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2012年10月11日 第22回ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会 議事録

医政局

○日時

平成24年10月11日(木)17:00~18:50


○場所

厚生労働省(6階)共用第8会議室


○出席者

永井委員長、位田委員、斎藤委員、佐多委員、佐藤(陽)委員、澤委員、鹿野委員、須田委員、直江委員、中畑委員、早川委員、町野委員、松山委員、武藤委員
荒木室長、原専門官

○議題

1)幹細胞に係る医学・生物学的安全性に関するまとめについて
2)その他

○議事

○荒木室長 定刻を少し過ぎましたが、第22回「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会」を開会いたします。先生方にはお忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。
 本日は、日本難病・疾病団体連絡協議会代表の伊藤たてお委員、(独)国立精神・神経医療研究センター神経研究所長の?坂新一委員、東京学芸大学教育学部准教授の佐藤雄一郎委員、(独)理化学研究所発生・再生科学総合研究センター副センター長の西川伸一委員、読売新聞社編集局社会保障部記者の本田麻由美委員、東京医科歯科大学医学部附属病院細胞治療センター長の森尾友宏委員からご欠席の連絡をいただいております。現行で20名の委員のうち、遅刻の先生方もおられますが、含めますと14名の委員にご出席いただくことになりますので、本会議については成立していることを申し上げます。
 報道の皆様におかれましては、頭撮りはここまでとさせていただきたいと思います。ここから永井委員長に司会をお願いしたいと思います。
○永井委員長 山中伸弥先生がノーベル賞を受賞されたということで、iPS細胞をめぐるいろいろな話がこれから出てくると思いますので、よろしくご審議をお願いしたいと思います。それでは最初に、事務局から資料の説明をお願いいたします。
○荒木室長 それでは、お手元にお配りいたしました資料をご覧ください。議事次第、座席表、委員名簿です。それに続けて資料です。今回のテーマは「幹細胞に係る医学・生物学的安全性に関するまとめ」で、資料1は「ヒト幹細胞樹立(調製)の各行程における品質管理の比較(案)」、資料2は「指針本文の対応イメージ表(第3、4章関連)(案)」、資料3は「前回までの専門委員会における主な意見」です。
 参考資料1~17を紙ファイルで配付しております。参考資料については、委員会終了後、机上に置いたままでお持ち帰りにならないようお願いいたします。以上です。過不足、落丁等がありましたら、事務局までお申し付けください。
○永井委員長 では、議事に入ります。最初に、事務局から「幹細胞に係る医学・生物学的安全性に関するまとめ」についてのご説明をお願いします。
○荒木室長 それでは、資料1、資料2に基づいて、少しお時間を取って説明させていただきます。今回は第22回目ということで、直前の第19回、20回、21回については、ES細胞、iPS細胞、体性幹細胞に係る医学・生物学的安全性について、それぞれ有識者、参考人ということでご議論をいただきました。
 それに基づいて本委員会においても意見をいただきました。それが資料3の「前回までの専門委員会における主な意見」ということで、第19回分が、平成24年6月26日に開催したES細胞について、2頁が第20回のヒトiPS細胞に係る医学・生物学的安全性について、資料4が前回のヒト体性幹細胞に係る医学・生物学的安全性についてということで、それぞれに参考人のご意見、それに対する委員の質疑、ご意見ということでまとめさせていただきました。
 資料3についても説明したいと思っていたのですが、資料1にすべて意見は落とし込んだ形で各行程ごとに、そしてES細胞、iPS細胞、体性幹細胞それぞれについての特徴もありますので、それをまとめた表が資料1です。大きく資料1で説明させていただきたいと思います。
 いちぱん左の端のカラムが各行程ということで、便宜的にこちらで書かせていだきました。まず採卵・凍結・保管という行程。次が提供者へのインフォームド・コンセント(提供者の個人情報の保護等も含む)ということですが、それが1頁です。
 それに続く右のカラムに、ヒトES細胞、ヒトiPS細胞、ヒト体性幹細胞、それに考慮すべき点ということで、3つの細胞の種類に共通のもの、あるいは共通ではなくて、特にここについては注意すべきというところを書き込んだものです。それでは、順を追って説明させていただきます。
 まず「採卵・凍結・保管」という段階について、基本的に問題となるのは、ヒトES細胞です。こちらはあらかじめ生殖補助医療としてヒト受精胚が作成され、その後、余剰胚として廃棄される意志がしっかり決定された後に樹立されるというものです。意見としては、受精胚を作成して、ES細胞の樹立までに約2年間を要するが、廃棄の決定を受けてからドナー・スクリーニングを実施しても、一定の安全性の担保は可能ではないのか、というご意見がありました。
 次は、「提供者へのインフォームド・コンセント」というカラムです。ES細胞については、余剰胚をヒトES細胞の樹立の用に供する旨について、同意の取得が重要だということです。意見としては、連結可能匿名化を基本として議論すべき、というご意見や、遺伝子解析結果までも提供者に開示することとするか、というご意見もいただいています。
 ヒトiPS細胞についは、倫理的に適切なドナーの選択・手続が重要である。意見としても、体細胞の使用方法について、予想可能な範囲で十分な説明をすべきと。これはいちばん右端の考慮すべき点と同様になりますが、特に、商業利用についても同意を取得しておかないと、再生医療への応用はできないのではないか、というご意見もいただきました。ここは若干矛盾するというか対立するご意見も当然あります。段階的なインフォームド・コンセントの取得は、提供者との面会の機会確保の点から実際上不可ではないか。あるいは、研究医への協力が強要されないかといった問題点も考えられる。研究の進展を常時しっかりとオープンにしていくことで、そのような問題は回避が可能ではないか、というご意見。臍帯血等、提供された体細胞をバンキングする際は、HLA等の情報を取得後は提供者への連結不可能、匿名化の上で保存したほうがよいのではないか、というご意見もあります。2頁目で、特に神経への分化は駄目という条件つきの同意の取得も可能ではないのか。最終製品の段階での安全情報が被験者にすべて提供できるような方式が良いのではないか、ということをこのカラムに入れております。
 ヒト体性幹細胞については、現行指針に基づいて、しっかりドナーの選択・手続きというので、原則、現行指針の適用を受けるものと考えられる、ということをいただいています。
 考慮すべき点ですが、商業利用の可能性まで含めた内容とするかどうか。条件つきでの同意取得を可能とするかどうかがポイントとなるのかと思っています。
 2頁は、「ドナー・スクリーニング」のカラムです。いちばん左端はES細胞ですが、ES細胞、iPS細胞、体性幹細胞は、ほぼ共通に、まず、ウイルス否定検査、悪性腫瘍等の既往歴を問診により否定すること。そして、ES細胞、iPS細胞については、必要に応じて遺伝子解析をすることが必要ではないかということです。具体的な意見としては、ES細胞について、使用に近い段階でのデータも総合的に勘案して評価するため、ESを樹立する前段階としてのドナー・スクリーニング段階ですべての安全性確認が必要ではないというご意見や、ドナー・スクリーニングで検査困難なウイルスを省略し、バンク化の段階での検査項目を追加する方法が良いのではないか。あるいはリストや検出方法を作成して対応すべきというご意見。受精胚は提供者本人の細胞ではないので、遺伝性疾患のリスクが直接的なものとしては比較的軽くなる。仮に提供者情報の追跡がなくても検査による回避は可能ではないのか、というご意見もありました。
 これは先ほどと一緒ですが、受精胚を作成してから樹立までに約2年間を要するということですので、逆にその間の提供者の情報が必要ではないのか。逆にブランクがあることで、受精胚由来の急性疾患系については回避は可能であろう。提供者が罹患した未知ウイルス等が、受精胚に感染することは理論上なかなか考えにくいのではないか、というご意見もあります。ウイルスのゲノムまで含めた実験を情報評価することは必要ではないのか。ES細胞についてはかなり多くの意見をいただいております。
 iPS細胞ですが、意見として、指針には、作成時点で最も考えられるドナーの適格性に関する最低限の基準、確実に除外すべき項目を含めて明記すべきではないのか、というご意見をいただきました。
 体性幹細胞については、ヤモト先生のプレゼンの中で、HTLV-1とかHIVとか、ヒトパルボ、あるいはHBV、HCV、梅毒及びマイコプラズマは必須項目ではないのかということを言われました。ドナー・スクリーニングの内容は、現行指針にも既に定めがありますので、詳細を細則等で落とし込むという方法もあるのではないかということでした。
 3頁の「採取」のカラムです。ES細胞については、採取というのは最初の排卵・凍結・保管ということで、樹立の前段階ですので、そこは割愛して、iPS細胞、体性幹細胞についてはドナーに関する記録情報をしっかり管理すべき、というご意見をいただいています。
 「提供機関からの移送」です。こちらについてもそのときに意見をいただいたものだけ書いてありますが、すべて共通するものもあるかもしれませんが、iPS細胞のところでは、クロスコンタミネーションの防止に配慮した方法を定めるべきということがありました。
 体性幹細胞では、少し細かい話ですが、細胞の保存は、-150℃のディープフリーザーでも可能ではないのか、あるいは細胞の運搬は-79℃のドライアイスでも可能ではないかということがありました。
