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2012年7月31日 第31回労働政策審議会 議事録

政策統括官付労働政策担当参事官室

○日時

平成24年7月31日(火)
16時00分~18時00分


○場所

厚生労働省省議室(9階)


○出席者

【公益代表委員】

諏訪会長、相澤委員、今野委員、岩村委員、小杉委員

【労働者代表委員】

落合委員、塩谷委員、高橋委員、南雲委員、西原委員、八野委員

【使用者代表委員】

川本委員、吉川委員、坂戸委員、篠田委員、土谷委員、三浦委員、宮原委員、渡邊委員

【事務局】

太田厚生労働審議官、妹尾総括審議官、金子労働基準局長、森山職業安定局長
小野職業能力開発局長、高井雇用均等・児童家庭局長、中野政策統括官(労働担当)
棚橋政策評価審議官、酒光労働政策担当参事官、荒木労政担当参事官

○議題

(1)平成25年度重点事項(案)について
(2)雇用政策研究会報告書(案)について
(3)提言型政策仕分けについて
(4)各分科会・部会の検討状況
(5)法案の国会審議状況
(6)地方公務員制度改革(素案)について
(7)その他

○議事

○諏訪会長
 皆様こんにちは。お暑い中を御参集いただきまして大変ありがとうございます。ただいまから第31回労働政策審議会を開催いたします。本日の議題は、第1に平成25年度重点事項(案)について。第2に雇用政策研究会報告書(案)について。第3に提言型政策仕分けについて。第4に各分科会・部会の検討状況について。第5に法案の国会審議状況について。第6に地方公務員制度改革について。第7にその他、となっております。そこで最初に、議題(1)平成25年度重点事項(案)について事務局から御説明をお願いします。

○酒光労働政策担当参事官 
 事務局から、資料に基づいて御説明をさせていただきます。資料1と、参考に資料2も添付しておりますので、併せて御説明いたします。平成25年度重点事項(案)ですが、いちばん最初の表紙に書いてありますように、政府全体の予算編成の方針等、まだ固まっておりません。今日の委員の皆さんの御意見とか、あるいは今後の政府の方針を踏まえて、重点事項をさらに検討を加えていきたいと考えております。それでは内容について御説明いたします。
 1ページ目、「平成25年度の労働政策の重点事項(案)」です。前文いろいろと書いてありますが、今回柱といたしましては、5点プラスその他の6点です。
 1点目は、「全員参加型社会」の実現。2点目は、「ディーセント・ワーク」の実現で、新成長戦略、あるいは日本再生戦略を踏まえた中長期的な基本的な方針に沿った取組を行っていくものです。それから3番目は、それらの土台となる成長分野等での雇用創出に向けての課題、主に雇用政策研究会などでの議論を踏まえたものとなっております。それから、4番目は、重層的なセーフティネットで、生活支援戦略等を踏まえたもの。それから、震災復興のための雇用・労働対策となっております。その他では、国際関係等を触れております。それでは、それぞれについて御説明いたしますが、時間の関係もありますので、端折りながらご説明をさせていただきます。
 まず第1点目は、「全員参加型社会」の実現ということです。そのうちの1点目が若者の雇用安定の確保ですが、これにつきましては先般、雇用戦略対話で「若者雇用戦略」を策定いたしましたので、それに基づいて厚労省部分の対策の推進を行っていくものです。内容は、いくつか多岐にわたっておりますが、まず1は、大学等の新卒者・既卒者に対する支援で、ジョブサポーターによる支援、あるいは大学に相談窓口を設置する等の取組を行っていくものです。
 2は、若者の採用や育成に熱心な中小企業を「若者応援企業」ということで宣言していただいて、そうした企業を集めて面接会の実施等を行っていこうというものです。3、4はキャリア教育の推進、あるいはキャリア・コンサルティングの活用促進等を図っていくというものです。5はフリーターの方のキャリア形成・正社員転換で、わかものハローワーク等、あるいはトライアル雇用等を活用した支援を図っていくものです。
 3ページ目の6は、ジョブ・カード制度で、公的職業訓練での活用を図る、あるいは「ジョブ・カード普及サポーター企業」の開拓等を進めていくことでジョブ・カード制度の推進を図っていこうと考えております。7がニート等の若者の職業的自立支援ですが、地域若者サポートステーションにつきまして、特に、新たに在学生に対する支援ですとか、あるいは中退者に対する支援、こういったものを強化していくことを考えております。8は高校中退者等に対する学卒者訓練の受講支援を行うというものです。
 全員参加型社会の2番目ですが、女性の活躍促進による経済活性化で、これにつきましては関係閣僚会議で先般議論をして、行動計画をまとめました。通称、働く「なでしこ」大作戦という言い方をしておりますが、これに基づいた対策を推進してまいりたいと思います。特に1ですが、男女雇用機会均等対策の推進で、「女性の活躍促進・企業活性化推進営業大作戦」とありますけれども、企業にポジティブ・アクションの取組等を働きかけをしていくことを進めていきたいと考えております。
 4ページ目ですが、3で仕事と育児の両立支援策の推進、あるいは4で保育士確保対策の推進を進めていくとともに、5ではやや新しい分野といたしまして、仕事と介護の両立支援策推進といったものについても取り組んでいきたいと考えております。
 全員参加型社会の3番目ですが、障害者の就労促進ということです。特に1ですが、障害者権利条約の批准等に対応していくために、障害者雇用促進制度の見直しについて検討してまいりたいと考えております。また2ですが、法定雇用率が来年の4月から引き上げになりますので、それを踏まえた雇用率達成指導の強化等を図ってまいりたいと考えております。その他34では、きめ細かな支援ですとか、能力開発の支援等を行ってまいりたいと考えております。
 全員参加型社会の4番目ですが、高齢者の就労促進ということで、5ページ目ですが1で年齢にかかわりなく意欲と能力に応じて働くことができる「生涯現役社会」の実現に向けて取り組んでいきたいと考えています。その他、再就職の援助ですとかシルバー人材センターの活用を図っていきたいと考えています。
 続きまして6ページ目ですが、全員参加型社会の5番目として、やや新しい分野ですけれども治療と職業生活の両立支援の推進ということで、これは先般の提言型仕分け、この後で若干説明しますが、提言型仕分けでも提案された案件でありまして、病気を抱えて治療をしながら職業生活と両立していくことができるような支援をしていくというものです。こういった取組を進めていこうと考えております。
 2番目の柱ですが、「ディーセント・ワーク」の実現です。その1番目の柱としては非正規雇用の労働者の雇用の安定・処遇の改善ということで、1として、今日も参議院で議論されましたけれども、改正労働契約法の着実な施行をしていきたいことと、2ですがパートタイム労働につきましては、建議もいただいていますけれども、さらに労働法制の整備を行っていきたいと考えています。
 7ページの3ですが、有期・短時間・派遣労働者等安定雇用実現プロジェクトとありますけれども、ともすれば有期とかパート、派遣とやや縦割り的な行政になりがちであったところを、横串的に非正規労働者の雇用の改善に取り組んでいこうというものです。具体的にはガイドラインを策定し、各事業所で雇用管理の改善に取り組んでいただく。あるいは国としても支援していくということです。4ですが、労働者派遣制度につきまして改正法ができましたけれども、さらに附帯決議等に基づきまして専門26業務の在り方等について、検討を進めていきたいと考えています。
 7ページの(2)ワーク・ライフ・バランスの実現ですが、1の過重労働の解消で年休の取得促進ですとか長時間労働の抑制等に取り組んでいきたいと考えています。8ページの6でバス、トラック、タクシーの自動車運転者の長時間労働の抑制。最近も痛ましい事故がありましたが、こういった自動車運転者の長時間労働抑制のために、業を所管している国土交通省と連携して、労働条件の改善等を図っていきたいと考えています。
 (3)は労働者が安全で健康に働くことができる職場づくりでして、1は業種の特性に応じた労災の防止とありますが、最近では小売業ですとか社会福祉施設等での事故、重篤な災害というよりは事故の件数が大変多くて、かつ安全に対する意識がややもすれば低いという傾向がありますので、こういった業界に対する労災防止の取組を強化してまいりたいと考えています。それから陸上貨物運送事業ですとか建設業については、まだまだ災害が多いということで、対策を引き続き取り組んでまいりたいと考えております。
 続きまして、9ページです。4、5とアスベスト対策あるいは化学物質対策に取り組みますとともに、6ですが安全衛生法の改正について、今国会に提出しておりますけれども、それを踏まえましてメンタルヘルス対策の推進を図っていきたい、あるいは7受動喫煙の防止対策のための支援を行っていきたいと考えています。
 9ページ(4)ですが、良質な労働環境の確保ということで、最低賃金につきましては、まず雇用戦略対話での合意を踏まえまして、最も影響を受ける中小企業への支援を引き続き実施していきたいと考えています。また2で非常に個別労働紛争が複雑・困難化しておりますので、総合労働相談コーナーの体制の強化を図る。あるいは10ページの3で、いわゆるワークルールの普及促進を図ることを考えています。また4ですが、パワーハラスメントにつきましては先般、円卓会議の提言が出ましたので、それを踏まえて周知・広報等を行っていきたいと考えています。
 3番目の柱ですが、成長分野での雇用創出あるいは人材の育成を図っていくということで、雇用政策研究会等で多くの議論がされたところです。まず(1)成長分野等での雇用創出の推進の1ですけれども、「大規模戦略産業雇用創造事業(仮称)」となっておりますけれども、現在でも市町村などの単位で事業所と自治体と一体となって、雇用創出のための事業を行っておりますが、都道府県単位のより大規模な形で、そういった事業が行えるように検討しています。
 続きまして11ページ、2ですが成長分野における雇用創出・人材育成等の支援ですが、いまでも成長分野の人材育成をしまして訓練等を行った場合に、「成長分野等人材育成支援事業」等の支援が受けられるわけですけれども、その対象となる産業ですとか職種をさらに拡大する等、使いやすくしていくことを考えています。併せて特に地域で雇用を作っていくという場面で、核となる「雇用をつくる」人材が非常に大きな役割を占めるということが、雇用政策研究会等でも指摘されています。それについて、さらに深掘りして検討していきたいと考えています。
 また3で成長分野等の中小企業において、さらに魅力的な職場づくりに取り組んでいただけるようなプロジェクトを推進して行きたいと考えています。その他、福祉分野の人材確保等に取り組んでいきたいと考えています。
 11ページ(2)ですが、成長分野での人材育成ということで、1成長分野を中心に離職者の訓練ですとか、2は在職者の訓練、あるいは12ページの3ですが企業で行う人材訓練、そういったものでの取組を推進していきたいと考えています。
 12ページの(3)ものづくり分野での人材育成の推進ですけれども、特に2ですが、ものづくり立国の推進ということで、企業のOB等で非常に優れた技能をお持ちの方に、たとえば、ものづくりマイスターということで、若い方々に技能を移転していただくための事業を行っていきたいと考えています。
 13ページですが、(4)職業生涯を通じたキャリア形成の支援ということです。1ですが労働者・企業に対する職業能力開発支援ということで、現在キャリア形成促進助成金がありますが、これについて若者ですとかグローバル人材、あるいは成長分野やものづくり分野、こういった政策課題に応じて、重点的にメリハリを付けていくことを進めていきたいと考えています。4ですが、職業能力評価基準につきまして整備を図るとともに活用の促進を図る等の取組を進めてまいりたいと考えております。
 14ページです。4の重層的なセーフティネットの構築ということで、これにつきましては、厚生労働省全体として生活支援戦略ということで取り組んでいるところです。特に1ですが、生活支援戦略の中では生活保護制度の見直しということと併せて、自立支援、就労支援というのが柱になっていますが、その就労支援についてはこの1の対策、生活保護受給者あるいは生活保護受給者に陥るおそれのあるボーダー層の方に対して、自治体と一体となって就労支援を行っていく。従前からここについては毎年のように拡充を図っていますが、さらに拡充を図っていきたいと考えています。
 それから2ですが、離職者の公共職業訓練あるいは求職者支援制度による訓練、こういったものを受けられた方の最終的な目標は就職できるということですので、就職に向けて訓練機関とハローワークの連携を強化していきたいと考えています。
 14ページ下にありますが、5番目の柱として震災復興ということです。15ページの1は昨年度の補正予算で行いました雇用創出のための事業を2つほど書いてあります。こういった事業を活用していくことと併せまして、新たに2、福島の避難者の方が帰還されるのにあたり雇用の場が必要ですので、雇用促進を図ることを自治体や地域の経済団体等にお願いするための事業を推進していきたいと考えています。
 その他、復興工事における労働者の安全確保ですとか、放射線管理の指導等を行っていきたいと考えています。
 6のその他ですが、国際関係ということで、外国人の適正な就業の促進ですとか、あるいは16ページの2ですが、日系人等の定住外国人の雇用リスクが高いものですから、介護等の分野での職業訓練等を推進していきたいと考えています。5ですが、技能評価システムをアジアの諸国などに移転していく。あるいは6ですがILOを通じた国際協力を推進していく。こういったことを進めてまいりたいと考えています。
 以上いろいろと申し上げましたが、さらに政府全体の取組といたしまして、資料2を御説明いたします。資料2-1が日本再生戦略で、本日の朝、閣議決定されたものです。フロンティアを拓き、「共創の国」へ、というタイトルになっていますけれども、基本的には目次をご覧いただくとよろしいかと思います。一昨年、新成長戦略を策定しまして、その後、震災等大きな変化があったということで、それを補完するような形で作っています。それで目次の2頁目、裏側になりますけれども、2.(2)1にすべての人々のための社会・生活基盤の構築「生活・雇用戦略」というのがありまして、ここで主に労働関係の政策が含まれており、基本的には2020年までの目標ですとか、対策の基本的な部分は新成長戦略を引き継いでおります。若者雇用戦略や「女性の活躍促進による経済活性化」行動計画、あるいは生活支援戦略と新たに加わった部分を補強してある形になっております。本文は50頁以降にありますが、時間の関係で説明は省略させていただきます。
 資料2-2です。「若者雇用戦略」の概要とあります。こちらは、今年の6月12日の雇用戦略対話で決定されたものでして、その前段では雇用戦略対応ワーキンググループで議論された内容です。戦略の基本的な枠組みは、機会均等・キャリア教育、主に学校現場における取組と、それから就職の現場、雇用のミスマッチの解消。社会に出てきてからのキャリアアップの支援、こういった3つになっておりまして、それぞれ文科省や厚労省などが中心となって取り組む事項になっております。具体的な事業については、先ほどご説明したものに含まれているということですので、説明は省略させていただきます。
 資料2-3です。「女性の活躍促進による経済活性化」行動計画です。先ほどの若者雇用戦略は雇用戦略対話なので、労使学校関係者等ですけれども、こちらは関係閣僚会議で決定されたものでございます。「働くなでしこ大作戦」という名前を付けておりまして、柱としましては3点、1番目は男性の意識改革、2番目がポジティブ・アクション、3番目が公務員から率先して取り組む、となっております。具体的な取組は、先ほどの中でご説明しましたけれども、特に1のところで、企業のご理解をいただくことで、女性の活躍促進・企業活性化推進営業大作戦を行いますというようなことなどが含まれています。ちなみに営業大作戦というのは、厚労省からお願いをしていくということですが、その目標値はその裏の頁で、工程表になっています。時間の関係で、だいぶ端折りながらの御説明になりましたけれども以上でございます。

