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2012年7月31日 社会保障制度の低所得者対策の在り方に関する研究会(第2回) 議事録

○日時

平成24年7月31日(火) 10:00~11:30


○場所

経済産業省別館10階 1028号会議室


○出席者

駒村 康平(座長) (慶應義塾大学経済学部教授)
岩田 正美 (日本女子大学人間社会学部教授)
岩村 正彦 (東京大学大学院法学政治学研究科教授)
白波瀬 佐和子 (東京大学大学院人文社会系研究科教授)
山田 篤裕 (慶應義塾大学経済学部教授)

○議事

○社会保障担当参事官室長補佐
 それでは、定刻になりましたので、ただいまから「第2回社会保障制度の低所得者対策の在り方に関する研究会」を開会いたします。
 委員の皆様には、御多忙のところ御出席いただきましてありがとうございます。
 本日の会合に先立ちまして、藤田政務官からごあいさつをお願いいたします。

○藤田政務官
 おはようございます。本日は大変お忙しい中、また暑い中に、当研究会に御出席いただきましてありがとうございます。
 社会保障・税一体改革については、衆議院を通過し、現在、参議院でご議論いただいているところでございます。一体改革について様々な報道がなされるにつけ、国民の皆様からはやはり税や社会保険料の負担が重くなるのではないかと声も挙がっているところでございまして、これらのことからも、社会保障制度の低所得者対策の在り方を考える当研究会の役割というのは大変大きいものがあると、改めて思っているところでございます。
 課題はたくさんございますけれども、どうぞ鋭意御審議をいただきますようよろしくお願い申し上げます。

○社会保障担当参事官室長補佐
 ありがとうございます。
 続きまして、今回、岩田委員と岩村委員は初めての御出席ですので、最初に御紹介いたします。
 日本女子大学人間社会学部教授の岩田正美委員でございます。
 東京大学法学部・大学院法学政治学研究科教授の岩村正彦委員でございます。
 それでは、カメラはここまでで御退出いただきます。

(プレス退室)

