ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(科学技術部会再生医療の安全性確保と推進に関する専門委員会)> 第1回再生医療の安全性確保と推進に関する専門委員会議事録
2012年9月26日 第1回再生医療の安全性確保と推進に関する専門委員会 議事録
医政局
○日時
平成24年9月26日(水)10:00~12:00
○場所
厚生労働省(17階)専用第21会議室
○出席者
永井委員長、伊藤委員、今村委員、澤委員、中畑委員、野村委員、早川委員、町野委員、松田委員、宮田委員 |
掛江参考人、大和参考人 |
原医政局長、吉岡総務課長、鎌田経済課長、佐原研究開発振興課長、荒木再生医療研究推進室長 |
宮田審査管理課長補佐 |
○議事
○荒木室長(医政局研究開発振興課再生医療研究推進室) それでは、第1回再生医療の安全性確保と推進に関する専門委員会を開会いたします。委員の先生方におかれましては、お忙しいところお集まりくださいましてありがとうございます。第1回ですので、まず委員のご紹介をさせていただきます。机上に配付している資料の3枚目に委員名簿があります。本委員会は、15名の専門家の先生方に委員をお願いしております。では本日ご出席の委員の先生方について、五十音順にご紹介申し上げます。
日本難病・疾病団体協議会代表、伊藤たてお委員。社団法人日本医師会常任理事、今村定臣委員。大阪大学大学院医学系研究科教授、澤芳樹委員。自治医科大学学長、永井良三委員。京都大学iPS細胞研究所副所長、中畑龍俊委員。中日新聞社編集局整理部記者、野村由美子委員。近畿大学薬学総合研究所長、早川堯夫委員。日経BP社特命編集委員、宮田満委員。なお、本日ご出席の予定の上智大学生命倫理研究所教授の町野朔委員、及び協和発酵キリン株式会社相談役の松田譲委員については、少し遅れているようです。
続いて、本日は所用によりご出席いただけなかった委員についてご紹介申し上げます。同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科特別客員教授の位田隆一委員、独立行政法人理化学研究所発生・再生科学総合研究センター副センター長の西川伸一委員、全国薬害被害者団体連絡協議会代表世話人の花井十伍委員、京都大学医学部附属病院輸血細胞治療部教授の前川平委員から、ご欠席の連絡をいただいております。
遅れている先生方もいらっしゃいますが、15名の委員のうち、現在8名の委員にご出席いただいておりますので、本会議が成立していることを申し上げます。さらに本日は参考人として、2名の先生にご出席いただいております。独立行政法人国立成育医療研究センター成育保健政策科学研究室長、掛江直子先生。東京女子医科大学先端生命医科学研究所教授、大和雅之先生です。
それでは開会に当たり、厚生労働省の原医政局長よりご挨拶をさせていただきます。
○原局長(医政局) 委員の皆様方におかれましては、ご多忙のところ、専門委員会にお集まりいただきましてありがとうございます。再生医療につきましては私の個人的な経験からも、2002年から2003年にかけて文部科学省に所属しておりましたときに、再生医療をどうするかということに携わったことがございます。そのとき、今日ご欠席の西川先生がまだ京大におられまして、ちょうど神戸の理化学研究所の研究センターが立ち上がる時期でございました。世の中にはまだiPS細胞もございませんし、韓国での問題もなく、ES細胞に対する非常に大きな期待があったことを記憶しております。
その後、我が国で山中先生によるiPS細胞の発見があり、ますます加速されており、実用化に向けての期待には非常に大きなものがあると感じております。ただ、一方で制度的な面あるいは倫理的な面も含めまして、必ずしも従来の考え方だけでは対応できないところもございますし、腫瘍化の問題等も出ていると聞いております。そういう意味では安全性につきましても、十分に慎重に考えていく必要があると考えております。
また、我が国政府におきましても平成24年7月31日に閣議決定された「日本再生戦略」の中でも、再生医療については大きく掲げられておりまして、早期にできる限り多くの実用化の成功事例創出に取り組み、併せて医療として提供される場合も、薬事規制と同等の安全性を十分確保しつつ、実用化が進むような仕組みの構築について2012年度から検討を開始し、速やかに実施するとされております。
これを受けまして我が省としては、実用化推進のために、また安全性を十分確保できる仕組みを検討することから、8月20日の厚生科学審議会科学技術部会で本委員会の設置が認められ、部会長が示された委員の皆様方にお集まりいただいたところでございます。本日は第1回でございます。内容的には先生方もよくご存じのことも多いと思いますけれども、再生医療の現状と課題に関して、総論的な資料を事務局のほうで準備いたしました。その資料を参考に、この委員会の目的等について認識を共有していただくとともに、今日は自由なご意見をいただければと思っております。これから何回か、この委員会でご議論いただきますが、委員及び参考人の皆様方におかれましては、率直かつ建設的なご意見を賜りたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
○荒木室長 それでは本日、事務局として座っている者の紹介をいたします。いまご挨拶申し上げた原医政局長です。医政局の吉岡総務課長です。同じく医政局の鎌田経済課長です。同じく医政局研究開発振興課の佐原課長です。医薬食品局審査管理課の宮田課長補佐です。そして本日、司会を務めます再生医療研究推進室の荒木でございます。よろしくお願いいたします。メディアの方につきましては、頭撮りはここまでとさせていただきたいと思います。
続いて本専門委員会の委員長についてです。厚生科学審議会科学技術部会運営細則に基づき、すでに永井良三委員にお願いしております。それでは、ここからは永井委員長に司会をお願いしたいと思います。
○永井委員長 委員長を仰せつかりました自治医科大学の永井でございます。どうぞよろしくお願いしたいと思います。先ほど原医政局長からご挨拶がありましたように、新しい医療技術の推進と安全性確保というのは、いつの時代にも考えておかないといけない難しい問題です。できるだけ広い範囲から意見をいただいて、建設的な集約に努めたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
議事の進行の前に、委員長代理を指名させていただきたいと思います。委員長代理は、本日はご欠席ですが、医学がご専門で再生医療等に造詣の深い西川委員にお願いしたいと思います。西川委員からはすでにご了承をいただいております。
それでは事務局から、本日の資料のご説明をお願いいたします。
○荒木室長 まず、議事次第の一枚物、座席表、委員名簿・参考人名簿があります。続いて資料1として「再生医療の安全性確保と推進に関する専門委員会の設置について」、資料2として「再生医療の安全性確保と推進に関する専門委員会運営細則」、資料3として「再生医療の安全性確保と推進に関する専門委員会の今後の進め方(案)」、資料4として「再生・細胞医療の現状及び課題」です。別途、各委員の机上に参考資料ということで、参考資料5まで綴ったものがあります。過不足・落丁等がありましたら、事務局までお申し出ください。
○永井委員長 では議事を始めます。最初に事務局から、専門委員会の設置についてのご説明をお願いいたします。
○荒木室長 それでは資料1から3に基づき、本専門委員会の設置及び今後のスケジュールを含めてご説明したいと思います。まず資料1です。8月20日の厚生科学審議会科学技術部会において、本委員会の設置が認められました。「設置の趣旨」が簡単に書いてあります。再生医療については患者(国民)の期待が非常に高いものである。しかしながら新しい医療であるので、関係法令などが十分整理されていないということで、実用化に際しての安全性の課題が言われているところです。先ほど局長のご挨拶の中で申し上げた、閣議決定された「日本再生戦略」においても、早期にできる限り多くの実用化の成功事例創出に取り組むとともに、医療として提供される再生医療についても、安全性を十分確保しつつ、実用化が進むような仕組みの構築を検討するということで、これがそのための検討委員会という位置づけになっております。
「検討課題等」については、医療として提供される再生医療について、同等の安全性を十分確保しつつ、実用化が進むような仕組みについて倫理的、医学的、社会的観点等から、多角的な検討を行い結論を得ることになっております。
「検討組織」「委員構成」については書いたとおりです。いちばん下に注として、委員及び委員長は細則に基づき、科学技術部会の会長が指名するということで、科学技術部会長でもある永井先生からのご指名により、本委員会メンバーが決まっております。
資料2は、本委員会の運営細則についてです。「目的」「委員会の業務」「委員会の組織」「議事の特例」「委員会の庶務」「雑則」となっております。これは一般の細則と同等ですので、あとでお目通しいただければと思っております。
資料3が、本委員会の今後の進め方(案)です。本日が第1回で「再生医療の現状と課題」ということでご説明して、ご意見をいただいた上で、第2回、第3回と年内にあと2回程度開催させていただきます。以降1、2カ月に1回程度開催して、来年の夏をめどに「再生医療の安全性確保のための枠組み」について、本委員会において取りまとめていただけるとありがたいと思っております。資料1から3の説明は以上です。
○永井委員長 それでは、ただいまのご説明についてご質問、ご意見をいただきたいと思います。目的あるいはゴールについて、いろいろご意見がおありかと思いますが、いかがでしょうか。
○中畑委員 この再生医療については、いまヒト幹の審査を経て行われている臨床研究と、当然のことながらPMDAを介して、治験という形で進められる再生医療の両方があるわけです。この委員会での議論は、この両方をカバーするところを目指していくのか、そこをはっきりさせておいていただけると思います。
○永井委員長 事務局、いかがでしょうか。
○荒木室長 あとの資料4でも、全体像という形で少し説明いたします。PMDAの薬事法の範疇については、こちらの委員会の範疇ではないのですが、関連性はありますので、適宜情報を共有しながらと思っております。研究の部分、すなわち現行では大臣告示の「ヒト幹指針」で行っているもの、「ヒト幹指針」の見直しは別途、ヒト幹指針の見直し委員会でやっておりますが、そこの研究あるいは法律的な枠組みが今のところ一定程度ない部分について、どういうものが必要かということは、スコープを広げてやっていこうかと思っております。研究の部分は対象として考えていただいて結構かと思っております。
