ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働基準局が実施する検討会等> 平成24年度化学物質のリスク評価検討会> 平成24年度第2回化学物質のリスク評価検討会




2012年5月10日 平成24年度第2回化学物質のリスク評価検討会

労働基準局安全衛生部

○日時

平成24年5月10日(木)14:00~16:00


○場所

経済産業省別館827号会議室


○議事

○瀧ヶ平室長補佐 皆様お揃いですので、ただいまから「第2回化学物質のリスク評価検討会」を開催いたします。本日は所用により、池田委員、小嶋委員、高田委員が欠席です。早速ですが、以下の進行を名古屋座長にお願いいたします。
○名古屋座長 事務局から資料の確認をお願いいたします。
○瀧ヶ平室長補佐 公開用の資料としてワンセット、次第が付いているものです。本日の議事としては、酸化チタン(ナノ粒子)のリスク評価、平成23年度リスク評価対象物質のリスク評価についてです。裏面に配付資料一覧を付けております。資料1は「酸化チタン(ナノ粒子)の有害性評価における主要な論点について」、資料2は「酸化チタン(ナノ粒子)有害性評価書案」、資料3は「酸化チタン(ナノ粒子)有害性総合評価表案」、資料4は「酸化チタン リスク評価書案(中間報告)」、資料5は「アンチモン及びその化合物 初期リスク評価書(案)」、資料5-2は「『アンチモン及びその化合物』の今後のリスク評価の進め方について(案)」、資料6は「キシリジン 初期リスク評価書(案)」、資料7は「ニトロベンゼン 初期リスク評価書(案)、資料8は「今後の予定について」、参考資料1は「平成23年度リスク評価の進捗状況」、参考資料2は「労働者の有害物によるばく露評価ガイドライン【机上のみ配付】」、参考資料3は「昨年度の初期リスク評価書(酸化チタン)」、参考資料4は「平成23年度ばく露実態調査の結果(非公開)【机上のみ配付】」、参考資料5は「提案理由書等【机上のみ配付】」です。過不足があれば、お申しつけください。
○名古屋座長 それでは、本日の議題に入ります。議題1「酸化チタンのリスク評価について」、事務局から説明をお願いいたします。
○松井化学物質評価室長 資料1をご覧ください。酸化チタン(ナノ粒子)の有害性評価の方向性については前回までご議論いただいたところですが、引き続きとなりますので、事務局のほうでこれまでの主なご意見と若干の関連情報、そして、たたき台として今後の方針案をまとめたのが資料1です。項目としては、表紙にあるように、1が結晶構造等の扱い、2が表面積等の扱い、3が評価値の設定方法、4が表面処理の扱いといった論点で整理をしております。1頁の結晶構造については、アナタース型とルチル型の扱いということで、(2)に前回の主な意見を簡単にまとめております。1つ目の○にあるように、毒性が強いのは、アナタース型がほとんどなので、ルチル型もこれで評価してしまうのは問題があるから、別々にやることが必要というご意見がありました。2つ目の○として、そうは言ってもデータが十分にないので、分けるのは難しいかなという意見がありました。その他、3つ目、4つ目の○のようなご意見がありました。
 2頁以降の表ですが、若干の参考資料ということで、前回森本先生にご説明いただいた有害性評価書に加えて、主な二次文献からアナタース型とルチル型を両方使って試験をしているものの結果を簡単にまとめております。全部が全部、ルチル型のほうが有害性が低いという結果になっているわけではありません。3頁の気管内投与試験の結果をご覧いただくと、この試験はルチル型のultrafineの1と2が、使用した酸化チタン粒子の欄の2つ目、3つ目にありますけれども、それとP25などを比較しておりまして、右側の試験結果にあるように、ルチル型のほうが有害性が低いので、P25のデータでルチル型酸化チタンを評価するべきではないといったことが述べられております。6頁の下にあるin vitroの細胞毒性の試験ですが、試験結果にあるように、UV照射した細胞においては、アナタース型がルチル型よりも100倍以上も細胞毒性が強かったという報告もあります。
 これで十分な検討かと言うと、そうでもないのですが、このようなことを踏まえて、9頁ではどのような選択肢が考えられるか、事務局で簡単に整理しております。<案の1>として、最初にご紹介した意見にあったように、アナタース型とルチル型について、それぞれ評価値を設定してリスク評価をする。<案の2>として、データが十分にないのでリスク評価の評価値は結晶構造によって区分せずに、同一の数値とする。<案の3>として、当面、評価値は1本とするが、実際に評価値を使って評価をするのが、今年度、事業場での濃度の調査結果を評価するときに使うので、来年の春までにルチル型のみでの評価値の設定が可能かどうか、もう少し情報収集を行った上で判断してはどうか。このようなことを参考に、引き続き今回ご検討いただければと思っております。
 10頁は表面積等の扱いですが、(1)の四角囲みにあるように、昨年この検討会でまとめていただいた方針では、評価の一次的な基準としては、原則として重量濃度を使うことにしておりましたが、表面積などについては今回どのようにするかということです。(2)の関連情報にあるように、前回森本先生から、有害性評価書案の最後に図が3つほどあって、今回も資料2としてお配りしておりますが、ラットに気管内注入した酸化チタンの用量を表面積で換算した場合、肺の炎症反応と用量依存性を示すことが報告されているというお話がありました。
 また、2つ目の○にあるように、酸化チタンのような難溶性低毒性の化学物質について、ラットへの長期吸入ばく露試験の用量を表面積に換算すると、一定の用量から、発生率が急激に増加するというお話がありました。3つ目と4つ目の○は、また後ほど出てきますが、NEDOプロジェクトの許容ばく露濃度の導出に当たっては、上の○2つのような既存の研究を考慮した上で、最終的には重量濃度を指標とした許容ばく露濃度を提案しているということがあります。4つ目の○についても後ほど少し紹介しますが、NIOSHのCIB63で勧告されているばく露限界値の算出に当たっては、指標として表面積を用いております。表面積を用いて量反応関係を検討した上で、最終的にP25の表面積などを用いて、表面積の指標を重量濃度に換算しているということがあります。(3)にあるとおり、このようなことがあるので表面積などの扱いについては、次頁以降にある「評価値の設定方法」と併せて検討するのがいいのではないかという提案です。
 11頁の評価値の設定方法については、前回の主要な論点という資料で、3つ挙げております。1つは、このリスク評価検討会の従来の評価方法ですと、まず産業衛生学会の許容濃度かACGIHのTLVがあるかといったところを検討してきているわけですが、今回、酸化チタン(ナノ粒子)については、ナノ粒子に特定しては両方ありませんので、どのように設定していくか。2つ目の・として、評価値の設定に当たって着目するエンドポイントとして、よく用いられている肺の炎症反応で適切かどうか、発がん性との関係はどうか。これは去年の秋にナノマテリアルのリスク評価の方針を検討いただいたときに指摘がありまして、取りまとめの中にも入れているところです。3つ目の・として、評価値に対応する粒子とは吸入性粉じんでいいのか、それとももう少し小さいものか、あるいはもう少し大きなものを含むのかといったところです。
 最初の・に対応して、(2)評価値の設定方法についてということで、関連情報を少しまとめております。評価値の設定については、今回全体の大まかな検討の方向を議論いただき、詳細な検討は有害性評価小検討会のほうでやっていただくのがいいかなと事務局としては考えております。(2)評価値の設定方法についてということで、アとして現行の設定方法を挙げております。この四角囲みがこの検討会で整理してきた「決め」と言いますか、そういったものです。(ア)として産衛学会の許容濃度かACGIHのTLVがある場合としておりますけれども、これがない場合は(イ)としてa~eがありますが、いままでは優先順位としてaから順番に決めているところです。しかし、必ずしも適応事例がそれほど多くあるわけではないというところす。
 11頁のいちばん下の行のaですが、米国のRELやドイツのMAKなど、外国の機関において職場環境に関する労働基準が決められている場合は、いずれかの値を用いるという方法を、まず検討してきております。aがない場合はbということで、一般環境に関する濃度を参考にすることを決めているところですが、これは今まで実績がありません。aもbもない場合はcで、発がん性以外の毒性試験で得られたNOAELから外挿した値を用いるということで、今までですとインジウム化合物についてはこの方法で評価値を決めているということがあります。aもbもcもない場合は、dの類似物質の数値を使うとか、eのfeasibilityを勘案したりして設定するということがあります。また、細かなところで、欄外の注にあるように、今回中心的に問題になるのは、正確に言うと二次評価値で、二次評価値はばく露実態調査の結果と比較して、制度的な規制の検討をするかどうかというときの判断に、いまのところ使っているものです。一次評価値は二次評価値を下回っても、行政指導で事業者に気を付けてもらうように指導する必要があるという判断基準に、現実には使っているということです。