○社会保障担当参事官室長補佐
 それでは、議事に入りたいと思います。
 今後の議事進行につきましては、駒村座長にお願いしたします。

○駒村座長
 おはようございます。
 それでは、議事に移りたいと思います。本日の配付資料について、事務局から説明をお願いいたします。

○政策企画官
 まず、配付させていただいている資料は議事次第のほか、資料1として3枚の紙です。
 資料2としまして、低所得者対策の経緯等という資料です。
 資料3としまして、前回会合の指摘事項等という資料を置かせていただいております。よろしいでしょうか。
 それでは、資料に即して御説明をさせていただきます。
 まず、資料1をごらんいただきます。こちらは、多様な現行制度、低所得者に代わる現行制度の考え方を整理してみたものでございます。関連する資料を資料2として付けておりますので、後で見ていただきます。
 まず、資料1を見ていただきます。1枚目は前回もお出ししている資料ですが、日本の社会保障制度の考え方としては「自助」を基本として「共助」が補完する。それとはまた別に、公的扶助や社会福祉などの「公助」というものが位置づけられているということでございます。そういう中で矢印のところで、社会保険方式が基本となる社会保障制度の体系になっているということでございます。
 今回の社会保障・税の一体改革でも、昨年の成案に抜粋を付けてございますけれども、その2つ目、「負担と給付の関係が明確な社会保険の枠組みの強化による機能強化を基本とする」としながら、一番下のところで貧困・格差の再生産の防止などの観点から、セーフティネット機能の強化を図るとしているところでございます。
 1枚おめくりいただいて、特にこの一体改革では近年の社会情勢の変化、核家族化の進行でありますとか地域の関わり合いの希薄化、あるいは非正規雇用の労働者が増えているということ、そういったことなどを踏まえて、「自助」を実現するための環境が損なわれているという認識の下、「自助」の実現を「共助」や「公助」がサポートする。そういうことを考え方の基本にしてございます。
 こうした中、その社会保障制度における低所得者対策につきましては、大別すると2つの方式があるだろう。1つは、社会保険制度を中心として、その中で低所得者対策を講じるという方法と、もう一つは生活保護制度を始めとしまして公助の制度において低所得者対策を講じる。こういう大きく2つの方式があるだろうということでございます。
 その次は、保険料負担の側面と利用者負担の側面で、少し低所得者対策を分けて整理してございますが、まず「保険料負担における低所得者対策」ということで整理してございます。
 1つ目は、社会保険料負担といいますのは、民間の保険の保険料とは異なってリスクに見合った保険料設定とはなっておらず、社会連帯等の社会政策的な考え方に基づいて設定をされるという仕組みになっております。特に被用者保険に典型的に見られますとおり、給与などの負担能力に応じた応能負担という形になって所得再分配機能、高所得者から低所得者へ、あるいは低リスクの者から高リスクの者への所得再分配機能を有するという仕組みになっています。
 そういう中、国民健康保険料につきましては無所得者を含めた強制加入の仕組みになっておりますので、そういう応益的な要素と応能的な要素の組合せで保険料が算定される仕組みになっている。それで、その応益保険料につきましては、負担能力が低い者については更に負担軽減措置を講じるというような仕組みになっております。
 もう一つの国民年金制度につきましては、これも無業者・低所得者などが対象となって、適用除外することなく日本の年金制度は構築されております。したがって、2行目のところにありますが、保険料免除制度を設けてそこに税財源を組み合わせることによって将来の年金給付に結び付けるという仕組みを取っているということでございます。
 こういう国民健康保険や国民年金の仕組みで「国民皆保険・皆年金」が維持されるという仕組みになってございます。
 1枚おめくりいただきまして、利用者負担の方の低所得者対策はどうなっているかということですが、主である社会保険制度におけるサービス利用者負担、医療保険の自己負担であるとか介護保険の自己負担、そういったものについては原則としては利用に応じた負担、応益負担ということになっております。
 ただ、一方で医療でいきますと、高額な医療がかかって家計が破綻してしまうことがないように、別途その制度の中で高額療養費制度ということで負担に上限を設ける仕組みが設けられています。
 障害の制度でありますとかの福祉制度においては、一般的には応能負担の要素が強い利用者負担の仕組みになっている。過去の経緯を見ますと、高齢者福祉サービスについては平成12年の前までは応能の仕組みでありましたが、介護保険制度創設で応益負担を原則として高額介護サービス費を組み合わせる仕組みになっているということでございます。
 現在の社会保障制度の各制度を見ますと、個々の制度ごとにその低所得者対策が講じられておりますし、また累次の改正を経てきておりますので、全体として見ますと必ずしも一貫した考え方に基づく仕組みとなっていないであるとか、あるいは多数のサービスを受ける家計全体の負担への配慮が必ずしも十分でないというような指摘があって、総合的な整合性の在り方を考えていく必要があるだろう。
 この検討会の主たるテーマであります総合合算制度を考えますと、今、見ていただきましたように、(2)の利用者負担の方が中心のテーマですけれども、その中でも社会保険制度における自己負担等、福祉制度等における自己負担等、そういったものの全体を対象としたまたがった制度設計を今後考えていく必要があるという点に留意する必要があるであろうということでございます。
 次に、資料2を見ていただきますが、こちらの資料は今回、手厚く付けておりますのでポイントと考えられる部分を中心に見ていただければと思います。
 最初から飛びますが、7ページ目をごらんいただきます。まず基本のところですけれども、7ページ目、8ページ目は平成11年の厚生白書からの抜粋です。日本の社会保障制度は社会保険を中心としてとなっておりますが、それぞれ社会保険制度、社会扶助制度、どういう考え方でどういう制度があるかということが書かれています。その上で一番下にありますとおり、社会保障給付費の9割は社会保険で対応しているということで、社会保険制度が社会保障制度の中核として位置づけられているということでございます。
 8ページ目の方は、社会保険と民間保険の相違を整理している記述がありましたので、そこを抜粋しました。真ん中辺りにありますが、「性格の面では」というところのポツ、上から見ると3つ目のポツですが、社会保険というのは加入が自由な民間保険とは異なって強制加入になっている。
 それで、更に2つ下、「第三に」というところで保険料負担のところを見ますと、低所得者の保険料軽減制度があったり、あるいは給付面での所得再分配機能を持っているという民間保険との違いがあるということです。
 「保険技術の面では」ということで、危険、リスクに応じた保険料の設定ではなくて、所得等の負担能力に応じた保険料方式など、所得再分配の機能が盛り込まれているということでございます。
 一番下のところですが、財源的に見ますと保険料収入だけではなくて租税を財源とする公費が入るということで、3行目の後半ですが、「公費負担の導入によって保険料負担を軽減することによって、所得格差のある被保険者の同一性を高め、保険集団としてのまとまりを作ろうとするものである」という整理がされています。
 次に1枚おめくりいただきまして、大きい2番として現在の社会保障制度における低所得者対策の具体的な内容を資料として用意しております。
 下の10ページのところは概念図にしたものですが、左の縦軸で自助、公助、共助で、右側はここでは年金、医療、介護という3つの分野を取って図示したものですけれども、真ん中の下の方にありますが、それぞれの制度の中で年金ならば年金で保険料の減免制度があり、医療、介護もそれぞれの中で軽減制度があったり、保険料の軽減制度があったり、自己負担金の減免があったりということで、最後はこの生活保護との接続がそれぞれの制度でされているという概念図でございます。
 1枚おめくりいただいて11ページ目、12ページ目は保険料負担の側面で見た低所得者対策がどういうふうになっているかを整理したものです。
 上の11ページ目ですが、被用者保険については基本的には応能負担で報酬に保険料率を掛けて算出するという仕組みになっている。右2つ、国民健康保険と後期高齢者医療制度については似たような仕組みですけれども、応能負担と応益負担の組合せになっている。それで、一番下で応益のところについて更に軽減制度を講じて低所得者の負担に配慮するというような仕組みになっています。
 下のページで、一番左にある介護保険については公費による保険料軽減制度というのはございませんが、一番下の欄にあります負担軽減措置のところでは生活保護受給者でありますとか市町村民税、世帯非課税のところ、低所得者と言われているところについては、高齢者の保険料全体の中で調整をして基準額より低い保険料を課するというような形で低所得者対策は講じられています。
 1枚おめくりいただいて、今度は利用者負担の方でそれぞれ低所得者対策はどうなっているかを具体的に整理している資料ですが、こちらは高額療養費制度とか、後ろに詳しく出てまいりますので基本的には省略しますが、上から3段目のところを見ていっていただきますと、基本的に医療保険制度では自己負担は応益負担、定率の利用者負担であるという仕組みになっている。
 下の14ページを見ても、下のページは食費と居住費ですけれども、医療保険も基本的には定額ということで応益負担、右側の介護保険も定額ということで応益負担ということです。
 ただし、上のページも下のページも低所得者に対する配慮が高額療養費制度の中で講じられていたり、あるいは食費の定額負担について低所得者は低い額を設定したりという形で、低所得者に対する配慮がそれぞれされております。
 1枚おめくりいただいて15ページ目、公費による公序の仕組みであります障害者の制度あるいは保育につきましては、所得に応じた利用者負担という設定で基本的な性格は応能負担という仕組みになっています。ここは、社会保険制度と少し違うところかと思います。
 しばらくページは飛んでいただきまして、21ページ目をごらんいただきます。いろいろな社会保障制度で、低所得者とはどういった範囲なのかということを決めるときに準拠しておりますのが住民税非課税というラインでございます。
 21ページ目は、住民税非課税のラインを上は給与所得者、どちらかというと現役世代、下は高齢者、年金受給者についてそのラインを整理して見ているものでございます。住民税は均等割と所得割というものがあって、基本的には均等割の方がその非課税限度額は低いところで設定されています。更に、均等割については級地ということで都市部か町村部かということで設定額が少し異なっている。
 例えば給与所得者で独身のところで見ますと、1級地であれば100万円という非課税限度額が設定されていて、所得割の方は少しそれよりも高い、網掛けの方が適用されているところですが、108万8,000円という限度額が設定されているということです。高齢者の方で、例えば下から2段目の夫婦の65歳以上のところを見ますと、均等割のラインは1級地で211万、所得割のラインは222万、そんなラインが設定されているということでございます。
 以上、整理したものが22ページ目ですけれども、いろいろな社会保障制度があって、それぞれの制度で低所得者のラインを何らか決めているわけですが、それを少し類型化してみたものです。?のところで、基本的には住民税非課税ライン、世帯非課税ラインというものを基準にしている制度が多数ございまして、その中で上から3つ目のものは高額療養費、高額介護サービス費、あるいは介護保険の保険料の軽減措置が準拠していますのは住民税の世帯非課税かどうかということで、更にもう少し下の層についてきめ細かく対応するということで、世帯非課税かつ公的年金収入プラス合計所得金額が80万円以下であれば更にもう少し手厚い低所得者対策を講じるというラインが設定されています。
 障害者自立支援制度の方は、世帯非課税というラインがあって、もう一つ上のところにも課税世帯なんだけれども市町村民税所得割額が16万円未満というラインも設定されているということです。
 ?の類型は国民年金の免除でありますとか、保育所の費用徴収の基準、こちらは世帯非課税というラインを使って、かつ所得税の非課税というラインも使いながら低所得者の負担に配慮するという仕組みになっています。
 一番下のところは独自の基準ということで、国民健康保険と後期高齢者医療の保険料の軽減措置については、その非課税ラインよりも下のところの所得層について、より丁寧に軽減措置を講じる必要があるということで、独自の所得ラインが引かれているということでございます。
 1枚おめくりいただいて23ページ目、24ページ目は少しモデルを設定してそれぞれ社会保障の給付の代表として年金、それに対して税と社会保険料がどんな負担に今なっているかを整理したものでございます。
 上の23ページ目の表は高齢者でございますが、例えばモデル年金世帯と書いてある高齢者夫婦世帯のところを見ていただきますと、年金額はモデル設定でいきますと277万で、所得税、住民税はその額ですと非課税になって、介護保険料は7万4,500円、それで75歳未満であれば国民健康保険に入っているとして、その額は応益割2割軽減が適用されるラインですので11万5,600円、それが後期高齢者になりますと別制度になりますので8万9,300円というような負担関係になっています。老齢基礎年金のみの世帯で見ますと78万6,500円で、所得税、住民税は非課税、介護保険料は2万9,800円で、後期高齢者の医療保険料は4,300円、そんな負担関係になっているということです。
 下のページは現役でございますが、年収額は住民税非課税ラインのところを取っております。例えば一番右の夫婦+子1人世帯を見ますと、非課税ラインが205万7,000円で非課税ラインなので所得税、住民税は非課税、国民健康保険料を見ますと応益割2割軽減が適用されるので、年額20万5,700円くらいの負担になっているということでございます。
 更にその次の25ページ、26ページ目ですが、今、見ていただいた数字は現状、足元の数字でございますが、今回の一体改革で将来の保険料の見通しの推計も公表しております。これは平均値でございますので今、見ていただいた表にそのまま適用はできませんが、大体相場観としてわかるのではないかと思いますので資料を付けました。
 例えば、医療で後期高齢者医療の制度のところを見ますと25ページ目のちょうど真ん中辺りですが、平成24年度は全国平均で月額5,400円、それが2025年には月額6,500円程度に伸びていくということが見込まれます。介護保険料であればその一つ下、月額5,000円が2025年には月額8,200円程度に伸びていくという推計でございます。
 次に、1枚おめくりいただいて大きい3番、低所得者対策の考え方、経緯について幾つか資料を付けてございます。
 更に、1枚おめくりいただいて29ページ目でございます。国民年金制度については保険料の免除制度があるということを先ほど見ていただきましたが、上から3つ目の丸で、制度発足時については全額免除の制度のみが設けられ、その後、平成12年の改正で半額免除、更に平成16年の改正で4分の1免除、4分の3免除と、だんだん免除制度についてきめ細かく対応できるような改正がされてきているということでございます。
 下の30ページ目でございますが、国民健康保険料の保険料軽減措置についての経緯を見たものでございます。国民皆保険が達成された制度創設当初についてはこの保険料軽減制度というのは設けられておらず、その後、昭和38年の改正で保険料軽減制度6割軽減、4割軽減というものが設けられたということです。
 3つ目の丸にありますとおり、その後、改正が行われて所得の低い世帯が増加して中間所得層の保険料負担が過重になってきたということを踏まえて、平成7年に応益割合を全体的に高めていくということとセットで新たに2割軽減制度というものを設け、更に6割、4割の軽減だったものを7割、5割に軽減割合を引き上げるという改正がされております。今回、一体改革ではこの軽減の制度のところについてもう少し拡充をしようということになっております。
