは他の支店でも相模原や府中がありますが、いわゆるその支店の勤務が一応中心という形になります。
 もう1つ違うのが、3頁にあるように、働く期待役割が違います。矢印で書いてあるとおり、弊社は販売業務がメインですが、販売員については、どこの雇用形態でもあります。弊社ではブロック単位で運営をしていますので、メイト社員というのは、ブロックリーダーという言い方をしておりますが、ここまではなれるということです。
 社員になりますと、マネージャーまたはマネージャーのアシスタントということで、かなり現場のリーダーとしてやっていくという形態で、この辺りで雇用形態別の差があります。
 雇用の特徴は、フェロー社員で入っても、メイト社員、社員にまでいくルートがありますので、採用が我々もキーだと思っております。いわゆる販売員としては、第一印象も非常に重要ですが、お客様と1対1で接する形ですので、その場の判断力は重要ですので、採用のときは、その辺をかなり重視して確保しているということです。
 4頁、「能力開発(人材育成)に関する取組」については、現在、能力開発教育メニューというのは6種類弊社でも大きくあります。基礎教育、職務別研修です。これは先ほど申したリーダー、アシスタント、マネージャー別に、そこになったときの教育があります。領域別研修ということで、婦人・紳士等、リビング、食品、ほかにもございますが、そういったところ別の教育です。資格別教育については、いわゆる公的資格もありますし、日本百貨店協会で作っている資格でワインアドバイザー・きものコンサルタント等、そのほかの資格を受講するためにやる教育です。その他研修と、自己啓発ということで、通信教育等のメニューを用意しております。
 これら全研修とも雇用形態の社員、メイト社員、フェロー社員を問わず研修は可能です。基礎教育について主にやっている内容は、当然、接客に当たっての接客用語や店内案内の知識、放送の基本などもありますが、いわゆる企業理念というのですか、会社の方針で、企業理念もグループの企業理念ということで、こういった企業理念でやっていますと。3カ年計画を弊社でも作っておりますが、その辺はこういうふうになっていますと、会社の概要はこうで、過去の歴史はこういう会社でしたというのも、社員、メイト社員、フェロー社員を問わず、どの雇用形態でもやっております。若干、やる時期がずれたりしていますが、メニューは基本的に同じです。
 職務別研修についても、必修で、リーダーにつけばリーダー教育は雇用形態を問わず、これは社員とメイト社員になりますが、それに問わず全く同じ内容を実施しております。社員になったら、当然マネージャーなどの教育をしております。
 領域別研修については、一部必修で原則選抜です。いわゆる婦人、紳士の基本的な内容は全員必修で受けさせる。これは社員、メイト社員、フェロー社員もみんな一緒です。ある程度のレベルになって高いレベルを求められると、ある程度選抜制です。これは正直言いますと、教育のキャパシティの問題もあり、その当たりで一部選抜して実施しております。
 資格別研修、自己啓発については、希望者が受講します。これはどちらかというと、自己啓発や自己研鑚の一部ということで導入しておりますので、原則有料で、一部労働組合の補助をいただいていますが、会社からの補助がありながら、原則自分で手を挙げて受講してレベルを上げていく制度です。これは社員、メイト社員、フェロー社員問わず、基本的に広く門戸を広げておりますが、選抜の内容になりますので、若干、キャパシティの問題で絞らせていただくということです。
 これらの教育研修プログラムをまとめたガイドブックがあり、これを全従業員に配付しております。今日お持ちしておりますが、「三越伊勢丹キャリアサポートガイド」で、これは毎年出ております。これは2012年版ということで、これだけの厚みがあり、この中に教育全体のメニューや、いま言った6つの内容、有料・無料どの辺りなのかとかを全従業員に知らしめていく。これは首都圏の三越伊勢丹だけではなくて、いわゆる百貨店における地域会社、例えば、札幌に丸井三越とか、福岡にも岩田屋三越とか、ほかの地域もありますが、そちらもすべて基本的には共通の事項でやっているということです。こちらは雇用形態にかかわらず、すべて配付しております。簡単ではございますが、弊社の事例をご説明させていただきました。以上です。
○阿部座長 ありがとうございました。最後ですが、事務局から資料が用意されておりますので、その資料の説明をお願いします。
○岡崎職業安定局長 前回フリートーキングでいろいろな意見をいただきました。その際聞いていて、その方がどういう非正規の対象者を想定して言っているかということで、結構、皆様方で思い描いていることが違ったような気がしたので、ここで固めるという意味ではないですが、議論の整理のためにこういう感じかなということで、整理したものです。
 企業側の雇い方の面で見ると、いま西久保さんが言われたように、企業の中である程度正社員まで含めて、企業内で昇格するような雇用管理をされている所。これはある意味では正社員定款とか、いろいろなことも含めて、厚生労働省も推進してきたところではありますが、それが1つの形態としてはあるだろうと。
 ただ、世の中的にそれがすべての業種、企業で本当になるかどうか。ですから、1つの姿ではありますが、これがどのくらい進むかどうかというのは、政策を進める上では考えなければいけないだろうと。ただ、1つの姿としてはあるだろうということで整理しております。
 もう1つは、いわゆる専門職的な契約社員等で1年とか2年とかで、特別な状況がある際に雇われる。そこでしっかりと専門職として評価されている。そこのところの話があるだろうと言われたので、そういうことも当然あって、これは契約で働いていたり、派遣会社からの専門職として働く形態がある。
 もう1つは、いわゆるパートが多い中では、定型的・補助的な業務がある。田村さんからも話がありましたが、そういう中でももちろんグレードがある部分はありますが、正社員まで望むような形はあまり想定されていなくて、定型的・補助的な中でいわゆるパートの中で進むことはあるぐらいのものがあるのかと。
 能力開発で考えていくのは、パートの中で考えるとこういうことですが、もう1つの枠として正社員がありますから、こういう中から正社員になるためにどういう教育訓練が必要かという議論は当然あり得ると思います。企業のほうからいくと、こういう部分と正社員があるという整理ができると考えてみました。
