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2012年8月30日 第6回医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会
医政局総務課医療安全推進室
○日時
平成24年8月30日(木)
○場所
厚生労働省専用第21会議室(17階)
○出席者
会議メンバー(五十音順)
鮎澤純子 (九州大学大学院医学研究院医療経営・管理学講座准教授) |
有賀徹 (昭和大学病院病院長) |
飯田修平 (練馬総合病院病院長) |
加藤良夫 (栄法律事務所弁護士) |
里見進 (東北大学総長) |
高杉敬久 (日本医師会常任理事) |
豊田郁子 (新葛飾病院セーフティーマネージャー) |
中澤堅次 (秋田労災病院第二内科部長) |
樋口範雄 (東京大学大学院法学政治学研究科教授) |
本田麻由美 (読売新聞東京本社編集局社会保障部記者) |
松月みどり (日本看護協会常任理事) |
宮澤潤 (宮澤潤法律事務所弁護士) |
山口育子 (NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長) |
山口徹 (国家公務員共済組合連合会虎の門病院病院長) |
山本和彦 (一橋大学大学院法学研究科教授) |
オブザーバー
警察庁 |
法務省 |
文部科学省 |
消費者庁 |
一般社団法人日本医療安全調査機構 |
厚生労働省
大谷泰夫 (医政局長) |
池永敏康 (医政局総務課長) |
田原克志 (医政局医事課長) |
宮本哲也 (医政局総務課医療安全推進室長) |
川嵜貴之 (医政局総務課医療安全推進室長補佐) |
○議題
(1)医療事故に係る調査の仕組みのあり方について
(2)その他
○配布資料
資料1 | 第5回医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会議事録 |
資料2 | 医療事故に係る調査を行う組織について(その3) |
資料3 | 調査結果の取り扱いについて(その2) |
資料4 | 第三者機関における調査の実務について |
資料5 | 医療安全支援センター総合支援事業の実施方針及び実施内容について |
参考資料1 | 調査を行う目的及び対象や範囲について |
参考資料2 | 今後の検討方針について |
○議事
○川嵜室長補佐 それでは、定刻になりましたので、ただいまから、第6回「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」を開催いたします。
本日は、御多用の中、当検討部会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
本日は、岩井構成員より御欠席との御連絡をいただいております。
それでは、以降の進行につきましては、山本座長にお願いいたします。
よろしくお願いします。
○山本座長 皆様、こんにちは。本日もお暑いところ、御多用のところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
議論に先立ちまして、藤田大臣政務官に御出席いただいておりますので、御挨拶をお願いしたいと思います。
政務官、お願いいたします。
○藤田政務官 皆様、こんにちは。大変残暑が厳しい中、そしてまたお忙しい中、きょうもこの検討部会に御出席をいただきまして、本当にありがとうございました。
毎回熱心な御議論を重ねていただいておりまして、それぞれのお立場でいろいろな御意見があるところでございますけれども、少しずついろいろな論点が整理をされてきているのではないかと思っているところでございますし、大変ありがたく思っているところでもございます。
きょうは、「今後の検討方針について」という参考資料もついておりますけれども、きょうが6回目ということで、次回あたりでそろそろいろいろな議論の一巡ができるのではないかと期待しているところでございます。ぜひとも、きょうも活発な御議論をいただきまして、議論を深めていただきますようにお願いを申し上げます。
どうぞよろしくお願いいたします。
○山本座長 ありがとうございました。
それでは、事務局の方から資料の確認をお願いいたします。
○川嵜室長補佐 それでは、お手元の資料の確認をお願いいたします。
まず、座席表及び議事次第。
配付資料といたしまして、資料1、前回の議事録でございます。
資料2「医療事故に係る調査を行う組織について(その3)」。12ページまでございます。
資料3「調査結果の取り扱いについて(その2)」。5ページです。
資料4「第三者機関における調査の実務について」。3ページです。
資料5「医療安全支援センター総合支援事業の実施方針及び実施内容について」。13ページです。
参考資料といたしまして、参考資料1「調査を行う目的及び対象や範囲について」。4ページです。
参考資料2「今後の検討方針について」。1枚です。
このほか、今回、青のファイルに第1回から第5回までの資料をとじて配付させていただいております。
以上でございます。乱丁、落丁等がございます場合は、事務局までお申しつけください。
○山本座長 皆様、資料は大丈夫でしょうか。おそろいでしょうか。
それでは、議事に入りたいと思いますが、本日の議題は、議事次第にありますとおり、大きく3つになります。「調査を行う組織及び調査結果の取り扱いについて」は、前回、御議論をいただいたところですけれども、それについて前回の議論を振り返って整理していきたいという主旨であります。第2点の「調査の実務について」は、今回の新しい項目になりますので、御議論をいただきます。最後に、「医療安全支援センターとの関係について」は、ヒアリングを予定しております。
本日は、伺ったところによると、この会議場が、この後、別の会議が予定されているようで、時間がいつにも増してリジットで、必ず5時に終われということを強く言われております。そのような事情がございます。
最後のヒアリングは、本日おいでいただいておりますので、必ず行いたいと思います。30分ぐらいの時間を取りたいと考えております。そのようなことですので、いつにも増して議事進行に御協力を頂戴できれば大変ありがたいということを最初に申し上げたいと思います。
それでは、まず、議題の第1点、「調査を行う組織及び調査結果の取り扱いについて」ですが、これについては資料2及び資料3が用意されておりますので、事務局から御説明をお願いしたいと思います。
よろしくお願いいたします。
○宮本室長 それでは、資料2と資料3を御用意ください。
この2つの資料ですが、前回、御検討いただきました論点例についてそれぞれ御発言いただきましたものの概要をまとめ、また、それぞれの論点例の最後のところには、前回までの議論の概要、およそ結論が得られたように思われる部分はその内容を、そうでない部分は、御意見が多様にあったことを表現する形でまとめております。資料2、資料3とも同じ形で検討しております。内容を簡単に紹介しますので、よろしくお願いいたします。
まず、資料2の「調査を行う組織について」のところですが、論点案の「1 調査を行う組織について、その基本的な考え方について、どのように考えるか。」というところの?、調査を行う組織は、どのような考え方に基づいてどのような機関が行うことが適当か。具体的には、院内調査組織と第三者機関についてはどのように考えるか。こういった論点でした。
これに対しまして、3ページ目にまとめています。患者遺族に対してきちんと説明を行い、再発防止を図る観点から、医療事故が発生した医療機関の職員等で構成される院内の事故調査と、公正公平性の確保や院内事故調査の支援を行うとともに得られた結果を医療界で共有していくために第三者機関が必要なのではないか。他方、専門性の高い事柄を調査するためには、経験のある医師を動員することが必要となりますが、医師不足の現状では難しく、第三者機関の設置は難しいのではないか。こうした方向性の違う、大きく2つの御意見に分けられるのではないかとまとめております。
続きまして、4ページ。論点例の2つ目として、当該医療機関で行う院内事故調査に加え第三者機関で調査を行う場合、両者の関係はどのようになるのか。具体的には、この点で1つ加えておりますが、第三者機関に必ず届け出るのか、院内調査の結果を第三者機関で精査するのか、院内調査を経ずとも第三者機関へ依頼することができるのか。また、独力でできない場合にはどのように取り扱うのか。また、第三者機関への調査依頼は、患者側、医療機関側それぞれからの受付を行うこととするのか。
こうした論点例に対しまして、7ページ目にまとめております。第三者機関への届出については、診療関連死は第三者機関に必ず届け出る必要があるのではないか。こうした御意見が出されていました。また、他方、届出の基準を明確に規定することは難しく、届け出るかどうかの判断の基準も人によって異なるということで、必ず届け出る必要はないのではないか。こういった御意見もございました。
それから、院内調査結果の精査と独力で院内調査ができない場合の取り扱いについては、それぞれ、報告書をきちんと検証する役割があってもよいのではないか、それから、その支援を行うべきではないか。こうした御意見が出されておりました。
第三者機関への調査依頼については、患者側、医療側、双方からできるようにすべきではないか。このような意見が出されておりました。
関連しまして、第三者機関に必ず届け出ることとする場合については、第三者機関が、患者遺族、医療機関と相談しながら調査の進め方を判断することにしてはどうか。また、第三者機関に必ずしも届け出ないこととする場合には、院内の調査がうまくいかない場合や、患者遺族の納得が得られない場合に第三者機関に調査を依頼することとしてはどうか。このような御意見が出ておりました。
続きまして、8ページ目。「院内の調査組織についてはどのような組織か。また、第三者機関を設置する場合に、第三者機関はどのような組織か。」という論点に対しまして、論点例?、医療機関で行う院内事故調査の考え方、基本的な性格、要件につきましては、その下にありますように、医療従事者には、医療を提供した結果について説明する責務があり、万が一うまく行えなかった場合でも、原因を究明し、患者遺族へ説明しなければならないのではないか。再発防止を実施する医療機関の職員が医療的観点から物事を整理する必要があるのではないか。このような御意見が出ておりました。また、基本的な要件としまして、外部の委員の出席が必須ではないか。このような意見が出ておりました。
続きまして、第三者機関を設置する場合の考え方と基本的な性格、基本的な要件につきましては、質の高い医療を実現するために第三者機関を設置すべきではないか。第三者機関は公的な機関でなければ刑事司法との調整は難しいのではないか。他方、司法的なものに利用するところとは、独立した民間組織を第三者組織とすべきではないか。このような異なった意見が出されていました。
第三者機関に求められる基本的な要件としては、独立性、中立性、透明性、公正性、多角的な検証ができる高度な専門性、地域格差がない迅速な対応ができること、こうした要件があるのではないかという意見が出されていました。
おめくりいただきまして、第三者機関を設置する場合に、第三者機関の調査権限をどのように考えるのか。その論点例の?として、調査権限についてはどのように考えるのか、必要な調査やその権限についてどのように考えるかということにつきましては、12ページ目にありますように、今後の改善点の観点からも、真実を明らかにするという観点からも、現場に立ち入って状況を見ることが必要であり、一定程度の権限は必要ではないか。他方、民法、個人情報保護法で担保できているので必要ないのではないか。また、資料の提出を求められても提出しないような場合、そのことを公表できれば十分なペナルティとなるので、必ずしも権限は必要ないのではないか。このような異なった意見が出されていました。