○諏訪会長 
 それでは、これらの説明について質問、意見がございましたら、御発言いただきます。

○川本委員 
 鳥原委員が急遽出席できなくなったため、御意見を預かっております。それも含めて、3点ほど意見を申し述べたいと思います。
 まず1点目です。「重点事項(案)」の4頁の(3)の1に、「障害者雇用促進制度の見直し」があります。障害者の権利条約の批准に向けて、障害者基本法や障害者総合支援法など、国内法制の整備が行われているところです。厚生労働省でも学識者による研究会報告書が取りまとめられつつあり、今後は障害者雇用促進法の見直しを視野に、労働政策審議会での議論が行われます。論点の1つが、障害を理由とした差別の禁止です。何が差別に該当するかが不明であれば、企業の現場で混乱をきたすわけです。したがって、差別禁止の在り方や職場での提供が求められる合理的配慮の在り方などについては、事業主の予見可能性が十分担保できる枠組みとしていただきたいと思っています。具体的には、現行の障害者雇用促進制度の中で、障害者手帳制度を前提にして、差別行為の基準や要件を明確化する必要があります。また、実効性を高めるためには、障害者雇用納付金を活用して、事業主の負担軽減を図ることが不可欠と思っております。
 2つ目の論点は、精神障害者の雇用義務化についてです。精神障害者を雇用するには、医療機関との連携など、特有のノウハウが必要であり、企業側の理解や公的機関の支援体制などが不十分な現状では、精神障害者の雇用環境の整備強化が優先されるべきと考えております。企業経営への影響や納得感といった観点を十分踏まえながら、慎重な議論を行うよう求めていきたいと思っております。
 2つ目は、資料1の6頁の2-(1)、「非正規雇用の労働者の雇用の安定・処遇の改善」です。この項目の7頁目の3で、「望ましい働き方ビジョン」に言及があることについて、一言申し上げます。労働者の雇用の安定に向けた施策については、私どもも非常に重要であると考えています。そのために、直近でも三者構成の労働政策審議会での建議を経て、法律改正への対応も含めて、さまざまな対応を行ってきているわけです。
 しかしながら、このビジョン自体は労使の関与なしで取りまとめたものであり、その中で掲げられた課題なり施策の方向性、さらに言えば根底に流れている考え方についても、私どもとしては到底容認できないものも多々ございます。この点については既に本審の下部の分科会などで、私どもの考え方を申し上げています。本日は内容の細部には触れませんけれども、少なくともこのビジョンを基に、国民的な議論を喚起することに加え、「重点事項(案)」に盛り込むこと自体、問題が多いと思っています。今後、このビジョンを政策に反映しようということであれば、誠に遺憾だと言わざるを得ないということを申し上げておきたいと思います。
 3点目が資料2-3、「女性の活躍促進による経済の活性化について」です。今回の行動計画では、女性の活躍促進の「見える化」総合プランの策定・推進が謳われています。そこに「企業の情報開示を強力に推進する」「開示情報の一覧性や業種ごとの比較を容易とする仕組みを作る」という記述がありますけれども、各社の考え方、労務構成がさまざまである中で、比較するのは難しい面もあります。どのような仕組みを想定されているのかわかりませんが、各業界、各社のさまざまな実情や違いを十分考慮したものとなるよう、検討いただきたいと思っております。
 また、企業等へ直接訪問すること自体については、全く反対するわけではありませんけれども、情報開示をさせるために、過度な取組は避けていただきたいと思っております。むしろ直接出向いていただけるということですので、いま企業が置かれている状況等について、企業の生の声も聞いていただければと思っております。いずれにしても開示するか否か、あるいは開示する場合の内容については、企業の裁量に任せるべきものと考えております。強制的な開示ということがないように、是非お願いしたいと思います。