 12頁の真ん中から下にあるイですが、このようなことを勘案して事務局のほうで拾い上げると、3つぐらいの候補があるように思われます。○1のNIOSHのCIB63において勧告されている値が、先ほどの(イ)のaに当たります。○2として、NEDOプロジェクトが提案している許容ばく露濃度がありますが、これは他の物質にはこのようなものがあまりないので、いままでの「決め」には特に位置づけられておりませんけれども、内容から言うと、NIOSHのRELにほぼ相当することから、これが候補に当たるのではないかということで拾い上げました。
 一応、いまの○1○2が、先ほどの11頁のいちばん下の行のaに当たると考えられますので、優先としてはこちらのほうが、○3のNOAEL等からこちらで独自に外挿している数字よりも優先しているのですが、いままでの議論の過程で、動物試験から外挿した数値というのも検討すべきであるというご意見もかなりありましたので、前回森本先生から説明していただいた有害性総合評価表に示されている評価レベルというのも、候補になるのかなと考えまして、○1~○3の3つの候補を、とりあえず整理してみました。13頁から概要を紹介しておりますので、簡単に説明しておきます。
 13頁の(ア)のNIOSHのRELですが、Aの設定の考え方は、労働生涯を通じてばく露しても、肺がんの過剰発生リスクが1/1,000未満と計算されるばく露レベルとして導出されております。Bにあるように、濃度のレベルは0.3mg/m3で、一次粒径が100nm未満のレスピラブル粒子として勧告されております。Cにあるように、エンドポイントが肺腫瘍で、Dにある3つの試験からEの外挿の方法で算定されておりますが、これは肺重量当たりの酸化チタン粒子の表面積を指標として、ナノから顔料級に至るまで1つの表面積で見ると同じという考えで、量反応の関係を統計モデルに当てはめて算出しております。これはベンチマーク用量信頼下限値を求めて算出したものが0.3であるということです。
 次頁のFにあるように、参考までにNIOSHのCIB63では、肺腫瘍以外にも、肺の炎症をエンドポイントとして、ほぼ同じ方法でベンチマーク用量の信頼下限値を導出しております。両者を比べて、肺の炎症のエンドポイントが少し安全側すぎるのではないかということで、肺腫瘍のほうをRELとして採用している。それは14頁の真ん中の下の辺りに書いております。
また、14頁の下にあるNEDOプロジェクトが提案している許容ばく露濃度は、同じく14頁の下の設定の考え方ということで、当面、15年程度の許容ばく露濃度として、10年程度で見直しをすることを前提にして提案されております。
 15頁のBは濃度レベルが0.6mg/m3、これは吸入性粉じんとしてです。Cのエンドポイントが肺の炎症で、Dにあるように、結果を用いているのは1つの試験ですけれども、その下に少し書いてあるとおり、酸化チタン(ナノ粒子)を用いた4つの吸入ばく露試験結果を検討して、この試験からNOAELを導いたということです。Eの外挿の方法にあるように、NOAELとして2mg/m3を採用し、○2○3にある方法でヒトに外挿しているということです。
 16頁の(ウ)ですが、これは森本先生が導出された評価レベルの数字です。Bの濃度レベルが0.15mg/m3で、Cにある評価のエンドポイントとDの外挿に用いた試験結果は、先ほどのNEDOプロジェクトの導出の方法と同じです。外挿の方法のところで、ヒトへの外挿の方法が細かなところで少し違っているのですが、これで数値のレベルに差があるということです。
 ECのDNELというのが有害性評価書のほうに並んでいるので、これについて前回内山先生からご指摘がありましたけれども、17頁の導出の考え方にあるように、EUのほうでREACH規則をナノマテリアルに当てはめるかどうかを検討するときに、研究機関が集まってプロジェクトをしておりまして、その中でREACH規則のガイダンスに基づいてDNELの導出の影響レベルを導いているということです。Bにあるように、前回ご指摘があったように、数値は少し低いですけれども、CとDをご覧いただくとわかるように、NEDOプロジェクトと有害性総合評価表で用いたものと同じ吸入ばく露試験が用いられておりまして、Eの外挿の方法を見るとわかるように、○1のNOAELが、用量レベルが1つ落ちたところを使っていると。ただ、Fにあるように、2mg/m3の用量をNOAELとするとこうであるといったことも同時に書いてある、そのような数値です。
 18頁に入りまして、まず問題になるのはエンドポイントをどうするかということかと思われます。最初の四角囲みの・でエンドポイントについての論点がありましたけれども、いま候補として挙げた3つの数値のエンドポイントについて簡単に整理しております。NIOSHのCIB63については、先ほど述べたように肺腫瘍と肺の炎症の2つで検討していて、最終的に肺腫瘍をエンドポイントとして選択しているということですが、考え方としては肺の炎症が先にあって、その二次的な影響として、肺へのいろいろな悪い影響が出てきて、その中に肺腫瘍もあるという整理です。肺の炎症を指標とした場合、NIOSHの指標を採ると、肺腫瘍の過剰リスクはゼロになるという記載があります。
 ○2のNEDOプロジェクトの報告書は、2行目の終わりに引用があるのですが、酸化チタン(ナノ粒子)のばく露による肺への悪影響にはそれぞれいろいろな現象があるけれども、「個別独立的なものではなくて、酸化チタンのばく露による酸化ストレスから持続性の炎症を経由して、間接的遺伝毒性による発がん性という一連のメカニズムの中に位置づけられる」としており、その最初のところということで肺の炎症をエンドポイントとして採用しているということです。○3の有害性総合評価表の評価レベルは、○2と同様に肺の炎症をエンドポイントとしております。
 19頁に入りまして、先ほど評価値に対応する粒子の大きさ、つまり、測定したときに空気中のどの粒子の大きさのものと比べたらいいかという話ですけれども、これが問題になるのは、通常、空気中でのナノ粒子は凝集してもう少し大きな粒子として存在しておりますので、どこで切ったらいいかということです。先ほど資料の中に少し出てきていましたが、NIOSHの場合はレスピラブル粒子で、NEDOプロジェクトの場合も、同じくレスピラブル粒子です。○3の有害性総合評価表については特に指定はありませんが、エンドポイントが肺の炎症であるということで、これに対応する大きさのものが妥当だと言えるだろうということです。
 イとして、参考までにどのように凝集して存在しているかという例ですけれども、平成22年度に実施したばく露実態調査で1カ所、ナノ粒子の製造しかやっていない事業場がありまして、総粉じんと吸入性粉じんの両方を測定しております。この表の中のDとEは臨時に実施した作業ですのであまり参考にならないかもしれませんが、A~Cの総粉じんと吸入性粉じんを比べますと、総粉じんとしては吸入性粉じんの数倍存在しています。これは重量濃度で見ていますので、総粉じんの比率は相当大きくなりますけれども、レスピラブルの粒子より大きな粒子で空気中に存在しているものもかなりあるという状況です。
 21頁に入りまして、少々長くなりましたが、いままでが関連の情報でして、(5)今後の方針ということで、一応たたき台を作ってみました。アは評価値の設定方法ですが、詳細は有害性評価小検討会で検討していただくにしても、大体の方向としては先ほど挙げたNIOSHとNEDOとこちらで作成している評価レベルの3つぐらいが、従来の考え方で言うと候補になってくるので、これを比較検討して考えていってはどうかという提案です。詳細は有害性評価小検討会で検討していただくのがいいかなと考えております。また、注にあるように、一次評価値は、従来、発がん性の疑われる物質については10-4の過剰発がんリスクを基本としてやっておりますので、こちらは従来のやり方が妥当ではないか。これは閾値のある場合は別のやり方でやっておりますので、その辺は従来のやり方に沿ってできるのではないかということです。