○早川委員 今のご質問に関連します。「委員会の業務」に第2条の1というのがありますね。ここに「安全性を十分確保しつつ、実用化を推進するための仕組みに関する検討」という文言があります。この「仕組み」というのはシステムのことを指すのか、あるいは要するに考え方、安全性を確保しつつ実用化を推進するためにどういうコンセプトでやっていけばいいか、ということも含むのか。もし、そういうことを含むのであれば、いろいろな制度がありますので、それに通底するコンセプトなり考え方は、たぶんあるのだろうと思います。それは含むのか含まないのか。たぶん私は含むというように理解して参画してきたのです。そこら辺はいかがでしょうか。
○荒木室長 早川委員のご指摘のとおりです。最終型として出てくるものは枠組みということで、システム的なところをご報告いただきたいと思っておりますが、当然その根底にあるものとしては、その思想というか、薬事のほうとも関連するところには共通の部分もあると思います。そういう根底の部分を、結構大所高所的なご意見からまず積み上げていければと思っております。
○永井委員長 ほかにいかがでしょうか。
○中畑委員 ちょうどPMDAに科学委員会というのができて、今週、その中の再生医療の部会がスタートしました。そこではこれからいろいろな検討が始まっていくわけですが、ここでの結論がPMDA、要するに薬事法の中での再生医療にも活かされる形でおまとめいただけたらと思いますので、よろしくお願いいたします。
○永井委員長 よろしいでしょうか。それでは、まず「現状と課題」について、事務局からご説明いただきたいと思います。
○荒木室長 資料4「再生・細胞医療の現状及び課題」を基に、ご説明申し上げたいと思います。次頁からが今回の「再生・細胞医療の現状」ということで、今回のメニューです。まず再生・細胞医療の種類と実施状況、それに用いられる細胞の例、再生・細胞医療に関する近年の科学的動向、今後の可能性、それに対する国民の意識、再生・細胞医療が取り扱う範囲の考え方、現行の日本での実施例、日本での規制の現状、各国の規制の現状ということで、これらを取りまとめたものが「再生・細胞医療の現状」ということでご説明申し上げます。
4頁の「再生・細胞医療等の種類と実施状況」について、ご説明申し上げます。大きくはヒトES細胞、ヒトiPS細胞、ダイレクト・リプログラミングをイメージしたヒトiPS様細胞、上記以外の体性幹細胞等というのがあるでしょう。さらに幅広く再生・細胞医療と捉えますと、リンパ球、樹状細胞等の細胞免疫療法、あるいは濃厚血小板血漿などの成長因子治療、そして組織移植(特に膵島移植など)、臍帯血/骨髄移植、臓器移植までをこちらに掲げております。
それぞれの臨床研究あるいは臨床の現場での診療行為として、どういう形で捉えられているのか。ヒトES細胞については国内では未実施です。米国においては脊椎損傷及び網膜色素のスタッガード病等で、2件実施されております。診療行為と実際に臨床の一般の医療としては、当然海外も含めて未実施です。iPS細胞については、海外も含めて未実施です。日本においては今後、理研での実施を計画しているということは報道等でも出ております。診療行為は、海外も含めて未実施です。ダイレクト・リプログラミングをしたヒトiPS様細胞については、臨床研究あるいは診療行為とも、海外も含めて未実施です。
上記のES、iPS以外の一般の体性幹細胞については、「ヒト幹指針」に基づいた研究として、9月現在で57件の研究が進められております。例えば、東京女子医科大学の細胞シートや大阪大学の心筋シートにおいて、「ヒト幹指針」に基づいた臨床研究が実施されているところです。診療行為、一般の診療という形ですと、日本においては薬事承認済みのものとして、J-TECの自家培養皮膚等と米国のOsirisと呼ばれる間葉系幹細胞を用いたGvHDの治療薬というのがあります。さらに美容外科として豊胸や皮膚のしわ取り等という形で、自由診療でされているものもあります。
リンパ球、樹状細胞等の細胞免疫療法ですが、臨床研究については大学病院等で実施されております。一部の先進医療の中で実施されているものもあります。診療行為としては、海外で薬事承認済みのものとして、Dendreonと呼ばれる自家培養白血球細胞等もありますし、国内においても民間クリニックで、企業の助力の下で実施されているものがあります。
濃厚血小板血漿などの成長因子治療も第3項先進のほうで、大学病院等で実施されているものがあります。海外においては治験中と伺っております。
膵島組織移植に関しては、臨床研究として福島県立医大あるいは国立国際医療センター等で準備されていると伺っております。診療行為として、骨等については大学病院等で実施ということになっております。
臍帯血/骨髄移植は、造血幹細胞移植の法律が前国会で通っておりますが、大学病院等で一般的に臨床研究も実施されておりますし、診療行為については一定程度限定した施設で実施されております。
臓器移植については、臨床研究も実施されておりますし、診療行為は移植学会の認定する施設で実施されているという状況です。
5頁が「再生・細胞医療に用いられる細胞の例(1)」です。いま申し上げたいろいろな種類の細胞を、ビジュアルに示したものです。専門委員の先生方にとっては当然なことと思われるかもしれませんが、一応わかりやすくしました。例えば胚性幹細胞(ES細胞)については、受精卵から胚盤胞になった段階の内部細胞塊から採ったものについてES細胞を樹立し、そこから大量保存・大量増殖が可能という性質を用いて特に分化させて、例えば目、筋肉、骨の基となるような細胞を作っていきます。iPSもいろいろなものから採れます。例えば皮膚から採れば、皮膚の線維芽細胞を基に遺伝子を導入してiPS細胞を作っていく。これも大量保存・大量増殖が可能という特徴を持っています。さらに体性幹細胞、造血幹細胞、間葉系の幹細胞などいろいろありますが、こちらも一定程度の分化能を持っています。
6頁です。例えばリンパ球においてはそれを採取し、調製、活性化することによって、がんの免疫療法という形で使われております。血小板についても採取し、調製、濃縮した上で、けがの皮膚の治療等を促進することに使われている場合があります。膵島については組織移植ですが、分離、調製して投与することで、糖尿病患者のインスリンが不要になる例も、海外の研究で出てきていると思います。
次が「再生・細胞医療に関する近年の科学的動向(1)」ということで、ES細胞の歴史です。1981年ですから、もう30年以上前です。まずマウスES細胞での樹立に成功し、さらに1998年にウィスコンシン大学のトムソン教授が、ヒトESの樹立に成功しました。日本においても2003年に、京都大学の再生研の中辻先生が国内初のヒトES細胞を樹立しています。2010年にヒトES細胞を「ヒト幹指針」の対象として、見直しの際に入れております。ただし細則において、ヒト胚の臨床利用に関する基準が定められるまでは、ヒトES細胞を用いる臨床研究は実施しないと定めております。つい昨年ですが、理化学研究所等がヒトES細胞から立体網膜を形成したということで、大きなニュースになっております。
8頁が「再生・細胞医療に関する近年の科学的動向(2)」ということで、iPSについてです。これも皆さんよくご存じのことですので複習です。まず、これは日本発ということで、2006年に京大にてマウスiPS細胞を樹立。そして2007年、京大の山中教授が世界初のヒトiPS細胞の樹立に成功しました。さらに2008年、京大にiPS細胞研究センターを設置しました。これは基礎研究から臨床研究までしっかり実施できる、世界で初めてiPSに特化した研究所として2010年4月から、CiRA(iPS細胞研究所)が設置されております。これもESと同様に2010年の「ヒト幹指針」の見直しにおいて、ヒトiPS細胞も対象としております。さらに2010年にはダイレクト・リプログラミングによって、ヒト皮膚細胞より造血幹細胞が作成されたということで、最近、とみに再生・細胞医療に関する動きがあります。
9頁が「再生・細胞医療に関する近年の科学的動向(3)」ということで、米国と日本の動向です。米国の動向についてはウィスコンシン大学のトムソン教授等が、山中教授とは異なる4遺伝子によるヒトiPSを2007年に樹立し、2008年1月、これには政治的な動きもありますが、ブッシュ大統領が一般教書演説の中で、iPS細胞等の生命倫理の問題に煩わされることのない幹細胞研究を支援することを表明しました。さらにオバマ大統領に代わりましたが、逆にブッシュ政権が禁じていたES細胞への連邦政府助成を解禁したということで、米国においてはiPS、ESとも政府としても支援していくというトップの判断がされております。2010年7月にはヒトES細胞を用いた初めての臨床研究ということで、脊椎損傷患者の承認を取得。さらに2012年1月、米国アドバンスド・セル・テクノロジー社が、ヒトES細胞を使用して網膜疾患患者の治験を開始しています。
日本については2007年に京大の山中教授が、4遺伝子を用いた世界初のiPS細胞を樹立しました。それを受けて2007年12月には文部科学省によるiPS細胞研究について、2008年度の研究費の助成の増額が決定されたということで、政府としても動いているところです。さらに2010年4月1日から、京大のiPS研究所が始動しているということで、激化する研究競争の中で産学官連携の協力体制が必要だろうと思っております。
10頁が「再生・細胞医療の可能性(1)」ということで、iPS細胞研究の例です。iPSを用いてマウスで樹立されたのが2006年ですから、それからまだ10年経っておりませんが、さまざまな可能性を秘めています。その例として血小板、脊髄、膵臓、腸管等、ヒトのさまざまな臓器あるいは組織に至るものに、iPS細胞を用いて分化誘導がなされています。ものによっては網膜色素上皮のように、網膜色素上皮細胞を作成し、大動物であるサルの目の移植に成功したものもあります。疾患としてはパーキンソン病、アルツハイマー病のようなものがあります。パーキンソン病についてはiPS細胞由来神経細胞を、パーキンソン病のサルに移植して、細胞の機能と生存を確認したということで、難病患者にとっても非常に期待が持てるようなものになっているのではないかと思っております。
11頁が「再生・細胞医療の可能性(2)」ということで、適用可能な国内患者数についてです。少し古いデータです。平成20年度の「再生医療技術戦略調査成果報告書」というNEDOの報告書の中からのもので、これはHS財団のデータを基にしているようです。例えば神経の適用疾患としては、神経切断、離断のようなものです。患者数は年間25万人いらっしゃいます。そのうち再生医療対象患者数は3,000人ぐらいかと。膵臓については、インスリン治療を必要とする?型糖尿病に限って言うと、患者数は5万人のうち、再生医療はもしかしたらみんな適用になるだろうと。あるいは澤委員に非常にやっていただいている心筋については、虚血性心疾患の患者は106万人いて、その10%程度が再生医療の対象患者数になるかもしれないというデータです。国内患者数への裨益効果も大きい可能性があるということを示しております。
