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2012年7月12日 第12回チーム医療推進会議 議事録

医政局医事課

○日時

平成24年7月12日(木)17:00~19:00



○場所

厚生労働省 省議室(9階)



○議事

○永井座長 定刻になりましたので、第12回チーム医療推進会議を始めさせていただきます。本日は、委員の皆様にはご多忙のところご参集いただきましてありがとうございます。事務局から委員の出席状況と資料の確認をお願いします。
○江口医事課長補佐 委員の出席状況についてご報告します。本日は、委員全員の方からご出席とのご連絡をいただいております。島崎委員については、若干遅れるとのご連絡をいただいております。小川委員はまだお見えになっていませんが、ご出席というご連絡をいただいております。
 今回より新たに委員として就任された方をご紹介します。日本看護系大学協議会会長の片田範子委員です。
 それでは、資料の確認をお願いします。まず、議事次第があります。次に座席表です。次にチーム医療推進会議の開催要綱、裏に委員名簿があります。資料1として「看護師の能力認証の在り方について(論点)」です。資料1の参考資料として「他制度における有資格者を対象とした法令に基づく追加教育等」という一覧表です。参考資料が3種類あります。参考資料1「看護師特定能力認証制度骨子(案)」、参考資料2「看護師特定能力認証制度骨子(案)に対する意見」、参考資料3として「特定行為と能力認証の関係について(案)」です。また、今日はその他に日本看護系大学協議会と日本看護系学会協議会から「チーム医療推進会議」の座長宛に提出された要望書を配付しております。不足等がありましたら事務局までお申し出ください。
○永井座長 それでは、本日の議題「看護師の能力を認証する仕組みの在り方について」に関する議論に入ります。先立ちまして、事務局から資料の説明をよろしくお願いします。
○江口医事課長補佐 資料1「看護師の能力認証の在り方について(論点)」をご覧ください。看護師の能力認証の在り方については、昨年11月に、本日参考資料としてお配りしている「看護師特定能力認証制度骨子(案)」をお示ししました。ご議論いただいた結果、昨年12月7日にチーム医療推進会議として「看護師特定能力認証制度骨子(案)に対する意見」をおまとめいただきました。
 今回から認証の在り方についてご議論いただくわけですが、論点としては大きく2つに分けられると考えております。論点?として「チーム医療推進のための看護業務検討WGで、医行為分類とカリキュラムの具体的内容についての検討が進んでいるが、これらをどのような形で位置付けるのか」という論点です。これについて、A案は「法令上、特定の医行為及びカリキュラムを位置付ける」という案です。B案は「分類に従い、特定の医行為が診療の補助に含まれることを明確化し、併せて、それぞれの行為を実施する際に教育・研修の付加や、一定の安全管理体制を整える必要があることをガイドライン等で示す」。B案は法令上は位置付けは行わないという案です。
 2つ目の論点として「看護師の能力認証を行う場合、国がどこまで関与すべきか」という論点です。A案は「国が能力認証を行う」、これは骨子(案)の内容です。B案は「関係団体、関係学会等が独自に能力認証を行う」、これは国は関与しないということです。B案は、昨年12月に整理していただいた骨子(案)に対する意見の中で、一部の委員からこういった形であればいいのではないかということがあったことを踏まえて、B案としてお示ししているものです。
 資料1の参考資料をご覧ください。この資料は、国の関与についての議論の参考になるよう、他制度においてベースとなる国家資格に法令で何らかの上乗せの国等の関与を位置付けているものを一覧表にしたものです。上から順に簡単にご説明します。最初に、麻酔科の標榜医です。医師・歯科医師は、医療法上制令で定められた診療科名であれば自由に標榜できることとされておりますが、麻酔科についてのみ、医師が個別に大臣の許可を得なければ標榜できないこととされております。この際の最終的な国の関与として大臣の許可という行為がありますが、その許可を得るための要件としては、法令上麻酔の実施に関して十分な修練ができる医療機関において、2年以上の修練をしたこと等の要件が定められております。なお、許可にあたっては、法律上あらかじめ医道審議会の意見を聞かなければならないこととされております。
 次に、精神保健指定医です。精神保健福祉法上、精神障害者に対する措置入院の判定や措置入院のための移送の際の行動制限の判定等、患者の人権に十分配慮して行う必要があるものについては、厚生労働大臣の指定した医師(精神保健指定医)が行うこととされております。この際の最終的な国の関与として、大臣の指定という行為が規定されていますが、その指定を受けるための要件としては、3年以上の精神障害の診療を含む5年以上の診療経験があること、大臣の登録を受けた研修機関が行う研修課程を修了していること等が挙げられております。
 3つ目は、産業医です。労働安全衛生法上、事業者は労働者の健康管理等を行わせるため、産業医を選任しなければならないこととされております。この際、最終的な国の関与は特に規定はされておらず、あくまで事業者が選任するという形のみです。その選任の要件として、厚生労働大臣が指定する者が行う研修の修了者であること、又は産業医科大学等を卒業し、実習を履修した者であること等が定められております。
 次に、臨床研修修了医師・歯科医師です。医師法・歯科医師法上、診療に従事しようとする者は一定期間以上臨床研修を受けなければならないとされており、臨床研修を修了した医師・歯科医師でなければ医療法上、医療機関の管理者になることはできないことになっております。この際の最終的な国の関与としては、国が管理する医籍等への登録と大臣による臨床研修登録証の交付があります。そのための要件としては、大臣が指定する病院等において臨床研修を修了することが定められております。
 次の2つは、母体保護法関係の制度です。まず母体保護法指定医ですが、母体保護法上、人工妊娠中絶は都道府県医師会の指定を受けた医師ができることとされております。この際の法令上の関与は指定ですが、その主体は都道府県医師会と規定されており、具体的な国の関与は規定はされておりません。また、指定にあたっての基準等についても、特段国が関与しているものはないという制度です。
 次に、受胎調節の実地指導員です。母体保護法上、避妊具を使用する受胎調節の実地指導については、医師以外は、都道府県知事の指定を受けた助産師、保健師、看護師でなければ、これを業として行ってはならないこととされております。この際の最終的な行政の関与は都道府県知事の指定ですが、その指定を受けるための要件としては、厚生労働大臣の定める基準に従って都道府県知事の認定する講習を修了していることと規定されております。
 次に、喀痰吸引等を実施可能な介護福祉士です。昨年の社会福祉士及び介護福祉士法の改正により、平成27年4月以降に介護福祉士の資格を取得して登録される方については、医行為である喀痰吸引、経管栄養等を業として実施することが可能とされました。一方、平成27年3月以前に資格を取得した介護福祉士については、厚生労働大臣が指定する研修課程を修了することで、業としての喀痰吸引等を実施することができることとされております。この際の最終的な国の関与については、国が管理をしている介護福祉士登録簿への研修登録と、大臣による特定登録証の交付があります。そのための要件としては、大臣が指定する研修課程を修了することと規定されております。
 最後に、特定社会保険労務士です。社会保険労務士法上、紛争解決手続代理業務については一般の社会保険労務士ではなく、厚生労働大臣が行う紛争解決手続代理業務試験に合格した特定社会保険労務士に限り行うことができるとされております。この際の最終的な国の関与としては、社会保険労務士名簿への紛争解決手続代理業務の付記と、付記したことに対して大臣による特定社会保険労務士証票の交付があります。そのための要件としては、厚生労働省令で定める研修を修了した上で、厚生労働大臣の行う紛争解決手続代理業務試験に合格することと規定されております。資料1の説明は以上です。
○永井座長 それでは、ただいまご説明のあった内容のうち、論点?についてご議論いただきたいと思います。ご質問、ご意見はいかがでしょうか。
○大久保委員 論点?では、A案が不可欠だと考えております。特定医行為を法令上に位置付けなければ、現場で実施してよいのかどうか迷いながら実施している看護師の不安な状況は、改善されないままということになります。また、教育の裏づけが担保されなければ、患者の安心・安全の確保が医療機関ごとに異なってくることになります。したがって、国民のニーズにより安全に対応していくためにも、いわゆるグレーゾーンで曖昧なままとするのではなく、A案のとおり特定医行為を法的に位置付けるとともに、その実施に必要なカリキュラムについて国が安全性を担保すべきだと考えております。
○藤川委員 この論点を見ると、A案とB案がありますが、A案のように法令上で特定医行為を定めれば厳格な対応を要することになり、この行為は特定医行為か、この業務は誰がやるのかということで、現場に混乱をもたらすことが必至であります。いま203項目をWGで議論していますが、医療現場では203項目以外にも多数の業務があるのです。相当数、10~20倍あるかもしれません。そうなると、その行為をするたびにこの行為をしていいのかどうかと、さらなる混乱が起こるだろうと思います。医学・医療は日進月歩であるため、法令上で医行為等の範囲を定めることは馴染まないとしてきた歴史があるわけで、特定医行為を医学・医療の進歩に遅滞なく追加・削減していけるかどうかは、難しい問題だろうと思います。
