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2012年9月21日 第7回医療裁判外紛争解決(ADR)機関連絡調整会議議事録

医政局総務課医療安全推進室

○日時

平成24年9月21日(金)


○場所

厚生労働省専用第12会議室


○出席者

会議メンバー(五十音順)

今田健太郎 (広島弁護士会仲裁センター代表)
植木哲 (医事紛争研究会会長)
小野寺信一 (仙台弁護士会紛争解決支援センター代表)
北川和郎 (総合紛争解決センター代表)
古賀克重 (福岡県弁護士会医療ADR代表)
児玉安司 (第二東京弁護士会代表)
小松満 (茨城県医療問題中立処理委員会代表)
小山信彌 (日本病院団体協議会代表)
佐々木孝子 (患者代表)
田口光伸 (愛媛弁護士会代表)
中村芳彦 (法政大学大学院法務研究科教授)
西内岳 (第一東京弁護士会代表)
橋場弘之 (札幌弁護士会紛争解決センター運営委員会委員長)
増田卓司 (愛知県弁護士会紛争解決センター代表)
宮脇正和 (医療過誤原告の会代表)
山田文 (京都大学大学院法学研究科教授)
山本和彦 (一橋大学大学院法学研究科教授)
和田仁孝 (早稲田大学大学院法務研究科教授)

厚生労働省

原徳壽 (医政局長)
宮本哲也 (医政局総務課医療安全推進室長)

○議題

(1)医療裁判外紛争解決(ADR)機関の取組等の紹介及び意見交換
(2)その他

○議事

○医政局総務課医療安全推進室長 
 定刻になりましたので、ただいまから第7回「医療裁判外紛争(ADR)機関連絡調整会議」を開催させていただきます。
 本日はお忙しい中、当会議に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 本日の出欠ですが、鈴木弁護士、高杉日本医師会常任理事及び水田弁護士から御欠席との連絡をいただいております。また、福岡県弁護士会医療ADR代表の交代に伴いまして、新たに古賀弁護士を構成員とお迎えしておりますので、御紹介いたします。
 続きまして、9月1日付で事務局に異動がございましたので、紹介させていただきます。医政局長の原でございます。

○医政局長 
 9月10日付で医政局長になりました、原でございます。お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。
 私も従来から医療分野にいろいろと携わってきたわけですけれども、訴訟とは違う場で紛争を解決する、このADRというシステム、これの活用は非常に有効なものだと思っております。そのため、この連絡調整会議も今回で7回目ということで、従来からの取り組み等について御紹介をいただき、また、それをもとに御議論を熱心にしていただいていると聞いております。御協力に改めて感謝申し上げます。
 本日の会議におきましても、引き続き活発な御議論あるいはそれぞれの情報交換、共有を図っていただければと考えております。
 患者、また医療機関の双方がお互いに利用しやすい環境を整えていくためにも、このような意見交換の場というものは非常に重要だと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

○医政局総務課医療安全推進室長 
 あわせまして、総務課長が吉岡に交代しておりますが、本日、所用のため欠席させていただいております。
 それでは、以降の進行につきましては、山本座長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。

○山本座長 
 本日も御多忙のところ、また、雨の中お集まりをいただきまして、ありがとうございます。それでは、会議に先立ちまして、本日の資料について、事務局のほうから御確認をお願いしたいと思います。

○医政局総務課医療安全推進室長 
 それでは、お手元の配付資料について確認させていただきます。
 まず、座席表及び議事次第。
 配付資料といたしましては、
 資料1、第6回議事録。
 資料2、和田構成員より御提出いただきました資料。
 資料3-1、医療ADR機関に対するアンケート調査結果の一覧。
 資料3-2、同じくアンケート調査結果の個別表。
 資料4、渡部構成員より提出いただきました資料。
 資料5-1、西内構成員より提出いただきました資料。
 資料5-2、同じく西内構成員より提出いただきました資料。
 それから、参考資料1としまして、当会議の開催要綱。
 参考資料2といたしまして、アンケート調査の調査票ということでございます。
 以上でございます。不備等ございましたら、お知らせください。
 また、資料1の前回の議事録につきましては、既に構成員の皆様には御確認いただきまして、ホームページに掲載しておりますことをあわせてお知らせいたします。


○山本座長 
 ありがとうございました。
 資料は大丈夫でしょうか。
 それでは、議事に入らせていただきます。前回の会議では、日本医師会の高杉常任理事から、ADRに関する設問も含む医師会のアンケート調査結果等について、中村構成員からは、医療ADRのあり方について。山田構成員から、医療ADRの機能と構成について御発表をいただき、最後に意見交換を行いました。
 今回も前回に引き続きまして、医療ADRに対する御意見等について、まず和田構成員にお話をいただき、質疑の時間を設けたいと思います。その後、厚生労働省が医療ADR機関に対してアンケートを行っていますので、その結果の紹介。続いて、渡部構成員、西内構成員からそれぞれお話をいただき、最後に再び質疑の時間を設けるという形で進めたいと思っております。御協力のほど、よろしくお願いいたします。
 それでは、まず、和田構成員から資料2に基づいて、お話をお願いいたします。