○渡邊委員 
 2ページの(1)の「若者の安定雇用の確保について」の2、「若者と中小企業とのマッチングの強化について」の意見を申し上げたいと思います。若年者雇用の本質的な問題解決のためには、キャリア教育の推進などにより、学生の勤労感の醸成を図っていくことと、基礎的な能力の向上が不可欠と考えております。また、現在の就職活動は大手企業に就職できなかった多くの学生が、志望先を中小企業に変えて就職しております。これを改めて、学生が最初から中小企業を希望するような仕組みが必要ではないかと思っています。そのためにはインターンシップなどの教育機関と、中小企業とを直接的につなぐ仕組みを拡充し、個々の企業の魅力を学生が体感できる機会を数多く設定し、学生や学校の個々の中小企業に対する意識、イメージを刷新することが重要と考えております。若者の安定雇用の取組に当たっては、厚生労働省の先導により、文部科学省などの他省庁と連携して推進していくことが必要と考えております。

○土谷委員 
 先ほどの川本委員の御発言に補足して、意見を申し上げたいと思います。私も女性が活躍できる社会をつくっていくことは、非常に重要な課題であると考えております。イオンにおいても、グループで働く女性従業員は海外を含め、35万人のうち25万人おり、女性が活躍できる企業への取組が非常に重要であると認識しています。
 イオンでは現在、ポジティブ・アクションへの取組を行っております。海外を含めたグループの女性役員は前年20名に対して、現在36名です。そのうち、私を含めて7名が社長で、女性役員比率は前年の3.2%に対して、今年は5.8%という形で進捗しております。また、2020年までに女性役員比率を30%まで引き上げるという目標を掲げて、部長職も3.0%から5.5%、課長職も6.7%から12.3%と上がってきています。
 今回まとめられた行動計画を拝見しますと、有価証券報告書やIR報告書など、公表方法の在り方を含めとありますので、川本委員が懸念するように、企業に強制するような手法が想定されているのではないかと、実は危惧しております。我々もサスティナビリティー報告書をホームページ上で開示している中では、女性役員比率の向上を目標に掲げて取り組んでいます。私自身もCSRを担当していたので、その視点で申し上げますと、やはり強制力を伴って企業に開示させるやり方は、企業の自主性を阻害するのではないか、企業の裁量に委ねるやり方のほうが、より実効性が上がるのではないかと考えております。
 したがって、企業それぞれが自らの目標と課題を認識して、課題解決をしていく上でのプロセスそのものが、企業の体質、競争力を強化することにつながるのではないかと考えております。いずれにしても行政におかれましては、企業の取組に対して側面支援の役割を期待したいと考えております。

○篠田委員 
 御説明のあった「重点事項(案)」のうち、7ページの4の「労働者派遣制度の在り方についての検討」に関連して、意見を申し上げたいと思います。今後の検討に当たっては、是非2つの点を踏まえて進めていただきたいと思います。1点目は、わかりやすい制度としていくことが大切だということです。労働者派遣制度の専門26業務の在り方等に検討が挙がっておりますが、一昨年、26業務の適正化プランが突然実施されて、現場に大きな混乱が生じたと聞いております。このような事態が生ずる原因としては、やはり制度の複雑さやわかりにくさという根本的な課題があると思います。制度の見直しに当たっては、企業の現場の実態に即したわかりやすい制度としていく方向で、検討をお願いしたいと思います。
 2点目は、需給調整機能の迅速性という観点で、労働者派遣制度のメリットを損なうことのないようにしていっていただきたいということです。労働者の雇用の安定が重要であることは言うまでもありませんが、労働者派遣制度を通じて、多くの就業機会が創出され、労働者側・企業側双方に、大きなメリットがもたらされていることも事実です。労働者派遣制度が有する雇用創出効果を強化していくような方向性についても、御検討願えればと存じます。

○三浦委員 
 私からは8ページにある安全問題について、2点申し上げたいと思います。1の来年度の重点事項の中で、小売業や介護事業などの第三次産業、陸運業での労災防止に向けた対策の推進が盛り込まれております。安全に対する第三次産業全体の意識が低いということですが、努力している企業もあるわけです。そういう面で言うと、決めつけというのはどうかという点はあります。いずれにしても、実際にまだまだ取り組まなければいけないことがあることは事実です。そういう中において、今後の推進に当たっては、これまで長年にわたって労災防止に積極的に取り組み、実際に労災を減少してきた実績のある製造業などで、具体的な取組事例があります。こういったものを是非参考に入れていただければと思っております。
 2つ目に、本日の資料にはありませんけれども、第12次の労働災害防止計画の策定が、安全衛生分科会で検討が進められています。先ほど来、いろいろな意見が出ておりますけれども、実態は個々ですので、ヒアリングなどを含めて業界や個別企業で十分実態を把握し、それを踏まえた現実的な内容としていただきたいということをお願い申し上げておきたいと思います。

○諏訪会長 
 いま、使用者側の皆さんの御意見が続きましたので、この辺で労働側に振らせていただきます。それでは落合委員、どうぞ。

○落合委員 
 資料2-1の日本再生戦略の考え方を踏まえた上で、労働政策の重点事項を是非展開していただきたいと思います。日本再生戦略の中でもよく言われていて、野田総理もよくおっしゃっている、分厚い中間層をつくっていくということです。日本再生戦略の中にも、社会全体の幅広い人々が成長の果実を享受できるような、いわゆるインクルーシブな成長を目指していく。そのための雇用創出、雇用の質の向上、教育などを通じて、分厚い中間層をつくって復活を目指すと書いてあるわけです。その中で人材戦略をどう展開していくかということです。
 日本はご存じのように、就業者の約90%が雇用労働者ですから、まさしく雇用社会に入っているわけです。そういった意味では雇用政策を国の基本政策の中心に据えた政策として、強力に推し進めるべきだろうと思っております。とりわけ、デフレ経済が続いている中においての最大の課題は、やはり国内需要を高めていくことであろうと思います。国内需要を高めるということは、雇用労働者の質と量を高めていくことであり、雇用労働者の消費購買力をもっと高めていくことでもあるわけですから、循環していくようなシステムをつくり上げていくことだろうと思っております。
 インクルーシブな成長を実現するためには、ジョブレスリカバリーのような、企業内での産業の競争力強化では駄目だと思っております。なぜかと言いますと、先日、私どもは労働組合で雇用の問題等々、日韓の定期協議でいろいろ論議をしました。そのときに「最近、日本の場合は韓国の経済に学べとか、韓国のグローバル大企業競争を学ぶべきだという礼讃があるけれども、内実はそんなものではないよ」と、向こうのほうから主張がありました。これは韓国の大財閥というか、大企業を中心にして、大企業の成長の果実が国内の中に降りてきていない、はっきり言ってトリクルダウンがされていない、海外に出るかということで、一部の大企業に富が集中し始めてきている。失業者の数え方は国ごとに違いますが、いま、日本国内はデータ上では4%台の失業率だけれども、実質は10数パーセントの失業率という状況であると言われています。
 そういう成長では駄目だろう。ここに「特に地域に根ざした良質な、かつ安定的な雇用の拡大を伴った再生戦略が求められる」と書いてあります。このとおりだろうと思います。特に重点的には、地域の雇用をどう創出していくかということを強調していただきたいと思います。具体策としては成長分野での雇用創出、人材の育成の推進というのが記されておりますし、「大規模戦略産業雇用創造事業の創設」、「新産業・成長分野雇用支援トータルプラン」などがここへ出てきておりますが、果たしてこれだけで十分な対策が講じられるだろうかと思っております。
 また、いま「地域の雇用情勢が重要だ」と言いました。現実は復興事業などによって、ちょっと回復傾向を示した所もありますけれども、依然として厳しい状況が続いていることはご承知のとおりだろうと思います。地域によってまだまだバラ付きがあります。これは補正予算等での対応になるかもしれませんが、既存の雇用創出の基金による事業の継続・拡充などを図りながら、持続的に良質な雇用が創造され、雇用創出した後もスムーズな労働移動と言いますか、転職支援システムといったものも、きめ細かにやっていく必要があろうということで、このきめ細かさを強調しておきたいと思います。
 先日の国家戦略会議の下にあるフロンティア分科会のような論議が、決してされないようにと思います。分厚い中間層を増やすのではなくて、分厚い中間層が貧困化するような、40歳定年制とか有期雇用の問題等々が論議されるような、馬鹿げた話が公的な場において論議されないように、ひとつ真剣に論議をしていただきたいと思っております。