 B案の場合のように、現場で柔軟に対応できるよう緩やかなガイドラインにするのは検討に値するかと考えております。現在WGで議論されておりますが、日医としては医療安全の観点から、本来医師がすべき危険な行為まで看護師に実施させるようなカリキュラムを組むべきではないと考えております。必要な研修の内容や期間も、それを踏まえれば自ずと現実的なレベルに収まってくるものと考えております。2年間の大学院の教育や8カ月の研修が必要な行為は、そもそも診療の補助を超えているものが多く、現場の多くの看護職員たちが参加できるものではないと考えております。A案、B案だけではなく、もう1つC案が出てくる可能性も十分考えられるということです。
○片田委員 今日は、「看護師の能力認証の在り方について(論点)」の論点?に関してお話いただきましたが、すでに国家資格を有している看護師に特定医行為のために、新たに教育も試験も厚生労働省がという、これは論点?にも関係してくると思いますが、このことに関しては、第三者機関が責任を持つ制度が、必要なのではないかと思っております。専門性の高い看護系学会と医学系学会の専門家集団の協力を得ながらやることが不可欠だろうと思います。これはA案かB案かを迫られる状況ではなく、何がそこで獲得しなければならない能力なのかを明確にした上で行うことのほうが必要なのではないかという意味も含めてということです。先ほど申し上げた専門性の高い看護系学会、あるいは医学系学会の専門家集団がすでにあるわけですので、それらの方々の協力を得て行うという法策、第3機関のありようが必要だろうと。
 私が申し上げているのは、論点?だけを独立した形でするのは大変難しいのではないかということです。提示されている資料の例においても、大臣が指定し、許可する資格が明示されていますが、試験を課する資格は特定社会保険労務士だけとなっております。そういう意味で、法令上の特定医行為及びカリキュラムをどのように位置付けるのかに関しては明確になっていない。そのような中で、この両案のどちらにするのかに関しては大変難しいと、選択はない状況なのではないかと思います。法令の在り方によって、これが必要になるかどうかということが出てくるだろうと思っております。
○永井座長 いま有賀委員にWGで議論していただいているのですが、実際の具体的な行為は、こうした問題について、医行為の分類、カリキュラムの具体的内容の位置付けについて議論はしていらっしゃらないのですか。
○有賀委員 こういう観点からの切り口で、議論を真正面からしているかというと、実はしておりません。いまご発言があったように、資料1で言う論点?と論点?があります。議長によれば、まずは論点?からということになりますが、それぞれが全くの独立事象というわけではなかろうと思うので、いろいろな議論が行ったり来たりしていることはありそうな気がします。
 私たちのWGに関して言えば、確かに認証に関する議論が全くないわけではないのですが、いまお話したように体系的にそれについての意見の集積並びに集約というプロセスをまだ踏んではいませんが、8カ月コースとか2年コースの話をしていくと、教育が必要だということはもうわかっているので、自ずとどのレベルでそれらを認証するかに関して言えば、参考資料1や参考資料2は昨年のことですので、これらに関して情報を得ながら、それぞれの委員がカリキュラム等についての議論、または具体的な卵と鶏の「鶏の働き」の様子などを考えながら、カリキュラムの話をしていることになると思います。
○永井座長 いずれにしても、グレーゾーンの分類は進んでいるわけですね。
○有賀委員 グレーゾーンの分類は進めております。主たる分類の基軸は、1つはいま藤川先生がおっしゃったように、行為そのものが人体にとって物理的に危険かどうかというポイントがあります。体に針を刺すとか、管を入れるとか、メスで切るといった意味での手技そのものの厳しさという軸が一番目です。もう一つは、病態を認識して、いま何が必要かと、これから先どのようなプロセスをたどるのか、いまここでどんなことを考えながら何をしなくてはいけないのかという、いわゆるアセスメントというか、判断の難しさがあり、これらの2つだろうと思います。漠然と刺すとか切るとかいう話のみでいくと、確かに難しいとか難しくないとかという話になるのでしょうが、もっと難しいのは、それらを一連のプロセスとして、どのようにしていくのかということの難しさだと思います。
 こういうルールが将来でき上がるにしても、でき上がらないにしても、私はいまから20年近く前に、すでに手術場に入る前に、よくできるICUナースに「この患者さんについて人工呼吸器からの離脱を夕方までに何とかできますかね」とお願いして手術場に入ったという話を、ここでしたことがあるかもしれません。そのときには、患者の肺臓の状態を血液ガスの分析などをしながら、いまどんな状態かを、レントゲン写真やその他の理学的な所見も合せて判断して、人工呼吸器の条件を、機械に完全に乗っている状態から自分の力で呼吸できるような形に少し戻して、それで判断をして、また次のプロセスに移る。そして最後は人工呼吸器で吸わせる空気そのものについて、例えば空気中21%の酸素にして、それでどうかという判断をしながら最終的な部分に持っていきます。そこには一つひとつの手技の難しさもさることながら、動脈血ガスを取るという難しさや、万が一に、抜管したあとに再挿管しなければいけない難しさといった一つひとつの難しさはありますが、その人工呼吸器から外す一連のプロセスの中で一つひとつの判断があって、その判断の連鎖が難しいと。そういう意味では、包括的な指示の下に、最終的な場面に向かって難しい判断をしていくことが難しいと言っているのです。したがって、法令上にA案で位置付けるにしても、B案でガイドラインで示すにしても、その場にいる医療者のやらなければいけないことは、我々がWGで話している内容をどのように審議していくのかということで言えば、AであろうがBであろうが、やらなければいけないことは、そういうことなのだということで話が進んでいることになります。
○永井座長 よくわかったような、わからないような感じはしますが。
○有賀委員 議論しているかということでは議論はしていません。ただ、意見を言えということではそういうことなので、そういう意味では、限りなくAに近いのは厚生労働省がお示しになった資料で、麻酔科の標榜医から始まってたくさんあります。私は麻酔科の標榜医ぐらいしか頭になかったので、これだけたくさん出てきましたが、限りなくAに近いものから、Bまではいきませんが、A1、A2、A3と並べていくと、麻酔科の標榜医と産業医と臨床研修医とは同じ法令と言っても全部違うので、そのように並ぶのかもしれない。またはAとは言いながらスーパーAとaとA'とA''みたいなものが並ぶと思うのです。そこを少し説明していただかないと、イメージがもう少し固められないのではないかというのが私の意見です。
○永井座長 多彩な内容なので、なかなか一概にAかBかとは言いがたいところがあるということですが、もう少し基本的な考え方からご説明いただけますか。
○江口医事課長補佐 資料1の参考資料は、あくまでも既存の制度の中で国家資格に上乗せする形でどういった教育なり研修を求め、例えば一定の許可なり指定という行為を求めているものがあるかをお示ししたものです。これらについて、今回看護師の能力認証を考える際にどれが適当なのか、ダイレクトに当てはまるものがあるかというと、そういうものはないだろうと考えております。
○有賀委員 私の質問は、例えば厚生労働大臣の許可と厚生労働大臣の指定と産業医の「なし」というものがありますが、そうすると法令で決めるといった場合に、「許可」と「指定」と「なし」とあって、都道府県医師会とか都道府県知事の指定といったことを法律で決めれば、都道府県医師会の指定でよろしいというのも法令で決めているということで、ここに位置付けて書いてあるので、そういう意味ではぎりぎり左端のAと、そういう法令を厚生労働大臣の責任の下で決めたので、したがって都道府県医師会がそれをやりなさいということになると、藤川先生がおっしゃるように国家がすべてを統制して、医学的な内容の時代背景が変わったときも膠着した状態になるということにはならないと思うのです。そういう意味で、ここにお示しになったのは、AとBと論点に書いてあるけれども、既存のものもスーパーAから、a、A'、A''、a''みたいなものが並ぶのではないかと言ったのです。
○江口医事課長補佐 母体保護法の関係は、既存の制度としてこの一覧表の中に入れておりますが、経緯を確認したところ、法律そのものは昭和23年にできているもので、議員立法で作られております。当初から、母体保護法の指定医については国の関与ではなく、都道府県医師会の指定という規定だったのですが、具体的にどういう考え、どういう経緯でこのような規定になったのかは、所管をしている担当課にもいろいろ聞きましたが、詳しくはわからないという状況でした。
○有賀委員 そういう意味では、現に立法府が決めたルールに従って、人工妊娠中絶を行うことができるということについての社会規範を示しているわけですので、経緯がどうだとか、そういうことを聞いているのではなくて、これもAだということであれば、それは1つの考え方になるのではないかということを聞いたのです。経緯がどうだという問題ではありません。
○田原医事課長 (参考)に書いてあるのは、どちらかというと論点?でご議論いただくときに参考にしていただくことを念頭に用意しております。論点?で法令上特定の医行為やカリキュラムを位置付けるということについては、あまり参考になるものではないかもしれませんが、法律上何らかの形で医行為やカリキュラムを明確にする場合は、A案になるとご理解いただければと思います。
