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2012年8月6日 第3回「統合医療」のあり方に関する検討会議事録

○日時

平成24年8月6日(月) 14:00~16:00


○場所

厚生労働省専用第18~20会議室


○議題

1.「統合医療」に関するエビデンスについて
2.論点整理
3.その他

○議事

○佐々木調整官 ただいまから第3回「『統合医療』のあり方に関する検討会」を開催いたします。
 構成員の皆様方におかれましては、御多忙のところ、また、非常に暑い中、本検討会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、金澤構成員、広井構成員、丸井構成員、渡辺構成員より御欠席との御連絡をいただいています。
 また、本日の特別参考人として、関係者に御出席いただいております。
 株式会社ツムラ医薬営業本部副本部長/学術戦略統括室長の高崎参考人です。高崎参考人には、後ほど御発表をいただく予定でございます。
 それでは、お手元の資料の確認をさせていただきます。
 議事次第、メンバー表、座席表。
 資料1「高崎参考人提出資料」
 資料2「論点の整理と論点に関する検討会におけるこれまでの議論」
 資料の欠落等がございましたら、事務局にお申し付けいただきたいと思います。よろしかったでしょうか。
 それでは、以降の進行は座長にお願いいたします。なお、カメラ撮りはここまでとさせていただきます。よろしくお願いします。
○大島座長 それでは、議題に入りたいと思います。最初の議題は「『統合医療』のエビデンスについて」ということです。
 前回は、いわゆる統合医療と言われているものの安全性とか有効性等の評価に関し、臨床医学における評価の面から見たエビデンスに数段階のレベルがある点等について、福井参考人よりヒアリングを行い、これを基に御議論をいただいたところです。
 今回につきましては、漢方については、ほかの統合医療と言われているものと同じように論じていいのかどうかという点で、委員の皆さんからもいろいろな御意見をいただきました。ということで、漢方薬の分野について、実際にどのような取組みがなされているのか。最も新しい状況について、御紹介をいただきたいと考えています。
 まず、最初に高崎参考人に25分程度、説明をお願いしたいと思います。
○高崎参考人 本日はこのような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
 どこまで御参考人なるかわかりませんが、今、弊社で行っております医療用漢方製剤のエビデンスの構築への取り組み内容につきまして一部御紹介させていただきます。
 スライドの表紙の方には漢方薬と書いてありますが、これは医療用漢方製剤を指しており保険の診療外で使われている漢方薬剤とは異なることを御認識いただければ、ありがたいと思います。
(PP)
 これは1980年代にアメリカで行われました有名なCAST-Studyをお示し致します。心筋梗塞後の不整脈に対し、経験的に使用されていた抗不整脈薬が、むしろ患者様に不具合を
与えていたという試験結果であります。この試験を始まりとしてEBMという言葉が世界に発信されたと私自身は認識しております。
(PP)
 漢方薬もある意味、伝統的に経験的に使われておりますが、果たして国民のためを考えたときに、経験側だけでいいのかという疑問はぬぐえません。かと言って、どういう方法論でやっていいかという道筋もない中で、今、我々としましては、できれば新薬で難渋するような疾患に対して、漢方薬でお役に立てるところはないだろうかという形で、EBM(経験に基づく医療)からEBM(科学的根拠に基づく医療)に向かってデータを蓄積している最中でございます。
(PP)
 一般的に新薬の開発の場合には、左側にありますように非臨床試験、要はラボからフェース1、2、3という形で進んでいきます。漢方薬の場合、既に臨床的に使われているということで、臨床での使用報告をベースに、(開発ではありませんので、フェーズ1、2、3という言葉が正しいかどうかはわかりませんが、先生方に理解していただくために、弊社の方ではあえて1、2、3という表現も使っています)、前向き試験や臨床薬理試験、プラセボを使ったようなレイトフェーズ2、そして検証というフェーズ3というようなものを実施するという考えで進めております。
 そして、薬としての有用性が確認できた上では、最終的には例えばイベントスタディですとか、医療経済効果を見られればと思っております。漢方薬はラボ創薬ではなくて、ベッドサイド創薬であると考えています。
(PP)
 その中で最もエビデンスの構築が進んでおりますのが、これが大建中湯という漢方製剤です。大建中湯は、米国で医薬品としての開発を進めており、日本でも最も使用されている漢方製剤です。米国開発中という事もあり、FDAとも数回にわたってミーティングをしています。(PP)
 大建中湯の構成生薬は3つ、山椒、乾姜、人参であり、構成生薬のうちの一つである山椒(Japanese pepper)は日本でしかとれない生薬でありまして、ある意味、日本オリジナルの漢方薬といってもおかしくないと思います。
(PP)
 当然こういう研究をやる上で、基礎臨床もそうですが、やはりプロダクトとしての品質の担保が非常に重要になると思います。大健中湯に限らず、弊社の漢方製剤に関しましては三次元の液体クロマトグラフィー等を使い品質管理を行っており、ロット間での主成分のバラツキを抑えており、FDAも注目して頂いております。
 また、それだけではなく、漢方薬の場合には、構成は生薬からなっておりますので、やはり農薬の問題、重金属、微生物、そういうものに関しても品質として担保されているということであります。
(PP)
 最近のエビデンスを御紹介しますと、実はプラセボができたのが3年ほど前でございまして、日本の外科の先生方の方が始めに取り組んだのですが、後から始めたメイヨークリニックに抜かれまして、一番初めの第一報は実はアメリカのメイヨークリニックから二重盲検の結果が出ています。
(PP)
 消化管の運動機能は客観的に見る方法が難しいのですけれども、メイヨークリニック自体はラジオアイソトープを使った消化管での食物の通過時間を見る方法(RI法)を世界で唯一持っています。そのRI法を用いて大建中湯の実薬とプラセボを用いて健常人の消化管運動亢進を検討した結果、大建中湯の消化管運動亢進作用が確認されました。実はこのキーオープンのときに私も立ち会いましたけれども、メイヨークリニックの先生方のびっくりした顔が今でも目に浮かびます。
(PP)
 当然、日本の外科の先生方も負けてはおりませんで、実はこちらの方が先に取り組んだんですけれども、ここにいらっしゃる門田先生にも入っていただいていまして、DKTフォーラムという組織を全国70大学の先生方に入っていただいて、特にプラセボを使った臨床試験を進めております。
(PP)
 特に臨床試験に重要なのは、やはり臨床試験のデザイン、海外の先生方もしくはジャーナルとディスカッションするときの統計解析、こういうところが非常に重要になりますので、そのような先生にも入っていただきまして、きちんとした形でエビデンスの構築を進めております。
(PP)
 既に肝臓外科での臨床試験は終了いたしまして、大腸の方も終了して、今、解析中でございます。胃の方は多分今年の12月には終了という形で、計4本の二重盲検が本年度中には終了の予定であります。
(PP)
 本日資料に入っておりませんが、実は金曜日に採択されまして、その中の肝臓の結果であります。プライマリーエンドポイントの麻痺性イレウスの期間ですが、プラセボに比べて有意な差が得られました。その他、若干サブ項目もありますが、この場では割愛させていただきます。今年の11月に米国肝臓病学会で発表されます。
(PP)
 また、唯一行っておりませんでした、すい臓がん関係に関しましては、パイロット・スタディが終了いたしました。やはり肝臓と同じく術後の麻痺性イレウスが非腫瘍例に比べて、やはり有意に低い。かつ当然イレウス管挿入も少なく、非常に面白いのは術後の創感染が減っていたという結果が得られております。
(PP)
 こういう結果をベースに全国11施設、和歌山県立医大の山上教授を班長としまして、プラセボ二重盲検、すい臓がん領域での二重盲検が8月にスタートいたしました。
 これは余談かもしれませんが、実はクローン病に関しましても9月から慶應の日比先生を中心に全国10施設でプラセボスタディがスタートいたします。非常に面白いのは、クローン病は実は米国で開発をしていまして、それと全く同一のプロトコルで行います。実は向こうのシカゴ大のPI、レミケードをつくったStephen Hanauer教授自体も、このスタディに関しては非常に興味を持っております。日本とアメリカ人でプラセボ効果が違うのではないかと。漢方というのは日本では結構リーズナブルな表現ですが、アメリカ人は全くないので、そういうところで学問的にプラセボ効果の違いが出るのではないかということをおっしゃっていました。
(PP)
 そして、3つ目ですけれども、ADME試験という薬物動態に関しましてもデータが出てまいりました。
(PP)
 漢方製剤の薬物動態試験に関しては、多成分系であり、かつ各成分量が微量であるため、なかなか難しいと言われていましたが、分析技術が非常に進歩しましたので、そういうものを使いまして、力技で片っ端から調べたわけであります。大建中湯の薬物動態試験を実施して山椒の成分や乾姜の成分などは、かなり早期に高濃度吸収されることが分かりました。特に山椒成分は経口投与して15分以内に血中ピークになります。これは世界で初めての発見です。実はこれに関してはFDAも非常にびっくりして、すぐにディスカッションしたいと向こうに呼ばれたのを覚えております。
 それと同時に、この吸収動態は早過ぎると。吸収トランスポーターを動かしたはずなので、こういうリサーチもしなさいというアドバイスを受けまして、実はこういうスクリーニング系も立ち上げてあります。当然投与する用量を増やせば吸収量も上がる。ドーズディペンデントなところも確認できましたし、日本人だけでなく米国人においても終了いたし、人種差はないということも確認できております。
(PP)
 エビデンスを言いますと、有効性だけではなくて、やはり安全性が非常に重要になると思います。大建中湯に関しましては約2年前から使用実態下での副作用調査を行いました。これは結果が出ましたけれども、1.9%という副作用の発現ということも確認できまして、今は機構の方とも相談をさせていただきながら、添付文書の改定に向けて作業を進めている最中でございます。実はこのプロトコルに関しましても、FDAからアドバイスをいただいた内容でございます。
(PP)
 そうなると、こんどは、何で効くのかという作用メカニズムが、要求されます。我々としましては、創薬の領域では一番ホットでありますTRPチャネルという温度や機械刺激に対するチャネルに注目しました。なぜかといいますと、例えば先生方がよく御存じのカプサイシン(トウガラシの辛味成分)はTRPV1に作用し、結果として、熱く感じます。
 メントール、メントールガムを食べますと口の中がすっとします。これは別にそのものが冷たいわけではなくて、TRPM8というチャネルを刺激するから冷たく感じる。TRPチャネルを刺激するものは、天然物に非常に多い。大健中湯の構成生薬中にもこういう成分が多数入っているということで、TRPに注目した訳です。
 腹痛・腹部膨満感というと、なかなかつかみづらいと考えますが、こういうチャネルの機能異常と考えれば、もしかしたら作用が分かり易いのではないかということで研究を進めてまいりました。
(PP)
 実際に細かいところは省きますが、その中でCGRP、アドレノメデュリンという2つの伝達物質に行き当たったわけであります。
(PP)