 労働者側もいろいろな方々がおられます。これは就業形態としてはパート、アルバイト、派遣といろいろあるわけですが、年齢とかいろいろな形に区切って、厚生労働省として政策対象にして、いわゆるフリーターが約200万人ぐらいということです。それ以外に専門職として契約社員、派遣社員の方がおります。あと家計補助的な方が多いと思いますが、パートの方が相当数おられます。非正規としては、最近高齢者の継続雇用が進んできておりますので、高齢者の契約社員や嘱託という形で、非正規になっている方が相当数おられます。さらに非正規の中には学生アルバイト等、すぐに正社員を目指していない方々がおられます。労働者側の対応についても、どの部分にどういう能力開発をしていくのがいいか。労働者側のいろいろな状況ももう1つ見なければいけないのではないかということで整理しました。
 そういう中で、非正規の方々に今後どうしたいかという希望を見ると、不本意で非正規になっていて実は正規になりたかったと。これはフリーターのところがいちばん多いのだろうと思っていますが、そういう方々については、正社員化をすることを含めた能力開発みたいなことを考えなければいけないということです。非正規の中の約8割の方は、アンケート調査等によると非正規のままがいいと言っておられる。非正規のままという中でも、その中でキャリアアップしたい方と、そこまでではない方とがおられる。この辺をどう考えていくかということはありますが、そういったことも1つ頭に入れなければいけないだろうと思います。
 能力開発の主体としては、労働者自らがやるか、企業がやるか、公的部門が何らかの支援をするか。前回いろいろなことを想定されて議論されましたので、あくまで整理のためにご提供したということです。
○阿部座長 ありがとうございました。これまで4名の方からいろいろと説明をいただきましたが、それを踏まえて、ご議論をいただければと思います。まず、発表者の方々に対して質問があればお願いします。どなたか質問はありますか。
○佐藤委員 最初の川渕さんですが、派遣に関しての調査を興味深く伺いました。2つありまして、1つは2頁の「訓練を受けたことがない理由」で、3割未満ということで、見たことがある方が少ないということです。その場合の理由が、「訓練機会がなかったから」が7割強で、非常に多いのです。これについては、先ほどメニューは用意されているが、対象サンプルが首都圏に偏っているので、多くの大手派遣会社はそこに集中している。したがって、例えば地方などがそこはなかなかできないということでした。そもそも調査対象というのは、地図的な分布から言うと、首都圏が多いのか、地方も多いのか、その辺りはどうなのかということが1つ目です。
 もう1つは、岡崎職業安定局長がおっしゃったイメージ図で言いますと、キャリアの訓練機会の支援ニーズから言うと、左から順番になるのかなという感じはするのです。その上で、派遣などの場合にはどのタイプがメインになってくるのか。それぞれもちろんセグメントされたニーズがあると思いますが、補足されたサンプル全体から言うと、ざっくり言うと不本意な非正規がメインなのか、それとも非正規のままキャリアアップがメインなのか、そのままでいいのか。経歴を見ると、わりと正社員だった方が一旦辞めて、派遣を選ばれているわけです。ということから言うと、左よりも真ん中なのかなという感じは何となくするのですが、その辺でお気付きの点があれば教えていただきたい。お願いします。
○川渕氏 サンプル数の都道府県の分布に関しては、この調査は一応WEBを使って、全国的にお答えをいただいてはいるのですが、首都圏が派遣労働者は人数としてはいちばん多い。というのは、大企業で使っている所が多いから。大手の派遣会社が首都圏に多くなっているところがあります。ですから、そもそも回答者の分布も首都圏に偏りがちです。正確に首都圏で何パーセントかというのはいま手元に資料がないのですが、全国隈無くはいるのですが、首都圏に偏りがある結果となっているということで、すみません、ご容赦を願いたいと思います。
 2つ目のご質問は、不本意で非正規を選ばれている方、非正規のままでいることを希望している方。これも先ほどの派遣協会の毎年のWEBアンケート調査の結果からいくと、大体4割ぐらいの方が正社員になりたいという希望をお持ちになっています。同じだけの割合で派遣のままでの就労を希望しているということで、両方の方がいるので、どちらかに特化するのではなくて、正社員を希望する方に対しては、正社員化の支援をやっていきますし、そうではない方、派遣で働くことを希望する方には、派遣の中でのキャリアアップをしていくという、両にらみでやっていかざるを得ないと考えております。以上です。
○阿部座長 いまのに関連して、たぶん佐藤委員がお聞きになりたかったのは、2頁の「教育訓練を受けたことがあるかどうか」で、「いいえ」と答えた人たちのうちの72.2%が、教育訓練を受けたことがない。その理由として、機会がないと言っているわけですが、その理由として、大手が提供している傾向があるとか、あるいは大都市圏に限っているということで、機会がないという理由は、大手に属していない登録の方や、地方部にいる人たちという説明があったということですが、それでいいのかということだろうと思うのです。
○川渕氏 これは正確に調べてはいないのですが、教育訓練を提供している実態からすると、おそらくそうではないかという推測になります。もう少しここは調べる必要があるのかもしれませんが、実態としてそういうことが言えるのではないかということです。
○小野委員 いまの話にも関連するのですが、質問も含めて、教育訓練を派遣会社が行う理由は、端的に言うと派遣社員の満足度を高めるためと、ここの派遣会社はいい派遣会社だというPRが大きいです。先ほど川渕さんもおっしゃっていましたが、なかなか教育投資に対する回収が難しい業態であるのです。理由は2つあります。1つは、実際に登録して教育訓練を受けた派遣会社から、果たして派遣されるのか。派遣されなかったら、利益として返ってこないので、そこが見込めるかどうか。そういうことで投資するかどうかという迷いが生まれるというのがあります。
 2つ目は、教育投資を一生懸命していい労働者になったときに、引き抜きということもあり得るのです。いまの法律上からいうと、それを拒んではいけないという法律もありますので、その辺でなかなか派遣会社としては、やはり、教育投資が回収できることが担保できなかったら、小さな所ではやらないのです。その辺は財政的に大きな派遣会社に教育投資は偏ってしまう現状があって、大きな派遣会社であったとしても、留どめてしまうところがあります。川渕さんにお伺いしたいのは引き抜きに関してですが、一生懸命教育訓練をした派遣社員が引き抜かれることに関して、各社はどういうふうに端的に思っているのかを、私は素直に聞きたいところではあります。