 備考として、ヒトES細胞は、これまで余剰胚が連結不可能で樹立機関に移送されている、というご指摘もいただいております。
 「樹立(調製)」の段階です。ES細胞については、感染因子ということで血清等の生物由来物質の混入を制御すること。造腫瘍性は最終製品について動物実験等により試験する、ということがポイントではないかということです。意見としては、クロスコンタミネーションのリスク回避のために、施設で物理的隔離を行うべきかどうか。複数の細胞株の取扱いがなければ、手順書で回避できるのではないのか、というご意見。目下、樹立可能な細胞株は数株~10株であろうと想定した場合、適合性への配慮は事例の蓄積により軽減されるのではないか、というご意見もありました。あとは、研究者自身からの感染ですが、これは手順書をしっかりすることによって回避可能ではないかというご意見でした。
 iPS細胞については、受入検査の際の血清等の生物由来物質の一部保管あるいは細菌・ウイルス等の不活化が重要である。樹立に使用する細胞の同定と樹立・培養方法に関する詳細の記録。取違え・クロスコンタミネーションの防止策。各調製段階における設備環境。調製の各段階における検体・手順書の作成。記録の保管。この辺の項目は重要であるということです。
 意見としては、インテグレーションフリーである導入遺伝子がiPS細胞のゲノムに残らないようなもの。そのための配慮については、個別の方法について基準を設けるのは困難ということなので、樹立方法等の情報を残すことも重要ではないか。最新の知見により明らかな造腫瘍性を認めるというもの以外の方法については、除外規定が必要ではないか。造腫瘍性自体は、最終製品について免疫不全動物で確認すべき。未分化iPS細胞についても造腫瘍性を確認すべきかどうかという問題点は残るであろう。樹立・分配に関して、治療を視野に入れた具体的なストック量やロット数を示した上での議論が重要ではないか、というご意見をいただいています。
 体性幹細胞についても、重要ポイントとしては大体iPS細胞と一緒で、受入検査、あるいは樹立・培養方法に関する詳細な記録は必要であろうということ。個別な意見としては、クロスコンタミネーションのリスク回避については、申請者がしっかりその方針並びに対策等を研究結果に明示することで担保が可能ではないか。4頁で、ウシ胎児血清(FBS)については、海外での使用実績にも鑑みると、使用をなかなか排除するものではないのですが、狂牛病(BSE)を回避する目的上、トレーサビリティの確保は必要であろう。さらに、前回ですので記憶に新しいところだと思いますが、体性幹細胞自体は造腫瘍性がほとんどないことが確認されており、調製段階での造腫瘍性試験は不要ではないか、というご意見もありました。免疫不全動物による造腫瘍試験については、これも細胞特異性とか、どこに移植をするかによっても個別判断されるべきではないか。あるいは大型の免疫不全動物は、安全性評価のための有用性は低いのではないか、といったさまざまなご意見をいただいております。これが樹立(調製)過程のところまでです。
 次は「品質管理」です。品質管理の部門、特にES細胞及びiPS細胞についてはバンク化の段階を含むというように、そこを一緒にしております。ES細胞については、バンク化が前提になり、バンク化の時点での品質検査が必要であろうということで、検査の仕方、品質管理の仕方として、ロット単位での品質管理だったり、ロットを構成しない場合は、別途品質基準を設定するとか、細胞生存率あるいは無菌試験、エンドトキシンといったものは、あとで指針の対照表を参考までにイメージとして出しますが、大体書かれているものも多いが重要だということになっています。
 具体的意見ですが、バンクでさまざまな試験を行うことを前提に、原材料のすべての安全性確認は不要ではないのか。仮に患者情報がなくても、バンクのレベルでの安全性の担保が可能というご意見。あるいはドナー・スクリーニングで検査困難なウイルスを省略し、バンクでの検査項目を追加する方法もある。分化指向性の情報も必要かもしれないが、それが安全性の担保に直結するものではないのではないか。ウイルス否定試験については、必要に応じて、罹患頻度の高いウイルスの追加検査という余地も残すべきではないか、というご意見がES細胞についてはありました。
 iPS細胞についても、ロット単位の品質管理等についてはほぼ共通で、ご意見としては、iPS細胞としての安定性、純度、ウイルス・不純物混入の有無が必要最低限の規格になるのではないか。そして、iPS細胞の特性もあって、ロット内のみならずロット間の同質性、均質性も重要ではないか、というご意見がありました。
 体性幹細胞についても大体現行指針に書いてあるような管理項目が書かれています。意見としては、先ほどの-150℃、-79℃の保存の部分の意見と、アレルギーのリスクを低下させる試験・評価が重要ではないか、というご意見を追加でいただいております。
 「樹立機関から使用機関への分配(移送)」です。このバンク化の時点で品質評価をするので、出荷に当たり検疫等は不要というご意見。その間に温度管理の措置は当然講ずるし、出荷・受取についてはしっかりミスがないように確認方法を明示する、あるいは感染等を避けるために、培養細胞の輸送容器はしっかりと同等以上ということで、一定程度のレベルの高いものが必要であろう、というご意見がES細胞です。
 iPS細胞についても方法をしっかり明記してください。それは凍結試薬・手順で、調製されたiPS細胞の分配についての手順書もしっかり作るべきだろう。あるいはロット内の分配に当たっては当然保管をする一定数が必要だというご意見でした。
 体性幹細胞についても、ほとんど先ほどのカラムと同じようなご意見を載せております。
 5頁の「使用」です。被験者へのインフォームド・コンセントも含むということですが、ES細胞については、保存・運搬後に再培養を行った際の細胞の特性に関する検討。これはiPS細胞も共通です。
 ES細胞のご意見ですが、仮に提供者情報がないとした場合、感染等のリスクを数値で示すことが必要ではないかというご意見がありました。QOLが非常に悪い難治性疾患などでのリスクを含めた容認については、倫理審査委員会の立場、現行でも施設、機関等における倫理審査委員会にしっかり審査をしていただいているところですが、ES細胞についてはまだ使用していないということです。それについては、QOLが悪い難治性疾患等でのリスクを含めた容認も含めて、審査委員会での審査が重要になろう。被験者から第三者への感染のリスクの可能性は現段階では不明である。感染リスクを含めたES細胞の製品情報の開示の方向が適切であろうということです。
 iPS細胞についての意見ですが、特に造腫瘍性について、想定外のリスクが起こり得ることをインフォームド・コンセントの中でしっかり被験者に説明をすること。最終産物に対する現時点で施行可能な造腫瘍性の評価に加えて、それでもなお将来起こり得る腫瘍化リスクの評価等については、指針にどう盛り込むか方法はあると思いますが、それが重要ではないか。iPS細胞の自家移植に関しては、現行指針でも対応可能とは思われるが、特化した規定を新たに設ける必要があるのかどうかは意見としていただいております。トレーサビリティ確保の観点ということで、試験結果・判定結果という結果だけではなく、そのプロセスとしての解析方法の詳細、生データ、サンプル自体の保管も、将来的に系統的に行っておくことが必要ではないか。運搬の距離、継代数を実際よりも大きく設定した条件下で、特性解析、コールドランのようなものをして、基準を設定することも今後は必要になるだろう、というご意見をいただいております。
 最後、体性幹細胞です。これも若干似ている部分があります。想定外のリスクが起こることについて、また対応については、しっかり説明及び情報共有が必要だろう。例えばヨーロッパのEMA(欧州医薬品庁)等の例に倣って、リスクマネジメントプランの提出も併せて必要ではないか。静注のような簡便な手法で可能となる全身投与については、見過ごされがちだが、本来はより慎重な配慮がなされるべきというご意見をいただきました。リスクの層別化で、高リスクか低リスクかを説明して、医師でも不明な部分が多いことをしっかり患者さんにも理解していただく必要があるのではないか。実際にインフォームド・コンセントの患者に取得するという観点では、専門施設において、専門医によるインフォームド・コンセントの実施が望ましい。同意文書の作成については、患者団体の意見を参考にすべき。被験者が研究に参画する形での説明文書の作成の姿勢が良いのではないか。ヒトの体内での造腫瘍性を獲得するリスクについては、細胞特性や移植部位に応じた検討をすべき。被験者モニタリングも必要ですし、市販後調査も必要。自家移植の場合の造腫瘍性に関する臨床的評価法はなかなか定まったものがなく、不明であるというご意見です。
 それぞれの3回のご意見をここに落とし込んだということでの説明は以上です。それぞれで共通の部分や足りない部分は当然あると思いますが、これが一定程度のたたき台となります。これが資料1です。
 資料2は、資料1のご意見を現行の指針を基に、必要なものを追加して入れるというイメージとして作ったものです。「指針本文の対応イメージ表」ということで、特に今回の医学・生物学的安全性に絡めると、第3章、第4章が中心に絡んできますので、そこをイメージとして入れました。
 1頁のいちばん左のカラムの作業工程は資料1と合わせておりますが、「採卵・凍結・保管」という作業工程においては、用語の定義として入れる。例えば用語の定義は第1章第2にありますが、ヒト受精胚を追加し、「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律に規定するヒト受精胚をいう」ということで、具体的に第6号でどう規定されるかというと、「ヒトの精子とヒトの未受精卵との受精により生ずる胚をいう」ということになっています。例えば、こういうものを入れ込めばES細胞についての定義も1つ追加になるのではないかということで入れたらどうかというイメージを示させていただきました。