 これらの生理学的作用は非常に詳細にわかっております。例えば血管拡張作用、腸管運動亢進作用、抗炎症作用、抗菌作用、等です。例えば先ほどお示ししたすい臓癌術後の創感染が減るというのは、この抗菌作用が影響しているかもしれません。
(PP)
 作用機序的に端折ってしまいますが、実際に今わかっているものは、大建中湯及び漢方製剤は経口投与されますので、一番初めのアタック部位は消化管の上皮だと思います。実はこの上皮細胞にはTRPA1チャネルがいっぱい発現しているということがわかっています。そこに関しまして、山椒の主成分でありますHydroxy-α-sanshoolや生姜の辛味成分6-Shogaolは刺激を与えるということもバイニング実験でわかっておりますので、多分そういうところに作用しまして、上皮細胞に豊富に含まれているアドレノメデュリンが管腔内に放出されるだろうと考えられます。
また消化管細胞内のEnterochromaffin cell上にもTRPA1チャネルが存在していることが
分かりました。Hydroxy-α-sanshoolや6-Shogaolは、薬物動態試験の結果から吸収されることもわかっており、Enterochromaffin cell上のTRPA1チャネルを刺激し、細胞内のセロトニンやサブスタンスP等が大量に放出されます。その結果、消化運動亢進されます。、今まで大建中湯はなぜ効くかわからなかったところが、こういう形でだんだんとメスが入ってきているということがわかっていただけたと思います。
(PP)
 続きまして、日本でも高齢者というところで注目を浴びている抑肝散という薬があります。
(PP)
 何に使われているかといいますと、認知症に伴う周辺症状(BPSD)であります。今、創薬の中心はこの中核症状をターゲットにしていますが、抑肝散の治療ターゲットは、患者様のみならず介護者等を苦しめるこのBPSDです。
(PP)
 抑肝散のBPSDに対する多症例での初めに報告は、東北大学の単盲検試験の結果です。抑肝散を使う群と使わない群の2群に分けまして、NPIという国際的評価基準を用いて検討した結果、抑肝散投与群で明らかにBPSD症状が改善致しました。
(PP)
 そのサブ項目を見てみますと、幻覚、興奮、焦燥感、異常行動、こういう陽性症状を明らかに改善する結果が得られ、従来の抗精神病薬等とは違いまして、ADLを下げないというところまで明らかになりました。この結果を基に、全国5ブロックで多施設での試験を行いました。
(PP)
 これはその中の一つ、関東ブロックで行ったクロスオーバー試験の結果であります。抑肝散を始めに使う群と使わない群、途中でクロスさせて、その後に非投与と投与に分けるというようなスタディデザインであります。やはり抑肝散を服用するとBPSDが改善するという結果が得られました。
 またこの試験の結果から、投与群では服用を止めた後にも効果が4週くらい持続するという、いわゆる持ち越し効果もありそうだということもだんだんわかってまいりました。
(PP)
 抑肝散の作用メカニズムに関して、我々が注目をしたのはグルタミン酸という興奮伝達性物質であります。臨床試験結果から興奮症状に対して効いているということで、まずここにターゲットを絞りました。一般的にはこのグルタミン酸が興奮性伝達物質として放出されますが、正常であればアストロサイトに存在しているグルタミン酸トランスポーターによって再吸収されます。しかしながら、トランスポーター機能に異常がある場合には、再取り込みが行われずグルタミン酸濃度の上昇による興奮症状や神経細胞死が引き起こされます。これまでの研究で抑肝散もしくはその中の成分は、グルタミン酸トランスポーターを活性化することによりグルタミン酸の再取り込みを上げます。また神経終末からのグルタミン酸の放出も抑制するということもわかってきています。
(PP)
 海外のジャーナルに投稿しますと、例えばBPSDに効くのはわかったけれども、抑肝散やその活性成分は、中枢に行くのかという質問を非常に初期のころに受けました。これは浜松医大と浜松ホトニクスと共同で実施している研究ですけれども、カニクイザルを用いセロトニン1AのRIリガンドによるPET画像を撮ってみました。通常、刺激を与えるとこのように明るくなるわけですけれども、抑肝散を投与しておきますと、このような形できちんとそれが抑えられているということがわかりました。現状ではこの活性成分も、ある程度わかっています。人ではありませんが、動物を使ったペット画像を使って中枢動態に関してもメスを入れております。
(PP)
 新たな臨床研究としては、島根大学の堀口教授らのグループが治療抵抗性の統合失調症に対する効果、またBPSDに対しては東北大学の荒井教授らのグループがいずれもプラセボを対照とした多施設二重盲検比較試験を実施中です。多分本年度中に終了すると思います。この2つの臨床研究については厚生労働省から予算をいただいております。
 それと同時に、大建中湯の副作用調査で使用したシステムを使いまして、副作用発現頻度調査もこの10月から開始いたします。高齢者に使用されるケースが多い薬剤ですので安全性の担保は重要と考えております。
(PP)
 消化器内科領域に関しては、六君子湯という漢方製剤を用いて非びらん性胃食道逆流症(NERD:ナード)をターゲット疾患として研究を進めております。
(PP)
 PPIが登場しまして、胃食道逆流症(GERD)に対する治療効果は上がりました。しかしながら、GERDの中で内視鏡等の検査上では異常は認められないが、胸焼け等の症状があるというNERDに対して課題となっています。またNERDに関してはPPIを使っても効きづらいということがわかっています。
GERDの病因はまだ明らかではありませんが、酸という攻撃因子と、酸から食道を守る機能(防御因子)とのバランスが破綻しているのではと考えられています。
(PP)
 その中で六君子湯に関しましては、これは客観的な24時間pHモニタリングを使いまして、食道に関してはどういう作用があるかということを検証したところ、やはり酸逆流時間ですとか時間率というものが有意に改善するということがわかってきました。言うならば、酸のクリアランスを改善することが人で明らかになってきました。
(PP)
 それ以外にも、ここにありますような胃の排出能や適応性弛緩、LESの圧を上げる、食道クリアランス、そして、組織抵抗性などに対する防御機能を上げる作用が明らかになってきました(唾液に対する作用に関しては、作用はないことがわかっている)ので、GERD対して有効ではなかろうかということで、ガイドラインの先生方を中心に、まずは多施設でのパイロット・スタディを行いました。
(PP)
 治療抵抗性のGERDに関しまして、従来のPPIに六君子湯を上乗せする群、及びPPIを倍量投与にする群とで比較検討すると、ほぼ同等の結果が得られました。
またNERD症例に絞って検討すると、PPIの倍量投与では有意差はありませんでしたが、六君子湯上乗せ群では治療前後で有意差が得られました。
現在は、規模を拡大しまして、全国約15大学及びその関連施設でこのG-PRIDE試験という試験をプラセボ対照で行っております。
(PP)
 PPI抵抗性の患者様を対照に、PPI+プラセボ群 120症例、PPI+六君子湯群 120症例、合計症例数 240症例です。この試験も既に7月で1年前倒しで症例登録が終わりましたので、データをクリーニングして11月くらいにはキーオープンできるだろうという形で進んでおります。
(PP)
 最後ですけれども、化学療法関係であります。これは私が出すのは恥ずかしいんですけれども、オキサリプラチン等々の新しい抗がん剤によりまして、進行大腸がんに関しましても非常に治療効果が上がっております。今や分子標的薬もできまして、余命は3年が見えてきています。
 また、大腸癌の化学療法としては、オキサリプラチンをベースにしましたFOLFOXレジメンが、世界的にみても第一選択であろうと思われます。
(PP)
 しかしながら、これはアメリカでやられた一番多施設の1,000例規模のものですが、このオキサリプラチンを使うと従来なかったような抗がん剤の副作用、末梢神経障害が9割くらいに表れる。止めた後1年後でも3割くらい残っている。今、言われているのは、この末梢神経障害がドーズ・リミッティング・ファクターの一つであろうということで、海外も含めてそれに予防的なスタディがさまざまに行われております。
(PP)
 一番代表的なのは、カルシウムマグネシウムの静注。しかしながら、いろいろなスタディの結果、中はまだクエスチョン。その中で一番新しいのが2009年メイヨークリニックで行われました被験結果です。実は急性障害のところで、マッスルクランプにおいてのみ有意差がありましたが、それ以外では有意差が得られませんでした。現在ASCOのガイドラインの中にも、オキサリプラチンの末梢神経障害に対する治療薬は記載がありません。
(PP)
 その中でオンコロジーの先生方が注目したのがこの薬でありまして、泌尿器の先生はもしかしたら御存じかもしれませんが、牛車腎気丸。糖尿病性の神経障害ですとか過活動性膀胱、最近では婦人科の先生方は、タキサン系抗癌剤の神経障害などにも症例報告をされている漢方製剤です。
(PP)
 まずは後ろ向きな試験を行って解析したところ、牛車腎気丸を使用している患者群では使うと、末梢神経障害の発現が少ないようだということが推測されましたので、次は前向き試験を行いました。
(PP)
 徳島大学を中心に多施設で使った群、使わない群でGrade2の末梢神経障害の発現率を見たところ、どうもいいようだと。しかし、これはまだプラセボを使っていませんので、まだクエスチョンということで、プラセボを使ったフェーズ2が試験を実施しました。
(PP)
 この試験は本当にフェーズ3に行っていいかどうかを確認する(薬剤のパワーを見る)試験なので、目標症例数は90症例で実施しています。
(PP)
 Grade2の末梢神経障害の発現率ですが、リスク比が実は0.9以下になれば、フェーズ3に進んでもいいよという判定になりますが、0.76という結果が得られフェーズ3に進んでもいいだろうということが確認されました。
また、Grade3の末梢神経障害の発現率に至っては半分くらいまでプラセボと比べて低いという結果が得られました。
(PP)
 当然ながら、抗がん剤の作用を打ち消してはまずいので、それに関しても検証したところ、特にはないということも確認できました。
(PP)
 ということで、これも厚労省の方に予算をいただきまして、今、もう少し多施設できちんとしたスタディをやっている最中でございます。これがGENIUS試験という試験であります。これも多分近々、この結果がどういう感じになるのか、プラセボ対照なのでわかりませんが、何らか国民の皆様に提供できればと思っております。
(PP)
 実際に漢方薬の研究の場合には、やはりまずは使用経験下で本当にどうなのかをきちんと検証した上で、前向き試験、可能であればプラセボを使ったフェーズ2試験を行いまして、最後は検証というようなロジックがいいのではないかということで、弊社に関しましては、これ以外の漢方処方に関しましても、勿論進み方に差はありますが、こういう形で進めております。
(PP)
 これは2009年の『SURGERY』にレビューが載ったものですけれども、漢方薬の代替医療からの脱出。ほかの代替医療を否定するつもりは毛頭ありませんが、医療用漢方薬に関しましては、きちんとしたエビデンスを基に代替医療から脱出したいと考えております。それにはやはりきちんとした作用メカニズム、安全性、有効性というものをきちんと検証する必要があるだろうと考えます。
(PP)
 日本は私が言うのも変ですが、医療の最先端と思っておりますし、特に手術などに関しては間違いなく最先端医療と思っています。そういうようなものと日本の伝統薬、漢方薬と組み合わせることによって、日本の国民だけではなくて、できれば世界に出したいというのが私どもの願いであります。
 以上であります。