○川渕氏 お答えは非常にしにくいのですが、派遣スタッフの方が高く評価をされて、派遣先にスカウトされていくということは基本的には歓迎されるべきことだと思っています。というのは、いつ、その方が今度派遣先の担当者になるかわからないわけですから、そこは無理に派遣スタッフに留めるべきではありませんし、むしろ歓迎すべきだと思っています。
 当然、派遣会社としては、派遣先に対して紹介予定派遣に切り換えてからとか、紹介という形にしていただくといった形でお願いをし、これまでの投資を回収しようと試みるのですが、最後は派遣スタッフと派遣先というか、直接雇用してくださる会社との間の合意に対して、我々がそこまで口を挟むことはしづらいのが現実だと思います。
○小野委員 ある意味、教育投資が回収できるような構造がなければ、投資というのはなかなかしづらいところはあるのです。ですから、特に派遣については考えなければいけないというのは1つあります。もう1つは、田村委員と西久保委員のお話を聞いて、これは主にパートの制度ですが、こういう職務が4段階に分かれていて、賃金が順に上がっていくような制度になっていますが、この制度は非常によくできていて良いと思うのですが、派遣はありますか。あるいはそれがなぜ作れないのか、というのが素直な疑問です。
○川渕氏 派遣スタッフの評価に関してヒアリングをしたのですが、段階的に評価している所は、30社にきいたうちの8社にとどまっています。そこが難しいのは、派遣の場合は、契約上定められた仕事限定されていて、そこから大きく出ることがなかなか難しいという、制度的な要因もあるかと思います。
 任される仕事の範囲が、派遣先によっては明確に切り出しをされているので、その中でどれぐらい早く、正確にこなせるかといった評価の仕方、視点で評価がされています。ただ、私も先ほどパートの方の段階評価を見て、これぐらいのレベルであればできるのではないかというのが個人的な感想です。やはり、派遣の方でも、単純に言われたとおりの仕事ができるという方から、人に教えられるまで、スーパーバイザーといった形で他の派遣スタッフに指導するような派遣スタッフの方までレベルはありますので、そこを一旦作ってみることは試みとしてできるのではないかというのが感想です。
○田村委員 私どもは派遣元、派遣労働者を8万7,000人ぐらい抱えているのですが、やはり、同じような問題がありまして、企業が教育訓練をするとヘッドハンティングに遭ってしまうということがあります。それよりもっと大きいのは、教育訓練した人たちが数名集まって、簡単に会社を興して、自分たちが派遣会社になってしまう。そういうことで出ていく人が多くて、その対抗策として、私どもがお付き合いをしている企業のほうは何をするかというと、派遣労働者を派遣元会社の正社員にする。いわゆる月給的にベースをもって、能力に応じてくっ付けていく。仕事がなくなっても、派遣に行っていない期間でも、基本給は払い続ける。そういうことで対抗策をしているところは現実にあることを報告しておきたいと思います。
○阿部座長 それはもともとは登録型だったのが、常用型になるということですよね。
○田村委員 そうですね。常用型というか、派遣元会社の正社員として置いておくのです。ですから、基本給的なものはいつも補償されている。派遣に行くと、仕事に応じたペイが少し付加される。休業補償がちゃんと付いて6割以上のものが派遣元から提供されている。それによって、有力、有能な労働者を抱え込む的なことをやっている。特に多いのが派遣会社も地方に事業所、営業所みたいなものを持っていますから、そこはニーズがあったときにすぐ人を出さなければいけないというのがあるので、一定数を抱えておきたいというのがあります。
○和泉委員 川渕さんに教えていただきたいのですが、アンケート結果に、能力開発やキャリア形成を希望しないというのがあって、理由として「時間がなくて」というのがあって、川渕さん個人としては、本当にそうかなと思うというお話もありました。この検討会は、能力開発はしたほうがいいという前提に立っていて、国としては人材立国としての底上げもしなければいけないし、経済も活性化しなければいけないし、将来、生活保護の人たちが増えることも防止しなければならないので、国としては必要だと思っているのですが、本人が「時間がない」とか「現状に満足している」という回答が、このアンケートにおいては多いのだとすると、果たしてと思って混乱していたのです。
 もしそうだとすると、そのあと川渕さんがおっしゃっていたように、そもそも意識改革や考え方の転換、具体的なスキルの前に、そこから必要なんですかねというのがすごく疑問だったのですが、ここはもし国がやるとしたら、川渕さんのお考えとしてはどうですか。
○川渕氏 先ほどご説明したとおりで、基本的には能力開発でキャリア形成を希望するスタッフの割合のほうが高いのですが、そうではない方もいる。わりと2極に分かれているというのが実感です。能力開発やキャリア形成に対して希望している積極的な方というのは、やはり自らも自分で自己投資をしてスキルを上げていこうという姿勢があります。そうではない方に関しては、いたずらに危機感を煽るのもあまりよくないので、キャリアというものは派遣で働いた場合はこういうふうに積んでいくのが理想的というように、、業界としてキャリア教育をやっていくべきではないかというのが、最後にご紹介した事業の1つです。
 国として、ということであれば、社会に出る前にいろいろな働き方に関して、どういうことをすれば自分の処遇が上げられるのかとか、キャリアに関しての一般的な教育を実施するのがいま考えられるところかと思っています。
○和泉委員 ありがとうございます。いまの点と、先ほどのいろいろな人がいるというのは分かっているのですが、田村委員のお話の中でも、必ずしも責任のある仕事を望んでいない人が意外と多かったりというところで、かなり棲み分けをして戦略を立てていかないと、限られた予算の中では、なかなか効果のある政策は難しいかと思いました。
 もう1つ質問があるのは西久保委員に対してです。販売だからということでしたが、瞬間的に判断する能力が非常に大切なのでというお話があったと思います。私は販売に限らず、いろいろな仕事で判断力はとても大切だと思っています。つい最近メーカーさんで、人と接する仕事でない所でもそういうご要請をいただいて、またそのことでさまざまな人材の関係の企業に、今どういう人たちを企業は正社員として求めているのかというお話を聞いたときに、いわゆる学歴ではなくて、言葉が世俗的ですが、地頭の良さみたいなことをおっしゃっていて、いわゆるIQとかEQとも言われていますが、そういった判断能力を計る指標がないかと探している企業がすごく多くなっているという話も聞いたのです。