 次は、提供者への「インフォームド・コンセント」の段階です。いまの指針をもし変えるとしたイメージは左側になりますが下線を引いてあります。インフォームド・コンセントの部分については「ヒト幹細胞又はヒト分化細胞の採取を行うに当たって」という2の(1)は現行の指針と一緒ですが、(2)のES細胞の樹立の用に供せられるヒト受精胚の提供を受けるに当たっては、説明者あるいは第一種提供医療機関は、提供者から3の(2)の規定に基づきヒト受精胚の提供者のインフォームド・コンセントを受けるものとするということで、ES細胞を仮に臨床研究として使うのであれば、このような形での入れ方になるのではないかということで、イメージを示しています。
 2頁目も追加した所を下線にしています。いちばん下ですが、(2)説明者は2(2)、すなわちヒト体性幹細胞の樹立により供されるヒト受精胚の提供の際のインフォームド・コンセントの取り方として、2の(1)の?????に規定する事項と、さらに追加して、ヒト受精胚が樹立過程で滅失されることその他提供されるヒト受精胚の取扱いについて。?ヒト受精胚及びES細胞について遺伝子の解析が行われる可能性があること等をしっかりと説明してください、ということを入れてみております。
 それ以外については、3頁については、いまの指針とあまり変えるところはないのかなということで書いております。
 4頁が「ドナー・スクリーニング」の段階になります。こちらについても現行指針でいろいろとしっかり細則も含めて書かれております。これまで3回議論をいただいた意見の中で、事務局として何を追加するかということになると、意見をそのまま取り入れると、5頁で、「研究者等は、次に掲げるものについては、既往歴の確認、診察、検査等に基づく診断を行うとともに、輸血又は移植医療を受けた経験の有無等から提供者としての適格性を判断しなければならない」ということで、次に掲げるものに梅毒、敗血症などがありますが、それに加えて「上記を含む重篤な遺伝性疾患」を入れたらどうかというイメージが5頁にあります。それがドナー・スクリーニングの段階です。
 「採取」の段階ですが、採取の段階についても、ほぼ記録をしっかりするとか、採取作業の適切な確保については、現行の指針である程度網羅されているのかなということで、6頁に移りますが、一応追加は入れておりません。
 次が6頁で、「提供機関からの移送及び樹立(調製)」です。ここについては、いただいた意見を抜き書いたもので、特に反映をさせているものはありません。書いているように、まず、感染因子の混入を制御、造腫瘍性は最終製品について動物実験等による試験、受入検査、血清等生物由来物質の一部保管、細菌・ウイルス等の不活化、特定細胞の同定、樹立・培養方法の詳細、クロスコンタミの防止策、このようにポイントとして箇条書したものについては、しっかり網羅できるような形でしなければいけないと思っています。
 そういう意味では、一定程度、いまの指針でもほぼ網羅している部分があるのかと思いましたが、特に配送の部分、受入れの際、提供機関から移送の際にクロスコンタミの防止は十分配慮しなければいけないというご意見もありましたので、そこを明確化するためにこれを入れてはどうかという案が8頁の上のほうになります。
 8頁の下はいちばん重要な「品質管理」だと思っています。ここは、ES細胞及びiPS細胞についてはバンク化の段階を含むということで、これも色を付けている部分が、先ほどの意見をこちらに引き移したものです。特にバンク化の時点での品質検査項目として必要なのは、※を入れております。すなわちロットを構成しない場合の別途の品質基準の設定なり、細胞生存率なり、生理活性物質の検査項目なり、遺伝子解析ということです。これは反映を全部し切れていないということをご承知いただきつつ、あえて入れるとすると、9頁の下にあるように、造腫瘍性の試験というところは、現行の試験というか、品質特性の把握の部分では入っていませんので、「造腫瘍性の試験」という1項目を入れるのかなということで入れております。
 10頁についても、基本的に大きく変える所は、いただいたご意見の中で、既に指針で盛り込まれている部分もあるのかということで、追加は書いておりません。
 11頁で「樹立機関から使用機関への分配」です。これも先ほどのご意見をまとめたものを色を付けて入れておりますが、バンク化する場合の段階の品質評価や温度管理の措置などが書かれており、ここは現行指針が非常に不十分なところですので、事務局として案をまだ出しておりませんが、さらに入れ込む必要があるのかなというところで、バンク化の部分はここのカラムに入れています。
 12頁で「使用」という段階です。使用については、現行指針では第5章の第2で、ヒト幹細胞等に関する情報管理で、提供者のスクリーニングあるいはロット番号その他のヒト幹細胞に関する情報の管理とともに、細則でしっかり検査を実施してください、ということになっています。ここの使用の部分について、案が浮かばなかったというか、ここも議論していただきたいと思ったのは、ご意見として、保存・運搬の後に再培養を行った際の細胞の特性に関する検討をしっかり行って、それを基に実際に使用していくという話もありました。そういうことで(2)に書いてあるコールドランをして基準の設定が必要ではないかというご意見もいただきましたので、それを使用のこの部分にどのように反映するかを、少しご議論いただければと思っています。
 以上、非常に説明は長かったのですが、実はご議論を円滑にするために具体的なイメージがあったほうがよいと思って、資料2で、現行指針との対照表とあえて入れるのならここだということで事務局案として出させていただきましたが、これでは全然不十分ですし、重複があれば、またご議論いただければと思います。
○永井委員長 ありがとうございました。それでは、これから1時間少々、ご自由に、ご意見、ご質問等をいただきたいと思います。どなたからでも、どうぞお願いします。
○佐藤(陽)委員 事務局のほうでいろいろと入れ込んでいただいて非常にありがたいとは思っているのですが、全体的な話として、原材料が違ういろいろなものについて入れ込んでいただいて、全部入るようにとやっていただくと、逆に、開発者あるいは審査を行う側のほうで、どこを見たらいいかというのがわからなくなりかねないというところがありますので、できるだけ、ESの原材料だった場合にはこの辺を見よう、というような形の整理ができればと思います。それはどういう仕組みかというのは、いろいろあるとは思うのですが、いろいろ入れ込んでいくと、だんだん全体が複雑になってきてしまって、開発する大学の先生方などが、どこを見たらいいのかがわからなくなってしまうということがあり得るので、そういったところにも注意していかなければいけないかなと思います。
○永井委員長 いまの意見、いかがでしょうか。
○須田委員 いまのご指摘、ごもっともです。例えば資料1ではかなり細かい意見も出ていますが、資料2の最終的なヒト幹細胞指針になってくると、そんなに細かいことを書く必要もないということで、資料1がそのまま資料2には反映されてきません。それでよろしいのでしょうか。それとも、幹細胞指針を出したときに、付帯事項としてかなり資料1のようなことを書いていくという体裁もあるのでしょうか。
○荒木室長 ここは作戦のテクニック的なところでして、先生がいまご指摘のように、資料1の意見をほぼ反映する形で条文上に落とし込むという方法と、すでにありましたが、細則という形で落とすという方法があると思います。重要なものはやはり指針の中に書いておくべきだと思っていますが、そこも含めて不十分だと思いますので、是非ご意見をいただければと思います。
○松山委員 審査で、プラクティカルな部分は、例えばQAのような形で、審査をすぐにしたがって、ここは見なくてよかったということが必ず出てくるはずなのです。よく「過不足」と言いますが、不足は指摘されるのですが過の部分はあまり指摘されないので、この部分は、次に追ってくる人たちのために、ここはやって余計でしたということを示していくということも必要なのかもしれない。そう考えると、QAで柔軟に対応していただければ非常にありがたいと思います。
○斎藤委員 皆様と大体同じ意見なのですが、基本的な考え方として、レシピエントといいますか、患者さんの重篤度によって指針をかなりフレックスに考えないといけないと思っています。ミニマムでいいとは言いませんが、最終的にES細胞の最終製品を臨床応用する際に、もちろん製品としての情報をすべて開示する必要はありますが、あまり細かく規定しても、その辺で不都合が生じてくると思います。例えばゲノムの解析をしたほうがいいとなっていますが、ゲノムの解析といっても、簡単にできる遺伝子発現の解析から、全ゲノムのシーケンスまでありますので、その辺も、実際に指針に本当に盛り込むのかどうかということは、難しい問題があると思います。ですので、最終的に患者さんのために作っているわけですから、それを前提として考えていただければと思います。
○松山委員 ゲノムの部分は、品質に直接かかわる部分と、クロスコンタミ等のトレーサビリティの問題とがあります。STRのようなものは、例えばES細胞、iPS細胞の場合はやっておいてもいいだろうと。ただ、一方で、例えばこんなポイントミューテーションを見なさい、ということを羅列していくというのはほとんど無意味なので、その部分はもう少しざっくりした形でもいいのかもしれない。その部分は、例えばES細胞とかiPS細胞のバンクあるいはストックを作るときに、それなりに自主性に任せてもいいのかなと思います。