また、必要な調査や権限については、客観的な原因究明ができるよう診療記録の提出やヒアリングなどを行うための権限を付与するべきではないかという御意見がありました。また、調査権限以外も含む第三者機関の具体的な権限としては、以下のようなものがあるということで、届出を受けること。院内の事故調査を行うのか、第三者機関からの人材派遣や地域の支援等をかりて院内で調査を行うのか、また、第三者機関で全て調査を行うのかといった調査の道筋をつけること。資料提供等を拒否されないこと。調査結果を統合して再発防止のための情報提供を広く社会に行うこと。他方、調査の結果が、他の処分や訴訟に使われ、公的な効果を持つのであれば、医療機関側には拒否する権利も保障されるべきではないか。このような御意見が出されていました。
続きまして、資料3に移ります。調査結果の取り扱いにつきましては、調査の目的に照らして、その調査結果の取り扱いについてはどのように考えるのか。主に公表についての考え方の議論をまとめております。
おめくりいただきまして、2ページ目にまとめております。調査結果の公表については、医療の安全、質の向上、再発防止の観点から、匿名性を担保した上で公表すべきではないか。ただし、医療事故は個別な案件も多く、容易に特定される可能性があるので、匿名性の程度については十分な検討が必要ではないか。このような御意見が出されておりました。
3ページ目に参ります。患者遺族への説明についてはどのように考えるのか。この点につきましては、調査結果の説明については、患者遺族に対し、文書を添え、口頭で説明すべきではないか。ただし、患者遺族の気持ちに配慮し、患者遺族の意向に沿うべきではないか。このような意見が出されていました。
続きまして、調査の報告について、訴訟等に使用される可能性についてどのように考えるのかという点については、5ページ目、最後の方にまとめております。どのような事実であれ、真実を正確に説明し、また、報告書を交付すべきではないか。交付された報告書が訴訟に使用される可能性については、証拠は自由に使えるというのが原則であり、調査結果の訴訟への使用について制限することはできないのではないか。むしろ、医学的判断(調査の結果)が、社会や司法の場で尊重されることが重要ではないか。また、他方の意見として、訴訟にも使ってよいということは難しく、問題ではないか。このような御意見が出されておりました。
資料の説明は以上でございます。
○山本座長 ありがとうございました。
ということで、これまで御議論をいただいた内容についての整理といいますか、枠で囲ってあるところで整理していただいているということでありますので、その整理の仕方とか、もう少しこういうことがあるのではないかとか、いろいろと御意見がおありであろうと思いますので、今、御説明いただいたどの点でも結構ですので、御発言をいただければと存じます。
どうぞ、加藤委員。
○加藤構成員 加藤良夫です。
今の事務局からの資料2に基づく御報告の中で、それぞれの論点について、それぞれの構成員がここでいろいろ意見を言ったことを整理していただいて、御尽力に感謝しますけれども、最後の、点線で囲った、例えば3ページにございます囲み、それが整理されているということになっているのかなと考えましてお尋ねします。
例えば、第三者機関は必要ではないかという論点のところで、多くの構成員が第三者機関が必要だろうと考えて意見を述べていると。それに対して、第三者機関の設置は難しいのではないかという意見が、例えば1人の方から出ていたとすると、それは、この四角の中で整理する中で拾い上げている、そういうことになっているのでしょうか。どういう整理の仕方をしているのか、少し御説明いただきたいと思います。
○宮本室長 資料の構成ですけれども、論点例に対しまして個々の御発言がありましたので、その点を○印がついた形で並べております。御議論いただいた状況を整理するものとして、点線で囲んだ部分にまとめているわけですけれども、結論に近い部分になっているのではないかと思われる部分と、そうではなく、いわば違った方向性で御意見が出されている部分と、ごらんのとおり分かれているかと思います。現状で議論が分かれているものにつきましては、見ていただいておわかりいただけると思いますが、これが結論ということではなく、現状、そのような議論の構図になっているというところで見ていただくために整理したものです。できれば、私どもとしては、何らかの形で、ここが統一された形での報告をいただけるようであればありがたいと思います。そのような方向を目指して御議論を進めていただければありがたいというふうに思っております。
○加藤構成員 よろしいでしょうか。
○山本座長 どうぞ。
○加藤構成員 2ページの一番下の○印のところの意見が、3ページの囲みの中の「他方」の意見に反映しているのかなと読めました。例えば、ある専門的な分野のことであるとすると、第三者機関ができないとなると、その発言をされた方は院内で行うというイメージになると思いますけれども、院内でも第三者的な外部の人を入れたりすることになってくると、結局、医師不足の現状では云々という議論が、同じことになるのではないかという気がします。それで、第三者機関の設置は難しいということの展開に力点があったのか、それとも、院内調査をしっかり実施することが大事だというところに力点があったのか、その辺が今、私の中で記憶が定かではないんですけれども、両論併記のような感じで議論は展開していないと認識しているので、その辺が少し、第三者機関が必要だということはみんな一致しているのではないかなと。そんなふうに思っていることが、何かそうではないように整理されていることは残念な気がしています。そういうことであります。
○山本座長 ありがとうございます。まさにそのような御意見を頂戴したかったところですが、これにつきましては、中澤構成員、どうぞ。
○中澤構成員 今のお話と関連する話ですから、お話しさせていただきたいと思います。
私の考えは、正直言って、第三者機関は院内調査をサポートするためにあるという考えです。そういう意味では、第三者機関はない方がいいとは考えていません。ただ、事実上、院内調査を補完するという形ではなくて、第三者機関が独自に目的を持って動きだそうとした場合に、人的資源ということから考えまして、専門性の立場から言ったときに、こういう形で集めるのは難しいだろうということなので、難しいというふうに書きしました。
実情から申しますと、院内調査の場合は、病院で起きていることに関しては、ある程度の専門知識を持った者の中で起きているということがあります。ですから、それに精通した専門家を求めることは意外と簡単にできることです。ところが、第三者機関という非常にグローバルな視点を持ったところに、専門性の多いものをぽんと投げたときに、それに合った人材を探すことはすごく難しいだろうと思っています。目的によっては、第三者機関を維持することは難しいだろうという意見を述べさせていただいたわけなので、これは、現実にできるかどうかがかかっておりますので、取り上げていただいたことは非常にありがたいことだと思っております。
第三者機関というのは今まで一度もできたことがないので、それが実際にできた場合にどういう形をとるかということは、よく議論していただいた上で対応していただいた方がいいという考えを持っていますので、こういうふうに取り上げていただいて非常にありがたいとは思っております。
○山本座長 ありがとうございました。御主旨が明確になったかと思います。
どうぞ、有賀構成員。
○有賀構成員 第三者機関が必要だということについて、あらかたの人たちが賛成していることについて言えば、表面上は、そのことについて争うことはないです。ただ、第三者機関が何をするのかということに関して言うと、今、中澤先生がおっしゃったように、僕的な言い方をすると、そもそも院内できちんとできろというふうな局面において、もし難しいことがあれば、それは助けてもらった方がいいだろう。そういう意味で、どこに視座を置くのかということを考えたときに、表面的に難しいのではないかという書きぶりそのものは、私は、中澤先生が言われたことの前者の意味で、もともと院内の事故調査がそもそも基本で、それを補完するという形で考えた上では、難しいと書いてあることについて言うと確かにそのとおりだと思います。何も多数決をしながら先に進むわけではありませんから、ここに参加した人たちは、この四角の中を読んで、それで、どういう議論があったのかということで先へ進んでいくというようなことではないかと思います。○か×かという話をしながらここでやっていくなら、そんなものは、じゃんけんしながら誰かに商品を渡すような話と同じになってしまいますから。
○山本座長 どうぞ。
○飯田構成員 私も多数決で決める必要はないと思いますが、第三者機関が必要だということは全員が賛成しているわけですから、いいと思います。問題は、どういう事例を、どういう対象を扱うかということは次の論点なので、それを今議論するともめてしまうので、それは後でいいと思います。補完するということには皆さん賛成で、どの段階から、どんな事例に対して行うかということが次の論点です。
それから、院内なら簡単だけれども、第三者機関は難しいというのは、それは逆であって、私は違うと思います。要するに、院内だと、専門家がいてもどうしても当事者になってしまうので、当事者以外の専門家を入れるという意味では、第三者がいいです。外部から入れるということに、院内事故調査委員会でも、第三者機関の事故調査委員会でも意味があるのです。無理だという意味で賛成するとすれば、全ての地域につくるのは無理だということです。全国の中で、ブロックなり、一つかわかりませんけれども、そういうものであれば可能であるし、ぜひやらなければいけないと考えております。
○山本座長 どうぞ。
○山口(育)構成員 今の御議論の中で、「補完的」という言葉の意味がわからなかったんですけれども、患者の立場で「第三者機関」と聞けば、当事者の医療機関ではない第三者の客観的な意見、客観的な調査をしてもらえる機関という認識だと思います。ですので、補完ということになるとどうしても、医療機関をサポートするというイメージで聞こえてしまいます。第三者機関というときのイメージとしては、やはり当事者の病院で院内調査があって、それがきちんと納得できればそこで問題解決ということになりますけれども、もっと、より中立的な立場の人たちの意見を聞きたいというときの第三者機関という位置づけだと思ってこれまでこの議論に参加してきました。しかし、先ほどの「補完的」というのは異なった印象を持ちましたので、「補完的」という意味合いを少しご説明いただけますか。
○飯田構成員 同じ考えで、どういう対象、どんな状況で行うかということを決めなければいけない。そういう意味では同じだと思います。そういう意味で「補完」と言ったわけです。
要するに、院内だけでは足りないからやるんだという話もあるし、そうではなくて最初から回すものもあるだろうと思います。
○山口(育)構成員 院内調査で納得いかないところを補完するという認識でしょうか。
○飯田構成員 そういう意味もあります。ですから、それはこれから議論しましょうと言っているわけです。
○山口(育)構成員 はい。わかりました。
○有賀構成員 今、最後のフレーズで終わり。つまり、「補完」というときに、患者さんたちと医療者とが、一定の水準できちんと、信頼し、納得できたりという局面があれば、私は、それはそれでいいと思います。けれども、それが崩れたときには、やはり誰かに助けてもらわなければいけないだろうという観点で言うと、それは、私たちからすると、場合によっては足りないところを補っていただくという意味では「補完」ですね。患者さんたちからすれば、全く別個の仕組みが作動しているんだろうなという話です。ですから、最初からけんかをする話をしようとしているわけではないので、したがって、もともとの日常の診療のプロセスの延長線上で、困ったときにはどうしましょうというふうな考え方で行きたいとして、今までも発言してきました。
○中澤構成員 先ほどの「補完」の話ですが、私が言っている補完は、患者さんに御説明するときに、これだけでは説明が足りない、自分たちスタッフではここまでしか説明できない、だけど、これに関してもう少し突っ込んで、専門家の意見を聞いたら、もうちょっと別の意見が出てくるのではないかという意味の「補完」です。ですから、患者さんに御説明する、物事をはっきりさせるために必要な人のお力をもらいたいというような感じです。おわかりいただけますかね。