○和田構成員 
 どうもありがとうございます。
 20分と時間をいただいておりますので、手短に私自身の考えておりますところをざっとまとめさせていただきたいと思っております。
 時間が限られておりますので、飛ばしながらお話ししていきます。裁判の場合には、当然ですが、個々の紛争の解決ということを越えて、それ以降のケースに対する影響とか、社会一般に対する一定の基準の定立でありますとか、さまざまな複雑な社会的機能を同時に果たさないといけないということで、制限も出てくるわけですけれども、ADRの場合には、そうした目的そのものが非常に多様かつ柔軟に設定できるということでございますので、ADRの目的自体を1つに定めるということは必要ではないだろう。そう考えたときに、個々のADRが何を狙うのかということを考えていく上で、まずニーズから発想していくということが基本的には重要であろうかと考えます。
 そこで、どのようなニーズが医療事故等の発生をめぐってあるかということになりますが、これは加藤良夫先生などが被害者の願いということでまとめておられるものを初めとして、さまざまなところで語られておりますので、これも簡単に述べておきます。まずは原因究明、再発防止ということ。これは患者さん側が当然求める真実を知りたいという、恐らく一番前面に出されてくるニーズです。
 また、それは単に結果を分析して、はいこうですと出せばいいということではなくて、それについて、医療側がいろんな思いを含めながら、きちんと向き合っていく。誠実な対話ないし情報共有の姿勢が必要で、これも1つのニーズであろうかと思います。場合によっては、事故とかでないケースでも、そういう対話の必要性、情報共有の必要性というのは当然のことでございますが、あるということです。
 当然ケースによっては賠償や補償も必要となる。この多様なニーズそれぞれにADR機関がどう応じていくかということが、いわばそのADRの特性を決めていくことになるのかなと思います。
 ただ、これは医療事故そのものをめぐる被害者のニーズでありまして、別にADR機関だけに限るわけではなくて、今、議論になっております事故調ですとか、医療機関内部での対応のモデルですとか、さまざまなことでこういうニーズにも対応できる場と機会があるわけで、それらとの連携の中でADRが個々それぞれ、重なりながらニーズに応答していくということになるのかなと思います。
 そう考えたときに、ADRが提供できる、あるいは基本になってくるであろう機能としては、第一に対話を促進して情報共有を支援していくような機能と、第二に真実を知りたいあるいは事実関係をきちんと把握するということで、訴訟におけるような機密な認定ではないかもしれませんけれども、事実について明らかにしていくような機能というものも、ADRの中で求められる可能性もあるかもしれません。
 第三に、賠償・補償に関する合意形成面あるいは法的な責任をめぐる議論ということも、ADRが果たし得るひとつの機能になるかと思います。
 これはあくまでも理念的なモデルというか、理念的な要素でありまして、個々のADRがどのような機能を果たしていくのか、それは制度設計のあり方、あるいはADR機関を設立する側の理念というものとの関係で、さまざまな多様なシステムそのものが出てくるであろうと思います。
 例えば、この機能を全部同時に果たそうとすれば、それこそ訴訟と同じような手続的な考慮も必要になりますし、資源も必要になって、ほとんど現実的ではないと思いますので、それぞれ強み弱みを生かせるような形になっていけばいいのかなと思います。
 これまで、この連絡調整会議でずっと議論を伺っておりまして、それぞれの機関ごとに少しずつ特性もあるのかなとも思っております。まず、第一に、対話の機能ということですけれども、例えば東京三会の2つのステップでやられるモデル。例えばステップ1のところでは、この対話の調整ということを中心に行っていく。こういうものをまさに正面から1つのベーシックな機能として、第一段階ではこれを念頭に置く。第二段階では、合意形成ということで、賠償問題等も含んでいくということだと思うのですが、こういう形で、1つのADR機関の中に組み込んでいくという方法がいろいろあると思います。
 これはADR手続そのものの機能分担として組み込む方法もありますし、千葉のADRの場合には、実際に調停が始まる前に相談という機能が組み込まれていまして、お医者さんとかが対応されていると思います。この相談のレベルでの対話を通して、かなりいろんな疑問が解消されたりする形で、納得が得られて終わっていくというケースもあると思います。こういうあたりも、実は個々の医療機関との直接の対話の中では得られなかったものが、この第三者機関の相談手続の中で、一定程度解消されていくというような機能の組み方ということかと思います。
 茨城の医師会の医療問題中立処理委員会、こちらの明らかなケースは個々の病院がきちんと対応して、それがわからないとか、あるいは基本的には医療側に責任がないけれども、患者さんの納得が得られない。これはまさに対話そのものが、どこかで不十分であったということを受けとめていくというところから出発点を考えられたと伺っております。これも対話促進機能が非常に強く意識されているということだと思います。
 第二に、事実認定と原因究明の機能ですが、これはADRでは非常に限界のあるところではありますけれども、岡山弁護士会の中では、医療関係者からそういう第三者的な意見を獲得するためのサブルーチンの手続を組み込まれたりしておられます。
 確かに、事実認定というのは、非常に大きな事件では難しい場合もあるのですけれども、さほど医学的に意見が分かれるわけではない、比較的明確なケースで、医学的な検証を通じて、ある程度の確定的な回答が出せるようなケースで、かつでも患者さんが納得していないようなケース。こういう場合に、第三者的に医療側からの意見を得られるような手続というものを組み込むということで、私は余り難しくないケースなら手続に組み込んでやっていくということは有効にできるのではないかと思うのです。例えば岡山の手続などはそれに近い、あるいはそれを追求しようという形なのかなと思ったりもしています。
 今、事故調の議論が進んでおりますけれども、事故調の場合には死亡ケースですし、コストもかかります。軽いケースであっても、患者さん側で納得できないという場合に、比較的簡易に医学的評価が得られるような手続、外国にもそういう手続がいろいろございますので、そういうものを少し組み込む方向というものもあっていいのではないか。これはADR機関の中でやる必要は必ずしもないのかもしれませんが、外部のそういう機能を持った機関との連携という形につくるということもできるだろうと思います。
 第三に、賠償に関しては、どうしても法的論点の検証や賠償の検討が必要になってきますので、法律家の関与も当然リソースとして必要になってきます。
 このように多様なニーズと応答的機能が求められる中で、それぞれがそれぞれのところで目指すADRが、機能が少しずつずれながら重なり合っていくという緩やかな連携が必要だろうと思います。
 これに関連して、外国のシステムを御紹介しておきたいと思います。資料の中に、英国の医療紛争対応システムというものをつけております。英国は、基本的にはナショナル・ヘルス・サービスがほとんどの医療機関を統括しているということになります。患者さんが何らかの形で問題を感じたということになりますと、まずPALSというのが院内に設けられていて、これは日本で言えば患者相談窓口に当たるようなところです。ここでは、種々雑多なクレームといいますか、苦情といいますか、問題があったときにはここに持ってくる。
 ここは事務職の方がやられています。そこで、問題がもう少し医療的なものにかかわるということになると、公式に文書化してComplaint Managerという役職が院内に配置されています。多くはナースです。これは法律で置くことが義務付けられております。ただし、この段階で法的な問題とかあるいは賠償の問題にかかわるようなことが出てくる場合には、ここで扱わずに、ナショナル・ヘルス・サービス全体、ちょっと消えてしまっているのですけれども、図の右側にNHS院外本部と書いていますが、NHS全体を統括している部署で、リーガル・オーソリティーというところがございまして、そちらのほうに委ねて、そちらで対応していくという形のシステムになっています。
 フランスも同じようなシステムをとっていまして、例えば患者さんが問題になったときに、院内にmediator hopitauxという、日本語に訳すと病院メディエーターというものを法律で置くようになっていて、日本の院内医療メディエーターと相似する対応をしています。
 私は必ずしも医療事故にかかわらない苦情の部分でも、患者と医療者のさまざまな行き違いをほぐしていくような場は必要だと思いますので、そういう形で、まず院内でとりあえず試みをやる。情報もきちんと開示するという文化の中で、院内でまずやっていく。
 しかし、それが必ずしもうまくいかない場合のバックアップ装置としての第三者機関、これもADRと言えるかと思うのですが、そういうものも必要かなと思います。こうした機能を担う機関としてヘルス・サービス・オンブズマンというものがイギリスでは整備されています。
 次のスライドにいっていただきますと、これは国家機関ではありますけれども、第三者機関です。Parliamentary & Health Service Ombudsman。オンブズマン制度はヨーロッパは非常に盛んですので、こういう機関がつくられておりまして、ここで扱うケースを見ていただくと、医療行為に関するさまざまな苦情とかあるいは疑問ということが多いのですけれども、院内で解決しない場合には、例えばこれは英国固有の問題も背景にはありますが、待ち時間の問題とか退院処理の問題で納得できないとか、こういうさまざまな雑多なケースを受けとめる機関というものがあるわけです。法的な問題、金銭的な問題は、リーガル・オーソリティーでやりますけれども、それ以外の問題の受け皿としてオンブズマンのような第三者機関があるということになります。
 下はフランスですが、これは無過失補償制度とも関連して、先ほど言いました病院メディエーターの試みがあるということでございます。
 こんなふうに外国のシステムを見ましても、狭く考えるのではなくて、患者さんと医療者の間のさまざまな行き違いがあったときに、もちろん基本的には院内で対応する。そして、医療側が情報を開示したりあるいはきちんと誠実な対応を患者さんとするということで、患者さんの納得が得られる。これが多分一番理想的だと思うのですけれども、ケースによっては、第三者的な医学的な意見を聞きたいとか、あるいは第三者的な人に入ってもらって、対話の場をつくってもらいたいとか、そういうニーズというものは多々あるかと思います。そういうものとしての法的問題を含まないものも含めて幅広いADRの役割というものもあっていいのではないか。
 先ほど言いました、東京三会の第一段階であるとか千葉の相談であるとか、茨城のADRでは、一つの狙いとして対応されているとは思うのです。しかし、日本のADRの定義で言うと、ADR法の第3条には、法的解決ということが念頭に置かれていますので、それよりももっとディフューズで、幅広い患者さんの苦情のようなものを受けとめるような、ですから、ADRとも呼べないのかもしれませんけれども、ADRのさらにオルタナティブのような対話の場も、あっていいのかなと思います。
 そういう観点で考えたときに、今回、余り具体的には出てきていないのですが、医療安全支援センターというのは全国に置かれているわけです。医療安全支援センターの中で、患者さん側が何らかの申し立てをする。イメージとしては消費生活センターのようなイメージをして、そこでできる範囲で対話の場をつくるとか、振り分け機能を果たしていく。そういう機能を念頭に、医療安全支援センターの活性化というもあってもいいのかなと思ったりもいたします。
 ちょっと大ざっぱなお話になってしまいましたけれども、その後、幾つかこれまでの議論の中で、気になった点をお話させていただきます。
 まず1つは、弁護士会のADRの中で、ここでも議論になりましたけれども、報酬に関する規定。これは最終的に合意がなされた解決額に応じて、比例的に報酬の額が決まってくる。これは法律家にとっては訴訟費用もそうですし、弁護士の先生方の報酬も基本的にはそういう形だったりもしますし、ごく普通のことなのですけれども、存外に医療関係者の方から頻繁に耳にするところでは、この点に強い疑問を持たれている。要するに、そこで解決額を高くつり上げるのではないかとか、そういう疑問を持たれるわけです。さすがにそんなことを弁護士は考えてやるわけではありませんと私も説明するのですけれども、素朴にそういう疑問を持たれている方は案外多いのです。
 そういうことを考えれば、いずれにしろADRが利益を生むようなものでは多分ないと思いますので、信頼性を高めるためには、報酬そのもののあり方というものを全然違う形で考えてみるということも、細かなことですけれども、そういうところが大事なのかなと思ったりもしています。
 それから、先ほど言いました対話的な部分で、例えば手続に入る前に相談を受ける機能。私もそういう相談を受けることが結構あるのです。弁護士さんから回されてくることもあります。これは弁護士さんのレベルで考えても、訴訟をやるということにはならない。そして、医学的に多分問題もないだろうと、しかし、患者さんが納得できなくてどうしようもないというケースなど、御紹介されましたということで来られる方とかもおられます。そこで話を受けとめて聞いていくということやるのですけれども、こういう機能を果たす場も必要だと思うのです。 
こういう機能を果たすときに、そこはまた専門家を当てればいいのではないかというお話があったのですが、私自身は専門性で分断していく、相談を受ける部分はそういう専門性を持った人がやるというのは、ちょっと違うのではないかと思っております。
 アメリカの一番広い形でカウンセリングをやっていくようなアイデアを提唱している人の議論などを見ても、例えば対人援助職にとって必要な、受けとめて聞いていく。場合によっては、きちんとした事実情報を獲得しながら理解を得ていくというプロセスは、対人援助職全体に共通する必須のスキルであるということが言われています。この対人援助職の中にはお医者さんは当然ですけれども、弁護士さんも含まれて、法律家も含まれているわけです。考えてみれば、それら専門家は、まさに対人援助職なわけで、そうするとそういう技能といいますか、そういう精神といいますか、それはかかわる者全員が持つべきものであって、相談のところもお医者さんであったり法律家でも構わないし、あるいはまた別の方でもいいのですけれども、別途の専門家ということではないのではないかと思っています。
 以上のようなことで、非常に大ざっぱではありましたけれども、さまざまな機能について、余り厳格に考えるのではなくて、それぞれの個々のADRが特色を生かしながら、連携をうまくつくっていく。その中で、相互に信頼を得られるように、李下に冠を正さずというような形で、少しでも相互に引っかかる部分というものは修正していくという形が必要なのではないかと思います。
 以上、雑駁なお話でしたけれども、これで終わらせていただきます。

○山本座長 
 ありがとうございました。
 大変興味深いお話をいただいたかと思いますが、どの点からでも結構ですので、御質問、あるいは御意見を頂戴できればと思います。
 小松構成員、どうぞ。

○小松構成員 
 今、和田先生のお話をお聞きしていて、報酬の問題、これは医療機関のほうでは、この問題に一番不信を持っているのではないかという印象は受けるのです。最初のころ、日本医師会にこのADRの問題を提案したときも、賠償額がひとり歩きして高くなるのではないかということをすごく心配していました。
 私たちは、この報酬規定はないのですけれども、総会をやっていると、ときどきそれを取り入れたらどうかという意見が出るわけなのです。そのときに、弁護士の先生がそれをやると、どうしてもまとめたいというふうになってしまうのではないかということをおっしゃるのです。この報酬規定に反対なのは弁護士の先生方なのです。やはりここのところに、先生が言われたように疑問点とか不信感を持たれないようなシステムにすることが、医療機関が参加しやすい大事なことになってくるのではないでしょうか。そのような感じがいたします。
 ただ、合意に至ったときに、そこに全て無責だから何も賠償しませんとかお見舞いもありませんという問題は、また別の問題になってくるかと思います。
 以上です。

○山本座長 
 ありがとうございました。
 和田構成員、どうぞ。

○和田構成員 
 今の報酬規定のところで、比例的な形になるシステムというのは、恐らく訴訟費用などもそうなのですけれども、乱訴を防ぐとかあるいは当初の請求額を過度に高額化させないとか、そういうポジティブな機能というのが、裁判の場合には念頭に置かれて、そういうシステムになっていると思います。しかし、ADRの場合は、そういう形の請求の立て方でもないと思いますし、実際に受益者負担という発想がこういう場合に適合するかどうかという疑問もあるかと思いますし、余り積極的な理由はないと思うのです。それであれば、そういう疑念を外部、特に医療関係者から持たれてしまうということになるのであれば、一定額にするとかいう形のほうが、むしろいいのではないか。余りデメリットはないのではないかと思っておりまして、そういうことに賛成でございます。

○山本座長 
 小野寺構成員、どうぞ。

○小野寺構成員 
 仲裁人の報酬が、成立した合意の金額に比例するのではないかとお考えなのでしょうか。そうではないのですか。

○和田構成員 
 仲裁人の報酬ではなくて、最終的に合意をされた方がADR機関に支払う額ということです。

○小野寺構成員 
 それは医療事故に限らず、仙台弁護士会の場合は、成立した合意額に比例した成立手数料を払うことになっています。ただ、仲裁人は5,000万で成立させようが100万で成立させようが、仲裁人としての報酬は一定額ですので、何としてもまとめようというような動機づけにはつながらないのです。
 もう一つ、ADRの財政基盤の問題があって、結局仲裁人の弁護士には日当として1回1万円、成立すれば8万円払うということになっているわけですが、やはり赤字なのです。弁護士会から持ち出しになっているので、成立した額に関係なく報酬を設定するというのは、望ましいかもしれませんが、そうすると財政的に破綻する、自立できないということもあって、その辺が悩ましいところかもしれません。

○山本座長 
 いかがでしょうか。
 橋場構成員、どうぞ。

○橋場構成員 
 同じことを申し上げたかったのです。つまり、どうしてもまとめようというインセンティブは、報酬という面からはあり得ないということです。ちなみに、札幌はもっと財政的に厳しいものですから、まとまったら調停人の方に3万1,500円をお支払いして、まとまらなかったら期日手数料の1回1万円だけ。そのぐらいのレベルでやっととんとんの運営をしているというのが実情でございますので、成立手数料はどうしても比例的に、例えば100万円だったら8%で、それを双方折半でセンターのほうに払っていただくというシステムをとらざるを得ないというのが現状です。

○山本座長 
 古賀構成員、どうぞ。

○古賀構成員 
 福岡の古賀です。
 私も患者側仲裁員として、3年間で8件ほど担当しました。そのうち2件成立して、1件は継続中という状況ですが、実際にやっている仲裁員弁護士からすると、ほとんどボランティアの感覚でさせていただいています。医療過誤事件、調査を含めて私は常時10~20件抱えていますが、それを考えると、医療ADRをやるよりは普通の事件をやったほうが弁護士業務的には報われるわけであって、そこは非常に誤解があるかなと思います。
 具体的な数字で御説明すると、福岡県弁護士会医療ADRの場合は、例えば1,000万で和解が成立した場合は、成立手数料として25万をお支払いいただきます。これは患者さんと病院側に折半していただくような形になります。一般的に1,000万、示談とか訴訟で和解が成立した場合は、成功報酬として10~15%程度受領する弁護士が全国的な平均ではないかと思いますから、そういうものに比較すると、患者さんの御負担も非常に少ないですし、一方、弁護士がそこで業務的に報われるわけではないというところははっきりしていますので、そこは御理解いただきたいと思います。
 ただ、報酬に関する疑念があるというか、不透明さが漂うのであれば、全国の医療ADRでわかりやすい形で情報公開をさらにしていく必要性は感じました。

