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2012年8月1日 独立行政法人評価委員会高度専門医療研究部会(第14回)議事録
○日時
平成24年8月1日(水)9:00~12:50
○場所
専用第23会議室
○出席者
永井部会長、猿田部会長代理、内山委員、祖父江委員、花井委員、本田委員、三好委員、和田委員 |
○議事
(以下、議事録)
○永井部会長
ただいまから第14回厚生労働省独立行政法人評価委員会高度専門医療研究部会を始めさせていただきます。委員の皆様方におかれましてはお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。本日はお手元の議事次第のとおり、国立精神・神経医療研究センターと国立長寿医療研究センターの個別評価を行っていただきます。最初に国立精神・神経医療研究センターの個別評価を始めさせていただきます。まず、樋口理事長からご挨拶及び平成23年度における業務実績概要の説明をお願いします。よろしくお願いします。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
おはようございます。国立精神・神経医療研究センターの樋口です。本日は大変お暑い中、私どものために、この評価委員会を開いていただきありがとうございます。昨年8月に初めての評価をいただいてから、はや1年が経ちました。私のほうから、業務実績の概要ということで、最初に少しお話をさせていただき、そのあと各施設長から施設関連の業績についての報告をさせていただきますので、よろしくお願いします。
早速ですが、お手元に資料1-1という、カラーの表紙がついた横紙があります。これに基づいて説明をさせていただきます。私の持ち時間が10分程度ですので、かい摘まんだ形でご説明をさせていただきます。1枚目は毎回出している概要です。2枚目は4つの柱といいますか、それぞれ行う事業の項目立て、現状と課題としてそれぞれまとめさせていただいております。これはそれぞれの担当者から報告させていただく中で触れてまいりますので、ここも飛ばさせていただきます。3頁以降、黄色く色がついているところが平成23年度の業務実績の中身で5頁まで記載しています。ここが実績の中身です。これについては、後ほど各施設長から報告させていただきますので、6頁をお開きいただいて、昨年、評価委員会でご評価いただいた評価の中身、もう少しこうすべきであるというご指摘、あるいはこういう点は高く評価できるといただいた評価に対して、その後の1年間での取組とその成果を要約したものです。ここのところを私から報告をさせていただきます。
第1が研究・開発です。研究・開発に関しては、臨床志向型の研究・開発の推進を行うことが私たちのミッションです。そのための取組として、専門疾病センターの立ち上げを昨年行ったわけですが、専門疾病センターの活動をこの1年でさらに充実させるということで、2つほど例を挙げました。例えばNMO神経脊髄炎という疾患の治療薬の適応拡大を行う研究を行い、あるいはパーキンソン病の姿勢障害、腰が曲がるという姿勢障害の分類法、後ほど出ますが、治療法に関する研究開発を行ったというのがその例です。なお、専門疾病センターの具体的な内容については次の7頁目に出ています。後ほどご覧ください。
トランスレーショナル・メディカルセンター、あるいは脳のイメージングセンターIBIC設立準備室を平成22年度、初年度に立ち上げたわけですが、さらに体制をしっかりと整備するようにというコメントを評価委員会でいただきました。それをもとに、1つはハードの面、設備等です。ソフトの面、人材を充実させると。昨年度の場合は、ほとんどが併任という形でしか人をあてがうことができませんでしたが、いろいろなことを工夫して、部長クラス、あるいは室長クラスに専任をそれぞれ何名か置くことができました。イメージングの研究基盤の整備、研究支援機能の強化といったことに取り組んでまいりました。なお、TMC、IBICに関しては後ろの8頁目、10頁目にそれぞれその内容が書いてありますので、これも後ほどご覧ください。
2ポツです。病院での研究の推進を行うということが重要とご指摘いただきまして、これに関しては、私どもの場合は稀少疾患、神経難病の患者の登録をまず行う、登録事業を推進する。今後、臨床研究を行う上では必須のマターでしたので、これを推進いたしました。医師主導治験の支援体制を強化するということで、9頁目に治験のための治験管理室の概要を示していますが、医師主導治験の支援体制を充実させて、臨床研究の支援を行う体制を強化いたしました。後ほど説明いたしますが、実際に医師主導治験の患者のリクルートを開始するところまできております。また、クラスター病棟の運用を開始いたしました。
3つ目のポツです。戦略的・重点的研究の推進を行うことに関しては、神経軸索変性の機序の解明、筋ジストロフィーにおける新たな遺伝子異常の発見、新たなイメージング手法の開発、例えば新たなイメージング手法の開発というのは、脳刺激とファンクショナルMRIを同時に測定するといった方法を開発したというのが挙げられます。先ほど申し上げましたパーキンソン病の姿勢異常の治療法として、特許の申請を行いました。リドカインを外腹斜筋に注射すると、姿勢異常が矯正できることから、特許を申請したところです。
2番目は医療の提供です。医療の提供に関しては、高度先駆的な医療の提供を行うことに関して、1つは光トポグラフィ検査の実施、あるいは先ほどのパーキンソン病関連疾患の姿勢異常に関する新規治療法の提供等を行っております。
2ポツとして、良質・安心な医療の提供に関しましては、モデル的チーム医療の実践を行うことで、専門疾病センターを立ち上げたというのは昨年ご報告しましたが、そこで具体的な疾患に対する取組を開始させていただいております。専門疾病センターに関しては7頁目に書かれております。
チーム医療実証事業は、厚生労働省の研究事業の中にアプライをして認められたものです。チーム医療を実際に行うことによってどういう効果があるかということを検証するということでした。センター独自の患者満足度調査の試行・分析。これは、昨年この評価委員会で一般の病院とナショナルセンターは異なるのだから、独自の患者満足度調査があってしかるべきであろうとご指摘をいただきましたので、それに基づいて試行し、分析をいたしました。退院後の在宅支援の強化という点では、訪問看護件数がここに書きましたように、年ごとに増加しているというところです。
3番目の人材育成・均てん化です。人材育成、モデル研修の実施ということに関しては、TMC、トランスレーショナル・メディカルセンターにおいて、研究・医療における専門家育成のための各種の研修、講習会、こういったものを定期的に実施しております。精神科医療評価、均てん化研修は従来からずっと行ってきましたが、さらにこれに加えて、認知行動療法という、いま最も精神科の非薬物治療としては注目されております認知行動療法を行うことができる人材を育てる意味で、厚生労働省の研修事業のうつ病CBT研修を実施しております。CBTに関しては11頁をご覧ください。均てん化に関しては、精神科救急医療の質のモニタリングということで、どこの病院でも救急医療の現場で用いることができるeCODOという行動制限の測定ができるプログラムを作っており、現在均てん化をして、全国各地で使っていただくようにしているところです。また、てんかん診療の実態分析などを実施するためのネットワーク構築を推進しております。
4番目は情報発信と医療政策の推進です。情報発信の推進に関しては、広報の機能を強化することに取り組みました。まずは規定を作り、ホームページの分析ツールを導入して、ホームページの分析をしたところです。さらに、メディアを通じての広報も重要であるということで、15頁にメディアカンファランスのことをまとめています。年に3ないし4回メディアカンファランスを開催してきました。
2ポツですが、今回の東日本大震災の対応を私どものところでも非常に大きな仕事として昨年度行い、その中でも災害時こころの情報支援センターを設置するということで、厚生労働省からの支援事業として受託をしたところです。実際に、現場の医療支援チームに派遣することも当然のことながら行ってまいりました。
5番目の業務運営に関しては、効率的・効果的な業務運営を行うということです。これに関しては、まだオンゴーイングですが、2つの研究所の在り方検討会を昨年外部委員の方を交えて開かせていただきました。今年度どのような形で2つの研究所の再編を行うかということにこれから取り組むところです。
特命副院長です。これも昨年のこの評価委員会でご指摘をいただきました。副院長1名の体制でしたが、それでは不十分であろう。副院長複数制をご指摘いただきまして、特命副院長2名を置いたところです。
事務職員の定数に関しては、6名がオーバーしているということで削減を決定いたしました。内部監査の実施に関しても監査室を作り、取り組んだところです。効率化による収支の改善については、一般管理費の節減が23%ぐらいできたところです。医療未収金対策の推進もそこに書いてある程度で行ってきております。以上、非常に駆け足でしたが、平成23年度の業務実績評価に対する取組とその制度を要約させていただきました。ありがとうございました。
○永井部会長
ありがとうございました。続いて評価の進め方についてご説明申し上げます。国立精神・神経医療研究センターの個別評価については、評価シートの個別項目を4つのグループに分け、グループごとの評価を行ってまいります。評価の指標として計画どおりであれば「B」評価、中期計画を上回っていれば「A」評価、特に大事なのが想定外の要因ということで、これを加味して計画を想定外の要因を含んで大幅に計画を上回っている場合が「S」評価ということです。ですから、B評価がまあまあ普通というふうにご理解いただきたいと思います。では、第1グループにまいります。研究開発に関する事項の項目1から3です。法人からの説明10分、委員の評定、質疑応答15分の合計25分です。法人から説明をお願いいたします。
○国立精神・神経医療研究センター理事(研究所長)
私から項目の1、2、3についてご説明申し上げます。使用する説明資料としては資料1-2の実績評価シートというA3版の非常に大きな横長の書類と、資料番号がついていないのですが、先ほど総長がご説明になられた業務実績、資料1-1と参考資料があります。業務実績の概要(参考資料)というのが、いま総長がご説明になられた次の資料として添付されております。その2つを使ってご説明します。
大きいほうの評価シート、評価項目1、2、3というところをご説明いたします。全部で1頁から42頁という、非常に膨大な頁数になっておりますので、限られた時間ですので、肝心な点だけをピックアップしてご説明申し上げたいと思います。
最初に研究・開発に関する事項で、病院と研究の連携等のところで、専門疾病センターがありますが、これについては後ほど医療の提供に関する事項のところで、糸山院長から詳しくご説明申し上げることにしております。評価シートの8頁目、研究基盤の整備という項目です。ここには、TMCの体制整備及びIBICにおける研究基盤整備があります。先ほど、総長からもご説明申し上げましたように、昨年度この組織を形成したということが非常に評価をいただいたと。今年度については、そこに魂を入れるようにとご指摘をいただいたところです。
TMCの体制整備については、資料1-1の参考資料の7頁です。TMC、トランスレーショナル・メディカルセンターと書いてありますが、先ほどもありましたように、黄色で囲ってあるところが、専任化ができたところです。即ちセンター長、情報管理・解析部長、先端診断技術開発室長、臨床研究支援部長等々、黄色のところが昨年度専任化が終わったところです。ちなみに、青色のところはその前の年に専任化が終わっていると。こういったスタッフの専任化によって、これまでTMCにおいては人材育成であるとか、臨床研究の支援であるとか、いろいろなことをやっております。継続的に取り組んできた事項についても非常に機能が強化されて、特に8頁の6番目の国際共同医師主導治験の推進の体制が非常に整ってきたと考えております。
9頁、特に平成23年度に重点的に取り組んだ課題としては、1つはクラスター研究棟、あるいはTMC棟の開棟といったことがあります。我々が非常に大切にしておりますバイオリソースの整備が進んでまいりました。特に、6ナショセンのバイオバンクの連携事業の実施、あるいはそこに書いておりますが、登録検体数として、1,000検体以上の新たな検体を保存することができました。特に、中でも、髄液の検体を集めることができたということは非常に価値があるものと考えております。
8番目としては、橋渡し研究の推進として、1つはあとで申し上げますが、特に筋肉の患者登録システムをうまく円滑に運用できていると。これによって、国際共同治験へ参画できるようになったということです。中ほどに書いてありますICH-GCP基準に則った臨床研究実施体制も構築をされてきたということです。その結果として、臨床研究を含む治験が活性化され、実施件数も着実に延びてきております。また、そういったFirst Patient inといったものも想定していた100日以内というのも大幅にクリアされて、42.7日という短期で実現していると。国際共同治験も積極的に取り組んだ結果、全体の治験数のうちの24%がそういった国際共同治験になってきているということです。
11頁はIBICです。これもご評価いただいた点ですが、正式に組織として立ち上がって、黄色に色をつけているところが専任化できていると。特に、センター長が6月に赴任してきていただいておりますし、プラス分子イメージング部長、あるいはPETで大事な放射性トレーサー研究室長などです。これは合成屋さんですが、化学屋さんです。そういったものが、専任化ができてきたということであって、その結果として、13頁に記載しておりますように、大型の機器を使った研究が非常に大幅に、イメージングに関する研究が大幅に推進できたということです。直接は関係ありませんが、12頁の4ポツでIBIC棟のオープンラボを作ることができまして、おかげさまでATR、国際電気通信技術基礎研究所がここに入っていただいて、共同研究も推進できていると。5ポツで、この施設を使って、多施設共同研究が進展してきているということです。
13頁目は、もう1つセンター内センターとして、CBTセンター認知行動療法センターがありますが、これもそこに書いてありますように、黄色のところが専任化ができたということです。
次の頁です。これに伴って、特に高田馬場の研修センターにおいて、多職種、あるいは一般の方に対して研修事業を活発に行っていると。また、厚生労働省の認知療法、認知行動療法研修事業においても、研修事業を活発に行うことができ、現在までに約1,700名の方々の研修をすることができているというところです。
評価シートの20頁です。(2)病院における研究・開発の推進ということですが、ここで特に私が申し上げたいことは、2ポツに書いている稀少疾患の患者登録の推進ということです。以前から筋ジストロフィーを中心とした患者登録システム、我々はRemudyという名前をつけておりますが、それを立ち上げて、患者さんの登録、ここでは遺伝子情報、あるいは臨床情報という詳細なデータがデータベース化された、非常に付加価値の高い患者登録システムです。これによって、治験、臨床研究の推進が非常に容易になってきているということで、真ん中辺に書いてありますが、平成23年度末までに904人の患者様にご登録いただいたことになります。現在は、こういった筋ジストロフィーを中心とした患者登録をさらにDMRV遠位型ミオパチー、あるいはパーキンソン病等、他疾患に広げていくという努力を継続して行っているところです。
26頁をお開きください。いちばん大事な研究開発に関するところです。即ち重点的な研究開発ですが、そこにザッといろいろな代表的な成果を書いております。28頁が非常に大事でして、英文の原著論文、あるいは総説、著書。こういったものが、そこに記載しておりますように年々増えてきているところです。永井委員長からサイテーション、あるいはインパクトファクターにも留意しなさいということで、シートの41頁に載っておりますし、また机上配付でも載っていると思いますが、サイテーションも年々延びてきていると。特に評価シートの41頁には、インパクトファクター15以上が5、インパクトファクター10以上が7というふうに論文の質としてもかなり秀れたものを出すことができていると。しかも、サイテーションについても昨年、一昨年度のものが延びてきているというところです。
29頁以降が論文について具体的にどういう成果を上げたかというところですが、膨大なものですので、先ほどの参考資料の15頁で記載しております。時間があまりありませんので簡単に申し上げると、15頁では、先ほど総長が申し上げましたように、軸索変性のメカニズム、特に細胞内シグナルを中心としたメカニズムをかなり詳細に解明することができました。
次の頁では、リン脂質の合成異常に伴う新しい先天性の筋ジストロフィー、筋疾患を発見することができた。これはコリンキナーゼの異常です。こういったものを見つけたり、17頁ですが、直刺激で活性化される部位をMMRで同定することができる。当然シグナルが混在しておりますので、だめだったものがソフトウエアの開発によって、スペティフィックに活性化されることが同定できたという秀れた技術開発です。
18頁には、発達障害の重症度の診断に役立つと考えられるタッチパネルとNIRSを使った診断技術を開発することができて、いま特許出願して、非常に注目を集めているものです。特許の代表的なものとしては、パーキンソン病の特許、先ほど総長からご説明があったパーキンソン病の腰曲がりといったもの、あるいは20頁目に眠気予防。こういったもののシステムを開発することができたということで、実はJR東海が買ってくれまして、当センターとしては初めて実用化に成功した特許です。こういった種々、研究の成果が順調に出すことができたということです。時間がありませんので以上で終わります。
○永井部会長
ありがとうございました。ご質問、ご意見をお願いいたします。
○猿田部会長代理
この前から比べてどんどん新しいセンターを確立させてこられて、例えばTMC、またIBIC及びCBTセンターと、これだけのものをしっかりさせて、しかも人員も選定で歯止めをかけますと、後ほど出てくるかもしれませんが、かなり人員的にも大変なのではないですか。その点ではどうですか。
○国立精神・神経医療研究センター理事(研究所長)
私たち、大変悩ましいところであるのですが、人員としては純増がなかなか難しいところなので、基本的には研究所、あるいはほかのところでもっている専任の者を、スクラップビルドですね。そこのポジションを使ってTMCに当てるというような、そういった努力を一方ではしています。どうしてもそういったことができない場合がありますので、先行投資という観念から、新しく純増で人を採用して雇うということなのですが、こういう昨今の事情ですので、なかなか予算的には厳しいものがあります。
○猿田部会長代理
全体的にあとのほうで見ると、いわゆる職員の有能な方を増員し、一方ではかなり減らしていますが、全体的に見たときに大変ではないかなと感じたものですから。
○祖父江委員
非常にすばらしい発表をいただいたと思っております。特に、去年から今年にかけて、疾患特異的な縦軸とTMCやIBICの横軸が非常によく整備されてきているのではないかと思います。いま、ご発言がありましたが、それぞれに専任化をされて、基盤整備を非常によくできてきているのではないかと思います。今後は、どう実際広げていくかということが、中身が問われるのではないかと思いますので、引き続きよろしくお願いしたいと思います。1つだけお聞きしたいのは、先ほど来、実績を上げておられてすばらしいと思いますが、1つ気になったのは、今後、特にディジーズモデファインセラピーをやっていこうとすると、いわゆる前向きのコホートといいますか、登録は登録として重要ですが、それを前向きに臨床症状、あるいはいろいろなものを追っていくという、そういうコホート型の研究が非常に重要になってくるかと思うのですが、その辺の現状はどうなっているのかということ、将来どういう形で、なかなか難しいのですが、おやりになろうとしておられるのかというのを聞いておきたいと思うのですが、いかがですか。