○山口(育)構成員 そうなってくると、医療側のサポートということで、中立というより、医療側の後ろにいらっしゃるようなイメージで聞こえてしまって、ニュアンスとして、先ほどから御説明いただいている「補完」とは意味が違ってくるのかなと思いました。
○中澤構成員 中立的というのは、対立したときの中立ですね。でも、私たちが説明して納得していただくというのは、詳しいことを説明していくと、そこで意見の一致が見られるということがあるので、私の考えでは、そういう意味です。ですから、まだ対立関係にあり、どうしても話を聞いてもらいたい意味で第三者を入れるという考えとはちょっと違うという意味で、私は言わせていただきました。
○有賀構成員 恐らく、信頼と納得の関係がだんだん薄れていくと。これは連続的に行きますから、山口先生が言われるように、後ろから来るのか、横から来るのか、向こうから来るのかなんていうことは、場合によっては僕の後ろから来るかもしれませんけれども、いよいよになってきたら向こうから来るかもしれないんですね。そういうふうな連続的な観点を持たないと、最初からけんかの構図でこれを考えますと、片っ端からけんかの構図になるんですよ。ですから、そうではないということを言っているわけです。
○山口(育)構成員 そういう意味では、結果的に第三者をつくるということに関しては、皆さんの意見が一致しているということではないのでしょうか。
○山本座長 基本的にはそうではないかと思います。見方の、どっちから見るかということで。
○中澤構成員 どういう第三者かというところで、今後、意見が交わされていくと思います。
○山本座長 そうですね。
今の点でも、あるいは、ほかの点でも結構ですが、いかがでしょうか。
どうぞ、鮎澤構成員。
○鮎澤構成員 済みません、前回お休みさせていただいてしまって、きょうは議事録を拝見してからこちらに出席させていただいています。
組織の、これからの議論になる実務のところに入ってしまうかもしれないのですが、前回、議論があった第三者機関の調査権限のことについて、その中で、いわゆる診療記録やカルテについては、そもそも開示ができるので、調査権限という議論の中でしなくても大丈夫じゃないかというお話がありました。ただ、実際に事故調査をしてみると、診療記録だけではなくて、その事故が一体どういう状況で起きたのか、それにかかわった方たちのヒアリングなどが、事故を見ていくときにとても大事なファクターになる。それは診療記録の中に書かれているものではないんですね。近年の事故だと、医薬品や医療材料など、物がとてもかかわってくることが多くて、これらを実際に調査しようとすると、例えばその物の強度や物性の変化などにまで踏み込んでいかなければいけなくなることもあって、実は、事故調査のメンバーには、医療従事者だけではなくて高度に科学的な他の領域の方たちに入っていただかなければいけないことがあることも実感しています。
それは後ほどの話になってくると思いますが、では、物を見せてくださいとか、現場に行かせてくださいとか、当事者の方たちに診療記録に書かれていない事故の調査に必要なさまざまなことを聞かせてくださいというようなことが必要になったときにはどうするのかということも、実はこれから事故調査を行うときにとても大事なことになると思っています。
今、いろいろな言葉についての御議論がありましたけれども、きちんとした調査というときには大きく2つ、いわゆる「客観性」という言葉に代表される公正性や中立性、透明性がどう担保されているかの話と、科学的な調査としての専門性の高い調査ができるかどうか。この2つの話があると思います。それがどのように担保されるかという仕組みを考えていくこと、この2つを整理して考えていくことが、これからは大事なことではないかと思います。
もう1点。これも後ほどの話ですが、先ほどお話しした、物を見せてくださいといったときに、その後、これが証拠の隠滅と言われてしまうのかというおそれが、実は医療の現場にあります。例えば強度検査をしなければいけないときに、工学の先生に入ってもらって、物を切り刻めば強度検査ができますよと。ただ、これがその先に警察が絡んでくる云々の話があると、これは証拠の隠滅と言われてしまうのだろうかというおそれがあるわけです。このあたりについては、後ほどまた、どうしたら院内であれ、第三者機関であれ、科学的な調査ができるようなスキームがつくり上げられるのか、ぜひ御議論いただきたいと思っています。
○山本座長 ありがとうございます。貴重な御指摘だと思います。
ほかにいかがでしょうか。
特段の御意見はございませんか。
最初に私が時間のことを申し上げすぎたのかもしれません。もしよろしければ、先ほど、鮎澤構成員からのお話もありましたけれども、この次の議題の調査の実務というのは、今までの調査権限等ともかかわる部分があるお話ですので、また戻っていただいても結構ですので、引き続きまして、資料4の「第三者機関における調査の実務について」の御議論に入っていただければと思います。
まず、資料4について、事務局から御説明をお願いいたします。
○宮本室長 それでは、資料4の御用意をお願いいたします。
「第三者機関における調査の実務について」ということで、論点例を2つ挙げております。1つ目として、原因を究明し、再発防止を図るという調査の目的に照らして、その調査の実務についてどのように考えるのか。また、事故が発生した医療機関に設けられた組織による調査と第三者機関による調査と、それぞれについてどのように考えるのか。
2つ目は、必要な調査項目についてどのように考えるのか。例えば、解剖や死亡時画像診断は必須の検査項目とするのか、解剖を必須とする場合、解剖ができないような場合についてはどのように考えるのか、このように論点例を挙げております。
参考1として各団体からの御意見、おめくりいただきまして、参考2として前回までの検討部会で出された主な御意見をそれぞれまとめております。
資料の説明は以上です。
○山本座長 ありがとうございました。
一応、論点の例としては、第三者機関の調査、院内調査、それぞれについてどのような形で調査が行われるのか、そして、今も少し出てきましたけれども、相互の調査の関係といったものをどう考えるのかという論点。あるいは、2としては、必要な調査の項目、解剖あるいは死亡時画像診断のようなものを必須とするのかどうか。解剖を必須とする場合には、解剖できないような事例をどう考えるのかといったような、実務ということで、具体的な調査の在り方、イメージにかかわる問題で、先ほど来の御議論で、恐らく、構成員がそれぞれ抱いておられるイメージは、今の段階では必ずしも一致していないだろうと思いますので、ぜひ多くの方々から、それぞれお考えのイメージを出していただければと思います。
樋口構成員、どうぞ。
○樋口構成員 ここは論点が2つあるんですね。1についてですが、中澤さんは、第三者機関というのは、医療については今まではなかったとおっしゃったけれども、そんなことはないのでね。例えば、モデル事業ではいろいろなことがあって、きちんとした専門家が一定の判断をしている事例が、たくさんと言えるかどうかは数の問題ですけれども、何年にもわたってやってきたわけです。仮にそれをモデル事業と呼びますが、そのモデル事業の中でも、院内調査委員会はもう設置しなくていいよ、そっちはやめてくれ、我々が全部対応しますから、というような話はないんです。もっとも、そんなことをしようと思っても、そういう権限もなかったですけれども。しかし、やりたかったのかというと、そんなことはないです。それは、院内調査委員会が走るなら、それはそれで対応してくださいと。そちらの報告とタイアップしながら、という話をしてきているので。
この第1点はそういう話なので、この後、腰砕けになって申しわけないけれども、実務を知っているこの中の委員では、山口徹先生に、今までの経験を踏まえて、こういうやり方で一応うまく行えたという話を、これは誘導尋問になるのかな、しかし、山口先生を誘導することはできないので、山口さんはお考えのことを言ってくださると思うので、その経験等を踏まえた御意見をお伺いしたいと思います。
○山本座長 ありがとうございます。誘導尋問ではないということですので。
○山口(徹)構成員 もともとモデル事業が、第三者機関をどうつくるかということが大きなテーマで行われてきましたので、そういうことをされたことがないということではないと思います。これまでの経験を踏まえて、専門家が集まることができないかといえば、それはそれなりの10地域で行い、場合によっては県外の人を呼び、必要に応じて集めているわけですから、日本全国どこを探してもいないということでなければ、人材を集めることは十分可能だろうと思います。
実際に、原因究明をするのに、モデル事業で現在行われていることは症例に限りがあります。一つは、解剖することを必須にしています。もう一つは、医師法21条の、いわゆる明らかな医療過誤に絡んだような事例については行っていません。そういう意味では、明らかな医療過誤の背景も含めた、先ほどからちょっと御議論があったような、再発防止に向けたところの検討については、ちょっと不十分なところがあるのではないかと思います。しかし、通常の、少なくとも解剖所見が得られて、それぞれの専門家が集まり、しかも、それぞれの領域の専門家だけでは、時にその評価が多少偏ることがあり得ますので、それ以外の臨床家も加わっていただいた検討の中で、後でいろいろレビューしてみても、それなりの妥当な結果は十分に出ていると思います。その後に、御遺族、依頼があった病院と、疑問、あるいは、何か御質問はありませんかというやり取りもしておりますので、そういう過程を踏まえて出てきた結論は、それなりに妥当なものだというのが多くの人の意見であり、同時に、病院、御遺族も納得した形でできているのではないか。御遺族がとても不満だという事例がないわけではありませんが、それは極めて少数ですから、普通にそれぞれの専門家が集まって行った検討で、皆さんが納得しやすいような、できるような結論が出てくることは現実的にそう難しい話ではないのです。これまでの経験からしても、そういう組織が、いざとなれば対応できるという体制があって、そして、院内の事故調査委員会がどこまでするかということが検討できていれば、体制としては十分成り立つのではないかと思います。
何か具体的なことがあれば、またお答えしたいと思います。
○山本座長 ありがとうございました。
それでは、中澤構成員、どうぞ。
○中澤構成員 私が申し上げた「第三者機関は今までない」という言葉ですが、私が言っているのは、法律的にはないという意味です。それはいろいろなところがあっていいんですけれども、今回つくろうとしているのは法律的な意味の第三者と捉えておりますので、そういう発言をさせていただきました。
もう一つは、専門家の意見ということで、これはそれなりのドクターを集めることができるということですが、私は、医療事故というものは、病院に対してすごく個別性があると思います。それから、患者さんについても個別性がありまして、誰それに起きた事故という考えがあります。それから、そこにかかわった医療者についても、誰それが携わった医療に関して起きた事故というように非常に個別性があるので、なかなか普遍的なものに一気に持っていくことができない。一気に持っていくと、恐らく、本質的なものが外れてしまうのではないかという危惧がありまして、私は、院内の調査で個別的な対応をして、その個別的な中の問題点を探って、もしそれに問題があれば第三者がかかわるというシステムが必要ではないかと思っていて、その意味では、院内の個別事情に明るいのは、やはり院内調査にかかわる人材だろうと思います。そこで、個別性にかかわるところを第三者機関に求めるとすると、非常に多様な対応が求められるので、これはやってみないとわかりませんが、私の感想としては、厳密に行おうとしたら非常にたくさんの人材が必要だろうという意味でお話し申し上げております。
○山口(徹)構成員 ちょっとよろしいですか。
○山本座長 どうぞ、山口構成員。