 1枚おめくりいただいて32ページ、下の方のページでございますが、介護保険の保険料ですけれども、こちらは公費で保険料軽減をするという仕組みではなくて、全体に65歳以上の被保険者の所得の高い層の保険料額を少し高目に設定して、低所得者のところの保険料軽減を行うという仕組みになっておりまして、第1段階、第2段階、第3段階というところがいわゆる低所得者として保険料の軽減をしているところです。今回の一体改革では、ここに新たに公費を投入して保険料軽減制度を拡充しようということを考えているということでございます。
 1枚おめくりいただいて、次は自己負担の方の低所得者対策の経緯でございます。34ページ目から36ページ目にかけては、高額療養費制度についてでございます。総合合算制度を検討する上でも、密接に関わってくる制度のところになります。こちらは、趣旨として高額な医療にかかっても家計が破綻しないようにということで、所得に応じた自己負担の上限を設定して定率による患者負担に歯止めを設けるという仕組みでございます。昭和48年に創設されているわけですが、その後の類似の改正で低所得者の所得区分を設定したり、あるいは世帯合算をしたり、多数該当の負担軽減を行ったり、現物給付化を図るという制度改善を行ってきているということでございます。
 現状は1枚おめくりいただいた35ページ目のところでございますが、上が70歳未満、下が70歳以上です。改めて申すまでもないかもしれませんが、70歳未満のところを見ていただきますと、一般の所得の方は8万100円というのが基本になって、多数該当、年4回以上多数高額医療が発生すると4万4,400円と軽減されます。低所得者についてはそこの基準額が3万5,400円となって、多数該当の場合は更に2万4,600円になるという仕組みです。
 そこが、高齢者について最も違うのは、一般の所得のところがまず4万4,400円という基準額に下がっていって、更に低所得者については住民税非課税世帯が2万4,600円で、その中で国保グループの方であれば80万円という年収基準で、80万円以下の方については更に1万5,000円を上限額にするという緩和措置が講じられているということでございます。
 下の36ページ目は高額療養費制度の額の考え方でございますが、上から2つ目の欄、一般の所得のところの右側を見ていただきますと、平成16年度の改正の考え方は平均的な標準報酬月額に対応する総報酬月額が32万円、その25%程度ということで額が設定されているということでございます。
 更に1枚おめくりいただいたところが、高額療養費制度の改正の経緯でございます。こちらは見ていただくことにして、下のページで大体どれぐらいのお金がかかっているか、38ページを見ていただきますと、その左下の方にグラフがあります。10年間で大体2倍以上に高額療養費の支給額は増加してきている。21年度の実績で1兆8,200億円という規模になっております。23年度予算ベースで2兆1,000億という規模でございます。
 しばらく資料は飛んでいただいて、43ページ目でございます。介護保険も基本的には定率の1割負担のところは高額療養費制度と同様の高額介護サービス費というものが設けられておりますが、それ以外に介護保険では食費と居住費の改正が平成17年に行われております。特別養護老人ホームと老健施設と療養病床という介護保険3施設の施設類型については、食費と居住費について一旦、保険給付の外に出して利用者負担を原則とした上で、低所得者のところについては「補足給付」ということでその負担を抑える措置が講じられております。
 具体的には44ページの下に表がございますとおり、食費についてはそれぞれ表にあります390円とか320円とか、所得の段階に応じた設定になっているということと、居住費についてはその施設の別途の類型によって、多床室であればより低目の負担額になっていますし、ユニット型であればもう少し高目の負担額になっているということでございます。
 1枚おめくりいただいて、次に45ページ目で、医療の高額療養費制度、介護の高額介護サービス制度はそれぞれの制度の中での上限を打つという制度でございますが、これが平成18年の医療制度改正を受けて、それをそれぞれ合算して上限を打つという仕組みが講じられています。施行は、平成20年の4月からそういう仕組みが入っております。
 合算した限度額が?のところにありますが、年額の56万円を基本として設定しているということです。こちらは制度のイメージの図のところにありますとおり、制度間にまたがりますので保険者が2つあります。したがって、受給者の方はまず介護保険の市町村の方に申請をして証明書を受けて、その証明書を持って今度は医療保険者の方に申請をして、保険者間で案分をした上でそれぞれ支給が行われるという仕組みで今、運用がされている。こちらは、もし番号制度が入ればもう少し所得の把握がしやすくなることもありますので、スムーズに合算の仕組みが動くという効果が得られることが期待されています。
 資料2は以上でございまして、最後に資料3でございます。こちらは、前回いただきました宿題について整理をした資料でございます。
 まず最初に2ページ目にありますとおり、社会保障制度における資産がどういうふうに扱われているかについて整理した資料です。
 3ページ目でございますが、国民健康保険制度で保険料のところで資産割というものが出てまいります。国民健康保険は先ほど見ていただきましたとおり応益保険料と応能保険料と大別されますが、その応能保険料の中に2つ種類があります。1つは所得に応じて賦課する所得割ですが、もう一つは固定資産税に応じて負担をしていただく負担割というものがございます。
 こちらの資産割を取っている市町村ですが、下の4ページの表を見ていただきますと四方式というところが資産割を含めて保険料を賦課しているところで、市町村数で見ますと資産割を取っているところが非常に多いということが見てとれます。
 ただ、市町村別に見ますと2つ目の丸にありますとおり、大都市等においては資産割を賦課しない方式で保険料の設定がされているということでございます。
 もう一つ、次の生活保護制度も資産を加味して給付を行う制度でございます。6ページ目のところを見ていただきますと、これも改めて御説明するまでもないかもしれませんが、「資産の活用」ということで原則は土地・家屋は売却、現に居住している場合は例外が認められますが、土地・家屋は原則売却、自動車についても原則は売却、預貯金はいろいろな銀行とか生命保険会社に調査の上、あれば原則収入認定ということになります。
 更に、生活保護の場合は「能力の活用」ということで、稼働能力があれば働いていただくべく努力していただくということですし、扶養の優先ということで扶養義務者に対する扶養も求めていくという仕組みになってございます。
 あともう一つ、資産を見る制度として7ページ目ですが、昨年の10月から始まっている求職者支援制度がございます。こちらも真ん中の要件のところを見ていただきますと、収入8万円以下、世帯収入25万円以下で、それで?、?ですけれども、世帯の金融資産300万円以下、更に現に居住する土地・建物以外に土地・建物を所有していないことということで、資産を勘案する制度がございますということです。
 下の8ページ目は、これもいただいた宿題で、年齢ごとに収入の状況と貯蓄の状況、金融資産の状況がどういうふうになっているのかがわからないかということで調べたものですが、残念ながら年齢ごとかつ収入掛ける貯蓄という形でのデータがございませんで、こちらで用意しましたのは全年齢で収入段階別に貯蓄の残高を見たものでございます。これは家計調査ですけれども、黄色くしましたところが典型ですが、フローとしての収入は低いところでも貯蓄が2,000万、3,000万、4,000万ある方も中にはいらっしゃるというデータでございます。
 参考に、下の表は年齢階級別に今度は貯蓄の残高、これは収入会計別に見られないのですが、貯蓄の残高は見られますので、例えば70歳以上のところを見ていただくと2,000万~4,000万円の貯蓄がある人が5,337で、4,000万以上のところが3,508ということになってございます。
 9ページ目以降が2つ目で、「低所得者対策の規模」が大体どういう感じになっているのかという宿題がありまして、その資料です。
 10ページ目のところは、それぞれ制度ごとに保険料と税がどういう負担割合になっているかを図示したものです。例えば国民健康保険、真ん中のところを見ていただくと半分が保険料、半分が国と都道府県の負担、公費の負担ということになっておりますが、1枚おめくりいただくと11ページ目で保険料財源だと言われているところの中でも左側ですけれども、その中に公費を入れて保険料軽減制度を行っていたりしますので、その保険料財源というところにも公費が更に入っているという仕組みになっています。
 下の12ページ目のところは、それぞれの制度で低所得者対策に大体どれくらいのお金がかかっているかを推定を含めて見たものでございます。
 まず保険料の方を見ていただくと、国民健康保険料の軽減制度で、これは平成22年の数字ですけれども、Bの欄、軽減額は3,400億円くらいかかっているということです。それで、その対象者がどれぐらいいるかというのが一番右の欄ですけれども、制度の対象者の中で軽減対象者は4割くらいいらっしゃるということです。後期高齢者医療制度で見ますとそれが2,800億円で、対象者は6割くらいいる。
 今度は自己負担の方を見ますと、高額療養費制度は低所得のところに5,200億円くらいかかっていて対象者は3割くらい、高額介護サービス費になりますと1,200億円で92%、さっきの施設居住費、食費の補足給付については2,700億円くらいかかっているということでございます。
 次に、「社会保障制度における物価スライド等の一覧」ということで、どんな制度がどういうものにリンクして額が設定されているかを整理したものです。
 14ページ目、一番上の欄は物価などを勘案しているものということで各種手当と年金です。公的年金については基本は賃金スライドですけれども、毎年、毎年の改定の際、物価を基準に改定しているということ、あとは既裁定者については物価スライドになっているのでこちらで整理しております。
 賃金水準を勘案しているものとしては、労災の年金給付あるいは休業給付、雇用保険の基本手当(失業給付)といったものがあります。
 一番下の生活扶助基準については、民間最終消費支出を参考にしているということです。
 1枚おめくりいただいた最低賃金につきましては、「生活保護に係る施策との整合性に配慮」するということになっているということです。
 下の16ページ目でございますが、これは平成11年度以降、生活保護基準と年金と最低賃金がどんな改定率で改定されてきているのかをグラフにしてみたものです。これを見ますと、かなり最低賃金の方はカーブがきつくなっていますので改定がされてきているということかと思います。
 次に、「世帯類型別、ライフステージ別の低所得者」についてという宿題をいただきました。資料では19ページ目をごらんいただきますと、先ほど住民税非課税のラインを見ていただきましたが、ではその世帯で住民税非課税という方がどれくらい日本にいらっしゃるのかを見たものでございます。それを65歳以上65歳未満に分けてみたものですが、人口が1億2,800万、これは推計ですけれども、大体住民税の世帯非課税の人というのは3,000万人くらいいらっしゃるという見込みでございます。それは、下の帯グラフを見ていただくと、年齢別に分けると65歳以上の方が900万人、約1,000万人いて、65歳未満の方が2,000万人くらいいらっしゃるという状況です。
 その中で生活保護を受けていらっしゃる方がトータルとして209万人、高齢者で80万人くらいいて現役で130万人くらいいる。それで、更に現役のところにはひとり親世帯が75万人くらいいらっしゃる。そんな推定でございます。
 20ページ目、21ページ目はちょっと視点を変えて相対的貧困率をいろいろな年齢階層、世帯類型で見てみたものでございます。後でごらんいただければと思います。
 次に大きいくくりとして、新しいマイナンバー制度という番号制度の導入が検討されております。その関係で宿題をいただきましたので、簡単に見ていただきますと23ページ目、スケジュールですけれども、マイナンバー法案は国会に提出されて審議を今、待っているところでございます。それが通っていけばという前提でこのスケジュールは組まれていますが、2015年の1月に番号が実際に使われ始める。社会保障の分野であれば、年金の相談とかでマイナンバーが使われ始める。
 その第2弾として真ん中の右側の方にありますが、2016年1月から国の行政機関の間でマイナンバーを使った情報連携が始まり、更に2016年7月から地方公共団体も含めていろいろな情報連携が始まる。そんなスケジュールになっています。
 そういう中、2013年のところに赤い特別法案提出というものがありますが、こちらは医療などにつきましては情報の機微性が高いということで、マイナンバー法と一般法に上乗せして個人情報に配慮したような特別立法をするべく、来年の法案提出に向けて今、検討している最中でございます。
 そういうスケジュールを念頭に置いていただいて、こういう低所得者対策との関係でどういう改善が図られる見込みなのかという資料でございます。
 まず税の分野ですが、24ページ目を見ていただきますと箱囲みの(2)のところで、今回のマイナンバー法で税務面でどういう変化があるかということです。取引の相手方が税務当局に提出する資料、これは法定調書と呼ばれているようですが、その法定調書と納税者自身が税務当局に提出する納税申告書にいずれも新しい番号を記載する。そうすることによって、税務当局が双方から提出された資料を突合しやすくなるということで、所得情報をより的確に把握することが可能になる。そういうことが期待されております。
 住民税も基本的には同じで、26ページ目には法定調書にはどういうものがあるのかという一覧を付けております。
 更に27ページ目でございますが、法定調書については、これは諸外国と比較したものですが、日本については利子所得は源泉分離課税になっておりますので、そこが今回のマイナンバー法が導入されても対象にならないということでございます。ストックについては諸外国も大体同様ですけれども、対象になっていないというところです。
 次に、社会保障制度でどういうメリットがあるかということです。28ページ目の資料では幾つかあるのですが、1つは「行政事務の効率化」ということでいろいろな給付があります。年金があり、雇用保険があり、あるいは生活保護があるということですが、それぞれの制度、別主体が事務を行っておりますので給付調整、それぞれの給付間の併給調整みたいなものがマイナンバーを使った情報連携が行政間でしやすくなるということが期待できますので、そういったものが効率的に行えるようになるという効果がひとつ期待できます。
 2つ目は手続の簡素化、これは国民から見ての利便性の向上ですが、今はいろいろな所得証明を付けたり、住民票添付とか、そういうものが求められる制度がありますが、そういったものが不要になっていくということになります。
 更に1枚おめくりいただいて30ページ目、下のページの方を見ていただきますと、医療介護分野では先ほど御説明した高額療養費制度と高額介護サービス制度の合算制度のようなものが今でもあるわけですが、さっきイメージ図で見ていただいたとおり、かなりマニュアル的にあっちにいったりこっちにいったりという手続になっていますが、そこが情報連携ができるようになると保険者間で給付状況の把握ができるようになりますので、こういう合算制度がスムーズに動くようになるということが期待できます。
 更に、先ほどちょっと個別法ということを申し上げましたが、医療の機微情報を扱う個別法をつくれば更にいろいろなことができるようになるということで、例えば下に?がありますが、健診情報・予防接種の履歴とか、そういったものを行政から履歴情報として管理できるようになって住民に提供できるようになったり、いろいろな医療機関と介護のサービス事業者を結んだようなデータの蓄積、あるいはデータの提供、そういった活用ができるようになるということが期待できます。
 最後に、1ページめくっていただいた本検討会の検討対象である総合合算制度といった制度も、マイナンバー制度ができることによって保険者がそれぞれ分立しておりますので、医療保険者は何千かありますし、介護保険は市町村というふうに分立しているところの行政機関間、あるいは保険者間の情報の連携がしやすくなりますので、総合合算もそういう意味ではしやすい環境が整う。更には、サービス提供機関、医療機関とか福祉サービスの事業者まで結ばれれば、現物給付も視野に入れた総合合算制度のようなものも考えることができてくる。そういう関係になってこようかと思います。
 私からは以上でございます。あとは、生活保護制度と最低賃金制度について御説明申し上げます。