○大島座長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの報告に対して御質問、御意見があればいただきたいと思います。いかがでしょうか。どうぞ。
○伊藤構成員 発表ありがとうございました。大阪大学の伊藤です。
 漢方を服用している方は、一般の西洋薬も服用されている方が多いかと思います。生活習慣病を多くの方が持っておりますので、そのときに薬剤との相互作用という問題が出てきます。肝臓のCYPの酵素で代謝されることが多い訳ですが、薬剤の情報は十分公表されているのですが、この漢方は複合剤といいますか、いろいろなものが含まれていて、それぞれについて、代謝の詳しい報告といったことは、ツムラさんの方で検討されているのでしょうか。
○高崎参考人 一番進んでおりますのは大建中湯でございまして、大建中湯はある程度ロジックができましたので、実は今、御紹介した抑肝散や六君子湯や牛車腎気丸に関しては、スピードに差はありますが、既にもう進めております。
○伊藤構成員 もう一つ、有効性を評価するときに、やはり客観的な指標、バイオマーカーというものを採用する必要があるかと思いますけれども、漢方の領域でどのようなバイオマーカーが有効だというような検討はされていますでしょうか。
○高崎参考人 一番難しいところではありまして、やはりどうしても客観的な、先ほどのメイヨーなどは例外としまして、例えばああいう試験を多施設で何百例もできるかといったら、なかなか厳しいところがありますが、特に今日、御紹介したものは、どうしても自覚症状に頼らざるを得ないと。だからこそ、プラセボスタディをやる必要があるだろうということです。
 ただ、今、先生から御質問があったようなバイオマーカー検査に関しましては、これはどうなるかわかりませんが、日本の技術、例えばメタボロミスクとか、そういうものを使った検討はしています。これが実際にどういう形で評価できるかどうかはわかりませんが、そういうバイオマーカー検討も徐々にいろいろな先生方の教えを借りながら、進めてはいます。
○大島座長 いかがでしょうか。複数成分の配合割合について、それはどうやって決められているんですか。もともと歴史的に決まっているものが定着していると考えてよろしいですか。
○高崎参考人 我が社のものに関しましては、実際に漢方薬の場合はほとんどが「湯」と書いてあります。これは湯液と言いまして、特に主成分レベルは煎じて使うものと同等のレベルに調整をして、ロット間でばらつきがないような形の調整をしております。
○大島座長 その配合割合の一番基本となるものは何かあるはずですね。それは歴史的な、中国から使われてきた伝統的な配合割合によると考えていいんですか。
○高崎参考人 現状はそうです。
○大島座長 ほかにいかがでしょうか。
○梅垣構成員 今の先生がされた質問と関連するのですけれども、漢方は煎じて飲むのとそうでない、製剤として使うのとがあります。両者で差があるのでしょうか。全くないのでしょうか。
○高崎参考人 実際にそのお答えに回答するデータを弊社は持っておりません。湯液と今の医療用製剤で一緒かというのは、まだ検討していませんので、あくまで我々としては、医療用製剤ということで厚労省に認可された製剤でエビデンスをやっていますので、それに対する回答は持ち合わせておりません。
○大島座長 いかがでしょうか。どうぞ。
○伊藤構成員 臨床試験をする場合、プラセボコントロールを用いますが、漢方では、エキス顆粒では結構な量になると思うのですが。顆粒の形ではなくて、カプセル化してプラセボとして使われるのでしょうか。
○高崎参考人 製剤技術が上がりまして、勿論すべての製剤がつくれるわけではないのですが、処方ごとのプラセボを作成して、顆粒製剤として、要は実臨床で使われているようなものと全く見分けが付かないプラセボをつくりまして、臨床試験、RCTを行っております。製剤とかではありません。
○伊藤構成員 メカニズムについてですけれども、あるメカニズムが想定されるというときに、これをもう一度実験レベルに戻す、すなわちリバースド・トランスレーショナルリサーチといいますか、そういったアプローチはされていますでしょうか。
○高崎参考人 例えば先ほどの抑肝散のグルタミン酸トランスポーターの不活という話をしましたが、グルタミン酸が異常を起こして、ある意味で疾患を引き起こしているだろうと思われているような疾患。例えばハンチントン舞踏病ですとか、先生方でいいますとモルヒネの専門。こういうものはもともとグルタミン酸のトランスポートをおかしくするということが言われていますので、そういう疾患に対して抑肝散を使ってどうかというスタディは既に行われています。
○伊藤構成員 最初の説明の中でレセプターの話がございましたね。レセプターを介したシグナルが有効ということであれば、そこを選択的にブロックしたり、あるいは動物でノックアウトをしたりとか、そういったアプローチも必要かと思いますが、その辺はどうでしょうか。
○高崎参考人 大建中湯に関しましては、先ほどTRPA1という話をしましたが、そういうノックアウトモデルをつくって、消化管の運動や血流というものがシャットアウトされるということをきちんと検証しています。
○伊藤構成員 ありがとうございました。
○大島座長 どうぞ。
○門田構成員 漢方のエビデンスを証明していく、非常にいい方向で行っていただいていると思います。私たちも一緒に研究させてもらいましたけれども、これを始めて、ありとあらゆる漢方をエビデンスを証明していくという方向性でいくのか。結果として出しやすいものが出てきつつあるというのは非常にいいと思いますが、これから先、どういうふうに考えておられるのですか。
○高崎参考人 非常に難しい質問で、弊社だけでも129処方を持っております。当然ながら、全部をいきなりやるというのは不可能でございまして、やはり優先順位。では、どういう優先順位かと申しますと、患者様に一番使われているものからです。国民に一番使われているものか順番にやっていくという形で、優先順位は付けています。
○門田構成員 今は漢方の話で、そのほかにも統合医療はいろいろと出て、EBMをどういうふうにしていくかというのが我々のテーマの一つだと思うんですけれども、その考え方をツムラさんが内部でやっておられると。その線引きをするのかしないのか。優先順位の高いものからやっていくというのはわかるのですが、その後にどう対応するかという、我々はもっとも、幅を広げてそれを検討しなければいけないわけですけれども、どう考えたらいいのかなと思っているから、逆に一社としてやっておられるので質問をしたわけです。
○高崎参考人 これは会社というか、私個人の意見としてでよろしいでしょうか。やはり私自体の考え方としては、だれが医療行為を行うかということで線引きしたのが一番いいのではないかと。少なくとも医療漢方製剤に関しましては、先生方のきちんとした御診断の下に患者に投与されますので、担保されるという言い方はわかりませんけれども、そういうような医療従事者、医師や薬剤師というような方々が使うものと、語弊はあるかもしれませんが、そういう何らかの線引きは必要ではないかとは思います。これはツムラの意見ではありません。私の意見です。
○大島座長 使う、使わないはいいんですけれども、その線引きをする線はどこで引くんですか。
○高崎参考人 私自体の意見としましては、まず品質をきちんと担保しないと問題かなと。医療行為に使うのであれば、ある程度の品質のガイドラインをきちんと持つべきではないか。例えば鍼とか灸とかその辺はわかりませんけれども、生薬製剤に関しては先ほど言いましたけれども、農薬とか重金属とか微生物、そういう問題もありますし、そういう製品を使って健康被害がいっぱい起こったと、一時期アメリカでは大騒ぎになりましたので、そういうところを考えたときに、プロダクトとしての有効性の前に国民に与える健康被害のことを考えたら、そこからまずは入るべきではないかと私は思います。
○大島座長 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。
○梅垣構成員 今おっしゃったのと同じように思います。こういうのをやるときには、だれがやるか、何を使うか、これが非常にポイントになります。何を使うかというときに、例えばツムラさんでは品質をきっちりされていると思いますが、ほかに名前は同じでもいろいろな商品が出回っていると思います。そのばらつきというか、そういうのがわかればですけれども、どういう状況になっているかを教えていただければと思います。
○高崎参考人 弊社ではほかのメーカーのものははかっていませんので、データは持ち合わせておりません。ただ、我々としましては、できる限りのことはきちんと、最近ですと一部の生薬は日本でつくっていますので、そういう生薬に関しましては放射能の検査も全部入れていまして、放射能が出たものは使わないと。今まで出ていないんですけれども、そういうものもきちんと担保して、これはあくまでも医療用ということを考えたときには、国民の税金を使っているわけなので、そういうところはきちんと可能な限り、安全性は担保したいという取組みはしています。ほかのメーカーさんはわかりません。
○梅垣構成員 それで天然物の場合、産地とか収穫時期によっても違いますが、どこでとれたかとか、そういうのを規定してあるルールみたいなものが漢方薬全体であるのか、ツムラさんにだけあるのか、そこら辺のところをお聞きしたいです。
○高崎参考人 我が社は実際のところは、現状では8割の生薬を中国から輸入という形になっていますが、ほとんどは自社農場で契約でやっていますので、今、言った品質管理をきちんとしていると。トレーサビリティをできていますので、そういうようなものが入らないような管理はきちんとしております。怪しいものが出たらもう使わない。ほかのメーカーさんに関しては、私はわかりません。
○大島座長 いかがでしょうか。どうそじ。
○伊藤構成員 私は西洋医でございますけれども、漢方を使うというときに、それぞれの商品について、それほど精通しているわけではないので、どうしても東洋医学に造詣の深い先生に御相談することがあろうかと思います。また、逆に東洋医学の先生が漢方を使うというときに、西洋薬も併存している場合には、相互の意見の交換が必要だと思います。そういう意味では、統合医療というのはまさに理想とする形でございまして、患者さんを中心にチームでやっていこうというわけですから、その辺の連携は漢方に限らず重要だと私は考えておりますが、いかがですか。
○高崎参考人 全く同感です。ただ、それもある程度、西洋医学と漢方医学を融合するのであれば、やはり同じ土俵で、現状はどうやってやるのかと言ったら、方法論としましては漢方医学側が西洋医学の立場に行くしかないので、それをやった上で統合していくというのがリーズナブルではないかと。
 今後、いろいろな切り口でいろいろな評価ができるかもしれませんが、現状はそれがないわけですが、ブラックボックスはブラックボックスでいいのかという問題ではないと思いますので、進んだ科学を駆使して、少しでも漢方のブラックボックスに数%でもいいからメスを入れたい。
 私どもはこういうことをやっていると、これも表現が悪いんですけれども、漢方を中心にやられている先生方からは、結構批判的に言われることもあります。しかしながら、我々の調査結果では、実際に今、伊藤先生がおっしゃったような、ほとんど9割以上の先生方が漢方薬を西洋医学と一緒に使っているんです。そういうことを考えたら、きちんとしたエビデンスをつくって、相互作用も含めて見ていく必要はあるだろう。
 作用機序にこだわるところは、勿論新しい疾患への対応もありますが、今後は新しいキャラクターの新薬が出る可能性もあります。例えば分子標的薬とかはまさに。そのときにあらかじめ漢方薬でこういう作用がありそうだということがわかれば、事前に相互作用なども予知できるのではないかということも含めて、作用機序を成分レベルできちんと押さえたいということは考えています。