○国立精神・神経医療研究センター理事(研究所長)
我々も前向きのコホートの重要性を認識しております。いま、かろうじてできているのが例の被災地における精神科を中心としたコホート、それほど数は多くありませんが、1,000人単位のものをしっかりやり始めているところです。もう1つは、大規模の前向きのコホートは、ある意味国がきちんとしたプロジェクトとしてやっていく、もちろん我々がセンターとしてやることは大事なのですが、ある程度の予算立てがきちんとしていなければかなり難しいということもあります。ですから、いまは少し小規模なコホートから始めております。そういった将来的なところがクリアされれば、我々が主体的となってやっていきたいと思っています。TMC長がおりますので、一言言わせていただきます。
○国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナル・メディカルセンター長
私のほうから一言追加させていただきます。いま、お話がありましたように、まず筋ジストロフィーの患者登録を進めております。特徴の1つは、単に新規登録を毎年重ねるだけではなく、臨床情報に関しては毎年更新する約束になっております。したがいまして、更新を積み重ねていきますと、少なくとも患者さんの自然暦、いわゆるナチュラルヒストリースタディーができます。それを基にして、さらに前向きの臨床研究も組み立てることができると考えております。より大きな問題は、このような稀少疾患ではなく、先ほどもお話が出ましたが、例えばパーキンソン病のような疾患にも、こうした考え方をどのように発展させたらよいかという点にあるかと思います。以上です。
○内山委員
すばらしい取組をされていて感心して拝聴しました。先ほどの猿田先生のご質問とも若干関係するのですが、IBICにしてもCBTセンターにしてもスクラップアンドビルドで専任化して、すばらしいと思うのです。一部は先行投資ということなのですが、こういう場合はやはり病院の経費、そういったことでお雇いになるのですか。もうひとつ、ついでに教えていただきたいのですが、決定のプロセスについて、委員会といいますか組織といいますか、どういう形でセンター内で合意形成をして実行するか、参考までにお聞かせください。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
お答えさせていただきます。先行投資的なことは、特に初年度、昨年度においては、ミッションを果たしていくためには、どうしても避けて通れないといいますか、欠かせない人材に限って先行投資で、そのかわり例えばIBICならIBICが立ち上がって十分機能してくれば、そこにはプラスの付加価値が加わり、収益という形で戻ってくるという、そういった前提を持ってやらせていただいているというところです。ですから、財源は当然、診療にかかわるところのポストであれば病院の財源ということになりますし、研究上にかかわることであれば、いわゆる一般の運営費交付金という形になると思うのですが、そこが1つです。実際にどういうふうにして選んでいるかということです。組織的には全体の、例えばどこのポストが非常に重要であるかということに関しては運営会議がありまして、運営会議でいろいろなディスカッションが出てまいります。その上で、それを理事会に持ち上げて、理事会の承認を得ているという。そういうやり方でやってきております。
○内山委員
ポストとしては、どれクラス以上の先生方で、何人ぐらいの組織ですか。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
運営会議はいま総勢20名ぐらいで構成しております。診療関係で言いますと副院長クラス以上です。研究所でありますと、いくつかのセンターのセンター長を含めて、研究所は所長が入っております。もちろん事務も入っております。
○本田委員
私は医療専門家ではないので、素人の質問ですが、稀少疾患の患者登録の事業のところに大変興味を持っています。とても重要な取組だと思っているのですが、先ほども質問が先生からありましたが、いまはこのセンターに通ってらっしゃる方のみの登録ということになるのですか。それとも、全国の病院の連携の中での登録で、どのようにリクルートをされているのですか。
○国立精神・神経医療研究センター理事(研究所長)
後者ですが、これもやはりTMC長が最も得意としているところですので回答させていただきます。
○国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナル・メディカルセンター長
追加で回答させていただきます。私どものこの制度はホームページ等で公開しておりますが、全国規模です。ほぼ全国の都道府県にまたがりまして、950名以上の方に登録していただいております。ポイントが3つありまして、1つは患者さんに登録をしていただくことで、インフォームドコンセントをクリアできます。2番目は必ず正確な遺伝子診断をしていること。3番目は簡単な臨床情報については毎年更新すること。この3つの精神を守っております。しかも、センターのホームページ、あるいは筋ジストロフィー協会の皆さんのご協力を得て全国に普及してきたことがあります。1つの大きな問題は、こういった雛形をどのようにほかの疾患に対して応用するかであるかと考えております。
○本田委員
実は、ちょうどスウェーデンで患者さんが自ら疾患登録をしているシステムを教えてもらって、是非これを日本でもと思っていたのですが、こういうところできちんと進んでいることにとても感銘を受けましたし、より広く広げていただくことと、こういう情報を患者さんにも役立つようなことをしていただければよりありがたいと思いました。
○永井部会長
ほかにいかがですか。
○国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナル・メディカルセンター長
20頁の右の上のほうに、患者さんに対してニュースレター等で情報発信をしていることを書いておりますので、後ほどご覧ください。
○永井部会長
特許例で、パーキンソン病の腰曲がりに対する外腹斜筋の治療というのは、これは用途特許ということになるのですか。物質特許ではないわけですね。
○国立精神・神経医療研究センター理事(研究所長)
19頁に写真が載っておりますが、パーキンソン病の方で非常に腰曲がりで悩んでらっしゃる方がいまして、これについて外腹斜筋に微量のリドカインを注入するのです。そうすると、まだはっきりどういうメカニズムかわからないのですが、腰曲がりが非常によくなるという、そういう現象です。
○永井部会長
用途特許なのか、物質特許なのかという、いわゆる特許の位置づけがいまいろいろ議論になっていて、医療行為が特許になるのかという話と関係してくるのですけれども。
○国立精神・神経医療研究センター理事(研究所長)
そのとおりだと思います。どちらかというと、用途特許ではなくて、医療特許の部類に入っていて、特許申請は受付けていただいたのです。確かに先生がおっしゃるとおり、将来どうなるかわからない。
○永井部会長
たぶん国でも議論しているところではないかと思うのですが。これから、高速シークエンサーでのデータが増えてくるわけで、レアディジーズの解析はどういう戦略を立ててらっしゃるのですか。いま、登録の話がありましたが、よくレアバリアントでコモンディジーズの説明をするということが言われますが、私はあくまでもレアディジーズだと思うのです。それでも非常に重要だと思うのです。レアディジーズから病態の解析、あるいは理解が深まるとともに、そこからコモンディジーズへの治療法が出てくる可能性があるわけです。
○国立精神・神経医療研究センター理事(研究所長)
7頁のTMCの説明のところで、左の黄色のところに、臨床開発部の下に先端診断技術開発室長を置いて、ここで次世代型のシークエンサーを使って、いろいろレアディジーズの全シークエンスをやっているというところです。病院から来る検査もあるし、あるいは他施設から送られてくるケースもあって、本当に大変な作業ですが、この専任室長がいま手がけている状況です。
○祖父江委員
パーキンソン病の腰曲がりに対するリドカインは我々もやらせていただいていまして、非常にいいなと思っております。リドカインはものすごく安いもので、自由にやれるところに意味があるのかなと思っていたら、これに特許がかかわってくると、ちょっとどうかなという感じがします。あまり高い特許は課さないようにお願いしたいと思います。
○国立精神・神経医療研究センター理事(研究所長)
全然そういう気はありません。確かに我々も審査のときに、一般的に使っていただいてなんぼの世界ですので、そういう観念はしっかり持っていますので。
○永井部会長
よろしいでしょうか。それでは第2グループにまいります。医療の提供に関する事項、項目の4から6です。では、10分でご説明をお願いします。
○国立精神・神経医療研究センター理事(病院長)
では、医療の提供に関する3項目、評価の4から6をご報告、ご説明させていただきます。まず評価の4ですが、これは「高度先駆的な医療、標準化に資する医療の提供」についての報告をさせていただきます。また評価の5では、「患者の視点に立った良質かつ安心できる医療の提供」ということで、評価を受けたいと思います。そして評価の6では、「医療政策の一環としての、センターで実施すべき医療」ということでの評価を受けたいと思います。
まず「高度先駆的な医療、標準化に資する医療の提供」ですが、これは大きなA3のほうの実績評価報告、これに則ってご説明させていただきたいと思います。43頁、高度先駆的な医療の提供としましては、いくつかありますが、代表的な点としてはミトコンドリア病の遺伝子診断。これは、昨年度からは全ミトコンドリアの全DNAの塩基配列を決定して、そして標準化的な診断に用いています。
もう1つは、精神科においてうつ病というのは臨床診断でされますが、その客観的な診断法は、非常に重要視されています。当院では、光トポグラフィ検査を用いて、うつ病の診断をしています。その70%くらいの診断率という、正確さが報告されています。昨年度は270例を行っています。
44頁のいちばん下を紹介させていただきます。筋疾患というのは大変特殊で稀少性の疾患ですが、全国の筋疾患の診断において、いろいろな要望があります。特に病理診断、そして新たな遺伝子診断という要望がありますけれども、これは当院において660件の検査を行って、大変感謝され、かつ医療に利用されています。
次に47頁、「医療の標準化を推進するための医療の提供」です。これはポンチ絵のほうの、参考資料の1頁を見ていただきたいと思います。まず専門疾病センターについてのご説明をさせていただきます。これは病院と研究所が一体となり、また病院においても多くの科、そしてコメディカル、多職種が一緒になって疾患の診断・治療を推進していくセンターです。現在のところ5つの疾患に関して、そのセンターを走らせています。
ポンチ絵の2頁、パーキンソン病、これも先ほどからいろいろ多くの説明がありますけれども、2段目の所が、そこに参加している施設ないしグループですが、いま多くのグループとともに活動しています。基本的にはパーキンソン病の治療、これを試行する形での研究をしています。先ほど言いました腰曲がり病に関しては、特許申請しています。長期間、3カ月以上の効果があるということで、これは非常に患者さんに感謝されているところです。
次の筋疾患、これも先ほどから多くのRemudyとか、患者登録のご紹介がありますが、これは研究所、病院における多職種のチームによって、筋疾患における治療をまず第一に考え、そして治験等を試行して、臨床研究ネットワークを計画しています。
次の多発性硬化症センターですが、このいちばん大事な点は、研究所で開発された多発性硬化症の治療薬の可能性があるOCHという、この薬に対する医師主導治験のプロトコール作成に関して、今年度から実施できる体制が出来上がっています。
てんかんセンターに関しては、右側の「てんかん診療」と書いてある周辺を見ておわかりのように、多くの科がそれぞれの立場における考え方、診断法、治療法というものを集約しまして、診断を検討して治療を行っているところが、非常に特徴的です。
6頁は地域精神科モデル医療、これは地域生活を中心とした精神科医療を実現するというのが大きな目的でして、特にこのセンターにおいては在宅支援、そして新しいデイケアの在り方の活動を行っています。特に効果としては、いちばん下の左のほうにありますように、就労及び就学者というのが、平成21年度は7名でしたが、平成23年度は20名に増加したという成果を上げています。これが専門疾病センターの報告、説明です。
続いて次の評価項目5です。「患者の視点に立った、良質かつ安心できる医療の提供」。これはA3のほうを50頁から見ていただきたいと思います。この「患者の視点に立った」という点では、まず患者の自己決定の支援という点では、精神科領域においては家族会等を含めて、多くの機会を求めて病状の説明を行ったり、また神経難病の方に関しては、遺伝子カウンセリング等を開いて、情報を提供しています。
52頁ですが、患者さんにそういう情報を提供して、参加していただくという点では、先ほどから大変皆さんの話題になっています、筋ジストロフィーの患者登録は、自らの意思または希望によって登録していただいています。全国から遺伝子情報、そして治験への参加等、いろいろな情報というものを共有しています。先ほどからありますように950件近い登録がなされています。
また、参加型ということにおいては患者満足度調査、これは前回の評価においても指摘されましたように、「精神科を主にする病院における評価法はないか」ということで、「CSQ8J」という評価法を用いて、現在当院における精神科医療の満足度を計っています。
現在解析中ですが、33の精神科領域の施設において、当院は中間よりもやや上のような評価でした。いちばん大事なのはそれをいかに我々が活かして分析しているのかですが、いまのところ医療スタッフのチームワークだとか、看護師の言動というものが、より満足度に与える相関ケースが高いことが示されています。こういうCSQ8Jというものを継続していって、病院における精神科医療を中心とした向上に役立てたいと考えています。
もう1つ、医療において非常に重要なのはチーム医療ですが、この推進においては先ほど言いましたような専門疾病センターがありますけれども、それ以外にも医療観察法病棟における多職種医療のチームを作っています。そして医療サポートチーム、褥瘡対策チーム、摂食嚥下チーム等、こういうことによって神経難病または重心の患者さん等の安全、またはQOLの改善に努力しているところです。
58頁を見ていただきたいと思いますが、医療において、特に我々センター病院において、地域ケアを見通した医療の提供を行っています。これは地域連携パスというものをいま整理しながら、退院促進、特に精神科における退院促進、そして在宅医療の貢献ということに力を入れています。特に成果的には訪問看護数、これは59頁の中程にありますが、平成23年度は1,500件を超える訪問看護件数をこなしています。
60頁は医療安全管理体制の充実です。もちろんいろいろな防止対策を行っていますが、特に強調したい点は、多職種が協働して医療安全体制に取り組んでいる。例えば摂食嚥下チームにおける誤嚥の防止、呼吸管理チームによる指導、またはME、医療機器管理におけるグループによる医療安全への取組、そしてインフェクションコントロールチームの活動等、多くの多職種のチームが医療安全に取り組む形で、いま努力しています。
62頁のいちばん最後を見ていただきたいのですが、3番目、こういうことをトータルしまして、病院全体の系統立った改善、基本的な医療における改善等に取り組んだ結果、昨年の11月に日本医療機能評価機構の病院機能評価の認定施設として、認定されています。
以上が2つ目の評価ですが、3つ目の評価項目としては、66頁の「その他医療政策の一環として、センターで実施すべき医療」ということで、特に我々としては2点、医療観察法病棟での医療の提供、そして重心への医療の提供ということで、取り組んでいます。
医療観察法病棟に関しては、また戻って申し訳ありませんが、小さいポンチ絵のほうの21頁を見ていただきたいと思います。政策医療の提供として医療観察法病棟等病院における医療観察法病棟は我が国最初に作られ、そして最大の病床数、68床を持っています。
2つの病床がありますけれども、その1つは合併症医療に取り組むということで、これは国からそういう役割を託されていますが、非常に特殊・重篤な状態の患者さんの治療に関して、先ほど言いました多職種の者が集まって治療計画を立て、そして毎月検討を行って進めています。また、情報公開も極力進めているところです。
また、合併症医療ですが、これは2年目を迎えまして、最初は合併症の有病率が21%だったのですが、昨年は80%。かなり多くの方々が合併症を持っておられ、それに対する治療を、病院における総合内科、総合外科のドクターを中心にして行ってきています。
また、教育研修機能。これは大変見学の希望が多いのですが、積極的に受け入れて、昨年度は230名以上の見学、研修を行っています。
また戻っていただいて恐縮ですが、68頁、重心、身体障害者への医療の提供としては、まず患者さんの治療、QOLの向上ということで、他科の先生を交えて、患者さんの様々な状態を把握して、治療しています。特に整形医療、骨折の形成、虫歯、歯科との連携を置いて、QOLを高めるように努力をしています。
それに加えて在宅医療、在宅の一環とした医療ですので、在宅で困られている方に対しての短期入院ということを、昨年度は191名において行って、トータルとしての医療、重心の患者さん、家族の医療の向上に努力しているところです。以上です。
○永井部会長
ありがとうございます。それではご質問、ご意見をお願いします。
○猿田部会長代理
これだけ臨床研究、医師主導の治験も進んできて、それを参考資料の9頁にもありますが、ICH-GCP基準にかなり準拠した形で、実際に進められているわけですか。かなり大変だと思うのですが、どうでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナル・メディカルセンター長
TMC長からお答えします。ご指摘のとおりと思います。特に臨床研究に関しては、将来の薬物開発、承認に向けて取り組むために、ICH-GCP基準で行わなければいけないわけですが、確かに私どもの所でICH-GCP基準による臨床研究の準備、試行というのが始まっています。
ただ、これを実際に行うためには、高いスキルを持っている多くの人員をそろえる必要があります。先ほどもご指摘がありましたが、人員の整備がなかなか難しい状況の中で、それを行うというのは大変なことでして、多くの皆様のご理解があって、初めてできるものと理解しています。
○猿田部会長代理
各拠点において、こういった形で進んでくれると、臨床研究がますます進みやすくなり、国際的評価も高くなるのですが、一方では非常に大変だと思うのですけれど、どうもありがとうございました。
○国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナル・メディカルセンター長
私どもも重点化、効率化を目指して、やはり定員をなるべく増やすことなく、こういった事業を推進したいと考えています。
○祖父江委員
どうもありがとうございました。非常にわかりやすくご説明いただいたと思いますが、これはちょっとコンセプチュアルな話になってしまいますし、おそらく先生のところだけではなくて、全てのナショナルセンター共通だと思うのですが、病院の機能として、いわゆる病院として地域とか患者さんに、いい医療を提供するという側面と、いまご質問があった開発的なところをどうやってやっていくかという、そこが二律背反とはいきませんが、少しコンセプトが違いますよね。