○参事官(賃金時間担当)
 それでは、まず最低賃金制度の主な概要を御説明した後で、生活保護制度との関連づけについて御説明をさせていただきます。
 資料の34ページをごらんください。まず最低賃金制度は御案内かと思いますけれども、国が法的強制力をもって賃金の最低額を定めるという制度でございます。適用対象は、パートを含むすべての労働者とその使用者でございます。一旦、すべての労働者に適用した上で、精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方などには減額をした額が適用されるということでございます。
 最低賃金には2種類ございまして、1つが「地域別最低賃金」、これは各都道府県ごとに定められ、産業や職種を問わず適用されます。平成23年度は、全国加重平均をしますと、1時間当たり737円でございます。このほかに、一部の産業では産業別の最低賃金、「特定最低賃金」を定めております。こちらはおおむね地域別最低賃金より水準が高くなっておりまして、平均すると今801円となっております。生活保護との関係が問題になるのは、?の地域別最低賃金の方になります。
 地域別最低賃金の改定は毎年行われております。これはちょっと複雑なのですが、中央最低賃金審議会で各都道府県の地方最低賃金審議会に対して引上げ額の目安というものを示します。最近、今年の分を示したところでございまして、それを受けて地方最低賃金審議会で各都道府県の額を審議していただくという仕組みになっております。
 続きまして、35ページをごらんください。地域別最低賃金はどういう基準で決定するかということでございますが、これは最低賃金法の第9条になるんですけれども、地域での「労働者の生計費」、「労働者の賃金」、「通常の事業の賃金支払能力」、この3要素を総合的に勘案して定めることとされております。法律が平成19年に改正をされて20年から施行されておりますが、前回の法改正の際に、生活保護との整合性というものが盛り込まれました。労働者の生計費を考慮するに当たっては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮することとされております。
 「最低賃金の効力」でございますが、地域別最低賃金については50万円以下の罰金ということでございます。
 「民事的効力」としては、この最低賃金を下回る契約については無効とされて、最低賃金と同様の定めをしたとみなされるものとなっております。
 最低賃金制度と生活保護制度については制度の目的も違いますし、また、両者の額の決定方法につきましても地域別最低賃金は都道府県単位ですべての労働者について同じ額が適用されるのに対しまして、生活保護制度は市町村が級地別に分かれて額が決まっておりますし、また、年齢、世帯構成によっても基準額が異なっております。
 どのようにして整合性を図っていくかということについては、中央最低賃金審議会で審議をして決めております。そこで決まっている現時点での比較方法が、36ページにございます。最低賃金についてですが、時間額を月額に換算するということで、時給の最低賃金額に1か月の労働時間として173.8時間を掛け、また税・社会保険料を差し引いて手取りに直すという意味で可処分所得比率0.849を掛けております。
 また、比較対象になる生活保護につきましては、基本的には最低限の賃金保障という意味で若い世代を念頭に置いております。具体的には、12~19歳の単身世帯の生活保護費と比較をしております。また、市町村によって級地、額が違うという点につきましては、県内の級地の人口加重平均を取ることで比較可能な数字としております。
 今、申し上げた生活扶助基準の1類費と2類費と期末一時扶助費、あとは住宅扶助については単身世帯の実績値を加えたものを比較対象としております。
 それで比較をしたものが36ページのグラフでございますが、これはデータが生活保護については平成22年度のデータ、最低賃金については平成23年度のデータで、それぞれ最新のもので比べております。下の都道府県名のところに四角で囲っておりますが、この囲われた県が、最低賃金が生活保護水準を下回る、いわゆる逆転現象が生じている都道府県ということで、この時点で11都道府県で逆転現象が生じております。
 この逆転現象が生じている県だけを取り上げた表が37ページにございます。北海道から広島まででございます。一番その乖離額が大きい北海道では時間当たり30円、生活保護水準の方が最低賃金を上回っているということでございます。
 この最賃と生保の乖離につきましては、よくニュースでも一旦、解消されたものがまた拡大をしたというふうに報じられております。これは、生活保護のデータや税・社会保険料率のデータを新しいものに更新した際に新たに逆転現象が生じるということが起きております。
 37ページでごらんいただきますと、昨年の最低賃金の審議の時点では、生活保護は21年のデータが最新でしたので、平成21年の生活保護と平成23年の最低賃金を比べた結果では乖離が生じていたのは北海道、宮城、神奈川の3県でした。これが生活保護のデータを新しいものにしたことと、あとは保険料率の引上げを入れ込んだことによって11都道府県で乖離が発生しているということで、8都府県、逆転現象が生じている県が増えたということになります。
 今年、中央最低賃金審議会での審議が行われましたが、そこでの審議の結果、この11都道府県については原則2年以内でこの乖離を解消していくということで、具体的に何年、幾らで解消していくかということについては今後の地方最低賃金審議会での議論にゆだねられております。
 38ページには、その乖離額の内訳を分析したものを載せております。乖離額が拡大をする要因というのは、1つは生活保護の住宅扶助実績値の増加との連動でございまして、ここが増加したことによる影響が1つあります。もう一つは、保険料率等が上がりますと最低賃金の額面は同じでも手取り額が低下いたしますので、その影響がございます。
 平成21年~平成22年のデータに更新した際には、住宅扶助実績値の方も影響しているのですが、可処分所得比率の低下も協会けんぽの保険料の上がり幅が大きかったということなどもありまして、こちらも大きく影響しております。
 以上でございます。