○南雲委員 
 若者雇用戦略について申し上げます。若者雇用戦略の実現に向けては、雇用の質の改善や即戦力指向の体質の改善、学生の基礎学力の向上などを含め、まさにオールジャパンで若者雇用に対する施策を、思い切って講じるべきであると思います。若者への投資は、結果的に企業の利益はもとより、国の財政や社会保障の安定にも寄与するなど、社会全体でその利益を享受することになることを、基本認識として取り組むことが重要です。
 そのために、連合は「働く場をつくる」「働く力を付ける」「働く場と結ぶ」「働き続けられる」の4分野における政策を同時に進めていくことが重要と考えております。労働者数ベースで3割弱、企業数ベースで9割以上を占めております。中小企業は地域に根ざした事業活動を展開しており、中小企業対策は地域雇用対策でもあります。地域を中心とした雇用創出を、若者雇用戦略と並ぶ国家戦略として位置づけるとともに、省庁間のリーダーシップを発揮いただき、十分な連携を図り、PDCAサイクルを着実に回していくことが求められていると思います。若者雇用戦略に盛り込まれた具体的施策については、予算は限られておりますが、可能な施策については、今年度から実施していただきたいと思います。
 もう1点は、「雇用保険二事業に関する懇談会」と「社会復帰促進等事業に関する検討会」への、労働者側の参画について意見を申し上げます。雇用調整助成金をはじめ、我が国の雇用・労働政策は、一般会計からの支出も含めた財源の9割以上が、労働保険特別会計を財源とする事業により行われております。これらの事業の検討を行う「雇用保険二事業に関する懇談会」、及び「社会復帰促進等事業に関する検討会」には、当事者である労働者側が参画できておりません。特に「社会復帰促進等事業に関する検討会」については、「社会復帰促進等事業に係る目標管理に関する基本方針」に、「社会復帰促進等事業に関する検討会における検討結果については、労災保険部会においても議論を行い」と記載されているにもかかわらず、本日開催された労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会において、社会復帰促進等事業に係る実績評価、成果目標が審議案件ではなく、報告案件の取扱いであったことは問題です。
 労働者側が参画できないのは、使用者側が財源を負担しているからというのがその理由と聞いております。しかし本来、雇用・労働政策の検討はILOの三者構成主義に基づいて、公労使の参画が求められるはずです。「雇用保険二事業に関する懇談会」及び「社会復帰促進等事業に関する検討会」については、公労使が参画する会議となるように、お願い申し上げておきたいと思います。

○塩谷委員 
 先ほど何人かの委員から、女性の就業拡大についての御発言がありましたが、私からは資料1の4ページの3の「仕事と育児の両立支援策の推進」と、4の「保育士確保対策の推進」に関連して発言します。先ほどから、女性の活躍を推進することが経済の活性化につながるということで、政府の女性の活躍による経済活性化行動計画の策定など、さまざまな場で論議をされているということは、大変心強いことだと考えております。ただし、そのためにはまずしっかりと裾野を広げる、女性の就業率を上げていくことが非常に大事だと考えております。
 そこで1つ問題なのが、女性の就業継続という観点です。現状に目を向ければ、いまだに仕事との両立の懸念などから、第一子出生時に6割強の女性が仕事を辞めているという実態があります。妊娠・出産、育児との両立支援というのが、女性の活躍による経済活性化の下支えであるということを、改めて公労使で認識を一致させたいと考えております。
 これには2つの大きな観点があると考えております。1つ目は、企業内での環境整備です。多くの職場で環境整備が進んできているとはいえ、残念ながら安心して妊娠・出産を迎えるための職場環境や労働時間への配慮が不足しているという実態も、まだまだあると考えております。ここについて引き続き公労使三者で協力しながら、環境整備に力を入れていきたいと考えております。
 2つ目は、雇用政策の枠を若干外れる部分もあるかもしれませんが、やはり待機児童対策や保育所整備、放課後児童クラブの整備など、社会全体での環境整備という観点も忘れてはいけないと考えております。産休明けや育休明け、「小1の壁」という言葉が依然として存在しております。男性の育児参加や育児休業取得にも取り組んでいく必要がありますが、社会全体として就業継続、もしくは女性が一旦仕事を辞めてから再就業するための保育、学童保育の整備も、経済活性化に向けて併せて取り組んでいっていただきたいと強く考えております。

○八野委員 
 私からは2点の提言をしたいと思います。1点目は、日本再生戦略の中に少しだけ触れられているのですが、雇調金を平常時に戻すというのが入っております。後ほど出てくる提言型政策仕分けの中にも出ていると思います。今月開催された職業安定分科会で、出口戦略として雇調金の支給要件の見直しが提案され、了承されていると聞いております。リーマンショック後又は東日本大震災後に、雇調金に助けられた労使はかなり多くあるのではないかと思っています。それを十分認識した上で、要件を緩和する際には私たちもかなりお願いして、機動的に対応していただいたという評価には非常に高いものがあると認識しております。
 そこで元に戻す際の判断は、なかなか難しいと思っていますが、今回の見直しは最近の雇用情勢を踏まえると、やむを得ないと受けとめております。ただし雇調金というのは、今回のような非常に機動的、なおかつ柔軟な対応が持ち味の雇用政策だと捉えております。いまの欧州の財政危機、財政金融不安、又は米国経済の停滞ということで歴史的な円高が続く中で、今後の景気の状況、雇用情勢又は予測できない事項などが起きてくるといったときには、必要な対策を機動的かつ柔軟に講じられるようにお願いしたいと思います。
 もう1点は、労働政策の重点事項の中のワーク・ライフ・バランスの実現の所で、過重労働の解消と仕事と生活の調和の実現に向けた働き方・休み方の見直しです。私からは長時間労働の削減についてお話したいと思います。長時間労働の抑制が重要な施策であるということは、このメンバーの皆さんはご承知のとおりだと思います。この中に「労使の自主的な取組の支援」というのが書かれております。これは重要なことではあるわけですが、この視点だけでは、まだ改善できるものにはなっていないだろうということです。先般公表された平成23年度の脳・心臓疾患と精神障害の労災の補償状況においても、過労死又は過労自殺による労災補償請求の件数、支給件数ともに増加しております。特に脳疾患についてはここ数年、300人程度の方々が労災認定されているという報告が載っているわけです。これは現状として、全く減っていない状況であると言わざるを得ません。
 長時間労働は、依然として深刻な問題であると言わざるを得ないと思っています。支援策とともに、労働基準監督行政による指導が必要です。とりわけ1番目として労働組合のない事業所や小規模事業所、2番目として36協定、特別条項付協定で時間外の限度時間を長く設定して届けている事業所、3番目として労災請求が行われたり、実際に労災補償の支給決定がされたりした業種の事業所等について、時間外労働の実態を踏まえて、重点的に取り組んでいただきたいと思っております。
 もう1点は、中小企業に対する労働基準法の月60時間超えの時間外に対する割増率50%の適用猶予措置の見直しについてです。これについては早期に労働政策審議会で議論ができるように、準備をお願いしたいと思っています。また、実態調査を行うということですが、36協定や特別条項付協定の締結状況又は締結の当事者、過半数労働組合や過半数従業員代表、又は延長時間数などについても調査項目に入れる等していただいて、実態を詳細に把握・分析できるように、調査をお願いしたいと思います。以上、2点をよろしくお願いいたします。

○西原委員 
 8ページの「労働者が安全で健康に働くことができる職場づくり」に関連して、問題意識も含めて申し上げます。この分野は労働者の命と健康にかかわる問題であることから、労使の徹底した妥協のない取組が要請されるとともに、行政としての役割発揮も、社会的に強く要請されていると考えております。
 一方、現状を見ますと、労働災害による死傷者数は2年連続で増加しています。この2年連続の増加というのは、33年ぶりだと聞いております。そういった意味では労働安全衛生をめぐる今の状況というのは、まさに緊急事態と言っても過言ではないのではないかと思います。また、精神障害の労災請求件数、あるいは支給決定件数についても増加の一途にあるということです。
 加えて、記載にもありますように、東日本大震災からの復旧・復興の作業が本格化しつつあります。また、福島第一原発事故の収束に向けて、除染も含めて大変厳しい環境の中での懸命な作業が継続しています。そういった中で、これらの分野についても労働安全衛生面からの強力なサポートが、極めて強く要請されると思います。
 それから、直近でマスコミ等からもかなり報道された、いわゆる印刷事業場における胆管がんの発生等については、すでに連合からも厚生労働省に対して、緊急要請を実施したところです。ショックを受けたのは緊急の一斉点検で、法令違反等問題のある事業所が8割近かったという実態が報道されていることです。私はいま改めて、労働者の労働安全衛生の強化が図られなければならない状況に置かれていると思います。
 一方で実態を見ますと、労働安全行政の原資となっている社会復帰促進等事業予算額は、いわゆる徹底した削減等々で、目標とされた917億円からもさらに減少の一途にあるというのが今の実情です。職場におけるメンタルヘルス対策、受動喫煙防止対策に向けた労働安全衛生法改正案の早期成立を強く求めるとともに、職場における労働安全衛生をいかに確保するかについては、厚生労働省としてもより危機感と切迫感を持って取り組んでいただきたい。もちろん労使の果たすべき役割が大きいことを前提とした上で、そのことについては問題意識も含めて、強く申し上げておきたいと思います。

