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2012年7月25日 独立行政法人評価委員会高度専門医療研究部会(第13回)議事録

○日時

平成24年7月25日(水)13:00~16:57


○場所

専用第21会議室(17階)


○出席者

永井部会長、猿田部会長代理、内山委員、祖父江委員、花井委員、本田委員、三好委員、和田委員

○議事

(以下、議事録)

○永井部会長
 時間になりましたので、ただいまから第13回「独立行政法人評価委員会高度専門医療研究部会」を開催させていただきます。委員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。
 それでは、本日の議事について事務局からご説明をお願いいたします。

○政策評価官室長補佐
 議事の説明の前にご報告いたします。夏目委員でございますが、今般、成田国際空港社長に就任されまして、業務に専念されるということで6月末で委員を退任されましたので、皆様にご報告申し上げます。なお、急な話でしたので、この夏の評価の際には、後任の委員を補充せずに、8人の委員の皆様でご審議いただければと考えております。よろしくお願いいたします。
 それでは、議事について説明いたします。本日は、高度専門医療研究部会における平成23年度業務実績の評価について、事務局より説明をしまして、そのあと、国立がん研究センターと国立成育医療研究センターの個別評価についてご審議をいただきます。最後に最近の独立行政法人を取り巻く状況について、事務局より報告いたします。以上でございます。

○永井部会長
 議題1の独立行政法人の実績評価を行っていただくわけですが、今年度実施する各法人の評価の流れ及び評価基準について、事務局からご説明をお願いいたします。

○政策評価官室長補佐
 個別評価の進め方について説明いたします。資料1-1-[1]、進め方について、昨年と変わりませんので簡単に説明させていただきます。始めに理事長から、法人全体の業務実績について、説明をいたします。その後、各個別項目を4つのパートに分けまして、法人から実績と自己評価を説明いたします。そのあと各パートごとに質疑応答を行い、委員の方はS~Dの評定と、その評定理由を評定記入用紙に記入していただきます。それを各パートごとに繰り返して進めていきます。評価については総務省に設置されています政策評価・独立行政法人評価委員会、いわゆる政・独委ですが、が作成しております「評価の視点」等を踏まえて評価をしていただく必要があります。高度専門医療研究部会では、これらに関する法人の実績を業務実績評価別添資料に取りまとめておりまして、この別添資料に記載された事項を評価するチェックポイントを資料1-1-[2]としてまとめておりますので、評価にあたっての参考にしていただければと思います。
 また、紫色の独立行政法人評価関係資料集がお手元にあると思いますけれども、それの126頁、今年5月21日に政・独委より、2次評価にあたっての、特に留意すべき事項が示されております。いくつかこれまでの対応に追記して対応すべき事項がありますのでご説明いたします。126頁のいちばん下の公益法人等に対する会費の支出についてと次の頁、保有資産の管理の1つ目と2つ目の●、独法の職員宿舎の見直し関係です。こちらは行革本部決定となっておりますけれども、決定自体が平成24年の3、4月に決まったものですので、23年度実績評価書でなかなかこれを手当てすることができませんので、総務省の政・独委事務局にも確認しまして、業務実績評価別添資料に現状を記載するということで対応することとしております。
 金融資産に記載されるいわゆる溜まり金の精査につきましては、財務担当委員にヒアリングの際に確認いただき、法人の総合評価の際にコメントをいただくということを考えております。内部統制については、監事の監査結果を踏まえた評価を行っているかについて、留意することとあります。昨年の総会、部会等で複数の委員からもご指摘がありまして、業務実績評価別添資料に一部追加しておりますが、資料の記載内容を確認いただきつつ評価していただければと考えております。
 また、資料1-1-[3]は、3月の部会でもご案内させていただきましたが、昨年の12月に政・独委から2次評価意見が出されており、その対応方針です。23年度評価では、3ポツ以降のものが対応可能な事項となっています。各法人において、この対応方針を受けて資料作成及び今回の説明をいたしますので、委員の先生方におかれましては、これらの案件にご留意の上、評価をしていただければと考えております。
 法人の個別評価が終わりましたら、各委員の評価を踏まえ、評価書案を起草委員に作成いただきます。各委員の起草担当の法人は、資料1-2のとおりです。がんセンターが猿田委員、循環器と国際が永井部会長、精神・神経医療研究センターと長寿医療が祖父江委員、成育医療センターが内山委員、財務諸表については和田委員ということで、よろしくお願いいたします。
 評価書案の作成は、各法人の所管課と起草委員とで調整しながら案文の作成を行っていただきます。起草委員において作成していただいた評価書案につきましては、総合評価の部会で各委員にご審議いただくことになります。
 続いて資料1-3と1-4についての説明です。資料1-3は、本部会で評価する6法人について、予め法人の大体の実績を踏まえた上で評価していただいたほうが、評価のバラツキが少なくなるのではないかと考えておりまして、自己評定の一覧を付けております。また、資料1-4として、他部会を含めた過去3年の評価結果をグラフ化したものを付けておりますので、他部会の評定等も考慮に入れて参考にしていただきながら、評価をしていただければと思います。事務局からは以上です。

○永井部会長
 ただいまの事務局からのご説明に対して、ご質問、ご意見はありますでしょうか。よろしいでしょうか。もしご質問、ご意見がありませんでしたら、ただいまのご説明に従った手順で、各法人の実績の評価を行っていただきたいとお願い申し上げます。
 それでは、国立がん研究センターについて、評価に入りたいと思います。最初に堀田理事長から、ご挨拶及び平成23年度における業務実績概要のご説明をお願いいたします。

○国立がん研究センター理事長
 ただいまご紹介いただきました、国立がん研究センター理事長の堀田でございます。この4月より就任いたしましたので、23年度評価を私が説明するのもややじくじたるものがありますけれども、これは役目としてやらせていただきたいと思います。
 23年度と申しますのは、独法化して2年目という時期でして、独法化以後のいろいろな改革の途中という段階です。事業概要の資料の2頁にがん研究センターの概要がありますので、簡単にご説明申し上げます。
 業務内容としまして、がんその他の悪性新生物に係る医療の調査・研究・技術開発、そして2番目に上記の業務に密接に関連する医療の提供、技術者の研修、医療政策の提言、そしてこれらに附帯する業務の実施ということで、業務内容が位置づけられております。
 私どもの理念として、世界最高の医療と研究を行う。また、患者目線で政策立案を行うということです。こういったアクティビティーはすべてこの下に書き込まれたように、「職員の全ての活動はがん患者のために!」ということで、職員から集めましたモットーから選びまして、このように定義をしております。
 使命としまして、ここに挙げました7つに整理いたしまして、ただいまこれに向けて取り組んでいるところです。
 組織概要につきましては、病床数が現在両病院合わせて1,025床、入院患者の平均は847名という状況です。外来患者は1,850名、役員数は常勤2名、非常勤4名です。なお7月1日に、1名非常勤理事が追加になっております。職員数は1月現在2,470名、常勤1,574名となっています。
 次はがん研究センター全体の事業体系図です。大きくは2つに分かれまして、1、高度先駆的な医療の開発・普及による公衆衛生の向上・増進といったことに向けて、5つの事業を展開しております。1つは研究事業、そして臨床研究事業、診療事業、教育研修事業、情報発信事業です。これらの事業はそれぞれに事業項目ごとに自己評価を次の頁以降に書いてあります。あらかた申しますと、研究事業については、臨床を志向した研究・開発の促進ということで、これは国時代に比べ、創薬とか診断技術など出口の見える研究を、研究所も行うということで、トランスレーショナルリサーチ、あるいは創薬研究といったことにかなりウェイトを置き始めています。そのほか、がんの特性を踏まえた病態解明、発症予防といったことについても研究を展開しているところです。
 また、臨床研究事業として、早期・探索的臨床試験拠点に昨年度指定していただきました。それにより、Phase1センターを構築して、早期臨床試験ができるような体制、すなわち知的財産、あるいは行政の経験者、生物統計家、こうした方々がいま出揃ってPhase1センターが動き始めたところです。
 またもう一方、標準治療の開発と普及ということで、JCOGの臨床試験グループを中心とした多施設共同研究の基盤整備を進めているところです。
 3つ目に診療事業ですが、高度先駆的な医療、標準化、この提供については特に先進医療、高度医療といったものに対して積極的に取り組んでいまして、特に外科系の領域では先進医療の項目をたくさん進めているところです。こういったことについてはあとで個別にお話申し上げることになると思います。
 もう1つは、患者の視点に立った良質かつ安全な医療の提供というところでは、「がん相談対話外来」を開設いたしまして、医師だけではなく、看護師や臨床心理士、精神科医が一緒になって相談に応ずるという新しいタイプの相談外来を開設しているところです。また、安全な医療を提供するという点で、かつてがんセンターは合併症があると診ないとか、いろいろな批判をいただきましたけれども、そういうことに一定程度対応できるように総合内科の充実を図って、合併症の管理とか、術後のケア等の充実を図ったところです。もう一方は、緩和ケアの取組み、特に東病院を中心に、モデル的な院外型の緩和支援施設等を運用しているところです。
 また、教育研修事業について、リーダーとして活躍できる人材の育成ということで、連携大学院を慶應大学と順天堂大学との間でただいま提携をしておりますが、これも順次広げていく予定です。そのほか、地域におけるがん医療の指導者の育成のための研修会といったものを展開しております。それからレジデントにつきまして、従来は3年のレジデントコースでしたが、短期レジデントコースを用意して3カ月から2年間で任意でできるように、門戸を広げているところです。
 情報発信事業については、ネットワークの構築の推進、情報の収集、発信といったところで、特に都道府県がん診療連携拠点病院連絡協議会を主催しまして、23年度はがん登録部会を新たに設置したところです。そのほか、情報発信について、患者必携「もしも、がんが再発したら」を新たに23年度に公開・普及いたしました。これは患者代表の方との共同で作業をしたという点で新しい展開だと考えております。そのほか、「地域の療養情報」を各都道府県が作成するのに支援を行っております。
 そのほか、国への政策提言という意味ではがん登録に対する提言や、東日本大震災にかかる放射線被ばくに対する提言等を行ってまいりました。
 次に効率的な運営体制の確立について、権限と責任の明確化を目的に弾力的な組織再編をやりました。これはある意味、過渡的な改革時の組織再編でありまして、第2期の再編の時期を現在迎えているというように認識しているところです。職員の業績評価、あるいは内部監査を充実させるといったことも23年度に特筆すべきことかと考えております。
 また、効率化による収支改善について、経営意識の向上やコスト削減、あるいは収入の確保をいたしまして、23年度の経常収支率は102.6%を達成しております。しかしこうしたことについてもさらに中身を精査し、我々としてはさらなる改善を図るつもりです。
 折角の機会ですので、新理事長として少し付け加えさせていただきたいと思います。「センターの課題・展望と23年度の主な取り組み」という別のファイルがありますので、それを参照いただけますでしょうか。ここの6頁ですが、4月以降、これを踏まえてどのようなことをやったか、少しだけご紹介申し上げたいと思います。国立がんセンターの改革への取組状況として、私が就任しまして、各部門の責任者を含むすべての方100名以上からヒアリングを直接行い、組織改革に対するいろいろな要望、意見、将来構想といったものについて聴取しました。それを元に組織改革をいたしました。これは先ほど申し上げましたように、国の時代から独法に移行する過渡的な形態と、これから安定的に事業を進めていくための形態といったものを、ある程度分ける必要があるという認識の下にです。理事長のリーダーシップを前提に現場の意見を反映できる運営体制ということを重視いたしました。書いてありますように、執行役員会を設けました。また、各部門の運営会議を強化することにより、部門間の調整や、そこでの意見調整をし、意見や要望が挙がってくる仕組みを新たにつくりました。
 もう一方は、政策的な問題に対応するために企画戦略局をがん対策における理事長の特命事項に対して答申を行う、シンクタンクとしての機能をさせるというように位置づけを変えて動かしているところです。また、役員人事についてはできるだけ民間の経営者の理事への登用、これには人選中と書いてありますが、ほぼ内定しております。それから国内外のがん医療と研究に関する有識者を理事長特任補佐として迎えました。現在外国の方の内諾も得ているところです。院長は中央病院と東病院の両方とも欠員になっており、私がこの6月末まで兼務しておりました。これによってセンター内全体が見渡せるのはいいのですが、やはり現場には責任者をきちんと置く必要があるという認識の下に、両院長を7月1日に選任させていただいたのと、副院長にもそれぞれの役割を振って、副院長・診療科長には若手の職員をできるだけ登用して、世代交代を図るといったことを進めているところです。
 次の7頁は組織の大まかな図ですが、従来は右側の旧体制とありますが、理事長から下へ直列に指示がいくという形で、それぞれ協議して上へ挙がってくるというスタイルはなくて、従来の企画戦略室というところが院内のいろいろな調整を図り理事長に挙げて、そこから理事長が指示をするというスタイルでした。理事長から各部長、科長の途中には何も置かないという、例えば事務部門に部長が4人いますが、その1人が1本ずつ理事長と繋がっているというやり方でした。したがって、非常に命令系統が単純化していますが、逆に未消化のまま挙がってくるという問題がありました。そういったところを左のような体制に切り替えて、それぞれの部所に責任と権限を分譲するという形にもってまいった次第です。そうしたことで定常時らのNCの運営については、こういった方式で安定的な成長を図ってまいりたいと思っているところであります。以上です。

○永井部会長
 これからの進め方についてご説明いたします。国立がん研究センターの個別評価については、評価シートの個別項目があります。4つのグループに分け、グループごとに評価を行ってまいります。評価の指標としていつも議論になるのですが、計画どおりであればB評価、中期計画を上回っていればA評価、想定外の要因を加味しており、計画を大幅に上回っていればS評価ということです。各センターがS評価を希望されると思いますが、S評価というのは想定外で、かつ大幅ということです。A評価というのは計画を上回っているということで、素晴らしい評価であるとお考えいただければと思います。
 第1グループ、項目1~3、研究開発に関する事項についての評価です。所要時間は、法人からの説明が10分、委員の評定及び質疑が15分、合計25分で行います。それでは、法人から説明をお願いいたします。

○国立がん研究センター研究所長
 研究所長の中釜です。最初の研究・開発に関する事項について説明いたします。ここには3つの項目、1番目が臨床を志向した研究・開発の推進、2番目が病院における研究・開発の推進、3番目が担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進とありますが、順次説明させていただきます。
 資料の20頁で、第1項目は、臨床を志向した研究・開発の推進においては、研究部門と診療部門の連携を強化し、共同研究を推進する、そのための基盤的な整備としてバイオバンクを充実させ、さらには研究支援としてのコアファシリティ体制を強化する。こういうものを通し、臨床研究を推進するだけでなく、産官学との連携を強化しました。
 次の頁で、大きな事業としてはPhase1センターを設置いたしました。これは、厚労省の早期探索的臨床試験の拠点整備事業ということです。この事業の中でファースト・イン・ヒューマンの試験が現在12件進められていて、今後ファースト・イン・ヒューマンを予定するシーズが6シーズあります。さらには未承認薬の医師主導治験というものも、現在計画中の6試験を含めて実施中のものが1試験あります。この中には、研究所からの成果として挙がってきた融合遺伝子に関する共同治験も含まれております。
 将来のファースト・イン・ヒューマンPhase1に持っていくようなシーズを積極的に探索するようなTRの実施支援体制もPhase1センターの中で強化して進め、世界トップレベルの早期臨床開発拠点を目指すということです。
 研究所は30年前に構築されたもので、当時は非常に新しいものだったのですが、このように横断的な、加えて学際的なTR研究を推進するとなると、少し不備の面もあります。そのために現在新研究棟の構想を練っていて、その基本構想を策定しているところです。この新研究棟の中では、臨床と基礎研究部門のシームレスな連携をより強化し、高度な研究機能と臨床との融合による新たなエビデンスの創造を目指すということ。世界をリードするような成果を創出するために、コアファシリティ機能の強化をし、研究基盤をさらに強化する。それから外部研究機関、民間企業との連携が取りやすいようなものを目指しています。
 次の頁で、このようなTR研究の推進、さらには臨床と研究の融合した研究の推進により、現在共同研究費・知的財産収入も独法化以後増加しています。いちばん上のグラフですが、共同研究件数としては、従来130件前後であったものが、現在は160件ほどに増えています。その共同研究による研究費の獲得も、2011年の段階では1億8,000万円、約2億円に近い研究費を獲得しています。相手方企業の割合としては、製薬企業及び医療機器の企業が合わせて7割ぐらいを占めているわけですが、ほかにも診断機器、研究試薬等々の共同研究があります。
 知的財産収入の推移も、2011年度は総額で800万円強の収入があります。この中には、法人化前の契約に基づく特許収入として約270万円も含まれています。現在はこのような状況で、これについては今後ともこれを増やしていきたいということです。
 次の頁で、幾つかの企業との包括連携協定も積極的に進めています。現在はここに示しておりますように、製薬企業としては海外のアストラゼネカ、ファイザー、さらには国内の製薬企業とも包括的な提携を結んでおります。次世代の医療分野の先端技術との融合ということで島津製作所との包括的な連携協定も結んでいます。次のシーズを探索するような仕組みとして理化学研究所、東京大学、6つのNCとの連携も積極的に強化しています。
 次の頁で、医療機器開発のための医工連携の仕組みについても積極的に取り組んでいて、昨年10月には東大工学部とのワークショップを開催し、いま現在東大以外の、具体的には東京理科大とか複数の大学、さらには企業との共同研究も積極的に推進しているところです。
 28頁で、第2項目の病院における研究・開発の推進の項目です。これに関しては基礎研究者と臨床研究者の連携を強化するには、その情報交流が重要であり、現在、センター内ではリサーチ・カンファレンス、あるいはトランスレーション・リサーチ・カンファレンスを定期的に開催しています。さらに、研究基盤としてのバイオバンクは非常に重要です。単に手術試料を蓄積するだけではなくて、そこには診療情報、あるいはゲノム情報を付加したような高付加型のバイオバンク構築を目指しています。そのための支援として、リサーチ・コンシェルジェのような仕組みも強化しています。
 その成果の1つとして、治験申請から症例登録、ファーストペーシェント・インまでの期間の短縮も約2週間強を実現しています。
 次の頁は、リサーチ・コンシェルジェの簡単な説明です。当センターでは、昨年5月以来、新包括同意ということで、新患の患者さんに関しては血液試料、さらには手術等の余剰サンプルについて医学研究目的に包括的に使わせていただくということで、患者さんへの説明及び同意を得ています。そのためのスタッフとして、リサーチ・コンシェルジェが、初診患者に対しては外来初診時に懇切丁寧な説明をし、外来受診のサポートをするだけではなくて、包括同意のためのバイオバンクの構築に関する説明をし、同意が得られた患者さんの症例に関してはその血液及び試料を使わせていただくということです。昨年5月13日からスタートし、今年の3月31日現在までに約9,000名強の患者さんに説明をし、同意者数が8,600名を超えている状況です。
 次の頁は、研究所と病院の連携研究を強化するということで、研究所内に病院の先生も入ってくるような形で研究分野を創設しました。1つの例として、脳腫瘍に関しては、研究所としては初めての取り組みですが臓器に特化した形で連携研究を進めています。ここにはセンターの病院だけではなく、国内外の脳外科の先生方、JCOGの臨床試験のグループ、国際共同研究を包括的に横断的に扱って、脳腫瘍に対するTR研究を推進しています。
 35頁で3つ目の項目の、担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進です。ここに平成23年度の代表的な成果をまとめてありますが、中でも特に代表的なものをいくつか紹介いたします。36頁ですが、肺の腺がんの新しい治療標的となる複数の新規融合遺伝子を同定しました。ここにはKIF5B-RETが示してありますが、これは肺腺がんの約2%、これ以外に新規にX-Yと書いてあるもので、論文投稿中です。現在、新しい肺腺がんの融合遺伝子が治療標的になり得るということで、将来的にはPhase1センターに持っていき、そこで早期の臨床試験に持っていきたいと考えています。
 次の頁は新しい治療法として、核酸医薬の例です。がんの幹細胞を標的とした治療法として、RPN2という新しい分子に標的するような核酸医薬の開発、これも現在臨床応用に向けてのロードマップが描かれています。
 そのほか38頁には、血液の幹細胞を標的とした治療戦略の構築、次の頁で国際的ながんゲノム・コンソーシアムを構築し、国際的な取組みとして、がんゲノムの解析を推進しています。このグループでは50種類のがんに対して、そのがんのゲノム情報を国際的に集積し、新しい治療戦略を構築するというものです。日本を代表として当センターでも、ウイルス肝炎による肝がんに対するゲノム解析を進めており、成果を上げております。その他、メチル化のプロファイリングによるがんの予防戦略、マイクロRNAを用いた超早期診断薬の開発といったものもすすめております。
 最後に、がんの検診領域においても、新しいエビデンスを構築するために、現在のがん検診ガイドラインを精査し、その中で新しい検診のシーズとなるものを発見し、この新しいシーズの開発に向けた、新たな検診戦略の構築ということで、現在代表的なものとしては大腸内視鏡の検診としてのエビデンス構築を目指しているところです。
 46頁には、疫学的な研究として大規模なコホート研究もおこなっています。従来の多目的コホートに加え、昨年度からは文科省の戦略推進費を使い、ゲノム・コホートの構築も並行して進めており、これは将来の個別化医療、個別化予防の展開につながるということで、強化して進めているところです。以上です。