○大島座長 いかがでしょうか。どうぞ。
○羽生田構成員 この会で前にお話を聞いたときに、同じ成分の組み合わせでも量によって効く部位がかなり違うというお話を伺ったのですが、今回これを見ると既に製品として出ているものについての効果であるとか、そういったものをやったのか。それ以前にもう既に量による違いは研究として終わっていて、製品化されたものを今回こうやってデータとして出してきたのか。
○高崎参考人 今やっている研究に関しましては、もう既に商品化されたものを中心にやっています。ドーズ試験は実際に漢方薬ではない。さっきのメイヨーもそうですけれども、今、取り組んでいる最中であるということになります。
 では、なぜ7.5gなのか、なぜ9gなのかというところは、まだこれからやっていかなければならないですし、多分病態とかによってドーズは変わるべきだろうと。一般的には、添付文書上は空腹時投与になっていますが、本当に空腹時投与でいいのかに関しても、今後、薬物動態などが出てきますので、そういうものを見ながら、やはり安全に有効性が出る投与方法、そういうところなどにも切り込んでいければと思っています。
○大島座長 いかがでしょうか。
 非常に細かいことを言うようですけれども、例えばある漢方の成分が10種類入っているとして細かく成分分析しようとすれば、その一つ一つの作用機序について、しらみつぶしにやっていけばわかりますね。しかし、それぞれの相互作用を考え始めると、10種類の相互作用などということを考えたら、ほとんど無限大の状況になってしまいますが、そういうことについてはどのようにお考えですか。
○高崎参考人 まずは臨床試験の結果が一番重いと思います。きちんと患者様に使っていただいて、安全性、有効性、そういうものを担保に、それを裏づけする、こういうような作用があるであろうと。
 よく言われるのが、こういう成分がこう動かすのだったら、これだけで新薬をつくればいいのではないかというような発想は当然よくされるわけです。本日は示しておりませんが、例えば大建中湯の山椒と薬用人参の成分、ジノセノサイドというものがあるわけですけれども、それと組み合わせると血流が単独よりも上がるんです。そういうような配合の妙というのも多分、今後わかってくるだろうと。
 今、先生がおっしゃったところは私もすごく疑問で、何でこういうものがこういう割合で入っているのだろうかというところは、今後、徐々に明らかになってくるというのは語弊があるかもしれませんが、明らかにしたいと思っています。
 ただ、ベースは患者様に使っていただいた臨床試験の結果が一番重いのではないかと、私は思います。
○大島座長 いかがでしょうか。
○羽生田構成員 今のお話は、かなり昔から使っている結果として、こういう量でいくのが一番効果が高いという評価をして使っているということですね。それについてのエビデンスはこれからはっきりさせていきたいということですね。
○高崎参考人 はい。
○大島座長 いかがでしょうか。
 役所の方に伺いたいのですけれども、仮に医療という名前が付いて、医療製剤であるという形になるのかどうかはよくわかりませんが、そうなった場合の品質管理に求められるものと、何も医療という名前が付かないまま、健康食品のような形で動いている場合に求められる品質管理は全然違うと。その辺の違いはどういう違いなのか、もし公式な言い方としてこうだということがあれば。
○佐々木調整官 難しいお題だと思います。医療における品質管理でございますが、今、恐らく先生がおっしゃられているのは、我が国の医療の制度で担保された中での品質管理のことをおっしゃっているのではないかと思いまして、そうでないもので品質管理は、例えば食品は食品で品質管理の仕組みとか、そういう話はありますので、一概に同じように比較をするのは難しいかと思います。
 少なくとも国内において、保険制度はございますけれども、医療法、医師法の中で医師が提供する医療という欄においては、個々については品質管理がすべてにおいてされているかどうかはちょっとというのがありますが、一応、国内法では免許皆伝の中で、医師においてはその責任の下、いろいろな医療が行えるという仕組みになっているかと思っています。
○大島座長 さっきの話でもあったように、会社の独自の考え方によって、その品質管理は厳しく行われているところもあれば、行われていないところもある。そんなことは当たり前でしょうという範囲の話なのか。人の口に製剤として入るものである以上、最低このレベルのことは押さえられなければいけない。特に医療という名前が付く場合にはこうだというような基準のようなことが聞きたかったんです。
○関野調整官 先生の今の御質問に対して、医療というとらえ方で答えてはいないかもしれませんが、会社の方が提供するものはあくまで製品として、医薬品としての一つの物が流通するわけですから、それに対しては薬事法がきっちりかかっていまして、品質、有効性、安全性がそれぞれ担保された上で国が認可して、その範囲内において流通しているということで、最低限といいましょうか、コンセンサスを得た仕組みの中で動いているということが言えると思います。
 一方、健康食品のような場合ですと、これは薬事法の対象外になりますので、先ほど触れられたような食品の分野でのルールにのっとって行われているという意味では、多少そこの求めるハードル基準というものは違いがあるということは言えると思いますが、そこにどれだけ医師が介在することによって、医療という名の下に医薬品が使われるのか。あるいは医療という一環で統合医療という言葉で言い表すのがいいかはわかりませんが、食品が一部、役を成すといったこともあり得るかもしれませんが、そこは現在、医師という形で、その中で判断されているということで担保されているのではないかと思っております。
○大島座長 いかがでしょう。どうぞ。
○伊藤構成員 漢方は医薬品のカテゴリーに入っておりますので、いわゆるGMPのグレードでつくられていると思います。ただ、サプリメントは特に日本の場合は千差万別ですが、アメリカではDSHEA法という法律の下、GMPでつくられています。従って、米国でつくっているサプリメントは安心ですけれども、日本はそういう指導を受けているということを聞いていますが、ほとんどのものがGMPグレードではない。それを目指そうとしているということは聞いております。
○大島座長 ありがとうございました。どうぞ。
○南構成員 かなり基本的なところで恐縮ですが、最初に今日のお話は、ここでは漢方薬というのは医療用の漢方製剤のことを意味するというお話で、会社としては129処方をお持ちだというお話ですけれども、これは医療用漢方製剤を129とすると、医療用でない、いわゆる一般用といいますか、そういうものも含めると、ツムラで扱っていらっしゃるものは、どの程度の数になるんでしょうすか。
○高崎参考人 我が社はOTCも若干扱っておりますけれども、やはりそのはんちゅうに入りますので、実は129処方プラス生薬で2つ、薬用人参の粉末と附子、トリカブトですね。それを2つ扱っています。
○南構成員 他社の品質は関知していないというお話ですが、これは業界としての取組みは何かないものでしょうか。
○高崎参考人 日漢協としまして、そういう取組みはされているのではないかと推測はされますが、私は詳しいデータとかは聞いていませんので、わかりません。
○南構成員 日漢協というのは漢方の生薬で、そこに御社も入っていらっしゃるということで、その取組みとしてはよくわからないということですか。
○高崎参考人 はい。
○南構成員 わかりました。
○大島座長 ありがとうございました。時間もありますので、次へ進んでいきたいと思います。
 次の議題は論点整理ですが、これまでの議論を事務局の方でまとめてもらっていますので、本日はその説明を基にして、更に議論を深めたいと思っています。
 事務局の方から論点整理の説明をお願いいたします。
○坂上課長補佐 事務局でございます。
 それでは、資料2をごらんいただければと思います。これまで本検討会で御議論をいただきました内容を基に、「論点の整理と論点に関する検討会におけるこれまでの議論」ということでまとめさせていただいております。
 四角囲みですけれども、これは前回、前々回と論点メモという形で、論点の整理をさせていただいておりますので、その4つの論点を再掲に近いような形で四角囲みにしておりまして、それ以降、これまで検討会でいただきました御意見、御議論ということでまとめさせていただいております。
 それでは、まず1ページ目。
 論点1「統合医療」をどのような概念としてとらえるべきか。
 ? 本検討会でいう「統合医療」とは、近代西洋医学と相補・代替医療や伝統医療等とを組み合わせて行う療法とすることでよいか。
 ? 本検討会でいう「統合医療」の提供主体をどのように考えるか。
 1—1 「統合医療」をとりまく背景
 ○ 近代西洋医学については、急性疾患に対し多大な貢献があったが、がん等の慢性疾患については限界が生じていること、臓器別に細分化が進んで全体が見ないこと、及び医療費が増大していることといった課題が指摘されている。
 ○ 一方で、高度先進的な医療には必ずしも当たらないものに対する期待感から、相補・代替医療や伝統医学など、「統合医療」の範疇に入る可能性があるものが国内でも多く利用されているという実態がある。
 ○ また、最近の科学の方向性として、従前からの「要素還元論」的なあり方がさまざまな分野で見直しされており、例えば、全体を「複雑系」としてとらえることの重要性が指摘されている。さらに、近代西洋医学と「統合医療」とを必ずしも対立的にとらえるのではなく、新しい医療のあり方として捉える考え方もある。
 1-2 本検討会における「統合医療」の内容
 ○ 社団法人日本統合医療学会によると、「統合医療とは、さまざまな医療を融合し患者中心の医療を行うもの・・・伝統医学と相補・代替医療、さらに経験的な伝統・民族医学や民間療法なども広く検討しています。」とされている。
 ○ 米国衛生研究所相補代替医療センターにおいては、「統合医療」を、「従来の医学と、安全性と有効性について質の高いエビデンスが得られている相補・代替医療とを統合した療法」と定義している。
 また、世界保健機関(WHO)は、「伝統医療」について、「それぞれの文化に根付いた理論、信心、経験に基づく知見、技術、実践の総合であり、健康を保持し、心身の病気を予防、診断、改善、治療することを目的としている。」としている。
 ○ 「統合医療」は、近代西洋医学を前提として、これに相補・代替医療や伝統医学等を加えて更にQOLを向上させようとする医療である。
 ○ これらの考え方を踏まえつつも、「統合医療」はあまり厳密に定義するのではなく、大まかな理解で捉えるべきである。
 1-3 本検討会における「統合医療」の提供主体
 ○ 相補・代替医療や伝統医学等については、必ずしも医師等の医療関係者により提供されるものに限らず、医師等以外の者により提供される場合や、利用者自らが利用しいる場合がある。
 相補・代替医療と言われる療法の具体的な例につきましては、下の四角囲みをごらんいただければと思います。
 ○ 「統合医療」は近代西洋医学とその他の療法を組み合わせたものとした上で、医師主導で行う医療と捉えてはどうか。
 続いて、3ページ目をごらんください。
 論点2 「統合医療」について、現時点において、どの程度の科学的知見が得られていると言えるか。
 ? 現時点では科学的知見が十分なものから全く得られていないものまで存在するが、このような現状に鑑みて、今後、どのような取組を行うべきか。
 ? 「統合医療」に関する科学的知見が十分に得られれば、「統合医療」の利用が促進されると言えるか。
 2-1 「統合医療」に関する科学的知見
 ○ 平成22年度厚生労働科学研究において、2008年から2011年の3年間、英国のコクランライブラリーに報告された相補・代替医療に関するシステマティックレビューについてですが、この分析によると、鍼療法の4件等については「効果あり」とされているものの、大多数については「未確定」とされているとのことであった。