 三越さんにお伺いしたかったのは、判断力を重視していらっしゃると言われましたので、例えば三越さんとか伊勢丹さんで仕事をしたいと思った人は、そこを磨けば雇われる率が高くなるわけですよね。しかし、先ほど見せていただいた能力開発のメニューでは判断力や対応力が養われるとはとても思えませんでした。どういう能力開発をすれば、雇用される機会は増えたり、あるいは職が良くなったりするのですか。
○西久保委員 フェロー社員からメイト社員、メイト社員から社員に行くときのお話をさせていただきましたが、例えば、グループディスカッションとか、グループで会話していく中で、いろいろな話題が展開して、30分ないし40分の時間を取るのですが、そこで話す内容が、ある方が返したときにどういうふうに返すのか、それがすぐ返せるのか、返せないのか、実はそういうところである程度見ているところはあります。
 面接も1対1でやるときに、細かい話ですが、面接官が突拍子もない質問をしてもある程度返せるとか、そういうところで実は見ております。判断力を定量化して図るという指標はあまり考えていません。お客様も人間ですし、従業員も人間ですし、我々採用する側も当然人間ですので、そこの中の1対1でどのような対応ができるかというところだけで、重視しています。
 先ほど判断力という言い方をしましたが、実際にはそこまで大げさなものではなくて、どれだけ人とのコミュニケーションがとれるかとか、その場ですぐ臨機応変な回答ができるかとか、その辺で見ているという程度だと思います。
○和泉委員 それはいままでの生き方とか、育ち方とは別に、何か重点的に一定の期間能力開発をすると開発されていくとお考えですか。
○西久保委員 どちらかというと採用のときにそこを見てしまうので、どのようにその方がそれまで能力開発をいろいろな機会があってされてきていると思うのですが、されてきたかという判断はしかねるのですが、ただ、採用したあとにフェロー社員からメイト社員に登用されるときのグループディスカッションで、やはり、採用のときと違う方はいらっしゃいます。そういう方はたくさんのお客様とお話されているとか、それは上司、部下にかかわらず、いろいろな方とコミュニケーションしている。我々は実はそう思っております。そういった人と接する機会を増やすことで、結果的に能力が磨がれているのではないかと。それがほかの話題でもありましたが、いわゆるOFF-JTでなく、OJTの中で教育訓練が自動的に積まれていって、川渕さんからもご紹介があったように、OJTの経験から皆さんは学んでいるのだと。実はそこに人と人と接する機会があって、そこでかなり能力が磨かれているのではないかというのが我々の思いとしてはあります。
○和泉委員 ありがとうございます。
○阿部座長 私からも西久保委員にお聞きしたいことがありまして、4頁の「能力開発に関する取組」のところで、領域別研修、資格別研修、自己啓発、特に領域別研修でしょうか、「一部は必修だけれども原則選抜」となっていたと思います。この選抜の基準というのはどういうものなのでしょうか。その選抜された方々は、もしかしたら転換制度を使って転換する方が多いのか少ないのか、その辺りはいかがなのでしょうか。
○西久保委員 正直申し上げますと、部門別である程度人数が限られていますので、一定数をその部門から選抜してくださいということで、多少現場にお任せしていると。例えば婦人なら婦人の領域で、こういう教育があるのだけれども、レベルアップしたい方を上長が推薦してくるという形態で選抜している状態です。ですから、私どものほうから制限を掛けているというわけではないです。
○阿部座長 その受けた方が、転換制度でフェロー社員からメイト社員、メイト社員から社員へということは多いのですか、少ないのですか。
○西久保委員 ケースとしては多いと思います。上長に選んでくださいといったときに、当然常にコミュニケーションを取っている、メイト社員とかフェロー社員の中で、多少前向きだとか、ばりばりやっている人がいれば、この人は伸ばしたいなと、そう思う方を当然、上長も推薦してきますので、結果としてその方が能力を発揮して上がってくるという傾向はございます。
○平田委員 2点あります。いまのに関連して西久保委員に1つお伺いします。フェロー社員からメイト社員、メイト社員から社員と転換制度があるとおっしゃっていて、その判断の1つに、グループディスカッション等で判断力や対応力を見るというのがあったのですが、ほかにも基準が設けられているのであれば、その辺りを教えていただけないかと思います。
○西久保委員 正直言いますといくつかあるのですが、あまり申し上げられないと言ったら変なのですが。ただ、先ほど言いましたように、レベルが期待役割で差が付いていますので、例えばフェロー社員からメイト社員になるときは、担当のリーダーをする能力を保有しているかというのは、当然判断基準になっています。ですから、先ほど言いましたように、会話ができるとか、お客様と1対1だけではなく、グループディスカッションの中で、チームをまとめるためにどれぐらいの行動をしているかというのは、当然拝見していきます。
 同じようにメイト社員から社員の場合も、マネージャーという多少広い視野で、さらにマネージャーの上の部長クラスとも交渉していかなければいけませんので、その辺のところは視点としては1つ入れています。
○平田委員 もう1点は川渕さんに対してお伺いします。資料の1頁目に、厚生労働省の調査結果として、「年間の教育訓練講座数と受講者数」というのがありました。この中で、方法として「OJT」というのがあるのですが、派遣のスタッフの方に対して、OJTで教育するというのは具体的にはどういうことなのかを教えていただければと思います。
○川渕氏 こちらは、私もこの資料から引用しているときに、疑問に思ったところの1つであるのですが、例えば製造系、エンジニア系、ITというところですと、実際につくってみて、実地での実技の練習をするといったものがあります。そういった分野、事務職ではないと思うのですが、非常に特殊な技能が必要とされるような分野に関しては、OJTの率が高いのではないかと。
 そうしますと、推測の域になってしまうのですが、このような職種を多く扱っている特定労働者派遣事業でOJTの比率が高いということの説明がつくかなと思います。
○阿部座長 もう1つ、私から田村委員にお伺いします。理念から始まるところで、3つのタイプの処遇体系と賃金制度の例があったと思うのですが、定型職、専門職、総合職、それぞれの3つのタイプで、処遇体系と賃金制度モデルということでご説明があったと思います。