○永井部会長
 それでは、皆様からご意見をお伺いいたします。最初にもお話いたしました想定外というのが、S評価には重要なのですが、どこが想定外だったかを説明していただけますか。

○国立がん研究センター研究所長
 想定外として1つには、TR研究を推進するためにはPhase1を推進するような仕組みは非常に重要なのですが、この研究費が獲得できて、その研究費の基盤があったからこそ、センター内での研究を含めて体制の構築ができたということがあります。具体的にこの仕組みができたお蔭で、いろいろ具体的なシーズを挙げてできたということが想定外と考えます。
 知的財産収入に関しても、現在2億円近い共同研究費が獲得できているわけですが、2年前の独法開始時の共同研究費はゼロだったのですが、昨年は7,000万円まで増えて、これが今年に至って一気に増えてきました。いまは1億8,000万円と書いてありますが、実際には2011年の前から契約し、2011年に入ってからスタートしたものもありますので、それを加えると2億円を超しますので、こういうものが想定外に伸びていると考えます。
 リサーチ・コンシェルジェが関係したバイオバンクに関しても、今年度は従来の仕組みに加えて、昨年5月からは新包括同意ということでかなり丁寧に説明をして、すべての研究に使わせていただくということを開始しました。そういうことで、患者さんの同意率に関しては懸念があったのですが、そのために今年度のバイオバンクの構築の予定数としては、少し抑えぎみに計画を立てたのですが、90%以上の同意率を得られて、実際にはバイオバンクの構築上に大きな影響はなく、逆に非常に積極的に構築できたというのも想定外で、リサーチ・コンシェルジェの努力が大きいのかと思います。
 研究成果としての想定は、これは研究ですのですべてが想定外かもしれませんが、肺腺がんの新規遺伝子を同定し、これが新たな治療標的となり得るということが、1つの遺伝子に関してはできたし、もう1つも動物モデルでは少なくとも実証できていますので、こういうものも想定外の成果として挙げられます。以上簡単に説明させていただきましたが、その他にも研究に関してはいろいろ想定外のことがあります。

○永井部会長
 いかがでしょうか。

○猿田部会長代理
 これだけ臨床研究の体制をどんどん進めてきたということで、実際に今度Phase1の早期探索拠点としても活躍していただきますが、そこに対する専門的な方というか、人員的にはがんセンターからどんどん採用して伸ばしていける。その人員的なところはどうですか。

○国立がん研究センター理事長
 この事業費を使って、人員としてはかなり手厚くいたしました。シーズを発見するといった目利き、レギュラトリーを経験した方、生物統計家、クリニカル・リサーチ・コーディネーター、これらの方を雇用できることになりました。これは東病院、中央病院の両方でPhase 1ユニットと申しますか、全体は1つなのですけれども、それぞれに分かれてブランチのようにやっている状況です。

○猿田部会長代理
 これまで見ていると、研究面は非常に貴重な研究だったのですが、それを実用化する面での流れが少し悪いなと。その体制をしっかり作り上げ、Phase1ができるようになればスッと動きます。

○国立がん研究センター理事長
 ご指摘のところは、私どもとしても力を入れているところです。

○永井部会長
 肺がんの新しい融合遺伝子というのは全く新しいものですね。

○国立がん研究センター研究所長
 はい。ここに示したKIF5B-RETというのは、RET遺伝子はもともと甲状腺がんで知られて、甲状腺がんでは特徴的な融合遺伝子があったのですが、肺腺がんでは初めて見つけました。

○永井部会長
 X-Yと書いてあるのは、まだお話ができないという意味ですか、それとも例えばという話ですか。

○国立がん研究センター研究所長
 この資料を作成したときにはX-Yにしたのですが、実際にはROSという遺伝子の融合遺伝子で、これもROS遺伝子自体はもともと知られた遺伝子なのですが、融合としては新しい融合遺伝子です。これも報告されていないものです。

○永井部会長
 これは、新しいキナーゼ阻害薬で、特異的に抑制できる可能性はあるのですか。

○国立がん研究センター研究所長
 可能性があると考えています。

○永井部会長
 創薬の準備は進めているのですか。

○国立がん研究センター研究所長
 はい、いま並行して進めています。

○花井委員
 ご説明ありがとうございます。研究所のほうも、実際の治療に役立つというところで、意識も体制も変わってきたとお伺いしました。トランスレーショナルリサーチというところで、診療部門との連携は結構重要かと思うのです。そういう意味では一般の病院と違うナショナルセンターとして、診療部門での意識というか、体制というか、特に変化というか、今後こういうふうになるべきだというご意見がありましたら教えてください。例えば薬剤師さんがおられると思うのですが、医師以外の専門家も含めてどのような様子かを教えてください。

○国立がん研究センター研究所長
 いまご指摘いただいた点は非常に重要な点で、従来の臨床研究の推進、TR研究の推進というのは文言では簡単なのですけれども、より積極的にそこにコミットしてくれる医師であるとか研究者、及びお互いの情報交換は非常に重要だと思うのです。そのために、いま現在の試みとしては、毎月ほぼ1回定期的に行われているリサーチ・カンファレンスで、例えば研究所から上がってきたようなシーズ、ここに示しました肺腺がんのRETの症例もそうですけれども、こういうケースを上げてきて、これを医師側、研究者側がどのようにコミットすると、創薬に向けての筋道が付きやすいか、問題点は何かという情報共有をして議論をするという場が設けられました。
 Phase1センターが構築されたことにより、Phase1センターの中でもいわゆる未承認薬、あるいはPhase1へ持っていくような新しいシーズというものを、医師及び研究者が集ってそこで議論し、治験を始めた場合にどのような遺伝情報を入手すればいいのか、さらにそれが次の新しい創薬に向けてどのように展開でき得るのかということも積極的に議論する。そこには医師だけではなくて、薬剤師も加わる形になります。具体的なシーズが上がってくると、より活性化できると思うのですが、現在はそういう取組みも昨年度来積極的に進めています。

○花井委員
 Phase1の段階で、それだけ現場の人がかかわるというのはかなり画期的ではないかと思います。

○国立がん研究センター研究所長
 そうです。

○本田委員
 ご説明ありがとうございました。Phase1とかTRの研究に力を入れていただいていることは、多くの患者さんに大変希望を与えることにもつながると思うので、とても素晴らしいと思っています。一方で、被験者になる患者さんへの説明の部分はかなり重要になってくると思うのです。その関係で私の理解が追い付いていないので教えていただきたいのです。リサーチ・コンシェルジェというのは、バイオバンクの包括同意のための方であって、ほかの治験にかかわっているわけでは全くないという理解でいいのですね。

○国立がん研究センター研究所長
 そうです。

○本田委員
 何人ぐらいいて、実際にどのぐらい時間をかけて説明しているのかということ。Phase1センターができたり、そういう治験とかTRに力を入れているということで、患者さんへの説明とか、何に力を入れているかを改めて教えてください。

○国立がん研究センター研究所長
 リサーチ・コンシェルジェの役割としては、入院の際の一般質問事項に対するお手伝いに加えて、患者さんの血液とか試料に関して、こういうふうに使わせていただくと、このような成果が将来的に上がってくると。それを懇切丁寧に30分ぐらい時間をかけて説明しています。
 これは、あくまでバイオバンクのための検体を供与いただけるかどうかという説明であり、個別の細かい研究内容については別途計画を立て、それはその研究の担当責任者がセンターのIRBにかけて、IRBの審査を受ける形をとっています。
 いまの質問にありましたPhase?に関しては、例えば早期の臨床開発、臨床試験に関して言うと、そこに入っていただいた患者さんに関する説明が非常に重要なところであります。そこは現時点では研究計画担当医師等の責任に委ねられているという状況です。

○本田委員
 担当の医師ですか。

○国立がん研究センター研究所長
 臨床試験の場合は担当の医師です。治験の場合は担当医師と補助としてCRCが行います。
○国立がん研究センター統括事務部長
 リサーチ・コンシェルジェについてお答えいたしますが、築地と柏の両キャンパスにいます。築地キャンパスに6名、柏キャンパスに5名がコンシェルジェの業務に従事しています。

○祖父江委員
 どうもありがとうございました。全体として出口型へのシフトといいますか、そういうところへのいろいろな力の入れ方が窺えると思いました。そういうのをどんどん進めていく上でいろいろな基盤があると思うのです。例えばコホート研究にしても、治験を動かすにしても、バイオバンクをやっていく上でも、がんセンターの中だけの問題ではなくて、広域的な連携をどうとっていくのかが非常に重要なテーマになっていると思うのです。
 ここに具体的な例として臨床試験部会とか、脳腫瘍の例が出ています。実態として、これは日本のいろいろな点で中心になっていただきたいと思っています。そういうシステム化がどの程度いろいろな局面で行われつつあるか、あるいは今後行おうとしているのかをお聞きします。

○国立がん研究センター研究所長
 臨床の出口を見据えた研究の推進、いわゆるTR研究の推進においては、その基盤体制が非常に重要かと思うのです。その重要な要因として、1つはバイオバンクを充実させる。もう1つはコアファシリティを充実させる。しかも、それを内部だけではなくて、外部に開放するということかと思うのです。バイオバンクに関しては、がんセンターの新しい包括同意に基づいたバイオバンクを構築した当初から、それは将来的に6NCあるいはがん診療連携拠点病院、あるいは大学を見据えた展開可能なプラットフォーム構築を意識していて、現在、実際には6つのナショナルセンターの共通プラットフォームに基づいたバイオバンクの構築を昨年度から議論しています。開始してからほぼ1年になります。いま現在はホームページも立ち上げ、今後の具体的な取組みとして、おそらくそれは6つのNCだけではなくて、ほかへ展開し得るような、大規模なバンクへの構築を見据えています。
 もう1つの基盤であるコアファシリティに関しても、現在はマンパワーの点から、主にがんセンター内部及び共同研究の枠組みに絞って、その技術提供をしているわけですが、これもいま委員からご指摘のあった点を踏まえてどのぐらいの技術供与が可能か、そういうものを見据えながら構築していきたい。そのためにも、いまの研究棟はなかなか無理があるので、新しいビジョンの下での、新しいイノベーティブな研究棟、それを構築する際にはそういうものも積極的に取り入れて、より機能的に動けるような体制にしていきたいと考えております。

○祖父江委員
 東北のメガバンクのことも、もちろん考えているわけですか。

○国立がん研究センター研究所長
 はい、そうです。東北メガバンクのほうはどちらかというと健常者コホート、我々は疾患コホートなのですけれども、両方が補完的な役割があるということで、現在そのワーキンググループの立上げ等については、東北メガバンクのほうでも求められているものですけれども、我々のほうとしても積極的にしていきたいと思います。今年度は、まず年末に一度合同のシンポジウムを開こうと考えております。

○永井部会長
 バイオバンクの試料の共有性というのでしょうか、いろいろな研究所で、ある研究者が集めたものはほかの研究者に使ってほしくないみたいなことが起こりがちだと聞いているのですけれども、そこは大丈夫でしょうか。

○国立がん研究センター研究所長
 現在、がんセンターのバイオバンクに関しては、共同研究の範囲であれば、それはほぼIRBの承認を得られれば使える形になっています。ただ、無制限という形はとっていないのですけれど共同研究であればということで、これは6つのNCも同じような仕組みをいま作ろうとしています。将来的には外部の企業などに対する対応をどうするかということも、現在6NCのセントラルバイオバンクの運営協議会で議論しているところです。いくつかのハードルはあるかと思いますけれども、できるだけ汎用性の高いものを構築していきたいと考えております。

○永井部会長
 ほかによろしいようでしたら、第2グループの項目4~6の医療の提供に関する事項についての評価です。まず説明を10分、その後質疑・評定で15分ということでお願いいたします。

○国立がん研究センター理事長
 この部分は私のほうから報告させていただきます。医療の提供に関する事項については、4番目の高度先駆的な医療、標準化に資する医療の提供のところでも細かく書きましたけれども、いくつか先駆的なものとして挙げられるものを列挙させていただきました。
 次の頁に、国立がん研究センターでのみ受けられる医療ということで、必ずしも想定外というものはないわけですが、高度先駆的な医療の展開としてはこういうものがあるという一覧です。
 49頁で特徴的なものをいくつか挙げさせていただきます。眼内腫瘍に対する小線源治療というのは、主には小児の網膜芽細胞腫という、日本でも非常に数の少ない病気であり、全部で200例ぐらいしかありません。そのうちの8割は国立がん研究センターで治療を受けています。その理由は、手術で眼球を摘除するとか放射線治療をやると、どうしても失明などの視力障害が起こります。これをいかに温存するかで、この小線源治療が有効だということです。
 図のいちばん下は、眼球を縦に割って横から見たものです。普通は、腫瘍がこんなに盛り上がっていることはないのですが、こういう腫瘍があるところの強膜の外に小線源を当てて、ある一定時間留置することによって照射を行います。この照射距離ですが、ルテニウム小線源というのは非常に短い距離しか飛びませんので、ある意味で局所的に照射が可能です。これをやることにより、視力温存率8割に達します。こういうこともあって、患者さんが集中している状況です。
 2番目は食道がんの手術です。進行した食道がんを手術するときには、開胸して広く開けて手術するのが通常です。完全胸腔鏡下の食道切除と、それにプラスしてなくなってしまった食道を何かでつながなければいけませんので、胃を巻き上げてきて食道の上部につなげます。左の図で赤く記したところから、胸腔鏡でアプローチします。逆に、ポツポツとブルーの点がありますが、そこから今度は胃管の再建術を行います。外目には大きな傷はなく、わりと早く回復できるということです。
 52頁は、麻酔科管理下による治療困難早期がんに対する粘膜下層の剥離術です。通常はセデーションをかけてやれる範囲に限られますが、この場合は麻酔医が参加し、静脈麻酔下で、非常に困難なものについても粘膜を剥ぎ取るような手術でお腹を開けなくて済むといったものを、年間に約100例程度やっています。
 53頁は、先進医療への登録をしてあるものの取組みです。ラジオ波と書いたものがありますが、このラジオ波というのは、既に肝臓については保険適用になっております。それ以外の胸部悪性腫瘍や乳がんといったものを対象にラジオ波でやります。針を刺して、その先に高周波を出し、熱を100℃に上げて、熱凝固をさせることによって、局所的にがんを切り取ったと同じ効果を現すといったものです。その代表的な例がこの下に写真で載っています。
 54頁は、BNCTといって、ホウ素中性子捕捉療法です。これは、まだ完全に完成した状況ではありませんが、平成23年度に新たに取り組んだものということでここに載せました。即ち、直線加速器で陽子をリチウムターゲットに衝突させ、そこから出てくる中性子を捕捉し、その中性子がホウ素に当たると、これがヘリウム原子とリチウム原子に分かれます。そのときに発生するα線が非常に短い距離を飛ぶものですから、細胞1個分しか照射しないということで、その効果を現すものです。ホウ素として、BPAというボロノフェルニルアラニンを前もって打っておき、そうするとそれが腫瘍にわりと特異的に取り込まれるということで、その腫瘍に取り込まれた状況で、中性子を局所に当てると、いちばん右の図のように、正常細胞にはあまり障害を与えずに、がん細胞1個分だけを照射するという論理によっております。
 55頁は、外来でのメチオニン・コリンPETです。通常のFDG-PETというのは、ブドウ糖の代謝で行われますので、脳腫瘍などには向きません。要するに、糖の消費が高いところは診断できません。そういう意味では、脳腫瘍を中心に、こういった新しいアミノ酸によるPETというもの、これは国立がん研究センターだけがやっているわけではありませんが、こういうものを展開しています。
 57頁は、術中のMRI・CT・DSAですが、DSAというのは、デジタル・サブトラクション・アンギオグラフィといって、影を差し引くことによってクリアにその血管を浮き出させる方法です。手術中にこの3つを同じ患者さんにできるという状況です。MRIは磁気ですから、何か金属があると危ないという話をよく聞くと思いますが、これは0.3テスラという、非常にエネルギーの低いものですので、左のほうにMRI装置と書いた周辺に点々が書いてありますが、その範囲以外はその磁気が作用しないので安全に使うことができます。これを術中に脳腫瘍・肺がん、乳がんその他のものに対してやっています。
 61頁は、医療の提供に関する事項として、患者の視点に立った良質かつ安全な医療の提供です。わかりやすい診療情報の提供であるとか、セカンドオピニオンを含めた相談を充実させています。62頁には、患者教室という形でサロンを展開しています。平成23年度には新たに7種類、代表的なものを6種類ここに掲げております。よりみちサロン、がん化学療法教室、リンパ浮腫教室、リマンマルームといったものを立ち上げております。
 63頁は、がん患者の生活上の不便さの調査実施です。これは、昨年5月25日に1日だけですが、外来患者さん全員にアンケートを配布し、日常の不便さを明らかにするということで回収させていただきました。回収率は62%で、すべて患者さんです。年代別に見るとなかなか面白い特徴があります。こういうことを踏まえ、新たに9月15・16日に50周年記念イベントとして、これを基にいろいろな企業の協力を得て、生活上の工夫の展示等を考えております。
 そのほかにはチーム医療などいろいろとありますけれども、69頁に、がん難民を解決する「がん相談対話外来」というのを新しい試みとして行っております。通常の外来では、医師が患者さんと対応するということで、セカンドオピニオンもそうですが、これは医師と看護師が患者さんの目線で、患者さんや家族と対話しながら、その状況について相談する。あるいは、その場合にがん専門相談員だとか精神腫瘍医が参加するということで、チーム医療としてのがん相談をやるということです。真ん中辺りに書いてあるように、利用者の感想としては、とてもよいもので満足度が高いということで、今後もこういうものを活かしてまいりたいと思います。
 72頁は、先ほど冒頭に申しましたように、糖尿病、心臓病、腎臓病があるとなかなかがんセンターでは診てくれないというのが昔からあって、それががん難民をつくるのだと言われてまいりました。そういうことに対する対応のみではなくて、安全にがん医療ができるように、総合内科を拡充するという方針で、特に糖尿病、心臓病、腎臓病などに対応できるようにした点は大変画期的なことかと思っております。
 73頁の、緩和ケアの取組みについては、左の上のほうに各年度の入院、あるいは外来等の緩和ケアの件数が出ております。特に注目したいのは右側で、従来緩和ケアというのは、がん治療が終わってからが多かったのですが、新しい基本法によると、治療の初期からということで、それを目指して前年度から15%、初期からの緩和ケアを提供できています。レジデントにも、在宅の緩和研修を開業医の協力のもとにやっています。
 74頁には、がん患者の院外型の相談支援センターを、東病院が柏市と柏市医師会との協力を得て、このような形で地域に密着した相談支援センターを展開しています。以上です。