○宮原委員 
 この後、重点事項を踏まえて、政府内で来年度具体的な施策についての検討が進むものと思います。申し上げたいのは、その際の財源の在り方についてです。先ほど来、すでにご意見も出ておりましたが、雇用対策をめぐっては、最近でこそ一般財源からの施策も増えてきているけれども、その多くは依然として事業主が拠出する保険料によって賄われる雇用保険二事業が中心となっています。ただし、この雇用保険二事業はリーマンショック以降、あるいは大震災以降、雇用調整助成金を中心に相当程度の支出がなされております。現在は雇用保険本体からの借入れを行わざるを得ないという状況だということは、ご承知のとおりです。
 したがって、来年度に向けた施策の展開とその予算を検討するに当たっては、雇用保険二事業の財政状況を、十分考慮に入れていただきたいと思います。申すまでもなく、ただいまの経済状況、ヨーロッパの金融不安、円高といったことを考えますと、財源の問題は大きな問題と考えざるを得ません。したがって雇用保険二事業については、優先度や緊急度を明確にした上で、優先度の高い事業に重点的に財源を振り向けて、同時に優先度の低い事業については、廃止や凍結あるいは大幅な縮小について検討をお願いしたいと思います。

○坂戸委員 
 私は中小企業の立場に絞ってお話したいと思います。「重点事項(案)」の2ページにある、若者の安定雇用の確保と成長分野等での雇用創出、人材の育成の推進というのは関連がありますので、この2つについてお話します。まず、安定雇用の確保です。キャリア教育の充実など、現行の教育制度へのさらなる改善策が打ち出されています。当然、学校を出て社会に出る方が、社会教育をしっかり受けて職業意識を持って出てくだされば、それを受け入れる企業としても大いに歓迎するわけですが、これには時間もかかるし、お金もかかるだろうというのは承知しております。
 ただ、現行の取組の中でも、これについて大きな効果を発揮している取組があります。それは厚労省がやっている職業能力開発大学、あるいは短期大学校です。ここの在学生あるいは卒業生というのは、もともときちんとした進路指導を受けているとは思いますが、社会参加へのしっかりした心構えが大変ありますし、職業に対する目的意識というものをはっきり持って、そこで学んでいるわけです。ですから我々中小企業は幹部社員の獲得に、大変広く使わせていただいているわけです。こんな立派なキャリア教育をなされている所があるわけですから、これを一般の学校教育でも参考にしてもらうように努力しなければいけません。財源の問題もあるのでしょうが、こういう実践的な施設というのを、もっとしっかりと充実する必要もあるし、学校にPRしていく必要もあるだろうと思います。
 それに伴って、「成長分野等における人材育成の推進」というのが書いてあります。これは大変ありがたいことですし、当然のことだと思います。しかし日本の中小企業の多くが、実際には成長産業の中にそんなに多くは組み込まれておらず、既存産業の中で一生懸命生きているわけです。ここは厚労省ですが、既存産業の中で頑張っている中小企業は、経産省辺りでリストアップされているわけですから、既存産業で頑張っている企業に対する人材育成の支援というのも、「等」と書いてあるから大丈夫だと思いますが、もう少しはっきりと表現していただければ、ありがたいと思います。
 同時に、今回はものづくり分野での人材育成の推進ということも書いていただいております。私もものづくりに携わっているものですから、これは我々にとって本当にありがたいことだと思っています。ただ最初に申し上げたように、中小企業にとってどんな人材が大事かと言えば、やはりものづくりに興味を持っている子どもを増やすことです。そういう風土をつくっていかなければいけないということで、最初に申し上げたように、大学校や短期大学校を充実させることです。もう1つ、子どもたちにものづくりの面白さを知らせるためには、技能士などの活用が大事だと思います。残念ながら、技能士の受験生もだいぶ減っていると聞いております。厚労省におかれましては、この辺に対してしっかりとした財源処置を出されて、応援していただきたいということをお願い申し上げます。

○三浦委員 
 先ほど労働災害について、西原委員からお話がございました。我々も労働災害については、死亡者はもちろんですけれども、死傷者をトータルとして減らしていかなければいけないということについては、全く異論はありませんし、これからも努力していきたいと思っております。ただ、ここ1年は確かに若干増えているのですけれども、内容をよく吟味して見る必要があると思います。特に政策的には少し中長期的な視点で、労災防止の取組を実施していく必要があるのではないかと思っておりますので、一言だけ付言させていただきます。

○吉川委員 
 資料1の4ページの下段にある障害者の就労促進について、2点ほど意見を申し上げます。1点目ですが、(3)-2、「中小企業への支援等の強化や、地域の就労支援力の更なる強化について」です。今まででしたら法定雇用率が1.8%でしたが、来年4月から2.0%へ引き上げられる予定と聞いております。その対応に向けて、中小企業は0.2%の差が非常に大きく、小さい企業では1人増やさなければ、結果的に雇用率未達成になってしまう所もあります。1人の従業員に対して厳しい現在の状況の中で、それを進めていくということは、大変難しいことでもありますので、その支援策に対して中小企業にもっとわかりやすく、時間をかけて周知していただきたいということをお願いしたいと思います。
 2点目ですが、4ページ下段の「障害者権利条約批准等に向けた障害者雇用促進制度の見直し」についてです。分科会で議論する際には、中小企業の実態を十分に踏まえてお願いしたいと思います。企業が障害者の就労支援の重要性を十分に認識して取り組んできた結果、最近では障害者の雇用が右肩上がりの傾向で増えてきていると思っております。しかしながら円高やデフレ長期化、電力料金の値上げ、供給不安定などに加えて、社会保障費の負担増大や労働に関する規制強化など、中小企業は現在、厳しい経済環境に置かれております。障害者の就労促進に向けては、雇用の担い手である中小企業の実態を是非十分に踏まえた上で、取組をお願いしたいと思っております。

○川本委員 
 何名もの方から、雇用保険あるいは労災保険の関係で御意見が出ましたので、私も補足したいと思います。例えば、雇用保険であれば、かつては能開機構がありました。総合大学校とか各地域の大学などがあって、まさしく職業訓練をしていたわけです。現在は高・障機構に吸収された形になっております。また、失業なき労働移動ということであれば、産業雇用安定センターもあります。ここに雇用保険二事業のお金、事業主が負担している保険から資金が提供されているわけですが、近年、この効率化ということで、毎年毎年支出が削減されています。必要なものの予算が減っていくというのは、売上げが減るのと同じですので、企業であれば成り立たない、雇用さえままならない状況になってくる。職業訓練等も必要なわけですから、そういう意味で事業主は雇用保険を拠出しているので、是非とも優先順位を付けて、必要なものは重点的に大事にしていただきたいと思っております。
 労災保険も同じです。この保険料は労災そのものの保険で使われるだけではなく、いわゆる中災防等で事故が起きないようにどういうシステムをつくるかとか、訓練等にもお金が行っているわけです。しかし中災防に対する予算も、同じように毎年毎年減らされているわけです。したがって重要なものについては、是非お守りいただきたい。それが分かった上で、事業主も保険料を拠出しているので、是非事業主の意向を最大限尊重していただきたいと思っております。近年、一方的にどんどん減らされている、あるいは必要性のないものにお金が行っていることについて、私どもは非常に遺憾に思っているということを、この場で改めて表明させていただきます。

○諏訪会長 
 いま労使各側の委員の皆様からさまざまな御意見、あるいは御質問がありましたので、ここで少しまとめて行政側から御意見、あるいは御回答などがありましたらお願いします。