○山口(徹)構成員 モデル事業でもそうですけれども、モデル事業が、病院から資料提出を受けて、院内のこととは全く独立して、全く別個のところでみんなで検討するということはあり得ません。当然、院内からの報告書も含め、院内ができること、院内の事情、それぞれそういうものも含めて第三者機関といえども外で検討しているので、院内の人しかわからない事情、あるいは、院内でどういうシステムになっているかという話については、必要に応じて院内から聞くこともありますし、当然、院内からの報告書ももらうわけですから、第三者機関はどういう形になるとしても、院内での調査と全くインディペンデントに進めることはあり得ないと思います。そうなれば、院内での検討結果を踏まえて、さらに第三者で行うという形になるでしょうから、院内の事情をわきまえていないから事がわからないという話にはならないと思います。
○中澤構成員 その辺もちょっと誤解があると思います。わからないとは言っていないんです。でも、それは、院内報告があって第三者機関がつかんでいただいた事実と、院内の者が直接つかんでいる事実が全く同じかといえば、これは異なると思います。ですから、まず第一義的には院内が行い、公平性についてはまた別に考えなければいけませんけれども、とにかく院内で起きたことの原因分析は、やはり院内が一番近いところにいるのではないか。非常に難しくて、院内の専門知識では問題にならないようなところは、第三者機関が持っている専門的な人材のプールの中から御意見をいただいて、院内の報告書をより緻密なものにしていくということで患者さんの信頼を得ようというのが院内調査の目的だと思っています。それは、できる、できないという問題ではなくて、できなくてもやらなければいけない問題であるし、それがどうしてもだめなときに、第三者機関が入ることはやむを得ないことかもしれないと思っています。
そういうわけで、優劣の差を言っているわけではないことを、ぜひ御理解いただきたいと思います。
○山本座長 では、里見構成員、どうぞ。
○里見構成員 議論が行きつ戻りつしているような気がしますけれども、これは多分3回くらい前に一度お話をして終わっているんじゃないかと思います。これまでモデル事業に取り組んできて、山口先生や樋口先生が一生懸命にされて、第三者機関で実際に行えますが、それを全て行うのはなかなか大変だろうと。実効性があるものにするためには、最初は院内事故調査委員会を開いてもらって、そこである種の結論が出て、それで双方が納得して、これで十分に原因が究明されているなら、それでよしにしましょうと。しかし、その中でも、まだ議論が十分に詰まっていないと判断された場合は、次に第三者機関に調査を依頼するという、こういう二階建て構造をとりましょうと、そういうふうに大体決まっていたと私は思います。この構造はこのようにしましょうと決めて、あとは、最初に院内事故調査委員会がなかなか開けないところは、医師会、学会も含めて委員を派遣する仕組みをつくりましょうということをして、まず院内事故調査委員会を開く。そこでまだ十分に詰まらないときは第三者機関に調査を依頼する。そのときの権限はどういうものであると。そういうものを、どちらが上とか下とかいう議論はやめにして二階建ての構造にしましょうとなったわけですから、その構造で次に進めていかれたらいかがでしょうか。
○山本座長 ありがとうございます。
どうぞ、豊田構成員。
○豊田構成員 質問ですが、死亡事故のときのイメージが湧きにくいんですが、すぐに解剖しなければいけないものに対して、それはどういうことでしょうか。院内の事故調査委員会は、例えば遺族が承諾して、院内または大学病院などで病理解剖しても構わないというケースはいいかもしれませんけれども、そのような場合、解剖はどのタイミングで行うことになるのか、そこが少し理解できないのですが。
○山本座長 これは、どなたかイメージがありますか。中澤構成員。
○中澤構成員 私見になってしまうかもしれませんが、解剖というのはマンパワーも必要ですし、非常に労力も使いますし、それによって出てくる成果は、私は、かなりバイアスがかかったものが出てくるのではないかという気がします。
これは実際に患者さんが何か事故を起こして亡くなる寸前、要するに、血圧が下がりますね。そのときに、そのまま手をこまねいている医者はいないと思います。あらゆる手段を尽くします。そうすると、延命処置ということになりますけれども、1週間近くもつこともできます。その1週間ちかくもったときに、亡くなりました、解剖と持っていったときに組織的に何が出るかというと、焼けあとの所見しか出ないということが結構多いですね。ですから、私は、解剖が果たして本当に迫る一つの手段なのかということについては疑問を持っています。
○山本座長 どうぞ。
○飯田構成員 誤解を招くといけませんのであえて申し上げますが、解剖の意義はあります。ただ、病理医がいる病院と、病理医がいない病院がありますから、病理医いない病院ではなかなか難しいというのは確かです。当院には病理医がいますから剖検を勧めていますが、患者の家族がなかなか承諾してくれないので、解剖の数としては、しにくいという実態はあります。
私が現役のころは、解剖のお話をほとんど100%しましたが、現役のころは多分7割くらいは剖検を取ったと思いますが、今は画像診断が進歩しているということもありますけれども、家族がなかなか納得してくれなくて剖検率は非常に低いです。ですから、臨床研修のいろいろな指定に関しても、今、剖検の基準がどんどん下がっています。どのタイミングかというと、不審死だけではなくて、普通の経過をたどった死亡例に関しても、個人的ですが、私は全て剖検のお話をしていましたが、それでもなかなか承諾が取れません。
ですから、剖検率が低いからけしからんと言われても困ります。それから、Aiに関しても、Aiを行った病院にヒアリングしましたが、結果はわからなかったということがありますが、意味があるかないかというと、剖検の方があります。
以上です。
○山本座長 有賀構成員、どうぞ。
○有賀構成員 先ほど、山口さんとの話の中で、もともとふだんのきちんとした診療プロセスの延長線上に、場合によっては信頼が崩れてしまう、そういう話を連続的に考えていくと。今、御質問があった、病理解剖が非常に難しいという話は、日常的なものと、連続的にそうなんだということからいきますと、私は、やはり中小病院であっても剖検できる体制をとっていくことが、この話の大事な部分ではないかと思います。
確かに、病理の先生が少ないとか、今言った、患者さんの御家族が、これ以上はもう勘弁してくれという方たちがたくさんいます。それでもやはり剖検で得られるものがないわけではありませんし、私たちは西洋医学をやっていますけれども、その方法論の一つは、最終的には病理学を得ることになりますので、そういうふうな、比較的やりにくい小さな病院であったとしても、何とかして剖検ができるような仕組みをつくっていくことが、この手の話の大事な背景ではないかと強く思う次第です。
ですから、きっとできるようにしたい。そうすれば、場合によっては、それもできて、そして説明ができて、それでもとなれば第三者が何らかの形で、さっきの言葉で言うと、補完して入ってくる。それはモデル事業のような形で入ってきてもいいかもしれませんが、最初からけんかしているわけではありませんから、どちらの病院であってもできるようにしたいというのが、この件に関する大事なポイントだと思っています。
○山本座長 ということは、豊田構成員の御質問の主旨は、信頼関係が成立していればそれは可能だけれどもということですか。
○豊田構成員 信頼関係の問題もありますけれども、まず、きちんとした事故調査を行える体制を整えられるものなのかということがあります。後になってから、やっぱり解剖すればよかったと思う遺族がとても多いんですね。今、先生方の御経験を伺っていると、実際に毎回一生懸命に説明していると。でも、日本人の多くは解剖に抵抗があるということもあって、または、病院に不信感を持ってしまう方もいると、多くの方が断ってしまう現実の中で、それでも先生方は話をきちんとしているというご主張はわかりますが、私自身の体験でも、本当に短い時間で、今ここですぐに解剖を決意しなければならない選択を迫られました。そういう時、主治医や病院長は物すごい緊張感の中でその説明をしなければならないし、遺族も、物すごい緊張感の中で決断しなければならないというときに、よほどの体制が整っていない限り、適切に物事を考えて、行動するのは現実に難しいと思います。
今お話を伺った中で、確かに、その考え方は正しいと思うことはあります。ただ、それは将来的にはそうかもしれないですが、今、現実に、ここ数年の間にその仕組みをつくっていくとなると、第三者的な方が、例えば解剖の説明をするなどしないと、当該の人たちだけで説明をして説得していただき、その病院が解剖を行う、それは体制を整えることが大変ということも一つありますけれども、もう一つは、それで信用していただけるかという問題もあると思います。今日のお話は、現実に私たちが患者会で御相談を受けている内容と照らし合わせると、短い時間で、わかりました、ぜひお宅の病院で解剖してください、となるかというと、そこまでの関係性をここ数年で作れるかというと、私はとても難しいと思っています。院内が努力する一方で第三者機関も含めた仕組みを早期につくっていくことが必要ではないかと思います。院内だけの努力では、今の段階では限界があるのではないかと思いました。
○山本座長 樋口構成員、どうぞ。
○樋口構成員 最初に政務官もおっしゃったし、何度もこうして会合を重ねてきて、そろそろ何らかの形で取りまとめをという話もあり、里見さんがおっしゃるように、こういう形でまとめようということに大賛成ですが、原則は二段階論でいいのですが、今、豊田さんが言ったようなケースは絶対にあるんです。多分、中澤先生は本当に幸せな医療者で、かつ、中澤先生に巡りあった患者さんたちはきっと幸せな患者さんだと思いますが、私ですら、60年間生きてきて、幸せではない医療者、幸せではない患者さんに会っていますから、もっと切実な経験を豊田さんなどもしてきているわけですね。
そういうときに、二段階は原則ですが、飛びはねて、とにかくいきなり第三者機関に行きたいという人がいてもいいんですよ。それで、中澤さんのところのような病院だったら、そこに行かないんですよ。だから、そういうふうにしてくださいと我々はお願いをするだけ。だから、二段階論を原則としていいのですが、それだけしか道はないという形には、きっと法制化はできない。遺族から直接行けるという話は、特に死亡している事例ですから、それはやはり残さざるを得ない。そういう不幸な事例を少なくすることは、別に法律の問題ではなくて、まさに医療現場の問題ではないでしょうか。
それで、逆に、そういう制度もあって、なおきちんとうまくいっていますという医療をつくることが、まさに医療界の責任なのではないでしょうか。
○山本座長 では、順にお願いします。まず中澤構成員から。
○中澤構成員 先ほどの豊田さんの御意見についてですが、今、解剖を自分の病院でできる病院はほとんどないと思います。ほとんどは大学病院に限られると思います。一般のところで、残念なことですが、解剖ができるスタッフがいません。今、本当に困っているのは、実際に生きていらっしゃる方のがんの診断を、悪性か、悪性ではないかということを調べる医者もいないんです。それは大学病院の病理ということになりますが、病理学教室に入る人がいない。前にいた病院などは、大学病院から交代で来てもらっていますけれども、常勤の医者を探そうとしても絶対にいないというような状況です。それは、院内で何かできるというようなことは、物理的に難しいと思います。
そういう話の中で、解剖が必須かどうかという議論していただいた方が現実に近いお話ができるのではないかと思います。
○本田構成員 私も、豊田構成員のお話を伺っていて、実感として思ったことですが、私自身は患者としての経験しかありませんが、何かを判断するというのは本当に難しいことで、それを短時間で行うことは本当に難しいですね。ましてや、医療事故なのか何なのかというときに、例えば死亡事例のような大きなものになった場合、その病院の方に説明を受けても、今まで信頼している、よい関係だったとしても、なかなか決断できなかったり、この先どうなっていくのかとか、実はここで解剖することにこの後どういう意味があるのかということを、耳に入ってくる度合いもまた違うと思います。