 また、論点?と論点?を一緒に議論しなければいけないというご意見もありましたが、これは最後にご議論いただく形にしていただければと思います。まず論点?、論点?をそれぞれご議論いただいて、それを踏まえて両方併せてご議論いただければ、議論も深まるのではないかと思っておりますので、よろしくお願いします。
○藤本委員 患者の立場というか、医療を受ける側の立場でお伺いします。病院の中での医者と看護師の仕事ということをメインにいままでお話されてきたと思いますが、これから必要になってくるのは高齢者の在宅医療とか療養で、看護師も医者もいまのままでマンパワー的に間に合っているのかどうか、特定看護師の制度が入ることによって、そういった在宅医療の辺りがどのように進むというか、患者にとって行き渡るものになるのか、そういった点を伺いたいと思います。それによって、例えばA案だった場合には、そういった看護師が増えるのかどうか、量的に高齢者がこれから増えてくる中で、それに対応するべき医療者、必要な医療者が、A案で間に合うのかというのが知りたいところなのですが、いかがでしょうか。
○太田委員 いい質問をいただいたと思います。この議論は、Cure、要するに疾病を治癒する場面でのナースの能力を中心に議論されてきました。在宅というのは、生活支援の中における医療の在り方、ケアの在り方で、そもそも異質で、同じ議論の中で在宅のナースの能力認定と、医者がそばにいるインテンシブ・ケアの場面でのナースの能力と一緒に考えていくことは、ものすごく難しいことだと考えながら、この内容を拝見していました。
 本質的な話になりますが、都道府県には5疾病5事業と在宅医療という柱があって、都道府県が医療計画に盛り込むわけです。基礎自治体は包括的地域ケアシステムを進めなければいけないわけです。そういう視点に立った医療の在り方を考えたときに、在宅医療は避けて通れない領域で、その在宅医療の主役はナースなのです。医師は何をするかというと、指示と責任と判断ということになります。そうすると、任せてもいいナースであることを誰かが承認してくれれば質が担保できるわけで、そういったことを私はずっと主張してきました。
 在宅に限らず、生活の場としての施設、これは障害者の施設もそうですし、高齢者の施設も同じですが、医療機関と位置付けられていない所は、大体ナースが医療支援をやっているわけです。相当のことをやっています。胃瘻の交換などをやっている人もいるわけです。ですから、その辺をはっきりさせてもらったほうが、国民のためになるだろうというのが私の考え方です。簡単に言うと、今日の議論は何を誰が認定するのかということです。在宅の地域の場面においては、本当に厚生労働大臣がしっかりと能力を保証してほしいと。私はそのように思いますし、そうしていかないと、マンパワーとして足りない。医者がいちいち出ていってやれるような量ではない。つまり、ナースとがっちりとグルになってやらなければならないというわけです。
○永井座長 つまり、先生のご意見は、医行為の内容及びカリキュラムについても法令で。
○太田委員 A案ですが、何をというのは在宅の場面に必要な何をということと、インテンシブ・ケアの場面における何をということは異質であると申し上げています。
○山本(信)委員 私も同じように思います。いままでのここでの議論は白か黒かをはっきりしようという議論で、B案で進むと、やはりはっきりしない部分があると。Aにするとはっきりするけれども、先ほど有賀先生もおっしゃったように、誰に任せるかという議論が出てきてしまう。太田先生のお話も有賀先生のお話も全く同じような切り口で、担保はしなくてはいけないけれども、具体的な行為は現場に任せるということになると、Aでもない、Bでもないという気がするのです。強いてどちらかにしろと示されると、議論のいきがかりからすれば、はっきりさせるという目的であればグレーゾーンのデマケをやらせたほうがいいのだろうと。そのときに、仮にそうであったにしても、先ほど太田先生もおっしゃったように、医療機関の中での議論と在宅では全く違うので、そういう意味では、病院の中以上に在宅のほうが業務の重複が起きるので、そういったときにチーム医療を進めると、それが安全につながるのだうという論点で、ここでの議論が進んでいるのだとすれば、その重複についてお互いの専門性が発揮できるように、他職種の業務との重複も、十分に仕事ができるようなことを配慮しないと、この議論はどちらに決めても、また同じことが起きるのではないかと思います。
 ですから、BでいくかAでいくかは、ここで決めなければならないのかもしれませんが、法令で決めても決めなくても、そうした十分な配慮をもって、どちらかに決めないと、同じことが起きてしまうということで、是非そうした配慮をした上でどちらかに決めていただきたい。他業種も同時に仕事をしていますので、医師と看護師だけで仕事が終わるわけではないことだけは配慮していただかないと困ると思います。
○藤川委員 先ほどの太田先生の在宅の件ですが、医療安全の立場からすると、在宅であるからこそ、危険な行為は医師が定期的に来たときに行うべきです。毎日、危険な行為があるわけではないので、あくまでも頻度が高くて、可能な限りできるものは看護師にやっていただいていいけれども、危険性のある行為まで、教育訓練をしてまでリスクを負わせるのは、患者側からすればベストの医療を受けられる権利がありながらそのチャンスを逃すことになる。医療機関であれ在宅であれ、患者さんの生存権を放棄させることになるので、それはできないと思います。だから患者さんの命を、後遺症が残らないようにきちんと治療していくという点においては、在宅だからといってタスク・シフティングを過度なまでにすることはあり得ないわけです。緊急事態や災害のときであっても、ドクターが来れば、その時点でドクターがしなければいけない危険な医行為はきちんとしていただくことが、国民から求められるタスク・シフティングの基準だと思います。それだけはしっかり守るべきです。
○永井座長 それは、いま絶対的医行為として別枠に分類されているわけで、問題はそのグレーのところがリストアップされているので、これをどこに位置付けるかということです。
○藤本委員 在宅の場合でも、看護師が在宅訪問してくださっているときに患者の容態が急変することがあると思いますが、グレーゾーンがはっきりなくなって白黒になったときに、これはドクターの指示がないと動けないからということで、看護師のできることが狭められてしまうと、患者家族にとっては、いまいる医療者に何とかしてもらいたいという思いもあると思います。いつでもドクターが来て指示できるような潤沢に医療資源のある地域の在宅医療でしたら、藤川先生がおっしゃるようなことが私たちからしてもベストなのですが、医療者が少ない所では、そこにいる医療者に何らかの手当をしていただきたいという思いも患者の中にはあると思うのです。それを「先生の指示がないとできませんから、待っていてください」と言われるのはどうなのかなと。
○永井座長 いまできるようにしているわけですが、それを法令上で位置付けるか、そうでないかという議論です。
○藤本委員 その点においては、私は法令上で位置付けたほうが現場の看護師も働きやすいと思いますし、国民の側もそのほうが安心なのではないかと思います。
○半田委員 教えていただきたいのですが、先ほど有賀先生がおっしゃったことで、AかBかと考えるときにどうしても知りたいと思うのは、厚生労働大臣が許可するという判断、あるいは厚生労働大臣が指定するという判断、なしという判断のバックグラウンドはどこにあるのですか。この行為は何で指定であって、この行為は何で認定であって、この行為は何も要らないという判断基準はどこにあったのかを教えていただくと、AかBかも非常にわかりやすくなるような気もするのですが。
○江口医事課長補佐 具体的に、一覧表の中では厚生労働大臣の許可、厚生労働大臣の指定が挙げられておりますが、「許可」については、これは講学上の話ですが、一般的に禁止されている特定医行為について、公の機関が特定の場にこれを解除して、適法にすることができるようにする行為と言われております。例えば、医療関係職種の免許も「許可」に該当するということで、そのほかでは病院の開設許可なども「許可」に該当するものかと思います。
 一方、「指定」は公法上も私法上もかなり用例は多く使われていて、指定そのものの行為については、人や場所といったものを特定する行為という位置付けがされております。この一覧表の中では、精神保健指定医という形で指定をするとか、臨床研修の場合には臨床研修指定病院を指定するという形で使われておりますが、これを見たときには、一定の要件を満たしているかどうかを「指定」という行為で特定しているということかと思われます。
○玉川看護職員確保対策官 若干補足します。こちらの表に掲げているもののほとんどは、医師がやるものになっております。そういう意味では、看護師の場合と違って、医事行為については一般に医師の場合はできるということからで、そのできる、できないという意味で範囲を区切っているものではないのわけですが、例えば精神保健指定医のように、この人が指定をしないと行政法上の効力が起きないというものについては、「指定」という形で規定しやっています。
 先ほどの麻酔科の標榜医のところは、広告してはならないという禁止規範とセットになっておがペアでありますので、この関係で「許可」という言葉を使っておりますが、多くのものところについては行政上の効力が認められるできないかどうかということでこうした枠組みを作っておりまいるということです。こうしたものについても、行政法上の仕組みとしてはあるということで、バリエーションをでお示ししておりまたものです。