12頁が「再生・細胞医療に関する国民の意識(1)」です。これはWeb上の調査で、平成23年3月に報告されたものです。2,900人を対象に、幅広い年代層に対して聞いたものです。再生医療が広く普及することを「期待する」回答者は44.4%です。「強く期待する」も含めますと、7、8割の国民は、再生医療については漠然とというのも含まれるかもしれませんが、非常に期待するということで期待感は大きいわけです。
13頁が、別の厚生科学研究費の特別研究で行われた研究です。これも20~60歳代の約5,000人を対象に、Web上で調査したものです。左側が「私は、自分の血液や皮膚の一部を提供し、これまで治療が困難であったり、方法がなかった病気やけがへの治療法の研究に協力したい」ということに「あてはまる」という方、「ややあてはまる」という方も含めて、7、8割の方が非常に協力したいという意識を持っていらっしゃいます。一方で「提供者が明らかな細胞の入手が困難な場合などに、海外のものなど提供者が不明の細胞を用いることはやむを得ない」ということについては、「あてはまらない」「ややあてはまらない」という方が半数強いらっしゃるということで、再生医療の研究の推進や実用化に向けては協力的・前向きな意見が見られますが、提供者が不明で出所がわからない細胞等、安全性が保証できないものに対しては、若干否定的な傾向もあるという意識があります。
これまで総論的に国民の期待、意識、可能性等を見ましたが、14頁が「再生・細胞医療が取り扱う範囲の考え方」です。これは今回の本委員会で議論していただく前提というか、その上で既存のいろいろな指針、あるいは通知等でどういうように定義づけられているかということで、あえてここは「再生・細胞医療」というように幅広めに考えておりますが、委員会の議論の中でどういうように扱っていくかというのは、これからです。
まず再生・細胞医療の定義です。平成22年3月、「医療機関における自家細胞・組織を用いた再生・細胞医療の実施について」という、医政局長通知の中で定めている定義があります。こちらについては参考資料1に、「再生・細胞医療(ヒトの細胞・組織を採取し、加工した上で、移植又は投与を行う医療をいう)は、臓器機能の再生等を通じて、国民の健康の維持並びに疾病の予防、診断及び治療に重要な役割を果たすことが期待される」ということで、括弧の部分が定義というか、ここで決めております。
「ヒト幹細胞を用いる臨床研究指針(ヒト幹指針)」の中においては、ヒト幹同章の第4で、ヒト幹細胞臨床研究の対象は、病気やけがで失われた臓器や組織の再生を目的とするものであること、第3で、第4に規定する対象疾患等に関するものであって、ヒト幹細胞等を疾病の治療を目的として人の体内に移植又は投与するもの。同章5として、被験者に移植又は投与されるヒト幹細胞等の種類としては、ヒト幹細胞及びこれを豊富に含む細胞集団、それを調製して得られた細胞及び血球、さらにヒト分化細胞を調製して得られた細胞及び血球ということで、ミニマリーマニピュレーテッド、最小限の操作のみにより調製されたものは除くというように規定しております。
さらに米国におけるHCT/P(ヒト細胞、組織または細胞・組織由来製品)の連邦規則があります。そちらにおいては、HCT/Psとはヒト細胞または組織を含む、またはヒト細胞または組織からなる製品であり、ヒト患者に対して埋植、移植、注入または導入することを目的としたものであると。こちらの例としては骨、靭帯、皮膚、硬膜、心臓弁、角膜、末梢血および臍帯血由来造血前駆細胞です。あるいは自己への使用の目的で加工された軟骨細胞、上皮系細胞を合成マトリクス上に乗せたもの、精液またはその他の生殖組織が含まれるが、これらに限定するものではないという形で定義づけられております。
15頁が「再生・細胞医療の実施例(1)」です。医療として提供する再生医療について議論いただきますが、すでに日本でもヒトにされているものがあるという例です。1つは、薬事承認された再生・細胞医療製品の例ということで、日本においては2つしかありません。ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング社の自家培養表皮の「ジェイス」と呼ばれるものと、つい2カ月前に承認された自家培養軟骨のジャックというのがあります。
16頁です。実施例(2)ということで、臨床研究としてヒトに実施されているものです。これは「ヒト幹指針」に基づき承認された研究です。9月現在で57ありますが、そのうちの例として、大阪大学の「虚血性心疾患に対する自己骨髄由来CD133陽性細胞移植に関する臨床研究」、間葉系細胞を用いた骨のもの、心原性の脳塞栓のものというように、いろいろとあります。いちばん下にあるのは、慶應義塾大学医学部の「角膜上皮幹細胞不全症に対する培養上皮細胞シート移植」ということで、こちらは他家のものを使っております。
17頁が実施例(3)の自由診療として、医療機関の中での責任においてやられている臨床研究です。例えば美容目的の豊胸手術では、皮下脂肪等から分離した自家脂肪由来の幹細胞を、自家皮下脂肪組織とともに乳房皮下へ移植します。肌の再生、「しわ取り」と呼ばれるもので、自己皮膚由来の幹細胞を移植します。さらにリンパ球活性化療法ということで、患者から血液を採取し、リンパ球を抽出、薬剤等での活性化、調製をした上で、点滴等で患者の体内に戻します。特にがんの患者等に用いられます。これは機能の再生が目的ではありませんが、細胞の調製作業ということで同じように挙げております。
いま3つの形態を申し上げましたが、18頁はその3つの形態を一覧表にしたもので、それぞれどういう形の規制の現状になっているかというものです。製品として提供される場合は、当然薬事法に基づいてなされますし、臨床研究として提供される場合には、大臣告示である「ヒト幹細胞を用いた臨床研究に関する指針」に基づきます。さらに診療行為として提供される場合は、医政局長通知である「医療機関における自家細胞・組織を用いた再生・細胞医療の実施について」によって行われていると理解しております。
細胞の採取・倫理、再生医療用細胞等の品質・安全性、細胞製造施設に関する規制、移植・投与、有効性の確保、使用時・使用後のリスクへの対応、記録の保存ということで、それぞれ薬事法、大臣告示、医政局長通知の中で定めています。この「同左」と書いてあるのが、大体同じようなレベルで、いまの段階で安全性の確保のために規制として求めている部分です。
「薬事法」については、特に製造施設に関する規制の部分ということで、製造業の許可制、GMP等による品質の管理をする。特に管理者の要件や製造設備の要件、あるいは品質管理の要件も規定されております。有効性の確保の部分は、承認審査をPMDAのほうでしっかりしていただく。使用時・使用後のリスクへの対応では副作用・不具合報告、PMDAの安全性評価、厚生労働大臣の廃棄等命令まであります。最後に記録の保存です。生物由来製品については30年間で、それ以外も10年間となっております。
真ん中のカラムですが、臨床研究として提供される場合は、「ヒト幹指針」についても採取や倫理、あるいは細胞自体の安全性は薬事法に準拠した形で定めております。製造施設に関する規制の部分は、「医療法」として医療施設としての規制であったり、「ヒト幹指針」の中ではGMPに準拠した品質管理を求めています。さらに使用時・使用後のリスクへの対応も、ほぼ同様の形で厚生労働大臣に報告していただきます。保存についても10年間と、「ヒト幹指針」で定めております。「医政局長通知」についても大体同左が多いです。移植・投与の部分というのは、十分な安全対策等を行ってほしいということで、若干具体的な記述がない部分もありますが、3つのトラックについて、それぞれ別のレベルでの法的、それ以外の枠組みがあります。
それを簡単にしたものが、19頁の審査手続きの比較です。「治験」については治験依頼者、企業であったり、いまは医師主導治験というのもありますが、計画届出をしていただき、PMDAにおいて治療結果についての調査をし、実施医療機関との契約を踏まえ、GCP省令に基づいて治験の実施をしていただくことになっております。「臨床研究」についても施設の研究責任者、あるいは総括責任者から申請をいただき、各研究施設内の倫理審査委員会での厳正な審査をいただいた上で、その審査結果を基に、一緒に厚生科学審議会のヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会に出していただきます。それを基に大臣が意見を発出して、臨床研究を実施することになっております。「自由診療」部分については、医療機関内で責任を持っていただくということで、手続きは特になしという状況になっております。
20頁が「再生・細胞医療に関する各国の規制の現状(1)」です。日本においては3つのラインというか、ルートがありますが、再生医療製品ということでアメリカ、ヨーロッパ、韓国を例として挙げております。アメリカについては先ほどHCT/Pの定義を申し上げました。規制対象としては351HCT/P、361HCT/Pというのがあり、基本的に規制の対象として大きく2つに分けています。さらに規制主体はFDAであって、規制内容として351HCT/Pについては品目ごとの承認が必ず必要であろうと。治験に限らず、製品開発を目的としていない臨床研究も含んでいるところが特徴です。さらにFDAでは販売承認申請が必要なく査察によって規制するものとして、靭帯、軟骨等の361HCT/Pもあります。
ヨーロッパではECのRegulationにおいて、規制対象の例外規定としてHopsital Exemptionもありますが、基本的にはEMAにおいて品目ごとの承認が必要なものとなっております。
韓国においても細胞治療剤ということで、規制対象にしております。例外としては医療機関内で医師が自己または同種細胞を当該手術、あるいは処置過程で安全性に問題がない最小限の操作のみを行う場合が、規制対象外となっています。これも同様に、品目ごとの承認が必要という形になっております。
それを米国との比較でビジュアルに表したものが21頁です。左側が日本、右側が米国です。日本においては上のカラムの「業として行う場合(医療機関外において行う場合)」の青の斜線の部分は対象になります。米国において大きく違うのは、「業として行う場合(医療機関外で行う場合)」は当然として、それ以外の診療行為、臨床研究として行う場合はFDAの審査の対象になっている。さらに角膜や臍帯血が含まれる部分は、日本では最小限の処理ということで、一定程度薬事法の対象にはなっておりませんが、米国においては対象になっている。そういう違いがあると思っております。