 イとして、先ほどの3つの候補とも特に結晶型には注意をしないで、基本的には1本で評価値を設定しております。仮にルチル型独自のものを設定する場合は、この評価値を参考にして設定したものは、ルチル型以外のものに適応される評価値として考えてはどうかということです。ウですが、今回以降、さらに詳細に検討する上で、どんな情報が必要かというのを特定していただいたほうが、事務局としてはいろいろ収集できる、あるいは委託調査を利用して情報収集できるかもしれないので、その辺もご指摘いただければということです。エですが、対応する粒子の大きさとしては○1にあるように、空気中でほとんど凝集粒子として存在している。ただ、○2として、どんな大きさに凝集していても影響があるかと言うと、仮に有害性のエンドポイントとして肺胞に到達する大きさの粒子が問題であるならば、レスピラブルで、かつ一次粒子がナノサイズのものということでいいのではないかというたたき台です。
 22頁に入りまして、最後に表面処理ですが、これは前回の事業場での濃度の調査に当たってご指摘がありまして、(1)の主要な意見にあるように、有害性試験で使用しているものと、表面処理の有無や内容が異なっていると問題ではないかという指摘があったのですが、ほとんどが表面処理されているので、気中濃度の調査に関しては、前回、名古屋先生にまとめていただいているように、一般的な処理方法のものということでした。(2)関連情報については、いろいろな文献から少し抜き出しておりますけれども、ルチル型は通常表面処理されていて、アナタース型は表面処理されていないものもかなりあるが、表面処理されているものも相当あるということでした。
 23頁は今後の方針(案)ですが、気中濃度等の調査は、前回名古屋先生にまとめていただいたようなことで今年度は実施し、並行して有害性と表面処理との関係は、引き続き情報収集してはどうかという提案です。事務局からは以上です。
○名古屋座長 ただいまの説明は、結晶構造と面積と評価方法の整理と表面処理ということです。まとめて議論するのは長いので、1つずつ分けて皆さんと議論していきたいと思います。最初の結晶構造の取扱いについて、ずっと説明がなされたわけですが、9頁で<案1>、<案2>、<案3>というものがあります。このところで、アナターゼとルチルと分けるのかどうかということと、当面の間は結晶区分を分けずに、リスク評価の中で、リスクの評価値を結晶構造によらず同一の値にしようかという形でまとめるのか。そうは言っても、もしかしたらルチルの構造のものをもう少し情報を収集してから、あまりにも差があったとしたら、そこでルチルをアナターゼと同じような形で設定してしまうと、どちらかを過小評価又は過剰な評価をしてしまう部分があるかもしれないから、その辺のところをどう判断したらいいかということだと思いますので、議論をよろしくお願いいたします。最初、分けるかどうかということと、1と2の所でどういたしましょうか。
○津田委員 アナターゼの場合、光が当たると活性化するということなのですが、光が当たらなければどうなのでしょうか。ルチルと大差はないのですか。それともその構造自体が違うから、生体作用が違うということなのでしょうか。
○名古屋座長 光触媒を用いた有害化学物質の分解実験を行っているのですが、実験では、光が当たらないと分解しませんが、活性は起こってこないと思いますね。バンドギャップが入って、要するに正孔と細孔が出来ないと、活性酸素が発生しませんから、分解はたぶんしてこないと思います。
○津田委員 そうすると、吸入されて肺に入った場合は、そういうことは起こらないことになりますね。そうすると、ヒトばく露の場合、皮膚に塗るとか、そういうこと以外だったら、あえて区別して考えなくてもいいのではないかという気がするのですが、その辺はいかがでしょうか。
○名古屋座長 森本先生、発言していただけますか。
○森本氏(産業医科大学) ここに示されているWarheitの論文で、これは気管内注入した論文だと思うのですが、ルチルとアナターゼで区別して気管内注入しております。Warheitの結論だと、アナターゼの炎症が強いということで、ルチルとアナターゼは分けて考えたほうがいいという論文があります。ですから、肺の中においても、何らかの機序で反応性が異なる可能性もあるのかとは、この論文を見る限りは思います。
○名古屋座長 それはよくわからない。例えば結晶性シルカには、石英とトリジマイト、クリストバライトがあって、どちらかというとトリジマイトに比べるとクリストバライトのほうが結晶表面の活性が強いというふうに言われていますが、その影響は、活性のレベルの差なのか、もっとすごい幅の広い影響なのか、その辺はわからないのですか。
○森本氏 そうですね。いま実際の論文の図表を見ていないから、何とも言えないところもあるのですが、ポジティブコントロールとしてクオーツを使っています。シリカはかなり炎症が強くて、そういうものに比べると、ルチルやアナターゼの分は、そこまで大きな差はないのではないかと思っています。私も読んではいたのですが、程度の差がはっきりわからないのですが、シリカに比べると差はかなり小さいものだろうと思っています。
○名古屋座長 そうすると、個人的にはあまり分けずにやられても、そんなに影響はないのかという気はしますが、どうでしょうか。是非分けたほうがいいというご意見があればお願いします。
○森本氏 1つ確認させてもらっていいですか。ルチルの生産量とアナターゼの生産量というのは、どのぐらいなのですか。
○松井化学物質評価室長 量的にはルチルのほうが多いのですが、触媒の単体で使われているものが1万トンほどナノ粒子であるということですので、アナターゼ型も相当多いことは確かのようです。
○宮川委員 結果を予想して、分けるべきか分けないでやるべきかということを決めてはいけないと思うのですが、発がん性を基準に評価値を設定して云々ということについての議論ですので、ナノのルチルは実際に化粧品等で顔の周りに塗るような用途として使われているものであることから、発がん性があるものがそれでいいのかという議論になってしまうのが心配です。発がん試験でポジティブに出るかとか、がんにつながる炎症が出るかということでは、実際に発がん性試験がポジティブに出ているのがアナターゼだけだと思います。その辺を考えると、そもそも発がん性があるかないかで評価の方法も変わってくるもので、そこを全部一緒にするというのは、多少違和感があるところです。ただ、ルチルについては、実際の設定がすごく難しいので、いますぐ分けて評価するとしたときに、ルチルはどうするかということは問題になると思います。しかし、全く同じとみなすと、過剰規制につながる可能性がちょっとあるような気がいたします。
○名古屋座長 ということは、いまのところは2の中で、要するにリスクの評価で結晶構造は同一の値にまずしておきますと。そのあとについて、3番の当面の間はそのようにするのですが、これから情報収集を入れて、ルチルの結晶構造について、有害性などの情報があったときに過剰評価にならない形の濃度がまた決まった点で変わると、現状は一緒という形でよろしいでしょうか。いま宮川先生が言われたところは頭の中に入れておきますが、評価の中でもし出てきたらまた考えるということで、現状のところは1つにまとめてという形でよろしいでしょうか。そんな中で、結晶構造はとりあえず同一の値として扱うという形で進めていきたいと思います。
 次は、表面の取扱いになります。10頁になりますが、ここのところはどうしますか。これはたぶんこのあとから出てくる濃度、評価値につながってくると思いますが、いずれにしてもNIOSHも大丈夫です。NEDOについても大丈夫なのですが、外挿してもらったところ、表面積を使ったものについては、外挿して使った値を使います。とりあえずいまのところ重量でいいのかと思います。この辺のところで、是非ご意見をいただければありがたいと思います。
○鷹屋委員 表面積で仮に何か値を設定して、最終的にこれでカンですよという話になると、表面積は求め方がいろいろあって、たぶんこちらで表面積で整理すると毒性がきれいになりますというのは、おそらく一次粒子の大きさから計算で出していると思います。出なければ材料を投与する前に、例えば懸濁液をする前に、乾いている状態で、BETと言って実際にガスを吸着させてやって、それは確かに間違いなく活性の表面の面積を測っているので、その値で整理するときれいな結果が出たというのはいいと思うのです。現実に気中で飛んでいる粒子の表面積はどう測るのかというと、測る機械はあるのですが、測る機械が出す数字と、いま言ったような例えば本当に一次粒子、完全に凝集粒子が一次粒子バラバラになると仮定して計算して出した値とか、BETで出した値とは必ずしもというよりは、かなりつながらないということが知られていますので、実務的に結構難しいのではないかという気がします。
○森本氏 あとからまた資料で出てくると思うのですが、実際の職場において、例えば単一のナノ粒子を使っている所と、ほかの粒子との複合して使ってくるところが出てくるのかと思うのです。その場合、例えばミクロンの粒子などを使ったとすると、重量濃度で比較した場合、大きい粒子のほうの比重は結構大きくなってくると思うのですが、いま使われている職場において、その辺の兼ね合いなどはどうなのか。例えば表面にナノ粒子がポンポンポンとあるような形とか、そのような使われ方もあるのかとは思っています。いかがでしょうか。