○山口委員 先ほどお話があったように、A案、B案ともに、何を誰がという2つの問題が同時にどちらかに分類されているので、両方ともがペアでなければいけないのかという話もあるのかと思います。何をというところについては203項目が挙がっておりますが、これは実際の現場でいろいろ変わり得るし、将来医療の進歩とともに新しく変わると思うので、何をというところだけお伺いしたいと思います。特定の医療行為を法令で位置付けるA案と、「分類に従い、特定の医行為が診療の補助に含まれることを明確化し」とあるB案の明確化された場合と、どこがどう違うかということと、新しく境界領域というか、またその中で新しいグレーゾーンができるのだろうと思うのですが、進歩に伴って新しい医行為が出てきたときに、その取り扱いにおけるA案とB案の違いはどのようになるのか、その辺を教えていただけますか。
○江口医事課長補佐 特定医行為そのものを明確化するという形だけで言うと、法令上位置付ける形であれ、ガイドラインなり通知なりで一定の整理をしてやる場合であれ、明確化ということでは同じような効果が生じるのかなと思います。ただ、一定の教育を受けた看護師が医師の包括的な指示の下で特定医行為を安全に行う仕組みを、実際に現場で実効あるものとしていくかどうかを考えたときに、何が特定医行為であって、それを実施する看護師はこういう教育を受けなければいけないという要件が、きちんと法令上位置付けられているかどうかという面では、実効上は違う効果があるのかなと思っております。
○山口委員 B案の明確化というのは、どういう過程でどういう格好でされるのでしょうか。
○江口医事課長補佐 具体的な方法としては、いろいろあると思いますが、例えば通知の形でいま作業をWGでやっていただいているので、その作業の結果、分類された結果を通知の形で世の中に示していくことが、1つの方法としては考えられるかと思います。
○山口委員 新しい、あるいは問題になるような記載されていない行為が出た場合には、その都度それを指定するということになるのでしょうか。
○江口医事課長補佐 新しく出てきた行為をどう分類するかについては、それを法令上位置付ける場合でも通知でそれを明確化する場合でも、基本的にはその都度新たに分類をした上で、法令上位置付けられる場合には法令上追加で示すことになりますし、通知で示した場合については、同じように新しく分類した結果を通知で示していくことになろうかと思います。
○山本(隆)委員 ガイドラインとなると、簡単に言うと例示に近い形になると思うのです。ですから、そこから外れるから絶対にやってはいけないという、非常にきつい縛りのものにはならないのではないかと。ただ、ガイドラインにしたほうが明確性は増すので、ガイドラインの意味はあるのですが、それでガチガチに縛るということではないだろうと思います。
 法令上の場合も、おそらく法律のレベルでは非常に一般的に「特定の医行為」という抽象的な言い方をしておいて、省令とか告示、これは法的な拘束力があるものですが、これでもう少し具体化をして、さらに具体的な部分はガイドラインのような形で示すことになるだろうと思います。その意味では、根拠が法律に置かれるというところは確かにA案とB案の違いではあるのですが、最終的に具体的にこの行為は医行為に当たるかどうかという判断は、おそらくA案でもガイドライン等の形で示されることになるのではないかと思います。
○小川委員 山口先生が先ほどお話になったことは、非常によくわかるのです。このA案とB案を対比してA案、B案とするのであれば、例えば法令上ではないのだったら、きちんと法令上でないところは何に当たるのか、A案の文章とB案の文章が全然対応していないのです。だから、何と何が対立していて、法令上でない場合には何が担保するのか、カリキュラムを位置付けるとなっているけれども、位置付けるところはB案では何なのか。要するに、A案で書かれている1行の文章とB案で書かれている3行の文章が全然対応していないから、皆さんわけがわからないのだと思います。
○永井座長 事務局からもう少しご説明いただけますか。
○田原医事課長 具体的な説明ではありませんが、参考資料3をご覧ください。これは第11回チーム医療推進会議にもお示ししたものですが、特定医行為を法的に位置付けることについて、法的に位置付ける場合と現行のままの場合ということで、特定行為の範囲や特定行為の実施についてある程度考え方を整理したものです。今回の論点との関係では、左側がA案、右側はB案になるということでおおよそ分けられるわけですが、いままでこういう資料でご議論いただいて、おおよそ法的に位置付ける場合と現行のままの場合、ガイドラインのような場合との違いをある程度ご議論いただいていたので、もう少し整理をして、資料1のような形でA案、B案という形でお示ししたものです。その内容についてはこれをご覧いただいて、さらにご議論を深めていただければと思っております。
○片田委員 参考資料3を見ながら、これはすごく心細い提案なのです。どういう意味で心細いかというと、いずれなのかと。先ほど言ったように、法的に位置付けるという部分もレベルがあるのに、それがない場合は国の責任はどうなるのだということになり兼ねないから、提案にはならないのではないかと思うのです。しかし、その中で法的に位置付けるということにも先ほど来言われているのが、ここにも幅があるのではないかということだと私は理解しています。
○永井座長 何らかの法的な位置付けは必要だということですね。しかし、A案の中のレベルをもう少し具体的に示していただきたいということですか。そこはこれからの作業なのだろうと思いますが、いかがですか。
○田原医事課長 もしA案がよくて、A案の中でいろいろグレードがあるということであれば、A案の中でこのように示してもらったほうがいいとか、こういう幅で示してもらったほうがいいというご意見をいただければ、それを我々で受け止めて、次回以降整理をして、お示ししたいと思っております。
○山本(隆)委員 事務局の理解と私の理解が違っているかもしれませんが、論点?は特定の医行為、それに対応するカリキュラム等の条件を法令上位置付ける。それに対して、B案はそれは法令上位置付けない。つまり、現在の看護師一般の行うことができる医行為と、それに対応する看護師一般の受けるべきカリキュラムが現在できている、その状態のままにするという理解でよろしいですか。
○田原医事課長 その理解で結構です。端的に言えば、A案は法令で位置付ける、B案は法令で位置付けないということで、法令で位置付けないにしても、何らかの形でガイドラインとして示して明確化することはあり得るのではないかということで、こういう表現にしております。
○永井座長 そうすると、A案は何らかの法的な位置付けを行うということですね。B案は一切法的には位置付けないという対比だということですか。
○田原医事課長 対比で言えばそういうことになります。
○島崎委員 遅れて来たので、私が理解していないのかもしれませんが、A案は特定の医行為についてはカリキュラムで明確に位置付けて、それについては法律的な効果として指示の対応が異なるということではないかと思っています。指示の対応が異なるというのは、特定の医行為については特定の修練を積んだ看護師が行うときには医師の指示が、「緩くてよい」というのは語弊があるかもしれませんが、包括的な指示でよいという、そういう法的な効果が生じると理解をしていたのですが、そうではないのですか。
○田原医事課長 そのようなご理解でよろしいかと思います。そういう行為についていろいろな効果を行うために、対象となる行為を法令上しっかりと位置付けるのか否かということになろうかと思います。
○島崎委員 もしそうだとすると、法律で位置付けることなしに、どうして法律的な効果を発生させることができるのかがよく理解できません。具体的に言うと、B案の教育・研修の付加とか一定の安全管理体制を整えるという義務付けはどうしてできるのでしょうか。そういうことをしたほうが好ましいというレベルであればともかく、一定の安全性を担保をするために、そういうことを義務付けるのに、どうしてそれが法律上の根拠がなくてできるのだろうかというのが素朴な疑問です。
○田原医事課長 そういう意味では、B案はそのような義務付けなどはしないという意味合いになります。ですから、それは現場に任せて、現行どおり、ある程度ガイドライン等で明確化するにしても、それは緩い、単に明確化しただけで、それによって何らか義務が発生したり、行為について制限をしたりするものではないということです。現行のままではなくて、もう少し法令上何らかの制限を加えたり、あるいは教育を付加させたりする必要があるということであれば、A案を選んでいただくことになろうかと思います。
○藤川委員 いま言われたように、A案がポンと1行で書いてあるものですから理解に苦しむのですが、特定の医行為を決めて、包括的指示でできるいわゆる特定看護師(仮称)みたいなものを作るのと、一般の看護師でも具体的指示があれば、いままでどおりできるというのがA案です。B案はそうではなくて、一般の看護師にもきちんと教育を全体的に提供して看護の質のレベルを上げるわけです。診療の補助行為を、前回は静脈注射など、いろいろ通知で出しましたが、ほかの業種にも出したように、通知で出す項目をいまのWGで決めて、それにはふさわしい教育をきちんとやって、医療安全も高めてくださいというガイドラインを出すわけです。通知は、1つ1つの行為だけでは出せないと思います。例えば「ドレーンの抜去類」とか、そういう表現になってくると思いますが、一つひとつの行為をすべて1,000も2,000も通知はできないわけですから、ある程度の安全を確保できる範囲の看護師がしてもいい行為を出す、いわゆる今までのように通知を出す形がB案だと思うのです。業務を拡大するにしても、きちんと教育をやって、安全をさらに確保しないと駄目ですよというガイドラインを出すのがB案ではないかと、私は理解しています。