 ○ 「統合医療」は個人の反応が異なることからランダム化比較試験(RCT)が実施できない分野が多くあるとされており、評価が非常に困難とされている。
 ○ しかしながら、相補・代替医療に関するランダム化比較試験(RCT)の論文数は増加傾向にある。
 ○ また、米国国立衛生研究所ではランダム化各試験(RCT)だけでなく、ベストケースの報告も行っている。
 今後、fMRIなどの新しい技術開発により、これまで不明であった療法の作用機序が客観的に解明される可能性がある。
 2—2 「統合医療」の利用状況
 ○ 平成22年度厚生労働科学研究の中で、一般人を対象とした、医療機関以外で提供されている相補・代替医療等の利用状況に関する調査の報告で、いずれの療法においても、「利用したことがない」との回答が最も多かった。
 具体的な内容につきましては、5ページ目の表1をごらんいただきますと、ここの表で「利用したことがあり、現在も利用することがある」、「以前利用したが、現在は利用をやめた」、「利用したことがない」、「覚えていない・わからない」といった項目がありますが、いずれも利用したことがないという回答が多くを占めております。
 続いて本文を戻っていただきまして、2つ目の○です。
 ○ また、相補・代替医療等に対し持っているイメージについての調査。
 こちらも詳しくは6ページ目の表2をごらんいただければと思います。各種療法に対するイメージで「わかっている」と回答された割合が多い療法につきましては、マッサージ、漢方、サプリメントが多いものの、イメージがわからないと回答されたものにつきましては、多いものは下の3つになりますが、ホメオパシー、アーユルベーダ、温熱療法につきましては、なかなかイメージがわからないという報告がなされております。
 続いて、表3です。医療機関以外で提供されている相補・代替医療等を利用する際の参考とする情報内容についての調査ですが、回答数として一番多かったものは価格ということで、58.9%を占めております。このような結果により、必ずしもエビデンスに関する情報が優先されているわけではなく、むしろ価格が低いことに関心が高い可能性が示唆されております。
 続きまして、7ページ目をごらんください。
 論点3 「統合医療」の安全性・有効性等について、どのように評価したらよいか。
 3—1 評価のあり方
 ○ 「統合医療」にも、副作用や医療事故につながっているものがあるとの指摘がある。「統合医療」を推進していくためには、安全性・有効性に関する知見を集積し、それらを評価することが非常に重要である。
 ○ 「統合医療」のエビデンスについては、必ずしも全てがランダム化比較試験(RCT)によるものではなければならないという訳ではないものの、よりレベルの高いものがより多く集積されることが望ましい。
○ 有効性に関する評価のあり方として、その傾向や連続性を捉えるという考え方もある。
○ 例えば食事療法でも食物アレルギーがあるように、どのような場面でどのように摂取するかによって有効性が変わり得ることも考慮すべきである。
 論点4「統合医療」を推進していくためには、どのように取組が必要か。
 ? 「統合医療」を推進していくためには、安全性・有効性等に関する知見を集積し、これらのエビデンスを確認しつつ、必要な情報を発信することが重要ではないか。
 ? 諸外国の取組に参考になるものがあるか。
 ? その他、「統合医療」を通じて必要な取組があるか。
 4-1 今後の取組方針
 ○ 「統合医療」を推進していくためには、安全性・有効性等が適切な形で確立されなければならない。
 4—2 諸外国における取組み
 ○ 平成22年度厚生労働科学研究事業において、諸外国の内容がまとめられております。
 (1)米国
 (ア)米国衛生研究所相補代替医療センターにおいて、エビデンスの構築に努められております。また、ウェブサイトを中心に、(i)患者/一般向け、(ii)医療従事者向けの2種類の情報配信を行われております。
 (イ)ハーバ—ド大学代替医療研究センターにおいて、こちらのセンターで研究を実施されており、研究者の育成も行われております。また、こちらのセンターの関連診療所において、相補・代替医療を提供しているという状況になっております。
 (2)中国
 ・国の医療政策においては、近代西洋医学と伝統中医学とが同等に取り扱われているという状況があります。
 ・2011年に、第12次伝統中医学五カ年計画が公表されており、同計画では、伝統中医学が積極的に保護、支援されるべきとされております。
 (3)インド
 ・医療体系は、近代西洋医学と伝統医学の二本立てとなっており、医療施設も医師もそれぞれ別立てとなっております。
 ・近代西洋医学の医師とインド伝統医学であるアーユルベーダの医師との協力により、近代西洋医学のり最先端の技術と伝統的医学資源の知見を用いた臨床研究プロジェクトが進められております。
 (4)韓国
 ・医療体系は、近代西洋医学と伝統医療の二本立てとなっており、医療施設の医療従事者もそれぞれ別立てとなっております。
 ・拠点病院において、近代西洋医学と伝統医学による統合医療の研究がおこなわれております。
 4—3 情報発信のあり方
 ○ 「統合医療」に関する安全性、有効性を含めた何らかの情報発信機能を、特定の機関が他との連携によって担うことにより、研究者は一般国民向けの情報発信が整備される必要がある。
 4—4 その他
 ○ 世界保健機関(WHO)では、国際疾病分類(ICD)の第10版から第11版への改訂作業が進められており、その中で、「伝統医学」を盛り込むことが検討されている。また、国際標準化機構(ISO)において、中国が中医学に関する内容を申請しているという状況でございます。
 ○ 「統合医療」には、病気になる以前の状態から兆候を捉え、治療を行っていくという考え方がある。日頃から自身の健康管理に努めていくという姿勢が重要である。
 以上、簡単ではございますが、内容をまとめさせていただいておりますので、御報告させていただきます。
○大島座長 ありがとうございました。
 今お話を聞いたように、諸外国でも随分、統合医療について力を入れ始めているということ、日本でも実際に、統合医療に関する関心が少しずつ高まっている。特に、鳩山元首相の発言以降だろうと思いますが、民主党の方で統合医療を進めるべきだというプロジェクトチームをつくって、政府としてもこれを進めていこうと決定しているという背景がありまして、この委員会が設置されたという経緯だと思います。
 その割にはと言うとあれですが、着地点がよく見えにくいところが少し難点で、この委員会に一体何を求めるのかということがあります。今、日本はこのような情況ですので、放置するわけにはいかぬぞということだろうと思います。こういった背景の中で専門家に集まっていただいて、統合医療というものをどう整理をしたらよいか、この委員会の結論として持っていけたらと思っていますが、そのようなことも頭の中に入れておいていただきながら、今の論点整理について御意見をいただきたいと思います。
 まず、最初の論点1について、いかがでしょうか。
○羽生田構成員 統合医療という、医療という名前が付いているんですけれども、相補・代替医療というのは、医療であるという意味で使っているのか。相補・代替だから、医療でないという意味で使っているのか。どちらなのでしょうか。
○大島座長 どうぞ。
○佐々木調整官 事務局からお答えします。微妙な言い回しかもしれませんけれども、今回、2ページ目の資料では、「『相補・代替医療』と言われている療法の例」とさせていただいていまして、医療という形で技術はくくりにくいのかなということで、ここではとりあえず療法として挙げさせていただいているところでございます。
 ただ、国際的には、この辺りは相補・代替医療という形のものですから、一応引用という形で、「相補・代替医療」にかぎ括弧を付けているのは、そういう意味でございます。
○大島座長 よろしいですか。どうぞ。
○羽生田構成員 統合医療という名前が医療かどうかというのは、最初の委員会でももう既に議論が始まったと思うんですけれども、この?の最後に「組み合わせて行う療法とする」、療法というのはやはり違う意味でありますから、統合療法ならわかるんですよ。今日お話を聞いたような漢方は、これは医療の中の一つとして既にいろいろ使われているから、医療として認められているものと私も解釈をしているのですが、それ以外に後に出てくる四角の中で、とても医療とは言えないものがいっぱいある。
 ただ、療法という言い方であれば、療法なのかなという思いもするので、統合医療ではなくて、統合療法だったら理解がしやすいと私は思っています。
○大島座長 いかがでしょうか。どうぞ。
○伊藤構成員 やはり統合医療という名前であるからには、医師が主導でリードしていかなければならないと思いますので、相補・代替医療も医療ですけれども、これはその手法と私は考えていまして、相補・代替医療のいろいろな手法にエビデンスを付けて、現行の医療と融合させ、医師が主導でやっていくという立場が統合医療と考えます。
○大島座長 いかがでしょうか。どうぞ。
○門田構成員 今、羽生田先生のおっしゃられたことは、私も同じようなことを感じておるんですけれども、統合医療というのは最初の論点1だけではなくて全体にわたるんですが、2ページの四角に囲まれたものを入れておって、これをすべて含めた段階で統合医療というまとめ方をされたときに、羽生田先生も心配されているんだと思うし、私もそうだと思います。
 また、伊藤先生が言うように、統合医療というのであれば、多分、伊藤先生も同じことではないかと思いますが、この全部が統合医療として考えていらっしゃらない、医師がするというようなことになれば、これは違うと。そこのところをクリアーにするのは残った問題で、これ全部を挙げて統合医療としてまとめるというのは、西洋医学の立場からということになるかもしれませんが、少し問題が残るのではないかと思います。
○大島座長 いかがでしょうか。どうぞ。
○梅垣構成員 私は健康食品とかサプリメントの分野をやっているんですけれども、例えば2ページの一番上のWHOのところで、心身の病気の予防、改善、治療することを目的としているというのが伝統医学と、こういうふうに書いてあるんですんですけれども、基本的にサプリメントは薬ではないというのは国際的にものすごく強調しています。アメリカのダイエタリーサプリメントの話を先ほど伊藤先生が話されていましたけれども、GMPでつくる、有害事象があったら報告するとなっていますし、それでも病気を診断する、予防する、治療するという表現は一切認められていません。国内外で薬以外のものと薬は明確に区別をするようになっています。
 なぜそうなっているかというと、だれが使うかというのが一番問題になるのと、何を使うかというのも問題です。使う物の品質がしっかりしているものは、それなりに使えるかもしれませんけれども、名前が同じでも全く違うものが食品の分野にはあるわけです。ですから、そういうことを考えると、この枠の中に入っているのはさまざまなものが含まれていると思われます。
○大島座長 アメリカでは、サプリメントは統合医療という範疇には入っているんですか。
○梅垣構成員 それが私自身もよくわからないですけれども、一番重要なのは、だれがやるかです。医師主導でやるのだったら医療としてできるかもしれませんけれども、全く知識がないとか、何かが起こったときにフォローできないような人がやると、やはり問題になると思います。
 例えば健康食品の場合、何かあったらお医者さんに相談してくださいと言われています。お医者さんに聞くと、相談されても困るよと言われることもある。そのようにどうやって対応するかはわからないということが実際にあるわけです。