ですから、もちろん患者さんのためにいろいろやることが、治験にも繋がるということはあるのでしょうけれど、そこをどのように病院の機能として、切り分けていかれるのかという、ちょっとコンセプチュアルな質問で申し訳ありませんが。
○国立精神・神経医療研究センター理事(病院長)
まさにご指摘のとおりです。疾患や専門分野において、それぞれの疾患に対応する特徴がありまして、まず先ほど言いました地域医療に関しては、精神科を中心としたモデル、こういうのをやはり地域の病院と一緒になってやる。これは地域でしかできないものですから。
あとは筋ジストロフィーみたいな、非常に稀少な疾患の治療においては、これは全国規模でやらないといけないと思いますので、一概にこれを同時に平行というか、疾患ごと、またはテーマごとに重点を分けながら、いま努力して行っているところです。
○祖父江委員
それが先ほど疾患、特異的なシステムを作っておられるというところに繋がると考えていいですか。
○国立精神・神経医療研究センター理事(病院長)
そうです。
○祖父江委員
どうもありがとうございました。
○国立精神・神経医療研究センター理事(病院長)
先生のおっしゃるご指摘は、私たちも常々、非常に頭を一方では痛めているところでもあります。といいますのは、やはり病院単体としては病院の独立採算的なところを、しっかりやっていくという方針があります。まだ達成はできていませんが、そういう方針でやっていくときには、患者さんをある程度限定してしまうというのは、受診一般にとってはマイナスに働くのです。
一方、こういう治験や開発ということをやるためには、かなりフォーカスした、こういった患者さんをうちは対象にしますということを言いたいところなのですが、それはなかなか両者が矛盾したところがありまして、言いにくいところがあるというので、1つはそういう疾病センターのようなものとか、専門外来というものを置きながら、しかし神経疾患、一般精神疾患、一般を外来では診療するということをやらざるを得ないというところがあります。
○内山委員
いまのこととも関連して、いわゆるナショセンの中で唯一常勤の研究者の方が多いセンターということで、これはこれで、また非常に意義があると思うのですが、いわゆる常勤研究者とされている方々の中にも、やはりクロスオーバーで臨床のほうに出てこられる方たちというのはおられるのですか。
○国立精神・神経医療研究センター理事(病院長)
それは実際、特に外来における専門外来等は、研究所のMDは病院の併任をして、積極的に臨床をやっていただいているということがあります。
しかし研究所の構成としては、そのMDが必ずしも全てではありません。PHDの研究者はたくさんいらっしゃいますので、ごく限定された範囲ということにはなると思います。
○花井委員
ありがとうございます。1年間で着実に充実の方向に行っているようにお見受けしたのですが、やはりちょっと気になるのは、いま言った治療という部分と、研究という部分の接点のところで、特に外部の研究費が取りにくい部分、具体的に言うとやはり地域精神科モデルの、いわゆる我が国の特殊な事情として、やはり地域との連携で、在宅へ移行して、そこを均てん化していってという、そういう政策的なミッションがありますよね。
これについては、かなり人もかかるし、医業収入で必ずしも賄えないところもあると思うのです。この辺は精神保健研究所との連携と、あと収入というか、それをやっていく上での、お金の面の心配とか展望というのがあったら教えてほしいです。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
この点に関しては、確かにおっしゃるように、地域との連携をとって、1つのモデルを作るというのが私たちの役割で、一般の医療をそこで展開するというよりは、1つのモデル的なものを作り上げていく。それを持って均てん化していくという方向に持っていきたいということで、例えば精神の地域医療に関する、地域におけるアフターケアであるとか、地域との連携をスタートしていますが、そこは精神保健研究所のそれを専門にしている部長と、その研究グループと病院の、例えば看護師でいえば訪問看護をする部隊と、そういったものが連携して、一部は研究費を当ててやっていく。
あとは保険診療で可能な範囲の訪問看護であるとか、そういったものは医療の範囲で請求していくという、そういう2本立ての形で進めています。それがある程度の形を成してきたときに、初めてそれに対しての診療報酬というのが、将来的に見込まれていくのだろうと思っています。
○国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所長
いま総長からご報告したとおりで、この医療に関しては、人件費がものすごくかかるということははっきりしています。人件費に関しては研究所職員、病院職員で賄っていただいています。それ以上にかかる人手に関しては、研究費から出させていただいているのが現状です。
しかし、モデル医療としては確立していて、有効性は明らかですので、これを全国に広めるためには、やはりシステムや制度を確立するための提言が、さらに必要になってくるだろうと理解しています。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
もう1つだけ申し上げますと、確かに外部資金の導入が難しい分野でもあると思うのです。そういう場合には、いまセンターに付けていただいている、いわゆる研究開発費というのがあって、ここは基盤を整備するという色彩もあるのですが、政策的に非常に重要なところには、その研究開発費というものを1つの班として付けて、研究を推進していただくといったところでも、少し金銭的な面では応援しているところです。
○花井委員
ありがとうございます。いろいろ工夫されているということで、ここは期待するところなのですが、1つだけ、これは評価と違ってお願いなのですが、ある種、ナショセンだからいろいろなリソースが使える話で、均てん化するモデルを作ったときに、普通の病院の医療はリソースが薄いのですよね。
そうするとナショセンモデルが実装できないという現象が、時たまいろいろな分野で見られていて、ミニマムスタンダードをナショセンが作るのかという話もあるのですが、ある種、やはり現状に応じて、今後、診療報酬で評価されていって、理想に近づいていく部分と、あと現状で実装可能な部分というのは、結構距離が日本の医療の場合にはありますので、そういうところを両にらみでやっていただけると、非常にありがたいと思います。以上です。
○永井部会長
あと、医療の提供体制は全般に改善していますが、法人化のメリットというのは、どのくらい活かしておられるのか。あるいは、まだ法人化においても、いろいろな制約があるのか。その辺の全体的な印象を教えていただけますか。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
なかなかそこの評価は、これで2年経ったところですが、難しいところはあります。ただ、いろいろな意味での、こちらが計画して活動する、例えば地域との関係だとかそういったことに関しては、やはり独法化したことによって、国の時代には国の縛りといいますか、その範囲の中でしか動けなかった部分が、ある程度の自由度を持って動けるようになったということがありますので、そういう点では非常に独法化して、プラスに働いていると思っています。
○永井部会長
制約という、未だに解決されていない問題というのはどうでしょう。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
制約というのは、組織を運営していくという意味においてでしょうか。
○永井部会長
独法化のメリットを活かす上でも、未だに制約になっている事項というのはどうでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
それは、いちばん大きいのはお金の問題ですが、これは国全体の、いまの状況がありますので、この点はいちばん私たちが、いま少し苦しい思いをしているところは、実は運営費交付金という形であてがっていただいて、当初、5年間の中期計画を達成する意味での、中期計画を達成するための予算が、5年間にわたってこれだけである、その間に経営努力をしなさい、最終的にはそれを黒にしなさいということでスタートしたわけですが、いちばんいま苦しいのは、やはり1年経って国の財政事情とか、東日本大震災というのが重なってきたわけですが、いきなり運営費交付金の本体が10%削られたということがあります。
ただし、その一方で特別枠として、実はその10%をほとんど回復していただいているのです。ただ、特別枠であてがわれたものというのは、新規の研究事業ですので、新規の研究事業にそれをあてがっていくと、本体のほうの減った部分がどうしても補えないという、そこが非常に苦しいです。
○永井部会長
どうもありがとうございました。続いて第3グループ、7から9の項目です。10分の説明でお願いいたします。
○国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナル・メディカルセンター長
人材育成に関しましてトランスレーショナル・メディカルセンター長からご報告させていただきます。最初に、理事長がお使いになりました「業務実績の概要」の4頁目をご覧いただきたいと思います。人材育成という項目がありまして、ポイントが2つあります。1つは研究・医療における専門家育成です。2つ目が医療従事者等に対するモデル的研修・講習、即ち、外部の方に対する講習です。具体的には評価シートの72頁をご覧いただきたいと思います。最初に、研究・医療における専門家育成の項ですが、(1)にありますように、私たちは臨床研究研修制度を設けておりまして、それに基づいて各種の講座を開いております。講座の回数としては10回ですが、いくつかポイントがあります。
まず、厚生労働省の臨床研究の決まりにありますように、臨床研究に参加する者は倫理講座を受けなければなりません。したがって、私たちの制度では新規及び5年ごとの更新がありまして、何れかの受講証がなければ臨床研究を申請できないシステムを採用しております。
2つ目のポイントは、臨床研究の入門講座、実践講座に関しましては、前年度までは一方向性の講義をやっておりましたが、平成23年度からは双方向性としまして講義と演習を組み合わせて、それぞれ、1日半ないし2日開催しております。
3つ目は、これらについて登録をしていただければ、CRT-Web上でこれらの講座を受講できることです。
これを一番の基にしまして、(2)に書いておりますように、8題の若手研究グループを採用しております。これにつきまして、年間34回の研究指導ミーティングを行いまして、平成23年度のうちにそれらのうちから既に7件の論文発表を見ております。
次に、(3)若手育成カンファレンスです。その主力は若手研究グループになりますが、これは、研究者、レジデント、コメディカル等を対象にしまして8回開催させていただいております。
次に、73頁の下です。連携大学についても進めておりまして、特に山梨大学との連携につきましては、平成23年度はセンター職員11名が入学しております。それに伴いまして、センターの部長職の者8名が客員教授に就任しております。ここまでが研究・医療における専門家育成です。
次の74頁で今度は医療従事者、特に外部の方に対するモデル的研修・講習についてお話申し上げます。
最初は(1)精神保健研究所の研修です。これは、各種の研修を20回開催し、院外の方1,050人にご参加をいただいております。(2)が認知行動療法の研修です。これはご紹介がございましたが、平成23年度4月、認知行動療法センターが発足いたしまして、6月、センター長の赴任をいただいております。それを受けまして各種研修、特に外部向けの認知行動療法研修、厚生労働省研修事業に基づきます、うつ病認知行動療法研修を行っておりまして、院外1,659名の方にご参加をいただいております。そのほか、医療観察法、光トポグラフィ、その他のことがあります。いちばん下を見ていただきますと、私どもがお約束しているセンター外の研修は年間20回ですが、平成23年度は80回。それから、1,000人以上の方に講習をすることになっておりますが、これは2,888人の方にご参加をいただいております。
○国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所長
続きまして、評価項目8と9に相当します情報発信、政策提言、医療政策の推進への貢献などについてご報告申し上げます。A3の用紙ですと77頁から、A4の参考資料は図21からときどき見ていただくことになると思います。よろしくお願いいたします。
医療の均てん化に関しましてはネットワーク構築の推進が最も重要になると考えております。政策医療の例として、77頁に重症心身障害、筋ジストロフィー医療観察法に関して記載してございます。特に医療観察法に関しましては、資料21頁ですが、先ほど糸山院長がご報告したとおりです。その中で、右下に「政策提言・研究」という部分があります。入院された全国の対象者について指定入院機関の全数の評価を行っています。また、研究所を中心に病院、コメディカルの方たち、全国の指定通院機関にご協力をいただきまして、外来通院の方々への調査も行っております。これらから得られました結果をふまえて、直接医療政策に生かしていただけるよう提言を行い成果を出してきております。
次の79頁、情報発信・情報収集です。一般市民を対象とした講習会やシンポジウムとしまして、多発性硬化症、筋ジストロフィーなどについて実施しております。これはA3の資料に記載してあります。これ以外に、中学校や高校の生徒さんへの薬物教育、スクールカウンセリングなどを通じて子どもたちへのメンタルヘルスの向上、メンタルヘルスを維持するためのさまざまな手段に関して指導も行ってきております。センター全体としての情報発信に関しまして、情報管理室の整備で、ホームページのアクセスツールなどを利用してたくさんの方に見ていただけるような魅力的なホームページ作りにも努力をしてまいりました。昨年度は200万件近いアクセスをいただいております。自殺予防総合対策センターのホームページであります「いきる」に関しましては、2年前には月間3万件程度でしたが、昨年度、5万件程度までに増加するなど、医療従事者、患者さん向けのホームページともに、ご好評をいただくなど、たくさんの方に見ていただいております。
次に、政策にかかわる問題です。政策提言に関しましては、特に標準医療やモデル医療に関するものについては82頁に記載してあります。この辺り、院長からもご報告がございました。それ以外に、2番目「国が設置する委員会への参画」というところをA3用紙でご覧ください。
自殺対策は国にとって喫緊の課題であるということで、私どものセンターにも5年前に自殺予防総合対策センターが設けられました。内閣府の自殺対策推進会議という非常に重要な会議の座長を総長が務めていたり、内閣府の自殺対策推進室の政策参与として2名が関与するなどの活動をしております。もちろん自殺予防総合対策センターはNCNP内外、国内外への発信を行って政策提言に結びつけているということを次の項目で申し上げたいと思います。委員会の参画に戻りますが、国の委員としては、文科省の再生医療の実現化プロジェクトのプログラムディレクターとしての活動、内閣府の交通事故被害者への支援専門委員、ドメスティックバイオレンスに関する専門委員、国土交通省への専門委員、薬物依存に関する厚生労働省、法務省関係の専門家としての助言委員などの活躍、それから、発達障害者施策検討委員などの活動も数多く行ってきております。
政策提言はいろいろな場面で行われてきているわけですが、たとえば、自殺予防に関しまして、自殺総合対策大綱が出来てから5年目ということで、今年度、見直しが行われる予定になっております。このために自殺予防総合対策センターが中心になり、自殺予防に関係している多数の学会からのご意見をいただき、昨年度、それを第1次提案ということで公表し、パブリックコメントをいただきました。そして、この6月に実際に改訂された第2次案を担当の中川大臣に手交したところです。このほか、精神保健医療福祉に関するモニタリング、毎年6月に行われている全国の精神科入院患者さんの全数調査の解析に関しても、引続き行っております。現在、特に問題になっております脱法ドラッグや指定薬物につきましても、基礎的な研究から全国の実態調査、臨床的治療法開発、国策としての薬物使用に係る問題に関する政策提言を行っております。
次に83頁、医療施策への推進です。各センターの非常に大事なミッションである公衆衛生上の重大な危機への対応です。最近では東日本大震災をきっかけに災害時メンタルヘルスの対応としまして12月に災害時こころの情報支援センターが出来たことは総長からもご報告いたしました。もちろん、それ以前から被災者の診療対応・支援者支援ということでメンタルヘルスのケアについて、昨年の4月から7月まで、病院を中心に各施設のスタッフが医療支援活動を行ってまいりました。これ以外にも被災地における住民や支援者の心のケアのため、メンタルヘルスの専門家が震災直後から現地に入ったほか、現地を統轄する岩手県、宮城県、福島県のメンタルヘルスアドバイザーとしての活動を依頼されました。それから、国・地域の施策立案の支援のため、被災地の地方自治体や各県の精神保健福祉センター等への支援のため、3月以来現在まで、一貫して活動を続けてきております。この件に関しましては、病院、精神保健研究所にあてて福島県知事から感謝のお手紙をいただいたこともございました。
国際貢献に関しましては85頁に記載があります。各国への貢献、疾患研究に関する貢献、メンタルヘルス向上に関する貢献等を行ってきております。マックスプランク研究所、メルボルン大学、WHO等に関しまして、特に積極的な意見交換等も行ってきております。
情報発信の項で1つ飛ばしました。79頁に、先ほど総長から申し上げましたメディアカンファランスその他、テレビ、新聞、雑誌等からの取材に100件以上の協力をするなど、マスメディアを通じて一般の方たちへのメンタルヘルス向上のための情報発信と、私どものセンターの仕事のご紹介、ご理解をいただくための活動なども続けてきております。以上です。
○永井部会長
ありがとうございます。それではご質問、ご意見をお願いいたします。
○三好委員
1点、人材育成に関してお伺いしたいのです。ここでリーダーとして活躍できる人材の育成ということで、この成果のところでは「研修等」とは書かれているのですが、平成23年度中期計画の目標の設定にも関係するのかもしれないのですが、リーダーの育成というと、企業も同じなのですが、業務をある程度、ある時期にキャリアを積んでいくというプロセスがどうしても必要に思うのですが、そういったところはこういうところで評価を見るべきなのか、別のところで見るべきなのか。リーダー育成というとやはり、そもそも計画の設定がまずいのかもしれないのですが、その辺はよくご意見をお伺いしたいと思うのです。
○国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナル・メディカルセンター長
TMC長からお答えいたします。私どもは現場ですので、リーダー育成に関しましては、より高度な判断が必要と思います。確かに実績として書いているものは、比較的入門、あるいはそれを実践するといったことを中心にしております。さらに育成を行うためには実際の、例えば臨床研究あるいは主導治験に参加していくことが極めて重要になります。ただ、それだけではなくて、我が国の現状を考えますと、PMDAとの例えば人事交流というようなものが極めて重要になりまして、私たちは積極的に進めております。現在、PMDAから出向いただいている方もいらっしゃいますし、私たち出身の者が現在PMDAに入っております。
