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2012年9月27日 医師臨床研修制度の評価に関するワーキンググループ(第7回) 議事録

○日時

平成24年9月27日(木)10:00~12:00


○場所

厚生労働省 専用第23会議室(19階)
東京都千代田区霞ヶ関1-2-2


○議題

総論事項(基本理念、到達目標等)等について

○議事



医師臨床研修制度の評価に関するワーキンググループ(第7回)



日時 平成24年9月27日(木)
10:00~
場所 専用第23会議室(19階)


○臨床研修指導官 ただいまから、医師臨床研修制度の評価に関するワーキンググループを開催させていただきたいと思います。本日は、先生方にはご多忙のところご出席をいただきまして、誠にありがとうございます。本日は、岡留委員が所用によりご欠席とのご連絡をいただいております。
 また、本日の議題に関連して、参考人の先生方をお呼びしております。聖路加国際病院長の福井次矢先生です。名古屋大学医学部附属病院医療の質・安全管理部副部長の安田あゆ子先生です。なお、文部科学省医学教育課からは渡辺企画官にお越しいただいております。以降の議事運営については、座長にお願いします。堀田先生、よろしくお願いいたします。
○堀田座長 皆様、おはようございます。今日は、定刻よりも早く皆さんにお集まりいただきましたので、早く開始することにいたします。今日は参考人の方にもご出席いただいており、かなり膨大な資料がありますが、これを基に、そろそろ論点整理に入っていく時期になりました。ディスカッションの時間をあとできちんと取りたいと思いますので、ご発表の方々には誠に申し訳ありませんが、コンパクトにお願いしたいと思っております。
 議事を始める前に、資料の確認からお願いします。
○臨床研修指導官 お手元の資料の確認をお願いします。いちばん上が議事次第、構成委員名簿等が綴られている束です。次がヒアリング資料-1、福井先生の資料です。ヒアリング資料-2は?~?の3部構成になっていますが、安田先生の資料です。ヒアリング資料-3は、片岡先生の資料です。ヒアリング資料-4が田中先生の資料です。
 続きまして、事務局提出資料-1が横の束です。事務局提出資料-2が?、?の2部構成になっております。事務局提出資料-3です。
 続きまして、参考資料-1ですが、?、?の2部あります。参考資料-2と参考資料-3がそれぞれ1枚ずつです。欠落等ありましたらお申し付けください。
○堀田座長 それでは、ただいまから議事に入りますが、資料の不足等はありませんか。よろしいですか。
 本日は、先ほど冒頭に申し上げたように、臨床研修で実施したアンケート調査の結果を踏まえて、基本理念や到達目標についての議論をしたいと思っています。その前に、臨床研修に関するアンケート調査の概要全般について事務局から説明をお願いします。
○医師臨床研修専門官 それでは、事務局提出資料-1をご説明します。臨床研修に関するアンケート調査の概要です。目的としては、臨床研修制度の見直しのための基礎資料を得ることを目的とし、期間としては本年の3月1日から4月20日までを調査期間としております。
 対象としては、病院票、患者票、研修医票、臨床研修指導医票という4つの票組みになっており、各対象はご覧のとおり、病院では平成24年3月現在の基幹型臨床研修病院のすべて、患者では基幹型臨床研修病院で2年次研修医が担当している患者、これは抽出調査になります。研修医については、平成24年3月末までに臨床研修を修了する医師のすべて、臨床研修指導医については、平成23年4月に臨床研修医の採用実績がある基幹型臨床研修病院の臨床研修指導医のすべてが対象になっております。
 回収率については、これは一定の推計ですが、病院票は68.6%、患者票は76.4%、研修医票は67.4%、臨床研修指導医は78.2%となっております。
 次の頁です。各4つの調査がどのような項目を設けていたかですが、病院票については、臨床研修制度を運営するための院内体制や病院群の状況、臨床研修医への評価方法、EPOCの導入の有無、研修プログラムの評価方法、研修医募集定員の考え方などを調査しております。患者票については、研修医の自己紹介の有無、説明のわかりやすさ、質問への対応、診療に対する安心感、問題があったときの対応や全体的な満足度などを尋ねております。研修医については、研修医の属性とともに、研修プログラムの選択理由や研修プログラムの概要、満足度やキャリアパスなどについて尋ねております。指導医については、指導医の属性とともに、臨床研修において必要と考えられる研修科目・期間、指導医に求められる資質、指導医講習会に求める内容や指導の実態、満足度などを尋ねております。
 次の頁です。臨床研修に関するアンケート調査、これは調査方法のフローですが、厚生労働省より各臨床研修病院に厚生局を介して調査票を送付し、それぞれ、病院アンケートですと病院長やプログラム責任者等へ配布、指導医ですとすべての指導医に配布します。臨床研修医に関しては調査票が2枚あって、調査票C-?が全員にお配りしているもの、C-?が5名に1枚の割合で、やや詳細な調査票となっておりますが、病院が選定した研修医に回答していただいているものです。患者については、一定の抽出のもとに各病院においてお配りしております。臨床研修医も担当患者に配布しているということです。以上です。
○堀田座長 全体的にこのような形のアンケート調査です。患者から指導医までのフローを紹介していただきました。それに基づいて、今回用意している資料に基づいていまから報告をいただくわけですが、福井先生から研修医のアンケートについてのご紹介をお願いします。なお、福井先生は所用で11時ごろに立たれますので、よろしくお願いします。
○福井参考人 ヒアリング資料-1に基づいて説明します。ただいま事務局から説明がありましたが、アンケート調査項目のうち研修医を対象に聞いた項目をいくつか、先ほどの事務局の資料で2頁に項目を挙げておりますが、その中のいちばん最後の「研修内容の自己評価」と、経験症例数の現在までできている解析について簡潔にお話します。
 1頁です。回答者数・分析対象が5,052名です。20ヶ月以上の2年間の研修内容について尋ねていて、20ヶ月以上の研修期間について回答した研修医を対象にしています。大学病院、臨床研修病院のそれぞれの属性を書いてありますが、大学病院のほうが男性のパーセンテージがやや低めです。「継続プログラム」と「弾力化プログラム」という言葉をこの解析では使っています。継続プログラムは、研修が必修化されたあと、そこに書いてありますように、2年前まで7つの診療科をローテーションすることが必須とされていたので、その7つの領域をすべてローテーションしているプログラムで「継続PG」と呼んでいます。そのようなローテーションをしていないプログラムは「弾力化PG」と呼んでいます。
 1.基本的臨床知識・技術・態度の習得状況についてですが、98項目あります。すべては用意しておりませんが、4頁の表1を見ると、例えば「鼓膜を観察し、異常の有無を判定できる」「直腸診で前立腺の異常を判断できる」「ショックの診断と治療ができる」「基本的な臨床知識・技術について後輩を指導することができる」などです。それらについて、4種類の分析を示しております。最初が平成14年、必修化される前のデータと、平成23年までに得られている今回のデータの全体像で自信を持って「できる」と答えているパーセンテージは、時系列でほとんど変化がありませんでした。つまり、今回2年間の研修が終わった研修医で、全体的に習得状況が悪くなったとか、非常に良くなったといった傾向は見られませんでした。もう1つ、大学病院の研修医と臨床研修病院の研修医を分けて見ても、時系列についても概ね変化はありませんでした。
 3番目は、時系列ではなく今回の対象者について、大学病院で研修した研修医と臨床研修病院で研修した研修医との横断比較です。その結果が先ほどの4頁の表1ですが、23項目で臨床研修病院の研修医のほうが有意に、大学病院の研修医に比べて「確実にできる、自信がある」または「だいたいできる、たぶんできる」と答えています。4段階評価をしているうちの2段階、「確実にできる」あるいは「だいたいできる」と答えた者の割合を見ていますが、23項目で、臨床研修病院の研修医のほうが大学病院の研修医に比べてそのように答えた割合が高かった。反対に、大学病院の研修医のほうが臨床研修病院の研修医に比べて、有意に「確実にできる」あるいは「だいたいできる」と答えた研修医の割合が高かったという結果になりました。
 先ほどの4~5頁をご覧ください。対象者が多いものですから、パーセンテージが大きくは変わらなくても、有意差が出ています。10ポイント以上差が出ているのは、4頁では「骨折、脱臼、捻挫の鑑別診断ができる」という項目で大学病院の研修医より臨床研修病院の研修医のほうがほぼ10ポイント高い。下から6つ目の「救急患者の重症度および緊急度を判断できる」が90%と78%で10ポイント以上の差がある。反対に、大学病院の研修医のほうが「できる」と答えた割合が高いのが5頁の上から2つ目の眼底所見と、9項目目の内分泌学的検査、下から6項目目の「データの種類に応じて統計学的解析ができる」、下から4つ目の代表的な精神科疾患などで、10ポイント以上の差がついています。
 1頁に戻ります。横断比較ですが、これは一人ひとりの研修医が答えたものを全部チェックしてもらったもので、継続PGの研修医と弾力化PGの研修医を比較したものです。98項目中14項目で、継続PGの研修医のほうがより有意に「できる」と答えていて、反対に弾力化PGの研修医のほうが継続PGの研修医より有意に「できる」と答えた項目は2項目でした。それが6頁の表2に書いてあるような項目です。一応有意差はあるということですが、それぞれ見ると10ポイントも20ポイントも差があるものはあまりなく、いちばん大きなものは、上から3つ目の「妊娠の初期兆候を把握できる」という項目だと思います。12ポイント近く差が出ております。
 次に「経験症例数」についてです。1頁の下から5行目ですが、経時的な比較については概ね変化がない。大学病院と臨床研修病院に分けた場合の経時的な変化については、「妊娠」「小児ぜんそく」については、「1症例以上経験した」と回答した研修医の割合が経時的にはやや低下してきております。
 2頁です。平成23年度の対象者についての横断比較で、大学病院の研修医と臨床研修病院の研修医の差ですが、経験症例数について85項目聞いており、85項目中13項目は臨床研修病院で研修した研修医のほうが有意に「1症例以上経験している」と答えた割合が高く、1項目についてのみ大学病院の研修医のほうが臨床研修病院の研修医に比べて有意に「経験している」と答えた割合が高かった。これは7頁の表3に示してあります。
 4番目の継続PGと弾力化PGの横断的な比較については、継続PGの研修医のほうが弾力化PGの研修医に比べて有意に「経験している」と答えた割合が高いものが13項目、反対に弾力化PGの研修医のほうが継続PGの研修医に比べて有意に「経験している」と答えた割合が高いものが6項目でした。
 最後に気になったところですが、今回弾力化されたプログラムでは内科6ヶ月以上、救急3ヶ月以上、地域保健・医療1ヶ月以上のローテーションが決められているのですが、2頁の【2】に書いてありますように、内科6ヶ月以上を満たしていない研修医が2%おりました。また、内科6ヶ月以上または地域保健・医療1ヶ月以上のどちらかが満たされていない研修医は、6.5%に上りました。個別のローテーションについて満たしていない研修医の数は、2頁の下半分に書いてあります。