○山本座長 
 増田構成員、どうぞ。

○増田構成員 
 愛知県の場合は医療ADRを含めて、年間300件ぐらいの事件処理をしていますけれども、年間の予算というものは2,000万円ぐらいなのです。申立手数料、うちは期日手数料はございませんので、あとは成立手数料ということになっています。ただ、それでも専属の事務局が2人いますけれども、その人件費というのは、会からの持ち出しということになっています。ですから、先ほどおっしゃったように、会のADRを運営するがために解決額をつり上げるとか、そういった発想は全くなくて、例えば医療事件で12回やって解決をしたという事件であっても、あっせん仲裁人の成立報酬は基本的に8万円です。そういう意味では、かなりボランティア的にやっていますので、そこはぜひ御理解をいただきたいと思います。
 ただ、成立手数料がどういった局面でネックになるかというと、簡易裁判所に調停を申し立てれば、最初の印紙額は高くつくかもしれないけれども、成立手数料はかからないというところで、なかなか弁護士会のADRに呼び込めていないというところが実情ではないと思っています。
 以上です。

○山本座長 
 小山構成員、どうぞ。

○小山構成員 
 それを受ける側の代表して、感じていることを少しお話させていただきますと、2つ懸念があって、1つは、このADR裁判で先ほど1,000万とかという話が出ていましたけれども、それが保険適用されるのかどうかというところが、裁判だったら問題なく入りますけれども、保険が使えるのかどうかということが問題。
 もう一つは、各病院は顧問弁護士を雇っているわけです。そうすると、顧問弁護士にも払うしそちらにも払うしという二重払いになってしまうのです。そうでなくても病院はあっぷあっぷしている状況の中で、さらにそういうことが起きてくることに対して、少し懸念を持ちます。
 ただ、もう一つ和田先生にお聞きしたいのですけれども、このADRの考え方というものはいろいろあると思うのですが、私たちが病院団体でアンケートをとった感じでは、どちらかというと弁護士さん中心というよりも、いわゆるメディエーター中心の会がADRだという認識があったのですけれども、先生のお話を聞くと、いろんな種類の形があっていいのだというお話だったのですが、段階があるのかもしれませんけれども、そこら辺は先生、どういうお考えなのか聞かせていただければと思います。

○和田構成員 
 まず、小山先生の前に弁護士の先生方にお話しいただいたことで、もちろん私はそれを理解していて、お医者さんたちからそういう疑問をぶつけられたときに、今、先生方がされたのとほとんど同じ回答をしています。そんなことはあり得ないですというふうにするのですけれども、全部のお医者さんに解説できるわけではないので、そういうことをもう少し広報していくことも必要かと思います。また、外から見てそんなふうに思われる場合、財政基盤のところを埋め合わせていく方法、脆弱なものをもう少し体力をつけるために、本当にその方式しかないのだろうかということをもう少し考えてみる余地はあるかもしれないということでございます。
 小山先生のお話のところでは、まず、ADRというものの定義ですけれども、日本での定義と世界的な標準の定義とは、かなりずれがありまして、日本の場合には法環境など社会的背景に起因する理由があって、そういうことになっているということも理解しておりますが、外国の場合には、まさに多様なのです。ただし、医療の領域は難しく、医療事故で賠償問題にかかわるものなどは、弁護士さんがかかわるような形でやっているところが多いです。
 ただ、先ほどのイギリスのオンブズマンもそうですけれども、これは別に法律家ではなくて、オンブズマンという行政官です。法律海外でも、苦情や対話促進を中心に対応し、ただし、賠償は扱わないという形のシステムもございます。
 ですので、そこは問題を区切って、賠償問題などリーガルにやるべきことは本格的ADRでやって、そうでない部分はもう少し自由に対話促進に関わる役割のみを果たすような第三者的な場。明らかに医学的には問題がないのだけれども、患者さんのほうが納得していない、患者さんの目線から見れば、ミスではないかとか思っていて、そういうケースでの対話を促進する場、リソースというのはどこか別のところにつくってもいいのではないかと思います。これは法的な意味でのADRのさらに外部にあるのものと言えるかもしれません。その両方あっていいのではないかと思っています。

○山本座長 
 小松構成員、どうぞ。

○小松構成員 
 小山先生の今の保険がきくかどうかの問題。これは私たちが始めたときも大きな問題でした。損保会社ともよく話し合ったのですけれども、結局私たちが主張したのは、恐らくこれは賠償が安くなるはずだと。解決が早く済むので安くなるだろうということを説得材料にしたのです。そして、実際にやってみて1,000万とか高額の場合は、当然こちらだけで解決するのではなくて、まず有責、無責を決めるために、医事紛争委員会にかける。そこで有責が出た場合は損保会社が賠償金を出しますので、解決の道が早くなります。結果的に、少ない例ですけれども、安くなっている。長引かないだけ、もめ事が短いです。ですから、私たちのADR機関だけでやっている問題ではなくて、損保会社も含めて話し合い、彼らに理解させるということも必要になってくるのかなという印象は持っております。
 医事紛争委員会にて、有責になり、賠償額が出て、その賠償に不満だということですごくもめることがあるのですけれども、中立委にかかっていてやるともめ事が非常に少ないです。そういう印象を持っています。
 以上です。

○山本座長 
 植木構成員、どうぞ。

○植木構成員 
 今出ている問題というのは、こういうADRの機関をつくる際の一つの方法として、組織図をどう描くのかというのが1つ。そうすると、その組織図の中で管理運営方法をどう持っていくのかという問題です。
 もう一つは、この組織図に描いた機構にどう財政的な裏づけをしていくのかという問題だろうと思うのです。組織的に言えば、弁護士会とか医師会がお造りになるのは、そういう組織になるわけですから、ある意味では財政的には後ろ盾があるわけですから、大方スムーズにいきそうだけれども、その構成自体に問題はあろうかと思います。そういう中で、千葉みたいな第三者機関が主体となるNPO法人のものでは、財政的には全く破綻状態。これは要するにボランティアによる運営以外の何物でもない。これが本音です。
 そういう困難な中で、これを続けていく意義というのが、どこにあるのだろうかとときどき自問自答することがあります。ボランティアで1年や2年だったら何とかいけるだろうと思いますけど、3年、4年、5年、10年なんて続くはずがない。こういう率直な印象を持っているわけです。
 今のところ法人の運営においては、篤志家の御厚志とかいろんなことで賄っているわけですが、手数料そのもので運営が可能となることは絶対にあり得ない。それではペイしないということです。個人的には、こういう私的な組織をもうちょっと格上げしないと考えるのです。そうすると、考え方としてはフランスなどにあるように、行政ADRに格上げして運営するより仕方がないだろうと思います。
 つまり、例えば建築物等の紛争解決ですと、建築紛争審査会がありまして、それはまさに建築紛争に関する特有な問題の解決を目指して、建築法を一部改正する。これが参考になると思います。医療ADRの場合には、医療法を一部改正していただいて、医療紛争をどう処理するかということ、そこに事故調なり、あるいはADR機構を組み込む形で、いわば医療紛争をワンパックで解決できる仕組みを作る必要があり、このような形で医療ADR機構の整備を図るのが良いと思われます。そういう全体像を考えていかないと、とても公正妥当な医療ADR機関はできないと思います。


○山本座長 
 宮脇構成員、どうぞ。

○宮脇構成員 
 今、ADRが独自で機関として大事な役割を果たしていただいていますが、医療事故全体としては、医療事故調査制度について日本医師会からの提言もありましたし、全体の議論が進んでいます。被害者の立場からすると、医療事故調査制度の機関の中で、原因が解明された場合に、次のステップは、責任とか、補償についてどうするのかということになります。
 そこで、ADR機関が実績をもとに、双方の弁護士さんと第三者の弁護士さんを入れて、調査結果をもとにやっていただくと非常に被害者としては納得しやすいし、ADR機関の役割というものが非常に鮮明になります。現在、医療ADRで問題になっているのは、責任の所在のところで、特に深刻なところでは紛争でなかなか応諾率が上がらなかったりするのですが、原因のところのステップの機関ができるとなると、このADR機関は被害者にとっては、補償面での解決は大きいなと思います。そういう点で、医療事故調査制度の延長線上で、公的に何らかの形で位置づけていただき、先程、言われていたボランティアという形ではなくて、明確に制度の一環としてやっていただけるような方向で、今後、ぜひ検討いただければと思います。

○山本座長 
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。
 古賀構成員、どうぞ。

○古賀構成員 
 和田先生のお話で、イギリスとフランスの話、とても興味深く聞かせていただきました。その中で、イギリスとフランスの制度ですが、日本のように患者さんが知らないうちに、医療機関の中の話し合いの席に着かされているということがあるのか。つまり、患者さんが申し立てすることが大前提であり、その手続というのはある程度透明になっているのか。その辺り、少しわかればお話を聞かせていただけますでしょうか。

○和田構成員 
 ありがとうございます。
 今の御質問ですと、答えはシンプルで、全て患者側からの主導です。患者側が申し立てて、例えばPALSのレベルに患者さん側から手紙であったり口頭であったり電話であったりで申し立てをして、そこで間に入ってもらったりする。その上のComplaint Managerに行く場合には、書面で申し立てをするわけですけれども、これも患者さんがするかどうかイニシアチブを持っている。全部患者側が持っているということになります。
 フランスの場合ですけれども、この無過失補償への適否を判定するCRCIというところで、無過失の場合には補償し、有過失の場合には、保険会社と患者さんの間での損害賠償額等についての調停の場というものを提供しているのですが、これは余りうまくいっていないとこの間行ったときには聞きました。これも患者側がイニシアティヴを持っていて、無過失補償のスキームで処理されるのはノーと言えば、そこに行かないで、裁判に行くという形になっています。患者のほうを無視していくということはないと思います。

○山本座長 
 よろしいでしょうか。
 医療安全支援センターについてのお話もありましたが、児玉先生、もし何かコメントがございましたら、お願いします。

○児玉構成員 
 関係諸機関等との連携を強めるために、医療安全支援センターには医療安全推進協議会という仕組みが運営要綱で定められて、各センターごとに設置されておりまして、各地の弁護士会、医療関係団体ともさまざまな協議をする場がございまして、そういうネットワークの中で、現状の相談に関してもさまざまな機関に受けとめていただく情報交差点の役割を果たすよう、研修に努めているというのが実情と認識しております。
 以上でございます。

○山本座長 
 ありがとうございました。
 それでは、おおむねよろしゅうございましょうか。
 このようなADRの役割の重要性、しかし、他方では財政的な基盤の問題。
 報酬につきましては、私の認識は和田先生と全く同じで、医療だけではなくて日本のADR全体の問題かなと思っておりまして、ユーザーの側から見れば、そのような懸念というか、外見上そのような懸念を抱かれることはやむを得ないところがあるのかなと。とりわけ、この場合は申立人と相手方、最終的に賠償を負担する側がある程度固定されているところがあるので、余計にそういう問題が顕在化するのかなと思いましたが、それは財政問題を含めて考えていかなければいけないということであったかと思います。
 それでは、続きまして、きょうの話題の次の項目のほうに入らせていただきます。
 まず資料3、医療ADR機関に対するアンケート調査を厚生労働省のほうでやっていただいておりますので、この点について、事務局のほうから御説明をお願いいたします。