○名古屋座長 ただ、そういうところで、電子顕微鏡のサンプルを取ったときにどうしてもあるのが、一次で飛んでいる粒子を取っているのか、あるいは一次、二次がくっついて凝集体を取っているのか、電子顕微鏡でなかなか分けきれない部分があるのです。要するにあとからくっついてきたのか、凝集体としてそこに捕集されたのか。電子顕微鏡のほうでなかなか分かれられないので、実際にどうなのかなと。これから、一次粒子的なものと中間の凝集体と凝集体という形態の粒子を幅広く取れるサンプラーが開発され市場に出てくれれば、現実的にどういう形のものが飛んでいるのかと言うことが分かりますが、いまのところすぐというわけではなく、試験的にはそうしたサンプラーはもうできているので、それが市販されて初めてわかる。いま取っているサンプラーの中では、確かに単粒子を扱っているところでも、現場で取ってきた粒子を見てくると、やはり凝集体が多いなと。それは本当に凝集しているかどうか、電子顕微鏡のレベルとして見ることはできないということだと思う。
 そこを考えると、表面積の影響は確かに強いということはよくわかるのですが、濃度設定のときにたぶんそこが影響してくるのだと思いますが、そうでなかったら重量分析法で取り扱いたい。NEDOの外部専門評価委員会ときも中西先生が言われていましたが、できたらそのときに表面積を測れる測定で、少しそういう形のものを参考にしながらやられたらどうですかというアドバイスをいただきましたから、たぶん今回の場合は重量分析で置いておいて、それにプラスアルファ、できたら原料で表面積を見ておくことは1つあると思う。現場に持っていく装置は高価で大きいので、装置の活用が出来ないとおもいます。できたら原材料としてあるものの表面積を必ず測っておくという形の現場提供情報としていただければ、良いと思っていますが、その辺でよろしいでしょうか。
 ということで、今回、表面積については、あえてそれだけを現場の作業環境中で測定するということではなくて、できたら重量分析法のほかに原材料の表面積を測るというプラスアルファとして表面積の情報を収集したいという形でまとめておいてよろしいでしょうか。
(異議なし)
○名古屋座長 ありがとうございます。たぶんそのあとに濃度が出てきたときに、表面積の影響で森本先生が数字を出していますが、もう1つそれを採用することになったら表面積を測らなくてはいけないので、結論ではないのですが、いまのところここの段階ではこういう形で取りまとめたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
○名古屋座長 ありがとうございます。そうしましたら、これは大前先生がいらっしゃいますから決めていただけると思いますが、評価値の設定方法ということで、この辺のところはどうしましょうか。最終的には二次評価値の中で、結果として出すのは18頁になります。その途中はプロセスになってくるのかという形になります。NIOSHの方法ですと0.3になるだろうと思うし、NEDOプロジェクトだと0.6になるだろうし、もう1つ有害性の総合評価は0.15と、この辺の数値が出ていますが、この辺をどう取り扱うか。ロの中で動物実験の不確実性の換算の係数とかいろいろありますが、この辺を先生方が見られて、どの辺の評価値を使って二次評価値としていくかと。これは最終的には大前先生のところの委員会でやっていただくことですが、とりあえずこのところではどの形のもので推移していくかということになります。特に3番が0.15になってきます。これは表面積のほうからきていますので、ちょっと評価しないといけないかと思います。議論をよろしくお願いいたします。
○花井委員 ちょっと1つ関連してなのですが、NIOSHのRELの値の考え方とNEDOプロジェクトの考え方というのは、ある意味では閾値がないかあるかという、その辺のかなり大きな考え方の違いみたいなものもあると思うのです。それに関して、論文ではこうなっているというのはあって、それがどうかという議論があるのだと思うのですが、それと同時にだか、あるいはそれ以前だか、国としての方針というか、何か考え方として閾値の存在をどう考えるかとか、そんな前提の議論というのはないのですか。
○名古屋座長 それは大前先生のほうが。
○大前委員 やるかどうかわかりません。
○森本氏 国としてとかそういうのではなくて、個人的な考えでよろしいですか。閾値あり・なしというのは、やはり遺伝毒性にかかわってくることが多いのではないかと思います。これはいままでの報告からすると、遺伝毒性は複数のもので認められていたから、ありという考え方で、基本的には閾値なしで考える方法が普通なのではないかと思います。それで、リスクとして出たというような評価値が最初の評価値だと思うのですが、残りの分は炎症というところにエンドポイントを置いておりまして、これは例えば将来的に炎症が腫瘍につながるというプロモーター的な役割と考えているのではないか。ですから、腫瘍が起きる前に炎症が起きる。その炎症で評価する。そういうプロモーター的な場合は、閾値として考えるというのが私はあったのではないかと思うのですが、いかがですか。
○西川委員 炎症がプロモーション的に働くというのはそうだと思うのですが、遺伝毒性試験陽性ですから、それに加えていわゆるイニシエーション作用がありそうな気がいたします。
○森本氏 例えばアメリカのほうのFDAの基準でも、発がん物質で、それががんを認めるというのはありまして、それのプロモーター的な遺伝子、サイトカイン、はっきりは覚えていないのですが、そのようなある程度はっきりとしたものがわかっている場合は、それを閾値として求めているような報告も、たしかあったような感じがしたものですから、先ほどの発言をさせていただきました。
○清水委員 森本先生がまとめられた資料2に変異原性の部分がありますが、活性酸素を発生させることがどうも遺伝毒性につながっていると。これはアナターゼに関してなのか、あるいはルチルに関してなのか、両方、どちらかはっきり区別ができないのかどうかという点が1つ疑問がある。それから、活性酸素によってもし起こるとしても、この場合は構造異常なのか、バスイト異常なのか、そういう報告もはっきりわからないのですよね。
○森本氏 最初のほうですが、私が調べた遺伝毒性に関して言えば、どちらかというとルチルよりもアナターゼのほうが遺伝毒性は多かったですね。それに伴う活性酸素の酸性、これはそこまで大きな違いがあったのかどうか、ちょっと覚えてはいないのです。最初のものはP25です。P25の報告が、多いのは多いですね。だから、活性酸素で遺伝毒性といった場合、遺伝毒性までしっかり見た場合は、アナターゼのほうが数としては多いのかと思います。後半のことはすみません。
○清水委員 結構です。結局アナターゼで起こるのか、ルチルで起こるのか、その辺ははっきりしたデータはないのですね。
○森本氏 はっきりしたデータは。
○清水委員 ナノ粒子ということで、メカニズム的には。
○江馬委員 遺伝毒性については、アナターゼもルチルも、両方ポジティブの結果とネガティブの結果があると思います。活性酸素の発生は、アナターゼ型の方が強いです。ネガティブな論文とポジティブの論文の数を比較しても意味がないと思います。ポジティブの結果の論文は非常に論文化しやすいので多くなるのは当然で、ネガティブのデータの2番目以降の論文は非常に論文になりにくいので、ポジティブのデータが多くなると思います。数で言えばそういうことです。
 遺伝毒性については、メカニズムとして活性酸素種を介したメカニズムが考えられますので、ある反応を介した遺伝子の変化は間接的というか、二次的な影響だろうと思いますので、閾値があると思いますが、それが確定しているかどうか、まだ議論があるところだと思います。想定としては閾値があるだろうと思いますけれども。
○西川委員 前回もコメントしたのですが、活性酸素を発生するということを示した報告は培養細胞を使っての試験であって、vivoといいますか、動物レベルで活性酸素絡みであるという報告があるのでしょうか。
○津田委員 実際にやっている者として申し上げますが、既に論文になっていて、松井さんにはお渡ししたと思うのですが、ルチル型のコーティングなしの二酸化チタニウム、それを肺内に噴霧投与しますと、当然として炎症が起こります。8回投与して、その肺を潰して活性酸素量を見ますと、確かに上がっています。ですから、in vivoでも起こります。もう1つは、その肺内で何が起こっているかということで蛋白解析を行いましたところ、細胞増殖活性のあるサイトカイン、Mip1αが上がっていることも分かりました。in vitroでも肺のマクロファージを採取して、その1次培養液の中に二酸化チタニウムを入れてマクロファージして貪食させ、その培養上清をヒトの肺のがん細胞の培養液の中に入れると、その肺の上皮が増殖するということも見つけました。さらに、ルチル型の二酸化チタニウムは発がん2段階法でやりますと、肺腫瘍の発生を促進します。それを報告しております。ですから、話のストーリーとしてはグループ2Bであることのメカニズムは、肺内で起こったイベントが大きく関係することを一応報告しております。 いま同じことをアナターゼ型でやっておりますが、まだこれは論文にしておりません。