○永井座長 努力規定のような感じですね。法的には縛りはないと。
○藤川委員 結局法的に縛ったとしても、業務上過失で責任を問われるのは変わらないわけです。国家が認証しようが認証すまいが、業務上の過失によって、もし患者が亡くなったりした場合は、たとえ国家で認証していても学会で認証していても、責任は変わらないと思います。だから、国家の認証が、業務拡大における安全の担保には決してならない。看護師という国家資格を持っている以上は、必ず生涯教育で勉強していかないと、医療には付いていけないわけですから、そういう点ではB案は我々日本医師会が主張しているような内容に近いかなと、私は理解しています。
○永井座長 その場合はばらつきが大きくなる懸念があるという議論だったと思いますが、いかがでしょうか。
○太田委員 在宅の場面の話ですが、何をという行為を、例えばバルーンカテーテルの交換を想定しますと、比較的よく詰りますから、在宅ではバルーンの交換は夜間に行われることが多いのですが、いちいち医師の到着を待たずとも、看護師のレベルで判断して交換がスムーズに進むのが望ましいと私は思います。
 そのときに、そういった行為に対してナース自身がそれをやることに不安を感じているか、患者自身がナースにやってもらうことに対して不安を感じているか、その辺の意識が非常に大きいと思うのです。ですから、再三、麻酔科の標榜医のことを例に挙げますが、麻酔をかけてもらうときに標榜医にかけてもらったほうが安心なのか、標榜医を持たない先生にかけてもらったほうが安心なのかというと、おそらく標榜医を持っている先生にかけてもらったほうが、患者の側からすると安心なのではないかと思うのです。そういう理論からいくと、在宅の場面はナースが1人で判断して1人で行う行為が非常に多いので、それは法的に担保してもらったほうが、ナースは安心して仕事ができるでしょうし、それを受ける患者もそういった資格を持った、あるいは認証されたナースがやることに対しての信頼感、安心は当然あるだろうと私は考えております。
○永井座長 認証の問題とその行為の位置付けは、多少は分けて議論する必要があると思いますが。
○太田委員 仮にバルーンという例を具体的な例として挙げただけですが。
○島崎委員 医療の技術が高度化をし、あるいは医療の実施の場面がいろいろと分かれていく、例えば在宅などもその例かもしれませんが、医療法ができた当時とは医療レベルや取り巻く環境が違うので、「診療の補助」の内容・範囲もかなり変わってきています。現実にこの議論がスタートした前提として現場ではどういうことになっているのか調べたわけですが、必ずしも203項目と一致しているかどうかは別にして、「診療の補助」としてかなり高度なことをやっています。こういうことが議論の前提としてあったのだろうと思います。
 言葉を変えて言うと、通常の看護師であれば、すべからくこの程度はできるはずだという診療の補助Part1みたいなものと、特定の技量を持った人であれば行える診療の補助Part2というか、特定の診療の補助行為があって、医療の安全性、つまり、そういう技術をきちんと医療現場で不安なく行えるためにはどうすればよいのかと考える必要があると思います。要するに、法的に明確化し、その範囲や法律的な効果、必要な教育、あるいは安全管理体制も含めて、そういうことを担保していかないと安心できないということになると思います。
○永井座長 もう1つの論点の認証の問題もありますので、そちらも含めてご議論いただきたいと思います。
○片田委員 本日、永井座長にお願いして配付していただいた声明のことに関してです。いまディスカッションされていますように、特定の医行為という部分を一つひとつ出していたら、それを特定することができない状況が現実的にあると思うのです。しかし、先ほど言われている、例えば「類」とか、それが出てくるのは、それぞれの先ほどの在宅という専門領域であり、いろいろな状況の中に専門領域があるがゆえに、ここだったら大丈夫だということがわかる行為が出てくるはずなのです。だから、それを最初から医行為でいこうとすると、それがそれぞれの領域でどのようにできるようになるのかという判断は、ここですごくやりにくくなるということに関しての声明ですので、もう一度お読みになっていただけるとありがたいと思うのです。そのような形で、特定の医行為ということよりは、認証能力というようなものをきちんと、どのように認証化するかということに関してが、本当に大切になってくるのだろうと思っています。
○永井座長 ただ、特定の医行為があることはあるのです、グレーゾーンのところね。
○片田委員 それはあるでしょう。
○永井座長 それをどうするか、法的な位置付けにするのか、あるいは国家認証みたいにするのか、協会認証にするのか。何か教育は必要であると、そこはよろしいわけですよね。
○片田委員 それはそうですね。
○永井座長 いかがでしょうか。これはかなり幅がありますよね。何らかの法的なことで位置付けておいて、認証はもう少し現場に応じた認証の仕方をしていくということも考えられるわけで、組合せあるいはその位置付けのスペクトラムは非常に広いわけですね。ただ、全く自主的に任せるというわけにもいかないのではないかと思います。何かは法的に書いていただく必要はあると思うのです。
 ただ、その場合に、どこまでその状況に応じて厳しく、あるいは緩く書くかというのは、もう少し具体的な案を見せていただいて、さらに議論したいと思います。
○藤川委員 専門学会の先生方に聞きたいのです。いま専門医の問題が出ていますが、専門医でない救急医と専門医である救急医とどういう境界を持ってさせているのか、麻酔もそうですが、その辺はいかがですか。医師の場合、専門医であるのと非専門医の場合の特定医行為の差が何かありますか。
○永井座長 いかがですか。
○山口委員 それもやはり領域によると思うのです。私は循環器内科ですが、例えば循環器内科でカテーテルによる治療という話になった場合には、やはりそれなりのトレーニングを受けて、その学会がある程度専門医を決めて、その専門医がやる話であれば安心して受けられます。ただ、単に循環器、単に医師、例えば単に内科医というだけでは、「では、カテーテルを持ってできますか」と言ったら、「それはやっては具合が悪いよ」という話になりますよね。
○藤川委員 いや、私が言っているのは専門医としてです。5年、6年経つと専門医になります。当然、卒業研修(前期、後期)で訓練しますよね。そのときは専門医ではないですね。そういうところは、いわゆる国家認証はしていないですよね。専門医になったからといって、厚労省の大臣認証で「あなたは心臓カテーテルができますよ」というようなことはやっていないです。学会で専門医の認証はしているけれども。
○山口委員 いや、学会で専門医をやっています。しかし、それは専門医制度に乗っかって、必ず指導医の下で研修をするという時期の話ですよね。
○藤川委員 そうですね。
○山口委員 だからその時期は、今の専門医制度でも、やはり指導医の下で研修を受けているという形だと思います。それはある意味、学会の自律的な医師の養成課程ということですから、決して医師の免許証を持って好きにやっているということではないと思います。
○藤川委員 それは、好きにではないですが、医師の免許証を持って循環器科に入局して、心臓カテーテル検査、治療をすること自体が法律違反ではないですよね。
○永井座長 いかがでしょうか。この認証の問題ですが、考えようによっては、何か位置付け、行為の位置付け、あるいは、教育のことが法律に書いてあれば、認証まで国家試験にする必要があるかという議論もあるかと思うのです。
○小川委員 これが例示として妥当かどうか、よくわかりませんが。実は、15年ぐらい前に医学教育の分野で臨床実習をより高度化して実質化しようということで、臨床参加型の臨床実習ということが叫ばれたわけです。そのときに非常に素晴らしい「前川レポート」という、水準1、水準2、水準3という、これはやってはいけないこと、あるいはこれはやってもいいことという3段階のです。いろいろな医行為に関して学生が、まだ医者の免許証を取っていないわけですから、前川レポートということで、学生がトレーニングする課程においてこういう医行為はやってもいいですよというようなことを非常に詳細にレポートしたわけです。これは、たしか文部科学省の委員会で決めたことだと思います。
 結局、これは法的な裏付けが全くなかった。これが悲劇の始まりでした。したがって、各大学の教育における努力目標に過ぎないことによって、結局、一生懸命に頑張っている大学もあれば、あまり頑張らない大学もあるという中で、今度、何が起こってきたかというと、医学教育の国際水準の中で、日本の臨床実習は非常に遅れているではないかということが指摘されるようなことになってしまった。結局、ああいう立派な前川レポートを作って、各医行為の水準1、2、3まで決めたにもかかわらず、それが実際に実施されなかった。15年前にあれだけ立派なものを作ったにもかかわらず実施されなかったその元は、法的な裏付けがなかった、努力目標だけだったからだと私は思うのです。こういう前例があるわけですから、この辺を含めてご議論をいただければありがたいのかなと思います。
○永井座長 ありがとうございます。