○医政局総務課医療安全推進室長 
 資料3-1と3-2を御用意いただきたいと思います。それから、参考資料2がアンケート票になっておりますので、そちらもあわせてごらんいただきたいと思います。
 本日出席いただいております11の医療ADR機関に対しまして、アンケートをさせていただきました。大変熱心に御回答いただきましたものを整理したのが3-1と3-2ということです。熱心に御回答いただきましたことについて、大変ありがたいと思っております。この場をかりまして、深く御礼申し上げたいと思います。
 3-1は、一覧表ということで、横軸に質問項目、縦軸にそれぞれのADR機関の名称を並べまして、3枚にまとめております。やや字が小さいかなというところもありますので、全く同じ内容になりますけれども、3-2のほうに個別表ということで、施設ごとの回答を1枚にまとめております。簡単に内容を紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 まず、開設年でございますけれども、それぞれの施設の開設年、括弧の中に医療ADRを開始した時期ということで、あわせて書いております。見せていただきますと、皆様方もよく御存じかと承知しておりますけれども、一番最初に平成9年に愛知県弁護士会紛争解決センターさんが開設をされ、一番新しい機関としましては、平成22年3月に愛媛弁護士会紛争解決センターさんが始められているということで、その間にそれぞれの機関が開設されております。
 申立者の制限、これは主に患者さん側と医療側と両方の申し出をお受けしているのかどうかということになりますが、多くのところはその制限はないと御回答いただきました。この中で、茨城県医療中立処理委員会さんのほうから、原則当事者に限定ということで、患者さん側からの訴えを中心に行っていると回答いただいております。
 事前の相談ということを義務づけているのかどうかということですが、7つの機関については、原則として相談を必要としているとお答えいただいております。その原則と言いますのは、必ずしもそうでない場合もあるということで、患者さんの場合だけはそういう必要がある、または、代理人がいる場合は必要としないという条件があるというところもございました。
 続いて、成立手数料につきましては、11のうち10の機関につきましては、「あり」とお答えいただきまして、双方折半を原則としているということでございました。茨城県医療中立処理委員会さんだけが、成立手数料なしとお答えいただいております。
 実施者体制については、それぞれ機関に特色がありまして、1名~3名ということで、それぞれお答えをいただいております。1名とされましたところは、弁護士さんが担当されるというところが中心でありますが、2名というところでは、患者側の代理人の経験がある方と医療側の代理人が経験がある方をそれぞれお1人ずつ選任をして、2名というところが多くなっておりました。
 3名とされたところにつきましては、ここもかなり多様なところがございまして、皆様もよく御存じの東京三弁護士会さんのほうでは、まず1名~3名の、状況による体制に違いがある。3名の場合はよく御存じのように、医療側の代理人の御経験の先生と患者側の代理人の御経験の先生と、そのほかの先生とでされるということで、お答えをいただいております。
 そのほか、3名のところに注目いたしますと、茨城県医療中立処理委員会では、弁護士さんと学識経験者と医師の方で3名。
 公益社団法人総合紛争解決センターさんでは、患者側の弁護士さんと医療側の弁護士さんと医師、これで3名ということで、そこは多様な姿ということを見せていただきました。
 専門委員の参加につきましては、「あり」と答えたところが6カ所、ないというところが5カ所ということでありました。特にないというところで、御意見を伺いますと、必要性を感じないとされたところ、希望があるが実現していないというところ、意見が分かれていて今のところ決めていないということ、そもそもあっせん人に参加しているので、改めて専門委員として医師を必要としていないといったところがございました。
 続いて、代理人の傾向というところですが、選任率を多くの機関からお答えいただいております。患者側と医療側それぞれに伺っておりますが、患者側のほうで見てまいりますと、茨城県医療中立処理委員会さんのほうでは、原則として代理人を認めておられないということで、ゼロということになろうかと思います。高いほうから見てまいりますと、岡山弁護士会医療仲裁センターさんでは80%に及ぶということでいただいております。
 医療側を見てまいりますと、愛媛弁護士会紛争解決センターさんでは25%。高い方に移りますと、愛知県弁護士会紛争解決センターさんでは、81.5%に代理人がついておられるということで、御回答いただいております。
 そのほか、興味深いところを少し見てまいりますと、東京三弁護士会さんのほうからお答えいただきました内容で、応諾事件、和解事件で代理人の選任率が高く、特に相手方、ほとんどが医療機関側になるわけですが、そこにおいてその傾向が顕著であった。このことから、特に医療機関側においては、代理人弁護士選任と応諾、和解成立との間に関連があることが推測されるということで、お示しいただいております。
 実績ということですが、多いほうから見てまいりますと、東京三弁護士会紛争解決・仲裁センターさんが45、愛知県弁護士会紛争解決センターさんが28、医療紛争相談センターさんが22ということで続いておりました。
 終了事件総数につきましては、こういった1年ごとの実績とこれまでの期間ということを合わせたものになるかと思うのですが、多いほうから見てまいりますと、愛知県弁護士会紛争解決センターが280。東京三弁護士会紛争解決・仲裁センターが127という形で続いております。
 続きまして、平成23年度の応諾率を見てまいりますと、高いほうから見てまいりますと、1件だけということですが、広島弁護士会仲裁センターさんが1件のみ成立、応諾率で見てまいりますと100%ということになります。続いて、愛知県弁護士会紛争解決センターさんが74.1%、茨城県医療中立処理委員会さん72.7%、東京三弁護士会紛争解決・仲裁センターさん71%と続いております。
 不応諾の理由ということで、それぞれお書きいただいておりますが、特徴的なところを見てまいりますと、主には医療機関側のほうで無責だと判断をしており、そこは十分説明をしたということで、それ以上応じていただけないということが中心となっています。そのほかのお答えを見てまいりますと、応諾すると金銭の支払いを余儀なくされてしまうと医療機関側が理解しているので、応じていただけないのではないかと書いておられるところ。医師会の保険における手続が開始されておらず、必要な審査手続が行われていないというところで、医療機関側のほうが受けておられないと認識されているところ。そういったところが特徴的な答えとしてございました。
 終了までの期間ということで、不応諾の場合、和解成立の場合、和解不成立の場合、それぞれ聞いております。
 不応諾の場合の期間、短いほうから見ますと15.5日で、愛知県弁護士会紛争解決センターさんが短いほう。長いほうになりますと、公益社団法人総合紛争解決センターさんが125.7日ということで挙げておりまして、かなり多様の期間が示されております。
 和解成立までの期間を見てまいりますと、短いほうで67日、仙台弁護士会紛争解決支援センターさん。長いほうでは、約8カ月、医療紛争相談センターさんが、御回答いただいております。
 和解不成立の場合ですと、短いほうでは57.21日、岡山弁護士会医療仲裁センターさん。長いほうでは、207.8日、札幌弁護士会医療紛争解決センターさんということで、御回答いただきました。
 最後の特徴や取り組みですけれども、ここは各機関でのアピールされているポイントになりますので、それぞれ特色を示されているということなのですが、全体のADRに共通する点を少し見せていただきますと、当事者に寄り添いながら紛争解決の背景事情等まで踏み込み、当事者の「納得」が得られる紛争解決を指向されているという御回答。
 それから、解決内容は、単に金銭賠償にとどまるものでなく、謝罪や再発防止等を合意したものもある、ということで示された御意見もありました。
 私からは以上です。

○山本座長 
 ありがとうございました。
 大変貴重な資料で、特にこういう一覧の形にしていただくといろいろ気がついたりするところもあるかと思います。御質問、御意見等もあろうかと思いますが、最後にまとめてお願いすることにして、引き続きまして、渡部構成員から資料4、日弁連ADRセンターという資料に基づきまして、お話をお願いいたします。