○森山職業安定局長 
 まず安定関係についてお話させていただきます。川本委員と吉川委員からもありましたが障害者関係です。障害者の関係につきましては、いま研究会を開いており、近々それをまとめていきたいと考えております。その中で差別禁止の在り方、あるいは合理的配慮の在り方、精神障害者の方々の雇用義務化の問題等々研究がなされております。近々、その研究会の報告をまとめて、次の段階として労働政策審議会の障害者雇用分科会で議論の予定です。その中で、いまお話があったような実情等を踏まえて、十分にご意見をお聞かせいただいて相談しながら議論を進めていきたいと考えております。
 障害者雇用の中小企業の実態につきましては、ご案内のとおり、いろいろな助成金につきましては中小企業の実態も踏まえて、大企業と比べて手厚く、例えば特定雇用開発助成金等々、助成額、助成期間等も手厚くしており、引続き私どもはそういう実態を踏まえて支援をしていきたいと考えております。
 2点目の川本委員からお話がありました「望ましい働き方ビジョン」につきましては、労使双方から分科会におきましてもご意見をいただいております。このビジョンにつきましては、非正規雇用問題に横断的に取り組もうということで、非正規雇用の労働者の雇用の安定や処遇の改善に向けて、公正な処遇の確保に必要な施策の方向性を理念として提示したもので、あくまで労働政策は公労使三者の合意により実施すべきものだという認識の下に、考え方を示したものです。平成25年度の概算要求におきましても、いろいろな取組をさせていただきたいと考えておりますが、具体的な個々の中身につきましては「日本再生戦略」の工程表にもあるように、労使の合意を得つつ検討していきたいと考えております。
 渡邊委員、南雲委員からの「若者雇用戦略」については、若者は厳しい状況にあります。その中で、オールジャパンというお話がありましたが、まさに労働界、経済界、教育界、政府を挙げて対策を組んでいこうということで、「若者雇用戦略」を作ったわけで、これをしっかりとやっていきたいと考えております。この中にはいろいろありますが、今年度できるものにつきましては、先ほど南雲委員からもありましたように、やれるものはすぐやっていく。また予算が必要なものについては、来年度予算で計上していきたいと考えております。
 渡邊委員からありましたようにキャリア教育の問題、中小企業とのマッチングについては、私どもは学卒問題を含めて中小企業とのマッチングが重要であると考えております。これを引き続きハローワーク等、あるいはジョブサポーターを活用してやっていきたいと考えております。何よりも、渡邊委員がおっしゃったように、関係省庁との連携をしっかりやっていこうと考えております。
 篠田委員からの「労働者派遣」については、労働者派遣法の改正におきまして、いろいろな検討事項が出ておりますので、今後、いろいろ実態を踏まえて検討を進めていきたいと考えております。附帯決議におきましても、篠田委員がおっしゃったように労使にわかりやすく周知等すべきだとありました。そういうものも踏まえて、十分に検討を進めていきたいと考えております。
 落合委員から、全体として再生戦略に基づいた雇用対策をしっかり進めるようにとありました。これは政府の閣議決定ですので、私どもしっかりこれを踏まえて進めていきたいと考えております。その中で、地域の雇用対策については、各地域の実情に応じて自治体が雇用創出に取り組んでいく、それを国が支援していくことは重要であると認識しております。詳しくは申し上げませんが、いろいろな緊急対策、雇用創出基金事業等々をやっており、また現在も実践型の地域雇用創造事業ということで、市町村レベルでの地域雇用開発を進めております。さらに平成25年度におきましては、都道府県レベルで少し大きめの地域の雇用対策を進めていきたいと考えております。
 南雲委員から「二事業懇談会の在り方について」御意見がありました。労働側の御意見の場については、今後ご相談させていただきたいと思っております。八野委員から雇調金の関係の御意見がありまして、これはいろいろ御意見がありました。ただ、私ども、これは緊急的に雇用状況が悪くなったときに、非常に役に立っていると考えております。いまお話がありましたように、分科会で雇調金につきましては、平常時に戻す対策をさせていただきました。これはそもそも雇調金の性質がそうですので、いろいろな財政状況が悪化した場合につきましては、柔軟に対応していくということで、これはいろいろな状況を踏まえて、御相談させていただきながらやっていきたいと考えております。
 宮原委員、川本委員からありましたが、雇用保険の財源につきましては、毎回審議会において御指摘をいただいております。私ども雇用保険二事業は大変厳しいことは十分承知しております。これにつきましてはPDCAをやりながら、また目標管理もしっかりやっています。川本委員もおっしゃったように、必要な所に出していくことも必要ですので、そのメリハリと言いますか、それにつきましては厳しく見直しをしつつ、重点化等々、御意見を踏まえながら進めていきたいと考えております。安定関係につきましては以上です。

○金子労働基準局長 
 何点か御指摘をいただきましたが、まず、使用者側の三浦委員、労働側の西原委員から、近時に起ける労働災害の発生状況に鑑みて、対策の強化は是非必要ということでした。両委員がご指摘のとおりで、死傷者数が2年連続で増加するという、極めて深刻な事態です。昨年末より、増加業種を対象として集中的な取組を進めているところですが、まだ増加傾向が続いている状況です。
 内容につきましては、発生件数で見ますと、小売業、あるいは介護施設などの第三次産業などでかなり件数が出ています。これは重篤度で言いますと、建設業や製造業の場合よりは軽いということに一般的にはなるのだろうと思いますが、件数がかなり出ておりますので、これに対する対策は、対策としてきちんと進めていかなければならないと考えております。
 この場合、製造業や建設業などでは、安全対策についての意識はかなり浸透しておりますが、第三次産業の場合には、企業の皆さんへの意識づけもやっていかなければいけない部分もあろうかと思います。
 陸上貨物の関係で災害がだいぶ増えております。中身は、従前はドライバーが交通事故を起こすことが多かったのですが、昨今の状況を見ますと、ドライバーの方が荷の上げ下ろしを荷主の方からの注文でやるケースがあって、普通、運転手は安全靴などは履いてないわけで、履いていない方が荷の上げ下ろしをやれば荷物が落ちれば怪我をすることにもなり兼ねないわけで、いまこれは国土交通省とも連携して、荷主の皆さんにもご協力をお願いするような方向で対策を進めているところです。これらの対策を進めるに当たっては、川本委員のお話とも関係するのですが、災害防止団体にいろいろなノウハウがあるのですが、最近、予算の制約等もあって、この辺りについて少し不十分な点が出てきているのではないかと。今後、対策を進めるに当たっては、中災防をはじめ災害防止団体に、これまで培ってきたノウハウなどを十分に活用しながら進めていくことが大切なことではないかと考えております。
 第12次の災防計画をいま作成に向けて検討を始めたところです。昨今のこういった状況を踏まえて、実態に合った、現場に即した災防計画を作っていきたいと考えております。
 西原委員から胆管がんのお話がありました。大阪の印刷事業場で多数の方が胆管がんを発症する事態になっており、いま我々としてもこれを大変重く受け止めて対応しているところです。印刷事業場について一斉点検をお願いしたところ、8割の所で関係法令違反があったということです。さらに印刷事業場での関係法令の徹底につきまして、約1万6,000事業場を対象に自主点検を進めて、その中からいろいろ問題がある所を中心に説明会や監督指導をやって、法令遵守の徹底を図っていきたいと思っております。また疫学調査を始めることにして、間もなく着手することにしております。労災の申請が、こういった関係で18人の方から出てきておりますので、こちらの対応につきましても、なるべく迅速に進むよう心掛けていきたいと思っております。
 南雲委員から「社会復帰促進等事業の取扱いについて」ということで、目標管理につきましては、三者構成の審議会できちんと議論をしていただくのが基本だろうと思いますが、さまざまな事業についての労働側の皆さんの意見の場と思いますので、その点については、さらに改めて御相談をさせていただければと考えております。
 労働時間の関係につきまして、八野委員からお話をいただきました。労働時間の関係は、現在、長時間労働の抑制に関しては、36協定を出していただいた際に、監督署の窓口におきまして指導を行っております。悪質事案に対しては、厳しい姿勢で臨むということでやっておりますが、先ほど来お話がありますように、過労死などを含めた労災の請求件数も非常に増えている状況ですので、一層の取組が必要ということについては、まさに御指摘のとおりだろうと思います。ただ、この関係の中で制度問題としては、前の労働基準法の改正の際に、月60時間を超えた所の割増賃金率を50%に引き上げる改正を行ったわけですが、中小企業につきましては、適用猶予措置を講じております。3年後、経過した時点で見直し検討という規定が入っておりますので、来年の4月がこの時期に当たることになります。なるべく幅広く実態を把握して、労働政策審議会で早期に議論が開始できるように努めていきたいと思います。私からは以上です。

○小野職業能力開発局長 
 坂戸委員から人材育成の関係で2点ほどお話がありました。能力開発大学校、あるいは短大の訓練の充実ということで、両校につきましては、実践的なカリキュラムを組んでいることもあり、就職率も98%ぐらいということで、この訓練につきましては、引き続き積極的に推進していきたいと思っております。他校にも参考にしてもらうようにということですが、例えば、千葉短大ではキャリア教育展を3日間開催して、中学生の職業観を養う公開授業などの取組をやっております。職業訓練指導員を高校に派遣して、職業体験実習などの取組を各地の大学校や短大でもやっておりますので、よりこれを広範にさらに普及させていきたいと思います。
 ものづくり人材、技能振興策の充実の件については、たしかに技能士をはじめとして、地域の熟練技能者の方によるものづくり体験教室や実技指導を小中学校の段階から、いろいろな節目節目で技能の魅力に触れる機会を設ける働きかけを、これから強めていきたいと思います。技能検定の受検者の拡大につきましては、受検ニーズの高い職種の新設をするとか、あるいは受検資格を緩和するとか、そういう形で具体的に検討を進めていきたいと思います。

○高井雇用均等・児童家庭局長 
 女性の活躍促進に関して、川本委員、土屋委員から「見える化」の関係で御指摘をいただいております。いま「女性の活躍促進・企業活性化推進営業大作戦」と称して、直接会社に伺って、情報開示をお願いしております。この中で具体的な手法としては、会社の概要をウェブサイト、あるいはCSR報告書を活用するほかに、容易にできる方法として、厚生労働省のサイトを利用していただくようお願いをしているところです。いずれにしましても開示をするかどうか、あるいは開示方法につきましては、各社の実情に即した取組をお願いしているところで、今後もそうしていきたいと思っております。また、一覧性の比較、容易にする仕組みのご指摘もありましたが、厚労省のウェブサイトに任意に開示していただいた情報について、一覧性があるようになることを検討していきたいと思います。土屋委員から、有価証券報告書等の御指摘がありましたが、政府部内におきましては、年内に関係省庁と共に連携して、総合的に検討することになっております。十分に検討していきたいと考えております。
 仕事と家庭の育児の両立の関係で塩谷委員から御指摘がありました。時間の関係で簡単にしますが、1つは男女雇用機会均等法や育児・介護休業法に基づきまして、助言・指導・勧告により厳正に対処していくことと、一方では、雇用環境を整備する企業側の取組を促進することで、次世代育成支援推進法に基づいた行動計画を一層お願いする、あるいは助成金を支給する等々、企業の取組を推進することが1点です。
 もう1つは、保育所の待機児童解消、学童保育の待機解消ということで、すでに政府では「子ども・子育てビジョン」を作っておりますので、これに沿って強力に施策を推進していく考えです。以上です。