 少しよくわからなかったことなのですが、定型職から専門職、専門職から総合職と、3つのタイプを異動するということはお考えになっているのか、なっていないのか。お考えになっていないような気がするのですが、なぜそのように分けたのか。それはもしかしたら、業種、職種を念頭に、それぞれタイプ分けしてしまうということになるのだと思うのですが、もしそうだとしたら、そこに抱え込むという形になって、ある意味でキャリアアップというのが、どこかで天井が出てくるようなことにはならないのかというのが1つです。
 もう1つは、「公的資格が増えないほうがいい」というようなことをおっしゃっていたと思うのですが、それがなぜかということを、もう少し詳しくお聞かせいただければと思います。というのは、たぶん同時にUIゼンセン同盟の中で、そういった資格制度みたいなものをお作りになるような話をされていたと思うのですが、それと公的資格の関係というのはどうなのかというのが気になったものですから、お聞きしたいと思います。
○田村委員 まず、定型職、専門職、総合職の3つのタイプですが、基本的にはこれは上がっていくことが上位等級に位置されますので、処遇も増えてくるし、仕事の重要度、責任も増えてきます。そして、最終的には総合職からは、当然ながら正社員への転換というのが出てくると考えていますが、先ほどの派遣にもありましたが、必ずしも上位を望んでいない人たちもいますので、その中での処遇制度という制度は必要なのだろうと思っています。ですから両方ありで、上位等級に上がっていくための出世もあるし、その中に留まりながら、その中での処遇が上がることも必要なのだろうと思っています。
○阿部座長 ただ、これを見ますと、どのタイプの処遇体系に入るかで決まってしまう形になっていませんか。
○田村委員 採用時にほぼ。
○阿部座長 ほぼ決まりますよね。そうすると、採用時にそれが嫌だとなると、労働者はどのようにすればいいのですか。
○田村委員 採用時にそれが嫌だというのは、上には上がりたくないという人ですか。
○阿部座長 上に上がりたいということです。
○田村委員 上に上がりたいというのは。
○阿部座長 総合職タイプを選ぶということになるのですか。
○田村委員 はい。その働きの中で人事考課されますから、その中で上位者の推薦があれば移っていくことは可能だと思っています。
○阿部座長 そうすると、同じ企業の中で、こういう3つのタイプの処遇体系、賃金体系を準備するということになるのですか。
○田村委員 そうですね。
○阿部座長 わかりました、そういう理解でいいのですね。
○田村委員 そうしていかないと、パートタイマーの人たちの、適正な評価と処遇という制度ができないだろうと。そうすると、どうしても労働市場の入口だけが決まっていて、年月が経ったから、5円、10円は上がっていくという世界しかつくられない。それは働きと処遇という意味で合わないだろうと思っています。
○阿部座長 わかりました。これは企業がどのタイプを選ぶというわけではなくて、企業が3つとも持っているというイメージでお書きになっているということですね。
○田村委員 はい。それから、公的資格の関係でいきますと、例えば数年前にドラッグストアなどにありますが、薬剤師がいれば、1類、2類、3類という、強い薬から一般的な薬まであるわけですが、登録販売者制度みたいなものができて、登録販売者の資格を持っていると、いわゆる一般薬から少しよく効く薬まで販売することができます。でも、それがないと売れないということになってしまいました。
 こういう資格がいろいろありますので、例えば酒類の販売士、総菜の調理師の資格ができたり、いくつかあると、その資格を持っていないとこれは現場で売れないと。でも、この人は主婦でも十分庖丁を使えるし、昔からやっているという人がいるのに、その資格がないといけない。その資格の要件は、例えば先ほどの薬でいきますと、月に80時間以上働いて、1年以上の経験がなかったら、資格を受けるしか要件が揃わないと言われてしまうと、働く現場がグッと狭められてしまう。
 逆の言い方をすると、その資格を取ったことが、転職した場合に正しく評価されるような資格であるならば、それはそれで大いに役立つと思いますが、かえっていまの現場を混乱させている。取った資格が正しく評価されず処遇に結び付いていないことが広がることを懸念するということを申し上げたつもりです。
○阿部座長 理解しました。ほかにはいかがでしょうか。
○谷口委員 田村さんにお伺いしたいのですが、ご提案いただいた3つのタイプの処遇の考え方を拝見しますと、基本的にベースは内部市場型の働き方がイメージとして全体にあるような気がするのです。というのは、常用型が前提でのこういうアイディアだろうと思うのです。
 実際のところ、非正規の方が、内部市場型をベースにした処遇体系というのは、イメージとしては馴染まないような感じもするのですが、どうなのでしょうか。
○田村委員 私どもは常用型が最終的にいい形であろうと思っています。それは必ずしもフルタイムである必要はないのではないか、ただし、自分から辞めると言わない限り、定年が決まっていたりすると、定年までは会社から辞めさせられることはないということを考えるべきではないだろうかという気がします。
 ただ、社員の方たちと若干違うのは、事業所採用、お店採用だったりするものですから、そのお店が例えばスクラップ・アンド・ビルドでなくなる可能性があるというときには、ほかの社員のように転勤はできるかということになると、いろいろな事情があって、それはできないだろうということがありますので、その辺の解雇なりの理由というのは、いくつか判断は広がるのかもしれませんが、厚生労働省が提案されている、いわゆる短時間正社員型の雇用というのをベースに我々は考えているということです。
○谷口委員 関連でお伺いしますが、公的資格が熟練度やスキルをきちんと反映していないということでのご批判だったのではないかと思うのですが、それは能力評価の方法の問題であって、既存の公的資格、例えば技能検定、実際の職務を評価するのに必ずしも適していないというか、そういう意味では川渕さんがご提案されていたような、資格のモビリティみたいなことの観点からいえば、確かに公的資格の多くはおっしゃる部分はあるかもしれません。
 ただ、ご提案されている、例えば職能等級のようなものというのが、お考えは常用型があるべき姿だろうということで描かれたものだろうと思うのですが、一方、例えば非正規の働き方が安住の地であると考えるようなタイプの人たちというのは、むしろ自分の持っているスキルをきちんと正当に評価できるような資格があって、モビリティというか、そのことによって自分の処遇改善に結び付けていくというような手法、つまり企業の移動ということは前提ですが、そういうタイプも必要なのではないかなという気もするのですが、いかがでしょうか。