○駒村座長
 ありがとうございました。
 それでは、低所得者の制度の現状や要件等を御説明いただきましたが、御意見、御質問などがありましたら御自由に御発言ください。
 山田先生、お願いします。

○山田委員
 詳細で非常に複雑な制度をわかりやすく、たくさんの資料を御用意いただきましてありがとうございます。大変参考になりました。
 私からは幾つかありますけれども、まずはメジャーなコメントというか、質問をさせていただきたいと思います。
 第1に、資料をいろいろと拝見させていただきまして、住民税非課税というのが要するに低所得者の定義として非常に重要だということが示されているわけですけれども、そもそも第1回のときに申し上げましたように、この研究会は低所得者対策ということで、低所得者の概念というものが非常に重要になってくるわけです。
 第1回のときに申し上げたのは、通常その低所得者の背後にあるのは何らかの消費支出みたいなコンクリートなベースがあって、それを低所得者として定義する。そこから出発するのがいいのではないか。勿論、現行の制度では住民税非課税というのが一つの低所得者の定義となっているわけです。
 そこで質問なんですけれども、住民税非課税が要するに社会保険等の減免措置に用いられるようになった経緯というのは一体どういうことなのか。そして、このそもそもの非課税の額を算出している根拠ですね。それから、その算定基準または控除等について、国民年金保険料については判別指数というものもかつてあったということですが、そういった過去の経緯を含め住民税非課税や免除基準の算定基準・根拠というものがどうなっているのか。それがどういった考えで設定されたかということが示されないと、低所得者という概念と本当に合致しているのかがわからないので、大変だとは思うのですけれども、そこの点について教えていただきたいというのが第1点でございます。
 第2点目としては、もう一つこの住民税非課税というベンチマークとともに、生活保護基準というものが低所得のベンチマークになっております。この生活保護基準と、それから住民税非課税というベンチマークというのはどういう関係にあるのか。どういうふうにお互いがどう参照しているのかということについても教えていただきたいというのが第2点でございます。
 私からは、以上でございます。

○駒村座長
 住民税非課税を一つの目安とすることにした経緯ですね。非課税の算出の考え方という御質問、それから非課税と生保基準ですが、非課税の方が3,100万人と非常に多くいらっしゃるわけで、これはどういうふうに推計されたかということも関心のあるところですけれども、先ほども少し触れられたと思いますが、1級地、2級地という話があって、これは生保の1級地、2級地と重なっていますよという御説明だということですと、この関係はどうなっているのかという御質問だと思います。
 事務局、いかがでしょうか。