○永井部会長
 ご質問、ご意見をお願いいたします。看護の二交替制をだいぶ増やしていますけれども、これは夜勤回数とか総配置数とか。計算上は二交替にしたほうが、総配置数は減るのではないかと思うのですけれども、その辺りの業務の連携はいかがでしょうか。

○国立がん研究センター統括事務部長
 三交替の場合と二交替の場合では夜勤の人数も変わってきます。三交替の場合には、基本的に2人夜勤体制なのですが、二交替にした場合には3人夜勤体制ということで、夜勤に当たる人数が増えてきます。それからローテーションの問題等を考えると、当センターの場合には三交替に比べて二交替にすると、看護師を増やさないとなかなかローテーションが組めないという問題があります。当センター以外の所でも同じような問題があると思うのです。看護師の負担軽減の点では非常に大きな効果が出ていると思っています。

○永井部会長
 配置数はむしろ増えるわけですか。

○国立がん研究センター統括事務部長
 はい。必要人数が増える部分があります。もちろんギリギリでやるというのはあると思いますけれども、この機会に看護師の負担軽減ということで、夜勤回数もある程度回す中で基準をクリアしながらということになってくると、どうしても体制がそれなりの人数になってきます。

○永井部会長
 月8日以内の夜勤という制約からということですか。

○国立がん研究センター統括事務部長
 そういうことです。

○猿田部会長代理
 いまのがんセンターのベッド数からいって、患者さんの待ちはかなり多いのですか。

○国立がん研究センター理事長
 待ち時間については、最近は短くなっています。病床の稼働率はちょっと減っています。それは、在院日数が短くなってきた影響だと思います。

○猿田部会長代理
 今度、総合内科をつくろうというので、糖尿病だ、腎臓病だと始まってくると、特に透析などが始まるとベッドがなかなか動かなくなってしまいます。そういう点でちょっと心配しています。

○国立がん研究センター理事長
 現在はちょっと空きぎみで、病床を集約するかどうかという議論が内部で起こっている状況です。

○内山委員
 高度先駆的な医療、あるいは高度先進医療等をやっておられて素晴らしいと思っております。ここにわざわざ紹介してある、麻酔科管理下による治療困難早期がんに対する粘膜下層剥離術というのは、麻酔科管理下によるというのが新しいのですか、それとも。

○国立がん研究センター理事長
 通常は内視鏡医が、基本的に自分でセデーションといって、鎮静剤を使って、麻酔というレベルではない管理でやります。これは4時間とか5時間かけてやることになりますので、そういう点では麻酔科管理下でやるのはポイントです。

○内山委員
 ホウ素中性子捕捉療法等と書いてあるのですが、こういうものの成績とか成果といったものはどこかに記載されていますか。

○国立がん研究センター理事長
 中性子捕捉療法というのは、昨年度プロジェクトとして立ち上げて、これから研究段階で、まだ患者さんに投与する状況ではありません。

○永井部会長
 ホウ素捕捉療法、中性子捕捉療法というのは、私は学生時代にだいぶ聞かされた治療で、実際にヒトにも応用されたわけですが、その評価はどうなっていますか。いままでの経験を踏まえて、今回どういうところを新しく組み立てているのですか。

○国立がん研究センター理事長
 従来はサイクロトロンというか、ものすごく大きい陽子を加速する装置を使って、京大等がやっています。そうすると、院内型にはとても向かず、グランドみたいなものが要るという話になります。今回のものは直線加速器で、院内に設置できるというコンパクトなものであること。それから、ターゲットがリチウムで、ベリリウムではないというところが特徴です。これが、果たして安定的に中性子を捕捉できるのかというところは、まだ実験段階といえば実験段階です。もし、これがうまくいけば汎用性はとても高いと思っています。

○祖父江委員
 先進医療も充実していることはよくわかりました。先ほどの話とも関係するのですが、研究型のベッドといいますか、前向きにプロスペクティブに研究をやっていこうという患者さんを集める仕組みと、このように待ってスポットで来られる患者さんに高度先進医療を提供していくという、そこの切り分けをどうやろうとしているのかを教えてください。

○国立がん研究センター理事長
 現在でも臨床試験病棟という位置づけの病棟と、Phase 1ベッドがあって、そこはそれ専用に使おうということです。それ以外の所は、必ずしも目的で分けて使っているわけではないです。特に外科系は、どちらかといえばハイボリュームセンターとしての機能を一部持たないと、トレーニングにも差し支えるということで、レジデントの研修からしても、ある程度のボリュームを確保する必要があると考えています。

○本田委員
 3点あります。1点は、69頁のがん相談対話外来の部分です。この取組み自体は大変素晴らしいと思います。国立がん研究センターでこれをやってよかったということでは、国立がん研究センターの意義がないと思います。これを、こういう形ならほかの拠点病院でもできるとか、ほかの拠点病院での相談支援をレベルアップするために、これをどう活かしたらいいのか。これをもとにどのようなことを考えているのか、もしくはされているのか。
 2点目は73頁です。緩和ケアチームの介入時期が大変早期からということが増えているというのはとても喜ばしいことだと思います。診療実績を見ると、介入件数はそんなに変わっていないのですけれども、早くなったというのはどういう努力をしたのか、もしあれば教えてください。
 3点目は74頁の、がん患者・家族総合支援センターという取組みも面白いと思って、私も見せていただきました。一時は、途中で閉鎖するという噂を聞いたのですが、これは継続するのかどうかを教えてください。

○国立がん研究センター理事長
 私も、つぶさにはあまりつかんでいない部分があって申し訳ないのですが、がん相談対話外来というのは、通常セカンドオピニオンと言っているもののバージョンを変えたものです。セカンドオピニオンというと、どうしても教えてあげるというような感じの外来になりやすいというところで、本当に患者さんの自己決定にそれが役立ったのだろうかという反省も一部ありました。医師が報告書を書いている間に、看護師さんや相談員がその時間を使って、別にフォローアップの相談をするというのが特徴です。言いっぱなしとか、聞きっぱなしではなくて、それをフォローするというところに今後はポイントを置ければと思っています。今後、がん診療拠点病院のセカンドオピニオンのあり方ということについて、これがいいかどうかは別にして影響を与えるのではないか、与えたいと思っています。
 前年度からで早期の緩和ケアになったというのは、あくまでドクターサイドから、緩和チームに依頼がないと動かないので、そこの部分の意識改革だと考えていただいて結構だと思います。
 患者支援センターについて私はつぶさには知らないのですが、支援の状況は継続性があるかどうかについてはいかがですか。
○国立がん研究センター統括事務部長
 もともと研究費でやっていた部分があります。研究費の切れ目でどうなるかという心配がありました。在宅の関係である程度補助金的なものでいまは利用できるものがあるので、現在はそういうものを使いながら継続してやっています。将来的には先ほど話がありましたように、地元の柏の自治体とか医師会といった所とどういう連携の中で、こうした事業が継続していけるかをまさにいろいろ相談させていただいているところです。

○花井委員
 総合内科の充実というのは、合併症のある患者さんが多いと思うので非常に期待するところです。現状で、でもこういう患者さんはちょっと難しいということで断った例はありますか。それから、こういう合併症がある患者さんはしようがないから、今後もっと充実していく。あまり充実しすぎると普通の病院とのことがありますけれども、その辺はどのような戦略というか、見通しであるのかを教えてください。

○国立がん研究センター理事長
 あくまでがん専門病院なものですから、補足的あるいは支援的な役割だということで、総合内科が独り歩きすることは基本的に考えていないです。しかし、とても重要なポイントだということです。問題は、専門医の先生方が、がんセンターで診ていいかどうかという判断をしていただくということがあります。もし、ここでは難しいとなったら、その先生を通じて、例えば総合病院に紹介していただくという形で対応しています。これは診られませんということで切ってしまうのではなくて、その先のフォローもしたいということです。したがって、総合病院化する方向にはないと考えていただいて結構です。

○三好委員
 高度先進医療は私も専門家ではないのでよくわからないのですが、評価という観点からお聞きします。例えば評価項目で、高度先駆的な医療、標準化に資する医療の提供でSということで、素晴らしい研究の成果をいくつかご説明いただきました。AでなくてSにしたというのは、特にどれがSだったのか。すべてがSだと、そもそもSではないのではないかという気がするのです。

○国立がん研究センター理事長
 非常に苦しいところですが、想定外というのは特にありません。日常の高度先駆的な医療を継続して提供するという意味合いで、がんセンターならではの医療の展開のところを評価したということです。おっしゃるようにこれが想定外の成果なのかと言われると、ちょっと苦しい面があるのは事実です。

○永井部会長
 ほかによろしいようでしたら、第3グループの項目7~9の人材育成に関する事項、医療の均てん化、情報の収集・発信に関する事項、国への政策提言に関する事項について10分でご説明をお願いいたします。

○国立がん研究センターがん対策情報センター長
 がん対策情報センターの若尾と申します。3つ目の項目についてご説明いたします。いままでと同じ資料2-1の76頁をご覧ください。まず、評価項目7、人材育成に関する事項についてご説明します。この人材育成に関する事項については、大きく2つのカテゴリーがあります。1つ目として、「リーダーとして活躍出来る人材の育成」、2番目で「モデル的研修・講習の実施」とあります。1つ目のリーダーとして活躍できる人材の育成では、主に内部のレジデントなどの教育制度の充実を図っています。この項目の3つ目にありますが、先ほども研究所と病院、臨床系の交流を盛んにするというご説明がありましたが、リサーチ・カンファレンスとして、研究者と臨床医が一緒になって新しい研究のシーズを探す、それぞれの可能性についてディスカッションする検討会を新たに開始しました。
 77頁です。これもいままで全くなかったことなのですが、先ほど最初に理事長からご説明があったように、慶應義塾大学と順天堂大学にご協力いただいて、連携大学院を新たに開始しました。この連携大学院では、がんセンターのレジデントなどが、センターに籍を置きながら大学院の授業の単位が取れて学位の取得が可能となったということで、新たに始まったものです。
 78頁です。いままでレジデントは、3年のレジデントコース、2年のがん専門修練医、それから、6カ月の短期レジデントがコースだったのですが、平成23年度より、新たに3カ月から2年の任意の期間で研修ができるというレジデント制度を開始しました。これも、実際、自分のニーズに合った形での選択ができるということで、新しいレジデントに好評をいただいています。
 79頁です。こちらは、2つ目の項目のモデル的研修の部分です。内部の研修だけではなくて、外部の医療機関等からの地域のがん医療の指導者を育成するための研修を実施しています。その1つとして、まず、指導者育成のための研修として左側です。医師、看護師、薬剤師、それからチーム研修などを含めまして、21種類のプログラムで計654人が参加した研修を実施しています。
 大変申し訳ないのですが、この資料の14頁に戻ってください。数値目標の13と14のところです。この13「NCC外の医療従事者らを対象とした研修プログラムの提供数」で、当初、中期目標、中期計画では16種類以上、年度計画で19種類以上と掲げていたのですが、昨年度、結局、最終的に薬剤師の研修を追加して21種類の研修を提供しています。数値目標の2番目、14では、中期計画で、中期計画の終了時までには4,500人以上の受講者を想定していまして、平成23年度は654人の研修を行いまして、現在累積で3,080名で、中期計画のペースを守った形になっています。
 また79頁に戻ってください。いま654名と説明したのですが、実際にはこれだけではありませんで、この頁の右側にありますがん診療連携拠点病院の指定要件でもがん研究センターの研修を受けることが義務付けられています。相談支援センターのがん専門相談員、あるいは院内がん登録の実務者の研修などを行っていまして、こちらが平成23年度だけで4,405名の研修を行っています。このように、非常に多くの外部の方の研修も行っているところです。
 81頁です。ここから評価項目8の、医療の均てん化と情報の収集・発信に関する事項へ入ります。こちらでは、まず、ネットワークの構築の推進で、全国に現在397のがん診療連携拠点病院がありまして、その中で、都道府県の拠点病院が51あります。この51の拠点病院への連絡と協議をする会として連絡協議会を開催しています。それと同時に、拠点病院に対して、画像診断コンサル、病理診断コンサルなどのコンサルテーションを実施しています。
 82頁です。これも新たなネットワークとして、独法化したので民間企業等との連携もできるようになったということで、先ほど研究の部分で、研究のための包括的連携という説明がありましたが、がんの情報普及のための普及・啓発に関する包括的連携に関する協定というのも、昨年度3社と結びました。こちらにあるような患者向けの冊子をいままでがん研究センターの運営費交付金で作成して拠点病院等に配付していたのですが、どうしても交付金の限りがある中で十分に行き渡らないところがあったので、こちらの企業の名前を入れていただいて、我々の届かないところに届けていただくことを、この冊子、あるいはその右側にあるチラシだったり、あるいは、真ん中の段では、ポスターを作っていただき、拠点病院のこと、あるいは相談支援センター、患者必携などのことについて多くのところに伝えていただくこと。さらには、がんセンターの活動などをやはり企業のネットワークを通して、あるいは企業の資金によって作成した媒体を通して広めていただくことを始めました。
 83頁です。これは、先ほどご説明した、拠点病院の連絡協議会の各拠点病院の協力を得て実施したものですが、拠点病院の院内がん登録の全国集計を行いました。2008年は11月に出していたのですが、2009年度の集計について、昨年度の2012年3月に公表しています。つまり3カ月前年度より早まっている、だんだんペースが早くなってきています。このときに、48万7,000件のがんの登録を行っています。これは重複はあるのですが、地域がん登録と比較して全がんの約63.6%をカバーしていると推定しています。つまり、拠点病院で約6割の患者が集約されている状況が確認されました。そのほか、こちらでは施設名も含めた公表を行っています。このような公表などを行うために、次の84頁にありますが、拠点病院の連絡協議会を通じて、我々だけではなくて、拠点病院でがん登録の公表をどうすべきかを十分ディスカッションをしてこの公表に結び付けています。平成22年度には臨床試験部会を立ち上げて、平成23年度にはこのがん登録部会を立ち上げています。このように、連絡協議会は、ただ最初は連絡の場だったのですが、実務的な部会を立ち上げることでその機能が充実してきています。
 86頁です。こちらが、拠点病院等に対する技術指導等の実施で、左側の表をご覧ください。病理診断コンサルテーションは数値目標として年間250件を立てていました。こちらも、誠に申し訳ないですが、先ほどの15頁をご覧ください。中期目標で250件、平成22年度の実績で290件だったのですが、平成23年度、大幅に目標を超えまして、417件のコンサルテーションを実施しました。これはなぜかといいますと、病理学会が同じような病理診断のコンサルテーションを実施しているのですが、東日本大震災の影響で病理学会のコンサルテーションがストップしたこともありまして、その一部ががん研究センターのこのコンサルテーションに流れてきたことが推計されています。
 86頁に戻ってください。この病理診断についてがん研究センターですべて診断をするというのではなくて、この右側の図にあるとおり、問合せを拠点病院から受けて、がんセンターが事務局となって全国に専門家パネルという形で約50名を超えるコンサルタントを委嘱していまして、そのコンサルタントの方々に意見書を書いていただいてそれを拠点病院に返す形で、少ない病理医を有効的に専門のコンサルタントに振りまして、その適切な意見を返すことを実践しています。
 87頁です。こちらが、がん対策推進基本計画にもありました「患者必携」についての取組みとなります。一昨年度、平成22年度に初診患者を対象とした患者必携を作成、出版し、ホームページ等に公開したのですが、やはり患者は新しい方だけではなくて、もう第1回目の初回の治療が終わって、再発などを非常にいつも心配して日々を過ごされている患者が多くいらっしゃいます。そういう方に対して、患者の協力を得て「もしも、がんが再発したら」というこの冊子を昨年度発刊しました。こちらを発刊して、ホームページではPDFを無償で配布、それから無料で電子出版なども提供しているとともに、患者団体、あるいは公共図書館などにこの見本版を配付しています。それから、下にありますが、自治体による「地域の療養情報」、これも最初がん研究センターで試作版を作って、それがいま全国に広まりつつある状況となっています。
 89頁です。先ほどご紹介した患者向けの冊子をいままでに49種類作成してきました。これも交付金の中でどんどん予算が絞られていく中で、十分に数が配付できないことが起きてきて、その結果、拠点病院から患者に配りたいのでもっと送ってほしいというリクエストを多くいただくようになって、当初は拠点病院にデータファイル、この基となるデータをお渡しして、各拠点病院で印刷をしてもらっていたのですが、それではやはりロットが少ないので高コストになります。今回、これも平成23年度新たに立ち上げたものとして、拠点病院からの注文を受ける、注文を取りまとめて多くのロットでまとめて印刷する仕組みを新たに開始しました。がん研究センターは全くコストをかけずに委託業者にこれを販売する仕組み、発注してそれをまとめて販売する仕組みを委託する形で、拠点病院からはこの冊子1冊30円で購入してもらうような形での運用を開始しています。その結果、まず最初、2月に稼動したのですが、182施設から約45万冊の注文を受けたことで、このがんセンターでの、コストがゼロで、若干の印税が入る形で多くの患者に届く新しい仕組みを開始しています。
 90頁です。3つ目の評価項目となります9.国への政策提言に関する事項、公衆衛生上の重大な危機への対応、国際貢献、その他我が国の医療政策の推進などに関する事項についてです。こちらでは、まず、科学的根拠に基づいた専門的な政策提言です。
 91頁、こちらも先ほどご紹介した、都道府県のがん診療連携拠点病院連絡協議会と、もう1つ、がん研究センターでは、全がん協すなわち、全国のがん(成人病)センターのネットワークを持っています。そちらとも連携して、この真ん中にある「がん登録の推進に関する追加提言書」をまとめて出しています。がんに関する医療機関が集まって行政側に専門的な意見を述べることを実践しています。右側については、先ほどご紹介がありましたが、放射線被ばくに関する提言書もこの全国がん(成人病)センターの協議会から出しています。
 99頁です。「世界禁煙デー記念シンポジウムの開催」がありますが、たばこ政策研究部が、いままで研究所にあったものですが、作年の6月にがん対策情報センターに移行して、情報提供機能、および政策提言機能をより高めてきました。具体的には、たばこに関するエビデンスを集めてそれを発信していくことをしているのですが、こちらにあるような世界禁煙デーのシンポジウムを開いたり、あるいは、これは厚生労働省との連携によるものなのですが、WHOの「たばこ規制枠組条約に関するガイドライン」などを翻訳して提供することを開始しています。あと、たばこに関しては、ドイツのがんセンターと共同でたばこの広告のレポートなども作成しています。以上が、項目7~9までのご紹介です。よろしくお願いします。