22頁が「日本と米国における実用化までの過程」です。ほぼ同じですが、日本において違う部分としては、臨床研究で品質、安全性、治験相談の前になる場合もあるかもしれませんが、臨床研究においてある程度そのフィージビリティーなどをやっていきます。ここについては点線になっておりますが、自主的ということで、具体的な法的な枠組みはありません。いままでが現状の部分です。
「再生・細胞医療をめぐる政府の動き」ということでは、24頁です。これは「日本再生戦略」ということで、先ほどから何回も申し上げておりますが、7月31日に閣議決定されたものです。こちらについては下線に書いてありますように、医療として提供される再生医療は、やはり一定程度、特に「薬事規制と同等の安全性を十分確保しつつ」と書いてあります。安全を確保しつつ、実用化が進むような仕組みの構築を進めていきたいということで、25頁の「医療イノベーション5か年計画」にも同じようなことが書いてありますので、割愛させていただきます。
26頁が「再生・細胞医療に関する関係省の検討状況(1)」です。厚生労働省においては審議会の下ではないのですが、「再生医療における制度的枠組みに関する検討会」を開いております。これは平成21年度から22年度に至るまでやっており、平成22年度においては「医療機関における自家細胞・組織を用いた再生・細胞医療の実施について」ということで、先ほどの医政局長通知を発出しております。さらに「再生・細胞医療に関する臨床研究から実用化への切れ目ない移行を可能とする制度的枠組みについて」ということで、平成23年度の報告書を出しております。これも参考資料2に綴じてあります。さらに、「厚生科学審議会医薬品等制度改正検討部会」において、薬事法等の制度改正についての取りまとめがされております。これは参考資料3に綴ってあります。
現行動いているものとしては、先ほど中畑先生からもご指摘がありましたが、「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」の見直しについて、ヒトES細胞を含む細胞の樹立、保存、分配等のあり方についての検討を実施中です。これは平成24年度中の取りまとめを目指しているところです。
27頁。ほかの関係省の動きとしては、文部科学省においては「科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会特定胚及びヒトES細胞等研究専門委員会」において、現行厚生労働省のヒト胚性幹細胞等の樹立と分配に関する検討状況を踏まえて、文部科学省が所管する関係指針の必要な見直しについて考え方を整理していくために、今年5月より検討を開始したところです。経済産業省においても、「再生医療の実用化・産業化に関する研究会」を設置して、現状と課題に関する議論を7月より開始しているところです。
このように、政府としても再生医療を推進していくための検討等を始めているところです。実用化に向けての課題としてどういうものがあるか、29頁で簡単にまとめております。指摘される課題の例ですが、革新的な医療として注目が高い一方、それゆえに次のような倫理面、安全面等での課題を抱えていると言われています。まずは「倫理面」です。他家の細胞等を採取する際のご本人の同意、任意性を確保すべきではないか。ES細胞は受精卵(ただし廃棄が決定した余剰胚)由来であることから、新たに樹立する場合は生命の萌芽に手を加えることになりかねず、無制限に再生医療への利用を認めることに問題はないのか。など倫理面の問題があると指摘されております。
「安全面」については、再生医療に用いられる細胞は生物由来であり、多分化能・増殖能を有し、移植に際して人体に及ぼす影響については未知の部分があるのだろう。特にiPS細胞は遺伝子操作を施すことから、突然変異によるがん化の可能性等もあると言われております。こういうことから安全面での十分な配慮が必要ではないかと。さらに再生医療に使用される細胞というのは、ヒトの体の一部を培養して製造されることから、その調製に当たっては品質が不均一となる可能性や、もともとの細胞に含まれていた細菌やウイルスが伝播するリスクがあるということで、適切な管理が必要ではないかということが言われております。
最後に、「現行のヒト幹指針に対する主な改善要望」です。これは平成23年度の「ヒト幹細胞臨床研究調査業務報告書」ということで、当課から委託した業務です。これは全国100ぐらいのアカデミアで、臨床研究を含めて再生を使った研究をされているような研究者、大学の先生に聞いたアンケート調査で、そこからピックアップしたものです。これは現行「ヒト幹指針」に限っての要望です。
例えば「もう少し柔軟な対応に加え、基準を明確にしてほしい。一部の施設ですでに行われている歯周疾患などの歯槽骨再生に用いる細胞移植については、特に一定の基準を示していただきたい」と。「加えて」という所に下線が引いてありますが、CPCの設置基準などもよくわからないので、どのような基準をクリアすればいいのか教えてほしい。2つ目の○が、民間で行われている似非再生医療にはほとんど規制がない中、アカデミアでの規制は必要最小限にしてほしい。3つ目の○が、胚性幹細胞に関する安全性の問題は十分な討議が必要であろうと。下線部に飛びますが、各細胞集団・精製行程などで審査基準、例えばGrade分類を作成して、ES細胞ではGrade5で審査、自家の非培養細胞ではGrade1(届出のみ)の審査など、審査委員会での迅速化を図ってはどうか。4つ目の○が、既存の幹細胞を使用した臨床研究については柔軟な対応をお願いしたい。5つ目の○が、例えば遺伝子治療あるいはがん免疫療法の細胞培養に従事する技術職について、国家資格制度の創設というのが必要ではないか。ヒト幹細胞指針に従ったCPCの施設・設備、文書体系、実施体制の監査を行って、施設認定制度を発足していただきたい。施設のハード面及びソフト面における監査システムの確立をお願いしたいと。最後に、保険診療で行っている造血幹細胞移植に影響のないように対応をお願いしたいという形で、さまざまな課題が指摘されています。
長々と説明しましたが、現状及び課題については非常にプリミティブというか、基礎的なところがございますけれども、以上でございます。
○永井委員長 ありがとうございます。それでは委員の皆様からご意見、ご質問をいただきたいと思います。澤委員どうぞ。
○澤委員 いま荒木室長からの明快な説明で、全体がどのような審議で進められるべきかということが少しわかってきましたが、最初の部分で再生医療の定義というか、特に14頁にそれぞれの基準で規格でまだ厳密でない。考え方なり関与している医療者の考え方もそれぞれに異なるのですが、「再生・細胞医療」という考え方で、かつ、安全性確保が今回の議論ということであれば、本当にどこまで細胞を使う治療行為はすべて入れるのか。しかも加工というニュアンスも、ほとんど加工しないものから加工するものまでありますが、どこまでカバーするか。そこがまずは議論のポイントかと思うのです。先ほど申しました安全性確保を主眼において考えるならば、細胞を使う、身体から体外に細胞を出して医療行為に使う、もちろん輸血以外だと思うのですが、そこは加工の程度も極めて最小限でも含めるべきではないかと思います。
○永井委員長 いかがでしょうか。
○荒木室長 基本としては、いま澤先生がご指摘のように定義のところ、入口というのは非常に大事だと思います。それも含めて今回ご議論をいただければと、事務局として何か決めてこうやってほしいというわけではなくて、そこはまず議論をいただくとありがたいと思っています。
○今村委員 ヒト由来のES細胞の件ですが、30数年前にいわゆる試験管ベビーが誕生して以来、日本でもこの体外受精、胚移植は非常にポピュラーな医療技術になっていきました。これについてはいろいろな倫理的な問題があるにもかかわらず、その規制は学会の戒告、あるいはガイドラインで規制されているにすぎないということで、非常に問題ではないかと。これについても生殖医療にかかわる法制化、いわゆる規制が考えられつつある。そうすると、受精卵を用いたいろいろな医療技術というものに対する規制と、ここで検討されるであろういわゆる規制の問題が齟齬が出てこないか。生殖医療に関する法制化と、ここで考える再生・細胞医療の実用化に向けてのいろいろな考え方の中に、齟齬が出てこないかということをちょっと心配しております。
○永井委員長 いまの点でよろしいですか。
○早川委員 いまの点に関連してですが、ES細胞というもの、つまり現実には廃棄が決定した余剰胚と、受精卵を区別して考えないと。科学的な観点でいえば、果たして余剰胚から個体ができるのか。となると、生命の萌芽にまさに関連するのですが、これは私は専門家でないのでわかりませんが、私の理解ではそこは1つ線引きがあるのだろうと。受精卵と余剰胚、そんな感じを持っておりますが、これは専門家の先生方にお伺いしたいと思います。それは区別できることなのか、直線上につながっている話なのかです。それによって話の展開は全く違ってくるかどうかは知りませんが、相当違ってくると思います。
○永井委員長 いまの点にどなたかご意見はございますか。
○伊藤委員 私たちは科学的なこと、技術的なことは全く素人でよくわからないのですが、一般国民として考えれば、素晴らしい再生医療が出てくることへの期待感は、このアンケートにもあるように非常に大きいものがあります。さまざまな形で報道されると、特に患者としては期待が大きく膨らむわけですが、期待だけを膨らませてしまってはいけないと思うのです。特にこの委員会は研究がアクセルだとすれば、一定のブレーキの役割もあるのではないかと思うのです。その辺の議論を国民にもわかりやすくしていくことが、私は必要だと思います。
そういう意味でほんのわずかしか出てこないのですが、マイナスと思われる面も、この中ではほんの数箇所だけ出ているのですが、そこをもう少し明らかにしなければいけないと思います。例えば民間で行われている似非再生医療というのが出ていますが、一般国民としては何が本当の再生医療で何が似非再生医療なのか、なぜ一方は規制が強く求められ、片方は放置されているのかということもわからないわけです。そのような中でどういう事故があったのかもわからない。もっと言えば事故が起きる、あるいは法令に違反したような行為が行われていることの技術的な面よりも、その背景が何なのかということを、この議論の中でも報告がまとめられていかないと、判断の基準が期待値の大きいほうにどうしても傾いてしまいますので、そこを明らかにしていただきたい。