○政策企画官
 ちょっと手元に詳しいことがわかるものがありませんので、わかる範囲で宿題にさせていただいて、わかる範囲で調べさせていただければと思います。
 恐らく、1つはいろいろな社会保障制度が住民税非課税を利用しているのは、事務が効率的にできるという観点が多分にあると思います。ほかに所得を見る仕組みというのは基本的には余りなくて、国民健康保険の保険料があえて住民税の非課税ラインよりも下のところをチャレンジをして把握をするということになっていますが、それも結構大変な事務作業としてやっている。そういう中で、簡便に低所得者を判別する仕組みとしては、やはり住民税も払っていないような方であれば、それは低所得者であろうということで参照しているという要素が強いのではないかと思います。
 あとは、残余のいろいろな経緯とか根拠などはわかる範囲で調べさせていただきます。

○駒村座長
 ありがとうございました。よろしくお願いします。ほかにいかがですか。
 では、岩村委員どうぞ。

○岩村委員
 ありがとうございます。今日初めて出てきたので、若干コメント的なものも含めながらと思います。
 まず第1点は、前回の資料と、それから議事録の方も拝見して、皆様の御意見を非常に興味深くお聞きしていました。主としてここで問題になっているのは、やはりどうしても社会保険のところかと思っています。
 ただ、実は日本の社会保険というのは、よく例として挙げられるドイツの社会保険であるとか、それからフランスの社会保険といったものと比べると非常に大きな特徴があります。それは、今日の資料3の10ページのところに出ているのですが、被用者の社会保険のところというのは協会けんぽを除くとかなり純粋の本来の意味での社会保険の姿を保っていますが、実はそれ以外のところ、例えば介護保険、それから後期高齢者医療制度が社会保険なのかという問題がありますし、また国民健康保険、基礎年金にも税財源というものが非常に大きく入っている。
 これは、実はほかのさっき言ったフランスとかドイツとかというような典型的な社会保険の国では余りないんです。農業分野を除くと、あまりない。そういう意味で、私は日本の社会保険というのはかなり独特の社会保険制度なんだと思っております。特に、税金が半分とか入っているというのは非常に珍しい例だろうと思っております。
 なぜ税が入るかというのは今日御説明いただいたとおりで、やはりどうしても保険料負担能力の低い世帯があるので、社会保険という建前を維持しつつ、それを運営していくために財源的に税をいろいろな形で導入しているとなっているんだと思います。
 そういう意味では、実は低所得者の対策というのは各制度で、ある意味それぞれ制度に内在する理由に基づいて行っているわけで、それに更に総合合算ということを入れることの意味というものが何かというのは、率直に言って私はあまりよくわかっていません。理解できていません。これが1点目です。
 2点目は、こういう形で社会保険の各制度にいろいろな形で公費が入っているということと、それから総合合算制度というものの財源として多分予定される税財源との間の整合性なりといったものを、一体どうするのかということも非常に難しい問題だろうと考えています。
 国民健康保険を例に取れば、ものすごく制度設計をすっきりさせようと思ったら、いわばデフォルトの保険料は皆さん全部払ってくださいねというふうにした上で、そして保険料軽減なり受診時の一部負担軽減というところに特化して税財源を投入するという方が、実は理論的には非常にきれいだし、制度的にも非常にきれいになる。それと同じようなことが実は総合合算の場合も言えるわけで、そういうことを考えないで総合合算をやるというのはどういうことなのか。これも、私には余りよく理解できていません。これが2点目です。
 3番目は、今日いろいろ説明していただいて大変細かい資料をつくっていただいてよくわかりましたが、私は保険料の例えば減免であるとか、それから利用時の一部負担の減免というのは、これは最近そう思っているのですが、保険料の減免とか一部負担の減免とかというふうに見ると事の実相を誤るのではないかと思っていまして、むしろこれはそれに相当する金銭給付を実はやっているんだというふうに考えるべきではないか。それが、実際に各制度の中でやっていることの本当の姿なのではないかと思っております。
 そうだとすると、事務局に少し資料をお願いしたいのですが、保険料の減免なり一部負担金の減免というものをむしろ実は金銭給付をしているんだという観点から整理したときに、では一体例えば今日、出てきたようなモデル的な低所得と言われる世帯にどのくらい金銭給付を現実にやっているのかということが少しわかるように資料をつくっていただけるといいかと思います。
 実は、今日出していただいた資料の裏返しの部分につくり方としてはなるのですが、そうしないと今、考えている、例えば住民税非課税世帯の人に一体どのくらい金銭として給付をやっているのかが見えてこないように思います。ですから、そういう角度で一回視点を変えて整理をしていただいた上で資料を出していただけると、もう少し事の実相というものがわかってくるのではないかと思っております。
 それから、さっき2番目か3番目に言ったことのつながりなのですが、実は国庫負担なり何なり、税で入っているものを整理しようとすると、これはものすごく大変な話になるので、そういうことをした上で総合合算ということを考えるのか。それをやらないのに総合合算を考えるのかということによって、全然話が違ってくるんだろうと思っています。これは、付け足しです。
 最後に、前回、皆様の議論を伺って、先ほど山田さんの議論を伺って、一体我々がターゲットとしようとしている低所得者というのはだれなんですかというのがやはり一番大きな問題だろうと思うんです。今日、特に出していただいた資料の中で預貯金を持っている人の年齢別、階層別の資料がどこかにありましたが、非常にはっきりしているのは高齢者がとりわけ金融資産のストックというものを非常に多く持っている。そうだとすると、多分低所得者ということで、これも前回の議論にありましたが、勤労世代の人たちと高齢者というものを同じくくりで考えてしまっていいのかというのは非常に大きな問題だろうと思います。
 マイクを独占するのはやめてこれで最後にしますが、実は介護保険の部会で今日御説明のあった補足給付が制度設計ということで話題になって、所得だけではなくて資産を見たいという議論が常にあり、私は社会保険の中で資産まで見るというのはちょっと社会保険の従来考えてきた論理には乗らないのではないですかということは申し上げているのですが、この問題というのが実は低所得者というものをどういうふうに考えるかという問題と結び付いていて、所得だけをつかまえるというのであればまだ社会保険の枠の中で何とか総合合算というものを考えるだろうということになると思いますが、問題は所得だけを考えていいのか。
 例えば、金融資産まで考えるのかということになると、これは社会保険の枠の中でやるのは私はやめた方がいいと思っています。そうなると、総合合算というのは社会保険という制度の枠の外でやりましょうという話にならざるを得ないかと思っていますので、これも今後どういうふうに制度設計するかという上では大きなポイントかと思っています。
 すみません、長々と申しましたが、以上でございます。

○駒村座長
 これから議論しなければいけない論点を整理していただいたのと、それから資料請求というか、資料3の10ページの方のお金の流れというのは社会保障の全体のお金の流れを言っているにすぎないので、この中での減額のための財政措置はどのくらいになっているのか。モデルでいいのか。それとも、何かざっと推計ですか。

○岩村委員
 モデルでいいと思います。今日の資料3の12では制度ごとになっていますが、例えば標準的な世帯をどこかモデルをつくってやっていただいているので、それで考えたときに、例えば何割減というふうになって、保険料負担が例えば2割減、5割減とかになっていますね。だから、2割減ということは実際に金銭給付としてはどのくらいやっているということになるのかですね。国民年金であれ、例えば全額免除ということになれば、そっくり保険料分がそのまま実は金銭給付でやっているのと同じことになるので、そういう形で見えるようにしていただければと思います。

○駒村座長
 もう一つは、資産を見るというのでさっき触れたのは補足給付に関わった話もされますか。

○岩村委員
 そこは別に、ただそういう議論があったということですが、ただ、資産を見るという話になるとちょっとそれは社会保険の枠の中に載せるのは難しいのではないですかという議論を私はしていましたという話です。