○諏訪会長 
 厚生労働省におかれましては、今後の予算編成作業を進めるに当たって、委員の皆様から今日出た御意見を踏まえて取り組んでいただきたいと思います。
第2の議論に移りたいと思います。雇用政策研究会報告書(案)についてです。事務局から御説明をお願いします。

○森山職業安定局長 
 資料3に基づきまして、報告書の概要を御説明させていただきます。時間の関係もありますので、骨子が1枚、横長の大きなものが入っておりますので御覧いただきたいと思います。研究会におきましては、「産業構造の転換」「人口減少社会の到来」の現状と課題が書いてあります。日本におかれた状況を、こういうものを踏まえて実施すべき雇用対策について御議論いただきました。今年の4月から9回にわたり検討をいただきました。この研究会では、今年の1月に国立社会保障・人口問題研究所から新たに公表された「日本の将来推計人口」を踏まえて、労働力需給の推計を行いました。「2030年・日本の姿」と書いておりますが、最初の○で、経済成長と労働参加が適切に進まない場合、2030年の就業者数が845万人減になると。ただ、経済成長と労働参加が適切に進む場合では、その場合よりも約630万人増となり、2010年比で、213万人に留まるという推計が得られたところです。
 そのためには、こうした成長を実現するためにということで、上に4つ書いてあります。需要面では「日本のもともとの強みを活かした産業の活性化」「増大するアジア市場の需要の取り込み、海外事業展開する企業への支援」「高齢者需要を取り込む産業育成」供給面におきましては、「全員参加型社会の実現」。「労働力の質・量をともに改善」を図る必要がある。
 下の枠ですが「雇用政策の重要な鍵となる施策の方向性」ということで御議論をいただきました。大きく3つ書いてありますが、緊急雇用対策として効果を発揮してきたいわゆる「まもる」雇用政策から、今後は、雇用を「つくる」「そだてる」「つなぐ」という政策に基軸を移行していくことで、その3つの施策に取り組む積極性、あるいはタフネス性を備えた雇用をつくる人材というものを創出していく。あるいは職業人生が長くなる中での人材育成から人材形成への転換、急激にグローバル経済が進展する中でのグローバル人材の育成。あるいは海外市場取り組み支援、こういうものを進めていく。先ほどもご議論がありましたが、個々の地域の雇用に生じた“痛み”に対応するために、「日本の成長を担う産業」を踏まえ、地域の特徴等を活かした新たな地域雇用創出を推進する。日本の将来を担う若者たちが自身の夢や目的に向かって邁進していく。あるいは充実した人生のキャリアを拓いていく社会を作ることが必要である。そのための就労支援をしていくべきであるという、施策の方向性の報告をいただきました。今後はこの方向性を踏まえて、いろいろな対策、来年度の予算も含めて進めていきたいと考えております。以上です。

○諏訪会長 
 ただいまの報告に関する質問、あるいは御意見はありますか。よろしいですか。それでは申し訳ございませんが、先に進めさせていただきます。議題3「提言型政策仕分け」について、事務局から御説明をお願いします。

○酒光参事官 
 資料4に基づいて、「提言型政策仕分け」について御説明をします。表紙をめくりますと「概要」がありますが、「提言型政策仕分け」については、昨年、政府版の提言型政策仕分けがありましたが、その厚労省版ということで、今回は特に複数の部局にまたがる分野についてきちんと連携がとれて、施策が組織横断的に取り組まれているかを中心に御検討をいただいたものです。
 テーマとしては「リーマンショック後の雇用対策」「治療が必要な方の医療分野と就労の支援」「健康づくりの取組」ということです。5月から6月にかけて仕分けが行われました。内容については2ページ目を御覧ください。
 主に上の2つのテーマについて簡単に御説明します。「リーマンショック後の雇用対策」については、リーマンショック後、かなり緊急の雇用対策をとられて、それぞれ一定の成果は確認されたということですが、さらに詳細な検証を行っていく必要があるという御指摘です。具体的には、雇用調整助成金については、そろそろ平常時の対応に戻すべきということです。あるいは人材育成については、訓練と就職支援をうまく連携させていくということです。また、地域の雇用創出については、さまざまな活用の事例の共有や、ガイドラインの整備等に取り組んでいくべきだということです。
 「長期にわたる治療等が必要な患者に対する保健医療分野の支援と就労支援の連携」については、医療機関や就労支援機関と連携した取組。あるいは職場での取組の支援としての実態把握や、休暇の在り方について取り組んでいくなどが提言されております。その他ありますが、時間の関係もありますので説明は省略します。先ほど御説明した重点事項にこの辺のことも踏まえた対策を盛り込んでいるということです。以上です。

○諏訪会長 
 ありがとうございました。御質問、御意見はありますか。よろしゅうございますか。それでは議題4に進みます。「各分科会・部会の検討状況」についてです。併せて、議題5「法案の国会審議状況」についても、事務局から御説明をいただきます。

○金子労働基準局長 
 資料5-1は労働基準局の関係です。「有期労働契約の在り方の検討」ということで、すでに審議会でご検討いただいて、法案を3月23日に提出し、すでに衆議院は通過しており、本日の参議院厚生労働委員会で質疑を終えたところです。今後、本会議に上程されて成立の見込みというところまできている状況です。
 2点目は、化学物質管理の関係です。内容については、第2パラグラフにあります。有害物の発散防止抑制措置として、これまで局所排気装置の設置ということで、ある程度対応措置が限られていたわけですが、一定の場合には、それ以外の措置でも発散抑制措置として認めることとしたものです。安全衛生分科会で3月に諮問・答申をし、7月に施行しております。
 3点目は、除染電離則の改正です。電離放射線障害防止規則については、除染作業に対応することができないということで、除染電離則を作ったわけです。さらに除染以外の復旧事業についても、これを適用する必要があるということで、除染電離則の改正を行ったところです。この5月に分科会で諮問・答申をいただいて、7月1日から施行しております。4点目は労災保険部会の関係です。介護給付の最高額・最低額等についての見直しです。以上です。

○森山職業安定局長 
 資料5-2、安定局関係で3点あります。1つは、「労働者派遣制度」の検討です。これは派遣法の改正が3月28日に成立しました。これを受けて、この法律の施行に伴う政省令等について御議論をいただいて、労働力需給制度部会におきましては6月27日に、安定分科会におきましては7月5日にご議論をいただきまして、「おおむね妥当」ということで答申されております。これは10月1日の施行予定です。
 2つ目は「雇用保険制度」です。これも法律を出させていただいて、3月28日に国会で成立しました。これに伴ういろいろな関係の政令につきましては、3月29日の分科会で諮問・答申をいただいて、3月31日に公布ということです。
 最後に、「障害者雇用対策」については、雇用率の関係で2.0%にすることを盛り込んだ「障害者雇用率等について(案)」が5月23日に諮問されて、同日の障害者雇用分科会において「厚生労働省案は、妥当と認める。」という結論に至り、答申がなされました。これを受けて、その政令は6月15日に閣議決定されて、施行は平成25年4月1日です。以上です。

○小野職業能力開発局長 
 資料5-3、職業能力開発分科会の関係です。25ページに3点の省令改正案、3月29日に諮問・答申が行われました。1つ目は、職業訓練基準等の見直しということで、これは26ページをご覧いただきたいと思います。技術動向の変化等に合わせて、金属加工分野などの公共職業訓練の訓練内容、訓練時間数等の配分を含めて見直しを行う。特に人材ニーズの拡大が見込まれる太陽光発電の設備の設置等を行う人材の育成に向けて、指導員訓練の科目の新設等を行う内容です。
 2点目は、35ページ、ジョブ・カード関連の雇用型訓練の一類型の実践型人材養成システムです。この対象年齢は、従来15歳以上40歳未満でしたが、これを45歳未満まで拡大するという内容の改正です。
 最後は、36ページ、事業主等が行う訓練で一定の水準を満たす者につきましては、認定をして、訓練の運営費、施設費等を補助する認定職業訓練の補助金制度があります。これは国庫補助率が2分の1が通常ですが、被災地につきましては補助率を引き上げております。これを平成24年度末まで延長するという内容です。以上です。

○高井雇用均等・児童家庭局長 
 資料5-4、3点あります。「パートタイム労働対策について」は、38ページ、パートタイム労働法改正法附則の検討規定に基づきまして、今後のパートタイム労働対策について、昨年9月から13回にわたり御審議をいただいて、6月21日に報告がとりまとめられたところです。
 38ページはその内容です。今後この建議に基づいて、パートタイム労働法の改正法案をとりまとめて要綱を雇用均等分科会に諮問する予定です。
 39ページは「女性労働基準規則の一部改正」の関係です。25の化学物質を取り扱う一定業務につきまして、就業禁止の対象にする、女性労働者の就業を禁止する内容につきまして、3月28日におおむね妥当との答申をいただいて、4月10日公布したということです。
 41ページ、「子育て期短時間勤務支援助成金の支給額の見直し」について諮問を行って、3月28日におおむね妥当の答申をいただいて、このように改正をしております。以上です。