○永井部会長
 ありがとうございました。それではご質問をお願いします。いかがでしょうか。

○本田委員
 ご説明ありがとうございました。さまざまな取組みをされていて大変素晴らしいと思うのですが、1つ、88頁の相談支援センターの活動状況についてご説明がちょっとなかったのですが、相談件数は大変伸びているとこれは見ていいのでしょうかということと、あと、ちょっと患者団体とか地域の方々、地域の患者とかにいろいろ聞くと、全体としては件数はあったとしても、相談はあまり機能していないところとかの差が結構あるとか、相談員のレベル、資質に差があって、結局役に立たなかった、立ったところもたくさんあるのですが、という声もあって、その辺どのようにいま捉えていらっしゃって、今後どうしていこうというのか教えてください。

○国立がん研究センターがん対策情報センター長
 こちらの88頁の資料、これ実は、全国の支援ではなくて中央病院の機能としてのご紹介の資料となっていますので、今回飛ばさせてもらいました。件数としては伸びている状況です。そのうち、特に中央病院の場合は、この左側のグラフにありますとおり、院内の相談よりも院外からの相談のほうが多く、さらに、電話相談も非常に多く受けています。電話相談のうち4,000件は外からの相談で、コールセンター的な機能も担っているというご説明になります。相談支援センターは2つ大きな問題がありまして、1つは、まだ認知度が十分ではなくて利用されていないことと、それと、いま本田委員からご指摘があったとおり、質の担保がされていない、評価ができていないことがあります。まず、前半については、認知度を高めるということで、先ほどの企業連携などを含めて、さまざまな角度で相談支援センターについての認知度を上げるような活動に取り組んでいます。それと同時に、相談員研修をがん研究センターで実施しています。実際にいま基礎研修1、2、3とやっているのですが、特に基礎研修3でロールプレーなども含めてしっかりと相談ができる相談員の方を育成することと、トレーニングすることを進めています。さらに、リーダー研修も始めまして、基礎研修を1回受けて終わってしまうのですが、それを地域に戻ってもらって地域で継続的な研修ができるような体制を今後整えていくような活動を始めています。さらには、やはり相談支援センターの質の評価をするための指標についての検討を昨年度から始めて、今年度にはある程度のものを出せるような形でいま検討を進めているところです。

○永井部会長
 いかがでしょうか。連携大学院の学位取得者は、どのくらいいま増えてきていますか。

○国立がん研究センターがん対策情報センター長
 ちょうど77頁の下の各大学の写真のところに、ちょっと見にくいところに書いてあるのですが、慶應大学で平成24年度は7名が進学して、順天堂大学で23名が進学しています。ほとんどレジデント、あるいはがん専門修練医という若い研修生が大学院でも勉強しています。

○永井部会長
 こういう制度は、大学側の反応もいろいろある、あるいはあったのではないかと思うのですが、そこについて何か説明いただけますか。つまり、大学側からすると、こういう制度は自分たちの大学院を弱体化するのではないかという声はなかったでしょうか。

○国立がん研究センターがん対策情報センター長
 そうです、そこのところをお願いして。

○国立がん研究センター研究所長
 具体的に弱体化という声は私自身は聞いてはいないのですが、順天堂大学の場合には広く社会人大学院制度を進めていますし、その一貫としてわりと快く引き受けてくださった。ただ、思ったよりも確かに進学者が多かったとは言われましたが。

○永井部会長
 そうですか。

○国立がん研究センター研究所長
 慶應義塾大学の場合は、基本的に慶應で講義を受け、どちらかというと臨床研究ではなくて基礎研究の研究ということで、これは、いま現在がんセンターの病院の先生でそういう基礎研究を推進したいということで、ここは人数の制限をある程度は設けられました。ここも特に今後とも推進していきたいというお声を聞いています。

○猿田部会長代理
 何やら診療体系が弱いのですよ、診療体制が。そういったことで、是非ともここと組んでやっていければということで、若い人からそうした。

○祖父江委員
 いまのことなのですが、私も23名でびっくりしました。これは初年度、最初からもう23名ですか。

○国立がん研究センター研究所長
 そうです。

○祖父江委員
 これは素晴らしいなと思ってちょっとびっくりしました。若い人、下の頁にはレジデントを毎年かなりの数を受け入れられていますし、それから、特にこの短期コースが非常にこの2年間で増えていますね。ですから、若い人の出入りが非常に盛んになりつつあるなという感じを受けたのですが、例えば、今後大学とがんセンターとのもう少しシニアなというか、教員レベルとか、PIレベルの行き来がどれぐらいあるのかがちょっと気になるところなのですが。やはり、ナショナルセンターと大学というのは人材の各層ごとの行き来があってもいいかと思っているのですが、その辺はどうですか。

○国立がん研究センター研究所長
 では、まず私のほうから。実際に、大学とのPIレベル、もう少し上のシニアレベルでの交流が非常に重要だと思っています。ただ、例えば、実際実績として研究所から大学の独立したPIになるケース、教授になるケース、教職になるケースというのも少なからずあることはあるのですが、やはり、より若い世代になったときに、教育の経験とかが問われてきます。そういう意味でも、こういう連携大学院を通して、そこで若い世代、中堅の世代にそういう教育の機会を経験してもらい、それを実績として大学側にも認めてもらう、こういう試みは、スタートしたばかりですが、付加的な意味もあろうかと期待しています。

○国立がん研究センターがん対策情報センター長
 補足しますと、特に順天堂からうちのレジデント等が大学院生となるに際して、うちのスタッフが順天堂大学の臨床教授という形にしてもらいまして、そこから交流が始まるのではないかと思います。いま、具体的な人の行き来はないのですが、院内に大学の教授がいる形がようやく動き出したことになっています。

○祖父江委員
 もう1つ、現場の問題として、ちょっといつも話題になるのは、特に厚労省から文科省へ移るときに、退職金の問題なのですが、キャリアがそこで切れてしまうことがいままであったのですが、そこはどうお考えになっていますか。なかなかそれは動きにくい現場の問題として。

○国立がん研究センター統括事務部長
 それは、個別問題として先方と協議をして、退職金を支給せずに継続するような形とか、そういった処理をいま。

○祖父江委員
 それは出向みたいな格好ですか。

○国立がん研究センター統括事務部長
 出向に近いような形ですが。

○祖父江委員
 長期出向で、また最後には大学に戻られる。

○国立がん研究センター統括事務部長
 最後はどちらで辞められるかということもありますし、退職金をどこで払うかという問題もあるのですが、基本的には引き継ぐような形でもって、そのときも。

○祖父江委員
 切れないようにする。

○国立がん研究センター統括事務部長
 切れないようにすることはいまできるようになっています。

○祖父江委員
 ちょっとなかなか現実問題としてそれ非常に難しい事例がいくつかあるのですよね。それが交流の妨げの1つになっていると思う。これは省省間の問題で。

○永井部会長
 行政法人化したというのはそこが切れるということではないのですか、独立したということですよね。これ国立大学も同じだと思います。

○国立がん研究センター理事長
 一旦、退職してという形にはなるのですが、その退職金の継続等はいまできるようになっています。

○永井部会長
 よろしいでしょうか。

○内山委員
 レジデントも結構おられて、頼もしいことだと思うのですが、皆さんレジデントのコースが終わった後、どのような割合で他の病院に移ったり、残ったりされますか。

○国立がん研究センター理事長
 短期の方は大抵もとの病院に帰りますが、3年のレジデントが終わるとその上に修練医という2年のコース、シニアレジデントですね、そこを終了したときにスタッフになれるかどうかと、ここが1つのポイントになるのです。スタッフになれない場合はやはりそれぞれの地方に散らばっていきます。逆に言うと、各地域で折角トレーニングしたものを活かしてほしいという具合になります。

○内山委員
 そのときは、やはり個人の判断ですか、それとも、貴センターで各地域の病院と連絡をとりながら人事を行っているのでしょうか。いわゆるキャリアセンターのような部署あるいは組織があるかどうかということですが。

○国立がん研究センター理事長
 現状はそういう医局機能は果たしていません。

○内山委員
 わかりました。

○永井部会長
 よろしいでしょうか。では、第4グループ、項目10~14についてご説明をお願いいたします。

○国立がん研究センター統括事務部長
 それでは101頁から、効率的な業務運営に関する事項で、まず10番目の効率的な業務運営体制ということですが、効率的な業務運営を図るために、組織をどうしていくかという問題がありまして、独法になりましてからいろいろと組織を従来の国時代に比べて修正している部分があります。そうした中で、平成23年度において特に行ったこととしては、事務部門の改革ということです。機能していないようなポストを廃止して、必要に応じたものに再編していったりとか、あるいは工事関係の専門家を活用して、施設整備機能の強化を図るとか、業務内容をより一層質の高いものにしていくための組織改正を行ってきている部分があります。
 102頁ですが、これは業務運営の効率性ということと、もう1つガバナンスという観点も加味してなのですが、雇用等の切り替えを平成23年度に行っております。具体的には2つのものがあり、1つは研究費財源で研究者が雇用する職員ということで、競争的研究費を研究者が取ってきた場合に、そのうち研究者が研究費財源で研究補助者を個人で雇用するということが、従来当センターにおいても行われていたわけですが、センターの中で働く職員の中で、センター職員という位置づけでなくて、個人で雇用しているということが必ずしも適切ではない、ガバナンスの点でも適切ではないということもあり、研究費を財源にして、研究者からセンターにその分の雇用するお金を出してもらった上で、センターが直接雇用するような形に切り替えるということを、平成23年度の4月に実施しているところです。
 もう1つは派遣契約に基づいて、センター内で派遣社員が働いているケースが多々あったわけですが、これも基本的に派遣ではなくて、センターの非常勤職員として雇用していくということで、センターの直接雇用形式に切り替えたということがあります。
 従来の研究者の個人雇用の場合、派遣契約の場合に派遣会社とか直接雇用する研究者の間で若干単価にバラツキがあり、そういったことの不公平感があったのですが、センターが直接雇用する形でその辺の処遇の不均衡を改善するといったような効果も、合わせて生じているということです。
 この結果、雇用の切り替え数が下に出ていますが、研究費財源で研究者が個人雇用する職員からセンターの非常勤職員に切り替わった職員が147名、センターの派遣契約からセンターの雇用する非常勤職員に切り替わった者が103名ということです。この部分が人件費的に見ますと、個人雇用から切り替わったものが約3億5,000万円、派遣契約の切り替えで新たに人件費として計上されたのが1億5,000万円で、合わせて5億円ほどが、従来は研究費から直接支出になっていた、委託費として支出されていたために人件費で上がっていなかった部分ですが、非常勤職員の給与費ということで、新たに計上されることになりました。ここは内容的には項目の移し換えというようなイメージと考えております。
 次の103頁、104頁ですが、ここでは使用電力の見える化ということで、昨年の震災の関係で消費電力が抑えられる必要があったということですが、そうした中で職員に対して消費電力を抑える方向でのインセンティブを持ってもらうために、職員がいまどのぐらいの消費電力になっているのかということを、各棟ごとに認識できるような仕組み、しかも1時間単位で認識できるような仕組みを新たに導入したということです。消エネはかなり熱心にやっているわけですが、一方で電気料金の引上げ等もありましたので、電気料金の総額そのものは昨年度は上がっているわけですが、こうしたことが多少なりとも消費の削減に寄与した部分はあったと思っております。
 105頁です。ここは中央病院の診療情報管理室の設置ということで、病院の中の体制で病歴管理、院内がん登録、予後調査に従事できるような専門の管理室を設置したということです。これも効率的な業務運営を図る観点からの位置づけとさせていただいています。
 106頁からは収支改善、電子化ということです。まず107頁に、平成23年度決算について、平成23年度計画との対比の表になっています。平成23年度決算ですが、収益が463億7,000万円、費用が454億4,000万円で、収支差が9億2,000万円という状況です。これは計画に対すると収益はほぼ見通し通りで、収益が1億6,000万円増となった部分と、費用では2億9,000万円ほど減になった部分もありますので、結果的には当初収支差で見込んでいた4億7,000万円に比べると、4億5,000万円ほど収支が増えたということがありますが、これも昨年度の実績と比べますと、昨年度は25億8,000万円という大幅な収支差があったわけですが、それに対しては16億円ほど収支差が減少しているという状況です。
 ここには計画との対比での表になっていますので、そこに収益と費用がそれぞれ計画に対してどういうことかということで書いてありますが、計画に比べて収益の部分で増えた部分としては、例えば補助金等収益の増というのは先ほどご説明しました早期・探索的臨床研究拠点の整備事業といったようなものですとか、あるいはがん診療連携拠点病院に対する補助事業ですとか、そういったようなものが計画よりも増えている部分がある一方で、費用のほうでは人件費が当初計画していたよりも10.8億円ほど多かったというような部分もあります。この中には、先ほど組み替えでもって非常勤職員の人件費が増えたという部分も含まれています。そのほか、経費の減のところで25億5,000万円とちょっと目立つ数字が出ていますが、これは当初計画していたものに比べて、費用を削減した部分もありますし、一方で工事等が当初計画していた時期に比べて遅れたことで、平成23年度に立つ予定だった費用といったものが減価償却中心に平成24年度にずれ込んだといったようなものなど、そういったものを合わせて経費が当初計画していた額よりも少なくなっているというところがあります。
 108頁はSPDということで医療用品等の調達に関して、業者を活用することにより、これまでセンターでもっていた在庫を直接持たなくて済むようになった部分で減額になった部分等が出てきているということです。
 109頁から110頁は予防・検診研究センターの改善ということで、この辺は新しく収益増をこれから図っていかなければいけないという部分で、その部分について先行投資的に設備の改善等を行う、あるいは研修メニューを増やしていくといったようなことを、平成23年度では方針として打ち出したところです。
 112頁が法令遵守と内部統制の関係です。ここでは特に研究費の関係で不適正なものがあることを防いでいく必要があるので、113頁ですが、研究費の適正経理管理室を新しく作りまして、ここで組織として監事等とも連携を取りながら、研究費の不正防止行動計画などを作ったりしながら、研究費の管理の適正化を図るような体制を作ったということです。
 114頁からはいろいろな対外的な医薬品業界等での動向等もありますので、そうしたものを踏まえながら、当センターとしても適切な対応をとるための仕組みを作っていくということです。
 118頁からは自己収入の増加等に関することで、ここは外部資金の獲得状況について出ていますが、119頁に外部資金については前年度とほぼ同額を平成23年度においても獲得したわけですが、ご覧いただきますように、国等の競争的研究費は厚生科学研究費等でも枠が減っているということもあり、若干総額が減っていますが、その分、治験・共同研究等が増えていることによって、ほぼ前年と同額程度のものを維持できているということです。
 120頁以下ですが、その他の課題ということで、121頁は50周年の年でしたので、1月に天皇・皇后両陛下をお招きしての式典を開催させていただいたということ。122頁は障害者雇用の関係で、当センターが独法になりまして、それまで厚生労働省の障害者雇用全体の中での一部だったわけですが、独法になりますと、センターとしての単独の雇用率が問われるようになってくる。独法になった当初は2.1%の法律で義務付けられている雇用率に対して、0.66%という非常に低い値であることが顕在化したわけですが、その後、障害者雇用を進めて平成23年度中には1.74%、平成24年4月1日に、新たに5名の障害者を採用することにより、法定雇用率をクリアしたという状況までもってこれたということです。
 頁を前のほうに戻して数値目標として掲げられている項目が何項目かあります。16頁にありますが、経営関係ですので数値目標に掲げられているものがいくつかあります。経常収支率ですが、先ほど言いましたように、9億円ほどの収支差がありますので、平成23年度実績は102.6%ということで、年度計画で示されている100%以上をクリアできています。
 一般管理費の削減率が次頁に出ていますが、一般管理費の削減率、さらに医業未収金比率、あるいは借入金額といったような点、年度計画に掲げているいずれの数値目標についても、一応平成23年度はクリアできているというような状況です。以上です。

○永井部会長
 ありがとうございます。それではご質問、ご意見をお願いいたします。

○三好委員
 107頁のところで、費用で人件費増が10億円ぐらい出ます。そのうちの5億円は派遣の切り替えとかその他、残りの5億円というのは平均的な延びなのか、新たに使途が増えた要素なのか、残りの合計の内訳を教えてほしいのですが。

○国立がん研究センター統括事務部長
人件費は10億8,000万円ほどが計画値よりも増えているということで、そのうち常勤職員の関係で計画値より増えている部分が4億円ほど、非常勤職員の関係で増えている部分が6億円ほどあるという状況で、常勤職員のほうは計画的にある程度増やすことを考えていたのですが、それ以上に看護職員等の配置等を含めて増になった部分が増えているということです。

○三好委員
 人を計画より多めに採用したという理由と理解していいですね。

○国立がん研究センター統括事務部長
 はい、そうです。

○内山委員
 108頁、SPD業務の見直しの項目で、契約業者1社による業務運営と記載されています。これは私ども地方の大学から見ると、画期的なことだと思います。一方、以前、ほかの所で昨年ナショナルセンター同士の共同購入という話題もあったのですが、共同購入についての現状はどうなのでしょうか。それと、いわゆるこの契約業者1社に任せることによって、これまで関わっていた職員は何人ぐらいか、あるいは現場でのサービスの低下等々の問題が起きていないのか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。