○駒村座長
 そもそも補足給付というものが保険の中でいいのかという問題意識ですね。わかりました。

○政策統括官(社会保障担当)
 岩村先生の御指摘は極めて正しい御指摘で、前回もちょっとお話ししたかと思いますが、我々の問題意識もかなりそれに近いものがあります。
 まず今回の総合合算の話ですが、実は総合合算制度をどう設計するかということは勿論、直接的なテーマなのですが、現行制度をいわば前提にするというか、現行制度のいろいろな個別制度で行われている軽減措置、低所得者対策をそのままにして、今ある負担を足して上限を打つという制度を設計するというふうには実は考えていなくて、総合合算を入れるということを一つの契機にして、現行制度で行われている各種の低所得者対策をもう一度整理し直す、組み立て直すということをしないといけないのではないかというのが問題意識です。
 それで、今回網羅的に資料を御説明しましたが、私どもとしては幾つか問題の切り口になるようなところをお示ししたつもりでいます。
 1つは、いわゆる保険料のようないわば社会保険制度のエントランスフィーといいますか、制度に加入する。制度資格を与えるために応能的に賦課している保険料に対して行われている軽減措置というのと、受益の段階で応益でもらっている一部負担や利用者負担に対して行われている軽減措置というのは、恐らく考え方が違うんだろう。哲学的に違うんだろうとすると、それぞれ各制度ごとに負担の上限とか負担能力に応じていろいろな措置を講じているわけですけれども、多分もともと一定の拠出のある負担を求めている理念、哲学が違うということになると、まずそこは整理して考える必要があるだろうということが1点です。
 それからもう一つは、今さっきもお話がありましたが、実は保険料にしても一部負担にしても軽減措置というのは形を変えた補足給付ですから、いわば保険原則に基づいて一定のルールに基づいて給付が行われているもの、負担が行われているものに対して、いわば保険の外側から、あるいは制度の外側から補足給付を行っているのと同じことをやっていて、それを保険制度の中に取り込んでいるということになっている。
 それで、最大の問題関心はそういったことを行うことによって本来の保険の考え方とか原理が一種、修正をされているのですが、それが非常にさまざまな形で複雑に行われていることによって、保険における費用負担と給付の関係の透明性が非常に阻害されているということがあって、何らかのそういう軽減措置なりは必要であるからやっているんですけれども、それを制度原理との関係で整理しないままいろいろなことが行われているので、多分そこの交通整理が要るんだろう。
 だから、極端なことを言えば、軽減措置は外へ全部出してしまって、外へ出してもう一度交通整理をし直して、それをまた別の個々の制度の観点ではなくて家計負担なり、制度横断的な負担の考え方からいわば制度横断的な、例えば総合合算に入れるという考え方もできるわけで、今回、各制度で行われていることをもう一度交通整理し直した上で総合合算を設計するということが要るのではないか。なので、今の制度を網羅的にレビューするようなことをやっています。これが2つ目です。
 3つ目はまさに今、先生のおっしゃったことですけれども、総合合算は先ほどの自助、公助、共助のカテゴリーでいくと何をやっていることになっているのかということです。今、海外の補足給付の話がありましたけれども、恐らく共助の世界、保険の世界であれば基本的にはフローの負担と給付の関係で見ることになりますので、資産であるとか金融資産を見るというのは実務的には難しいですし、論理的にもおかしいわけです。
 しかし、いわゆる公費で行う公助の世界ということであれば、基本的には反対給付(負担)のない給付という形で公費を埋めていくわけですから、そういう意味で言えば本人以外の家計全体の負担能力を見るとか、事柄の是非はともかくとして扶養義務者の負担能力を見るとか、場合によっては資産を見るとか、いろいろなことは選択肢としてあり得ることになるので、実は社会保険の中で行われている各種低所得者対策もどういうものとして保険原理を修正しているのかという考え方の整理の仕方によってはいろいろな設計の仕方ができる。
 そうすると、歴史的にいろいろなことをやってきているわけですけれども、今回はそういう交通整理をきちんとする必要があるのではないかということで、実はかなり気宇壮大なことを考えております。ですから、総合合算制度そのものを直接的に設計するということは最後のゴールなのですが、それに合わせて今の社会保障制度、あるいは社会保険制度の中で行われているいろいろな低所得者対策について、もう一度交通整理をして理念的に整理をし直して、いわば保険の外へ出すべきものは出した上でもう一度改めて制度設計するという整理が要るのではないかという問題意識です。
 それから、先ほど低所得者の定義の話がありましたが、民税非課税ラインを使っているというのは、これは1つはわかりやすいということと、最大の理由は今お話がありましたように実務的な理由で、逆に言うと民税非課税世帯の人は市町村は所得把握ができない。民税非課税世帯の人はそもそも申告義務がないので、民税より下には実務的に線が引きようがない。なので、民税非課税を使っている。日本は民税非課税基準が高いので、それが低所得者ということになると3,000万人の低所得者がいるという世界になっている。これはやはりおかしいと思っているのですが、その下の線を引くのは非常に難しい。実務的にも難しい。
 唯一、例外的にそれをやっているのは国民健康保険です。それで、今回番号が入るので民税非課税ラインの下で一定の所得把握ができる可能性があって、そうするともうちょっと白地でラインの引き方というのはあり得る。
 もう一つあるのは、線が引けるかどうかという問題と、哲学的にそれを低所得者と言えるかどうかというもう一つの問題があって、それは論理的には生保基準以下の人に課税をするのかというような世界が出てくる。そうすると、生保基準との関係も整理しないといけないという話になってくるので、やはりもう一度、一から定義を考え直した上で負担を考えるということをやらざるを得ない。
 一方で、生保の基準の見直しもしていますので、そこも見ながらやっていくということなので、前回スケジュールをお示ししましたけれども、番号が入るのは大分先ですから、普通の審議会みたいに今年の12月までに答えをくださいとか、そういう感じではありませんので、じっくりやっていただいて結構なので、少しちゃんとやりましょうということでございます。

○岩村委員
 香取さん、大変ありがとうございました。
 別にそれに反論しようとか、そういうことではなくて、さっきのコメントにちょっと付け加えると、例えば高額療養費の問題であるとか、それから高額介護の合算の問題というのはあるのですが、例えば高額療養費を取ってみると明らかに性格の違うものが2つあるんです。
 つまり、アドホックにたまたま大きな手術をしたので高額療養費がそのときだけかかるというのと、それから典型的には高齢者がそうですけれども、要するに慢性疾患とか、あとは寝たきりの状態で病院に入院しているとかというようなケースで、それに更に介護保険の利用が重なる。つまり、ある程度持続的に高額療養費なり高額介護サービス費がかかるというようなケースがあるので、そこも実は合算すると言っても、そのやり方はどうするのかという技術的には非常に難しい問題が存在すると思っております。
 あともう一つあったんですが、済みませんが、ど忘れしましたので、また思い出したらということにしたいと思います。

○駒村座長
 では、白波瀬さんどうぞ。

○白波瀬委員
 丁寧な資料を大変ありがとうございました。とても勉強になりました。。このメンバーの中で制度について知識が不足していると思われますので大変役に立ちました。そこで、2点ほどあります。
 1つは、やはり前回からずっと言われていることなんですけれども、問題とする低所得者を定義する場合の基準をどこに置くかという点です。そもそもどの低所得層をもっとも深刻な社会問題として、着目するかということにも通じます。岩村先生の方からも総合合算というのはイメージがわかないというお話があって、同じような疑問を持っておられるとある意味安心したんですけれども、例えば今の12ページのところもそうなのですが、最後の軽減対象者率のところの数字を見ても、ライフステージの違いがそのまま数値に反映されているというところがあります。つまり基準というものを現役世代のところに置いて平均値で比較すると、高齢世代のところで高い値が出てくるという構造ですね。
 ですから、合算する前にそれぞれにとっての実質的なリスクの大きさの話と、そして負担の相対的な大きさというところは、良く考えないといけないと思います。低所得層といった場合、それは極めて相対的なところで定義されておりますので、相対化する場合の基準をどこに置くかによって数字そのものが大きく動きます。言い換えますと、基準そのものが一つでないという問題です。資料の10ページのところでもあるように、諸制度の中で異なった程度の税が組み込まれ、保険料が設定されているという実態があるわけで、その違いを一本の軸で整理して負担の量を合算することの正当性というか、合意をどこで持ってくるのかというのは極めて難しいところですし、またこの点、やはりどこかでいつか議論しなければいけないように思います。
 一つ一つの制度をそれぞれの中で完結させて、そこからこぼれてしまう低所得層を別枠組みで支えていくといったやり方はきれいだと思うのですが、具体的な制度設計のイメージがわきません。
 2点目は、36ページの最低賃金と生活保障の問題のところで質問ですけれども、この逆転現象が起こっているところの生活保護対象区域の世帯の構造の特徴というのはありますか。要するに、逆転現象が起こっている地域で生活保護対象者がどのような世帯で生活しているかといった資料はあるのでしょうか。最低賃金というところで個人ベースでのデータとなっていますが、個人が生活している世帯状況を知ることができれば有益ですし、そこでなにかしらの区域の特徴が見えてくるかもしれないと思いました。以上です。