○名古屋座長 このところは我々が濃度を決めるわけではなくて、二次評価値を大前先生の所でやっていただくことになると思います。今後の方針の中では、吸入性粉じんについて、まず粒子に対して対象としてもらうということと、濃度としてはNEDOのものと、NIOSHのものと、有害性総合評価案が3つ出ています。これをそちらの委員会の中で決めていただけるという形で、今日はよろしいでしょうか。
○宮川委員 我々はいつも一次評価値と二次評価値を決めておりまして、相当安全のマージンを含んだ一次評価値と、許容濃度等の二次評価値を使って、リスク評価をしてきたと思います。そうすると、今回もいきなりあまりデータがないところで1つに絞って、それが一次評価値か二次評価値かどちらになるかわかりませんが、それ一本でいくということではなく、はっきりした証拠に基づいた特段の理由があるというのではない限り、基本的には従来の方法を踏襲し、一次評価値の設定の仕方は従来を基本、二次評価値については産衛もACGIHもないので、現在いくつか提案のあるところから適当なところを選ぶという方針がよろしいかと思いますが。
○名古屋座長 よろしくお願いいたします。それは先生方にお任せします。今日のところは要するに粒子径を一応決めたということと、濃度については比較をする上で設定していただければありがたいということで、よろしいでしょうか。最後になりましたが、表面処理の取扱いということで、これは前回もありましたが、現場を考えるとなかなか難しいなということで、ほとんどの場合、表面処理をするのは現場へ行って測定していると、どうしても処理している所が多いので、あえて処理を分けてするのかどうか。どうしても処理しない所の酸化チタンを測定することになったら、製造ラインの途中で処理していない所の現場を設定して測定するという形にします。ここはどうしましょうか。処理していない所のデータも取って、それを評価の中に結果として反映させたいということはあるかもしれませんが、通常の所ではどうでしょうか。気中の調査、一般的な処理の方法によっている事業場を対象にするという形で、よろしいでしょうか。必要に応じて、処理をしていない所の測定をしても、通常の場合はほとんどの事業場へ行って、そこで扱われている物について測定対象にするという形で、よろしいでしょうか。
(異議なし)
○名古屋座長 ありがとうございました。あと決めておくことはないですね。いまのところ結晶構造の所と表面積の取扱い、評価の設定、表面処理の取扱いということで、これでよろしいでしょうか。一応終わりますが、ここのところで事務局で何かありますか。
○松井化学物質評価室長 今後、有害性小検討会で検討いただくときに収集しておくべき情報とか、もしお気付きの点があればご指摘いただければと思います。
○花井委員 サイズの問題なのですが、ナノサイズ云々と議論しているわけですから、いろいろなデータに情報があれば、サイズ、平均値、あるいは分散の幅、それを測定法も含めて必ず書くような習慣をつけてほしいと思うのです。それから、レスピラブル、インハラブルといっても、ある分野の人はそれでいいのでしょうけれども、ちょっと外れてしまうと何のことだか全然わかりませんので、それなども例えばサイズで少し書いておくとか、そういうことは是非お願いしたいと思います。
○名古屋座長 たぶん測定の所でお願いするのだと思いますが、吸入性粉じんもそうですが、折角ですからナノの粒子を測定することがプラスアルファの測定として導入していただけたらいいかと思います。対象とするのは、ここでは一応、一次粒子としてのものに限りますが、吸入性粉じんを対象とするということと同時に、いま言われたように現場測定時にナノ粒子の情報も集めてくるという形で、よろしいでしょうか。ありがとうございました。ほかに何かありますか。
○原委員 ちょっと質問があるのですが、処理をしているときに結晶構造は基本的に変わらないと考えてよろしいのでしょうか。
○名古屋座長 変わらないと思います。
○原委員 大体同じ。それは高温になったら変わるということで、普通の処理では全然変わらないと考えて。
○名古屋座長 そうです。
○原委員 原材料が何であるかで調査は決めるということ。わかりました。
○名古屋座長 それはあとで確認しますが、前回の議事録を見たら、たぶんわかると思います。ナノ粒子の有害性の中で、資料1は終わりたいと思います。第2ということで、平成23年度ばく露実態調査対象物質のリスク評価について、これは事務局からまた1つずつ、よろしくお願いいたします。
○松井化学物質評価室長 少し資料が飛びまして、資料4です。これから以降、昨年度にばく露実態調査を行った物質についてのリスク評価です。最初に酸化チタンが出てまいりますが、1頁に「はじめに」があります。酸化チタンについては、平成22年度~平成23年度に、ばく露実態調査ということで事業場における濃度の調査を行っております。この経緯は、酸化チタンがIARCの発がん性の区分で2Bに分類をされておりましたので、リスク評価がやはり必要であろうということで始めたわけです。
 この頁の「はじめに」の最初の文章にありますように、平成22年~平成23年度にばく露実態調査を行いましたので、その評価を中心に中間的に今回取りまとめたいというものです。2番目の段落、3番目の段落にあるように、酸化チタンには職場において取り扱われているもので、一次粒径がナノサイズのものとそれ以外のものがあるということで、それぞれの用途に使われているということがあります。4番目の段落にありますように、平成21年に取扱い量500kg以上の事業場で、その取扱いの状況について、事業者から報告をいただいております。このときにはナノ粒子、それ以外は全く区分をせずにいただいており、その中からばく露の高そうなところを、あとでコントロールバンディングを使ってとか、いろいろ説明しますが、実地の事業場で調査を行ってきたわけです。何分にも有害性について一本で、つまりナノ粒子と顔料級のもの一本で考えてきておりましたので、顔料級のものが中心でばく露実態調査をやってきたということがあります。
 一方で、ナノマテリアルについては、ほかの粒子サイズの大きいものと異なる労働者の健康障害への影響が指摘されていることから、昨年リスク評価の方針を取りまとめて、これから順次行っていくということで、酸化チタン(ナノ粒子)が1番目の物質なわけです。これとの関係がありまして、今回はこのリスク評価のばく露実態調査を行ってきたものについては中間取りまとめという形で取りまとめておいて、ナノ粒子の今後行うリスク評価と併せて、両者の整合も図りながら粒子の大きさを踏まえた対応を検討していくようなことで、今回は中間取りまとめにしたいというのが、1頁の上から約半頁にわたって書いているものです。
 1頁の下から物理的性状等があって、2頁の真ん中辺りから有害性評価の結果があります。これはナノ粒子を意識せずに、酸化チタン、主に顔料級のものについて取りまとめたものです。3頁の真ん中辺りに(5)評価値があります。二次評価値、総粉じんとして10mg/m3ということで、ACGIHのTLVを採用して、いまのところこれで評価の目安としているところですが、今後ナノ粒子の評価値の設定方法との整合性についても検討が必要かというところです。下から3分の1ぐらいの所で、ばく露評価の結果があります。(1)主なばく露作業で、最初に先ほど申し上げた平成21年に行った事業場からの報告の状況を簡単にまとめております。
 4頁の最初ですが、これを踏まえて、コントロールバンディングなどを使って、ばく露の高そうな事業場を抽出して、ばく露実態調査を行った結果、2つほどの種類の作業において、比較的高いばく露が見られたところです。○1として粉体塗装の塗料として酸化チタンを使っているところ、○2として酸化チタンを製造する事業場で、臨時に篩い分けの作業を行ったところ、高いばく露が見られたということで、昨年この検討会に報告したときには、この篩い分けの作業の粒子の大きさについて、特に報告をしておりませんでしたが、その後、平成22年度に行ったばく露実態調査の対象事業場の粒子径について確認をしたところ、この事業場はナノ粒子の酸化チタンのみを製造している事業場であったということです。ですので、○2はマテリアルを製造している事業場ということです。その下のばく露実態調査の概要については、以下、調査方法を書いております。4頁の真ん中辺に測定分析法があります。サンプリングでメンブレンフィルターでレスピラブル粒子を、残りをグリットポットで捕集して、総粉じんとレスピラブルの粒子、両方を測っているという測定方法です。