○堺委員 参考資料1は根本的な問題提起だったと思うのです。それを見ると、看護の業務には療養上の世話と診療の補助と2つあるわけですが、その診療の補助の内容が変わりつつある状況の中で、それにどう対応しようかという議論だったと思うのです。
 例えば、203項目出てきて、それに対して議論しているわけですが、状況が変化する中でどのように対応するかは、また議論があると思います。これはある程度の法の中でやっていく必要があるのではないでしょうか。そのあとで、では、認証についてどうするかという議論が重要なのではないかという気がします。どうも資料1の論点は逆に、せっかく参考資料1などがあるにもかかわらず、問題をちょっと複雑化したのかなという感じがするので、是非原点に戻ったほうが良いと思います。我々は何の目的でチーム医療推進会議をやっていたかというのを考えていただければ、自ずとわかるような気はするのですが、いかがでしょうか。
○永井座長 いかがでしょうか。今回、事務局から非常に幅広い提案がなされているわけですが、この背景をもう少しご説明いただけますか。
○田原医事課長 もともと、昨年の11月に参考資料1にありますような骨子(案)をお示ししておりましたが、これに対して12月にチーム医療推進会議としての意見がまとめられたところです。反対のご意見もありますので、骨子(案)もありながら、幅広くご議論いただくためにこういう論点整理をしたものです。「論点の整理」の論点?のA案と論点?のA案ですと、この骨子(案)の内容になろうかと思います。また、論点?のB案と論点?のB案となりますと、現行と全く変わらないような形になります。その両極端がありますが、その間の中でどのような仕組みがいいのか、現行の参考としていくつかの制度をお示ししておりますので、そういうものを参考に、このようにしてはどうかというご議論をいただいて、それを基に事務局で一定の整理をして、またご議論を深めていただきたいと思っております。
○永井座長 いかがでしょうか。
○島崎委員 参考の資料などを見ても、一定の法律効果を及ぼすには、当然、法律上何らかの根拠規定が必要だと思うのです。ただし、その能力の認証とか、それを必ずしも具体的に国家試験というような形でやることまで求めているわけではない。その間に幅があってしかるべきだと思います。こうした議論をするときに必要だと思うことは、国がその能力認証を行うのか、ほかでもよいのか、といったときに考慮しておかなければいけないファクターというのは何があるのかということです。つまり、一定の法律効果を及ぼす以上、その認定にばらつきがあってはいけない、そこが強く求められるのはそのとおりだと思うのですが、考慮すべきファクターとしてほかに何があるのでしょうか。ちょっと漠とした質問なのですが、その辺り、何かヒントになるようなものがあるのでしょうか。例えば、あえて1つだけ言えば、国として具体的な個別の行為の範囲を決める際、国家が強く関与するのが好ましいか好ましくないかといった判断基準や議論もあるのでしょうか。よくわからないところがあるので質問させていただきます。
○永井座長 有賀委員、その辺は何かWGで議論されていますか。
○有賀委員 WGでは、法令上どうのこうのということは、先ほどお話したように実はないのです。
○永井座長 では求められる要件は。
○有賀委員 それはカリキュラムの内容、それから、先ほど先生が質問された、何項目かのうちのどれがどれだけいわゆる難しいのかという分類です。だから、今のここでの文脈で言いますと、たくさんの看護師さんたちにお手伝いいただいている医行為として極めて難しそうなもの、中等度のもの、現状で個々に勉強をなさいませという程度のもの、松竹梅とかABCなどと言っていますが、3段階としています。その中の個々の勉強でどうぞというものに関しては、そういうふうな分類なので、皆さん、よろしくと。それから松またはBと呼んだ真ん中に関しては、やはり病院の中で一定の勉強のプロセスを持ちなさいと。
 例えば医師でいえば、中心静脈ラインをとるときに、各フロアで勝手にやるのではなくて、病院で勉強のプロセスを持ちなさいと。それでもって、トレーニングをされたドクターからよく教わってからきちんとやりましょうねと、そういうルールで勉強をしながら看護師さんたちにやってもらいましょうねと。くだんの特定行為と言われるようなものに関していうと、一定のカリキュラムで勉強した暁に、社会の仕組みとして何らかの形でそれができるようにしていきましょうね、という話になりますから、認証という意味では、確かに何らかの認証というようなことになるはずです。
○永井座長 やはり、ばらつきを減らしてある基準はクリアしてもらうというのが、当然前提になってくるのですね。
○有賀委員 そうです。その勉強のプロセスが、今現在、日本看護協会の資格である、任意団体の資格かもしれませんが、認定看護師の資格を持った方に新たに数カ月勉強していただこうというようなものと。つまり、救急医療の分野に特化しているとか、・・・の分野に特化して認定の資格を持っているので、では、その分野において、いま言ったAに分類されるものに関して、できるような形でこれだけの勉強をしてもらいましょうねと。でその後に認証しましょうと。それから、大学院というのは修士課程ですかね、2年間コースに入ってもらって、そこで老年看護とか、先ほど言った集中治療とか、そのような勉強をしてもらって、それでもってその後で認証していきましょうと。だから認証の暁に、8カ月コースで認証するものと、大学院などで行われた2年間の勉強のあとの認証は、同じ認証とはいいながら、たぶんその守備範囲に関して少し差があるのではないかという議論なのです。
 そこで私たちのWGの中においても、2年コースを経れば、とい満遍なく、どの分野においてもスーパーナースみたいなことってあるのかという議論があって、それはさすがに、やはりイメージとしてなかなか持ちにくいというような議論もあります。いずれにしても、そのような議論がある。
○藤川委員 先ほどの島崎先生のお話にお答えします。これは前回の委員会で私たちが資料で出した、厚生科学研究の中で、医師法に基づく医行為の研究がきちんと終わっております。保助看法は保助看法できちんとあります。いま議論していることは、診療の補助の切り口から議論しています。医行為すなわち医師の裁量権の範囲の医師法で認められた医師がやるべき行為を削っていくタスクシフティングの話です。保助看法のほうから改正をしていくというのは、私はあまり感心しない。もし医師がすべき医行為をタスクシフティングするというならば、やはり医師法の改正も考慮した上で保助看法の改正もするという、2つの法律にきちんと手を付けるという前提でやらなければ、いままで長年築いてきた医師法に基づく医療の安全、保助看法による医療安全がぐらついてきます。これは憲法の9条問題と一緒です。平和憲法を改正するならば、自衛隊をどうするかという問題と一緒です。やはり大きな根幹になる日本の医療の憲法ですから、それを扱うということであれば、それなりの覚悟を持ってやらないといけません。保助看法改正で、看護師が本来すべきでないのに医行為をするようになるというのはいかがなものかということです。少なくとも医療安全は損なわれるわけですから、それに関しては、やはり法律的にもう少ししっかりした議論をしないと、危なっかしいかなというのを感じます。
○島崎委員 今日、議論が必ずしも完結しないのであれば次回でもよいのですが、次のようなことを議論する必要があるように思います。1つの極として、能力の認証に国が直接かかわる、つまり、国家資格でなおかつ国が自ら認証するような形態がありますが、その対極として、この論点?のB案になるのでしょうか、認証は学会に任せてしまう、あるいはどこかの団体に任せて国は極力認証に関与しないようにするという形態がありのすが、その間にバリエーションはいろいろあると思います。事務局からこれまでの前例を紹介していただいたわけですが、かなり古い法律もあり、あるいは先ほどのお話ですと議員立法のものもあるようです。私が知りたいことは、むしろそのときのものの考え方であり、先ほど半田委員がおっしゃったこととも関係しますが、多少抽象的であっても、何かこういう考え方でこういう取り扱いにしたという「切り口」みたいなものがないと議論しにくいような気がいたします。
 関連して言うと、論点?についても、先ほど来ありますように、確かにA案とB案の違いがはっきりしないので、具体的な要件とか法的な効果が曖昧になってしまう。そこは今後の議論だとしても、事務局は平成23年11月18日には「制度の骨子(案)」まで示しているわけですから、それをベースする形でも構いませんが、具体的な違いをもう少し明確にしていただく必要があるような気がいたします。
○大谷医政局長 論点をいただいていまして、それぞれ、事務局でもう少し整理しなければいけない論点は多いと思うのですが、基本的に1つ、入口のところでは、先ほど島崎委員がおっしゃったように、どういうためにやるから、どういう許認可の形があるのかということは、考え方を整理しなければいけないと思うのです。それで、下に右へ強から弱まで幅を置いているのは、AかBかではなくて、国が自ら試験をするから、それから専門の学会にお任せするまで幅がありますね。
 その中には、右端にも国としては学会にお願いするという、関与するというやり方もあるわけですから、相当バリエーションがあるだろうと。そうすると、何が求められるかというと、おそらくこの制度、原案でいけば、包括的指示を仮にこの認証を持った人に、その医師ができるようになるとすれば、医師がその認証を持った人に包括的指示に足るだけの認証、国の関与といったらどこまでなのかということになるし、患者さんがその認証を持ったナースにそのことをお願いするときには、こういうことを経た人は信頼に足るね、というところはどういう関与なのかという、そういうことを見ていかなければいけないだろうと。そうなると、少なくともドンピシャのものはないと思うので、それはやはり、1つの例を見ながら考えていかなければいけないのかなと思います。そういう意味で、基準はやはり、医師が包括的指示をするに足る信頼を得る公的な関与は何なのか、それから患者さんの立場、そういうものはあると。それが1つだと思います。