○田村委員 パートも派遣も同じようなところがありまして、派遣の場合は先ほどありました26業種あるのですが、それぞれ資格を持っていると上がっていきますが、青天井ではないのです。どこかで、40歳、50歳になっても、派遣の人の賃金というのは止まってしまうのです。ところが正社員に転換すれば、そこで仕事の内容が管理的なこと、教育的な力が増す、折衝能力が増したりすると、上がっていく可能性があるのですが、パートも派遣も、そういう意味では能力を付けて動いてもいいのですが、いつかどこかで天井にぶつかります。それは年齢とともに本当にお金が必要なときにぶつかってしまう現状があるのではないか。ですから、我々は動き回るよりは、企業の中で存在し続けられるものを、是非求めていきたいと思っています。
 それが活かされればいいのですが、職務給にしても、どちらかというと、ポストがなければ、持っていてもその賃金は出てきません。職能があっても、発揮する場所がなければ評価されません。潜在能力だけで評価していただけるなら非常にありがたいですが、たぶんそうはならない現実があると思っています。
○谷口委員 データがあるのかどうかわからないのですが、不本意ながら非正規でおられる方が、非正規の中でどれぐらいの割合でおられるのか。仮に、一定割合は不本意でないというタイプの非正規の方も、それなりの割合でいると思うのです。
 そういう方たちに対する能力開発なり、能力評価という仕組みが必要ではないかと思うのです。
○田村委員 2つあって、前回別の場の厚労大臣のところでありましたが、上がることによって税制、社会保障の問題にぶつかると、130万円の問題があって嫌だという方も現実的にいらっしゃる。会社も能力を上げて賃金を払っていきたいけれども、それにぶつかって何が起こるかといったら、いちばん忙しい年末のアルバイトを雇うときに、パートが誰も出てこない。そういう現実の問題が税制の問題と、年末にいつも起こるわけです。
 それを考えると、突き抜けてしまうか、税制、社会保障制度そのものを変えていかないと、そこは直らないです。そこが直れば、能力がきちんと評価されるものになってくることもあると思います。
○谷口委員 一般論としてどのぐらい適応できるのかわかりませんけれども、最近、正規の人たちが長時間労働、大変厳しい労働を強いられているということも言われています。そういった背景の下に、正規をドロップアウトして非正規に、そこに安住の地を求めるというタイプもいないとは限らないと思うのです。
 一方、正規の方が能力開発の機会をどれぐらい得られるかという問題はまた別の問題としてあるのですが、そういったことを考えますと、非正規の方について、私たちは全てネガティブに捉える部分があると思うのですが、必ずしもそうではない。私は、非正規の方に対して、諸手を挙げてそれがいいと言っているつもりではないのですが、そういうタイプの非正規の方は、安住の地としての非正規という人もそれなりの割合でいることがあるのではないか、そういうことを忘れてはいけないのではないかなという気もするのです。
○田村委員 いらっしゃると思います。人の生き方ですから、仕事が人生だと思っている方もいらっしゃるし、別のことを重く見て、そのための経済的な援助として働かざるを得ないという人たちも当然いますから、そこは切り分けて考えてあげないと、先ほどのチャートのようにいろいろなタイプがあって、多様性があるから、多様性を認めながら接し方はそれでいかなければいけない、あなたはどうなのかとしていかないと、どの制度もうまく動かない。それこそいくつかのメニューを揃えながらそこに個人を当てはめるというものを入れていかないと、駄目なのではないかと思っています。
○佐藤委員 いまの谷口さんと田村さんのやり取りの中での意見なのですが、最初に岡崎さんが示された、左側の不本意正規と、真ん中の非正規のままでいるけれどもキャリアアップしたい、この論点にかかわっていると思うのです。
 要するに、1つの在り方というのは、谷口さんがおっしゃっているような、あるいは田村さんの調査結果から出てきているのだけれども、多くはいまのパートの方は主婦パートですから、正規になりたいということをメジャーとして強く願っているわけではないです。いまの雇用形態として、そのタイプとして働きたいわけです。
 ただ、そのタイプで働いて習熟していくと、スキルが上がっていく、それを正確に把握していただいて、それをペイとかインセンティブにつなげてもらいたい。それが次の能力アップの意欲のインセンティブになっていくという良循環が出てくることが望ましいだろうと、示されていると思うのです。
 悩ましいのは、そのときにいまの雇用形態のままでスキルアップして、いま言ったような姿になっていきづらい現状があって、そこに何か青天井がある。そこの青天井を突き抜けようとすると、雇用形態のチェンジをしなければならない。つまり、いわゆる正規にならないとならない。
 正規になると青天井で突き抜けていくのだけれども、今度悩ましいのは、いまの働き方がいいと思って選んでいるのが、今度は拘束性が強くなってしまって、長時間と転勤が入ってくるわけです。そこは欲しくないわけです。それなしで、いまの形態のままでスキルアップ、評価、良循環と持っていけないかという話だと思うのです。そこはすごく大事だと感じたのが1つです。
 それを踏まえた上で私が伺いたいのは、西久保委員の資料の3頁で、社員、メイト、フェローがあります。フェローはいいとして、社員、メイトのところが、スキル性、役割期待としても、かなり重なりのあるところだけれども、切り分けられているのです。
 メイトの中でまとめ的、リーダー的、マネジメント的というか、会社から見ると非常に期待されている役割だと思うのです。それをクリアできるかどうかということなのですが、メイト社員のままでスキルアップして、先ほど言ったようなグループリーダー的なスキルを身に付けたということであったときに、メイト社員の雇用形態のままで、スキルアップを図って、評価してという良循環にいけるかどうかというのが、1つあると思います。
 そこが止まっていて、それをもっといこうとすると、やはり正規なのだとならずにいけるかどうかというところだと思うのだけれども、そこはその可能性も含めて、現状はどうなのでしょうか。
○西久保委員 お答えしますと、メイト社員の担当のリーダーというところと、社員もマネージャーまで線が引いてあって、担当のリーダーとありますが、ここは基本的に同レベルです。先ほど言いましたように、メイト社員が4年目で無期雇用になっているというところがありますが、メイト社員と社員の差は、先ほど言いましたように異動の範囲の差とか、その辺があります。期待役割の差は、社員、マネージャーまでなれるかというのがありますが、同じリーダーで見れば同じポジションなのですが、そこで先ほど言いましたように異動の差がありますが、そこに対して、少し細かい話で賃金がどうかと言いますと、メイト社員のリーダーと、社員の担当リーダー級の月例給は合わせています。