次に、おそらく先ほど申し上げた臨床研究医師主導治験のためには、そういった高度なスキルあるいは知識を持つ方たちとの交流、実践、また、NCであるということを非常に活用いたしまして、国立病院機構、大学法人との協力といったことと相まって、現場としましてはリーダーを育成したいと考えております。しかし、大所高所からはまた別の観点がおありかと思います。
○祖父江委員
どうもありがとうございました。今のリーダー育成の質問ともちょっと絡むのですが。PMDAとの人事交流とか、いま外部との人事交流のお話をしていただいたのですが、例えばPIクラスとか、さらにその上の実質的に研究を進められる方の例えば大学との人事の行き来が各層ごとに、やはりいろいろなところとある程度人事的交流があるというのが非常に重要ではないかと私は思うのです。その辺はどんな状況なのかというのを教えていただけるとありがたいと思います。
○国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナル・メディカルセンター長
これも現場としてのお答えでして、おそらく総長は更なる高度なお答えがあると思うのですが。私どもとしましては、そういった人事交流が行われることは極めて重要であり、従来、NCにおいては、大学法人との交流が必ずしも活発でないということは否めないと思います。しかし、私たちに関しましては、例えば精神医学に関しましては、現役の国立大学の教授の方にご赴任いただきまして、その方が実は参考のほうの7頁に組織表があるのですが、そのうちの臨床研究支援部長にはその外部の教授であった、しかも比較的年齢の若い方にご就任いただいております。それから、PMDAのことは申し上げました。私たちの中からも、例えば、客員教授あるいは非常に有力な大学の教授の候補が何人も出ております。そういった意味では、NC等の中ではおそらくそういった交流がなされているところではないかと感じております。
○国立精神・神経医療研究センター理事(研究所長)
もう1点補足させていただきます。確かに正規職員としての人事交流は難しい面があるのですが、そういった非常勤のレベルあるいは客員レベルということでは、いま、非常に活発な交流が行われています。例えば、いま神経研究所では大体250人の職員が働いておりますが、そのうちの約100人は大学関係、あるいは企業の方々からの客員研究員もしくは研究生といったレベルの方々が活発に来ているのです。したがって、そういった場所では非常に活発な人事交流が行われていると私は思っております。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
一言付け加えさせていただきます。私たちは、やはり大学との人事交流は非常に大事だと思っております。特に、例えば神経研究所の場合は、部長の公募をするとインターナショナルな業績を持った方がどっとアプライされます。その中から素晴らしい人が選ばれていると思うのですが、例えば病院などは、部長クラスにしても、なかなか大学との間の関係、関係といいますか、基本的には公募でやりますが、有能な方に来ていただくというのは、これまではなかなか難しかった。その理由の1つは、独法化前は大学の環境と国立の私たちの環境との間にかなりの違いがあった、いろいろな意味での、制約の違いとか活動の自由度の違いとか。それで、関心は持って「ナショナルセンターで仕事をしてみたいと思うけれども」と。いろいろ実情を聞いて、「ああ、そんなのでは無理です」と言って引き上げられてしまうといったことがいままであったのです。そういう点では、独法化したことによっていろいろな意味で大学の環境にかなり近づいたと私は思っております。これから、いよいよ交流をもっと促進させていきたいと思っております。
○内山委員
今のことに関連して、ここで聞く質問ではないかもしれませんが。平成22年から大学法人から移った場合でも退職金を引き継ぐということを決められたと聞いているのですが、ファイナンシャルの面はどのようにされているのですか。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
まさにその辺も、確かに難しいといいますか、厳しい点もあります。しかしながら、これまで大学で仕事を続けてこられた方が、ある意味では継続性を持って来ていただくということでより来ていただきやすくなるということはやはり重要だと思っております。フィナンシャルの面はもちろん重々考慮しつつですが、今のところ、そういうやり方をさせていただいております。
○本田委員
情報発信のところでお伺いしたいのです。ホームページ等のアクセスの実績が上がったとか、そういうことはいいことだとは思うのですが、どういう中身のものをどういう人に届けたいとか、そういうコンテンツをどのように決めるかとか。ここに書いてあるのは、センターの紹介とか何をやっているのかというのは基本的に提供されるべきことなので当たり前だと思うのですが、NCとして広く国民に、もしくは医療従事者にどういうことをコンテンツとして出していきたいのか、もしくは国民とか患者家族がどういうことを求めているのかとか、そのような調査、もしくは一緒の意見交換とか、そういう取組などはされているのかどうか教えてください。
○国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所長
こちらから現状をお届けするのは当然なのですが、患者さんからのご質問に答えられるような双方向型の内容に関しては、意識して対応をしております。それから、病気を持った方たちあるいは障害を持った方たちが知りたいと思われる内容に関しては、できる限り速やかに、新しい情報を提供しています。それから、患者さんご自身やご家族をケアする方たち、専門職の方に知っておいていただきたい内容に関しても、意識して、随時更新をするようにしております。それぞれの内容に関しましては、各部門が責任を持って考えて出していくわけですが、大きな改変、あるいは各部門で共通に問題になるあるいは皆様に理解していただいたほうがよい内容につきましては、センターの中で相談の上で、センターのトップページの見やすい所に出していただく努力をしております。
○国立精神・神経医療研究センター企画戦略室長
付け加えさせていただきます。いまセンターでは、さまざまな新聞記事とか、テレビ番組とか、そういったものを全部集約してウォッチしております。そういったものが出たときにホームページのアクセスが一時的に増加しますので、そういったものを分析して、どういったことがニーズとして求められているのかといったような試みを始めております。そういった取組をより進化させて、全体的にどういったものを優先していくべきなのかといったことを今後検討して確立していきたいと考えているところです。
○国立精神・神経医療研究センター理事(研究所長)
もう1つ補足いたします。当センターの中に広報委員会というのを置いて、やはりどういったコンテンツを付けていけばよいかというのを議論しているのです。例えばその研究面で言えば、1つの成果というものが国民のレベルで非常にわかりやすく説明したところと、同じ内容について専門家が、科学者が見ても、ああ、これはすごいとわかるような二段構えの、そういったコンテンツを必ず入れるようにしているのです。そういった取組であるとかというのはやはり企画戦略室長のほうの広報係、博報堂とか、有名なところからも来ていただいていて、いま、非常に活発に広報活動ができるようになってきていると思います。
○本田委員
今のお話、広報委員会がコンテンツについて、もちろんはじめは各部署があれなのでしょうけれども、どういう情報をどのように提供するのか、コンテンツの中身をどうしていくのかというのは、広報委員会が基本的に責任を持って全体を見渡しているという形ですか。
○国立精神・神経医療研究センター企画戦略室長
そのとおりです。
○本田委員
先ほどおっしゃった今後のさらに進展、調査というのも、ここがやっているということですか。
○国立精神・神経医療研究センター企画戦略室長
はい、ご指摘のとおりです。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
一言だけ追加させていただきます。今年度の年度はじめの私の挨拶の中で、今年度から、今年度だけではありませんが、我がセンターが外から見えること、「見えるセンター・わかるセンター」ということをスローガンにいたしました。なぜかと言いますと、「がんセンター」と言うと、国民の100%が名前を知っている、何をやっているか知っている。ところが、「精神・神経医療研究センター」と言ったら果たしてどれぐらいの国民の方が知っておられるだろうかと。やはり知名度はかなり低いだろうと思いますので、まず「見えるセンター・わかるセンター」。その1つの試みとしまして今年は9月にセンターをアピールするシンポジウムを開くことにしておりますので、是非お越しいただければと。
○永井部会長
よろしいでしょうか。では最後にどうぞ。
○和田委員
少し全体的にご質問をさせていただきたいのです。実は私、自殺の問題というのがここ数年、数年というよりも昔からなのでしょうけれども、非常に多くて、国としても国民全体としてもこれを何とかしてほしいと。それを医療の面から拝見すると、やはりこちらのナショナルセンターさんが一番かかわりが強いのであろうと。政策提言のところにもいろいろ書かれて、国の政策にいろいろ提言をされ協力をされていると思うのですが、実はそこの自殺にかかわる精神の問題は基本的に、もっと研究とか臨床研究の分野でも、それから人材育成。一般にお医者さんの中でこれを専門に診てくださる先生はあまり多くないように思うのです。そういった人材育成とか、あるいは先ほどお話になった情報発信のところでも、国民がみんないろいろアクセスしてくる中で少しでも自殺をなくすような施策をナショナルセンターさんとしてもとっていただく。つまり、全国的に自殺をなくすような、なくすようなというか、自殺に至る精神的な疾患をなくしていくような活動をもう少し。やってくださっているとは思うのですが、これを拝見する限りではまだまだもっとやっていただいて、その成果が数値的にも表れてくるようになってほしいと思うのですが、その辺についてお考えを。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
では、私が一言言って、あと、加我所長からいただきます。ご承知のように、自殺に対する対策というのは、国を挙げて政府が中心となって、そして内閣府の中にその部署を設けて、全省庁挙げての取組ということで。その表れが、先ほどちょっと紹介がありましたように、自殺対策推進会議というようなものを定期的に開いて、どういうことに取り組んでいくべきかというのを内閣府のほうで取りまとめられるという、そのお手伝いをしているというところがあるのです。その中で私どものナショナルセンターとしての役割は、先ほど申し上げましたように、自殺予防総合対策センターを置いて、そこで。ここでは、基本的には、自殺の原因ですね。どういうことに基づいて起こってくるものであるかという、ある意味では研究をしっかりやると。それから、その研究成果を、情報としてしっかりと発信すること、ということで対策センターが出来上がっております。そこでの取組をその都度情報として発信して、いま、いちばん最近で言いますと、今度、自殺予防総合対策大綱を書き換える時期に来ておりますので、それに対する提言をさせていただいたというようなことをやっております。まだまだ本当に国全体の取組の中のごく一部ではありますが、努力をさせていただいているところです。
○国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所長
自殺予防総合対策センターを中心に自殺に至る原因、状況に関する研究は、引き続き進めております。いろいろな原因や誘因がかなりわかってまいりましたので、それをいかに除いていくか、あるいはそれに対して介入なり援助を行っていったときにどう変わっていくかということも含めて、今後、研究を進めていこうと考えております。
人材育成に関しましては、自殺予防総合対策センターは創立以来非常に力を入れております。医師はもちろんですが、多職種がかかわる必要が非常に多い分野ですので、ソーシャルワーカー、心理の専門家、自治体の窓口でかかわる方たち、精神保健福祉センター関係の方たち、看護師、薬剤師なども含めての研修に非常に力を入れて毎年続けております。
自殺者数が目に見えて数が減らないからということをご心配だと思うのですが、国を挙げての取組が5年前、実際はそれ以上前から行われてきており、数だけを見ても、この2、3年で1割程度の減少を見ております。このような取組ですぐに数が減るわけではないことは、これまでのフィンランドなどの研究でも主張されてはいますが、日本では警察庁発表のデータで3万人を超えているものの、厚生労働省のデータでは3万人を切るところにきております。是非この傾向が続くようにと、なお数値としても減少するように考えつつ、研究を進めていきたいと思っております。
○永井部会長
それでは、最後の10から14の項目について、10分で説明をお願いします。
○国立精神・神経医療研究センター企画戦略室長
評価項目10です。参考資料を主に説明いたします。評価シートは、89頁、効率的な業務運営体制についてです。参考資料の25頁です。効率的業務運営体制を適切に確保する前提として、ガバナンスの強化を行っていまして、経営安定化プランの策定、提案窓口の運用、実地内部監査の実施、事務職員の研修等を行っているところです。先程来説明していますとおり、特命事項を担う副院長の配置を決定し、4月1日から配置しています。また、研究所については、ほかのTMC、IBIC等の関係もどうするかという部分がありますが、有識者を迎えて研究所のあり方について検討を行っているところです。事務部門の組織の見直しとして、財務経理部長を専任化するとともに、調達部門を財務経理部に移しているところです。
26頁は、総人件費改革の取組です。これについては、退職後の不補充等を行い費用を減額しています。一方で、医療体制の充実ということで、人件費的には増加しているところです。この間、平成21年度から平成23年度で5.3億円の人件費の増ですが、一方で収益は12億円増加しています。しかしながら、費用的には増加してきていますので、先程来ご指摘の点で、全体的なバランスをどうしていくかという中で、精査をしていく必要があると考えているところです。
次に、評価項目11です。参考資料は27頁、評価シートは96頁からです。平成23年度の収支実績ですが、27頁の上の表をご覧いただきますと、決算額ベースで経常収支率が94.2%となっています。その下のグラフをご覧いただきますと、収益も伸びてきていますが、先行投資としての費用が短期的に増えている状況がありまして、これらについて適正化していく必要もあるところです。その下が、一般管理費の縮減です。これは、先程来説明をしていますとおり、着実に減じてきています。
28頁は、材料費・医業未収金です。これらについては、着実に縮減をしているところです。収入増への主な取組として、経営安定化プランの策定を行うとともに、施設基準の上位取得等に努めているところで、自己収入を増やしていく努力をしています。右下ですが、電子化の推進としては、研究業績管理システム等を整備することによって、省力化、効率化を図るとともに、電子カルテ、財務会計システム、医事会計システム等を活用しています。また、月次決算については、着実に実施し、理事会で審議しているところです。
次に、評価項目12です。参考資料は29頁、評価シートは110頁です。法令遵守等、内部統制の適切な構築ですが、所要の体制を確保するとともに、実地監査を実施しています。特に重要な契約業務については、契約監視委員会によるきちんとした指摘を踏まえて、それを契約審査の段階から活かしていくことで、契約業務の質の向上を図っています。原則一般競争入札やさまざまな項目について公表していく努力をしています。右下にありますのは、平成22年度の指摘を踏まえて改善した事項です。また、随意契約見直し計画においては、本年度は98.3%を随契ではない部分、競争性のある契約にするという計画にしています。これは、別添の資料に書いております。
評価項目13です。参考資料30頁、評価シートは116頁からです。予算・収支計画・資金計画等です。まず、自己収入の増加に関して、参考資料30頁をご覧いただきますと、寄附受託研究等の受入れを進めるとともに、競争的研究資金を確保しています。平成23年度は、平成22年度並みに23億円を確保していますが、これを先行投資に見合った形で順調に増やしていくことが課題であると考えています。借入金等については、長期借入は行う状況ではありませんし、短期借入金、重要財産の処分等の計画については、ともにありません。また、剰余金についてですが、剰余金は発生していません。
31頁は、平成23年度の財務状況の一覧です。貸借対照表をご覧いただきますと、規模としては440億円規模になっています。計算書左下ですが、先ほど説明しましたとおり、経常収支率94.2%です。右側に、運営費交付金の状況があります。現在、交付金が41.8億円あり、経常収益の33.6%を占めています。
次に、評価項目14です。参考資料は32頁、評価シートは123頁からです。主なものを掻い摘んで説明します。人事システムの最適化としては、業績評価をきちんとやることはもちろんですが、公募を進めて良い人材を取ることと、非常に重要な職場環境の整備ということで、全病棟にクラークを配置する、メンタルケアのアンケート等を実施する、ノー残業デーなどの設定を行っています。また、良質な医療の提供のための取組ということで、特に医師をはじめとする技術職について、特徴ある採用等を行っています。例えば医師ですと、治験臨床研究分野の総括担当、またスーパー特区の事業の治験の担当を少し専門的な立場から仕事ができるように確保しています。療養介助職では、13名の採用を確保し、患者のQOLの向上を図っています。
33頁ですが、アクションプラン、年度計画については、その都度的確に策定することが必要ですが、それとともにセンターの職員がすべてそういった情報を共有するということで、イントラで周知をするとともに、運営会議できちんとチェックをしながら、進捗を確認しています。いちばん下は、わかりやすい国民目線の情報開示ということで、もちろん利用者の投書箱を設けるとか、職員の提案窓口をつくるといった国民目線に少しでも近づくための努力はしていますが、先程来ご指摘もありました、ホームページの中でそれを実現していくことが今後の課題ですが、いまのところバリアフリーの取組や利用者の方々が使いやすいということで、属性別の入り口を設けるなどの工夫をしているところです。以上です。
○永井部会長
ありがとうございます。それでは、ご質問をお願いします。
○猿田部会長代理
これだけの活動をやっていて、交付金が各ナショナルセンターで減らされたのは、かなり影響を受けたと思います。外部資金の獲得も、いまの状況ですとメーカーその他かなり厳しいと思うのですが、今後の見通しはいかがでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
大変厳しいと思います。外部資金に関しては、もちろん研究所においてはいままで以上にアプライをして、できるだけの資金を確保しようということです。それから、どうしてもこれまで継続してきている研究を頓挫させるわけにはいきません。それが頓挫するということは、ミッションが果たせなくなることを意味します。ですから、そのような運営費交付金の中で手当されない部分を外部資金で確保するのが基本的なことにならざるを得ないだろうと。もし、それが十分果たせないとすれば、いまは全体の研究所の再編に関しての議論を始めていますが、私自身はその中で申し上げているのは、流行の言葉かもしれませんが選択と集中をやっていかざるを得ないだろうと。いままでと同規模で同質のものを継続できる環境は、なかなか難しいと思っているところです。ただ、やはり役割として果たさなければならないところがありますので、それを全部落としてまで何でもありなのかということでは済まされないだろうと思っています。