 3頁のいちばん上に記載しています、産婦人科の症例数です。産婦人科は選択必修で、必ずしもローテーションしなくていいのですが、到達目標上は妊娠分娩も経験することになっています。この時点で妊娠分娩の経験をしていない研修医が504名おりました。このうち、産婦人科をローテーションしていない研修医が大部分ではありますが、ローテーションしないと妊娠分娩を経験するのは難しいと思われます。そういう意味では、厚生労働省で到達目標を達成しているかどうかをチェックするとシリアスな問題になるのではないかと思います。決めたことをやっていない、それで2年間の研修を終えて、修了証書が出されている可能性が高いのではないかと思います。ただ、このアンケート自体が2月から3月にかけてやっていますので、最後の1~2ヶ月で全員が妊娠分娩を経験しているかもしれませんので、確実にとは言えませんが、危惧するデータではあります。以上です。
○堀田座長 これは自己評価によるアンケートでの達成度評価ということになりますが、いろいろな角度から分析していただきました。あとでまとめて時間を取りますが、何かいま特別に確認しておきたいことがありましたら、ここでご発言いただきたいと思います。
○神野委員 モデルチェンジしてから最初のアンケートですね。そういった意味では、特に継続プログラムではないほう、いわゆる専門医研修が入ってどう変わったのかというのは示唆に富むものがあると思います。いちばん最後の、これからの臨床研修の目的、理念にもかかわるかと思うのですが、前に先生がこのヒアリングで退院患者3,000人以下の病院での分析を示してくださいました。この病院属性で今後3,000人以下のことが話題になったときに、3,000人以下の病院の研修医だけ抽出して分析するようなことは可能でしょうか。
○福井参考人 おそらく、できると思います。その視点での分析は行っていませんが、クロスさせることで分析は可能だと思っています。
○神野委員 前回のデータでも、3,000人以下で地域医療とか介護保険の絡みで非常に勉強になったということもたくさんありましたし、今後の分析でそういう余地が残っていることを知ることができて嬉しく思います。
○小森委員 これは確認ですが、いまお話いただいた2頁の【3】と【4】について、大学病院研修医の1項目、継続PG・弾力化PGの6項目というのは間違いですね。
○福井参考人 そうです。申し訳ありません。
○小森委員 その頁の下のほうですが、「内科にまったく回っていない」が1、「救急にまったく回っていない」が195、「地域保健・医療にまったく回っていない」が192。これは見直しによっても相当問題なわけですが、この人たちの地域特性とか背景に何か特徴がありましたか。
○福井参考人 まだそこまで分析しておりません。
○堀田座長 宿題とさせていただきます。よろしいでしょうか。そのほか、ご意見はよろしいですか。
 弾力化プログラムと言っても、3科必修プラス選択必修ですから、相当に回っている人もあるわけですね。
○福井参考人 おります。
○堀田座長 7科を必修で全部回ったというのに近い弾力化プログラムもあるということですね。
○福井参考人 中にはおります。選択必修のところの分析がなかなか難しい。4つのうちの2つ、しかも期間がどうでもいいということになっているので、例えば1日回ってもいいとするのか、1週間以上回らないと回ったことにしないのかとか、定義付けが難しい。産婦人科はまったく回っていない人でも、妊娠分娩を経験した人がいるようですので、一体どこでどのように経験したのかよくわかりません。
○堀田座長 例えば、救急で運び込まれてきた妊婦の患者を一瞬診たというのも入っているかもしれないということですね。そういうことも含めて、きちんと目標を達成しているかどうか、また議論の対象になると思います。ありがとうございます。
 続きまして、同じく本日お越しいただいている安田先生から、指導医・患者・研修医アンケートについてご紹介いただきます。よろしくお願いします。
○安田参考人 名古屋大学の安田です。よろしくお願いいたします。
 私の資料は、ヒアリング資料-2-?、?、?ですが、?からご説明します。個別の説明をする前に、先ほど福井先生からご紹介いただいたアンケートも含めて、今回の堀田先生を班長とする研究班では4種類のアンケートを実施しております。先ほど事務局から概要の説明のあった4種類なのですが、内容としては研修制度への意識調査という部分と満足度調査という部分、研修制度のアウトカム測定、医療提供体制への影響を測定している部分、研修制度の運営実態という5つに大別したものをアンケート項目に落としていると考えております。そのうちの私が担当した指導医と患者のアンケート、研修医の満足度の意識調査のような部分に関してご報告します。ご報告する前に、いまから数を紹介しますが、驚くような数の皆さんにご協力いただいていて、指導医の皆様、入院中の皆様、研修医の皆様に、この場をお借りして調査への協力にお礼申し上げたいと思います。
 意識調査・満足度調査をなぜやるかという部分をご説明します。いままで、研修制度の利用者ということで研修医の先生のアンケート調査はありましたが、研修制度全体を考える上では、ステークホルダー全員からしっかりと意見を聴取して、それを基盤にしてシステム改善に努めていくという考え方が、いま私が勉強しているような質の改善科学からも考えやすいのかなと思い、今回、いろいろな方に意識調査・満足度調査をお伺いしております。意識調査に関しては、回答者がなぜそう回答したのかというような背景因子の解析に重点を置いております。満足度に関しては、どのようなカテゴリに属する回答者が満足度が高いのかということを主に解析しております。先生たちもご承知のことと思いますが、住民投票のようなものではないので、多数の回答者がいるところを採用したほうがいいという短絡的な利用をしていただくことがこの調査の目的ではありませんので、よろしくお願いします。
 それでは、ヒアリング資料-2-?をご覧ください。患者さんへアンケートをしております。回答してくださった患者さんは、先ほどの福井先生の調査の拡大版と呼んでおりますが、5人に1人抽出された2年次研修医が、2月、3月ごろに担当された患者それぞれ2名を無作為に抽出し、無記名で回答いただいております。回答数としては1,425名、年齢分布としては、中ほどのグラフのような形になっております。下に、平成20年度に厚生労働省が実施した患者調査での年齢別推計入院患者数を載せております。平均年齢、最頻値が若干若めな感じですが、いろいろな方にお答えいただいていて、男女比もほぼ1対1となっております。
 2頁です。いちばん上に、回答者の入院中の診療科が示してあります。内科が半分強ですが、その他いろいろな科に入院されている方が回答されております。入院中の病院がどの程度の規模の病院であるかとか、新規年間入院患者数がどうであるかをグラフ化しております。
 3頁をご覧ください。お聞きした項目は、先ほど事務局からご説明がありましたように8項目で、問7までが研修医の態度評価のようなものになっております。到達目標の中の行動目標の「医療人として必要な基本姿勢・態度」に項目がたくさんありますが、その中で患者から測定することが適切ではないかと考えられたものを質問に落としています。問1から紹介しますと、まず「研修医であるという自己紹介は」というところで、7割弱の方が「あった」と回答されていて、3割弱の方が「なかった」と回答されています。問2ですが、「診察のために病室には」ということで、「毎日」と「ほとんど毎日」を合わせると、90%弱ぐらいの方が「来ていた」と答えていらっしゃいます。問3の「説明は」は、90%強の方が「とても」か「まあまあわかりやすかった」と答えていらっしゃいます。問4の「あなたの質問に対して」は、「いつも」か「たいてい丁寧に答えてくれた」という方が90%強でした。
 問5の「診察や処置を受けるとき」は、「安心できた」「まあまあ安心できた」が9割弱でした。問6の「問題があったときの対応は」は、この質問項目はややわかりにくかったのか、「その他」という回答が1割強ぐらいあるのですが、85%程度の方が「まあまあ」か「適切だった」と回答しております。
 4頁です。問7ですが、「あなたの訴えは指導医(上級の医師)に」は、「報告されていた」「まあまあ報告されていた」が9割程度です。問8が満足度になりますが、「全体として、今回の研修医に担当してもらって」は、「とても」か「まあまあよかった」と回答している方が9割強となっております。
 その下はカテゴリ化したグラフをお示ししておりますが、10頁に表があります。これは9個のカテゴリに分けて解析をした結果です。8頁の下に文章があります。1つ目が年間新規入院患者数が3,000人以上か未満か。2番目が大学病院であるか臨床研修病院であるか。3番目が入院科目を内科系、外科系に分けて、2つにカテゴリ化しております。4番目は、入院科目を必修科目か選択必修科目かその他かで3つに分けました。5番目は、総病床数が300床以上か未満か。6番目が、年間に救急取扱い件数が1万件以上か未満か。7番目が、これは2次医療圏別ですが、人口10万対医療施設従事医師数が平均以上か未満か。8番が、6都府県(東京、神奈川、愛知、京都、大阪、福岡)かそれ以外の道県か。9番が、プログラム種別を、これは福井先生の分け方とはやや違うところがありますが、スーパーローテート型プログラムか弾力化プログラムかという形に分けました。
 これは説明しますと、「スーパーローテート型プログラム」はいままでの改正以前のプログラムを採用しているか、また全科必修というのは「(麻酔科を含む)」というのが入っていて、診療科で数えると8診療科ありますので、その8診療科か、もしくは病院独自の必修科目としているものが必修3科目以外に4つあるものを「スーパーローテート型プログラム」ということにし、それ以下の必修科目数のものを「弾力化プログラム」と考えました。これは意思決定として病院の全募集定員の中でどの型が多いかどうかで判定しております。福井先生は、一人ひとりの研修医が受けられたプログラムを見て判定されているので、データを照合しましたら、やや一致しないところもあるのですが、こちらは病院の意思決定としてそのような形で二分しました。
 10頁の表に戻ります。カテゴリ分けしたものについて、質問項目も全部2択にしてカイ2乗検定を行ったところ、年間入院患者数に関して態度評価の一部で、入院科目の内科系・外科系と、必修科目・選択必修科目のところで一部に有意差が出ているのと、6都府県・その他のところで一部に有意差が出ています。いちばん右の*が付いているところが有意差が出ているところです。
 有意差が出ているグラフは、4頁のいちばん下の網掛けになっている、質問に対して「いつも」「たいてい丁寧に答えてくれた」が、3,000人未満とそれ以上でやや違うのと、5頁の上から2つ目のグラフの「問題時の対応は」が「適切だった」「まあまあ適切だった」に関して、2つに分けると有意差が出ているということです。