 測定結果、総粉じんは5頁、6頁に表と図があります。総粉じんについては、最大の測定値が22.9mg/m3ということで、これは先ほどの篩い分けの作業で臨時に行ったものです。これを除くと、粉体塗装の作業で濃度が大きくて、14.7mg/m3が最大値でした。これらの数値は、いずれも先ほどの二次評価値の10mg/m3を超えているという数値でした。
 6頁からレスピラブル粒子の濃度について述べておりますが、6頁の真ん中辺で最大値が3.11mg/m3ということです。レスピラブル粒子は評価値を設定しておりませんが、これを粉じん則の酸化チタンの袋詰め作業が常時行われている屋内作業場に適用されている管理濃度が3mg/m3で、これをわずかに超えるという最大値になっております。7頁、8頁にレスピラブル粒子の測定結果があります。8頁のグラフを見るとわかるように、比較的濃度が高いのはすべて粉体塗装の作業でした。8頁(3)ですが、ちょっと説明が前後しますが、いま5頁から8頁にわたって表とグラフが出ておりました測定結果は、平成22年度~平成23年度に行ったものです。先ほどちょっと申し上げたように、最初の年、平成22年度にやったところ、粉体塗装と臨時に行われた篩い分けの作業ということで、高い濃度が出てきたわけです。○1の粉体塗装の作業に関連しては、平成23年度に塗装の作業ということで追加をして、測定を行っております。粉体塗装2カ所、液体塗装1カ所ということです。○2の篩い分けの作業に関連して、同じような作業を行った事業場がなかったかということで、関連の事業者団体からの情報などを踏まえて、同じような作業を行っている事業場を探したのですが、現実には見つからなかったということでした。
 8頁の下のアの粉体塗装の作業についてですが、これの測定値の分布が9頁の下半分の表にあります。粉体塗装を行う事業場で、総粉じんについて、9頁の下半分の表です。直接、粉体塗装の作業を行っていた労働者が4名、9頁の表の全体という縦の欄の真ん中に「粉体塗装の作業4」とありますが、このうち10mg/m3という評価値を超えていたのが2名でした。
 10頁の上の表はレスピラブル粒子ですが、粉体塗装を行う事業場で、粉体塗装の作業を実際に行っている者は先ほどと同じ4名ですが、レスピラブル粒子については3mg/m3以上の人が1名、1~3mg/m3の人が2名ということで、4名中3名は1mg/m3を超えていたということです。注書きにありますように、3mg/m3は、現在は適用されておりませんが袋詰めの作業については管理濃度があって、それを超えていると。1mg/m3については、産衛学会から勧告されている第二種粉じんの許容濃度ということで、酸化チタンの有害性を勘案したというよりは、全体の粉じんの中の種類分けで決められているのですが、この辺を超えている人が多かったということです。
 前後しますが、9頁の上から6行目にありますが、これらの事業場では粉体塗装の実施に当たって、外付け式又は囲い式の局所排気措置がいずれも設置されておりました。直接の粉体塗装の作業を行うに当たっては、局所排気装置が設置されておりましたが、この中で囲い式の局所排気装置が有効に機能していた事業場、これは測定されたのが1名のみですが、ここにおいては総粉じんにおいても吸入性粉じんにおいても、比較的低い濃度が測られておりますので、発散抑制装置の状況がばく露レベルに影響していることが考えられるということがあります。いずれも、それぞれ労働者は防じんマスクを使用していたという状況です。粉体塗装の作業については、このような状況です。
 9頁の真ん中イに先ほどの篩い分けの作業があります。これについては、そもそも平成22年度で酸化チタンのナノ粒子を製造している事業場でこの作業を行ったのは異物の混入があり、それに対応するために篩い分け作業を行ったということで、この事業場においても同じ作業はもう行われない。少なくとも同じトラブルがなければ行われないということで、同様の作業はないか探したところ、先ほど申し上げたように同じようなところはなかったというところです。
 10頁の今後の対応です。これが中間取りまとめに当たってのまとめということにしてはどうかということです。最初の「今後の対応」は、先ほど申し上げたように、「ナノ粒子のリスク評価結果と併せて、両者の整合も図りながら、粒子の大きさを勘案した対応を検討することとする」ということで結んでおります。次の段落で、今回のばく露実態調査において高いばく露が見られた作業については、評価値をナノ粒子との関係で再検討して、いまの評価値でいいかということを確認した上で対応を検討する必要があるということがあります。粉体塗装については、溶剤の発散でのいろいろな健康や環境への影響を勘案して、そういう溶剤を使わないので、労働者の健康にも環境にもよいということで、少しずつ普及していると伺っておりますが、こういう作業自体もさらに把握しないといけないかということで、並行して作業実態を把握して、評価値の再検討結果で、もしも措置が必要であれば、適切な発散抑制措置などを検討することが必要だという結論にしております。それから、先ほどの臨時で実施された篩い分けの作業については、物がナノ粒子ですので、ナノ粒子のリスク評価の中で評価を行うこととするという結びで案を作っております。事務局からは以上です。
○名古屋座長 ありがとうございます。これにつきましてどうでしょうか。最終的には今後の対応という中でこういうふうにまとめてありますけれども、何かありますか。
○森本氏 異物が混入したというところの高濃度のところですが、これは要はアクシデントが起きたということで、よろしいですか。
○松井化学物質評価室長 いいです。
○森本氏 その場合、アクシデントが起きたことを、ご本人は認識した作業だったのか。それとも全然、訳のわからないままアクシデントというか。
○松井化学物質評価室長 聞いている範囲では認識されているはずです。普段、全く行わない作業を当人は行っていますので。
○森本氏 そういうことですね。だから、その場できちんとした局排というのも使われていなくて、こういうふうな高い値が起きたということになっているわけですね。先ほどの話の中では、きちんとした局排を使った作業者の人はばく露のレベルが低かったという話でした。
○松井化学物質評価室長 それは粉体塗装のほうで、粉体塗装はいつも行っている作業だけれども、委託先の機関が行って調査したときに排気装置の稼働と言いますか、効果がうまくいっていないようなことがあったと聞いています。
○寺島化学物質情報管理官 前半の資料になりますが、参考4-1のばく露実態調査の横表の8頁です。
○松井化学物質評価室長 8頁に大きな横表があって字が細かいですが、F事業場の労働者No.のf4、f5の方で真ん中辺から右側です。局排は外付け式のものを使ったようですが、あまりうまく稼働していないようですね。防じんマスクは付けておられたということです。
○森本氏 例えば測定の間にタバコを吸っているとか、そういうのはないのですね。
○松井化学物質評価室長 ないはずです。
○森本氏 わかりました。
○名古屋座長 A測定が1桁ですから、ここは異常に高いですね。よろしいでしょうか。あと何かほかにありますか。
○津田委員 素人の質問ですが、粉体塗装はどういう塗装方法ですか。
○松井化学物質評価室長 私も素人なので素人が説明しますけれども、普通、塗装は有機溶剤か水系のものに溶かして吹き付けますね。それで溶剤なり水系のものが蒸発して、あと塗膜になるのですが、これは溶剤も水も使わずに、被膜になる樹脂とその顔料が混ざったものを特殊な方法で吹き付けて、それを高温に合わせ、高温に合うことによって樹脂が被膜を形成するということだそうです。
○津田委員 そうするとチタニウムのほうに、最初、樹脂がコーティングしてある。
○松井化学物質評価室長 樹脂と酸化チタンはないと被膜になりませんので、最初の状態かどうかというのはちょっと。
○津田委員 壁に糊みたいなのが貼ってあって、吹き付けるほうのチタニウムにも糊と親和性のあるものがあって吹き付けると、そういうものですか。
○松井化学物質評価室長 ものが金属のようです。あとで加熱するので金属を塗装するのに使われるのが多いようで、吹き付ける側は樹脂と酸化チタンで、両者がどういう状態でなっているかというのは、ちょっと正確に調べないとわかりません。通常は閉鎖された所であまり人が入らないでやるようですが、この作業の調査をしたときは、人が手で吹くような作業もあったという報告になっています。
○津田委員 その作業は、こういうペンキを塗るときとはまた別なのですか。
○松井化学物質評価室長 工程は、通常の塗装とはかなり違うと聞いています。
○津田委員 どうしてそういうことをやるのですか。
○松井化学物質評価室長 ですから、例えば有機溶剤など、人の健康なり環境にも相当。
○津田委員 有機溶剤のばく露を防ぐために。
○松井化学物質評価室長 はい、それがかなり大きな要因のようです。
○圓藤委員 車の。
○名古屋座長 自動車の下の塗装ですね。酸化しないように、錆びにならないように。
○津田委員 自動車の下塗り?