○国立がん研究センター統括事務部長
 共同購入は基本的には医薬品についての共同購入です。SPDはむしろ医療材料的なもので、そちらのほうがメインになっているところがまず違いです。
 あと、当然現場が困るようなことになってはまずいわけで、例えば品目の選定とかといったようなことについては、十分に現場の意見を聞きながら進めているというところです。
 体制については全部を中の職員でやっているわけではなくて、委託をしていた部分もありまして、それを今回1社に集約化することによってですので、職員のほうの体制がそれによって大きく減るというようなことではなかったということです。

○永井部会長
 ほかにいかがでしょうか。

○猿田部会長代理
 補助金は減ったのですか、平成22年度から平成23年度に運営費交付金は。

○国立がん研究センター統括事務部長
 運営費交付金はほぼ同じです。ただ、平成24年度は、これは毎年1割カットとか、規定経費については1割カットできますので、その分、ほかの名目でもっていかにとっていくかということが、これはどこの独法も同じなのですが、ナショナルセンターも同じなのですが、非常に厳しい状況になっています。

○永井部会長
 1割カットというのは結構厳しいですね。つまり真水が減るわけですね。経費や人件費を考えると、削減額の2倍以上、診療報酬を増やさないと間に合わないわけですね。そこはどういう計画になっているのでしょうか。

○国立がん研究センター統括事務部長
 そこは既定経費が削られますので、その分、運営費交付金の中でもって、新しい事業なりを出していって、それでどの程度取り返せるかというのが正直なところになっています。

○永井部会長
 借入返済金は年々減っているのですか。そっちも一緒に1割額が減れば、どうということはないでしょうけど、そことの違いがどうなのか。


○国立がん研究センター統括事務部長
 借入金は独法になるときに従来700億円あったものを170億円に圧縮して立ち上がったわけですが、平成22年度は新規借入金がありませんでしたので、減った分、また平成23年度に新たに借入れがあったのですが、トータルとしては大体独法になったころとそんなに大きく増えておりません。

○永井部会長
 返還金です。返還する額が毎年同じなのか、一緒に減っているのか、そこのバランスが非常に重要になるわけですね。

○国立がん研究センター統括事務部長
 それは運営費交付金が減ったからといって減るわけではないです。

○永井部会長
 ではないわけですね。そうすると、やはり厳しいということになりますね。

○国立がん研究センター統括事務部長
 はい。

○猿田部会長代理
 これから人事面でもう少ししっかりしていくと、どうしても人件費は上がりますね。だから、それで運営費交付金が減らされてくるとかなり厳しいですね、どうですか。

○国立がん研究センター統括事務部長
 運営費交付金で賄うというか、基本的な大きな収入はあくまでも診療報酬で、医療部分についてはもともと交付金が入っておりませんので、いま運営費交付金で人件費分が入っているのは研究者の部分ぐらいなのです。大部分はもう運営費交付金が入らない形になってきています。ですから、それとは別にまさに診療報酬等とか、自前で稼いでいくというところに、今後はやはり力を入れていく必要があると思っています。

○内山委員
 医療支援室の中身ですが、医師の事務作業補助は主にドクターズクラークが中心になるのですか、それともほかの何かプラスアルファのいろいろな方策とかがあるのでしょうか。

○国立がん研究センター理事長
 これは病棟クラークで、それはもう配置しております。通常の病院の医師事務作業補助者は特定機能病院ではカウントできないものですから、例えば診断書作成支援とか、そういったスタッフを用意しております。

○内山委員
 人数は配置できたのですか。

○国立がん研究センター理事長
 いまのところ、中のニーズは応えられるようになっています。だから、ドクターが下書きを書いたりする必要は基本的にはないです。

○内山委員
 はい、わかりました。

○永井部会長
 ほかにはいかがでしょうか。

○和田委員
 107頁のところで、もう少し詳しく教えていただきたいのですが、この107頁の分は、平成23年度の計画と決算との対比で、計画では収支差が4.7億円だったのに9.2億円だったから、4.5億円計画よりも余分に収支差が出ましたという形になっているのですが、実は昨年の平成22年度の決算では、20億円を超える収支差があったのです。それを計画で運営費交付金が下がるだろうとか、支出が増えるだろうということで、計画は4.7億円しか収支差が出ないであろうということで、この収益費用の計画が作られた。にもかかわらず、この人件費が10.8億円で、これは計画では増やしていたはずなのに、ここで10.8億円増えました。このうちの半分の5億円ぐらいは、ほかの科目になっていたのを科目の入れ換えで計上された分だから、ほかの経費がその分だけ少なくなっているのだろうということです。10.8億円の半分の5億円が人件費を増やした、その増えたことが例えば医業収益の増につながっているのならいいのですが、医業収益のほうは0.7億円の増にしかなっていないし、これはどう説明をつけるのか。
 材料費についてもほかの収益はほとんど変わらないのに、どうして材料費が6.1億円計画よりも増えたのか。委託費も増えたのか。そしてよくわからないですが、経費の減が25.6億円節約しましたということになっていて、要するにお聞きしたいのは、どれだけの経営努力があったのか。やるべきことをやらないで利益が出たという分も、見方によればあるのだろうと思うのです。運営費交付金のほうで手当てされていたものを支出しなかったことによって、利益が出たという分もあるであろうし、その辺のところの説明をもう少しわかりやすくお願いしたいと思うのですが。

○国立がん研究センター統括事務部長
 最初の人件費の増額のうちで常勤職員が4億円ぐらいは占めていると、計画との乖離のところでお話をしたのですが、その中心となるのは看護だと思います。看護のスタッフを増やすことによって、三交替が二交替になり、労働条件がある意味で改善され人材確保がしやすくなるといったようなもの、あるいは医療安全の点でもそのほうが事故が起こりにくくなるといったようなものもありますが、これがすぐ収益に直結しにくいという部分が1つあるかと思います。
 もう1つ、医業収益のゾーンのところを見ていただくと、当初見込していたよりも入院で4.9億円、約5億円ほど減になっているわけなのですが、この部分は実は中央病院では病棟の改修工事が平成23年度は7月から11月まであり、常時病床の1割、60床程度が閉鎖中だったということがあって、入院収益が前年度に比べても落ちてしまった部分があると思っています。逆に外来は6億円ほど診療報酬改正がないにもかかわらず増えておりますので、パフォーマンスそのものはかなり上がっていたのだと思うのですが、やはり入院患者数がここで稼げなかったことが、入院収益の減につながっているのかと思います。
 もう1つの材料費等の話がありましたが、材料費等については医療材料の関係と研究材料の関係の両方があると思っています。医療材料は医業収益が減れば、ある意味で横這いならばそんなに医療材料だけが増えるわけはないだろうということかと思いますので、ここで増えた要素は研究材料の関係での経費が、前年に比べて計画していたときに比べて増えた部分があります。ここには出ていませんが、当初考えていたよりも研究費収入が増えた部分といったようなことで、それに伴う研究材料も増えている部分があると私どもは考えています。
 それから工夫があったのかという経営努力の点ですが、経営努力については、例えば電子カルテシステムとか、医療情報システムについてはいま大幅な見直しをしておりまして、平成23年度、24年度でもってネットワークのシステムや電子カルテのシステムといったものを、いま入札で決定しているところですが、平成23年度中にはネットワークシステムについて、いままで1社で行ってきたところを競争的環境を整えることにより、複数の会社によって競わせることによって、結果的には入札価格を相当程度落とすことが可能になってきており、平成23年度中のネットワークシステム、平成24年度の電子カルテシステムを合わせて、大体年間で数億円規模の縮減を図ることができると思っております。
 そのほかにも先ほどお話しましたSPDの導入による在庫を持たないことによる費用減ですとか、あるいは業務委託契約について、単年度ではなくて複数年契約にすることによって、単年度の価格を安くしていくことなど、いろいろな費用の削減に関する取組みを行ってきています。ただ、おっしゃるようにそうした費用の削減の取組みと合わせて、先ほどご説明しましたように工事等が遅れたために、見かけ上計画が年度の計画に比べて落ちている部分が、この25億6,000万円の半分ほどは、そうした本来平成23年度中に工事が終わっていれば、初年度の減価償却の費用が立つところが立たなかったために落ちたという部分がありますので、そこはもう少しその中身をご説明させていただく必要があると思っています。

○和田委員
 実はここのところをうまくというか、的確にご説明がないと、材料費の増6億円、委託費の増3.7億円で、それに見合う収益の増が計画に対してプラスしている部分がないのです。計画どおりの収益なのです。なのに材料費は計画を6億円、委託費は3億円上回っている。医業収益も計画に対して7,000万円しか増えていないのに、10億円増えていますと。このような数字になって、その経費の減、ここのところではっきりと経営努力でこのようなものを少なくしたのですということがはっきりしていないと、工事が遅れたとか、いろいろなことで経費が発生すべきものがしなかったというようなことで、25億円を丸々やられたら、ではきちんと工事が進んだら9.2億円など吹っ飛んでしまう、25億円の経費がこれに重なったのではとても合わなくなってしまう。収支決算書は大きな赤字になってしまうというような見方にもなってしまうので、ここはもう少し25.6億円を中心に、経営努力のところと、そうではないところとをはっきりと分けてご説明を是非いただきたいと思います。

○国立がん研究センター統括事務部長
 そこは実際にもう少し個別の話を整理させていただいて、和田委員に説明させていただきます。

○永井部会長
 ありがとうございます。ほぼ時間ですので、とりあえず項目の評価はここまでとしたいと思います。事務局からこの後の取扱いについてのご説明をお願いします。

○政策評価官室長補佐
 評価の記入が終わっていない委員の方については、評価シート及び評定記入用紙をお持ち帰りになって記入していただくか、本日評定記入用紙の電子媒体をお送りいたしますので、それにご記入いただいて、ご回答していただくということでお願いいたします。その場合の締め切りですが、8月1日(水)までということで、事務局まで評定記入用紙をご提出いただくようお願いいたします。

○永井部会長
 それでは先生方、ありがとうございました。5分休憩でよろしいでしょうか。次の評価は15時10分ぐらい前からで、5分間休憩させていただきます。
(法人及び所管課入替)

○永井部会長
 続いて国立成育医療研究センターの評価に入ります。最初に五十嵐理事長からご挨拶と平成23年度の業務実績概要のご説明をお願いします。

○国立成育医療研究センター理事長
 ご紹介いただいた国立成育医療研究センターの五十嵐でございます。どうぞよろしくお願いいたします。成育医療研究センターは健全な子どもを産んでそれを育て上げ、成人に移行させるために必要な臨床研究等を行うことが使命でございます。したがって妊娠中あるいは生殖補助医療を受けようとする成人の女性、胎児、小児からいわゆる思春期の子どもまで幅広い子どもたちを対象として、それらの心あるいは身体、医療システム等も含めて研究する、あるいは臨床を行っているセンターです。そういうことで私どもの医療、研究は普通とは少し違うのが特徴だと思います。
 平成23年度の業務実績の概要について簡単にお話いたします。まず臨床を志向した研究・開発については、研究所、病院の連携を強化するために、いろいろな会合を行いました。共同研究等も行っております。産学等の連携強化をするために、共同研究を推進しており、実際にその数も増えております。職務発明委員会における審査件数も増加しており、知的財産の管理の強化及び活用を推進することを図っております。
 次に特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進については、まず、業績は英文業績はこの2年間で約10%程度増えております。日本小児科学会は2年前に我が国の小児医療あるいは小児医学の分野で臨床の英文ペーパーがどのくらい出るかを調査いたしましたが、2001年をピークにこのところずっと85%ぐらいで低迷しております。その間に国際競争力はその間増えておりますので、日本の小児医学の臨床研究はおそらく30%程度低下していると推定しております。そういう中で当センターの英文の論文数は10%増えており、研究成果が出ていると考えております。
 それから医薬品あるいは医療機器の開発の促進についても臨床研究の実施件数は、2年ほど前に比べて53件増えておりますし、企業治験に関しても16件増えております。積極的にこうしたものの推進を図っていると言えると思います。具体的な臨床に応用するという点に関しては、例えば周産期医療のガイドラインの作成をして全国に向けて発信しました。それから本年度は母子手帳の10年ぶりの改訂がありましたが、それに向けて胆道閉鎖症の発見のための便のカラーのスケールを開発して、これを取り入れていただくことになりました。
 次に医療の提供については、高度先進的な医療、標準化に資する医療の提供ということが大きなミッションですが、高度先進的な医療の提供の点では、私どもの施設では小児の肝移植の実施件数が、38件と1施設としては世界で最も多い数を誇っております。しかもその生存率は90%で世界トップレベルと言えると思います。そのほかEBMに基づいた成育医療を提供することにも努力しております。
 最後に医療政策の一環として当センターが行わなくてはならない医療の提供の点においては、最近はお産が集約化されており、小さな医療施設ではなかなかお産をすることができない状況になっておりますが、当センターでは昨年1年間で1,637件の分娩を行いました。その7割がいわゆる多胎妊娠あるいは胎児異常等をもっているハイリスク妊娠でして、社会的な役割を果たしているのではないかと考えます。
 もう1つ、これは新聞その他いろいろなところで情報が出ていると思いますが、小児救急医療体制が東京においてもいろいろ問題があることが指摘されていますが、私どものところでは小児の救急患者数は年間3万3,827人を受け入れており、救急車の搬入台数も年間3,000台以上受け入れております。この数は日本でも1施設としては1、2位を争う数ではないかと自負しております。
 最後に小児医療施設として、教育について少しお話させていただきます。私どもは後期研修医あるいは専門研修医、つまり小児科医になろうとする医師になって3年目から5年目の3年間の医師を受け入れておりますが、総勢現在41名おり、おそらくいわゆる小児医療提供施設の中では、最大の数の研修医を育てているのではないかと考えております。
 以上、簡単に概略をお話し、その後担当の者が説明することにします。どうぞよろしくお願いします。

○永井部会長
 これから評価を進めますが、評価シートの個別項目を4つのグループに分けてグループごとに評価を行います。評定が先生方は気になると思いますが、計画どおりはB評価となっております。ですからBが悪いということではないです。中期計画を上回っていればA評価です。S評価を皆さん期待されますが、これは想定外の要因が必要でなおかつ計画を大幅に上回っていることですので、順調にいけばB評価ですので、その点をご了承いただきたいと思います。では最初に項目1から2について研究・開発に関する事項、臨床を志向した研究・開発の推進、病院における研究・開発の推進、この2つの項目について説明をお願いします。説明は10分でお願いします。

○国立成育医療研究センター臨床研究センター長
 臨床研究センター長の藤本です。私からは個々の評価項目の1及び2について、説明をいたします。
 まず、評価シート1頁、[1]「研究所と病院等、センター内の連携強化」です。参考資料は1~7頁を併せてご覧ください。まず研究所の部長による病院レジデント向け、いわゆるランチョンセミナーと申しておりますが、それが定着して定例化することができました。また研究ユニット単位の共同研究会議を定期的に開催することができました。これらをトータルして共同開催は56回を数え、平成21年度の回数を約8%上回ることができました。また新規の共同研究の推進のために共同研究企画推進対策部会を作り、この活動により病院と研究所による共同研究が計画以上に増化しております。病院、研究所、臨床研究 センターの一層の交流を図るために、平成23年度は併任人事を積極的に推進しました。即ち病院医師3名を研究所の室長として、臨床研究センターの室長1名を研究所の室長にそれぞれ併任させました。その他記載のごとく病院医師やレジデントと研究所などとの交流も積極的に行うことができました。
 評価シート2頁、[2]「産学官等との連携強化」です。説明資料は8、9頁~17及び18頁の資料が相当します。1.企業及び大学等との共同研究は順調な延びを示しており、その実施数は平成21年度よりも約19%の増となっており、計画を相当上回っております。
 3.小児治験ネットワークを説明します。治験の推進は新たな治療法開発にとって非常に大事です。特に成育疾患のような希少疾患の場合は症例の集積性が鍵になります。平成22年度の治験基盤整備事業により、小児治験ネットワークを構築中ですが、平成23年度はインフラ整備が大変進みました。小児治験ネットワークの特徴は、この文書の後半にも書いておりますが、1つのネットワークで参加施設27施設を1つの医療機関と見せるように、症例を集積させ、治験実施にかかる業務手順書の標準化、治験費用算出や契約書等の統一化などを図ることによって、新薬などを開発する企業が参加しやすい仕組みを提供するものです。平成23年度は手順書や契約書などの標準化、統一化のみならず子ども用のアセント文書の統一化。あるいは治験候補患者検索システムの構築も行うことができました。また1か所の治験審査で承認されれば、施設ごとの審査が不要になるといういわゆる中央IRBの準備が平成23年度完了し、本年6月に第1回の委員会を既に開催しております。また明日第2回目が開催される予定になっております。
 次に[3]「研究・開発の企画及び評価体制の整備」です。センター内の共同研究を活性化し、かつ評価する仕組みとして先ほども紹介しましたが、共同研究企画推進対策部会を設けております。平成23年度には成育医療研究開発費の新規課題、提案に係る事前の内部評価を担当しました。即ち外部評価委員の評価に先立ち書面と発表で採点評価し、課題を絞り込む作業を行いました。このような仕組みにより、採択過程をより透明化することができました。学術論文のインパクトファクターなどに係る評価については、後ほど研究所長から説明いたします。
 3頁、[4]「知的財産の管理強化及び活用推進」です。資料は20頁です。1.に記載しているように、相談機能を強化することを目的として、医学生物系の特許に詳しい弁理士の導入を図りました。その弁理士のご支援をいただきながら、平成23年度には研究所並びに臨床研究センターのすべての研究グループからのヒアリングを終えて、シーズの状況あるいは特許申請にかかるポイントなどを明確にすることができました。そのような試みもあり、結果として職務発明に係る審査件数は18件、うち新規件数が8件と計画よりも大幅に増加させることができました。また2.のように職務発明の審査プロセスを明確にし、また共同出願や権利譲渡に係る契約内容の確認を共同研究審査委員会と連携して行うことなどにより、より適切な契約が図られたと考えております。
 続いて6頁に飛び、ここは評価シート2の部分です。(2)病院における研究・開発の推進です。[1]「臨床研究機能の強化」です。1.は臨床研究の推進には多忙極める医師たちが日常の診療から抱くquestionを研究に仕上げ、倫理委員会の承認、そして実行というすべてのプロセスの中での支援が必要だと考えております。そのためにPMDAなど規制当局での審査経験者、研究プロトコールが書ける医師、CRCなどがチームを作り、臨床研究センターが中心となって運営をしております。平成23年度には4件の医師主導治験の実施支援を行いました。また治験以外の臨床試験に関しても、計画立案ならびに研究実施の支援も行っており、その支援数は年々増加している状況です。
 2.のデータマネージメントに関しては、主として多施設の臨床試験を担当していますが、平成23年度には当センターを含め肝移植の主たる実施施設と連携して、小児肝移植のデータベースを完成させるなど、疫学研究にも活動を広げております。
 3.の細胞治療については、生体肝移植時に余ってしまうドナー由来肝臓の活用による細胞治療の研究を推進しております。生まれつきの代謝異常疾患患者で肝移植が可能となるまでの間のブリッジ治療として細胞治療の研究が倫理承認を受けております。現在、病院、研究所ならびに臨床研究センターの三位一体の連携の下、移植用の細胞の保存が進行中です。
 4.の医療機器開発に関しては、筒状の内視鏡の開発ならびに超音波装置などが得意分野ですので、子宮内胎児用診断、治療機器の開発が進んでおります。「なお書き」に書いておりますが、評価委員会からご指摘を受けた点については、平成24年度の数値目標として治験申請から症例登録までの期間を平均110日以内と盛り込んでおります。
 最後に[2]「倫理性・透明性」の確保の説明です。説明資料は22頁と24頁です。当センターでは、臨床研究や疫学研究の審査は倫理審査委員会が、治験の審査はIRBが担当しております。いずれも定例化されており、平成23年度には倫理委員会は14回、IRBは10回開催されております。これらの審査結果はホームページにより速やかに公開することで、透明性の確保を図っており、ホームページの更新の頻度は倫理審査関係は14回、IRB関係は7回です。また臨床研究の倫理指針に従い研究者には倫理を含む研修の受講を義務付けております。センターが主催する研修セミナーを平成23年度は3回行いました。資料25頁の常勤医師の研修受講率は92%を越えております。なお研究参加への説明文については、ここでは問合せ先の記載が行われているかどうかということを具体例として挙げておりますが、自由意思による参加であること、同意撤回ができる、またその手続などについて説明文を丁寧に確認し、被験者の権利確保に努めております。以上簡単ですが、説明を終わります。