そういう意味では、いきなり第三者に行かない事例の方が多いと思いますけれども、私は、先ほど樋口構成員がおっしゃったように、原則としては二段階論が当然だろうと思っていますが、初めの段階で、コーディネーターなのか何かよくわからないですけれども、何かそういう第三者的な人が説明をきちんとしてくれて、それで、わかったと。院内の方できちんとしてもらった上でということもあるでしょうし、私は解剖をしてもらいたいけれども、ここの病院でできないのであれば、連携するような形でできないだろうかというような、そういう医療機関の連携のようなものをきちんとつくっていただくとか。説明の部分で、第三者的な方にまず聞きたいという希望というか、そういうものがとてもあって、そういう仕組みがあってもいいのではないかと感じました。
○山本座長 どうぞ。
○山口(育)構成員 先ほど、けんかというお話がありましたが、第三者からの説明を求めたいというとき、必ずしもけんかではなくて、当事者ではない第三者ということが納得につながる場合もあるのではないかと思います。
私も、モデル事業で、大阪の評価委員にかかわらせていただいていて、解剖した結果、意外なことがわかったとか、解剖したからこういう事実が出てきたんだねということを経験しています。Aiではわからなかったけれども、解剖したら原因がわかったというようなことも経験させていただいています。
解剖に当たっても、調整看護師が中に入るということで、医療機関とは別の方がコーディネーターとして中に入って説明することで、御遺族の方が気持ちのワンクッション置けるというような意味合いもあるのかなと思います。ですので、今は10地域しかありませんが、モデル事業を中心に考えて、そのモデル事業で、実務の在り方のどこが足りないのか、例えば解剖をしなかった場合、後で第三者機関というときに受け付けるのかとか、今は医療機関からの申請でないとだめというところを患者からも受け付けるようにするとか、今まで取り組んできたモデル事業の実績を踏まえて、そこに肉づけしていくようなことで実務を考えていった方が現実的ではないかと思います。そうすると、今おっしゃったような、院内で病理解剖するということが、今は現実的に不可能だとしたら、そういうモデル事業では実際に実施しているわけですので、それを根本的に考えた方がいいのではないかと思います。
以上です。
○山本座長 ありがとうございました。
では、山口徹構成員。
○山口(徹)構成員 モデル事業でも、組織としてつくるのに一番難しかったのは、やはり解剖体制をどうするかという点でした。人手が足りないという点では、そこが一番大きな点だと思います。もちろん、その病院で解剖ができれば、御遺族も、ぜひというケースもあると思いますけれども、それは 当然、できることに限度がありますね。
だから、そういう意味から言うと、どこでも解剖ができる体制をつくることが、この第三者機関にかかわらず死因究明制度の中では非常に大きなキーになると思います。もちろん、ある事故が起こってから亡くなったのが2か月後で、それに関して解剖による情報では新しいものがないということもあり得ますけれども、やはり解剖で大きいのは、臨床的にはいろいろな可能性がたくさん考えられますけれども、その中の、これとこれとこれは可能性がないということをはっきり言える。必ずしも、解剖して初めて、こうだったのかとわかるケースはそう多いわけではないですが、いろいろな可能性をきちんと否定することができる。そうすると、可能性として、これとこれの可能性があるというように話を絞ることができますから、そういう意味では、死因を究明して、それに伴っていろいろ考える上で、やはり解剖は非常に大きな意味があると思います。もちろん、Aiもできればそれなりの意味があると思いますけれども、Aiに解剖がまさるという点はどなたも御異論はないと思います。やはりどこでもそういう解剖が迅速にできる体制をつくることは、死因究明制度の中でも一つの大きなキーだと思います。
そういう意味でも、解剖ができるためには、各地域で大きな病院なり大学病院なりに御協力をいただいて、そういう解剖体制をつくりあげることが必要です。第三者機関がどうあるかということとは別に、解剖は第三者機関で行い、もう一度その結果を踏まえて院内で検討するというところから始まっても一向に構わないわけです。どこでいろいろな評価をし、検討をするかという問題と、解剖という結果を得て、それを踏まえて話を進めるということは、別に考えたようがいいと思います。対象になっている事例は、どうして亡くなったかが明確な事例ではなくて、予想しないような展開で亡くなって、何が原因かわからない、あるいは、病院側の説明に納得がいかない、こういう事例が対象になっているわけですから、より多くの、より正確な資料をもとに検討する体制をつくることが死因究明制度では重要だと思います。そういう意味で、解剖体制をつくることは大きなことだと思いますし、重要なキーになると思います。
○山本座長 ありがとうございました。
高杉構成員、どうぞ。
○高杉構成員 医師会の高杉です。
特異な経過をたどった、医療側が説明できないような死というのは調べなければいけない。この場合に、解剖は重要な手段ですけれども、患者さんに説明してもなかなか納得を得られないというのは事実です。
それから、豊田さんが言われたように、絶滅危惧種は法医学者と病理学者です。病理学の医者は、生きている人を対象にしていますから、病理解剖になかなか手が回らないのは確かです。しかし、医学上説明できない症例の方をきちんと解剖して死因を究明することは、我々の本当の使命ですから、これに対しては、各県に1大学あるわけですから、そういう説明できない不幸な目にあわれた方をきちんと説明できるようにしようというのが我々の本当の考えです。したがって、解剖ができるような体制に、県医師会あるいはそこの大学、地域でできるような体制を組むような提案をしております。それは、日本医師会の死因究明制度に対しての考え方の基本です。
山口先生がおっしゃったように、とにかくモデル事業でもここまでできたのだから、何とかできるようにしようではないかという山口先生のお考えは、私は全く賛同ですし、よくわかります。ただ、今は画像診断が進歩していますから、いわゆる解剖でのマクロ診断、肉眼診断はほとんど画像診断でできますが、ミクロ、顕微鏡の診断になってくると、これはやはり解剖がものを言う。本当の死因究明につながってくるだろうと思います。
それから、解剖というのは、死なれてからできるだけ早くしなければいけません。そこに決断を迫られる御家族の心境はわかりますが、時間を置いてはできないということは仕方がない。場合によっては、すぐにできればいいけれども、これは今は手薄だから、人が回せないから1日お待ちいただく場合もあるかもしれませんけれども、できるだけ早い解剖の体制を敷くようなことは、この制度を動かすためにはぜひとも必要だろうと思います。医療者も、患者さんも、家族も、その原因を知りたいというのは当然だろうと思いますので、その辺で我々は努力していきたいし、そういう提案をしていきたいと思います。
もう一つ。第三者機関についてです。山口先生が前回に言われたと思いますが、これは、誰が見てもそうだと。第三者性がきちんと保たれて、きちんとした答えが出ることが大切ですから、院内事故調査委員会だけでは限界があるだろうと思います。あるいは、患者さんが直接第三者機関へと、そちらの道を取られる道もやはりつくりたいと思いますし、その場合にも、解剖されますか、されませんかという話にもなってくる。あるいは、病院としては、これは第三者機関に届けて我々が院内事故調査をしますというケースもあるでしょう。その辺は、その場その場で臨機応変に対応していく。そこに第三者的な医療メディエーターというんですか、第三者が説明するような機会も各病院でつくられつつありますので、医療はいろいろと変わりつつあるだろうと思います。これをさらに進化させた制度が、インパクトあるものになっていったらいいかなと思っています。
○山本座長 ありがとうございました。
どうぞ、中澤構成員。
○中澤構成員 今のお話で、絶滅危惧種という言葉が出ました。
○高杉構成員 ごめんなさい。それは取り消してください。
○中澤構成員 いや、それは、私どもは本当に実感だと思います。ただ、医師会の御意見をいただきたいのですが、今、医師会は、医師を増員しない方がいいとおっしゃっていますね。それでこういうことができるのでしょうか。
私が今非常に危惧しているのは、要するに、医者の数がいないので、みんな臨床に取られてしまって基礎に行く人がいないのが現状かと思っています。医者の数が少ないところで、こういうふうにいろいろなことができるのかということを、現実論として捉えていただいた方がいいかなと思います。
○高杉構成員 その御質問は、ここでお答えするには不向きなことだろうと思います。地域によっての医師不足、科によっての医師不足、偏在、いろいろな問題が包含されていますから、これはまた別の機会にお答えしたいと思います。
○山本座長 いかがでしょうか。
どうぞ、豊田構成員。
○豊田構成員 患者の立場の人たちの意見が混乱しているように感じられているかもしれませんが、院内事故調査が大切であることは、多くの患者や遺族が思われていると思います。院外の第三者機関や、解剖でないとわからなかったことがあるという御意見のお話がありましたけれども、それと同じように、院内の事故調査でないとわからないというものは確かにあると思いますので、とても大切なことだと思います。
ただ、それをすることによって解剖が遅れてしまったりして、解剖の内容がよくないもの、結果がわかりにくいものになったりすること、そういうことを妨げてしまうことはよくないと思いますので、最初の事故直後にきちんとした体制で患者さんに説明して、どういったところで解剖を受けられたり、事故調査を受けられたりするか、院内でしっかり説明を受けられること、最初の初期段階でそうした仕組みをつくっていただきたいと思います。
現実的に、医師不足の問題などについては、私はそこまでの知識が余りありませんので、意見は言えないのですが、実現できる仕組みをつくらなければならないというところでは、その分野に詳しい方々にぜひお話をいただいて、現実的にどの地域でどのくらいの割合で解剖できる仕組みをつくれるのかということを具体的に話し合いしていただきたいと思います。
それと、中澤委員は、第三者機関でそうした専門家の方々を集めるのが難しいのではないかというお話でしたけれども、私は、お話を伺っていると、全国の病院が、院内の事故調査の仕組みを、同じような、一定のレベルでつくっていくことの方が、現実的に時間がかかり難しいのではないかと思っています。例えば、外部委員の先生に来ていただいて事故調査委員会を立ち上げたりしますけれども、きょうのこの検討部会のように、日程調整が大変でなかなか開催日を決めるのが難しい、報告書ができるまでにすごく時間を要してしまうとか、それは外部の専門医の先生方に来ていただくお話ですので、お金もすごくかかるということがありますので、院内でそうしたことを現実的に今すぐできるかというと難しいので、そこでモデル事業の中でも協働型という形で、外部の人がサポートするような仕組みをつくられて試験的に今実施されていると思います。そうした取り組みをもう少し聞いていただいた上で、このことについてもう少し理解していただきたいと個人的には思います。
○山本座長 いかがでしょうか。
中澤構成員。