○名古屋座長 下塗りというよりも車体の下のほうですね。
○津田委員 塗ったら白くなるでしょう。
○名古屋座長 車の色に応じて色は付けますね。白ですからいろいろ色が付けられますので。実際に行かれたとき、どうでした。
○東久保氏(中災防) この吹付け塗装のときには塗料粉を帯電させて、それを静電塗装という形で吹き付けます。そうすることによって被塗装物の金属に塗料がきれいに付いてくれて、それで一定の厚さの塗膜を作ることができますので、その後に加熱というか、そういう加工をして均一な一定の塗膜が形成されるという形です。
○津田委員 主に金属に塗る場合。
○東久保氏 そうです。
○津田委員 こういう壁ではないのですね。
○東久保氏 金属です。車なんかでもホイールや自転車のフレームなど、一部の所ではそういう粉体塗装を使っている。あるいは鋳鉄管ですね。管の中のコーティングというのであれば粉体塗料で非常に強い塗膜ができますから、いま現在使われている状況です。
○名古屋座長 よろしいでしょうか。
○花井委員 これも教えてほしいのですが、こういう使い方というのは、かなり小さな規模の所でも広くたくさんあると思います。今回あった5万7,637人ですか、920事業場、こういった有害物ばく露作業報告を出してくる所は、こういう作業をどのくらいカバーできているのか、何かその辺はつかんでいますか。
○松井化学物質評価室長 500kg以上の取扱いがある所に、労働安全衛生法の事業者の報告という規定を使って報告いただいています。これは報告しないといけないという義務が生じていて、実は罰則もありますので皆さんに報告いただいていると考えています。ただ、500kgで切っていますし、あまり少量の方まで報告していただくのもいろいろ問題がありますので、500kgで切った場合にどのくらいのカバー率になるかというのは物によって異なってくるかと思います。
○花井委員 小規模の所でかなり危険な使い方をしている所もあるかもしれないけれど、その辺はつかめないと。
○松井化学物質評価室長 一応、仕組みとしては、1年目にそこから抽出して調査をして、ばく露が高い所は、いま、おっしゃったように少量で使っていて特殊な使い方をしているかもしれないので、そこも含めて2年目に調査すると。事業者団体等に状況を聞いて、できだけカバーするようなことで対応しています。
○名古屋座長 よろしいでしょうか。そうしましたら酸化チタンについては、この中間報告にあるとおりということで、酸化チタン(ナノ粒子)のリスク結果を踏まえたリクス評価を、これからよろしくお願いしますということで、ありがとうございました。次の物質についてアンチモンですか、事務局からよろしくお願いいたします。
○寺島化学物質情報管理官 資料5のアンチモン及びその化合物初期リスク評価書(案)について、ご説明させていただきます。このアンチモン及びその化合物のリスク評価書としてご検討いただくのは今回が初回になりますので、冒頭から説明させていただきます。
 1頁で、(1)化学物質の基本情報ですが、ここにありますようにアンチモン金属をはじめとして、主なものして三酸化二アンチモン、以下、いろいろな物質があるということです。(2)物理的化学的性状ですが、アンチモンとしては融点630℃の白色の塊ということで金属です。三酸化二アンチモンの沸点のところに「昇華」と書いてありますが、三酸化二アンチモン昇華によって取り扱うことがあるということです。水素化アンチモン、スチビンと言われるものも存在しています。
 通し頁の3頁で、(3)生産量、用途ですが、三酸化二アンチモンについては生産量が2,800トン余り、主な用途としては各種樹脂等の難燃助剤、顔料等に使われています。2の有害性評価の結果で(1)発がん性については、ヒトに対して発がん性が疑われると整理しています。IARCでは三酸化二アンチモンを2B、三硫化アンチモンを3に分類していて、日本産衛学会では2B、ACGIHではA2となっていますが、これも三酸化二アンチモンとなっています。閾値の有無の判断ですが、三酸化二アンチモンについては閾値なしと判断されるとし、根拠としては下にありますようにDNA損傷試験、マウス経口反復投与等で陽性、ヒトリンパ球を用いたコメットアッセイで高濃度ばく露群で陽性を示しています。これらを踏まえて域値なしと判断するということです。ユニットリスクについての情報はなしということです。
 (2)発がん性以外の有害性ですが、急性毒性については五塩化アンチモンについて吸入毒性がラットで720mg/m3、/2Hです。8行目の経口毒性はラットで34,600mg/kgと非常に低い。これは三酸化二アンチモンについてです。その下の行にある酒石酸アンチモンカリウムについて、マウスの後も酒石酸アンチモンカリウムについてのものです。皮膚刺激性/腐食性:あり、アンチモンヒュームや三酸化二アンチモン粉じんによる皮膚炎が報告されています。眼と皮膚感作性は判断できない/報告なしとなっています。生殖毒性:ありとされています。
 (3)許容濃度等ですが、ACGIHのTLVで0.5mg/m3、アンチモン及びその化合物ということで全体として規定されていて、日本産衛学会では0.1mg/m3、これもアンチモン及びその化合物ということで、スチビンを除くとされています。
 これらを踏まえて有害性評価では、評価値として一次評価値を閾値なしということで、ユニットリスクがないので設定せずとしています。二次評価値としては、日本産衛学会の許容濃度を採用して0.1mg/m3、これは暫定です。
 3のばく露評価の結果ですが、(1)有害物ばく露作業報告の提出状況については、35行目にありますように360事業場から869作業について報告があり、主な作業としてはこれこれとありますが、せっかくですので後ろから2枚目のばく露作業報告集計表をご覧いただくと、細かくて恐縮ですが、いろいろな作業について用途、分類、ばく露作業報告をいただいたものの内容を集計したものです。どの辺がボリュームゾーンになるかというのが、これでご覧いただけるかと思いますが、用途のところで、○2他の製剤等の原料として使用している部分と、○3触媒又は添加剤として使用している部分が、全体としてボリュームゾーンになっています。内容としては、おそらく難燃助剤としての使用が多いかと思います。○7顔料、塗料等の使用とありますが、アンチモンは顔料としても使われていますので、ここのところもボリュームゾーンになってくるかと思います。それと分類としては他の製剤の原料になる部分ですが、触媒としてというのも見られています。
 元に戻っていただき、こういうような作業が報告されていますが、全体として対象物の取扱量は延べで4万7,000トン、労働者の合計は延べで1万人近くということでした。
 5頁の(2)ばく露実態調査結果ですが、ばく露作業報告をいただいた300余りの事業場から、コントロールバンディングを用いて、ばく露レベルが高いと推定される事業場に対し、今回、一次調査を踏まえてワンステップ進んでいますけれども、それらによって詳細な作業実態を把握した上て9事業場を選定し、ばく露実態調査を行っています。これらの事業場で認められた作業としては、「計量、投入」「袋詰め、包装」等の作業でした。対象事業場において31人の労働者の個人ばく露測定を行い、10単位作業場についてA測定を行い、39地点についてスポット測定を実施しています。
 測定方法としては、23行目からありますように個人ばく露測定ではメンブランフィルターを用いた捕集、分析法としてはICP発光分析、ICP-MS法、GFAAS法です。測定結果としては、31人の個人ばく露測定中の幾何平均値で、この辺は細かいので次の頁のグラフをご覧いただいたほうがわかりやすいかと思います。いちばん高い値はグラフのいちばん上にある0.400mg/m3で、暫定二次評価値である0.1mg/m3を4倍ほど超えています。A測定の評価結果も算術平均値で0.162mg/m3です。A測定のところで、この高い値の出た作業場は三酸化二アンチモンの自動計量、充填が密閉化された装置で行っていたのですが、ここでは高い値になりました。次の6頁の上から3行目ですが、この労働者の方は手作業で計量、袋詰め作業を行っていました。こういった所でのスポット測定も高かったところから、高いばく露が個人ばく露測定で確認されたものと考えられます。このような作業を行っていた別の事業場の労働者の個人ばく露測定でも、0.254mg/m3と高いレベルを示していることから、三酸化二アンチモンの計量、投入、袋詰めといった一連の作業をする方々で、高いばく露が認められたということです。
 8行目に「一方」とありますように、アンチモンメタルから三酸化二アンチモンを揮発製練と呼ばれる方法によって製造する事業場においても、炉内の残渣除去、インゴットの投入等を行う労働者の方で0.343mg/m3という値が測定されています。揮発製練というのは、私も素人ですが、金属のアンチモンメタルを酸化させて三酸化アンチモンしたところを揮発させ、三酸化二アンチモンが揮発してきたところをつかまえて製品とするものだそうです。