○駒村座長
 それでは、事務局からお願いします。

○参事官(賃金時間担当)
 すみません。私の説明がちょっと不足していたかと思うんですけれども、最低賃金と比較している生活保護の額というのは1類費、2類費、期末一時扶助費については12~19歳単身の基準額を使っていますので、実際の受給者の構成というのは影響しません。
 影響があるとすれば、住宅扶助は実績値ですので、そこは影響がある可能性がありまして、その場合には例えば民間の賃貸に住むような方が増えれば住宅扶助については実績値は上がる可能性はあります。
 ただ、高齢者についてはそもそも基準値を使っておりませんので、受給者の構成は関係ないということになります。

○駒村座長 では、岩田委員お願いいたします。

○岩田委員 私も今日初めて出席しましたので、全体にまだついていけてはいないんですけれども、低所得者とか低所得世帯というのは戦後、最初の厚生白書もそうですが、大変問題にしてきたカテゴリーで、そのときは生活保護ぎりぎりといいますか、いわゆるボーダーラインというような概念を使って、いろいろな推計をしています。
 その場合、所得で低いという意味と、もう一つはカテゴリーをそのとき非常に重視して、例えば母子世帯であるとか障害者世帯であるとか、そういうカテゴリーを列挙していますね。後々その辺りがカテゴリー別の社会保障や福祉サービスにつながっていくようになったのではないかと思います。
 それから、1967年くらいになって初めて厚生省はようやく戦後は終わったと言っているんですけれども、そのときに、しかしそうした層の問題を常に気にかけていないと繁栄はうまくいかないというようなことを指摘しています。その間、厚生省は頑張ったという感じを私は持っているんです。
 もちろんカテゴリー的に見た場合、そのときと今はかなり低所得者の性格が変わっていると思うんです。その辺の確認がまず必要かなと思います。さきほどの山田先生の最初の例えば保護層と低所得層がどのくらい内容的に違ったりしているのかということを、低所得とは何かということを、住民税非課税で見るか、見ないかという問題は勿論あるんですけれども、その確認があった方がいいという感じがします。
 もう一つ、ここで問題になっていることは、国民の側から見るといいますか、負担の問題を世帯の方からも見るし、制度から一遍出して世帯の負担をもう一回考えようということだろうとすると、いただいた大変御丁寧な資料は、どちらかというとやはり制度や財源から見ている整理なので、世帯の方から見るとまた相当変わってくるんですね。
 例えば、資料2の10ページに自助・共助・公助で、公助も自助の共同化で自己責任の世界だということ表現は、ちょっとどうかなと私は思ったんですけれども、それはともあれ、これは制度的な見方ですね。例えば、生活保護世帯の中でも高齢世帯で年金受給者が相当いるわけですね。4割くらい年金をもらっている。そうすると、世帯の方から見ると実はこの公助の中に共助の部分が伸びている。一部オーバーラップして、その差額だけ公費が出ている。
 医療もほとんどいないとは思いますけれども、働いていてたまたま社会保険で医療を賄っているという被保護世帯も理論上はあり得るわけです。介護の場合は、例の境界層というものがありますので、それは公助なのか共助なのかどちらに出るかわかりませんけれども、そういうでこぼこが世帯の方から見るとあるわけですね。それから、年金など所得保障は生活保護以外は個人単位ですから、世帯の方から見ればどこかに書いてありましたような組合せがさまざまに出てくる。
 そうすると、世に言われているような自助・共助・公助というほど単純ではなくて、一つの世帯の中にかなり込み入った、しかも先ほどの岩村先生のお話で、保険の世界に非常にたくさんの税金が投入されているとすると、単純に生活保護だけが税金のお世話になっているというような世間の単純な見方よりももう少し複雑なものとしてまず理解しておく必要がある。その上で、多分生活の方からその辺の制度や財源の整理をするとしたら、私は結局生活最低限みたいなものをどうやって確保するかということになると思うんです。
 低所得基準に税制度を使う場合はもともと所得税における課税最低限が所得再分配的な機能を持つと同時に、その時々のさまざまな理由で減税とかやりますので、扶養控除や何かも含めて何かプラスアルファの非常に複雑なものがついていくので、低所得基準としては余り評判はよくなかったわけですね。ある時期、例えば自営業者や何かは得だとか、いずれにしても結局サラリーマンは損をするような感じがありますので、課税最低限も含めてですね。
 あとは破産法などもあるわけですけれども、一体どのくらいまでは残さないといけないか。しかし、それ以上は能力に応じて皆、出してもらう。あるいは、場合によってはそれ以上だったら利益に応じて出すというようなものがあると思うんですけれども、結局最低限というものが生活保護基準以外に最賃がもう一つありますが、最賃、生活保護、課税最低限、それから破産法など、こういう辺りを並べてみて一回考えてみる必要もあるんじゃないかと思います。
 いずれにしても、世帯の方から見た組み立てというのも何かうまい図が書けると整理されるかと思います。感想にすぎませんが。

○駒村座長
 確かに今の岩村先生、岩田先生のお話をお聞きすると、資料2の10ページがどういうふうにこの位置づけを再整理するのか。今まではさっきの議論であったように、保険の中に混ぜていたものを新しい形の方法であるということを明確に新しく位置付けて再整理するのかどうかということも少し今後議論していかなければならないです。
 それからもう一つは、資料3の方の19ページの先ほどから出ている、今お話もあった最低保障のラインというのはどこなのかというのが制度別に違うのを整理した方がいいし、あるいは我々がターゲットにしている人たちはどのくらいいるのか。3,100万人で、現役に対しては2,200万人と9,900万人ですから2割くらいということでしょうか。それに対して65歳以上は3割くらいいる。前のページを見ると、このラインがどういうものと近いのかというと、先ほども議論があった最低生活保護ラインと近いようにも見える。
 ただ、それは65歳未満については近いようにも見えますが、65歳以上になると一気にどうも乖離をしている。これは税制上の問題がさまざまあって、非常に範囲が広がっている。こういう状態のままやっていけるのか。あるいは、資産をこういうふうに再位置づけした場合にはどう考えるのかという議論が今日あったと思います。事務局から何かございますか。今日の論点はこういうふうな感じだと思っているのですが。

○政策企画官
 非常に有益な論点を出していただいたと思っています。もともと次回くらいから少しずつ総合合算制度を意識して、どういう論点があるかということを少し整理をしていきたいと思っていましたので、その際、大分視野を広げていただいて整理しやすくなったと思っています。
 複数の先生から言われましたとおり、世帯から見る必要というのは、確かに私どもが資料をつくるとどうしても制度からつくってしまうので、なかなか実際につくるのは難しいんですけれども、世帯から見たものを少し工夫しながらつくってみたいと思います。

○駒村座長
 あとは、委員の先生、いかがでしょうか。よろしいですか。
 特段ないようですので、本日は充実した議論をいただきましてありがとうございます。それでは、時間もまいりましたので、本日はこれで閉会にしたいと思います。
 事務局には今日幾つか山田さんも含めて御質問があったと思いますし、あるいは委員の皆さんからもし質問し忘れた部分があればまた連絡があるかと思いますけれども、次回用意いただければと思います。
 次回の日程については、事務局からまた御連絡させていただきたいと思います。次回の日程は、まだ決まっていないですね。

○政策企画官
 はい。

○駒村座長
 では、事務局から連絡がいくと思います。
 本日は、お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございました。


(了)
<照会先>

政策統括官付社会保障担当参事官室 政策第1係

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