○永井部会長
 いかがでしょうか。いま倫理研修の受講率92%ということですが、8%の方は臨床研究には参加していないということですか。あるいは参加しているが、出席していないということですか。

○国立成育医療研究センター臨床研究センター長
 おそらくこれは実質的には参加されていないのかなと思います。と言いますのは計画書の中で記載のある研究者には、必ず義務付けておりますので、そこから漏れていらっしゃる方と思います。

○永井部会長
 申請書で名前が挙がった方は倫理講習会を受けていることは確認されているということですか。そうするともうほぼ100%実施していると言っていいわけですね。

○国立成育医療研究センター臨床研究センター長
 はい、基本的にはそう考えております。

○永井部会長
 やはりそこが非常に大事だと思うのです。講習会だけやって、チェックしていない所が結構あります。いかがでしょうか。

○内山委員
 研究所は非常に病院と一体化してよくやっていると思います。かといって、研究所ですから必ずしもみんながみんな病院とのトランスレーショナルリサーチばかりではないと思うのですが、その辺の配分なりあるいは研究所のあり方について、今後どのような方向に向かっていくかなど、そういうことは普段からディスカッションはされているのでしょうか。

○国立成育医療研究センター研究所長
 研究所の名取です。成育医療研究センターにおける研究所のあり方については、そんなに日常的に議論をしているというわけではございませんが、中長期的な観点から、1つはどうしても研究所の中ではいわゆる基礎的な研究とそれから臨床研究の配分をどうするかは非常に重要な課題ですので、1年に1回ぐらいですが議論をして、これは研究所の中でだけでの議論で済む話ではないので、センター全体としての議論もこれから進めていこうと考えております。

○内山委員
 連携大学院等は既に始めていましたでしょうか。

○国立成育医療研究センター研究所長
 はい、一部の大学とはもう6年前から始めております。

○内山委員
 実績はどうですか。

○国立成育医療研究センター研究所長
 大学院の学生の方に当研究施設にお越しいただいて、一緒に研究をして、学位論文等が多いのですが、そのような実績はだいぶ上がっております。もう1つは、いくつかの大学とはこちらが取ったグラントで米国が多いのですが、海外の研究所に1年、2年と留学していただき、より共同研究を密接に行うというシステムも動いております。

○永井部会長
 ほかにいかがでしょうか。

○三好委員
 産官学の連携強化の中で、小児治験ネットワーク、これはもう構築されつつあると聞いたのですが、いま、されつつあるという理解でよろしいのでしょうか。

○国立成育医療研究センター臨床研究センター長
 基本的にはもう構築されております。

○三好委員
 では稼動しているというか、既にそれを利用して。

○国立成育医療研究センター臨床研究センター長
 どこまでが構築済み、一部まだ例えばインフラ整備、プログラム開発に関しては、まだ完璧に完成しているわけではありませんが、先ほど申し上げたように既に1回目の中央IRBを通して、それは1つの薬に関して承認したということで、これが早晩開始されるという点ではネットワークは動き出していると評価しております。

○国立成育医療研究センター企画戦略室長
 補足をいたしますと、この事業は厚労省の事業ということで、平成22年度、23年度、24年度の取りあえず3年間の事業で始まっておりますので、まだ平成24年度、今年度も事業としてまだ構築中ですが、一部分もう開始されているとご理解いただければと思います。

○永井部会長
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。ご質問ございませんでしたら、次のグループに参ります。項目3と4、1.研究・開発に関する事項、(3)担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進。2.医療の提供に関する事項、(1)高度先駆的な医療、標準化に資する医療の提供。これらについての評価です。では、10分でご説明をお願いします。

○国立成育医療研究センター研究所長
 それでは、2番目の区分、評価シート3に該当しますが、研究・開発に関する事項の担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進について私から、次いで、評価シート4に該当しますが、医療の提供に関する事項については松井病院長から説明させていただきます。
 最初に、資料の8頁をご覧いただきたいと思います。重点的な研究・開発戦略の考え方について、23年度の計画が右から2番目に記載されております。その結果が、右側の業務の実績欄に記載されております。まず、当センターが戦略的に重要と考えているものは再生医療における成果ですが、昨年の平成22年度の評価のときに、ヒトES細胞3株の樹立を報告させていただきましたが、23年度におきましては、研究所内に新たに再生医療センターを開設して、重点的に再生医療研究を推進いたしました。その結果、23年度には、臨床応用の際に大きな支障となる異種動物成分を一切使用しないという培養条件下で、ヒトES細胞を樹立することができました。これで、技術面では実際のヒトへの応用の準備というものが整ったということになりますので、現在、臨床応用を目指しまして、臨床応用のための指針、医薬品としての認可等のいわゆるレギュラトリーサイエンスの部門で、厚労省、PMDAに協力させていただいております。
 次の成果として、iPS細胞の遺伝子のメチル化という問題についてのご説明をしたいと思います。今日は非医学領域の方も多いと思われますので、なかなか聞き慣れない言葉かと思いますが、ご承知のように、細胞というのは遺伝子によってすべてその機能が決まってくるわけですが、遺伝子だけで決まるわけではありませんで、遺伝子にメチル基というものがくっ付いたり離れたりすることによって、その機能が変わったりするということがわかっております。そのことを「メチル化」と言います。このiPS細胞を作ったときに、もとの細胞の情報が引き継がれる、つまりメチル化状態が多少引き継がれるという報告がいくつか相次ぎまして、再生医療応用に問題となっている、みんなが心配しているということがありましたが、私どもの研究で、iPS細胞は作製直後は、これは1カ月ぐらいの単位ですが、異常なメチル化が数多く発生している。しかし、これを長期間、数箇月から1年というぐらいの単位の長期間培養を続けることによって、そういう異常なメチル化は減少するのだということを発見し、報告させていただきました。これは、再生医療研究における重要な成果であると考えていますし、また、この異常なメチル化が先天異常や小児の発がん等にも関係しているということからも、重要な成果と考えております。23年の論文数の数値については、先ほど総長から報告申し上げました。なお、2006年から5年間に発行されました当センターの論文765件の、6年目時点での被引用回数は3,815回ですが、1年ごとずらしてまいりまして、2007年からの5年間では、論文数838件について被引用回数は4,775回と増加しておりました。
 続きまして、資料の9頁をご覧いただきたいと思います。ここでは、23年度の計画におきまして、疾病に着目した研究、疾患の本態解明ということで、内容として3つを挙げました。この3つの課題についての成果について説明を申し上げます。ここでいちばん大きな成果は、不妊、不育、胎児死亡といったようなヒトの発生段階において、その異常の原因解明に関連する重要な原因として、先ほどちょっと申し上げましたエピゲノム異常、つまりメチル化の異常というものがございます。この問題に対しまして、国際共同研究により、哺乳類卵子のエピゲノムの全容解明に成功いたしました。ここでは、遺伝子のメチル化情報、つまりヒトができるときに卵子と精子というのはそれぞれのメチル化情報を引き継いで受精卵ができるわけですが、いままでは、その受精卵ができたときに、もともと引き継いできたメチル化情報は一旦全部キャンセルされて、すべてプログラムし直しと考えられていたのですが、この研究は、その配偶子のメチル化状態が受精卵のメチル化状態に影響するということを明らかにした大変注目されている論文でして、発刊から1年も経っていませんが、すでに30回ぐらいのサイテーションを受けております。
 次に、川崎病です。川崎病は罹患率が年々増加しておりますが、いまだに原因がよくわかっておりません。川崎病の第1選択の治療法というのはγグロブリンの大量療法ですが、これがなぜ効くのかということは、いままでステロイドと同じような作用機序かと考えられていたのですが、これがそうではないということを明らかにいたしました。これがどんな意味があるか。研究がもう一歩進めば、状況によっては、このγグロブリンというのは血液製剤ですので、血液製剤を使わない治療法の発展が可能であろうかと考えております。
 3つ目は、原因がよくわからなかった新生児乳児の消化管アレルギーへの研究です。これは、全国の施設と共同しまして、このアレルギーを起こした方の228の新生児の検体を集めて研究を行いました。その結果、通常の食物アレルギーと似たようなメカニズムで起きているということを世界で初めて見出すことができました。これはイコール何を意味しているかというと、いままで診断というものがうまくできなかったのですが、診断への道を開いたと言えます。この成果の論文の掲載は今年ですので、23年度の評価には入っておりません。
 続きまして、[2]成育疾患の実態把握の項です。平成14年度にスタートした成育のコホート、これは昨年もご報告申し上げましたが、いま現在9年目を迎え、1,273人の7年以上の追跡を行っております。これは出生前から、妊娠中からレジスターしたコホートでして、出生前からの長期コホートというのは我が国ではこれ以外にほとんどないものと思っておりますが、23年度はアレルギー疾患に関するゲノム解析について倫理委員会の審査を終え、24年度、今年度ですが、研究を開始しております。
 資料の10頁をご覧いただきたいと思います。[3]「高度先駆的及び標準的な予防、診断、治療法の開発の推進」ですが、23年度計画として4点を挙げております。業務の実績の欄に記載しておりますが、1つは、慢性肉芽腫症という非常に難治の病気がありますが、この遺伝子治療について、すでに厚労省での審査も終えていただきまして、いま許可の連絡を待っている段階となりました。許可をいただき次第、適用のある患者さんとの話合いに入る予定と考えております。その他3点についても、ここにありますように年度計画どおりに実施をしております。
 資料の11頁をご覧いただきたいと思います。先ほど藤本臨床研究センター長からもお話がありましたが、医薬品及び医療機器の開発の推進のところでは、数字が出ていますが、薬剤治験だけで集計しますと、21年度から23年度で23件、26件、28件と、22%の伸びを示す結果となりました。
 次に、均てん化に着目した研究の項ですが、医療の均てん化手法の開発の推進ということについては人材育成を目的としたところもありますので、後ほど松井院長のほうから報告をさせていただきます。
 資料の12頁をご覧ください。情報発信手法の開発です。ここも同じく、情報発信手法を開発してその結果どうなったかというところが大事かと思いますので、これについても後ほど松井院長のほうから報告を申し上げます。
 最後に、資料の13頁をご覧いただきたいと思います。情報発信の重要性、それから、発信する情報をいかに高い精度で確保していくかということが非常に大事なことと考えていますが、ウの項の妊娠と薬情報センターの情報発信ということについて、1点だけご紹介したいと思います。甲状腺機能が亢進するバセドウ病という病気がありますが、このバセドウ病の第1の選択薬の1つに、メチマゾールという薬があります。このメチマゾールという薬は、昔から多少奇形発生リスクがあるのではないかと言われていましたが、例えば妊婦を管理する産科医等の中で、あるかなという程度の認識の薬です。しかし、前方視的にこのデータを集めまして、鼻孔閉鎖とか気管閉鎖、食道閉鎖等について、やはりアラートを出すべきレベルの頻度ではないかと。これはいま中間報告ですが、昨年これを出させていただきまして、関連の学会のホームページ等についても転記をしていただいて、医師、医療従事者に対して警報を鳴らすことができました。これはまだ最終的な解析を終えていませんので、今後また発表させていただきたいと思います。

○国立成育医療研究センター病院長
 病院長の松井です。18頁をお開けいただきたいと思います。高度先駆的な医療、標準化に資する医療の提供につきまして、まず高度先駆的な医療の1番目ですが、肝移植については先ほど理事長が述べられたとおりですが、小児の単独の肝移植施設としては手術成績が世界でトップレベルにあるということは、何度強調しても足りません。2番目に胎児治療ですが、周産期センターにおきまして高度先駆的医療を行っているわけですが、その内容は、双胎間輸血症候群に対するレーザー手術40例、これは日本の症例の半分近くを担当していますし、胎児胸水に対するシャント術3例、胎児頻脈性不整脈に対する経胎盤抗不整脈薬投与1例を施行いたしました。川崎病に対しましては、初回の免疫グロブリン静注療法が不応の症例に対しまして、インフリキシマブ、さらに、インフリキシマブにも反応が乏しい場合には血漿交換を施行し、安全性、有効性ともに良好な成績を収めつつあります。
 内分泌・代謝科の例を挙げますと、尿素サイクル異常症および骨形成不全症、エストロジェン過剰症、男子低身長に対して、また、クッシング症候群に対して、臨床試験を継続して行っております。
 19頁をご覧ください。[2]「医療の標準化を推進するための、最新の科学的根拠に基づいた医療の提供」ですが、エビデンスに基づく成育医療を提供するとともに、各診療科ごとに標準化に向けた教育を行っており、それに関する講習会を各診療科ごとにレジデントに向けて計127回開催いたしました。
 具体的な例を簡単に述べますと、アレルギー科におきましては、食物アレルギー患者の入院食物負荷試験、感染症科におきましては、抗菌薬適正使用のためのantibiogram、これは抗生物質ごとにどれほどの感受性があるかを図示したものですが、これに基づいて院内感染の、あるいは耐性の獲得を防ぐということが行われておりますし、眼科では、未熟児網膜症に対して、通常は光凝固を行うわけですが、早期に硝子体手術を行っております。これは外国からも患者さんが訪れております。腫瘍科におきましては、「小児がん情報ステーション」を更新するとともに、エビデンスに基づいた治療のレジメンを30パターン作成しましたし、形成外科におきましては、頭位性斜頸の診断・予防・治療システムのほかに、形状誘導のヘルメットの療法を確立して好評を得ています。循環器科においては、劇症型の急性心筋炎に対して体外心肺補助循環システムを導入して、これも良好な成績を収めつつあります。以上でございます。

○永井部会長
 ありがとうございます。それでは、ご質問を。

○猿田部会長代理
 いくつか臨床的な面で。まず、いちばん私が感心しますのは、成育医療センターで各診療科別に非常に新しいことをやられていることです。例えば循環器のこと、目のこと、各領域でしっかりした仕事をしているのですが、これは人数的にはかなり先生方が忙しくやっていらっしゃるのですか。

○国立成育医療研究センター病院長
 どの医師も非常に長時間精勤しております。少しずつになるかもしれませんが、人手を増やしていかなければならないということは痛感しております。

○猿田部会長代理
 それとともに各ところとの連携をとっていただいて、センターとして持っている技術の素晴らしさを教えてもらいたいというのが私の希望なのです。その点で是非お願いしたいというのが1つです。それから、肝臓移植に関しては22年のときも確かいちばん良かった。23年も同じぐらいの数ですか。

○国立成育医療研究センター病院長
 さらに増えました。今年は年間で50例近くになると思います。

○猿田部会長代理
 もう1つは、90数パーセントと非常に成功率がいいですね。

○国立成育医療研究センター病院長
 何といっても強調したいのは、肝動脈の血栓症が1例もないということで、これは世界中どこに出しても、みんなびっくりいたします。

○猿田部会長代理
 そうですね。非常に誇れるところだと思います。もう1つ、名取先生に伺いたいのですが、先ほど出たメチマゾールの件です。これまで妊娠においては、あの薬はわりと安全だろうということで、かなり広まって、皆さん使っているのです。そういう点で、もし警告が出るなら早めに出さなければいけないのではないか。そこを非常に憂うのですが、どうですか。

○国立成育医療研究センター研究所長
 実は、昨年でしたか、後方視的な研究の論文が1本、国内の伊藤病院からも出たのですが、私どもは、正確な数字を出すためには前方視的に症例を集めていくということを、いま一生懸命やっております。現在までに集まった、飲んだ患者さんの症例数が、95例ぐらいなのです。その中では、まだいろいろなバイアスはあるのですが、約5%以上の患者さんに何かしらの問題が発生している。一般的には1,000分の1オーダーぐらいで考えなければいけない異常です。ただ、科学的にきちんと、しっかりした根拠を持ってから皆さんに報告するというのが務めと考えていますので、早期のアラートとしては、甲状腺学会、周産期新生児学会等のホームページで警告は出させていただいております。

○猿田部会長代理
 特に内分泌学会などは幅広く使われていますから、その点のところで注意してもらいたいと思います。
 もう1つ、メチル化の異常問題です。これは1年ちょっとでだいぶ異常が減ってきているということですが、いちばん長いフォローアップはどこまでやられているのですか。

○国立成育医療研究センター研究所長
 今回は、いちばん長いところで1年です。そこでもうやめております。1年でほぼベースラインの変化に戻っているということです。多く異常が指摘された研究は、iPS化されてから1カ月か2カ月以内で観察したものが多いわけですので。

○猿田部会長代理
 それで、1年で大丈夫なのですか。

○国立成育医療研究センター研究所長
 それは何とも言えません。

○猿田部会長代理
 そこは、非常に問題になるものですから。

○国立成育医療研究センター副研究所長
 副研究所長の斎藤です。1年しか見ていないのですが、1年のレベルでヒトES細胞のメチル化の異常のレベルとほぼ同じになりました。ヒトES細胞に関しては1年以上フォローしていますので、問題ないのではないかということでございます。