○酒光労働政策担当参事官 
 資料5-5に基づいて、点検評価部会について御報告を申し上げます。先般、7月25日に点検評価部会が開催されて、2011年度の年間評価を行いました。資料5-5は、その検討の場に提出させていただいた評価(案)です。今後、この評価(案)、当日の御意見等を踏まえて、修正をして、年度評価として確定する予定です。
 併せて、法案の審議状況について、資料6で御説明します。
 表紙をめくるといくつか法案があります。1.派遣法については、だいぶ長い間かかりましたが、今年の3月28日に成立したところです。2.労働安全衛生法につきましては、前臨時国会に提出をして、現国会において継続審議中です。3.雇用保険法につきましては、今年の3月28日に成立、31日公布ということです。4.高年齢者の雇用安定法に関しては、現在衆議院の厚生労働委員会でご審議をいただいているところです。5.労働契約法につきましては、本日の午前中、参議院の厚生労働委員会でご議論をいただいて採択をいただいたところです。いまはそういったような審議状況となっております。以上です。

○諏訪会長 
 ありがとうございました。ただいまの説明につきまして、御質問、御意見等はありますか。

○高橋委員 
 私からは資料5-4の38ページ、雇用均等分科会のパートタイム労働対策についての建議のポイントのところです。この間のさまざまな分科会の議論を踏まえた報告だと非常に尊重した思いで受け止めております。この中で、とりわけパートタイム労働法第8条の「通常の労働者との差別的取扱いの禁止規定」については、無期労働契約要件を削除するとともに、労働契約法改正法案との整合性に配慮しながら、職務の内容、また人材活用の仕組み、その他の事情を考慮して、不合理な相違は認められないとする法制を採ることが適当であるという旨がきちんと示されたということについては妥当だと受け止めております。とりわけ、パートタイム労働法と労働契約法改正法案に当たる対象者が、非常に重複していることや類似ということを鑑みれば、この内容は妥当であり、これによって、より多くのパートタイム労働者に均等・均衡待遇の確保に関する法律の効果が広がるということを期待しているところです。
 また、雇用管理の改善措置の内容に関する説明や、苦情対応担当者の規定なども盛り込まれておりますので、パートタイム労働者の納得性の向上という視点からも、一定程度、期待できる内容だと言えると思います。
 こういったところで、非常に経済状況が厳しい中ですが、この報告は公労使の真摯な議論を得ながらとりまとめられたものであり、全体としては、均等・均衡待遇の実現に向けて、1歩でも進める足掛りになるものだと私たちとしても評価しているところです。
 ただその上で、意見ということで述べさせていただきます。この分科会においても、労働者代表委員は議論の中で、合理的理由がある場合を除き、パートタイム労働者であることを理由とした差別的取扱いを禁止するということや、通常の労働者と同基準で通勤手当の支給、あるいは忌引休暇の付与は是非行っていただきたい。事業主に雇用管理の改善計画の策定を課すことなどを求めてきたところです。そういった意見が、この報告に取り入れられなかったことは、少し課題を残すものであるかと思います。とりわけ通常の労働者との均衡確保を目指すこういった法律の理念に照らして、課題が残ったと言わざるを得ないと思います。それにしましても、今後はこの報告の趣旨が活かされる形での改正法案の作成と、また法案審議と早期の成立、それらの運用を是非求めていきたいということを申し述べて意見とさせていただきます。以上です。

○諏訪会長 
 ほかに御意見、御質問等はございませんか。

○高井雇用均等・児童家庭局長 
 御指摘のように、6月21日の建議は、大変な審議を経てとりまとめていただいたものです。今後は法案作成作業を進めて、可能な限り速やかに国会に提出したいと考えております。また、改正法が成立した場合には、周知徹底を図るとともに、適切に運用していきたいと考えております。以上です。

○諏訪会長 
 ほかにいかがですか。よろしいですか。それでは議題6に進みます。議題6の「地方公務員制度改革(素案)について」御説明をお願いします。

○荒木労政担当参事官 
 「地方公務員制度改革(素案)について」御説明します。資料7、表紙をおめくりください。ご案内のとおり、現在、非現業の国家公務員につきましては、自律的労使関係制度を導入することを改革の1つの柱とする国家公務員の関連四法案が国会で審議中です。その動きと併せて、非現業の地方公務員につきましても自律的労使関係制度を措置することで、総務省が主体となって検討が進められているところです。
 資料7は、今年の5月11日に総務省がとりまとめ公表した地方公務員制度改革の素案となっております。パワーポイント資料にあるように、非現業地方公務員につきましても、非現業の国家公務員と同様に当局と認証された労働組合との間で団体交渉を行って、合意に達した場合には団体協約を締結して、それにより勤務条件を決定していこうということです。団体交渉の場合におきまして、労使間での紛争が生じた場合には、都道府県労働委員会において不当労働行為事件の審査を行ったり、あるいはその交渉が不調になった場合には、あっせん・調停等の調整を行うことになっております。
 こうした業務が都道府県労働委員会に負荷される場合には、委員会の業務量が増えるということで、次頁に素案の抜粋が記載しております。9(1)1委員の法定数の上限につきまして、現行13人が上限となっておりますが、これを「15人」と改めたり、あるいは条例の定めによる増員の上限につきましては、現在2人までとなっておりますが、その増員の上限を撤廃して、条例で自由に定めることができるようにということで、労働委員会の体制整備が盛り込まれております。説明は以上です。

○諏訪会長 
 ただいまの御説明をめぐって、御質問、御意見はございますか。

○南雲委員 
 国家公務員に続いて、地方公務員制度改革に伴う労働委員会の体制整備として、労働組合法の改正が行われる方向での議論が進められていることについて意見を申し上げたいと思います。
 国家公務員については、昨年の6月に関連法案が閣議決定され、国会に法案提出をされております。その中に労働組合法の改正も含まれておりましたが、労働政策審議会では事務局から労働組合法の改正に当たる部分の説明はあったものの、法律案要綱の諮問は行われておりません。労働組合法は、集団的労使関係を規律する法律であり、労使にとって大変重要で影響の大きいものです。その見直しに当たっては、ILOの三者構成主義に基づき、労働政策審議会において審議されなければならないはずです。その観点から、昨年の国家公務員制度改革の際の手続きは、適切に行われるべきだったことをまず申し述べておきます。今後、地方公務員制度改革に伴う関連法案が作成する適切なタイミングで、本来、労働政策審議会に労働組合法改正の法律案要綱などについて適切に行われるよう対応をとっていただきたいと思います。
 また現在、労働組合法について審議する常設の分科会・部会がなく、この労働政策審議会本審が、その任を担わざるを得ない状況にあります。今後、集団的労使関係法制について審議する場合、審議の受け皿となる三者構成による審議会の設定も含めて、検討していただきたいことを申し述べたいと思います。以上です。

○諏訪会長 
 ほかにいかがですか。ただいまの御意見に関して事務局から何かありますか。

○荒木労政担当参事官 
 地方公務員制度改革につきましては、先ほども申し述べさせていただきましたが、現在、総務省を中心に検討が進められており、素案という形ですが、その全体像が今回明らかにされたことを踏まえて、今般、労働組合法の改正部分について御報告させていただいたところです。今後、具体的な法制化の作業の過程で、今回御報告した内容に加えて、労働組合法そのものについて更なる見直しを行う場合には、南雲委員の御指摘を踏まえて、しかるべき対応を取らせていただきたいと考えております。
 もう1点については、労働組合法などの集団的労使関係法制の見直しが課題となった場合には、平成16年の改正におきましても本審議会で部会を設けたところです。具体的な議論が必要となった場合には、委員の皆様にお諮りしながらではございますが、その審議の場の在り方について御検討させていただければと思っております。以上です。

○諏訪会長 
 ほかによろしゅうございますか。最後の議題7の「その他」について、事務局から御説明をお願いします。

○酒光労働政策担当参事官 
 「その他」については、参考資料を簡単に御説明します。参考1は、労働政策審議会の諮問・答申等の一覧です。これは御覧いただければと思います。その中で、2ページの上から2つ目に、雇用対策法施行規則の一部を改正する省令案、あるいはその関係告示案がありますが、これは出先機関改革の関係で、アクション・プラン等に基づくハローワーク特区の実施のためのものです。簡単な資料を参考2に付けてありますが、アクション・プラン等を踏まえて、東西1カ所ずつにおいて、ハローワーク特区の取組を行うことになりました。それに伴う省令、告示です。今回はお時間の関係もありますので、説明は省略させていただきます。以上です。

○諏訪会長 
 御質問、御意見等はございますか。よろしゅうございますか。本日はこれ以外に何か特別に御発言等がございませんようでしたら、この辺りで閉会とさせていただきます。最後に本日の会議に関する議事録は、本審議会の運営規程第6条によりまして、会長のほか2人の委員に御署名をいただくことになっております。つきましては、労働者代表委員の落合委員及び使用者代表委員の川本委員に署名人になっていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。それでは本日の会議は以上で終了させていただきます。大変暑い中をご協力いただきましてありがとうございました。


(了)
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