○大島座長 現実のところは、例えばある医者が、これはいい治療法だと自分は信じているから、これをやりますと。ただし、保険診療には認められていませんので、この部分は自費でやりますというふうに言った場合、これはどうなるんですか。
○佐々木調整官 それも医師が治療目的として処方している用法でありますので、医療という言い方になろうと思います。
○大島座長 医師主導の医療ですね。
○佐々木調整官 さようでございます。
○羽生田構成員 保険医療にはならないで、いわゆる全額自費のいわゆる自由診療。
○大島座長 そうですね。それも一応、医療の範疇には入ってくるということですね。
 いかがでしょうか。どうぞ。
○門田構成員 先ほどと同じような主張になるかもわからないですが、このまとめたものの流れの中で、4-2で福井先生のまとめられたものが各国において、ずっと引用されているんですね。これの流れを読むと、それぞれの国が少々やり方は違うけれども、この統合医療的というんですか。今回の主題になっているようなことについては、ほぼ認められているような流れになっていると思うんですが、各国がそれぞれ対象としているものは、先ほど言いました、2ページ目の四角の中に入っているようなものをどう扱っているかというのは、はっきりしているんですか。
 これが全部含まれた上で、各国がそういうふうな扱いなのか。各国それぞれの内容が違うのか。この文章で読む限りは、この四角の中に入っているものも、ほぼ全世界で認められていることの流れになっているようにとれるんですが、その辺りは実際にどうなのでしょうか。
○大島座長 いかがですか。
○佐々木調整官 各国の状況について、詳細を確認できているわけではないので、この2ページに出ている相補・代替医療のすべてを取り込んだ形での統合医療かどうかというのは、正直わかりません。ですから、鍼とか韓国医療で有名だと思いますが、2ページに挙げているのは、あくまでも相補・代替医療と言われている療法の例でございます。
 これらすべてを取り込まないと統合医療として整理できないというよりは、むしろ今回この御議論としては、近代西洋医学とその他の療法を組み合わせて行う。そこに医師が介在しているというものを統合医療として扱うことについて、どう考えるかという概念整理をお願いしたいなと思っていまして、一つひとつの療法の是非について御議論をいただくには、それは今後の知見の集積が必要ではないかと、事務局としては考えているところでございます。
○大島座長 どうぞ。
○伊藤構成員 門田先生の質問ですけれども、私の知る限り、やはり各国の事情でどれを使っているかというのはさまざまだと思います。例えばドイツでは、伝統的に温泉を使った療法が非常にエビデンスレベルの高いところまで進んでいますし、それをすべての国に持っていくというわけではなくて、各国の事情というのがかなりございます。
 したがって、そういう意味では、日本独自の統合医療をつくっていかなければならないと思います。日本にはいろいろな手技もあり、自然産物も非常に豊富ですので、そういうものを使った日本独特の統合医療を各国のいろいろな事例を参考にしながら、展開していくべきだと考えます。
○大島座長 いかがでしょうか。そういう意味では、日本は漢方については世界に先駆けて、統合医療として扱っているという言い方もできるわけですか。これは国として、医療としても認知しているし、保険診療の中にも入っていると。
 そうすると、今、統合医療と言っている、2ページに挙げられているものを漢方並みに持っていくには、一体どうしたらいいのかということを議論せよと言っているようにもとることができますね。医師主導でやる限り、しかも自費診療でやる限りは、勿論、補完治療という格好でやる分には保険診療ということが加わってきますから、これは非常に大きな制限が出てきますけれども、そうでない限り、自費診療でやる限り、医療という名前のもとに、どういうふうにでも自由にやってくださいというのも、認められているということになるわけですね。
 そうすると、あえて医療という名前を付けて、国が関与するということは、それを保険診療の中に参入させるワンステップとして考えているのかという考え方ともとれますね。
○佐々木調整官 今、座長の方から漢方並みとか、もしくは保険診療という話がございましたけれども、この検討会ではそこまで御議論をいただくかどうか、まさに先生方の御議論に委ねたいと思っておりますが、少なくとも統合医療という形で言われていて、この相補・代替医療は世の中にある。そういう現状を見つつ、今後、その統合医療を仮に推進していくとしたら、現時点で我々はこのような療法をどのようにとらまえて、今後どのような取組みが必要なのかというところに、まさに御意見なり御検討をいただけたらと思っているところでございます。
○大島座長 いかがでしょうか。どうぞ。
○羽生田構成員 1-1の一番最初の○に、私どもが一番心配している言葉が入っている。3行目「医療費が増大していることといった課題が指摘されている」。統合医療を使って、今の医療費を削減しようという意図が見えるのではないかと心配をするわけです。政府とすれば、当然医療費のことを考えますから、そういった意味でこういう言葉が入ってくるというのはあり得るだろうということで、かえって出てくることが一番心配していることであって、本来その医療として行うべきか。これはそうではないとか、そういった議論は医療費の増大とは全く関係ない話であって、それがここへ出てきてしまうということが、何か政府ではこれがその奥にはあるのかなということを考えてしまう。一番心配しているところです。
○大島座長 どうぞ。
○佐々木調整官 基本的に医療費の云々かんぬんとしては、政府全体としての政策は勿論あるんですけれども、統合医療の議論の中で医療費云々かんぬんの議論をするつもりはございません。ただ、冒頭申し上げましたように、こちらの整理ペーパーは論点を4つ提示させていただいていますけれども、過去2回の検討の中でいただいた御議論と、研究報告書とかで記載されている内容を転記したりという形でまとめさせていただいておりまして、この1-1の最初の部分につきましても、いただいた御意見を記載させていただいておりますので、これについて御議論を深めていただくなら、またお願いしたいと思っています。
○大島座長 いかがでしょうか。どうぞ。
○伊藤構成員 やはり医療費の問題というのは、避けて通れないことだと私は思います。実はアメリカのNCCAMも明らかに、その戦略計画として、統合医療の推進を謳っており、将来の医療費削減のための先行投資であると位置付けています。現時点で医療費がどんどん膨らむ状況下で、医療保険制度が破綻することは容易に想像できるところですので、この統合医療は現行の患者さんに対する医療もそうですけれども、疾病予備群の人に対して、いかに統合医療を使って、未病の状態を維持するかということ、すなわち予防医学的な意味合いが統合医療のゴールだと思っています。例えばメタボの人をいかに脳梗塞とか心筋梗塞にしないかとか、あるいは一番大事なのは、がんというのが大きなエリアですけれども、がんのサバイバーというのが全く放置されている状況です。
 がんのサバイバーは一応の治療が終わったら、もう医療施設に来ないわけで、統合医療はそういう人たちにしっかりとセルフケアーの重要性を啓発することによって、二次がんとか、がんの再発を遅らせるという手法ですので、これも必然として医療費の削減につながっていくわけでございます。
○大島座長 アメリカの場合には、統合医療というものが健康対策の全体の戦略の中に明解に位置づけられているという御意見でしたが、いかがでしょうか。どうぞ。
○門田構成員 先ほどの話に戻るのですが、この論点整理を今後どういうふうに使うのか。ただ、我々のこの検討会の内部の整理だけなのか。あるいはどこかにこれがある時点で、外に向かって発信していくものなのか。その辺りはどうなっていますか。
○大島座長 どうぞ。
○佐々木調整官 事務局からでございます。この資料2の論点ペーパーでございますけれども、いただいた御議論を踏まえながら、最終的にはこちらの検討会でのとりまとめ、報告書という形で発信していくものに発展していければと思っております。現時点では、いただいた御意見を項目ごとに並べて整理しているという形でございますけれども、本日から更に御議論を深めていただいて、少しずつそういったとりまとめの形で集約していただければと思っております。
○大島座長 論点2から4までありますので、次に論点2を中心に、前後しても構いませんので、統合医療について、現時点において、どの程度の科学的知見が得られていると言えるかを中心に御意見をいただければと思います。いかかでしょうか。どうぞ。
○梅垣構成員 一般的な人の考え方というと、いい情報だけが世の中に出ていってしまって、そればかりが見られているので偏っています。例えば統合医療というと、今の医療で限界があるというので、何かを一般の方が探しにいく。そうすると、インターネットなどでいい情報だけが出ている。悪かったという情報は一般的には出ないです。論文などでも、何か効いたとか効果があったような情報だけが出ていくということがあります。そのところの問題点がかなりあると思います。
 ですから、どこまで知見が得られているかが明確には整理されていない。また、だれが何を使って、どういう結果が得られたかというのが何となく整理されていない。でも、何となくよかったという情報が世の中に出てきているというのが今の現状だと思います。きっちりとした知見を整理していくというのが必要なのではないかと思います。
○大島座長 いかがでしょうか。そもそも統合医療に科学的な手法による知見で整理できるものですか。
○梅垣構成員 がん関係のところ、例えばアガリクスを使ったり、何とかを使ったりというのを調べられている先生方はいらっしゃると思います。ですから、今インターネットなどで出てくる、ぼやっとしている情報をしっかりさせる、だれが使えば効果があるのかを明確にする取組みされているところもあると思います。
○大島座長 漢方の場合は、前から漢方は違うという御意見がいっぱいあって、これは私もある部分は納得できるんです。何千年という伝統的な歴史があって、それだけ使われてきたという経験がありますから、安全性ということに関しては相当部分、経験の積み重ねがあるだろうということが言えるのではないかと思うんです。
 有効性は一体どうするんだというのが次のステップに当然なるのですが、ほかの新しい生物製剤にしても、あるいは化学合成剤にしても、成分分析があって、成分分析された成分が有効か安全かというところから、薬の場合は始まるわけですね。それを全く抜きにして、要するに安全性のところの担保を抜きにして、効くか効かないかという方向に行ってよいのかどうか。
 あるいは安全性を抜きにして先へ行ってしまうということは、科学的か科学的ではないか、比較試験で効いたか効かないかというだけの話ではなくて、その前の前臨床の部分もありますから。それを完全にスポイルしてしまっていいのかどうか。
 あるいは仮に使われた後、先ほど伊藤先生の方からありましたけれども、GMP製剤であるということが前提であって、しかも安全性については報告義務があるということがありますね。
 したがって、安全性とか有効性とかいうことを言う場合に、どこまで厳密にやるのかやらないのか。いかがでしょうか。
○南構成員 先に失礼をするので、何も言わないで帰るのも申し訳ないので、ちょっとまとまらないのですが。今の段階で、この検討会としてまとめられる結論を、この論点ペーパーを下敷きにまとめていくということはできるのかなとは思いますが、それが果たして、いわゆる統合医療の在り方の検討会としてのふさわしい結論なのかというと、今、座長がおっしゃったように、その一つひとつの対象となっている療法の信頼性などに全く触れないものになるのでは、余り十分なものとは言えないのかなという気はするんです。