○位田委員 バンク化という言葉が出てくるのですが、バンクと言ったときに、みんな同じことを定義されてお使いでしょうか。バンクという言葉は今いろいろなところで使われていて、自分のところのラボで保管するだけのバンクもあれば、もう少しパブリックなバンクもあるので、その辺の定義をきちんとしておかないといけないのではないかと思うのです。他方で、バンクを定義するよりも、その中で細胞をどう扱うかということを、ポイントポイントを絞って規定すればそれで済むのだという考え方もありますので、どちらがいいのかよくわかりませんが、バンク化という言葉がこの中に入ってきた。前の指針にはありませんでしたから、その辺りはどう整理するのかなと思っています。
○佐藤(陽)委員 昨年12月にお話させていただいたのですが、最終的にヒトに投与するものを作るという意味では、生物製剤を製造するときの原材料としてのバンクというような意味を、ここに記しておいたほうがいいと思うのです。そうしないと、アカデミアの先生方が使う指針ですから、ATCCや理研のバイオリソースセンターのバンクというイメージとオーバーラップして誤解を生む可能性があります。やはりその辺はここに明記しておく必要があると思います。
○中畑委員 ただ、いままでの体細胞を使った場合は、1つの提供者からのサンプルというのはかなり限定されたヒトにしか投与されないということですが、今回のES細胞とかiPS細胞というのは、一応この委員会で作った指針に基づいた細胞であっても、不特定多数の方に投与されるということでは、やはりかなり厳密な形にしておかないと、そこに齟齬が生じてしまうと、将来非常に大きな問題になると思いますので、そこは、ES細胞とかiPS細胞については、ここの委員会で作る指針に基づいて作ったものも、PMDAを通じて臨床治験として使われるものとほとんど同質であるという形にしておかないと、そこに非常に大きな問題が起きる。治験と臨床研究で全然違う質の細胞を使って日本で医療が行われるということになると、大問題になりますので、そこは必ず統一すべきではないかと私は思います。
○鹿野委員 いま中畑先生がご指摘になった治験に移行する可能性というのは、想定しておく必要はあるかと思うのですが、必ずしもすべてのケースがそこを目指すものではない可能性もあるのかなと思います。ですから、そこは書分けをしておかないといけない部分もあるのだろうと思っています。資料を見て思ったのですが、例えばインフォームド・コンセントの商業利用の可能性なども含めて、商業開発につながるケースと、そうでないケースを、何箇所かでそれを書き分けておく必要があるのかもしれないと思っています。品質管理で最低限のレベルを担保する部分については共通するとは思うのですが、臨床研究でとりあえずの当たりを見たいとお考えの先生もいらっしゃると思うので、その辺はちょっと整理が必要ではないかと思います。
○直江委員 事務局に確認なのですが、以前の議論で、文科省ガイドラインとこの指針が2つできることの議論とか、これをES細胞も含めて一本化するのかとか、分けたほうがいいという話も途中にあったように思うのですが、現在は、臨床応用を目指すものは幹細胞の指針として一本化した指針にする、という方向でよろしいのでしょうか。
○荒木室長 その辺りについては、議論の結論が、これまでの中間まとめの段階では出ていなかったのかなと思います。今回も、あくまでもイメージとして一本化したということを想定した際には、ここの部分でES細胞は特別なので章を立てますねとか、先ほどご意見がありましたように、品質管理の部分でもES細胞あるいはiPS細胞を個別に、特別に必要なところは章立てをしていくということは考えられると思いますので、まずはそちらのイメージで、いま議論を進めるためにさせていただいています。特に、医学・生物学的安全性というところで、これはかなりロジカルに作り立てていけばわかりやすくなるのかなと思いますので、とりあえず別にせずに、一本化したイメージで作っています。最終段階で総論を話すときに、やはり1つでは見づらいとか、逆に1つのほうがいいとか、両方のご意見があると思いますので、いまの段階では議論に資するために一本化したバージョンで作っています。
○直江委員 あとは、いまもご意見が出ましたが、非常に細かいところと、もう少し重要な、これからの議論かもしれませんが、施設の問題や倫理委員会等のことというのが総論としては出てくるべきだろうという気がするのです。一方、例えばコンタミの検査はこれもやるという、非常に具体的なウイルスの個別の名前も出ていますので、まだこれからだと思いますが、細かいところは細則など下に落とし込んでいって、もう少し全体的な、アウトライン的なものが必要なのかなと思いました。
○荒木室長 非常に貴重なご指摘だと思います。現行の指針でも若干でこぼこがあるといいますか、非常に詳しいところもあるので、そこをどうするかということは、そこでも議論していただきたいと思っています。
○位田委員 資料1と資料2を見合わせながら聞いていたのですが、資料1のiPS細胞で、商業利用についての同意書というご発言がありました。同意はもちろん要るのですが、商業利用になると、これはヒトの細胞ですから、細胞の売買をどうするかという問題をまず片付けないと、同意云々には入れません。そこをご留意いただければと思います。
○町野委員 ちょっと誤解したかもしれませんが、商業利用と書いてあるのは、企業などが製品にしたり、売買まで想定された上での書き方なのでしょうか。
○荒木室長 議論の流れの中で、どういうご議論だったかということによると思いますが、例えばiPS細胞などは1対多で使う可能性がある。その際に、自分の皮膚から取ったiPS細胞をどんどん増殖させて、それを企業として製品化して売るというほうだと思いますので、最初に取る段階でお金を払って売買するというイメージよりも、それが将来的に、というようなイメージではなかったかと思われます。いかがでしょうか。
○松山委員 おそらく、所有権の問題がファジーで浮いているというのは本当のところだと思います。例えば私から血液を取ったり、私から皮膚を取ったりしたら、これはもうブツとして存在しているわけですから、これは所有権とか物権を認めないというのは現実的にあり得ないだろうと思います。そう考えたときに、実質的にそこに付加価値を付けることによって製品になっているというのは、もう致し方ないのかなというところがある。ここはもしかしたら位田先生はお考えが違うのかもしれないのですが、もしよろしければご意見をいただければと思います。
○位田委員 iPS細胞はどなたかの体細胞から作られていますし、しかも、iPS細胞で持っている遺伝情報は全部その人のものですから、それがそのまま動くと。そのときに、物だから付加価値を付けたものと考えるのか。いまのところ、少なくとも日本では通常の細胞の売買というやり方は認められていないので、アメリカなどから買い入れてもいいという話もありますが、そこのところをきちんと決めておかないと、iPS細胞だったら売ってもいいのか。それも細胞の一種ではないか。細胞の売り買いというのはどこまでやっていいのかということです。もちろん自家移植をやっている分には全く問題ないのですが、製品として細胞を考えるのか、製品は製品だけれども、でもそれは細胞だと考えるのか、そこの考え方をきちんとしておかないといけない。iPS細胞だったらいいのだけれども、ほかの細胞の売買はなぜ駄目なのかという問題にもなります。そこの理由と、どこで線を引くかということは、きちんと決めておかないといけないと思っています。
○松山委員 その部分は、駄目だという法律はたぶんないのだろうと思います。ただ、そこのところは倫理的にどうなのかという、もやもやとした気持悪さがあるので、現実的には、例えばNPOを介したりして、物としての所有権の移転ではなくて、何となくファジーに使っているというのが現実だと思っています。
○位田委員 要するに、無償であれば問題はないのですが、それを商品として使うときにどうするかという問題なのです。いまのところは、研究用に無償で提供されて、その細胞が無償で動くということについては全く問題がない。ただ、それを値段を付けて売買をする、製品として売買をするというところで、iPS細胞だからいいと考えるのか、ほかの細胞であっても臨床治療に使うのに必要ならそれは売買でもいいと考えるのか。背景的には非常に大きな問題なのですが、iPS細胞そのものが若干特殊かもしれないので、そこをきちんと線を引いておかないと、影響が非常に大きくなってきます。
○松山委員 ここで大上段に、再生医療用の製品が物で物権があるのかどうか、という議論は、なかなかまとまらないと思います。現実的に、輸血製剤などの場合は、薬価が付くという形で実質的に日赤等から売買されているので、あの法的な枠組みというのは非常に参考になると思います。これは事務局へのお願いなのですが、どういう形でそこをうまくやっているのか、また教えていただければと思います。物権という形で明確に出していないけれども、薬価と付いているというシステムなのかもしれないのですが、例えば立法措置などで回避しているのであれば、そこはもしかしたらお願いするのかもしれないし、指針に書き込んでクリアしているのであれば、それでもいいのかもしれない。血液の対応は非常に参考になると思います。iPS細胞の場合、線維芽細胞だけではなくて今は末梢血からもできたり、臍帯血の動きもありますから、特に臍帯血との絡みというのは非常に参考になるのかなと思います。
○早川委員 ここに2つの指針がありますが、もう1つ別の指針で、「細胞組織利用医薬品等」という、2000年ぐらいに出たガイドラインがあるのです。それには倫理のことも含めて書いてあって、無償提供が基本になっている。それはあくまでも薬事法上のもので、商業利用というのは最初から念頭に入っている話なので、iPS細胞であろうが何であろうが、そこでもうすっきり割り切ってしまったほうがいい。細胞提供者は無償で提供するということを、ドナーからいただくときにしっかりインフォームド・コンセントしておくというのが、いちばんすっきりするのではないかと思います。そこをまた調べていただければいいと思うのですが。