○国立精神・神経医療研究センター理事(研究所長)
1つだけ追加させてください。研究でいえば、当センターはわりと文科省からの援助を受けており、一生懸命努力をしています。これからの流れとして、やはり独法化の利点を活かす、それから臨床研究の推進を活かした、しかも先ほど申し上げましたが、私たちは非常に豊富なリサーチリソースを持っているわけですね。そういったものは、わりと一般の企業の方にも浸透していて、あそこはすごいリソースを持っているということをわかってきていただいているのですね。そういったものを活用して、これからは企業からの資金獲得にも尽力しなければいけないのではないかと思っています。
○内山委員
いまの議論にも関係しますが、国立大学法人の場合は、一般運営費交付金として、その中に人件費と基盤的経費が含まれています。ナショナルセンターの場合は、人件費は一般運営費交付金には入ってこないようですが、仕組みについて教えてください。
○国立精神・神経医療研究センター理事(研究所長)
細かい数字はタッチしていないのですが、基本的には運営費交付金の中で非生産部門、我々の研究部門に関わるものについては、給料も含めてすべて運営費交付金で賄われています。
○内山委員
それは、研究基盤経費の中に入っているのですか。
○国立精神・神経医療研究センター理事(研究所長)
はい、そうです。一方病院の方については、90%ぐらいのものが病院の自己収入から出ていますし、10%はやはり運営費交付金が出ています。どうしてかというと、病院に勤めている方についても5%か10%は研究をすることも義務になっていますので、そういった部分については、運営費交付金から出る形で基本的に給与が支払われています。
○国立精神・神経医療研究センター企画戦略室長
追加で申し上げますと、事務部門についても入っていません。
○内山委員
事務部門と何ですか。
○国立精神・神経医療研究センター企画戦略室長
事務部門と、病院診療部門の大部分は入っておらず、研究の部分の人件費がほとんどです。
○内山委員
自前でかなり賄っていて、大変なのですね。そうすると、別のところで出た運営費交付金10%削減というのは、やはり今回の給与削減に関連するのですか。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
それは別です。
○内山委員
それは、効率化計数のような形、あるいは国の施策ですか。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
これは、たぶんいまの政権になって、全体の運営費交付金の10%を一律落として、それを使って新しい政策、私どもであれば新しい研究事業を行うという考え方から出発したものだと思います。
○内山委員
よくわかりました。ありがとうございました。
○和田委員
A4の評価シートの96頁の効率化による収支改善の左から2つ目の中期計画のところで、収支相償の経営を目指すこととし、5年間を累計した損益計算において、経常収支率が100%以上となるよう経営改善に取り組むとあります。つまり、5年間で黒字にするというか赤字にしない、収支相償にすると。それに対して、昨年度若干の支出超過であったと。今年度が、また経常支出超過で、その額が少し大きいのですね。事業損益として、昨年が26百万のマイナスだったのが、今年度は765百万マイナスになったと。したがって、トータルでは繰り越しが790百万円ぐらいになるのでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター企画戦略室長
平成22年度が26百万円で、平成23年度が765百万円です。ですから、昨年に比べて739百万円悪化していることになります。
○和田委員
評価に当たって言いますと、中期計画に対して確実に実績を上げているかとなりますと、かなり計画を下回っているのではないかという判定になってしまうと思うのです。問題は、来年以降あと3年間で黒字にするとか赤字にするとか、株式会社ではないのであまり好きな言葉ではないのですが、計画は収支相償といっていますので、収支相償にする計画がおありなのか。そして、それに向かって今年度は先行投資的な部分がこれだけ入っているのだということを説明いただけるのかどうかを、1つお願いします。
○国立精神・神経医療研究センター理事長
具体的には、それぞれお答えします。基本的なところを申し上げますと、1つは平成23年度で大きく私たちの計画を下回ったのは、大雑把に言いますと医療の側が半分、研究所サイドが半分となります。医療がなぜ計画より下回ったかは、分析をしました。昨年度の前半から冬にかけて、患者数が落ちました。スタートした当初は、比較的目標に近いところだったのです。なぜ、それが落ちたかという分析をしたのですが、なかなかはっきりした要因がわからなかったのですが、医師、看護師も含めすべてのスタッフにどうやったらこれを回復できるのかという知恵出しをしてもらいました。そして、そこでいろいろな取組をした結果、今年の初め頃からかなりリカバーしてまいりました。しかし、年度を通してみますと、やはり診療収益が当初の予定を大きく下回ったということがあります。これに関しては、私たちは先ほど申し上げましたように、病院全体としての取組をしましたので、ここにきていまは年度計画にそこそこ達する状況にきています。したがって、これから1、2年に関しては、病院の診療収益は少なくとも当初の計画をほぼ達成できるのではないかと。ただ、もし患者さんの稼働率が100%になったとしても、それを大きく上回る収益は残念ながら診療点数の関係がありますので、難しいところはあります。
一方、研究所関係は運営費交付金で手当されています。先ほど申し上げましたように、基本的な運営費交付金が毎年10%カットされ、一方特別枠として私どもの場合は、金額としてはほぼ全体の計画並みの運営費交付金が平成23年度も、おそらく平成24年度も交付されてくるということです。先ほど申し上げましたように、そこには新規の事業を立ち上げていくことが入ってまいります。一方でそれをやりながら、他方従来あった研究活動をそのまま継続していくことになりますと、そこでどうしても運営費交付金のレベルでの赤が生じてしまう、それが半分という状況です。大雑把に言いますと、そういうことだと思います。
○国立精神・神経医療研究センター企画戦略室長
いま総長が説明したとおりなのですが、平成24年度においては、医業収入についてはいまのところ平均在院日数なども短くなりましたし、1人1日当たりの診療報酬点数も上昇している中で、約6億弱の収益の増を見込んでいるところです。あとは、医療外の研究でかかる費用については、これは個別に精査をしなければいけないのですが、約3億円ほど経費が増になっていまして、平成23年度が一時的に収支が悪化している部分を回復することはできると見込んでいます。あとは、さらに前向きにやっていき、必要な費用節減をすることで中期計画の最終年度までには、少しでも100%に近づけるということでやっていけるのではないかと考えています。
○和田委員
また、個別にはもう少し資料をお願いするかもしれません。財務諸表等、本日お配りいただいた資料1-6の21頁に、開示すべきセグメント情報として、先ほど説明いただいた研究事業、臨床研究事業、診療事業、教育研修事業、情報発信事業の事業区分があり、さらに法人共通があり、いちばん右に合計が出ています。この枠の下から8番目に、事業損益とあります。これを見ますと、研究事業が232百万円のマイナス、臨床研究が196百万円のマイナス、診療事業が297百万円のマイナス、教育研究事業が45百万円のマイナス、情報発信事業が42百万円のマイナスと、すべての事業にわたって赤字になっています。当然、法人共通は研究収益から30%相当の間接費を振り替えられたのだと思いますが、これが入っているので若干の黒字にはなっていますが、トータルすると765百万円のマイナスとなります。これは、会計的にみると非常に由々しきというのは、5年間でトータル収支相償にするという中期計画に対しては、大変難しいのではないかという判断になります。これは、それぞれの分野別、事業セグメント別に、平成24年度はもう計画ができているかもしれませんが、平成25年度、平成26年度と早急に対策を立てて、どのような計画を作るのかは、いまはお持ちではないと思いますので、改めて教えていただきたいと思います。
○永井部会長
よろしいでしょうか。ほかにありませんか。よろしければ、以上ですべての項目評価が終わりましたので、事務局からこの取扱いについての説明をお願いします。
○政策評価官室長補佐
評価の記入が終わっていない委員の方については、お持ち帰りになって記入していただくか、本日評定記入用紙の電子媒体版をお送りいたしますので、それに記入いただき、回答をいただければと思います。その場合は、8月8日(水)までに事務局まで評定記入用紙をお送りいただきますよう、よろしくお願いします。
○永井部会長
それでは、国立精神・神経医療研究センターの評価は以上です。どうも、お疲れ様でした。ありがとうございました。では、ここで3分ほど休憩をして、11時10分から次を始めます。よろしくお願いします。
(休憩 法人入替え)
○永井部会長
国立長寿医療研究センターの個別評価に入ります。最初に、大島理事長からご挨拶及び平成23年度における業務実績概況のご説明をお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター理事長(総長)
評価委員の先生方、よろしくお願い申し上げます。
昨年は6センターのうち、最下位の評価をいただきまして本当にありがとうございました。これを受けて、何としてでも最下位脱出というのか、これを目指して頑張ってきましたので、今年はよろしくお願い申し上げたいと思います。多少、背伸びのところがあるかもわかりませんが、S評価6、A評価8ということで、これは現場にも随分確認をしたが、自信を持ってこれで行ってくださいということですので、こういう評価をさせていただきました。ただし、総長は具体的な話は一切してくれるなと。総論だけを話して、具体的な話については現場のほうで答えるということですので、私の話は総論的な話になるかと思いますが、よろしくお願い申し上げたいと思います。
私どものセンターの行動原則は、基本的にはNCのあり方委員会で示された3つの役割、臨床研究の推進、高齢者医療の均てん化、政策医療の実現ということを目標にして動いてきています。もう少し具体的には、高齢者医療というのはいったい何なのかということから始まって、何をやろうとしているのかということですが、超高齢社会の実現によって、医療構造、疾病構造が大きく変化をしました。その結果、医療需要が大きく量的にも質的にも変化してきています。従って、それに合わせてどういう医療がよいか。あるいは、どのように医療の提供をしていくのがよいのかというようなことをきちんと明解にして、これを国民さらには世界へ発信していくことが私どもの役割と考えています。そういう意味では、医療の大きな転換期をいま迎えていますが、その医療の転換期に当たってどれほどの役割ができるのかが問われていると考えています。
そして、高齢者医療の象徴はいったい何かですが、高齢者医療の象徴的な問題の1つは認知症であり、もう1つはどのように高齢者医療を提供していくのかについては、病院から地域への転換ということで在宅医療が大きなテーマになってくると考えています。国の政策的な大きな課題としても、この2つは極めて重点的な課題として取り上げられているのは、先生方もよくご存じのことだろうと思います。私どもも、特にこの2つについては重点的な課題として取り組んできています。
センターの運営についての基本的な考え方ですが、2009年から独法後どうするかということをずっと考えてきました。センターの使命や目的を明確にしながら、人と仕組みをどう機能させていくかについて考えてきました。特に人事については、2009年から病院長、研究所長のトップ人事をはじめ、有能な人材を日本中からリクルートすることを積極的に進めてきています。
組織については、1つは病院と研究所の一体化がナショナルセンターに求められているもので、具体的には病院と研究所が一体化して研究体制を進めていくということですが、臨床と基礎とが協働できるようなセンター化を積極的に進めています。2つ目は、お金と人と物の集中的、重点的な運用の仕方をどう考えていくのかということです。これも流行の言葉でいえば選択と集中という考え方で進めているところです。3つ目は、意思決定のあり方をできるだけ簡略化、簡素化して早く決めていくことを考えてきています。問題が出たらすぐに意思決定ができるような仕組みを構築して問題を先延ばしにしない。4つ目は、評価のあり方をはっきりとさせて、特に研究に直接従事している中心になるプレーヤーの評価を明確化して、これを徹底する方向で進めてきています。
こういった組織運営の考え方の更に基本部分に、病院経営の健全化があります。病院経営については本来のミッションの達成という使命とは、トレードオフの関係にもなりかねない、この2つをどうやって両立させるのかを考えて進めてまいりました。病院経営の健全化については、5年計画ぐらいでプラスの方向へ持っていこうというのが最初の目論見だったのですが、2010年までに経営基盤については基本的なところを押さえることができまして、2011年では非常に喜ばしいというか、思いもかけなかったといえばあまりにも謙虚にすぎるかもわかりませんが、予測を超えた収益増を得られることができました。
本来の目的であるミッションの達成については、先ほど挙げた認知症と在宅医療を例に挙げますと、認知症については「もの忘れセンター」を設立しまして、すべての症例をデータベース化して、これがそのまま研究に起用されるような仕組みを構築しました。これは、たぶん世界のどこにもない仕組みと症例数であろうと自負しています。そして、基礎と臨床とを合一して認知症疾患先進医療センターを作りまして、創薬から臨床へということを目標にしてきましたが、既に臨床治験に持ち込むことのできる薬剤が特定されてきておりまして、具体的に臨床の場へ持ってくるのに王手がかかっている状況にあります。
政策的な問題としては、認知症サポート医の研修を7、8年続けていて、全国で2,000人以上の医師の研修を終えています。そして、そのサポート医が地域ではさらにかかりつけ医の研修を行っており、計2万人以上の研修が行われています。在宅医療については、今年度の政策課題で重点的に取り上げられ、全国の105カ所に拠点を指定して、その拠点の研修あるいは評価を進めているところですが、その事業の中心的な役割を私どものセンターが担っています。センター内部では、在宅医療の支援病棟を作り実験的に医療を進めています。支援病棟が発足する前の地域における在宅での看取率は11~12%でしたが、病棟を作ってから在宅での看取率が30%以上に上がってきています。
他にセンター化を進めているところでは、歯科口腔先進医療開発センターがあります。ここでは歯髄再生の研究がスーパー特区に指定されておりますが、これもそろそろ臨床に王手がかかるところまで研究が進んでいるところです。さらに、私どものセンターの弱点として老年学が弱いというところがありましたが、これについては「老年学・社会科学研究センター」を作り、総合的に老年学を追求していく拠点になる第1歩を進め始めたところです。これらが独法化後重点的に行ってきたことです。
最後に一言だけ、付け加えておきたいことがあります。病院が築後45年以上経っていて、この老朽化がものすごく激しい状況にあります。この状態は患者の療養環境の劣悪化の原因になっています。例えば今日のような猛暑の日に冷房が壊れてしまうとか、又、冬は暖房が壊れてしまうことがしばしばあるというような状況で、その度に大騒ぎになって扇風機を50台ぐらい借りてきてやるとかいうようなことがしばしば起きています。
患者の療養環境の劣悪さは深刻ですが、更に職員にこれから私たちはどういうセンターを目指すのか、病院長、研究所長からもいろいろな檄が飛んでいて、自分たちの目指すべき姿はどうなのか、いいことはどんどん提案しろというようにやってきています。その結果、先ほども申しましたが経営状態が非常に良くなってきたり、あるいは研究のほうでもいろいろな形で成果が上がってきていますが、そうなると様々な新しい提案も増えてきます。例えば病院のほうでは、患者数も増えたので新しいことを提案してもスペースがないとか、診療の環境自体が45年前の病院の設計のため何ともならないというようなことが次から次へと出てきます。これを打破するためにはリフォームではとても無理なので、新しく病院を作り替えるしかないという結論に至りました。私もこれには同意をして、センターとして病院の建替えは避けられないということを決定させていただきました。ということは収益増についても更に頑張ろうと職員一同考えているところです。こんなことを最後にあえてお話させていただいたのは、必ずしも国のほうの動きは私共のこのような考えに応援してくれるように考えていただけているのかなと、どうも思うと首を傾げたくなることがいろいろとあります。私としましてはここでこの勢いをストップさせてしまうと、長寿医療研究センターの勢いそのものが停滞しかねないおそれがあると感じています。折角、良い流れが出てきているところですので、せめてやる気がなくなるようなことだけは避けていただきたいと最後にあえてこの問題を出させていただきました。以上です。どうもありがとうございました。
○永井部会長
それでは評価に入りますが、まず計画どおりであればB評価ということですのでご了解いただきたいと思います。中期計画を上回っていればA評価、想定外の要因がある、かつ計画を大幅に上回っていればS評価ということですので、その点ご了承いただきたいと思います。
第1グループ項目の1から3について、法人から10分で説明をお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター理事(研究所長)
評価項目1から3について、研究所長からご説明を申し上げます。評価項目1は臨床を施行した研究開発の推進ということで、主として皆様のお手元に資料2-1と資料2-2がありますが、この概要資料ポンチ絵を使って主に説明をさせていただきます。評価項目1は7、8頁になります。ここでは病院と研究所のセンター内の連携強化、産官学の連携強化、あるいは知財管理及び活用推進が項目になりますが、これらについて8頁のポンチ絵に書かれておりますように、あるいは先ほど総長の大島からご紹介がありましたように、研究所と病院の共同研究あるいは共同的な連携というものは、この2年間で著しく進んでおります。特に認知症先進医療開発センター、もの忘れセンターの連携強化、歯科口腔医療開発センター。これは病院の歯科、研究所の歯科研究部門いずれもが連携して進めているといったようなことが代表的なものです。さらに、企業との連携も進んでおります。最後の知財管理本部についても昨年度設置いたしまして、多くの知財を今後効率的かつ推進させることから、バックアップオフィスの機能を強化したところです。
評価項目2は、病院における研究開発の推進ということで、9、10頁になります。これは病院ですので、後ほど評価項目4~8で病院長の鳥羽のほうから詳しくご説明申し上げますが、ここでは2頁につき、特に認知症の診断治療、診療システムの構築で大きく前進したと我々は考えております。このもの忘れ外来は日本最大のもの忘れ外来と位置づけておりますが、地域との連携、バイオバンクへの提供、治験推進といったようなことを淡々と進めています。