○渡部構成員 
 日弁連ADRセンター委員長の渡部晃と申します。
 私のほうから、日弁連ADRセンターの取り組みについて、お話します。
 1枚目が、その表紙でして、「弁護士会医療ADRの課題と展望」と副題が書いてあります。
 2ページ目にいっていただきますと、報告の内容として、1番目に日弁連ADRセンターというものは何かということをまずお話して、日弁連ADRセンターは医療ADRばかりではなくて、多数のADR、各種のADRに取り組んでおりますので、それを御紹介した後、医療ADRの課題と展望について、日弁連ADRセンターが取り組むべきことということでお話させていただきます。
 3ページは、日弁連ADRセンター、1番目の論題でございます。
 4ページ目、日弁連ADRセンターは、目的がADR関係の調査研究や、各弁護士会の裁判外の紛争解決機関の連絡調整というものが目的で、設立が2001年6月、12年前に設立されまして、最初は「裁判外紛争処理機関」でしたが、処理というのは余りにも冷たい感じがしますので、2006年11月に改称いたしまして、「裁判外紛争解決機関」という括弧書きを入れて、ADR(裁判外紛争解決機関)センターとしております。
 5ページ目、活動の現状ですが、その当時、ローカルな各地の弁護士会に仲裁センターなり紛争解決センターがありましたので、その方々が自発的に2番目に書いてあります、全国仲裁センター連絡協議会というものを行っておりまして、その連絡協議会の中に仲裁統計年報編集委員会というものがあって、それが自発的に仲裁統計年報を発行していたのですが、それを日弁連ADRセンターが引き継いで、仲裁統計年報の発行と全国仲裁センター連絡協議会の主催をやることになって、今日に至っております。
 全国の目的が連絡調整とかさまざまなことですが、5ページの下のほうに書いてありますように、日弁連の構成としては、弁護士が8月1日現在で3万2,050人おります。日弁連の会員といいますのは、弁護士個人と弁護士会というものがあります。全国に52弁護士会がありまして、その52の弁護士会のうち、31弁護士会に弁護士会ADRが存在する。要するに仲裁センターとか紛争解決センターがある。約5分の3、6割にある。全部にはないわけです。
 「34センター」というのは、弁護士会に支部がありまして、支部にも紛争解決センターがある場合がありまして、支部にもあるものも加えて34センターになるわけです。後でお話ししますが、基本的に医療ADRをつくる場合には、総合ADRとしての紛争解決センターや仲裁センターがないと、なかなかつくれないという部分がありまして、これが後で申し上げますように、現在11弁護士会にある医療ADRの基盤になっているということを御理解いただきたいと思います。
 6ページ、近年の状況として、日弁連ADRセンターの取り組みとしては、下請けかけこみ寺という下請け取引の関係の紛争の「行政型ADR」に協力をしました。ADRの中には「司法型ADR」と「行政型ADR」と「民間ADR」と3つの種類があるのですが、「司法型ADR」は、「家事調停」とか「民事調停」を指しておりまして、行政型ADRというのは、先ほどどなたかお話しました「建築紛争審査会」とかそういうものです。民間のADRというのは、弁護士会の「仲裁センター」とかそういうものを指しております。
 そういうときに、行政ADRの1つとして、中小企業庁傘下の下請けかけこみ寺事業に対して、日弁連から180人の相談員、仲介委員を推薦したのが2007年でございます。以降、行政型ADRに日弁連に対して推薦依頼がかなり多くなってまいります。いろんな形式のものに仲介委員を派遣してくれ、あるいは和解仲介として弁護士会を利用したいというものがふえてくるわけです。
 2008年6月、私、この時期に日弁連ADRセンターの委員長になりました。その前年に東京三会で医療ADRが設置されたものですから、それに倣って8高裁所在地近辺には少なくとも医療ADRがほしいなということがございまして、医療ADRを設置しようといたしました。ただ、先ほど三会のタイプを見ていただくとわかりますように、3人の弁護士の方が調停人になるものですから、かなり重厚な手続になってしまって、全部の弁護士会の仲裁センターに設置するというのは、なかなか人材の面とかそういう面で大変なものですから、8高裁所在地の割合と大きな弁護士会に限らせていただいて、そういう取り組みを始めて、一番最後に愛媛の弁護士会が名乗りを上げていただいて、四国にも医療ADRを設置させていただいたということでございます。
 2009年に日弁連が協力いたしました「地デジADR」とは、アナログ波からデジタル波に変わるときに、ビル陰の関係で受信障害が発生した場合のADRです。それの関係でADRを総務省のほうからつくりたいということで、ついては仲介人、調停人を派遣してくれないかということで要請がありまして、日弁連から全国で北海道から九州のほうまで、180人の仲介委員、相談員、調停人を推薦いたしております。東北のほうは少しおくれましたけれども、アナログ波の停波とともに事業として終了して、成功しております。
 2010年になりますと、今度は金融商品取引法の改正で、金融ADRというものができまして、原則は指定紛争解決機関という銀行協会などは独自の金融ADRをつくって、それと各金融機関が協定書を結んでADRをするという取り組みを始めたのです。実は政令の段階で弁護士会ADRが一定の業態の金融機関について、金融ADRの適格性があるということで指定されまして、それが大変なことになりました。政令で弁護士会の仲裁センターとか紛争解決センターが指名されたものですから、信用金庫、信用組合、農協、JAバンク、JFマリンバンク、労働金庫、そういった団体、それから、2種の証券取引業者から契約の締結申し込みが、特に東京三会に殺到しまして、団体も含めて640程の申し入れがあって、現在、580件の契約が締結されておりまして、それが信用金庫協会などの団体との契約もあり、その傘下に900社ほどの金融機関がありますので、そことも契約関係になっておりますから、結局全部で言いますと、約1500社と契約関係になっているということになりまして、全国の弁護士会で金融ADR制度の整備に追われているところです。
 例えば金融機関は、全国にあるものですから、沖縄とか北海道にあるものもありまして、それが東京三会と契約を締結しているものですから、テレビ会議システムで調停をする。沖縄の先生を東京の調停人にして、テレビ会議システムで調停をするような取り組みも始めまして、ネットワーク化の問題として、今後の日弁連ADRセンターなり各地の紛争解決センターの課題になるところでありますが、隔地者間の調停ができるようになってきているということです。
 2011年になりますと、御存じのとおり東日本大震災が起きまして、原発が爆発して、多数の被災者が出てしまいまして、その紛争解決に文科省傘下の原紛センターというところが調停を行うということになって、それに日弁連から調停人(仲介委員)を推薦してくれということで、現在、200人推薦しております。そのうち、180名が東京三会の会員になっておりまして、それが8月末の段階で、申立件数が3,793件になっていまして、未済が2,879件になっており、毎月未済が二、三百件滞留していく状況です。
 仲裁統計年報などを見られれば、東京三会で扱うADR紛争の総数が250件ぐらいです。1年もたたないのに、それに10倍以上のものが来ていますから、処理能力をはるかに超えているということがおわかりだろうと思います。しかしながら、やっていかなければならないという事態になっている。
 これが近年の日弁連ADRセンターの取り組みでございまして、7ページを見ていいだきますと、新たな課題領域への対応ということがございますが、今、ハーグ条約の批准の問題がでてまいりまして、今国会は流れましたけれども、国際間の子の引き取りの関係、あるいは面接交渉の関係で、来年には国内施行法が成立しますが、外務省から面接交渉の関係で、パイロット事業でやってくれということが東京三会のほうに来ておりまして、もう始めておって、1件目がくるかどうかという事態になっております。
 このように、弁護士会ADRに対しては、多方面から特に行政の側からかなりのアプローチがあって、人を派遣してくれ、又は特定のADR事業をやってくれというのが、近年、特に多いのです。
 それだけADRが注目されているということだろうと思いますが、その中で、結局弁護士会ADRの問題としては、弁護士会がどうしてもローカルなのです。ローカルなものですから、全国的な取り組みになると、ネットワークがどうつながるのかという問題がありまして、それは先ほど言った金融ADRのような形でやっていけば、何らか全国的な解決手続もできるのかなという方向がありますし、そういうことの中で、多様な要求に対してどう弁護士会ADRが対応していけるのかということが問題になってくるわけです。
 先ほどお金の話が出ましたけれども、そのような活動をするのに、弁護士会は大体持ち出しなのですが、人件費とか部屋代は、利用者からとっておりません。これは、結局弁護士会という公益的団体だからこそそれができる。要するに、調停人の先生はほとんどボランティアで定額でしかもらえませんので、成立手数料は、会に入るだけなのです。それも小さい案件でも、数万の成立手数料で医療ADRで東京の場合は30万円払うわけです。ですから、完全な持ち出しです。ですが、公益的な見地からも弁護士会は運営しなければならないということで、しかし、仲介人の先生を大事にすべきであるということで、弁護士会が仲介人の先生にお支払いしているわけです。ただ、紛争価格が高い案件がくれば、それに応じたものでお支払いいただくということで、赤字のものを解消してゆくのです。
 弁護士会内外のネットワークづくりというのは、今、言ったような形で弁護士会同士のネットワークも必要ですし、弁護士会外とのネットワークも必要であろうということです。ですから、ADRの分野は、発展せざるを得ない領域なのです。社会の需要が多くて、行政も含めて民間も含めてなっていくので、それに対して、弁護士会はどう対応していくのかということを考えていかなけなければならないなということが、日弁連ADRセンター全体の考え方です。
 8ページ以降は、医療ADRの課題と展望。
 こうしたさまざまな多種多様なADRに対するニーズの中で、医療ADRをどうしていくべきかという問題なのです。2008年に医療ADRをつくろうということで、全国に御協力いただいて、11カ所できているわけで、この取り組みでかなりの案件がふえまして、東京などは医療ADRに関する関係がかなりふえております。ですから、これが各地にあればいいのですが、先ほど言いましたように、体制の問題で基盤として今、52会のうち31会しかできておりませんから、それがないと医療ADRもできないので、ぜひ、これからも弁護士会に必ず紛争解決センターや仲裁センターがあるという状態にしていくのが、我々の日弁連ADRセンターとしての取り組みであり、その中で、東京三会のような方式はとれないなりに、茨城でやっているような、小規模の会でもできるような医療ADRが何とかそういった会でもできないのかという取り組みも考えていかなくてはならないのかなと、今、茨城のうまくやっているところを見て、思っていたところでした。
 見ていただくと、医療ADRでそれだけ日弁連ADRセンター特別部会でこれだけありますと、三弁護士会は3つありますので、11ということになります。
 10ページにいきますと、見ていただくとわかりますように、さまざまやり方があるのです。東京の場合はあっせん人が1名~3名、愛知県の場合は原則1名、公益社団の大阪のほうは弁護士2名で医師1名、茨城のほうは弁護士1名、学識経験者1名、医師1名。何人がいいのかちょっとわからないのですが、愛知県の場合は、恐らく患者の代理人、医療機関の代理人が一部仲介委員みたいな役割を果たしていて、ADRに対する理解があるのだろうと思うのです。東京であれば、かなりドライであるところで仲介委員が3人いて、医療側の意見も組み上げ、患者側の意見も組み上げてやっていって、中立性を保っているというところがあるのですが、そこが愛知県の場合は、双方の代理人が理解ができているものだから、1人でいいというところがあるのかなと。要するに、会に対する信頼が両代理人にあれば、まとまるということだろうと思います。
 応諾率を見ますと、愛知県と東京三会は同じぐらいで、愛知県は圧倒的に多いというのは、理解があるからということでしょう。
 お医者さんを入れるかどうかというのは、愛知県のほうは医師を専門委員として入れるのですが、年間1件~3件。東京三会は当初の政策上、専門委員はなしということであります。大阪の場合は、医師を1名入れているということであって、茨城県の医師会のほうは、こういうような情勢であります。
 この構成によって応諾率が上がるか上がらないかとか、そういうことは余り3つの応諾率の関係で見ると、それほど関係ないのかなという気はしますので、その機関に対する信頼の問題なのかということだろうと思います。
 11ページにいきますと、日本の場合というのは和田先生が言われていましたのですが、ADRという定義がはっきり法律で書かれておりまして、これが日本においては定義とされているものでして、民間事業者、紛争の当事者が和解をすることが民事上の紛争について、紛争の当事者双方から依頼を受け、当該紛争の当事者との契約に基づき、和解の仲介を行う裁判外紛争解決手続をいう。
 要するに、当事者双方から依頼を受けるわけですから、中立でなければならないのです。ですから、どちら側の立場に立つわけでもなくて、公平性と中立性が肝としてあるので、茨城の医師会が運営としては公平で中立でやられていると思うのですが、外見的に見てどう見えるのかというところが一番お悩みだったろうと思うのです。公平性と中立性というのは、その辺のところだと思うのです。
 手前みそで恐縮ですけれども、裁判所以外で公平、中立に行える日本の機関というと、弁護士会かなと思っているところです。いろいろ見回してみて、弁護士会がそうなのかなと思っておりまして、そういうところから弁護士会ADRを医療ADRにおいても発展させていかなくてはならないなと、定義の面からもそうですし、現在、そういうことで考えておりまして、別に医療ADRだけを発展させるのではなくて、全ての分野でADRを発展させたいわけですが、とりわけ医療の分野で、深刻な生命にかかわるような案件について、公平・中立なADRを提供できるように、今後とも努力していくし、各地の先生にも努力していただきたいなと思っております。
 12ページ、さまざまな共通点・相違点。3カ月、3回以内で解決しようということがあって、そういう目標でやっております。
 「医師の専門的知見の導入には課題」というのは、東京三会でも当初、入れるかどうかという議論があったようです。そこの仲介人に専門的にやっている先生は、ある程度医学の知識がありまして、どういう論点なのかということはわかっていることが多いのと、児玉先生のようにお医者さんも兼務している方もいらっしゃるので、双方わかっている方がいらっしゃるわけですけれども、どうしても公平性、中立性になると、医学的判断を先にやってしまうとまずいというのは、調停をやられた医師の先生はおわかりだと思うのです。医学的知見というのは千差万別、人によって変わるということがありますので、当初から医学的知見を言って、私はこう思う、これが正解だ言われてしまうと、解決しようがないということがあり得るわけで、そのときに専門委員として利用することはあり得ても、和解仲介人としてどうなのかということは、茨城のほうでは医師の専門的知見のほうは一歩下がって、調停のほうは弁護士の方にやらせているというのは、その辺のことをわかられてやられているのかなと思っていました。
 その辺のところがありまして、それは各地でそれぞれ考え方があっていいのかなと思います。
 「普及と応諾率については、ばらつき」というのがありますが、要するに医療の場合は、圧倒的に弁護士会ADRの課題を医療機関側の理解の問題、信頼していただくことが重要でして、来てくれないことには強制的に呼び出すような裁判所ではないので、解決できません、話し合いもできませんので、私が当初申し上げましたように、弁護士会というのは、もともと患者さん側から非常に絶大な信用があるのです。ただ、医療機関の側から言うと、患者の味方かと思われているところがありまして、私はADRを専門にずっとやってきた、どちら側からも医療を扱わない弁護士ですけれども、その立場から見ると、そこが弁護士会ADRの課題だと思っておりまして、できれば医療機関側の信頼を得て、出てきていただいて話し合いに応じていただくということが、この問題を解決する早道だろうと思っております。そこは弁護士会ADR、医療ADRが普及していくのと同時に、この分野での課題であると思っております。
 地域に応じて違う、愛知などは医療機関側、代理人も含めて理解があるのでしょう。地域によってはそうでもない地域もありますので、東京などは西内先生や児玉先生がいらっしゃるので、病院関係の御理解は大変よく得られているように私には見えますけれども、そういった我々の側の信頼を勝ち取る努力、患者側からももちろんのこと、医療機関からもADR機関として信頼を勝ち取る努力が必要なのかなと。それに対して、日弁連ADRセンターとしては支援していきたいなと思っております。
 13ページ、まとめでございます。今、いろいろADRの設計の仕方、医療ADRだけでも多様で、ほかの分野はほかの分野であるわけですけれども、それに対しては、ADRがいいところは非常に融通無碍なところがありまして、時間的にも各地の先生は土日でも開いてみたり、夜間で開いてみたりするようなところがありますので、そこは普通の公的機関とは一味違ったところがあると思います。その辺のところは、それぞれの地域によって違うと思いますが、地域特性を生かした制度設計というのは、医療ADRの場合、医療機関側の御理解が必要ですから、御理解のないところ、御理解のあるところに応じて、我々の側で積極的にアプローチして、うまく機能するようにしていくということはこれからの課題だろうと思います。
 3番目は、法曹界と医療界の相互理解の促進。私のようにいろんなADRを扱っている立場から見ると、この医療ADRにおいても、弁護士会ADRの果たす役割というものは非常に大きいのではないかと思っておりまして、そのために環境づくりをいたしたいなと思っているところでおります。
 以上であります。