○猿田部会長代理
 ありがとうございました。

○内山委員
 いま猿田委員からもお話が出ましたが、肝移植その他高度先駆的な医療の提供で、各分野をよくやっておられると思います。159名という常勤医師数でこれだけの研究をやられていて、一方で救急車を3,222台受け入れているということで、気になるのは医療資源の配分ですね。これだけ先駆的な医療を行いながら、一方で救急医療等々の医療があって、病院としては目指す方向が混在しているわけです。その中で病院の職員、特に医師の方向性を一致させるために苦労をされている様子が伺えて、傍から見ていて感心しつつ、働いている人の意識というのが気になるのですが、いかがなものなのでしょうか。

○国立成育医療研究センター病院長
 これは大変難しいことでございます。先駆的医療をしながらというわけですけれども、しかし、24時間365日毎日先駆的医療をしているわけではありません。その合間に社会の圧倒的なニーズである救急医療についても応えなければならないと思いますし、私の知っている小児病院は、フィラデルフィアにおいても、ボストンにおいても、ロサンジェルスにおいても、地域あるいはその周辺の救急医療をやりながら高度な医療も並行して行っていくということをしているように思います。したがいまして、今後できることとして私に考えられることは、そうしたダイバースな職員の意思を可能な限り統一しながら、医師以外あるいは看護師以外の人たちをその医療の中に取り込んでいくということが1つの方法ではないかと。あまり直接にお答えできなくて申し訳ありませんが、そのように感じております。

○国立成育医療研究センター研究所長
 1点短く補足させていただきます。臨床に携わる医師が臨床研究に対するマインドを持つということが望ましい姿であるということは、近年の米国の報告等でも知られております。私どもとしてやれることは何かというと、臨床に携わる先生方が臨床研究を行う際の負担をいかに減らしてあげるかということだと考えております。その意味で、臨床研究センターとも協力しまして、計画の立案、倫理委員会への提出等々、オフィスワーク的な部分を極力サポートして、病院の先生方の臨床研究への参加の負担を極力減らそうということは、センター全体としてさせていただいております。

○内山委員
 一方で、これだけ救急患者が多い中で、ベッドの稼働率はそう高くないような気がしますが、各科のベッドの配分等々も毎年変えているのですか。これだけ皆さんが一生懸命だと、診療科による温度差もないわけではないと思うのですが、いかがなものなのですか。

○国立成育医療研究センター病院長
 科による温度差は、確かにあります。それから、季節によって利用率が大きく異なることがあります。例えば5月、9月、1月などは患者さんの利用率が少ない。しかし、例えば夏には小児病棟に患者さんを入院させるのに四苦八苦するというような状況もありますので、多少の変動は認めつつ、なおかつ、みんなが疲弊しないような方向に持っていくべく努力をしているというのが、正直なところです。

○内山委員
 今回の給与削減等々に対しては、どう対応されたのですか。これだけ頑張っていて、本当に素晴らしいことだと思うのですが。

○国立成育医療研究センター理事長
 それでは、私のほうから。運営費交付金を私どもは40億円いただいております。全体では200億円の予算規模でやっているうちの約2割を厚生労働省からいただいているわけです。その人件費に相当する分の10%ということで、約9,100万円程度を目標に削減を行います。管理職手当をいただいている方を中心に、そうでない方、つまり若い方には影響が出ないような形で行うことを病院の職員にも先日説明をして、納得していただいたところです。これは、ひとえに私どもが頭を下げることによって幹部職員に御理解していただいたとお考えいただければいいと思います。もちろん、彼らの士気が低下しないような算段をしなければいけないとは考えております。

○内山委員
 ありがとうございました。本当によく頑張っておられるので、いまお聞きした限りではソフトランディングだと感心しています。こんなことを言っていいか悪いかわかりませんが、少し安心しました。私が所属する地方の大学病院は打撃を受けていますが、ナショナルセンターにはナショナルセンターとしての機能を期待しているものですから、非常に心強く思います。

○永井部会長
 ほかにありますか。先ほどiPSの話が出ていましたが、メチル化の話と、もう1つ、ゲノムの不安定性がかなり問題になっていると思いますが、その安全性の検討・研究は、どの程度まで進んでいらっしゃいますか。

○国立成育医療研究センター研究所長
 私どものセンターでは、センター全体を挙げてiPSの研究に取り組んでいるというわけではございません。各部門で必要とされる、主に疾患特異的なiPSを作って、疾患の特性を受け継いだiPS細胞を作って研究に用いるという方向が主でございます。むしろES細胞のほうが実際の臨床応用にはiPSで心配されている発がん性等のリスクが少ないということで、むしろそちらをプロモーションしているということがありますが、どちらにしましても、定期的に継代培養した結果のゲノム解析を定期的に行って安定性を担保していく、という方向で基本的には動いています。また、iPS細胞については、経済産業省との共同プロジェクトの中で、自動化は大変手間がかかるものですから、自動化の装置もいまは出来て、それを試行的に動かしていますが、これは一部は京都大学のiPSセンターもやっていらっしゃるところです。

○永井部会長
 iPSによる臨床研究、再生医療は、あまり本格的に考えてはいらっしゃらないということなのでしょうか。

○国立成育医療研究センター研究所長
 戦略としましては、臨床への応用と。患者さんの治療に資するという観点では、私どものセンターとしてはまずES細胞から取りかかりたいと。それが許可いただけるのであれば、先ほど申し上げたように厚労省の許可待ちですが、状況が整えば今年度でも開始したいと考えております。iPSのほうは、むしろ疾患特異性の研究という方向で考えています。

○永井部会長
 よろしいでしょうか。それでは、次の第3グループにまいります。項目5~9、2.医療の提供に関する事項、(2)患者の視点に立った良質かつ安心できる医療の提供、(3)その他医療政策の一環として、センターで実施すべき医療の提供。3.人材育成に関する事項、4.医療の均てん化と情報の収集・発信に関する事項、5.国への政策提言に関する事項、6.その他我が国の医療政策の推進等に関する事項。これらについて10分でご説明をお願いいたします。

○国立成育医療研究センター病院長
 21頁と、同時に資料も参照しながらご説明します。21頁の(2)患者の視点に立った良質かつ安心できる医療の提供について。[1]患者等参加型の医療の推進を図っています。それはセカンドオピニオンをセンターの重要な使命として位置づけ、その意図を全病院に浸透させることによって行っています。資料の54頁ですが、セカンドオピニオン外来総件数は99件となりまして、平成21年度と比較して約200%の増加です。セカンドオピニオンの外来総件数99件のうち、依頼の多かった診療科は脳神経外科18件、血液腫瘍科17件、神経内科11件でした。
 一方、高度在宅医療の対象者の支援ですが、資料の56頁です。患者相談窓口を開設しました。また、患者満足度調査を行い、その結果全体の46%が「満足」、32%が「非常に満足」という結果を得ました。セカンドオピニオン外来実施件数は21頁の表にあるとおりです。
 22頁です。チーム医療の推進について例を挙げて書かれております。当センターでは、内科その他、成人と大きく異なる特徴として、小児医療は多診療科、多職種間にわたる疾患が多く見られます。例えばリハビリテーション科においては、このような多くの診療科で治療を受けた、あるいは受けている子どもたちの発達評価を専門とするセンターを開設しまして、この資料を各科にフィードバックしております。例えば胎児診断された先天異常症例を、産科医、新生児科医、遺伝診療科医、外科医、循環器科医、麻酔科医、看護師、助産師、Medical Social Worker、臨床心理士など、多くの職種が関与して、最善の治療を検討しているところです。そうした例は、資料の59頁にありますように、多職種の関与が見られまして、22頁の報告表でも、総合診療部、循環器科と心臓血管外科、感染症科と各科、脳神経外科と脳神経内科、小児外科、その他との連携、アレルギー科と消化器科、新生児科、その他との連携、栄養管理士も含みます。胎児診療科と外科、麻酔科、看護師、臨床心理士などとの連携。内分泌代謝科と泌尿器科、内分泌科、遺伝診療科、その他との連携といったような、文字どおりチームワークと申しますが、これは言うは易く行うは難いものでして、相当のエネルギーを払って実施しているところです。
 23頁です。[3]として、入院時から地域ケアを見通した医療の提供を心掛けております。退院支援チームは、患者が入院したときから将来の予後転帰を予測し、高度在宅医療を必要とするようなケースが出てくる場合、退院後に地域と医療連携、看看の連携ですが、そういうケースを想定しまして、支援を実施しました。NICUに入室した患者は退院支援の必要があるか否かを知るために、スクリーニングシートを活用したりしています。こうして退院支援チームが退院支援を実施した件数は、35件でした。
 [4]「医療安全管理体制の充実」です。医療安全管理委員会を月1回開催しています。資料の65頁にあるような、インシデントの集計、分析報告を基に、病院における安全管理に必要な調査を行って、問題の解決に努めております。併せて、ヒヤリハットニュースを6回、76頁に解説がありますが、全職員対象の医療安全対策研修会を7回、医療安全パトロール等を実施しまして、各部門に対して、助言、勧告、指導を積極的に行っております。
 資料の78頁にありますが、平成22年度に作成した「医療安全ポケットマニュアル」を改訂しました。そして、全職員対象に、この医療安全ポケットマニュアルが正確に理解されているかどうかeラーニングテストを実施し、受講率は78.9%でした。
 [5]ですが、客観的指標を用いた医療の質の評価を行いました。新たに、医療連携・患者支援センターを設置しまして、患者相談専門職及び医療ソーシャルワーカーを加えた相談窓口を設けました。また、患者満足度調査については先ほど申し上げたとおりですし、毎週1回火曜日に意見箱をオープンしまして、患者の苦情に対して、応えられる限り、これを掲示して応えているところです。
 26頁です。その他の医療施策の一貫として、センターで実施すべき医療の提供について述べます。[1]「子どもの心の診療」についてです。子どもの心の診療ネットワーク事業のホームページ、同じく家族向けのパンフレットあるいは心理教育冊子としてホームページをアップしまして、3万件以上のアクセスがありました。その他、子どもの心の診療ネットワーク事業に展開しまして、特にコメディカルスタッフの役割に対する研修に努めました。
 [2]ですが、周産期・小児医療における中核的な役割を担当しました。周産期医療については先ほど理事長が述べましたように、1,600件余りのうち約7割がハイリスク妊娠です。併せて、MFICU(母体胎児集中治療室)を6床新設し、さらにNICUを15床から21床に増床しました。その結果、母体搬送の受入数は、前年の47例から107例と飛躍的に増加しました。
 2.小児医療の提供ですが、小児救急医療については、先ほど理事長が述べたとおりです。特に東京都は地域を4分割しまして、当センターは城南地区を担当しているわけですが、そのほかに東京都全体の3次救急医療、子ども救命センターとして機能することを期待されております。それだけではなくて、先ほどご指摘がありましたが、地域の医療機関としても、地域住民の指示が得られるように、世田谷区医師会と協定を結んで、地域のクリニックの小児科医はいまのところ3名ですが、初期救急医療の診療に一緒に携わっております。
 29頁は人材育成に関する事項です。リーダーとして活躍できる人材の育成に努め、病院所属や研究所、臨床研究センターで、新たに研究を開始したものは医師は6名でした。また、大学または企業に所属して、当センター研究所内で共同研究員として研究に従事した研究者の数は、それぞれ55名及び19名でした。病院では、成育医療研修会を通じて、多くの研修生を受け入れました。
 (2)モデル的研修及び講習の実施です。資料の95頁を参考にしてください。成育医療の均てん化の推進を目的として、モデル研修等を年16回企画しました。また、各種研修、講演会等を、センター外の医療従事者等を対象に、年24回開催しております。
 31頁です。4.の医療の均てん化と情報の収集・発信に関する事項です。ネットワークの構築に努めまして、臨床研究セミナー、小児整形外科、小児病院カンファレンス、PICU施設、看護部、耳鼻咽喉科、消費者庁・国民生活センターとの「医療機関ネットワーク事業」を行っておりまして、小児の大きな問題である不慮の事故情報の収集を行い、再発防止策の作成に役立てております。これをさらに組織化いたしまして、さらなるプロダクトを狙っております。
 (2)情報の収集・発信です。ホームページについては、先ほど述べたとおりです。医療者、研究者向けのメールマガジン、一般向けに配信する「成育すこやかジャーナル」をそれぞれ年間に12編配信しました。
 33頁です。国への政策提言に関する事項として、6ナショナルセンター共同でバイオバンクの構築を目指しております。それから、厚生労働省の推進する小児がん対策として、我がセンターからも、がん対策推進協議会に専門委員を派遣し、その意見を提出いたしました。先ほど申し上げた胆道閉鎖症の早期スクリーニングのための便色カードは、私どもが開発したものですが、世界で3番目にNation-wide Screeningとして4月から実施されるに及びました。
 6.その他の我が国の医療政策の推進等に関する事項です。東日本大震災の経験を踏まえて、資料112頁にあります震災対応マニュアルを作成しました。また、今後はBusiness continuity planも編纂を予定しています。国際貢献においては、これまでロシア、ウクライナ、アルゼンチン等から、すでに診察依頼がありまして、6件対応しています。生体肝移植チームとしてエジプトにチームを派遣して、アウトバウンドの協力をしました。以上です。

○永井部会長
 ご質問をお願いいたします。

○内山委員
 多方面にわたる活躍で、本当に忙しいのだと思うのですが、この中で、医療安全感染管理講習会を7回開かれたということなのですが、一度も出られないドクターもいると思うのですが、人数とか、平均の参加回数がおわかりでしたら教えていただけますか。

○国立成育医療研究センター病院長
 感染対策についてはわかりません。ただし、おっしゃるとおりで100%出席しているわけではないことは申し上げなければいけません。

○内山委員
 インシデンタルレポートもドクターからの報告は6%ということで、これも現場からは仕方がないと思うのですが、これもパーセントというのは大体同じようなものですか、それとも多少工夫されて上がってきているとか。

○国立成育医療研究センター病院長
 はかばかしく上昇はしておりません。

○花井委員
 大変素晴らしい感じで、小児医療の多方面にわたって対応されているし、すごいと思いましたが、1つ気になるところは、入院患者、救急、外来の患者がこれだけいてというところで、例えば救急チームと各科、病棟との連携の辺りはどのような感じなのでしょうか。もうちょっと入院患者が増えてもいいかなという気はするのですが。

○国立成育医療研究センター病院長
 救急はほとんどが総合診療部の救急診療科が対応しております。それから予約外、外国でいうambulanceの患者も、紹介状がない限りは救急診療部がまずは診ます。
 先ほど総長が申し上げましたが、総合診療部にレジデントが3学年で40数名いるということで、初めてこういうことができる。ほかの小児病院で総合診療部にこれだけの人数がいるところはありません。それだけの人数がいるということは、ただ単に救急診療だけではなくて、いわゆる先進医療をするといっても、決して1臓器だけが侵されているわけではありませんし、心の問題その他がありますので、その隙間を埋めるというか、そういうことにも総合診療部が役立っていると。
 ご指摘のように、患者がもっと入るのではないか。私は、すぐに患者の数を増やすというよりは、むしろ内容をよく吟味して、一部外来で、例えば化学療法であるとか、外来手術、そういうところに持っていくというのが今後あるべき姿ではないかと、個人的には思います。

○永井部会長
 人材育成ですが、センターによっては連携大学院のようなことをやっていますが、先生方のセンターではいかがでしょうか。

○国立成育医療研究センター研究所長
 先ほどのご質問にもありましたが、現在3大学と連携大学院の締結をしております。

○永井部会長
 人数が伸びているかどうかですが。

○国立成育医療研究センター研究所長
 平成23年度では55名の方の交流で、平成22年度はたしか20名に満たない数だったと思います。これは1つには、私どもの施設から大学へ人が着任されるところがいくつかありまして、そういうところは非常にコミュニケーションがうまく取れますので、そういう中からも連携大学院の学生の数は増えてきています。

○永井部会長
 成育で行った研究が大学で学位として認められているかどうかという点についてはいかがですか。

○国立成育医療研究センター研究所長
 それが連携大学院の中で非常に大事、かつ最初に約束を取り交わしておかなければいけないところでして、それについては平成23年度からそういう約束というか、そういうものを取り交わしてやっていくようになっていますが、実は連携大学院を結んでいない大学からも研究に来ている方がたくさんいて、そういう形の場合は、私どもでやった研究が所属されている大学で学位論文として提出されているということです。

○永井部会長
 そういう実績も数字でお示しになられるとわかりやすいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○国立成育医療研究センター研究所長
 わかりました。

○本田委員
 ご説明いただいているのかもしれないのですが、私が理解できていないのであえて伺いたいのですが、研究の分野とか、いろいろな分野で優れた成績を残されていて、活動されていて、それが医療の均てん化に基本的には役立つというのは理解しているのですが、一方で例えば項目4の「医療の均てん化と情報収集・発信に関する事項」でいうと、NCとして診療機能を、全国の小児を診ている医療機関などに、どういう診療機能の支援をしているかとか、そういうのはどこに当たるのでしょうか。そういう部分でのNCの役割というのは、どの辺のことなのでしょうか。

○国立成育医療研究センター病院長
 少なくとも私どもは、常勤の職員と非常勤のレジデント、このレジデントは卒後3年から3年間、希望するものはフェローとしてさらに3年間トレーニングを積んで、有能な人材として育成された者は、またレジデント期間が終了しますとスタッフとして残るのは一部で、その人たちが日本の小児の、例えば大学は少ないのですが、小児病院あるいは基幹病院に就職していきますので、そういったことを通して均てん化していくことが期待できます。時間がかかりますが、そういうやり方と、いわゆる広報、学会、論文その他を通して、均てん化を図っていくということだと思います。ご質問のお答えになりましたでしょうか。

○本田委員
 はい。例えば31頁にあるような、看護部でやっている感染管理ネットワークというのも、全国のネットワークの中でやっているものと理解していいのでしょうか。

○国立成育医療研究センター病院長
 おっしゃるとおりです。日本小児総合医療施設協議会というのがありまして、そこでは看護師が集まって、年に1回学会のようなものを開いています。それも非常に大きな原動力の1つだと思います。

○内山委員
 レジデントの後期研修は41名ですが、この人たちの行く先について、例えばナショナルセンターとして日本全国の状況を見据えながら、キャリア支援センターのようなものを将来構想するとか、そこまでの考えはないのでしょうか。地方では非常に小児科医がいなかったりして、そこでずっとでなくても、多少はそこから支援するとか、そういう話はいままであまり出ていませんでしたが。

○国立成育医療研究センター病院長
 この40数名のレジデントになったのは、2、3年前のことですので、そこまではやっていませんが、大学病院の小児科の教授の中には、成育でトレーニングを受けた人を受け入れる姿勢を示している方が、少しずつ出てきていることは聞いています。

○国立成育医療研究センター理事長
 いまのご指摘は大変重要な使命だと考えています。卒業生がどこに行って、いま何をしているかのフォローアップをしているところで、データが出てきております。それから、私どものところは、内科のようにいろいろな内科を回って、本当に総合内科医になれるかという問題があるのと同じように、高度な医療のセクションを3年間で回ることによって、本当の意味での小児科医になれるかどうかという課題も実はございまして、そういう意味で、特に予防接種だとか、神経学的なフォロー、発達のフォローなどをきちんとできるか、そういうことも含めた本当の意味での小児科医をつくることをこれから考えて、計画を立てているところでして、もう少しすると本当の意味で総合力を持った小児科医を輩出できるようになると思いますので、全国の大学から是非来てくれといわれるような、そういう実力のある小児科医を是非つくりたいと考えているところです。