評価項目3に移ります。担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究開発の推進です。11~17頁にかけてですが、ここについては自己評価においてS評価を付けました。これは、想定を越えたという大きな研究の推進があったかどうかということですが、これからご説明させていただきます。最初に12頁のアルツハイマー病の先制治療薬の開発ということで、認知症先進医療開発センターを平成21年度から開始しております。昨年度、この先進医療開発センターでは12頁の図にありますが、真ん中で黄色い帯のようになっておりますが、いろいろなプロセスを経て、最終的にこの先駆的治療薬を開発することですが、特に昨年度は製薬企業との連携が成立して、企業連携研究部というものを開設いたしました。そういう中で、アルツハイマーに関する基本的なアミロイドβあるいはタウといったような物質がありますが、それぞれに対する抗Aβ薬あるいは抗タウ薬を特許として1件ずつ出願いたしました。さらに抗タウ薬については既存の薬剤ということもありまして、現在病院と連携しながら臨床試験の実施に向けて、いま動いているところです。そういったようなところで、この認知症に対する基本的研究、創薬に向けての研究というものは、ある意味で想定を越えてきちんと進んだということがあります。
13頁は、歯髄の再生医療に関わる領域です。これについても、昨年度までは非臨床試験で着実に進めておりましたが、昨年度臨床研究の確立の体制あるいはヒト幹細胞の計画書の作成、そしてセンター内の倫理審査委員会の承認を得て、現在厚生労働省に臨床試験へのステップを申請しています。これが認められると、実際にヒトを用いて失われた歯髄というものを再生させる大きな転換になるだろうということで、高齢期においても歯を失うことなく、健康長寿の実現へ向けているというところです。
14頁においては、私どものセンターが発足して14年間にわたり、老化の基本的な研究である長期縦断疫学研究がなされております。これについても老化全体、基本はすべてのエイジングについての長期縦断研究、コホート研究ですが、昨年度は特に認知症にフォーカスを当てております。その結果、14頁の右側の図にありますが、このエイジングに関する縦断研究はすべてのデータを蓄積させておりまして、例えば大脳の白質病変があった場合、その5年後、6年後といった場合に、繰り返しのある測定値のかなり難しい分析にはなりますが、そういうものを見ていくと大脳白質病変が中程度以上のものでは、軽度のものに比べ、あるいはなしのものに比べると、認知症発症のリスクが高まるといったようなことも明らかにされてきております。こういったエイジングに関する繰り返しのある測定データというのは、我が国でこれだけ精密に取っているのは私どものセンターだけで、そこから極めて有用なエイジングに関わる問題が今後もさらに抽出されてくることになるだろうと考えております。
15頁に移ります。これも昨年度、予想を越えて得られた研究結果ですが、実は私どものセンターのある大府市と共同いたしまして、大府市に居住する約半数の高齢者5,000人の方々のMRIも含めた、大規模な認知症のスクリーニングを行っております。その結果、約400人が認知症予備群、すなわち軽度認知機能障害MCIの方々を抽出されておりますが、この方々に対してランダマイズ・コントロールド・トライアル、すなわちランダム化試験を我が国で先駆けて行っております。その結果、頭を使うエクササイズというものがその後のMCIの方々における認知機能の低下を抑制するということが明確化されまして、今年度になってからですが、アメリカのタイムなどに取り上げられるといったようなことがありまして、そういった意味では日本の介護予防事業に大きな貢献をしているのではないかというふうに自己評価をいたしております。さらに16頁では、認知症ともども今後後期高齢者が増えていく中で、虚弱高齢者というものが急増いたしてまいりますが、現在国が行っている介護予防事業の中で、基本チェックリストというものが虚弱高齢者を推定するのに妥当性があるということも、初めて明らかになりました。
17頁はバイオバンクです。これについては6NC共同で、バイオバンクを進展させているところです。私どものセンターにあっても、新たにバイオバンクのための建物を現在建築中であり、国の大きなバイオバンク事業に資するために着実に歩みを進めております。以上が評価項目1から3の説明です。
○永井部会長
それでは、ご質問をお願いいたします。いかがでしょうか。この診療情報データベースは、診療の電子カルテとの統合というのはどうなっていますか。そこの整備はされていますか。
○国立長寿医療研究センター理事(研究所長)
私どもの病院では、病院長のほうが詳しいでしょうけれども電子カルテを導入しておりまして、それらがバイオバンク事業やもの忘れセンターと認知症の開発センター、今後そういったような連携を結ぶための基本的なツールとして活用することになっております。
○永井部会長
もう一度入力しなくても、電子カルテの処方や検査データがそのままデータベースに入るようになっているかどうかということですが、それは可能ですか。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
あと、さらに特殊な診療科のものに関しては、ファイルメーカーがシステムを新たに導入していますので、すべての診療情報が上手に取れるようなシステムを構築いたしました。
○祖父江委員
非常にプログレスしている感じを実感として持たせていただきました。全体としてはそうですが、1、2お伺いします。前も何回もお聞きしているので同じ質問になるかと思いますが、出口型の研究がアルツハイマーあるいは歯髄のほうで行われているということで、ここでは特に企業との連携でその先を行こうというお話ですが、特に医師主導や自前の研究開発治験をやろうと思うと、それなりの基盤整備というかプロマネや生物統計家や、あるいはデータマネジャーというものを注ぎ込んだ基盤整備というのが、かなり重要な位置を占めると思います。その辺がどのあたりまで来ているのかを第1に。もう1つありますが、お願いします。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
臨床研究推進部において、治験臨床研究に関わる推進部というものを立ち上げておりまして、医師が2名、上級CRCを含むCRCが4名、生物統計家は併任ですが2名、医療情報システムに精通する医師、薬剤師などで、トータルで8名くらいの組織をしています。認知症先進医療開発センターの2階に、かなり広いスペースで独自のスペースを有しております。
○祖父江委員
それだけの方が実際投入されているということですので、それは良い方向が見えているなと思います。どうもありがとうございます。
もう1点は、先ほど認知症の外来センターというか、これは世界的なものだと思いますが、そこでの登録患者をフォローしていただいているというようなお話もありました。今後のディジーズモディファインセラピーをやっていく上で、前向きな疾患コホートをきちんと追っていく作業は非常に重要になると思いますが、それが実態として、どれぐらいの規模でどういう形でいま行われていて、今後どういう疾患にこれをさらに広げていこうとされているのかという計画があったら教えていただきたいのです。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
もの忘れセンターは、私が責任者ですのでお答えいたします。まず、すべての患者に初診時に全部画像、心理検査を含めてやると同時に、1年後も同じような形でやるようなことを全例は来るわけでありませんが、それもパス化しております。ですから、前向きなコホートについてはバイオバンクの関係で、言葉が問題ですが、包括的な検体、遺伝子を含めた解析ができるような同意書をすべての患者から取って、同意の得られる方ですが、前向きなことをやっております。
○国立長寿医療研究センター理事(研究所長)
もの忘れセンターは患者が受診されますが、もう1つの入口は私どもがやっておりますNILS-LSAという、一般の未病というか疾病を発症していない方々のエイジングに関するLongitudinal Studyがあります。ここでもすべての画像、すべての必要事項のものは同じように取っております。これまでは、エイジングというもののあり方に対するデータとして起用されてまいりましたが、もう一度第一次の調査の方々、すなわち14年前に調査に参加しデータを取られた方については包括的同意書を取り直した上で、認知症の発症について健常なときからどう変わっていったのかということもやろうということで、現在取り組んでおります。
○内山委員
いまのことに関連して、非常によく戦略的な研究等々をやっておられると感心しています。たぶんこれは分野にもよると思うし、決してインパクトファクターがすべてではないのはわかっていますが、研究者が常勤で50人おられるわりに、インパクトファクター10以上の雑誌への論文が、ほかのナショナルセンターに比べると極めて少ないというのは分野の関係もある、あるいはまた研究所の方向性の関係もあるのでしょうか。
○国立長寿医療研究センター理事(研究所長)
基本的に、実は世界的にいうとジェロントロジーやジェリアトリックスという領域になります。別にエクスキューズではないのですが、その領域というのはインパクトファクターが10や15というジャーナルは、まずありません。しかし、だからといって簡単かというと決してそういうことではありませんで、我々としては基本的にはジェロントロジー、ジェリアトリックスの領域で、しっかりした業績を作っていくということは1つのポリシーだと思っております。もちろん、そういう中でハイクオリティのインパクトファクターが15、20といった以上のものを昨年は『ランセット』にも出しておりますが、そういったものを別に蔑ろにしているわけではありませんが、そういう領域特性というものがあることはひとつご了解いただければと考えております。
○永井部会長
よろしいですか。続いて、評価項目4から6の説明をお願いします。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
概要資料の18頁から説明させていただきます。高度先駆的な医療の提供では、認知症、運動器などの早期客観的診断法、褥瘡の診断法など、ここに書いたとおりですが、19頁から説明させていただきます。
老年疾患の早期発見の簡単なツール、画期的な機器の開発といったものをご説明させていただきます。20頁に、もの忘れセンターにおける1,000例の包括的な解析結果をお示ししています。認知機能の低下に伴いまして、健常から終末期までの多くの方のデータが先ほどのように集まりまして、これらは生活機能障害や周辺症状といった言葉の荒れ、あるいは身体合併症といったもののデータを蓄積いたしました。なぜ、これがとても役立つかといいますと、認知症の診断補足率が15%以下、すなわち診断されていない方が日本にたくさんいる中で、生活機能や周辺症状といったものに着目した早期発見が国の急務になっておりまして、これらの新しい発見に対して客観的なデータを提供できるといったものが揃ったということが、非常に大きな成果ではないかと思っております。
21頁をご覧ください。在宅医療が国の重点施策として、昨年提言で大島総長がまとめたものが採用されたわけですが、具体的に拠点事業をやっていくに当たってどのようなものを整備していったらいいかというものが、在宅医療そのものに問題はないのか。教育研究システムはどうやって作っていったらいいのか。そのシステムの中で教科書はどうするかといったものを一つひとつ、大きな研究班を作るための整備ができまして、オールジャパン体制で震災後の在宅医療を含めて研究基盤が整備されました。
22頁です。いままで骨粗鬆症と筋肉の減少症といったものは、骨粗鬆症は整形や骨の先生、筋肉は栄養の先生がやっておりましたが、高齢者で歩行が遅くなる、あるいは転ぶといったものは骨と筋力の減少が同時に起こっていることがたくさんの方でわかりまして、今後運動器といったものを1つの外来や診療科として見ていって、足腰や歩行をしっかりさせるデパートメントやセンターを作っていくといった基になるデータが出たことが画期的なことだと思います。
23頁です。転倒は高齢者の3割に起き、骨折は減っていないわけですが、転倒を簡単に予測する機器を開発して、足首が上がらなくなるほど転倒することが簡単に1分以内に測定できます。これが予想外な理由は、奈良県をはじめとして介護予防計画から引き合いが来まして、実際の介護予防計画の中でも既に使われ始めたということが、こちらでは嬉しいことでした。
24頁は、いままでわかっていなかった疾患の加齢頻度がわかったということです。これは骨髄異形成症候群の年齢別発症頻度が初めてわかったということで、これがわかっていなかったこと自体が意外だったわけですが、新しく研究班で成果がでてきました。
25頁の歯科で、昨年も一部をお示ししましたが、いよいよ歯科の早期診断が非侵襲的な赤外線装置で、非常に軽いうちからわかるといったことをご説明いたしましたが、それがさらに歯周病もわかる。さらに、口腔内の悪性疾患といったものの早期発見にも役立つことが新たにわかりまして、このような機器が非侵襲的に実用化されることによって、早期診断・発見ができることが開発されました。以上、単なる研究開発だけではなくて、それが実用化され、さらに公衆衛生上の、あるいは国の施策に多く採用されたという我々の想定を越えた評価が得られましたので、S評価をさせていただきました。
評価項目5に移ります。患者の視点に立った良質かつ安心な医療ですが、27頁をご覧いただきたいと思います。電子カルテになりまして、さまざまな複雑な入力が必要なことが増えていますが、長寿で初めてもの忘れセンターにおいてiPadを用いた心理検査の入力システムを構築しました。ほかの大学からも多くの引き合いが来まして、いま全国の大学病院でこれらがいろいろな形で採用されることになりました。患者もこれは非常に時間が短縮されるということで、好評を得ております。
28頁は、患者満足度調査の実施です。ナショナルセンターの平均やNHOの平均を上回って良好な満足度調査を得られましたので、自己評価Aとさせていただいております。
評価項目6、29頁に移ります。その他、医療政策の一環としてセンターで実施すべき医療提供ですが、特に認知症、モデル在宅医療などについてご説明させていただきます。30頁は先ほどから繰り返しお話しているもの忘れセンターですが、いよいよ昨年、周辺症状も含めた入院機能を持った病棟もオープンしまして、フルオープンしました。国内、世界でも最大のセンターですが、診断から予防、治療、ケアサービス情報、超早期から終末期まで、周辺症状を持った身体疾患の入院も含めてのサービスがワンストップで行われるようになりました。多くのほかの診療科の医師が協働して行うだけではなくて、多職種協働のモデルといったものをケアカンファレンスで提供し、これらを地域に還元できるようなシステムを作っています。例えば31頁を見ていただくと、認知症疾患医療センターでは周辺症状といいまして、心の乱れといったようなもので入院することがありますが、特に重度の場合には個室が必要ですから、近隣の大府病院と連携しています。この大府病院の連携で、逆に長寿のほうに身体疾患で入院してくる人が多いですが、それによって意外なことは、長寿を経由すると在宅復帰率が50%で非常に短い。この認知症疾患医療センターのうちの病棟の平均在院日数が26日ですので、いわゆる軽度の周辺症状を持った身体疾患のモデルは精神病院と連携することによって、むしろ精神医療にも貢献できることが意外な結果でした。
32頁は在宅医療の支援病棟で、先ほど総長から説明がありましたように在宅復帰率が9割、在宅死が愛知の平均の3倍ですが、これが想定外によかった理由は、100病院をはじめとする基幹病院での採用が始まっただけではなくて、全日病をはじめとする中小病院あるいは慢性期医療の病院が、うちの中でコピーできるところはコピーして、独自にこのような在宅医療を支援する病棟のシステムを厚労省のさまざまな審議会で提案することが、想定外の成果でした。すなわち、良いところをコピーしていただいたことが我々の想定を越えたところです。
33頁です。終末期医療はがん、エイズに特化したものですが、「非がんの終末期医療ケアチーム」といったものを日本で初めて立ち上げました。診療報酬は認められておりませんが、半数以上の非がんのEnd-Of-Life Care Teamといったものを立ち上げたところ、マスコミをはじめ、多くの医療関係者にも見学などの興味を得たということで、想定外の評価も含めSとさせていただきました。お願いします。
○永井部会長
ご質問をお願いします。
○猿田部会長代理
現場として、在宅医療の先生が苦労されている問題で、これは特に愛知県の領域でうまくいっているわけではなくて、第一線の現場では未だに非常に混乱しています。そのあたりで先生の所がうまくいっているのは、何かコツがあるのですか。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
小まめに、ここの三浦という診療部長が近隣の医師会をすべて個別訪問しまして、コミュニケーションを取ってやっていることが1番。もう1つは、大府市、東浦町をはじめとする自治体の理解がとてもいいということだと思います。
○猿田部会長代理
地域によってはなかなかうまくいっていない所が多いものですから、それでなぜうまくいったのかと思って。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
今後も在宅医療の展開においても、医師会の理解と行政の理解を中心に拠点事業の展開についての教育に関して、長寿が積極的に主導権、リーダーシップを取っていこうと考えております。
○本田委員
在宅支援のことですが、ご説明が簡潔で明快すぎて私にはわからなかったもので、もう1回教えてほしいのですが、こういうシステムが確立したことで在宅死が33%になったというのは大府市の話ですか。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
この支援病棟に登録している知多半島の大府市を中心とした78名の医師の地域で、知多半島の北部をほぼカバーしている地域です。
○本田委員
それのうまくいった理由というのが先ほどのご質問のお答えだったのかと思いますが、NCでこういうことをやっていらっしゃるということは、全国にモデルを作っていらっしゃることだと思いますが、うまくいっていたものをどのように全国に普及するように今後していかれるのか、どういうふうに提案していかれるのかを既にされているのだったら、そこを教えていただきたいのです。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
在宅医療に関しては、推進するための会というものが定期的に開かれておりまして、厚労省の方以外に医師会の方や在宅をやっている医師が集まっております。そこで発表してそれらのことをやっていると同時に、これらは自治体の方や病院の方の見学も多いものですから、こちらへ来ていただいて見学・研修していただいております。具体的にこれを三浦診療部長の全国的な研究班で、ほかの病院で同じようにやってもらうようなことが佐久総合病院などのケースですが、そのような在宅医療推進会議では縦割の医師会や中小病院の責任者も入っておられますので、そこでの情報提供を通じて縦割組織のほかの病院団体の方が、これらを一部採用される動きにつながってきたと考えております。
○永井部会長
ほかにいかがでしょうか。
○本田委員
もう1つだけすみません。31頁の認知症の患者の在宅復帰の部分ですが、いま国の政策でも、いかにそれをどうしていくかということが大きな課題として議論されて、新しい施策が出されたりとかいろいろされているところですが、在宅復帰率が50%以上というのは、大府病院から既に精神科病院に長期に入っていらっしゃる方がここに転院したら、こういうふうになったよというデータという意味ですか。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