○須田委員 商業利用というときに、必ずしも細胞移植だけに限らないと思うのです。特にiPS細胞では可能性が高いと思うのですが、その細胞株で非常に有効なドラッグスクリーニングができるとか、そこから非常に有効な分子が取れてくるという可能性も十分にある。そうなってくると、先ほど松山先生が言われたように、それを供与した人の所有権という問題は出てくるかもしれないので、やはりそれは一度調査していただきたいと思います。昔、ある血液の細胞株から貴重なサイトカインがクローニングされたのです。それを提供した人が一応所有権を売って、裁判でどうなったかは覚えていませんが、それは、企業の利益につながった場合には、ついて回る問題かなと思います。
○中畑委員 今回ここの委員会で議論しているのは、細胞として治療に使うということで、例えばiPS細胞を作って、iPS細胞から新しい薬が取れたということは、これは全然違う次元のことになりますので、この委員会では議論しないと。ここでは、iPS細胞なりES細胞、あるいは体性幹細胞から由来した細胞を使った実際の医療ということになりますので、その場合は、提供者は原則その権利を主張しない、ということがほぼ基本でいいと思うのです。iPS細胞から作った新しい心筋の細胞なり神経の細胞なりを、ある企業がそれを臨床治験としても展開して、多くの人にそういうものを投与するということは、当然あってしかるべきで、むしろ、これからどんどんそういう形で進んでいかないと、再生医療がより多くの人に一般医療として提供できるという形にはならないわけですので、当然、iPS細胞由来あるいはES細胞由来の細胞を使って、企業がそこから有効な細胞を作り出して、それを実際多くの患者さんに提供するということは、大いにこれから進めるべきで、むしろ、そういう形が私はあるべき姿ではないかと思います。ですから、提供のときと、実際にその細胞を使ってプロダクトとして医療を行うというところは、分けて考えないといけないのではないかと思います。
○位田委員 私は、その提供者に権利があるかどうかということを問題にしているのではありません。基本的に細胞は研究用でも売買しないというのが一応原則になっている、しかし、製品になってしまったら、それは細胞として売り買いされる可能性がありますから、そこはいままでの日本の原則とは違う。中畑先生がおっしゃるように、それを使わないと再生医療はできませんから、当然、何らかの形で、こういう理由でiPS細胞については製品として売買をすることができるのだ、それで治療に使うのだということで、例外とするのか原則とするのかわかりませんが、そこは、理由を付けてはっきり決めておかなければいけないと思います。逆に、臨床の治療のために売買はできるけれども、研究用にもiPS細胞の売買ができるのか、ということもあるのです。誰に権利があるかという問題ではなくて、細胞を売買するという一般論として、どこまで構わないと言って、どこからは駄目だと言うのか、ここからここまでは無償で、ここからは有償なのだとするか、そこの線は決めておかなければいけないと思っています。
○町野委員 3つぐらい問題が、非常に混乱しているという感じがします。1つはもともとある議論で、例えば臍帯血などが提供されるときに、これはヒトの治療のために使われる、これは研究用に使われると。しかし、研究用に使われると言ったときに、大学などの研究機関だけではなくて、製薬会社などが使うということについても構わないかという議論があって、これはインフォームド・コンセントの中身の問題だと思うのです。もう1つ、売買の問題というのがあって、これは、基本はいま位田先生が言われたとおりだろうと思うのですが、臓器移植法の臓器の売買の禁止というのが、法律ではなくて、考え方としてどこまで及ぶかという問題だろうと思います。現在の考え方、製品化されたときについては、そこから先は売買できますよという話は、これは大体妥当だろうと思うのです。問題は第3の、松山先生が言われた、売買の可否の問題とは別に、このものについて誰がどこまで権利を持つかという議論なのですが、これはまさに法律上の問題であって、生命倫理専門調査会で前にどなたかがプレゼンされましたが、そこで、きわめて明快に、人格権と所有権、あるいは財産権との問題、これが複雑に絡み合った問題であって、これは法律上、議論しろと言えば当然議論できる問題だろうと思います。
○鹿野委員 倫理的な面とか法律的な面については素人なのですが、私が感覚として感じているのは、松山先生がおっしゃったように、献血の取扱いです。無償提供ということで得られた献血をベースにして、いろいろな血液製剤が作られている。実は、その中間段階に原料血漿というものができるのですが、中間段階の原材料は、ほかの製薬会社に売買されて、そちらでまた製剤として製造されているという実態があります。ただ、先ほど早川先生がご指摘になった、提供段階は無償であるというのは、参考資料4の4頁の第3にそういう規定がありまして、これはおそらく血液製剤も同じで、献血についても無償提供、ボランティアとしてやる、むしろ売血的な行為は日本では禁止されているという状態だと思います。中間段階の売買というのは、実際はあるのですが、使用される範囲というのはかなり限定されていて、そのものをほかの目的に転用するというのはかなり制限されていたような記憶があります。ですから、その献血を用いて血液製剤に至るいろいろな法的な規制というのが1つベースになって、応用が効くのかなとは思っています。そういう意味では、中間段階のものが売買可能というような法的根拠が付くのであれば、スクリーニングに使うような細胞を製薬会社から入手して、限られた範囲で利用することが可能となる可能性もあるのかなと思っています。その辺は一度整理して確認していただければ、iPS細胞、ES細胞で違うケースはどうするかというのは、そこから議論ができるのではないかと思います。
○松山委員 私は所有権の話をしたので、もしかしたらかなり脱線させてしまったのかもしれませんが、所有権について絶対こういうところで議論しなければいけないということではなくて、例えばiPS細胞なりES細胞からバンクができて、実際に患者の目の前に行っていると。ただ、たまたまそれが自分とリンクされているとどなたかが気づいて、これは自分由来の細胞なのだから返せとか、あるいは医療に全く補償がないのだという形になったときに、物権という形で明確になっていくほうが、そこはきっちり切れるだろうという考え方なのです。資本主義なので、物権というのは根本ですから、そういう発想で言っているのであって、そこをしっかりと後づけでtreatされないような形になっていれば、私は特段所有権とか物権にはこだわらないということです。おそらく根っこは位田先生と一緒だと思うので、よろしくお願いします。
○中畑委員 現実にはiPS細胞を作るときにも、ほかの体性幹細胞もそうだと思うのですが、連結可能匿名化にするか、あるいは連結不可能な匿名化にするか、トレーサビリティということを考えると連結可能匿名化の形でできるだけ匿名化していくと。だから、その細胞がどの人由来の細胞であるかは少なくとも特定できないような形で、一般にはいいように利用されると。そういう形で進むのは、当然そうだと思いますが、連結可能匿名化ではまだ不十分なのかどうか。私はそこがきっちり管理されていれば十分ではないかと思うのですが、そこは一応決めておく必要があると思います。トレーサビリティを考えると、連結可能匿名化の形でできるだけ進めるべきではないかと思います。
○永井委員長 いまの点について、ご意見はいかがでしょうか。これは外国から細胞が入ってきたらどうするのですか。また別個に議論することなのでしょうか。
○松山委員 きっちりトレーサビリティを出していただくしかないのだろうと。例えばFCS、ウシなどを使う場合にも、原材料まで遡って、どんな特徴でどんな形というところまで全部個体から遡りますので、同じような形で細胞も遡っていただくのだろうと。
○永井委員長 そうすると、連結可能匿名化ということを前提とするということでしょうか。
○松山委員 大原則だろうと思います。
○位田委員 所有権とか、細胞とは何かとか、連結可能匿名化とか、そういうものが錯綜しているので、事務局で、現状でiPS細胞に類似の制度がどうなっているかを少し整理していただいたほうがいいのではないかと思います。基本的に細胞の売買が良いということになると、細胞の集まりの組織はどうなのか、それが上に上がって臓器はどうなのかというと、臓器移植法の話になってしまいます。一貫してどこからどこまでが良くて、どこからが駄目なのかという整理はしておかないといけないので、そのときに仮に製品として売買ができるとして、所有権の問題をそこで考えるのか、もしくは所有権の問題を先に考えて処理をしていくのか、その辺はいろいろなやり方があるので、いまここで議論をしても、おそらく結論は出てこないと思います。
 外国から物が入ってきたときに、例えば山中先生のiPS細胞の元の皮膚細胞は外国からお買いになったということですから、外国の制度に乗って細胞が入ってくるので、それはそれでいいのだろうと思うのです。しかし、日本ではいまのところは細胞の売買は認めないと、法律に何も根拠はないのですが、一応やらないということになっているので、日本でこれからiPS細胞を実際に再生医療で製品として使うときに売買を認めるのか、そこをきちんと決めればそれでいいのだろうと思います。