これだけ多くの研究者の方々、臨床家の方々がこの問題に取り組んでいて、SF的にパッと全面的に進まないというのはさまざまな困難があるからだと思いますし、難しい点がいっぱいあるのだと思います。そこをどう乗り越えるかが研究なのだと思います。どういう点が困難でどういう点がうまくいかなかったのかも、逐一でもないのでしょうが、特に重要と思われるものについては、一定程度こんなことは困難なのだ、こういうことは難しいのだということも国民の前には明らかにしていただかないと、判断の基準がわからないわけです。また、そういう困難事例、事故事例、あるいは法令違反の事例をはっきりさせておくことによって、もっと前に進むこと、あるいは安全の確保が生まれてくるのではないかと思いますので、是非これからの議論においては、そういう部分も明らかにして、一般国民にも資料提供していただきたいと思います。
○永井委員長 先ほどの早川委員の受精卵と余剰胚の問題はかなり大きな問題ですので、これからの議論の中でご意見をいただきたいと思います。
○町野委員 先ほど今村委員と早川委員、いまの伊藤委員のお話にも関連してですが、今村委員がおっしゃられるとおり、受精胚の取扱いの問題については再生医療、特にES細胞と、生殖補助医療の問題とは共通する点があります。それは確かにそのとおりなのですが、再生医療ではお子さんを誕生させることが問題なので、受精胚そのものに対する侵害は直接問題にならない。ただし、着床前診断とか、あるいは出生前診断もおそらく胎児の問題ですから、そちらの問題が関係するときについてはこれになりますが、生殖技術一般については受精胚の取扱い問題という点では共通しますが、キメスの問題を含んでいないので一応違うということは言えると思います。
しかしながら、いま伊藤委員もおっしゃられましたとおり、その両方の行為について、いずれも医療行為の一部ですから、昔は生殖補助医療というのは医療ではないという意見もありましたが、現在は皆さんそうは考えていらっしゃらない。そうすると、医療についてどのような規制を及ぼすかというより広い問題からすると共通のところがあります。生殖医療については法律による規制は基本的に及んでいないし、なるべく医療の裁量に委ねながら、現場の医療関係者の自律性に求めてやっているということがあります。再生医療についても、法による規制は全般的に及んでいるわけではないことは確かです。これをどうするかというのが今日の問題だろうと思います。
したがって、医療の規制等についてどのような態度があり得るか。簡単に言いますと医療はもともと自由でなければいけないというのが基本的な原則ですから、その中にどのような規制を加えるのが妥当なのかということでは共通だろうと思います。
○永井委員長 ありがとうございます。ほかに、宮田委員。
○宮田委員 伊藤先生もおっしゃっていましたが、これは規制だけで済むのかなという気が実はしています。例えば似非再生医療と呼ばしていただきますが、そういったものに国民が飛び付く面もある。あるいはがんの末期に親父さんのために効くかどうかもわからないような、リンパ球活性化療法に大枚をはたくという心情もわからないわけではないのです。それは背景に、きちんと、どこまでいま再生・細胞医療が進んでいて、どこまで効能が証明されていて、どこまでリスクがあるのかということを、必ずしも国民が知らされていない。ですから、そういう意味では規制だけではなくて、教育とか啓発ということを含めていかないと、まずこれはうまくいかないのではないかと考えています。
それから規制の手法に関してもいくつかあると考えていて、法律を作る、ガイドラインでやる、それから先ほど言ったプロフェッシヨナルとしての学会の規制としてやる。そこをうまくベストミックスを探るのが、今回の委員会なのではないかと私は思っています。
規制に関しては、緩和しろという意見がここに出ていましたが、規制は悪い面だけではないのです。このように再生・細胞医療のようにまだまだ発展途上のものに関しては、規制によって報告義務を課すことによって知識の蓄積、特に安全面を担保するような知識の蓄積が行われる流れが本来ならあるはずなのですが、いま総合機構の再生医療の知識の蓄積と、ヒト幹の審議における知識の蓄積はあるのですが、問題はここがシェアされているかどうかというところが、もう少し頑張らなければいけない点なのです。
似非再生医療に関しては知識の蓄積と共有がないことが問題です。少なくとも局長の通達を読むと、情報管理とか記録の保存はあるのですが、本当にそれが行われているかどうかを担保するような査察のようなものは確かにないし、情報を集めていくという活動もいまは行われていないわけです。はっきり読めばこの通知はよくできていて、これがきちんと守られていれば、似非再生医療に関する我々の懸念はそんなにないはずなのです。今回の委員会でも是非この通知がなぜ守られていないのかということも含めて、議論していただいたほうがいいのではないかと思っています。
○野村委員 私も素人の立場からという形でいま言わせていただきたいと思ったのは、宮田委員のお話を具体的にもう少し、今回の資料でいうならば、ほかの先生もおっしゃったようにすごい期待値があるのです。これができるといいのではないかという期待値は、国民の意識という調査結果にも表れていることだと思うのですが、逆にふっと思うのは、先ほどのご説明の中には前頁の可能性がここまであるということに対して国民の可能性、期待値が高いというふうには説明されていました。
しかし、私たちというのはこういう治療があると治る、ではみんな治るのだときっと思うのですが、そのわりには前頁を見るとやはり対象疾患、対象の患者数が全部ではない疾患がほとんどで、やはり心臓の悪い人、心筋が悪い人はこの再生医療が行われれば全部治るのではないかという期待のわりには1割程度といって。それがもちろんさまざまな理由によって対象となるとか、違う治療法で治るよあなたはという軽いケースもあると思うのですが、やはりその辺りところを夢の治療ではなくてというのがあります。
生殖医療もそうだったのです。すごい夢の治療だと思っていたものでも、成功率は1割とか3割しかなかった時代もたくさんあって。その辺は私たちは知らないとやはり期待してがっかりするし、先ほど皆さんもおっしゃっているように、とにかく情報公開で知らせるというのが今回はいちばん大きいのではないかと思います。
専門家の方についても、やはり未知の部分があるとはっきりおっしゃっていて、それというのは別に専門家の中で未知の部分を抱えているところではなくて、国民全体に実はこの医療はまだまだわからないところがあるのだということをはっきり示して、そこから知っていって考えてみませんかみたいなことを、私たちは健康を考える報道の中で、いつも可能性を信じてやってきている部分があるので、そういったことというのは、そんなことを国民に言ったって余計に不安になるというような方もいらっしゃると思うのですが、やはり知らされないよりは知っていて考えたほうがいいと思う。わからないのだよという部分についても、きちんと示していく必要が今回はあるのではないかと考えています。
○松田委員 この委員会の名前を付けるに当たって、安全性確保ということが最初前面に押し出されて、ほかの委員の方から、それと同時に推進という趣旨が重要ではないかということで、この名前が付いていることに関連して、私はこの委員会の果たす役割、ルールづくりとか安全性に関するガイドラインをしっかり作っていくことの意味を2点述べてみたいと思います。
私もいろいろなところで関係しております遺伝子組換え食品がありますが、あれは依然としてなかなか国民の間に理解が浸透しないで、抵抗感、アレルギーが強いのですが、医薬品で、特にバイオ医薬品はほとんど遺伝子組換えの製品なのです。しかし、これについては、もちろん食品と医薬品と違うとはいえ、あまりアレルギーがないのは、やはり医薬品についてはしっかりしたルールがある、あるいは透明なプロセスで審査がされる、そういうものがあるからこそ理解が得られて、アレルギーが比較的少ないのではないかと、いろいろな場面でそういうことに遭遇することがあります。
ですから、この委員会においても、きちんとしたルールづくり、安全性に関する指針をしっかり議論して作っているのだ。そして、できたものを国民に多く説明して浸透させるという説明責任を果たせば、理解は一段と進むのではないかと思います。その意味においてこの委員会の役割は大きいということです。
もう1つは医療や医薬に関して議論するときは、患者に対するベネフィットはいちばん大きいことです。さらに1つ、常に議論をされなければいけないのは産業の視点です。この産業の視点に立ったときに、こういう規制やルール、ガイドラインを作ることは一見ネガティブに働くようですが、私はむしろ逆で、そういうルールがしっかりしていればこそ、その基準に見合ったビジネスチャンスを作っていこうという、それが統一ルールの下に、しっかりした品質の製品を作って、医療の現場に提供して、それが逆に推進プロモーションにつながるのだという意味において、産業の視点においてもこのルールづくり、安全性の確保というのが極めて大事だと、この2点について申し上げたいと思います。
○今村委員 委員会の名称自体が安全性の確保と推進と、ある意味では二律背反みたいな部分もあるのですが、これに加えて、少し先ほどから指摘されておりますような生命倫理に対する畏敬も、どうしても欠かすことができない視点だろうと思います。受精卵という余剰胚に関するご意見は拝聴しましたが、受精卵を作る技術は極めて容易、もう誰でもできる。しかし、そのような誰でもできる、どこでもやっていいのかというような部分もありますし、いわゆる人の問題、あるいは施設の問題も考えなければいけないですし、非常に日常的になってしまった生殖補助医療と、いまから開発されるべき再生医療の問題との峻別は非常に大事な問題として出てくるのだろうと思います。
実際、医療は自由に行われるべき、国の規制はなるべく少ないほうがいい。これはもともと日本医師会もそのような基本的な態度でおりますが、いわゆる生命倫理にかかわる問題が出てきたときに、野放図というか規制なしにということについては、国民に対するきちんとした説明があり、これを国民が納得する前提がやはり必要だろうと思います。
○澤委員 先ほど来の議論にありましたような生命倫理の問題、情報公開の問題は非常に重要で、私も本当にそうあるべきと思っています。それを詰めながらも、今回の議論の方向性としては、先ほど宮田委員がおっしゃいました18頁にある医政局長通知。これは永井先生が委員長で、制度的枠組みの委員会で作られた通知だと認識していますが、結局ここにはかなり、そのときも2年間にわたって議論して、そうでありながら、結局は臨床研究のところまではこういう徹底ができるけれども、医療法下の自由診療のところは、結局手続きもなくという形で、そのときも議論したのですが、そのままになってしまったと。おそらく自由診療をやられている方々は、この通知すら知らないのではないか。その徹底がどの程度されているのかということは、私たちも2年間、あのときの非常に熱弁で議論した委員がこの中にも何人かおられますが、したにもかかわらず、結局はそこが問題になっていると。