 この有意差が出ているものに関して、二項ロジスティック分析でどのカテゴリに差が出ているかを11頁から見ています。一部で出ているものもありますが、出ていないところもあるという感じで、実数を見ると、3,000人以下の病院で回答してくださっている患者が非常に少ない。統計学的には有意差が出ているという言い方をしたいと思いますが、この本当の意味についてはよく考えなければいけないと考えております。
 入院診療科に関しては、研修医としての自己紹介が「あった」「なかった」ということや、診察のために病室に来ていたのが外科系では少ないということがあります。これは診療形態も関係しているのかなというところはありますが、有意差が出ています。
 6頁をご覧ください。下の2つが網掛けになっていて、必修科目、選択必修科目、その他の科目で研修医としての自己紹介が「あった」「なかった」というところで有意差が出ているのと、「診察のために病室に来ていた」というので有意差が出ています。このことの意味は、先ほど紹介したように内科系の方が多くて、内科系の患者さんの回答がよいせいでこういう結果が出ているのかもしれませんし、2年次の終わりに取っているので、病院の運用ですでに専門研修に入られているような方たちが一部にいらっしゃって、そういう方たちは研修医として活動していないということを表しているのかもしれませんが、これ以上のデータはないので、推測だけになります。これが患者アンケートに関してです。
 次は、2-?の研修医アンケートをご覧ください。研修医アンケートに関しては、一部の意識調査の部分だけを解析しております。2問だけですが、1つ目が1頁の上にありますように、臨床研修を行ったプログラム、病院を選んだ理由ということで、順位を付けて3つまで回答していただいておりますが、複数回答です。「研修プログラムが充実」ということを選んでいるものがいちばん多いという結果になっております。
 2頁が、臨床研修病院を選んだ理由を聞いているので、大学病院を選んだ方とか6都府県(都会の病院)を選んだ場合を、従属変数として二項ロジスティック分析をやっております。いちばん右の枠に○が付いているところが有意差があるもので、この項目のオッズ比を見ると、例えば大学病院を選んだ方に特徴的なものはオッズ比が高くなっており、「たすきがけプログラムがあったから」「出身大学だから」といった項目はかなりオッズ比が高く、大学病院を選ぶ方の理由として特徴的と言えると思います。
 逆に、有意差が出ているのですが、1未満でかなり小さなオッズ比を示しているもの、例えば「プライマリケアに関する能力を習得できる」とか、そういう項目に関しては大学病院を選ぶ理由としてはあまりないという見方ができると考えられます。都会の6都府県の病院を選んだ場合に特徴的な理由としては、1つは「大都市圏である」ということを選ばれていることと、「伝統や実績がある」という項目も高いオッズ比を示しておりますし、「研修修了後の研修が充実」といったところが見られます。逆に特徴的でないというか、選ぶ理由でないところとしては、「奨学金をもらっていた」という項目はかなり低いオッズ比を示していると言えると思います。
 3頁が、研修に関しての研修医の満足度です。下の表にある8つの項目に関して、それぞれ1~5の5段階評価をしていただくようにしていますが、総じて中央値が4を示していて、満足度がかなり高いと言えると思います。
 4頁をご覧ください。真ん中の?の表ですが、研修病院と大学病院で満足度に関して有意差があるのかということを見ています。「指導体制」と「臨床研修に関する病院体制」については有意差が出ておりませんが、あとの部分は3頁の下から4頁の上のグラフで示されているように、臨床研修病院のほうがやや満足度が高いということになっております。先ほどの5番のいちばん最初で、「研修プログラムの充実」がいちばんの理由ということでしたので、プログラム種別で満足度がどう違うのかを検討しました。それが4頁の?ですが、先ほどのカテゴリで「スーパーローテート型プログラム」と「弾力化プログラム」と施設ごとに分類して、差が出るかということを検討しております。5頁のいちばん下から、○が付いているところで有意差が出ているのですが、研修プログラム別に検討していて、面白いのは研修プログラムでは有意差は出ていないということで、どちらも満足度は変わらないということですので、研修プログラムを選ばれる研修医の考えは一様ではないと言えるのではないかと思います。また、経験症例数の種類や数といったところは有意差が出ているということです。処遇も有意差が出ております。ここまでが研修医のアンケートです。
 次が指導医のアンケートですが、かなりボリュームがありますので、項目紹介だけして、あとで必要に応じて解説をしたいと思います。
 資料-2-?をご覧ください。臨床研修指導医と定義されている方にお答えいただいています。アンケート回収総数が1万6,669で、厚生局で回収された回収率が出ていて、地方差があるのかどうかはわかりませんが、お示ししてあります。男女比は9対1近くになっております。
 2~6頁までが、カテゴリ別にどういう方が分布しているかを示してあります。7頁から、研修に必要な科目、期間をどのように考えますかということで、ご自身の専門科も入れて聞いております。11頁から、指導医に求められる資質をどのように考えられるかという項目を聞いております。この中には、指導医講習会のテーマとして必要なものは何かという項目も入っております。15頁から、実態調査ですが、今回データは一部しかお示ししてありません。16頁からが満足度や不安に関して聞いております。23頁から最後までが、臨床研修制度に関する意識調査で、どう思うかとか、どこを改善すべきか、どうあるべきかといった項目を聞いております。そのような項目を聞いておりますので、また議論の中でご参考にしていただければと思います。
○堀田座長 急がせてしまって申し訳ありません。また議論の中で触れていただくことにしたいと思います。最初に詳しめに説明していただいた患者に対する満足度調査ですが、このワーキンググループでも国民的な視点から見たときにこの制度がどうなのかという評価も必要との意見がありました。これまではどうも研修を与える側とか受ける側だけの話になるのでということで、この項目を今回初めて入れた。したがって時系列的にはわからないということですが、なかなか興味深いデータだと思います。
 それでは、安田先生のご発表に対して何か質問等がありましたらお願いします。
○田中委員 資料-2-?で、大学病院を選んだ理由が2頁の表に書いてあるのですが、「出身大学だから」がオッズ比も高いのですが、いちばん高いのは「たすきがけプログラムがあったから」ということですね。
○安田参考人 そうですね。
○堀田座長 ほかでも、そういうデータが出ていましたね。事務局が持っている資料ですか。
○医師臨床研修推進室長 そうですね、のちほどご紹介します。
○堀田座長 あとでまたご紹介いただきます。ほかにいかがでしょうか。
 ありがとうございました。それでは、あとは総合討論のところで触れていただくことにして、次に片岡先生の病院アンケートについてよろしくお願いします。
○片岡委員 よろしくお願いします。私からは、先ほどの4種類のアンケートのうち、病院アンケートの集計の中間報告をさせていただきます。対象ですが、これは先ほどご紹介があった平成24年3月現在の基幹型研修病院のすべてが対象で、回答者は病院長、プログラム責任者など、回収数が719で回収率は68.6%となっています。
 項目1.臨床研修の実施体制について、問1-1では臨床研修に関わる職員の数ということで、このパーセンテージが出ているのは、その臨床研修に関する仕事が80%以上、医師に関しては50%以上の職員の数になります。問1-2で業務内容を答えてもらっていますが、これは項目別に大きい差はないように思います。問1-3が相談件数、2頁で問1-4は専任担当者の常駐のスペースがあるかないか、問1-5はその設置場所、問1-6は職員を設置していない場合、これは214病院ですけれども、その理由について。続いて専用の場所を確保していない258病院の理由について。以上、1.は臨床研修実施体制についてデータの集計となっています。
 項目2.臨床研修の病院群について、問2-1ですが、臨床研修病院群を構成する医療施設は、どういった所と病院群を形成しているかということで、すべてのデータの合計になると、?自院の関連する大学の関連医療施設、?設置母体が同一等のグループ医療施設の回答が多くなっています。4頁は、そのデータをカテゴリ別に解析したものです。?が研修病院の種別で、臨床研修病院か大学病院かで見ていますが、大学病院の場合は、自院の関連する大学の関連医療施設と臨床研修病院群を形成することが80%以上であるということ。臨床研修病院に関しては、同一医療圏内あるいは近隣の医療施設という回答が多くなっています。?が地域別(6都府県と6都府県以外)で、これはご覧のとおりであまり大きい差はない状況です。?が所属病院の入院患者別(3,000人以上と3,000人未満)、こちらも回答の内容に大きい差はないと思います。
 5頁、問2-2は臨床研修病院群を形成する際に考慮していることについてです。これは項目別にAからIになっていて、最も多い回答として75%程度の病院が「大いに考慮」しているのが、Aの「自院で実施できない研修科目が充実している施設を選定している」ということ。逆に30%程度の病院が「全く考慮しない」としたのがEとFで、Eの「同一設置母体等グループの施設間の交流が活性化するように選定している」、Fの「関連大学の医局の交流が活性化するように選定している」については「全く考慮しない」という回答が多く、研修内容の充実が目的で病院群を形成しているという印象を持ちました。問2-3の臨床研修病院群の中での役割分担は、多くの施設で、この3つの項目に関して基幹型が中心になって役割分担をしているという結果です。
 6頁、問2-4は支障が生じたために対応が必要となった事項です。最も多い回答は「ローテート期間や時期の設定」なります。
 項目3.臨床研修の評価について、問3-1は採用している評価方法で、多い回答は1の「指導医による評価」、次が4の「レポート」になります。これは7頁で同様に、病院別にカテゴリ別の評価を行いました。?の研修病院の種別(臨床研修病院、大学病院)の評価の違いで、これは、そもそも指導医による評価、レポートのどちらも必須のはずなので、100%になっていないのは個別のチェックが要るかもしれません。指導医による評価、レポートも、臨床研修病院、大学病院であまり差はないように思います。地域別、病院の規模も採用している評価方法について大きい差異はないですが、コメディカルによる評価は3,000人未満の病院でやや多い傾向がありました。また、すべての病院において、コメディカルによる評価を行っている所は約50%程度という結果です。
 8頁、EPOCの活用について。「スタンダードのEPOCを使っている」が48%、「ミニマムEPOCを使っている」が5%。問3-2は、それぞれの病院のカテゴリ別にEPOCの活用について評価をしています。これはご覧になってください。
 9頁、問3-3はEPOCを導入していない理由と、それのカテゴリ別の評価になります。問3-2、EPOCを導入しない理由についてカテゴリ別に評価したものですが、?で大学病院と臨床研修病院を見ると、回答は特に何個までと言っていませんので、大学病院の回答のほうがたくさんの理由に○を付けている傾向ではないかと思います。?の地域別は6都府県と6都府県以外の回答に目立った差は見受けられません。?の所属病院の入院患者別は、3000人未満の病院は「よく知らない」ので採用していないという回答がやや多いかと思います。問3-4の「上記の点が改善されたら、EPOCを使用してみたいか」に関しては、42%が「思う」となっています。