○山本座長 
 ありがとうございました。
 それでは、関連しまして、西内構成員のほうから、補足説明として資料5に基づいて、東京三会の取り組みについてお話をいただきたいと思います。

○西内構成員 
 第一東京弁護士会の西内でございます。
 資料5-1に基づきまして、只今の日弁連の渡部先生のお話について、東京三弁護士会の立場から補足させていただきたいと思います。
 まず、お断りしておきますけれども、「東京三弁護士会」という会があるわけではなくて、東京には3つの弁護士会があるということで、「東京三弁護士会」と言っております。場合によっては「東京三会」と略して言うこともありますが、「東京弁護士会」、「第一東京弁護士会」、「第二東京弁護士会」の3つの弁護士会がございまして、3つまとめての総称としての東京三弁護士会という名称を使っております。
 その「東京三会の医療ADR」の体制と取り組みのうちで、今の、渡部先生のお話のうち、専門的知見の導入と、医療界と法曹界の相互理解の促進の現状について、少しお話をさせていただきたいと思います。
 まず最初に、専門知見の導入の点ですが、資料5-1の「1」番です。「第三者医師による医学的知見の導入について」というところですが、資料5-2、これは従前、こういう報告書がありますという御報告はさせていただきましたが、東京三弁護士会の医療ADRの検証作業を行って、報告書を取りまとめたものですが、この55~57ページにかけて、「第三者医師による医学的知見の要否・是非と展望」というところに取りまとめてあります。
 そのうち、特に56ページの(3)と(4)に星印をつけさせていただきました。その部分を簡潔に御説明いたしますと、確かに医療ADRという名称からすれば、医師の医学的知見の導入というものが専門的知見の導入だろう、それを導入するのが医療ADRだろうというのは、非常にわかりやすくて説得力がある御意見だと思います。私ども、東京三弁護士会もこの東京三会医療ADRを発足させるときの制度設計として、当然その点も検討いたしました。
 ただ、ここにも書いておきましたが、医学あるいは行われた医療行為の評価の多様性、逆にいうと正解は1つですよ。あるいはある程度一定の狭い幅の中にありますよ、ということであれば、第三者医師の専門的知見を求めるということは非常に有益だろうと思います。例えて言えば、建築紛争あるいは交通事故における工学鑑定、あるいは不動産の評価、さらには知的財産権などもその分野に入るのかもしれませんが、医療行為に対する評価というのは、そんなに狭い幅の中に正解が入るのか、あるいは正解があるのかという点が問題となります。私も代理人として長い間医療事件を取り扱ってきましたが、相当評価が分かれることが多いのです。訴訟になったときに、原告側、それから被告側から私的鑑定書、つまり原告の依頼した第三者医師、専門医ですね。被告が依頼した第三者専門医の意見書なるものが証拠として提出されることが少なからずあり、しかも場合によっては原告側が数通、被告側が数通ということもあります。そしてそれらの意見書による意見がそれぞれ違うのです。本当に皆さんが想定されるであろう狭い範囲の中の違いではなくて、非常にバリエーションにあふれた意見が出てくることもあります。相当な幅を持った各々の第三者医師の御意見が出てきます。
 そういった多様性のあることが多い医療に対するあるいは医療行為に対する評価というものに対して、財政基盤というものも含めて、ADRという簡易、迅速、廉価ということも包含されている制度の中で適性・妥当な判断を導くということが達成できるのだろうかということを、我々はさんざん悩みました。その中で、もちろんこれが最終決定ではなくて、東京三弁護士会もどんどん進化していきたいと思っていますが、とりあえず発足に当たっては第三者医師による医学的知見の導入という選択肢はとりあえず脇に置いておきました。
 もう一つ言えば、今、申し上げたような多様な評価が可能であり、どれもが正解であり、決して間違っているわけではないだろうという中で、仮に1人の専門医に御意見を求めたときに出てきた意見、あるいは2人、3人の意見が出てきたときにADRという制度の中で対処できるのかということです。東京地方裁判所を初め千葉地方裁判所などでは複数鑑定という裁判上の鑑定を行っており、複数の医師から意見を求めるという手続を裁判所レベルでは行っております。
 そして、複数の鑑定を何で行っているかというと、先ほど申し上げたように、医学、医療というものにおける正解は1つではないことが多いことから、1人の鑑定人の意見だけで決めていいのかという疑問がいろんなところから出てきたことから、複数鑑定は少なくとも医療については適切だろう、あるいは客観的な妥当性、公平性が担保できるだろうということから、複数鑑定の導入ということになっているわけですが、仮にADRで1人だけではなくて、お金の問題を置いておいて、複数の専門医から知見を求めて、複数の意見が出てきたときに、その意見をどう評価するのか、また誰がどういう手続によって評価するのか。そういう能力があるのかということが問題となります。
 例えば、これが訴訟であれば、訴訟上の鑑定、今、申し上げた複数鑑定もあれば単数鑑定もありますが、出てきた鑑定意見に対しては、両当事者は意見を述べるあるいは反証の機会が与えられるわけですけれども、ADRでそれをやるのであれば、訴訟と何が違うのか、そして、そこまでやる時間と労力、もっと言えばお金をかけてやるのであれば、それは訴訟と何が違うのか、ADRという制度に親しむのかというところで我々もいろいろ悩んだ結果、東京三会としては医療ADRにおいての第三者の専門医の知見の導入手続は取り入れず、脇に置いた形でスタートしようということで現状に至っております。
 その点についてアンケート調査も行っておりますが、それも55~56ページにかけて書かせていただいております。
 そして、訴訟であれば、判決という形で最終的には解決する道があるのですけれども、ADRは当事者の合意による解決に正当性の根拠が求められるわけですから、出てきた専門的知見に対して合意していただけなければ、次の東京三会の手続きである「ステップ2」の金額の話に移るということはできなくなります。
 つまり、出てきた第三者医師の専門的意見に対して、両当事者すなわち申立人側と相手方が直ちにそれに同意するとは限らず、そのときにどういう手続を経て両当事者の納得を得ていくのか、その手続をどうやって用意するのかなどという問題点について、ここに縷々書かせていただきましたが、悩んだ結果としての現在の東京三会のやり方があるというところです。
 さらに言えば、第三者医師の知見を得るために、一般的知見だけを得るのであれば、我々が医学書を読めばいいだけの話ですが、当該症例に関しての具体的な意見をいただかなければ何の意味もないわけですが、そうすると、カルテを読み込んでいただいて、あるいはそれ以外の資料も読み込んでいただき、もちろん患者さん、御家族側の言い分も当然あるでしょうし、そういったものも陳述書なりの形にしていただいて読んでいただくというときに、どの医療水準の医学的知見の導入を求めるかにもよりますけれども、第一線で日々休む暇もなく、満足に眠る暇すらないような医師の先生たちにそれをお願いしたときに、本当に答えてくださる余裕が、時間的、労力的にあるのだろうか。あるいはその対価を我々は払えるのだろうか、誰が払うのか、弁護士会医療ADRで言えば弁護士会が持つのか、あるいは両当事者に御負担いただくのかというさまざまな問題がある中で、とりあえず東京三弁護士会は今のような形をとっているということでございます。
 次に2番目の医療界と法曹界の相互理解の促進の点ですが、渡部先生もおっしゃった様に相手方に応諾していただかないとADRはスタートできませんので、まず相手方に応諾していただくということがADRがスタートするための基本であることは言うまでもなく、しかも、応諾していただいても、そこでちゃんと「ステップ1」の対話ができ、信頼関係ができ、「ステップ2」の解決の手続に移行できるというところがないと、ADRというものは機能しないことから、医療界と法曹界の相互理解というのは、ADRが機能し、今後発展していく、そして活用されていくための必要不可欠な基盤だろうと思っております。
 では、今、東京三弁護士会が関与しているその点に対しての取り組みはどういうことかというと、ここに書かせていただきましたが、(1)これは東京地方裁判所には医療集中部というものが民事部に4か部ありますが、そこと都内の13大学医学部附属病院及び東京三弁護士会の三者による協議会と幹事会というものを設置しております。これは平成14年に設置して、現在まで続いております。
 ここでは、先ほど申し上げた東京地裁が行っているカンファレンス鑑定のあり方とか、専門委員制度のあり方とか、医療界と法曹界の相互理解のためにどうしたらいいのかとか、さまざまな医学的知見の導入のあり方とか、そういったことを議論しております。ちなみに、この三者のうちの1つである都内13大学医学部附属病院は、東京地裁のカンファレンス鑑定の複数鑑定の給源ともなっております。
 2つ目の(2)として、(1)の三者協議会を基盤として、主催は東京地方裁判所ですが、毎年「医療界と法曹界の相互理解のためのシンポジウム」を開催しております。
 第1回の平成20年から始まりまして、第4回まで既に行っております。第5回目はことしの10月9日に開催を予定しています。内容は全て『判例タイムズ』という法律家向けの専門雑誌に掲載されております。
 どういうことをやっているかということ、都内13大学医学部附属病院の方であれば、どなたでも参加でき、具体的な事例を御紹介して、その中で問題とされた過失とか因果関係の点について、参加された医師の先生方とか参加した我々法律家とかが、自分たちはこう思う、これはこう思うという意見交換をして、そこで意見を1つにまとめるということが目的ではなく、お互いの思考とか見方がどう違うのだろうかということの理解をしようよというのが目的でありまして、医師の先生方はこれをこう見るのだ、こういう思考過程を取るのだ、法律家はこうですよということをお互いにわかり合うということが目的です。相互理解はまずそこからだろうと、お互いの思考方法、評価方法の違いをまず知ろうということで毎年行っております。
 さらに、(3)東京三弁護士会医療関係事件検討協議会というものがあり、これは東京三弁護士会が共同して設置した委員会です。これは上記?三者協議会の幹事会の受け皿として平成14年につくりました。
 これは日ごろ東京三会に専ら患者側で代理人をされている弁護士、医療側で代理人をしている弁護士がおりますが、それまで交流はなかったのですが、この協議会をつくったことによって、双方の弁護士たちが同じ委員会で医療訴訟等についての意見交換とか協議をしていく中で弁護士レベルにおいての患者側と医療側の相互理解が随分深まったのです。その結果の一つとして、この?の東京三弁護士会医療関係事件検討協議会が東京三弁護士会の医療ADRを誕生させたのです。つまり、患者側の弁護士と医療側の相互理解が進むことによって、この医療ADRが誕生となったといういきさつがございます。
 最後に(4)ですが、東京三弁護士会ADR自体に関する特徴としては、昨年の6月の本会議においてお話させていただきましたので、簡単にします。
 まず、医師、医療機関からも、第三者であるあっせん人立ち合いのもとでの医療行為などに関する説明とか、患者家族との関係の調整などを目的とした申し立てもどうぞ行ってください、我々はそういう事案に取り組んでいきますということを積極的に広報しております。パンフレットも発行しております。
 2つ目の特徴としては、審理手続を、両当事者の質問、説明、納得、対話の促進と、それによって相互理解に向けて話し合いを行うという「ステップ1」、そしてそれによって両当事者間に解決に向けての気運が出てくれば、「両同時者の同意」を要件として「ステップ2」の具体的な解決に向けた合意形成のための調整の手続に入りますという2つの手続に明確に分けました。
 これによって、相手方が応諾すれば、とにかく最終的にはお金の話になってしまうという不安はなくなりました。つまり説明だけでもいいので安心して出てきてください、そしてそこでADRの手続を終わらせることもできますということを、手続的にも透明化することにより、安心して応諾していただける、そして相互理解だけでも、せめて対話だけでもしてくれませんかという制度設計にしたというところでございます。
 ですから、東京三会の医療ADRは、まず申立人と相手方が対話をしていただく場という理解でとらえております。
以上が、東京三弁護士会をめぐる医療界と法曹界の相互理解のための現状でございます。
 以上です。