最後の頁にありました現行のヒト幹指針の改善要望の中にも、かなりそういう点が、何でアカデミアだけがみたいな意見になって。それは別にそういう観点ではなくて、国民全体にこういう細胞治療行為が安全に行われるためにどうすべきかという観点から、もう一度、あのときの議論も含めて、どうしたら少なくとも大きな問題は起こらないかと、ベセスダの事件のような問題が起こらないということを、再発が絶対にないような徹底した議論をここでしていただきたいと思います。
○早川委員 いろいろな要素があるので、一緒に議論してしまうと整理するのは大変だろうと思うのです。先ほど松田委員がお話されたこととも関連するのですが、まず安全性確保というテーマがありますよね。安全性確保というテーマのときに、2つの観点を考えたらいいのではないか。
組換え食品の話が出てまいりましたので、例えば、安全性確保というときに、1つの視点は、純粋科学的にいま対象としているものの安全性は一体どういうことかということを、科学的、中立的、公平に徹底的に洗い出すという必要があるのだろうと思うのです。それに対して、国民の皆様に、多少難しいところがあるかもしれませんが、コミュニケーションをきちんとやる。
そういう部分と、我々の社会というのは常に科学に囲まれていて、ということはそれをどう活用していくかという部分があるわけです。そうしますと、科学的なことを今度は社会の中でどうマネジメント、活用していくのかという話があって、その中に産業的な視点もあれば、倫理的な視点もあれば、あるいはこの場合は医療ですから、実際に患者さんがおりますから、実際の対象として純粋科学的にリスク評価するときはこうであるけれども、しかし、明日の命も危ういという患者さんがいた場合に、それとの関係づけの中で、どのようにマネジメントしていくべきか。マネジメントしていくときに、一方は野放しで、一方はかなり規制が入ってくるということはよくない、マネジメントの部分については、医療や患者さんが存在する以上は、何らかの形の公的なコントロールの中でやらないといけないと思います。
もちろん、なぜこういうマネジメントをするかということに関して、患者さんに対してはインフォームドコンセントという問題がありますし、あるいは先ほどの余剰胚の問題もありますが、そのときにどれだけきちんと説明と倫理的に同意文書を得るかという、倫理の問題も入ってきますが、やはり一つひとつきちんと問題を分けて、現実の中でグットソルーションは何かということを追求していくということで、たぶん安全性確保と推進が、我々が科学的な社会に住んでいて、あるいは医療というものを対象にしている場合に、取るべき基本的な態度だろうと個人的に思います。安全性確保については、また細かい要素がありますので、議論の進捗につれてお話できればと思います。
○永井委員長 参考人の先生方からもどうぞ、ご意見をいただきたいと思います。
○大和参考人 荒木室長のまとめられた資料の中で、アメリカとヨーロッパの比較というのがありますが、これだけ見ていますと、アメリカとヨーロッパでは、いま問題になっているような似非再生医療というのは行われていなくて、全部治験でやっているように読まれかねません。ここにいらっしゃる先生方には、そのような心配はないのかもしれませんが、資料がWebで公開になり、独り歩きする危険もあるので、コメントさせていただきます。アメリカでもヨーロッパでも似非再生医療、未承認のクリニック、ホスピタル等々で勝手にやっている再生医療というのがたしかにあって、これが大問題になっているのというのが事実です。
特にNature BiotechnologyやNature Medicineは、非常に精力的に、これらを告発する記事を定期的に出しています。つい最近もNature Biotechnologyに出ていますが、特にアメリカでは大きな問題になっています。米国は合衆国ですが、一つの州の中だけで限定的に治療をするのならば、FDAのコントロールを受けないのだという主張があります。このような立場を、知事が表明している州さえあるのです。
ヨーロッパは少しトーンが違っていて、似非再生医療を告発する国もあるのですが、一方、先ほども出ておりましたHospital Exemptionを非常にうまく活用している国も少なくないようです。ATMPでEMAの審査を受けようとすると、やはりものすごく大変です。実際にこれまでに、ATMPで製造販売承認が出たのは1品目しかありません。かなり多くの開発者がHospital Exemptionでいくという動きになっています。ヨーロッパもEUといいながらも、国がいくつもあるということで、合衆国のような状態です。
このような状況ですので、どこかの回で海外の事情であるとか、海外の規制当局がそれに対してどのように対応しているのかに関して、少しでも時間を作っていただけたらいいなと思います。
○掛江参考人 私は倫理が専門で、今日は議論を伺わせていただいていて、倫理的な問題提起をいろいろいただいて非常に勉強になったのですが。29頁のところで、倫理的な問題、実用化の点で課題として挙げていただいている2点以外にも、実際の自由診療の中での問題など、いろいろな関連する領域での倫理的な問題もあると思いますので、今後患者さんの保護、被験者の方の保護という観点から、どこにどういう倫理的な問題があるかというところも含めて、十分に検討させていただくことが必要かと思っております。
○宮田委員 澤先生もおっしゃっていましたが、この医政局長通知を一度たたき台として議論したほうがいいと思うのです。第2章の6項の小項目。この通達は皆保険ということが前提になっていますから、保険医療とそれ以外の予防や美容などの再生医療の分類を行っている構造なのです。そこをどう考えるかということも含めて、我々は議論しなければいけないのではないかと思います。つまり、再生医療、細胞医療というものが、保険医療のほうにきちんと効能と安全性が確認されて、保険医療のほうに乗っていく流れと、そうではなくて、淀んでいて何だかわからないような流れがいま存在している。そこに関して言えば、非常におざなりに書いてあって、本気で安全性を確保しようという意思はこの通達ではあまり感じられない、というところに大きな問題があるのではないかと思っています。
そういう切り口も含めて、保険医療のほうの流れというのは、国が責任を持って、安全性を担保しようという仕組みが整っていますが、それ以外の部分をどのように考えるのか。それを規制でやるのか、啓発でやるのか、施設基準のようなものでやるのか、いろいろな議論をこれから皆さんとしたほうがいいのではないかと思います。そうではないと、ここにいらっしゃる先生は、日夜ご努力をなさって、再生医療を良いものとして作ろうとしていらっしゃるのですが、一方で、再生医療という名の下に、患者さん、あるいは国民を混乱させるような実際の診療も行われているやに伺っております。すごくストレスが研究者の中にも溜まっていますし、国民のほうでも一体何だかわからない。これ以上血税を投入すべきかどうか、という判断にも影響するだろうと思っています。保険医療の俎上に乗っていない部分に関しても、今回の委員会で皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
○澤委員 宮田委員と同じ観点なのですが、再生医療学会でいまどのような議論が行われているかということを、少し紹介させていただきたいと思います。私たち再生医療学会は、やはり再生医療を国民に安全に迅速に届けると。いままで治せなかった方を治したいというのが理念であります。安全に迅速にというその2つのポイントをどう推進していくかということで、ある意味、規制緩和もお願いしてまいりましたし、自分たちもいかに努力をするかということを議論してきたわけです。
そんな中で、再生医療学会が自分たちで言うのも何なのですが、再生医療という言葉が勝手に独り歩きしていて、私たち再生医療をやっている人間が自信をなくすほどに似非再生医療。よく町中で、再生医療クリニックセンターと書いてあるのをご存じですか。東京駅の前や有楽町の辺りに、再生医療と書いてあるのですが、中で行われているのは、先ほど来の似非診療といいますか。本来の再生医療は、失った臓器や機能、身体機能を回復させるというところに観点があるのですが、そういう観点ではないと思うような医療行為が存在しているわけです。そういう状況の中で、やはり先ほど申しましたベセスダ問題が起こって、再生医療学会ではそれに対して声明文を出しました。やはり再生医療を安全に行うべき立場から見ると、こういうものはしっかり国として議論してほしいと思います。
前回、私は再生医療学会の会長をやらせていただきましたが、そこでも議論はやはり再生と言わず細胞治療全体を含めて、やはりそこは最も皆さん統一して考えていただきたい安全性は、細胞の加工とか、基準。先ほど基準がないのでというのはヒト幹のアンケートでもたくさん出ていましたが、培養の基準や培養士の技術認定等の観点が安全性を確保する1つのポイントだろうというのが、いまの再生医療学会のスタンスです。いかに基準を作ろうかと、もうすでに進めているわけです。学会としてはガイドラインを作るということを努力しながら、それをどのような形で国に援用していただけるか。そのポイントと、先ほどの枠組み検討会で2年前に議論して、結局そこに書かれていながら全く徹底されていないという現実を、うまくつなぎ合わせていただいたら、安全性の確保という1つの具体的な方向性が議論できるのではないかと、再生医療学会としては考えています。
○永井委員長 いまの点について、私もちょっといろいろ感じることがあるのですが、先ほど野村委員、伊藤委員が言われたことと関係ありますが、あらゆる医療というのは、決定論的なものと、確率論的なものがあるわけです。決定論的に魔弾のように必ず効くというものであれば、非常に考え方は容易なのですが、多くの医療は非常に高い確率から低い確率まで、やはり確率論的です。しかし低い確率であっても効果が大きい場合から小さい場合もあり、いろいろあるわけですね。そういう意味では、いまの澤委員のいろいろなご意見に答えるためにも、知識を作ることが重要です。これは宮田委員が先ほどおっしゃられたことだと思うのですが、知識を作りながら考えていかないと、なかなかわかりにくいところがありますし、過剰な期待を招いてしまうかもしれない。そういう意味で、この検討の中で、是非知識を作るというところは、意識してご議論いただきたいと思います。