○佐藤(陽)委員 連結可能匿名化とか、いろいろとお話が出ていますが、こういった議論になるとき、いつもヒト幹細胞の指針を拝見して思うのは、作法は書いてあるのですが、その背後にある原則とか目的があまり書かれていないところがあるのです。だから、何のために連結可能匿名化をしなければいけないのかということと、だから原則こうであるべきだということがあって、臨機応変に、例えば重篤な患者がいたときに、どういうところまでリラックスできるかといった例外的なところ、その精神、principleが書いてないと、この指針を見たときにどう考えたらいいかがわからないというのが私の印象なのです。ですから、例えば連結可能匿名化の趣旨をこの中に、原則連結可能だとしてもその趣旨はこうであるということを書き込んでおかないと、チェックリストだけになってしまって、例外が認められなくなる可能性があって、非常に堅苦しいと言っては語弊があるかもしれませんが、そういった指針になってしまうのではないかという懸念があります。
○荒木室長 貴重なご意見ありがとうございます。compassionate use的に本当に治療法がない患者については、ドナーの適格性の判定、あるいはその治療に使う細胞の品質安全管理については、ミニマムは決めるけれども、それ以上の部分については少しflexibilityを持たせるべきということです。なぜこういう原則なのかというと、こういう理屈ですという思想的なところもあったら、例外的なことが書き込めるということです。
○佐藤(陽)委員 みんなで考えるときの材料になるのではないかと思います。
○荒木室長 具体的に、例えば資料2の第3章にも、一応提供者の人権保護の観点で「選定にあたっては慎重に検討するものとする」というところがあるのですが、その辺りを少し詳しめに書くなり、具体的にこの辺りにこういうことを入れたらいいのではないかというご意見もいただくと、事務局としてもありがたいと思っております。
○松山委員 いまのところを、例えば前文みたいな形で対応するということが1つあると思います。早川先生がお作りになった0907-2~6号の通知でも前文があって、その部分で、全部やらなくても、それは科学的、合理的に考えればいいのだという形でphilosophyを語っておられるので、ああいう前文みたいな形で対応する方法もあるだろうと。全体的に見て、ここだけしっかり書いてあまりでこぼこするのは、指針上プラティカルに使いにくいのではないかというところもあるので、そこは前文で書いていただくか、のちのち佐藤先生にコメンタールみたいな逐条解説を書いていただくか、そういう形にしていただけたらわかりやすいかと思います。
○武藤委員 資料2のドナー・スクリーニングのところで、5頁に今回新たに下線で「上記を含む重篤な遺伝性疾患」というのが加えられています。そこで、事務局にお伺いしたいことが2つあります。1つは、この「上記を含む」というのは、?~?の症状を有するような重篤な遺伝性疾患についての診断や適格性を判断すべきというご趣旨でよかったのでしょうか。
 もう1つは、ご本人が気づいていない遺伝性疾患の診断とか遺伝的リスクが提供時に判明しうることになりますと、今回から連結可能匿名化という方針をとった場合、いろいろと考えなければいけないことがあるのかなと思います。これまで、ドナー・スクリーニングで判明した疾患についてどのように結果をお知らせしてこられたのか、教えていただければと思います。
○荒木室長 まず読み方の部分ですが、先生のご理解のように、例えば?の肝疾患で重篤な遺伝性疾患というイメージですので、上記?~?の間のもので共通に、さらにそれが重篤の遺伝性疾患になる場合というイメージです。「含む」ですので、?~?以外のものの重篤な遺伝性疾患も当然含まれるということです。
 後者の、もしこういうことがドナー・スクリーニング上わかった際に、それを提供者、ドナー側へ戻しているかどうかについては、こちらでは正式に把握はしていないのですが、倫理的に言うと、そこはわかった段階で戻すのが普通の場合もあると思いますが、それは逆に先生方にお伺いしてよろしいでしょうか。
○中畑委員 一般的というか、現在京大で行っているようなことでは、スクリーニング検査をして、その結果を知らせてほしいかほしくないかというところに○を付けて、ほしいというドナーの方には結果をお知らせする、別にほしくないという方には結果はお知らせしないという形で、すでに提供するときからドナーが自分の意思で選べる形で結果を戻せるようにしておくということを行っています。ほかの病院でも大体そうではないかと思います。
○武藤委員 そうであれば、ここに?が加わった瞬間に、突如、専門的な遺伝医療の色彩が出てくることになろうかと思います。例えば、ご本人が悪性腫瘍だという告知は受けていても、家族性腫瘍だったことはご存じないとか、健康なドナーに見えて、実は遺伝性で重篤な疾患の保因者であった等の場合もありえます。そこで、?の運用については、どこまでここに書き込むかは別としても、かなり留意点が増えることについてご注意いただければと思います。
○早川委員 この5頁の?ですが、この遺伝性疾患というのが、うんと遡ると1314号というのが2000年にあったのですが、そこが源流で?まではずっと言及されてきているのです。遺伝性疾患のことを問題にし始めたのは、iPS細胞を取るときに、そこの遺伝的背景を知った上でiPS細胞を作って、それを利用するという観点で遺伝性という話が入ってきたので、?までの病気に関する、これは特に同種というか自己の話ではなくて、他人の細胞をベースにして製品を作ろうということですから、たくさん候補者はいるわけだから、できるだけこういう疾患のない方から得ると。基本的にはそういう考え方です。それにプラスiPS細胞で、科学の進歩もありますが、iPS細胞を作って、それが多能性故にいろいろなものに使えるとすれば、遺伝的にわかる範囲で具合が悪いものを使わないほうがいいでしょうということで、遺伝的というのがiPS細胞のところで出てきているのです。だから、iPS細胞も体性幹細胞も全部同じように読んでしまうと、また少し違うのかなと。ここの件に関しては、ひょっとしたら注釈が要るかもしれないという感じですかね。
○武藤委員 経緯とご趣旨は理解いたしました。実際たくさんの提供者を、必ずしも遺伝医療の専門家がいない施設でも募集されると思うので、注釈を是非検討いただければと思います。
○町野委員 いまの話ではないのですが、今日の議論は再生医療の基本ですから、これは国民的な信頼を得なければいけないというのが基本にあるわけです。その点で、先ほど松山先生が言われたような、誰がどの点の権利を持っているかという議論は大切だと思うのですが、気をつけなければいけないのは、これは指針の世界ではないのです。ここでこれを決めるわけにはいかないのです。民法とか、そういう法律の世界ですから、現在の法律状態がどうなっているかということの議論からしなければいけないということだと思います。この点は、この委員会で何でもできるという話ではなくて、ただ研究はしなければいけないので、それはこの委員会ではなくて、おそらくどこかでしておかなければいけない問題だろうと思います。
 もう1つ、先ほど佐藤先生が言われたことは非常に大切だと、実は私は前から指針のことについて思っていました。かなりマニュアル化しているために、ハンバーガーショップの店員のように、こういうときはどうするのだという感じになってしまっているところがある、意味がわかっていないためにいろいろな問題が起こってくると。ただ、それで指針違反ということが出てきたり、そういう議論が出てくるわけですから、それは大切だと思います。ただ、松山先生が言われたように、これを前文でうまくいくかというと、前文が付いている指針はたくさんありますし、法律でさえもありますが、そこから何か出てくるかというと、必ずしも明確なものは出てこないだろうと思います。だから、議論としては、生命倫理専門調査会の報告書自体も、科学的合理性とか社会的妥当性ということでやっていますから、要するに必要なときには、それほどひどくなければやってもいいのだという、ただそれだけです。それは何の原理もないわけですから、ここのところでの議論は必要だろうと思います。トレーサビリティについての議論はまさにそうだろうと思いますから、これは必要だからやるのだということではなくて、もともとトレーサビリティまでみんな否定しなければ個人情報が守られなかった、という考え方自体がおかしいということだろうと私は思うのです。
 もう1つ、これは冒頭に出た問題ですが、ES細胞について切り分けるかどうか、これは思想的にかなり重要な問題だろうと思います。というのは、ご存じのとおり、文科省の指針は、ES細胞は樹立されたあとでも樹立されたES細胞自体がただの細胞ではないのだという考え方に立っているから、指針が独立しているわけです。その前文を見ると、いろいろ多能性を持っているから、これは大切にしなければいけないという議論なのですが、これが幹細胞の指針の中に取り込まれたということは、おそらくはこの点を否定したと思いますが、これが妥当かどうかという議論はもしかしたら必要かもしれない。ただ、技術的な問題として、ES細胞のものについては、安全性の確認や手続きについて、特別なものが必要だということで、分けるという以上の問題があるように思います。私自身はこのような考え方でいいのではないかと思いますが、昔を知っている人たち、ES細胞指針等を作ったときの人たちについては、おそらく違和感を持っている人もいるだろうと思うのです。iPS細胞とES細胞と出自が違うから、別に取り扱うべきだという議論が一時かなりあったぐらいですから、そういうことの留意が必要ではないかと思います。
○直江委員 いままでの議論の蒸返しになるかもしれませんが、連結可能匿名化というトレーサビリティの問題はいま非常に議論になっていますし、先ほどの武藤先生のお話も、私もそうだなと思ったのは、何のためにやるのかということと、誰がそれをトレースできるのかということと、その結果をどのようにドナーの方に返すのかというところが抜けていたと。安全性やイベントが起こったときの医学的な理由のためにトレーサビリティが重要だという話はみんなシェアしていると思うのですが、いま言った3点が抜けている。そこがいま議論になっているところではないかと思っています。