 11頁、問3-5の「有効と思われる臨床研修プログラムの評価」は、すべての病院の回答で「履修した研修医による評価」が多い結果になっていますが、12頁のカテゴリ別の評価を見ると、?の臨床研修病院と大学病院の回答の違いとして、大学病院ではピアレビューの回答が少し多い傾向にあります。?の病院の規模による評価を見ると、3,000人未満の所で第三者機関による評価の回答がやや多かったように思います。
 13頁、4.臨床研修病院の定員について、これは「適当」とする病院が57%と半分を超えています。カテゴリ別の評価をその下に載せています。臨床研修病院と大学病院、6都府県とその他、3,000人以上と3,000人未満で大きい差はないようですが、3,000人未満の病院では定員に関して「概ね適当」とする回答が最も多い結果ではあります。問4-2で適当と考える研修医数、問4-3で病院の研修医の募集定員を決定する要素として重要である項目を、それぞれ聞いています。
 15頁、5.臨床研修に関する委員会は、問5-1で研修管理委員会の構成員数、院外委員数を具体的に聞いています。問5-2は研修管理委員会開催回数になります。16頁、研修管理委員会開催回数について、これもカテゴリ別に内容を提示しています。17頁、5-3は研修管理委員会以外の臨床研修の運営に関する委員会の設置の有無になります。これもご覧いただければと思います。18頁は、先ほどの研修管理委員会以外の運営委員会開催回数、委員会設置の利点を具体的な内容として提示しています。
 19頁、6.指導医のモチベーションについて、病院が行っている工夫ということで聞いています。問6で、モチベーションを高める工夫として、1~7は具体的な工夫をしているか、8はその他の取組、9は特に取組を行っていないという回答で、回答数は1,594です。次の問6は補遺で、カテゴリ別の評価をしました。(1)?の研修病院の種別を見ると、大学病院は臨床研修病院に比べてさまざまな工夫をしています。例えば研修医評価のフィードバック、指導医手当、表彰といったところの回答が多くなっています。
 20頁、?の地域別で見ると、これも6都府県のほうがややそういった工夫をしているという回答が多い傾向にあります。21頁、(2)のモチベーションを高める工夫として実施している項目の数ですが、これも0~6の項目で分けると、同様に大学病院のほうが工夫の数が多い傾向が見てとれました。
 ざっとした説明ですけれども、以上になります。
○堀田座長 ありがとうございました。駆け足でやっていただきましたが、研修施設の構造的なこと、プログラムの選択の問題、評価の仕方といったところの外形的な部分を紹介していただきました。何かご質問等ございますでしょうか。いかがですか。EPOCの中身については、この後、田中先生にご紹介いただきますが、EPOCの採用が全研修病院の半分ぐらいというのは、ずっと変わっていないのですかね。
○田中委員 発足時は6割強ぐらいだったのです。少しずつ減ってきて24年度は、それまで漸減していたのですが、今度は逆に漸増したというのが現状です。
○堀田座長 ミニマムEPOCという簡易版を作ったけれど、意外にこれが伸びていない。
○田中委員 そうですね、そのとおりです。
○堀田座長 ほかに、よろしいでしょうか。それでは田中先生、EPOCに関してよろしくお願いします。
○田中委員 資料-4を使って説明させていただきます。今までの先生方がアンケートの分析をされましたけれども、こちらは全然方式が違って、オンライン卒後臨床研修評価システムのデータを用いた解析です。前回、ご報告したのは2008年でしたけれども、2010年、つまり弾力化プログラムが始まった後、最初の修了者たちを対象にして比較をしたというものです。
 3頁をご覧ください。「2010年開始」というのが弾力化プログラムの研修医ですけれども、研修修了後に取っていますので、最後の1ヶ月でローテートするかもしれないといったことはないはずです。全体の数はほとんど変わらず4,000人ですので、研修医の2人に1人ぐらいが解析対象になっています。大学病院と臨床研修病院の比率もほとんど変わっていません。後ほど説明に出てきますけれども、600床以下の病院が4割弱を占めています。年間入院患者数5,000人以下の病院が非常に少なくて5%以下となっています。
 結果を説明させていただきます。次の頁をご覧ください。ブルーが2008年、エンジが2010年の弾力化開始以降です。行動目標達成率は、全体を見ていただくと、どの項目を見ても2010年のほうが少しずつ達成率は上がっているのです。経験目標A項目の達成率というのも、こうやってご覧いただくと、概ね2010年の弾力化プログラムがよかったのかどうかは別として、2010年のほうが少しずつ上がっているということが言え、中には優位な改善を示している項目もあります。
 次の6頁から有意に減少している項目出てきます。研修目標B項目の履修率ですが、赤枠で囲ってある「流・早産および満期産」というのは、グラフで見るとずいぶん減っているように見えますけれども、これは85%のところからスタートしていますので強調されます。しかし、それにしてもP値で言うとかなり低い差が出ています。
 7頁を見てください。これは疾患ですけれども、やはり産婦人科で経験すると思われる項目で妊娠分娩、女性生殖器・関連疾患は減少し、逆に男性生殖器疾患は有意に改善しているというか増えているということは言えます。このうち妊娠分娩は必修項目になっていますので、必修項目が減っているということは問題かもしれません。隣のカラムを見ていただくと小児も減っています。(B)というのは経験することが義務づけられているものですが、小児けいれん性疾患(B)も減っています。ただ、減り方の有意差は下の小児喘息と併せて非常に少ない状況です。あとは、小児ウイルス感染症、小児細菌感染症も減っています。
 8頁は大学病院と臨床研修病院に分けたものです。ただ、お断りしておきますが、例えば他の先生方のように、弾力化プログラムと従来のプログラムというプログラム別の解析はEPOCではできませんので、もちろん大学病院の中にも従来型のが含まれていますし、一般研修指定病院の中にも弾力化型が含まれていることを、ご承知おきください。しかし、その中でも大学病院で妊娠分娩は有意に減っている。小児ウイルス感染症も有意に減っているということで、産婦人科と小児科のローテーション関係のものが減っていることがわかります。
 9頁は臨床研修指定病院です。こちらも妊娠分娩、小児ウイルス感染症が減るのは同じ傾向ですが、それに加えて小児けいれん性疾患もちょっと減っているということがあります。あとは、ここにどういう意味があるかなかなか説明は難しいのですが、小腸・大腸疾患、横隔膜・腹壁・腹膜疾患といったものも必修疾患で、有意差の程度は低いですけれども、若干減少していることは注目されます。
 10頁ですが、今度は病床数に分けて検討しました。病床数600床以下の場合、同じように妊娠分娩、小児けいれん性疾患が減っています。これが600床以上の病院でどうかを見たのが11頁ですが、同じように妊娠分娩、小児ウイルス感染症は減少していて、これは病床数にかかわらず減少していることがわかります。
 12頁をご覧ください。入院患者数で見ると、3,000人以下というのはいかにも少ないので5,000人で比較しましたけれども、5,000人以下で見ると、実はいま問題になっている妊娠分娩や小児ウイルス感染症は、有意な減少は認められませんが、これは研修医の数が少ないためと思われます。 13頁で、5,000人以上の大きな病院では、今までの分析と同じように妊娠分娩、小児ウイルス感染症の減少が認められます。小児けいれん、小児喘息も減っています。
 プログラム評価もEPOCではしていますので、プログラム評価が2008年と2010年で変わったか調べてみました。14頁にありますように、大学病院は満足度が若干改善していると言えます。要するに「おおむね勧められる」というところが増えているということです。臨床研修病院はもともと高いこともありますけれども、あまり変化はありませんでした。
 15頁をご覧ください。こちらも病床数で比較してみると、600床以上の病院のほうが満足度の改善は有意に認められました。入院患者数では有意差は認められませんでした。
 16頁がデータとしては最後になりますが、開設者別で見てみると、有意に減少した、有意に増加したというところは特にありませんでした。
 以上をまとめると17頁になりますが、2010年度研修医は2008年度研修医に比べて、行動目標、経験目標Aの達成率に低下は認められませんでした。明らかに低下していると思われるのは、小児科、産婦人科関連疾患の経験目標です。臨床研修病院では一般外科関連の項目が一部低下していますが、有意差の程度が低いことから、意味があるものかどうかはなかなか難しいところです。それに対して、選択必修の中でも精神科に関しては低下は認められませんでした。プログラム評価の満足度は、大学病院、病床数601床以上の病院で向上しています。以上です。
○堀田座長 ありがとうございました。EPOCを採用している所は大学中心で、大学はかなりのパーセンテージでやっているのですが、研修病院だと比較的規模の大きい病院が採用しているということから小規模の病院の状況は反映しにくいという問題がありますけれども、このような状況です。何かご質問はございますか。
○横田委員 地方とか県別に、こういう達成率をやろうと思えばできるのですか。
○田中委員 やろうと思えばできるのですが、まだちょっとできていない状況です。
○堀田座長 ほかにご意見は、よろしいですか。先生はいま、履修率が減少した項目に割とポイントを置いて説明されましたけれども、逆に改善した項目というのはどうでしょう。
○田中委員 統計上、有意に増加したというのはあまりないのですが、意味のあるものかどうかということで言えば、7頁の「経験が求められる疾患・病態」をご覧ください。例えば右側の上から3番目の副腎不全が有意に増加しているとか、角結膜炎が有意に増加している、緑内障が有意に増加しているなど、選択の部分が増えただけに、よりスペシフィックなところが増えている傾向はあるように思います。ただ、それが研修制度の中でどういう意味があるかというのは、またちょっと別のことです。
○堀田座長 必修項目がどれだけきちんと履修されているかというのがポイントになると思いますので、そういった視点から今後、この評価をしなければいけないと思います。ほかにいかがでしょう、よろしいですか。それでは、いまのことを踏まえて、事務局からの提出資料があります。これについて説明をお願いします。
○医師臨床研修専門官 事務局提出資料-2・?、?の2つをご覧ください。これは臨床研修に関するアンケート調査の中で、研修医に関するアンケート調査をまとめたものです。一部は安田先生からご発表があったところです。残りのこちらに盛り込んでいない研修医に対する調査もあって、それは福井先生から先ほどご説明があったとご理解いただければと思います。
 研修医のアンケート調査で、これは平成24年2月から4月に調査したものです。?の資料については平成23年、つまり昨年修了した者に関する調査の結果で、本ワーキンググループの第1回のときに、平成22年度の調査は発表させていただいたところです。平成23年度調査については今回、改めてご紹介させていただくという趣旨です。