○今村委員 医療は全般にそうですが、特にこの医療に関しては、情報あるいは知識という面で、いわゆる専門家と国民の間の情報の非対称性といいましょうか、これが非常にあるのです。そういうことからも、人の臓器等を扱う者については、いわゆる包括的な合意、あるいは個別的な合意というものを含めて、そういう国民に対する説明はしっかりやらないと、また、再生医療に対する不信というようなものが出てきて、おそらく国策として進めようという、こういったような医療の発展を削ぐことになる。こういうのが私どもとしては非常に危惧しています。国民に対する説明というもの、あるいは患者さん個人個人に対するきちんとした説明を十分にしていくことが大事だろうなと思います。
○中畑委員 再生医療といいますと、いろいろなレベルの再生医療というのがあって、例えば今日も出てきましたが、ES細胞やiPS細胞を使った、まだ全く元になる細胞がどういう形で我々の体で振る舞うかということも十分まだわからないような、そういった医療から、かなり一般医療に近いような再生医療まであると。それを日本の中でどういう形で再生医療をこれから発展させて、患者さんに利益をもたらすかということになると思うのです。特に我々がまだ手を付けていないような細胞を使ったような医療というのは、施設を限定して進めるべきではないかと思います。
私は血液で、特に造血幹細胞移植を長年やってきたのですが、日本で造血幹細胞移植ができる施設というのは大体200箇所以上あるのです。ところが韓国を見ると数施設なわけです。そこに全国から患者さんが集まって、たくさんの症例を移植すると。日本はどんな地方の小さな病院でも同じ医療ができるという形で、いままでこの日本の医療というのは進んできたわけですが、やはりこういう最先端の医療というのは、施設を限定して、そこで十分に検証をしながら進めていく。先ほど少し出てきました知識の蓄積ということでも、十分データを取って、知識を蓄積して、それが一般的な医療になるのかどうかというところも、十分判断しながら進めていく。最先端な部分は施設を限定し、一般的な医療になったところは、もう少し幅広くやってもいいのではないかと思います。ある程度再生医療の中の階層性を作って、これから進めていく必要もあるのではないかと考えています。
○伊藤委員 一般国民がどう受け取るかということは、私は大変重要だと思っているのです。30頁の2番目に書いてあるように、片方は全然規制がないから、専門のほうも規制を緩めてくれということではないのではないか。国民が求めているのは、最先端の医療でもありますけれども、最良の医療だと思いますね。最良の医療を提供しなければならない。どなたかもおっしゃられましたが、この委員会に来ておられる先生方は、本当に熱心に真剣に取り組んでおられるということは、皆わかっているわけですが、それを規制するという意味ではないのですが、悪貨は良貨を駆逐するという言葉があるように、片方は自由にのびのび、ひどいことをやっていても、自由にやっているんじゃないかと、そうすると、一生懸命やっているほうの規制は少し緩めろというのは、ちょっと論理的に違う、逆なのではないか。良いものを守りながら、いかに野放図にやっている部分を規制するか。あるいは、なぜ起きているのかということを検証する、ということが大事なのではないかと思います。
ここの先生方はあまり交通違反をやってつかまったことはないと思うのですが、つかまると次の免許更新のときに、いやというぐらいに、本当に夢に見るぐらい、事故の写真をいっぱい見せられて、説明もいっぱい受けるわけです。自分はそういう具合に幸いならなかったけれども、そういうこともあるのだということは、受ける国民の側にきちんと知らせておく必要はあるのだろうと思うのです。
専門の方々は、どうしたらまずいか、何がまずいか、どういうことがいけないのか、よくわかっているわけでして、そういう方々に何か規制をするという意味ではなくて、選択する国民の側が、よく理解できるような方向に議論も持っていっていただければ、私どもとしては大変ありがたいなと、そういう意味で申し上げました。
○野村委員 いわゆる似非再生医療クリニックというのは、規制を強めるとなくなるものなのかどうか。その場合どういう規制だったらなくなると、皆さんお考えになっていらっしゃるのですか。その辺すみません、素朴な疑問で申し訳ないのですが。
○澤委員 別に無くそうというわけではないのです。安全にやってほしいということで、やはり有効か有効でないか正しい評価が必要だと。評価がしっかりしていて安全であれば、やはりそれは進められる可能性はあるかもしれない。我々のフィールドと違うので、医療かどうか一概には言えないのですが、根本的には、とにかくいまは全く評価されずに、かつ安全性も確保されずに、非常に高額なお金を請求している。実はそのあと、合併症とかで例えば大学病院にたくさん駆け込んで来られているのです。美容外科の講座が我々の大学病院にあるのですが、そこの先生がいつも言っていましたが、結局、そういう問題点がものすごくあるのに、そこは全く国として調べられていない。
アメリカや韓国は、先ほどの大和先生の議論もありましたように、ないわけではないのですが、もう少しその辺りは、もう一歩進んだ段階ではあるようには思っています。日本ではそういう意味では、自由天国的な。それは医療法下の医療ということが根幹にあって非常に重要で、医師の自由な判断とか裁量権というのが非常に確保されて、そこも非常に大事なのです。ですから、First-in-Manというか、世界で始めてやる治療など私たちがやらせていただくときも、それはもう医療法の中で自分たちがやっているのですから、同じなのです。その辺をご参考にしていただいて、それをなくすなくさないという議論ではなくて、安全性とか有効性をしっかり評価した形でやらないといけないという。
○野村委員 それは、そちらのクリニックの良心にしたがって、ある基準やインセンティブを設けていけば、良い方に流れる可能性は残っているという理解でよろしいですか。
○早川委員 18頁に、規制の現状というのが書かれてあって、いまの安全性確保という点で、いちばん右の「診療行為として提供される場合」というのが、いま議論になっているのだと思います。例えば安全性確保というのは、絶対的なものではなくて、非常に相対的なものだと思うのです。安全性の中に、使っている本体自体の問題があります。それから、先ほど澤先生もおっしゃったように、製造行程の中から出てくるような、そこの杜撰さによって発生してくる、本体以外のファクターによる安全性上の問題があると思います。本体自体も絶対的な安全性ということはなくて、やはり投与量や投与部位とか、投与期間とか、投与頻度とか、そういうものによって、当然本体の安全性というのは相対的に変化してくるだろうと思うのです。
もう1つ考えなければいけないのは、それは適用前の評価の話であって、今度は実際に人に適用したときにどうなるかというのは、それは実際適用してみないとわからないので、そこから安全性の評価が始まる。それが非常に将来に対して有効なデータになる。それがさらなる展開を生むということもあると思うのです。
18頁を見てみますと、結局いまの第3の医療法でやっているものの、これをこのまま信じるとすれば、適用前の段階では「同左」ということで、そこは保証されているように一見見えるのです。マネジメントがそれだけきちんとされているかどうかはわかりませんが、一応このままでいくとそういうことです。そこのところの安全性確保に関することをきちんとやらないといけない話と、いちばんの問題は、それを実際使ったあとの安全性評価なり有効性評価の客観的データに関して、ある公的なところが、きちっとマネジメントして得られるという部分に関して、少なくとも8頁の表をそのまま読むとそれがない。そこら辺に関して、もうちょっときちんと評価をしていくというか、できるような形にしていくということと、先ほど来ずっと言われているように、倫理的なことをどれだけきちんと守るのかという話と、公開に関して、どれだけきちんとできているかと。ここら辺が第3の道を解決していくための1つの方法なのかなと思いました。
○永井委員長 有効性の公開ということも含むわけですか。
○早川委員 もちろんです。いくら安全でも有効性のないものに関してずっと使用し続ける訳にはいかない。ほかのところでは、非常に有効性に関して、ある程度のことが言われているわけですから。安全であったらいいというわけではなくて、私は有効性という言葉がいいかわかりませんが、少なくともいま病に苦しんでいる患者さんに対するベネフィットがあるかどうかは明らかにすべきということです。ベネフィット評価は患者さんが持っているリスクを軽減できる程度に対する製品側あるいは技術が持っているリスクとの相対的な関係で進めていかざるを得ない。いずれにしても相対的なものなので、個別の事例になりますが、評価をやるマネジメントがきちんとできるかどうかということが課題かと思います。
○永井委員長 先ほどの似非再成医療や似非科学とか、以外と難しいのですね。科学と似非科学はどう違うかという議論はいつの時代にもされてきましたし、科学とは、検証可能性だということも言われているわけです。検証可能性が非常に科学として大事だということですので、そういう論点・視点も入れる必要があるのではないかと思います。
○大和参考人 Googleなどで検索すると、補助生殖医療をやっているクリニック、マタニティークリニックが多数ヒットします。そこのHPを見ると、「最近、再生医療始めました」と書いてあるクリニックがたくさんあります。先ほど今村先生からお話があったように、日本の補助生殖医療にはそれなりに複雑な歴史があって、実際にどれくらいの数の赤ちゃんが補助生殖医療で生まれているのかも正確な数字は明らかになっていません。成功率等に関しても同様です。一方、移植に関しては施設限定になっていて、全例の詳細が明らかになっています。
海外では、たとえばフランスには独法でアジャンス・ド・ラ・バイオメディスン、英語で言えばAgency of Biomedicineというのがあって、再生医療、移植医療、補助生殖医療、遺伝子治療のこの4つを全部管理しています。そこでは、どの病院で、何個受精卵を作って、何個お母さんに戻して、何人生まれて、何個凍結保存してあるか、全部1桁目までわかっています。ですから、余剰受精卵を、ESを作るのに円滑に回せるようになっているのです。再生医療に関して、このようなレジストリーをどこまでやっているのか詳細はわかりませんが、Hospital Exemptionに関しても管理していると思います。
日本は、移植に関してはかなりガチガチにやっている一方、補助生殖医療に関しては全然把握できていない。再生医療がどっちにいくのかということなのですが、本日いろいろとお話があったように、やはり野放しでは難しいと思います。クリニックを駆逐するかどうかはともかく、やはり現状では移植医療に近い方向で、中央官庁あるいは独法なりが、症例数や治療成績等々に関して把握し、必要に応じて公表することは重要ではないかと思います。