 もう1つ、そのことについて、例えば体性幹細胞で低リスクのものまで実際問題連結可能匿名化が要るのかどうかとか、その辺はまた考えてみる必要もあるのかなと。つまり、これが1つのES細胞、iPS細胞、体性幹細胞で、体性幹細胞でもハイリスクのものもあればローリスクのものもあるかもしれないということが、1つの指針で本当に良いのかどうか、その辺はgradationを付ける必要があるのかどうかということも考えてみる必要があるのかなと、いまの皆さんの議論を聞いていて感じました。
○斎藤委員 町野先生のご議論に追加ですが、ご存じのように国立成育医療研究センターは樹立機関で、樹立機関の承認を得て、樹立研究計画、あるいは使用研究計画について非常に厳密な審査を受けました。3、4年かかったわけです。それが果たしてこれからも必要なのかどうかという議論はさておき、指針でどこまで盛り込むかですが、ES細胞にしてもiPS細胞にしても、最終的に倫理委員会ですべて審議をするわけですが、日本全国いろいろな倫理委員会がありますので、ある程度樹立機関や最終製品を使用する機関の要件等で盛り込めないものかなと、町野先生のお話を聞いて思いました。
○須田委員 文科省の指針との関係ですが、いま私自身が委員長をしていますが、解釈としては、ES細胞を樹立するときには生命の根源であるものを滅して作るのだから、尊厳を持って取り扱うと。しかし、これが臨床に応用されていくときには安全性が問題になるので、いま厚労省でこの議論をしていることが上に乗ってくるだろうと。先ほど言われたように一本化して議論していかないと、文科省の指針と厚労省の指針は目的が違うから取扱いも違いますよということにはならないと思うのです。確かに出自が違うとか、そういうことはあるのですが、ES細胞の樹立に関しては倫理的にかなり厳しく論じられていますが、使用に関して安全性が大事であって、そこにまで生命の尊厳をいつまでも持ち込むのは、かえって教条的な感じもするのです。
○町野委員 私もそういう考えなのですが、あとで参考資料の使用の指針の全貌を見ると、おそらくそういう考え方に立って作られていなかったと。ただ、これは過渡期のものだと思うのです。最初は樹立と使用と全部1つでやっていましたから、それはおかしいだろうという議論が出てきて、2つに分けましょうと。あとのほうは緩やかなものにしようということがありますが、そこを一遍に取って、ただの細胞のうちの1つだよとはなかなか言い切れないというところで、こういうことになっているのではないかと思います。
○位田委員 確かに、ES細胞は樹立のときの倫理問題とES細胞になってからの倫理問題は少し違います。樹立のときはヒトの生命の萌芽を壊すというのがいちばん大きな問題ですが、使用のときの問題はいろいろな細胞になる、つまり多能性の細胞なので、例えば生殖細胞ができて、そこからヒトが作られるのは困るという話はあったのです。あまりにもそこを強く考える意見があったので、最初は樹立と使用と1つの指針の中でかなり厳しく制限していたと思いますが、いまは樹立と使用は完全に2つに分けてしまって、かつ使用も、ES細胞そのものをどこかに移植するという話よりは、ES細胞から何かの細胞に分化させたものを移植することを一般的に考えているので、その段階になると普通の細胞と同じだと考えています。ただし、いままでの経緯があるので、この細胞はヒト胚を壊してES細胞が作られて、そこから出てきた細胞だという注釈は付けていきましょうという話になっているので、特にES細胞からの分化細胞が特別の価値を持つという解釈は、いまは当たらないのではないかと私は思います。
○早川委員 薬事法の関係の指針で、9月7日に厚生労働省からES細胞を出発した製品の指針が出ているわけです。そこの考え方は、先ほど斎藤先生がおっしゃったように、最終製品の側からまず考えましょうと。それが、先ほどの佐藤先生の話ではないですが、最終製品がいま対象としている患者との関係において是か否かという観点から考えましょうと。もちろん、それに至る過程も含めて。
 しかし、先ほどおっしゃったように、最初にこれからES細胞を樹立しようという場合は、倫理的なことをしっかりやりましょうと。ただ、すでに存在している、すでに皆さんが手に持っておられる細胞株があって、極端に言えばES細胞から分化したような状態の細胞株があって、それが非常に有用であるという場合に、元にたどれないわけです。それをどうするか。そこは最終製品の側から見た安全性なり有用性なりに力点を置いて、そのルーツを徹底的に問わなければ駄目だという形の指針にはしなかったのです。だから、これから新しくやる場合には、最初の樹立に関するルールは文科省と同じような形で守りましょうと。だけど、それが必ずしもいまできなくて、しかもそれは不都合ではないと思えるものは最終製品の側から考えて扱いましょうという構造になっているということだけ、その是非はともかくとしてお話したいと思いました。
○位田委員 ES細胞の使用に関しては、文部科学省のほうは研究ですから、最終製品云々という話ではもちろんありませんが、受精卵を壊してES細胞ができた。ES細胞についてはいろいろな細胞になり得るから、どんな細胞を作るかというところについては留意しましょう。そういうことです。例えば、生殖細胞を作っていいのかというのは倫理的な問題でしょう。しかし、心筋細胞を作るとか神経細胞を作るといった問題は、一旦心筋細胞なり神経細胞になってしまうと普通の細胞である。ただし、由来が重要だという意見はまだ残っていたので、この心筋細胞はES細胞から作った心筋細胞ですよという注意書きを付けてやってくださいということになった。だけど、注意書きが付いているからこの使い方は駄目だとか、こういう使い方だったらいいとかという話ではなくて、丁寧に扱いましょうという程度になっているのです。先生は最終製品というところでおっしゃいましたが、一旦分化した段階で、もうすでに考え方としては同じような取扱いができるのだと私は思っています。
○中畑委員 大体の方向はいいと思うのですが、この委員会でも以前、これから作るES細胞はインフォームド・コンセントを取る段階から将来は臨床にも使われるのだと、十分なインフォームド・コンセントを取った上で受精卵を提供していただいて、そこから作るということで皆さん納得したと思うのです。だから、すでに存在するES細胞については、将来臨床に使われることを前提にして作られているわけではないので、それをいま早川先生が言われたような形で、最終製品が良ければいいという形では使えないのではないかという考えで、私はいままでいたわけです。そこははっきりさせておいていただかないといけないと思います。
○早川委員 それはこの委員会で結論を得ていく話だろうと思うのですが、私たちはそのように考えています。もちろん、おっしゃったように、できるだけルーツはたどるわけです。最終製品だけの問題ではなくて、できるだけ途中の過程も明らかにするわけです。だけど、樹立した細胞株に関しては、どうしてもたどり切れない部分がどこかで出てきます。そこはそれ以上たどれないから、最終製品は使えないという考え方は取らないと、ただそういうことです。
○中畑委員 たどれる、たどれないという問題、トレーサビリティの問題ではなくて、いままでのES細胞は、最初からES細胞を作る段階で将来臨床に使われることは全く前提にしないで作っているわけです。だから、最終製品で判断すればいいのではないかというのは、論理的に問題があるのではないかと私は言っているのです。
○須田委員 ヒトES細胞から生殖細胞系列の研究をするのが、いまようやく許可されましたが、あのとき問題になったのも、あのときのガイドラインは生殖細胞誘導を図ってはいけないというガイドラインだったので、先生が言われるように、現存する日本で作られたES細胞は使えないわけです。だけど、臨床応用してはいけないという文言は、あのときの指針には入っていますか。もし入っていなければ、外国でもみんなそうですが、何々してはいけないということが付いていないから、いまでも生殖細胞を誘導に使っているわけです。
○中畑委員 あの指針では、臨床応用については別途厚労省で検討するということで、文科省の指針の下では臨床に使えるという形にはなっていないと、明確になっていないと思います。
○須田委員 禁止していますか。
○早川委員 私たちは、もともとそこから生命体が生まれるとか、つまり生殖細胞になるとか、それを製品としては考えていません。我々が対象として考えているのは、心筋であったり肝臓の細胞であったりということですから、そこはもともとの議論と製品ベースで考える議論とは必ずしもオーバーラップしない部分があって、そこで私たちは、ES細胞が本当に有用に使えるのであれば、出自が完璧にインフォームド・コンセントができていなくても、安全性や有効性といった面できちんとできるのであればいいではないかという立場に立っています。たぶん、ここもヒト幹の委員会ですから、製品をベースに考えるのだと思うのです。製品そのものが倫理上おかしいようなものは、ここでははなから通れないと思います。
○直江委員 変な議論になってきましたが、シンプルに考えると、臨床研究の指針というのもあるわけで、例えば患者から同意を得て、目的を明らかにしてサンプルをいただくということで、これは研究用ですよと言ってもらったものがどんなに良いものであっても、実際問題、それを患者に投与されるという前提は、ICが取られていないものは、やはり無理ではなかろうかというのがいままでのこの委員会の議論のように私は思っていましたし、それはそれでいいのではないかと思っていたのではないですか。随分話が蒸返しになったような、戻ったような感じがするのですが。