○山本座長 
 ありがとうございました。
 それでは、残された時間20分程度ですけれども、今の事務局からのアンケート結果の御報告、それから、渡部構成員、西内構成員それぞれの御説明、いずれについても結構ですので、御質問、御意見があれば、お願いいたします。
 山田構成員、どうぞ。

○山田構成員 
 今の西内先生の御議論、大変興味深くお伺いしました。医師による判断を入れないという決断の理由としては、制度的になかなか大変だという、どちらかというと消極的な理由のようにも聞こえたのですが、実際には、このような方法をとることによって、いわゆる事実認定とか判断から当事者を説得していくというADRのパターンではない、本当の対話を促進していくようなパターンが生み出されるというメリットもあるように思われます。そこで、先生からごらんになって、このように判断を使わずに調停を進めていく場合に、当事者が納得・合意に向かっていく転換点となるのは、どういったところにあるとお考えでしょうか。

○西内構成員 
 私も全ての東京三弁護士会医療ADRが取り扱った事例を知っているわけではなくて、実は我々あっせん人も見ることができないぐらい厳重に守秘義務による管理がなされていまして、したがって、研修会などで得た情報とか、自分あっせん人又は代理人としてのの経験から得た情報ですけれども、まず応諾していただいた事例が前提になっていると思うのですが、きちんと申立人側の意向、あるいは要求、求めているものをきちんとあっせん人が整理する。それを相手方にきちんとわかりやすく伝える。それに対して、説明をきちんとしていただく。その往復の交通整理を繰り返し行っていくわけですが、それによって、ある程度以上の納得性と満足性、他方、相手方のほうはそれに対する信頼性、行った説明がある程度きちんと受け入れられている、あるいは真摯に聞いてくれているといったところから相互理解は始まるだろうと思っています。
 それがうまくいったときには、「ステップ2」に入るわけですが、解決事例などで数千万円の解決事例などもございます。ただ、詳細は今、言ったような厳重な守秘義務の関係から結果だけしかわかりませんが、そういった事例も東京三会にもあるという現状です。
 

○山本座長 
 小山構成員、どうぞ。


○小山構成員 
 一番最初のアンケート調査結果を見て、少し安堵したのですけれども、当初始まったときに、応諾率が非常に悪いということでしたが、どうも7割近くいっているということで、大変安心しました。ただ、なぜ応諾率が悪いかというところの議論を、日本病院団体協議会の中でさせていただいたときに、渡部先生のほうから弁護士さんは中立だという表現を使われましたけれども、そこら辺を余り中立だと考えていないところが非常にあるのです。それはいみじくも今、西内構成員がおっしゃった医療側の医者と弁護側の医者の言っていることは、全く正反対のこともあるという話なわけです。それは広い医師の中から、自分たちが納得できるような意見の人を集めてくるからそうなるのであって、それに対して、対抗として、都内の場合は13の大学病院がカンファレンス鑑定、私も2回ぐらいやったことがあるのですけれども、こういう紛争だということでもって、3つの大学にこういう紛争のことのカンファレンスをするから、こういうことに見識のある方を出していただきたいということがきて、出てこられるわけです。そうすると、これは全く中立なわけです。ですので、これは中立になるということで、それと同じことがADRの中にもあるわけです。
 このADRは、いわゆる患者側の弁護士さんがつくったADRだとかということになると、最初から医療側が被告として入るような感じになってしまうということで、なかなか応じられないという意見が病院団体の中にありました。ただ、それも今、いろいろお話ある中で、ここまで上がってきたということは、もう少し話し合いをしながらいけば、もう少し理解が強められるのだなという感じは持ちました。
 ちょっと気になるのが、先ほどからお話しているとおり、弁護士が一番いいのだというお話をされておりますけれども、和田先生などの話を聞いていますと、メディエーターという考え方が出てきます。ここら辺は、我々はどう理解したらいいのか御意見を聞かせていただければと思います。

○和田構成員 
 簡潔にですけれども、先ほどの医学的な鑑定とのお話とも絡めて言いますと、弁護士の専門性でもそうだと思うのですけれども、例えば過失なのか正当事由があるのかということで、法律家の中で意見が分かれるケースというものはあるのです。しかし、多くのケースについては、どの弁護士が見てもこれは過失ありだろうと、これは正当事由ありだろうというケースも多々あるかと思うのです。そういう場合に、患者さん側が納得していない。医療者のほうが説明してももうちょっと信用ができないというときに、第三者的な医師の意見を聞く。これは恐らくどの医師に聞いても同じような回答がくるというケースで活用するということはあり得ると思います。
 ただ、そのようなケースまで弁護士のリソースを使うということが本当に効率的かどうかということもありますので、まさに対話だけの部分で実は誤解があったり、納得できないという部分があるようなケースの受け皿になるような機関。そういうものは、必ずしも法律家でなくても、対話の仲介の研修を受けたような方がやるという手続を設定する。これは医療界がつくってもいいと思うのです。そこでちょっと問題がある、大きな問題だというケースであれば、弁護士会ADRのほうにむしろ移っていただくような振り分けをするという入口の機能を持ったような部分であれば、私は弁護士でないADRというものも十分機能するし、弁護士ADRのリソースを余り無駄に使わないためにも有効かなと思います。

○山本座長 
 渡部構成員、どうぞ。

○渡部構成員 
 ADRの定義からそれがADRなのかという問題があるので、私の立場から言うと、ADRというものは公平、中立というのが肝だろうと思っているのです。ここの連絡会議に出ていく弁護士会の先生も、実は私、お頼みするときに、その観点で医療側の先生と患者側を主に扱っている先生と、両方扱っている先生といろいろ取りまぜて出てきていただいた経緯がありまして、それは専らADRというものは公平、中立なものだからということで、いろいろな分野の先生、医療機関側の先生の意見をいただきたいということもありまして、出してきているのです。
 ですから、弁護士会は患者側に信頼はありますけれども、患者側一辺倒だと思っていただかないで、私のようなどっちつかずの人間もおりまして、ADRだけを見ているという者もおります。ADRというものは公平・中立な第三者機関であると考えているのです。ですから、そのように運営していこうということがありますので、それは弁護士の先生であれば、今までどちら側についていても調停人となれば公平・中立になるように訓練されているのです。調停人というものは公平・中立でなければならないという訓練をされているものですから、その立場になれば、そうなっていただけるというのは、今までの経験上、東京三会でやっている調停を見ていましても、そういう運用をされておりますので、ぜひ、その辺のところは御理解いただきたいなと思っております。

○山本座長 
 小山構成員、どうぞ。

○小山構成員 
 そのとおりだと思います。それは事実として、応諾率がこれだけ上がっていることは事実だと思います。同じことが医療側にも言えると思うのです。第三者的に選ばれた医療側の代表者というのは、やはり中立な立場でもって事実を見つめて、これはどう考えるかという意見を言っているので、そういう意味であっても、医療側も中立だということをぜひ御理解いただきたいと思います。

○山本座長 
 田口構成員、どうぞ。

○田口構成員 
 先ほどのお話の中で、医療界と法曹界の相互理解の場として、三者協議会というものが西内先生のお話にもありましたけれども、全国の地裁レベルで設置されている協議会なのですが、例えば愛媛では、弁護士会にいついつ大学病院ないしは県立中央病院でいわゆる手術の見学だとか医療機器の見学、来たい人は来なさいということで、大体2名~3名毎年参加している。どうも東京三会での協議会のようなしっかりしたものになっていなくて、そこでの医療界と法曹界の相互理解というものは、ほとんど築く場としては生かされていない。
 児玉先生からお話がありましたけれども、医療安全推進協議会というものも必ず設置されていると思うのですが、松山市の医療安全推進協議会には、私、議長として参加させていただいていますけれども、正直、その場でも余り医療界との交流といいますか、相互理解というものも図れていないという実情で、ぜひ他の県なり東京都はそういう場が十分充実しているということですが、何らかの相互理解促進の場というものがないかなと模索しているのが愛媛の現状でございまして、もし次回にでもこういう方法があるよという御提案をいただけるのであれば、ぜひ御教示いただきたいと思います。

○山本座長 
 ありがとうございました。
 宮脇構成員、どうぞ。

○宮脇構成員 
 年間約800件弱の医療過誤裁判が提訴されているわけなのですけれども、今回の統計でもADRの申込みが170件ぐらいということで、すごくギャップが多いなと思います。ADRは被害者のほうが調停に申し込むということが全体に多いようですけれど、最近の熱心な医療機関については、急変による死亡や予期しない不幸な事態のときに、何度も何度も説明しているところが結構ふえているのです。場合によっては、管理者が10回以上説明している。そういう医療機関は当事者と医療機関だけではなかなか理解が進まない可能性も大きいので、むしろそういう機関ほど一定程度説明が終わった後、それでも難しいのであれば、積極的にADRの機関を利用されて、患者側の弁護士も含めたところで、改めて病院から熱心な説明をやっていただければ、むしろ患者側のほうとしては安心して病院の説明に納得できていくという機能を持っていると思うのです。
 そういう点から言うと、ADRの協議に入るとすぐ賠償金につながる発想というのは非常に狭い考えで、むしろ患者の理解を得るために、ADRをもっともっと医療機関側が活用していくことが、今後の大きな課題ではないかと思うし、ぜひ、そうやっていってもらいたい。
 医療被害者が裁判を起こす動機としては、そういう不幸な事態が起こった後、病院からの説明が何回か行われて、これ以上説明することはありませんということで切られて、不信感が払拭されないままで、より原因を知りたいということで裁判に持っていかざるを得ない動機があるわけですから、ぜひ、そうならないために医療機関と患者だけの関係ではなくて、せっかくこういうADRの機関であるということを、医療機関のほうも大いに活用してもらいたい。
 私たち被害者としては、医療過誤裁判は難しい医療の水準の論争ではなくて、むしろ診察したのかしなかったのか、検査したのかしなかったのか、病院は検査した、実はしていかなったではないかとか、そういう次元のことが多いのです。心電図でこれは問題ないと、別人の心電図で、差しかえたのではないかとか、その次元の話を多くの被害者から聞くので、そういう点では、医療過誤裁判の内容としては、そこに持ち込まないで、本当に関係している方々が誠実に話し合ったらとっくに解決すると思います。ADRについては、ぜひ、医療機関のほうが毎年提訴される数倍の件数を持ち込んでいただいて、そこで患者側の弁護士を含めて、医療機関から説明を真摯に行い、患者の理解を得ることを考えていただきたいと思っております。