 それからもう1つ。能力がシフトするのかというと、今回のは医師の行為を削るということではなくて、医師の行為は全然変わらないので、診療の補助でグレーゾーンのところをどう確定するかという議論ですから、その確定するときの決め方はおそらく3つあって、1つは、要するに、侵襲性の高いもので抽象的に決めていくと。これは、しかし、わからないということでグレーゾーンが生まれているのだろうと。そうなると、特定するしかないと。そうなると、ポジティブリストかネガティブリストかどっちかだろうと。ポジティブだったら、これをしてはいいということを決めておくやり方で、今回はそれに立っている。ネガティブだったら、これとこれとこれはしては駄目だということをはっきり書くということになる。ネガティブリストで作るとおそらく、医療行為の数はものすごくあるわけですから、現実的に特定するためにはネガティブリストがいいかポジティブリストがいいかと。そうすると、刻々発生するからその指定省令の改正が頻繁になるかもしれませんが、限定的にするためにはどっちのほうが効率的かということもあるのかなと、そのように考えています。いかがでしょうか。
○永井座長 根拠法は保助看法ということになるのですね。具体的な一つひとつの行為は別として、基本になるのは保助看法で位置付けると。
○大谷医政局長 ええ、医師の行為にいわば影響させるわけではないわけです。
○永井座長 既にあるグレーゾーンを診療の補助として位置付けると。それは保助看法の改正ということになるわけですね。
○大谷医政局長 法令上位置付けるならば、保助看法がベースになると思います。
○片田委員 保助看法をいじるというのは本当に大きなことだと思います。それで、包括的指示という部分で言われていますが、通常、グローバルスタンダードのプロのところだと、いわゆるCRリスポンシビリティという言葉が使われていると思うのです。それは、両方ともが行うことができるけれども、その場合にお互いが、どのくらいその責任の範疇を理解しながらやるかということになっていくわけですよね。そのような形で包括的指示というのはずっと昔から言われていることなわけです。今回は違うとおっしゃっていますが、そのことに関してというようなのを規定することが難しいから「包括的指示」とおっしゃっているのだとは思うのです。そういう場合に、では、包括的指示ができる人、それから、具体的指示がありさえすればできるというような形のところを持ちながら、なおかつ保助看法をいじるというのは、私はすごく難しいことなのではないかと思います。
○永井座長 いかがですか。
○藤川委員 結局、医師であっても看護師であっても、同じ5年目であっても、上司から見れば、やはり頼りない5年目の医師や看護師に見えるわけです。たとえ特定看護師(仮称)を作ったとしても、太田先生が言われるように、任せられる特定看護師(仮称)と、やはり任せられない特定看護師(仮称)ができるわけです。やはりどうしても能力の差と経験の差が出てきます。先生が言われたように、なかなかクリアカットにできないので、現場の医師がきちんとその能力を勘案しなければと無理なわけです。たとえ国家が認証しようが、学会が認証しようが、やはり能力の差は出てきますので、そこは現場の医師に任せてやったほうが、患者さんも安全だと思いますし、我々も安心して任せられます。片田委員が言われるのはそうかなと思います。
○片田委員 ただ、私、1点先生とは違うのが、現場の医師がそれぞれの看護師の能力を見極めるということは、本当にその時間とその労力というのができるのだろうかと。私たち看護師の自律ということを考えさせていただきますと、自分たちがその行為をできるかできないか判断できるから、いままで看護の免許を使って行為をしてきているのです。だから、そのような形のところを、医師がそこを決めてあげるという発想は、これはやはり職の自律というものを脅かすことだと思います。
○堺委員 藤川委員はそんなことを全く言っていないと思うのです。逆にいうと、看護師さんも医師の評価をしているわけなのです。だから同じことなのです。お互い、信頼関係があれば、それは問題ないのです。だから、包括的指示というと、医者から命令されるという捉え方ではないと思うのです。
○片田委員 ただ、言葉で言っているわけですよね。
○堺委員 以前の捉え方はそうかもしれないけれども、新しい人は全然わからないので。○片田委員 いやいや。
○有賀委員 先生、現に「医師の指示に従って」というような枕詞がどうしてもありますので。そういう意味においては、どういう表現であれ、・・・という医師の指示というようにたぶんならざるを得ないのではないか、というのがおそらく私たちのWGの漠然としたコンセンサスだと思うのです。それをたまたま包括的な指示と言ったのは、これは私の理解ですし、しばしば喋っていますので。包括的な指示というのを極めて具体的に日常的に使っているジャンルは病院前救護の世代ですよね、あそこでは「救急救命士による包括的な指示に従った医行為」というような言い方をしますから。ですから、除細動などは包括的な指示でやらないといけない。「やっていいですか」「じゃ、やれよお前」という世界ではもうありませんから。
 ですから、そのようなことでやるので、お医者様が見極めているなどという話ではなくて、逆に、看護師さんだってきちんとした答えが出る人に指示を仰いでいるわけですから。だから、チーム全体としてのバランスから言えば、さっき言った、最終的に誰がどれぐらいの責任を負うのかというようなことで現場が最終的に法的に律されるのだとすれば、たぶん100のうち51はどんな場合でも医師が責任をとらなくてはいけないのだろうと、こういう話ではないかと思うのです。だから、認証の話は究極的に、その部分をどれだけ社会の仕組みとして、私たちの業界として、ルールとして持ち得るかというだけなのです。私とか堺先生が一緒に働けば、堺先生と私の間では、たぶん一定のルールが出来るとは思うのです。ただ、それが、ICUとか、急性期と慢性期は違うとおっしゃっていますが、私たちが見知っている世界で言えば、急性期の病棟の中で同じように、大体似たようなことができるのかということでになる。そこで、やはりこういうところでルールを決めないといけないのではないかと。
○半田委員 先ほどの島崎委員のお話をぶり戻すようですが。いま我々の団体が、こういう認証とか、どういうことをやっているのか、世界規模でOECD諸国だけで調査をやっているのです。ところが、国がここまでかかわるというのは、返答が来ているところではいまのところ、まずないように感じています。職能団体は国が認めた職種であって、試験を通った人であって、その団体、組織を認定していったら、そこに認証というところをほとんど委託しているのです。ここの表の作り方を見ると、国が管理するほうが認証の制度がよくて、学会が見るのが制度が悪いかのごとき印象を与えかねないのです。それはそうではないだろうと。国がやるから素晴らしくて学会がやるのはそうではないという何か、「独自に」とか「勝手に」という言葉が先ほどから何回か出ているのですが、その考え方が違うだろうと。例えば学会や何かを使って認証するというやり方は、私はこのように左右、こっちが緩くてこっちが厳しいというやり方ではなくて、もっと違う切り口からこの2点を見たほうがいいのではないかという気がします。
 そういう意味で、私は今日の話の中で、例えば論点?だとやはりAがいいのかなと思うところはあるのですが、論点?になると、B案はもっと職能団体や学会に権限委譲。これは一種の権限委譲的に看護師さんへの話になる部分で、国もこの部分においては権限委譲をするのが大きな流れの中でまとまるという感じを私は受けます。
○北村委員 いまいろいろな論点が出ていますが、特定の医行為の範囲がはっきりしていないのです。そういう意味で、どこまで必要かどうかというのがなかなかわからない。それで今、WGのほうではその区分けをしているわけです。それがはっきりしないと、法令上、どこまでいいのか、どうかというのができない。ただ、それとは別に、認証についてどういう形で認めるかというのは、いま半田委員が言ったとおりです。それはまた別に置いておいて、ただ、特定の医行為については。そういう意味では、法律上、はっきりしていないと、やはりグレーゾーンが、看護師さんが仕事をする上でやはり不安になるということもありまして。静注にしても、通知等で認められてきたという中で、ただ、やはり教育が必要です。それはやはり医療機関ごとに違ってきています、医療機関でまだやっていないところもありますし、やらせているところもありますし。そういう意味では、医療機関の常識の中で任せてもいいのではないかということです。ただ、どこまでやらせていいかどうかというのは、やはりしっかりした形で決めてあげるべきだと思っています。
○永井座長 それは、法律とは関係なしに各団体で決めていいということですか。
○北村委員 診療の補助としてやれる範囲については、やはりある程度法律上、通知でもいいと思いますので。そういう意味では、やはりしっかりした形で決めてあげないと駄目だと思います。
○藤本委員 1つお願いがあります。論点?の関係団体、関係学会などが独自に能力認証を行うとした場合に、それぞれ、関係してくる団体あるいは学会が大体想定されると思うのですが、その団体や学会がこのことについてどう受け止めているかということを調べていただいて、例えば、行うとしたらどういう点が課題であるかとか、そういうところを聞いてからでないと、こちらにお任せできるかどうかという判断ができないのかなという気がするのですが、いかがでしょうか。