○中澤構成員 今、私と少し考え方が違うところがあります。それは、時間がかかるとおっしゃっていますが、院内事故調査ができないようなものは別ですけれども、ある一定のレベルのものであれば、院内で起きている話ですから、聞くポイントもみんなわかっている話ですので、迅速性から言うと院内の方がずっと早いです。私どもは2週間以内に調査結果を報告できるようにすると言っています。それが土台ですから、それを患者さんにお示しして、お話も聞いて、これは違うんじゃないのというような話も全部入れて、また何回もやり直しをします。それは、今、出席者を集めるのが大変だとおっしゃいましたが、恐らく、中央で第三者委員会が行う方が大変ではないかと私は思っています。実際に前のモデル事業の報告書を見たときに、やはり専門家のスケジュール調整が非常に大変だったということも言われているので、それは事実かなと思います。ですから、院内調査で時間がかかるということは余り当たらないし、私たちが第三者機関の手法に危惧を持っているのは、患者さんには早く説明しないと、例えば10か月置いた後で話をしては、患者さんは放っぽっておかれると思ってしまいますので、そういう意味では、院内調査だから遅れるということは余りないのではないかと思います。
それから、ほかに、院内調査は今は無理だろうという話ですが、院内調査をしてくれという話が出たのは、今まではないですね。政府からも、厚生労働省からも、そういうものが出るか出ないかは別として、要するに、医療界全体として院内調査をどこでも実施しましょうという話が今まではなくて、この間、医師会さんがそういうものを出されたので、これは一歩前進かなと思いました。そういうことを実施してみて、院内調査はこういう進め方で問題を解決するということを少し言ってあげるだけで、患者さんにお話しできるものはできると思います。
それから、ここで扱っているのは、死亡例という重症な例ですが、それ以外に、事故にかかわる障害例は数多くあります。それは、どこの病院でもある話なので、こういう院内調査委員会をまず立ち上げて、そのスキルを充実させるような教育のようなものが日頃から行われれば、今までよりはよくなると思いますし、私は、その件については、患者の権利ということを、医師だけではなく医療従事者全員に納得してもらって、そういう目で物事を見てもらうだけで、院内調査はかなり質が上がるのではないかと思っています。
○山本座長 どうぞ。
○豊田構成員 ぜひ質を上げていただきたいです。ただ、先ほど樋口委員もおっしゃったように、中澤委員だからなさっていることがあって、もちろん、病院長お一人だけがなさっているわけではなくて、全国的に一生懸命に取り組まれている先生方がいらっしゃると思っています。ただ、9,000近くある診療所や病院の中で、それを今すぐ取りかかれるか、それを今すぐサポートできる仕組みがつくれるかというところを考えると、患者団体で相談を受けている立場からみていると、かなり時間を要するのではないかと想像できますので、並行してつくっていただきたいという思いがあります。
○中澤構成員 並行はよろしいと思います。ただ、2つ行うとどちらかに重点が行くので、法律で何かを行うという話になったときに、その役割がはっきりしていないと、育つものも育たないということがあると思います。
私は、医者あるいは医療従事者の頭の考え方が変わるということだけで、随分と変わるのではないかと思っています。それは、要するに、インフォームドコンセントの延長で事故が起きるのだから、事故が起こったことについては、患者さんに説明するのが、患者さんの権利として当然のことだよと言ってあげることでかなり違うと思います。一番違うのは、学生のときからそれができるということです。今、私どものように年を取った医者にゼロからというのは難しいと思いますが、それを今の若い医者から育てていくことができれば、10年後にはそういう世界ができるかもしれないと私は思っています。
○山本座長 ありがとうございました。
いかがでしょうか。
では、松月構成員。
○松月構成員 本題に戻りますと、事故調査を行う実務については、Aiですぐにわかるものもあると思います。解剖は死亡原因の究明として、パーフェクトではありませんが、原因がわかるものもあると思いますし、様々な原因となり得る可能性を否定できるところに、私は、解剖を行うメリットがあると実感しています。御遺族が解剖を選択しなかったけれども、後に解剖しておけばよかった思われたときには、本当の死亡原因が何だったのかを、カルテや検査値だけではわからないことがあります。死亡原因を特定するのではなく、否定するという意味では、解剖はパーフェクトではありませんし、先ほど中澤構成員がおっしゃったような問題もありますが、解剖によって死亡原因はある程度解明できます。私は、解剖を勧める理由として、死亡原因が何なのかよくわからない場合は、御遺族だけではなく、医療者側も同じ思いをもっています。やはり解剖を実施していくには、病理医も少なく確かに厳しい現状だと思います。では一体どこが実施できるのか。でも、将来的に解剖の実施を可能なものとしていくことは、事故原因を追究する上で重要なことだと思います。今はできないからと言うのではなく、それができるようになって欲しいと思います。
それと、不信感が芽生え始めた遺族の方に解剖を勧めることについては、現在、調整看護師が10拠点の中でいろいろな調整をしています。解剖を実施する体制を作るためには、そのような調整ができる人材も育てていかなければいけないと思います。看護師の立場から見ると、御遺族のお気持ちもわかりますし、そのように思っています。
○山本座長 ありがとうございました。
加藤構成員、どうぞ。
○加藤構成員 資料4の論点例に沿っての話ですが、基本的に各医療機関が自律的に、自分のところで起きた医療事故についてきちんと調べて教訓を引き出そうとする営みは誠に大事なことだと思います。その意味では、院内事故調査が尽くされて、御遺族等に説明がなされることは大事だと思いますけれども、現実に中小の病院、100床ぐらいの規模の医療機関で、実際に部長という人が一人で執刀したオペの事例などは、その医療機関の事故調査は実際には無理だろうと思います。
そういう意味で、公正、客観的に行うために、院内事故調査が現実的には難しい規模の医療機関もあって、そういう際には、むしろ第三者機関でさまざまな仕組みを用意しておくことが、学会レベルや地域レベルなどいろいろな形も含めて必要になってくるだろうと思います。そういうときに、院内事故調査の、公正で客観的で質の高い事故調査を行うためには、事故調査のガイドラインが必要だろうと思っています。そこの基本的なルールづくりも一方できちんとしていただきたい。
2週間で事故調査を終えるというのは、自分が、死亡事例で、大学病院のケースでしたが、2か月間で済ませたときの大変さを知っていますので、きちんと調査するには、大変な思いをしても2か月や3か月はかかるだろうと思っています。まして死亡事例であれば、死因究明という点では解剖は欠かせないだろうと思います。ここの検討部会の大方の意見は、どうまとめるのか難しいですが、死因究明、要するに、診療関連死を前提にして死因究明を図ろうとすれば、今、モデル事業で積み上げてきているように、解剖を基本に置いて、Aiも適宜加えてということで、材料をなるべく豊富にしていく考え方になるだろうと思います。
そうすると、病理等が忙しいとか、数がどうとかという問題が出てきますが、将来の死因究明のあるべき姿を考えれば、病理医もきちんと育てていく国の政策を、それなりの働きかけをしていく必要があるだろうと思います。
そのようなことをしながら、一つひとつの事例から最大限、真相究明を図り、再発防止なりに生かす、安全で質の高い医療につないでいくような教訓めいたものを引き出していく。それが調査であって、それに必要な項目としては、カルテ等の調査、場合によっては現場の状況、いろいろな配置の問題など、調査すべきことはさまざまあるのではないか。病院の中のいろいろな仕組みも、大学病院の事故調査をしたときには、例えば、輸血のタイミングについては、どういう仕組みで血液が到着するのかというようなことなども全部しますので、調査項目は相当多岐にわたるというのが経験してみての実感です。
そういう丁寧な調査をしていくことによって、改善点などいろいろなことが出てくるのではないかと思います。今、解剖のこと、Aiのことが論点例としてここでは提示されていますが、私は、幅広く調査権限を持って対応していくことが必要だろうと思っています。
○山本座長 ありがとうございました。
どうぞ、鮎澤構成員。
○鮎澤構成員 6点あります。手短にします。
まず1点目。現場で事故調査をしています。病院での実務にも当たっています。患者さんや御遺族には、私たち医療従事者も何が起きたのか知りたいということで解剖をお願いしています。この委員会の議事録は大勢の方が読まれておられます。解剖はとても大事なことだ、せめてもの次善策としてAiもあるということを広く知っていただくためにも、やはり解剖は意義あることだと、きちんとこの席で皆さんで確認していただきたいと思っています。それが1点目。
2点目。とはいうものの、現実的になかなかできない。この委員会の前のというのも失礼ないい方かもしれませんが、死因究明という言葉が使われている委員会に出ながら、今までの死因究明はどうしていたのだろうというじくじたる思いを持っていました。事故調査だけではなくて、医学の進歩のためにもきちんと死因が究明できる制度が、あるべき姿として必要であることを、いつできるかどうかは別にして、この事故調査委員会でそこまで議論できるかどうかは別にして、この委員会の報告書がどうまとまるのかわかりませんが、ぜひともこの委員会のメッセージとして出していただきたいと思っています。
うちは大学病院ですから自分のところでできるわけですが、それでも週末だったり案件が重なっていたりしていてすぐにはできないとか、いろいろな事情で、御遺族には解剖そのもののご承諾はいただけながらできなかったこともあります。
というわけで、まず、地域として、その地域が持っているリソースをどのようにみんなで使え合えるかというスキームをこれから考えていかなければいけないということが3点目。
今、モデル事業では、当該病院で起きた事案は他院での解剖が基本になっておられますね。それは、公正性、客観性を担保するためということになりますが、第三者機関がいろいろな形で入ってくだされば、当該病院の事例も当該病院で解剖することができるなど、スムーズになることが出てくるのではないかと思っています。現実的な対応策として御検討いただきたいと思います。
4点目ですが、私は、この事故調査委員会、第三者機関にかける事案としては、解剖を条件にするとハードルが高くなると思っています。死因究明ではなくて事故調査であるならば、解剖をお願いしたい、でもできない、Ai、でもできない、でも、できることがあるならば、この事故調査委員会にはかけることができるような仕組みにしていただくことが、真相究明、再発防止に一歩でも近づけていくとても大切なことではないかと思っています。
そして5点目ですが、先ほどの有賀先生が、自分でできろ、助けてもらえ、とおっしゃいました。そのお言葉をお借りするなら、自分でできる、助けてもらうレベルがが、施設のレベルによって大きく異なります。それから、納得できるレベルも、医療従事者と患者さん、患者さんもそれぞれで異なります。だから、一律こういうふうにと線を引くことはできないと思います。そういう中で、助けてもらいたい人、納得できない人が、かけることができるある種ののりしろを持った仕組みでないと、現実的にはなかなかみんなが幸せになっていかないのではないかと思っています。最初のころはいろいろとでこぼこがあるかもしれませんが、大枠の条件を決めて、引き受けるような仕組みの中で少しずつ整理されていくのではないかと思っています。
最後の6点目です。今、患者さんが亡くなられると、説明しなければいけないことがたくさんあります。解剖してくださいというお願いだけではなくて、モデル事業をお願いしようとすると、モデル事業とはどういうものなのかということも説明しなければいけなくて、それをどのタイミングですればいいのかということも、現場的にはとても悩ましいところです。私たちは、主治医がされたり、安全管理部からお願いしたり、モデル事業の事務局の方に来ていただいてお話をしていただくようなこともあります。これはもうケース・バイ・ケースですが、モデル事業の方に入ってきていただくというのは、第三者の方から、別の観点からお話をしていただくという意味でとてもありがたかったという思いがあります。先ほど、誰が説明をするのかというお話がありましたが、そのあたりのことについてもいろいろと考えていただける可能性が、この第三者機関の設立によって出てくるのではないかと思っています。