○山本座長 
 先に北川構成員、どうぞ。

○北川構成員 
 話が元に戻ってしまうところがあるのですけれども、先ほど渡部委員長のほうから、あっせん人の構成と応諾率の関係のお話がありまして、余り関係なさそうですねというお話があったのですけれども、資料でいいますと、渡部委員長のお話があった資料の10ページになります。これについて若干補足説明をさせていただきたいと思いますが、実は一昨年の秋の終わりのころ、この協議会で私のほうから大阪の実績ということで紹介させていただきまして、応諾率も上々です。
 成立率に関しましては、応諾のあったものはほとんど成立していますという紹介をさせていただいて、あわせて、当初大阪では医師のあっせん人を確保できていなかったのですが、ちょうどその時期に医師のあっせん人が確保できるようになり、今後、医師のあっせん人の入った事件について、事例が集積できる見込みなので紹介させていただきたいというお話をさせていただいたのですけれども、実は、その後、1年間応諾が1件もないという状態が続きました。不応諾の理由については単一の理由だけではないのかもしれないのですが、残念ながら医師のあっせん人は活躍する場がほとんどなく、この33%というのは、やっと去年の秋の終わりにその状態が解消されて、残り数カ月という時期の数字がこの数字になっているということです。現在、当初のころの応諾率にはまだ至っておりませんが、平均近くまで回復されてきておりますので、ぼちぼち医師のあっせん人の入った事件についての事例が集積されてきておりますので、近いうちになるかどうかわかりませんけれども、その結果をある程度検証したものをこちらで発表させていただければと思っております。
 以上です。

○山本座長 
 植木構成員、どうぞ。

○植木構成員 
 渡部先生のお話、非常に興味深く伺わせていただきました。この問題の本質は、最終的には、前回、前々回においてここで問題になっているような、医療ADRのグランドデザインをどう描くのかというところに帰着する問題だと思うのです。
 そこで、先ほども申し上げましたように、組織的には今は医師会と弁護士会と第三者機関というか、そういうところが主体としてこれを運営しているわけです。もともとの出発点は、医師と患者側あるいは病院と患者さんとの間のトラブル、その紛争の解決にあります。そうしますと、一方の当事者である医師会がそういう機関をおつくりになったときに、他方の当事者である人は当然疑惑を持つわけです。あるいは世間も何らかのリアクションをすることになります。その逆も同じことになります。あまり現実的ではありませんが、患者さんがそういう制度をおつくりになったと考えた場合、病院やお医者さんがそこに出ていくだろうか。その場合、欠席裁判かあるいは罵倒されるかという話になってしまい、あたかも人民裁判か何か知らないけれども、そんなものになってしまい、医療ADR機関としての役割を果たすことができない。そこでは医師側の応諾率はゼロということになります。
 そこで中立的な観点を確保すると言う意味で、弁護士会主体の医療ADR機関が出現することになります。弁護士会はある意味では、中立・公正だというのが渡部先生の御意見だと思うのです。
 ただ、そこでもう一度立ちどまって考えなければいけないのは、医師あるいは病院と患者さんの紛争であるけど、弁護士さんがそれぞれの立場で介入するわけですから、弁護士会は比較的中立・公正であっても、結局は医療ADR機関はそれぞれの当事者から引き受け弁護士が紛争の解決を図るわけですから、それは少しの緩衝地帯とはなるかもしれませんが、そういう意味では、弁護士による当事者の利益代表がそれを解決することになります。そこでは弁護士の立場上、あくまでも医師と患者の間の紛争の解決という観点で捉えることになります。
 そうなると弁護士さんというのは、紛争の解決を専門とするわけですから、ADRの目的を紛争を前提にしていることになります。そもそも医療行為というものは、紛争を前提にして始まっているのではなく、医師と患者による固い信頼を前提として成り立っています。わたしはこのような発想の下で、医療ADR機関は第三者機関のほうがいいのではないか考えており、こういう前提の下で第三者機関による制度を造ったわけです。
 そうすると、先ほど申しましたように、どうしても財政的に行き詰まることになります。これは明らかにそうなのです。そうなったときに、結局はそこを解決するのは、先ほど申しましたように、行政機関への格上げをするよりない。あるいは今日のお話にもありましたように、メディエーションとドッキングさせる。院内だけではなくて、院外のメディエーションとドッキングをさせる方法が考えられ、もっと大きな形で行政機関に格上げできるような組織をこれからは考えていかないと、どうも医療ADRの将来というものは開けないのではないか。
 医療ADR機関の本質は、売買とか金融とかそういう取引紛争の解決とは違い、医療はもともと医師と患者の信頼関係から出発しているのですから、それに見合った紛争の解決機関が必要となり、他のADR機関とは違った観点からの構築が必要となります。それが医療相談の重要性です。


○山本座長 
 渡部構成員、どうぞ。

○渡部構成員 
 御意見ごもっともで、これは医療ADRばかりではなくて、ほかの分野のADRでも結局財政上の問題というのは、最も大きな課題なのです。日本においてADRが大体、赤字になることになっているのです。欧米のほうにしても、アメリカのように1人の高名な調停人が引き受けて、タイムチャージベースで多額の報酬をとるようなシステムになっていないものですから、どうしても赤字になる。日本においてADRは、どこか公的なところが援助しない限り成り立たないのです。弁護士会ADRは、そういう場所代と事務局人件費の関係は弁護士会が公益的な団体だから補助しているようなものです。
 医師会は医師会で、医師会が丸抱えすればそれだけお金がかかるわけで、それは公平・中立な第三者機関であるということになると、どう見ても絶対に財政的な基盤がなくてはだめです。例えば今までのADRの類型から言えば、金融ADRなどは、要するに金融機関側がお金を出して、「指定紛争解決機関」をつくるわけです。そういうことをするし、あるいは住宅紛争審査会というものは、国交省で弁護士会を指定してこれを設置し、国交省から予算を組んで渡すわけです。
 そういう形態があるのと同時に、他に一定の補助を与えるということが1つあるし、行政型ADRということで、今、言ったように一番重厚な形でつくるということもあると思うのですが、行政型ADRを新たにまるごとつくるというのは、なかなか今の国の財政事情からして難しいとすると、ほかの金融ADRのようなパターンとか、今、言った住宅紛争審査会のようなパターンとか、今ある機関なりリソースを利用して何らかするということが、割合と実現可能性がある。この分野でもあり得ることかなと思っているのですが、そこはどうなっていくのかわかりませんけれども、そういう方向性があるかなと思っております。

○山本座長 
 ありがとうございました。
 増田構成員、どうぞ。

○増田構成員 
 先ほど渡部構成員のほうから、日弁連ADRセンターの実情を報告されましたけれども、その中でも愛知県の場合には、非常に医療機関側も患者側もセンターに対する信頼が高い、そのことが応諾率を上げているのだという御報告がございましたが、愛知県で医療側の代理人経験をされている弁護士で、日弁連ADRセンターの幹事にもなっておられる先生から、2年ほど前、「なぜ応諾をするのか」についての報告をされました。その概要を御説明しておきます。
 まず、応諾する理由として、総論的には自分が相談を受けた事件については、全て応諾をしています。なぜかというと、応諾することで格別の不利益はないのではないのか。事案によれば、デメリット、メリットもあるけれども、総じてデメリットは少ない。
 協議が整う見込みがなければ、手続を終了させることができる、そういった柔軟性がありますと。
 それから、あっせん仲裁人が手続の中でメディエーターの役割を果たしてくれることを期待する面もあります。解決に至らなければ費用負担はありません。愛知県の場合は、期日の手数料がありませんので、特に医療側が費用を負担することはない。
 基本的にあっせん仲裁人が1人であるために、期日が非常に早く入る、比較的迅速に進められるということが挙げられています。
 申し立ての類型的に見ますと、双方に代理人がついて、事前交渉があって、それが決裂をしてあっせん仲裁を申し立てをされた場合には、医療側の弁護士としては訴訟を予期していたのだけれども、あっせん仲裁を申し立てられることによって、何らかの解決方法がそこで出てくるのではないかと期待をする。だから、出ていくのだということ。
 申立人側に代理人がついていない当事者の本人申し立て、そういった場合には、あっせん仲裁の申し立てというのは、いかに簡易な手続であったとしても、それなり申立書をつくってセンターに出さなければいけない。応諾をしないという対応は、より不信感を強めるだけである。そういった法にのっとった手続を選択したことを尊重して出ていくのだということもおっしゃっていました。
 あっせん仲裁人に対する信頼ということですけれども、愛知県の弁護士会の場合は、あっせん仲裁人は全部で130人います。これまでに一般的な事件も含めて、約3,000件近くの処理をしていて、各あっせん仲裁人はかなりの事件数を経験していて、そのことあっせん仲裁人に対する信頼につながっている。
 愛知県の場合には、医師の専門委員制度というものを設けています。これについては、東京三会の西内先生等がおっしゃったことですが、医師をあっせん仲裁人としてパネルに加えるのか、専門医とするのかということは非常に悩みました。ただ、実際には今、専門委員という形にしています。この秋から約20名の医師の先生方に専門委員をお願いしています。医師の専門委員が加わることによって、弁護士の医療知識が補充されて主張が整理されやすくなり、申立人のわだかまりが解けるといったこともあります。 
実際に、専門医を入れた事件というのは、この5年間で9件ですけれども、そのうち、成立した5件、そのうちの4件は本人申し立てです。その過程で、全ての期日ではないのですが、例えば2回目から入れるとか、そういった形で専門委員に加わってもらうことによって、そこで先ほど和田先生がおっしゃられたような対話といいますか、そういった場が設けられて、そのことが患者さん側の納得を得られて解決をしているということがあります。
 このように、特に医療機関側の代理人をされている弁護士の方が、こういった形で積極的にあっせん仲裁の場を使おうという姿勢を示されているということが、応諾率を高め、解決率を高めているのではないかと思いますので、時間がオーバーしておりますけれども、報告をさせていただきました。

○山本座長 
 ありがとうございました。貴重な情報だったと思います。
 植木構成員、どうぞ。

○植木構成員 
 千葉の場合、応諾率32%程度だから、お前のところは余り応諾率がよくないではないかと思われ、誤解されるといけませんので、先に言っておきますけれども、我々のところは、その前に医療相談を十分にやっており、大体6割、7割はそこで解決しているわけです。その他があっせん調停に回り、その内の30数%が応諾されているわけですから、実質的な応諾率は非常に高いことになります。

○山本座長 
 ありがとうございました。
 私の不手際で既に時間が経過しておりますので、本日はこの程度にさせていただきたいと思います。
 本日も非常に有益な御議論ができたかと思います。ADR全体について、もう少し軽い使い方、説明の場、対話の場としてADRをさらに活用していく余地があるのではないか、患者側、医療側双方からそのようなお話があったかと思います。ただ、そのためにどのように医療側との信頼感を確保していくのかという問題がある。
 さらに、根本的な問題として、財政の問題が非常に大きな問題としてあるということを踏まえて、大きな問題として引き続き考えていく必要がある事柄だろうと思いました。
 それでは、本日の議論はこの程度にさせていただきたいと思いますけれども、最後に事務局のほうから何かございますか。

○医政局総務課医療安全推進室長 
 1つ訂正させていただきます。冒頭に出欠を申し上げましたけれども、前田構成員から御欠席という連絡をいただいておりまして、改めてお伝えしたいと思います。申しわけございませんでした。
 また、次回の第8回の日程につきましては、調整の上、御連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。

○山本座長 
 それでは、本日はこれで閉会いたします。
 長時間にわたる熱心な御議論、どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

医政局総務課医療安全推進室

室   長 宮本: 内線2570
室長補佐 川嵜: 内線4105

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