 ただ、異動の範囲が若干違いますので、ほかの賞与への反映の仕方とか、その辺が少し違いますが、基本的にはここは同じ水準まで上げています。ですから、メイトのままでいてもリーダーに就けば、相応の処遇がきちんともらえるという制度まで、実は設計はされています。
○阿部座長 いまの議論なのですが、伊勢丹、三越さんのように、そういう制度を作れればうまくいくのです。ところが、そうではない企業をどうするかとか、先ほどの引抜きの問題をどうするかというのをやらないと、全般的には、非正規のままでいることを希望するがキャリアアップしたいとか、正規になりたいのになれずにいる不本意非正規の人たちのキャリアアップというのは、なかなか難しいのですよね。
 ただ、その引抜きの問題や、あるいは企業が一生懸命やっていない企業に、どうやって手を伸ばして、キャリアアップを図るかというところを考えないといけないかなと。そこが公的部門の役割のような気がするのです。
 民間企業ができることは勝手にやっていただいて、そうではないところ、特に、今日出てきた論点で大事だなと思ったのは、引抜きの問題をどうするか。引抜きがありながらも、例えば派遣会社なり、田村委員も「労働移動があると困る、企業はやらない」という話をしていたと思うのですが、そういったところを、特に外部労働市場で働いている非正規の人たちの問題として考えないと、これは簡単に能力開発という話にはいかないと思います。
 ですから、委員の皆さんには宿題として、引抜きをどうするかとか、あるいは外部労働市場で働いていると考えられる、内部化したいという田村委員の思いがあるのはわかるのですが、一応外部労働市場で働いている人たちの問題をどのように解決していくかというのを議論していかないといけないかなと、私個人は思いました。
○西久保委員 いまの引抜きの話で、弊社の事例を申し上げます。先ほど言いましたように、メイト社員は4年目以降は無期雇用にしましたが、これは2008年ぐらいからやっております。それをやった理由が、まさに引抜きです。先ほど言いましたように、教育体系はかなり揃えていますので、メイト社員で弊社の知識を学んだ者が、正直言いますと、いわゆる取引先様にだいぶ引き抜かれたという経緯がございまして、その防止のためにも無期雇用化とか、処遇の向上を図ってきたという経緯がありまして、ご参考までに申し上げさせていただきました。
○阿部座長 先ほど田村委員も、派遣会社の中には常用雇用型に変えるということで引抜き、あるいは引抜きというか独立を食い止めることをしたという話もありました。たぶんそういうことなのだろうと思います。それは民間の努力でできることで、そうではないところをどうやるかですから、かなりしんどいところではないかなと思うのです。だけれども、それをやらない限りは、能力開発は進まないのではないかと思うので、是非委員の皆さんにはいろいろお考えいただいて、お知恵を拝借したいと思っております。ほかにご意見はございますか。
○小野委員 質問と意見という感じです。西久保委員の話の中で、従業員が1万2,000人ぐらいいらっしゃるのですが、このうちパート社員は何割ぐらいなのかを教えていただきたいと思います。
○西久保委員 1万2,000人のうち、半数が社員です。フェロー社員に当たる者が3分の1ぐらいです。メイトが6分の1ぐらい、大体そのぐらいの感じです。若干前後はございます。
○小野委員 多くのスーパーマーケットは8割、9割ぐらいに非正規のパートの方がなっているのですが、組織の中で非正規雇用の労働者のボリュームが大きくなってくると、何かルールを作らないと、混乱するのです。ある意味ルールを作って、秩序を生み出しながら、多くの人たちのやる気を出させるような仕組みを構築しないと回らなくなってくる。だから、ある一定の人数を超えたら、何らかのルールを入れないと回らないというのは、絶対に企業の論理としてあると思うのです。
 では、どのぐらいの人数でそのルールを作らなくてはいけなくなってくるのか。あるいは何人以下であったらルールがないのか。ルールがないのだったら、何らかを後ろ支えするものを公的に考えていったり、あるいは業界で考えていったり、労働組合で考えていったりということが必要になってくるのかなと思いました。
 ですので、大企業において、私がいまヒアリング調査をしていますが、行くところで、大企業においては、非正規に関して何らかのルールは持っています。問題は、中小企業なのかなと思っています。
○阿部座長 ほかにございますか。
○佐藤委員 先ほどの引抜きというか、そこは大事な論点になっていくと思うのですが、要するに、企業が教育訓練、能力開発するときには、当然小野委員が言うように、投資ですから、それに掛けた分のリターンを期待すると。ところが、そのリターンが戻ってくる前になくなってしまうということはリスクだから、差控え、抑制するということですよね。
 ですので、それは1つの企業の中で定着型のというか、左側のタイプを意識すると、そういうモデルになるのだけれども、阿部さんが言ったように、外部労働市場というより労働市場の中で見たときには、例えば逃げられても、また取れるような形にしておけばいいわけで、欧米はそうなっているわけです。逃げられるわけだから抑制します。
 だけれども、ある種の能力要件のシグナルが筋目立っていて、この要件の能力だとこういう人を採れるとか、人材スペックが明確になっているとマッチングしやすくなるという面があるわけです。だから、資格には田村委員が言うように、業務独占型を付けないと駄目だという部分もあるのですが、いわば資格にも認定型のものがあるから、それはそれでシグナルとしてマッチングを高めていくという面もあるのではないかなと。そこを考えていく上で、重要なポイントかなと思いました。意見です。
○阿部座長 それは非常に大事な意見だと思います。自分が持っているポータビリティ、「技能のポータビリティ」という言葉も出ていたと思いますが、そのポータビリティをどうやって図っていくか。それは、ある意味投資を無駄にしないということにもなりますし、いま佐藤委員がおっしゃったようなことになると思うのです。
 ですから、どうやって技能のポータビリティ、知識のポータビリティ性を高めるような労働市場を作るかというのも大事な論点だと思います。