 ?のほうは平成24年度、平成23年度調査を、それぞれ比較を中心にまとめているところです。1.回収結果にありますが、回収数と回収率については冒頭の調査の全体で説明させていただいたとおり、研修医に関しては、このとおり配布対象者数が7,506名、回収数は5,057枚、回収率は67.4%となっています。昨年は、ご覧のとおり回収率が78.1%であったのが、若干、落ちてしまったということがあります。去年は研修医だけを対象にしていたのを、今回は病院に対して、指導医や患者調査も同じく調査票を送ってお願いしましたので、調査負担度の点が回収率を下げた原因ではないかと考えています。男女比については、男性が64%、女性が32%となっています。出身大学の所在する地域においては、ご覧のとおりとなります。
 2頁で臨床研修を行った病院の種別については、大学病院が48%、臨床研修病院が51%となっています。3.臨床研修を行った病院を選んだ理由ですが、これは安田先生から詳細に分析いただいたものを既に紹介いただいています。昨年と比較すると、大学病院で研修した研修医の回答ということでは、概ね傾向は変わらないのですが、1位が「出身大学だから」、2位が「臨床研修のプログラムが充実」、3位が「様々な診療科・部門でバランス良い経験を積める」等々があります。平成24年度は新たに、「たすきがけプログラムがあったから」という選択肢を1つ設けていたのですが、そちらを回答した者も5番目にランクインされる結果になりました。
 ちなみに、上に※で書いていますが、平成24年度は調査票の設計上、当てはまるものを最大3つまで選択してくださいと調査票に書いていました。一方、平成23年度はすべて選択可能としていましたので、平成24年度に関して見ていただくと、全体に若干パーセンタイルが下がっていますけれども、最大3つまでと数を絞った影響が出ていると考えています。
 臨床研修病院で研修した研修医の回答ですが、「多くの症例を経験できる」が1番、以下、「様々な診療科・部門でバランス良い経験を積める」「臨床研修のプログラムが充実」「プライマリ・ケアに関する能力を修得できる」「実家に近い」という結果が出ています。2番目の「様々な診療科・部門でバランス良い経験を積める」が、昨年は順位として4番目に来ていましたけれども、今年度は2番目にランクされている状況になっています。
 3頁で4.臨床研修後に従事する病院(予定)の種別ですが、大学病院に関しては50.5%、大学病院以外の病院については47.0%となっています。昨年に比較すると大学病院がやや減っていて、大学病院以外の病院で研修する予定と答えた方が若干増えている結果になっています。5.臨床研修修了後に勤務する病院(予定)を選んだ理由としては、大学病院であれば「出身大学である」がいちばん多く、以下、「優れた指導者がいる」「研修プログラムが優れている」「臨床研修を受けた病院である」「病院の施設・設備が充実」となっています。大学病院以外の病院を選択した研修医の回答としては、「研修プログラムが優れている」が1番にランクインし、以下、「優れた指導者がいる」等々の理由が続いています。
 4頁をご覧いただくと、平成23年度においては調査内容として、修了後にどこの病院を希望する予定か聞いているのですが、複数回答になっていた関係で直接の比較はすぐには難しいところがあるかと思います。傾向としては、大学に関しては「出身大学である」がいちばん上に来て、臨床研修修了後に臨床研修病院で研修予定の研修医においては、「優れた指導者がいる」「専門医取得につながる」「研修プログラムが優れている」等々が上位になっています。
 5頁は、平均でどれくらい各診療科をローテートしたか尋ねたもので、これは毎年、調査をしているものです。下のグラフが平成23年度(昨年)で、平成24年度のデータは見直し後、初めてのものです。これを比較すると内科系と救急に関しては、それぞれ内科が1.2ヶ月、救急が0.9ヶ月伸びています。ほかの診療科については非常に少ない増減ですが、例えば外科系では3.2から2.9とマイナス0.3ヶ月減っている。麻酔科は変わらないのですが、小児科は1.8から1.5とマイナス0.3ヶ月、産婦人科はマイナス0.3ヶ月、精神科もマイナス0.1ヶ月という結果になっています。地域保健・医療に関しては若干増加している傾向があります。
 6頁で、7.将来従事を希望する診療科です。昨年の内科系の希望者は研修前後で34.4%から33.1%と、やや減少していたのですが、今年(平成24年度)についてはやや増加しているという結果がありました。あとは、昨年と比べて変化の傾向があったのは救急で、昨年は研修前と後で変わらないパーセンテージだったのですが、今年度に関しては3.0%から2.2%に落ちています。そのほかは昨年と比べて大きな変化はないところですが、外科系がやや落ちていて、麻酔科は増加しています。小児科や産婦人科はやや落ちていて、精神科がやや増加する傾向となっています。
 8.将来の診療科を選んだ理由で、昨年と比べてあまり大きな変化はないですが、1番には「やりがいがある」が来て、「学問的に興味がある」「なんとなく相性が合う」等々が続いています。
 7頁です。9.経験した臨床研修の満足度で、これは安田先生からもご発表があった部分です。全体平均で4.0と昨年に比べて0.1ポイント増加したことになります。大学病院では3.9、臨床研修病院では4.2という結果になっています。10.研修を行った診療科について、基本的な臨床能力の修得に役立ったかですが、これは5段階評価でマックス5、ミニマム1です。だいたい4を超える評価を得ていて、内科系や整形などが高く、総合診療科も高いですが、若干、4を切っているのが産婦人科と精神科という結果になっています。以上が平成24年と平成23年を比較した調査です。
 事務局提出資料-2・?の平成23年調査で若干、補足させていただきますが、いちばん最後の頁をご覧ください。平成23年調査においては平成22年も同様に聞いていたのですが、育児休暇の取得と医師不足地域での従事についての考えも聞いていますので、これをご紹介します。育児休暇の取得についての考えを聞いたところ、いちばん最後の頁ですが、女性は「仕事に復帰できる等の条件が合えば取りたい」が52.9%で、「取りたい」と希望する方が約40%いました。男性については「仕事に復帰できる等の条件が合えば取りたい」と回答した方が41.6%、「取りたくない」が26.2%という結果になりました。
 医師不足地域での従事についての考えですが、これについては今年度、平成24年調査ではこの項目は聞いていないところです。医師不足地域での従事についての考えを伺ったところ、「条件が合えば従事したい」が66.8%でした。医師不足地域で従事するのに必要な条件としては、「一定の期間に限定されている」「自分と交代できる医師がいる」「給与がよい」等の理由が上位となっています。以上になります。
○堀田座長 ありがとうございました。事務局提出資料と一部重なるところもありますが、全体の傾向として例えば研修の期間を見ると、確かに見直しプログラムだと産科で必修科目が若干ずつ増えている。その他については大きく変わったという印象はないのですが、この辺はどんなものでしょう。
○医師臨床研修推進室長 おっしゃるとおりです。5頁で、ローテート期間として2年間を全体にして見たところ、上が平成24年です。要は平成22年度の弾力化に応じて必修にしたもの、選択必修にしたものについて、それぞれ注視していったのですが、もちろん、いま座長がおっしゃったように内科あるいは救急、地域保健・医療も若干増えている。これは必修にした3つです。それ以外の例えば外科系、産科、小児科、精神科については若干減っている。これは制度改正がある程度反映されているのかもしれないのですが、ただ、さはさりながら、選択にしたからといって思ったほど大きく減っていないという印象を、私どもは持っています。
○堀田座長 おそらく、到達目標がきちっと設定されてあるわけですから、それをやろうと思ったらどこかの項目はなしにするというわけにいかないということなのでしょうね。ただ、先ほど少し問題になったように、では1週間回ったらたら、それで履修したことになるのかという評価は、今後しなければいけないということでしょうね。先ほどのEPOCの達成度を見ても、極端に変わるものは一部はあるけれども、全体として今のところ大きな差は出ていない。今後、ではもっと項目を絞っていいのかということは個々にあり得るかもしれないということですね。それについては達成目標、到達目標が、どの程度できているかということの評価の中で考えていく必要があるかと思います。何かご意見をいただけますか。
○片岡委員 平成22年度の変更によって、定員20名以上のプログラムは産婦人科ないし小児科の特別プログラムができているので、そういう意味では全体を平均すると、経験しなかったというところに有意差ができていますけれども、将来的に産婦人科、小児科に進む人の人数はどうか、ということも調べても良いと思います。あるいは特別プログラムの選択者がどのような経験ができたかというあたりも興味深い点です。
○堀田座長 それは、どの調べ方で調べると、いちばん有効に出てきそうですか。
○片岡委員 研修医のアンケートで、産婦人科や小児科の特別プログラムを取っているかどうかという質問があればわかると思います。人数が多くなければ、個別調査をしても可能な範囲ではないかと思います。
○堀田座長 それは、どの調べ方で調べると、いちばん有効に出てきそうですか。
○片岡委員 研修医のアンケートで、そういう特別プログラムを取っているかどうかという質問があったらわかると思います。ただ、人数がそんなに多くないと思うので、個別調査をしても可能な範囲ではないかと思います。
○岡村委員 いま、調べ方とおっしゃったので思ったのですが、今回の事務局資料で将来の診療科を選んだ理由のところに、やりがいがあるとか学問的に興味があると書いてありますけれども、その前の将来従事を希望する診療科で、結果的に外科系、救急、小児科、産婦人科が減っていますね。これは明らかに当直や緊急の呼出しが多い科が減っていると思います。それに対して選んだ理由のところは、みんな表向きの理由ばかりで、この質問では本音が出てこないような気がする。ただ、それを聞き出すのは非常に難しいと思います。
○堀田座長 これは無記名だし、別に書いてもいいのですが、設問自体がそっちのほうに誘導しているというのがあるのか、真面目な回答を要求するみたいなところがある。それはどうですか。
○医師臨床研修専門官 設問に関しては、処遇や負担を回答項目に設けてはいるのです。ここに記載はないのですが、それに関してはかなり下のほうになってくるという結果になります。
○堀田座長 よろしいですか。その辺、例えば特別コース、要するに小児科選択コースや産科コース独自について調べていないのですね。
○医師臨床研修専門官 調査票の中に、そういう項目を作っているということはないのですが、ただ、現在の病院のプログラムが小児科と産科のプログラムを指定しているというのは、こちらでも把握はできると思いますので、そういう視点で、いま回答していただいたデータの中から、そういう相関ができるかどうか検討させていただきたいと思います。
○堀田座長 よろしいですか。