以上です。
○山本座長 包括的な御意見をありがとうございました。
時間の関係がありますので、宮澤構成員、どうぞ。
○宮澤構成員 時間の関係がありますので、最後に申し上げたいと思います。
今回いろいろな議論が出てまいりましたけれども、ブレーン・ストーミング的な議論の出し方はそろそろ終了かなと思っています。その意味では、第三者機関の在り方や内容に関して、骨子の部分をどういう形で決めていくかということを、そろそろ論点を絞っていった方がいいのかなと。その意味では、第三者機関の性質、これは公的なものなのか、民の方で行うのか、そもそもそれでかなり違ってきますので、その骨子の部分を決めておく必要があるだろうと。
それから、構造については、今、二段構造という形で、里見先生から、議論はほぼ出尽くしているのではないかと。私もそう思っています。
それから、調査権限の問題に関しては、書類的なものは、個人情報保護法や民法の証拠保全、そういうもので全部できるだろう。そうすると、問題になるのは何かというと、現場に行って、現場で行われた方のヒアリングをする、そういう権限をどうするかという問題が出てくるだろうと思います。
あとは、行うべき内容の骨子、どういう調査を行うのか。例えば、今おっしゃったAiや解剖を必須にするのか。その後の細かな部分、誰がどういうところで聞くのかということはかなり実務的な部分になるので、この段階では、本来的に決めるべき骨子の部分を、どこを決めていくかということを考えながら議事を進めていかれる方がいいのではないかと思っています。
以上です。
○山本座長 ありがとうございます。議事進行についても有益な御示唆をいただきました。
山口構成員、最後に手短にお願いします。
○山口(徹)構成員 先ほどちょっとお話がありましたことですが、現在、モデル事業も協働型という形がありまして、その病院で解剖ができるときには、第三者がそこに立ち会う形で解剖に公正性を持たせて、依頼病院で解剖を行っています。だから、解剖ができれば、そういう形も含めて、何とかできるだけ御遺族が解剖を受け入れやすい体制をつくっていくことが重要な点だろうと思います。それは、地域ごとに解剖体制をつくらないと、いくら東京でできるからといって、東京まで御遺体を運ぶわけにはいかないわけですから、そういういろいろなバリエーションも含めた形で、解剖ができる体制をつくっていくことが重要だろうと思います。
もう一つは、この第三者機関なりに届け出るかどうかという話もありましたけれども、それも含めて、当面の検討の対象は、死亡事例が一つの大きな枠だと思いますが、解剖がなくても検討対象にするかどうかは大きな問題点だと思います。その向こうには、亡くなっていない方で、ぜひ検討してもらいたいという事例がたくさんあるわけですから。モデル事業では、現在、解剖がない事例は検討対象としていませんけれども、ぜひ新しい制度では、解剖がなくても少なくとも死亡事例で検討を要するような事例は対象に含めて、事業あるいは制度を始めていただきたいと思います。検討対象としてどこまで含めるかということで、つくるべき体制が異なると思いますから、よろしくお願いしたいと思います。
○山本座長 ありがとうございました。
まだ御発言の向きもあろうかと思いますが、本日は冒頭に申し上げたような事情もありますので、最後の議題に移りたいと思います。
最後は、「医療安全支援センターとの関係について」です。本日の趣旨としては、医療安全支援センター自体のお話というよりは、医療事故の調査の仕組みと自治体が設置する医療安全支援センターとの関係がどのようなものになるのか、どのようなものであるべきかということについて御議論いただきたいという趣旨でございます。
議論の前提として、医療安全支援センターの現状、現在の機能について御説明いただくことが有益だろうということで、この医療安全支援センター総合支援事業を実施されている東京大学大学院から、医療安全管理学講座の瀬川様にお越しいただいておりますので、医療安全支援センターの現状等について御説明をいただきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
○瀬川氏 御紹介、ありがとうございました。瀬川玲子と申します。
私は現在、厚生労働省の補助金事業である医療安全支援センター総合支援事業の事務局を担当している東京大学医療安全管理学講座におります。本日は、「医療安全支援センター総合支援事業の実施方針及び実施内容について」というテーマでお話しする機会を頂戴いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。
早速、内容に入ります。医療安全支援センターは、医療法第6条の11に基づき設置が進んでいます。初めに、医療安全支援センターの設置に至る背景を振り返ると、平成14年に公正労働省の医療安全対策検討会議が策定した医療安全推進総合対策の中で、国として取り組むべき課題の一つに、医療機関や地域における相談体制の整備を図っていくことが挙げられました。その具体的な方法として、医療機関や医療関係団体における相談業務を充実させることと並行して、二次医療圏ごとの公的な相談体制の整備や都道府県に医療安全相談センターを設置することが提案されました。翌平成15年には、医療安全支援センターの設置について通知があり、各地でセンターの設置が進みました。
さらに、別添1の医療安全支援センター運営要領にありますように、平成19年の第5次改正医療法において、医療安全支援センターは、都道府県及び保健所を設置する市または特別区を設置主体として、スライド2にありますように、医療法第6条の11に基づいて、患者からの医療に関する苦情・相談に対応するとともに、医療機関に対して必要な助言を行うこと。それから、医療機関及び地域住民に対して医療安全に関する必要な情報提供を行う。区域内の医療機関に対して、医療安全に関する研修を実施する。区域内における医療安全の確保のために必要な措置を講じる組織として、医療法上にも位置づけられました。
スライド3に移ります。医療法第6条の12の規定に基づき、先ほど別紙で御紹介しました医療安全支援センター運営要領の5ページの5に、「国による支援事業」という項目があります。その一環として、医療安全支援センター総合事業があります。これは、全国の医療安全支援センターを総合的に支援することを目的として厚生労働省による至る事業として、平成18年までは財団法人医療機能評価機構が受託していました。平成19年からは当講座が担当しています。
次のスライドに、医療安全支援センターの体制図が載っております。中央右寄りに患者・家族・国民がいて、医療に関して何か困ったことなどがあるときに、黄色い矢印で表記してあるように、相談をされると思います。その先は、医療機関や地域の医師会等の相談窓口であったりしますが、左にあります医療安全支援センターでもできるという形です。
支援センターは、さらに左にある国から情報提供や助言を受け、また、下のピンクの箱にあるように、医療安全支援センター総合事業が全国372か所の支援センターを支援する形になっています。
また、別添2でお配りしました、医療安全支援センター設置状況の表ですが、網かけになっている部分が都道府県と二次医療圏センター、それ以外が保健所設置市区センターです。●印は未設置の地域です。
次に、実際にセンターでどのような相談・苦情を患者・家族・国民から受けているのかという内訳を示したものが次のスライドです。これは、毎年、総合支援事業が医療安全支援センターを対象として行っている実態調査に基づいて集計したものです。全国で1年間に約9万件の相談・苦情があり、相談と苦情の数は半々です。さらに、苦情の中で多いものは「医療行為・医療内容」、2番目に「医療機関従事者の接遇」となっています。また、相談の中で多いものは、「健康や病気に関すること」です。
ここで1つ訂正があります。相談内訳の凡例の2番目の表記、「医療機関の紹介・内訳」となっていますが、正しくは「医療機関の紹介・案内」です。失礼しました。
戻りまして、相談・苦情の中で一番多かった健康や病気に関する相談について、次のスライドで事例を御紹介します。相談内容は、治療内容について聞きたいというものでした。そこで、センターでは、御自分で医療機関に聞きましょうという対応をとっています。こうした相談や苦情を行政が受けるということへの住民の期待は高いと思われます。それに応えるために、センターの職員には、人の話を聞くことの難しさ克服していくことや、問題をどう解決していったらよいかなどの知識の習得が重要で、そこのところの手助けに関してのニーズがあります。また、こうした住民から寄せられた医療の安全や質の向上にかかわる相談や苦情を、医療機関にセンターから情報提供したり、医療機関に向けて研修を行ってみたいというセンターの声もございます。また、国民の側にもセンターから働きかけたいというニーズもあります。住民啓発として、例えば、よりよい医療のかかり方、賢い患者になる、というような内容の市民啓発を行っていきたいというニーズがあります。
そこで、これらのニーズを踏まえて、次のスライドにありますように、総合支援事業の事業計画を立てて実行しています。1番と2番が研修会、3番がミーティング、4番は情報提供、5番は実態調査、6番は支援センターを支援する事業、この6本の柱をもとに支援事業を行っています。
次に、1番から6番までの詳しい御説明をします。
まず1番の研修事業です。初任者研修は、支援センター業務に初めて従事する方を主な対象として、相談を受ける際の基本的な姿勢、スキルなどを学ぶことを目的としています。研修の中身は、最も基本的、本質的なものですので、毎年同様の企画になっています。50名程度の研修ですので、実際に相談を受けて困ったことなどをほかのセンターの職員と共有できる機会にもなります。
次のスライドで、2-1の実践研修は、医療機関における医療安全・紛争対応の活動、医療安全支援センターに寄せられる相談に関係するほかの機関の活動などの知識ベースの研修となっています。この研修は医療機関からも参加可能な研修としています。
そして、2-2のブラッシュアップ研修ですが、昨年来の現場の要望を受けて、本年、新企画として立ち上げたものです。来月初めて行うこの研修では、相談員として経験を積んだ方を対象に、さらなる相談対応の質の向上を目指して、必要な知識の提供、相談支援の振り返り、実践スキル習得のためのロールプレイを行う予定です。
3番目はジョイントミーティングです。ジョイントミーティングは、センター職員の経験交流の場、各センターの取り組み発表の場、センターの相談員が抱える課題などの情報交換の場、センター職員と区域内の医療機関の安全管理者とのつながりをつくる場と位置づけております。毎年、年度の初めと終わりに開催しています。
4番目の事業は、情報発信・情報共有のインラフの整備です。ホームページによる情報提供で、対象を国民向けと医療安全支援センターの職員向けに発信しています。職員の方からの御要望をお聞きしながら、これらの情報の充実を図っているところでございます。
5番目の柱は、毎年行っております現状調査です。これはスライド5にあります円グラフのもとになる調査でございます。
6番目の柱は、医療安全支援センターを支援する事業です。これは、研修企画・運用サポートとして、センターの発案が行われる研修に私たちがさまざまな形でお手伝いするものです。例えば今年度は、ある保険設置市区のセンターが、医療機関の相談窓口との連携を図ろうという目的で勉強会を開いたのですが、その企画・運営をお手伝いしました。まだまだ御要望がありますので、センターのニーズに沿ってお手伝いに行く予定でございます。
最後にまとめますと、医療安全支援センターは、体制図にもありますように、国民から医療に関する相談や苦情を受け、それをしっかり聞き、助言などを行っています。また、医療機関などとの連携や情報提供を行うこと、国民と医療者の相互理解を促進することによって、医療の安全、質の向上に寄与しているものと思われます。
以上で御説明を終わります。御静聴、ありがとうございました。
○山本座長 ありがとうございます。簡潔に御説明をいただけたかと思います。