おっしゃるとおりです。長期でない方ももちろんいますが、精神病院ですから100日以上の方は結構たくさんいらっしゃるということです。
○本田委員
それのノウハウみたいなものは、全国にまたいろいろな形で出されているわけですか。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
まだノウハウといったものが、ナショナルセンターであるうちの病院という所からなので在宅復帰しやすいのか、うちの医療連携機能や、そういう人の機能が高いのか、その辺についての細かい研究検証はこれからですが、意外なものだと思いますから、少なくとも精神科の入院日数を短くするために、総合病院や基幹病院がどういうことを果たすべきかということのもしかしたら知恵が詰まっているのではないかということで、挙げさせていただきました。
○本田委員
是非、検証していただけたらと思いました。
○祖父江委員
この前のときにも議論が出て、たぶんいまの議論はその流れだと思いますが、先生の所ですとうまくいくけれども、ほかだとなかなかうまくいかないというのはどこが原因かを、是非研究していただけるといいなと思います。ヒト、モノ、カネの厚さが末端に行くと、先生の所と同じようにやれないのではないかという状況を感じます。ですから、全国に敷衍できるようなシステムというのも非常に大事ではないかなと思います。
もう1つは、各ナショナルセンター共通のことだと思いますが、先ほど総長がおっしゃったのですが、病院として儲けと言ってはいけないですが実績を上げていかなければいけないところと、研究的な要素を病院の中にどう取り込むかということが問われていると思います。もう1つは、地域の問題と全国ネットの問題という軸がいくつかあると思いますが、その辺は先生は病院としてどういう切り分け方をされて、ナショナルセンターの病院としてどうあるべきかという方向づけをされているのかを教えていただけますか。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
ナショナルセンターは国民のニーズに答えるために、重点課題である認知症在宅医療やそれらのもの、ほかの老年疾患も含めてほかの医療機関ではできない特徴的な医療、画期的な医療をやることがメインだと思っています。ただ、その特徴を打ち出せば打ち出すほど医療圏というのは広がりまして、愛知県全域や県外からもたくさんの患者が訪れ、経営にも資する。これが本来の仕事だと思っています。ただ、地域的に知多半島の我が病院から南に血液や神経難病の医師がいないといった地域特性もありますので、これはその病院のニーズとして答えなくてはいけない。ですからナショナルセンターであると同時に、地域で果たすべきニーズといったものにも半分は答えていく使命があると考えてやっております。以上です。
○永井部会長
よろしいでしょうか。続いて項目の7から9までご説明をお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
人材育成に関する事項です。先ほど説明いたしました、看護教育のことで1年目は膨大な資料ができたのですが、3人しか集まりませんでした。しかしこれによって、今年は96名以上の応募が全国から、東大を含めてありまして、この資料の作成といったものは十分今年からの発展的なものに繋がったというように考えております。
評価項目8の、医療の均てん化と情報の収集・発信に関する事項について、ネットワーク及び情報の収集・発信です。37頁の長寿医療に対する情報発信は、地域的なこともありハンディキャップでありまして、いいことをやっていてもほとんど何をやっているのか知られていないというのが医療に関してありました。マスメディアの方との会合や、ホームページの充実などを含めて、昨年よりも格段にマスコミといったものに対して多くの情報を発することができました。認知症医療の均てん化、啓発のための多様な研修ですが、38頁にサポート医研修、家族教室、ベッドサイド研修、これは社会人です。アウトリーチの公民館出前研修を掲げております。39頁には、認知症疾患医療センターから地域へというポンチ絵ですが、これは好運にも地域医療再生事業で長寿医療研究センターを通じて愛知県全域の認知症に対する知識を普及啓発しなさいというお金をいただきました。これに関して、診断のビデオカンファランスや、家族支援の様子を県内にITを用いてやるようなシステムを現在構築中です。
40頁は認知症サポート医養成研修事業です。総長からも話がありましたが、認知症の診断率が低く、また、10年前の医師会の調査では、認知症を病気と考えている医師が半分以下しかいなかったという実情に鑑みまして、長寿が始めた事業です。平成17年~23年度まで、2,149名のサポート医が養成されまして、毎年400名で3,000名を目指しています。41頁は、そのサポート医の研修は医師会から代表して1人いらっしゃるわけですが、医師会に帰り、かかりつけ医対応力向上研修をしていただいています。その数が現在25,000名を超えました。その下に都道府県別のサポート医の数がありまして、確かにまだバラツキがありますし、十分とは言えないといったようなお叱りを厚生労働省からいただいております。しかしながら、このかかりつけ医認知症対応力向上研修の第三者評価というものが、我々と関係のない研究班でなされまして、そこで想定外に、鑑別診断機能が高いのは当たり前ですけれども、周辺症状に対する対応機能や、かかりつけ医機能、在宅医療機能、地域連携推進機能が遥かにその研修を受けていない医師の診療所よりも高くなっていることがわかりました。これは想定外の成果でした。実は精神科医のいる診療所というものはもちろん高いのですが、一部の機能に関してはかかりつけ医認知症対応力向上研修終了医師のほうがバランスよく能力が向上していることがわかりまして、これが最も想定外でうれしい事態でした。
42頁は認知症疾患医療センターから地域の多様な研修ですが、以前からボランティアで家族教室というものをやっております。この家族教室が、受けた人からもう少し知りたいということで、家族教室の中級編も要求され、始まるようなことが想定外でした。
また、認知症に関する社会人研修は、こちらから申したものではなく、企業のほうから教えてくださいといった形で研修が始まりました。公民館出前研修は、私が8箇所全部回りましたが、想定外のことと言えば、ほかの自治体からもやってくれと言われたということです。このような多様な研修が地域の認知症の対応力、この地域からできるということが自慢になると思います。私のほうからは以上です。
○国立長寿医療研究センター理事(研究所長)
引き続きまして、評価項目9、国への政策提言に関する事項・その他我が国の医療政策推進等に関してご説明いたします。昨年度の実績としまして、大きなポイントは3つあるかと思います。1つは国への政策提言です。具体的に申しますと、44頁に、昨年はエイジング・フォーラム2011というものを開催いたしました。ここではアジアの特に東アジアでのここ近年、そして近い将来著しい超高齢社会に向っていきますけれども、やはり我が国でのノウハウ、あるいは我が国での取組といったようなものはひとつの大きな指標になるかということであります。ただ、なかなかこれまで産官学というようなものが協調してやるという、そうした場というのがなかなか設定できなかったのですが、昨年はそこに書かれていますように、非常に多くの企業あるいは行政、様々な立場の方々が、特にリーダーの方々にお集まりいただきまして、今後の日本の高齢社会をどういうもので、特に地域、それに対する行政や産業や学というものがどう携わって連携していくのかということに関しての、非常に大きなイベントを想定外のイベントと私ども位置づけていますけれども、開くことができました。これがベースになりまして、今朝も実はその委員会がありましたけれども、今年はアジアエイジングサミット2012という形に結実しております。ここでは韓国や台湾、中国といったような日本を取り巻く、そして喫緊の超高齢社会を迎える国々からの方々をオーディエンスとしてもお迎えし、また、パネリスト、あるいはスピーカーとしてもお迎えし、こうした形で日本がリーダーシップを取っていこうということで、現在も努力を続けている次第です。
続きまして45頁につきましては、先ほど来からいろいろご説明させていただいておりますが、やはりこの在宅医療にかかわる国への貢献と言いますか、そうしたものも着実に進めていると考えております。今回は社会保障審議会の医療部会で在宅医療拠点を医療法へ位置づけてはどうかというようなご提言もいただいたということで、これに向けて着実に歩みを進めているということです。
さらに、東日本大震災これは昨年ですが、年度でいうと一昨年になります。それ以降、災害が起きた直後は様々な所からも派遣というものが数多くありましたが、現在でも私どもは47頁にありますような、生活機能賦活研究部を中心として、未だに避難所から動けない高齢者の、いわゆる生活不活発病をいかにして予防するかということで、生活機能賦活研究部を中心として現在もほとんど災害地に入って、高齢者の生活機能を見守るということで調査研究を進めております。
さらに48頁は海外交流で新たにカナダとのエイジングに関するLongitudinal Study、あるいはコホート研究というものを総合的に開始しました。国内外でのこうした取組、特に国への政策提言というようなことに関する展開をしているところです。以上です。
○永井部会長
ありがとうございます。ご質問、ご意見をお願いいたします。
○花井委員
在宅医療について、国も大きく舵を切ってそちらの方向でいっており、非常に重要な活動をたくさんされていると思うのですが、特に人材育成の面で、サポート医研修というのを委託で受けているということですけれども、この目標が大体3,000人を挙げていますけれども、まだまだ足りないような気もするのですが、今後、サポート医研修というもの自体がここだけで研修をやっているという形か、もしくは、いろいろと研修制度そのものも全国に広がりを見せてやっていくという感じですか。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
いままでは長寿医療研究センターが協力医師を募って全国の数箇所でやるだけでした。というのは、この研修自体が認知症学会をはじめとして、あまり評価が高くありませんで、今回、ようやくこの評価が出てほかの専門学会の方も一緒にやろうかというような動きが出ておりますので、スピードを加速するためには学会の先生方との協力を得て、よりスピードを広げることを考えていかなければならないと思っております。
○花井委員
そうするといまはまだ全国で数回開く程度であるけれども、そのパフォーマンス評価がかなり出て、これによってかなり医師の対応能力が向上するということが理解されつつある、そういう段階だという理解でよろしいですか。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
はい。
○花井委員
ありがとうございます。
○本田委員
私もそこのサポート医のところを伺いたいと思ったのですが、41頁の想定外に評価がよかったというのは、かかりつけ医対応力向上研修を受けた方ということですね。私はちょっとたまたま取材も関係しまして、サポート医を折角養成しているのに、全然活用されていないとか、たくさん採っていらっしゃるけれども何をしているのかわからない。もしくはどこにそういう人がいるのかすら、一般の人はもちろんのこと、地域の医療関係者にも情報が提供されていないとか、そういうちぐはぐなことがまだあるやに聞いていますし、実際、一回養成してもどんどん変わっていくものを今後どうやって、何を担っていっていくのか、その辺のいまいろいろ課題だと言われることに対して、漫然と養成を続けるのではなくて、どういうことをされるとか、そういうのを教えてほしいのですけれども。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
厳しいご指摘ありがとうございます。サポート医の所在と継続的な養成に関しては、サポート医のネットワーク及びWebでのことを始めました。それからサポート医の継続研修に関しても始まったところです。サポート医というのは必ずしも専門医ではありませんで、長寿のテキストとビデオで医師会に帰って普通に教えられるようになるということが目標ですので、サポート医のところに専門医としてかかってもらってはちょっと。ですから、そういう位置づけですけれども、あくまでも教育者としての、一般医としての位置づけというようにむしろ考えていただいたほうがいいと思います。
○祖父江委員
どうもありがとうございました。人材育成のことで少しお聞きしたいのですが、これも各研修医に共通のことになるかもしれませんけれども。現場の感覚で非常にたくさん講習会などをやっていただいて、エデュケーションにご尽力していただいているのはよくわかるのですが、例えばここに書いてあるリーダーとして活躍できる人を養成しようというようなことになりますと、企業とか大学とかPMDAとか、あるいは海外とかそういうところとの人事交流、人事がどう活性化しているのかということが非常に重要ではないかという気がするのです。それが実態としてどれくらい現在行われていて、将来構想としてどうあるべきかというようなことがもしあれば、教えていただけないでしょうか。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
大学との人事交流は当センターからの教職、アカデミーポジションの者が複数名出たりして、ようやく交流が出てきたところです。また、関係大学院、関連大学院も順調に増えておりまして、アカデミックとの交流はそのようなことです。海外からは視察が非常に多くて、年間に数件以上あります。特に名古屋大学のヤングリーダープロジェクトで海外の行政の方も年間に1回来ていただいております。先ほど言いましたカナダとの交流におきましては、定期的に長寿からナショナルセンターに留学という言葉が適当かわかりませんけれども、海外派遣を来年度末に1名決定して開始したいというように考えております。
○永井部会長
そのほかいかがでしょうか。
○祖父江委員
先ほどもいろいろなところで何回か聞いていますし、内山先生からもご質問があったのですが、人事交流をやっていくときに1つ問題になるのは、法人化してから特にそういうこともはっきりしてきたのですが、いわゆる退職手当の継続性というところが現場では、問題ないと言えば問題ないかもしれませんが、非常に大きな問題になることもあって、これが1つの障害になっています。これをどう手当てしていくのか、あるいはシステムとしてどう考えるのか、そういうことをお考えになっているかどうか、お聞きしたいのですけれども。
○国立長寿医療研究センター総務部長
退職手当については去年も少しお話があったと思いますけれども、私どもとしましては、一応、こちらのセンターから大学のほうにとか、できる場合ご本人の希望を聞きながら継続するか調整をしております。また、来ていただく方についても、駄目ということではなくて、要望があればできるだけ希望に沿うような形でやらせていただいているというのが現状です。
○祖父江委員
予算の措置などもされているのですか。
○国立長寿医療研究センター総務部長
そこにつきましては、細かい話になりますけれども、元々独法にいく前に当時の数に基づいた職員の数でした。その分の退職金は出ますけれども、それを超える部分については自前でやるということになっておりますので、もしそれを超える部分については、私どものほうでお支払いをするという形で考えております。
○本田委員
一般への情報提供というところで少しお伺いします。いま認知症は本当にもう国民の最大関心事の1つというぐらいメディアとしても読者の方とか感じているのですが、そういう意味で認知症の正しい理解とか、どう対応したらいいのかという情報がいろいろ出ているように思いますけれども、一般の方が、いざおかしいと思ったときにご家族の方は本当にとまどわれていると思うのです。それでここに情報発信とか、ハンドブックの作成、ホームページの情報発信とか書いてありますけれども、例えばそのハンドブックはどういうものを作られていて、全国のどういう所にネットワークを。こういう病院とか、こういう所だとどこでも手に入りますとか。37頁に載っているのは長寿医療センターのホームページなのかどうかがちょっと私は不勉強で恐縮ですけれども、そういう国民への正しい理解とどう対応していったらいいのかという、情報発信のところ、ハンドブックとホームページについて教えてほしいのですけれども。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
一般のパンフレットという形でも提供したり、ホームページにアップロードをしておりますけれども、やはりまだ認知症の周辺症状に対する初期対応というガイドラインを服部精神科医長の手で作成できましたが、その一部がまだ十分アップロードされておりません。それで家族教室のことを先ほどお話しましたけれども、家族教室の中級編あるいは上級編では、ご家族がご家族を教えるステージに入っていこうとしていますので、そのテキストが国民の方にいちばん理解しやすいものということで、それを今年度の重点課題で作り、公表したいと思っております。
○本田委員
それはインターネットから誰でも取れるという形になっているのですか。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
そう考えております。
○内山委員
災害時における高齢者の生活機能の実態把握調査についてお伺いします。こうした調査というのは災害時ではなくても、今後の高齢者の生活に対するいろいろなサジェスチョンが出てくると思うのですが、この調査の結果を受けてその後のフィードバックは何かされたのでしょうか。
○国立長寿医療研究センター理事(研究所長)
現在、実は調査中と言っていいと思います。昨年の3月11日に発生しましたけれども、1年半経って、結局こういうのは長期に追跡しないと、その3月11日に何をした人がどうなっていったのかというような追跡研究になりますので、正直申しますと、十分な例えばマニュアルが出ているというわけではありません。今回の災害規模が巨大でありまして、前の中越地方地震の場合にはマニュアルを出しました。しかし、今回の東日本大震災については、こうすべきだというような提言、あるいはマニュアルのようなものはまだできておりません。
○永井部会長
よろしいでしょうか。次に、第4グループにまいります。項目10から14について、10分でご説明をお願いします。
○国立長寿医療研究センター企画戦略室長
それでは、お手元の業務実績概要資料の49頁からですが、評価項目10効率的な業務運営体制のところから説明します。評価シートのほうは70頁になります。効率的業務運営体制ですが、先ほどから出ていまして、研究、診療部門の強化を図り、それから、管理する部門の強化を図っていき、総人件費改革に対応していきます。具体的には50頁以降でご覧ください。先ほどから出ていましたが、認知症先進医療開発センターにおいては質的な研究基盤の強化を図るということで、分子基盤研究部を新設しました。それから、企業との共同研究で治療薬の開発を進めていくということで、企業共同研究部の計画をしていまして、本年度から実際に企業と契約を結んで、部を立ち上げて稼働しております。それから、老年学・社会科学研究センターというものを再編成して作り上げていて、平成24年度4月から実施をしています。
51頁ですが、人員についての見直しです。これは人員の体制です。財務経理部については、これまでは総務部長と併任という形でしたが、平成23年度はお金の関係で、規模もかなり大きくなってきますので、部長を併任から専任化しました。併せまして、医事というのは診療報酬の請求関係もあって、かなり強化をしなければならない部門ですので、医事室を医事課に格上げしています。それから、監査の関係で、監査室というのがありますが、監事あるいは会計監査人と連携をとって内部統制を強化している、という方針で臨んでいます。それから、総長特任補佐というのを設けています。外部からの助言をいただくということで、特に経営の関係、知財の関係とかをご専門の方にお願いしていまして、特任補佐という形で運営会議や内部の会議、理事会にも参加していただいて、意見を述べていただいております。