○掛江参考人 いまの議論をずっと伺っていて、ちょっと疑問が湧いたので、是非今後チャンスがあれば教えていただきたいのです。18頁の規制の現状の図の中で、診療行為として提供される場合の「使用時・使用後のリスクへの対応」のところの2番目に、「倫理審査委員会の承認」と書いてあるのです。本当にこんなものが存在しているのかということ。それからここで言う倫理審査委員会は何に基づいて設置されて、何に基づいて、何を議論している委員会なのかということ。ここで倫理性や安全性、患者さんの権利擁護であるとか、そういったことの担保しているのであれば、実態が私のほうは全く勉強不足で知らないものですから、永井委員長が最初のところでおっしゃった、知識を作りながら検討というところで、是非知識をいただければ、今後検討できるのではないかなと思っているのですが。
○永井委員長 事務局からお答えいただけますか。
○佐原課長(医政局研究開発振興課) 研究開発振興課長ですが、倫理審査委員会につきましては、この通知の0の「はじめに」というところにも少し書いてあるのですが、厚労省でヒト幹指針ではなく、もう1つ「臨床研究に関する倫理指針」というものを作っておりまして、この中で、各医療機関における倫理審査委員会のあるべき姿というのはお示しをしておりまして、この通知の中でも、それを参考にやってくださいということになっております。また、各医療機関で、どのような倫理審査委員会が設置されているのかというのは、厚労省には定期的にご報告をいただくことになっておりまして、その内容については、厚労省のホームページで公開をするようにしております。
○掛江参考人 いまのご回答に対してなのですが、研究に関してはご説明いただいたとおりであることは、私のほうでも承知しているのですが、診療行為として提供される場合という欄にありましたので、そういった意味では、研究の枠組みではない一般診療として実施されている場合に、どのような倫理性、安全性の担保という手続きが取られているのかなというところが、今後わかれば教えていただければと思っております。
○宮田委員 議論すべき課題はすごくいっぱいあるので、まず事務局がこれを整理しなければいけないというのが1つ。もう1つは、似非と我々がいま仮に名付けているものの実態を誰も知らないのではないでしょうか。我々も確かにホームページとか、あるいは宣伝で拝見をいたしますが、最近、大学をお辞めになったお医者さんが、結構再生医療をやっていたりするのです。そういう意味では医療界においてもモラルハザードが起こっているなと実は思っていて、まずは、似非というのを定義するのは難しいのですが、実態をもう少し把握なさる努力をどうやってやるべきかということを、まず議論したほうがいいのではないかと思います。
もう1つは、では似非何とかは駆逐すればいいのかというと、私は全然そう思っていなくて、永井先生が正直に白状していましたが、似非科学と先端化学は区別が実はつかないのですよね。ひょっとしたら似非やっている人がすごい発見をしている可能性もあるのです。そういう意味では、我々はまだ発展途上の技術、特に再生医療とか細胞医療をやるときに、ある意味では自由を担保しなければいけないというように、この委員会でも議論しなければいけないと思うのです。一方で、それでは医者だけが悪いのかというと、国民のほうも、末期の最後に親孝行したいという希望もあって、そういうのは高くお金を払うマゾヒスティックな市場というのも、実は似非再生医療を支えているというところがあるので、先ほどから何回も言っていますが、規制だけの問題ではない。
倫理という言葉を少し広く捉えると教養にもつながりますので、むしろそういう意味では、いまの実態、今後の展開のようなことも含めて、国民とどうやって知識を共有していくのか、現状はいま何が起こっているのかということの知識を、どうやって収集して整理をして、それを判断していくのかという2つの観点から議論をやってみたいなと思っております。
○永井委員長 似非と本物の区別がつかないと言っているわけではなくて、やはり検証ということが非常に重要だということです。これは歴史上散々議論されてきたところなわけですね。
○佐原課長 先ほどの掛江参考人のご質問に対して、臨床研究として提供される場合を主に申し上げましたのは、いまのこの医政局長通知では、2章の6にあるのですが、評価療養とか、あるいは保険適用されていない細胞医療については、まずは研究として実施することが必要であるというのが立前になっております。立前というといかにもいい加減だと言っているようなもので申し訳ないですが、そのようになっています。そうしますと、先ほど申し上げた、倫理指針のほうに準拠してやっていくと。制度的にはそのようになっているのが現状です。
○宮田委員 やはり医政局長通知を少し検証しなければいけなくて、これは地方自治法の単なる助言ですよね。そうすると、これは地方自治体が似非再生医療、細胞治療を取り締ることを厚労省が助言するみたいな仕組みになっていますよね。先ほどおっしゃっていたように、保険医療のほうに持っていくために、研究という概念が入っていると思うのですけれども、そうではない美容とか予防に関しては、やはりこの条文を読むだけでは、なかなか助言としてもいま一つだと思います。
では一体国が何をやり、国のいまのマネジメントシステムだと地方自治体が実際の現場になるはずなので、そこが何をやるべきなのかということも含めて我々は議論しないと、また小田原評定が続いてしまうと思っています。もう少し行動計画的な、ワークするような仕組みを作ったほうがいいと思います。
○早川委員 いま表に出てきている話と、表に出てきていない話の2つに分けて。どうしても2つが混同しがちなので、実際に表に、行政もすべてある程度把握している安全性確保、推進に関する議論と、これからのやり方ですけれども、表に出てきていない話にコンセントレイトして、どうあるべきかという話を分けて議論していただければ、議論としてはわりと集中できるのではないかと思いますので、よろしくお願いします。
○町野委員 先ほどの臨床研修の倫理指針ですが、あれは指針の書き方として一率に全部適応があると。本人が診療だと言っても、そんなことは関係ないという書き方になっているのです。ただ、確立した医療であるときについては、それを除くということになっていますから、そこで外れるかどうかの問題で、おそらくその点は問題ないだろうと思います。
それから、18頁ですが、法令の薬事法の隣に大臣告示とかいろいろありますが、これは法令ではないので、ちょっとミスリーディングでございます。法令というと、それに違反したときは法律的なサンクションがかかりますが、ここは全部独立の命令や告示ですから、これは直接関係ない。ちょっとこれだとまさに法令による規制が及んでいるように見えますが、それはそうではないわけです。
もう1つは、この規制のやり方として、事前的な規制。例えば主に薬事法は実はそうなのですが、そういうものと、実行されたときの規制。おそらく話題が出てきたのは、行われた医療として提供されたものは非常に危険であって、事故が生じるということですから、そういった両面があるわけで、後者のほうがかなり最初に出てきたというふうに私は思います。
そうだとすると、例えば薬事法のところでも、下のほうで「移植・投与」のところでは、直接の規制はないのです。ですからどのような医療について規制を加えるかということについて、日本ではおそらく前例がないと考えたほうがいいだろうと思います。このところで再生医療についてだけやるということは、どういうことなのか。ほかに危険な医療というのはかなりある。インプラントだとかいろいろ聞いたことがあるのですよね。どうしてそっちを放っといてこっちだけやるのかということの説明がないと、やはり先に進みがたいということがあります。
1つは、再生医療はこれから促進させていかなければいけないから、おそらくその過程で、それいけどんどんというわけにはいかないので、ある程度の規制を加えるという理屈しかないのではないかと思います。危険なものがある、似非医療があるから規制しなければいけないというのは、それは直ちには多くの人は思うけれども、実際バランスの問題として、いったいそれでいいのかという話ですよね。その説明はしなければいけないだろうと思います。
○伊藤委員 18頁の「使用時・使用後のリスクへの対応」で、製品として提供される場合と、臨床研究と診療行為となっていて、それぞれの欄のいちばん上にあるものは、横一列に読んでいっていいものなのかということと、横一列に読むと、この診療行為としての場合は、重大な健康被害を報告する義務なしというように読んでいいのでしょうかということが1つ。
それから、先ほど澤先生から出ておられた、ベセスダ病院の事件がその後どんなことになっているのか、あるいはいまドイツと日本との間で同じようなことが起きているようなことも噂では聞いているのですが、それは本当なのかということをどなたか知っていたら教えてください。
○荒木室長 18頁の表の見方ですが、「使用時・使用後のリスクへの対応」で、一応この4つの○がすべて製品の場合、臨床研究の場合、診療行為の場合にございます。別に横1列が相同性があるというわけではなくて、カラムの中で4つずつあるという理屈です。右の「診療行為として提供される場合」の国等への報告義務なしというのは、こちらの医政局長通知の中で、報告をすべきみたいなことは書いていないと、そういう意味です。義務はありませんと書いてあるわけではなく、書いていないということで義務はなしということです。
○永井委員長 ベセスダの話はどなたかご存じですか。
○鎌田課長(医政局経済課) 次の機会にでも整理してご説明しますが、ベセスダにつきましては、事故が起きた後、まさに担当しております京都市のほうで指導が入りまして、その後休診の状態が続いております。その後、再開の動きがどうかについて不明ですが、いまのところないのではないかという見方がありますが、いずれにしても休診中です。いずれ細かいことは整理してご説明いたします。ドイツのほうは存じ上げないので、またそれも調べてご説明申し上げます。
○永井委員長 そろそろ時間になりましたので、今日いただいたご意見を事務局で論点整理をしていただきたいと思います。その他お気づきの論点がおありでしたら、事務局までお寄せいただきたいと思います。次回から議論をさらに深めたいと思いますので、よろしくお願いします。最後に事務局から連絡事項等お願いします。
○荒木室長 本日は貴重なご意見を数多く賜り、今後整理してそれぞれを議論していきたいと思っております。次回につきましては、11月16日を予定しております。詳細につきましてはまた会場等も含めましてメール等でお伝えしますので、よろしくお願いします。
○永井委員長 ありがとうございました。それでは、本日はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。
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