○医師臨床研修推進室長 実は先生方もそうなのですが、分析が最終的に済んでいないところがあって、今、できている分だけの途中経過的な意味が多いものですから、いただいたご指摘などを踏まえ、今後、分析の視点を変えて集計をし直すことは可能ですから、そのあたりはご指摘いただければ、できる範囲で私ども引き続きやっていきたいと思います。
○堀田座長 そういうことも踏まえ、総論事項として基本理念とか到達目標の評価といったところについて、今後、ディスカッションするポイントを事務局に少しまとめてもらっています。お願いします。
○医師臨床研修推進室長 お配りしている資料の事務局提出資料-3、総論事項(基本理念、到達目標と評価、研修期間・診療科等)をご覧ください。ご案内のとおり年内、12月までにお取りまとめいただく論点整理について、座長からご案内がありましたように、そろそろ最終的な整理を見通しながらご議論を賜る必要がございます。そこで今回は、例えば今回の議題に沿って現時点で考えられる論点を整理してみたものが、このペーパーです。全体の構成や内容については、今後、本ワーキンググループにおいて漸次固めていただくものとして、現時点でのたたき台としてご案内を申し上げます。
 1.基本理念について、全体としてはこのように現状があって、それを踏まえて、どういう論点が考えられるのかを下に二重枠で囲む構成にしています。臨床研修の基本理念については、いわゆる臨床研修省令と、この省令の施行通知において明示されているところです。特に施行通知ですが、これは別途、参考資料-1-?として今回お配りしています。この中で「医師が、医師としての人格をかん養し、将来専門とする分野にかかわらず、医学及び医療の果たすべき社会的役割を認識しつつ、一般的な診療において頻繁に関わる負傷又は疾病に適切に対応できるよう、プライマリ・ケアの基本的な診療能力(態度・技能・知識)を身に付けることのできるものでなければならないこと」とされています。したがって論点としては、現下の社会情勢あるいは関係者の評価等を踏まえ、現在のこの基本理念について、どう考えるかという大きな論点があろうかと考えています。
 2.到達目標についてです。同じく施行通知において、「臨床研修の目標」は、本日、参考資料-1-?としてお配りしているところです。これを参考に、臨床研修病院が当該研修プログラムにおいて作成するもので、「臨床研修の到達目標を達成できる内容であること」とされています。具体的には、ここに書いてありますように行動目標と経験目標というふうに構成されているところです。
 2頁で、それを踏まえた論点としては、制度の基本理念、社会情勢、関係者の評価等を踏まえ、現在のこの「行動目標」についてどう考えるかという論点、2つ目として、現在の「経験目標」についてどう考えるかという論点、同様に研修医の到達目標の達成状況、これは先ほど来、先生方からご案内のあったアンケート調査結果などを踏まえ、どう考えるのかという論点があろうかと考えています。
 3.到達目標の達成に係る評価についてです。現状は先ほど来の施行通知により、1つは研修期間中の評価と、後ほど申し上げる修了時の評価に分けてあります。研修期間中の評価については、形成的評価により行うことが重要であって、研修医ごとの研修内容を改善することを主な目的とすること。研修医が実際にどの程度履修したか随時記録を行うものであること。研修医手帳を利用するほか、インターネットを用いた評価システムなどの活用も考えられること。評価結果を研修医にも知らせて、研修医及びスタッフ間で評価を共有し、より効果的な研修へとつなげるものであること。以上が期間中の評価です。
 修了時の評価については、総括的評価により行い、研修医ごとの臨床研修修了の判断を行うことをその目的とすること。研修管理委員会が研修の修了認定の可否についての評価を行うこと。研修実施期間の評価及び臨床研修の目標の達成度の評価に分けて行い、両者の基準が満たされたときに修了を認めるものであること。なお、最終的な認定に当たっては、相対評価ではなく絶対評価を用いるものであるとされているところです。
 以上を踏まえ、論点としては3頁の上の枠の中です。到達目標の達成に係る評価の在り方について、どう考えるのか。例えば研修医の評価について、プログラムの評価について、研修のプロセスの評価について、アウトカムの評価について、それぞれどう考えるのかという論点、あるいは田中先生から先ほどご紹介がありましたが、EPOCの今後の普及について、どう考えるのかという論点です。次のところはこれまであまり議論がありませんでしたけれども、妊娠出産等による休止、中断や未修了への対応、研修期間中の大学院への進学、障害を有する研修医への対応について、何らかの具体的な方策を考える必要があるのではないかという論点です。なお、この最後の、障害を有する研修医への対応に関連し、医師免許自体の取扱いについては制度の見直しが図られています。その旨は参考資料-3として、医師法と医師法施行規則の抜粋をお配りしているところです。従来、障害については、いわゆる絶対的な欠格事項でしたけれども、第4条で、「心身の障害により医師の業務を適正に行うことができない者として省令で定めるもの」という形で、これについては免許を与えないことがあるという相対的欠格事項に、平成13年に改正されているところです。こちらは免許についての参考です。
 資料-3の3頁に戻って、4.臨床研修全体の研修期間については、現在、医師法において2年以上と規定されていますけれども、これがこのままでいいかどうかという論点があります。5.研修診療科及び各診療科ごとの研修期間について、現在、研修科目については平成22年度以降、従来は7診療科必修であったのを、内科、救急、地域医療の3診療科が必修、それ以外の選択必修の中から2科必修という形に改められています。研修期間については、これも平成22年度プログラムから弾力化がされ、内科については6ヶ月以上、救急については3ヶ月以上、地域医療については1ヶ月以上履修することが定められています。
 このことを踏まえて論点としては、現行のいま申し上げた必修、選択必修とする診療科について、どう考えるのかという問題です。特に平成22年度以降、選択必修となった外科、小児科、産婦人科、精神科についてどう考えるのか。あるいは現行のそれぞれの診療科についての研修期間についてどう考えるのか。プログラムの自由度、すなわち選択診療科の研修期間や、病院群の例えば基幹型は8月以上、協力施設については3月以内とされている、この期間についてどう考えるのかという論点があろうかと考えています。
 以上、これらの論点について、引き続きご議論を賜りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○堀田座長 これからはフリーディスカッションにします。いままで、ご発表いただいたことも踏まえていろいろな問題点を、ここの場合、あまり系統立てていなくてランダムでも結構ですので、忌憚のないご意見をいただきたいと思います。
 なお、いままで話してきてこのWGでは何となくわかってしまっているという感じですが、このWGの外では、結構強烈な意見を持っている人もあります。そういったことも一定に考慮した論点整理をしないといけないとは思っています。
○神野委員 いまの資料-3に基づいて、小さいことと大きいこととを含めて4つぐらい意見を述べさせてください。
 小さい話で、まず「基本理念」からです。「医師としての人格をかん養し」と非常に難しい文句が1つあることが気になってしまいます。これは小さい話です。
 次は大きな話です。「基本理念」でプライマリ・ケアの基本的な診療能力を身につけることをきちんと謳っている。これは、この臨床研修制度が出来たときの原点として極めて大事なことであると思います。その中で、今日のアンケート調査にもありましたし、いちばん最後のところにもありますが、やはり平成22年のモデルチェンジである弾力化プログラムについて議論しなければいけないと思います。先ほど、アンケート調査でもやはり産科、小児科についての能力が下がったというような話があったわけで、これは本来、プライマリ・ケアを謳う以上は、外科、整形外科のお医者さんだとしても、あるいは眼科、耳鼻科のお医者さんだとしても産科、小児科の基本的な能力を身につけるべし、というような思いでこの「プライマリ・ケア」という言葉をお作りになったと思いますし、それがこの一番の基本だと思います。そういった意味では、この弾力化プログラムについては、多少見直しをしてはいかがかと思ってしまいます。
 先ほどの事務局の資料で、モデルチェンジをしても小児科や産科があまり減らなかったという円グラフがあったわけですが、先ほど座長もおっしゃったように、おそらく小児科専門コースを取っている人たちの数字が入ってしまうと、統計的には割り算をすれば数はあまり変わらなくなる。あるいは産科専門コースの人の分を、産科で半年以上いる人がいれば、おそらく統計的な数字としてはそんなに前年度と違わないのではないかと思います。
 それと関連して、論点案にありますが、大学院進学についても、臨床研修期間中に大学院進学ということは、私は多少いかがなものかと思います。大学院は専門としての技術あるいは学問能力を身につける場所だと思いますので、果たしてそこでの研究と臨床研修は合っているものかどうかということを言わせていただきたいと思います。
 それから、おそらくこれで3つ言ったと思いますので最後のことですが、3番の「到達目標達成に係る評価について」です。この評価の中でも「現状」のところで「プログラム責任者は」とか「指導医」という言葉がたくさん載っているわけですが、残念ながら、いまの基幹病院でも指導医をこれから養成しますとか、プログラム責任者講習を受けていない方々しかいない基幹病院があるやに聞きます。そういった意味では次の見直しのときに何らかの配慮をすべきと考えます。この制度が出来てから随分長いわけですから、指導医講習を受けた指導医がいない所は、私はやはりおかしいと思います。もっと言えば、基幹型の場合は、プログラム責任者研修を受けた指導医がいない所は臨床研修病院としていかがなものかと思います。以上です。
○堀田座長 ありがとうございました。大変重要なポイントをいろいろ指摘していただきました。このWGは、結論を出そうという場ではないので、論点整理なので、こういった論点もあるのではないかという形で提案していただければ結構です。いまの大学院問題について、岡部先生、ご発言いただけますか、これは論点になるのかどうか
○岡部委員 私としては、是非論点にしていただきたいと思うのです。というのは、やはり基本理念として、プライマリ・ケアに関して一定の能力を持った医師をある一定期間で養成するというのは非常に重要なことですので、それを揺るがすことはあってはならないと思うのです。
 一方で、すべての大学医学部卒業者が、卒業後のキャリア・パスを考えたときに、臨床研修期間を単にそれだけに費やすことが本当に正しいかどうか、社会的な要請に応えているのかというのを少し考える必要があると思います。ある一定数の基礎研究医、特に非常にいま人材がいなくなってしまっている例えば司法解剖の分野、そういうところに一定の人材を供給することは、地域医療あるいは特定の診療科の医師不足と同様、あるいはそれ以上に喫緊の課題であって、いま手当をしないと、たぶん10年後にそういう医師がいなくなってしまうという可能性も起こり得ると思うのです。そういうことを考えると、ある程度そういう学問、研究にリンクを持たせつつ初期臨床研修の期間を過ごすという制度が存在する必要は、いま非常に重要になっていると思います。そういう意味で、これはやはり論点としてこの委員会でしっかり議論していただきたいことだと私は思います。