 言葉の問題になってしまうのですが、医療というのは自然科学に基づく医学の知見を基にした医療という制度であると考えれば、四角の中に入っている相補・代替医療と言われているもの全部について、信頼性なり医療として認め得るかどうかということを問うのは無理があるのは明らかだと思います。統合医療とは何を呼ぶのかということが問題ですが、単なる健康増進法ではなく統合医療である、というところにこだわると、医療制度ということと不可分には考えられないのではないかと思います。歯切れの悪い言い方で恐縮ですが、そんなような感想を持ちました。
 国民の期待が非常にあるということは明らかなのですけれども、それを現在の医療制度の中に入れるかどうかとなると、医療は制度であるので、おのずとそんなに簡単には結論は出せないということなのではないかと思います。
○大島座長 ありがとうございました。
 いかがでしょうか。どうぞ。
○梅垣構成員 国民の期待があるという点で、なぜ期待しているかというと、やはりこれは情報なんです。根拠のないような情報が参照されていて、物すごく夢のようなものだと思われている部分もあります。一方、ちゃんと研究をしている部分もあると思います。その部分の影響が非常に大きくて、もしこれを医療としてやるのであれば、だれがやるか。先ほど座長がおっしゃったように、安全性が確保できているかどうかです。これが原則で、安全性を確保する上では、例えば漢方だと先ほどお話になったように、ちゃんとその成分分析をして、安全性も確保できています。それが大前提になりますから、それらの点が確保されていないと、統合医療は、本当の医療として患者さんに提供、国民に提供することは難しいのではないかと思います。
○大島座長 いかがでしょうか。どうぞ。
○門田構成員 私は2回目を欠席しましたので、1回目でも同じようなことを申し上げたんですけれども、雑多なものというか、エビデンスが出てきつつある漢方とか、そのほかのものと一緒に話を進めて、統合医療という単語で結ぶというのは、非常に無理がありますね。
 この委員会に何が求められているかというと、統合医療というのは非常に話題になっているので、何らかの情報を提供するんだということになれば、今おっしゃられたように、安全性と今あるものの中の線引きを、ここまではこうである、これは全く評価の対象にならない、これは安全性は担保されるが効果は云々と、幾つかのクライテリアで分けて、そういうものを発信するくらい。それも難しいところがあるかもわかりませんけれども、何かしないと、このざっくりとしたものをそのまままとめるというのは、何のためにこの会議が開かれたかがわからなくなるのではないかという気さえするんです。
 ですから、私は先ほど高崎参考人にお尋ねしたのも、どこかでどういうふうに線を引くとすればというふうなことを尋ねたつもりです。
○大島座長 いかがでしょうか。どうぞ。
○羽生田構成員 医療費のことが出ているのが問題だと申し上げましたけれども、1-2の一番上の○の最後2行「3.個人の自然治癒力の促進により、治療のみならず、むしろ増進を目標とする病気の予防や健康」という、これは本当に大きな目標だと思います。その結果、医療費がかからなくなったという結果になれば、それはもっといいことだろうと思いますが、医療費が増大しているから、これによってという、それを目的にしたような書き方をされると非常に気になってしまう。
 ただ、予防という意味、いわゆる自然治癒力を上げていくんだという意味で、この統合医療という言葉がいいかどうかは別としても、こういったものが議論されるということは、私は賛成です。
○大島座長 それでは、論点3「『統合医療』の安全性・有効性等について、どのように評価したらよいか」、この辺を頭の中に置きながら、前に戻っていただいても勿論構いませんし、全体を見て御意見をいただいても構いません。いかがでしょうか。
○羽生田構成員 安全性という面は一番最初の委員会のときから私が言っていることですが、実は2ページ目にある四角の中に、実際に人体に触れて、いろいろと施術を行う上で、療法に免許のない資格があるんです。このカイロプラクティックというのは、日本には資格がありませんからね。
 そういった、いわゆるだれがという中で、私は最低限、国家資格という言葉を口にしたんですが、接骨という意味では国家資格があります。鍼灸マッサージもあります。しかし、カイロプラクティックについてはありません。これが非常によく効いたという人もいるけれども、実際に脊損を起こした人もいます。だれがだれに対して行うかという中で、この中に資格がなくても危害が加わらない療法がいっぱいあるんです。そういうものと実際に患者さん、人体に対して施術をして、危害が加わり得るものとは少仕分けなければいけないのかなとも思います。
 例えば音楽療法などは、音楽による鎮静効果は非常に大きいということが、今、手術室はほとんど音楽をかけながら手術をしています。いわゆる西洋医学で手術をする場でも音楽療法的な音楽の使い方もしているわけですし、その辺は実際に人体に危害が加わるものという意味では、最低限、国家資格というものが必要なのかと、一つの分け方として、そんな気がいたしております。
○大島座長 人体に直接介入するようなものについては、ある一定の資格が必要ではないかと。いかがでしょうか。どうぞ。
○伊藤構成員 今、カイロのお話が出たので、私もカイロは専門家ではありませんが、カイロと称してやっている人たちは非常にさまざまで、アメリカではカイロの資格(公的資格)を取ろうと思ったら、通常の大学を出て、カイロの専門大学で医学の知識も全部習得した上で、臨床研修を受けて初めて認定されます。日本には柔整とか接骨という別のカテゴリーがありますので、なかなかそれがうまく住み分けできないという状況にあると思います。
 実際に日本で米国でのカイロの資格を持った人はわずか100人と聞いておりますけれども、カイロであるから全部一くくりというのではなくて、やはりそれなりの技術、医学の知識を持った人は何らかの形で認定して、そういう人たちを統合医療の中に受け入れる。場合によってはそういう人たちに、それなりにといいますか、国家資格に準ずるような資格を与えていくことがやはり必要ではないでしょうか。
 資格問題ということでは、臨床心理士もそうですね。2つの学会が対立していて、本当は国家資格まで必要であるが、そこができていない。そこは国の力で整理していただければならないと考えております。
○大島座長 いかがでしょうか。カイロプロクティックが有効か有効でないか、どうやって決めるんですか。
○佐々木調整官 カイロの話が出ているんですけれども、ここで有効かどうかを決めるくらいの知見があるとはなかなか言えないと思います。伊藤先生の言われましたように、カイロはアメリカから始まって、かなり向こうでは制度化されている仕組みはあると思いますが、個別の療法からいうと知見も十分でない中で、議論としても拡散するのかなと。
 先ほど言われましたように、一つ一つにはすべての国家資格を求めていくというと、800なり1,000なりある療法を一つ一つやっていくという話になると、それもまた収拾の付かない話になるかと思いますので、今、統合医療について我々はどう受け止めて、今後取り組むとしては、どういうものを求めていくことが必要なのかという観点を御議論、整理をいただけると、とりあえず現時点ではいいのかなと。
 そして、これは我々の反省でもあるんですけれども、その知見の集積ということであれば、ツムラさんの御発表がございましたように、厚生労働科学研究でお手伝いをさせていただいたところもございます。知見の収集・集積をやっていくということは必要なのではないかと考えております。感想になります。
○大島座長 いかがでしょうか。どうぞ。
○梅垣構成員 論点3の安全性・有効性等についての評価ということですが、これはなかなか評価が難しいですが、例えば何かをやるときに、そのやった対象者の特性とか、どうやったとか、それらの記録に残り、それがオープンになるようにしないと、私は問題が起こると思います。
 例えばカイロとかいろいろとありますけれども、それを資格を取ったからやっているとしても、全く根拠のないようなビジネスとして結び付いてしまうと、非常に混乱してくると思います。まともなことをやっている人と、とんでもないことをやっている人が乱立してくるということになりますので、何をだれがどういうふうにしたかというのが、記録に残るような状況にするのが、もしやるとしても私は必要だと思いますし、それらの情報が蓄積してくれば、それなりの方向性も見えてくるのではないかと思います。
 実際に行ったことオープンにできない人は、私はやるべきではないと思います。それは患者さんのためにはならないですし、本当に患者さんのためになると思ってやっていれば、行ったことがオープンにできるはずだと思います。
○大島座長 いかがでしょうか。どうぞ。
○羽生田構成員 先ほど申し上げたようなことですが、一つの提案として、人体に直接触れて、直接施術なり何かをして危害が起こり得るものと、そうでないものとを少し分けられないでしょうか。この四角の中だけではなくて、ほかにもありますね。その辺だけでも少し分けると、危害が起こり得るものはそれなりの注意をしなければいけないということは、いろいろな情報として流せるだろうと思います。
 危害が全くないというものもありますし、それによって非常に精神が安定するとか、そういった療法的なものも含まれておりますから、実際に人体に対して施術を行って危害が起こり得るかどうかという、その辺だけでも分けられたらと思います。
○大島座長 先ほどから出ている、どこかで何かの区別をしないと先に行けないのではないかという御意見で、私も全くそのとおりだと思いますが、その点で一つの提案がありました。
 ほかにいかがでしょうか。論点4の「『統合医療』を推進していくためには、どのような取組が必要か」も頭の中に置きながら、全体について御意見があれば、伺いたいと思います。
 「安全性・有効性等に関する知見を集積し、これらのエビデンスを確認しつつ、必要な情報を発信することが重要ではないか」。この?については、今まで御意見を伺っていて、どの先生も否定的ではない、むしろそれは当然だろうという点では一致しているのではないかという感じがしますが、では何をやるのかという話になると、途端に詰まってしまっているという感じではないかと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ。
○伊藤構成員 統合医療を国民の信頼を得て根づかせるためには、一つの方法としては、トップダウンでやっていく。国が主導して、代表的な拠点を幾つかおいて、そこでチーム医療の下に、統合医療がどれだけ効果があるかということを臨床試験も含めてやっていく。そのトップダウンで得られた結果をいろいろなところに還元していくというスタンスが重要であると思います。議論も必要ですけれども、同時に実践も必要であろうと考えます。実践をしながら、そこで軌道修正をしていくというやり方でないと、いつまで経っても議論のままで終わってしまうと思います。
 今回、大震災が契機となって、現行の医療のひずみが露見しました。そこでもう一度、医療の原点に戻って、医療体系を見直すくらいのつもりでやっていかねばならないと考えています。医療の専門化が進んだためにチーム医療ができていないとか、全人的な医療ができていないというのは、患者さんがひしひしと感じているところですから、それを患者さんの目に見える形でやっていかなければならないのではないでしょうか。是非その議論も進めながら、実践も同時にやっていくということは、これから必要なのではないかと考えます。
○大島座長 どうぞ。
○門田構成員 確かに日本の医療のポイントについては、今、伊藤先生がおっしゃられるとおり、いろいろなポイントで我が国の医療に課題が残っていると。いろいろな問題点が出てきているのは事実だと思います。しかし、それと統合医療の推進は、直接は関係ないのではないかと私は思います。