 企業はいろいろなルールというか、作っているというのは、いま西久保委員からご説明いただいた伊勢丹三越の例もありますし、あるいは平田委員がお調べになっているいろいろな事例というのも、非常に参考にはなるのですが、それはどちらかというと、条件のいい会社であったりするわけですよね。それ以外のところにどのようにやるかは大事なところで、そこが岡崎さんのプレゼン資料にあった、誰が主体でやるかというところで、公的部門というところで役割があるのかなという気はするのです。もちろん労働者が自分で投資をしても、先ほどのポータビリティが確保されれば、もしかしたら自分で投資してもいいということになる可能性はありますよね。もちろん企業が投資するというのでも可能なのですが、そういうところをマッチングの整備はもちろんやっていかないといけないですし、引抜きの問題ですとか、先ほどここでは議論をしませんが、川渕さんから言われていた職種の縛りの問題、そういったところもいろいろあるのだろうとは思うのですが、それは別のところでやることになるのではないかと思います。
 それですので、第3回の予告はこのあとしていただきますが、第3回、第4回と回を重ねる中で、そういったことでこの検討会の着地点を探していかないといけないかなとは思っておりますけれども、是非委員の皆さんにはその辺りをお考えいただいて、いいお知恵を拝借できればと思っております。
○和泉委員 1ついいでしょうか。全然違う論点かもしれませんが、今ここにオブザーバーとしていらっしゃる皆様を含めて、とても詳しい方がいらっしゃる一方で、例えば役割期待あるいは責任の大きさ、重さに基づいて賃金は決まっていくのだとか、制約の多い少ないによって賃金は決まっていくのだとか、報酬体系が何によって決められているかといったことのきちんとした考え方を、広く一般の人はあまりよくわかっていないのではないかと思うのです。
 キャリアプランニングをするときというのは、ほとんどが「何に興味がありますか」「どういうことをしてきましたか」ということだけで、仕事の適性とあわせてこういうのができるといいですねというようにマッチングさせていくわけですが、今日の話もそうですし、資料4を見てもそうなのですが、大切なことはご本人の満足度が高いかということが1番です。いま何割いるかということを、私も含めて皆さんすごく関心を持っていますが、満足のありようというのは、ライフステージによって、またさまざまな状況によって変わっていくものだと思うのです。
 ですから、一旦正社員から非正規になって、仕事以外のことを優先してきても、そうでなくなったときには、またどの場所からでも再チャレンジができて門戸が開かれている。そして、そのさまざまに選んだ働き方に差別がされていなくて、身分ではなく自分で選んだ1つの在り様だという考え方が社会に広がっていることが大切かと。能力開発しなくていいと思っている人は、もしかしたらしなくてもよくて、再チャレンジしようと思ったときに能力開発の機会が分け隔てなく用意されているということがすごく大切かなと思ったのです。
 これはもちろん同一価値労働同一賃金が基本にはあるのですが、役割期待とか制約とか、そういうことによって、正社員になるかそうではないかの違いもあるし、それに対しての評価とか、給料も変わってきてしまうのだという、そういう仕組みそのものを知らせる仕組み、つまり教育をやらないといけない。そこがわかっていないから本質的にどうキャリアを組み立て、どう選択していけばいいかがわからないのではないかと思いました。
 今は、その途中段階からしかキャリアカウンセリングをやっていないので、根本的なキャリアの選択でまず間違えないように、重要なときにきちんと選べる、そこに対しての知識も、この場ではないかもしれませんが、一緒にやっていかないといけないと思いました。そこがわからないでいるので、とにかくいい会社に勤めようとか、とにかく正社員だとか、大変になってきたら責任が重くないもので103万円の壁の下で働こうとか、目先のことだけで場当たり的に対応してしまうのだろうと、今日専門の皆さんの考え方を聞いていて私は感じたので、素人的で申し訳ないのですが、最後にお話させていただきました。
○小野委員 私も乗っかるような発言をさせていただきたいのですが、労働者の方にヒアリングをしています。壮年期の方などに最近は多くヒアリングをするのですが、いろいろと話を聴くうちに、自分のキャリアが棚卸しをされて、最後にストンと落ちた顔で帰られるということがよくあります。こんなに自分の仕事についての話を聴いてもらったことがないというような感じです。
 そういうことを何回も繰り返し聴くうちに、そういえば、日本にはカウンセラーとか、労働にかかわる仕事をやっている人はすごく少ないなと。例えばイギリス、アメリカなどにしても、大学からパーソナルマネジメントとか、いろいろあるのです。イギリスのNVQ制度では、指導員という方が資格を持ってものすごくたくさん働いていらっしゃる。そういう、1つの労働を扱う専門職というのが確立した労働市場があるのです。
 ある意味、日本はそれがないし、どこに行ったら、自分の仕事についての悩みであったり、方針を定めてくれるのかということが、おそらく人生の中でないのだろうなと。それがすごく初期の段階で、20代の初めとかでそれを受けていたならば、今後の人生は変わっていくということは大いにあるかもしれないなとは思います。
 ただ、キャリアカウンセリングというのはものすごい人数が要るし、労働集約的な仕事ですので、それを全員の労働者にやるというのは恐しい人数が発生していくことになると思うのですが。
○和泉委員 大学では、5万人計画とかいろいろなさっているのだと思うのですが、わりとその前段階がわかっていないかなというか、そういう意味で、少し紐づけたほうがいいかなという感じはしました。
○谷口委員 資料をはっきり見なかった私の責任ですが、資料4に、不本意非正規が約2割、そうでないタイプが約8割という資料を出していただいていまして、それを見落としまして申し訳ございません。
 やはり問題は、約8割の方が、必要なときに必要な能力開発を受けられるという仕組みが必要なわけですよね。そこのところを焦点化させたいという気がします。
○阿部座長 予定している時刻がきていますので、本日はこの辺りで終了したいと思いますが、さらに追加で発言される方はいらっしゃいますか、よろしいですか。
 本日の議事についてですが、非公開に該当する特段の理由もないと思いますので、議事録は公開したいと思いますが、いかがでしょうか。
(了承)
○阿部座長 そのように取り扱わせていただきます。次回の日程等について、事務局からお願いいたします。
○事務局 次回は11月上旬を予定しています。最終的な調整を行いました上、改めて連絡させていただきます。よろしくお願いいたします。
○阿部座長 これをもちまして、本日の第2回非正規雇用労働者の能力開発抜本強化に関する検討会を終了たします。本日はお忙しい中ありがとうございました。


(了)

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