○堀田座長 ありがとうございます。おそらく大学の基礎系におられる先生の共通の意見だと思います。それを大学院という形にもするかどうかという具体的なことは今後、親の会等で議論していただくことになるのですが、卒業して研修のときに基礎系への道がプッツリ切れてしまって、そこからまた基礎へモチベーションはなかなか持続しないという点で、何か継続できる仕組みが必要ではないかということだと思います。場合によっては、オプションで研修期間中に期間を区切って基礎たとえば、法医学とか、そういうことをやることも組み込めるのかどうかという議論にも発展するかもしれません。
○小森委員 基本理念については「かん養」という言葉がございました。基本的には、私はこれは堅持するという方向でいいと思います。神野委員のおっしゃったことは、一つひとつごもっともだと思います。特に臨床研修制度が導入されまして、やはりドラスティックに影響が出たのが基礎医学の分野です。法医学等の問題が特にクローズアップされておりますが。このことについては、弾力的な考え方はやはり残しておく、あるいは、またさらにつくる必要があると私は認識しております。
 もう1点は妊娠出産等の問題です。これは、これからますます重要な問題になってまいります。このことについて具体的な提案はいま持ち合わせておりませんが、非常に重大な問題として認識していく必要があると思いますので、一歩議論を進める必要があるだろうと思っております。
 障害を有する研修医の問題について、私、実態がよくわかりません。今日は時間がございませんので、次回にでも、さまざまな障害を有していらっしゃる方の医師免許の取得については平成13年から改定されたわけですが、現実にどういう問題が起こっているのか少し実態を出していただかないと議論ができません。大切な要点であると認識しております。
 もう1点。もう一方で、当然なのかもしれませんが、弾力化プログラムを導入することによって、研修医の方々のいわゆる満足度が大学病院で非常に増加しています。これをどう考えるかということはいろいろなお考えがあるのだと思います。当然といえば当然なのかもしれませんが、これもしっかり踏まえる必要があると認識しております。
 「弾力的な」という意味では、2年以上の臨床研修の研修期間中の、諸外国への留学あるいは外国での研修をどのように考えるか、いままでも多少議論があったと思っていますが、いま我が国は非常に閉鎖的といいますか、若者が外に出たがらないことも大変懸念されている状況の中から、そのことについては1つ論点として挙げていただきたいと思います。以上です。
○堀田座長 ありがとうございました。そのほか、論点は。
○神野委員 いままでの話です。私も、基礎医学に行く人がいないことに対しては大変危惧します。ただ、いまの臨床研修制度は、これを2年間受けた人は、将来医療施設の管理者になれるということだけなので、私は、法医学に行かれる方は最初から大学院の基礎医学、あるいは、1年間で中断されて基礎に行かれるというようなコースは大いにありだと思います。その際に臨床研修と、例えば法医学と生化学とを合わせるのはいかがなものかということで、中断ないしは最初から大学院に行かれる、そういったお医者さんの必要性はもっともっと主張しなければいけないと思います。
 もう1点。いま小森委員からの話もありましたが、特に弾力化について研修医の満足度が高くなっている。これはそのとおりだと思います。やはり、日本の中に専門医指向の方もたくさんいらっしゃるわけです。ただ、もう1回この理念ですが、「プライマリ・ケアの基本的な臨床能力」と書いてあります。研修医の満足度の話もありますが、繰り返しますが、国として、どういうお医者さんがいいのですかというような筋を通すところも必要だと思います。
○田中委員 プライマリ・ケアの診療能力は、1つは、卒前教育もセットで考えたほうがいいと思うのです。やはり、診療参加型臨床実習を充実させることで卒前にどのレベルまで達成されるかということも考えて議論したほうがいいと思うのです。
 もう1つ、目標と評価です。さっき福井先生もちょっとおっしゃっていましたし、EPOCのデータもご覧いただきますと、本来、必修項目は100%なければならないのですが、100%を割っているという現状はあるのです。守ってもらわなければ困るとも言えますが、守れないものを決めるほうが無理だという面もあって、やはり少し検討したほうがいいと思います。プライマリ・ケアという観点から、でも、これは削ってもいいのではないか、と思われるものもあるのではないかと私は思うのです。例えば、さっき座長がおっしゃったように、改善したものはないのかというお話がありました、私、そのとき申し訳なかったのですが、熱傷は明らかに改善しているのです。2008年と2010年の2つの時点で比較すると、熱傷の経験率は必修のなのですけれども低かったのですが、それはだいぶ改善している。ですから、残しておいてどんどん改善を促したほうがいいものと、これは無理だというのは落としていく、ということも考えていいのではないかと思います。
○岡村委員 いまのは田中先生の意見には通ずるところで、しかも、先生が出されたEPOCの結果で妊娠分娩、小児の経験が減っているということですが、あの結果を見ていて、例えば髄膜炎、アナフィラキシー、熱中症、熱傷、肺塞栓、そういったものはむしろ経験が増えているということがこの表からわかるのです。例えば、妊娠分娩は研修医として経験しなければいけないものなのか、学生の臨床実習中に一応立ち会っておくことで十分ではないかと私は思うのですが。そういったことから、いま田中先生が言われるように、確かに、卒前教育と絡めてということがすごく大事ではないかと思います。
 もう1つ。例えば、頻度の高い症状というもので「発熱」という項目があります。発熱というのは本当に千差万別で、風邪引きの37.5℃ぐらいの熱から、髄膜炎とか感染性心内膜炎のように重篤で絶対に早く対応しないといけないものを経験しているかどうかです。ですから、よく病床数の規模で研修施設の認定を議論する際、発熱と全部ひとまとめにしてしまうと、その差が出てこないような気がするのです。
○堀田座長 という意味では、要するに経験目標とか、そういった項目をもう少し詳細に精緻化する必要があるのではないかということと、本来、研修期間中に履修が必須でないものも若干含まれている可能性もあるという論点かと思います。こういうことは、論点としては挙げても大丈夫ですね。
○医師臨床研修推進室長 もちろんです、はい。
○堀田座長 ほかにいかがでしょうか。
○片岡委員 先ほど大学院の話が出たので。岡山大学の場合、大学院と並列できるというコースを取っている人が1学年に、1名から数名います。卒後研修を修了して大学院、4年目に入っている人もおります。基礎系や行政を目指す人もいますが、彼らは「臨床研修をきちんと行うことはやはり絶対的に必要だった」という感想を持っております。臨床研修をきちんと行うということが前提なので、そういう意味では我々は特段の配慮はしていないですし、研修の到達目標も当然満たす必要があります。どうしても臨床と研究の両方をしたい人に関しては配慮よりも、むしろサポートの体制を整えるほうが重要なのではないかと考えています。
○堀田座長 そういう視点も重要ですね。医系技官の方は、是非その臨床経験をしっかり積んでやっていただきたいとは思います。初期臨床研修はしっかり積んだ上でということだと思います。
 いま海外でやっていただいているものは今後、報告していただくのですが、いわゆる初期の研修の中で基礎をどう位置づけるかというようなことは何かありますか。
○大滝委員 今まとめているところですが、具体的な例はその中でもお示しできると思います。例えば、フランスでは希望する病院で研修するために、研修に入る前に1年間留年する例もあるそうです。また、正式な開業免許を取るためには研究論文を提出することが求められていて、研究をして論文を作成することを制度化しているそうです。このように制度にかなりバリエーションがありますので、参考になるかと思います。
 そういったことを通して見ますと、私自身も思うのですが、鍵になるのは、一方で質を保証しつつ、もう一方で多様性を支援することでしょう。いま、制度が立ち上がってきたので、今度は、その質を保ちつついろいろなケースに対応できるような、いい加減でかまわないという意味ではなくて、多様なキャリアとか事情に対応できるような制度が大切になると思います。関連して続けてよろしいですか。
○堀田座長 はい。
○大滝委員 1つは、研究のことがいま話題になりましたし、女性のことも話題になりましたが、そうしたことを含めて、補助金の支給についてです。最近のことを正確には把握していないのですが、以前は卒業直後2年間でなければ補助金が出ない、そこで切られてしまうという問題がありました。例えば妊娠出産などの事情で規程以上に休暇を取った場合、2年間で必要な期間が終わらないという問題です。研修期間が少し伸びてしまうと、その部分は補助金でカバーされないことがあったと記憶しています。卒業後すぐに基礎研究に進んだ人が3年目、4年目に臨床研修に戻ってきた場合でも、補助金が支給されるとか、キャリアに応じてもう少し弾力的に運用できるとよいと思います。補助金だけの問題ではないのかもしれませんが、制度として多様なキャリアとうまく融合できるような工夫をお願いしたいです。すぐには難しいと思いますが、先ほどの話にもあったように具体的な事例がありますので、それを基に検討していただきたいと思います。
 もう1つは質の保証という面です。私自身は、イギリスの医学教育における評価が、世界的にも注目されていて特に素晴らしいと思うのです。ただ単にレポートを書くとか、この症例を経験したか印をつけるだけではなくて、本当に目標とする能力を習得してできるようになっているのかどうかを、指導医が観察して評価するということがイギリスではかなりしっかり行われていて、それらの評価の提出のほとんどが最近はオンラインで行われているようです。それもまた次回の報告の中でご紹介できると思います。
 そういった面から見ますと、日本の現行の到達目標は、?や?のAでは「できる」「できない」という形で評価を区分していますが、?のBでは経験したかどうかを評価しているだけで、その病気を診られるかどうかは、目標では問うていないのです。しかも、その項目が網羅的にたくさんあるので、経験したたかどうかだけをワーッと埋めるようにチェックしていく評価になっています。
 英国では、例えば熱のある患者に対する初期診療能力であれば、そのような健康問題を持った患者さんを実際に研修医が診療しているところを指導医がそばで見ていて、この研修医は本当にこういう患者を1人で診て大丈夫かどうか、ある簡単なチェックリストに沿ってチェックして、それを報告として提出するようです。いまの医学教育の考え方ではコンピテンシーと言うのですが、研修医の実際の行動の特性を観察して、その場でのひとまとまりの行動がきちんとできているかどうかを評価するのです。そのような枠組みの評価に、今後は少し変えていくことを提案したいのです。