 そういった意味で、統合医療を推進していく拠点をつくるというよりも、統合医療はほかの医療と違って、新しい先進医療をスタートするのであれば、拠点をつくって、そこでやると。これはよくわかるのですが、大半はもう既に全国でやられているわけですから、それをどこかに拠点化して、がんの拠点病院のように何某の補助金を付けて云々ということを、今するタイミングとはとても思えない。
 それよりも先ほど言ったように、国民の信頼を得るためには、国民が一番困っておられるのは、いろいろなものが山ほど出てきているけれども、本当に効くのはどれなのか。害があるのは何なのかということを知りたいということがまず第一でした。
 先ほどから座長も言っていましたけれども、どこかで区別化してやっていくことを発信する。少なくとも今の段階でわかっている範囲内ではこうである。将来にわたって更に検討して、それについて白黒付けていきましょうというものがたくさん残ってもいいけれども、何某のことをやっていかないと、メッセージは出せないのではないかと思います。
 例えば私は物すごく引っかかっているのが、2ページの四角ですけれども、ホメオパシー。私は医学会副会長として医学会で働いておりますけれども、これは医学会は反対しています。そういう声明を発しています。ですから、医学会としては反対しているようなものがここに出てきて、平気でまかり通っていくのはとても許されないと思います。そういった意味で、やはりその辺りを整理していくという作業をするのが推進に一番つながるのではないかと思います。
○大島座長 どうぞ。
○伊藤構成員 先程私が申しましたのは、医療の今のひずみの中で、体制を見直すことがすなわち統合医療だという言い方ではなくて、ワン・オブ・ゼムとして統合医療はあるだろうということでございます。
 門田先生がおっしゃるように、裾野をしっかりした上で徐々に積み上げていくというボトムアップの考え方から、トップダウンである程度しなければならないところもやはり必要だと思います。そこでトップダウンとボトムアップがうまく融合すれば、いいということになると思います。しかし、スモールサイズでやっていたのでは、なかなか結果が出てこない。そして、統合医療はチーム医療ですから、そうしたアプローチがどこでもできるわけではありません。どこか拠点となるセンターで一人の患者を中心として、いろいろな医療従事者が関わることによって、さらにその積み重ねによってエビデンスが出てくると思います。
 現に統合医療でないとできない医療があります。例えば、我々が今、臨床試験をしておりますJRの福知山線の脱線事故の被害者やその遺族ならびに家族の方々の事例がそれに当たります。7年半が経過し、西洋医学でやれることはほとんどないけれども、いまだいろいろな問題を抱えている。そこで、当院でいくつかの統合医療的アプローチを試みることによって、更にそのQOLを上げることができたということが、我々の臨床試験の結果から出てきております。
 がんにつきましても、一旦治療が終わった方(がんサバイバー)に対しては、やはりこれも統合医療でしかやれない領域です。また、一方ではがん難民をつくらないというような意味も含めて、統合医療が必要ではないかと思います。
○大島座長 ありがとうございました。
 質問を変えまして、それでは、今、国民にはいろいろな形で統合医療というものが既に広がっている。世界的にも広がっているし、日本の中でも広がっている。このように関心が高まっている中で、国民は一体何を一番求めているのか。こういう状況に対して、国にはどんな責任があるのか。国民の要望にどう答えていく責任があるのかという観点から見たときにどうなのか、一体何をしなければいけないのかという御意見をいただければと思います。
 そして、もう一つ、今、伊藤先生がはっきりと指摘されましたが、今のような状況の中で、西洋的な科学的な医療の限界は一体どこにあるのか。それを超えるために統合医療が何か有効な手立てを持っているのか、持っていないのかというような観点から御意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
○梅垣構成員 一般の人は、例えば病院でもうこれ以上はできませんよと言われると、情報を探しにいくんです。何とかしたいという思いからです。そういうときに参照されるのは、体験談とかそういう情報なので、それを参考にしようと思っても、それを見たときに懐疑的になります。どこまでその療法なりがまともなのか。そこのところがはっきり知りたいというのを、恐らく一般の人は望んでいるだと思います。
○大島座長 要するに、こんな表現でいいのかどうかよくわかりませんが、今の医療ではお手上げだという状況になって、何かほかに手立てはないかというときに、実はいろいろな手立てのようなものが世の中にはいっぱいあふれている。それらに一体意味があるのか、ないのかということを知りたいということですか。
○梅垣構成員 そうです。特に例えばサプリメントなどを使う人がいますけれども、それも物すごくいいことばかりが書いてあるところを探しにいって、薬のように使ってしまうという問題があります。サプリメントなら、どういう問題があるかが認識できれば、変な使い方は多分しないでしょうし、まともなことだけ情報を手に入れて、安心もすると思います。けれども、今のところではいろいろな情報が混乱していて、わからない状態なので、しっかりした情報が欲しいというのが一般の人が求めているところだと思います。
○大島座長 それを今の現状の中で、科学的な手法が中心になるのかもわかりませんが、こういう根拠があります、あるいはこういう根拠はありません。あるいは現状ではよくわかりませんというようなことを含めて、情報をきちんと出すと。いかがでしょうか。
○羽生田構成員 今のような情報は非常に必要ですけれども、現実には、今つくっている業者からのいいことずくめの宣伝しか、ほとんど情報が入ってこないという情報だと思います。これは少し時間がかかるのかもしれませんけれども、一番わかっているのは使った本人。サプリメントでも健康食品でも、それを使って御自分が一番わかっていると思います。ですから、その辺の情報を集める手段。
 今、うちでは国民の健康対策検討委員会という中で、ちょうどその委員会をつくったときに中国からの健康食品でいろいろと健康被害が出たというのがきっかけで、こういう委員会をつくったんですけれども、そこでそれによる健康被害を情報として集めようということをモデル事業で少しやっているんですが、医療機関ではむしろ健康被害が起きたときの情報の方が多い。使った人の中には、非常にこれはよかったという情報が多い。悪かったという情報も当然あるでしょうけれども、やはり少し情報を集める手立てを考えてはいかがでしょうか。
○大島座長 情報をできるだけ集めろということですが、ほかにいかがでしょうか。
 時間がもうそろそろ詰まってきましたが、今日全体の御意見をまとめますと、相当幅があったかとは思いますが、今統合医療として整理されて一覧表になっているものがありますが、これを一括して統合医療だと言ってしまうには、無理があり過ぎるのではないかという御意見が非常に強かった。
 では、どこで線を引くのかという話になると、その線の引き方についてはそんなに明解なものは出てきていないような感じがします。一方で、統合医療と言われるものに対して国民の関心が高まっているので、これに対しては情報提供から始めて何らかの対応をしていくしかないだろうと。勿論、一方でエビデンスをどうつくっていくのかという作業は、同時進行でやらなければいけないけれども、これは方法論から議論をし始めると、なかなか一筋縄ではいかないところもありますから、一挙にそこまで組織化をしたりとかいうことはとても無理だろうと。
 したがって、まずやれることは、統合医療と称されているものが一体何なのかというくらいのところから整理をして、現状で何がわかっていて、わかっていないのか。特に安全性とか有効性について、一定に何か言える根拠があるのか、ないのか。これは追求していくと何も出てこないということにもなりかねないという感じがして、少し気にはなるんですが、それはそれで現状をきちんと整理して、情報の整理をして提供をしていくことが必要だろうと思います。
 ただ、一方で相当にわかっているものも出始めていることも事実ですし、又、一方では関心が非常に高いにもかかわらず、専門学術団体の考えている、実態とどうも動きがうまくシンクロしていないようなものもある。こういったようなことについては、改めてきちんと確認をしていく必要があるのではないか。
 もう一つは、西洋科学的な手法で考えられてきた問題、やり方でどうしても解決の付きにくい部分があるという現実もあるので、そういったことに対して統合医療は一つステップアップできるのか。あるいは統合医療による新しい手法でもって、そういった問題の解決に近づいて、あるいは乗り越えることができるものなのかどうかということについても、情報提供をしていく必要があるのではないかというようなことではなかったかと整理をさせていただきましたが、いかがでしょうか。ちょっと苦しいですか。
○梅垣構成員 今、座長がおっしゃった方向でいいと思います。例えば2ページの8番のサプリメント・健康食品にハーブ療法とあって、16番にアーユルベーダがあります。アーユルベーダの医薬品という中にハーブ療法も入っていています。物すごく入り混じっていますから、だれがやっても安全なもの、医療関係者でなければできないもの。そういうもう少し大枠で分類した方がいいのではないかと思います。
○大島座長 その辺のもう少し具体的な話につきましては、羽生田先生の方から指摘されたことなども含めて、例えば実際に体に介入して、危険性のあるようなものと、ほとんど危険性のないようなものは区別すべきではないとか、そういったことについても論点整理をしていく必要があるだろうと思います。
 今のようなお話も、そもそもアーユルベーダとは一体何だというところから、情報の提供が必要なのではないかと思ったりしますので、そこら当たりももう少し細かく区別をしていく必要があるのではないかともいう感じがします。
 いかがでしょうか。どうぞ。
○門田構成員 せっかく高崎さんが来ておられるので、19番の漢方と生薬が中ポツで結ばれているんですけれども、このディスカッションの中で、これでいいのか。これは分けるべきなのかというのはどうですか。
○高崎参考人 医療用漢方製剤に関しては、分けていただきたいと思います。医療用漢方製剤に関しては、代替医療ではないです。
○大島座長 漢方と生薬は分けるべきか、分けるべきでないかという御質問です。
○高崎参考人 漢方と生薬ですか。生薬も薬価に載っておりまして、加工品のものもありますので、そういうものは明確に分けるべきだと思います。
○大島座長 ということで、第3回目はこの辺りで終わらせていただきたとい思います。
 後は事務局の方から。
○佐々木調整官 ありがとうございます。次回の進め方でございますが、次回の開催日時、場所については調整の上、追って御連絡を申し上げたいと思います。今日いただいた御議論を踏まえて、論点をまとめたいと思います。
○大島座長 局長の方から何か一言ございますか。
○大谷医政局長 ひたすら勉強しながら聞いておるわけですけれども、いろいろな茫漠たるテーマを私どもは問いかけて、一生懸命こうやって御議論をいただいて、感謝しております。最後にまとめるときには、政府として、政策としてどうコミットするかというところが最後に凝縮してくると思うので、今いただいたものはそういった格好で、学会や業界としてやるべきこと、あるいは政府としてどこまでコミットするか。そこら辺が最後は整理のポイントになってくるのかなと聞いておりまして、どうぞよろしくお願いします。
○大島座長 ありがとうございました。
 それでは、これで終わりたいと思います。


(了)
<照会先>

医政局総務課 (内2513、2520)

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