それでは、構成員の皆様から、医療安全支援センターと、我々が現在議論している事故調査の在り方の関係について、加藤構成員、どうぞ。
○加藤構成員 御説明、ありがとうございました。スライド番号で言うと5枚目になりますか、3ページの上のところに、平成22年度苦情・相談内訳がありますね。その中で、苦情の方ですが、医療行為・医療内容に対する苦情が37%となっています。この中で、死亡事例で苦情という件数が把握できているかどうかが第1点目です。
仮に、そういう死因究明に関連して、苦情めいたことが各都道府県の医療安全支援センターに行った場合、どういう対応をしているのかということを併せてお聞きしたいと思います。
3つ目が、それぞれの研修の中で、今、言ったような、具体的に診療に関連して思いがけず亡くなってしまって、それが苦情という形で医療安全支援センターに来たときには、どのようにスタッフが対応すべきと研修の中で教えているのか。
以上3点、御質問させていただきますので、よろしくお願いします。
○瀬川氏 まず1点目の医療行為・医療内容の中においての、死亡から苦情につながったものの件数については、恐らくこちらでは把握できていないかと思われます。数の取り方が、この項目でしか取っていないので、どんなものがこの中に入っているかということに関しては、現状ではわからない状態です。
そして、特別、こうした死亡事例に関してどのような対応をするかという研修はしていませんで、どのようにお話を聞くかということを主に研修では行っているので、死亡に特化したものは研修では行っていません。ですので、どういう対応をしているかということに関しても、申しわけないのですが、把握していません。済みません。
○加藤構成員 そうすると、今、検討会で何か参考にするという意味で言うと、医療行為・医療内容の中で苦情があったという統計の取り方でしかなくて、例えば、診療に関連した死亡事案での苦情だったとか、ある意味では、わりと深刻なものについては、これから、各医療安全支援センターの方から情報を今後取っていっていただいて集計していただくというようなことは、現実的には難しいのでしょうか。実は、そういうデータが欲しいと思いますが、いかがでしょうか。
○瀬川氏 私の方では何とも申し上げにくいのですが、今のところ、どのように集計を取っていくかということは検討中でして、中身に関しても、内訳をもっと詳しく聞くのかとか、そのあたりは、今、検討中です。
○山本座長 お答えいただける範囲で結構です。
どうぞ、山口構成員。
○山口(育)構成員 医療安全支援センターの初任者研修とブラッシュアップにかかわっていますので、現状をお伝えしようかと思います。
372の窓口ということですが、看護師さんや薬剤師さんなど医療従事者の方もいらっしゃるのですが、実は行政職の方も兼務で相談を受けておられます。二、三年で部署を変わられる中で相談を受けておられるということで、相談員になったことに対してとても不安を持っている方が多いです。今おっしゃっているような、相談内容の内訳を見ていただいておわかりのように、どちらかというと、わりと気軽に相談する内容が多くあります。深刻な問題になってきますと、行政としてどこまで言っていいのかということに非常に迷いがおありで、研修のときには、そういうときにもきちんと、例えば法的解決をするにはどのような流れがあるかというところまでお伝えしないと相談にならないのではないでしょうか、というようなことを私はお伝えに行っている立場です。
ですので、医療安全支援センターで困ってしまったときに、逆にCOMLに相談者を紹介してくださっています。また医療安全支援センターの体制によっては、複数の相談員がいらっしゃるところと、たった一人で対応していらっしゃるところがあり、加えて二、三年で職員の異動があるとなると、医療安全支援センターに求める内容が一律にはできないのが現状ではないかと思っています。
本年からブラッシュアップをしようということも、やはり相談を継続して行うにはステップアップが必要と企画されました。相談対応するにはある程度年数の積み重ねが必要ですが、そのために、より研修が必要となったのです。そういう意味では、分析とか、今回の死因の調査に何か御協力いただけるような部分は、私は余り見えないのかなと、正直、思っていました。
○山本座長 加藤構成員、どうぞ。
○加藤構成員 そうすると、むしろ、行政の方にお願いしなければいけないことかもしれませんが、医療安全支援センターのこうした全国的な取組の中で、例えば解剖したいけれども、医療機関では解剖したくないと。しかし、なぜ亡くなったのか知りたいという相談がどんなぐあいに出ているのか、あるいは、そういうときには、モデル事業を実施している10地域のところである医療安全支援センターでは、モデル事業についてきちんと説明してアドバイスしていただいているのか。そういうときに、医療機関が、モデル事業はもうしないというような苦情があったりするかもしれませんね。そうすると、今はモデル事業でも対応できないわけですけれども、そういう、ある程度ポイントを、統計を単に、医療行為・医療内容、苦情、そういうことで4万2,252件のうち37%という統計を取ってみたところで、それがこうした検討会のときの基礎的なデータとして活用し難いものになってしまっている。それはもったいない話だと思うので、ぜひ、これから前向きに、そうした事例があった場合は、全体の集計をするときには上げてくださいというフォーマットをつくって、それで把握するというようなことは、厚労省としても、むしろすべきではないか。基礎的なデータ集めという意味でね。そう思います。
その意味では、むしろ、室長の意見を聞いておいた方がいいかもしれないのですが、いかがでしょうか。
○山本座長 お願いします。
○宮本室長 医療安全支援センターの状況につきましては、今、御案内いただいたとおりですけれども、自治体にそれぞれ設置していただいて、その中で医療の苦情や相談を受けていただいております。機能は、かなり限定的な機能の中で、何とか地域の医療を充実させる方向で活動いただいているのが実情だろうと思いますし、もう少し細かい点を伺いますと、地域ごとにいろいろな体制をつくっていただいて、その向上を図っていただいていると理解しております。
例えば、11ページ目に、医療安全推進協議会というものをつくっていただくようにお願いしているわけですけれども、ここも、活動のぐあいは地域によってかなり差があると伺っています。かなり充実したところでは、相互に関係者の間で認識が深まって、少しお話をするだけでいろいろな問題が解決する方向に、その地域がだんだんとできつつあるようなところもあると伺っています。
ここの中では、そうした各地域が取り組んでいることを紹介させていただいたということですが、今後、もし新しい制度をつくるとすればどのような関係を持つのか、そうした点で少し御意見をいただければありがたいと思います。そういう趣旨で御紹介させていただきました。
調査の点は、現状は申し上げたとおりですが、何かしら関係が出てくる部分があれば、また考えていきたいと思います。
○加藤構成員 愛知県、名古屋市の、この医療安全支援の関係を担当者にお会いしてお話を聞いたこともありますが、スタッフの数や財政的な面などいろいろなことで、必ずしも十分なものではないと私は認識しています。
今、室長が指摘された11ページのところでは、医療安全に関する情報の提供ということが、11ページの(4)の?に出てきまして、「当該地域における医療の質の向上を図るため、医療安全の推進に資する情報を適切に情報提供する。」とあります。そのためには、まず情報をしっかりと具体的に集めていくことが必要だろうと思います。そういう意味で、もう少し踏み込んだ、厚労省としての医療安全支援センターの活動を通したさまざまな個別データの中で、かなり重要な、要するに、診療に関連して亡くなったということでの苦情が来ているものは、そうあるわけではないでしょうから、そういうものをピックアップするぐらいのこと、そしてまた、そういうケースについては、モデル事業が展開されているところではモデル事業につないでいくとか、そういうふうに有機的に施策を推進してもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
○山本座長 御要望として御意見を出していただいたということにしたいと思います。
ほかに。松月構成員。
○松月構成員 医療安全支援センターの特長は、患者さん・御遺族、市民の方から見ると、声をかけやすい点だと思います。例えば、病院では敷居が高く相談しにくかったことでも、身近な地域にあるため声をかけやすいということがあります。また、アクセスしやすいということもあります。
医療安全支援センターは、御遺族の方が、第一選択として相談できる窓口として、私は非常に有効ではないかと思います。
○山本座長 どうぞ。
○中澤構成員 私、このお話を伺って連想したのは、アメリカの患者権利擁護事務所のことを考えました。これは、政府がお金を出して民間施設で対応していますが、これは明確なミッションがあって、要するに、患者さんの権利が侵害されたという訴えが患者さんからあったときに、その患者さんの訴えが正当なものであるという前提に立って医療機関を調査する権限があるという形のものでした。何かそうしたミッションがはっきりすると、わかりやすくなるのかなと思いました。
○山本座長 ありがとうございました。
では、豊田構成員。
○豊田構成員 病院の立場で、医療安全支援センターから苦情を受けた経験があります。匿名の場合も、患者さんの何々さんから御連絡がありましたという場合もありますけれども、こういうことがあって病院に不満を持たれています、しっかり病院の方で対応してくださいという指摘を受けたことがあります。
内容を伺っていくと、話の内容はきちんと聞かれていると思います。ですので、仕組みをつくられれば、しっかりとしたデータを取ることは可能だと思います。ただ、その後、その病院がどう対応するかというところまでは追いかけていません。もちろん強制的に調べることもできませんから、病院がそのまま対応しないということもあり得ると思いますけれども、患者・家族・国民や医療機関がどういう支援を求めているのかをもう少し知っていただいて、連携すれば、いいものができてくるのではないかと、病院職員としても期待しています。
○山本座長 ありがとうございました。
有賀構成員。
○有賀構成員 もう時間がないので、付録の発言をします。
日本救急医学会で、こういうふうな基本的な仕組みをホームページに出した、そのときの、里見先生が言われた二段階目は、実はこれが登場します。だから、このことについて、私はそのころは直接は知りませんでしたけれども、場合によっては、二段階目としての機能としても使い得るということは、救急医学会の中では議論しました。
○山本座長 ありがとうございました。
それでは、最初にお話ししたような事情がありますので、本日の議事はこの程度にさせていただければと思います。大変活発な御議論をありがとうございました。
最初に政務官もおっしゃいましたように、次回で一回りといいますか、議論が一巡することになりますので、次回以降、どういう形で取りまとめに向けての議論をしていくかということが問題になろうかと思いますが、とりあえず次回につきましては、残された検討事項について、本日と同じような形で御議論いただくことになろうかと思います。
それでは、今後の予定等について、事務局からお願いします。
○川嵜室長補佐 次回の検討部会の日程は、調整の上、後日、連絡させていただきます。よろしくお願いします。
それから、机上の資料はお持ち帰りいただいて結構ですけれども、青のファイルについては残していただきたいと思います。よろしくお願いします。
○山本座長 ありがとうございました。
それでは、本日はこれで閉会したいと思います。長時間にわたる御議論、ありがとうございました。
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室 長 宮本: | 内線2570 |
室長補佐 川嵜: | 内線4105 |
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