 例えば今の到達目標でいうと、Bの1の症状が並べてあるところは、そのように評価の考え方を少し変えるだけでかなり妥当な評価できるでしょう。7頁のBの1の「頻度の多い症状」についてです。経験したかどうかではなくて、観察評価するのはこれら全部の項目についてでなくてもいいのかもしれません。例えばこれらの中から10項目を選んで、実際に診療しているところを指導医が確認して、これは任せられる、OKだという評価を、何かオンラインで記録を登録するといったイメージです。これも医学教育で最近用いられている言葉ですが、「ポートフォリオ」的に、ある場所に評価したものをどんどん載せておくのです。それをあとで本人なり最終的にチェックする人だけが振り返って見ることができる、イギリスはそういうことをやっているようです。
 そのようにする場合は、逆に、Bの3の網羅的で膨大な疾患のリストを全部経験したかどうかを評価することも見直してはいかがでしょうか。少なくとも、いままで調べている範囲では、イギリスではこういった膨大な疾患リストは見当たりません。EPOCの利用が広がりにくい主な理由の一つが、この項目が多すぎて評価が形骸化してしまうことなので、その見直しにも役立つと考えています。海外の調査をしていて出てきたアイディアです。以上です。
○堀田座長 ありがとうございます。今日、安田先生も来ていらっしゃるのでせっかくですから、先生も厚生局で審査専門官をやっておられたので、そういう立場から、いままでのディスカッションで何かご意見はありますか。
○安田参考人 先生方のおっしゃることはいちいち的を突いた、皆さん、やはり見識のある方ばかりだなというように伺っておりました。妊娠出産に関する事案については、私も女性医師ですので専門官時代にもいろいろかかわっておりましたが、確かに大滝先生がおっしゃった補助金の問題は1つあると思います。そこは簡単に解決できるところかなとは思うのです。
 女性医師の方々で24ヶ月で終われないというような方の対応も何人かさせていただきましたが、私が見ていた中では、実は全員が、24ヶ月で終わらないまでも、何とか復帰されていて戻っておられます。それは女性医師自身の努力だけではなくて、やはりその受入れ側の施設の、プログラム責任者をはじめ皆さんの努力があって、両方の努力があってできるのだなということは、その1事例1事例では経験させていただいておりました。女性医師が頑張らなくていいという状況はあり得ないとは思うのですが、そのような経験のある所のやったことをうまく取り入れていただきたいと思います。実際、臨床研修期間に妊娠出産がかかってしまう方は、私の感覚では年々増えているような気はしますので、無視できないのではないかとは思っております。
 1つ、先ほど全部端折ってしまったのですが、指導医のアンケートのほうで紹介させていただきます。25頁をご覧ください。先ほど来大学院進学のことなどが出てきて、論点にすべきかというようなところから始まっていたと思うのですが、臨床研修指導医の資格をお持ちの1万6,000人強の先生方に、臨床研修で改善をするとしたらどういう改善が必要でしょうか、という項目をたくさん設けて複数回答で聞いているのが25頁のいちばん上の図になります。たくさんの先生がたくさんのものに○を付けておりますので、総数としては6万2,000ぐらい、改善してくださいという回答が出ています。
 これはパレート図という形でお示ししておりますが、「必修科目、期間設定」に関して改善してほしいという方がいちばん多いということ。そして、2つ目はちょっと舌足らずな書き方がしてありますが、「基本的診療能力を身につけるように見直してほしい」というのが回答項目になっております。3つ目が「都道府県別、各病院の募集定員設定について見直してほしい」です。この3項目が、いちばん多くの先生が改善が必要ではないかと考えておられるということです。皆さんが言われていた基本的診療能力というのは、やはり指導医の皆さんもそういうものが必要だと考えているということがわかると思います。必修科目、期間設定に関しては、どのように改善してほしいかがよくわからないところもあります。
 真ん中の(ア)のグラフは、お一人、いくつぐらい○を付けているのかということですが、最頻値3としまして、皆さん、いろいろ改善してほしいということで、かなりの数に○を付けられています。
26頁、やや難しい感じになってしまうのですが、皆さん、お答えになるときにたぶん一定の考えをお持ちで○を付けられると思うのです。どういう方がどういう考えをお持ちか因子分析という手法を用いてやりますと、4つの因子が浮かび上がってきました。数字がたくさん並んでおりますが、数字が大きいほどその概念に寄与しているのではないかという項目です。いちばん強い概念として浮かび上がってくるのは、「専門研修に重点を置く」「早く専門研修を開始する」に改善が必要という形で○を付けられているというのが第1因子です。
 第2因子は全く逆で、地域医療研修をより充実させたり、大病院に偏らず多彩な経験を積むように、そして、基本的診療能力を身につけるような形で改善してほしいと考えている方たちです。相関で見ますと、1番の因子と2番の因子は相関も少ないですので、そういう回答項目は別の方が選んでいることがわかると思います。
 3番目に関しましては、臨床研修の到達目標や必修科目期間設定を改善してほしいと考えている方たちは、評価方法も統一してほしいと考えています。その方たちは、第1因子、第2因子とも、そんなに関係は強くなくて、何かしら現状に不満はあるのですが、どちらのベクトルで見ているかよくわからないのが正直なところです。
 4番は、指定基準、都道府県別の募集定員に関して、改善が必要と考えているのですが、これもまた、どういう方向性かはわからないです。
1つ言えますのは、「研究期間がある」、「専門研修を身につける」ことが必要だと考えていらっしゃる方たちはかなり、かなりというか、これは数の問題ではないのですが、いるのではないかと考えられると思います。地域医療研修の充実、多彩な研修以外にも専門研修のことも同時に、どのような対応をするかということは検討する必要があるのではないかと考えられます。
○堀田座長 ありがとうございました。こういった因子分析をすると、それぞれの立場で異なったベクトルでものを見ている、それの総計で見ているとなかなか方向がわからないこともある、そういう話ですね。これは貴重なデータです。
○横田委員 私は行政の代表として来ておりますので、一応地域医療の確保という観点から申し上げたいと思います。今後は、地域の医師の偏在とか診療科の偏在をなくしていくことを目的に、この初期研修も充実していかなければいけないと思うのです。その中で、先ほど小森委員からもありましたように、女性医師の問題は非常に重要だと思います。京都府だけの話ですが、今年度のマッチングでいちばん倍率の高かった病院の特徴は、女性の医師を非常に大事にしている。短時間勤務、病児保育、男性の育児保育、そういったものがすべて整った環境の病院を志望する研修医が多いということがわかりまして、我々も、女性医師への支援を十分やっていかなくてはならないと思っています。この研修の評価については、やはりそういった研修の場の充実、特に女性の医師の職場環境の充実ということも踏まえた、何かそういったことを評価の中に入れていただくと非常にありがたいと考えています。
○堀田座長 ありがとうございます。いろいろご意見をいただきましたが、予定の時間を少しオーバーしましたので、この辺で閉じたいと思います。次回、また詰めていきたいですし、それまでにもしこの論点は是非というのがあったら、事務局に登録してもらうというやり方をすれば時間の節約になるかと思いますので、よろしくお願いします。それでは、事務局からの報告、今後の予定をお願いします。
○医師臨床研修推進室長 1つ、参考資料-2をご覧いただけますでしょうか。「医師臨床研修部会における臨床研修制度に関する主な発言」という一枚紙をお入れしております。これはご参考なのですが。
 実は、ご案内のとおり、このワーキンググループでお取りまとめいただく論点整理は、あとは部会に報告して、その後は部会で見直しに向けた具体的な審議をいただくことになっておりますが、先般、桐野部会長から、部会においてもこれまで制度に関していろいろな意見が出されているので、そういう意見の概要をワーキンググループの先生方にもご案内して、議論を深化していただくことが相応しいのではないか、というようなご示唆を賜ったものですから、今回、これまで何回か開催された部会の中で制度に関するご意見をまとめてみたものです。
 簡単に申し上げます。「研修医の受入実績に関すること」です。まず、「研修医の受入実績が2年間なかったことにより取消となった病院が、指定にかかる再申請を行うことについて」と。これは何かというと、取り消した翌年に再申請をするという例がいくつか見られたものですから、そういう場合は、協力型病院として何年か実績を積んで、改めて指定申請をすることが適当ではないかというご意見です。
 それから、その下ですが、協力型病院でも、かなり長い期間研修を受けることが可能なので、基幹型の指定が取り消されると、もう研修医は来ないというようなイメージは払拭する必要があるのではないか。
 それから、協力型病院において研修医の受入実績がない場合の指定の取扱いです。実績があれば、2年間の実績を踏まえて基幹型に申請できるのですが、そもそも、長い間実績が全くない協力型というのは、協力型としても指定を継続することは不適切ではないかという考え方です。
 次が枠囲みで「臨床研修病院群に関すること」ですが、この病院群を一定程度形成することを条件とすべき。つまり、義務づけるべきではないかと。ただし、その際でも、北海道の病院と九州の病院というような群の形成は実効性に問題があるので、群の形成の仕方については、条件を付けるにしても何らかの考え方を整理するべきだというご意見です。
 その下、「指導医講習会に関すること」とあります。これは、現行上は特定の診療科のみに指導医講習会を受講した指導医を置くことになっておりますが、その他の診療科でも必修あるいは選択必修、あるいはその病院独自に必修としているものについては、講習会の受講を必須とすべきではないかというご意見がございました。
 後ろの頁を開いてください。現在は次の年に指導医講習会を受講予定の段階で申請ができるようになっているのですが、その結果、実は受講できなかった例がいくつかあったものですから、部会の先生方の中には、この講習会は、実績としてきちんと受講した上で事後的に申請をするのが筋ではないか、というご意見がございました。同様にプログラム責任者講習会については、希望どおり受講できない場合があるので、未受講の場合は指定を見送って、受講した時点で指定をするのが筋ではないかというようなこと。
 最後、訪問調査に関することです。これは、今年の4月から激変緩和措置の廃止に伴いまして、3,000人という基準を満たさない病院には個別の訪問調査を実施して適否を判断することになりましたが、訪問調査は、3,000人以上についてもしっかり実施しないと不公平ではないか、というようなご意見がございました。以上です。
○堀田座長 ありがとうございます。私が失念していまして順序が狂いましたが、こういった論点が部会のほうでも語られているということです。では、今後の予定をお願いします。
○臨床研修指導官 今後の開催日程ですが、次回は10月を予定しております。詳細が決まりましたら、後日、ご案内差し上げることといたします。
○堀田座長 では、本日はここまでです。またよろしくお願いします。


(了)
<照会先>

厚生労働省医政局医事課
医師臨床研修推進室

直通電話: 03-3595-2275

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