52頁、病院の中です。複数副院長制ということで、平成23年4月から副院長を2名置いて、役割分担を明らかにして管理を徹底させていまして、1人は経営と診療の担当、1人は研究・教育・研修の担当と分かれて行っております。それから、総人件費改革の関係ですが、1つは、事務・技能職員については削減を図るということで、2名の減です。そうはいっても、医療のレベルを維持・向上させていくことが必要でして、外来部門は非常勤看護師を採用し、中では夜勤の専門の看護師を配置しているのと、医師が診療に専念できるようにということで、医師の事務作業補助者をとって、施設基準も上位がとれるように配置をしています。
次、評価項目11ですが、これによる収支の改善の状況です。56頁ですが、平成22年と23年でどう変わったかを表したものです。いちばん下に総収支差というのがありますが、平成22年度は年間で2億900万円の赤字でした。平成23年度は総収支差が2億9,200万円の黒字で、総収支差は5億円の改善で、黒字化が図られました。結果、剰余金についても8,300万円の剰余になりました。その大きな要因ですが、医業収益の所をご覧ください。診療外の所は研究の関係があるので大きな差は出ませんが、経営努力が大きく実現したのは56頁の医業収支の所だと思います。平成22年度は医業収支差が2億5,700万円の赤字でした。平成23年度はこの部分が3億7,600万円の黒字になりました。医業収益の所をご覧いただくと、これは約7億円の収入増となっております。大きな要因ですが、入院の単価が36,800円から41,600円と、1人あたりの単価が大幅に上がっています。それからもう1つは、入院の患者数をご覧ください。これも8万700人から8万2,000人と、患者数も伸びていまして、基本的に単価の増と患者の診察の数が増えたのが大きな要因です。単価の伸びた要因ですが、7対1看護を実施することができました。看護師の確保も終えて、在院日数も短くすることができて、7対1が入ったということです。それから、先ほど申し上げたように、医師の事務作業を補助することで医師の業務を効率化させていき、体制加算をして、それも上位のほうが取れるようになった等々、何点かありまして、大きな改善が図られています。費用のほうですが、医療材料のようなものは、診療の数が増えれば増えてくるものがあります。これは当然増えているわけですけれども、一方で、設備関係や退職関係については、辞めていく方が減っていることもあって、かなり抑制することができた。費用のほうは6,000万円ぐらいの伸びになっていて、大きな反転が遂げられたのではないかと思います。
概要資料の53頁をご覧ください。平成23年度においては、収支率にすると103.6%になっていまして、平成23年は8,300万円の利益剰余金を計上することができました。これは累積でして、数値目標的にいうと、5年間累積で経常収支率100%以上が目標になっていますが、ここまでは何とか2年目で回復できて、これから先はしっかり、経常的に利益を上げるように持っていくかが課題になっていくと思います。これがないと、先ほど申し上げていますように、病院の建替えも控えているので、一生懸命がんばっていかなければいけないと思います。
それから、管理面ですが、一般管理費については、平成21年度比で15%以上を削減することを目標としていただいていて、これも平成22年度と同様で、3割カットを維持できています。未収金につきましては、先ほど申し上げたように、医療の収益が7億円近い増になりましたが、実質的にいうと、未収金は率としては平成22年と変わっておりません。ということなので、本来は未収金が発生したものの、発生しないように一生懸命努力をしたと。残念ながら、率までは下げられなかったですが、大きな額の増があったとしてもそこまではできたわけです。
経費節減は、医薬品については医薬品、検査試薬、消耗品については6NCで共同購入することにしていまして、SPDも活用して、在庫管理を徹底して、ここに書いてあるように、材料、医薬品とも節減を図ることができました。
次の54頁です。これは先ほど申し上げた、上位基準の取得ですが、それ以外にも、診療科長会議なり診療報酬のプロジェクトなりを開いて、病院の中で、医師の方を中心に、院長を中心にですが、目標患者数のヒアリングを行ったり、あるいは、実際に患者数がどういう推移になっているのか、原価計算した結果、それぞれの月々でどうなっているのかといったものもしっかり議論していただいて、収益増になるようにみんなで努力をしていただきました。電子化はご覧いただいたとおりです。
55頁に平成23年の財務状況があります。先ほど申し上げたとおりですが、損益計算書のいちばん下、本年度は経常収支率が103.6%になっています。ということで、一生懸命努力をして、想定外に大きな収益も上げることができ、費用が伸びることも抑えることができたということで、Sをつけさせていただいています。どうぞよろしくお願いします。
57頁ですが、これは効率化の分で、先ほどもお話を申し上げたとおりです。58頁は、医師の診療活動の定量化とフィードバックでして、これは日頃、院長をはじめ医療スタッフが行っていることですが、部門ごとの原価計算をちゃんとやると。一定のルールに基づいた計算をして、みんなで情報を共有し合って、アドバイスをしていって、経費の節減と収支の改善につなげ、臨床研究も同時に行っていただいているので、両方一緒にがんばっていただいています。それから、電子化の推進における効率的な業務運営ということで、我々のほうも月次決算をしていまして、理事会をはじめ、かなり多くの会議で情報を共有しております。こういうことで、理事会運営会議でいろいろな月次決算を見ながら、何が欠けていたのかを本年度は昨年の赤字を補填して、8,300万円の利益剰余が出ました。
次に、評価項目12ですが、法令等内部統制の適切な構築です。監査室を設けていますが、そこが独自に内部監査を実施しております。今回は会計監査人、監事と連携した監査31回を実施していまして、それ以外に、契約業務の競争性、公正性を担保するということでハンドブックを作成し、周知の徹底を図っています。
62頁を開けてください。適正な契約業務ということで、当然、国の会計法に準じた会計規程なりを設けております。さらに、透明性を図り、競争性を確保していくということで、外部の委員の方にもお願いして、契約監視委員会を設けております。この結果、平成24年度に多くのものが一般競争入札のほうに転換をして、新しい契約スタイルに変わってきております。
評価項目13ですが、予算収支計画などです。外部資金については、研究収益が大幅に伸びていまして、競争的資金を含めて、平成22年度よりも36%増えました。64頁の「受託研究取扱規程」という所をご覧ください。それに基づいて4億1,300万円の収益を上げていまして、平成22年度に比べて36%の増になっております。負債につきましては、新たに借入を行っていなくて、償還は確実に行っています。したがって、借入金はまた減っていて、いまのところ7億5,000万円となっています。それから、剰余金ですが、8,300万円が生じましたが、これについては目的積立てではなく、積立金として積立てをする計画です。すみません。表現ぶりが目的積立てとなっていますが、訂正します。
65頁、上に関することで、人事システムの最適化です。業績評価制度、年俸制職員について行っていまして、本年も2年目ということで、ヒアリングなどを実施して評価を行っています。それから、職場づくりということで、保育所については保育時間延長を行っていまして、これは看護師さんなどが働きやすい体制を確保することを行っています。看護師宿舎についてもかなり老朽化の激しいものがありましたが、これについてはリース宿舎をするということで、今年度も新たなものを1戸建築する予定としています。待遇改善につきましても、医師、看護師の諸手当も、夜間の看護手当や医師加算なども、専門看護手当なども新しく設けています。
評価項目14です。業務に関することでアクションプランを立てていますが、若手職員による病院活性化チームというのがあります。それは若手で病院の活性化をいろいろ考えていこうということですが、これまでに、電子カルテに顔写真入りの職員録を作成して、みんなで顔見知りになろうとか、外部の人も見やすいようにパンフレットを用意する等、活動しています。
67頁ですが、これは年俸職員の業務実績評価です。平成22年度の業務成績については、ご評価をいただいた後、平成23年の給与に反映していますが、理事長や理事については、経営成績の観点、あるいは、社会情勢等も踏まえた内容ということで1%カット、それから、年俸制職員についても1~5%のカットで、マイナスの支給改定を行っています。
68頁、人材確保につきましては、病棟クラークなどを配置したり、リース宿舎をしたりということで、職場的な魅力づくりをしていく努力をしています。次に、69頁ですが、ミッション達成のための取組です。朝、定例的に幹部によるミーティングを行って、細々としたいろいろな問題からトピックスの問題、大きな問題に至るまで、幹部の間で情報交換と問題解決についての議論をして、常に重ねています。これに基づいて、いろいろな個別のミッションについて、的確な指示を行うなり、理事会や運営会議で必要なときには指示をしたり、議論をそこで、みんなで情報を共有し合って、かつ、指示も同一的に行うということを行っています。それから、新病院構想ですが、現在、病院構想の検討委員会を4月に開催して、あと、ワーキングチームで中身を議論していくというのがいまの状況です。以上でございます。よろしくお願いします。
○永井部会長
ありがとうございました。それでは、ご質問、ご意見をお願いします。
○三好委員
いま、平成21年度の収支差の数字はおわかりになりますか。平成22年がマイナス2億円、平成23年度がプラス2億9,000万円、基準となる平成21年度がわからないのですが。
○国立長寿医療研究センター企画戦略室長
大変申し訳ないのですが、平成21年度は国でして、企業会計などという言い方はしておりません。
○三好委員
ないのですね。わかりました。結構です。
○国立長寿医療研究センター企画戦略室長
私が申し上げるのも変ですが、たぶん国立中部病院といった頃から、収支のとり方はいろいろ変遷があったとしても、黒字になったのは初めてではないかと思います。
○三好委員
おめでとうございます。もう1点です。一般管理費も相当、30%減ということで、これもかなりご努力とは思いますが。それで、確か前年もそのぐらいとおっしゃったように思ったのですが。そうすると、一応前年の削減努力もそのまま継続してやっているという理解でいいのですね。わかりました。
○内山委員
単なる感想ですが、素晴らしい収益の増加ということで感心しています。評価シートを拝見しますと、自主的な草刈りや樹木の剪定ということまで書いてあって、多分そのような姿勢が全体によい影響を与えているのではないかと、感心している次第です。また、看護師さんもかなりの人数をよく採用できたものと思います。評価シートにある二交替制の導入について教えていただけますか。
○国立長寿医療研究センター企画戦略室長
通常よく言われるのは三交替ですが、病院によってはやり方がいろいろあって、夜勤の組み方として、1日を日勤、準夜、夜勤と分けるのが三交替です。二交替は2つに分けるやり方で、1回あたりの勤務時間は長くなりますが、確実に次の日に休めて、若い人向けにはとても。
○内山委員
何時から何時までの勤務ですか。すみません、私の勉強のために教えてください。
○国立長寿医療研究センター総務部長
深夜帯の方については、大体5時前から翌日の8時半までと、16時間近く働いてはいるのですが、途中2時間程度の仮眠をとってやっていますので、そういう形で進めています。翌日また、2日程度の継続したお休みがつきますので、身体的には若干、自分の時間ができるということで、特に若い方には好評という形で、割と進んでいます。
○内山委員
若い看護師さんには好評なのですね。
○国立長寿医療研究センター総務部長
看護師確保につきましても、平成21年度は40人から50人ぐらいの看護師の退職がありましたが、昨年度は20人程度で、このあたりが相当変わってきたのではないかと思います。
○内山委員
夜勤専門の看護師さんも増員になったと。こういう方はおられるのですか。
○国立長寿医療研究センター総務部長
そこについても継続的に募集をしていまして、常勤の方であってもどうしても夜勤ができない方がいますが、このあたりをフォローするという形で。数的にはまだ10名足らずですが、そういう方も継続的に採用していると。
○国立長寿医療研究センター企画戦略室長
大学とか、学校にまだ通いたいという方がいて、それで、生活のためも含めて働きもしたいという方で、若い方だったら夜勤だけ、夜勤を毎日やっているわけではありませんので、そういう方で勤めたいという希望の方はいらっしゃいます。
○内山委員
となりますと、病棟によっては医療の内容が高度すぎたり細かすぎてついて行けないという方もおられる可能性もあると思いますが、その点はうまくバランスがとれているのですか。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
先端医療で、1年以上の修練を要するところはそれ程多くありませんので。
○内山委員
比較的運営しやすいセンターなのですね。診療単価を見ていると確かにそんな気もしますけれども。でも、うまく運営されている様子で、とても素晴らしいと思います。
○国立長寿医療研究センター総務部長
対象を考えさせていただいていますが、このレベルであればここでいいではないかという形で運営しております。
○永井部会長
昔、二八体制ということで、夜勤は月8日以内というのが大きな制約だったわけですが、二交替制あるいは夜勤専属の場合、その問題はどうクリアされるのですか。
○国立長寿医療研究センター総務部長
夜勤の方は、基本的に月4回という形で。要するに、4回というのは1回が2回として教えますので。
○永井部会長
1回を2回と数える理屈なのですね。
○国立長寿医療研究センター総務部長
一応月4回を上限という形で入っていただきます。
○永井部会長
その場合、今度は配置数が増えていくと思いますね。
○国立長寿医療研究センター総務部長
夜間ができない方たちや正職員の看護師がいるので、そういう方たちのバックアップという形でやっていただいて、さすがに先生のおっしゃるように、昼間の看護師が若干増える傾向はあります。
○永井部会長
その方々が有効に働けるような配置も考えているのですか。
○国立長寿医療研究センター総務部長
はい。
○内山委員
夜勤手当はどのぐらい出ているのですか。
○国立長寿医療研究センター総務部長
専門の方で、一応4万円です。
○猿田部会長代理
今回、特に理解できるのは、病院の経営をよくしたことだと思いますが、新病院も出て、なおさらこういうことはいいと思って。かなり給与は抑えておいて、それで、これだけ業績を伸ばしています。これが継続できるのですか。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
昨年度は赤字だったものですから、幹部も含めて給与は減らさせていただきましたが、経営がよくなってくると、当然その分は評価しなければいけないと思っております。速報値ですが、この4月から回復期リハ病棟を開設したこともあって、より効率的な一般病棟ができて、経営はさらに相当改善していますので、待遇改善と経営改善を両立できると考えています。
○猿田部会長代理
もう1つ、外来の患者数が増えていることが。やはりそこは非常にいいことなのですね。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
おっしゃるとおりだと思います。
○猿田部会長代理
がんばってください。
○永井部会長
他に。
○祖父江委員
いまの議論の続きになるかもしれませんが。回復期リハ、それから、先ほどおっしゃった、地区の血液とか神経内科の関係もあると思いますけど。いわゆる、町の医療をどんどん拡充して、儲かるほうには働くと思いますが、研究に対して、その中でどういう方策を打っていくかについてはいかがでしょうか。これは理事長がおっしゃったことの繰返しになりますが、どんどん相反する方向に。効率化ということはいいのですが、そこをどういうビジョンで得ようとされているのかを教えてください。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
私も最初、相反するのではないかと思ったときもありますが、実際に国立長寿医療研究センターで行うのは臨床研究ですので、どの診療科も患者さんがたくさん来なければ臨床研究ができないわけですね。したがって、特色のある医療を打ち出し、忙しい診療をして、その中で、新しいアイデアで国民に還元できるもの、まったく相反するものではないと考えていまして、それがいま、職員にも浸透して、患者さんをたくさん集めて、こういう感じで新しいことをやりたいと。例えば、感覚器センターとか運動器外来をやると、そういうことでみんながんばっていると考えております。
○祖父江委員
それは理想的な姿だと思いますし、実際にそういう診療が研究に結びついていると理解してよろしいですか。
○国立長寿医療研究センター理事(病院長)
実際に、そのような研究班や、病院の中でのデータ、研究発表業績も出ております。
○和田委員
昨年に比べて経営状況が大変よくなって、すばらしいと思います。1つだけお尋ねします。内部統制などについてもきちっとやられていると書かれていますが、この組織図の中に、理事長直轄で、コンプライアンス室というのがあって、このコンプライアンス室について、どういう人が就任していて、それで、平成23年度においては業務的にどういうことをされたのか、ご説明いただければと思います。
○国立長寿医療研究センター総務部長
コンプライアンス室と申しますが、事務が中心になってやると進めさせていただきますが、正直申し上げますと、いま現在欠員になっています。昨年度、平成22年、事務の職員の数を増やしたのですが、総人件費対策の関係で、元に戻す、減らすようにというご指導をいただきまして、増やす予定のところが2名を減らした中でやっています。コンプライアンスの方は基本的に欠ですが、先ほど申した監査室長という者が中心になって、中での統制はとっている形です。
○永井部会長
他にいかがですか。よろしいですか。それでは、評価シートへの評定の記入をお願いしますが、その間に質問等があればお願いします。事務から、今後の進め方についてご説明いただけますか。
○政策評価官室長補佐
本日お配りしている資料の送付をご希望される場合は、部会終了後に事務局へお申しつけください。また、評定の記入が終わっていない委員の方は、8月8日の水曜日までに事務局へ評定記入用紙のご提出をお願いします。
○内山委員
この用紙を後で、前回のように送っていただくことはできますか。電子媒体でお願いします。
○永井部会長
以上で国立長寿医療研究センターの評価を終了します。どうもご説明ありがとうございました。本日の議事は以上でございます。次回の開催について事務局からご案内をお願いします。
○政策評価官室長補佐
次回は、明日8月2日9時から、場所は省内17階の専用第21会議室になります。議題は「国立国際医療研究センター及び国立循環器病研究センターの個別評価」となっております。連日、朝早くからの審議となりますが、どうぞよろしくお願いします。以上でございます。
○永井部会長
それでは、これで終了します。どうもありがとうございました。
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