○佐藤(陽)委員 資料2に「臨床研究に関する倫理指針」があって、21頁を見ると、第5「試料等の保存及び他の機関等の試料等の利用」とあります。1の(2)に「人体から採取された試料等の利用」とあって、ここに、先ほど私が申し上げたのは、少し記憶にあったということがあって、そこに「研究開始時までに被験者等から試料等の利用に関わる同意を受け、及び当該同意に関する記録を作成することを原則とする」と書かれています。原則とするということは、確かに誰もがagreeすることだと思いますが、その下に「ただし、当該同意を受けることができない場合には、次のいずれかに該当することについて倫理審査委員会の承認を得て、組織の代表者等の許可を受けたときに限り当該試料等を利用することができる」とあります。?は、当該試料等が匿名化されているということ。?は「当該試料等が?に該当しない場合において、試料等の提供時に当該臨床研究における利用が明示されていない研究についての同意のみが与えられている場合は、次に掲げる要件を満たしていること」ということで条件が書いてあります。?は、?、?に該当しない場合においては、こういう条件を満たしてくださいということが書いてあります。
 実は、これとほとんど同じ記載が疫学の指針にもあって、ヒトゲノム指針にもあります。そういったときに、果たしてヒト幹細胞臨床研究指針だけが例外を認めないというのが妥当なのかどうか、あるいは臨床研究の倫理指針にこういう例外規定があることの背景、考え方がどこにあるのかを理解しながら、ヒト幹細胞の臨床研究指針も作っていかなければいけないと私は思っています。
○武藤委員 いまの点で少し混乱しているのですが、ここで書かれているのはあくまでもほかの臨床研究に使うという前提で、臨床応用と先生方がおっしゃっているのは、試験ではなくて治療という意味で、医療という意味でお使いなのでしょうか。「試験」と「医療」は区別しなければいけないと思うのですが、どうなのでしょうか。
○永井委員長 投与するか、解析に使うかどうか。そこに違いがある。
○直江委員 あります。
○早川委員 須田先生のおっしゃったことと同じかどうかわかりませんが、例えば同意を得たのは、研究に使用することができるという同意を得たと、そこまでであると。ただ、その研究が何のための研究か、研究のための研究なのか、将来何か可能性を広げるための研究なのか、それを拡大解釈するかしないかということはあるかと思いますが、研究の延長線上に臨床的な応用があっても私はいいと思ったのです。思ったので、先ほどのようなことを申し上げたということです。
○町野委員 2点あって、1点は、須田先生が言われたことは誠にもっともな議論で、法律家らしいという感じがしました。つまり、普通の考え方はNoと言わない以上デフォルトはYesなのです。ところが、日本では倫理指針の世界は逆になっていて、Yesと言わない以上Noなのだと。この建前が正しいかどうかはもちろん非常に議論があるのですが、私などは非常に違和感を持っていたことは事実です。しかし、これを変えるかどうかというのは、全体をやるわけですから、かなり難しい話かなと思います。
 ちなみに、厚生労働省関係の法律はこういうタイプのものがかなり多いのです。ある場合は「できる」と書いてあるけれども、それ以外の場合はみんな禁止かというとそうではなくて、許される場合もある。よくわからないものがあるので、これは基本的な議論だと思います。
 もう1つは佐藤先生が挙げられた資料とのこの部分ですが、これは誠にもっともで、これは臨床研究でも何でもないのです。つまり、人体からすでに取られていますから、それについて何をするかという問題を臨床研究の指針の中に入れ込んだのは、ヘルシンキ宣言が改定されたときに、個人情報の保護までヘルシンキ宣言の中に入れてきたことの影響を受けて、厚生労働省がそのままそれを持ってきたために、臨床研究でないものが中に入っていると。だから、ここの問題は被験者の権利、安全性とかインフォームド・コンセントといった問題ではなくて、個人情報の保護の問題、あるいは提供されたものについて、先ほど松山先生が言われたとおり、どこまでその人が権利を保持しているかという問題で、少し違う問題なのです。その辺のことがわからないで、みんな臨床研究の中に落とし込んでいるので、一体どういうことでこのような例外があるのかがわからないという話だろうと思います。これは作ったほうの責任ではないかと思いますが。
○位田委員 日本では、基礎研究と臨床研究がある意味ではきちんと分かれているように扱われていますが、諸外国では「基礎研究」という言葉はほとんど使わないので、ヒトの試料を使う研究はClinical Researchだという話です。必ずしも、ヒトに使わないからいいのだとか、ヒトに使うから駄目なのだという話ではない。これは1つ留意すべきだと思うのです。日本は文部科学省と厚生労働省がきちんと分かれているので、文部科学省は基礎研究、厚生労働省は臨床研究から後という話で、どうしても臨床研究指針もそういう目で見られるかもしれませんが、ヘルシンキ宣言自体は、必ずしもヒトに使わなくても、ヒトの材料を使うということについて決めています。
 おっしゃるように、臨床研究指針でも原則と例外があるのですが、例外を使うためにはいろいろな条件があって、その条件をクリアすれば例外として、例えば倫理審査委員会のOKを取ればよろしいと。ただし、その条件を満たさないのに、何でもかんでも使っていいという話ではない。そこは留意をしておかないといけないと思うのです。一言で言うと、できるだけ同意は取り直しなさいということです。しかし、いろいろ努力したけれども、取れない。病院にポスターを貼ったり、webサイトで今度こんなことをやりますよ、だから、もしあなた方のうちで誰か私のは使ってほしくないと思う人は言ってください、という努力をした上で、それでも取れない場合は倫理委員会がOKし、それではどうぞということで、ここで例外に落ちるのです。原則と例外があるのは、別にフィフティ・フィフティではなくて、大原則は大原則として使うのであって、厳しい例外もあればかなり緩やかな例外もありますが、例外に落とし込むための努力をしているかという話だと思います。
○町野委員 少し誤解を受けたようで申し訳ありません。私は、佐藤先生が言われたとおり、原則の意味がどこにあるか、例外はどうして例外なのかと。それがわからなければ、現場の方は非常に難しいだろうという話なので、それだけを申し上げるつもりだったので、それは誠におっしゃるとおりだと思います。要するにprincipleの、大げさに言えばphilosophyの問題です。一体これは何を保護しようとしているのか、どういう不都合があるからこれを守らなければいけないのか、それがはっきりしないで原則例外と言われても、それはわからないと。それは誠にもっともだという話です。
○永井委員長 議論がだいぶ多岐に渡って、なかなか整理が難しいですが、とりあえず今日の話を事務局で整理していただいて、次回少し論点整理をしながら、もう1回議論しないといけないと思います。ほかにいかがでしょうか。
○佐多委員 感染症のところですが、これを見ると、移植医療に関する感染症ドナー・スクリーニングとか、そういうものが全部網羅的に書いてあります。ほかと同様、同じように書いてあることは、原則論としていいのですが、今回のES細胞やiPS細胞、体性幹細胞だとすると、樹立・調製の過程が長いので、その間にスクリーニングが要らないものも結構入ってきているのではないかという感じがします。
 また、臓器移植の場合もそうですが、使うときの条件が厳しい条件を取るために、余計厳しい感染症のregulationをかけなければいけないという問題も出てきます。これまでの細胞、臓器の移植の場合と比べても違う部分が出てきているので、臓器移植などもそうですが、絶対禁忌とか相対禁忌とか、軽重に分けたやり方をしています。一部はそういう形で入っていますが、原則はみんな同じような格好で並べて入っているので、基準としては少し強すぎる部分があるような印象があります。
 基本的には、参考資料の17頁に寺岡先生がまとめられたようなものがあります。これは平成23年8月5日に改定されているものですが、これをベースに、幹細胞の場合にはもう少し考え直してもいいのではないかという部分が出てくるのではないかと考えました。ただ、この参考資料の17頁にはLCMVのことが書いてないので、Lymphocytic choriomeningitis virusというものがあるのです。ウイルスに感染した臓器移植によって患者が亡くなったという例が抜けています。それを入れたものが、感染症のドナー・スクリーニング等においては原則と考えていいのではないかと思っています。それに基づいて、あとは今回の細胞移植の場合の条件を取捨選択していくのがいいのではないかと思って見ておりました。いままでの議論と少し違うのですが、一言だけ追加させていただきます。
○永井委員長 ほかに何かありますか。よろしいでしょうか。
 それでは、今日のご意見を整理した上で、また次回検討を続けたいと思います。これからの予定はどのようになりますか。
○荒木室長 非常に多岐にわたるご意見で、まとめるのが難しいかもしれませんが、資料2、あるいは資料1について電子媒体等で先生方に送らせていただきますので、いまの佐多先生のご意見等もありましたように、例えば個々の感染症の検査はこちらの臓器移植に合わせる形で、これは必須といった形でもし書き替えられる部分があれば、是非事務局までいただければと思っております。
 次回の予定ですが、11月13日(火)5時から7時を予定しております。会場は未定ですので、詳細についてはまたご連絡申し上げます。次回については、本日いろいろご議論いただいたトレーサビリティの話とか、そういうことについてこれまでの議論をまとめたもので提出しますし、本日宿題となったようなものについても少しまとめようと思っております。年内は12月にもう1度ということで、月1回ペースで引き続き行いたいと思います。以上です。
○永井委員長 ありがとうございました。それでは、それでは、今日はこれで終了させていただきます。


(了)

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