 4のリスクの判定及び今後の対応ですが、アンチモン及びその化合物について、個人ばく露測定では4人が二次評価値を超えていました。こういった作業でばく露が高かったということです。1枚紙で資料5-2をご覧ください。話が元に戻って恐縮ですが、IARCがこれまでの経緯ということで、「アンチモン及びその化合物」は平成20年に選んでいるわけですが、このころは発がん性に着目して選んでいます。IARCの区分に従って選んでいるわけですが、IARCの発がん性評価は三酸化アンチモンについて「2B」としていたということで、○2にありますように、ACGIHのTLV及び産衛学会の許容濃度が勧告されているのが、「アンチモン及びその化合物」という大きいカテゴリーであったこと。MSDS対象物質としてのカテゴリーが、そういう幅広の部分であったということで、「アンチモン及びその化合物」についてリスク評価の対象とされたわけですが、IARCの部分で三酸化二アンチモンのみが「2B」とされていること。2にありますように、ばく露実態調査でばく露が高いとされているのが三酸化二アンチモンを取り扱う作業、三酸化アンチモンの揮発製練というので、これを作っている事業場ということでしたから、3のリスク評価における今後の対応方針として、(1)にありますようにばく露実態調査結果とIARCの評価を勘案し、当面、詳細評価を行う対象は三酸化二アンチモンのみとする。
 (2)として三酸化アンチモン以外のアンチモン化合物、五酸化アンチモンを含む多種多様なものと、金属アンチモンについては、○1ACGIHのTLVが五塩化アンチモンの健康影響から設定されていること。○2三硫化アンチモン、三塩化アンチモン、酒石酸アンチモニル塩等で有害性に関する報告があることから、有害性は無視できない状況にもありますので、「リスク評価に係る企画検討会」で今後の対象物質としてそれぞれ選定する際に候補物質として提示し、検討いただくこととしてはどうかということです。このような内容を、先ほどのリスク評価書の4の部分にも記載していて、三酸化アンチモンについて詳細リスク評価というところに進んではどうかという案にしています。
 6頁の32行目からですが、三酸化二アンチモンについて詳細リスク評価をすることにして、その際には、今回、リスクが高かった作業について作業工程に共通した問題かを詳細に分析する必要があり、自主的なリスク管理について指導の対象としていくこととしています。事務局から以上です。
○名古屋座長 ありがとうございました。今までアンチモン及びその化合物という形で設定されましたが、実態調査等をひっくるめて見てくると、三酸化アンチモンのほうの影響が強いということです。そこによってばく露評価を超えていますので詳細評価にいくのですが、このとき見てくると、三酸化アンチモンのほうは詳細リスク評価にいって、その残りは、これは企画検討委員会で出したものですから、そこにお返ししてもう一度個別に検討していただき、それを対象物質としてまた評価するどうか、そういう形のまとめ方だと思います。これはいかがでしょうか。
○原委員 1点だけ、4頁の二次評価値が0.1mg/m3、アンチモンということで、その上の(3)の許容濃度が0.5mg/m3、スチビンが0.1mg/m3です。5分の1になって25℃で換算すると、おおよそ等しいという基準だと思えますけれども、スチビンをアンチモンの化合物として考えてもいいというのは、よろしいのかどうか、有害性評価委員の方からお聞きしたいのです。
○名古屋座長 評価の先生方、どうでしょう。取りまとめていらっしゃる大前先生は退室されてしまったので、どなたか評価委員会の先生方の中で発言していただければと思います。それでは、評価検討会のところでまた考えていただくという形で、よろしいでしょうか。いまのところ答えが出てこない。
○寺島化学物質情報管理官 ちなみに、今のお答えではないのですが、アンチモンの有害物ばく露作業報告の集計表のところに、どういう性状で扱っているかというのがあり、固体、液体というのはあるのですが、気体というのがなかったのです。ゼロでしたので報告としては上がってきていないと理解していますが、かといって全くゼロではないと思うので、500kg以上のところはなかったと。
○名古屋座長 濃度としてはあるけれども。
○櫻井委員 このスチビンのところですけれども、資料5の12頁にも書いてあるように、上から3分の1ぐらいのところです。アルシンと同じようにスチビンも特殊な毒性、溶血があるということで、全く違った取扱いをするのが妥当だろうと一般に判断されていると思いますし、それでよろしいのではないかと思っています。
○名古屋座長 取扱いとして上がってきていなかったということで、今回だけは酸化アンチモンという形にしたよという形で、よろしいでしょうか。そうしましたら特に資料5-2に書かれていることと、それから今後の対応という形の中で考えてみると、酸化アンチモンの製造取扱いについては詳細リスク評価に移行するということ。なお、酸化アンチモン以外のアンチモンについて、金属アンチモン、その他については再度、企画検討委員会のほうに検討をお願いするということで、これは事務局にお願いするということでよろしいですか。ありがとうございました。資料6について事務局からよろしくお願いします。
○寺島化学物質情報管理官 資料6のキシリジンです、1頁でジメチルアニリンという別名のある有機物です。(2)物理的化学的性状ですが、臭気のある液体で沸点が200℃余り、蒸気圧が4~130Paです。
 2の有害性評価の結果ですが、(1)発がん性についてはヒトに対する発がん性が疑われるということで、2,6キシリジンについてIARCで2Bとされていて、他の異性体は区分外となります。閾値の有無ですが、判断できないとされています。総合的に見て判断できないということです。(2)発がん性以外の有害性ですが、急性毒性の部分は、吸入毒性がマウスで149ppmです。それ以外のところについては報告なし、判断できない等が多いですが、生殖毒性については、ありとされています。(3)許容濃度等ですが、ACGIHで0.5ppm、経皮吸収ありとされています。産衛学会では設定がありません。(4)評価値として、一次評価値は設定せず、二次評価値については0.5ppmを採用しています。
 3のばく露評価の結果ですが、(1)有害物ばく露作業報告の提出状況は9事業場(うち1事業場は誤報告)から作業について報告があり、これらは他の製剤の製造を目的とした原料としての使用で計量等の作業をしています。延べ労働者数が69人でした。(2)ばく露実態調査結果ですが、ばく露ガイドラインのコントロールバンディングを用いて、ばく露レベルが高い2事業場を選定し、4頁の上から2行目、その2事業場に対してばく露実態調査を行っています。なお、8事業場のうち6事業場については生産終了、または当面生産予定なしということでしたので、全数当たったということです。対象の2事業場における用途ですが、「医薬品又は染料の中間体の合成原料としての使用」でした。「反応槽への仕込み」「キシリジンの回収」の作業がありました。3人に対して測定を行っているのですが、A測定とスポット測定も実施しています。
 測定結果ですが、20行目にありますように8時間TWAの幾何平均が0.0038ppm、二次評価値が0.5ppmですので、かなり低いことになります。最大値が0.0108ppmでした。個人ばく露測定において最大であった方が、労働者が作業したスポット測定では0.0600ppmで、個人ばく露測定の結果と矛盾はなかったということです。この事業場では当該原料を過剰に使用するということで、反応槽にたくさん投入しておき、反応後、未反応のキシリジンを回収する作業でばく露の機会があったということです。
 4のリスク判定及び今後の対応ですが、3人の方の測定の結果、0.5ppmを超える高いばく露が発生するリスクは低いということで、今後、自主的なリスク管理を行うことが必要とまとめています。グラフのほうも、右にありますように対数メモリーに対してかなり低い値となっています。以上です。
○名古屋座長 ありがとうございます。ここはどうでしょうか。3人ということと、二次評価値に比べて著しく低いばく露濃度の結果が得られたということですので、何かありますでしょうか。そうしましたら、これは通常どおりでという形で、キシリジンについては、ばく露状況から初期濃度リスク評価ということで、終了ということでよろしいですか。ありがとうございました。1つ残っていますが次回ということで、資料8のところで事務局から今後の予定について、よろしくお願いします。
○瀧ヶ平化学物質評価室長補佐 今後の予定です。5月22日(火)、14時から、825会議室で残りの物質をやりたいと思っています。第4回目が6月6日で、次回でまだ終わらない物質がたぶん残りますので、それをやっていきたいと思っています。参考1に、今回、リスク評価をする物質の図が書いてありますが、順次、やっていきたいと思っています。前回の案内には6月22日を書いていたのですが、おそらくあと2回で処理できるのではないかと思っています。万が一のときには6月22日もということで、委員の皆様方には念頭に置いていただければと思います。以上です。
○名古屋座長 ありがとうございました。できるだけあと2回で終わらせたいと思っています。本日、特にナノのところでいろいろ議論いただきましてありがとうございました。それでは以上、本日のリスク評価検討会を閉会します。本日はお疲れさまでした。ありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働基準局が実施する検討会等> 平成24年度化学物質のリスク評価検討会> 平成24年度第2回化学物質のリスク評価検討会

ページの先頭へ戻る