○藤川委員 麻酔学会で、京都大学麻酔科学教授が今の議論に対して論文を書かれています。結局、自分たちは専門麻酔医の中で専門看護師と医師が忙しいから一緒にやっていますが、あくまでも診療の補助としてやらせているのであって、医師の代行をさせるようなことはさせていませんと述べられています。「俺は隣の麻酔に行くから、お前、しておけよ」というような、そういうことはさせていませんと、あくまでも医師がそこにいて、いろいろな行為をさせてはいるけれども、医師の代行はさせていないと、させるべきでもないということです。京都大学麻酔科学教授が書かれた論文を見て、やはり現場で麻酔をかけている先生方の中にそういう意見もあるのかなと思う。いわゆるアメリカ方式で麻酔の導入時に、バッグを持たせてある程度させるとか、そういう所もあるかもしれませんが、日本では麻酔の研修医がいますし、ベッドサイドの学生もいます。導入のときにマスクを持たせるのなら、研修医や標榜医を目指す人たちが当然持つべきだと思います。まずは研修医師を育てなければ麻酔の実習の責任は果たせないわけです。
○永井座長 それは、いま有賀委員会のほうでその行為を挙げてもらっているわけですね。いかがでしょうか。
○山本(隆)委員 先ほど島崎委員から非常に本質的なお話があって、私も考えがまとまりきっているわけではないので完全な意見というわけではありませんが、先ほどの参考の表を見ると、効果の部分に関して、いろいろなものが入っています。ここに入っているもの、例えば上から2番目の「本人の意思によらない入院」とか「一定の行動制限をする」というのは、公衆衛生等の観点から公共の決定を行うものです。それから、人工妊娠中絶などもそういうところがあるかと思いますが、こういった公共的な決定を行う資格の場合には、この表でいうと、「指定等」とありますが、指定とか許可というところのウエイトがかなり高くなるのではないかと。
 ただ、ここでいま議論しているのは、看護師という資格があるそのベースの上に、特定の行為ができる能力を持った看護師を認証しましょうという話ですから、公共的な決定という面よりは、より専門性をチェックするというところにウエイトがいくことになるだろうと。そうすると、この表でいうと、おそらくウエイトは教育・研修、試験の辺りの話になってきて、そうなるとこれは、やはり基本的に専門家の方に任せないといけない部分が大きいだろうと。例えば国家試験といっても、では、試験委員を誰がやるかというと、やはりそれは専門家の人を呼んできてやるわけですから、当然、専門家の方がここに入ってきて担うことが絶対に必要になるのです。
 ただ、そのときに国がどこまで基準を決めるか、あるいは国がどこまで行為という形で関与するかというのは、結局、国民の安心の部分なのかなと。要するに、国民の信頼性を確保するために、専門家プラス国が関与するということがあったほうが確実ではないか、というところだと思うのです。国のプラスの関与の部分について、いろいろな程度があって、これを見ても、試験については国が全然関与しないというところから関与しているというところまでありますが、非常に大雑把にいえば、国民の生命とか身体とか財産にどれだけ深くかかわっているか、それに対する危険性が非常に高いということであると、国の関与も強くないと国民の信頼という面で問題が出てくるのではないかと、非常に大きな考え方としては、そのようなことになるのかなと思います。
○永井座長 ありがとうございます。
○大久保委員 私も論点?のA案、国が能力認証を行うほうがいいのではないかと考えております。特定行為というのは、やはり患者の安全・安心がいちばん求められますので、教育内容がばらつきなく、いろいろな基準をクリアできるように国が担保して、そして、教育によって習得した能力を国が保証し担保することが、やはり患者の安心につながるということで不可欠だと思います。また、国の認証ということは、実施をしている看護師の安心にもつながると思いますので、国の関与が必要だと考えております。
○太田委員 島崎委員もおっしゃってくださったのですが、在宅医療というのは、歴史をたどっていけば、わずか20年なのです。医療の場が地域にあるとか、自宅にあるとかという考え方は1992年からです。1992年当時は、胃瘻で生きている人は在宅にはいなかったのです。いまや、NICUから出てきた子どもたちは人工呼吸器を付けていて、チューブフィーディングで在宅で暮らしているわけです。そういったことはおそらく想定されていないと思うのです。それほど重症の人たちが地域で暮らしているというような状況であって、そこで誰が支えているかというと、ナースが支えているわけです。そのナースたちの能力に本当に安定した在宅療療生活が依拠しているわけです。そういう状況ですから、国が本当にナースの力をきちんと認めるということこそが、非常に重要なことなのだろうと私は思います。
 職能団体の認証も、もちろん学会の認証も、それはあっていいと思うのですが、ご承知のように、その認定試験がどのように行われているかというと、比較的血の通った判定が多いわけです。それで、職能団体も組織率を見ると、医師会は相当入っていますが、ほかの関連職種は比較的少ないですよね。歯科医師会も100%ではないと思いますし、薬剤師会も、50%か、よくわかりませんが少ないと思いますから、やはり職能団体に委ねるのも、もちろん日本看護協会の組織率も50%を割っているのではないかと思いますが、職能団体に委ねるのは、そういった意味からどうかなと私は考えます。
○永井座長 では最後に片田委員、どうぞ。
○片田委員 会議で、最初のほうで申し上げたのですが大変緊張しておりました。やはり私は、本当にこれまで看護協会が担ってきてくださった専門看護師の認定、認定看護師の認定、その両方ともは専門学会のスペシャリストたちに支えられながら、初めてできたことだと思うのです。あれを作りはじめた原点も、それぞれの専門家たちが集まって、日本看護協会という職能団体の力を借りながらやっていこうという時代だったから、それができたと思っています。そういう意味で、これからのユニバーサルという部分から考えると、やはり第三者機関という部分を学会同士の協力の中でやっていかざるを得ないのではないかと。そうしないと、先ほど質問していらっしゃったように、こちら側のB案のところで、関係団体とか関係学会等が一つひとつやりはじめたら、これはすごく勝手なやり方になっているという現況は既にいろいろな国に起こっているのです。ですから、その辺は国のある程度の指定というような状況がありながら、なおかつきちんとした専門学会の知識ある人たちが、それをやっていくというようなシステムにしていかないといけないのではないか、と思っています。
○永井座長 ありがとうございました。そろそろ時間なのですが。では最後にお願いします。
○宮村委員 私は歯科医師会からなのですが、もともとこれらの議論は、特定看護師さんをどうしてあえて作るのかということで始まっていて、医師会と同じように、今のままでいいのではないかとは私たちも思っていました。しかし、看護業務に特定行為というものをいろいろ挙げていって、包括的指示の下にしても、仮称の特定看護師を作っていこうとするならば、A案というか、やはり何らかの法的なものがないといけないのではないかとは歯科医師として思います。
 もう1点。この間も申し上げたのですが、歯科口腔外科医がいるものですから、歯科医師の指示というものもあるのです。2時間ぐらい経っても、歯科医師の指示などはびた一文も出てこない。医政局長も力強く「医師の指示」と言われると、ここの会議に出ている歯科医の私としては何だかつらいというか、私は一体何のためにいるんだ、という気があります。参考資料1でも、昨年の11月だから歯科医師というのが抜けていてもいいけれども、前回も言ったように、今後はきちんとお願いしたいと思います。
○永井座長 そうしますと、今日出たご意見を基にもう少し具体的な論点の取りまとめを次回までにお願いして、何か具体的な枠組みの提示等を事務局にお願いするということでいかがでしょうか。事務局、よろしいでしょうか。
○田原医事課長 はい。いまお話がありましたように、本日のご意見を踏まえまして、さらなる論点、考えられる具体的な仕組みについて少し整理をさせていただいて、また次回、お示しして、それに基づいてまたご議論いただければと思っております。
○永井座長 最後になりますが、座長宛の要望書が日本看護系大学協議会と看護系学会協議会から配付されています。これはカリキュラムに関するものですので、看護WGでご検討いただきたいと思います。片田委員、何か追加がありましたらご説明ください。
○片田委員 いいえ、そのようにしていただければありがたく、また、ここで議論ができたらうれしいと思います。
○永井座長 ありがとうございます。そうしましたら、事務局からお願いいたします。
○田原医事課長 先ほど申し上げましたように、次回、論点や考えられる具体的な仕組みについて整理をした上で、お示ししたいと思っております。次回以降もご議論をいただければと思います。次回の開催につきましては、追ってご連絡をしたいと思います。
○永井座長 ありがとうございました。それでは、本日はここまでとさせていただきます。どうぞ次回以降もよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。


(了)
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