○内山委員
 これだけ毎年人材を輩出していますので、後継者の育成というのも大事な問題ですし、いろいろな意味で、この忙しい中でたくさんの使命と言ったら失礼になりますが、当然皆さんが期待するものは結構あると思いますので、その場その場はもちろん大事なのですが、ナショナルセンターは特に小児中心のナショナルセンターとして、どうあるべきかということを常に、もちろん検討はされているのでしょうけれども、中長期的に立って是非お示しいただきたいと思っています。

○永井部会長
 そのほかによろしいでしょうか。それでは第4グループ、項目10~14についての説明をお願いします。効率的な業務運営、法令遵守、予算、収支計画及び資金計画、その他主務省令で定める業務運営に関する事項、これらについて10分間でご説明をお願いします。

○国立成育医療研究センター企画戦略室長
 企画戦略室長の岡本から説明いたします。35頁です。まず、効率的な業務運営に関する事項です。平成23年度に行ったことが、真ん中の少し上のほうに書いてありますが、情報管理部の設置、再生医療センターの発足、周産期診療部の名称変更、臓器移植センターの発足、発達評価センターの発足、医療連携・患者支援センターの発足、執行役員会の人員の変更等ということで、先ほど病院長から「病院の機能の充実」というところで、いくつか紹介があったところに対応したセンターの組織の改編を行っています。
 人件費または人事の問題については、技能職の退職後非常勤職員への切替えを行っています。それから先ほどありましたように、小児、周産期医療の充実を図っていますので、それに必要な人材の確保を行っている関係上、総人件費については、平成21年度比で16.5%の増になっていますが、その欄のいちばん下に掲げていますが、人件費率については、平成23年度実績で38.8%ということで、平成22年度の実績の41.0%に比して、人件費率の低下につなげています。あとは、引き続き事務の人件費のさらなる削減は、努力をさせていただいております。
 38頁です。効率化による収支の改善ですが、平成23年度の経常収支は最終的に5億3,400万円の黒字ということで、経常収支率が102.6%です。平成23年度計画では、経常収支率を103%以上にするという目標設定をしていましたが、102.6%ということで、若干それを達成することができませんでしたが、平成22年度に引き続いて2期連続の黒字を達成しています。
 達成できなかった1つの原因として、付属の資料の136頁、139頁、141頁をご覧ください。136頁で、入院患者数の推移を記載していますが、3月の東日本大震災後の4月、5月辺りの患者数の落ち込み139頁ですが、オペ数の減少141頁ですが、2011年の全国の分娩数の推移ということで、東京地区の分娩が減っているということで、その辺りの影響を受けたところで、その影響を挽回できるまでには十分に至らなかったと判断しています。
 38頁で[2]「材料費の節減」です。6つのナショナルセンターでの共同入札を引き続き実施していまして、節減に努めています。それから、使用医薬品の集約化、または後発医薬品の促進ということで、特に後発医薬品の採用は徐々にですが、品目ベース、数量ベースともども増加をしています。しかし、材料費率は残念ながら増加していて、これの主な原因はムコ多糖症による酵素製剤、または血友病に対する血液凝固因子製剤、この非常に高額な医薬品を使わないといけない患者が増えたことに伴いまして、特に医薬品の材料費率が増加しています。
 39頁です。[3]「一般管理費の節減」です。これも平成22年度と同様ですが、委託内容の見直し、消耗品等の費用の削減に努めまして、目標を達成しています。
 [5]「収入の確保」で、特に医業未収金対策ということで、クレジットカードの取引の会社数を増やすことを通じて、医業未収金の比率を数値目標としては0.05%を設定していましたが、それを下回る医業未収金比率が0.04%ということで、未収金の低減、削減に努めているところです。
 同じ39頁の2.電子化の推進です。平成23年度においては、特に情報関連部門の強化を図るということで、情報管理部を新たに設置し、文書等の電子化の推進を図っています。
 43頁で、法令遵守等内部統制の適切な構築です。平成23年度においては、監事、外部有識者で構成する契約監視委員会を4月1日に設置し、委員会を3回開催しています。それから、法令遵守のためにコンプライアンス室を平成22年度に設置していましたが、そのコンプライアンスに対する相談、情報提供が容易になるようにということで、平成23年度は新たにメールで匿名で相談できるというコンプライアンスのホットラインを開設しています。
 契約業務の競争性、公平性、透明性の確保という観点からは、契約業務の1件100万円を超える案件については、一般競争入札を原則としています。また、一定金額以上の契約については、随意契約、競争入札問わず、事前に、外部有識者を含む契約審査委員会において、審議をしています。契約金額が100万円を超えるものについては、契約方法の如何にかかわらず、ホームページにてその内容を公表するということで、競争性、公平性、透明性を確保しています。
 先ほど説明しました契約監視委員会においては、平成22年4月から平成23年12月までの契約について、その中の随意契約及び一社応札または応募案件について、点検、見直しを実施しており、一社応札・応募となった案件については、改善を図っているところです。
 「その他」に記載していますが、最近も報道があったところですが、株式会社メド城取の民事再生法の適用申請に当たり、当センターが債権者リストに挙がっていた問題ですが、これについてはいろいろ内部調査、我々が持ち合わせる資料で調査をしてきましたし、まだしておりますが、残念ながらまだ相手方からの詳細な資料の提供がない関係上、現時点では詳細が未だに不明であるということです。
 46頁です。予算、収支計算書、資金計画、特に自己収入の増加に関する事項ですが、寄附の受入れについて、ホームページ上でその手続等を明確に示すことにより、その獲得に努めているところです。固定負債、長期借入金の残高については、約定どおり償還を行い、その残高を減少させています。剰余金については、平成23年度の決算においては5億2,000万円余りの剰余金が生じていますが、これは将来の投資、借入金の償還に充てるための積立金とすることにしています。
 47頁は施設・設備整備に関する事項です。自己資金を活用して、先ほど説明したとおり、病院の機能を強化するために必要な医療連携・患者支援センターの改修工事、また発達評価センター等の改修工事を行っています。
 50頁はその他主務省令で定める業務運営に関する事項の人事システムの最適化です。人事評価については、平成23年度は看護部門において、人事評価を実施していますが、その他の職員については、平成24年度から実施するということで、いま準備をしています。特に、女性の多い職場ですので、女性の働きやすい環境の整備については、独法の発足時において新たに育児短時間勤務制度の対象の拡大、3歳までの子を養育する職員の請求により時間外勤務を制限するなど、制度面での充実を図っておりますが、昨年度から院内保育所を設置するということで検討を開始し、昨年度は職員アンケートの調査を行ったところです。
 人事に関する方針としては、基本的には医長職以上の管理職員については公募制を原則とし、平成23年度の常勤職員の公募件数は26件に上ったところです。それから、看護師確保対策の推進ということで、特に成育医療研究センターの周産期部門、小児科部門の強化に関しては、看護師の確保が非常に重要ですので、見学会、説明会、離職防止策を平成22年度に引き続き実施しています。
 51頁です。平成22年度に病棟再編計画を策定し、それに基づいて病棟再編を行っています。特に、平成23年度は周産期病床を30床増床、院長から説明があったようにMFICUの設置など、体制の強化を図り、そのために必要な人材ということで先ほど少し触れましたが、看護師75名を増員し、確保したところです。
 「その他の事項」ですが、平成22年度は理事長、理事により、各職場長からいろいろ意見を聴く機会を設けましたが、平成23年度は職場長のみではなく、その下のレベルの一般職員等も対象に、センターが抱える問題点やいろいろな現状について、理事長及び理事による意見交換を行いました。その意見交換等を踏まえて資料の193頁にありますアクションプランを策定していまして、緊急性の高い項目に関しては、取組みをすでに開始したところです。

○永井部会長
 ご質問をお願いいたします。

○猿田部会長代理
 最後の看護師の確保は75名ということですが、これで十分なのでしょうか。

○国立成育医療研究センター企画戦略室長
 例えば夜勤の問題など、もう少し充実しなければいけない部分もあります。

○猿田部会長代理
 一応いまの数であればやっていかれると。

○国立成育医療研究センター企画戦略室長
 いまのところ病棟の再編計画等に基づいて、必要な数は確保されているというところです。

○三好委員
 35頁の総人件費のところです。平成21年度は16.5%超で、これだけ増えたのはNCの役割を着実に果たすために計画的に増員していると読めるのですが、もし計画的だとすると、計画の段階でその数字が入るのではないかと思います。それなのに、どうして計画以上に出ているかというところが、結構なパーセンテージが上がっているので、そこが疑問なのですが。

○国立成育医療研究センター企画戦略室長
 総人件費削減は国の時代に設定された話で、増員計画は独法に入ってから新たに設定したということになりますので、必ずしもその部分が十分に反映されていないということになろうかと思います。

○三好委員
 平成22年度比でいうと、増加率はどのぐらいになるのですか。そうすると計画に今度は反映されているはずなので。

○国立成育医療研究センター企画戦略室長
 平成22年度の総人件費については63.3億円で、平成21年度比で11.7%の増ということです。

○三好委員
 そうすると、平成23年度は66億円だから、減っているということですか。

○国立成育医療研究センター企画戦略室長
 63.3億円ですので、増加しています。

○三好委員
 平成23年度が66億円ですね。

○国立成育医療研究センター理事長
 はい。

○内山委員
 ということは、2億7,000万円増加しているということですか。
 小児病院として黒字が出ているということは、とても嬉しいことなのですが、医療機器の更新比率等がわかりましたら教えていただけますか。医療機器購入の要望が各科から出てくると思うのですが、現在の体制で最終の判断というのは、どのような形で決めておられるのでしょうか。

○国立成育医療研究センター企画戦略室長
 いま手元に更新の比率はないのですが、医療機器の更新について、例えば今年度で言いますと、これから各科からの要望事項を取りまとめ、院長、副院長等をメンバーにする委員会で、きちんと各科からの要望のヒアリングを行い、病院の中でのプライオリティを付けて、そのプライオリティの高いものと、予算、費用との絡みを見つつ、最終決定をしていくというプロセスで、更新、購入を行っていくことを考えています。
 大型のものについては、独法移行時に、最近更新されたものが結構ありますので、それらは中長期的に更新を計画的に行っていく予定にしています。

○内山委員
 独法になったときに結構更新されているということですね。各科の要望には、毎年何億円ぐらいを予定しているのですか。大体でいいのですが、どれぐらいの採択率というか。

○国立成育医療研究センター企画戦略室長
 大体3億円程度で、採択率は50%を超える、6~7割程度いっているのではないかと。必ずしも正確ではありませんけれども。

○内山委員
 医業収入が150億円ぐらいですと、3億円程度というのは各部署にそこそこ更新の配分ができているということだと思います。採択率が50%というのは、全部署ではなくても、ある程度は現場で満足のいく数値だと思います。わかりました。

○国立成育医療研究センター病院長
 CT、MRIなど大型のものは、どうしても年限もきておりますので。

○内山委員
 それはまた別個ですね。

○和田委員
 法令遵守と内部統制の適切な構築ということで、43頁に記載がありまして、内部統制の体制の確立です。コンプライアンス室があったり、内部監査室があったりということです。また、科研費等の補助金については、使用状況の無作為モニタリング監査を実施しているということで、しっかりやられているのだと思うのですが、(3)のことはマスコミでぼんと出てしまっていることですから、お聞きしなければいけないのですが、この問題の対応はどの程度まで、例えばコンプライアンス室も絡んで調査委員会をつくって、徹底的に調査をしたのか、それから外部の会計検査院の検査が入っているのかどうか、その辺を教えていただきたいのですが。

○国立成育医療研究センター企画戦略室長
 この件につきましては、昨年の10月に手続が開始され、そのあとに我々も知るところになりました。それを受けまして、病院、センターの幹部の会合をもちまして、どのようにやっていくかを検討しまして、まず現役の研究者、外部研究費をもらっている主任研究者のドクター等を中心に、OBも含めて、130名余りの方からヒアリング、書面による確認を、私のほうで行いました。その中では、関与を認める者はいませんでした。
 また、センター内の会計の書類等のチェックは、やれるものはすべて行いましたし、監査法人による独法以降のものについては、監査も受けておりますが、その中では明らかになってきませんでした。ここにも記載させていただいているとおり、我々の持ち合わせている資料の中からは、中身が全くわかりませんので、先方に資料要求をしていますが、未だ提出されていませんので、その資料が提出されたあとには、当然中身を精査した上で、必要があれば外部委員等も混じえた調査委員会で、きちんと調査をしていくことを考えていますが、いまのところそれに至るだけの資料、または情報がないという段階だと思っております。

○和田委員
 というところが多いようですが、うちの規定に基づいて、こういう状況が出てきた場合には対応をどうするという決めはあるわけですか。その規則に基づいて手続を踏んでいるのでしょうか、それとも、そういう話もあるけれども、まだよくわからないということで置いてあるのか。

○国立成育医療研究センター企画戦略室長
 当然研究費の経理については、それぞれの資金を提供している基のところのいろいろな取決めもあります。それから、当然外部資金を受ける我々の中での手続も定められています。その中で調査をするにしましても、もう少し情報がないと具体的な調査に至れないということなので、いまのところ資料を入手でき次第、それに必要な、またはルールに則ってやっていくことを計画しているわけですが、如何せんそれに至っていないのが現状です。

○和田委員
 こういう事態になったときに、どのように対応することにしているのか、コンプライアンスというのはそこからスタートするのだろうと思います。そこできちんと決めてというか、それを立ち上げて、それがいま調査中というのか、それともそうではなくて置いてあるのか、たまたまテレビでも困った報道もされていますので、気になりましたのでお尋ねしました。

○国立成育医療研究センター企画戦略室長
 補足をしておきます。コンプライアンス室の室長とは、最初から綿密に打合せをして対応してきております。コンプライアンス室長は顧門弁護士でもありますので、常に法的なアドバイスをいただきながらまた監事、監査法人等とも密接に連携して、調査を行ってきたところです。

○和田委員
 はい、わかりました。

○永井部会長
 その件はだいぶ昔のことで、なかなか実態がわからないのだろうと思いますが、やはり社会的に見ると、昔のことであってもイメージダウンにはなってしまうと思うのです。ですから、是非再発しないように、すでにこれまでも教育研修等をされていると思いますが、ここは昔のこととはいえ、さらに一段と名誉挽回のために、かなりしっかりした教育研修、管理体制です。いろいろな教育研修、eラーニング等での受講者、先ほどの医療安全、臨床研究なども同じだと思うのです。研究費の使用に関する受講状況のチェックです。こういうところは一段と強めておく必要があるのではないでしょうか。

○国立成育医療研究センター企画戦略室長
 おっしゃるとおりだと思います。管理体制の見直し、研究費の執行に当たる研究者に対する説明会等についても、いままで以上にきちんと取り組んでいきたい、また一部すでに実行しているものもございます。

○永井部会長
 研修、講習をするだけではなくて、出席したかどうか。しない場合には研究費の申請ができないぐらいの体制が必要だと思います。

○花井委員
 材料費率で凝固因子が影響しているという話が出ていましたが、中学生ぐらいから自己注射分は院外処方にするということ、高校生になった患者はほかの病院でもいけるとか、そういったことはなされて、こういう感じなのでしょうか。

○国立成育医療研究センター研究所長
 ここにおける血液製剤の中身というのは、多くは手術時に使うアルブミンとか、あちらのほうがほとんどです。

○花井委員
 いや、この説明だと凝固因子製剤で、どこの病院もそうなのですが、凝固因子製剤は非常に単価が高くて、院内で出すと高いはずですよ。

○国立成育医療研究センター研究所長
 それはほとんど入院患者に使うもので。

○花井委員
 入院患者だけでこうなっているということだと、圧縮のしようがないということですね。

○国立成育医療研究センター病院長
 病院名は明かしませんが、東京23区内でこれまで血友病の患者をたくさん診ていた病院の先生がやめるということで、たくさんの患者が紹介されてきていることが、理由の1つではないかと考えます。

○花井委員
 凝固因子製剤を院内で出すと、どんどん上がっていくのです。凝固因子使用料もどんどん上がっている傾向なので、その対策がないと、患者がお荷物になっていくというのがいちばん辛いところなので、何らかの対応で工夫がされているかなということです。直接評価とは関係ないのですが、気になったので伺いました。

○国立成育医療研究センター病院長
 ご指摘ありがとうございます。

○永井部会長
 時間になりましたので、以上で評価を終わらせていただきます。事務局から、このあとの取扱いについてのご説明をお願いします。

○政策評価官室長補佐
 本日お配りしている資料の送付をご希望される場合には、部会終了後に事務局までお申し付けください。評価の記入の終わっていない委員の方々は、8月1日(水)までに、評定記入用紙をご提出いただくよう、お願いいたします。以上です。

○永井部会長
 最後に、最近の独立行政法人を取り巻く状況についての説明を、事務局からお願いいたします。

○政策評価官室長補佐
 委員の皆様方は紫色の関係資料集の54頁をご覧ください。今年の3月の部会から独法の関係で変わったところと言いますと、今年の5月に、独立行政法人の通則法の一部を改正する法案が国会に提出されております。中身としては3月にお話したのとほとんど変わらないのですが、独立行政法人制度を廃止して、行政法人制度を創設。行政法人を法人の事務・事業の特性、国の関与の在り方等に着目し、中期目標行政法人と行政執行法人に分類します。
 中身として、組織規律で、主務大臣に法人の違法行為の是正命令権を付与、監事、会計監査人の調査権限を付与。財政規律として、運営費交付金の適正な使用に係る責務を明記する。また、一貫性、実効性のある目標評価の仕組みとして、政策責任者たる主務大臣が、法人の目標設定から評価まで一貫して実施する。また、国民目線での第三者機関のチェックとして、総務省に行政法人評価制度委員会を設置して、委員会は中期目標や評価、中期目標期間終了時の見直しの内容等を点検する。このような中身になっています。
 具体的にこれ以上のことはまだ決まっていませんので、情報として入手しましたら、また皆様にご報告したいと思います。以上です。

○永井部会長
 議事は以上です。次回の開催等について、事務局からご報告をお願いします。

○政策評価官室長補佐
 次回は8月1日(水)の9時から、省内19階専用第23会議室になります。議題は、国立精神・神経医療研究センターと長寿医療研究センターの個別評価等となっています。

○永井部会長
 以上で、独立行政法人評価委員会高度専門医療研究部会(第13回)を終わります。成育医療研究センターの皆様、今日はありがとうございました。委員の先生方もご苦労さまでした。


(了)
<照会先>

政策統括官付政策評価官室

独立行政法人評価係: 03-5253-1111(内線7790)

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